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1973-02-27 第71回国会 衆議院 商工委員会 第4号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和四十八年二月二十七日(火曜日)     午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 浦野 幸男君   理事 稻村左近四郎君 理事 左藤  恵君    理事 田中 六助君 理事 羽田野忠文君    理事 山田 久就君 理事 板川 正吾君    理事 中村 重光君 理事 神崎 敏雄君       天野 公義君    内田 常雄君       小川 平二君    越智 伊平君       木部 佳昭君    小山 省二君       近藤 鉄雄君    笹山茂太郎君       塩崎  潤君    澁谷 直藏君       田中 榮一君    八田 貞義君       松永  光君    岡田 哲児君       加藤 清政君    上坂  昇君       佐野  進君    竹村 幸雄君       藤田 高敏君    渡辺 三郎君       野間 友一君    松尾 信人君       宮田 早苗君  出席国務大臣         通商産業大臣  中曽根康弘君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      前田佳都男君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         経済企画政務次         官       橋口  隆君         科学技術庁原子         力局長     成田 壽治君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君         通商産業政務次         官       塩川正十郎君         通商産業省企業         局長      山下 英明君         通商産業省繊維         雑貨局長    齋藤 英雄君         通商産業省公益         事業局長    井上  保君         中小企業庁長官 莊   清君         中小企業庁次長 森口 八郎君  委員外出席者         厚生省環境衛生         局環境衛生課長 加地 夏雄君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 二月二十六日  登録、無登録織機差別撤廃並びに繊維産業の  振興に関する請願荒木宏紹介)(第六九三  号)  同(神崎敏雄紹介)(第六九四号)  同(野間友一紹介)(第六九五号)  同(米原昶紹介)(第六九六号)  麻織物調整規則施行による無登録織機の取扱い  等に関する請願瀬崎博義紹介)(第六九七  号)  通商産業省の無登録織機処理方針等に関する請  願(荒木宏紹介)(第六九八号)  同(神崎敏雄紹介)(第六九九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  機械類信用保険法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二六号)  金属鉱物探鉱促進事業団法の一部を改正する法  律案内閣提出第六一号)  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 浦野委員長(浦野幸男)

    浦野委員長 これより会議を開きます。  内閣提出機械類信用保険法の一部を改正する法律案及び金属鉱物探鉱促進事業団法の一部を改正する法律案の両案を議題とし、順次政府より提案理由説明を聴取いたします。中曽根通商産業大臣
  3. 中曽根国務大臣(中曽根康弘)

    中曽根国務大臣 機械類信用保険法の一部を改正する法律案提案理由を御説明申し上げます。  機械類信用保険制度は、中小企業設備近代化機械工業振興に資することを目的として、昭和三十六年に発足した国営の保険制度であります。発足の当初は、機械類割賦販売のみを対象としておりましたが、その後、中小企業向けローン保証販売の増加に伴い、これを保険対象追加し、今日に至っております。  本保険制度は、発足以来すでに十二年近くを経過しておりますが、この間、割賦販売等に伴う代金不払いのリスクを保険することにより健全な割賦販売等促進し、中小企業設備近代化機械工業振興に大いに貢献してきております。すなわち、本年度についてみますと、本保険に付保される機械類販売は件数にして約一万五千件、金額にして約四百億円にのぼる見込みであり、また保険に加入している製造業者等の数は約五百五十社に及び、中小企業者機械工業界の双方にとって重要な施策一つとなっております。  今回の法律改正の趣旨は、本保険制度を拡充し、新たに機械類リースによる取引につき信用保険を行なうことであります。  リースは、所有権を譲渡することなく、使用権のみを長期間にわたって特定の相手方に与えるもので、近時、わが国におきましても機械類リースによる取引が増加しつつありますが、特に中小企業におきましては、資金有効活用技術革新に伴う機械陳腐化防止会計事務簡素化等の利点を有しているため、リース利用はその設備近代化をはかる上で有力な手段の一つとなるものであります。また、リース利用が進みますことは、機械工業の側から見ましても新型機械普及等の面できわめて有意義なものであります。  しかしながら、中小企業にはまだ信用基礎の確立していないものが多く、長期間にわたるリースを受ける場合にはその使用期間中における景気変動に伴いリース料不払い事態等が懸念されますため、リース業者中小企業リースすることをためらいがちであり、中小企業向けリースは円滑さを欠いている実情にあります。  このため、政府リース業者相手方とする保険契約を締結し、万一リース料不払いが生じたときはその損害の二分の一を補てんすることを内容とする信用保険実施し、中小企業信用力を補完することによりまして機械類リースを普及し、中小企業設備近代化機械工業振興に資することとした次第であります。リース信用保険保険契約保険金等に関する制度基本的仕組みは、現行の機械類信用保険と同様であります。  今回の改正によるリース信用保険制度の創設は、以上申し述べましたとおり、今後中小企業設備近代化をはかっていく上できわめて有意義な施策であり、全国中小企業関係団体からも強い要望が出されているところであります。ぜひ本制度の実現をはかることが必要であると信ずる次第であります。  以上がこの法律案を提出いたしました理由でございます。何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。  次に、金属鉱物探鉱促進事業団法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  御承知のように、イタイイタイ病を契機といたしましてカドミウム等重金属による鉱害問題がクローズアップされてまいりました。また、昨年宮崎県土呂久鉱山の砒素中毒問題の例に見られますように、休廃止鉱山による鉱害問題も大きな社会問題となってきております。  これは鉱山鉱害問題が、一般産業における公害と異なり、事業活動が終結した後においてもカドミウム砒素等重金属を含んだ坑廃水が流出し、また堆積物の崩壊、流出、浸透水等により鉱害を発生し続けるという特殊性があるためであります。現在全国には七千をこえる金属等鉱山がありますが、その大半が膨大な蓄積鉱害源をかかえるに至っております。また、現在操業中の鉱山については、鉱山保安法に基づき強力に規制、監督を実施しているところでありますが、なお相当な鉱害源が残存するという事態を招いております。  このような鉱害状況に対処し、国民の健康と生活環境保全をはかることは緊急の課題であり、このためには鉱害源を処理するための鉱害防止工事に早急に着手するとともに、これを計画的に実施し、現在までに蓄積されている鉱害を一掃する必要があります。  一方、鉱山による鉱害特殊性と、現在の鉱業を取り巻く経済情勢にかんがみるとき、以上の対策を円滑に推進するためには、規制の的確な実施に加え、鉱業権者に対し長期低利融資等を行ない、鉱害防止工事実施を進めやすくする体制を整備することも、また不可欠であると考えます。  さらに鉱害防止義務者が存在しない鉱山にかかる鉱害防止工事については、その基礎調査技術指導等の一そうの充実をはかり、工事の的確を期するとともに、その促進をはかる必要があります。  政府といたしましては、昨年来これらの施策を実現するための予算上、立法上の措置について鋭意検討を進めてきたところでありますが、このたび、従来の金属鉱物探鉱促進事業団を活用して、先に申し述べた資金貸し付けその他の蓄積鉱害の一掃をはかるための事業等を行なわせることとする等の成案を得るに至りましたので、ここに金属鉱物探鉱促進事業団法の一部を改正する法律案国会に提出いたしました。  以下同改正法案内容要旨を御説明申し上げます。  改正の第一は、題名並びに事業団名称の変更であります。あとで申し上げますように事業団業務の拡充に伴い、法律題名金属鉱業事業団法に改めるとともに、金属鉱物探鉱促進事業団名称金属鉱業事業団に改めることとしております。  改正の第二は、目的追加であります。法律目的金属鉱業等による鉱害防止に必要な資金貸し付け、その他の業務を行ない、もって国民の健康の保護及び生活環境保全金属鉱業等の健全な発展に寄与することを加えることとしております。  改正の第三は、業務追加であります。事業団は、従来、金属鉱物探鉱、開発を中心として業務を行なってまいりましたが、鉱害防止に関して、次の三つの業務を加えることとしております。一、金属鉱業等による鉱害防止のための措置に必要な資金貸し付け、二、金属鉱業等による鉱害防止のための措置に必要な資金にかかる債務の保証、三、金属鉱業等による鉱害防止のための調査及び指導。以上の主要な改正点に加え、金属鉱物探鉱及びこれに必要な地質構造調査に必要な船舶の貸し付け事業団業務追加するとともに所要の規定の整備等を行なうこととしております。  法の施行期日は、公布の日から起算して三カ月をこえない範囲内において政令で定める日としております。  なお、金属鉱山等鉱害対策につきましては、本法案とあわせて後日金属鉱物等鉱害対策特別措置法案を今国会に提出し、万全を期することとしております。何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようよろしくお願い申し上げます。
  4. 浦野委員長(浦野幸男)

    浦野委員長 以上で提案理由説明は終わりました。  両案に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  5. 浦野委員長(浦野幸男)

    浦野委員長 通商産業基本施策に関する件、経済総合計画に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出があります。これを許します。佐野進君。
  6. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 私は、通商産業大臣所信表明に関することにつきまして若干の質問をいたしたいと思います。  現在の経済問題の最大課題は、円の切り上げを含む一連の経済情勢変化に対応する対策だと思うのであります。  そこで、通商産業大臣所信表明につきまして私何回も読ましていただいたのでありますが、今日の経済変動をもたらした最大原因が、通商産業政策の持つ欠陥の露呈といってもいいのではないかと私は感ずるのでありますけれども、この所信表明全体を見ましたところ、大臣所信の中では、たとえば一ページの終わりから四行目、いわゆる「成果を収めて参りました。」、「国際経済情勢につきましては、一昨年十二月のスミソニアン体制の下に、」云々というような形の中で、通商産業政策について成果をおさめてきた、こういうような評価をまず大前提にいたしておるわけです。  それで、通産省の持つ今次の経済変動に対する認識はすべてここに集約されるような感じがあるわけです。そういうような観点からこの全体を見てみますると、いずれにいたしましても、政府責任は全く成果をおさめた方向においてのみあるのであり、たまたま起きてきた円の変動相場制移行理由、あるいは将来行なわれるであろう円の切り上げ固定相場制に対する復帰問題等に関しては、いままで行なってきた成果の上に立つ一定の状態であり、しかもそれが成果の上に立った状態であるというように表明しているように見受けられるわけであります。  通産大臣にお伺いいたしたいまず第一の問題といたしましては、今日の経済情勢に対する、通産大臣としては、この所信表明の前提として説明されておるように、成果をおさめてきた、このような評価の中で、一体どのような成果が具体的におさめられているのか、このことをひとつまず冒頭にお聞きしておきたいと思うのです。
  7. 中曽根国務大臣(中曽根康弘)

    中曽根国務大臣 まことに恐縮でございますが、私はその部分は発言しなかったのであります。私、読んでいるうちに、このことばは適当でないと思いましたから、そのところは吹っ飛ばしまして、努力をしてまいりました、そういうように申し上げたはずでございます。
  8. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 これを読んでいないからといって、これは一般的に出る問題であるし、さらにいろいろな通産省の関係しているあらゆる書類、発行されている書類を見ても、このような形の中で説明されておるわけですね。たとえば、通産ジャーナル等を見ましてもね。したがって、私は、これがわれわれの目の前に出されたわけで、全体が出ているわけではございませんから、その点につきましては委員長のほうで適切な処置を、そのようなことであれば、ひとつお願いしたいと思うのであります。  努力を続けてきたということでございますから、そこで質問を続けてまいりたいと思うのでございますが、日本政府責任ということについてはむしろ通産省責任ということで、どのように考えておられるか。今日の事態に対して努力を続けてきたけれども、その努力成果が具体的にあらわれていないということになりますと、どのような努力を続けてきたかについて、ここに幾つかの問題点が書いてあるのでございますが、これが結局政府として十分なる成果をあげることができなかった、こういうように認識してよろしいのかどうか。
  9. 中曽根国務大臣(中曽根康弘)

    中曽根国務大臣 けっこうでございます。
  10. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 そういたしますと、努力をしてきたけれども成果をあげることができ得なかった、その最大原因は一体どこにあるのか、今日の事態が発生した最大原因がどこにあるのかということになるのであります。  そこで、また読んだ、読まないということになりますと問題がたいへんやっかいになりますけれども、ここで私が大臣にお伺いいたしたいことは、結局今日の事態アメリカの圧力によって発生してきたのだということは、世界じゅうにおける誤らざる認識だと思うのであります。ところが、それらの点につきましては、第三ページから、「まず第一に、対外経済政策について」云々から四、五ページにわたる中で、大臣はこのように言われているのであります。貿易の分野における一番最後の項において、「今回の為替変動相場制への移行によりまして、日米貿易バランス改善に向かうものと期待され、その推移を見守ってまいりたいと考えております。」と、こういうように言われているのであります。その前段において、国際収支の項におきましては、これだけの努力をしたということで非常に高くその努力評価しておられます。その評価しておられるこの文言は、とりもなおさず、一番最初私が御質問申し上げました「成果を収めて参りました。」という項に関連して、「昨年十月、政府は第三次円対策を策定し、」云々という五本の柱の実績がこのような成果をあげてきた、こうなってくるわけであります。  そして、そういうふうな成果をあげてきた現状の中で、現在、為替変動相場制移行しているが、結果的には、この為替変動相場制移行したことによって、日米貿易のアンバランスが是正され、いわゆる日米貿易バランス改善に向かうものであると考える、このことは、一番最初文章が、努力を続けてきたということでございますから、文章がちぐはぐになってくるのでありますが、私は、円の変動相場制への移行が、日米経済関係改善に対する非常によい政策であるがごとき印象を受けるわけであります。それが、第一に、五本の柱によるところの黒字基調解消のために努力してきたということと関連して、円の変動相場制移行がきわめて好ましい政策の展開であるがごとき印象を受けるのであります。となりますと、先ほどの成果をあげたということは、成果をあげたということでなく、努力をしてきたけれども十分な成果をあげるほどでなかったということと関連して、非常にこの意味が合わなくなってくるわけでございますが、この最後の「今回の為替変動相場制への移行によりまして、日米貿易バランス改善に向かうものと期待され、」云々という条項についての大臣の見解をお伺いしたいと思うのです。
  11. 中曽根国務大臣(中曽根康弘)

    中曽根国務大臣 まことに恐縮でございますが、先ほど申し上げましたように、成果をあげるというところは、私、削除いたしまして、努力をしてまいりましたと、そう申し上げたのでございます。それで、いまのところに、これから「日米貿易バランス改善に向かうものと期待され、その推移を見守ってまいりたい」と、こういうことばを書きましたのは、今度の変動相場制移行というものは、やむを得ざる措置としてわれわれとしては涙をのんでやった、そういうことでございますが、しかし、ともかく結果的に見れば、われわれとしては、こういう今日ありとは予期しないような事態、いわば不幸な事態におちいってしまいまして、われわれとしては大いに反省しなければならぬところでございますけれども、結果的に見ると、これで、ある程度黒字の問題もバランスを回復する方向にいくという予想はつくと思います。で、その推移を見守っていきたい、そういう意味であります。
  12. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 ここであまり時間をとるわけにはまいりませんので、進めたいと思うのでありますが、大臣に、次の質問にもからんでまいりますからお伺いしたいのですが、この文章そのものを見ますと、何としても、所信表明として大臣商工委員会で一番最初の意見を発表するに際して、現状、起こりつつある事態に対する認識がきわめて甘い、甘いというよりか無責任だというようにしかとられないところがいろいろ出てくるわけなんです。  いまの為替変動相場制への移行によりまして、「日米貿易バランス改善に向かうものと期待され、」——これはだれの犠牲によってそういうように期待されるようになるのか。結果的には、そのことによって得る利益アメリカであり、言うなれば、ニクソン大統領中心とする経済ブレーンがその政策の成功を心から喜ぶという形の中において、この事態はいま進行しつつあるわけです。わが国はこの事態の発生によって、産業界をはじめ中小零細規模企業者一般に対して、一般勤労者に対して、はかり知れない不安を与えているのであります。不安を与えるということは、いままさに起きつつある事態がこれ以上深刻になるであろうという予測をだれしも完全に行なうことができるわけでございます。  もちろん、それは変化することもありますけれども、そういうような状況の中でこのような文章のもとに通産行政が行なわれていくということになるならば、しかも大臣の第一回の所信表明がそのようなことであるとするならば、私は、いままでの通産行政の積年の弊害が今日この事態を招いたと言っても言い過ぎでないと思う現況の中において、なおこのような文章の中でその所信を表明し、今後の通産行政を続けていかれるということについてはたいへん危惧を持つわけであります。この点について、いま一度、次の質問の関連がございますから、アメリカ利益が守られ、日本国益がそこなわれたのではないかと私どもは認識するのでありますが、大臣は、日本国益はこれによって守られたとお考えなのかどうか、この文章範囲内においてお伺いしておきたいと思います。
  13. 中曽根国務大臣(中曽根康弘)

    中曽根国務大臣 通産省当局といたしましては、円が変動相場制に入ったということは遺憾な事態でございまして、先生おっしゃるとおり、われわれは反省しなければならぬところであると思っております。
  14. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 そこで、次へ進みたいと思うのでありますが、私は大臣の答弁と、この文章をだれが書いたのかわかりませんが、文章とがだいぶちぐはぐなので質問がやりにくくてしようがないのですけれども、いずれにせよ、質問を続けていきたいと思います。  いま巷間いわれているところによりますと、いわゆる二百六十四円ないし二百六十二円、二百六十五円というように、変動相場制ですから日々刻刻変化を続けておりますけれども、しかし一応普通常識においては、円の切り上げは一〇%、せいぜい二百八十円台程度でおさまるのではないかというように予測されていたのが、ドルの切り下げにおいて実質的に一〇%以上切り上げになってきておるわけでございまして、さらにその上に変動相場制において二八%以上にその切り上げが実際上行なわれているわけでございます。したがって、この変動相場制がいつまで続くか、その続く中において将来どうなるかということに対して、各産業界中小企業界等におきましては前途に大きな不安を持っているわけであります。したがって、一日も早く、一刻も早くその不安を解消してやること、そして健全なる産業活動が展開されることに対してその対策を示すことが通産行政の当面する緊急の課題でなければならないと思うのであります。  そこで、巷間伝うるところによれば、すでに産業界においては、もはや円の固定相場制復帰の際には切り上げ幅は二〇%以上になるのではないか、実質的にはいわゆる二二%の切り上げ、二百五十二円四十六銭、下限においては二百四十七円三十九銭程度において円の切り上げが行なわれるであろう、したがって、その切り上げ幅の中において今後の輸出産業ないし経済活動について対応すべきであるというようなことが、一般的常識としてあらゆる産業界において流布されておるやに聞きます。そのような大幅な切り上げになったとき、日本経済の受ける打撃というものは非常に大きい。したがって、円の変動相場制については相当長期間にわたってこれを持続しなければならない、このようなことが政府最高方針であるやにこれまた流布されているわけであります。したがって、円の変動相場制がいつまで続くのか、その続いた状況の中において一体幾らに円が固定されるのか、これは現在の産業活動その他全体に対する非常に大きな課題でございます。  この課題は、単に金融政策上の問題だけではなく、産業政策上における問題として、通産行政課題、問題として、通産行政担当責任者である通産大臣は最も大きな関心を持って対処しなければならない、日銀、大蔵大臣と同様、それ以上の責任ある態度を示さなければならぬと思うのであります。通産大臣は、変動相場制は一体いつごろまで続いたらいいのか、固定相場制復帰に際しては、一体どの程度最小限ぎりぎりのものであると考えるのか、この点についてお尋ねいたします。
  15. 中曽根国務大臣(中曽根康弘)

