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1973-06-15 第71回国会 衆議院 商工委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月十五日(金曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 浦野 幸男君   理事 稻村左近四郎君 理事 田中 六助君    理事 羽田野忠文君 理事 山田 久就君    理事 板川 正吾君 理事 中村 重光君       天野 公義君    稲村 利幸君       内田 常雄君    越智 伊平君       木部 佳昭君    近藤 鉄雄君       笹山茂太郎君    島村 一郎君       田中 榮一君    八田 貞義君       増岡 博之君    岡田 哲児君       加藤 清政君    加藤 清二君       上坂  昇君    佐野  進君       藤田 高敏君    野間 友一君       松本 善明君    米原  昶君       近江巳記夫君    玉置 一徳君       宮田 早苗君  出席国務大臣         通商産業大臣  中曽根康弘君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      小坂善太郎君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      新田 庚一君         経済企画庁国民         生活局長    小島 英敏君         農林省食品流通         局長      池田 正範君         通商産業省貿易         振興局長    増田  実君         通商産業省企業         局長      山下 英明君         通商産業省企業         局参事官    三枝 英夫君         通商産業省繊維         雑貨局長    齋藤 英雄君         通商産業省鉱山         石炭局長    外山  弘君  委員外出席者         沖繩開発庁総務         局企画課長   亀谷 礼次君         沖繩開発庁総務         局調査金融課長 松岡  宏君         沖繩開発庁振興         局振興第一課長 加瀬 正藏君         農林大臣官房地         方課長     結城 庄吉君         農林省食品流通         局野菜計画課長 戸田 博愛君         通商産業省公益         事業局業務課長 田中誠一郎君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部業         務課長     服部 経治君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部日         本鉄道建設公団・         本州四国連絡橋         公団監理官   山田  宏君         建設省計画局建         設業課長    井上 孝夫君         建設省道路局企         画課長     浅井新一郎君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 六月十五日  辞任         補欠選任   神崎 敏雄君     松本 善明君   小宮 武喜君     玉置 一徳君 同日  辞任         補欠選任   松本 善明君     神崎 敏雄君   玉置 一徳君     小宮 武喜君     ————————————— 六月十四日  小規模企業助成法案峯山昭範君外一名提出、  参法第八号)(予) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 浦野幸男

    浦野委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済総合計画に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。玉置一徳君。
  3. 玉置一徳

    玉置委員 経済企画庁長官に御質問申し上げたいのですが、時間が少のうございますので、かいつまんで要領よく質問していきたいと思うのであります。そのつもりでお答えを願いたいと思います。  先般、OECDおいでになりまして、世界的なインフレ各国とも悩んでおるということをつぶさに見ておいでになったわけでありますが、そこで話し合われた中で、世界的にどういうことで悩んでおって、原因は一体どういうことか、それについて世界的にお互いに協力をすべきものはどういうことかという一つの要点と、わが国が世界的なインフレに対して対処すべき役割りというものは具体的に何か、特にアメリカのドルのたれ流し等について要求すべき点があればその点もお聞かせ願いたい、こう思います。
  4. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 昨年のOECDのおもな問題はむしろ経済成長にあったわけでございますが、今年の問題は、ただいまお触れいただきましたように、インフレーションの問題であったわけでございます。経済成長率について見ましても、世界的には、一九七一年は三・三%でございまして、総合物価上昇も五・三%という程度でございましたのが、七三年の上期になりますと、成長率は平均して八%、そのかわり物価のほうも七%ないし九%になってまいりましたが、最近は、さらに大幅な物価上昇が見込まれておるわけでございます。  これはきっかけといたしますと、ソ連の穀物不足、それに伴います船賃の増高というようなものがきっかけになったと思われますが、やはり何と申しましても、全体に経済成長が非常に高くなって、需要が非常に増加した、それに対する供給が十分でないというような点があるように思われるわけでございます。  今年のOECDにおきます各国の演説の中で幾つかの類型があったように思われるのでありますが、一つ類型は、アメリカイギリスのいわゆる所得政策、これに伴ういろいろな問題点の披瀝がございました。その中で、イギリスのハーバーという大蔵大臣は、われわれの所得政策は、彼は成功したと言っておるわけですが、成功した理由の一つは、例外を置かなかったことである、あらゆるものについて、同時に強力にこれを進めたということであるということを言っておったわけでございます。それに対しまして、フランスあるいは西ドイツというようなところは、やはり総需要抑制ということを考えていかなければならない、特に総需要の中の超過需要を圧縮するということにつとめなければならぬけれども、それには国民協力が必要だ、巨大な利益を得るものと、それから地方財政ということを言っておりましたが、国だけでなくて、地方財政協力を特に必要とするというふうな考えを述べられておったわけでございます。  全体といたしまして、私どもも強く主張いたしたのでありますが、これからの政策のおもな問題点として、インフレの抑圧、インフレを終息さす、国民生活を安定させるということを非常に大事な目標に考えるということ、これはコミュニケの中でもハイプライオリティーを置くという表現になって採択されたわけでございます。  それから、総需要抑制ということでは、財政、ことに公共事業の支出、そういうような面での抑制政策と、それから金融政策、これは公定歩合引き上げとか、あるいは預金準備率引き上げ、あるいは貸し出し準備率引き上げということもフランスあたりでは言っておるわけでございますし、それから税収がございますとそれをある期間凍結する、そういうような考え方も披瀝されたわけでございます。  そういう、いわゆるプロパーミックス、そういうポリシーを適当にミックスする、そのほかに自由化対策であるとか、あるいは競争原理を十分に発揮させる、いわゆる寡占をさせないとか、あるいは労働対策であるとか、そういうものをかみ合わせていくいわゆる政策多様化が必要である、そういうようなことがおもな論議の取りまとめとして出てまいったわけでございます。  ことに、ヨーロッパの各国は非常に境を近く接しておるわけでございますので、一国のインフレーションが直ちに他国インフレに影響する。ことに大国の責任というものが非常に小国——小国ということばはなんでありますが、大と小と分けると小国になるわけですが、小国側から強くそれを言われたわけでございます。  それから、そういうことのほかに、何といってもいまの通貨問題全体の過剰流動性と申しますか、そういう問題について国際的な協力が必要である。いまの為替相場につきましては、フロートしておるこの現状の比率というものはおおむね妥当ではないかということが言われたわけであります。それから貿易政策で、東京ガット総会がこの秋あるわけでございますが、東京総会におきまして、各国関税引き下げ等について具体的な手段、方法を用意して、東京総会からいろいろなそういう話し合いをするようにしょう、こういうことも合意されたわけであります。東京総会における期待は非常に大きいというふうに思ったわけでございます。  やはり経済の問題というのは、世界じゅうが協力していかなければいけない。経済の問題では一人が勝って他がみんなやられてしまうというような、そういうことはないので、みんなが協力していかなければならぬ。その意味において、コンフロンテーションということはもう過去の問題で、これからはコーポレーションの時代である、そういうことが一同の合意した点でございます。  日本として協力すべき点は、やはり国内の問題がまず第一で、日本としては日本インフレーションを退治するために全力を尽くす、そうして国際的に日本インフレーションというものをもとにして輸出を伸ばすとか、そういうようなことで他国に迷惑をかけないようにするということが大切であるというふうに考える次第でございます。  簡単でございますが……。
  5. 玉置一徳

    玉置委員 お伺いしたいことはたくさんあるのですが、しょせん世界的なインフレの中で日本もそれに対処しながら、しかも協力しながら国内インフレを克服していかなければいかぬ。五月の前年同月比が卸売り物価で一二・一%、一〇%こえれば悪性インフレとも言い得るというのが通説でありますので、思い切った手を打っていかなければならない、現下政治の一番大きな課題だと思います。  そこで、去年の十二月以来、金融政策は、公定歩合引き上げ等いろいろ手を打たれておりますのは御案内のとおりであります。ところが、金融政策だけ先行しておる、総需要抑制ということが片一方に伴わなければ金融政策だけではインフレの克服はでき得ないということを考えますと、民間投資等抑制行政指導等でおやりになっているのは新聞で見ておりますが、思い切って政府態度をやはり明確に民間にも示すべきである。こういう意味で、財政投融資のうち少なくとも一番大きな需要を食います道路もしくは新幹線あるいは防衛産業等需要抑制の姿をやはり政府みずから見せるべきだと思いますが、物価担当大臣として、そういうことを献言する意思があるかどうか、御検討になる意思があるかどうかをお伺いしたいと思います。
  6. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 仰せのとおり、金融政策というものは幾つかとられておるわけでございますけれども、これはやはり実際に効果をあらわすのに相当時間のズレがあると思います。まあ半年くらいというのが普通いわれているところでございまして、その意味で十二月に手を打っておれば六月ごろにあらわれるということでございますが、全体がずれておるという批評もあるわけでございます。一方政府は、金融政策だけではいけないというふうにもちろん思っておるわけでありまして、財政の時期調整ということで、先般上期の公共事業投資を五九・六ということにいたしたわけです。私の個人的な考えを申し上げますと、実はもっとやってもらいたいと思っておるわけでございますが、諸般の公共事業施行の点からいいましてそういったことになったわけで、これは前年に比べますと、前年は七三%ばかりやっておるので、それに比べれば五九・六というのは非常に締めたということになるわけでございますが、三年前ですと六二%ぐらいでございますから、それに比べればという意見もあるわけでございます。最近の情勢にかんがみまして、もっと施行率を切り詰めようというふうに全般として考えておるものでございますから、さらにこれを詰めたらいいということになると思います。ただ、予算が通過して問もなくそういうことをやってという議論も一方にはございますので、野党の皆さんの御協力をいただきますことはたいへん願わしいわけでございます。  それから、アメリカニクソン大統領が非常に大胆な提言をしておるわけでございますが、やはり私どもも、いま玉置委員のお述べになりましたような、公共事業の思い切った繰り述べ、時期調整ではなくて繰り延べ、あるいは新幹線工事等を含む問題も思い切った手を打って、燃え盛る購買欲の火の手に水をかけるということは、私は非常に有効であると存じまして、お考え十分承って善処したいと考えております。
  7. 玉置一徳

    玉置委員 私はこれは緊急質問の本会議場でもそのことを申し上げておいたのですが、あの膨大な予算を組もうと思って準備した当時と状況がうんと変わってきております。前期の分を抑制していただいた当時よりもなおいまは深く憂えなければいかぬ時期でありますので、政府みずからがその強い態度を示すことが民間への行政指導が非常にしやすくなるんではないだろうかということを痛切に感じますので、ひとつ物価担当大臣として御検討いただきたいと思うのです。  その次に、このように世界的なあれになってまいりますと、一次産品の出塁局がよくないような感じがいたします。自由主義経済の中で不可能に近いほどむずかしいことではありますけれども、総需要をどう抑制するかということを結局は考えざるを得ないところに追い込まれることは必至であります。そういう点につきましても、原材料、資材というものを国民の必要なところへ回すというくふうがあってしかるべきだ、そこにおのずから優先順位がつけられるべきじゃないだろうかというところまで来つつありますので、あらかじめそういうものを御検討になるお考えがあるかどうか、お伺いをしたいと思います。
  8. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 OECD会議の中でも出たのでございますけれども、総需要抑制する場合に、統制することをできるだけ避けたいということでございます。私もさように思っておる一人なのでございますが、そこで願わしいことは、上からの統制ではなくて、物をつくる方面、使う方面、それ自身からの話し合いによる自己規制と申しますか、そういう形へ持っていけるのが一番望ましいのでございまして、そういう方法をいま考慮中でございます。
  9. 玉置一徳

    玉置委員 私は、これは自由主義経済の破綻にも連なっていく問題だと思うのです。したがって、いまのお話のように、そのこと自体が国民の非常な理解協力のもとでやらなければ、いまこの自由主義経済ではでき得ないとすれば、この実態を国民によく周知徹底して御理解をいただき、同時に政府が、先ほど申しましたように、思い切ってみずからすべきことを先にしていくという態度が非常に大切だと思うのです。ものが混乱におちいってからやるんでは非常に効果が乏しい。先ほど言いましたように、財政的にかなり放漫な予算であったことも事実でありますので、当時としてはやむを得なかったとしても、事態が変わってきたのでありますから、実行予算に関しては、物価の問題を考慮し、総需要を考慮して思い切った手を打たなければいかぬということを申し上げておったのは、その意味であります。  そこで、私は、与党だけ、政府だけにものをやれということは、ほんとうは無理だと思います。国民全体もやはりこのことを理解し、協力しなければできないことであり、そのためにはいろいろなテレビの放送等にも着手されておるわけでありますが、野党協力も求めて、一点、二点に集中して、まず目玉商品をつくって、その目玉だけはやり遂げるんだというような気持ちがない限り、このことはなかなか効果があがり得ない、かように思うのです。その意味で、打つべき手はどういうものがあるかお考えになっておれば案を提示していただきたい、お考えを示していただきたい、こう思います。
  10. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 仰せのとおり、物価の問題というのは全国民的な問題でありまして、私がよく申すのでございますが、国民は、生産者であろうとあるいは流通業者であろうと、最終的には消費者でございますから、消費者の問題というのは全国民の問題である、したがって、これは一党一派の問題ではございませんで、やはり願わくは超党派的にこの物価の問題を考えていかなければならぬ、こう思っておる次第でございます。そういう意味で、私はこういうふうに思うのでございますが、いかがでございましょうか。  日本経済というものは非常に成長してまいったわけでございますが、この辺で成長経済から福祉経済へ切りかえ、福祉社会を建設しよう、こういうことになっておるわけでございますが、国民福祉考える場合には、やはり国民所得をふやしていくということになります。国民所得がふえるということは、国民消費がふえるということになります。そこで腹一ぱい消費するんだ、それに生産がついてこないのはけしからぬという考え方でまいりますと、どうしても物価は上がってしまうわけでございます。  そこで、やはり節度ある消費と申しますか、浪費をしない消費と申しますか、私はきわ立った、世間の注目を引くために二宮尊徳精神などということを言っておるわけでありますけれども、そういう消費考え方の切りかえ、大量生産大量消費によって誘導するような考え方を切りかえることがこの際必要なんではないかというふうに思っておるわけでございまして、いま玉置委員のお考えというものは、頂門の一針としてよく私どもとして承って善処したい点である、こう思っておる次第でございます。
  11. 玉置一徳

    玉置委員 通産大臣おいでになりましたので、約束どおりここでやめなければいけませんので、最後に一点だけお伺いします。  経済企画庁長官にお伺いしたいのですが、土地問題、土地は公のものであるというので、土地に関しては非常にやかましい議論が目下展開されつつあるわけでありますが、一つだけすぐにでもできる問題ですが、私は、その理論構成その他のことは別にいたしまして、大土地会社土地を買います、それから造成して売ります、そこに相当な貯蔵を持っておる。幾らで買ったかということもすぐわかるわけですが、大土地会社に関してはそういうものを毎年報告をしなければならないというような義務づけをするだけでもいろいろな問題点が全部出てくるんじゃないだろうか。そこで、あまりに膨大な八年分、十三年分というような手持ちもないようなことにもなるでしょうし、まずそのことからだけでも始めたらどうかと思うのですが、経済企画庁長官、どうお思いになりますか。
  12. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 土地会社というのはいろいろな形態において存在するのでございまして、いまお話にございましたような土地を専門にやっておる、土地造成をしておるのもございますし、それから私鉄のようにサイドビジネスでありながら、実際はその経営をカバーしているというような形態もございますし、定款をちょっと変えて、それだけで本来の業務と違う土地売買をやっておるのもございますし、いろいろな形態がございますわけで、これがみんな土地投機になり、一般の市民の住宅への夢を奪っておるというのは現実なんでございまして、何とかそれを適正な方法で吐き出してもらわなければならないと思います。ただその場合、どこへ引き金を引くかという、そのトリガーの的をどこに持っていくかということが非常にむずかしい問題だと思います。ただいまの玉置委員の御指摘の点はよく私も承りまして、建設大臣とも相談をしてみたいと思います。
  13. 玉置一徳

    玉置委員 まあとりあえず小さいものは別にしまして、大きな土地をあれしたものだけでも、そのことから始めることが肝心じゃないか。時間もございませんので質問を終わりますが、ひとつ十分お考えをいただきたい、こう思います。  以上で質問を終わります。
  14. 浦野幸男

  15. 野間友一

    野間委員 私は、通産大臣質問をしたいと思います。  通産大臣は、過日OPEC諸国、これはイランを中心として訪問をされたわけですが、この訪問された目的、それからイランにおいて行なわれたおもなことについて、簡単にまず御説明を願いたいと思います。
  16. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 産油国を歴訪いたしまして、友好親善の実をあげるためでございます、内容は、経済協力及び両国親善関係を促進しよう、そういうことでございました。
  17. 野間友一

    野間委員 通産大臣は、十三日の参議院の本会議で、イランでのいわゆる王制発言の問題につきまして、遺憾の意を表明されました。また、当委員会においても同趣旨の表明があったわけでありますが、日本のいわゆる象徴天皇制、これとイラン王制、これを同視するということはどこに間違いがあったのか、こういう点について御所見を承りたいと思います。
  18. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は先方の要人との対談で、友好親善の実をあげよう、そういうことに非常に熱を入れまして、そういう本旨で申し上げたのでございますけれども、まあ両国が皇室及び王室をいただいておる、また古い文化、伝統を持っておる、そういう共通性を強調いたしまして、その親善雰囲気を盛り上げようとしたものでございます。憲法論から申しますと、両国憲法には相違がございます。日本主権在民のもとに象徴天皇制をいただいておる国で、独特の国柄でございます。その点はよく認識しておるところでございます。
  19. 野間友一

