運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1973-06-15 第71回国会 衆議院 社会労働委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月十五日(金曜日)    午前十一時七分開議  出席委員    委員長 田川 誠一君    理事 伊東 正義君 理事 塩谷 一夫君    理事 橋本龍太郎君 理事 山下 徳夫君    理事 川俣健二郎君 理事 八木 一男君    理事 寺前  巖君       小沢 辰男君    大橋 武夫君       加藤 紘一君    瓦   力君       小林 正巳君    斉藤滋与史君       住  栄作君    田中  覚君       高橋 千寿君    戸井田三郎君       登坂重次郎君    羽生田 進君       増岡 博之君    枝村 要作君       大原  亨君    金子 みつ君       島本 虎三君    田口 一男君       田邊  誠君    多賀谷真稔君       山本 政弘君    石母田 達君       田中美智子君    大橋 敏雄君       坂口  力君    和田 耕作君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君  出席政府委員         厚生政務次官  山口 敏夫君         厚生大臣官房審         議官      出原 孝夫君         厚生省公衆衛生         局長      加倉井駿一君         厚生省環境衛生         局長      浦田 純一君         厚生省医務局長 滝沢  正君         厚生省薬務局長 松下 廉蔵君         厚生省社会局長 加藤 威二君         厚生省児童家庭         局長      穴山 徳夫君         厚生省保険局長 北川 力夫君         社会保険庁医療         保険部長    江間 時彦君         労働事務次官兼         労働省労政局長 石黒 拓爾君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君         労働省婦人少年         局長      高橋 展子君         労働省職業安定         局長      道正 邦彦君  委員外出席者         環境庁長官官房         審議官     橋本 道夫君         環境庁企画調整         局公害保健課長 山本 宜正君         大蔵省主計局主         計官      渡部 周治君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ————————————— 委員の異動 六月十五日  辞任         補欠選任   村山 富市君     大原  亨君 同日  辞任、        補欠選任   大原  亨君     村山 富市君     ————————————— 本日の会議に付した案件  健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出第四七号)  日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出第四九号)      ————◇—————
  2. 田川誠一

    田川委員長 これより会議を開きます。  健康保険法等の一部を改正する法律案及び日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、質疑を行ないます。  申し出があります。順次これを許します。川俣健二郎君。
  3. 川俣健二郎

    川俣委員 まず大臣、初めに公害の問題ですが、いよいよ第三水俣を契機に日本の国はもう公害だらけの、魚もうっかり食えないという状態になったわけです。これについては近く大きな連合審査、あるいはその他の国会における審議委員会があると思うのだが、厚生省のほうで近くPCBと魚の摂取量、この指導要綱を出す。それからあわせてこういう魚は食うなといういろいろな手引きを厚生省が、ようやく教えてくれるそうだが、なるべく魚はまるごと食うな、はらわたに悪いのはうんと入っているぞ、そういうことでしょうが、それと水銀許容基準ですね。この二つが大体いつごろ出る運びになっているか、聞きたい。
  4. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 水銀の問題はきわめて深刻な問題でございます。そこで政府におきましても先般、水銀等汚染対策推進会議を設置することといたしまして、三木環境庁長官もと関係各省局長さん方が集まって、この深刻な事態に強力にかつ早期に対処するような体制をつくらなければならない、こういうことになっておりますことは、すでに御承知のとおりでございます。  その関係各省全体の計画の中で、厚生省が取り扱います問題は、魚介類に対する水銀安全基準早期設定、これが私どもの省で行なわなければならない問題でございまして、この問題の解決のためにさっそく専門家方々のお集まりいただいた委員会をつくりまして、目下検討していただいておるわけでございますが、私どもとしましては国民の不安を一日も早く除く、こういう考え方から六月中、今月一ぱいにこの安全基準設定をはかっていくようにいたしたい、かように考えておるわけでございます。もとより役所側だけでやるわけではありませんで、それぞれの専門学識経験者方々の真剣な御討議を経なければならぬ問題でございますので、そのとおりに必ずなるということは私も言い得ないと思いますが、委員方々には、国民の必配しておることでございますので、今月一ぱいに何とか早く結論を出していただくようにということで、お願いをいたしておるような状況でございます。  それを受けまして、いろいろな近ごろのPCBとかいうことが一般国民には非常にわかりにくいことでございますから、われわれの食生活において、もう少しわかりやすい説明ができるようにしなければなるまい、そういうことを考えておりまして、この安全基準早期設定と相まって今月中に、できるだけ早く基準を示すようにいたしたい、かように考えておるような次第でございます。
  5. 川俣健二郎

    川俣委員 早急に出すとかそういう抽象的なめどだったら、私はもっと突っ込んでいこうと思ったが、六月一ぱいで出すということであれば、この質問は、これで終わりたいと思います。  それで、きょうの質疑ですが、この前私が関連質問で、中医協、これは一つの事件だと私は思うくらいに大きな問題だと思うのですが、かっては各地方医師会、お医者さん方は、日本医師会長のかさのもとに寄らば大樹の陰で、まずあれに言わしておけ、われわれ得するから、こういう態度でしたが、この前の製品ボイコットの問題で、これはちょっとひどいということで、かなり地方医師会が反論なりがたがたしてきたことを私は地元に帰って見きわめてきましたが、その問題を法解釈とか憲法違反とかいう論議は、きょうはやめますけれども大臣は、この健保審議中医協の問題を避けて通れるというように考えられておるのか、きわめて十分に関係があるのだというように考えられておるのか、その辺をまず聞かせてもらいたいと思います。
  6. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 中医協のああした紛糾か生じておりますことは、私としてもまことに残念しごく遺憾と存じておる次第でございまして、何とか一日も早く正常な状態に復帰するようにということを念願いたし、医師会長にもたびたびお目にかかりましたし、支払い側方々からの御意見も十分いろいろ承っておるわけでございますが、きょうの時点において、この解決のためには、もう少し時間がかかると私は判断をいたしておるような次第でございます。  そこで、この問題と健保法との関係でありますが、純法律的には関係がないともいえましょう。しかし中医協が正常化し、その結論がどう出るかということも、またいろいろな法律審議段階において、もちろんこれはどの程度上がるかというようなことは一切私どもの容喙しないところでございますから、正確な資料として参考にするというわけにいかぬかもしれませんが、正常化されればどうなるであろうかといったふうないろいろな推測的な判断資料が出せる、こういうふうなこともいえるわけでございまして、関連があるかないか、こう言われますと、法律的には関連はない。しかし関連があるというならば、それは将来の診療報酬がどの程度になるであろうかという推測的な判断が出せる、こういうふうなことにおいて関連があるということもいえるとは思いますが、私ども由来診療報酬改定ということについては容喙をいたさないたてまえをとっております。  支払い側医療関係者の間で御相談を願って、それを建議し、それに基づいて私どもは諮問する、こういう形でございまして、今日まででも健保法のいろいろな審議に際して、診療報酬がどうのということが絶対不可欠の関連があるというふうには考えていないわけでございます。
  7. 川俣健二郎

    川俣委員 関連がないといえば関連がない、あるといえばあるという程度だという。それじゃ、この間大臣は数回あっせんに乗り出したのだが、この前も不調に終わった。そこで向こうのほうは何がきっかけで、こういう問題が発生したわけですか、中医協事件というのは。
  8. 北川力夫

    北川(力)政府委員 中医協におきます今回のトラブルは私どもも非常に残念に思っております。今回の中医協論議は昨年秋から始まりました次の診療報酬改定ということに関連してでございます。  簡単に経過をたどってみますと、昨年の九月から始まりまして、診療担当者側からは、昨年二月改定の際の中医協建議書にもございました、いわゆる経済変動に対応する診療報酬改定、また医薬技術進渉に対応する診療報酬改定ということを受けまして、いわゆるスライド制の問題と、かたがた点数診療報酬の不合理是正ということが提起をされたわけであります。支払い者側からは診療報酬適正化という問題の中でのいわゆるスライド問題ということと、より大きくは薬価基準適正化問題が提起をされました。  そういうことで年が明けまして、大体毎月二回交互に議論が行なわれまして、四月の終わりには双方の審議相当に煮詰まった段階になってまいりまして、連休が明ければ何とか結論に近づこう、こういうような論議中医協の場では行なわれておったわけであります。そういうことで五月になりましてからの状況は、むしろ論議相当に尽くされておりましたので、会長中心になって診療担当者側意見を聴取し、また支払い者側意見を聴取して、いわゆる最終的な両方意見調整に入っておったような実情でございます。そういう実情で五月の十日と十五日、あとまだもう一回十八日を予定いたしておりました途中で今回のような事態が起こったわけであります。  したがって、今回のトラブルは長い経過もいろいろございますけれども、最後の段階におきましては会長あっせん段階両方の主張の間の相違というものと、それから会長のほうにおける、このあっせんのいろいろな方法というふうな問題が——中医協の場は、利害関係がなかなか複雑にふくそうした場でございますから、そういうような問題を中心にして、相互に多少の理解の不十分、あるいはまた若干の行き違いというふうなものもございまして、そういう問題が結果的には調停の最終の段階で現在のようなかっこうでストップをしている、こういうのが現在までの経過並びに偽らざる実情であろうかと私どもは考えております。
  9. 川俣健二郎

    川俣委員 大臣がこの間お会いしたときに、お断わりするということで文書を突きつけられたでしょう。その文書の中身は、向こう医師会の代表が言うのには、背信行為ではないか。スライド制導入というものをこの前の総辞退のときに、時の総理厚生省当局約束したというのはうそか、これをはっきりしてください。それとも医師会のほうがうそを発表しているのか。
  10. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 先般、武見会長にお目にかかりましたときに、中医協現状に対する私の見解というものをいただいたわけでございまして、私はいま中医協現状に対してこういうふうに考えておる、こういうことの書面をいただいてきたわけでございます。  そこで、スライド制の実施という問題につきましては、昨年なくなられました斎藤厚生大臣医師会との間に、診療報酬物価人件費スライドしていくということについて、厚生大臣としてこれが実現努力するという、昭和四十六年七月二十八日の医師会との了解事項、しかもそれは当時の佐藤総理が立ち会っておる、こういうふうな事項については、同じ自民党政府大臣として、私も責任継続の原則からいたしまして、この約束は果たすように努力しなければならない、こういうふうに私は考えておるわけでございます。
  11. 川俣健二郎

    川俣委員 それでは確認しますけれども、毎年の医療料金スライド制厚生当局は考えておるのだということでいいのでしょう。確認します。
  12. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 スライド制の問題につきましては、私が申し上げるまでもなく、御承知のように中医協という場において診療報酬が決定されるわけでございます。この紛糾が生ずる前に、支払い側においては年一回、月をきめて診療報酬改定を行なうことを検討しましょう、こういうことを支払い側会長に申し、会長はこれを受けて医療担当者にその旨を伝えたが、医療担当者側は年一回、月をきめて検討するということでは不満である、物価、賃金の上昇にスライドしていくというスライド制をとるべきではないか、こういうふうなことで、紛糾がそこから始まってきておるわけでございます。  診療報酬改定は、由来中医協において御相談を願うということでございまして、私個人がどう思うかという意見は言わないことにいたしてあるわけでございます。  私が医療担当者方々にお目にかかりましたときには、具体的な問題としてお答えはいたしません。医療問題についての私の一般的な所信としては、このように考えていますということを申し上げておるわけでございまして、私が自分の権限で、職権でスライド制実現するという立場にはないわけでありまして、私は言うておりますように、約束したことは守るように努力しなければならない、こういうことで中医協会長その他にお願いする立場にあるわけで、私が診療報酬を決定する、こういう立場にはないわけであることを御理解いただきたいと思います。
  13. 川俣健二郎

    川俣委員 それは違うよ。齋藤厚生大臣厚生行政でもかなりの権威者であるのかな、労働行政もかなり造詣が深い方だと思うのですが、両者があの事態のときに紛争を生じたわけでしょう、時の政府——社会党政府じゃない、時の政府がそれをとったわけでしょう。私は責任をもってそれをやりましょう、その約束スライド制約束しているんでしょう。それを齋藤厚生大臣個人がやるとかなんとかいう問題じゃないですよ。厚生当局もそれにつながっているわけでしょう。なくなった斎藤厚生大臣じゃないですよ。いま生き生きとしている齋藤厚生大臣ですよ。弾力条項等大いに関係があるだろうが、みんな知っているだろうから聞くのだけれども、それを避けて通って、それはまず中医協でもう一ぺんやってくれというのは、労使交渉のたてまえとして、おかしいよ。
  14. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 御承知のように診療報酬改定というのは中医協という機関があるわけでございますから、中医協という機関を無視して、私が、どのくらいにするとかこうするとかいうことは言う立場にはない、これは御理解いただけると思う。ただ私、厚生大臣としては、前のなくなられた斎藤さんのお約束したことは斎藤昇個人約束したのではない、厚生大臣として約束したわけでありますから、当然私はその責任を継続して負わなければならぬ。したがって、診療報酬改定にあたってスライド制実現するように努力する、これは私は当然だと思うのです。努力しておるつもりであります。さように考えております。
  15. 川俣健二郎

    川俣委員 そうだとすれば、武見会長がおれのほうにあっせんに来るのじゃなくて、向こうのほうにあっせんに行けと言われるのは当然だと思います。政府がちゃんと責任をもって仲に入って、そのスライド制は私が約束しましょうと言ったのは政府なんでしょう。そういうことなんでしょう。それはわれわれは理屈は合わないと思う。そういう前提でいなければだめだよ。それでなければいつまでたっても——齋藤厚生大臣は私のほうできめる筋合いではないとりっぱなことを言うけれども、それを突っぱっておる間は、中医協解散のままだとぼくは思う。それはどうです。
  16. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 いろいろ御批判、十分私も理解できます。ですから、武見会長が言われるのは、おまえがあっせん者ではないのだ、おまえ自身の責任において中医協会長と問題を詰めなさい、こうおれは思っておるんだよ、こういう趣旨の見解でございます。こういうことで、武見さんがそういうことを言われる言われないは別として、厚生大臣の所轄にある中医協が混乱をして、なかなかまだ事態の収拾ができないということは、いずれにせよ私の責任だと考え、痛感をし、中医協が正常に戻るように努力を現在いたしもし、努力しなければならぬと考えておりますが、医療担当側、さらに支払い側、いろいろ言い分があるわけでございます。その言い分について、いろいろなことを言うことは、私としては、かえって事態を混乱させるということをおもんぱかって、実は答弁を控えておるわけでございますが、紛糾していること自体は、まさしく私の責任であると受けとめて努力しているような次第でございます。
  17. 川俣健二郎

    川俣委員 それでは、ひるがえって、時の政府がそういう約束をしたものを、また中医協でもう一ぺんやってくれという状態厚生省はいるのだろうけれども、そこで、今回の事件発端はそういう政府約束もあることだし、どうしてもスライドをとるのなら、やはり中医協としては医療社会化というものも並行的に考えていかなければならない、こういうところから発端が出てきたわけです。  ところが、議事録を読んでみると、この間辞任に追い込まれた河原委員の強い発言よりは、むしろ安恒委員が強い発言をして、その雰囲気を納得に追い込んでいっている。そこへ河原委員が、私らもそう思う、スライド制というのを導入する限りは、医療社会化というものもあわせて並行的に審議する必要があるのだ、そういうところへ持ってきたら、医師会側は、医療社会化はという言い方が気に食わぬという問題になって、製品のボイコット問題になった。そこで、それではいま中医協の言った、言わないの問題よりは、ある面では医療社会化をやると開業医がなくされるとか、あるいは国営国管医者は縛られるとか、そういう誤解もある。そうは厚生大臣は思ってないと思う、医療社会化というものは。  では厚生大臣どう思われるか。特に私が大臣に聞きたいのは、スライド制を導入するのなら、医療社会化まで織り込んで、厚生省責任権限を持ってスライド制医療社会化というものを両方厚生行政の上に乗せなければだめだと私らは思うのですけれども厚生大臣医療社会化というものをどう思われるか。
  18. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私も、実は中医協のその場でどういうことばを使われたかはよく存じておりません。医療社会化ということば中心にいろいろ言われておりますが、もしそれが、社会化ということばそのものが、いわゆる自由開業医制度を廃止するということばであるならば、これは私はおかしいと思います。しかし、どうもその辺の内容については、私もあまりつまびらかにいたしておりませんで、私は医療社会化という内容意味するところを十分理解いたしておりません。
  19. 川俣健二郎

    川俣委員 それなら時の厚生大臣としては——時の厚生大臣ですよ、河原委員は、厚生行政専門職じゃないですよ。その人ですらスライド制政府約束した、これはやらなければならぬだろう、だとすれば、医療社会化もあわせてやらなければならぬだろう、こういうようなことを、専門の人でない河原委員ですら言っておるのに、時の厚生大臣が、医療社会化理解してないなんということを言うのでは——では、大臣でなくて、局長でもいいです、どう思っておるのか、医療社会化というものは。
  20. 北川力夫

    北川(力)政府委員 医療社会化というのは、学問的にも非常にいろいろ見解かあるだろうと思います。いま御指摘のございました、この前の中医協の場で医療社会化という問題に端を発してトラブルの起こりましたことは、先生の御指摘のとおりでございます。  ただ、医療社会化ということが、直ちに医療国営化ということになるのかどうかという点につきましては、これはいろいろ議論があると思うのです。たとえば地域医療を確立するとか、あるいは総合医療を確立するとか、そういったこともやはり広い意味では、こういう概念に当たるかもしれませんし、今回の問題は、どうも医療社会化ということ、即医療国営化というふうにつなげて問題がとらえられたところに、トラブルもとがあると思うのです。  いま問題に出ました総辞退の結末としての、いわゆる厚生大臣武見会長合意十二項目の中にございます、いわゆるスライドという問題につきましては、いま大臣も申し上げましたが、診療報酬物価人件費スライドしていくことについて、厚生大臣としても、これが実現努力する、こういっているわけでございますから、これは厳密な意味でのスライド制であるかどうか、そういう点はこれまたいろいろ議論が分かれると思います。  でございますから、私どもは現在のトラブルは、そういう医療社会化、即医療国営化、そういう前提もとに端を発したと考えておりますが、医療社会化がどうだというふうに聞かれますと、そのこと自体は、この概念はかなり広範な概念であると思いますし、それから、いま私が申し上げました合意十二項目の一項目にございます文言、これは完全なるスライド制の確立ということを必ずしも十分に意味しているものとは私は考えておりません。いわゆる物価人件費に対応をして診療報酬改定されるということ、また改定される、実際の審議される場は中医協である、しかし厚生大臣としても、やはり大いに努力をする、こういうことでございますから、全体的に、総合的に見てみますと、この問題は、いま申し上げたようなかなり幅のある解釈が可能であろう。したがって厚生大臣といたしましても、また厚生省当局といたしましても、診療報酬改定をこのような考え方に立って考えていく、またそのような考え方中医協においても審議をされるということにつきましては、現在の中医協現状から見て、まさにそういうような線に沿って行なわれている、われわれはそのように理解をいたしておるような次第でございます。
  21. 川俣健二郎

    川俣委員 それでは理解がだいぶ違うけれども医師会の一部には医療社会化というのを本質的に拒否反応を示す人がいるが、少なくともいま局長が言ったようなことを、そういうところがら、いまの中医協解散状態を正常化するのにひもどいていく必要があると思います。医療社会化というのは決してそういうものじゃないです。スライド制政府責任をもってこれから毎年やるとすれば、医療社会化もこういうような観点で必要なんだ、そういう努力というものを全然なされてないと思うのです。ただ何とかそこをひとつ、またテーブルに着いてくれや、これではいつまでたっても中医協もとへ戻らないですよ。そういうところの糸口がない。私はそういう努力は必要だと思いますよ。どうです。
  22. 北川力夫

    北川(力)政府委員 私が申し上げました、いまの医療社会化ということについてのいろいろな考え方は、いろいろ誤解があると困りますのでつけ加えて申し上げておきますが、私の考えでございますので、いろいろこれについては、まだまだ議論はあると思います。  それから努力の問題ですが、中医協という場は、先生も御承知のとおり診療担当者医療費を実際に負担いたします支払い者側あるいは保険者、こういった者がお互いに議論をする場でございまして、まことにその利害関係が複雑に錯綜しておるということは事実でございます。またその複雑に錯綜しておることが、多年中医協の場をきわめてむずかしい場にしていることもまた先生お認めかと思います。そういうことがございまして、いまおっしゃいました、たとえば医療社会化ということば一つとらえましても、いわば理屈の問題も一つございましょうし、また経緯の問題もこざいましょうが、長年のそういう経緯の積み重ねで、そういう表現がいいかどうかわかりませんが、お互いにややもすれば硬直するような要因が絶えず伏在をしておる、こういう状況でございますので、そういうものが今回の機会に出てまいりまして、はなはだ残念ながら現在停止をしているという状況が偽らない現状であろうかと思います。  そういう意味合いでございますから、理屈の上からのこの問題の解決と、それからいま大臣が申しました厚生大臣としてのより高い見地からのこの問題のアプローチ、両方面からこの問題は至急に解きほぐしていく、こういうことが私どもの現在の考え方でございます。
  23. 川俣健二郎

    川俣委員 それは私は、こういうふうに公害だとか、あるいは福祉だ、いろいろ社会が複雑になってきたときの厚生行政、特に医療行政というのは、たいへんだと思う。それはわかるけれども、やはり約束したことは、そういう方向で行かないとだめだということなんですよ、特に厚生行政は。大臣、私はそう思いますよ。  じゃ、もう一つの例を申し上げますと、こういうことがあったというのだけれども、それは事実だろうか。私は知らないけれども、政務次官にちょっと聞きたいのですが、いわゆる心身重症児の社会事業をやっておる施設が民間に方々にあるわけです。かつての厚生大臣でしたか、重症児こそ社会福祉のかなめということで、ちょっと世に訴えたわけであります。それは自民党の厚生大臣ですけれども……。  そこで、この四月三日に厚生省と交渉を行なったというのです。ところが、そこの労務状態というのは、あとで話を続けますけれども、もうかなりひどいものです。残業だって労働基準法がはたして守られておるかどうか。労働省も各課長方来ておるようだが、あとでみんなに聞かしてもらいたいのだよ。ただ非常に私が遺憾に感ずるのは、特に政務次官が、それじゃひとつ島田療育園なり、びわこ施設なりを私は見ましょう、こう言ったところで労使の紛争が一応おさまった。それが四月三日だ。ところが、いつまでたっても、うんともすんともない。そこで五月三十一日に抗議スト、そしてこれからストライキを設定しておる、こういう状態だというのだ。山口政務次官はそういううそをつく人じゃないと思うのだけれども、はたしてそれは約束したのかどうか。
  24. 山口敏夫

    ○山口(敏)政府委員 ただいま川俣先生の御指摘のとおり、福祉社会の中で、特に重症身障児をはじめ身障者の方々に対する社会的な理解や共感というものがより必要であるということは、もう当然でございますし、また、そうした施設に働いておられます職員の方々の待遇を少しでも改善しなければならない、また、より社会的な理解も深めていただかなければならない、こういう考え方の上に立ちまして、四月三日、厚生省で島田療育園の方々あるいはびわこ学園の方々の陳情を伺いました。そして私も、厚生政務次官という立場であると同時に一人の政治家としても、ぜひそうした福祉の現場というものに対して実状を認識を深める意味におきましても、また今後の新しい施設の問題点をより理解する上におきましても、ぜひひとつおじゃまして、いろいろ率直な意見の交換もさしていただきたい、むしろ私どものほうから前向きにお願いをしたというような経緯もございます。  しかし、そのときにも申し上げましたことは、御承知のとおり国会の開会中でございますので、国会が終わり次第ひとつおじゃまさしていただきたい、こういうお約束をしたわけでございますが、幸か不幸か国会の会期が延長されまして、これまた重要法案等も、特にわが省の関係の重要法案も国会の中で十分解決のめどもついておらないというような実情の中におきましては、どうしても国会のほうにより時間をとられるということで、心ならずもまだ施設のほうに訪問できないというところでございます。
  25. 川俣健二郎

    川俣委員 この間労働政務次官がILOに行くというので、そういう政務次官おったかなと言う人がおったけれども、政務次官は盲腸じゃないんだから。しかし、いいですか、外国へ行くのじゃないんですよ。あなた、幸か不幸か国会が延びたということは、これはずいぶん言うものだなと思うのですけれども、外国へ行くのじゃないんですよ。片や東京、片や琵琶湖ですよ。何が時間ないのだ。あなた、いつ行くんだ。国会が終わる七月まで行かないつもりか。それをはっきり言ってください。
  26. 山口敏夫

    ○山口(敏)政府委員 決して私自身が施設の視察の問題に対しまして、これを避けているとか、あるいは逃げておるとかいうような気持ちがかりにも自分の心の中にありますれば、そうした懇談のときも、あるいは陳情を承ったときも、しいて私のほうからぜひ訪問したい、実情を伺いたいというようなことは申し上げないわけでありますから、私自身は一日も早く見たいという気持ちにおいては、いまも変わらないところであります。  ただ、その伺った諸問題に対してかりに約束をしたときに、実行し得る物理的な状況も、あるいは行政の中における予算的なアプローチ、まあ戦術的な問題等も考えましたときに、見ることだけは早く見る、ところが、その約束がなかなか実行でき得ないということは、せっかく福祉の第一線に立って働いていただいております職員の方々の心に、いたずらに不信を招くようなことがあってはならないという私なりの判断というものが、あるいは川俣先生のいまの御批判につながるような点があったことにつきましては十分反省し、できるだけ早く行くことが、あるいはよかったのかなという感じを持つわけでありますが、私なりの考え方からしますると、国会が終わったあとのほうが、伺った話をより実践する作業でも、また期待にもこたえられるのじゃないか、こういう考え方で延ばしておったわけでございます。
  27. 川俣健二郎

    川俣委員 まず人は、行ってみるとわかるのですけれども、民間ですから、抗議をやる人は、特に介護職員はほんとうに国、政府にたよっているんだ。そういう状態だから、それじゃあなたの出張はあとで理事会ではかってみますけれども、あなた自身は行く気があるということをまず披瀝されたが、一応きょうだいぶ来ているようだから、あなた会って、そこでよく説明して、近いうちに行くということを約束できますか。
  28. 山口敏夫

    ○山口(敏)政府委員 できるだけ早い機会に実際を拝見さしていただいて、またいろいろ御意見も承るということについては、はっきり約束できます。
  29. 川俣健二郎

    川俣委員 それともう一つ、今後は大臣に、そういう状態があった、大臣お耳に入っていたかどうか知らぬが、いままで紛争があった。そこで、政務次官が行って、見た、ああひどいな、これじゃだめなんです。少なくとも厚生政務次官だから、しかも賃上げとかその他改善を要求しておるのだから、ある程度大幅な権限を政務次官に与えてくださいよ。どうですかね。
  30. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 いやしくも政務次官が視察をし、いろいろ回答するときには責任をもって答えなければならぬわけでございますから、事前にいろいろな事態を調べておきまして、それはもちろん政務次官ですから、大きな権限をお持ちのことでございますから、言い得ることははっきり言うということになろうと考えております。
  31. 川俣健二郎

    川俣委員 それじゃ、大幅な権限を与えますね。
  32. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 大幅ということになるかどうか、私も内容をよく存じておりませんからわかりませんが、政務次官として言い得ることははっきり言う、言うたことについては厚生省責任を持つ、これはもう当然だと思います。
  33. 田川誠一

    田川委員長 委員長からちょっと申し上げますが、川俣委員のおっしゃることは当然だと思います。山口政務次官におかれましては国会開会中といえども、できるだけ早く視察に行くことを、私からも要望いたします。
  34. 川俣健二郎

    川俣委員 それでは政務次官けっこうですから。  そこで島田療育園にこういうレポートがある、それを見て大臣も当然厚生行政を考えなければならぬと思うのだが、「動く重障児の六病棟では、体重五十キロ台がザラ。六十キロ以上もいる。夜のおむつ替えは重労働であった。なにしろ足が持ち上がらない。三十九人のうち、おむつ使用は二十二人。昨年暮れ、退職者が続いたこともあって、夜勤は二人。交換は二回ある。一回の夜勤に、一人が二十二人のおむつを替える。」こういう手記を私は読みました。それで当然ここに発生するのは重労働ですから、腰痛症という問題が出てくる。特に私はいま例示を出したので、島田療育園なり琵琶湖の養育園なりの、こういう実態を把握しておるかどうか、開かせてもらいたい。
  35. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 重症心身障害児の施設におきまして、特殊の勤務形態から腰痛症の申請が出、またその中で認められたものがあるということは、私どもも把握しておるわけでございまして、たとえば現在島田におきましては腰痛症の労災の関係の申請をいたしておりますのが三人。それから琵琶湖におきましては、すでに認定を受けている者が十二人いるというような状況であるように聞いております。
  36. 川俣健二郎

    川俣委員 労働省のほうですか、あなたのほうですか、個々の労働条件を例示的に大体知っておるのですか。
  37. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 社会福祉施設の労働条件につきましては、われわれこれに対しては非常に関心を持っておりまして、毎年重点的に監督指導を実施いたしております。昨年も五月に一斉監督を実施いたしておりまして、それに基づく労働条件についてのいろいろな違反状況等も把握いたしておりますが、ただいま個々の施設の分につきましては手元に資料を持ち合わせておりません。全体の社会福祉施設の状況につきましては大体把握しております。
  38. 川俣健二郎

    川俣委員 それでは具体的に言いますと、こういうことになっているのだ。琵琶湖のある女子職員の深夜業手当が夜中の十二時から朝の八時までで二百五十円ぽっきりだ、民間のですから。これが事実であるかどうか。これにちなんで、ほかのものを全部調査して資料を出してください。そこで、さっき申し上げましたように、厚生省の政務次官がそれに当たられるようですから、労働省も一諸になって、労働条件は必ずからむわけですから、ぜひそれをやってもらいたいのだけれども、よろしいですか。
  39. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 至急調査いたします。
  40. 川俣健二郎

    川俣委員 厚生大臣が四月五日の参議院の予算委員会で、大半が腰痛症ですから、当然腰痛症になると代替職員というものが必要なわけだ。ピンチヒッターだ、これを約束されましたか。また約束の問題になって恐縮ですが……。
  41. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 この前参議院の予算委員会におきまして田中先生からの御質問がありまして、厚生大臣は四十九年度の予算において介護体制の充実というものをよりはからなければいけないということについてお答えになったわけであります。  そのときに腰痛症の問題も出てきたわけでございますが、私どもといたしましては腰痛症と申しますのは、これは労災関係になるわけでございます。一般的に私ども聞いておりますのは、腰痛症という労災認定を得るかどうかは別として、非常に重い子供たちをかかえたりして腰が痛くなるというような実態があるように施設のほうからも聞いておるわけでございます。したがって私どもといたしましては、何々病対策ということではなくて、むしろそういう腰が痛くなるというような労働条件を少しでも改善するようにということについて、予算的な問題その他について改善をはかるように考えるということについて現在作業を進めているところでございます。
  42. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 実は先般、お述べになりましたその日だと思いますが、予算委員会の分科会でお尋ねがございまして、腰痛症にかかっておる人もたくさんある、なかなか職員の数が不足なんだよ、こういうお話がございました。そこで重度心身障害児につきましての職員はすでに御承知のように四十八年度においては一・五人に対して一人こうなっておるわけでございます。そこでこれを何とか直さねばだめですよ、と非常に強い御質問をちょうだいいたしまして、私はさっそくこの問題は、なるほど仰せのとおりだ、腰痛で悩んでいる方もある。非常に重い気の毒な子供さんを介護する、これはたいへんなことです。ですから私は四十九年度の予算においては一・五人に一人というのではなくて、一対一というように予算を組むように努力いたします。さらにまた四十八年度でやりくりして何とかならぬか、こういうお話がございました。私はその御質問を承って、なるほどほんとうにお気の毒だと思いました。そこで、そのくらいのことをやりくりできないようでは、しょうがないと思いましたので、本年度においても予算のやりくりを考えましょう、すなわち全部一律というわけにはいかぬでしょうが、特に体重の重い子供さんをたくさんかかえておるような施設については、本年度においてもやりくりして一・五というのを一対一ということでやりくりして改善をはかるように努力いたしますという約束をいたしました。そのとおりです。  したがって、その約束に基づきまして、いま大蔵省と折衝中でございまして、近く結論を出す考えでございます。
  43. 川俣健二郎

    川俣委員 大体いつごろがめどですか。それが一つと、具体的に入ったので、この問題はこれで終わりますけれども大臣の姿勢を聞きたいのです。  それじゃ、こういうところで働く職員が、なかなかないということのあれはわかると思う。だけれども大臣のほうは少なくとも緊急予算措置を四十八年度もやるということにしているとすれば、もし職員がその島田なら島田で見つかったとすれば、予算措置のほうはだいじょうぶであるかということをもう一ぺん確認して、姿勢をもう少し理解したいのです。
  44. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 いま大臣の後段にお話しになりました本年度のやりくりの問題でございますけれども、これはいま大臣がおっしゃっておられますように、私どものほうでも何と申しますか、いわゆる特別基準的なものとでも申しましょうか、そういったようなものが何とかできないかということで、現在いろいろと検討しているわけでございまして、まあ限られた予算の中でございますから、そのやりくりがどういうふうにできるか、あるいはどの程度できるかということは現在検討しているところでございます。  ただそのやり方としては、いま大臣がおっしゃいましたように、腰が痛くなるというような問題についてのそういったようなものを含んでの、いわゆる勤務条件の緩和という問題でございますから、やはり一つの考え方は、だんだん大きくなって体重が重くなった子供たちをたくさん扱うようなところについては、もう少し労働条件の緩和をはかるというようなことで、それも一つの案でございますが、いろいろございまして、年齢で考えたらどうだというような意見もございます、あるいは体重で考えたらどうだというような考え方もあるわけでございまして、その点は現在私どももどれが一番適切であるのか、またどのくらいのやりくりができるかということについて検討しているわけでございます。  それでいま大臣おっしゃいましたように、これはやはり財政当局との相談を詰めていかなければならない問題でございますので、私どもとしてはできるだけ早く結論を得ていきたいというような考えでおるわけでございます。
  45. 川俣健二郎

    川俣委員 大蔵省どうですか。だいじょうぶですか。
  46. 渡部周治

    ○渡部説明員 重症心身障害児就容施設等におきます職員の処遇改善の問題につきましては、非常に強い社会的な問題としまして考えられておることは、われわれとしても十分承知しております。そして去る四月におきます参議院予算委員会分科会におきます大臣の御答弁も、私そばで承っておりました。ただいま児童家庭局長のほうからお話もございましたように、この具体的な措置の内容につきましては、現在厚生省でいろいろ御検討中であるように承っておるわけでございまして、いずれわれわれのほうで御相談を受けました段階におきましては、大臣も非常に熱意を持って取り組んでおられる問題でもございますし、社会的にも大きな問題でございますので、財政当局としても十分前向きに対処したいと考えております。
  47. 川俣健二郎

    川俣委員 それで大臣、このようにこういう施設は非常に一つの問題ですけれども、全国に困っておる貧弱な施設があるわけです。もう半分は社会奉仕、慈善事業的にやらざるを得ないような施設もあるわけですから、そういうのに対して、厚生行政がどうしてもおくれているというか、こういう状態を感ずるのですよ。  それで、もう少しおくれている話をしますと、老人行政がおくれていると、同じ内閣なんだが行政管理庁福田長官が、こう新聞発表していましたが、これは閣僚会議にもこの話があったのですか。
  48. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 閣議では話はございませんでしたが、そういう勧告をいただいておるわけでございます。
  49. 川俣健二郎

    川俣委員 それでいいですか。
  50. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 行政管理庁から最近この老齢者対策に関する行政監察結果に基づく勧告というのをちょうだいいたしております。
  51. 川俣健二郎

    川俣委員 そこで、さっそく調査しましたもの——こういう発表があったと思うな、六月十日だかNETテレビで。老人問題を調査した資料がありますか。
  52. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 この勧告は最近ちょうだいしたものでございますが、最初に労働省関係の老人の就労問題、厚生省も若干関係ございますが、就労問題、それから健康管理の問題、それから在宅老人の福祉対策問題、それから施設の問題、そういうぐあいに大ざっぱに分けまして四つの点について、いろいろ指摘があったわけでございますが、この中には、これは大体四十六年の調査でございますので、その後の改善によりまして御指摘の点は、もうすでに相当改まっておる点もございます。しかし、なお不十分な点も多々ございますので、この勧告の線に沿って早急に対処したいというぐあいに考えておるところであります。
  53. 川俣健二郎

    川俣委員 対処するという姿勢はわかったけれども、調査したわけですね。調査資料はあるわけですね。
  54. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 調査と申しますのは、一般的にたとえば一、二の例を申し上げますと、高齢者の無料職業紹介所というのを私どものほうでやっておりますけれども、これについては就職率も非常によくて、高齢者就職促進に非常に大きな役割りを果たしておる。しかし専任職員が三人というようなことで非常に人数が足らぬ。そういうことで今後はそういった職業紹介所の内部をもつと活動しやすいように充実をはかれというような御指摘でございました。  こういうようなことは私どももすでに承知いたしておりますので、そういう個々の例に従いまして、具体的に四十九年度以降の予算において、この勧告の線に沿って措置をしてまいりたいというぐあいに考えております。
  55. 川俣健二郎

    川俣委員 私が言うのは、対策を考える前に調査がなければだめだ、調査資料が。それで六月十日の六時五十分からNETで厚生省の実態調査というのが発表された。それはおたくから出ておるのだと思う。そういう調査資料はあるわけですか。
  56. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 これは老人全般につきまして、毎年ではございませんけれども、統計調査部でもやっておりますし、それから私どものほうでも任意に必要に応じていろいろ調査をやっております。毎年ではございませんけれども、いろんな調査というものは持っておるわけでございます。
  57. 川俣健二郎

    川俣委員 どういう調査資料ですか。私ら委員会では見せてもらってない。老人問題の調査資料というのは出たことない。
  58. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 ことしはやっておりませんが、昨年、老人実態調査というのをやっております。
  59. 川俣健二郎

    川俣委員 その資料を見せてください。
  60. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 あとで御提出いたします。
  61. 川俣健二郎

    川俣委員 いま課長かどなたか持っておるのじゃないですか。老人問題で質問すると言ったでしょう。
  62. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 いまちょっとその資料は持ち合わせておりませんが、早急に提出いたします。
  63. 川俣健二郎

    川俣委員 それは何時ごろになるのですか。
  64. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 午後、もう午後になりましたけれども、昼食時あたりに取りに参ります。
  65. 川俣健二郎

    川俣委員 午後といったって、何時ごろです。
  66. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 一時間以内に提出いたします。
  67. 川俣健二郎

    川俣委員 これは老人問題から健保改正の内容に入りたいので、ちょっとこの資料が出るまで保留して、休憩をお願いしたいのです。
  68. 田川誠一

    田川委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  69. 田川誠一

    田川委員長 速記を始めて。  この際、午後一時まで休憩いたします。     午後零時十一分休憩      ————◇—————     午後一時十九分開議
  70. 田川誠一

    田川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  休憩前の質疑を続けます。川俣健二郎君。
  71. 川俣健二郎

    川俣委員 さっきの継続ですけれども、そうすると、これから大臣が老人対策を積極的に考えよう、そうして長期計画に基づいて少なくとも、これもまた田中総理約束だが、来年度の予算には必ず老人の問題を抜本的に取り上げて予算化ということも云々された。大臣がそういうような考え方を持っておるのに、厚生省当局局長方に聞くのだが、一体出せるほどの調査資料を持っておるのかどうかということです。  いま未定稿のものを見せられたが、未定稿なんで、まだ各委員に配る段階じゃないというのだが、もう間もなく予算の作成時期なんだ。出せる見通しがあるのかどうかということですね。大臣がそういう考え方を持っておるのに、事務当局ははたして資料が整っているのかどうか。NETの六月十日の発表は、そんな事実はないと突っぱねるなら——六月十日のNETの厚生省発表というのは、やった覚えはないのですか。
  72. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 私どものほうで調べましたけれども、どうも私のほうで発表したという事実が確認できませんので、さらに調べてみますけれども、いまの段階では私のはうではその事実は確認できないということでございます。  それから老人の実態調査につきましては、これも継続的にやっておりまして、先ほど先生のほうに——まだ未定稿でございますけれども、四十七年度にまとめました老人の実態についていろいろな数字がございますので、ある程度老人の実態については把握をいたしておるわけでございます。そういう実態を踏まえまして、四十九年度予算におきましては、老人問題の予算、老人対策の拡充という点につきましては、これは省をあげて取り組んでまいりたいというぐあいに考えております。
  73. 川俣健二郎