    中曽根国務大臣 どの程度続くかということは、一体ドルあるいは円あるいはマルク、そういう諸般国際通貨がどういう水準で安定することが一番妥当であるか、そういう国際経済情勢が円滑に動くようになることが最も望ましいことでございますから、そういう諸般通貨情勢もよくにらみ合わせてきめるべきものであるだろうと思います。現在、ドルはまだ多少動揺もしておりまして、安定点がどういうところに落ちつくか見当もつかないという状況でもございますから、しばらく推移を見る必要があると思いますが、いずれにせよ、円ばかりを考えないで、やはりほかの外国通貨とのバランス等も考える必要がある、そういうように思うのであります。  それから、どの程度切り上げ率が適当かということは、その時点における実勢相場をまず勘案して、そして将来の展望をも踏まえて行なわなければならぬだろう。今日どの程度になるかということは、いまだ予測することはできない状態でございます。
  16. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 いま私の申し上げたことは、社会一般の中で流布されている一つの考えだということで私は質問申し上げましたから、大臣がこの席でこれこれこうだと明確な答弁ができようとは思っておりません。しかし、私は、いずれにせよ諸情勢を勘案しながら、固定相場制復帰する際において円切り上げ幅をきめるということは、いま私がそれはいけないとかいいとか議論することではなくして、当然のことだと思うのでありまするが、しかし一日も早く、できるだけ切り上げ幅を少なく、しかも将来またまた円切り上げをしなくても済むような、そういうような、単に円の固定相場制復帰、円の切り上げ幅の決定ということだけでなく、それに関連する諸政策との関連の中において、それらの問題が決定していかなきゃならないと思うのであります。したがって、それらの問題についてこそ、当面通産行政としてどうあるべきかということについて全力を尽くしていかなければならないと思うのであります。  ところが、いま私どもの仄聞する通産行政全体の中においては、当面する対策等についていろいろ意見を出し、あるいは対策に奔走しているように見受けられまするが、基本的な問題について、また円の再切り上げが行なわれる、その次にさらに再々切り上げが行なわれる、しかも円切り上げの幅がだんだん大きくなっていく。田中総理に言わせれば、円が強くなるのはいいだろう、そういうような無責任なことを言っておりますが、それでは済まないとすれば、当面する事態に対応する通産行政対策は——もちろん将来への展望の中において、通産行政対策はどのように転換していくのか、これは非常に大きな課題であろうと思うのであります。したがって、大臣通商産業政策の転換、行政の転換に関する考え方がもしあるならば、お聞かせを願いたいと思います。
  17. 中曽根国務大臣(中曽根康弘)

    中曽根国務大臣 やはり日本は国際社会の中に生きているものでございますから、アメリカあるいは共産圏あるいはヨーロッパ、EC諸国、それらの国々の動向及び通貨の強弱等をよく見抜くこと、それからそれらの国々が貿易通商問題、通貨問題等についてどういう意図を持っているか、日本に対してどういう希望なり要望を持っているか、そういうことをよく見抜きまして、長期的な彼らのゴールをよくにらみながら、日本の立場をきめていくということが大事であるだろうと思います。そういう点では、私は、ある意味においては国際主義者でもあります。ただしかし、日本中小企業日本の産業を守らなければならぬという重要な要素もございますから、今回の変動相場制実施によってどういう痛手を具体的に受けているか、目下いろいろ調査実施中でございます。   〔委員長退席、田中(六)委員長代理着席〕  そういう国内的なダメージもよく見ながら、いままでのような国際的な諸関係との調和点をどこにとるか、しかもそれはいまおっしゃいましたように、長期的に安定するということが非常に大事でございますから、長期的に長続きする定点はどの辺にあるかということをにらむということが非常に大事でございまして、その点は、事務当局と一番真剣に目盛りの推移をいま見つつある、そういう状態でございます。
  18. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 それでは、その通商産業政策の転換に関する目盛り云々ということを言われておりますので、具体的に二つばかり質問してみたいと思うのであります。  一つは、いわゆる日米貿易の均衡をはかる。先ほどの方針の中にも、これは円の変動相場制移行によって均衡をはかると書いてありますけれども、円の変動相場制への移行によって均衡をはかるということは、わが国の犠牲によって均衡をはかるということになってくるわけでありますが、しかし、わが国の犠牲によらざる日米貿易関係の均衡をはかるということは一体どういうことか。そのこと自体がやはり当面する円問題の最大課題でありますので、通商産業政策の転換を行なわなければならないということは、たびたびいろんな形の中で出ておりますけれども、その具体的な方法は、もし片りんでもあるならお示しを願いたいと思うのです。
  19. 中曽根国務大臣(中曽根康弘)

    中曽根国務大臣 われわれの立場からしますと、通貨的調整というものは、どっちかといえば第二次的なもので、実態的調整のほうが大事だと思うのです。実態的調整ということは、やはり両国の中における需要供給の関係、そういうものが一つのメルクマールになって出てくるだろうと思います。そういうようなことと、それを、つくっている基礎になるのは、産業の構造の問題がございますが、産業の構造転換ということが、やはり実態的調整の基礎的な施策になるだろうと思うのです。  日本としては、LDC諸国からは追い上げられておりますし、またアメリカその他先進諸国には天井打ちという、コンピューターその他のような問題もございます。その中にあって、日本が国際社会においてあまり外国に被害を与えないで、しかも自分の生活を充実さしていくという道をさがす。これがやはりわれわれの方向です。端的に申し上げれば、知識集約産業とか、あるいは福祉国家型とか、こういうことでございますが、要するにLDC諸国よりも高級品をつくっていく、あるいは付加価値の高いものをつくっていく、そういう方向に進めて——これはものによっても違いましょうが、アメリカその他の間においては水平分業の形に移っていくことが望ましい、そういう方向に産業転換の指導をしていきたいということが基本であると思っており、ます。
  20. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 まあこの問題については、議論すれば長くなりますから、一応いわゆる世界貿易の不均衡、特に日米貿易の是正ということに関して通商産業政策の転換をはかる、いままでのいわゆる重化学工業偏重の政策からある程度、構造問題に関連する方向に転換をはかっていくということは、まあ私どももいろいろ勉強さしていただいてよくわかるわけでありますが、それだけではたしてこれらの問題の解決が行なわれるかどうか。  私は、それ以上に、これらの問題の解決をはかるために、いま大臣が言われたようなことについてもっと積極的な取り組みをしてもらうということについては賛成でありまするけれども、同時に、いわゆる生産第一体制から福祉経済体制への転換、これが通商産業政策の転換の大きな柱になっていかなければならぬじゃないか、こう思うわけであります。生産第一主義に基づくところの弊害が今日の円問題をはじめ、社会各般に悪い影響を与えているとき、相変わらずそれをただ高度化するという形の中において転換をはかろうとするということは、これはもうますます矛盾を深めていくことになるのではないか。むしろこの際、世界的に日本貿易伸長に対する批判の第一としてあげられているところの働き過ぎ、もうけ主義、これらの転換をどうやってはかっていくのかということに対して、通産当局としては十分積極的な意味において努力をしていかなければならぬじゃないか、こう思うわけであります。このことについてお考えをいただくと同時に、時間がございませんから引き続きそれに対して私は次の点を御質問してみたいと思うのであります。  これらの問題で一番大きな課題となってくる問題は、労働時間の問題があります。週休二日制の問題があります。さらにまた賃金の問題があります。いわゆる分配率の問題に関連いたしてまいりますが、低賃金、長時間労働、これが今日の弊害を生む最大原因である、こういわれているわけでございまするけれども、通産当局は、今日この週休二日制の問題、あるいは賃金の問題等中心とする福祉経済転換への方向はお考えになっておられるのかどうか、この際、ひとつ具体的にお答えを願いたいと思うのであります。
  21. 中曽根国務大臣(中曽根康弘)

    中曽根国務大臣 基本的なことを考えますと、予算の構造、財政計画自体の転換がやはり基本であるだろうと思います。たとえば、国民消費あるいは民間設備投資あるいは政府財政需要、社会資本の投下、そういう面における転換が必要だろうと思います。いままでの六〇年代の成長を見ますと、民間設備投資が主導で重化学工業化が行なわれて、いまそのあと始末をやらされているというところでもございます。ようやく財政構造が転換しつつありまして、国民の消費とか、あるいは財政需要とか、公的消費というものが、あるいは公的資本投下というものが非常に中心になってきている。特に最近は年金あるいはそのほかの福祉的な施策が非常に急速に伸びてまいりまして、こういう形の予算の構造的転換を行なうということが基本であるだろうと思いまして、私はそういう方向に協力してまいりたいと思うわけでございます。  それから第二に、週休二日制や賃金問題等はこれとからんでいる問題でございまして、通産省としては、各官庁の中でも週休二日制賛成、推進のほうなんです。週休二日制の閣僚協議会がございますけれども、私は、常に積極的な発言をして労働大臣に協力しておるのでございます。ただ、これは一律に、画一的に行なうことはかえって角をためて牛を殺すということにもなりますので、各企業の実態に応じて、何も週休二日というのは土曜、日曜を休むということじゃなくて、水曜と木曜日と休んでもいいし、月曜と火曜日を休んでもいいし、日曜と水曜日を休んでもいいわけですから、そういう企業の実態に応じて、ともかく二日休むという方向に持っていくことが望ましい。しかし、一挙にそこまでいけない場合には、西ドイツがやったように月曜から金曜日までは三十分時間延長したらどうか。それで土曜日は全部休んでしまう。そういう段階的なやり方もあり得るのです。今度土曜日は外為銀行相互の相場取引をやめまして、外為相場は銀行間においては立たない。そういうことに近くなりますけれども、これは非常に歓迎すべきことであって、これが次に銀行業務のほうに移っていくということはいいんではないか。官庁としてもやはりそういう方向に進むべきだと私は思っております。
  22. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 賃金の問題は、いま落ちていましたから次のときに一緒に答弁してもらいたいと思います。  そこで、私は今度のこの円の変動相場制移行に関係して、これから国民生活がどのような影響を受けるか、さらに中小企業はどのような影響を受けるかということについて質問を続けてみたいと思うのでございます。  いま、各銀行をはじめ各方面で、円の切り上げが行なわれた際における四十八年度の経済成長の見通しあるいはこれに対する対策、こういうことについてのいろいろな発表がなされております。大臣もごらんになっておられると思うのでありますが、各銀行等の発表によりましても、円の切り上げが一〇%ないし一五%程度の段階においては相変わらず一〇%以上の成長率を持続するであろう、このように予測が発表されておるわけでありまするが、二〇%以上になった場合どのような状況になるかということは、これは想像を絶する切り上げ幅でございますからまだ出ておりませんが、いずれにせよ、日本経済は円の切り上げが行なわれたとしても、デフレ的状況になるのではなく、相変わらずインフレ的様相の中で経済が発展していくであろうということがいわれておるわけであります。  しかし、この予測は端的に二つの部面に分かれている。いわゆるこの変動相場制から切り上げというその変動の過程の中で、いわゆる強きものは残り、弱きものが脱落する、いわゆる産業構造の転換という形の中において強い企業だけが残っていく、強い基盤を持つ産業が残っていくであろうということ、それはもう共通して指摘されているわけであります。こういうことになりますると——これはそうなのかどうなのかを含めて……。こういうことになりますると、いわゆる弱小企業、弱小の基盤の上に成り立つ産業というものが、この変動相場制の過程の中で、構造改善なる名のもとに淘汰されていく、通商産業政策としては、その淘汰されていくことが必然的なものとして受けとめ、若干の落ちこぼれに対して救済的な対策を立てていこう、そういうように、この所信表明を見ても、いろいろな政策を見ても感ずるわけでありまするが、大臣は、この点についてどのように考えられるか、お伺いしておきたいのであります。
  23. 中曽根国務大臣(中曽根康弘)

    中曽根国務大臣 お話の前段の中で非常に重要な問題は、賃金の問題ともからんでまいりましょうが、いま実勢相場で二百六十五円前後が立っておりますけれども、かりにそういうような情勢推移するとすると、ことしの下半期ぐらいにはかなりきびしい経済情勢が出てきやしないか、中小企業、輸出関係に対する痛手というものは、その数字だけでもかなりのものが出てくる。それよりさらに下がっていくという情勢になると、相当数の中小企業、輸出関係が痛めつけられる。そうなると、いまわりあいに、まだ去年からことしにかけての通貨の流出あるいは過剰流動性の結果でほてりが残っていますけれども、日本経済は冷えてくる、そういう可能性が非常にあると私は思っておるのです。だから商工業界等についても、前途は必ずしもそうやさしいものではない。これは商工業者みずからがもう気がついていらっしゃるところであると思いますが、通産当局としてもそういう指導をしていかなければならぬ、そう思っております。  ただしかし、その中で国民経済全般として考える問題は、スタグフレーションの問題が出てくるだろうと思うのです。これはドイツの例、アメリカの例等を見ましても、なかなか物価は下がらない、そういう例が最近の現象です。つまり経済というものが、純粋に経済的諸要因だけでは動かなくて、社会的、政治的条件が経済の中にかなり入ってきておる。そういう新しい社会構造あるいは経済的機能というものが出てきておるわけでございますから、このスタグフレーション問題にどう取り組むかということが、この円の調節にからんでやはり次に出てくる大きな問題になりゃしないかということを考えております。  それから、もう一つ大事なことは、最後の御質問のところに当たりますが、喫水線の辺を上下している日本中小企業輸出産業等については、前回の経験をも考えてみまして、今回は思い切った構造転換をやる必要があるだろう。後進国からの追い上げで、そうして景気がよくなれば多少はいいけれども、少し調節が出てくるとまた喫水線下に沈んでしまう、ただ、ほかにやる道がないから、わかっているけれどもやめられないという気の毒な業界、業種があるわけです。これらの問題をこのまま放置していいという段階ではないと私は思うのです。ですから、今回は前以上に、そういう後進国から追い上げられている産業等については、思い切って内需に転換してもらうとか、あるいは構造改善を実行するとか、そういう点についてかなり強い政策をやろうと指導もやるし、また助成もやるし、ともかく構造転換を促進しよう、そういう決心をもっていま事務当局に対していろいろ検討を命じているところでございます。
  24. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 私は、そういうような状況の中で今日の事態を一般的にながめてみますると、そのような経済的な大変動、いわゆる喫水線以下に落ちこぼれ、その存立の基盤を崩壊させつつある企業が存在する半面、円のフロート制あるいはまた切り上げその他の変動の中で、非常に大きな利益を得ている企業ないし人たちもたくさんおると思うのです。したがって、私は、この利益を得ている者に対する対策利益を意識的に、この変動の状況の、いわゆる他人の不幸の中でみずからの利益を追求し、追求するだけでなくして、現に得つつある人たちに対する対策と、具対的にどうすることもでき得ない状況の中で損失をこうむっている人たちに対する対策と、大きく二つに分けて緊急対策を立てていかなければならないのじゃないか、こう考えるわけであります。以下、その二点にわたって大臣に御質問をしてみたいと思うのであります。  まず、得をする人たちはどういう人たちか。大企業、なかんずく大商社が今日得をする者の筆頭にあげられているわけであります。政府・自民党も昨日に至るまでの間、いろいろこれらの問題について議論をされておるようでありまするし、野党各党もこれらの問題については積極的な取り組みをいたしつつあるわけであります。この問題について、いわゆる商社法なるものを制定しよう、あるいは法律におけるところの規制をしよう、強い政治的姿勢をもって、この変動の中で、他人の不幸の中でみずからの利益を追求する飽くなき欲望を満たしつつあるこれらの人たちに対して、一定の制裁的な行動をとろうということが、一般的な発想として着想が出てきながら、時間と日がたつに従ってしぼんでいってしまい、結果的に最後には何にもなくなってしまった。こういうような経過がいま私たちの目の前に新聞、マスコミ等を通じて報道されているわけでありまするけれども、通産当局としては、これらのいわゆる変動、他人の不幸の中で利益を得ようとする人たちに対してどのような姿勢をもって臨まれようとするのか、この点ひとつお聞きしたいと思います。
  25. 中曽根国務大臣(中曽根康弘)

    中曽根国務大臣 これは通貨調整と若干関連はありますが、直接関連しているよりも、ドルの蓄積からくる過剰流動性、それからくる一部業者の中における自由の乱用というものからきている問題ではないかと思うのです。やはり力のある者が何でも自由だということで金もうけに社会性を没却して狂奔するということは、これは心ある者は慎んでもらわなければならぬことであります。法というものはすべてを網羅してあるものじゃありませんで、あれはやってはならぬ最低限を規制していることで、そのほかには社会的規範あるいは道徳、そういうような面で自粛してもらわなければならぬ広大な部面があるわけであります。その広大な倫理的世界というものを没却してしまって、金があれば何でもできる、そういう自由の乱用ということは慎んでもらわなければならぬ。  政府としては、自由経済、資本主義政策をとっておる国でございますから、できるだけ干渉や統制を避けたいと思っておるし、今後もそういう政策をわれわれとしては続けていきたいと思いますけれども、国民生活全般の調和を害したり、あるいは社会的正義感に触れてくるようなものを放置するわけにはいかないわけです。  そこで、今回のようなアイデアが出てきたわけでございますけれども、しかし今度は実際何が有効に行ない得るかという具体的な実行段階の検討をやってみますと、これはなかなかむずかしいもので、何しろいかに法あるいは権力でやろうとしても、商社やあるいは業界、業者のほうは頭がいいし、抜け道なんというのは無限にあるわけです。右と言えば左へ行く。左と言えば右へ行く。弁慶が牛若丸を追うような情勢でもあるわけです。ですから、法だけで縛り切ろうとしてもなかなか縛り切れるものではない。そこで、その辺をどういうふうにして最も実効性のあることをやり得るかということを、いま党とわれわれは検討をしておるのであります。  また、新聞で見ますと後退というような字が書いてありますが、必ずしも後退ではない。何が有効であるかという点を中心に考えるべきである。商社を目当てに法律をつくるというのはむずかしいことである、それよりも行為自体を対象にして法律をつくる、そのほうが賢明ではないか、そう考えております。
  26. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 私は時間がありませんからあまり詳しくは申し上げられませんが、私もいろいろ調査したのです。しかし、いま大臣が言われた企業の過剰流動性によるところの余剰資金というものが、昨年のドル・ショック以来六兆一千億、あるいはだぶついたお金で、ともかく金融緩和の中で銀行が無制限に貸し出したこれらの投機資金に類する資金が二十三兆円、これらのものが特に為替変動の中で、その差益でもうけた商社を中心にして、ばく大もない流動資金が投機によって利益を得ようとして動き回ったということは、もう隠れもない事実だと思うのです。それが端的に土地と株、やがて商品に波及していった。これは今日もうどうにもならないところになってきて、自民党のほうで総理大臣がえらいどうも——商社法をつくらなければならぬと幹事長が言ったとか言わないとか、だんだんそれが実施される段階になってくると、商社のほうの圧力がかかったのか、どこの圧力がかかったのかわからぬけれども、結局しりすぼみになって、大山鳴動ネズミ一匹も出ずという形になってきて、大臣のいまのことばではないが、実効ある措置といいながら、実効ある措置というものは何があるかということになると、何もないということになってくる可能性があるわけであります。  私は、株の買い占めの問題につきましてここで時間をさいて申し上げる余裕もございませんが、しかしいずれにせよ、商社関係だけで丸紅飯田が昨年の九月期の決算で、三十七億円も半期間における利益をあげる。あるいは三井鉱山が四百三十円の株価である。あるいはまた新日鉄は一時二百円以上がいまなお百八十円の近所にある。これらは経済実勢あるいは企業の実態に即した株価であるかどうかということは、もうだれが見てもわかるのです。土地の値段にしてもそうです。こういうことはだれがやるかということになると、大商社が今日の為替変動の中で、もうぬれ手にアワでもうけ取ったその金を基礎にやっているわけです。経済を撹乱しているわけです。だから、そういうような意味において実効ある措置がとれない。結局それをとるためには、法律でやるよりは行政指導でなんということを言ったって、これはどうにもならぬと思うのです。そこで、これらについてはわれわれ野党のほうも、特に社会党のほうとしても、これはもう少し積極的に今後問題として取り扱っていきたいと思うのでありますが、これらについての見解をお聞きしたい。  同時に、一つ具体的な例で、たいへん小さい例でありますが、中小企業に関連して商社の企業進出、いわゆる産業支配に関係する一例を申し上げて、大臣並びに関係者の答弁をいただきたいと思うのであります。  それは、商社がいま株、土地さらにまた商品の買い占め等だけでなく、具体的な中小企業分野に対して進出をはかりつつあるという例であります。日商岩井がクリーニング業界に対していまなぐり込みをかけてきている。クリーニング業界というものは御承知のとおり全国で八万三千店あるわけでありますが、その中で二万八千店が取り次ぎ店で、具体的に店を開いているのが五万五千店あるわけであります。これの年間の売り上げ高が三千億円。したがって、五万五千店で三千億円しか売り上げのないこのきわめて零細規模の中小企業に対して、クリーニング業界に対して、巨大なる資本を持つ日商岩井が十三億円の工場、エーデルワイスという小会社をつくって神奈川県の厚木に進出して、関東近県におけるところの一般中小企業の店を系列下に置いて産業支配を行なおう、こういうような動きがいま具体的にあらわれてきているわけです。しかも、そのことは単にエーデルワイスだけではなくして、伊藤忠が黒川合同クリーニングを、あるいは綿久という小会社を使っての病院関係のシェアの確保あるいは丸紅、住商等も市場調査をすでに始めている。これはどうしてそういうことをやっているか、三千億円しか売り上げのない企業に対して、そのような大商社が全面的に目をつけて進出をはかろうとしておる。それは同じ条件にあるアメリカ日本の倍の人口でもって一兆八千億円のいわゆる生産売り上げ高を持っているわけです。六倍規模の売り上げ高を持っているわけでございますから、結果的にいうならばまだ六倍、いわゆる日本の人口からするならばまだ三倍の伸びがある。その三倍の伸びをこのあり余った金で、株でももうけた、土地でももうけた、商品取引でももうけたそれを、今度は新しい中小企業分野に進出する形の中で、あらゆる中小企業の市場調査をする中で、その分野を系列支配しようとしている。これは商社活動の一つの具体的な例なんです。こういうようなことが行なわれ得たとするならば、いまやまさに、日本中小企業は最も零細でありますから、すべて商社の余剰資金によって経済支配をされるという可能性が出てきているわけです。こういう動きに対して大臣はどう考えるか。さらにこれに対して、厚生省から課長が来ているようでございますから、どのような指導をしているか、その点ちょっとこの際、時間がありませんから簡単でけっこうですが、ひとつ御説明願いたいと思います。
  27. 中曽根国務大臣(中曽根康弘)