    野間委員 それでは、この点について同僚の松本善明委員から関連して質問をしたいと思いますので、お許しいただきたいと思います。
  20. 浦野幸男

  21. 松本善明

    松本(善)委員 私は、通産大臣のいわゆる王制発言というのが国務大臣としての政治姿勢の問題としてたいへん重要な問題だと思いますので、また、だからこそ通産大臣は遺憾の意を表されたのだと思いますので、その点について若干お聞きをしたいと思います。  イランは、イラン憲法によりますと、国務大臣の任免を含む行政権国王行使をし、法律制定には国王の署名が条件となっております。また、陸海空軍最高指揮権国王に属し、宣戦講和国王権限となっております。国王は絶対的な権限を持っておって、明治憲法のもとでの天皇統治権総攬者として立法、司法、行政権限を掌握をし、陸海軍統帥権宣戦講和権限を持っていたのとむしろ酷似をしております。このイラン王制日本象徴天皇制とをともに王制として、双方の国の共通点をここに求め、この点を友好のきずなとする発言をしたということは、わが国憲法の規定します国民主権精神や国政に関する権能を全く有しない象徴天皇に関する憲法の条項について通産大臣が非常に無理解であったとしかいえないかと思いますが、この点に関して通産大臣の御見解を伺いたいと思います。
  22. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 憲法論をやった場所でございませんので、ともかく両国友好親善雰囲気を盛り上げよう、そういう場で、そういう話はわりあい短くて、大部分は両国経済協力の問題を一時間近く話したのでございます。両国憲法上の差は私もよく存じておるつもりでございまして、日本主権在民下象徴天皇制をいただいておる独特の国で、天皇国事行為を内閣の助言と承認でやるのみにとどまる、あとは象徴としての地位をお持ちになる、そういう国であると思います。主権在民でございます。  イランの国も、たしか憲法二十六条で、主権国民に発するといって、これも主権在民の国であると思います。「国家権力は、人民より発する。憲法は、右の権力行使方法を定める。」ただし、立法権は、法律制定及び改正にあるけれども、「国王及び下院並びに上院から発する。」それから行政権については、国王に付託される。「司法権は、教法に関する事件については、教法裁判所に属し、市民法に関する事件については、司法裁判所に属する。」ただし、ペルシアの主権は、三十五条に「神の恩寵によって、人民により国王たる者に授与された信託である。」こういう、これも独特の性格を持っておる国でございます。しかし、一般にイランの場合は帝制であるといわれておりますが、主権在民という点は、国民がわりあい知らない部分ではないかと思うのです。  最近、法制局に聞いてみますと、主権在民でない、在君の憲法を持っている国というのは非常に少なくて、エチオピアとか、ネパール、ブータン等々であると言っておりました。あとはオランダでもベルギーでもその他の国でも、たいてい主権国民にある。その上に王とかキングとかいうものをいただいている、そういう体制が非常に多いということであります。  日本は、しかしそれらの国ともまた変わっておりまして、天皇権限は、憲法に規定されているように、内閣の助言と承認によって国事行為を行なう、そういうふうになっておって、独特の体制を持っておるものと思います。そういう点はよく認識して、この日本憲法を公務員として私は一貫して順守していくつもりでございます。
  23. 松本善明

    松本(善)委員 イラン憲法が、「国家権力は、人民より発する。」ということを規定しておることは事実でございますが、先ほど私が申しましたように、国王は非常に強大な、明治憲法における天皇と酷似するぐらいの強大な権力を持っております。通産大臣は、このイラン国民主権の国である、そういう点においては日本と同じだ、こういう認識でおられるのでありますか。
  24. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 憲法論はこれは学者にまかしてお願いすることで、私はとやかく私の議論を申し上げる立場にございません。ただ、憲法の条章にこうあるということを申し上げたのでありまして、まあ国柄をどういうふうに判定するかということは、これは法制局や学者の論議に待ちたいと思います。
  25. 浦野幸男

    浦野委員長 松本君に申し上げます。  野間君の関連質問でありますので、この一問で関連を終局していただきたいと思います。
  26. 松本善明

    松本(善)委員 理事会では、私も聞いておりましたが、野間委員質問時間の範囲内で質問をするようにということでございます。これは質問をさしていただきたいと思います。それでなければ、理事会をあらためて——理事会の決定ではそういうことになっていると思いますので、いまの委員長の御発言は私は了承しかねると思います。質問を続けさせていただきたいと思います。
  27. 浦野幸男

    浦野委員長 ちょっと待ってください。四十分という時間を割り当てまして、野間君から質問をいただいて、そうして松本さんの関連質問を許したわけであります。しかし、主体の質問者よりも関連質問が多いということは、これは関連にはならないわけでありますので、また野間君から質問を受けて、また関連をされるのはけっこうでありまするが、関連質問は適当に処理していただきたいと思います。
  28. 松本善明

    松本(善)委員 通産大臣は六月十一日、東京丸の内東急ホールで、象徴天皇をいただいた二千年の歴史を強調した発言をされました。このことは報道されております。また、六月二十四日号のサンデー毎日では「わたしは、日本天皇は、むかしから今日まで本質的性格はいまの象徴天皇的存在であったと思っている。」と述べられ、天皇が政治の実権者として君臨をした後醍醐天皇とか、明治憲法時代が誤っていたという考えを述べておられます。あなたの日本天皇についての考え方をあらためて伺いたいと思います。
  29. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は、憲法学につきましてはそれほどまだ権威でもありませんし、大学時代勉強し、憲法調査会で勉強したところでありますが、私なりの個人の主観的確信というものは大体そういう考えでありまして、日本天皇の歴史的事実、それから現在の憲法下における天皇の地位や意義というものをそういうふうに私は解釈しておる。大体これは松本国務相が説明した象徴天皇論と同じであろうと思っております。
  30. 浦野幸男

    浦野委員長 もう一点だけ許します。
  31. 松本善明

    松本(善)委員 私、聞きまして、また野間委員に聞いてもらって、そういうふうにして進めたいと思います。  通産大臣は、六月二日の大阪中之島中央公会堂で、織田信長が出ても、豊臣秀吉が出ても、徳川家康が出ても、藤原氏が出ても、いざというときに国がまとまったのは天皇というものがあったからだ、天皇家はすべての勢力の上に超越し、さん然として上に輝いて、国民精神的中心にある、そういう天皇があるから、佐藤内閣が罵倒され、田中内閣が何だかんだといわれても、天皇というものが上にあるから、その大きな求心力で日本はもっているという発言をしておられます。  この発言や、象徴天皇制二千年の発言は、いずれも近世、中世の天皇と現行憲法のもとでの天皇を同視しているわけであります。  近世、中世の天皇は、あるいは関白が置かれ、太政大臣、将軍が置かれなどいたしましたけれども統治権の源は天皇にあるとか、どんな場合にも名目的な統治権を持っていたのであります。これは現在のように統治権を全く持たない天皇とは本質的に異なっております。国民主権のもとでの象徴天皇制統治権を持った天皇を同視するということは、イラン統治権を持った国王日本象徴天皇制を同視するという、同じ誤りをおかしているのではないかというふうに思うわけであります。  統治権を持っている天皇、持っていない国王あるいは天皇、これについての区別が通産大臣が明確でなければ、この間、王制発言について遺憾の意を表されましたけれども、これは全く形式的なものであって、本質的に通産大臣国民主権を軽視しているという思想は何ら変わっていないということにならざるを得ないと思う。この国民主権との関係で通産大臣はどういうふうに考えているか。明治以前の天皇と、いまの国民主権のもとで統治権を持たない天皇とをどのように区別して考えているか。この点と、象徴天皇二千年という発言との関係を明確に説明していただきたいと思います。
  32. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 象徴天皇二千年というのは新聞がつけたヘッドラインでありまして、私は、日本のいままでの歴史を私なりに勉強してみまして、やはり日本民族のばくばくたる、地下に脈打つような国民の世論の支持があったから、天皇制というものは続いてきたのだろう、いわゆる戦前の天皇制、徳川以前の天皇制、そういうものは続いてきたのだろう、そのように思います。ですから、藤原時代におきましても、自分のむすこを天皇にするということは、おそれてできなかった。そのかわり、自分の娘を女御に入れて、そしてできた子供が天皇になるということはありました。だから、自分のむすこを天皇にするというようなことは、もしそれをやったら、国民の非常な反発を受けるものだから、できなかったのだろうと思いますし、それからやはり頼朝が守護、地頭を置いたときにも、あれは勅許を得て置いておるということでございます。  そういうふうにして、やはり日本国民は、武将といえども天皇というものは上にあるものだという観念があったのではないか。武将は昔は北面の武士と称して、殿上人にはなれなかった。軍刀を握っていた連中は、つまり殿上にははいれない。そうすると天皇というものは、そういう武というような、軍刀を握る存在ではなくて、それよりもっと高次の、社会的にもあるいは文化的にも、そういうすべてをまとめるような、上にあったのではないかと私は思います。  その後、戦国時代でいろいろ皇室が式微したことはありますけれども、やはりそういう増鏡とかいろいろな文書もあったりして、間歇泉のようにときどきふき出す。それで織田信長が天下を統一するときには、やはり彼は銭四千貫でございましたか、ともかく天皇に献納して全国民の前に勤王の意思と微意をあらわしてやった。ともかく京都にかけのぼるということが天下を制覇することの象徴的なことのように思われておった。今川義元もそれを心がけたし、武田信玄もそれを心がけたと思うのです。それで、織田信長は京都へかけのぼらんとしたが、本能寺の変で破れた。秀吉が次いでこれをやって、そして関白とかなんかになりましたが、しかし、やはり天下安堵というのは、聚楽第に後陽成天皇を招待して、そして領土安堵というようなことで戦国時代が終わりを告げたというフィナーレの儀式みたいな宴会をやったのではないかと私は思います。  しかし、徳川時代になってから、公家諸法度であるとかいろいろなものをつくりまして、天皇の地位というものを徳川幕府的にある程度の制約を置いたことは皆さん御存じのとおりです。しかし、それがまた水戸学とか本居とか賀茂真淵とか、そういう国学の思想の復活があったりして尊王攘夷思想が幕末に出てくる。明治維新が行なわれた。そういうところを見ると、やはり現代と昔は違いますから、象徴天皇という意味も、法学的概念と素朴な気持ちとは、また社会学的な概念とは違うわけであります。したがって、昔の観念と今日の観念を今日の観念で律することは非歴史的であります。一般的にいって、そういう情緒的な基礎の上に天皇というものは支持されてきた、そういうことを指摘したものであります。
  33. 野間友一

    野間委員 そうしますと、いまのお話をずっと伺っておりますと、日本は二千年来象徴天皇制が続いてきた、こういうふうに私は受けとめたわけですね。こういう考え方に立ちますと、明治憲法から新しいいまの憲法制定によって、国体、言うなら国のあり方ですが、これは根本的な変化をしたのではない、こういう御認識なのかどうか、ひとつその点についてお伺いしたいと思います。
  34. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点の議論はいろいろ主観的に分かれるところで、憲法国会において国体は変革せりやいなやということでずいぶん議論があって、こんな厚い本が何冊もできています。そういう憲法的論議については、この場所で申し上げることは適当でないと思いますので、どうぞ御遠慮させていただきます。
  35. 野間友一

    野間委員 大臣お話を聞いておりますと、どうもいま申し上げたように私は理解しました。いろいろ論議はあります。ありますけれども大臣はどのような御認識に立っておられるのか、その点について私のほうは質問しておるわけです。
  36. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 やはり明治維新前も、明治憲法下も、今日も、国民の敬愛の的にあった、そして国民の支持があったから天皇はずっと続いてきたのだ、そういう厳然たる事実は私はあると深く認識しております。
  37. 野間友一

    野間委員 そうでなくて、国体そのものが変わったのかどうかという点についての大臣の認識なんです。いわゆる国体というのは、私ども考えますのは、従前のいわゆるすべての統治権天皇が持っておったそういう国の体制、さらに現在の憲法のいわゆる国民主権の原則、ここに私は根本的に明治憲法といまの憲法との違いがあるというふうに理解しておるわけですね。その点について国体が変わったというふうに理解されているのか、あるいは依然としてずっと変わってない、こういうふうに理解されておるのか、ひとつ御認識のほどをお聞かせ願いたいということです。
  38. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 国体論というものは、一体国体とは何ぞやということから始めますとやはり四、五十分かかって、あなたの時間が切れてしまうおそれがあると思うのです。それで、憲法調査会のとき及び憲法国会のときのものをどうぞよくごらんになってくださいませ。あのとき野坂参三さんはいまの憲法に反対されまして、おそらく象徴天皇にも反対し、憲法九条にも反対し、憲法全体に反対したから、野坂さんや志賀さんは徳田球一さんとともに反対投票されたのだろうと思うのです。それにはそれなりのお考えがあったと思います。しかし、それはそのときの速記録をよくごらんいただかないとわれわれも理解ができないところがあります。つまり、そのときその時点における論議、それから国体論というものは、その定義、そのときの情勢というものによっていろいろ変わり得るのであって、定義をどうとるかということによって千差万別に判定は下し得るわけでございます。ですから、ここで一義的に申し上げることは、時間をとりますので遠慮さしていただきます。
  39. 野間友一

    野間委員 先ほど答弁の中で野坂さんの話が出ましたけれども、それは質問と関係ありませんので、私はその答弁は不当だと思います。それはそれとしても、時間の関係で次に進めますけれども、どうも大臣考え方をお聞きしておりますと、天皇中心主義、国民主権はどこかへいっておるのじゃないかという感じを非常に深くするのですけれども、いかがですか。
  40. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は、明治憲法というものは、伊藤博文が勉強して、研究して案文をおつくりになったということであると思いますけれども、やはり三権を集中的に持つといういわゆる明治憲法的元首というようなものは、私らが考えている日本天皇と長い間の歴史を見ると違うと思うのです。それで今日のいわゆる象徴天皇になったということは、長い伝統における敬愛の的であった天皇に近づいた、私はそう思って歓迎しているわけであります。
  41. 野間友一

    野間委員 同じような観点からの質問ですが、天皇が国の総攬者であった時代から、天皇統治権を全く失って国民主権者になったこの現在、先ほども申し上げたように、国の総攬者から今度は国民主権……(発言する者あり)私が聞いておるのは政治姿勢です。国体、国のあり方そのものは変わってない、こういうふうにお考えになるかどうか、さらに重ねてお聞きしたいと思うのです。
  42. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いまよく聞こえなかったのですけれども、もう一回ひとつ御説明ください。
  43. 野間友一

    野間委員 天皇が国の総攬者であった時代、それから天皇統治権を全く失って国民主権者となった現在……。     〔「何の関連がある、そういうことは内閣委員   会で聞け」と呼び、その他発言する者多し〕
  44. 浦野幸男

    浦野委員長 静粛に願います。
  45. 野間友一

    野間委員 この違いですね。この中でも国体、国のあり方そのものが同じとお考えになるか、あるいは変わったというふうにお考えになるか、そういうことなんです。
  46. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私ふしぎに思いますのは、日本共産党綱領というのを読んでみますと、「君主制を廃止し、」と書いてある。これは一九六一年七月二十七日の日本共産党綱領です。そうすると、日本共産党は、日本は君主制であるというふうにお考えになっておられるのか。そういう文章はほかのところにもございまして、天皇を「法制的にはブルジョア君主制の一種とした。」こういうふうにおたくの綱領にもお書きになっておる。すると共産党は、やはり日本王制、つまり君主制というのは法律的用語で、一般的にはそれは王制と同じだと法制局あたり言っておりますけれども、そういうふうにお考えになっておるのか。私たちはやはり主権在民象徴天皇という独特の体制にきた、そう認識しておるのであります。
  47. 野間友一

    野間委員 では、その点に関連して松本委員のほうから……。
  48. 浦野幸男

    浦野委員長 きょうの議題は、通商産業基本施策に関する件、経済総合計画に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めておりますから、そのつもりで御質問をお願いいたします。
  49. 野間友一

    野間委員 ですから私のほうは、所管大臣としての通産大臣政治姿勢、それをお伺いしておるわけです。ここでいまの問題に関連して、松本委員のほうから関連質問を行ないます。
  50. 浦野幸男

  51. 松本善明

    松本(善)委員 これは通産大臣国務大臣として通産行政を行なわれる上で非常に重要な政治姿勢の問題であると思いまして私ども質問をしておりますので、御了解いただきたいと思います。  いま共産党の綱領について通産大臣が触れられましたけれども、社会学的にこれをどう見るかということと、国民主権について通産大臣がどう考えているかということの質問は全く別問題。私は質問にお答えいただきたいというふうに思うわけであります。  通産大臣象徴天皇制を守るというふうに言っておられるのでありますが、憲法第一条によりますと、天皇象徴たる地位は、「主権の存する日本國民の総意に基く。」ということが明記されております。これは国の主権者であります国民の総意という法的基礎を失えば、天皇の地位は変動せざるを得ない、これは学説上も通説といっていいと思います。天皇象徴たる地位すらも国民主権のもとにある。通産大臣はそういう認識でおられるかどうか、この点を伺いたいと思います。
  52. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 憲法第一条のとおりであります。
  53. 松本善明

    松本(善)委員 ちょっと恐縮ですが、もう一度お願いいたします。
  54. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これは憲法第一条の示しているとおりであります。
  55. 松本善明

    松本(善)委員 田中総理大臣は、六月七日の衆議院の内閣委員会で次のような発言をされました。  陛下が国政を左右される、国政に影響のあるような御発言をなされることは全くありません。政策に対して反対、賛成というような立場をおとりになるということは全くないということだけは、この際、明確にいたしておきます。私たちは、旧憲法時代を思い出してもそうでありますが、お相撲をごらんになられても、天覧相撲が行なわれても、いずれが勝っても拍手をなされないという、非常に中立的なお立場であるということは旧憲法時代から一貫しておるのであります。でありますから、もちろん新憲法になって陛下がそのようなことをされるはずはないということは、私自身の経験に徴しても、憲法上も当然でありますし、事実の上においても信じておるのであります。  こう発言をされました。十三日の参議院の本会議田中総理は、戦前の天皇について、明治憲法時代の天皇について議論したのではないというふうに答弁をされましたけれども、速記をとってよく読んでみますと、明白に総理は、明治憲法時代も一貫して天皇が国政に関与することはなかったという趣旨を述べておるのであります。いま長く引用いたしましたのはその趣旨であります。  あなたは、天皇統治権を持っていた明治憲法時代は誤りであるという考えを明らかにしておりますが、明治憲法時代と現行憲法のもとでの天皇を同視をする総理のお考えと同じか違うのか、この点をお聞きしたいと思います。
  56. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は、私の個人の歴史観及び日本の国家観というものを申し上げたのでありまして、総理のことはどうぞ総理にお聞きください。私は、私の考えを申し述べて、それは以上いままでるる申し上げたとおりでございます。
  57. 松本善明

    松本(善)委員 内閣の中で国務大臣と総理大臣との考えが違っておるということはたいへん重要な問題でありますので、その点について簡潔に違うのか同じかということだけお答えいただきたいと思います。
  58. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 総理大臣の御発言はどうぞ総理大臣にお聞き願いたいと思いますが、総理大臣も、一貫していまの憲法主権在民のもとにおける象徴天皇制を守っていくということも言っていらっしゃる。総理大臣は、明治憲法と現在の憲法の相違はまた明確に認識していらっしゃる。これだけ申し上げれば明らかであると思います。
  59. 松本善明

