○青木
政府委員 ただいま御
指摘の
事前調査を行なったにもかかわらず
公害が生じたのは何ゆえかという御質問かと思いますが、まず一般論で申し上げますと、昭和四十年から四十七年までに産業
公害総合
事前調査ということで、大気関係、水質関係、合わせて約五十
地域にのぼる
調査をいたしておるわけでございます。これらの
地域におきましては、
調査の実施後
工場立地が進展いたしましたが、これらの進展が予想されるものなどの開発の態様がいろいろでございまして、一がいには言えませんが、
通産省といたしましては、対象
地域の
環境汚染の状況を極力
環境基準の範囲内に押えるように指導したものでありまして、ある程度の効果はあがっていたものと言えると存じます。
〔
委員長退席、稻村(左)
委員長代理着席〕
しかしながら一方、御
指摘のとおり、対象
地域の周辺にぜんそく患者が発生するなどの
公害問題が生じているということも事実でございます。
これらについて
考えられる
原因を申し上げますと、まず第一に、
事前調査が指導方針といたしておりました従来の
環境基準そのものが、人の健康を保護する上で残念ながら必ずしも十分な目標値でなかったという点にあると思われます。このために、
政府といたしましては、この反省の上に立ちまして、五月に二酸化硫黄にかかわる
環境基準を改定するとともに、二酸化窒素についても
環境基準を設定したところでございます。これらの
環境基準は国際的水準から見ましても相当きびしいものでございまして、こういうことによりまして、今後人の健康の保護に万全を期することができるというふうに
考えております。したがって、今後の
調査は、これらの新しい
環境基準が維持達成できることを目標に進めてまいるつもりでございます。
それから第二には、
事前調査に基づいて行なってきました
行政指導も、最終的には
企業自身がそれをよりどころとして
操業することにより担保されるものでありまして、おのずから限界があったという点を反省するわけでございます。
第三には、従来の
事前調査は、予算上の制約もございまして
調査の精度が高められなかったことや、
調査手法の点で未熟な面があったことも私どもは認めさるを得ないと思います。しかしながら、過去十年近い経験を有しますこの
調査の手法
自体は、実用化されているものとしましては国際的に見ましても高水準にあると思われますので、これは昨年九月、日本で開催されましたOECDの大気管理グループの会合においても認められておりまして、今後さらにこの改善をはかりまして完ぺきなものに近づけて、将来こういう問題が起こらないようにいたしたいと
考えております。
それから、御
指摘の具体的地点につきまして簡単に一例をあげて申し上げますと、鹿島の関係でございますが、鹿島地区における大気関係の
調査は、四十年度並びに四十三年度に
コンビナート完成時点を目標年度とした
調査を実施しております。
コンビナート完成時点においても
環境基準を越えることのないように
事前の改善指導を実は行なったわけでございます。
硫黄酸化物にかかわります大気汚染の
現状は、昭和四十六年度までに測定されておる全測定点におきまして、従来の
環境基準には適合しているわけでございます。また、四十五年、四十六年度におきましても汚染が進行している傾向は見られておらないわけでございます。
これを若干具体的に申し上げますと、
調査対象時点を鹿島臨海工業地帯の完成時点といたしまして、現在
立地している
企業、将来
立地予定しておる
企業二十八
企業、三十一
工場のばい煙発生
施設を
調査しております。それから、
企業から
提出されました第一次案では、使用燃料の平均硫黄含有率が一・四%でありまして、風洞、模型及び電子計算機によるシュミレーション予測結果では、一時間値〇・五九二PPMの最大濃度が出現することが予測されたわけであります。このために最大重合汚染濃度が
環境基準に適合するよう各
企業の煙源の改善を指導いたしました。その結果、使用燃料の硫黄含有率は一・一%に減少しまして、また排煙脱硫装置も採用されましたために、最大重合汚染の濃度が
従前の
環境基準に適合することが確認されたわけでございます。それから、水質関係について申しますと、この
調査を四十一年度、四十三年度の二度にわたって行なっております。水質汚濁の
現状は、
生活環境項目のうちCODは、昭和四十六年に水域類型Bの海域において
環境基準を越えることがありましたが、昭和四十七年度は
環境基準を達成しております。また、油分については、ときに
環境基準を越えることがありますが、有害物質についてはいずれも検出されておらず、
環境基準を達成しております。
事前調査におきましては、共同汚水処理場の
設置、製鉄所排水の活性汚泥処理等を指導しておりますけれども、
コンビナート稼働初期におきまして
環境基準を達成できなかった理由といたしましては、まず第一には、共同汚水処理場が活性汚泥処理法でありまして、大
規模共同
施設でありますために、微生物が馴致されますまでに長時間を要したことでございます。第二には、製鉄所の活性汚泥処理
施設の稼働が予定よりもおくれたことであります。第三には、港湾建設、埋め立てのために一時的の
影響があらわれたことがございます。
これらの点は、
事前調査自体の欠陥といいますよりも、一時的、過渡的な現象でございまして、本法に基づく
企業指導の強化等によりまして、今後は十分処理し得るものと
考えております。鹿島の場合には、
事前調査の結果に基づく指導によって現在では
環境基準を達成しておるわけでございます。それからまた、水質汚濁事件といたしましては、四十六年四月に製鉄所のシアン排水による魚の大量斃死がありましたけれども、これは前述の活性汚泥処理
施設の
設置がおくれたことによるものでございまして、直ちに
対策を講じた結果、その後問題は生じておらないわけでございます。
以上のように、一例として鹿島の状況を申し上げましたけれども、今後
調査の手法をだんだん完成さしていくこと、それから将来新しい
環境基準を達成するような
行政指導をしてまいること等によりまして、過去の失敗を
未然に防ぎまして、無
公害の
工場建設につとめてまいりたいというふうに
考えております。