    中曽根国務大臣 大企業が特定分野に進出することによって、中小企業が著しい影響を受ける場合については、中小企業団体の組織に関する法律というのがございまして、その十七条、三十条等によって、中小企業者の申し出に応じて主務大臣が調停案を策定して、その調停案について、中小企業調停審議会の議を経て、進出計画の一部変更、事業の縮小、数量の削限あるいは進出計画の一時停止を行なえることになっている由であります。いままで、薄葉紙業界においてこういうことがありましたが、これは行政指導によって円満に解決したということであります。  いまのお示しの件につきましても、そういう関連業界からのお申し出があれば、われわれ通産省としては、その間について、法律に基づく処置が可能である場合には行なうことにやぶさかではございません。この点については、中小企業庁長官及び厚生省から答弁させます。
  28. 莊政府委員(莊清)

    ○莊政府委員 大臣からいま申し上げましたように、一般的に大企業の中小企業分野への進出につきましては、中小企業団体法に基づきまして、中小企業自身が大企業に対して、それの事業の縮小なり延期なりということを取りきめたいという特殊契約の締結ができるということがございます。従来はまだ、法律に基づいて特殊契約が締結されたというところまではいっておりませんが、いま大臣が申し上げましたように、いろいろな産業分野でこういう事例がございまして、こういう法律の規定及び中小企業の申し出のある場合には主務大臣が調停、あっせんをするという法律の規定、これを背景に、行政指導という形で、多くの産業分野において、過去から行政指導により円満な解決がはかられてきております。  御指摘のクリーニング業につきましては、厚生省から担当課長が参っておるようでございますが、特別に法律が一本ございまして、いま申し上げました中小企業団体法とほぼ同様の趣旨の規定が盛り込まれておるわけでございます。したがいまして、調停、あっせんにつきましても、クリーニング業でございますから、この特別な環境衛生関係の規定に基づいて、主務大臣たる厚生大臣がこの場合には第一次的には行なうということでございます。ただ、中小企業一般問題につきましては、責任大臣通産大臣でございますから、ただいま大臣としても申し上げましたとおり、必要に応じて、中小企業庁もございますので、厚生省と十分連絡をとりながらこの問題の解決にも努力をいたしたい、かように私、事務当局としても考えておるわけでございます。
  29. 加地説明員(加地夏雄)

    ○加地説明員 特殊契約の問題につきましては、ただいま通産省のほうから御説明がございましたけれども、御承知のように環衛法の中にございまして、大企業はそれに対して応諾義務もあるわけでございます。一方私どもは、それ以外の環衛業では非常に例が少ないのでございますけれども、クリーニング業につきましては、例の中小企業近代化促進法でございますが、あれの近代化計画ということで従来近代化を進めてきたような経緯もございます。そういう中で、中小企業近代化、クリーニング業界につきまして業界の近代化を進めると同時に、環衛法の必要があれば環衛法の特殊契約規定を担保してございます。そういった形でやっておるわけでございます。
  30. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 この問題については短い時間では議論が尽くしきれませんので、原則的にいまの答弁で了承いたしておきますが、ただ大臣最後に御質問しておきたいことは、これらの問題は単にクリーニング業界だけではなく、あらゆる産業に波及してくる。特に中小企業に波及してくる可能性がありますので、私はいまの団体組織法の中における解釈に基づく措置だけではなくして、具体的に中小企業の立場を守る意味において、中小企業の事業分野はこれこれこれである、大企業、特に商社を中心とする企業の分野はこれこれこれである、こういうような点について、中小企業対策の一環として、事業分野に関する法律等の制定についてもひとつ御研究願いたい、こう思うわけでありますが、御見解をお伺いしておきたいと思います。
  31. 中曽根国務大臣(中曽根康弘)

    中曽根国務大臣 よく心がけてやってみたいと思います。
  32. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 次に、大企業が、この円の変動相場制移行の中で、特に商社が悪どい利益を追求しているという反面、いわゆる零細規模企業、中小企業の一部には大きな犠牲がいままさに波及しつつあるわけでありまして、その存立の基盤に激しい動揺が見られている業界が幾つかあるわけであります。それらの点について、一つの具体的な事例を申し述べながら、対策について大臣の御答弁をいただきたいと思うのであります。  玩具業界全般に関しては、いまいわゆる輸出面におけるところの対策が非常に大きなウエートを占めておりますから、今回のこの事態によって受ける被害は非常に大きいわけであります。   〔田中(六)委員長代理退席、委員長着席〕 そこで私、ある業界に参りましてその実情を具体的に調査してまいったわけでありますが、ある業界において次のような事態になっているわけです。これについて逐一申し上げますので、大臣からひとつお答えを願いたいと思うのであります。  この業界は年間一千三百五十億円の生産を行なっている。そのうちの六百億円を輸出しております。そして、平均して大体百二十億円程度の滞貨があるわけであります。この滞貨があるこの業界が、いま変動相場制移行によって、輸出成約等におきましても、いろいろな部面においても、非常に大きな損害を受けつつあるわけであります。そしてその損害を受けつつある状態だけでなくして、現に前回のドル・ショック、円切り上げに基づくところの緊急融資に対して、すでに返済期が到来いたしておるわけであります。ところが、現に追い打ち的に来ておる今回のこの状況が、到来しておる返済期と重なったために非常に大混乱を引き起こしておる現状があるわけであります。そこで、通産局長会議等を開かれ、あるいは通産当局においては、前回の措置を十分参酌しながら対策を立てられておるようでありますが、私は以下、この実情のもとに、次のような点について御質問をしてみたいと思うのであります。  この業界だけではございませんが、前回の緊急融資に対して返済期の来ている業界に対してどのような措置をおとりになるのか。それから、いまそれらの融資に対する利子は、大体六分五厘の利子を支払わなければならないのでございますが、これに対してどのような措置をとられているのか、いわゆる前回の融資に対して六分五厘の金利を支払う状態になっているのでありますが、これに対しての措置をお伺いしたいと思うのです。  それから、今回の事態によって大体二十億円の差損が出るということになっています。現在の成約に対して二十億円の差損が発生する。この二十億円の差損に対して何らかの処置をとっていくことができるのではないか。政府は、特に大企業、造船業界等、いま非常に大きな株価の上昇を見ている業界等に対しては、前回も相当の対策を立てられたようでございますけれども、こういう弱小企業に対する差損に対してどのような措置をとられるのか、これをひとつお聞きしたいと思うのであります。  前回は、これらの差損については、メーカーと業者と買い入れする人たちが大体三分の一ずつ負担することによってその差損を埋めてきておるわけでございます。今回はそのことも不可能だといわれておるわけでございますが、それがどういうようなことになるか。今後の対策としては、これらの業界においては体制を転換することによって、先ほど来大臣の言われているような状況の中で新規開発を行なおうとして鋭意努力をしているわけでございますが、現にこの業界だけでも五十億円からの金がかかるということでございまするが、それらに対してどのような措置をお考えになっておられるか、これらについてひとつ御質問をしてみたいと思うのです。  時間が参りましたので、私はそのほかたくさんあるわけでございまするが、さらに一つこれに関連して最も中小企業経営者が困っている実情について大臣に申し上げて、ひとつ善処をお願いしたいと思うのであります。  それは今回の措置において一般的中小企業という形の中でそれぞれ対策対象になっているわけでありまするが、具体的には中小企業の中でもいわゆる商社、メーカー、下請等々が存在いたしておるわけであります。結果的には最下層の下請零細企業に最大のしわ寄せが行くわけであります。  ある業界において、二月二十日に、関連産業各位という名のもとに次のような文書が流されているわけであります。いわゆる今回の変動相場制によって非常に業界が苦しくなった。それでこの苦しくなった業界の体制を挽回するために一生懸命努力している。この一番最後の項を読んでみると、「どうか体制挽回に苦慮しつつあるメーカの窮状をおくみ取り下さいまして、緊急非常事態打開のため、当面のコスト引き下げに格段のご協力を賜わりたく、枉げてお願い申し上げます。」、この意味するところは、自分のところのメーカーは苦しいから、コスト引き下げについてあなた方のお店は格段の協力をしてくれ、いわゆる値引きの申し入れをいたしておるわけであります。現にこのようなことは、この業界だけでなくあらゆる業界、輸出関連業界において、あるいはそれに便乗する業界において発生しているわけであります。これらについてひとつ大臣の御見解をお伺いし、時間もなくなりましたのであとの質問は保留して、一応私の質問は終わりたいと思います。
  33. 莊政府委員(莊清)

    ○莊政府委員 玩具の業界は非常に輸出依存度の高い業界でございます。零細企業がほとんどでございます。そこで今回のドル・ショックについて特に影響が甚大でございまして、私どもヒヤリングをしておる結果でも、たとえば業界の強い要望として、すでに借り入れておる前回のドル・ショック融資の政府による肩がわりないし無期限の返済猶予というものができないか、それから利子は政府で補給してもらえないかというふうな点が一つございます。  それからまた、為替差損のお話がございましたが、全額国庫で補償してもらいたい。それから新規のドル・ショック融資については無担保とし、かつ、利子補給により無利子としてもらえないかというふうな非常に切実な御要望が出ておるということを承知いたしておるわけでございます。  各産業ごとの状況等につきましては現在鋭意調査中でございまして、これに基づきまして財政当局とも十分折衝の上早急に対策を固めたいと努力をいたしておりまするが、前回のドル・ショック融資の返済問題につきましては六・五%の金利で一年の据え置きでございました。この金利をさかのぼって免除するとか下げるとかいうことは、従来の政府機関の融資のあり方の問題としても非常に困難かと存じまするが、返済期限の来たものの猶予を延ばす、据え置き期間を延ばすということをぜひこの際実現いたしたいと考えておるわけでございます。この点については財政当局にもすでに申し入れをして、いろいろ検討をしてもらっておるところでございます。  新規の融資につきましては、現在の政府機関の一番の優遇レートである六・二%というものをぜひ実現いたしたいと考えておりまするし、融資の期間とか据え置き期間、その他いろいろな融資条件につきましても、私どもいま内部で検討いたしておりまするが、前回の融資よりもできるだけこれを改善したい、それから資金の量についてももちろん十分確保したいということで、いま中で検討しておるところでございます。  それから為替差損の問題につきましては、これは従来どういう措置がとられておったかと申しますると、一つは緊急融資でございます。緊急融資と申しましても、このドル・ショックによっていろいろな形で企業あるいは組合というものは経営に思わざる蹉跌を来たしまして、経営の安定、立ち直るまでの間その下ざさえをするために思わざる長期の運転資金の需要が生ずるわけでございます。まあ為替差損による売り上げの減少とか金利がかさむとかいうふうなものも、当然企業の安定をはかる上において予期せざる負担として企業経理上出てくるわけでございます。それらも含めまして、ドル・ショック緊急融資ということで、前回に引き続き今回も融資を、前回よりも一般にソフトな条件に改善した上で、これも対象に含めて融資をいたしたいと考えております。  もう一つは税の手当てでございます。中小企業につきましては、特に国税について一年間の繰り戻しを三年に繰り戻しを認めた、地方税についても三年の繰り延べを五年の繰り延べにしたということを前回やっておりまするが、この制度が四十七年度末で切れておりますので法的措置を要しまするが、今回これについても手当てをすべきであるということで、いま大蔵省の主税当局のほうに検討を依頼して前向きに検討を願っておるところでございます。直接的にこの差額を補給金というふうな意味で直ちに補てんできるものかどうか、やはり全体としては相当な額になりまするので、単に財源上の問題ということではなく、まあこれはストレートな輸出補助金は二重為替ということになって国際的なことも当然考慮に入れなければなりませんが、なかなか為替差損というのは、一体幾らかというふうなことも、海外との関係もあってこれの確定というふうなことは実務的に非常にむずかしい面もございます。こういう面で為替差損の問題につきましては私どもも慎重に取り上げて検討いたしておりまするけれども、現在のところ、これを一般会計予算等で補てんしていくということは実際の措置として非常にむずかしい問題がまだまだあるのじゃないか、こういうことで現在検討しておるところでございます。
  34. 中曽根国務大臣(中曽根康弘)

    中曽根国務大臣 今回の円の調整によって中小企業あるいは下請産業に対して圧力が来るということも予想されておりまするので、通産省では約三十の業種の親請会社の団体に対しましてそういうような圧力を加えることがないようにという通達をこの間出しました。その通達に基づきまして各通産局においてそういうケースがありやなしや、ときどき行って調べさせたり何かしておりますが、今後ともそういうような下請等に対する過当な圧迫が来ないように監視し、注意していくつもりでございます。
  35. 浦野委員長(浦野幸男)

    浦野委員長 藤田高敏君。
  36. 藤田委員(藤田高敏)

    ○藤田委員 私は、きょうは主として火力発電所あるいは原子力発電所の問題に関連する質問をしたいと思うわけでありますが、その前に、いま佐野議員から質問のありました、国際通貨の問題からくるわが国産業界に及ぼす影響、なかんずく、中小企業に対するさまざまな影響の問題について質問があったわけでありますが、このことについて一言質問をしてみたいと思うわけであります。  いまの通産大臣の御答弁を聞いておりますと、答弁の限りにおいてはきわめて適切と申しますか、ごく常識的な答弁をされておるわけでありますが、今回の円の変更相場制への移行の問題やがてこれは国会が終わった段階で円の再切り上げになるのか、あるいはことしの秋のIMF総会まで変動相場制を持続するのか、これはいろいろ条件によって違ってくるであろうと思うのですけれども、こういった状態の中で影響を受けるのは産業界であり、国の各省間でいえば、私は通産省関係が一番大きな影響を受けると思うのです。  そういう点からいけば、通産大臣自身の、いわば国際通貨の改革の問題がいま具体的に日程にのぼっておると思うわけでありますけれども、その問題に対する見通し、そういうものをひとつ聞かしてもらいたいということが一点であります。  それといま一つは、今度の変動相場制移行の問題については、ドイツあるいはフランスは現状どおりで据え置いたわけでありますが、結果的にはドルの切り下げという形で円が変動相場制移行する、こういう形で一定の段階を推移しておるわけですけれども、ドルと円との関係、ドルとマルクあるいはフラン、そういう相対的な関係というよりも、基本的にはやはり金を中心として問題はどう動いておるかという、この観点の見方なり判断を誤ると、今日まで日本がもうドルに振り回されてきた——非常に私はしろうと的な言い方をいたしますけれども、から手形に近いドルの紙きれによって、日本産業界が今日このように左右されるような事態が発生しておると思うのです。  しかも、二百億ドル余っておる手持ちドルの中で、わが国の金の保有高というものはわずか八億ドル程度だ。西ドイツやフランスは三十八億ドルから四十億ドル程度持っておるやに聞いておるわけでありますが、国際通貨体制の今後の改革の問題に関連をして、この手持ちドルの保有高というものについて、通産当局あるいはわが国政府がどのように考えるのかということを基本的に据えていかないと、将来SDR体制移行するにいたしましても、やはりアメリカでは、なるほど金廃貨論というようなものが具体的に台頭してきておるようでありますが、一般的には、何といっても金というものが中心になって国際通貨体制というものは維持されていくであろう、こういう観点に立つ場合、この問題に対する政府なり通産当局の基本的な考え方というものをしっかりしておかないと、いま起こっておる産業界に対する円のフロートからくる影響以上に、さらに重大な問題が次の段階では待ちかまえているんじゃないか、こういうふうに考えますので、その点についての基本的な見解をひとつお伺いしてみたい、こう思うわけであります。
  37. 中曽根国務大臣(中曽根康弘)

    中曽根国務大臣 二点について御質問がございましたが、国際通貨体制がどういうふうになるかということは、これから各国が協議してやるところで、まだ私らこういくであろうというような予測を申し上げることは仮想であると思います。当面は、アメリカとしては通貨、通商一体となって、自分で一〇%の切り下げをやって、いわば肉を切らせて骨を切るという戦略に出たのではないかと思います。これによって、この引き金によって自分のフランチャイズに世界の国々を入れて、今度のガットの総会、IMFの総会目ざして、特に通商拡大法のアメリカの立法に伴う大統領授権、そういうものを一つの武器にして各国に対して通貨、通商面における調整を試みよう、そういう戦略体系で来ておるものだろうと私は判定しております。  それに対して、わがほうがいかなる対応策を事前に、あるいはそのときにとるかということは、いまいろいろな場合を想定して通産当局に検討さしておるところでありますが、いずれにせよ、非常にきびしいものがくるということを予想しておるわけであります。その中にあって、日本としては、やはり国際協調ということが大事な一つの原則でございまして、国内産業を保護しながらも国際社会に生きていけるような常識的なラインを出していかなければいけないであろう、さもなければ長続きしないであろう、そういう気がいたしまして、いろいろな対策を考えておるところでございます。  それから、金の問題につきましては非常にむずかしい問題で、世界の通貨体制の中で、金、SDR、ドル、これをいかなる形で位置づけるかということは、各国の利害も非常にふくそうして一致してないわけであります。たとえばフランスのような国々は金を非常に重んじる。しかし、ほかの国々の中では必ずしもそうではない。日本なんかは金を八トンくらいしか持っておりませんからあまり重んじたくないという傾向のほうだろうと思います。だがしかし、こういういろいろな事態を考え、また世界における通貨の供給量、将来予想されるある程度の供給増大がないと、世界貿易自体が進んでまいりません。そういう意味においてSDRの創設等も人間の英知でつくったのであろうと思いますけれども、そういうようなものも考えてやる必要があると考えます。  しかしいずれにせよ、前に、金を持っていたのでは利子は生まない、しかしアメリカの証券、債券を持っておれば利子が出る、そういう思想がございましたが、今日の時点になると、一オンス三十五ドルが九十ドルくらいに上がっておるのを見ると、とんでもない高利が金のほうにはついておる。そういう意味で、国際通貨の変動体制を予見していくということが非常に重要な問題であるというふうに反省しておる次第でございます。
  38. 藤田委員(藤田高敏)

    ○藤田委員 政策当局としては、国際通貨体制がどのように変革されていくかということに具体的に取っ組んで、やはり国益ではありませんけれども、二回にわたる実質的な円の再切り上げによってわが国がばかを見るようなことのない対策というものがきわめて大切ではないか。きょうの持ち時間の中でこのことについて深く論議する時間を持っておりませんが、うしろ向きの議論ではありませんけれども、これはもうすでに経済界でもずいぶん議論になっておるところでありますが、前回の円の切り上げがなされた段階で、日本がロンドンなりあるいはチューリヒなり、そういった金の自由市場に向けて金を買うための対策を講じておれば、今度のようなアメリカに振り回された形の円の変動相場制移行あるいは実質的の円の再切り上げというものがなされなくて済んだのではないか。逆にいえば、アメリカ自身をリードするような形の政策というものが具体的にとれたのではないか、こういう見方がいまあるわけでありますから、そういう点では、大臣の言うように、国際協調主義もいいですけれども、わが国だけがアメリカべったりになって、そしてその結果は国民が犠牲になり、ばかをみる、こういうようなことはすべきでないと思うのです。そういう点ではもっともっと自主的な立場で、将来の国際的な通貨制度をどういうものにしていくことがわが国の将来にとって最もプラスであるか、そういう観点から基本的な政策を打ち出してもらいたい、このように考えるわけであります。  この点はあとで、質問の中で基本的な考え方についてなお答弁される向きがありましたら、お答えをいただくことにいたしまして、以下、私は冒頭申し上げた火力発電所あるいは原子力発電所に関連する問題について、少しく質問をしてみたいと思うわけであります。  その前段として、現在あるいは現在策定中のものを含めて、総合エネルギーの中に占める電力エネルギーの比重はどういうものになっているか。なかんずく、この水力、火力、原子力の比重、最も新しい資料で数字的に説明をしてもらいたいと思います。
  39. 井上政府委員(井上保)