    川俣委員 それでは必ず予算の折衝にあたっても——われわれは強く社会党案で提案しておるのですから、特に老人問題は六十五歳以上無料、そして自治体病院を中心に老人専門病院を早く建てる、それから特別養護老人ホーム、寝たきり老人などの施設の有機的な活用、それからさらに健保の自己負担分を公費負担にするのではなくて、保険から切り離して全額公費負担でやるべきだ。そこまでいかないと老人問題は取り組めないのだ、こういう考え方もありますから、ぜひ作業の途中でも、まだ未定稿のようだけれども資料を出してもらって、やはり委員会あげて厚生行政に対処するという考え方を持っているのです。それに対して大臣どう思われますか。
  74. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 老人問題の処理は政治の非常に大きな課題であるわけでございまして、御承知のように、田中内閣のこの問題に取り組む姿勢を示す意味において、内閣に老人対策本部を設ける、老人対策懇談会を設ける、こういうふうなことで民間学識経験者意見も聞き、さらにまた機構的にも各省あげて総合的に行政を推進しなければならないという姿勢を示しておるわけでございまして、その老人問題のいろいろな施策の大半は厚生省責任を持ってなさなければならぬ問題でございます。しかもこういうふうな問題は特にきめのこまかい施策が必要であるわけでございまして、川俣委員のような、厚生、社会問題、こういうふうな福祉の問題についての専門家でございますから、川俣委員のお述べになりましたような、もろもろの意見も十分承知いたしておりますので、できないものはしようがありませんが、できるものは勇気を持って前向きに解決していく、こういうことで努力をいたしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  75. 川俣健二郎

    川俣委員 局長、全国自治体病院協議会、これがかなり調査に取っ組んでおるし、かなりな内容を持っておるのだが、これは局長のほうでそのように理解して、おりますか。見たことありますか。
  76. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 自治体病院協議会が老人医療の無料化等が実施された前後の高齢患者の入院状況をお調べになりました資料を最近いただきまして、承知いたしておるような次第であります。
  77. 川俣健二郎

    川俣委員 そういう中で自治体病院から要望書が出ておるのですが、いわゆる病床規制の問題をちょっと聞いてみたいと思う。これは島本委員でしたか質問したのに、どうもすれ違いの政府答弁なので、もう一ぺんここで確認しておきたいのだが、病床をふやす場合は地方審議会の議を経てやらなければならぬ。ところが医療法の七条の二によるとそうではなくて、老人の病床などのようなものは、もし許可できないという場合に初めて審議会にかけなければならないというように私はこの法律理解しておるのだが、それに関連して通達を出されましたね。どういう通達でしたか。
  78. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先生指摘の、昨年の医療審議会で御審議の結果答申をいただきました病床規制についての人口別の改定の数字と、それからその際に御意見がございました加算制度、いわゆる病床の規制地区でございましても、その規制とは別に加算して病床の設置ができるという意味の加算制度が、老人医療の無料化に伴います対策として老人病棟等の設置について認める、そのほか公害病患者を受け入れる病院の病床を特別に設ける場合にも加算制度として認める、それから原爆医療を受ける特殊な病院の病床も加算制度として認めるというような内容につきまして、先ほど申し上げた人口別の数値の変動しました結果とあわせて通知いたしたわけでございます。
  79. 川俣健二郎

    川俣委員 その通達はちょっと違うのじゃないですか。どうですか、そのとおりですか。
  80. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 医療機関の整備につきまして、地方自治体がこの七条の二に基づきます病院の増床変更という場合には県の医療審議会にかけるように行政指導としての通知は出しております。
  81. 川俣健二郎

    川俣委員 この七条の二はそうじゃないんだろう。もしそういうような申請に対して許可を与えない処分をしようとするときは審議会にかけるのでしょう。この七条の二というのはそうなんでしょう。どうですか。
  82. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 おっしゃるとおり、病床の不足地区であっても、問題なく増床ができるところについても、できるだけ医療機関整備審議会におかけいただくという意味で先ほど申し上げた行政指導でございまして、厳密には先生おっしゃるように、その規制に該当するようなもののときにその理由を付して加算制度なり、それぞれの病院の実情を付して都道府県の医療機関整備審議会にかける、こういうことは必要なこととなっておるわけであります。
  83. 川俣健二郎

    川俣委員 地方が非常に混乱しているのは、三十九年の四月一日に次官通達で、追加申請をするときには、許可をするときもしないときも必ず審議会にかけなさいという通達だろう。どうです、それは。
  84. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 それは先ほども申し上げたとおり、なるべくかけるように、いわゆる行政指導としての通達を出しております。
  85. 川俣健二郎

    川俣委員 そこが非常に混乱しておるというのだ。  そこで参議院の法制局に聞いてみた。この通達はどうだろう。そうしたら、こういうことなんです。医療法七条の二の三項の「都道府県知事は、第一項の規定により前条第一項又は第二項の許可を与えない処分をしようとするときは、あらかじめ、医療機関整備審議会の意見を聞かなければならない。」となっているが、法文上明確なものに許可を与えない場合は医療機関整備審議会にはかる必要はないと考えておるが、見解はどうだ、こう言うたら、右の許可を与える場合に、医療機関整備審議会の意見を聞くことを要しないことに関しては、お示しのとおりだ。——与える場合には審議会は要らないんだよ。だから通達は要らないというんだ。どうです。
  86. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 そのような行政指導の考え方で従来やっておりましたけれども先生おっしゃるような法制局の見解等を踏まえて、やはりこの問題の取り扱いに誤解がある、あるいはそれがいろいろの問題を生んでおるということであれば、この問題の取り扱いについては、検討するにやぶさかでないわけでございます。
  87. 川俣健二郎

    川俣委員 それじゃ三十九年四月一日に次官通達で出したものを、局長もとでもう一ぺん検討してみていただけますか。
  88. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 検討いたします。
  89. 川俣健二郎

    川俣委員 そこで、さっきの自治体病院なんですが、いわゆる公的医療機関、その公的医療機関は、四十八年度の予算を見ると再建財政対策に入ってないのですが、これはどうなんです。これはほんとうは予算でやるべきだったんだが……。
  90. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先生の公的ということが入ってないというのは、正式には自治体病院が入ってないというお尋ねだと解してお答え申し上げます。それでよろしゅうございますか。自治体病院につきましては、従来公営企業法に基づきまして一般会計からめんどうを見ることのできる範囲をきめられております。そういうようなことで、それぞれの自治体病院はお世話をする自治体という親元があるわけであります。今回取り上げました日赤、済生会、厚生連、北社協の四団体にはそういう病院の親元がない。しかも自治体病院はそれを交付税あるいは特別交付税で見ておる。むしろそれにならいまして、今回四十八年度としては二億八千万の、四団体の赤字の病院でしかも救急、僻地等の特殊の医療を担当している部門に対しまして、算定した補助金を用意いたしたわけでございます。
  91. 川俣健二郎

    川俣委員 それじゃ端的に答えてください。  自治体病院はそれに入ってないのですか。
  92. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 したがって、いま申し上げた趣旨からいたしまして、自治体病院は今回の二億八千万の補助対象にはなっておりません。
  93. 川俣健二郎

    川俣委員 二億八千万の中に入ってないというのは、入れないから入ってないんだ。公的医療機関には入っているわけでしょう。
  94. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 医療法の第七条に基づきます公的医療機関には、自治体病院は当然入っているわけでございます。
  95. 川俣健二郎

    川俣委員 それで、公的医療機関の定義には「この章において、「公的医療機関」とは都道府県、市町村その他厚生大臣の定める者の開設する病院又は診療所をいう。」自治体病院は一番先に書いてある。こういう再建財政対策に自治体病院が入ってないというのは、これはおかしいんじゃないか。
  96. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 その先生がおかしいとおっしゃる御質問の答えとして、先ほど申し上げましたように、公的の中は自治体が主軸でございまして、そのほかに日赤、済生会等がございますが、その同じ公的の中で、自治体病院の関係には親元があって、それぞれ公営企業法に基づき、何といいますか、一般会計の繰り入れ等の条件も定められておる、なお自治省からは特別交付税等の積算の基礎としていろいろの措置がなされておる。同じ公的の中で日赤、済生会等がそのような措置の親元がない、しかも赤字であるというようなことに対応する措置として、そのような今回の二億八千万を用意した、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  97. 川俣健二郎

    川俣委員 大臣、聞きますけれども、こういうようにもう全国的に、公害だ、そして難病奇病だ、そしていろいろ福祉施設その他を考えると、日本にある自治体病院というのは非常に財政が悪化しております。老人の医療が無料になれば、それだけふえるわけですから。そうしますと、各地方は唯一の場は自治体病院なんだ。医療行政における自治体病院の位置づけというものは、どういうようにこれから考えようとしておりますか。
  98. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 県立なり市町村立なり公共団体の設置いたしておりまする病院は、地域地域における医療供給体制の中核をなす重要な役割りを持っておると私は理解をいたしておるわけでございます。近時こうした公立の病院が、いろいろな要因によりまして財政が悪化していることは十分承知いたしておるわけでございまして、この問題に対し真剣に取り組む必要がある、こういうふうに私は理解をいたしておるような次第でございます。
  99. 川俣健二郎

    川俣委員 それで事務当局、いま大臣が言うように自治体病院は中核となる重大な役割りを持っておる。しかし財政悪化だ。こういうところに非常にこれから問題が出てくる。  それで、医療供給体制のたとえば看護婦の問題一つ取り上げてみます。これは自治体病院はあとの同僚委員からもこれにつないで質問がありますけれども、一つの医療供給体制の中で看護婦の問題ですね。看護婦は不足だ。ところが、早くも国立病院の看護婦、国家公務員のほうは千円の夜勤手当というアドバルーンで、四月一日にさかのぼって、もう支払っておる。これが看護婦総数の何割になっておるか、こういうことを考える。何割くらいになっておりますか。
  100. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 この点は、数字の上で五割というような御意見もあったと聞きまして、私も数字をあれしてみましたら、ほぼ八割近い数字になっております。自治体病院を含めた公的病院の看護婦数と千円問題に直接かかわる国立では、二割八割という関係になると思います。
  101. 川俣健二郎

    川俣委員 二割は国立病院。医務局長はいつだったか、ぼくが前の質問のとき、何となく国立病院というのをおらが病院——こういうことは思っていないだろうけれども、国立病院は厚生省の病院である、厚生省がめんどうを見るから——そういう意識が、厚生行政、予算を見ると、どこかにあると思うのです。  そこで看護婦の一つの問題を提起すると、二割国立病院、八割は自治体、赤十字、厚生連その他。そうしますと、千円の夜勤手当、三百五十円だったかがいきなり千円になった。国立病院二割だ。あとの八割の看護婦はどういう心境になる、こういうことなんです。ところが、さっき申し上げましたように、おらの自治体病院でも千円出さなければ、向こうに国立病院の看護婦がいるんだから。そういう場合、とても財政悪化がある。そこで前の金子委員でしたか、看護婦手当をどうか、こういうようにあれがあった。そうすると、その審議の中で中医協審議してもらったら、当然医療費で払わねばならぬ、こういうようになると、私は前向きの看護婦不足対策にならない。そこで大臣どうですか、こういう八割、二割のギャップは、これは何といったって厚生行政として考えねばならぬ。これは国費でどうですか、大臣
  102. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 川俣委員のせっかくの御意見でございますが、これは全部国で見るというわけにはいかないと思います。しかし、こういうふうなわけで自治体病院は非常に重要な役割りを負っておるわけでございまして、この問題は確かに市町村が一般会計においてできるだけめんどうを見る、足らないところは特別交付税で見るという仕組みには一応なっておるわけでございますし、さらにまた、看護婦のそういう問題も診療報酬の中で見なければならぬというたてまえになっていることは、そのとおりでございます。しかし、はたしてこういうことでいいのかどうか。私も多少、まあいま具体的にどうするという名案も実は持っていないのですが、こういう姿で看護婦問題をとらえていくことが、日本の看護婦問題のとらえ方として適当であろうかという悩みを実は私も持っているのです。川俣委員はすぐそれは国で、こうおっしゃるけれども、これもそう簡単にいかない。それじゃどうすればいいんだ。これは非常にむずかしい問題でございます。  そこで先ほども申し上げましたように、自治体病院の赤字問題についてもう少し真剣にこれと取り組まなければならない、こういうふうに考えておりますので、来年度の予算編成の前に自治省とも十分相談をいたすつもりでございますが、さらにその前に、社会保障長期計画懇談会においても各方面の意見を十分聞いて、そして何らかの一つの案を持って自治省と相談をし、この苦しいいろんな財政問題の処理に当たっていく必要があるのではないか、こういうふうな考え方をいま実は抱いておるわけでございます。どういうふうにすべきかという方法論については、これは非常にむずかしい問題がありますので、いま私自身非常に苦慮しておる段階でございます。
  103. 川俣健二郎

    川俣委員 自治省と相談するとかということも必要かもしらぬけれども、これはやはり看護婦不足という対策上からも、このぐらいのことはいいんだと思うのですよ。厚生行政厚生大臣はこう思うんだ。四、五十億でしょう。やはりそういう前向きの姿勢を考えなければならないと思う。そこでそれが一つ。  それから大臣、長期計画の話が出ましたから社会保障長期計画懇談会、メンバーがそろったようですが、しかし田中総理は大っぴらに予算委員会約束した大きな問題で、厚生大臣約束されている。大原委員でしたか詰めて、そして懇談会が発足したと聞いておる。そこでこの結論、一体来年度の予算に間に合いますか、どうです、うなずいているけど……。
  104. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 実はもうすでに発足いたしまして、数回いろいろ御議論を願っておるわけでございますが、大体いま一番中心になっておりますのは、その看護婦さんの問題を含めた医療供給体制、この問題をどうするか。医療施設の体系的整備の問題もあります。無医地区の問題もあります。救急医療体制の問題もある。看護婦さんの問題もある。こういうような問題について実はいま集中的に御検討願っておりまして、大体八月一ぱい結論をお出しくださいというふうにお願いをしておるわけなんです。  委員方々も最近非常にひんぱんに会合を開いていただいておりますので、委員方々にはほんとうにお気の毒だと思いますが、相当精力的にお骨折りを願って、八月末までにこうした問題についての長期計画の案を出していただくというふうに考えております。それも可能であると私も考えております。
  105. 川俣健二郎

    川俣委員 そういう前向きでなるべく早くやる、こういう答弁があったのですが、問題は来年度の計画、予算、これです。もうぼつぼつ時間ですから内容に少し入っていきますけれども、ことしは健保は幾ら赤字でもたな上げだ、これはいいんですな、どうですか。
  106. 江間時彦

    ○江間政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  107. 川俣健二郎

    川俣委員 そうすると、来年度は政府考え方はどうなんですか。来年度もし赤字の場合は、当然例の弾力条項を発動するということなんですね。前の質疑にもあったんだけれども、その辺がうやむやになっている。
  108. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 法律に基づきまして本年度は弾力条項といいますか、料率調整その他は発動いたさないということが、法律で明文で書かれておりますが、来年度におきましては先般来お答え申し上げておりますとおり、給付改善、さらにまた診療報酬改定、その他緊急事態が生じますれば、慢性的な赤字は別として、そういう問題があれば相当な金がかかるわけでございますから、この法律が成立いたしますれば当然発動をせざるを得ない、かように考えておる次第でございます。
  109. 川俣健二郎

    川俣委員 それでその問題ですが、われわれは、政管健保の構造的な原因からくる財政基盤の強化をはかるためには国庫補助二〇%という考え方でいるわけだ。いま理解としても、そういう頭でいる。そういうような考え方でいるんだが、政府のほうは一〇%でこれはこと足りるということなのか、大蔵省と折衝したけれども、一〇しかとれなかったということなのかどうなのか知らぬが、そういうようなことは一体どうなんだ。これは大蔵省なり厚生省から……。  もう一つは、保険料率の弾力条項と大臣のときどき言う連動する国庫負担の関係、これはもう一度聞かしてもらいたいのですが……。
  110. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 政管健保におきましては、たびたび各委員方々からご質問いただきましたように、その体質が脆弱であります。そういうふうなことで被用者保険というものは、原則として被用者の保険の保険料でまかなう、これは御承知のように私が申し上げるまでもなく、日本の健康保険制度というものの出発の歴史がそうであったわけでございますが、しかし、いま申し述べましたようないろいろな基盤の脆弱であるというふうなことも考え、さらにまた昨年提案いたしました健康保険法は皆さまの御協力によって衆議院は通過いたしましたが、参議院において廃案になった、こういういきさつ等もありますので、実は思い切ったつもりで、一〇%ということを法案に定率を定めることにいたした次第でございます。  しかもまた過去の累積赤字三千億、これはたな上げ、こういうことまでいたしたわけでございまして、これはもう川俣先生のような、健康保険制度については非常に御理解のある先生でございますから、私は、これは十分御理解いただけると思うのです。三千億の赤字をたな上げし、しかも去年までは定額二百二十五億、そこへもってきて定率一〇%、医療給付費が現在八千八百億ぐらいでございますが、これがもっと伸びれば、それのまた定率、こういうことでございますから、政府としては、思い切った財政措置であると私は信じております。  なお、それと同時に、その料率調整規定の発動に伴いまする国庫負担でございまするが、これもいつか申し上げましたように、社会保険の歴史においては、私は画期的なものだと思うのです。従来でございますと、労使の保険料だけ、それが今度の改正によって定率の一〇%、さらにまた、その七・三%を上回るような必要が生じた場合、すなわち診療報酬改定あるいは給付の改善、そういうふうな場合には、今後は三者三泣き的と私は言ったのですが、額が多少違いますから三者三泣き的と申し上げました。すなわち〇・一、千分の一の料率を上げることによって、労使は五十五億ずつ、国は三十五億というわけでございますから、私はこれも思いきった財政措置であると思っておるのでございまして、私は三者三泣き的と申し上げておるわけでございますが、これなども専門家である川俣委員は、私は高く評価していただけるのではないか、かように考えておる次第でございます。
  111. 川俣健二郎

    川俣委員 ことばでは思い切ったと言うのだけれども、思い切ってないですよ。ほめられたついでだから、もう少しほめられたいのだけれども、三者三泣きと大臣が言いますけれども、ぼくはどうも、前の委員質問を聞いておっても、三者三泣きじゃないような気がするのです。  それはなぜかと言うと、千分の七十三から千分の八十まで、大臣がこんなところへかけないで——鉛筆一本動かすときだけは、こっちのほうから三十二億ですか、出しましょう、こういう考え方、しかし、この前の山本委員質疑によればこの三十二億は少し動かしてもいいようなニュアンスの答弁があった。それを踏まえて、私は質問する。ところが、三者三泣きというのだが、千分の七十三から千分の八十、いわゆるその〇・七の間を動かすときには三者三泣きで国庫補助をする、これはわかるのです。千分の七十から千分の七十三まで上げるときはないんじゃないのかな。
  112. 北川力夫

    北川(力)政府委員 これは、千分の七十というのは、現行の固定料率でございます。それから、七十三というのは、今回給付改善を行なうに伴って、新しくお願いをいたします料率でございます。その新しく給付改善等に伴って千分の三をお願いいたします際に、先ほどもお話のありましたように、政管健保の基本的な逆ざや的な性格、構造を補うために、二百二十五億の定額から定率の一〇%の国庫補助を基礎にぶち込むということでございますので、七十から七十三というケースと、それから七十三から今度はさらにそれが上へ伸びていく場合とでは、私どもはケースが違うのじゃないかと思います。七十から七十三の場合には、根っこですでに一〇%という大きな補助が入っておりますので、そういう意味で御理解を願いたいと思います。
  113. 川俣健二郎

    川俣委員 それは弾力条項を理解せいと言われたって理解しないのだよ。ただ、大臣は三者三泣きと、こうおっしゃった。私は、いままでの赤字をたな上げしてもらえるのだからなんということは、これは大蔵省が言うなら、また話はわかる。厚生大臣がそんなことを考えなくたっていい。いままで一〇%ずつ補助してくれば赤字はなかったのだ。二百二十五億でがまんせい、これだけの補助でがまんせい、こう言われてきたから赤字だった。そんなことはないのだ。そんなことは、全然法律的にもセットになっていない。そんなことは別にしたっていい。たな上げと全然関係がないよ。  私が言うのは、こういうことですよ。あまりうまくしゃべれないが、政府原案によると、保険料率が今回の改正による千分の七十三から千分の七引き上げられて千分の八十となった段階の国庫負担は、基礎部分の一〇%に、〇・四かける七として二・八%だ。計一二・八%しかならない。保険料は千分の八十取りながら国庫負担は一二・八%でいいのだと言うから、三者三泣きじゃないよ。これはどうです。これは初めて出る質疑なんだ。
  114. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私の言うておるのは、七十三から上がるときは、三者三泣き的になりますということを申し上げておるわけでございます。
  115. 川俣健二郎

    川俣委員 しかし、千分の七十から考えるべきだと思うよ。どうですか、事務当局で、こういう考え方は持っていませんか。私はそう思うな。千分の七十から考えなければだめだよ。これはどうです。
  116. 渡部周治

    ○渡部説明員 今回の制度改正に際しましては、政管健保の財政対策と給付改善を行なったわけでございますが、それに必要な財源を全体としてどのようにまかなうかという観点から、保険料負担の改定と、それから一〇%の定率国庫補助の導入ということを決定いたしたわけでございます。  具体的な計数で御説明申し上げますと、財政対策と給付改善に必要な財源は千五百四十七億でございます。これを被保険者及び事業主の保険料負担の引き上げでもって——これは折半でございますが、それぞれ四百八十六億、計九百七十一億でございます。一方、国庫負担の引き上げは、二百二十五億に対しまする今度の一〇%国庫負担の定率分八百十一億の差額の五百八十六億でございます。  そういう意味におきましては、七十から七十三における過程におきまして、国庫負担のほうは五百八十六億でございます。それとの比較で計数を申し上げますと、被保険者、事業主の保険料負担は、それぞれ四百八十六億でございますが、それに対しまする国庫負担は五百八十六億でございますから、被保険者、事業主、国の三者の間では、特に国のほうの負担が大きいという計算になります。
  117. 北川力夫

    北川(力)政府委員 私ども考え方は、先ほど大臣から御説明申し上げましたし、私からも申し上げましたが、こういうことでございます。  いろいろ、いま三千億のたな上げについて貴重な御意見を拝聴いたしました。今度の改正のスタートラインと申しますか、それはやはり従前の累積赤字を一応たな上げをして、まず出発をする。第一段階は、この内部的な不均衡是正ということをやります。それから再出発、いわば政管健保の再出発でございますから、先はどからるる申し上げておりますとおり、従来の実績から申しましても、また今度八年ぶりで標準報酬を上にのっけますので、そういうことも考えに入れまして、今後の賃金の伸び等も勘案いたしますると、やはり一〇%の国庫補助を基礎に投入しておけば、御承知のような体質の弱さというものはカバーできるのではないか。こういうことが第一点でございます。  それから千分の七十三の料率は、先ほど申し上げましたとおり、今回保険給付の改善を家族につきまして、また現金部分につきまして、相当大幅な改善をするわけでございますから、その際には、やはり応分の負担をお願いするということで、〇・三%の引き上げというものをお願い申し上げておる、そういうことで給付改善もスタートするわけでございます。  そうなりますと、保険でございますから医療内容の充実あるいは保険給付内容の充実強化ということで、コンスタントな保険の運営以外に新たな要素が今後は当然に予測をされます。そういう場合にこれに対応する財源的な措置として、千分の七十三から上限千分の八十まで保険料を引き上げて、その場合に、〇・一%引き上げたときに全給付費の〇・四%というものをリンクして国が負担をするという、これは他の保険には例を見ない政管健保にユニークな構造でございますけれども、そういうかっこうで今後とも政管健保医療内容、保険給付内容の充実にも対応していこうということでございますので、全体的にこれを通覧していただきますと、従来からの問題、あるいは再出発にあたっての問題の整理、それから再出発後の変化に対応する仕組み、全体的にバランスのとれた今回の改正のメカニズムではないか、このように考えておるのが私ども考え方であります。
  118. 川俣健二郎

    川俣委員 時間がないですが、大臣は三者三泣きというのは私のほうに向かって言っているのか、大蔵省に向かって言っているのか、わからないのです。というのは、三者三泣きというのは金額的に同額だな、そうですね、平たく言って。〇・四じゃ三十二、三億、こっちは千分の一で百十億の折半で五十五億、理想は同額で三者三泣きと言っているのですかね、大臣。それを期待しているわけですか、どうですか。
  119. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私は初めから三者三泣き的と——三者三泣きらしいと、こういう意味で申し上げておるので、従来はこういう場合には労使の保険料だけでまかなうというのが原則です。しかし、こういうふうな体質が弱いことでもありますから、基盤を強化する意味合いからいっても、労使に五十五億ずつ出していただくときには、国も何とかこれに近いところを考えてみましょう、こういうことで〇・四というのがあったのでございまして、同額にするという考え方は、まだやはり時期尚早というところだと思うのです。  将来何らかの機会において、また今後法律改正をするような場合になったときには、〇・四を少し上げるという場合が、あるいはあるかもしれませんが、現在の段階においては、先ほど来申し上げておしかりをいただくのですが、三千億の赤字をたな上げにし、しかも一〇%の定率補助をしようというこの際でございますから、大体〇・四が適当なところであろう、こういうふうに判断をいたして提案をいたしておるわけでございまして、将来また何年か先に法律改正をするというふうな場合になりますれば、こういうことも一つの問題になろうかと私は思っております。
  120. 川俣健二郎

    川俣委員 「的」ということばが入っていることに気がつかなかった。やはり説得力はないですね、大臣考え方が理論構成されたとしても。三者三泣き的——割り勘で飲もうというときに、それは「的」とは言えないよ。大臣考え方は聞いたし、大蔵省も聞いておられるのだろうと思うのだが、そこでもうあれですから……。  健保関係は七つぐらいの種類があるわけだが、ようやく日雇い健保も出してよこした、長年われわれが要求したやつですね。さらに、大工、左官や、とび職等の擬制適用によるのが、まだほったらかされておる。ほったらかされておるのに——今回は法案提案ということにはならなかっただろうが、厚生省は、これに対して国保組合は特に二五%でほったらかせれておる、こういう問題に対してどういうように考えますか。
  121. 北川力夫

    北川(力)政府委員 ただいまお尋ねの中身は、いわゆる従来の擬制適用から国保に移行いたしまして国保組合として現在あるもののことだと思います。最近のいろいろなことを考えますと——これは公営国保の場合もそうでございますけれども、特に国保組合の場合には、また、いま先生指摘の擬制適用から移行いたしましたところは、本人は十割の給付をいたしておりまするし、それからまた、老人医療等の問題もございますので、財政的にだんだんとむずかしい状態になっていることは事実だろうと思います。     〔委員長退席、伊東委員長代理着席〕 そういうこともございまして、四十八年度予算におきましては、そういったものも含めて臨時調整交付金というものを相当大幅に増額をいたしたような次第でございますが、はたしてこういう状態で今後国保組合の運営がどのような状況になるのか、私どもは実は非常に注目をしているような状態でございます。そういったことを考えまして今後の具体的な明確な方針は私どももまだ立てかねておりまするけれども、国保組合として運営をしてまいります以上は、やはりできるだけ負担の面も過重にならないように、またバランスのとれた負担をしていくように、また給付内容も現行の給付内容を維持できるようにといった点を十分に配慮いたさなければなりませんので、今後の推移も見ながら国保組合の健全な育成ということについては十分に配慮をしてまいりたい、このように考えておるような次第でございます。
  122. 川俣健二郎

    川俣委員 もう一つ内容を伺っておきたいのですが、家族給付の点も前の委員がいろいろと質問した中で政府考え方も伺いました。それで家族給付について新聞記事もいろいろと出ておるのですが、あれはまぼろしの数字じゃないと思うんだけれども、特に大臣に、ボーナスから保険料をとろうなんという発想はもうやめたと思うのだが——ボーナスというのは所得税と失業保険というように法規制されておる日本の国で、ボーナスから特別保険料をとろうなんという発想が、ただ、あるところからみんなとればいいのだという考え方だったのか、それとも、やはり悪かったという考え方になっているのか、その辺を聞かしてもらいたいのです。
  123. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私もほんとうを言いますと、賞与から保険料をちょうだいするということが、それだけを考えてみれば好ましいとは思っておりませんが、今回の給付改善に伴って、ある程度の保険料を上げなければならない、五割から六割に上げるということになりますと、やはり相当膨大な支出が必要になってまいります。そこで、それを全部保険料のはうでまかなうということになりますと、七十幾つということになりますので、この際は、しばらくの間賞与からひとつある程度の保険料を出していただくというふうなことのほうが適当ではないか、こういうふうに判断をいたしたわけでございます。  料率だけでいきますと、五割から六割にする給付をまかないますためには、おそらく千分の七十五くらいになるという計算でこざいましたので、全部保険料ということよりは、毎月の標準報酬からいただくよりは賞与からいただくということのほうが、この際としては適当ではないか、こういうふうに判断をいたしまして提案をいたしたような次第でございます。
  124. 川俣健二郎

    川俣委員 もう少し聞かしてもらいたいのですが、やはりいまの大臣の話を聞いてみると、ボーナスからも取るということは、もうさいふに金が入ったら、必ずどこかから取るというふうな考え方にしか聞こえないんだ。あるいは千分の七十五にすると響きが悪いからボーナスのほうからも取る、こういう考え方なのか。私はこれから厚生行政に取り組むまだ若手なんで、大臣のような造詣の深い、円熟した、厚生行政の神さま的な人が、保険料を取ろうとする、国民から見た場合、おまえ金が入ったんだからよこせと、あらゆる口から取っていく、一本のところから取ったら目立つからということなのか、もう少し、事務当局からでもいいが、発想したあれを聞かしてください。
  125. 北川力夫

    北川(力)政府委員 私もまだ円熟はしておりませんので、十分な答弁はできませんが、考えましたところは大体次のようなところでございます。  いま大臣からお答え申し上げましたように、千分の七十五という料率を設定して初めて財政の健全化がはかれるというのが今度の給付改善に伴う財源手当てでございます。ただ、千分の七十三から七十五までというのは、いかにもやはり急激な負担増でございますし、また被保険者の所得の状況もバラエティーがあるわけでございます。したがって財政安定という見地から暫定的な措置として、一つのやむを得ない措置としてボーナスから保険料を取るということになりますと、そこにはそれなりのくふうが要ると思うわけです。そのくふうとして千分の二に相当する分を標準報酬五万円以下の方からはちょうだいをしないということで、比較的中高位の所得のある方から暫定的な措置としてこれを徴収をする、そういうふうなことをいたしまして、なおかつ、また本体になる、保険料の基礎になっております標準報酬も頭打ちがございますから、そういう意味でボーナス保険料というものをいただく場合にも五十万円で頭を打つ、そういうふうないろいろな、そこには私どもなりの粒々辛苦のファクターをつけ加えまして今回の制度を仕組んだような次第でございます。  いろいろ御批判もあろうかと存じますけれども、そういった給付改善に伴う手当てとしての、また財政安定のための暫定的な措置としてのものでございまして、私どもはいま大臣から申し上げましたように、これが最善の策であるというようには必ずしも考えておりませんが、しかし、こういうことをやることによって被保険者相互間の負担のできるだけの均衡をはかりたい、これが今回これを考えました本旨でございますので、そのように御理解願えれば幸いに存じます。
  126. 川俣健二郎

    川俣委員 辛苦したあれを聞かしてもらったけれども、そうすると厚生省考え方をずっと聞いてみますと、問題は財源がどこかにないかということだけでしょう。ボーナスから取るのだというのは一時的なものであって、これからずっと取っていいんだという学説的なものもあるわけじゃないんだ、そういうことですね。あるいはこっちのほうは少なくとも目立たないから——その辺は聞かしてもらわないと……。厚生省の根性をここでただしておきたい。
  127. 北川力夫

    北川(力)政府委員 私どもは決して目立たないようにこっそり取るとか、そういう気持ちは毛頭ございません。また、未来永劫こういったものを取らなければならないということも、現在の健康保険制度というものをじっくり考えてみますと、これが一番いい仕組みであるかどうかはわかりません。したがって、法文上も明らかなように暫定的な措置、「当分ノ間」というふうに書いてあります。したがって、こういうことは決して恒久的な措置であるとは考えておりませんし、いま申し上げましたような、いろいろあれこれ考えました末の粒々辛苦のものでございますので、その辺の事情をひとつ十分に御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  128. 川俣健二郎

    川俣委員 粒々辛苦のお話を承りましたけれども、私は私なりに解釈しますと、たいした根拠はないです。根拠もなければ理論づけもないし、学説もないし、こんなのはないのだ。そうだったら、どうせあれなら、千分の七十五をもらわないと間に合わないという提案のはうが、まだ財政対策としては正直だ、そういうように私は受け取った。  そこで大臣、最後に聞きますけれども、今回われわれは国をあげて健保に反対しておる。それはなぜかというと、国民の負担が多くなるからですよ。そしてそれが物価高にはね返ってくるから、何といったって賛成できるものではない。ただ、ことしはそれに賛成、同意するようなものをおみやげつきで出してきた。非常にその辺が——ほんとうに日本の国の厚生行政をやるというのなら、おみやげなんか要らないよ、はっきり言えば。これだけ足りないというようなことじゃ通りにくいから、こっちのほうは少しプラスしておいて、こっちのほうにはぐっと——そうじゃなくて、やはり医療基本法と医療保障という抜本問題を取り上げなければ、私は、やはりこの問題は解決しないのだと思います。     〔伊東委員長代理退席、委員長着席〕  だから厚生大臣考え方は、抜本改正はまだ時期的に間に合わなくて出せないのか、それともそれをやるにしても、今回この健保財政を確立してからでないと、医師会その他いろいろの関係があって、まずこれを確立してから抜本改正を出そうということなのか、その辺、最後に厚生大臣見解をお聞かせ願って、私の質問を終わります。
  129. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 御承知のようにわが国の保険制度はたくさんに分立いたしておりまして、負担の公平、給付の均衡、十分でないものがたくさんあるわけでございます。そこで、それを一挙に解決しようといたしますと、やはりそこにはそれぞれの沿革等がありまして、解決することはなかなか困難でございますので、徐々にそうした方向に持っていくためのワンステップとして、この際、政管健保においては、家族給付五割ということでは、よその保険制度との調整がとれない。そこでそういうふうな抜本的な改革へ向かっての一歩として給付の改善を提案をいたしたわけでございます。  したがって、この法案は単なる値上げ法案といったふうに川俣委員は仰せになるかもしれませんが、私は心から給付改善の法律だと考えているのです。三十数年来投げておかれた中小企業労働者の家族の給付、これを五割から六割にする、そしてこの法案が通ったら六割から七割にしましよう、こう申し上げておるわけでございます。そういうふうに給付の向上、そういう方向に向かって足並みをそろえるような努力をし、そうして基本的なところの抜本改正というものに手がけるようにしなければならぬ、こういうふうに考えておるわけでございます。したがって今回の法律は、あるいは御不満な点もたくさんあろうと思いますが、三十数年来投げておかれたこの家族の給付の向上あるいは高額医療保障、そういうふうなことの解決、そして根本的な解決への第一歩にしたい、こういう考えであることを、ひとつ評価していただきたいと思っておる次第でございます。
  130. 川俣健二郎

    川俣委員 大臣の話を聞いてみると、やはり給付改善すればするなりで医療供給体制が多くなる、必要になるのだと思います。皆さんおわかりであろう。家族が多くなって老人施設がよくなれば、うちにいるよりも老人ホームに行く、こういうことになるわけだ。そうなればやはり医療全体の問題を同時に考えていかなければ——それだけおつむのいい人が、お医者さん方ずらっと並んでいるのに、なぜいつまでも抜本改正が出ないのだろうか、こういう考え方をわれわれは底意に秘めて、やはりこのあれは、どうしても反対だという考え方なんですね。その辺、大臣、もう一度お願いします。
  131. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私は当初から申し上げておりますように、医療供給体制の整備をはかる、これはもう基本だと思います。保険は医療にかかった場合の経済負担の問題の法律であります。  そこで、根本的に医療供給体制を整備する、これは今日まで——実は昨年もそうした関係法律を提案いたしたのでございますが、提案いたしましても国会の御審議もいただけず、さらにまた関係各方面の同意も得られないということでございますので、そういうふうな医療供給体制に対する根本的な法制はひとつ練り直しましょう、こういうことにいたしました。しかしながら経済負担の面から見ると、政管健保はあまりにも脆弱な内容である。そこでまずこの辺から手をつけて、そして逐次保険制度の抜本的な改革あるいは医療供給体制の確立、そういう方向に進んでいかなければならない、こういうふうに考えております。  しかし幸いに、医療供給体制については、昨年出しましたような、そういう抽象的な法制だけでは十分意味をなしませんので、その実態的な改革をはからなければならないということで、先般、社会保障長期計画懇談会というものを設けまして、まっ先に医療供給体制の具体的な措置について御検討を願いたい、こういうことにお願いをいたしておるわけでございますから、私どもは抜本的な改革なり、あるいは医療基本法というものを放棄しておる考えはございません。そういうふうな実態の向上、あるいは保険制度の向上、そういう問題の上に立って、川俣委員もお述べになりましたような基本的な医療基本法なり保険制度の抜本改革、こういうところに取り組んでいくようにいたしたい、こう考えております。
  132. 川俣健二郎

    川俣委員 終わります。
  133. 田川誠一

    田川委員長 田口一男君。
  134. 田口一男

    ○田口委員 私は、まず大臣に、いままでだいぶん長時間お疲れだと思うのですけれども、基本的といいますか、この健康保険法の改正をめぐって毎週週末に地元に帰って、話し合う機会を持っております。率直に言って、いま大臣から答えがあったように、五割が六割になった、高額医療を若干改善した、こういうことで前進面を評価する国民が全くいないとは私は言いません。よくなったじゃないかという国民がおることも事実です。しかし、言っておるように、今度の健康保険法の改正によって、もう将来健康保険の赤字問題ということで頭を悩ますようなことは、これですっぱり根が断ち切れたんだ、こういった期待を実は持っていない。一方では改善は認めるけれども、はたしてこれでいって政管健保はいつの日か、また赤字になるのではないか、こういう不安を持っておることも事実なんですね。  さらにまた、私は政管健保の職場のそれぞれの人々や、健保組合のそれぞれの関係者にも何回となく会っておるのですが、こういう意見もあるのです。  これは部分的な意見として受けとめてもらいたくないのですが、この高額医療、三万円以上を見てもらえるようになった、たいへんありがたい。しかし、ありがたいけれども、差額ベッドの問題であるとか付き添いの問題であるとか、そういうことを解決してもらわない限りは、この際五割が六割になった、七割になったにしても、あまりありがたいことはない。むしろ差額ベッド、付き添いの問題について、はっきりした答えを出してもらえないかという人もあるわけです。  ですから、それぞれ言う立場、経験の違いによって意見の違いは当然あるだろうと思うのですが、私は、健康保険法の改正をめぐっての国民の声というものを、限られた範囲で私なりにまとめてみると——えたいの知れぬ病気がふえてきておる。えたいの知れぬという言い方はおかしいのですけれども、これから生まれてくる子供にしても、ほんとうに五体満足にそろって生まれてくるんだろうか、こういうことに対する妊産婦の不安というものもたいへん強い。こういったことについて、いまここで何とか歯どめをかけてもらわないと、ちょっぴりの医療費の給付の改善ということでは、おさまらぬのじゃないかという不安があることも、大臣、これは十分知ってもらいたいと思うのです。  さらに、いままで言い古されてきたことなんですが、待ち時間三時間で、見てもらえるのは、たった三分か五分。最近は団地なんかに行ったら、夜は無医地区と同じなんです。日曜とか夜間とか、子供が引きつけたり急病になったという場合には、お医者さんをさがすのに、ほんとうに青息吐息でさがして回らなければならぬ、こういう問題をどうしてもらえるんだ。  さらに先ほどお話のあった看護婦不足をどうするか。またこれはあとでも申し上げるのですが、一回お医者さんに行くと馬に食わすほど薬をもらってきて処置に困るという、こういったようなもろもろの国民の声、そういったものに今回の政管健康保険の改正というものがはたしてこたえておるのかどうか、こたえようとする姿勢があるのかどうかといえば言い過ぎになりますけれども、そういったなまなましい声がいままで大臣の耳に届いておると思うのですが、この健康保険法の改正がそれらを切り開いていく端緒になるのかどうか、それを積極的に受けとめた改正案であると自信を持って言えるのか、まずその辺のことから、繰り返しになると思うのですが、大臣からもう一ぺんお聞かせをいただきたいと思うのです。
  135. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 田口委員がいまお述べになりましたような、もろもろの心配を国民がしておることは私も承知しております。差額ベッドの問題あるいは付き添いの問題、それから医療施設のサービスの問題、いろいろな問題の悩みを持っておることは私も十分承知をいたしておりますが、そうした問題も、できるだけ私は解決の方向に向かっていくべきだと思います。  しかし、何しろ現在中小企業に働いておる方々の家族の給付が、国民健康保険のほうでは七割になっておるのに、政管健保のほうは三十数年五割給付、奥さんや子供さんが病気になっても半分払わなければならぬという姿にあること、それからまたさらにガンやその他の病気で相当高額な自己負担を払わなければならないという姿、そういうふうな姿を考えてみますと、まずそこからひとつ手をつけてみたい。もちろんはかのほうは、あと回しという意味でもございません。あと回しという意味でもございませんが、並行して解決をしていかなければならぬ、こういうふうな考え方でございまして、国民医療について抱いておる心配、私はそれをはだに受けとめながら、前向きに並行的に解決をしていくように努力をしたいと思います。  しかしながら一挙にこの問題を解決しようというと、それはなかなかたいへんでございます。御承知のように国立、府県立病院等においてもいろいろな差額ベットを徴収しております。一級、二級のような病室、そのほかさらにどんな病室でも、三人が入っておれば必ず百円か二百円とる。私は一つも好ましいと思っておりません。早くやめさせたいのです。早くやめさせるべきだと思うのです、しかし市町村のほうの病院経営者に言わすと、財政が苦しい、財政が苦しい、こういうことでございます。  そこで私どもは、もちろんそういう問題についても一歩一歩解決の方向に進んでいかなければならぬとは思いますが、まずさしあたり政管健保における家族医療費の軽減をはかってあげる、私はやっぱりこれも一つの前進だと思うのです。何もかも一挙にと言われますと、これは手がつかないと思うのです。やはり手のつけられるところから解決して、そしてこれに並行してやっていこう。  したがって、私がいま特に力を入れておりますのは、医療供給体制の問題として、僻地の問題救急医療の問題たくさんあるわけでありますが、それを一歩一歩解決していく、こういうふうに考えておる次第でございまして、この法律だけで全部悩みが解決するなどとは私も考えておりません。こういう問題を解決しながら、ほかの問題も解決の手を伸ばしていく、こういうふうに考えておる次第でございます。
  136. 田口一男

