○板川
委員 日韓条約、財産及び請求権に関する問題の
解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定によって、無償として三億ドル、十年間均等として年間三千万ドル、さらに有償として海外経済協力基金より有償二億ドル、これまた十年間で年間二千万ドル、そのほか日韓閣僚
会議によって、韓国に対する円借款が行なわれておる。これはコミットベースで、昨年までが二億八百万ドルということになっておる。さらに民間における投資あるいは延べ払い投資額は本年の三月末で二億二百万ドル、延べ払いについては、三十八年から四十八年の十年間で、ことしの三月現在では六億ドルをこえております。この膨大な、いわば対韓援助がなされておるわけであります。私
どもが日韓条約に反対したのは、韓国だけにそういう経済援助をやるということについて、これはいかぬ、日本は朝鮮民族に多大な迷惑をかけてきたのだから、そういう経済援助なりをするならば、全朝鮮民族になすべきである、こういう考え方に立って日韓条約に反対したわけです。韓国に対する経済援助、われわれが消極的にもこれを認めつつあるのは、長い間日本が朝鮮民族に迷惑をかけた、その朝鮮民族の一方の人に一ほんとうは両方やりたいが、一方の韓国にこうした経済援助をすることは朝鮮を征服した日本の軍国主義の一つの贖罪、こういう気持ちでおるわけであります。そういう意味で、経済協力というものを消極的ながら認めざるを得ない、こう思っておったわけでありますが、ある週刊誌にはこういうことが書かれております。これは自民党の代議士の宇都宮徳馬さんの談話のようでありますが、こう書いてあります。「ソウル地下鉄建設のような明瞭な目的でも、三分の一は韓国の
関係者に、三分の一は日本の
関係者にまわり、実質使われるのは残りの三分の一にすぎないといわれるのだから、対韓援助は汚職の巣窟といわれても仕方がない。」「たしかに対韓経済援助は黒い霧に包まれていますね。金大中氏だけでなく、韓国の信頼すべき筋は”日本の経済援助は朴大統領を支えているだけで、韓国民のためにはなっていない”といっています。特にピンハネがひどい。一億の借款のうち、六千万ぐらいが消えてしまうという例もあるそうです。それでも利子をつけて返済しなければならないので、不実
企業という、実質上倒産している
企業が五十以上もあるといいます」、こういうことが宇都宮代議士談として載っておるのであります。
私は、宇都宮代議士が事実こういう発言をしたかどうか、真偽のほどは知りません。そのことは問いません。しかしインドネシアの賠償の際に、いわば公然の秘密として同じような事実があったことを私も現地に行った際に伺ってまいりました。いわばそういうことは、真偽のほどは私自身もわからぬが、しかしこれはあり得ることであるという感じがいたします。そうしますと、われわれ日本国民が税金を納め、そしてそれが少なくとも朝鮮民族のある部分の人に
——経済援助として幾らかでも戦時中、戦前の贖罪的な意味を持っておるのに、途中でそういうことになってはまことにわれわれは遺憾であるし問題であると思うのです。
そこで伺いますが、経済援助の手続というのは一体どういう
内容を持っておるのか。聞くところによりますと、これは相手韓国側から要望が出る、それを日本側が検討をする、日本側で援助のワクをきめる、予算をきめる、そして日韓両国で協議決定する、それを交換公文で取りかわす、こういう手続を経る、こういわれております。この
資料等を見ましても、一応は表向きは鉄道
設備改善事業とか漢工鉄橋復旧事業とか建設機械改良事業とか、とにかくいままで日韓条約の際にきめられた有償、無償の五億ドルというものは、具体的には、表向きはちゃんとした
計画にのっとって金を出した、こういうようにいわれておりますが、はたしてこういう韓国が交換公文で約束したように、われわれの金が韓国国民のために、朝鮮民族のために、ほんとうに役に立っておるのかどうか。それをチェックすることはわれわれのほうとしてできないのかどうか。これは交換公文でどういう
内容であったか私はわかりませんが、日本側として、必ずそれが国民のために公正に使われておるということをチェックすることができないのかどうか。きょうの朝日新聞の社説にはこう書いてあります。「こうして毎年、積み上げられる対韓経済協力は、わが国と他国との一般的な協力
関係を、質量ともに大きくしのいできた。しかも韓国の場合は、事前の十分な事務的詰めもなしに、閣僚
会議で政治的に借款供与の方向を合意することも、少なからずあった。このような経済協力が、韓国の建設に一体どのような役割を果たしたのか、まともに
調査したものはわが国に一つもないといってよい。」朝日新聞の社説にはそういう論評があります。今度の事件で、日韓閣僚
会議が延期されたことは当然でありますが、日韓閣僚
会議の援助の取りきめ自体に私は問題、疑問が多々あるという感じがいたしております。そこで、この経済協力を不正なく約束どおり相手方が実行しているかどうかをチェックする機関というものは一体あるのかないのか、あるならどういう方法でおやりになっておるのか、それを伺いたい。