○米田
参考人 私はこの法律ができました
昭和四十一年からスタートした
港湾調整審議会の
委員をずっと仰せつかっておりまして、しかも法律のもとになりました建議をつくる
段階におきまして、石井照久
会長が病気のために
委員会に
出席し司会することができなかったので、私が各
委員の御了承を得まして、いわゆる
委員長の代理の職務を扱わせていただきました。したがいまして、本日申し上げることは、この建議ができて、そしてそれが
法律案に移されていくときに経緯がどういうふうになっておったかということについて、そこに重点を置いて御説明申し上げまして、あとはひとつ何か御質問でもございましたらお答えいたすことにいたしたいと思います。
率直に申しまして、
昭和四十一年にこの法律ができましたときには、いわゆる
港湾労働者が非常に不足しておるときでありまして、これを確保するためには一つの
日雇い労働者の
登録制度をもって、これを基本にしてやっていくということよりしかたがないということが、あのときの法律の眼目になっておったというふうに思うのでございます。そこであの法律が今度施行されてみまして、毎回の
委員会に
出席して
労使の
方々の御
意見あるいは公益の
方々の御
意見を承っておりますと、どうもその期待のように動いてなかったということを率直に感じざるを得ない。その一つは、この
日雇い労働者の
登録制度の育成というふうなことが、どうもうまくいかなかった。そこでせっかくそういうものを設けながら、
日雇い登録者の
雇用ということが万全にいってなかった。片方で季節
労働者その他、入り込んでくる者も相当ありましたし、あるいは常用
労働者の中にもわりに短期間の者がございまして、そこら辺の区別がどうもうまくいかなかった。それから今度は
日雇い労働者の
登録者のほうについて見ますと、必ずしも
登録したということに徹底して
職安に出頭してくるとかなんとかということがない、わりに休むときが多いのがある程度傾向に出てきたわけでございまして、せっかく
港湾登録労働者を期待したけれども、どうもそれがそのまま出てこないというふうな形、こういうふうな形からどうもうまくいかなかった、これが私は大きな原因になっているかと思います。
それから何回となく、これを直すために、
日雇い労働者を尊重し、常用
労働者をはっきりさせ、そして
日雇い労働者にはまず出頭してくるようにするということについて、
委員会もあるいは実地に調べたりなにかして非常に努力したわけでありますが、どうしてもそのとおりにならない。そこで最後には、それではひとつ使用者側と
労働者側と、あるいは
政府もある程度関与して、一体になった共同
雇用体制というものをつくって、それにひとつ責任を持っていくようにしたらばどうかということが出てきたわけであります。そこで
委員会の中に共同
雇用体制の小
委員会を設けられまして、ここでまた何回となくこの体制の確立について検討が加えられたのでありますが、これもまた
労使双方の御主張がかなり違っておりまして、どうしてもまとまらないというふうなことであったわけでございます。
そういう結果を受けまして、これではいまの法律ではどうもうまくいかないのじゃないか、共同
雇用体制の精神をひとつ守るための法律
改正というものを一ぺんやる必要があるのではないかというふうに考えてまいりました。たまたま先ほどの
参考人の方の説明にもございましたように、
港湾の
労働、事業が機械化その他によって非常に変わってきております。これに対応するということもあるいは必要になってくることからいたしまして、
港湾労働法の
改正をひとつやってみようという方向に向かいまして、従来やっておりました共同
雇用の小
委員会と、それにさらに
委員会の中の公益の
方々も加わりまして、そしてこの法律の
改正を前提とした検討を始めました。これを始めましたら、今度はかなり進捗してまいったわけでございまして、結局その
内容は大体建議のもとになったのでございますけれども、すでに御承知のように、
事業主をもって設立する
港湾労働協会で
日雇い港湾労働者の
登録、
紹介等の
業務を行なわせる、それからこの
業務が公正に行なわれるためには
登録委員会を公
労使の三者で構成して、ここで
登録というものの公正をはかる。さらに今度は
調整、いわゆる職業の
紹介その他のこともございますから、
