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1973-08-28 第71回国会 衆議院 商工委員会 第47号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和四十八年八月二十八日(火曜日)    午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 浦野 幸男君   理事 稻村左近四郎君 理事 左藤  恵君    理事 田中 六助君 理事 羽田野忠文君    理事 板川 正吾君 理事 中村 重光君       稲村 利幸君    江藤 隆美君       越智 伊平君    木部 佳昭君       小山 省二君    笹山茂太郎君       塩崎  潤君    田中 榮一君       八田 貞義君    松永  光君       保岡 興治君    山村治郎君       佐野  進君    竹村 幸雄君       藤田 高敏君    渡辺 三郎君       野間 友一君    近江巳記夫君       小沢 貞孝君  出席国務大臣         通商産業大臣  中曽根康弘君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      小坂善太郎君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         公正取引委員会        事務局経済部長 三代川敏三郎君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁物価         局長      小島 英敏君         通商産業政務次         官       塩川正十郎君         通商産業省通商         政策局長    和田 敏信君         通商産業省産業         政策局長    小松勇五郎君         通商産業省基礎         産業局長    飯塚 史郎君         労働省労働基準         局安全衛生部長 中西 正雄君  委員外出席者         外務省経済協力         局外務参事官  菊地 清明君         通商産業省立地         公害局鉱山課長 蓼沼 美夫君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 八月二十八日  辞任         補欠選任   内田 常雄君     江藤 隆美君   近藤 鉄雄君     山村治郎君   宮田 早苗君     小沢 貞孝君 同日  辞任         補欠選任   江藤 隆美君     内田 常雄君   山村治郎君     近藤 鉄雄君   小沢 貞孝君     宮田 早苗君     ————————————— 本日の会議に付した案件  中小企業者範囲改定等のための中小企業基  本法等の一部を改正する法律案内閣提出第八  四号)  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 浦野幸男

    浦野委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済総合計画に関する件、私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺三郎君。
  3. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 私は、最初出光石油化学徳山工場のその後の問題についてまずお聞きをしたいと思います。  二十四日に通産省から報告を受けましたが、その同じ二十四日に通産省で開かれました事故調査委員会において、今日の段階における最終的な結論を出されたのではないか、こういうふうに思いますが、その事情についてまず御質問を申し上げたいと思います。
  4. 塩川正十郎