    ○田口委員 いま私が一つの例としてあげた付き添い差額ベッド、こういうものについても、いま大臣から好ましぐない、ひとつ何とかしなければならぬというお答えをいただいたわけです。  そこで、やや事務的な話になると思うのですけれども、たしか昭和三十九年だったと思うのですけれども、保険局長の通達を、差額徴収の問題について都道府県に出しておるのですね。これを見ると、まあ三十九年と四十八年ですから約十年の開きがありますけれども、私はこの問題で、いまの大臣ことばじりをとらえるのじゃないですが、三十九年に出された保険局長の通達を見ると、はっきり言って差額徴収肯定論なんですね。日本における差額ベッドの伝統なんかをちょっぴり書いて、昭和十二年か十三年からある、いろいろとあの通達を読んだ限りでは、まあ口の悪い言い方をすれば、これは保険局長、開き直った言い方です。てまえたちが差額ベッドをやってくれというから認めているのじゃないか、何が悪い、だから病院において一〇%から二〇%ぐらい差額ベッドがあるのは当然だ、こういうように読める三十九年の保険局長通達というのがあるわけです。  あれから十年たった今日、先ほど私が申し上げたように差額ベッドに対する怨嗟の声というものが満ち満ちておる。こういう状態の中で、三十九年の保険局長通達というものがいまなお生きておるのかどうか。いま大臣がおっしゃられたように好ましくないということであれば——それは確かに一挙に何もかも解決できぬでしょう。いろいろな事情があると思いますが、少なくともこういう機会に差額ベッドに対する指導方針というものを、肯定論ではなしに否定をする立場で指導していかなければならぬのじゃないか。こういう点で、古証文を持ち出したようですが、三十九年の通達を今日の情勢と引き比べて、ひとつ撤回をするのかどうかということについてお答えをいただきたいと思います。
  137. 北川力夫

    北川(力)政府委員 三十九年の差額徴収についての通達は、ただいま御指摘のとおりのようなものでございますが、これは全体を通読をいたしますと、必ずしも差額徴収を全面的に肯定しているというようなものではないと私どもは思います。三十六年に国民皆保険が達成されまして、その後医療機関の整備等とも相まって急速に入院患者もふえてくるというような状態、また三十九年のこの通達を出しました時点で、かなりな差額徴収ベッドがあるというふうなことを踏まえた上で、皆保険体制後における差額徴収というものをどういうふうに考えるべきかということが、この通達の内容であったかと私は承知をいたしております。  この中におきましても、要するに一番重要なことは、患者が希望しないにもかかわらず無理無理差額徴収のベッドに収容されるということは、これはもう絶対に避けなければならないということを言っておりますと同時に、他面、また社会の中には差額を払っても入院をしたいというふうな人もある一面、現状においてはある、そういう意味で、ある一定のパーセンテージのものはあっても、それは全面的に否定すべきものではないのではないか、こういうことを言っておるものだと思います。  しかし、いまお話しのとおり、その後十年近い歳月が経過をいたしまして、その間の病床の伸びもございますが、また疾病構造の変化もございまして、現在非常にたくさんの入院希望患者もございますし、また現にたくさんの入院患者があるわけでございます。そういう中で、経営難等もございまして、最近の実情はただいま御指摘になっておりますとおり差額ベッドの問題がやや乱に走っておる、こういうことを私どももいろいろな機会を通じて、あるいは審議会等を通じて十分に承知をいたしております。  したがって、この三十九年の差額徴収に関する通達そのものについては、私どもはこれを否定するわけではございませんけれども、少なくともここに書かれておりますように全病床数の五分の一とかあるいは六分の一とか、そういう程度にとどめて、保険患者である限りは必ず希望をすれば保険ベッドに収容される、差額徴収なしに収容される、そういう状態がコンスタントに確保できるように、できるだけの努力をいたしたいというように思っておる次第でございます。  最近そういう問題もいろいろございますので、少なくとも私どもに一番身近な公立病院でありますとか、あるいは公的な病院でありますとか、そういうところにおいては、できるだけこの線までこの差額徴収というようなものは考慮するようにということを厳に申しておりまするが、なお、なかなかこういう問題は一挙に解決できる問題でもございませんし、また診療報酬等とからみ、あるいは公的な資金の導入等とのからみ、そういう問題もございますから、そういう問題をも十分考えながら現在の事態に合ったような指導を今後してまいる気持ちでございます。
  138. 田口一男

    ○田口委員 その問題について、私はいまここで三十九年通達を撤回しろ、今日の現状に合わないから、あの通達を否定しろと言っても、これは文書で否定をすることは、局長、そうむずかしいことじゃないと思うのです。しかし私は、それを文書で否定通達を出せとは言いません。むしろ、いまちょっとお話があったように、差額ベッドを取らなければ——一歩下がって言った場合ですね、差額料を徴収しなければやっていけないような今日の診療体系、まあ昔金持ちがのうのうとホテルのような部屋に入る、そういう続きがいまあるということじゃないと思うのですね。やはり病院の経営という面からいって、これは必要悪として差額ベッドを取っておる、私はそういうふうに見るわけです。  ですから一片の通達で、差額ベッドを一〇〇%解消するということは確かにむずかしい。当然に公的資金を導入するか、または診療報酬改定について、そういったことがなくなるような矛盾を是正しなければならぬ。いま考えられるのは、この二つしかないと思うのです。ですから、一方公的資金をどんどん導入しなさい、これは当然要求として私ども実態をとらえて、これからもやっていかなければならぬ。しかし、いまここで言っても、これは財政問題で水かけ論になりますから、そうすると残るところは、そういう差額徴収をしなくてもいいような診療報酬の体系にしていかなければいかぬ。  そうなってまいりますと、けさほどからの川俣委員の御質問もありましたが、この中医協というものの任務、中医協でこの問題について、ひとつきっぱりと答えを出してもらいたいという期待が病院関係者にも、支払い側、被保険者の側にもある。ここのところはわかるわけですね。ところが、先ほど局長の答弁にあったような、中医協がこういう状態になった一つのひっかかりとして、日本医師会スライド制云々ということがありましたけれども、まあ、ここでスライド制けしからぬとかどうとか言ったところで、これは武見会長、カエルのつらに水かもしれませんけれども、いやしくも国会の場で一つの意見として言った場合に、総額スライドということについては、依然として今日の矛盾を内包したままで医療費を増加させるということになってしまうのではないか。だから診療行為別に差額徴収をしなくてもいい。看護婦の正当な報酬が出せるように、こういった診療行為別にスライドしていくほうがいいのではないかという意見を持っておることは、これは一つの意見としてお聞きをいただきたいわけであります。  ですから、この中医協というものについて、先ほど相当時間をかけて川俣委員との間にやりとりがございましたけれども、もう一ぺん、ここで私はごく簡単な思考に戻ってお答えをいただきたいのですが、たてまえとしては医療保険というたてまえとして、法律に基づいた中医協、中央協議会というふうに言っておりますけれども中医協厚生大臣診療報酬などについて諮問をする。その答申がある。ことしは、これこれ上げようではないか。そのことによって、その年の一年間の総医療費というものが推計できるわけですね。単純な思考で言えばですよ。中医協医療費の値上げがきまる。それによって、ことしの保険による総医療費は一千億だと推計できる。この一千億をまかなうためには、保険の原則ですから労使折半、国の負担で保険料は幾らにしましょう。こういった数字に基づいて保険料を幾らに引き上げますから、ひとつ国会で審議をしてください。これが私はたてまえだと思うのです。  ところが、その一番根本である医療費はこれだけになりますよという中医協がパンクをしておるのですね。まあ大体これくらい上がるのじゃないですか。ですから財政再建ということも今度の改正案にはあると思うのですが、あるのでしょうが、どうも根っこのところがふわふわとしたままで保険料をこれだけ上げたい、大体のところ、こういうことになるのじゃないですかという言い方で提案をしておるのではないかと思うのですよ。ところが、変なたとえですが、中医協というところで、さんざん一ぱい飲む、それが特級酒飲んだか一級酒飲んだかわからぬなりに、まあまかしておけ、さいふはおれにまかしておけというような健保財政の審議のやり方だと思うのです。  ですから、中医協というものが一体いつめどがつくのか。そうでなければ、あとこれはお答えによって追及したいと思うのですよ。財政の問題について、ここで事こまかに審議をするたたき台というものが全くないじゃないですか、保険財政というたてまえからいって。その辺のところ、どういうふうにお考えですか。
  139. 北川力夫

    北川(力)政府委員 中医協におきましては、おっしゃるとおり中医協の設置法によりましても、主たる任務は適正な診療報酬の額を審議することがその第一でございます。そういう意味合いで、従来から中医協の場で診療報酬改定と申しますか、適正化と申しますか、そういった問題が審議をされておるわけであります。ただ、現在その中医協がパンクをしておるというお話がございましたが、かりにパンクをしていない状況でございましても、診療担当者といういわゆる医療費を受け取る側と、それから支払い側という医療費を払う側、労使双方並びに保険者とで構成されているわけでございますので、なかなか診療報酬改定というのは従来から相当な時間がかかっておるわけでございます。  そういったことで、従来からの例によりますと、前回改定が昨年の二月でございますし、その前はかなり前でございますから、いま一般にいわれておるような毎年一回スライド的な改定をするということではなくて、さらに両方で、診療報酬を受け取る側も払う側も相当複雑な利害関係が錯綜しておる中で論議を重ねた上での適正化ないしは改定ということが行なわれておる。     〔委員長退席、伊東委員長代理着席〕 でありますから、現在の時点で、しかも、いまお話にあった中医協が異常な状態にある中で、直ちに、今年度ないしは来年度の診療報酬改定が幾らになるかということは、私どもは軽々には予測はできません。しかし、これはいつかもお答え申し上げたかもしれませんけれども、ずっと最近数年間あるいは十年間の診療報酬改定というふうなものの実績、そういうトレンドをある程度伸ばしてみますと、それはそれなりに今後どの程度診療報酬改定というふうなものが行なわれるであろうかという推測は可能なのでございます。     〔伊東委員長代理退席、委員長着席〕 でございますから、中医協の場における論議は、もちろん今後できるだけ早い機会に、これが正常化されることを私ども期待をいたしておりまするし、そこで正規に正常化された状態論議をしていただく、結論を出していただく、それを受けて改定をする、そういうことになろうかと思いますけれども、一応切り離しましても、傾向値としての将来の、いわゆる保険財政に対する影響という面から見ての改定の幅がどのくらいのものになるであろうかということは、全く見当がつかないというようなものではないというふうに現在考えておるようなところであります。
  140. 田口一男

    ○田口委員 新聞なんかを見ると、いまの医療費の年々の自然増、それから傾向値といったものをちょいちょい発表しておりますから、大体の数字としては、これはいまおっしゃるように、たとえば自然増六%とか、四十七年が一二%であったから、ことし改定をやるとすれば一二%プラスアルファまたはベータがつくから、そういう大体の傾向値というものは、これはしろうとでもわかると思うのです。しかし、ほんとうに国民に経済負担をかけるということで、健保の問題が中心になっておるのですから、はっきりした数字、これを出すことはやはり提案者側の一つの責任だと思うのですね。しかし、それが幾ら厚生省でやきもきしても、中医協がああいう状態だから、しょうがないといえば、それまでであります。しかし、しょうがないということで国会の場で済まされないと思うのです。  前回同僚の村山議員があの不買問題にからんで、多少財政問題からはずれましたけれども相当追及をいたしました。先般もこれは冗談話のような話で、地元で言われたのですが、ああいうことをやられたら、私なんか売るものがありませんから、不買運動は幾ら言ったってないでしょうが、へたなことを言ったら————————————という冗談のような話をしておるわけですね。医師会に対してへたなことを言ったら、気に入らぬことを言ったら——人間なま身ですから、いつお医者さんにかかるかもわからないわけです。————————————という、冗談まじりのようなことまで、ちまたで言われておるわけですね。こういう状態、そういうふうな不安、たとえ冗談まじりにしろ、——————というようなことで疑惑を持っておるとすれば、はたして公正な審議というものが、発言できるのかどうか。  ですから、前回は村山委員が憲法問題で追及をいたしましたけれども、憲法第十九条、これは確かにそのとおり、良心の自由、言論の自由ははっきり規定しております。ただ憲法問題でいった場合、古い話なんですが、たしか昭和四十四、五年——四十五年でしたか、ある作家が「創価学会を斬る」というふうな本を出して、それで相当もめたことがあります。あのときの法制局の見解は、まあ憲法問題よりも民事問題でしょうといったような見解を出したことを議事録でちょっと見たのですが、ですから、今度あの中医協における社会化云々といったような発言でボイコットをする、不買運動を起こすといったことは、憲法問題ということは、もちろんこれははっきりしなければならぬけれども、民事問題ということで、主務官庁である厚生省が許可をしておる公益法人である日本医師会に対して、公益法人がそういうことをやってもいいのかどうか。民法七十一条にそういうことがはっきり書いてあるわけですね。不適当であれば取り消すことができる。これくらい強いことを打ち出してもいいのじゃないか。  ところが、これは失礼な言い方になるかもしれませんけれども政府のおえら方やそういった高官は、全部医師会のそういう方に脈をとられておる。へたなことを言ったら——————という心配があるんじゃないですか。だから強いこと出ないのじゃないか。気に入らぬやつがおるから中医協をボイコットする、気に入らぬことを言ったから、その者の属する会社の製品を買わない。これをもし厚生大臣が、いますぐ立場としてどうも言いにくい、好ましいことではないと知りながらも、どうも言いにくいということを何回か言われておりますけれども、いま、ちまたでは、お医者さんに対して、変なことを言ったら、何か———————————こういう心配、これが他の審議会、あらゆる審議会、協議会なんかの場に波及したら、一体言論の自由は保障されるのかどうか。事、医療の問題じゃないと思うのです。  ですから、この際、この中医協におけるああいった不買通達、言論を封殺するような、そういうようなことをあえて行なう公益法人を許可しておる主務官庁の厚生省は、そんなことをしちゃ許可を取り消すぞ、公益法人としてふさわしくないじゃないかというところまで私は出てもいいと思うのです。そのことによって、初めて中医協における真摯な意見というものが戦わされて、支払い側も言っているような、一年一回は上げてもしょうがないでしょう、約束をしておりますというのですから、そこで結論づけられたものをもって国会で保険財政というものを審議する、こういうことになると思うのですが、事は重大ですから、私は民法七十一条を持ち出しましたけれども、そういう点からもき然たる態度をとってもらわないと、幡随院長兵衛じゃないが、横紙破りのようなことを、これからどんどんやられる。それによって医療費はどんどん上がっていくということになりはしないかという不安につながるわけです。そこのところをひとつ大臣……。
  141. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 先ほどもお答えいたしたのでありますが、現在、中医協が混乱をして正常化しない状態にありますことは、私もまことに残念なことだと考えております。したがって、私も支払い側方々にもお目にかかりましたし、医師会側方々にもお目にかかりました。何とか事態を収拾し、そして、特に病院関係において待ち望んでおりまする診療報酬改定が正常な姿で、一日も早く実現されるようにこいねがっておるわけでございますが、なかなか事態収拾思うにまかせず今日に至っておりますのは、私も遺憾とするところであります。  そこで、私は、各側がいろいろなことを言うていることについて、私がみずからいろいろな批判がましいことを申し上げることは、こう言ったじゃないか、ああ言ったじゃないかというようなことを私がまた批判すると、かえってエスカレートし、また事態収拾の上に適当でないということで、私は常に答弁を差し控えさしていただきたい、こう申し上げておるわけでございますが、私は一般的に申し上げることは、言論の自由というものは、あくまでもこれは尊重されなければなりませんし、審議会なり委員会なりにおいて、それぞれ節度を持って、常識のある方々発言するわけでございますから、言論の自由というものは、あくまでも尊重していくような運営をしていかなければなりません。そして私もまた今後はこういうことが二度とあってはならない、こういう考え方事態の収拾に当たっていきたいと考えておるような次第でございます。
  142. 田口一男

    ○田口委員 まあこの問題は、いま言った相当微妙な問題ということは十分わかりますから、深く追及しませんけれども、ただ法律論的に言ったら、中医協の根拠法規第十五条にも書いてありますね。公益委員は国会の承認事項だ。国会で承認をした公益委員会長を気に食わぬからといってボイコットする、こういうことにもなるわけですよ。その辺のところは、ひとつ節度を持って、国民医療を預かるのですから、そういう態度で、早急に中医協の再開をし、明確な医療費の増高傾向ということをひとつ打ち出してもらう必要がある。このことを特に要望しておきたいと思います。  そこで今度は、さっき言った財政論議にまた戻りますが、この審議が始まってから、盛んに給付改善、給付改善ということをおっしゃられておるのですが、この数字を見た場合、そろばん勘定をしてみたいと思うのです。  この法律案参考資料の七のニページに、制度改正後の数字が出ておりますが、「四月実施」「満年度」とあって「四月実施」の数字を出していますが、今回の改正案によって、まず給付改善に要する費用というものが(1)から(2)、(3)、(4)、これの合計ですね。五割を六割にする、自己負担三万円の高額医療、こういったことを含めまして五百五十三億です。次に、保険料を引き上げる、標準報酬の上下限を改定するということによって、保険料収入としてふえる分が(5)、(6)、(7)、これの合計は九百七十一億ですね。単純なそろばん勘定です。  そうすると、給付改善だ、給付改善だと言っておるけれども、保険料収入と給付改善に要する費用を比べると、四百十八億おつりが来るのですよ、この限りでは。六割にしたのだから保険料を上げますよ、高額医療も見るから、ボーナスからも取りますよと宣伝をしながら、そろばんをはじけば四百十八億おつりが来るのですね。しかも三者三泣き的で今後の問題、今回の問題を含めて、国庫補助が一〇%で八百十一億。大ざっぱな勘定で、おつりが来て、四百億と国庫負担八百十一億、ざっと千二百億というものが浮くわけですね。  この千二百億というものについて、ひとついままでのこの委員会審議経過を私は整理しながら、もう一ぺん確かめたいのですが、いま局長のお話しになった、中医協かいまどうなっているか知りませんけれども、大体の傾向としては、上がって行くだろう、診療報酬改定しなければならぬだろう。それは一二%プラスアルファになるかもわからない。その改定財源に回すのか、こういう見方もあるのですね。ざっと千二百億という金は、診療報酬改定の財源に回してくれるのかなという淡い期待感を持っておるのは事実です。しかし、ずっとそろばんをしてみると、収支見込みは千百七十九億というのです、それに千二百億充てていったら、昭和四十八年に保険料を引き上げて、若干の給付改善をやって、収支プラスマイナス・ゼロ、こういう勘定になるわけですね。  そうすると、弾力条項にも関係してくるのですけれども、一二%プラスアルファ、まだわかっていない診療報酬改定という改定財源はどこから求めるのか。もうすぐに保険料を引き上げなければならぬじゃないか。自然増収とかいろいろありますけれども、そういった問題をこまかく計算をしまして、どうも改定財源というのは、すぐに保険料を引き上げなければならぬようになってくる、こう思うのです。  いま私が大ざっぱなそろばん勘定をいたしました千二百億という金は、繰り返して言いますけれども改定財源に充てるのか、プラスマイナス・ゼロということで収支の改善に持っていくのか。そこのところをはっきりしていただきたいと思います。
  143. 江間時彦

    ○江間政府委員 いま先生の御指摘になりました千二百億というのは、改正前の収支一切がっさいをあれいたしますと、大体において千二百億円、政管健保に赤字があった、ちょうどそれを埋め合わせるのにびたり合うわけでございます。  したがいまして、先生がおっしゃいます、今後もし医療費改定があるとすれば、どうなるのかということでございますが、御承知のように、毎年所得水準の上昇がございまして、過去の実績か見ますと、大体過去の平均的な状態では一六%ちょっとこえるぐらいの所得増がございます。したがいまして、標準報酬の最高限の改定がもし適当に行なわれるといたしますと、それだけわれわれのほうに増収になるわけでございますが、一七過去における診療報酬の伸びでございます、いわゆる医療費の伸びでございますが、これはもし医療費改定がない場合には大体において九%ぐらいの自然増になっておるかと思います。したがいまして理論的にはその差、すなわち六ないし七%ぐらいが診療報酬改定に振り向けられ得る財源かと、事務的に計算しますと、そういうことになります。
  144. 田口一男

    ○田口委員 いま言った自然増と、それから自然収入増、それから医療費の自然増、そういったもので大体六、七%は浮いてくる。それを医療費改定財源に回してもさっき言った一二プラスアルファというものの約半分くらいしかないわけですね。そうすると、その足らぬ分は結局保険料を引き上げなければならぬ。もう簡単明瞭に答えが出るわけですね。
  145. 江間時彦

    ○江間政府委員 私はその診療報酬改定の幅がどのようなものであるかということを申し上げる立場にはございませんが、ただ過去におきます実績は大体二年に一ぺんくらいの改定でございまして、そしてその改定というのが大体毎回一〇をこえるくらいの幅になっているものと存じます。したがいまして年率で見ますと、大体いま私が申し上げたような率の中にほぼおさまるのではないか。したがいまして、私ら事務的には先ほど申し上げたぐらいの改定幅でありますと、ほぼ長期的に政管健保の財政収支は安定するというふうに考えております。
  146. 田口一男

    ○田口委員 確かに過去の医療費改定は二年に一回ぐらい、そういう傾向をたどっておることはわかります。しかし中医協——また中医協を持ち出して、不安定な状態の中での結論を出せということですから無理な注文ですけれども、診療側がスライド制ということを強く固執をしておる。そうなってくると、大体計算をされておると思うのですけれども医師会が要求しておるようなああいう方式でのスライド制を全面的に採用した場合には、純然たる増が一体一年間で何%になるのか。そういうことからいけば、一二%として二年に一回ですから簡単にいえば六%ずつだ。ところが、スライド制になった場合には六%や一〇%でおさまるかどうか。そういう試算がもしあれば、やっておれば、ひとつ答えを出してほしいのです。
  147. 江間時彦

    ○江間政府委員 先刻来御説明申し上げておりますように、医療費改定は今後きめられることでございますし、またわれわれは財政対策といたしましては、改定が確定いたしましてから後に事後的な処理をいたしますので、いまそのような作業はいたしておりませんけれども、しかし先ほど来申し上げましたように、大体過去の趨勢と現在われわれが立てております見込みというのは、それほど大きく食い違っておりません。そこら辺のことは、まあ仮定の数字をつくればいかようにでも資料調整いたします。ただ念のため申し上げますと、なるほど医療費というものの中には、いろいろございますけれども、いわゆる医療費の中に占めます人件費、物件費の割合というものは十割ではございませんで、したがいまして、その改定率が直ちにわれわれの支出増にそのまま反映するというものではないわけでございます。そこら辺はいろんな仮定を設けますと、計算の方法はあるかと思います。大体そんなことでございます。
  148. 田口一男

    ○田口委員 そういった計算をやっていないというのですけれども、私は今回同時に提案をされておる厚生保険特別会計法の改正案を見ると、いずれ赤字になるだろう、これはちょっと乱暴な言い方ですが、いずれ赤字になるだろうという前提でやっておるんじゃないかという気がするのです。特別会計法のいまの仕組みでいけば、赤字が出れば、この厚生保険特別会計を担保にして金を借りるのだ、無制限とはいいませんけれども、ある程度の金は借りられる。ところが今度は第十八条ノ八、これは昔の法律の書き方で、かたかなで書いてありますから、なかなか理解しにくいのですが、改正の趣旨というのは、こういうことなんでしょう。  「保険料率ノ引上ニ拘ラズ引上ゲラレタル年度ニ於ケル健康勘定ノ歳計ニ不足ヲ生ズル虞アル場合ニ於テ一年内ニ保険料ヲ以テ其ノ償還ヲ為シ得ルコト明ナルトキハ」といういい方は、保険料を引き上げても赤字が出たら、一年以内に返せるめどがついたら金を借りろ、こういうことなんですね。いままではそういう規定は一年とかどうとかというタイムリミットはなかった。そうなってくると、この辺でがちっと下で押えて、赤字が出たってそう無制限に借金させませんよ。そうして一方では診療側はどれくらい金が出てくるのかわからぬ。  こうなってきた場合に、現行法の第十条を制定したときのいきさつを思い起こすのですが、赤字で支払い側がお医者さんに金が払えぬ、こういう状態があるために第十条をつくったのですから、さらに今度第十八条ノ八で、借金する者は一年以内に返しなさい、しかもそのかわり金額は前もって保険料の範囲内ですよ、一度引き上げたら。そうなってくると、政管健保という脆弱な財政基盤というものはがんじがらめにされてしまって、医療費はどんどん上がるわ、金は借りられぬわ、弾力条項はそこに生きてくるのでしょうけれども、これは政管健保にあまりにもむごい仕打ちを——財政再建ということをいいながら、ここで一挙におもしをかけてきておるんじゃないか。ですから特別会計法の第十八条ノ八を新設するこの辺の理由、それもいまの診療報酬の問題に関連をして、ひとつお答えをいただきたいのです。
  149. 江間時彦

    ○江間政府委員 いま先生が御指摘になりました点は、要するに政府管掌健康保険の財政的な構造が基本的に赤字を生むような形になっておる。それを今回の措置によりまして構造的に少なくとも当面安定できるように直した。それとの関連におきまして、過去の累積赤字はたな上げにする。そのかわり、それからあとにおきましては、もし構造的な要因によりまして赤字が出るようであれば弾力条項を発動するというものでございまして、少なくともわれわれが提案いたしております現在の財政構造は、当面は収支の安定が保てるというふうにわれわれは考えております。
  150. 田口一男

    ○田口委員 この特別会計法に関連して、もう一ぺんこれは大臣にひとつだめを押しておきたいのですけれども、現在の特別会計法の第十条をつくったいきさつは御存じだろうと思うのです。お医者さんが、保険の会計が赤字だから支払いが延期される、一方では赤字だから診療を制限するというようなことがかつてあったわけですね。そういうことを取り除くために第十条ということをあえて設けた。これは、十八条ノ八で借金に手かせ足かせをはめてしまうと、かつてのように保険会計が赤字になってからお医者さんに金が払えないということが万々起こらぬともこれは保証できぬわけですね。十八条ノ八がありますけれども、そういうことが絶対にないという保証をここではっきりさしてもらいたいし、私はむしろ第十八条ノ八ということを新設することによって、いよいよもって、さっき三者三泣きというようなことを強調されましたけれども、この政管健保にいわゆる独立採算性ということを強調する、それだけじゃないと思うのです。  どんどん赤字が出る体質を持っておるのですから、その赤字の出るのはお医者さんのせいだというふうに、今度はストレートに国民が思いがちですね。そんな法外な診療報酬をふっかけてくるから赤字になるんじゃないか。ただでさえ今日でも、お医者さんに対する国民の不信感というものが強いことは御承知だと思うのです。そういう不信感に、今度は財政面で赤字が出るのは医者のせいなんだと、結局医療を利用する国民医療を供給する医者との間にだんだんみぞを、このことによって広げてしまっていく、そういうきっかけにもなるんじゃないか。  ですから三千億の赤字をたな上げし、私は認めるわけじゃありませんけれども、こういった財政再建策というものを出してきたその善悪は別として、それに追い打ちをかけるような特別会計法十八条ノ八というのは、いまの医療に対する国民の不信、相互間の不信というものをより広げさせる、これに役立つばかりで何の益もない、こういう規定を設ける必要はどこにあるのか。私は財政という面だけではなくて、そういう国民医療に対するいまの混乱した状態、不信感がみなぎっておるような状態、これを解きほぐしていくのが私は厚生省の一つの義務だと思う。そういう面から、この特別会計法については再考する必要があるんじゃないか、このことを重ねて申し上げたいのですが、御見解をお伺いしたい。
  151. 北川力夫

    北川(力)政府委員 十八条ノ八の改正についてのお尋ねでございますけれども、ただいま医療保険部長からお答え申し上げたのが大体の大筋かと思います。この十八条ノ八で、確かに御指摘のとおり十条の規定にかかわらず今後はこのような仕組みでいくというふうなことを定めております。ただ今回の改正は、先ほどからの議論にもありましたように、従前からの赤字はたな上げをするということ、これは十八条ノ九に書いてあるわけです。それから今後は、いろいろ従来の経緯、実績等によって一〇%の国庫補助を入れて財政基盤を補強をしていく、また財政のそのつどの変動には弾力性規定でもって対応していく、こういうたてまえでございますから、そういう意味合いでは政管健保の再発足という、そういう時点において今後財政運営の基本を明らかにするという意味合いにおきましては、一つのけじめをつける意味において、第十八条ノ八という規定は私どもは意義のある規定だと思います。  ただ、いま御指摘のありましたこの規定が入ることによって、将来診療報酬の支払い遅延が起こるのではないか、こういうことでございますけれども、今後の仕組みが、医療費改定とか医療内容の充実の場合には、いわゆる調整規定によって、あるいはこれにリンクした国庫補助によってまかなっていくということでございますので、その限りにおいては当分の間、相当長期間財政は単年度でもって安定をしていくのではないか、私どもはこのように考えております。また実際上の、支払い上の資金繰りの関係におきましても、まず従来の経験に徴しましても、十条の規定がここにおいて規定をされておるために、年度をこえます場合に支払い遅延を生ずるというふうなことは、実際問題としては起こりにくいんじゃないか、こういうことが現在の私どもの大体の考え方でございます。  これを厳密に、万々、将来、未来永劫そういうことがないかどうかといわれますと、その辺私どもも、非常に変動要因が多いものでございますから、そこまでのことは申し上げかねますけれども、過去十年間近く非常に財政負担に苦しんでまいりました政管健保の運営について、もちろんそこには十条の規定に基づく長期借り入れ金もあるわけでございますが、そういうものを使わなくても、今後新しい仕組みが円滑に動いていけば、こういう規定が入ることによる支払い遅延というものは、そんなに心配することはないんじゃないか、まずそういう心配はないのではないかと、このように考えているような次第でございます。
  152. 大原亨

    大原委員 ちょっと関連して。  関連ですから簡潔に申し上げるんですが、いま田口委員指摘をされました点は、いままでの議論の中では初めての議論です。第十八条ノ八の改正は、これは大蔵省の要求でやったんだと思うのですね。大蔵省が歯どめをかけたんだと思うのですね。この中身の議論についてはいままでずっと村山あるいは山本、各委員からもずっと質問があった議論です。そこで、その質疑応答を進じていま田口委員質問指摘をいたしましたように、たとえば人事院勧告ということが、いまのような物価や生活水準が上昇しているときには、あらかじめ想定されているときには予備費の中へ入れるわけです。予備費の中で、最近は、五%ないし六%程度は財源を含めて当初予算を組むわけです。ここの財政制度改正後の、対策による財政影響の収支の表については、これは保険財政の中の予備費というのは、インフルエンザその他突発的な事項が起こったときを予想しているんだということであって、診療報酬値上げとか給付の改善について予測しているものではない、こういう議論は今日まであったわけです。  そこで私どもは、社会党は診療報酬の値上げということは、全く否定したことはないんです。われわれは、これは、こんなに物価が上がり生活水準が上昇しておるときに、病院や診療所における医療従事者、医師、その人の生活やあるいは資材費その他を含めても、これは当然予想しているんです。これは中医協においても合意を得ているんです。ただし、スライドの中身については、自動スライドか政策スライドか、自動スライドの場合には、物価に自動スライドするのか人件費その他に自動スライドするのかという議論があるわけです。そこで、これは診療報酬の値上げというものは予想しているわけですから、昭和四十七年の二月に診療報酬改定を御承知のようにやりまして、二回値上げの時期を過ぎておるわけですから、これは当然あるわけです。  であるとするならば、山本委員等が指摘をされました春闘のアップ率その他の影響を含めて考えてみても、この資料の二ページにある、制度改正後の、1、は収支見込みで、2、は対策による財政的な影響ですけれども、その資料のバランスというものは明らかにくずれるのであります。というのは、もし、一二%に想定をするという議論がありましたが、そうすると、これは政府の答弁をまつまでもなく、九百六十億円以上医療費がふくらんでくるわけです、支出の増と収入の増減等を計算してみても。これをどういうふうにまかなっていくかという、単純に言うならば、議論をしているわけですね。それに対しまして、収入についての——法律案をつくりました当時から現在は変わってきた、あるいは議論をしている今日の情勢の中における収支のバランスというものについて、もう一回一つ一つを見直して、これでだいじょうぶか、一、二年でパンクするのじゃないか、この法律の十八条ノ八の改正でワクがかかっておるけれども、これがパンクして事実上はできなくなるのではないか。そうすれば、保険料値上げということを必然的にしなければならないというようなことが一両年のうちに来るのではないかということを簡単に言えば、議論しておるわけです。それに対して、私は、もう少し客観的に今日の段階において推定し得る数字をもって的確に答えてもらいたいと思うのです。その点を私はいまの田口質問関係いたしまして質問をして、その答えをいただきたい。  つまり、この背景はどういうことかというと、診療報酬の引き上げは当然予想し得る事態であるが、これは標準報酬が上がっておるわけですから、あるいは上限の引き上げを提案しておるわけですから、自然に増収する分があるわけです。それでまかなって、家族の給付の六割とか、あるいはいろいろな給付の改善を少しずつ分べん費その他についてやっておりますが、そういうものについては保険料率の改定でやるのが普通の原則であって、これは財政安定で赤字基調の克服ではないか。それがパンクするような状況において、こういう条文があるということは、これは、私どもが現在の予測し得るだけの資料をもって議論しておっても、責任ある審議とはいえないのではないか。もう少し的確な、この問題についての計数をあげての答弁を政府はすべきである、こう思いますが、いかがでしょう。
  153. 江間時彦

    ○江間政府委員 大原先生指摘になりましたように、もし一二%というような診療報酬改定があったといたしまして、四十八年度に関する限りは、いわゆるたな上げということになるわけでございますから、そういうことはないわけでございまして、問題は四十九年度からあとの話になると思うわけであります。  先ほど来申し上げておりますように、われわれが現在考えております財政構造は、過去の所得増が大体従来どおりございまして、診療報酬改定も大体二年に一ぺんでございます。そのような状況をいろいろ考えますと、今後大体六ないし七%くらいの診療報酬改定があったとしても、財政構造は安定して、当分の間はこのまま推移できるというふうに、われわれは考えているわけでございます。
  154. 大原亨

    大原委員 だから、その計数上の、私が指摘した計数上裏づけられた答弁をいまやすべきではな  いのか。
  155. 江間時彦

    ○江間政府委員 先ほど来申し上げておりますように、大体において過去の所得の平均的な状態といいますのは、われわれの収入増として考えます場合は一六%くらいのものが予想できるわけでございます。それに対しまして、いわゆる医療費改定のない場合の、医寮費の支出の自然増といおれますものは、大体において九%くらいであるかと思われます。したがいまして、その差額の七%くらいまでは診療報酬改定があったとしても、財政構造が安定的に推移できるだろうということを申し上げておるわけでございます。
  156. 大原亨

    大原委員 だから、それは山本委員やその他の指摘したように、政府はこの資料をつくるときには、保険料の自然増収は一二、三%、こういう想定をしたわけですよ。しかし、これをつくった後に春闘の問題があって、二〇%ないし二一%も賃金が上昇しておるけれども、上を二十万円で押えられるから、そこで、実際上は標準報酬を基礎とした保険料収入に影響するところは一六、七%だろうと言ったわけです。  これは、いままでのわれわれの常識からいうならば、政府資料が示すように、かなり上がっているわけですよ。そういう収入増をも見込みながら、実際には毎年一回診療報酬を値上げをしなければいかぬでしょう、客観的には。それが今回、言うならば一二%程度のことを考えて議論するのは当然じゃないですか。一二%とすれば九百六十億円、約一千億円の、この表以外の支出増があるわけですから、そういう点はぴしっと計数整理をしてみて、この資料においてどういう点を是正するのだ、予測し得る診療報酬の値上げに対しては、平年度はどうなって、来年度からどうなるのだ。本年度の赤字のたな上げについては、もう議論が済んでおるわけだ。しかし、来年度の問題について、十八条ノ八の改正でワクをかけておるのだという議論を田口委員提起したわけです。  ですから、平年度のベースにおいて、そういう問題の波及はいろいろなところに——まず数字がありますよ。それは三、四十億円単位であるわけですけれども、それをぴしっとして、この表をつくり直してごらんなさい。いろいろな場合を想定してやってごらんなさい。そうしたならば、われわれの試算によりますと、少なくとも数百億円の赤字が出てまいりますよ。これは弾力条項を一年か一年半ぐらいで吹っ飛ばすような問題ではありませんか。本年度四十八年は、それで過ぎるわけです。しかし、四十九年は入っていくわけですから、そういう赤字基調が変わらない状況において、この健康保険法の改正案を議論しても、あまりにも無原則、無責任議論ではないか、こういうことを言っておるわけですから、この資料を、いろいろいままで議論したやつをもとにして修正してごらんなさい。それを基礎にして、もう少しこの赤字基調が、ほんとうに政府の言うように数年続いて財政が安定して、抜本改正に取り組めるのか。しかしその問題抜本改正、全体の医療給付面の改正については、五カ年計画の議論をしておるけれども、そういう問題についてはまだ議論があるのですよ。原則的なことを私は言いましたけれども、これはあとつけ加えて言いません。そういう資料を出しなさい。いかがですか。
  157. 江間時彦

    ○江間政府委員 大原先生のおっしゃる点は、私のほうでも繰り返しになるわけでございますが、要するに、標準報酬の最高限の改定が適切に行なわれるならば、われわれの保険料財源の収入増として一六%ぐらいのものは予想できるわけでございます。     〔委員長退席、塩谷委員長代理着席〕 それに対して、いわゆる医療費の支出増といいますのは、医療費改定の行なわれない場合には九%ぐらいが過去の例になっております。したがいまして、大体診療報酬の年々の改定幅というのは六ないし七%ぐらいの間であれば、財政は長期的に安定するということを申し上げているわけでございます。そこら辺のところは予見の設定のしかたによりまして、いろいろな計算ができるわけでございまして、予見を設定していただきまして資料を調製することはいたします。
  158. 田口一男

