運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1973-02-23 第71回国会 衆議院 商工委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年二月二十三日(金曜日)委員長の指 名で、次の通り小委員及び小委員長を選任した。  エネルギー・鉱物資源問題小委員       天野 公義君    稲村 利幸君       内田 常雄君    小川 平二君       近藤 鉄雄君    左藤  恵君       田中 榮一君    松永  光君       山田 久就君    板川 正吾君       竹村 幸雄君    藤田 高敏君       野間 友一君    近江巳記夫君       玉置 一徳君  エネルギー・鉱物資源問題小委員長                 左藤  恵君  流通問題小委員       稲村 利幸君    越智 伊平君       近藤 鉄雄君    塩崎  潤君       澁谷 直藏君    田中 榮一君       西村 直己君    羽田野忠文君       松永  光君    加藤 清政君       佐野  進君    中村 重光君       神崎 敏雄君    松尾 信人君       宮田 早苗君  流通問題小委員長       羽田野忠文君  沖繩国際海洋博覧会に関する小委員      稻村左四郎君    越智 伊平君       大久保武雄君    木部 佳昭君       小山 省二君    左藤  恵君       澁谷 直藏君    島村 一郎君       田中 六助君    羽田野忠文君       八田 貞義君    岡田 哲児君       加藤 清二君    上坂  昇君       中村 重光君    渡辺 三郎君       神崎 敏雄君    米原  昶君       近江巳記夫君    宮田 早苗君  沖繩国際海洋博覧会に関する小委員長                稻村左四郎昭和四十八年二月二十三日(金曜日)     午前十時五十七分開議  出席委員    委員長 浦野 幸男君   理事 稻村左四郎君 理事 左藤  恵君    理事 田中 六助君 理事 羽田野忠文君    理事 山田 久就君 理事 板川 正吾君    理事 中村 重光君 理事 神崎 敏雄君       天野 公義君    稲村 利幸君       内田 常雄君    小川 平二君       越智 伊平君    大久保武雄君       木部 佳昭君    小山 省二君       近藤 鉄雄君    笹山茂太郎君       塩崎  潤君    澁谷 直藏君       島村 一郎君    田中 榮一君       八田 貞義君    松永  光君       岡田 哲児君    加藤 清政君       加藤 清二君    上坂  昇君       佐野  進君    竹村 幸雄君       藤田 高敏君    渡辺 三郎君       野間 友一君    近江巳記夫君       松尾 信人君    玉置 一徳君       宮田 早苗君  出席国務大臣         通商産業大臣  中曽根康弘君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      小坂善太郎君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         経済企画庁調整         局長      新田 庚一君         経済企画庁国民         生活局長    小島 英敏君         経済企画庁総合         計画局長    宮崎  仁君         大蔵省証券局長 坂野 常和君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君         通商産業政務次         官       塩川正十郎君         通商産業大臣官         房参事官    濃野  滋君         通商産業省通商         局長      小松勇五郎君         通商産業省貿易         振興局長    増田  実君         通商産業省企業         局長      山下 英明君         通商産業省繊維         雑貨局長    齋藤 英雄君         通商産業省鉱山         石炭局長    外山  弘君         通商産業省鉱山         石炭局石炭部長 佐伯 博蔵君         通商産業省公益         事業局長    井上  保君         中小企業庁長官 莊   清君  委員外出席者         大蔵大臣官房審         議官      藤岡眞佐夫君         農林大臣官房審         議官      内藤  隆君         林野庁林政部長 平松甲子雄君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 浦野幸男

    浦野委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済総合計画に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出があります。これを許します。田中六助君。
  3. 田中六助

    田中(六)委員 私は、最近の円問題、わが国の円はいまフロートしておりますが、この問題をマクロ的に取り上げて、三つぐらい質問したいと思います。  大蔵省の方、どなたか来ておりますか。藤岡さんという人は来ていたはずだが、まだ来ていないですか。——そうしたら通産大臣にお聞きしたいと思います。ほんとう外貨保有高がどの程度あるのか、あるいは公称百八十億ドル前後といわれておりましても、その構成のぐあいなどによっては二百億ドルをはるかに突破しておるというふうにいろいろいわれておりますので、その点をちょっとお聞きしなければ質問の入りぐあいがちょっと問題だと思いましたが、おいででないようであります。——藤岡さん、外貨保有高は現時点でどの程度ございますか。
  4. 藤岡眞佐夫

    藤岡説明員 お答え申し上げます。  外貨保有高は、一番新しい数字で本年一月末百七十八億五千六百万ドルとなっております。
  5. 田中六助

    田中(六)委員 百七十八億ドル、これは一番新しい数字だということでございますが、私どもが見聞するところによりますと、実質的なわが国外貨保有高は二百億ドルをはるかに突破しておる。これは外電も伝えておりますし、一応専門家どもそういうように言っておりますが、その点はどういうことになっておるのですか。
  6. 藤岡眞佐夫

    藤岡説明員 いま申し上げましたのは、いわゆる外貨準備というものでございまして、いまの先生の御指摘の点は、たぶん外貨準備以外に、いわゆる外貨預託というのを政府為替銀行に対してやっておるわけでございます。これは、昨年一年間で二十八億五千万ドルやったわけでございますが、これは為替銀行外国からいろいろユーロとかあるいは米銀借り入れをやっておりますのを、いわばこの預託によって肩がわりするというかっこうになっておりますので、外貨準備には入れないのが適当だということではずしておるわけでございます。したがいまして、確かに、外貨準備のほかに二十八億五千万ドル昨年中に外貨預託をしたわけでございますが、これを一緒に足しますのは適当ではないというふうに考えておるわけでございます。なお、外貨準備のほかに中長期債等を購入しておりますが、これも流動性において欠ける等、外貨準備として十分の適格性はございませんので、外貨準備には計上してないわけでございます。この金額は昨年だけで十三億三千万ドル程度ございます。
  7. 田中六助

    田中(六)委員 中期債とか、その他の純然たる外貨準備を除くと、いま言っただけでも、もうすでに二百億ドルを突破しておるわけでございます。  私がいつも思うことは、日本国際会議におきまして、日本政策当局者などの主張、あるいは代表に出ている人々、そういう会議に出ている人々はもちろんでございますが、政府そのものも、いつも後手後手に行っているようで、他国の動向にどういうように対処するか、あるいは外国がどういうふうな見方をしておるか、そういうようなことだけに右顧左べんをして、日本主張日本あり方というようなことの主張があまりにも足らな過ぎるのじゃないかというような気がするのです。  その原因をつらつら考えてみますと、そこに大蔵省あるいは日銀当局、そういうものが為替管理あるいはその他の法律に名をかりて非常にミシイズムといいますか、秘密主義あるいはオブスキュランダムというような、要するに反啓蒙主義、人を教えて、こういうぐあいになっておるのだというような啓蒙をするという点に非常に欠けておるのじゃないかという気がいたしますが、この点、通産大臣はどのようにお考えでしょう。
  8. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 御指摘要素もあるように思います。やはり通貨貿易全面にわたりまして彼我の情勢を国民の皆さまに常によくお知り願っておいて、そして政府が行なう政策について非常な認識と御理解をいただく、そういうことは非常に重要であると思います。
  9. 田中六助

    田中(六)委員 大臣も多少それをお認めのようでございますが、私がこのことを申し上げるのは、たとえば外国の文献を調べてみましても、平気日本外貨準備構成について書いてみたり、それから、外国専門家は、日本のこういう円の強さ、円のあり方につきまして非常に詳細に書いているのです。そうすると、日本の場合どうかといいますと、円転換規制とかユーロダラー取り入れ規制とか、そういう日本対外債務あり方とか、外貨準備構成とか、そういうものについて非常に手を抜いた報告のしかたをしているという印象があるのです。  それで、日本学者でも、国内経済については非常に見通しのいい学者もおりますし、外国経済学者に比べまして、近代経済学につきましても非常に劣らない。ところが、一たん国際経済というものになりますと、御承知のように昔はジョン・メナード、ケインズ、最近ではミードとかマンデルとかあるいはゾーメンとか、そういう連中が平気国際会議の内容をリードする立場でうまくやっておるのです。  それで、日本も円がこれほど強くなったのでございますので、世界のキーカレンシーとして、世界の貨幣をリードするという立場、腹がまえが政府になくてはならない。その点が欠如しておるために、円がこういうふうになっても常によその国のことを考慮したりして、日本国内における対策は、中小企業対策をどうするこうするという非常にびほう策で、為替政策そのもの根本に触れるような政策をとりきれない。  これはなぜかとつぶさに考えますと、やはり私は、大蔵当局あるいは日銀の二つの場所でキャッチボールをして、通産大臣には失礼でございますが、通産大臣ほんとうにこのメカニズムを知っていないのではないか、総理ももちろんそうじゃないか、そういうような気がするのですが、その点に対する大蔵省見解を聞きたいと思います。
  10. 藤岡眞佐夫

    藤岡説明員 なかなか大きな基本的な問題の御質問でございますが、まず、国際会議等におきまして、必ずしも先生がおっしゃいましたほど私どもは何も言えないで黙っているということではございませんでして、ことに最近WP3とか、新しい通貨制度をつくろうということでC20というものが開かれておるわけでございます。実質的な討議は昨年十一月から行なわれておるわけでございますが、私どもは、やはりこれだけ日本が大きくなりましたところに国際通貨の問題もあるということを考えまして、日本考え方はこうだということを言っておりまして、現に先般行なわれました国際収支調整過程の問題におきましては、日本主張を多くの国が支持するというふうなかっこうになったわけでございます。  それから、次の日銀大蔵省でいわばキャッチボールみたいなことをしておるというような御指摘でございますけれども、この為替管理というのは非常に技術的な点がございまして、多少御指摘のようなところもあろうかと思いますが、できるだけそういうふうな誤解のないように今後やっていきたいと思っております。
  11. 田中六助

    田中(六)委員 そういう誤解のないように注意すると言っておりますが、私はぜひとも、できるだけレポートなどでも、経済学者もあるいは町のエコノミストも、政府はもちろん、私どもが十分知り得るような体制をとって、いままでの発想法というか、いままでの考え方為替問題あるいは為替相場に対することで、できるだけ国民啓蒙しようという方向に持っていってもらいたいと思います。  それで、ひとつこれは提案でございますが、こういうふうに国際金融専門家をつくり上げるという意味でも、私は幅の広い、層の深い日本体制をつくらなければいかぬ。原則的には、このためにはまず歴史的な背景とか、そういう知識がなければいかぬ。それから二番目には国際金融実務についても多くの人が知る必要がある。それから三番目は、先ほどから申しておりますように国際金融理論、そういうものについても一般にわれわれが十分熟知する。そういう三つ要素が備わると、私は日本も安泰で、しかも世界の円として、あるいは経済大国ということばはあれでございますが、これほど経済が伸びてきたのでありますので、世界に範をたれるという意味で、責任のある国になっている、ことに新しい何かの流通経済に通ずる何ものかをつくり上げるというような日本の使命もだんだんあるわけでございますので、そういう観点から、この為替問題をずっと地におろすということから、何か国際経済問題懇話会とかいうようなことを、これは一つの私の考え方ですが、そういうことで大衆にもその結果のレポートをどんどん出して啓蒙するというようなことで、一つ懇談会形式のものを早目におつくりになったらどうかという気がいたしますが、その点、通産大臣何か御意見がございましたら……。
  12. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いま御指摘のように、国際経済あるいは国際通貨に関する専門家実務家等を育てるということは非常に同感でございます。日本がこれだけ経済的に大きくなり、日本の円というものが世界影響を及ぼす力を持ってきた今日、欧米に比べましたら確かに御指摘のように、そういう理論面実務面におけるエキスパートが非常に欠如しておるように思いますし、いろいろのケースが出てきた場合にわれわれに助言していただく層も非常に薄いように実は痛感いたします。  それから、いま御指摘懇談会につきましては検討させていただきますが、確かにそういう啓蒙の必要はあると思うのでございまして、たとえば大企業や商社が為替問題その他を見通してす早くヘッジする力、あるいはそういう知識を持っておるのに対して、中小企業中堅企業になりますと、そういう知識やヘッジする技術を知らない、そのためにみすみす為替的な損をこうむる、そういうこともあるようです。  前回の切り上げの際、非常な試練を受けまして、今回の変動相場制移行については、あらかじめ手を打った会社もかなりあるように思います。これはやはりそういう知識技術が普及してきたことでありまして、これを中小企業その他にまで、できるだけ早く及ぼすということば、われわれにとっても非常に大きな責任であると感じております。
  13. 田中六助

    田中(六)委員 大臣の御見解、十分わかりましたので、できるだけ一日も早くそのような方向に持っていってもらいたいと思います。  次に、今回の円のフロートでございますが、いつ固定相場に変わるかということも大きな問題で、その時期あるいはもしも円を切り上げる場合、どのような幅ということは大きな関心事でございますが、これをお尋ねしても大臣もお答えできないと思いますので避けますが、ただ私が思うのは、常に為替変動が行なわれると、必ずアメリカ日本、西ドイツあるいはEC諸国と申しますかイギリス、これは結局為替が強いからそういうようなことになるのでしょうが、そういう特定の国々だけが相談をして、常に後進国と申しますか、発展途上国というようなものは全く無視されていく。特に日本アジアの中で一番発展しておる国でございますし、有色人種と申しますか、アジア国々人々は、日本をじっと見ておる。  そういうときに、私はこの為替相場が変わっていくたびに思うのですが、こういう後進国人たちはどういうように思っておるだろうか。たとえば円が上がりますと、今まで日本からどんどん買っておったのが、かってに上がってどうにもならない。今度はアメリカに輸出する場合に、ドルが下がっておると、非常に影響をこうむるのは、むしろ国内産業もございましょうが、やはり日本輸出国として生きていくときに、これらの東南アジア諸国のことを忘れてはならない、これがいつも無視されておるようでございますが、こういう点につきまして通産大臣はどのようにお考えでしょうか。
  14. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 御指摘のように、為替変動に際しまして、いままでの例を見ますと、EC諸国あるいは日本、ともかくその当面対象となっておる通貨を持っておる国が、その相談相手になって、いろいろな変化が起こっておるわけでございます。これは第一義的には当然やむを得ないことであると思いますけれども、その結果影響を受ける国々は全世界に及ぶわけでございます。特に、いわゆる発展途上国LDCといわれている国々の受ける影響は非常に大きなものがあるように思います。  これらの点は、やはり国際通貨体制の問題の一環として、国際的な場面で解決していくように努力すべき問題であると思いまして、そういう点につきましては、大蔵大臣に対して私からもいろいろ申し上げてみたいと思います。
  15. 田中六助

    田中(六)委員 最後に、国内の問題でございますが、中小企業対策につきまして触れたいと思います。  これは、さきの円の切り上げのときに経験を深めたために、今回はきわめて表向きは平静、しかもこの前と似た政策をとって、財政投融資からも政府関係三機関にも金を出すとか、いろんな方策をとって、一応表向き対策はとられておるようでございます。  しかし、個別にずっと調べてみますと、非常に深刻な中小企業もございます。私は、そういう個別政策もさることながら、そういう政策為替変動するたびにとるということじゃなくて、日本輸出構造を大体どうするのか、産業構造をどのように持っていくのか、そういう見取り図というものがなければ、中小企業者自分たち合理化する、これは円が強くなって、自分たちが波をかぶるけれども、だれも助けてくれないというような観点から自分合理化すると、今度は、かえって輸出ドライブがかかって、また円が切り上げられるというようなことになると、ほんとうにいつも大波、小波をかぶるのは中小企業者だというようなことにもなりかねないのです。したがって、私は、中小企業者がみずから、あるいは政府の援助によって合理化したそういう果実、その実をどういうふうに持っていくのか。あるいは先ほど申しましたような、産業構造輸出構造をどういうふうにしてやるのか。その根本対策がなければ、常にびほう策だけで終始して、政策のほうは手っとり早く一応対策をぽっぱっと立てた、八項目に準ずるようなものを立てたというようなことで終わるおそれがあるわけでございますが、こういう点についての政府の御見解を聞いてみたいと思います。
  16. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 確かに御指摘のように、通貨調整だけによって行なえるという部門はごく一部でございまして、やはり経済構造調整という基本部門のことのほうがはるかに長期的に重要であると思います。  日本産業構造は、知識集約型福祉社会を目ざす産業構造に転換させるという大方針を持っておりますが、現在の状態を見ますと、航空機とかコンピューターというような非常に高度のものは、アメリカがほとんど独占しておる。それから繊維雑貨というようなものは、いわゆる発展途上国が追いかけてきておる。この間にあって、一番苦しんでおるのは、雑貨やその他をやって、LDC諸国から追いかけられてきておる中小企業関係であると思うわけです。これが二回にわたる円の変動によって非常な波をかぶっておるわけでございます。  そういう点をよく考えまして今度は、そういう事業別構造転換の指導と、それから政策を推進していきたいと実は思っておるのです。三日前から通産局長会議をやっておりまして、つぶさに現地の事情をいま聴取しておりますけれども、やはりどろ沼のような境に浮いたり沈んだりしておるというところに零細企業を置いておいてはいけないのでありまして、むしろ転換して、さらに高度のものに進むほうが適当であるというものについては、業界とも話し合いまして、そういう構造転換を思い切ってやるように、今度は積極的に推進していきたい、こう考えております。
  17. 田中六助

    田中(六)委員 まあこの中小企業は、私どもが想像する以上の自己鍛練と申しますか、そういう合理化など自分で非常にやっております。どうか零細な中小企業も忘れることなく、日本経済の大きな発展のキーをなしておる産業でございますので、大臣のいまの御決意はわかりましたので、十分今後ともその具体化に精進されんことをお願いいたしまして、質問を終わります。
  18. 浦野幸男

  19. 板川正吾

    板川委員 通産大臣経済企画庁長官、公取の所信表明なり、あいさつなり、業務報告なりについて質問をいたしたいと思います。  まず、通産大臣に伺います。  通産大臣は、田中内閣の第二次の組閣にあたって通産大臣として留任することになった、そのときに、留任のあいさつの中で、大臣は、言語明快にこういう意味のことを国民に公約をいたしました。第一は、通産大臣として戦う相手は、一つとして物価抑制であり、第二に公害防止であり、第三に円の再切り上げを防止することである。奉仕する目標としては、国民福祉である、第二が消費者生産者と同様な、同レベルにおいて奉仕する、中小企業の擁護である、こういう意味のことをまことに明快に国民約束をされましたが、その気持ち、所信においては今日変わりございませんか。
  20. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 変わりはございません。
  21. 板川正吾

    板川委員 戦う相手の中に、円の再切り上げ防止という点は、すでにこれはこの戦いに敗れたわけでありますが、今度大臣所信表明をつぶさに検討してみますと、物価に対する意欲というのが、物価と戦う、こう約束をしておりながら、この所信表明の中に意外と物価に対する取り組みの姿勢というのがない、こういう感じがいたしますが、大臣見解はいかがです。
  22. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これは消費者行政と一体で行なうという考えを私、持っておりまして、そういう意味では、まず根本的には、長い間続いてきたいままでの通産省の機構の大改革をやりまして、そして今度は審議官を設けることにいたしましたが、この審議官を活用いたしまして、総合企画、特に消費者物価というような、いままで弱い線であった点を補強しようと思ったことでございます。  それから、生活産業局を今度設置いたしまして、いままで生活産業的な仕事をやっておった局もございますけれども生活産業という名前を冠したという意味は、やはり消費者行政あるいは物価というものを念頭に置いて、そういう観点からも行政を強く進めようという意欲が実はあるわけでございます。  その中に、今度はいろいろ化学物質の取り締まりとか、いろいろなことを国会で御審議をお願いしておるわけでございます。実際にやっております仕事の中では、最近卸売り物価が非常に高くなってきた、そういう点について個別的にいろいろな施策をいま強力にやっております。特に投機の問題等につきましては、わりあいにきめのこまかい政策をいま内面的に一生懸命やらしておるところでございます。  物価の問題についてまだ成功をおさめないことはまことに遺憾でございますけれども、ともかく物価は企画庁だとか大蔵省仕事だというふうにきめておいてはいけない、日本政府全体が責任を背負って共同責任で取り組むべき相手である、通産省は通産省の部面においてそれを引き受けていかなければならぬ、そういう信念を持って今後も取り組んでいきたいと思っております。
  23. 板川正吾

    板川委員 一昨年十二月に円の切り上げが行なわれた。一六・八八%切り上げが行なわれまして、円の切り上げが行なわれたならば、輸入の物資が少なくとも安く入るという論理になるはずであります。ところが、昨年の重要な輸入物資を十ばかりそろえて検討してみましたところが、輸入物資で安くなっているのはくず鉄とトウモロコシぐらいでありまして、あとは砂糖、羊毛、大豆、木材、石炭、原油、これはすべて一割から二割、三割近く値上がりしております。円が切り上げをされ、輸入がしやすくなり、外国からの輸入が安く入るというたてまえになっておるのに、なぜこのように輸入物資が高くなっておるのでしょう。これは大臣見解を伺ってみたい。
  24. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういう物資の中には、国際価格が騰貴して、そのために輸入価格が下がらない、あるいはいままで以上に上がった、そういうものがございます。それから石油のような場合には、OPECの原油国のほうの攻勢にあいまして、値上げを余儀なくされて切り上げの効果が減殺された、そういうところもございます。  全般的に見ますと、インフレ気味で、海外の原料物資の値段がいままでよりもかなり高くなってきた、そういうところで減殺されたということ、一部には入ってきたものが流通の過程でその引き下げを消されてしまったというところもあるいはなくはないと思います。それらはいろいろ追跡調査等もさしてみましたけれども、的確につかめないところもございました。今度のこういう事態にかんがみまして、いやしくも一部分とはいえ、この前の轍を踏まないように、いま各局に対していろいろ指示しているところでございます。
  25. 板川正吾

    板川委員 いま国民生活をたいへん脅かしておる大豆あるいは木材の輸入、これなんかを見ましても、数量において一昨年と比較して減ってないんですね。木材や大豆でも減ってない。しかし、この値段が暴騰しておる。地価が上がり、あるいは一般の物価が上がり、さらに株価が上がる、最近はゴルフ場の会員権まで暴騰するという状況でありますが、一体、国内のそういう投資でなくて投機的な動きによって物価が上がっている原因は、大臣、どこにあるとお考えでしょうか。
  26. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 先ほど申し上げましたように、海外からのインフレが波及するというところもございますが、一つの原因としては、いわゆるドルの蓄積に伴う過剰流動性が、そのはけ場を求めて土地へ来たりあるいは商品に来たり、いろいろしている要素があるように思います。この外貨と円の結合をいかにして切断するかということが当面のわれわれの大きな仕事ではないか、そういうように考えております。
  27. 板川正吾

