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1973-02-21 第71回国会 衆議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年二月二十一日(水曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長代理理事 大村 襄治君    理事 木村武千代君 理事 松本 十郎君    理事 村山 達雄君 理事 阿部 助哉君    理事 武藤 山治君 理事 荒木  宏君       宇野 宗佑君    越智 通雄君       大西 正男君    金子 一平君       木野 晴夫君    栗原 祐幸君       小泉純一郎君    塩谷 一夫君       地崎宇三郎君    中川 一郎君       野田  毅君    萩原 幸雄君       坊  秀男君    村岡 兼造君       毛利 松平君    山中 貞則君       佐藤 観樹君    高沢 寅男君       塚田 庄平君    広瀬 秀吉君       堀  昌雄君    村山 喜一君       山田 耻目君    小林 政子君       増本 一彦君    広沢 直樹君       内海  清君  出席政府委員         大蔵政務次官  山本 幸雄君         大蔵大臣官房審         議官      大倉 眞隆君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省証券局長 坂野 常和君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君        自治省税務局長 佐々木喜久治君  委員外出席者         国税庁直税部長 吉田冨士雄君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 二月二十日  昭和四十二年度以後における国家公務員共済組  合等からの年金の額の改定に関する法律等の一  部を改正する法律案内閣提出第六五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  有価証券取引税法の一部を改正する法律案(内  閣提出第三号)  相続税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二号)      ————◇—————
  2. 大村襄治

    大村委員長代理 これより会議を開きます。  有価証券取引税法の一部を改正する法律案及び相続税法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。村山喜一君。
  3. 村山喜一

    村山(喜)委員 政務次官にまずお尋ねをいたしますが、最近ダウ平均が五千二百円を突破している状態が続いているわけですが、一時は株価が、金融余剰流動性を締めるというような操作をやることによって幾らかは落ちましたが、また最近はインフレヘッジとしての期待を持たれて、株価上昇を続けているようであります。一体いまの株価というのは適切なものとして見ていいのかどうか、その点について、政務次官はどういう考え方をお持ちか、まず承りたいと思います。
  4. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 最近の株価状況はやや過熱している、いまお話しのように、ダウ平均がたいへんな高値を呼び、また変動相場制になってもまだ上がるというような状況などから見まして、どうもよく実態のつかめないような面もあるやにうかがわれるわけであります。全体として見たときに、仰せのように、過剰流動性が確かに株に向いておるという傾向もあるわけでして、安定した株価になっていくということがいいことであろうと思われますが、ただ株は、やはり資本主義経済の中で一つ機能を持って価格形成がされていくわけでありまして、その中に、その過程において不健全なものがありとするならば、それは証券行政の立場でいろいろ指導をしていかなければならないものであろう、かように思うわけであります。
  5. 村山喜一

    村山(喜)委員 ちょっと過熱ぎみだとおっしゃるわけだけれども、適正な価格というのは一体どれくらいを想定しておりますか。
  6. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 私も株式のことについてはしろうとでありますので、幾らくらいが適当であろうかということは申し上げかねるわけでありますが、しかしいずれにしろ、あまり急激に上がったり下がったりするということは、全体から見て避けたほうがいいのではないだろうか、幾らくらいが一番適当であろうかということは、そのときどきの状況にもよることでございましょうし、株の動き方がどういう流れで動いていくかということについても、これもまた見方がいろいろ出てくることであろうと思います。なお詳しくは証券局長のほうから申し上げることにいたします。
  7. 村山喜一

    村山(喜)委員 あとでけっこうです。  この前大蔵省のほうから一年間の株価時価総額増加額資料としていただきましたが、これによると二十四兆三千四百七十億円が一年間に時価総額増加額として出されております。これは一部と二部の合計でございますが、一年の間にまあ二倍になったということは、これはきわめて異常だと私たちは思うわけです。その異常な状態がなぜ生まれたのかというそのことについてどういう分析をしておられるか、それを説明願いたいと思います。
  8. 坂野常和

    坂野政府委員 昨年の正月以来、いわれますように株価が一本調子で上昇いたしまして、時価総額が倍近くになっております。この一番の理由は、法人が株を買った、それから外人も株を買った、この辺が一番の原因であります。その法人の中でも銀行等金融機関商社等事業法人と両方があるわけであります。昨年の一−六月を見ますと個人の売り越しが七億九千七百万株、外人も若干売り越しておりまして一億六千二百万株でありますが、それを、生損保金融機関事業法人がその分を買ったわけであります。生損保が四億九百万株、金融機関が四億七千七百万株、事業法人が四億六千二百万株の買い越しであります。七−十二月になりますと、個人はもっと多く売り越しになりまして十一億六千万株の売り越しであります。これに対しまして、生損保の買い越しが六千四百万株、金融機関の買い越しが五千二百万株、このほうは上期に比べまして非常に鎮静化いたしたわけであります。これは銀行局並びに日本銀行からのそういった指導も出たわけであります。ところが、事業法人のほうはますます勢いがふえまして、下期においては八億一千九百万株の買い越しということになっております。この一月に入りましても同じような状況でありまして、金融機関のほうはあまり買い越しておりませんけれども、事業法人はやはり相当買い越しを進めておる。これは普通いわれておりますいわゆる過剰流動性事業法人手元にたくさんの資金がだぶついておりまして、それが土地や株に向かっておるといわれておりますが、まさにそういった傾向がここに出ておるわけであります。したがいまして、これは戦後初めて日本法人に非常な手元資金が集まりまして、それが株式市場をこういうふうに活発化せしめたということであろうかと思います。
  9. 村山喜一

    村山(喜)委員 事業法人過剰流動性が高まっていく、それはなぜそういうような姿が生まれてきたのですか。
  10. 坂野常和

    坂野政府委員 きっかけはやはり外貨流入と申しますか、輸出代金流入であったと思います。しかし同時に、長い間の好景気で、わが国事業法人体質が著しく改善といいますかよくなりまして、手元資金も非常に高まってきておったわけです。また自己資金、いわゆる利益をもって減価償却いたしましたり内部留保をいたしますこの自己資金比率が非常に高まってきておった。そこへ外貨流入する。しかも金融機関からの貸し出しは、不況のときから好況に移ったときとずっと続けまして、前年の二割ないし三割というような非常な勢いで伸びておったわけであります。そういうことで、ただでさえ金融的にだぶついているところへ、銀行からの貸し出しも非常に多かったということがその理由になったかと思います。
  11. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで金融機関株式取得に対する自粛要望、そういうような行政措置金融機関にはとられた。一方、事業法人についてはどういう手が打たれたのですか。
  12. 坂野常和

    坂野政府委員 本来株式取引は自由でありますので、事業法人株式を持つこと自身がよくないというような制限をすることは不可能といいますか、やるべきことではないと思います。またやられてもおりません。ただ、時価発行に関係いたしまして、時価発行のあり方というところで、事業法人体質、実績、事績、業績でございますね、そういうことを勘案して、時価発行を引き受けます引き受け証券会社がそういう選別をしていくというようなことはやっておるわけです。
  13. 村山喜一

    村山(喜)委員 証券市場に対して、いまおっしゃるように時価発行をチェックするように行政指導をなさったと聞いているわけですが、その効果はどういうふうにあらわれてきておりますか。
  14. 坂野常和

    坂野政府委員 本年の下期の時価発行額が上期に比べまして著しく伸びておったわけであります。これが来年の上期と申しますか、この四月以降どうなるかということが一つの問題であったわけでありますが、去る二月の十六日の日に、引き受け四社が四月以降の時価発行をどの会社を該当せしめるかというそういう会合をやりまして、その結果、四−六月においては一−三月のペースよりもやや落ちた発行額になりそうだということで、その引き受け会社申し合わせが済んだというふうに聞いております。
  15. 村山喜一

    村山(喜)委員 現在のところは効果が即時にあらわれているとはあまり受けとめられないわけですが、来年度のその四月から六月の第一・四半期においては、そういうようなことをやりましょうという程度にとどまっているわけですか。というのは、私は時価発行増資基準というものをもう一回厳密に適用し直すべき段階に来ているのではないかと思うのですが、そういうような増資基準等についての基準変更をお考えにはなっていないわけですか。
  16. 坂野常和

    坂野政府委員 先ほどお話ししました、二月に入って新年度時価発行をどうするかという会合が行なわれたその会合で、新しい計画に入ることのできる会社は新しい基準で見直されたわけであります。  もとの基準と新しい基準とどういう点が違うかと申しますと、その発行会社の収益の状況資本状況増資の間隔、親引け比率ディスカウント率あるいはその会社資金計画資金繰り状況、そういうものを見まして、かつ、アンダーライター同士があまり激しい競争をいたしますと過度の時価発行になりますので、それも防止するというような申し合わせをいたしまして、いままでの基準よりもかなりきびしい基準で見直して新年度時価発行増資を見ていく、こういうことになったわけです。
  17. 村山喜一

    村山(喜)委員 新しい基準と古い従来の基準との中でどの点をどのように改正をしたかという資料をお出しいただきたいと思いますが、いいですか。
  18. 坂野常和

    坂野政府委員 これは証券会社申し合わせでありまして、行政措置ではございません。したがいまして、申し合わせの中には、発行会社に対して発表した分もありますが、自分たち申し合わせとして外へは出していない部分もありますので、発行会社に対して示した基準は提出できると思いますけれども、四社あるいはアンダーライター間で取りきめておる内規につきましては一般に公表しておらない。これは一種の外へ出さない営業の部分というふうにも解釈されますので、その部分は提出できないかと思います。
  19. 村山喜一

    村山(喜)委員 基準として示したものとその申し合わせによる協定との間に著しい懸隔があれば別ですが、内容的にさほど大きな違いはないというのであれば、大蔵省が示した基準を出していただきたいと思います。  ということは、いまの増資やり方を見ておりますと、どうも親引け割合があまりにも大き過ぎるのじゃないかという印象を抱くのが第一点ですね。それと、系列の金融機関との結びつきの中で、売れなければ金融機関のほうがそれを引き受ける、抱きかかえるというような形をとるものがきわめて多いように見受けるわけです。そういうようなものをチェックしていかなければいけないし、また、東京証券市場のシェアというのが大体八〇%ぐらいだと思うのです。ところが、東京転換社債発行して、そしてまたあらためて公募増資を一年のうちに今度は大阪のほうでやる、あるいは名古屋でやる。そういうようなことによって、証券市場からそういう自己資金調達をうまくすり抜けて年に二回もやっているような事例があると私は思うのです。それは自己資本比率を高めるためにはきわめて有効な措置でありますが、そういうような形の中において、それが生産のほうに向かわないで、そういうふうに調達をしたものが株をつり上げるために使われたり、あるいは土地のほうに向いたりしたんでは、そういうことを許している状態がおかしいと思うのです。ですから、そういろ面についての改正をこの増資基準改定でやられたのではなかろうかと思うのですが、やっていらっしゃるのかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  20. 坂野常和

    坂野政府委員 言われる点がまさに時価発行なり転換社債発行問題点であり、また世の中一般の批判でもあるわけであります。そこで、新基準におきましては、先ほども触れましたように、その会社が一体その資金を何に使うか、それから会社自身は現在資金繰りはどうなっているか、かなり手元流動性があるのにさらにそういった資金を集めようとしているのか、あるいは設備需要その他長期資金のほんとうの需要というものがあって、早急に資金調達しなければいかぬという状況になっているのか、それを調べるということはもちろん新基準重要項目一つであります。また、親引け比率につきましては、従来放置されておった時期におきましては七割ないし八割ということで、市場に出る公募株式が二〇ないし三〇%という著しく少ない状況にあったわけでありますけれども、十二月にこれも新しいやり方で、とりあえず五〇%以下に押えるということで実行しております。新年度におきましてはさらにこれを圧縮いたしまして、四〇%以下に圧縮するという方針で臨んでおります。
  21. 村山喜一

    村山(喜)委員 その親引けの分はわかりましたが、大量公募の問題については、年一回という増資基準がありますね。それが市場を変えたら触れないというような、きわめてゆるい基準がありますね。そういうような措置はどうされますか。
  22. 坂野常和

    坂野政府委員 増資基準は年一回であって、これは東京でやったり大阪でやったりということは許されないわけでありますが、言われます意味が、東京上場している会社増資を行なう、その後その会社大阪なり名古屋上場するということになりますと、その大阪なり名古屋上場いたしますときに、ごく少数でありますけれども、新しい公開株をそこで要求されます。そういう取引所上場規則になっております。と申しますのは、一定の浮動株が必要でありますが、その浮動株の名簿が前期でありますと、半年あるいはそれ以上たっておりますと、はたして浮動株主がどれだけいるかということがはっきりいたしません。そこで取引所といたしましては、新しくそこで若干の公開株、株の公開を要求しております。そういうときに増資が行なわれるということはあるかと思います。しかし、時価発行の大規模なものを続けて行なうということは、いまのアンダーライター基準では許されないということになっております。
  23. 村山喜一

    村山(喜)委員 では具体的な問題を指摘しますが、これは一月二十二日の日経に出た記事ですが、間組が四十七年九月の末に千二百万株の公募をしたわけです。そしてことしの四月二日に、今度は五百万株の公募増資を、東京ではなくて大阪名古屋市場上場をする。運転資金調達するのがねらいだし、この株式の半分は親引けということで新しい基準に適合しておりますが、大量公募は年に一回という増資基準に比較をしたらそれには触れる。しかし、他の市場上場する場合には特例として認めるということによりまして、これは特例として認めておるのじゃありませんか。
  24. 坂野常和

    坂野政府委員 ただいまの具体的な間組の場合は、先ほど御答弁申し上げましたその案件でありまして、昨年の九月の公募はいわゆる時価発行であります。それから本年の四月に行なわれますものは、大阪名古屋に新しく上場いたしますために、二百五十万株ずつ新しい公募を要求されまして、これが計五百万株ということであります。これは、東京だけに上場されておったものを大阪名古屋市場上場するという特別の手続に伴う増資であります。
  25. 村山喜一

    村山(喜)委員 いまの証券市場における、まあ東京大阪、これで大体何%ぐらいですか。そのほかの市場比率はどういうことになっておりますか。
  26. 坂野常和

    坂野政府委員 いまちょっと正確な数字を持っておりませんが、八〇ないし八五ぐらいかと思いますが、いま調べます。——四十七年十二月現在で東京が七二・四、大阪が二二・六でありますので、九五になります。
  27. 村山喜一

    村山(喜)委員 その他が五%ですね。で、これは名古屋をはじめ全部で八カ所ですか。
  28. 坂野常和

    坂野政府委員 名古屋、京都、広島、福岡、新潟、札幌であります。
  29. 村山喜一

    村山(喜)委員 私は、こういうふうにして、まあ新しいお客さんを開拓をして事業の発展をはかるのだという会社側趣旨はよくわかるわけです。新しい株主公募する。ところが、いまの増資基準からいえば、これは時価発行で九月にやったばかりのものが、新たにそういうような名古屋で二百五十万株も新規増資をされる、こういうような形になってきますと、一体いまの増資基準というもののそういうような過剰流動性事業法人に持たせるのをできるだけ押えようという趣旨からいえば、こういう一種特例をつくっていけば、しり抜けになってくるのではないか。これによって、行政指導といいながら、事実上はそういうようなことをやるのを押えることができないのじゃないか。こういうことになるおそれはないのですか。こういう特例の占める割合はどういう状態になっていますか。
  30. 坂野常和

    坂野政府委員 その特例はごくわずかでありまして、全体のうちのまあ五%にはならない程度であります。  それから、これは特例しり抜けになるのではないかという御質問でございますが、金額と申しますか株数が非常に制限されております。これは上場の際の最低必要公開株数に限定されておりますので、そう大きな株数になるということはない。一般公募株数といいますか、時価発行の際の公募株数に比し少ないということであります。また、これをやってはいかぬということにいたしますと、他市場新規上場することができないということになりまして、これは企業証券活動の上では著しく制約されるということになりますので、そういうわけにもまいらぬというふうに考えております。
  31. 村山喜一

    村山(喜)委員 特例が五%程度だということでありますので、これ以上追及はいたしませんが、時価による公募増資転換社債発行状況はどういうふうになっておりますか。
  32. 坂野常和

    坂野政府委員 公募増資は、四十七年度八千七百三十七億円、これは、まだ二月、三月の予定分が入っておりますが、八千七百三十七億円であります。転換社債発行は、四十七年度、これも予定を含み、二千八百八十億円となっております。
  33. 村山喜一

    村山(喜)委員 そのうち時価発行増資分が、全額公募の分が、幾らありますか。
  34. 坂野常和

    坂野政府委員 五千三百三十億円であります。
  35. 村山喜一

    村山(喜)委員 四十六年度はどういう状態でしたか。
  36. 坂野常和

    坂野政府委員 先ほどの八千七百三十七億円に該当いたします、すなわち公募増資額は九百九十億円でありました。時価発行五千三百三十億円に該当いたします金額は、二百六十六億円であります。
  37. 村山喜一

    村山(喜)委員 時価転換社債幾らですか。
  38. 坂野常和

    坂野政府委員 四十六年度は八百五十億円であります。
  39. 村山喜一

    村山(喜)委員 そういたしますと、公募増資総ワクで見た場合には、大体四十六年度の約九倍、それにそのうちの時価発行増資分が、これは二十倍、それから時価転換社債の場合が三倍余り、こういう状態になっておりますが、これは将来どういうふうにしていく行政指導方針をお持ちですか。先ほどもお話がありましたように、できるだけこれを押えていくんだ、増資基準等をきびしくやっていくんだという方向でございましたが、将来はこれを展望をしながらどういうふうに持っていったらいいというようにお考えなんですか。
  40. 坂野常和

    坂野政府委員 ただいまこの増資基準等で一応制限的に発行を行なっていこうということを考えておる理由が二つございます。  一つは、株式市況がかなり高い水準になっておりまして、その高い水準のもとでたくさんの新規証券発行された場合、その新規証券信頼性というものがゆらぐことがないだろうかという心配であります。  第二は、わが国は長い間こういった新しい発行市場というものがほとんど行なわれないと申しますか、そういった機能が発揮できない状態にあったわけでありますが、最近のこういった金融情勢から、初めてこういう新しい資金調達手段が生まれた。それにいわば殺到といいますか、急にそこへみんなが寄っていって、非常に急激に多額のものが発行されるということになりますと、制度として失敗いたすおそれもあります。  その二点から、これをただいまのところ制限的に行なっていく、そうして市況も落ちつき、あるいはこの新しい制度に対して、発行者側も、引き受け会社も、あるいは投資家もだんだんになれてくると思いますから、なれてくるようなときに、徐々に分量をふやしていく。本来企業資金調達としては非常に効率的でもあるし、また非常に機能的な手段でありますので、これを健全な姿で発展させたい。したがって、これを制限しているのはやはり現在の状況から臨時的な考え方であるというふうに考えております。
  41. 村山喜一

    村山(喜)委員 臨時的な措置として押えていく、将来は自由にしていくのだ、落ちついてから、ということでございますが、最近の株価の指数の中でどうも私たちが懸念をしておるのは、いわゆる新規上場をする場合とか、あるいは時価発行をめぐりまして、架空の価格をつけて株価操作というのですか、これによって、公開株数を少なくすればこれは高く売れるというようなことによって値づけをする、そういう株価操作に見られるようなものはございませんか。
  42. 坂野常和

    坂野政府委員 そういうことがないように取引所も監視しておりますし、また私どもも引き受け証券会社を通じましてそういうことがないような監督をいたしております。しかし現実には、言われますように価格が急騰するという場面がかなりたくさん実例があります。これはそのつど徹底的にその法律違反行為がないかということを調べておりますが、やはり大きな需給関係で値段がそういうふうに上がることはありましても、そこでいわゆる証券取引法に違反した操作が行なわれていたという事例を見い出したものはいまのところありません。
  43. 村山喜一

    村山(喜)委員 時価発行に際しまして、値づけが高かったために売れなかった、そこで買い取りをした事例というのは前松下電器の場合ありましたが、そのほかの場合ありますか。
  44. 坂野常和

    坂野政府委員 その後該当はありません。
  45. 村山喜一

    村山(喜)委員 こういうような形の中で株価が異常な上昇をしていく、過剰流動性に基づく株価上昇というものが見られる。しかもその間に、先ほどの説明のように事業法人の手に株式が集中していく傾向が出てきているわけですが、現在の株式の所有を法人個人別に見た場合には、どういう変化値があらわれておりますか。
  46. 坂野常和

    坂野政府委員 個人の持っておる株式数が次第に減ってまいりまして、昭和四十年当時におきましては外国人を除きます個人は四四・八六%でありましたが、これが順次減りまして四十六年度末、昨年の三月末におきましては三六・九四に落ちております。一方、法人は、金融法人事業法人ともに非常にふえておりまして、たとえば金融機関は四十年当時二六・二八でありましたが、四十六年度末は三二・五四、一般法人は四十年当時二一・二四であったものが、四十六年度末には二五・〇八というふうに持っておる株数がふえてきております。
  47. 村山喜一

    村山(喜)委員 いま言われたのは四十六年度末ですか。四十七年度末で見た場合どうなりますか。
  48. 坂野常和

    坂野政府委員 この統計は非常に時間がかかりまして、四十七年度末はまだその時期も来ておりませんが、四十七年度末はございません。
  49. 村山喜一

    村山(喜)委員 私が資料としてもらいましたのは四十七年三月末現在の資料なんですが、法人金融関係の法人一般事業法人と合わせて六三・二ですね。それから個人が三六・六。先ほどはちょっと三六・九四という数字を言われたのですが、これはどちらが正確ですか。
  50. 坂野常和

