運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1973-04-25 第71回国会 衆議院 商工委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年四月二十五日(水曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 浦野 幸男君   理事 稻村左近四郎君 理事 田中 六助君    理事 羽田野忠文君 理事 山田 久就君    理事 板川 正吾君 理事 中村 重光君    理事 神崎 敏雄君       稲村 利幸君    上田 茂行君       小川 平二君    越智 伊平君       木部 佳昭君    小山 省二君       近藤 鉄雄君    笹山茂太郎君       塩崎  潤君    増岡 博之君       松永  光君    渡部 恒三君       岡田 哲児君    加藤 清政君       加藤 清二君    上坂  昇君       竹村 幸雄君    渡辺 三郎君       近江巳記夫君    松尾 信人君       宮田 早苗君  出席国務大臣         通商産業大臣  中曽根康弘君  出席政府委員         通商産業政務次         官       塩川正十郎君         中小企業庁長官 莊   清君         中小企業庁計画         部長      原山 義史君  委員外出席者         労働省職業安定         局雇用政策課長 関  英夫君         労働省職業安定         局業務指導課長 加藤  孝君         労働省職業訓練         局管理課長   中野 光秋君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 四月二十五日  辞任         補欠選任   島村 一郎君     渡部 恒三君   八田 貞義君     上田 茂行君 同日  辞任         補欠選任   上田 茂行君     八田 貞義君   渡部 恒三君     島村 一郎君     ————————————— 四月二十四日  中小企業に対する融資制度改善に関する請願  (多田光雄紹介)(第三三二七号)  中小業者営業生活擁護に関する請願正木  良明紹介)(第三三二八号)  同(松本忠助紹介)(第三三二九号)  中小小売商店営業保護に関する請願小川新  一郎紹介)(第三三三〇号)  中小小売商業振興に関する請願小川新一郎君  紹介)(第三三三一号)  小企業経営改善資金融資制度創設に関する請  願(小川新一郎紹介)(第三三三二号)  同外一件(正木良明紹介)(第三三三三号)  同(松本忠助紹介)(第三三三四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  中小企業者範囲改定等のための中小企業基  本法等の一部を改正する法律案内閣提出第八  四号)  中小小売商業振興法案内閣提出第九三号)  中小企業信用保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出第八五号)  国際経済上の調整措置実施に伴う中小企業に  対する臨時措置に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第九七号)      ————◇—————
  2. 浦野幸男

    浦野委員長 これより会議を開きます。  内閣提出中小企業者範囲改定等のための中小企業基本法等の一部を改正する法律案及び中小小売商業振興法案の両案を議題といたします。     —————————————
  3. 浦野幸男

    浦野委員長 順次政府より提案理由説明を聴取いたします。中曽根通商産業大臣
  4. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 中小企業者範囲改定等のための中小企業基本法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  中小企業施策対象としての中小企業者に関しましては、昭和三十八年に制定されました中小企業基本法をはじめとする関係法律により、その範囲が定められております。これらの法律により、現在、鉱工業その他の事業を営む企業につきましては、資本金規模で五千万円以下または従業員数規模で三百人以下のいずれかの条件に該当する企業が、また、商業サービス業を営む企業につきましては、資本金規模一千万円以下または従業員数規模で五十人以下のいずれかの条件に該当する企業が、それぞれ中小企業者とされている次第であります。  しかしながら、中小企業基本法の制定後すでに十年近くが経過し、この間、経済規模拡大等中小企業をめぐる経済情勢変化は著しく、このような変化に対応して、現行の諸法律における中小企業者範囲の見直しを行なうよう、これまで関係各方面から強い要望が寄せられてまいりました。なかんずく、鉱工業その他の事業を営む中小企業者範囲につきましては、近年における資本充実進展を勘案して資本金基準を引き上げるべきことが、また、商業サービス業を営む中小企業者範囲につきましては、特に業態面で他と異なる特性を有する卸売業を取り出して、資本金基準従業員数基準の双方を引き上げるべきことが強く要請されてまいったわけでありす。  政府といたしましても、このような御要望に沿って中小企業者範囲を見直すべく、一昨年以来、内閣総理大臣諮問機関である中小企業政策審議会の場において慎重な御検討をお願いいたしました結果、昨年八月、「七十年代の中小企業あり方中小企業政策方向について」と題する意見具申により、本問題に関する同審議会の御意見をいただきました。本改正法案は、この意見具申内容に沿って中小企業者範囲改定しようとするものでありますが、その概要は次のとおりであります。  まず、中小企業者範囲改定内容といたしましては、第一に、鉱工業その他の事業を営む企業につきまして、資本金基準現行の五千万円から一億円に引き上げることとしております。この場合、従業員数基準は、現行どおり三百人に据え置くこととしております。  第二に、商業サービス業を営む企業につきましては、卸売業を営む中小企業者範囲を新たに定めることとし、その資本金及び従業員数基準をそれぞれ三千万円及び百人としております。この場合、小売業及びサービス業を営む中小企業者範囲につきましては、資本金基準の一千万円と従業員数基準の五十人を現行どおり適用することとしております。  このような改定のためには、中小企業者範囲の原則的な基準を定めております中小企業基本法規定改正することはもとよりといたしまして、その他、個別施策の裏づけとなっております各法律中の関係規定を改める必要があります。これらの法律は、中小企業等協同組合法中小企業近代化資金等助成法等であり、さきの中小企業基本法を含めて、合計十八法律となっております。  本改正法案は、これら十八の法律のそれぞれに本則の各一条を充てることにより、一括して改正を行ない、もって、中小企業施策の総合的、効率的な実施をはかろうとするものであります。  以上がこの法律案提案理由及び要旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。  中小小売商業振興法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  中小小売商業は、全国で店舗数百九十万を数え、わが国経済においてきわめて重要な役割りを果たしており、今後とも、国民生活水準向上に伴い、その役割りはますます増大するものと思われます。  しかしながら、中小小売商業は、資金力不足経営体質改善のおくれ等多くの問題をかかえており、さらにはわが国経済発展に伴う人手不足深刻化消費者の欲求の多様化等新たな経済環境への対応を迫られております。  加えて、最近、百貨店、大型スーパーとの競争が激しくなっており、また、流通部門に対する外国企業の進出が相次いで伝えられるなど、中小小売商業を取り巻く環境は一段ときびしさを増しております。  このような情勢に対処して、中小小売商業者の自主的な近代化努力を促進し、その能力を効果的に発揮できるよう必要な援助を行なうことは、流通近代化、ひいてはわが国経済発展のためにもきわめて重要な課題であります。この点に関し、昨年八月に取りまとめられた産業構造審議会流通部会第十回中間答申におきまして、中小小売商業振興をはかるため、立法措置検討を含め中小小売商業施策の一そうの強化、拡充をはかるべきであるとの御意見をいただきました。  本法案は、この答申内容に沿って、中小小売商業施策を抜本的に強化、拡充するとともに、これを総合的に推進することにより、中小小売商業振興をはかることをねらいとするものであり、その方向は、昨年八月の中小企業政策審議会意見具申「七十年代の中小企業あり方中小企業政策方向について」の内容にも合致したものであります。法案概要は次のとおりであります。  まず第一に、通商産業大臣は、中小小売商業振興をはかるため、中小小売商業者に対する一般的な指針を定め、その要旨を公表することといたしております。  第二に、中小小売商業振興のため特に重要である商店街の整備の事業中小小売商業者店舗共同化事業及びボランタリーチェーン等連鎖化事業について特別の助成制度を設けることといたしております。すなわち、それぞれの事業について中小小売商業者中心としてつくられた組合、会社などが計画を作成して、政府認定を受けることができることといたしております。国は、認定を受けたこれらの計画実施を促進するための特別の助成策として、金融面では、中小企業振興事業団融資強化、拡充するとともに、中小企業信用保険法の一部を改正して近代化保険を適用するなどの措置をとることとし、また、税制面では、租税特別措置法の定めるところにより一定の資産について特別償却をすることを認めるとともに、一定土地について地方税法規定による特別土地保有税課税対象から除外することといたしております。  第三に、中小小売商業者経営近代化のための諸施策について規定を設けることといたしております。すなわち、国は、中小小売商業者経営近代化のため必要な資金確保等につとめること、地域における小売商業実態等を調査し、その将来の展望を明らかにするようつとめること、中小小売商業従事者の資質の向上をはかるため研修事業実施その他の措置を講ずるようつとめること、中小小売商業者経営近代化のため必要な指導及び助言を行なうこと、また、これらの施策を講ずるにあたり、小規模企業者経営近代化のために特別の配慮をすること等を定めております。  第四に、いわゆるフランチャイズ事業の運営の適正化をはかるための措置について規定しております。すなわち、最近発達し始めたフランチャイズ事業において、本部企業中小小売商業者である加盟店との間で契約内容をめぐるトラブルが生ずることを防止する必要がありますので、本部企業は、加盟しようとする者に、契約に先立ち、あらかじめ、重要な契約事項を記載した書面を交付し、その内容について説明しなければならない旨の規定を設けるとともに、政府はこの規定に従わない本部企業に対して勧告を行なうことができるようにいたしております。  これがこの法律提案理由及びその要旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  5. 浦野幸男

    浦野委員長 以上で提案理由説明は終わりました。  両案に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  6. 浦野幸男

    浦野委員長 内閣提出中小企業信用保険法の一部を改正する法律案及び国際経済上の調整措置実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上坂昇君。
  7. 上坂昇

    上坂委員 今回のドル対法は、あくまでも緊急措置であるということはもう自明の理であります。そこで、いつまでも緊急措置ばかりやっていたのではどうにもならないという問題があるだろうというふうに思いますので、中小企業政策全般についてひとつお聞きしたいというふうに思います。  政府のほうから出ました資料によりますと、いまの中小企業の問題について情勢変化というのがあげられておりまして、第一番に円切り上げに象徴される国際化進展、第二に勤労者意識変化あるいは人間尊重社会への志向、三番目に公害、過密化現象などの環境問題の深刻化、四番目に産業構造知識集約化への指向、こういうことを分析しまして、これからは困難は大きいが可能性も大きい時代わが国中小企業に提供するものと理解をしている、こういうふうに書いてあるわけですが、可能性が大きい時代中小企業に提供するというふうに理解するということは、具体的にはどういうことなのか、これを通産大臣からお伺いをしたいと思います。
  8. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 現代はいろいろ消費者の嗜好も変わってまいりましたし、そういう新しい創意くふう等を行なうことによりまして、新しい需要を喚起したり新しいマーケティングができる時代変化しつつあるわけであります。そういう部面はわりあいきめのこまかい小回りのきくいわゆる専門店的なやり方でやったほうが深く浸透し得る場面があるわけであります。それが定型化してくると、大企業がそこへ入ってくるということになりますけれども、そういう意味において、創意とくふうをもって小回りがきく、質的に充実している中小企業等に大きな機会を与えるように努力していくべきである、そう考えておるわけでございます。
  9. 上坂昇

    上坂委員 この四つの問題の中で、これは長官に聞きたいのですが、二番目の人間尊重社会への志向という場合には志向という字が書いてあるわけですが、産業構造知識集約化では指向というのが書いてあるのですが、これを区別された理由はどういうことですか。
  10. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これはいままでいろいろ御答弁申し上げておりますように、いままでの成長優先あるいは重化学工業中心というような発想から、福祉社会を目ざして、福祉のための成長、そういうように思想の転換をやった結果出てきておるものでございまして、産業目標自体は、重化学工業から付加価値の強いもっと高度な工業社会を目ざしたいわゆる知識集約型、それはやはり人間価値を尊重した哲学や社会観を基礎にしてできてくる一つ産業構造の体系、そういうことを目ざしておるものでございます。
  11. 上坂昇

    上坂委員 大臣にはあとでまた別な面でお聞きしたいと思いますが、具体的な問題に入らせてもらいたいと思います。  小規模事業対策の拡大問題がありまして、特に低金利かつ無担保、無保証特別融資制度が今度つくられておるわけでありますが、これの限度額が百万円以内になっております。運転資金は五十万円以内ということになっておるわけですが、いまの貨幣価値あるいはいまの経済情勢からいくと、百万円以内ということになったのでは、ほんとうに企業充実させる、内容充実させるということにはいかないというふうに思うのです。百万円以内あるいは運転資金を五十万円以内というふうにした根拠をお伺いしたいのです。
  12. 莊清

    莊政府委員 今後におきます中小企業対策の中で、とりわけいわゆる零細企業対策というものが重要であるというところからこの融資制度を創設したわけでございます。従業員が、製造業でいえば五人以下、商業サービス業で二人以下というふうな層が中小企業の七割以上を実は占めておりますが、そういう階層では、いまお話がございましたが、非常に小口かつ簡易迅速に借りることのできる融資というものに対して非常に需要が強いわけでございます。したがいまして、担保も要らない、それから保証人をつけることも要らないという形での簡易な小口金融制度を設けたわけでございます。  現在そのためには、信用保険制度の中でも、御案内のように特別小口というふうなものがございますが、現在八十万円、今回改正案で百万というふうに御提案申し上げておりますが、その程度小口金融というものを需要しておる層というのは、保証人も立てにくいし、担保も出せないという苦しい事情にある。それに対してやはり経営指導ということを重点的に行なうことにいたしておりますので、その経営指導の一環として今回特別の融資を行ないたい。まず第一歩の着手としてそこから始めていこうという考え方でございます。  これは正直申しまして、金利を下げろというためには一般会計の負担も相当ございます。来年度三十億でございますか、そういう財源面の制約ももちろんないわけではございません。とりあえず百万円というものを限度にスタートしたわけでございまして、私どもこの制度の運用の実績も見まして、最初に申し上げました制度の精神、趣旨を踏まえまして、この制度内容改善充実ということには今後引き続き十分努力をいたしたいと考えております。
  13. 上坂昇

    上坂委員 そうすると、特に根拠というものはないわけですか。これは百万円ぐらいあれば間に合うだろうということなんですか。それから運転資金五十万円ぐらいだと何とか急場はしのげるだろう、こんな程度考え方でこれはできているわけですか。
  14. 莊清

    莊政府委員 御指摘のとおり、明確な数字上の積み上げがあるわけではございません。これは率直に申し上げてそのとおりでございます。ただ、いわゆる零細層資金需要というものは、非常に小口ではございますけれども、相当ソフトな条件融資をしてもらうということが非常に望まれておるわけでございます。そのために、従来からあります保険制度の中でも、特別小口保険制度というものが特にございまして、現在八十万でございますが、その程度金融需要というものが特別にあるという認識の上に立って行なわれてきております。この限度最初は五十万以下でございましたが、順次引き上げられて今日八十万、御提案申し上げておる線で百万というふうなことでございます。  そこで、国民公庫を通ずる今度の融資につきましても、やはりそのあたりも勘案いたしまして、これは経験的なものでございますけれども、とりあえず百万からスタートしていこう。申し上げましたとおり、今度この融資実績等も見まして、制度内容改善ということについては引き続き十分努力をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  15. 上坂昇

    上坂委員 いろいろ理由はわかりましたが、実際問題としてこういうふうに限度が百万なら百万以内ということにきめられておりますと、これはもうできないというふうに思います。したがって、借りる範囲はおのずからきまってきてしまうわけですが、実際問題として、商業者なんかが、先ほど大臣からもお話がありましたように専門店化をしていく、あるいはそれに伴う店舗の改造をしなければならないということになりますと、たちまち百万円ぐらいかかってしまうわけですね。これは商業者もそうですが、企業者のほうもちょっとした機械を買うとすれば、もうそれで百万円ぐらいは飛んでしまうというのが実態であります。また、いまの金融でいきますと、一カ所から借りているとほかからはなかなか借りられないという問題があります。したがって、どうしても、弱い、担保力も何もないところでは、一つ公庫なら公庫から借りると、もうほかのところから借りられない。県にもいろいろ機械貸与であるとかなんとかいうような措置があるわけでございますが、そこへ持っていっても、やはり国民金融公庫から幾ら借りているのだ、ほかの銀行からどのくらい借りているのだということが対象になって、そしてこちらのほうは削られてしまうというような状態が出てきます。そういう面から見ると、一般中小企業にとって無担保、無保証人であり、これを利用することによって非常に大きな転換ができるというような場合には、やはりこれはもっと金額を上げていく必要があるだろうというふうに思うわけであります。経験的に、これから措置をしてみて、それに対する需要の問題であるとかなんとかいうことをいろいろ勘案してみて、それから措置をするということではなくて、もうそういう段階にはすでに来ているのであって、私は、これでは実際問題としては足りない、こういうふうに考えるわけであります。少なくともいま三百万円くらいないとどうにもならないような状況に実際問題としては来ているのじゃないか。そしてこれは上限でありますから、三百万なら三百万以内、その範囲内で、貸すほうはいろいろ査定をすることになるわけでありますから、そういうところへ持っていくべきであるというふうに私は考えるのですが、そういうことについては、将来の問題として残しておくということなんですか。
  16. 莊清

    莊政府委員 零細企業に対します特別の融資につきましては、今回の制度をつくります前から、御案内のように国民金融公庫専門政府関係機関として設けられております。年に八千億近い融資を行なっておるわけでございますが、従来から三百万円程度までは保証人だけで貸し付けをするという制度はございます。最高限度は、国民公庫担保が必要になっておりまするが、五百万円までということでございまするし、この三百万、五百万という限度につきましても、現在それぞれ引き上げの方向財政当局と話を煮詰めておるところでございます。したがいまして、今回設けました特別の融資制度というものは、平たく申しますれば、その上に別ワクとして上積みとしての効果を実は持っておるという御理解をいただきたいと存ずるわけでございます。  経営指導を行ないまして、百万程度担保、無保証で、しかもきわめて低利の融資が行なわれるならばその経営指導成果が非常にあがるというふうに判断されるような場合におきましては、一段と有利な条件融資を上のせして貸せるようにという考え方でございます。したがいまして、百万円以上の金が要る場合、当然ございますけれども、従来の制度とあわせまして資金量については配慮をしていくということが本来あるわけでございます。  ただ、先ほどから申し上げておりますとおり、やはり零細金融充実という見地からは、この百万円の新制度そのものについて内容充実強化ということを今後考えていく。上のせだから上のせはもうそのままでいいというふうな考え方ではございませんということを申し上げておるわけでございます。
  17. 上坂昇

    上坂委員 この無担保、無保証人の申請をする場合には、商工会または商工会議所推薦が必要になるわけでありますが、商工会にも入れない、特に商工会議所にはなかなか入っていないところが非常に多いわけでありますが、商工会議所推薦がなければこれは扱えないということなんですか。
  18. 莊清

    莊政府委員 零細企業対策の中で、金融制度も大切でございますが、経営相談指導ということが非常に重要でございまして、従来から、商工会議所に対しましては、指導員に対する国庫補助、施設に対する国庫補助等を行ないまして助成をはかっております。  その場合に、やはり従来のように経営に対する一般的な指導助言という範囲にとどまっておってはなかなかその成果があがりにくいというところから、いわば相談指導業務成果を確実にし、高からしめるという考えがございまして、今回の金融制度においては御指摘のような仕組みを考えたわけでございます。  ただ商工会議所、これは会員の方がもっとふえることを私ども率直に希望いたしておりますけれども、全部が入っておるわけじゃございません。ただ、商工会議所というのは、御案内のとおり、法律に基づいた特別の任務を帯びた組織でございます。地区内の商工業の総合的な進歩、改善をはかるということで公的な使命が与えられておるわけでございますから、たまたま会員でない方でございましても、現在すでに会議所商工会指導相談業務対象にいたしております。会員でなければ指導しないというふうなことはございません。したがいまして、この金融制度対象としても、こういう指導、診断を受けない方はいたし方ございませんが、受ける方につきましては平等に扱う、これは制度としてはっきりしておるわけであります。
  19. 上坂昇

