○横田
政府委員 最初に
厚生年金の財政
計画について申し上げます。
御
承知のように財政
計画を立てます際には、将来被保険者数がどのくらいに伸びて、また
受給者がどのくらいの数字になるかということが非常に大事な要素でございますが、この辺の伸びぐあいの推定につきましては、今後
長期にわたりまして、わが国の就業構造の変化がどのようになるかということが非常にむずかしい問題でございます。そういった点につきまして多少問題はあるかと思いますけれ
ども、現在の時点で私
どもが前提として置ける
程度の前提を置いて計算をいたしました際に、現在は御
承知のように
厚生年金は被保険者数が二千三百五十万人でございます。それに対しまして、
年金の中の
中心になります
老齢年金の
受給者数を申しますと八十万人でございます。したがって、
受給者数の被保険者数に対する割合から申しますと三・六%、非常に低い比率でございます。
先ほど先生御指摘の
年金制度の成熟化の問題は、御指摘のように二つの面がございまして、
一つは、金額の点ではたしてどの
程度成熟しておるかという問題、それからもう
一つは、
受給者というものがどれくらいの比率になっておるかという問題。第二の問題の
受給者数の成熟度合いにつきましては、いま申し上げましたように三・六%、非常に低い比率でございます。これは
一つは
老齢人口の
人口構成という問題がございますが、もう
一つは、これも御
承知のことだろうと思いますけれ
ども、
年金制度自体の
発足の歴史が浅い関係上、
年金制度は先ほど大臣からも申し上げましたように、非常に
長期間にわたっての
制度でございますので、
制度が
発足したからすぐ
受給者が発生するというものではない。そういう
年金制度の歴史の浅さかげんというものが非常に大きな原因になりまして、現在の時点では
厚生年金につきましても、
受給者数という点から見ました場合の成熟度合いは未成熟に近い状態、こういうことでございます。
これが先ほど大臣からも
お話がございましたように、
老齢人口が急速に多くなる。それから平均寿命も非常に長くなってきたということになりますし、それから、それを背景といたしまして、さらに
制度自体が歴史の長さをさらに延長していくということで、どんどん
受給者がふえてまいります。大体こういうふうな推移をたどりまして、
厚生年金につきましては、
受給者数というものが被保険者数に対して、その比率がほぼ一定する状態、これをよく定常化ということばを使っておるようでございますが、その
段階になりますと、
受給者数が八百二十万人、これは
昭和八十五年でございます。ちょうど現在から四十年ほど
あとになりますが、その八百二十万人という数字は、被保険者数に対する割合から申しますと二七%でございます。
したがいまして、非常に大ざっぱにいいますと、
受給者数の伸びのぐあいというものは、
年金制度の成熟
段階におきましては、おおよそ十人の現役
労働者でもって三人の
受給者をかかえる、こういうふうな姿になります。
そういった前提に立ちまして、
長期にわたっての
厚生年金財政の収支の見通しをいたしてみます場合に、これもまたいろいろ前提の置きかたがむずかしいのでございます。と申しますのは、
厚生年金は、御
承知のように
保険料につきましては標準報酬
制度というものをとっておりまして、こういう場合の推計の際の言い方としましては、非常にざっくばらんな言い方をしますと、大体俸給の何%というようなことで
保険料が入ってくるわけでございますので、そういった給与
水準というものが、逐年どのくらいの
水準でベースアップされるかというこの見通しが非常にむずかしいわけでございます。
その点につきましても、一応の前提の置き方といたしましては、標準報酬
制度は
昭和四十八年から五十二年までの五カ年につきましては、おおよそ一三%
程度の上昇をするであろう、それ以降の五カ年につきましては一〇%、それから
あとの五カ年間は八%、その
あと五カ年たった以降におきましては七%
程度、こういうふうな前提をかりに置いたといたしまして、そして給付
水準につきましては、現在御審議をいただいております給付内容の改善を前提といたしまして、このような改善を今後も繰り返して行なった場合どうなるかといったような前提を置きまして、ただいま申しましたような被保険者数の伸び、
受給者数の伸びというものを計算いたしてみますと、先ほど申しました