    坂野政府委員 いま手元に数字がございませんので、後ほど御報告いたします。
  51. 村山喜一

    村山(喜)委員 こういうような形の中で事業法人が占めるウエートというのが六三・二%。この傾向はまだこれからずっと続いていくだろうと思われるわけです。そうなっていきますと、金融機関事業法人との間の株の持ち合い、あるいは企業企業との株の持ち合いという形のものが始まっているわけです。それがどういうふうになっているのか。株式というのは自然人が結集して株式会社をつくるというのが昔想定をした株式会社の姿なんですが、そうではなくて今度新たに法人同士が持ち合いをするそういう特殊な株式会社が生まれてきた。自然人は排除されるというのですか、そういう姿のものが出てきた。  そういう新たな時点において、これからのあり方という問題についてはいろいろと検討をし直さなければならない問題が出てきているんじゃないかと私は思うのですが、そういうのがどういう比率に、どういう状態になっているか。
  52. 坂野常和

    坂野政府委員 統計でそういう持ち合いの数字はありません。ただ言われますように、そういう傾向が強くなっていることは事実であります。またそういうことになってくればくるほど、やはり株価というものは非常に大切なものになっていくわけであります。その持ち合っている証券の信用力というものが落ちないように市場をしっかりしたものにして、そうして価格信頼性を高めていかなければならないというふうに考えております。
  53. 村山喜一

    村山(喜)委員 私はこれはやはり調べていかなければ——そういう調査をした資料がないとおっしゃるのですが、企業の所有、株式会社の所有と支配の形態をめぐりまして、いままでとは事情が完全に違うような姿が出てきたわけですから、そうなると、会社支配というのを金融機関が支配をする、あるいは親会社が系列会社を支配する、そういうような大きな、株式会社ではなくて、一つ事業団としてのそういう形成をしてきているのではないだろうかと思うのですよ。それは利益の部面ももちろんありますが、今度はそれから出る弊害の部面がありますね。最近の会社乗っ取りというような問題はいろんな形で巧妙に行なわれて、そして集中化が進んでいくような形態があらわれているわけですが、そういうのはこれは自然の姿だということであなた方は放置をされるつもりですか。
  54. 坂野常和

    坂野政府委員 それは国民経済全体として非常に重要な問題だと思います。ただ、私どもの行政の守備範囲から少しはずれる問題でありますので、私どもとして、言われますような株式の持ち合いがどういう現状にあるかということは調査いたさねばならぬと思っておりますが、それ以上、そこにどういう政策を立てていくかということは、私どもの局の守備範囲外の問題かと思います。
  55. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、これはやはり政務次官にお答え願わなきゃならない問題だと思うのですが、そういうような企業企業との持ち合い、それから金融機関事業法人との持ち合い、そういうような中において系列化の傾向というようなものを知らなければ、それがまた正しいかどうか、正しくないとするならば、どういうふうにその民主化を進めていくべきか、そういうような方向を政策的に持たなければならないと思いますが、山本政務次官はそれについてどういうようなお考えをお持ちですか。
  56. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 本来、会社はそれぞれ独立をしてそれぞれの目的の事業活動をすべき性質のものであろうと思います。いまお話のような事業団的なものは、そういう観念から相当はずれたものであり、そういうものがどういう経済活動をするか、国民経済全体の上においていろいろの弊害が出てまいるということであれば、その時点でまたひとつそれぞれの行政指導なり、あるいは規制というものを考えなければならないものであろう、かように思います。
  57. 村山喜一

    村山(喜)委員 その実態は調査をするということにしていただけますか。
  58. 坂野常和

    坂野政府委員 これは非常にむずかしい作業でありますので、どういうふうにすれば一番的確につかめるかということを、まず検討してみたいと思います。
  59. 村山喜一

    村山(喜)委員 では、角度を変えてお尋ねをしますが、金融機関が三二・五四%も株を保有をする。これは自由ではありましょうけれども、その傾向がこれから増大をしていくということは望ましいことですか。
  60. 坂野常和

    坂野政府委員 これも証券行政の守備範囲外の問題でありますが、日本銀行等におきましては、やはり金融機関がある程度以上の株式を持つということは好ましくないということで、それを制限するような指導が行なわれております。
  61. 村山喜一

    村山(喜)委員 今度の円対策に関連をして、政府のほうから行政通達が行なわれて、確かにそういうような指導をされているやに聞くのですが、そういうようなのは好ましくない。じゃ、どの程度持っておれば好ましいのか、その政策判断の基準をどこに設定をしているのか。これは証券局長ではなくて銀行局長のほうからの答弁になるのでしょうが、金融機関株式取得の自粛を要請をしたというように新聞で出ておりましたが、それはどういうような中身のものですか。
  62. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 いま証券局長が御答弁申し上げましたように、金融機関があまりたくさん株式を持つということについてはたいへん——たいへんといいますか好ましくない傾向である。そこで、いろいろな指導をしておるわけでありますけれども、しからば、それが政策判断としてどの程度のものであれば許されるかということになってまいりますと、一つの抽象的な基準を、あるいは銀行局あたりは持っているのかもしれませんけれども、抽象的な基準であればともかく、具体的にはなかなか立てにくいのではないだろうか、こう思うのであります。  なお、私もその詳細については承知をいたしておりませんので、後ほどでも担当の者からお答えをさせたいと思います。
  63. 村山喜一

    村山(喜)委員 金融政策を、インフレに対処するための政策として引き締めをするということで、一連の措置がずっととられてきているわけですね。その中で預金準備率の引き上げの問題もあるし、あるいは窓口規制の問題や、手形買い取りの規制なり、あるいは金融調整の措置なり、あるいは土地融資の抑制の局長通達とか、あるいは金融機関株式取得自粛要望というようなものが出されているわけです。それはやはりどの程度のものが基準として考えられるのかということの説明がなされなければ、何のために通達を出したのかということになるわけでしょう。これは大蔵省として通達を出しているのじゃないですか。政務次官、それの通達の中身は御存じないですか。
  64. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 私も最近大蔵省に参りましたので、最近のことは何でございますが、しかし、前のことになりますと私もつまびらかにしない点がございます。一つ一つの政策は、具体的な判断に立っていま仰せられたようないろいろな措置をやったことでありまして、それらを一連の金融政策として、どういうふうな具体的な政策判断に立ってやったかという問題になってまいりますと、結局は、やや抽象的になりますけれども、その金融機関がそうした金融機関としての正常な活動範囲を逸脱するような、ややはずれてくるようなことにならないように、日本の経済全体での金融の役割りを正常に果たしていけるような、そして国民経済が伸びていけるような、そういう観点でやられたものであろう、かように思うわけであります。
  65. 村山喜一

    村山(喜)委員 それはおっしゃるとおりですよ。だけれども、あなたのおっしゃるのは抽象的ですよね。だから中身がない。中身を示してもらわなければ、一体、そういうような行政指導というものが的確であるのかどうかということについて、われわれも納得はできないわけです。一般論としてはあなたのおっしゃるとおりだ。その問題はそれじゃ保留しておきますか。
  66. 大村襄治

    大村委員長代理 いま銀行局長を呼んでおりますから、来ましたらひとつその節に……。
  67. 村山喜一

    村山(喜)委員 その問題はしばらく保留をいたしまして、前回、金融引き締めをやりまして株価が下がりましたね。そのときに泣いたのは大衆投資家である。機関投資家の場合には売り逃げて、それで大きいものはもうけて、そうして損害を受けなかったということが報道されておりましたが、当時はどういうような状況だったのですか。
  68. 坂野常和

    坂野政府委員 一月の三十日から連続五日間、ダウ指数にいたしまして六三三の市況暴落を見たわけでありますが、この間、個人が若干の売り越しになっております。したがいまして、その取得原価がどうであったかはわかりませんけれども、中には取得原価よりも下回った価格で売った個人もあるのではないかというふうにいわれております。また証券界の中での話によりますと、若干そういった個人があったということであります。しかし、法人はすべて売り逃げ、個人はすべて損したというよな一般的なことではなかったかと思います。
  69. 村山喜一

    村山(喜)委員 どうもいまの説明では、あなたも実情をあまり的確につかんでいらっしゃらないようですが、もっと詳しくそのときの状況を数字で示してもらいたい。
  70. 坂野常和

    坂野政府委員 一月の個人の売り越しは、株数にいたしまして一億一千九百万株であります。一月の最初のうちは個人は買い越しでありまして、十六日から二十七日までの買い越し額が三千三百万株であります。そのあとで売り越しに転じて、月末には一億一千万株の売り越しとなっておりますので、個人がこの短期間の間に、かなりの売り越しをしたということであります。二月の十日までを見ますと、個人の売り越しは九百万株でありまして、これはこの期間、二月に入りますと大きな金額の売り越しはとまった、そういう数字になっております。
  71. 村山喜一

    村山(喜)委員 どうもその数字から見ますと、一番値が下がったときに大衆投資家はあわてて売って、そうして最近また値が上がってきたので幾らか買い戻したというような姿ですね。  法人関係はどうなっておるのですか。
  72. 坂野常和

    坂野政府委員 一月一ぱいでは事業法人の買い越しが一億六千五百万株、生損保が二千七百万株、金融機関が千九百万株であります。二月に入りまして、十日まででありますが、金融機関は買い越しゼロであります。ちょうどとんとんということ。生保、損保が百万株、事業法人が三千三百万株の買い越しとなっております。
  73. 村山喜一

    村山(喜)委員 だから、安いときに法人関係は買いに出て手に入れた、こういうようなことが数字の上で明らかになっていますね。だから、確かに大衆が泣いて、そうして大きなものはもうけるというような仕組みになってしまっているということをやはり指摘せざるを得ないわけですが、そういうふうになってくると、もう株というものは大衆には縁のないものだ、そしてこれは大きな法人や、そういうような投機性の資金を取り扱うものが利用するのが証券市場だ、こういうようなふうにもなりかねませんね。こういうふうな状態は、これは株というのは大体そういうような性格のものだといえばそれまでですが、証券市場の民主化という立場からいって、決して好ましいことではないと思うのですが、そういうような状態にあるときに、行政指導に当たるあなた方としては、どういう指導をされるわけですか。
  74. 坂野常和

    坂野政府委員 これは非常に重要な問題でありまして、昨年、法人営業と申しまして、証券会社が大きなロットで株を集めて法人にはめ込む、あるいはAの法人よりBの法人へそれを移すというような、そういう商いを非常に活発にやったわけであります。これは証券会社の目先の利益としてはたいへん利益があがる話なんですけれども、やはりそれによって浮動株を狭めていく、個人株主を薄くしていく、そういうことは長い目で見て証券市場のためにならない、証券市場の健全な発展を阻害する行為だということで、私どもは、主として大きな証券会社でありますが、昨年一年間に六回ほど厳重な注意をいたしております。また取引所におきましても、あるいは証券業協会におきましても、同様の趣旨のことを何回も会員に通達いたしております。今年に入りまして言われましたような現象が一部にあらわれ、やはり証券界のあり方というものに対して、かなり鋭い批判が加えられております。私どもとしましては、この株価の高いときにいますぐ個人に株を持たせるということは、一方で危険もありますので、それは問題と思いますけれども、やはり長い目で個人投資家を育てていく、そうして目先の利益に走って法人営業だけをやっておったのでは市場を狭める、そういう指導原理で、事あるたびに証券会社に対してそういうことを監督してきたという現状であります。
  75. 村山喜一

    村山(喜)委員 証券会社法人はめ込みをやって品薄の状態にしておいて、品薄になれば需要と供給の関係で値が上がりますから、そうして値をつり上げておる。こういうような状態になってくると、いま証券会社の経理内容は一体どういうふうになっておるか、これをお尋ねしないわけにはまいりません。
  76. 坂野常和

    坂野政府委員 四十七年の九月決算のときの状況で、経常収支が千二百三億円、これは全証券会社の合計の数字であります。税引き後の利益が七百十九億円、前年は四百七十七億円でありました。純財産額が前年四千八十三億円が六千四十億円、こういう状況になっております。
  77. 村山喜一

    村山(喜)委員 それは証券会社にもいろいろありますから、中身によってアンダーライター業務、あるいはディーラー業務、ブローカー業務というそれぞれの業務を引き受けておるわけですから、上位七社、これがどういうような状態になっているのか、資料としてお出しいただけますか。数字はお持ちでしょう。  いま資料をお出しいただく前に、銀行局長見えておりますからお尋ねいたしますが、金融機翼が株式の取得を自粛するようにという銀行局長通達をあなたがお出しになった。これは三二・五四%も金融機関が株を保有するといち状態を迎えて、そういうような、金融資産というものの運用にあたって、株の値上がり利益というものを収入の中に取り入れるというやり方はまずいだろうということで通達はお出しになったのだろうと思うのだけれども、それでは適正なあり方というものはどこを目ざしてそういう通達をお出しになり、それによってどういう効果が生まれてきているのか、説明願いたい。
  78. 吉田太郎一

    ○吉田(太)政府委員 銀行株式投資につきましては、もう先ほどから御指摘があったと思いますが、四十六年の下期、特に昨年の一月以降急激にふえてまいっておるわけでございます。これはいろいろの理由があろうかと思います。たとえば銀行間の持ち株競争を激化している、あるいは株式公開買い付けというような関係上、経営者が安定工作をするというような影響もあったかと思います。ただ、私どもいろいろ調べてまいりました過程におきまして、昨年の秋以降を契機として、だいぶこれは鎮静化してきておるように見受けておるわけでございます。現在の全体の預金の中で株式をどのくらい持っておるかということでございますが、大体全国銀行の場合に、預金の三・七%という実態になっております。しかし、とにかく取引所などを通じて調べてみましても、問題は、金融機関が持っておるということ以上に、金融機関の融資が株式投資に向かうという面のほうがむしろ非常に大きいのではないかということを私どもは考えておりまして、日本銀行と連絡をとりながら、日本銀行の窓口指導の中で、銀行の融資を株式投資の関係ということでなかなか押え切れないわけですが、少なくとも銀行が株を持つそのシェア競争などをしないような具体的な指導をしておるというのが実態でございます。なお、しかし何といいましても、基本的にはこのごろよくいわれております流動性の過剰状況を是正していくという観点から、金融を締めていくということが前提でございます。あるいは、具体的には商社のほうへいく金をコントロールするという意味から、この間からやっております企業別の手形の限度額を設定するというような形で、株式市場に金が回る、そういう形での融資が行なわれることを防ぐということにむしろ主体を置いておるというのが現状でございます。  それから、先ほど銀行に対してどういう指導をしておるかということでございますが、これはいろいろな会合の機会をとらえまして、自粛あるいは自主的にひとつ調整をするようにということを申し入れております。
  79. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 議事進行。きょうは大蔵委員会だけやっておるのだから、定足数とかなんとか言わずに、大体自民党は九割くらい出てこなければ、もう委員会やらぬほうがいいですよ。もう少し出席をちゃんとして、きょうは予算委員会とこの委員会だけでしょう、おそらく。それでこんな出席でやれなんというのは……。この委員会だけなんだから、もうやめたほうがいい。どうですか。
  80. 大村襄治

    大村委員長代理 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  81. 大村襄治

    大村委員長代理 速記を始めて。  午後一時より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午前十一時四十九分休憩      ————◇—————    午後一時十四分開議
  82. 大村襄治

    大村委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。村山喜一君。
  83. 村山喜一

    村山(喜)委員 これは質問が前になされておるかもしれませんが、現在所得税法の施行令の二十六条によります課税の実態の捕捉率はどういうところまできているわけですか。
  84. 吉田冨士雄

    ○吉田説明員 個人の有価証券の継続的取引にかかります株の譲渡益の調査につきましては、われわれできるだけ努力してやっておるわけでございますが、前にちょっとお話ししましたように、五十回、二十万株という線を一応引きまして、法令の線でやっているわけですが、そのうちで二十万株のほうの把握は比較的楽でございますが、五十回という回数、これが御案内のように一回一回は委託契約の回数でやっておるわけでございまして、その把握がなかなか困難な場合がございますが、できるだけ努力してやっております。  それからもう一つは、有価証券の中にはかなり架空名義、仮名のものが現実として存在しておりますが、これの解明というものにかなり努力をいたしております。総体的な計数につきましては、税務統計では所得別、所得の種類別にしか税務統計をとっておりませんので、その場合には、事業所得あるいは雑所得の中に入るわけでございます。その細分としての統計はとっておりませんので、ちょっとわかりかねます。
  85. 村山喜一

    村山(喜)委員 件数は幾らですか。
  86. 吉田冨士雄

    ○吉田説明員 そのしさいでございますが、調査あるいは申告の件数、あるいは所得の内訳両方とも統計としては出てきておりません。
  87. 村山喜一

    村山(喜)委員 その件数もわからないというような状態で、ときたま、あいつがよけいに株でもうけているそうだというのを聞き込んで調査をしてみると該当した、それをつかまえて課税をさせる、新聞に出るというような程度のものですか。
  88. 吉田冨士雄

    ○吉田説明員 株のかなりの売買があるということで、いまおっしゃいました探聞によって調査をするというのがかなりございますが、それ以外にも別途預金を調べまして、いろいろそのソース等を調べた場合に、これは株の譲渡益で——あるという、そういう入り方の調査もございます。
  89. 村山喜一

    村山(喜)委員 そういうような調査の方法で何件四十六年度、四十七年度において、これを該当者としてとらえているのですか。
  90. 吉田冨士雄

    ○吉田説明員 先ほど申しましたように、そういう計数としては国税庁としてとっておりません。なかなかまた実際問題としてとりにくいものですから、現在のところでは持っておりません。
  91. 村山喜一

    村山(喜)委員 山本政務次官、そうしたら、ほとんどこれは捕捉をしていないということですね。だから完全に頭のいいものは抜けている。だから、法律はあるけれども実効性がない、何のためにこの法律をつくっているのかわからぬ、こういうことを指摘をせざるを得ないわけですが、そうですか。
  92. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 この二十六条によりますところの継続的取引の問題につきましては、昭和二十八年に譲渡所得の非課税制度がスタートいたしました当時から、必ずしも法令上明確ではございませんでしたが、継続的に株を売ったり買ったりするということであれば、これは本来事業所得と考えるべきである、それを事業というに至らない程度であっても、いわゆる雑所得として考えるべきであるということで、当時から国税庁の通達等によりまして、どこから事業所得と見るか、どこから雑所得と見るかという回数、金額基準は、現在とは若干違っておりましたが、当時から制度としては、したがってたてまえとしては課税すべきものということで、今日に至っておるわけでございます。  その場合に、御指摘のように、非常に制度と実際の運用とがうまくいってやないという事実があるわけでございますが、それはまず第一に、残念ながら他の所得と比べますというと、この種の所得についての申告状況はあまりよくないといわざるを得ないわけでございますし、また同時に、調査につきましても、ただいま直税部長がちょっと触れましたように、調査の端緒をなかなか把握しにくいということもございまして、思うようにいっていないということでございます。  そこで、昭和二十八年に株式の譲渡所得が非課税になりましてから今日まで、税の制度の問題といたしましてはこのままでいいというふうに考えているわけではなく、やはり株の譲渡所得の非課税が、所得税におきますところの総合累進の精神からいいますと、好ましくないということがいわれるのは間違いないわけでございます。そこで、四十八年度の税制改正の際にも私どもは、株式の譲渡所得の非課税は一つ問題点であるという角度で研究もいたしましたし、その際一つの手がかりは、御指摘の二十六条の継続的取引の現行制度を若干とも実効あらしめるように直す方法はないかということも、研究課題の一つとして、ごく事務的ではございますが検討はいたしました。しかしながら、この問題は基本的に、株の取引そのものが、市場を通ります場合でも相対の場合でも、いわゆる取引関係が表になかなか出にくい性格の経済行為でございますので、現在の段階ではいまだ、この制度を何らかの意味において強化することによって、一方において公平を維持しながら、なおかつ相当の成果をあげ得るような制度に切りかえるというところまで検討が至らなかったという次第でございまして、私どもといたしましては、問題のあることはよく承知しておりますし、今後とも検討を続けなければならない重要な問題であろうと考えております。
  93. 村山喜一

    村山(喜)委員 その実態をつかまえることができないというのは、商法二百六条による問題があって、無記名なり、あるいは偽名なり、あるいは架空名義を使うことを許しているところに問題があるのじゃないですか。
  94. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 商法の細目はちょっとあとでお答えをいたしますが、現実に、現在株の取引につきましては、実名で行なわれているものもありましょうし、仮名で行なわれているものもございましょう。しかし、実態といたしましては、現在株の譲渡所得は原則非課税でございますから、したがって、税との関係において、特に仮名なり偽名なりというものがふえておるというのはそう一般ではないと思います。  その点につきましては、なぜ申告状態がよくないか、なぜ調査がうまくいっていないかというのは、いわば鶏と卵のような関係にあるわけでございますけれども、まず第一に、非常に大量な取引でございますし、たとえば何らかの形で資料を求めるというようなことを予定いたしたとしましても、膨大な資料になります。そのことは、証券の取引そのものにも、必ずしも負担にならないで済むような方法というのはなかなか見出しがたいというような事情もありますし、また、かりにそれが資料化されましても、資料化されます以上は税務署の実務においてこれを有効に利用し得るという体制ができていなければいけないわけでございますが、何ぶんにも毎日の何億株という取引、そのうち個人分がどのくらいありますか、法人分はもちろん課税になっておりますから問題はございませんが、法人分がどのくらいあるかということはありますが、とにかくたいへんな量でございます。これを有効適切に利用し得る体制にいたしますためには、いろいろ税務署の執行体制の中にもなお整備を要する点もございますので、かりに仮名あるいは偽名ということの問題を除きましても、なおかつその取引実態の把握がなかなかむずかしい、また制度的にそれを確立することがむずかしいという状況にございます。
  95. 村山喜一