    ○田口委員 特別会計法の問題からいま出たのですが、ちょっと今度は次元を落としまして、厚生保険特別会計で、実は各地方庁の職員がそれぞれ仕事をやっているわけですね。そこで、いまじゃなくていいのですが、会計別定員というのがきまっていると思うのです、厚生保険特別会計が何人、船員保険が何人。これをあとで資料を出してもらいたいのですが、ある社会保険事務所の一例を私は申し上げます。その管内には被保険者がざっと九千五百人、毎月の請求件数が、被保険者の数とレセプトの数とはほぼ一緒ですね。その九千近い請求件数というものを私が調べたその社会保険事務所では、厚生保険特別会計で六人、船員保険で四名、計十名、この中には所長も入っております。十名でやっておるわけですね。たいへんな事務量なんですね。  これは皆さんのほうは御承知だと思うのですが、そこへ持ってきて、これはいつか私が関連で申し上げたと思うのですが、かりに高額医療の問題が、この改正案どおりやられたとしたら、これまた社会保険事務所でチェックをしなければならぬ。膨大な事務量、事業量になると思うのです。ただでさえ忙しいところに、こういった新しい事業量というものが、これから社会保険事務所に付与されるかもわからない。そういったとぎに定員法だ何だかんだというしちめんどうくさいことがあると思うのですが、一体これをそのまま放置しておいて、仕事だけやれということになっておるのか。スムーズに事業をやっていくために、ぜひとも人員増ということについて、この際考えてもらいたい。  私は、これを強調する一つの具体的な例として申し上げたいのですが、先般も言ったと思うのですけれども、高額医療の問題で、話がちょっと飛ぶようなんですけれども、現物給付をやれということを言いましたね。ところが、何だかんだ理由があってできない。まだ制度が発足しておりませんが、ある組合員の奥さんが、ガンか何かだったと思うのですが、一カ月五十万以上かかる。金がない。親類じゅう借りに行ったけれども、どうも金が集まらぬわけですよ。幸いにといえばなんですが、たんぼを持っておったので、それを売って当座の医療費に全部つぎ込んだ。そうしたら、たんぽを売った金に税金がかかったというのですね。税金を取られるというのです。なおってもともとでしょう。たんぼを売って全額医療費にほうり込んで、まだ税金を取られている。  こういうたいへんなまなましい声を聞いたのですが、かりにこの制度が発足した場合でも、前回申し上げたように三月ぐらいかかるという現場相当者の意見です。三月でも私はおそいと思うのです、費用弁償として。そうなってくると、事務をスムーズにやるためには、一つの次善の策として、こういった地方庁の社会保険事務所関係の職員というのを、定員法だ何だかんだというかもしれないけれども、事国民生活に関係するのですから、この辺のところは別ワクでやるべきではないか。そういう点について、ひとつこの際はっきりした答えをいただきたいと思います。
  159. 江間時彦

    ○江間政府委員 先生のおっしゃいますように、われわれの持っております社会保険事務所というのは膨大な事務量をかかえておりまして、現在の定員でも必ずしも十分でないというふうに思っております。われわれ毎年事務の合理化をはかる一方で、増員の要求をしておるわけであります。いま御指摘の高額医療費の事務、これまたたいへんでございまして、非常に大ざっぱに言いますと、大体平年度で五十万件近いものが出るようになるかと予測しているわけでございます。これに対しまして四十八年度におきましては百八十四名の増員をいたしております。できるだけ事務の合理化をはかり、十分な定員を確保したいというふうに思っております。
  160. 田口一男

    ○田口委員 四十八年度百八十四名ですか。
  161. 江間時彦

    ○江間政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  162. 田口一男

    ○田口委員 その増員の中身でしょうけれども、私が調べたところでは四つ事務所があるのですけれども、四つの事務所全体で一名しかふやされていないのですね。幾ら事務の合理化をはかるといったって、これじゃふやしたことにならぬじゃないですか。ですから、この問題についてもっと前向きで検討願いたい。  同時に、これは厚生省にとっていやな話かもしれませんが、この厚生保険特別会計、船員、年金もそうなんですが、いうところの自治法附則八条職員がほとんどですね。こういう機会ですから、この際私は確かめたいのですが、先月の三十一日に地方行政委員会で江崎国務大臣が、またその前の本会議でわが党の小川議員が質問をした際に、総理からもある程度の答えをもらっておるのですけれども、「当分の間」といわれる附則八条職員の身分移管の問題ですが、これを、自治大臣が前向きの答弁をされておりますけれども厚生大臣として、この附則八条職員の身分移管について、従来何回となく議論をされておるのですけれども、ここでその考え方を検討とかどうとかいうことではなくて、ある程度のめどを区切った方針というものを出していただきたいと思います。
  163. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 社会保険関係の事務に従事しておる職員の、地方事務官の問題でございますが、当該県につとめております地方公務員との間に給与の差が激しいということが一つの大きな要因となりまして、地方の吏員に移したらどうか、こういう意見のあることは私も十分承知いたしております。ところで、こうした人々が従事しておりまする仕事は、こういう特別会計の仕事で国の完全なる事務として運営されておるわけでございまして、こうした事務について地方吏員に移管しておるという例はよそにないわけでございます。  そこで、この問題は、御承知かと思いますが、国の事務、地方の事務との分配、国の機関地方自治との関係、そういう関係で非常に解決をしなければならないむずかしい要素がたくさんあると実は私は考えておるのでございます。  そういうふうなことから、労働、厚生、運輸三大臣が自治大臣と協定をいたした趣旨も、文書の交換をいたしました趣旨も私は理解いたしておりますので、適当なときに——いつまでも決着をつけないでおくことは、私は適当でないと思っているのです。何とかできまするならば、来年度あたりを目途として国の機関地方機関との権限の分配の問題、それから国の特別会計という事務をどういうふうに遂行したほうがいいのか、はたしてそれが地方吏員に移管してその部分は行ない得るのかどうか、そういうふうな非常に複雑な要素を持っておるのです。  そういうわけで、私はどういうふうにするのが一番いいのか。労働組合の諸君は、給与が非常に違うということから、これは実は始まっておる問題で、私もよく承知しておるのですが、どういう形でいいのか、まだいまのところ、私もはっきりした結論を得ていない状態でございますが、来年度あたりをめどとして何とか決着をつけなければならぬのではないか、こういうふうに考える次第でございます。
  164. 田口一男

    ○田口委員 じゃ、その問題はその程度できょうは終わりますけれども、さらに財政の問題にまた戻りたいんですが、先ほど大原先生から相当数字をあげて言われました。いまの議論をずっと続けていくと、医療保険という保険そのものには私は異論があるのですが、いまの保険というたてまえからいったら、すべてイコールで結ばなければならぬわけですね。総医療とそれから収入と、ある程度のタイムラグがあるにしても、総医療に対してこちらを上げていかなければならない。いまのような状態でいけば、まあ五カ年計画云々ということもあるのですけれども、極端な言い方をすれば、この等式を維持していくためには、際限なくこちらも上がればこちらも上がる、こういうことになっていくじゃないか、保険形式ということでいけば。不等式ならいいんですよ。ところが、保険形式でいくんなら、いつも等式、イコールでいかなければならぬ。こちらは際限なく上がっていく、それはそれなりの理由がある。  そういう場合に、ここでひとつ、際限なく上がっていくといういまの供給体制そのものに一挙にメスを入れることは、むずかしいという大臣のお答えですけれども、いまこの供給体制というものにメスを入れなければ、将来何兆円という医療費というものになっていく。それは全部国民が負担しなければならぬ。これはとんでもないことになると思うのですね。ですから私は冒頭に言った、いろいろな医療に対する不安がある、それにこたえる医療供給体制というものが十分でない、こういう点について、今度は供給体制の一つとして私は二つに分けてしぼって質問をしたいのです。  まず一つは、自治体病院です。さっき川俣委員とのやりとりがありましたけれども、もう一ぺん繰り返すつもりはありませんけれども、ことし自治体病院は大体一千億程度の赤字が出るだろうといわれているのですね。二億八千八百万が公的病院に対する財政再建措置、こういうことも聞いておるのですが、それには自治体病院が入ってない。これのやりとりはさっき聞きました。ところが、それに対して、どうも厚生省側が言っておることに、だんだん矛盾を感じておりはしませんかと言いたいのです。  日赤であるとか、それから厚生連であるとか、今度の対象は北海道の社会事業病院もそうなんですけれども、ここはたいへんだから二億八千万出しましょう。じゃ、自治体の赤字はどうなんですかと言ったら、特別交付税等もあるじゃないですか。確かに特別交付税というものにルール計算の方式があることは知っておるのですが、四月の六日参議院で、和田静夫議員が確認をしておるのですが、地方交付税なり特別交付金というものは、地方固有の財源であるということを確認しておるでしょう。特交なり普通交付税は地方固有の財源だと。そういう中から、今日の医療問題で、これは医務局長がお答えになったように、看護婦問題というのは、これはやかましいから、看護婦の養成所の運営費については、これは見ましょうと言っておるのですね。これは言われたでしょう。  そうなってくると公的医療機関、自治体病院は一応除いて、二億八千万の財政援助をしましょう、しかし今日のいろいろな事情の中で、自治体が持っておる看護婦養成所の運営については、これは国がめんどうを見ましょう、出すということを言ってくれた。ただ単に、親元がしっかりしておるから、自治体の一千億の赤字は何とかそちらで見てもらいたい、親元のさだかでないものは、こちらで出しますよという論理は、ちょっと首尾一貫してこないんじゃないか。  同時に今月の四日、五日に自治体病院のシンポジウムがあって、そのときも医務局長はお答えしたんですが、これは所管、セクト云々というわけじゃありませんが、厚生省という役所の機能からいっても、公的医療機関としての自治体病院も、厚生省ががちっと握らぬことには、赤字になったって、それはそちらのお役所で見てもらいなさい、公的医療機関のうちで親元のはっきりしないものは、私のほうでめんどうを見ますということで、大臣がお答えになったように、将来その地域の基幹的な機能を持つ自治体病院というものになかなかなっていかないんじゃないか。  だから、供給体制ということにひとつメスを入れていく第一段階として、いま社会問題化されておる自治体病院の経営悪化、それを交付税なり特交でめんどうを見ておるのだからというので見のがすのではなくて、看護婦養成所に金を出すまで踏み切ったんですから、それと同じ考え方で、この際見るべきじゃないか、こう思うんですが、いかがなものでしょう。
  165. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 確かに和田委員の御質問の機会に、いわゆる交付税の性格論、それから特段に、ただいま看護婦の養成の問題につきましては、地方自治体は先ほどの二億八千万円と同じように、私立、いわゆる地方公共団体を除いて看護婦養成所には運営費補助が出ておるわけです。あのときの御質問に検討をお答えしたのは、看護婦養成について、地方自治体の関係の看護婦養成にも補助金を出すことを検討いたしたいということを申し上げたのでございます。その根拠と申しますか、いわゆる地方公営企業法、先生承知のようにあるわけでございます。その中に、要するに政令で定める看護婦養成あるいは公衆衛生活動、それから救急医療、僻地活動等については、それぞれ公営企業法の政令によって、八条の五その他で「病院事業」という中に明確にうたってございます。  したがいまして、このような事業そのものについて、看護婦の養成等については特段考慮いたしたいと思いますが、基本的には公営企業法の十七条の二の「当該地方公営企業の経営に伴う収入をもって充てなければならない。」さっき申し上げたような特定の事業以外は「当該地方公営企業の経営に伴う収入をもって充てなければならない。」と明確にしてございますので、いわゆる一般的な意味の赤字をめんどうを見ろというようなことまで踏み切ることは、この公営企業法のたてまえ論との問題を私は意識しますので、政令でもって定めた看護婦の養成であるとか、あるいは公衆衛生活動は現実に補助金も出ておりますけれども、その他救急、僻地等について、やはり基本的には検討に値する問題である、これは一般会計その他で負担してもよろしいといって、これが市町村財政なり県財政のほうの規定からいっても、一つの負担の事実としてあらわれておるのでございますから、私は当面いままでのお答えの中では、一番重要な医療供給の基本になります看護婦の養成事業については、ぜひとも他の地方自治体立の看護婦養成所についても、これを補助金の対象にするように検討いたしたい、こういうふうにお答えしているわけでございます。
  166. 田口一男

    ○田口委員 確かに自治体病院を規制しておる地方公営企業法、それで縛られておることは承知をしておるのですけれども、そういう制約の中で看護婦養成所にはめんどうを見なければならぬとい叶う、そこまで踏み切ったことは、私は敬意を表します。私の質問の趣旨というのは、際限なくこれから上がっていくであろう医療費というものを、国民経済という立場から抑制すると言っちゃ、また変にとられますけれども国民経済の立場から、お医者さんに金払ったって、これはプラスじゃないわけですね。大きい目で見ればマイナスですよ。だから、そのマイナス要因を少なくしていくためには、やはり医療供給体制というものをしっかりしなければならぬ。しかし、大臣もいろいろ言われたように、医師会だ何だかんだということで、まあ鴨川の水と「さいころ」みたいなものですから、思うにまかせぬことはわかります。が、思うにまかせるところは国立病院と公的、しかも自治体というのは、ある程度一本しんが通っていけるだろう。——きょうは自治省呼んでいませんから何ですが、結局、さっき言った差額ベッドの問題でも、自治体病院、相当差額を取っております。取っておる原因は、地方公営企業法に、たしか昭和三十九年か四十年だったと思うのですが、財務規定を適用したために、その病院は病院で赤字を出さぬようにしろということが差額ベッドなんかを生んだ一つの原因である。  ですから、その辺のところを、きょうは自治省いないのですが、医療供給体制を充実をしていくためには、まず自治体病院について、そういう制約を取っ払うように努力をしてもらって、看護婦養成所まで金を出すように、いま検討しているのだから、百尺竿頭一歩を進めて、一千億の赤字に対しては厚生省、ひとつ国民医療を預かる立場から見ようじゃないか、これぐらいはひとつ踏み切ってもらわぬと——そういう立場でひとつ判断をしてもらいたい、こう言っておるわけです。
  167. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先生の御趣旨を最も端的に受け取りますと、要するに国立なり公的ということの使命の中に、先ほどこの政令でも明らかなように公衆衛生活動的な事業、いわゆる予防活動的な事業というものが、事実一般会計で負担してもよろしい、すべきであるという性格で出てきております。そういうような、うたわれておる機能というものを今後健康の、いわゆる医療とわれわれの健康という問題を基本的に考えた場合には、先生の御指摘のように医療を受ける状態の、健康破綻を招かないように、やっぱり予防対策あるいは健康をさらにつくっていく対策というような方向に、公的病院なりあるいは公的医療機関の機能、あるいは患者に対する教育活動、こういうものを強化しろという御趣旨に受け取りますならば、われわれとしては当然国公立等を中心に、この問題の活動は積極的に協力しなければならない、あるいはみずから積極的にやる必要があるというふうに考えるわけでございます。
  168. 田口一男

    ○田口委員 私が申し上げたのは、そういう趣旨も含めて、当面の一千億になんなんとする赤字、これによってまたつぶれる病院も、現に私の地元でも二つぐらいこの四月にやめようかという病院がある。町立ですけれども、財政の問題とお医者さんがおらぬ。これをほっておいたら、四十九年になれば、もっともっと自治体病院というのは減っていくと思うのです。ですから、いま局長おっしゃったように、そういう機能を持つ公的の病院だけ、当面の財政基盤というものを充実させるために、法令その他の制約がいまあるのですが、それを取っ払うような方向でひとつ検討してもらいたい、こういう趣旨なんですね。  そこで公衆衛生の問題が出ましたから、確かにこれは公衆衛生、国民経済でマイナス要因を減らすために大事なことですから、公衆衛生局長に聞きたいんですが、最近、公衆衛生たそがれ論というのがいわれますね。ところが保健所というものは、まあ人口十万で一カ所ある。一番厚生省の仕事として住民に密着をしたところだと思うのですよ、保健所の仕事は。ところが、その保健所というものは、私は予算委員会の分科会でもちょっと言ったのですが、どうも時代の要請に適応しがたい。一体どこに原因があるのか、ひとつ簡単にお答えをいただきたいと思います。
  169. 加倉井駿一

    ○加倉井政府委員 御指摘のように保健所の問題につきまして、いろいろ論議をされております。これは従来保健所が中心となりまして急性伝染病あるいは結核等、特定の疾病につきまして、いろいろの対策を実施してまいっておりますが、経済情勢その他、環境の変化に伴いまして疾病構造がだいぶ変わってまいっております。したがいまして、従来の単独の疾病対策に終始いたしておりました保健所の機能は、根本的にそれを検討し直さなければならない状態になったわけでございまして、数年前からこの保健所の、いま先生の御指摘もございましたような機能の問題につきまして、論議がかわされております。したがって厚生省におきましても、保健所問題懇談会を設置いたしまして、いろいろ論議をしていただきました。その結果、その問題懇談会の基調報告もいただいております。  この基調報告を受けまして、私どもといたしましては、やはり今後来たるべき疾病構造の変化に応じました保健所の機能というものを再編成しなければならぬということに決心をいたしまして、それに着手をいたしております。しかしながら従来行なっておりました伝染病関係も、やはりゆるがせにできない問題でございまして、それとあわせて、先ほど申し上げましたいろいろの疾病構造の変化に対応いたします今後の保健所といたしまして、どうあるべきかという問題も実施いたさなければならないというふうに考えております。  したがって、今後の公衆衛生行政というものは、従来の伝染病と違いまして、やはり慢性疾患が主体になってまいると思いますが、そういう慢性疾患につきましては、やはり情報を中心といたしましたいろいろの調整機能を保健所に付与すべきであるということも考えられるわけでございまして、この問題は地域によって非常に性格が異なってまいりますので、画一的な指導方針のもとに全国の保健所を運営するわけにもまいらぬわけでございまして、その地域の実情に応じまして、あるべき保健所の姿をどうするかということを考えていかなければならないと思っております。  したがって、そういうことを踏まえまして四十八年度におきまして特定の地域を選定いたしまして、それにいかに対処すべきかということの実験をいたしておりますが、その計画に基づきまして、今後保健所をいかに運営すべきか、しかも活気のある保健所にするかということにつきまして、現在検討を加えておる次第でございます。
  170. 田口一男

    ○田口委員 いまの保健所の問題で検討中、勉強中ということはわかるのですが、それに関連して、先ほど言った自治体病院に戻るのですけれども、保健所の機能というものは、いま十分でない。だから国民の要求にこたえるような保健所というものはどうあるべきか、いま検討しなければならぬ。ところが自治体病院も一つそういう使命を持っておるわけですね。その使命を生かそうとすると、残念ながら今日のところの法制のもとでは、地方公営企業ということで財務規定なんかが適用される。それをいま検討されておると医務局長お話があったのですが、その自治体病院が地方公営企業、言うならば営利ですわね。一つの商売だ。そういったような性格を付与しなければならぬといわれておる。一方ではもうけなさい。こういう点について医務局長、どういうふうにお考えですか。そういった、いま局長が答えられたような公衆衛生の面まで、どんどん自治体病院というものは機能を発揮しなければならぬ。ところが一方では、いまの地方公営企業法の十七条で、言うならばこれは営利を目的にしなければならぬ。そこに矛盾があると思うのです。  ですから公的病院、とりわけ自治体病院というものがはたして企業なのか。公営企業というような名前に私はこだわって言うのじゃありませんけれども、その辺の矛盾を解消しなければ、供給体制の確立ということについては、たいへん厚い壁ということになってきはしないか。その点どうでしょう。
  171. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先生指摘のように、確かに公営企業法という名のもとに、先ほど申し上げましたように、「当該地方公営企業の経営に伴う収入をもって充てなければならない。」と最後に結んでおりますが、その前に「地方公営企業の特別会計においては、その経費は、前項の規定により地方公共団体の一般会計又は他の特別会計において負担するものを除き、」ということを先に出しまして、そして最後に「経営に伴う収入をもって充てなければならない。」としておる考え方というものは、看護婦養成あるいは公衆衛生活動、そういうものは率先してやりなさい、しかし、そういうものは一般会計その他からめんどうを見ますけれども、それ以外の一般医療、いわゆる他の病院と同様の一般的な医療は、みずからの収入をもって充てなければならないとなっておるのでございます。  それで考え方は、むしろ先生のお考えに沿うような法文にはなっておると私も思いますけれども、基本的に医療機関というものが企業という名の法律で運営しておるという意味も含めた、いろいろなお考えがあることは、私も否定できないと思いますし、私の個人的に受ける感じからいっても、この公営企業法というものの設立の趣旨なり、そういうものを必ずしもつまびらかにいたしませんから、的確なお答えにはならぬと思いますけれども、われわれとしては、この条文の書き方は、やはりそういう自治体病院の使命というものをきちっとうたいながら、残った分については、「なければならない」と、かなり強くなっておりますけれども、こういうような形に私は理解いたしております。
  172. 大原亨

    大原委員 関連質問ですが、いまの田口委員の御質問は、公的医療機関の中に、国立や公立の医療機関かありますね、親元がはっきりしているものと、そうでない、日赤その他の公的医療機関がありますね。このほうに対して予算措置をすることは当然だし、足りない。しかし国立や自治体病院等が、企業として採算ベースで運営されるのは根本的におかしいのではないか。特定の看護婦養成、公衆衛生活動、そういうものについては一般財源を入れる余地はあるけれども、自治体病院の一般的な医療については赤字が出ても予算措置をしませんよ、言うならばこういうことである。この地方公営企業法の十七条をこの際改正すべきではないのか、こういう議論です。  というのは厚生大臣、一つ例をとってみると、救急医療体制その他あるけれども、老人医療の問題があるわけですよ。老人医療は非常にピンからキリまで軽重の度合いがあるわけです。軽度のものは民間病院等に行くわけですが、しかし重度のものは、かなり手がかかって、やはり公共医療機関のほうが差額ベッド等がないから、行くわけです。  ことしの一月から全国的に、いびつな形ですけれども医療の無料化をやったわけで、どんどん受診率がふえているわけです。もう一つの現象は、そのお年寄りが病院に定着をして、社会復帰の訓練その他がないものですから、ずっとこれに沈でんしておるわけですよ。そうやってくると、老人医療一つとってこれを分析いたしましても、これは大きな問題ですよ、たくさん時間がかかるのだが、そういうところで、公共医療機関、自治体病院等にずっと集まっておりますと、経営からいうならば、非常に不採算医療である。公共医療機関というものは、いまの制度では、不採算医療というものが集中的になるわけです。  私ども開業医撲滅論じゃありませんよ。開業医と公共医療機関がバランスをとって共存するようにするために、公共医療機関をどうすべきかということを私ども議論しているのです。  そういう点からいうと、不採算医療で、救急医療等も出てくるわけです。交通災害その他では、たとえば頭がぶち割れて脳に大きな故障が起きても、非常に単純な担架しかないものですから、いろいろな問題が起きてきておりますけれども、そういう問題等を含めて、難病、奇病の問題を含めて、治療と研究と教育を一体的にやらなければならぬようなものを、公共医療機関が任務を果たすべきじゃないのか。僻地医療責任分担の問題についても、私どもは提案をしておるわけですが、そういう不採算医療について公共医療機関が任務を果たすということが、いまや国民的な要請ではないのか。逆にいうならば、たとえばいま医薬品の問題等が議論になっておるけれども、二割五分の潜在技術料を取らなければ経営ができないというふうなことで、それを逆用するような医療機関等もあって、問題になっておりますが、それらの問題を含めて、良心的にやるならば、公共医療機関、特に自治体病院は地域医療の基幹病院になっているわけですから、良心的にやればやるほど赤字が出るのじゃないか。それを公営企業法の十七条でひっくくっておいて、これについては見ませんよという、そういう法律はいけないのではないか。そういうことをしておるから採算主義になってきて、保険財政を食うじゃないか、こういう議論をしているわけでしょう。  ですから、公営企業法の十七条を根本的に改正をして、そうして公共医療機関の位置づけをぴしっとして、そして自治体行政の上においてもそのことをやるということが、これがこっちのほうの赤字基調の問題を供給面で総合的に解決するという非常に大きなポイントでもあるし、国民立場から要請されているのではないか。十七条は改正すべきじゃないのか。いまや企業性、採算性を度外視して、学校や警察と同じようなサービス機関に近いようにしていくべきじゃないのか、疾病構造も変わっているわけですから、こういう議論をしているわけです。十七条に関係をして、これは政治的な問題ですから、大臣からひとつ答弁してください。
  173. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 この問題につきましては、先ほどもお答えをいたしたわけでございますが、府県立なり市町村立の病院は、現在のたてまえ上、その自治体においてめんどうを見る、足りないところは特別交付税で見る、こういうたてまえになっております。しかし、現在の公立病院が非常に赤字に悩み、経営も非常に困難であるということも、十分私は承知をいたしておるわけでございます。     〔塩谷委員長代理退席、委員長着席〕  そこで問題は、特に看護婦養成の仕事まで診療報酬の中でやるというふうなたてまえをとっておるわけでございまして、はたしてこういうことで問題の解決ができるだろうかという、多少私は悩みを持っているのです。私は、さっきはっきり申し上げたのです。特に看護婦のような問題は、当該病院に使用する看護婦という観点でいまの養成の考え方が全部できております。ところが、そういう考え方でなしに、看護婦も、これだけ苦しくなってまいりますと、看護婦の養成というものは、一つの大きな医療問題における国家的な要請に従ってやらなければならぬ大きな問題だと私は思うのです。  そういうふうなこともありますので、この問題については、実は社会保障長期計画懇談会にもこの問題をぶつけまして、どうすればいいのだこの問題、ということを検討し、その結果を待って、自治省と相談しながら、私はもう少し、国家的要請によってやるべき仕事、そうでない仕事と、やっぱり多少そこにふるい分けはあるのじゃないか、こういうふうな考え方で、自治省と真剣に取り組んで検討をいたしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。  特に看護婦のような問題は、これは当該病院に使う看護婦を養成するなんという概念ではない、やっぱり国家的な事業として考える必要があると私は思っているのです、ほんとうを言うと。だから、その点は御理解いただけると思っているのです。しかし、それなら、いまおまえどうするのだといういい知恵も、実は学もありませんので、いますぐどうすればいいという案は私もありませんが、この問題は実は医務局長に会うたびに言っているんです。看護婦の養成は当該病院に使用する看護婦を養成すればいいんだというような考えではだめだ、国家的な養成として考えるのにはどうすればいいのかということを、ひとついい案を考えてみろ、そこでいまの懇談会にもこの問題ぶつけてあります。そしてある程度結論が出ましたら、それに基づいて自治省とも相談をしてまいりたい、こんなふうに考えておる次第でございます。
  174. 大原亨

    大原委員 関連質問ですからやめますが、大臣、あなたは看護婦養成の問題について言われたのです。これは看護婦養成の問題だけじゃないのですよ。看護婦養成の問題は医療従事者の養成の問題として根本的に考えなければいかぬ。これはやはり何といったって医療の質を向上して要員を充足するためには教育から考えていかなければいかぬわけです。その点は文部省と厚生省が断絶しておるのです。厚生省意見が文部省へ反映しないのです。文部官療は石頭ですから、筑波大学の法律案で各県に医科大学をつくる問題がありますけれども、私が行って二、三時間議論したのですけれども、全く文部官療というのは——厚生省はそこまで言わぬけれども、文部省が一番最低だ。そこで厚生省と文部省の関係厚生省と自治省の関係についても検討し直しなさい、こう言うのです。  いいですか。運輸省と自治省は地方の鉄道については、これは公営企業の考え方を変えつつありますよ。足の公共性ということから修正しているのですから。ですから私は老人医療の問題、救急医療の問題、福祉医療、教育病院の構想その他、そういう構想からいっても、難病奇病の問題からいっても、いまや基幹病院、公共病院、その中の中軸である地域医療に密着した自治体病院というものは、赤字が出れば出るほどいいのですよ。それだけ保険財政にもサービスをしておるし、住民にもサービスしているのですよ。よけいな薬も飲ませないし、そこから内部環境の破壊もないわけですよ。  そういうことですから発想を変えて、地域医療における自治体病院の任務は何かということを考えたならば、公営企業法の十七条などなんというのは根本的に考え直して国のサービス機能をきちっとするという、教育、学校と同じように考えたらどうだ、それと近く考えたらどうだ。それを基本としてやるならば、こっちの保険財政の議論というものが悪循環しないで、同じことをいつもやっているということにならないのじゃないか。できることは一つでも二つでもやりなさい。何を一体やるんですかという議論を私はしているわけですから、十七条をはずして、自治体病院、公共医療機関については国として全国民にサービスできるような財政的な裏づけをして、そしてきちっとすることが、この供給面あるいは給付面の改善に伴う表裏一体の問題ではないか。十七条を改正しなさい、こういうことを言っているんです。もう一回、厚生大臣は五分の一くらいわかったようですから、さらにひとつ御答弁いただきたい。
  175. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私は大原委員の気持ちを十分理解をしているつもりでございます。そういうふうな考え方から私はこの問題に真剣に取り組みたいと考えておりますから、その条文の検討も含めて前向きに十分善処いたすように努力をいたします。
  176. 田口一男

    ○田口委員 自治体病院の企業性の問題は、いま大原さんが言われましたから、もう繰り返す必要はないと思うのです。先ほど局長言われたように、確かにあの法律解釈すればそうなんですね。しかし、こちらが赤字だから、こちらの公衆衛生の機能のほうは、これでやっていきなさいというのは現実にできぬです。こちらを何とか埋めるためには、こちらを削るというのが自治体病院の現実ですから、結局いま大原先生が言われたように、あの財務規定を変える以外にはもう救いようがない、この点だけ重ねて言っておきたいと思います。  時間が参りましたから、あと、これこそ思いつきではなくて、いますぐに大臣なり所管局長権限で検討また実現できるという問題について、ひとつ申し上げたいのですけれども、この公衆衛生の問題にからんで、さっき局長から保健所のあり方について検討しておるというのですが、そういう検討をしておるやさきに、私は三月五日の予算委員会分科会で栄養課の問題を取り上げましたけれども、これは大臣の答弁で栄養課という名称はなくさないというお答えをいただきました。ところが、その後聞いてみると、栄養の仕事と不離一体の調理師の問題について、これは調理師法というのは議員立法ですね、御存じでしょう。ところが、これは調理師法を所管するお役人のなわ張りだと思うのですが、栄養課からどこか取り締まる方向に所管かえしよう、こういう話を聞いておるのです。  いま局長が一生懸命に公衆衛生のあるべき姿というものを模索しておられる。ところが現実に、いま国会のこの場では審議にかからないそういう所管がえの問題について、調理師なんというのを取り締まりの方向に持っていく。一体調理師をどういうふうに考えておるか。私たちは栄養士と調理師とが一体となって国民の健康を栄養という面から充実していくのだといっているのだが、取り締まりという方向に持っていった場合、いま乏しいながらも保健所でやっておるのを、逆におまえのところはきたないじゃないか、取り締まりばかりになっていく。議員立法の精神からこれははなはだしくはずれると思うのですね。  こういう点について、こまかいことかもしれませんけれども、いまの局長考え方とは相反しておることを現実にやられておる。これは私ははっきり言って所管かえはやるべきでない、こう思うのですが、その辺局長どうですか。
  177. 加倉井駿一

    ○加倉井政府委員 調理師は飲食店や集団給食施設等において業務を行なっております。これらの飲食店等の施設の基準設定あるいは営業の許可、施設の基準等順守させるために食品衛生監視という制度があるのは御承知のとおりでございますが、これは環境衛生局が所管いたしておりまして、御指摘の取り締まり行政ということにあるいはなるかもしれませんけれども、私どもといたしましては、こういう施設の衛生管理と表裏一体となります調理師の資質の向上というものは、全く一元的に所管いたしましたはうが、より効率的になるというふうな判断に立ちまして、調理師法の所管を環境衛生局に移管いたしまして、いま申し上げましたような効率的な運営をいたしたい、こういう考えからでございます。
  178. 田口一男

    ○田口委員 これはもう釈迦に説法だと思うのですが、昭和三十三年に調理師法を議員立法でつくったときの調理師法の目的にはっきり書いてありますね。そこからいったら、いみじくもいま局長言われたように、取り締まり的な色彩の強いところに所管がえをするということは、立法の精神にこれは反するでしょう。これがまず第一点。  それから調理師と名前はいいのですが、板場さんですね。この法律をつくったもう一つのねらいは、社会的な地位の向上ということが含まれておる。これを取り締まりの対象にする、何が何でも取り締まりということは言いませんけれども、少なくともいままでの所管からいえば、取り締まり的色彩の強い食品衛生課のほうに移すということは、私は厚生省自体国民の栄養、食生活の改善、こういった面から大きく国民経済のマイナス要因を少なくしていくという観点に立った場合に、むしろ逆行するものではないか。  現に調理師会という一つの組織があるのですけれども、これは栄養士と密接に結びついております。それを栄養士は栄養課、調理師は取り締まりの食品衛生課、こうなった場合、一体法にうたわれておる食生活の向上とか調理師の社会的地位の向上といったことが期し得られるのかどうか。ですから、これはそういう他の省庁等にまたがる問題でもないし、少なくともいま言った健康保険の論議の過程からずっといって、そういう危惧を持たれるような供給体制なり国民の健康を守るという立場からいって、それに相反することはやめるべきではないか、こういう点を重ねて私は強く言いたいのです。そういう点、大臣ひとつどうですか、これは。所管がえの問題、時代錯誤もはなはだしいと思うのです。
  179. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私、うかつでございまして、実はまだそういう動きがあることを承知していないのです。調理師の仕事を栄養課からよそに移す、きまっていないでしょう——きまっておりません。かりにそういう動き、それは役所の中ですから、私のところまで決裁が回っておりません。  そこでこの問題は、確かに仰せのごとく、現在は栄養課にあって、それを食品衛生課へということのようでございますが、食品衛生課のほうは御承知のように取り締まりというばかりじゃなくて、実は最近水銀問題やらPCBとかいろいろな問題がございますから、やはり調理師の方々はそういう食指導ということを考えてみれば、そちらでいいんではないかというふうなことで、そういうことを公衆衛生局の中で私は考えておるのではないかと思います。しかし、課の事務の異動につきましては、大臣の決裁なしでは、これを行なえないわけでございまして、実は私の手元までまだ来ていないのです。そういうわけでございまして、おそらく八月ごろにでもなりますれば、いろいろそういうふうな課の事務の廃合その他を考えようという動きがあるわけでございますから、そこでいろいろな準備のために、そういうことを話をしている程度だと私は思っております。  したがいまして、正式に決定いたしますときには、先生の仰せになったようなことも十分に頭に入れて私は考えたいと思います。しかし、ただ食品衛生課のほうに移ると取り締まりだという考え方はどうであろうか、私は率直にいって、そういう感じがするのです。むしろ最近のようにPCBがどうの、水銀がどうの、これはたいへんなことでございます。ということであってみれば、食品衛生のほうは現実的にいろいろな問題をかかえておりますから、食べ物のつくり方の指導をやるには、むしろ食品衛生課がいいんではないか、こういったふうな意見も私は出たんじゃないかと思うのです。  ですから、食品衛生課というと、すべて取り締まりだ、これは私はあまりお考えいただかないほうがいいんじゃないかと思いますが、この点については、まだ決定をしておるわけではございませんから、どうかこの点はもうしばらくお待ちをいただいて、あなたの仰せになりましたような趣旨も十分頭に描いて善処いたしたいと考えております。
  180. 田口一男

    ○田口委員 まあこれは深くは私は言いませんけれども、ちょっと食品衛生課即取り締まりというのは即断だというふうに大臣がおっしゃるのですけれども、私はほんとうはそうは思いたくないのです。しかし、保健所のいまの機能が十分でないという公衆衛生局長のお話に関連して私は申し上げたのですけれども一般国民の場合に食品衛生というのは、確かに厚生省は環監、食監というふうに職務がありますけれども、あるいは食品収去というのですか、そういう業務があるでしょう。食品収去、食監がそれをやるわけですね。それはその受け取り方、こっちが収去されるのですけれども、私は保健所の一係員がどうこうというのじゃないのですよ。あくまでいまやられておる仕事は、時代の要請に対応していないということもあるでしょうが、収去ということ自体が私なんかの耳に入ってくるのは全く取り締まりですね。  ですから、そういうことを見て、ああいうところに調理師の問題がいったら、これはおまえのところ、まないたきたないじゃないかといってびしびしやられるのじゃないか、こうなってしまうという危惧を実は持っておるのです。ですから私はあえて言ったのは、そういう取り締まり的と言ったわけです。大臣の決裁が終わっては、もうお手あげですから、十分そういうことのないようにひとつあらためてだめを押しておきます。  さらに先ほどから老人医療の問題でいろいろと出ておるのですが、これは厚生省が発表した数字ですから、いまさら申し上げる必要はないと思うのですが、日本の老人人口が一九六八年には六十五歳以上が六・八%である、一九八〇年になれば九%になるだろう。ところが患者総数に占める六十五歳以上の割合が、一九六八年には一四%であったけれども、一九八〇年には二四%になるであろう。これはまだ老人医療の無料化がやられてないときの数字ですね。この数字を見ても、すでに人口の老齢化よりも、病人のほうの老齢化が前に来ておるということは、数字からいえるわけです。実際の年寄りは八〇年には九%だけれども、病人のほうは二四%になる。こういった病人の老齢化がふえていくというものをすべて医療機関で受けとめていることは、先ほど大原先生もおっしゃったとおりです。  そこで老人医療の問題で、今回の健保の改正案、私は地元でいろいろと座談会、懇談会なんかで注文、意見を聞くのですが、大企業の健保組合のあるところから——健保組合とは一がいにいえませんけれども健保組合のある大企業を定年退職をして中小企業に入っていく。その中小企業は大かた政管健保だ。こういう類型ですね。そういったことから政管健保の年齢構成で疾病構造もだいぶ変わってくるということもあるのですけれども、この際ひとつこういうことが考えられぬだろうか。  定年退職から理想をいえば老人医療の年齢までということになるのですが、少なくとも六十五歳ぐらいまでの間は、その属しておった組合、健保組合、政管なら政管で引き続いて被保険者として資格を持っていけるというふうな制度、これはかつての国会でそういう案が一度出されたということを聞いておるのですが、それを蒸し返すつもりはありませんけれども、こういった老人問題がいわれておるときに、この定年退職から六十五歳なら六十五歳、七十歳なら七十歳までの間を引き続いてその属した健保組合、政管健保の被保険者として資格を与えるような方向というものが検討に値しないか。これが一つ。  それからもう一つは、これは公衆衛生、保健所の保健業務に関連するのですが、大体お年寄りが、いま在宅で医者にかかる場合もいろいろな病気がありますが、一番多いのは何といっても高血圧ですね。これは極端な例を申し上げるようですが、老人医療が無料化になったということも一つは原因でしょうが、医者のはしごというのが多いのです、医者のはしごというと変な言い方ですけれども。それで、ある健保組合の保健婦から話を聞いたのですが、レセプトをずっと見ておったら同一人が同一の疾病で転々とお医者さんにかかっておる。はなはだしい場合は一日に三回くらいかかっておる。  そこでその患者のうちへその保健婦が、組合員の家族ですから行ったら、仏壇の前にお茶を入れる乾燥箱があるのですね。大げさな話じゃないのですよ。大きな木の箱に一ぱい薬が詰めてあったというのですよ。保健婦が行ったら、これはどこそこのお医者さんからもらった薬、これはどこそこのお医者さんでもらった薬……。あなた、こんなに飲んだらまいってしまうじゃないか。気休めということもあるでしょうから、どこそこへ行くということで、はしごをやるわけですね。  健保組合の場合にはそういった保健指導、労務管理の一環として保健婦さんの活動というものは、比較的綿密にやられておるようです。ところが政管健保の場合は、そういう制度は皆無といってもいいわけですね、そうそうチェックはできませんから。そういったことを保健指導していくというのは、やはり保健所の保健婦に課せられた任務です。ところが三歳児だ何だということで、これも大事な仕事なんですが、十分にやっていない。人の問題もあります。老人医療の無料化ということに対応して、そういった保健指導ということが全く手抜きになっておる。当然公衆衛生の観点からこれをひとつやって、早急に対策をとってもらいたい。  それからさっき言ったように、定年後の継続被保険者の資格、私はもう一つ注文をつけておきたいのですが、これもお年寄りの集まりに行ったら、こういう意見が出るのですよ。年寄りになったら、目が悪くなるのは、あたりまえだと言われるかもしれませんけれども、大体老眼鏡かけますわな。ところが老人医療の場合でも保険の場合でも、検眼とかめがねというのは保険の対象外でしょう。イギリスはめがねなどあるそうですけれども、せっかく老人医療というものが、問題があるにしても、ここまで進んだ以上は、その検眼、めがねの問題についてこういう健保の改正案にひっくるめて一つの政策として打ち出す必要があるのじゃないか。年寄りだから目が悪くてもしょうがない、もうよぼよぼ、めがねなんか必要ないだろうということは言えぬと思うのです。  厚生省から資料をもらったら、これは政管健保で八十歳以上の非組合員がわずかですけれどもおるわけですね。六十五歳以上もちろんおりますけれども、そういったことから考えても健保の対象にめがねを入れようということは、いま、あまり急な言い方かもしれませんけれども、政管健保で八十歳以上が総数で二百五十分の一抽出で〇・〇九%おるのです。こういう実態があるから、老人に対する検眼、めがね、こういう問題について何らかの措置を考えるべきではないか。以上申し上げましたが、いかがでしょうか。
  181. 北川力夫

