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1973-02-28 第71回国会 衆議院 大蔵委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年二月二十八日(水曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 鴨田 宗一君    理事 大村 襄治君 理事 木村武千代君    理事 松本 十郎君 理事 村山 達雄君    理事 森  美秀君 理事 阿部 助哉君    理事 武藤 山治君 理事 荒木  宏君       愛野興一郎君    宇野 宗佑君       越智 通雄君    金子 一平君       木野 晴夫君    栗原 祐幸君       小泉純一郎君    三枝 三郎君       塩谷 一夫君    地崎宇三郎君       中川 一郎君    野田  毅君       萩原 幸雄君    坊  秀男君       村岡 兼造君    毛利 松平君       保岡 興治君    山中 貞則君       佐藤 観樹君    高沢 寅男君       広瀬 秀吉君    堀  昌雄君       村山 喜一君    山田 耻目君       増本 一彦君    広沢 直樹君       内海  清君    竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 愛知 揆一君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      茂串  俊君         大蔵政務次官  山本 幸雄君         大蔵省主計局次         長       長岡  實君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省理財局長 橋口  收君         大蔵省理財局次         長       後藤 達太君         大蔵省証券局長 坂野 常和君  委員外出席者         大蔵省理財局資         金課長     福島 量一君         建設省住宅局日         本住宅公団首席         監理官     福地  稔君         建設省住宅局住         宅計画課長   京須  実君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員の異動 二月二十八日  辞任         補欠選任   大西 正男君     保岡 興治君   野田  毅君     愛野興一郎君 同日  辞任         補欠選任   愛野興一郎君     野田  毅君   保岡 興治君     大西 正男君     ————————————— 本日の会議に付した案件  資金運用部資金並びに簡易生命保険及び郵便年  金の積立金長期運用に対する特別措置に関す  る法律案内閣提出第一号)  有価証券取引税法の一部を改正する法律案(内  閣提出第三号)  相続税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二号)  証券取引に関する件      ————◇—————
  2. 鴨田宗一

    鴨田委員長 これより会議を開きます。  証券取引に関する件について調査を進めます。  この際、政府より最近の株式市場についての説明を求めます。坂野証券局長
  3. 坂野常和

    坂野政府委員 最近の株式市況に関します若干の問題について、御報告を申し上げます。  一、吉國大蔵次官証券界代表に対する要請の件  二月十四日、円が変動相場制に移行して後、証券市場は再び過度活況を呈し、国際通貨情勢の困難の中でのこのような動きに対し、証券界に対する一般批判も強まってきましたので、大蔵省は二月二十一日に価格形成主眼とする特別検査実施するとともに、証券界に対する批判に対しては、業界みずからが現状をいかに考え、いかに対処するかを明らかにすべきであるという観点から、吉國大蔵事務次官が同二十一日、証券界首脳瀬川日証連会長、日高、菊池東京協会会長を招いて、これを伝えることといたした次第であります。  その際、次官は、わが国経済の置かれている現状にかんがみ、証券界としては目先の競争に走ることなく、営業活動を自粛自戒し、秩序ある証券市場を育成して国民経済発展に寄与するよう努力してほしいとの趣旨を述べております。  証券界に対する世上一般批判は、法人に対する過度営業活動を行なっているのではないか、外部からの投機資金を導入して市場をますます投機化しているのではないか、投資家の誤解を招くような株価予測等を責任ある地位の者が行なっているのではないか、個人投資家に対するサービスが不十分ではないかといった諸点にあると考えられます。これらの点については、大蔵省取引所証券業協会において繰り返して注意してきたにもかかわらず、最近世上批判がますます強まってきておりますことは、証券界においても十分反省し、みずからこの批判にこたえる姿勢を示すべきときにきていると考えられます。瀬川日証連会長は、吉國次官要請を受けて、形式は談話ですが、証券界の考え方を明らかにした実質声明ともいえるものを二月二十一日付で発表しております。今後証券界として、この談話趣旨に沿ってこれを実行していくことが大切であると考えます。  なお、特別検査は、最近市場における値動きが激しく、価格形成がゆがめられ、市場の秩序が乱れているのではないかとの批判が聞かれるので、価格形成主眼を置いた検査を行ない、投機資金動向営業活動時価発行に伴う価格形成等について調査すると同時に、価格形成をゆがめるものがあればこれを排除し、秩序ある市場発展をはかるという見地から検査実施しているものであります。具体的な会社名については申し上げられませんが、現在八社について検査を行なっており、検査日数に長短はありますものの、今回の特別検査の全貌を把握いたしますには、なおかなり日数を要する状況にあります。  二、協同飼料事件  二月二十三日の東京地方検察庁の発表によりますと、協同飼料、この会社資本金三十五億円で、昭和三十六年より東京証券取引所第一部に上場されております。この会社増資、この内容は、株主割当一千百五十万株、五億七千五百万円、一般公募一千二百五十万株、プレミアム十八億七千五百万円、その増資に際しまして株式仮装売買等株価操作会社役職員が行なった疑いがあるとして捜査中であり、さらに若干の証券会社がこれに関連しているとの疑い捜査されているということであります。  一昨年末以来の株式市場活況時価発行増資の増加の状況の中で、株価の急激な上昇過度信用取引あるいは証券会社営業態度行き過ぎ等が見られましたため、これまで信用取引規制証券会社に対する自粛要望等、公正な価格形成を確保するため種々の措置を講じてきたところであります。  ただ、発行会社一般投資家にまで、証券取引法趣旨が十分には徹底していなかったこともあって、今回のような事態が生じましたことは、まことに遺憾に存じております。  今後とも、証券会社に対する監督を一そうきびしくするとともに、発行会社に対しても証券取引法趣旨の徹底をはかるなどにより、このような事態が再び起きることのないよう努力してまいりたいと考えております。  三、最近の株式市況  最近の株価動向を見ますと、一月二十四日に株価最高水準、これは指数で四二二・四八、ダウ五三五九・七四に達しました後、高値警戒感があったところへ、国際通貨情勢の動揺、ニューヨーク市場株価下落等があったため、株価は一月三十日から大幅に下落し、二月三日には株価指数で三七〇・二七まで低下いたしました。  しかし、その後株価は二月十四日の円の変動相場制移行の中で、むしろ上昇のテンポを早め、二月二十日にはダウ修正平均五三三四・六九と一月二十四日の最高水準の近くまで戻す状況となっておりましたが、このような株価上昇原因としては、大口個人投資家余剰資金運用先株式市場に求めており、一部の仕手株が急激に上昇するとともに、大型株についてもなおかなり売買が見られたことによるものと考えられますが、法人動向はこの期間若干の売り越しとなっておりました。  しかし、さきに述べましたように、二月二十一日に特別検査実施吉國次官証券界首脳への要望が行なわれ、続いて二月二十二日に協同飼料事件が起きたことに加えて金融の引き締まり転換も予想され、また、国際通貨動向がなお不安定である等の理由により二十一日以降株価は落ち着いた動きを示しており、売買高も減少する等市場は鎮静化しております。  以上であります。
  4. 鴨田宗一

    鴨田委員長 質疑の通告がありますので、順次これを許します。広瀬秀吉君。
  5. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 有価証券取引税法の一部改正の質問を私は二月二十一日にこの席でやったわけでありますが、それから二日後にこの協同飼料株価操作不正行為検察庁によって摘発をされるという事態を迎えた。こういうことについて、私はどうも合点がいかないわけなんです。あのときにも、もう少し時間があれば、時価発行に関するいろんなそういうものがあり得るのではないかという、そういうものに対する株価操作というようなものがどうもつきもののようであるという問題についてもただそうと思ったわけでありますが、その際、当面何を一番大蔵省として証券行政重点を置くかということは、抽象的には聞いたわけでありますが、公正な株価形成ということを最重点にするんだと、こういうことであったわけですが、あくまで局長はそれを抽象的な答弁にとどめられたわけです。  これは、私のほうの質問がより具体性を持たなかったという点では、私どももその責任の一半を負うわけだけれども証券問題について、やはりこの委員会におきましてももっと掘り下げた討議もしていかなければいけないし、また証券行政を担当している皆さんのほうもいろいろな問題について、心配になっておる問題などについて、あるいは検査、いま御報告をされたようなことを、この大蔵委員会にむしろ積極的に状況報告するというような姿勢、こういうようなものが必要であったろうと私は思うわけなんです。証券問題を前の日にあるいは前々日議論をしながら、大蔵省担当局が、検察庁からこういう手が入って、これが大々的に新聞報道されるというまで一言もこの委員会——その前後にそういう論議がされているときに、株価形成の問題についてはいま非常に心配な問題が出ているのだというようなことを、積極的に報告をなさるというような姿勢というものがほしかったと私は思うのですが、これはわれわれの追及の不十分な点を認めながらも、大蔵省自身姿勢としてもそういうものがあってしかるべきだ、かように考えるわけです。国会において問題を取り上げて原因の究明に当たるというようなことが行なわれることによって、やはり行政当局としても非常にやりやすい面も必ず出てくるはずだと私どもは思っておるわけだし、正しい結論がそういう中から導き出されると思うわけであります。行政ベースだけで考えてないで、これをやはり国会の場にも報告をする、大胆、積極的に報告をするというような心がまえというようなものをもっと持ってほしい、こういうことを痛切に感ずるわけであります。その点について、次官国会の審議と証券行政の問題についてどういうようにお考えになっておられるか。この点をまずお聞きいたします。
  6. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 過般来のただいま局長から御報告申し上げましたようないろいろな事案については、まことに遺憾に存じます。ただ、検察庁のほうで、こういう事案捜査の段階に入ってきたということについては、率直にいいまして、大蔵省も、捜査のことでありますので、関知はしていなかった。おっしゃるように、そういう事件事前にわかっておれば、もちろん皆さま方にもいろいろな形で御報告もできたかと思います。それが、残念ながら捜査のことでありますから、検察庁のほうも、捜査に入るまでは外部に漏らさないという捜査一つの常道がありますので、さようなことで大蔵省も関知できなかった、こういうふうに思うわけです。しかし、全体といたしましては、確かにいま広瀬委員のおっしゃるように、証券行政というものの一つのあり方としまして、株価の具体的な動きに介入するということは差し控えなければならぬことでありますけれども、その間の過程におけるいろいろな事案が現実に行なわれていないとするならば、それらについては、やはり相当徹底して思い切った措置をしていかなければ、国民経済の上でもたいへん損失を招き、国民にも申しわけないことになるであろう、かように存ずるのであります。  仰せの国会との関係につきましても、全く御説のとおりだと私は思うのでありまして、今後の大蔵省側態度としても十分ひとつ考慮をしていきたい、かように考えております。
  7. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 大蔵省は、この協同飼料の問題について、これは時価発行をやった会社でありますが、その前後に、株の動きどもかなり異常な点がもう昨年の七月当時から見られておった。その間に株価操作かなり、九月ごろあるいは十月まで行なわれておったはずなんです。そういうものに対して、検察庁から摘発される前に、時価発行もやった会社でありますから、特別な検査等をやって、ある程度の実情というものを知っておったのか。検察庁の手が入るまで全く知らなかったのか。この辺のところはどうなっておりますか。
  8. 坂野常和

    坂野政府委員 昨年の秋に、今回の事件関係しております一つ証券会社検査をたまたまいたしております。そのときに、こういう問題があるということは、その検査を通じてほぼ把握しておりました。また、東京証券取引所のほうでも、本件に関しては価格形成に不審な点があるので、注意をいたした事跡がありました。その後取引所のほうから、こういう案件について大蔵省のほうでもちょうど検査をしておられるようなので、少し調べてくれという御要請があって大体の状況は把握しておったわけです。
  9. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 当然そうあるべきだと思うわけであります。  そこで、時価発行というような場合は——これは時価発行はすべきでないというような議論ではありません。時価発行が、最近のような株価上昇の気配の中で、空気の中でこれが行なわれて、自己資本充実に役立つ、あるいは経営改善に役立っているというようないい面をわれわれは見て、認識はしておるわけだけれども、しかし、時価発行をする前に、まあ時価発行の額をどの辺に押えるかというようなことも、終わり値からやや低いところにするとか、いろいろ時価発行についての条件などもあり、この委員会でも相当問題にしてきました。しかし、時価発行をする場合に、おそらくその前にできるだけ高い時価発行をしたい、プレミアムをそれだけ獲得したいという誘惑というようなものが、時価発行会社に当然働くわけで、したがって、そういう面では証取法百二十五条の禁止事項のいろいろなことを、あらゆることを、秘密のうちにやるのではないかと私どもは想像をするわけであります。  証券取引法の百二十五条でいろいろ項目をあげて禁止事項がうたわれておるけれども、そのほとんど——仮装売買をやってみたり、あるいは自己売買をやってみたり、株価操縦を自由自在に、あらゆることを秘密のうちにやるというようなことを、ほとんど大部分が実はやっているんじゃないかと私は常々疑っておったわけなんだけれども時価発行をするという場合のそれについては、証券局検査が総力をあげてそういうものに対して、そういう百二十五条違反の事項をやっておるかどうかということで徹底的な検査をやるというような姿勢は、いままであったのですか。時価発行会社については全部検査官が立ち入って、そういうおそれはないかというようなことについてはやっておりましたか。今までに時価発行をやった会社の数も相当な数にのぼりますが、その時価発行をやった会社の数、これを四十五年あたりからでけっこうです、四十五年に非常に多かったわけですから、四十五年以降でありますから、四十五年、四十六年、四十七年、時価発行を行なった会社の数が幾つであるか、そしてそれに対して、その時価発行の時期以前に検査を行なった事例はどのくらいあるか、この点を明らかにしていただきたい。
  10. 坂野常和

    坂野政府委員 先に四十六年から申し上げますと、四十六年に時価発行を行ないました会社の数は六件であります。それから四十七年、これは年度でありますが、一月までにすでに時価発行を行なったものが百十件、三月までに行なう予定になっております会社数が百二十二件であります。しかし、これは完全時価発行を行なった、あるいは行なおうとしている会社数でありまして、一部株主割当一部公募、いわゆる抱き合わせ増資ということを行なっております会社は、四十六年度百四十二件、四十七年度一月まで二百五十九件、三月までの予定三百二十二件、いずれも会社の数であります。  時価発行を行ないます際に株価を監視するということは、お説のとおり非常に大事なことであります。しかし、この株価がどういう動きをするかについて事前に点検いたしますのは、証券取引所でそれを行なう以外に方法がないわけであります。証券取引所におきましては、売買管理を専担する部門がありまして、そこで毎日の価格形成のうち、価格値動きが不正常であった、あるいは疑いがあるというようなものについてそれを取り上げまして、その内容がどういうことであるか調査をいたします。その結果、価格形成に不公正な点があれば、関係証券会社あるいは上場会社あるいはその投資家に対する注意をいたしたこともあります。  そういうことでやっておりますが、証券検査のほうは事後的にやります。従来の証券検査は、証券会社に参りまして財産状況から内部管理状況、それから営業活動状況取引所における価格形成やり方等、すべてについて網羅的な総合検査をいたしておったわけでありますが、昨年の春ごろから株式市場が非常に活況を呈し、お説のように時価発行がたくさん出てまいりました。この価格をフェアにするということは非常に急務になってまいりましたので、昨年の五月ごろから、証券検査は、価格形成主眼とする検査重点を移してまいりました。これは主として大証券の場合が多いわけでありますが、特にその証券会社が主幹事になって時価発行を行なうような場合には、その銘柄について特別の価格形成について問題はなかったかという点について、かなり詳しい検査をいたしております。  ただ、何ぶんにも非常に件数が多いものですから、時価発行を行なったすべての銘柄についての検査までは実績はあがっておりません。その中から値動き等に問題がありはしないかという疑いのある銘柄を選定いたしまして、そういう銘柄についてかなり長期間にわたって、その価格形成が不正常であったかどうかというような点を点検、検査いたしております。  最近に至りまして、株式市場状況、特に昨年の十二月ごろから市況が急に活発化し、株価が急上昇するというような事態になってまいりましたので、一段とこの傾向を強めまして、本年に入りましてからは一般検査よりも主として価格形成重点を置いた検査に漸次切りかえております。先ほど御報告いたしました、現在行なっております八件の特別検査は、価格形成のみの特別検査ということにいたしておるわけであります。
  11. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 いまのお答えでは、証券検査は事後的なものだということなんですが、この事後的なものということは、法律的にそうでなければならぬということなんでございましょうか。それとも何らかの疑いありと証券局で認定をしたら、立ち入り検査をするという権限はありませんか。
  12. 坂野常和

    坂野政府委員 権限的にはそういうこともできると思います。しかし、会員組織取引所で、一応取引所がそれを一義的には監視するというたてまえになっておりますので、初めからそういうところに国の権限で介入していくことが、価格形成にかえって悪い影響を与えるようなおそれはないかという点も考慮すべきだと思います。しかし、非常に悪質であり、かつそれをとめることが投資家保護上ぜひとも必要であるというような案件があれば、お説のように途中と申しますか、そういった価格形成が行なわれている際に、直ちに立ち入り検査等行なうという必要がある場合もあると思います。それから昨今のような情勢にかんがみ、今後はそういうことも考慮したいというふうに考えております。
  13. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 先ほどの報告で、いま八社について検査実施中であるということなんですが、その検査は、これは事後検査ですか。いまおっしゃった権限はあると思うという、その権限の行使ですか。どちらですか。
  14. 坂野常和

    坂野政府委員 両方やっております。と申しますのは、先ほど御報告いたしましたように、この検査価格形成がゆがめられるような、そういうことはないかという点を点検しておるわけであります。そういたしますと、いま現在一部の仕手株等をめぐって、外部からかなり強い投機資金証券市場に流入しております。この投機資金株価をゆがめているというような事実が現在あるんじゃないかというような疑いが一部ありまして、そういうようなことに関しては、現在行なわれている価格形成に対してそれをチェックするというような意味がございます。しかし、御報告でもう一点、時価発行等についての検査も兼ねておるというようなことを申し上げましたが、これは大体すでに時価発行を終わった銘柄価格形成を点検するというようなことであります。また、証券会社営業態度というようなことを御報告をいたしましたが、これは主としてごく最近の営業態度を見ておる。それは現在続いておる会社もございましょうし、すでにその問題について営業態度が一応は終了しておる証券会社もあると思います。
  15. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 私どもは、大蔵省事後検査だというような立場をとっている限り、やはり黒い株価というようなことが次々に発生するのではないか。東証自体で、これは昨年一年間で五十七件も警告を発するというようなことがあったという。この五十七件も警告を発するというような事態に対して、大蔵省としてはどういう検査なり、あるいはこれに対する対策というものをとったのか、この点をひとつ明らかにしていただきたい。
  16. 坂野常和

    坂野政府委員 五十七件は非常に軽微なものも含んでおりまして、これが全部が全部価格操作的なものということではございません。しかし、五十七件の中には、若干価格形成影響を与えたんじゃないか、悪い影響を与えたんじゃないかというようなものも含まれておりまして、そういうものにつきましては、取引所のほうから連絡がございまして、連絡のありましたものについては検査、あるいは検査に至りませんでも、その会社を特別に調査するというようなこといたしましてその事実を確かめた上、注意すべきはいたしましたし、またそういうことが起こらないような新しい体制、これは証券会社内部管理体制が悪かったことに基づくものもございましたので、そういうものについては内部に特別の牽制組織をつくらして、そういうことが起きないようなチェックをさせるというようなこともいたしました。したがいまして、五十七件全部を東証から連絡を受けたというわけではありませんけれども、主要なものについては私どものほうでもチェックをいたしまして、注意を与えたりあるいは申し上げたような処理をしております。
  17. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 この五十七件の警告、これはきのう予算委員会でも、新しく今度はこの協同飼料だけではなしに三光汽船においてもこの種の疑いがあるという質問が、同僚の楢崎議員からなされております。その際にも、東証からの警告事案だけでも五十七件もある。こういう問題をぜひ国会にも報告をし、また公表するというような姿勢をぴしっとこの際することによって、かなり業界全体に対する、証券業界のそういう不当な、あるいは今回のような不正な行為というようなものを押えるために非常にこれはいい資料にもなるだろうと思うし、国民的な立場で、国民の利益が大きくこの黒い株価操作によって害されるわけでありますから、国民に対する啓蒙の意味においてもこれはしっかりひとつ公表すべきだ、こういうように思いますが、その点についてはいかが取り計らうおつもりであるか、お伺いしておきたい。
  18. 坂野常和

    坂野政府委員 昨日の予算委員会におきまして、東証理事長がその件に関しまして、五十七件の具体的な内容は申し上げかねますが、それをある程度類型別に区分いたしまして、こういうものが何件、こういうものが何件という資料を提出いたしますということを報告しておられました。したがいまして、東証のほうとしては、そういった区分類型別の件数というものを国会のほうへ御提出するという予定になっております。
  19. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 時間がありませんので、いずれこの証券問題、特にこの株価操作等の、黒い株価操作という表現で今日呼ばれております問題については、証券金融小委員会が本委員会に設置をされておるわけでありますから、こういうところで徹底的に議論をしなければならぬと思っておりますが、特に日興、大和という二つの証券会社の支店が、この時価発行協同飼料会社に手をかして情報を提供し、あるいは援助をするということになったわけだけれども、この原因というものは、やはり証券会社自身のもうけ主義、さらに出来高競争主義というところにあったといわれておるわけでありますが、証券局としては、その病根は一体どこに根ざしたものか。こういう事案が起きるのは、発行会社の場合と、それからそれに手をかした証券会社、どこにその病根を発見し、メスを入れるべきか、この点についてどういうようにお考えになっておられるか、伺いたいと思います。
  20. 坂野常和

    坂野政府委員 急激に生じましたわが国の株式発行市場が、非常にまだふなれと申しますか、過渡期的現象と申しますか、熟してないと申しますか、そういうところにあったと思います。御承知のとおり、わが国の株式市場は、流通市場は非常に活発でありましたけれども発行市場のほうはほとんどその機能らしい機能もせずに戦後ずっと推移してまいったわけであります。そこへ過剰流動性というようなことから、株価の急上昇、それに伴って時価発行というものが急激にふえてきた。そういうことに対して、時価発行というのはそもそもどういう会社がどういう気持ちでやるべきであるか、株主保護、投資家保護というのはどういう態度をとるべきであるかというようなことが不十分のまま、この時価発行ということが非常に急激になった。また、証券会社のほうも、こういうことに対しまして非常に激しい競争をしております。この競争が激しいあまりに、ややもすると内部管理体制が乱れがちになるというようなこともあったかと思います。  したがいまして、今後私どもは、こういったせっかく芽のはえたこの発行市場の機能を、やはり育てていかなければならない。そのためには、やはりその機能を健全に育てるために証券取引法というものをもうここで原点に返って徹底さす必要がある。これは証券会社はもちろんのことですが、発行会社、投資層にも徹底をはかる。この徹底はだれがやるかといえば、証券会社証券界がみずからやらなければいけない。やはり第一線で発行会社なり顧客に接触するそのセールスの一人一人が、証券取引法というものをよくわきまえ、これを徹底していって、そうして発行会社あるいは投資家証券取引法違反的なことをやろうとしても、それは受け付けないというようなことが非常に肝要かと思います。  また、証券界内部管理、これは非常に最近仕事が忙しいあまり、内部管理がおろそかになっている面もありますので、これも一度原点に返って見直し、また正さなければいけないというふうに考えております。  またさらに、証券取引所、これは会員組織取引所でありますけれども会員組織取引所というものは、自分たちが自分たちを規制するという自主規制、これができなければ会員組織取引所の持つ本来の意味がないわけでありまして、従来ややもすると、いわゆるニューヨークでもいわれました私的クラブというような感じがなきにしもあらずということでありまして、そういう点についても十分なにしたいと思います。  なお、四十五年度の時価発行を行ないました会社件数は十九数でありますが、公募を行ないました会社は百九十八社であります。
  21. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 この発行会社のほうでは、四月、五月、六月という時期には、いわゆる株主安定操作をやっておったんだということを盛んにいっておるわけなんです。こういう株主安定操作をやるという場合も、これはそういう安定操作をやる場合に届け出をするというような条件で、これはもうそういう操作がある程度はやむを得ないという認識に立って届け出をするということになっているんですが、そういう安定操作をやる場合に、これは実際にはやっているんだけれども、安定操作の通知をするというようなことが現実には行なわれているんですか、いないんですか。非常に少ないと聞いておりますけれども
  22. 坂野常和

    坂野政府委員 安定操作の届け出を出して安定操作を行なっている会社は、現在までで十数件あります。
  23. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 そういう操作を実際にはもうかなりやっておる。TOBを避けるんだというような名目でやる。そうしてそれは同時に売り買いになりますから、どうしても株価つり上げの要因にもつながってくる。こういうようなことで、巧妙に逃げながらやっているケースというのは、届け出は非常に少なくて大部分がやっているというようなことがいわれるわけでありますが、そういう点についても、そういう問題に対する検査というようなことを、事後検査だと、こう規定をしないで、機動的な検査体制というものをうんと強化する、こういう立場というものはやはりこの際あっていいんじゃないか。そうしてその検査によって、そういう不正行為をやった証券会社は世間の信用が一時期落ちるということをやはりやらなければいかぬと思うのです。  ところが、自主規制ということに重点を置いて、それがやはり証券会社自身が姿勢を正さなければいかぬのだ。それはもうことばとしてはきれいであるし、表面かっこういいけれども、やはり効果はない。その不正行為をやったものはやはり世間にもたたかれて、もうひどい目にあうんだ。それをやはり実物教育をやらなければいかぬ。百二十五条違反があると客観的には見られておっても、それに対する罰則の適用なんというのはこれはほとんど一件もないでしょう。今度の協同飼料の場合なんかでも、これは成り行きどうなるかわからぬ。いろいろな理屈をくっつけるだろうというようなことだって考えられるわけです。そういう罰則適用というようなことなんかの事案というのはありましたか。
  24. 坂野常和

    坂野政府委員 百二十五条違反の罰則適用は一件もありません。粉飾決算のほうは若干実例があります。  なお、事後検査の件につきましては、昨年の五月、私どもの局に株価監視班というのをつくりまして、小人数ながらそういった点について常時監視をしていくという新しい組織をつくって、まだ微力でありますが、すでに活動を開始いたしております。
  25. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 時間がなくて申しわけないのですが、こういう問題が起こるということも、証券業務の未分離、分離化が進んでいないということにやはり基本的には一つ問題点が基本問題としてあるだろう。そこで常に問題になるのは、この証券業がそういうように分離されて、それぞれ独立の別会社になったらなかなか経営が成り立たない。やはり証券会社を健全に発展させるためには、多角的な収入源を確保しておかなければいけないというようなことなんですがね。  これはいささか資料が古いのですが、これは四十一年です。額は申し上げませんが、自己売買益が九・三%、それから売買委託手数料が五七・四%、これが大部分でありますが、引き受け手数料が七・四%、募集売り出し手数料が一〇・九%というように、証券業者の営業収益の数字があります。これはたいへん古いのですが、最近のものはこのパーセントがどのくらいになっているのか。  それと、皆さんが方針として出されたようでありますが、分離の方向というものを一応出されておる。これは非常に微温的であって、引き受け部とブローカー、ディーラー業務をやるところを、情報連絡あるいは人事の面で断ち切るというような方向が出ているようでありますが、最近のこの営業収益のパーセントで、若干困難があっても、そして手数料なんかが安ければ高くしてでも引き受け業務というものとディーラー、ブローカーというものは別な会社に持っていってそれぞれ独立をさしていくということを思い切ってやらないと、このようなものが常にあとを断たないであろう。  それと、大蔵省検査に対する態度をもっときびしくやっていく。そして、大衆の審判にゆだねる。このことが姿勢を正させ、このような黒い株価というような問題が絶えず起こることを防ぐ。しかも、いま一番起こりやすい条件にあるのですから、この際、そういうことに勇断をふるわなければならぬだろうと思いますが、その営業収益のパーセントの推移と、そういう方向をどれだけ進める決意があるかどうかという点をお聞きして、質問を終わりたいと思います。
  26. 坂野常和

    坂野政府委員 昭和四十七年九月末の決算の数字によります証券四社、これはいわゆる大きな証券会社四つでありますが、これの職能別収入のパーセントを申し上げます。ブローカー業務が五六・九、ディーラー業務が二二・一、アンダーライター業務が二一、これで八八・三になりまして、その他が一一・七というふうになっております。  証券会社が各種の業務を兼業することによる弊害というのは、お説のとおり、ございます。しかし、ブローカーとディーラーにつきまして、現在のわが国の証券市場が、顧客から注文をとる人と、市場の中で価格を調整していく機能と、同じ証券会社がやっている。これはロンドンなりニューヨークと違うところであります。この関係から、この二つを離すということは現在では非常に無理ではないかというふうに考えております。しかし、この弊害はためなければならない。問題は、アンダーライターとブローカーで、今度の事件等を通じ、非常に批判のあるところであります。また、過般の証券取引審議会におきましても、この点について、非常に詳しい御議論があったわけであります。お説のとおり、これを分離できれば一番すっきりするわけでありますが、現在の証券会社の実情から、直ちにこれを分離するということはやや困難な状況にあります。そこで、とりあえずは、これを兼務しておっても弊害の生じないような体制、これは口では申しましても、実際はなかなかむずかしいことだと思います。したがって、その効果がどの程度あがるかは監視してまいらなければなりませんが、また、効果があがらなければ、さらに分離を進めてまいらなければなりませんけれども、とりあえずはそういうことで進めていく。同時に、そういうことでもし疑いを持たれるならば、将来はやはり新しいアンダーライターをつくらなければいかぬのじゃないかというような論議も発生してくるかと思います。いずれにいたしましても御趣旨の方向で進めてまいりたいというふうに考えております。
  27. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 時間がございませんので、これで終わります。
  28. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次に荒木宏君。
  29. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 先ほど局長の御報告を伺いましたけれども、何か聞いておりますと、自粛自戒、業者、投資家のほうに基本的な原因があるかのようなお話で、監督官庁としての大蔵省の責任は一体どうなっておるのかというふうに疑問を抱かざるを得ないようなお話のように伺ったのですが、協同飼料の話が御報告の中にありましたから、その関係からお尋ねをしたいと思います。  伝えられるところの昨年の六月、七月、八月、あのころに大蔵省は、証券市場動き、ことに撹乱的な動きに対してよく注意をし、監視をしておられたのかどうか、このことをまずお尋ねしたい。
  30. 坂野常和