    板川委員 そうなんですね。昨年、輸出が二百九十億ドル輸入が二百億ドル、九十億ドルという貿易黒字が出た、これが国内の過剰流動性を呼んだものと私は思うのです。ですから、そういう点に根本的に対策を講じなければいかに——きょうの新聞にありますが、暴利取締令とかあるいは物統令を発動して物価を押えよう、あるいは暴利をむさぼった人を押えようとしても、結局それは実際は不可能だろうと思います。ですから、二百九十億ドルも輸出をし、輸入が二百億ドル、九十億ドルもいわば黒字になったということが国内の過剰流動性というのを呼んだものと思うのであります。  しかし、この過剰流動性を生み出したことに対する従来の対策というのはどういう対策をとってまいりましたか。第三次円対策等がございますが、しかし、第三次円対策等を見ましても、実際それが実行される段階になったのは十二月末から一月一日あるいは二月一日、すでにもう円対策が時期的に間に合わない状態で円対策を講じておったのじゃないでしょうか。この点についての大臣の反省はありませんか。
  28. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 アメリカ側の今度のドル切り下げの措置を見ますと、われわれが昨年の秋以来非常に努力を傾倒してきたにもかかわらずタイミングが間に合わなかった、そういう反省を持っております。
  29. 板川正吾

    板川委員 そうですね。そういう点は実際手おくれであったと思います。もっと早くそういう円対策というのを実施すべきじゃないか、こう思います。  そこで、さらに伺いますが、円の切り上げがあった場合に、本来なら輸入がふえて輸出が減る、こういうたてまえになるべきでありますが、一昨年円切り上げをした後、昨年は、かつてない、有史以来の輸出がふえ、逆に輸入は伸びない、こういう状況になったことはどこに原因があるのでしょう。
  30. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 やはり切り上げの効果というものは、世界的に見ましても二年ないし三年くらいかからぬと出てこないようでございます。ドイツの場合も、切り上げてその効果が出るには二、三年かかっておりまして、切り上げた翌年くらいはかえって外貨はふえてきておる。これは一つには、切り上げた結果、その国の通貨の値打ちが上がるわけでございますから、よけいのドルが入ってくる。いずれにしてもドルのかさは多くなるわけでございます。そういうわけで、金額においてはそう減らないで、しかし数量においては少し減ってきている、そういう現象が起こるようでございまして、日本の場合も、そういう意味においては、ドルのかさにおいては減らない、そういう現象は昨年を通じて起きていたものと思います。  それから、業者によっては出血輸出を強行するのもあるのではないか、そういうこともまた考えられます。
  31. 板川正吾

    板川委員 大幅な円の切り上げがあったにかかわらず輸出が急増しておる。それはいま言ったように、中小企業者が自衛的に出血輸出をしたり、いろいろ吸収したりする点があると思います。しかし、私は、根本的には日本の低賃金、長時間労働、低い社会保障あるいは公害のたれ流し、こういう社会経済の構造そのものが円高をもたらしている最大の原因だろうと思います。  そういう点を根本的に変えない限りは、今度さらに円を切り上げたとしても、やはり同じ手で一年後、一年半後に再び再々切り上げという状態になるんじゃないでしょうか。ですから、低賃金や長時間労働や低い社会保障や公害のたれ流しという日本経済構造というのを根本的に変えなくてはだめだと思いますが、大臣はいかがお考えですか。
  32. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういう要素も見のがすべからざる大きなファクターであると思います。しかし、また一面においても、いわゆる日本株式会社といわれるように、日本全体の力というものが外貨をふやしているとも考えられます。たとえば、なぜ自動車が安くなっているか。なぜ造船の輸出があんなにふえているか。これは鉄が安いから、鉄板が安いからです。鉄板がなぜ安いか。それは臨海工業地帯にあの大規模な、しかも新しい転炉法で酸素を注入する技術を開発して、そしてかなり合理的な大きなスケールの製鉄所をつくった。そういうことから単価が非常に安くなった。そういう面から鉄板やその他が安くなり、自動車が輸出され、船が輸出されるという情勢にもなった。そういう技術面の開発あるいは経営面における努力あるいは市場開拓に対する努力、そういういろいろな総合力が入ってきているのだろうと思います。しかし、その中にあっても、御指摘のように賃金の問題あるいは公害に対する処理の問題、あるいは週休二日制その他に関する問題、こういう問題はやはり厳然としてある、そういうように思います。
  33. 板川正吾

    板川委員 鉄のコストの件ですが、アメリカでは一トンの鉄を生産するのに百三十五ドルかかる。そのうち賃金、人件費が八十三ドルかかる。日本はどうかというと、コスト全体でアメリカの賃金より低い八十二ドル。八十二ドルの中に、確かに転炉など新鋭な能率的な設備をこらしたものもあります。しかし八十二ドルのうち、賃金はわずかに二十ドルだそうであります。これは日銀調査室で発表しておるようでありますが、とにかく賃金の比率が圧倒的に低いのです。ですから田中総理が、日本は明治百年以来円は下がりっぱなしであったけれども、ここへきて上がることはいいことじゃないかと言っても、国民をそういう貧困の中に押えておって、そして円の切り上げをして円の価値がふえたといっても、それは大資本家だけが喜ぶべき現象であって、やはり国民の生活レベルを上げていかなければならないと私は思います。そういう点でぜひひとつこの反省を促しておきたいと思います。  それから次に伺いますが、第三次円対策で貿管令を発動いたしました。しかし、手おくれの気味がありますが、この貿管令を発動するについて、通産省は、業界に対して、もし円の切り上げなり通貨の調整なりがあれば貿管令は撤廃をする、こういう約束をしておったようであります。円の切り上げあるいはドルの切り下げが発表され、フロートに移行したときに、通産大臣は、この貿管令は撤廃すると言明されました。その同じ日に、大蔵大臣は、テレビで、貿管令の撤廃は困る、こう言われておったのでありますが、貿管令は撤廃いたしますか、いたしませんか。
  34. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 貿管令は、あれを設定するときに業界と話しまして、御指摘のように、円調整があるという場合には打ち切ります、そういう約束で実はやったのでございます。こういう変動相場制に移りましたから、約束を守ってこれを撤廃するのは筋である、そういうふうに申しました。しかし、その後いろいろ情勢変化もあり、国際的な変化やあるいは国内的な推移もよく見通してやる必要があるので、撤廃問題については検討する、そういうふうに後段で申し上げておいたのでございます。  私の考えとしましては、ともかく貿管令はそういういきさつでしかれましたけれども、これをにわかに撤廃するというようなことになった場合には、あるいは切り上げ率がうんと高くなったり、あるいは課徴金を設定する口実を与えたりすることになりはしないかということもまた一面おそれているわけでございます。そういうすべての情勢をよくにらみながらこの問題を処理していきたいので、しばらく検討を続けていく、そういう態度でいきたいと思っております。しかし、いまの情勢全般を大観してみますと、やはり主要なものについてはある程度継続しなければならないのじゃないだろうか、そういうふうに内心考えております。
  35. 板川正吾

    板川委員 では、貿管令は当分検討を続けて情勢を見ようということですね。  次に、私は、今度のいわば通貨騒動の根源についてひとつ見解を伺いたいと思いますが、今度の通貨騒動の根源は、御承知のように、ドルがマルク市場に殺到した、西ドイツが固定相場を維持するために、六十二億ドルもこれを買いささえた。そして、やがて日本為替市場にドルが殺到するだろうというのでフロートに移行したのでありますが、国際為替市場における投機の主役を演じたのは、アメリカ系の多国籍企業がニクソン大統領と気脈を通じて、黒字国である日独になぐり込みをかけた、こういうような説がありますが、大臣はどうお考えですか。
  36. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういう記事は新聞でも読みました。しかし、真相は確かめておりません。しかし、ある程度投機的な資金がマルクを目ざして殺到していったということは想像されます。
  37. 板川正吾

    板川委員 これは、今日アメリカはどう思うか知りませんが、世界的な常識になっておるんですね。そこで、今回のアメリカの措置がアメリカ国際収支改善にあるということは私は当然と思うのでありますが、アメリカ国際収支改善のためにこういう通貨切り下げを行ない、あるいは日本切り上げを要請する、これはアメリカ国際収支の調整改善にあるということは間違いないのですが、しかし、それならば、私は、アメリカが貿易の自由化は要請しましても、いわゆる資本の自由化を同時に要請するというのは、国際収支のアンバランスを改善するという立場からいうならば、論旨が矛盾している感じがいたしますが、どう思いますか。
  38. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そのとおりであると私も思います。
  39. 板川正吾

    板川委員 アメリカが資本の自由化を非常に熱心にわが国に要求しておることは、これは結局将来資本自由化を要請して、将来アメリカの多国籍企業日本為替市場に自由に出入りできるようにしておこう、こういうねらいがあると思います。このアメリカ系の多国籍企業のねらいというものが、私はニクソン政権を通じて、日本に資本の自由化を非常に強く要求をしておる原因と思いますが、その点どうお考えですか。
  40. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 アメリカが今回ドルを一〇%切り下げまして国際収支を改善しようとしておる反面、あれをやったときのアメリカ側の態度を見てますと、多国籍企業に対する、外国に対する資本の輸出等については優遇措置を改めていない、あるいはむしろさらに甘くしているような感じのことをやっておるのは、私は批判さるべきである、そう私は思います。
  41. 板川正吾

    板川委員 前回、円の切り上げあるいはスミソニアン体制をつくるときは、アメリカは賃金を凍結しあるいは物価を一時的に凍結をした、あるいは資本がよそに流れ出るのを押えるという措置もとった。ところが今回は、アメリカがそういった措置を緩和してはおっても規制は強化していないのですね。そういう点がドルが世界的に信用を失ってきている最大の原因だろう。そのドルが信用を失ってくるから、多国籍企業のいわば過剰流動性といいますか、それが利益を追求して各国の為替市場に自由に行きたい、そのためには日本をねらいたい、こういうことであろうと思います。  そこで、アメリカ側の多国籍企業の過剰流動性ということも問題でありますが、石油産油国が御承知のように最近毎年一月一日から二・五%値上げする、あるいは経営参加によって原油の販売権を持つ。この石油産油国に膨大な資金が集まってくる。十年後にはサウジアラビアですら四百億ドルにのぼる過剰流動性といいますか、ドルが集中するだろうといわれております。この石油産油国の過剰流動性、それからアメリカ系の多国籍企業が持つ過剰流動性、こういうものが資本を自由化した場合に、いつでも日本為替市場に殺到する可能性があるわけでありますが、こういう点に対して何らかの対策というもののお考えがありますか。
  42. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いまの世界通貨調整の問題点を考えてみますと、そういう問題点は確かにございます。いま板川先生指摘になりましたように、アメリカの多国籍企業に対する対策の放置、それからアメリカ国内のインフレの放置、あるいはさらにドルと金の結合を怠っている、あるいは世界のSDRとかドルとか円とかという通貨体制の中におけるドルとそれから金との関係における位置づけをどうするか、そういうポイントが明らかにされておりません。  それから、御指摘になったいわゆるユーロダラーの処理、こういう問題がやはり国際間の重要問題であると私思うのです。その中でユーロダラーについては、われわれのほうの調査では大体八百億ドルぐらいあるだろうといわれておりますが、この中には発生的にはいろいろ原因がありますが、アラビア関係の産油国から来ている資金がかなり預金としてある、これが動かされているともいわれております。おっしゃるとおり、一九八三年ぐらいにはサウジアラビアだけでも四百億ドル近くふえる。こういう話ですと、おそらくあの辺全体を合わせると、ユーロダラーは千億をこえ、あるいは千五百億ドルぐらいには将来伸びてくる危険性があります。そのうちの一割の百五十億ドルが動いただけでも、これはマルクが六十二億ドル買いささえてああいうふうにまいってしまったわけですから、とてもたまらぬことになる可能性があるわけです。ですから私は、いまマルクスが生きていたら、ユーラシア大陸に怪獣が徘回している、ユーロダラーという怪獣である、そういうことを申し上げたのでありますが、この怪獣征伐をやらないとやはり国際通貨体制というものは安定しない、そう私は思います。これはやはり国際間において、この規制と申しますか、考えてもらわなければならぬ大きな問題である、そう私も思います。それでやはり産油国に対しては合理的な投資を行なえるように、これは先進国が協調して産油国の話し合いに乗ってやって、そちらへ誘導すべきではないか、そう私は思います。
  43. 板川正吾

    板川委員 外国為替市場の管理というのが日本はきびし過ぎるとか、いろいろな非難があるようでありますが、私は、今回のフロート、変動制に移行された場合に、本来ならフランスのように二重相場制をとる、こういうことのほうが論理的に正しかったのじゃないだろうか、こういう感じがします。たとえば御承知のように、アメリカ国際収支の改善のためというならば、貿易の面においては自由にするが、しかし資本の移動についてはあくまでも管理をする、いわばフランスの二重相場制、そういう考え方のほうが将来の資本の自由化というものに対処する手段としてはいいのじゃないだろうか、こう思いますが、いかがでありますか。
  44. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 二重相場制の点では、マルクとフランの間で話がつかないでおったのだろうと私は思います。マルクは、それでこの前は切り上げという形に一斉にいったわけでございます。二重相場制というのも一つのアイデアであると思いますが、これは技術的な手続、それからその相場制からくる反応が非常に経済的な活動に乱反射してくる要素もあるのではないかと私は思います。日本のような情勢からすると、やはり一応は変動相場制に移って、それからその実勢を見きわめて次の段階を考えるというオーソドックスな方法が、日本のような貿易をやっている国については安定性を早く回復する、そういうふうに私は考えます。
  45. 板川正吾

    板川委員 いずれにしましても、私は、この世界的な過剰流動性に対する対策というものを今後もひとつ大いに警戒しつつ対策をとってもらいたいということが要望であります。  そこで、この大臣所信表明の中に、中国に行かれたことの報告がございます。訪中して中国首脳とひざを交えて会談した、こういう報告がございますが、大臣が訪中されて日中で会談された内容あるいはその成果というものはどういうことでありますか。
  46. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 政府間協定を結んで長期的安定と拡大をもたらすような基礎をつくろうというのが私の考えでございまして、そういう方針のもとに参りました。  それで、私らはぜひ知りたかったと思うことを先方にもいろいろ尋ねてみました。たとえば、いままで各業種の方がいらっしゃいましていろいろお話をしてきましたが、わりあいに自分の業種に関係した部分的なことが多いようです。しかし、日本として長期的に貿易を拡大して安定していくということを考えますと、先方の五カ年計画というものは大体どの辺のスケールで伸びていくものか。それに応じてわれわれがいろいろ協力し、あるいは互恵平等でやっていくという場合には、こちらの資金計画はどの程度に伸びる必要があるのだろうか。たとえば輸銀の問題にしても、毎年輸銀の資金をどの程度見合っておくのが適当であろうか、あるいは各業種別に、たとえば昨年の半ばごろ以降、肥料に対する非常な需要が中国からございました。しかし、もう日本は売り切れてないという情勢でもございました。また、秋ごろ鉄鋼に対する需要がまいりまして、それは無理をしてもある程度出したと思うのですけれども、そのために国内価格が少し上がったという形勢なきにしもあらずであります。そういう点から見ますと、大体この程度のスケールで需要が起きるということをにらんでおくことが、日本経済計画をつくっていく上にも非常に重要なファクターでもあります。  それから、やはり経済運営のプリンシプルをよく話し合っておく必要がある。こういうプリンシプルについては、あまり業界の方は深く話し合いはできないだろう、そう私らは思いました。しかし、経済計画と経済運営のプリンシプルというものは、長期的に協力をしていくためには非常に大事な要素でもございます。そういう点は政府がやるべき分野でもあると思いまして、そういう点についていろいろ尋ねてもみましたし、わがほうの見解も述べてみたところでございます。  それから、一つの重要なポイントは農業問題がございます。中国の輸出品を見ますと、農業的なものがかなり多くなるであろう。その場合に、日本の農業との調整の問題が起こりはしないか。そういう意味で、中国も日本の農民をいたずらに痛めつけることを喜ぶものではあるまい。ですから、日本の農業と中国農業というものが長期間に安定するような調整措置を話し合うという必要は非常にあるのではないか。そういう観点に立って両国のそういう関係者で話し合いをする機会をつくろう、そう思いまして、この点は周首相にも直接話しまして、快諾を得て、こちらの専門家を近く先方に派遣する準備をしていきたい、そう考えておるわけであります。  そういういろんな点について話し合いをしてまいりました。
  47. 板川正吾

    板川委員 日中の貿易協定を早期に締結しよう、この見通しはつきましたか。
  48. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 できるだけ早い機会に双方で草案を提出し合おう、それを事務的レベルでよく検討し合って煮詰めて、そして、まあ私の見通しでは、八月から九月くらいまでの間に大体下話を終えるように作業を進めたい。そしていろいろ煮詰まって問題点だけ残って、それを秋にかけて両国で話し合って解決して、そうしてことし一ぱいじゅうには協定をつくって、LTの失効に対処し得る体制をつくっておこう、そういう段取りで進めたいと思っております。
  49. 板川正吾

    板川委員 ぜひひとつ早期の締結をはかってもらいたいと思います。  そこで、これはちょっとよそ道に入りますが、中国訪問をされる際に業界の方が一緒に同行されたというふうに報道されておりますが、同行された方はどういう方で、いかなる資格で一緒に行ったのですか。
  50. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 政府間協定のもとに貿易が行なわれるに際しては、できるだけ日本の業界を網羅した、そういうまとめる団体ができることが好ましい。いままでは覚書貿易あるいは友好貿易等がございましたが、いずれこれは政府間協定ができれば、そのもとに統合さるべき性格のものである、もう国交が正常化されればみんな友好商社になるわけですから、非友好商社というのは論理的にあり得ない、あるいは不正常な間における一つのやり方ではないかと私個人は感じたわけです。そういう点においても財界を網羅したそういう団体ができることが望ましいという観点に立って、財界の方々とも相談をして、日中経済協会というものができたわけでございます。これは日本の全地域、それから大企業から中小企業に至るまでを網羅いたしまして、そういう経済界のほとんど各分野を入れた日中経済協会というものが稲山さんを会長にしてできまして、その人たちにそういうような日中間の貿易関係の実務的なあっせんをしていただこう、あるいは貿易に伴ういろんな照会とか、あるいは研修員の研修とか、そういう問題もやってもらったらいいだろう、そういう調査、研修、あるいはあっせんというようなことをやってもらうという意味で、財界の総意でできたわけでございます。  そこで、それらの方々の紹介を兼ね御同行を願った。会長の稲山さん、それから理事長の河合さん、それから専務理事の大久保さん、それから大阪からの副会長中司さん、名古屋からの副会長土川さん、これらの方々に御同行願って、そうして政府間協定をやる。その際における民間実務者間の話し合いを先方の劉希文さんその他といろいろお話しを願い、また、各公司とも具体的なお話しを願ったというわけでございます。
  51. 板川正吾

    板川委員 同行された方は、いま大企業から中小企業まであるその会の代表だと言いますが、同行された五人ですか、六人ですか、その人たちはほとんどいわば独占大企業の代表者じゃありませんか。稲山さんにしろ、あるいは土川さんにしろ、これはもうそれぞれその業界、その地域を代表する財界人ですよ。私は、大臣が日中の貿易を促進しよう、あるいは日中の友好を深めようということで中国へいらしたことについて、とかく言うものじゃありません。あるいは貿易を促進するために政府間で話し合いをすることは、それはけっこうであります。しかし、どうも一緒に財界の人を連れて行って話し合いをするというのは、これは社会から見たらばおかしい。政府政府で行ったらいいじゃないですか。財界の人が向こうとコネをつけ、意思の疎通をはかりたいというなら、財界自身が一つの団体で行くべきじゃないですか。大臣の要請であわてて日中何とか協会をつくり、その代表だということで行ったことは、これは通産大臣という公的な立場の人が、痛くもない腹——私はあえて痛くもない腹と言いますが、痛くもない腹を探られることになるんじゃないですか。これはやはりこういう形は好ましくないと思いますが、大臣はどう思いますか。
  52. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日中経済協会に対しましては、政府も補助金を出しておるわけです。それで、いろいろな調査あるいは研修、向こうから来る技術者の受け入れ、そういうこともお願いする予定になっておるわけでございます。そういうような団体でございますから、去年できまして、ちょうどいい機会でありますから、御同行を願ってそういう実務的な話と今後の円滑な交流の用意をしていただいた、そういうことでございます。
  53. 板川正吾

    板川委員 いずれにしても、大臣という公的な政府を代表するものですからね。そういうときはちゃんと公私を混同しないようにひとつやってもらいたいと思います。  時間の関係がありますから、経企庁長官のほうに質問を移します。  小坂さん、ごあいさつということですが、これは経済企画庁長官はあいさつ、通産大臣所信表明、これはあえてあいさつというのは、何か特別な意図がありますか。
  54. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私は第二次田中内閣経済企画庁の長官を拝命いたしました。したがいまして、大臣としてまず皆さま方にごあいさつを申し上げたい。しこうして所信を申し上げるという気持ちで、まずごあいさつを申し上げ、しこうして所信を述べた次第でございます。中曽根通産大臣は、すでに二回にわたってこの委員会と御関係があります。これはまあごあいさつ抜きでもしかるべしと考えたわけでございます。
  55. 板川正吾

    板川委員 じゃ、あいさつとあるが、しかし、これは同時に——まああいさつというのは私的なものですね、所信表明と受け取っていいわけですね。信ずるところを述べたということでいいのですね。
  56. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 さようでございます。
  57. 板川正吾

    板川委員 それでは伺いますが、昨年の商工委員会で、時の木村経済企画庁長官は、この所信表明を含めたあいさつの中で、「本年中に新しい長期計画を策定し、今後の経済運営の長期的指針として、その実現につとめてまいる決意であります。」こう発言しているのですね。これは大臣がかわりましても、経企庁長官として発言をしております。今度の基本計画が長期的といわずに、なぜいわば中期的な五年見通しということになったのですか。前では、長期的な経済計画を立てるという、こういう約束を当委員会でしております。しかし、出たところを見ましたら、今度は中期的ないわば経済社会基本計画ということになりました。その変更はどういうねらいがあるのですか。
  58. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 御承知のように、池田内閣以来、所得倍増計画とかあるいは中期経済計画とかあるいは新社会経済発展計画とか、いろいろやってまいりましたけれども、どうも国民の活動力といいますか、日本人のすぐれた資質と申しますか、いわばポテンシャリティーともいうべきものが非常に強くて、大体成長率が一けた台であったものが、常に二けたになっていく、大体計画の途中でこれが更新されていくということで、今度の計画におきましてもまず五カ年くらいのものを考えてよろしかろうじゃないかという御意見の方が多かったようでございまして、そういうことからこの計画になったものと存ずる次第でございます。  従来は経済社会発展計画という名が冠されておりましたのでございますが、今回はひとつそれを基本計画ということにしよう。その意味は、まず具体的に、私ども輸出、生産中心という経済社会の構造を改めまして、やはり福祉指向型の経済に持っていこう。それにはまず政府の投資額もきめようじゃないかということで、御承知のように九十兆という投資額をきめまして、そしてそれを実現するためのいろいろな具体的な財政計画の見積もりもいたしたわけでございます。社会資本を二・三倍にするとか、あるいは振替支出でございますね、社会保障等の関係のそういうものは二・七倍にするとか、あるいは硫黄酸化物あるいはBODの関係を全体として六〇%台にするとか、あるいは三大都市あるいは三大湾地域のそうしたものについては四〇%台にするとか、そういう具体的な目標をきめたわけでございます。  しこうして、そういう計画の過程におきまして産業界、労働界からいろいろ代表の方が出ていただいて審議をしていただいているわけでございますが、特に労働界からもいろいろな御意見が出まして、よほど傾聴すべき点が多かったわけでございますので、そういうものを入れましてこの二月に基本計画をまとめていただきまして、答申をいただいたというような次第となっておるわけでございます。
  59. 板川正吾

