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1973-07-18 第71回国会 衆議院 商工委員会 第44号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年七月十八日(水曜日)    午前十一時十八分開議  出席委員    委員長 浦野 幸男君   理事 稻村左近四郎君 理事 左藤  恵君    理事 田中 六助君 理事 羽田野忠文君    理事 山田 久就君 理事 板川 正吾君    理事 中村 重光君 理事 神崎 敏雄君       天野 公義君    内田 常雄君       小川 平二君    越智 伊平君       木部 佳昭君    小山 省二君       笹山茂太郎君    塩崎  潤君       島田 安夫君    正示啓次郎君       田中 榮一君    西村 直己君       西銘 順治君    八田 貞義君       増岡 博之君    岡田 哲児君       加藤 清政君    加藤 清二君       上坂  昇君    藤田 高敏君       渡辺 三郎君    野間 友一君       近江巳記夫君    松尾 信人君       玉置 一徳君  出席国務大臣         通商産業大臣  中曽根康弘君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         公正取引委員会         事務局取引部長 熊田淳一郎君         社会保険庁年金         保険部長    八木 哲夫君         通商産業政務次         官       塩川正十郎君         通商産業省企業         局次長     橋本 利一君         中小企業庁長官 莊   清君         中小企業庁次長 森口 八郎君         中小企業庁計画         部長      原山 義史君         中小企業庁指導         部長      生田 豊朗君  委員外出席者         労働省労働基準         局賃金福祉部長 廣政 順一君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 七月十八日  辞任         補欠選任   小山 省二君     島田 安夫君   笹山茂太郎君     正示啓次郎君   西村 直己君     西銘 順治君 同日  辞任         補欠選任   島田 安夫君     小山 省二君   正示啓次郎君     笹山茂太郎君   西銘 順治君     西村 直己君     ————————————— 七月十七日  プラスチック成型用原料の需給安定に関する請  願(神崎敏雄君紹介)(第九〇五六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  中小企業者範囲改定等のための中小企業基  本法等の一部を改正する法律案内閣提出第八  四号)      ————◇—————
  2. 浦野幸男

    浦野委員長 これより会議を開きます。  内閣提出中小企業者範囲改定等のための中小企業基本法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。近江巳記夫君。
  3. 近江巳記夫

    近江委員 中小企業近代化資金等助成法関係についてお伺いをしたいと思いますが、この範囲拡大に伴って小規模企業者利用度の高い設備近代化資金については、貸し付け限度額十万から五百万まで貸し付け率の二分の一について引き上げることが必要ではないかと思うのですが、この点についてどうお考えであるか。  それから、本法による中小企業構造改善準備金制度利用状況はどうなっておりますか。これをひとつ中小企業庁長官にお伺いしたいと思います。
  4. 莊清

    荘政府委員 設備近代化資金は、御案内のように小規模企業重点貸し付けをいたしております。今回定義改定はございますけれども小規模企業対策を充実するということで、今年度も貸し付け規模拡充いたしておるわけでございます。現在一千万円までの設備対象にいたしておるわけでございますけれども、なお、実情をよく今後も見まして、この制度効果が一そう出ますように、限度額その他についても十分検討いたしたいと思います。  貸し付け実績等につきましては、担当部長のほうから御報告いたします。
  5. 原山義史

    原山政府委員 中小企業構造改善準備金利用実績についてお答えいたします。  現在まで二十九件準備金を利用しております。金額としまして、全事業費としまして二百十八億九千六百万円ということに相なっております。  それから設備近代化資金利用状況でございますが、四十七年の実績を申し上げますと、四十七年の実績はまだ完全に出ておりませんが、予算額は三百五十四億でございます。四十六年の実績は三百七億でございます。
  6. 近江巳記夫

    近江委員 そういうワク組みがあって、利用状況がどうなっておるかということを聞いておるわけですよ。これはこなしておるのですか。
  7. 原山義史

    原山政府委員 四十七年度につきましては、まだ完全に実績をわれわれとっておりませんが、設備投資が旺盛に向かいつつあったわけでございますが、一般金融の超緩慢ということもございまして、実績ワクを相当余しているようでございます。あとで数字を確かめまして御報告いたしたいと思います。
  8. 近江巳記夫

    近江委員 民間に比べて政府金融機関のそういう条件というものははるかにいいわけであります。ですから、やはりそういう状態の中でも利用者がたくさんあると思うのです。その点、非常に手続がむずかしいとか、いろいろな制限等においても、厳格はいいのですけれども、厳格過ぎる、手続がうるさいというようなことがいまだにあるわけです。そういう点については十分利用できるように配慮すべきだ、この点は申し上げておきます。  それから中小企業退職金共済法関係ですが、この改正により卸売業者従業員五十人以下から百人以下に引き上げられることになるわけですが、これにより範囲に入る卸売業ではどのような方法によって退職金支払い手段を講じてきていると中小企業庁では把握しておられるのか。また、これらの卸売業が任意でやっていたとして、スムーズに中小企業退職金共済事業団に加入できるものであるかどうか、この二点についてお伺いしたいと思います。
  9. 原山義史

    原山政府委員 中小企業退職金事業団運用につきましては、労働省の所管でございますので、ここで早急に答弁することは私ども範囲を越えるので答弁いたしかねると思います。
  10. 莊清

    荘政府委員 退職金共済事業団の運営の詳細はいま部長から申し上げたとおりでございますが、今回の基本法改正あたりまして、中小企業退職金共済事業団法も一部改正をお願いしておるわけでございます。中政審の答申を得ますまでの審議にも労働省委員としてお入りいただいておりまして、この卸売業定義改正については労働省でも十分審議状況を承知の上で、今回の事業団法改正にも賛成をしてもらっておるという実情がございます。  事務的にもこれの加入につきましては全然問題がないわけでございまして、定義改定が行なわれましたならば、これに該当する規模卸売企業というものはこれの改正を非常に待っておるわけでございまして、個別に労働省指導によりまして、単なる金融を受ける、助成を受ける面だけではなくて、こういう労働福祉の面につきましてもそれ以下の規模の卸がすでに相当利用しておるわけでございますが、同様にこの制度も利用するように十分な指導労働省とも連絡の上遺憾なくやりたいと考えております。
  11. 近江巳記夫

    近江委員 いま部長から詳細なお話があったということを言っておりますが、部長労働省であるからわからぬというような、何も詳細でも何でもないことです。この程度のことは一々労働省が出なくても、中小企業庁としてつかんで、いつでも答弁できる、それくらいつかんでおくのは当然だと思うのです。いまここでやかましく言ってもしかたがないから、この点についてはあとでまた労働省連絡をとって詳細を答えていただきたいと思います。  その次は、中小企業近代化促進法関係ですが、産地ぐるみ近代化をはかる、いわゆる近促法といったものが検討されたようでありますが、それはどういう構想であるか、もしお考えになっておったならば長官からお伺いしたいと思います。
  12. 莊清

    荘政府委員 近促法第五条の二の構造改善事業を従来から進めてまいっておりますが、従来の考え方はいわゆる産地単位ではございませんで、全国ベース一つ商工組合をつくりまして、そこに過半数の中小企業が加入して計画を組まなければならないという運用方針でございました。ところが、実際にはいろいろの産地で、産業分類上は同じ品目でございましても、具体的には相当品種なども違う、それから需要先も違うというふうに事情が異なるわけでございます。なかなか全国一本の構造改善計画と申しましても実態が違うものでございますから、円滑を欠く場合が多くて、計画を組みたいけれども、結局そこに至らないという例が多数ございました。そこで、今回のドルショック等を契機にいたしまして、私どもその点を十分反省いたしまして、必要な場合には産地単位組合をつくって、そこで構造改善計画を組めるようにしなければならない、かように考えまして、財政当局とも予算の際に折衝いたしまして、そういう運用によって高度化資金等を活用するという道を設けたわけでございます。
  13. 近江巳記夫

    近江委員 次に、中小企業振興事業団法関係についてお伺いしたいと思うのです。  中小企業をめぐる諸情勢の変化に対処して高度化を強力に推進することが必要であると思うわけですが、このために中小企業振興事業団業務拡充資金量確保が絶対的に必要であると思うわけです。そこで、この範囲拡大に伴ってどの程度資金ワクを予定しておるのか、これが一つ。  二つ目は、各都道府県負担割合を軽減する考えはないかどうか、これが二点。  三点目は、融資条件の緩和についてどう考えておられるか、これについて長官からお伺いしたいと思います。部長でもけっこうです。
  14. 森口八郎

    森口政府委員 振興事業団高度化事業は、先生御存じのとおり事業者申請に基づく共同事業について援助するものでございます。したがいまして、定義を上げましたからというわけで直ちに事業団資金がふえるかどうか、さらに実態の推移を見なければわからないわけでございます。幸い事業団のほうは現在余裕資金をかかえておりますので、定義を上げましても、事実上その要請には十分こたえ得る資金を現在の段階では持っておるというふうに私のほうは考えております。     〔委員長退席、稻村(左)委員長代理着席〕  それから第二に、都道府県負担割合の問題でございますが、中小企業施策全般といたしまして、国と都道府県負担はほぼ半分ずつというのが大体の考え方でございます。現在の事業団中小企業者に対する助成割合におきましても、無利子分につきましては国と都道府県がちょうど同じ割合ずつ無利子分を持ちまして、それから財投分政府がその上にオンするという考え方になっておるわけでございますので、この考え方をいまにわかに変えることはむずかしいのではないかというように考えるわけでございます。  それから第三の御質問は、助成内容についてさらに改善する必要はないかということでございます。現在一般高度化事業につきましては、大体一般中小企業高度化事業に対して二・七%という非常に安い利率で貸し付けておるわけでございます。したがいまして、これをさらに改善をする必要があるかどうかということになりますと、すでに相当の助成をいたしておりますので、これ以上さらに改善をするという点についてはいかがかと思われる点もございますので、現在の状況では困難であろうというように考えるわけでございます。ただ二・七%という金利は変えないわけでございますが、無利子貸し付け対象について、たとえば中小小売商業振興法制定にあたって、零細業者共同事業を行なう場合に八割無利子制度対象を広げるというような改善は当然行なっておるわけでございますので、今後ともこういうような内容改善には努力してまいりたいというように考えております。
  15. 近江巳記夫

    近江委員 ワクがあるということをおっしゃっているわけですが、そうすると、いままでの利用状況にしても、またPR推進にしても、指導にしても、行き届かなかったがゆえに借り手が少ないという面もあって空白があるという点も十分に考えられると思うのです。いずれにしても、これはやはり相当問題があると思いますし、そして当然範囲拡大をしていって、そしていまのままのワクでいいということはちょっとおかしいと思うのですね。ですから、中小企業庁としても十分検討されて、そういう実情に合った体制をとっていただきたい。特に要望しておきます。  それからその次は中小企業特恵対策臨時措置法関係ですが、本法制定されて二年になるわけですが、これの施行状況はどうなっておるか。さらに、この特恵関税供与に伴う影響についてどのように把握しておるか。三番目は、特恵関税供与の今後の方針についてお伺いしたいと思うのです。長官でも部長でもけっこうです。
  16. 莊清

    荘政府委員 特恵対策臨時措置法施行でございますが、実は本法は実質的には施行に至っておりません。業種指定の政令をまだ出すに至っておりませんが、その事情は大体二つございます。  一つは、本法制定後二度にわたりまして円の切り上げという事態が起こってきたわけでございます。特恵法で主たる対象考えておりました繊維とか雑貨というふうな労働集約性の高い産業は同時に中小輸出産業でもございまして、特恵法考えておりますよりも若干一歩進んだ施策ドル対法の体系で講ぜられることに実はなったわけでございます。その対象がほぼ同じであるというふうなことが一つ事情でございます。  もう一つは、今後の特恵問題についての方針はどうかというお尋ねもございましたが、現在までのところ、この特恵制度というのはアメリカの特恵問題がどうなるかという大きな懸案を実は残しておるわけでございまして、そのあたりの問題がどうなるかということと、わが国態度ということも当然からんでこようと思うわけでございますけれども、少なくとも現在までのところ、この特恵制度運用は、輸入のフラッドによりまして著しく影響のあると思われるような商品につきましては、農林物資にせよ通産関係物資にせよ、運用上、たとえばシーリング制度でございますとかいうふうなことを行なってまいりまして、著しいフラッドというのは避けながら実はやってきておったというふうな事情がございます。こういうことも、本法施行についてまだ直ちに踏み切らなかった事情でございます。  今後どうなるかという点は、申し上げましたように米国態度とも非常に関係してくるわけでございますが、実は前回の円の切り上げ、今回のフロートによりまして、必ずしも特恵制度によらずともLDC諸国からの労働集約の高い商品輸出というものが先進諸国全部に対して非常に有利になりつつあるということもございまして、いまこの問題は、今後の世界全体の情勢を見て考える、こういう段階になってまいっておるかと私ども考えておるわけでございます。今後も私どもは、特恵対策法施行の問題もございますが、やはりLDC諸国とは協調しながらわが国中小企業もまた伸ばしていかなければならないというのが基本でございます。やはり国際分業のメリットというものも取り入れながらわが国国内中小企業については、これが一歩進んだ形で十分に成り立ってまいりますように、事業の転換でございますとか、高度化でございますとか、知識の集約化でございますとか、また、場合によっては、海外に、過去のすぐれた経験なり技術なりマーケッティングの力というものをもって先方に出かけていって、一緒に事業をする、こういう総合的な対策を十分に講じていく、こういうことでこの問題に対処していくのが基本的な考え方ではないか、かように考えておるわけでございます。
  17. 近江巳記夫

    近江委員 確かに本法ができて、それ以後の経済情勢の激動ということはよくわかるわけですが、法律もできておるわけですし、この点も通産省中小企業庁はそういう国際情勢見通しがわからなかったのか、逆にいえばそうなるわけですね。ですから、法律もあるわけですし、そういうことで十分な検討をして、要するに、この点から言えることは、もっと国際情勢を的確につかんで、実情に合ったそういう方向——法律をつくるにしても中身をよく検討する、今後そういうようによく勉強してもらいたいと思うのです。特に要望しておきます。  それからその次は、官公需についての中小企業者受注確保に関する法律関係ですが、同じく本法制定による効果はどうであったか、それから中小企業向け受注確保のための今後の方針はどうであるか、これについてお伺いしたいと思います。
  18. 莊清

    荘政府委員 官公需確保は非常に大切なことでございます。聞くところによりますと、米国でも、中小企業政策のおもな柱が官公需対策になっておると伺っております。わが国では、御指摘のように、官公需中小企業向け発注計画というものを毎年八月ごろ閣議決定をいたしまして、その際に官公需関係担当各省庁がきめこまかな配慮をするよう運用上の留意事項をあわせて閣議決定をして、これを公表しておるわけでございます。現在まで実績が確定いたしておりますのは四十六年まででございまして、四十七年度につきましては、目標は一兆一千億円で全官公需の約二七%というのが四十七年度の目標になっておりますが、実績は目下集計中でございます。  そこで四十六年度の実績について申し上げますと、官公需総額が三兆四千五百八十億円でございます。国が一兆四千四百五十八億、公社公団が二兆百二十二億という内訳でございます。中小企業向け実績は三兆四千五百八十億に対しまして九千百八十一億円でございます。国が四千六百七十三億、公社公団が四千五百八億でございまして、官公需総額に対します中小企業向け実績は二六・五%でございます。昭和四十一年ではこれが二五%ぐらいでございますので、実は年によって上がり下がりがあるのでございますが、若干上がりぎみであるということでございます。  四十八年度の計画につきましては、来月中には例年どおり閣議決定をする運びで、目下関係各省と打ち合わせ中でございまするが、官公需割合を少しでも上げていくように、また予定した計画目標を間違いなく実施できるように、こまかい発注しかた等についても改善すべき点があれば、この際さらに一歩改めるように努力いたしたいと思います。
  19. 近江巳記夫

    近江委員 この閣議決定におきましても、中小企業のそういう過去の問題についてはやはりパーセントも低い、しかも、実績においてもその目標を達成できないというのが従来のパターンじゃないかと思うのです。だから、皆さんが中小企業を育成していくということで一生懸命力を入れているならば、こういうところにこそ政府ができる点において力を入れていくべきである、このように思うわけです。今後この法律に基づいて努力していかれるのかどうか、これはひとつ大臣にお聞きしたいと思います。
  20. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 法律趣旨に基づきまして、中小企業に対する割り当てをできるだけふやすように、閣議その他の機会を通じまして努力いたすつもりでございます。
  21. 近江巳記夫

    近江委員 その次は下請中小企業振興法関係ですが、主務大臣承認した振興計画は何件あるか、施行状況についてお伺いしたいことが一点と、その次に、承認件数が少ない原因は何であるか。三点目は、下請振興協会強化についてどう考えておられるか、長官にお伺いしたいと思います。
  22. 莊清