    北川(力)政府委員 第一点の退職者の継続医療の問題でございますが、この問題は仰せのとおり先般のいつかの国会でも提案され、論議された問題でございます。この問題は昨年の社会保険審議会におきましても、事業主側委員からの提案がございまして、いろいろ論議をされましたが、健康保険組合をやめまして政府管掌に行く分、あるいは国民健康保険に行く者、いろいろバラエティーがございまして、そういう関係を技術的に処理することが困難な面もあるわけであります。したがいまして昨年暮れに社会保険審議会からいただきました意見書では、当面四十八年度から実施すべき事項からは除外をされております。  しかし、いわゆる若いころに健康保険組合で保険料をかけて本人は十割、家族も付加給付を受ける、それから退職をすると国民健康保険に入って七割給付しか受けられない、あるいはまた政府管掌に行って家族は五割給付である、こういうことは前々から各種保険の相互調整の一環として議論されておる問題でございますので、今後の制度改善の問題として各方面の意見を十分に聞きながら、具体的実施方法を検討してまいりたい、このように考えておる次第であります。  それから第二点の、老人の方々がたくさんの薬をもらうというふうな問題に関連をいたしまして、保健指導の問題がございました。これは保健指導ということで、公衆衛生の問題でもございますけれども、私ども政府管掌健康保険の被保険者につきましても、できないとはいうものの、できるだけのそういった面のチェックはいたすつもりでございます。また、今回の四十八年度予算におきましても保健施設の関係は大幅な増額を見ておりますし、そういう面で医療費のチェックとまた保健関係の指導と予防活動の促進、こういうことは今後も十分努力してまいりたいと思っております。  最後のめがねと検眼の問題でございますが、これはいわゆる老人対策の一環でございましょうが、これも一種の、要求とまではまいりませんけれども、老人対策としてこういう問題を保険で取り上げるか、あるいはまたそういった面以外の部面で取り上げるか、いろいろ議論の分かれるところかと思いますので、今後の課題として検討さしていただきたい、かように考えております。
  182. 山本政弘

    山本(政)委員 川俣委員と、それから田口さんの質問の中で三者三泣き、三者三泣き的というふうに的がついたようであります。そのことでちょっとお伺いしたいのですが、国庫補助というものは一体何かという定義をひとつ教えていただきたい。江間さんが一番適任かもしれません。教えていただきたい。国庫補助とは何かということを。
  183. 江間時彦

    ○江間政府委員 必ずしも私ども立場でお答えするのが適当かどうかわかりませんが、御指名でございますので……。  国庫補助といいますのは、その名のあらわしますように、特定の事情がございまして、それに対しまして、国庫から一般会計の財源によりまして補助を出すということでございまして、理論的にはいろいろな性格があると思いますが、一つには国の責任度合いをあらわすということもありましょうし、現実に特定の事業を国家的な観点から助成するというような意味もあると思います。ときによって、そこら辺は必ずしも統一した理念はないかと思います。
  184. 山本政弘

    山本(政)委員 ぼくのお聞きしたいことは、財政法上にいう国庫補助とは一体何か、いかなる場合に国庫補助をお出しになるのかということです。
  185. 渡部周治

    ○渡部説明員 財政法上の国庫補助の意味という御質問でございますが、財政法の上で特に国庫補助の性格等につきまして規定は特にないように見受けられるわけでございます。問題は国庫補助につきましては、いろいろな性格がございまして、法律的に特定の法律でもって、こういう場合に一定の補助をするというぐあいに明定している場合もございますし、いわゆる予算補助というかっこうで法律的には何も規定はございませんけれども、予算でもって特定の補助をするというものがあるわけであります。  それは別に法律に書いてある国庫補助、予算補助というものにつきまして、特に予算の取り扱いの上で差別があるわけではないわけでございますが、やはり一般に国民の権利義務に非常に関係の深い国の支出につきましては、法律で規定をするというのが大体のかっこうになっているように存じます。
  186. 山本政弘

    山本(政)委員 それではお伺いいたしますけれども、これは田邊さんからたしか御質問があったと思いますが、国民年金の場合には国庫負担はたしか三分の一でしたね。それから厚生年金の場合には国庫負担が二割。保険局長は前に年金局長であるはずですから、そのことを御存じだと思うのですが、それを一ぺんちょっと確認したい。
  187. 北川力夫

    北川(力)政府委員 確かにそのとおりだと記憶します。
  188. 山本政弘

    山本(政)委員 そうすると厚生年金の二割の国庫負担の中には、健康保険の適用をする組合の人たちも入っているだろうし、政管健保の適用をする人たちも入っておりますね。そう言えますね。その点はいかがでしょう。
  189. 北川力夫

    北川(力)政府委員 厚生年金は政管、組合の区別はございませんから全部政管でございます。そのとおりでございます。
  190. 山本政弘

    山本(政)委員 そうしますと、これはこの前の健保のときであったと思うのですけれども、渡部さんにお伺いしたのですが、国保の国庫補助率は四五%ですね。しかもこれは総医療費に対する補助率でありますから、給付費ということにすればもっと率は高くなると思うのです。そういうことに引き直して政管にしてみると、どれくらいのパーセンテージになりますか。
  191. 渡部周治

    ○渡部説明員 お答え申し上げます。  国民健康保険につきましての国庫補助はただいま山本先生がおっしゃいましたとおり、総医療費に対しまして四五%という補助になっております。政府管掌健康保険の場合は給付費に対して一〇%ということでございますが、国民健康保険と政府管掌健康保険の国庫補助の率を比較する場合に、やはり両保険の制度の差異というものを念頭に置いて計算しなければならないのではなかろうか、こう思っております。  これは国民健康保険と政府管掌健康保険の場合には、一般的に国民健康保険のほうが被保険者に低所得層が多いというようなこと、あるいは給付率が被用者保険に比べて低いというようなものが高率国庫補助の一つの原因にはなっておりますけれども、最も多い要因というのは、事業主負担がないという点であろうかと思います。
  192. 山本政弘

    山本(政)委員 そうしますと、事業主負担があるなしのことは、私は問題がないと思うのですけれども国民年金に対して三分の一、三分の一というのは三三%と一応考えていいわけですね。厚生年金は二割ですから、二〇%。国保と政管の間に性格の違いがあるように、国民年金と厚生年金にも性格の違いがあるだろうと思うのです。そしてその違いは、年金と、それから健保ということについても、性格上の違いというものは、そう大きくは違っていないと私は思う。そうすると国民年金については三三%、そして厚生年金については二〇%という——健康保険に限っていえば、なぜそれだけの差というものがあるのだろうか。この点をはっきりしてもらいたいと思う。私の質問意味はおわかりでしょう。
  193. 渡部周治

    ○渡部説明員 お答え申し上げます。  御質問の趣旨は、国民健康保険と政府管掌健康保険の補助率のバランスに比べて、長期保険である国民年金と厚生年金とのバランス、これが十分とれておるのかという御趣旨であろうかと思います。社会保険につきましての国庫負担をしておる理由、これはいろいろあるわけでございまして、一般的に申し上げますと短期保険である医療保険に比べまして、長期保険の場合には老齢であるとか、あるいは廃疾であるといったような事故の性質上被保険者と事業主だけで費用を負担することは必ずしも適当でないということでございまして、一般的には国庫負担は医療保険の場合よりも必要である。これは社会保障制度審議会あたりの考え方にも出ておるわけでございます。諸外国にもそういう考え方がございます。  そこで問題は、それでは国民年金の国庫負担三分の一、むしろ国民健康保険の四五%よりも低いじゃないか。それに対して三分の一の国民年金の負担であるにかかわらず、厚生年金は二〇%をしておる。一方四五%の国民健康保険に比べて一〇%はどうだ、こういう御指摘であろうかと思いますが、問題は国民年金の国庫負担三分の一の趣旨、それから国民健康保険の国庫補助四五%の趣旨、これがまたそれぞれ特殊な理由に基づきましてなっておるわけでございます。  その点をちょっと御説明いたしますと、国民年金と国民健康保険とでは、その加入対象がほぼ共通であるということは言えるわけでございますが、医療費という当面の生活にかかわる直接的な出費につきましての社会保障と、年金制度のように長期にわたる本人の拠出をもとにいたしまして、老後生活等の積極的な保障をはかるという社会保障とでは、国庫負担の程度につきましては種々議論があるわけでございます。  国民健康保険の補助率は、発足のおくれました市町村国保の給付率を引き上げまして、国民健康保険の内容の充実をはかろうという政策的な要請に基づきまして定められたという沿革的な理由がございます。また国民年金の国庫負担につきましては、二十五年間の在来の、本来の年金につきましては、これは従来どおり給付額の三分の一でございますけれども、現実に支給されておりまする十年年金、これにつきましてさらに近く支給が始まります五年年金等につきましては、今回の改正によりまして、かさ上げ後につきましては従来の三分の一から二分の一に引き上げられたということでございます。そのほか国民年金を考えます場合に、福祉年金というのは、やはり一種の経過年金と考えなければならないと思います。
  194. 山本政弘

    山本(政)委員 年金のほうはわかりましたが、それでは国保は総医療費に対する四五%、給付費に引き直しては幾らになりますか。
  195. 渡部周治

    ○渡部説明員 給付費に引き直しますと六四・二%でございます。
  196. 山本政弘

    山本(政)委員 そうすると、なおかつ主計官のほうはそういう論理をお立てになるわけですか。これは確認しておきますよ。
  197. 渡部周治

    ○渡部説明員 先ほど申し上げましたように、市町村国保につきましては、政管健保と違いまして事業主負担がないわけであります。事業主の負担を加味いたしまして、政管健保並びに市町村国保のバランスを見てまいりますると、国庫負担と事業主負担を加えますると、政管健保の場合総医療費ベースに対しまして四六・七%、国保四五%と、バランスがとれておるものと考えます。
  198. 山本政弘

    山本(政)委員 そうしますと、この前の健保のときのお答えの中で、政管健保を給付率に引き直すと二七%くらいになるというお話だった。そうしますと定率国庫補助の一〇%というのは、労使負担というあなたの論理を入れても一三・五%になるわけですね。そうでしょう。ですから国保の定率国庫補助というのは一〇%では低過ぎないですか。議論をずっと推し進めていったら、低過ぎるということになりませんか。二七%ということは、私は申し上げないけれども、少なくとも一〇%というのは、あなたの議論というのを通していったって低過ぎるでしょう。
  199. 渡部周治

    ○渡部説明員 一〇%の定率国庫負担を換算すると、一三%になるというのはちょっとわかりませんで、私のほうはむしろ総医療費ベースに合わせて八・五くらいになるのではないかと思います。それに事業主負担が三八・二加わりますので、両方合わせまして、四六・七くらいになるということでございます。
  200. 山本政弘

    山本(政)委員 国保の場合は、要するに事業主負担がないからそういうふうになるというお話があったから、私は申し上げているのですよ。半分半分で折半ということになれば、少なくとも議論から言えば、一三・五%になるでしょう。ぼくの言うのは、給付費ですよ。
  201. 渡部周治

    ○渡部説明員 給付費に直して一三%くらいになるというのは、ちょっとわかりかねるのでございますが、かりに市町村国保を給付費ベースに直しますと六四・二%でございますが、給付費ベースで政管健保を見ますと、一〇%の国庫負担と事業主負担が四五でございますので、これは五五%ということになろうかと思います。
  202. 山本政弘

    山本(政)委員 ちょっと大臣質問申し上げますけれども、これは私、この前の質問のときにもお伺いしたのですけれども、たしか昨年の五月二十四日でしたか、この委員会で可決したときには五%を一〇%にお上げになりましたね。その上げたとき、たしか三百八十九億円か上積みをしたわけですね。今度の改正は、その上に立っての改正案じゃないんですか。つまり一〇%というものは、前もってそのときに一つの既成事実としてつくられたものじゃないのですか。あるいは既定概念として、そういうふうにあなた方がお考えになったものじゃないでしょうか。
  203. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 既成概念として植えつけられたものかというお尋ねでございますが、実は、今度の法律は、御承知のように給付改善ということを前提にして、そしてこれだけの歳出があるというふうなことを考え、歳入をどう考えるかということで来ているわけでございますが、既定概念というか、昨年の財政対策において、一〇%という国庫補助率は皆さん方の御協力もいただいて、そこに落ちついたというわけでございますから、それよりは下げるというわけにはいくまい。——率直に言いますよ。ですから、これだけの給付改善をやる、それだけの歳出が要る、そこでこれだけのそれに対して、まず国庫負担をどのくらいにするかということを考えたときに、昨年皆さん方の御協力をいただいて一〇%になった国庫補助率を下げるということはできまい、こういう考え方であると思います。したがって、その意味においては、既定概念からの大きな拘束があった。これは、私は事実であると思います。
  204. 山本政弘

    山本(政)委員 関連ですから、あまり時間をかけてはいけないのですが、いいですか、三者三泣きだとあなた方おっしゃっているのですよ。三者三泣きというようにおっしゃっておって、そして標準報酬では四百九十億、保険料では三百三十二億、ボーナスで二百十六億、合計千三十八億のお金を、要するに取り上げるのだ、ぼくに言わしたら。お取りになるわけですよ。そうでしょう。それでお出しになる金というのは、それよりか少ない金になるわけです。ここに泣いてないというところが一つあるのです。半泣きですよ。  もう一つは、〇・一上げれば〇・四国庫補助かするというのです。そうすると、〇・一%上げた場合に五十五億になりますね。そして〇・四%上げた場合には、一体幾らになるかというと、三十五億ぐらいですね。ここにも一つ不合理があると思います。あなた方の今度お出しになっている弾力条項というものを最大限に適用してごらんなさい。要するに、〇・一から〇・七の最大限まで上げたときには、これは三百八十五億になるのですよ。そのときに、それに従って引き上げられる弾力条項の〇・四というのは、どれだけ上がるかというと、二百四十五億円になるのですよ。差し引き百四十億という差が出てくるわけです。しかも五十五億というのは、労使の片側の金額なんです。両方の金額からいえば、二百八十億という差が出てくるでしょう。  二百八十億というのは、あなた方は、中医協についてのせんだってのお答えによって、江間さんだったと思いますけれども、もし一二%上がったらどうするかと言ったら、予備金の二百四十億があります、こういうお話だった。それをはるかにこえる金額じゃありませんか。それで三者三泣きと言えますか。どこにそう言えますか。三百億に近い金というもの、それだけの差が出てくることに対して、どこに三者三泣きということが言えるだろうか。当然国庫負担というものはもっと大幅に上げるべきでしょう。そうしなければ、ぼくは理論としてもおかしいと思うのですよ。そうなりませんか。大臣のお答えをお願いします。
  205. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私は、先生のおっしゃった前段の、全体についての三者三泣きということはは、いまだかつて使ったことはないのです。弾力条項について、〇・一上げたときに——従来のいろいろな収入を上げるときの方式としては、御承知のように、労使の保険料だけでまかなうという仕組みでありました。しかし弾力条項ということになりますと、七十三から上に上げますときには、〇・一上げますときに〇・四、すなわち五十五億、五十五億、三十五億ということで同額ではありません。これも言うてあります。そこで私は、三者三泣き的でございますと言うておるわけなんです。私は、同額にするということは、もう御承知だと思いますが、言うておりません。いままでは労使の負担だけでまかなうのだけれども、今度は国も出すようにしましようというふうな、何といいますか、言いわけするわけでもありませんが、通俗的な意味において三者三泣き的と申し上げました。  そこで先ほども申し上げたように、三者三泣きというならば、同額であるのがほんとうじゃないか、こういうふうに先ほどもお尋ねがございました。そこで、この点については、将来の問題としては、そういうことも考えなければならぬときが来ると思います、というふうにお答えをいたしておる次第でございます。
  206. 山本政弘

    山本(政)委員 私は、お断わりしておきますが、弾力条項に賛成をしておるわけじゃありませんよ。しかし、あなた方がやっておる〇・一%ならば〇・四ということの中にだんだん差が出てくる。そこで三者三泣きということをぼくは念のために調べてみました。「三者三泣き」とおっしゃっておるのです。一番最後に「三者三泣き的」と言っている。「的」というのが入っています。最初のほうは「三者三泣き」ですよ。それがだんだんと、こういうものが議論が進んできたら、「的」が入ってきたのですよ。  ぼくの申し上げたいのは、三者三泣きといって、三十五億、五十五億——二十億の違いでしかないというような、一見したら、そういう印象を与えながら、最終的になってみたら、三百億に近いものが、ぐんと差が出てくるということ、しかもそれが要するに予備費をはるかに上回る金額になるということは、まさしく、三者三泣き的だと言ったって、ごまかしじゃないかと言うのですよ。そういうことなんです。  あらためて、私は、このことについてもう一ぺん質問したいと思います。きょうは関連ですから……。しかしそれは、ぜひそういうことは、国庫補助についてもっと考えるべきですよ、あなた方が改正案をお出しになるというのだったら。——終わります。
  207. 田川誠一

    田川委員長 島本虎三君。
  208. 島本虎三

    ○島本委員 これは、大臣、いろいろ熱心に討論されているのを見ると、私も中に入りたくなるのであります。  それで、先ほど伺いましたところが、午前中にも重大な論議があったようであります。それはやはり医療福祉施設、それらの問題が川俣理事によってだいぶ追及があったようでございましたが、私自身もこれを納得させてもらうために、やはり社会保障、社会福祉を今度重点にした予算である、こういうようなことでございますので、あまり内容は多岐を要しませんが、一、二だけを聞きたいのであります。  医療福祉施設のうち、第二びわこ学園、それから島田療育園、それから砂子療育園これらに働いておる人たちの労働条件が過酷なようであります。しかし、大臣もこの問題には先ほども答弁があったようでありますが、先般は、患者一対介護者一、こういうような一つの原則も確立があったように聞いておるわけであります。大臣も、この点は将来にかけて四十九年度からの約束の中に入っている、こういうことなんでありますけれども、この点、大臣、やはりはっきりしておるのでございましょうか、まず聞いておきたい第一点であります。
  209. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 重度心身障害児を収容しておる施設につきまして、その職員と収容しておる子供との比率で予算が大体配分されておるわけでございます。すなわち、一・五に対して一。そこで、先般も参議院の予算委員会においてお尋ねがありまして、重い子供を世話するのはたいへんなことだ、一対一くらいにならぬのか、こういうお話がございまして、私もそういうふうな方向について来年度は努力いたしましょう。それと同時に、本年度においてもやりくりできないかということでございましたから、全部が全部そういうふうにするということは、やりくりですから、できないでしょうが、特に年齢もいって相当重い子供の一ぱいおるような施設については一対一くらいにするように、やりくりして努力いたしましょうというようなことで、いま特別基準をつくることにして関係省と相談をしておる段階でございます。
  210. 島本虎三

    ○島本委員 はなばなしい日の当たる部分より、こういうふうに日の当たらない部分に対して十分政治的配慮をするということがほんとうに大事なのであります。大臣がわざわざそれを約束され、努力される、このことをいまはっきり聞きましたが、そのようにして大蔵省でもこの点は十分知っておられるわけですね。
  211. 渡部周治

    ○渡部説明員 重度心身障害児の収容施設におきます職員の処遇の問題につきましては、その処遇の改善が当該重度心身障害児のお世話をするという意味でも非常に大事な問題である、しかもその施設の職員の確保等いろいろ現在問題が起こっておるということにつきましては、われわれも十分承知いたしております。そしてこの問題につきまして去る四月の予算委員会におきます齋藤大臣の御答弁も私もそばにおって承りましたし、けさほど来の御議論についても十分承っております。
  212. 島本虎三

    ○島本委員 そうすると、重ねてやはり大蔵省並びに大臣、これは定数をきめるときの基準ということではなしに、常時こういうような配置をするという意味に当然解釈できるのでありますが、そういうように解釈して差しつかえないですね。
  213. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 常時という意味がよくわかりませんが、一定の基準を設けまして、特に重い子供がたくさんおるとか、年齢の相当いった子供が多いとか、そういうふうな一つの基準をつくりまして、そういう基準のところには本年度やりくりで一・五でなくて一対一、こういうふうにしようという考え方でございます。かってにこちらで恣意的に判断してやるというわけにはまいりませんから、こういう措置費の使い方の問題ですから、一定の基準を設けてそういうふうにいたしたい、こういうふうに考えております。
  214. 島本虎三

    ○島本委員 やはりこれは大臣がそこを考えたならば、各局長以下はそれにならって、はっきりとしたこれに実をつけなければならないわけであります。しかし、いま私どもが聞き及ぶところによると、第二びわこ学園、それから島田療育園、それから砂子療育園、こういうようなところでは、労働過重のために職員がだいぶ弱っておる。弱っておるどころか、重度の心身障害者を扱いながら、自分自身のからだもそれになりつつあるということを聞くのであります。これはもうとんでもないことでありますが、いわゆる腰痛症、こういうような問題に対して十分配慮しなければならないことは論をまちません。したがって、大蔵省でもそれをオーケーだと認め、大臣もこれに対して次からは的確に措置をするというのであります。そうなると、現在腰痛症に悩むこういうような職員に対してはどういうふうにしようとするのでしょうか。それもまずちょっと伺わせていただきたいと思います。
  215. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 腰痛症の問題につきましては、私の所管しております国立療養所にも重度心身障害児をかかえておりまして、これが明らかに認定されて、いわゆる公務災害として認定された場合の例もございます。それから、できるだけ早期に発見し、重症にならぬうちに休業あるいは治療という問題もあろうと思います。それから基本的には予防的な措置、すなわち、寝台の高さ、あるいは入浴の際の機械化、あるいはいまのお話のように人員を増すことによりまして、従来一人で無理をしておった作業をできるだけ大ぜいでやれるようにして、このような突発的な腰痛症が急激に起こる、あるいは慢性的に起こる場合もございますし、急激的に腰椎の脱臼のような形で起こる場合もあろうと思います、そういう予防措置というようなことも大事でございましょうし、就業前の健康診断というようなものを的確にいたしまして、やはり障害が起こったあとの比較をきちっとして、障害を明らかに認定できるようにするような健康管理的な措置も必要だろうと思うのでございまして、そういう点を含めまして腰痛症は非常に広範な対策を必要とする問題であります。また、午前お話の出ましたように、腰痛にかかったあと休む場合に代替要員を用意しろというお話もございました。国立の場合もこの問題は至急検討いたしたいというふうに考えております。
  216. 島本虎三

    ○島本委員 国立以外は。
  217. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 国立以外については、児童家庭局がただいま参っておりませんけれども、午前来の児童家庭局の答弁の中には、大臣からもお答えいたしましたように、本年度からの検討、それから、もちろん来年度にわたっての定員の増、そういう問題を検討いたしております。
  218. 島本虎三

    ○島本委員 では、ここで三つばかりはっきり納得させてもらいたいと思います。腰痛症の代替職員、これに対しては十分配慮するということを午前中の川俣質問によって確認されておるようであります。そうすると、これはいつから金の措置をするということになるのか、この辺もはっきりさせておいてもらいたいと思います。
  219. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 この点につきましては午前中の川俣委員と児童家庭局長論議においてわれわれも承っておりましたけれども、ただいま具体的な内容を検討し、具体的に案ができますならば、財政当局と折衝して対策を講じたい、こういうふうなことで、その趣旨をお答え申し上げておったわけであります。
  220. 島本虎三

    ○島本委員 これは人によって——なぜ児童家庭局長あたり来てないのでしょうか。全局長がそろっているという仮定で私は質問しているのですが、これではちょっと困るのです。そうでないと、大臣一人になってしまいますからね。これはちょっと困るんじゃないかと思うのです。  こういうような点からして、その額はどういうふうに見ておるのでありますか。これは大臣でしょうかね。
  221. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私もそこまで金額等実は存じておりませんが、これは私が先ほども申し上げましたように、参議院の予算委員会で、社会党の田中寿美子先生からの御質問でございましたか、腰痛症が出てたいへんだといったふうないろいろなお話がございまして、これは何とかしなければなるまい、そういうことで、その答弁の中でお答えいたしまして、大体いま基準を大蔵省と実は折衝しているんです。ですから、なるべく早くやれるようになると思います。職員の組織の配分についての定員の問題ですから、間もなくできると思います。
  222. 島本虎三

    ○島本委員 いまもうすでに腰痛症になっている人たちを考えてみたら、間もなくでは、大臣、少し困るのであります。現にそれで困っている人たち、そのためにいま悩んでいる人たちが、いま言った三カ所にはもうすでにいるでしょう。数を申し上げますと、第二びわこでは六十一名いるそうではありませんか。私はあ然としたのです。なぜこれほど女の人たちが腰痛症に悩むほど重労働をしなければならないのか。島田療育園では三十三名いるそうではありませんか。それから、砂子療育園には四十五名だそうです。こういうふうにして見ますと、もう百四十名くらいになるのでしょうか。こういうような状態にしておいて、それだって、大の男じゃございません、ほとんどが女子職員でございましょう。そういうふうにして見ると、これはやはり一日もほっておけない社会問題であるだけでなく、いま日本では公害が世界から注目されているのに、こういうふうな社会福祉施設の中に働く人の、重労働また腰痛症、こういうようなものをいまわっとやられたら、日本の名折れですよ。こういうようなのは、やはり早く処理してやらなければならない問題で、日の当たらない個所で働くこういう悩める人、こういうものを積極的にやってやらないといけないと思うのです。私はそういうような点で、額はこれからだというのですが、これでは困るのです。もうきめてやらないと、困っている人があるのですから、どうにもならないでしょう。  では、数はどのくらい見ていますか。それでないと、いつから金を出すのか、額は幾らなのか、数はどのくらい見ているのか、これもはっきりわからないで、漫然と、対策をしますでは、これは画竜点睛を欠くんです。これは優秀な大臣が、これも大臣答弁か、こういうふうに言われるようになっては困りますからね。私は、いままで失言のない齋藤大臣に失言をさせないためのこれは厚意ある質問であるわけです。この点だけはひとつはっきりさしておいたほうがこの際いいのです。大蔵省もわざわざ来ていなさいますから、ここらで、幾ら出すのか、額はどうなるのか、数はどのくらいなのか、この三条件だけはきちっとしてやろうじゃありませんか。これは必要なことだと思います。これはやってもいいんです。やらないとだめなんです。これは大臣
  223. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 そこまで私も先ほど来申し上げておるように承知しておりませんが、間もなく児童家庭局長が参りますから、答弁をいたさせますが、いずれにしろ、この問題は早く解決しなければならぬ問題だと心得ております。
  224. 島本虎三

    ○島本委員 じゃ、局長が来るまで——大臣、これは大臣でいいんじゃありませんか。大臣、あなたのほうが局長よりよく知っているんだ。
  225. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 数字を私は存じておりませんから、間もなく参りますから、いましばらくお待ちをいただくようにお願いいたします。
  226. 島本虎三

    ○島本委員 大臣でこれは進めたいと思うのですが、それまでだめですな。それがだめだというのはまことに残念であります。  じゃ、健保の問題に若干入りまして、私自身は、食事寮法の問題と健保関係を大いにこれから追及してまいりたいと思うのであります。  その前に、いまのようなこの問題は保留にしておくわけにまいりませんから、大臣局長が来たならばいつでもこの問題を解決しようじゃありませんか。この三条件、これだけははっきりしてやらないとまさに困りますから、いま来るまで待ちましょう。  その前に、今回の健康保険改正法案、これはいま山本委員もちょっと申されましたけれども、給付の改定中心でございまして、値上げ法案ではないのだ、こういうようなことをよく言われているのでありますが、大体金額からしても、給付の改善を大幅に上回る保険料、約二倍の増収をはかるのは、やはりこれは値上げになるのじゃないかと基本的に私は思うのですが、いわゆるこれは値上げであるということにならぬのでしょうか。この考え方が私はわからぬのであります。どうぞひとつ御説明願いたいのであります。
  227. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私からお答えいたしますが、発想は給付改善から始まっておることは、たびたび申し上げておるとおりでございますが、保険制度をとっております以上、それだけの給付改善をすれば、ある程度の負担をお願いする、これは私は、保険主義をとっておる以上、当然だと思います。ですから、保険料率が上がる、その部分だけとらまえれば、確かに値上げであることは私も否定はいたしません。しかし、こういう給付をやるためにこれだけの応分の負担をお願いしたい、これは、保険主義をとっておる以上、当然であると思います。すなわち、ねらいがどこにあるかということで考えますれば、私は、給付改善の福祉立法である、かように考えておる次第でございます。
  228. 島本虎三

    ○島本委員 なるほど名答弁かしれませんけれども、私の場合はそれがちょっと納得できないのです。たとえば、政府の試算によっても、今回の給付改善に要する金額は約五百億円、そうなりますと、今度保険料率とそれから標準報酬の上下限の引き上げ、特別保険料、こういうような被保険者から徴収する金額、この合計が約九百億円徴収されることになるのであります。そうすると、五百億円の給付改善で、徴収するのが九百億円、これであったならば、やはり二倍徴収することになるのでありますから、当然これは値上げだ、私どもはこう思うのでありますが、これをもって、給付改善にして値上げにあらず、こういうような論拠がわからないのであります。いかがでございましょうか。私の質問間違っておるでしょうか。
  229. 北川力夫

    北川(力)政府委員 数字から申しますと、確かに先生のおっしゃるような数字になると思うのです。ただ、今回の改正の基本的な考え方から申しますと、やはり今回はその出発点で一つは赤字のたな上げという問題もございます。それから再出発の段階で一〇%の国庫補助を政管の基礎にぶち込みまして、体質を安定させるという問題が一つございます。それから、八年間近く据え置かれました標準報酬を改定して、被保険者相互間の負担の均衡をはかるという問題もございます。その上で保険料を改定する。また、保険給付を家族につきまして六割でありますとか、あるいは家族の高額寮養費でございますとか、そういった面の改善をいたしますので、そういうふうに分けて考えていただきますと、今回の法律は政管の運営の健全化をはかりながら、しかも給付の改善をするという意味でございますので、数字はもう先生のおっしゃるところかもしれませんが、内容に立ち至って考えていただければ、その辺のところはその趣旨は御理解をいただけるのではないか、かように考えております。
  230. 島本虎三

    ○島本委員 やはりそういうように答弁しても、そう考えられないのが私でありまして、五百億と九百億、五百億の約二倍を取って、     〔委員長退席、塩谷委員長代理着席〕 そうして五百億円の給付だとするならば、これはやはりよけいに取るということには相違ないわけでしょう、原案では。給付は、それはやるのはわかります。いろいろ要件なんかもわかります。しかし徴収のほうが、五百億と九百億なら、約二倍取るということになるので、この点から言うと値上げということにどうしてもならざるを得ないと私は思うのですが、それは違うというならば、私の考え方ががんこなのかもしれません。がんこなのかもしれませんが、どうも数字の面からいうとそうなりませんか。その点をよく納得さしてもらいたいのです。
  231. 北川力夫

    北川(力)政府委員 ただいま申し上げましたように、先生たいへんな専門家でございますから、私は決してがんことかそんなことを申し上げているわけじゃございません。いま申し上げたとおり、その再出発の前提といたしまして赤字はたな上げをする、また、標準報酬のバランスを保つために負担の公平をはかるための改定ということでありますので、結果的には標準報酬の改定ということは保険料の増収ということになっておりますけれども、この問題と純然たる料率の改定という問題とは、中に立ち入って考えますと、やや性格を異にするのではなかろうか、こういう意味合いのことを申し上げたわけでございます。半面、給付の改善には相当なお金がかかっておりますし、両者総合的に考えていただきますと、先生おっしゃるようにこれは値上げ法案である、そういうふうに言うのはいささかどうであろうか。やはり給付改善ということが今回の非常に大きな問題ではなかろうか、このように考えておる次第でございます。
  232. 島本虎三

    ○島本委員 違うというならばなおさらのこと私わからないから、議員としてこれを解明してもらいましょう。そうなると、やはり特別保険料その他の引き上げによって保険者から徴収する金額は約九百億、そして半分の五百億円のお返し、こういうふうになったら、これはどうしても取り方がちょっとよけいである、こういうようなことにならないということを証明してくださいよ。
  233. 北川力夫

    北川(力)政府委員 ただいま申し上げましたとおり、数字の全体をトータルをいたしますと、これはもう計算でございますから、先生がおっしゃるとおりなんでございますが、私どもは、ものの考え方といたしまして、いま申し上げたような整理をしているわけであります。それは、改正なかりせば、満年度の収支で千百七十九億の逆ざやが出るということでございます。それで、まず第一に行ないますことは、標準報酬の負担の不公平を是正するということで改定を行ないます。十万四千円を二十万円までかさ上げをいたします。この分で結果的には四百九十億円の歳入増になります。それから、先ほどからしばしば議論がございました体質の補強ということで、定率の国庫補助を入れますと、それが八百七十三億ということになります。そういうことはいわば一つの前提条件だとわれわれは考えております。その上で給付の改善に要する費用が満年度ベースで七百二十四億、それから保険料率の改定並びに特別保険料で五百四十八億、こういう計算になるわけでございまして、確かに先生おっしゃるとおり、全体の数字をトータルいたしますと、そういうことにはなるわけであります。しかし、いまのようなものを考える場合に整理をして考えますと、給付の改善部分と、それから純然たる保険料の改定部分とは、むしろ給付の改善部分のほうが金目にして多いというような結果になるわけでございまして、そういった改正につきましての内容について私どもはぜひ御理解をお願い申し上げたい、このような趣旨のことを申し上げた次第でございます。
  234. 島本虎三

    ○島本委員 それは全体で考えればそうだけれども、部分に分けて考え方を変えると値上げにならないんだ、便利に、自分に都合よく考えればそうなるのかもしれませんが、数字上約五百億と九百億なら、やはり取るほうがよけいだということになるのであります。それは理解できません。できないけれども、いつまでやっても繰り返しでありますから、次を聞いてまいります。  健康管理体制の確立ということは、今度医療供給体制と並んでいろいろ御議論もあるところであり、われわれとしてもこれは問題にしております。したがって、この長期計画で取り上げるのか、それとも、取り上げるとすれば、どのようなかっこうで取り上げるつもりなのか。特に健康管理体制はよけい保健所が負わなければならないが、その強化対策がさっぱり考えられておらない。これではやはり画竜点睛を欠くのではなかろうかと思います。その整備計画や、ことに従事している人の確保対策なんかに対しては格段の御配慮があるのじゃないかと思うのですが、これについて少し御説明を願っておきたいと思います。
  235. 加倉井駿一

    ○加倉井政府委員 保健所の拡充強化の問題でございますが、これは先生指摘のように、医療供給体制の全体の問題と関連をいたしております。従来、保健所は結核や急性伝染病等を中心といたしまして活動いたしてまいったわけでございますけれども、社会的ないろいろの変化に基づきまして疾病構造が変わってまいっております。したがって、それに基づきまして新たな体制を考えなければならないわけでございまして、これは別の面の医療供給体制と歩調を合わせなければならない面が非常にたくさんございます。したがいまして、こういう面にあわせまして、保健所のあるべき姿を変えていかなければならないというふうに考えております。この問題につきましては、保健所問題懇談会が昨年基本的な事項を私どもにお示しいただきましたので、これとあわせまして各地域のニードに応じられるような保健所の体制を考えてまいりたい、かように考えております。  したがいまして、本年度は実際にどのような条件あるいは問題があるかということで、まず数カ所の保健所を中心といたしまして実験をいたしまして、その結果をもとにいたしまして、次年度以降、先ほど申し上げました医療供給体制とあわせながらこれを計画いたしたい、かように考えております。特に従来の保健所のあり方で申しますと、そこに働きます人たちに対しましていろいろ問題がございまして、職員の充足等に若干難点等もございました。しかしながら、今後の保健所のあるべき姿というものは、保健所に勤務しておられる職員の俸給もさることながら、やはり仕事に魅力のあるようなところにしなければならないということも考えておりまして、そういう問題もあわせまして、先ほど申し上げましたように、本年度実験をいたしまして、それを基本といたしまして同時に検討を重ねてまいりたいと思っております。したがいまして、これも医療供給体制の長期計画にあわせまして実施をいたすつもりでございます。
  236. 島本虎三

    ○島本委員 やはり医療供給体制に比べて健康管理体制というのはもっともっと十分やっていかなければならないものなんです。これが先行しないとだめなんです。ところが、依然としてこれからの研究段階にあるということは、やはりわれわれとしては遺憾だと思います。もっとこれを詰めないといけません。そのためにも今後その方面の従事者の確保というようなものが重要であります。この点は無医村対策の一つとしても——一つとしては別々なんですが、その中においてもこれは重要な問題でありますので、今後この問題に対してははっきりしたデータと申しますか、計画と申しますか、こういうようなものを早く立ててもらわないと片ちんばになる。今後は健康管理体制と医療供給体制、この二つは並行してないとだめなんです。あえて言うと、健康管理体制のほうが先でないとだめなんです。こういうような点がどうもおかしいわけであります。私どもとしては、この点は抜けている、おくれているものの一つだ、これだけははっきり指摘しておかないとだめだ、こういうふうに思います。それに対してはどういうものですかね。これはやはり心配なくはっきりした対策はできますか。できるとすると、いつごろできますか。
  237. 加倉井駿一

    ○加倉井政府委員 先ほど申し上げましたように、本年度いろいろ問題の究明をいたしまして、次年度五十年度から着手をいたしたいと思います。と申しますのは、急性伝染病あるいは従来の伝染病と違いまして、慢性疾患におきましては、各種の情報の総合化が必要でございます。単一の情報によって対策を立てるというわけにはまいりませんので、その情報の収集等に非常にやはり研究すべき、検討すべき点がございますので、そういうものをいかに整備するかということが一つの大きな課題になろうかと思いますので、その方法等につきまして早急に私ども結論を得たい、かように考えております。
  238. 島本虎三

    ○島本委員 では次に進みますが、まだ児童家庭局長来ませんか。来ましたか。——では、次に移る前にこの問題の整理をいたします。  重度心身障害児の対策であります。これは医療福祉施設に働く人たち、重労働によって腰痛症がふえている、この問題によってもうすでにその対策そのものは考えられているようであります。その対策の一つ一つをここでただ単にばく然と考えているんじゃ済みません。ことに大蔵省も来ておりまして、その裏づけも完全にあるわけでありますから、ひとつこの際、腰痛症の代替職員、これに対してのはっきりした構想を三つ、いつから金を出すのだ、その額は幾らを考えているのだ、数はどのくらいを考えているのだ、これでいま詰まっているところなんです。あなたが来ないとわからないということなのです。これは午前中の川俣委員質問に対しての私の疑問とするところなのです。これをはっきりさしておかないと解決になりませんので、この点は大臣はあなたが完全な答弁をするのを待っておられるようでありますから、この点、遠慮しないではっきり答弁してもらいたいと思います。
  239. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 結論から申し上げますと、先生せっかくのお話でございますけれども、いまお話しになりました三点につきましては、いまの段階ではまだ結論が出ておりませんので、ここではっきりいつからどういう対象に対して、またどういう施設に対してどのくらいということはまだきまっておりません。現在検討いたしておりますことは、腰痛症の代替職員ということではなくて、やはりそのもっと源に、腰が痛いというような状態になる勤労条件というものが確かに重心の施設にはいろいろとあるわけでございます。したがって、その合理化と申しますか、解消と申しますか、そういったような対策をどうするかということをいま考えているわけでございまして、平たく言いますと、重心の施設は医療施設でございますから、医療費が財源の主体となるわけでありまして、私どもはそれに重症児指導費という加算制度をつくっておりまして、現在加算をしているわけでございますけれども、この加算制度について現在の何か特別の基準的なものがやりくりでもってできないかということについて検討をしているわけでございまして、その考え方でして、一つの例として、いま検討しておりますのは、各施設について、大体、体重の面から見ると重い子供あるいはおとなたちがどれくらいいるか、そういう重い入所者が多いところについては、やはりそういう腰が痛くなるというようなことがどうしても多くなるわけでございますから、そういうところに何か配慮と申しますか、特別の考え方を適用するということができないかどうか、するとすればどういう方法があるだろうか、それからまた、するとしても、現在のもうすでに四十八年度予算はきまっておるわけでございますから、その予算の限られた範囲内でいろいろとやりくりをしてどのくらいのものがそこに生み出せるかというようなことを総合的に考えて、いわゆる介護体制の合理化というものをいま考えているわけでございまして、四十九年度の問題はもちろんでございますけれども、四十八年度におきましても、いませっかくそうなっていろいろな資料を分析いたしまして検討をしているという段階でございまして、私どもとしてもできるだけ早く結論を出したいというように努力をしているわけでございます。
  240. 島本虎三

    ○島本委員 せっかく大臣の答弁でいいところまでいったのですが、官僚の答弁になると、それからまた下がるのですね。それじゃさっぱりやっていないということになるじゃありませんか。
  241. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 全然やっていないわけではございませんで、現在いろいろと作業をしたり検討したりしているわけでございますけれども、まだきょういまの段階では結論が出ていないということでございます。
  242. 島本虎三

    ○島本委員 四十八年度予算の中で緊急措置として、何か午前中の答弁で、措置費は五千万円ですか六千万円ですか、それくらい皆さんのほうで見ているようなあんばいなんでしょう。そうだとすると、それぐらいの中で全然できないでしょう、緊急の措置は。これくらいでいいのですか。
  243. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 五、六千万という数字は、まだ最終的に確定したわけではございませんで、いわゆる特別基準的な配慮をする場合に、いろいろやりくりをしたらばそのぐらいの金額がやりくりできるかなというような感じのまだ数字でございまして、したがって、現在作業をやっております中でも、大体どのくらいのやりくりがきくかということも、その作業の一つとしてやっておるわけでございます。しかし、私どもとしては、決して何もやっていないわけではないので、やはり限られた予算の中のやりくりでわれわれがいろいろと考えていまして、四十八年度の緊急の措置と申しますか、特別措置というものがどのぐらいにやれるか、またどうやるのが一番いいのかということを現在検討しているわけでございます。
  244. 島本虎三