    坂野政府委員 昨年、私どもは、正月以来ずっとそういったことに対しまして何回も注意をいたし、また信用取引の規制等の措置も繰り返してきております。もう少し詳しく申し上げますと、一昨年の十二月の通貨措置、円の切り上げがあった直後から株式市場が非常に活況を呈し始めましたので、四十六年の十二月二十七日に信用取引の証拠金率を引き上げたそのときから、私ども株式市場に対して特別の注意を払い、そのときどきの動きに対して証券業界注意をいたし、またそういった諸種の弊害が起きないように営業のやり方をためる、これは、たとえば手持ち商品の分量を圧縮するとか、自己売買を圧縮するとか、あるいは信用取引の規制を行なうとか、それから営業態度について、そのつどいろいろ変わった方法で注意を与えるとかいうようなことを、昨年、公にしたものだけでも三十回程度、その他個別を入れますとかなりの件数の注意警告というようなものを与えてきております。
  31. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 大蔵省のやられたことは、もうすでに新聞でも発表されておりますし、それぞれの機会に御報告もあるようですから承知はしておりますけれども、大体、自粛をしなさいとか、やれ証拠金率を少しいじるとか、あるいはまた担保掛け目を多少手直しするとかいう程度で、株式市場で実際に操作をしておる人たちにおきゅうがすわるような、そういう有効適切な、ほんとうにこたえるような手段を一体おとりになったのかどうか。御案内のように、昨年の二月に、すでに東証一部でダウ平均が三千円をこえておる。年末納会のときには五千円をこえるというぐあいに、年間を通じてずっと上昇を続けたわけでしょう。しかも問題になったあの前後の六月ごろには、わずか一週間の間に二百円前後の乱高下があるというふうな異常事態だったわけですね。  今回問題になりました協同飼料内容を見ますと、三月の株価に対して八月の株価は一・九倍になっているでしょう。わずか五カ月の間に約二倍近く株価が上がっている。三月の高値が百二十八円で、八月は二百四十五円です。しかも出来高が、四月に百五十四万一千株で、七月には千五十二万九千株になっている。出来高だけでも六倍をこえておるのです。こういうことにじっと注意してごらんになったとおっしゃるのですか。これはおかしいとお感じにならなかったですか。局長、どうですか。
  32. 坂野常和

    坂野政府委員 株価上昇は諸種の需給関係、いろいろな需給関係で起きるわけでありまして、お説のような六月に大きく動いたというのも、これは例のポンド問題のときであります。そういった需給関係とか、あるいは外部からの要因によって動く。したがいまして、株価自身が高くなったからこれはけしからぬことだとか不都合なことだというような気持ちは、私どもは行政の立場からは持っておりません。しかし、お説のように個別の価格形成について不公正な要因があれば、これは排除しなければいけない。それが証券行政の一番の基本になっておるわけでございます。  そこで、そういうことについて取引所証券会社というものを通じて監督をいたしておるわけでありますが、外部投資家あるいは発行会社というものは、そういった株の売買に関して特別の監督関係があるわけではございません。したがいまして、この証券取引法違反というような行為があれば、これは刑罰によってそれをただすという以外に是正の方法はないわけであります。私どもはそういうことにならないように、間接的な行政は絶えずいたしておるわけでありますが、そういった直接発行会社あるいは投資家を調べるというような権限はないわけでありまして、その点は証券取引法がそういうたてまえになっておるということを申し上げておるわけでございます。
  33. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 これは非常に見方によっては重大な御意見のように思うのですけれども大蔵省は政令を定めて、そして投資家の保護を完全なものにし、価格形成を公正なものにする、証券取引法に目的規定がちゃんとありますよ。そのために、たとえば百二十七条では、政令を定めて過当投機がきちんと防止できるようにする権限と責任を持っていらっしゃるわけでしょう。ですから、あなた大蔵省でじっと腕を組んですわっていて、行き過ぎがあったら言うていらっしゃい、自分で価格形成の不公正なことをしたと思う人は言うていらっしゃい。そんなことで言うてくる人はありませんよ。だから、現実の市場動きを見ていて、これはおかしいと思えばそれに適切な対処、形の上では間接的になりますよ、しかし、それは間接であればあるほどより強大なものですから、その権限を十分誠実に行使されなければいかぬと思うのですが、先ほどおっしゃった間接行政というのは、責任回避の意味でおっしゃったのではないでしょうね。その点ひとつ念を押しておきます。
  34. 坂野常和

    坂野政府委員 証券取引法のたてまえを申し上げたわけでありまして、私どもがそういうことに対して無関心であるとか、責任がないとか、そういうことを申し上げておるわけではございません。私どもは、価格形成がゆがめられるような、そういうことがないようにということを毎日やっておるわけでありますが、これは取引所とか証券会社というものを通じてやる、平常はそういうやり方しかできないような証券取引法のたてまえになっておる。しかし、それはやっております。そうして、その直接発行会社なり投資家証券取引法に違反した場合は、それを直接ためるためには刑事罰の規定しかない、こういうことを申し上げたわけでありまして、だから私どもは、それは警察当局にまかしておって、私どもは何もやっていないというような意味ではございません。  それから、ただいま述べられました百二十七条は、お説のとおり政令をもってその数量等を定められることになっておりますが、問題の百二十五条及び五十八条、この二つは、当時アメリカの法律をほとんど直訳的に輸入した条文でありまして、きわめて広範囲でありますが、その実現と申しますか、その法のとおりの立証をいたすということは非常にむずかしい条文になっております。しかし、この百二十五条、五十八条という二つが証券取引法の一番の背骨になっておるということは事実でございます。
  35. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 もう一言、念のために、いまのお答えについて確かめておきますが、証券業協会を通じて、こういうお話がありますが、形は通じるにしても、決して問題が起きるまではほっておくという受け身じゃないでしょう。適時適切な投資家保護の処置をおとりにならなければいけないわけでして、ですから、そういう意味ではしょっちゅうやはり目を見張っている、投資家の保護に欠けるところがないかどうか、公正を害するところがないかどうか。そして、それの行政発動の形式としては間接になることはありましょう。通じることはありましょう。だけれども決してそのことは、こういった結果になったことについての大蔵省の責任を免責するものじゃありませんし、軽減するものでもないと思いますが、それをひとつ念を押しておきます。
  36. 坂野常和

    坂野政府委員 仰せのとおりでありまして、私どもは、そういった、価格をゆがめるような、そういうことがないように、また、あれば直ちに排除するというようなことで行政をやっておるわけであります。ただ、言われますように、形の上ではそういうことになっておるということでありますので、今後とも価格形成について投資家保護に欠けるような事案が発生しないように、今回の事件を契機として、私どもはなお一段と努力いたしたいというふうに考えております。
  37. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 そういたしますと、たとえば今回問題になった協同飼料ですが、経営規模とかあるいは業態から見まして類似しているのに、たとえば日本農産工業というのがあります。これは、協同飼料が今度ふやして資本金三十五億ですが、こっちのほうは資本金が五十四億、そうけた違いの大きな差異はないのですけれども、ここの株価の推移を見てみますと、ちょうどこの協同飼料の問題になったこの時期に百四十七円から百八十円ですから、ちょうど三月から七月にかけて一・二倍ですね。そして取引の高も、これは協同飼料と違ってそんなに大きく変わっているんじゃなくて、大体従来の線から見て同じ傾向で推移している。配当率もどちらも一割二分。そうしますとそう大きな変わりがなくて、同業で、片方はわりに安定しているのに片方はぐっと急上昇した。先ほど外貨の関係のお話もありましたけれども、そういった一般的なことではなくて、類似のところでこういったことなら、少し注意をして見ておけば、これは一体どういうわけだと、すぐにわかると思うのですが、こういうことにはお気づきにならなかったのですか。
  38. 坂野常和

    坂野政府委員 株価上昇したものすべてについて点検いたしておるということではありません。やはり価格形成に不審のあったような銘柄、これは主として取引所でその価格形成を毎日注意しておりまして、問題があるかないかは主として取引所で発見と申しますか、その端緒をつかむというような仕組みになっております。先ほどのお話で、もちろん証券検査においても事後的なものでなくて事前的なものに切りかえていくというようなことも必要がありますけれども、現在においては、どちらかというと、証券検査のほうはやや事後的なものになっております。したがいまして、お説の銘柄がどういう値動きであったかは——やはり取引所が昨年注意といいますか、検討をいたしましたのは、協同飼料については取引所で検討いたしておりますけれども、いまあげられました銘柄については特に検討はしておらないということであります。
  39. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 そういう姿勢体制、そういうかまえが一つはこういうことにもなったんじゃありませんか。この端緒については、業界にまかしておると、こうおっしゃるんですけれども、これは仲間の内々のことでしょう、はっきり言えば。もちろんそれなりに法律上の規制もあり、法律上のそれなりの措置する立場にはありますけれども、しかし、はっきり申し上げて監督官庁じゃないわけです。投資家としてはそのことの規制を、保護をこそ求めておるわけですね。そういったことで、しろうとが考えても、どうして片方こんなに上がるのだろうということをだれだって思うのですがね。先ほど値動き一般が問題なのではない、これはもうそうでしょう。大体が資本の取引される場ですからね。しかし、不審というのは一体何ですか。値動きに不審があるという、その不審というのは一体どういうことですか。何らの合理的な理由なくして値段が急上昇する、これは不審とはいえませんか。局長どうですか。
  40. 坂野常和

    坂野政府委員 急上昇いたしました場合に、もちろん特に問題がある場合とない場合とございます。それで、私どもが言っております価格形成をより公正なものにするという意味は、次のようなことであります。株式価格形成は不特定多数の、ある程度専門的知識を持った評価が一カ所に集中されて、その評価が重なり合って価格形成されるというのが最もフェアなやり方である。その間に遮断があってはならない。それからその評価が集まってまいりますところに、不正、技巧があってはならない、そういうことが価格形成が最もフェアなプロセスで行なわれる。でき上がった価格自身が公正か公正でないかは、これはわからないわけでありますけれども、そういうことが価格形成をより公正なものにするゆえんであり、これが証券取引法の第一条でいっておりますところの投資者保護ということであろうと思います。
  41. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 そういう教科書にあるようなことを伺っているのじゃないのですよ。いま聞いておりますのは、具体的に起こって、そして検察庁まで入っている、世間の人たち注目していますよ、一体大蔵省何しているんだとみんな思っていますよ。だから、この個別の具体的なケースについて、ほかにも一ぱいあります。ありますけれども、これがいま取り上げられて、しかもあなたのほうで報告なさったから、これについて伺っておるのですが、これについて少し見ておれば、一方は従来と同じような動きがあるのに、片方はこんな動きをしている。そしてそのことについての合理的な理由は何もない。これはやはり人為的に手が入ったと見るのが自然じゃないですか、たとえばこの件についていえばね。それでは局長のほうではこの急上昇したのに対して、合理的な理由があるというふうに思っていられるのですか。
  42. 坂野常和

    坂野政府委員 協同飼料価格形成については、取引所で昨年、この価格形成がおかしいということを発見いたしまして、関係証券会社注意するとともに、大蔵省にそのことは報告されております。たまたま先ほどの御報告でも申し上げましたように、私ども関係証券会社一つ検査中でありましたので、その引き継ぎを受けて、協同飼料価格形成がどういうふうになっているかということの検査調査をいたしまして、その結果、ほぼ全貌を把握しております。したがいまして、本件に関しましては、取引所でも早くから気がついておりましたし、私どももこれを検査でほぼ全貌を知り得たというような現状でございます。
  43. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 報告があったとおっしゃるのですけれども、しかし、それにしては報告を受けたあとの処置、手の打ち方、これはほとんど効果がなかったと申し上げてもいいのじゃないでしょうかね。ですから、監視体制と、それから政令の改正も含めて、それについての規制方法ですね。こういうことが二度と起こらぬように、政府としては格段の御勉強をされてしかるべきだと思うのですが、今後の施策について、今回のことを教訓にして、政務次官からひとつ政策としてお伺いをしたいと思うのです。どういう具体的な処置をお考えになっているか、監視体制とそれから規制方法です。
  44. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 証券行政というもののあり方といいますか、これはもう先ほど来いろいろお話し申し上げておりますように、基本的にはやはり資本主義経済の中での一つの自由な価格形成でやるというたてまえは動かせないわけでありまして、そういう中で健全でないような動きがあるということならば、これには厳重な監督をしなければならない、規制を加えなければならないということは言うまでもないところでございます。  そこで、先ほど来局長からもお話し申し上げておりまするように、証券取引法という一つの根拠法規があるわけでありますから、この法規にのっとって正しい運営が行なわれるように、この取引法の趣旨をひとつ徹底をさせていく。  それから証券会社が今日いろいろ批判の的になっておりまして、証券会社自体の内部管理体制というものに、現実の外部動きにいろいろ刺激をされた管理体制の乱れというものがやはりある。それらに対してこれを正していくという方向をひとつ強化をしていく。  それから最近の株価の問題は、時価発行による増資というものが大いに責任がある、こう思うのです。時価発行というものは、もちろん一つの資金調達の、あるいは自己資本をふやすという一つの方法としては間違いのないところでありますけれども、どうもこれがいろいろ乱雑になっていく一つの根本的な、株価操作への何ともならない誘惑というものを感じさせるという向きもありますから、そういう時価発行増資一つの選別をきちっとしていくということも必要であろうと思うのです。  また先ほど来お話し申し上げたようにアンダーライター業務とブロカー業務の区分をはっきりしなければならない、あるいは取引所における売買管理をひとつしっかりと強化をしていく、あるいはまた証券取引法上の検査のやり方、先ほど来いろいろ御議論いただきましたが、これらについてもひとつ十二分に検討を加えていきたい、かようなことでございます。
  45. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 関連しまして、一体どうしてこういうことが起こるか、原因関係ですけれどもね。ほかの委員からもお話がありましたけれども、外資外資というてとにかくドルかせぎに狂奔する。その結果、輸入インフレで国内の過剰流動性が問題になってくる。また一方、金利のほうは公定歩合を下げる。何のことはない、ずっと市場にばらまいておいて、そして時価発行を認める。ちょうど水が低いところにずっとたまっていくように、その中でこういう株価操作が行なわれるということは、いまの政策を続ける限りは勢い必然じゃないですか。だから問題は、確かにいまおっしゃったような検査方法だとか、引き受けと委託の兼業をやめさせるとか、あるいは時価発行についてのチェックをするとか、いろいろありましょう。しかし、根本的にはいまの田中内閣の政策じゃないですか。先ごろ発表された五カ年計画、長期計画では、五十二年には貿易収支で百二十四億ドルですか、ますますその方向を拡大していくのでしょう。そこらの基本的な政策に対する再検討をあわせてやり、そして同時に、この技術的な点を改良するということなくしてはとても解決できないし、その大波の中で被害を受けるのは大衆投資家です。ですから、私はあと増本委員のほうから関連質問の希望がありますので、私の希望を申し上げておいてバトンタッチしますけれども、まずいまの監視体制と、検査をやられるところの一般的なチェック基準ですね。これはひとつ報告してください。  それから、昨年の十一月からやられたあの検査の結果、特定企業の内容はどうこうということは別にしても、一般的なその中にあらわれた問題点は、やはりこれははっきり報告をしてもらう、そして同時に、大衆投資家の保護、これに欠けるところがないように、政令改正の点も含めてひとつ十分な検討をお願いしたいということを申し上げておいて増本委員に交代いたします。
  46. 鴨田宗一

    鴨田委員長 増本一彦君。
  47. 増本一彦

    ○増本委員 いまの政務次官のお話でも、証券取引法に対する業界の認識が非常に弱い、だから、こういうことが起こっているんだ、こういうふうにおっしゃるわけですけれども、一体証券取引法ができて何年になるのですか。その間、こういうことをちっとも勉強もしなかった業界を放置してきた監督官庁としての責任というものがやはり私はあると思います。いまになって法律上の認識が足りないとかいうことだけで事を済ますというのは、私は証券行政そのものが不在であるというように言わざるを得ないと思うのです。先ほど局長は、去年の正月からずっと証券業界については注意してきた、新聞報道によりますと、昨年の十月の問題になっている協同飼料については、大蔵省証券業界を通じて警告を出しているというようなことも報じられているわけですけれども、それにもかかわらず十一月の時価発行でこういうことが起こっている。一体どういう手を具体的に打ってきたのか、その打った手が全部結局は手ぬるくて、結果としてこういう事態を発生させている、こういうことになると思うのですけれども、この点についてほんとうに明確に責任を一体感じておられるのかどうかです。その点をまずお伺いしたいと思うのです。
  48. 坂野常和

    坂野政府委員 結果として今回の事件が起きたことに対しましては、私どもはたいへん責任を感じておりますし、また結果としてこういうことが起きたということは、たいへんに遺憾に思っております。しかし、私どもとしましては、昨年一年間考えられるあらゆることをやってまいりました。しかしそのやり方がぬるかったではないか、あるいは証券界が言うことを聞かなかったではないかというような御批判もあるかと思いますが、行政としてやり得るあらゆることをやってまいりました。また、今後さらに一段とそういった監督体制を強化していきたいというふうに考えております。たてまえが、本来価格形成というのは、需給が自由に行なわれるそういう場である、したがって、不正、技巧というものは排除いたさなければなりませんけれども価格形成そのものに介入するということは、これは市場の機能を阻害するということで、これまたたいへん気をつけなければならぬ点であります。そこが証券行政一つのむずかしい問題であろうかというふうにも考えております。
  49. 増本一彦

    ○増本委員 しかし、新聞報道によると、東京地検の捜査の結果では、協同飼料は八月の末から九月にかけて日興証券に対しては二百四十円から二百五十一円に、大和に対しては二百三十四円から二百四十六円に、野村にも二百五十円に株価をつり上げてくれということを依頼しているということまでいわれている。そして株価動きも、実際に非常に高くなっている、こういうことを見ると、これらの証券会社が、実際には株価操作にやはり加担をしていた、手を出していたということは、これはもう捜査の結果でも明らかになっている。それにもかかわらず、依然としてまたこの証券取引法のPRとか認識があまかった、こういう不勉強な業界をそのまま放置してきた、これはもう長年経営者を含めてその責任は十分に問われなければならないし、ここでも、この委員会でも参考人なり何なり呼んでいただいて、やはりきびしくやらなければならぬ、そういう事態だと思うのです。それにもかかわらず、そういうようなのが実態だということは、大蔵省としてもよく御存じだったと思うのです。だから、結果としては手ぬるかったではなくて、手ぬるい手しか打てないなら打てないで、その点についてもっと明確に問題点を出して、じゃあ立法上を含めて制度としてどうしろということまではっきりとした方針や方向をお示しになることが、私はこの事件からの教訓を大蔵省がどういうようにくみ取っているかということを、国民が判断する一番大事な基準であるというように思うわけです。その点で、政務次官局長がどういうようにお考えになっているか、最後にもう時間になりましたのでお伺いして質問を終わりたいと思います。
  50. 坂野常和

    坂野政府委員 今回の事件をきっかけにいたしまして、従来にも増した強い監督体制をしがなければならないというふうに考えておりますが、そのためには、やり方の問題もありますが、お説のように法律の問題もあります。ただ、法律の問題は、かなりむずかしい問題を含んでおります。これはもう数年前からこういった問題を私どものところで考えておるわけでありますから、今回の事件を端緒にいたしまして、早くこの法体系の整備も考えなくちゃいかぬということで、できるだけ早い機会に検討を終わり、場合によっては御報告できるような体制に持っていきたいというふうに考えております。
  51. 増本一彦

    ○増本委員 ちょっと最後に一点だけ。  先ほども政務次官のお話やあるいは局長のお話によりますと、アンダーライターの部門、それからブローカー、ディーラーの業務、これを分離するというようなことも検討するというお話がありましたね。しかし、一つ証券会社の中でこれを幾ら部門を分けたところで、私はそれで事足れりというのは神話だというように思うのです。そういうことだけで今回のような問題がコントロールできるというようにまともにお考えになっているのだとしたら、これはまだまだ、こういうような事件からきびしく教訓をくみ取っていることにはならないと思いますけれども、その点ではどうなんですか。
  52. 坂野常和

    坂野政府委員 たいへんむずかしい問題でありますけれども、いますぐ証券会社を二つに分けて、アンダーライター会社とその他の会社というようにすることは、若干まだ困難な状況ではないかというふうに考えられます。したがいまして、とりあえず、一緒にやっておっても弊害の起こらないようなそういう体制、そしてもし弊害が起これば、それはもうそれこそ厳罰に処するという体制で進みたいというふうに考えております。  これはよその国の話でありますが、アメリカにおきましても同様の問題がありまして、いまアメリカのSECはこの点をどういうふうに処理するかということでたいへん苦労しておりますが、やはり会社を分けるということでなく、一緒にやっておって、弊害が起きれば罰則で処罰するという方向で進んでおる模様でございます。
  53. 増本一彦

    ○増本委員 伝えるところによると、大蔵省のあれは、社内の規定をつくってそれで二つに分けるということだ、あくまでも証券会社の自治にゆだねる。そうすると結局、体裁は二つに分けても、むしろますます隠微的にこういうインサイダートレーディングがまかり通るということになると思うのです。この点についても、厳重にやはり制度として確立するような方向をほんとうにきびしくやっていただきたいというように思います。  もう時間ですので、これで終わります。
  54. 鴨田宗一

    鴨田委員長 広沢直樹君。   〔委員長退席、大村委員長代理着席〕
  55. 広沢直樹

    ○広沢委員 いまいろいろ問題が出てまいりましたが、まあ昨年あたりから、企業の新しい資金調達の方法として、いま問題になっております時価発行の問題が出ておりますけれども、結局その時価発行による資金調達によって、その裏ではいわゆる株価操作が行なわれているんじゃないかということもうわさされておったわけです。そのうわさが先日の協同飼料の問題で、やはり事実そうであったではないかと、それから昨日ですか、予算委員会においても、やはりまた三光汽船の問題も疑惑として一応取り上げられております。しかし、こういう問題がいまに始まったわけではなく、過去にも何回かあったわけですし、いままでそのたびごとにこういう問題が国民に対する一つの大きな証券行政の不信を招いているわけですけれども、その株価操作原因となっているものが那辺にあるのかということを的確につかんでいないと、対策もこれは十二分に行なわれないわけですね。そういう意味から、株価操作が生まれてくる原因というものを局長はどういうふうに把握されているか、まずその点から伺いたいと思います。
  56. 坂野常和

    坂野政府委員 一口に申しますと、株式市場の持つ公共性というものに対する認識不足ということだと思います。御承知のとおり、株式市場は、企業の長期の資金を株式という形で調達するきわめて大切な市場でありますけれども、これがややもすると、一部の理解によると、単なる投機の場である、株が上がったり下がったりする、そこでおもしろおかしくやればいいという、そういう感じが一部にあるのではないか。特にわが国の株式市場は、戦前は非常に清算取引を行ないまして、投機の場であったわけであります。そういうことの伝統も——伝統というとあれですが、そういうことの残渣も若干は残っておる。そういうことが重なり合いまして、株式市場の持つ公共性の認識不足ということが一番の問題ではないか、私どもはそういうふうに感じております。
  57. 広沢直樹

    ○広沢委員 ただ認識不足だけで片づけられる問題ではないのでありまして、私がお伺いしたいのは、そういう認識不足からこういうような不祥事が生まれてくるんだということでは済まされない問題ですよね。しかしながら、そういうことはいまに始まったわけではないのですから、一応認識がありながらも、やはりそういう中にも不当な利益を得ようという動きが絶えずまつわりついているのですから、それに対して、一つには今日の時価発行による性格というものが、発行企業は少しでも多くのプレミアムを得ようという動きがあるわけですね。今日特に過剰流動性の問題余剰資金の問題が問題になっている中では、こういうことが生まれてくるわけですね。それだけじゃなくて、証券業界の過当競争というものも一つ原因にあげられるのじゃないか。こういう原因を的確に把握されて、それに対する適正な指導なりあるいは是正なりというものを行なっていかなければ、これは解決しないと思うのです。  ですから、単なる認識不足がそういうことに出てきているんだ。その反面には、行政指導は一応行なっているんだ。認識不足ということを例にあげられるのだったら、行政指導もある程度単なる抽象的な行政指導じゃないか、徹底していないじゃないかという問題になってくるわけですから、私はもう一歩突き進んで、どういうところに今日の大きな問題が起こってきたかということを、どういうふうに掌握されているか、それに対してどういうふうな適正な指導なり処置なりをおとりになったか、これを伺いたいのです。
  58. 坂野常和

    坂野政府委員 認識不足というのは、全体を通じて概括申し上げたので、言われますとおり、原因は追及すべきであり、私どもとしては追及いたしております。ただいまのお説にもありましたように、まず発行会社時価発行を行なう際の態度の問題がございます。これはお説のように、自分の会社の株の価格が一円でも高ければいいという、そういう感じであってはならないわけであります。価格は適正に形成された価格、それを基本として時価発行を行なうということは当然であります。またその時価発行で得たプレミアムは、これは会社の利益ではございません。これは株主のものであります。したがいまして、このプレミアム勘定をどういうふうに使って、それでどうやって会社自身がそれを有効効果的に用いていくか、と同時に株主に対してそれを還元していくかという長期の考え方、これが必要であります。一部の発行会社プレミアムは一種の利益のように錯覚している向きがあるのではないかというようなことが世上いわれておりますが、これはたいへんな間違いであろうかと思います。  またその引き受け証券会社、これはお説のように目下のところたいへんな競争をいたしております。私企業でありますから、競争は当然のことでありますが、その競争が過度にわたるあまり、ルール違反を犯すというようなことになりますと、これは免許を受けた証券会社として最もいけない行為になるわけであります。競争はルールの範囲内で行なう。法律はもちろんのこと、取引所、協会等いろいろこまかいルールがございますので、ルール全部を守ってやっておれば、世間から非難されあるいは批判されるというようなことはあり得ないわけでありまして、今日証券界に対して諸種の批判があるということは、やはりそのルールが十分守られてないということであります。それは競争が激し過ぎるということでありますので、その点は十分に証券界みずからえりを正していかなければならない。特に最近は国際的な市場になりつつありまして、海外からも日本の証券市場証券業界というものを見られております。そういうようなことでありますので、単に国内の眼だけでなく、海外からの批判があるということも認識をして仕事をしていかなければならぬ、そういうふうに思います。
  59. 広沢直樹

    ○広沢委員 時価発行によって多くのプレミアムを得ているわけですけれども、それまでの過程、時価発行が今日このように盛んに行なわれる、それまでの過程に株価形成の問題、先ほどお話がありましたけれども、そこまでつり上げていく、その上に立って時価発行というものが行なわれ、多くのプレミアムを得るということになってくるわけですね。その過程での問題点についてはどういうふうに考えているか。先回の有価証券取引法の一部改正の審議の機会に私、御質問したのですけれども一つの例としては信用取引規制をやっているではないか。それについては暴騰、暴落に基づいて強化したり緩和したりという処置をおとりになる。これ自体が悪いというわけじゃありませんけれども、しかしその間において株価形成というものが非常に狂ってきているのじゃないだろうか。最近は余剰資金があるということで、いわゆる利回りやそういうものではなくて、いわゆる営業利益を追求した株価形成というものが行なわれてきているのではないか。そうすると、その利回りを度外視しても、全然度外視するということはないわけでしょうけれども、そういうようなことで、シェアがだんだん金融界だとか事業法人によって占められて、一般投資家というものははみ出されていく。その中で、暴落、暴騰の過程で、いわゆる信用取引の緩和とかあるいは強化の過程において非常に高値になっているところから、暴落というか下がり始める。その過程において操作が行なわれていくのじゃないだろうか。そうすると、かりに信用取引を緩和された場合においては、やはり小口の投資家というものは投資しやすい状況に置かれてくるわけですから、そこでいままでの法人が売り逃げしてしまうというような状況でもうけていくこともあるでしょうし、そういうようないろいろな過程において株価を高値に持っていって、その中で時価発行をされて、それでプレミアムをかせぐ。その上に立って、また株価操作というものが裏面では行なわれているのじゃないかという問題もありますが、それまでの正式な認められた過程においても、そういうふうにして一般投資家の疎外の問題と、それからいわゆる高値に持っていって時価発行によるプレミアムを得ようという動きがあるのではないか。その点についてはどう考えますか。
  60. 坂野常和

