○
塩川政府委員 私は、七月三日日本を立ちまして、十二日までアメリカ並びにカナダを訪問してまいりました。
今回の訪問は、
先生御
指摘のように、アメリカが農産物に対しまして緊急の輸出規制をいたしまして、それに伴い、わが
通産省といたしましては、そういう農産物も含めまして、輸入の業務を責任を持っておる役所でございますだけに、これの円滑な輸入を促進するために、
大臣が特に派遣を要請されまして私が参ったような次第でございました。
そこで三日、四日とワシントンにおきまして農務省並びに商務省を訪問いたしまして、最初にブラントヘーバーという農務省の
次官補でございますが、これが直接の規制の責任者でございますので、それに強く陳情をし、わが国の立場並びに今後に対する要請をしてきたのであります。
そこで、まず第一に大豆の問題でございましたが、アメリカが緊急措置をいたしましたその品目の中にある大豆は、わがほうといたしましては非常に米国に対する依存度が強いのでございます。したがって、今回の措置があらゆる
意味におきましてわがほうにとりましては非常に大きいショックであったということの抗議をまずいたしたのであります。そのショックの内容は、
一つはアメリカがいままで農産物を買ってくれということを強く要請しておりました。特に昨年の箱根会談等におきましては、農産物の買い付けにもっと積極的な姿勢を示してほしいという要請があったのであります。したがって、わが国といたしましては、農産物の輸入に相当な計画性を持って今日まで増大をしてまいりましたところ、突然買えと言っておった国が今度は売らないということはおかしいではないか、これがどうしてもわれわれとしては納得できない事態なのだということが第一点であります。
それから第二番目の問題といたしまして、今回の規制が突然行なわれたということでありまして、もっと十分に話し合いをした上でも規制をしようと思ったらできるではないか、突然やったということは非常にわれわれとしては不可解であるということで、強くこの突然の規制ということに対しまして抗議をしたのであります。
三番目は、いままで日本とアメリカとの
関係はいわば同盟国の
関係であり、友好
関係が非常に深いのであります。したがって、他の諸国がこれを買い付けた、たとえばソビエトなり中国も大豆の買い付けをことしは積極的に大量にやっておりますが、そのしわ寄せがいままで一番親密なるわがほうに、影響を及ぼすいうことについてどうも納得のできない点がある、この三つにつきましてまずただしたのであります。
それに対しまして、農務省
次官補ブラントヘーバーでございますが、それはまず第一に、突然やったということはまことに申しわけなかった、しかしながら、この措置は物価凍結令からくるところのインフレ抑制の
一つの
対策としてとったことであり、突然行なわなければ、事前に予告をするというような措置をとった場合には、そこに思惑的な投機が入ってくるので突然やった、それがために非常に迷惑をかけたことはまずおわびする、しかし、現在非常に急激に大豆がアメリカ国内において高騰した、この二カ月間で四〇%という高騰を見たということは、
外国の買い付けが相当激しかったということにほかならぬと思う、ついては、どの程度の買い付けを
外国はやっておるのかということを調べた上で、順次輸出の規制をゆるめていくつもりである、こういうことの一応の話がございました。
そして日本との
関係でございますが、いわゆる彼らのことばで言いますところのトラディショナル・カストマー、伝統的な顧客としての日本の立場というものはよく尊重し、これに対しては迷惑をかけないようにわれわれもできるだけ努力をいたしたい、そして今回の規制はあくまでも暫定的なものであり、輸出業者の契約の
実態なりあるいは来年度の穀物年度でございますが、来穀物年度の生産の見通し等がついた場合、早急にこの規制措置をゆるめる、あるいはまた撤廃いたしたい、こういう気持ちである、こういうことでございます。
そこで、私は、それは一般論としてそういうことであろうが、いわゆるあなたのおっしゃるトラディショナル・カストマーとしての扱いということにはならぬではないかということを強く主張いたしました。その結果、やはり諸
外国に対する原則というものは曲げるわけにはいかないが、運用の面においては、日米間のことであるから、日本の立場というものをわれわれはよく理解しておるから、その面については考えていこうということでございました。その結果、この運用面ということは何かということを突っ込んでまいりまして、結局それがとうふ用の大豆というものについては別に考えていこう、こういうことでございました。
次に、ゲント商務長官にお会いいたしまして、これは先ほど申しましたブラントヘーバーと同じような内容のことでございますが、要するに、日米間におきますところの相互信頼というものがこういうアメリカの国内で起こった問題から日米の
関係にそういう影響を及ぼしてはいかぬ、われわれはあくまでもアメリカに対し供給の責任というものを強く追及する権利があるのだから、これに対する措置というものはひとつ十分責任を持ってもらいたい、それから今後しばしばこういう輸出規制を連発的にやるかどうかということをただしたのであります。
そこで、ゲント商務長官の話でございますが、日米間における
関係は、今後とももっと計画的に話し合ってもっと緊密にやっていくべきであると思っておるし、今回の農産物の輸出規制ということについては、突然行なったことはまことに申しわけない、しかし、これがために日米間に間隙をつくるなどということがあってはならぬので、その点われわれも重々今後の運営については対処したい、こういうことでございましたし、また、ブラントヘーバーとの間で話し合いました結果については商務長官として全力をもってこの実行を推進する、こういうことでございました。したがって、今後輸出規制というものはできるだけアメリカとしても避けていきたいという気持ちを強く言っておりました。しかし、これは世界的な食糧不足という事態が起こってきておる。その中にあってアメリカだけが供給余力を十分持っておるというところに、そこに世界的な
