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春野参考人 主婦連合会の副
会長をいたしております
春野でございます。
本日の
参考人として、たいへん恐縮ですが、
委員長から比較的突然の御指名を受けましたもので、内部でこの
法案について十分煮詰めたり、また他の
消費者団体の皆さんといろいろ討議する余裕を持ち得ませんでした。したがいまして、ただいま申し述べますことは相当ずさんな点もあろうかと
思いますが、お許しをいただきたいと
思います。
消費者の
立場といたしましては、非常に変動の激しい
経済状態の場合、特に
経済商業活動などにあるものさしをつくりましても、それが間もなくして実情に合わない、そういうようなことも多うございます。だから
規制、
規制ということは、安全の
確保あるいは公害の防止あるいは不当な暴利、不公平、そういうような場合には厳重なものが必要でしょうけれ
ども、原則としては自由な
競争が望ましいと思っております。いろいろくふうされた大商店あるいは
専門店、自由な場が提供されて、それを
消費者は自由に選択する、そういう気持ちを持つものでございます。けれ
ども、従来
百貨店法が長く実施された上での実情から見ましても、現在なお過密な大
都市あるいは地方中小
都市、また同じ東京でも大阪でも、その地区によってそれぞれの格差がございます。そういったことをいろいろ
考えますと、住宅密集地もあればこれから住宅ができるというところもあれば、また、商店街が広く広がっていく、新しい
都市形成というふうないろいろなこともございますので、こういった
法律が
運用の面でよろしくその実情に即しつつ施行されるのもやむを得ないのではないか、そういうふうに基本的に思っております。
百貨店法が十七年間にわたって実施されてきたのですけれ
ども、三十一年に制定されましたころは、どちらかといいますと中小のお店を強く保護しなければというふうなことが非常に強調されました。それで
百貨店側もいろいろ
規制されたと
思います。
百貨店審議会等でも、私
どもの代表はいろいろ
意見を述べてまいったと思うのですが、しかしいつしか
経済の大変動から、外側から見ておりますと
百貨店の増加あるいは増築、拡大、これは非常に目立ってふえまして、
百貨店法はあるんだろうかというような気もするくらいになかなかにこの
百貨店の
発展ぶり、増改築もまた今度許可されたというふうな例が多かったように
思います。また一方、地元の商店街も、
百貨店のそういう
進出、拡大を大いに歓迎する、これで
共存共栄ができてたいへんけっこうだという向きがあったり、かと思うと猛烈に反対される向きもある。いろいろな状態があって今日に及んでいるんですね。
そのうちに、これまた自然の趨勢だろうかと思うのですが、いつしか
百貨店のちょっと手前ぐらいの
規模で
スーパーさんが
進出された。そうすると、ものによりましては
百貨店ともほとんど変わらない、あるいは最初は
スーパー的であったけれ
ども、そのうち
百貨店同様なふうになっていったというような、これも
時代が生んだ
一つの産児でございましょうけれ
ども、そんなふうな実情を踏まえて、
百貨店のほうは
許可制、これは不合理だ、だから
百貨店法をやめて、そして
スーパーも
百貨店のほうも、両方ともいわば中をとったけんか両成敗というふうなぐあいでしょうか、
届け出制——
届け出制の奥には
審査、勧告、命令、ちょっときびしい
規制があるようでございますけれ
ども、そういったようなふうにしてこれが生まれたのかしらと思ったりもいたします。
この
法案の第一の目的のところに、これも
時代の反映でございましょう、
消費者利益に配慮しつつということを大きく第一のところにうたわれたというのはちょっと珍しいのでございまして、これは私
どもとしては非常にうれしいのですけれ
ども、その
消費者利益をどんなふうに配慮されるのか、
消費者利益の何に焦点をぐっと合わせられるのか、言わずもがなかもしれませんけれ
ども、そこら辺のことが中をずっと拝見すると少しぼやけて、正体は中小の
皆さま方を強く保護するというところの、その上のほうにちょっと
消費者利益ということをつけてあるのかしら、これは変な勘ぐりをいたしたくございませんけれ
ども、この点についてはちょっと後ほど触れさしていただきます。
現在の実情やら経過の一、二を申し上げますと、江東区でございますが、そこにある
スーパーが
進出しょうとされた。そうすると、地元の商店街では感情的と思われるくらい猛烈な御反対があっているわけです。
消費者の多くの方に聞いてみますと、むしろこの際
進出してもらって、よそ者を入れないというような意識で長く来られた商店街をある程度刺激していただいて、そして地元商店街も大いに奮起していただく、そのほうが好ましいのだ、何も私たちは
スーパーだけでものを買ったり、地元のお店を排斥するものではないけれ
ども、いつまでもこんな状態では、地元の商店街が比較的他と比べて高価であり、しかも態度も非常に横柄だ、そういうことを
近代化していくためにも好ましいというようなことで、ここはもうものすごい抗争の渦が巻いているわけでございます。
そうかと
思いますと、これは私の住んでおります目黒の地区の実例でございますが、かわいらしい
スーパーが商店街のどまん中にできました。その当時その周辺の
小売店が四、五、つぶれるのではないかしら、こういうふうに見ておりましたら、つぶれるどころか、それができたことによって非常に周辺の商店が奮起されまして、清潔にもなり、
販売努力をされる、そのうちに
スーパーのほうがどういうわけかあっさりつぶれてしまいまして、商店街のほうのどなたもつぶれることなしに、非常に評判のいい商店街になられた、こういう例もございます。
それから同じく、これはちょっと昔ですけれ
ども、四国のほうに
百貨店が
進出する。その場合に、東京のほうからいろいろ地元の
消費者団体と話し合っていろいろ御注意を申し上、げたわけですが、そうしましたら、地元の商店街もそれから