    塩川政府委員 渡辺先生の御質問に対しまして、立地公害局長が実はもうすぐ参ると思っておりますので、できましたら事故調査報告の結果につきましては、同局長から詳しく説明さすほうが至当かと思いますので、しばらくの間御猶予いただきたいと思います。
  5. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 私も質問順序、組み立てがありますのでちょっと困るのですが、それではまず最初、わかる範囲内でお答えをいただいて、次の質問についても数字その他が出席がおくれておって、ちょっとわからないようであればまた質問を変えます。  それでは、この徳山工場における塩ビ樹脂生産はこれまで月どのくらいになっておったのか、この数字がわかればそこからお聞きしましょう。
  6. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 徳山におきます塩ビ生産は、月大体一万六千トン程度かと考えますが、全国生産の約一五%に当たる数字でございます。
  7. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 そうしますと、事故発生からこれまで二カ月足らずでありますけれども、この間、いま答弁にありました一万六千トン前後、これは全く生産ができなかった、こういうふうになるわけですね。
  8. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 事故が起こりましたのは七月七日でございますが、それ以来工場操業は全面的に停止をいたしておりまして、今日まで約五十日の間操業をストップしておった状態でございます。
  9. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 さきに全体の約一五%相当というふうなお話でございましたが、この徳山工場——私が一番最初質問したこととも関連するわけですけれども操業再開をされて生産もとに復する、一万六千トンないしは一万六千五百トンに復する、こういう時期については、いま通産省ではどのように見通しを立てておいでですか。
  10. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 徳山におきますタンクヤード使用につきましては今月の十六日にすでに許可をされておりますが、これによりまして各地区からのエチレン緊急応援を得まして、十八日ぐらいからエチレン徳山に積み込まれていると思いますが、この分によりまして一部塩ビ関係工場操業開始されたわけでございます。  なお、昨日第一エチレン設備操業許可を受けました。このほうはエチレン設備といたしまして十万トンでございます。いままで許可をされましたタンク使用と、それから昨日許可されました第一設備稼働開始によりまして、大体月に一万四千トンくらい生産が進むというふうにも考えております。  なお、二十万トン設備でございます第二エチレン設備安全検査が終わりまして、これの操業開始の指示がありましてから本格的な生産ということになるわけでございますけれども、第二設備のほうにつきましては、当分の間、修復その他県当局検査等に時間がかかると思いますので、いまのところ、まだその操業開始の時期につきましては明確にわからない状態でございます。
  11. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 そうすると、最初私が申し上げました御質問にもいま若干関連した答弁をいただいたわけですが、この事故を起こした第二エチレンタンク操業再開については、いまの答弁ですとちょっと見通しがはっきりつかぬ、こういうふうなお答えですけれども、この点おおよその時期、おおよそのめどというものはわからないのかどうかということと、それからもしこれが操業再開という形にならない場合に、大体もと生産能力と比較をして徳山工場においてはどの程度減産になるのか、その点をあわせてお答えをいただきたいと思います。
  12. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 第二エチレン設備がいつ操業再開になるかは、一にかかって安全点検の結果いかんによるわけでございます。安全点検につきましては、通産省立地公害局並びに山口県当局におきまして慎重に検討してきめることになるわけでございますので、私どもその状況についてはつまびらかにいたしておりませんが、少なくとも本年内の操業再開というのは無理ではなかろうかというふうに観測しておるわけでございます。  なお、第二エチレン設備再開されるまでの間、第一エチレン設備並び徳山地区タンク使用しまして、他地区からのエチレン応援によりましてどれだけ生産ができる見通しであるかという御質問でございますが、私どもあほうは、他地区からの応援を極力得させることにいたしまして、平常時の生産の一万六千トンに対しまして一万四千トンくらいまでのところに生産を持っていってももらうように企業に対しても要請をいたしておる次第でございます。
  13. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 それから、この徳山工場からエチレン供給を受けておりました徳山積水あるいはサンアロー、こういった塩ビ工場がいままでは操業を停止しておったと思うのでありますけれども、その後の状況、それから今後の全面再開見通し、これはどのように見ておられますか。
  14. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 事故あとしばらくの間は両企業とも全面的に操業を停止しておったわけでございます。今月の十八日に他地区からのエチレン応援出荷を得まして、これを原料といたしまして操業開始したわけでございますが、まだ現在のところ三〇%か四〇%程度操業規模ではないかと思っております。
  15. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 そうしますと局長、さっき御答弁いただきましたこの徳山工場の第二エチレン設備、この関係公害とのかみ合いあるいは安全装置とのかみ合いで完全に再開をしない場合には、いま三〇%ないし四〇%と数字をおっしゃいましたが、これ以上この操業度をあげるというわけにはいかない、それと見合った形で全面操業再開になる、このように受け取っていいのでしょうか。
  16. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 三、四〇%と申し上げましたのは、他地区からのエチレン応援の分だけによります操業分でございますが、第一エチレン設備稼働によりましてこの両企業稼働率は六割くらいまで上がるのではないかと思っております。
  17. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 わかりました。  塩ビ樹脂生産減退理由については、私も八月の初めに通産省から資料を取り寄せました。その資料に幾つかの理由をあげておられるわけですが、その二、三について具体的に数字をあげてお聞きしたいと思うわけです。  電力制限オキシダント等による操業ダウンによる減産、これをどのようにつかんでおられるのか、できるだけ数字をあげてお答えをいただきたいと思います。
  18. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 電力制限だけによります生産減が幾らであるかということはなかなかつかみにくいわけでございますけれども、私どものほうで九月の塩ビ生産につきまして想定をしたところによりますと——その前に七月、八月の状況をちょっと申し上げますが、七月におきましては、当初の見通しでは月間十二万トンくらいの塩ビ生産が行なわれるのではないかと思っておったわけでございます。これが徳山事故あるいは光化学スモッグ発生による電力制限等によりまして九万六千トンに終わったわけでございます。その後八月におきましては、やはり十二万トンの見通しに対しまして、まあ後半におきまして出光の一部操業再開というようなこともございまして、ほぼ十二万トンに近い十一万トン程度のところに行くのではないかと考えております。それから九月につきましては、当初の見通しは十二万トンでございますが、これが予定よりも一万トン程度は上がっていくのではないかと考えております。  この理由といたしましては、徳山操業がかなり軌道に乗ってくるということと、それから電力削減等による塩ビ工場生産減退がかなり回復してくる。さらには、あちこちで公害問題との関係塩素工場苛性ソーダ工場操業が一部停とんしているところもございますが、これらにつきましても一漸次解決をいたしまして、生産削減の諸要因が除かれていくことによりまして、九月におきましては十三万トン程度生産が行なわれるのではないか、かように考えております。
  19. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 これから先御質問しようと思っておった内容も若干含めてもう先に答えられたわけですが、徳山工場のあの事故による減産、それからさらに電力制限光化学スモッグ関係、さらにまた最後局長言われたようでありますが、この漁業問題にかかわってのいろいろな問題での減産、こういうふうに通産省はあげてきておられました。これは八月の初旬に私が資料をいただいた際のことですが、これらを一つ一つ具体的に数字をあげてお聞きをしたい、こういうふうに思っておったわけです。なぜかといいますと、徳山の問題が事故調査委員会結論によって、一部であっても一操業再開されるということになれば、それによっていままでの減産分がどれだけカバーできるのか、あるいは電力制限が特に七、八月たいへんな事情だったとしても一、それが数字がどれぐらいであって、九月になればどれだけ回復をするのか、漁業問題についても一しかりであります。そういうふうに一つ一つ克明に整理をしながら対策を立てていかぬと現在の逼迫した事情というものを適切に克服する対策は出ないのじゃないか、こういうふうに考えましたからお聞きをしたつもりなんですが、いま局長からいただいた答弁は、最初資料要求していただいておったと同じように、総体的な生産計画に対する実際の生産量、それが数字で示されたわけです。それで、その理由としては、いま申し上げましたように、三つくらいの理由をあげられたわけであります。その点どうも電力制限について、そのためにどれくらい減産したかということはなかなか数字がつかみにくいというふうなお話であれば、その点についてはこれは一応保留をして先に質問を進めますけれども、この苛性ソーダメーカー公害にかかわる漁業問題などから非常な減産があった、こういうふうにいわれておりますが、これは一体どことどこで、その原因による減産というものがどれだけになっておるのか、これはおつかみになっておると思うのです。この点をひとつ個々答弁をいただきたいと思います。
  20. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 個々に、具体的にどこの工場でどれだけの生産制限があったかという点につきましては、実は手元に私資料を持ち合わせておりませんので、後ほど先生のお手元に御報告に参りたいと思います。
  21. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 これだけ事情が逼迫しておって、あとで申し上げますけれども、特に電線工事業者なんかが東京に集まって、あれだけの大会も一やっておるわけでありますから、その原因究明問題点整理、こういうことはひとつ敏速に通産省でもやっていただかなければならぬのではないか、こういうふうに私思います。しかし、これはあと個々にはいま資料を出していただけるというお話でありますから、ぜひ早急にその資料を提出していただきたいと思います。  ところで、この漁業問題との関連での減産といいますか、これは個々の問題は別として、大体全体的にどの程度減産になっておるのか、特に七、八月、その点数字がわかっておれば、全体的なものでけっこうですからお答えをいただきたいと思まいす。
  22. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 ちょっと初めのほうを私聞き漏らしたのでございますが、電線の問題でございますか。
  23. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 いやいや、電線の問題にしぼっていてもあれだけの工事業者東京に集まって大会をやるほど品不足で逼迫をしておるわけですから、そういう事情を考えただけでも、この通産省があげられておるような、たとえば電力制限の問題であるとか、あるいは公害にかかわる漁業漁民との対立の問題であるとか、徳山の問題、先ほど申し上げましたそういうふうな点について的確な見通しを持つ必要があるんじゃないか、あるいは数字をつかむ必要があるんじゃないか、こういうことを前段に申し上げたわけです。私最後にお聞きしましたのは、この漁業問題からの減産理由にあげられておりますけれども、それは全体的にそのことによってどれだけ塩ビ生産停滞をしたか、この数字をあげてお答えをいただきたいということを申しているわけであります。
  24. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 失礼いたしました。正確な数字は私いま手元にございませんけれども、総体として考えますと、漁業問題によるトラブルのための生産減というのはそれほど大きなものではないと考えております。一番大きなものは、徳山事故によりますもの、それから第二には光化学スモッグ等によります電力制限、こういう順序かと思います。
  25. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 しかし、漁業問題による減産は大体どのくらいかということを個々企業ごとに、あるいは個々地域ごとの問題についてはいまおわかりにならぬと言いましたから、これはあと資料を出していただくことでいいのですが、そのためにどれほどの影響があるかということは、大体もうつかんでおられるのではないでしょうか、わかりませんか。三千トンないし四千トンぐらいじゃないでしょうか。それはどうです。
  26. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 大まかな数字で恐縮でございますけれども、三千五百トン前後ではないかと考えております。
  27. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 大体そうだと思うのですよ。しかしこれは七月ですよ。七月は三千五百トン前後だと思うのです。それで、この解決見通しですね、最初の御答弁によりますと、この問題についてもいろいろ話し合いが進んで、一部を除いてはというようなお話があったやに記憶しますが、大体この解決見通しはどのようになっておりましょうか、あるいはいま話し合いが進められて完全に解決にいっていないにしても、それはいつごろになれば解決見通しがある、そのことによっていままで停滞をしてきた生産状況というものが十分にもとに復する、こういう見通しについてのつかみ方はどういうふうになっていますか。
  28. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 八月におきましては、千葉地区におきます漁民海上封鎖というような問題がございましたが、これもすでに解決いたしておりますが、あと現在窒素におきまして海上封鎖が行なわれておりますが、これにつきましては、私は見通しはまだ明確に申し上げられる段階ではないと思いますけれども、いずれ関係者の御努力によりまして解決がされていくものと考えております。
  29. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 時間が十分あれば相当こまかい点まで詰めたいわけですが、まあいいでしょう。  そうしますと、徳山が一応再開をされて、急速に生産回復が行なわれるというふうな問題やあるいは七、八月特に問題であった電力制限が解除されていく。それから漁業公害の問題にかかわる減産についても、窒素の場合は別として、ほぼ解決に向かっておる。そういうふうにすると、全体的にはもうこの塩ビ不足については大幅に解消の方向に向かう、こういうふうに通産省は確信しておられるというふうに判断してよろしいでしょうか。
  30. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 御指摘のような事情もございまして、漸次需給は緩和していくものと考えております。なお、もう一つ需給緩和要因といたしまして、塩ビ樹脂原料でございますEDCの輸入についての努力が現在商社等を通じて行なわれておりまして、これは従来は月間四千トン程度しか輸入できなかったわけでございますが、九月から六千トン増加して一万トンの輸入ができる見通しがついたわけでございまして、国内的な要因あるいは輸入等の国際的な要因等も加えまして考えますと、大幅にということを申し上げる段階ではございませんけれども、少なくともいまのようなきわめて逼迫した状態から漸次回復されていく、かように私どもは考えております。
  31. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 次に、生産計画との見合いで需要の増について簡潔に二、三お伺いしたいと思います。  通産省資料によりますと、塩ビ樹脂生産量は四十七年の場合に一月から十二月で合計白七万九千六百六十九トン、こういうふうになっておるわけですが、四十八年の場合には生産計画をどのように考えておられたのか。当初の生産計画ですが、それを最初にお聞きしたいと思います。
  32. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 需要につきましては、対前年二六%増の百四十二万トンを想定いたしておったわけでございます。
  33. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 そうすると、百四十二万トンというのは当初の生産計画であって、いわゆる著しい需要増に基づいて、これに対する年度中途で修正の計画といいますか、そういうものを立てられましたか。立てられたとすれば、それはどのように立てられたのか、その点も一あわせてお伺いをします。
  34. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 建設関係等の異常な需要増によりまして塩ビ需要の増加が予想されますので、先ほど申し上げました百四十二万トンに対しまして若干の上のせを考えたわけでございまして、これも数字といたしましては百四十七万四千トンという数字をつくったわけでございますが、その後の状況を見ますと、これでもなおかつ最近の爆発的な建設関係を中心とする塩ビ需要はまかないきれないという感じがいたしますので、現在この数字につきましても再検討をいたしておる状態でございます。
  35. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 わかりました。そうすると、この百四十七万四千トンという計画需要増に見合ってさらに検討する、こういうことでありますが、この百四十七万四千トンから手直しをさらにされて、どの程度数字を見込まれるのかわかりませんけれども、一方生産体制といいますか、こういうふうな点については先ほど来るる質疑を行ないましたように、いろいろな問題点があって、これが減退してきた、そういう状況の中で百四十七万トン、さらにそれを上のせする、それに見合った生産計画というものがこの四十八年に完全に立てられるのかどうか、そういう生産能力というものが原料その他の面も含めまして可能なのかどうか、その点はどうでしょう。
  36. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 生産面につきましては、現在の状態におきましてもかなり目一ぱいの増産はいたしておりますので、百四十七万四千トンをさらに上回るような需要が想定されます場合には、非常に需給関係はギャップができるかと思いますが、そこでいま申し上げました百四十七万四千トンは、ほっておけばどのくらいになるかというところで需要見通しを一応立ててみるということでございますが、生産との関係で、総需要抑制策の一環といたしまして、不急不要部門削減等も当然考えていかなければならぬ、さようなことになるかと思います。
  37. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 私も当然そういうふうになってくるのじゃないかと思うのです。ですから、需要がそういうふうに急激にふえた、それで生産計画を手直しして立ててみても、材料の不足やその他の生産を取り巻くいろんな諸問題、こういう点からするならば、無制限にそういう生産計画というものは立てられないのじゃないか、こういうふうに思いますので、その点をお聞きしたわけです。  ところで、先ほど私ちょっと触れましたが、二十三日に日比谷の公会堂で開かれました全日本電気工事業工業組合連合会ですか、この危機突破大会、これには通産大臣が出られたわけです。私も傍聴しました。きわめて問題が深刻であります。しかも緊急であり、多くの業者にとってはまさに死活の問題といっても決して誇張ではない、こういう現状にあるわけです。当時もそうであったし、いまもそうです。見通しとしては明るくなってきたというふうに考えられましょうけれども、しかし現在でもその実情は変わっておりません。しかもそれは、単に工事を請け負う末端業者の問題にとどまるものではないということは御承知のとおりであります。直接一般の庶民の生活にも重大なかかわりが出ますし、あるいは健康それから環境、さらにはこれがもっと深刻化していけば、地方自治体の財政にまで大きな影響を及ぼす、こういうふうな問題すら持っておるわけです。ですからこれは、呼ばれました大臣として、来賓としてのごあいさつをなさるのは当然でしょうけれども、単なる一般的な来賓としてのあいさつ、あるいは抽象的な善処論、こういうものではとうてい解決できない、こういう深刻な内容になっているというふうに私は思うわけです。  そこで、少し具体的な対策についてお聞きしたいと思うわけですが、その前に、現在全国電線関係あるいはまた水道用の配管、こういうものを現実に扱っておる末端業者の数、これは通産省で大体どの程度に見ておられますか。あまりこまかい数字でおわかりにならぬですか。
  38. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 登録を受けております電気工事事業者の数は、全国で五万五千軒程度かと思います。
  39. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 五万五千軒、そうしますと、二十四日のこの商工委員会左藤、山田、加藤各委員がいろいろ質問されたわけでありますけれども通産省はそれに答えられて、この緊急事態に対処をして、電線にしぼって申し上げますと、塩ビ電線メーカーに対して緊急出荷要請を行なって、県を窓口として供給を行なう、こういうふうに言われておるわけであります。また塩ビのパイプについても同様の措置をとる、こういうふうに言っておられるわけですが、この緊急出荷の要請をした分といいますか、これについては、いつからいつまでの需要分を見通された要請でしょうか。
  40. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 電線につきましては、とりあえず緊急出荷をいたしますのは五百五十万メートルでございます。これは電線の銅量に換算いたしますと約二百トン相当分というように考えられます。
  41. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 もう少し端的にお答えいただきたいのですが、これは現在の需要量、これに対しては何日分ぐらいあるいは何カ月分ぐらい、こういうふうにお考えになっていますかということをお聞きしたいわけです。
  42. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 ことしの四月−六月の、特に電線の中の平形ケーブル、屋内配線用の電線でございますが、これの生産は銅量にいたしまして約三千トンと考えておったわけでございますが、これは六月の後半から漸次落ちてまいりまして、七月の終わりには二千トン程度になったわけでございます。したがって、この差額の千トン分をいかにして緊急に出荷をするかということで、従来通産省としては施策を講じておったわけでございますが、とりあえず第一段として措置いたしますのは、先ほど申しますように五百五十万メートル、銅量に換算して二百トンでございますが、これだけでは平常時の需要にはとても足りないわけでございますので、さらに引き続いて第二段の緊急出荷措置も一現在検討しておる状態でございます。
  43. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 いまおっしゃいましたが、五百五十万メートル、これは先ほど私はお聞きしましたが、登録業者の数だけで全国五万五千軒、そうしますと一業者当たり百メートルですね。こんなことではどうにもならぬと思うのです。これは一軒ちょっとした家を建てれば百メートル使うのですから。しかも、その後も建築の需要というものは停滞をしておらない。こういうふうな状況からいうならば、たとえば六月あるいは七月、そして今月にはいって八月、この段階需要のストックされた分といいますか、電線がなかったためにどうにもならなくて、それがまだ完成してない、こういうふうな状況のストック分ですから、これはたいへんな逼迫の度合いです。ですからこれは、五百五十万メートルでも通産省が積極的にそういう施策をおやりになったということ、このことについては私も適切であると思います。しかし、その量があまりにも少な過ぎる。業者当たり百メートル、これじゃもう話にも何にもならぬ、こういうふうに思うのです。ですから私は、それは体何日分に見合っているのか、いま絶対必要だというふうに要請を受けておる状態からすればどのくらいに相当するのかということをお聞きしておるのもそのためなんです。  第二次の緊急手配もやらなければならぬというふうにいま言われたわけでありますけれども、これは二十四日の答弁では来週早々、まあきのうから今週に入っているわけですけれども、今週には県の窓口を通してそれが末端の必要な業者に渡る、このように確認をさせていただいてよろしいと思うのでありますけれでも、そのことと、それからもう一つは、いまおっしゃいました第二次、あるいは必要であれば第三次、こういうものを矢つぎばやにやっていかないと、とても末端需要に応じきれないと思うのですけれども、その見通しはありますか。
  44. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 第一段の措置として実施いたします五百五十万メートルにつきましては、昨日各府県に私のほうから依頼状を出しまして、かつ実施要領につきましては先週の末、通産局を通じて各県に流しておりますので、明日あたりから実際の受付が開始されることになると思うわけでございます。受付が開始されますと電線工業組合の事務所等がこれに協力をいたしますので、わりあいにスムーズに早く実際の電気工事業者手元に届くのではないかと思っております。  それから第二段の措置につきましては、通産省から塩化ビニール協会のほうに要請をいたしまして、塩化ビニールを平形ケーブル用の電線にさらに緊急に出荷をしてもらうということで話を進めておりますが、塩化ビニール協会のほうからも原則として通産省要請に協力するということになっておりまして、現在その数字等について打ち合わせをしておるわけでございます。私どもは、できますれば九月の半ばぐらいまでには第二段の措置を実施したい、かように考えておるわけでございます。
  45. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 私は先月の末から今月の中旬にかけまして、私の出身の山形県で、県内の電気工事関係業者要請を受けました。非常に深刻な要請であります。しかし、こういう表現は悪いのですけれども、えてしてそういうような要望というものは誇張されておる面もありますから、正確に事態を検討したい、そういう意味で、どういう種別のものが一体足りないのか、また値上がりの割合は一体どうなっているのか、それから、とりあえず必要な数量はどれだけ必要であって、そして供給度合いはどのくらいになっておるか、これは七月の末現在と考えていただいていいのですが、それをずっと克明に調べました。時間の関係がありますから、ここに一覧表も持っておりますけれども、一々一つの県の問題を申し上げようとは思いません。ただ、この供給については、手持ちのところもありますけれでも、新たな入手は全くゼロというのが七月末現在の現実の業者の実態でありました。彼らはこういうふうに言うのです。幾ら高くても手に入れば何とかなる、要請にこたえられる、たとえば家を建てている、そういう必要な人に対して電線要請にこたえられる、しかし、幾ら高く出しても物がないのだ、こういうふうな非常に深刻な話をしておるわけです。そして、これは前歴があるわけでありますから——電線という意味じゃありません。ほかの品物に前歴があるので、どこか商社あたりで隠しているのじゃないかということで、盛んにわれわれも突き上げられました。しかし、そのことについては、通産省にもいろいろその後私もお伺いをいたしましたし、私ども調査能力で、はたして大口にそれを隠匿しておるかどうか、買い占めをしておるかどうか、こういうふうな点については残念ながらわかりません。しかしながら末端業者は、大豆やセメントや灯油や、いろいろな問題がありましたから、こういう点に対して非常に神経過敏になって、そういう声を痛切にあげておるわけです。  この価格のべらぼうなはね上がりの問題は、重大な問題でありますけれども、二十四日も各委員の方々から御指摘がありましたので、この委員会で私は価格問題を繰り返そうとは思っておりません。いずれ物特でこの問題は別に取り上げたいと思っております。  ただ、二十四日の質問の際に、通産省当局としては、塩ビ製品については、いますぐに投機防止法の指定対象品目にする考えはない、もう少し動向を慎重に見たい、こういうふうな趣旨にとられる答弁をしておられます。それはどういう理由でもう少し慎重に検討したいというふうにおっしゃるているのか。九月以降早急に生産回復して心配がないのだ、太鼓判を押せる、こういうふうなことから、もう少し慎重に動向を見るというふうにおっしゃっておられるのかどうか、この点、一点だけお伺いをしたいと思います。
  46. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 塩ビ電線の現在の不足事態に対処しまして、塩ビメーカー並びに電線の工業会等に対しまして緊急出荷の要請通産省としてやっておるわけでございます。こういう要請に対しまして関係業界も、可能な限りの出荷に協力をしつつあるわけでございますが、もう少しメーカーの協力の度合いもさらに強めていかなければならぬと考えております。そのためには、現在のような施策をさらに第二段、第三段というようなことで進めていくのも一つの方策かとも考えておるわけでございます。  なお、流通業者等の買いだめ等の実態があるかどうかにつきましては、実は私ども八月の初めからいろいろ調査をやっておるわけでございますが、商社あるいはメーカー、流通業者、問屋等の調査報告もとにして一応詳細に聞いてみたものもございますけれども、そういう流通段階あるいはメーカー段階におきます買い占めという状態というのはあまりないのではないか、むしろ末端需要家のほうにおきまして、出光の爆発事故を契機にして今後の品不足というようなことを心配して、多少買い増し的な動きがあるのではないか。これはユーザーでございますので、ユーザーが通常のベースより若干上回ってストックを持っているということ自体はそれほど非難するわけにはまいりません。ただ、いま全国非常に数多くのユーザーが少しずつ買い増しをいたしますと、これは全体として品薄傾向にさらに拍車をかけるというようなことになるわけでございます。  投機防止法の対象の問題につきましては、私ども引き続いて検討はいたしておりますけれども、現在通産省で措置しております緊急出荷あっせん等によりまして、どれだけ効果があるかということをひとつ見きわめるのと、それから、いま申しましたように、流通段階等の買いだめ等の事実というのはどうもあまりないのではないか、 こういった点をあわせ考えまして、流通段階調査についても、もう少し時間をかけてやる必要がございますし、少し推移を見る必要があるんではなかろうか、かように考えているわけであります。
  47. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 塩ビ不足の問題は、言うまでもありませんけれども電線とかあるいは水道配管用だけのものではありません。人間の生命、健康、こういうものに直接かかわりのある医療器具などにまで及んでおるわけであります。通産省としては、そういった製品別の緊急度合い、必要度合いといいますか、こういうものと十分見合った生産計画というものをやっていただく必要があるんではないか、こういうふうに私は思うのです。特に医療器具なんかの問題については重要な意味を持っているわけでありますから、そういうふうな生産計画の指導なりあるいは原料手配の対策、こういうふうなものを当然進めていかなければならぬと思うのですが、それに対して一定の固まったお考えがおありでしょうか。
  48. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 御指摘のように塩ビ不足が各製品に波及していくわけでございますが、現在通産省といたしましては、特に一般庶民の住宅に密接な関係があります塩ビの平形ケーブル、それから塩ビ管等につきまして緊急出荷の措置を講じているわけでございますけれども、御指摘のように、農業用のビニール、あるいは医療器具等に使いますビニール等、国民生活には非常に重要な関係を持っております物資もあるわけでございますので、これらにつきましても、その対策につきまして現在検討いたしておる段階でございます。
  49. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 これはぜひそういう点もこの全体的なにらみの中で、誤りのない生産指導計画あるいは原料の手配、こういうものを通産省としてはやっていただきたいと思っております。  ほかにもう一つ、きょうこの委員会でぜひとも御質問申し上げておきたいという問題は残してありますので、最後にこの塩ビの問題については、次官のほうから考え方をお聞きしたいと思うのでありますが、さっき私は投機の防止法の対象品目の問題に関連して局長にちょっとお伺いをしました。たとえば灯油なんかにつきましても、ようやく需要期を前にして対象物資に加えるような態度を通産省は固められたように仄聞をするわけです。はっきり責任者から公式の場でお聞きをしたわけではありませんから、これは仄聞をするわけでありますけれども、灯油の問題一つ取り上げてみましても、当時価格が比較的安定をしておる、こういうふうな理由があげられて、最初の十四品目には入らなかったようでありますけれども、しかし実際は、この末端においては必ずしもそうではありません。絶えず品不足あるいはまた価格の不安定で推移をしてきたわけであります。しかし、ただ法律技術的な形式主義、悪くいえばそういった形式主義、あるいは法制局あたりの意見、これが優先をして、指定品目になることが少しおくれたといいますか、いままで見合わされてきたというふうにも聞いておるわけでありますけれども、少なくともそういうふうな法律技術的な形式論だけで国民の生活はとうてい守られません。塩ビ問題なんかでも、そういうことがかりそめにもあってはならないというふうに私は考えるわけであります。幸いにして九月、十月以降大幅に生産回復してこの問題が基本的に解決されれば非常によろしいのでありますけれども、しかし必ずしも予定どおりにそういかないというふうな場合も想定をされるわけでありますから、その辺はひとつそういう意味で慎重に、しかも国民の生活を守っていく、こういうふうな立場で、適用しなければならない場合には大胆に打ち出す、このようにぜひともする必要があるんじゃないか、こういうふうに私は思うのです。これは基本的な考え方でありますので、政務次官のほうから最後にこの問題についてはお伺いをしたいと思います。
  50. 塩川正十郎