    村山(喜)委員 商法の二百六条で、対抗手段をとる場合には株主名簿に記載していなければできないというようなことがありますが、そういう程度のものでは、配当金は受け取りに直接行けばいいのであって、郵送、銀行間送金をしてもらわなくても取れるわけですから、こういうような法規の整備がおくれている中において、いまのそういうような所得税法の施行令の二十六条も、つかむことができないとするならば、そういうような法令の整備を、どこに問題があってこれが完全に捕捉ができないのか、そうして、これはまあ二十万株以上ですから大口のものだけをねらっているわけですから、小さなものは切って捨てるとして、この努力をあなた方がいままでしてこなかったのじゃないですか。いわゆる税の執行の中において、非常にむずかしい、捕捉するのは困難だということはよくわかりますよ。わかるけれども、そういうようなのを、じゃ、どこにネックがあるのか、法令の整備においてはこういうような点を直さなければならない、それを直すように努力をどれだけしてきたかということについては、その説明はできますか。山本政務次官、どうですか。
  96. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 努力が十分であるかどうかという点については、私どももこういうふうに十分努力いたしましたと言うに足るだけのものを御説明できるとは思っておりません。ただ、現実の問題といたしましては、いま当面の問題は二つございまして、かりにそういう制度を整備するなり何なりいたしますにしましても、今度はそれを、効果を担保し得るだけの税務行政の整備ということが必要でございますが、これは実は、細目の検討はいたしませんが、直観的にはかなり膨大な、たとえば具体的には職員の数をふやすとかいうところまでいきませんと、なかなかうまくいかないのではないかというふうに思っております。  それからもう一点は、かりに、その譲渡の状態がAからB、BからC、CからDという譲渡があったというふうな状態を把握することの制度その他を十分に整備いたしました場合に、もう一つ問題になりますのは、譲渡でございますから、売り値と買い値の差額が所得として課税標準になるわけでございますが、この買い値の把握、いつごろにどのくらいの値段で、その方がAなら、AからBに行った場合、Aが昔、幾らぐらいでその株を買ったものかということを、どうやってとらえてくるかということが、また一つ、法制技術的によほど研究しなければならない問題であるというふうに考えております。  昭和二十八年当時に廃止になりましたときの経緯としましては、私どももどういうわけで廃止をしたかという事情につきましては正確にはなかなか承知をしていないわけでございますが、私どもが聞いておりますのでは、譲渡所得把握そのものが非常に困難であるということのほかに、譲渡損失の主張が非常に多く出る。その場合にも、一応申告でございますから、申告があればそれを認めざるを得ないことになりますが、譲渡損失ということになりますと、やはりこれもまた当該株式の取得原価というような問題がありまして、そのあたりからこの制度がうまく運用できないという結論になったようでございます。単に事務量的な問題とか、執行体制を整備するのにうまくいかないということのほかに、さらにいまの買い値の把握という問題をどうするかというあたりに、非常に困難な問題があることをお含みいただきたいと思います。
  97. 村山喜一

    村山(喜)委員 困難な問題は、それはキャピタルゲインとキャピタルロスをどうとらえるかという技術上の問題もあるでしょう。しかしそれは、いつの時点においてそれを仕入れて、いつの時点で売ったかという、当時のその日にちさえはっきりしておれば証明ができるわけじゃないですか、市況というものがあるわけですから。そういうような問題よりも、むしろいままで、めんどうだから、もうつかまえることをやってみたってあまり効果がないからやめておこう、執行の体制がそういうことになっているのではないか。そしてまた、そういうようないろいろな法令等の整備が十分でないから、抜け穴が多くてつかまえることができないのでしかたがない、そういうような態度にきている以上は、やはりどこかでか、そういう担税能力のある人から税金を取らなければならぬということになると、流通税の段階でこれを税金として取ろうということにならざるを得ぬ。  そこで、この現行の税率を二倍程度に引き上げるという科学的な根拠は一体どこにあるのですか。二倍でよろしいという根拠です。なぜ三倍にしちゃいけないのか。
  98. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 一般的に有価証券の取引の量がふえておりますし、株の価格も上がっておりますから、そのことからいって、株の譲渡の背後に担税力がふえたものと予測できるから、有価証券取引税を上げてもいいであろうということは言えますけれども、その場合に、なぜ二倍でなくちゃいけないか、三倍ではいけないか、あるいは五割増しではいけないかというあたりのところにつきましては、どうしてもこれでなければいけないという根拠があるわけではございません。  ただ、今回、私どもが倍にさしていただきたいということで御提案をいたしますにつきましては、いろいろな角度から検討したわけでございますが、一つは、上げなくてもいいではないかという議論もあるわけであります。それはどういうわけかと申しますと、一種の比例税と申しますか、取引価額を課税標準に置いております関係上、昭和二十八年と今日とで取引金額はふえたかもしれないけれども、ベースになるものは価額でございますから、当時と今日での価額の増加率だけ負担額はふえていくわけでございますので、そういう意味から言いますと、一単位取引について幾らというふうに定額できまっているではないか、その中できまっているところから、ふやさなくてもいいではないかという議論も一方ではございます。しかし一方では、そうはいってもやはり量はふえてくるわけでございますから、単位の取引だけからいえば増税はしなくてもいいではないかという議論もあるかもしれないけれども、取引のロットがふえていくわけでありますから、そういう意味からいえばやはり担税力をそこに推定してもいいのではないかという両論がまずあるわけであります。  結論的には、とにかく何がしかの負担増を求めてしかるべきだということになったわけで、御提案申し上げておるわけでありますが、その場合の倍率につきましては、一つの目安になりましたのは、やはり各国の状況がどうなっているかというようなこと、それから最近ヨーロッパにおきまして、取引所が近接している国々の間で、この種の税率をある程度統一すべきではないか。と申しますのは、税率に差がありますと、税率の低い地域の取引所取引が集まる。ヨーロッパのように近接しておりますところではそういう問題が起こりますので、そういうことを考えてはどうかということがOECDの租税委員会等で議論がございまして、これはまだOECD全体としての意思決定にはほど遠いのでございますけれども、各国の税務の専門家の集まりでは、まあ一つの目安として〇・五%ぐらいにしてはどうかというような議論があったりいたしております。  そういうこともありまして、今回も二倍にするか、あるいはもう少し上げるかということを事務的には検討いたしたわけでございますが、何しろ昭和二十八年以来二十年間据え置いてきているものでございますし、これは何回でも移転のたびごとに負担がかかるものでございますから、きわめて常識的といいますか、科学的でないということになるかもしれませんが、まあ現行制度の二倍にするということは、負担率の引き上げとしてはかなり大きい。これは二倍が大きいか、三倍が大きいか、あるいは五割増しが大きいかということは、水かけ論でございますけれども、まあまあ二倍というのがかなりの思い切った上げ方ではないかというようなことから二倍ということにしたわけでございまして、それ以上、具体的にどうしても二倍でなければならない、二倍が非常に合理的であるという理由はございません。
  99. 村山喜一

    村山(喜)委員 よくわかりました。まあ腰だめ的にやっていらっしゃるということはよくわかった。  そこで、私たちは、一年間に二十四兆円をこすような株価上昇で、しかもそれは法人買いが多いということがわかった。まあ個人の売買もそうですが、時価発行等によってプレミアムが生ずる、その利益も法人企業に属しているわけです。そういうようなことを考えますと、やはり法人税法の改正もやらなきゃならないし、また流通税であるところの取引税の問題も、もっときびしくしてもいいんじゃないかと私は思うのですよ。  そこで、先ほど四十七年度の証券株式会社がもうけたところの純利益が七百十九億という話でございましたが、それは手数料でもうけたものもあるでしょうし、それから信用取引金融利益もあるわけですね。そういうようないわゆるブローカー業務、ディーラー業務、アンダーライター業務というようなものを通じてもうけたものがこの七百十九億ということになるわけですが、一体その中身がわかりますか。
  100. 坂野常和

    坂野政府委員 利益の金額はわかりません。と申しますのは、この中の機構がそういうふうに分かれておらないから、利益の金額はわかりませんけれども、収入金額機能別にわかっております。先ほど申し上げました経常収支の中のその収入のほうを機能別に見てまいりますと、ディーラー活動で一六・八%、ブローカー業務で五四・三%、アンダーライター、セリング関係が一三・五%、その他一五・四%というふうになっております。
  101. 村山喜一

    村山(喜)委員 そうなると、いまブローカー業務が主体になっておるわけですが、この手数料はどういうふうになっておりますか。
  102. 坂野常和

    坂野政府委員 委託手数料収入は、先刻申し上げました経常収支の千二百三億という数字に対応する手数料収入が三千百三十億五千二百万円であります。
  103. 村山喜一

    村山(喜)委員 一株当たりの手数料はいまどうなっておりますか。そして取引所には幾ら納めておりますか。
  104. 坂野常和

    坂野政府委員 一株当たりの手数料は、株価並びに取引株数によって非常にこまかく分かれておりまして、たとえば一番基本になるところは、七十円以上百円以下のところは、三万株未満であると一円七十銭というふうなことになっておりまして、株価が高くなると手数料は高くなります。それから取引株数がふえますと逓減するというようなことで、これは取引所の受託契約準則というので定められております。
  105. 村山喜一

    村山(喜)委員 取引所には幾ら納めているのですか。取引所の手数料です。
  106. 坂野常和

    坂野政府委員 全体の金額はいま手元にありませんが、納め方は一株につき二銭とか三銭とかいうふうな定率会費と、それから会員一件ごとに幾らという定額会費の両方から成り立っております。
  107. 村山喜一

    村山(喜)委員 一円七十銭ぐらいの手数料を基準にして、取引所には大体一銭五厘くらいしか納めていないと私たちは聞いているわけです。そういう中において七百十九億ものたいへんな利益を上げてきた。この利益は、過去においては、ピンチになったときには、証券会社山一の場合、国のほうが救済をしましたね。そういうような損失を受けたときには、国のほうから救済を受ける。利益を受けたときには、そこの証券会社がもうかる。こういうような仕組みの中では私たちは納得できない。この七百十九億というのは、今日の段階においては利益の水準としては適当だ、こういうふうに考える筋合いのものですか。先ほど局長のほうに、四大証券ですか、アンダーライター業務をやる上位七社のその企業収益についての資料を出してもらいたいと言っておるのですが、その収益性の上から見て、妥当なものだとお考えですか。
  108. 坂野常和

    坂野政府委員 証券会社は、御承知のとおり、市況の繁閑が非常に激しい業種でありますので、非常に収益の上がるときと、非常にぐあいの悪いときとあることは御説のとおりでございます。で、昨年九月決算、その前の年の四十六年の九月決算、いずれも戦後最高の利益水準になっております。これが適正であるかどうかということは、やはり委託手数料が適正に定められているかどうかというようなことが非常に大きな問題であろうかと思います。先ほどの七百十九億のうち、四社の数字は四百二十六億でありまして、そのうち野村証券が、端数がありますが百八十三億、日興証券が九十八億、山一証券が七十億、大和証券が七十四億となっております。
  109. 村山喜一

    村山(喜)委員 主税局長、お聞きのとおり、手数料との関係もありますけれども、非常に膨大なもうけをしているわけですが、この業界間の取引の第一種のほうは、これは第二種に比べて商売用株の売買、自己売買をやったりするから、それは商品として取り扱うので税率が低いのだということなんでしょうが、はたしてこの一種と二種との間に均衡がとれているのか、その分析をされたことはありますか。いまのような話を聞いていると、そんなに均衡がとれているようにも承ることはできないわけですがね。
  110. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 今回の改正案を御提案いたしますについては、そのあたりは一応研究はしてみたわけでございますが、先般当委員会におきましてお答えいたしましたように、やはり長く持っておる人がそれを売るという場合と、証券会社が一度買い取って、それをすぐに、一週間なり十日なりの間持ってそれを売るという場合と、やはり若干差があってもいいのではないか。ただ、その場合に、それが倍でいいかどうかというあたりについては、確たる根拠はございません。ございませんが、従来その両者については差を持たせてあった。片一方はいわばたなおろし商品的性格を持つものであり、片一方は資産的性格を持つものであるので、その点について負担率が違うというのは、やはりそれなりに理由があるのではないか。長年、二十年来行なってきたことでもございますし、これをいまここで急に変えて両者を統一することがいいか悪いかという点については、かなりむずかしい問題であろうと判断されたわけでありまして、非常に保守的であるかもしれませんが、そこらあたりは従来どおりのバランスのままで双方二倍にするということにしたのは、あるいは勉強不足だと言われればそうかもしれませんが、いままでそこで定着をしておるということに着目したものでございます。
  111. 村山喜一

    村山(喜)委員 法律を改正しなければ定着をしておるわけですから、だから今度法律改正をするにあたっては、過去の状態がどうであったのか、立法制定当時の水準がどうであったのか、いまの株価証券会社の収益率がどういうふうになっているのか、担税能力はあるのかないのか、そういうようなことを比較検討しながら、それは厳密な意味において数字で示すことはできないにいたしましても、これが望ましい姿だということで、単に二倍、単純倍率を出して、そして税率を決定しようというのは、これは優秀な大蔵省の官僚が計算をする方式ではないような気がするのですが、どうなんですか。
  112. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 御指摘は、証券会社体質が非常に強くなったのではないか。まあ五、六年前に例の山一証券のような問題が起こりました当時と比べますれば、明らかに証券会社、特に大手の経営基盤が確立をしてきたことは間違いがないと思います。その点につきましては、別途法人税の問題として考える必要があるわけでありまして、今回御審議願います租税特別措置法におきまして、株式売買損失準備金の制度について若干の改変をお願いいたしております。従来よりも株式売買損失準備金の積み増し額を減らすように考えております。そういう意味では、従来ありました証券会社についての税のあり方というものを検討する必要は私ども考えており、またそれを租税特別措置法の一部改正ということで御提案を申し上げておるわけでございますが、いわゆる流通税としての有価証券取引税そのものについては、ただいま御指摘のような点もありますけれども、なお従来の体系をそのまま維持するということで、証券会社につきましても二倍程度の引き上げ率を相応とするということでございます。——失礼いたしました。ただいま誤った答弁を一カ所いたしておりますので、訂正さしていただきます。租税特別措置法のほうで改正することにいたしておりますのは、株式売買損失準備金と申しましたのは誤りでございまして、証券取引責任準備金の制度のほうでございます。これにつきまして、今回若干の縮減を御提案しているということを言い間違えたものでございます。
  113. 村山喜一

    村山(喜)委員 流通税をどの程度かけたらいいのかということについては、いろいろな見方が私はあると思うんですが、こんなに株価が異常な上昇を示している、そしてさらにその過剰流動性が除去されない姿の中で株価は狂奔をしているという姿が今日の状態です。とするならば、しかもその間において生じたところの、時価発行に伴うプレミアムの収益についても課税の対象になっていない、あるいは無記名、架空名義の取引もきっちりと規制ができていない、そして先ほど質疑をいたした中で明らかになりましたが、所得税法の施行令の二十六条による捕捉率も統計的な数字さえもない、そしてこの大口の有価証券の譲渡所得については、個人の分の課税も、これも十分な捕捉がされていない、こういうような問題をながめてみますと、確かに株というもので大きな所得を得ている人たちがおることは間違いない。間違いないけれども、それを捕捉する手だてが十分に整っていないというのが、今日の状態だと思うのです。  そのためにはどうすればいいのか。それは流通税で多少の疑義があるけれども、これをやはりそういうような政策的な問題を整えていくためにも、そしてまた担税能力があるというふうに見られているわけですから、その倍率をやはりもっと引き上げるような措置を、私はこの際とるべきだと思うのですよ。この問題については、社会党のほうも修正案を用意をいたしておりますので、また提示をいたしまして、大臣がおいでになりましたときにひとつ論議をすることにいたしまして、これで私の質問は終わります。  あと、大臣に対する質疑を留保しておきます。
  114. 大村襄治