    ○井上政府委員 御答弁申し上げます。  全体に占めます電力の比重は約三割程度でございまして、その中で水力が約七割程度、火力が三割足らず、あと若干が原子力というのが現状でございます。
  40. 藤田委員(藤田高敏)

    ○藤田委員 事務当局から説明をしてもらった数字で少し議論をするのがたてまえかと思いますが、時間的な関係で、私が集めております資料を中心質問をしてみたいと思うわけであります。  全体的な比重は、いま答弁されたとおりだと思います。なかんずく電力関係の計画は、現在の段階、昭和四十七年の段階で、総ワクで六千万キロワット、四十七年以降、これは第五十九回電源開発調整審議会の資料ですが、これによりますと、四十七年から五十三年までの七カ年に新たに着手する電気事業用の発電施設、それによりますと、この七年間に水力が千五百四十四万キロワット、火力が三千八百九十四万キロワット、原子力が三千六百十五万キロワット、合計約九千万キロワットの新規の事業計画があるわけであります。したがって、現在の六千万キロワットプラス現在建設中のものが約二、三千万キロワットと理解いたしております。合わせますと締めて約一億八千万キロワット程度の電力が、五十三年の段階では必要になってくるという計画に、私の入手した資料ではなっておるわけであります。  大体そういうふうに理解をしても間違いがないかどうかをひとつお尋ねしておくのと同時に、それを前提にして質問をいたしますと、この四十七年から五十三年までの七カ年計画、いま私が数字を指摘いたしましたものによれば、原子力がそのうち約四〇%、火力が四三・二%、水力が一七・一%というふうに、比重の面においてはそういう比率になってくるわけであります。  私があえてこの数字をなぜ用いたかといいますと、だんだんと原子力なりあるいは火力の比重が大きくなってくる。大きくなればなるほど、今日、火力なり原子力発電それ自体が持つ放射能公害なりあるいは火力発電所の持っている亜硫酸ガスを中心とする公害の問題、この問題について——原子力発電の問題は、安全性の問題を中心に論議しなければならぬと思うわけでありますが、一面、公害の問題に焦点を合わして考えれば、この二つの問題をどう処理するのかということはきわめて重大な問題だと思うわけであります。そういう観点から申しますと、まず第一に火力発電に対する排煙脱硫装置の行政指導、これはどういうような計画をもって通産当局としては今後対処されようとしておるのかということが一つであります。  原子力発電の問題につきましては、これは公害以前の問題として原子炉の安全審査をきわめて厳格にやらなければならぬという問題があると思うのですが、この安全性に対する問題については、これはあとで具体的に最近起こっております愛媛の伊方の原発の問題あるいは東海二号の原発の問題を通して質問したいと思いますけれども、この基本的な二つの問題について、通産当局としてはどういう基本的な考え方で対処しようとしておるのか、この点についてまず具体的にお聞かせ願いたいと思うのです。
  41. 井上政府委員(井上保)

    ○井上政府委員 お答え申し上げます。  最初に火力発電の公害対策でございますが、これは現在のところ、大きく分けて二つの方式があると思います。  まず一つは、火力発電に用います燃料のサルファ分を下げるということでございます。現在電力会社のサルファ分の平均は大体一%程度でございますが、これを五十一年を期しまして半分程度に下げていきたい。大体一・〇四ぐらいを〇・五一ぐらいにしたいというのが現在の計画でございます。  次は、その中でございますが、排煙脱硫施設をつけまして、それはいまのサルファ分の減少の内数になるわけでございますけれども、下げていきたいということでございます。今後できてまいります火力発電所につきましては、非常に特殊なローサルファ燃料を使います場合以外におきましては、原則として極力排煙脱硫施設をつけていくことを行政指導してまいりたいということでございまして、最近の計画によりますと、これは今後大幅に増加していく、こういうことでございます。  それからいま一つは、地域によりましては非常にローサルファのものを強く要求されるところがございます。いろいろな工業地帯などにおきましては特にローサルファのものを使う必要があるということでございまして、こういう場合におきましては、さっき申し上げましたローサルファ燃料のうち、特にLNGであるとかナフサであるとか、そういうものを今後用いていきたいということであります。従来も若干用いておりますが、これをできるだけ多く用いていきたいというふうに考えております。さらにもう一歩前進しました手段といたしましては、ガス化脱硫をいたしまして、さらに燃料のサルファを下げたものを使っていきたい、こういうふうに考えております。  それから原子力の問題でございますが、これにつきましては、原子力委員会ともよくタイアップいたしまして、放射能その他の安全審査を十分にやりまして、そういう被害、公害が及ばないように措置してまいりたい、こういうことでございます。
  42. 藤田委員(藤田高敏)

    ○藤田委員 まず前段の排煙脱硫についての説明でありますが、これまた、先ほどの大臣の答弁ではありませんが、抽象的な答弁だけを聞くと、きわめて前向きで公害防止にも取り組んでいるように聞こえるわけであります。と申しますのは、極力公害防止に向けて積極的な行政指導をやりたい、こう言っておるわけでありますが、しかし火力発電所に対する排煙脱硫装置をつくらせていくという点についての計画を見てみますと、去年の段階ではその施設のうちのわずか一%、三年先の昭和五十年段階でわずか五%、こういったようなテンポでは、いま局長が答弁したような抽象的な答弁とは実態はもう全然違うわけですね。  低硫黄の使用の問題でありますが、これは何といっても輸入量の問題にも関連するわけでして、これまた低硫黄を使って、それでは亜硫酸ガスを出すようなことの少ないような、そういう燃料政策をとるといってみても、これは輸入量からいっておのずから制限されてくるのではないか。ということになると、勢い、私は、少なくとも新設のこの火力発電所に対しては、排煙脱硫装置は義務づけていくという積極的な施策というものが当然とらなければ、今日のこの公害問題は解決しないのではないか、こう思うわけですが、どうでしょうか。
  43. 井上政府委員(井上保)

    ○井上政府委員 排煙脱硫施設の装置の件でございますが、これは従来必ずしも十分でなかったという点におきましては先生のおっしゃるとおりでございますが、四日市判決以後におきましては、排煙脱硫装置をつけるという機運が全体的に非常に高くなってまいりまして、われわれといたしましても極力これをつけさせる。したがいまして、古い発電所で、非常に密集地帯にあって土地がなくてつけられないというようなところは、極力ローサルファの燃料を使いまして対処するということにいたしまして、今後できるものにつきましては極力もう排煙脱硫装置をつけるということで考えていきたいと思っております。  それで、法律的な条件にするかどうかの点につきましては、現在まだ検討中でございます。
  44. 藤田委員(藤田高敏)

    ○藤田委員 通産大臣、どうですか。
  45. 中曽根国務大臣(中曽根康弘)

    中曽根国務大臣 いま公益事業局長が申されましたように、いろいろなファクターを検討しておるという最中でございます。
  46. 藤田委員(藤田高敏)

    ○藤田委員 法律的に義務づけていくという、そういう御意思はありませんか。
  47. 中曽根国務大臣(中曽根康弘)

    中曽根国務大臣 これは排出基準とか環境基準、そういうところでいま攻めておるわけでございまして、その基準を守らなければならないということでございますから、いまのところはそういうことでいこうと思っております。
  48. 藤田委員(藤田高敏)

    ○藤田委員 この問題はぜひ法律的にも義務づけていくという、そういう方向で取り組んでもらいたい。これは強く要求しておきたいと思います。  時間的な関係で原子力発電の問題に移りたいと思いますが、原子力発電所の問題は、従来ややもしますと、エネルギー政策の観点からこの原子力発電の必要性というものが力説されてきたのではないか。また、政策当局としても、そういった観点から取り組んできたのではなかろうか。ところが、最近、私自身の出身県でありますが、伊方原子力発電所の問題なり、あるいは茨城の東海二号発電所の設置許可に対する不服審査の申し立て、こういう問題に見られるように、非常に安全審査自身がずさんではないのか、あるいはこのままの状態で原子力発電所をつくると将来重大な問題が起こるのではないかという事態が起こっておりますが、そのことに対して、私が具体的な問題としてひとつお尋ねしたいのは、たしか中曽根通産大臣科学技術庁長官を兼務されておったときに、との愛媛県の伊方原子力発電所が認可になっておるわけであります。会社が申請をして、原子炉等規制法に基づく総理大臣の許可がおりるまで、その期間はわずか六カ月、いろいろ調べてみますと、今日まで全国各地に原子力発電所がたくさんできておりますが、審査期間の長いのは一年半、短いので六カ月ということでさまざまでありますけれども、アメリカあたりの安全審査にかける時間というのは二十カ月から三十カ月にも及んで、事安全審査に関する限りはきわめて周到な検討がなされておるというふうに聞いておるわけであります。  これはあとで具体的な事例を行政不服審査法に基づく異議の申し立て書を中心質問をしたいと思うわけでありますが、こんな短期間でこのような結論が出たというのは、伊方についてもあるいは東海二号についても、非常にその間検討する時間を手抜きするという事態があったのではないか、このように考えるわけでありますが、その点に対する考え方をまず長官からお伺いいたしたいと思うのです。
  49. 前田国務大臣(前田佳都男)

    ○前田国務大臣 ただいま藤田委員から御指摘の安全性の問題でございますが、原子力発電におきまして安全性をどうして確保するかということは、私は原子力発電の大前提であろうというふうに考えております。したがいまして、現在原子力委員会の中に、御承知のとおり原子炉安全専門審査会というのがございまして、三十人の権威者をもって構成されております。そうして原子力発電の申請がございましたときには、立地の適性、あるいは設備の安全性等につきましてきわめて慎重に審議をしておるのでございまして、いずれまた委員から御指摘があろうかと思いますけれども、この伊方の問題につきましても、これは私が着任前の問題でございますけれども、いろいろトレースをいたしましたけれども、相当慎重にやったようでございまして、ただいまその異議の申し立て等につきましては慎重に審査中でございます。
  50. 藤田委員(藤田高敏)

    ○藤田委員 行政不服審査法に基づく異議の申し立てというのは、伊方の原発に関連する申し立てが初めてじゃないかと思うのです。東海二号の場合が続いてこれはいわば二回目、こういうきわめて異例のことでありますけれども、原子力発電所の建設にかかわる問題としては非常に重大な問題だと私は把握いたしております。これは地方新聞を例にとるわけでありませんが、私どもの県の新聞の社説では、この不服審査の異議の申し立てばきわめて体系立って、一般県民あるいは国民をして納得させるだけの迫力に満ちたものだという高い評価をしておるわけであります。  そういう観点から見た場合、私はこの伊方の場合も、あるいは東海二号の場合もそうじゃないかと思うのですけれども、行政当局としては慎重に審査をしたというが、あらわれてきておるものについてはその手続、経過を含めて、やはりそこには反省すべき多くの問題点を残しておるのではないか、こういうふうに思うわけですが、この点、特に直接の担当庁は科学技術庁でありますけれども、当時、この許可をしたのは中曽根通産大臣であり、科学技術庁長官であったわけですが、そういう点では行政の責任は引き継がれるものとはいえ、当時許可をした直接の大臣としても、これはきわめて関心を持たなければならぬ問題だと私は思う。  そういう点からいって、現在の通産大臣もあるいは科学技術庁長官も、いままでこういったことはなかったわけですね。初めてこういう事態が起こったという限りにおいては、この異議申し立て書の概略については知っているのかどうか、中身はどういうものか、それに対して今日段階における一定の見解というものはどういうものかという点を、大臣及び長官から聞かしてもらいたいと思う。
  51. 中曽根国務大臣(中曽根康弘)

    中曽根国務大臣 原発の安全審査問題というのはここ一、二年の間非常にやかましくなってきた問題でございまして、原子力委員会の内部においても安全審査機構を非常に強化してきておったところでございます。四国電力の問題につきましても、そういう時代でございますから、特に審査を厳重にしてやってもらいまして、大体安全性が確認されて、私も認可に踏み切ったわけでございます。  ただ問題は、安全性の問題よりもむしろ地下水の問題があそこにはあった。炉の安全性という問題よりもむしろ社会環境の問題という問題で、安全性とはちょっと離れた問題であるように私は当時考えておりました。その後、不服審査申し立てが出たということは聞いておりますが、私は中身まではまだ読んでおりません。
  52. 前田国務大臣(前田佳都男)

    ○前田国務大臣 異議の申し立てばいま藤田委員御指摘のとおり、今回伊方が初めてでございます。それに引き続きまして、また東海のほうからも出ておりまして、まことにこの異議の申し立てば私は重大な問題であると思って、非常に厳粛な態度で臨んでおる次第でございます。  内容につきましては私も一読はいたしました。しかし、詳しくいま委員に御答弁するようなまだ段階ではございませんで、あるいは過去の審査状況等ともなれば原子が局長も参っておりますから、その事務当局からも御説明いたしたいと思います。
  53. 藤田委員(藤田高敏)

    ○藤田委員 この異議の申し立て書の中身を一つ一つやっておりますと、これはもう三時間も五時間もかかると思うのですが、さすがやはり中曽根大臣は記憶力がいいと見えて、水の問題は大きな問題点になっておるわけであります。しかし、これは私きょう詳しく触れようとは思いません。  しかし、そのことに関連して、ちょっと順序不同でありますが、この原子炉の安全専門審査委員の中に宮永一郎さんという方がおられますね。それからこの安全審査にタッチされた調査員に藤村理人さん、この方がタッチされておると思いますが、これは間違いないですか。
  54. 成田政府委員(成田壽治)

    ○成田政府委員 安全審査会の委員としまして宮永さんが委員に入っております。それから藤村さんは、その下の調査員、正式な委員じゃありませんが、安全審査会の委員の下で実際に仕事をされる調査員として入っております。
  55. 藤田委員(藤田高敏)

    ○藤田委員 この宮永一郎さん、藤村さんがこの原子力発電の安全審査に実質的にタッチをされた有力なメンバーである、この方が、たまたまこれは偶然の一致でしょうけれども、この原子力発電所の設置が決定された去年の十一月二十一日、同じ日に京都大学で行なわれた原子力学会の席上で、愛媛の関係住民からいま問題になっておる審査内容が手続的にも、また安全審査の面についてもきわめて重大な問題点を含んでいるということで、いろいろ討論をした結果、追及された結果、この御両氏は、水問題についての調査は不十分であった、住民の意思を無視して許可したことは不当であった、よって水問題に関する安全性は認められず、今回の認可は不当である、こういうことのいわば結論としてそういう署名書に捺印をしておるわけですね、署名をしておるわけです。そのときの会場の雰囲気なり条件はどういうものであったかということは、私自身は知りません。  しかしながら、こういう原子炉の安全審査にタッチをされたほどの専門家が、こういう重大な確認書に署名をされるということは、私は非常に重大なできごとだと思うのです。こういう事態が発生し、加えて安全専門審査会の会長は内田さんですね。内田会長さんも、去年の十一月の十七日に地元の代表が科学技術庁に来まして、そこでいろいろ反対の陳情をやったところで言われておることは、分水契約が不成立の場合は審査を撤回してやり直さなければならない。また、原子力発電所の設置と申しますか、設置区域内と申しますか、内径七百メートル以内に土地を持っておる反対住民がおるとすれば、これは原子力発電所をつくることはできぬ、こういうことを言われておるわけでありますが、こういう事実があったかどうかということについて当局は確認をしておるかどうか。確認をしておるとすれば、こういう事態が起こっておることに対して重大な発言、いわゆる自分が直接タッチして、この原子炉はだいじょうぶでございますということで結論を出しておきながら、別の会議ではそうではありません、これはきわめて不安なものですと言わぬばかりの確認書に署名をしておるというような事態が発生しておるとすれば、私は、この審査自身をやり直さなければいけないような重大な事情変更というものが生まれてきておるのじゃないか、こう思うわけでありますが、どうでしょうか。
  56. 成田政府委員(成田壽治)

    ○成田政府委員 先ほどの宮永委員が去年の十一月の二十一日午後、それから藤村調査員が十一月二十二日午前、京都大学の日本原子力学会の会場において学生、宮永さんの場合は約六十名、藤村さんの場合は約三十名に取り囲まれまして、そして安全審査がずさんであった、あるいは取水計画の詰めが十分でなかった、そういう確認書に署名されております。  それで、これは非常に重大な問題でありますので、原子力委員会あるいは科学技術庁もいろいろ調査しておりますが、宮永委員及び藤村調査員は、学生のつるし上げ等の状態で確認書に署名しましたが、これは自己の本意に反して行なったものであるということを表明しておりまして、藤村調査員は私信でございますが、地元の建設反対同盟に対してもそういう返事を出しておるというふうに聞いております。
  57. 藤田委員(藤田高敏)

    ○藤田委員 いまの答弁では、自己の意思に反してこの確認書に署名をした、こういっておるようでありますけれども、そういったことは客観的に認めることはできるでしょうか、これは長官どうですか。
  58. 前田国務大臣(前田佳都男)

    ○前田国務大臣 ただいま御指摘の、委員が、同一人が前言をひるがえすというふうな発言をしたということは、おそらく何か、私その場に立ち会っておりませんからわかりませんけれども、相当な事情があったのじゃないか。いやしくも学識経験者として選任されました審査委員が前言を取り消すというふうなことは、よほど何がのそういう事態があったのじゃないかと思いまして、私もその当時の状況を、ただいま御答弁いたしました原子力局長からも聞いたのでございますが、いま局長から御説明のような状況でありまして、その点まことに遺憾には思っておりますが、どうもやむを得なかったんじゃないか、そういうふうに思っております。
  59. 藤田委員(藤田高敏)

    ○藤田委員 原子炉設置に伴う安全審査の問題は、ほかの公害なんかと違って——きょうは限られた時間の中で一番肝心な安全審査に関連する部分の質問ができないかと思うのですけれども、もし事故が起こったりしたら取り返しのつかない事態を起こすわけですが、そのことについてそういう社会的に責任のある機関にタッチをしておる、そういう構成メンバーになっておる人が、いわゆるシンポジウム——それは何人かの学生に、あるいは地域の住民から詰問的な質問をされたのかどうか知りませんけれども、そういう問題について正規の機関の中で責任をもって自分の出した結論を簡単にひるがえして確認書に署名をするなんということは、逆にいえば考えられないことだ。また、われわれ第三者の立場から見て、客観的な立場から見て、そのようなことは許されていいものかどうか、そのことの当否を含めて、第三者をして客観的に納得せしめるだけの確認がない限り、この宮永さんあるいはもう一人の藤村さんですかの二人の、そういう態度を変えた真意というものが、社会的にどういうものであったのかということの確認がなされないと、問題の結論が出ないのじゃないか。あえて言えば、これは学者の本音であったとすれば、この審査自身をやり直すべきだろう、私はこういうふうに思うわけであります。  この行政不服審査法に基づいてこういう異議の申し立てが出ておるわけでありますから、この中で、この二人の学者の見解をはっきりただすような機会を、場を設けるべきじゃないかと私は思うのですが、どうでしょうか。
  60. 成田政府委員(成田壽治)

    ○成田政府委員 伊方の発電所の異議申し立てにつきましては、先ほど長官から御答弁ありましたように、非常に重大な問題であり、また、発電所につきましては最初のケースでもありますので、決定いたす前にこの内容について慎重な審査を行ないたい、そして原子力委員会にも十分相談をして、一定の期間がありますので、その間慎重に審査をして、そして決定をいたしたいというふうに考えて、目下その内容をいろいろ検討中でございます。  それから、その過程で宮永、藤村両氏の意見を聞く機会を持たれたらという御指摘がありましたが、この点につきましては原子力委員会ともよく相談をしてきめたいと思っております。
  61. 藤田委員(藤田高敏)

    ○藤田委員 そういったことは公開の場でやられますか。
  62. 成田政府委員(成田壽治)

    ○成田政府委員 原子力委員会会議、これは毎週二回ほどやっておりますが、そういう形でいろいろ異議申し立ての検討等もやっておりまして、これはいわゆる公開の場というものではない。原子力委員会会議の形で行ないたいというふうに思っております。
  63. 藤田委員(藤田高敏)