    上坂委員 普通こうした金を借りる場合には、商工会議所とか商工会に行くよりはむしろ信用保証協会のほうへ行っていろいろ相談をするということのほうが実際に地方では多いというふうに私は思います。特に商工会とか商工会議所がお祭り商工会とか商工会議所になっている場合が非常に多くて、実際に中小企業に対する指導のできない面があるわけでございます。その一つに、いまの経営指導員といいますか、そういう人たちの問題も出てくるわけですが、この人たちはいま待遇が非常に悪いわけです。そんなものですから、よけい積極的な指導あるいは教育宣伝をするという形が出てこないという問題があります。  そこで、そういう点は十分指導してもらいたいと思いますが、経営指導員に対する待遇の問題で基準単価を大幅に引き上げるというふうに出ておるわけですが、これは幾らに引き上げているわけですか。それから、各地にいる経営指導員というのは、待遇は一体どのくらいになっているというふうにつかんでおられるか、お伺いしたいと思います。
  20. 原山義史

    ○原山政府委員 お答えいたします。  経営指導員は、四十七年度の給料は月額六万一千七百円と相なっておりますが、これを本年度の予算では七万四千一百円、約二〇%引き上げて待遇改善をはかっていきたいというふうに思っておるところでございます。
  21. 上坂昇

    上坂委員 次に、中小企業金融の問題でありますが、一点だけお伺いします。  信用補完制度で、昨年度同様に百五十億円公庫の出資になっておるわけですが、これを昨年と同じにしたということはどういう理由ですか。
  22. 莊清

    莊政府委員 たまたま百五十億円ということで前年度とそろっておるわけでございますけれども、一つには、信用保険公庫の保険事故が起こりました場合の準備資産でございます保険準備基金というのが最近かなり充実してまいっております。まあ事故の状態というふうなものも、金融緩和等もございましたが、いっときに比べますと、かなり減って安定してきておるということがございます。片や、申し上げましたとおり資産も充実してきておるということが一つございます。  それともう一つ理由といたしまして、昭和四十七年度におきましては、その保険の付保実績と申しますか、信用保証協会に付保することを市中の金融機関が要求するというふうな傾向が、まあ金融の超緩慢というふうなことも原因の一つでございますが、非常に貸し出しが伸びたけれども、そちらのほうはゆるんだというふうなことで、付保実績が一割ちょっと前年度よりも下がってきておる。四十八年におきましては、その落ちたところからまた上に伸びるとわれわれ思っておりますが、従来考えておりましたような一本調子の上がり方では明らかにないであろうというふうなことをいろいろ勘案の上、予算が査定を受けたということでございます。いわゆる保証協会に対する融資基金につきましては、これは重要でございますので引き続き百億という大きな額でございますが、これを確保して、延べ合計額で国からの融資額は九百億円に達する。これで相当保険料の引き下げに伴う保証料の引き下げも考えておるわけでございますが、この融資基金の活用によりまして、保証料も四十八年においては久しぶりに相当大幅に下げられるだろというふうな見通しも実は持っておるわけでございます。たまたま結果が百五十億ということでそろっておりまするが、準備基金についても融資基金についても、それぞれこまかく中を検討の上、予算の査定がなされておるわけでございます。
  23. 上坂昇

    上坂委員 ドル対法の問題の中で、法第二条に基づきますと大体四項目の条件が実際あるわけです。この条件の中の一番先に、第一項の出荷額に占める中小企業製品の割合がおおむね五〇%以上の業種というふうになっておりますが、この根拠についてお伺いしたい。  それから、三番目の第三項目の問題でありますが、指定された地域以外の地域で輸出比率が三〇%以上のものということになっております。緊急融資では二〇%ではないかというふうに思うのですが、これを三〇%にした理由というのはどこにあるのか。  それから、第四項でありますが、この四項については前の三項一、二、三のいずれにも該当しないもので、輸出成約の円滑化をはかる必要があるとして別に定めるものというふうになっておりますが、これは具体的にはどういうふうなことになっておるのか。  それから、これらの四つの条件のもとに置かれているものの扱い方なんですが、申請をする場合にこれは平等に扱ってもらえるかどうか、この点についてお伺いをいたしたい。
  24. 莊清

    莊政府委員 今回実施いたしましたいわゆる為替予約制度についてのお尋ねでございますが、業種、産地を指定しておるわけでございます。御指摘のありましたとおりの運用に相なっておるわけでございますが、まず出荷額に占める中小企業製品の割合が五〇%以上、つまり中小企業が相当主体をなして生産をし、輸出をしておる業種というものをとらえておるわけでございます。これは前回第一次ショックのときに実施いたしました措置と同様でございまして、これによりまして、いわゆる輸出比率の高い中小企業業種というものがおおむね全部対象になっておるというふうに考えております。輸出比率につきましては一〇%という線をとっております。業種別で百十四でございますが、これによりまして、業種としては問題のものがまずカバーできておるというふうに考えております。なお、二月の二十七日から発足いたしたわけでございますが、業種については、現地の要求がございましたので、その後四業種を新規に追加いたしておるのでございます。いままでのが業種の説明でございます。  それから産地の指定でございますが、輸出比率が一〇%以上の産地というものは全部で七十一拾ってございますが、一、二の産地につきましては目下検討中でございまして、近く追加をいたしたいといま検討いたしております。  それから、弾力条項と呼んでおりますが、これを設けてございまして、基準に合う人はそれぞれ地元の県知事なり市町村長の証明を受ければそれで為替銀行へ行けるわけでございますが、該当しない人につきましては、中小企業庁でこの弾力条項によりまして諸事情を総合勘案の上証明をいたしますという制度があります。今回はすでに六十企業について、いわゆる特認といっておりますが、これをしたわけでございまして、前回は四十七でございますので、今後必要がございましたら、この特認の条項というものについても弾力的に運用を心がけてまいりたいと思います。
  25. 上坂昇

    上坂委員 時間がないので急いで聞くことになりますが、この緊急措置と、それから一般の中小企業の対策ということが重なり合って総合して効果あらしめていくということになるだろうと思いますが、本会議の質問でも申し上げました設備の転廃事業の問題でありますが、これは業種あるいは産地、共同でないとこの事業というものはやらないのかどうか、その点についてお伺いします。
  26. 莊清

    莊政府委員 設備廃棄に対します特別の融資制度というのはそのとおりでございまして、これは現実の問題といたしましても、個々ばらばらに行なうということになりますと、お互いに様子をながめ合うということになって、なかなか進めにくいということもありますので、一つの産地で同業者がそれぞれ話し合いを十分にしていただいて、産地全体として設備を幾ら廃棄しよう、輸出は幾ら減らす、そのかわり新しいものをつくっていこうというふうなことでやっていただくほうが成果があがるのではないかというふうな一つの判断がございまして、組合に対して融資をするというふうなことで、前回のドル・ショックのときから行なわれておるわけでございます。私どもは、この制度はこの制度として、各県から相当な要望もございますので、内容改善強化を目下検討いたしておりまするけれども、個別の事業がそれぞれ自分の努力と知恵で転換をやっていくという場合がございます。その場合に廃棄の問題が起こるということで、昨日も御質問がございました。大臣からその問題についても今後事務当局に検討させたいという御答弁がございました。私どもはその線で検討をさしていただく所存でございます。
  27. 上坂昇

    上坂委員 大臣にお伺いいたしますが、中小企業の場合、これから転換をしていかなければならないということできのう中村先生の御質問がありまして、海外進出の問題というのがございました。この海外進出について、私はなかなかむずかしい問題がたくさんあるのではないかというふうに考えるわけです。特にいまの商社がほとんど海外で主導権を握っておるという段階でこれが出ていくということについても、結局はそこの援助なり助力、支援を受けないと出ていけないというような条件にいま経済的になっておるのではないか、構造上ですね。そういう点について、これを克服してやることができるというふうにお考えになっておられるか。また、実際に海外進出を許すことになりますと、それに対するところの、いろいろな金融面からの措置が必要になってくるのではないかと思うわけでありますが、この点についてはどういうふうにおやりになる御意思であるか、お伺いをいたしたい。
  28. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 中小企業の海外進出につきましては、商業資本の場合は、華僑その他との競合がございまして、これはきわめて困難であると思いますし、適当でないと思います。そうでなくて、中小企業の中のいわゆる工業に重点を置いたもの、あるいはその地域の開発輸入に関係するようなもの、農産物あるいはそのほかのものでございますが、こういうものについては、私はかなり有望なことではないかと思います。その際、開発輸入の場合には商社と関係が出てくるかもしれませんけれども、普通の工業のような場合には、必ずしも商社と結ぶ必要はないので、また独立自存でやっていただくほうが将来のためにもなります。  最近日本におきまする労務費、それから東南アジア各国における労務費の低廉さというようなことから考えまして、韓国や台湾に出る中小企業はかなり多うございました。しかし、韓国や台湾だけでなくて、インドネシアあるいはその他の東南アジア諸国にも出ていって、現地となじんでもらって、その地域に定着する、地域に貢献する、産業として栄えると同時に、地域に刺激を与え、また要員のトレーニングにも貢献する、そういうことが長い目で見ると望ましいように思うのでございます。そういう可能性があるかといえば、かなりの分野についてもあるような気が私はいたします。そういう意味から、それを奨励いたしたいという気持ちで今回協会をつくって、それに関する金融やら誘導やらいろいろな助成措置も講じておるところでございます。まだ微々たるものではございますけれども、これを根拠にいたしまして、将来は中小企業の海外進出についてかなり思い切って力を入れてこれをスピードアップしていきたいと考えております。
  29. 上坂昇

    上坂委員 最後にもう一つお伺いしたいのは産業構造転換の問題でありますが、これまた非常にむずかしい。現在の日本のような産業構造の中で、はたして中小企業に対する産業構造転換が実際可能なのかどうかということになりますと、私は非常に疑問に思うわけであります。この点については、産構審のほうから四項目か五項目にわたって、これからの中小企業あり方について答申も行なわれているようでありますが、そのためには相当な金融措置といいますか、そういうものを準備していかなければならないと思います。これは今後どの程度の期間のうちにこうしたものをやれるというふうにお考えになっているか、お伺いをいたしたいと思います。
  30. 莊清

    莊政府委員 中小企業におきましても、わが国の経済全体の成長発展の中におきまして、いろいろな条件が変動してまいりましたが、企業の非常な努力もあり、政府施策もございまして構造が変わってきておるわけでございます。  中小企業製造業と申しますと、繊維、雑貨というふうにわれわれもよく申すわけでございますけれども、近年の出荷額の統計を見てみますと、中小企業全体の工業出荷額を一〇〇にした場合に一番多いのは機械である。これが単独機械だけで二一%ある。繊維は一一%、雑貨六%、その他の金属製品、化学、木材とか紙パルプ関係とかいうふうな、いろいろな分野が伸びてきておるわけでございます。全体といたしまして、加工度の高い、付加価値の多い方向へと生産の構造が変わってきておりますし、輸出の内容もまた高度化しつつある。中小企業がたいへんな努力をして内外の情勢変化に対応することができたればこそ、わが国の経済というものが高度化しながら発展してきたというふうに言えるだろうと私は思うわけでございます。  ただ、第二回目のドル・ショックでも指摘されておりますとおり、中小企業と申しましてもたいへんすそ野が広いわけでございまして、その中には労働集約度の高いようなものも、いろいろ現にございます。そういうものに対しては非常に大きなショックが内外の情勢からどうしても避け得ないというところから、そういうところの産地なり企業が、産地あるいは企業として今後も企業努力はもちろん必要でございますが、継続発展ができるようにということを政府としては十分考えなければならない。これが重要な政策だろうと存じます。廃業してどこかへ行ってしまうというようなことは決して望ましいことではございません。産地の中でつくるものは漸次高度化し、品種が変わってまいりましても、やはり重要な産地としてそこの労働力、資源等が活用されるということは、当然そうならなければなりませんし、多くの産地でそういう方向に現に向かいつつあるわけでございます。  何年でそういうふうにするかという仰せでございますが、今回のドル・ショックの影響を非常に受けた産地であって、やはり転換がどうしても望まれるというものにつきましは、ここ三年前後の期間ぐらいを目標に、製品の高級化なり転換なりの具体的な方向をきめていく必要があるだろうという考え方に立ちまして、現在四十の産地について、都道府県と一体になりまして検討を開始しておるところでございます。  ただ、これだけですべてが仕上がってしまうというふうには私どもは考えておりません。わが国の経済もますます高度化の方向に向かうことは当然の必要でございます。それがまた経済を伸ばし、国民所得を上げる、国民の福祉にも通ずる道であるというふうにかたく信じておりますので、どこまでやればそれでおしまいということではございません。やはり状況にすばやく適合して、企業が存続し、産地が高級化しながら存続するように持っていくというふうにいたしますれば、その後の変化に対応して、また積極的に次の対応をしていく。これがやはり基本的な政策ではないか。そのために必要な当面の緊急の対策というものを問題産地については特に集中をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  31. 上坂昇

    上坂委員 いまの問題ともう一つ関連しますが、いまの中小企業にとって一番問題なのは、労働力の確保と金融措置であろうというふうに思いますが、いまの労働集約型の中小企業の場合、若い人は非常に雇用しにくい。したがって、もっぱら中高年齢層、炭鉱とかいろいろなところをやめた人とか何かを利用するような状態になるとか、あるいはまた農村の婦人労働者を使うというような方向でいまきていると思うわけですが、それを知識集約型にもっていくということになると、従業員の質的転換というものが非常に大きく問題になってくるのじゃないかと思うわけであります。そうなりますと、さしずめ待遇の改善なり何なりということも当然これに対して必要になってくるわけであります。そういう点で、現在の労働者の動向について、特に中小企業と大企業を比較した場合に、労働者の意識というものがどういう方向に向いているのかということについて、通産省としてはどういうふうにつかんでおられるか、これをお伺いしたいと思うのです。
  32. 莊清

    莊政府委員 一言で申し上げますれば、中小企業は、従業員また給与あるいは企業福祉の面で大企業よりもおくれが相当ございますから、その面の改善というものに対しての要求が強いことは当然でございますが、私どもが調査いたしましたところでは、若い人も中小企業に入っていく。そこでは大企業におるよりも、むしろ自分の考えておることなり能力をフルに発揮できる可能性が高いのじゃないか、そこで、中小企業に入ってきたというふうな希望を持ってやっておられる、そういう意識調査の結果もございます。
  33. 上坂昇

    上坂委員 時間ですから終わります。
  34. 浦野幸男

    浦野委員長 加藤清政君。
  35. 加藤清政

    加藤(清政)委員 私は、ただいまから、いわゆるドル対策法案及び中小企業信用保険法の一部改正について、それに関連する諸問題についてあわせてお伺いしたいと思いますが、いままで各質問の中で重複している点もあろうと思いますので、もし重複しておる場合には、簡単にお答えを願うようにいたしまして、中曽根通産大臣並びに長官、各担当者からお答えを願いたいと思います。  一昨年のスミソニアン合意によります円の一六・八八%、三百八円への切り上げについては、わが国の輸出関連の中小零細企業にかなり大きな痛手を与えたと考えられます。しかも、今回の変動相場制への移行は、言うなれば、前回のダメージから十分に立ち直っていないところに、あらためて強烈なカウンターパンチを浴びせられたような感がするわけでありまして、前回の円切り上げの際にはかろうじて自力で切り抜けた企業も含めて、かなり広範囲にわたって深刻な打撃になっていると思います。  そこで、ドル対策法は、言うなれば一つの基本法であって、融資の促進を中心に、損金の繰り戻しとか、保証協会の保証ワクの拡大とか、あるいは緊急融資認定をするとか、事業転換の決定などを裏づけとして考えているわけでありますが、たとえば、事業転換一つをとってみても、これは個人ではなかなか決断のつかないものであり、行政官庁が確信を持った転換指導をしていかなければならないと思います。この点での指導あるいは誘導をどのように行なっていこうとしておりますか、お答え願いたいと思います。
  36. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 前回の切り上げ、それから今回の変動制に伴いまして、中小企業の中にはかなり苦難の波にさらされているものがあります。特に今回においてはしかりでございます。  そこで、将来を展望してみますと、いわゆる発展途上国からの追い上げもございますし、そういうものと競合するようなもので劣弱な地位におちいろうとするようなものについては、この機会に、でき得る限り思い切って転換をして、新しい分野でその力を発揮願うようにすることが好ましいと思います。ただ、それにはなかなかむずかしい社会的問題が付随いたしまして、同業者の人々が思い切って一緒に目をつぶって、手をつないでやらないとできないところがございます。ある人がやろうとしても、ほかの者がおるとどうも思い切れないというところもございます。そういう微妙なところも考えまして、できるだけ思い切って手をつないでやれるような体制をとれるように、通産局ないしは地方の商工部等を通じて誘導していき、また、それに伴う援助をわれわれは重点的に与えるようにし、また情報も与えるようにして促進したいと思っております。  最近いろいろな情勢を見てみますと、たとえばグラブ、ミットなんかはそういうものに該当するものでございますけれども、あの業界はいまのやり方、いまの企業というものから離れるという意思はなくして、苦難だけれどもその中でがんばっていくということを示しておられるようであります。ことほどさようにむずかしい問題でありますけれども、しかし一般的に見て、それが結局はその人たちのためになるというものにつきましては、中小企業庁を中心にいたしまして積極的に進めていきたいと思っておるわけでございます。  具体的には長官から御答弁申し上げます。
  37. 莊清

    莊政府委員 大臣からお答え申し上げましたような方針で、現在都道府県と緊密に協調連絡の上、特に問題の多い四十産地につきまして、緊急診断と申しておりますが、診断を行ない、今後の方向づけを提案するということにいたしております。これは業界に対して押しつけ、強制ではございませんで、それを受けて業界でまた自主的にいろいろ具体策を練っていただいて、きまれば政府助成する、こういう方針でございます。
  38. 加藤清政

    加藤(清政)委員 たとえば今後円が二百六十円水準になった場合、輸出の減少ははかり知れないほど大幅になると考えられるわけでありますが、輸出減少はどの程度になると見通されますか。また、各業種ごとの見通しはどうか。あわせてその際の対策についてお伺いしたいと思います。
  39. 莊清

    莊政府委員 第二次ドル・ショック直後、全国の約百の産地について緊急の調査を行ないました結果では、二百六十五円程度のレートの場合に、四十七年に対して二一%程度、四十八年度の業界見通しに対しては二六%程度の減になるであろうという結果が出ておるわけでございます。これが二百五十五円程度にさらに下がりますと四割程度ということが報告されております。これは特に輸出比率の高い繊維、雑貨等の産地を中心に百ほど調べましたので、最も強烈な影響が数字としては出てくるわけでございます。  中小企業全体といたしましては、影響度合いの低い業種、企業ももちろんないわけではございません。ただし問題は、こういう産地でございますので、その後も実態調査につとめておりまするが、今回の対策を特にこれらの産地に対しましては重点的に集中いたしまして、緊急対策の成果が十分あがるように、また今後の構造改善につきましても、先ほど申し上げましたように、前向きの指導を十分行ないたいと考えております。
  40. 加藤清政

    加藤(清政)委員 政府関係の三金融機関の緊急融資が二千二百億円準備されておりますが、緊急融資の被害確認に基づく貸し付けはどの程度になっておるか、お伺いしたいと思います。たとえば東京都の場合には、四月二十一日現在で千四百五十九件の被害確認を受け付けておりますが、全国では一体何件くらいになっておりますか。また、業種別ではどの業種に多いか、その点をお伺いしたしたいと思います。
  41. 原山義史

    ○原山政府委員 四月十五日現在でございますが、中小公庫につきまして貸し付けは三百四十七件、三十六億円、国民公庫は百二十九件、三億六千万円、商工中金は百七十五億、合計二百十五億程度の貸し付けが実行されております。なお、業種別内訳等はまだとるに至っておりませんので、追って整備していきたいと思っておるところでございます。
  42. 加藤清政

    加藤(清政)委員 次に、円がフロートしているため、外国為替が非常に不安定な状態にあり、したがって、輸出業者の被害を押えるために為替予約の証明をしております。これは昭和四十八年二月二十六日、日銀から為替銀行に預託しているということを聞いておりますが、聞くところによると、その裏づけになる外貨の預託が円滑に行なわれていないということを聞いておりますが、現在どの程度になっておりますか。たとえば都の場合、四月十九日段階で九百七十七件を証明しておりますけれども、全国ではどのくらいか、その点あわせてお伺いしたいと思います。
  43. 莊清