    大村委員長代理 荒木宏君。
  115. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 相続税法改正案について質問をいたしますが、初めに、質問の問題点を明らかにしておきたいと思います。  まず第一点は、この課税の最低限が今度の改正案で出されておりますけれども、平均的な勤労者の生活資産、それから平均的農民の営農資産あるいは平均的な中小業者の営業用資産、こういったものには、本来税金の負担を課するべきではないというのが、わが党の主張であります。そういう点から改正案についてひとつ質問をしたいと思います。あわせて財源調達という意味から、今度の改正案には出ておりませんが、税率の問題で高度累進にすべきである、こういう主張がありますので、その二点について御質問したいと思います。  そこで、まず第一点でありますが、今度の改正案の理由によりますと、中堅財産階層の負担の軽減をはかる、こういうことが出ておりますが、ここで出されておる中堅財産階層というのは、一体どういうところを考えておられるのか、政府委員にまずその点をお尋ねしたいと思います。
  116. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 たとえば、相続財産幾らぐらいから全く課税の対象外とすべきかという、いわゆる課税最低限の問題と、もう一つは、基礎控除額と税率をかけ合わせました結果として出てくる税負担の問題、両方から考えるべきであろうかと思いますが、ただいま先生から御指摘がありました中堅勤労者層あるいは中堅農民層あるいは中堅企業層というものを、どの程度金額水準に置いてお考えか、私ども推しはかることができませんが、大体の考え方としては、私どもの考え方も、先生の言われるそういうあたりのところからいわば下の財産階層については相続税の課税対象にするということは適当ではなかろうじゃないか、大体そういう感じでございます。
  117. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 いまお尋ねしましたのは、政府の御意見でして、改正案でお出しになっておる中堅というのは、大体どの辺のところをさしておられるのかということをお聞きしておるわけです。
  118. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 提案理由その他で中堅階層の負担軽減に重点を置くということを申しておりますのは、一つは、いわば標準世帯と申しますか、相続課税案件のうち、最も中堅的なものであります、配偶者があり、子供が四人——子供というのは不正確でございますが、相続人が四人ありまして、まあいわば相続人五人の場合の形態として、従来大体千二百万円を課税最低限といたしましたものを千八百万円にしておりますのは、まず、課税最低限をそのような相続人構成の場合に千八百万円まで上げれば、いわば中堅相続階層というのは課税対象外になるであろうということが一つと、もう一つは、あえて御説明するまでもございませんが、基礎控除的なものを引き上げますと、租税負担割合の軽減割合は、小財産階層負担軽減割合が大きくなりますので、そういう意味で、たとえば遺産額が億をこえるような階層については、あまり現在の段階では軽減割合を大きくする必要はないのじゃないかという趣旨でございます。
  119. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 ちょっと、お尋ねしておる趣旨と御答弁と違うのですが、それはそれでおいておきましょう。  ところで、四十七年十月に税調のほうに出された主税局のほうからの資料によりますと、「標準的な住宅地において土地と家屋のみを所有する世帯の相続財産調」というのがあります。建設省の調査によりますと、いまの持ち家の家屋の平均の面積が大体九十四・八平米と、こうなっておりますから、この表で言いますと、宅地が七十坪で家屋三十坪、これが建設省のいう平均的な持ち家の数値表になるだろうと思いますが、これで見ますと、今度の改正案で相続人の数によって違いますが、法定相続人がかりに一人とした場合に、いま税調のほうに出された表に照らしてみますと、税金がかからない、つまり標準的な階層の持ち家の人で、相続税を払わなくてもいいという案件が一例もないと思いますが、その点については、政府委員のほうでは事実関係はお認めになりますか。
  120. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 一人という場合に、配偶者であればかからないと思いますが、その一人が配偶者でなければ、全部課税対象になるということであろうかと思います。
  121. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 もう少し正確に申し上げますが、配偶者でなくて法定相続人一人の場合には、ここにあげられた十例のうち、非課税になる人は  一件もない。配偶者が法定相続人である場合には、十例のうち非課税になる人は四件しかない。つまり今度の改正案にかかわらず、半分以上がやはり税金を払わなければならぬ、こういうことになっておりますが、この件については政府委員のお考えはいかがですか。
  122. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 相続税の性格から申しまして、所得の最終清算という意味があるわけでございますが、そこでただいま御指摘の資料によります具体的な所在地にあります物件について、昭和四十一年当時にはたとえば課税にならないものになっておった。しかし、今度の改正案では御指摘のように、相続人の数が小さければ、課税になる場合がたいへん多く出てくるという関係にございます。その点は非常にむずかしいところでございますが、たとえばここにあります具体的な地域、東京都でいいますと世田谷の成城なり経堂なりという地域の持つ意味合いが、四十一年度と四十八年度とでは、ある意味ではたいへん変わってきております。当時はこの程度の地域であれば、課税に全くならないようにという配慮があってしかるべきであったでありましょうし、現在の状況からいいますれば、これらの地域にある場合に、ある程度課税になることがあってもいたし方ないというふうに考えております。
  123. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 事実関係の確認と評価が、質問と回答の中でちょっとこんがらがっておるのですが、先に事実関係のほうだけ押えていきたいと思うのです。  いまの御答弁に関連して一言お尋ねしますと、今度の改正案の基本的な考え方として、相続税を払う苦しみからのがれようとすれば、東京都民は世田谷の成城や経堂からはもう出ていかなければならぬ、それもやむを得ないのだ、こういうことになりますが、そう伺ってよろしいですか。
  124. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 相続税は、その全額が課税になるわけじゃなくて、その一定基礎控除を引いた額に対して税金がかかるわけでございますから、これらの地域におきますところの相続人の負担は、確かに四十一年当時と今日とでは、改正後におきましても今日のほうが高くなる。高くなりますけれども、その負担の程度ということも考え合わせていただきたいわけでございます。しかし、ただいま御質問のように、相続税を全く払わないでいこうということであれば、おっしゃるように出ていかなければならぬということは起こり得るということでございます。
  125. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 問題は、主税局からお出しになった表の「標準的な住宅地」、つまり特別に高級住宅地であって、財産家でなければ住めないような地域ではなくて、一般の都民が生活上そこを生活の根拠にしている、こういう標準的な住宅地で相続案件が起こった場合のことですね。特に私が問題にしたいのは、たとえば法定相続人が三人の場合に、今度の改正案によりますと、控除額は九百六十万円ですね、いろいろな控除の計算がありますけれども。かりに六百万と、それから百二十万三人といたしますと九百六十万円。それでも、今度の出された表によりますと、相続税を払わなくてもいいというのが十例のうち一件しかない。東京じゃ全然ありません。大阪でもありませんよ。名古屋でわずかに一件あるだけ。ですから、今度の改正案では、東京大阪に住んでおる、標準的な地域に住んでおる人たち、相続人が三人というような場合には、決して軽減にならない。相続税を払う苦しみというものが緩和されない。むしろふえている傾向にあるのじゃないか。こういう事実にあると思いますが、いかがですか。
  126. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 先にちょっとお断わりしておきます。税制調査会の審議の便宜に供するために私どもが提出しました資料、お手元にいっていると思いますが、その「標準的な」という意味でございますが、これだけでごらんになりますと、確かに東京における標準的住宅地という意味でのように読み取れます。そういう意味においては、この表現は非常に不正確であったと思います。実はそういうことではなくて、これは従来から同じポイントをとりまして、そしてそのポイントについての相続税評価額が年々変わってまいりますから、したがって、その変わりを知るためには、ポイントを変えるとややこしくなりますものですから、従来から便宜とっておりましたポイントにつきましての評価がどういうふうに変わってきたかということを示すものでございまして、私どもはこの十例が大阪なら大阪東京なら東京の最も中心的といいますか、標準的なポイントというふうに見ているわけではなかったわけでございます。もっとも、こういうポイントを変えないということで評価の比較をするという作業を始めるある時期におきましては、この「標準的」といろことばが、私がいま申しました意味での標準的であるほかに、同時に東京におけるあるときの標準的なものであったという歴史をしょっているものでございます。  いずれにいたしましても、確かにおっしゃいますように、もし相続人が本人とあと三人であれば九百六十万になりますから、九百六十万の場合には、これらの案件についていわゆる課税最低限それだけをとらえてみますと、課税最低限の上になる、つまり課税対象になるという可能性は十分あるわけでございますが、そのことの持つ意味は、ある意味では、私どもはこの地域が持つ意味が漸次変わってきているということも考えていただく必要があろうかと思っております。
  127. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 「標準的な」ということばの持つニュアンスは、ともかくおきましょう。主税局から出していらっしゃる資料をもとにお尋ねしているのですから、そういう意味合いでお聞き取りいただきたいのですが、板橋の四十七年のここにあげられた数値によりますと千八百三十万円、こういう数字が出ておりますが、法定相続人三人の場合に九百六十万円を控除しまして税額を計算しますと、改正案によっても三百二万円の相続税を納めなければならぬことになります。いまの標準の世帯構成が四・幾人ということになっておりますから、被相続人を引きますと相続人は三人というのが一応標準的な形ですね。これは配偶者がある場合とない場合とでちょっと違いますけれども、かりに配偶者がない場合の法定相続人三人、まあ一つのケースとして二十過ぎの成年が三人いた場合に、板橋で標準的な居住用資産を相続しますと、三百万円をこえる税金を払わなければならない。そうすると、労働省の調査によれば、いまは定期給与の平均が五万五千八百六十二円ですから、今度の改正案ですと、五、六万円の月給取りが三百万円の相続税を払わなければならぬ。ということになりますけれども、その支払いについては借金をするか、貯金をおろすか、いろいろ考えなければならぬと思いますけれども、貯蓄の平均にしたって、内閣の調査によればもう全部の平均で百六十四万円です。階層別に直せばもっと低くなるでしょう、低所得の労働者の場合は。これについては政府委員のほうでは、どういうふうにして払えばいいというふろにお考えなのか、それを伺いたい。
  128. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 ただいまの御質問にお答えする前に、問題は板橋区の常盤台一丁目という場所で、今後相続税を納めないで、三人の相続人の方が続けてその家を持って、そこで住んでいくなり何なりしていきたいという場合に、板橋区常盤台一丁目というのは、いまではかなりのいわば高級住宅地になりつつあるところでございますから、その意味におきまして、おっしゃるように平均的な勤労者の方が、そして平均的な貯蓄の方が、そこにお住まいになるということを前提にして、そういう者は課税対象から除くということであるかどうかということについて、私どもは若干見解を異にするわけでございます。  いまどうやって納めるかということでございますけれども、それは現行制度の上では延納なり物納なりという制度がございますけれども、それ以外、いまこういうふうにしていただけばお納め願えるという格別のことをお答えするものを持ち合わせておりません。
  129. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 板橋に住んでおる人に対する見方が、おまえの質問と違うのだ、こういうふうに伺ったのですけれども、それでは政府委員のほうでは板橋に居住している方々に対して一体どうごらんになっているのですか、もう少しはっきり伺いたい。見解が違うとおっしゃられても、私はとにかく東京都の中で、世間で言うように、赤坂や柳橋や新橋の、そういったとにもかくにも特殊な地帯と見られるところに住んでいる——これは見方は違うでしょうけれども、しかし、労働者が板橋に住んじゃいけない、それは身分不相応だというようなことはないでしょう、だって親の代からずっと住んでいる人はいるのですから。それに対して政府委員はどうごらんになっているのですか。見方が違うとおっしゃったが、どう違うのですか。
  130. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 その板橋というところでなくなった方が土地を持ち、建物を持っておって、そしてその御子息がそこにいまおられるということを考えた場合に、はたして問題は、この相続税は所得の一生分の清算という意味を持っております関係上、それは当然に御子息がそこで平穏無事に住むことを前提に考えるべきかどうか。つまり相続税はどの程度から課税対象とすべきかどうかということになるわけでございます。いままさに御指摘がありましたように、東京都内の非常に地価の高いところでお住まいの方の場合には、それが相続税の課税対象になりましても、それは大部分の方の御賛同を得られると思います。いま、たまたまといいますか、ちょうどその辺のかなりの住宅地といわれておりますそういう住宅地についてどう考えるべきかということは、まさに相続税の問題をお考えいただく場合のポイントであろうかと思います。ただ私どもは、いまの板橋の場合で考えますと、そして七十坪、三十坪ということを考えますと、その辺の階層からは税を納めていただいてよろしいのではないかという前提に立っているということでございます。
  131. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 そうなりますと、これは大資産家、高額所得者が相続した場合の負担程度ですね。受ける影響、それとのバランスもありますから、いまそのくらいなら税金はもう覚悟せい、こういうことだということでとにもかくにも伺っておきますが、これは何も板橋だけではありませんで、私が住んでおります大阪の阿倍野区、これはもう庶民の住んでおる地域として大阪では一番典型的なところですけれども、ここの数字で見ますと、千三百七十二万円ですから、法定相続人三人の場合には四百十二万円が対象になりまして、やはり七、八十万円の税金は納めなければならぬ。ですから、今度の改正案によって、とにかく標準的なところでは、相続があれば、どっちにしたってどうして払おうかという思案をしなければならない。一思案も二思案もしなければならぬ。その点について、どうして払うかはそれはかってに考えろ、そのぐらいのことは負担しなければならぬのだという御意見のように伺いましたのですが、私どもは相続に関してどういう階層がどの程度に負担すべきかということについては、高額所得者、大資産家が高度累進で負担すべきである、こういうふうに思っておりますので、相続税の目的と照らして少しお尋ねをしたいのですが、相続税の機能といいますか、目的、それについては政府のほうではどういうふうにお考えになっておりますか。
  132. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 相続税は一種の所得税の補完税というふうに考えております。所得税は毎年毎年の所得を課税標準とする税でございますけれども、いろいろな形で累積的にそれが財産化していく、そしてそれがいわば親の代から子の代に移っていく、その移っていく機会に所得税の補完税としてその者の生前の所得に対する清算を行なうものという性格があると思います。  それから一方、相続人のほうの立場から見ますと、これは親子関係なり何なり、緊密な関係にある方同士のその相互間の問題ではありますが、ある意味からいいますと、たとえば勤労所得、事業所得等と比較しますと、若干違った意味で偶発的に財産を取得することになるわけであります。一時的に、偶発的に財産を取得することになるわけであります。その偶発的な財産取得についてはやはりそれなりの担税力があるものということを考えているわけでございます。そのなくなった方の生前所得に対する清算的課税の性格と、相続を受けられた方の偶発的財産取得についての課税ということが相続税の性格であろうか。よってもって富の集中化をある程度抑制し、そして所得再配分機能を発揮し得るものというふうに考えておるわけでございます。
  133. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 これは意見の部分ですから、あまりするのもどうかと思いますけれども、しかし、いまは大体資産取得税体系でしょう、税額計算の部分では遺産税体系の考え方も若干は取り入れておりますけれども。だから、なくなった人の一生を通じて少し出入りのあった分をこの際清算するという考え方は、昭和二十五年以来考え方の方向としては捨てられているのじゃないですか。ことに一時的、偶発的とおっしゃるけれども、所得税では一時所得という項目がちゃんとありますよね。集中排除という点からいえば、過度の集中こそまさに排除すべきであって、そういう点からいうならば、なおのこと高額相続、大資産の相続に対して累進をするべきである、こういうふうに思いますが、政府委員のお考えはいかがですか。
  134. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 第一の御質問の相続税の性格の問題でございますが、そこはいろいろな見方があるかと思いますが、現在基礎控除制度がとられております意味を考えてみますと、そしてそれは基礎控除の中で、相続人の数とか何とかということに関係なく、また妻のような地位に関係なく、すべての相続案件について六百万円なら六百万円までの基礎控除制度がありますというものの考え方は、一種のやはり被相続人の一生所得の清算という意味を持っているものと私どもは考えております。御指摘のように、相続税の課税標準のとり方なりあるいは税率のとり方なり基礎控除の置き方などによりまして、所得の清算的性格のほうによりウエートを考えてそういう仕組みにするか、あるいは相続人のほうにウエートを考えてそういう仕組みにするか、私も詳しくはございませんが、技術的にも、また理論的にもいろいろ大いに議論に値する問題があるようでございますが、私どもは、いずれにいたしましても、現行制度は、先ほど御説明申しましたような両者の組み合わせというふうに考えております。  それから、おっしゃるように、富の集中排除という場合に、巨額の富の集中排除ということに重点が置かるべきである、よってもって累進構造が確保されなければならないということについては、私どもも全く御意見のとおりでございます。ただ現在、累進度は取得金額一億五千万円超七〇%という税率になっておるわけでございますが、この税率は過去におきましても直さずに来ておるわけでございます。かなり財産額の評価額が上がっておりますから、相続税の改定に際しましては、やはり税率につきましてもある程度改定を行なうべきであるという意見もないわけではないのでございますが、御指摘のように、いずれかといいますと中小財産階層の問題により重点を置いて考えらるべきだということから、今回は税率は改正をいたしておらないわけでございますが、現行税率そのもののあり方、それが最近の財産状態等の関係からいってこのままでいいかどうか、なお検討を要する問題で、なお基本的には、先生のおっしゃるような考えで、集中排除のウエートは高財産階層に置くべきだという点では、先ほども申しましたように格別私どもとしても違った意見を持っているわけではございません。
  135. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 同じく主税局のほうから出された「財産階層別課税状況の推移」という税調あての資料によりますと、遺産金額での階級区分というのがありまして、一番上が一億円以上ということになっておりますが、この一億円以上の部分が、昭和三十五年の割合五・八%から四十五年度では二五%へと、こういうふうに約五倍近くにその金額部分がふえておりますけれども、政府自身もそのふえておる傾向はもちろんお認めいただけますね。
  136. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  137. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 それから、同じく一億円以上の部分の一件当たりの金額が、一億六千四百万円から一億八千六百万円と一三%ふえていますが、これも増加傾向にあることはお認めになりますか。——詳しい数字の検討はあとでしていただいてけっこうですが、ふえている傾向にあることはお認めになりますか。
  138. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 おっしゃるとおりだと思います。
  139. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 階層別では、いま申しましたように、その一億円以上という階層が総額中に占める割合がうんとふえてきている。それから被相続人、つまり相続一件当たりの金額もふえている。そういう意味合いで、担税力が増加しているということはお認めになりますか。
  140. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 担税力が増加しているというのはどういう意味か、ちょっと私わかりませんが、とにかく一億円以上の方がふえておる、財産の大きい方がふえておる、それは顕著に、しかもステディーにふえておりますから、それは同時に相続税の担税力を持った方が質的、量的にふえておる実情にあるということは、その意味ではおっしゃるとおりだと思います。
  141. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 しかるに、先ほどちょっとおっしゃっておりましたが、同じくそれに添えられた相続税率表と所得税率表の比較という、この棒線グラフで示した表がありますけれども、これを見ますと、課税価格が五十万円から三百万円までの範囲では、相続税のほうが所得税よりも高くて、そしてそれ以上になってくると相続税のほうは低くなってきている。ことに、もう一億円以上になりますと、頭打ちの税率が所得税は七五%、それから相続税は御存じのように七〇%ということですから、まさに富の高度集中を排除する必要があるということをお認めになり、かつ、先ほど申した意味で担税力が増加しているということが事実として出ておるならば、高額の相続者に対する高度累進の税率をもっと引き上げるべきであると思いますが、いかがですか。
  142. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 ただいま御指摘になりました私どもが税制調査会に提出しました相続税率と所得税率の比較で、御指摘のように中以下ぐらいのところでクロスポイントが出てきておることは事実でございます。なぜこのようなクロスポイントが出てきたかと言いますと、この表でもおわかりいただけると思いますが、現行相続税の税率をつくりました四十一年当時には、所得税と相続税との間で税率上ある種のバランスがとれておったわけでございますが、所得税の税率はその後数次にわたりまして改定をいたしました結果、所得税税率が中堅層のところで下がってきたわけでございます。にもかかわりませず、相続税のほうは税率改定を行なっておりません結果、税率構造だけで単純に比較しました場合の姿は、このようにいわばスマートでないものになっておるわけでございます。さて、そこで今回も、そういう意味から申しますと、相続税につきまして税率も改むべきではないのか、この四十万ないし二百万あるいはその強のところの税率を直すべきではないのかということも十分一つの検討課題になったわけでございますが、実際の負担額は、御存じのように相続財産から基礎控除を引きました金額に税率がかかってくるわけでございまして、税率だけで見ますとこういうかっこうになりますが、実質負担率で見ますと、やはり中小のところにかなりウエートを置きながら税負担を軽減するというかっこうのものに直すことができるということで、今回は、当面の問題といたしましては課税最低限の引き上げをまず優先すべきものと考えたわけでございまして、その点については、税率自体の問題としては、御指摘のようになお問題のある点を残しておるということは、おっしゃるとおりでございます。
  143. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 ひとつはっきりおっしゃっていただきたいのですが、問題を残しているだけじゃないですよ。つまり高額所得者、ここで言えば五千万から一億、二億とありますけれども、そこのところを所得税の税率よりもむしろ上にカーブが出るようにすべきではないか。単に問題を残しているというだけじゃなくて、残している問題の方向ですよ。先ほどあなたは、これは不労所得なんだ、偶発的なものなんだ、しかも過度の集中を排除する必要があるんだ、こういうことをおっしゃったのだから、それなら、最もその必要が高い一億、二億、五億というところの税率をもっとうんと上げるようにすべきじゃないか、これをお聞きしているのですよ。現に昭和二十五年までは相続税は最高税率九割ですよ。だから、そういういままでの例もあるのだから、そこのところをもっとうんと上げるようにすべきではないか、このことをお聞きしておるのです。
  144. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 純粋に税率の問題として承ったわけでございますが、税率の問題としては、所得税につきましても法人税につきましても、中堅ないし上層階層の税率に現在いろいろ問題がございます。これは相続税についてもありますし、所得税についてもございます。また、相互の関連をいかにすべきかということも問題でございます。ごらんになりますように、五千万円ないし一億から上につきましては、所得税につきましても相続税につきましても全く税率を最近直していないわけでございまして、おっしゃるとおりに、いわば右上がりの税率にすべきことは間違いありませんけれども、さりとて、十年前あるいは五年前に持っておりました一億というものの意味と現在持っております一億の意味は変わっておるわけでございますから、右上がりの税率構造にならなきやならないということについては、御意見のようにわかりますけれども、さりとて、一億、二億について現行税率を上げるべきであるということについては必ずしも賛成し得ないわけでございまして、場合によりますと、むしろ逆に一億、二億階層の税率を下げていかなきゃならない。四十年なり四十一年の時点において持っておりました一億と現在持っております一億は、あたかも同じ百万円の持っております意味が違っておりますのと同様の意味におきまして違ってきておりますから、一億、二億のところの税率は当然に上がるべきであるという御意見には賛成をいたしかねます。
  145. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 主税局の出されたこの二つの表と一つのグラフによって、平均的な居住用資産の相続については税を課すべきではない、それから、高額所得者については率の改定も含めて税を課すべきである、こういうことを申し上げたわけですが、共産党としてはそういう主張を今後もいろいろな機会にそのことを申し述べ、政府のほうの検討を十分にお願いしたいと思います。  なお、課税最低限はいま基礎控除ということでやられておりますけれども、これはかつて免税点制度も二十一年まではとっておりましたし、そういう意味合いで、いま私が質問に関連して申し述べた二つの方向について、今後の問題としても十分御留意いただいて御検討願いたいということを申し述べて、質問を終わります。
  146. 大村襄治