    荘政府委員 振興計画承認実績はいままでたしか四十件でございます。一件が自動車の部品関係でございます。あと造船関係下請と相なっております。あと電気機械関係等数件のものにつきまして、現在指導を行なっておりまして、まとまり次第承認申請に至るように目下指導中でございます。  実績が非常に低いではないかという点は、私どもも非常に遺憾に存じておる点でございます。今後一そう指導に努力する心算でございますが、しいて理由考えてみますと、一つには本法施行後約二年半でございますが、その間が非常に経済の激動期にございまして、なかなか先行きの発注見通しを親が立てにくいという事情があったことが一つ言えるかと存じますが、やはり経済の変動が予想されるだけに、また、下請企業としては、こういう長期の発注見通しというものをある程度持ちませんと経営ができないという点があるわけでございますので、これはあまりほんとう理由にはならないと私ども反省しております。今後もっと実績があがりますように指導につとめたいと思います。  それから下請振興協会でございますが、数が昨年度末で十九でございました。今年度で二十六まで設置が進む予定でございます。これに対します補助金助成額も増加をいたしております。特に今後私どもが力を入れなければならないと思っておる点でございますけれども、これは一つには、公益的な下請あっせんということができなければほんとう効果があがりにくいという点でございますので、公益的な事業活動助成、そのための人員の増強等一つ重点を置きたいと思います。  もう一点は、協会に置かれております苦情処理委員会に対して、これも国と県で経費の助成をしておりますが、下請代金等に対する苦情の問題についての調停、あっせん業務というのは、下請代金支払遅延等防止法の円滑な施行をはかっていくという意味からも、非常に協会は重大な使命を今後負ってもらいたい、そういう方向協会というものを私どもは評価をし、役に立つ協会に育て上げたい。このあたり重点に私どもは努力したいと考えております。
  23. 近江巳記夫

    近江委員 こういういろいろな制度をお考えになって、非常にいいと思うんですよ。いいけれども、いま長官が反省しておられたように、なかなかそういうふうに進まないということについてはさらに反省をしていただいて、長官いま決意を述べられたわけでありますので、さらにこうした拡充強化につとめていただきたいと思うのです。  それから中小企業投資育成株式会社法関係ですけれども通産大臣承認を受けないで新株を引き受ける場合の新株発行後のその株式会社の資本の額の限度を一億円以下から三億円以下に引き上げる理由はどういうことですか。
  24. 莊清

    荘政府委員 投資育成会社法施行いたしました後におきまして、東京大阪名古屋等におきます株式の上場基準価額というのが相当引き上げられたわけでございます。現在東京大阪が最低三億円、名古屋で二億円というふうな水準に上がったわけでございます。そこで一億円までというふうな考え方ではとうてい実態に合わなくなってまいりました。はっきり申しまして、投資育成会社法というのはやはり上場を一応の中心的な目標にしております。まあかなり中堅規模以上の中小企業をより育成強化するというのが目的でございますけれども、今後はやはり三億円程度までは当然にこれをできるというふうな形に改めませんと実態にそぐわないであろう、こういう判断から、今回の定義改定の一環といたしましてこの法律改正も御審議願うことにいたした次第でございます。
  25. 近江巳記夫

    近江委員 次に、中小企業海外投資促進を今後はどのようにやっていくのですか。
  26. 莊清

    荘政府委員 現在まで約四百件強の海外投資中小企業によって行なわれております。単独のものもございますし、商社等との協調の形もございます。ただ、今後の海外進出につきましては、先ほど御答弁申し上げましたように、やはり国際化の中での中小企業というものを考えますときに、なるべく相手国への経済協力趣旨にも沿うような形での中小企業進出というものを、国も積極的に助成をすることが必要であると考えております。このために、四十八年度からは、御案内のように金額はまあ四億円程度でございますけれども、新しく予算通産省に計上いたしまして、海外貿易開発協会を通じまして無利子の融資を行なって助成するという制度が発足したわけでございます。一般的には会議所等を通じまして中小企業海外のこういう投資計画についての相談でございますとか、調査であるというふうな事業を行なわせておりまして、これに対しての補助も従前からございますが、やはり投融資のための相当長期低利の融資の原資を今後大幅に拡充するということと、海外進出のための指導機関に対します助成を一そう強化するということが予算上の措置の眼目になろうかと思います。  同時に、やはり相手国であるLDC諸国経済がだんだん伸びておる国もございまして、導入業種のウエートのつけ方とか、あるいは進出した企業について国内での一定の部品の調達なり効用なりについて注文をつける、要望をするという政策が次第に行なわれつつありますので、そういう外国側の事情も公の立場で国がよく調べて、的確な情報を中小企業に即時流していく、指導もする。場合によっては相手国政府との折衝も必要になりましょう。こういう形での助成というものを幅広く行なっていく努力が必要であろうと考えておりまして、中小企業庁といたしましても、従来この面の行政はどちらかといえばまだ手薄でございます。今後この方面にも、わが庁といたしましても十分体制も整えて努力もいたしたいと考えております。
  27. 近江巳記夫

    近江委員 それから非常におくれておる対策として、事業転換の対策というものが非常におくれておると思うのです。こういう点は中小企業庁がもっと真剣に取っ組んでいかないといけないのではないか。非常にもたもたしておるように思うのです。これについてどういうように長官考えていますか。
  28. 莊清

    荘政府委員 事業転換というのは中小企業自体相当積極的な意欲を燃やし、努力をする段階に入ってきておるわけでございますが、やはり国として今後重点を置くべきだと考えられる点は、的確な指導を行なうという点と、それから事業転換を実際に行なう中小企業に対しての金融、税制上の助成措置を格段に整備強化する、この二点であろうと存じます。  第一点につきましては、やはり今後は知識集約化方向での転換ということが主眼でございまするので、通産省といたしましては、目下各審議会等におきまして今後の産業の知識集約化方向づけについて業種別にもいろいろ検討に入っております。中小企業分野につきましても、中小企業近代化審議会の場もございますので、私どもは、今後そういう場も活用しながら業種別の問題についてもひとつビジョンを出すというふうな努力をし、これに基づいて的確な前向きの指導を行ない得る基礎を固めたいと考えております。  第二の財政金融措置につきましては、御案内のように事業団を通じます設備廃棄の無利子融資等もございまするし、あるいは中小公庫なり国民公庫を通ずる個別の企業に対する融資もございますが、いずれもまだ私どもはその融資率なり期間なり金利なりについての一そうの改善が必要であると考えておりまして、今後この問題につきましては、当面の問題として輸出産地の転換という大きな問題も控えておりまするので、現在行なっております輸出産地の転換計画の調査が終わり次第、この問題をひとつ契機にいたしまして、制度改善という点について財政当局と折衝をいたして実現をいたしたい、かように考えております。
  29. 近江巳記夫

    近江委員 この中小企業者定義につきまして、アメリカの場合はよりこまかい業種ごとに定めておるわけですが、わが国としてはこういうアメリカの考え方等についてはどう思いますか。
  30. 莊清

    荘政府委員 アメリカでは、私もあまり詳細には実は存じないのでございますが、たとえば製造工業について言うと、一応二百五十人でございましたか、それ以下は全部中小企業、それからあと、それをこえて千人までの従業員範囲内で、これは数十と申しますか数百と申しますか、非常に細分された業種ごとに、これは四百人、これは八百人、これは六百人というふうに政府の告示できめておるようでございます。その告示が印刷物でも数ページにわたっておるというふうな複雑さでございまして、わが国とはおよそ様子が違っておるようでございます。  この点につきましては今回の中小企業政策審議会でも議論のあったところでございますけれども、アメリカの中小企業政策は日本のように予算、財投、税制、法律というふうにいろいろあるというのと違いまして、非常に大ざっぱな制度であるのと、官公需の関係が独禁法の関係もあって相当アメリカ政府では従来から力を入れてきておるというふうな歴史もあるようでありまして、したがって、業種別といいますか、商品別に相当きめこまかく研究してやっておるという特殊事情が実はあるのじゃないかと判断されるわけでございます。  わが国の場合には、いろいろな施策がございまして、施策相互のやはり一体的な、有機的な関連というものもございますので、これはやはり実際の施策運用にあたって明確であり単純明快であるというふうな基準が行政上最も望ましいということで、ひとつ格差の指標という意味から全業種を通じまして資本金なり従業員で簡単にきめまして、どうしても必要がある場合には政令でまた特例を開いていく、こういうたてまえを従来からとっております。今回も審議会でいろいろ議論がございましたが、たてまえとしては従来のたてまえでやっていくのがわが国実情に最も適しておるだろうというふうな一応の結論になりましたので、今回はそこまでいっておらないわけでございます。  ただ、この問題につきましては、外国の事情もいろいろ今後とも引き続き調査をし、勉強をいたしたいと考えております。
  31. 近江巳記夫

    近江委員 時間がありませんからもう終わりたいと思いますが、いま非常に週休二日制ということがいわれておるわけですが、中小企業における週休二日制の実施については、政府としてはどう考えておるか、その考え方についてお伺いしたいと思います。
  32. 莊清

    荘政府委員 ことしの一月末の閣議決定で、雇用対策基本計画というものが定められておりますが、その中に、政府一体としての考え方が明快に示されております。  それは、かいつまんで申しますと、中小企業についてもやはり人間尊重社会への適応という意味で、こういう点での努力ということは当然に必要であるけれども中小企業の場合には産業実情に応じ段階的に推進すべきである、特に中小企業については早急に実施することは困難と考えられるので、今後五年間の計画期間というものが定められたわけでございますが、その期間中には完全な週休二日制のほか、たとえば隔週または月一回の週休二日制なども含めて、何らかの形の週休二日制が一般化することを目標に、政府としても指導を行なう、同時にやはり中小企業では格差がございますので、企業としても成り立っていく、こういうことができるように生産性の向上がはかれるように今後一そう中小企業施策拡充をはかるべきである、かような決定がなされております。この点につきましては、今後の中小企業政策を推進する上でも非常に大きな問題になってまいると思いまするので、指導はもちろんのことでございまするが、特にこれが企業が受けとめられるようにする前提条件の整備、これに私どもは政策面で十分配慮いたしたいと考える次第でございます。
  33. 近江巳記夫

    近江委員 最後に、大臣にお伺いいたしますが、このように今回のそういう改正に伴いましてますます政府としても中小企業に力を入れていこうとなさると思うのですけれども、いつも答弁では一生懸命やるということをおっしゃっておるわけですが、予算面等で見ますと、全体の総予算の中で占める中小企業対策費のパーセントというものはいつも変わらぬわけです。こういうことであっては、幾ら施策があったとしても名前だけである、中身がなかなか実情に伴わないということを脱し切れないと思うのです。そういう点で、八月はいろいろまた政府としても予算の骨格にもかかられるし、また年末にはほぼ決定になるわけでありますけれども、少なくとも中曽根大臣がおられる以上は、中小企業のそういう予算獲得についても、いよいよ八月が近いわけでありますし、大幅に今後は獲得してもらう必要があると思うのです。そういう点、今後の大臣のそういう決意をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  34. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いま随時御質問いただきましたように、各般の法制があるわけでございますが、必ずしもうまく機能している状態にないのははなはだ遺憾でございます。本年度の予算につきましても大いに努力したのでございますが、経営改善資金のほうにかなりワクをとられまして、そのために期待どおり十分にほかのワクをとることはできなかったことをはなはだ残念に思います。来年度の予算編成にあたりましては、この八月の概算要求のときから、その点については大いに改善して努力していきたいと思っております。
  35. 近江巳記夫

    近江委員 終わります。
  36. 稻村佐近四郎

    ○稻村(左)委員長代理 午後一時五十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時三分休憩      ————◇—————     午後一時五十七分開議
  37. 浦野幸男

    浦野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。玉置一徳君。
  38. 玉置一徳

    ○玉置委員 中小企業者範囲改定等のための中小企業基本法等の一部を改正する法律案につきまして若干の質問をいたしたいと思います。  まず、五千万円を一億円に、それから人数はそのままでありましょうけれども、時代の変転に伴いまして、資本金を一億円に改めることのほうがより実態にそぐうという意味でこの法案をお出しになったことはよくわかりますが、全般的に零細な中小企業と申しますが、零細企業に対してあたたかい金融その他の措置がうまくいっているかどうかということを心配するわけでありますので、その意味におきまして、中小企業の資本金別、それから従業員等によりましての規模別企業数のパーセンテージがわかりましたら、それが全体に占める割合がどの程度あるのかということをひとつ当局のほうからお教えをいただきたいと思います。
  39. 莊清

    荘政府委員 お答えいたします。  製造業について申し上げますと、中小企業というものが九九%以上占めておるわけでございますが、その中小企業の総数が七十四万一千二百、約七十四万ございます。その中で、いわゆる個人、これが四十七万五千九百九十一となっております。この個人は、当然のことでございますが、従業員数が非常に少ないわけでございます。それから、法人が二十六万五千あるわけでございますが、資本金五千万円をこえます法人中小企業は六千二百程度でございます。したがいまして、ほとんどの中小企業は、資本金が現在ではまだ五千万円以下のものが多いわけでございますけれども、五千万以下であったものが、その後の増資等によって順次ここへ上がってきておるというものがあるわけでございます。  そこで、規模をわかりやすく申し上げますために、個人、法人を通じまして、従業員規模別の構成比で申し上げたいと存じます。個人、法人を通じまして従業員数が五十人以下の製造業が九六%でございます。五十人から百人までが二・二%、それから百人−三百人が一・三%、三百人をこえておりますのが〇・五%と相なっております。これをもちましても、零細な製造業が多い。九六%は五十人以下の従業員ということでございます。  それから、今回定義改定対象になっております卸売業について申し上げます。中小の卸売業は全部で約二十九万ございます。正確に申し上げますと、二十八万九千四百七十でございますが、そのうち個人は十三万六千四百二ということで、半分を若干下回っているものがやはり個人でございます。製造業よりは個人は少のうございます。それから、法人はこの差額でございまして、十五万三千六十八と相なっております。卸売業は、業態から申しましてやはり法人形態をとっておるものが比較的多いのでございますが、やはり個人が相当ある。特に資本金規模別で見ましても一千万から三千万というところ、それから三千万円超というものを合計いたしますと約一万八千くらいございます。資本金規模でも製造業の場合よりは比較的大きいものが卸業ではございます。ただし、これをまたわかりよくするために従業員数で、個人、法人を通じて構成比を申しますと、卸売であっても五人以下の従業員のものが約六四%でございます。それから、それ以上五十人までの従業員というものが三三・五%ございまして、五十人以上のものというのは二%強ということに相なっております。  次に、小売業について申し上げます。小売業は百八十八万ございますが、ほとんどが個人でございまして、百六十八万四千四百七十八というものが個人になっておりまして、これはほとんどが五人以下でございます。それから法人でございますが、これは十九万七千ということで、百八十八万に対しましてせいぜい一割強というところでございますが、一千万円未満のものがほとんどでございます。従業員数で申し上げますと、当然のことでございますが、五人以下の零細なものの占める比率は非常に高いのでございまして、五人以下が八八・一%、それから五十人までが一一・七%で、ほとんど全体である。百人をこえる小売業というのはほとんどないということが申し上げられると思います。  以上でございます。
  40. 玉置一徳

    ○玉置委員 ついでにお伺いしたいのですが、中小企業金融の中核である政府三機関のいままでの貸し出し実績でございますが、資本金別でもけっこうですし、従業員規模別でもけっこうですか、どの階層がどの程度借りておるか、利用しておるかということがわかりましたらひとつ御報告をいただきたい。
  41. 莊清

    荘政府委員 まず国民金融公庫について申し上げますが、資料の関係で従業員規模別に申し上げます。五人未満の事業者に対します貸し出しの金額でございまするが、四〇・一%でございます。それから十人未満でとってみますと七〇・一%に相なります。ですから六人から十人まではこの差額の約三割ということでございます。それから五十人未満というところでとってみますると九八・六%でございますので、ほとんどすべての資金を五十人未満、とりわけ十人程度以下の人に運用しておるということが明瞭でございます。  次に、中小企業金融公庫でございます。これは長期の設備資金を融資いたしますので、若干趣を異にしておりますが、やはり運用上留意いたしておりまして、三十人以下で切ってみますると、金額で四三・四%でございます。百人まで上げて切ってみますと七九・三%、約八割でございます。それから三百人まで上げて切ってみますると九七・一%ということになっておりまして、百人以下の製造業を中心に中小公庫も融資しておるということが御了承いただけるかと存じます。  それから商工中金でございまするけれども、これはちょっと資料が不備でございまして、現在統計がございません。調べるといたしますれば、これは組合金融でございまするので、融資しておる先の組合の構成メンバーがどうなっておるかということを悉皆調査をして分類してみるということに相なりまするが、これは後日私ども作業につとめまして、あらためて御報告させていただきたいと存じます。
  42. 玉置一徳

    ○玉置委員 以上規模別の問題と、それから金融機関のこれに対する貸し出しの実績をお示しいただいたのでありますが、なお一般市中金融機関等を考えますと、同じような方向よりは若干違った傾向を示しておるのじゃないかと考えられます。こういう点から考えまして、時代に即応して中小企業定義ワクというものを五千万から一億円にすることは非常に望ましいことだと思うのですが、依然として零細な中小企業、零細企業が非常にたくさんある。これに対する近代化資金等のこれからより一そうの充実が望ましいんじゃないだろうかということが考えられますので、特段にこの点を御注意いただきまして、ある意味では、そういうものに特別の金利等の配慮を将来考えていただかなければならぬじゃないだろうかというような感じすらいたすものであります。いまお話を聞きますと、国民金融公庫はその性格上特にそうでありますが、中小企業金融公庫等も、それなりに零細規模の諸君にも十分貸しておるように思いまするけれども、統計と実態とまた若干様相の違うことも考えなければならないんじゃないかというようなことも考えられますし、特段に今後とも御注意をいただきまして、零細企業の金融につきまして同時にひとつ十分の御配慮をいただきたいということを希望しておきたいと思います。  そこで次に参りたいのですが、物価問題に端を発しまして、金融の引き締めというものが数次にわたりまして行なわれております。つまり公定歩合の引き上げは三回やられました。日銀の準備預金の引き上げが二回だったと思います。そのほかにも特別な業態を指定して二回ほど行なわれておりますが、これは必ずしもこの政策だけでやれるというような感じはいたしませんけれども、それにしても、このことも必要でございますので、そこで問題は、金融の引き締めをいたしますから、今度は金融機関の貸し出しの引き締めも勢い強まってこざるを得ないと思うのですが、それにつきまして中小企業に不当にしわ寄せが来ないかどうかということを前からこれはどなたも心配しておいでになるところであります。三機関の貸し出し実績及び申し込み件数のでき得れば対前年比というようなものをもしもお調べがございましたら御説明をいただきたいと思うのです。
  43. 莊清