    ○島本委員 どうやればいいのかという検討よりも、現在もう腰痛症にかかって、その人たちの苦労やその人たちの重労働の現在の状態を思ったならば、どうやったならばこれが解決できるかというようなこれからの措置なんかではおそ過ぎるのです。もっと的確にやらないとだめなんです。いままでの大臣の答弁や大蔵省のほうでは、もうすでにそういうような問題に対しては十分考えているのだ、こういうような答弁なんです。ところが、計画ないのがあなたのほうなんです。これじゃもうすっかり立ちおくれですよ。したがって、もうこれはいつから措置するのだ、額はどれほどなんだ、数はどの程度なんだ、これからだ、これから考えたら、一体この三施設の中の百名をこえるこういうような人たちはどうなるのです。とんでもないマンマンデーです。私はどうしてもこれは納得できない。立てかえ払いをしてでもいいからこれは早くその措置をさせる、こういうようなところまでいかないとだめなんじゃありませんか。それは大臣のと大蔵省のときまではすなおだったのですが、あなたが来たら、なおさら悪くなった。さっぱりわからなくなった。厚生省というのはどういう官庁なんですか。局長大臣の意を体していなくてもいいのですか。私はその点では先ほどの大臣の答弁に納得していたのです。それから大蔵省のそれに対する答弁も納得していた。肝心のあなたが来て、わけがわからなくなった。これはどういうことなんです。もう一回、大臣、ひとつ答弁してみてくださいませんか。
  245. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 局長には、できるだけ早く特別の基準と申しますか、体重の重い、しかも年齢の高いような者をたくさんかかえているような施設には、やりくりしてでも一対一で職員をやれるように組織の配分を運用しろ、こう命令しておるわけで、一生懸命いま基準相談している、こういうことでございますから、私もそう思っておりますし、いま局長は、きょうはあまり具体的にはいいにくいのでございましょう。おそらく腹の中は決心しているものが私はあると思うのです。だけれども、きょうの段階では最終的に申し上げる時期をもう少しずらしたいというふうな御意向もあるのではないかと思いますので、その辺は御理解してあげたらいいと思います。
  246. 島本虎三

    ○島本委員 もう少しはっきり言って、失言に近いようなところまで言ったら、あなたの株ももっと上がるのですが、いつもそこら辺でとまる。一回くらい失言してください。  それで今度は、総花的に全施設にこれを考えるというようなことは当然必要かもしれませんけれども、壊滅に瀕していま死にかけているような人を救済するのは、人道的にも社会的にも当然なんですよ。したがって、これはいま言った壊滅しかけている三施設、この三施設に対しては重点的に緊急対策をとることが必要なんじゃありませんか。その考えはおありになっているのですか、おありになっていないのですか。
  247. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 三施設に限るかどうかということについてはまだお答えできませんけれども、しかし、いずれの施設にもみんなということには私も考えていないわけでありまして、やはり特別の基準的なことをやるには、特別の配慮を必要とする施設というものを対象とするべきだと思うわけでございまして、そういう意味では全部に一律にということではなくて、やはり特定の必要性の高いところにということになると思います。
  248. 島本虎三

    ○島本委員 では、当然この三施設は特別の必要の度合いの高いところだ、こういうようなことになるわけですね。
  249. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 全体の施設の資料の分析をながめて、どことどこにするかということが最終的に決定していくわけでございますけれども、いまのお話のようなところは、やはり当然検討の対象になると思います。
  250. 島本虎三

    ○島本委員 検討の対象になるのがあたりまえなんですね。死にかけているのです。重症です。重症心身障害者を扱っている人たちがもう重症になっているのです。これは厚生大臣としては最も不名誉なことなんです。そういうようなことからして、腰痛症の代替職員、これは緊急の必要がありますから、それに対しては立てかえ払いしてでもやらしてもいいはずじゃありませんか。そういうような人があったならば、立てかえ払いしてやらしてもよろしい、こういうようなところまでも考えているのですか、いないのですか。
  251. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 立てかえ払い云々ということはちょっとお答えできませんけれども、とにかく私ども、いま大臣がおっしゃいましたように、大臣の御指示があるわけでございますから、一日も早くこの問題は結論を出して、実施できるものは実施をしていきたいというように考えております。
  252. 島本虎三

    ○島本委員 依然として官僚答弁はそつがないのでありますが、もう少し具体的に、そうだとか、そうでないとか、言ってもらいたいのです。  そうすると、このいま腰痛症で悩んでいる人たちはどうなるのですか。そのことばだけ聞いたって、これで腰は直らぬでしょう。いままでの答弁で詰まっているのですから、立てかえ払いしてもいいのだ、こういうところまで決意すべきです。何のための社会保障なんですか、何のための施設なんですか、医療福祉施設なんですか。そういうようにして考えてみたならば、ことしはこれが施策としては重点的なんでしょう。重点的な施策がまだまごまごしている。これは田中内閣の命取りになるじゃありませんか。その重大な問題に対して、やはりもう少し詰めた考えをここではっきり示さないといけないと思います。  それで私は、代替職員については敢然と考えてやるべきだ、またやらなければならない、そうして、そういうような人が見つかったならば、立てかえ払いしてでもいいからそれをやらせるべきだ、ここに踏み切るべきです。これに踏み切れないような社会保障はあり得ないし、社会福祉はあり得ない。田中内閣になってからなおさら退歩した、こういうようなことになりかねないわけです。私は、この辺、重大なところだと思うのですが、大臣、これはこの辺で決意して、ひとつ先に進みませんか。
  253. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 先ほど来申し上げているように、この問題はきわめて重要であり、緊急を要する問題でありますから、一日も早く決着をつけさせるようにいたします。
  254. 島本虎三

    ○島本委員 一日も早く決着をつけるように努力する、では、もうそういう人に対しては立てかえ払いしてもいいのだ、あすからでもそれをする、あとの保障は完全に考えてやるのだ、こういうふうに考えてもいいということになりますね。
  255. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 さようなことを申しておりません。
  256. 島本虎三

    ○島本委員 さようなことを申していないとすると、これはもう腰痛症のある人の代替職員は考えておらない、こういうようなことに、初めに戻ってしまうことになりますが、考えているのですか。
  257. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 やはりものには手順がございますので、本省としては基準をつくり、東京都知事を通してそれぞれの施設に流さなければならない、これはもう先生十分御承知のとおりなんで、わかっておっしゃることだと思います。
  258. 島本虎三

    ○島本委員 わからないのです、実際は。わからないから、わかるまで聞きたいな、こう思っているのです。しかし、これはいまも苦労している人があるのです。もうあなたから涙の出るようなあたたかいことばを聞きたくて、ほとんど徹夜してでも待っている人もいるのです。そのために、大蔵省も来て、あなたの答弁に対しての裏づけをちゃんと金の面でしようじゃないか、こういうような態勢も整っているのです。それなのに、局長のほうがまずまず慎重である、大臣に至っては局長より先に出まいとして、一回ぐらい失言してもいいと思うのですが、ほんとうにまたおかたいことでございます。こういうようなことでは、もうすでにこれらの施設にいる人たちの代替職員、これはどうなるのですか。もっともっと悪くなれ、こういうようにして投げてしまうようなことになってしまうじゃありませんか。いつからこれをやれるのだ、見通し、額はどれほどなんだ、数はどれほど考えているのだ、せめて、これで安心して帰れるな、こういうようなことの一言ぐらい言えないものですか。大臣言えなかったら、おそらく自民党の人がそれぐらいやってやれという声援ぐらい飛んでもいいはずなんです。寂として声なし。それではほんとうに私は弱るのです。ほんとうにもうこれは立てかえ払いしてでもいいからそういうような人たちに対しては措置しなさい、私はそう言いたいのです。大臣はそれを言わない。  しかし、もう一回聞きますけれども、この腰痛症の代替職員、これに対しては十分もう皆さんのほうでは考えておられる、こういうようなことであります。またそのように受け取られます。しかし、いつからか、額は、その数はということになると、ぴたっととまってしまうのです。この辺が私たちとしてはまことに残念であります。健保の現在出されているこういうような制度そのものの運営にあたっても、やはりこういうような点があるかと思うと、安心じてこの問題に対してまた入っていけない。当然じゃありませんか。ほんとうに私は残念で残念でならないのでありますけれども、これはもうそれ以上全然ことばはないのですかね、局長
  259. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 先生がおっしゃいました三点についてどうするかということを、いま私どもとしても大臣の御指示を受けまして真剣に検討しているわけでありまして、したがって私どもも、これはできるだけ早く結論を出していきたいというように考えているわけでございます。
  260. 島本虎三

    ○島本委員 できるだけ早くというのはわかりました。それならば、わかったついでに、きまった時点でさかのぼって、六月にさかのぼってこれを実施するのだ、このぐらいまでも当然考えてもいいわけだね、これぐらいしてやらぬとだめですよ。
  261. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 まだ内容的には検討しているわけでありますから、どういうふうな形で実施するかということについては、まだそこまで内容的に詰めてお答えをする時期にないわけでございます。
  262. 島本虎三

    ○島本委員 六月までさかのぼってでもいいからこれを実施して認めてやるんだ、こういうような考え方は少しはありますか。
  263. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 現在、どういう方法でどうやったらいいかということを考えている最中でございまして、まあそういうことができるかどうか、ここでもってお答えをするわけにいきませんけれども、そういった先生のあたたかい御配慮も一応検討の上で結論を出していきたいと思います。
  264. 島本虎三

    ○島本委員 この問題ばかりやっていてもだめだから、これは少し留保して、頭が冷えたころもう一回この問題に触れることにしましよう。あなたはそのままずっと最後までおってください。  これは大臣にちょっとお伺いしますが、私も公害のほうが忙しくてこっちのほうはあまり来ないので、この点は申しわけないと思っておるのです。  新聞報道によると、与党のほうでは今国会で七割給付に答申どおりに検討している、こういうようにいうのですが、与党が検討しているのは、政府が進んで修正したほうが簡単ですからいいんじゃないかと思うのですが、そういう意思はないのですか。
  265. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 政府は、現在提案しておる法律が現時点においては最も適当である。こう考えて提案をいたしておるわけでございます。七割給付の問題につきましては、現在提案いたしておりまする法律が成立した暁に、七割給付を実現するように最善の努力をいたす、こういうことにいたしておるわけでございまして、政府が修正案を出す、こういう考えはいまのところ全然持っていないのであります。
  266. 島本虎三

    ○島本委員 何だかおもしろいですね。成立したならば七割給付にする、しかしながら、これは通すのが前提条件だ、それまではしない。七割にするつもりなら、初めから出してもいいでしょう。そうなんでしょう。与党側もそういうような検討をしているというなら。責任内閣でしょう。やはり自民党多数によって占めた内閣であって、そうしてここに齋藤厚生大臣というものが任命されて生まれたのでありますから、与党が考えていたら政府も当然考えてしかるべきじゃないですか。私はそういうように思っておるのです。したがって政府は、与党が考えておるなら、先に修正してその意思に沿う、これが責任内閣のあり方じゃないか、こう思うのですが、この点、私の考えは間違いでしょうか。
  267. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 与党がどういうことを考えているか、私は承知いたしておりません。政府としては、この法律が成立した後に七割給付実現のために努力をいたします、こう申し上げておるわけでございまして、与党がどういうふうなことをいま考えているのか、私は全然承知をいたしておりません。
  268. 島本虎三

    ○島本委員 全然承知していないといううそを初めてわかりました。自民党員であって、党のほうでどういうふうに検討しているかわからない、そんなばかなことはありませんよ。わかっていながら、わからないふりをしている。そうして、それに対して協力して、通ったならばまた考えてやる。むちとあめを一緒に持ってやるような考え方じゃないですか。
  269. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 そんなことはありませんよ。
  270. 島本虎三

    ○島本委員 そうではないと言ったって、そうだって顔に書いてある。  念のためにお伺いするのですが、どうですか、大臣はPPPの原則を知っておりますか。——そうですか。そうだとすれば、この公害病を保険で見るということに対してはどういうようにお考えですか。
  271. 江間時彦

    ○江間政府委員 現在責任者がはっきりしておりますケースにつきましては、たとえ医療保険で給付をいたしましても、求償権を行使いたしましてお金を戻すということをやっております。現に、過去におきます若干の事例につきまして、政府管掌健康保険あるいは国民健康保険、いずれもかなりな額を戻しております。
  272. 島本虎三

    ○島本委員 この求償の状況と、その具体的な数字をあげてみてください。
  273. 江間時彦

    ○江間政府委員 大体保険全体を通じまして、われわれ持っております数字は、新潟水俣病あるいはイタイイタイ病、四日市ぜんそく、その関係で一億円ぐらいのものを戻しております。
  274. 島本虎三

    ○島本委員 これはやはりPPPの原則からして、少なくとも加害企業が明らかになったときは求償するのが原則です。また、そうしなければなりません。少なくとも保険財政に負担をかけるようなことをしないためにも、これはもうすみやかに実行すべきであります。何件ぐらいいままでやりましたか。
  275. 江間時彦

    ○江間政府委員 全体といたしまして、われわれの手元にあります数字で、大体百二十人くらいの分を求償しております。
  276. 島本虎三

    ○島本委員 四日市裁判の判決がありました。それから、第一水俣の熊本のあれは、もう二千名をこえる認定患者がおるわけであります。第二水俣の阿賀野は、この方面ではすでに終わっておりますけれども、それぞれ相当の数がおるわけです。百二十人とは、これはどういうことでございましょうか。けたを一つ違っているのじゃありませんか。
  277. 江間時彦

    ○江間政府委員 こういうケースにつきましては最終判決が出るのがかなりおそくなりまして、われわれとしましては、責任者が明確化したつど求償権を行使するということでございます。いま先生がおっしゃいましたたとえば熊本の水俣病などにつきましては、まだ補償の決着はついておりません。そういう関係もございまして、求償権を追って行使するという予定にいたしております。
  278. 島本虎三

    ○島本委員 裁判があって判決が出て、いろいろな患者の数が、六派にも分かれておりますけれども、自主交渉派を除く以外は、もうすでにこういうものを受けているはずであります。四日市裁判、不特定多数によるところの共同加害者になっておりますが、あれだって一応判決が出ておるわけであります。それと同時に、第二水俣といわれたあの阿賀野、これに対しても終わっているはずであります。熊本は幾らか、新潟は幾らか、四日市は幾らか、数を出してみてください。
  279. 江間時彦

    ○江間政府委員 申し上げます。  新潟水俣病は三十九人、金額にいたしまして約千三百万円、イタイイタイ病、これは人数にいたしまして七十六名、金額にいたしまして五千九百五十五万円くらい、それから四日市ぜんそく、これは人数にいたしまして八名、金額にいたしまして二千七百五十万円、熊本については先ほど申し上げたとおりでございます。
  280. 島本虎三

    ○島本委員 熊本についてはまだ判決は出ないのですか。
  281. 江間時彦

    ○江間政府委員 最終的な決定を待ってということになっておりまして、できるだけ急ぐ方針でございます。
  282. 島本虎三

    ○島本委員 判決は出ないのですか。
  283. 江間時彦

    ○江間政府委員 判決は出ておりますが、裁判外の補償交渉の決着はまだ済んでおらぬようでございまして、その決着を待って正式に求償額を決定するということでございます。
  284. 島本虎三

    ○島本委員 そのほかに、総理府の中にあります公害調整委員会、いわゆる三条機関、これによる年金の制度まで含めた決定がもうなされておるわけであります。あれは個人を対象としての決定であります。そういうふうになっていてもこれはやはりわからぬのですか。その分だけ全部国民のほうへはね返るわけであります。財政へはね返るわけであります。PPPの原則はちゃんと大臣も知っておるわけでありまして、事務当局のほうでそれを知っていながら依然としてこういうふうなマンマンデーの態度をとっているということは、私はわかりません。これは何か間違いではございませんですか。
  285. 北川力夫

    北川(力)政府委員 いまのお尋ねの中で、水俣市でございますが、きょう水俣市のほうで、国保のほうで求償することをきめたようでございます。
  286. 島本虎三

    ○島本委員 水俣市だけですか。
  287. 北川力夫

    北川(力)政府委員 現在のところ、水俣市でございます。
  288. 島本虎三

    ○島本委員 第一次水俣病は水俣市だけで発生したのですか。
  289. 北川力夫

    北川(力)政府委員 これはほかにもあるわけでございますが、きょう決定になったのは、水俣市の分について決定をした、そういうわけであります。
  290. 島本虎三

    ○島本委員 これはもうすでに数にして二千になろうとして、新たに認定を受けようとしている人が千なんです。医者が足りなくて、その手続や方法が十分進捗しない状況なんです。それなのに、依然として百二十名しかないというこの考え方が、私は理解できない。この分だけ保険財政のほうへみんなくるわけでありますから、どうもこういうような点をやってみると、財政対策を十分考えていると言いながら、まだまだずさんな点があるんじゃありませんか。そういうような点で、大臣はちゃんとPPPの原則はわかっているからそれはいいけれども、事務当局もこれに対応してもっときちっとやる必要はございませんですか。
  291. 江間時彦

    ○江間政府委員 先生の御指摘ごもっともでございます。われわれもできるだけ急ぐ方針でございます。ただ、やはりこの種の案件は、被害を受けた人をまず一義的に救済する、その決着を待ってから求償権の行使はやはり必要であるというような感じで事が進んでおるわけでございまして、したがって若干の遅延がございますが、しかし、少なくとも先生のおっしゃったように、保険財政の観点からこういうものについて明確な求償権の行使をし、そうして保険財政に損害を与えないということだけはしっかりして……。
  292. 島本虎三

    ○島本委員 しっかりしているというのですか。
  293. 江間時彦

    ○江間政府委員 しっかりいたしたいと思います。
  294. 島本虎三

    ○島本委員 いたしているのですか、いたしたいのですか。
  295. 江間時彦

    ○江間政府委員 しっかりいたしております。
  296. 島本虎三

    ○島本委員 しておるのですか。そこを、語尾がはっきりしない、語尾が。
  297. 江間時彦

    ○江間政府委員 しっかりいたしておるつもりでございますが、さらに一生懸命やるつもりでございます。
  298. 島本虎三

    ○島本委員 百二十人なんて、こういう数字しか把握していないところに、ずさんさがあるのです。これはもうあなたを含めてほとんど何らかの水銀中毒患者になりつつあるのが、いまの日本国民なんです。百二十名とは何事ですか。これをもっとはっきり求償権を発動するために調査活動を展開して、そしてこれはもう明確にすべきです。PPPの原則は、もう総理大臣はじめ、世界の常識ですが、その点になってまいりますと、どうも厚生省は一番ゆるやかなようであります。これは許されません。であるのに、百二十人。イタイイタイ病、四日市ぜんそく、川崎を含めた横浜ぜんそく、そしてこれまた第一水俣、第二水俣全部含めて、おそらくは万に近いほどの患者がいるにもかかわらず、百二十名、これしか求償していない。これはどうも、委員長、あまりにずさんですな。しかし、これに対しては、まだできていないのをこれ以上言ってもしょうがありません。早くやらないと保険財政そのものに対して厚生省が赤字に協力することになるわけであります。ですから、この点はきちっとさせるのが目下の急務だ、私はこういうように思っておるのであります。この点だけは私としては御忠告を申し上げておきたい。百二十名なんてばかな話はありません。もう少し具体的にこれを調べて、資料として私のほうへ出してもらいたい、これを要求いたします。委員長を通じてよろしく言ってやってください。
  299. 北川力夫

    北川(力)政府委員 求償権の行使は、やはり判決が確定したものについて行なっておりますから……。
  300. 島本虎三

    ○島本委員 みんな判決は終わっているよ。
  301. 北川力夫

    北川(力)政府委員 ですから、いまお尋ねの点もございますので、資料は十分整備をいたしましてお届けいたします。
  302. 島本虎三

    ○島本委員 それと同時に、政府のほうでは現在のこういうような状態を救済するために、公害健康被害補償法というようなものを大臣は準備している、また、しなければならない、こういうようなことが発表になったように私は記憶するのでありますが、これはやはり私は先見の明を誇ってもいいんじゃないかとさえ思うのであります。しかし、いま起きてきてからこれをやるということは実際おそいのであります。しかし、あるにこしたことはございませんが、健康被害補償法というものは、健保との関係はどういうようになるのでございましょうか、この点を解明してもらいたいと思います。
  303. 北川力夫

    北川(力)政府委員 この制度ができます前はいまのような求償関係ということが出ておるわけでございますけれども、この制度ができますと、公害病患者の医療につきましては、保険とは関係なしに特別法として全額この補償制度から補償額が支給される、こういうことになります。
  304. 島本虎三

    ○島本委員 この問題、私は一つの疑問点でございますから、これも解明しておいてもらいます。  高額医療費内容、これは法定ですか、政令に落としているのですか。これは政令だとすると、何のために政令なんでございましょうか。
  305. 北川力夫

    北川(力)政府委員 これはもう先生も十分御承知のとおり、現在は非常に高額な療養費を要する疾病が多くなっている実情でございます。そういうために今回この制度をつくったわけですが、やはり疾病の態様あるいは医療内容、そういったものもだんだんと変化を来たしてまいりますし、そのときそのときの社会的な条件に応じたものをこの高額療養費の対象として取り入れなければならぬというような実情もありますので、そういう意味合いから申しまして、この高額医療費の額とか、あるいは支給要件とか、そういったものは政令で定める、こういうふうなことにしたわけでございます。  なお、この政令で定めます場合にも、支給要件等を定めます場合には、現在提案いたしております法案にも書いてございますように、専門審議会である社会保険審議会に諮問をいたしまして、そこで十分に関係者の意見を反映する、こういう仕組みになっております。
  306. 島本虎三

    ○島本委員 関係者の意見を反映させる、これはいいのですけれども、ただ、一つ疑問の点は、これは法定しないで政令によるという、政令そのものは内閣がこれを行使し得るわけでありますから、法による制約をのがれるために、そして、かってないと言っては失礼ですが自由裁量を残すためにこれを政令にしたわけでありますか。なぜ法定しないのですか。この辺の解明だけはきちっとしておいてもらいたい。
  307. 北川力夫

    北川(力)政府委員 いまも少し申し上げたのですけれども、高額療養の対象になる疾病あるいは高額療養費そのもの、そういうものも、社会環境の変化とかあるいは疾病構造の変化等に伴いましてだんだんと変動をしていくと思うのです。そういう意味合いで、法律で固定的に考えますよりは、政令段階でその辺はそのときどきの社会条件に対応できるように柔軟に対応していく、こういう意味合いで政令に委任をしているわけでございまして、決してかって気ままな自由裁量で行なうために政令に委任しているわけではございませんので、その辺の実情は十分に御理解を願いたいと思います。
  308. 島本虎三

    ○島本委員 たとえば国民生活に一番影響のある、またそういうふうなことのしきたりになっている郵便料金、そのうちの第一種、二種、こういうようなものは法定になっております。特定の人は出すけれども、さほどでもないというような小包や別な種類のものは、やはり省令に落とされている。大事なものは法定するわけです。そうすると、この高額医療費の問題については、これから社会情勢が複雑になってくるし、公害等の発生によってなかなかつかみ得ないものがある、ことに有機水銀の中毒になったら、ほとんど生まれてくるのは植物的生存をあえてしいられるような、脳神経をおかされた人が生まれる、こうなってしまえば、すでに高額療養費の範囲を越えてしまう、そういうようなのがこれからだんだん多くなってくる。そうなった場合には、これははっきり法定しておいて、それによって完全な救済をはかるのがやはり厚生省のたてまえじゃなかろうか、こういうふうに思うのであります。そういうような点を、自由裁量を残しておいてというような考えで法定しないで政令に落とすのかどうか、この辺をきちっとしておいたほうが将来のためにいいのです。と申しますのは、いまの社会情勢、経済情勢からして、高額医療費の適用を受ける人たちが今後はますますふえてくる可能性があるからであります。この点についてはもう一度はっきり国民のために解明しておいてください。そうでないと、将来運用を誤られたらたいへんであります。
  309. 北川力夫

    北川(力)政府委員 確かにただいま先生の仰せのとおり、現在は高額の療養費を要する疾病がだんだんとふえつつあることは事実でございます。こういう疾病をどういうふうに処理するかということにつきましては、医療保険の分野で、本人はまあ十割給付でございますけれども、家族のほうは、今回、いろいろ御批判はございましょうけれども、とにかく五割の壁を突破いたしまして六割まで給付率を上げる、残ったところは高額療養費でできるだけカバーをしていく、こういう仕組みをとっておるわけであります。また、いま先生のお話にもありましたが、そういった特定疾患につきましては、いわゆる公費負担医療というようなものもだんだんと充実をしてまいっておりまするから、そういう意味合いで彼此相補って新しい疾病構造の変化に対応していく、これが現在の全体的なかまえであろうかと思います。そういう場合でも、いま申し上げましたように、高額医療費の対象になるものについて、なお非常に激動する社会状況を考えますと流動的でございますので、そういう意味合いでは、私どもはむしろ、自由裁量というような御批判がありましたけれども、そういう意味ではなくて、この制度をほんとうに価値あるものにする、この制度をほんとうに実効あるものにする、時代に即応して実効を発揮せしめるためには、やはり政令段階で流動性のあるものにしたほうが現在的な要請により多くこたえ得るのではないか、こういう気持ちで立案いたしましたのがこの制度の仕組みでございまして、その辺はひとつ御理解を願えれば幸いかと存じます。
  310. 島本虎三

    ○島本委員 それならば、もう少し、法による制約をのがれるためじゃないのだ、将来これらに対して改善をはかっていくためなんだと、一言でずばっとなぜ言わぬのです。そう言えばいいでしょう、それなら。
  311. 北川力夫

    北川(力)政府委員 いろいろ言い方はありますから、まあ先生のような非常に明快なおっしゃり方もございますし、また、私が申し上げましたような、やや複雑でございますけれども、立ち入った言い方もございますし、その辺は先生とあまり私は意見は違わないと思っております。
  312. 島本虎三

    ○島本委員 意見は違わないと言うけれども、どうもあなたのほうは含みがあるからだめなんだ。含みがあり、複雑になればなるほどあやしいのです。複雑にしておくとどうもあやしいのです。ですから、簡単明快に言う機会を与えているのに、あえて言わない。言わないから私のほうで言ってやると、そうであるかのようで、ないかのようだ。それじゃ、高額医療費のやつをせっかくつくっても、これは困るのじゃありませんか。一言でずばりと言える機会を与えているのに、なぜ言わないのですか。これはそのためだと言うと私はやはり理解できるのですね。そのためでないとすると、これまた法的な制約をのがれるためだ、こういわざるを得ないわけですね。将来改善をはかるためなんだと言えばいいのに、そうであるかのようで、ないかのようだ。これは、大臣、どうですか。
  313. 北川力夫

    北川(力)政府委員 どうも私の答え方がはなはだことばの選択が不十分なものでございますから、先生の御理解をいただかないので残念でございますけれども、簡単に申しますと、おっしゃるとおり、これはもう一般的な意味では改善をしていく、そういう意味合いでございますから、どうぞ誤解のないように御了承いただきたいと思います。
  314. 島本虎三

    ○島本委員 初めからそう言えばいいじゃないですか。  それで、WHOの憲章、これは、大臣、十分御存じでございましょうが、あの中に健康という定義があるのですね。健康の定義、あれを御存じでございますか。健康を扱うための保険をやって、健康の定義を知らないわけはないでしょう。
  315. 加倉井駿一

    ○加倉井政府委員 原文をただいま持っておりませんので、正確かどうかわかりませんけれども、精神並びに身体の疾病状況がないばかりでなく、社会的にも安らぎの状態にあることを健康という、大体そういう意味だったと思います。
  316. 島本虎三

    ○島本委員 健康とは、肉体的、精神的及び社会的に完全によい存在である状態であって、単に疾病や虚弱の欠除ではない、このことですか。
  317. 加倉井駿一

    ○加倉井政府委員 そのとおりでございます。
  318. 島本虎三

    ○島本委員 WHOの憲章ではこういうふうにはっきりきめているわけですね。健康保険や何かも、健康とはこれなんだということで、これに準じていろいろ、健康をおかされた場合の対処、それが保険による場合はこれだと、政府管掌の健康保険、それはもう当然ここに導入されるわけですね。そうなんでしょう。
  319. 北川力夫

    北川(力)政府委員 健康保険で申しまする保険事故は、健康保険法の規定に書いてあるとおりでございますけれども、その精神、趣旨とするところは、やはりただいまお話しになりましたところにもあると思います。
  320. 島本虎三

    ○島本委員 にもあるということは、これはWHOに日本だって責任を持たなければならない状態でございましょう。そういうふうな段階なのに、にもあるなんてよそごとのように考えられるなんて、それは無責任です。これはもうそうだとすると、それだけですか、そのほかに政府のほうでは知っていながら知らないそぶりをしているような問題はございませんか。
  321. 北川力夫

    北川(力)政府委員 私、ちょっとただいまの先生の御質問の趣旨を少し十分に理解しない点もございますが、どういうことでございますか。
  322. 島本虎三

    ○島本委員 確かにいま言ったような点が書かれているのです。それは一九四六年に採択されて批准されたWHOの憲章、これは二十六行で、そしてこれがいま言ったようなやつがぴっと書いてあるのです。ところが、政府のほうでもそれだけを宣伝するのです。その一番うしろのほうに書かれている英文の三行のはう、それをさっぱり宣伝しなさらないのです。その三行のほうは、すなわち、政府はそれぞれの国民、ピープルズの健康に対して責任を持つ。それは適当なヘルス・アンド・ソシアル・メジャーの供給によってのみ充足され得る。これはもう三行のうちに書いてある。こっちのほうの政府責任のほうを翻訳しない。そして目玉商品だけをちゃんと、これはWHOの憲章だといって出しておる。その肝心な三行はちゃんと政府責任をここにはっきり規定してある。この辺が少し私としてはおかしいと思っています。しかし、まさにこのWHOの憲章に値する文章、この三行、これをなぜ抜いてあるのか。国の責任という重大な意味が抜けている。これは今日のような環境破壊、公害、こういうふうなものが発生した、それはその結果である。まあこういうふうに考えられるでしょう。それについて、これは肝心の点が、国の責任という点が抜けておる。これがWHOの健康に対する一つの定義である、こういうふうに言ってきたということは、私はこれは重大だと思うのです。最後の三行を抜いて国民にアピールし、政府責任をはっきり明確にこういうふうにうたわないということに対して、大臣はどうお考えですか。
  323. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 WHOの健康の問題の中の最後の、先生の御指摘の問題は、確かに重要な問題でございますが、一般的に、私の理解では、WHOの国際的な一つの連合の宣言と申しますか、そういう趣旨でございますので、一般的には各国政府という読み方にしてございまして、それを受けて、それぞれの国勢なりあるいは国家の体制に応じてその健康の問題に対する施策を、先ほどおことばにもございましたように、いろいろの手段方法をそれぞれ選択いたしまして実施するという意味理解しておりますので、この場面では政府ということばが使われている、しかし、必ずしもそれが政府がどの程度の役割りをその事業の中でやるかは、各国のそれぞれの置かれた実情に応じて対応すべきであるというふうに私は理解いたしております。
  324. 島本虎三

    ○島本委員 これは条約であります。条約をかってにあなたが理解していいのですか。それによって、肝心の政府責任、こういうふうなものに対して、それを抜かして自分かってにこれを考えるということを表明していいですか。それは少し行き過ぎじゃないですか。  政府、これは複数になっていますね。それぞれの国民、これはピープルズとなっていますね。その健康に対して責任を持つ。それは適当なヘルス・アンド・ソシアル・メジャーの供給によってのみ充足され得るわけでしょう。この肝心な、英文にして三行、いま私が長々と言いましたけれども、これを抜いているところに大きい問題があるということなんです。あなた、わかっていながらそんなかってな解釈をしているけれども、この健康というものを考えれば、環境であるとか、食事であるとか、運動であるとか、この三本の柱が健康維持の基本的な概念だ、こういうようなことをちゃんと言っているのです。各国もそれを守ってやっているわけです。肝心のところだけ日本政府はそれを発表しないわけです。大臣はわからないなんてうそを言っていますけれども、あなたなんかまっ先にわかっているのだ。このうちの食事と環境、これを重点的に取り上げて今後当たらなければならないのが、国際的な日本の義務、同時に国民に対する政府責任、こういうようなことになるのですよ。そうじゃないのですか。これは、大臣、そのとおりなんですから、簡単な答弁で言ってみてください。
  325. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 よく私も存じませんが、翻訳の際に落ちておるというお話、よく私も理解できないんですが、落ちているならば直さなければならぬだろうと思います。
  326. 島本虎三

    ○島本委員 落ちているなら直さなければならないと思いますだけですか。落ちている中でこれはもう健康というものの考え方がすでにずれてしまったのです。環境、食事、運動、この三本の柱が健康維持の基本的概念、これでなければならないということも国際的にきまっているのです。したがって、食事、環境、こういうようなものを重点的に取り上げなければならなかったのです。環境を重点に取り上げないから、公害でしょう。食事を重点的に取り上げないからこそ、現在のような、いろいろな健康だとかなんとか、こういうようなことに不十分な施策しかできないということになるわけです。もっともっと広くこの問題を考えて政府としても国民を指導すべきなんです。そこなんです。ですから、政府のほうとしてはおそらく健康のためには医療のほうだけ考えている。肝心の食事だとか、環境であるとか運動、当然これは保健所を通じてせなければならなかったかもしれませんが、その欠陥は別にして、この総体的な一つの仕組みを考えておらなかったわけです。健康というと、病気になった人をただ医者にかければいいんだ、そのための金に対しては保険制度によってやればいいのだ、この程度考え方、これが日本の現在の深みに入ってしまった一つの重大な欠陥だと言うのです。大臣もそういうような点に対して今後は十分気をつけて対処しなければならないと思うから、それで私こう言っている。どうも困るのですが、答弁を求めたいのですが、私のほうが言わなければだめなようになってしまった。健康維持であるとか、偶然にも私は公害のほうをやっているものですから、こういうような点だけは気になることなんです。いかに保険をやっても、それ以上の病気が次々と出てくるような原因をそのままにしておいてはだめなんです。環境を整備するのが健康の中の重大な柱だ、こういうようなことになっているのです。それなのに、そういうようなのがことばになって出てきたのは明治、大正を経て最近だけですよ。これがいまの政府の重大な欠陥なんです。財政方式や何かを取り入れた健康保険法の改正によって国民の健康を全面的にやってやる、まだそこまで考えも行動も全然やっていないじゃありませんか。それで健康維持、疾病の基礎的な治療、そういうようなことに対して食事療法が最も良心的な医療行為として考えられるわけです。それについて厚生大臣は忘れているのじゃないか、こういうように私は思っているのです。食事というと、食べるほうの食事です。昔は食餌と書いたのですが、いまは食事と書くのです。やはりこれは医療行為として食事から考えていかなければならない問題だということだろう、この辺まで、初歩的でありますけれども、私も考えますが、大臣も、このWHOの健康の原則からして、当然この辺からもう一回健康保険法の改正法案が出たのを機会にして考えようじゃありませんか。これはやはり考えてくださいますか。
  327. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 食事、環境、運動という、健康をささえる三つの大きな問題について非常に御熱心にお話しをいただいたわけでございまして、私も、承れば承るほど、ごもっともな御意見だと考えております。ただそれが、御承知のように、保険というのは経済負担の問題の処理方式の問題でございますから、保険でやるかどうかということは別として、基本的には、やはり健康管理ということが基本であるということについては全く私も同感です。病気になってから、さあお医者さんに行って、そのお医者さんに払う金を保険によって安くしてもらうとか、ただになるとかいうことであってはならないのです。やはり基本的にはすべての国民がその健康というものを管理する、そして国がその管理をするにあたって必要な授助なり助言を与える、必要な施設をつくってあげる、必要な制度をつくる、こういうふうになるべきものと理解いたしておりますので、今後はそういう方面にできるだけの力をいたすようにいたしたいと考えております。
  328. 島本虎三

    ○島本委員 そこから発しまして、いま人工じん臓、これが高額医療費の一つとして考えられておるわけでありますけれども、この人工じん臓、これはもう無料ですか、それとも高額医療費をそれぞれ支払っておりますか、これはちょっと初歩的ですけれども、聞かしてください。
  329. 北川力夫

    北川(力)政府委員 人工じん臓は、保険医療としていわゆる現物給付として支給しております。
  330. 島本虎三

    ○島本委員 現在この人工じん臓が高額医療費の一つとしてあるわけですね。この人工じん臓による治療患者のうちの八〇%が、この肝心な食事療法による失敗によって死亡している、こういわれておるのです。これは人間として最も重要な機能の一つとして現在人工じん臓が高額医療費の一つとして存在しておるのに、人工じん臓による治療患者のうちの八〇%が、食事療法による失敗によって死亡しているということ、これを聞いて私はちょっとがく然としたのです。はたしてそうかなとさえ思ったのです。そしてこの食事療法の良否、これが透析回数を大きく左右するというのです。そして、現在多くの病院では週二回か三回の透析を行なっているのですけれども、この透析回数も、食事療法、これを十分行なうことによって、それが二回、三回から週一回の透析で臨床的に何ら異常が見られない状態になる、こうなんです。そうすると、このことは、いまの健康保険ですね、この対策としてもやはり無視できない重大な問題じゃないかと思うのです。私自身、これも意外な問題ですから、ちょっと書いてきてあるのでありますけれども、こういうような食事の問題いかんによってもそれほど影響があるということ、これはやはり今後十分考えないといけないと思うのです。健康保険法を運用するためにもこれは重大です。したがって、これはもう患者自身にとっても、一回で約五万円ほどになるのですか、そういうようにいわれておりますけれども、かりに週三回の透析としても、これまで年間七百二十万円費用がかかるということになります。それがやはり二百四十万円に軽減するということができれば、まさにこれは注目すべきことだと思うのです。それが食事療法によってこれが可能だということになると、これはやはり十分肝に銘じておかなければならない問題だと思うのです。そこで、参議院の社会労働委員会でしたか、この問題に積極的に取り組んでいくということだったように私は記憶しておるのですが、参議院の議事録でしたか、衆議院の議事録でしたか、何かそれを私見たのです。ですけれども、依然としてこれはまだ考えられておらないようであります。  それで、栄養士というのがあるわけです。この栄養士の業務内容、これまでの調理中心から、慢性疾患などの患者の栄養相談業務を最重点として指導していくのだ、こういうようなことをどなたかおっしゃっているのですけれども、これは本年はどのように改善なされておるのですか。これは滝沢医務局長にお伺いしたいのであります。
  331. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 栄養士の仕事の所管は、栄養課を持っております公衆衛生局でございますが、御指名でございますし、また私も過去に公衆衛生局長をやりまして、この問題についていろいろ先生の御質問に応じたこともございますので……。  確かに、人工じん臓と食事療法、特に栄養指導の問題は、先生の御指摘のとおり、きわめて重要な問題でございますので、人工じん臓だけがほぼ的確にできましたということだけでは、食事の指導が、本人の理解あるいは食事を実際とる上で適切な食事療法がなされませんと、人工じん臓の効果は適切にならないわけでございます。そういう点を含めまして、今後われわれは栄養士の病態栄養の指導等の力をつける必要がある。それには、非常に率直に申しまして、栄養士の学校養成のカリキュラムまでやはり検討する必要があるのではなかろうか、あるいはさらに、卒業後、病態栄養士というものに対する特定な認定というものも検討してはどうかというのが、私の個人的に持っておる見解でございますけれども、しかし、国家試験後二重にまた資格を云々することはなかなかむずかしい問題でございますので、それらは全体としての栄養士の資質を高める必要という点からいけば、栄養士の養成課程、カリキュラムをやはり検討して、管理栄養士等を含めてこの問題を検討する必要があるというふうに思っております。
  332. 島本虎三

