○中曽根国務大臣 まず第一に中東訪問の問題でございますが、今回の中東訪問は、一つには、友好親善をますます濃密化していくということ、それから、世界の石油事情の変化に備えまして、現地の情勢や中東諸国の
意見をよく聞いて政策立案の資にしたい、こういうことでございます。
さらにもう一つは、沖繩海洋博にぜひ出展参加をお願いしたい、これも各国にお願いをしてまいりました。
行きました感想は、実は予想以上に
日本に期待し、かつわれわれは歓迎していただきました。特にイランとの間におきましては、貿易協定がここ一年半ばかりとぎれておったのでありますけれ
ども、ことし分と来年分と引き続いてこれを継続することに話がきまりまして、外交
手続でこれを調印することにいたしました。
それから、サウジアラビアにつきましては、経済技術協定が同じように停滞しておりましたのを至急促進することにおいて
意見が一致いたしました。
そのほか、現地の情勢を見てみますと、ともかく石油産油国は、いまや石油は
商品ではない、石油は
自分の国の工業建設あるいは都市開発のための重要な手段である、石油産出国は、その石油の代金をスイスの銀行や欧米の銀行に貯金しておいたところで、ドルが切り下げられれば財産は喪失してしまうし、石油はいつかはなくなってしまう、だからいまのうちにそれらを工業設備にかえておいて、現地に工業設備をつくって、それを世界に売って、子孫のときになっても子孫が食べられるようにしておきたい、こういう非常に熾烈な要望を持って、その
相手として
日本をマークしておるということが非常に顕著でございました。それはやはり一つには、
日本がアジアにあって非常な親近性を持つということと、もう一つは、アラブの国が非常に注目しておるイスラエル問題について、
日本はクリーンハンドを持っておる、そういうことにおいて、欧米の諸国と扱いを異にしておるという面があったわけでございます。
それで、私が発言した中で、二、三国際的に波紋を起こした問題がございますが、この問題について私の真意を解明しておきたいと思います。
一つは、いわゆる消費国同盟に入らないと私が発言したと伝えられまして、それがアメリカ筋においてある程度の反発を買っておるということでございます。私は現地へ行きまして、どの国に対しても共存共栄でいこう、そういうふうに言いましたら非常に喜んでくれまして、それと同時に、向こうは相互補完という形でこたえてくれました。
日本の工業力それから現地の油、お互いが補完し合って発展していこう、共存共栄ということばを聞いたことは非常にうれしい、そういう共鳴をもって迎えられたのでございますが、そのときに、伝えられる消費国同盟に
日本は入るのか、こういう質問がございました。なぜそういう質問をしたかといいますと、それらのアラブの国々は、消費国同盟あるいは消費国連合ということばを聞いてすぐ殺気立つような情勢にあったわけです。これは、いままで欧米のメジャーが産油国に対して覇権を握るような形で押えつけてきて、石油の値段でも何でも、とにかくドルが一〇%切り下げられてしまえば
自分の国はばく大な損をする、なぜ切り下げられたかといえば、これは先進工業国家間のドルのアンバランスによって起きたことで、産油国は
関係ないことだ、だから石油を当然値上げすべきだという
考え方をあの人たちは持っているわけです。そういう中で西欧あるいは先進国が結束して消費国連合をつくるということは、産油国に対する挑戦であり、対決であるとすぐとっておるわけです。そういう異常な心理のもとにあって、このようなかつての植民地主義のようなことで圧迫あるいは圧服されるということについて、非常に感情的な身がまえをあの人たちは持っておりました。
私は、そういうことは適当でない、そういう対決を刺激するようなことは好ましくない、