    松本(善)委員 お答えが十分ありませんので次へ移りますが、天皇は、日本憲法……
  60. 浦野幸男

    浦野委員長 松本君、新しい議題を出すのですか。
  61. 松本善明

    松本(善)委員 違います。これに関連しての話です。  日本憲法前文によりますと、「日本國民は、正當に選擧された國會における代表者を通じて行動し、」とか、「そもそも國政は、國民の嚴粛な信託によるものであって、その権威は國民に由來し、その権力は國民の代表者がこれを行使し、」などと民主主義的原則を明らかにしておりまして、天皇が国を代表するような考え方というのは、この日本憲法には片りんもありません。  通産大臣に伺いたいのでありますが、天皇わが国国民を代表することができると考えておられるかどうか。できるとするならば、その憲法上の根拠をお聞きしたいと思います。といいますのは、いま、中曽根発言も含めまして、この憲法について内閣やあるいは閣僚がどう考えているか、きわめて重大な問題として国民の注視の的になっておりますので、明確にお答えをいただきたいと思います。
  62. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日本憲法によりますと、「日本國民は、正當に選擧された國會における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸國民との協和による成果と、わが國全土にわたって自由のもたらす恵澤を確保し、政府の行爲によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が國民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも國政は、國民の嚴粛な信託によるものであつて、その権威は國民に由來し、その権力は國民の代表者がこれを行使し、その福利は國民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。  日本國民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覺するのであつて、平和を愛する諸國民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、壓迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる國際社會において、名譽ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の國民が、ひとしく恐怖と缺乏から免かれ、平和のうちに生存する權利を有することを確認する。……(松本(善)委員質問に答えていただきたい」と呼び、その他発言する者多し)ちょっと黙って聞いてください。大事な憲法を読んでいるのですから……。「われらは、いづれの國家も、自國のことのみに専念して他國を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に從ふことは、自國の主権を維持し、他國と封等関係に立たうとする各國の責務であると信ずる。  日本國民は、國家の名譽にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。    第一章天皇 第一條 天皇は、日本國の象徴であり日本國民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本國民の總意に基く。 第二條 皇位は、世襲のものであって、國會の議決した皇室典範の定めるところにより、これを繼承する。 第三條 天皇の國事に関するすべての行爲には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。 第四條 天皇は、この憲法の定める國事に關する行爲のみを行ひ、國政に關する權能を有しない。   天皇は、法律の定めるところにより、その國事に關する行爲を委任することができる。 第五條 皇室典範の定めるところにより攝政を置くときは、攝政は、天皇の名でその國事に關する行爲を行ふ。この場合には、前條第一項の規定を準用する。 第六條 天皇は、國會の指名に基いて、内閣總理大臣を任命する。」これはなかなか大事な条文であります。「天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。」(松本(善)委員「代表することができるかどうかと聞いているので、その点を明確にしていただくようにお願いいたします」と呼ぶ)第七條におきましては、「天皇は、内閣の助言と承認により、國民のために、左の國事に關する行爲を行ふ。 一 憲法改正、法律、政令及び條約を公布するこ  と。 二 國會を召集すること。 三 衆議院を解散すること。 四 國會議員の総選擧の施行を公示すること。 五 國務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認證すること。 六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認證すること。 七 榮典を授興すること。 八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認證すること。」それから第九に重要な「外國の大使及び公使を接受すること。」それから「十 儀式を行ふこと。」こういうことがございます。  そこで、いろいろ学界に論がございまして、高柳賢三先生は、憲法国会におきまして、天皇は外国使臣を接受したりする外交権能の一部を不完全ながら持っておる、そこで、外交的には天皇は国を代表する性格を持っておる、そういうように高柳先生はおっしゃっておりました。私それはあとで憲法調査会で拝読をしたわけであります。学界の通説を調べてみますと、以上朗読しました前文並びに一条以下の条文等から見まして、天皇は対外的には国を代表する性格を持っておる。対外的に国を代表する性格を持っておるから、ある意味において元首的性格もその部分についてはある、そういうのがどうも多数説のようであります。これが正しいかどうかは学界の人々の御意見によって分かれるところでありますけれども、そういう学界の多数説というものを私は頭に置いております。
  63. 松本善明

    松本(善)委員 参議院の本会議で総理は、天皇は外交関係では国を代表している、そういう面で定義をすれば元首とも言い得るということを言いましたけれども、これは決して学界の通説ではありません。これはそういう憲法上の根拠は全くありません。  私は最後に通産大臣に伺いたいのですが、自民党が昨年の十月六日、自民党の憲法調査会で決定をいたしまして、本年五月三日に発表されました憲法改正大綱草案では、天皇について、天皇の法的地位を明確にするため、天皇国民統合の中心として国を代表する旨を規定する、こういうふうに変えたいという案ができております。これは象徴たる地位というのは、代表たる意味を持たない、少なくとも代表たる地位を持つことが明白でないから、天皇に国を代表する資格を明確にしようという趣旨であると思います。また、明治憲法は、はっきり天皇は元首であるということをいっております。私はこの参議院本会議での総理の発言、それから通産大臣のいまの御答弁をお聞きいたしますと、これは天皇に国を代表する資格を与える、それはとりもなおさず元首という方向に行こうとしている、こういうことだと思います。  通産大臣に伺いたいのは、自民党の憲法調査会で決定をいたしました憲法改正大綱草案の、天皇は国を代表する旨を規定する方向にするということについて、通産大臣は御賛成なのかどうか、そういう方向に持っていこうとしておられるのかどうか、その点について伺いたいと思います。
  64. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それが最後の御質問でございますか。最後の御質問ですね。(松本(善)委員「そうです」と呼ぶ)  あの草案というのは、まだ政調会を通ったものでもなければ、総務会を通ったものでもないのです。それで私、あの起案者の一人である稲葉修元憲法調査会長に解説を聞きましたが、あの草案でも、主権在民のもとにおける象徴天皇を維持しょうという点は一貫して変わっておりません。ただ、代表問題というものは、いろいろ学説が分かれておるところでございまして、代表となると外へ対しての形である。そうすると、外国使臣の接受とか、そういう関係のことからすると、やはりいまの学界の多数説にあるように、対外的には国を代表する性格を持っておる、そういう多数説に従った考え方が、そこに出ておるのかもしれません。その辺は私の推察であります。大体自民党は、学界の多数説に従うよう努力しておりますから、そういう性格がそこにも出ておるんだろうと私は思います。しかし、そういう点は、国家の非常に重要な問題でありますから、私もこれからよく勉強していきたいと思っております。
  65. 松本善明

    松本(善)委員 これで終わりますが、通産大臣の答弁は、私は全体として、国民主権と規定をした日本憲法主権在民精神を非常に大きく踏みはずしておる方向に行こうとしておる。天皇の代表という問題につきましても、決してこれは多数説ということではなくて、憲法上の根拠がなく、慣習としてずっと外交関係をそういうふうにやってきた。憲法制定当時の学説をお読みになれば、これは明白であります。  私はそういう点で、時間が十分でありませんので、この点についての通産大臣発言については了承できない点が多々あるし、問題にしなければならない点がたくさんありますけれども、きょうは時間がありませんので、この程度で質問を終わりたいというふうに思います。
  66. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は、あなたのお考えは断じて了承できません。     〔発言する者あり〕
  67. 浦野幸男

    浦野委員長 静粛に願います。  近江己記夫君。
  68. 近江巳記夫

    ○近江委員 まず私は石油問題をお聞きしたいと思うわけですが、大臣OPEC諸国への直接歴訪は、経済協力などを約束することによって産油国との経済交流にかけるわが国のそういう姿勢を世界に示されたわけでございますが、今回わが国の石油業界の中東諸国との経済協力の姿勢というものを見ておりますと、非常に政策は変わってきておるんじゃないか、こういう感がするわけでございます。  そこでまず最初にお伺いしたいことは、米国政府、メジャーは、日米、EC諸国を中心とする国際石油消費国連合結成を強調しております。それに対して大臣は参加を拒否なさっておるわけです。米国はアレン特使などを派遣してこれに参加を促しておるわけですが、そうした事実があるかどうか、大臣のその後の心境についてまずお伺いしたいと思います。
  69. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 アメリカ政府がいわゆる消費国同盟というようなものを提唱しているということはございません。いままでわれわれのほうにはそういう話もございませんし、その後調べてみましたけれどもアメリカの国務省あるいはそのほかが消費国同盟と言ったというようなことは、われわれのところにも情報としても入っておりません。アメリカの評論家とか、あるいは国会議員の一部がそういう発言をなさったのではないかと思うのです。それがアメリカ政府意思のように伝えられてきたのではないかと思います。  この間、アメリカのメジャーの中の雄であるエクソンの会長と会いましたけれども、エクソン会長も、産油国と対立したり、挑発するような印象を与えることは非常にまずい、そういうことはアメリカの真意ではない、アメリカ政府がそういう考えを持ったこともありませんということをはっきり私に言っておりました。私は、それがあたりまえのことであろうと思うのであります。しかし、消費国同士がいざという場合に緊急に融通し合ったり、あるいは公害の防除であるとか、新しい石油資源あるいは原子力を含めたエネルギー資源、そういう問題について協力し合うということは、世界の繁栄のために非常に重要な要素であると私は思いまして、消費国が、そういう意味で、お互いに緊急事態の場合の融通とか、あるいは技術の開発とか、そういうような問題で協力することはわれわれは非常に歓迎する。今回OECDにおきまして石油委員会が開かれますけれどもOECDに出る日本の代表に対しまして、私は、でき得べくんば産油国消費国を含めた国際協調の機関をつくるようにできるだけ努力しなさい、そしてわれわれとしてOECDのワク内でいまのような緊急融通とか、そういう話もすることが適当であろう、日本産油国消費国とを合わせたそういう全体としての協調機関をつくるということには非常な熱意を持っておるということを特に指示しておるわけでございます。
  70. 近江巳記夫

    ○近江委員 今回イランに合弁で大型製油所をつくる。これは三菱商事など五グループが推進しておるということを聞いておるわけですが、こうなりますと産油国で初めて精製をする、こういうことになるのではないかと思うのです。あるいはジライン、アブダビ原油購入、直接買い付けというようなことも出ております。これは大臣が中東を訪問されて後、こういうことが出てきておるわけですが、従来のそういうわが国の石油政策を見ておりますと、わが国での精製であるし、主としてメジャーからの購入をしておった、こういう点におきまして非常に具体的な動きが出てきたように私は思うわけです。そういうことで、今後政府が石油政策として根本的に新しいそういう政策なり考え方をお持ちになったのかどうか、具体的にひとつお伺いしたいと思うわけです。
  71. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 やはり日本のような大消費国は国際協調でやらなければ生きていけない国でございます。だから消費国とも協調し、産油国とも協調する、アメリカとも協調するし、ECとも協調するし、あるいは中近東、そのほか全世界の産油国とも協調していく、そういう総調和的立場で石油政策を進めるということが第一でございます。  それから第二は、いままで日本の石油政策というのは、ややもすれば日本列島沿岸における製油所政策の感がなきにしもあらずでございました。初め戦争で全部焼かれて、それから占領中太平洋岸の石油精製所の建設を許されて、外資が入ってきてメジャーから油を大量に買い付けて、その間に民族系が次第に育成されて、キャパシティーは製油においてはいま五〇%、五〇%にまでなりましたが、スタンドやその他の販路等を見ますと、まだメジャーズのほうが五四%くらい持っておるようでございます。しかし、もうこの段階になれば、民族系とかあるいは外資系とか差別することはあまり適当ではないのではないか。おおらかな気持ちでお互いが協調していくという形でいったらいいのではないかと私は思います。それと同時に、いままでは原油獲得政策というものが石油政策になかったように思うのです。いまやパーティシペーションオイルが出たりDDオイルが出たり、いろいろ世界石油戦線に変化が来ておりますから、したがって、日本列島の沿岸における製油所政策的石油政策であったものをグローバルに、シベリアもガルフの沿岸もあるいはペルーの沖もあるいは北海のほうもあるいはインドネシアもアジアも、すべてを含めた原油獲得政策まで含めた新しい石油政策が出てこなければならぬだろう、その中には現地精製主義あるいは中間地精製主義等も考慮されるべきではないか、そういうふうに思っております。
  72. 近江巳記夫

    ○近江委員 こういう現地精製であるとか中間地精製ということになってきますと、やはり公害問題ということがあるわけですが、現在これだけ日本列島が汚染されてきておる。この石油業の及ぼす影響というものは非常に大きいと思うのです。これを海外でもまき散らすということになりますと、非常に大きな問題があると思うのです。こういう点については十分な配慮をする必要があると思うのですが、これについてはどうですか。
  73. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 産油国のほうは、自分の国の工業建設やインフラストラクチュアの建設に協力してくれる国に油を売る、そういう厳然たる方針がいま出つつあるということ、これは石油を獲得しようとするものにとって見のがすべからざる条件でございますし、また原油を運んでくるコスト、そういう面からのプラスマイナス、浪費の面、そういう面も考えられますし、また、日本における公害問題あるいは石油備蓄政策上の基地獲得の困難性というものまで考えてみますと、現地精製、中間地精製あるいは石油化学の工場をつくっていくという構想というものは、いまや必然の流れの中にあるのではないかと思います。しかし、これは非常に大きな変化でございまして、国際的にも、また日本国内企業者にとりましても非常な影響を持つ問題でございますから、いま慎重に検討させておるところでございます。
  74. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで石油業界は、来月からでもガソリンなど石油製品の値上げの動きを示しておるわけです。御承知のように、最近のインフレ状況また物価の高騰というものは、もう国民生活を破滅のふちにまで追い込んできておると私は思うのです。そういう中で、いままで為替差益等もかなりあるわけです。そのように原油を値上げしてくるという、そういう現地の姿勢もあるわけでありますが、しかし安易に、上げてくるからもうしかたがないから値上げをするのだということでは、一体大衆の生活はどうなるんだということなんです。すべてそういう安易な転嫁をしようという業界の姿勢というものは許せないのです。きょうは小坂長官もお見えになっておりますし、直接担当の中曽根大臣もいらっしゃるわけですから、こういう動きに対してどう対処なさるのか。為替差益だって十分あるわけですよ。そんな安易に大衆に転嫁することは許せないと思う。この点についてひとつ御見解を賜わりたいと思う。
  75. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 OPECとの交渉やあるいはメジャーズとの値上げ等によって安易に国内価格を上げるということはわれわれも許しません。この点はわれわれも厳重に抑制するように処置してまいりたいと思います。円の事実上の切り上げ等によって石油の輸入関係においては余裕もその点に関しては出てきておるはずであります。しかし、また最近一一・九%の値上げということがさめられたようで、今度はそっちの面からの上昇原因が日本にも波及してこないとも限りません。いろいろ複雑な波がいま入りまじって入りつつありますけれども、われわれとしては、石油は日本の生活及び産業の米に当たるようなものでございますから、できるだけ抑制して引き上げないように指導していくつもりであります。
  76. 近江巳記夫

    ○近江委員 この三月期におきましても、石油業界は百億円にのぼる為替差益を出しております。この点、いま中曽根大臣抑制するという姿勢をお出しになった。ほんとうにそれを実行していただきたいと思いますが、小坂長官にも、国民生活のお目付役として、私はひとつ決意をお伺いしたいと思うのです。
  77. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 去る六月二日、OPECとメジャーとの間で、通貨変動に伴う原油価格値上げ交渉が妥結をいたしまして、平均一一・九%の価格引き上げが行なわれるようになったことは、いま通産大臣からお話しのあったとおりでありますが、現在のところメジャーからわが国の石油業界に対する価格の引き上げの通告は最終的にはなされておりませんので、今回の価格引き上げわが国石油製品価格にどの程度影響するかは明らかではございませんけれども、ただいま近江委員仰せのとおり、相当円の変動相場制に伴うメリットを得ておるのでございますから、物価情勢のきわめてきびしい現状にかんがみまして、石油製品に原油の価格の変動が安易に転嫁されることがないように、通産当局とも十分御相談をして善処してまいりたいと考えております。
  78. 近江巳記夫

    ○近江委員 両大臣ともこうした決意を表明されたわけでありますので、どうかひとつことばだけに終わらないように、両大臣発言はみな国民は見守っておりますから、国民生活安定のためにがんばっていただきたいと思うのです。  それから、先ほど申し上げましたように、インフレの高進あるいは物価の高騰、こういうことはほんとうに目に余るものがあるわけであります。米国は物価の六十日間の凍結をする、このように発表するなど、欧米諸国は思い切ったこういうインフレ抑制策というものをとろうとしておるわけですが、わが国は、こうした従来の輸入の拡大あるいは金融政策の活用などの、そういう従来の政策によって、物価問題に取り組んでおるように私は思うわけでありますが、従来の政策以外に思い切った措置を講じなければ、それはもうインフレをとめることはできない、物価の高騰をとめることはできないと思うのです。この点についてどのようにお考えであるか、まず小坂長官にお伺いしたいと思います。
  79. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほども玉置委員に申し上げたのでございますけれども、この段階においては燃え盛る火の手のような物価高をどこかで遮断しなければならない。それには相当思い切った手を打たなければならぬというふうに感じておる次第でございます。それにはどういう手があるかということでございますが、これは何といっても、まず財政が先行すべきであろう、財政金融のポリシーミックスを従来に加えて強力な手にしていかなければならぬと思うのでございます。  なお、アメリカの打った物価凍結というような手を考えます場合には、物価と申しますと賃金も当然考えていかなければなりませんけれどもわが国におきましては、そうした土壌にないと思いますので、こういう手を打つことはいま考えられないところと思います。
  80. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 けさも閣議で、アメリカの新政策に対する対策をいろいろ協議いたしまして、特に農林物資等についていろいろ手当てをいままでしておる、食糧等については、かなり先のものまで手当てをしておって、大豆のようなものについては、日本が非常に買っているというので、アメリカのほうがもう少し返してくれというくらいの量を日本は買い付けをしておるというふうな話もございました。われわれとしては、具体的にこれがどういうふうに展開してくるか注目しつつ、われわれのほうも全力をあげて物価引き下げに努力していくつもりです。きょうはさっそく事務当局のこれに対するいろいろな対策協議を開始させることにした次第であります。
  81. 近江巳記夫

    ○近江委員 先日、日銀総裁は、金融政策だけでは総需要抑制は困難である——もちろんこれはインフレの問題、物価の問題を強く意識して、次のような発言をされているわけです。公共投資の年度を越える繰り越し、それから国債発行予定額の削減、国鉄等公共料金の値上げの抑制等が必要である、このようにお述べになっているわけです。ところが、この国鉄法案は衆議院を通過して参議院にいまかかるわけでありますが、国民生活がこれだけ困っておるのに、そういう国鉄の運賃の引き上げ等が行なわれようとしておるわけです。そのほかに、御承知のように電力、ガス、特に大口としては関西電力あるいは四国電力、大阪瓦斯、これが大幅な値上げをしようとしております。伝え聞くところによりますと、関西電力あたりは二八%くらいの申請をもう出す、こういう姿勢できているわけです。この間も一般紙にも発表されておりましたけれども、収益率はそうした順位からいきますと、たしか十一位か十二位に関西電力もランクされている。収益もあがっているわけです。そういう中で、こういう電力やガス——エネルギーという問題については、非常に国民生活への波及というものがたいへんなものです。これが安易にそんな値上げが許されていく。このままでインフレが進み、物価高が進んでいったときに、一体国民生活はどうなるのですか。政府はどうして真剣にそうした国民生活の対策を考えないのですか。ただ、そういう業界が言ってきたから、なるほどこれから設備投資をやるから、このままでいけば赤だ、しかたがない、そういうことであってはならぬと思う。やはりそこは政府としての何らかの手があると私は思うのです。その点、中曽根大臣と小坂長官に、どうするか、ほんとうに国民生活を守ろうという立場から、ひとつ御見解をお伺いしたいと思うわけです。
  82. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 国鉄運賃の問題は運輸委員会でも申し上げたのでございますが、過去における国鉄運賃引き上げの際、一般物価に及ぼす影響は現実的にはそれほどあらわれていないということでございまして、観念的には、国鉄運賃が上がればそれだけ物価が上がるではないかということでございますけれども、やはりそこには嗜好と選択と申しますか、そういうものが働く点もございまして、過去における実例は、さような影響は及ぼしていないのであります。  ただいまお話しのような電力その他の問題につきましては、いまだ申請が出ておりませんので、一部にいろいろいわれますけれども、現実に申請が出てまいりました段階では、もちろんこれは通産省にまいるわけでございましょうが、通産省におかれていろいろ御検討の末、私どもとも協議があるわけでございますから、その段階におきましては、業界の内部の経理の状況あるいはそれが一般に及ぼす影響、そういうものを精査いたしまして、十分誤りなきを期したいと考えておる次第でございます。
  83. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 公共料金はできるだけ抑制するというのが政府の方針でございますから、われわれもその趣旨に沿って措置していくつもりでございます。  物価問題を考えてみますと、世界的な情勢から見て、食糧問題が取り上げられ、それからいまや石油等を中心にする燃料問題が取り上げられております。そのほか、各国全体がインフレ的傾向に悩んでおりまして、これはもうEC諸国も、アメリカも、日本も、同じような現象にとらわれているところでございます。必死になって物価抑制するということが、当面各国政府の第一の仕事になっておりまして、私たちも懸命の努力を今後も払っていくつもりでございます。
  84. 近江巳記夫

