○神崎委員 いま通産次官がおそきに失したと言われて、先ほどの中曽根さんの遺憾ながらというところと同じ立場に立った御答弁であるので、そのことについては、私はそれでよいと思います。
これまた何べんも断わりながら言いますが、命が大事ですから強調するのですが、次官も御
承知だと思うのですが、この
法案についていかにわれわれが重要に思うかということについて続けて申しておきたいのは、たとえばPCBというのは、御
承知かもしれませんが、大体百年ほど前に発明されたのですね。これが実用化したのは一九三〇年、これはアメリカが最初でございます。
このPCBは熱や酸、アルカリに強く、また水に溶けにくいので非常に絶縁性に富むのです。そこで、人類の化学工業上の傑作で、技術的には理想に近い物質である、こういう評価がある。したがって、これの用途も非常に広い。たとえば、この
法案と関連があるからここへ連れ出してきたのですが、螢光灯、塗料それから冷蔵庫、洗たく機、クーラー、電子レンジ、トランス、印刷用インキ、接着剤、床タイル、トイレットペーパーなどなど、これは数え切れぬほど利用されているのですね。
そういうような形で利用されているが、しかし一たんこれが自然界へ出ましたならば、先ほどからあげているように非常に悪い影響を及ぼして、人体に及ぼす影響はきわめて大きく危険だ。そこで、この処置について、いま次官がおっしゃるように、この
法律でほんとうに完全を期せるかどうかというところまではあとにしますが、そうなまやさしいものではないのだ。そうして現実は、このことは、一方では
取り締まりをしようとする側面を持ちながら、さらに一方では野放しになっているという実際問題が非常に多いということです。
これも続いて御意見を聞く前に紹介しますが、これは単なる一部分ですけれ
ども、たとえば絶縁油の
関係では、トランスの絶縁、コンデンサー、ペーパーコンデンサーも一緒ですが、中でも私は一番気にするのは、たくさんありますけれ
ども、時間の
関係で
一つだけ言いますが、あの新幹線ですね。われわれが乗せてもらっているあの上の屋根にあるパンタグラフ、あそこにPCBの容器がついているんです、絶縁体で。これはある時期に来たら交換しなければならぬ、このことをひとつ覚えておいてほしいと思うのです。
それからコンデンサーの絶縁体の中には、先ほど言った螢光灯、水銀灯、それから冷暖房
装置、洗たく機、ドライヤー、電子レンジ、モーター、直流用・コンデンサー、蓄電用コンデンサー、こういうものに大体百カネクロールから五百カネクロール、ときには千二百五十四という一番最高の数字もあがっておりますが、これがあるということです。
それからもう
一つは、熱媒体、加熱と冷却のほうですが、これは食品工業、それからもちろん化学工業もですが、紙
製品、紙製のいわゆるトイレットペーパーも含むのですが、製紙工業、それから薬品工業、プラスチック工業、アスファルト工業、
船舶、暖房、パネルヒーター、乾燥機、こういうものはいわゆる熱媒体の中にある。
それからもう
一つは、絶縁用の可塑性のあるものですね。これについては電線やケーブルの被覆、これもそうでしょう。それから絶縁テープ、電気
製品用プラスチック成型品、それから難燃剤では、ポリエステル樹脂、ポリエチレン、ゴム。その他では、いわゆる接着剤、化学といし、ニス、ワックス、アスファルト、床タイル。
それから塗料、印刷のインキでは、いわゆる難燃性の塗料、防水性塩化ゴム塗料、塩化ビニール塗料、ポリウレタン塗料、セルローズ塗料、印刷インキ、ノンカーボン紙
——われわれがよく使うカーボン紙もそうです。
それから潤滑油の中では、高湿用潤滑油、
作動油、真空ポンプ油、切削油、極圧添加剤。
その他、紙や毛織物のコーティング、カラーテレビの部品、農薬のビルルダー、陶器の彩色、それから電子複写紙。
これはあげれば、これを読んでいたら何ぼでもありますが、これが全部、いま言うPCBによってやられる。だから、
一つの進歩の側面もありながら、人体に非常に大きな影響を及ぼす側面もある。
こういう形から見て、最近このPCBについて通産省が基金二億円でその対策をお立てになって、研究
協会を建設省が設置する、こういうことになっておるのですが、大臣も来られたので、ひとつ意見を聞かしてもらいたいのですが、昭和二十九年以来わが国において
生産されたPCBは五万七千トン、そのうち輸出入を考慮しましても、わが国において消費されたPCBは五万三千トン、このうち電気機器
関係、つまりトランス、コンデンサー等が、いま紹介したように圧倒的に多くて三分の二を使用している。それらに使われているのは大体三万六千トンというように評価しているのですね。
そこで、この分析に当たった京都の衛生研究所の藤原邦達主幹は、いろいろ言っていますが、これについて、先ほど紹介した新幹線等で使っているあのパンダグラフのものを取りかえる場合でも、大体いま日本でこのPCBの廃棄処理ができるという焼却炉は、鐘化に二基とモンサントに一基あるだけだ。そして、現在年間約六百トンの処理しかできない。しかし、現実には千八百トン処理しなければならない、こういうようになっているわけですね。そうすると、その千八百トンから六百トンを引きますと、千二百トンの処理が、いまどこでされているのか。野ざらしになっておるのかどうか。これは聞くところによると、ものすごいカロリーの高い、熱度の高いもので焼却しないと消えないのですね。そうすると、今度できてくる官民基金二億円でやられるこのPCB対策の研究
協会では、こういうことが消化できるのか。こういう形について、まずこの段階で御意見を聞きたいと思うのです。