    莊政府委員 二月二十七日からこの制度を行ないまして、最初の間は、御指摘のように予約が殺到したのに対して預託が必ずしも伴わなかったというふうな事態が若干ございましたが、為替市場閉鎖及びその再開後におきましてはこの点が改善されまして、最近までのところ十一億三千万ドルの預託がすでに実行され、スムーズに予約が行なわれておるというふうに承知いたしております。これは前回の第一次ショックの際の予約の総実績よりも約三億ドルすでに多い水準でございます。件数につきましては、現在大蔵省のほうで為替銀行と連絡をとって調査中でございますが、数字がわかりました上で別途御報告をさせていただきます。
  44. 加藤清政

    加藤(清政)委員 ただいま荘長官から御答弁がありましたが、特に件数については、都の場合には九百七十七件ということがわかっておりますが、全国でどのくらいかということを把握して、その中で将来に対する対策というものを立てていかなければならないと思いますので、後刻わかりましたならば、全国ではどのくらいかということをひとつ資料として御提出願いたいと思います。  さらに、各業種がかかえている受注残は、本年一月の段階でガラス製品が六カ月、繊維製品が八カ月、建築金物が一カ月、一般文具が一カ月という状態であったと聞いております。したがって、各業種平均が三カ月ということでございまして、ちょうど一月でありますから今月あたりから手持ちの受注がなくなっていくというように考えられますけれども、政府の認識として現在の事態はどういう状況にあると考えておられますか。また、その対策はどうか、その点お伺いしたいと思います。  さらに、特に競争力の弱い業種では、成約価格が低く押えられて、結局利益が上がらないといった状態も考えられますが、現在の成約状況及び価格面はどうなっているか、お尋ねしたいと思います。
  45. 莊清

    莊政府委員 変動相場移行直後の調査では、百ばかりの主要輸出産地の平均受注残高は約三カ月でございました。二月は御案内のようにフロート直後でございますし、商談がほとんどストップいたしまして、百産地のうち約六割程度の産地では、商談を幾らしても全然まとまらなかったということが報告されております。三月に入りましてから為替の相場が二百六十五円程度の水準で安定的に移行し、先物相場も二百六十円台で安定してきたというふうなこともございまして、商談がまとまる傾向に向かっておるようでございます。三月末現在で調査いたしたのでございますが、百産地のうちで報告の参っておらないものが四十弱ございます。残りのうちでは、六産地はまだまとまらないと申しておりますが、五十七の産地では契約が進んでおるということでございます。  それで、五十七の産地につきましての輸出成約の円ベースの金額でございますが、平均でございますけれども、前年同期に対しまして二五%前後くらいはまだ割り安になっておるということでございまして、バイヤーとの交渉を鋭意やっておるわけでございます。ドル価格の引き上げというものは今後順次実現に向かっていくというふうに考えておりすが、現在のところでは、まだあまりそれに成功しておらないというのが実情のようでございます。
  46. 加藤清政

    加藤(清政)委員 次に、中小企業対策として、これには当然輸出関連の中小企業も含まれると思いますが、それらの業種転換なり近代化なりを推し進めていく場合に、そこに働く人たちの問題を考えていかなければならないと思いますが、そういうものを指導していく立場として、業種転換や合理化に伴う労働者の問題についてはどのような考え方に立って指導していこうとされておりますか、それについての見解を伺いたいと思います。
  47. 莊清

    莊政府委員 基本的な私どもの考え方は、大臣がしばしば申しておられますように、いわゆる失業者等が出ることのないように緊急対策も講じ、また今後の構造対策も進めるということでございます。ただ、現実の問題として、その面に対する施策が必要であることは申し上げるまでもないことでございます。これにつきましては、特に問題になるのは中高年齢の離職者でございまして、ドル対策法に基づきまして、前回同様、中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法の運用によりまして、求職手帳の交付に対する特例あるいは特別の訓練手当等の給付という措置を講ずることにいたしております。なお、前回では、この措置の適用を受けた実績はなかったように、実は私ども労働省のほうから連絡を受けておる次第でございます。
  48. 加藤清政

    加藤(清政)委員 この問題につきましては、ひとつ労働省のほうに御出席願うように連絡しておきましたが、来ておりますか。——それでは労働省の担当の方にお伺いしたいと思いますが、労働省としては、離職者対策、とりわけ中高年齢層の離職及び再就職のためにどのような対策を持ち合わせておるのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  49. 関英夫

    ○関説明員 お答え申し上げます。  中小企業からの離職者の対策といたしましてまず第一に一番必要なことは、離職の動向に関します情報を早期に的確に把握することにあると考えております。現在の雇用状況は、求人のほうが求職を二倍も上回るような、いままでにない労働力需給の逼迫を示しておりますので、このような早期の求職動向の把握によりまして職業相談あるいは職業紹介、こういったことを機動的に実施して、離職者の早期再就職につとめてまいりたいと考えております。  御質問の中高年齢者の場合には、そのような労働力需給の逼迫状況のもとにありましても、若年層よりも再就職にやや時間がかかるといったことも考えられますので、先ほども通産省のほうからお話がございましたが、この御審議いただいております法律に基づきまして、中高年齢者雇用促進法に基づきます中高年齢者の求職手帳制度、これの有効期間を延長する措置を講じまして、これを必要があれば積極的に活用いたしまして再就職の促進につとめてまいりたいと考えております。
  50. 加藤清政

    加藤(清政)委員 中高年齢層の離職者対策並びに職業訓練の現状について、いま労働省の所管の方からお話がありましたが、現行の職業訓練手当、これを増額する意思があるかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。  さらにまた、職業訓練を受けている期間中は、たしか失業保険なり訓練手当が支給されるわけでありますが、大企業と比較して賃金水準の低い中小企業の労働者が訓練期間中に支給される手当で生活していくということはかなりきついのではないかと思うわけでありまして、それとあわせていまの職業訓練手当を増額する意思があるかどうか、そういう点についての動向についてお答え願いたいと思います。
  51. 中野光秋

    ○中野説明員 中小企業等の転離職者に対します職業訓練につきましては、積極的にこれを進めようということで、実は今年の二月に都道府県知事に対しまして、転離職者については積極的に職業訓練に受け入れてもらいたいというような通達も出しているところでございます。  それから、ただいま御質問の訓練期間中の援護措置の問題でございますが、実はこの職業訓練を受講する場合は、失業保険の受給者でございますれば、失業保険の給付期間を受講期間中は延長して支給する、こういうたてまえになっているわけでございまして、かりに失業保険の受給の最高のワクをもらう人につきましては、通所手当あるいは技能習得手当等も含めまして月額八万円程度になるのではないかということでございます。  それから、失業保険受給者以外の人たちがこの訓練受講をいたします場合は一般の訓練手当を支給するわけでございますが、これにつきましても、昭和四十八年度におきましては前年度より約一二、三%のアップを考えているわけであります。
  52. 加藤清政

    加藤(清政)委員 時間がありませんので、最後に中小企業信用保険法改正では付保限度額の引き上げを打ち出しておりますが、この引き上げ幅の水準で中小企業者の要求を満たすことができるかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。特別小口、無担保保険等、個別にこれまでの実績を明らかにしていただきたい、そのように思います。
  53. 莊清

    莊政府委員 実績でございますが、四十七年の十二月末の付保残高で申し上げますと、御質問のございました特別小口保険は、全体の付保金額二兆三千五百八十億円のうち百九十四億円で比率が〇・八三%でございます。一件当たりの平均が約五十二万円ということになっております。  それから無担保保険でございますが、同じく二兆三千五百八十億円のうち八千二百七十億円の残でございまして三五%に相なっております。一件当たりの平均金額は約百二十万円と相なっております。
  54. 加藤清政

    加藤(清政)委員 荘長官にお尋ねしたいのですが、今後大口需要の傾向が出てくると思いますけれども、この程度限度額で対応できると考えられますか、その点をお尋ねしたいと思います。
  55. 莊清

    莊政府委員 お尋ねの御趣旨は普通保険の限度額の問題かと存じますが、普通保険は現在二千五百万円を限度にいたしております。組合が利用いたします場合には倍額の五千万円であります。大口のものも個々の企業でもあり得ますし、組合でもあり得るというふうに考えておりまして、今回これの引き上げを三千五百万円、七千万円ということで御提案申し上げておるわけでございます。
  56. 加藤清政

    加藤(清政)委員 いま大口需要の傾向が出てまいりますが、この限度の引き上げにつきましてさらに一そうひとつ御努力願いたい。都道府県でも経営改善資金として組んでおりますし、また、新規の融資としての環境整備等安定資金として別ワクでこの大口の需要に対応しておりますので、そういう点についてもひとつさらに一そうの御努力をお願いしたいと思います。  中曽根大臣に対しまして、最後にお伺いしたいと思うのですが、この改正する法律案の提案の中で、この中小企業の信用補完制度については、現在二兆三千億円を上回る保険規模に達して、中小企業者に対する事業資金の融通を円滑にする上で大きな役割りを果たしておる。しかし、この中小企業を取り巻く環境というものは現在急速に変化して、それに伴ってこの信用補完制度も現実の資金需要に対応できるような措置をしていかなければならないということをうたっておるわけでありますが、小口保険について見ますると、限度額現行八十万円から百万円に引き上げたわけでありまして、それに対する努力はよくわかるわけでありますけれども、しかし、はたしてこの小口保険の無担保、無保証に対しての制度が百万でいまの企業実態に対応できるかどうかという点も考えられるべきでありまして、仏つくって魂入れずのたとえのようになってはならないと思うわけであります。  地方公共団体では、調べによりますると、八団体がすでに百五十万円までは利率が七・八%で無担保、無保証でやっておる。東京都では、四十八年度予算の中で、二百万円まで利率が七%でこの小口融資についての扱いをしておるわけでありますので、ひとつ政府は、来年度は小口保険について百五十万円か二百万円にして、実際に対応できる融資額にしていただきたい、このように思いますが、それについての中曽根通産大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  57. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 保険のワク及び基礎額等につきましては、いろいろ当委員会で御審議をわずらわしまして御高説を拝聴いたしましたが、確かに御指摘のように、現在の中小企業をめぐる環境からいたしますと、再考を要する部面があるように思います。基礎額につきましては、将来の課題としてわれわれも検討さしていただきたいと思いますが、ドル対法によるワクの増大の部面につきましてはいろいろ検討してみたいと思いますし、また、各党の御意見も承りまして、各党の御意見をよく尊重いたしまして検討を加えていきたいと思います。
  58. 加藤清政

    加藤(清政)委員 時間が参りましたので、以上をもって質問を終わります。
  59. 浦野幸男

    浦野委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    正午休憩      ————◇—————    午後一時三十八分開議
  60. 浦野幸男

    浦野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。神崎敏雄君。
  61. 神崎敏雄

    ○神崎委員 初めに伺いますのは、この法律の目的は、円の変動相場制への移行、事実上円の切り上げによって影響を受ける中小企業を救済する措置を講ずる、こういう点にあると聞いておりますが、そのように理解をしてよろしいかどうか、大臣に伺います。
  62. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 おおむねそのとおりでございます。
  63. 神崎敏雄

    ○神崎委員 おおむねというニュアンスがついているところにあとでいろいろ討議をしなければならぬと思うのですが、まさにおおむねということばが適切な表現だと思うのです。  次に伺いますのは、当局は二月十四日以降の円フロート、実質切り上げによる中小企業の影響について実態調査をされておりますが、今回と前回と比較して、中小企業への影響は、今回は前回よりさらに深刻だ、こういうふうに当局は認識されておられるかどうか、これを伺いたい。
  64. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 前回のドル・ショックに比しまして、今回のドル・ショックの特色いかんということでございますが、前回、四十六年八月に対しましては、輸出型産地はさらに苦しい立場にあるように思います。前回におきましてともかく事態を切り抜けてきたのは、その要因として、景気が上昇基調にあって内需が旺盛であったということ、これまでの金融緩慢基調を反映して企業の手元流動性があったということ、それから、業界みずからが内需への転換、製品の高級化、生産設備の改善等の対策をとってきたこと、それから、政府中小企業施策がタイミングよく実施されたこと等が考えられます。  しかし、今回のショックの影響につきましては、前回のショック時すでに余裕をなくしている上に、為替相場が予想外の大幅な円高となったために、全般的にかなりの影響が出るものと懸念しております。加えて金融も漸次引き締まり傾向にあり、この面からも、今後の動向は注視を要するものと考えます。このため、とりわけ輸出比率の高い業種、中小企業等においては、最近の原料高、労働力需給のきびしさと相まって事態はきわめて深刻に受けとめられております。  こうした環境変化に対して、中小企業は、前回のショックを契機として積極的に対応策を講じており、前述の内需への移行や製品の高級化のほか、新製品の開発、新規部門への進出、海外投資などが真剣に推進されつつありますが、今回の事態を契機にこの傾向は一段と加速されるものと思われます。
  65. 神崎敏雄

    ○神崎委員 そこで、続けて大臣に伺いたいのは、ことしの二月の円フロートに関して、あの当時、国会の本会議あるいは予算委員会で、総理大臣または通産大臣は、繰り返して、中小企業対策について万全を期す、こういうふうに言われ、しばしば私たちもそう承ってきたのですが、この法律改正案のどこにその万全を期した特徴点があるのか、この特徴点をひとつ教えていただきたい。
  66. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 今回のドル対法の一部改正につきましては、通産省はこれまで次のような措置を総合的にとってまいりました。  変動相場制移行直後に、下請取引の適正化金融の円滑化、納税猶予制度の活用等の行政措置、それから、中小企業の輸出にかかる為替予約の円滑化をはかるための外貨預託、さらに、三月十四日の閣議決定によりまして緊急対策を決定いたしました。これは輸出関連中小企業に対する緊急融資実施、既往融資の返済猶予、信用保険の特例、税制措置、これらのうち、行政的に可能な緊急融資は直ちに実施に移しておりますが、信用保険の特例、税制措置については立法措置が必要であり、このため、今回御審議いただいているドル対法の一部改正を上程しているものであります。  ドル対法の一部改正案の中では、前回利用率の高かったことにかんがみ、無担保保険の別ワクについて特段の配慮を行なうとともに、欠損金の還付について適用期間を二年延長することといたしております。  なお、ドル対法の一部改正に伴い、次の措置認定中小企業者に講じられることとなります。設備近代化資金の返済猶予、信用補完措置の拡充強化、付保限度額の別ワク設定、てん補率の引き上げ、保険料率の引き下げ、税制上の特別措置事業転換に対する融資事業転換資産に対する加速償却、労務対策、また、わが国経済国際化の伸展に対応するために産地の緊急診断を実施するとともに、引き続き中小企業近代化、構造改善及び事業転換を一そう強力に推進することとしております。  フロートの期間中については、以上の施策の円滑な活用につとめていくことによりまして十分に対処していくことができるものと考えておりますが、フロート制が長期化して、当初予定していた施策では十分でないと認められるような事態が生じる場合には、事態の推移に応じて適切な措置を適時にとってまいるつもりでございます。  一応の措置としては、これで対策はなされているものと考えます。
  67. 神崎敏雄

    ○神崎委員 フロート制が長期化した場合はさらに前向きな姿勢で検討をしていくということが残されているということをいま聞きました。  そこで、いま大臣が言われたことは適時適切にひとつ積極的にやってもらうということを前提にして伺いますが、昭和四十六年からきょうまで本法はどれだけ徹底をされてきたのか。また、この実績はどう評価しておられるのか。というのは、そちらからいただいている資料では、大体指定業種は百十三、そしてその範囲内の中小企業数は約十二万。しかし、この法の認定を受けた業者は約一万四千しかなかった。すると認定数は一〇%、十人に一人の割合です。こういうような実績が前回のドル・ショック以降今日までの実績なんです。これについて当局はどのような評価をいましておられるかということを伺いたい。
  68. 莊清

    莊政府委員 ドル対法に基づく認定企業実績が一万三千四百でございます。全部の中小企業から見まするとお話しのように一部でございますが、指定業種と指定産地で約百八十前回行ないまして、ドル・ショックによる大きな影響を受けるというところはほとんど全部をカバーしておるものと考えております。このドル対策法の指定を受けますると、いろいろな施策がございまするが、とりあえず企業としてまっ先に利用いたしますのは信用保険の特例でございます。信用保険の特例を使って市中から金を借りたいというふうな方からまず急いで認定を一万三千四百受けられたと言える面がございます。そのうちに金融が非常にゆるみましたので、私は、この認定が途中である程度ブレーキがかかったというふうな事実があったのじゃないかと思います。ただし、政府関係機関からの貸し出し、これは千八百億行ないましたが、これは申し出があれば貸すということでございましたから、実は融資件数で三万五千件というふうに認定事業数よりもずっと多い方が認定なくして融資を行なうものでございますから、県知事あるいは市町村長の被害を受けたという証明書を持ってきていただければ政府系の金融機関で貸し出す、これが三万五千ということでございます。
  69. 神崎敏雄

    ○神崎委員 そこで続いて伺いますが、認定基準の中で輸出比率がおおむね二〇%、こういうふうに説明されておりますが、二〇%というところで線を引かれた根拠は、一体何を根拠に引かれたのですか。
  70. 莊清

    莊政府委員 おおむね二〇%ということで、ドル対法に基づく業種指定、産地指定を行なっておるわけでございます。大体中小企業の場合に輸出比率の高い業種というのは産地をなしておりまして、これらの産地を拾ってみますると、繊維でも雑貨でも四割ないしそれ以上の輸出比率があるものが大部分でございますので、二割程度ということで拾っていけば、それに準ずるところも一応全部指定できるだろうというふうに考えて二割としたわけでございます。
  71. 神崎敏雄

    ○神崎委員 この中小企業庁で出しておられる調査を見ただけでも、たとえば新潟県のよく言いました燕市のいわゆる金属洋食器のような地場産地、これが全国で約三百、しかもこれらの輸出率は大体一〇%以上なんですね。いわゆる輸出型産地といいますか、これが百二十ある。企業数では三万九千三百九件ある。このうち認定を受けた企業の件数と融資総額は一体どれだけになっておるかということを聞かしてください。
  72. 莊清

    莊政府委員 認定企業の数は、先ほど申し上げました一万三千四百でございます。これとは別に、閣議決定に基づく政府系機関からの融資、これは三万五千件行なっておる。これは重複しておると思いますが、重複していない部分が相当あることをまず申し上げたいと存じます。  それから、融資実績でございますけれども、政府関係機関からの緊急融資は、ワクが千八百億でございまして、実績としてはそれをたしか十七億ほど下回るところが実績でございます。これは千五百億最初にきめまして、あとで様子を見て三百億追加したということでございまして、余裕を見てやったということもあって、実績がそこでとどまっておるというのが実情でございます。  このほかに民間から緊急融資が当然行なわれておるわけでございますが、この保険の使用実績、この場合には保険を使ったものがございますけれども、それが約六百六十億程度でございます。保険を使わずに、自分で金融機関に直接担保を出したとかいうふうなことで借り入れている場合が当然ほかにあるわけでございますが、その点については、実は残念でございますが、調査とか統計がつくりにくいものですから不明になっております。ただ、金融がゆるんだので、相当額の市中からの金融中小企業に急激にふえておりますが、その中で輸出産地等につきましては、ショックの分も含まった金融が一部ではあるけれども当然入っておる。その額は残念ながらわからないので申し上げることはできませんが、そういう実態になっております。
  73. 神崎敏雄

    ○神崎委員 ぼくの言っていることが間違っておるのかどうか知りませんが、もう一回長官に聞きます。  燕のようなもの、いわゆる地場産地ですね。こういわれるものが全国で大体三百くらいある。しかも、そういうものが輸出比率は大体一〇%、一〇%と二〇%の間にかなりあると思うのですが、これが一つの問題点だ。  もう一つは、専門的に輸出型産地といわれていますね。その輸出型産地なるものが百二十。この百二十の中の企業数が三万九千三百九ある。おたくのほうから出ているのですが、これは合っていますか。——それを続けて言いますが、それだけ掌握されておるなら、その件数である三万九千三百九の業態は、この民間だとか保険だとかいろいろおっしゃいますが、それだけの捕捉されているものが三万九千三百九件であるとするならば、これだけであったのかということと、この三万九千三百九件は、直接融資を受けた総額はどれだけなのか。もっと言うならば、一業態当たり何十万といいますか、何百万といいますか、どれほどの対策費としての措置を受けたか、こういうことを聞きたい。
  74. 原山義史