    大村委員長代理 広瀬秀吉君。
  147. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 相続税法改正問題について若干質問をいたしますが、まず最初に、今度の改正におきまして、そのバックグラウンドといいますか、どのような情勢の変化というものをとらえて改正になったのか、その点まずお答えをいただきたいと思います。   〔大村委員長代理退席、木村(武千代)委員長代理着席〕
  148. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 相続税につきましては四十  一年に現行のように定めていただきました。その後若干の改正はございました。特に四十七年度の税制改正で、夫から妻、妻から夫への相続につきましては、現実に配偶者の取得した額が三千万円までは課税しないようにするという、かなりの大改正もございましたが、基本的には、基礎控除なり税率なりということにつきましては直していないわけでございます。その結果、実は納税人員と申しますか、相続税を課税された案件の相続人数は、四十一年対四十六年で大体二八一%というふうに納税人員がふえておりますし、相続税課税価格で申しましても四三一%というふうにふえております。また、相続税額では実に五四六%というふうに大きくふえております。このことは、やはり相続税につきましても、七年間も経過したわけでございますから、基本的に直すことにいたしませんと、たとえば純農村、また都市近郊農村は別といたしまして、一部の中間の農村地帯におきましても、相続人の数等によりましては、場合によっては課税案件が出てくるということもありますし、いわゆるサラリーマン等につきましてもかなり課税案件がふえてくる形態がございますので、四十一年基準程度までは戻すということはございませんが、ある程度軽減措置を講じませんと、相続税の本来の目的であるところの、先ほど来説明しておりますような趣旨から申しましてもいかがかと思われる程度になるおそれがありますので、この際ひとつ全体としての課税水準を、いわば課税対象も減らし、それから課税価格もある程度減らすことができるようにしたいというのが基本的な考え方でございます。
  149. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 四十一年から基本的な部分について改正をしていなかった。妻の税制上における優遇措置というような角度からの改正に終わっておったということで、課税件数においても、あるいは課税総額においても、いまおっしゃったような、二八一%、四三一%、五四六%というような、非常にたいへんな相続税の負担の重課というようなことが目立ってきたというようなことがこの改正理由になっているわけでありますが、その主たる原因というのは、いまもちょっと答弁の中でもにおいはしているわけですけれども、まず都市生活者における土地価格、大体相続資産というものは土地が大部分、かなりのパーセンテージを占めておることには間違いはないわけでありますから、その土地価格上昇ということがやはり基本的な原因だと思うのですが、その点いかがでございますか。
  150. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 大筋はおっしゃるとおりでございまして、土地価格上昇が全体としての相続財産価額が大きくなってきたということにつながっておるわけでございます。ただし、最近の相続税案件の中の課税対象財産でどういうものが多いかということを見てまいりますと、全体を一〇〇として、土地、なかんずく宅地の占める割合が約三五%になっております。これは四十六年の課税関係資料から作製したものでございますが、全体の相続財産の価額の中で三五%が土地になっておる。しからば土地だけが非常に急にふえてきたかというと、そうではなくて、四十一年時点で見ましても、やはり宅地が相続財産価額の中に占めます割合で三三%くらいになっております。そういう意味から申しますと、必ずしも土地だけがふえたというわけではありませんが、しかし、それにいたしましても、土地価格の急上昇は御指摘のとおりでございますし、また相続財産の中におきましてもやはり宅地分がわずかながらふえつつあるという現状でございます。
  151. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 私のところの資料によりますと、四十六年で相続財産の種類別表がありますが、四十一年当時は土地の財産価額が五八・八%であった。これが四十六年度ではもう七〇%になっている、こういうことになっていますし、さらに宅地は四二・五%が逆に三九・九というような、むしろ奇妙な数字が出ているんですけれども、いずれにしても土地全体でかなりの上昇を示しておる、こういうことであります。その他はみな幾ぶんずつ減っているというような数字になっているわけでありますから、相続税を審議する際にやはりわれわれがいま最も重点的に考えなければならないことは土地問題である、地価の上昇ということだろうと思うのであります。いまの数字を別に訂正してもらわなくてけっこうでございますが、私が出した数字はやはり大蔵省からとった数字ですから、そういう状態になっているということであります。  そこで、そういう状態先ほど荒木委員も質問をいたしましたけれども、相続税というのは一体どういう機能と目的を持つものであるか。これも大蔵省の「私たちの税金」という本によりますと、富の過度の集中を排除して再分配をはかるんだ、生存中に国から受けた便益の提供による蓄積財産を国に還元をする、こういうことも書かれております。納税者が相続や贈与によって偶発的に受けた富に担税力を求めていくんだ、こういう被相続人の立場、相続をする者の立場、両面からそういうことをいわれておるわけであります。そして特に、相続の時点で、被相続人の一生を通じての租税負担を清算をする、こういう意味で、言うならば所得税の補完税であるというように説かれておるわけであります。  先ほどからの御答弁の中にもそういう趣旨での御答弁があったわけでありますが、さて私どもが考えまするに、この相続税の負担が逐次上昇をし、税収においてもかなりの税収が見込まれてきている。四十四年当時に六百四十五億程度であったものが、四十八年の見込みでは大体千百七十億になる。これはおそらくこれ以上になることはほぼ間違いないであろう。そうすると、大体四十四年から比較しても二倍くらいにはなるんだ、税収の伸びも。やはりそれだけ多くの人が課税をされ、またその土地価格上昇によって、居住に必要な必要最小限度の狭いところではあるけれども、まわりの地価が上がったということで、たとえば都会に住む人たちが重い相続税を負担しなければならないというようなことになってくる。これは、居住をする、生活をそこで営むということ、それによってその人がその生涯を通じて、サラリーマンとして、労働者として、その賃金稼得者として生きてきた、そしてその住まいに要した必要最小限度の土地というものは、いわゆる営業的な利益を生むことでも何でもなかった、国からも別にそれほど便益を提供された覚えもない、それでいながら、いつの間にかその土地の評価だけは上がって、固定資産税の負担に苦しめられながらきたというような者が、たまたまその労働者がなくなって、いままで養ってきた子供や奥さんに相続をされる、こういうような事態のときに、その人たちの生活を根底から破壊するような事態にも、いまのこの税法のたてまえからいえば、なりかねない。そういうようなことで相続税法というものははたしていいのだろうか。  おっしゃっていることはそれなりにわかるけれども、そういうことを考えるならば、これは何かもっと発想の転換というようなものを相続税についてやらなければいけないのではないか。やはり相続人の生活がそのことによってそこからどこかへほんとうに追い出される、あぶり出されるような事態というものは避けなければならない。基礎控除だとか、そういうものが低いということもあるかもしれぬけれども、しかし、そういうものを画一的につくれば、これは大都市と過疎地帯との間にいろいろな条件の差というものも出てくるから、税法はやはり画一的だという形の中ではなかなかカバーしきれない。そういうことになれば、そういう相続という段階において、先ほど読み上げたようなこと以上に、生活の破壊、もうそこで生活することはまかりならぬというような事態にまで追い込むことはおかしいのではないか。相続税がそういう機能を果たすということになってくるとするならば、あなた方がおっしゃっていることはもっともなことであるけれども、これは現実に合わないものになってくるのではないか。そうだとすれば、この程度の基礎控除だとか配偶者控除の引き上げだとかいうものだけでは、特に今日の大都市における地価の上昇という事態はカバーしきれないというような問題と、相続税法の今日のたてまえというものをかみ合わせた場合に、もう時代的な感覚が完全にずれてきているのではないか、こういうことが考えられるわけです。そういう点について何らか新しい発想の転換の上に立った相続税法のたてまえというものを考えなければならない時期に来ていると私は思うのですが、いかがでございましょうか。
  152. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 最初にお断わりいたしますが、先ほど私が申しました数字はちょっと適当でございませんで、まさに先生がおっしゃった統計による数字のほうが私どもが出しております公式の数字でございますので、その点訂正させていただきます。  次に、御質問の点は、現在の配偶者控除あるいは基礎控除、相続人の数による控除というものでは不十分ではないか、居住用家屋について何らか別途の制度をつくってはどうかという御提案であろうかと思います。その点については、基本的には、ものの考え方としては私どもも必ずしも反対ということではないわけでございまして、そのことは、現在、妻の贈与税につきまして、今回の改正で六百万までは課税されないことになるわけでございますが、その考え方は、居住用財産について夫が妻へ贈与する、妻が夫に贈与する場合の考え方というもので特別な控除制度をしいております。贈与税でそういう特別な制度が置かれておるということからいたしますと、相続税につきましても何か居住用住宅についての特別の制度を置けるはずではないか、技術的に困難ではないはずであろうとおっしゃいますれば、そういうことも可能であるはずでございます。ただ問題は、贈与の場合と相続の場合とちょっと趣を異にいたしまして、相続の場合には、先ほど来私も申し上げ、先生もいまお触れになりましたように、一生所得の清算という意味がありますものですから、そういう意味から申しますと、金額の大小に関係なく、財産の性格によってそれを区分するということが適当であろうかどうかという点については、たいへんこだわるようでございますが、やはり問題があるのではないかと思っております。ただ、先ほどの荒木委員の御質問に対するお答えにおいても触れましたように、思想的には、あまりぜいたくでない程度の住宅であれば、せめてそれだけは相続税の対象にならないようにということが一つの目安になりまして、現在の基礎控除あるいは相続人の数による控除、妻に対する控除、総合いたしますならば、まずまずそのところには税はかからぬであろうという程度に調整をしているということでございます。  そこで、さらに一歩を進めて、はっきりと居住用財産を目安にした控除を置いてはどうかという御提案でございますが、これは非常にむずかしい問題がありますのは、どの程度の家であればそれは課税外に置くかというあたりになってまいりますと、これはやはり一種金額基準で切らざるを得ない。宅地の高いところもありますし安いところもありますし、家がりっぱな場合もありますし、そうでない場合もありますから、金額基準に置かざるを得ない。そこで、金額基準に置くといたしますと、今度はまた他の財産とのバランスの問題が起こってくるわけであります。私どもは御指摘の点はよくわかりますので、そういうことを十分頭に置きながら今後とも相続税の課税水準をきめていくということにはいたしたいと思います。しかし、いま直ちに先生御指摘のような形で新しい控除をもう一本立てるということについては、なお私どもとしてはちゅうちょする次第でございます。
  153. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 私の考えておりますことは、発想の転換ということを言ったわけですけれども、これは最後のところで主税局長も触れられたわけですが、基礎控除幾ら、配偶者控除幾ら、こういうようにやられる。これは税法の少なくとも今日までのたてまえとしてはやむを得ないことであるかもしれない。また、そういうことでよその国なんかでもやっていることだ。しかしながら、日本の場合に、日本ほど地価上昇というようなことがこれほどラジカルともいうべき形で急進しているところはまずないわけですね。  そういうようなところで、たとえば東京都内における世田谷なら世田谷、前の論者もそういうところを引例したわけですけれども、そういう坪五十万もするようなところで基礎控除四百万が何坪に値するのか、これは八坪だ。八坪に住めるはずは絶対ないわけでありまして、どんなにささやかな、平均的なという表現でもいいかもしれないけれども、無理のない最低限度の居住に値するスペースというものが五十坪なら五十坪ということにしましても、これは二千五百万にもなってしまうということになるわけですね。   〔木村(武千代)委員長代理退席、大村委員長代理着席〕 そうだとするならば、こういうような形でやる場合にはもうみな相続税をかけられて、しかもそれが労働者である場合には、これはいわゆる投機だとかあるいは営業による利得だとか、そういうようなことでかせげない。きまった給与以外になかなか受け取れないわけですから、どうしてもその財産を処分してどこかへ出ていかなければならない。その出ていく先だって、いまつとめを持っておって労働しておる。その職場からたいへん離れたところへ追い出されざるを得ない。こういうような機能まで果たしていいのだろうかということが、いま日本の特に大都市においては非常に深刻な問題になっているのではないかということであります。したがって、何らかの形で人間が居住するについて最低の限度として、土地が五十坪でなくてもいいでしょう。あるいは四十坪でもいいかもしれない。そして建物が延べ二十坪なら二十坪という程度のもの、そしてその土地とその上にある上物、居住に要する建物というようなものについては、時価相続税法による資産の評価というものではなくて、そういうものを基準にしてずっと先祖代々きておるのだ。そしてしかもサラリーマンであって、所得税は一〇〇%徴収されて、いささかもいわゆるクロヨンとかトーゴーサンといわれるような恩恵に浴している階層ではないのだ。しかもそれは親譲りであって、自分が取得したものではないというような者がそこに住みたいというような場合には何らかの形で、それ以上の分については相続税の対象にしても、時価による評価をしてもけっこうだけれども、そういう生活の城というものを、相続税のたてまえにおいても何らかの形で控除するというような特例がこの段階では私は必要な気がするが、税法上そういうことは絶対にとってはならぬことだしとるべきものではないのか。私どもはそういう配慮というものがあってしかるべきである。これは農業地域というような指定のあるところ、あるいは市街化調整区域というような、そういうところではかなりさま変わりの議論になるけれども、そういう発想というものが、この際暫定的にでもあるいは特例としてでも、地価安定というものが実現しない限りにおいて必要だ、こういう考えに立つわけですけれども、その辺の点についてどうお考えでしょう。
  154. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 ただいまの点は非常にむずかしい点でございます。おっしゃいますように、現に東京近郊に住んでサラリーマン生活をしておられる、御両親なり何なりの家があって、そこから通勤しておるし現在の所得もあまり大きくない、こういうことを考えてみますと、確かに御不幸のためにその家に住めなくなる、住めなくなるまでというのは少し大げさであるとしても、相当税を納めなければならなくなるということには問題があろうかと思います。  ただもう一つの問題は、現に田畑なり山林なりを地方に持っておられる方がなくなって、その御子息が東京で同じように勤労者として働いている。その場合に課税のいわば標準価額は同じであっても、片一方のほうの場合には住宅についての特別の控除があるから課税にならぬ。ところが、片一方の場合には課税になるということではちょっと問題が起こってくるわけでありまして、地方の農村地域から出てこられて東京で現在勤労者の生活をしておられる。その方がたまたま御不幸があって親御さんの財産を継がれる。その機会に一種の財産分与を受けて、今度は東京近郊で家を持ちたいというような場合も、片一方においてケースとして非常にたくさんあるわけでございます。現に居住しておる者についてだけ一種の特別控除制度をつくりますと、後者の例の場合との間のアンバランスという問題が生じてまいるわけでありまして、いろいろなケースがあるわけでございます。現に、家を持っておられる方は何とか特別の控除をする。同じような財産価額であるが、それは現に家を持っていない場合にはだめだということにするのは非常につらい。私どもとしては、片一方の第二のほうの方々からもそういう御要求が出るであろう、こういうふうに考えるわけでありまして、そのことを考えますと、やはり全般的な課税最低限の引き上げということのほうがより公平ではなかろうかと思うわけであります。  ところで問題は、ただいま御指摘のように、長い間住んでいたところから出なければならないとか、あるいは相当の税を納めなければならないというような事態が出てくる機運があるわけでありまして、そのことに対処いたしますためには、そこらのところを課税最低限を定めるときの一つの目安として、漸次手直しをしていくということではなかろうか。ただ、ただいま坪五十万の例をお引きになりましたけれども、それは、坪五十万円というのが呼び値でありましても、相続財産の評価額はそれほど高くはなっていないのでございます。大体公示価格の七割くらいを目安にしておるわけでございますから、公示価格自体が現在の呼び値よりはやや低いところにきめられておりますから、それが相続財産の評価額になっておるということもお考えいただきたい。そういたしますならば、東京の山手線の中であるとか、あるいはそのすぐ周辺のいわば高級住宅といわれるところでありますと、ちょっと家を維持することが困難に、相続人の数にもよりますが、なってくるかと思いますけれども、まあまあぎりぎりその辺のところを目安として直させていただくということでありまして、ただお気持ちは、御指摘の点は非常によくわかるので、私どもも過去において四十一年から七年間を手直しをしなかった、その間において土地の値上がりが非常に大きかったというところからたいへん事態が切迫化しておるわけでございますが、今後は地価の傾向も片っぽうにおいてにらみながら、片っぽうにおいてそう長い間課税最低限のワクをささえるということをしないで、弾力的にやっていってはどうか。重ねての御質問ではございますが、居住用財産についてだけの特別控除ということは、ただいま一例で申しましたように、一方において不公平を生ずるという危険がございますので、なお私どもといたしましてはちゅうちょをいたすということでございます。
  155. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 これは急にそういう方向でやりますというような答えは出てこないだろうと思うけれども、問題提起として十分これはさらに検討をしていただきたいと思うわけですが、次に質問を移します。  皆さんが出されておるこの基礎控除四百万円プラス八十万円から、今度は百二十万円かける五ということなんですが、核家族化の進行ということについてあまりにも皆さまは無感覚でいらっしゃるのではないか。これは本委員会において所得税のいわゆる標準世帯というのをどうするか、五人家族なのか、夫婦子供三人ということなのか、夫婦子供二人ということにすべきかということで、だいぶ論争をして、今日標準家族が四人ということに、夫婦子供二人ということになっているわけでありますが、最近これが一そう人数が減ってきているのではないか。したがって、核家族化の進行ということによって、法定相続人が妻を含めて子供四人というような形に大体なるだろう、大体そういう事例を想定されておるのだろうと思うのですが、この辺のところにも現状に対する認識のズレというものがあるんではないか。家族構成は大体今日二・六七人というところではないかと思うのですが、この点もそういうことになるとするならば、これはもう五人という想定で一千二百万ありますよ、それから配偶者控除を六百万に上げますよ、合わせて一千八百万ですよというようなこともかなり大きく差異が出てくる、こういうように見なきゃならぬわけですね。その辺のところについて実態はどうなっておるのか、その辺はっきりさしていただきたいと思います。
  156. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 私どもが持っております資料では、昭和四十六年の相続税の課税実績がございます。それによりますと、被相続人、いわばなくなった方の数が四十六年分で二万五千九百四十三人、それに対して相続税の申告書の上での法定相続人の数が十一万一千八百八人ということで、四・三一、四人と三一ということになっております。ただ、実はいろいろ相次いで父親がなくなり母親がなくなりというようなことがある関係もありましょうか、遺産総額が小さいほうが法定相続人の平均数が減っておりまして、一例を申しますと、遺産額一千万円以下というところで二・四五人、こういうことになっておるわけです。これは一つには、人数が多ければ基礎控除が働いてまいりますからその方は課税にならないわけで、私が申しておりますのは、課税統計の数字でございますものですから、したがって遺産階層が小さいところでなおかつ相続税を納めていらっしゃるという方は、これは人数が少ない場合に限る、こうなっておりまして、遺産階層で一千万円以下のところの数が二・四五人、逆に遺産階級が一億円の方の相続人の平均人数が五・一二人というようなことになってきておるわけであります。でありますから、この課税統計表を何か換算して読み返してみる必要があるわけでして、そういう意味から申しますと、平均の四・三一よりは実態はもっと人数が多いのであろうということがいえるだろうと思います。その点が一点。  それからもう一点は、ただいまちょっと核家族のお話が出ましたけれども、相続の場合はこの核家族という形で、生計を別にしておられましても、相続税法上の法定相続人の数というのは、民法の相続の場合の法定相続人の数になってくるわけでございますから、実際の生計は分けておられましても、これが相続人であることは間違いないのでありますから、最近のいわゆる核家族化現象というものが、いわゆる相続人の数にはあまり直には影響してきておりません。いま手元に残念ながら資料がございませんが、たとえば先ほど十一万一千人を二万五千九百四十三で割ると四・三一と申しましたが、その四・三一という数字は長い間変わっておりません。たとえば、先ほど例にとりました現行税法の改正時点であります四十一年をとってみますと、これが四・二三になっております。その後御参考までに申しますと、四十二年が四・二五、四十三年が四・〇三、四十四年が四・二八、四十五年が四・二七、四十六年が四・三一というようなぐあいでございまして、この数そのものは実は移動がない。ただおっしゃいますように、五人を前提にするから千八百万になるけれども、それがもう少し小さい人数で考えれば、最小限はもう少し小さくなるのではないかというのは御指摘のとおりで、なおそのあたりはよく検討してみる必要があると思いますが、今回基礎控除の五割増し、それから相続人の数によりまして八十万円のところも五割増しの百二十万、妻のところも五割増し、そうすると法定相続人の数はいまお示しいたしましたように四十一年当時とほぼ相続税案件としては変わっていないということを前提として、各控除を同じ割合で五割実は上げていくということにしたわけでございます。
  157. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 これはいま、相続自体が起きるというのは、戦時中の産めよふやせよというような時代のツケがいまきているようなところもあるかと思うのですが、これからの問題としてはやはりその点も十分考えて、課税最低限というものは考えていかなければならぬだろうと思いますし、また高額所得層にかえって法定相続人が多いということについては、これは相続財産を目あてに、俗なことばでいえば二号さん三号さんに産ました子を遺産相続の段階で認知するというような事例なんかが、これはお笑いのようなことではあるけれども、現実に何億の億万長者というような人たちにはそういうような事例なんかもある。総体で二万四千件ぐらいという相続税課税案件、この程度のものでしかないということは、これは限られたかなりしぼられたものになってきている。しかもそういう何億というようなところでは、そういうことがお笑いぐさではなくて実際にあることだろうと思います。これからは、しかしいずれにしても、もちろん四人も五人も子供があって、嫁に行ったけれども法定相続人であることには間違いないということはそのとおりだけれども、そしてその民法の基本構造は変わらないでしょうけれども、これからは子供自身が二人だあるいは一人だというような、そういう形での核家族化の進行ということが非常に進行するという段階を迎えますと、これはもうそろそろこれからそういう影響が出てくる段階でありますから、その点も問題を指摘をしておくにとどめたいと思うわけであります。  そこで私どもは、次の問題としては、というよりもいわゆる課税最低限のあり方というものが、どういうところに基準を置いて、どういうところまでは相続税というものを課さないか。その根本は、やっぱり生活破壊、その相続税を徴収されることによって相続人の生活の基盤全体がくずれるというようなことまで追求するということは、これはもう先ほどの相続税の機能なり目的なりというようなものから考えても、無理だという限界というものを、皆さんもおそらく理論的には考えてやっておられるだろうと思うけれども、そういうものについて、具体的な表現としては基礎控除、配偶者控除をどうしていくか、こういうことになるわけですけれども、その基準というものはどういうところに置くということが、何らか明確な考え方、整理された考え方というものがあるのかどうか、この辺をひとつはっきりさしておいていただきたいと思います。
  158. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 その点は非常に問題でございまして、それを明確にいたしますためには、私どもとしては本来一種の国富統計、そして国富の、個人の財産階層別——所得階層別でなくて、財産階層別分布というようなものがありますならば、非常に都合がいいと思うわけでございますが、残念ながらわが国は、非常に統計は進んでおりますが、財産統計、国富統計が不十分でございまするために、財産階層別の分散図というものが把握できないわけでございます。そこで、やや科学的、理論的な基準を定めがたいのでございます。  そこで、現実に今回お願いをいたしましたときの目安を御説明することによって、ただいまの御質問に対するお答えにかえたいと思いますが、四十一年の改正によりまして、その当時どのくらいの案件が課税対象になったかと申しますと、もし四十一年に改正しなかったならば大体二%、つまり相続案件でございますが、どなたか御不幸があった件数中、相続の発生件数が二%くらいになるだろうと推定されたものを、相続税の改正によりますと、大体一・四%くらいに落ちるように改正したわけであります。これが四十六年には三・八%まで上がっている。今回改正を行なわないとしますと、四十八年にさらに上がりまして、大体四・九%くらいの課税案件件数になってくるだろうということでございます。これを、ほっておけば大体四・九%くらいになるのを、四%くらいに落とすかというくらいの見当をひとつつけましたということが一つであります。それは、先ほどの荒木委員の御質問に対するお答えでもちょっと申しましたとおり、現在の段階で、全体として所得、したがって財産がふえてきております関係上、四十一年当時まで戻すということはとても考えられないわけであります。四・九くらいになるかというのを四%くらいに落とすというのは、あるいはまだ不十分であるという御指摘があるかもしれませんが、全体としての所得、財産の増加と見合うならば、この程度ではいかがかというのが今回の考え方でございます。  第二のメルクマールといたしましては、もう少し具体的に、どのくらいの財産の場合に課税しない、どんなタイプの相続の場合に課税対象にならないようにするかということでございますが、まあ二つ三つメルクマールがあるかと思いますが、その一つ、最も重要なのは、先生先ほど御指摘の都市における通常の居住用財産だけしか持ってないという程度の相続の場合には、これは課税対象外に置いたらどうか。その都市における通常の居住用財産というのは、たとえば東京でいえばどの辺の地域のどの程度の規模の居住用財産を頭に置くかというあたりで、先ほど荒木委員の御質問で、まだ不十分ではないかという御指摘があったあの問題でございますが、一応そういう地点におきますところの居住用財産だけであれば課税にならないというのが、一つの目安でございます。  第二は、いわゆる純農村、純粋農村におきますところの農家について、これは現在までもそうでございますが、今後も相続税の課税対象にならないように考える必要があろうか。農地の最近におきますところの相続税評価額等を目安にいたしまして、現在の農家の財産の分布状況を見まして、五つに割りまして一番財産の多い階層、農家のうちで財産の一番多い階層、そのまた平均ぐらいのところまでは、間違いなく相続税がかからぬ。五分位に分けまして、一番大きい財産階層のまたその平均までのところは財産税がかからぬようにする。現在相続税評価額は、田畑はそう大きくございませんし、山林も大きくございません。したがって純農村地帯における純農家においては、調べてみますと、田畑、牧草地、宅地、山林、その他を合わせまして、また自営地、貸し付け地を合わせまして、大体いま申しました五分位に分けた一番大きい分位の平均が四町四反ぐらいになっております。そういう方の持っておられます住居その他の家屋が百坪ちょっとこえるぐらい、住居、その他に作業用の建物がありますから、百坪をこえるぐらいになっておりますが、その平均のところぐらいのところでありますと、大体私どもの一応試算してみましたところでは、相続税評価額が一千万円ぐらいのところになります。そこで、そのぐらいであれば今回の、先ほど御指摘があって、それではいかぬと言われましたが、かりに配偶者及び相続人四人で計算してみますと千八百万円でありますから、まずまずだいじょうぶ、こういう見当をつけておる。その辺が一つの目安になっておるわけでございます。
  159. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 農村地域あたりでも、最近じゃ特にゴルフ場建設を始めて、たとえば私どもの栃木県あたりでも三十八のゴルフ場建設で、いま大手資本が入って土地の買い占めをものすごい勢いでやっておるわけです。もうそういうところでは一反歩当たり百万、百二十万というような、農地、畑あるいはたんぼ、さらに山林あたりまで八十万から百万というような値段まで出して、とにかく用地を取得するんだということで、もう過剰流動性が乱舞している今日の世の中ですから、金に糸目をつけない。とにかく土地を必要量だけ確保するんだということで、ものすごい土地買い占めがそういう形で行なわれているのです。  そうすると、そういうところはいずれもまさに純農村なんですよ。そして、そういうところには純農家がずっとある。そういうところにそういう撹乱要素がそういう形で入ってくるというようなことになりますと、時価評価額の大体七割だとかあるいは六割だとか、あるいは半分ぐらいというようなことになったところで、いま主税局長がおっしゃったようなことではもう相すまなくなるというような現実も農村部においてすら出ているのです、そういうことで。特に首都圏あたりにおきまして、あるいは首都圏でなくても東北のほうにいきましても、縦貫道がもう貫通するというようなことを踏まえて、その近辺に、またインターチェンジ近辺にはゴルフ場ができる、あるいは工場が工業再配置で立地されるというようなことになって、ものすごい地価上昇が、急角度の地価上昇が起こっているということになりますと、やはりそういう面で、農業をやはりそういう地域でもこれからも続けていくというようなことについて、後継者が居つくことがなかなか困難であるというようなところに相続税の重課が頭にのしかかるなんということになったら、いよいよまともに、まじめに日本の農業を守ろうとするような後継者なんかが、そういう相続税で痛めつけられるというような形になって農業から離脱をしていく、放棄をしていく、こういうような事態もこれは考えられるわけでありまして、そういう点については、農業後継者問題というようなものなども十分踏まえた上での考え方というものを、やはりきちっとした方針のもとに、実情をよく調査をしながらやっていただかなければならない、こう思うわけでありますが、そういう点で、いま五分位の一番上、平均というようなところまではかけないということでありますが、さらにそういう新しい事態に対応する要素というようなものについてどのようにお考えなのか、その点ひとつ聞いておきたい。
  160. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 私どもの考え方では、農村地帯におきまして農業を継続していくというようなことである農民の方々について、しかもその農地の保有状態が常識的なものであるところについて相続税が課税になるということは適当でないというふうに思っております。ただ、一面におきまして、都市の近郊の農家で、たいへん地価が高いところでなお農業を継続していく場合とか、それからさっきのゴルフ場の御指摘がありましたような場合について考えますと、これはむしろ、現在、たとえばゴルフ場ができるというようなことで地価が上がっているといたしましても、実は田畑の相続税の評価額は農地としての経営その他を頭に置いたかなり低い評価水準になっておりますから、田畑でも牧草地でも現に農業を続けていらっしゃるという状態の場合には、間違いなく私が先ほど申しましたような規模のものでありましても課税にならない、こう確信をいたしております。しかし、現実にそれをゴルフ場等に売られたというような場合あるいは提供しておるというような場合あるいは別用途等に提供しておるという場合でありましたならば、これは一方において中小企業なりサラリーマンなどとのバランス問題も出てくるわけでありまして、そういう方々について課税案件が起こってくるということは、これはやむを得ないのではないかというくらいの感じでございます。  なお、全国的に地価の上昇が、一律ではなくてアンバランスに起こっておりますから、多分に、現在私どもがそう考えておりましても、今後の推移によっては意外なところで計算上どうしても課税さしていただかなければならなくなるような案件が出てくる危険がございますので、いままでよりはもっと詳細にこの土地価格の推移等をにらみ合わせながら、いまおっしゃいますように、純農村地域において農業を続けていく場合には、これは課税の対象にならないようになるような制度にしておかなければなりませんので、もっともっとそういう動きを見守って間違いのないようにいたしたいと思います。
  161. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 皆さんの相続税の税収見積もりの中に、課税人員といいますか課税件数といいますか、十万四千という数字が出ているわけですが、この業種別内訳といいますか、たとえば中小企業が何ぼ、あるいは農業が何ぼ、その他の商業をやっている人とか、労働者いわゆるサラリーマンとか、そういうような内訳というのはわかりますか。わかったら教えてください。
  162. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 申しわけございませんが、いまの税務統計上そういう分類をいたしておりませんので、その数字は把握いたしておりません。
  163. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 その点はあとで資料として、ここ二年ぐらいでけっこうですから、農業の場合の相続税課税件数等についてひとつ資料として出しておいてください。どのくらいのものでどういうふうにかかっているか。
  164. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 特に農業の問題にしぼりますならば、あまり多くのあれはないと思いますから、至急調べてみたいと思います。
  165. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 次に、税率の問題ですけれども、これもかなり長い周変わっていない。これは何年前にいまの現行税率はきまったままですか。
  166. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 前回の相続税の手直しをいたしました四十一年以来全く変わっておりません。
  167. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 その間に地価暴騰というようなことで、主として相続財産の約七〇%が地価であるということになるわけでありますから非常にウエートが高い問題であります。したがって、今日もう現在のところ六十万円以下一〇%を振り出しに十三段階で、最高一億五千万超七〇%、こういうことになっておるのでありますが、この地価上昇によってぼろもうけをして多額の資産を持っておる——庶民大衆がマイホームの土地を求めるにもこと欠く、全く不可能に近いというような、特に都市等においては全く不可能に近いような状況になっている。しかもそういう土地の増加益をたっぷりため込んでおるような人たちというのが、相当なこれはもう何億、何十億というような資産を持っている人たち個人の場合でも少なくないのではないか。したがって、この税率そのものも、税の刻み方などにつきましても十分もう改正すべき段階に来ている。そして少なくとも最低税率の一〇%のところあたりはもう少し、五%ぐらいの段階を設けてもいいような気もいたしますが、そういう基礎控除を抜いた残額が六十万とか百万とかいうような小さなものについては若干税率を低めるくらいの配慮をしてもこのところはけっこうだけれども、上のほうですね、右上がりのところ。先ほどの主税局長のおっしゃる右上がりのところは五億あるいは十億というような段階の刻みなどをつけ加えて、そういうところは現在の七〇%の最高税率というのを八〇%くらいまでは、せめてこの程度までは設けてもいいのではないか。実効税率になればそれもいささか下がるわけですから、そういうところの表面税率を少なくとも八〇%ぐらいまでは持っていってもいいのではないか、私はそういうような感じがするわけでありますが、税率改正の問題について一体主税当局はどういうお考えを持っておられるか。私の意見に賛成の方向か、反対の方向なのか明らかにしていただきたい。
  168. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 税率については、本来見直さなければならない問題だと思っております。ただその見直し方が非常にむずかしいということがありまして、申しわけございませんが、今回は御提案をしなかったわけでございます。  どういう点の見直しをするかといいますと、いま御指摘ありましたように、いわゆる遺産階層の小さいところでございます。昭和三十三年から四十一年の改正までの間は三十万円までのところが一〇%でございました。それを四十一年の改正で六十万円まで一〇%にしたわけでございます。そういう意味におきまして、当時八年たちましてこれを直しておりますから、ある意味からいいますともうそろそろそこらあたりを直すかどうかという問題が一つ残っております。  それから第二は、先ほど荒木委員の御指摘にありましたように、所得税の税率が絶対的なものではないと思います。ないと思いますけれども、所得税のカーブと相続税のカーブをかいてみますと、途中のところで一部分逆転しているようなカーブになっている部分がありまして、そこでここらの財産階層の部分について若干手直しをしなければならぬかどうかという問題がございます。  三番目には、右上がりの、つまり財産の多いほうの階層の問題でございますが、これは三十三年以来の法制を四十一年に直しますときに若干直しておりまして、たとえば七〇%の適用対象を従来一億円超でありましたものを一億五千万円超に直すというようなことをやっておるわけでございます。五〇%の適用税率でいいますと、従来三千万円以下でありましたものを五千万円以下に直すというようなことでやっておるわけでございます。ですから、ノミナルに若干財産がふえておりますから、そして高税率対象階層が非常にふえてきておりますから、そういう意味からいいますと、一部むしろ先生の御指摘と逆に下のほうに下げるということをやらなければならぬ階層もあるかと思っております。  最後に、非常に大きな階層について七〇という税率をもっと上まで持っていったらどうかということがあるわけでございます。これは一つの参考としてよその国の例などを調べてみますと七〇よりも多い国があるわけでございます。ただ、アメリカでは最高税率が七五をこえておるようでありますけれども、ただその七五をこえるにはアメリカの場合ですと財産が六十億以上ということで非常に飛び離れて高いわけでございます。それからイギリスが七五になっておりますが、この場合にはやはり日本の円に換算して五億くらいになっておるというようなことでございます。  そこで、一体高いほうに税率を積むべきかどうか、積む場合の問題点はどの辺に置くべきか、これは国民の皆さん方の間でもっと高くしたらどうかという御意見があると思いますが、その場合にどの辺からということになりますとかなり意見が分かれてくる。それからもう一つは現在の申告状況、特に高財産階層の申告状況がどうか。高財産階層につきましては、国税庁の調べがかなり徹底をしておりますから、もう間違いないとは思っておりますが、そもそも、しかしそういうことでなしに、高税率といいますと一種の租税回避行為が起こりますものですから、それとの関係をどう考えるかということを見なければならぬということでございます。これはかなりいろいろこういうことで検討してみなければならぬ問題があると思っておりますので、今回も初めからやらないというようなことではなくて、やれないかどうか検討をしてみたわけでございますが、十分の調査を行なわなければとてもできないということで見送ったのでございます。ただいまの御指摘の点、私どもも、今後の方向を考えます場合に十分頭に置いていきたいと思います。
  169. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 十分頭に置いて検討をされるようでありますが、やはり地価上昇という問題を中心にした土地政策とも関連をつけながら、勇断をふるって——最近地価の上昇によって五億なり十億なりというような個人財産を持っておる人たちがかなりあるのではないかというような、これは私自身で調査をいたしておりませんけれども、今日の情勢の中で、そういうものを少なくとも予測できる、そういう状態に今日の状況はあるだろうと思います。そういうことになれば、やはり土地を買い占めをして、そしてその値上がり益を得ようということで、勤労階層に対してその土地を放出するというようなことにさせる方向に持っていくためには、やはり幾らため込んでおっても、土地を買い占めて増価益を待っているというような——私は、本来土地というのは売買すべきものではないのだ、これは譲渡はあっても売買のいわゆる差益を取ろうというような、売買による差益で大もうけしようというようなことであってはならないだろう、こういう基本的な考えを持つわけだし、今日多くの国民が、そういうことで土地に対して——本来土地を買い占めるというようなことは、土地投機ということがよくいわれますが、そういう意味では投機ではない。これは今日までのところはリスクを伴わないものだ、これはもう上がるにきまっているんだ、限られた供給の中で、持っていればそれはもう上がるだけなんだ、需要はどんどんふえるんだ、こういうことでありますから、絶対リスクを伴わない買い占めなんですから、土地投機ということばは当てはまることではないんだというような議論も聞くのでありますが、そういう立場からいっても、相続の段階において非常に高率な税制によって富の集中を排除される、はき出させられるんだというようなことになれば、土地政策に対しても非常にいい影響があるだろうと私は思うのです。  したがって、この辺のところはひとつ思い切った、税制だけではもちろん土地問題というものは解決しないけれども、やはりそういう一翼というものは税制においても果たし得る、これはかなりそういうような心理的な影響も大きいものがあるだろうと思うわけでありまして、十億持っていれば、八〇%の課税をしたって二億以上のものが残るわけであります。表面税率八〇%にしたって二億残る勘定になるわけであります。実効税率でいけば二億何千万か残るわけでありますから、ほんとうに相続税というものがいわゆる所得税の補完税だ、しかも国から与えられた便益に対して、その死という段階において租税負担を清算をするのだという理屈からいっても、私は、こういうものに対する高率課税というものに大胆に踏み切ることはきわめて理にかなう措置であろう、こういうように思うわけであります。この点は、政務次官、いかがですか。いま主税局長からは、やや遅疑逡巡しながらも前向きの答えを得たのですけれども、ひとつ政治的立場に立って見識のある御答弁を伺って、あといろいろこまかい問題たくさん聞きたいこともあったわけでありますけれども、この辺で、次官からしっかりした御答弁がいただけるならば、あと質問者もつかえているようですから、終わりたいと思うのですが……。
  170. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 次官にお答えいただきます前に、前回、昭和四十一年の税制改正のときにもその問題がございまして、税制調査会でもいろいろ御議論がございました。「富の再配分を図るという社会的要請をもつ相続税の性格からその最高税率を七五%程度とすべきであるという意見である。しかしながら、現在以上の負担を求める場合には、ただでさえ負担感の重い相続税について、贈与等による回避を増加させることとなり、実質的公平を害するのみでなくかえって再分配効果を阻害する等のこともあるので、最高税率の引上げについては、さらに慎重な検討」をしなければならぬ、こういうふうにいっておりますが、実はこの辺のことがなかなか問題でございますし、確かに一般的に申しまして非常に富の集中という傾向が出てきておりますから、そういう意味からいいますと、相続税を強化するというのは、特に先ほど来御指摘の土地の値段の問題と関連して一つの御意見であろうと思いますけれども「贈与等による回避を増加させることとなり、」こう書いてございますが、この「等」というのでいっておりますけれども、実は税負担が重くなればなるほどそういう問題が出てくるという問題がありまして、そこらあたりでの、ことばは悪いですけれども、うまく立ち回られた方とそうでない方との間に公平が害されてはいかぬ。それから財産形態によりまして、外見ですぐ見えるものと、そうでない財産とがあるわけですから、それを外見になかなかわからない財産形態に振りかえるということがありますので、そこらで実は私が歯切れの悪い答弁を申し上げたわけでございます。しかし、このことは前回も考えましたが、なかなか税制調査会でも踏み切れなかったということであり、今回もいろいろ事情は変わっている面とまた変わってない面があるということを一言つけ加えさせていただきます。
  171. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 次官から答弁いただく前に、いまの主税局長の御答弁で、私どもは、やはり贈与税が相続税の補完税である、その意味は贈与税を課さなければやはり相続税の回避行為が起こるだろう、こういうたてまえで贈与税を設けておるということで、税率の刻みなんかでもそういう面での配慮が含まれて、案外非常に金額の少ないところでも、七十万ぐらいでも二五%の贈与税率になるというような税率の刻みもあるわけでありますから、しかも三千万円までのところで七〇%に到達するような税率になっているわけですから、三十万円以下ということを一〇%にして、そういう税率のたてまえになっているのですから、相続税だけでいいと言っているのではないのです。やはりそういう相続税と贈与税との関連というものを含めながら、贈与税の税率の問題も同時に考えるべきだということは、これはもう唇歯輔車の関係ですから、そういうことも含んでの提言である、こういうようにお受け取りをいただいてけっこうなのであります。  それからもう一つついでに、これはたいへんこまかい問題なのですけれども、いわゆるおやじさんがなくなって、あとおかあさんが十年後になくなる、いわゆる十年の期間で相次相続控除という問題があるのですけれども、十年という期限がどこに——いまたとえば私の場合でも、父親がなくなってから母親がまだ十数年生きているわけですよ。これは私の家の財産がどうのこうのという問題ではないけれども、最近はおやじさんがなくなっても十年以上奥さんのほうがよけい生きているなどというものは相当あるのですよ。そういうようなところで十年ということの根拠、そして相次相続の控除というものが十年を期限にして行なわれるわけですけれども、この点は弾力的に改正する意思はないのかどうかということを、非常にこまかい問題として調いて、それから最後にいまの問題を含めて次官の御答弁をいただいて終わりたいと思います。
  172. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 いまの相次相続の点は、ちょっと私不勉強でございまして十分なお答えはできませんが、いろいろな相続形態に変化があるかどうか、それから昨年の改正で夫婦間贈与を非常に大幅に広げましたこととの関連上どう考えたらいいか、そこらを検討して、しかるべきときにお答え申し上げたいと思います。
  173. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 先ほど来いろいろ御質問あるいは答弁を伺っておりまして、土地の値上がりというものが今日国民感情の上においていろいろな問題点を残しておる。税の負担の公平という点から見ましても、急激な土地の値上がりがそういう不公平感をかもし出しておるということも間違いないところであります。土地は商品ではない、すべて国民のものである、そういう一般的な観念に従って、特に先ほど来のお話で、急激な地価の上昇によるそういう利益を土地対策の一環としてやっていきたいというお話であります。今回相続税のみならず、土地税制というものをこのあと御審議をお願いすることになっておりますが、これらもほんとうならば、税の理論の上からいえばいろいろ問題点があるわけでありますけれども、これらも現在の国情に照らして、高所の判断に立ってやるということになったものでありまして、そういう根本的な考え方でこの問題と将来とも取り組んでいきたい、かように思います。
  174. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 答弁たいへん不満ですけれども、きょうのところはこれで終わります。
  175. 大村襄治

