○藤田
委員 私は、
日本社会党を代表して、
工場立地の
調査等に関する
法律の一部を改正する
法律案に反対する討論を行ないます。
本法案に対する私たち社会党の基本的な立場と見解は、すでに
質疑の中で明らかにしてきたところでありますが、以下、その反対理由を簡単に説明いたします。
その第一の理由は、
工場を立地するにあたって最も重要なことは、憲法二十五条による国民の生活権と生存権を侵害するものであってはならないこと、また、国連人間環境
会議における人間環境宣言によってもすでに確認されているごとく、公害の未然防止や環境保全、すなわち地域環境を絶対に破壊しないということが前提条件として保障される
工場立地でなければなりません。この基本的な大原則と規制条件といささかたりともおろそかにした条件によってその立地を許すことは、公害
日本列島とまで酷評せざるを得ない
わが国の
現状からも、絶対に認めることができないところであります。
しかるに本法案は、これらの基本的諸条件のごく一部について最低限の義務づけをしているにとどまるものでありまして、真の
工場立地法の名に値しないものであるという立場から反対するものであります。
その第二の理由は、本来の
工場立地は、
工場立地を規制する基本法が先に
制定され、それから
工場の適正配置を進めるべきであるにもかかわらず、
日本列島改造論によって
工場再配置政策のほうが優先し、それを正当化する意図の
もとに本法案が提出されてきているのでありまして、まさにこれは本末転倒の政策と言わざるを得ないのであります。このことは、
田中内閣が依然として国民の福祉を犠牲にして、
生産第一主義、大資本優位の政治を推進していることを裏書きするものでありまして、私たちの承服できないところであります。
反対する第三の理由は、
工場立地の規制は、公害防止、環境保全、土地利用計画その他のきびしい条件付の許可制によるべきであり、また、許可された後といえども既得権とみなさないような
制度にすべきであるにもかかわらず、本法案はこの考え方からあまりにもかけ離れており、賛成することができないところであります。
第四の反対理由は、
工場立地の規制は、住民参加の
もとになされるべきものでなければなりません。住民の理解と協力を得られない
工場立地は、社会的にはそれ自体存立条件がないということにしなければなりません。この観点からするなれば、本法案は住民参加の規定を全く欠いているものであり、意図的に公聴会の規定さえ明文化しないのみか、届け出られた
工場立地計画の公表、閲覧の規定さえもなく、住民をつんぼさじきに置こうとしているものでありまして、時代感覚のズレもはなはだしく、現代社会における住民自治の本旨にも
もとるものと言わざるを得ないのであります。
反対する第五の理由は、いま前段でも
指摘したところでありますが、住民無視の姿勢は、法第三条第二項の
企業秘密の規定に余すところなくあらわれております。
現在、
日本列島が救いがたい公害列島になった最大の原因は、今日まで
政府があらゆる産業政策上の立法
措置を講ずるにあたって、公害にかかわる部分をはじめ公害発生のメカニズムの一切について
企業秘密として聖域を設け、
企業を過保護してきたところにあると申さなければなりません。ここに政治公害といわれるゆえんもあるのであります。にもかかわらず、これらに対するきびしい反省もなく、環境破壊の実態にさえあえて目をおおい、依然として
企業秘密を擁護しようとするところに問題があります。なるほど大臣答弁では、
企業の財産権を擁護するような答弁から、公害防止に関する調査の結果として
企業秘密は含まないという一歩前進したところまで変わってきたのでありますが、しかし、公害発生のメカニズム一切について
企業秘密はないという明快な統一見解をついに最後まで聞くことができませんでした。ここに本法案の最大のガンが残っていると言わざるを得ないのでありまして、かかる考え方が存続する限りへ
わが国の公害は絶対にあとを断たないであろうし、政治公害もあとを断たないであろうことを強く
指摘して、反対の意を表するものであります。
反対する第六の理由は、本法案の重要部分である準則についても、大体の考え方を示しただけで肝心なところが不明確なままになっているということであります。また、本法案は、既存の
工場に対しては何ら手をつけていないのであります。
政府が公害防止、環境保全に対してほんとうに本腰を入れてやる気があるのであれば、当然の
措置として既存
工場に対しても本法を適用し、積極的な規制を行なうべきであります。にもかかわらず、その対策がこの法案には見ることができないことをはなはだ遺憾とするものであります。
最後に、この法案では、自己の責任で公害防止対策を講ずることができない
企業には、今日の社会が要求している社会的責任を果たすことができない無資格者として
工場立地を認めるべきでないと考えます。行政監督官庁はこの立場に立って指導を強化すべきであるにもかかわらず、この法案では、国の手厚い援助を講じてまず
企業立地を促進することになっており、これは法案全体の性格論として一貫されているところではありますが、
工場立地規制法の性格を一そうあいまいにして、この
法律をして
工場立地促進法にするものであり、私たちの絶対賛成できないところであります。
以上、幾つかの反対条件を明確にいたしまして、私の反対討論を終わります。(拍手)