    板川委員 この基本計画は政府決定とありますが、この政府決定の扱い方はどういうことですか。あえて政府決定という……。
  60. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 これは審議会の会長から総理大臣あてに答申をいただきまして、そしてその庶務を経済企画庁でやるわけでございますので、私がそれを見まして、そして閣議に出しまして政府決定としていただいたというわけでございます。したがいまして、この政府決定をいたしましたる以上は、これは政府の計画でございまして、政府は、その実現に対して責任を持ち、これを推進する、こういうことだと存じております。
  61. 板川正吾

    板川委員 この決定及び遂行に責任を持っていくという二とでありますが、そこでこの内容についてちょっと伺いたいのです。  この基本計画には、やはり依然として経済成長第一主義というのが濃厚であろう。口では福祉政策重点に切りかえると言いながら、実際は経済成長第一主義あるいはあわせて輸出至上主義、こう言ってもいいのじゃないかと私は思いますが、この基本計画の構想の中には、依然として、要するに経済成長がなければ福祉はないのだ、こういう考えに立っておると思うのです。成長がなければ福祉はないのだ、だから成長はやむを得ないのだ、国民福祉を向上するためには成長はやむを得ないのだ、こういういわば思想の上に立っていると思いますが、大臣見解はいかがですか。
  62. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 この基本計画に副題をつけまして、「活力ある福祉社会の実現」ということにいたしております。ということは、日本国民がすべて活動的な社会生活を営みながら、その間に相互連帯の意識を強めて福祉社会をつくっていくという考えでございまして、経済成長というものも一方に見ながら、しこうして福祉社会の実現を強力にはかっていく、こういう考え方に立っておるわけでございます。福祉を忘れた成長というようなものは、これは絶対に許されぬことでございますが、さりとて福祉というものは、やはり国民のすべての活動の中から出てくる、こういう考え方に立っておるわけでございます。
  63. 板川正吾

    板川委員 この経済成長率あるいは貿易、輸出入の伸びぐあい、こういうのは、この五年間の中期的な見通しをもっても、多少の遠慮はありますが、やはり従来の高度経済成長政策というのを踏襲している。これは田中総理もしょっちゅう言っておりますが、要するに経済成長がなければ福祉がないのだ、こういう考え方に立っておる。しかし、ヨーロッパ諸国は、経済成長というのは日本から見ればはるかに低いですね。低いにもかかわらず、福祉政策日本の二倍にも三倍にもなっておるというのは一体どこにあるのか。その理由は何でありましょうか。それは私は、福祉政策を進めることが経済の安定にもつながってきていると思うのです。どうもこの基本計画の思想は、まさにこの成長第一主義から離れられない。ヨーロッパの実態を見てもらって、もっと福祉に重点を置いた考え方をとるべきじゃないでしょうか。大臣見解を伺いたい。
  64. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 福祉に努力せよという考え方は、全く私も同感でございます。ただ、この計画に示しておりますように、いわゆる振替所得、福祉関係への支出、これは四十七年の際に、対国民所得六%で四兆五千億になっておりますが、これが計画終年次の五十二年で見ますと対国民所得八・八%、十二兆五千億円、したがって二・七倍になっておるわけでございます。大いに福祉を増進しようという考えを持っておりますけれども、しかし、従来の経済的な一つのパターンがあるわけでございまして、これを急激に、五年の間に一気に変えてしまうということになりますと、これまた反作用が起きるわけでございまして、現に今日の経済見通しで成長率は一〇・七というふうに踏んでおるわけでございます。この一〇・七を五十二年の終期においてはどのくらいに見たらいいかということはいろいろ議論があるところでございますが、結論はそこに書いてございますように九%台の成長率、今日一〇以上あるものを平均して五年間に九にいたしますには、計画の後期においては八%とか七%というものが出てくるわけであります。それで平均九%になるわけでございます。そういう点から見ますと、私も、板川先生おっしゃるように、大いに福祉を増進しろということについては全くそのとおりに考えておりますが、一気にいかない、漸を追うていくということであるわけでございます。
  65. 板川正吾

    板川委員 先ほど経済見通し、この実施に責任を持つと言われておりますが、いま説明された経済見通しに自信がおありですか。
  66. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 経済計画は実は閣議で決定をいたしますときに、こういう非常に変動する経済の実態のもとにあるのだから、フォローアップをひとつ大いにやる必要がある、毎年これを見直して、どうも計画と実態とが違っておる点についてはいろいろな政策、たとえば財政政策、金融政策、貿易政策、また必要のある場合には為替政策も併用しながらこの目的達成をやろう、こういうふうに申しておるわけでございます。そういうような経済の実態と計画との誤差を修正していくフォローアップを毎年やろうということにいたしておるわけでございます。
  67. 板川正吾

    板川委員 そうしますと、責任を持ち、実施していくというこの経済基本計画というのは、銀行筋の調査部あるいは株屋さん等で発表する経済の計量モデルなどとまあ大差がない、こういうふうに考えていいのですか。
  68. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 われわれ経済の計画を立てておるわけでございます。これは社会主義下の計画経済のもとにおける計画とは若干違うわけでございまして、やはり市場のメカニズムというようなものが前提になっておるわけです。しかし、これは政府の計画でございますから、やはりあるべき姿といいますか、努力してこういう目標を達成したいといいますか、そういうことが当然入っているわけでございます。したがって、五年間の見通しというのは民間でやっておりませんが、一年、一年のいわゆる経済見通しですね、これはいま御指摘のように民間の経済学者やその他がやっておられるものがございますが、これとは違います。  それから、政府としても経済見通しをまた別にやっておるわけでございます。これもいま私が申し上げたような意味で、政府施策を内包するものであるという点につきまして、ほっておけばこうなるのだろうという見通しとは違うわけでございます。
  69. 板川正吾

    板川委員 政府施策を内包しておるというのですが、どうも経済企画庁の見通しというのはあまり当てにならないのですね。昨年経済企画庁がこういう経済見通しを立てて、当委員会で木村長官が所信表明の中で主張しております。「昭和四十七年度の経済の姿を想定いたしますと、以上のような経済運営により年度の後半には景気も回復し、この結果、実質経済成長率は七・七%、沖繩の本土復帰に伴う増加分を控除しても七・二%程度となるものと見込まれます。」そして「国際収支も、年度後半にかけて黒字幅は次第に縮小の方向に向かうものと見込まれます。」年度の後半にかけて黒字幅が次第に縮小していく、こういうことを言っておるのですね。経済専門家である経済企画庁が昨年三月十日にそういう見通しを言っておりながら、実際ことしの報告の中では実質経済成長率は一〇・三%だ、ここにも三%ほど大きく違っておる。もう一つは、この円の切り上げがあったために、年度の後半には輸出が伸びなくなるだろう、こういう見通しに立っておるのですね。ところが、その三月十日にこの席上で経済企画庁長官が言ったその三月の輸出というのが、いわば前代未聞というほど二十五億ドルも伸びておる。だから、経済企画庁の経済専門家がいろいろ分析をして見通しを立てておるのに、その言った時点においてすでに大きく見通しが狂っておる。輸出の見通しでも、去年は後半に黒字幅は減るどころか、後半にますます黒字幅がふえておった。悪いといわれた前半の三月がそれまでにないほど輸出が伸びておった。三月十日に発言しておるのに、三月分の輸出が二十五億ドルにもなっており、従来の月間十八億ドル−二十億ドルから見ると全く狂っておる、こういういわばずさんな見通しの上に立って基本計画を立てられると、かえって国民のほうが迷惑するのじゃないですか。従来この席上で主張された見通しと、この一年後における実績は全く食い違っておるということをどうお考えですか。
  70. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 まず基本計画の問題と、それから経済見通しの問題と分けていただきたいと思うのでございますが、経済計画のほうは今度できたものでございまして、従来と違う点は、毎年フォローアップをしてその計画に近づけるような努力をしようということを申しておるわけでございます。従来、せっかく先ほど述べたような国民所得倍増計画とか、中期経済計画とか、経済社会発展計画とか、新経済社会発展計画とか、いまみんな年度の途中で大きく変わって、いま申し上げたような新しいものに換骨奪胎していっているわけです。そこで、そうした経験にかんがみまして、私どもは、この計画を立てたら毎年フォローアップをして、その計画の線に近づけるような努力をしようこういう心がまえでおるわけでございます。  それから経済見通しのほうでございますが、これは毎年やっておるわけでございます。これは専門のエコノミストがいろいろな分析をしてつくっているわけでございますが、これも実は相当に変わっておる。これはもう私はあえて抗弁はいたしません。そのとおりでございます。ことしも変わるのではないかという御指摘もございますが、実は私も一月の二十六日にこの経済見通しをきめたわけでございますが、どうもその後を見ますと経済の動意が非常に強いのでございます。たとえば機械受注というようなものは十−十二で非常に強くなっている。機械受注が上がっているということは、いずれも民間の設備投資がふえるということでございます。  そういうような点を考慮いたしますと、四十六年の不況からの立ち直りがかなり早い。四十七年度は非常に早く立ち直って、ことに後半むしろ景気がよいほうの状況に強くなってきているという点を見ますと、これはどうも経済成長率一〇・七とか、あるいは消費者物価五・五とか、卸売り物価二とかいうようなことを言っておりますけれども、これはなかなかむずかしいのではないかという感じを持っておったところに今度の為替の問題が出たわけでございます。この為替変動によってこうした騰勢はかなり吸収されていくのではないか、デフレ的な効果を持ちますから、いまの騰勢にその点で水がかけられるのではないか、こういうふうに思っておりまして、その点から見ると、彼此勘案して現在のところこの見通しを変える必要はないと思っておるということを他の機会に申し上げておるわけでございます。
  71. 板川正吾

    板川委員 これはやがて結果が審判してくれると思います。いずれにしても、どうせ中期計画、長期計画を立てるなら、社会保障の抜本的な改善の中期計画でも立てたほうが企画庁としてはいいんじゃないですか。この日本経済構造というのを福祉重点に持っていくというなら、社会保障を抜本的に改善する方向の計画を立てたほうがいいのじゃないかと私は思います。  時間がございませんから、以上であとは公取に伺います。  公正取引委員会に伺いますが、鉄鋼の不況カルテルを認可いたしましたが、この鉄鋼の不況カルテルを認可した理由をひとつ説明してみてください。過去のです。
  72. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 鉄鋼の不況カルテルのうち高炉メーカーの、八社ございますが、その分は、一昨年の終わりごろにすでに認めております。つまり当時八月十五日にドル・ショックがございまして、一たん浮揚しかかった景気がそこで大きく水をかけられたわけでございまして、そのために、これは鉄鋼に限りませんが、一般的に不況がずっと長引くという結果になりました。  鉄鋼は特に、ものにもよるのですが、非常に価格変動が大きく過去にも出ております。四十五年の一番景気のいいときをとらえますと、日銀の指数から申しましても、鉄鋼の価格は四十年を一〇〇といたしまして一一四というふうな、これは鋼材で申しましたが、鉄鋼全体としてはもう少し高うございます。それが九八というふうなところに落ち込んでまいりまして、平均でございますから、これはひもつきの相場があまり動かないといたしますと、市中の仲間相場はもっと激しく動いております。過去におきましても、鉄鋼のいわゆる市中相場というものは非常に高くなったり低くなったり変動しておりますが、そういうことで四十六年の終わりごろにどうしても採算割れの品種が多い。需要が強度に低下いたしました。政府施策もありましたけれども、一般に経済界が非常に沈滞しまして、需要の見通しが非常に暗いということでございます。事実その後も何カ月かにわたりまして鉄に対する需要は落ち込んだままの状態でありましたので、そういうふうないろいろな条件を勘案しましてカルテルを認めたものでございます。
  73. 板川正吾

    板川委員 四十六年十二月八日に鉄鋼の不況カルテルを認めた。その不況カルテルを公取が認めた理由の中に、これは昭和四十五年の価格から比較して非常にいま下がっておる、だからこれは不況である、こういうふうに認定の基準を置いておりますね。たとえば、昭和四十六年五月末には棒鋼の市中価格が、昭和四十五年五月末には四万五千五百円であったが、三万一千円である、厚板が四十五年には四万三千五百円であったが、三万四千三百円に落ちており、冷延鋼板が五万一千五百円であったが、四万八百円に下がっておるから不況である、これを不況カルテル認定の理由としているんですね。ところが、有価証券公告等で過去の鉄鋼の好況、不況というのを見てまいりますと、この基準にした昭和四十五年というのは鉄鋼業界としていわば一番景気のいいときなんですね。景気のいいときの価格を基準に置いて、下がったから不況だ、これでは私的独占を取り締まっていこうという公取としては論理としてはおかしいのじゃないですか。一番高いところを目標にして、ずいぶん下がった、そういう理由づけでこの不況を認定したというのは、論理としてはおかしいと思いますが、どうですか。
  74. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 ただいまおっしゃいますように、確かに好況期に比べて下がったから不況カルテルを認めるのはおかしいということでございますが、私ども公取といたしましては、コストと実際の販売価格との開きということにやはり焦点を当てざるを得ない。だからコストのほうが本来大きく下がってきておりますれば、価格が下がったからといってもそれだけで不況の要件には合致しませんが、遺憾ながら、四十年を一〇〇とした、これは一般の卸売り物価についても共通でございますが、その指数によると九八くらいになる。これは過去にも九六くらいまで下がったことがございますが、これは全体を平均した数字でございます。そうなると、コストに合わない。コストのほうが何千円も上回ってしまうといいますか、採算割れが大きく生ずる。需給のギャップが大きい。設備のほうは何年も前にすでに着工しておりますので、それがかえって経理の上ではたいへんな負担になるわけでございます。  そういうことでありまして、たとえば決算を見ましても、鉄鋼メーカーの高炉メーカーのうちで、新しい設備を定率で償却しておったのができなくなってしまった。設備はほとんど借金に基づいて行なわれているということもございますが、それで定額償却に振りかえるというようなことをやって、どうやら決算をする。これだけではございませんが、そういう時代でございまして、コストが上がってきておるということもやはり一つの原因である。売り値のほうが一〇〇を切るというふうになりますと——そもそも四十年のときの相場というものは好況期の相場ではございませんで、全体としては不況期の相場でございます。そういうことでありますので、やはりコスト割れという事実は認めなければなりませんし、需要の停滞、需給ギャップの大きな差というものを認めた上でこれを承認したということでございます。
  75. 板川正吾

    板川委員 時間がなくなっちゃったのでしり切れトンボですが、この鉄鋼の市中価格を見ても、四十六年の十二月に認可を申請した。六月三十日で一応切れた。さらにそれを延長したんですね。昨年の十二月一ぱいまでこれを延長してきたのですが、これを延長するときには、すでに不況カルテルを認めた時代よりも市価が非常に上がっておりますね。しかも、昨年の七月から十二月まで延長した。この半年間の半ばでは相当市中価格は上がっている。だから不況カルテルを認定したのはいいとしても、やむを得なかったとしても、この最後の六カ月延長というのは、私は過保護に当たると思いますよ。この中間の鉄鋼の市中価格を見ても、初めから見ればずっと上がっておる。だから十一月、十二月は品不足で、最近は非常な暴騰をしているんじゃないですか。だから鉄鋼の不況カルテルを認めた、しかもそれを再度半年間延長させたということは、私は公取としては適正を欠いた延長だと思います。できれば、どうしてもだめだというならば、この最後の延長の六カ月のうちの三カ月くらいでほんとうは延長を取り消すなりしていくべきじゃなかったか。あわてて十二月ごろ通産省と協議して、百万トン増産しろとかなんとかいうことは、公取行政としては失態だろうと思いますよ。こういう点を今後反省して、特に大企業の不況カルテルについては十分目を光らせてもらいたいと思います。この不況カルテルのおかげで、いま中小企業関係者は鉄が上がってずいぶん苦労しているんですよ。物価値上げの大きな役割りを果たしておるという点をお考えになって、ひとつ今後慎重にやってもらいたい。  時間となりましたから、以上要望して終わります。
  76. 浦野幸男

    浦野委員長 午後三時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時三十六分休憩      ————◇—————    午後三時二分開議
  77. 浦野幸男

    浦野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。加藤清二君。
  78. 加藤清二

    加藤清二委員 この際、最初に経企庁長官にお尋ねをいたします。  さきに円の切り上げが行なわれて以後、特にアメリカ貿易に限ってお尋ねをしますが、日本アメリカへの輸出の量はどの程度伸びたか、それから伸び率は円切り前と比較して減ったかふえたか、円建てで計算をしたならば、その伸びは何%程度であるか、それを長官にお尋ねいたします。  なぜかなれば、私がお尋ねしなければならぬのは、私ども国民が知らされる数字は、新聞を見ても雑誌を見ても政府統計を見ましても、ほとんどドル建てでございます。ドルでございます。ドルで計算すれば、物量の輸出は減っても数字だけは上がるのでございます。アメリカへの輸出が伸びた伸びた、こういわれておりまするが、私が調査したところによりますると、自動車は伸び率が減っておるのでございます。鉄も自主規制をいたして減っているのでございます。繊維のごときは、協定以後ぐんと減って、ウールは一九六八年をピークに半分以下に減っておるのでございます。ただ、物価が上がったのでドル金額があれしたとか、あるいは円が切り上げられたために、したがってドルの数字が伸びたでは、これは実態をつかんでいないのもはなはだしいといわなければならぬ。国民数字の魔術に踊らされ、その魔術をアメリカが逆用して日本の円再切りを一そう迫るという、逆手に使われているという心配があるからでございます。
  79. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 一昨年末に一六・八八%円が切り上がりましてから、一時は非常な不況になるのではないかという点が懸念されたのでありますけれども、幸いに昨年の下半期から立ち直りを見せまして、むしろたいへん好況というふうな状況になっておるわけでございます。輸出全体で見ましても、四十七年度は輸出が二百九十億ドル、輸入が二百億ドル。もっと輸入をふやそうということでございますが、これがなかなか思うようにふえません。四十八年度は、御承知のように輸出が三百三十三億ドルで、輸入が二百五十二億ドル、こういうことになっておるわけでございます。  そこで、先生指摘のように、その中でアメリカはどのくらいあるかということでございますけれども、これまた後ほど局長のほうから数字を申し上げますけれども、全般として、おっしゃいますように、数量的にはアメリカのほうは伸び率がそれほど伸びておりません。伸び率としてはむしろ御指摘のようなことでございますが、ヨーロッパのほうが非常にインフレぎみでございまして、ヨーロッパに対して非常に品物がよけい出ておるということは現実でございますけれどもアメリカヘの輸出というものについては、これは円建てでどのくらいになるかという点につきましても、あわせまして局長のほうから御答弁申し上げます。
  80. 新田庚一

    ○新田政府委員 手元にあります資料で御説明いたしますと、四十七暦年の対米輸出の伸びが一八.一%でございます。四十六年が二六・一%でございますので、約八ポイント落ちているわけでございます。  なお、円建ての伸び率でございますが、実は地域別の円建ての輸出の伸びの資料がございませんが、おおむね一〇%くらい引いたところあたりではないかと推定いたします。
  81. 加藤清二

    加藤清二委員 だから私がお尋ねしておるのは、ドル換算でなくして円換算の輸出量が聞きたい、こう言っておる。ドルで試算をした場合には、円が切り上げられれば、まあかりに一割切り上げられたとすれば、ドルの受け取りは一割多くなるにきまっているんですよ、量は一緒でも。それから、インフレで物価が上がっていけば、量は同じでも金額は上がるにきまっているのですから、これは。だから、実態を国民によく知らせるためには、日本アメリカへ売った品物くらいは日本円に換算して国民に知らせるべきだと思うのです。その実態を数字の、すなわちドル建ての魔術で受け取っておりますると、アメリカ輸出は円切り上げ後もどんどん伸びたという間違った印象を与えるからなんです。その実、具体的に産業別にこれを見ますると——あなたが答えないからこっちから言う。自動車の輸出の伸びは、最盛期は三〇%以上あったのに一〇%以下に減っているのです。繊維全体としては、日米協定で五%は完全に伸ばされる、しかも、シフトも許すということになっておりまするけれども、これは伸びておりません。ことにウールのごときは、先ほども申し上げましたが、一九六八年をピークに半減また半減なんです。もうかっているのはアメリカのキャラウエーです。そういう実態を日本流に解釈し、日本国民によくわかるように説明をすることが、政府としての任務ではないかと思う。なぜアメリカのペースにはまって、アメリカのグラウンドで勝負をしなければならないのか。これはおかしいんです。したがって、きょう答弁ができなければやむを得ません。予算委員会とは違うから、さあ出せなんていうことは言いません。あとでいいから出してください。  引き続いてお尋ねします。  ことしの物価の目標ですね。物価値上げ。卸が二%と聞いております。小売が五・五%と聞いております。それは努力目標なのか。ほんとうにそうなるのか。なぜそういうことを聞かなければならぬかというと、いままでの経企庁の物価値上げの数字はみんな努力目標で、全部一年たって見ると、その目標を上回っているというのが前例だからでございます。さて、ことしはといえば、また円再切りが行なわれる。円再切り上げが行なわれれば、当然卸売り物価は下がってしかるべきでございます。それを承知の上で、昨年二・二%だというのにことしまだもっと下がるファクターがありながら二%ときめられた理由。  それから、もう一つの問題は、消費者物価の値上がりが五・五%と政府みずからがおっしゃられました場合に、はたして国民の預金を奨励することができるかできないかという問題です。国民の預金金利は、定期であったとしても、資本利子税その他を差し引きますと五%以下になります。それじゃ、貯金しておいたら損するではないかという論理になってくるわけなんです。貯金して損するようなことを国民に奨励できるのかとお尋ねしなければならない。よくもまあ五・五%という数字を出しなすったとその出典を危ぶむものでございますが、それと同時に、それでもその数字がはたして努力目標であるのか、実質そこへ持っていくのか、これを聞きたいんです。
  82. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 先ほどのものを円で計算しろというお話はまことにごもっともでございます。さっそく後ほど資料として申し上げたいと思います。  それから、いまの見通しの問題でございますけれども、平均ということになりますと二%ほどで、まあ一応げたという加藤さん御承知の計算方法をとっていますが、このげたが一・五ということで、あと〇・五しか残ってないということで、非常に卸売り物価の二%というのはきつい数字であると思っております。相当な政策努力をしなければできない、こういうふうに思っております。  それから、五・五の場合も実は同様でございまして、このうち三・五がげたになる。そうすると、あと二%ということになりまして、これまた非常にきついのでございます。それじゃ一体、五・五などと言っているけれども、預金利子よりも高いではないか、そんなことで、どうして預金する意欲が出るかという御指摘もそのとおりだと思いますけれども、長期的には、先ほどここで問題になりました経済社会基本計画、あの五年間では四%台の消費者物価の値上がりを考えたい、こういっておるのでございますが、実は短期的になぜ五・五という数字を出さざるを得ないかと申しますと、前年の昭和四十五年で見ますと、もう七・三でございます。それから、その次の年の四十六年度で見ますと、これは五・七でございます。そこで、現実にそのように消費者物価が上がっておりますのに、努力目標として、これは低いほうがいいにきまっておりますけれども、四%いきなりやるんだと申しましても、これは現実には無理である、こういうことになるものでありますから、相当な努力をして五・五にしなければならぬ、こういうことを私ども考えておるわけでございます。  なお、諸外国の例で見ますと、イギリスやフランスは大体消費者物価というのは八%ぐらいになっております。アメリカは、御承知のニクソンのインカムズポリシーというのを一昨年の八月十五日にとりました。それで物価も賃金も凍結するという挙に出まして、これはそれの第三段階ということで、一応彼らはターゲットと言っているわけですが、賃金は五・五ぐらい、物価は二%ないし三%ぐらい、そのくらいの目標にして、あと自主的にまかせようということになりまして、政府はその凍結状況を少しゆるめたわけでございますが、それにいたしましても、そういう状況でございまして、諸外国で非常に消費者物価が上がっておる、こういう状況を受けまして、われだけわが道を行くというので、あまり低い数字も出ないという苦心のほどはひとつ御了承いただきたいと思います。
  83. 加藤清二