昭和八十五年の成熟期におきましては、単年度の
年金の支出額は百三十八兆四千八百億、こういうふうな数字でございます。大体百四十兆円
程度の単年度支出をかかえる
年金財政になります。
その裏打ちをいたしますために、今回御
提案申し上げております千分の十五の
保険料の引き上げをいたしまして、今後五年ごとに同じような比率の引き上げをいたすことにいたしました場合に、成熟期であります
昭和八十五年におきましては、年度末の積み立て金が四百十一兆円何がしになります。大体単年度支出の三年間の積み立て金を持った
年金財政の設計を
考えてみることができる、こういうふうな見通しを持っておるわけでございます。
それから
国民年金の問題でございますが、この
国民年金の問題につきましては、もう十分御
承知のように、給付につきましても定額制の給付でございます。それから
保険料につきましても定額制の保険でございますので、
厚生年金において計算すると同じようなベースに立っての計算をするということは、なかなか困難でございます。それからもう
一つ非常に困難な要素といたしましては、はたしてこれから農業
人口というものがどういうふうな推移をたどるか、それからもう
一つは自営業者、農民と自営業者が主たる
国民年金の被保険者でございますから、こういった推移が将来にわたってどうなるかという問題でございます。これはこちらのほうが減ってまいりますと、その分が
厚生年金の被保険者のほうに入っていく、つまり両方合わせまして
国民皆
年金の体制ということになるわけでございます。
まず被保険者数の傾向から申しますと、おおよそ二千三、四百万人台で被保険者数は安定をする、こういうふうな見通しを立てております。現在は二千四百三十万でございますが、多少横ばいになったり減ったりいたしまして、二千三、四百万人
程度で大体被保険者数は安定する。それから
受給者の問題でございますが、四十八年度は、
老齢年金についてみますと六十万人でございまして、先ほど
厚生年金について申し上げましたと同じような数の上における成熟度合いというものを申しますと二・五%でございます。成熟期は大体八十五年から九十年ごろでございますが、この辺になりますと
老齢年金の
受給者のシェアと申しますか、そういったものは一九%
程度で安定をする、こういうふうな前提に立ちます。
ただ問題は、こういった被保険者数なり
老齢年金の
受給者数の推移は一応こういうふうな見通しができたといたしましても、さっきも申しましたように、定額制の
保険料、定額制の給付でございますから、
厚生年金のような報酬に比例しての要素に重点を置いて
収入のバランスを立てるという
制度とは違いまして、いろいろ
制度設計の面で窮屈な面がございます。と申しますのは、
保険料も一人何百円というきめ方をいたしておりますので、皆
年金であります以上、どなたでもお払いいただけるようなそういった金額でございませんと、形式上は
国民皆
年金でございましても、実質的には適用漏れが多く出てまいりまして、皆
年金の実をあげ得ない、こういう問題がございますので、その点を
考えますと、どうしても
保険料額の上げ幅につきましては、
厚生年金について
考えるよりも多少低目に押えなければならない、こういうふうな問題が
制度の構造上出てまいります。しかも給付の面につきましては、
厚生年金の被保険者につきましても
国民年金につきましても、大体同じようなレベルにするのが
政策的には適当であるというふうな
考え方でございますので、おおよそ
厚生年金に準じたような
考え方をとりました場合には、現在お願いいたしております三百五十円の月額の引き上げ、そういったものを、できれば今後にわたっても同じように繰り返すという財政設計をとってまいるわけでございます。
それから
福祉年金の問題につきましては、これはさっき大臣から申し上げましたように、まさしくこれは
政策的な改定をすべき
年金でございますので、先ほどの御
答弁にもございましたように、来年は七千五百円、五十年は一万円、それ以降につきましては、まだどのようにするかということは未定でございますが、ただ七千五百円、一万円にいたしましても、さっきからいろいろ議論がございますようにほかの
制度とのからみ合い等をどのように割り切るかという問題も同時にあわせ
考えなければならない。大体以上のような
計画を持っております。