    荘政府委員 金額ベースで三機関に対します借り入れ申し込みの対前年比の数字を申し上げたいと存じます。  三機関合計で、これは五月の数字でございますが、五二・二%の申し込み額の増加と相なっております。ただし、これにはドル対策融資も含めておりますので、昨年五月には実はドル対策融資は終わっておりまして、ことしだけ入っておりますので、そこを調整いたしますと三〇・四%伸びております。ことしの三機関に対します年度当初の予算策定時の財投貸し出し計画の伸びは約二〇%でございました。例年よりは上げておったのでございますが、今後もこういう趨勢が続くといたしますと、明らかに相当申し込みがワクに対して多いということになる趨勢が見受けられる状況になってきております。
  44. 玉置一徳

    ○玉置委員 それは五月のものですが、その前後も大体そういう傾向にあると見てよろしいか。
  45. 莊清

    荘政府委員 ことしの一、二月はさほどのことはございませんが、大体四月ごろから上がってきておるということでございまして、六月の数字はまだでございますが、当然これ、ないしこれより上の数字になっておる可能性が大きいと判断しております。
  46. 玉置一徳

    ○玉置委員 そこで、いまもお話がございましたが、ついでにドル対の緊急融資でございますが、二千二百億円だったと思いますが、それの申し込みと貸し出しの実績を一緒に御説明をしていただきたいのです。
  47. 莊清

    荘政府委員 ドル対策の緊急融資は、六月末までの実績で申し上げますと、申し込みが二万七千六十六件でございます。これに対しまして貸し出し実行済み額は、六月末で一万七千六百三十五件、金額で千四百二十九億円でございます。したがいまして、二千二百億のワクに対しましては約千四百億円でございますから、まだ相当額残っておりますが、すでに申し込みが貸し出し済み件数よりも一万件多いという状況でございまして、その後、これの審査を急ぎまして実行いたしておりますので、近い将来、この二千二百億のワク全部消化をする、こういう状況になろうかと存じます。
  48. 玉置一徳

    ○玉置委員 そこでただいま御説明をいただきました金融引き締めによります中小企業への不当なしわ寄せ——不当か何か知りませんが、しわ寄せ、それからドル対の融資の不足というものについて何らかの措置を講ずるおつもりがあるかどうか、大臣から御答弁をいただきたいのです。
  49. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 中小企業に対する金融につきましては、このドル・ショック以来鋭意力を入れておりまして、二千二百億円の緊急融資を三機関を通じて行ないました。自来傾向を見ておりますと、需要はございますけれども、それほど飛び上がった強い需要が特に起きているという情勢ではございません。しかし、最近に至ってようやく輸出入の情勢がきびしくなって、物価問題、資材問題等もありまして、倒産件数が少しふえてくる気配があるものですから、特に注意をいたしまして、融資については万全を期して、もしそのワクで足りない場合には、先に消化してよろしい、十二月のほうはわれわれのほうはさらにワクを取る、そういうことも言わしております。
  50. 玉置一徳

    ○玉置委員 もしもワクが不足するような場合は、十二月に当然追加のワクをこしらえなければいかぬから、その意味で若干先食いをしてもよろしい、こういう意味だと思いますが、それでよろしゅうございますね。  大臣に先に帰っていただく意味で、公取を飛ばしまして、この中小企業基本法の一部改正等に関連いたしまして、官公需中小企業に振り向けろということが、どのように実際行なわれておるのか、かなりの実績をあげておるかどうか、当局からひとつその実態を御説明いただきたいのです。
  51. 莊清

    荘政府委員 官公需金額は、予算規模拡大に伴いまして、当然に国、公社、公団ともふえてきておるわけでございます。  数字を若干申し上げますと、四十一年度は官公需総額が一兆八千八百五十億円、うち中小企業向け実績が四千八百九十一億円ということに相なっておったのでございます。四十六年度は、官公需の総額は全体で三兆四千五百八十億円でございます。これに対しまして中小企業向け実績は九千百八十一億円でございまして、二六・五%が中小企業向けという実績でございます。四十一年度の実績では二五・九%ということになっておりますので、若干比率は上がってはおりますが、ほぼ横ばいの状態と言えるかと存じます。  それで、四十七年度の官公需につきましては、目標といたしまして一兆一千億円、官公需総額に対しまして二六・八%というのが昨年の八月に閣議で定められておりまして、現在までその方針運用してまいったわけでございます。実績につきましてはまだ各省からの資料がそろっておりませんが、今後とも予算が相当ふえますので、当然増もございますけれども、やはり工事でございますとか、物品の調達等につきまして各省できめこまかく配慮していただきまして、官公需総額の伸びも相当あるけれども、その中で中小企業向けの分を従来以上にふやすように、いまことしの四十八年度の官公需予算についての作業を進めておるところでございます。
  52. 玉置一徳

    ○玉置委員 この法案に関連いたします投資育成会社の実績をお尋ねしたいのです。と申しますのは、私、投資育成会社というのは一体どういうことをやっているのだと思って、七、八年前でしたか、大阪の投資育成会社に実際に教えてもらいに参りました。そのときに事業そのものは通産省の直接やるほどの仕事かどうかと思って行ったのですが、ただ責任者のあまりにも熱意のあるお仕事ぶりに感心をいたしまして、実際の勉強に実はならなかったような感じもしたくらい一生懸命におやりいただいておりました。その後、こういうものが一体法律が所望しておるような域に実績があがっていっておるかどうか、ついでに御答弁をいただきたいと思うのです。
  53. 莊清

    荘政府委員 三十八年度発足以来ちょうど十年でございますが、その間の株式に対する新規投資が件数で三百七十四件、金額にいたしまして百十一億三千三百万円でございます。それから転換社債の取得は二百二十四件、五十九億五千百万円でございます。合計いたしまして件数で六百十八件の百七十一億三千四百万円となっております。このほか、すでに投資をしました企業への再投資というのが当然あるわけでございます。これが累計で二百九件、二十六億円に相なっております。以上の両方を合計したものが総実績になります。件数は総累計八百二十七件、百九十七億三千六百万円というのが従来の実績に相なっております。
  54. 玉置一徳

    ○玉置委員 大臣御多用ですからお帰りいただきましてけっこうでございます。  公取委員会に御質問を申し上げたいのですが、下請代金支払遅延等防止法運用でございますが、どのような調べ方をしておいでになるのか。統計として出てきておるのはどうであって、それは実態としてどういう調べ方をしておいでになるか。その調べ方と、現在そういうものが不当に行なわれておる件数等の実態とその調べ方、それをお教えいただきたいのです。
  55. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 下請法に基づきます支払い遅延等の調査の方法でございますが、これは大体毎年定期調査というものと、特別調査というものを親事業者に対して行なっております。そのほかに、下請事業者に対しても特別調査を実施しておる。まず第一には、定期調査におきましては書面による調査をやって、疑わしいものについては、これは検査対象といたしまして立ち入り検査等を行なっております。立ち入り検査の結果、違反がはっきりいたしますと、これは、法律上の勧告を行ない、違反軽微なものは、行政指導によって支払い遅延を是正させるというやり方をいたしております。  調査の施行状況でございますが、この下請法の運用は公取と中小企業庁で協力をいたしまして協同でやっておるわけでございますが、昭和四十七年度におきまして、公取では八千七百五十一の親事業所に対して書面調査をいたしまして、そのうち勧告をしたものが四十一、それから行政指導によって支払い遅延等を是正させたものが四百八十五、合計五百二十六に対して措置をとっておるわけでございます。
  56. 玉置一徳

    ○玉置委員 書面によりますということは、歩積み、両建てでも同じでありますけれども、親企業と下請の企業に対しまして手紙を郵送して、それで返事をもらっておいでになる、それは支払いの遅延はございませんかとか、そういうことなのか、何月何日現在のどういうような支払い状況になっておるかということですか、どちらでございましょうか。
  57. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 それは支払いの遅延はございませんかということではなくて、具体的に数字を出させまして、支払い状況を具体的に調べているわけでございます。
  58. 玉置一徳

    ○玉置委員 私たちが歩積み、両建て等で中小企業事業場で聞きますのと、皆さんから御報告を受けるのとでは若干数字が合点がいかないような感じのするものもありますので、ひとつ今後とも全般に詳しくということはできぬだろうと思いますけれども、毎年一つの摘出するものをつくって、実態調査も無差別にやっていただくようなものも、人員等の関係もありまして無理は言えませんけれども、ひとつそういうお調べをいただいておるのか、実態に合っているかどうかということもお考えいただければありがたいと思うのです。よろしくお願いしたいと思います。  そこで、これは同僚議員から質問があったと思いますが、ありましたら返事は非常に簡単でけっこうですが、今回の下請代金法の改正に際しまして五千万円以上と一億円との間が親と子になることがあり得るわけであります。五千万円をこえて一億円以下の親事業に対して一千万円をこえて五千万円以下の下請企業ができますときに、どのような形で今後行政指導なり何かなさるのか、この点お伺いしておきたいと思います。
  59. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 お答えいたします。  今回下請事業者範囲が五千万円以下から一億円ということに引き上げられました結果、従来保護を受けておりました五千万円以下の下請事業で五千万円超一億円以下の親からの下請の保護者がなくなるじゃないかというおそれがございます。それにつきましては、もう前にもお答えをいたしましたけれども、一体どれくらいのものがしわ寄せを受けるのか、実態調査をいたしました。それは資本金一千万円超五千万円以下の事業者のうちで下請取引を行なっているもの六百五十三社につきまして、昭和四十七年十二月末の時点で調査をしましたところ、資本金一億円超の事業者との下請取引の比重が著しく重い、つまり一億円以上から下請を委託されている、製造委託、修理委託をされているものの数が大部分である。と申しますのは、いま申しました五千万円以下の事業者について調べた結果では、資本金一億円超の事業者とだけ下請取引をしている者が三百二十四社、資本金五千万円超一億円以下の事業者とだけ取引をしている者というのが二十二社でございます。以上申し上げました双方の事業者下請取引をしている者は三百七社でございますけれども、その下請依存度と申しますものは資本金一億円超に対しては五七%、資本金五千万円超一億円以下に対しましては、一六%という数字でございまして、五千万円超一億円以下のものにつきましての比重が非常に少ないということでございます。ただ、少ないからといって抜けるというのは非常に問題でございますが、この点につきまして、その抜けたところにつきまして不公正取引、いわゆる優越した地位の乱用行為があれば、これは独禁法の一般指定十号によって規制していくということでカバーできるというふうに考えております。
  60. 玉置一徳

    ○玉置委員 それから中小企業の問題に関係しますから、くどいようですが、お聞きしておきたいのです。  先日も同僚議員からたびたび質問のありました百貨店の派遣店員のことで極力努力しますというお話でしたが、その間に百貨店の各社から、自主的に五年計画でこういうふうにいたしますとか、いろいろ出てまいりました。公取の権威ということばは非常におかしいのでございますけれども、やはり公取はすぐどうしろということもできないと思いますけれども、何らかの目標をこしら身て、行政指導すべきじゃないだろうかという感じがします。公取は、質問はじゃんじゃん出る、努力いたしますということはしょっちゅう繰り返しておる。その間にひとりでに自主的なものが出ていく。けっこうなことかもわかりませんけれども、やはり何らかの措置が要るのじゃないだろうか。  なお先般もお話があり、新聞にも載っておりましたけれども、きょうまでいろいろな意味で、公取の存在を軽んじられるような現象が起こっております。それにつきましては、今後は厳重にやりますというようなこともおっしゃっておったように承るわけでありますが、いまの百貨店の派遣店員の問題とあわせまして、従来のものをどのような形で取り組んでいくのだということを、できますればはっきり意思表明をいただければと思います。
  61. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 お答え申し上げます。  百貨店の派遣店員の問題につきましては、この前に実情を申し上げたわけでありますが、昭和二十九年に百貨店の特殊指定ができましてから、原則として手伝い店員は不公正な取引方法として規制されております。それから自来手伝い店員の実情を再三調査いたしまして、業界の自主的な改善努力を促してきたわけでありますが、なお問題がございます。そういうわけで、四十五年の十一月に、百貨店業者に対して、改善しろということを強く警告をしたわけでございますが、それから以後三回にわたりまして、各百貨店業者から改善計画書を提出さして、改善方を指導してまいりました。しかし、まだこれで問題が解消したということは言えませんので、公取としては今後さらに百貨店に対して強力に改善指導をいたしまして、その違法な手伝い店員は廃止させるという方向で、一段の努力を払ってまいりたいと考えているわけであります。
  62. 玉置一徳

    ○玉置委員 この間もそういうお答えをいただいたのですが、二五%でしたか、何か前年度比一%ほど下がっておったような統計をいただいたように思います。だから、違法なものが横ばいであるということは言えると思うのです。人数はふえておるでしょうから、しかもこれは平均でありまして、あの新聞報道を見ておりますと、やはり自粛してやろうと思うところはやっておるというようなところを見ますと、やらないところは、あるパーセンテージよりもはるかに多いパーセンテージのものがあると思います。その中には、やはり不公平があるのじゃないだろうか。積極的に自主的にああいうふうにやろうという姿勢がわき出ているときにあわせて、ある程度若干の時間をかけてあげておやりなすったほうが一その中で、ほかがやらないのに、やるものだけが損するというようなことにならないような空気をいま醸成することのほうが大事じゃないか。だからひとつ、違法なものですから、努力をいたしますということばかり、いつまでも言うておるのじゃなしに、この機会をはずしては、できにくいと思う、こういう意味で、もう少し前向きにお取り組みなすったほうがいいのじゃないだろうかということを言うておるのですが、いかがですか。
  63. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 確かにおっしゃるとおりでございまして、いま抜本的な改善策というものを考えております。これはいつまでもいままでのようなやり方を続けていっては、根本的な解決には遠いんじゃなかろうかということで、この機会は非常にいい機会でございますので、これは至急そういう改善策を立ててまいりたいというふうに思います。
  64. 玉置一徳

    ○玉置委員 それはそれで了といたしまして、この間からの物価問題につきまして、前向きに取り組みたいのだというような意思表示が違う形で出ておったと思うのです。つまり協定の、再三勧告したにかかわらず、そのことが違った形で行なわれておるものが往々にしてある。いままでは勧告のしっぱなしということばではなかったけれども、いわばそういう形であったけれども、今後は摘発をして起訴するぞ、起訴するというのですか何というのですか、立件するというのかわかりませんけれども、そういう取り組み方にやっていきたい、なお、物価問題にプラスすると思われるものは、いままでは、ある意味では慎重にかまえておったけれども、これからは積極的に取り組んでいきたい、こういうような新聞発表があったように思いますが、一体、どういうことを、どのようにお考えになっているかを最後にお伺いして、質問をやめたいと思います。
  65. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 それは、この前、委員長が記者会見で申し上げたことでございますが、たとえば違法な価格協定というものが、それが違反であるという審決を受けながら、どうも再三再四繰り返されてきている、こういう場合に、また審決を出してそういう協定を破棄しろというだけではきわめて手ぬるいのじゃないか。だから、委員長の申されましたのは、短い期間内に再三再四、三回とか四回以上繰り返されるというようなものに対しては告発も考えていくべきじゃなかろうか。さらに、その協定破棄だけではなくて、破棄さしたあとの事後のフォローを十分にやっていく。つまりどういう価格でその後売っているかということを報告さす、つまり事後監査を強化していきたいというようなことを申し上げたと思いますが、大体そういう方針でもって公取としては進むということにいたしておるわけでございます。
  66. 玉置一徳

    ○玉置委員 物価担当としては専門の物価調査官等ができたわけでございますので、またそのうらはらとして公取が十分しかも迅速に果敢に活動していただくことが、あわせて物価問題に大きな効果を発揮するのじゃないか、こういう感じもしますので、今後ともほんとうに前向きと申しますか、積極果敢な活動をお願いして、質問を終わりたいと思います。
  67. 浦野幸男

    浦野委員長 松尾信人君。
  68. 松尾信人

    ○松尾委員 いま質問が重ねられたようでありましたけれども、投資育成会社に関しまして二、三お尋ねしたいと思います。  これは非常に素朴な質問でありますけれども中小企業投資育成株式会社法、このような法律を設けて、そして東京名古屋大阪へその投資会社をつくった。三十八年にスタートしたわけでありますけれども、その目的、これをまず伺いたいと思います。
  69. 莊清

    荘政府委員 基本法制定と同時に、投資育成会社法施行されたわけでございますが、その目的は、中小企業の健全な成長発展をはかるという基本法の目的と全く同様の目的を持っておるわけでございまして、そのためにいろいろな施策が必要でございますが、投資育成会社は、その施策の中でいわゆる自己資本の充実をはかるという側面を担当して、こういう特別の会社をつくろう、政府資金的な助成を行ない、これを通じて自己資本の充実を助成させよう、こういうことが目的でございます。
  70. 松尾信人