    加藤清二委員 最初の質問のお答えですが、円建てで計算しますと、わが党の調査によればアメリカ輸出はせいぜい一%から一・五、六%でございます。特になぜこういうことを言わなければならぬかと申しますと、あたかもアメリカヘの売りが日本は多くて買いが少ない、何か経済的には日本が悪いことをしているような印象をキッシンジャーその他が来るたびに与えている。これは大きな間違いであると同時に、この勢いで進んでいきますと、この秋行なわれようとしているLTAの会議、OECD、ガットその他から総攻撃を受けて、日本はまたぞろ輸出を削られなければならぬ。その削られるのが、長期にわたる協定に追い込まれる。そこヘコットンだけでなくて、ウールも合繊も追い込まれてしまうということになるからでございます。すでにその動きがあるから、それで申し上げたのでございます。  次に、それにからんで通産大臣にお尋ねしますが、この九月に期限切れになりますLTA、日本は、当然LTAの期限切れを機会にこの協定はすでに破棄すべきであると存じますが、どうかということです。  それから次に小坂さんにお尋ねしますが、そのいまの二%といい、五・五%というのは、あくまで努力目標でございますね。あれこれ勘案して積算されているかいないか。
  84. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 政策として可能な限界というものがございますわけで、あれこれやって政策的な努力をした上でこれを目標にしてしかるべし、こういうことを出したわけでございまして、積算は基礎がございます。ございますけれども、しかし、ほっておいたらまた重なるというのではございません。
  85. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 LTAの問題につきましては、現在ガットの部会、ワーキンググループを中心にして各国間において調整及び検討をやっている最中でございます。筋からいったら、加藤先生おっしゃる筋であるかもしれませんけれども、しかし、この問題はなかなかデリケートな要素を含んでおり、また、ヨーロッパ、アメリカ、北欧の諸国の動向、それから韓国や台湾やシンガポールその他アジア国々の動向、それからそのほかのLDC諸国の動向等もよく考え、単に綿だけでなくして、毛や合繊にも影響が出てくるおそれもあることでありまして、そういう国際情勢等を慎重に勘案しながら検討を続けていきたいと思っております。
  86. 加藤清二

    加藤清二委員 それは後退ですね。田中という通産大臣は、これは日本に不利な協定なるをもって、絶対に期限切れの場合には破棄を前提に進めるという答弁であったのです。  そこで、私は、国際協定はほんとに破棄する気があるならば、一年前に破棄通告すればそれが有効になるはずであるから、あなたが通産大臣をやっていらっしゃるうちに通告すべきであるということを申し上げたところ、御説ごもっともであるから、よく検討して、その線に沿って努力する、こういう答弁をいただいているわけなんです。それが、いつの間にやら後退したということになりますると、これはたいへんなんだ。  なぜそう言わなければならないのか。LTAは、最初日米の二国間協定だったのです。ワンダラーブラウスで文句をつけられたり、可燃性繊維、羽二重で文句をつけられ、そのあとを襲ってこの問題が発生したわけなんです。そのときには一年こっきりの協定だったのです。それがSTAと変わったときに、三年ずつにしましょう、今度はLTA、ロング期間になったら五年ごとだ、五年済んだらまた二年延ばしましょう、また三年延ばしましょう、延びて延びて、一、二年で終わるというはずのやつが、まさに本年で十八年目なのです。十八年が何も悪いことはないと思う。その間に日本が有利に展開しているというならば何をか言わんやであります。  その当時の経企庁の長官は、長官よく覚えておいて下さい。高碕達之助先生という、自民党ではありまするけれども、私は実にりっぱな人だといつもほめております。非常に勇気のある人でした。が、そのお方がやめなさるというとすぐにショートが始まって、そうしてSTAに変わっていっちゃったんだ。その当時、オールアメリカ国内輸入量に占める日本のシェアは、最高二八%から二四%でございました。しかし、LTAが行なわれ、列国の協定に入ってからは、日本のシェアは半分以下になって、いまは八%前後でございます。その間に、香港、台湾、南朝鮮がぐんぐん伸びて、いまじゃ香港が一番多くなりました。なぜか、列国間協定と言いながら、日本だけ過酷なカテゴリーがはめられているからです。縦六十四品目、横四季節割り、これではシッピングに間に合いっこありません。だから日本へ買い付けに来たアメリカのバイヤーが香港に飛んで、香港ワクで輸出するのです。その結果どうなるか。メイド・イン・ジャパンがメイド・イン・ホンコンということになる。香港のワク分の権利金だけは、日本の輸出関係業者とアメリカの商社がこれを負担させられておるのです。四%です。これはアメリカ国民にとっても損のことならば、日本の業界にとってもたいへん損なことなのです。だから、このようなことを十八年もしんぼうしたのでございまするから、いいかげん、アメリカから文句つけられることばかりが芸じゃございませんので、日本立場立場として交渉に当たるべきであると思う。どうしてもそれが言いにくいとおっしゃられまするならば、失礼でございまするが、野党が結束して向こうへ渡りまして、あなたたちの援助もいたしまするが、いかがでございますか。
  87. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 御支援をいただきまして、まことにありがたく感謝申し上げる次第です。  この問題は、加藤委員、御造詣の深いところで、いままでのいきさつやら現状やら、すべて知悉された上での御発言であると承知いたしますが、筋からいうと、おっしゃるとおりの筋なわけでございます。  しかし、現実の国際環境を考えてみますと、何が日本の国益を確保するのに一番適当な方法であるかという点をいま摸索しておる最中なのでございます。ガットの繊維部会のいろいろな現在の情勢、この間も鈴木審議官をやりまして、彼が帰ってきて、きのうも報告を聞いたところでございますが、何しろアメリカ、ヨーロッパ等が結束して、今回は日本LDC諸国に当たる気配になって、LDC諸国の中でも脱落するものも出てきておるという報告を実は受けておるわけです。それで日本のLTAの消化の状況等を見ますと、必ずしも十全な消化はし切れておらぬという情勢でもございます。しかし、それには、いま加藤委員のおっしゃったような悪い条件がついているということもございます。それらの点、すべてを考えてみまして、もうしばらく考えさしていただく時間がほしい、こういうことでございます。いずれ、われわれのほうの見当がつきましたら、野党の先生方にも御相談申し上げたい、こう思っておったところでございます。
  88. 加藤清二

    加藤清二委員 本件は、事重大でございまするので、いずれ時を改めて、ほんとうに祖国日本立場に立っての交渉、その結果、日本の将来に再びLTAの二の舞いを起こさせないような方向に持っていかなければならぬと存じます。いわんや事のついでにというので、ウールも合繊もこれに包括されたとなりますると、日本繊維はもはや立ち行きません。倒産続出で、円の切り上げ対策を練る程度のところではどうにもなりません。同時に、いま行なわれている繊維の構造改善は、根底からくつがえります。ですから、さような重大な案件でございまするので、慎重にほんとうの国益を探っていただきたいと存じます。  さて、円切り上げ、ドル切り下げ、そこから生じてくる輸入差益、これを一体政府はどこへ持っといこうとしていらっしゃるのか。私ども社会党——野党の皆さん、そうでしょうが、当然この差益は国民に返されるべきものである。にもかかわりませず、さきに円切り上げが行なわれた結果、卸売りは上がりました。物価は上がりました。輸入差益で輸入価格が下がったはずなのに、これがほとんど、輸入時点では下がったけれども国民の消費時点では逆に上がっております。再びこれを繰り返してはならぬと思います。  そこで、お尋ねする。一体生産の基礎材であるところの鉄はどうなるか、石油はどうなるか、綿はどうなるか、羊毛はどうなるか、生糸はどうなるか、小麦はどうなるか、大豆はどうなるか、砂糖はどうか。以上申し上げたことを関係の各省からどうなる、どうするというお答えを願いたい。
  89. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 通産省といたしましては、前回切り上げが行なわれましたあといろいろ追跡調査をいたしましたが、必ずしも十分に成果をあげたとは言い得ませんでした。今回は、前回の経験にもかんがみまして、各部局に手を回しまして、十全なる調査をやろうということで、各品物別に、まず第一に消費物資、たとえば万年筆であるとかウイスキーであるとか、そういうような消費物資約二十点以上であったと思いましたが、これらについてモニタリングシステムを活用するとか、あるいはこちらのほうで立ち入り検査もするとか、そういういろいろな手続きをきめまして追跡調査を厳重にして、その差益がどういうふうに処理されているか調べる、こういう手はずを整えているところでございます。  それから、石油やそのほかのバルキーなものにつきましても、それに準じまして、原油の購入価格、それからその間における流通間の手数料その他、そしてこの輸入差益が消費者価格にどういうふうに反映されているかという過程を同じようにトレースいたしまして、この前のような、どうも国民の目から見ましたならばあいまいに処理されているようなことをなくしたい、そういうふうにいま手はずを整えておるところでございます。
  90. 加藤清二

    加藤清二委員 その方針はけっこうでございますが、私がお尋ねしたいのは、商品別、銘柄別にどうなるかということをお尋ねしているわけなんでして、なぜそんなことを聞かなきゃならぬかと申しますと、午前の質問でも行なわれましたように、鉄は下がるべきところ、カルテルもこれあり、粗鋼だけで三割の余の値上がりが行なわれておる。石油の場合はOPECが上げたという理由のもとに、これまた灯油までが上げられている。綿の場合のごときは、一こうり七万円前後が大体生産コストでペイするといわれていた四十番手が十七万円の余もしている。羊毛は去年のいまごろ大体ポンド八百円程度であったものが今日ではどうか、二千七百円の天井相場なんです。ストップ高なんです。生糸は一キロどうなのか、一万円の余に上がっている。これじゃ絹織物という着物はもはや一般庶民には縁遠いものになってしまうのです。バナナしかり、生糸しかり。小麦はどうか。これも二倍にもなる。だから、うどんやパンまで高くしなきゃならぬことになる。大豆はどうか、これは五倍の余になっているのです。砂糖、食肉すべてしかりなんです。きょうこのごろは、ついでのことにといって便乗値上げで米までそういうことになったので、近ごろちょっと警察が手を入れだしたということだが、私どもはこれは歓迎なんです。だから銘柄別に、輸入原材料は、原料高でなしに原料安になるはずなんだから、それが消費者に還元されずに、途中の生産流通段階で吸収されて、それにちょうちんをつけてなお高値を呼ばせるということは大きなあやまちであると思う。だから銘柄別にどうなるということを——ただ円切りを避けて努力する、努力するということを総理も関係大臣もみんな本会議で述べておるはずである。抽象論ならもう聞きとうない。具体的に聞きたい。
  91. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 仰せのとおり、この差益は消費者に還元すべきものでございまするが、ただいま通産大臣が言われましたように、私ども経企庁は、各省との連絡の肝入りのようなつもりで、経企庁が農林、通産関係各省のほうと物資別に今度はひとつ前回の経験を生かして手ぎわよくやろうじゃないかということでいろいろやっておるわけでございます。  最近の物価がものによっては非常に騰貴をいたしまして、これを何とかせにゃならぬということで私ども頭を痛めておりますが、基本的には、これは過剰流動性をもっと押えにゃいかぬということで考えておるのでございますが、いま御指摘のございましたいろいろの物資について、たとえば小麦のようなものは、これは主たる食糧でございますから、これは食管法のワクの中に入れるものでございます。もち米も当然これは米でございますから、こういうものは、やはりそうしたもののワクの中でもっと押え込むことができるのではないかというふうに思います。  それから商品市場というものが乱高下がはなはだしいわけでございますが、たとえば羊毛等が非常な騰貴をしているということで、それの市場に少し関与していくという姿勢を見せましたら今度は暴落をする、それじゃいいかと思ったらまた上がっていくというような状況でございまして、こうした商品相場の乱高下をどういうふうにして押え込んでいったらいいかということについても、いろいろ関係各省間で打ち合わせをいたしておるわけでございます。  いま御指摘のように、部門別、品物別にもっと具体的な態度をとれ、措置をいろいろ検討して誤りなきを期せという御叱声はまことにそのとおりであると存じますので、せっかく努力をしたいと考えております。
  92. 加藤清二

    加藤清二委員 予算委員会ですと、この際、いまお尋ねしたことをちゃんと数字で出すまで待とうホトトギスであぐらをかくところですが、そういうことはやりませんが、あとでいいですから書類にして出してもらいたい。私だけでなくて、各委員のところへ全部お配り願いたい。なぜかならば、この問題はもはや放置することはできない案件なのです。自民党の皆さんは、学生がちょっと暴動を起こすというと、さあっとそれを押える議員立法をされる。きわめて動に対する反応が早い。しかし、経済問題に関する限りは、いつでも後手後手となる。したがって、政府に調べていただきまして、いま銘柄別、商品別の輸入差益がまたぞろ業者のふところに入るというようなことがわかりまするならば、これを放置することはもはや議員として怠慢のそしりを免れることはできません。したがって、最大多数の最大幸福を考え国民の幸福を考える私どもは、調査団を編成して調査をしようとしている。  このことは、先ほど二階堂長官とも話し合ってきました。答弁に出てもらいたいと言ったら、そんなことをやらぬと君の言い分を言え、こう言って、ついでに、あとは経済企画庁長官大臣の二人がそろっておるのだからそっちに聞いてくれ、こういうことなのです。あなた、何ぞ耳打ちしたのと言ったら、君の言うことはたいていうそはないし、間違いないからたいてい言うことを聞くよ、こういうわけなのです。やらなければそれを言うぞと言って——なぜこんなことを言わなければならないのか。物価統制令を発動するということを、おととい私どもの仲間の生活協同組合が総理官邸で聞いたばかりなのです。そうしたら、きょうになったらひっくり返っておるのです。もう右顧左べん、朝令暮改もはなはだしいですよ。何が原因でそうならねばならなかったなどと私は尋ねません。先ほども会議でこの質問が行なわれておりました。私は何がゆえにとは質問しませんが、これではいけないのです。したがって、調査団を派遣するという提案をこの際いたします。いまの銘柄別の問題、あとでお尋ねします三品市場、証券市場、ここへの調査団の派遣をあとでもう一度提案しますから、いまからよく考えておいてください。  そこで、その高くなる要因、安くならなければならない、物価が下がらなければならない要因があるにもかかわらず、それが相殺されて、逆に飛び越えて上がらなければならぬという原因がはたしてどこかにあるだろうかということを調べてみますると、これがいま答弁にもありましたように、証券は証券市場であり、三品は三品市場で行なわれている。まさにこれはギャンブルです。大体通産大臣御案内のとおりです。証券市場はいざ知らず、通産省傘下の三品。  農林大臣にお尋ねする。農林傘下の三品市場は何のために開設されておるのか。何の目的で開設されておるのか。  あとで公取さんにもお尋ねします。ここがはき違えられてしまっておる。  天然資源は気候風土によってその生産が左右されることが多い。これを加工する連中は、そのゆえにコンスタントに生産することができない。それでは生産品を販売するときに安定価格を保つことができない。ゆえにつなぎの場が必要である。したがって、これはつなぎの場として許されている場所なんです。だからこそつなぎの必要なのは会員だけである。一般の資金はここへ導入されては相ならぬたてまえなんです。にもかかわりませず、ここへ銀行から金がどんどんぶち込まれている。  失礼な言い分ですが、しろうとの金をもぎ取っていって、ちょうちんをつけさせて、それで足らぬで太鼓をたたかせて、太鼓持ちまでさせてということなんです。しかし、太鼓持ちとか、業者間でいうちょうちんとは、これは国民、しろうとなんです。それまでも巻き込んで、たいへんなギャンブルが行なわれておる。このギャンブルを黙って許すというならば、これは競輪、競馬場と同じでございまするから、国家がここから収益をあげるべきなんです。ギャンブルとして許すならば、当然二割五分なり三割を最初に国家がピンはねすべきなんです。それは怠っている。そうしてギャンブルだけは野放しである。  特に大蔵大臣に聞く。銀行局長来てみえたら聞く。銀行の金がだぶついた。それじゃ仕事にならない。だから貸し出し金利を安うして、ついでに預金金利も安うして、そうして流した。流した先の金は、設備投資やら海外市場のシェア拡大に使われずにギャンブルの場に使われた。それが土地であり、それが株であり、それが三品なんだ。大体大蔵大臣は窓口規制の条項を守っておりますか。こういう連中に金を貸し出すときにどういう条件をつけておりますか。まず大蔵大臣に伺います。
  93. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 加藤先生仰せのように、ドル・ショック、四十六年の八月以来非常にいわゆる過剰流動性という状況が続いてまいりました。この間、経済の実態は非常に不況というようなことで、むしろ景気の拡大政策を昨年までとってまいったわけでございます。  仰せのように、銀行自身としても貸し出し競争というようなはなはだ遺憾な状況もあり、昨年の夏ぐらいまでに非常に流動性がふえたということは、まさに先生指摘のとおりでございます。その間いろいろございましたが、今日いま御指摘のように、いわゆる日本銀行の窓口指導というのを行なっております。  これはるる申し上げる必要もなかろうと存じますが、いざ最後のときに日本銀行に銀行が資金不足でかけ込んでくるという状況をストップいたしますと、一種の金融恐慌という状況が起こりますので、その事前の段階で、経済の実態が過度に過熱しないようにむしろ貸し出し計画を規制するというのが今日行なわれておる窓口規制でございます。  そういう意味からいたしますと、現在一月から三月までということについて指導いたしておりますが、その前の期は、大体銀行の貸し出しは二四・五%伸びておりました。これに対して半分以下である一二・七%というワクを指示いたしまして、このワク内で銀行がそれぞれの企業なり、あるいはその他の相手に金を貸すようにという指導を行なっておるわけでございます。もしもこれが実現といいますか、効果を発揮いたしますと、相当の信用の収縮になると私どもは期待をしております。万一この計画が守られないようなことになれば、これははなはだゆゆしいことでございますので、三月末までばまずそういう形で総量の規制を行なっていくというのが今日のやり方でございます。  それからなおそのほかに、もう先生御承知のことだと思いますが、その中でも大企業に対する融資ということにつきましては日本銀行として非常に関心を持っておりまして、御承知のように、十一商社を含みます二十二の大企業に対しまして、その企業の振り出した手形は、日本銀行はもう無制限に引き取らないというきびしいワクをつくって、これを一月の二十四日からやっております。そのほか、これは一定の規則という形で公表をいたしておりませんが、一月から三月までの増加額につきまして、商社向け融資に対して、個別に都市銀行、長期信用銀行及び信託銀行の貸し出しについていわば前期の半分以下という形の指導もやっておるわけでございます。  何ぶん今日も二月の中ごろでございます。この辺の効果というものは必ずあがってくると期待しておりますが、それでも足りない場合には、さらに全体の金融政策の運営の問題として考えていかなければならない問題もあろうかと考えております。しかし、現在の段階におきましてはフロートというような問題もあり、経済界全体に及ぼす心理的な影響もあろうかと思いますので、現在のところは、その辺の事情を注視しておるというのが実情でございます。  なお、このほか大蔵省としては、いわば戦後の融資統制令というような形に近い形で、きわめて異例の土地関連融資についての規制措置、これも同様に、前期に対して三分の一くらいに押えるというようなことを実際上の行政指導で行なっておるというのが実態でございます。
  94. 加藤清二

    加藤清二委員 もうすでに証券市場も三品市場も企業倫理を逸脱しておるということを各紙が一斉に書いているところなんです。商品市場設立の目的に違反しておる。会員にあらざる者が手か出しているということなんです。会員にあらざる者がここで勝負するということは、国会に例をとれば衆議院でない者が大ぜいここへ押しかけてきて、そして多数決で事をきめると同じことなんです。こんなばかげた混乱を許している国は世界じゅうどこにありますか。  幸い、大蔵省証券局はそこに思いをいたして、すでに立ち入り検査を行なっていらっしゃるようです。三十五銘柄の規制強化をやられたようでございます。その効果のほどと、それからもう一つ、証券が何ゆえにこれほど過熱しなければならないかという理由がギャンブル以外にありましたら、ここで御説明願いたい。
  95. 坂野常和

    ○坂野政府委員 証券市場の昨年の過熱は、御承知のとおり法人活動によるものがその大半であります。すなわち、生保、損保、金融機関をはじめとして、後半に至りましてはむしろ事業法人が主として買い越しに回ったわけであります。  本年一月及び現在までの状況を見ますと、金融法人、生損保の買い活動のほうはむしろ鎮静化いたしまして、いまや事業法人がもっぱら買い越しになっておるということであります。これは一つには、いわゆる過剰流動性の問題もあるかと思いますが、同時に安定化工作、自由化に伴う系列化というような配慮から、事業法人の自衛策としての株を集めるというような行為もこれにからんでおるというふうに見ております。  私ども担当といたしましては、最近の株式市場の過熱の要因をそのように分析いたしまして、価格形成がゆがめられることのないように、そして長期の資金調達としての大切な場がくずれることがないように、関係方面に何回も注意もいたしておりますが、去る二十一日より価格形成がゆがめられないような特別の検査もいたしまして、この価格形成をより公正にするような作業もいたしております。
  96. 加藤清二

    加藤清二委員 初めてある程度満足できる答弁をいただいたようですが、この件について、農林省は傘下の三品にどのような措置をとっておられますか。農林省傘下の三品につきましては、本委員会においても去年、おととしと今日あることを予見してもう何回も繰り返し、繰り返し注意、勧告をしておいたところです。にもかかわらず、一向におさまっていない。農林省、どうですか。
  97. 内藤隆