    ○島本委員 これは、前回滝沢局長の答弁しておることから私はこれを言っておるのでありますから、あなたを特に指定したのはそのためなのであります。あなたの答弁によって私は学んだのであります。しかし、まだそれは医療法の定員が百床以上一ということになっておるようですね。国立の予算では二・二人の栄養士、こういうことになっておるようですね。それで本来の栄養士の栄養相談業務がこれは何%ぐらいになるか、一〇%程度というわけですから、これは少なくとも百床当たり四・四人の栄養士が必要だ、こういうようなことになるわけです。また、その義務必置というのですか、こういうようなことも当然考えていかなければならない状態である、こういうようなことなのでありますけれども、いわゆるこの栄養士の増員予算としてこれはもう見込まれてありましたかどうか。また、これに対して滝沢局長は答弁においては十分覇気があったのですが、その後のあらわれた結果は、あまり情勢の進展が見られないようなのであります。この点で栄養士の待遇等についてはこれは十分改めていかなければならないし、これもいまの健康管理の上からいえば必要なことなのであります。これも忘れられておる場面なのであります。この点はあなたはかつてすばらしい答弁をしておるのでありますが、あなたは、いま言ったようなことからして、この栄養士の待遇改善について特に措置されないというのはどういうわけなんですか。
  333. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 人事院の例の医療職の給与表を改善いたしますことは、直接的には国家公務員の給与の改善につながる問題でございますが、一般的には、看護婦さんの場合でございましても、やはり官主導型と申しますか、国家公務員の看護婦さんの給与の改善ということが、全般的には民間その他の看護婦の待遇の改善に実績的に従来つながっておりますし、そういう点からも、栄養士の場合、あるいはレントゲン技師の場合、衛生検査技師その他一般的に医療従事者の待遇の改善は、毎年人事院に医務局からも申し入れ、近く大臣にも人事院総裁にお会いいただきまして、本年度は特段看護婦の問題等を中心に処遇の改善をお願いいたしておるわけでございます。そういう点を通じまして、一般的に医療職の職員の給与改善に努力いたしたいと思うのでございますが、特殊な病態栄養の指導というのは、そのような指導力のある栄養士がいまの教育制度の中からはそうたくさんは出てまいりませんけれども、各病院ともその必要性が現実にあるわけでございますから、栄養士と医師と看護婦のタイアップが年々現実の姿としてふえております。したがって、医療法の規則の中で、百床以上に一人という規則になっているのは古いのじゃないかという先生の前々からの御指摘に対して、現実には一人以上、二人、三人と入っております現実に照らしまして、看護婦が四人に一人という先日御指摘がございました事柄も検討を命ぜられておりますので、医療法の規則の中でそのような医療従事者を特定して数を設定しているのは現実的でなくなってきている問題につきましては、全般的にこの運営を医療機関の運営とも関連を考えながら規則の改正を検討いたしたいというふうに思っております。
  334. 島本虎三

    ○島本委員 次に、私もやはりいろいろなことを聞いてみたいのですけれども、その中で、健康そのものの基本ということも考えておかないと困るからこそ、私自身としてもこういう問題と取り組んでみたのです。  本年度の予算で、栄養相談室の設置、これを予算化した病院というのはどれくらいありますか。私は、そのための栄養士の増員、専任化する必要、こういうようなものがあると思うのですが、これに対する取り組み方や指導はどうなっておりますか。従前どおり何らなされていないではありませんか。この現状についてどうなっていましょうか。どなたでもけっこうです。
  335. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 国立病院の場合については、先生も過去のいろいろの御質問の中で、特に糖尿病のクリニック、糖尿病は栄養指導ということが非常に重要でございます。先ほどは人工じん臓の御指摘がございましたが、その点では、たとえば例を国立の京都病院等に引きますと、栄養士等を配置いたしまして相談窓口を実施いたしております。そのような施設は逐次国立病院の中に開局いたしております。他の一般医療機関については、病院の管理、運営の立場で自主的におやり願っているので、特段補助対象にするとか、あるいは特段通知を出してそれを指導するというようなことはいたしておりません。これは病院が病院管理の立場と患者サービスの立場と、あるいは患者に対する栄養指導の立場から、栄養士の相談窓口あるいは糖尿病患者等に対する指導、こういうものをいたしておるのが実態でございます。
  336. 島本虎三

    ○島本委員 どうもあまり基本的なこういう問題にばかり携わっていては困るのですが、やはり問題は健康ですから、その保障のための健康保険ですから、そういうようなことを言うと、健康に対する概念、こういうようなものをしっかりしていないとだめなんです。せっかく優秀なる齋藤厚生大臣が所属しております田中内閣は、やはり中国との国交の正常化、これを手がけたという一つの功績があるのです。しかし、医療の発生を考える場合に、中国に学ぶべき点もあるわけです。これは三千年くらいですか、それくらいだと思うのですけれども、やはり中国においても食医というものがおったのだそうです。お医者さんは食医だ。イタリアなんかにおいても、内科医のことをダイデスタといっているようです。これは食事の医者、こういうふうに呼ぶのだそうですね。これは局長もよく知っているとおり、ヒポクラテスですか、医者の神さまですけれども、これは、医療の最初は食事療法であるとさえ言っています。したがって、古代においてさえも、疾病予防や治療の基礎的な手段としてまず第一に食事を考えておったということですね。ところが、食事療法で治療してなおらないものは、次には薬餌療法に入っていった、それから外科療法という順序に進んでいっているわけです。いずれも食事療法が基礎になっている、また前提になっている、この条件をいついかなる場合でも私どもは忘れてはならないと思っているわけです。こういうような考え方は、いまの科学文明の進んだ時代にあっても忘れてはならない原則である、こう思います。この考え方について、いまの保険そのものは、薬を中心にして考えている、また療養そのものを中心にして考えている。しかし、その実は、もう少し前に健康の原理からして考えるべきものは食事というものもあったのだ、医者の始まりは食事に対する医者だったのだ、こういうようなことであります。そういうような考え方からして、私は、食事療法というもの、それから現在の制度の中にこれらをきちっとしてやるということが、とりもなおさず、いわゆる健康を保持するために重大な一つの要素になっているということ、これを考えておいてもらいたいということなんです。  したがって、いまのような原則が日本医療の中にだんだん忘れられようとしておるわけです。古きを何とかということばがありますけれども、そういうふうに見ると、ことしを機会にしてもう少し考え方を一歩前進させてもいいのじゃないか。ただし、案外、根本的、基礎的には、古い三千年前のこういうような一つの教えがあった、こういうようなこともわれわれとして勉強してもいいのじゃないかと思うのです。この点を今後十分考えて医療保険なんかに対処していかなければならないし、健康を保持する重大な要素にしていかなければならないのだ、こういうふうに思っているわけなんです。今後はそのためにも、現在の病院においての食事療法、医者や栄養士、看護婦、これはチーム医療によって行なわなければならないということ、これが基本的な問題として忘れてはならないのじゃないかと思うのです。  ですから、いろいろな問題がありますけれども、特に慢性疾患なんかの場合には、食事療法が長期間必要になるわけです。したがって、家庭においても、入院中と同様に、帰ってきても食事療法が行なえる、こういうようなことにしておかないとだめだ、これが一部にいわれていたわけです。  そういうような特殊用途の食品の規格、基準をつくる、こういうようなものが考えられ、進められてきているわけです。厚生省のほうではこれは十分知っていると思うのですが、この特殊用途食品の規格、基準をつくる、こういうようなものはどういうふうに考えられていま進行しているのですか。
  337. 加倉井駿一

    ○加倉井政府委員 従来、特殊栄養食品につきましては、ビタミン等の添加につきましてのその容量が申請の内容に合致している場合には、特殊栄養食品ということで認可をいたしてございます。しかしながら、ただいま先生の御指摘のようなこともありまして、たとえば食品の量を減少いたしましたものとか、あるいは低カロリー食品等が疾病の治療上必要ということになってまいりますと、その基準等につきまして、栄養審議会を通じまして基準の作成をいたしまして、それに合致した食品につきましては、ただいま御指摘の食品といたしまして販売の認可をさせるという方向に向かっております。
  338. 島本虎三

    ○島本委員 どうも十分理解することができなかったわけです。しかし、ちょっと進めさせてもらいたいと思う。これは理解するまで議論する問題でもありませんから。  この特殊用途食品の発売場所、こういうようなものは自由ですか、限定していますか。
  339. 加倉井駿一

    ○加倉井政府委員 自由でございます。
  340. 島本虎三

    ○島本委員 そうすると、利用方法なんかでいろいろなトラブルが起きることも当然考えられるわけですが、これは昔から薬餌といって、薬も食事も同様に重要なものだ、こういうふうに考えて、発売場所を許可制などにしたり、栄養士を必置する、こういうようなことに対しても十分考えておかないと、またせっかくのいい発想が、そのようなちょっとした手抜かりによって重大な一つの欠陥をはらむことにもなる、こういうふうに思うわけです。現在そういうような点を私は考えておりますけれども、これはどういうような方向に進んでいるのか、また、いま私が心配したようなことは十分考えているのか、この点等についても問題があると思いますから、これはもう十分に考え、これを早く改善するような措置をとったほうがいいのじゃないかと思うのです。これはどうでしょうか。
  341. 加倉井駿一

    ○加倉井政府委員 御指摘の点は、おそらく医療食という問題かと存じます。この問題につきましては、現在医療食協会がその品物の取り扱い等につきまして指導をいたしております。この医療食の販売につきましては、医師の処方せん、食事せんが出ましたものにつきまして、栄養士の指導のもとに、それの購入並びに取り扱いがなされておりまして、この方向が、私どもといたしましては望ましい方向だということで考えております。ただ、現在の段階におきまして、いろいろまだ問題があろうかと思いますので、御指摘の方向に、よい方向に向かうように私どもは検討し、さらに前進さしてまいりたい、かように考えております。
  342. 島本虎三

    ○島本委員 やはりそういうような点は、十分考えていかないといけない問題だ、こういうように思います。  だいぶ結論を急がなければならないような状態になってきたんでありまするけれども、最近、国のほうの行政として、私どもはいままでいろいろ議論してまいりました、こういうような傾向に反している点があるのじゃないか、こういうように思うわけです。基準給食の点、こういうような点になりますと、栄養素本位の基準量の確保のための食事というものは、患者さんには案外喜ばれない。これは病人の栄養量なんかについても一向に改善もされない。そして質的な配慮のできないような給食体制、こういうようなものをしいてくるので、基準給食制度の欠陥、こういうようなものについては、やはりもう改善を迫られてきておる、こういうようなことであります。  私は、そういうような点からして、今後重大な問題もこの中にある、こういうように思うわけですけれども、まず去年の八月の十日の参議院の社会労働委員会だと思いますが、同僚の大橋和孝議員によって、病院給食の下請ですか、こういうようなものは行なわないようにするという方針、これを政府は明らかにしたはずであります。これを答弁したのは齋藤課長でありました。それはどうなんですか、これは新設される病院、公立の病院ですけれども、こういうようなところでは、指導状況——いまのような下請、この方向をとっておるようでありますが、これは何か反対ではありませんか。この点についてちょっと伺いたいのですが、この当時と同じですか。
  343. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 北九州の病院で起こりました給食の下請の問題でございますが、ただいま考えておりますことは、いわゆる病院の管理責任の上で、外部の——いわゆる直接、病院の職員でなく、外部の職員に病院の責任の上で病院内の給食施設を使って給食をするということは、北九州の段階まで一応認めている形をとっております。
  344. 島本虎三

    ○島本委員 この問題については、私どもも十分検討しておるのでありまするけれども、これはもう、愛知県のがんセンター、名古屋保健大学や千葉がんセンター、こういうようなところでも、国の中心であるべき自治医大までも、下請にこういうようなものは全部回しておる。こういうようなことでは、実際私どもとして納得できないわけです。こういうようなことからして、もっと食事療法についてのこういうような見解と、健康に対するはっきりした概念を樹立させる。このことだけはきちっとしておいてもらわなければいけない。このことだけをはっきり申し上げておきたいわけです。  時間もだいぶたってまいりましたから、先ほどの医療福祉施設である第二びわこ学園それから島田療育園それから砂子療育園、これらの腰痛者に対しまして、これは厚生大臣としても、十分この点は、代替職員をもって対処する、こういうようなことでございます。しかし、その時期もはっきりしない、また額もはっきりしない、同時にその数もはっきりしない、これではほんとうに困るのであります。しかしながら、何としても、もうすでに瀕死の重症を負っている人たちは、これは先に救済しないとだめだと思う。先ほどからこれをやってみても、大臣の答弁まではわかるのですが、局長のほうへ行くとしり込みされておる。まして時期まではっきりしない。こういうようなことだったら、まことに私どもとしては、たいへんであります。したがって、この際、この点もはっきりさしておいてもらいたい、こう思いまして、再び質問いたします。
  345. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 この問題は、ほんとうに先ほど来申し上げておりますように、やはり緊急な問題だと私は考えておる次第でございます。     〔塩谷委員長代理退席、委員長着席〕  参議院の予算委員会の分科会で御答弁を申し上げて以来、だいぶ日にちもたっておりますから、なるべく早く決着をつけなければならぬというので、局長にそう言うて検討さしておるわけでございますが、まだその結論を得ていませんことは残念でございますが、この際、私は、はっきりお約束申し上げますが、来月早々——ということは、十日までということをお約束申し上げます。来月早々必ず決着をつけて、ひとつこの問題に対処いたしたいと思います。これで、あるいは多少御不満かもしれませんが、私の意のあるところも御理解をいただいて、この辺で御了承を賜わりたいと思います。来月早々いたしたいと思います。ということは、十日までということでございます。
  346. 金子みつ

    ○金子(み)委員 関連して。いまの問題でございますけれども大臣もいま御自分でおっしゃいましたが、たしかことしの四月の五日だったですね、参議院で大臣が御答弁をなすったのは。それからきょうまで、まる二ヵ月以上たっているわけですが、二カ月以上たって、その間に子供たちはどんどん育っているわけですね。だんだん重くもなっているわけですよ。そういうような状態ですし、職員も四月の三日の日に政務次官のところに陳情に来た方々があるのですが、その方々のうちの四人ぐらいの者が入院しちゃったのです。倒れちゃったのです。そういう状態ですから、ここで一日でもおくれると、もう事情はものすごくひどくなっていくわけですね。悪くなります。  それで先週、私が緊急事項として、質問をさせていただきましたときに、緊急事態だと申し上げた理由は、覚えていてくださるかどうかと思うのですけれども、島田は、とにかく神武以来初めてなんですね、こういう施設がストライキをやるのは。昼間一時間ストライキをやったのです、子供に差しさわりのない時間だったのですけれども。そうして、そのあと第二波、第三波、第四波のストライキをする計画を立てていたわけです。それから島田だけでなくて、びわこも、砂子も、その計画を立てていたわけです。ですから、こういう施設で、どんな人間であろうと、いま人手がなくて困っておる、腰痛者がこんなに出てきているのに、ストライキをするということになっている。たいへんなことだと思ったので、私は、緊急事態として質問したわけなんです。  そのときに大臣が、四十八年度の予算の中で何とか考えるということをおっしゃっていただきましたし、それから児童家庭局長も、そのときに私が総花式じゃなくて、重点的にとお願いしましたが、この施設のことを考えて、重点的にすると、そのとき御返事をいただきましたから、その施設の人たちはその御返事をいただいて、ストライキを中止したのです。中止して、いまかいまかと首を伸ばして待っているわけですよ。いつ一体それを具体的に示してくださるのだろう。厚生省はどんなあたたかい気持ちで、いまこんなに困っている自分たちを助けてくださるのだろうということで、待ちかまえていたわけですね。それが、なかなかあらわれてこないものですから、それでたまらなくなって、きょうまた政務次官にお会いしていたわけです。  きょう政務次官にお目にかかって、午前中の川俣委員質問のときに、委員長からも御発言があって、政務次官、行くべきだ、国会の会期中でも行くべきだとおっしゃっていただいたのですけれども、政務次官にお会いしてのお話し合いのときには、政務次官はやはりすぐ行くということにならなかったので、とっても残念だと私は思うのです。御自分でいらっしゃいませんで、ただあした障害福祉課長ですか、課長を島田へ派遣するということを約束してくださいましたので、あした島田へ課長がいらっしゃいますから、課長はあした島田に行かれたら、園長の説明をお聞きになったり、施設をごらんになるだけじゃなくて、職員とひざを交えてよく話し合ってください。実態をほんとうにつかんで帰ってくださいということを、お願いしてあるのです。ですから、課長がそれをよくよく理解して、実情をつぶさにわかってお帰りになったら、それを土台にして一日も早く基準をきめていただきたい。  もう二カ月以上、これで来月まで待っていたらどうなるのですか。五、六、七、三カ月ですね。三カ月にもなりますから、もし来月の十日とおっしゃるのだったら、大臣のおことばを信用して十日まで待ちましょうけれども、ぜひさかのぼって出していただきたい。どういうふうに費用を使うようになるか、措置費の加算だと思いますけれども、措置費の加算をいつから使っていいということを、さかのぼっていただかないと、いままでの分が全部なしになってしまいますから、やはりそれは四月にさかのぼるか、六月にさかのぼるか、その辺を考えてやっていただきたいと思うのですけれども、それをお約束いただけますでしょうか。
  347. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 七月上旬と申しましたから、七月分から加算をいたすようにいたします。七月分からいたします。
  348. 金子みつ

    ○金子(み)委員 六月にさかのぼれませんか。七月に全部出していただくのはけっこうですけれども、それは一ヵ月さかのぼっていただけないかということをお願いしているのです。
  349. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 こういう予算はさかのぼっては支給いたしておりません。これはもう御承知だと思います。ですから、七月分からちゃんと加算するようにいたします。
  350. 金子みつ

    ○金子(み)委員 私は、前例というものがあることはよく承知いたしておりますけれども、行政は、前例がなければできないはずはないのですね。もしそのことを心から心配して、ほんとうにやりたいと思ったら、私は行政の上で新しい例が出ても、ちっともおかしくないと思うのですね。そうしたら、さかのぼっていただけないでしょうか。いかがです。
  351. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 実はこういうことはいまだかつてやったことがないのです。この前、三月何日かに予算分科会で田中委員から御質問をいただいて、それ以来も御質問をいただいて、これはやはり何とかしなくちゃならぬという私どもの気持ちでございます。その中で、お気の毒な方をかかえて何とかめんどうを見てくださっている方々のことでございますからということで、これは異例中の異例として厚生省はやるわけでございますから、ひとつこの辺で御了承願いたいと思います。
  352. 島本虎三

    ○島本委員 異例中の異例といいましても、これはまさに瀕死の重症者でありますから、この点はほんとうに血のにじむような質問なんです。ほんとうは一カ月でもさかのぼってもらいたいところなんです。しかしながら、これに対する対処は的確にしてやってほしい。この点だけ強く要請いたします。  なお、私としても、これ以上健康の問題に触れて基本的な問題として、もっとやっていきたいのであります。しかし、まだあと二時間ぐらいかかる予定でありますけれども、それほど持ちません。一応約束の時間になったようであります。約束の時間になって、質問をすっかり残してしまったわけであります。いまだに質問技術はへたくそであります。  しかしながら、その中でいろいろと今後の問題点だけははっきりしたわけでございますけれども、健康保険の改正そのもの、この中にはまだまだ問題点が多いのであります。私どもはこれに対してはっきりと、ようございますと言えない立場であることを、私としては、まことに残念だと思いますけれども、やればやるほど、この保険に対しては私はまだまだ疑問が出てまいるのであります。そういうようなことからして、私の質問は残すことになりましたが、私は一応これで打ち切らしていただきたいと思います。
  353. 田川誠一

    田川委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  354. 田川誠一

    田川委員長 速記を起こしてください。  寺前巖君。
  355. 寺前巖

    ○寺前委員 前回、前々回になりますか、保険の審査で時間がおそくなったために、質問が途中でちょん切られてしまいまして、きょうもまたおそい時間になって、政府委員の皆さんにはおなかを減らしておられるのに気の毒だと思いますが、ひとつ御協力をお願いしたいと思います。  私は特にちょん切られた点で残ったところだけに、きょうは限っておきたいと思いますし、全面的にはさらにまたあとの委員の人にお願いするとして、きょうはどうしても聞いておきたいという四つの点がありますので、最初に提起しておきたいと思います。  その第一番目は、いわゆる弾力条項といわれるものですね。これは前の国会の場合でも賛成した党は一つもなかった。自民党さんも、これはぐあい悪いといって削除された。野党の各党もみんなこれは反対した。どこの党もこれについては賛成しなかった。それにもかかわらず再びここに提案がされてきている。一体あのときにどの点で反対があったのか、それについてどのように考えたのか、これについて聞きたいというのが第一点。  私は問題をもう先に出してしまいます。それから第二番目。いわゆる弾力条項について、これが歯止めが云々ということをよくいわれます。厚生大臣の手元でやるとか、あるいは保険庁の長官がどうのこうのとかいろいろ経過の途中でも意見がありました。だけれども歯どめとして社会保険審議会云々という話が出てきました。そこで私が聞きたいのは、あわせて提案をされているところの厚生保険特別会計法との関係において、弾力条項というのは一体どういうことになるのだろうか。歯どめというものがきくものなんだろうか。これが第二番目に聞きたい問題点です。  第三番目に聞きたい点は、今度新しく高額医療の問題がここに出てきております。ところが聞くところによると、この高額医療が療養費払いということになっている。そうすると、この療養費払いというのは、すでに沖繩で経験していることなんですが、診療の制限の役割りをしていくんじゃないか。この点について一体どういうふうに考えるのだろうか。なぜ現物給付でやることができないのだろうか。これが第三番目の問題。  第四番目の問題は、高額医療をやることによって、いままで公費でかなり多額のものをめんどう見ていたのが、まず保険で出してしまった残りを公費で見るということになって、公費自身の持つ分が減っていく。この公費医療とか、あるいは公害の救済の問題とか、こういう問題について、はっきりと保険財政の中に組み入れられるかっこうのものはおかしいんじゃないか。たとえば公害の場合だったら、原因者がきわめて明確なんだから、原因者負担ということにおいて明確に切り離したところの執行をすべきなのであって、保険の残りを入れていくという考え方自身は、きっぱりと断ち切って考えるべきだと私は思うのですが、この辺の問題について聞きたい。きょうお聞きしたいのは、この四点です。  そこで第一番目の、国会でどこの党も結局において賛成しなかったところの、このいわゆる弾力条項なるものを、何で再び出してきたのか、どこが問題になっておったのかというふうに理解されておるのか、その辺について御説明をいただきたいと思います。
  356. 北川力夫

    北川(力)政府委員 前回の国会におきまして、財政対策法案の中で、今回提案をしておりますようないわゆる弾力調整規定が保険料率についてあったことは事実でございます。その際に、ただいまお話にありましたこの問題が、反対になった理由といたしましては、いろいろあろうかと思いますけれども、私どもはここ七年ないし八年間固定料率で来ておりますけれども、一定の幅を設けるにしろ、行政府に授権をするということについて、立法府として、当院としてはいかがなものかというふうな点が主たる反対の理由ではなかったのではないか、このように思っております。そういう点が反対の理由であり、かつまた一番大きな問題点だったと思います。  しかし、今回お願いをしておりますのは、確かに形は前回と同様でありますけれども、前回のような単なる財政対策ということの中のいわゆる調整規定ではございませんで、給付の改善を行なって、またその前段階として政管健保の体質改善をして、今後恒常的な運営の健全化をはかるというような、いわば基本的な医療保険の改革の第一段階としての性格を持っているのが今回の提案でございます。  したがいまして、そういう意味合いでは、今回の改正では、先ほどもいろいろ申し上げましたが、過去の赤字をきれいにして、政管健保の再出発でございますので、今後の医療内容の充実あるいは給付の改善等につきましては、当然に負担関係について、そのつどそのつどの状況に柔軟に対応する仕組みが必要だと思うわけであります。そういう意味合いで、料率の弾力的運用ということは政管健保の恒常的な運営の硬直性を排除する意味におきましても、これはぜひ必要な仕組みではなかろうか、このように考えて今回のこの制度を組み入れたわけでございまして、形は同様でございますが、法案全体の姿の中における関係をお考えいただきますと、前回とはかなり違った意味合いではなかろうか、かように考えておりまするし、また同種の短期保険におきましては、やはり同様な仕組みが組み入れられておることも事実でございますので、そういう点を考え合わせますと、今回の弾力調整の規定というのは、やや前回とは違った趣の意味がある、このように考えているわけであります。
  357. 寺前巖

    ○寺前委員 やはり意味合いは違わないのですよ。弾力条項は弾力条項です。それで、前回何といっても問題になったのは、はたして値上げをしなければならぬものかどうか。やはり保険財政ですから、保険財政を検討するということにおいては同じことです。保険財政を健全に運営するために料率をどういうふうにやっていくか、要するに収入をどういうふうにやっていくかということは、保険財政全体の関係において、被保険者にこういう保険料をかけて、これだけの収入を集めるやり方がいいかどうかということを審議していかなければならない。一定のワクの範囲を弾力的にできるように短期保険だからやっていこうという考え方だったと思うのですけれども、この点においては前も今後も少しも変わらない。たとえば前のときは上だけやったんだが、下も入っています。若干の違いはあるかもしれないけれども、基本的には考え方は同じだと思うのです。  そこで、ちょっと聞きたいのですけれども、そういう民主的な審議、この保険財政の運営のしかたがこれでいいかどうかという、そういう場としての国会が非常に論議になったわけです。ですから、わずか〇・一の料率のアップでも昔から国会で大論議になる。今度だったら千分の三ですか、これだけ上げるということで大問題になるわけでしょう。だからそれは単に料率だけの問題ではなくして、保険運営全体のあり方との関連性を検討する国会という場があるのだ、ここが非常に意味を持っておると思うのです。  そこで局長に聞きますが、いわゆる普通の大企業の諸君たちの健康保険、あの料率をきめる場合には、その健康保険組合をどういうふうにしてやるかということについて相談するところがあるのでしょう。それはないのですか、どうですか。
  358. 北川力夫

    北川(力)政府委員 あります。
  359. 寺前巖

    ○寺前委員 それじゃ公務員の場合には共済組合というのがありますね。ここはどうなってますか。
  360. 北川力夫

    北川(力)政府委員 やはりそういう場として共済組合の運営審議会があります。
  361. 寺前巖

    ○寺前委員 そうすると、やはりすべての保険というのは、本人が払って——資本家の側も払いますが、そういうふうに多数で運営している限りにおいては民主的にそういう検討する場が要るのだ、その一役がいまの政管の場合だったら国会がその場になっている、国民健康保険の場合だったら地方議会がその場になっている。ここで論議されて、保険のあり方はかくのごとくあるべしだ、こうなっているのです。この点がこの前の国会の非常に大きな問題点だった。そうじゃないですか。この場が要るのだ、だからそういう意味において弾力条項で好きなように料率を上げていく、それは単に料率を上げるという問題だけではないのだ、保険の運営そのものを検討する場として必要なんだ、だから弾力条項はいけません、これがこの前の国会の全体の、それぞれの党のニュアンスは若干違うけれども、いけませんと言うて取り上げなかった理由じゃないですか。  それをまたもや出してくるということは、これは一体この前の国会の審議前提にしているのかしていないのか、これはだれだって疑問に思う点ですよ。だからこのように民主的な運営という問題に対して、そこで歯どめというのがあり得るのか。おそらく社会保険審議会というのがそれにかわる場として見ているというふうに言いたいのだろうと私は思うのですけれども、社会保険審議会は歯どめにはならないと私は思う。やはり全体的なものを相談するここへかけなければだめだ。現に保険審や制度審を通して法案がここへ来るけれども、立法自身の中で保険審や制度審の意見を聞かぬでおいてばあっと出してきているということは、前回の国会のときにも問題になっているし、いまでも問題になっている姿でしょう。だから実際には相談しますと言うけれども、その相談は声をかけるというだけの相談と違うのじゃないですか。そこで絶対オーケーが出ない限りは不可能なんだということじゃないんでしょう。今度の法律のやつはどういうことになっているのですか。
  362. 北川力夫

    北川(力)政府委員 いろいろ御意見がございましたが、私どもは健康保険組合とかあるいは共済組合等との関係におきまして保険料の設定というものは、政府管掌健康保険の場合には、ただいまお話にもありました社会保険審議会というものがあると思っております。それで今回の御審議をお願いしております原案では、いわゆる弾力調整規定によって料率を上下する場合には社会保険審議会の意見を聞くということになっております。また前回と違います点は、この保険の運営責任者である社会保険庁長官の申し出というものがまずあって、それに対して厚生大臣が必要性の有無を判断して、その上で社会保険審議会の意見を聞いてきめる、こういう仕組みになっておりますので、制度を並べて並行的にバランスをとりて考えた場合には、やはり料率の改定審議の場は、私ども政府管掌健康保険に関する限り、これは社会保険審議会であろうと考えております。  なお、社会保険審議会の意見を聞くだけじゃないかというような御意見でもございますけれども、これは社会保険審議会の実際の審議というものを経験しております、われわれといたしまして、また特に保険料率の改定というふうな問題について審議をされます場合に、いま先生が言われたような、そんな簡単なもので審議が終わるというようなことは、さらさら考えていません。これは十分な審議をして、おそらく皆さんの合意がなければできない問題でありますから、そういう点、私は運営上まさに共済組合の運営審議会あるいは健保組合の組合会、こういうものと同様な関係に立つだろう、このように考えておりまして、先生の言われた御意見には、にわかには賛成しがたいことだと思います。
  363. 寺前巖

    ○寺前委員 ちょっといまおっしゃったけれども、皆さんの合意というのは、みんな一致しないことには、こういうことはできません、こういう意味ですか。
  364. 北川力夫

    北川(力)政府委員 これは社会保険審議会の運営に関する問題でございます。組合会のように労使双方とかあるいは社会保険審議会のように労使双方以外に公益委員というものもございます。ですから、そういうところの全体の合意を得ながらという意味でございまして、私は事柄の実態を推定しながら申し上げているわけでございます。
  365. 寺前巖

    ○寺前委員 いや、ぼくは事実を言っておるんで、保険審で二本立ての答申をしたりするでしょう。だから合意というのは、全部一致しなければだめなんですかと言っておるのだ。それともまあまあということでいくんですか、その点はどうなんですかと聞いておる。
  366. 北川力夫

    北川(力)政府委員 これはいろいろなケースがあるだろうと思います。いまのようにびっしりと一〇〇%の合意ということになる場合もございましょうし、また多少意見が割れる場合もございましょうし、それはケース・バイ・ケースでございましょうけれども、少なくともその審議会で十分に審議をされて、全体のマクロの合意というものができ上がるということでないと、やはりこういう保険料率の変動ということは、なかなかできにくい問題ですから、そういう面で私は、社会保険審議会の運営に十分信頼をしていただいていいのじゃないか、こういう趣旨のことを申し上げたわけです。
  367. 寺前巖

    ○寺前委員 あなたそうおっしゃるんだけれども、そこで厚生保険特別会計法について少し教えていただきたいと思うのです。十八条ノ八、十八条ノ九が改正されていますね。この改正についての御説明をいただきたいんですよ。ひとつ説明してくれませんか。
  368. 江間時彦

    ○江間政府委員 もともと保険といいますのは、収支の均衡を自主的にはかるということを意図した制度なんでございますが、中小企業の従業員を被保険者としております政管健保につきましては、体質的な問題もございまして、かなり構造的に財政が苦しい。これに対応いたしまして定率の国庫補助を導入する、またこれとの関連もございまして、ここにおける累積赤字をたな上げする、このような措置をとりました上で、これからは政管健保の単年度に発生する赤字がないように、借り入れ金につきましては今後は摩擦的な運営のための資金以外のものを借りないというような趣旨のものでございます。
  369. 寺前巖

    ○寺前委員 ぼくはもっとわかりやすい、しろうと的な話を聞いておる。これを読んでどういうことになるのだということを聞いておるので、もっと端的に言ってください。  もっとわかりやすく聞きますが、四十八年度末、今年度末までの赤字分についてはどうなんですか。これは政府責任で全部返済するということの意味ですか。ちょっとわかりやすく教えてほしいと言っている。ぼくは要するに、こういう法律がわからぬのだ。だから聞いておるのだから、もっと親切に言ってくれなければだめだ。だから政府責任において全額処理しますということなのかどうか。  その次に、これはどういうことなんだろう。いまの話は一般会計で全部処理してしまうというのかどうか。  それからその次に、これは今後のことだから、どういうことになるか知らぬけれども、四十八年度までずっと運営をやっていったら、診療報酬の値上げなりいろいろな事情も途中で起こるでしょう。そうすると、また四十八年度末までにさらに赤字がふえていく。そのときに今度は四十八年度から四十九年度にかわるでしょう。四十八年度から四十九年度にかわったときに、今度は病院が申請を基金に出してきて支払いをしてやらなければならぬ問題が起こる。そのときに毎月借金をして支払ってやる。その借金は、もうその前年度ずっと毎月毎月のものが赤字のことはわかっておって、そのままで四十八年度から四十九年度にかわったときに、その毎月毎月の借金は問題なしに貸してくれるのか。そして四十九年度の一番年度末になったときに、はっきりと見通しのないような料率のままにある限りにおいては、その年度末で金を貸してやらぬ、こういうことの意味なのか。ぼくはこの文章がよくわからぬから、わかりやすく聞かしてくれ、こういうことなので、これは大蔵省に説明してもらいましょうか。
  370. 渡部周治

    ○渡部説明員 厚生保険特別会計法十八条ノ八の規定の内容についての御質問でございますので、各条項ごとに御説明申し上げます。  まず十八条ノ八の第一項におきましては、まず一般的に従来特別会計法におきましての借り入れ金の規定があるわけでございますが、その第一項におきましては「健康勘定ノ負担ニ於テ為ス」限りにおきましては四十九年度以降——四十八年度までは従来の規定が働きますが、四十九年度以降におきましては当分の間特会法の十条の従来の規定が働きませんので、次に述べます二項と三項の原則によりますということをうたっておるわけでございます。したがいまして、実質的な規定は第二項と第三項に相なるわけでございます。  そこでまず第二項につきましては、ここに書いてございますように「健康勘定ノ昭和四十八年度末ニ於ケル借入金」、これは収支不足の赤字の累計でございますが、これにつきましての「債務ヲ弁済スルタメ」につきましては借り入れ金をすることができる。つまり借りかえをすることができるという規定でございます。  それから次は第三項でございますが、「前項ニ定ムルモノノ外」と書いてございますのは、したがいまして、四十八年度末の累積収支不足に相当いたします借り入れ金以外の借り入れ金、つまり新規借り入れ金ということになろうかと思います。それにつきましては「健康保険法第七十一条ノ四第三項ノ規定ニ依ル保険料率ノ引上ニ拘ラズ引上ゲラレタル年度ニ於ケル健康勘定ノ」云々と書いてございますが、これはいわゆる弾力条項が発動せられます。しかしながら弾力条項が発動せられましたけれども、なおその引き上げの年度におきまして摩擦的に収支不足が生じた、そういう場合におきましては、一年以内に保険料でもってその償還をなし得ることが明らかなるときは、その新規借り入れば、その部分については摩擦的な借り入れ金としての借り入れができる旨の規定でございます。
  371. 寺前巖

    ○寺前委員 そうすると、ぼくが聞きたいのは、四十八年度まで赤字になって、いまたとえばこれが通ったとしても、診療報酬が上がっていくということになってきたときに、新たな事態、変わった事態が予算の結果の中では生まれてきますね。四十八年度末までに思っていたよりも赤字が出てきたという事態が生まれてきた。そこで、四十八年度は年度末に新たな借り入れをして、そして四十九年度へ移っていくわけですね。四十八年度までの新たな借り入れを含んだ分を含めて、いままでの借金については一般会計で責任を負うのですかというのが一つ。  それから四十八年度から今度四十九年度に変わりますでしょう。この変わったときに、今度は四十八年度の歴史的な経過から四十九年度に入った。毎月毎月赤字になっていくということは四十八年度末の姿の中から見て、四十九年度はどうなっていくかは見えます。だから、赤字になっていく場合に、毎月の借り入れについては弾力条項を発動しなくても、それは借り入れることができるのかどうか。そして四十九年度末になって、今度は年度の整理をしなければならぬから、整理をする段階には明確に弾力条項を発動して、責任を持つような体制でなければ、そのときにはもうお金は貸すわけにはいきませんよという解釈でいいのかどうか、ちょっと教えてほしいのです。
  372. 渡部周治

    ○渡部説明員 お答え申し上げます。  まず第一点の、四十八年度末までの累積赤字につきまして借りかえができるか、こういうことでございますが、それにつきましては予算に定めた額ではなくて、実際に生じました赤字の累積額に  つきましては、この第二項の規定でもって借りかえができる、こういうことでございます。
  373. 寺前巖

    ○寺前委員 その借りかえを一般会計でやるのか。
  374. 渡部周治

    ○渡部説明員 続きましてお答え申し上げますが、四十八年度以前に生じました累積収支不足のうちに、特会法の十八条ノ九という規定が次にございます。これのうちに、いわゆる累積損失に相当するものにつきましては一般会計で負担する、補てんすることができる、こういう規定を設けております。  それから第二番目の御質問は、四十九年度以降、毎月毎月かりに赤字が生じていったという場合にはどういう運営になるのか、こういうことでございますが、いわゆる一時借り入れ金——年度越しでありません、一時借り入れ金につきましては、特会法に別に十二条の規定がございまして、これは一時借り入れないしは国庫余裕金の振りかえ使用ができるということでありますから、これは従来どおりの運用に相なります。  第三番目の、年度越しになった場合にどうなるか。ここでいわゆる十八条ノ八第三項が働くわけでございまして、その場合に、かりに従来の赤字がずっとあるということでございますれば、これは弾力条項を発動してもらわなければならない。したがって、弾力条項を発動した場合に、第三項にいう摩擦的な借り入れ金というかっこうで一年以内に償還できるものは借り入れをすることができるということになるわけであります。
  375. 寺前巖

    ○寺前委員 そうすると、弾力条項を社会保険審で相談をします、相談をして十分検討してもらってやるといっても、今度は年度末の借りるときまでに弾力条項の発動がなければ、お金は貸すわけにはいきませんよということになるわけですね。そういうふうに理解していいのですか。
  376. 渡部周治

    ○渡部説明員 規定上の解釈は、そのとおりでございます。
  377. 寺前巖

    ○寺前委員 そうすると、この弾力条項が社会保険審の云々ということで、いかにも民主的なものがあるように見えるけれども、実際上は無条件に発動しなかったならば、そのときには年度末の借金ができないということは、逆に支払いがストップになってしまう、そういう片一方に条件が伴うから、これは歯どめの性格にはならない。だから、この厚生保険特別会計法が弾力条項と一緒にある限りには、この弾力条項が十分民主的な運営をといったって、それはそういうふうにはならないという性格を持っておる、いまの答弁から私はそういうふうに思うのですが、大臣、どんなものでしょうか。
  378. 渡部周治

    ○渡部説明員 いまは条文の解釈を申し上げたわけでございますが、今度は条文の趣旨から、さらに今後の見通し等も踏まえまして、御答弁申し上げます。  この厚生保険特別会計法十八条ノ八の改正規定の趣旨でございますが、これは今回の健康保険の制度改正にあたりましては、給付の改善とあわせまして政管健保の長期的な収支均衡をはかるための財政対策を行なっておるわけであります。この財政対策におきまして政府が提案しております方策が講じられますならば、われわれといたしましては政管健保の長期的な収支の均衡がはかられるということを期待しておるわけでございまして、そういうような収支均衡がはかられるということを前提といたしまして、さらにもう一つは、従来の累積損失は、三千億になんなんとする巨額の累積損失でございます。  これは保険会計本来の姿でありますれば、保険者の負担にならなければならぬ問題でございます。しかしながら、政管健保の長期の収支安定のためには、この巨額な累積損失というものを一般会計の負担において消そう、こういう特別異例の措置をとったわけでございます。そういう従来の累計損失は全額租税財源である一般会計負担で解消する措置を講ずる、こういうことをあわせ講じました以上は、今後長期的な収支均衡がはかられることを前提といたしまして、新規の借り入れを限定するという規定を置いたわけでございます。  そこで問題は、それでは実際の運営にあたって事実赤字が生じてきた場合に、弾力条項の発動が、この借り入れの規定によって強制的にあれされるのじゃなかろうか、こういう御疑問であろうと思います。  これはこの改正規定の趣旨でございます、今回の改正のねらいである政管健保の長期的な収支安定が所期のとおり実施できるかどうかということにかかっておろうかと思うわけでございます。この点につきましては、もちろん個々の政管健保の収支の動向を決します保険料収入の伸びになり、あるいは医療給付の伸びというものを断定的に推定することは困難でございますけれども、保険料収入と医療給付費の過去の趨勢から判断いたしますならば、保険収入の伸びは平均一六%程度というぐあいに見込まれております。それから医療給付費のいわゆる自然増、これが九ないし一〇%程度というぐあいになっておりますので、この保険収入の伸びは医療給付費の自然増のみならず、年率六ないし七%程度医療費改定には耐え得る、こういう構造に相なっておるわけでございます。  したがいまして御懸念のように、いわゆる給付改善とか、あるいは医療改定というような緊急の事態が生じない限りは、この借り入れ限定の規定が働くことによって政管の収支が、支払い遅延等の事態が生ずるというようなことはないと考えておる次第でございます。
  379. 寺前巖