    ○松尾委員 それで、いろいろ投資の実績も累計で百七十一億幾らと出ておるわけでありますけれども、利用できない業種——これは業種が政令指定になっておりますね。そういう指定された業種に対して投資をして助成していくわけでありますけれども、この資本金というものは大体どのくらいの会社に投資されておるわけですか。平均的にでもけっこうであります。代表的なものをおっしゃってもけっこうです。
  71. 莊清

    荘政府委員 投資育成会社が投資を始めます際の相手方の中小企業規模というのは、いままでの実績ではたしか三千三百万程度という層を対象に取り上げて育てていくというふうなことに相なっております。
  72. 松尾信人

    ○松尾委員 中小企業は五千万以下でありますから、その限度内における会社への投資でありましょう。三千三百万、これは大体中堅企業どころをねらいにしておるというふうに感じられるわけであります。また、これが上場していく、相手をそこまで発展させていくというねらいが上場にあるということでありますけれども、これは間違いありませんか。
  73. 莊清

    荘政府委員 主たる目的は仰せのとおりでございます。ただ、今回では、従来の一億ということでは、東京大阪名古屋上場はもうできませんので、現在の上場基準である三億まで訂正をさせていただきたいという意味の改正案を提出いたしております。
  74. 松尾信人

    ○松尾委員 すると、基本法改正限度が今度は五千万から一億になるわけですね。そういうところに関連して、またいろいろこの法を変えていきたいというような意向はあるわけですね。そこは了といたしましょう。ところで、そのように投資をして育成をしてきた会社が、こちらの期待といいますか、そのように上場をしていくのだ、そこまで伸ばしていきたいというような期待に沿って投資後の会社の経営というものが向上しておるかどうかですね。その推移というものはどのようにたどっておるかということでありますけれども、これの大体の傾向ですね。これは特別のものは言われないで、総体的な傾向をおっしゃってもらいたい。十年間の傾向ですか、経緯、そういうものです。
  75. 莊清

    荘政府委員 投資育成会社を十年やってまいりましたが、その間、再投資等も行ないまして徐々に増資の実をあげてきておる例が非常に多いわけでございます。一億円をすでにこえた資本金になっておる投資先がすでに六十八件ございます。まだ上場になったのが一件もないという点は問題でございますけれども、今回の法律改正は三億円までは当然やれるということになりまするし、それをこえましても、主務大臣承認を受けまして五億、六億ということが可能に相なりまするので、近い将来次第に上場ということに踏み切る考えでございます。  それから、どういう成果をおさめてきたかということに関連いたしまして、いままで五件でございますけれども上場には至りませんけれども、当該企業もそれを望み、当該企業に対する金融機関とか取引先もそれを望んでおるという場合には、ケース・バイ・ケースに実態をよく調査いたしまして、上場ではございませんが、つまり関連企業への、取引先への株の売却といいますか、投資育成会社は一応目的を達したので、関係の民間のほうにそれを肩がわりしていくというふうなこともあわせて行なう方針に実は切りかえております。これは実は従たる考え方でございます。五件程度実績がございます。それで、機械関係とか金属関係あるいは繊維関係というふうなものが投資先のおもな業種の分野でございますけれども、投資先企業の自己努力ももちろんございますし、それから投資育成会社の経営指導というものも実は相当やっておるわけでございます。  それから、増資効果も出まして、増資をしたことによって金融もつきやすくなったということ、いろいろな総合的な効果でございまするが、現在投資先企業、これは転換社債を含めまして五百七の中で一割以上の配当をやっておるというものが七割くらいございます。ということは、相当数の企業が良好な安定した経営を目下得るに至っておるという大体の目安として御了承いただけるのじゃないか、かように考えております。
  76. 松尾信人

    ○松尾委員 大体の傾向はわかるわけでありますけれども、もうどうもこうもならぬというようなものも出てきておるのじゃないかと心配するわけでありますが、そういう事例はないか。  それから、すでに資本金が三億をこえるようになったのもあろうかと聞いておるわけでありますけれども、そういうことがあるかどうか。あるとすれば、そういうものが当初の目的である上場ができないというのには何かそこにわけがあるのか。  以上の三点でありますけれども、いかがでしょう。
  77. 原山義史

    原山政府委員 お答えいたします。  投資育成を進めました結果、現在二部上場の基準である三億円をこえる会社は九社ございます。このうちいろいろ投資育成、今後上場に適するかどうかという審査をいたしまして、近く本年内には上場できるものが出てくるのじゃないかというふうに思っておるところでございます。  なお、これまで投資先について非常に成績が悪くて倒産したというものはないかというふうなお尋ねが第二点だったかと思いますが、遺憾ながら投資先における倒産等による評価損を数えるものが四社ばかりございます。金額にいたしますと五千万円程度の評価損を計上した次第でございます。  これまで相当時間がたってまだ上場ができていないというのは制度に問題があるのではないかというふうな御指摘が第三点だったかと存じますが、一つは、法律制定時より上場基準が引き上げられてきたというふうなことでございまして、非常に小さい金額から三億まで持っていくのには非常にたいへんな時間がかかる。一般の二部上場になった会社等の一千万円から三億になった経過を見てまいりましても、大体十年以上かかっているというふうなことから考えましても、資本金をそう大きくしていくのはむずかしいというふうな点はあろうかと思いますが、今後もコンサルティング等を充実しまして、育成に努力さしてまいりたいというふうに思っているところでございます。
  78. 松尾信人

    ○松尾委員 最近の投資会社の投資実績でありますけれども、四十六年−四十七年度は四十四年−四十五年度に比べて大幅に落ちていますね。ダウンしている。特に東京の育成会社のほうは、四十七年度の当初の計画は十二億円、これに対しまして、実績が五億三千万円と、半分そこそこだという不振でありますが、これはどういうわけですか。特に東京だけでけっこうであります。
  79. 莊清

    荘政府委員 東京について特段の特殊事情がそれほどあるわけではございませんが、三社を通じまして、やはり四十七年という年はドル・ショック後の年でもございます。四十六年は不況であったわけでございまして、設備投資もどうしても四十六−七年を通じて中小企業では停滞がちになったということが一つの大きな事情でございます。四十七年の後半では未曽有の金融緩和ということもございまして、増資よりも借り入れというふうな形も採算上一時少し有利になりましたものですから、拍車がかかったかと存じますが、基本的には経済の大きなうねりが影響したというふうに考えております。  東京の場合には、ほかの名古屋大阪と、これは程度の差の問題でございますが、特に設備投資の落ち込みの大きかった重化学関係というものに対する投資需要が従来からも多うございます。  それから投資先の実績でもさようになっておりますので、そういう傾向がやや顕著に出たということかと存じます。業務の運営等につきましては三社とも懸命な努力をいたしておりますし、私どもも今後投資育成会社の機能の強化拡充、充実ということには従来以上に努力する方針でございます。
  80. 松尾信人

    ○松尾委員 この会社をつくっていこうというのは十年前の発想ですから、中堅企業を大企業のほうに仲間入りさしてやろうというようなねらいが基本的だろうと思うのです。これは上を向く型、上方指向型、その政策の一つですね。でありますから、それはそれなりに意義がありますけれども、このようにいろいろ中小企業が非常に大きな環境の変化にいまさらされておるわけでありますが、これを上ではなくて横型、中小企業そのものを発展または育成、助長していこうというような投資の形態も考えられていいんじゃないか、このように思うのです。上へ向けての助成のための投資育成、これはそれなりに意義がありますけれども、やはり横へ中小企業としてはできにくい、力の弱い部門、たとえばこちらからいえば知識集約化のいろいろの分野があります。そういう分野を開拓してやろう、また中小企業独特の専門の公害防除の設備が非常に不十分でございまして、中小企業からの公害というものがなかなかなくならぬ、そういう中小企業専門の公害防除施設を育成強化していこう、ぼくのほうからそういうことを言ったわけでありますけれども、何か横型に、そして中小企業全体が環境整備し、そしてともどもに、消費者とともに発展していく方向というものをさがされまして、そして思い切ったそのような投資育成の施策を講ずるような考えはないのかどうか。これは長官答えられたあとに、また大臣もよくよくそこを聞いておられまして、お考えを聞いていきたいと思います。
  81. 莊清

    荘政府委員 御質問の御趣旨を取り違えておりましたならば再度答弁をさせていただきます。  投資育成ということから、基本的にはどうしても上場目標にするということに相なりますので、最初スタートするときにあまりに零細な中小企業というものでは、増資に伴う負担ということもございますし、小ぢんまり経営をしておる、基礎固めをして次第にほんとうのスタート台についていくという間の非常に小さな企業法人は、またこういう機関からの投資ということが必ずしもなじまない場合もございます。そこである程度規模に達してきた中小企業がどうしても対象になりますが、その際に、先ほどから申しましたように、いまの投資の先でございますけれども、これからの日本の中小企業の中心になって、付加価値の高い、生産性の高いものをねらっていくという業種としての電子関係でございますとか、あるいは精密な機械の部品であるとか、こういうところは相当な設備投資も要る。この設備投資の原資というものは、借り入れも必要でございますが、やはり借り入れ型では不健全でございますから、自己資本の充実をはかる必要がある、こういうところにつきましては、一つははっきり政策的な意図をもちまして投資育成会社を指導し、育成会社も長い目で見ればそういうところに最もウエートを置いてやってきたということは事実でございます。  今後もいろいろな産業分野でそういうものがほかにもあるわけでございますので、今後の中小企業がそちらの方向重点を置きながら発展していくのが望ましいといったような分野への誘導も含めまして、こういう投資制度というものの運用をやっていく。あまりそれに片寄り過ぎますとまた問題が生じてくると私は思います。いろいろな分野で必要なものがあるわけでございますが、たとえば政策的に四つなら四つ、五つなら五つとしぼってしまうというふうなことはあまり適当ではないと私は思いますけれども、ある程度重点を置きながらの運用ということは今後も十分研究をいたしたいと思います。
  82. 松尾信人

    ○松尾委員 大臣のお答えになる前に申し上げるわけでありますけれども、いまのお答えでは、いまの法律を変えなくてはいかぬようになるかもしれませんね。心配があります。ですから情報指向型というものを今度横に水平型というようなかっこうもできるのだ、そしてそこにいろいろ中小企業関係の施策として開拓していく分野があるのだ、そこも投資の対象にしていくのだというように幅広くいまの法律の運営でできればけっこうであります。もしもいまの法律のたてまえをそのことによってこわすということになりますと、法律改正するか別途のそのような育成会社をつくるかということになるわけでありますけれども、別途もなかなかたいへんだとすれば、簡単にどこか触れたらこの情報指向型だけでなくて横にもそれがどんどんいけるんだというようなことが考えられておりますか。できますか。いかがでしょう。
  83. 原山義史

    原山政府委員 お答えいたします。  投資育成会社のねらいは、先ほども長官から申しましたように、資本金を充実しまして将来上場のところまで持っていくというのが本来のねらいであったわけでございますが、いろいろの経済情勢等を考えまして必ずしも上場一本やりというのはやはり問題であろうというふうな点等、最近の事情を考慮いたしまして、できれば今後、上場というかっこうでなくて、安定株主を増やしていけば結果的には自己資本の充実というふうなかっこうになるわけでございますので、今後会社が保有する株式を金融機関とか取引先等に処分するといういわゆる繰り上げ卒業方式を認めるというふうなかっこうで運用することも考えてみたいというふうに思っておりますが、現在までこの方式で五件の処分を行なっておるところでございます。
  84. 松尾信人

    ○松尾委員 いかにしてもそのような方向を定着させるようにやっていただきたいと思うのであります。  それから、これは飛びますが、投資育成会社と日本合同ファイナンスの間の相互の業務提携の問題でありますけれども、このような動きがありますか。
  85. 原山義史

    原山政府委員 お答えいたします。  日本合同ファイナンス株式会社は本年四月に野村証券が中心となって設立したいわゆるベンチャーキャピタルの一種だというふうに存じておりますが、同社設立時に東京投資育成会社に対して、同社から今後相互に協力をしまして連絡を密にして中小企業の自己資本の充実に当たりたい旨、非公式に接触があったということは事実であると聞いております。ただ、両者の間に業務提携を結ぶとか、業務提携契約を結んで相互に実際上の業務上の連絡を行なってやるというふうなことは全く聞いておらないところでございます。
  86. 松尾信人

    ○松尾委員 そうすると、そのような話が出ておるんだけれども、だとすれば何を目的とし、どういう理由でそのような話が持ち上がっているわけですか。
  87. 原山義史

    原山政府委員 私のほうで東京投資育成会社のほうに聞き合わしてみましたところ、この日本合同ファイナンスもやはり中小企業の投資を充実していく、いわゆるベンチャーキャピタルの一種だというふうに私、先ほど申し上げましたが、そういうかっこうでの会社である。東京投資育成会社ももちろん中小企業の自己資本の充実によって将来上場するところまで育てていきたいという使命を持った会社である、そういうところで両社でよく情報を交換して勉強し合おうじゃないかというふうな程度の話であったと聞いております。
  88. 松尾信人

    ○松尾委員 お互いに情報を交換して、そして投資した会を育成していくということであれば何も問題にする必要はありません。何といっても法律に基づく投資育成会社でありますから、いわば半官半民、まあ官というものが非常に強いのですね。政府の出資もあるわけでありますね。片や純然たる民間企業。そういう会社が純然たる民間のそのような企業というものと、目的は一緒であっても、それが業務提携、また投資をともにしていくというようなかっこうになりますとまずい点が起こるのじゃないかということを心配してこのようなことを聞いておるわけであります。今後のあなたのほうの指導方針はどのようにこれを確立してやっていかれますか。
  89. 原山義史

    原山政府委員 先ほど申し上げましたように、両社が中小企業の自己資本の充実をはかるために相互に連絡を緊密にしていくということ自体は必ずしも否定すべき問題だとは思わないことでございますが、投資育成会社自体、先生おっしゃいましたように半ば公的機関でございまして、中立性がなければいかぬ。一方、聞くところによりますと、合同ファイナンスは野村証券という特定の証券会社の系列に属するところだというふうに聞いておりますので、相互に連絡、交換するという範囲でならけっこうでございますが、業務提携をし、相互に仕事を分け合うとか、あるいはその提携に基づきまして、会社を引き受けたあとこちらへ回すとか、そういうふうなことを提携上やっていくということは、中立性の点で非常に問題だというふうに思っておりますので、さようなことがあれば厳重に監視してまいりたい。いま全くそういう点はない、事実無根だというふうに私ども聞いておりますが、もしそういうことがあれば厳重に監視してまいりたいというふうに思っておるところでございます。
  90. 松尾信人

    ○松尾委員 妙なつながりがあってはいけませんね。でありますから、この東京なら東京の投資育成会社、その株主が野村証券であるというつながりは全然ありませんか。
  91. 原山義史

    原山政府委員 東京投資育成会社の株主に多くの証券会社が入っていることは確かでございますが、特定の証券会社が特に多く株を持っておるというふうな点はございません。
  92. 松尾信人

    ○松尾委員 大臣にお答え願いたいのでありますけれども、昨日の私の質問に対しまして長官からお答えがあったのでありますが、それはいまの中小企業金融の借り入れ残高の問題であります。総額は四十五兆円とお聞きしたわけでありますが、その中で政府の三機関が一〇%貸し付けておる。それから民間の中小企業専門の金融機関、相互銀行なり信用金庫、そういうものが三五%貸し付けておる。四十五兆円のその残りの五五%は都市銀行であり地方銀行が貸しておるわけですね。中小企業専門機関という相互銀行なり信用金庫、それが三五%あるわけでありますけれども政府が力を入れておる政策金融としての三機関がわずか一〇%にすぎないという答えであったわけであります。ですから、この点は非常に力を入れてしっかりがんばるというようなお答えでありましたけれども、これはよくよくしっかり財投問題等をやっていきませんとふえないのじゃないか。そういう一つ資金ワクという点から零細な中小企業の方々がなかなか金が借りがたい。現実には非常に改善されておりますけれども、なかなかむずかしい点が多々あります。製造業で申しますれば、事業所数で中小企業が九九・五%を占めておる。卸、小売が九九・三%を占めておる。サービス業では九八・九%を占めておる。それから従業員規模でありますけれども、製造業では中小企業が八百六十七万の従業員がおる。卸、小売については八百六十二万人の従業員がいらっしゃる。サービス業では三百六十六万人いらっしゃる。全中小企業で二千七百二万人の従業員がいらっしゃるわけです。そういう人々に対する零細な金融というものは、やはりこれは都市銀行とか地方銀行ではいけない、何としても政策金融といたしまして、国民金融公庫を中心にがっちり守っていかなくちゃ相ならぬ、このように思いますが、総額に対するわずか一〇%、そのくらいしか政府の三機関で占めておるにすぎない。中小零細企業に力を入れていくとおっしゃいますけれども、そういう面からいけば、これはあまり力を入れていないんじゃないかという証拠があるわけであります。この点を最後に大臣から聞いて私は質問を終わりたいと思います。
  93. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私も同感に思います。そういう政策金融をつくった趣旨は、中小企業、特に零細企業に対する国の援助を増大させるという趣旨でございます。  ただ、聞いてみますと、中小企業の中でもわりあいに大きいほうあるいは中くらいのほうは、地方銀行やら相互銀行のチャンスが多いようでありまして、その比率は非常に大きいようであります。零細になると政府関係機関にたよる率が大きくなってきまして、特に国民金融公庫等はほとんど協調融資でなくして単独で融資しておる。そのほかに信用保険の制度もございます。そういうことで、零細のものは国民金融公庫を中心にしてわりあいに密度が濃くなっておるということでございます。  それにいたしましても、いまの一〇%という比率は非常に貧弱な比率であると思いますので、今後とも資金量をふやしまして御期待にこたえるようにいたしたいと思います。
  94. 松尾信人