    ○近江委員 こうした公益事業の決算書なり何なりは、間違っておるということばは非常に行き過ぎであろうかと思いますが、私は、そこにその企業の合理化であるとか、あらゆる努力がなされなければならぬと思うのです。公益事業の姿勢を見ておりますと、何となしに親方日の丸式といいますか、やはりそういう姿勢が私は見られるようにも思うのです。  そして、こうしたデータもいただいておりますが、関西電力にしても大阪瓦斯にしても、各種会社にたくさん投資をしております。もちろんその会社の経営にとって関係のある会社であろうかとは思いますけれども、こういう膨大な投資をしなければならないのかという問題もあるわけです。そういう経理面等についてはどういうチェックをなさっているわけですか。もし大臣がこまかい点おわかりにならないようであれば、担当官でもけっこうですが、時間がありませんから、簡潔にお願いしたいと思うのです。
  85. 田中誠一郎

    田中説明員 電力会社につきましては、先生御存じのように、電気事業法によって経理の内容について毎年定期的に監査をいたしておりまして、その経理の公正さを期するようにしておる次第でございます。
  86. 近江巳記夫

    ○近江委員 あまり答弁が簡単過ぎるわけですが、電気料金にしましても、ガス料金にしましても、あまりにも差があるわけですね。たとえば関電の場合、電灯では十円六十八銭、電力では四円八十七銭。大阪瓦斯の場合は家庭用が二十二円四十一銭、工業用が十六円二十三銭。さらに、こういう使用のシェアを見ますと、電力においては七九二%というものを産業に使っておるわけです。しかも、こんな安い電力を使っておるわけです。政府がとってきた高度成長によってどんどん工場生産を高めていく。そして電力を使っていく。したがって、それに投資もしなければならぬ。そして大衆にそのように料金を転嫁していく。これだったら、まるっきり国民がほんとうに大企業のために奉仕しているみたいなものですよ。こういう料金の大きな差の問題等なんかどう考えておられるのですか。これについてお伺いしたいと思うのです。
  87. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 電気料金につきましては、法律に基づきましていままで原価主義を採用してきたところでございまして、この原則は今後も維持していきたいと考えております。一般家庭用と産業用の原価の格差は、送配電経費、需要の内容等によって差異が生じているものでございますが、最近の公害対策費の増高、燃料費の高騰等による発電部門費の増大、一般家庭の負荷態様の変化等から見て、この格差は縮小する傾向にあるものと思われます。したがって、原価主義のもとにおいても、最近におけるコスト増高に伴い、料金の改定が行なわれる場合には、家庭用と産業用との格差が若干縮小することが考えられます。
  88. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほど私は名前を読み上げておりませんが、関電においても瓦斯においても、二〇%以上もの株式を取得しておる会社が相当あるわけですね。関連会社はもちろんと思いますけれども、こういうような内容等はどのようにチェックなさっているのですか。
  89. 田中誠一郎

    田中説明員 ただいまも御説明申し上げましたように、電気事業につきましては毎年定期的に監査をいたしまして、投資面につきましても厳正なチェックをしている次第でございます。投資につきましては、先ほど先生から御指摘ございましたように、関連会社等々につきましては、下請会社あるいは電気工事会社ということで、それぞれ電気事業のより効率的な運営という目的で投資しているものが大部分というふうに承知している次第でございます。
  90. 近江巳記夫

    ○近江委員 特に先ほど申し上げましたように、こういうようなインフレ物価高の情勢の中でありますし、政府としてはほんとうに真剣に値上げの問題については対処してもらわなければいかぬと私は思うのです。  それで、小坂長官も、出てきてからよく検討するということですが、なるほどそうかもしれませんけれども、やはりあなた自身の姿勢が一番大事だと思うのですよ。値上げを認めてやろうという姿勢で検討するのか、これはもう押えなければならぬのだ、そういう姿勢できびしくチェックしていくのか、やはり根本の姿勢が一番大事じゃないですか。この点、重ねて小坂長官と中曽根大臣に決意をお伺いしたいと思うのです。
  91. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 公共事業の料金につきましては、政府といたしましては厳にこれを抑制する、真にやむを得ざるもの以外は厳にこれを抑制するという方針をとっておりますので、私の姿勢はさような線で一貫しているわけでございます。
  92. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 政府の一般的方針に基づきまして、できるだけ抑制するように努力してまいります。
  93. 近江巳記夫

    ○近江委員 いずれにしても、きょうは非常に限られた時間でありますので、こうした問題については私もできるだけ資料等で検討して、また今後この問題をきびしくお聞きしていきたいと思うわけです。  それで、最近の物価上昇政府消費者物価は五・五ということを見通しでおっしゃっておるわけですが、もうすでに五%にきているわけでしょう。今年これで五・五でいけるのですか。対策だって、先ほどおっしゃったような従来の政策とあまり変わらない。ずるずるとこういうことを見ておっていいのですか。この政府の見通しを改定なさるのか、改定しないのか。またさらに突っ込んでインフレ対策、物価対策をどのようにやっていくのか。それをお出しにならなければ、いまでさえ五%にきているでしょう。ずるずると五・五をはるかにオーバーすることは間違いないじゃございませんか。その点をひとつ小坂長官にお伺いしたいと思います。
  94. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 最近の物価の状況につきましては、他の機会でも申し上げておりますように、まことに胸を痛めておる次第でございます。ただいまは経済見通しそのものもさることながら、燃え盛るような物価値上がりの情勢に何とかくさびを打ち込んで、これをとめるということに全力を傾けたいと考えておる次第でございましてその後におきまして見通しというものについてよく検討さしていただきたい、こう考えておる次第でございます。
  95. 近江巳記夫

    ○近江委員 努力はなさるわけで、それはわかるわけですが、このままで五・五で押えられますか。長官、あなたの現在の心境を聞かしてください。
  96. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 漫然としておりましてはなかなか困難であると考えております。
  97. 近江巳記夫

    ○近江委員 いまのままではもうはるかに突破するとお考えですか。先ほど長官が政策をおっしゃったわけですが、その政策でいってどのくらいまで——いまおっしゃったでしょう。このままで漫然といけばこうなってしまうと、いみじくもいまとっておられる政策を漫然という形でおっしゃったわけでありますが、このままでいけばどのくらいまでいくとお思いなんですか。
  98. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私の立場でさようなことを言うことは百害あって一利なきことと心得ますので、私の立場でこういう公式の席で申し上げることは、全力を尽くしていまの物価の値上がりを押えるという決意を申し上げることにとどめさせていただきたいと存じます。
  99. 近江巳記夫

    ○近江委員 特にきょうは大もの大臣が二人そろわれたわけでありますので、ひとつ政府は全力をあげてこの問題に取り組んでいただきたい。特に公共料金の値上げについては、安易なそういう姿勢ではほんとうに私たちも政府に対決しますよ。ことばは非常に荒いわけですけれども、この点は両大臣が握っておられるわけですから、特に強く要望しておきます。  最後に一点だけお聞きします。先ほどの石油問題等も含めまして経済援助の問題があるわけですが、昨年の経済援助を見ますと、GNP比率では非常に後退しておるわけですね。従来からこういう海外援助の問題については、ともすれば海外においてエコノミックアニマルという悪評も受けておるわけでありますし、これは積極的にしてもらいたいということを常に申し上げてきたわけでございます。ところがGNP比率では後退しておるという姿勢が出ておるわけですね。ですから今後こういう経済協力の問題につきまして政府としてどういう姿勢で臨まれるのか、それを最後に両大臣からお伺いして私の質問を終わりたいと思います。
  100. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 海外技術協力経済協力及び援助等につきましては、できるだけその比率をふやしていきたいと考えております。特に政府援助の点につきましては多少後退ぎみの傾向がございますので、OECDラインを目ざして今後ふやしていくように努力していきたいと思います。
  101. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ただいま通産大臣の言われましたとおりでございますが、やはりプロジェクトそのものについてよく検討いたしまして、真に受け入れ国側も喜ばれ、また、わが国としても援助が伸ばし得るような、そういうプロジェクトをできるだけよくつかんでまいりたい、こう思っておる次第であります。
  102. 近江巳記夫

    ○近江委員 終わります。
  103. 浦野幸男

    浦野委員長 上坂昇君。
  104. 上坂昇

    ○上坂委員 私は、沖繩海洋博の問題を中心にして、現在の沖繩の状態、それに対するいろいろな施策、そのことについて質問してまいりたいというふうに思います。  過日、三日ばかり沖繩の調査に行ってまいったのでありますが、三日程度の調査では皮相的なものしか見きわめられないというふうに思います。しかし、それでもなお非常に大きな問題を感じますし、質問の材料に事欠かないということになりますと、今度の海洋博をめぐって沖繩では非常に大きな問題が生じているというふうに考えるわけです。  そこで、質問を申し上げるわけでありますが、経済企画庁の総合開発局の資料によりますと、沖繩の就業構造というのは、昭和四十五年度で第一次産業が七万七千人で二一・五%のウェートを占めている。第二次で六万九千人、これが一九・四%、第三次産業になりますと、二十一万一千人の就業になっておりまして、これが実に五九・一%を占めておるわけであります。生産所得のほうでこれを見ますと、昭和四十六年度で、総額で三千百五億円になっておりますが、第一次が二百三十五億円で七・六%、第二次が五百六十二億円で一八・一%、第三次になりますと、二千三百八億円でありまして、実に七四・三%を占めております。こうした構造というのは、戦後の基地依存経済の強制によるサービス業を中心としたあり方の反映であることは明らかであるというふうに思いまして、他府県に比べまして非常に奇型的な分布になっているというふうに思います。  こうした状態にあるところへ沖繩開発のいわゆる起爆剤という形で本部半島を中心とする海洋性大規模レジャー、レクリエーション基地の開発を骨子とする海洋博を開催することになったわけでありますが、その計画の中に、いかに第一次産業あるいは第二次産業の振興を青写真に取り入れようとしましても、つまるところは、沖繩全島が観光ないしレジャー、レクリエーション基地化するものであって、観光開発以外の何ものでもないというふうな印象になるわけであります。このことは、沖繩振興開発あるいは沖繩経済の基本的な構造問題になっているというふうに私は思うので、非常に重要な問題だというふうに思うのです。  以前に硫球新報の世論調査では、自然環境が破壊されても経済的に豊かな県になるべきだというのが三三%、経済的には多少豊かでなくても自然環境が破壊されない県になるべきだとする者が六四%という数字が出ております。こういう県民意識から見て、政府の沖繩振興開発の基本理念が問題になるのは当然であろうというふうに私は思います。このことについて、この沖繩振興開発の基本理念というものを一体ほんとうのところどこへ置いておくのかということについて、通産大臣の担当大臣としての見解をお聞きしたいと思います。
  105. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 沖繩開発庁を中心にしてつくりました沖繩開発十カ年計画というものが基本であるべきであるのだろうと私は思います。海洋博というものは一時期の問題でありまして、大黒柱はやはり沖繩開発十カ年計画による総合計画を推進していく、これがわれわれのたてまえでなければならぬと思っております。  現在、御指摘のようにわりあい観光方面に重点が行きまして、第三次産業が非常に伸びておりますけれども、沖繩県経済全体を考えますと、一次、二次、三次のバランスを得たかっこうに持っていくということが正しい態度であると思いまして、そういう方面に知事さんとも協力して持っていきたいと思う次第でございます。
  106. 上坂昇

    ○上坂委員 お答えはそういうことになるだろうというふうに思うわけでありますが、そこで具体的にひとつ聞いていきたいと思います。  沖繩の振興開発計画によりますと、「沖繩の各面にわたる本土との格差を早急に是正し、全域にわたって国民的標準を確保するとともに、そのすぐれた地域特性を生かすことによって、自立的発展の基礎条件を整備し、平和で明るい豊かな沖繩県を実現することを目標とする。」こう出ているわけであります。そこでお伺いしたいのは、「自立的発展の基礎条件」というのは一体何をさすのか、その点をお伺いいたしたいというふうに思います。
  107. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 やはり社会資本が充実しているということ、それから一次、二次産業、各産業における経営主体というものが充実強化されているということ、そうしてそれらの間にバランスが維持されるということ、それから一番のポイントはやはり物価と労務の問題について安定性を持つということ、こういうことが大事ではないかと思います。
  108. 上坂昇

    ○上坂委員 次に、「平和で明るい豊かな沖繩県」という形になりますと、いわゆるバランスのとれた産業配置といいますか、あるいは物価、労務、あるいは社会資本の充実というような形にお答え願ったわけでありますが、具体的にはこの産業配置の場合、第一次産業がどのくらいか、第二次がどのくらいか、そういう点について具体的にお示しをいただきたいと思うのです。
  109. 亀谷礼次

    ○亀谷説明員 ただいま通産大臣からお答えがありましたように、政府といたしましては、沖繩が現在置かれております一次、二次、三次産業を通じまして非常に格差がございますので、まず基幹の産業であります第一次産業につきましても、今後十年間に現在の農業生産を二倍以上にこれを高めていく、それから三次産業につきましては、現在非常に基地収入に片寄っております特異の三次産業でございますけれども、これを観光産業を主体にいたしまして、全体としましてこれもやはりまた現在の二倍なり三倍というふうに高めていくことにしております。特に二次産業につきましては、沖繩の持っております産業構造で最も弱い部面といわれておりますので、沖繩内におきますところの伝統的な地場産業、具体的にいいますと伝統工芸その他食品製造等、多種多様でございますが、零細性の高いこういった地場の二次産業を振興いたしますとともに、本土から有力な企業等も積極的に進出していただいて、これまたできるだけ公害の少ない、と申しますよりも、沖繩の自然をそこなわないという前提におきまして、工業効果の高い集約的な産業をできるだけ誘致していく。こういうことに基づきまして、先ほど先生からも御指摘がございましたように、現在の沖繩の持っております生産所得、これが大体四十五年の基準年次で三千百億円でございますが、これを約三倍の一兆円程度になるような期待のもとに、産業構成を含めまして関連産業施設あるいは社会基盤の整備を行なう、こういうことを考えておるわけでございます。     〔委員長退席、山田(久)委員長代理着席〕
  110. 上坂昇

    ○上坂委員 いまの第一次産業は二倍以上にする、そして第三次産業の場合には観光産業を中心にして、これも二倍程度にしていくということでございますが、先ほど指摘しましたように、もういまですら、昭和四十五年ですらそのウェートが、第三次産業の場合六〇%に達しようとしておるわけであります。そうしますと、これを二倍にしていくということになりますと、これはたいへんなウエートを占めてくることになるだろうというふうに思います。総体的に見ますと、一次、二次が、それはずっと生産の伸びとかなんとかはあるかも知れませんが、第三次産業に比較して非常に低い形になってしまう、そこではこれはバランスがとれなくなってしまうというふうに感じられるわけであります。したがって、この海洋博後にそうした状態が出てくるということは、予想の上だけではなくて計画の上でもそういうことになるということになりますと、これはたいへんな問題になるのではないかというふうに考えるわけであります。そこで、その時点においてこれを手直しをするというようなことになりますと、また、復帰後の経済の混乱のような状態が起きないとも限らないというふうに考えるわけであります。その点で私は、バランスがとれているというふうにいわれておりますが、何だか非常に産業配置的にアンバランスのように感ずるわけでありますが、その点についてもう一度御回答いただきたいというふうに思います。
  111. 亀谷礼次

    ○亀谷説明員 お答えします。  先生が御指摘になりましたように、確かにいま沖繩が置かれております産業構造そのものが、いろいろな要因もございまして、本土の一般的な府県に比べてアンバランスのような経済構造になっておることは御指摘のとおりでございます。しかしながら、やはり開発計画に示しておりますように、沖繩の県民が十年後に平和で豊かな県民所得と県民生活を享受する、こういう目標で進むわけでございますので、一次、二次と三次、両産業構造間においてやはりバランスのとれた発展を遂げることが必要でございます。しかしながら、沖繩におきましては、何と申しましても、やはり従来からございます基幹産業としての農業、あるいはまた今後沖繩が第三次産業としての観光をもとに大きく発展しようという非常に強い願望もあるわけでございまして、先生御指摘のように、美しい沖繩の自然が破壊されない、破壊しないという条件において、今後沖繩が伸びていく一つの大きな要素としてやはりそういった面も考えざるを得ないと思います。  そういったことで、いろいろと具体的な問題はあるわけでございますけれども、やはり沖繩の現状を見ました上で積極的に二次、三次を通じまして産業を伸ばしていかざるを得ない。この場合に農業問題等も出てくるわけでございますけれども、今後の一つの行き方といたしまして、海洋博その他いろいろなメインのプロジェクトをあくまで沖繩の振興計画の中の一環として位置づけた上で、たとえば観光と第一次産業の結びつけでありますとか、あるいは第二次産業と第一次産業との関係でありますとか、いろいろ多角的な面でこれらを関連づけながら有効適切な手を打っていく必要があるであろう、こういうふうに考えているわけであります。
  112. 上坂昇