    ○内藤説明員 農林省所管の商品取引所の上場品目につきましては、先生十分御案内でございますが、輸入大豆につきましては、本年一月に入りましてから、中国大豆の例でございますけれども、一委託者からの受託枚数を制限するということを十六日に決定いたしまして、なお臨時増し証拠金の増徴というようなことをいたしますと同時に、過熱を防止するという趣旨を中心にいたしまして、新規売買の自粛ということで、当時の当限でございました一月限につきまして、新規売買の自粛要請ということを取引所で自主的に決定いたさせたような次第でございます。  なお、本年の二月以降につきましては、受託制限、それから臨時増し証拠金の増徴ということをさらに強化いたしまして、また既存限月につきましては、新規玉となります委託売買は禁止いたしまして、過熱の防止ということを一月二十九日に決定いたしております。  また、当限につきましても、従来は御案内のように、月中以降というものは当限の値幅制限というものを撤廃しておったようなわけでございますけれども、これにつきましても、値幅制限を設けるというようなことにいたしまして、なお将来に過熱が尾を引くというようなこと、現在の玉の整理をするというような趣旨を組み入れまして、七月の新甫につきましては当分の間立ち会いを臨時に停止するというように、現在考えられます措置を各種講じまして、大豆につきましての商品取引所の規制を強化しているような次第でございます。
  98. 加藤清二

    加藤清二委員 この答弁はちょっといただきかねる。おっしゃったことは事実かもしれませんけれども、一向にきき目があらわれていない。ということは、農林省は三品市場になめられておるということだ。農林省がなめられておるということは、国民が困るということなんです。国民が不幸になるということだ。  その具体的事例を申し上げます。政府予算までが狂ってくるのですから。先日、全国の家具業者、さしもの等々の方々が全国大会をやられた。各党の代表に来てくれということなんです。私は成田委員長のかわりで参りました。たいへん深刻なことでした。御出席の自民党代表のお方もずいぶん答弁に困られただろうと、はたから見ておってこっちまでが冷や汗の出る思いをした。どういうことか。ラワン材が値上がりしないのに、どうしてベニヤ板が一カ月や二カ月のうちに三倍にも四倍にもはね上がるのですか。同時にそのはね上がりが、東京市場と名古屋市場と大阪市場で、同じ日に同じ値段、二割五分もどうして一ぺんにはね上がるのですか。公取さん、これはどういうことです。そんなことが行なわれてよろしいですか。上がるべからざるものが上がっているのですよ。  なぜ上がったかといったら、これは合板が先に便乗値上げをやった。日本の木材の値上がりに便乗値上げをやらなければ損だというわけで、去年の八月、半年前百八十円であったものが、ことしの一月には四百円にはね上がっておる、これは二倍の余ですね。そうしたらどうなったか。それは各月ごとに上がっていった。ところがラワンはどうなったか。石当たり十二月に三千五百円だったのが、ことしの一月に六千円に一ぺんにはね上がっておる。同時に、アガチスまで、四千五百円であったものが一万円に、タモ材が一万八千円であったものが七万五千円、四倍強とはね上がっておる。一カ月にどうしてこんなに上がるのですか。  どこにその原因があるだろうと思って調べてみると、どうもおかしいです。これは農林省へ関係業者が再三陳情したはずなんです。絶対上げない、もしも上げるならばラワン材を直接輸入さしてあげますなどと甘いことをいっておった、そうでしょう。ところがどうです、農林省のことばを裏切って三倍にも四倍にも、一カ月の間ですよ、皆さん。そんなばかげた例はどこの国に通るのです。  その結果どうなったか。もらえるべきラワンが入らないものだから、学校から、地方自治体から注文をとっているのですが、四月の納期に間に合わない。学校を開設しよう、児童数がふえた、机がほしい、納まらない、これをどうするのですか。おかげで、生徒は一日じゅう立って勉強するのですか、運動場でやらせるのですか、講堂であぐらをかかしてやるのですか。私は、文部省にも聞きたいところだが、私が文部省にこの間行ったら、先生それは困りますよ、皆さんの努力で納めてもらわなければ困るという。納めてもらわなければ困るにきまっているのだ、買えない、売り惜しみをするから。  同じことが糸へんにある。綿布がどんどん値上がりした、綿糸が値がりした。あえて名前は控えるけれども、名前をいえばすぐわかる大きな紡績傘下の商社が、某布帛製品工場へ契約したものを二百反カットしてしまった、納めない。ところが、これを受ける側は何かといったら、自民党の方が経営していらっしゃるトラック会社なんです。そこへ納めなければならない。納めないとこのトラックは道路交通法違反で動かせない。なぜか、シートをかけなければならぬから。そのシートの材料が買えない。ではほかの材料でといったら、納めるときに、仕様書の中に銘柄がちゃんと明記してあるから、「二つダイヤ」でなければ受け取りませんという。これはそのとおり、当然のことなんです。なぜ製品があるにもかかわらず、契約を一方的に破棄してまでやって売り惜しみをしなければならないのか、これは民法第五百四十二条の違反行為だ。おかげで消費者やそれをいただいて勉強しようとする学校までが困るんだ。学校の困ることは——先生の困ることはまだいいんだ。生徒の困るのはどうしてくれるんです。農林省、大臣に聞きたい。責任を問うておる。
  99. 平松甲子雄

    ○平松説明員 合板の価格の騰貴につきましては、先生御承知のとおり、合板の本来の需要のほかに、木材の代替品としての合板の需要の増加があって価格が上昇いたしたものであると私どもは理解しておるわけでございますが、木材なり合板なりの価格の騰貴なり需要の増加というものにつきましては、四十七年に入りまして景気の回復と同時に住宅需要が非常に伸びてまいりまして、その結果、木材の需要が非常にふえた。それに対応いたしまして木材の供給というものが、森林資源の状況なりあるいは労務状況なりということで対応できないということから価格の上昇を来たしたということでございまして、私どもも非常に遺憾に存じておる次第でございます。  その点につきましては、とりあえず木材の対策といたしましては外材の輸入に仰ぐというようなことをいたしましたり、同時に、合板につきましては、国内の生産数量の増大ということをはかったわけでございまして、国内の生産数量も前年対比で約一五、六%の増加というふうな形になっておりますし、また輸入につきましても、ことしの一−三月の輸入数量というのは生産数量に対して一六%というような数字でございます。ことしの一−三月の供給数量というのは前年対比にいたしまして約四割くらいの増加になっております。しかもなおかつ供給が需要に追いつかないというような状況でございまして、私どもといたしましては、供給の増大を極力はかってまいりたいというふうに考えております。
  100. 加藤清二

    加藤清二委員 そんな需要と供給で逃げちゃいけませんよ。そういう答弁をするから、私が言ったでしょう。あれじゃ需要と供給が一夜のうちに二割五分もはね上がる原因になりますか。そんないいかげんなことで逃げたら、各業者に対してあなたたちの言ったこととはうそに終わっておるでしょう。あなたたちの言うとおりだったら、こんなふうになりませんよ。需要と供給の関係だったら、どうして大阪と名古屋が一夜のうちに二百四十円のものを三百円にしますか。どうして二割も一斉に上がりますか。需要と供給というものはそういうものですか。  公取にお尋ねします。  どうも談合の疑いが濃厚であると同時に、それを押しつけている形勢がある。したがって、私どもは立ち入り検査をしようと思っておる。あなたたちが立ち入り検査をなさらなければ、われわれみずからが調査団をつくって立ち入り検査をしようと思っておる。と同時に、ここの国会でいつでも証言台に立ちます、そういう約束もとっておる。このことは社会党だけが言うんじゃございません。当日の大会で、自民党さんも共産党さんも公明さんも民社さんもみんなそろって約束したことなんです。時間ですから、これで理事さんの指図に従います。公取さんはこれに対してどうするか。  次に委員長にお尋ねします。  証人が幾らでも出てきてここで証言をするその機会を与える気があるかないか。同時にそれが真実であるかどうか。われわれは立ち入り検査をすベきだ。国政調査をすべきだ。すでに民主団体が調査を始めている。それに議員がおくれてはまことに申しわけない。  最後に、物統令を発動することにいろいろ問題がありましても、よし百歩譲ったとしても、このまま放置するわけにはいかないし、足もとに火がついている問題である。だからあえて私は提案する。総理や二階堂官房長官が国民約束したことを破らせないために、私は急遽議員立法をして直ちにその発動によってこのギャンブルを解熱させて、そして国民の利益を守るべきだと思うのですが、これについての見解を両大臣からこの際承りたい。  以上でございます。
  101. 浦野幸男

    浦野委員長 加藤議員にお答えします。  先ほど、証人なり参考人なりが委員会に出てきたら聞く用意があるか、こういう御質問でございまするが、これは次回の理事会において協議の上で処置いたしたいと思いますので、御了承いただきたいと思います。
  102. 加藤清二

    加藤清二委員 けっこうです。
  103. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 合板の価格につきましては異常な値上がりを来たしております。これについて、これを使っておりまする家具メーカーの全国の組合から、まあ陳情という形でありますが、出ております。  ただし、その際証拠をそろえてというお話がありましたが、実はわがほうにはまだその証拠の提出はございません。ございませんが、現在事務当局におきまして取り調べ中でございます。できるだけ早い機会に何らかの実態を明らかにしたいと思います。(加藤清二委員「いつごろ答えが得られますか」と呼ぶ)いつごろまでということははっきりお約束はできませんが、事件として取り上げるかどうか、いままだ事件としては扱っておりませんで、合板のメーカーの組合、団体のほうから事情を聴取しております。しかし、それは場合によっては事件として取り扱うことに切りかえまして、そうすればあまり長くかけては意味がありませんから、できるだけ早い機会に実態を明らかにしたいと思います。
  104. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 最近の商品市場等におきまする動きを見ますと、お説のとおりこれは投機筋によるものと推定されます。単に自分の製品をヘッジしようというものではなくなってきておる。そこで、おそらくこれは過剰流動性と関係しているものと推定されます。ドルの買い取りと比例してどうも値が動いている、そういうこともプレスされております。そこで、一つの商品を押えると次またそれがもくもく盛り上がってくる。ウナギを押えるような情勢でもあります。  そこで、どうしてこの過剰流動性を押えるか。ある筋によれば、商社筋がやっておるのではないかといううわさもあります。けさも閣議でこの問題をかなり長い時間相談いたしまして、こういうような投機は征伐しなければならぬ、それについては政府と党と一体になって協力して前向きでやろう、そういうことをけさ閣議でも相談したところでございます。この問題は単に自民党だけの問題でなく、全国民の利害休戚に関係する問題でございますから、野党の皆さま方の御協力を得れば非常にありがたいと思いますし、同じ目的を達成するために、政府側といたしましても、野党のお知恵なり御協力をお借りして、一緒になってこの問題の解決に向かいたいと思います。
  105. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 いま通産大臣がお答えいたしましたように、どうも一カ所でおさまったかと思うと次が出てくる。しかも、この合板の問題は、これから結婚シーズンであり、家具が非常に値上がりしてくるというようなことで、非常にアキュートな影響を一般市民に与えるものでございます。これはやはり私ども立場から、きのうも実はその話をしておったのでございますが、思い切って合板を輸入してみたらどうか。ところが製品は関税上非常に高いんでございますね。木材は安いというか、無税でございますけれども、製品のほうは高い。しかし、高くても、もうこの際やったらいいじゃないかということを考えております。  それからさらに、いまの過剰流動性の問題ですが、円資金にかわるドルの問題は、この四十七年になりましてからずっと少なくなっております。この四月から十二月まで一兆三千億くらい。ところが、銀行貸し出しが十五兆以上あるようでございますね。四十六年度が円資金にかわるのが大体四兆三千億くらいだと思いますが、そこで銀行の貸し出し増が十三兆円くらい、それがさらにふえておるのですね。いま銀行局長からお答えがございましたけれども、やはりこの問題についてはもう少し考えてもらわなければならぬのじゃないか。私の立場からそういうことを具体的に指図はできないのでございますけれども、国務大臣としてこれは非常に問題があるということで、私なりに警告をしたいと考えております。(加藤清二委員「議員立法は」と呼ぶ)これはもう議員の皆さまがお考えになることでございます。もちろん議院がそういうことであれば、私どもはそれでけっこうでございます。
  106. 浦野幸男

  107. 野間友一

    野間委員 今回のドル危機、円の実質的な切り上げの原因が、アジア侵略を中心とするアメリカの軍事侵略政策によるドルのたれ流しにあること、また、内には、中小零細企業者あるいは労働者等を犠牲にして、また、もろもろの優偶措置の中で肥え太ってきた大企業本位の自民党政府の政治、これにあることは、一昨年の円切り上げ後も、貿易あるいは国際収支に大きな黒字を出し、輸出が増大しておるということから明白であると考えます。したがって、わが党は、対米従属、大企業優先の政治を抜本的に改め、国民優先、生活優先の政治へと転換しなければ、今後もドルの危機、円の切り上げが何度も繰り返される、このように主張してまいったことは御承知のとおりであります。  しかしながら、きょうは私は時間の関係もありますので、この中で最も深刻な打撃を受け、そしてとほうにくれておりますところの中小企業対策等について、通産大臣並びに関係各位に御質問をいたしたいと思います。  まず一昨年のドル・ショック並びに円切り上げの後に、政府中小企業対策として行なった施策をお伺いしたいと思います。
  108. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 一昨年におきましては、とりあえずまず実情の調査をやらせまして、円切り上げが各業態別にどういう影響を与え、どういう実態に業態がなっておるかということをまず把握させまして、その把握に基づきまして、まず第一に滞貨金融、そのほかの金融措置をやらせました。これには政府関係金融機関及び民間銀行にも協力を求めまして、この貸し出しのワクをふやし、それから金利その他につきましても考慮した向きもございます。  それから、業種によりましては、転換しなければならぬという業種も出てきておりました。これらにつきましては指導を強化いたしまして、転換できるものは転換する方向に積極的に指導もいたしました。  それから、税金の面につきましては納税の猶予、減免等の措置もたしか講じたと思います。  それから、保険関係のことで、保険業務を強化する、そういう措置もたしか講じたと思います。  今回は、そういう前回講じましたことを一応参考にいたしまして、さらにもう一歩前進した諸般の措置を講じよう、そういうことで手当てをしておるところでございます。
  109. 野間友一

    野間委員 いま若干についてお伺いをしたわけですけれども、その施策、措置が、一昨年のことですけれども、十全であったと考えられるかどうか。その点はいかがですか。
  110. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 一〇〇%十全であったとは思いませんけれども、しかしかなりの企業が金融措置を受け、あるいは手形の予約制度、直物の買い付け制度等を利用いたしまして危機を乗り切ったと思います。
  111. 野間友一

    野間委員 このあとドル・ショックの追跡調査などをして実態の把握につとめられたことがあるかどうか、その点はどうです。
  112. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それは通産局ごとに実態調査をやっております。
  113. 野間友一

    野間委員 その結果はどのような教訓を引き出されたか、その点について御答弁を願いたいと思います。
  114. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 たとえばこの前のときには燕の洋食器等は壊滅するのではないかと一時いわれましたけれども、しかし金融措置その他を活用いたしまして、燕も立ち上がって、前に負けない程度の経済力を回復しつつあったところでございます。各企業とも非常に努力をいたしまして、大体景気上昇とともに芽をふいてきたという状態が去年の秋の状態であったと思います。  それで、この前やりまして、ひとつ特に取り上げなければならぬと感じましたことは、たとえばケミカルシューズであるとか、あるいはクリスマス電球であるとか、零細企業がやっておるものにつきましては、その企業はもう成り立たなくなる。後進国の追い上げがあり、また先進国その他においてもいろいろ障害が出てきてやれなくなる。だから企業転換をやらせる必要が出てくる。そういうものもあったわけです。しかし、これはなかなか新しい商売が見つからないとか、あるいはいままでの仕事になずんで、しばらく出血をやっておればそのうちまた回復してくるであろうという見通しから、思い切って転換もやれない。うっかり転換してしまうとまた新しく業者がそこへ出てくる。アウトサイダーの規制もできない。といって韓国その他LDC諸国からも追い上げがきておる。そういうわけで喫水線上を上がったり下がったりしておるようなものが実はあるのです。それらのものを、いまから思えばもっと思い切って行政指導し、あるいは商売転換の芽を指導して、そうして構造転換を行なうべきであったのではないかという気がしております。今回は、そういう点については、必要ならば立法も考慮して思い切った構造転換をやって、その喫水線上に浮沈しておるという不安定な商売をなくしてあげたい、そういうふうに考えます。
  115. 野間友一

    野間委員 いまのお答えによりますと、かなりの成果があったというふうに理解するわけでありますけれども、東京都が二回にわたって追跡調査をしておるということについては御承知だと思います。それによりますと、輸出関連事業所が約一万、これは二回目が四十七年三月の時点での調査の結果でありますけれども、生産額に占める輸出額の割合、これは小規模事業ほど高い。これは当然だと思うのです。輸出の依存度が八〇%以上の企業は従業員十人未満のところが六一%、三十人未満が三七、百人未満が二九、こういうことになっておるようであります。  この中で、この調査結果が報告をしておりますけれども、ドル・ショック、円切り上げ影響について、単価切り下げなど出荷価格の下落を余儀なくされた。これがまだ続いておるというのが、約四二%の企業。それから、利益が全くなくなった企業、これが一六%。赤字になった企業が八%。さらに、操業短縮をした企業が二二%。この内訳は、機械関係が四七%あるいは化学工場が二九%。このような、いまなお深刻な影響を受けて不況の中であえいでおる。こういう実態から考えまして、大臣の認識は誤っておる、甘く見過ぎておる、私はこのように考えますけれども、いかがですか。
  116. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 業種により、またその当該工場や企業によって、そういうのも多少はあると思いますが、概していえば、予想していたよりも強靱な力を発揮して危機を乗り切った、そういうふうに一般的に私たちは考えております。だといって安心しているわけではございませんけれども、去年の初めのうちは不景気でかなり困っておりましたけれども、秋ごろから景気が回復してきて、内需に転換をしたのもかなりございますし、採算もとれるようになったのもございます。また、上がった値段については向こう持ちあるいは痛み分けという程度で、適当に消化して乗り切った、そういうのもかなりあると考えております。
  117. 野間友一

    野間委員 いまの答弁は——私が東京都の統計の結果を御報告申し上げたのですけれども、具体的に出てきている数字ですね。これからは、いま大臣の言われるような評価は出てこない。依然として甘く見ておる。このようにだれが考えても考えざるを得ないというふうに私は思うわけです。  さらに、具体的な地場産業の問題について調査をしておられるかどうか、この点についてまずお伺いしたいと思います。
  118. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 やっております。もし御質問があれば、中小企業庁長官等が来ておりますから、お答えさせます。
  119. 野間友一

    野間委員 それでは、まず大阪の生野のめがねレンズの業者の実態についてお伺いするわけですけれども、これは去る予算委員会の中で、わが党の荒木議員が質問したわけであります。私たちの調査したところによりますと、四十六年の七月、これはショックの前でありますけれども、出荷価格、一ダースが千五百円。これが前回のショックで千三百八十円に切り下げをされた。さらにその後千三百二十円。今日は千二百八十円。この中でめがねレンズの業者がわずかの工賃であるいはマージンで、労働時間を延長して朝から夜中まで働いて、かろうじて生活をしておる、こういう実態について政府当局は御存じかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  120. 齋藤英雄

    ○齋藤(英)政府委員 お答え申し上げます。  大阪の地場産業でございますレンズ工業でございますが、私ども調査によりますと、輸出金額は四十七年には四十六年に比べておおむね七%ないし八%低下になっております。したがいまして、これは前回のいわゆるドル・ショックと申しましょうか、おそらくその影響でこういうふうになったのではなかろうかと思います。この間の出荷額の全体でございますけれども、四十七年対前年度の対比で、おおむね二割くらい伸びております。これは国民生活の向上あるいは景気動向等、いろいろあると思いますが、内需の増加によりまして出荷額がふえているというふうに考えるわけであります。したがいまして、全体としてこれを見ます場合には、ドル・ショックの影響というものは内需によってかなりの程度カバーされておるというふうに私ども考えております。
  121. 野間友一

    野間委員 そういう認識だから困るというのですよ。二割の増加といま言われましたけれども、この不況の中でなぜこんなに伸びたのか。現場の零細な企業者が一体どのような仕事をしてここまであくせく働いてきたのか。この実態を知れば、単に皮相的、形式的に、伸びた、こういうような字づらで評価することは全く不当だと思います。しかも、原材料の価格、これは円の切り上げによって輸入が安くなるわけでありますけれども、私の調べたところによりますと、アメリカのコーニングというところから輸入を続けておりますが、原材料が百キロ当たり二万五百円。これは当時も現在も全く変わっていない。   〔委員長退席、稻村(佐)委員長代理着席〕 こういう状況の中で、これは働かなければ収入がない。なければ、死ぬよりしようがない。だから、一生懸命、苦しい中で働いておる。こういう実態を政府がもっときびしく調査を続けて、この実態の把握につとめなければならぬ。いまのお答えは、全く皮相的にものを見ておるとしか、私は考えられないと思います。  それから、神奈川県のスカーフの現状について調査した結果、おわかりなら述べていただきたいと思います。
  122. 齋藤英雄

    ○齋藤(英)政府委員 お答えいたします。  輸出スカーフの製造業は、大きな産地が横浜中心でございます。四十七年の生産額、おおむね百五十五億程度でございます。輸出は企業数百三十社ぐらいでやっておりますが、前回の円の切り上げによりまして、四十七年度におきます輸出量は対前年比六五%になっております。これは前回のいわゆるドル・ショックの影響がかなり大きかったということでございます。  また、最近におきましては、海外のバイヤーとの間の値開きが非常に大きくなってまいりまして、しばしば受注がむずかしいという状況が見られるわけでございます。したがいまして、この輸出スカーフの業界は、今回のドルの切り下げ等通貨情勢によりまして相当大きな影響を受ける業種の一つであるというふうに私ども考えております。
  123. 野間友一

    野間委員 そうしますと、前回の切り上げ前に比べて、私の調査した結果とは多少数字が違いますけれども、それだけ輸出額が減っておる、こういうことを認められ、さらにいま深刻な事態にあえいでおるということを認められたと思いますので、次に移りたいと思います。  このほか、たとえば通産大臣も言われた、クリスマス電球あるいは燕市の洋食器、これらが同じような事態の中でいまなお苦しんでおる。このことは、東京都のこの調査の結果、都内の輸出関連企業だけではなしに、全国至るところで、とりわけ地場産業、しかも生産の中で占める輸出の割合が非常に高い零細企業者、これらが前回のショックからまだ立ち直りをすることなしに今日まであえいでおる、こういうことを如実に示しておると私は思います。  さらに、あと一、二例を加えてみますと、たとえば和歌山の高野口、これは私の住んでおるところでありますけれども、高野口の特殊織物、先ほど社会党の委員からも話されておりましたけれども、糸がいま非常に暴騰しておる。しかも、一昨年の切り上げから今日まで苦労した中でやっと上向きになってきた。さらに今度のフロートということで、今後どうすればいいのか、全くとほうにくれておるということを最近私のところに参りましていろいろと苦労話を聞かされたわけであります。  それだけではありません。大阪のボルトナット、これは対米輸出が半減して今日まですでに続いております。しかも、為替差損が一〇〇%メーカーの負担、その他建築金物あるいは人造真珠、いずれも今日までまだ回復しておりません。したがって、もっともっと自分の足でこの実態を調べて、ほんとうに深刻なこの状態を知らなければ具体的な適正な施策は講ずることができない。この点について私は強く主張するわけでありますけれども通産大臣いかがですか。
  124. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いままでもやっておりますが、さらに調査力を強めて実行いたします。
  125. 野間友一