    大村委員長代理 高沢寅男君。
  176. 高沢寅男

    ○高沢委員 ただいま広瀬委員からいろいろお尋ねをいたしましたが、そのことにもまた関連しながらなおお尋ねをいたしたいと思います。  まず、相続の資産の評価の原理と申しますか、これは現在は相続税法の二十二条で、時価で評価する、こういうふうなことになっているわけですが、そうするとここに土地なり資産の評価の一つの原理として時価というものが出ておる。この時価には、実際に売買される、そういう価格もあるでしょうし、それからたとえば建設省のほうでやられる実際の売買価格というものを基準にされるところの公示価格というものもあるでしょうし、この相続税の場合の評価というものは、またそれらの関連をつけながら価額というものを出してこられるということになっておるわけですが、こういう時価という一つの原理に立つと、ここに当然最近の非常なインフレと、ことに急速な物価の上昇というふうなものがからんできて、そこにいろいろな矛盾が出てくるということになると思うわけです。そこで、現在行なわれている、いま申し上げました実際の売買価格あるいは建設省でなされる公示価格、それから相続税の前提として国税庁のほうでなされる資産の評価、この三つの間の関係、これをどういうふうに扱っていらっしゃるのか、それをまずお聞きしたいと思うわけです。
  177. 吉田冨士雄

    ○吉田説明員 ただいま先生のお話しのように、法律では時価と書いてございまして、あとは国税庁のほうの取り扱い通達で、相続税あるいは贈与税についての評価をやっているわけでございますが、その際の時価の取り扱いでございますけれども、基本的には課税時期、つまり相続あるいは贈与のあった時点、財産を取得した時点におきまして、財産の現況に応じまして、不特定多数の当事者間で自由な取引を行なったと仮定した場合に通常成立するであろう価格というぐあいに概念的に考えておりまして、一般的にこれを正常売買価格とか正常取引価格とわれわれは言っておりますが、これを基本にしまして、あらゆる財産をできるだけそれに近いように評価しようということでいろいろ考えているわけでございます。  ただいま御指摘の土地の場合と、それから株式の場合とをちょっと申しますと、株の場合、特に上場株につきましては、ただいま申しました概念が非常によく当てはまりまして、多数のものが取引市場でぶつかり合いまして、おのずからそこに一つ価格形成が行なわれるということでございますので、上場株式につきましては取得時の、なくなったときのその日の終わり値を基本にいたしまして、しかしそれだけでは、若干例外的にそのときに非常に高かったという場合もございますので、あとその月の平均の終わり値とそれから前の三カ月間のそれぞれの終わり値を比べまして一番低いものを時価考えております。しかし、基本的にはなくなった日の上場株の終わり値の価格ということでやっております。これが一番時価の標本的な考えだと思います。あといろいろ株の評価はございますが、基本はそれをもとにいたしまして有価証券等の評価をやっております。  いま特に御質問の土地の場合でございますが、土地の場合はこのように多数がぶつかり合うということがないものでございますから、われわれといたしましては、そういう市場価格を、いろいろな人の御意見を伺いまして、いわゆる仲値と申しておりますが、その仲値をまず正常売買価格としてさがす努力をしております。その場合に、まずいろいろ精通者の御意見、おもに不動産鑑定士とか市町村の固定資産の関係者の方とか金融機関で不動産の関係をやっておられる方、そういう精通者の御意見をまず伺いまして、それと、できるだけ近い時点の近い場所の売買実例価格を幾つかさがしてまいりまして、それはかなり売り急ぎの場合もございますし、そうでなくてかなりつり上がっている場合、かど地のような場合は実際の値段が正常売買価格よりか非常に高くなっている場合、そういう場合がございますので、正常売買価格を見出すように精通者の方の御意見を伺いながらきめているわけでございます。それからその正常売買価格は、公示価格とほぼ同じと思っていただいてけっこうだと思います。しかし、公示価格というのは御案内のように、全国でまだ非常に数が少のうございます。宅地だけで二千八百程度でございまして、宅地の評価の件数は約七万筆でございますので、公示価格があるところはできるだけ公示価格の仲値を入れます。その仲値の相続税の評価額はかた目にとりまして七〇%の数字ということを目途にしております。と申しますのは、先ほど申しましたように市場価格でございませんものですから、精通者の御意見にも非常に上下の幅がありますし、買い急ぎの場合と売り急ぎの場合とございますので、われわれといたしましては、どちらかといえばやはり何といってもかた目に、処分価格的な価格考えまして、かた目に仲値の七掛けということを基準にいたしまして、宅地にいたしましても農地にいたしましても、それを基準考えてやっているわけでございます。  固定資産税のほうは、いま自治省のほうからお答えがあると思いますが、現在のところでは私どもの価格よりは低目な価格だと考えております。
  178. 高沢寅男

