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竹内参考人 竹内でございます。
政府は、去年の
割賦販売法の
改正に続きまして、今度、
消費生活用製品安全法という
消費者保護の
観点からの立法を出してこられたわけで、いままで
業界寄りといわれていた通産省としては、私
どもは、非常に大きな変身をしたと思っておりますけれ
ども、この
法律を読む限りにおいては非常にけっこうなことが盛られております。おりますけれ
ども、この
内容は大体
行政運用にまかされている。こまかいことはすべて
役所がやるというたてまえになっております。そういう
意味で、これは
あとで申し上げますけれ
ども、まだまだ私
たち消費者は、
役所に対する
不信感というものをずいぶん持っているわけで、そういう
意味からこの
法律をながめてみますと、ずいぶん私
たちにとって心配な点がある。そういう点を逐条申し上げてみたいと思います。
第一に、第二条の「
定義」のところで、この
法律で扱う
商品の
範囲が書かれておりますけれ
ども、この抽象的な文句だけでは、私
たちどうもはっきりしない。特にいままで、たとえば
電気用品取締法だとか
食品衛生法、
火薬類取締法、毒物及び
劇物取締法だとか、いろんな法規でもって安全をはかるための
規制がなされておりますけれ
ども、そういったものと、この
法律とのなわ
張り調整といったものがどういう手順で行なわれるのかということがどうもはっきりしておりません。
一口で言いますと、お
役所というところはなわ
張り根性が非常に強いですから、これはめんどうだと思えば
お互いに譲り合って、めんどうなことには手を出さない。逆に、これはいけそうだとなると
お互いに奪い合う、そういうような現象が間々起こりがちなんです。そういうことのために、私
たち消費者の安全が害されるということになってはまことに困ることなので、そういった点についての
権限調整といいますか、仕事の
調整は一体だれがするのか。言うなれば、これは
政府の
責任だ、
政府閣僚がやるべきことだということに尽きるのでしょうけれ
ども、そういうことであるならば、私は、たとえば
物価については
物価についての
閣僚協議会がある。言うなれば、こういった安全についての
閣僚協議会といったものをつくっていただいて、これは
食品についてもあるいは車についても
化学物質についても、いろんな多岐な
製品についての安全について、統一的な考えのもとに、そういう安全の
基準あるいは安全についての
対策を講ずるというようなことをやっていただきたいというように希望するわけです。
それから、次の二条の二項に
特定製品というものの
定義が掲げてあります。これは「特に
危害を及ぼすおそれが多いと認められる
製品で政令で定める」云々とありますけれ
ども、これは
運用次第で、非常に限定的、制限的に
運用されますと、私
たちの安全は
確保されない。ですから、この点については、なるだけ広くこれを包含するように
運用をしていただきたい。
たとえば、昨年の夏、私
どものところへ
苦情が持ち込まれましたコカコーラの
びんの
破裂による
事故、こういったものは、その前の年、おととしにそういう
事故が起こって、
びんのつくり方を変えたということで売り出したところが、それがまた
破裂事故を起こしておる。そして目がつぶれたり
後遺症の残るような
けがが起こっておる。ああいったものについて、どうして
事故が起こってからやっと取り組むというようなことをされるのか、これは私
たちにとって非常に
不信感の種なんです。そういうことが起こるであろうということは予想されるわけですから、そういう
事故が頻発してから
特定製品に指定するという後手に回るようなことは絶対にやっていただきたくないということをお願いしたいわけです。
それから、さっきもお話が出ましたが、
子供用の
製品、たとえば
子供用の
自転車ですね。あれの
ブレーキは小さい
子供の握力ではなかなか急にとめることができないような
ブレーキがつけられているらしいです。これはある
自転車屋さんが私に言ってくれました。こういった点についてはいまのところ野放しなんだ、だから
子供が
自転車を乗り回して急
ブレーキをかけようと思ってもだめなんだというわけです。こういう点についても、早急に
安全基準をつくっていただきたいということをお願いをしたいわけです。
それから次に、第三条の
品質基準については、
消費者というものが完全な
知識を持ち、完全な能力を持っているものという