    ○松尾委員 以上で終わります。
  95. 浦野幸男

    浦野委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  96. 浦野幸男

    浦野委員長 速記を始めて。  中村重光君。
  97. 中村重光

    ○中村(重)委員 出席が非常に悪いようですので、もっと委員の出席に委員長の特段の配慮をひとつ要請いたします。  法案に入ります前に通産大臣にお尋ねをいたしますが、昨日、一昨日の二日間、日米の経済合同会議が持たれたわけでありますが、今回の会議は、伝えられたように通商政策の第二ラウンドの問題が中心であったと思うわけであります。また、流通産業の一〇〇%資本の自由化という問題が小売業の自由化という形になってまいりますので、中小企業に及ぼす影響というものも非常に大きいわけであります。いろいろな問題が議論されたようでありますし、なかんずく通商問題が中心であっただけに通産大臣の舞台がほとんど中心ではなかったか、新聞もそのように伝えているようであります。したがいまして、大臣から詳しく昨日並びに一昨日の会議の模様、今後それが日本の経済に、通商政策あるいは通貨政策にどのような影響を及ぼしてくるのか、首脳会議に備えての経済合同会議でもあったわけでありますから、今後の非常に重要な問題点が私は今回の会議にあったと思うわけでありますので、それらの点について通産大臣からひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  98. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日米経済閣僚会議は月曜日と火曜日の二日間にわたって行なわれました。主要な議題は日米間の通貨、通商問題、エネルギー問題等を中心にして議論が展開されました。  今回は、前回までのいろいろの例と比べてみますと、日米間の貿易バランスがかなり改善をされ、また資本の自由化一〇〇%という政策が打ち出されており、特にコンピューター、ICの自由化の問題も当方が踏み切ったものでございますから、アメリカ側はこれを非常に高く評価いたしまして、従来のようなとげとげしい感じは非常に薄らいで、わりあいになごやかな雰囲気に終始したということであります。私は今度初めて出たものですから、いままでのことは知りませんが、いままで出た人の話ではそういうことでございました。  先方は、しかしこの貿易バランスの傾向がこれで定着したかどうか、また、疑わしいところがあるという態度をまだ持しておりまして、引き続き貿易のアンバランスの解消のために、また自由化の継続的な努力のために日本側の努力を要請いたしました。  私は、大体最近一月−六月間の貿易の趨勢を見るというと、いままで大体二十五億ドルくらいの対米黒字になるという見通しであったけれども、ことによると二十億ドル前後あるいはそれを切るかもしれぬという情勢に数字はなってきておる、この傾向は定着したものと考える、もちろんわれわれは引き続いてこの貿易アンバランスの解消に向かっては努力をしておることでもあるし、さらに関税の引き下げ等についても各共通で今度はさらに前進させたい、そういう要望を述べまして、この問題に対するわがほうの見解を表明し、また引き続き私たちが貿易のアンバランス解消に努力していくという誠意を示したのであります。しかし他面、一面におきましてアメリカ側が今回突如として農産品について日本に対する供給打ち切り、ストップという措置をとったことは非常に心外であって、このために日本側はどれくらい迷惑を受けたか知れぬ、いままで、昨年以来アメリカ側は日本に対して農産物を買ってくれ買ってくれと貿易の会議があればそのことを要請してきて、昨年はわが国においては五億ドルくらい思い切って食糧、飼料をさらにプラスして買ったはずである、本年もその趣旨に沿っていろいろそういう努力をしようとしておったところ、突如手のひらを返すようにそういうような態度に出るということは、アメリカの将来の貿易政策が重大変換をしたのかということを疑わせるような状態でもあるので、こういうことは厳に慎んでもらいたい、そして一応打ち切りとかストップした大豆その他についてはできるだけ早期にこれを解除して日本側に供給してもらいたい、そういうことを強く要請したところでございます。  なお、ガットの問題その他とも関係いたしましてアメリカ側は新拡大通商法を国会で通そうとしておるようだけれども、その中でわれわれが一番注目しておるのはガットの精神による自由無差別ということがそのまま実行されるかどうかということである、特に新通商法において課徴金問題とか輸入割り当てとか、あるいはことによると輸出制限とか、そういうようなことで、ある国に対して、無差別に行なうという原理が失われて差別主義がとられるというようなことになると、これは非常に大きな影響を国民感情の上にももたらすことになる、こういう問題については新通商法運用上大いに注意してもらいたいと申しました。  それからもう一つはセーフガードの問題でございます。このセーフガードの問題は、加藤委員か一番御熱心な繊維問題とも関係しているところでございまして、この問題については、加藤委員やあるいは関係業界の意見も十分聴取してありまして、この点も強く言ったところであります。  私は、四原則を掲げまして、セーフガードについて主権国家の名前において恣意的にこれを発動するというようなことは厳にやめなければいけない、客観的な基準がまずなければならない、それからセーフガードは国際的に承認された客観的な基準によってそれが発動されて、それでそれが数カ国による国際的なフォーラムが承認されなければならない、そういう客観的オーソリティーを持った第三機関による判定、そういうようなことを重要視して、一国が専断をもって行なわない、そういう点を非常に強く私たち主張いたしまして、セーフガードの問題という問題はこれからガットにかけて、また繊維交渉にかけて一番重要な問題になってくるというので、この際われわれの意見を申し上げておくといって四原則を強く主張しておきました。  それから南北問題等もございまして、私といたしましては、最近の変動相場制への移行に伴って南のほうからの苦情が非常にふえておる、つまり切り上げによって日本の品物、ドイツの品物が非常に割り高になる、そしてドルに依存しておる南方の品物が安くたたかれる、またいろいろ借款やその他をしている場合のマルクや円に対する償還の金額が高まってくる、その分だけ割り高になる、そういう点において南の発展途上国からわれわれに対して非常な不満が開陳されておる、アメリカもこれを考えなければいけない、変動相場制ということになると、大体固定相場制という考え基本にあって、一%とかあるいは〇・七%とかということも可能であるかもしれない、変動相場制ということになれば、これはプラスマイナス・ゼロになるということが頭の中にあるものでありますから、したがって基礎的収支を海外援助まで含めてその上でゼロにするという構想でないとこの変動相場制下における南に対する援助というものは成り立たない、従来は固定相場制のもとに行なわれておったそういうような関係から、このままほっておくと南北の格差はますます激しくなる危険性がある、そしてそれを救済すべからざる状態が出てくる危険性がある、したがって南北問題という現下の最も大きな問題を処理する上においても、アメリカは非常に大きな責任を持っておる、それはドルを安定させることである、長期的に安定させて、そしてこの南北問題の乖離をさらに防ぐような積極的努力をすることを私たちはアメリカに特に要請したい、これは日本とアメリカとの関係に関係するのみならず、これからの問題である南北問題というものを考えた上での先進工業国家としての日本の良心から発することばである、そういうことも強く言いました。  これに対して先方のボルカー次官は、非常に当惑したような顔をしておりまして、アメリカのドルが安くなればそれだけそれに依存しておった諸国の輸出が増進されるというところもまた少しありますというようなことで、理屈に合わぬような理屈で返事をしておりましたが、ともかくこれは非常に胸にこたえたと思うのであります。  それからエネルギー問題につきましては、私は、消費国同盟に入らないということを言ったけれども、それは現在の国際情勢からすれば消費国同盟というようなことは対立と挑発的にとられる危険性がある、私は中近東に行った際に、対立的あるいは挑発的ととられるような危険性のある消費国同盟というものであれば日本は入る意思はないということを言ってきた、いまでもそういう考えであるということを明言いたしまして、石油問題、エネルギー問題については、産油国が産油をふやしていくという方向に政策的に環境づくりをすることは先進国にとって大事なことであって、それは工業による協力であるとか、そのほか諸般の政策でそういう環境づくりをわれわれ日米両国はともにやらなければいかぬ、そういう意味において、日米両先進国がエネルギー問題という共通の大問題を控えて国際協調を中心にしてこの問題を前進さしていくように私たちは要望したい、そういうことを強く言いました。  ロジャーズ国務長官は、挑発的だととられるいわゆる消費国同盟的構想に対しては非常に警戒的で、われわれは産油国と対立する意思は毛頭ない、また対決とか挑発というような意思は毛頭ない、中曽根さんと全く同感であって、国際協調を中心にしてこの問題を解決しなければならぬとわれわれは確信しておるというようなことを繰り返しまして、ともかく産油国と対決することなくという前置詞をいつもつけて話をしておったような状態で、私らが中近東へ言ってきたことばは、ある意味においては先方にかなりの認識を深めさせた効果があったのではないか、こういうように思いました。  それと同時に、シベリア開発の問題、それから濃縮ウランの共同工場の問題、それから日米間における資源、エネルギー問題に関する専門家の協議の問題等について具体的にある程度話しまして、そういう問題については、前向きに相協調してやっていこう、シベリア開発については私から特にアメリカの参加をわれわれは強く希望する、あれだけの大きなプロジェクトというものはアメリカ、日本、ソ連、三国の協調によって進めるということが将来とも望ましいと思うと言って、アメリカの参加を強く要望しておいた次第でございます。  以上が概要でございます。
  99. 中村重光

    ○中村(重)委員 いまのお答えにさらに突っ込んでお尋ねをしたいわけでありますが、時間の関係もありますし、法律案の中身についてお尋ねをしてまいりたいと思います。また、いまのお答えに対しましては後日機会を見ましてお尋ねをいたしたい、かように思います。  端的にお伺いをいたしますが、中小企業基本法の一部を改正して中小企業範囲拡大するということでありますが、中小企業範囲拡大するということは、経済規模拡大であるとか経済構造の変化という点から理解できないわけでもありません。しかし、範囲拡大するということが現行法におけるところの中小企業にいろいろな形においての影響を及ぼすということも、これまた軽視できないわけであります。そこで、中小企業庁自体として、現行法を改めなければならない、範囲拡大しなければならないという積極的な理由をどこに求めておられるのかという点であります。具体的な点から、私は範囲拡大という方向へ進もうとされておると思いますが、その点について考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  100. 莊清

    荘政府委員 今回の定義改定は、いまお話がございましたが、基本法制定後十年間におきます経済成長のもとで貨幣価値の変動も当然ございましたし、また当然に自己資本の充実ということもあったわけでございまして、十年前の五千万円というだけでは、これはかえって実質中小企業であるものも中小企業施策対象からこぼれ落ちていくということが避けられないと判断をしたことが基本でございます。この点につきましては、実は四十四年の中小企業政策審議会の中間答申がございまするが、その際にも、審議会の場では相当検討がされましたが、答申の時期までにまとまりませんで、引き続き検討するということが定められた経緯もございます。それ以降も、中小企業の業界のほうからも重ね重ねこの定義改定についての強い要望がございましたし、当委員会においても、この問題について慎重な検討をすべきであるという御決定があったわけでございます。私どもは、慎重な検討を、昨年八月に提出されました中政審の答申にあたりまして、審議会のほうに御審議をお願いいたしました。いろいろなデータに基づきまして、中小企業施策対象とする中小企業規模というものは、従業員規模、資本金規模においてどういう水準であることが今日最も妥当であろうかという点について、学識者の御意見も伺いまして、数字に基づいていろいろ検討いたしました。その結果、中政審の答申におきましても、一つの線が出てまいったわけでございます。私どもはその線を尊重いたしまして、今回の法律案を実は作成をしたわけでございまして、積極的な理由と申しますものは、中小企業と一口に言いましても、その間に経済全体の伸びの中で、同様の格差を持ちながらも、やはり全体としては規模が大きくなってきておる、しかし、十年前とほぼ似たような格差は依然として持っておる、こういうことでございますので、その中小企業の限界というものは、今日時点においてはどういう資本金であるのがいいかという、こういう見地から検討したのでございます。つまり、一言で申し上げますと、いわば調整でございまして、実質的には大企業とみなされるものの一部を積極的にここへ取り込んでいこうという、そういうふうな見地からの修正、改定ということでは考えられぬ、基本において全然違うわけでございまして、そういうことはごうも考えていないわけでございます。
  101. 中村重光

    ○中村(重)委員 本法案に対しましては、中小企業庁も相当力こぶを入れて、中小企業庁としては、重要法案であるというような考え方の上に立っておられる。答弁に立たれるところの政府委員にいたしましても、部長まで含めて四名ですか、五名ぐらいの政府委員を用意しておられる。私どもも、決してこの法律案が簡単な法律案であるとは考えていない。しかし、いま長官のお答えを伺いましても、中小企業定義を改めなければならないという積極的な理由、説得力のある答弁ということにはならないのではないかと私は思うのです。範囲拡大をしなければ、中小企業政策を展開をしていく上において、どのような障害がどの程度起きるのかということが問題点であろう、こう思うわけです。中小企業政策審議会の中間報告といったような点についても、いまお触れになったわけでありますが、十年前と現在と貨幣価値というものも違ってきておる。それらの点等から考えてみますと、中小企業の資本というものも非常に大きくなったということから考えてみますと、いまのお答えもわからないではない。しかし、より私どもが関心を持ちますものは、そのことが現行法のもとにおける中小企業にどのような影響を及ぼすのか、これは全事業所の中の九九・三%でありますか、それだけの事業所でありますだけに、私どもは、この範囲拡大をしなければ、全事業所の中の九九・三%程度中小企業に対する政策を進めていくということについての障害になるとは考えない。中小企業政策を展開していく上について障害になるからこの法律を改めなければならないという形になって出てくるのでなければ説得力はないというふうに私は考えるわけであります。したがいまして、聞きたいところは、その点に対してどうなのかということであります。
  102. 莊清

    荘政府委員 御質問に対しましては、むしろある程度具体的に例を引いて御答弁申し上げたほうが適切かと存じますので、一応そういう角度から御答弁さしていただきます。  今回、製造業のほかに卸売業というものを特に区分いたしまして定義を定めたという点が一つの点でございまするが、従来は、小売と卸と一本で実はきめてまいったわけでございます。その後、流通革命と申しますか、中小の卸売事業についてもいろいろ困難な問題が出てまいりまして、大商社といわれるような国内の大手卸と比べまして地方の中小卸等が重要な任務を帯びながらも相当体質を改善しなければならないという必要に迫られてまいりました。中小企業振興事業団からの高度化資金の融資を行ないまして、八十ばかりの卸団地を造成中でございますけれども、これもそれに即した施策でございます。その場合に、従来の定義でございますと、従業員が五十人、資本金では一千万、このどちらにも該当しない、そのいずれをも若干こえておるというものが地方の卸にもかなりございます。これらもその扱い物品ごとに詳細に見ますると、メーカーは巨大であり、それを一次卸で扱っておる大手商社というものはきわめて巨大であり、地方の卸は、やはりそれらと比べれば中小でございます。ところが私どもは、中小企業に該当しないということで、現に造成中の団地につきましても、そういう事業者に対する分は事業団高度化融資からすべて減額いたしまして、融資をつけておらないわけでございます。こういう点につきましても、やはり小売と卸とは本来違うものでございますので、卸は卸なりに考えまして、適当な規模での定義考えられるならばこれを設けるということが必要であると考えざるを得なかったわけでございます。工業につきましては、従来から従業員が三百人という規模がございまして、それに見合うものとして五千万の資本があったわけでございますが、この十年間、やはりわが国経済成長の中で相当産業全体で自己資本の充実も進み、それから大規模な投資も行なわれて資本装備率も上がってまいりました。中小企業もその方向にあったわけでございまするが、大企業ももちろんその方向で大いにやっておりまするので、大手と中小企業と比べました場合における生産性格差、賃金格差というふうなものは十年前と実はあまり変わっておらないのでございます。若干の改善はございまするけれども基本法の前文に出ておりますのは、第一条に出ておる、何がゆえに中小企業施策に国が力を入れなければならないかという点に注目した意味での施策対象とすべき中小企業範囲というものを考える場合におけるその格差の問題一つとりましても、資本金が相当ふえてきても、やはり昔と事情が、平たく言えば、あまり変わらないというふうなことがある、こうわれわれは考えたわけでございます。労働集約的な事業従業員が三百人をこえておりますると、どうしても設備投資するために資本金を若干ふやさなければいけないということで、六千万円にしたいときにも五千万円でどうしてもちゅうちょせざるを得ないというふうな事情などがあるわけでございまして、こういう点はやはり調整をしなければならない不都合な面がどうしても出てきておる、こういうふうに判断したわけでございます。
  103. 中村重光