    坂野政府委員 信用取引の規制は、信用取引の絶対額が多くなっていくか減っていくか、それから売りと買いのバランスはどうであるか、回転日数が速まるかゆっくりになるか証券金融会社の残高がふえるか減るかというような指標を検討いたしまして、まだこまがいものがございますが、その指標全体の動きを見まして信用取引を規制強化いたしたり緩和いたしたりしております。これは株価が高いから安いからということではございません。ただ、たまたまそういった指標が過熱的になってまいります場合には概して株価が高いし、それからゆるめていいような場合には株価が安くなっているという、結果論でそういうことになっております。私ども株価自身で判断はいたしておりません。  それから、現在法人に株が集まりまして、個人投資家の持ち株が減ってきている。そして市場でも法人が売って個人が買っているのではないかというようなことでございます。前回の御説明までの間は、法人買いのほうがやはり強かったわけでございますが、ごく最近の状況は個人買い、法人売りという形が一部に出ております。したがいまして、こういう際、個人投資家株式をすすめるその営業態度というものは、非常にむずかしい状況だと思います。その慎重な営業態度をさらに求めております。  時価発行が株高をねらって行なわれるのではないかということは、結果として、昨年の時価発行の実績を見ますと、大体そういうことになってきております。ただこれは、協同飼料事件は氷山の一角であって、すべてに問題があったのではないかといううわさが世上にありますけれども、私どもはそうは思っておりません。また私どもが点検いたしました範囲内においては、そういう問題はないということであります。ただ、高値で発行してあとでそれが下がるということになりますと、発行された証券に払い込んだその投資家にとっては非常に大きな損害が生ずるわけであります。したがって、いかなる価格発行するかということは発行会社自身も十分検討しなければなりませんし、同時に引き受け証券会社がその価格選定というものを十分責任を持って行なうべきである。世上批判があるように、一円でも高くという競争をしておるとすれば、これはたいへんな間違いであるというふうに考えております。発行価格につきましては、直前の価格のみでなく過去の価格も勘案して、そういった会社の前の価格と現在の価格というものと両方勘案してきめていくというようなルールにしておりますけれども、その価格のきめ方等についても今後なお検討を要する問題かと思います。
  61. 広沢直樹

    ○広沢委員 現実にいま起こり得る問題の中でやはりいま私が指摘しましたように、いわゆる時価発行してプレミアムをかせぐ、その上に立って不正なことが行なわれるという原因の及んでいくところは、やはりいままでの経済成長の過程において過剰流動性の問題が出てきた。これを的確に吸収しあるいは規制するような方法をとっていないところに、株式投資が始まりあるいは土地の投機が始まるといった問題が出てきたと思うのですよ。ですから、過剰流動性の問題の中で株式投資に相当のなにが行なわれているわけです。その過程においては、いま指摘申し上げましたように、いままでの証券民主化を阻害されるような方向で、金融界だとかあるいは企業だとかいうようなものが株を買い占めると言うと語弊があるかもしれませんが、そういう状況が起こって、株数が不足してくる。それ自体が高値になってくるということですね。そういうふうにして高くなってきたところで得するのはだれかといえば、これは証券会社ですね。手数料の収入もふえてきます。もちろん手持ち株は一応規制によって少ないわけですけれども証券会社は相当もうけるのじゃないか。そして法外な高値になってきた。そういうように市場価格をつり上げてその上時価発行をしていこうとする法人は当然また大きな利益を得るわけです。このような合法的な操作がこの裏には行なわれておるのではないか。それを基礎にした上に立って今日の状況というものが生まれてきているように私は思うのです。ですから、証券取引法で禁止されるいわゆる株価操作だとか内部者の取引以外の何ものでもないと思うのですが、こういう以前の問題に関してで株価形成のあり方をもう少ししさいに検討し、それに対する指導を強化していかなければ今日の問題は解決しないのじゃないだろうか、こう考えているのですけれども、いかがですか。
  62. 坂野常和

    坂野政府委員 お説のとおり、価格形成はいろいろな要因で行なわれておりまして、これが正常な価格形成であるかあるいは不正なものがそこに入っているかということを点検するのは、かなり困難な作業でございます。しかしこういう事態でありますので、取引所はもちろんのこと、私どもとしてもこの価格形成をゆがめるようなものは極力排除していくという努力を続けたいと思います。  なお、アンダーライターの姿勢の問題を私どもは非常にやかましく申し上げておりまして、最近、アンダーライターと申しますか証券四社で引き受け姿勢の是正ということで、こういう取りきめをいたしております。読み上げますと、「過度な競争を避け、企業の財務内容の的確な把握、公正な株価形成の確保、株価動向の不安定な銘柄に対する慎重な態度に努める。」ということで、株価動向がどうも不安定である、これはおかしいぞというようなものは引き受けをしないというようなことで取りきめが進んでおります。
  63. 広沢直樹

    ○広沢委員 次に、大蔵省証券行政の柱にいま申し上げておるいわゆる株価形成の適正化ということを主眼にうたっておられます。ここらは時価発行を企業の有効な資金調達法として定着させていくためにも、これがはっきりしていないとまずいわけですけれども、それに対して証券界のほうでは、時価発行のあり方だとか株価形成の適正化について厳正な自主ルールを立てるということになっているわけですね。すでに作成されたといわれているのですけれども、その点についてはどういうふうになっているか、ちょっと御説明いただきたい。
  64. 坂野常和

    坂野政府委員 本年度分につきましても一応の基準を持っておったわけでありますが、四月以降の時価発行に対しましては、基準を強化いたしまして公正な時価発行が行なわれるようにということをいたしております。  項目を申し上げますと、一つは利益率、その会社の配当率なりあるいは税引きの利益金額あるいは率というものを従来より以上に、これは具体的な数字がありますが、強化してまいります。  二番目は、量的な基準でありまして、資金の使途、その会社がその資金を何に使うか、それからその会社は資金繰りが非常に豊富であるかどうか。豊富であり、使途も不明確なものは時価発行を行なわないというようなこと。あるいは公募の株数をできるだけ減らしましてあまり大きくしないというようなこと、そういうような量的な関係を正してまいります。公募の株数は、従来は発行済み株数の二割程度というようなばく然たる基準になっておりましたが、今度は資本金別に、何百万株以内とか何百万株以上とかいうことを定めまして、いわゆる抱き合わせ増資公募分があまり大きくならないようにというようなことをやっております。ただし公共的な企業、電力、ガス等については、若干弾力的に取り扱う必要があるのではないかということになっております。  それから三番目に増資の間隔、これは一年以上間を置かなければならぬ。続けて増資を行なうということはこれはさせないというような申し合わせになっております。  また、いわゆる親引き比率、発行会社からじかに銀行とか事業法人へはめ込むのを親引けと申しますが、これを四〇%以下に圧縮する。従来は五〇%ということでありました。  また、ディスカウント率、先ほどの発行価格の問題であります。時価に比べまして若干低い価格発行するわけでありますが、これを著しく低い価格といたしますと、その払い込んだ人に即日大きな利得が出るという魅力も出ますものですから、あまり大きな幅にしないというような方法も必要かと思います。ただし、これをあまり現在の時価に密着させますと、発行日後の市況影響で直ちに発行価格を割るようなそういう時価が生じました場合は、これは払い込み者がばく大な損害をこうむりますのでその辺慎重を要しますが、ディスカウント率の圧縮をはかる。  それから先ほど読み上げましたアンダーライターの引き受け姿勢の是正というようなこと。  以上のようなことをやりまして、四月以降につきましては従来より発行ペースがかなり下回るというような状況になろうかと思います。
  65. 広沢直樹

    ○広沢委員 そこでもう一点お伺いしておきたいことは、今日大きな問題になりました協同飼料の問題ですけれども、これについても昨年の十月に、こういう株価操作疑いがあるのじゃないかということを通知した、警告を発した。それに対して、そういう不審な点はないという報告であった。現実的にはいまこれは大きな問題になっているわけですね。  そこで、これについては証券局に対して東証のほうから具体的にこういう問題があるということは報告があったというお話であったのですが、これ以外の件について、そういう問題点が考えられるという報告が来ているかどうか、まず第一点お伺いしたい。
  66. 坂野常和

    坂野政府委員 以外の件についても報告が来ております。
  67. 広沢直樹

    ○広沢委員 何件来ておりますか。
  68. 坂野常和

    坂野政府委員 取引所において昨年価格形成関係証券会社について注意いたしました件数が五十七件でありますが、そのうち大蔵省のほうに連絡のありましたものはただいま的確な数字ありませんけれども、五、六件程度となっております。それは、いずれも協同飼料というようなそういう事案ではなくて、この内容はいろいろありますけれども、そういった協同飼料的な事案はありません。
  69. 広沢直樹

    ○広沢委員 確かに五十七件ですけれども、この警告を発した内容というのがやはり株価操作疑い内容的には警告を発しているわけですね、いろいろそれは例によって違うでしょうけれども。しかしそのうち、五十七件の警告を発しておきながら、正式に証券局に対しては五、六件の報告しかないというのは、これはどういうわけですか。
  70. 坂野常和

    坂野政府委員 この五十七件の内容は種々分かれておりますが、大部分は通常の売買に比しまして量が非常に多い、それから短時間のうちに価格上昇したというようなことで、それを点検した結果、どうも一応注意しておくよという程度の話のものが大半であります。あるいはまたクロスと申しまして、比較的規模の大きい証券会社が一銘柄について大口の売買をいたします際に、クロス商いというのがあります。これをやりますには取引所のこまかいルールがあるわけでありますが、そのルールに違反してやったのではないかというような疑いのあるものとか、そういうふうに非常に軽微というと適切でないかもしれませんけれども価格形成と申しましてもそういったものが大多数でありまして、そういったものはもちろん何件あったという報告はございます。しかし、その個別の案件ごとに、いまただいまこういう事件が生じておりますとか本日こういうことがありましたという意味での報告はない、こういうことでございます。
  71. 広沢直樹

    ○広沢委員 これは行政指導の上から、すでに東証において警告を発せられた五十七件については、報告があるなしにかかわらず、それは十分掌握されていると思うのですね。そういうことでそれなりに、東証東証売買審査室があるのですから、そういうふうなところから一応警告を発したりいろいろなことをやっているようですけれども証券局としてもそういう疑念を持たれる分については何らかの手を打っておくべきであろうと思うのです。それじゃ五十七件あるいはそれ以外にあるかもしれませんが、具体的に手を打たれた実例があればひとつ御説明いただきたいと思います。
  72. 坂野常和

    坂野政府委員 比較的問題のあるような場合は、当該証券会社あるいはその証券会社に発注している外部の力、これは法人、個人ありますが、そういうようなものに注意をいたしました事例があります。  それから個別の案件で、注意をするまでもありませんけれども、どうも価格形成に対する営業態度がまだ十分でないと思われるような場合には、定期的な検査特別検査じゃなくて一般検査といっておりますが、定期的に証券会社検査いたしております。これは大蔵本省でやる会社と各財務局でやる会社と分けておりますけれども、その定期的検査の際の資料にそういうものを入れておきまして、そうしてそういう価格形成についてなぜ取引所からしかられるような、注意を受けるようなことが起きるのかということの原因会社別に見ていく、あるいはそれをまとめて定期的検査のときに注意するというようなことをやっております。
  73. 広沢直樹

    ○広沢委員 具体的にこれに対する警告内容ですね、これについては公表できませんか。
  74. 坂野常和

    坂野政府委員 昨日の予算委員会におきまして東証理事長は、五十七件の事例を一件一件具体的に御報告することは取引所の性格としてどうもできにくい、しかし類型別に整理いたしまして、こういうたぐいのものが何件、こういうたぐいのものが何件という御報告を提出しますという答弁をしておられましたので、そういう資料が予算委員会のほうへ提出されるものと思います。
  75. 広沢直樹

    ○広沢委員 取引所の性格としては森永理事長そうおっしゃったかもしれませんが、一応先ほど申し上げたとおり、証券局においてこういう事例について、行政指導の上からどこにどういう問題点があるのかということを公表できないかと申しているのです。
  76. 坂野常和

    坂野政府委員 類型別の資料が本日できると思いますので、その類型に基づく問題点、あるいはそれの是正方法というものは御報告願えるかと思います。
  77. 広瀬秀吉

    広瀬委員 時間がありませんので、また来週証券問題で質問があると思いますから、その機会にまたいろいろお伺いしたいと思いますが、要するに今日こういう問題が相次いで起こってきているということには、やはり証券行政の指導あるいはあり方自体に、姿勢にこれは問題があるんではないか。したがって具体的に、こういうような一つ一つの事例をこの際きちっとただしていく必要があるんじゃないか。ただ、自主的なルールを立てたにしても、これは指導的な立場でありますし、それから証券行政においても自主的なそういうような形で自粛を促していくという形ではあまりにも行政指導が弱過ぎるんじゃないかと思います。したがって、いま一つの例をあげました五十七件の問題が指摘が受けている内容については、これはやはり徹底的にそういう問題が起こってこないように適正な手を打っていかなければなりませんし、それを東証警告だけにまかせておくというような形では、警告をしなければならぬというのはそれだけの原因があるわけですから、それをそのまま放置していくということは今後もいろいろな問題を起こしていくことになるだろうと思います。そういう件について、それは公表できるという話ですから、証券局立場においてその資料を提出していただきたい。これをひとつお願いしておきたいと思います。  それから最後に、もう一つ資料要求として、昨年の増資総額については先日お話がありました。そこで、上場された各社別の増資総額がどういうふうになっているか、そして、それに対して、額面の発行と、それからいわゆる時価発行とどういうふうな状況になっているか、この分について資料を出していただきたい。これをお願いしておきたいと思います。
  78. 坂野常和

    坂野政府委員 前段の資料は問題ございませんが、その時価発行増資の個別会社の資料も提出できますが、御要求は、およそ増資をしたあらゆる会社、つまり本年度でいえば三百二十二社という意味でございましょうか。
  79. 広沢直樹

    ○広沢委員 そうですね。一部、二部上場でいいですよ。
  80. 坂野常和

    坂野政府委員 それはもうすでに出てきた実績でございますので、数字を拾えないことはございませんが、やや時間がかかるかもしれませんので御了承願いたいと思います。
  81. 広沢直樹

    ○広沢委員 わかる範囲でけっこうですよ。  終わります。
  82. 大村襄治

    ○大村委員長代理 竹本孫一君。
  83. 竹本孫一

    ○竹本委員 最初にまず、最近の株の投機は何兆円ぐらいかという問題と、それから、最近株式市場に流れ込んだ資金はどのぐらいか、数字を承りたいと思います。
  84. 坂野常和

    坂野政府委員 一月の東証一部上場株式時価総額は、四十六兆三千八百三十二億円となっております。これは昨年の、四十七年の一月、ちょうど一年前は二十二兆七千七百七十六億円でございますので、倍以上の金額になっておるわけであります。  それから株式市場に流入した金額でありますけれども、四十七年中、年間四十二兆八千七百四億円、ことしになりますとこの金額が非常にふえるだろうということでありますが、これを、いままでの実績を年間に引き伸ばしてかりに計算いたしますと、四十八年は、このペースでまいりますと七十四兆一千二十四億円となる、こういうペースになっております。
  85. 竹本孫一

    ○竹本委員 次にお伺いしたいことは、先ほど来いろいろ問題になっております株式市場の黒い操作とかいったような問題がありますときに、証券取引審議会というのがあるはずですけれども、これは緊急にこういう問題にもぼくは取り組むべきだと思うけれども、いろいろ承っておりますと、証券取引審議会というのは、有価証券発行売買その他の取引ということについて、その重要事項については調査審議をするということになっておるけれども、四十六年、四十七年は一回ずつ開いただけだというふうになっておるようですけれども、はたしてそうであるか。  あわせて伺いますか、今回のような重要問題については、こういう調査検討をする審議会はむしろ活用すべきであると思うが、いかなる動きをしておるか、あるいはいかなる動きを期待することになっておるのか、証券審議会のあり方の問題と関連して、局長の御意見を承りたいと思います。
  86. 坂野常和

    坂野政府委員 審議会そのものは昨年中二回開かれたわけであります。しかし、その審議会の下に小委員会があります。これは昨年中は、二つありまして、一つ証券取引審議会の専門委員会、もう一つは特別委員会、この二つの委員会がありまして、それはほとんど毎月、あるいは専門委員会の場合は一月に二回ないし三回というようなペースで開かれております。したがいまして、その小委員会の開催件数はきわめてたくさんあったわけであります。専門委員会のほうは主として証券市場の国際化に伴う証券関係の法制整備ということをやっております。特別委員会のほうは内外の経済、金融情勢の変化に伴う公社債市場のあり方について検討をしまして、去る二月の初めに答申が提出されました。その間、十二月に審議会の本審議会を開催いたしまして、株式市況時価発行現状報告並びにこれに対して証券行政としてとるべき手段について御検討を願っております。また今後、こういう証券市場がきわめて重要な事態になってまいりましたので、証券取引審議会においてさらに基本的な問題も含めて御検討を願うということは必要であろうかと思いますので、ただいまのところ、その準備中であります。
  87. 竹本孫一

    ○竹本委員 今回の問題について、特に重要事項としてこの審議会の審議を願うという予定がありますか。
  88. 坂野常和

    坂野政府委員 その点につきましては、まだきめておりません。目下検討中であります。
  89. 竹本孫一

    ○竹本委員 やはりこれはそうした審議会があるのですから、特に問題が問題であるから、事柄の性質上、審議会にもはかって正しい世論の盛り上がりを期待すべきではないかと思いますが、もう一度その点について……。
  90. 坂野常和

    坂野政府委員 今回の具体的な事件がただいま検察当局で捜査中でありますので、そのほうの進行ともにらみ合わせて検討いたしたいというふうに考えております。
  91. 竹本孫一

    ○竹本委員 それからもう一つは、この審議会の委員は十二名ぐらいですね。この委員の構成を見てみますと、大体、中小企業金融公庫のほうから一人出ているということ以外には、あとは大学の先生が一人といったようなことで、委員会の構成を、もう少し庶民の声が反映するようにこの際再検討すべきではないか。これは御承知のように、最近は労働者も株を持つし、家庭の奥さんも株を買っているといったような問題がありますから、証券の大衆化ということが叫ばれ、現実に進行しておるという段階においては、それに相応するような審議会の意見の反映というものがなければならぬというふうに考えますから、この構成では不十分である、もう少し庶民の声が端的に反映するような構成にすべきであると思いますが、いかがですか。
  92. 坂野常和

    坂野政府委員 定員が十三名に限られておりますので、これはまあ法律で限られておりますので、その人選が広範にわたるということは非常に困難でありますけれども、お説のようなことも非常に重要かと思いますので、将来の問題といたしまして検討いたしたいと考えます。
  93. 竹本孫一

    ○竹本委員 ぜひこれはひとつ……。やはりこれは十年前とかいうような段階における委員の構成ならばこんなものであったかもしれぬし、妥当性があると思うのです。しかしいまのような、情勢はまるきり変わり、証券大衆化も大きく進行しておる段階には相応していないと思うので、前向きにぜひ検討をしていただきたいと要望を申し上げておきたいと思います。  それから、今度の問題にも関連いたしますが、根本的な問題として、証券会社の四社独占の問題について、いまの大蔵省はどういう取り組み方をしておられるのか、この辺を伺いたいと思います。
  94. 坂野常和

    坂野政府委員 証券市場が寡占化、独占化するということはたいへんに弊害のあることでありますので、いわゆる四社寡占体制ということに対しまして、一つは中小証券、と申しましても四社に続くかなりの力を持ってまいりました中証券が最近だいぶ伸びてきておりますが、こういうものの力をつけていく。そして四社市場に参加していくというようなことが進められております。また過般の証券取引審議会におきまして、いますぐの問題ではないにせよ、やはりアンダーライター部門を中心に新しい証券会社を免許したらどうかというような御意見も出ております。また海外から証券勢力がわが国に入ってくるというようなことも考えられます。それやこれで、寡占体制といわれておりますようなことは、次第にそれが緩和といいますか薄れていくというような方向になるのではないか、またそういう方向に持っていくように証券行政も努力いたしたいと思っております。
  95. 竹本孫一

    ○竹本委員 次にまいりまして、円の再切り上げということになりますと株は下がるのが常識だというふうに思いますが、最近は、一時下がったけれどもどんどん上がっている。この現象を証券局としてはどういうふうに見ておられるか。本来下がるべきものというふうに一応考えられるか、あるいはそれがまたいかなる特殊事情によって上がっておると見ておられるのか、あわせてお伺いいたしたいと思います。
  96. 坂野常和

    坂野政府委員 基本的には金融緩和による余剰資金かなり法人筋にありまして、これはいまだに証券株式市場に対してかなり買い要因になっております。また株主安定工作というようなことも依然として進んでおりまして、そういう意味からも法人株式が集まるという傾向は依然としてあるわけであります。しかしごく最近の情勢を見ますと、長らく売り越しであった個人が若干買い越しになりまして、金融法人、事業法人等から若干株が流れ出ている。ごくわずかでありますがそういう傾向がごく最近出ております。これは円のフロート後の市場に対しまして、大口個人投資家投機資金が大量に流入したというふうに私どもは見ております。その大口投資家投機資金は、主として仕手株をねらって跳梁しておるというふうに判断いたしております。これが主因となってごく最近の株価上昇ということになっておるというふうに分析しております。
  97. 竹本孫一

    ○竹本委員 そこで、その上昇の分析の問題ですけれども、結局これはいわゆるインフレムードである。換物運動である。いずれにしましても、過剰流動性の問題やいまお話しの投機資金が流れ込むという問題があるわけですけれども、そういう問題のまた根底には、やはりインフレヘッジだとかいったような考え方がある。これは一つの形を変えたといいますか、あるいはそのものずばりというのか、換物運動であるというふうに私は見ておるし、また証券界の中にも最近の株の動きとか株式市場動きというものはどう考えても異常であるということを感じて、本人たち自身も何となくおそろしいといったような気持ちを漏らす人もおるようですけれども、そうした異常な動きというものがある。ただ金が流れ込んできたから、その金が出てくるので株価をつり上げておるのだということ以外の、あるいは以上にというか、その根底に換物的な動きがあるという、インフレに対する不安や恐怖心があるというふうに見ておられるかどうか、その点をもう一回聞きたい。
  98. 坂野常和

    坂野政府委員 少なくとも、証券業界はそういうことを種にして営業するということは非常によくないことであるという話を一月の五日と二月の二十一日と二回にわたって大蔵次官から証券首脳部へいたしました。そのあとを継ぎまして、私どもの局の各分野で証券界にその趣旨を徹底させております。そういうムードによって国民全体がたいへんむずかしい事態に来ておることをいいことにして証券市場で営業を行なうというような姿勢は、これは非常によくない姿勢であるというような指導をいたしております。
  99. 竹本孫一

    ○竹本委員 大蔵当局の次官局長のそうした御努力は評価しなければならぬと思います。しかし、それらの倫理教説を越えたより大きな不安があるというところがぼくは問題だと思うのですが、これは大臣にもまたあらためて聞きたいと思うのですけれども、私の意見を申し上げますと、総需要をこんなに次々に拡大をしていくようないまの政治の姿勢の中で、株は落ちつけとか、それから通貨、円・ドル問題も落ちついてほしい、そのために業界の人がかってに思惑的に走ってはいけないぞといってみても、経済の基本、構造が、そういう形にうねりがいっておるわけだから、それはほとんどナンセンスとは申しませんけれども、非常にはかない努力である。問題はもっと根本にあるのであって、その倫理教説を越えた問題があるというふうに私は理解しておる。円の再切り上げ問題にしても、田中内閣は何か突然出てきたようなことを言っておるし、事実そう思っているという向きが非常に多いのですけれども、われわれはほかの場合にもいろいろ論じておりますように、いまの経済構造なり政治の姿勢から見て、通貨、為替の安定なんということを考えることばほとんど夢みたいな話である。それと同じように、今度は他の面から言うならば、いまの政治姿勢や経済構造を前提にしながら株の投機が抑制されるということを期待しても、これまた非常にはかない望みにすぎないというふうに思えますけれども、それはこの場で深く論じても適当でありませんのでやめますけれども、そういう根底に大きな問題があるということを特に申し上げておきたいと思います。  それからもう一つ、最後にデノミの問題ですけれども、株の動き自体の問題はいま申し上げましたが、特にそれと関連をして何か騒げばすぐデノミ関連株がばっと上がる。私はいまのように円なり通貨の安定ができていない場合に、それの百分の一にするとか何分の一にするといったような、ベースがきまらないものをデノミをやるというようなことは、きわめて政策的な態度としてあり得ないことだ、あるいは許されないことだと思う。いわんや一つのデノミをやれば三千億か四千億か知りませんけれども、むだだとは申しませんが、たいへんな経費もかかる。あれこれ考えまして、イタリアがどうだとかいう話もあるわけですけれども、いまは少なくともデノミをやるべきかどうかということになると、当然やるべきことかもしれませんが、いまはその時期にあらずと思うのですけれども、そして当局もそういうことをときどき言っておられるように承るのだけれども証券界動きはデノミは必至である、そういうような受けとめ方で、チャンスがあればデノミ関連株を上げておる。一体これはどういう理由であるか。すなわちデノミをやらぬということは政府も言っておるんだけれども、そのPRが徹底しないためであるか、あるいは徹底しても政府の言うことだからあてにはならぬということでなめられておるのか、過小評価されておるためにそうなるのか、どちらの理由で事あるごとに一体デノミ株は上がっておるのか、この点についてのお考えを承りたい。
  100. 坂野常和

    坂野政府委員 いまの御質問のどちらの点ということをお答えできるような情報も持っておりませんけれども、私どもは、デノミに限らず、日ごろ注意いたしておりますことは、その不確定要因を確定要因のように言う、あるいはそういうムードを出すということによって営業していくということは、証券界自体の大きな意味での不信感を招く、そういうことは非常によくない営業姿勢であるということを指導いたしておるわけであります。
  101. 竹本孫一

    ○竹本委員 これは私は、原因は一応別にしても、いま申しましたような理由において、デノミはいま少なくともやるべき時期ではないということが徹底するように、もう少し積極的な努力が必要ではないか、ぜひそういうことを考えてもらいたいということを要望して、質問を終わります。
  102. 大村襄治

    ○大村委員長代理 午後一時四十五分再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時五十二分休憩      ————◇—————    午後一時五十八分開議
  103. 大村襄治