    ○原山政府委員 お答えいたします。  全国で中小企業がかたまって生産している産地は四百ぐらいあって、そのうち約二百程度が非常に輸出に片寄った産地であるという点については、先生御指摘のとおりでございますが、その産地を全部指定していないではないか、こういう御質問が第一点であったかと思いますが、これは業種を指定しておるために、業種で指定しておればわざわざ産地を指定しないで済むというかっこうに相なっているわけでございます。  それから、三万九千の数字は、私どもの数字か、いまよく確かめることができませんので、少し調べさしていただきたいと思いますが、大体業種をまず指定しまして、それから業種で漏れたものをあとで産地で指定するというやり方をとっておるために、非常に輸出中心に産地を形成しているところは、ほぼ全部拾えたものと私ども考えておる次第でございます。お答えになりましたでしょうか。
  75. 神崎敏雄

    ○神崎委員 少し筋が——あなたのほうの資料で私は申し上げている。ところが、それが三百が四百になったり、三万九千三百九がわからないと言われると、私のほうではよけいわからぬようになるのですがね。それはあなたのほうの資料もよく調べてもらって、私はあんまりそこに対して重点を置いておらないのですが、重点は、前回のときに打たれた措置で、一業種、大体どのくらいの額の融資を受けただろうか、それによってどのような状態に、当時から今日に向かってきておるのかということをもし握っておられるのだったら答えていただきたい。
  76. 原山義史

    ○原山政府委員 融資の業種別の実積を申し上げます。  上位二十業種をあげますと、絹人絹、綿スフ、台所用品、銑鉄鋳物、金属工作機械等々でございますが、まず絹人絹織物業につきましては、件数が三千七百六件、金額にして百九十一億五千六百万円。それから第二位の綿スフ織物につきましては、件数が三千百二十件、金額は百三十四億七千百万円。その次に台所食卓用品は、件数が二千百八十三、金額が七十三億二千九百万円等々でございます。大体、おもなものはそんなところであります。
  77. 神崎敏雄

    ○神崎委員 業種全体の合計と総額の総計。
  78. 原山義史

    ○原山政府委員 三万五千八百二十五企業に対して千七百八十三億円の融資が行なわれておりますが、これを業種指定、産地指定ごとに申し上げますと、業種指定分につきましては二万七千四百七十五件、千四百六十六億八千四百万円、産地指定分につきましては、三千百八十六件、百十七億二千四百万円、こういうふうに相なっております。あとは個別指定のものでございます。
  79. 神崎敏雄

    ○神崎委員 いまおっしゃった一件当たりのやつは、資料であとでいただけますか。
  80. 原山義史

    ○原山政府委員 資料であとで提出したいと思います。
  81. 神崎敏雄

    ○神崎委員 では、もう一件一件聞くことをやめます。  次に、お尋ねしたいのは、この法律は確かにある程度改善の面は認めております。さらに、私たちが尋ねなきゃならぬと思っておることは、冒頭で通産大臣から、適切に時期を見てさらに積極的に改善をしていく、こういう積極的な発言があったので、これも私が聞こうとするところを先にお答えになっておりますから、やめます。あとは、これから先、そういうことをやっていかれるかどうか、その実績を見た上で問題提起なり、また申し上げるときは申し上げていきたい、こう思っております。  確かにこの法律案は、ある程度改善の面は認める。それは改正案では、前回の認定者も認定を受けられるとか、あるいは期間が延長されるとか、融資規模が少しは拡大される、これは先ほども大臣が答えられたとおりです。そういうふうなことは承知できます。しかし、私が申し上げたい第一は、この法律によって中小零細企業がほんとうに救済されるのかという問題なんです。先ほどからなぜ二〇%のところへ線を引くのかと言っているのもこれに関連があるのですね。輸出で二〇%以上やれるところには、政府のそうした対策が直接あるいは間接に、恩恵といえば語弊がありますが、実質的にそのことについての対象者になり得られる。しかしながら、そうでない零細企業が救済されるのかどうか。  それと、申し上げたいのは輸出関連、それも先ほどから言っておりますように輸出比率を二〇%に限定している点です。また、特に申し上げたいのは、下請企業の処置がされてないという点です。当局は、円切り上げによって直接、間接に受けた影響というものが非常に大きい、広い、また深い、こういうことを知っておられ、そのためにいろいろなところでいろいろな角度からの措置をとる、あるいは対処するということを発言され、一部ではやられておりますけれども、いわゆる二〇%という線以下の業態が非常にたくさんある中で、下請企業が一番過酷な目にあっておるのですね。  そこで、冒頭に申しましたように、通産大臣や総理大臣が、今回のドル問題に対しては万全を期す、こういうことを言われ、そうしてわれわれも大きな期待を持っておるのですが、いままた重ねて今後も時期、時期において手を打っていくということを言われておるのですが、そのパーセンテージに達してない中小企業者、特に零細企業者に対してはどういう形で対処されるのか、これが一番困っているんだ、それについては何か施策をお考えになっておられるか伺いたい、こう思います。
  82. 莊清

    莊政府委員 まず前回のドル・ショックのときの政府系機関からの緊急融資を先に申し上げます。  これは件数で三万五千件行なわれたわけでございますが、うち国民公庫、これが零細企業を主として対象にしておりますが、三万五千件のうちで一万九千四百八十六件、約一万九千五百件でございますが、二万件近いものが国民公庫の貸し付けとして行なわれております。それで、国民公庫は四百五十億円のワクで融資をいたしました。平均が一件当たり二百二十四万ということになっております。したがいまして、国民公庫は平素は百二十万円くらいの融資の平均水準になっておりますが、それよりは倍近い水準の融資を行なっておる。三万五千件のうちの二万件近いものをこなしておるということが一つございます。これは法律に基づかない金融でございます。  それから法律に基づいての措置で、これはドル対策法による認定企業のほうになります。これを一万四千企業従業員数別に申し上げますと十九人以下の零細層企業が全体の四二・八%、それから二十人から五十人までが二七・三%、五十一人から百人までが一四・八%、こういうことになっておりまして、以上合計で八五%でございますが、十九人以下の層が四割強認定を受けていただいておる、そして主として保険を使ったということが言えるわけでございます。  それで、それらの零細企業の方は無担保保険あるいは特別小口保険の利用をされたと思われるのですが、特別小口は、利用件数、実績が非常に少のうございましたが、無担保保険では、四千八百三十八件の利用がなされております。そして保険の引き受け額が九十六億で、一件平均二百万ということでございまして、この無担保保険も従来の実績は大体平均百二十万程度でございますが、それよりも高い水準の保険を利用したというふうになっておりますので、繊維の産地その他政府系の融資等も利用したというのがございますので、かなり大きい企業も入っておることは間違いございませんが、零細のほうもかなりな程度は使っていただいております。  それじゃ、今回何か考えておるかというお尋ねがございましたが、政府系機関の融資につきましては、国民金融公庫の利用促進という意味でワクもふやしてございますが、今回は四百五十億から五百五十億にいたしておりますが、従来三百万まで保証人だけというのを五百万円まで新年度から上げることに国民公庫全体も改正いたしておりますし、従来以上に国民公庫零細企業との結びつきを円滑にしたいということで、担保の面等についても通牒もいたしておりますが、額の問題でも三百万を五百万に上げるというふうな措置を実はとったわけでございます。  それから、下請企業をどうしたかというお尋ねがございましたが、前回のときも業種指定、産地指定の際に通達を出しておりまして、それぞれ掲げられた業種について、あるいは産地にかかわる原材料供給、部品供給の下請を含むということをはっきり通達で流してございます。
  83. 神崎敏雄

    ○神崎委員 下請は実際にどうなっていますか。
  84. 莊清

    莊政府委員 これは下請を含んでおります。下請でも認定を受けたものはございます。
  85. 神崎敏雄

    ○神崎委員 ここで大臣に、初めによいお答えをいただいておるので、そのお答えに基づいたことでもう一回ひとつよいお答えをいただきたいと思うのは、これは予算委員会で私も主張いたしましたが、全国の業者の切実な声にこたえて、中小企業全体に対する無担保、無保証、無利子の融資の実現が検討をされないか。問題点は、もう無担保、無保証というようなところまではきているのですが、無利子というものは、ほかのものにはありますが、こういうものにはない。いまほんとうに中小企業の立場を考えておられるなら、ほかのものよりも、特にこの点を無利子にするほうがより国民は歓迎し、なかんずく対象者である中小企業零細企業は喜ぶのですが、この点、もう一回この機会に通産大臣から決意を聞いておきたいと思うのですが、どうですか。
  86. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 共産党は無利子のことをかねがね主張しておられますが、前にも申し上げましたが、こういう段階になりますと、利子云々ということよりも早く資金の手当てができるというほうが恩恵が多い。利子をただにしてくれるよりも、おそくなったら困る。大体利子はかなり安い額ですから、一万円借りても何%というので、それほど多額の金額にはならないので、利子負担というものはそう経済運営の負担になるとは私思えないのです。そういう面から迅速にこれを貸し出す、そして企業指導を有効にやって、情報を提供するというほうがよけい喜ぶのではないかと私たちは思います。しかし、安いにこしたことはないし、ゼロにするということも一つ考え方でございますけれども、現在のそういう金利の体系になじみにくい要素があったわけです。  ほかのところでは無利子にしたところもございますけれども、こういう制度でまだ無利子まで踏み切るという場に財政当局の考えも至っておらないのが現状でございます。そういう面から、今回はこれでやらしていただきまして、そして実態をもう少しよく見きわめて、もし必要あらば財政当局とも重ねて相談する、こういう態度でいきたいと思います。
  87. 神崎敏雄

    ○神崎委員 これについては財政当局との間で考えてみたいという話で、こちらもとめておきます。というのは、無利子の制度について、商業振興法あるいはいろいろ現在通産省はお考えになって、また出そうとせられている法案の中にもそういうものを含んでいるのです。利子よりも早くやるということはもちろんですけれども、まず返すのに二年間据え置くとかあるいは三年間据え置く、そしてワクを上げていただくという形、そのことでは対象者は喜んでいるのですが、元金を返すどころか、あらためて借りなければならない。その上にこういうような状態におちいっているときに、利子はやっぱりついてくるのです、時間がたてば。それを返済するだけで非常に苦しんでいる。そのほうが実は大きいということもひとつ考えておいてもらいたい、こう思います。  そこで、結論的に言いますと、本改正案の基本理念は前回の対策よりあまり前進してないのだ。さらに、重要な点は、先ほども言われておるように、前回の場合には、まだ中小企業には若干の力がありました。ところが、今回は前回とは状況が違うんですね。一ぺんやられて非常に打撃を受けて、そしてこれに対してやや回復しようというところに二回目の打撃が来た。したがって、前回と違うということをひとつまず認めておかなければならぬと思うのです。改正案ではほんとうにそういう違いをくみ上げておられないというところに、先ほどから伺っておる要点があるわけです。  ほんとうに中小企業営業をまず発展させるという立場であるなら——特に弱小業者は、名前は事業転換でございますけれでも、どんどんつぶされていくのだ。スクラップ・アンド・ビルドというもので施策を推進するというのがほんとうの方針あるいはねらいである。円切り上げを契機にして中小企業をこの際再編成していくのだ、あるいはそのときに近代化とか、振興だとか、いろいろな形の名前や表現はつきますけれども、中身としては淘汰されていくということであって、それに対して根本的な立場からこれを回復する、あるいはこれをもう一ぺんまず立ち上がらしてやるというよりもスクラップ化する、こういうような形になっていくというところに問題の重点がある。  そこで、思い切った改正案が出るかといえば、いま論議しておるような程度で、各党の質問者もこれでよろしい、非常によかったというような側面よりも、さらにこれをびほう策的な立場から批判された質疑を重ねておられるという先般からの状態であります。したがって、政府中小企業救済にほんとうに万全を期す、こう約束されておるし、先ほどから大臣も、さらにこれを見ていく中で善処し、あるいは積極的な形で拡大していこう、無利子の問題についても検討の余地が全くないというような立場でなしに、考えてみてもいいというようなニュアンスのある答弁をされておりますので、私はこれで質問を終わります。
  88. 浦野幸男

    浦野委員長 松尾信人君。
  89. 松尾信人

    ○松尾委員 先ほど大臣のほうからお答えがありましたので、これは何も大臣のお答えを聞く必要はありませんけれども、今回のドル対策は、一昨年のドル・ショックに比較しますと非常に問題が多うございます。そして拡大しておりますし、倒産または転廃業というところに追い込まれる寸前の業種、企業が出ております。   〔委員長退席、稻村(佐)委員長代理着席〕  大臣の先ほどのお答えのとおりに、これは実態というものを十分把握いたされまして、しっかりやっていただきたい、これを最初要望しておきます。  それから次の問題に入りますけれども、前回のドル・ショックの対策のときにも言われたことでありますが、要するに、市場転換をやろう、また二番目には製品の高級化をしっかりはかっていこう、内需への転換をはかりましょう、このような方策をとられたわけでありますけれども、私がいま申しております市場転換、特に海外の問題、それから製品の高級化、内需への転換、こういうことにつきましてどのような実績があがったかということでありますが、これは長官、どうですか。
  90. 莊清

    莊政府委員 ドル対策法に基づきまして、事業転換計画を定めて知事の認定を受けたというのは現在まで二十数件ございますが、それ以外に特にそういう手続を踏んではおりませんが、内需への転換あるいは海外への進出その他製品の転換等を行なった例が各産地でいろいろございます。  例を申し上げますと、内需への転換では繊維が非常に多いわけでございます。ほとんどの繊維の産地で内需への転換が行なわれ、その場合に製品の高級化を伴っております。  それから、神戸のケミカルシューズでも、これは繊維ではございませんが、同様の高級化を伴った内需への転換が大幅に行なわれております。こういう場合には、新規に特に設備をするということはございませんで、既存の設備を活用しております。  それから、クリスマス電球では、既存の設備技術を相当使ってインテリア関係の電球とかあるいは卓上電子計算機の部品等を行なっておりますし、秋田のクリスマス業界では、過剰になりました設備を韓国に持っていきまして合弁企業の形で現物出資をしたというふうなことを行なっております。これは設備の活用といえると存じます。  それから、燕の洋食器でも、自転車の部品とか道路につけますカーブミラーとか、めがねわくとか、いろいろなものを行なっておるという実態がございます。
  91. 松尾信人

    ○松尾委員 いまいろいろおっしゃいましたけれども、この市場転換なり高級化なり内需への転換ということは今回もしっかりやっていくわけですね。そしていままでいろいろおっしゃいましたけれども、そのような転換の問題、高級化の問題、内需への転換、こういうことについてどのくらい業界が自主的にやる、またはあなたたちが一生懸命にタッチして主導的に指導していく、こういうことは現実にどういうからみ合いになっておりますか。
  92. 莊清

    莊政府委員 繊維等では、業界の自主努力と構造改善努力というものが非常な成果を生んできておるということが申せると思います。  それから、燕の業界とか、あるいはクリスマス電球業界のような場合には、地元の会議所、県あるいは通産省、いろいろ相談を現に受けてやってまいりました。クリスマス電球業界につきましては、三月にも部品生産の問題で電子工業会とか電気機械工業会のメンバーと現地の業者の人との会合ということを通産省の仲介で行なうということをいたしまして、お互いに理解が深まって、現在商談がかなり進みつつあるというふうなこともございます。でございますから、今後もそういうあっせん努力というものは当然続けるつもりでございますが、問題の産地につきましては、より大きな構造改善ということが今後は必要になってまいりますので、現在県と一体になりましてそれらの産地にチームを出しまして、この産地をどうしたらいいかということについて、産地の御要望に対してこちらのアイデアというものをひとつ差し上げようということで、いま診断に取りかかっておるところでございます。
  93. 松尾信人

    ○松尾委員 これは単なる産地なり業界ではなかなかできがたい問題がたくさんあります。これはむしろ政府主導型というような面が大事だろうと思います。前回の緊急融資一千八百億、これで件数、金額、いろいろ出ておりますけれども、これは円滑にいっておりますか。それが一つ。  それから中小の貿易商社でありますけれども、これはどういうふうになっておるか、対象からはずれておるのじゃないかというようにも感じますけれども、なぜこれを入れぬのか。当然被害は大きいわけで打撃は大きいわけでありますが、現実にはそういう方々にどのようにやっておるか、この二点を聞いておきたいと思います。
  94. 莊清

    莊政府委員 先ほど申し上げましたように一万三千四百認定いたしたわけでございますが、認定申請があって認定にならなかったというのは、たしか五、六件と承知いたしております。でありますから、認定申請したものはまず全部認定を受けられたというふうに考えております。  それから中小貿易の関係でございますが、業種指定、産地指定以外に別に弾力条項というのが法律にございまして、個別の認定をやっております。その中で、この中小貿易というのは二百数十社認定を行なっておるわけでございます。
  95. 松尾信人

    ○松尾委員 次は担保の問題、担保力の問題であります。  今回は緊急融資規模で二千二百億、商工中金等の内訳がありますけれども、このようにドル・ショックでもう相当金を借りておりますし、これ以上担保を出して金を借りる余力はない。そういう点をあなた方はどのように見ておるか。また一方、人件費も上がっておりますし、原材料も高騰しております。下請工賃の上昇もあります。そういう中でたくさんの休廃業が出、倒産をしている。こういう中で二千二百億、この担保力の問題ですけれども、そういう点をどのように思っていらっしゃいますか。
  96. 莊清

    莊政府委員 担保力不足は重大問題でございますので、ドル・ショック直後、市中銀行を含めまして関係金融機関に、担保保証人については弾力的にこれを行なうようにということを強く要請いたしました。特に政府関係機関については、担保の評価あるいは担保順位その他につきまして、極力弾力的に実態に応じて行なうように強い通達を出したわけでございます。  さらに、信用保険を使って担保力不足を補うということが大切でございますので、信用保証協会に対しましても、保証協会が徴取する担保保証人について同様弾力的に行なうように厳重通達をいたしますとともに、今回御提案している法律におきましても、無担保保険、特別小口保険の引き受け限度額というものの改定をお願いしておるわけでございます。また、予算措置に見合いまして、新年度から、保険料、それから信用保証料の引き下げを実施し、今回のドル対法によりまして、ドル・ショック業者が保険を使う場合には、さらに引き下げた保険料の三分の二ということにいたしております。
  97. 松尾信人

    ○松尾委員 いまお答えがありましたけれども、現実の問題としては、あなた方の通達等で解決できないのですよ。ですから、そのような話は通じておるといっても、現実にはもう何も差し出すものはない。ですから借りない。小口だとか無担保とおっしゃいますけれども、そういうものは、総計で言いましてもたいした金額にはならないわけであります。やはり何か考えを変えていきませんと、せっかくのドル対法——もう借りるだけのものは借りているわけですから、それをまた、うんと貸しますよ、こういうことになりましても、現実には借りにくい、こういうことを考えて、その点はどのようにやったらいいかということですよ。通達等で済む問題ではありません。
  98. 莊清

    莊政府委員 仰せのとおり、一片の通達では第一線の具体的な処理というのはなかなか一挙に改善されるわけじゃございませんので、それぞれの政府系の金融機関の中でも全国的な会議も開いて、趣旨の徹底等を十分はかるよう措置いたしたわけでございますが、今後とも御趣旨を体しまして十分監督を強めてまいりたいと思います。   〔稻村委員長代理退席、山田(久)委員長代理   着席〕  なお、零細金融全般の問題でございますけれども、国民公庫からの貸し付けにつきましては、支店長限りで、担保は取らずに保証人だけで貸せるという制度がございまして、従来ワクが三百万円までということになっておりましたが、今回は、新年度からそれを五百万円に上げておるという措置、これは一般的な制度でございますが、これもあわせて行なっておることをぜひ御了承いただきたいと思います。
  99. 松尾信人