前提でこういった安全についての
品質基準がきめられますと問題を生じがちだ。ですから、完全な
消費者を
前提としたような
安全基準であっては困りますということです。逆に言うならば、不完全な
消費者、わりあい注意力のない
消費者が多いわけですから、そういった
消費者を
前提にした
基準をつくっていただきたい。その場合に、いままで
メーカーは、えてして、表示でそういうことが書いてあるから、注意表示がしてあるからといって
責任をのがれようとするわけです。
一例を申し上げますと、これは四十五年の暮れにあったことなんですけれ
ども、東京瓦斯が出しておる赤外線ガスストーブ、これのある機種について、ガスせんを半開きにして使っていますと不完全燃焼を起こして
事故が起こっておる。そういったものは、普通のわれわれの常識からすれば、ガスせんというものは火力を調節するために半開きにするということは常識なんです。台所のガスコンロはそういう使い方をしております。それと同じような考え方でそのガスストーブを使っていたところが、不完全燃焼で
事故を起こした。これはまだ現にそういうものが
消費者のところに出回っているのです。そういったものについて東京瓦斯にものを申しますと、パンフレットに書いてある、これは全開にして、全部開いて御使用くださいと書いてあるから、そのとおりやってくれれば、そういう
事故は起こらないのだ、こういう説明なんです。そういうことは、ああいう説明書を一々読んで使うという人は、よくよく注意深い人でないとないはずだ。ですから、普通の注意力でもって使う人を
前提に、そういう半開きになるようなガスせんをそこにはつけない、全開か全閉か、どちらかにしか使えないようなガスせんをつけるというような配慮が必要だろうと思うのですが、現状はそうはなっていない。こういう点もぜひ
改善をしていただきたいということです。
それから、いまの
品質基準、それから二十五条に書いてある型式承認の点検ですね、こういったものも、これは一年以上七年以内と
法律に書いてありますけれ
ども、七年に一回というようなゆうちょうことではわれわれとしては非常に困ることなので、最低一年に一回は必ず点検をする、そしてその
品質基準が現状に合っているかどうかという
見直しを必ずやっていただきたいということを希望したいのです。
それから次に、二十八条の
特定製品の設備の定期検査、これも一年一回以上、頻度を上げていただきたい。これは省令できめることになっておりますけれ
ども、煩をいとわずにひんぱんにやっていただきたいということです。
それから次に、これは
役所の行なう行政
措置、たとえば三十条の
改善命令、三十二条の承認の取り消し、それから三十五条の
危害防止命令、八十二条の
緊急命令、こういった
役所がとる行政
措置については必ず公表する。いままでの取り締まり法規の
運用を見ておりますと、始末書をとって、以後注意しろということだけで済ましておる。外部に公表すると
業者が迷惑するというような配慮から、公表をしないで済ましているということが多かったわけですけれ
ども、こういうことでは、こういう
事故というものはなかなか根絶できない。そういう
意味で、一見酷なようでありますけれ
ども、こういうことをやった場合には実態を広く
消費者に知らせる、あるいは同業他社に知らせるという
意味ですべて公表をしていただきたいということです。
それから次に、第三章の
製品安全協会につきまして申し上げたいのは、四十五条の発起人、それから五十一条の役員、それから五十九条の評議員、こういった人
たちに業界人は入れないでほしいということをお願いをしたいわけです。そういう業界人がいままで学識経験者というような名目のもとに入っておりますと、私
たち消費者にとっては、そういうことだけでもってその
団体に対する
不信感が出てくるわけです。何もその人がりっぱでないという
意味じゃありませんけれ
ども、やはり疑わしいようなことはしていただきたくないという
意味で業界人は入れていただきたくないということを申し上げたい。と同時に、お役人が天下り人事でもってあまり熱心でない人がそういうところへたらい回し的にポストを占めていいかげんな仕事をやられても、これもまた困るわけで、せっかくつくるならば、
ほんとうにこの安全
協会が
消費者のために実質的な仕事ができるような人的構成を配慮をしていただきたいということです。
次に、六十三条の賠償保険につきましては、先ほ
ども御
意見が出ておりましたけれ
ども、最高一千万円という限度があるようですけれ