    ○大村委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  資金運用部資金並びに簡易生命保険及び郵便年金の積立金長期運用に対する特別措置に関する法律案を議題とし、質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。佐藤観樹君。
  104. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 この法律案に入る前に、前にと申しますか、バックグラウンドから私は少しお伺いしていきたいと思います。と申しますのは、ここに出された法律案自体は、形式的には、従来から長いこと論議されていた、いわゆる財政投融資計画を国会の審議に乗せよと言ってきた長い歴史の中で出されてきたもののように一見見えますけれども内容についてはきわめて不満な点が多い。その意味で、この出されたものは、財投を国会審議に乗せるというのと若干違うように思うからであります。  まず、お伺いをしたいのでありますけれども、最近、一般会計に対する財政投融資の割合あるいは国民総生産に対する割合、これが非常に上がってきておると思うのです。事務当局のほうからその比率について若干説明をしていただきたいと思います。
  105. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 お尋ねのございました財投計画と一般会計との対比、それから財投計画とGNPとの対比でございますが、最初に一般会計に対する財投の割合を申し上げますと、昭和四十八年度、今回御審議をわずらわしております財投計画の割合は四八・五%でございます。それからその前の年、四十七年度が四七・〇、四十六年度が四五・五、少し前に戻りまして、昭和四十年度が四四・三でございます。  それからGNPに対する割合でございますが、ことし、四十八年度が六・三%、昨年度が五・七、四十六年度が五・三、昭和四十年度が四・九%でございます。  ただいま御質問の中にもございましたように、逐年財投計画の規模が大きくなってまいりまして、一般会計との対比においても、あるいは国民総生産との対比においても、その比重が増してきておることは、御指摘のとおりでございます。
  106. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 そこで、一般会計のほぼ半分に近い、本年度でいえば七兆円近い財政投融資が行なわれるわけであります。ただし、財政投融資というのはまたあとで概念をはっきりしなければいけませんけれども、ここでいう、いま論議する財政投融資計画というのは、産投特別会計、資金運用部資金、簡保の資金、政府保証債・政府保証の借入金である、こうして話をしていかないと、あとでまたいろいろと非常に大きな重要な問題がありますので、とりあえずそれを財政投融資計画と呼んでおきますけれども、その割合が、いま御説明があったように、率がたいへん高くなってきておるわけであります。これが一般会計十四兆二千八百四十一億と加わって、財政政策に与える影響というのはきわめて大きくなってきておると私は思います。その点についてはいかがですか。
  107. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 一般会計の歳出と財投会計と合計いたします場合には、重複勘定がございますから、差し引きをいたしまして、純計ということになると思いますが、いずれにいたしましても、一般会計の歳出の規模も最近非常に大きくなってきております。財投計画は、過去の伸び率から申しまして、一般会計の伸びを上回って大きくなっておりますから、両者を合計した国の財政活動としては非常に大きなウエートを占めてきておるということは、御指摘のとおりであろうかと思います。
  108. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 そこで、たとえば先ほどの五年前を見ても、あるいは十年前を見ても、かなり——八年前の四十年度でも、一般会計に対する比率というのは、四四・三と、きわめて高かったわけであります。今日まで財政投融資計画自体が——もちろん、その中で、産投会計、政府保証債、政府保証の借入金、こういったものは、一般会計歳入歳出予算で、あるいは特別会計予算として論議をされてきたわけでありますけれども、これだけ大きな額を占める、また、フィスカルポリシーに対して非常に大きな影響を持つ財政投融資計画自体が、今日まで国会の正式な論議にはならなかった、単に参考資料程度であった、これはやはり非常に問題があると私は思うわけであります。これは申すまでもなく昭和三十六年以来ずっと国会予算委員会なりあるいは各分科会なりで論議をされてきたわけでありますけれども、いまや、この財政投融資計画というのは、一般会計予算を補う、あるいはそれを補完する、そういった大きな意味を持っておると私は思うわけであります。その意味で、従来の国会での論議というのは——ここに出されたような形での財投、あるいはこれでは具体的には二つの原資に対する審議だけになるわけでありますけれども、そういったものではなく、経済の景気不景気、あるいはこれからの日本の経済体質をどう変えていくか、そういった意味も含んだ財政政策、その中で財投というものが占める位置はたいへん大きいと私は思うわけであります。  三十六年から論議されていながら、今日まで何ゆえにこの財投自体が国会の議決事項にならなかったのか、その辺はどういうふうに理解していらっしゃいますか。
  109. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 財政投融資計画、省略して財投計画ともいっておりますが、さらに省略いたしまして財投ということばがございますけれども、いわば経済用語としては、日本の戦後の経済の中に定着しているというふうに考えて差しつかえないと思います。  御承知のように、これは昭和二十八年度から政府が財政活動の状態を明らかにする一つの資料として作成をし、国会に提出をいたしてまいったのでございます。現在のような形になりましたのは大体昭和三十年度になってからでございます。御質問の中にもございましたように、原資としましては、産投会計、政府保証債、そのほかに大宗を占めるものに資金運用部資金があるわけでございます。ただ、従来の経過で申しますと、産投会計が当初は非常に大きなウエートを占めておった時代もございます。それから資金運用部資金が最近は非常に伸びが好調でございますが、三十年代は必ずしも郵便貯金の伸びが好調でないという時代には、むしろ政府保証債というものを活用して政府が民間の資金を公共部門に転化する、こういう作用をいたしておったのでございます。  したがいまして、その当時の状態を前提に置いて考えますと、産投会計は、御承知のように、産投会計法に基づいて産投会計の歳入歳出予算として国会の審議をわずらわしておるわけであります。それから政府保証債・政府保証借入金について、それぞれ借入機関に規定がございます。その規定に基づいて、予算の限度で国会の議決をちょうだいいたしておるわけでありますから、そういう点で申しますと、当時の財投計画の実態に即して考えますと、やはり産投会計とか政府保証債についてはすでに国会の議決をちょうだいしている。問題は、資金運用部資金なり簡保資金というものが、従来の取り扱いでは抜けておったわけでございますが、これにつきましては、当時のような資金構成の割合の反映ということがございます。もう一つは、資金運用部資金なり簡保資金というものが、国民の任意的な貯蓄であり、受動的に集まる資金の運用という、いわば金融的な性格を強く持っておりますので、そういうものにつきましては、財政法の規定によりまして、特に資金として大蔵大臣なりあるいは郵政大臣の行政府がこれを管理する、こういう国会の御意思を反映して従来資金を管理いたしてまいったわけでございます。したがいまして、そういう財政投融資の原資の構成の割合とか、あるいは資金運用部資金、簡保資金の資金の性格等から申しまして、昭和三十六年以来、国会で御議論をちょうだいいたしておりますが、政府は一貫して、これは性格から見て、国会の議決の対象にするのは適当でないということを申してまいったのでございます。いま御説明しましたような当時の状況、当時の事情、またウエートから申しましても、当時は大体一般会計に対して三三%から四〇%程度のウエートを占めておったのでございます。先ほど御質問の中にございましたように、最近は大体半分程度になってきている、当時財投計画の資金の性質なりあるいは規模のウエートなりが小さかった、こういうことに着目しての措置であったとというふうに考えております。
  110. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 たとえば三十六年、ちょうど論議の始まった三十六年を見ましても、一般会計に対する比率というのは——ちょっといま私の手元に資料がないのですが、たとえばその中に占めるのは、いま大体三〇%ぐらいだというお話でございましたけれども、その中に占める資金運用部資金の構成比というのは五七・三%、それから簡保が一七・二%、合わせて大体七五ぐらい、つまり四分の三近くが昭和三十六年の段階でも財投の中で占める資金運用部資金、簡保の資金になっていたわけです。確かに、一般会計に占める割合は、現在のように四八・五%、半分ということにはなっておりませんけれども、それでも三分の一というのはかなり私は大きな額だと思うわけです。それは過去の話を、その当時は論議をしなかったのでありますから、その件について私はいまここでせんじ詰めてもしようがないと思うのでありますけれども、ただ、いま局長が言われた理由の中で二つ、どうしても納得できない部分があるわけであります。  その前に、これだけはひとつ確認をしておきたいわけでありますけれども、少なくもいま、産投会計、資金運用部資金、簡保、政府保証債・政府保証借入金、この四つを原資とする財政投融資計画、これ自体がこれだけ大きくなってくると——形式は別ですよ。形式の件についてはまたあとでお伺いしますけれども、これだけ大きな額になってきますと、経済運営に与える影響、財政政策の中に占める影響、こういったことから、この形をいま、審議の形式はまた別でありますけれども、いまの段階においては、財政投融資計画全体を予算とともに国会の議決を経て、そしてそのもとで経済運営を行なっていく、そういう態度というのが行政府として必要になってきているんじゃないか。形式はまた、二重議決云々の問題がありますが、それはまたあとでいたしますけれども、財政投融資計画全体として、これだけ大きくなった財投について、一般会計予算同様に国会の議決を受ける必要があるのではないか、こう思いますけれども、この見解についてはいかがですか。
  111. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 ただいま御質問になりましたのは財政投融資計画の本質論になるかと思いますが、先ほどもちょっとお答えを申し上げましたように、財投計画は、産投会計、政府保証債を別といたしますと、資金運用部資金あるいは簡保資金、これはいずれも本来金融的な性格を持った資金でございます。一定の金利条件のもとにおいて受動的に集まってくる資金でございますので、一般会計予算あるいは特別会計予算——一般予算のように支出の目的なりあるいは経費の必要性というものが最初にきまって、それに必要な財源を一定の租税制度のもとで調達をする、こういう性格のものとは本来基本的に異にいたしておるわけでございます。自然に資金が集まるということでございますから、初めに資金ありきということでございまして、一般予算の場合は、初めに歳出ありきということでございます。必要な歳出なりあるいは経費の目的というものがきまってから、いかに財源を調達するか。それに対しまして、財投計画の主たる原資をなす運用部資金その他簡保資金等につきましては、最初に資金がある、こういう性格のものでございますので、また、資金ということで、歳入歳出外現金ということで主務大臣に管理運営がまかされている、こういう性格のものでございますので、それぞれ法律の規定によりまして、集まった資金につきましては、確実かつ有利な運用をはかることによって公共の目的に奉仕するという命題を与えられておりますので、国会の御意思が、主務大臣なり行政府なりが責任をもって管理運営せよ、こういうことでございますので、したがいまして、それに基づきまして従来から管理運営いたしてまいったのでございまして、ただ、経済情勢なりあるいは社会全体のニードが変わってまいりますから、また同時に、郵便貯金を背景とした資金の量というものがふえてまいっておりますから、先ほど来御指摘のありましたような事情の変化を加味いたしまして、今回特に、昨日の政務次官の提案理由の説明の中にもございますように、従来の性格に加えて、財政的資金の配分といった性格を持つようになった社会的事実に着目して、今回こういう形で国会に御審議を仰ぐということにしたのでございます。
  112. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 では、その問題からまずいきますけれども、財投の原資が受動的であるという。これは、たとえば郵便貯金にしても、普通の人が、国民が郵便局へ貯金を持っていけば、これは私のところでは運営できませんから要りませんというわけにいかない。そういう意味では確かに受動的だと思うのです。しかし現実的には、郵政省がやっているのは、一応簡保にしろ、あるいは厚生年金、国民年金——これは義務的徴収になっているわけですね。——これはある程度の目標があって、そして現実には原資というものを確保している。これはきょう郵政省は別に入れていませんけれども、現実にはある程度目標がある。そのもとで働きバチのごとく働かされている。全逓というのは私たちを応援をしてくれているところですから、よく話を聞くわけでありますけれども、そういった意味では確かにこれは徴税と違います。税金と違いますけれども、税金だって、経済運営に伴っていろいろな狂いがあるわけですね。それとは若干確かに意味は違いますけれども、原資が任意的だ、受動的だと言うけれども、現実には、全くそれは計画性のない、全く数字が出てこない受動的なものではないと思います。そういった意味では、私は、現実にはある程度の、これだけ必要なんだということが原資として出てきていると思うわけです。そういった意味では確かに税金とは違いますけれども、原資の面から見ても、必ずしもそんな、数字が出てこない、その年に  なってみて集まってみなければわからないというものではないと思いますね、性格的に。その点い  かがですか。
  113. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 これは郵便貯金にしましても簡保資金にいたしましても、いずれも有償の資金でございますから、貯金なりあるいは保険の掛け金をいたしますと、いわば利息のついた形でまた戻ってくるという性格のものでございますので、まあ税金のように無償の資金とは性格を異にいたしておるわけでございます。ただ、御指摘の中にございましたように、もちろん郵政事業特別会計、郵便貯金特別会計のいわば積算の根拠という現実的な必要もございますし、そのほかにやはり一つの金融機関としての貯蓄目標というものも設定をいたして実際には貯金の活動もいたしております。そういう点では同じでございますが、かりに目標値をきめましても、国民の必要に応じて貯金を持ってくる場合には、安全な金庫としての性格から見て、当然郵便貯金の受け入れということは拒否できないのでございますから、したがいまして、ある年一兆七千億という目標を立てましても、それが二兆になる場合もありますし、あるいは二兆五千億になるという場合もございます。あるいは逆に、一兆七千億が一兆五千億で終わるという年もあろうかと思います。したがいまして、そういうものといたしましては、いわば一つの金融機関としてのストックを形成いたしておりますから、そういうものとして、まあ生々流転と申しますか、年度を越えて資金がふえたり減ったりする、こういう性格のものでございますから、一般予算のように一定の目標、一定の租税制度のもとにおいて無償で資金を集める、受益者負担とは完全に分離している、そういうものとは基本的な性格の違い師ある。そういう点から申しまして、現実の処理にいたしまして目標を設けてやるということは事実でございますが、その目標に対して大幅に狂ったり、あるいは実績がふえたり減ったりすることがある。しかもそれはいわば組織の主体としての国の判断によって増減することが不可能なものだ、こういうことであろうかと思います。
  114. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 あとからまた、財投の追加の問題あるいは繰り越しの問題、そのあたりでもう一度お伺いしますけれども、しかしそのクッションになっているところですね、つまり、原資が非常に大きくなれば、ではその分だけ全部財投計画でまかなえるかという——まかなうという言い方は変ですね、配分と申しましょうか。それはできるかといえば、必ずしもできぬわけですね。そのクッションになっているところが、いま言われた簡易保険の特別会計であったり、郵便貯金特別会計であったり、厚生年金の特別会計であったりするわけですね。そこでクッションになって、あまり資金が余る場合には全部財投が引き受けるわけにはいかないということで、そこが私はクッションになっていると思うのです。ですから、確かにいま局長言われたように、前半の部分、それは私もそのとおりだと思います。税金とこの財投の資金というものを全く同じに考えているわけじゃない。ただ現実的には、いまの経済情勢の中でどれだけの型の、どれだけの総額の予算を組み、それからどれだけの投資あるいは融資をして経済活動をやらせるか、この大ワク、それはそのとき現在の経済情勢によって大きく占められているものだ。それがやはりフィスカルポリシーの、まずどこに投資をするか以前に、総ワクどのくらい現在の経済情勢の中で予算を組み、また財投計画を組んだらいいかということになると思うのです。これが単に、まあそんなことはないとしても、原資が非常に大きくなったから、じゃあそれに見合うだけの財投をやったらいいかといったら、これはますますインフレに拍車をかけるようなもので、たいへんなことになるわけです。そのために原資の見込みがあり、財政投融資計画があると思うわけですね。その意味で、確かに一兆二千億の予定が一兆五千億のときもありましょう。あるいは逆の場合に原資が足りないときもあるわけでありますが、こういったように性格的には税金と確かに違いますけれども、いまやそれを全く手放しに財投計画を、原資が来たからそれをすべて運営すればいいのだということでは、財政政策上きわめてまずいことになるのじゃないか、こう思うわけであります。  それからもう一つ、今日まで長いこと議論をされながら国会審議、議決事項にならなかったことに、一事不再議と申しますか、財投計画に含まれている産業投資特別会計、それから政府保証債・政府保証借入金、これが、産業投資特別会計の場合には、出資として一般会計の歳入歳出予算に盛られている、あるいは政府保証債・政府保証借入金の場合には、一般会計の総則で限度がきまっている。こういうことで、もう一度財政投融資計画全体を議決をする場合には、二重議決になるのじゃないかという論議が今日までずっとあったわけであります。  そこで、理財局にお伺いをしたいのですが、まず、たとえば道路特会をとった場合に、一般会計予算からはどういう形で特別会計予算にお金が出ていますか。
  115. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 最初に御質問になりました財政政策と財投計画との関係は、先生の御指摘のとおりであろうかと思います。金が集まったからそれを全部使う、こういう性格のものではございませんで、やはり一国の財政活動が経済にどういう影響を与えるかということは、予算編成の際に十分慎重に検討いたすのでございます。そういう点から申しまして、従来予算の編成と同じ時期に財政投融資計画も編成をいたしておったのでございまして、まさに、そういう点から申しますと、フィスカルポリシーなりあるいは資源配分の観点から予算と一体として編成をいたしておりますので、そういう点から申しますと、やはり経済政策上の観点から投融資をする、そういう性格を持っております。現に昭和四十二年度以降、民間経済が非常に勢いを得た時期には、民間経済の行き過ぎに対して財政は遠慮するというフィスカルポリシーをとったのでございますが、その際には、一般会計の伸びは比較的恒常的な伸びをいたしておりますが、財政投融資計画は異常にむしろ伸びを縮めております。たとえば一三%の伸びというような時代もございますし、そういう意味でやはり財政活動が一国の経済にどういう影響を与えるかという観点からもちろん編成をいたしておるのでございまして、先ほどは資金の性格に着目をして御説明いたしたのでございますが、どういう観点から財投計画を編成するかということであれば、先生の御指摘のとおりに、やはり経済政策なり財政政策の一環としてこれを取り扱う、これが基本的な立場でございます。  それから、後ほどお尋ねございましたのは、主計局のほうからちょっとお答え申し上げたいと思います。
  116. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 せっかく局長からそういうお話がありましたので、その点は私もきわめて考え方が一致するわけですね。したがって、私は形式論はあとにして、いま四つの原資を持っている財政投融資計画全体を国会のもとに置かないといけないのではないか。おそらくそこから出てくる議論は、あくまでこれは資金であって、流動的である。ですから、有利確実な方向に運営をしなければ、郵便貯金をしている人にも、あるいは簡易保険を払っている人にも利子が払えない、そういった議論になると思いますけれども、従来から、昭和三十六年から論議をされてきた、この財政投融資計画を国会審議に乗せよという議論の根底は、私はいま申しましたように、財政政策で占めている財投というものの大きさが非常に重要になってきたがゆえに、予算と財政投融資計画というものが一体として審議されなければいけないのじゃないか。したがって、形式的にはまだこれから論議になるわけでありますが、産投会計と政府保証債・政府保証借入金の二つはすでに議決になっているから、従来の財政投融資計画全体を国会議決にするのはおかしいという論議になってくるのだと思うのです。  そこでその問題に入りたいわけでありますけれども、たとえば道路整備特別会計の場合には、一般会計から特別会計にどういう形でお金が出ているか、まずお伺いをしたいわけであります。
  117. 長岡實

    ○長岡政府委員 道路の整備は道路整備特別会計を通じて経理をされておりますが、その歳入に、一般会計から揮発油税等の特定財源の収入とそれから一般財源等を受け入れております。この関係は、予算の形から申しますと、一般会計予算の歳出にこの道路整備特別会計への繰り入れが計上されまして、特別会計の歳入に一方受け入れの金額が計上される、こういう仕組みになっております。
  118. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 そうしますと、予算案が五つにわたって、予算総則と歳入歳出予算と繰越明許費と国庫債務負担行為と、もう一つが継続費、これだけが現実には一括して賛否を問うわけでありますけれども、いま申しましたように、道路特会の場合には、一般会計から歳出の形になって一回その額が議決をされ、今度は道路特会で見れば、歳入の大きな部分は一般会計からの歳出であり、そして特別会計を議決する場合には、さらにそれに加えてこまかい項目が議決されるという形になっているわけですね。それはよろしゅうございますね。——そうするならば、法制局にお伺いをしたいわけでありますけれども、こういうのは、いわゆる一事不再議と申しますか、二重議決と呼ばないのですか。
  119. 茂串俊

    ○茂串政府委員 お答えいたします。  この二重議決の問題につきましては、御案内のとおり、財政制度審議会で慎重に審議いたしました結論でございますが、先ほど御指摘のございましたように、財政投融資計画に盛られておりますところの産業投資特別会計であり、政府その他の出資並びに政府資金による資金調達の問題につきましては、産業投資特別会計の歳出予算あるいはまた予算総則にそれぞれ計上されておるわけでございますが、全く同じ事項につきましてこれを財政投融資計画の一環として計上いたしますると、いわゆる二重議決の問題が生ずるわけでございまして、この場合には、かりに国会で一方のほうの額を修正したような場合に、はたしてどちらの額をとったらよかろうという問題も出てまいりますし、また、若干考え過ぎをいたしますると、それでは両方の権限に基づいて二重に支出してもよいのかといったような疑問すら生ずるわけでございます。したがいまして、先ほど先生のおっしゃいました一般会計の歳出に立ち、また特別会計の歳入に立ちといった場合には、基本的に違った問題であるということがいえるわけでございます。
  120. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 そうしましたらこういうことですね。いま道路特会の場合には、一般会計にとって見れば歳出である。それから道路特会から見れば歳入である。次元が違いますからね。入ってくるほうと出ていくほうですから、次元が違います。ところが、財投の場合、たとえば産業投資特別会計の場合には、一般会計から見れば産投は歳出であり、それから財投から見ればこれはおそらく歳入とは呼べない、従来のことばからいいますと歳入とは呼べないということになると思うのでありますけれども、この財投から見ますれば、これは収入であるのじゃないですか。
  121. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 法律的な問題は法制局からお答えを申し上げることにいたしますが、いま御質問されましたのは、産投会計の歳出の問題でございます。財政投融資計画にのっておりますのも支出の問題でございます。したがって、全く同一の事項について国会の御判断を仰ぐということは、たいへんおそれ多いことでございます。かりに、先ほど法制局からお答えがありましたように、別の議決がなされた場合には、いわば歳出権の付与ということでございますから、行政府に対して歳出権を付与していただくということでございますから、どちらの御意思に従ったらよいかということで、いわば政府は去就に迷うわけでございます。そういった点から申しまして、全く同一の歳出権についての二つの議決、二つの御意思の確定ということは、これは適当ではない、こういう立場でございます。
  122. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 それはどうも私はおかしいんじゃないかと思うのですが、おそらくそちらのほうが専門家だから正しいのかもしれませんけれども、いいですか、産業投資特別会計というのはあくまでこれは原資ですね。つまり、一つの歳入歳出とは、あくまで資金ですから、税金と違いますから、皆さん方のことばの使い方でいえば、いえないと思うのでありますけれども、歳出だと言いますけれども、歳出というのは、これからいろいろな特別会計なりあるいは公団なり公庫なりにおのおの分けて使うわけで、あくまで原資見込みの中に産業投資特別会計四十八年度八百二億という額が入ってくるわけですね。出ていって直接使うのではなくて、とりあえず——皆さん方の考え方は、これは財投に入るのではなくて、全くここは財投というプールでなくて、別個に一般予算から特別会計へ出ていくということですか。
  123. 長岡實

    ○長岡政府委員 産業投資特別会計の仕組みにつきまして簡単に御説明申し上げますが、産業投資特別会計の歳入の面には、産業投資特別会計自体の運用収入あるいは一般会計からの受け入れ等がその特別会計の歳入に上がりまして、特別会計の歳出として産業投資の支出であるとか、あるいは別途に御審議をお願いいたしますアメリカからの対日援助債務処理費の支出であるとか、国債整理基金特別会計への繰り入れであるとか、こういったものがこの特別会計の歳出に当たるわけでございます。したがいまして、産投会計からの出資はあくまでこの特別会計の歳出に出てくるわけでございます。
  124. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 そうしますと、たとえば本年度の予算の説明の六四ページに出てくる産投特会のいわゆる財政投融資に向ける分ですね、八百二億、これはどこに数字が出てきますか。
  125. 長岡實

    ○長岡政府委員 産業投資支出として八百二億がのっております。
  126. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 そこまではいいです。  そうすると、今度は産業特会から財投へ出すわけですね。財投はこれは別ワクになっておるわけですね。
  127. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 産投会計からの歳出、つまり産投会計から各財政投融資対象機関に対して出資をいたします。これが産投会計の歳出になっておりまして、財投計画表も、その歳出と同じものが産投会計から各対象機関に対する出資になっております。したがいまして、産投会計の歳出と財投計画に計上されました産投会計の額とは全く一致をいたしております。つまり、どちらも歳出のサイドとしてとらえておるのでございまして、そこで二重議決の問題が生じてまいるということになるわけでございます。
  128. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 そうなりますと、財投のこの四つの原資というのは、一つ——何と言ったらいいのか、プールになってないわけですね。産投会計と政府保証債、これは総則できまっていることですから、一つのワクになっていなくて、これはそのまま産投特会からここに数字を引き写すという形になっているということですね。ですから、逆のことを言えば、私が前半言ってきたように、財政計画、いわゆる四つを原資とする財投計画というものを、おそらく、歳入歳出ということばではおかしいから、収入支出という、これはいろいろことばを考えなければいかぬと思いますけれども、収入支出という観点にして財政投融資の一つのプールをつくるならば、そこへ産投から支出され、財投でこれを収入として受け入れるという形にすれば、これは二重議決ということにはならぬわけですね。もちろん、これは財政法自体を変えなければだめですよ。その前提での話でありますけれども
  129. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 ただいまの御提案は、非常に新しい、斬新な御提案であろうかと思いますけれども一つの、財政投融資勘定と申しますか財政投融資特別会計と申しますか、そういう体系をつくりまして、そこに資金運用部資金から、簡保資金から、あるいは政保債によって調達した資金から、産投会計から、全部突っ込んでしまう。それを各財政投融資対象機関に対して融資なり出資をするというのも、これは確かに一つの考え方であろうかと思います。ただその場合に、確かにたいへん御理解がしにくい面があって恐縮なのでございますが、財投計画表自体は、資金の性格の異なったものを表示をいたしたいわば一覧表でございまして、財政投融資という、活動いたしております国の財政活動の一部をできるだけわかりやすい形で、いわば一覧性と申しますか、あるいは明瞭性と申しますか、そういうかっこうのものとしていわば表示をいたしたものでございまして、それぞれは別個の原理なり別個の論理で動いておるわけでございまして、産投会計は確かに多少の回収金とか利殖収入もございますけれども、原資は大半は一般会計からの繰り入れに依存しておりますから、資金運用部資金とかあるいは簡保資金とは性格を異にしております。また、政府が保証債務負担をいたしまして民間資金を調達するというのも、これは運用部資金及び簡保資金のように政府みずから制度を設けて金を集めるというものとも性格を異にしております。そういう違った性格のものを四つ集めましてそれを原資の欄に置き、縦に政府機関その他の財投機関をずっと並べまして、それのいわば対応関係をあらわした表でございまして、先生の御疑問のように、何か一つプール勘定みたいなものがあって、そこを全部経由するということにすれば確かに非常に明瞭でわかりやすいということになると思いますが、いま御説明いたしましたように違った資金のものが集まっておりますので、違った性格のものを一つの勘定にたたき込むということは、かなり性格的にも技術的にも問題がある。全く発想を変えて、たとえば戦前のように、かりに資金運用部資金というものを考えました場合に、ほとんど大半を国債引き受けに充当するとか、そういうように資金の流れが変わってくればまた別でございますけれども、いまのように各資金、財投機関資金というものがあり、それぞれの使命に応じて活動をしておるという実態を念頭に置いて考えますと、いまの御提案は検討する必要があろうかと思いますけれども、たいへんむずかしいことじゃなかろうかという感じがしておるのでございます。
  130. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 それは大蔵省あるいは官僚的立場からいえば私はそのとおりだと思うのです。ただ、現実には金に名前が書いてあるわけじゃない。現実には産投は産投として投資され、あるいはその他の資金というものも、現実に各公庫なり公団なり事業団なんというところに経済活動として動いていくわけですね。その意味においては、確かにいま局長言われましたように、原資は非常に性格の違うものが入るわけです。入るわけですけれども、実際にそれが出ていく段階においては、経済活動として一緒なわけですよね。問題なのは、私が冒頭に申し上げましたように、いまの、これだけ財政投融資自体が大きくなって、それがフィスカルポリシーの中で非常に大きな部分を占めるようになっているときに、これをはっきり国民の前に明らかにしてそうして経済政策を立てる必要がある。そういう意味では、従来からの経緯をずっといま局長が御説明になったように、全然性格の達う税金の流れ、あるいは国民一人一人が貯蓄したもの、あるいは保険でかけたもの、こういったものをみんな一緒にして、一つのプールにして会計を考えるということは、従来の考え方では確かに苦しい面があろうかと、その面ではわかります。収入といった面では確かにそうかもしれませんけれども、しかし、私は支出の部分から考えれば、これは実際に経済活動の中では同じ機能をしている産投会計の、これは利子がつきませんけれども、お金であり、その他の資金はみな同じような活動をするわけでありますから、私はそのあたりはもう一回考え直す必要があるんじゃないか。これはさらに私のほうでもおそらく修正案としてそういった内容を盛り込んだものを一度出したい。これも法制局と一回さらに詰める必要があるであろう、こう考えているわけであります。  それからもう一つは、一般会計、特別会計の関係と申しますか、財政投融資でやるべきものと一般会計で見るべきもの、これは何かその目的の範疇というか、政策的な、たとえば財投というものはこういうものに使わなければいけないんだという明文化されたものはあるのですか。
  131. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 財政投融資は、先ほど来御説明いたしておりますように、いわば戦後の日本の発明にかかるものでございまして、異なった性格の資金を並べて政府の財政活動を一般に明らかにするという、いわば親切心から作成した表でございますけれども、ただ、いまお話がございましたように、それではそれぞれ達った性格の資金を通じて財政投融資計画はどういうふうにあるべきかという共通の原理と申しますか、そういうものは法律的に明らかにされたものはございませんが、ただ、それぞれ資金運用部資金法とかあるいは簡保資金積立金に関する法律等で大体その性格というものは明らかになっております。つまり、有利かつ確実な運用に加えて、公共目的への奉仕ということがうたわれておりますし、それぞれ財政投融資対象機関個々の公団、事業団にも、やはり公団、事業団の任務なり使命なり目的というものも明らかにされておりまして、いわばそういう公団、事業団の性格を、まあ共鳴すると言うとおかしいのですけれども、そういう性格のものを助成し、援助し、拡大する、そういう見地から財政投融資の活動を行なっておるのでございます。  ただ、一般会計との間にどういう原理的な区分があるかというお尋ねでございますが、一般会計は、先ほどもちょっと触れましたように、やはり税金を原資とする活動でございますから、いわば使い切りと申しますか、使い捨てと申しますか、年々の歳出として消費をするというものがたてまえでございます。それに対しまして、財政投融資の原資は預かり金が中心でございますから、あるいは民間から拝借した金が中心でございますから、やはり運用して利息をつけてお返しをする、こういうたてまえでございますから、したがって、財投の対象事業としましては、事業に収益性なり経済性あるいは有償性というものが要請されてまいるのでございまして、全く無償的な性格の事業には財政投融資の資金というものは本来なじまない。  繰り返しになりますが、やはり一般会計、たとえば住宅について申しますと、公営住宅のような低所得層に対する住宅政策は一般会計の歳出でございまして、やや上の層に対する住宅公団あるいは住宅公庫は財投がこれを負担をする。あるいは、一般道路は一般会計、有料道路は財投、こういう区分がございまして、やはり事業の収益性なり経済性というものが財投対象事業になる一つの基本的な性格であろう。そこが一般会計予算との区分のけじめになろうかと思います。
  132. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 さらにそのことについて具体的にお伺いしますと、いわゆる産投会計で支出をするものの、つまり、これは産業投資特別会計から支出すべきものか、あるいは財投で有償にすべきか、この判断の何か一つ基準があるべきだと思うわけですけれども、そういう基準というのは何かあるんですか。
  133. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 産投会計から出資をいたしますものは、原則的に申しますと、出資金を基礎といたしまして金利を薄めるという性格を持っております。産投会計からの出資だけというのはおそらくないと思います。産投会計から出資をすると同時に、やはり財政投融資対象機関として資金運用部資金なり簡保資金を融資する。無利息の出資金と有利息の借入金をまぜて、ある一定の資金コストまで下げる、こういう性格を持っております。そういう見地から、当該機関がやはり一定の資金コストなり一定の金利水準を確保する必要があるという場合には、産投会計からの出資をまぜて財投活動を行なう、こういうことになろうかと思います。
  134. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 いや、そのやり方はわかるんですよ。わかるけれども、いま申しましたように、たとえば産投会計で見るべきもの、それからその他の資金運用部資金を使う、あるいは簡保資金を使う、こういったような無償のものを使うか、有償のものを使うか、それは何らかの法的基準があってやるんですか、それとも理財局のほうで、先ほど言われましたように、何と申しますか金利を薄める効果にする、あるいは公共性のあるもの、あるいは資金が、たとえば道路公団なら日銭がとにかく入ってくるけれども、入ってこない会計なり公団もありますね、そういったものの性格分けでやるのか。その際に、有償のものをどのくらい充てる、無償のものをどのくらい充てる——無償のものというのは、この場合には産投特会になるわけでありますけれども、無償のものを充てるか、有償のものを充てるかというのは、何らか法的な基準があるんですか、それとも理財局のほうの自由裁量でやるんですか。
  135. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 法律の規定によって産投出資をしなければならないとか、そういうものはどの程度にしなければいかぬとか、そういう詳細にわたっての法律的な規制というものはございませんが、たとえば産投会計の出資で大宗を占めますのは輸出入銀行でございますが、輸出入銀行の場合には、輸出の貸し出し金利あるいは輸入投資の貸し出し金利をどの程度の水準にするかということをまず想定いたしまして、その水準に置くためには、資金運用部資金からの借り入れの金利を出資によって薄めて、しかも独立の金融機関でございますから、ある程度の貸し倒れ準備なりあるいは可能ならば多少の準備を積む、そういうことを想定計算いたしまして、それに基づいて出資と融資の割り振りをきめておるのでございまして、これはまさに予算編成の過程において一般会計予算の編成と財投計画の編成とが一体となって作業をして結論を出す、こういう性格のものでございまして、法律的に必ずこれだけのものを出資する、あるいは必ずこれだけの借入金をする、そういうはっきり法定されたというものはございません。
  136. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 私のこの項目の最後にもう一度確認をしておきたいわけでありますけれども、今度の法律改正では、四十八年度特別会計予算のいわゆる予算総則に書いてある区分と資金運用部資金の限度額、それから簡易生命保険郵便年金特別会計の積立金の限度額、こういった形で予算が出されて、国の予算の説明書のように、一企業団あるいは一事業団あるいは一特別会計、これの歳入歳出というような形では出されないわけですね。そういうことになりますね。私は、おそらくこれは資金が流動的であるということを言われると思うのでありますけれども、やはりこれだけ公団も事業団も特別会計もふえてきた時点においては、非常に経済活動に重要な意味がありますので、ここで公団も事業団も、いわゆる財政投融資計画に盛られる各省特別会計から、こういったもの全部やはり歳入歳出予算を提出して、そして国会の議決を経るべきである。その際に、私は先ほどちょっと申し上げましたように、特別会計自体は歳入歳出ということばは非常にこだわりがあろうかと思いますので、これは何ということばにするかはまた別の問題として、収入なり支出なりという形でひとつ特別会計をつくって、そのもとでやはり各事業団、各公団、これは歳入歳出をきめて国会に提出すべきではないか、こう思いますけれども、おことばは大体わかるような気がしますが、一応どういう御見解でしょうか。
  137. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 いま前段でお述べになりましたことと後段とはかなり性格が違った事項であろうかと思いますけれども、前段は、政府関係機関予算と同じように、公団、事業団等についても国会の議決を受けるべきではないか、こういう御主張であろうかと思いますが、これは御承知のように、政府関係機関と申しましても、公社と公庫、輸出入銀行とは取り扱いを異にいたしております。公社は御承知のように特別会計から発足したという経緯もございまして、すべての歳入歳出予算、建設勘定から、損益勘定から、全部国会での議決の対象になっておるのでございますが、公庫は、御承知のように、事業勘定はこれは主務大臣の認可でございまして、ただ借入金の限度につきまして国会の御審議を仰ぐ。さらに経費予算、利息支払い、利息収入等につきましては、政府関係機関予算として国会の議決をちょうだいいたしております。そこまでが国会の議決をちょうだいしておるところございまして、それ以外の公団、事業団、基金等につきましては、御承知のように、現在のところ主務大臣の認可で事業を行なう、こういうことになっております。  これはたびたび国会等でも御議論いただいている事項でございますが、どちらかと申しますと、これは沿革的な反省に基づいてこういう措置をとってきたものございまして、歴史的に申しますと、公庫のほうが時間的にはちょっと早いのですけれども、いずれにいたしましても、公社、公庫というものが最初にあり、それから公団、事業団というものが生まれてきておるのでございまして、やはり現在の実定法に国会の御意思として反映されておりますのは、政府関係機関まではそういう形で国会の議決を受けて、公団、事業団につきましては主務大臣の認可で活動してよろしい、こういうことでございますが、ただ実際に予算の取り扱いで申しますと、この事業資金の大宗を占めるのは運用部資金なり、要するに財投の原資によって活動いたしておるのでございまして、そのほか縁故債等の民間資金がございますが、やはり財投資金というものがその原動力になっております。  今度こういう形で財投計画の全部の事項につきまして国会の議決をちょうだいする——形式につきましては先ほど来御批判をいただいておりますが、いずれにいたしましても、四項目全部について何らかのかっこうで国会の議決をちょうだいいたすわけでございますから、そういう形で議決をちょうだいしたものを原資として個々の公団なり事業団がどういう活動をするかということは行政府におまかせいただくというのが、現在の実定法の考え方でございます。  そういうものの活動の状況につきましては、財政法二十八条の参考書類で、資金収支というかっこうでその事業の態様は明らかにされております。これも四十七年度から特にそういう経費を追加いたしまして、道路公団なら道路公団がどういう資金を調達してどういう事業をやっているか、その資金の内訳まで二十八条の上には明らかにされておりまして、そういう点から申しますと、実質的には国会における御審議なり御批判をちょうだいする範囲というものが十分取りつけてある。こういうことでございますので、いまの制度の問題を今度の財投の国会議決の問題とからめて解決するというには、少し問題の角度が違うのじゃないか。  それから後段の問題は、先ほどお答え申し上げましたが、違った性格なり違った源泉の資金というものを一つにまとめて一つの投融資機関にするということは、これはやはり適当でないのじゃないかという感じがいたしております。と申しますのは、現在の資金運用部資金も、御承知のように郵便貯金、年金等を統合管理いたしておりますので、これがもうすでに一つの巨大な金融機関になっております。そこへ集められたものをまた特別会計に繰り入れをする、しかもそこでその他の一般会計出資とまぜて一つの投融資勘定を行なうということは、これはやはり資金の性格が基本的に違うものを一つにまとめるということで無理があるのじゃないかという感じがいたします。  余談になりますが、産投会計もかつては外債を出したこともございますが、やはり特別会計というものは、最終的に税収で返済するような国債とか、あるいは年々の税収というものを引き当てにして特別会計では財政活動をいたすべきものでございますが、運用部とか簡保というものは全然性格の異なった資金が自然に集まるものですから、それを一つのどんぶりに入れるということについては基本的に問題があるのではないかというふうに考えております。
  138. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 いまのお答えに対して、まず一つは、六兆九千二百四十八億、約七兆円近い財政支出——財政支出ということばは正しくないですね、投融資が行なわれるわけでありますけれども、このおのおのが主務大臣の認可になっている。これだけの額のものが主務大臣の認可になっていることが非常におかしいことだと私は思う。大体この財政投融資の問題は、研究すればするほど、行政府のほうは立法府からのがれようのがれようとする——局長が悪いわけではないですけれども、とにかくのがれようのがれようとしている態度がありありと見える。これから申し上げます弾力条項の問題、あるいは繰越金の問題、こういった問題を考えてみても、形は弾力的な運用、有利確実、こういった弾力的な運用ということばを使っておりますけれども、しかし、すでに財政政策にとって非常に大きな部分を占めるこれだけの額のものを、弾力的運用というだけで見過ごすわけにはいかないと私は思う。だから、財政法を変えて——これは私たちはまた対案として出しますけれども、七兆にものぼるこの財政投融資というものの、おのおのは各公団、事業団、特別会計、これが主務大臣の認可で行なわれているというような時代はもうすでに過ぎているというふうに、まず一つ思うわけです。  それからもう一つ、私は、いま申しましたような理由から、まだまだ財投の中で——先ほど冒頭に申しましたように、四つの原資、これだけではなくて、いわゆる財政投融資というのは、国が行なう投資または融資を本来いうわけでありますから、そういった意味では、産業投資特別会計以外の特別会計からの出資、あるいは一般会計からの出資または貸し付け、及び国が行なう利子補給または損失補償契約によって活用される民間資金、あるいは国の保証がなくても借り入れる借り入れについても、いわゆる財政投融資計画の一覧表として収入支出、こういった項目でやはりやるべきではないか、これによって全部財政投融資というものはきわめて一覧的に見れる、こういうことになると思うのです。  それで、いまのおことばでは、財政法第二十八条によって、おのおの各公団、事業団、特別会計、こういったものを議決——議決とは言わないですね、参考に供しているということでありますけれども、財政法二十八条のたてまえで法制局にお伺いをしたいのですが、ここに提出されている財政法第二十八条による昭和四十八年度予算参考書類というのは、これは国会が議決をする権限はありますか。
  139. 茂串俊