    ○上坂委員 まあそのことを論争しても、これは問題があとを引いてまいりますからあとでいろいろ触れたいと思います。  そこで、この海洋博の位置づけの問題でありますが、現地の人たちに言わせますと、この海洋博というのは振興開発計画の中に位置づけられるのがあたりまえなんですが、そうではなくて、むしろ現在の状態では海洋博の実施を中心に振興開発計画が組み立てられているのではないかという認識を非常に根強く持っているように私たちは感じてきたわけであります。海洋博の関連事業の計画を見ましても、環境衛生事業などになりますと非常にその計画がわずかであります。これでは開発と自然環境保護の調和という理念がやはりから念仏になるのではないかというふうに私たちも感じます。こうした県民感情といわゆる疑念を打ち消して、県民がほんとうに望んでいるところの豊かな生活あるいは生活環境を破壊しない振興開発を行なうということになるためには、どうしても海洋博の現在の推進のしかた、あるいはあり方、それ自体をもう一度練り直し、洗い直す必要があるのじゃないか、こういうふうに私は感ずるわけでありますが、これはあくまでもいまの基本計画に沿って進めるのだというふうに考えておられるのかどうか。いろいろな面でこれから改めるところは改めていくというような姿勢に立ってこれからの計画を運営されていくのかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  113. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いろいろな御助言、御忠告は謙虚に承りまして、改めるところは改めていきたいと思います。  きのうも社会党の沖繩調査団の安井吉典議員ほか皆さんからお話がありまして、いわゆる第三セクターの問題について考慮せよというお話がございました。われわれも役所に検討を命じまして、来週屋良知事が大体現地の考えをまとめてわれわれのほうにお寄せいただくということでありますから、屋良さんともその際じっくりと話し合いまして、現地の御要望もよく聞いてお互い納得のいくような線をつくりたいと思っております。  きのうわれわれがあなた方の御意見を聞いて検討したところでは、これは大体屋良さんの御意見を聞いて最終的にはまとめていきたいと思っておりますが、こちらで考えた線では、まず本土企業の出資は第三セクターについては県、市町村の出資額をこえないようにしたい、それで市町村の出資額についてはいろいろ特別の措置をこっちは見る、現地の負担にならないようにいろいろ措置しようと思っておるわけでございます。それから第二に、その第三セクターの役員人事については、市町村から少なくとも半数の役員は出すようにする。それから第三に、公社の運営については沖繩県側の意見を反映させるために協議会を設ける。それから公社の本社はもちろん那覇市に置く、現地に置く。一応こういうことをわれわれは頭の中に考えておりまして、県側の御意見がどういう御意見が出てくるか、十分話し合いをしていきたいと思っております。
  114. 上坂昇

    ○上坂委員 次に、本土資本の現在の沖繩への進出、それに関連をいたしまして物価の問題についてお伺いをしたいというふうに思います。  昨年の七月末で、本土からの土建部門の進出は百七十四社に及んでいるというふうにいわれております。これらが沖繩開発庁の工事入札に加わっているというふうに伝えられております。これは事実であるかどうか、お伺いをいたしたいと思います。私たちも町をずっと歩いてまいりまして、いまほとんど大手企業の営業所がいろいろなビルに事務所を設けておりまして、地元建設業界の話では、いまの建設中のビルにしても、中央大手資本の進出が非常に著しいということを言っておるわけであります。このことについてどういうふうに把握をしておられるか、お伺いをいたしたいというふうに思います。  それからもう一つは、金融面では、これも本土の生命保険会社が二十社のうち十二社以上が進出をしている、あるいは証券会社、銀行の進出も非常に進んでおって、系列化も進んでおるというふうにいわれております。いわゆる大手商社の十社はこれはもちろんでありますが、私鉄、それからホテル資本、デパート等の進出なども非常に激しくなっている。それらの社員や外交員といいますか、そういう人たちを当て込んでの貸しビルあるいはマンション、ホテル、アパート、住宅、さらには娯楽施設まで建築が急速に進んできているというような状況のようであります。こうした中央の本土進出の実態というものを具体的にどの辺まで一体つかんでおられるのか、お答えをいただきたいというふうに思います。
  115. 加瀬正藏

    ○加瀬説明員 御質問のうちの前半の本土の土木建築企業がどのように進出しているかということについてお答え申し上げます。  私どもの沖繩総合事務局の開発建設部に指名競争入札の参加を申し出ている本土企業は百三十二社でございます。
  116. 上坂昇

    ○上坂委員 その他の実態はどうですか。銀行であるとか、商社であるとか、保険会社であるとか、あるいはゴルフ場建設であるとか、いろいろあるんじゃないですか。
  117. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いま手元に資料がないようでございますから、あらためて提出いたします。
  118. 上坂昇

    ○上坂委員 とにかくたいへんな本土資本の進出のようでありますが、これは人口あるいは県民所得それから面積などどれをとってみましても、日本全土の一%にも満たない沖繩市場が、ここ一、二年の間に本土のどの県よりも有効需要が期待できる。これが海洋博開発のメリットということになりますと、これはもう当然投機的な対象になるのは火を見るよりも明らかだというふうに思います。私は、そこに物価高騰の元凶があるのではないかというふうに考えるわけであります。  そこで、沖繩県当局の調査によりますと、復帰後十カ月後の今年四月までに月平均一%から四%の物価上昇があった。昨年の六月に比して、現在全体では九・二%の上昇を示している。食料では一五・六%の上昇を見ているというふうに資料が出ておるわけでありますが、実際調べてまいりますと、とてもそんなことではないようであります。生鮮食料、生鮮魚介類になりますと三八六%という高騰の資料が出ております。設備修善の面では三四・三%というような値上がりを示しております。特にひどいのは地価でありまして、これはまさに復帰直後の数十倍になっているんじゃないかというふうにいわれておるわけであります。物価で問題になるのはやはり土地買い占めであろうというふうに思いますが、五月現在で、公有地、私有地を含めまして四千三百五十万平方メートルが処分をされております。沖繩の総面積の三・二八%に当たるわけでありますが、このうち公共用地に利用されているのは六十六万五千平方メートルにすぎません。実に買い占められた土地の九八%が私企業によって占められているという実態であります。こうした状況は今後ますます広がるというふうに私は思います。そしてこれが沖繩の第一次産業を破壊し、第二次産業の発展を阻害することになると考えているのでありますが、こうした問題についての対策というものをどういうふうに立てておられるか、お答えをいただきたいというふうに思います。
  119. 亀谷礼次

    ○亀谷説明員 お答えいたします。  先生が御指摘になりましたように、われわれ政府のほうで沖繩の土地の売買状況等も調査を進めておるわけでございますが、そういった投機的な面もあるかと思いますけれども売買が非常になされておりまして、ただいま御指摘のような地価の高騰を招いておることも率直に判断をしておるわけでございます。  われわれが沖繩の開発を進める上で、やはり何と申しましても沖繩の土地の合理的な利用計画をつくりまして地価を安定させていきますことは、振興開発計画の実施をはかる上で基本の条件となるわけでございます。土地問題につきましては、本土全体を含めまして非常にむずかしい問題があるわけでございますが、何と申しましても、沖繩振興開発計画を実施する上で公共優先という立場からの土地利用をはからなければならないことは言うまでもございません。そういう意味で、これらの土地の投機的な面の抑制、あるいは特に那覇を中心にしました大都市周辺の住宅用地等の確保をはかることが基本であると考えております。このためには、沖繩県と政府協力をいたしまして振興開発計画に基づきますところの土地利用の基本計画を早急にやはり策定する必要があるわけであります。この計画に基づきまして土地利用の規制でございますとか、あるいは公社等によりますところの公共用地の先行取得でございますとか、あるいは計画的な宅地の開発等あらゆる行政面の施策を総合的に活用することによって、この問題を解決する以外に道はないわけでございます。  具体的には、現在国の法律にございます自然環境保全法でございますとか、あるいは自然公園法、あるいは農地法、農振法、こういった各種の立法の総合的な活用をはかるとともに、政府におきましては今年度の予算措置といたしまして、沖繩県に対しまして公共用地の先行取得のための資金の一助といたしまして十億円の予算を計上いたしました。これは今後両三年間に総額約三十億の資金を沖繩の県の事業といたしましてこういった公共用地の先行取得に充てるために計画をしているわけでございますが、こういった問題と、それから加えまして、私がお聞きしておりますところでは、六月県議会で、県におかれましても本土の先進県にならわれまして、県独自の立場でこれらの土地の強力な規制措置等もいま条例化の準備を進めておられるやに聞いております。これらの問題が実施を見ました暁におきましては、政府も全面的にこれに御協力を申し上げ、運営上遺憾なきを期していきたいと考えておるわけでございます。
  120. 上坂昇

    ○上坂委員 いまお聞きしますと、何かこれから全部やらなくてはならないし、これからやることのような印象を受けるのでありますが、これからそういうことをやったって、もう先ほど資料で申し上げたような買い占めがどんどん行なわれて、何か後手後手に回っているのじゃないかというような気がするわけであります。そんな調子ではますますスプロールの状態が出てくるのじゃないかというふうに考えるわけなんであります。これはこれから計画立案するのでは困るのであって、もう実施の段階でありますから、あとほんとうのことを言うと六百日しかないわけでありますので、その中に二千億から二千五百億の事業をやるということになりますと、これはたいへんだというふうに思うのです。そういう点でどうも少しなまぬるいような感じがして、そういうところが沖繩県民にとっては非常に不安であって、政府が一体どこまで本腰を入れて、責任を持ってこの計画を進めているのかという疑いを持つ原因があるだろうというふうに私は思うわけであります。その点は今後十分注意をしてもらわなければならない問題であろうというふうに思います。  そこで問題なのは、いまのような物価の高騰あるいは土地の買い占め、そういうことによってどういう状態が出てくるかと申しますと、当然これは農地が減ってくるわけであります。特に本部半島周辺においてはこれが著しくなっております。農地が減って離農者がふえてくれば、農産物や畜産物の生産と出荷量が当然落ちてまいりまして、したがって価格は逆に上がります。県民の生活に大きく影響してくるのであります。ことに沖繩ではエンゲル係数が三二・六%でわが国の全国平均二八・八%よりも四%も多いのでありますから、問題は非常に深刻であろうというふうに私は思います。こうなりますと、どうしても生鮮食料品の流通対策ということも焦眉の急になってくるのではないかというふうに思いますが、これに対して、なおあとで岡田委員のほうからもいろいろ詳しくお聞きすると思いますが、私は基本的な対策というものをお聞きいたしたいというふうに思うわけであります。  それからもう一つ、建築資材の値上がりが、先ほどの資料にありましたように非常に著しいわけでありまして、これは問題であります。海洋博関連公共事業だけでも、現在の値上がりの状態でいきますと、おそらく計画、いわゆる予算内でまかない切れなくなるのではないかということをおそれるわけであります。このことに対して、これはだいじょうぶなんだという点の具体的なものを示していかないと、海洋博に対する県民の不安と疑問というものはますます大きくなって、海洋博の実施について非常に大きな支障を来たすのではないかというふうに私は考えるわけであります。これらについてどういう対策をお持ちになっておられるか、お答えをいただきたいと思います。
  121. 加瀬正藏

    ○加瀬説明員 ただいま御指摘の資材の値上がり状況でございますが、公営住宅について私どもが今年度試算したところによりますと、昨年に比べて二四・七%くらいの値上がりが単価でなされておるようでございます。これは本年度の予算単価に比べましても一八%くらい上がっておるわけですが、この値上がりをどのようにして今後の事業の消化に対応していくかということでございますが、今後資材の値上がりがないように、先般五月八日に、海洋博関連の施設部会で、資材の円滑な供給ということについての対策を樹立したわけでございますが、そのほかに工事の平準化とか、本土サイドからの資材の手当てということで今後の値上がりは防がなければいかぬと思っております。さらに、工事の設計の合理化とか、そういう方面で値上がり分を吸収して、海洋博関連の事業の当初予想した機能が十分に全うされるような配慮をしてまいりたい、かように考えております。
  122. 上坂昇

    ○上坂委員 いま住宅だけの問題でお答えを願ったわけであります。二四・七%の基準の値上がりというふうにお答えですが、とてもそんなどころではないようにわれわれとしては聞いておるわけです。大体沖繩の場合には、これは暴風雨対策から何からいたしまして、いままでのような、いわゆる本土のような家ではとてもだめなんだ。ずっと見てまいりますと、ほとんどが鉄筋コンクリートのような建物に住んでおるようであります。実は十四万円の基準になるのが坪三十万円くらいでないと建てられないというような状況のようでありまして、こういうところに、やはり所得の問題と、それから住宅事情、特に住宅事情においては、本土と比較しまして住宅難の状況は非常に著しいわけでありますから、どうしても住宅については早急に何とかしなければならぬというような状況が出てまいってきておると思うのです。そうした実情というものを十分把握されて、ひとつ予算の面でも計画の面でも組んでいくというふうな形でないと、これはとてもやっていけないのではないかというような気がします。頭のいい人がそろっていろいろ考えておるわけですから手落ちはないだろうというふうに思うのですが、実際のところを見てみますと、どうもそうでないような感じがするわけでありまして、十分これについては御注意をいただきたいというふうに思うわけであります。  時間の問題もありますから次に進みますが、建設事業とこれに関連して労働力の問題についてひとつお伺いをいたしたいというふうに思います。  県の商工部の発表によりますと、現在の建設関係労働者数は一万五千七百人でありまして、このうち九百八十九人が復帰後進出した県外事業所の従業員である、それがまた復帰後急激に増加をしてきた、こういうふうに発表しているのであります。賃金面では県内事業従業員が平均八万百八十円であります。しかもこれは大体四人家族であります。県外の労働者の場合には十一万一千九百円となっておりまして、二八%ほど県内事業の従業員が低いわけであります。総体的に見まして建設関係では一万二千三百余人が不足しておる。なかんずく五人から二十九人の小規模事業で非常に不足が目立っておりまして、全体では実に五三・六%をこれらの事業が占めておる。こういうふうに発表しておるのであります。  この労働者の不足というものは、海洋博関連建設事業が始まりますと急激にその速度を増してくるだろうというふうに思います。そうしてそれが県内従業員の引き抜き合戦に拍車をかけたり、賃金高騰の誘因となったり、果ては労務倒産を惹起する、そういうことになりますと、今度は公共事業にはね返ってまいりまして、事業の停滞、遅延につながってくるというふうに私は思います。そうなりますと、県民が不安に思っておるところの県民のユーティリティーがますますおくれる結果になってくる。そこにまた海洋博への不信が一そうつのってくる。こういうふうな形で循環をしてくるだろうというふうに思うのです。ですから、海洋博の計画がなかなかうまくいかないような状況になってしまっておるというふうに考えるわけでありますが、この対策というものは非常に重要であるというふうに私は思うのであります。これらの実態というものを一体どのように把握をし、どのような対策を立てておられるのかということは問題であるというふうに思います。そのことについてもひとつお答えをいただきたいわけであります。  次にお伺いをしますが、県外労働者を導入する場合、本来の沖繩経済を対象にして導入をするというふうにもつていくのか、あるいはもう海洋博がうまくいけばいいのだというふうなかっこうで、この労務対策というものを考えておられるのか。その辺のところがやはり問題でありますので、一応念のために伺っておきたいというふうに思います。
  123. 亀谷礼次

    ○亀谷説明員 御質問の第一点の労務者不足に対する対策でございますが、先般通産大臣が閣議で発言しておられますように、地元の労務者を引き抜いたり、本土企業がするようなことは厳に戒めなければいけないことでありまして、海洋博を行なう場合におきまして、まず地元の労務者を一〇〇%活用して、足らない分を本土から持っていくということが筋かと思いますが、その場合に、本土から持っていく義務といいますか、これはどちらかというと本土企業にしわを寄せたい、かように考えまして、そのことが海洋博後の労務対策としてもいいのじゃないか、このような配慮から、先般来海洋博の施設部会で検討をしております積算上の配慮等によりまして、地元の労務者が引き抜かれない、かような対策を考えております。  それからなお、海洋博後の問題につきましても、労務者の活用につきましては地元優先ということは当然でございますので、これは労働者にもそのようにお願いして、海洋博時の足らざるを補うという姿勢でいま頼んでおります。
  124. 上坂昇

    ○上坂委員 大体わかりましたが、実際に県の建設業界では、本土から労働者を連れてくる場合には、本土企業が炊事婦まで全部連れてきてくれ、こういうふうに言っているわけであります。これは非常に苦しい立場を十分あらわしている問題であるというふうに思いますが、何か最近の発表によりますと、本土の大手建設の四社が昭和五十年には労働賃金が一万五千円になるというような発表をしているのだそうでありまして、そういうようなことをぼんぼこぼんぼこやりますと、たいへんな問題が出てくるというふうに思いまして、地元で非常に心配をしておるわけであります。  そこで、もう一点お伺いしたいのは、沖繩の建設業者は大小二千五百六十社あるというふうにいわれておるわけでありますが、海洋博関連を含む建設ブームで、まさにうけに入っていると言ってもいいと思うのです。しかし、これらを全部合わせましても、完工高を見ますと、鹿島建設一社にも実は及ばないという状況だろうと思います。しかし、四十七年度の工事の状態を見ますと民間工事で七百四十五億、公共で二百六十九億円、合わせて一千十四億円の消化をしている、こういうふうに言っております。したがって、われわれは能力があるのだ、こういうふうに言っているわけであります。しかし、海洋博を実際に進めていく上において、いろいろ技術的な問題や何かでやはり本土資本にもたよらなければならない。そのことは十分承知している。しかし、われわれとしてやれるということを踏まえて、そしてこの建設を進めてもらわないと困る。問題は一番心配しておりましたのは工事の集中化に対応する機械、設備の充実、そういうものが焼眉の急になってくるわけでありますが、そうなりますと、当然経費が非常に増高してまいります。したがって、海洋博後の問題について設備過剰の問題がある。これは当然起きてくる。こういう点を非常に心配をしておるわけであります。そこに本土の大手が今度は野放しに入るというような状況になりますと、県内企業はバンザイをしてしまう、この辺が県内企業の非常に心配をしているところであります。  そこで具体的な問題として、実は本土並みの工事の格づけをやるわけでありますが、これをひとつ撤廃をしてくれないか、こういう要求があるわけです。これは建設省の方はよく御存じでありますが、A、B、Cに分けましてBのクラスになりますと二億円しかやれない、ジョイントして四億円程度の工事しかできない、こういうことになりましたら当然本土企業の下請にならざるを得ない、こういう問題があるわけです。ここのところを多少改める必要があるというふうに思うわけです。  もう一点は、発注の時期の問題でありますが、会社の数はたくさんありましても資本力が小さいわけでありますから、一ぺんに発注をされたのでは消化し切れないわけであります。短時日にしわ寄せされないように、年間を通じて発注をしていくような計画、そうした体制というものを立てていく必要があるのではないかというふうに考えるわけであります。この点についての対策をお聞かせいただきたいというふうに思います。  それから、海洋博では先ほど課長からお答え願ったわけですが、地元の労働事情を荒らさないということでありますが、これは第一次産業にも非常に関係がありまして、第一次産業の荒廃を防止することにもなるわけでありますから、この点については十分お答えのような形での対策を立てられるようにお願いをいたしたいというふうに思います。要は、問題は地元企業の育成をはかるという観点に立ってあくまでも海洋博の計画は進めるのだ、こういう点について確としたお答えをいただきたいというふうに思うわけであります。
  125. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 現地の御事情もよく承り、また各方面の御意見も参考にいたしまして、海洋博がスムーズに県民の喜びのうちに開催できるように誠心誠意努力するつもりでございます。
  126. 井上孝夫