消費者の皆さんもぜひ早く出てきてほしい、こういう御
賛成があったり、それからまた、これもごく最近のことですけれ
ども、山形のほうのある
一つの地区で
スーパーが
進出した。その数ヵ月たっての影響調査を拝見しますと、
百貨店のほうは敵になるどころか相変わらず売り上げは伸び、それから地元商店街のほうの商店の皆さまの中で売り上げが減ったというところが約四〇%、あべこべにこれができたことによって伸びたというお店が二〇%、そういったふうないろんな状態が出ているわけでございます。これからもう大なり小なりこういったふうな実情の波紋は至るところで描かれることだと
思いますし、したがって、この
法律が
運用されますについて、従来のこの
百貨店審議会以上に、大
規模小売店舗審議会というこの
審議会の任務が非常に大きいことだと
思いますし、この
審議会の内部が利害抗争、対立、そういうことの渦巻きにならないように、よほど慎重に、あるときは弾力的に、あるときは厳正に、これからのこの
運用が非常に大切だと
思います。
最後に、この
法律を拝見いたしましての感想は、さきに申しました第一の目的、「
消費者利益に配慮しつつ、」というのがどうぞつけ足しでございませんように、真に中小の
皆さま方の繁栄と大型の皆さん、そして
消費者利益、これが三つ、一番最後に実は
消費者がというものでなくて、三者公平な同等の
立場に立っての配分、そういうことが大事だと
思います。
法律の上で「
消費者利益」ということをトップに載せられたこの
法律の意義を十分実際に生かしていただきたい。単に業界だけの代表の
利益調整、そういうことだけを目的にするものであれば、利害抗争というものはいよいよ激化したりするのではないか、こう思うのです。
それから第三のところの千五百平方メートル、それから三千平方メートルと数値がはっきり出ておりますが、これは私
どもの勘ぐりかもしれませんが、頭のいい人が二千八百なのです、あるいは千三百なのです、こういう設営をされた場合に、これは一向に届け出なくても、つまり法の盲点といいましょうか、そういうことはなかろうと
思いますけれ
ども、かと思うと、ちょっとはみ出る、ちょっと足りないというような数値でとんだ意外なトラブルが出てくるということをちょっと心配いたします、いい悪いは別といたしまして。といいますのは、薬事
審議会等で薬品
販売業の新規店舗を設けます場合に、距離制限というのにはっきりと百五十メートルあるいは二百メートルというふうなことをうたい上げてございます。いまそれは実情に合わせて相当緩和して許可しようというふうに相なりつつございます。その
審議会の場でも一メートルあるいは半メートル足りないばかりに、
消費者は非常に必要と思う場所にその開業許可がおりないというふうな、数字のものさしというものが実に実情とずれた悲劇を生むこともなきにしもあらず、非常に多かったのでございます。実態は
消費者地帯がぐっとふえたりあるいは減ったり分散したりいろいろございますので、ここら辺の数値が非常に気になるところでございます。あんまりしゃくし定木にこの数値一点ばりにこだわりますと、とんだことが起こり出すような気がいたしてなりません。
それから第六のところですね。届け出がありました場合に通産大臣は「大
規模小売店舗内の
小売業の
事業活動が、
中小小売業の
事業活動に与える影響を
審査するものとし、必要があると認めるときは、大
規模小売店舗審議会の
意見をきいて、第五の規定により届け出た者に対し、届出日から三月以内に限り、
消費者利益を配慮しつつ、」と、ここに「
消費者利益」が出てくる。これは最初からやはり中小のお店の皆さまのこと、それから
消費者利益というものを同時に踏まえて同時に
意見を求めて大臣がお
考えになるという、こういうことが望ましいと
思います。
それからさらに続いてその二項でございますが、「開店予定日を延期すべきことを命ずることができるものとする」、三項には、「前二項の場合において、地元商工
会議所等の
意見を聴し、答申を行なうものとする」、この場合も地元商工
会議所だけでなくて
消費者側の
意見を十分同時に聴取されてしかるべきだ。何もかも中小の
皆さま方と同じように取り扱いなさいと、そういう
意味でなくて、多少余分であっても、すべて
消費者側はどのように思うか、どのように見ているか、そういうことを最初から十分おくみ上げになって、初めて「
消費者利益を配慮しつつ、」という証拠になるのではないか、そのように
思います。
それから次の第七のところでございますが、休日だとか閉店、開店の時間云々ですね。これも週休制の声も高いおりからですし、いろいろ大小のお店によってくふうし、
販売態度、休日等におきめになると思うのです。その場合に、いままでの例ですと、業界同士の利害あるいは売り上げといいましょうか、そんなようなこと、それをもとにして、そして互いにセーブし合ったり牽制したり出し抜こうとしたり、そんなふうなことできめられているのではないか。ところが、
消費者のほうもいろいろ
事情の変動がございまして、いまでもせっかくいろいろのお店があるのに、さて働いて七時ごろわが家の近くに来てももう何も買うことができない、どこもあいていないという不便をかこつ共かせぎの三十代、四十代の
主婦たちも多いのでございます。そこら辺のこともございますので、ほんとうにこれはお互いの利害打算ということだけを
中心でなく、あるいは労働条件その他もございましょうし、そこら辺の場合に
消費者の状態はどうかというようなことを十分胸襟を開いて御討議願いたいと
思います。
原則はトップに述べたとおりでございますが、願わくば、とかくに
消費者利益というふうなうたい文句で、中は実は利害抗争の一種の
調整である、事あらば何とか出し抜いていくというふうなことでなしに、真にこの
規制はまことに当然であった、また、いい目的を果たされた、果たしたというように
運用されることを希望して終わります。ありがとうございました。