    ○高沢委員 そこで、ついでに固定資産税のほうの評価、これはいま説明された評価とはかなり違う線の実際の評価となっておるわけですが、これは戦前からの地租以来の相続税というものがあって、それだけの違いというものが出ていると思うのですが、固定資産税の評価というのは時価という原理とは言えない。そうすると大体どういう原理だというふうに考えていいのか、そこをちょっとお尋ねしたいと思うのです。
  179. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 固定資産税におきます評価額  の適正な時価という規定がございまして、時価によって評価をするということになっております。したがいまして、土地につきましてもその評価額を出します考え方は、相続税の場合と同様でござ  います。
  180. 高沢寅男

    ○高沢委員 法律上同じ原理に立っておるといういまの御説明ですが、しかし実態としては非常に大きな違いがあるわけですね。この辺はどういうふうにお考えになるわけですか。
  181. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 固定資産税の評価と相続税の評価をできるだけ統一をしていくということは、税制調査会におきましても指摘されておりまして、私どももそういう努力を続けております。ただ、固定資産税の場合には、全部の土地が評価の対象になるという技術的な問題がございますために、たとえば昭和四十八年度の場合を申し上げますと、私どもが評価事務を始めます段階におきましては、四十八年度の相続税の、いわば基準地の評価額というものはまだ出ておりません。したがいまして、私どもが各府県ごとに基準地の価格というものを示す段階におきましては、どうしても四十七年度の相続税の評価額というものを基準にしながら、その後の地価の上昇を見込んで昭和四十八年度価格をきめるという方式にならざるを得ないわけでございます。そういうことで今回の評価がえを行なっておりますが、どうしても四十七年度の相続税の評価額と、それからあとで出てまいります四十八年度の相続税の評価額との中間ぐらいの数字というような結果になってくるわけでございます。そういうことで、どうしても相続税の場合と完全に一致をさせるということは、技術的な困難さがございます。それからまた、相続税の場合には毎年評価をしておりますけれども、固定資産税の場合には三年ごとの評価でございますので、できるだけこの基準年度におきましては統一をはかるように、お互い努力しているところでございます。
  182. 高沢寅男

    ○高沢委員 評価の関係では、そうすると固定資産税の場合も法律上適正なる時価ということで、この相続税の場合にせよあるいは固定資産税の場合にせよ、とにかく評価の原理は時価であるというふうなことが明らかになってくるわけです。  そこで相続の場合、先ほどから荒木委員の質問にもありましたし、広瀬委員の質問の中にも出てきておる、たとえば農業であれば農業経営というものを、現在の日本水準として当然な農業経営の一つの規模、あるいは商店であれば商業を営業していくための当然な平均的な規模、あるいは住宅であればこれは生活基盤としての住宅、宅地の適正な規模というふうなものには、相続税はかかってはならぬ、かかるべきではない、こういう立場から、先ほどからいろいろ御質問があったわけです。これについて私はむしろ、そういう生産手段としての農地あるいは農家の家屋、それから商店の店舗やそれにつながる家屋、それからサラリーマンの住宅、この住宅の場合には生産手段というよりはむしろ生活手段というふうに考えるべきだと思うのですが、そういうものに対しては、時価という評価の原理でなくて、別な評価の原理をとるべきではないのか、こう思うわけです。先ほどの局長の広瀬委員の質問に対するお答えの中で、たとえば農業であれば、農地四町歩何がしぐらいの面積で、そしてその家が住宅と作業場とを含む農家の家屋が百坪程度のものであれば、今度のこの改正で相続税がかかるようなあれにはならぬ、まずまずそういう心配はない、こういうふうな御説明があったわけですが、しかし、いまのように年々非常に物価が上がり、地価が上がるというふうなことで、いま御説明の相続税の評価が一年一年改定されていくということになると、しばらくたつと結局相続税がかかってくるというふうな線にひっかかってくるおそれがあるわけです。そういたしますと、いま言ったような住居なり、あるいは農業を経営するための農地なり、それから商店の店舗というふうなものは、もう別な概念で、その生産手段、生活手段ということで、時価でない別な評価の原理というものをひとつ適用すべきじゃないか、こう考えるわけですが、いががでしょうか。
  183. 吉田冨士雄

    ○吉田説明員 主税局長のお答えになる前に、先ほど評価の関係で純農地の評価の点について御説明が漏れましたので、ちょっと補足しておきますと、純農地につきましてもやはり基本的な考え方時価ということで、売買実例価格あるいは精通者の意見で引っぱってくるわけでございますが、御案内のように農地というのは、いまおっしゃいましたように四町歩というような大きな単位の売買がございませんで、どちらかというと一反とか、非常にその意味では切り売りといいますか、限界的な売買が多いものですから、売買価格自身も非常に高くなって限界価格になってくる。したがいまして、その一反の限界的な土地を買うためには一体どの程度の犠牲を払ったかという点を考えますために、全体の収益と限界の収益との比率を出しまして、おおむね五五%という調整率をかけまして、それで純農地の評価をしております。
  184. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 土地の評価について、それぞれの目的に応じて違う評価基準を採用してはどうかという御意見だと思いますが、その前に、相続税全体といたしましては、実は財産の中で、土地でありましても、家屋でありましても、あるいは預金のようなものでございましても、株券でありましても、または書画骨とうのたぐいでありましても、どういう財産形態であるかということについて評価基準を変えるということについては、いろいろな財産保有形態の方々の課税バランスという点からいいますと問題があるのではないか。やはり全体としては、第一原則はあくまで時価なら時価によるということで、財産形態のいかんにかかわらず同じ評価基準でないとぐあいが悪いのではないかというふうに思われるわけでございます。  それを前提に考えますと、今度は土地の中で土地の用途に応じて評価基準を変えるかどうかという問題が出てこようかと思いますが、現行制度の上におきましては、これまた非常に技術的にもむずかしいのではないか。たとえば、そもそも土地というものがあります場合に、それが現に使用されておる形態によって、違う評価基準で評価するということになりますと、一応はそれでいけるように思われますが、限界点のような問題がいろいろございます。そういうことから、現在はその辺非常にあいまいでございますが、たてまえは時価ということでありながら、いま現在の実際の税務の執行におきましては、国税の中におきましても、相続税の中におきましても、市街地におきます宅地と農地あるいは山林等につきましては、それぞれ評価基準、評価の技術の問題として若干の差異を設けているというやり方で進んでいるわけでございます。これを制度上、そういう評価技術といいますか評価のしかたということでなしに、本来農用地のようなものあるいは企業用地のような場合、住宅用地の場合において何か別の基準考えたらどうかという御指摘であろうかと思いますが、通常の場合には、それは何か適当なる基準をつくるならば、やってやれないことはないと思いますが、現実の問題としましては、農地でありましても、近傍農地の問題とか、企業用地の問題につきましても、企業用地と住宅用地とが併存しておる場合とか、いろいろな問題がありますので、私どもとしては、その辺は実務の上において、納税者の申告、それから税務署のそれに対する見方ということで処理が進んでおるわけでございまして、それを一般的な基準によって差異をつけるということには、制度上明確にするということについては、にわかにどうも賛成いたしかねるという状況でございます。
  185. 高沢寅男

    ○高沢委員 農地なりあるいは山林なり、こういう場合には、いま御説明の調整率をパーセントの調整を、たとえば宅地であれば公示価格の七〇%程度であるところを、農地ならば調整率五五%というふうな形で、実際はそういうふうな矛盾を調整する運用をされておる、こういう説明で、それはそれでわかるわけです。わかるわけですが、しかし、たとえていえば、いままで純農村地帯であったというふうなところへ、たとえば千葉県のような例で、新国際空港ができてきた。従来全く純農村として農業経営をやっていた地区で、そういう新国際空港ができるという関係で急激に都市化するような状況が出てくる。しかし、そうなってきたんだけれども、そこで従来から農業をやって、そして将来にわたって農業をやっていくんだ、こういうふうな立場である方が、周辺が都市化してきた結果として土地評価が急速に上がってくる、その評価が上がってくる立場で自分の農地も評価をされていく、そういう評価に基づいて相続税やさらにはその他の各種の税金がかかってくるというふうなことになってくると、結局そういう税金を払うためには、従来たとえば三町歩なら三町歩というもので農業をやっていたけれども、その農地の一部を売らなければ納税ができないということで、結局三町歩の農地を二町歩に減らさなければならぬ。二町歩になればもう満足な農業がやっていけないというような、いろいろな問題が都市化の進行というふうなことの中で非常に出てくるわけです。そうなりますと、先ほど言われたようなそういう調整措置をとっているということは、それはそれなりにわかるけれども、しかし、そういう環境の変化による農地の評価の値上がりの速度というものは猛烈ですから、とてもそんな調整では間に合わぬということになろうと思うわけであります。そうすると、そういうふうになってきたところでも、自分は三町歩なら三町歩という農地でもって将来にわたって農業をやっていくのだというふうな者に対しては、当然農地としての評価でいくべきであるし、そうすると、そこに適用される評価の原理は、時価ということではなくて、たとえば農地であれば、私は、収益還元方式という、その農業の中から生まれてくる、農家としての生計を立てていくに足るだけの収益、その収益を生み出す生産手段としての三町歩の農地であれば、そういう収益を基準にして、そうして預金の利子率でこれを還元して農地価格というものを出していく、こういうふうな農地の価格のきめ方の一つの原理があるわけですから、そういう原理を農業の経営の基礎になる土地については適用する、こういうあり方があっていいのじゃないか。同じ考え方から、都市部における商店の店舗というふうなものについても、その店から生まれる一カ月のその家族の生活の基礎になる収益というものをやはり同じように資本還元して、それでその店舗なり、その店舗の建っておる土地なりというふうなものの評価をきめていくという、先ほどの繰り返しになりますけれども、そういう生活手段なりあるいは生産手段という性格を持ったワク内の財産については、時価でない、いま言ったような収益還元方式なり、そういう方式による別な評価の原理を適用すべきじゃないか、こう思うわけですが、いかがでしょうか。
  186. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 現行ではあくまで時価評価によることを原則といたしております。それに対して高沢委員からは、収益還元方式による価格によって、つまり、個別の相続人の方々の置かれておる立場ということを織り込んで財産評価を行なうべしという御議論であろうかと思いますが、まさにその問題は相続税の非常に基本的問題としてこれまでも議論されたところでございまして、収益還元方式をとったらどうかという議論があるわけでございます。しかし、それにつきまして、従来は、農業の場合とそうでない場合とまず分けまして、農業の場合には、比較的、収益の程度といいますか、農地から生ずる収益の程度というものがある程度の幅の中に入るわけでございましょうけれども、市街地におきますいろいろ企業用の土地について考えますと、その土地から上がりますところのその収益の状態というのは、同じようなお店が隣合わせに並んでおりましても、他の状況によりまして収益の状況が非常に違う。そうしますと、同じ地域で隣合わせで仕事をしておられる場合にも、収益還元方式になるとすれば、その土地の評価は変わってくるということになるわけでありますが、はたしてそれが一生の所得についての清算的な課税の性格を持ちます相続税にふさわしいものかどうか。しかもその相続の時点だけでものごとを判定しなければならない。その相続人の方が土地をあとどういうふうに利用されるか、企業をそのまま継続されていかれるか、あるいは兄弟相談の上でそれをやめて別のほうに転換していくかというような問題がいろいろあります。それを相続時点、その御不幸のあった時点で判定しなければならぬということになってまいります場合に、現実に収益還元方式の採用というのは困難をきわめるわけでございます。そこで、現行制度ではあくまで時価主義ということをとりながら、なおかつ、そこから生じてきますところのいろいろの矛盾撞着を排除するために、若干評価上いろいろな配慮が加えられるという形で進んでおるわけでございます。  農業につきましては、先ほど申しましたように、現実的には課税最低限の水準の置き方との関連で現行のような時価主義に多少の配慮がありますが、時価主義で配慮いたしましても、ほとんど、農業の継続に支障があるようなことは、よほど特殊な場合を除いてはないような配慮が、現実的には、この土地の評価という面からではなくて、課税最低限のきめ方ということとの関連で解決されておるという現状でございます。  営業その他につきましては、なお課税案件が相当あるわけでございまして、その点につきましては、実際の面におきましてはときどきいろいろな面で不行き届きを起こしておりますが、やはりお店を並べておる二軒で、同じお店であればそれがどのような職業に使われておるかということで差違があるのはやはりおかしいということで、現在のところ、収益還元方式でなしに時価方式でいっておるわけでございます。  収益還元方式の問題は、相続税のほんとうに基本的な問題でございまして、今日までしばしば議論されておりますし、今後も検討をいただかなければならぬ問題であろうかと思いますが、現実的にそれを適用いたします場合の税の執行といいますか、適用といいますか、あるいは申告手続といいますか、そういうものとの関連から申しますと、私どもは、現時点ではやはり時価主義でいく、その場合にいろいろな点で評価の面で若干の配慮を加えていくということのほうがスムーズにいくのではないかという実感を持っておりますが、いろいろ理論的には高沢先生から御指摘のような問題があることは、私どもも承知はいたしております。
  187. 高沢寅男

    ○高沢委員 いろいろ御説明があり、それはそれなりにわかる御説明ですが、ただ、収益還元方式をとった場合、またこの方式に立っての矛盾は、いま局長の言われたように、当然あるわけです。それはそれで矛盾があります。しかし私の考えでは、むしろいまの時価主義に立っていたほうがもっと大きな矛盾があるんじゃないか、こう考えられるわけです。  この前の相続税法改正昭和四十一年で、今度の改正まで七年あるわけです。この七年の間の地価の値上がりとかいうふうなものの速度というものは、私はたいへんな大きなものだったと思うわけです。私はいま練馬におりますけれども、たとえば練馬の大泉地区であれば、昨年暮れには大体土地は坪二十二、三万というふうにいわれていたわけです。もういまになるとこれは坪三十万をこえているわけですね。これは例の日本列島改造論であおられたということがあるわけですが、そのくらいの速さの値上がりであるわけですよ、去年からことしで。そういうテンポで——これからかりにこの次の相続税法改正がまた五、六年将来にあるとすれば、この五、六年いま言ったようなテンポで地価が上がっていって、この評価が時価主義でなされていくということになっていきますと、そうすると、先ほど言いました生活の基盤としての最低の単位というふうなものは、いまの地価であればたとえば五十坪に二十五坪程度の家屋というふうなもので一応できるとしても、それが五年、六年その値上がりが続いていく中で時価主義で評価額を追っていけば、五年将来には、その課税最低限のワクの中にはいれるのは、それこそ二十坪か三十坪くらいしかはいれないというような矛盾が出てきて、こっちの時価主義の矛盾のほうがずっと大きいというふうに考えるべきじゃないか。  収益還元方式の矛盾はそれなりにあるでしょうが、たとえば農地に関しては、さっき局長の説明で、農業収益の大小の幅というものは比較的そう大きくないから、収益還元方式というものは一応成り立つじゃないかというニュアンスのお答えがあったのですが、商店の場合にはそのお店の性格によってずいぶん幅があるということを言われたわけです。しかし、たとえばその地区の一つの商店街なら商店街の平均的な毛のを求めて、それを年々——これは当然所得税やその他の関係で出せるわけですから、そういうことでもって追っていけば、収益還元方式の立場に立ってもそういう商店の店舗でも私はやれないことはないし、その矛盾のほうがいまの時価主義の矛盾よりむしろ小さい、こういうふうに考えていいと思うのですが、もう一度、繰り返しになりますが、御見解を聞きたいと思います。
  188. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 御指摘のように、土地価格上昇がきわめて速いスピードでございますことを考えますと、この財産評価についての原則、特に土地についての原則がいかにあるべきやという問題は、従来にも増して深刻に考えなければならない問題であると思っております。  ただ私どもが、実はこれは税の制度ということだけでなくて、私個人のことを申し上げて恐縮でございますが、現場においていろいろ相続税の納税者の方々の御不満やら何やらを聞いておりまして税務の衝に当たってきました経験等からいたしますと、収益還元方式も確かにおっしゃるように一つの問題ではございますが、今度はまた、先生はそっちのほうが矛盾が小さいとおっしゃるわけでありますけれども、私の感じでは、それはそれなりにやはりいろいろと紛争が起こりはしないかという心配がちらっといたすわけでございます。  そこで、もう一つの解決方法としては、確かに、最小限の住宅は課税にならないようにしなければならないということであるとか、あるいは農地の課税につきましても、もし今後急激な価格上昇がありますれば何か考えなければならないということが起こるわけでありまして、いま現在の時点において、このように四十一年以来の改正について御審議を願っている際にこういうことを申すのは若干不謹慎かとも思いますが、土地価格上昇傾向との関連におきましては、過去においてかなり長期間四十一年以来据え置きになっておりましたけれども、このように非常に土地価格上昇が大きいとすれば、相続税全体について、絶えず——いままでほど長い間据え置きということではなくて、かなり短時間に実情に合った措置をしていかなければならぬことが起こるのではなかろうか。ある期間を置いてあまりぽんぽんと改正をいたしますと、今度の税法改正で申しますと、一月一日以降に御不幸があった場合に新法が適用になってくるわけでありますが、改正がありますと、必ず十二月三十一日の御不幸と一月一日の御不幸とで非常に開きが出るという問題が起こってまいりますものですから、そういうことを考えますと、相続税法改正もいままでのようにあまり長い間据え置くということはまた問題があるかというふうにも考えますので、私どもはいまこの改正を御提案申し上げながらまた先のことを申し上げるのは、ある意味で非常に不謹慎なんでありますけれども、しかし何か将来の方向としてはそういうことも考えなければいかぬ。それによって、高沢先生御心配の、あっという間にまた練馬地区で課税になるではないかという問題についての対処のしかたとしては、収益還元方式の採用ということも一つの御提案ではございますけれども、そういうことも考えておる次第でございまして、同時にまた、収益還元方式がどうかというようなこと、またそれを、いまちらっと御示唆ありましたモディフィケーションができないかということも考えてみたいとは思いますが、いずれにいたしましても、居住用の財産のうちしかるべき程度のもの、あるいは農業財産のうち当然農業継続が可能であるようなものについては、従来と同ような意味で課税対象にならないように絶えず見直しをしていけば、どうやら当面解決できるのではないかというふうに私は考える次第であります。
  189. 高沢寅男

    ○高沢委員 時価方式でということを前提にいま局長お答えになって、その中で、将来そういうふうな非常な地価の値上がりが速い場合には、いま改正をしておるこの時点で、その先のことまで考えなければいけないというお答えがあったわけですが、私は、それは不謹慎でも何でもなくて、当然のことだと思うわけです。  そういたしますと、こういう非常な年々の大幅な物価の値上がり、また特に地価の値上がり、こういうふうなことをここしばらくの間私たちは予想しなければならぬということになってくると、たとえば今度社会保障関係では、年金に対して政府のほうでも物価スライド制というものを出されてきたわけで、これなどもわれわれは非常におそきに失したという感じがあるわけですが、とにかくそういうふうな物価の上昇に伴って生ずる非常な不合理というものを是正する一つの方法として、スライド制ならスライド制というふうな考え方もこの税法の中に取り入れて、そして今度の千八百万円のこの非課税ラインというものを、これはこれでいいか、あるいはこれを二千万にするか、とにかく一つの妥当な線をきめて、その線をその後年々物価の上昇に応じて自動的に上げていく、こういうふうな方法がとられれば、いまの点の心配はかなり私は防げるのじゃないか、こう思います。これも税の体系としてスライド制というのは確かにあまりいままで例のないことにはなるかと思いますが、そういうことも考えなければならぬ最近の経済情勢じゃないかと考えるのですが、いかがでしょうか。
  190. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 その点につきましては、所得税と法人税と相続税と、かりに三つとってみましても、きわめてこまかい点でありますが、いろいろ相互関連している分野がございます。たとえば贈与税の課税最低限というものを考える場合に、所得税の一時所得の課税最低限の問題であるとか、あるいはその他いろいろそういう問題の関係がございます。そこで、スライド制をとって相続税だけはそういう形で上がっていくということについては、やはり他の税との何か共通点を持っていませんと、いろいろぎくしゃくする点がありますので、にわかに賛成をいたしかねるわけでございます。  そこで先生の御質問は、宅地も今後上がっていくであろうし、その他諸物価もどんどん上がっていくではないかということで、そのことを御心配の上でただいまのような御指摘があるわけでございますが、私どもも、現状のように土地が急激に一〇%をこえるような勢いで年々上がる、こういうことであっては非常に困るわけでありまして、何とか実はむしろそっちのほうがもう少し常識のテンポでとどまるようになってもらわないと何ともぐあいが悪いわけでございますし、その辺の変化を見合わせながら考えたい。もしそういうふうなことであれば、これは相続税だけでなくて、なかなかやっかいなことになるわけでありまして、あくまで諸物価、物価水準その他は安定しているということでなければ、もう制度の組み立てが非常にむずかしいわけでございまして、一つの御意見としては承っておきますが、いま直ちにスライド制というわけにもなかなかまいりにくいかと思います。
  191. 高沢寅男