    ○井上説明員 公共工事の入札参加願いを出された業者の格づけのことにつきましてお答え申し上げたいと思います。  先生御指摘のとおり、公共工事の入札の参加を申し出られました業者につきましては、その過去の完成工事高だとか経営規模だとか経営比率だとか、そういうものを客観的に判断いたしまして、その他施工能力に関係する、あるいは労働福祉に関係する諸費用を計数化いたしましてランクづけをする、いわゆる格づけを行なっておるのでございます。この目的は、施工能力を確保して公共工事を適正に施工するということのほかに、実は業界をA、B、C、D、Eというふうに分けると同時に、工事の金額も分けまして、大きな業者が大きな工事を、小さい業者が小さい工事を、それぞれ適正な受注秩序のもとに工事がうまく配分できるという意図も持っておる次第でございます。  そういうようなことで、中央建設業審議会の勧告に基づきまして、各発注者が実施をいたしておるわけでございますが、現在私どもちょっと不勉強で、地元業界のほうから具体的にこれに関する要望を承っておらないのでございますけれども、私ども現在考えておりますところでは、この中央建設業審議会の勧告によりまして格づけを行なうということが、結局は地元業者もしくは中小建設業者の方にも受注機会を確保するという方策の一環であるというふうに考えるわけでございますし、具体的には、先ほど先生も御指摘になりましたように、ジョイントベンチャーと申しますか、共同請負のような形でそのランクを上げるというような形によりまして、大きな工事にも受注機会を確保できるというふうに考えておる次第でございます。基本的には、従来前々国会等から言われておりますように、沖繩の工事は、それぞれの地元業者を優先して行なうということは、ただいま大臣もお答えになったとおりでございますが、その手段としまして、具体的な格づけという現地における事務的扱いにつきましては、概要そのように考えておる次第でございます。以上御答弁申し上げます。
  127. 上坂昇

    ○上坂委員 いまの格づけの問題は、実を言いますと、これは建設委員会でも十分取り上げられなければならぬ問題だと思うのですが、これはわれわれ地方におりましても非常に問題になっているわけです。大体、大手が出てまいりますと、これはみんなあとは下請になっちゃうんです。大手がやっているかと思うと、実際に仕事をやっているのはみんな下請なんです。そういうことになりますと、格づけというものが、一体いわゆる適正配分になるのかどうかという問題が出てくるだろうと思うのです。その辺のところをどういうふうに指導するのか、私は非常に疑問であります。各地方の建設業者に聞きますと、非常にこの点は問題にしておって、あながち沖繩ばかりじゃないわけであります。三十億、五十億の市民会館が建つ、あるいは市庁舎が建つということになりますと、ほとんどこれは大手に取られてしまうというような状況でありまして、地元の建設業者ができないのかというと、これは実際はやれる。ところが、仕事をしておるのは、電気工事から何から、こまかいのはみんな下請がやっているというような状態ですね。そういう状態を一体どういうふうに把握しておられるのか、私は非常に疑問でありますが、この格づけをやはり撤廃していくということが、決してその適正配分を侵すことにはならないというふうに私は思うわけであります。それから地元の業者ももちろん困らせることにはならない。そういう点は、やはり業界自身が自主的にできるものである。同時にまた、それぞれその企業の実力というものはわかっているわけでありますから、法外な仕事をとるというようなことはおのずからなくなってくるというふうに私は思うのです。そういうような点をひとつ十分考えていただきたいというふうに考えるわけであります。この点は要望いたしておきます。  もう一つ、労働者の問題で、基地関係の問題について、これは質問をしないわけにはいかないわけでありますが、いま六月現在で二千七百四十三名の人員整理の予告が駐留軍から出ております。そして現在すでに千五百十九名の離職者がおります。労働力が不足しているにもかかわらず、これらの人々の就職が非常に困難をきわめておりまして、沖繩では、求人に対して五・三倍の求職となっているという状況であります。一体こういう状況を、この海洋博関連あるいは開発局等ではどういうふうな形で見ておられるのかということについて、ぜひひとつお伺いをいたしたいというふうに思うのです。  それから、こうした状況の中で、就職が非常に困難でありますから、基地関係の労働者の対策として、政府は米軍に対して強力な交渉をする、そして縮小しないときには、やはり離職者を出さないというような交渉を当然やるべきだというふうに私は思うのです。このことは、やはり沖繩の開発を目標として計画を進めておられる担当大臣である通産大臣にも十分お考えをいただきたいというふうに思うわけであります。  同時に、県が現在、離職者対策として、財団法人沖繩駐留軍離職者対策センターというものを四月に設立をしたのであります。これに対して、政府としては、やはり十分な助成措置を講ずべきであるというふうに思います。そのことが県民の生活安定、福祉向上につながるものであるというふうに考えるわけであります。そしてまた、政府があたたかいそういう施策をするということが、二十八年来苦しめられてきた、あの私たちの同胞、これが復帰の喜びに浸るものになると私は思うわけであります。そういう点で、十分な施策を講ずるようにひとつこれはお願いしたいと思いますが、その点について大臣はどういうふうにお考えになっておるか、お伺いをいたしたいというふうに思います。  それからもう一つは、沖繩の開発がいま進められているわけでありますが、注意する点は、沖繩は緑の表土をむきますとみな赤土であります。これが乱開発されますと、海がよごれてしまい、サンゴ礁が死滅をするという状況が出てきます。オニヒトデだけではなくて、開発のまさに鬼、ほんとうの人手がサンゴ礁をだめにしてしまう、あるいは海をだめにしてしまうという状況があるというふうに思います。そういう点で、乱開発について十分な監視をしてもらわなければならぬというふうに思いますが、沖繩にはすぐれた文化遺産が非常に多いわけでありまして、県指定、国指定を合わせますと、百八十三件あるというふうにいわれておりますが、これらに対しても、これはデベロッパーが入り込むと、日本の各地で起こっておるような状態が出てまいりますから、そのことについても十分な対策を立てられるようにしなければならないというふうに考えるわけであります。このことについては、建設省のほうからお伺いをいたしたいというふうに思います。
  128. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 離職者対策につきましては、労働省や施設庁におきましても、かねてからいろいろ苦慮して、努力しておるところだと思うのでございますが、関係各省とも協議をいたしまして、離職者に御心配をかけないように努力をしていくつもりであります。
  129. 浅井新一郎

    ○浅井説明員 御指摘の赤土対策とそれから文化財の保護の関係でございますが、実は、私のほうで沖繩の海洋博関連で道路事業をやっておりますが、道路事業に関しましては、これからやっと本格的に取り組む段階でございまして、現時点では、赤土によって海がよごれているというような事態はございませんが、御指摘のように非常に問題の土でございますので、これから事業が伸びていく段階では十分注意して、そういう事態がないようにいろいろ施工上の配慮をしてまいりたいというふうに考えております。  文化財の保護につきましても、ルート選定その他につきまして十分事前調査をやりまして、問題のないように処理してまいりたいというふうに考えております。
  130. 三枝英夫

    ○三枝政府委員 海洋博の会場の中の文化財の保存問題もあろうかと思いまして、この辺につきましては、十分開発協会等を指導いたしまして、県当局と打ち合わせしておりまして、現在垣内権現堂とかカンサ二カ所とか貝塚二カ所とか、約五、六件のものがございますが、これは全部会場建設にあたりまして、それを生かし、温存するということで検討いたしております。
  131. 上坂昇

    ○上坂委員 次に、交通の問題についてお伺いしたいと思いますが、六カ月間に五百万人の総観客を対象とした事業であります。そのうちで県外から百七十五万人を誘致することになるわけであります。問題なのは、行ってみまして感ずるわけでありますが、実は沖繩では、ことしの三月末ですでに十九万八千四百台の乗用車がある。復帰後十カ月で大体六万台増加しておる。車一台当たり道路は、本土では五十四メートルなのに、沖繩では二十三メートルしかないという状況でありまして、ものすごい交通渋滞が起こっております。しかも、向こうは右側運行でありますから、そこで本土から、もしフェリーボートなんかで乗り入れをいたしましたら、これはたいへんな問題が起こるのじゃないかと私は心配をしておるわけであります。したがって、計画にはカーフェリーによるところの乗用車乗り入れ計画をしているようでありますが、これはもう当然検討を要する問題で、むしろ本土からの乗用車の乗り入れば禁止すべきである。そうでないと、これは交通災害がたいへんな問題になるというふうに考えるわけであります。そういう点についても、ひとつお伺いをいたしたいと思います。  それからもう一つ、環境衛生の問題でありますが、百七十五万人の誘致客、延べ三百五十万人になるわけであります。この屎尿あるいはごみ対策、それからもう一つ医療対策が伴わなければならないと思うわけです。この辺のところがまだ計画中というかっこうではとても問題にならないと思いますが、その辺のところをひとつお伺いをいたしたいと思います。  それから、県、市町村の事業について質問をいたしますが、海洋博は、その本来の趣旨に沿って、県及び各市町村の持つ振興計画の実施を基本として進めるべきであります。なお、そのことについては、沖繩の十カ年計画を中心にして進めるというお答えがありましたが、その中に市町村の振興計画というものもぜひ入れていただかなければならないと思います。問題は、海洋博によって県や市町村の機能が麻痺をしてしまったり、あるいは大きな負担増があってはならないということになると私は思います。そういう点で、政府のあたたかい配慮が必要であります。したがって、先ほどからいろいろお答えがありまして、法律の運用であるとかなんとかたくさんありました。ところが、その法律の運用あるいは政令の運用というものが、ともすれば、従来の慣習に従いまして本土並みに扱ってしまうというおそれがあります。その結果、非常な混乱が起きて、金融の問題にしましても、何にしましても非常な支障を来たしているという事実があります。これは二十八年間もともかく異国の、異民族の支配のもとに暮らしてきた人たちなんでありますから、いろいろな面で日本の状況とは違う問題を持っている、そういうことを十分に勘案して、いわゆる官僚的なやり方ではなくて、ほんとうにあたたかい立場に立って、この施策を進めるというようなことにしてもらわなければならないと考えるわけであります。その点をひとつ十分お考えをいただきたいと思います。そういうことについてのお答えをひとついただきたいと思います。  それから、現実の問題といたしまして、政府はEXPO関連事業の工事量、それから資金、資材、労力等に関して、どうも先ほどから聞いておりましてもおわかりのように、計画をこれから立てるような状況になっている。これではとても県民は不安でたまらない。そこで、こうした消化をもし実施していくとすれば、これらの消化に対する具体策を一カ月単位でもあるいは二カ月単位でもいいから発表していく。そこまでの親切な形での計画の実施を進めていかないと、反対が起こり、あるいは延期論が起こってくるのは当然であろうと考えるわけであります。そこまでできないならば、これはほんとうのことを言えば、やめたほうがいいのじゃないかと考えるわけであります。  それから最後に、海洋博の関連の自治体の公共事業費、これは全額国庫補助にすべきだと考えますが、その点についてお答えをいただきたいと思います。特に昨年度二十六万二千坪の用地確保について努力をいたしまして、現在九八%取得済みであります。その取得費あるいは補償物件費が十九億六千三百万円、これは県費の支出になっております。そしてこのうち十七億円を地方債でまかなっておりまして、その利子が一億二千万円にのぼっておるのであります。こういうことが、実は地方自治体に対する財政の圧迫ということになっていると思います。こういうふうなものは全部政府が当然負担すべきであって、全額国が負担すべきであると私は考えますが、その点についてお答えをいただいて、私の質問を終わります。
  132. 三枝英夫

    ○三枝政府委員 お答え申し上げます。  すべて私どもの所管のことではございませんが、まず第一点の交通区分の問題につきましては、総理府の交通対策本部を中心としていま関係各省で打ち合わせをしているというのが現状でございます。もちろんこの際には県当局の意向が非常に大きく尊重さるべきことであろうかと思います。これは海洋博の開催期前にやるか、あるいはそのあとのほうがよろしいか、法律上の定めでは、沖繩復帰三年後ということでございますので、海洋博の五十年時点以後ということになるわけでございますが、この辺は、いま申し上げましたように、早急に関係各省で結論を出したいと考えます。それとあわせまして、本土等のカーフェリーの乗り込みの問題につきましても、そちらのほうで至急御検討をいただくことにいたしたいと思います。  それから、ごみ処理、屎尿処理等の対策につきましては、これも公共関連事業の一環として、海洋博の行なわれます本部町、名護、今帰仁村等合わせまして、それぞれ所要額の予算を計上してございます。その補助率等につきましては、本土適用の最高率を適用するということで考えて、これは十分に対処し得るようにいたしたい。ただ、そこの開催される場所の小さな町の財政というものを見ますと、いかにも負担も大きい。それによりまして、整備されないために訪れた観客にいろいろ迷惑がかかる、あるいは衛生上の問題が出るということではなりませんので、海洋博の協会そのものにつきましても相当額の援助をする。また、自治体のこういった補助額以外の自己負担分につきましても、別途資金対策で何とかめんどうを見てあげるという方向で対処いたしたいと考えております。  それからまた、医療対策につきましては、実は五月中旬、日本医師会の関係で、これは厚生省をはじめとして関係各省出席いたしまして、一つは開催期間中の問題と、もう一つは一般医療、沖繩全体としての医療対策、二つに分けまして、それぞれ第一回の討議が行なわれました。またその後、屋良県知事も九州各県等に御協力をお願いするというようなことで、医師会の協力体制につきましても方向が出てきつつあると聞いておりますし、鋭意、医師会を中心にしてそういった医療対策について万遺憾なきを期したいと考えております。  それからまた、第四点の御質問でございます海洋博の関連事業についての全額国庫負担とすべきではないか、こういう御意見でございますが、御承知のとおり、沖繩の県あるいは地元自治体の財政力の問題を十分考慮いたしまして、千二百億の関連公共事業についても地元負担は三十四億程度にとどめてございます。これは比率を申しますと二・八%ということでございます。ちなみに、万博のときには総額六千五百億の公共関連事業がございまして、地元負担は二千百四十億見当で、三二・九%ということになっております。したがいまして、二・八%の地元負担ということでございますので、われわれといたしましては、関係各省も同様でございますが、地元の財政事情を考慮いたしまして、今日現在とり得る最高の手段をとったと考えております。また、いろいろな事業につきましても一〇〇%補助あるいは直轄事業というかっこうに切りかえての、負担がかからないような措置を十分配慮いたしたつもりでございます。  それから、地元負担につきまして起債の利子等の負担あるいは償還額の負担等につきましては、起債の際にも、当方からも自治省にいろいろお願いをしたところでございますが、この問題につきましてはまた別途検討さしていただきたいと考えております。
  133. 加瀬正藏

    ○加瀬説明員 私どもの担当の部門についてお尋ねがございました二点についてお答え申し上げます。  まず、ごみ屎尿処理施設あるいは下水道等につきましての計画がまだできてないじゃないかというような御指摘でございますが、現在水道事業については認可設計中で、七月までには終わる予定でございます。  それから、ごみ屎尿処理施設につきましては基本設計中でございます。それから名護のごみ処理施設については用地の手当ても済んでおります。  もう一つ、工事計画を前もって公表すべきでないかというような御指摘かと思いますが、これは実は海洋博の関連施設部会で、四十八年度の沖繩におきます官公、民需の総体の事業量を千八百億ないしは二千億という推計をいたしまして、その額を前提にいたしまして、必要な資材量をはじいております。その詳細の御説明は省略したいと思いますが、御指摘のように、資材確保の面とかあるいは工事の分担等の関係で、前広に計画を公表するということについてはメリットも多いと思いますので、御指摘のとおり前向きに検討してまいりたいと思います。
  134. 上坂昇

    ○上坂委員 終わります。
  135. 山田久就

    山田(久)委員長代理 岡田哲児君。
  136. 岡田哲児

    ○岡田(哲)委員 私は、上坂さんのほうから質問がありまして、当然それに関連をして申し上げるわけでありますので、前提は抜きにいたしますが、時間もありませんので、できるだけその趣旨に沿った、核心をついた御回答をいただきたいと思うわけであります。  第一点は、中小企業の金融の問題についてでございますが、現地の中小企業の方々と話をしてみますと、特別融資の関係で三十七億ほど余ってしまった。大体これは利用率から見ますと五二%ぐらいの利用率のようでございますが、やはり地元の関係の意見を聞きますと、復帰後の混乱とあわせて、こういう金融の制度について非常になじみが薄い、さらに事務手続やその他の内容について非常に複雑な感じを持っている、こういうようなことがるる言われているわけであります。  特に要望の第一点は、貸し付け事務の簡素化、それから貸し付け条件の緩和等が強く言われているわけであります。こういう点から考えまして、六百日後再び海洋博という大きな経済変動を伴う時期でございますので、できるならばこの特別融資についてやはり十分な配慮をする必要があるのではないか、こういう感じがしてならないのであります。問題は、金が必要なのだがなかなか借りることができなかった、こういう実情など十分勘案をされまして、これについての十分な配慮をしていただきたい、こういうふうに申し上げるわけでありますが、この点はいかがでございましょうか。
  137. 松岡宏

    ○松岡説明員 沖繩振興開発金融公庫におきましては、昨年の復帰の五月十五日から、地元中小企業者に対しまして、それまでのドル経済から復帰後の円経済への転換を円滑に行なうための救済融資ということで、金利三%の特別資金貸し付けを行なってまいっております。これは円経済への転換を円滑に行なうという趣旨で設けられた制度でございますので、復帰後一年限りということで発足いたしておりまして、去る五月十四日をもってその取り扱いは一切終了したわけでございます。当初の予算上の予定は八十億円でございましたが、実績は四十六億二千四百万円ということになっておりまして、進捗率といたしましては五七・八%でございます。これは地元の中小企業者に対しまして、その業者が使用している従業員一人当たり八万円という計算で、きわめて単純明快な計算のもとに所要額を融資するという制度でございまして、およそ政府関係金融機関の融資としては、まことに破天荒な、単純明快な貸し付けであって、本土において前例を見ない制度でございます。  御質問の趣旨として手続が複雑難解であったということでございますが、従業員を二人使っていれば十六万円、三人使っていれば二十四万円ということでございまして、その審査手続もきわめて簡素化いたしまして、実地調査ども省略する、あるいは当初予定しておりました申請手続の中に納税証明書をつけるというふうな要件も、発足後若干の経験からそういうものも簡素化するということで改善いたしまして、きわめてスピーディーに処理したわけでございます。  四十七年度末のころにはもうほとんど申し込みがとだえておりまして、すなわち、沖繩公庫のPRが十分行き渡って、必要な限りの方は全部申し込まれたということであります。当初の予定八十億円は、これは復帰前のいろいろと事情のわからない事態において計画した数字でございますので、もし不足するようなことがあったらこれは絶対申しわけないということで、十二分の資金を用意した、その結果未消化部分が生じたわけでございますけれども、私どもといたしましては、需要のある方にお貸しできないような事態にならなくて済んだということをむしろほっとしているわけでございます。
  138. 岡田哲児

