○中曽根国務大臣
中小企業信用保険法の一部を改正する
法律案につきまして、その提案
理由及び要旨を御説明いたします。
中小企業信用補完制度は、創設以来一貫して発展を遂げ、現在二兆三千億円を上回る保険規模に達し、
中小企業者に対する事業資金の融通を円滑にする上で大きな役割りを果たしてきております。
しかしながら、
中小企業を取り巻く環境は、現在、急速に変化しつつあり、それに伴い、信用補完制度においても
中小企業者の現実の資金需要に十分対応できない面が出てまいっております。
本
法律案は、このような
観点から
中小企業信用保険法の一部を改正しようとするものでありますが、その概要は、次のとおりであります。
第一は、保険限度額の引き上げであります。
最近の
中小企業者の資金需要の大口化傾向に対応して、普通保険の
中小企業者一人当たり限度額を現行の二千五百万円(組合の場合は五千万円)から三千五百万円(組合の場合は七千万円)に引き上げようとするものであります。
また、特別小口保険につきましても、小規模層の資金確保の円滑化をはかるため、小企業者一人当たり限度額を現行の八十万円から百万円に引き上げることとしております。
第二は、公害防止保険のてん補率の引き上げであります。
すなわち、公害問題の
重要性にかんがみ、公害防止保険のてん補率を現行の七〇%から八〇%に引き上げようとするものであります。
このことにより、公害防止保証の一そうの推進がはかられ、
中小企業者に対する公害防止資金の融資の円滑化に寄与するものと
考えます。
以上がこの
法律案の提案
理由及びその要旨であります。
何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
次に、
国際経済上の
調整措置の
実施に伴う
中小企業に対する
臨時措置に関する
法律の一部を改正する
法律案につきまして、その提案
理由及び要旨を御説明申し上げます。
去る二月十四日に
実施されましたいわゆる第二次ドル・ショックと称される円の変動相場制への再移行は、
輸出関連の
中小企業の事業活動に著しい影響を及ぼすことが憂慮されております。
政府としては、直ちに、
中小企業製品にかかる
輸出の円滑化をはかるために外貨預託を裏づけとする先物為替予約制度を
実施しましたが、
中小企業対策の
重要性と緊急性にかんがみ、
政府部内で
所要の
措置の
検討を進めた結果、三月十四日、国際通貨情勢の変化に伴う緊急
中小企業対策について閣議決定を行ないました。閣議決定は、次の事項を骨子としております。
すなわち、第一は、
政府関係中小企業金融三機関等による長期低利の緊急融資の
実施であります。融資規模二千二百億円、金利六・二%の特別融資により、
輸出関連の
中小企業者の経営安定をはかるものであります。
第二は、前回のドル・ショック時に
実施した緊急融資の返済猶予を行なうほか、設備近代化資金、高度化資金等についても返済猶予
措置を講じ、経営安定をはかるものであります。
第三は、担保力の乏しい
輸出関連の
中小企業者に対し、
中小企業信用保険の特例
措置を講じ、その信用補完をはかるものであります。
第四は、法人税及び所得税につき、今後二年間欠損金の繰り戻し制度による還付を既往三年間にさかのぼって行なうなどの税制上の特別
措置であります。
第五は、
中小企業の事業の転換を円滑化する
措置であります。
政府としては、これらの特別
措置により、
輸出関連の
中小企業者が第二次ドル・ショックに耐え、事業活動に支障を生じないよう遺憾なきを期したいと
考えております。
本
法律案は、この閣議決定の
内容中、
法律的な
措置を要する事項につき、立案されたものでありますが、その要旨は、次のとおりであります。
第一は、今般の円の変動相場制への再移行を
国際経済上の
調整措置として
規定し、これにより影響を受ける
輸出関連の
中小企業者を新たに認定することであります。この結果、前回のドル・ショック時に認定を受けた
中小企業者も、新たに認定を受けることにより、再び救済
措置を受けることができます。
第二は、新たに認定を受けた
中小企業者について、
中小企業信用保険上の特例
措置を講ずることであります。具体的には、通常の保険限度額のほかに、特別小口保険については八十万円、普通保険については二千五百万円のそれぞれ通常分と同額の別ワクを設け、無担保保険については通常分の一・五倍の四百五十万円の別ワクを設けることであります。この信用補完の強化により、担保が不足している
中小企業者に対して、金融の円滑化をはかることであります。
また、四十八年二月十四日以降、認定を受けるまでの間に、信用保証
協会が
輸出関連
中小企業者にした保証についても、この特例
措置を遡及して適用することといたしております。
第三は、認定を受けた
中小企業者に対し、設備近代化資金の支払い猶予の特例及び事業の転換の円滑化のための
措置を講ずることであります。
第四は、租税特別
措置法の一部を改正し、新たに認定を受けた
中小企業者等に対しては、今後二年間に生ずる欠損金につき繰り戻し制度による還付を通常は一年となっておりますのを特に既往三年間にさかのぼって認めることとしたことであります。
第五は、新たに認定を受けた
中小企業者に対し講ずる特別
措置に遺憾なきを期するため、
法律の有効期間三年を五年に延長することであります。
これが、この
法律案の提案
理由及びその要旨であります。
何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。