    ○松尾委員 これは繰り返しておきますけれども、現実はそのような認識のもとでは借りにくいし、小口だけになっていくおそれがある、これははっきり申し上げておきます。  それから中小企業対策——政策の問題ですけれども、政府もいろいろ考えてはきておりますね。中政審の意見具申、そういう中におきましても、ソフトな面での対策、また中小企業の多様性の認識、それから政策の指針的、誘導的な割役り、こういうものを非常に重視しておるわけであります。何といいましても、このような企業成長のかぎというものは製品の開発、それから情報収集でありましょう。消費者需要というものも多様化し、高度化しておりますし、こういう面での中政審の意見具申というものに対して、あなたたちがどのようにこたえていこうとするのか、どのようにこれを重点的に取り上げてやっていこうとするのかということをお聞きしたいと思うのです。
  100. 莊清

    莊政府委員 中政審の答申では、中小企業をとりまく国際環境あるいは国内の経済的社会的諸条件が大きく変わりつつある。それに対して企業の自主努力によって、企業もみずから対応すべきであるし、それに対して政府も的確な誘導策及び助成策を講ずべきであるということが基本姿勢に相なっております。特にその答申では総論の部分の結びで三つのことを述べております。  一つは、御指摘のございましたように、中小企業政策というのは、今後は指導的誘導的な役割りを重んじなければならない。たとえば、企業に対するいろいろな先行きの情報の提供その他が一つの重要課題でございます。  それから、単なる設備についての金融あるいは設備を改善するということにウエートのかかり過ぎた政策ではなくて、製品の高級化であるとか販路の開拓であるとかその他の、いわゆるソフトということばを使っておりますが、ハードな面だけではなくてソフトな面での助成策強化をすべきであるということを述べておるわけでございます。  第三番目には、これらの施策を講ずるにあたって、中小企業というのはきわめて多様であって、かなり力のある層もあるけれども、零細企業が多い、この零細企業がしっかり企業として生成発展できるかどうかが、中小企業政策として最も大切な点である、これに対しての金融、税制上の助成措置というものが格段に強化さるべきであるということをはっきりと指摘しておるわけでございます。来年度の予算等におきましても、そういう点に配慮を私どもかなりしたつもりでございますが、必ずしもまだ十分でございませんので、今後ともその方向で十分強化をいたしたいと思います。
  101. 松尾信人

    ○松尾委員 抽象的な答えでありまして、どうも具体的にそれをどう実現するかということを何もおっしゃらぬわけであります。予算が若干組んであるということでありますけれども、何としても製品の開発、いろいろの情報の収集、そういう力が中小企業零細企業にはありません。ここに力を入れませんと中小企業の救済にもならないわけであります。  いまのお話のところでありますけれども、政府が本年度予算の中で振興事業団の機構改革を行なう、公害とか事業転換等について情報の収集、提供を行なう、これは仮称でありますか、中小企業情報センター、こういうものをつくるんだ、こういうことをどのようにやっていこうとするのですか。具体化の問題です。
  102. 莊清

    莊政府委員 中小企業事業団に今度つくりました調査情報部でございますが、一度に全部もなかなか行なえませんので、当面最も産業界で必要としております公害問題に対して、こういう対応のしかたをして成功した、こういう点に配慮すればうまくいくというふうな生きた情報を求められておりますので、この公害情報と、それからもう一つ、ドル・ショック等もございまして、製品の高級化等の経営多角化、転換の成功例、あるいはそれをする場合にどういう点に配慮をしなければならないかという実例に即した情報を望まれておりますので、この点と、二点をとりあえず四十八年度の重点にいたしまして、個々の情報提供体制を整備するということを考えております。情報提供先としては、各県におきます総合指導所とか会議所商工会、あるいは県中央会というふうなところを使いまして、そういうところとの密接な連携のもとに情報を提供していくという考えでございます。
  103. 松尾信人

    ○松尾委員 これはそういうところを一つ一つ実現していきませんと、言っただけでは何にもならないわけです。ですから、こうしてやっていくということをはっきりとめどをつけて、きちんきちんと実行していくべきでありましょう。  次は、事業転換の問題であります。  いままでは大体金融面にうんと力を入れる、それから税制面についても考えるということでやってこられたわけでありますが、その中でも事業転換のことが考えられております。これはほんとうに、いままでの金融面税制面等で一応手厚いというようにあなたたちが思っているくらいのことをやられても、やはり非常に苦しんでおる、倒産も続いておる、こういうことでありまして、そういう金融政策等だけでは中小企業というものはほんとうに立ち直ることはできない。そうしますと転廃業の問題にどのくらい力を入れていくかということに、一つは大事な点があると思うのです。先日の閣議におきましても、この転貸の貸し付けに所要の改善措置を講ずる、このようにあるのでありますけれども、具体的にはどういうふうに考えているのですか。
  104. 莊清

    莊政府委員 ドル・ショックだけでなくて、中小企業が今後経済のにない手として発展をしてもらうということが大切でございまして、このためには、やはり情勢変化に応じました積極的な政策という意味での高級化、多様化、転業ということが大切なわけでございます。これはやはり中小企業政策の重要な一つの柱だろうと思います。特にドル・ショックを受けたところについてはそれが至急に望まれるということでございます。  そこで、いろいろな税制、金融上の措置は一応あるかというお話でございますが、私どもは現在ドル・ショックの転換助成策というものの内容につきまして、財政当局といまその内容改善につきまして事務的な折衝をすでに開始いたしております。現在四十産地について診断を行なっていると申し上げましたが、それらが円滑にいくためにもぜひこれが必要であると思いますので、その診断の結果もよく見まして、財政当局と前向きに内容改善をセットしたいと考えております。  なお、産地等に属しない個々の企業でも転換を現に行ないつつある例が多数ございますので、これらにつきましては一般的な会議所商工会等を通ずる相談あるいは県の指導所における相談体制というものをさらに強化して、そちらの方面についても企業のよき相談相手になれるようにということをぜひ行ないたいと考えております。
  105. 松尾信人

    ○松尾委員 やるというお話でありますけれども、四十七年度よりこの事業転換の貸し付けという制度が始まって、国民金融公庫、中小公庫振興事業団の予算ワク、また、それに対する実績というものを見ておるわけでありますけれども、ワクの消化といいますか、申し込みというのですか、転廃業の実績といいますか、そういうものが非常にない。  これはもうぼくのほうから言いますけれども、中小公庫は、五十億の予算ワクでありまして実績が四億一千六百万、国民金融公庫では、この予算ワクは十億、それに対してわずかな件数でありまして二千六百万、これはどういうことなんでしょうかね。それから中小企業振興事業団、この転換融資事業実績はどうか、これはほとんど実績はない。こういうことから、一生懸命やろう、ワクは組んだ、そしてやっていこうとするその努力はわかりますけれども、現実には何も出てこないということはどういうわけでしょうか。どういう事情でしょうかね。
  106. 原山義史

    ○原山政府委員 御指摘のとおり、事業転換の中小公庫国民公庫の貸し付けはその後少しふえまして、現在中小公庫では四億四千一百万、こういうふうに相なっております。国民公庫は四千八百万というふうに若干はふえてきておりますが、従来、事業転換というのは企業の根本を変えるものでございますので、なかなか企業として踏み切りがたいというふうなことで、あまり実績が多くなかったというのは御指摘のとおりでございます。しかし、たび重なるドル・ショックによりまして、最近では非常に事業転換の意欲の出ておるものも出てまいりましたので、今後はこういう制度は相当活用されることに相なるのじゃないかというふうに思っておる次第でございます。  なお、先ほど私どもの長官財政当局と折衝しているというふうなことを申し上げましたが、今年度から条件を緩和して、より使いやすいようにしたいということで現在検討しておりますが、その要点を、ごく方向だけ申し上げさせていただきますと、従来事業転換の中に新しく指導事業に基づく転換というふうなワクを一つつくるということが第一点でございます。第二点としまして、貸し付け限度が現在八千万でございますが、これを一億二千万に引き上げるというふうなことでございます。それから特利をする対象に、設備だけでなくて建物等も含めたらどうかというふうな問題、最後に金利でございますが、ドル・ショック転換につきましては金利を通常の七%から引き下げるように現在交渉中でございます。大体六・五%程度に持っていきたいというふうに思っております。
  107. 松尾信人

    ○松尾委員 大臣、いまお聞きのとおりでありまして、やれ知識集約型だとか事業の高度化、産業構造転換、こういうことが非常に重大なお互いの課題であり、政府も考えておるわけでありますけれども、事、中小企業に関する限りは、そのような金融的な措置をとりながらも現実は進んでいない。これが現実です。ですからどうとかしようといっても、いまいろいろ条件緩和等を言われましたけれども、これはなかなか条件がきびしいわけですね。特にこの事業団の分につきましては非常にきびしい。また、ドル対法の指定業種または指定産地というようなことになっておりまするし、この条件というものをうんと変える、また、政府にこういう指導体系というものがありましたら、そういうものをしっかりつくって、これはぐっとこちらのほうへひっぱっていきませんと、おくれがちな中小企業というものはますますおくれていって、ほんとうに体質の改善ができないわけですよ。いままでの実績というものを反省されまして、これは大臣のほうからうんと力を入れていきませんと、大蔵省の予算も、なんだ実績もほとんどないじゃないかということで、これは実現が困難であろう。現実にそういうことをしっかりやっていかなくてはできないという要請がありますけれども、これはひとつ大臣からはっきりした答えを聞いておいて、私は事業転換というものをしっかりやってもらいたい、このように思うのですが、いかがですか。
  108. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 御指摘の点はまことにごもっともでございます。正直に申し上げて、われわれのほうも的確な転換業種を各業態について見出すということは非常に困難な実情にもございます。したがいまして、そのおのおのの直面している業態の皆さんとよく相談をして、親身になってこちらのほうから誘導できるような体系をつくって差し上げなければならぬ。それにはそれにふさわしい仕組みをわが官庁内部においてまず先につくって、そして誘導する確固たる方針をやはりつくり上げなければならぬ。まさに御指摘のように思われますので、われわれのほうもそういう方向に持っていきたいと思っております。
  109. 松尾信人

    ○松尾委員 もう一つ大臣のお答えを聞いておきたいのは、先ほど申し上げました製品の高度化、高級化、それにはデザインとかファッション等とかいろいろありまして、これもなかなか個々の中小企業ではできません。何か政府が、やはり施設とか、そういうブレーンとか、そういうものをはっきり見つけるとか、養成するとか、ここに行けばだいじょうぶとかいうものをつくりませんと、これも単なる作文的な構造改善をやりますとか、事業転換をやりますというのと一緒で、現実に進まない。ですから、結局いろいろ追い上げを食らったり、外国のそういうものに負けていくということが言えるわけでありますが、これは大臣、ひとつしっかり考えてやってもらいたいと思うのですよ。手の届かない分野がございますからね。ひとつお考えを述べてください。
  110. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ただいまも申し上げましたように、事業転換というのは難事中の難事でございまして、口で言うほどそうたやすいものではないということをよく心得ております。  そこで、やはり通産省全体で取りかかって、いろいろな企業情勢を見ながら、たとえば、大企業がある方面に進出しようとする場合に、それを思いとどまらして、余裕があって可能性がある場合には、そういう転換事業のほうを優先的に差し向けるとか、そういうように通産省全体のぺースで転換を促進するような指導要綱というべきようなものをつくりまして、一生懸命努力してみたいと思います。
  111. 松尾信人

    ○松尾委員 この金融のいろいろの措置政府のいろいろのドル対、また今回の措置ということ、問題は先ほどからもいろいろ指摘がありましたとおりに、どのようにスムーズに金が借りられるかということが一番大事な点でありますけれども、中小公庫でも国民金融公庫の分でも、直貸しですか、こういう審査期間ですね、申し込みがあった、それからだめならだめ、オーケーならオーケーという、この審査期間というものがいまどのくらいか。これは私が先に申しておきますけれども、非常に長いということでございますけれども、どうですか。要するに、いろいろの金融助成策、これは末端では借りられるか、借りられぬかという問題です。そこでいろいろトラブルが起こっていますね。何日も呼び出されて、また出てこい、こういう計画書を出せ、そして最後にだめだというのが相当出てきておりますし、借りられても、相当期間が長くて、もう申請者がいやになるほど非常につらい思いをしている、これが実情でありますけれども、どのようにこういう点を理解されておりますか。これは長官から答えてください。
  112. 莊清

    莊政府委員 中小公庫は、発足当時は、非常に金融ベースと申しますか、手続が煩瑣で審査が長引いたということがいわれておりましたので、その後鋭意改善につとめました結果、昭和四十六年度では九十日くらい平均かかっておったというのが、四十七年度第一・四半期では七十日、第二・四半期五十三日、第三・四半期四十三日というふうに平均日数でかなり短縮してきております。相当スピーディーな処理に努力をしておるのでございます。これは平均でございまして、何回か取引のある企業の場合は三十日程度というふうになっております。ただ、中小公庫の場合には、運転資金融資というのがほとんどございませんで、ほとんどが相当多額の設備資金になっております。そういう関係もございますので、担保の問題とか、あるいは事業計画の審査等で、運転資金などを扱っている国民公庫などよりもどうしても長くならざるを得ない面があると思いますが、今後も一そうこれを縮め、迅速、的確に行なうということが大切でございますので、十二分に注意いたしまして指導をいたします。
  113. 松尾信人

    ○松尾委員 大臣、いまお聞きのとおりでしてね。九十日だとか六十日、四十日ということでありまして、やはり非常に借りにくい。それからおまけに担保なんかもだんだんなくなって、もうほとんどないという状態ですから、なかなか現場は出ないんです。ですから、うんと金を用意したから安心だというわけにいかないということですね。せめてこれは一週間、十日でケリをつけるというようなことを考えませんと、そのつど——自分が親方ですからね。従業員もたくさんいないんですよ。親方が行かないと説明できぬというので行っているわけでありますけれども、そのつど行きまして、仕事が一日つぶれるわけです。そして書類を出してもだめだったというような事例も多々出てきております。大臣はそういうこともよく知って、やりませんと、ほんとうにおれはこういうことをやったんだ、予算もこのようにやったんだ、ずいぶん大蔵省のほうと苦労して出したんだとおっしゃるけれども、末端ではそうはいかないということを認識されまして、要するに、その審査期間の短縮、原則、そういうものをはっきり打ち出されまして指導というものをきちっとおやりになりませんと、末端にはこういう制度というものが浸透しない。そしてその間にいろいろ問題が出て、倒産とか転廃業とか、いつの間にやらだめになった、こういうことにつながってきておる。いかがですか、お考えは。
  114. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 事務当局にも聞いてみますと、中小企業金融公庫等は事業処理量は非常にふえておるそうでございます。ただ、定員もそうふえていない。そこで、報告書類とかそういう書類をできるだけやめさせて、事業を簡素化してフル回転してやっておるそうでございます。こういうような重要な仕事に当たっておる中小企業関係金融機関については、人間をふやして能率をもっとよくすることも考えなければならぬような気もいたしますと同時に、仕事の内容自体も、その金融を受ける側の弱い人たちの身になってやってあげる必要がある、そう思いまして、改革を試みてみたいと思います。
  115. 松尾信人

    ○松尾委員 ぜひやっていただきたいですね。そして要求する書類が、こんなもの、あんなものというんですよ。そういうところをよく見てやってください。  保険の問題に入りますけれども、私のもらった資料では、四十六年度に比べまして四十七年度の普通、無担保特別小口、この付保の状況、件数等でありますけれども、これはうんと減っている、こう私は理解するのですけれども、いかがですか。四十六年度に比べて四十七年度はどうか、まずその点をお答えください。
  116. 莊清

    莊政府委員 約一一%ほど金額で四十七年度は減ったことは事実でございます。これは金融の超緩慢ということも非常に影響した一時的な現象である、こう考えております。
  117. 松尾信人

    ○松尾委員 四十六年度に比べて四十七年度ですからね。それは金融の緩慢もあったろうというようなお話でありますけれども、やはり借りにくいのではないか、要するに、保険で引き受けることが非常にむずかしくなってきているのではないかということを私は現場におって感ずるわけです。これはよく見てくださいよ。いまのようなお答えだけではなくて、なぜ減ったのか。件数もうんと減っておりますし、金額も減っております。これはもう少し納得のできるような回答を願いたい。  それから保証協会自体の問題でありますけれども、いろいろこれも質疑が重ねられておりましたけれども、この保証協会の経営に不安はないのかどうか。これは総体的にこの収支、そういう点からの経営実態ということについてお答え願いたい。
  118. 莊清

    莊政府委員 四十七年度で保険の引き受け実績が一一%前年より減りましたが、前年四十六年では三五%ぐらいふえております。それまでずっと年々二〇%から三〇%の伸びでございまして、特に四十七年は、やはり金融の異常な緩和ということの反動ではないかと存じます。もちろん御指摘のございましたように、信用保証協会がもっと中小企業になじむように、スピーディーにかつ的確に処理をするということが基本的に非常に大切でございます。ドル対策については、厳重な担保条件その他について通達もし指導もいたしておりますが、ドル対策保険に限らず、業務全般について御指摘の点を十分体しまして今後指導に万全を期したいと存じます。  それから、保証協会の経営の状況が総体としてどうかというお尋ねでございますが、これは国からの助成手段としては融資基金、これが四十八年度の予算を含めまして約九百億円の融資が行なわれております。そのほか、県からの出掲、市町村関係金融機関等からの出掲等も年々着実にふえてまいっておりまして、四十六年度末の保証協会の流動資産が四千百九十三億、四十七年度末ではおそらくこれが四千五百億くらいの規模にふくらんでおると思います。これが市中銀行に預託されまして、数倍の規模での保証金融というものが約束されるという仕組みになっておるわけでございまして、お話のように、この保証協会の資産を充実していくということが、実質的には保証付の融資の実現規模を大きく決定いたしますので、県も助成を一段と強化する、国も融資基金については四十八年度百億出すことにいたしておりますが、今後もさらにこれの増強を考えてまいりたいと思います。  なお、御参考までに四十六年度の保証協会全体の収支を単年度でございますが一言申し上げますと、収入が二百八十億、うち保険料収入が二百二億円になっております。七十八億円がいろいろな財産の運用益になっております。それから支出は二百二十一億で、差し引き五十九億円の黒字ということで、いま協会自体は健全な運営をされております。この二百二十一億の中で人件費が六十億近い規模になっております。これも年々上げなければなりませんので、事務の合理化も必要でございますが、国及び県あるいは市町村金融機関等の援助、助成ということを今後さらに進めまして、保証料は引き下げる、しかも業務量はふやす、人件費も十分人材が集まるように適正な水準は確保する、こういうことをぜひいたしたいと思います。
  119. 松尾信人

    ○松尾委員 経営が健全だ、こういうことであります。ならば、ここの窓口業務ですけれども、先ほど大臣もお答えになったとおり、何といってもこの保証協会の保証というのが一番零細企業の集まるところですよ。ですから、ここで親切にやってもらい、ここで早く仕事をやってもらい、そして立ち上がることができたというのが実績なんですね。ところが、現実はそういっておりません。これは先ほど政府三機関についてお話をしたのと一緒でありまして、大衆の需要に一番先端でタッチしているところはここだというくらいに御理解なすったほうがいいのです。  そこで、いろいろやはり政策金融という立場を厳然と守っていかなければできないのでありますけれども、非常にきびしい。きびしいことは事故というものにつながっていくわけでありますから、それはある程度私もやむを得ないと思いますけれども、先ほどの質疑の中で事故率を——普通保険、無担保特別小口、こういうものの事故率というものも私のほうも調べております。これはわずかな率になっておる。これは厳重な審査をしたからそうなっておるのか、それはわかりませんけれども、そういう現状からいってもう少し大まかにこれは見ていくべきじゃないか。それから早く処理していくべきじゃないか。そうして政府が腹をきめて大まかにやってみよう。早くひとつ第一線の処理をやってみようという腹をきめられたあとの事故率というものを一ぺん勉強してみようというくらいの腹をきめないと、一番先端のこの保証協会の保証というものが現実では非常に困難である、こういう点について長官はどのように考えますか。
  120. 莊清