    ○茂串政府委員 ただいまの御質問につきましては、あくまでもこれは予算審議の参考書類でございまして、議決の対象になるものではございません。
  140. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 あくまでこれは参考資料であるわけですね。そういった意味では、万が一何か事が起こったときにはわれわれ立場がない——と言うと変な言い方でありますけれども国会の議決を経てないということになるわけであります。そういった意味では、これだけふくれ上がった財投計画からいっても、当然私は、これはまた私たちも対案として具体的に法律として出す予定でありますけれども、公団、事業団あるいは特別会計もみんな歳入歳出予算を提出してこれは議決を受けるべきである。現在のように七兆にものぼる財投のおのおのを、設置法できめられている主務大臣の認可とするだけでは非常に不十分である、まずこれを申し上げておきます。  質問の第二項目は、弾力条項の問題であります。  まず、お伺いをしたいのでありますけれども、いままで昭和二十八年から——時間がもったいないから古くはいいですけれども、いままで財投で追加額が一体どのくらいあったものがあるか、おもなものだけ、それは何%くらいになっているか、これをちょっとあげてください。
  141. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 昭和四十五年度からちょっと申し上げますと、四十五年度の追加の合計額は二千四百四十一億円でございまして、当初計画に対して六・八%でございます。それから四十六年度は七千八百九十億円でありまして、当初に対して一八・四%。四十七年度は、まだ年度途中でございますが、七千六百九十八億円で、一三・七%でございます。
  142. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 各特別会計あるいは公庫、公団、事業団、こういったところでおもに追加の多いところは、数はよけいいりませんけれども、特に多いところはどういうところがありますか。
  143. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 いま申し上げましたのは、これは財投計画全体でございまして、ほんとうは追加額ということになりますと、資金運用部資金と簡保資金ということでございますけれども、あまり余分な数字を申し上げてもあれかと思いますので、財投計画ということで申しますと、大体恒常的に追加がございますのは中小三機関でございまして、国民、中小、商工中金というものはほぼ例外なしに追加をいたしております。それから年度末に技術的な補正ということで、当初計画の計算上の調整ということで、従来開発銀行に追加をいたしておる例もございますが、四十六年度は景気対策ということで、四十七年度は新しく資源配分的機能に注目するということで相当程度追加をいたしておりますので、各機関が相当たくさん出ておりますが、経済が異常な年は別といたしまして、恒常的なノーマルな状態の場合には、大体年末における中小三機関の追加が中心でございます。
  144. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 四十七年はまだおそらく資料がなかなか不十分なところがあるからあれだと思いますが、それでは四十六年度の中小三機関、住宅金融公庫、国民金融公庫、中小企業金融公庫、これはどのくらい追加がなされていますか、どのくらいのパーセンテージになりますか。
  145. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 住宅公庫は三百六十四億円でございまして、当初計画は二千八百二十九億円でございますから、そんな大きな率にならないと思います。国民公庫が九百四十五億円、当初計画が二千七百七十六億円、それから中小公庫が千二十億円、当初は二千七百三十六億円、この二つはいずれも相当な率になっております。それから商工中金が三百七十億、当初計画が百三十億でございますから、これは三倍近くになっておるわけであります。
  146. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 ちょっとそれで私は確認をしておきたいのですが、四十五年度の国立学校特別会計、ちょっと経緯が、私も調べてないので、わからないのですが、当初計画が六億で、追加が二十二億、合計二十八億ですね。それからいま言われた商工中金、これが当初計画が百三十億で、四十六年の九月の二十三日に決定になって二百五十億。四十六年の九月二十三日ということは、ドル・ショックですね。合計三百七十億。そうすると、四十六年度の予算総則はこれはどうなっていたんですか。どういうことですかな、これは。
  147. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 四十六年度は今度の法律なりあるいは予算総則の措置をいたしておりませんから、政府の判断で、自由裁量でできた、こういうことでございますので、これで申しますと、いまの五割という限度では実は不十分であった。商工中金の場合は五割という限度ではカバーし切れない、こういう問題が出てこようかと思います。
  148. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 局長は商工中金のことばかり言いますけれども、今度の弾力条項というのは五〇%になっているわけです。先ほど言われた中小三公庫、住宅金融公庫、私はこれを計算してみたら、当初計画が先ほど言われたように二千八百二十九億、それについて、四十六年度ですが、追加の合計が三百六十四億、一三%です。国民金融公庫、当初計画二千七百七十六億、追加が九百四十五億、三四%、それから中小企業金融公庫、二千七百三十六億、追加が千二十億、三七%、確かに商工中金は、いま申しましたように逆に二八四%になっているわけですけれども、商工中金を除けば、あとの数字は、一番多いといわれた住宅金融公庫、国民金融公庫、中小企業金融公庫にしたって一三%、三四%、三七%という数字ですよね。あとの数字を見て、たとえば環境衛生金融公庫、これは三%、農林漁業金融公庫、これは四十六年度の話ですが、三%、こういう特殊なものはあれとしても、開発銀行二八%、住宅公団八%、雇用促進事業団三%、これは皆さん計算していただければわかると思いますけれども、財投の追加が五%にものぼるというものは、いまも一例としてたとえば四十五、四十六——四十七年は計算がまだ完全でない部分もありましょうから、それを除いたとしても、商工中金のドル・ショックで出た数字、これくらいなものですね、五〇%をこえるというのは。ですから、五〇%というのは、弾力的運用ということばの面でありますけれども、過去の実績から見ると非常に多過ぎると私は思うのです。商工中金のように、特に四十六年のドル・ショックのときのような場合には、ここまでやるんだったらやはり補正予算を組むなり、どうせ商工中金からこれだけのお金を出すだけでは間に合うわけはないのでありますから、そういった意味では、五〇%というのは過去の実績からいってまず過大であると思いますが、いかがでございますか。
  149. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 五〇%になぜしたかという問題はあとでお答えいたしたいと思います。  先ほどちょっと財投計画で御議論がございましたので、それでお答えをいたしましたが、今度の法律では、資金運用部資金、簡保資金は五割の弾力でございます。そういうことで精密に計算をいたしますと、昭和四十六年度の地方団体の増加は、当初に対して五三%になっております。財投計画で見ますと三九%でございますが、資金運用部資金で計算をいたしますと五三・四%でございます。そのほか過去にさかのぼって見てまいりますと、当初計画の非常に小さな機関というのはやはり五割で済まない場合がございますので、本来ならば個々の機関ごとに割合を設定するというのが望ましいと思いますが、しかし、実際に個々の機関ごとに割合を計算して率をきめるということもたいへんむずかしいということから、五割ということにいたしたのでございます。これは本会議でも大蔵大臣からお答えをいたしましたように、従来から政府関係機関、公庫の借入金の限度額というものにつきまして、五割の弾力条項というものを、たしか昭和三十三年度からだと思いますが、すでにちょうだいいたしております。それから、四十六年度から、政府保証の機関別の限度額につきましても、五割の弾力条項というものを国会で議決をちょうだいして、すでに制度として行なわれておりますので、それと平仄を合わせる、それとバランスをとるという見地から五割ということにいたしたのでございます。個々の機関ごとに見ますと、おっしゃいますように、過大なものもございますし、それから過小なものもございますので、御質問の中にございましたように、ほんとうに非常に大きな追加を必要とするような場合には、あるいはそれと並行して一般予算の補正の措置が行なわれるということも考えられますので、一応財政投融資の運用の限度としては、従来の慣行というものを尊重しまして、個々の機関ごとに五割ということにいたしたのでございまして、全体として五割を一挙にふやす、五十の対象機関を全部一挙に五割をふやすということは、資金的に見ても不可能なことでございます。そういうことを念頭に置いて五割としておるのではございませんので、いま申しましたような他の制度とのバランス、それから個々の機関ごとの割合の設定がむずかしい、こういう事情から五割ということにいたしたのでございまして、できるだけ国会の統制を逃げるとか、そういうよこしまな気持ちは一切ございませんので、御了承いただきたいと思います。
  150. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 もちろん財投的には無理にしても、過去の経緯もありますけれども、五〇%という数字は——いま約七兆の財投、このうち四十七年度では九〇・一%、四十八年度では九一・九%がいま言われた資金運用部資金と簡保資金であるわけですね。ですから、正確にはこれを合計すればいいのでありますけれども、四十八年度の財投がざっと七兆。そこから産投と政保債を引かなければいけませんからちょっと欠けますけれども、ざっといって七兆。それに五〇%を加えると十兆五千億。もちろん数字としてはこれよりもう少し少なくなります。いま申しましたそれの九掛けぐらいになるわけです。十兆五千億の九掛けという数字に——もちろんこれだけ今度原資がはたしてあるかというと、原資がまた足りなくなってくるということになりますから、なりませんけれども、法律上これだけのフリーハンドを行政面に与えていくということは、私は問題だと思うのです。過去の五〇%はもう一回洗い直してみなければいけないと思いますけれども、それにしても、この五〇%というのは非常に過大ではないかと思うわけであります。これは答弁を聞かなくても大体わかりますから、次の問題に移ります。  今度は繰越金の問題であります。全部の機関を聞いていたらとても時間がむだでありますから、過去繰越金が多かったところは一体どんなところがどのくらい繰り越しをしているのですか。
  151. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 財政投融資計画の規模が大きくなってまいりますのに伴いまして、やはり財投機関の繰り越し額というのはふえてまいっておりまして、資金運用部資金について申しますと、大体相場として二、三千億の繰り越しであったのでございますが、四十六年度から四十七年度の繰り越しは大体七千億ぐらいになっております。これはやはり経済情勢なり金融情勢とも密接に関係がございまして、たとえば地方団体のごときは、四十六年度は非常に金利が下がって、安い金利で楽に資金調達ができるということで、運用部から借り入れるということで保証を与えておりますが、実際には運用部から借りないで市中から借りるというようなケースが相当ございます。これは地方団体だけでなくて、一般的に金融が緩和いたしますと、やはり個々の機関、ことに融資機関につきましては繰り越しがふえるという傾向がございますので、そういう機関ごとの繰り越しの額はちょっといま手元にございませんが、傾向として申しますと、やはり金融的な影響を受けやすい機関、たとえば輸出入銀行なんか繰り越しが非常に多い機関です。それから実際に建設が進まない、たとえば住宅公団のごときもやはり繰り越しの多い機関に属するというふうに考えております。
  152. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 個々の繰り越しがなぜ多いかということをつついて聞いていても本論にならないので、それは除きますけれども、たとえば四十四年度日本開発銀行、改定計画二千二百八十六億、これに対して繰り越し額が百七十億となっているわけであります。そうしますと、四十五年度の財投計画を立てるとき、この百七十億というのはどういう取り扱いをされますか。
  153. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 まあ繰り越し額でございますから、これはやはり経験的にずれずれになりますから、前年度からの繰り越し、それから後年度への繰り越しと、こういうことでございますので、査定の際には、前年度からの繰り越しの額というものは当然確定いたしておりますから、それに当年度の運用見込み額を加えて、現実に当該年度の末でどのくらい繰り越しになるかということを計算いたしまして、それと明年度の事業量というものをいわば突合いたしまして新年度の計画をつくります。その場合にも、やはり新年度でさらに明年度へ繰り越しになるものがどのくらいあるかということも念頭に置いて作業をいたしております。
  154. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 そうすると、いま私が例にあげた日本開発銀行の場合に、四十五年度改定計画が二千六百三十二億になっているわけでありますけれども、おそらく改定しない前はこれより少ないわけですね。たとえば話を簡単にするために二千五百億にしましょう。そうすると、いま局長から話があったように、日本開発銀行は四十五年度にはこれだけの運営予定ですということがいろいろな経済情勢その他からきまってくると思うのであります。それがたとえば二千五百億に落ちついたとします。そうすると前年度、四十四年度の繰り越しの百七十億というのは、二千五百億から百七十億円を引いた二千三百三十億というのが財投計画となるのか、あるいは二千五百億はそのままにして、百七十億はそのまま上積みになるのか、それはどういうふうに具体的にやっていますか。
  155. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 その点は、先ほども御説明しましたようにずれずれになりますから、その分の繰り越しが同額であるとすればそれは外ワクに考えてよろしいわけでありまして、前年度からずれてきたものがそのまま明年度にずれるということであれば、資金計画としては、当年度の必要な資金量を計算してそれを財投額とすれば計算としては合うわけでありますから、したがって作業の際には繰り越しの見込みについてまあ念査をいたしますが、やはり実際に予算を作成いたしますのが十二月から一月でございますし、その基礎データというのがやはりどうしても十月、十一月ごろでございますから、半年間の情勢の推移というものを完全に読み込むということがなかなかむずかしいという事情もございますので、原則としてずれずれで全く同じになればよろしいのですが、やはりそこに多少の相違が出てまいります。金融情勢等で影響を受ける場合は非常に繰り越しがふえるという場合もございますし、あるいは資金が足りなくなって手持ち現金が非常に少ないということが結果的にわかることもございます。それはいろいろでございます。
  156. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 どうもまだよくわからないのです。そのずれずれという意味がよくわからないのです。つまりいま申しましたように、四十五年度の日本開発銀行の運営見込みがいろいろな経済情勢に合わせて二千五百億だとすると、その際に四西年度から確かに——予算の編成期というのはやはり十一月の半ばから十二月にかけてずっとやるわけでありますから、確かに最終的に繰り越す額というものはわからぬですけれども、たとえば日本開発銀行でしたら大きなプロジェクトをやるわけでありますから、大体出ていくもの、出ていかないもの、わかるわけですね。そのこまかいことは捨象して、とにかく四十四年度に百七十億の繰り越し額がある。そのときに、四十五年度の事業計画あるいは運営見込みをつくるときに、大体ことしは開発銀行としては二千五百億の運営見込みをつくりたい、つくるんだ、それだけの事業を開発銀行としてはやりたいという場合に、四十四年度のが百七十億余っているわけですね。置いてあるわけですね。その百七十億というのはそのまま——いまのこのやり方でいくと明許しないということでありますから、そうしますと、いままでは百七十億というのは別個に考えて、四十五年度の財投としては二千五百億ということを考えるのか、あるいは百七十億を合わせて二千五百億になるようにするのか。もし前者ならば二千五百億プラス百七十億の二千六百七十億というものが財投計画の当初計画となるわけでありますね。具体的にはどちらをやっているのですか。
  157. 福島量一

    ○福島説明員 ただいまの御質問でございますが、多少技術的にわたりますので私からお答え申し上げますが、財政投融資、たとえば四十八年度の開発銀行の財投額をどうきめるかということから実は問題を御説明しませんと御理解願えないと思うので申し上げますが、たとえば四十八年度に開発銀行が、たとえば海運とかエネルギーとかあるいは土地開発とかさまざまな事項があるわけでございますが、それらについてかくかくしかじかの貸し出しをしたいという要求があるわけでございます。それにつきまして私どものほうで、開発銀行の事業の実施状況なりさまざまの要因を考えまして、全体として開発銀行の来年度の貸付規模はこの程度であるとまず査定を行ないまして、その中で開発銀行のいわゆる自己資金、たとえばすでに開発銀行が貸しておりまして開発銀行自体に回収になるが、別に運用部には返す必要はない、たとえば開発銀行は三年で貸しておいて運用部の貸し付けは期限は五年であるものとか、あるいは期限前の繰り上げ償還になったものとかさまざまなものがございます。そういったものを想定いたしまして、その差額を来年度の財投額になにする。具体的に資金運用部、簡保資金の貸し付け額、こういうように決定して、それを財投計画に計上するということでございます。  ただいまのお尋ねの百七十億につきましては、先ほど局長が申し上げましたように、秋から暮れにかけての査定作業でございますから、具体的にどの程度の金が繰り越しになるかということが想定困難でございます。私どもといたしましては、明らかに事情が読み取れる場合は別でございますが、通常の場合は繰り越し額がないものとして査定を行なっております。  したがいまして、先ほどの設例でお答え申し上げますれば、その四十五年度の開発銀行の査定された二千五百億にプラス百七十億ということで財投額はきまる、事実上のいわば予算原額に見合う財投計画がきまるということになろうかと思います。ただ繰り越しの中にもさまざまな種類がございまして、全く手つかずの繰り越しということもございますから、たとえば貸し付け契約はした、しかし実行の時期が翌年度へずれる、したがって翌年度へずれるために当方に借りに来ない、資金運用部に来ないという形の繰り越しもあるわけです。資金運用部の繰り越しと申しますのは、要するに財投機関に対して貸し出しを実行しないということでございますから、そういう意味で百七十億という金額が出てまいりますが、今度は開発銀行と貸し付け先との関係というものを見ますと、いわば契約済み繰り越しと申しますか、約束はしたけれども金を出さない。金を出さないから、したがって運用部に借りに来る必要がないという形での繰り越しもあるわけでございますから、当然に不用になるようなものは、いわば翌年度へオンしてそのまま使われるというものだけが繰り越しになるわけではございません。念のために申し上げておきます。
  158. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 最後にくぎを差したわけですけれども、とりあえずの原則からいえば、繰り越しの中にも次年度に明らかに予定をされているものもあるということですね。——そうしますと、会計年度は一年ごとになっているわけでありますから、今度出された法案の第四条で繰り越し明許をする場合としない場合と実態的に違うのか。私は、やはり一年ごとに会計年度がある限りは、そこで使わなかったものは使わなかったもの、そして四十四年度に実際には使わなかったんだけれども、事業をやっているというものが事実あると思うのです。そういうものはまた四十五年度に復活をさせればいいわけでありますから、やはり一年ごとに運営の期間を区切って報告をして、そして引き続きのものについては引き続きのものでそのまま認め、あるいは新たなものをそこに加える。そうするのがやはり会計年度の考え方としては正しいんじゃないか。おそらく百七十億のうちに全然手つかずのものもあったと思うのです。手つかずのものは、たとえばいまの例をとれば、四十五年度には日本開発銀行は二千五百億の運営予定ができるということならば、全部百七十億が手つかずならば、その百七十億はそのまま全部返還をしてもいいわけです。それならば今年私ははっきりと繰り越し明許をして、そして四十四年度の決算はこうでございました、四十五年度は新たに日本開発銀行としては二千五百億の財投資金が要りますということになると思うのです。ただし、百七十億のうちに手はついているけれども、四十五年度に支払わなければいかぬというようなものがある場合に、四十五年度にまたもう一回これを計上すればいいことではないかと私は思う。何ゆえに四十四年度なら四十四年度で片をつけて、決算をつけて、そして事業を引き続くものは四十五年度にまた財投のワクの中に入れるということにしないのか、その辺がわからないわけです。
  159. 福島量一