    ○中村(重)委員 問題は、中小企業政策の展開というものは量的な拡大だけではどうにもならぬということです。これを質的、量的に拡充強化をはかっていくということでなければいけないのではないか。ただいまのお答えの面から、量的にはある程度理解できる点があります。しかし、四十八年度の中小企業政策——いま白書もお出しになっていらっしゃるわけでありますが、それらの点にも若干目を通してみたわけでございますが、それよりも、私どもは、いま政府が今国会において提案をなさったところの予算あるいは財投といったようなことが中小企業政策をどのように展開していこうとするのかというバロメーターとして受けとめる以外に実はないわけでございます。したがいまして、量的、質的両面にわたって今後中小企業政策をどう進めていこうとしておられるのか。また、四十八年度の予算の中に、あるいは財政投融資の中に、基本法改正いたしまして中小企業範囲拡大していこうとする考え方の上に立って組まれているわけでありますから、これが反映をしているのであろうと思います。どの点にどのような形でこれが反映をしているのか、それらの点もひとつお聞かせをいただきたいと思うのです。
  104. 莊清

    荘政府委員 定義改定問題について検討するにあたっては、当委員会でもかねて小規模零細企業対策の一そうの充実をはかることが基本的な前提であるという御決議をいただいております。また、中小企業政策審議会の答申にも同様の趣旨のことが明記されておるわけでございます。  そこで、いわゆる施策の上位シフトが起こるのではないかという点に対する配慮でございまするが、具体的に申しますると、一つには中小企業金融の面でございまするが、中小企業公庫の長期の設備資金の融資につきましても、従前から実質的に大企業と考えられるものについては、かりに中小企業定義に該当しておっても、個別に審査の上これを対象からはずすように指導をし、それを厳重に実施しておるところでございます。今回も、定義改定が行なわれましても、この点は十分留意をしてまいる考えでございます。  積極的な面でございまするけれども、御案内のように、小規模零細対策については、いろいろ従来から政府としても施策を講じてきております。予算、財投、税制の各般にわたっていろんな施策を講じてきておりまするが、四十八年度におきましては、金融面におきましても経営改善資金融資制度の創設等につとめたわけでございまするし、税の面におきましても個人事業者に注目いたしまして、長年の懸案でございました個人事業主報酬制度の実施に踏み切るというふうな二つの画期的な措置を中心に予算面でもいろいろ努力をしたわけでございます。  経営指導の問題につきましても、これはこまかくなりまするが、経営指導員の増員その他にいろいろ努力をしたつもりでございます。ただし、これらを通じまして、小規模零細企業のあの膨大な数に対しましてまだきわめて足りないという点が非常に多い点を率直に私どもは反省いたしておりまして、今後も引き続き格段の努力をし、零細企業対策の充実強化に万全を期したいと考えております。  予算の上でございまするが、定義改定に伴って製造業で五百くらいの企業が今度新しく対象になってまいります。卸では三千四百強のものが対象になってくるという問題がございます。これらの問題につきまして、予算面で具体的な積み上げではございませんが、特にこの点への配慮も含めて努力いたしました点は、中小企業振興事業団に対します出資及び財投の強化でございます。団地等につきましても融資の対象になるものが特に卸業に多いわけでございますが、こういう点も考慮いたしまして全体の資金量強化につとめたわけでございます。  それから財投の面になりますると、端的に申しますると、中小三機関の融資ワクの問題でございまするけれども、その中で国民金融公庫は小さな層にしか運用をいたさないことになっておりまするのではずしますと、中小公庫の設備資金が最も問題でございます。これにつきましては実は資金需要が具体的に明確ではございません。法律改正が行なわれましたならば、今後中小公庫への借り入れ申し込みということが当然出てくるかと存じまするけれども、おそらく今年度におきまして実際の資金需要となるものはごくわずかであろうと思います。年内において実際にこれらの企業に貸し出しが実行されるということは、事務の手続の上からいってもちょっと考えられない点でございます。来年に入ってからの融資ということになりまするので、期間的にも非常に無理もございますが、五十億程度のものを上のせした形で中小公庫の財投規模を設定しておるということでございます。もしもこれらのものが五十億以上ということになりますれば、それだけ既存のものに対しての圧迫にもなるわけでございますから、今後資金需要を具体的な申し込みというベースで具体的にとらえまして、その中で取り上げるべきものだけをよりすぐりまして、五十億で足りなければ年末の補正の際に具体的な措置をするという方針で臨んでおるわけでございます。
  105. 中村重光

    ○中村(重)委員 お答えになりましたような個別的な問題についてはあとでお尋ねをいたします。  大臣の見解を伺ってみたいと思いますが、先ほど私が触れましたように、中小企業の政策を今後展開をしていく、経済規模拡大であるとか、あるいは経済構造の変化に対応する措置といたしましては、私は国内政策ではなくて、国際的な視野から考えていかなければいけないのではないか、質的な政策をより強化拡充をしていかなければならない。そうなってまいりますと、この中小企業の国際的分業化ということが必要なのかどうか、必要であるとするならば、これを進めていこうとするお考え方があるのかどうか、また、必要とされる理由はどういったことなのか。それらの点に対して大臣の見解を伺ってみたいと思います。
  106. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 中小企業は元来競争力のない国内的需要を満たし、社会性を多分に持った性格の問題であるだろうと思っております。したがいまして、国際分業になじまない性格を本質的に持っているように思います。しかし、近来日本の経済が次第に成長してくるに伴いまして、中小企業の中でも外国に向く仕事も若干出てきたことは事実であります。そのほか労務問題や資材問題等の観点あるいは公害的観点等から、外国で仕事をやるほうがより適切であると考えられる新しい事態も出てまいりました。そういう事態に備えまして、最近中小企業で東南アジア地方に出ていきたいと希望するもの、あるいは南米や一部アメリカあたりに出ていきたいと希望するものが、商業部面だけでなくて製造工業の部面でも出てまいりました。そういうものにつきましては、通産省としても誘導政策をもちまして、できるだけ便宜をはかってやって、中小企業海外進出する機会をよけいつくるようにしていきたいと思っております。今回も若干のそういう金融措置を講じまして、そういう海外に出ていくという中小企業を適切に助成するように、いろいろ予算的にも措置しておるところでございます。
  107. 中村重光

    ○中村(重)委員 国際的な視野から見る分業化の問題は、大臣がいまお答えになったようなことであろうと私も思います。国内的に考えてみると、大企業が中小企業分野に新規参入をする、そのことが中小企業に対して大きな圧迫になっておるということは、大臣御承知のとおりであります。したがいまして、商社等の活動に対しては、大臣の持論でもあるわけでありますが、この際、大臣の持論を百尺竿頭一歩を進めて、中小企業の分野を確保するという施策を強力に推進する必要があるのではないか。立法措置というものも当然考えていかなければならないと思います。したがいまして、それらの点に対してどのように大臣はお考えになっていらっしゃるのか、また、必要性をお認めになるとするならば、具体的に今後施策の面にどのようにこれを展開していこうとお考えになっていらっしゃるのか、伺ってみたいと思うのであります。
  108. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この問題は、商社問題等が論ぜられました際にも御答弁申し上げましたが、中小企業の分野に、資本力があるもの、あるいは力を持っているものがむやみやたらに侵入してくるということについては、われわれは慎重でなければならぬ、われわれはむしろそういうことを歓迎しない、大企業は大企業の道を行くべきである、そういう考えを持っておるのでございます。自由を乱用してはいけない、そういうこともこの前申し上げましたが、商社やあるいは力のある企業が、ボーリングとか洗たく屋さんとか、そのほか中小企業がいままで固有に確保してきた分野にまで、力にまかせて出てくるということは、われわれは制御しなければいかぬ、そう思っております。これは中小企業基本法あるいはそのほか中小企業団体法等の指示しているところでもあります。これらの問題については、団体法によりまして、紛争が起きた場合、つまり中小企業側から、被害を受けたという場合に提訴して、それを通産大臣が調停し、裁定するという制度ができておるはずでございます。あまりかかった件数はないようでありますけれども、そういう措置すら国としてはやっておるわけであります。したがいまして、商社等その他が力にまかせて、中小企業固有の分野にやたらに出てきて、そしてこれを圧迫するというようなことが起こらないように、私たちは行政指導をもってやると同時に、もし必要ならば、そういうことに、実情を見た上で立法措置も検討してけっこうです、そういうふうに私は御答弁申し上げました。いまでも事態の推移をよく見ながら、もし必要あれば立法措置も辞さない、そういう考えを持っております。
  109. 中村重光

    ○中村(重)委員 大臣お答えのように、中小企業が他の事業から圧迫される、その場合に、これを調整する紛争調整のための、あるいは圧迫から中小企業を守っていくという考え方の上に立った調整法的なものがあることは事実だ。しかし、もう十四、五年もたちますような法律が動いていないということも事実である。そのことはやはり現行法のもとでは、大企業の新規参入、中小企業に対するところの圧迫、これを排除することができないという答えにも実はなるわけです。必要であるならば立法措置を講じようということでございますが、あまりにもこれは古くて新しい問題であるわけです。必要であるならば立法措置を講じなければならぬ、あるいは検討するというような議論のときはもう過ぎておる、商社のあまりにもわがままなと申しましょうか、横暴なやり方、大臣がいつも口にされることでありますが、金さえもうかるならばどんなことでもやってよろしい、目的のためには手段を選ばないということをここでチェックしていかなければいけないのではないか、積極的に私は中小企業事業分野を守る、中小企業の安定をはかっていくという方向に立法措置を講ずるというところに進んでいかなければいけない、こう思いますが、大臣のその点に対しての重ねてのお考え方をお聞かせいただきたい。
  110. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 事態の推移を見まして、その弊害が顕著なような情勢ならば、立法措置も辞さない、そういう考えをもちまして厳重に監視していきたいと思っております。
  111. 中村重光

    ○中村(重)委員 荘長官にお伺いいたしますが、ヨーロッパ諸国に参りましても、中小企業と大企業の労働者の賃金にしてもたいした格差はありません。また所得の面におきましても、私は日本のようなこういう二重構造的な大きな格差というものはないというように受けとめているわけであります。なぜにヨーロッパ諸国において中小企業が安定した経営をやっているのに、日本のように、六十数本というような中小企業に関連をする法律を持っているところのこの国で、中小企業の環境というものが異常なこうした状態にあるのか、なぜに中小企業というものが安定をしないのか、どこに原因があるとお考えになっていらっしゃるのか、それらの点についてひとつ考え方をお示しいただきたいと思います。
  112. 莊清

    荘政府委員 実は、賃金の格差でございますけれども中小企業の中でも上位層につきましては、三十五年の数字と四十五年の数字はわかっておりますが、これを見ますと、百人以上の中小企業の場合には、かなり大企業との格差が縮まってきておるということは申せます。ただ、零細層におきましては、これは生産性の低さということの当然の反映でございますが、大企業に比べましてまだ相当大幅な格差がございます。百人以上の従業員を持った上位の中小企業におきましては、初任給の水準などは大企業と全く格差がないか、むしろ若干高い場合もあるということも耳にするわけでございます。結局、御指摘の問題は、わが国の零細中小企業の場合に最も端的にと申しますか、集中的にあらわれておる特殊事情かと存じますが、やはりヨーロッパ、アメリカ、特にアメリカを見ました場合に、わが国の場合、まだ社会的な非常な流動性というものがいろいろな要因から阻害されている面が欧米よりも相当大きゅうございますから、したがいまして、そういう意味で、中小企業、こういう零細企業というものも、なかなか困難な面に直面せざるを得ないという一般的な事情がございます。  そのほかに、たとえばヨーロッパとの比較でございまするけれども、私もあまりつまびらかではございませんけれども、ヨーロッパの場合には、中小企業といえども相当進んだ技術を持っておる。日本の中小企業でも、下請でも、最近は、技術をもって大企業と相当対等ないしそれ以上の価格交渉もできるというものも若干出てきたようではございまするけれども、これは全く若干でございまして、大部分のものはまだそこまでいかないというふうなそういう差も、これは歴史の差だと存じまするが、そういうものもございまするが、もう一つの見方として、特にドイツあたりでは、手工業的な分野でも、ギルド的なそういう制度あるいは社会的な理解というふうなものが、歴史的にこれは中世からずっとございまして、日本のような場合はそういうものが特にない。こういう差なども、やはり過当競争というふうなことにもつながっていくわけでございまして、わが国の小規模零細企業というものは、いろいろな意味で、ヨーロッパの同じような零細層に比べて困難な立場に置かれておる、こういうことも耳にするわけでございます。     〔委員長退席、稻村(左)委員長代理着席〕 いろいろな要因がありまして、どれがきめ手かということは、私はちょっと申し上げにくいと思うのでございまするけれども、結局、こういう層に対して、それでは日本としてどうやっていくかということになりますれば、結局、生産性の向上を個々の企業でもできるようにするし、また、相協力してやっていくことによって相当効果があがるという面につきましては、そちらの共同化ができるような施策を用意して行政を行なっていく、こういうことを基本にものごとを考えていくということが大切だと存じます。  先ほどお尋ねのございましたような、大企業の不当な事業分野の拡大というふうなことにつきましては、今後行政指導も一段と強化して、十分これは調整を加えていくというふうなことも、もちろんこの問題の解決に大いに関係のある点だろう、かように存ずる次第でございます。
  113. 中村重光

    ○中村(重)委員 いろいろお答えがあったのですが、長官、日本の中小企業というものは、実際の行政面から放置されているということですよ。あまりにも差別が大企業との間にあり過ぎるということです。そうでしょう。金を借りても、中小企業のほうが金利が高いんですよ。税金も、租税特別措置法というものは、中小企業にもこれは該当するのだと言うけれども、中堅的な企業は別としまして、下位の中小企業というものはこれは縁遠いものです。無縁なものなんです。さらに、中小企業に対しては、大企業の系列下にあるということです。あとでお尋ねいたしますが、親企業と下請企業の状態でも、お考えになったらおわかりでしょう。同じ職場で働いているところの下請企業の労働者が、大企業で働いているところの労働者の賃金の三分の一とか五分の一とかいう状態でしょう。これが常識だというようなことがまかり通っておる。政府も、この点に対しては、何も意に介していないということです。いろいろな事業から中小企業は圧迫されている。そして中小企業自体も、過当競争の中にどうにもならないような状態にあるけれども、これも放置されておるということです。これでは日本の中小企業というものが大企業との間の格差というものをなくする道はないではありませんか。これに対して解決の手を差し伸べようとはお考えになっていらっしゃらないのです。何か団地政策等をやって、そして中小企業近代化をはかっていこうとする方向について見ても、実際の運営面はどうか。運営面は、大企業の利益をはかるための団地政策になっているにすぎないではありませんか。具体的な事例をあげろとおっしゃるならば、私はなまなましい具体的な事例をあげて中小企業庁の判断を聞いてみたい、そのようにすら思います。何か法律さえつくればよろしい、あとはどのようにその法律が動いているのか、ほんとう中小企業のためになっているのかどうかということについて、追跡調査すらしようとはしていらっしゃらないではありませんか。やろうとしても人手がない、金がない、これが現実でしょう。私はそうした中小企業政策を展開する上においてのガンともいうべきものを除去しない限り、日本の特異な体質である経済の二重構造、大企業と中小企業の格差というものは解消しないということを申し上げておきたいと思います。  いま一点指摘をし、御見解を伺っておきたいことは、中小企業には若年労働者というものを充足することができないということなんです。たまたま入ってまいりましても、これが定着をしないということです。中小企業の基盤を強化するためには、若年労働者を充足し、これを定着させるという施策が強力に推進されていかなければならないと考えます。基本法改正をおやりになる、このことが、量だけではなくて、質的にも中小企業の政策を強化拡充していこうとお考えになるならば、ただいま私が指摘をいたしましたような問題点こそ大きく取り上げて、これを施策の面に生かしていかなければならないと考えます。それらの点に対して、大臣からは、どうあるべきかということについての考え方中小企業庁からは、私が指摘をいたしましたようなことについて具体的な考え方をお聞かせいただきたいと思います。きょうは、労働省からお見えでございますから、中小企業の若年労働者の充足の問題、定着の問題、中小企業の福祉施策の問題点等についてもお答えをいただきたいと思います。
  114. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 御指摘のように、確かに量的拡大だけで片づく問題でなく、質的充実という面が非常に重要であるということは私も同感でございます。質的充実の面については、御指摘にありました労務関係の福利厚生の面に至るまで充実させなければ、もうとても大企業に対抗できない時代に入りつつあります。これらの諸般の問題につきましては、私たちも、もう一回思いを新たにいたしまして、いろいろな施策を検討してみたいと思います。
  115. 莊清

    荘政府委員 小規模零細中小企業は、これは生産の面でも小売、サービスの面でも非常に数が多く、かつ不可欠な機能を現に持っており、今後もこれが健全に発展するということが、経済の発展のためにも、また日本の社会生活、国民生活の安定とかあるいは福祉のためにも非常に重要であるということは、中小企業政策審議会の答申でもはっきりと述べられておるところでございます。零細であるから補助をするというふうな考え方ではなくて、零細であってもきわめて重要な役割りを果たしていくべき積極的な重要性のあるものであるから、しかもそれらが格差の点で非常な不利をこうむっておるので、その格差是正につとめつつ、それらの事業事業として成り立つように生産性の向上をはかり得るように積極的な助成を行なうということが、私どものこういう零細小規模企業に対します施策基本姿勢でございます。このために、従来から税制、金融等の面につきましても努力してまいっておりまするが、せんだっても御答弁申し上げましたように、中小企業の七五%程度は実はこの層に属するわけでございまして、施策量の点でもまだきわめて足りないと私ども考えております。いま団地の問題について若干御指摘がございましたが、団地の運営等につきましても、私どもは今後さらに一そう指導強化いたしまして、所期の目的を達し得まするように、施策量の充実と並んでその結果等につきましても調査もし、反省もするということをここで先生にはっきり申し上げたいと存じます。  直接的な労働福祉の問題につきましては、いろいろな施策も現にあるわけでございまして、いまから関係省の担当官のほうから御報告申すことになりますが、通産省といたしましても、関係省と今後連絡を一そう密にいたしまして、従業員と経営者とあまり区別のないのが小規模零細層でございますので、経営者も従業員も含めた福祉対策の充実ということに十分意を用いまして今後の施策考えてまいる所存でございます。
  116. 廣政順一