    塩川政府委員 買い占め売り惜しみの防止のいわゆる投機防止法でございますが、これの運用につきましては、われわれ決して四角四面に法律的な解釈のみで運営しようとは思っておりません。したがって、生活関連とはどういう物資であるかという解釈も幅広くいたしておりますし、投機の可能性あるいは価格の安定という実情の認識等につきましても、非常に幅広く将来の可能性も見越して絶えず判断をやっていきたいと思っております。  そこで、灯油の問題でございますが、これは大臣もしばしば言っておりますように、近く需要期がやってまいります。その需要期の直前において動向を見定めて、もし買い占め、売り惜しみというような気配が若干でもうかがえるようになれば、これを未然に防止するために対象品目に入れたいということをこの委員会でも言明いたしております。したがって私たちは、その運用は先ほど先生が言っておられるようなそういう気持ちでやっていくべきだと思っております。  また、塩ビにつきましてもさようでございまして、先ほど局長答弁しておりましたように、まず生産が順調に復興することが第一でございまして、四−六、七−九、これの計画が順次回復してきております。そこで生産、出荷、こういうものが順調に回復しておるにかかわらず、この出回りがどうももう一つ思わしくないというような場合には、直ちにこれを対象品目に入れていきたい、このように思っておる次第でございまして、せっかく投機防止法が制定されましたので、これを有効に使うことによって物資の流通というものの万全を期していきたい、こういう気持ちでございます。
  51. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 あと実質七、八分しかございませんが、塩ビの問題は終わりますけれども、もう一つ別な問題でお伺いをしたいと思います。  実は山形県の米沢市に板谷ジークライトの工場があります。これは労働省からもきょう来ておられると思うのですが、規模の比較的小さな工場であります。四百六十名程度の従業員でありますから小さな工場でありますが、たいへんなけい肺患者が出ておる。しかも、これは私ども七月一日に別な問題でこの工場を視察をしました。それはそこから出ておりますところの排土、この鉱石が国有林の保安林に指定をされておりますところの広大な場所に捨てられておる。これは現地の住民あるいは関係する多くの人々から訴えがありまして、完全な環境破壊ではないか、こういうふうな問題が出たわけであります。私どもはそれを中心にしてずっと調査をしたわけでありますが、その際に、この板谷工場を視察させてもらいました。こういうふうな生産設備あるいは作業の工程ではおそらくたいへんなけい肺患者がおるのではないか、こういうふうなことを関係者に申したわけであります。早急に調査をする必要がある、そういう危険な状態にあるのではないかという指摘をしました。  その後七月の五日に山形県議会の予算特別委員会で、その後の調査した結果の一部を発表をしながら県当局質問が行なわれました。当時、県の答弁としては、これについては所管が違うので必ずしも十分把握はしておらないが、一部労働基準監督署あるいは局を通じて大体の実情は聞いておりますというかっこうで、議員の指摘に対してほぼ同じような答弁が行なわれたわけであります。肯定するような答弁が行なわれたわけであります。それによりますと、これはたいへんなけい肺患者がこの工場の中におります。  この実態について、最初通産省にお聞きをしたいわけですが、仙台の鉱山保安監督部、これは一体いつごろからこの安全施設についての検討を加えられて、そして何回この改善命令を出されたのか、こういう点について最初にお伺いをしたいと思います。
  52. 蓼沼美夫