    莊政府委員 事故率の減少は、金融の非常な緩和ということも四十七年度においては一つの原因だと存じますけれども、同時に中小企業経営内容が近年かなり改善されてきておる。それから、中小企業の方自体に保険制度を活用するというお気持ちが非常に浸透してきたというふうないろいろな総合的な結果として出てきたものと承知いたしております。  信用保証協会は、御指摘のとおり、中小企業政策の重要な一つの柱でございまして、保証協会は公的な職務を帯びた機関でございますから、政策的な見地に立って、特に零細企業の場合には、金融の円滑化に貢献するという姿勢で運営をしなければならないことは当然でございます。その方向で今後とも料率の引き下げ問題とか、限度の引き上げ問題とか、事務の簡素化、担保保証人の徴求の弾力化というような運営面できめこまかい配慮を加えまして、実績が年々あがっていきますように、私ども厳重に監督をしてまいりたいと存じます。  他方やはり県と、国民の予算を使って運営しておるものでございますし、数多くの方が利用して活用していく、そういう共同の重要な機関でございますから、中小企業の方にも保証協会を盛り立てるという御尽力も当然願わなければならぬ。ただし、そうかといって、不幸にして事故が起こったときに、市中銀行のように担保その他を全部実行して回収すればいいという式の運営は現在いたさせておりません。あくまでも中小企業が立ち直って事業が軌道に乗って、また返せるようにまずしてやる、そして返せるようになったときにその範囲で回収するということを原則にしております。回収率のほうは六、七割でございますけれども、そのあたりのかね合いに十分配慮していま指導しておるということをぜひこの際御報告いたしたいと思います。
  121. 松尾信人

    ○松尾委員 これは問題がありましょう。ありましょうけれども、やはり何といっても経営自体は非常に堅実である。保証協会のことでありますけれども、だんだん年々資金的にもふえておりますし、そこから入ってくる収入面というものも確保されておる。ですから、いままでの実績というものを踏まえまして、ほんとうにこれは大衆の庶民金融の政策金融の前線、第一線の味方であるといってみんながたよれるように保証協会を育成していく必要があるわけです。ですから、まだまだいまのお答えは——私は、もう少し決意を固めて、審査期間を短くしてみる、思い切って一週間、十日で結論を出すようにしてみる、そうして保証料等も下げてみる、経営のほうもながめていく、それから半年、一年たっての事故率を見てみる、そしてやってよかったなというようなものを一つ一つつくっていきませんと、政府三機関もそうでありますけれども、この保証協会の実績、大衆に直結した保証というものが遊離していくということを繰り返し申し上げておく次第であります。しっかりやっていただきたいと思います。  それから公害防止保険でありますけれども、これは四十六年より実施されておる。これもワクから見た消化率なんかどうなんですか。
  122. 莊清

    莊政府委員 実績を申し上げます。  四十六年度は、保険の引き受けが千六十一件、六十五億四千四百万円でございます。四十七年度は、四十八年一月末現在でございますので、一年未満でございますが、件数では二百件ほどふえまして千二百九十九件、金額も約二十億ふえまして八十六億六千百万円、こういうのが状況でございます。(松尾委員「ワクと実績」と呼ぶ)引き受けワクは百四十億でございます。
  123. 松尾信人

    ○松尾委員 時間も参りましたので、これで私の質問を終わります。
  124. 山田久就

    ○山田(久)委員長代理 宮田早苗君。
  125. 宮田早苗

    ○宮田委員 最初にお断わりしておきますが、私の質問がいままでの諸先生方の質問と重複する場合もあると思いますので、その点は簡略にお答えを願いたいと思います。  まずドル対策法の一部改正の本論に入ります前に、現行法及び各種の措置が一昨年の円切り上げ対策にどのような効果をあげたかをお伺いしたいと思います。  まず一番は、現行法の対象となっております認定件数をお聞かせ願いたい。また、その中小企業に対する政府系三公庫からの緊急融資規模及び設備近代化資金と高度化資金の返済猶予金、この三つの数字はどうなっておりますか。お聞かせ願いたいと思います。
  126. 莊清

    莊政府委員 認定企業の件数でございますが、一万三千四百二企業でございます。これは全国業種として指定された関係認定が一万一千六百四で大部分でございます。  それから、中小企業公庫からの融資実績でございますが、ワクが千八百億に対しまして、実績は千七百八十三億円でございます。件数は三万五千八百二十五件でございます。  それから、高度化資金等の返済猶予の実績でございますが、高度化資金は六百六十二件、五十六億八千七百万円が返済猶予に相なっております。  それから、設備近代化資金は七百七十件、三億八千八百万円の返済猶予実績が出ております。
  127. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、緊急融資の貸し出し条件でございますが、あとの質問に関係をいたしますので聞いておきたいと思います。  現行法では年利が六・五%の条件緩和となっておりますが、今回のフロートに伴う緊急対策、つまり閣議決定の特別融資分は年利が六・二%となっております。金利の差があるわけですけれども、六・二%にそろえる措置はできないかどうか、お答え願いたい。
  128. 莊清

    莊政府委員 私どもも金利はなるべく低い金利にいたしたいというふうに考えて努力をいたしてまいったわけでございますが、預金部資金のコストがございます。それと政府関係機関の人件費等、経費がどうしてもかかりますので、六・二%というのは相当大幅な逆ざやに実は相なっておりますので、これをさらに大幅に下に下げていくことは実際上なかなか困難な事情がございました。  なお、今後の問題といたしまして、預金部資金はいずれ近々貸し出し金利が引き上げられる方向にあると存じますが、そうなりますと、六分二厘の維持をするということはなおさら苦しいという問題に相なるわけでございますが、この点は、ドル対策融資金利は絶対上げないという方針で、いま財政当局と鋭意折衝いたしております。
  129. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、税制措置によります効果についてお聞きいたします。租税特別措置法改正によって、欠損金の繰り戻し還付制度の特例を設けておるわけですけれども、この実績と今後の見通しはどうなるか、お聞かせ願いたいと思います。
  130. 原山義史

    ○原山政府委員 私どもが現在二百七十企業について調べてみましたところ、これによる税制還付を受けた金額が六億五千万というかっこうに相なっております。なお、この中では回収率が二〇%程度でございますので、おそらく還付を受けてない人は回収しなかったのが多いかと思いますが、一応回収率二〇%ということで六億五千万というのが当方の調査でございます。今後につきましても、もうすでに三年前までさかのぼって税金還付を受けておりますので、還付する余裕は相当少なくなってこようかと思いますが、ドル・ショックによって新たに欠損会社に落ちたものもあろうかと思いますので、やはり相当程度実績が出るのではないかと思っておるところでございます。
  131. 宮田早苗

    ○宮田委員 伺いましたように、金融税制措置で、はたして輸出関連中小企業の体質改善は進んでいるのかどうかという問題がございますが、円切り上げ後の当面はしのげると思いますけれども、最も重要な事業転換の円滑化という政府の方針に沿う結果が出ているかどうか、輸出産地などでの具体例がございましたら、ひとつお知らせ願いたいと思います。
  132. 莊清

    莊政府委員 わが国中小企業のたゆまざる前向きの経営努力によりまして、第一次でドル・ショック産地といわれましたところでも、かなり前向きの対応策が実際に進捗しつつございます。これは一番大規模と思われますのが繊維の内需への転換、高級化でございますが、クリスマス電球とか、燕の洋食器とか、こういう機械関係、器具関係のところにおきましても、技術設備を使って新製品をつくるとか、あるいは海外に進出する等、多角的な形で企業自体が鋭意努力を始めつつある。今後はさらに一そうこれを広げまして、政府としても指導助言を強め、助成策改善をはかりたい、かように考えております。
  133. 宮田早苗

    ○宮田委員 それでは本論に入りますが、まずドル対策法の改正案でございますが、ここで示されるような法改正も必要ではございますが、中小企業者の最大の不安は、何といっても円がいつまでフロートしておるか、それがいつ固定相場に戻るかということが一番大きなものではないかと思います。  そこで、時期に対する見通しと、今回の法改正は固定相場制に戻った場合にも適用できることを前提にしておりますか、お聞きしたいと思います。
  134. 莊清

    莊政府委員 途中でかりに固定相場に復帰いたしましても、この助成措置というものは何ら変わるわけではございません。法律の有効期限も五年ということで、その点も明記してございます。
  135. 宮田早苗

    ○宮田委員 政府は、政府系三公庫から二千二百億を特別融資することにしておりますが、すでに金融界は金融引き締め基調にございまして、秋口にかけ金融引き締めが浸透した段階で、特別融資分はもちろん問題ないにいたしましても、輸出関連中小企業資金繰りが苦しくなるというふうに予想されますけれども、この点はいかがでございますか。
  136. 莊清

    莊政府委員 中小企業の三機関に対します資金需要は、今年に入りまして昨年同期に比べましてかなり大幅の伸びを示しております。資金需要として具体的な借り入れ申請として出てくるのは将来でございますが、口頭で前もって申し出ておるものを調べてみますと、かなりな高い伸び率になっております。それで特に今回は金融の引き締め下におけるドル対策を進めなければならないということで、第一回目と非常に違うわけでございます。  中小企業金融の円滑化という問題につきましては従来からの基本線でございますので、状況の推移を十分よく見まして、金融が不円滑なために、中小企業がせっかくの経営努力をしても経営がうまくいかないというふうなことは絶対にないように十分善処いたしたいと思います。
  137. 宮田早苗

    ○宮田委員 前回のドル・ショック時に実施いたしました緊急融資の返済猶予について詳しくお聞きをしたいわけでありますが、猶予期間中の金利負担がどうなっておるかということでございます。私が言わんといたしますことは、最初申し上げましたように、利子の違いというのが今回と前回は出てきておるわけでございますので、これではちょっと不公平といいますか、問題がありはしないか、こういう気持ちがあるものですから、そういう点についてどうお考えになっておるか、お聞かせを願いたいということであります。
  138. 莊清

    莊政府委員 猶予期間中におきましても、これは政府関係機関融資の従来からの一つのきまりのようなものでございまして、元本の返済は猶予するけれども金利だけは納めていただくという方針でおります。今回のドル・ショックに際しまして中小企業界の御意向をいろいろ伺ったのでございますが、何と申しましても資金繰りをつけてもらいたい、元本を返すとなると巨額の返済になる、金利とは全く比較にならない多額のものが返済になるわけでございますからたいへん苦しくなるので、何はさておき返済猶予を望むということがございましたので、これについてはさっそく実施したわけでございます。
  139. 宮田早苗

    ○宮田委員 先ほど現行法が企業の体質改善に果たした役割りをお伺いしたわけでございますが、今回の改正やその他の施策によって業種転換などをどのように進めようとしておいでなのか、その点、まずお聞かせ願いたいと思います。
  140. 莊清

    莊政府委員 業種転換というのは、Aの品物をつくっておったものが全く違ったものにいきなり全部向かうということばの上での転換ではございませんで、実態は既存の設備なり技術を極力生かしながら、そうして成長性の高い製品に部分的な転換を行なっていって、それを計画的にふやしまして、そして従来の部分をそれに見合って縮小していくということを行なっておるのが中小企業のいままでの現状でございまするし、また、そういう形をとって成功しておる例が一番多いわけでございます。大臣も先ほど申しましたように、事業転換というのは、そういう形にいたしましても、これはなかなか言うはやすく行ないがたい、企業経営上のたいへんな問題でございますので、政府としての助成策もいろいろございますけれども、この諸条件改善については、いまも財政当局検討いたしておりますが、今後もさらにそちらのほうへ向かっての努力を大いにいたしたいと存じます。  また、個々の企業ではなかなか対応しにくいという面がございますので、政府、都道府県一体になりましていろいろな情報の提供、指導、それから知恵を貸してあげると申しますか、そういう診断のようなこと、これらを非常に重視して、いま実際に四十産地ほどに対しまして進めつつあるところでございます。
  141. 宮田早苗

    ○宮田委員 当然のこととは思いますものの、この法改正案自体の中心が特に金融面ということになっておるわけでございますので、あえてただいま質問をしたわけでございますが、答弁によりますと、金融面以外の適切な指導をするということをおっしゃっております。  さらに、私どもから現地の立場で申し上げますと、出先の機関もあることでございますので、より小まめな適切な指導ということが今日一番必要なときと思っておりますので、ただいま答弁をされた以外のことにつきましてもひとつ十分に配慮してほしいということを現地の希望としてまず申し上げておきたいと思います。
  142. 原山義史

    ○原山政府委員 先生の御指示に基づきまして今後も指導を進めていきたいと思います。具体的には、去る四月十二日に全国の商工部長に集まってもらいまして、現地の事情に即した事業転換あるいは産地の恒久化対策を練っていただくというふうになっております。その際、現地の事情を十分聞き取りながら、相互によく話し合いをした上で一つのめどをつけていくようにというふうにお願いしてございます。  なお、こういう産地でかたまっている事業以外の問題につきましても、いろいろ転換なり製品の高度化の問題はあろうかと思うわけでございます。これにつきましては、中小企業振興事業団の調査部におきまして、実際の転換なら転換の事例集というものをつくりまして、これにそれぞれコメントをつけまして、わかりやすく皆さんに参考に提示するように、鋭意いま作成について努力中でございます。
  143. 宮田早苗

    ○宮田委員 あと質問はほとんど重複する面がございますので、これを最後にさしていただきますが、まず通産省は事業転換を円滑にということが中心のようでございます。どうも中小企業に働く労働者のことがおざなりにされておるような気がするわけでございまして、労働省の担当者にお伺いしたいわけでございますが、この種の関係で一番大きく問題になりますのは、そこに働いておいでになる方が業種転換をした場合、それに即応する体制というのがなかなかできかねるのじゃないかというふうな現状でございまして、その場合、特に中高年対策ということが必要なことと思いますし、同時に、住宅政策あるいはまた職業訓練というようなことが特に必要でございますけれども、こういう点についての方針がございましたら、労働省の担当者の方にお答え願いたいと思います。
  144. 加藤孝

    加藤説明員 御指摘ございましたように、特に認定中小企業から離職をします方、その中でも中高年齢者の方についての再就職の促進を私どもとしては十分配慮していかなければならぬと考えておるわけでございまして、そのために、特に認定中小企業者から離職をされます中高年齢者の方につきましては、現在中高年齢者雇用促進法というものがございますが、それで実施をしております六カ月間の求職手帳制度というのがございます。これは六カ月間毎月二万五千円程度の就職指導手当というものを支給いたしまして、その間にきめこまかい職業相談あるいは職業訓練あるいはまた職場適用訓練、そういったものをやる制度でございますが、こういう制度を六カ月ということではなくて、認定中小企業から離職をされる中高年齢者につきましては、六カ月ないし一年をさらに延長をする特別の措置を講ずることを予定いたしておりまして、そういう制度を積極的に活用いたしまして、今後きめこまかな職業相談あるいは転換に必要な職業訓練というものを進めてまいりたい、こう考えておるわけでございます。  なお、住宅対策といたしましては、特に再就職に伴いまして住居を移転される労働者の方については、事業主に対しまして雇用促進融資というものを用意いたしておりまして、そういう事業主によります従業員の住宅確保という点についての積極的な援助をしていきたい、さらにまた、雇用促進事業団が建設をいたしております移転就職者用の宿舎というものがございます。   〔山田(久)委員長代理退席、田中(六)委員長   代理着席〕  そういったものに入居をしていただく、こういうような形の中で再就職あるいは職業訓練、住宅確保対策というものを進めていきたい、こういうことで考えておるわけでございます。
  145. 宮田早苗

    ○宮田委員 終わります。
  146. 田中六助

    ○田中(六)委員長代理 渡辺三郎君。
  147. 渡辺三郎

    ○渡辺(三)委員 私は、だいぶ前の方々から質問があって、お答え願った点が非常に多い関係もありますから、できるだけ簡略に御質問申し上げたいと思います。  第一点は、公害防止保険の引き受け額が昭和四十六年度の場合には六十六億円、これは四十六年度から発足をしておるわけでありますけれども、四十七年度の予定額としては百四十億円になっておるわけであります。これは昨年の四月からことしの一月までの十カ月間の実績では六十三億円程度になっていると思うのであります。これは予定に比べてかなり伸び悩んでおるわけですが、公害防止という問題がきわめて重要な段階で、この保険の利用が必ずしも伸びていない理由、あるいは実態などについて最初にお伺いをしたいと思います。
  148. 莊清

    莊政府委員 御指摘のように、ワクに対しまして消化の状況がおおむね半分程度という実情にございます。この原因としては、いろいろな原因があると存じますが、一つには、中小企業は公害防止に最近は非常に積極的でございますが、資金の性質上、市中銀行からの借り入れというよりも、むしろ長期低利の政府系の公害防止事業団でございますとか、中小企業振興事業団融資というものの利用に現在向かっておるという点がやはり背景に一つあると存じます。同時に、この保険につきましてもまだなじみが少ないと申しますか、料率の問題等も、保証協会の窓口では一%以上のものにも相なっておりますので、そういう点も一つのネックになっておろうか、これも事実かと存じます。
  149. 渡辺三郎

    ○渡辺(三)委員 今回の公害防止保険についてはてん補率の改善が予定されておりますけれども、いまお話がございましたが、公害防止の必要性にかんがみまして、無担保保険に公害防止の特別ワクを設けてさらに保険料を大幅に引き下げる、そして利用の促進をはかる、こういうふうな抜本的な改善を今後の課題として検討されてみるお考えがおありかどうか、この問題であわせてお伺いをしたいと思います。
  150. 莊清

    莊政府委員 無担保保険につきましては、いわゆる零細金融の円滑化をはかるという趣旨でございまして、設備資金運転資金対象にしておりますが、運転資金の比重が非常に高いわけでございます。  片や公害防止保険のほうは、零細企業もございますけれども、中小企業の中でも相当上の部が長期の設備資金としてまとまった金額を借り入れるということでございますので、両方合わせて一本の保険というのは、運営面におきましてもかえって実態に合わない面もあろうかと思いますが、それぞれの保険制度は一応現在どおり別個にいたしておきまして、無担保保険につきましても、また公害防止保険につきましても、それぞれの金融の円滑化がはかられますように制度改善をはかっていくという方向検討させていただきたいと存じます。
  151. 渡辺三郎

    ○渡辺(三)委員 この問題については、最初に御質問申し上げました内容にありますように、十分に活用されておらないというふうな面が実態としてはあるわけですから、いまのお話もございますけれども、中小企業としては重大な問題でありますだけに、十分円滑に利用できるように、あるいはまた必要なものについては積極的な指導をやるなり、そういう施策充実させていくように努力を払っていただきたいと思うわけであります。  それから次の問題は、信用保険法の改正とあわせて保険公庫の保険料率の引き下げ、政令事項になりますか、予定されているというふうに思いますが、具体的にはどの程度の引き下げを考えておられるのか。あるいは私若干座をはずした時間がありますので、お答えいただいたのかもしれませんけれども、その点のお答えをいただきたいと思います。
  152. 莊清

    莊政府委員 保険料率は政令改正によりまして四月十六日からすでに実施をいたしております。ただし、ドル対策関係の保険につきましては二月十四日にさかのぼって適用することにいたしております。引き下げの率は今回は八・四一%でございまして、五種類の保険制度がございますが、総合で現在〇・六七五三%の保険料率と相なっておりまするが、これを〇・六一八五%まで八・四一%引き下げるというのが今回の引き下げの内容に相なっております。
  153. 渡辺三郎

    ○渡辺(三)委員 それから中小企業信用保険公庫に対する政府の出資、これは各委員からも出されておるわけでありますけれども、関係方面から大幅な増資の要請があったわけであります。今年度の予算では前年度と同じ百五十億円、こういう出資にとどまったわけであります。この程度ではたして十分かという問題について、私ども非常に大きな疑問を持つわけであります。たとえば、商工会の決議などでも、どうしても二百五十億円は必要だ、こういうふうな決議が出されておるようであります。今年度はさらに出資の増をはかる必要が出てくるのではないか、こういうふうに思いますけれども、これに対する見通しといいますか、あるいはまた、いま現在で、今後の趨勢についてどのように考えておられるか、明らかにしていただきたいと思います。
  154. 莊清

