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1973-06-12 第71回国会 衆議院 社会労働委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月十二日(火曜日)    午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 田川 誠一君    理事 伊東 正義君 理事 塩谷 一夫君    理事 橋本龍太郎君 理事 山下 徳夫君    理事 川俣健二郎君 理事 八木 一男君    理事 寺前  巖君       小沢 辰男君    大橋 武夫君       加藤 紘一君    粕谷  茂君       瓦   力君    小林 正巳君       斉藤滋与史君    志賀  節君       住  栄作君    田中  覚君       高橋 千寿君    戸井田三郎君       登坂重次郎君    羽生田 進君       増岡 博之君    粟山 ひで君       枝村 要作君    金子 みつ君       島本 虎三君    田口 一男君       多賀谷真稔君    村山 富市君       山本 政弘君    石母田 達君       田中美智子君    大橋 敏雄君       坂口  力君    和田 耕作君  出席国務大臣         労 働 大 臣 加藤常太郎君  出席政府委員         労働省職業安定         局長      道正 邦彦君         労働省職業安定         局審議官    中原  晁君  委員外出席者         運輸省港湾局参         事官      高橋 全吉君         労働省職業安定         局特別雇用対策         課長      永場 久治君         参  考  人         (大阪市立大学         助教授)    柴田 悦子君         参  考  人         (全日本海員組         合組織局次長) 田尾 憲一君         参  考  人         (日本港運協会         副会長)    高嶋四郎雄君         参  考  人         (全日本港湾労         働組合副委員         長)      吉岡 徳次君         参  考  人         (日本船主協会         顧問)     米田富士雄君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ————————————— 委員の異動 六月十二日  辞任         補欠選任   小宮 武喜君     玉置 一徳君     ————————————— 六月十一日  医療事務管理士法制定に関する請願外十八件  (八田貞義紹介)(第六七〇三号)  同外九件(根本龍太郎紹介)(第六八九八号)  社会保険診療報酬引上げ等医療制度改善に関  する請願柴田健治紹介)(第六七〇四号)  同(安井吉典紹介)(第六七〇五号)  全勤労国民生活保障に関する請願野坂浩賢  君紹介)(第六七〇六号)  社会福祉の向上に関する請願東中光雄紹介)  (第六七〇七号)  健康保険法等の一部を改正する法律案反対等に  関する請願田中武夫紹介)(第六七〇八号)  同(竹村幸雄紹介)(第六七〇九号)  同(平田藤吉紹介)(第六七一〇号)  同(中路雅弘紹介)(第六七一一号)  同(竹村幸雄紹介)(第六八一六号)  同(大野潔紹介)(第六九〇三号)  同外一件(渡辺三郎紹介)(第六九〇四号)  健康保険法改悪反対等に関する請願石橋政  嗣君紹介)(第六七一二号)  同(佐野進紹介)(第六七一三号)  同(下平正一紹介)(第六七一四号)  同(田中美智子紹介)(第六七一五号)  同(辻原弘市君紹介)(第六七一六号)  同外一件(中村茂紹介)(第六七一七号)  同(芳賀貢紹介)(第六七一八号)  同(安井吉典紹介)(第六七一九号)  同(米内山義一郎紹介)(第六七二〇号)  同(川俣健二郎紹介)(第六八一三号)  同(原茂紹介)(第六八一四号)  同(松浦利尚君紹介)(第六八一五号)  同(木下元二紹介)(第六九〇五号)  同(田口一男紹介)(第六九〇六号)  同(高沢寅男紹介)(第六九〇七号)  同(中村茂紹介)(第六九〇八号)  同(中村重光紹介)(第六九〇九号)  同(馬場昇紹介)(第六九一〇号)  同(原茂紹介)(第六九一一号)  同(堀昌雄紹介)(第六九一二号)  同(村山喜一紹介)(第六九一三号)  視力障害者生活と権利の保障に関する請願  (金子みつ紹介)(第六七二一号)  