    ○福島説明員 先ほど申し上げましたように、各年度の計画編成の時点では、当該年度は決定しておりませんから、したがいまして、どの程度の金額が不用になるかは推定不可能でございます。具体的には三月三十一日の時点で各対象機関ごとに、先ほど申し上げましたような契約はしておるけれども執行に至らない、したがって運用部に借りに来ないという金額とか、それからいわば全く執行しないもの、こういうものがはっきりしてくるわけでございます。したがいまして、先生御指摘のように当該各計画策定日にあらかじめその分を見込めない以上、当該年度のかりに繰り越しになるべきものは繰り越しになるべきものとして、翌年度においてこれを執行することにしませんと、その分だけまた翌年度計画を改定して追加しなければならぬということになるわけです。その手間が一体どうかということが一つございます。  それからもう一つ、念のために申し加えておきますが、これはあくまで繰り越すことはできるわけでございまして、私どもは、たとえば先ほど申し上げましたように、全然手つかずで来年度まで資金の使途がはっきりしないというものについては、別途不用ということもやります。不用ということもやりますから、全く手つかずにずるずるべったりに翌年度に繰り越すということはしません。ただこの規定は、そういうことがあった場合には繰り越しできるといういわば明許の規定を法律上はっきりしておくということでございまして、当年度、未使用のものをことごとく翌年度に繰り越ししようということではございませんので、当然当該年度末までに不用なり何なりの処理をすると思いますが、翌年度早々資金の必要なものは繰り越して使用させることにするという趣旨でございます。
  160. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 そうしますと、先ほど私、四条と言いましたけれども、間違いでして三条ですが、長期運用予定額の繰り越しというものの理由は、あくまで実際に予定を立てるのは十一月から十二月にかけてである。しかし会計年度としてはまだ一月、二月、三月と三カ月あるわけでありますから、その意味ではその三カ月間の実績というのがまだ未定のところがあるので、したがってその三カ月未定の部分は次期に繰り越すことができる、翌年度の運用することができるという理由ですか。
  161. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 第三条の運用の問題でございますが、私からお答えを申し上げたいと思います。  第三条の繰り越し規定を設けました趣旨は、先生の御質問の中にもございましたように、これは財政法の繰り越し明許と同じような性格のものじゃないか、したがって、毎会計年度ごとにどういうものが繰り越し明許の対象になるかということを明らかにすべきではないかという御意見から出ておるのではないかと思います。財政法の考え方は、財政法をごらんいただきますればおわかりのように、その性質上その年度内に支出を終わらないものについては繰り越し明許とすることができる、こういうことでございます。つまりその性格というのは、一般予算の中には本来繰り越しの対象にするのが適当でないもの、本来年度内に使い切りで処理すべきたとえば人件費というようなものがございますけれども、そういうものと、性質上どうしても繰り越しが必要なものとを分ける。本来会計年度区分ということを尊重すべき一般予算でございますから、当年度で使い切ってしまうべき性格のものでございますが、中にはその経費の性格上繰り越しが必要なものもあって、いわば繰り越し明許費という事項を特に財政法で設けて国会に提出しておりますが、それはあくまでも例外だ、こういう頭でできておると思います。  したがいまして、国の活動として公共事業費のようにずっと継続して活動することが必要な経費につきましては、原則として繰り越し明許費ということで事項別に国会に提出をいたしておりますが、それと同じように、財政投融資の対象機関は事業機関にしましても融資機関にしましても、その性質上年々歳々事業を継続するものでございますから、したがって年度内に使い切るとか年度内に処分し切るというような性格の事業ではございませんので、もし繰り越し明許の考え方を入れるとしますと、全部繰り越し明許の性格を持つもの、こういうことになるのでございます。したがいまして、毎会計年度金額を特に一定額明定することも非常に困難でございまして、予算の場合には繰り越し明許費ということで項の中へ事項を指定いたしておりますから、そういう性格のものは何かということははっきりわかります。またそれは性質上やはり繰り越しを必要とするものだという財政法十四条の規定から出ておりますけれども、財投機関の場合には、事業機関、融資機関でありますから、もし明許ということになりますと全部が明許になる、こういう性格のものでございます。そこで来年度の予算措置よりは、法律上の措置として、ただし法律にも明らかにしておりますように、来々年度に、三年度にわたって繰り越しを行なうことは穏当でございませんから、やはり両年度に限って繰り越して運用することができる。こういういわば事業なり融資の財投機関の性格に着目した措置でございます。繰り越しを乱用することによって政府がフリーハンドを持つとかいうような考え方に出ているものではございませんので、事業の性格なり機関の性格から見てどうしてもこういう措置が必要であるという趣旨でございます。
  162. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 私は、その逆の考え方というか、逆の面もあると思うのです。つまり今度の法案でも、これはまたどなたか論議されると思いますけれども、五年以上の融資に限ってこの国会の議決の対象になるわけですね。五年未満のものというのはどのくらいのパーセンテージあるか、ちょっとあげてみてくれませんか。
  163. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 四十六年度末、昨年三月末で申し上げますと、総額が十八兆一千二百七十四億円でございまして、そのうち五年以上が十五兆二千五百十六億円、八四・一%、五年未満一年超が千二百四十億、〇・七%、一年以内が二兆七千五百十八億、一五・二%でございます。
  164. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 このように財投でやる支出というのはきわめて期間が長いわけですね。したがってそのフィスカルポリシーにおける影響というのはたいへんあとまで響くものだと思うのです。したがって一年たてばいろいろ経済情勢が変わるわけでありますから、その意味から、繰り越した分についてはそこで政策的な見直しとまでいかないまでも、これをそのまま公団なり事業団なりに置いておくことかいいことなのか悪いことなのか、この辺もやはり検討する必要があるのじゃないか。額が大きなところもありますけれども、たいしたことないから、いま局長からお話がございましたような観点で、財政法のたてまえと若干ニュアンスが違うんだということのようでありますが、私は逆に、非常に長い投資であるがゆえに、各年見直しをしないと非常にあとあとまでその影響が出てくるのではないか、こう思うわけであります。その意味で、私は繰り越し分についてもとにかく決算すべきものは単年度で決算をするのがほんとうではないだろうかというふうに考えているわけであります。  時間もだいぶたったから最後の問題でありますけれども、財投に関連をして住宅政策の分をちょっとお伺いをしたいのであります。今度から保険の還元融資が出るようになり、また住宅金融公庫から融資が出るようになったわけでありますけれども、うちを建てる場合あるいはマンションを買う場合は本年度はどういうように条件が変わったのでしょうか。
  165. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 住宅関係は建設省もお見えになっておりますので、こまかい点は建設省からお聞き取りいただきたいと思いますが、財投計画をできるだけ国民要請にこたえるということで、福祉関係重点を顕著に移行したいということから、特に住宅政策には力を入れて措置をいたしたのでございますが、住宅に対する資金の充当は、対前年度で申しますと三一・六%の伸びとなっております。財投計画全体が二八・三%でございますから、その率をはるかに上回る資金を充当いたしております。  内容的に申しますと、住宅公庫の戸数は三十万八千戸、四十七年が二十八万戸でございますから、二万八千戸ふやしております。貸し付け限度は、標準的な木造が百五十万から二百五十万、耐火が百七十万から三百万、マンションが二百万から三百万というふうに、大幅にふやしております。  御質問にございました年金福祉事業団を通ずる被保険者住宅資金貸し付け制度、これも、ことしから初めて行なうことにいたしまして、被保険者期間において最高は二百五十万まで借り入れが可能だ、こういうことになっております。  そのほか、宅地造成事業も、伸びで申しますと、住宅公庫で四三・七%、住宅公団で六〇%の伸びになっております。  それから、質的な面で申しますと、二戸当たり面積の拡大、単価の増、それから顕著な事例としましては、貸し付け金利を、住宅公庫の個人貸し付けの場合は五・五%から五・二%への引き下げ、それから公団家賃計算上の資金コストとしまして五・〇%から四・七%への引き下げ、そのほか住宅公団に長期特別分譲住宅制度というものを設けまして、家賃並みの支出で3DK以上の住宅が比較的長い期間で個人の所有になる、こういうような政策をとっておりまして、住宅に関する資金の配分の面におきましても、内容の面におきましても、画期的な改善をいたしたというように考えております。
  166. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 確かに、いま言われた数字の面では、若干住宅政策については前進があったと私は思うのです。しかし、はたして、いま言われたように——確かに普通のうちの場合には最高二百五十万まで借りられるようになった。あるいはマンション、耐火構造の場合には三百万まで借りられるようになった。あるいは年金福祉事業団が、最高が二十年以上掛けた人で二百五十万まで借りられるようになった。年金福祉事業団と住宅金融公庫あわせて最高借りられる人が五百五十万ということですね、最高借りられる、最もいい条件で借りられる人が五百五十万借りられるようになった。その意味では確かに私は前進だと思うわけであります。しかし——建設省いらっしゃいますね。——いまうちをつくろうと思うと、大体どのぐらいの額が一体かかるものですか。特に選挙前から材木が上がったから、建設省が持っていらっしゃるデータよりもおそらく二、三割は、木造の場合には私は上げて考えなくてはいかぬと思うのですが、とりあえず一番新しい資料で、一体いま普通の人が、もちろん上のせの土地代金は別個にして、住宅にしてどのくらいのものを皆さん方が建てられるのだろうか、ということはどうですか。
  167. 京須実

    京須説明員 お答え申し上げます。  最新の資料を残念ながらとれませんので、四十六年で申し上げますると、住宅供給企業の実態調査がございますのですが、これでは、南関東——あえて全国で一番高いところで申しますと、南関東で、一戸建てが七百四十四万、高層で八百六十四万でございます。これはいずれも規模等は六十五平米前後の相当大きなものでございますが、それがそういう数字になっております。
  168. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 四十六年度の資料ですから、ことしは四十八年ですからずいぶん古い、昔の話の資料ですが、その数字でも面積が大きいから幾らかあれするにしても、とにかく選挙前からの木材の値上がり、セメントの値上がり、買い占め、こういうものを入れますと、いま私が申し上げましたように、最高で五百五十万借りられる。しかしこれも現在では返済がかなりきついと思うのですね。最高借りられる人が五百五十万。しかし実際に七百四十四万あるいは八百六十四万、これは面積がどのくらいでしたか。
  169. 京須実

    京須説明員 六十六平米でございます。
  170. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 二十坪でこのくらいですから、こうなると五百五十万のほかにもちろん自己資金を持って、その上に和みたいに土地のないものだったら土地を買って住宅を建てなければいかぬわけですね。そうなると確かに数字の面では五百五十万まで最高借りられるようになったけれども、まだまだ現実はとてもうちが建つにはほど遠い。なかなか自分のうちが建てられるという水準にはなっていないと思うのですね。これはいま建設省の四十六年の数字を見てもそれですから、いま建てようと思ったらとてもそんな数字じゃ私は建てられないと思うのです。片や住宅公団のほうは一体どうだろうかということがまた問題になってくるわけでありますけれども、住宅公団はたしか去年が八万八千戸で、今度は八千戸減らしたのじゃなかったですか。
  171. 福地稔

    ○福地説明員 お答えいたします。  四十八年度につきましては計画戸数は八万戸にしております。四十七年度は八万八千戸でございますから、八千戸の減でございます。
  172. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 非常に住宅事情がいま悪いわけでありますけれども、減らすというのはどういうことですか。
  173. 福地稔

    ○福地説明員 住宅公団は御承知のように、首都圏あるいは近畿圏、名古屋あるいは福岡というような大都市において中堅勤労者に対して住宅を供給いたしております。最近特に首都圏近郊県におきまして団地を拒否する動きが出てきております。たとえばすでに用地を取得しておりましても、その地方団体に協議いたしますと、その協議が難航するあるいは新たに用地を取得する際につきましてもなかなかうまくいかないというような現象が起きております。それは一つには、団地建設に伴ないまして学校あるいは道路その他の関連公共施設が必要になりまして、その財政負担に地方公共団体が非常にたえられないということが一つ、それから基本的には首都圏近郊の各県におきましては、いわゆる人口抑制というような立場から団地を拒否する動きがございます。したがいまして、昭和四十七年度事業につきましては、現在大幅に事業の進捗がおくれている状況でございます。昭和四十七年度末の見込みで四十七年度事業は五〇%になるのじゃないかというように考えております。したがいまして、来年度はそこら辺を踏まえまして八千戸減の八万戸ということで計画いたしたわけでございます。
  174. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 これは政務次官にお伺いをしておきますけれども、いま私が質問しましたように、政府のほうでは持ち家政策を遂行しているようでありますけれども、私が先ほど数字をあげましたように、二十年年金を納めた人で、それから住宅公団から最高借りたとしても五百五十万、実際に土地を買ってうちを建てるとなると、おそらくいまの数字では一千万から一千三百万、二十坪ぐらいでそのくらいになると思うのです。なかなか持ち家政策もできない。さりとて、じゃ国か住宅公団ですぐ住宅を見てくれるかという、いま建設省からお話があったように、私のところにも大きな、一万二、三千人の住宅公団の団地がありますけれども、学校施設、下水道、そのほか足の便の問題、こういったような問題でなかなか問題があるわけです。こうなってくると、持ち家もできない、住宅公団にもつくってもらえない、こういうことになると全く住宅政策というのは、確かに財政投融資で金はついたけれども、実際の運用面で、私は非常に興味を持って来年見てみたいと思うのですけれども、どのくらいはたしてこれを借りられる人がいるだろうか、どれだけ一体住宅が現実に国民に与えられるのだろうかということになると、きわめて私は将来、先行きが暗いものだと思うのです。この辺のところは政務次官、いかがですか。
  175. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 確かにいまお話しのように、住宅問題はたいへん重要な、政府が最も重点を置かなければならぬ施策の一つであり、ことに今後の福祉国家をつくっていく上においてはこの問題は非常に大切な問題であります。いまお話しの持ち家政策ということでございますが、確かに持ち家政策ということもありますけれども、そればかりでも私はいけないのじゃないだろうか。やはり所得に応じて、低所得者層のためには必ずしも持ち家政策ばかりでは解決できない問題がある。そこで住宅公団をはじめとして、一番むずかしい問題は関連公共施設ができないということでありますから、関連公共施設をもっと公共の手で、ひとつ手を貸して、できるだけそういうものを充足をしていくという方向で、貸し家政策も並行してやっていく。同時に、まあ勤労者の財産形成という大きな問題もありますから、そういう面からも特に住宅を、ある程度資金を、頭金を持っていただいて、その上でひとつ国のほうあるいは公共的な手も貸して持ち家をつくっていく、そういう方向で今後さらに一段と国のほうも力を入れていかなければならないことである、かように考えるわけであります。
  176. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 実は、私も住宅問題に非常に興味を持って、私が議員になったときからずっとやっているわけですが、建設省の中には、これは当時根本建設大臣であったわけでありますけれども、個人の住宅の場合にはきわめて、一戸当たり三人とか四人とか限られた人数しか入れないものだから、公共性という面については非常に薄い。資金の配分のやり方として、下水道とか道路に比べれば非常に薄い。そういう何か建設省の中においても住宅局というのはあまり日の当たらないところに置かれているような、そういう面がある。もうすでに四年前からやっているわけでありますけれども、しかし、とにかく憲法にきめられている衣食住のうちの住なくしては、私は文化的生活以前の問題だと思うわけであります。そういった意味で、これは単に住宅政策だけの問題ではない、都市政策、総合的な政策の問題でありますけれども、どうも今度の財投にしても、はたしてこれが全部使えるのだろうかということをつくづく思うわけであります。今年度の住宅公団の資金運用部資金と簡保資金の借り入れ金、幾らですか。
  177. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 昭和四十八年度の日本住宅公団に対する資金運用部資金は三千六百七十五億円、簡保資金が二百億円、それから政府保証債が百五十億円、合計四千二十五億円でございます。
  178. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 それで、四十六年度の日本住宅公団の繰り越し額が、改定計画は二千二百十四億円ですけれども、繰り越し額が五百五十億円もあるわけですがね。それで四十七年度の繰り越し額というのはまだわからぬわけですね。
  179. 福島量一

    ○福島説明員 まだ確定しておりませんが、かなり不用額が出てくるんではないかと思います。繰り越しでなくて、四十七年度分の予定しました資金のうちから不用額が出てくるんではなかろうかと思います。
  180. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 そうすると今度の八万戸も、私は、この数字の関連から見てみるとどうもあぶないんではないかということを心配をするわけであります。  それともう一つ建設省にお伺いをしたいのですけれども、先ほど申し上げましたように、私のところに一つは大きな一万二千人くらい住んでいる住宅公団の団地、それから一つは七千人ばかりの住宅公団の団地があるわけであります。そこでその住宅家賃の値上げの問題が絶えず関心事なわけでありますけれども、今度は住宅公団の家賃の値上げということは、いろいろな計画から起こり得るのでしょうか、起こらないんでしょうか。少なくとも本年度は上げない計画になっているでしょうか。
  181. 福地稔

    ○福地説明員 いま住宅家賃のお話が出ましたが、その前に八万戸建設についての御心配がございましたけれども、来年度におきましては、先ほど御説明いたしました関連公共施設の建てかえ資金、これはかなり増額しております。それから上限につきましても、改善いたしております。それから特に問題になっております小中学校の補助率、これも改定いたしております。そういうことで、これはぜひともやりたい、こういうように考えております。  次に、御質問の家賃値上げの問題でございますが、私どもは絶えず公団の経営内容につきましていろいろ検討いたしております。で、中身につきまして検討いたしますと、すでに公団創立当初の家賃と現在の家賃は相当に格差を生じております。それからもう一つは、家賃を据え置きにしておりますので、いろいろな修繕費あるいは維持管理費について赤字が出ております。したがいまして、事務的にはそこら辺のズレを何らかの措置で改善しなければいけない、こういうようにわれわれは考えておりますが、家賃の値上げにつきましては、政策その他の関連がございますので、本年度は家賃の値上げは考えておりません。
  182. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 私が先ほど政務次官にお伺いしましたように、財産形成といっても、なかなかいまの物価高の中ではどうにもならぬような問題もあるし、そういった意味で住宅が足りない人から見れば非常に少数の人にしか提供できないけれども、またここで住宅公団が値上げをするということになりますと、他の物価にもいろいろこれは響いてくる。しかもそのあたりの民間住宅の家賃にも響いてくるといういろいろな問題がありますので、その安い家賃を維持するためにどうしたらいいかというような問題はまた別の機会に討論さしていただくことにいたしまして、私の質問は終わります。
  183. 大村襄治

    ○大村委員長代理 高沢寅男君。
  184. 高沢寅男

    ○高沢委員 ただいま佐藤委員から、財政投融資の国会議決に関することで、総論部分から質問が始まって、だんだん各論のほうへいっているわけですが、私はまた各論のほうから少しお聞きをしていって、だんだん総論のほうへお尋ねをしたい、こう考えます。   〔大村委員長代理退席、委員長着席〕  最初に、資金運用部特別会計、これについてお尋ねをしたいわけであります。  この特別会計の予算書で、資金運用部の特別会計を見ると、歳入のほうは資金運用収入、それから一般会計より受入、それから歳出のほうは事務費及び預託金利子、予備費、こういうふうになっておりまして、その主体は、歳入のほうも歳出のほうもともに利子の出し入れ、こういうふうな性格になっているわけでありますけれども、それで総額としては歳入歳出とも資金運用部特別会計は一兆六千二百二十四億円、こういうふうな規模で特別会計予算には出ておるわけですね。ところが、財政投融資の原資としての資金運用部の資金の総額は五兆六千二百三十九億あるわけですね。この五兆六千二百三十九億が、特別会計予算の予算総則の中で、今度新たに国会の議決を求めるもの、長期資金の各期間別の運用という形で出されておる、こういう関係になっております。  そこで、私がお尋ねしたいことは、資金運用部の特別会計になぜ利子の出し入れだけを計上されて、その本体であるといいますか、運用される資金のほうのこの面をなぜ特別会計のほうへ出してないのか、ここのところをひとつお尋ねしたいと思います。
  185. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 これは佐藤委員の御質問にもお答えいたしました事項と関連を持っておりますが、資金運用部資金は御承知のように、財政法第四十四条に定める資金でございまして、昔のことばで申しますと、歳入歳出外現金ということでございます。これは資金のかたまりでございますから、本来資金の受け入れ、まあ郵便貯金等の受け入れが主体をなします資金の受け入れ、これは受け入れたものを使い切ってしまうものではございませんので、これを運用して、いわば元本は、残ってまいりますので、そういう意味一つの資金のかたまりでございますから、本来、年々歳々会計年度区分によって予算統制を受ける歳入歳出とは基本的に性格が違う。本来、会計年度区分とか、あるいは一本一本の予算統制とかにはなじまない性格のものであるということで、財政法の資金として、ほかにも国債整理基金とかあるいは外国為替資金とか、いわゆる資金というものが認められております。そういう性格を持つ資金として、資金運用部資金は大蔵大臣が管理運用の責任を持っておるのでございまして、したがいまして、そういう資金というものは本来予算外のものである。それによって実際利息収入が入り、それから利息の支払いを行なうという損益予算、これにつきましては会計年度ごとの予算統制になじむ、こういうことで、特別会計の法律によりまして、特別会計の歳入歳出予算は利息金の支払いと受け入れを中心とするということが規定をされております。これは法律で規定されておるからそうだという意味ではございませんで、資金の性格から見てそういう取り扱いがなされておるのでございます。
  186. 高沢寅男

    ○高沢委員 そういたしますと、私、この間の本会議で、運用部資金の原資の中で、「その他」の資金という部分があるということでお聞きをしたわけですね。そのときの大蔵大臣の本会議での御答弁では、「その他」の資金というのは主として回収金、こういうふうなものが「その他」の資金になっておる、若干他の特別会計の関係があるけれども、その大部分は回収金という性格である、こういうふうな御説明があったわけです。そうなってまいりますと、今度は産業投資特別会計、これを見ると、これは主として歳入面では一般会計からの繰り入れが大きな部分をなしておりますが、そのほかに産投会計の場合には、運用金回収、それから運用利殖金収入、こういうようなものが産投会計の歳入の中には計上されておる。そうすると、いま言われた資金運用部の「その他」の資金の中身になるそういう回収金とかいうふうなものは、産投会計の例から見れば、資金運用部特別会計の歳入の中に計上されるのが当然じゃないか、こういうふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  187. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 産投会計は御承知のように多分に沿革的なものでございまして、旧見返り資金特別会計が主体をなしておりますが、そのほかに前には一般会計の繰り入れ金によって産投支出をやっていた時代もございますし、これは特別会計としての一つの論理で動いておりますが、特別会計の中に出資金のほかに貸付金もございます。その貸付金の回収金は当然産投会計の歳入になるのでございますが、そこで資金運用部資金との違いはどういう点にあるのか、こういうお尋ねであろうかと思います。これは財投計画を編成いたします場合に、資金運用部資金の原資がどれくらいあるかという見積もりをいたします場合に、第一に考えますのは来年度における増加分でございます。つまりフローで見まして来年度郵便貯金その他がどのくらいふえるか、これは当然新規の運用に充て得る資産になるわけでございます。このほかに総額で二十兆くらいの残高を持つ資金のかたまりでございますから、過去に貸したものの回収金というものもございます。したがって、明年度において新規運用可能資金と申しますか、処分可能資金と申しますか、そういうものとしては、来年度の増加分とそれから既往融資の回収分、これは来年度の原資に充て得るのでございまして、そういう角度から資金運用部資金全体としてどのくらい来年度に新規に運用可能であるかという算定をいたします場合に、おもな内容が郵便貯金、厚生年金、国民年金でございますが、そのほかに本会議で大蔵大臣からお答えしましたように、既往の回収金、そのほかに幾つかの特別会計からの預託金というものが予定し得る、こういうことでございまして、産投会計と資金運用部資金とは本来別のものとして従来から運用され、また別の法理によって規制されておる、こういう性格のものであろうと思います。つまり運用部資金につきましては、一般会計からの税収とかいうものを引き当てとしての歳入というものではございませんので、これは純然たる郵便貯金というものが中心になって運用されておる基本的な性格の違いだけでございます。
  188. 高沢寅男

    ○高沢委員 それは産投会計と運用部の特別会計は違うことは名前を見たって確かに違うわけです。一方は産業投資のための特別会計だし、一方はまさに資金の運用のための特別会計だから、それは違うことは私も知ってはおりますが、しかしその歳入の中に、産投会計ではそういう回収金という性格のものが計上されている。そして運用部資金では回収金という性格のものが計上されていない。その違いがどこにあるかということを私は聞いておるわけです。
  189. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 これも先ほどお答えしましたことの繰り返しになりますが、特別会計は歳入歳出全部を予算統制というかっこうで歳入歳出予算として国会に提出いたしております。資金運用部資金は自然に集まる資金が基盤でございますから、したがってそういうふうにして集まってきた資金のかたまりというものをどうやって管理するかということが一番大事な事項になるわけでございまして、その管理ということにつきましては、一本一本の預金の受け入れとかあるいは預金の払い出しとか、あるいは貸し出しの実行とか回収とか、こういうものにつきましては行政府の主務大臣に一任をされておるという性格のものでございまして、これは先ほど申しましたように、財政法でやはりそういう資金というものは一本一本の予算統制には適当でない、こういう立場から資金運用部資金のほかに幾つかの資金が設けられておるわけでございまして、これも繰り返しになりますが、産投会計と資金運用部資金との性格の違いからくる当然の取り扱いの相違であるというふうに考えております。
  190. 高沢寅男

    ○高沢委員 私はいまの御説明では納得できないわけです。資金運用部の、さっきあった回収金によって主としてできているところの「その他」の資金という、この「その他」の資金の動きが、ことに昭和四十八年度などは非常に大きくなっているわけですね。一兆をこすくらいに大きくなっていますね。ここに昭和四十年以降の資金運用部資金の「その他」の資金に当たるその資金の数字がありますけれども昭和四十年には「その他」の資金というものが——このころは「その他」の資金という名前はついていなかったわけですね。運用部の資金総額の中で、郵便貯金、厚生年金、国民年金、この三資金と総額とのいわば差額としてあったわけですかね。それが昭和四十年は三千五百三十億それから四十一年は千九百五十一億、四十二年が二千四百九十八億、四十三年が二千七百六十七億、四十四年が二千五百六十八億、それから四十五年が三千四百七十億、四十六年、この辺でずっとふえてきて六千五百六十八億ですね。それから四十七年になりますと——ちょっと四十七年は私まだ調べておりませんが、これが四十八年になると、一兆六千億をこえる、そういうような数字になるわけですね。ここでそういうふうに「その他」の資金という、つまり回収金というふうな性格を主体とする金が非常に大きな金になってきています。二千億、三千億という段階をこえて、もう一兆六千億というような段階の金になってきて、これは運用部の資金運用の中で非常に大きな比重を占めるというふうな段階へ来ておるということですね。  こういうふうになってきたのはなぜかというと、さっき言われた受動的な資金を管理するのだ、こういうふうに言われているけれども、その受動的な資金といっても、もともとその窓口は、郵便貯金の特別会計であったり、厚生年金の特別会計であったり、あるいは国民年金の特別会計、これこそまさに厚生年金や国民年金の法律に基づいて受動的にその保険料が入ってくる、その受動的に保険料の入ってくる中から運用部のほうへこの資金が回されてきて今度は運用される。そうして長年にわたる運用の結果として、すでに一兆六千億という回収金を持つようになってきておる。こうなると、これは言うならば、資金運用部特別会計の自己資金といってもいいのじゃないか、こう思うわけです。そういう金が一兆六千億も出てきた段階では、これは単に受動的な資金の管理であるというだけでは割り切れない性格になってきておる。そうすると、そういうような性格の回収金であるとすれば、これはもう長年の間に資金運用部特別会計におのずからたまってきて、それだけのいわば自己資金的な性格の金ができてきた。とすれば、その金はまさに国民の金であるわけですが、そういう金が年々運用されるということになれば、これは当然特別会計の歳入に計上して、そして国会の議決を受ける、国会の監督を受けるというふうにするのが当然ではないか、こう思うわけですが、いかがですか。
  191. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 いま高沢先生おっしゃいました数字を多少補足して申し上げますと、その他の欄でございますが、四十七年度は一兆九百六十四億円でございます。これ全額が回収金ではございませんので、本会議でも大蔵大臣からお答えいたしましたように、四十八年度で申しますと、回収金は一兆二千七百九十四億円でございまして、その他船員保険特別会計等からの預託金が三千三百六十五億円、こういうことになっております。  いま御質問の中にございました、回収金は自己資金じゃないかという御指摘でございますが、それはそのとおりでございます。ただ、それはあくまでも資金運用部資金の回収金なり資金運用部資金の自己資金でございまして、特別会計の自己資金ではございません。特別会計は、先ほど来御指摘の中にもございましたように、いわば損益予算を国会の議決を仰ぐという形で提出をいたしておりますので、その根っこになります元本と申しますか、残高と申しますか、資金のかたまりと申しますか、そういうものは直接予算統制の対象になっておりませんから、したがって、回収金も、受け入れ金ではございますが、財政法でいう歳入ではございません。したがいまして、そういうものとして集められた資金、御質問の中にもありましたように、従来は郵便貯金とか年金だけで、特に「その他」というものを掲示いたしておらなかったのでございますが、昨年、国会の御指摘もございまして、特に「その他」という欄を新たに設けまして、合計が原資に符合するようにいたしておりますが、これは、よく考えてみますと、本来それ自体に大きな意味を持たない措置でございまして、郵便貯金なりあるいは年金というその大宗を占めるものについて、従来から特に明らかにいたしておったわけでございますが、いずれにいたしましても、全体としての資金運用部資金ということでございますから、そのうち郵便貯金が幾らであるか、あるいは「その他」が幾らであるかということは、本来はさして重要な問題ではないのでございまして、そこで、そういうようにして新規にふえる資金、それから既往の回収金を含めまして、新年度において処分可能な資金というものが出てまいりますから、そこで、そうやって出てまいりました資金をどういうところに運用するか、どういう形で運用するかということにつきまして、今回特に法律案を提出して国権の最高機関である国会の御審議を仰ぐということにいたしたわけでございますから、あくまでも一般予算と同じように歳出の面におきまして、財投の場合は運用という形で国会の議決を仰ぐという形でございますから、あくまでも自己資金なり回収金というものが直ちに歳入として予算統制になじむというものではないというふうに考えております。
  192. 高沢寅男