    ○岡田(哲)委員 お話を聞きまして非常に理解ができたわけであります。特別融資の点についてはいま言われたように承りますが、問題は、やはり全体の金融についてはまだまだなじみが薄いといいますか、なれないというか、そういう点があるというふうに思います。おそらく地元の関係からも強く要請などされると私は思いますので、ぜひいろいろの問題点の中から、沖繩について六百日後に迫っているという変動の時期でもございますので、できるだけの措置をとっていただくことをまずお願いをして、この点については次に移りたいと思います。次は物価の問題でありますが、先ほど上坂委員のほうから話がありましたように、物価全体ということについて私は触れようとしているわけではないのであります。これは沖繩から出た資料で、那覇市の統計でありますが、この資料を見ますと、昭和四十七年六月を一〇〇として、昭和四十八年四月との対比でございます。これを上昇分と寄与率という形で一応一覧をいたしますと、大体野菜が五六・一%の上昇に対しまして寄与率が二二・一%、生鮮魚介類が三八・六%の上昇に対して寄与率が一四・二%、肉類が二〇・四%の上昇に対して一四・二%、こういうふうに、すでに政府も発表いたしておりますように、沖繩の物価事情の中で生鮮食料、衣類、こういうものが本土と比べて非常に高く上がっているということはお認めのとおりだというふうに思うわけであります。  私はこの点から見まして、やはり沖繩の流通機構に問題があるのではないか、こういうふうに実は思うわけであります。この原因がそういうことであるならば、あるということでけっこうでございますが、そういう前提でものを判断いたしますと、もう少しこの流通機構を直ちに措置をする必要が出てくるのではないか、こういうふうに思うわけであります。  そのときに思いますことは、この基本法の中にも、適正価格の形成だとか、安定的な供給だとか、生産体制の確立だとか、卸売り市場の整備だとか、こういうことばが非常に羅列されているわけでありますが、私はこういうものでなしに、いまほんとうに必要だというふうに沖繩が考えている点、特に台風や集中豪雨、大干ばつ、こういうものが大体毎年あるわけでありまして、そういう点を考えますと、もう少し品質保持、計画輸送というような点を考慮しながら備蓄の冷蔵倉庫、さらに冷凍冷蔵船の就航、輸送、または冷蔵輸送用のコンテナというものが直ちに必要になってくるのではないか、こういうようなことを実は考えるわけであります。基本計画の中にも一応あげられている点でありますが、当面の計画の中には、当面の公共投資の中にはこれが載っていないのであります。私は、少なくとも五百万の動員を六百日の間にかけて実施をしようとする、この問題をめぐって早急にやる必要があるのではないか、こういうことを考えるのでありますが、御見解を承りたいと思います。
  139. 戸田博愛

    ○戸田説明員 沖繩の野菜の価格は、実は復帰後の昨年の七月に非常に高騰いたしまして、その後やや落ちつきを取り戻した感じはございますけれども、先ほど御指摘ありましたように、四月でなお一五六というような水準でございます。  沖繩の野菜生産につきましては、多少年によって変動はございますけれども、順調に作付面積自体は伸びております。四十二年に二千六百二十六ヘクタール、昨年四十七年は三千八百ヘクタールということで非常に伸びてきております。したがいまして、平常の時期におきましては、できるだけ県内産の野菜で供給していくという体制をつくりたい。そういう意味で、野菜生産の振興をはかっていくということで、野菜生産団地というものを昨年来つくっていっておるわけでございます。しかし、御指摘ございましたように、沖繩の特殊な気候というようなこともございまして、夏場あるいは台風というようなこともございますし、さらに、品物によりましてはなかなか県内で自給することがむずかしい品物もございますので、こういうものにつきましては、われわれといたしましても、できるだけ他の府県から円滑に輸送をしてまいりたいというふうに考えているわけです。特に沖繩県の県経済連という生産者団体がございますし、これと全国的な生産者団体、そういうものが提携をいたしまして、できるだけ不足をしないような形で野菜を輸送してまいりたいと思います。  先生御指摘の冷蔵庫の問題でございますけれども、野菜を冷蔵いたしますC級冷蔵庫につきましては、現状ではなおやや余裕があるような状況でございますけれども、先ほど来御指摘ございましたように、将来の海洋博というようなことにかけまして需要がどうなるか、そしてそれに対する貯蔵体制をどうするかというようなことにつきましては、現在関係の団体あるいは関係省庁とも相談をいたしておりますので、そういう必要性があれば当然これは前向きでつくっていかなければならぬというように考えております。
  140. 岡田哲児

    ○岡田(哲)委員 実は私、県の農業協同組合中央会からの要請を手に入れているわけでありますが、この要請の中で、いま申しました冷蔵倉庫あるいはコンテナ等に対する要望書が出ているわけであります。おそらくこれは県にも出されているでありましょうし、政府にも出てきているんじゃないか、こういうふうに実は思うわけであります。いま申し上げたのは、流通の問題をいかにするかということと同時に、特に離島でございまして、年間の状態から考えてみまして、できれば島の中央部にそのようなものを置いて——この要請書によりますと食料加工コンビナートということばを使っておりますが、いまの倉庫だけの問題でなしに、そういうような意味も含めていく必要があるのではないか、こういうふうに実は思うわけであります。ただ、基本計画を見せていただきますとそういうような計画は実は載っていないのでありますが、ぜひ必要だと思いますので、ひとつ検討をしていただきたいと要望すると同時に、前向きで取り組んでいただくようにこの機会に申し上げておきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  141. 戸田博愛

    ○戸田説明員 コンテナ輸送等につきましては、いろいろな府県の間で現在実験的に進めておりますし、食品コンビナートとなりますと私ちょっと答弁するあれはございませんけれども、野菜の流通につきましては、先生のおっしゃられたような方向で前向きで対処してまいりたいというふうに思っております。
  142. 岡田哲児

    ○岡田(哲)委員 いま物価対策部会が開かれることになっているようでありますが、当然そこでも少なくとも問題になるのではないかというふうに思いますので、それらの問題も踏まえながら今後さらに促進をしていただくようにお願いをいたしたいと思います。  次はサトウキビの問題でございますが、すでにいわれておりますように、サトウキビの中に占める労賃といいますか、これが非常に上がってきている状態であります。先ほどからの答弁にもありましたように、海洋博が持ち込まれますと労賃その他がずっと上がってまいりまして、第一次産業を侵されるのではないか、こういう心配さえ出ているのであります。聞くところによりますと、大体一トン七千円近く、刈り取り、積み込みの労賃で四千五百円から五千円ぐらいだといまいわれているわけでありますが、これを省力化していくためには、相当な機械化といいますか収穫機の導入ということがもうすでに計画されているようであります。問題は、これを使うとなりますとこの必要資金についての助成措置が必要になってくるというふうに強く考えるのでありますが、この点についてはいかがでございましょうか。  それからもう一つ、同じく価格の点についてでありますが、沖繩におけるサトウキビの育成を今後進めていくというためには、やはり本土における米価と同じような生産費及び所得補償方式というような算定をすることが非常に大事になってくる、こういうふうに思うわけでありますが、この二点についてお伺いをいたしておきたいと思います。
  143. 結城庄吉

    ○結城説明員 最近の労働力の不足なり労賃の上昇によりまして農業面で好ましくない状態が発生しているということにつきましては、沖繩総合事務局からも承っておりますが、七割くらい兼業農家というような形で兼業化している中でございまするので、必ずしも全体が好ましくないことだけではない面もあろうかと思いますけれども、農業面から申しますと、従来サトウキビにつきましては結いというような形で共助の作業形態をとっておりますものがくずれかかっているというようなこと等もありまして、収穫放棄というようなことが出てまいっておるということで、農業の生産意欲を低めていくということにつきましては大いに問題があるというふうに私どもも存じておるわけでございまして、サトウキビの最大の労働力の低下、生産費におきます労働賃金の支出面の低減ということをはかってまいるためにも機械化というものを進めなければならないというふうに私どもも存じておるわけでございまして、収穫機の開発ということにつきましては特段の努力を払ってまいりまして、これもようやく御承知のように実用化されてまいっておりますし、また、行政なり普及活動なりあるいは砂糖会社等の啓蒙によりまして、地元におきましてもこれを受け入れていくという意欲がだいぶ出てまいってございますので、今後とも大いに機械化ということを進めてまいりたい。また、機械を導入するにあたりましても、基本でございます基盤整備というものをはかっていくのがまず先決でございますので、基盤整備と機械の導入ということを積極的に今後とも進めてまいりたいというふうに存じておる次第でございます。
  144. 岡田哲児

    ○岡田(哲)委員 進めていくことはいいのですが、私の言っているのは助成措置を十分にとるように、こういうことでございますので、その点は当然助成措置はとるということでよろしゅうございますか。
  145. 結城庄吉

    ○結城説明員 振興計画の中におきまして、来年度予算におきましても、その十カ年の計画を前提にいたしまして予算化して助成をしてまいりたいというふうに存じております。
  146. 岡田哲児

    ○岡田(哲)委員 次に、今度の海洋博は「海−その望ましい未来」というのがテーマであります。しかし、現実に調べてみましたときに、沖繩の漁業というものについては相当大きなウエートを占めるべきであるし、また将来そうなければならぬのではないか、こういうふうに実は考えておるわけであります。長い海岸線、それから天然の魚礁であるサンゴ礁、東シナ海に隣接する南方漁場の隣接しているというような点を見まして、私が特にここでお伺いをしたいのはサンゴ礁の問題でございます。この天然の魚礁になっているサンゴ礁が、先ほど上坂委員のほうからも話がありました、たとえば土木工事のためにその土砂が海岸を埋めてしまっているという問題もあります。また、聞くところによりますと、パイナップルの農場から、集中豪雨などありましたときに赤土が川に流れ込む。御存じのように非常に川が短いものですから、そのまま海に流れ込んでくるということもあるようであります。それから聞くところによると、アメリカ軍の上陸用舟艇などの演習のためにサンゴ礁がこわされてしまうという話も聞いております。オニヒトデは非常に有名になっておるのでありまして、南のほうからどんどん北へ向かって上陸をして食いつぶしている、こういうふうに見ますと、まさにサンゴ礁の島だといわれたこの沖繩のサンゴについては、相当死滅の状態にいま立たされている。しかも、それは漁業に非常に深い関係を持ってきている。こういう点から見まして、先ほど建設省には、土木工事をやる場合にはぜひ重大な規制をして、そういうことのないようにということが上坂さんのほうから言われたと思いますが、それ以外の状態というのもたくさん出ているのでありまして、私は、サンゴ礁を守るというだけでなしに、サンゴ礁を守るということが漁業を守る、そういう意味にも通ずる相当重大な問題でありますので、ぜひこの点について御留意を願いたいと思うわけでございます。  実は環境庁を呼ぼうと思ったのですが、きょうは出られないようでありまして、資料はもらいました。この黒いところが全部侵されているところだそうであります。もうこれは一カ所、二カ所じゃなしに、沖繩全島のサンゴ礁が全滅に瀕している、こういうことでありますので、これは一県だけでなしに、国のあらゆる各省を総動員してこの対策に当たってもらわなければならぬのじゃないか、こういうふうに思うのでありますが、いかがなものでありましょうか。
  147. 三枝英夫

    ○三枝政府委員 お答え申し上げます。  まさに先生のおっしゃられましたように、沖繩地区におきますオニヒトデの大増殖によりますサンゴ礁の破壊、これは海洋博という私どもの所管する立場といたしましても、非常に重大な問題でございます。ただ遺憾ながら私どもの知っている範囲では、オニヒトデの発生のメカニズムあるいはそれの完全に有効な駆除対策というのが世界的に見ましても確立されていないという点がございまして、実は環境庁のほうにもこの問題はお願いし、四十七年度、四十八年度それぞれ四百万円の予算を計上し、そういった観点の基本的な解明を御研究願っているわけでございますが、しかし時期は迫りますし、現実にできるだけ人力をもっての駆除ということも九牛の一毛かもしれませんが、しかしやらざるを得ないということで、県当局ではオニヒトデ駆除一千四百万くらいの予算を立てまして、もり銃による、ダイバーによります、まことに原始的ではありますけれども、退治をやっておるということでございます。別途硫酸銅を使ったやり方とかいろいろ研究はされておるようでございますが、いろいろまた逆の意味で副作用があるというようなこと等もありまして、まだ駆除対策は確立されていないという現状でございます。しかし、ただいまございましたようにこれが同時に漁業資源等につきましても影響のある問題であることは確かであろうと存じますし、この問題につきましては、ただいま申し上げましたようなことで、環境庁を中心に関係各省寄り寄り集まりまして、さらに検討を続けたいと思います。
  148. 岡田哲児

    ○岡田(哲)委員 ぜひこれは前向きに取り組んでいただかないと全滅をしてしまう。こういうのを目の前に見てまいりましたので、ぜひお願いをしたいと思います。  時間がありませんので、最後に非常に簡単に申し上げますが、沖繩は本土の離島であり、同時に多数の離島群を含んでできている県でございまして、先ほど触れました物流との関係あるいは加工拠点をつくっていかなければならぬだろう、そういう点から考えますと、地元の方々から強く復帰後要望されておりますのは、なぜ国鉄を沖繩に持ってこないのか、こういう話が出ておるのであります。いろいろ問題があろうかと思いますが、国鉄を将来沖繩に建設する考え方についてまずお伺いをしておきたいと思います。
  149. 山田宏

    山田説明員 沖繩本島に鉄道の新線を建設することにつきまして、政府といたしましては、現時点におきましてはまだ計画を有しておりません。ところで、いま先生お話しのように、さきに沖繩県当局から本島の内陸部に鉄道を敷設してほしい、こういう要請が政府に出されております。ところで、鉄道は、申し上げるまでもなくいわゆる大量輸送機関でございます。そこで、現在の沖繩本島の輸送状況、交通施設の利用状況を考えまするに、非常に道路が整備されておるようでございますし、先ほどもお話がございましたが、自動車の台数というものが非常にふえておるようでございます。そこで、こういった状況下において、現在さらには今後の長期的展望に立ちまして、鉄道の建設というものの必要性があるかどうか、これは旅客、貨物両面にわたりまして住民の足の確保あるいは地域開発という観点からの鉄道建設の必要性があるかどうか、こういったことにつきまして、いま申し上げたような他の交通施設の整備状況、それも踏まえまして今後十分慎重に考えてまいりたい、かように考えております。
  150. 岡田哲児

    ○岡田(哲)委員 私はぜひ御検討願いたいと思うのでありますが、問題は復帰をしてただ沖繩だけに国鉄がない、こういう点やら感情的な面もたくさんあろうと思います。  それから、離島間の海上輸送の点についても、ぜひ国鉄でという要望が企業側、農民あるいは中小企業の関係からも強く出ている問題でありまして、その点を踏んまえながらひとつ御検討を願いたい。あわせて国鉄でやるとすれば、先ほど申し上げた冷蔵コンテナというようなものも現在九州では使っているようでありまして、あらゆる手を使って沖繩の違和感というものを取り除いていただくようにお願いをいたしておきたいと思いますが、その点どうでしょうか。
  151. 服部経治

    ○服部説明員 ただいまの先生のお話でございますが、先生のお話からもうかがわれます沖繩県民のそういった強い感情というものは、私どもといたしましてもよく理解できるところでございます。しかしながら、先生御承知のように、鹿児島−沖繩間につきましては現在民間事業者数社によりましてそれぞれ定期航路が運営されております現状でございまして、必要輸送力の確保という面におきましては、現状で格別問題は生じていないというふうに私ども承知いたしておるところでございます。したがいまして、この沖繩航路につきましては、今後とも現在運航の実績を持っております民間事業者を育成いたしまして、必要輸送力の確保に当たるのが最も妥当な方法ではないか、かように考えられるところでございまして、この区間に国鉄連絡船を就航させることにつきましては、国鉄のほうで現在の段階ではそのような計画を持っていない、かような状況でございます。  それからなおもう一点、国鉄のコンテナ輸送を沖繩本島のほうにも及ぼしてはどうか、こういう御指摘でございましたが、国鉄では、ことしの三月から、鹿児島経由那覇ということで国鉄コンテナの貸し出し連絡的な輸送を行なっております。現在の段階では、まだこれが始まって間もない事情もあると思いますが、冷蔵コンテナの使用は現在までまだ実績はございません。ございませんが、これはもちろん必要がございますれば、当然そういう方向でわれわれも考え、また対処してまいりたい、かように考えております。
  152. 岡田哲児

    ○岡田(哲)委員 時間が来ましたので、以上できょうは終わりたいと思いますが、何にいたしましても、先ほど通産大臣が言われましたように、屋良知事もこちらに参りまして具体的な相談もされるようでありますし、現地のほうからもさらに要望が出てくるというふうに思います。ぜひそういう問題について積極的に取り組んでいただくようにお願いをしておきたいと思います。  しかし、何にいたしましても、行ってみまして感じますことは、全土における米軍の基地機能が全く変わっていない、こういう点が非常に大きいし、さらに物価が拍車をかけて上がっている。第一次産業がつぶれてしまうのではないか。初めての経験でありますが、沖繩県民は非常に不安におちいっているわけでありまして、六百日という短期日の間に大きな公共投資がされ、過熱度はそれが短くなればなるほど起こるのでありまして、やはり不安をなくしていく、あらゆる施策が一人一人の県民にわかるようにしていく、そういうことがなければ、私はこの海洋博は成功しないのではないか、こういうふうに強く感じた一人でございます。どうかこれを契機に、今後も問題が起こり次第ただしていくつもりでございますが、政府全体が前向きで取り組んでいただくことをお願いして、終わりたいと思います。
  153. 山田久就

    山田(久)委員長代理 午後三時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後二時五分休憩      ————◇—————     午後三時十八分開議
  154. 浦野幸男

    浦野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。加藤清二君。
  155. 加藤清二

    加藤(清二)委員 実は事重大でございまするので、私の質問に対する答弁、特に通産大臣や経企庁長官の答弁いかんということでたいへん心配して、けさほどは大ぜいさん、ここにぎっしり一ぱい来ておられましたけれども、私の質問が行なわれないということでお帰りになりました。帰っていただきました。それほど関心を集めている問題でございます。ところが、あいにく大臣が他の委員会に御出席のようで、こちらには来られません。法案が上がるということなら、これはやむを得ざる仕儀だと存じます。しかし、大臣にかわって御出席の答弁の方は、そのおつもりでよく御答弁いただくと同時に、もし政治的答弁ができない案件につきましては、お帰りになりまして大臣とよく御相談の上、書面をもってでもよろしいですから、あとで大臣の答弁をいただきたいと存じます。  第一番は、世界第一の農産物の生産国であるアメリカが、日本に向かって農産物の自由化を迫ったまでは理解できます。しかし、今度は農産物の六十日のストップ、しかもこれは卒然とああいう発表をされたわけでございます。先物契約をしておりまする日本の商社の困り方は、これはだれでも理解のできることだと存じます。しかし、アメリカがくしゃみをすれば日本が流行性感冒になるといわれまするけれども、それほど及ぼす影響が大きいのでございます。きのうすでに雑穀市場の大手亡はストップになりました。きょうの午前の第一節、第二節を見ましてもたいへんな寄りつきぐあいでございます。もしこれをこのまま放置しておきますと、まず第一番に製油会社に響きます。なぜかならば、御案内のとおり六十日ストップといいまするけれども、手持ちが三十日分しかございません。配合飼料に及ぼす影響はやがて養鶏、養豚、牧畜に及ぼす影響が大きい。それはやがて卵やあるいは牛乳や、もっと端的にいえば、先般行なわれましたようなあの大豆の高値がある。とうふの高値を呼んだと同じようなことに相なるわけでございます。これに対して政府はいち早く手を打つべきだと存じまするが、きのうの発表によりますと、農林省も通産省もたいしたことない、こういう表現でございました。それは世間に及ぼす影響を勘案なされば、あの発表もやむを得ざるの指示だと存じまするけれども、ほんとうに及ぼす影響は少ないものと思って手をこまねいておられては、困るのは国民でございます。物価の値上がりは国民の怒りを招くところであり、国民の怒りはやがて田中内閣の下落に通ずる、物価値上げは、時の権力、時の内閣の人気の下落に通ずることは先般来の問題で明らかなところでございます。ですから私は、本件は内閣の名誉にかけてでも早期に対策を立てられまして、国民に不安感を与えないようにすべきではないかと存じますが、農林省、通産省、具体策いかがでございますか。なぜ通産省にこのことを聞くかと申しますと、雑穀市場の売買はやがて三品市場に通ずるからでございます。表は、目に見えるところは違っておりまするが、地下を調べてみますと、ちゃんと連通管の原理と同じようなことになっているからでございます。
  156. 池田正範