    ○蓼沼説明員 お答えいたします。  板谷鉱山につきましては、昭和十五年に操業開始いたしまして、昭和二十九年に鉱山保安法が適用になっております。これは、板谷鉱山の掘っております鉱物が耐火粘土というものでございまして、追加鉱物ということで、二十九年から通産省の鉱山保安法の適用になったわけでございます。  それからこの監督でございますが、毎年平均四ないし六回監督を行なっておりますが、特に粉じんに関しまして改善を要すべき点に関する指示といたしまして、四十五年一回、四十七年二回、四十八年一回ということで指示を行なっております。
  53. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 時間がありませんので簡単に聞きますが、そうしますと、この改善命令をいまおっしゃったように繰り返して行なった、それに対する会社側の受け入れといいますか、あるいは指示どおりに改善をされてきたかどうか、この点を簡単でけっこうですから、端的にお答えをいただきたいと思います。
  54. 蓼沼美夫

    ○蓼沼説明員 改善の内容につきましては、その個々に具体的に指示をいたしておるわけでございますが、たとえば現在袋詰めをしておりますものをコンテナバッグ輸送という方法とか、あるいは粉じん処理施設の強化ということでバックフィルターという粉じん処理施設を行なって最新式の処理をするような施設に指示をいたすようなことで、そのつど指示をいたしております。最近は四十八年七月に検査を行なったわけでございますが、この時点でやはり一部不十分な点がございましたので、鉱業権者に対して粉じん防止に対する戒告を行なっております。
  55. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 労働省からせっかく来ていただいておるわけですが、山形県の労働基準局あるいは当該の米沢の監督署、こういうところでは、大体どの程度この現場に入られて、そしてどういう具体的な指示をいたしておるのか、その点明らかにしてもらいたいと思います。
  56. 中西正雄

    ○中西政府委員 お答えいたします。  この事業場に対する監督指導といたしましては、昭和三十八年に衛生管理の特別指導事業場に指定をいたしまして、年間を通じて継続、作業環境の改善等について指導をいたしました。その結果、局所排出装置の設置がなされ、また局所排出装置を設置いたしましても一部高濃度の作業個所もございますので、そういう作業場における作業にあたりましては防じんマスクを使用する等の指導をいたしたのでございます。その後昨年までに粉じん対策に関する監督指導を四回実施しておりまして、そのつど作業環境の改善その他の指示をいたしております。  なお、本年は先ほど通産省からも説明がございましたような事情が発生いたしまして、局署合同の監督指導を実施いたしております。衛生管理体制の確立とか、あるいは衛生委員会の効果的な運営、さらに局所排出装置等の点検制度の確立等について改善をいたしたのでございますが、その結果、同工場では作業環境の総合的な改善について検討をする模様でございますので、その実施について今後強力に指導してまいりたいと考えております。
  57. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 先ほど私、日にちをちょっと申し上げましたが、七月の一日に私ども現地に入りました。そして七月の五日に県議会の特別委員会でこの問題が追及をされました。そしてその日のうちに、これは新聞記者の皆さんが米沢の監督署その他に行ってその事実があるかどうかということを聞いたから明らかになったわけでありますけれども、五日に指摘をしたと同じような内容が監督署によって明らかにされました。そしてその翌日、六日に仙台の保安監督部が現地に入っているわけですよ。そしてさらに九日には、今度は山形の基準局の局長以下五名が現地に入っておる。ですから、七月の五日に県議会の予算特別委員会でこの問題が問題にされるまでは、内容については全然天下に公表されておりません。これは時間がありませんから私はきょうは問題提起程度にとどめますけれども、けい肺によって死亡した者は、昭和三十五年以来十二人になっておるのですね。四百六十名の工場で十二人、たいへんな数ですよ。これはちょっと類例がないと思うのです。しかもその十二人のうち四十三年から今日まで死亡者が六人を占めておる、こういうふうになっております。職業病の認定患者が現在三十三人、そのうち三年以上の長期入院患者が二十六人、ほかに管理区分一から三まで、いわゆる職業病の認定患者になっておりませんけれども、軽症患者といわれる人が百四十五人、こういう状況です。しかも、この板谷工場地区は、地域の住民がほとんど何らかの形で工場に依存はしておりますけれども、この地域全体の人々もあのものすごい粉じんの中でたいへんに健康をおかされているのではないか、こういう点が一般的にいわれております。ですから、七月の中旬から八月の初旬にかけて米沢市の保険衛生課あるいはまた保健所、こういうところが保健婦を総動員して相当克明な、地域全体の住民に対する健康診断を行なっております。この住民の中からも、八月初旬までの調査段階で、精密検査をして明らかにけい肺患者であるといわれる人が二人出ております。その後さらにふえるかもしれません。こういう状況が深刻に進行しておったにもかかわらず、こういう問題について一体基準局は、この点は明らかにしながら、地域の住民に対するいろいろな影響力のある問題でありますから、予防の措置であるとか、あるいは関係各官庁、機関に対して連携をとりながらその絶滅を期す、こういうふうなやり方をなぜおやりにならなかったのか、この点をひとつはっきりお伺いをしたいと思うのです。
  58. 中西正雄