    廣政説明員 労働省におきまして、いま先生御指摘のように中小企業あるいは零細企業におきまして労働力、特に若年労働力をどのように確保するかということが、私どもといたしまして施策の中で一番考えなければならないポイントの一つだと存じます。従業員労働者を企業の中に確保し、そしてそれをどう定着させるかということの基本は、私どもといたしましては、やはり何と申しましても適正な労働条件確保と労働者に対する福祉の向上、この点についての積極的な援助をしていかなければならないものと考えております。  適正な労働条件確保といたしましては、労働基準法あるいは最低賃金法といったような法律の実施につきまして、これをどうしても守っていただくということが基本的な命題だと存じます。と同時に、それ以上に、労働者がこの職場で働きがいを感じていくということについての私ども指導もまた大事だろうと存じまして、その意味におきまして、労務管理改善と申しますか、雇用管理改善と申しますか、そういう点で特に都道府県に対する補助金も出し、その補助金をもとにして都道府県がさらにこれを一つ事業として、中小企業のもろもろの団体、商工会議所にいたしましても、協同組合にいたしましても、あるいは任意団体にいたしましても、そういうところで労務管理改善指導を進めておるところでございまして、その中で最低基準以上の労働条件なりあるいは福祉対策なりという点に意を用いてまいっておるところでございます。通産省におかれます産業政策ともうらはらになりまして、密接な関連を持ちつつ私どもとしては労働省なりにそのような施策を講じてまいっておりますし、今後ともまたそれを充実してまいりたい、このように存じております。
  117. 中村重光

    ○中村(重)委員 中小企業というのは、働く労働者もみずからの創造性を発揮し得る職場なんですよ。そういった面からは中小企業は魅力ある職場です。機械的であるという面が非常に少ないというのです。中小企業で働く労働者は、やはりそこに生きがいというものを感じる。しかし、そうであっても現在のような労働条件の中ではどうにもならぬというのです。生きていくことができないということです。これが現実なんですよ。零細企業の場合におきましては、やめていったって一人立ちをするために必要な退職金というものがないでしょう。現在の中小企業退職金共済制度というものも形だけはある。しかし、これに対しましては、その掛け金をかけた年数によって違うのでありますけれども、五%とかあるいは一〇%という補助金にすぎないでしょう。わずかの退職金です。だから、中小企業に働くすべての勤労者に魅力ある職場とするためには、やはりそれだけ内容を充実させていかなければならないということです。したがって、中小企業退職金共済制度というものを今後どう強化拡充をしていこうとするのかという点と、さらにまた最低賃金制の問題もそうなんです。現在のような最低賃金制のあり方ということでは、これはどうにもなりません。これも改めていかなければならないということです。  さらに、厚生省もお見えでありますが、八木年金保険部長にお尋ねしたいことは、五人未満の零細企業に対しましても社会保険を強制適用しなさい、これは十年一日のごとく要求をしておりますけれども、依然としてこれが改まらない。こういうことでは、若年労働者が中小企業のところで働こうとしても働くことができない。寄らば大樹の陰という形になって、大企業のほうに若年労働者は走ってしまう。私は、これは当然の帰結であると考えます。これを抜本的に改めていかなければならないと考えますから、ただいま私が指摘をいたしましたことについて、それぞれお答えをいただきたいと思います。
  118. 八木哲夫

    ○八木政府委員 お丁答え申し上げます。  先生御指摘の問題は、五人未満事業所に対します被用者保険の強制適用の問題であろうと思うわけでございますが現在国民皆保険、皆年金によりまして、医療保険につきましては一応五人未満事業所におきましても国民健康保険、それから年金におきましては国民年金の適用対象となっているわけでございますが、先生御指摘のように、社会保険審議会なりあるいは国会におきましても、しばしば被用者保険を強制適用すべきであるという御意見をいただいているわけでございまして、私どもは、五人未満事業所の従業員に被用者保険を強制適用するという問題につきましては非常にむずかしい問題が多々あるわけでございますけれども、しかしこの問題につきましてはとうてい放置しておける問題ではないのじゃないかということから、本年度におきましてはこの実態をできるだけ早く調査いたしまして、この問題につきまして前向きに解決いたしたいという方向で取り組んでおる次第でございます。
  119. 廣政順一

    廣政説明員 いま先生御指摘の中小企業退職金共済制度も、これまた中小企業に働く労働者の福祉の向上あるいは労働条件改善の一環として設けられたものでございます。この法律は四十五年に改正されまして、できました三十四年ころと比べますと現在かなりの改善を見ておるわけでございますが、この退職金共済制度につきましては非常に喜ばれておるのではございますけれども内容についてまだ不十分な点があるという御指摘を各方面からいただいております。そういったことの中に、いま先生御指摘の補助金が非常に低いではないかというお話もございます。  退職金共済制度につきましては、実はできましてから五年目ごとにこれを検討し直すということに相なっておりまして、四十五年の法改正もやはりその検討し直した結果に基づきまして国会の御審議をお願いいたした次第でございまして、この五年目の検討にあたりまして、私どもとしては先生のおっしゃいます点も含めて十分検討させていただきたいと存じております。  なお、最低賃金の問題につきましては、私ども四十五年に中央最低賃金審議会からの御答申がございまして、それに基づきまして、ただいま五カ年計画のもとに全労働者に最低賃金が及ぶようにということと、もう一つは、その最低賃金ができる限りアップ・ツー・デートなものであること、有効性保持と申しますか、そういう二つを基本といたしまして、ただいま各都道府県労働基準局におきまして最低賃金を進めておるところでございまして、御承知のとおり、各産業産業によりまして非常に事情が違います。そこで、産業ごとにできるだけたくさんの労働者が、そして同時に、産業別で必ずしもおおいがたい面もございますので、その場合には県全体を通じてという二本立てでやっておるところでございまして、ただいまのところで目標を五年に置いていたしておりますけれども、現時点におきましては、すでに七割見当の労働者が最低賃金のカバーを受けているという現状でございまして、私ども五カ年計画とは申しますが、できる限り早くこれを全労働者に及ぶようにいたしたい、このように行政を進めているところでございます。
  120. 中村重光

    ○中村(重)委員 お答えはたいへん前向きのように聞こえるのだけれども、そのお答えもいつ聞いても同じような答えなんですよ。中身は少しも前進しないですね。退職金の共済制度にいたしましても、御承知のとおり、中小企業事業所数というのは四百六十一万八千六百二十四事業所、従業者の数は二千七百二万六千三百三十八人、これは比率にいたしまして、事業所の数が先ほど申し上げたように九九・三%です。労働者の数は七七・二%でしょう。これに対して共済契約者の数は、四十七年十一月現在で十四万八十一人、それから非共済者の数は百三十四万六千二百四十四人です。話にならぬじゃありませんか。また、最低賃金の問題もお答えは前向きのように聞こえます。しかし、少しもこれも前進しないということです。もっと強力に推進をしていくということでなければならない、お答えのことが実現をしなければならないということなんです。また八木さんは、これもまた前向きのお答えでありましたけれども、この被用者年金の制度に加入をしようということにしましても、むしろこれを妨害する傾向すらあります。具体的な事実を私は指摘できます。きょうは時間の関係がありますから、いずれ具体的な事実をもって、これでもほんとうにやろうとお考えになっていらっしゃるのかということでお尋ねをしてみたいと考えます。  大臣に御見解を伺ってみたいのですが、私は、中小企業に働く労働者の問題について、中小企業庁はあまりにも無関心過ぎると思う。ほんとう中小企業政策を展開していくためには、この労働問題というものはきわめて重要な問題ではないでしょうか。ならば私は、歴代通産大臣はこのことについてもっと関心を持ち、もっと積極的な取り組みをして、厚生大臣、労働大臣とも話し合いをして、中小企業に労働者が定着をするように、若年労働が充足されるように、そういう努力をされる必要があるのじゃないか、そのように考えますが、今後中曽根通産大臣とされてはどのような態度をもって臨もう、この問題を解決をしていこうとお考えになっていらっしゃるのか、お伺いいたします。なお、大臣の答弁が終わりましたらば、労働省、厚生省はお引き取りになってけっこうです。
  121. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 労務問題は、中小企業に対しては最近は致命的な問題になりつつあるように思います。特に大企業との比較におきまして、給与、待遇、厚生施設、退職金、そういう面におきまして格段の差が出つつあります。特に零細企業においてしかりであります。そういう観点から中小企業対策につきましては今後その面にも大きく力を入れまして、労務問題について不安がないようにして中小企業政策を前進させたいと思っております。
  122. 中村重光

    ○中村(重)委員 お尋ねをしたかったのですが、時間の関係もありますので、資料としてお出しをいただきたいのは、新たに対象となる中小企業者の数と資本金です。次に申し上げるのを同時に資料として御提出をいただきます。資本金一千万円超五千万円未満、資本金五千万円超一億円未満、資本金一億円超五億円未満の従業者の数、同上の生産高及び工業生産の伸び、同上の出荷高及び輸出高、同上の売り上げ高の伸び、同上の一人当たり付加価値生産性、同上の設備投資実績計画、同上の自己資本と他人資本の比率、それから賃金の格差、それから資本金五千万円以下の中小企業経済上の問題点、これらの点についての資料の御提出をお願いをしておきます。  次に、お尋ねをいたしますが、新たに対象となる中小企業者の借り入れ金残高は幾らか。
  123. 莊清

    荘政府委員 今回対象としてふえますのが、製造業が約五百七十、卸売業が約三千四百程度でございます。合わせまして四千を若干こえる程度でございます。これらの企業につきまして個別にまだそういう調査が実はまとまっておりません。そういう点は早急に調査をいたしまして、別途御報告させていただきたいと存じます。
  124. 中村重光

    ○中村(重)委員 中小企業の借り入れ金残高というのは、これは統計資料に出ているんですよ。ならば、今度新たに対象とする中小企業の借り入れ残高というものは、私どもがこの法律案審議する上において必要なんです。現行法におけるところの中小企業にどのような影響を及ぼすのかといったことは、この定義拡大することが是か非かということと関連をいたしますから、このことは必要なんです。お答えがなければいけないわけですが、しかし資料としてできるだけ早く御提出をいただきます。同上の中小企業中小企業三機関及び振興事業団等に対する借り入れ依存の予想はどうか、これはお答えができるでしょう。
  125. 莊清

    荘政府委員 これは先ほど御答弁いたしましたが、中小企業金融公庫に対します設備資金の借り入れば、私どもの予想では比較的少額ではないかと存じます。将来のことは必ずしも断言できませんが、現在対象として新たに加わってくる予定の企業は、地方銀行あるいは相互銀行等から現在すべて資金の融資を受けておるわけでございまして、少なくとも今年度につきましては、長期の設備資金でございますだけに金融情勢等もございまして、それぞれ取引先金融機関との連携によりまして手配をしつつある実情でございますので、さしたる資金需要にはならないだろうと私どもは存じます。法律改正後具体的な申請が出てまいりましたならば、その一つ一つについて相当慎重な調査をいたしまして、必要なものについては別途配慮をするということを先ほど御答弁申し上げましたが、そういう方針で進めたいと存じます。
  126. 中村重光

    ○中村(重)委員 長官、あなたのほうは中小企業範囲拡大をする、これにいまお答えになりましたような数の中小企業が入ってくる、それには当然予算の関係が出てまいります。財政投融資の関係が出てくるのですよ。四十八年度の予算並びに四十八年度の財政投融資というものの規模は、あなたのほうの概算要求の段階、大蔵省との折衝によってこれが決定をいたしました際に、新たに上位規模中小企業はこれに入ってくるということを前提にして予算並びに財政投融資の規模というのは決定をしたのでしょう。比較的少額ではないかというような心もとないお答えでもってこの範囲拡大の御提案をされることについては問題があるように私は思います。もっと確信のあるあなたのほうの答弁はもちろんでありますけれども、今後中小企業政策を展開をしていくという上に立って御提案をされるのでなければいけないと私は思うのです。  なぜに私はこれをお尋ねをするかと申しますと、中小企業予算にいたしましても——これはあとで若干変わってきたと思うのでありますけれども中小企業庁所掌中小企業対策費というのは六百三十億三千七百万でしょう。財政投融資にいたしましても、これは三機関でもって八千七百八十一億、予算の面においては対前年度比は一二六%、財政投融資にいたしましても一二二%ですね。中小企業庁所掌分以外の中小企業対策費総計は八百二億八千六百万円、対前年度比一一八%、ここで一般予算の伸び率、一般予算の中に占める中小企業関係の予算は、四十八年度は〇・五六%ですね。四十七年度は〇・五九%ですよ。〇・〇三%減っているのです。財投にいたしましても四十七年度は財投総額に占める比率は二二・四%、四十八年度は一二・七%で、一%近く減っております。範囲拡大した、上位中小企業は入ってきた、そしてまた中小企業施策におきましても大臣が声を高くして強調していらっしゃる小規模経営改善資金融資制度、これらのものもこれに入っている。あるいは中小企業施策にいたしましても、大規模小売店、いわゆる百貨店法の改正に伴うところの施策あるいは小売商業振興法案、幾つもの中小企業法律案をお出しになり、新たな施策を展開をしていこうといわれる。しかし、その裏づけとなるところの中小企業予算あるいは財政投融資というものは四十七年度を下回る、こういう状態でいいのかどうか。絶対額がいかにふえたとは申しながらも、今日の物価上昇の中において実質的に中小企業予算というのが減っておるのではないか。こういったことをほったらかしておいて新たに中小企業範囲拡大をして、しかも上位中小企業——金を借りるにいたしましても大きな額を融資を受けなければならぬところの中小企業というものを新たに加えていくということになるならば、既存の中小企業に対するところの圧迫となるということは、これは常識ではありませんか。そしてお尋ねをいたしますと、まあたいして三機関に対する依存はないと思います、少額だと思います、そういう抽象的なお答えで、この範囲拡大法律案をお出しになるということは私はおかしいと思う。もっと確信ある提案をしてもらいたい、確信ある答弁をしてもらいたいということなんです。ただいまの私の指摘に対して反論がおありだろうと思いますが、あられるならば、納得のいくような説得力のあるお答えをひとついただきたいと思う。いかがですか。
  127. 莊清

    荘政府委員 中小企業対策費が政府全体で八百億であるということにつきましては、私どもも長年努力はしてまいったわけでございますが、これは正直に言ってまだまだ不十分であるということを率直に認めざるを得ないと考えております。定義改定と直結するわけではなく、やはり中小企業対策そのものの見地から、今後財投の拡充も必要でございますし、税制改正の上での特段の配慮も必要でございます。これと並びまして一般会計からの中小企業対策費につきましても、これは私ども格段の努力をいたす所存でございます。  それから、先ほどの御答弁に対しての補足という意味でお聞き取りいただきたいわけでございますが、五十二億円分を中小公庫の来年度融資ワクとして実は上積みをしておるということを当委員会でも別途御答弁申し上げたわけでございますけれども、これは具体的な申請を待たなければ、はたしてどれだけの需要が今年度中出てくるかわからないわけでございます。私どもはそれの申請内容一つ一つ相当厳重にチェックをした上で必要なものがあれば融資を行なうという慎重なスタートを切りたいと思っております。中小公庫の貸し付け規模というものは、御案内のように今年度から上がりまして、八千万円ということにいたしておるわけでございますが、輸出製造業中心の融資でありますので、五百数十企業として四百五、六十億というものが——機械的に全部に八千万融資がされればそういう規模にもちろん相なるわけでございますが、その場合でも本年度の実際の借り入れ申請というものは今後出てまいるわけでございまして、設備資金でございますから、当然先の時期の借り入れ申し込みになるわけでございますし、審査の時期もございますので、実際に金が出るのは来年に入ってからですから、年度分としては第四・四半期分ということになるわけでございます。そういたしますと、機械的で非常に恐縮でございますが、四百五十億前後のものの四分の一程度と見れば百億、それの半分として五十億強というふうなことで一応のものは組んでございますけれども、私どもは、これをそう大きく上回ることはまずないであろう、こういうふうに見ております。申請がございましても、私どもは実質的に大企業の子会社といわれるようなものは従来から慎重に調査して避けております。今回五百七十対象がふえてくるのですが、そこから申請が出た場合には十分注意をして、個別によく調査をいたしまして、その上で融資をするという考えでございます。そういうものを積み上げてみて、この金額で足りなければ当然にワクの追加というのは必要でございますけれども、当面これだけのものを上のせして準備をいたしておるということでございます。必要な追加というものは別途考えますけれども、追加が非常に大きなものが当然に予想されるという状態で予算を組んだ、こういうことでは実はございません。
  128. 中村重光