    ○藤田委員 そういう原子力委員会会議という中でやれば、これは外へ向けての、第三者に向けての審議内容というものは明らかにならないわけですから、いま言った二人の学者の、豹変といいますか、なぜ態度が変わったのかということについての確認はできないと私は思うのですけれども、どうでしょうか。  そのことが一つと、時間がありませんのでなにしますけれども、行政不服審査法に基づけば、その三十四条で、一たん内閣総理大臣だったら内閣総理大臣が処分の決定をしましても、その効力を一時停止するか、あるいは全部の効力を停止するような措置をとることができるということになっております。その効力を一時停止してでも、いま言った問題の真偽のほどを明らかにする必要があるのじゃないかと思うのですが、これは長官お考えはどうでしょうか。
  64. 前田国務大臣(前田佳都男)

    ○前田国務大臣 確かにいま委員御指摘のとおりでございますが、この異議の申し立てがございましても、処分の効力、執行、手続の続行等を妨げないという規定もございまして、われわれは極力取り急ぎましてその異議の申し立てを慎重に審査をいたしたいと思っております。いまのところ、それを取り消すとか、そういうことは考えておりません。
  65. 藤田委員(藤田高敏)

    ○藤田委員 それではこの行政不服審査法に基づく異議申し立ての申し立てに基づく審議の結論は、いつごろまでに出されるようなおつもりですか。
  66. 前田国務大臣(前田佳都男)

    ○前田国務大臣 この行政不服審査法によりますると、三カ月以内に行なうのが適当であるというふうに、たしか書いてあったように思うのでございまして、大体やはり慎重に審議いたしますのには、そう簡単にすぐというわけにいきませんので、やはりその程度かかるのじゃないかというふうに考えております。
  67. 藤田委員(藤田高敏)

    ○藤田委員 そうしますと大体三カ月以内に結論を出したい、こういうことですね。
  68. 前田国務大臣(前田佳都男)

    ○前田国務大臣 さようでございます。
  69. 藤田委員(藤田高敏)

    ○藤田委員 それで私、それに関連してなにいたしますが、そういう異例な、ある意味では予期せざる事態がこれは起こっておるわけですから、アメリカの原子力委員会ではありませんけれども、アメリカの例によりますと、冒頭申し上げたように、非常に安全審査の審議期間が長いわけですね。二十カ月も三十カ月もかけてやっている。日本は半年そこそこでやっておる。これ自体が私は、何と申しますか、いまの高度経済成長政策に基づくエネルギー政策に即応していくためには、そういうふうにピッチを早めて、そうして原子炉設置を許可していかなければいかぬ、そういう経済的な、産業政策の要求に応じておる態度が、一面としてあるのじゃないかと思うのです。  私は、ここでぜひ要請をして、長官もそういう取り計らいをやってもらいたいのですけれども、こういう異例な事態が起こった以上、どうでしょうか、これは御相談ですけれども、今日原子力に関する安全性の問題等につきましては、たしか二月二十二日だったですか、藤本という教授が大きく、日本の安全審査の基準がアメリカに比べてずさんだという点を指摘いたしております。実はこの問題について私は少しやりたいと思っていたのですが、時間がありません。私は、原子力発電を基本法に基づく自主、公開、民主のこの三原則にほんとうに沿って国民のものにするためには、私はこの機会に専門家の意見を公開で、公聴会を開いて意見を聴取する、そしてこの不服審査の申し立てに基づく結論を出す、こういうような手だてをぜひやってもらいたいと思うのですが、どうでしょうか。
  70. 前田国務大臣(前田佳都男)

    ○前田国務大臣 最初に御指摘の、産業政策、エネルギー政策から、取り急いで原子力発電を進めなくてはいかぬということで、そういう姿勢から安易な態度で、できるだけその審査を簡略にいたしまして、そして許可をするというそういう姿勢はまことに感心しないと私は思いますので、その点は先生御指摘のとおり慎重にやりたいというふうに考えております。また、従来も慎重にやったはずでございますが、いろいろこういう異議の申し立てが出たことは非常に私は残念に思っております。  それからいま御指摘の藤本教授でございますか、藤本教授の論文、私も新聞で拝見しまして、実はすぐに担当の局長も呼びまして、あるいはまた専門家といいますか、技術関係の次長も呼びまして、この論文についていろいろ私、これは一体どうだということもよく聞きました。しかしまた、現在あの新聞に出ておる程度では藤田さん、ちょっとどうも専門家が見てもわからぬそうでありまして、何か近いうちに雑誌か何かに出るようでございますので、その雑誌に出た段階において、もう少し詳しくこの論文を勉強いたしたいというふうに考えております。  それからあと公聴会の問題で御質問がございましたけれども、公聴会の問題といいましょうか、やはり原子力発電の安全性のためには一生懸命にこれまでやってき、ことしの予算でも相当とったつもりでおりますけれども、一生懸命に幾らやってもやらなくちゃいかぬという問題です。それと同時に、やはり何といたしましても地元住民の理解と協力が必要だと思いますので、そういうような意味においてもやはり公聴会等もやる。よく前向きということをいいますけれども、その面で考えていかなくちゃいかぬというふうに考えておりますが、それじゃどんな場合にどういう方法でやるかという問題についてただいままだ御答弁する段階じゃございませんけれども、原子力委員会の中におきましても、こういう問題についてただいま検討しておるということを申し上げまして、お答えにしたいと思います。
  71. 浦野委員長(浦野幸男)

    浦野委員長 午後二時三十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時五十三分休憩      ————◇—————    午後二時五十八分開議
  72. 浦野委員長(浦野幸男)

    浦野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中村重光君。
  73. 中村(重)委員(中村重光)

    ○中村(重)委員 高橋公取委員長に、最近の生活必需物資の高騰に関連をいたしましてお尋ねをいたしますが、御承知のとおりに、木材であるとかあるいは土地であるとか、また生活必需物資といたしましては大豆、小豆、最近は食管制度の中にありますところの米の投機すら伝えられているわけです。こうした商社の買い占め、売り惜しみ、このような生活必需品の投機というものは国民生活を破壊するきわめて重大な問題であると私は思うわけです。こうした情勢の中で、日本法律というものはほんとうに国民を守るためになければならないのだけれども、国民を守るために適当な法律はないのかということを考えてみますと、不十分でありましょうけれども、独禁政策の立場から独禁法四十条の発動ということが当然考えられなければならないのではないか、私はそのように思うわけであります。公取委員長といたしましても重大な関心をもって見守っておられると思うのでありますけれども、私はこの商社の売り惜しみとか買い占めといったことは、まさにこの不公正な取引であるという判断をいたしておるわけでありますが、公取委員長はどのような見解を持っておられるのか、その点について伺ってみたいと思います。
  74. 高橋(俊)政府委員(高橋俊英)

    ○高橋(俊)政府委員 私どものほうは四十条の一般調査権と呼んでおりますが、そういう権限を発動して実態を調査するにあたりましては、やはりその対象となる行為が独禁法自体に触れるものであるという、少なくとも触れるおそれがある、四十六条の場合には、さらにもっと強制的な立ち入り検査にまで及びますが、そこまでいかない段階において一般調査権を発動する場合においても、独禁法自体にかかわり合いはないというふうに判断されますと、単純に関係者を呼んで事情を調査し、その他の資料の提出を求めるというふうな行動を起こすわけにはまいらないわけであります。  そこで、いまおっしゃいましたように、確かにただいま一部で、多少下火になったとはいいながら、かなり重要資材、ことに生活に密着する物資について買い占め等の行為が行なわれ、不当に価格がつり上げられておるということはまことに遺憾なことであり、だれかがこれを取り締まるべき筋のものであると思います。しかし、公正取引委員会として、この問題について十分専門的な立場から、つまり公正取引委員会にも法律の専門家はもちろん委員におりますが、見解をただしてわれわれも何回か議論はいたしました。しかし、いまの独禁法のたてまえは、ただ単純にその行為が不公正である、公正でないというだけで独禁法に触れるというふうに判定できない。なぜかと申しますと、私的独占の場合でも、同じ不公正な取引も同様でございまするが、どちらも競争制限的な行為を取り締まろうという趣旨から出ておるのでございまして、法律が体系的に——暴利を取り締まるとかというふうな見地から不公正であるというふうにいっているのじゃないので、不公正な方法を用いてはならないということは、そういう方法を用いて他の事業者の行為に何らかの拘束を行ないまして、そして自由な、公正な活動をさせない、そういうことが一貫しての法律の体系になっております。これは私的独占も不公正な取引についても、いずれについても同じことが言える。  そういたしますと、よほど極端な場合に、たとえば単独に一人の事業者が、ある商品の大半を買い占めた、あるいは買い占めたことによって、単独に行なって、そのためにそれを原料とするもの、その他のものがたいへんに拘束を受ける、事業活動ができないというふうな場合を想定いたしますと、あるいは私的独占に触れるおそれがあると思いますが、共謀してやらない以上は、たくさんの会社が期せずして、しめし合わせたようにやっても、証拠がない。また、証拠がないし、そういう気持ちもない。たまたまA社が買い占めに走ったからBもCもみんな右へならえをして同じことをした。それで市場から品物がどこかへ隠されてしまったというような場合、こういう場合はやはり独禁法違反としての要件を欠く、こういうふうな解釈になっております。  いままで事件がいろいろありましても、今日までそういう理由の事件に対して、買い占め等に対して独禁法を発動したという経験が全くないわけでございます。物統令についても、実は買い占めに対して適用した事例がないようでございます。  そういうふうに法律の体系がなっておりますので、何らか新しい立法措置を講じなければ独禁法の活用については無理がある。したがいまして、四十条の一般調査権を活用するといいましても、実は何のためにするのかという目的を欠くことになりますので、たいへんむずかしい事件である。しかし、経済撹乱的行為でございますから、こういうものを出して、実際上行政指導で足りなければ何らか立法によってこれを規制するということを考えるのは、しごく当然ではないかというふうに私どもは感じております。
  75. 中村(重)委員(中村重光)

    ○中村(重)委員 私は、いたずらに法を拡大解釈をして適用していくということには、もちろん問題があると思います。さりとて、いま委員長が言われたように、そう狭く解釈すべきものかどうかということになってまいりますと、また私は実は異論があるわけであります。いま委員長がお答えになりましたように、独禁政策が、独禁法の適用というものがいわゆる証拠主義といったような形になっていることは私も認めますけれども、その証拠というものは座して待っておってもつかむことはなかなかできないのであります。だからして、いろいろな調査活動というものが活発に展開されていかなければいけないのだと私は思います。最近の商品の投機にいたしましても、はたして商社が個々にやっているのか、あるいは話し合いをして大手商社がやっておるのかということになってまいりますると、いろいろなケースがあるであろう、個々に買い占め、売り惜しみをやっているケースもあるでしょうし、あるいはまた大資本特有の、少ない商社でありますだけに、話し合いということも簡単にできるといったようなことから、私は投機をねらった話し合いが行なわれておるということもあり得ると思います。そこに不公正な取引というものが起こってくるのだ、私はこう考えるわけであります。  従来こうした事例の場合に独禁法が適用されたという事実がないということでありますが、いままでも投機というものはありましたが、現在の商品投機というものは過剰流動性というものが背景をなしているということは、これは事実であります。ですけれども、商社のきわめて悪質な利潤追求主義であるということも事実でありますから、できるだけすなおにこの法律を解釈して、公取といたしましては調査に乗り出して、不公正な取引というものを押えていく、もって国民生活の安定をはかっていくということでなければいけないのではなかろうかというように感じます。  なるほど委員長がお答えになりましたように、第一条の目的という点から考えてみますと「私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止」するということでありますけれども、これは、この条文を読んでみますと「禁止し、」というところで一応切れる。そして「事業支配力の過度の集中を防止して、結合、協定等の方法による生産、販売、価格、技術等の不当な制限その他」というように読んでみますと、必ずしも集団的な形とばかりとれないのではないかという点が一点。  それから、真の目的は何かということになってまいりますと、「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。」こう実はあるという点から考えるということです。  それから、四十条というのは第一条の目的を受けているのではありますけれども、条文というものはここに働くということになると私は思います。そうなってまいりますと、第四十条の調査のための強制権限というものは「公正取引委員会は、その職務を行うために必要があるときは、公務所、特別の法令により設立された法人、事業者若しくは事業者の団体又はこれらの職員に対し、出頭を命じ、又は必要な報告、情報若しくは資料の提出を求めることができる。」すなおにこれを解釈いたしましても、私は現在の商社の買い占め、売り惜しみによる価格騰貴といったような問題に対しましては、不公正な取引としてこれを適用して公正取引委員会は活発な動きを展開するということは当然であろう、そのように思います。  時間の関係もございますので、きょうは解釈論議であまり時間をとることができないわけでありますけれども、私の申し上げましたことに対しましての公取の見解はいかがであろうか、伺ってみたいと思います。
  76. 高橋(俊)政府委員(高橋俊英)

    ○高橋(俊)政府委員 確かに先ほど私が申しましたとおり、買い占め行為そのものには共同行為が伴っていない限りむずかしいと思いますが、四十条の調査の問題については、そこまで疑いがはっきりしなくてもこれは行ない得るものだし、必要とあらば、私どもは行なったほうがいいと思えばやるつもりでございます。確かにおっしゃるように、先ほど私はその疑いが全くなさそうな場合には勇み足になりやせぬかという気持ちがしましたけれども、しかしそこまで狭く解釈しなくても、四十条については、私は、商社その他——商社と限りません、だれがやっているのかはっきりしないのですが、しかし疑いが全くないわけじゃないですから、四十条による調査は行なうことにしたいと思います。
  77. 中村(重)委員(中村重光)

    ○中村(重)委員 この問題に対しましては、松尾委員からも関連質問があるようでございますから、続いてやっていただくことにいたしたい、こう思います。  中小企業庁見えておりますか。来ていますね。この機会に私は、中小企業庁が独占禁止法の二十四条に対する、「一定の組合の行為」というこの解釈、それから協同組合法の九条の二の「事業協同組合及び事業協同小組合は、次の事業の全部又は一部を行うことができる。」というので、生産、加工、販売、購買等を行なうことができるわけでありますが、これとの関連性ということについてどう解釈をしておられるか一応伺いまして、それからまた公取のこれに対する見解を伺ってみたいと思います。
  78. 莊政府委員(莊清)

    ○莊政府委員 独禁法二十四条の小規模の事業者の組合というのは、いわゆる中小企業者のみで構成されているということを定めたものと考えております。  それから協同組合法のいわゆる協同事業に関する業務の規定は組合法にございますが、独禁法二十四条のその「行為」というものは協同組合法でいっておるところの生産、販売その他の共同施設、その中に含まれるので、物的な施設だけでなくて、そういう経済行為を含めて協同組合法では事業として定めておるものである、従来かように解釈してまいったわけでございます。
  79. 中村(重)委員(中村重光)

    ○中村(重)委員 高橋委員長の見解を伺ってみたいのですが、協同組合が行なう行為でございますね。これに対しましては独禁法としては適用除外であるということで、従来とも協同組合の共同行為といったようなもの、あるいは協同組合員のなす行為ということに対しましては、独禁法の適用をされたという事例がないようでございます。ただいま中小企業庁長官の解釈と同じ解釈であるのかどうか、まず伺いましてからまたお尋ねをしてみたい、こう考えております。
  80. 高橋(俊)政府委員(高橋俊英)

    ○高橋(俊)政府委員 独禁法の二十四条に、中小企業のみを組合員とするような小規模の事業者の協同組合、こういうものを対象にしまして、こういうものは独禁法の適用除外であるというふうに書いております。しかし、適用除外であるけれども、ただし書きがあります。不公正な取引方法を用いる場合とか、不当に対価を引き上げることとなる場合というふうなただし書きがございますけれども、原則の条項においては、協同組合の構成が大企業を一切含まないという場合には、法律の上から正面から適用除外とうたっておりますので、これに対しては公正取引委員会では、その範囲では何とも手の打ちようがないといいますか、これを違法とすることもできないような仕組みになっております。
  81. 中村(重)委員(中村重光)

    ○中村(重)委員 この第二十四条のただし書きと、それから私的独占禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外等に関する法律の第二条との関係ですね。その二条によると、「私的独占禁止法第八条の規定は、左に掲げる団体に対しては、これを適用しない。」というので、適用しない団体を書いてある。第八条との関係というものもからんでくるわけでございますが、八条を受けて第二条の解釈というものがここへ出てきているわけですが、この場合第二十四条のただし書きとの関係はどうなるであろうか。これまでも排除するという形になっておるのかどうか、いずれの場合といえども第二十四条のただし書きというものは動くのかどうか、この辺いかがでございましょう。
  82. 高橋(俊)政府委員(高橋俊英)

    ○高橋(俊)政府委員 中小企業等協同組合法の第七条において、独禁法の二十四条に書いてあると同じようなことを繰り返しているわけでございます。これがなぜこういうふうになったかちょっとおかしいという感じがしますが、結局は、届け出の問題は独禁法の二十四条だけでは満たしておらないという全く手続的な問題で、ここにあらためて、独禁法の二十四条にあるのになおかつもう一ぺん述べておるということであります。しかし、御質問の趣旨は、ただし書きにある不公正な取引方法とか、あるいは不当に対価を引き上げることとなる場合というものは、この両方とも実は同じことを書いておるのでございますから、どちらの場合でも、これはただし書きでもってその場合は独禁法の適用を受ける、こういうふうに解釈いたします。
  83. 中村(重)委員(中村重光)

    ○中村(重)委員 私がこの法律の解釈をお尋ねいたしましたのは、中小企業等協同組合の共同施設というものが価格協定というのを含めるのだという解釈を中小企業庁がとっておると伺っているわけであります。私は、共同施設というものと価格協定というものはおのずから異なるものだというように判断をするわけです。共同施設というようなものを価格協定を含むという広義に解釈していくということになってまいりますと、共同施設でもって物を生産、加工する、その品物が個々の協同組合員によって販売をされる場合、あるいはそのことが正式に協同組合の決議という形でやらないにいたしましても、二以上の事業者が集まって協議をして物を生産する、あるいは販売をするというような価格協定をなすこともあり得るわけです。その場合といえども、これは独禁法違反ではないのだ、あくまで協同組合というものは、その組合員個々がやる行為といえども適用除外になっているのだという解釈をいたしますと、このただし書きというものはここにあるけれども、事実上は有名無実であって、中小企業というものには、この独占禁止法というようなものは働かないというようなことになってまいりますと、私は国民生活の関係上重大な問題がここへかもし出されてくるのではないかというように感じるわけでありますから、その点についてひとつ考え方をお示しいただきたいと思うのです。
  84. 高橋(俊)政府委員(高橋俊英)

    ○高橋(俊)政府委員 たいへん失礼しました。中小企業等協同組合法にある共同施設というものが何であるか。これはおそらく少なくとも当初立案されたときには、物的な施設ということを考えてつくったものだと思います。事実協同組合を推進するという目的の中には、その当時中小の企業者が単独では非常に合理化に進めない、そこでこれを共同して一つの共同の施設を設けて、たとえば織物業者であれば染色加工の段階を共同施設で設ける、そういうことが合理的であるというふうなことでつくられたと私は聞いておりますし、共同施設は読んで字のごとく、あくまで施設であろうと思います。だから、この「施設」ということばの中に、何といいますか、価格を協定する行為が施設として入るかと言われますと、これはその行為自体物を何も伴わない場合、共同施設ということばの中に入るかどうかは私はかなり疑問だと思います。  なお第二の点は、組合ではなくて個々の事業者がかってに価格協定を行なえば、これは適用除外の規定がございませんから独禁法に触れることとなります。  なお、ただ施設ということばの中には、共同施設には入らないというだけで独禁法二十四条の適用除外をきめている規定がどうなるのかという点につきましては、私は、解釈としては、むしろ独禁法の中で一定の要件に合致する協同組合等には独禁法を適用しないのだという原則をきめていることから反射的に考えまして、それらの組合は対価を共同して引き上げるとか、きめるとか、不当な対価にならない範囲でやれば、それは合法とみなさざるを得ないんじゃないかというふうに考えております。
  85. 中村(重)委員(中村重光)

    ○中村(重)委員 非常に重要な問題でありますので、いずれ時間が十分あります際にこの問題についてはなお突っ込んでお尋ねもし、見解も伺ってみたいと思いますが、中小企業庁長官、いかがでございますか、あなたのほうの解釈は。第九条の二にあります共同施設、これは中小企業協同組合の価格協定まで含むという解釈をおとりになりますか。
  86. 莊政府委員(莊清)