    ○中西政府委員 けい肺患者の発生状況につきまして、一般市民になぜ公表しなかったという御質問でございますが、このけい肺患者の毎年の発生の数というものが、先ほど先生からも御指摘のありましたように、毎年一人、二人程度の死亡者といいますか、この数が必ずしも一度にたくさん出たというような状況でなくて、じん肺の性質上、長年の蓄積が症状となってあらわれるというようなこともございます関係で、非常に緊急な問題であるというふうな認識が必ずしも現地になかったのではなかろうか、そういうふうなことで、格別に市民に公表するというような手段をとらなかったのではなかろうかというふうに考えられます。
  59. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 これは時間がありませんから、私きょうはこれでやめますけれども、しかし、いまの御答弁では私は全く不満です。確かにこのじん肺の性質上、いまおっしゃったように、年間一人なくなったとか、あるいは二人なくなったとか、しかも長期にこの病気の性質からして表面化しなかった、こういうふうな面があるということは百も承知ですよ。だからといって人命の尊重がなおざりにされるということは絶対に許されない、私はそう思うのです。御承知のように、この地区は大体人口千二百名そこそこです。部落をあげてそのくらいの人口です。しかし、そういったような地区で、先ほど言ったように四百六十名の従業員の中から十二名の死者が出ておる、あるいは大体三六%に相当する軽傷を含めての患者が出ておる、長期療養者が相当たくさんおる、こういう状況であれば、これは必ずしもその部落民あるいは市民、県民全体に公表しなくても、各関係官庁に十分に連携をとって、そして先ほど保安監督部のほうにも御質問申し上げましたが、そういう工場の施設の改善とあわせながら万全の措置をとる、あるいは地方自治体その他の行政機関に対してもこの実態というものを明らかにしながら善処方を望む、こういうことでなければ、単にその作業に、直接その危険な個所に携わっておった人でない者までけい肺におかされておるという実態が保健所の健康調査の結果明らかになっておるわけですから、こういう点については私は十分な指導監督というものをやっていただきたいと思うのです。  なお、この問題をここで取り上げましたのは、同工場が土砂捨て場として国有林の保安林の解除指定を受けた、その中でいわゆる工場施業案というものについて貸し付けの際の特約条件が通産局長より認可されております。こういうふうな問題があったり、あるいは捨て土の堆積場の土砂の流出、崩壊防止、こういうふうな問題についても特約条件がありますから、その問題との関連で私は御質問申し上げたわけでありますけれども、この特約条項もほとんど守られておりません。これは重大な問題です。これは環境破壊の問題と関連をしまして、公害特別委員会ないしは農水委員会で私はこの問題をもう一回取り上げますけれども、人間の健康にかかわる問題でありますから、ぜひひとつ十分万全の対策をやっていただきたい。それを最後に申し上げまして、時間が参りましたので、きょうの段階質問を終わりたいと思います。      ————◇—————
  60. 浦野幸男

    浦野委員長 この際、内閣提出中小企業者範囲改定等のための中小企業基本法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案に対する質疑は、すでに去る七月十八日に終了いたしております。  これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  61. 浦野幸男

    浦野委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  62. 浦野幸男

    浦野委員長 本法律案に対し、田中六助君外三名より、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党四党共同提案にかかる附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者より趣旨の説明を求めます。中村重光君。
  63. 中村重光

    ○中村(重)委員 ただいま提案いたしました附帯決議につきまして、私からその趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。    中小企業者範囲改定等のための中小企業基本法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、中小企業基本法制定後十年の経過と最近の中小企業をとりまく内外情勢の変化にかんがみ、長期的視野に立脚した中小企業政策を積極的に推進するため、さらに一層の努力を傾注するとともに、特に本法施行にあたり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。  一、中小企業関係予算及び財政投融資の大幅な拡充強化を図るとともに、特に小規模企業に対する施策を格段に充実し、中小企業施策が上位規模中小企業に傾斜することのないよう措置すること。  二、中小企業の近代化、知識集約化を図るため、新たな構造改善制度を拡充・推進するとともに、中小企業の事業分野の確保について適切な措置を講ずること。  三、下請中小企業の振興を図るため、振興事業の推進、下請企業振興協会の拡充等を行なうとともに、下請代金支払遅延等防止法の運用を強化し、同法の規制対象から除外される下請関係については、独占禁止法による規制あるいは行政指導により十分対処すること。  四、中小企業の従業員の福利を増進するため、中小企業退職金共済制度の普及改善、社会保険の完全実施、福利厚生施設の整備等、労働福祉対策の拡充に努めること。 以上であります。  各項目の内容の説明につきましては、案文により十分御理解いただけると存じますので、この際、省略させていただきます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  64. 浦野幸男

    浦野委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  直ちに採決いたします。本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  65. 浦野幸男

    浦野委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、附帯決議について政府から発言を求められておりますので、これを許します。中曽根通商産業大臣
  66. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 ただいまの附帯決議の御趣旨を尊重いたしまして、政策に万全を期する次第でございます。どうもありがとうございました。     —————————————
  67. 浦野幸男

    浦野委員長 おはかりいたします。  本案に関する委員報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 浦野幸男

    浦野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  69. 浦野幸男

    浦野委員長 引き続き、通商産業基本施策に関する件、経済総合計画に関する件、私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。板川正吾君。
  70. 板川正吾

    ○板川委員 ただいま渡辺委員からも議論のありました重要資材の非常な逼迫の問題に関連いたしまして、私は鋼材の問題と日韓経済協力の問題、この二点について若干質問いたしたいと存じます。  まず鋼材の問題に入りますが、鋼材の需給が非常に逼迫をして品不足が伝えられるばかりでなく、小売り価格が猛烈な値上がりをして、中小企業者は実は悲鳴をあげている実態であります。この間、知人の鉄工所で聞いた話でありますが、いわば最終小売り価格、末端の価格というのは、一年前に比べますと三倍近い値上がりを示しておる。そして従来は注文してから、一、二口で入荷されたものが、これは七月の初めでありますが、注文して一週間から二週間かかる。しかも価格は暴騰しておる。最近では注文をして入るのが二カ月先やら三カ月先やらわからぬ、こういうような状況で困っておる。     〔委員長退席、稻村(佐)委員長代理着席〕  しかも値段は、さっき言ったように末端価格は三倍にもはね上がっておる、こういう状況を実は聞いてまいったわけであります。  そこで、まず第一に、これは事務当局でいいのでありますが、本年四十八年度粗鋼生産の総量、内需、輸出の割合、前年比、こういう問題について事務当局から一応報告をしてもらいたい。
  71. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 本年の鉄鋼の生産は粗鋼ベースに直しますと一億二千二百万トンを想定いたしております。このうち輸出につきましては二千四百五十万トンを予定いたしておりますが、輸出につきましては後進国におきまして非常に要望が強うございますので、後進国並びにアメリカ、ヨーロッパ等の輸出見込みそのまま考えますと約二千八百万トンくらいになるかと思いますが、これらを可能な限り削減して二千四百五十万トンというのを本年度の目標として考えております。
  72. 板川正吾

    ○板川委員 内需が約一億トン近いわけであります。いまの計算から九千七百五十万トンということになるわけでありますが、この内需は前年から比べますとどのくらいの割合でふえておりますか。
  73. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 対前年度二九・四%でございます。
  74. 板川正吾

    ○板川委員 内需は大体二〇%近くふえておる、こういうふうに一応頭に置きます。  それから、一年前の昨年の八月と今日の状態では、これは一般の中小鉄工所等で使っておるものでありますが、この小形棒鋼の値段、小売り価格、市中価格がどういうふうに変動しておるか。それから大手、自動車産業とか家電用とかに使われるいわゆるひもつきの冷延薄板、この値段が一年前とどういうふうに違っておるか、それをとりあえず伺いたい。
  75. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 小形棒鋼につきましては、昨年の八月がトン当たり三万五千五百円だったかと思いますが、それが本年の八月におきましては八万九千円に値上がりしておる状態でございます。それから冷延薄板につきましては、ひもつきと申しまして自動車等にメーカーから直接販売いたします分につきましては五万円、昨年もことしもほとんど変わってない状態だと思います。ただ、約二割くらいが市中に問屋等を通じまして販売されるわけでございますが、このほうの値段につきましては、昨年の八月が五万円でありましたのが、本年の八月は約十万円と考えております。
  76. 板川正吾

    ○板川委員 いまの報告を聞きますと、大企業には、ひもつきで安定した価格で、しかも数量も確保されております。これは長期契約によって八〇%を確保されておるわけでありますが、中小企業、零細企業ということになりますと、供給面で不安定ばかりでなくて、値段も非常に差がある。小形棒鋼にいたしましても、昨年三万五千五百円で、これがいま約九万円ですから三倍近い値上がりをしておる。おそらくスポットものならばもっと高値になるわけであります。大企業には安定した価格で昨年も五万円、ことしも五万円、中小企業で使う小形棒鋼などということになりますと三倍近い値上がりをする、こういう鉄鋼価格のあり方というものについて通産大臣はどういうお考えをお持ちでしょうか。
  77. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 鉄鋼のような産業の基礎資材は、できるだけ長期的に安定した値段で需要者に供給することが望ましいと思っております。いまお示しのような市中ものと、それから長期契約ものとの間にはなはだしい価格差があるということは非常に残念なことでございまして、それにはそれ相応の理由があると思いますが、その中に投機的要素とか買いだめ的要素とか、あるいは非常に不当利潤をむさぼるというようなことで、流通段階においてそういう現象が起きるという場合には、これは行政指導その他によりましてできるだけ平準化する方向に努力してまいりたい、そう思います。
  78. 板川正吾

    ○板川委員 なかなかそれがむずかしいことはよくわかりますが、そこで通産省としてこの鋼材の需給関係に最近手を打った。この手を打った内容について若干説明してください。きょうの新聞にも出ております。
  79. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 鋼材につきましては、今月の八日にまず小棒につきまして緊急出荷をいたしまして、そのあっせん相談業務を開始したわけでございます。小棒は、御承知のように、平電炉メーカーから出ておりますものの約一割が小棒共販会社を通じて販売されておったわけでございますが、末端の小口建設業者等への需要の確保の観点から、この共販会社を通ずる量をふやすことにいたしまして、とりあえず八月の八日に三万トン分をこれに振り向けることにいたしたわけでございます。現在第一回分としてすでに締め切りをいたしましたところ、三万トンを若干上回るようなものが出ておりますが、これにつきましては個々業者にあっせんをやっておるわけでございます。あっせんの対象といたしましては、中小業者ということで資本金五千万円以下の業者を対象にいたしておりますが、一件当たりの割り当てと申しますか、販売の量は原則として二十トンでございまして、特に必要なものにつきましては五十トンまで販売を認めるということにしておるわけでございます。  第二番目の措置といたしまして、小棒以外の一般の鋼材でございます。特にH形鋼その他の建設関係の鋼材につきましては、大手のユーザーの分をほぼ一割カットいたしまして、この分を中小建設業者向けに確保する措置を先般講じたわけでございます。数量にいたしまして、八月の末から十一月までの間に四十六万トンでございますが、とりあえず八月、九月といたしまして十六万トンの供給を確保するということで鉄鋼メーカー並びに自動車、造船、電気、機械等の大手ユーザーに通産省から協力依頼を呼びかけまして、これらの関係業界はいずれも通産省の施策に協力する姿勢を示しておるわけでございまして、この面につきましては諸般の準備が整いまして、近々あっせんの業務を開始することにいたしておるわけでございます。これは鋼材あっせん所を通じまして、鋼材あっせん所に申し込んだものにつきまして販売の確保をはかるということにいたしております。
  80. 板川正吾