同(瀬崎博義紹介)(第六七二二号)  同(福岡義登紹介)(第六七二三号)  同(浦井洋紹介)(第六八三〇号)  同(野間友一紹介)(第六八三一号)  同(和田耕作紹介)(第六八三二号)  同(田中美智子紹介)(第六九〇一号)  生活できる年金制度確立等に関する請願外四  件(枝村要作紹介)(第六七二四号)  同外五件(岡田春夫紹介)(第六七二五号)  同(加藤清政紹介)(第六七二六号)  同外一件(川崎寛治紹介)(第六七二七号)  同(兒玉末男紹介)(第六七二八号)  同外九件(神門至馬夫君紹介)(第六七二九号)  同(佐藤敬治紹介)(第六七三〇号)  同外三十五件(清水徳松紹介)(第六七三一  号)  同(田口一男紹介)(第六七三二号)  同(竹内猛紹介)(第六七三三号)  同(多賀谷真稔紹介)(第六七三四号)  同(安井吉典紹介)(第六七三五号)  同(山中吾郎紹介)(第六七三六号)  同(山本政弘紹介)(第六七三七号)  同(坂本恭一紹介)(第六八九九号)  同(渡辺惣蔵紹介)(第六九〇〇号)  社会保険診療報酬引上げ及び健康保険制度改  善に関する請願外九件(稲富稜人君紹介)(第六  七九八号)  同(諫山博紹介)(第六九〇二号)  国民健康保険組合に対する補助金定率引上げ  等に関する請願外九件(小島徹三紹介)(第六  七九九号)  社会保障制度改善に関する請願勝間田清一君  紹介)(第六八〇〇号)  同外二件(小林信一紹介)(第六八〇一号)  同(勝間田清一紹介)(第六八九一号)  同外二件(久保田鶴松紹介)(第六八九二号)  同(小林信一紹介)(第六八九三号)  同(柴田健治紹介)(第六八九四号)  同(土橋一吉紹介)(第六八九五号)  優生保護法の一部を改正する法律案反対等に関  する請願外四件(江田三郎紹介)(第六八〇二  号)  同(小川省吾紹介)(第六八〇三号)  同(兒玉末男紹介)(第六八〇四号)  同(下平正一紹介)(第六八〇五号)  同(中村重光紹介)(第六八〇六号)  同(細谷治嘉紹介)(第六八〇七号)  同(武藤山治紹介)(第六八〇八号)  同(村山喜一紹介)(第六八〇九号)  同(安井吉典紹介)(第六八一〇号)  年金制度改善に関する請願諫山博紹介)  (第六八一一号)  健康保険法等の一部を改正する法律案反対及び  医療保障の拡充に関する請願石母田達君紹  介)(第六八一二号)  保育所事業振興に関する請願外一件(田口一男  君紹介)(第六八一七号)  同(多賀谷眞稔紹介)(第六八一八号)  同(中澤茂一紹介)(第六八一九号)  同(中村茂紹介)(第六八二〇号)  同(中村重光紹介)(第六八二一号)  同外四件(日野吉夫紹介)(第六八二二号)  同(福岡義登紹介)(第六八二三号)  同外一件(村山富市紹介)(第六八二四号)  同(山本政弘紹介)(第六八二五号)  同(和田耕作紹介)(第六八二六号)  同外三件(枝村要作紹介)(第六九一五号)  同(柴田健治紹介)(第六九一六号)  同(嶋崎譲紹介)(第六九一七号)  同外一件(清水徳松紹介)(第六九一八号)  同(田口一男紹介)(第六九一九号)  同(多賀谷眞稔紹介)(第六九二〇号)  同外二件(中澤茂一紹介)(第六九二一号)  同外三件(中村茂紹介)(第六九二二号)  同(成田知巳紹介)(第六九二三号)  同外二件(野坂浩賢紹介)(第六九二四号)  同(長谷川正三紹介)(第六九二五号)  同外二件(日野吉夫紹介)(第六九二六号)  同外五件(八木一男紹介)(第六九二七号)  同外三件(吉田法晴紹介)(第六九二八号)  戦災被爆傷害者等援護に関する請願津金佑  近君紹介)(第六八二七号)  戦傷病者援護に関する請願羽生田進君紹  介)(第六八二八号)  同外一件(荒舩清十郎紹介)(第六八九六号)  同(奥野誠亮紹介)(第六八九七号)  身体障害者生活等保障に関する請願山原健  二郎君紹介)(第六八二九号)  保育所増設等に関する請願栗田翠紹介)  (第六九一四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  港湾労働法の一部を改正する法律案内閣提出  第四〇号)      ————◇—————
  2. 田川誠一

    田川委員長 これより会議を開きます。  港湾労働法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため参考人として次の方々に御出席をいただいております。大阪市立大学助教授柴田悦子君、全日本海員組合組織局次長田尾憲一君、日本港運協会会長高嶋四郎雄君、全日本港湾労働組合委員長吉岡徳次君、日本船主協会顧問米田富士雄君、以上五名の方々でございます。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  皆さまには御多用中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。何とぞ率直な御意見をお述べいただきたく存じます。  なお、議事の都合上、最初に御意見十分程度に要約してお述べいただき、そのあと委員からの質疑にもお答え願いたいと存じます。  また、念のため申し上げますが、規則により参考人方々からの委員への質疑はできないことになっておりますので御了承を願います。  まず、柴田参考人からお願いいたします。
