○
坂野政府委員 御
承知のとおり、戦後のわが国
証券市場は、長い間その機能を十分に発揮できない情勢に置かれておったわけです。これは二点ございまして、第一は金利機能、価格機能というものが、わが国国民経済で十分働く
ような環境が育っていなかったという点であります。第二点は、
証券業界の力が弱くて、発行者、投資者をつなぐこの力が非常に弱かったために十分な機能発揮ができなかった。この二点に大きく言えば尽きると思います。
それが最近に至りまして、外貨流入を機として、国全体にたいへん余裕の
資金もできてきた。俗に言えば、国民経済全体が金持ちになった。
証券取引も盛んになりまして、業界の力も相当備わってまいりました。こういうことで、いままで問題になっておりましたその大きな二点というものが解消されつつある、そういう現状になってきておるわけであります。
それに着目しまして、発行市場のほうも非常に活発になってまいりまして、時価発行、転換社債発行という
ような新しい発行様式も盛んになってまいりましたし、また外国の発行会社もわが国
証券市場に着目して、円建ての外債をはじめといたしまして、わが国の市場で消化する
ような
証券発行というのがかなり活発に行なわれる
ようになってまいりました。こういう状況におきましては、まさに年来いわれておりましたわが国の長期の
資金、長期の
資本というものを
証券市場を通じて調達するという機能が、
ようやく十分にその機能を発揮できるその場ができてきたわけでありまして、そういう
意味におきましては、国民経済的に非常に重要な場面に立ち入ってまいったというふうに認識しております。
ところで、こういう時期において何が一番大切かということでございます。これは
証券市場というものが自由な
取引を前提とする市場でありますだけに、その
流通市場でつくられる価格がフェアなものでなければいかぬ、公正な手段によってつくられた価格でなければ
世の中の信頼を得るわけにはまいりません。その信頼がないままに新しい
証券が発行されますと、発行される
証券についての信頼がゆらぐおそれがあります。そういうことになりますと、
証券市場の持っております基本がくずれてくる、その基本の基盤がくずれてくるわけであります。そこで何よりも大事なことは、価格形成を公正なものにして、そこでできている価格について広く信頼を得るということが大事であろうかと思います。そういう観点に立ってただいまの市場をながめてみますと、
株式市場につきまして、御
承知のとおりたいへんたくさんの
資金が流れ込んでおりまして、
取引高も非常に多くなっております。また、そういう基盤の上に時価発行等も非常に盛んになっておりますけれ
ども、そこで行なわれておる価格形成が、はたして
資本市場本来備えるべき十分練られた価格、大勢の人の評価がそこへ集まって、そうして練られた価格形成というものが行なわれているかどうか。一部の意思がそれを遮断していないか、間違った
考え方がそれに加わっていないか、あるいは
株式の価格形成について不正の手段、技巧等が弄されていないかどうかという点につきましては、すべて万全とは申しがたい状況にあるのでありまして、そういうことから
株式市場の価格形成についてよりこの価格を公正なものにしていくということが目下の急務であろうかと思いますが、そのために
取引所におきましても諸種の規制をいたしておりますし、また私
ども、
証券会社の
営業態度あるいは外部からの
投機資金等について十分慎重な監視を続けておるという現状であります。また一方、時価発行につきましては、この株高に便乗して不要不急の
資金が調達されるとか、あるいはその発行される
株式が広く
一般に流布されないで一部の
法人に集まるとかいうことのない
ような指導を続けておるわけであります。
一方、公社債市場につきましても同じでありますが、特にわが国の公社債市場は、いままで
金融環境の圧迫によりまして十分その機能を発揮し得なかったという事態がございます。こういう非常に恵まれた
金融環境のときに、十分人々に広く信頼される価格形成の行なえる
ようなそういう
流通市場をつくりまして、その
流通市場でできた価格を基礎として新しい発行が行なわれていくという
ようなメカニズムを育てていく必要があるわけでありまして、目下のところ証取審議会の二月五日の答申が行なわれました審議会の答申の趣旨に沿いまして、大至急この
流通市場を整備するということをいま作業いたしております。
以上の
ような
考え方でありますが、それを推進いたすものは何といっても
証券業界であります。したがいまして、
証券業界が
取引所を含めまして国民経済のこの大きな要請にこたえますためにほんとうに信頼される姿というものになっていかなければならない。いま一部
証券界に対して非常な批判がありますむこの大事なときに何をやっているんだという
ような批判もあります。こういう批判にこたえるためにも、
証券界は何のために何をし
ようとしているのかということを明示して進む必要がある、そういうふうに
考えております。