    ○莊政府委員 この第九条の二の共同施設というのは、いま公取委員長のほうから物的施設のみと解するのがすなおではないかと思われるというふうな御趣旨の発言があったかと思いまするが、中小企業庁といたしましては、従来から、共同施設というのは物的施設をつくってそれに基づいて行なう共同事業というのが入るのは当然でございまするが、それ以外の共同事業というものも排除されてない、入っておるという解釈で組合を指導してきておる事実がございます。たとえば第三号の「組合員の福利厚生に関する施設」これは組合員のために何らかの物的施設をつくって福利厚生をはかるということはもとより、従来から、組合が掛け金をいたしまして福利厚生の見舞い金を出すとか、あるいは火災にかかったときに積んである金で組合員に払うとか、こういうことも別に物的な施設はないわけでございますが、これに入るということで、小規模の形で認められてやっておった。もっとも現在は火災共済に関してはその後立法が行なわれて、同じ組合法の中で火災共済に関する別の組合制度ができましたが、それ以前においてはそういう解釈のもとで行なわれておった。それはその当時においては非合法とは考えられていなかった、こういう事態がございます。  ただ第一号の業務というのは、先生御指摘の御趣旨は私よくわかるのでございます。そういうふうにしていくと価格協定も入るし何でも全部入るではないか、それが独禁法にはね返るということは、中小企業振興をはかるということはわかるけれども、別途健全な中小企業の育成、共同事業ということから、やはり合理的な限界なり指導というものをはっきりさせなければいかぬだろう、こういう御趣旨で御指摘になっておるのだろうと思います。その点につきましては委員長も先ほど御答弁になったと思いますが、独禁法第二十四条ただし書きで、不当な方法を使うとか、価格を実質的に引き上げるようなことになったときには、いかに零細な企業だけでつくった協同組合の価格協定——これは私どもあくまでさっき言いましたように、組合法の中で合法的に読めるという指導を長年いたしてきておりますが、独禁法二十四条ただし書きで、公益の確保をするという意味から別途これは公取が厳正な態度をもって臨まれる、それはやむを得ないというよりもむしろ正しいことである、こういう解釈をしておるわけであります。
  87. 中村(重)委員(中村重光)

    ○中村(重)委員 私はきょう固有名詞をあげて具体的な事例を申し上げることを避けます。避けますけれども、協同組合の事業内容として、これをきわめて拡大解釈をいたしまして事実は不公正な取引をしておるということを承知いたしているわけであります。  そこで、中小企業庁長官から、いわゆる独占禁止法の適用除外の協同組合の共同事業とはどういうものなのか、その点についてのお考えをお聞かせいただきたい。独占禁止法の適用除外に当たる協同組合の共同事業の範囲を伺えばよろしいのです。
  88. 莊政府委員(莊清)

    ○莊政府委員 公取委員長がおいでになっておりますので、私は関係者としての答弁という程度で……。これは独禁法の二十四条の解釈適用の問題であろうと思いますので、私は関係者だと思いまするが、ここにはっきり書いてありますように、一応協同組合の行なう行為については価格協定も入ると私は申し上げましたが、これは独禁法の規定は適用しないと一応二十四条本文には書いてございます。ただしとして、「但し、不公正な取引方法を用いる場合又は一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより不当に対価を引き上げることとなる場合は、この限りでない。」つまり独禁法を適用してそういう行為は排除される。かりに中小企業協同組合でもそうであるということははっきりうたわれておるわけでございます。したがって、このただし書きに該当する場合には、中小企業の協同組合の共同事業についても独禁法の適用除外が排除される。つまり独禁法がもろに大企業並みにかかってくるということでございます。したがいまして、協同組合が行なっておる価格協定行為についても、その実態に即しまして公取のほうで調査の上、遺憾ながらこのただし書きに該当しておるという場合には独禁法の定めるところによってそれの排除措置が講ぜられてしかるべきであろう、かように私どもは解しております。
  89. 中村(重)委員(中村重光)

    ○中村(重)委員 協同組合の行なう共同事業とはどういう範囲までですか。いま申し上げたように、具体的な共同事業というものはこういうものだということをお示しいただければわかるわけです。
  90. 莊政府委員(莊清)

    ○莊政府委員 共同事業の一番具体的な例は、協同組合法九条の二の一号の生産に関する共同事業、これは、共同生産施設を持って生産工程の一部を共同化するというふうなことは、繊維の組合その他従来から非常に行なわれております。それから購買に関する共同事業ということでは、注文を一括組合が受けて、それを組合員に流していくという行為そのもの、もちろん共同購買のために何かトラックを持つとか物的施設を持つということも入りますし、一括受注というようなことは非常に重要な共同行為でございまして、受注行為そのものが共同行為として広く行なわれ、成果をあげておるわけでございます。こういうことが組合の共同行為の典型的な例かと思います。
  91. 中村(重)委員(中村重光)

    ○中村(重)委員 時間がありませんから、この点はまた後日にお尋ねをすることにいたします。  大蔵省からお越しでございますから……。先般大蔵省では、土地取得関連融資の抑制ということで銀行局の局長通達をお出しになっておると思いますが、その後の実績と申しましょうか、状況についてお聞かせいただければと思います。
  92. 吉田(太)政府委員(吉田太郎一)

    吉田(太)政府委員 この前、実は夏以来投機目的の融資については自粛を促してまいりましたが、その後、個別に状況を調べてまいりましたところ、投機あるいは投機でない実質的な融資であるかどうかということの判定が非常にむずかしいという問題が起こってまいりました。ただ、明らかに言えることは、一般の貸し出しの伸び率に比べますと、不動産関係の融資の伸びが異常に高いという状況が、私どもの三カ月ごとの調査でわかってまいりましたわけでございます。そういうことに着目いたしまして、具体的な数字でこれを規制していくことが一番実効があがる方法であろうか、かように考えたわけでございます。  たとえて申しますと、全国銀行で一般の貸し出しは、昨年の十月から十二月まででは、大体八%足らずという伸び方をしておりますが、不動産業、これが業種としては最も高いわけでございますが、これが倍近くの一五・六%、かような状況になっておるわけでございます。したがいまして、これを一般の貸し出しの伸びに合わせるようにということを基本的な考え方といたしまして、四月から六月までの期間の貸し出しについては、一切総貸し出しと同じ水準におさめるということを基本目標といたしております。  その総貸し出しにつきましては、もうすでに中村先生御承知のとおり、日本銀行で総貸し出しの水準の指導をいたしておりまして、いわゆる四半期別四%の伸びに押えるということでございまして、これが一つの基準になるわけでございます。したがって、この基準に合わせるためには、一月から三月までの計画について、不動産業についても四月−六月にその水準に達するように具体的な計画をいま各銀行から聴取しておるという状況でございます。  おおむね申し上げますと、都市銀行については従来の三分の二程度の貸し出し計画を一月−三月の線に押えております。それから四月−六月期にはさらに三分の一減らしまして、全体のいままでの、昨年の十月から十二月までの水準の三分の一ぐらいに押えるという計画を立てておるようでございます。  それから信託銀行、長期信用銀行につきましても大体同様でございまして、信託銀行は一七%ぐらいの従来の不動産業に対する貸し出しでございますが、これを一月−三月におきましては大体一二、三%の線でそろえて出してきております。そして四月−六月にはこれを五%ぐらいの水準にまで落とす。長期信用銀行も、大体同様の計画で現在臨んでおります。  これがどういう状況になっておるかということでございますが、銀行によってまちまちでございますが、従来からの商談あるいは交渉の進んでおったものについては、その中で具体的な計画のあるものについては、やはりこれを今期も認めていかざるを得ないであろうということで取り入れておるようでございます。したがいまして、こういうものについては、一月から三月までについては、これを融資カットをするということは非常に無理がまいります関係上、やってないようでございますが、たとえば非常に融資計画があやふやであるとか、あるいはその具体的な計画の着手が長期にわたるようなもの等については、融資を断わっておるというように聞いております。もちろんこれについては、この具体的な総ワクの外に、地方公共団体が土地を買うための融資というものは除いておるわけでございます。したがって、一般の不動産業に対する融資については、今後さらに一段と新規融資については縮小されていくということになろうか、かように考えております。
  93. 中村(重)委員(中村重光)

    ○中村(重)委員 そうしますと、銀行等の融資の最近の状況は通達の線に沿った好ましい状況であるという判断でございますか。
  94. 吉田(太)政府委員(吉田太郎一)

    吉田(太)政府委員 現在までのところは、総量の具体的な計画を聞いておる段階でございます。したがいまして、総量の融資の計画の中間点という意味での一月−三月の計画に関する限りは大体望ましい方向に行っておるのではないか、かように考えております。ただ、それぞれの計画の中の具体的な融資というものにつきましては、私どもは一月−三月期が終わりますころに各銀行から個別に融資状況を聴取いたしますので、その中で判定をすることにいたしております。したがって、個別問題としての融資として非常に慎重を欠く、あるいは適切を欠くかどうかということについては、まだいまのところ的確にはつかんでないという状況でございます。
  95. 中村(重)委員(中村重光)

    ○中村(重)委員 通達の中に当分の間とあるわけですが、当分の間というのはいつまでだということなんですか。
  96. 吉田(太)政府委員(吉田太郎一)

    吉田(太)政府委員 この措置はいわば一種の緊急措置でございまして、厳密に申し上げますならば何らかの権限をもって行なうべき性質のものであろうかという面がございます。これは現在のところ、銀行法に基づきます大蔵大臣の一般監督権の発動として、むしろそういう公共的な金融機関として当然社会的責任にこたえて融資すべきである、その自主的な調整を要請しておる、かような趣旨の通達でございます。したがいまして、これはきわめて異例でもあり、いわば望むらくは避けるべき手段ではなかろうか、かように考えておるわけでございます。しかし、何ぶん国民的な問題になっておるこういう土地問題、特にそれが金融機関の融資という面から加速されるというようなことがあってはならないという、そういう事態に備えたものであるだけに、できるだけ早く土地問題の異常事態、特に金融機関の関連の結果それが加速されておるという状況がやみ次第、これはやっぱり撤回すべきものである、かように考えております。ただ、これが一年続くものか二年続くものかということは、今後の金融機関の貸し出し態度を見て判断したい、かように考えておるわけでございまして、そういう意味で当分の間、こういうふうにしたわけでございます。
  97. 中村(重)委員(中村重光)

    ○中村(重)委員 同僚諸君の質問の時間を勘案いたしまして、通産大臣に対する質問、その他公取委員長に対する質問を留保いたしまして、あと一問でもって私はきょうは質問を終わりたいと思います。  山下企業局長にお尋ねいたしますが、先ほど商品投機の問題に対しまして、公正取引委員会は当然第四十条を発動して調査のための措置を講ずべきであるということに対しまして、公取委員長はこれに基づいての調査実施したいという態度を明らかにされましたが、通産省とされても、この四十条を適用しての公正取引委員会調査活動は相当であるという判断をお持ちになるかどうか、法解釈の点から見解を伺っておきたいと思います。
  98. 山下(英)政府委員(山下英明)

    ○山下(英)政府委員 公取委員長がお答えになりました点については、私どももそう考えております。そのほか、個別法におきましてそれぞれ立ち入り検査の権限等がございますので、その事態に応じては、法に基づいて、取引行為を営むもの、これを政府調査すべきだと考えております。
  99. 浦野委員長(浦野幸男)

    浦野委員長 松尾信人君から関連質疑の申し出がありますので、この際、これを許します。松尾信人君。
  100. 松尾委員(松尾信人)

    ○松尾委員 ただいま国民生活物資の異常な高騰、買い占めとか買り惜しみの問題、それで質疑がかわされてまいりましたけれども、私はこの問題をもう少し明確にしていきたい、このような立場から、まず公取委員長に聞くわけでありますけれども、詳しいことは時間がありませんので申し上げません。当然もうおわかりのところでありますけれども、この独禁法の一条、これは目的規定でございますけれども、ここにはいろいろ書いてあります。そして、不当な取引制限、または不公正な取引方法を禁止する、そして結局は公正かつ自由な競争を促進していくのだ、そして一般消費者の利益を確保するということを規定しておるわけであります。また、二条の定義では、不当な取引制限とは何だ、不公正な取引方法というものは何だということを定義しておりまして、そして、この不当な取引制限については三条でその禁止をする、不公正な取引方法につきましては十九条でその禁止をする、このような規定も明確に盛られておるわけであります。  独禁法のこのような規定というものを前提に置きまして、いま四十条の一般調査権の発動ということに触れてまいっておるわけでありますけれども、この国民生活必需物資の異常な高騰、これを何とか規制しなければいけないということは当然でありまして、国民の大きな期待をここにつないでおるわけであります。だれが、一体どういうことでやっていくだろうか、こういうことになるわけでありますけれども、このようなことを前提にいたしまして、私は端的に聞くわけでありますけれども、この独禁法で投機取引というようなことを抑制することがやれるかどうかということをもう一回明確にひとつお答え願いたい。まずこれを公取委員長にお聞きするわけであります。
  101. 高橋(俊)政府委員(高橋俊英)

    ○高橋(俊)政府委員 先ほども申し上げましたが、よほど極端な場合でないと、投機的な取引そのものをこの法律によって排除するということは法律的に困難であるというふうに思います。
  102. 松尾委員(松尾信人)

    ○松尾委員 それで、これは事実の認定になるわけでございます。でありますから、法に触れると認定すれば確かにこれは公取としては動き出さなければいけない、このように思うわけでありますが、しかし、その認定の問題になりますと、いまお話しのとおりに、これは事実証拠というものが一番大事でありますから、個々の問題というものを解決することには、確かになかなか困難はありましょうけれども、法律のたてまえとしては当然やっていけるのだ、こういうことをまず明確にしたいというわけであります。  そして、では、どういう場合に公取としては動き出すのかというような点にも今度は触れてくるわけであります。そして一番大事なことは、ほんとうに公取がやる気があるかどうかということであります。あなたのほうで、法のたてまえもそうなんだ、ですからやる気があるんだ、ですからこの法を守り、国民生活を守っていくという立場から、私のほうで十分やる気があります、こうなってきますと、非常にみんなが安心もいたしますし、そして、確かに公取に権限があるんだ、公取がこの問題についてはしっかり動き出した、このような期待というものが一ぺんにかかってくるわけでありますけれども、ほんとうにやる気があるかどうか、そして四十条等で入っていかれるお考えであるかどうかということを明確にしていただきたいと思うのであります。
  103. 高橋(俊)政府委員(高橋俊英)

    ○高橋(俊)政府委員 独禁法というのは、結局万能の法律じゃないので、やはり資本主義の公正自由な競争、そういうものを促進することによって、ひいては国民の生活を豊かにする、そういうことでありますから、直接にある種の行為を規制するという問題になりますと、先ほど申しました投機的な行為、投機による利潤を得るために行なうそれぞれ個々の業者の行為に対しましては、はっきり申し上げまして適用はできません。ただし、その業者がお互いに同じようにしめし合わせて出荷を抑制する、買い占めをやって出荷をしないようにするというようなことをする、そして値段が大幅につり上がるように持っていく、こういう行為に疑いがあるという場合には、これは四十六条を適用してもできますが、さしあたり、私どもとしては、いままでそういうふうな証拠らしきものにより——たいていの場合違反事件については、何か事件の端緒が必要なんです。職権による端緒もありますが、たいていは申告と称する申し立てがあるわけであります。証拠があるというようなことで、証拠が多少微弱でありましても、そういうことがあると四十六条によって行動を開始するわけであります。この場合、いままでのそういう買い占め事件について申告が全くないといってもいい、ただ一部の品物について共同行為があったというふうな、陳情とも申告ともつかないようなものがありまして、これは四十条によって事情を調査中でございます。ですから、せっかくの御期待にまるでそむくようでわれわれも本意ではないのでございますけれども、法律目的、体系が先ほど申しますようにできておりますので、投機的な行為を直接に取り締まるというふうにはまいらない。しかし、できるだけやり得る範囲で四十条による調査などを行なうつもりであるということは先ほど申した次第でございます。
  104. 松尾委員(松尾信人)

    ○松尾委員 それで結局は実態調査をやるかどうかということになるわけであります。それから情報の収集をどのようにやっていくかということになってくるわけであります。これは現在もうすでに公取としてはある何かはやっていらっしゃるであろう、こう私は期待をしておるわけであります。では、公取として現在このようにやっている、また実態調査のほうもがっちりやっていきたい、このような面であなたのほうはいかがですか。
  105. 高橋(俊)政府委員(高橋俊英)

    ○高橋(俊)政府委員 いろいろな思惑買いが発生してからたいへんもう時期がおくれておりまして、たいへん申しわけないのですけれども、いまはできるだけその情報を集めるということに主力を置いております。
  106. 松尾委員(松尾信人)

    ○松尾委員 ですから、情報の入手に力を入れていらっしゃるわけでありますけれども、もう一つ、公取としては、こういうものに該当した場合には当然発動できるのだという何かの鎮静剤というもの、きちっと現在も法律はあるのだ、その法律に基づいて公取はこういうことをやっていけるのだというような、そういうものが打ち出されますと、これはそれだけでも大きな抑制といいますか、鎮静剤にはなるであろう。そういう打ち出しがなくて、単に情報を集めておるとかなんとかでは、なかなか表へも出ませんし、ですからそこのところのかね合いでありますけれども、やはり一つの伝家の宝刀的なそういうものはきちっとある、その発動というものは現実にはむずかしいのでありますけれども、やっている。一生懸命力を入れてやる。このような点は、私はむずかしい、むずかしいではなくて、情報も大事でありますけれども、そういう面で大いに督励して公取が力を入れてやる、このような点をはっきりきょうはお答え願いたい、こう思っているわけです。
  107. 高橋(俊)政府委員(高橋俊英)

    ○高橋(俊)政府委員 私どものほうは、ただ、おどかし的な行為を行なうことによって鎮圧しようというのですとやはり法に対して忠実でないということになりますから、その辺はよく順序をわきまえまして、まず情報を収集することに全力を尽くし、なおその過程において幾ぶんかでも疑いがあれば、全く調査のためだけでもよろしいのですが、関係業者を呼んで資料の提出を求め、情報の提供を要求する、こういうふうなことをやったほうがよいのではないか。先ほど中村先生からの質問の過程におきましても、私は最初はきわめて消極的なお答えをいたしましたが、そうではなくて、必要とあらば関係業者を公取に呼んで事情を聞く。そうしないと、ああいうふうに二倍だ、三倍だというふうな価格につり上がったものに対して国民の疑惑が晴れないし、いろいろこれから立法措置を講ずるにいたしましても、若干手おくれといいますか、時期おくれになるおそれもありますから、われわれのなし得る範囲で、正当な法律行為として持っている権限の範囲内で適宜な措置をとりたいと考えております。
  108. 松尾委員(松尾信人)

    ○松尾委員 非常に明確になってまいりました。それで、この点はしっかりお願いしておきたいと思うのであります。  もう一つは、輸入物資の関係でありますけれども、これは輸入商社があります。この輸入商社のほうにつきましては、いま独禁法上公取としてはどのようなことができるのでありますか。いろいろの問題があると思うのでありますけれども、八条で禁止行為もあります。届け出義務もあります。それで何か輸入商社、その事業体、そういうものに対して届け出をとっているとか、やはり輸入物資がなかなか値下がりすべきものが下がっていないというようなことで、これも非常に問題でありまするので、いかがですか、この輸入商社の関係は。
  109. 高橋(俊)政府委員(高橋俊英)

    ○高橋(俊)政府委員 輸入業者、これは輸入業者に限りませんが、事業者団体はすべて届け出をするようになっております。現在、総数から申しますと二万というたいへんな数字になるのでありますが、輸入業者の分だけを取り上げますれば、おもだったものとしては四十数件でございます。これは、中には、その品目がたまたまいま問題になっておる品目のものを取り扱う業者団体も含まれております。そういうことで、輸入品を中心としたような資材の値上がり、大豆などは大半が輸入でございますが、そういうことについて、私ども、事業者団体のほうから事情を聴取するというふうなことをするつもりでおります。なお、輸入品が値下がりすべきであるのに下がらないというふうな問題につきましては、これは輸入総代理店の問題がからんでおる場合が多うございますので、並行輸入をいやしくも阻害するようなことは一切いかぬ、そういう点で監視体制を強めてまいりまして、下がるべきものが下がらない場合には、その事情を追跡していくというふうな体制をとっております。
  110. 松尾委員(松尾信人)

    ○松尾委員 以上いろいろ質疑してまいりまして、委員長のお考え、今後のあなたのやっていこうとされることがわかったわけであります。せっかくやろうと思えばやれる、そのような法律規定があるわけでございますから、これでやる。やってみて、ほんとうにどうにもできないというときに新たな立法措置等が考えられるべきであろう。ですから、まずやれるものでやっていく。そして、いまみんなが許しがたいという感情で物価の異常な値上がり、そこに買い占め、売り惜しみということを注視しておるときでございますので、今後ともにひとつ強くがんばってもらいたい、そして着実にひとつ成果のあがるような行動をとっていただきたい、このように強く要望するものでありますが、一言決意だけを聞いて私の質問を終わりたいと思います。
  111. 高橋(俊)政府委員(高橋俊英)