    野間委員 それから次に進むわけでありますけれども、ぜひ一昨年の深刻な事態、この中でほんとうに謙虚に教訓を引き出していただいて、そうしてこのような施策の誤り、不十分な施策の中で回復しない、苦しい業者の状態を万全を期してこれを救済する、そういう観点から取り組んでいただきたいと思うわけであります。  ところで、通産大臣所信表明の中で「中小企業をはじめとするわが国産業の撹乱防止、経済の安定的な発展の維持に万全を期する」こういうふうに述べておられることは明らかでありますが、先ほどのお答えにもありましたけれども、前回とられた中小企業対策の措置、これと比べて万全を期するということはどのような関係にあるのか。前回の施策と比べ合わせて御答弁を願いたいと思うのです。
  126. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 中小企業の皆さま方がこの円の変動によって商売上の支障を来たさないように、金融あるいは税制あるいは為替、そういうあらゆる面において手当てをして、心配をかけないようにするということでございます。  なお、さっき申し上げた喫水線上を上下しているというような零細企業については、今度は思い切って構造転換政策も進めていくべきだ、そういうふうに考えております。
  127. 野間友一

    野間委員 あまり抽象的でわかりにくいのですけれども、前回の措置については、ある程度先ほど具体的にお答えになったわけですけれども、前回の措置と今回の措置と比べて、さらにそれを前進させる面があれば、いままでやった分、あるいはこれからやろうとする分についてお答え願いたいと思うのです。
  128. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 前回やった措置は全部適当な措置でありますからやるつもりであります。しかし、事態は前回よりも深刻なものもございます。したがいまして、きのう、おととい、三日間、通産局長会議をやりまして、その報告をいま聞いたところでございますけれども、その情勢を見まして適切な措置をさらに必要あらばとっていく、そういうことであります。
  129. 野間友一

    野間委員 そうしますと、前回とられた措置については、全部今回についてもこれを実施していく。さらにその上に新たな施策を講ずる、こういうことですね。
  130. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そうです。前回とった措置はおおむね適切な施策であると私は思います。したがいまして、今回もそういう適切な施策は全部実行したい。その上、事態は前回より深刻である、そう考えますので、さらに必要あらば適切な措置を積み上げていきたいということであります。
  131. 野間友一

    野間委員 いま考えられておることについて……。
  132. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 たとえばさっき申し上げた喫水線上を上下している零細企業構造転換というようなものは、私の頭に浮かんでいることであります。
  133. 野間友一

    野間委員 その程度なら万全ではないと思うのです。いま私が実態調査の結果御指摘申し上げたように、前回のときにとられた措置、これは金融、税制等々についてございますけれども、それにもかかわらず深刻な事態が生じているわけなのです。したがって、単に喫水線上のといういま抽象的なことばがありましたけれども、いま何ら具体的な措置といいますか、そういうものを持っておられない。その程度では、前回と同じように幾らやっても、またぞろ網の目からこぼれ落ちる中小零細企業者、これらの苦悩が深まるばかりである。もっと強力な施策をとるように、私は強く要求をしたいと思います。  ここに大阪商工会議所の最近のアンケートがありますけれども、この中で、大阪商工会議所関係の業者の回答がございます。再切り上げになった場合に、輸出数量低下を予想する企業が四三・二%、採算割れが三三%、こんなに数えております。それから為替差損の増大が六・三%、主力市場の喪失が八・五%、持に中小企業の場合に採算割れの予想をしておるのが七一・四%、こういう大きな比率にのぼっておるわけであります。しかも、前の円切り上げ影響についてもアンケートの結果がございますが、甚大な被害を受けたのが八・三%、かなりの被害を受けたのが三三・五%・それから何らかの被害を受けたのが三八・八%、合計約八〇%。つまり十人のうち八人の業者が被害を受けておるわけです。しかも、さらにダブルパンチの今回のフロートによりまして、業者の方々がいま申し上げましたようなアンケートの結果、非常に深刻な事態が到来する不安におののいておるわけであります。そこで、強力な施策をこれから推進されると言われるわけでありますけれども、具体的に二、三の問題について私のほうからお聞きを申し上げたいと思います。  初めに、民間金融機関が中小企業に対して選別融資、これを強めたりあるいは歩積み両建て、これを行なわれることがないようにしなければならぬというように思うのですけれども大臣はどのようにお考えですか。
  134. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 もとより当然のことでございます。のみならず中小企業零細企業に対しては積極的に融資するようにこちらから指示しているところでございます。
  135. 野間友一

    野間委員 現実にはしかしこういう事態があちこちであるわけなんです。こういうものがあるという実態を御存じかどうか。さらに、もしこういう実態があれば政府としてどのような措置をとろうとするのか、その辺について、御答弁を願いたいと思います。
  136. 莊清

    ○莊政府委員 今回のドル・ショックに対しまして、民間の金融機関から中小企業への融資が従前以上に円滑に行なわれるということが、非常にショックの緩和及び中小企業の安定のために欠くことのできない重要な事項でございます。政府といたしましては、前回のドル・ショックのとき同様、いずれ国会の御審議を経まして、民間金融の円滑化をはかりますために、政府の信用保険制度に特例を設けまして、民間金融の円滑化を側面から推進するということがぜひとも必要だと考えておりまするが、とりあえず今回のドル・ショック直後の二月十四日、これは大蔵省からも側面的に市中金融機関のほうに御指導いただいたわけでございますが、通産省からも全国の民間金融機関に対しまして、特に弾力的な金融上の配慮を払うようにという要請をいたしました。また、下請代金等につきましても、必要ならばひもつき融資をひとつ親企業のほうに考えるようにという趣旨のことも通達をいたしたわけでございます。これを受けて全国銀行協会のほうでも直ちに決議をいたしまして、傘下の金融機関に詳細な示達をしたということでございます。現在のところ、為替の買い取りにつきましても、現物につきましては市中銀行が中小関係の分を円滑に買い取っておるという状況にございます。  なお、御指摘のございました歩積みとか両建ての問題、これは従来から中小金融にまつわる非常に難問題でございますが、幸い金融緩和、この一年ほどの間に金融機関が相当中小企業に重点的な融資ということを行なってきた結果、そういう点についてもかなりの程度は改善に向かいつつあったというふうに考えておりまするが、もちろん全部がなくなっておるわけじゃございません。したがいまして、今後はこれは大蔵省と協力いたしまして、従来から銀行に対しても強い要請もし、調査等もいたしておりますが、今回のドル・ショックを契機にそういう金融基調が中小企業に対して変わらないように、逆戻りすることがないように、御趣旨を十分体しまして、通産省としても万全の努力をいたしたい、かように考えております。
  137. 野間友一

    野間委員 具体的に聞いておるわけなんで、いま金融緩和と言われましたけれども、信用のある大きなところにはそれはそうかもわからない。しかし、いま申し上げたような問題が現に小零細業者、こういうところにあちこち出ておる。したがって、単に一片の通達だけじゃなしに、具体的な、効果的な措置をぜひ講じてほしいと思うのだけれども、その点について、政府としてはどう考えるか、この点なんです。もう一ぺん答えてください。
  138. 莊清

    ○莊政府委員 前回、ドル・ショックの直前と、昨年の十一月現在くらいと比べますると、中小企業に対する金融機関の融資残高というのは大体三十二、三兆円から四十四、五兆円まで大幅にふえておりまするが、特に市中銀行等では、先ほど申し上げましたように、民間金融機関として、中小企業の融資を非常に重視いたしました結果、貸し出し増の中で、中小企業向けの貸し出し増のウエートが漸次高まってきておったわけでございます。半分以上が中小企業に貸し出された時期もございます。  そういうことで、金融情勢は好転しつつ推移しておったわけでございまするが、先ほども申しましたとおり、今回の通貸調整に伴う金融情勢の今後のあり方として、金融機関がまた中小企業向けに金融のパイプを締めてしまうというようなことがございますると、これはもう基本的に中小企業としては大問題になるということでございますから、国の金融政策全般のあり方ということとどうしてもこれは切り離しては考えられない問題でございます。  この点につきましては大蔵省銀行局におきましても十分配慮をするということで、私どもの要請もありまして、全銀協のほうに対しましても非常に強い要請、指示を今回はしていただいておる。その推移を見まして、私どもは産地の調査等今後も引き続き行なっていくつもりでございます。したがいまして、民間からの金融の円滑化、それが一体どう推移していくかという点も十分注意をし、そういう徴候が少しでもあらわれてきた場合には、政府全体として取り上げる問題でございまするから善処を必ずする、こういうことで中小企業庁としては十分目を光らしていく、こういうふうに考えております。   〔稻村(佐)委員長代理退席、委員長着席〕
  139. 野間友一

    野間委員 そうしますと、そういう問題はあってはならない、こういう点については認められたと思うわけでありますけれども、これをほんとうに効果的にこういう事態が起こらないように強力な措置を講じてほしい。  また同時に、それに関連して融資の問題について、私は零細企業者の方々と会う機会がありましていろいろと話しをしたわけでありますけれども、いま求めておるのは、一つはかけ込み融資ですね。これはすでに黒田府政の大阪ではやっております。無担保、無保証、無利子をやっておるわけなんです。国でも当面五十万までこのような特別融資、かけ込み融資、こういう制度を実現してほしい、これが強い要請であります。さらに、小零細企業への融資について、国が利子補給を行なうとともに、信用保証料についても全額負担しろ。このことについては、前回あるいは今回のドル・ショックあるいは円の切り上げ、こういう事態は、中小零細企業者の方々の責任では全くない、まじめに働いておってもこんなひどい打撃を受けておる、当然のことだと思うのです。税金というものはこういうところに使わなければならぬ、こういうように思うのです。かけ込み融資の問題についても、いま大阪でやっておるこういうことについて、ぜひこれを実現してほしいと思うのですが、いかがですか、お答え願いたいと思います。
  140. 莊清

    ○莊政府委員 ドル・ショックに伴う緊急融資でございまするが、実態調査、現在進行中でございますので、それに基づいて所要金額等算定し、融資条件等についても検討の上、財政当局と折衝になるべく早く入りたいと考えておりまするか 御指摘のように、零細企業その他非常に苦しい状況にあるわけでございまするので、融資条件の改善についても十分検討いたしたいと思います。前回、中小企業三機関から約千八百億の融資を行なったわけでございまするが、これの返済期限が迫っておるという状況にございまするので、これにつきましても返済猶予の思い切った措置をぜひ今回は講ずべきであろうというふうに考えておるわけでございます。  その場合、新規に行なうドル・ショック緊急融資についての無担保、無保証に全部したらどうかという御提案もただいまあったわけでございまするが、金融機関中小三機関に対しましては、とりあえず新しいドル・ショック融資の制度が新規にきまって発足するまでの間の融資態度といたしまして、一般的な通知をいたしましたが、その中でも弾力的な運用につとめるように金融の円滑化を積極的にはかるようにという趣旨の指示をすでにしてございます。三機関からの融資をすべて制度的に、担保もなし、保証人もなしというふうに今回思い切ってできるかどうかということは非常に大きな問題だと存じますが、担保力に欠いておる人たちがふえてきておるということは、私は、調査の結果でも事実そうなると思いますので、別途国の信用保険制度のほうにおきまして、特別小口とかあるいは無担保保険、これらのものの利用も、中小の三機関からの借り入れで弾力的に使っていくことができるというふうな措置とあわせまして、担保力の足りないものについての補完、こういうことをケース・バイ・ケースで弾力的に行なうということが今回の措置としては必要だと存じます。  なお、話がこまかくなって恐縮でございますが、信用保険の保険料の問題あるいは県の保証協会における保証料の問題、これについても御指摘があったわけでございますが、これは四十八年度予算におきまして、ある程度の引き下げが可能となるよう予算措置をすでにとっておりましたが、今回のドル・ショックにつきましては、さらにその水準よりも、前回同様少なくとも三分の二くらいの低料率でそれが利用できるようにぜひいたしたい、かように考えていま検討をしておるところでございます。
  141. 野間友一

    野間委員 利息を下げるということは、もう当然の措置だと思うのです。これを強力にやることはもちろんですが、いま私が要求したのは、かけ込み融資、これを取り上げ、実現する、そういう方向考えるかどうか。特にこれは切実な問題ですから、もう一度答弁願いたいと思うのです。  それからもう一つ関連して融資の問題ですが、国金のある課長がこういうことを言うんです。この前のショックで借りて、この上にさらにまた借りるのか、返済能力がないじゃないか。それは場合によれば国の施策として貸すことはできたって、おまえ返すことはできないじゃないか、こういうことを言うほどに、いまちょうど、前のショックのあとの返済期が迫っておる、今日さらにまた借金しなければならぬ、こういう点から考えまして、特に先ほど申し上げたように、このショックあるいは切り上げの原因が、全く中小零細企業者には責任がない。ここに金を使わなくて何で政治といえるか。こういう点から、かけ込み融資の問題あるいはいまの国金の、いみじくも課長が、これは現場ですから、実態をよく知っております。したがって、無担保、無保証だけではなしに、無利息さらには返済期間を猶予して、その期間を国が利子を補助をする、こういうような施策考えるのは当然と思うけれども、どうですか。
  142. 莊清

    ○莊政府委員 前回のドル・ショックの際の中小三機関からの緊急融資につきましては、返済期がそろそろ迫ってきておりますので、これの返済を約束どおりにしてもらうということは、いかにも実情に沿わないことでございます。これにつきましては、ぜひ、相当期間の据え置き期間の延長、いわゆる返済のたな上げでございますが、この措置をまず緊急措置として講ずるため、所要の措置をいま検討いたしております。  それから、返済を猶予しただけでは、もちろん、今回こぶの金融需要が緊急に起こっておるわけでございますから、これに対してまたもう一度手当てをするということは当然でございます。これについても現在実態調査を行なっておりますので、まとまり次第、所要の具体案というものについて大蔵省とも直ちに折衝に入りたい、かように考えております。  その場合に、一つの御提案として、思い切って、返済能力も欠けておるから利子をゼロにできないかという点でございますが、これはやはりいろいろなショックを緩和し、それに耐えて、再び事業として成り立っていくようにする、その間の緊急のつなぎの金融でございます。滞貨をかかえ込んだとか、あるいは減産に一時期おちいる、あるいは為替差損が出てそのために売り上げ計画にひびが入った、こういういろいろな意味で予期せざる増加運転資金が事業の継続上どうしても必要になるわけでございますから、これの金融ということでやはり私ども考えざるを得ない。したがって、金利をゼロ——なるべく低利のものを確保するような努力を当然私どもしなければならないわけでございますが、金利なしというふうなところまでは、実際問題として、実際の行政上の措置としてまことにむずかしいんじゃないか。しかし、融資の諸条件につきましては、前回の制度というものもございますけれども、再検討の上なるべく今後の事態に対応できるような、そういうものに努力をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  143. 野間友一

    野間委員 たいへんたよりない話で、わかったようなわからぬような話なんですけれども、そういうような姿勢では、ほんとうに、何度も申し上げておるように、この危機を乗り切ることはできない、施策一つすらとることができない。こういう政府では、またぞろ深刻な事態が生じて、中小零細企業者が非常に大きな決定的な打撃を受ける。この責任はあげて政府にあるということを私は強く指摘を申し上げ、さらに今後もこれを追及していきたいと思います。  時間の関係で、次に問題を進めたいと思います。  下請代金支払遅延等防止法の関係についてまずお聞きするわけですけれども、この法律が非常に不十分であるということについては衆目の一致するところであります。それにしても、いまの緊急事態の中でこれを最も効果的に、最もきびしく施行して、そして守らしていくということは、これはまた大事な問題だ。私から言うまでもありません。  そこでまずお聞きしたいのは、この法律の適用を受ける親事業者、これは大体全国でどのくらいあるのかということが一点。  それから、輸出関連事業のうちで、この法律の適用を受ける親事業者はどのくらいあるのか。というのは御承知のように、現行法規では資本金一千万円以下、あるいは法人でない個人の場合にはこの法律が親事業者に適用できない、こういうことになっておりますので、この点についてひとつ関係者は明らかにしてほしいと思います。
  144. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 ただいま親事業者として扱っております事業者の総数は三万二千でございます。そのうち輸出関連と言われますと、ちょっとその点につきましては明確にお答えすることはできません。  なお親事業者になるものと子との間について、多少それをこまかく申しますと、議論の余地があることは私どもも認めておりまするが、しかし、一応中小企業というものは、現在たとえば資本金五千万、従業員総数三百人というふうな一つの機械的な基準を設けておりまして、そういうものの上のものはいわば大企業であり、それより下であれば中小企業であるというふうな扱いにしておりますので、中小企業間において親子という場合には、一千万円以下というものは子とみなす、それ以外のものについては、同じ中小企業の間で親事業と子というふうに分けるのは、議論はございますけれども、いささか範囲が広くなり過ぎましてたいへん効果的でない。かえって、私どもは、調査をしたりするときにも、三万二千ありますが、これを全部調査することは実際できないのです。したがいまして、ある程度その中から抜き出してやっておる。しかし、総数としては、その半分ぐらいは中小企業庁と協力いたしまして調査しておりますが、親となるものが非常に数多くなりました場合には、それらの調査についてはかえって手薄になる場合もありますので、不徹底になる。したがいまして、一千万以下のものは子である、中小企業が親となる場合においても一千万以下であれば子となる、こういうふうに取り扱っている次第でございます。
  145. 野間友一

    野間委員 調査が不徹底になるという話ですけれども、そんなばかなことがありますか。それがいまこの法律のもとでも、あとでまた触れますけれども、実際には調査あるいは検査の活用がなされていない。いまでもそうですよ。しかも、もしその点の調査が範囲が広がってむずかしいということであれば、その点については、たとえば公取あるいは中小企業庁長官だけではなしに、各都道府県知事にこの権限を与えればこれは十分できるし、また、そうするのが当然だと思うのです。全国で公取と長官だけができる、このこと自体が問題であって、この親事業者に資本金一千万以下の中小企業者はなれない。つまりそれだけ最も切実なしわ寄せを受ける二次、三次の下請業者、これに対してはこの法律が適用できない、ここに大きな問題があると思うのです。その点について、私のこの指摘はよくわかると思いますけれども、今国会においてこういう不備を是正するために法律を改正する意思があるのかないのか、あるいは不備そのものがあるということを認めるかどうか、この点について答弁を求めたいと思います。
  146. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 従来から問題になっている点ではございまするが、先ほど私は数がふえると申しましたが、現在でも三万二千の親事業を、たとえば私のほうだけで十分綿密に調査するとなるとこれは非常に困難きわまることである。かりに今度は一億円に中小企業がなるといたしますと、一億円までのものも、従来まあ五千万の水準のものは当然に全体の経済レベルが上がってまいりますから、大体五千万というのは今日においては一億円に相当するでございましょうが、企業の数というのは、法人としての組織を持っているものだけでも少なくとも数十万、百万近いんじゃないかというふうにいわれております。もちろんこの中には、実際には存在しないものも登記を取り消しておりませんから多少は水増しになっておりますが、とにかくたいへんな数にのぼる。それらにつきまして全部中小企業同士の親子関係を認定するということからやらなければならぬわけですが、あまりに広範囲に問題を広げることについて私どもは若干能力的に疑念を持っておりますし、効果ある行政をするためには確かに零細の下請にまで及ぼすべきであるとは思いますけれども、あまり手広く広げたためにそのことが、たとえば都道府県ということをおっしゃいましたが、そういうものについて実際にこれが不当な、不公正な取引というものに該当するかどうかという点について、あまり行き過ぎた取り締まりをすることもいかがかと思います。  中小企業同士でありますから、その中には法律をそのとおり守れないという場合だってあるわけでございまして、これを全部いかぬというふうにして扱うかどうか。私ども現に、六十日といわれましても、六十日の支払い期限を守らなかったら全部違法であるというふうなきめつけ方をするとなると、これはたいへんなことになります。そういう点では、若干その辺に行き過ぎた行為、少し行き過ぎた支払い遅延というふうなものはきびしく取り締まるというふうなことではございますが、まあそのように私ども解しております。
  147. 野間友一

    野間委員 私がいま問題提起をしておるのは、先ほどから何回も言っておるように、ショックの中で最も被害を受ける中小零細企業者をどう救っていくかということです。この法律はそれなりに、曲がりなりにも、これがきびしく守られれば効果あるのは当然のことなんです。だからこれをどうやって効果的に実効性のあるようにやっていくか、これは当然政府のつとめじゃないですか。そういう点から考えて最もしわ寄せを受ける二次産業あるいは三次の下請、こういうところが資本金が一千万以下ということで親企業になれない。そうしますとこの法律の適用はできない。全くそれじゃざるじゃありませんか、そうでしょう。そういう点をもっと真剣に考えて、特に今度のこのショックとの関係で都道府県知事にこの権限を与えるとか、あるいは一千万以上、これを取っ払ってすベての親企業者にこれを適用する、こういうふうにしなければこの法律そのもののねらいというものが、これは下請事業者の利益の保護というのが目的なんですから、これの実効性がないじゃないかということを申し上げておるのです。  現に一昨年のドル・ショックのあとで、公取の資料によると、おざなりのお茶を濁したような調査をしておる。この調査なるものもあれでしょうが、書面による調査照会だけでしょう。よく考えてほしい、みずから違反しておる者が、自分は違反しておるというようなことを公取の照会に正直に答えるばかがおりますか。このようにして、この法律そのものの中身はいいとしても、評価できるとしても、全くこういうでたらめをあなたら自身が執行をやっておる。この書面にあるけれども、四十七年度中に八千四百九十件親企業者に対して調査をし、勧告四十二件を含め四百三件支払い改善等の措置を講じた、こういう記載がしてある。あなたがここで読んだとおりだ。これも親事業者に単に書面で照会しておるだけじゃないですか、そうでしょう。
  148. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 ただいままで行なっておりますのは主として書面によるものでありますが、立ち入り検査を行なっておるものも数百件ございます。
  149. 野間友一