    莊政府委員 信用保険公庫に対します政府の出資は四十八年度が準備基金が五十億円、それから融資基金として百億円、合わせて百五十億円であります。このほかに四十七年度の年度末に、予備費でございますが、ドル対策関係で別ワクで四十億円の緊急出資が行なわれております。実質的には四十八年度分の出資とおとりいただいてけっこうかと存じます。  全体の出資がどれだけになっておるかということを申し上げますが、準備基金として四十八年度分を含めまして二百四十億、それから融資基金の関係は、四十八年分を入れて約九百億ということでございまして、千億以上の出資を政府としては行なっておるということに相なっております。仰せのとおり、今後もやはり保険制度の基礎を固めるということが一つと、それから保険料の引き下げ、これを進めていくという意味で準備基金の増額につきましても前向きに通産省としてはぜひ努力をいたしたいと考えております。
  155. 渡辺三郎

    ○渡辺(三)委員 次に、担保の問題について少しお伺いをいたしたいと思うわけであります。  今回のドル対策といたしまして信用保険の特例措置がとられておるわけですが、これにしましても金融ベースに乗らないような打撃の大きな企業がなかなか実際問題としては恩典を受けにくい、こういう実情にあろうかと思います。信用保証制度そのものが実際に末端で十分に円滑に利用されているかどうかというふうな問題と関連をしまして、この問題はそれぞれの委員からも角度を変えて出された重要な問題であります。  そこで、ドル対策として保証する場合に、担保の評価について、たとえばその担保が百の値打ちしかない、こういうふうな場合であってもそれ以上の融資を特別の措置として認めていく、こういうふうな考え方がないかどうか、この点をまず最初にお伺いしたいと思います。
  156. 莊清

    莊政府委員 担保を客観的に見て百のものをたとえば二百に評価できないかという点につきましては、これはやはり担保というものの性格上実行することは困難であろうと存じます。  信用保険制度零細企業金融の円滑化というものを一体どう両立させるのかというお尋ねがございましたが、この見地から、私ども今回御提案申し上げております無担保保険制度及び特別小口保険制度を今後充実整備していくということが非常に大切だと存じます。特別小口保険につきましても、今回限度額を百万円まで上げておりますが、これは御案内のとおり、担保も要らないし保証人も要らないという形で信用保証協会が保証をしてあげるという制度でございまして、同一市町村内で一年以上事業をやっておるとか、いろいろそういう一応の歯どめはございますけれども、その条件に該当すれば担保を取らないし、保証人についても要求しないという形の制度で、零細金融についての保証をやってやろうというわけでございます。  それから、無担保につきましては文字どおり無担保でございまして、担保は取らないけれども保証人は要求するという形に相なっておりますが、今回のドル対策につきましても、その際の保証人の取り方につきまして、保証人の一々の返済能力まであまり追及してまいりますと、制度が必ずしも円滑に動きませんので、そのあたりについては実態に即して弾力的に運用を行なうようにというふうにいたしておる次第でございます。
  157. 渡辺三郎

    ○渡辺(三)委員 八十万の限度を百万に上げた、こういう問題についても、これはわずか二十万上がったというふうな問題もありますし、それから、利用者にとっては、もっと百万をこすような額でもって、しかも相当早い時期から強い要請が行なわれてきておったわけでありますから、今回八十万が百万になったということは、それだけの前進はあるにしても、必ずしも需要者の要望に十分完ぺきに応じておるというふうにはいえないと思うのです。  そこで、私先ほどの御質問を申し上げたわけですが、普通の市中銀行の融資の場合、大体私どもの認識では、実際の担保価値の二分の一、この程度融資にしか応じておらないというふうな実態になっておると思うのですよ。ところで信用保証協会の場合は若干それよりはゆるやかではないか、こういうふうには考えますけれども、一体担保価値基準というものをどの辺に置いておるのが信用保証協会の場合の実態だろうか、これは若干はゆるやかではあろうけれども、市中銀行の場合とそう大きく変わってないのではないか、こういうふうに私は実情から考えておるわけなんですが、その辺ひとつ明らかにしていただきたいと思うのです。
  158. 莊清

    莊政府委員 担保を出して金を借りるという場合に、十分な担保があれば当然それをまっすぐ銀行に出すわけでありまして、信用保証協会にわざわざ保証料を払うという必要はないわけでございますが、そういかない場合に保証協会を中小企業は利用するのが現状でございます。そこで保証料、担保は取りますけれども——無担保保険などは担保を取らずに保証人だけでやるというふうなことをいたしております。たとえば、近代化保険でありますとか、普通保険とか、公害防止保険で取ります際にも、担保物件の評価そのもの、土地の評価にいたしましても、なるべく時価に近いところで保証協会では評価をするというところに金融機関と違った一つのメリットがあるわけでございます。  それからもう一つ、掛け目のお話がございました。掛け目につきましては、銀行の場合に相当きびしいというお話がございましたが、それでは信用保証協会の場合には何掛けであるかということをちょっとここで私申し上げるだけの準備がございませんが、銀行ベースの場合よりも相当に有利な掛け目でそれぞれの協会が運用しておるということは事実だと存じます。今後も特にドル対策につきましては、そういう従来の運用の上になお弾力的に評価なり掛け目を行なうように、それから担保の設定順位につきましても、保証協会の場合にはひとつこの際大いに弾力的にという、このあたりを強く指導しておるわけでございます。
  159. 渡辺三郎

    ○渡辺(三)委員 一般的にはいままでもそういう指導をしてこられたと思いますけれども、実際私どもが地方において資金を必要とする人々のいろいろな具体的な相談を受けて保証協会との折衝などを現実的にやってみる場合に、いまの問題が、いま長官がおっしゃるような形にばかりはいってないような面があるようです。したがって、この点についてはさらに一そう指導の面も強化をしてもらいたい、こういうふうに考えるわけであります。できるだけ目一ぱいの評価をして、この制度がほんとうに資金を必要としているそういう業者、これに十分に行き渡るように配慮を強く要望しておきたい、こういうふうに思うわけであります。  それから、先ほどこの問題に関連しまして、保証人の問題についてもお答えをいただいておるわけですが、これもまたここで一般的に議論されているように円滑にはいっていないのが実情ではないか、こういうふうに思うのであります。もちろん保証協会といえども、極端な表現ですが、全然信用できない保証者をもって資金を回す、こういうふうなことはできないというふうなことは私も常識的にはわかります。しかし、これに対する諸条件があまりにきびし過ぎますと、この制度本来のせっかくの趣旨というものが生かせないというふうな面がありますから、この点についても担保の点と同じように十分な配慮をしてもらいたい、こういうふうに考えております。これはお答えをいただかなくてもけっこうであります。  次に、これは午前中の質問に答えられて出ておったようでありますけれども、各都道府県あるいは市の信用保証協会、これの保証料率のばらつきの問題であります。私も一応の資料を手元に持っておるわけでありますけれども、年々若干ずつ料率の引き下げは平均して行なわれておりますが、それでもなおかつ、全国的に見ますと料率に非常に大きな違いがあります。こういう点については、一定指導基準というものを出しておられると思いますけれども、できればその指導の具体的な中身あるいは一つ基準の出し方、こういうふうなものについて具体的にお答えをいただきたい、こういうふうに思います。
  160. 莊清

    莊政府委員 具体的な数字を示しましての指導を現にやっておるわけではございませんが、中小企業庁といたしましては、御指摘のように、他に比べまして割り高感の非常にある保証協会個々につきまして内容検討いたしております。この保証協会というのは、歴史的にはそれぞれの自治体で県の金等を中心に始めたものが制度化されたわけでございますので、発足のときからのいろいろな違いもございますし、その後における県からの助成程度の違い、地元金融機関の協力の度合いの違い等もいろいろございます。  そこで、そこらの実態をにらみながら、なおかつ、やはり高過ぎところはどうしても下げてもらいたいという強い要請を出しておるわけでございます。少なくとも何%以内にしろというところまでは、なかなか保証協会の性格もございまして、国としてちょっと及びかねる点もございますが、一つ融資基金の融資のやり方といたしまして、現在相当保証料が高いけれども、県もひとつ出捐などをこの際相当額ふやして、そしてかなりの程度保証料率を引き下げるという方針を明らかにされました保証協会に対しましては、保険公庫政府から受け取ります出資などからの融資基金というものがございますが、この融資基金の配分にあたってその点を十分配慮して、政府としてもそれを援助していくというふうな形で、間接でございますけれども、著しく高いものの平準化という方向でずっと努力をしておるわけでございます。四十八年度の保険融資基金の配分におきましても、この点に重点を置きまして配分を行ないたいと考えております。
  161. 渡辺三郎

    ○渡辺(三)委員 大部分すでに質問された内容と関連し、あるいは重複をしておりますから、私はここでやめたいと思いますが、いまの問題、これは融資基金の援助などをもって平準化をできるだけはかっていく、こういう点についてはわかります。そうしますと、いまの長官の御答弁でありますと、たとえば各県の保証協会で取り扱っております融資の総額、こういうふうな額に見合った形で、この場合にはこの程度保証料率が望ましいのではないかというふうな、一定の数字を明確に出さないまでも、一つ基準というふうなものはお持ちになっていないのでしょうか。そういうものを指導するまではなされていない、これは各都道府県に自主的にまかしているのでしょうか、その点もう一ぺんお聞かせいただきたいと思います。
  162. 莊清

    莊政府委員 全般的に申し上げますと、東京、大阪のように相当大きな規模保証業務を行なっておりまする協会では、非常に小規模で行なっております保証協会に比べまして、保証料率が割り安ということに相なっております。これは件数も多いし危険の分散もできるということが実情であります。それからまた、所在の県あるいは地元の地方銀行等も援助をする体制が相対的に強いということもございます。  そこで、申し上げましたように、融資基金の配分にあたりましてそのあたりの平準化を考慮しておるわけでございますが、過去四、五年の間に全体として保証料が、その融資基金の配分及び県当局における出指金の増加あるいは県自体からの特別貸し付けの増加等ございまして、五、六%下がってきております。これは全国平均してここ五年ばかりの間に五、六%下がっておるわけでございます。その過程におきまして、非常に大きく割り高になっておりましたところというのは解消しております。一番問題になりますのは普通保険でございますけれども、この普通保険につきましても、きわ立って高いという県は今回はなくなりまして、一・四%超というふうなところは今回は全部なくなる、全部一・三%以下というところで勢ぞろいをやっとするようになったというのが実情でございますので、上下の開きが急速に縮みつつあるということは申せるかと思います。今後も、全国一本ということはお説としてあるのでございますが、なかなかそれもできませんが、極力上下の差をさらに縮めるような方向で県にもお願いをし、私どもも援助をいたしたい、こう考えております。
  163. 渡辺三郎

    ○渡辺(三)委員 終わります。
  164. 田中六助

    ○田中(六)委員長代理 近江巳記夫君。
  165. 近江巳記夫

    ○近江委員 前回のドル・ショックの影響につきまして、業種別、産地別に見ましてその影響度、業種、産地のとった対応策、政府のとった緊急対策の効果等についてどのように政府は調査なさっておるか、お伺いしたいと思います。
  166. 原山義史

    ○原山政府委員 前回のドル・ショックに対して政府がとった措置というふうな御質問でございますが、まず緊急融資としまして千八百億円の融資をした、それから信用保険の特例で一万三千件の認定をしてこれを行なったという点につきましては先生御存じのとおりでございます。  各産地ごとにどういう対策をとったか、こういうふうな御質問でございますが、たとえば神戸のケミカルシューズというふうな例をとりますと、これは内地の八十社以上あった輸出専業者が現在五社くらいになっております。それで全体の出荷額は以前といまとほとんど変わらない。これは内需の開拓、特に女性のパンタロンブームに乗りまして底高ヒールというなものを開発しまして、むしろ内需にシフトするようなかっこうでこれを切り抜けていっています。  また、秋田のクリスマス電球等の例を見てみましても、これは八社で共同出資会社をつくって韓国に進出している、あるいは電気関係の部品の下請に入っていっているというふうにそれぞれ対応策をとってきて、非常に中小企業のバイタリティー、小回りを生かしまして乗り切ってきたということが言えるかと思います。
  167. 近江巳記夫

    ○近江委員 今回の場合、前回の影響を受けたこれらの業種、産地について、新たにどういう影響を受けるのか、輸出契約状況、受注残高、問屋の支払い状況等について、政府として把握なさっている点についてお伺いしたいと思います。
  168. 莊清

    莊政府委員 第二次のドル・ショックによります影響調査は、九十八産地についてドル・ショック直後に実施いたしましたが、相当重大な影響が出るというふうにそれぞれの産地で判断をいたしておるという事実を掌握いたしております。つまり二百六十五円レートの場合について、四十七年に比べまして九十八産地では輸出が二一%ほど減るであろう、四十八年度では六%ほどの輸出の増を産地では見込んでおりましたので、その四十八年度見通しに対しましては二六%減るということでございます。なお、二百五十五円というふうな著しい切り上げ相場になりました場合には四〇%程度の大きな減が避けられないという報告を得ております。  これらは輸出の比率の非常に高い産地でございますから、中小企業全体として見れば必ずしもこのところまでいくわけではございませんが、集中的な影響を受けるであろうと思われる九十八産地については深刻な影響があるということを憂慮いたしております。  その後におきます輸出の成約状況は、ショックのありました二月にはフロートの状態が非常に激しくて為替が著しく変動しておりましたこともありまして、六〇%以上の産地で成約が全然なかったという実情にございまするが、三月に入りましてからは漸次成約ができつつあるという状況でございます。九十八産地のうちで報告を出してまいりました約六十産地の中で、一割に当たります六産地ほどが三月も引き続き成約が結局まとまらなかったということを報告しておりますが、残りの産地につきましては成約が漸次できつつあるということでございます。ただし、円ベースでの輸出単価というものは若干昨年同期よりも現在のところフロートのせいがありまして低くなっておりまして、今後輸出ドル価格の引き上げ交渉というものにどこまで成功するかということが産地としても最大の関心になっておるというのが現状でございます。  以上でございます。
  169. 近江巳記夫

    ○近江委員 前回この輸出関連中小企業のうち約一万三千四百ですか、企業認定しておるように聞いておるわけですが、この輸出関連企業のどの程度これで認定したことになるのか。また、今回の認定基準は前回と同じであるかどうか。業種別、産地別に見ますと、指定は前回よりどのくらいふえるのか、お伺いしたいと思います。
  170. 原山義史

    ○原山政府委員 産地指定、業種指定には二つございまして、金融面法律面であります。法律面は、主として信用保険をねらった指定でございます。金融面につきましては、前回は輸出比率がおおむね三〇%という産地、業種を指定いたしましたが、今回は輸出比率を下げまして二〇%という程度までこれを拾っていくということで、現在すでに指定しまして発足しておるところでございます。  なお、今後の問題でございますが、今後法律改正をしていただきまして新たに指定する場合でございますが、この際につきましては、金融面にあわせまして、前回とほぼ同様でございますが、二〇%の輸出比率を持つ業種、産地を指定していくつもりでございます。  なお、この企業が全体の輸出企業のうちどのくらいかというふうな御指摘でございますが、先生御存じのように、中小企業全体で輸出比率はどのくらいかと申しますと平均大体八%程度でございます。ただし、その二〇%の業種、二〇%の産地に入る企業であれば、極端にいえば輸出比率ゼロのものでも指定の対象になり得るわけでございます。その理由は、内需のほうに輸出業者が転換しまして内需に迷惑をかけるというふうな点を救うために、業種として見て、産地として見て入っておれば、被害を受ければこれを指定していくという方針をとっておるわけでございますので、その面から考えますと、実際に被害がある企業については相当程度、ほぼ大体拾っていけるのではないかというふうに考えているところでございます。  なお、下請につきましても、輸出に密接に関連があるというふうな点でこれを読み込んでいきまして、指定の対象にしてまいりたいというふうに思っておるところでございます。
  171. 近江巳記夫

    ○近江委員 こうした指定の問題につきましては、漏れのないように政府としてよく見ていただきたい。この点を特に要望しておきます。  それから、事業転換につきまして中小公庫あるいは国民公庫の利用実績が非常に低いじゃないかということがよくいわれておるわけですが、この理由は一体何ですか。
  172. 原山義史

    ○原山政府委員 確かに先生御指摘のとおり、中小公庫及び国民公庫における事業転換貸し付けの実績は非常に低うございます。これにつきましては、私どもも、前のショックの段階においては、事業全部を転換して乗りかえていくという機運がまだあまり強くは醸成されてなかったというふうなことがあるのじゃないかというふうに思っております。今回のショックにおきましては、企業においては相当意欲的に転換をしたいというふうな機運が盛り上がってきておるものと思いますので、相当利用実績も出てくるんじゃないかというふうに思っておりますが、この点について条件を緩和いたしまして、できるだけ利用を促進したいというふうに思っておるところでございます。
  173. 近江巳記夫

    ○近江委員 この条件緩和ということをおっしゃっておるわけですが、せっかくこうやって組んでおられるわけですから、これが利用されないというのは、やはり政府のそういう指導というものも不足しておるのじゃないか、こういう点をひとつ政府としても反省をして、組んだ以上はそれを有効に使って、中小企業が一歩前進をできるように十分努力をしていただきたいと思います。  それから、今回の影響によってどのくらいの事業転換の希望者が出ると見ておられるのか。また、これらの企業者に対して、転換先の業種設定あるいは高度化等についてどういう方法で指導なさるのか、これについてお伺いしたいと思います。
  174. 莊清

    莊政府委員 転換を希望する企業は、今回のドル・ショックが、第一次ショックをひどく受けた、特に一部の産地に集中的に影響するであろうというところから、それらの産地において相当数の企業が製品の高度化なりあるいは既存の技術を活用した成長性の高い部品の生産等に向かうという計画検討を開始するものと見ております。何百企業になるかというふうなところまではまだわかりませんですが、現在申し上げました特に問題の多いと考えられます四十の産地につきまして、通産省と県とで一体となりまして、コンサルティングチームを派遣して、今後の方向についての一つ検討案を示すということに取りかかっておりますので、これが進むにつれてまして御指摘のような点も漸次判明いたしてくると思います。  いずれにいたしましても、第一次ショックのもとで相当数の転換企業の自主努力もあって行なわれたわけでございますが、今後これがふえる方向にあると思いますので、やはり政府としては指導助言ということを行なう、同時にいま部長から申し上げました政府関係機関からの融資の諸条件というものの内容改善強化をはかるということで、誘導と助成の二つで転換が円滑にまいりますように前向きに努力をいたしたいと思います。
  175. 近江巳記夫

    ○近江委員 誘導、助成ということばはいいんですけれども、その助成も弱いし、あるいは誘導にしましてもなお一段と弱い。そういうチームをつくっておるということをおっしゃっておるわけですが、ほんとうに政府としてのどれだけのビジョンを持って、具体的なものを持っておるかということになってきますと、それはよく相談して考えましょうという、やはりそういうようなことばが端々に出てくるわけですよ。だから、この辺はもっと強化していただく必要が大いにあると思うのです。長官、そう思われませんか。
  176. 莊清

    莊政府委員 全く同感でございます。通産省といたしましても、中小企業庁を中心にいたしまして、繊維雑貨局とか重工業局とか関係の局もございますので、先ほど大臣からの御答弁にもございましたように、通産省の組織をあげまして、今後これら転換を要する企業の向かうべき道についての通産省としてのビジョンというものの検討を進めるということでまいりたいと存じます。その方向に向かって、中小企業庁といたしましても、省内で中心的な役割りをになうわけでございますので、十分努力をいたしたいと思います。
  177. 近江巳記夫

    ○近江委員 それではひとつことばだけではなく、そうした点について十分努力をして実のあるものにしていただきたいと思います。  それから、前回のときの附帯決議の第一項にあります「事業転換又は縮小を行なうものの特定の設備に対する買上げ措置」について附帯決議をつけたわけですが、その後どういう措置を講じられたのか、また、特に今後この事業転換がふえることが予想されるわけですが、特定設備に対する買い上げについてどういうことを行なおうとなさっているのですか。
  178. 莊清