    ○高橋(俊)政府委員 私どものほうはそれぞれの担当部員、一々申しますとなんですが、みな十数名とかいうふうなきわめてこまかくなっておりまして、能力には限界がございますけれども、有効で適切な処置についてできるだけわれわれ研究いたしながらそれ相応の効果のあがるような措置をとってまいりたい。ただし、法律的に不可能であるという問題につきましては、これはどうしても御容赦願わなければなりませんけれども、いやしくも法律に触れる疑いがあると思われるものについては、一般調査権もできるだけ活用していくということでございますので、どうぞひとつよろしくお願いします。
  112. 松尾委員(松尾信人)

    ○松尾委員 では終わります。
  113. 浦野委員長(浦野幸男)

    浦野委員長 暫時休憩をいたします。    午後三時五十八分休憩      ————◇—————    午後四時十八分開議
  114. 浦野委員長(浦野幸男)

    浦野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。神崎敏雄君。
  115. 神崎委員(神崎敏雄)

    神崎委員 私は、質問する前に委員長に申し上げておきたいのですが、理事会でさきに決定した事項の中に、委員会は過半数以上が出席する、これを原則とするということになっているのですが、特に責任政党と自負されている自民党の委員の諸君の少ない中で委員会をやることを非常に遺憾に思います。ひとつ、委員長のほうからこういうことを今後の例にしないということが先ほどもありましたが、ほんとうにこういうことのないように警告を発しておきたい、こう思っております。  さて、大臣お越しになったので、私は質問に入るのですが、今回の円・ドル問題の中でも、とりわけ中小企業は大きな打撃を受けたということは、すでにこれは先日来明らかになっておるのでありますが、その中小企業に対する対策一つとして、金融措置問題点になっております。  そこで、私は、通産大臣所信表明に関連をいたしまして、幾つかの問題点について、これからお尋ねをいたします。  まず初めに、昭和四十八年度中小企業施策の目玉として小企業経営改善資金、これの融資制度を創設された、この経過と目的についてお伺いをしたいと思うのであります。
  116. 中曽根国務大臣(中曽根康弘)

    中曽根国務大臣 経済の激動期でありますので、小企業、特に零細企業の皆さま方が、この時期にたくましく経済界を乗り切っていけるように、金融措置を特別にやろう、そういう考えを持って、商工会議所あるいは商工会というものが法的に認められた公益法人でございますから、それと連絡協調して円滑な金融制度を開いて、小規模企業者の経営改善に資そう、そういう考えでございます。
  117. 神崎委員(神崎敏雄)

    神崎委員 それでは、その新しい制度の概要と申しますか、融資の内容、それから融資を受けられる資格、これらについての説明をしていただきたい。
  118. 莊政府委員(莊清)

    ○莊政府委員 国会にいま御提案しております来年度予算の経営改善資金についての現在の考え方でございますが、まず融資対象はいわゆる小企業を対象にいたします。製造業では、常時雇用する従業員五人以下、商業、サービス業では同じく二人以下の人を対象にするという考え方でございます。  それから限度額でございますが、一企業当たり、来年度におきましては百万円が限度、ただし、運転資金のみにつきましては五十万円を限度に考えています。  それから金利でございますが七%、融資期間は二年間、こういうことで考えております。  なお、これの融資はどこが行なうかという点でございますが、先ほど大臣の御答弁にありましたように、国民金融公庫を通じてこの融資を行なう、この場合に商工会議所、商工会からの推薦に基づいて行なう、こういうことでございます。
  119. 神崎委員(神崎敏雄)

    神崎委員 次に、政府はこれまでに小企業向けの金融措置を含めて、対策をいろいろ講じられてこられたようでありますが、これらの従来の施策と今回やられるこの制度との違い、特に従来と比較してこの制度のすぐれている点というものがあれば、ひとつ説明をしていただきたい。
  120. 莊政府委員(莊清)

    ○莊政府委員 零細企業につきましては、従来からいまお話がありましたように、いろいろな施策を講じておりますが、特に一番窮出な面は、何と申しましても、零細企業の場合には金融でございます。金融の悩みが一番深刻でございますので、従来は国民金融公庫からいわゆる零細生業資金という融資が行なわれております。それから民間からの借り入れ、もちろん銀行だけではなくて、信用金庫とか組合とかいうふうなものも民間金融機関でございますが、そこからの借り入れを円滑にするための信用保険制度というのがございまして、その中で特別小口保険というものをつくりまして、県の信用保証協会が無担保、無保証保証に立ってやる。保証料は払う必要があるわけですが、担保、保証人は要らないという特別小口保険制度、こういうものがあります。  また県から直接行なってもらっておる制度としては、こういう零細企業が近代化のために設備を買う場合には、国と県とが同額ずつを出し合いまして、機械の購入代金の五〇%を無利子で融資をしてあげる。設備近代化資金と申しておりますが、そういう制度を設けております。  また中小企業振興事業団、ここにおきましては、こういう零細企業が、メッキとか皮革等に例があるわけでございますが、集まりまして、工場アパートといっておりますが、同じ建物をつくってその中にみんなが集まって、工程を合理化して共同事業をやるという場合には、その所要資金の六五%を二分七厘という低利で貸すというふうな金融上の措置を行なってきておるわけでございます。  なお、税の上でも、今回国会に御提案しておる個人事業主報酬制度というものは、個人形態は零細が大部分でございますから、こういう層を十分念頭に置いての税の面での合理化である、かように御承知いただきたいと思います。  それで、今回の新しい金融制度と従来の制度と一体どこが違うのかというお話でございますが、(神崎委員「従来と違う、すぐれた点」と呼ぶ)これにつきましては、政府機関がひとつソフトな条件で金融をつけようという点がねらいでございます。国民公庫が現在三百万円までは保証人だけで貸しておりますけれども、金利も七・七%でございます。今回の小企業経営改善資金貸し付けは、金利は先ほど申しましたように七%、金利本特利にいたしております。特利にするために、来年度では三十億、一般会計から国民公庫に金をつけるというふうな手当てをしておるわけでございます。  もう一つの点は、無担保、無保証でございます。こういう点が、政府関係機関からの金融として従来になく条件がソフトになっておる点がすぐれた点だろうと考えております。
  121. 神崎委員(神崎敏雄)

    神崎委員 従来との違いは、よくわかりました。これに関連しては、またあとで質問をいたしますが、では、この制度利用する際に必要となる資格要件について説明をしてください。
  122. 莊政府委員(莊清)

    ○莊政府委員 資格要件の細部につきましては、予算もまだ通っておりませんし、いろいろ検討いたしております。いずれ財政当局と十分打ち合わせ、関係方面、商工会議所とか商工会あるいは中小企業関係の各種団体等とも十分打ち合わせの上、煮詰めたい、かように考えておりますが、やはり私ども中小企業庁の事務当局としての考え方は、小企業であること、これはもうはっきりいたしております。従業員五人以下あるいは二人以下と先ほど申し上げました。そのほかに居住要件と申しますか、一定の地域内で一定期間継続して事業を行なっていた人をやはり対象にしたい。それから、これは特別小口保険制度の場合にも同様でございますけれども、払うべき税金を払っておられる納税要件、これは国の一般会計の財政の金を融資するわけでございますから、特別小口保険の場合同様の配慮は要るんじゃないか。最小限、そのあたりのことをいま考えております。
  123. 神崎委員(神崎敏雄)

    神崎委員 それ以外には何も条件はありませんか。
  124. 莊政府委員(莊清)

    ○莊政府委員 これは、要件というのはことばが適当でないかと思っておるのでございますが、その小企業自体が会議所とか商工会の経営指導を受けておりまして、その会議所、商工会から国民金融公庫のほうに推薦をしてもらう、その中から貸していくというふうなことは、これはやり方の問題として一つあるわけでございます。居住要件とか納税要件とかいうのは、そういう意味では一つの資格要件でございますし、推薦の問題というのはやり方の問題というふうに私どもは理解をいたしております。
  125. 神崎委員(神崎敏雄)

    神崎委員 それで大体わかりましたが、そうしますと、いまの説明された中から、納税要件というのは国税や地方税を完納しているかどうかということですから、たとえば納税証明書というのがあればこれで客観的に確認できますね。さらに一定の居住という問題ですが、これについても居住要件でありますとこれを客観的に保障するのは住民登録、これで十分客観性があると思います。ですから、資格の要件で問題になるのは、いまあなたがおっしゃった経営指導員の指導というこの件なんですね。  そこで、経営指導員の指導を受けることと、商工会議所または商工会の推薦が要る、こういうことですが、この経営指導員の指導、推薦ということについて、もう少し具体的に、どのような指導内容と性格を持っておるものか、あるいはそのカテゴリーはどういうものなのか、これを聞かせていただきたい。
  126. 莊政府委員(莊清)

    ○莊政府委員 零細企業に対しましては、国としては、特別の指導を行なう必要があるということで、従来から国と県が協力しておるわけでございまするが、国も一般会計から相当額を出しまして、商工会議所、商工会に指導員というものを置いてもらっておるわけです。そして、現在、国と県で指導員の人件費というのは全額補助した形になっておりますが、指導員に対しては、中央で定期的な研修教育というふうなことも行なっておりまするし、それぞれの会議所、商工会の地区内で零細企業に対する経営の指導を行なわせておる。人件費のほうも国と県とで折半して見ておる、こういうことでございます。  その指導内容でございますが、これはもう実に多岐にわたるわけでございます。小企業でございまするから、いろいろな点で知識、経験も足りませんし、情報も不足する。しかも企業でございますから、個人経営の場合でも、中ぐらいの会社が全部で手分けしておることを大体一人か二人の人で全部考えて処理していかなければならぬということでたいへんでございます。そこで、やり方としては、巡回指導ということもやっておりますが、窓口に来てもらっての相談に乗ってあげる、そしていろいろなことを、もう何のことは教えません、指導しませんということではなくて、聞かれたら、頼まれたら何でも能力の許す最高限度までやるというのが本務になっております。  それで、やはり一番重要なのは、経営のあり方について企業者自身ではなかなか判断がつかない、あるいは知識、知恵がないというふうなところを診断してやりまして、そうしてこの経営をこう改善しなさい、そうすればよくなるというふうな経営のあり方についての基本的な判断、助言ををしてあげる、これが指導員として一番大切なことでございます。そのほか、もろもろの相談、苦情、全部受けてやる、こういうたてまえにいたしております。
  127. 神崎委員(神崎敏雄)

    神崎委員 いまいろいろ御説明を伺って、いよいよこれからそのことについてお聞きしていくのですが、結局はもろもろのことやら経営のことやら、もうありとあらゆる相談を受けるというようなことですが、その相談を受けた上の結果の判定というものは、この受けた指導員の主観的な判断によるものである、こういうことになるのですが、それでいいのですか。
  128. 莊政府委員(莊清)

    ○莊政府委員 経営指導をもっぱら行なう専門の職員として商工会議所がその経営指導員を設置しておるわけでございます。あくまで商工会議所の職員でございます。ただ、仕事の持っておる公共性、これに着目いたしまして、いま国と県が全額人件費の補助をしておるということでございます。それで個々の零細企業に対して、経営の基本的な問題はここだからここをこういうふうにぜひ改善することが適当であるという指導をするわけでございますから、これはあくまで専門家として日々やっておる点でございます。一々商工会議所の会頭がその名において勧告をしたり指導をするというふうな実態ではございません。
  129. 神崎委員(神崎敏雄)

    神崎委員 そうすると、ここに中小企業庁が出しておられる「経営指導員必携」というのがありますね。これを承知しておったら、先ほどから言われている一定のところに居住しておる、あるいは税金を完納しておる、こういうことが必須条件であるならば、別に、ことさら特定の教育を施された指導員が指導しなくとも、ただ税金が納まっているかどうか、あるいは一年以上同じところで同じ事業をやっているかどうかということがあって、ほかに要件がないと言うなら、客観性はそこで認められているのだから、ことさら指導員でなくても、だれでもそのことを確認すればやれるという基準になるのと違うのですか。
  130. 莊政府委員(莊清)

    ○莊政府委員 居住要件とか納税要件というのは、特別小口保険の場合もそうでありまするし、やはり国の資金的な助成を行なうという点では共通でございますから、特別小口保険と少なくとも同水準のことというふうに、いま事務的に内部で検討しておる点であるということを先ほど申し上げました。  この融資制度を今回設けましたのは、従来からぜひこういう制度が要るということが中小企業の業界からも要望があったわけでございます。いま申し上げましたように、商工会、商工会議所では指導員という専門家を置いて、長年零細企業を対象にしてその経営改善指導を行なってきたわけでございまするが、指導といいましても、そこでとまってしまう、金融についてなるべくソフトな条件のものをひとつ、その指導を受けた線に即して企業が行おうとする場合に、普通どうしても資金需要が起こりますので、そういう場合に金融とうまく結びついて、口だけの指導でなくて、助成措置のほうまで手を伸ばしてもらいたい、そうでないと、なるほどけっこうな指導であったと思っても、なかなか自分の力だけではできにくい面がある、こういう点が足らない点として指摘されておったわけでございます。  そこで、零細企業対策を本格的に進めるためには、従来の経営指導そのものも強化していくということがもちろん大事でございまするが、その経営指導に魂を入れると申しますか、経営指導の線に即して企業が経営改善を行なう場合に助けになるように、それが実を結び得るようにこういう金融制度を設けて、そうして指導員に推薦をさせて金をつけていくということが経営指導の実をあげるものであろう、かような考えが基礎にあるわけでございます。そこで、今回のように商工会議所、商工会の経営指導事業のいわば一環という考え方でこの金融制度国民公庫につくった、こういうことでございます。
  131. 神崎委員(神崎敏雄)

    神崎委員 たかだか百万円の金を借りるのに、まず税金が完納されていて、一定期間同じところで生業が営まれているという客観的な保証があって、その上にまだ経営そのものの指導に魂を入れなかったら五十万、百万の金を貸さない、そういうようなきびしいワク内でしかこの融資というものは受けられないのですか。経営指導員なるものの指導によってこれからやられようという積極的な理由というものをいま聞かしてもらうと、中小企業というものはあまり経営もじょうずでないし、やることもあまり魂が入っておらぬ、だから国から金を借りなければいかぬような状態になるのだから、ひとつここで魂を入れかえて経営を強力な形に運営できるような指導をしていくんだ、それに従ったら五十万、百万の金は貸してやる、こういうふうに受け取っていいんですか。
  132. 莊政府委員(莊清)

    ○莊政府委員 私が申し上げたのは、いまお話しになったような趣旨で申し上げたつもりでは実はございません。私のことばが足りなかったならばおわびをいたしまするが、最初に申し上げましたとおり、零細企業というのは非常に困難な問題を多くかかえておるわけでございます。非常に小さな企業体で、多くの場合、個人企業のような形でもろもろの問題に全部立ち向かわなければならぬというふうな経営上の非常にむずかしいハンディキャップを背負っております。したがいまして、経営の改善指導に対する期待というものは、当然にもう従来から非常に大きいわけでございます。  そこで、国も県も力を入れまして、会議所、商工会に対して補助をいたしまして、経営改善指導につとめてきておるわけでございまするが、魂が云々と申し上げましたのは、ただ口だけの指導ということに、従来は残念ながらその指導事業というのはとどまらざるを得なかった、その点でございます。決して中小零細企業自体が魂が云々ということでは、もちろんございません。零細企業は必死になって事業をやっておるわけでございます。それに対して指導をするのだが、指導だけにとどまってしまうということでは、その指導の効果はそこでとまる、そこで、指導そのものに魂を入れ、効果をあげ、零細企業の指導に実をあげたいということがこの金融制度のほんとうの最初の起点である、こういうことを実は申し上げたわけでございます。
  133. 神崎委員(神崎敏雄)

    神崎委員 話をごまかしてもらっては困るんだが、その指導に魂を入れるというような表現は、さっきの質問のときの答弁にはなかった。中小企業の経営に魂を入れるということを言われたので、経営に魂を入れるとは一体どういうことかということを聞いたのであって、そしてまた言うと、今度は非常に抽象的にもろもろということですが、ではもろもろとは中身は何かということになってくると、これは一時間や二時間では済まないと思うのです。先ほどは、巡回もしてやる、窓口に来ても相談に乗ってやるんだ、こういう答弁もあったのですが、あとでそのことについても関連して聞きますけれども、ほんとうにそういうことがやれるのですか。やる自信があっておやりになるんですか。そういうことが長官、具体的にできるのですか。ここで質問しているときにはそういう答弁をされていますけれども、具体的実情としてそういうことがほんとうに実現し、また実施されると思っていますか。自信があったら自信がある、必ずやるなら必ずやる、やろうと思っているんだったらやろうと思っているんだ、一つの構想である、プランであるという程度のことでもどちらでもよろしい。
  134. 莊政府委員(莊清)

    ○莊政府委員 従来から全国で五千人程度、この経営指導員というものを配置して指導につとめてきておるわけでございます。当然零細企業の数というものは非常に多いわけでございまするから、すべての零細企業にまんべんなくその指導が行き渡っておるかといわれますると、現状においてはまだまだ不十分だ。これからこれはよほど強化していく必要があるということは、率直に認めざるを得ません。ただ、指導員としては、何とか零細企業経営をよくしようということで懸命の努力をしておる、これはもう私どもよく認識しておるところでございます。
  135. 神崎委員(神崎敏雄)

    神崎委員 それを追い詰めていったら時間をとるのですが、あなたがいま言われたので、あとで言おうと思っていたことが逆になって先にくるのですが、いままでやろうと思っていたことが不十分で、なかなか思うようにはいかないのだと言われております。あなたのほうから出ているこの資料なんですけれども、これは中曽根大臣も聞いてもらいたいのです。  小規模の事業者というものは商工会議所あるいは商工会に結集されて、もろもろの相談についていろいろな角度で懇切丁寧に指導されるらしいし、魂も入れられるらしいが、東京商工会議所には小規模事業者というものは一体何ぼあるか。三十四万二千七百八十あるのです。それに対して指導員というのは九十五名なんです。九十五名の指導員が三十四万二千七百八十軒の小規模事業者をどのような形でやっていこうとしているのか。これでもろもろのことをやったり魂を入れたり、いろいろなことができるのかどうかということです。たとえば私の出身地である大阪に例をとりますと、大阪には十六万二千七百八軒ある。ここに指導員は五十三名だ。隣に堺市というところがあります。ここは私はよく知っておりますが、中小企業の町、堺と言われるくらい今度のドル・ショックでも非常に大きな被害をこうむるところですけれども、ここでは中小企業庁は一万五千四百七十六捕捉されている。ところが指導員はただの八人だ。こういうような機構と中身で、いままでに答弁されたようなことが保証できますか。中曽根大臣、どうですか、この現状は。
  136. 中曽根国務大臣(中曽根康弘)

    中曽根国務大臣 指導員がそういう大都会の商工会議所の一部において不足しているということは事実でございます。これらは順次強化していきたいと思っておりまして、今度の増員のワクの中においてもそういう措置をとっておりますし、また、そういう大きな都会の商工会議所は支部をつくる必要があると思いまして、そういう支部の設置についてもいろいろ進めてやっておるところでございます。
  137. 神崎委員(神崎敏雄)