    ○板川委員 こういう中小企業向けの鋼材確保のために、小棒の場合には平電炉メーカーから八月三万トン、九月六万トン、これを供出をしてもらってあっせん所を通じて直接この需要者に配給しようということ、それから一般鋼材については自動車、造船、電気、機械、こういう大手ユーザーの一割をカットして、それに約四十六万トンを九月、十月、十一月、この三カ月にわたってこれまた各府県あるいはあっせん所を通じて直接需要者に手に入るように配給をしよう、こういうことのようでありますが、この値段はどういうことになっておりますか。
  81. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 メーカーから小口のユーザーに直接渡すというのを眼目にいたしておりますので、値段につきましてはメーカーの出し値に運賃その他の諸がかりを加えました適正な値段をもって末端需要家に売るということにいたしております。これによりまして普通鋼鋼材につきましては、現在の市中価格の半値に近いような値段になるのではないかと私どもは考えておるわけであります。
  82. 板川正吾

    ○板川委員 市中価格の約半値で小棒の場合には八月三万トン、九月九万トン、一般鋼材の場合には九月から三カ月で四十六万トン、これが出た場合に、鋼材の小売り価格にどの程度影響を及ぼすとお考でしょうか。これは一つの予想でもけっこうです。答弁してください。
  83. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 正確な見通しを申し上げることはなかなかむずかしい問題でございますけれども、当面一番逼迫いたしておりますのは中小の建設業者関係でございまして、これが数量もある程度確保でき、かつ値段も市中の半値ということになりますと、心理的な影響というものはかなり大きいかと思っておるわけでございます。第一回分が十六万トンでございますが、この分だけで市中の値段をさますということはなかなかむずかしいかと思いますけれども、引き続き十月、十一月と十五万トンずつ出しますので、これによって価格の鎮静化に効果があるのじゃないかと思います。  それからこういう措置を実施いたしますと同時に、鉄鋼生産につきまして、現在の異常な生産減という事態は漸次改善されていくものと実は私ども考えておるわけでございまして、この八月におきましては、降雨量の異常な減少によりまして、日本鋼管の福山製鉄所をはじめといたしまして、かなりの減産があったわけでございます。これが秋口に入りますと、この減産の情勢は漸次是正され、生産の増大がされまして、需給の面においてもいい影響が出てまいりますので、この需給関係の好転と、通産省が今回実施いたしました緊急出荷制度が両々相まって今後の価格の鎮静化にはかなりの期待が持てるのではないか、かように考えておるわけであります。
  84. 板川正吾

    ○板川委員 通産大臣に一言この点で伺いますが、こうした緊急措置を講じてなおかつこの価格の面にさしたる影響がない、そういう事態であった場合に、この緊急措置をさらに延長し、あるいは数量をふやす、こういうお考えはありますか。
  85. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 とりあえずいま申し上げましたような四十六万トン、あるいは三万トンないし六万トンというような緊急供給計画を立てましてやっておるものでございます。大体渇水の状況も福山その他において解決いたしましたし、それから各製鉄所等においても操業度がまた順次高まってくる様相も見えますから、この情勢でしばらく様子を見まして、その後の事態に応じて、必要ならばいろいろ措置を講じていきたいと思っております。
  86. 板川正吾

    ○板川委員 必要があればさらに強化を考えるということと理解をいたします。  そこで、一つ伺いたいことは、鉄鋼の場合に、メーカーの出荷価格と小売り価格の差、値開きが非常にあり過ぎますね。流通段階にたいへん問題があるんじゃないだろうか、こう私は考えます。調査によりますと、特約店、卸商が一万軒あるそうであります。そして一万軒がいわば売り惜しみをしておる感じがいたします。先ほど言いました知人の鉄工所へ行ってみましたら、注文してもなかなか来ない。前はすぐ来た。なかなか来ないので、おそらくできたてのほやほやが来るだろうと思って見たところが、これは五・四十・七十五のチャンネルでありますが、まわりが一ぱいさびておって相当年月、長期に外で保管しておったような品物が、しかも一時間がたって入荷した。実際に逼迫しておるなら、工場から出たてのやつが来るというならわかるのですが、実は意外に古い、相当保管しておったものが送られてくる。こういう実態を見ますと、どうも特約店で、流通段階で売り惜しみをしておる傾向があると思います。大体鉄鋼産業というのは、不況のときにはカルテルで保護される。そうして好況の場合にはもうけほうだい。これは聞くところによりますと、この特約店等では家族ぐるみ海外旅行をして、たいへんもうかっておるという悪口も実は聞くわけであります。損をするときもあるのだからもうけるときはもうけるのだと言っておるそうでありますが、これはちょうど大商社が買い占めをして、そうして損するときがあるのだからもうけるときはもうけるのだという、いわば企業の社会性というのを無視しておる傾向じゃないだろうか、こういう感じがいたしますが、大臣は、この鉄鋼の流通段階におけるこうした問題をどうお考えですか。
  87. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 鉄鋼の流通段階が非常に複雑でかつ手数がかかっているということは確かにわれわれが今後検討すべき重要な一つの対象であるだろうと思っております。  いままで鉄鋼の値段が非常に上がったり下がったり激しいものがありまして、そういう過程において多少危険負担をそこで背負わせるというような保険的要素もなくはなかったという気もいたしております。しかし、いずれにせよ、末端価格との差が非常に開いているというようなことは好ましいことではございませんで、その間を合理化させて安定させるということがやはり鉄鋼政策としては重要なポイントでありますから、その点につきましても大いに検討してまいりたいと思っております。
  88. 板川正吾

    ○板川委員 鉄鋼産業の場合はいわば通産省のガイドポストといわれて、大体どのくらい生産してほしいと計画的に生産がされているわけです。だから急にこの値段が上がったり下がったりしないわけであります。そういう意味で流通段階で何か大損をしたというようなことは聞かない。わりあいに計画的な生産、流通であっていいはずが、たまに損したからといってこういうときに企業の社会性というのを無視してもうけほうだいという態度は、私はまことにけしからぬ行為だと思います。  経済企画庁長官、さっき塩ビの話が出ましたが、この小棒とか塩ビは買い占め売り惜しみ法の適用を考えているということのようでありますが、この小棒のような、いわばこれは生活消費物資ではありませんが、しかし生活に重大な関係があると私は思うのです。解釈を拡張して、この小棒などについてはそういう買い占め売り惜しみ法の適用ができないかどうか、お考えになったことがありますか。
  89. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お話しのように、小型棒鋼というようなものはいわゆる生活物資ではないわけでございますけれども、国民の経済生活の上に非常に大きな地位を占めるものであることは仰せのとおりだと考えますが、この小型棒鋼が安くなるような措置を通産省としてもいろいろお考えになっていただいておりまして、幸いに十六万トン放出、しかも市価の仲間相場の半額というようなことで、これがどういう影響を持ちますか——先ほど、これだけでは影響を持つと考えられぬというような話が一部でございましたが、そういうようなお考えを持たれては非常に遺憾でございまして、これがすぐに相当の影響を持つことを私どもとしても期待したいわけです。続いて十五万トンくらいの放出がまたあるようでございますけれども、そういうことで様子を見まして、お話しのごとくに流通過程においていろいろな問題があるやに私どもも聞いておるわけでございますから、その様子によりまして十分また検討させていただきたい、こう考えております。
  90. 板川正吾

    ○板川委員 生活物資の買い占め売り惜しみ法はどうもあまりにも範囲を狭くしぼろうとした関係もありまして、おそらくこれは法制局に聞けば、小棒などの生活に大きな関連を持っておる物資でも、この法の適用を受けることはできないのじゃないかという感じがいたします。私は、いずれこの買い占め売り惜しみ法というのは、もっと間口を広くして法の改正を考えなくてはならない段階が必ず来るという感じがいたします。ひとつその際は検討願いたいと思います。  通産大臣に伺いますが、ことしの鉄鋼の高炉、平電炉メーカー稼働率というのは一〇〇%だそうですね。これはもうフル生産しておる。そうして一億二千二百万トンを生産した、こういうことになります。  わが国の鉄鋼産業の需給の長期見通しを見ますと、公害問題から非常に立地難が予想されております。また、産業計画懇談会ですか、こういうところの説によりますと、鉄鋼のごときエネルギー多消費産業というものは内需をまかなう程度でいいのでありまして、何も三割五分も輸出するようなことまでしなくていいじゃないか、こういう提言すらあるわけであります。今後の鉄鋼産業のあり方、立地、あるいはエネルギー面からの規制、公害問題、さらに流通問題、こういうもの等を考えていきますと、いままでのような自由な経済といいますか、社会的責任を直接負担しないような企業家の自主的な意思にまかせるというようなことでは、基幹産業としての鉄鋼産業のあり方に問題が生じてくるのじゃないだろうか、私はこういうふうに感じますが、大臣、どういうふうにお考えでしょうか。
  91. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 最近公害問題、立地問題等がございまして、鉄鋼業の立地について困難が出てきていることは御指摘のとおりでございます。しかし一面において、また採算性という問題もございまして、私らは海外で適当な地があればそこで立地をして、現地と経済協力を行ないながら製錬あるいは鉄鋼生産を行なうということも好ましいことであって、それはおのおののケース・バイ・ケースによってそういう方向に指導、援助もしていきたいと思っておりますが、一面においてはやはりまたコストという問題もございます。そういう面から一がいに日本の鉄鋼業は海外へ出ていけというようなことを言うことはできないと思っております。おのおのその業態に応じ、環境条件に応じ、経理状況に応じ、ケース・バイ・ケースでそれに処していく。しかし、そういう方向に進むということは好ましいことで、通産省としてもそういう方向に大いに推進していきたいと思っております。
  92. 板川正吾