    ○高沢委員 法律上の御説明はそういうことになるかもしれませんが、さっきも言いましたように、私が指摘をした昭和四十年ごろのそういう「その他」の資金に該当する部分は、二千億か三千億台であったわけです。それが四十七年には一兆をこし、四十八年には一兆六千億、おそらくこれは今後四十九年度、五十年度、この先を考えていけば、もっともっと大きな額になっていくのだろうと私は思うのですね。そうすると、そうなればなるほど、資金運用部の運用される原資の中で、この比重というものが大きくなる。そうしてしかも、さっき言ったように、その性格は、船員保険の預託という部分を別にすれば、その回収金という性格は、いわば自己資金という性格である、こうなってくるわけですから、これはいわば長い間に、回転している中で次第に資金運用部資金の中でそういう自己資金的な部分が生まれて、そしてそれが成長してきて、もうかなり大きな部分になってきている、こういうことであるわけです。  そこで、資金運用部特別会計としては歳入でない、こう言われるわけですが、しかし、資金運用部資金としては、それはすでに非常に大きな自己資金になってきておる、そうしてそれは運用の中で大きな役割りを占めておる、こういうことですから、私はむしろ、こういうふうな自己資金的部分がどのくらい入ってくるのだという見込みとか、それを今度はどういうふうにまた運用するのだというふうな計画、その辺はおそらく、資金運用部資金法に基づく資金運用審議会への運用計画の中では、当然触れられていると思うのです。それからまた、運用した結果としての審議会へ提出される運用報告書というふうなものの中では、おそらく扱っておられると思いますが、そうであるとすれば、そういうふうなものを、これらも含めて一括して国会へ提出して、そうして国会の審議を受ける、こういうふうにするのが当然ではないか、こう思うわけです。  従来も「その他」の資金の部分に当たるものが、いままでは運用部の原資計画の中で、全体の原資計画と郵便、厚生、国民という三つの資金との間に差額があって、この差額は一体何なんだ、こういうふうなことが国会で問題になって、初めて「その他」の資金という名前が今度はつけられてきたということであって、これも国会が黙っていればそんなふうな扱いに結局ならなかったということなんであって、私はそういう点では、とにかく国会からそういうふうなものを求めるという場合には、国民の前へ——国民の前へということは、具体的には国会の前へですから、そういうふうな部分の資金の性格やあるいはそういう回収の予定、それのまた運用の計画というふうなものが国会へ提出されるということがやはり正しい、こういうふうに思うわけで、そういう点からもう一回繰り返して、産投会計の中でやっている、多少それは性格は違うかもしらぬけれども、しかし、この資金運用部の特別会計の国会へ承認を求める事項の中へそういうものを出してくるべきである、私はそう思うわけですが、ひとつお考えをお聞きしたいと思います。
  193. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 「その他」のことをお尋ねでございましたので、ちょっと補足して申し上げますと、四十年度の計数をおあげになりましたので、四十年度の「その他」が三千五百三十億でございますが、これはその当時の資金運用部資金の総額は一兆一千八百七十二億円でございます。したがいまして、資金運用部資金全体の中に占める割合は二九・八%でございます。三割近くが「その他」資金であったわけでございます。自来八年を経過いたしておりますから、三千億が一兆円にふくれたという計数上の増はございますけれども、しかし四十八年度の五兆六千億に占める「その他」資金の一兆六千億の割合は二八・七%でございまして、割合から申しますと、特にふえているということではないわけでございます。  これは、先ほど佐藤委員からお尋ねがございましたが、財投計画を編成いたします場合には、原資の面からどのくらい処分可能な資金があるかというアプローチもいたしますが、同時に財投政策の要請から財投計画の規模をどのくらいにするか、こういう財政需要と申しますか、経済政策と申しますか、財政政策と申しますか、そういう面からのアプローチと両方突き合わせまして財投計画というものが編成されるのでございまして、単に原資の面だけからの制約、あるいは原資の面だけからの制約がないからといって無制限に財投計画を大きくする、こういった性格のものではございませんので、そういう点から申しまして、やはり資金という性格で、年々歳々の予算調整と関係なく一つの資金というものが管理され、運用されてくる、そういう形態を持っておるわけでございます。  したがいまして、この「その他」は、端的に申しまして、従来「その他」という欄を設けておりませんでしたのは別に他意はないわけでございまして、郵便貯金なり年金というものを念頭に置いて、役人的な単純な発想から「その他」という欄を設けていなかったわけでございまして、御注意もありましたけれども、「その他」という欄を設けることにいたしておりますが、先ほど申しましたように、これは本来さして大きな意味を持たないものでございまして、もっと端的に申しますと、一種の調整項目でございます。郵便貯金なりあるいは年金というものは計画に従って集められ、目標に対して増減はございますが、これはこれとして確実な数字として明瞭に出てくるものでございます。それ以外に回収金、これも数字ははっきりいたしております。そのほか特別会計の余裕金とか預託金とかいろいろございますし、その中には長い期間の預託のものもあれば短い期間の預託のものもございます。そういうものを全部含めて、一団となって資金運用部資金というものを形成しておりますから、したがって、経済政策なり財政政策の要請から財投計画を低く押えるべきだ、こういう政府としての意思決定がございます場合には、おのずから「その他」資金というものは小さく出てくるわけでございます。単なる原資面からだけの表示ではございません。運用面からの制約によりまして財投計画を小さくするときには「その他」というものは小さく出てまいります。いわば原資の引き当てでございます。したがって、財投計画を大きくする、景気調整の要請があります場合には、おのずから「その他」という欄が金額として大きくなってくるということ。こういう一種の調整項目でございます。  先ほどお尋ねがございました五年以上のものにつきましては今回から毎年国会に提出するということにさせていただいておりますが、五年未満のものにつきましては、本来郵便業など利息のついたお金の運用ということで適宜適切な運用をやることによって預金者の利益を保障するようにする、こういう法律の趣旨から申しまして主務大臣が資金運用審議会の承認を受けて運用する、こういうことにいたしておりますので、そこで五年未満の資産がどのくらいあるかとか、あるいは五年未満の資産の運用の予定額はどのくらいであるか、こういうお尋ねでございましたら、これは計数でもって十分お答えする用意があるわけでございます。別に五年未満の資金の運用の実態について国会で御説明を回避するというような必要は毛頭ございませんし、これは法律の規定からいいまして、資金運用部資金はどこに運用するかということがはっきりきめられておりますので、政府の自由裁量によっていかなる方面にも運用することができるというふうな性質のものではございませんので、これはそういう資金の管理につきまして法律で大きく、しかも強い無限定のワクがかぶさっておりますので、そういう意味でわがままな放恣の運用はできない、こういうことになっておるわけでございます。
  194. 高沢寅男

    ○高沢委員 純粋に技術的な質問ですが、いま言われた「その他」資金の中には五年未満ですか、そういう短期的なものも含まれておる、いまのはこういうふうなことですか。そうじゃないのですか。それは違いますか。
  195. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 これはちょっと私のことばが足りなかったかと思いますけれども、五年以上の長期の運用に引き当てる金でございますから、長期運用に充当してさしつかえない金だけを計上いたしております。したがいまして非常に短い一年未満の原資の引き当てにいたしておりません。
  196. 高沢寅男

    ○高沢委員 そういうものは、そのほかにあるわけですね。
  197. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 はい。
  198. 高沢寅男

    ○高沢委員 それからもう一つ。これも非常に技術的な質問なんですが、いまの局長の御答弁の中で、これは調整部分に当たるものだ、そのときの情勢によってある程度ふくらましたり縮めたり、そういうふうなクッションのような役割りをする、こう言われるわけですが、この回収金というものは、そういうふうな時の状況によってふくらましたり縮めたりということができるのですか。  それからそれに関連して、さっきの昭和四十年の「その他」の資金に該当する分は三千五百三十億。その当時の資金運用部の資金の総額の中では、わりあいに大きな部分になっておりますが、その翌年の昭和四十一年は資金運用部資金の総ワクが一兆二千五百四十二億、その中で「その他」の部分は千九百五十一億。四十年からぐっと縮んでいますね。その翌年は二千四百九十八億、それから二千七百六十七億、二千五百六十八億とずっと昭和四十年の水準より小さい。ここら辺がどうしてこういう小さな「その他」で、その後今度は昭和四十六年、七年、八年になるとずっとふえてくる。これは回収金という性格から見て、なぜここら辺が小さくてあとぐっと大きくなるということになるのか、それをひとつお尋ねします。
  199. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 いま先生のおっしゃいましたのは実績の計数でございますので、回収金としてはっきりした数字はこの中に含まれておりますので、回収金の数字自体を伸縮するということはもちろん不可能でございます。ただ、当初計画を立てますときには大体回収金はこのくらいということで積算をいたしております。コンピューターに打ち込んで回収金をはじいておりますが、まだどうもプログラムの作成が必ずしも適当でございませんので、やはり当初の見込みに対しては相当実績が変わってまいります。その点が一つあります。  ただ、お尋ねの趣旨はそういうことでなくて、財政政策の要請によって回収金の額をかってに伸縮するじゃないかということであろうかと思うのでありますけれども、そういうことはもちろんいたしておりませんし、それは不可能でございます。したがいまして、四十年度には三割近くの「その他」の資金が、四十一年は一五%くらいに減っておりますが、これは財投計画全体としてごらんいただきますと、四十年度は公募借入金等——政保債が中心でございますか、これが四千三百六十七億でございます。それから四十一年度は六千百三十八億ということで二千億近くふえております。これは四十一年から本格的な建設公債による財政政策に転換をしたという年でございますので、同時に不況対策ということもあって政保債というものを大幅に増発いたしたのでございます。その後ごらんいただきますと、政府保証債はむしろ横ばいからだんだん減ってまいりまして、たとえば四十五年のごときは約五千億になっております。こういうふうに、この四十三、四、五あたりは民間経済が非常に過熱した年でございますから、政府保証債の発行政府として控えたのでございます。そういう点から申しまして、この年には「その他」の割合がややふえるというような、そういう姿になっております。したがいまして、四十一年度になって「その他」が激変いたしましたのは、主として政府保証債の増額によるものであり、同時に四十年度あたりでこの「その他」を景気対策ということもあって追加をいたしておりますので、「その他」の調整の余地が少なくなってきた。  もうたいへん正直なことを先ほどから申し上げておるのでございますが、四十一年から「その他」の割合が減ってきておるということは、経済政策の要請から財投計画を押え目にいたしておりますから、したがってその分は調整項目として資金運用部資金のいわばたまりを形成しておる、こういうことでございます。これは別に国会に対して秘匿をしなければならぬという性格のものではございませんので、残ったお金はやはり運用をしなければならないという性格を持っておりますから、財投計画に対してでなくて、できるだけ国債等の可能な運用対象に充当いたしておるわけで、そういうものは短い五年未満の運用ということで運用いたしておるわけでございます。したがって、「その他」という欄は、繰り返しになりますが、一種の調整項目ということで御理解をいただきたいと思うのでございます。
  200. 高沢寅男

    ○高沢委員 いまの御説明でだんだんわかってきましたが、わかってくると事は重大だと思うのですね。つまり、いまの御説明によると、回収金のほうは、これは伸ばしたり縮めたりするということはできない。これは戻ってくる金ですから、まさに戻ってくる金として、おそらく年々その額はふえていくということになると思うのですが、その戻ってくる回収金の中で、「その他」の資金の運用は、そのときの政保債が多いとか少ないとか、景気が過熱しているとかいうふうな状況に応じて、運用する面ではそこをある程度ふくらましたり縮めたりするというふうな操作をされておる、そして余った分は国債を買うとかいうような短期の運用のほうに回しておる、こういうふうな御説明であるわけですが、そういうことであると、まさに大蔵省のそのときときの判断でやられるというふうなことになるわけであって、国会としては、そのことに関してはいわばあずかり知らぬ、何か知らぬけれどもことしの財政投融資計画の「その他」の部分は少し多いな、ことしは少し少ないなというふうなことなんだけれども、その背後に資金運用部の特別会計として回収金がこれだけで、この回収金の中で、ことしは景気の状況が過熱しておるから、運用するのはこれだけ詰めて、「その他」の差額の分は押えて運用していますというようなことは、これは国会の審議では少しも出てこない。いまの局長の御説明でそういうことがわかってきたのですが、そうであると、産投会計と資金運用部特別会計とは違いますという先ほどの説明では、私はすべては納得できない。やはり今年度分では回収金はこれだけあります、この回収金がこれだけある中で、今年度の景気動向から見て財投の資金にはこれだけ運用します、しかし残りのこれだけの部分は国債を買うというふうな形で使いますというような全体の使い方の計画が国会に出されて、そして国会の審議を受けるということにならぬと、言うなれば、ほんとうの意味の財政民主主義というものはとても貫くことはできない。資金運用部というものは非常に大事な財政投融資の役割りを果たす機関であるわけですから、そうであるだけに、いまの理財局長の御説明を聞くと、そういうふうな部分は国会へちゃんとそれぞれの内容を提出されて、国会の審議とその決定を受けるというふうにされることが必要だと私は思うわけですね。これは、それを出すかどうかという御判断を局長にお尋ねするよりは、政務次官のほうから、そういうふうな性格であればひとつお考えをお聞きしたい、こう思います。
  201. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 先ほど来回収金の内容についていろいろお話がございました。しかし、先ほど来局長が説明を申し上げておりますように、法律的な性格そのものには変わりはない。ただ金額の上において絶対額が相当ふえてきておる。しかし全体のパーセンテージはそれほど変わっていない。そういう性格の回収金であるわけです。要するに、行政の分野にどの程度まかせておくか、これらの金はやはり予算そのもの、税によって調達する一般会計とは全然違うものでありますから、ある程度行政のらち内に自由にまかせて、その運用に誤りなきを期する、遺憾のないようにする、そういう行政の範囲におまかせを願えておる範囲内のことではないだろうか、かように思うわけでございます。
  202. 高沢寅男

    ○高沢委員 ただいまの政務次官のお答え、私はたいへん不満足であるわけです。従来も、政府は租税による一般会計の性格と、租税とは違う性格の資金の財政投融資とは性格が違うということで、財政投融資は国会の審議の対象にする必要はないということでずっとこられたわけです。しかし、これは国会でも大いに繰り返し論議され、そして財政民主主義というふうな立場からそうするのが当然であろうということから、今回のいま審議している特別措置法の提案ということになって、財政投融資も国会の審議と議決を得ていこうという方向へ進んできておるわけですね。こういう方向へ進んできておるということは、これは当然政務次官もお認めになると思うのですが、そうであるとすれば、その方向を、いま政府のほうから出てきていることよりももう一歩さらに進めて、そして大事な国民の資金——税金ではないけれども非常に重要な国民の資金というようなもののその取り扱い、その性格、内訳というふうなものを国会の審議にかけるということは、私は、財政民主主義の立場からいっても、今回の政府特別措置法を出された趣旨をさらにその方向で進めることになるのではないか、こう思うわけです。したがって、これは行政にまかせるワク内でいいのだというお答えだけではちょっと満足できないわけです。もう一回次官のそのお考えを聞きたいと思うのです。
  203. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 政務次官からお答えがあると思いますが、その前にちょっと補足して申し上げたいと思います。  高沢先生の御主張は、端的に申しますと、非常にことばは悪いのでおしかりを受けるかもしれませんが、資金運用部資金というものの存在それ自体の基本に触れる御発言であろうと思います。財政制度審議会で二年間議論いたしまして、専門家の方々にお集まりいただいて二年間なかなか結論が出なかったというところも、実は、資金運用部資金というものを金融的資金と考えるか財政的資金の配分という性格を持つものと考えるかという認識の相違に発するのでございまして、これは本来金融的資金の管理であり運用であるということであれば、そういう考え方を強調される専門家の方は、これは本来国権の最高機関の審判を受けるべき性質ではないという強い御意見でございます。それに対しまして、今日の資金運用部資金の額なり経済に占める重要性から見まして、やはり財政的資金の配分、逆に申しますと、実物経済に着目してみますと、今度の法案の第一条に出ております資源配分的な機能を持つ、資源配分的な性格を持つ資金については、国権の最高機関としての国会の御意思を確認するということが必要であろう。非常にことばは悪いのですけれども、それが譲り得る最大限度じゃないかというのが財政制度審議会の御意見の大勢であったのでございます。これは審議会の答申の中にも明らかに出ておりますけれども、五年以上の長期の運用、財政投融資の運用は御承知のように二十五年以上というものが大体全体の四割くらいを占めておりまして、実際財投機関に対して五年の融資を行なっておりますのは、国民金融公庫とかあるいは商工中金というような比較的短い融資をいたしております金融機関に限られておりまして、住宅にしましても鉄道にしましても、そういうものは二十五年とか三十年という非常に長い運用をいたしておるわけであります。したがいまして、西欧的な常識から申しましても、長期運用ということになれば当然二十年くらいということでありますし、日本におきましても国債は常に十年ということになっております。したがって、資金運用部資金の長期の運用ということであれば、より長い二十年とか、場合によっては十年というような、そういう長いものだけを国会議決の対象にするのは適当であるし、それ以上に拡大するのは適当でないという御意見であったのでございますが、いままで財投計画には五年以上のものを全部計上しておりますし、中小三機関分は五年という融資で実際に運用が可能でございますから、そういう点から申しまして、五年以上のものについては一切国会に提出をする。ことに財投計画以外の国債の長期運用、金融債の長期運用、それから簡保資金につきましては電力債の長期運用、これも国会の議決の対象にするということにいたしておるのでございます。  したがって、五年未満の短期の運用を、そのときの金融情勢なりあるいは債券の事情によって機動的に運用することが要請されるような事項、またそれはそういう形で運用いたしませんと、日々歳々入ってまいります資金は全部利息がついておるわけでございますから、遊ばせることは許されないわけでございます。したがって、そのときそのときの情勢に応じて機動的に運用するということが要請されますし、また運用対象というものが法律できめられておりまして、先ほども申しましたように、ほしいままの運用というのは一切できない。それから、これだけ大きな政府資金が一挙に金融市場に出動するということになりますと、金融市場に大きな影響を及ぼしますので、直接マーケットに出ることは一切やっておりません。これは中央銀行が管理をいたしまして、中央銀行の判断で、金融政策との斉合性を保ちながら運用しておりまして、そういう短期の、一年以内とかあるいは三年程度の金融につきまして、一切計数をもって事項別に国会の議決を仰ぐというような姿にするということは、実務上も不可能でございますし、また本来の性格から見て適当でないというのが財政制度審議会の答申でございます。したがいまして、長期の運用、五年以上の長期の運用につきましては、可能な限り、本来の有価証券に対する投資としての性格を持つ金融債とか、あるいは電力債についてまで国会に提出して議決をちょうだいする、こういうことにいたしておりますので、五年を切る短期の運用については、一切国会の議決の対象にするということはやはり適当ではないというふうに考えられておるわけでございます。
  204. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 いま局長から御説明申し上げたわけですが、この問題は、御承知のように国会で、特に野党の皆さん方から国会の議決の対象にすべきであるという御議論がずいぶん活発にありました。いま御説明申し上げましたように、財政制度審議会でも両論があったわけであります。しかし、現実を見ますれば、本来はやはり、何と申しましても金融的な資金であることは間違いない。間違いないことであるけれども、そういう全体としては数量的な規制にたいへんなじみにくいものではあるけれども、しかし同時に財政的な資金、資源配分的な性格というものも兼ね備えるに至ってきたから、この問題についてはひとつ従来の線とは違った観点で検討しよう、こういうことになりまして、今回のような法律案をひとつ御審議を願う、こういう経緯になったようなことでございます。したがいまして、そういう本来は金融的な資金ではあるけれども、しかし一面においては財政資金の配分という性格も兼ね備えておるということから始まったものでありまして、そういう点をお考えいただければ、今回の法律案が、政府としては思い切って出してきた、こういうふうに御理解がいただけるものと思うわけでございます。
  205. 高沢寅男

    ○高沢委員 この財投資金全体、あるいは特に資金運用部の資金は、受動的な資金で、安全、確実、有利な運用、こういうふうな性格である、それから最近の経済情勢の中では、それが同時に資源の適正配分という役割りも果たす、こういうふうなことになって、どっちがどっちか、あれかこれかという関係ではないと私は思う。つまり、その二つの性格はいわば重なっていて、そういうふうな受動的な資金の管理なり運用なりという金融的な性格を持ちながら、その性格が同時に、現実の経済の中では、そのときどきの好況、不況というふうな経済情勢の中で景気刺激的な、あるいはその他そのときの政府の経済運営の目的に沿った役割りを果たして、資源配分的な役割りを果たしている。だから、この二つの機能は、どっちを重視するという関係ではなくて、いわばむしろ結びついた、たての両面という見方ですべきじゃないかと思うのですが、その中でこういう予算審議との関係で論議する場合には、当然資源配分的な性格というものをむしろ重く見るべきではないか、その点を重視すべきではないかということが一つ。  それからもう一つは、先ほども言いました自己資金的性格のものが長い間に次第に資金運用部の中にたまってきたということですね。ここで仮定の問題として、資金運用部資金をいまの時点でかりに解散して、そして郵便貯金とか国民年金とか厚生年金とかいうふうなところに返すべき金は返して、一方貸し付けしておるところから回収すべきものは回収して、そして回収と返済と両方をきれいに清算したあとにある一定の自己資金分が残るわけです。そういう状況に現になってきているわけです。そして、その部分は相当大きな金額になってきておる、こういうことですから、さっきの資源配分的性格が非常に大きいという面と、いま言ったような自己資金的な性格のものがすでに相当蓄積されてきておる、こういう両方の意味からいって、私はすべてのものを国会に出せということは決して言いませんが、少なくとも産投会計に大体匹敵する程度の、回収金のこういうものにあたる歳入部分というものは、資金運用部特別会計の中に出してしかるべきじゃないかというのが一つ。  それからもう一つは、今度は、資金運用部の、そういう短期のものも含めた運用の全体計画、あるいはその実績というものについては、これは資金運用審議会のほうに出されておる計画や、その報告というふうなものを、これは国会の議決事項ということにする必要はありませんが、少なくもそういうものは国会報告として提出をされるということが必要なんじゃないか、こういうふうに思うわけです。ただ、報告として出すには、財政法二十八条の項目の中にはめ込むような財政法上の手続をとるということも、あるいは必要が出てくると思いますが、そうなれば当然そういう財政法上の手続もとることを前提としながら、そういうふうな部分を国会への一つ報告事項にされるということが必要じゃないかと思います。  そういう点で、お尋ねする二点は、一つは自己資金の部分に関する歳入部分あるいは運用部分というものは、資金運用部特別会計の中で、産投会計と同じようにお出しになるのが必要じゃないか、第二は、資金運用審議会へ出される計画なり報告の部分は、ひとつ国会への報告として提出される、こういうことがあってしかるべきじゃないか、こう思いますが、ひとつ御意見をお尋ねします。
  206. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 自己資金部分が相当あるんじゃないかという御意見でございますが、これは、国会に資料として提出されております資金運用部の貸借対照表がございますが、その中に積立金が載っておりまして、これが資金運用部特別会計のいわば純資産でございます。運用のほうは、政府機関とか国債等でございますから、貸し倒れはないという前提で考えますと、過去二十数年間で七百億程度の積立金ということでございまして、総資産が二十兆でございますから、たいへん乏しい積立金ということであります。二十兆の金融機関というふうにお考えいただきますと、その自己資本というものは比較にならないぐらいの額になるのでございまして、そういう点から申しまして、たいへん利の薄い商売を二十年間やってまいりまして、ことに最近は金利が下がっておりますので、これもたしか予算書につけて提出をいたしてございますが、四十七年度は大体四十八億ぐらい単年度で赤字になるということでございますので、四十八億を取りくずしますと、大体六百五十億ぐらいの積立金ということになるのでございます。  さっき回収金が自己資金になっているということでいろいろお尋ねでございましたが、約二十兆の金融機関というふうにお考えになって、二十兆の金融機関が来年どのくらいの融資を行なうか、その場合に、融資のほか、有価証券の取得もいたすわけでありますから、非常に端的に申しますと、お金にしるしはございませんから、どれにどれを充てていると言われてもほんとうは困るわけなのでございますけれども、そういう点から申しまして、一つの資金のかたまりとしての二十兆というものが現存して、それがいろいろなかっこうで資産運用され、また日々運用したり回収をやったり、また預金のほうも受け入れがあったり払い出しがあったりという、一種の金融活動をいたしておるわけでありますから、本来はやはり金融機関という性格を持っているのでありまして、その中の資源配分的な部分についてだけ、特に経済に対する影響が大きいということで、国会の議決をちょうだいする、これが財政民主主義のたてまえであろうかと思うのでありまして、本来金融的な性格を持つものにつきましては、これはまあ国債に運用をすることもございますし、あるいはまた国債を日本銀行に呼び戻すこともございます。これは一種の流動準備としての性格も持っております。預金の払い戻しもございますし、それからすでに約束した貸し出しの実行ということもございますから、やはり流動資産として持っておることも必要になるのでございまして、そういうものについての一切の計画表を計数によって、そういう御意見でございますけれども、これはたいへんむずかしい御注文でございまして、口幅ったいことを申し上げますけれども、たとえば銀行の頭取をお呼びになりまして、おまえのところはどのくらい自己資金があるのかと言っても、これはなかなか答えられないのと同じことでございまして、ほんとうの自己資金で六百五十億程度ということでございます。それ以外は貸し倒れがないということであれば、二十年間のかせぎはその程度ということになります。そういうものと、それから年々歳々のフローとしての運用の問題とは、これは別の問題でございまして、そのうちの長期のものについて特に国会の御審議を仰ぐということでございますから、短期のものについても計画をという御注文でございますけれども、それはたいへんにむずかしいというふうにお答えする以外にないと思うわけでございます。
  207. 高沢寅男

    ○高沢委員 そのストックとフローの関係はわかりました。ストックに当たる部分は約六百五十億くらいですか。——そして回収金として、ことしの場合は一兆二千七百九十億ですね。これも回収金であるけれども、それはあくまでフローであって、それはまた厚生年金とか国民年金に戻っていくべき、還流していくべき、そういう性格のものということになるわけですか。フローというのはそういう意味ですか。
  208. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 そこのところが非常にむずかしいわけでございまして、お金にしるしはございませんから、あっちに運用したりこっちに運用されたりということもあるわけです。回収金をどこに充てたりということは、原資の、先ほど申し上げました引き当てということでございまして、回収金は、一切支払いは戻ってこないかと言われても、それは戻ってくる部分もあるわけで、そこら辺はこん然一体となって支払いとか運用とかに使われているというふうに御理解願いたいと思います。
  209. 高沢寅男

    ○高沢委員 とにかくそれは一兆二千億のフローであるということですね。——それはわかりました。  さっきの産投会計に戻りますけれども、産投会計も運用金回収とか運用利殖金収入というのは、これはやはりフローの一種であって、そして産投会計の歳出の面では、それがアメリカの対日援助債務処理費のほうにまた今度は返済で流れていく。そういう点では産投会計のその部分もいわばフローの性格であるわけです。決してストックではない。そういうフローの性格のものが、しかし産投会計では出ているということになるわけですから、少なくもこれに見合う程度の、そういう資金運用部の特別会計のほうへの出し方は可能なんじゃないか、こういうふうに私は思うわけです。
  210. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 産投会計は、本来債務を持たない性格のものでございまして、資金運用部資金というのは郵便貯金とかあるいは年金とか、債務性のものを受け入れるわけでございますので、それを資産として運用するということでございます。産投会計は本来一般会計の繰り入れとか、あるいは対日援助見返り資金特別会計という資産となったもの、つまり自分の財産を運用しておるということでございまして、いわば負債という感じではないわけでございます。資金運用部は銀行としてお考えいただけば、負債があって、資産があって、運用があるということでございまして、やはり特別会計とは基本的に性格を異にする、こういうことでございます。
  211. 高沢寅男

    ○高沢委員 しかし、例のガリオア・エロアの返還の協定を結ばれて、したがって、産投会計はその意味では債務をしようということになるわけでございましょう。
  212. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 特別会計の性格はいま申し上げたようなことでございますが、産投会計は、いま御指摘がありましたように、ガリオア・エロアの返済は産投会計の負担で行なうということになっておりますので、これは対日援助処理特別会計を承継したという歴史的な経過からそういう性格を持っておるのでございまして、年々歳々債務を受け入れて年々資金を運用するという資金運用部資金とは性格が違うということでございます。
  213. 高沢寅男

    ○高沢委員 先ほど私、第二のあれで要求した資金運用審議会に出される計画あるいは報告書、それは少なくも国会へ資料として出されるということはあっていいのじゃないか。これはどうでしょうか。
  214. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 資金運用審議会に運用計画を作成いたしますことは、先ほど私のほうから申し上げたと思いますが、資金運用審議会から一年未満の運用につきましては大蔵大臣に委任されておりまして、一年以上のものについて運用計画を作成して審議会の議を経る、こういうことになっております。それから運用の実績も報告を出しておりますので、いま急なお尋ねでございますから、ちょっと考えさせていただきまして、別に特に国会に提出することを支障とするというような性格のものでございませんけれども、いまちょっと手元にどういうものを出しているか用意がございませんので、ちょっと考えまして、必要なものについては提出するようにいたしたいと考えます。
  215. 村山喜一

    村山(喜)委員 ちょっと関連。その財投の原資が、資金運用部資金のほうから充当率が八一%にもなり、いま話を聞いておりますと、低金利政策をとったために一年間に四十八億も赤字になっている、それからストック分としては、現在は六百五十億程度しかない、こういうようなことですが、そうなると運用先は法定化される、その中において今後どういうふうな運営をやっていくのかというようなことも、これはきわめて重要な財投資金の原資の問題に関係が出てくるわけですから、やはりその報告ができる程度のものは、われわれのところには、少なくともこの委員会には提出をされる筋合いだと私は思うのですが、政務次官、どうですか。資料としてお出しを願いたい。
  216. 鴨田宗一

    鴨田委員長 政務次官の前に、局長にちょっと答弁させます。
  217. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 いまお尋ねがございましたのは、運用計画、それから決算の問題であろうかと思いますけれども、運用計画は、国会の議決をちょうだいしてこの法律が成立して、四十八年度予算について国会の議決をちょうだいしたあとに資金運用審議会に運用計画を提出して御承認いただくのでございます。  そこで、さっき、高沢先生のお尋ねに対してちょっと考えさせていただきたいと申しましたのは、五年以上の財投計画計上予定額につきましては、すぐ計画が実行できるのでございますけれども、しかしそれ以外のものについて急に計画をこれからつくるということになりますので、はたして十分お調べにたえるものができるかどうか。こちらの用意としては、四十八年度予算が成立したあとで審議会におはかりをするということで用意をいたす予定にいたしておりましたので、今日ただいま用意はございませんので、どういうものをお出ししたらいいか、ちょっといますぐイメージがわかないということで、そういうお答えをしたのでございます。  それから決算は七月に運用審議会に報告をいたしました。これもどういう形で国会にお出ししたらいいか。五年以上の実績は来年度から出るのでございますけれども、いままでのものにつきましてどういう形で出したらいいか、別にお出ししないというのじゃなくて、ちょっと考えさせていただきたい、こういうことを申し上げたのでございます。
  218. 高沢寅男

    ○高沢委員 いまの点ですが、四十八年度のものは、これからそういうふうに運用審議会に計画をつくって出されるということであれば、これはいますぐ出せといっても無理であると思いますが、そうであるならば、昨年度の財政投融資計画があって、そのもとにおいて昨年度この資金運用審議会に出された計画やあるいはその報告があるはずですから、それはおそらくすぐ出してもらえると思うのですが、それはどうでしょう。
  219. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 いまお尋ねのございました四十七年度分の運用計画、それは資料として提出するようにいたします。
  220. 高沢寅男