    野間委員 いや、問題をごまかしては困る。検査ということの前に調査があるわけです。しかも、その調査について、あなたのところでこの間もらった「業務の概略」という資料があります。それによると、親事業者に対する書面調査が八千四百九十、これが全部でしょう。しかも下請事業者からの申告はたったの四件、こういうものを申告すると請負関係がとまってしまう、こういうことをおそれてなかなか申告できない。この法律に違反してたくさんの契約がやられておる。あなた自身知っておるはずだと思うんだ。  こういうことを考えたときに、いま申し上げたように、この緊急事態に一千万以下の親企業にはこれが適用できないという法の不備と同時に、やり方そのものも単に親事業者に書面で調査するだけでお茶を濁す、こういうことでこの法律の効果的な適用ができるのかどうか、これはだれが考えたってできないというのが当然だと思う。もっと真剣にどうすればこれがもっともっと効果的に適用できるか、この点をあなたは十分考えなければならぬと思う。今度の十四日のあの書面も親事業団体に出しておる。あのような単なる一片の書面でこの深刻な時期にこの法律に基づいて救済ができるかどうか。できると考えるばかはおらぬ、そうでしょう。単なる書面でなしにあなた自身がどう考えておるか、これを最も効果的に実施できるようにどうすればいいのか、あなた答えていただきたいと思います。
  150. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 はっきり申し上げまして、こういう支払い遅延の調査というものは、たとえば下請の段階のほうから調査をしていくということになりますれば百万あるいは数百万というふうな数字にならないとも限りません。個人企業者を含めますとその数は相当膨大なものであろうと思います。したがいまして、親企業のほうから調査する。その場合、親企業が虚偽の報告をするというふうなことについては厳重にこれは取り締まっていくわけでございますから、従来でも、親企業のほうから、調査いたしましても、そういううそを言ってくるというケースはあまりない。大体いままでは特に金融がそれほど詰まっておらなかったということもありましょうけれども、それほど大きなばかなものをやっているというケースは少ないように思われますし、申告においてわざと故意にその件数を少なくしているというふうなところもないように思います。
  151. 野間友一

    野間委員 そういう認識でおるからだめなんですよ。もっと自分の足でかせぎなさい。歩きなさい。歩いてもっと実態を知ってください。たいへんなんですよ、いま。あなた自身にはわかっていないのですよ。下請企業者の生活の苦しい実態がわかっていない。こんな法律がすなおに守られておると思っておる認識そのものが誤っておるんだ。あなた自身が自分調査に一ぺん行きなさい。親企業者たちを無差別に抽出してもよい。あなた一ぺん歩いて実態を調べてほしいと思います。どうですか。  時間が来ましたので最後に通産大臣、るる述べましたけれども、こういう深刻な実態の中でほんとうに真剣にこの問題に取り組むという姿勢をここでひとつ述べていただきたいと思います。
  152. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 中小企業者のために一生懸命やりたいと思います。
  153. 浦野幸男

  154. 近江巳記夫

    ○近江委員 きょうは時間も非常に限られておりますので、何点かお聞きしたいと思います。  先ほど他の委員からも質疑があったわけでございますが、最近の商品相場の異常な過熱ぶり、これはもう黙っておるわけにはいかぬと思うのです。特に羊毛であり生糸、綿糸、こういう繊維市況、これは商品取引所開設以来の高値を更新しておるわけです。また、輸入大豆やアズキ、砂糖、ゴム、こうした国際商品等もほぼ全面的に暴騰あるいは波乱含みの、そういう市況を繰り返しておるわけです。こういうことがインフレムードを一そうあおっておるわけです。たとえば羊毛の場合、商社が減産を見越してオーストラリアで買い占めをやっておる。それがさらに投機筋を刺激して市況を一年間に二倍近くにまでつり上げておるというような例もあるわけです。あるいは土地や株への大量投機で非常に商社、企業が非難を浴びておりますが、最近は銘柄米やモチ米の投機買いにも出ておるということが伝えられておるわけです。こういうことを考えますと、非常に国民生活に大きな影響を与える商品でありますし、こういう商品投機ということにつきましては徹底的に追及していかなければならぬと思うのです。  それで、この間田中総理からいろいろな指示をされておるようでございますが、物統令等も初めはできることなら適用したいということをおっしゃっておりましたが、しかし法的に物統令そのままの適用は無理だろう、新規立法というようなこともいわれておるわけですが、しかし実際に立法措置をとってそれが動くまでには相当な期間がかかるわけです。このままの状態で放置しておけばいいのかという問題があるわけです。そういう点から考えますと、現在の政府として考え得るすべてのそういう規制、それを一刻も早くやらなければいけないのじゃないか、このように私は思うわけです。  きょうは各省も来られておりますし、立法措置はまたあとでお聞きしたいと思っておりますが、現在とり得る最高の皆さんの知恵をしぼった、また国民生活を守らなければならないという決意のもとにお考えになったその規制策というものについてお聞きしたいと思うわけです。まず初めに公取委員長、それから農林省、それから経企庁長官、通産大臣、この順序でお願いしたいと思います。
  155. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 価格をつり上げた背景に事業者の共同行為があった、こういたしますれば、つまり通謀でやったということでありますと、これは明らかに独禁法に違反いたしますから、そういう場合については徹底的にこれを追及するということができると思います。しかし、いま問題になっております羊毛、木材その他大豆などの投機については、一般的にやや品薄傾向を見越した思惑買いがある、買い占めがあるが、しかしそれは商社がやっておるのか事業者がやっておるのかわかりませんが、とにかくこれは共謀でというよりは、若干無差別に何の連絡もないが、とにかくぼろいもうけを得るためにやっておるという行為じゃないかというふうに見られておるわけでありまして、共謀しておれば当然公取の所管になりますが、そうでない場合には、投機を目的とした買い占め行為というそのものずばりには、いまの独禁法は当てはまらぬというふうに遺憾ながらなっておりまして、解釈上非常に無理をするとこれはできないこともないのですが、よほど極端な事態が起こらぬ限り、新たに別に法律をつくらなければそういう行為の法的な取り締まりは困難ではないかというふうに考えられる次第でございます。
  156. 内藤隆

    ○内藤説明員 お答えいたします。  農林省といたしまして先ほどちょっと触れたのでございますが、代表を大豆にとりまして若干申し上げますと、くどくどしく申し上げませんけれども、当面の緊急対策と、それから長期対策というふうに分けて考えておりまして、大豆の主要供給国でございます米国及び中国におきまして、異常天候による先行き不安というようなことがございました関係から、緊急対策といたしましては、米国及び中国に対しまして、それぞれ輸入の促進ということにつきましておのおのの政府及び関係機関に積み出しの促進、既契約につきましても積み出しがおくれるというような事情もございましたので、積み出し促進を要請して、これに対してはしかるべき返答、具体的に申しますと、たとえば中国の場合におきましては十二月、一月、二月積みで約六万トン必ず積み出そうというような返事をいただいておるわけでございます。  そのほかに二番目といたしまして、北海道を中心といたします国産大豆の集荷の促進というようなことをいたしましたし、三番目に、大口の大豆の需要者でございます国内の製油業者、これが当然搾油用の原料として一定量のものを手持ちをしておるわけでございます。そのうち五万トン程度のものを不足しております食品用に放出する、これは適正な価格で食品の実需者団体と契約をするという形で放出させる。それからさらに、先ほど申しました大豆の商品相場につきましては、過熱の防止のために、各段階におきまして各限月につきまして相当強い規制措置をとったというようなことでございます。  また、将来の問題といたしましては、申し上げるまでもございませんが、農林省が一応計画いたしております生産目標に従いまして、国産大豆の生産振興と価格安定、それから品種改良等を総合的に講じましてやってまいります。  そのほか、今回の経験を通じましても、海外の供給源が、これは世界的にさようでございますけれども、米国というようなことに非常に片寄っているというようなことから、新規の供給地域というようなものの発見と申しますか、すでに有望なところも若干ございますが、そういうようなことによる多角化、安定化というようなことであります。  さらに三点といたしまして、これも今回の経験でございますが、食品製造業者というようなものが原料の大豆の手当てというようなことに非常に当用買いに徹しているというようなことから、長期の原料手当て、それから円滑な流通というようなことに十分な体制を持っていないというような欠点も若干ございましたので、そういうようなものの改善をはかっていくというような点を考えておるような次第でございます。
  157. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 根本的には先ほどから申し上げておりますように、過剰流動性を締めていく、これを吸収していくということであると思います。  大豆の問題でいまお話がございましたけれども、ああいう問題につきましては、やはり製油メーカーの手持ちの大豆を吐き出させるという臨機の措置をとっているわけでございます。  さらに物量をふやすという意味で、輸入を大幅に増加するということで、関係各省庁にいろいろお願いしましてさような措置をとっていただいているわけでございます。  なおトリガーといいますか、引き金を引いて、一つの過当取引といいますか、買い占め等にどう対処するかという問題につきましては、さらにこの週明けの月曜日に関係各省の次官が寄って、官房長官のもとで何か対策を協議するというようなところを考えてもらっているようなわけでございます。
  158. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いままで関係者が述べたとおりでございますが、私思いますに、やはりいま小坂経企長官が述べられましたような過剰流動性を退治する、これが一番基本で長期的な政策であろうと思います。過剰流動性を退治する一つのポイントは、ドルと円の接触をある程度断つ方法はできないものか、凍結する、ここら辺に一つのポイントがあると思いまして、大蔵省でもいま検討しているはずでございます。  それから、商品取引の問題になってまいりますと、通産省が担当している部分では、綿糸とか毛糸とか生ゴム等がございますが、これは臨床的措置に終わってしまうわけです。しかしやらなくちゃならないというので、証拠金を引き上げて、いわゆるマル代七十万円まで、つまり最高値まで実は引に上げて、これを下げたこともございますし、情勢によっては立い会い停止も考慮して、にらみながらやっているわけでございます。  最近の情勢を見ると、大体しろうと筋は手を引いてきて、くろうと筋が投機的関係で出入りしているという様相が見受けられます。したがって、かなりびしびしした政策をやっても、しろうとに迷惑を及ぼす可能性は少なくなったと私たち判断をいたしまして、最近は建玉報告ということをやらせております。つまり、買った最終買い主を報告しなさいということでそのたびごとに報告させる。これは投機をやる者にとっては非常にいやな措置でありましょうけれども、そこまでいま始めているというところでございます。
  159. 近江巳記夫

    ○近江委員 各省からいろいろな対策、現在とり得る規制についてお話があったわけですが、公取委員長にお伺いしたいと思うのですが、先ほどのベニヤの例でもありますように、一斉に二五%上がる。その場合に共同行為があったかなかったか、もちろん調査はされると思うのですが、いままで公取がいろいろと努力されてきたと思うのですけれどもほんとうにそういう証拠をつかんで、そして何らかの罰則を与えていくという例は、きわめて少なかったのじゃないかと私は思うのです。  こういう点からいきますと、この状況から見ますと、一斉に二五%もベニヤ板を一ぺんに上げてくる。これはもう、話し合いがあったかなかったかということよりも、状況においてはっきりと、裏には何かあったんじゃないかということは、私ははっきりしておると思うのです。こういう点において、独禁法、現行法においては確かにその点は無理があろうかと思うのですが、それであるならば、国民生活を守る点において、独禁法を改正するとか、そういうことは大胆に公取委員長がお考えになるべき問題じゃないかと思うのです。その点、独禁法の改正等についてはどのようにお考えでございますか。
  160. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 ただいまの御質問の点は、たいへんにむずかしい法律問題なのでございます。と申しますのは、刑事訴訟法三百十七条におきましては、証拠主義をうたっております。ただ、三百十八条に参りますと、証拠の証明力は裁判官の心証によるということでありまして、これが一般の刑事関係を通ずる基本的な考え方になっております。独禁法は経済関係法でございますけれども、やはり最終的にはこれは最高裁まで争い得る問題でございまして、結局は刑事事件としていくべきものでございます。こちらの勧告に従った場合にはそれで終わりでございますが、しかし、ほんとうに争いとなれば、東京高裁に参り、さらに最高裁に参るというふうになっておりますから、やはりその手続としては刑事訴訟法上のことを頭に置いておかなければならない。といたしますと、客観的な事実だけはある、しかしこれを証明すべき、話し合いを行なったとか共謀したという証拠はどうしても得られないという場合でも、なおかつこれを違法としてきめつけることができるかという点は、たいへんむずかしゅうございます。  英米法の場合には、かなりその点に日本の従来の法律体系と違う点がございまして、幾らか日本あり方とは違うとは思いますが、しかし、かといって、民事裁判の場合には、これはいずれか一方に必ず勝ちを宣しなければならぬ。いずれか一方が勝って一方が負けなければならぬというふうになっておりますが、刑事事件の場合には、疑わしきものは罰せずということが依然として大原則になっておりまして、それを無視してやろうといたしますと少し無理がある。したがいまして、私どもは、かりにそういうふうなことを考えるといたしますれば、いま言われましたのはいわゆる管理価格と同じものなんですが、そういうものに対しては、刑罰をもって臨むような法律体系ではやはり無理ではないか。これは私どもだけが幾らがんばりましても、法律全体の筋の問題でございますので、そのワクからはみ出してやることはできないので、完全な行政指導的な、ほんとうの刑事責任とは関係のないものでいかないとむずかしいのではないかというふうに判断しておりまして、現行法では、解釈上も、いまのような行為について独禁法で取り締まるということはたいへんむずかしいといいますか、不可能に近い。したがって、非常にもの足りないという点は十分わかります。
  161. 近江巳記夫

    ○近江委員 経済面において国民がたよるべき唯一の官庁として公取があるわけです。そういう点において、公取委員長自体も、現在の独禁法の無力さといいますか、その点は痛感なさっているわけです。ですから、非常に困難な問題は、私は非常によくわかるのです。ですから、英米法においても日本よりも一歩進んだ点もあるわけでありますし、その点はさらに研究をしていただいて、やはりあくまでも国民立場消費者を守るという立場において、それをさらに強化できる、そういう法改正を早くすべきだ。非常にむずかしいことはよくわかるのです。これは先ほど公取委員長もおっしゃっておりましたが、この管理価格ももちろん同じ問題でありますし、その点、今後その辺の研究について、公取委員会としてもさらに力を注いでいかれるかどうか、ただもう非常にこれはむずかしいということで流されていくのか、その点を一つお聞きしたいと思うのです。
  162. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 私といたしましては、相当な決意を持ってこの問題を究明してまいりたい、そして何らかの手がかりを得るようにいたしたいというふうに考えております。
  163. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで経企庁長官、通産大臣も、過剰流動性の問題、輸入の拡大、当面のそうした商品市場でのそういう規制措置等についてお話があったわけですが、いま私が状況を申し上げました、それを何とか取り締まれないのか、こういう点からいきますと、先ほどの商品市場の規制等は、これはきくと思いますが、全般的なこういうインフレ傾向のもとにおいて、国際商品の値上がり、いろいろなそういう状況を考えましたときに、私はほど遠い対策じゃないかと思うのです。これはもう経済の非常に大きな問題を含んでおるわけでありますので、もう少しパンチのきいた対策というものはないのですか。たとえば通産大臣あるいは経企庁長官は、もう大体そういうように思惑買いに走っておるようなところは、大手商社をはじめとして、通産省、経企庁とされては大体の目星がついていると思うのです。それであれば、国民生活を守る点からみれば、自粛すべきじゃないか、こういうようなことも強力な指導もあってしかるべきじゃないかと私は思うのです。現在の状態、このままであれば全く放置している状態と同じじゃないかと思うのです。その点、国民生活の安定という点におきまして、私はほんとうに緊急の問題であると思うのです。その点もう一歩何かお考えになった点はありませんでしょうか。
  164. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 きょうも閣議でその話が出まして相談したのでございますが、通産省としては、商社の社長に来てもらいまして、次官から自粛方を要請する、これを近くやるつもりでございます。  それから、党と連絡いたしまして、要するに端的な問題を申し上げればウナギを押えるようなものですから、そこでどこを押えたらいいか、その急所をさがして、必要ならば党と協力して議員立法も考慮して、そういう急所を押えるような立法行為も検討したらどうか、そういう考えで党と連絡している最中であります。
  165. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、相当中曽根大臣もこの問題については強い決意で臨んでおられるということは、いまの御答弁で感じるわけです。一番やはりパンチがきくのは、それは何といいましても立法をして押え込んでしまう、これがやはり一番だと思うのです。非常に中身はむずかしいと思いますが、いま中曽根大臣もぜひそれをやりたいということをおっしゃったわけですが、経企庁長官も、この点に関しては通産大臣と同じ決意ですか。
  166. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 同様でございます。実はきょうも私は、その過剰流動性の問題について、あるいは私の権限ではないかもしれませんが、これは大蔵省日銀のやる問題であると思いますけれども、どうもこのままではちょっと座視するに忍びないというくらいの気持ちを天下に公にいたしました。  さらに、実はこの価格の問題を、土地の問題のときにしみじみ思ったのでございますが、土地の価格をあのまま凍結したいという気持ちは皆さんあったと思うのでございますが、しかし、そういうことがなかなかいまの法体系のもとでできにくいのでありまして、それならばということで、特定の地域を限って取引の規制ということを考えたわけでございます。そこで、やはり生必物資の中で特定の物を限ってその取引というものを規制することはできないか、そうした方向で少しやってみようじゃないかということで、実は検討を命じているわけでございまして、知恵もございませんけれども、誠心誠意この問題に対していきたい、こう考えておる次第でございます。
  167. 近江巳記夫

    ○近江委員 国民生活の中でも物価安定ということは一番国民の願うところでございまして、その御目付役の経企庁長官というものは一億数百万の国民がたよっておるわけでございますので、あまり知恵がないなどとおっしゃっていただくと困るわけであります。非常にすばらしい知恵をお持ちであると思いますので、ひとつ大いに知恵を働かしていただいて、どうかその決意のもとにがんばってもらいたいと思うのです。  それで輸入の拡大という問題でございますが、残存輸入制限の問題あるいは輸入商品の関税引き下げ、あるいは輸入商品の流通機構の改善、また特にこうした食料品の開発輸入とか、いろいろ問題があろうかと思うのです。この輸入の拡大という点につきましては、通産大臣、経企庁長官はどのようにお考えでございますか。また農林省もお答えいただきたいと思います。
  168. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 輸入の拡大ということは、拡大均衡を期する上からも大切なことで、われわれも原則的に賛成でございます。ただ、たとえばミカンのようなものは、こういう豊作で緊急対策を講じているところでございますから、これにオレンジを輸入したらミカン業者はなお黄色くなり青くなってしまう、そういうことであります。したがって、そう何も輸入しなければならぬということばかりでもありません。そういう寛厳ところを得たやり方でやる必要が農産物については非常にあります。したがいまして、原則的にはそういう方向で、関税面についてもさらに検討を加うべき点もあると思います。  私の感じでは、ニクソン大統領が拡大通商法案にからんで相当な権限を得ようとしておって、関税を上げたり下げたり、課徴金をつけたり、あるいは割り当てをふやしたり減らしたり、そういう可能性があるんですから、やはり日本の総理大臣もそれに見合うような権限をある程度議会から少しいただいて、緊急の措置をやるような体制にしておかぬと、アメリカ政策に追いつかぬじゃないかという気もいたします。そういう必要性を実はいま個人的に痛感しているところであります。
  169. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 大同小異のことを申し上げるわけでございますけれども、私はやはり何といっても輸入をもっとふやしていかなければならぬ、輸入をもっとふやすということになりますと、やはり製品の輸入をもっと積極的にすることを考えたらいいだろうと思います。  日本も相当経済成長をしました結果、いわゆる相当高度な経済国家になっておるわけで、他の国に比べますと製品輸入が非常に少ないと思うのでございます。元来工業国は製品輸入が非常に少なくて原料輸入が多いわけですが、日本のタイプはまさに原料輸入が非常に多くて製品輸入が少ないという形が、西欧の場合に比べて非常にあるわけでございまして、これを直すにはやはり関税の問題があると思うのでございます。関税をもっと下げるように製品の輸入関税を下げるということを考えて、それが国民生活に均てんするように考えていったらいいと思うのであります。租税法定主義との関係で、なかなかこれがうまく緊急に間に合わぬという点がございますので、やはり総理大臣にそういう授権をするような立法はできないものだろうか。こういう際にやはり必要なものの関税は下げる、しかしあまり入ってきてぐあいの悪いようなものの関税は上げる、そういう上げ下げの権限を総理に与えるということができないものだろうかというふうに考えておる次第でございます。
  170. 近江巳記夫

    ○近江委員 農林省は、局長さんはちょっと担当が違うようでありますが、しかし農林省の最高幹部でありますし、お考えがあればお伺いしたいと思うのですが、どうでしょう。
  171. 内藤隆

    ○内藤説明員 農林省といたしまして、農産物の輸入につきましては、従来とも生活物資等の食糧につきまして適時適量の輸入ということで努力してまいったわけでございますが、今後の方針につきましては両大臣が申されたとおりでございます。
  172. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、今度この変動相場制に入りまして、非常に国民が期待しておるのは、輸入品の引き下げなんです。それで、一昨年のあの切り上げのときにはどれだけ還元されるだろうかと非常にみな望んでおったのですが、ほとんど流通機構で吸収される、総代理店の問題等もあるわけでありますが、当然いまのようなこういうインフレ状態のもとにあって、しかもそういう商品の騰貴というようなことがあった場合には、なおさらそれが吸収されてしまうというおそれもあるわけですが、いまそういうような状況は一応別として、この輸入品の引き下げについては、現在でも一六%台でフロートしておるわけですから、単純にいけば当然それだけ安くなるわけなんです。ですからその点について、前回はそういうような効果が国民に還元されなかったという経緯もあるわけでありますし、今回の再切り上げにおいてどのようにそのメリットを国民に還元されようとされておるのか、前回のそうした問題点、またその反省の上に立って今後はどうなさっていかれるのか、この点をひとつ経企庁長官、また監視役の公取委員長にお伺いしたいと思います。
  173. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 前回の経験もございますので、私どもは大体四つの問題について特に遺漏なきを期したいと考えております。  一つは、主要の輸入品の価格動向を追跡調査いたすことです。これは大蔵、通産、農林そして経企が一緒になりましていろいろそれをやってみよう、そしてその結果に基づきまして消費者に情報提供をいたすこと及び関係業界をそのもとに指導するということが一つでございます。  それから二番目は、輸入総代理店の対策など、輸入品にかかる流通機構の改善でございまして、これは御承知のように真正品の並行輸入を昨年十月からいたしまして、ある程度効果がございますが、これをさらに徹底的にやろうということでございます。それから流通機構の改善は、これも当然でございまして、この四十八年度予算におきましても改善策を予算に盛っていただいているわけでございます。  それから第三番目は、輸入自由化、関税引き下げ等の輸入の積極的拡大の推進でございます。  それから第四番目には、政府が関与いたしております物質、たとえばたばこのようなもの、あるいは小麦、そうした政府が直接関係している物資等の販売価格に円レートの上昇のメリットを反映させるための方策をいかにすべきか、これは目下最良の方法を検討するように関係各省でいたしておるわけでございます。
  174. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 公正取引委員会といたしましては、昨年の十一月に策定いたしましたいわゆる輸入総代理店の認定基準、これを厳格に励行させたいというふうに考えておりますが、現に、四十五年当時非常に無視されておりました届け出が、昨年の場合には件数も非常にふえて六百二十八件というのが出ておりますが、今後もそういう輸入総代理店の届け出についてはこれを厳重に励行させまして、届け出の段階におきまして、その契約の中に並行輸入を阻害するような文言等がありました場合には、これをやめさせる。なお、もちろん再販売価格を維持させるような契約は訂正させておりますし、それからその後の追跡調査でございますが、一般の物価動向、輸入物資の動向を見ますと、下がっているもののほうが多いということは確かでございます。ですから、円切り上げの効果がまるで出なかったかといいますと、出ているものもかなり見受けられます。しかし十分でないということはいえるのじゃないかと思いますが、そういう点から、ことに真正品の並行輸入を阻害するようなことを事業者が行なっているかどうかについては、その価格の動向ともにらみながら、十分にこれを監視を続けてまいりたいと考えております。
  175. 近江巳記夫