    ○中村(重)委員 努力はしておるけれどもまだまだ努力をしなければならない。これでは実際、答弁にならないのです。中小企業のという声だけは大きいのですよ。中身はないということです。全体の事業所の九九・三%が中小企業者だということです。にもかかわらず、総予算は十四兆円になった、その総予算の中に占める予算というものがコンマ以下だということです。コンマ以下に中小企業を扱っているという、この事実だけは否定することはできないでしょう。これで、努力はしておりますが、まだまだ足りません。しかし 中小企業のためにやっておるのでありますと言っても、説得力がありますか。これでほんとうの政策の転換ができるでしょうか。範囲拡大をしなくても、中小企業予算というものは、年々形式的ではなくて実質的な拡大していかなければならないということなんです。今日の物価上昇の中に、その大きなウエートを占めているものは何か、生産性の低いところの中小企業、農業、こういうものが放置されてきている。つくった品物あるいは売る品物、これを価格にはね返さない限り中小企業は生存していくことはできないではありませんか。生産性を向上させる、そうしてつくった品物のコストを低下させる、これが物価政策にもなるではありませんか。物価政策の大きなウエートを占めると私は思う。いかに口に物価引き下げであるとか言っても、ほんとうに引き下げのための施策を講じていないということなんです。私は、十年前の中小企業定義を改めるということに対しましては反対だとは申しておりません。しかし、定義拡大するということは、量的拡大なんです。大臣もお答えになりましたように、私も指摘をいたしましたように、質、量面に中小企業施策というものを強化し、拡充していかなければいけなのだ、その根本をなすものは予算であり財投であると思うのです。     〔稻村(左)委員長代理退席、委員長着席〕 その予算であり財投であるものを比率において四十七年度よりも低下をさせるというようなことで量的拡大を私どもに納得しろと言われるのは、私はあまりにも不見識であると考えます。しかし、すでに予算は通ってしまいました。  私は、大臣に決意を促したいことは、先ほど同僚諸君の質問に対してお答えにもなっておりましたが、ほんとうに抜本的に中小企業政策というものを前進させなければならない、その裏づけとなるところの予算、財投、これを大幅にふやしていくということでなければならないと思います。この異常な決意が私は大臣に求められていると考えます。したがいまして、大臣から確信のあるお答えをいただかなければ、私はこの法律案を成立させるわけにはいかない。私もほんとうに安心でき、大多数の中小企業の方々がほんとうに納得する大臣の答弁と、さらにその答弁を具現するための、来月は概算要求の月でございますから、そのことに対する大臣の決意をひとつ伺いたい、そしてそれを見せてもらいたいということであります。いかがですか。
  129. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 中小零細企業につきましては質的強化が重要であると冒頭御指摘もあり、申し上げましたが、質的強化と同時に、金融その他の面において、量的拡大もまた同じく必要であります。中小企業の扱う仕事の量あるいは最近における物価高の情勢海外における資金量、そういう諸般の情勢を見ますと、やはりこの資金量を国として相当ふやしてやらなければこの拡大の意味をなさないということも考えられます。そういう諸般の点を考えまして、来年度予算以降資金量ワクを大幅にふやすように努力していきたいと思います。
  130. 中村重光

    ○中村(重)委員 公正取引委員長にお尋ねをいたしますが、同僚諸君から数回にわたってこの点はお尋ねしておりましたが、どうもお答えが必ずしも納得のいくお答えでなかったように思います。それはもうおわかりのとおりですが、今回の定義改定によりまして一億円未満まで中小企業になる。そうなってまいりますと、下請代金支払遅延等防止法、この関係に変化を来たすことになってまいります。いままで親企業であったものが今度は下請企業としては遇されるけれども、親企業としての取り扱いを受けない。ところが、いままで下請企業として遇されたものが、今回新たに中小企業基本法対象となるこれらの企業との下請の関係というものが今度はなくなる、いわゆる下請代金支払遅延等防止法対象から除外をされるということになってまいりますと、大きい企業は保護され、小さい企業はこの保護からはずされるということになってまいりますから、私はこれは問題であると考えます。いわゆる施策の妙味を発揮して、そのように不平等な形にならないようにしなければならないと考えますが、その点に対する公取委員長の御見解、また今後講じていこうとする施策についてお伺いをしてみたいと思います。
  131. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 中小企業定義といいますか、その資本金による区分が五千万から一億円に引き上げられた、これは現時点だけとってみますと確かに変化が起こるわけでございます。いま御指摘のように、いままでは大企業といわれたものが中小企業になる、中小企業になって、したがって、こちらの法律の関係でございます下請法からまいりますと、親事業者であったものが下請のほうに回ってくる、こういう変化がいまの時点でとらえればございますが、大体こういう資本金による大企業と中小企業の区分というものは、御承知のとおり今回の場合に十年経過してこうなっておるわけです。本来は毎年毎年実質的に中小企業の中身は変化していると思います。つまり十年前の中小企業は、今日も、それはまあ資本金だけで、同じ資本金ならば中小企業である、こうみなすのは経済実態とはだいぶ離れてくるのじゃないか。これはすでに中村委員も百も御承知でございますから私はとやかく申しませんが、十年間における経済のレベルが大幅にアップしております。これは日本のGNP全部をとらえても同じでございますし、それぞれの会社あるいは個人でもそうでございますが、その資産の大きさあるいは名目的な場合であれば、はるかに大きな膨張を遂げております。ですからずっと前に一千万であったものがいまや実質は一億である、こういうことになるわけでございまして、中小企業とは何であるかということを定義する場合に、資本金で区分していること、あるいは従業員で区分していることに多少の矛盾はございますけれども、そういう方法しかない、こういうことであろうと私は思いますので、いまにわかに突然変異のようになりますけれども実態から言えばやはり実態のほうに資本金のほうを合わしていった、中小企業定義を合わしていった、こう考えます。一億円以下のものは、一億円をこえるものの下請事業者の立場になる。また、従来は一千万としておりましたが、一千万以上一億円までのものは、これはそれより下の階級、下の分野に対しては親事業者になる。だから、両様の性格を持つということでございます。御指摘の点は、五千万という従来の線があって、それが上と下とで同じ中小企業の中で親と下請の関係が生ずるではないか、そういう点は見のがしておるのではないかというふうに私は受け取ったのでございますが、そうであるといたしますと、多少の矛盾というふうなものはあるかもしれませんが、まあ中小企業全体として見た場合、一千万円から一億の間でそれほど大きな圧倒的な力の差があるかどうかという点を考えてみますと、むしろ下のほうの一千万までの低いほうのレベルの下請業者を保護し、かつ今度のほんとうの一億円をこえる大企業からとかくしわ寄せを受けやすいそれ以下のものすべて、これについて特別に配慮をしていくということで、つまり二段階制でやっていっても、それほど大きな矛盾は来たさないのじゃないか。御指摘の点はわかりますが、それらについては実態調査などをいたしまして、われわれの言っておることが多少でも違っておる、だいぶ違っておるということであれば、なおそういう点について規制の方法は考えたい。原則としては下請法に書いてあること、これはすべて不公正な取引方法にずばり該当することでございますので、そういう独禁法上の措置によって、具体的な案件がもしありますれば、これは規制することは十分可能であるというふうに考えております。全体としての大きな経済の水準変化の中で、いま申し上げたように二段階といいますか、一億円の上と下、一億円と一千万の間、こういうふうなものを設けまして、下請法の精神を十分生かすようにやっていきたい、足らないところは独禁法で補いをしたい、こういう覚悟でございます。
  132. 中村重光

    ○中村(重)委員 規模拡大させるということは、私どもも当委員会において、条件つきでありましたが、いわゆる小規模企業というものに対して影響を来たさないように、抜本的な振興策を講じなさい、規模拡大について、定義を改めることについて検討しなさいという附帯決議をつけましたから、みずから附帯決議をつけながらこの規模拡大というものについて反対をするという態度は矛盾をすることになります。また、その必要性も認めております。しかし、中身がそれに伴うかどうか、私が声を大にして指摘をしてまいりましたものは、附帯決議の趣旨が生かされていない、中身がからっぽだ、これじゃいけないから、結論としては大臣の決意を伺って、今度は質問を新たに進めたい、こういうことになっているわけであります。  しかし、規模拡大は当然と申しましょうか、避けられないと申しましょうか、やむを得ないと思います。ところが、従来保護されてきたものは既得権なんです。今回定義改正によって、従来保護されたもの、与えられた既得権というものが奪われることだけは間違いない。いま委員長は、能力はあまり変わらないではないかとおっしゃる。しかし、それは答弁になりません。能力は変わるのか変わらないのか、事務局長から数字をあげて、一千万円以下あるいはそれ以上というものに対する下請関係についてお答えがありましたが、たいした数ではない。たいした数ではないけれども、やはり従来八千万円なら八千万円の企業が親企業として五千万円以下の企業との間に下請関係を結んだ、そして下請代金支払遅延等防止法等の保護を受けてきたということだけは事実なんです。したがって、それは既得権と言える。そのことがなくなるということは既得権が奪われることになるのでありますから、既得権はやはり保護していくのでなければならない。それをどうしてやっていくのかということについては、独禁法においてこれを補完していきたいというお答えでありましたが、独禁法二条七項あるいは独禁法十九条、不公正取引方法の十号、これらの条文が、いま委員長がお答えになりましたような関連の法律であると私は実は考えます。しかし、これと下請代金支払遅延等防止法がそのままずばり当てはまるのかどうかということになってくると、問題があるのじゃないでしょうか。不公正取引方法の十号を見ましても、いわゆる優越的地位利用云々というのがありますが、下請代金支払遅延等防止法という法律で保護してきて、今回それからはずされたものが、かりに下請代金の支払いで、いままでは問題なく中小企業庁あるいは公取から指摘を受け、それが、従来と変わってきたということでもって直ちに独禁法違反である、不公正取引であるという判定を下せるのかどうかということになってくると、無理が出てくるんじゃないでしょうか。抽象的な不公正取引とかなんとかということじゃなくて、これは従来保護されてきたものは既得権なんだから、同じ中小企業の中ではあるけれども、そこに親企業、下請という関係が出てきたならば、下請代金の問題についてはそれを今後とも実行させますというお答えが出るのかどうか、その点が私は問題であると思うのです。私どもが聞いておりますのはその点なんです。不公正な取引が許されないということは当然なことなんです。問題は下請代金支払遅延等防止法というものが適用されなくなるんだが、これをどうするのかというのが聞いている点なんです。この具体的な問いに対して具体的なお答えをいただきたいということであります。いかがでしょうか。
  133. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 この問題はなお私ども十分再検討いたしたいと思っておりますが、いまお話しの資本金による、従来の既得権といいますか、保護の利益を受けるという点は、そういうふうに既得権と解してもけっこうでございますが、上位のものが優越的地位を乱用して下位のものに不当な取引条件を押しつける——これは簡単に申しまして下請法の一貫した中身だと思います。それを具体的にいろいろ表現しておる。私どももそれを見ますと、非常に下請法というのはきめこまかく、どういうものとどういうものとの関係というようなことを書いて、それから具体的に、支払い遅延だけではなくて、一ぺん契約しておきながら納入した場合の価格をあとから削減するというふうなことまで、個別に書いております。しかし、一般に上位企業と下位企業、親と下請のような関係におきまして、不公正取引ではいけないのじゃないかというお考えに対して、私は、それは具体的な事例があればいつでもいけるんだというふうに思います。ただ、下請法というものがありますから、実際に不公正な取引を行なった場合は、それにずばり当てはまるケースのほうがはるかに多いと思います。しかし、それが、特別の法律はありますけれども、それがなくても、かりにそれにぴたり該当しなくても、独禁法そのものの適用を何ら妨げることはないのではないか、私どもはそう思っておるわけです。下請法によったほうが、調査その他をする場合、一般的な基準としてはそのほうが筋が通っております。さればといって、いま御心配のように独禁法の十九条の、こういう不公正取引を禁止する規定では無理なんではないかというお話のようでありますが、私はいろいろの場合に不公正取引というのは独禁法上十分取り締まりの対象になる、そういうふうにいま申し上げておる。その見解がはたして違っているかどうか、そういう点についてはなお十分に検討してみたい、こう申し上げておるわけでございます。
  134. 中村重光

    ○中村(重)委員 不公正取引は独禁法違反であることは明らかなんですね。これは法律に明記しているところです。問題は、下請代金支払遅延等防止法です。下請代金というものは二カ月以内に払わなければならない。手形を発行する場合は、二カ月以内にこれが割れる、割引ができる手形を発行しなければならないという形でいままで運営してこられたと思います。かりに今回は一億円以内は中小企業であります。一千万円以上一億円以内は中小企業ですよ。一千万円以下はこれは対象になりません。これは下請関係が今後は生じないということになる。いままでは生じておったものが今後生じなくなる。そこで、従来は生じておりましたから、二カ月以内に割り引きする手形——かりに今回、今後三カ月しなければその手形の割引ができないといったような事態が起こってきた、そういう手形が発行された、その場合に、いわゆる不公正取引ということが言えるのかどうか。具体的な問題なんです。既得権とも関係があるわけです。ですから、そうした具体的な問題についてお尋ねをしておるわけでありますから、それに対してお答えをいただきたい。ですから、優越的地位を利用したそのことが独禁法違反であることは間違いないんだが、その優越的、いわゆる不公正取引とは何ぞや。私がいま具体的な問題として指摘したようなことが起こった場合、これが不公正取引というような形になるのかどうかという点であります。いかがです。
  135. 熊田淳一郎

    ○熊田政府委員 ただいまの具体的なお話でございますが、そういうような具体的な事例が出てまいりました場合には、私どもといたしましてはそれが独禁法の優越的地位の乱用、あの条項に該当するということで糾明をしてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  136. 中村重光

    ○中村(重)委員 それでは、いままで下請代金支払遅延等防止法対象となっておった下請企業、今後はこの範囲拡大にかかわらず、依然としてそのことは下請企業支払遅延等防止法が適用される、そのとおり理解をしてよろしいかどうか。
  137. 熊田淳一郎

    ○熊田政府委員 独禁法を適用いたします場合には、必ずその適用の基準というものがなければならないわけでございます。下請関係につきましては、この下請法が当然に最も基本的な基準になるわけでございます。したがいまして、いま先生おっしゃいましたような、現在は下請法によって保護をされておるが、改正後は保護をされないという業者につきまして独禁法上の問題が生じてくる、優越的地位の乱用が生じてくるという場合には、当然下請法を基準といたしまして不公正取引というものを認定してまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  138. 中村重光

    ○中村(重)委員 先ほど、具体的なこういった事例が起こってきた場合は、そのことがいまの不公正取引ということで独禁法でもってこれを取り締まるかという私の質問に対して、あなたのお答えは、これは取り締まってまいりますというお答えがあったわけだから、それでもう一度お尋ねするんだけれども、八千万円の中小企業と三千万円の中小企業と、従来は下請法の適用がされてきたわけだから、今後ともそれは適用されるということに理解してよろしいんですね。
  139. 熊田淳一郎

    ○熊田政府委員 たびたび申し上げますけれども、それは下請法が適用されるということではございませんで、独禁法が適用されるということでございます。ただし、独禁法を適用いたします場合に、当然運用の基準というものがなければならない、下請法はその基準に当たる、こういうことでございます。
  140. 中村重光

    ○中村(重)委員 その点はよろしいのです。それは下請法そのものからはずれるけれども、それにかわって今度は独禁法の不公正取引ということになるのですということであればよろしい。しかし、いままであなた方の答弁は、この関係はなくなってまいりますという抽象的な答えを繰り返してこられたわけだ。いまのような明快な、明確なお答えがなかった。したがって、下請法、独禁法のいずれが適用されようとも、要するに従来のとおり適用される、したがって、従来公取であるとか、あるいは中小企業庁が問題点として指摘をして、これに対して勧告をしたりいろいろしてこられたわけだ、それはそのとおり今後とも実行される、しかしそれは下請法ではなくて独禁法である、そのとおり私どもは理解をいたします。  最後に、通産大臣にお答えをいただいて私の質問を終わりたいと思うのですが、同僚委員から先ほど質問があっておりましたが、鳴りもの入りでこの下請中小企業振興法というものが実は適用される、こういう形になってまいりました。それに基づいて振興基準というようなものがこの法律案の中核であった。ところが、今日までただ二つだけしかその振興基準というものができていない。それから振興協会というものも、紛争調停といったようなことまでやらなければならない。でなければ、下請企業の地位というものは向上されないということを私ども指摘してまいりましたし、そのことでこの法律案の修正等もいたしましたし、それぞれのお答えが実はあっておったわけです。ところが、振興基準の問題しかり、それから振興協会の構成の問題にいたしましても、依然として肝心の中小企業の発言力が弱いということです。親企業の意向というものがこの振興協会というものを動かしておるということです。これではいつまでたっても下請企業というものは親企業と対等な立場に立ちません。下請が親企業と対等な立場に立って、そして下請の振興をはかっていくということでなければいけないということです。そのためにはやはりこの振興協会のあり方ということを追跡調査をしてもらって、親企業の意向をこれに反映させるのではなくて、ほんとう下請企業のための振興協会でなければならない、そのことが下請の地位を向上させる、経営の安定をはかっていくという方向でなければいけないということであります。大臣はどうか具体的な事実をひとつお調べになりまして、この振興協会というものが強力に運営をされるように対処してもらいたいと思います。大臣の見解はいかがでしょう。
  141. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 御指摘のように、振興協会をよく点検いたしまして、これが法案の目的を達するような機能を発揮するように、必要あらばこれを改組するとか充実させていきたいと思います。
  142. 浦野幸男

    浦野委員長 以上で本案に対する質疑は終了いたしました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十一分散会