    ○池田政府委員 ただいま御指摘になられました商品取引所の、特に手亡の価格のここ二日ほどの上昇ぶりは確かに御指摘のように異常なものといわざるを得ません。御承知のように、今回のアメリカの対外輸出規制の対象はなおこまかく内容がわかっていない面もございますけれども、大統領の談話等総合いたしますと、たとえばいまの手亡のごときは、これの受け渡し代替品と指定されておりますのは、アメリカできわめて手亡によく似たピービーンズというのがございますが、これらは今回の輸出規制の対象には入っていないのでございます。したがって、ものの道理からいたしますと、当面あのアナウンスが行なわれたということによって、取引所における対象になりますところの手亡の需給には影響がない、むしろここ数カ月来はやされておりますことしの夏の異常天候というものを背景に、手亡の価格というものはもう少し上がるべきだ、あるいはアメリカのピービーンズの値段というものは全般的に比較的高くなってきておりますので、それと受け渡し格差を国内におきまして、ほぼ一俵当たり三千円程度に現在きめておりますが、それらの格差から考えて、もう少し手亡の価格は、水準として上にいってもいいのではないかといったような見方が国内の一部にあることは事実であります。しかしながら、今回のこのアメリカの輸出規制のアナウンスに直結する原因というものはどうも考えられないということで、実は先ほど東穀の責任者を呼びまして、この異常な状態というものは国民環視の中で非常に遺憾であるので、この過熱状態というものがこの上起こるということになりますと、当局側としては重大な決意を持たざるを得ないということで強く警告を発してまいった次第でございます。  それからなお、全般的に現在のアメリカの輸出規制の影響でございますが、これはなお内容を十分明らかにしなければ言えない面もございますが、いわゆる六十日間のこの期間の中で、農産物の輸出規制に関して直接問題になりますことは、商務省は現在商社に対してこの二十日までにレポートを求めておりますが、その貿易のレポートをどう使ってくるかにかかってくると思います。しかしながら、アメリカ側の発表によりますと、既契約分については少なくともこれを尊重していくのだというたてまえでございますから、したがって、現在私どもが情報として把握しております範囲によりますと、たとえばトウモロコシ、マイロといったような配合飼料用の原料穀物につきましても、大体ことしの十月までは成約分を持っておりますし、また、小麦等につきましても、十一月ころまでの成約はすでに持っております。さらに、大豆につきましても十二月までの成約分を持っておるといったように、当面輸出規制というものが暫定的に行なわれる、しかもこれが全面ストップとはいまの考え方からいたしますと受け取れませんので、その何割かが何かの形で行なわれるというふうにかりになりました場合にも、直ちに当面への影響というものはそう大きくないというふうに私ども実は考えておるわけでございます。ただ、これがその後、いわゆる第四段階と称せられる本格的な成約のもとで長期に続くということになりますれば、これは非常に大きな問題になってまいります。したがいまして、私どもとしては当面、アメリカ政府が輸出穀物の規制をどのような形で行なうかということについての内容を一日も早く把握したいというふうに考えておるわけでございます。
  157. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 今回のアメリカの輸出規制措置は、日米経済関係にとっても異例な、非常に影響の多いものと心得まして、私どももその対策には遺憾なきようにしたい、こう思っております。  御指摘の農産物に関連して、穀物の取引所が暴騰した場合に、繊維三品取引所にも悪影響を及ぼさないか。この点は私どもも懸念しておる一つでございまして、御承知のように本年初頭から、それでなくても国民生活物資の価格高騰に関連する取引所の相場として暴騰してまいったことについていろいろの規制措置をとってまいったわけでございまして、一応の安定帯に入ることを希望しつつ監視しておるやさきでございます。したがいまして、この際、米国の輸出規制に関連し、穀物取引所の影響を受けて再び繊維三品の取引所が暴騰することのないよう、さしあたり取引所当事者にも警告をしたいと思っております。この点につきましては、通産大臣とも相談いたしまして、すみやかに処置をしたいと思っております。  なお、その後の事情につきましても最大の関心を持って監視して、状態に応じ必要な措置を用意しておきたい、こう考えております。
  158. 加藤清二

    加藤(清二)委員 農林省にお尋ねいたします。  東京穀物に対して厳重なる警告を発してきたとおっしゃられました。先般のあのごたごたの結果は、大阪の山本氏、全国商品取引所の理事長はやめられまして、今度は東京の雑穀の理事長である清水さんが全国会長についこの間かわられました。清水さんの平生の理論であります経済哲学を実行に移すよい機会だと思いますが、厳重警告の内容を承りたい。
  159. 池田正範

    ○池田政府委員 これは申し上げるまでもなく商品取引所が一つの穀物の実需を正確に反映してこれが暴騰するといった場合は、これはむしろ取引所自体の問題というよりも、その背景をなしておる穀物の需給の実勢を打開することが先決であるという場合もあるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、当面手亡につきましては、実需の条件の中に変化が認められないのに、急速に一般的な輸出規制という雰囲気をはやして上げてきたというふうなことがございますので、これはかなり危険であると私ども考えまして、すでに御承知のように、今月の十五日に臨時増し証拠金の引き上げ等を含みます規制の強化を実施しておりますので、それ以来全体の取り組み枚数も、かって六万枚程度ございましたのがすでに一万枚程度まで落ちてきております。したがって、全体としての過熱が出てまいりますときによく見られますところの全体の取り組み枚数が非常にふえる、それによってさらに価格が上がってくるという形ではなしに、きわめて少ない、減少した取り組み枚数の中で、ちょっとした原因でぎくしゃくと価格の変動を激しくするというふうな非常にふぐあいな取引の現状からいたしまして、これはやはり取り組みをいたしております人々の自粛といいますか、そういうことを十分に警告することで当面様子を見る、しかし、もしそれだけで効果があがらないということになれば、さらに証拠金の引き上げとか、あるいは場合によっては立ち会いについての規制まで含めまして考えざるを得ない、こういうことを含めて警告を発したわけでございます。
  160. 加藤清二

    加藤(清二)委員 農林省、よく聞いてくださいよ。木材の加工業者があなたのところへこの正月以来何度も何度も陳情に行きました。そのつど万全の策が講じてあるから心配ない、心配ないというお答えでございました。にもかかわりませず、ラワン材、ベニヤ板、これはたいへんな暴騰をいたしました。それのみでとどまったのではございません。雑穀に火がつきました。おかげでとうふ屋までが問題を起こしました。その結果はついに、M商事と申しましょうか、犯罪まで起こしたわけです。それが発見されたわけなんです。いまや国民は、農林省の手の打ち方について全面的な信頼を与えていない。いわんや雑穀市場の関係についてはもうスペキュレーションだといわれておる。つなぎの場ではない、ギャンブルメーカーのもうけ場所だといわれておる。それを管理、監督なさるところの農林省としては、ついこの間、二度と再びこのようなことはさせませんと言うておきながら、またぞろこうなる。大手亡は市場には関係がある。しかし、あなたのいまおっしゃってみえますところのピービーンズは上場に関係がないのです。供用品でもない、代替品なんです。しかし、それが除外されているにもかかわらずなお上がったということは、これは思惑買いが入っているという証拠である。その思惑買いがなぜそんなに動くか。加工業者が上げるはずはございません。会員外の資金がここへ常にギャンブルを目当てに、スペキュレーションを目当てに流れているから、アメリカがくしゃみをするとこちらが感冒になるわけなんです。同じ金が、そこで手じまいするというと、今度は糸へんの一番ギャンブルのしやすい上場品や供用品の少ないウールに来て、それを手じまいさせると今度はコットンの一番数の少ない二十番手に飛びつくわけなんです。こんなことは何度も何度も過去の歴史に繰り返してきておることなんです。だから厳重に自粛せよと言ったくらいで自粛ができるとお思いですか。ほんとうにそうなら、この正月以降のああいうスペキュレーションはなかったはずなんです。ヘッジだ、ヘッジだと表には言いながらスペキュレーションをやっておる。おかげでこの春定年でやめていった官吏の方や全国の校長さんたちの退職手当金までが雲散霧消していることをあなたよく御存じなんでしょう。だれがもうけたのです。ギャンブルメーカーなんです。一部の人がもうけて、出資した人が泣いて、そうして国民が高いものを食わされて、こんなばかげた話がありますか。市場であおるものですから、農産物と糸へんがこんなに高くなっている。物価値上げの張本人だ、犯人だといわれてもやむを得ないはずなんです。だから私は、この間も新旧理事長の交代のときに党を代表して行きまして、ゆめさようなことのないようにと念を押してきたはずです。ところがまたやっている。直接大手亡に関係のない原因にもかかわらずストップ高なんです。あまりにも自由の幅が大き過ぎるといいましょうか、雑穀市場が農林省の言うことを馬耳東風と受け流しておるのか、もう少し身の入った指導をしていただきたい。こちらからお尋ねする。こういうことが幾日続いたら取引停止に持っていかれますか。
  161. 池田正範

    ○池田政府委員 ただいま申し上げましたように、私どもも、この大手亡の二日ほどの動きというものはまことに異常であるというふうに思って警告を発したわけでございます。しかし、その警告の結果、見ておって、なお天井知らずに実需と無関係に上がるというふうな形で、なおその取り組み枚数その他がどんどん波状的に大きくなるというような要素が出てまいりますならば、これは最終的には立ち会いの停止といいますか、取引を停止させるところまで持っていかざるを得ない時期も来ようかと思います。しかし、その前にいろいろと取引所に対しては打つ手もあるわけでございまして、たとえば先ほど申し上げましたような臨時増し証拠金をもう少し重みをつけるというようなことで、少しくらいの金を持っていったのでは取引に合わないという経済的条件をつくり出すというのも一つ方法でございます。また、場合によっては、この夏の様子のわからない天候をはやして価格のつり上げをやるというふうな場合がこれ以上続くといたしますならば、新甫についての取引について思い切った制約をするというふうなこともできようかとも思います。いずれにいたしましても、ただいま先生が御認識になっておることと、私が手亡について現在東穀で行なわれておるスペキュレーションに対する評価とは、あまり距離がないというふうに私も思います。私もできる限りひとつ前向きで、いやしくもインフレをあおる先端に取引所が立つというふうな機能を果たさせることについては、何とか食いとめるために全力を傾けたいというふうに思います。
  162. 加藤清二

    加藤(清二)委員 需要と供給によって物価が上がるということならばわかります。しかし、今度の値上げは、あなたも御指摘になりましたように、実需に関係ないのです。もっとも先物だけ上がった、六十日停止しているから、停止している問に取引ができないから、それがちょうど当月限で納会に必要であるという時期のものだけが上がったというならば、私も理解できます。しかし、当月限がどうして上げなければならないのです。いまあなたがそれに対して、こうおっしゃられましたね。証拠金を上げます、こうおっしゃいました。確かにそれは一つの手です。新しい資金、特に新しい外部資金を防ぐにはいい手に違いありません。しかし、証拠金をどれだけ上げても、証拠金なしで、から売り、から買い、信用取引をやっている向きのほうが多いということをあなた御存じでしょう。お尋ねするが、日本で指折りの二社五綿という連中がバイカイする場合に、証拠金を納めた例がありますか。
  163. 池田正範

    ○池田政府委員 穀物取引所におきましては、いま御指摘のような点について、証拠金を出さずに取引が行なわれているということはないというふうに承知をいたしております。
  164. 加藤清二

    加藤(清二)委員 あなたの認識、あなたに報告書はそう書かれているでしょう。あったらどうしますか。
  165. 池田正範

    ○池田政府委員 おしかりいただいて恐縮なんでございますが、私自身はどうも、ないということを信じ込んでいま御答弁申し上げたわけでございますけれども、もしかりにそういう形のものがあるとすれば、これは厳重に処分しなければいかぬというふうに私は思います。
  166. 加藤清二

    加藤(清二)委員 当然のことです。しかし、あなたが仲買い人を調べたりあるいは会員を調べた、それだけでは根の深いこれは、根をあらわしてまいりませんが、これはもはや一般通念になっている。外部資本で信用のない人が取引をする場合には証拠金は納めなければならない。しかし、会員と仲がいい、仲買い人と仲がいい、資本が同一系列である、仲買い人が大きな商社のダミーである、看板は違うけれども実質資本の系統がその大企業、大商社の傘下にあるという場合は、証拠金は全然納めません。信用でこれを行なっております。雑穀だけではありません。三品もまたしかりでございます。  通産大臣に承りたい。証拠金を出せといった場合に大商社は出しておるかおらないか。
  167. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 いま農林省の池田局長が答えられましたように、私どもは証拠金を出すという規定でやっておりますし、報告は皆さん証拠金を出してやっておりますので、そこまででお答えを切りたいのですけれども、お詳しい加藤先生の御質問でありますので、私どもがさらに入手しておる情報も入れてお答え申し、私ども行政上の努力のほども知っていただきたいと思いますが、少なくとも、去年の暮れからことしにかけまして、三品取引所の値段が次々と上がっていって、言ってみれば買い方がもうけ資金を次々と取っていく段階におきましては、それだけ信用がふえますし、かつ、先ほど御指摘の二社五綿というような、本来的に会社の信用が多い場合には、証拠金は納めてもらいますけれども、仲買い人のほうが場合によっては同額の貸し付けをいたします。こうなりますと無敷になりますし、場合によっては一定率を貸し付けるなり、保証金なりを反対行為によって相殺いたしますので薄敷という現象にもなります。私どもは価格高騰の対策のための調査の過程におきましてそういう事実も承知いたしましたので、そういう行為はやめるようにという指導をしてまいっております。
  168. 加藤清二

    加藤(清二)委員 農林省よく聞いてくださいよ。通産省のほうは、法には触れないが具体的事実のあることを認められました。私から申し上げましょう。証拠金を何ぼ上げても、証拠金が何億という金になりましても——二社五綿とあえて言うておきましょう。固有名詞を使っては差しさわりがありますから。それを納めなければならない。代理でバイカイをまかされた仲買い人は同額の金を貸すのです。なぜ仲買い人がそのようなことをするのか。証拠金と同じ金を当該納めた人に貸すのです。なぜそういうことをするか。それは買い方、売り方の依頼者が、つまり言うと、二社五綿側がそれを仲買い人側に要求するからである。その要求に応じない仲買い人はけしからぬというのでつまみ出されるのです。それが実情なんです。ですから、あなたがそれはないとおっしゃるならば、そういう行為がないとおっしゃるならば私は実例を出します。たくさん持っておるのですから。なぜかならば、納めるほうが少ないのですから。つまりまともにやっているほうが少ないのですから。証拠は幾らでもある。出した場合にあなたはどうします。いまここでも出せます。暗唱しておるのですから。  そこで、局長のあなたに答弁を要求しては無理だから大臣にと言うておいた。しかし、その大臣も御都合あしくてお出ましにならなければ、あとで書面でお答え願いたいと最初に申し上げておる。書面でというのはここのところでございます。ないとおっしゃるならば、私は出す。出したときにはもう承知しませんぞ。この委員会でしゃべり上げるのですから。したがって、あなたのほうはこれをよく調査してみてください。調査は簡単です。ちょうど証券金融があると同じように商品金融もこれあり、銀行もこれあり、きょうのバイカイ高の裏づけがあるかないか、お調べになればすぐわかることなんです。私は調べてきております。したがって、この点は、及ぼす影響の重大性にかんがみて、ここで公表を避けるというならわかります。ぜひひとつあとで書面でお答え願いたい。それは納得できますか。
  169. 池田正範

    ○池田政府委員 ただいま御指摘の点につきましては、調査をいたしまして、後ほど書面で提出させていただきます。
  170. 加藤清二

    加藤(清二)委員 こういうことがあればこそ、いわゆる信用取引の場合に枚数が膨大にふえる。三月二十七日、ことしの納会の場合に二千八百枚の問題がありました。これは通産省の手の打ち方のよろしきを得て、現物を浴びせました。その結果、これを受け取った側は、倉荷証券を受け取ったのですから、翌日から倉敷料を払わなければならない。たいへんなことになって、あの綿糸の異常高はあれからがらがらとくずれていきました。これは業界が通産省の手の打ち方を非常に歓迎しているところでございます。しかし、あれで功績をあげても、またぞろあれから一、二カ月出ないうちにウールや綿糸が異常高になって、そうしてこれが小売市場に影響したり、輸出市場に影響をするということになっては、せっかくの功績も御破算です。  通産省にお尋ねする。もしこの雑穀関係の異常高、そこへ手打ちとか手じまいとかいうことをやらせますと、その金がこっちへ流れてくるのです。いわゆる流動性の資金ですから流動してくる。うわさだけでも流れてくるのです。その場合の歯どめとして対策を打つことが必要だと存じますが、もし三品市場においてさようなことが出来するというきざしが見えましたら、この前ウールで行なわれましたように——三月九日に手じまいをさせた。あれも非常に勇断ではあるが、歓迎されたところでございます。立ち入り検査すると同時に、立ち会いを停止する、これが一番きき目があると思います。それをやる勇気が、あるいは用意がありますかありませんか。
  171. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 非常な関心を持って事態を監視してまいりますが、必要な場合には、立ち会い停止を含む規制措置を敢然とる用意をいたしたいと思います。
  172. 加藤清二

    加藤(清二)委員 与えられた時間が参りましたので本日はこの程度でなにしますが、これはまだ序の口です。この間お約束いたしましたこのインデント取引がオッパ取引になった、その結果どういう悪影響があるかという実物を持ってきております。この問題につきましては、あまり皆さんを長いこと拘束しては申しわけありませんから、本日はこの程度で終わりますが、いずれ時間をいただきまして、このインデント取引がオッパ取引に変わるとかくのごとく悪影響がある、かくのごとき間違いが発生するということを皆さんに認識していただくと同時に、それのよりよき手を皆さんとともに検討してみたいと存じます。だから本日はこの程度で終わります。
  173. 浦野幸男

    浦野委員長 次回は来たる十九日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十七分散会