    ○近江委員 同じ問題で通産大臣にもお伺いしたいと思うのです。通産省としてお考えがありましたら……。
  176. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 経企庁長官が申されたことに尽きますが、通産省としては、現場官庁といたしまして、そういう商品別に各局で手配をいたしまして、トレースやらあるいは調査あるいは立ち入り、そういうところまで含めて実行するつもりであります。
  177. 近江巳記夫

    ○近江委員 いまそうした対策をお述べになったわけですが、前回もそうした対策はおっしゃったわけです。しかしながら、追跡調査にしても立ち入り検査にしても、どれだけそれが行なわれたか。ペーパープランであってはならぬと思うのです。その点、そういう計画をなさる以上は、ほんとうにこの運用の点においてきびしくやっていただきたいと思うのです。  それで、経企庁長官がいま、政府所管の輸入物資の問題についてはおっしゃったわけですが、輸入の小麦であるとか、外国製のたばこであるとか、塩であるとか、そのお考えは非常にけっこうだと思いますし、これはもう大いに実現できるようにはかっていただきたいと思うのです。  いま、その運用の問題につきまして、ひとつ代表で経企庁長官から決意をお伺いしたいと思うのです。
  178. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 まことにおっしゃる気持ちと私ども同じでございまして、何としてもこの際、この円切り上げという事態を消費者のために生かす、物価引き下げのために生かすということを強くいたしたいと思っております。
  179. 近江巳記夫

    ○近江委員 もうだいぶ時間が迫っておりますので簡単にしたいと思いますが、中小企業の問題で、先ほど通産大臣もおっしゃっておりましたが、今後は事業転換ということが非常に大きな問題になってくると思うのです。  前回の第一次のときにおきましては、この事業転換に対して、中小公庫から五十億、国民公庫から十五億、一応ワクをとられたわけですが、しかしわれわれとしては非常に少ないのじゃないかということを申し上げたのです。ところが現実に、われわれも少ないと思っておったのですが、まだワクが消化できてない。ということは、政府がこの事業転換にあたっての指導というものに力が入ってなかったのじゃないか。ただもうそうした中小零細業者に、知恵をしぼって考えなさいと、それであってはだめだと思うのです。ですから、その点を今後、そのワクと同時にどのように政府としてはお考えになっているか、これが一点です。時間がありませんので、簡潔に中小企業庁長官からお伺いしたいと思います。
  180. 莊清

    ○莊政府委員 転換というのは非常にむずかしい、企業にとって重大なことでございます。情報の提供ということを業者自身が非常に強く要望いたしております。そこで、従来から県の総合指導所等を通じまして、成功した転換例、失敗したもの等の情報も与えたり、それから相談にも乗っております。しかし十分ではございません。来年度予算におきましては、今回のドル・ショックを別に予想しておったわけではもちろんございませんけれども、今後の方向といたしまして、情報の提供がきわめて必要である、これは長期路線であるということで、中小企業振興事業団の中に調査情報部というものを今回は強化新設いたしました。そこで全国的に必要な情報というものを集めまして、これを中小企業の各地方団体、組合等に迅速に提供していくというふうに制度を一歩前進させたわけでございます。御趣旨を体しまして努力をいたしたいと思います。
  181. 近江巳記夫

    ○近江委員 最後に中曽根大臣にお伺いしたいと思いますが、大臣はこの間中国へ行かれまして、そのときに万博のあと地を利用して中国博の開催について話し合われたと思うのですが、これは中国のほうからも非常にけっこうであるという返事もきておりますし、そういうことで、これはもうきまったんじゃないかと思うのですが、いずれにしましても、やはりこれは国際博ではないにしても、今後の日中のそうした友好関係をさらに促進していくためにおいても非常に有益であると思いますし、これには何といっても、大阪商工会議所等が中心になっておるようでありますけれども、やはり大阪市、大阪府あるいは政府もできる限りのバックアップをしなければ成功しないと思うのです。その点、政府としてどういうような決意でこれをバックアップされるのか、それをお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  182. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 大阪の商工会議所を中心とする関西財界、経済界の皆さんの御要望がありまして、私も自分で直接総理にこの依頼をした責任者でもありますから、この博覧会が成功裏に終わって、日中友好親善の実を結ぶように、政府といたしましても後援、便宜供与、できる限りのことをいたしたいと思います。とりあえずは、あの施設の利用をどういうふうにするか。夏になると冷房しなければならぬというようなことがあったり、そのほか具体的な問題が幾つかございます。そういう問題についても政府としてできる限りの御協力をいたしたい、そう思っております。
  183. 浦野幸男

  184. 宮田早苗

    宮田委員 私は、民社党を代表して、政府の通産政策、中でもこのたびの円変動相場制移行によって大きな影響をこうむっております中小企業問題及び大企業も含めた産業構造の転換策などについて政府見解をお伺いいたす次第です。  わが国はGNPが自由世界第二位の経済大国となっておりますが、その成長の原動力となったのが、全事業所数九五%、全就業者数六四%を占める中小企業であることは御存じのとおりであります。わが国産業構造は大企業とそれを取り巻く系列及び関連の中小企業によって構成されております。いわゆる二重構造でございまして、大企業の生産計画や営業政策が直線的に系列や関連中小企業の生死につながっておるのであります。また、中小企業に働く労働者の労働条件は大企業との格差が依然縮まらず、今日の重要な社会問題となっておることも御存じのとおりであります。  ちなみに、中小企業と大企業の一人当たり資本装備率及び年間付加価値額を比較してみますと、前者は約四分の一で、後者は五分の三であります。また、年間給与にしましても、中小は大手の六〇%にすぎません。この賃金をアメリカやイギリスで見ますと、大企業の一〇〇に対しまして中小八〇前後で、中小企業は永遠に存在しても中小企業問題は存在しないといわれるゆえんであります。なぜ日本だけがいつまでもこうした問題をかかえなければならないか、この二重構造解消のためにどのような政策を持っておいでになるか、政府の御見解をお聞きいたします。通産大臣、お願いします。
  185. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 われわれの目標とする福祉社会は、やはりいわゆる中産階層の充実した社会が最も望ましい。日本の現在の情勢を見ますと、所得分配についてはほかの国に比べてわりあい成功しておると思います。ちょうちん型になって、重役も工員さんも給料の差はそうは開かなくなってきておりますが、財産分配という点になると、最近の土地成金、そういう面で落差が出てきている。これは対策をわれわれも考えなければならぬと思っております。  中小企業と大企業の関係もこれと同じようなもので、できるだけ格差をなくしていく。そうしておのおのがおのおのの占める分野を占めて分業を形成していく。垂直的分業ないしは水平的分業を合理的に形成して、あわせて国民経済一つの力になっていただく、こういう考えが正しいと思うのでございます。  その間にあって、下請企業に対する圧力を起こさないように、あるいは技術における格差を中小企業がすみやかに回復していくように、あるいは国際市場におけるマーケットその他についても、情報、経営技術その他において負けないように、そういう諸般の点で大企業のできないところを独自の線で埋めて、個性ある中小企業として伸びていく。そういう考えに立って落差を埋めていこう、こう考えておるところでございます。
  186. 宮田早苗

    宮田委員 今日の中小企業関連と大企業との格差はより以上に広がってきつつあるのじゃないかというふうな傾向が見えるわけであります。いま大臣は格差を縮めることの方法を若干申されましたけれども、それはどういう方法で縮めることが可能であるか。たとえば専門化という方向に向かうという一つの手もあるでしょうし、あるいはまた、輸出する場合の力をその面でつけるという面も当然出てくるのじゃないかと思いますが、そういう面についての政府の指導の方法がございましたら、お聞かせ願いたいと思います。
  187. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これはいわゆる中小企業対策としてやっていることを強力に展開していくことである、こういうふうに一言で申し上げられると思いますが、たとえば今回小売り商業を振興する特別の法案をわれわれは用意したり、あるいは中小企業外国に対して投資活動を積極的に行なえるように、これが必要な資金的措置を国としても今度は講ずることをやっております。あるいはさらに技術的落差を埋めるために、技術情報等を中小企業に与えるように積極的に努力するとか、特に大事な点は、やはり中小企業自体が自力更生の精神で連帯して一緒に協同組合を中心にして伸びていく。そういう連帯で伸びていくという精神と行動が非常に必要ではないか。  たとえば百貨店というものがありました。スーパーというものが出てきた。小売り商店街というものに出てきておる。ところが、スーパーというものがあの間隙を縫ってめきめきと肥えてきたのには、それだけの苦労と経営精神があって伸びてきたわけです。ところが、商店街になると、お客を寄せるために、じゃパーキングプレースをつくるとしても、東がいい、西がいい、いや、おれの土地は出さぬ、おまえの土地は出さぬ、そういうことで、非常に小さなセクトとエゴが入ってきて、みんなで一緒に伸びていくという精神がどうしてもいままで欠如しております。これからはそういう共同で伸びていくという精神を持たなければ、中小企業は伸びられる方法はありません。そういう方向中小企業を指導していこうと思うわけであります。
  188. 宮田早苗

    宮田委員 今日までの日本経済の屋台骨をささえておるといっても過言でない中小企業でございますが、円の変動相場制に伴って中小企業に対して行なおうとしている措置についてさらにお問いしますが、政府は、円が変動相場制に移行するや中小企業に対する緊急融資あるいはまた借り入れ金の返済猶予などの施策を打ち出しておりますが、いずれを取り上げてみましてもどろなわ式というように見えるわけでありまして、このような措置は混乱を防ぐためには必要でございましょうけれども、一昨年の円の切り上げの際の緊急措置とその後台頭してまいりました産業の構造の転換促進という二つの教訓が今日どう生かされておりましょうか。  また、変動相場制あるいは近々行なわれるでございましょう円の再切り上げに問題業種に対する金融中心の救済だけで対処したのでは、円問題も中小企業がかかえた体質の問題も解決しないんじゃないかというふうに思っておるわけでありまして、一昨年の円切り上げ以降政府は一体この産業構造転換とどう取り組み、今後どのような施策具体化しようとしておいでになるか、さらにお聞かせ願いたいと思います。
  189. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 一昨年の暮れの円切り上げともからんでおりますけれども、通産省の大目標として、日本経済構造を知識集約型、社会福祉型に転換させるという大方針で進められておるところでございます。もう一つは無公害社会の建設、そういう点から公害問題ということも入ってまいりまして、そういう福祉型の産業構造に転換するようにつとめてきたところでございます。  このためには、円の問題以降につきましてはともかく抵抗力を増していく、そしていろいろ経済的波動が来てもたえられる中小企業にいまのうちから培養していこう、そういう考えを私持ちまして、たとえば無担保、無保証の小口零細金融制度を今度新しくつくろうとしておりますのも、そういうことが一面頭の中にあってやったことであります。あるいは今度先ほど来申し上げておりますような構造転換、この問題も今度は思い切って強く取り組んでいこう、そういうふうにも考えておるところでございます。いろいろこまかい政策がございますけれども、そういう着眼点を持ちまして今後も進めていきたいと思っております。
  190. 宮田早苗

    宮田委員 私ども民社党といたしましても、いまおっしゃいましたような福祉社会、これを基本にすべてを進めていかなきゃならぬ、こういう気持ち、考え方を持って、このたび五カ年計画を樹立いたしましたことは御存じのとおりであります。そのためには産業体質の転換の必要というものが特に取り上げられなければならない。政府の従来の産業政策は、物価上昇、公害の発生等弊害をもたらしたことはいまさら言うまでもございませんが、そこで私ども民社党といたしましては、産業構造高度化転換促進法の制定を提案しようという考え方を持っておるわけです。すなわち、高度加工産業知識集約型産業など付加価値の高い産業を計画的に振興すると同時に、労働者の技術水準を引き上げる措置を講じつつ、この分野への計画的誘導を促進する。このほか住宅産業公害防止産業などを、公共住宅建設計画、公害防止計画などの国家的目標を達成する産業として改善をしてその育成強化をはかり、わが国産業構造を環境保全、福祉向上型に誘導転換するという考えでありまして、これを実現させるためには転換を指定された産業の設備買い上げ等の優遇措置を講じたり、あるいは指定産業の離職者に対しては失業手当に加えて職業転換給付金を支給したり、再教育機関を拡充する等も必要でありましょう。こうした経営者や労働者が転換しやすいビジョンを示すことこそ特に必要じゃないかというふうに思っておりますが、こういう問題についてどういうふうに政府はお考えになっておりますか、お聞きしたい。
  191. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 民社党がお考えになっております日本産業構造転換の方向と、われわれが考えている方向も大体同じであるといま拝承いたしました。われわれのほうも産業構造審議会の答申を得まして、通産省としてもそういう目標に向かっていま諸般の政策を講じておるところでございまして、今後ともこれを強力に推進していきたい、そう考えております。
  192. 宮田早苗

    宮田委員 質問の要旨も相当変わりますが、産炭地振興計画についての質問でございます。  政府は今国会に国土総合開発公団なるものを出されるわけですが、つまりこれは工業再配置・産炭地域振興公団法の一部改正案を提出しておるということでございまして、条文の中では、特に疲弊の著しい産炭地域の鉱工業振興事業を目的の一つにあげておりますが、産炭地問題は、昨年まで独立した事業団が担当してきたわけであります。ところが名称こそ残りましたが、日本列島改造を目ざす工業再配置公団に事実上吸収されまして、いままた組織が変わろうとしているので、特に産炭地をかかえております九州の筑豊あるいは佐賀、長崎など閉山地域では、今回の措置によってますます産炭地のウエートが低くなるではないかという危惧の声が多く聞かれるわけでございまして、この具体的な施策をひとつまずお聞き申し上げたい。
  193. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 今回の法律改正にあたりましては、追加業務との経理区分の明確化、つまり産炭地振興業務と追加業務との経理区分の明確化、それから追加業務に必要な機構、人員の新規追加を行なうこととしておるのでありまして、産炭地振興業務は、従来と同様支障なく運営されるものと思います。  なお業務面においては、従来の産炭地域振興業務は一そう拡大するほか、さらに今度は公団の業務として、地方都市開発整備という仕事が入ってきているわけです。宅地の造成、道路、公園、下水道等の公共施設の整備等の仕事が追加されます。それで、大体産炭地振興区域は誘導地域にすべて指定してあります。したがいまして、これらの措置と合わせて、地方都市整備という業務も新しく加えられまして、いままで以上にそういう面においても仕事は拡大し、円滑に行なわれるようになるのではないかと思います。  われわれといたしましても、この新しい法律を改正するに際しましては、産炭地域振興業務に支障ないように非常に注意いたしまして、総理府とも最後までこの点についてはいろいろ折衝してそういう点を確保した次第でございまして、心配のないように運営もいたしたいと思います。
  194. 宮田早苗

    宮田委員 大臣所信表明の中にも、国民福祉の一そうの向上のため、社会資本の立ちおくれ、公害問題、過疎過密の問題、物価問題ということが特に入れられておるわけでございますが、私がこのことを申し上げますのは、産炭地域振興事業団がいままで工場団地の造成をし、工場誘致をしてきたわけでございますけれども政府のおっしゃるように、福祉ということよりは、もう少し具体的に言いますと、福利厚生面ということがあまり考慮されていないという実態が産炭地域では見受けられるわけでございまして、ただ単に、団地を造成し、そこに工場誘致をしたというだけでございまして、それだけでは所期の目的でありますところの過疎過密対策になっていないし、また、その地域が希望しておりますような発展というこの芽がなかなか出にくい問題でございますだけに、それの具体的な対策、たとえば団地の造成ないしは、その上に工場を建てますが、並行して福利厚生という関係のものをより以上に考えていかなければならぬじゃないかと思いますが、そういう点について、小さくなりましたけれども、お答え願いたいと思います。
  195. 佐伯博蔵

    ○佐伯政府委員 ただいま大臣からお答えいたしましたように、産炭地域振興につきましては、団地の造成、企業誘致等をいたしておりましたが、なお今後とも、先生おっしゃるように、福利厚生面につきましても力を入れてまいりたいと存じます。
  196. 宮田早苗

    宮田委員 福利厚生という問題について、国の力をもってなさるものか、あるいはその地域の町村の行政という、そのほうに指導してなさるものか、そういう点についてのお考えがありましたらお聞きします。
  197. 佐伯博蔵

    ○佐伯政府委員 公団等の事業としてやります範囲のものは今後ともやってまいりたいと思いますし、それで足りませんところ、その他につきましては、関係の市町村とも十分連絡をとりながらやってまいりたいというふうに存じます。
  198. 宮田早苗

    宮田委員 もう一つ重要な問題がこの関係にあるわけでありますが、過疎過密という問題に直接関係もあります。といいますのは、せっかく来ました企業、これに働く人々が女性中心であり、パートとかあるいはまた内職的な工場でございまして、一家をささえておりますところの、中心であります男の働き場になっていない。こういうところに、地域の浮揚というものがなくなってしまうのじゃないか、こういうふうに思うわけでございますし、さらに申しますと、ますます産炭地域での働き手がほかのほうに吸収されてしまう。そうすると、結果として教育問題に影響いたしましたり、その地域のいろいろな行政にも非常に大きな影響を来たすというような状態が間々出てきておるわけでございますので、こういう問題についてどういうふうな方法をこれからとったらよろしいか、そういう点について、わかっておる範囲内でひとつお答えを願いたいと思います。
  199. 佐伯博蔵

    ○佐伯政府委員 先生おっしゃられますように、炭鉱が閉山しましたあとに団地をつくりました場合に、往々にして、最初に参りますのは縫製関係とか、比較的規模の小さいものが多うございます。女子の方が主として働くというふうなことが現実に多うございました。それではなかなか目的を達しませんので、もちろん、それだけでもいけませんものですから、つとめて大きな企業、中核企業になるようなものを誘致すべく努力をいたしておりまして、だんだんとそのような方向に向かっておるというふうに存じておりますが、なお一そうそういうふうに中核企業の誘致につとめてまいりたいというふうに思います。
  200. 宮田早苗

    宮田委員 質問の順序がちょっと逆になりましたが、関係がございますからお聞きしたいと思いますのは、基本的な問題についてであります。わが国唯一のエネルギー源であります石炭、これの将来ということについて、ひとつお聞きしたいと思います。  聞きますと、石油資源も三十年程度というふうに聞いておりますし、また、いまの石油にかわる別なエネルギーというものも開発されようとしておりますけれども、何はおいても、わが国にあります資源は石炭だけでございますので、いままでの石炭で立っていっておりましたその地域の特に関心事でございますし、いまこのまま進んでまいりますと、石炭を掘るという会社、工場というのが皆無になってしまうのじゃないかというふうな懸念すらみな持っておるわけでございますので、基本的な問題でございますけれども、石炭の将来ということについてお考えがありましたら、この際お聞かせ願いたいと思います。
  201. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 石炭産業が衰微してきたもとは、一つは、ほかの化石燃料、特に石油系統の燃料の値段及び運搬手段というものが非常に発達して低廉になってきた、そういうことが一つと、それから公害関係の二つの理由があったのだろうと私は思います。しかし最近、世界における石油事情もだんだん窮屈になってまいりまして、各国とも自己のエネルギーを非常に大事にするようになってまいりました。アメリカでもイギリスでも、石油や電気を浪費するな、そういう声を政府国民の皆さんに呼びかけるような時代にもなってきたわけでございます。日本においても事情は同じような事情であると思いますが、今日においてもまだ、そういう経費の点において価格の点において石炭はひけをとっておるのが一般ではないかと私思います。  そこで、第五次石炭答申の線を守り抜いて、そうして次の時代のいろいろなエネルギー事情の変化の場合にも石炭を守っていきたい、そういう気持ちで第五次答申を守っていく、そういう基本線を貫いていきたいと思っております。
  202. 宮田早苗

    宮田委員 大臣の答弁を聞いておりますとけっこうと思いますが、問題は、石炭の埋蔵量、たくさんある山、これの温存のしかたで、一たん閉山いたしますと、なかなか、次に掘り出すということは、専門家に聞いてみますと、不可能じゃないかというようなことをよくいっておるわけでございますが、まさかのときには温存をして、それを再度開発するということも必要な時期が来るのではないか、こういうような気もするわけでございますけれども、その方法についてお考えがありましたらお聞かせ願いたいと思います。
  203. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私あまり知識がないのでありますが、温存の場合には新鉱開発よりも金がかかる、そういうことも実は聞いておるんです。事実かどうか、私確かめてみたことはございませんが、たぶんそういう可能性もあるんではないかと思います。ですから、むしろ第五次答申の線を守ってこの石炭の危機を切り抜けていくことが賢明ではないか、そう思っております。
  204. 宮田早苗

    宮田委員 最後になりますが、予算のことを少しお聞きしておきたいと思います。  問題は、労働外交の問題についてでございまして、労働省が特に労働組合と十分連携をとりまして、各国との交流あるいはまた情報交換というようなことで、今度国際労働インフォメーションセンターというものを設置しようじゃないか、こういうことになってまいりまして、聞きますと、一応労働省が二千七百万円程度の予算を考えておったようでございますが、これが通産省のほうにかわってしまったという状態になっております。これがどういうことでかわったかというこの原因をまずお聞きしたいと思います。
  205. 増田実

    ○増田(実)政府委員 ただいま宮田先生お尋ねの労働のインフォメーションセンターの設置につきましては、労働省から予算要求が出ておったわけでございますが、予算折衝の最終の段階におきまして、大蔵省から、ジェトロのほうの予算につけて、そしてこれを実現したいという相談がございまして、私どものほうは、ジェトロの仕事の中に労働インフォメーションセンターを行なうことについて相当検討いたしましたのですが、労働省からもいろいろ意見を聞きまして、私どものほうでやれるということで大蔵省のほうにそのように御返事いたしました結果ジェトロのほうに予算がついた、こういう経緯でございます。
  206. 宮田早苗

    宮田委員 いきさつはわかりましたが、これの運営ということになりますと、やはり労働組合、労働省という関係のところと密接に連絡を取り合っていかないと成果があがらないんじゃないかというふうに思っております。そういう問題については十分配慮をされておると思いますが、イエスかノーかひとつ聞きたいと思います。
  207. 増田実

    ○増田(実)政府委員 労働インフォメーションセンターの運営につきましては、できるだけ関係方面と御相談しながらその運営の万全を期したい、こういうふうに思っております。
  208. 宮田早苗

    宮田委員 希望になるわけでございますが、最初に質問いたしました中小企業対策、いま非常に大きな問題になっておるわけでありますので、そういう点についてはより具体的に、より親切にひとつ御指導、御援助をしていただくような配慮をお願いいたしますとともに、産炭地問題、特に北海道から九州に至るまで大きな関心事でございますので、この点についてもいままでより以上のこまめな御配慮をお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  209. 浦野幸男

    浦野委員長 次回は、来たる二十七日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時二十五分散会