    ○板川委員 この問題はまた別の機会にゆっくり議論したいと思いますが、鉄鋼産業の流通問題ですね。不況時にはカルテルで保護され、好況時にはいわば自由価格でもうけほうだい。大企業はひもつきで、安定的に、しかも安い値段で供給が確保されている。中小企業は好景気になれば高くなり、品不足ということになる。不安定な供給と高値。こういう生産と流通の段階で非常な矛盾があると私は思うのです。  大臣は、この間、新聞によりますと、新自由主義という政治理念を提唱されております。新自由主義というのはどういうのだか私もわかりませんが、新聞等によりますと、大企業の社会責任を問う、そうして場合によっては、社会公共の立場から、この活動に相当な規制があることも当然である、こういうようないわば理論を背景としておるやにうかがえます。学者あるいは思想家じゃなくて、行政府の長官でありますから、総論だけ言っておいて各論のほうはわからぬというわけにはいかないのじゃないだろうか。そうしてその新自由主義という政治理念からいうと、この鉄鋼産業のあり方、流通の段階というのは、まあ公害問題、立地は別としても私は問題があろうと思いますが、大臣の所見をこの新自由主義理念から伺っておきたいと思います。
  93. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 新自由主義というようなことにとらわれないでも、鉄鋼関係における流通段階というのは検討すべき問題点が多々あろうと思っております。それは板川委員が先ほどから御指摘のとおりの事態があるからでございます。ただ、日本には日本特有の流通事情というものがございまして、快刀乱麻を断つようになかなか流通関係というものは断てない情勢がございます。さすがの美濃部知事でも築地の魚市場やそのほかになかなか手が出せない、河野一郎先生でもなかなかむずかしい事態があった。やはり日本特有の業界事情があるわけでございます。だといって、拱手傍観しておるべきものでもございません。そういう点から、この流通段階を検討して、これを改革するということに努力していきたいと思っております。
  94. 板川正吾

    ○板川委員 鉄鋼問題はこの程度にいたしますが、一言だけ——公取は、きょうは公取委員長以下重要な案件の審議があるそうで、出席はぜひかんべんしてくれということですからいいのでありますが、ひとつ公取の担当部長から伝えてもらいたい。  私はこの鉄鋼産業のカルテルについて二度追及したけれども、公取委員長の態度は率直に反省するところがなかった。当時は、ことしの二月と三月ごろだと思いましたから、この鉄鋼産業の実態について結論が出なかったけれども、いわば水かけ論であったけれども、今日の段階では、公取の昨年とったカルテル延長の措置というのは不適切な措置であったということが明らかであると思います。公取は、不況のときには大企業をカルテルで救い、今日このようにいわば品不足の時代になったならば、値段が二倍、三倍になっても公取自体何らの手も打つことができない。こういう実態を放任しておる。公取は最近中小企業、零細企業のカルテル問題を懸命に取り上げておりますが、それを百取り上げたとしても、鉄鋼産業、このカルテル要因の経済的な影響のほうがはるかに大きい。そういうことを考えてひとつ大企業のカルテルについてはきびしい態度をとるべきである、こういうことを公取委員長に伝えておくように申し上げて、鉄鋼問題は終わります。  次に、私は日韓経済協力の実態について伺いたいと思います。これは、通産、経済企画庁、外務関係おられると思いますが、御承知のように金大中氏事件では、いずれ本会議で内閣としての統一ある答弁を総理に求めると思います。野党各党がただいま本会議質問要請いたしておりますから、こうした委員会で聞きますと、委員会ですでに質問しておるんだから本会議は必要ない、こういうような自民党側の意向のようでありますから、金大中事件については私は触れません。  ただ一つ、この際伺っておきたいことは、この金大中事件と同種の事件があったのであります。一九六七年西独における同種の事件、それからもう一つはアルゼンチンでイスラエルの秘密警察がユダヤ人虐殺の張本人であったアイヒマンをイスラエルに不当に拉致したという事件がありますが、この二つの問題について、当事国西独、それからアルゼンチンがどういう態度をとったか。これは外務省からひとつ当時のいきさつを報告してもらいたい。
  95. 菊地清明

    ○菊地説明員 まず最初の西独の場合でございますけれども、一九六七年六月でございますけれども、西独に留学しておった留学生、音楽家約十七名がいわゆる蒸発したという事件がございました。これは最初は事態が判明しなかったわけでございますけれども、ほどなく韓国側のほうで韓国側官憲が関与しておるということを明らかにしましたので、その際、西独政府としては、七月十三日でございますが、書簡をもって韓国政府に正式に抗議いたしまして、韓国に拉致された韓国人を早急に西独に送還するようにということを要求いたしました。  この間にありまして西独政府がどういう態度をとったかということでございますけれども、当初西独政府は、経済援助の停止とか、外交関係の断絶というような措置は必ずしも適当でなくて、あくまでも外交交渉によって問題の解決をはかるという態度をとっておりました。その後七月二十四日でございますが、韓国政府が率直にその非を認めまして、西独政府の要求に応じまして、この事件に関係しました在独韓国大使館員三名を本国に召還することを約束しまして、それから拉致された韓国人のうち六名が西ドイツに送還されました。その後一九七一年までには拉致された者全員が西独に帰っております。     〔稻村(佐)委員長代理退席、田中(六)委員長代理着席〕  韓国は西独から拉致した人に対してどういうことをいたしましたかというと、裁判に付しまして、相当重い刑の判決の下った方もあったわけでございます。こういった重大な事態になりましたので、一九六七年の十二月、その年の十二月になりまして、西独政府は、本件発生の前に韓国政府に約束しました資本援助協力二件、たしかダムと訓練所の設置だったと思いますが、この二件の実施を一時的に中止いたしました。その後外交交渉を盛んに重ねまして、結局拉致された人に対する裁判が最終段階に近づきました一九六九年の一月に、西独政府は西独外務省の政務局長フランクという人をソウルに派遣いたしまして、両国の友好関係を再確認し、同時に西独は援助再開を決定いたしました。その後の経過は、先ほど申し上げましたように、七一年までに拉致者全部がドイツに帰りました。つまりその前に恩赦とか特赦とか大幅な刑の減免その他によりまして、無罪ないし執行猶予となりまして西独に帰れたという状況でございます。  第二に、アイヒマンのことでございますが、一九六〇年の五月にイスラエルの秘密警察がアルゼンチンにおいて、ドイツにおけるユダヤ人虐殺の張本人と見られますアイヒマンを逮捕してイスラエルに連行いたしました。これに対してアルゼンチン政府は、イスラエル政府に対してアイヒマンの返還と責任者の処罰を要求し、これに伴いまして両国間は非常に緊迫したわけでございますけれども、結局八月に至りましてこれが国連の安保理事会にかかりまして、それで両国の伝統的な友好関係を促進すべきだという国連の安保理事会の決議を両国政府が応諾するという内容の声明を発しまして、この問題が落着したという状況でございます。
  96. 板川正吾

    ○板川委員 この二つの事件を見ますと、西独の場合には直ちに国交断絶ということまでは持っていかなかった。しかし、政府が韓国に与えておった総額七千万マルク、日本の金にしまして七十億円の火力発電所と農業用センターの建設のための経済援助を停止することを決定した。一時的とあなた強調しなくても、停止することを決定した。しかしこの事態は、表立って国交断絶を押し出したことではなかったけれども、事態の発展を見ては段階的にさらに強力な報復措置をとる覚悟がここで明らかにされた。そのために韓国側ではだんだん折れてきたという、金大中事件と同様な事件に対する西独側の一つの措置がとられたことは明らかであろうと思います。もう一つのアイヒマンの問題では、これはイスラエルとの外交関係をアルゼンチンは断絶をしたわけであります。いずれもそれは主権の侵害、独立国の威信を傷つけられたということに最大のポイントがあったと思います。  そこで、その問題はまた別の機会といたしまして、西独では韓国との交渉で当時七千万マルク、日本の金で七十億円でありますが、この援助停止を決定した、そしてそういう措置によって、ついに最終的には十七名、拉致された全員が西独に帰ることができた、こういうことであります。  そこで外務、通産、経済企画庁担当部門でお答え願いたいのですが、日本の対韓経済援助の今日までの実績はどういうふうになっておりますか。どういう実績がありますか。御承知のように、日韓条約による有償二億ドル、無償三億ドルですが、そのほかに閣僚会議に基づいた援助が決定されておりますが、現在までそうした経済援助の実績はどういう金額になっておるか、これを明らかにしてもらいたい。
  97. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 御承知のように、いわゆる有償二億ドル、詳しく申しますと、一九六五年に締結されました財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定に基づいておりまする二億ドルと、それから交換公文を受けまして経済協力基金と韓国政府とが借款契約を締結するいわゆる円借款とがあるわけでございます。  本年七月末現在では、有償二億ドルにつきましては、市外電話拡張、上水道整備、高速道路建設事業等のプロジェクトに対しまして約一億五千五百万ドルを供与しておりまして、また個別の円借款につきましては、コミットベースで約四百十一億円のうち六十二億円を具体的に貸し付けておるわけでございます。  なお、借款契約を締結後チェックすることにいたしておりまして、基金は現在現地駐在員事務所の活用、相手国政府からの報告徴収等によりまして、当該案件の進捗状況について絶えず把握をいたしておりまして、また借款手続上、借款資金自体も相手国政府に直接流れる仕組となっておりませんので、借款資金については非常に厳格に行なわれておるというふうに強調いたしておるわけでございます。  なおさらに詳しく申し上げますと、二億ドルのうちソウルの地下鉄は一九七一年十二月三十日、コミット額が二百七十二億四千万円、実行額が五十二億円。第一次商品援助、一九七二年七月一日のものは、コミット額が七十七億円、貸し付け実行額が十億円。通信施設拡充計画は一九七三年一月二十六日、コミット額が六十二億円、これが実行はゼロ、すなわち総額が先ほど申し上げましたようなことになっておるわけでございます。  なお、交換公文によりまするものは四百十一億四千万円でございまして、そのうち六十二億円が実行されておるという状況でございます。
  98. 板川正吾