関係というものを絶えず見ていかなければならぬので、その点は十分理解してほしいということは言っておりました。
総じてアメリカとの農産物の
関係について申しますならば、日本といういわゆる伝統的な顧客、いいお客さんといいますか、こういうものに対しては今後ともその立場を十分尊重して迷惑をかけぬような、これからの話し合いというものを進めていこう、それがためには十分日米間における今後の話し合いというものをより一そう緊密にやっていくべきだと向こうは主張しておりました。それと同時に、日本においてもある程度のストックというものはやっぱり考えてもらわなければならぬ、こういうことを向こうから申し出ておったのであります。
それからスクラップの問題でございますが、これも輸出規制をしようというような気配があったのでございますが、この問題につきましては、木材なり、あるいは他の商品におきましても、日本とアメリカとの間に自主的な話し合いで解決しておることがたくさんございます。したがって、このくず鉄もお互い話せばわかる問題であるから、これはもう輸出規制とか、そういうことではなくして、話し合いで片づけていきたいというのが私たちの態度でございまして、その点は十分理解してくれまして、結局話し合いでおおよそこちらのほうの思っております数量の確保ができたのであります。
それから引き続きましてカナダへ参りました。カナダは、御承知のように、わがほうに一番
関係がありますのは、なたねと亜麻仁であります。
まず第一のなたねは、カナダのほうの輸出のうちの四〇%がわが国に来ております。一方、わが国から見ました場合に、なたねは約九八%カナダ一国にたよっておるという実情であります。亜麻仁につきましても、わがほうは一〇〇%カナダに依存しておる、こういう状態でございます。
そこで、カナダのほうの主要な
方々にお会いしたのでありますが、まず最初にカナダのほうの商務長官これは
通商産業大臣でございますが、ギブスリーという方がおり、この方が輸出の責任者でございます。これにまず最初に抗議を申し込みました。全くアメリカと同様突然の措置であるということを申しましたところ、これは大豆かすに対する代替品としてなたね油のかすが重要な飼料になっておる。したがって、大豆かすの規制をアメリカがやったことに伴って、それの連鎖反応をおそれてカナダとしては
対策を講じたのであって、全く他意がないからその点は了解してほしい、こういう
趣旨でございました。そしてなお、実際実務的にやっておりますのはラングという穀物担当の
大臣とジャービスという農務
次官補、それとウィーランという農務
大臣で、この三人に会って十分話をしてくれということでございましたので、それぞれ三人の方に会いました。
そこで、
結論的に申し上げますならば、なたねにつきましては、現在の契約分についてはできるだけ日本に出荷するようにわれわれも努力する、こういうことでございまして、現在日本が契約しております七月以降の分について、若干の時間のズレはあろうと思いますけれ
ども、できるだけ早く出すということでほぼ話を終わったのであります。それと亜麻仁につきましても同様でございまして、日本の実情はよくわかった、したがって供給の断絶を来たさないように十分配慮するということをそれぞれの
大臣が言っておりました。したがって、なたね並びに亜麻仁につきましては、私は現在の需要に対する供給はそうひどくならないのではないかと思っております。
なお、先ほど
先生の
お尋ねは四点ございましたが、その中の今後の
対策ということでございますが、御承知のように世界的な天候異変ということがいわれております。農産物にやはり部分的に不作、豊作というふうな状態が出てきております。これは非常に残念なことでございます。したがって、アメリカなりカナダに対しまして農産物の買い付けが各国とも非常に激しいということは御承知のとおりであります。特に小麦や大豆、こういう主要なる穀物につきましては、共産圏からの買い付けが非常に多くなったということが事実でございまして、こういうようなのはいわゆるスポット買いというべきものであろうと思います。しかし、世界的にまんべんに供給しなければならぬという立場からものは考えられておると思うのであります。したがって、今後私たちとしましては、これからの需要の見通しというものを的確につかんで、絶えず供給国と緊密に話をしていく、これがやはり大事なことだと思うのであります。
それともう
一つ、こういう農産物等につきまして、特に天然資源全般についてでございますが、わが国のストックというものが非常に希薄であるというところにやはり問題があろうと思います。したがって、ストックを国の責任において確保していくということも考えていかなければならぬ、このように思います。
また、こういう農産物あるいは天然資源等一般について申しますならば、買い付けについてやはりマナーが必要であろうと思うのでございまして、そういうことにつきましても、今後われわれは十分
対策を講じていきたいと思うのでございます。
なお、最後の四番の御質問でございましたが、カナダにつきまして、今後日本といたしましては、やはり農産物なり天然資源というものは多角的な供給源を求めていくべきだと思うのでありまして、そういうふうに見ますならば、カナダ等は、確かにそういう多角的供給の
一つの大きい供給源になると私は思っておるのでございます。九月に日加経済閣僚
会議が開かれる予定でございまして、そういう際にこれが大きく議論されることであり、日本とカナダとの間におきますところの経済交流というものを私たちは大きく期待しておるような次第でございます。
以上、簡単でございますが、御
報告にかえさせていただきます。