    ○高沢委員 そのスライド制というような考えをもし入れるとすれば、当然所得税の課税最低限も同じ扱いをすべきだ、こういうことになるわけですが、まあしかし、いまの局長のお立場としては、なかなかそれはいいというお答えはできないであろうと思うのですが、それはひとつ考え方としては、いまのような年々の非常な物価の値上がりの速い場合には、これはどうしても考えてもらう必要のある考えじゃないか、私はこう思うわけです。  それから、それに関連しまして、もう一度さっきの、従来農用地であったところへいろいろな都市化現象が出てきて、そういうことから非常に土地の評価が急速に上がるような、これは都市近郊が非常に多いわけですが、そういうふうな場合、一つの相続のケースが出てきた場合、さっきの局長の御答弁で、たとえば御兄弟で話し合ってその相続財産を財産処分してというふうな場合も確かにある。さりとてまた、話し合いの結果、その御兄弟の中の長男なりだれかが農業経営として引き継いでいくということをやる場合もあるわけですが、そういうふうな場合には、財産処分をしてそしてそれを売ってお互いに分けていこうというふうな場合には、これはこれで私は時価の評価でまさにいいと思うわけですが、さっき言いましたような農業経営でいくのだというふうな場合には、これに対してはさっき言った別の原理の評価、もしそうでなければ、また農地としても従来のそういう十分な調整を加えられた評価というものがなければいけないのじゃないか、こう思うわけです。  で、その点については私は、これは最近問題になっておる固定資産税の関係における農地の宅地並み課税のことにもからむわけですが、その当事者が、自分は将来にわたって農業をやっていくんだということを明らかにし、それを国に対して申告をし、というふうなことがあった場合には、それに対しては将来にわたって農地としての評価を適用していくということがあるべきじゃないか。そうでなくて、自分はもう農業をやめて、この土地を財産処分して宅地に転換して売っていくんだというふうな行き方を選択する場合には、当然これは時価で評価して適用していくという、そういう本人の選択を前提として国の税制の適用も区別される、こういうあり方があっていいのじゃないか。それで、もし農業でいくんだという選択をなされた方が、何年かたった後に、事情の変更で、もう農業をやめてほかの方法でいきますというふうになった場合には、これはさかのぼってそれに対して農業でない他の、ほかの方法による税の適用ということで課されることもあらかじめ明らかにしておいて、そういうことを承知の上で御本人が選択される、こういうふうなやり方があるのじゃないか、こう思うわけですが、これはお考えいかがでしょうか。
  192. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 都市近郊の農地の扱いにつきましては非常にむずかしいことであるということは、昨年来の農地の固定資産税について宅地並み課税問題についてのいろいろな各階層におきますところの御批判等によっておよそ推定されるわけでございます。ただいま高沢委員がおっしゃいますように、農地を農地として利用していくのであれば、それなりにそのことを前提として課税してしかるべきじゃないかという、いわば農業側の御主張と、本来すでに宅地なり何なり他の用途に充てらるべき状態にある土地について、それが農地のままで残っているのだというのはおかしいではないかという、いわば宅地を求めているサイドの世論といいますか国民の声といいますか、そういうものといかに調整すべきかということが大問題でございまして、固定資産税は年々の課税の問題でありますから、より深刻な問題として現在議論されておりますが、相続税のほうは、まあ御不幸があったときだけのことでありますので、いま固定資産税ほどには議論されていないが、いずれはその問題が非常に浮かび上がってくるであろうということは考えられるわけであります。私どもは基本的にはその点はいまだいずれの立場に立つともなかなか申し上げにくいわけでありまして、そもそも都市近郊で住宅地として非常に適当な土地があるという場合に、それをそのまま農地として御本人が続けたいというのであればそれが認めらるべきなのか、いや、それはやはり住宅用地として適当であり、片方、かなりの面積の住宅用地の供給が強く望まれている時代においては、そっちのほうの立場に立って判断すべきだということなのか、そこらあたりのいわばコンセンサスといいますか、そういうものがなかなか固まっていない現状において、一体いま御指摘の点をどう処理すべきがよろしいという前提で制度なり運用なりに当たるべきか、非常にむずかしいところであると思っております。  ただ、相続税の立場といたしましては、農地を相続された二つの相続のケースがあったとしまして、一方の場合には、御兄弟で相談の上で土地を処分してしまうということを前提に話が進み、一方においては、長男なら長男がそれを相続というか、農地をその後農用地として継続的に使う、つまり農業を継続する、しかし弟さん方はそれをどう考えるか。そこがつまり、一人だけの固定資産税の場合のように、現にだれかが農業をやっておられてその固定資産税をどうするかという話ではなくて、相続人が何人もおられて、そして片方の相続ケースの場合は、長男は続けていきますよと言うし、こっちの相続ケースの場合は、それは全部相談の上でやめた、こういうふうになる場合、こっちとこっちで税の負担が変わるということは、ちょっとなかなか簡単でない。またいろいろな不満が起こってくるという問題がございますので、固定資産税問題以上にそこは簡単ではなぐて、非常に冷たいと言われるかもしれませんが、やはり統一的な解釈をすべきでございましょうし、その統一的な解釈というのは^やはりどうしても評価基準を統一的にしなければならぬということでありましょうし、なかなかそれを、片方の相続ケースの場合には農地として続けていくから全体の相続税を変えていくということはむずかしいので、そこらは固定資産税の場合以上にむずかしい問題があるかと思っております。  そのケースにつきましても多少問題は出ております。現在のところ、どうにか課税最低限との関係でそれほどいま問題を起こさずにいっておるわけですが、その課税最低限の上昇、今度の改定率以上に農地の評価額がどんどん上がっていくということになりますと、御指摘のような問題が起ころうかと思います。いまそういう原則を採用すべしということについては、いま申し上げました例などの場合について——ごく一部の例について申し上げたわけでございますが、こういう場合に相互のバランスがどうかという、それぞれの方、二男、三男の方はそこを離れてサラリーマンになったり、いろいろ別の仕事をしておられるわけでしょうから、そういう方とのバランスがどうかというあたりをよほどよく考えてみませんと、なかなか簡単には——収益還元方式なり何なりによって農業継続の場合には全くかからぬようにせいということについては、相当問題があろうかというふうに考えます。
  193. 高沢寅男

    ○高沢委員 その収益還元方式という一つの原理なり、あるいは生活手段、生産手段としていこうという者と、そうでない、財産処分しようという者との間で、選択せいという原理なり、これはいままでの相続税法の体系から見れば違う原理であるわけですから、これはなかなか直ちに、それはけっこうですというお答えにはならぬと思いますが、しかし、その辺の矛盾の救いどころとして、いま局長は、課税最低限でその辺は相当カバーできる、こういうふうなお答えであったわけで、そうすると、ことしの改正で確かに相当カバーできる課税最低限になったとして、それがさっき言いましたように非常な地価なり物価の上昇の速度が速い状況では、しばらくたつともうこの課税最低限はカバーできないものになってしまう、こういうことであるわけです。  そこで、私さっき言ったスライド制、こういう考え方も出したわけですが、とにかく税制としてスライド制というものがかりに直ちに採用するだけのあれができないとしても、スライド制採用にほとんど同じくらいの効果のある手続をとるとすれば、これは非常に年の刻みを短い間に法改正を重ねていくということでないと、私はそこら辺の矛盾が解決できないと思うわけです。そこで、先ほど局長の御答弁では、いまの改正を論議している際に不謹慎かもしれぬが、そのまた先の改正考えなければいかぬということを言われましたが、私は、当然、いまのような物価上昇勢いでは、そうなければこの矛盾は解決できないと思うわけです。そういう点で、もう一度繰り返して、スライド制の採用ということをこの原則としながら、もしそれが法律の形としてそうできないなら、それと同じ効果のあるような改正手続ということを当然政府は考えられるべきだ、こう考えるわけですが、それをもう一回局長にお考えいただきたい。
  194. 大村襄治

    大村委員長代理 答弁は簡潔にお願いします。
  195. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 農地をはじめとして宅地の上昇率が非常に速ければ、やはり相当の頻度で改正をしなければならない、こういうことになるのではないかというのが、私どものいまの感じでございます。
  196. 高沢寅男

    ○高沢委員 じゃ、次へ問題を移しまして、相続の資産の中で有価証券なりあるいは貴金属なり書画骨とうなり、不動産でない性格のそういうふうな資産の相続財産ですね、これの捕捉というものが実際どういうふうになされるのか。私の考えでは、いまの経済情勢はもうインフレーションの状態であると言っていいと思うわけですが、こういうふうな状況のときには、お金というものが非常にそういうふうな物へ逃げる。しかも、逃げるのは一方には土地ということもありますけれども、また同時に、課税の対象として捕捉されにくい方向へ逃げる、こういうふうなことが非常にあると思うわけです。そういう点で、有価証券あるいは貴金属あるいは書画骨とう、こういうふうな資産が全体の相続財産の中で従来どのくらいの比率を占めてきたか、また、最近のようなインフレ傾向が特に速くなってきた段階で、それの捕捉がどうなっておるかということをひとつお尋ねしたいと思います。
  197. 吉田冨士雄

    ○吉田説明員 基準の問題でございますので、私からお答えいたします。  いまおっしゃいました書画骨とう、宝石あるいは有価証券あるいは別途預金、このグループは不表現資産で、われわれとしては一番調査の重点を置いており、また、調査しても一番困難な点が多いのでございます。四十六年の相続のありました総遺産価額の九千九百五十八億のうちで、有価証券が九・八%、それから預貯金が七・八%になっておりまして、それ以外に、土地とかあるいは家屋あるいは事業財産というものがございますが、それ以外に、統計で「その他財産」という分類がございまして、雑でございますが、これは六・四ほどございますが、その半分は、大体生命保険とか退職金とか、そういう部分でございまして、これもかなり不表現資産に近い場合がございます。それから、「その他財産」の中に宝石とか骨とうとか書画が入っていると思いますが、この点はちょっと統計として出てまいりません。  それから、こういう不表現資産の把握の執行の問題でございますが、私どもは実地調査あるいは簡易調査によりましておもに不表現資産の把握につとめているわけでございまして、大体毎年被相続人で二万六千人ほどのものに対しまして、大口調査と簡易調査で一万六千件ほどやっておりますが、そのうちの実地調査六千件は、大部分が不表現資産の把握に努力しているわけでございます。その結果、先ほど申しました九千九百五十八億の遺産価額、これとぴったり合いませんが、大体四十七年に調査で評価が出ましたのが九百五十一億円でございまして、約一〇%弱でございますが、この大部分は不表現資産がおもであろうと思っております。  個別のケースとしましては、やはり大きな社長その他の相続財産の把握で、ほとんど別途預金から入りまして、あるいは生前に土地を譲渡した、その代金がどこかへ行ってしまったというものから入りまして、その資金使途を追及いたしまして、それはほとんどの場合が有価証券あるいは先ほど先生のお話しのような不表現資産にかわっているケースが多うございます。
  198. 高沢寅男

    ○高沢委員 相続税の中では、未成年者控除の項があるわけですね。これも今度の改正の中へ入っているわけですが、この未成年者控除という、そういう考え方のある税はほかにどういうものがありましょうか。
  199. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 国税では相続税だけだと思います。非常に類するものとしては、地方税に、住民税の中に一部の未成年者についての非課税規定がございます。
  200. 高沢寅男

    ○高沢委員 ちょっとこの相続税の直接のあれからそれるかもしれませんが、最近非常に著しい傾向としては、所得税の納税人員というものが非常に増加してきている。私たちの見るところでは、その中で、新制中学卒業、新制高校卒業というふうな年齢層の、言うならば二十歳前の若年労働者、そういう人たちが納税人員としての数の中へ非常に多く入ってきている。これは未成年者であるわけです。そうすると、相続税で未成年者控除という考え方があるとすれば、所得税の場合も未成年者控除という考え方があっていいんじゃないか。これは実際大学を出て、そして二十歳をこえた段階で社会人になっていく人と、そうでなくて、中学や高校の卒業で、それ以前に社会へ働きに出ていく人、こういうそれぞれの立場の違いがあるわけですが、いずれにせよ、この二十歳なら二十歳という線で一人前の社会人としてこの世の中へ出発していく。そうすると、その十五歳なり六歳なり、その辺から働き始めた人は、その二十歳に至るまでの間その人の働いて得た所得なり収入は、そういう社会人として出発していくための一種の準備の段階と見て、そういう準備をさせるためにその二十歳に至るまでの間つとめて所得があって、しかし、それに対しては税をかけない、こういう考え方は私は十分成り立つと思うのですが、これはちょっと所得税の関係になるわけですが、お考えいかがでしょうか。
  201. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 これは最近初任給がかなりの程度に上がりまして、一般の給与の水準上昇率よりも高いスピードで初任給が上がってまいりました関係上、御指摘のように、中学卒業生もしくは高等学校卒業生でありましても、卒業して就職すると直ちに税金を納めなければならないというような状況が顕著になってまいりました。またその数も多くなってきて、そのことが勤労者のうちで納税者の数をふやすことの非常に大きな要素になってきております。同時に、未成年で勤労——問題は勤労所得の問題であろうと思います。資産所得については未成年者についても別に問題はないのだろうと思いますが、勤労者について、所得がある方と、それからまだ学校へ行っている方の親御さんの負担との関係のバランスをどう見るべきかという問題になってきております。  ただ、現在の所得税でいろいろの人的控除制度もございますが、たとえば障害者控除であるとか老年者控除であるとか、それから寡婦控除であるとか、それからいまの未成年者の御意見にやや近いものとして勤労学生控除であるとかという制度がございます。これらの制度があるんだから、未成年者控除のようなことを考えたらどうかという御意見は、今日までもしばしば寄せられてきておるところでございますが、いまあります障害者控除なり寡婦控除なりというものの考え方は、そういう方については、普通の方の場合と比べて何かいろいろ費用がよけいかかるんだ、追加的費用があるんだということを頭に置いて、それをしんしゃくするという趣旨から、諸控除が今日まで何年かの間にいろいろの御議論の末生まれてきたわけでございます。未成年者につきましては、こういういわば何か追加的費用がかかるという関係にはないのではないかな、まあ考え方で、よく考えてみなければいけませんが、いままでのところでは、特別の追加的費用が未成年者のゆえにかかるということはいえないのではないかな、したがって、それを考えますと、どういう点に着目をして特別な控除ということを考えていくのかなというあたりが、理論的といいますか、制度を組み立てます上になかなか割り切れないためが一つと、それから、一般的にいって、いろいろの人的控除をいろいろ積み重ねますことは、所得税制度がいまでも非常に複雑であるといって非難を受けております関係がございまして、一そう複雑にすることになるのではないかということで、どちらかというと、一般的に諸控除、基礎控除、配偶者控除、扶養控除というようなものをもっと上げるというか、漸次整備していくということのほうがあるいは先の問題であって、未成年者だけを取り上げるのはどうかというようなことで今日まできておるわけであります。なかなか、所得税の中に未成年者控除というものを織り込むことは、現行制度との関係ではなじみにくいかと思います。しかし、この問題が非常に問題であるということは、認識は持っておりますので、また、各方面から漸次そういうふうにしたらどうかという御意見が広がりつつあるやに伺っておるわけでありまして、私どもも今後よく研究を続けてまいりたいと思っておるわけであります。
  202. 高沢寅男

    ○高沢委員 未成年者控除というのは、私の聞き方がちょっと悪かったと思うわけです。これは、所得のあるその一家の世帯主の——さっき言われたたとえば障害者控除であれば、その世帯の中に障害者があれは、それはそういう追加的の経費がそれだけあるからということで控除の対象になるわけですが、未成年者の場合には、控除という考えより、むしろ、成年になるまでの間のその所得というものは課税の対象にしない、つまり、所得税の課税対象になる人間は二十歳以上である、こういうふうな線を引けば、これは控除という考えじゃなくて、つまり課税の対象から未成年者はそっくりはずれる。だから、税体系を複雑にするのじゃなくていきわめて単純にするということになるわけで、これは税務署の税務処理の面でも非常にいいのじゃないかと思うのです。ひとつ前向きにお考えをいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  203. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 未成年者については全く課税対象から除外するというのは、私どもはちょっとまた別の意味で問題があると思うわけでございます。それは、未成年者でもかなりの資産所得者がおります。最近はいろいろな関係でかなりの資産所得者が出てきております。御指摘は、そういう資産所得は別にして、勤労者である未成年者については別に扱ってはどうかということだと思いますが、これもまたやはり未成年者でも非常に大きな——非常に大きなというとおかしいですが、かなりの所得階層の方がおります。いろいろスポーツの関係だとか芸能の関係だとかいうこともあって、未成年者でもかなりの所得の方がおります。したがって、未成年者なるがゆえにそれを課税からはずすということはいかがなものであろうか。しばしばその点は御議論がありますけれども、やはり所得税の場合には、基本原則は、収入、所得というものによってバランスをとるべき問題ではないかと思いますので、そういう意味では問題が非常にむずかしいと思います。  控除問題として考えます場合に、御指摘のように、障害者控除のようなものでなくて、老人の老年者控除のように、御本人についてお年寄りであれば特別な控除があるという制度がございますことと関連しまして、従来から、老年者の所得について特別の控除があるのであれば、未成年者について特別の控除があってしかるべきではないかという御議論があるわけでございますが、その点につきましては、先ほど申しましたように、老年者控除につきましても、年配の方にはやはりいろんな意味で追加的費用がかかるであろうという前提で組み立てられておるわけでありまして、費用が全く同じであっても未成年者なるがゆえに何か特別の控除を考えろということでありますならば、それはどういう理論的な組み立てをしたらいいのかという問題がまずあろうかと思います。そこらが今後の問題であるという意味で、研究は今後ともいたさねばならぬと申し上げたわけでございます。
  204. 高沢寅男

    ○高沢委員 じゃ、この問題はまた別に所得税のときになお論議をすることとして、もう一つお尋ねしたいことは、相続の、垂直相続といいますか、水平相続といいますか、夫婦間の相続なりあるいは贈与であってもこれは同じであると思うのですが、一つの財産が形成されてきた、その形成は結局夫婦の共同でもってつくられてくるわけですから、したがって、名義上夫から妻へそれが移る場合、それが相続であれあるいは贈与であれ、実際上はその財産形成のためにその妻もまさに参加してきた、その財産が自分の名義になることによってそこに税がかかるというふうなことは、これは非常に不合理である、こう思うわけです。もちろん、この場合には、その夫婦の結婚の年数とかいうことは一定の年数が前提に考えられなきゃなりませんが、そういうふうな水平な財産移動、贈与であれあるいは相続であれ、こういう場合には、これは税をかけない。そのまた奥さんから今度は子供さんに将来移るというふうな縦の相続の場合には、これは当然相続税が適用されるというふうな考え方に立って、横の移動の場合には税をかけない、こういう考え方一つあっていいんじゃないか。今度の場合、配偶者の控除を六百万まで相当大きく拡大されていることはわかりますけれども、原理上、この横の移動は課税しないという、こういうふうな考え方が妥当じゃないか、私はこう思うのですが、いかがでしょう。
  205. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 その問題は、実は昨年の相続税の税制改正によりまして、夫もしくは妻、つまり配偶者が現実に相続をされました財産が三千万円までであれば、その部分は全部非課税にするという制度が昨年から、昨年御審議願って御採用願ったわけであります。それを一歩進めて、財産の額のいかんにかかわらず、横の相続は全部非課税にして、縦の相続だけを課税にしてはどうかという御意見であろうかと思います。その点は、昨年の御審議のときにも、三千万円なんということを言わないで、ずっと額が大きくても、夫婦であればそこは相続税の対象からはずしてしまってはどうかという御議論が、昨年の税制改正のときにも出た御議論でございます。それに対して私どもは、この三千万円非課税の制度をつくりました気持ちとしては、かなり高沢先生から御指摘のような思想に近いわけですが、無限に非課税にしてしまうかどうか、つまり、一億でも五億でもそれは非課税にしてしまうかどうかということになりますと——もともとそういう御議論が出ますのは、財産の形成は夫婦でなされたものではないか、夫だけの働きで財産ができたわけではなくて、妻の働きがあったではないか。ところが、日本の慣習ではたまたま名義を夫にしておく場合が多いから、夫婦でつくったのに、共同のものであるのに名義を夫にした場合が非常に多いから、土地建物、預金等も夫の名前にしておく場合が多いから、だからそこはおかしいという議論が根底にあるわけでありまして、その財産形成についての夫と妻の貢献度といいますか、寄与度といいますか、そういうものをどう考えるべきかということが一つあって、それを背景にして、横はもう課税しないことにしてはどうかという御議論につながるのだと思います。  ちょっと異常な例をあげて恐縮ではございますが、一億とか五億とか十億とかいうふうな相続についてまで夫婦の寄与度が半分半分であったと見るべきかどうかというような問題がからんでまいりますものですから、そこで、一方において思想的には漸次横は課税しないという思想を一つ置きながら、一種の課税制度の限度を置くという意味で、三千万円というところあたりに線を引いたわけでございます。私どもは、この制度は何しろ去年のまだ一月一日以降の御不幸の方にだけ適用があるわけでありますから、ここ数年その経緯を見てみまして、どういうことであろうか、やはり三千万円では足りないので、もっとその上まで非課税にしたほうがいい、もっと明快であるということになるかどうかということを見きわめてみたいというのが一点と、もう一つは、法務省のほうで、相続税でなくて、相続制度について、非常にいま民法を変えるべきだということで検討中でありますので、そっちのほうでいろいろこまかい議論が行なわれておりますから、その経緯も見きわめたい、その二つを見た上で、もし御指摘のように横の相続はなしのほうがよろしいということになれば、そういう方向に進むのもいいかと思いますが、まだちょっとそれまでには時間をおいていただきたいという気持ちでございます。
  206. 高沢寅男

    ○高沢委員 非常に大きな財産の場合には不合理があるではないか、こういうお答えですが、それはまたそれで、夫から奥さんのほうへそれが非課税で移ったとしても、いずれ一定の時間の後にはその奥さんから子供さんへ移る段階で課税されるあれがあるわけですから、これは私は不公平という問題とは性格が違うと思うのです。要するに原理上の問題として、その財産の大きい小さいはともあれ、それが形成される過程は、夫婦の協力で——松下幸之助さんであっても、その奥さんの協力でああいう資産があるというふうに考えるべきじゃないか。これは所得税における二分二乗方式というふうな考え方にも当然考え方としては通じていくことになるわけですが、これは一応われわれの主張としてそういう主張があるということを申し上げて、この問題は終わりたいと思います。  では、以上で私の質問は終わります。
  207. 大村襄治

    大村委員長代理 次回は、来たる二十三日金曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時五十八分散会