ども、現状では一千万円ではたしてカバーできるかどうかという点を非常に疑問に思いますので、この限度額はもっと上げていただきたい。
それから、この損害額を査定をするのに半年か一年かかるというお話なんですけれ
ども、これはもっと早く始末をつけていただきたい。これは損害保険会社に委託をしてこういった査定をされると聞いているのですけれ
ども、これはもっと早くできるのではないかというように思います。
それから、六十三条五号の資金の交付、これは一律三十万円となっておりますけれ
ども、三十万円ではいかにも少額で、この金額ももっと上げていただきたいということです。
それから、これは大事なことだと思うことは、
業者が、こういう制度があるからといって、
被害者に対する損害補償を、もうあれでおしまいだ、
あとは知らないぞというような態度を絶対にとらないように、これは強力な
行政指導をぜひお願いをしたいわけです。これは、昨年夏にコカコーラが
破裂をして、それで
事故を起こしたときに、コカコーラ会社は、保険会社からその補償はするのだからといって、全然親身になってその
被害者に対する配慮をしなかったという実例がございます。こういうことになっては、非常に
消費者にとっては困ることなので、これはぜひお願いをしたいと思います。
それから次は、八十二条の「
緊急命令」ですが、これは申すまでもないことですけれ
ども、弾力的に臨機にどんどんやっていただきたいということを申し上げたいと思います。
それから、八十三条の
特定製品の
業者に対する「報告の徴収」、次は八十四条の「立入検査」、こういった行政官庁の監督権の発動なんですが、この監督権を発動する端緒はどうしてつかむのかという点が私
たちはっきりいたしません。通産省のお話では、この新年度から私書箱を設けてどんどんと
消費者の
苦情を受け付けるのだ、それによって端緒をつかむというお話なんですけれ
ども、私
たちは、まだまだお
役所に対する信頼感というものを持っておりません。ですから、そういうことをやって、そのとおり親身になって取り上げてくれるかどうかという点は、はなはだ私
たちは心もとなく思っているわけなので、そういう
意味で、端緒をどうしてつかむのかという点について私
たちは
不信感を持っております。
それから次に、こういった立ち入り検査なんかに従事する職員なんですが、都道府県にも権限を委任するというようになっているのですけれ
ども、実際の運営として都道府県の職員がどの程度こういった仕事に従事することになるのか、この点は、はっきりいたしません。通産省と通産局だけでもって細々とおやりになるということであるならばあまり実効があがらないのじゃないか、ぜひこれは都道府県の職員がどんどんとこういうことに介入できるように
運用をしていただきたいということです。
それから、八十九条の
審議会について申し上げますと、これも
製品安全協会で申したと同じように、業界人をメンバーに入れないでいただきたい。業界人の専門的な
知識を得るためには、
参考人という形でどんどんと
知識を吸収されることはけっこうだと思いますけれ
ども、メンバーに入れるということは弊害を生じる。これはほかの、たとえば農林物資の規格法のJASの調査会、ああいったところに学識経験者という名前で業界の人が入っているために、多数決で押し切られてしまうのです。
消費者代表はもちろん入っておりますけれ
ども、多数決でいつも押し切られてしまう、こういう
運用をされては非常に迷惑なので、特に多数決でそういうような
運用がなされないようにぜひお願いをしたいということと、それから重要な事項は、公聴会でもって広く
意見を聞くというような運営のやり方もやっていただきたい。それから、ほかの法令で
規制されている事項について、この
審議会がどんどんと積極的に
意見を出す、あるいは建議をするというようなこと、ほかの同様の安全のための
審議機関と連絡をとって行政の斉合性を保つようにしていただきたいということを申し上げたいわけでございます。
それから、九十三条の「主務大臣に対する申出」、これについても聞きっぱなしでは困るということで、お
役所のなさることは、自分のメンツでもってなかなか改めようとしない傾向がございますけれ
ども、
消費者が、こういった場合に
意見を言ってきたならば、率直に
審議会を開くなりあるいは公聴会を活用するなりして、その
意見が妥当である場合にはどんどんと制度を改めていただきたいということを申し上げておきます。
時間が超過いたしましたので、
あとまだ申し上げたいことはございますけれ
ども、この程度でやめさしていただきます。