    神崎委員 答弁まことに不十分で、不足であります。こういうふうに具体的な事例を出すと、将来必ずこうするとか、こういう考えを持っておるということの答弁に終わるのですが、ものには常識というものがある。ところが、これはもう常識はずれもはなはだしくて、将来ふやすといっても、三十万のところに五十人くらいだとかいうもので、一体先ほどから言われているように、もろもろのことを窓口で懇切丁寧に何でもかんでも聞いてやるんだということは、体制上も、これはもう話にならぬ。商工会議所とか商工会というところに、この金融をしてもらおうと思う中小企業者が訪れたり、また、そこのこれだけ少ない指導員を待っておったら、三年目か五年目に当たるか当たらぬかわからない。指導員一人で一年の間に幾らの事業所を受け持つのかといえば、大体約七百件だといっておるのですね。一年は三百六十五日ですよ。春夏秋冬祭日も休日もあらばこそ、指導員が朝から晩まで走っても、年じゅう走っても二年ですよ。これで祭日も休日も何にもなしで、そうしていま魂を入れなきゃならぬような不十分な経営しかようやらぬと見ておる中小企業者を単に口先だけではなしに、懇切丁寧に自立が確保できるようなやり方で指導するのだ、全く相反した、矛盾したことである。商工会議所とか、商工会とかいうところの窓口に制約しないで、たとえば各行政区の区役所とか、そういうところに商工課というところがありますが、そういうようなところもひとつ融資の道を開くようにして、それに対する事業費なり、その他をひとつ国が十分に保証していけば——そういう人を別にたくさん雇ってやらなければ、もうそれは圧倒的に雇わないと、そういうあなたがいま説明されたようなことの親切なことはできませんよ。ただ、金を借りるのには、いわゆる税金を納めている、一年以上なり同じところで営業をしていること、それで大体いいのだ、そういうようなことになっておったのだから、別にそういうことまでしなくてもいいと思うのですね。  このことは、念のために聞きますけれども、こういうドル問題や円問題で困った中小企業がいかにもこれで回生されるごとく宣伝されておりますけれども、これを借りようと思えば、いま言うような形のワクの中へ入っていく。そうじゃなしに、何かほかにこれに対しては目的があるんじゃないだろうか。たとえば、相談に行った場合には商工会の会員になれとか、あるいはおまえの帳面のつけ方は間違いだからこれは青色申告にしなければならないとか、こういうような指導を強要したり、ワクをはめたりするようなことはあるのかないのか、何かそういうような折衷的なものがあるのかないのか、これを答えてください。
  138. 莊政府委員(莊清)

    ○莊政府委員 零細企業金融につきましては、先ほど申し上げたわけでございまするが、政府が直接行なう金融としても、国民金融公庫の貸し付け等は相当件数、金額が利用されておるわけでございます。今回国民金融公庫にこういうまた融資制度を設けました趣旨というものは、先ほど申し上げましたように、経営改善指導ということで別途やっておるわけでございまするから、その成果をあげるためにこういう金融制度を設けたわけでございます。スタートしたばかりでございまして、国民金融公庫全体の融資規模は現在一年間数千億にすでに達しておりますけれども、今回は三百万程度でございますから、全体の中では非常に小さなウエートしかどうしても残念ながら持ち得ないということは認めざるを得ません。ただ、やはり経営改善指導というのは、その指導を受けた、指導してくれということで積極的に努力をしておられる零細企業の人にとっては、指導しっぱなしという従来の体制に比べますれば、やはり相当期待できる、明るい前進ではないか、かように考えておるわけでございます。  それで、その場合に何か指導にからみまして、商工会議所に入らなければ指導してやらぬとか、こういうことがあるのではないかというお話でございますけれども、従来から商工会議所、商工会というのは法律上もはっきりございますように、地区内の商工業の総合的な発展をはかることが任務であるということがございまして、会議所の会員になっていない零細企業に対してもどんどん指導、相談何でもやっておるという実情は先生も御案内のとおりだろうと思います。この融資につきましても、会員でなければ診断、指導もしない。したがって、融資の対象にも推薦にもならぬのだ、こういうことはないわけでございます。
  139. 神崎委員(神崎敏雄)

    神崎委員 青色は。
  140. 莊政府委員(莊清)

    ○莊政府委員 失礼いたしました。  青色申告につきましては、中小企業対策として、実は従来からやはりどんぶり勘定ということでは、なかなか中小企業も経営の近代化の足がかりがつかみにくいのだという判断から、青色申告というものを政府としても指導奨励してきたということはございます。したがいまして、今後も従来同様、やはり記帳に関する相談等は相当多いと思いますので、そういうことは続けまするが、青色申告してなければ、あるいはすると約束しなければ経営指導など今後もうお断わりでありますというふうなことは、従来も全然していないと確信いたしております。
  141. 神崎委員(神崎敏雄)

    神崎委員 従来までのことを聞いているのではなしに、きょうからあしたに行くところについて聞いているのですが、ここは青でも白でもこれには関係ないですね。  それでは伺いますけれども、ここにこういうことが書いてあるのですね。これは「経営指導員必携」です。中小企業庁から出たやつです。あなたもお持ちであろうと思いますから見てください。二十九ページのまん中ぐらい、「国税当局は、現在、青色申告の普及育成に努力している。」「経営改善の一環として、税務指導の着眼は青色申告の普及育成にあるといえよう。」「青色申告会の組織化に協力する気がまえが望ましいのではあるまいか。」これはいまあなたが言われたとおりなんですね。ところが今度の「経営改善普及員必携」、「記帳指導編」、これの六ページの下から三行ですが、青色申告をしているかどうかという問題で、「個人、法人ともに青色申告をしているかどうか、もし白色申告ならば、なぜ青色申告をしないのか原因を究明し、税に関する正しい理解を与えて青色申告にするよう指導すること。」それからこれの二十五ページに、「逆に青色申告をさせるための記帳指導といってもよいだろう。」「青色申告を勧奨し誠実記帳を指導すること」という欄の中で、記帳指導目的一つに青色申告承認申請があるということでこういうことを出して、続けて「逆に青色申告をさせるための記帳指導といってもよいだろう。」お金を借りるときに、この経営指導やらあるいは経営改善普及員というまことにお粗末な人員構成ですけれども、これを必携として持ってきているのですね。これに当てはまらなかったら百万円、五十万円の金が借りられない。一方ではドルのショック、円の問題、それをあたかも救済するがごとくぶちあげて、目玉商品のごとく振り回しておって、中身は実は商工会あるいは商工会議所の中へ入れていく、そのことが目的である、こういうふうに思うのですが、この必携は、おたくから出していないのですか。必携は指導員が持って歩くものじゃないのですか。もしこのとおりやっていないというなら、指導員は、あなたの思っていることとだいぶ違うことをやるのですかね、どっちですか。
  142. 莊政府委員(莊清)

    ○莊政府委員 税務の関係につきましては、中小企業者からは、特に零細企業からは、その指導を十分やってほしいという要請というものは、従来から非常に強いわけでございます。そこで、記帳指導制度というものがありまして、もっぱら税務申告の関係の記帳指導につとめておるわけでございますが、青色申告ということを前提としまして、いろいろ税制上の零細企業、中小企業に対する優遇措置というものも近年整備されておるわけでございます。また、青色申告をするための帳簿類の整理とかいうことを通じまして、経営の合理化という足がかりがまたおのずからつかめてくるということで、どんぶり勘定の経営をいつまでも続けていくということから中小企業といえども順次脱皮をしてもらいたいということから、青色申告をなるべく努力してひとつ皆さんもやってくださいという呼びかけをし、指導をしておるわけでございます。したがって、記帳指導員としてはもちろん強制はしないわけでございますけれども、大部分の人が青色申告をしたいのだが、帳簿のつけ方がわからぬから、伝票の整理のしかたがわからぬから教えてくれということでおいでになる、それに対して指導をする。たまたま青色申告についてまだ十分な理解がないというふうな人に対しては、青色申告ということは非常に経営の合理化にも役立つし、努力してひとつやるほうがいいことだという意味の啓蒙指導ということも重要な仕事になるわけでございます。そこに述べられておることは、いま申し上げましたような趣旨に立ったものでございまして、青色申告をしないとか、白色申告をずっと続けるという人たちを中小企業政策の外に締め出さなければいけない、めんどうを見てはいかぬ、こういうこととはおよそ違うわけでございます。中小企業努力をしてなるべく青色申告のできるような方向にひとつ進んでもらいたい、指導もします、お手伝いもしましょうということで指導しなさいというのがその必携の精神だ、私はさように理解をしております。
  143. 神崎委員(神崎敏雄)

    神崎委員 聞いておることだけ答弁してもらっていただかぬと、幾らか余裕が——委員長あるいは理事の方に御了解を得て十分や十五分延びることは認められているのですけれども、時間はどんどんたつので、伺っていることだけについてひとつ答弁してほしい。  私の伺っているのは、いま中小企業が帳面をつけるのに記帳に弱くてわからないのだ、そのために事業がうまくいかないのだ、だから政府さん、ひとつよろしく教えてくれといっている要望じゃないのですね。これは中小企業に金を貸してやるのだ、約三百億貸すのだ、そして百万円、運転資金の場合は五十万円貸してやるのだ、これが出てきていることについて、これを借りるためにはどういう要件——要件とじょうずにいっているのですが、条件ですよ。その条件は何かといえば、税金を完納して、一年以上一定の事業をやっておった者がまず該当するのであって、それ以外には、青色であろうが白色であろうが、あるいは商工会議所の会員であろうが商工会の会員であろうがなかろうが、これはもう一向に差しつかえなしに全部貸します、それは当然そのとおりです。憲法十四条に基づいてもそのとおり。しかしながら、何か話を聞いてみると、記帳指導のところへ重点がいく答弁、強力にそこに比重がかかってくるのですが、そうしたら、この金を貸すのはそれがほんとうのねらいか、語るに落ちたのかと言わざるを得ないのですが、私は金を借りる一つの資格の要件について質問をしているのです。  ところが、その中身を読めば読むほど、どうやら金を借りようと思えばそちらのほうの拘束がきついなと思って調べてみたら、こういう「経営指導員必携」なり、「経営改善普及員必携」というようなものが出てきて、それで指導員というものは一体どれだけおるのだろうと思って調べてみたら、先ほど読み上げたようにまことにお粗末な構成である。だから、この問題に重点を置くだけではなしに、いま言うているのは、他に目的があってこういう制度をやられているのだなという裏づけのほうがずっと多いのですね。  そこで、たとえばこういう新聞があるのです。これは一月八日の朝日新聞ですが「小企業へ新融資制度、無担保無保証、難航のすえ創設決る」という題で、「これは、全融の常識に反する制度だとして、大蔵省は難色を示していたものだが、共産党系の民主商工会対策として自民党が創設を要求し、これを大蔵省も受入れたもの。」これは朝日新聞で、民主商工会というものは共産党とは関係ありません。共産党は政党であります。民主商工会というものは任意の中小企業が集まって、そして経営やら税金やらあるいは労災保険やら、いろいろなものを、いわゆる弱い者が集まって相互に知恵を出し合って、法律的なことは弁護士さんに相談するとか、あるいは帳面のことは計理士に相談するとか、そうして独立して現在全国に二十二万をこえる組織がある。それを、こういう共産党系という言い方にはわれわれは異論があるが「共産党系の民主商工会対策として自民党が創設を要求し、これを大蔵省も受入れたもの。」これは朝日新聞。同じく十四日の日刊工業には「各地で共産党系の民商の組織活動が根をおろしはじめているので、自民党としてもこれに対抗するため商工会の機能を拡充し、商工業者の票をつかもうというわけだ。」これは座談会です。こういうようなことを、マスコミさんは、その中を、ちゃんとそちらの意図をくんで書いておられるのでしょうが、こういうことでこの小企業融資というものが始まっているのですか、長官。
  144. 莊政府委員(莊清)

    ○莊政府委員 その新聞の記事はよく存じませんが、中小企業庁としてそれはあずかり知らね記事でございます。
  145. 神崎委員(神崎敏雄)

    神崎委員 それではこれには全然関係ないというわけですね、そういうことも考えてない、純粋に今度は中小企業に金を貸すのだ、そういうことですか。
  146. 莊政府委員(莊清)

    ○莊政府委員 さようでございます。
  147. 神崎委員(神崎敏雄)

    神崎委員 それから、関連して、先ほど長官も認められているように、小企業というのはたいてい少人数なんですね。夫婦でやっているところ、子供を入れての家内工業です。こういう場合に、窓口に来てもらうこともあるが、巡回することもあると言われたが、これはできるだけ機構を充実して、さいぜん中曽根さんも言われたが、可及的すみやかに充実をして相談に行ってもらう。でないと、窓口へ呼び出されて行っておったら、その日一日もう仕事にならないのですね。きょうび百万円、五十万円の運転資金なんていいますけれども、それこそマンションの敷金にも足らない、そのくらいの金なんです。それを借りるためにこれだけのいろいろな角度からの制肘があって、その上にまた一日棒に振って窓口にとやかく言わなければならぬのですが、できるだけこれはひとつ巡回その他で行ってもらいたいと思うのですが、そういうことにしようと思えば、先ほどあげたいわゆる東京では三十四万二千七百八十、大阪では五十三人、堺で八人、これはどのくらいふやしたら中小企業サービスが裏づけられるようなことになるのですか。それを聞かしてください。どのくらいふやしたら、かゆいところに手が届くくらいな体制になるのですか。
  148. 莊政府委員(莊清)

    ○莊政府委員 先ほど東京の例を御指摘になりましたが、現状はまさにそのとおりでございます。そこで、大臣からも申し上げたと思いまするが、やはり地方と違いましてこれだけ大きな大都会地でございますと、一カ所に会議所があって、そこに指導員が幾らおっても、なかなかお互いに徹底しないということで、近年努力をいたしまして東京でも支部を順次整備しつつございます。やはり支部をつくりまして、これだけ広い地域でございますから、それぞれの支所に行けば指導を受けられる。また、その支所の指導員がその地区内を回れる、こういうふうな状態に持っていくことが方向だろうと思います。そこで、現在一番不足しておりますのはその支所の数と、それからそこに置かるべき指導員の数だろうと思います。今後は予算措置に十分努力をいたしまして、今年度も若干は、昨年よりはふえておりますが、まだまだ不十分でございますので、今後もそちらの面は鋭意努力をいたしたい、かように考えます。
  149. 神崎委員(神崎敏雄)

    神崎委員 だから先ほど私が申し上げたように、商工会議所とか商工会だけでやろうとするからたいへんなことになって、五十万円の金を貸すために人件費が百万円も百五十万円も要るようなことになっちゃうのですね。それよりも各行政区にある区役所の商工課とかあるいは市民課とか、そういうようなところを利用して、そこでやってもらったらもっともっと効果があがって効率的になる、こう思います。  時間がないので、続いていきますが、次に、この金は、据え置き期間をなぜ設けなかったのですか。いわゆる設備投資や運転資金、こういうものについては、いままでその融資制度というものは大体六カ月から一カ年くらいの据え置き期間があったのですが、この場合には、なぜそれがないのですか、目的が金を貸すということならば。
  150. 莊政府委員(莊清)

    ○莊政府委員 長期の貸し付けでございますと、たとえば五年、十年というふうな長期のものでございますと、いまの政府関係機関の融資でも全部、据え置き期間が半年とか一年とかいうものは設けておりますが、この資金は少額であるというふうなこともございまするし、なるべく広い層に及ぼしたいというふうなこともございまして、百万円程度ということになっておりますので、期間も二年程度という短い期間になっております。その中でしいて据え置き期間をつくるかどうか。これは財政当局ともずいぶんいろいろ検討した点でございますが、スタートの昭和四十八年度においては、据え置き期間については特別の定めなくやってみる、こういうことに決着したわけでございます。現在国民公庫で三百万円以下の、保証人だけで融資をするといういわゆる生業資金貸し付けがございますが、たしかこの場合にも特に据え置き期間というものは設けられていない、かように考えております。こういう点についても、実は私ども中小企業庁としては、今後実際にやってみて、その実態も見ましてはたして二年でいいのかどうか、あるいは据え置き期間というものが全然なくて、そうしてほんとうに効果があるかどうかというふうな点については、十分実情を見た上で検討を続けたい、かように考えております。
  151. 神崎委員(神崎敏雄)

    神崎委員 さらに、これについては金利を先ほども七%にしたとおっしゃるが、同時にこの国会に提出を予定されている中小小売り商業の振興法、これも小売り商業の近代化をねらっているのですが、これは無利子ですね。この商店のほうは無利子で、中小企業のほうは七%という利率を取られて、しかも据え置き期間もない。これはなぜこういう差別があるのですか。
  152. 莊政府委員(莊清)

    ○莊政府委員 政府機関を通じて行ないます政策金融のあり方については、これはいろいろな御批判もあり、御意見もあるのは、私は当然であると思います。また、そういう御意見を十分聞きまして改善方向努力するというのが私どもの任務であると思っておりますが、いま無利子で商業に貸すと仰せになりましたのは、商店街をもう全部全面改組してしまうというふうな場合でございます。なかなか地域の商業振興の基本になるような大事業でございますけれども、実際にやるとなりますと、どこの例を見ましても甲論乙駁、なかなか犠牲が多いものでございますから、なかなか進まない。しかも、商店街でございますから、地域住民に非常に大きな影響もある。何とかこれを早急に推進する必要があるというふうなところから、これは中小企業振興事業団では、従来から工場アパートでありますとか、あるいは寄り合い百貨であるとか、いろいろな零細企業を対象にしたものについても相当ソフトな条件で融資しておりますが、今回は商店街の全面改組というふうなものを非常に急がれるということで取り上げまして、特にその制度の適用対象にしたというわけでございます。零細小規模金融のほうも、できれば金利を少しでも下げたいということは、私どもの正直な気持ちでございまするが、一人一人の企業が本来金を少しでも有利な条件で借りたいということがあって、個々に対する融資の施策でございますから、いきなり無利子というところまでは踏み切っておらぬ、こういう実情でございます。いま行政上いろいろ苦心をしてやっておる制度でございまして、こういう点については、今後もいろいろ前向きに全体的に検討すべき問題であろうと承知しております。
  153. 神崎委員(神崎敏雄)

    神崎委員 最後に、そもそも今度のこの問題は円あるいはドル問題が起ころうとも起こらなくとも、政府は出そうというふうにしておられたものか、あるいは円対策として急遽このことをお考えになったのですか、どっちですか。
  154. 莊政府委員(莊清)

    ○莊政府委員 率直に申し上げます。この構想をぜひ実現しようということで大蔵省に予算要求いたしましたのは昨年の夏でございます。今回の円・ドル問題というふうなことはもろちん考えておりませんでしたが、すでに第一次のドル・ショックというものがございました。かつ零細企業も、商業でも資本の自由化問題とか、工業でも後進国の追い上げとか、いろいろなことがある。その中で工業も商業も零細なものほどたいへんであるという問題意識は十分にございました。
  155. 神崎委員(神崎敏雄)

    神崎委員 税金も、国税も地方税もすべて完納し、営業が一年続けられていた、そういうところではショックもややましな形でやられているところもあると思うのです。ほんとうにいま困っている人たちには、先ほど私が申し上げましたように無利子で、そして一年や二年の長期据え置きでほんとうに救済するために、この問題の起こる以前に考えられたことであっても、これをそういう形の性格に少なくとも転換をしてもらって、そしてもっともっとこれの利用が安易に、容易にできるような形にしてほしい、またそうするべきだ、それがなかったら、いわゆる中曽根大臣所信表明の中にある万全を期すという形にもそぐわない、こういうように思いますので、どうしても、これをそういう形の方向へやらなければならないと思うのです。  それについて関連して申しておきますけれども、国がいまこんなことを言っていることはまことに恥ずかしい。すでにこの中小企業に対する金融対策というものは、特に前回のドル・ショック以後東京都では、前年度は百万円、現在百五十万円、そしてこれは無担保、無保証です。四十六年度は、二百四十九件で一億四百万、ことしは、まだ年度がきておりませんから、四十七年の十二月末現在です。これを利用した人が四千二百九件、三十二億八千三百万円、京都は百五十万円、これも無担保、無保証、四十六年は三千百五十一件で二十七億二千百四万円、これが四十七年の十二月末現在で千六百七十五件、十四億七千万円、大阪府は現在百五十万円ですが、この四月からは二百万円を予定している。これが四十六年度で六千八百二十五件、四十七億七千八百万円、四十七年度、これは十二月末現在、五千三百十四件で四十四億三千七百万円、この三つの都市ですでに件数にしたら一万一千百九十八件、金額ではどれだけ出しているかといえば、もうすでに百六十七億九千三百四万円出しているのです、昨年度のドル以降、担保なし、保証人なしで。たった三つの都市ですらこういう対策がもうすでに行なわれ、一年半このことが経過されて、十二月末現在でこういう数字がいま出ている。いまごろ国が、しかもいろんな制肘をつけた上でこういうような小口の融資というものは、およそ立ちおくれ、あと追いどころか、結果から評価するならば、国民から見ては非常に期待がはずれているんだ。ましてや、新聞報道でこのように報道されるような——青色であろうと白色であろうと、特定の団体であろうがなかろうが、全部公平に扱うということを言われたから、その点については追及はしませんが、もっともっと大幅な、もっともっと楽な形で金融をしていただく、またしなければならない。また、われわれもこのことについては今後追及していって、どんどんとこの点を拡充強化していく、こういうふうにやってもらいたい、またやらなければならない、このことを申し上げて終わります。  どうも委員長、ありがとうございました。
  156. 浦野委員長(浦野幸男)

    浦野委員長 次回は、明二十八日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時二十三分散会