    ○寺前委員 ぼくは制度問題を論じておるんですよ。だから、制度としてははっきりと、弾力条項の発動がない限りお金は貸せません、もしも赤字が年度末にあった場合には、制度としてはそうなる。したがって、それは弾力条項に、いかに相談をしましてとなっていても、それは制度的には相談にならない。それはもしも相談をしておって払えないということになった場合には、片一方のほうで借り入れができないものだから、支払いができないという事態が起こる。だから、どっちかになってしまう。したがって、これは歯どめにならないということを、私は制度問題としてはいわざるを得ないというふうに思う。制度問題として、この問題について指摘しておるのです。それでわかりました。その問題はこれではっきりしたんですよ。  それから三番目に、先ほど言いましたように高額医療、ここでは「高額療養費ノ支給要件、支給額其ノ他高額療養費ノ支給ニ関シ必要ナル事項ハ政令ヲ以テ之ヲ定ム」と書いてあります。ですから、これは政令に出てくるのだからよくわかりませんけれども、いろいろ話を聞いていますと、月三万円の高額医療費について療養費払いをやってもらうということでなっているというふうに話を聞いている。そこで、療養費払いというのは現に沖繩で実際問題としては、お金を先に払った上でやるというやり方では、今度は診療の制限になってしまうという実際上の経験を私たちは見ているわけですね。そこで、高額医療をいままでと同じように現物給付ですか、やれないものなのかどうなのか。  そこでまず聞きたいのは、老人医療とかあるいは公費老人医療もそうですが、要するに公費医療ですね、こういうものはいままで療養費払いでないやり方をやっていたわけでしょう。今度この高額医療の制度が入ってきた場合に、こういう老人医療その他の公費負担をする医療についてどういうことになるんだろうか。変化が起こるんだろうか。その点はどうなんです。
  380. 北川力夫

    北川(力)政府委員 確かに御指摘の点ありますとおり、現在は保険と、老人医療なら老人医療という場合には上のせ方式で現物でございました。今回の、たとえば政管健保を家族で五割分は、現在老人医療で公費負担をする。それに今度は高額医療が入ってまいりますと、その分は償還払いでございますから現在とは違った形態になるわけでございます。  そういうことでございますが、私どもはいろいろなケースがあると思うのでございますけれども、現在の実態が、すでに医療機関の窓口におきまして負担がなく、医療を受けておるというような実態がありますので、そういうような実態をどういうかっこうで尊重をするか、どういうかっこうであげるかということについては、いろいろ今後検討課題でございますが、こういう実態をできるだけ尊重することといたしまして、いままでのと申しますか、現行の公費負担との積み重ね方式の場合よりも不利なかっこうにならないように十分な配慮をしてまいりたい、こういう考えでおるわけでございます。
  381. 寺前巖

    ○寺前委員 無理なかっこうというのは、要するに従来どおりのほうにやれるように努力をしたい、こういうふうに理解をしていいですか。
  382. 北川力夫

    北川(力)政府委員 大体、どういう方法をとるかはいろいろ考えておりますが、現在と同じような形態での処理の方法を考えたい、こういうわけです。
  383. 寺前巖

    ○寺前委員 そこで、そういう公費で老人医療とかそういうやつは大体そういうふうに解消をしていく。一般の場合、五割の負担とか、あるいはまた、国民健康保険の場合だったら三割の負担ですか、家族もね。そういう場合を考えてみるときに、高額医療はレセプト単位にやっていくわけでしょう。そうすると、被用者保険の場合だったら、三万円以上ということになると七万五千円の単位から三万円以上の医療費ということになってきますね。それから国保の場合だったら十万円になってきますね、三万円ということになったら。それが対象になってくる。かなりの金額の医療費を使う人がはじめて高額医療の対象になってくる、こういうことになるわけですけれども、それでは、このようなかなりの金額を払う人たちが、実際には外来なのだろうか、それとも入院している人が多いのだろうか、その辺はどういうことになっていますか。
  384. 北川力夫

    北川(力)政府委員 高額医療は、前回もこの委員会でお答えを申し上げましたが、大体昨年の四月診療月分で、いまの七万五千円という話に例を引いて申し上げますと、件数で約二〇%、点数にして五〇%近いものが該当をするわけでございます。その場合に、いろいろな病名をしさいに点検してまいりますと、正確な数字は申し上げかねますけれども相当の部分が入院の場合じゃなかろうか、かように考えられるわけでございます。
  385. 寺前巖

    ○寺前委員 私がなぜそれを聞くかというと、入院患者と外来の場合には、療養費払いの制度を、現物給付の導入の場合に、外来の場合は確かに三万円という問題を考えるには複雑だと思うのですよ、月末にならなければわからぬのだから、いろんなあれがずっとあるから。だけど、入院している場合だったら、私はかなり入院の月末の処理ということはしやすいのではないか。だから入院患者である場合だったら、圧倒的に現物給付でやっていくことができるのではないか、私はそういうふうに思うので、これは再検討してもらうことができるのではないだろうか、そういうような感じを持つのだけれども、私の知っている限りでは、この金額になるのは、ほんの一部分の人しか外来患者では出てこない。圧倒的に入院患者。入院患者だったら、いろいろむずかしい技術問題があるから、療養費払いということも話になるかしらぬが、現物給付でやっていくことは可能だと思うのだけれども、どうでしょう。
  386. 北川力夫

    北川(力)政府委員 この制度は何ぶんにも初めてもうける制度でございます。それからいまおっしゃったように、入院と外来との区分けも、入院のほうが相当多いということも大体の推定はつくわけでございます。しかし、やはり一般的に考えますと、いま先生がお述べになりましたように、かなりのわずらわしさが現物給付の場合は出てまいります。そういうことから、私どもはこの制度は、いろいろ条件はあると思いますけれども、できるだけ早く償還をするということを事務的に配慮していくことによって、償還払いということによって、これは十分効用を発揮し得るのではないか、こういうように考えまして、一般的な処理としては現金の償還払い、こういう制度で確実に制度のスタートを期したい、こういう意味合いでございます。  入院の場合にどうなるかということは、確かに言われたような点が、私はないとは申しません。申しませんが、何ぶんにもそういうたてまえでスタートするものでございますから、スタートいたします時点で、その後またこの高額療養費の実際上の状況、実態というものを十分考えた上で、どういうふうなかっこうにするかは制度発足後に検討さしてもらいたい、こういう考えであります。
  387. 寺前巖

    ○寺前委員 ぼくは大臣にちょっとお聞きしたいのですけれども、それは現金が先になければ見てもらえぬというようなことでは、せっかくふだんから保険をかけて、それで万一病気になったときに困ると思っている人たちが期待はずれになると思うのですね。せっかく高い医療のやつはめんどう見てもらえるものだと思ったのが、先に金がなければ見てもらえぬのだということでも困るわけですね。そういう意味では、ほんとうにお金なしに見てもらって、あとから整理がつくのだということ、それが受ける側の身になったら一番いいやり方だと思うのですね。おらく大臣だって、そういうふうにしたいのだろうと思っておられるだろうと私は思うのですよ。  問題は、制度の導入がなかなかむずかしいというんだったら検討してもらったらいいと思うのです。しかし制度の導入というのは、大部分の圧倒的部分——私が考える範囲では一万件のうちで二、三人ぐらいしか外来というのは出てこないぐらい、圧倒的に入院患者だと思うのですよ。そうしたら、気楽に受けられてあとから整理をするということができる条件こそ、これがやはりふだんから保険に入っている人たちに対する遇し方だと思うのですが、この辺、大臣どういうふうに思われますか。
  388. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 ただいまのお尋ね、私も気持ちは十分わかります。しかし、これは新しい制度でございますから——もちろん十分検討はしなければならぬと思いますが、新しい制度でございますから、これはいままでよりは改善になることは確かですね。いままで健康保険組合、共済組合などにおいても大体こういうやり方で成熟しておるということを私は実は聞いているのです。健康保険組合なり共済組合でこういうことをやっておるということでもあるので、私はこれでいいのじゃないかという、こういう感じ、考えを持っているのです。しかし、いまお話しのように入院患者が大半であるということであってみれば、それがどうしてできないだろうか、こういう感じもいたします。ですから、お答えといたしましては、一応たてまえとしては償還制でございますが、いろいろ御意見のある点は、ひとつ十分考えさしていただきたい。こういうふうに思います。
  389. 寺前巖

    ○寺前委員 それではその次に、私は前から解せないのは、私この前ちょっと理事会の都合か何かで質問を聞き漏らしたのですが、公害の認定患者に対する保険の問題ですよ。この公害の認定患者に対する治療は保険で使って、個人負担分を支払いを受けるということになっているんじゃないですか。私の理解が間違っておったら、そう言ってほしいのですが、環境庁おられますか。
  390. 山本宜正

    山本説明員 当時の立法の趣旨として先生おっしゃるとおり、自己負担分が救済法の支払いの対象になっております。     〔委員長退席、伊東委員長代理着席〕
  391. 寺前巖

    ○寺前委員 それじゃ厚生省に聞きますが、公害の認定患者というのは、これはきわめて明確な加害者がおって公害の認定を受けるわけですね。何でそんな公害の患者の医療を保険がめんどうを見なければならぬのだろう、加害者が明確だったら、加害者に全額持たすのが当然じゃないでしょうか。労災だったり、明確に職場に原因している場合には、それに基づいて治療をする、こうなっているじゃありませんか。何で公害の場合にそういうふうに明確にしないのか、私はこれは解せぬ話なんです。これはどうですか。
  392. 山本宜正

    山本説明員 昭和四十四年に当時立法したわけでございますが、その当時におきましては、原因者が必ずしもはっきりしていないというような場合が多いということで、その裁判の結論を得るまでにたいへん時間を要するというようなことから、緊急の解決に間に合わないということで、この特別措置法がつくられたという経緯でございます。
  393. 寺前巖

    ○寺前委員 大臣どう思われます。原因がきわめて明確なんですね。公害という。いま公害の認定患者というのは、まだ制限があります。公害の認定は全面的じゃないですね。だけれども公害に原因があることはきわめて明確だ、大気が汚染させられたのだ、したがってそのために認定患者になっている、そうしたらこれに対して——きわめて明確に公害という害がもたらしているのだから、一般的に本人の予防の範囲では責任が負えない問題だから、だからそういう問題は別個の公害の認定患者として全面的に治療を受けるという、そういういわば公害認定患者の手帳を持っていけば、そこで別個のところで支払うというのがたてまえだろう、私は労災と同じ性格だと思うのですよ。何でそういうふうにはっきりしないのだろう、これは私理解に苦しむのですよ。これはどうなんでしょう。いまの話は話でいいですから……。大臣どうでしょうね。
  394. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 これはもうPPPの原則でございまして、おそらく近く提案になります環境庁の公害健康被害補償法、これは根っこから加害の企業者が全部払うというたてまえの法律をいま提案をしようというわけでございます。現在の制度は、私はよくわかりませんが、これは環境庁のほうで御説明願ったらいいと思うのですが、加害者がどうもあまりはっきりしない。はっきりしているのもあるのでしょうが、はっきりしない。そこで、一応健康保険で見てもらう。今度はいよいよ加害者がはっきりするという段階になりますと、私のほうの保険庁は、その自己負担分について加害した企業主に求償権を発動している。現在発動しているのです。そういうふうに行なわれておりますが、今度ははっきりした公害認定患者ということになりますと、これはもう保険から全然離しまして、根っこからPPPの原則に従って救済する、こういう仕組みになるはずでございます。
  395. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、公害の場合もそうだけれども、公費医療についても明確にしたらどうなのかと思うのですよ。たとえば原爆の場合でも、この前原爆の法案をここで審査したときに論議になりましたけれども、長い間問題になっておった、原爆に起因するということを本人がいろんな角度から明確にしない限り認定患者になれないということでは、ほんとうにむずかしい。だから、それは原爆に起因していませんよということを当局のほうが言えない限り、それは原爆に起因している病気なんでしょうということで救いましょうという態度を今度はとってみたいというふうな話が、この前出ました。私は非常にりっぱな態度だと思う。  そこで、こういう原爆の対策を考えた場合に、そういう原爆の被害を受けている人たちが、三十万人が特別原爆者としての手帳を持っているわけですよ。そうしたら、そういう手帳を持っている人は、現在白血病なり慢性肝機能障害とか、そういう場合に限ってめんどうを見てもらうけれども、全面的じゃなくして、あとについては、やはり保険の残り分で見るというやり方、だから三十万人いるが、ほんの七千人しか実際上全面的に見てもらうということになっていないわけです。やはり保険の残りなんです。  私は、原爆手帳を持っていたら、全面的に原爆手帳でもってすべてめんどう見ましょう、老人手帳を持っていたら、老人手帳ですべてめんどう見ていきましょうというふうに、公費の問題については、はっきりと整然と社会的に責任を持つという制度は、その制度だけでいく、そういう保険制度を確立する必要があるのじゃないだろうか。複雑ですよ。足したり、その中から引いて、三万円かどうのこうのというややこしいことをやり出したら……。それはまた本人にとっても複雑なことで、病院に行くのが非常に行きにくくなってしまうということになると思う。今度の高額医療制度は、保険が先に取った残りを公費その他が見ていくという、国においても公費の面においては前よりも後退したことになっているし、むしろ公費負担の問題については全面的に公費でめんどうを見ていく体制をこそ今日確立すべきではないかというふうに私は思うのですが、大臣の御見解を聞きたいと思うのです。
  396. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 公費負担といいましても、これはさまざまでございまして、国家賠償的な性格を持っているものもあるし、それから伝染病のような社会不安を及ぼすようなものもあるし、それから老人医療とか、その他それぞれそのときそのときの社会的要請に基づいて行なうものもあり、そういうわけでございますから、公費負担と一がいにいいましても、そのいわく因縁があるわけでございまして、そのいわく因縁に即してそれぞれ必要な公費負担を行なう、こういう仕組みでございます。  なるほど、寺前議員のように公費負担といえば何もかも根っこから、こういう御意見、私わかりますよ。なるほど簡単だといえば簡単。ところが、公費負担にするには、それぞれ理由がある。国家賠償的なものもあるし、社会不安を除かなければならないというふうな性質のものもあるし、それから老人医療とかその他やはりそれぞれのそのときそのときの社会的要請に基づいてやらなければならぬものもある。そこで、原爆でも、根っこから公費で見るものもあり、それから原爆の中でも軽い、といってはどうかと思いますが、また違うものは自己の負担分だけを公費にしよう、こういうわけで、それぞれ理由によって公費負担の度合いが違っておるわけでございます。それを千編一律、公費となれば何もかも、こういうわけにちょっとまいらぬと私は考えております。  しかし、あなたのような御意見は、わかりいいという意味においては私も理解はできます。しかし、わかりいいからといって何もかも公費にしてしまえ、根っこからしてしまえ、こういうわけには制度上いかないのじゃないか、こう思います。
  397. 寺前巖

    ○寺前委員 わかりいいというのは、やはり必然性があるからわかりがいいのですよ。  それで、この際ちょっと環境庁に聞いておきますが、私は、いままで保険の残り分をめんどう見ていくというやり方自身が非常におかしかったし、いまの大臣の話を聞いていると、改善するという話に聞こえたのですが、きのうだったかきょうだったか、新聞を見ていると、ところが事務費は半分、国か地方自治体か知らぬが、持たすのだとか、いろいろあるのですが、加害者が明確なそういう制度というのは、はっきりと全部加害者の責任においてやるというふうになぜ割り切れぬのだろう、ふしぎでかなわぬのだけれども、その辺どういうふうに考えておるか、聞かしてもらいたい。
  398. 橋本道夫

    橋本説明員 いま先生のおっしゃいました、本国会に上程を予定されております公害健康被害補償法におきましては、補償の給付費につきましては全額汚染源者の負担という形になっております。そういう意味で、補償給付費につきましては全く公費がその中に介入しないという形でございます。  いまおっしゃいました事務費という点につきましては、給付の事務ということにつきましては都道府県知事もしくは政令で定める長が給付を行なうということになりますので、その点につきましては、公害対策基本法でいう国、地方公共団体の救済の措置をする責務があるということと、もう一つは、公害医療と同時に、一方また地方住民の福祉ということにも関係があるということも考えまして、給付の事務費につきましては公費といたしまして、半額を国で、半額を地方負担ということにいたしております。
  399. 寺前巖

    ○寺前委員 やるのだったらやるで、全部やったらいいと思うのですよ。ほんとうのところ、すきっと、そのことをぴしっとやらすということが、それこそ責務だと思うので、私はそういう問題というのは、やはりすっきりやるべきだというふうに思います。意見意見として申し上げておきます。  それで、時間もおそうございますので、この話は一応ここらで終わらしてもらって、日雇い健康保険について入りたいと思うのです。労働省お見えになっていますね。——環境庁どうもすみませんでした。  日雇い健康保険の審議に入る前に、健康を守るには、何といっても前提は、健康を病気になってから守るといったってだめなんで、前提は予防の段階において十分に果たさなければならない、そういうことで、きょうは日雇い健康保険の対象者の一部分である失対の労働者について、はたしてこれが健康を守るような賃金の状態にあるのかどうかということを疑問に思うので、この際に労働省に来ていただいて、お話を聞かしていただきたいというふうに思うわけです。  ことしは労働省が肝いりで、公企体の労働者に対するところの春闘のいろいろお世話をやっておられました。公企体の労働者のことしの賃上げの状況を見ますと、昨年に比べて、一万四千七十八円という数字が出ております。数字が違っておったら直してください。去年と比べて一七・五%のアップになっておる。民間の主要企業の状況について出ている数字を調べてみると、これは労働省労政局の調べの春闘の状況のあれですが、それを見ますと、一万四千九百十七円で、昨年に比べて二〇・二%のアップになっているという状況が出ております。この公企体の状況とか民間の主要企業の前年度に比べるアップ率を見ると、ここ五年間の状況の中では、最高の数字が、去年からの間にことしは起こっています。  ところで、このように公企体の労働者の場合は一七・五%、民間の場合二〇・二%のアップ率になっているけれども、失対の賃上げの状況を見ると、去年に比べて三千七百十四円、一三・二%という数字が出ている。あるいは生活扶助の基準状況を見ると、標準四人世帯の一級地で、厚生省のを見ると、六千二百十一円の一四・〇%になっている。私は、失対の賃上げの状況を見ると、これはおそらく物価が五・五%アップのことしの状況を考慮された上で昨年きめられた案であろうというふうに思うのですけれども、公企体のことしの春闘や民間の企業のアップ率と比べてみるときに、あまりにもアップが少ないのじゃないだろうか。ここ五年間の状況を見ますと、五年間に、公企体労働者だったら四万八千三百十五円上がっている。民間の場合だったら五万九十四円のアップがなされている。生活扶助の基準の場合を見ても二万四千七十五円上がっている。それにもかかわらず、失対の状況だけは、五年間を考えてみただけで一万四千四百十四円で、額そのものにおいても、アップ率そのものにおいても低いだけではなくて、五年間に格差がますます大きくなっていくような状況にあると思うわけです。  やはり私どもはこの家族を含めて生活を保障していかなければならない。全日自労の調べによると、半分ぐらいの人がこの賃金でもって家族を養っているということが出ている状況を考えてみても、やはり労働者としての賃上げを保障していかなければならぬのじゃないだろうかというふうに私は思うのです。     〔伊東委員長代理退席、委員長着席〕 そこへもっていって、ことしの物価の上昇というのは、異常な上昇が起こっているように思うのです。異常な上昇というのは、この間も新聞に載っておりましたけれども、二十年ぶりの最悪の記録だ、前年よりも十何%のアップだというような数字も新聞に発表されておりました。  だから、物価の面から見ても、これはいまの賃金のままでいつまでも放置できるのだろうか。いま私のところに来ている手紙を見ると、私の背たけになるほど、この賃金の問題については何とかしてくれぬだろうかというはがきが来ております。私はそうだと思います。もともとが非常に低い賃金であって、そしてこの物価高の前において、今日の時代、緊急に何らかの処置をしなければ、このままではたいへんな事態になっていくんじゃないかというふうに私は思うのですが、ひとつ、労働省がこれに対してどういう見解で、この働いている人がたに対してどういうふうに臨もうとしておられるのか、御見解をお聞きしたいと思います。
  400. 道正邦彦

    ○道正政府委員 寺前議員も御承知のとおり、失対就労者の賃金は、法律に基づきまして、類似の作業に従事する労働者の賃金——建設業の日雇い労働者の方々中心になるわけでございますが、そういう民間の同種の作業に従事する労働者の賃金と、失対就労者の年齢あるいは作業内容を考慮してきめることになっております。しかも、きめるにつきましては、失対賃金審議会の意見を聞いてきめるということになっております。したがいまして、毎年、そういう法律の規定に従いまして私ども予算を編成するわけでございまして、四十八年度におきましては一三・二%アップを予算化しているわけでございます。したがいまして、制度といたしましては、物価であるとか生計費であるとか、そういうものとリンクをするたてまえになっておりません。  ただ、御指摘のとおり、最近の物価の上昇は顕著なものがございますので、私どもといたしましては、失対就労者の生活につきましては重大な関心を持って、推移を見守っております。しかしながら、いま直ちに失対賃金を上げるということには、予算が通りまして、まだ二カ月足らずの時期でもございまするし、制度的にもいろいろな問題がございますので、むずかしいかと存じます。ただ、私どもといたしましては、失対就労者の生活につきましては重大な関心を持っており、今後の推移を見守ってまいりたいというふうに考える次第でございます。
  401. 寺前巖

    ○寺前委員 それは当然関心を持ってもらわなければいかぬのですが、物価の上がり方のこの異常さは、去年の予算の検討のときは五・五%という前提でやったというわけです。私、二月にこれは厚生大臣に聞いたと思いますが、二月に聞いたときに、これはまだ、これからどうなっていくのかについて見守っていきたい、こうおっしゃった。で、見守ってもらっておる間に物価はますます上がっておるわけだ。見守っておるほうはよろしいけれども、見守られているほうは賃金はきまっておるんだから、この賃金のままで、いまほんとうにたいへんな事態が来ていると思うのです。何とか早急に手を打たなければならぬ事態に来ていると私は思うのです。だから、労働省として、まず、いま直ちにやれる範囲のことからでもやっていくんだというような態度をとらなかったら、労働者を見殺しにすることになると私は思うのです。やれることからでもやっていく、そして基本的にやる問題については検討するものは検討していく。積極的に打って出なかったら、重大な段階がいま生まれつつあるんじゃないだろうかと、私はほんとうに心配なんです。お互いに、われわれ自身だってそうなんだから。  私は再度、この失対で働いている人たちに対して、どういう見解で見ておられるのか、ほんとうにたいへんじゃないと見ているのかどうか。一生懸命働いていますよ、この人たち。それに対して、労働者として、ほかの企業の労働者は春闘をやって、みずから賃上げをかちとっているわけでしょう。ここの場合は、国会の承認がなければ賃上げができないということになっておったら、時期はどんどんおくれていく。だから、そういうことに対してどうしていくのだ、ほんとうにみずから打って出て、何とか責任を果たすという態度がなければいけないと思うのです。再度見解を聞きたいと思うのです。
  402. 道正邦彦

    ○道正政府委員 現在、いわゆる失対就労者といわれる方々は、全国で十三万人以上になっております。しかしながら、平均年齢は五十九・一歳、約六十歳でございます。しかも女子の方が六割という状況でございます。そういう状況を踏まえまして、私どもといたしましては建設業だけでなく、こういう方々にふさわしい作業、つまり第三種と申しております軽作作に就労していただくということで、約四割の方がそういう軽作業に就労されております。一般の清掃のほかに、たとえば草花の栽培であるとか、あるいは街路樹の必定であるとか、あるいは学校給食のお手伝いであるとか、あるいは動物園の飼育の補助であるとか、中にはいわゆる遺跡の発掘の補助をするというようなことをやっていただいておるわけでございまして、それだけに、働かれる方々もやりがいを感ずる。生きがいを感ずる。逆にまた地域社会からも歓迎されるということになってきております。私どもは、こういうふうに失対就労者の実態に合った職種を今後とも拡充し、地域社会からも喜ばれるという形の失対事業を進めてまいりたいと考えております。  しかしながら、年齢構成が高い、軽作業であるということになりますと、比較をいたします民間の同種の作業あるいは年齢ということの賃金ということが比較の対象になります関係で、一般に比べまして低目に出ることも、これまたやむを得ないことだと思います。しかしながら、御指摘のように現在の物価高の状況下にありまして、生活の問題につきましていろいろ苦労されておるということもよくわかります。  当面の措置といたしましては、一般の民間の日雇い労働者につきましてはない制度でございますけれども、夏季と年末に手当を支給いたしております。それで当面の措置といたしまして夏季の手当の支給、これを極力急いで都道府県に指示をし、なるべく早く失対就労者の手元に夏季の手当が行き渡るように、都道府県を指導してまいりたいというふうに考えております。
  403. 寺前巖

    ○寺前委員 局長からいま、できるだけ早くに支給するように指導したい、それは私は非常にいいことだと思います。同時に、夏季手当の中身についても額を多くするように、これは検討してもらわなければいかぬし、基本的に、賃金そのものを——他の、民間やあるいは公企体の労働者の賃金の状況から考えてみても、もっと基本的賃金を高めてもらうように検討してもらわなかったら、これはお年のいっただけによけい、その人たちの健康を守る立場から見ても、政府の責務を果たしたということにならないと思う。これはひとつすみやかに検討していただくことを要望して、この質問は終わっておきたいと思います。  そこで私は、この法律のほうの日雇い健康保険そのものについてお聞きをしたいというふうに思います。  日雇い健康保険の法律そのものは、私は保護立法だというふうに聞いている。昭和二十六年十月十七日の失対審議会で「日雇労働者健康保険制度の創設について」という意見書が出されています。これを見ると「日雇労働者健康保険制度は、日雇労働者及びその被扶養者を保護することを目的として早急に」云々ということが、そこの文章の中には書かれています。そうして同時に、この日雇労働者健康保険法を読むと、第一条に目的が書いてあります。その目的もずっと読んでいくと、一番最後に「その生活の安定に寄与することを目的とする。」と書いてある。ですから、これは普通の保険の制度と日雇い健康保険との大きな違いだと私は思うのですよ。保護立法である、生活の安定のために寄与する、ここに日雇い健康保険の特殊な、創設からこの法律の制定の精神があるというふうに見ているのですが、間違いですか。
  404. 北川力夫

    北川(力)政府委員 この法律ができました経緯には、ただいま先生がおっしゃったような経緯もあろうかと思います。  なおその前には、二十四年に当時ドッジ・ラインの不景気によって失業者が非常にふえたということで、失業保険の面で、まず日雇い失業保険の特例ができまして、そのあと追っかけて、当時は皆保険ではございませんので、日雇い労働者についても健康保険をつくるべきではないかということでできたのが現行の制度でございます。  法律に書かれました第一条の目的についていま御議論がございましたが、保護立法であるかどうかということは、これはいろいろ御議論のある点でございますけれども、やはりこれは保険としてつくったものでございまして、ただ日雇い労働者の場合には通常の常勤の労働者に比べて傷病が生活の安定に及ぼす影響も非常に大きいというふうな点もございますので、そういう面を考えますると、この法律の制定ということは、それ自体この目的に書いてありますとおり生活の安定に非常に大きな寄与をしているのではないか。そういう意味で私は必ずしも、保護立法という意味はどういう意味か知りませんけれども、やはり社会保険としての日雇い労働者を対象にした保険であるといういま申し上げたような意味で、その生活の安定には寄与している、こういう考えでございます。
  405. 寺前巖

    ○寺前委員 どういうことかわからぬとおっしゃるけれども、そのことばどおりで、生活に寄与するという、こういう日雇い労働者の状態を保護していくのだという精神が、ここにはにじみ出ているところに他の保険制度との違いがあるんじゃないかというようなことを、ずっと振り返ってみて私はそういうふうに解釈したのであって、私は確かに他の保険制度とは、やはりそこが違うと思うのですよ。そういう法律の精神というのは大切にする必要があるというふうに私は思うのです。  そこで私はそういう立場から考えたときに、幾つか今度の法律で改善された面がいろいろあります。改善された面を私は否定はしません。傷病手当を二十二日を三十日にした、これは明らかに改善だと思うのです。だけれども、私はもっと積極的な改善があり得ないだろうかというふうに思うわけです。というのは、たとえばこの傷病手当なんというのは、日々雇用の労働者にとっては大きな位置を占めている。二十二日を三十日にした、それはよろしい。だけれども、ぼくはこういう日々の雇用の労働者の場合の、たとえば傷病手当などというものは、もっと政管並みの六カ月ぐらいにぽんとやるということは、日々雇用だけによけいぼくは考えてみる必要があるのじゃないだろうか。  そこでちょっと聞きますけれども、これを今度三十日にしたわけですね。そうすると大体要する費用が十億ぐらいだ。これをもしも政管並みに六カ月にした場合には、どれだけのお金がかかるのでしょうか。ちょっと聞かしてくれませんか。
  406. 江間時彦

    ○江間政府委員 約四億円程度と推定しております。
  407. 寺前巖

    ○寺前委員 プラスがですか。
  408. 江間時彦

    ○江間政府委員 はい。
  409. 寺前巖

    ○寺前委員 そうするとたいした金額でもないですね。四億ぐらいだったら、ぼくは日々雇用の労働者、それだったら何とか手は打てぬものだろうか。財源にはいろいろ切りがあるという話になりますけれども、この収支決算の状況から見ると、かなりこれは赤字を組みながら、なおかつ、こういうふうに改善された。しかしそれだけれども、傷病手当の占める位置なんというものは、ぼくはこの日々雇用の労働者の場合には少し検討してみる必要があるのではないだろうか。これは問題提起ですから、あとで一緒に、これだけが日雇い健康保険の改善せよという点ではありませんので、幾つか気がついたところだけ私お聞きしたいと思って言うわけです。  それでは埋葬料は、いままで本人四千円で家族二千円、これが今度本人一万円の家族二千円というふうになってきているわけですけれども、最近の葬式の状況からいうと、たとえば東京都の場合には協定の最低料金は二万一千五百円ということになるわけですね。こういうものなんかは現に実費が要るそのものなんですから、そうすると、この埋葬料のようなものは、もう少し手は打てないものだろうか。これをもしも二万円ということにしたときには、一体どの程度の予算が余分に要ることになるかわかりませんか。
  410. 江間時彦

    ○江間政府委員 大体三千万円見当のものであります。
  411. 寺前巖

    ○寺前委員 そうですが。それから分べん費ですね。分べん費四千円、配偶者二千円を二万円、一万円、これ自身はかなりの金額のアップですね。だけれどもお産というのは、やはりそれ相応のお金が要ることから見るとやっぱり少ない。だから政管並みに四万円ということぐらいに直すということになったら、何ぼ金が要るのでしょう。
  412. 江間時彦

    ○江間政府委員 大体三千八百万円ぐらいであります。
  413. 寺前巖

    ○寺前委員 そうですが。そうすると、私はこういう話はいろいろ切りがないものですから言いませんけれども、せめてお葬式とか赤ちゃんを産むときとか、それから日々雇用の労働者なんだから傷病手当とか、こういうものを考えたときに、さきのお話だったら、四億に三千万円に三千八百万円という金額になる。それで全体の赤字を出してでも改善した今度の案に、若干もう少し力を入れたら手が打てるというようなことで、べらぼうな話の金額ではない。だからもう一歩積極的に打って出てそして改善をしていく。ぼくは日々雇用の労働者の生活の安定に寄与するために、もう一歩打って出ることが必要なのではないかというように思うのですけれども、この辺の問題についての大臣の御見解をお聞きしたいと思うのです。
  414. 北川力夫

    北川(力)政府委員 いろいろ例示がございまして、それとのかね合いで、金目のお話もございます。私どもも今回の改正が全くベストのものであるというふうには必ずしも考えておりません。  ただ今回の改正は、そのベースといたしまして、昨年の社会保険審議会あるいは社会保障制度審議会が長年改正ができなかったものについて、関係者の合意ができましたものについて、できるだけ早く実現をするということでやるわけでございますので、その点はひとつ、今回の案の早期成立ということをひたすら念願をしておるという点は御理解を願いたいと思います。  また、いまおっしゃいました、あるいは四億円あるいは三千万円というふうな金目の関係でございますが、この制度の仕組みから申しまして、保険料を納付している納付の枚数の関係で、受給要件というものもございますし、全体の財政規模をながめますと、極端な赤字基調であることは、これはまぎれもない事実でございます。したがいまして、そういったことを彼此勘案いたしますと、さしあたってこの線まで早期実現をして、実現をいたしました暁には、次の改善のステップというものをできるだけ早い機会に考えてまいる、こういう考え方でございますので、そういう現状について御理解をいただきますようにお願い申し上げます。
  415. 寺前巖

    ○寺前委員 大臣お答えいただかなかったのですが、あとでもいいです。  それで、私ちょっと解せないのが前からあるのですよ、日雇い健保で。  それは、一つは港湾の労働者なんです。あれは月に十四日は印紙がなければ日雇いをもらえませんね。二カ月で二十八日ですか。ところがあそこの労働者は、平均的に見て月に十一・何日という仕事にしかならないわけですよ。あと何日間かあぶれ手当をもらっているというのが、現実に仕事との関係でそうならざるを得ないのが、客観的な数字となってあらわれているんです。  そのあぶれ手当というのは、仕事に行って仕事がないということで、あぶれ手当をもらっているんですね。これは公的な制度なんですよ。そうすると、これは出ていって仕事がないんだから、事実上仕事に行ったということで、何か検討してでも資格を与えるということを考えなかったならば、かけ捨てになるじゃないか。これは私は制度的に前からふしぎでかなわないんだけれども、どうなんでしょう。
  416. 江間時彦

    ○江間政府委員 この港湾労働者につきましては、昔から、雇用調整手当が支給された日を就労の日と考えてほしいというふうな要望も参っております。  実際問題といたしましては、やはり日雇い健康保険という保険制度をとっておりまして、しかも受給の要件というものも確実でないというようなことがございまして、現状としては、やはりまだこれを解決するだけのことがむずかしいという実情でございます。
  417. 寺前巖

    ○寺前委員 むずかしいって、ちっともわからないのだけれども、制度的に、仕事が現実にしっかりもらえるのが十一・何日という数字が客観的に出てしまっている。行ったけれども仕事がもらえないので、あぶれ手当というのをもらう。その両方を合わすと、明らかに資格条件が生まれるようになっている。だから、十一・何日しか実際に仕事につけぬものだから、あとかけ捨てになってしまう。これは制度的にそうなっている問題である。だから、制度的にそうなっているんだから、これは責任をもって解決をしなかったら、おかしな話ではないか。私は、制度的に考えても少しも理解をすることができない。  これは前から問題になっているんですよ。何でいまだにこういう制度的におかしいという問題について検討を加えないのか。いまの話では私はさっぱりわからぬですよ。制度的に十一・何日しか仕事——ちゃんとそこには印紙を張っているわけですね。そしてあぶれ手当をもらいに行く日は、これは仕事に行ったけれども仕事が与えられぬから、あぶれ手当をもらう。制度的に行っているんだから、そこには何かの処置が考えられるはずではないか。何かの処置をそこで検討する必要はないのか。どうなんですか。
  418. 北川力夫

    北川(力)政府委員 制度の仕組みということになるわけでありますが、ただいま医療保険部長から申し上げました雇用調整手当は、先生も御承知のとおり、失業保険金と同様な性格を持つものであります。したがって、これをいわば保険料納付の対象になる給付金というふうには、現行の制度上は考えられません。そういう意味合いで、前々からそういう御希望はあるのですけれども現在、この制度の運用上適用していくということはむずかしい実情であります。  なおまた、現行制度の仕組みといたしましては、いまお話に出ました港湾労働者に限らず、初めからおっしゃいました前二カ月間に二十八日以上の就労と申しますか、印紙納付と申しますか、それができる見込みのないことが明らかな者については適用除外という道がございますので、そういうことによって——これは被用者は被用者保険でというたてまえから見ますと、ややずれ込みますけれども国民健康保険の被保険者になるという道があるわけでございますから、現行の制度としては、そういう適用除外によって、国民健康保険のほうで救っていくということになろうかと思います。
  419. 寺前巖

    ○寺前委員 かけさせておいて、かけ捨てにさせてしまうというのは、現実にそういうふうな仕事の与え方になっている以上は、ぼくはおかしな話だと思いますよ。お金だけ取っておいてということになる。これは研究してもらう必要があると思いますよ。このままの制度をそのまま置いておくのは、どう考えてもおかしな話だ。これは要望しておきます、大臣。  それからもう一つ。もうおそいですから、私もこの程度にしておきたいと思っておるんだけれども、そういうような、これはどうしても矛盾だと思うものは、やはりそれなりに制度的に整備するということを考えてもらわなければいかぬと思うのです。  今度のこの法案は、給付期間の満了後の医療費の給付は二年を三年半にしようという話ですね。ところが、この三年半に延長することになったけれども期間終了後において前二カ月二十八日間、前六カ月七十八日間以上の保険料の納入があった場合には、さらに給付が受けられるような措置をとるわけでしょう、今度の法律は。これはいいことだと思う。ところが私はこの問題について、こういう場合はどういうことになるんだろうかということをちょっと疑問に思った。  それは何かというと、こういう形で、たとえば慢性の疾患にかかって、二十八日間働くことを通じて三年半過ぎた場合に、働きながらめんどう見てもらうということで、ずっと継続することができるというやり方をした。ところが、その継続の過程の中で労働災害にかかったとしましょうか。労働災害のほうは労働災害でめんどう見てもらうことになるけれども、その慢性の疾患はそのまま残っておる。そうすると、いままで働きながらだったら、その慢性疾患が見てもらえるけれども、今度は一方で労災にかかってしまったために働けなくなってしまった。その場合に、働けなくなってしまったから、これがめんどう見てもらえなくなってしまうではないか。こういう場合にどういう救済のしかたをするんだろうか。ちょっと疑問に思ったのでお教えをいただきたいと思います。
  420. 北川力夫

    北川(力)政府委員 ただいまのケースは、今回の改正が三年半ということで延長いたしましたほか、その三年半経過後も所定の保険料を納付していれば継続して給付ができるという、二段がまえで改正をしているわけです。ですから日雇い健保の場合は、やはり給付をいたします場合に受給要件というものがございますので、いまのような労災による疾患で就労が不可能になって保険料の納付の条件が満たし得ないという場合についてまで、日雇い健康保険のサイドで給付を行なうということは、現在の仕組みではやはりできないということにならざるを得ぬと思うのです。
  421. 寺前巖

    ○寺前委員 いや、それで日々雇用の労働者だから、ぼくは特別にこまかく研究してあげてもらいたいということで問題提起をやっているのです。働きながら慢性疾患の場合だったら、めんどう見てもらえる制度を今度は確立していく。いいことだと言うのだ、私は。ところが労働災害というほかの要件でぴたっと、倒れてしまったために、慢性疾患があるやつが働けないから、めんどうを見てもらえなくなる。これは確かにぼくは日々雇用の労働者にとって大きな打撃だと思われる。自分の意思と別に労働災害にかかったのだから、だからこういう場合の救済は一体どうしたらいいのだろう。すぐにいまわからぬだったら、日々雇用の労働者だけに何とか解決する道をぜひ研究してもらいたいと思うのだが、絶対研究しませんか、これ。どうです。  私は日々雇用の労働者の場合に、せっかくそういう制度を考えたときに、労災という形で打撃を受けた場合には、これは深刻だと思うのです。たとえば健康保険の場合には継続給付という方式もあることだから、日雇い健康保険の場合にそういう制度の導入を検討してみるとか、これは研究してもらえますか、どうです。
  422. 北川力夫

    北川(力)政府委員 健康保険の場合の継続給付とだいぶケースが違うわけです。それで、確かにおっしゃったとおり、労災という事故で慢性疾患の給付期間が三年半で切れるということは、一つのケースとしては問題点であろうかと思います。これのまともな解決方法は、やはり三年半という給付期間をどこまで延ばしていくかということが私は正当な解決方法だろうと思っております。またそのことは、今回の改正が行なわれましたあとの、われわれに残された大きな課題だと思います。運用上そういうケースについて道を開くということは、どうも現段階では、そういう道はなかなかむずかしかろうというのが私の考えでございます。
  423. 寺前巖

    ○寺前委員 むずかしいから研究してくれと私も言っているんだが、労災という特殊な事態が一面で起こったときに、働きながら慢性疾患を——大体日々雇用の労働者というのはそういう条件の人が多いから、特に問題提起を私はやっている。だから、日々雇用の労働者にとっては、こういう問題は深刻な事態が生まれてくるから、あなたたちは能力を持っている人が一ぱいおるのだから、これはあの手この手でもって救う道はないだろうか、ぜひとも研究していただくことを私は要望したいのですが、大臣どうです。それでもって私は質問を終わりたいと思いますけれども……。
  424. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 まあ問題が多いのでございまして、これで質問を終わるということでございますから、最後に締めくくりとして私も申し上げますが、日雇い健康保険についてはいろいろ不十分な点がたくさんございます。しかし、私どもは労使が意見一致して昨年の六月にきめた案でございますから、この案はまず早期に成立させる、そのあとで不十分な点は、やはり根本的に私も考えていきたい、こんなふうに考えております。
  425. 寺前巖

    ○寺前委員 十分に生活の安定に寄与されるように、ひとつさらに残されたいろんな矛盾の問題について十分御検討いただくことを要望して、私の質問を終わりたいと思います。どうもおそくまで御苦労さまでした。
  426. 田川誠一

  427. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 先ほど田口委員質問中、調理師の件について大臣は判を押してないと言いましたが、厚生省設置法の一部を改正する法律案で、公衆衛生局の事務から環境衛生局のそれへ移すよう提案いたしてありますので、その際の発言は訂正いたします。
  428. 田川誠一

    田川委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後八時五十五分散会