    ○高沢委員 まだ三十分ほど時間があるようですから、次の問題へ進みたいと思います。  私、本会議質問の中でもお尋ねしたのですが、公団、事業団等、この関係の予算の問題なのです。この問題は、私は、やはり政府関係機関が国会へ予算として出されておる、ということであれば、その性格が政府関係機関、公社あるいは公庫と非常に似たような類似の性格である公団、事業団等、こういうものの予算も同じように国会へ提出されることが、まず技術的に決して不可能ではない、こう私は思うわけなんです。そういう点において、これは先ほどの佐藤委員質問の中でも出ていたわけですが、これをひとつ国会へ提出をされるのが、財政民主主義のたてまえから妥当ではないか、こう考えるわけですが、いかがでしょうか。
  221. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 これは先ほど佐藤委員質問にもお答えいたしたのでございますけれども、公社、公庫、銀行、それから公団、事業団、各種の機関がございますが、公社は公社として一つの原則によって予算の提出ということが義務づけられております。それから公庫、銀行につきましては、御承知のように、利息収入とか利息支払い、人件費、経費とか、そういうものについて国会に提出をし、公庫については、借入金の限度につきまして国会の議決をちょうだいする、こういう形になっているのでございます。公団、事業団は、経費予算につきましても主務大臣認可でございますし、事業計画、資金計画もすべてそれぞれ主務大臣の認可ということで処理しておりますが、これもたびたび御質問があり、たびたびお答えをいたしておるのでございますけれども、経過から申しますと、公社なり政府関係機関の運営の実態から考えまして、やはりできるだけ弾力的自由な運営が必要だ、こういう観点に立って、公団、事業団という設置法ができ、そういう組織ができ、また今日まで運用されておるのでございまして、これは財投対象機関のあり方という問題よりは、政府関係諸機関のあり方の問題でございまして、これは理財局長という立場でお答えすべき性格よりかなり越えた問題であろうかと思います。制度の整備をどうするかという問題でございまして、これは全くの私見でございますが、もしそういうような問題を取り上げるとすれば、やはり公社その他を含めて全部どうするかという問題になるという感じがするのでございまして、御指摘なり御批判をいただくような余地は、それはあると思います。たとえば輸銀と基金とでどう違うのか。それは、直接借款を主とし、他に調査機能をあわせ持つ基金と直接借款よりも輸出入、投資のための融資を主とする輸銀とは、数段の違いがございますけれども、ただ制度だけに問題をしぼって違っているのは何かということであれば、それは国会という最高機関がこういうことであってよろしいということで、われわれ行政府がその法律のもとにおいて運用するというふうにお答えを申し上げるわけでございます。これはなぜ公団と事業団と違うのかということは、非常に割り切ってはっきり申し上げることはむずかしいかと思います。それは事業団は金融機能を持つものが原則として事業団である。しかし公団の中にも融資機能を持っているものもございますから、こういうふうに割り切ってお答えすることは非常にむずかしいと思いますけれども、主として戦後の行政の運営の反省の上に立って、公団、事業団というものが生まれてくるということで、公社、政府関係機関とは性格の違うものとして考えるということで、先ほど申しましたように私のお答えする領域を越えた問題だというふうに考えます。
  222. 高沢寅男

    ○高沢委員 この問題は、確かに局長にお尋ねするよりは、もっと政治的な判断の問題もからむと思いますので、したがって政務次官のお考えをということになるわけですが、私いまここに、日本道路公団法ですね、この公団法の法律があるわけですが、この第四章では、財務及び会計というような形で、日本道路公団の財務、会計の立て方についてずっと法律で規定されているわけです。それからさらに道路公団法の施行規則があって、その施行規則の中では、経理原則として、勘定区分の立て方とか、あるいは予算総則をこういうふうに立てなさい、それから収入、支出の予算はこういうふうにつくりなさい、予算の添附書類はこうしなさい、予備費それから予算の流用等、それぞれ規定があって、こういうふうなものをつくって、これで主務大臣の認可を受けるというふうなしかけになっているわけですが、こういうふうなものを主務大臣の認可を受けるためにつくられるならば、これでもうすでに公団のいわば予算の形ができるわけですから、そういうものを国会へ出されるということに、何の技術的な支障もないと私は思うわけであって、したがって、このことはむしろ、一種の政治的な一つの判断として、その主務大臣の認可でやるよりは、国会の議決事項にしたほうが、財政民主主義としてより前進である、こういうふうな判断に立って、そういう扱いをされるのがいいのじゃないかというふうに私は考えて、ここのところはひとつ政務次官にお考えをお聞きしたい、こう思うわけです。
  223. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 これは私どもにとってもたいへんむずかしい問題でございます。大きくいえば、立法府と行政府との限界というのがどの辺で線を引いて——今日は一種の政党政治、政党内閣制度のもとでありますから、そういう国会と行政との限界点というか、そういうところをどの辺に引いていくかという一つの大きな問題とも関連があるように思うのです。これはいま仰せられましたように、たとえばそれぞれの公団法なり事業団法で、それぞれの事業の目的なりあるいは事業の範囲というものは相当きびしく書かれており、それ以外の仕事はできない、こういうたてまえになっており、その範囲ではそれぞれの公団、事業団がある程度弾力的に自由な活動もできるようにする、また機動的に時期を失せずやるということも必要であろう、こう思うのでありまして、その辺のかね合いをどう判断していくかという大きな政治的な判断も加味した決断の問題であろうと思うので、私もここで直ちに結論を出して申し上げるわけにはいきませんが、御説についてはよく私どもも検討してみたい、かように考えるわけであります。
  224. 高沢寅男

    ○高沢委員 いまの点は、われわれからすれば、財政投融資のいわば計画全体を一つのセットにして、それでこの国会の議決の対象にすべきだ、こういうふうな立場がわれわれはあるわけでして、そういう立場から、財政投融資の資金の入るほうの面については、産投会計、それから資金運用部、簡保、さらに政府保証の債券及び借入金というふうなこの四つの財投への資金の入る面と、今度はその資金が各種の特別会計、各種の公社、公庫、銀行、それから公団、事業団というふうにそれぞれ出ていく、それらの全体を一つのセットにして議決の対象にすべきだ、こういうふうな立場を持っておりますので、そういうことから、したがって、この公団、事業団のそういうふうな予算についても議決の対象にと、こういう主張を申し上げているわけです。ここらのところは、また、われわれとしては繰り返しさらにお尋ねしたり、あるいは最終的にはそういう立場でわれわれの案を提出するというふうなことにもなろうかと思いますが、そこへ行く前に、いまの公団、事業団の予算のことに関連してお尋ねしたいことは、公団、事業団の中で有価証券の保有の問題があるわけですね。これは、財政法第二十八条による昭和四十八年度予算参考書類の中で、それぞれの公団、事業団の貸借対照表等が提出されております。この中で見ると、各公団、事業団みないずれも有価証券を保有されている。それが四十六年度末、四十七年度末の見込み、それから、四十八年度末の見込みと、こういうふうな形で出ているわけですが、これを見ますと、たとえば住宅公団の場合は、四十六年度末の決算において、有価証券を約百十億持っておられる。それから四十七年度末の見込みではそれが二百一億、約倍にふえている。それから四十八年度の末の見込みではそれが一億というふうにぐっとゼロに近いような状態になっていますね。それから道路公団では、四十六年度末の決算で有価証券が百二十四億ある。四十七年度末の見込みではそれが三億、同じく四十八年度末の見込みでも三億というふうに、これもほとんどゼロに近い状態です。ほかの各公団、事業団もみなそれぞれ同じようなあれがあるわけですが、有価証券がこういうふうに四十六年度末で非常に大きな額になっていて、四十七年度末見込み、四十八年度末見込みでは非常に小さいということですね。この有価証券動きというものは一体どういうことなのか、その有価証券の中身はどんなものか、ちょっとお尋ねしたいと思います。
  225. 福島量一

    ○福島説明員 各公団、事業団の保有しております有価証券は、一時的な資金繰りのために、運用のために持っておる短期証券がおもでございます。ただいま御指摘の住宅公団の場合に四十六年度末の金額が非常に多いといいますのは、これは大口の住宅用地の土地の取得について資金の支払いが行なわれるということで用意いたしておったところが契約が妥結しなかった、それでずれ込んだということのために資金に余剰が生じました。それを短期証券に一時有利な運用をしているということでございますし、道路公団も四十六年度の場合に、これはたしか南九州に雪が降りましてちょっと工事がおくれたというような事情がございまして、資金が支払いに至らなかったということもあって、それを一時的に有価証券に運用しておるということでございます。したがって、道路公団の場合はいわばきわめて偶発的な要因による金額であるわけです。住宅公団は、先ほど来話が出ておりますように、事業の進捗がなかなか思うにまかせないというようなこともありまして、四十七年度末も金額が上がっておる、こういう事情でございます。
  226. 高沢寅男

    ○高沢委員 そうすると、いま説明されたそういう一種の資金繰りの性格を持った短期の有価証券の保有である。そうすると種類はどんなものになりますか。
  227. 福島量一

    ○福島説明員 大部分はいわゆる短期証券、外為証券とか、それから食糧証券とか、ああいった三カ月の短期の証券、いわゆる短期国債と申すものでございます。
  228. 高沢寅男

    ○高沢委員 私は、これから少しまた先ほど言いました基本論の財政投融資計画を全体として国会の議決の対象にするというところへいきたいわけですが、先ほど佐藤委員からそこのところについてかなりいろいろ質問があったわけです。その際のお答えの柱としては、二重議決という問題があって、そういうところから全体として財政投融資計画を国会の議決の対象にするという扱いはできない、こういうふうな御説明があったわけですが、その二重議決の問題でさっき産投会計の例も出されていたわけですが、私、そこのところをもう一回触れてみると、今年度は一般会計から産投会計へ七百五十八億入ることになっております。これは一般会計でいえば歳出であって、今度産投会計のほうでは七百五十八億が歳入になっている。この一般会計歳出と産投会計歳入、これは二重議決ではない、これは言うならば出るものと入るものの相互関係ですから、これは二重議決じゃないというごとはさっきお認めになったわけですね。  そういうふうな立場で見ますと、ことしの産投会計はそういうふうな一般会計からの受け入れとか、先ほど言いました運用資金の回収とか、運用利殖金の収入とか、その他借入金もあったりというふうなことで歳入ができている。それに対して、今度は歳出の中で産業投資の支出として八百二億、今度はこういう産投会計の歳出があるわけですね。さっきわれわれの言った財投会計全体をいわば一つの特別会計のようなものに考えてみるとするならば、この産投会計からの八百二億の歳出というものが今度は財政投融資計画の昭和四十八年度の受け入れ資金、つまり歳入の八百二億というものにこれが見合ってくる、こういうことになるだろうと思うのですね。そうでしょう。そういうことになるんじゃないですか。昭和四十八年度の財政投融資計画の七兆近いそのいわば総ワクというものを一つの特別会計と考えてみれば、その中の歳入面の一つとして産投会計から八百二億入ってきます、こういうことになるわけですね。それから資金運用部からは五兆六千二百三十九億ですか、こういうものが入ってきます。それから簡保の資金のほうからは七千億ですか、こういうものが入ってくる。それから一般会計の予算総則できめられている政府保証の債券や借入金が——予算総則のほうではそういうふうな借り入れをするということがきめられていて、その借り入れをした金は、今度はいま言った財政投融資の全体の袋の中ではそれが歳入として入ってくる、こういうことになるわけだから、これは決して二重議決というものではなくて、ちょうどさっきの一般会計から出る、特別会計へは入る、今度産投特別会計から八百二億が出る、それが財政投融資へ入る、こういう相互に見合う出る、入るの関係のつながりなんであって、これは決して二重議決という性格のものじゃない、こう考えるわけですが、いかがですか。
  229. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 詳細は主計局のほうから補足をしてもらいたいと思いますが、さっきも佐藤先生そういう御意見でございましたか、私が御説明したのが十分でなくくあるいはまだ十分御理解いただいてない面があろうかと思いますが、産投会計と資金運用部資金政府保証債による民間資金の調達とは、性格がそれぞれ違っているということを申し上げたのでございます。産投会計は一般会計からの繰り入れが大宗を占めておるものでございますから、いわば債務というものはないのでございまして、自己資本ということで、いわば税金を原資としてその運用なり出資なりをいたしておるわけでございます。これはそういう性格のものでございます。それから資金運用部資金はあくまでも預かり金でございますから、いま先生のおっしゃったような何か特別の大会計というものをつくりましても、それはあくまでも大会計に対する貸し付けにすぎないのでございます。大会計が自由に処分してしまってよろしいというものではなくて、必ずまた返さなければならぬというものであります。それから政府保証によって調達した民間資金というものは、これはそれぞれの機関が政府保証で調達するわけでございますから、それをやめて何か大会計が国債を出し、大会計の負担で民間から資金を調達するというようなことになってくるという感じがするのでございまして、どうも率直に言って御質問趣旨がよくつかめないのであります。  資金の性質がそれぞれ違っておりますので、それを何か一つのどんぶりに入れるということがどうも原理的に不可能じゃないかという感じがするのでございまして、私の理解が浅いのかもしれませんが、どうも特別会計と資金運用部、あるいは政府保証による民間の資金調達とはおのずから性格が違う。自分自身で調達する資金、つまり政府が制度を設けて集める資金と、それから保証して集めさせる資金とはまた性格が違いますので、どうも全然違った性質のものを一つのどんぶりに入れるということが、本質的に無理ではないかという感じがしておるのでございます。間違っておるかもしれませんが、そういう感じがいたすのでございます。
  230. 高沢寅男

    ○高沢委員 わかりました。つまり産投会計のような場合は、資金のもとの性格がいわば税金という形で、これは出資というそういう性格を持った金と、それから借入金という性格の金と違う性格の金を一つのどんぶりに入れるのは無理がある、こういうようないまのお答ですが、そのお答えから見ると、産投会計自体がそうなっているのではないでしょうか。産投会計自体が、この歳入で見ると、一つは運用収入、一つ一般会計からの受け入れ、これはまさに税金です、一般会計からの受け入れ。それから一つは借入金というのがあるわけですね。これはつまり税金とは違う性格の金でしょう。そういうふうな運用収入とそれから税金の性格を持った一般会計の金とそれから借入金、全く性格の違う金が産投会計という一つのどんぶりの中へ歳入で入っておるわけですよ。これが可能であるならば、いま言われた財政投融資というもっと大きなどんぶりを一つつくって、そのどんぶりへ産投会計の金も入る、資金運用部の金も入る、それから政府保証の債券や借入金の金も入る、借金の性格の金とそれから出資の性格の金、違う性格の金が一つのどんぶりに入るのは私は一つもふしぎではない、こう思うわけですが、いかがでしょう。
  231. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 この三百五十億は、これもさっき高沢先生か佐藤先生でしたかにお答えをいたしました内容をなしておるのでございますが、産投会計は本来借入金をする会計ではございません。ガリオア・エロアの返済も既応の融資の回収金の運用益で支払いをするということで、昭和三十七年の日本国に対する戦後の経済援助の処理に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定に関連して産投会計改正の際に、国会でも御説明させていただいておるわけでございまして、これを年度途中で一括して返済する、そういう国際経済上の要請から返済をするということになりますと、そのために借入金を行なう必要が生じるわけですが、本来産投会計は恒常的に借り入れをする、あるいは国債を出して調達する、そういう性格の金ではございません。繰り返しになりますけれども資金運用部資金は年々歳々資金が入ってくる。それで産投会計の借入金はガリオア・エロアを返済してしまえばこれでおしまいということでございまして、恒常的に借入金で資金を調達するというように産投会計を性格づけておるわけではございませんので、もとに戻りますが、資金運用部資金と産投会計とは本質的に性格が違う、かように思います。
  232. 高沢寅男

    ○高沢委員 大臣が見えましたから、ここでもって私は質問を打ち切りますが、なお若干問題が残りますので、あと機会をあらためて質問をさしていただきたいと思います。      ————◇—————
  233. 鴨田宗一

    鴨田委員長 有価証券取引税法の一部を改正する法律案及び相続税法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  両案は、昨二十七日質疑を終了いたしております。  有価証券取引税法の一部を改正する法律案に対し、日本社会党を代表して武藤山治君外一名より修正案が提出されております。また、相続税法の一部を改正する法律案に対し、日本社会党、公明党及び民社党を代表して、武藤山治君外二名より修正案が提出されております。     —————————————
  234. 鴨田宗一

    鴨田委員長 この際、提出者より両修正案の趣旨の説明を求めます。武藤山治君。
  235. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 ただいま議題となりました日本社会党提案にかかる有価証券取引税法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、提出者を代表して提案の趣旨及びその内容を御説明申し上げます。  修正案の案文は、お手元にお配りいたしてありますので、朗読は省略させていただきます。  有価証券取引税は、昭和二十八年に有価証券の譲渡所得課税が税務執行上の理由等で廃止された際に、この課税廃止に伴う代替課税の趣旨で設けられたものでありますが、以来今日まで株式等の譲渡に対する税率は据え置かれており、今回、政府はこれを二倍に引き上げる提案をいたしているわけであります。この間、売買取引は昭和二十八年では約一兆円であったものが昭和四十七年では約二十四兆と何んと二十四倍もその流通量が拡大し、一方株価も年々上昇してきており、取引の背後にある担税力が増大しているにもかかわらず二十年もの長い間これを放置していたのであります。  これは資産家優遇の態度であると申さなければなりません。政府は事あるごとに国民の納税道義の低さを指摘いたしておりますが、有価証券を譲渡した場合、何十億もの所得があってもわずか〇・一五%のきわめて低い税率の有価証券取引税しか課税されなかったという不公平な税制では、政府みずから納税道義の低下に一役買っているといわなければなりません。このような汗水して働く者よりも働かずして資産を動かす者の税負担が軽いなどというような不公平な税制は、一日も早く是正されなければなりません。  いまや不公平な税制に対する不満は国民の間で蔓延いたしております。この不満をわれわれは的確に受けとめ対処しなければならない時期に来ていると認識するものであります。この認識に立って有価証券取引税につきましては一般国民感情から見て、また、他とのバランスから見て、その税率を大幅に引き上げる必要があると判断し、修正案を提出した次第であります。  次に、修正案の内容でありますが、株式等を譲渡した場合の税率を現行の六倍に引き上げ、最高となる税率をほぼイギリス並みとすることといたしております。すなわち、一般の譲渡の場合は現行の一万分の十五から一万分の九十に、証券会社売買により譲渡した場合は現行の一万分の六から一万分の三十六にそれぞれ引き上げることといたしております。  以上がこの修正案の概要であります。  次に、日本社会党、公明党、民社党、三党共同提案にかかる相続税法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、提出者を代表して提案の趣旨及びその内容を御説明申し上げます。  修正案の案文は、お手元にお配りいたしてありますので朗読は省略させていただきます。  御承知のように相続税は、被相続人が生存中所得税の課税が及ばなかったことにより蓄積した財産を、相続開始の際に把握し清算すべきであるとするいわば所得税の補完税としての機能と、富の過度の集中を抑制し、高額の財産を相続した者とそのような機会に恵まれない者との負担の均衡をはかるという社会経済政策的な機能を持つものであります。しかるに現在の相続税制で、はたしてこの機能が十分働いているかどうか、はなはだ疑問に思うものであります。たとえば標準家族が十億円の遺産を相続した場合、特殊な控除を除き、通常の諸控除等がすべて適用されたといたしますと、その実効税率は五五%にすぎないのであります。現在、わが国の所得税は利子、配当所得の分離課税、キャピタルゲインに対する非課税措置等種々の資産所得優遇の措置がとられており、税制上の特典や租税の回避等が資産所得者に有利に働くこととなっていることを考え合わせるならば、この実効税率はいかにも低過ぎると申さなければなりません。かかる資産家優遇の税制は断じて放置するわけにはいかないのであります。  以上のような観点から、富の再分配をはかるという相続税の機能にかんがみ、高額の財産を相続した場合の相続税率を引き上げるため、本修正案を提出した次第であります。  次に、その内容を申し上げますと、まず初めに相続税の最高税率の引き上げであります。現在一億五千万円をこえる金額についてすべて最高税率である七〇%が適用されることとなっておりますが、この最高税率を八〇%に引き上げ、一億五千万円をこえ五億円以下の金額については七〇%、五億円をこえ十億円以下の金額は七五%十億円をこえる金額は八〇%とし、新たな税率適用の金額の区分と税率を設けることといたしております。  次に、贈与税の最高税率の引き上げであります。  御承知のように贈与税は、相続税の補完税としての役割りを果たすものでありますが、相続税の最高税率の引き上げに伴い、同趣旨の改正を行なうことといたしております。  以上のほか、修正に伴う所要の規定の整備をはかることといたしております。  以上が修正案の概要であります。  何とぞ、御審議の上、満場一致の御賛成を腸わりますようお願い申し上げます。
  236. 鴨田宗一

    鴨田委員長 これにて両修正案の趣旨説明は終わりました。     —————————————
  237. 鴨田宗一

    鴨田委員長 これより両案及び両案に対するそれぞれの修正案を一括して討論に入ります。  討論の通告がありますので、順次これを許します。荒木宏君。
  238. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 日本共産党・革新共同を代表して意見を申し述べますが、私どもは税金一般については、担税力のある大資産家、大金持ちからこれを取るべきである、勤労者、一般国民には減免をするべきだということをかねてから主張してまいりました。  したがって、いま審理になっております相続税について申しましても、わが党の主張は、額に汗して働く勤労者、国民の標準的な居住用資産、また実際にわが国農業をささえている、食糧需給の供給源になっている中小農民の営農資産、また中小業者の営業資産には課税をすべきではない。税率についても、低額の相続財産の取得者には税率を軽減し、高額の相続財産取得者には高度累進税率を課すべきだ、こういう主張をしてまいりました。  この点から見ますと、社会党ほか二党の御提案にかかる税率についての今回の修正案、これも高額相続財産取得者の税率累進を進めるという点の前進はありますけれども、しかし標準的な勤労者の相続財産や、あるいは相続事業の保護や、あるいは低額相続財産取得者に対しての税率軽減、この点には触れておらず、その意味では部分的でありまして、またその累進度も不十分なものであります。  さらに、政府提出の改正案は、税率改正には全く触れず、基礎控除など若干の引き上げがありますけれども、しかしそれ自体高額財産の相続取得者にも同じ金額の利益を与えるものである、基礎控除ですからその性質上全部に適用になりまして、そういう意味で実質的公平という点に背馳する点がなしとは言えません。またその引き上げ額も地価の上昇率その他から見ますと、まことに不十分なものであります。  しかし、今回の国会での審理で明らかになりました諸点について、政府は今後改善すべく検討を約束しております。さらにそれを促進すべき旨の附帯決議案も予定されております。今後、わが党主張のごとく改善する努力を一そう強めることといたしまして、今回の修正案にも、また政府提出の改正案にも、部分的な改良を含んでいることを考え合わせまして、その意味でともに賛成するものであります。そこで、採決の手続上、税率にかかる修正案に賛成をし、もし否決されたときには、基礎控除等にかかる政府提出の改正案に賛成する、こういう態度を表明をいたしておきます。  なお一言、有価証券の取引税法の改正案について申し述べますと、これについては、まず第一に譲渡所得の課税について論議になりましたように、この点についての抜本的な改正の方向が示されておりませんし、また一種と二種の間の税率の区別がそのまま維持されております。さらにまた、大衆投資家、低額の証券取引者に対する税の軽減と、そして金融機関、大資本の取引に対する重課と比例税、流通税ではありますけれども、そういった意味合いの問題点を解決する方向を含んでおりません。  そこで、わが党としては、これには賛成をいたしませんし、さりとてこの問題について、従来の放置されておった税率を引き上げるという点については、あえて反対することでもありませんので、棄権という態度をとりましたので、一言表明しておきます。
  239. 鴨田宗一

    鴨田委員長 広沢直樹君。
  240. 広沢直樹

    ○広沢委員 私は、公明党を代表して、ただいま議題となっております有価証券取引税法の一部改正並びに相続税法の一部改正法律案、両案に対し反対し、また、両案に対する各修正案に賛成の討論を行なうものであります。  相続税が所得税の補完税として、生存中に所得税では把握できなかった資産に対して課税し、富の再配分的機能を持つものであることは言うまでもないところであります。  しかるに、今回の改正案では、非課税限度の五割引き上げという低額資産についての対策はしておりますけれども、なお農業用資産や零細事業者の事業用資産に対する配慮に欠けており、さらに高額資産家に対しては何ら措置していないのであります。  御承知のとおり、わが国の現行の所得税は、利子、配当所得の分離課税、キャピタルゲインの非課税等、資産所得にきわめて有利な制度となっており、最近の土地、株式等の高騰と相まって富の集中傾向に拍車をかけております。このようなときに、相続税の最高税率七〇%、その実効税率五五%に検討を加えないということは、相続税の機能を解せず、現状に即した対策とは言いがたいのであります。  修正案は、このような点に着目して、相続税の最高税率を現行の七〇%から十億円超八〇%に引き上げ、あわせて相続税の補完的な役割りを持つ贈与税についても一億円超八〇%に引き上げようとするものでありますが、富の再配分の見地からいずれも時宜に適したものと言えるのであります。  以上の理由によって、私は、修正案に賛成の意を表明し、原案に反対をいたします。  さらに、有価証券取引証券取引税法の一部改正については、二十八年以来の税率を二倍に引き上げようとするものであり、一歩前進の方向とは受け取れるものがありますが、しかし、最近における証券市場状況、諸外国における状況、さらに勤労所得と不労所得の不公平な税制の是正の上から、修正案は大幅に引き上げを必要とするものであるとしております。富の再配分の見地からも、時宜に適したものであると思います。  したがって、原案に反対し、修正案にこれも賛成の意を表明するものであります。(拍手)
  241. 鴨田宗一

    鴨田委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより順次採決に入ります。  まず、有価証券取引税法の一部を改正する法律案について採決いたします。  まず、本案に対する修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  242. 鴨田宗一

    鴨田委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。  次に、原案について採決いたします。  原案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  243. 鴨田宗一

    鴨田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  次に、相続税法の一部を改正する法律案について採決いたします。  まず、本案に対する修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  244. 鴨田宗一

    鴨田委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。   次に、原案について採決いたします。  原案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  245. 鴨田宗一

    鴨田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  246. 鴨田宗一

    鴨田委員長 ただいま議決いたしました両案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党を代表し、広瀬秀吉君外三名より、それぞれ附帯決議を付すべしとの動議が提出されております  この際提出者より両附帯決議案の趣旨の説明を求めます。広瀬秀吉君。
  247. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨内容を簡単に御説明申し上げます。  案文は、お手元に配付してありますので、朗読は省略させていただきます。  まず初めに、有価証券取引税法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案について申し上げます。  その第一は、最近の外貨流入に伴う資金の過剰流動性等を背景といたしまして、大企業等が投機的な目的で大口の株式売買を行なう傾向が顕著となっており、これが株価を異常に変動させる実情にありますが、資本市場の経済に与える影響株式市場の秩序の確立、証券民主化等の見地から、その規制を適切に行なうよう配慮すべきであるというのがその趣旨であります。  その第二は、個人の有価証券の譲渡所得課税は昭和二十八年に廃止されましたが、この非課税措置が税の公平感を著しく乱していることにかんがみ、大口の有価証券譲渡所得について、適正な課税が行なわれるよう検討すべきであり、これに関連して無記名もしくは架空名義による有価証券取引を排除するよう一そうの努力をすべきであるというのがその趣旨であります。  次に、相続税法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案について申し上げます。  その第一は、地価等の上昇に伴い居住用資産の評価額が高騰いたしておりますが、地価が高い都市地域であっても、生活の手段である住宅等の最低限度のものは相続税を課することがないよう十分努力すべきであるというのがその趣旨であります。  その第二は、農業用資産及び中小零細事業者の事業用資産を受け継ぎ、実際に事業を継続する相続人に対して、相続税の過重な負担をさせることは、農業用資産等を売却しなければ納付できないというようなことともなり、この結果、事業の継続も危ぶまれることとなる場合もありますので、税の軽減等により、事業の継続を著しく阻害しないよう十分努力すべきであるというのがその趣旨であります。  その第三は、死亡退職金についての相続税の非課税限度額は、現在相続人一人につき八十万円とされておりますが、退職金支給の実態にかんがみ、非課税限度等についても早急に検討を加える必要があるというのがその趣旨であります。  以上が、両附帯決議案の趣旨内容であります。何とぞ御賛成をお願い申し上げます。  以上であります。     —————————————   有価証券取引税法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案) 一、最近外貨流入に伴う過剰流動性等を背景として、大会社等が大口の株式売買を投機的に行なう傾向が顕著となつている。これが株価を異常に変動させている事情を重視し、その規制を適切に行なうよう配慮すべきである。 一、個人の有価証券譲渡所得非課税の措置が、税の公平感を著しく阻害していることにかんがみ、大口の有価証券譲渡所得については、適正な執行の実行性に充分配慮しつつ個人についても課税を行なうよう検討すべきである。なお、これに関連して無記名もしくは架空名儀による有価証券取引を排除するよう一層努力すべきもである。     —————————————   相続税法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案) 一、最近の物価および地価の上昇により、土地、家屋等居住用資産の相続価格が高騰している事情を勘案し、標準的居住用資産、とくに都市地域における最低限度の住宅等に対しては、相続税を課することがないよう充分努力すべきである。 一、また、標準的農業者および中小事業者の事業用資産に対する相続税についても事業の継続を著しく阻害することがないよう充分努力すべきである。 一、なお、死亡退職金の相続税の非課税限度についても、早急に検討を加えるべきである。     —————————————
  248. 鴨田宗一

    鴨田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  おはかりいたします。  有価証券取引税法の一部を改正する法律案に対し、動議のごとく附帯決議を付するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  249. 鴨田宗一

    鴨田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、相続税法の一部を改正する法律案に対し、動議のごとく附帯決議を付するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  250. 鴨田宗一

    鴨田委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。  両附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。愛知大蔵大臣。
  251. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 政府といたしましては、ただいま御決議いただきました附帯決議両件につきまして、その趣旨を十分尊重いたす所存でございます。     —————————————
  252. 鴨田宗一

    鴨田委員長 おはかりいたします。  ただいま議決されました両法律案に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  253. 鴨田宗一

    鴨田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  254. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次回は、来たる三月二日金曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時四十四分散会