    莊政府委員 事業転換に関する附帯決議に基づきまして行なわれた具体的な措置は、中小企業振興事業団からの八割無利子の融資制度を創設いたしまして、それによりまして設備の廃棄に対して助成を行なうという制度が新たに設けられたということが最大の点でございます。この点につきましては、実績というのはまだほとんどあがっておりません。実際に申請が出てきたのは二つでございますが、うち一件だけ、約七千万円程度融資が実行されて、もう一件が目下審議対象になっておるという状況でございます。
  179. 近江巳記夫

    ○近江委員 この制度ができても実検に動いたのは一件だけである。無利子か知らぬけれども、やはりこれは返さなければならぬわけですね。政府も非常に少ない資金の中で努力をしている苦労もわかるわけですけれども、やはり事業転換というようなことをいっても、また縮小というようなことをいっても、やはり設備ということが一番ひっかかってくるわけですよ。ですから、やはりこの辺のところは政府として、中小零細業者が生きる道を求めて一生懸命やっておるわけですから、もう少し実際に力を入れてもらわないと私は困ると思うのです。これは今後もっと努力しますか。
  180. 莊清

    莊政府委員 大臣からの当委員会での御答弁でも、この問題について事務当局によく検討させますという御答弁があったわけでございます。私どもよく検討させていただきますが、念のために申し上げますと、事業転換を必要とする企業や産地でも、かりに、政府が買い上げましても、ほとんど買い上げの対象として金目にならぬような、たいした設備のない、そういう業種というふうなものも多々ございまするし、設備に対する助成をどうするかという問題とあわせまして、転換するための前向きの必要な新しい設備資金運転資金、これが金額的にも当然中心になるわけでございます。この前向きのほうについての条件改善というものも、私どもは十分念頭に置いて総合的に検討をする必要があろうと存じております。たとえば設備の買い上げの問題につきましても、大臣の御答弁どおり検討をいたします。
  181. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、この事業転換に際して既存業者との競合の問題が出てくると思うのですけれども、この回避についてどういうように考えておられますか、この点についてお伺いします。
  182. 莊清

    莊政府委員 事業転換の場合に、やはり成長性の高い分野に転換をしていくということが当然のねらいでございます。そこでいたずらなる競合が起こるということではまた共倒れになりますので、大臣も先ほど御答弁になりましたが、通産省としても個々の産地ごとに現在診断を進めておるわけでございますけれども、たとえば具体的にどういう電子部品なり機械部品なりが将来性があるか、まだまだ伸びる余地があって、転換企業がニューエントリーとして入っても余地があるかということについては、通産省をあげまして十分検討の上、それぞれの産地にもアドバイスをする、そのために省内で十分の体制を整えまして検討をして情報を与える、これが一番大切だろうと存じます。その場合に、たとえば一部の産地で行ないましたような後進国への企業進出というふうな問題を含めまして、広い視野で国際分業の観点も含めまして行なっていくというふうに考えたいと思っております。
  183. 近江巳記夫

    ○近江委員 最近、地方自治体におきましても、非常に住民のそうした意思を尊重してどんどんやろうとして努力しておるわけですが、非常に財源不足である。やらなければならぬことは中小企業、需細企業対策をはじめとして住民の福祉を考えていくと、もう非常にたくさんの問題があるわけですね。そういう点で、この都道府県の財政に対する助成対策、これは政府全体で考えなければならぬ大きな問題でございますが、この問題について長官、そして大臣は、どのようにお考えであるか、お伺いしたいと思うわけです。
  184. 莊清

    莊政府委員 中小企業指導行政というのは、今後金融、税制上の助成措置と並びましてきわめて重要に相なるわけでございます。通産省では、明年度約十一億円程度の予算を組んでおりまして、これを都道府県に対しまして補助金として交付するということによりまして診断指導を県の手でやってもらうという措置を行なっております。このほか、御案内のように、商工会議所商工会に対しましての五十数億円の予算計上によりまして、その面からも個々の企業に対しましては各種の指導助言ということを行なっていくことを考えておるわけでございます。  県に対しましても、単にドル対策だけの問題ではございません。いろいろな産地なり企業なりあるいは商店街とか、こういうものが今後やはり近代化を年々続けていくということが中小企業発展、ひいては国民経済の発展のため不可欠でございますので、十一億円の予算を今後はもっともっとふやす体制を強化するということに努力をいたします。
  185. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 先般も府県の商工部長会議を開きまして、ドル・ショックの影響について各地域別の影響等もよく聴取をいたしました。やはり第一線で親身のめんどうを見てもらえるのは市役所とかあるいは府県でございます。通産局も、もちろん本省の指示を受けてその方向を伝えたり、資金のめんどうを見たりいたしますけれども、一番実情がわかっているのは何といっても府県だろうと思います。そういう意味において、府県及び信用保証協会というようなものを大事にいたしまして、緊密な連絡をとって府県のイニシアチブを尊重いたしまして中小企業対策を兼ねて進めていきたいと思います。
  186. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうした対策で十数億円というような、これは実際全国に分けますと非常にわずかなんですね。先ほど申し上げましたように、こういう自治体でいろいろやらなければならぬことは山積しておるわけです。そういう中で、中小零細のこういう問題を第一線でめんどうを見ていかなければならぬわけですね。ところが、やはりこういうような低い金額である。こういうことでは、ほんとうに都道府県にさらにそれをしわ寄せしていく、ひいてはそれがまた実際に中小零細に思うだけのことが手当てができないということになると思うのです。ですから、この点はひとつ大臣ももっと強力に展開していただくように強く要望しておきます。  それから、今回特別小口保険の付保限度額を八十万円から百万円に引き上げることにしておるわけですが、この辺についてはもっと上げる必要があるのじゃないか。上げないよりそれは上げたほうがいいのですけれども、もっと上げる必要があるのじゃないか。この辺についてどのように考えておられるのか、お伺いしたいと思うわけです。
  187. 莊清

    莊政府委員 特別小口保険は百万円に上げるわけでございますが、実情を申し上げますと、四十六年度で平均大体五十二万円程度の水準でございます。片一方、国民金融公庫は、零細金融専門に行なっておりますが、従業員五人ないし二人以下という零細企業に対する貸し出しの平均が八十万円を若干上回る程度、八十五万円程度というふうになっております。また、信用保証協会の中で十数協会が八十万円以上の額を定めまして、県独自で保証を引き受けておられる実情に実は今日ございますが、その平均の保証承諾額で九十四万円程度というふうに相なっております。私ども、とりあえず四十八年度においてこれを百万円にぜひ改正したいということで、四十六年に商工委員会で百万円に引き上げるべしという附帯決議をちょうだいしておりましたこの線の実現に努力をしたわけでございますが、今後も零細金融の円滑化という見地から、保証の実情、金融の実情等を絶えず十分注意いたしまして、十分検討をさせていただきます。
  188. 近江巳記夫

    ○近江委員 同じような問題ですが、ドル対法では、輸出関連中小企業者に対する特例として別ワク四百五十万円を設けることにしておるわけですが、通常の付保限度額も同じように引き上げる必要があると思うのですけれども、この点についてはどうですか。
  189. 莊清

    莊政府委員 ドル対関係につきましては、今回の緊急事態で相当無担保による大口の融資申請があるだろうということで、先ほど大臣も御答弁になりましたように、当委員会の御意向をよく体して検討するという御答弁があったわけでございますが、一般の基本ワク三百万円につきましては、現在のところ、その約四〇%くらいの百二十万円程度が平均の利用実績にも相なっておるというふうな事情もございまするし、各県におきましても、特別小口のように限度超の保証制度というものにまだ至っておらないいろいろな点もございまして、四十八年度の改正におきましては三百万円、しいてこれを改正する必要はないというふうに判断いたしましたのが実情でございます。
  190. 近江巳記夫

    ○近江委員 平均がこのように低いから、そこまできていないからいいというように聞こえるわけですが、都道府県で八十万円以上でやっておる。こういうところは平均九十四万円と出ておるわけですね。額を上げていけば平均額だってそれだけ上がっていくわけですよ。現在平均額は低いから、そこまできていないから上げる必要はないというのはおかしいわけです。その点、どうなんですか。
  191. 莊清

    莊政府委員 特別小口の場合には、現在の限度額八十万に対しまして五十二万、六五%くらいの平均水準になっておりますから、その六五%の上下に個々のものが散っておると御了承いただきたいと思います。無担保保険の場合には、三百万円に対して、それの四〇%の水準である百二十万を中心に散っておるということで、かなりの違いがございますのと、それから件数的に見ましても、現状におきましては、特別小口保険のほうは、五十万円から八十万円の間の件数というのが三〇%近くございますが、無担保の場合には、二百万から三百万というのはせいぜい一〇%であるというふうな実情にございます。これは利用の現状がそうなっておるということでございまして、今後そういう利用の実績を十分見まして、絶えず零細企業金融の円滑化をはかるという見地から検討してまいるという姿勢でございます。
  192. 近江巳記夫

    ○近江委員 この普通保険につきまして、付保限度額が、個人二千五百万から三千五百万、組合五千万から七千万に引き上げられるわけですが、これも三千五百万円でいいのかどうか、これの根拠は大体どういうことなんですか。
  193. 莊清

    莊政府委員 普通保険というのは、一番広く使われておりまして、保険の全体の実績の約六五%程度が普通保険でございますが、これは中小企業の中で相当大きいところも設備資金等に使いますし、産地の組合などもまとめて銀行から金を借りるという場合にも使うということで、非常に大口のものも対象になり得るわけでございます。  そこで、非常に大づかみな計算で恐縮でございますが、個人企業統計によりまして中小企業者一人当たりの借り入れ残高を見ますと、四十五年で平均ですでに二千五百万円をこえておるという実情にございまして、四十年代におきます平均の伸び率で伸ばしてみますと、個人企業統計は四十八年の数値が大体三千五百万を若干こえるくらいの数値になるわけでございます。  なお、信用保証需要のほうも先ほど申し上げましたが、中小企業の中でも比較的規模の大きいところ、あるいは産地組合としてまとめた組合需要というふうなものが漸次大口化しておりまして、二千万をこえたような実績のものが漸次増加しておりますので、このあたりも勘案いたしまして三千五百万円というふうにいたしたわけでございます。
  194. 近江巳記夫

    ○近江委員 こういう点も、さらに引き上げをよく検討していただきたいと思うのです。  それから、この近代化保険につきまして、中小公庫近代化貸し付けワクは年々拡大されておるわけですが、この付保限度額が据え置かれておるわけです。この点矛盾しないかどうかです。  それから二つ目は、他種の保険に比べて、特に利用実績が低いと思うのですけれども、その原因は一体何であるか。  三点として、今後引き上げる必要があると思うのですけれども、それに対してどう考えておられるか。この三点についてお伺いいたします。
  195. 莊清

    莊政府委員 中小企業金融公庫近代化促進貸し付けでございますが、現在これを引き上げの方向で実は検討いたしております。現在の限度額が八千万円でございますが、四十七年度の実績ではかなり高い平均でございまして、五千三百万円という水準になっておりますし、貸し付け残高が七千万円をこえておる企業も相当数ございますので、これを引き上げることが必要であると考えております。  片一方、近代化保険でございますが、四十六年度一年間の実績でございますが、七百万円の平均実績であり、全体の約九割が二千万円以下というふうな実情にございます。普通保険や特別小口につきましては、相当数の県の協会がいわゆる限度超の保証制度をそれぞれ自主的に設けておられますが、近代化保険につきましては、これは借り入れの件数等もまだそう多くないというふうな実態も反映してかと存じますが、そこまでまだいっていないというふうなこともございまして、今回のところは、これは据え置いていいのではないか、こういうふうに判断をしたわけでございます。
  196. 近江巳記夫

    ○近江委員 この信用保証協会につきまして、協会の所管大臣通産大臣の共管になっておるわけですが、中小企業庁はどういう権限があるかということであります。特に中小企業庁は協会に対してどういう行政指導ができるのですか、この点についてお伺いしたいと思います。
  197. 莊清

    莊政府委員 法律上、監督権としては財政当局である大蔵省と通産省とが完全な共管に相なっております。  具体的に通産省で行なっておる監督でございますが、今回のドル・ショックの際にも、直ちに通達を出して実施いたしておりますように、その運営の基本でございます担保保証人の問題あるいは今回四月に行ないました保証料の引き下げの問題等の重要な点について、個々の協会に対して十分な行政指導に今後もつとめたいと思います。同時に、それが実現されますように、保険公庫から各県の保証協会に対します融資基金の充実等の面につきましても、これは通産省の責任において今後ますます努力をし、実績をあげてまいりたい、かように考えております。
  198. 近江巳記夫

    ○近江委員 もうだいぶ時間もきておるようでありますので、最後に一つだけ聞きたいと思いますが、無担保保険を例にとってみますと、無担保、無保証人保証しておる協会もあり、無担保、有保証人保証しておる協会もあるわけです。この信用保険法第三条の二に、無担保保険は「その保証について担保保証人保証を除く。)を提供させない」こうあるわけです。このカッコ内は保証人保証は必要なのだと読めるわけですが、法解釈はどうなっておるか明確にしていただきたいということが一つです。保証人保証はとってもとらなくてもいいということであれば、現在保証人保証をとらないでやっている協会もあるわけでありますから、中小企業者保証受益の均等化をはかる見地からカッコ内を、保証人保証を含むと修正することが必要であると思いますが、この点については、どうお考えですか。
  199. 莊清

    莊政府委員 現行法の上では、厳密に申しますと、無担保保険については担保をとってはならないということに相なっております。具体的な業務のやり方につきましては、各県の保証協会ごとにそれぞれ業務方法書なり細則で定めておるわけでございまして、実はこれには長い歴史もあるわけでございます。法律的には担保をとってはならないということでございまして、保証人について積極的にとらなければならないという規定があるわけではございません。ただ、保証人もとらずに無担保保険を使っておるというのはごく一部であると私どもは承知をいたしております。無担保保険の付保残高に対しまして、せいぜい一、二%程度のものでございますから、まだごくごく一部の状態であると考えております。保証人の問題を法律上どう扱うかという問題は、こういう実態もさらによく検討させていただきまして、その上で慎重に検討をさせていただきたいと思います。
  200. 近江巳記夫

    ○近江委員 最後にこれで終わりますが、こうした円の再切りの問題であるとか、あるいは最近のこうした過剰流動性の吸収ということで、金融引き締め等も窓口規制等でやられるようになったわけでありますが、とにかくどこでどうなのかわかりませんが、中小や零細にそういうしわ寄せが来るというようなこともありまして、これから先行き金融等におきましても、中小、零細が非常に心配な点がたくさんあるわけでございます。こういう点、今後金融等におきましても、やはり政府としても中小、零細にもろにかぶらないように特段の配慮が必要じゃないか、私はこのように思うわけです。金融その他税制等もいろいろございますけれども、そういう点も含めてまとめて大臣に、今後の中小、零細企業に対する姿勢または決意をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  201. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 通貨調整に伴います中小企業の苦難にこたえまして、金融、税制あるいは事業転換その他万般の措置につきまして、いろいろ御意見を体して遺漏のないように努力をいたします。
  202. 田中六助

    ○田中(六)委員長代理 以上で両案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  203. 田中六助

    ○田中(六)委員長代理 これより中小企業信用保険法の一部を改正する法律案について討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  中小企業信用保険法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  204. 田中六助

    ○田中(六)委員長代理 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  205. 田中六助

    ○田中(六)委員長代理 次に、本法律案に対し、稻村左近四郎君外四名より、自由民主党、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党五常共同提案にかかる附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者より趣旨の説明を求めます。中村重光君。
  206. 中村重光

    ○中村(重)委員 ただいま提案いたしました附帯決議案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。    中小企業信用保険法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行にあたり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。  一 中小企業金融の円滑化を図るため、無担保保険の付保限度額の引上げを検討すること。  二 各種保険の保険料率の引下げについてさらに検討するとともに、特に公害防止保険の保険料率の引下げを図ること。  三 信用保証協会の保証料率の引下げについて指導すること。 以上であります。  本決議案の各項目の詳細につきましては、当委員会の審査を通じて十分御理解いただけるものと存じますので、この際、省略をさせていただきます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  207. 田中六助

    ○田中(六)委員長代理 以上で趣旨の説明は終わりました。  直ちに採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  208. 田中六助

    ○田中(六)委員長代理 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。     —————————————
  209. 田中六助

    ○田中(六)委員長代理 国際経済上の調整措置実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案に対し、稻村左近四郎君外三名から、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党四党共同提案にかかる修正案が提出されております。     —————————————    国際経済上の調整措置実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案  国際経済上の調整措置実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。  第五条第一項の改正規定中「四百五十万円」を「五百五十万円」に改める。     —————————————
  210. 田中六助

    ○田中(六)委員長代理 この際、修正案について、提出者より趣旨の説明を求めます。中村重光君。
  211. 中村重光

    ○中村(重)委員 ただいま提案いたしました修正案につきまして、提案者を代表し、私からその趣旨を御説明申し上げます。  修正案は、すでに委員各位のお手元に配付いたしておるとおりであります。  御承知のとおり、輸出関連の中小企業者は、前回のドル・ショックから十分立ち直っていないうちに行なわれた今回の円の変動相場制移行により再度の打撃を受け、深刻な影響をこうむっております。これらの輸出関連中小企業者にとりましては、今後の金融引き締めの基調の中で金融の円滑化をはかることが最も重要な問題であります。  改正案におきましても、輸出中小企業関連保証の特例において、無担保保険は付保限度額を別ワク四百五十万円に引き上げておりますが、さらに引き上げをはかることが必要であると考えられますので、付保限度額を五百五十万円に修正するよう提案した次第であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  212. 田中六助

    ○田中(六)委員長代理 以上で修正案の趣旨説明は終わりました。     —————————————
  213. 田中六助

    ○田中(六)委員長代理 これより討論に入るのでありますが、本案並びに修正案につきましては、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  まず、稻村左近四郎君外三名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  214. 田中六助

    ○田中(六)委員長代理 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま議決いたしました修正部分を除いて、原案について採決いたします。  修正部分を除く原案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  215. 田中六助

    ○田中(六)委員長代理 起立総員。よって、本案は稻村左近四郎君外三名提出の修正案のとおり修正議決すべきものと決しました。     —————————————
  216. 田中六助

    ○田中(六)委員長代理 次に、本法律案に対し、稻村左近四郎君外三名より、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党四党共同提案にかかる附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。中村重光君。
  217. 中村重光

    ○中村(重)委員 ただいま提案いたしました附帯決議案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。    国際経済上の調整措置実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行にあたり、今次の国際通貨情勢の変動により輸出関連中小企業者が深刻な影響を受けている事態にかんがみ、次の諸点について速やかに適切な措置を講ずべきである。  一 業種及び産地の指定並びに中小企業者認定について弾力的運用を図り、輸出関連中小企業者がもれなく対象となるよう努めること。  二 中小企業振興事業団助成対象となる設備共同廃棄事業の要件を緩和するとともに、個別に事業転換を行なう中小企業者の設備の買上げについてさらに検討すること。  三 政府関係中小企業金融三機関による緊急融資について、貸付期間を延長する等融資条件の緩和を図ること。  四 政府中小企業金融機関の貸付手続きの簡素化を図るとともに事務処理体制の整備拡充に努めること。 以上であります。  本決議案の各項目の詳細につきましては、当委員会の審査を通じて十分御理解いただけるものと存じますので省略させていただきますが、せっかく各般にわたり中小企業施策の拡充をはかりましても、個々の中小企業者、特に地方の零細企業者は、具体的な中小企業施策に対する認識が必ずしも十分ではない実情でありますので、この際、施策の普及徹底について特に配慮するよう政府に注意を喚起しておきます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  218. 田中六助

    ○田中(六)委員長代理 以上で趣旨の説明は終わりました。  直ちに採決に入ります。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  219. 田中六助

    ○田中(六)委員長代理 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決定しました。  この際、両附帯決議について政府から発言を求められておりますので、これを許します。中曽根通商産業大臣
  220. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ただいま御決議になりました二つの附帯決議に対しましては、その御決議の趣旨を尊重して万全の措置を講ずる考えでございます。どうもありがとうございました。     —————————————
  221. 田中六助

    ○田中(六)委員長代理 おはかりいたします。  両案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  222. 田中六助

    ○田中(六)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕
  223. 田中六助

    ○田中(六)委員長代理 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時五十一分散会