日本はあくまで協調と国際緊張の緩和を目ざして、そして産油国及び消費国が協力し合って、両方の国及び世界人類の幸福のために進むということが望ましい、だから共存共栄ということばを言ったのであります。そういうところから、主として産油国、いわゆるOPECの諸国の人たちが身がまえておるところに私が参りまして、そういう質問を受けたものでありますから、私らはそういう消費国連合というような考えに対して、何ら事前相談も受けていなければ情報も受けていないことであって、そういう対決あるいは緊張を惹起するということであるならば、向こうの石油大臣が言っていましたが、われわれのほうはすぐ生産制限する、そうすれば値が上がってしまう、消費国もすぐ困ることだ、出しているのはわれわれの国ではないかということを激しく言っておりました。そういうことになればかえって石油の値は上がっていく、対決方式よりも協調共存方式のほうがこの場合は好ましい、そういう考えに立ちまして、そういう誤解が解けないうちに
日本が入るなどということは適切でない、軽率であると思ったから、したがって私は入らないというふうに言ってきたのであります。
それからもう一つは、OPECの諸国は、いわゆるシオニズム、すなわちパレスチナ問題について、非常に大きな警戒と問題を持っているわけです。それで、この西欧同盟というようなものについては、彼らはこれはシオニズムのカムフラージュじゃないかと見ているわけです。
日本は幸いに、そういうシオニズムの問題についてはいままでクリーンハンドを握っておって、国連においても、安全保障
理事会の二百四十二号という決議においては、武力による占領あるいは武力による侵略ということは否定しているし、武力で占領されたものはもとに復さなければならないという決議に賛成しておりますし、パレスチナ民族の民族自決権についても、われわれは賛成投票しておるわけです。そういうことはアラブの国々はかなり好感を持って見ておる。シオニズムに対する非常に大きな恐怖心と警戒心を持っておるやさき、
日本がわざわざそういう誤解があるところで汚染され誤解を受ける必要はない、そういう誤解が払拭されないうちに入るというようなことは適当でない、こういう考えに立ってそういう話をしたわけです。
それで、先方の石油大臣たちも、じゃどういう方式で協調方式がとれるかと私が質問したのに対して、そういう対決をもって最初からやってくるというやり方でなくて、たとえば、国連のもとに資源や石油の問題を協調してどうするかという相談をするというのならば、われわれも考えていいという答弁がありました。アラブの国々も長い目で見て
自分の国家を存立させ発展させるということを考えておるので、一時的に金もうけをしようなんということはいま考えておりません。そういう
意味において協調方式をどうして生み出すかということに頭をいま用いるべき時代である、こう考えたわけであります。
それからもう一つは、キッシンジャー博士が言う大西洋同盟に
日本は入るのか、こういう質問を受けましたが、私は、そういうものに入る
理由はないと答えた。なぜならば、そういうものはわれわれのところにまだプロポーズもないし、内容もよくわかぬけれ
ども、太平洋の国の
日本で、大西洋の国々の同盟に入るというのは妙な話じゃありませんか、われわれはアジアの国として、アジアの国々とまず共存共栄を保っていくというのが第一の方式であって、そういう伝えられるような大西洋コミュニティーというものに入る
理由はないということを私は答えた、これがその真相でございます。
それから、ココムの問題につきましては、簡単に申し上げますが、
日本は、ココムのリストレビューについては常にこれを緩和するように提案して努力してきたところでありますが、今後もその方針を持っていくつもりです。しかし、御質問の点については、六月十九日から二週間、北京で七三年北京
日本生産工程自動化電子機器、医療機器展覧会というのがあって、そのうちの三十三品目がココムの特認事項に含まれておったものが出ておりました。しかし、
日本もココムの中には入っておりますから、入っている以上はその
規定を守ることが当然でございますから、各出品者に対して直接通産大臣に輸出承認申請を行なうように指導して、それぞれ持ち帰り条件を付して五月二日に承認したところでありますが、品物はコンピューターとか、半導体とか、あるいはデーターレコーダーとか、周波数シンセサイザーとか、そういうようなものでありまして、われわれが協定に入っている以上はこれを守るべきものであると思います。しかし、ココムリストの緩和につきましては今後とも引き続いてわが国は努力してまいりたいと思います。