    ○板川委員 日韓条約、財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定によって、無償として三億ドル、十年間均等として年間三千万ドル、さらに有償として海外経済協力基金より有償二億ドル、これまた十年間で年間二千万ドル、そのほか日韓閣僚会議によって、韓国に対する円借款が行なわれておる。これはコミットベースで、昨年までが二億八百万ドルということになっておる。さらに民間における投資あるいは延べ払い投資額は本年の三月末で二億二百万ドル、延べ払いについては、三十八年から四十八年の十年間で、ことしの三月現在では六億ドルをこえております。この膨大な、いわば対韓援助がなされておるわけであります。私どもが日韓条約に反対したのは、韓国だけにそういう経済援助をやるということについて、これはいかぬ、日本は朝鮮民族に多大な迷惑をかけてきたのだから、そういう経済援助なりをするならば、全朝鮮民族になすべきである、こういう考え方に立って日韓条約に反対したわけです。韓国に対する経済援助、われわれが消極的にもこれを認めつつあるのは、長い間日本が朝鮮民族に迷惑をかけた、その朝鮮民族の一方の人に一ほんとうは両方やりたいが、一方の韓国にこうした経済援助をすることは朝鮮を征服した日本の軍国主義の一つの贖罪、こういう気持ちでおるわけであります。そういう意味で、経済協力というものを消極的ながら認めざるを得ない、こう思っておったわけでありますが、ある週刊誌にはこういうことが書かれております。これは自民党の代議士の宇都宮徳馬さんの談話のようでありますが、こう書いてあります。「ソウル地下鉄建設のような明瞭な目的でも、三分の一は韓国の関係者に、三分の一は日本の関係者にまわり、実質使われるのは残りの三分の一にすぎないといわれるのだから、対韓援助は汚職の巣窟といわれても仕方がない。」「たしかに対韓経済援助は黒い霧に包まれていますね。金大中氏だけでなく、韓国の信頼すべき筋は”日本の経済援助は朴大統領を支えているだけで、韓国民のためにはなっていない”といっています。特にピンハネがひどい。一億の借款のうち、六千万ぐらいが消えてしまうという例もあるそうです。それでも利子をつけて返済しなければならないので、不実企業という、実質上倒産している企業が五十以上もあるといいます」、こういうことが宇都宮代議士談として載っておるのであります。  私は、宇都宮代議士が事実こういう発言をしたかどうか、真偽のほどは知りません。そのことは問いません。しかしインドネシアの賠償の際に、いわば公然の秘密として同じような事実があったことを私も現地に行った際に伺ってまいりました。いわばそういうことは、真偽のほどは私自身もわからぬが、しかしこれはあり得ることであるという感じがいたします。そうしますと、われわれ日本国民が税金を納め、そしてそれが少なくとも朝鮮民族のある部分の人に——経済援助として幾らかでも戦時中、戦前の贖罪的な意味を持っておるのに、途中でそういうことになってはまことにわれわれは遺憾であるし問題であると思うのです。  そこで伺いますが、経済援助の手続というのは一体どういう内容を持っておるのか。聞くところによりますと、これは相手韓国側から要望が出る、それを日本側が検討をする、日本側で援助のワクをきめる、予算をきめる、そして日韓両国で協議決定する、それを交換公文で取りかわす、こういう手続を経る、こういわれております。この資料等を見ましても、一応は表向きは鉄道設備改善事業とか漢工鉄橋復旧事業とか建設機械改良事業とか、とにかくいままで日韓条約の際にきめられた有償、無償の五億ドルというものは、具体的には、表向きはちゃんとした計画にのっとって金を出した、こういうようにいわれておりますが、はたしてこういう韓国が交換公文で約束したように、われわれの金が韓国国民のために、朝鮮民族のために、ほんとうに役に立っておるのかどうか。それをチェックすることはわれわれのほうとしてできないのかどうか。これは交換公文でどういう内容であったか私はわかりませんが、日本側として、必ずそれが国民のために公正に使われておるということをチェックすることができないのかどうか。きょうの朝日新聞の社説にはこう書いてあります。「こうして毎年、積み上げられる対韓経済協力は、わが国と他国との一般的な協力関係を、質量ともに大きくしのいできた。しかも韓国の場合は、事前の十分な事務的詰めもなしに、閣僚会議で政治的に借款供与の方向を合意することも、少なからずあった。このような経済協力が、韓国の建設に一体どのような役割を果たしたのか、まともに調査したものはわが国に一つもないといってよい。」朝日新聞の社説にはそういう論評があります。今度の事件で、日韓閣僚会議が延期されたことは当然でありますが、日韓閣僚会議の援助の取りきめ自体に私は問題、疑問が多々あるという感じがいたしております。そこで、この経済協力を不正なく約束どおり相手方が実行しているかどうかをチェックする機関というものは一体あるのかないのか、あるならどういう方法でおやりになっておるのか、それを伺いたい。
  99. 菊地清明

    ○菊地説明員 お答え申し上げます。  経済協力のチェックをどうやっておるかという御質問でございますが、これは非常に技術的でたいへん詳細にわたるわけでございますけれども、ごく簡単に申し上げますと、まず日韓請求権経済協力協定に基づきます例の三億ドル、二億ドル、あの分につきましては、日韓合同委員会というのがございまして、これは毎年実施計画をそこにかけまして、それでどういうプロジェクト、どういう事業に幾ら使うということをあらかじめ日韓間で合意いたしましてそれに基づいて実施いたしております。それからはずれる場合は韓国側から一々その合同委員会にかけまして、日本側の了解を求めるというかっこうになっております。  それから、先ほどの交換公文ベースの経済協力と称されるものでございますが、これは先ほど、事前の詰めなくして閣僚会議その他で安易にコミットをされておるではないかという御指摘ですけれども、これにつきましてはプロジェクトないし借款をやります場合には、必ず私たちの申しておるフィージビリティー調査というようなことをやりまして、それがはたして韓国の経済に役に立つか、韓国の経済発展の優先度はどうかということとか、全部そのプロジェクトそのものがはたして経済的なものかどうかというのを非常に技術的かつ経済的な見地からチェックいたしましてからコミットする、閣僚会議に上げるというふうなかっこうになっております。  それから商品援助というものがございますが、これにつきましては日本から商品を持っていくわけですが、その商品の売り上げ代金につきましては、韓国政府においては産業合理化資金という資金を持っておりまして、これに売り上げのウォン貨を払い込むということになっております。それで、この産業合理化資金に関しましては、産業合理化資金法というものがございまして、これは韓国の産業開発のために使うということになっております。
  100. 板川正吾

    ○板川委員 向こうから申し入れがあり、こっちがその計画を聞いて、わが方が検討する、そして妥当と思われるものを考えてワクをきめて協議をする、これは請求権の問題と違う、閣僚会議で主として行なわれるものですね。円借款の問題ですね。一応は向こうがそういう計画をして出してくる、こちらがその計画を検討する、こういうことは当然だと思うのです。だけれども、実際それが約束どおり実行されているかどうかということを調査はできませんか、それをしておりませんかというのです。
  101. 菊地清明

    ○菊地説明員 実際に、はたして現実にその目的どおり使われているかどうかということに関しましては、先ほど申し上げました基金の駐在員がおってチェックする方法もございます。それから現実に経済協力の場合は、日本から物資、資材が韓国へ現実に渡るわけでございますけれども、その場合は貿管令によりまして輸出承認という手続がございます。ですから、輸出承認の際にはたしてこれが協定ないし交換公文に合致した商品であるかどうか、資材であるか、プラントであるかということを現実にチェックいたしております。それが最後のチェックでございます。  それからもう一つ、協力がはたしてどういう効果を生んでいるかという、効果測定という問題、これは非常に大事な問題でございますけれども、これに関しましては、経済協力の効果測定チームというようなものをときどき派遣いたしまして、韓国に関しましてはかつて一回派遣したことがございますが、できれば今年度において派遣を考慮いたしておりますが、この効果測定ということは私たちとしても十分心にとめておる問題でございます。
  102. 板川正吾

    ○板川委員 それでは外務省に要求いたしますが、経済援助の効果測定調査を過去においてやったことがある、また今後したい、こう言っておりますから、過去において効果測定調査をした資料を当委員会に出していただきたいということを要望いたします。  時間の関係もありますから結論に入りますが、一説によりますと、韓国の中央情報部、CIAの活動資金というのは、国家の機密資金として、議会の賛成を必要としない、こういわれております。したがって、必要とあれば幾らでも使える、こういうようにいわれております。その豊富な資金源はアメリカと日本の経済援助にその根源があるという説もあります。これは私も実態調査しておりませんが、そういう説を耳にいたします。かりにそれが事実であるとすれば、日本としてこんなばかな話はないわけであります。韓国の中央情報部の活動資金を日本が援助をし、その中央情報部員によって日本の主権が侵害をされ、威信が失墜をされた。そうして泣き寝入りをして、韓国のどうかつに屈して、大平大臣の最近の態度は、相手がノーといえば打つ手がないというような感じを持つわけでありますが、こういう問題は、国民は政府の出方に重大な関心を持って見守っております。田中内閣の決断と実行という公約は、私はこういう場合にひとつ断固たる行動に出るべきではないかというふうに、国民の一人として、国民の声として申し上げておきたいと思います。それがいわばほんとうの日本と朝鮮民族との友好の道につながる。間違った土台の上にほんとうの友好というのは築かれるはずはない。アメリカが世界各国に経済援助、軍事援助をしながら各国からきらわれているというのも、間違った土台の上に友好というものを築き上げようとしたからであると思います。日本もそうしたアメリカの二の舞いを踏んではならぬということを強調いたしまして、私の質問を終わります。
  103. 田中六助

    田中(六)委員長代理 次回は、明二十九日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時五十九分散会