雇用調整規程を
労働大臣の認可のもとでやるというふうなことになりまして、この結果、
雇用の秩序を確立するために直接雇い入れを廃止していく。それから季節
雇用の規制のために
日雇い労働者の
範囲を拡大するとか、あるいは適用
港湾外の
労働者を臨時に使用する、こちらに持ってくるというふうなことも制限するというふうなことをいたしまして、大体一つの骨子ができたわけでございます。
これと合わせまして、ちょっとこれにはずれますが、
港湾倉庫につきましても、あれを野放しにしておくというか、現在ではかなり除外
規定の
範囲が広いのでありますけれども、ずっとその規制を厳格にしてきて、やはり
港湾労働者のこの法律の適用の中に入れていくというふうなことをやってまいりました。また、こういう事業をやるためには利用者のほうの利用の利便のほうから考えまして、
港湾運送料金の付加料金というものを利用者のほうで増加すると同時に、それを中央に一元的にプールするというふうなものを骨子にいたした建議案の
内容の要綱ができたわけであります。
十一月の十七日でありますか、成文化された建議案を
審議会の
総会にかけまして、これでいかがですかということになりました。その結果は、先ほどもございましたけれども、
労使双方とも全会一致の賛成でこれが可決されたわけであります。
そこで私が、ちょうど石井
会長が病気でございますから、直ちにその決議を持って
労働省に参りまして、
労働大臣に対してすみやかにこの決議が法制化されるようにということを強くお願いして帰ったわけでございます。
その結果、本年の一月の下旬に
港湾調整審議会が開かれまして、そのときに、
労働省で大体まとめられました法律要綱というものがその
総会に提示されて、各
委員の
意見を聞かれたわけでございます。この際に、先ほど
吉岡参考人からのお話もありましたが、前には全会一致でありましたけれども、ここでわれわれは賛成するということにはまいらないというふうな発言がございましたが、しかし、この
会議といたしましては、前に出しました建議がそのまま法律要綱の中に盛られているかどうかということについて考えましたものですから、大体これで盛られているのじゃないかということで、これでよかろうということになった結果が、今回の国会のほうへ御提出になっておる
改正法律案ということになっておるようであります。
なお、
委員会ではなかったようでありますが、この
運用を適正にするために、この協会の職員その他に対しても相当厳重な監督が付加されたようでございますが、これも当時問題なく皆さんが承知されたわけでございます。
そこで、こういう結果が今日になったのでございますが、それからあとの状態につきましては、私の私見も見通しも入っておりますけれども、前のときとはかなり違った
労使の
関係の空気が出てきているように思われたのでございます。何とかしてこれをひとつ盛り上げて実現させてみようじゃないかというふうなことが各方面に出てまいりました。たとえば、利用主のほうからいたしましても、付加料金はなかなか問題があるところでありますけれども、けっこうだ、そういうものができるのならばひとつ出しましょうというふうなことで、それを出されていくというふうなこともございますし、それから、先ほど申し上げました
港湾倉庫に対する
港湾労働法の適用の拡大も直ちに行なわれるようになってまいりましたし、それから、
労使関係の
近代化というふうなことについても、かなり進んでまいってきたようでございます。こういう
関係でまいりましたので、私どもは、せっかくここまでまいったのでございますから、何とか建議を生かしたこの
法律案をまずやって、そして
労使の協調の精神というものも今後強く生きるような方法でまいって、従来のようなはなはだ停頓したような形でいるというふうなことがないようにいっていただきたいというふうに存じております。
私は、はなはだ何でございますけれども、直接業界に触れておるわけではございません。いろいろそういうことに動くためには、具体的にはいろいろ問題点があったかとも思います。そこらのところは、そういう精神にのって解決していただきたいというふうに思いますので、これをもって私のごくあらましの経過報告といたしまして、あとは何か御質問でもございましたらばお答えさせていただきたいと思います。ありがとうございました。(拍手)