  3. 柴田悦子

    柴田参考人 柴田でございます。  今回の港湾労働法改正につきまして、その中で最も重要な部分というのは、港湾労働協会の設立をめぐっての問題ではないかというように考えます。  そこで、お配りいたしましたレジュメと申しますのは、これは私がきょうのために若干整理をいたしてきたものですが、それをごらんになりながら、要点だけを短時間ですからまとめてみたいというふうに思っております。  第一番目には、港湾労働協会性格をめぐってでありますけれども、事業主性格、これは二十五条の十六に出ております。「地区協会の会員の資格を有するものは、事業主とする。」というように規定してありますけれども、事業主性格が明確に記されておりませんので、現実港湾関係労務に従事をさせながら地区協会に加盟しない業者をチェックするということが、必ずしもこの規定範囲内では十分ではないと考えます。たとえば背後輸送倉庫内労働を含んでおります倉庫業の場合などは、この事業主範囲の中に含められるのかどうかというような内容が不明確なまま残されております。  このように、bのところに触れておりますが、同じく十七に、地区協会事業主の加入を理由なく拒んではならないという規定がございますが、今度はそれの逆で、事業主が入会を拒んだ場合に一体それがどうなるのか、aとの関連でこの辺が不明確ではないかと考えるわけであります。  従来の港湾労働雇用並びに調整登録業務は、公共的な機関である第三者的な職安というのが従事いたしておりまして、そこから地区協会への業務移行がなされるわけですが、その場合に不平等性なり不公平性なりというようなものが持ち込まれるおそれはないのかどうか、この辺が不明確ではないか。こう考えると、現行法よりここの範囲に関する限りは一歩後退というふうに考えられるのではないかと思います。  第二番目に、「港湾労働協会雇用調整紹介業務などをめぐって」というところでございますが、今日でも現行法範囲内では、雇用調整計画、これは第三条第三項でありますが、労働大臣港湾調整審議会意見を聞いて、それ以外に必要なときには都道府県知事であるとか関係行政官庁意見を聞くことができるという項目に「港湾労働協会意見をきく」ということが付記されております。ここでも港湾労働協会位置づけというのは、本法案でかなり大きなウエートを持つというように考えられるのではないかと思うのです。  そこで定数を上回った過剰登録者に対する登録取り消し条項、第十一条でありますが、現行法におきましては、労働大臣の指示したときに、上回る数を限度として取り消しできるということになっておりますが、改正法では「承認を受けて、」と労働大臣の指示が承認というように変わっております。これはただ単に文字の上だけではないのではないかというように考えておりまして、後者の場合には地区協会主導権がある。ところが現行法では労働大臣の側に主導権がある。この点では労働大臣権限が縮小し、地区協会の主張が拡大するという点で、非常に労働者側への不安を増大させる余地というのが、この項からうかがえるのではないかというふうに考えております。  さらに、第三番目の登録委員会性格でありますけれども、この改正法案の中で見る限り、第三者的な機関としての位置づけというのは、この登録委員会が最もその任を受けるのじゃないかと思うのですが、しかし地区協会に対する拘束力というのは持ち得ないような規定であります。二十五条の三十五です。  第四番目に、登録の拒否並びに取り消し条項現行法の九条、十条関係でありますが、港湾運送業務に必要な能力、適格性を有しないときに取り消しできるということなんです。これは現行法ができました四十年、それから施行された四十一年段階と今日の段階とではたいへん異なっている条件を含んでおりまして、つまり港湾荷役革新が非常に急テンポであるという時点で、この項目運用いかんによっては、労働者の解雇につながる危険性があるということであります。  次の十七条の二項目というのはたいへん重要な項目でありまして、地区協会職業訓練を受けさせることを指示できるという項目なのですが、これはもっと大きく取り上げていかなければならない項目ではないかと考えます。しかしながら、本二十五条の十二、地区協会業務ということを規定した範囲内には、職業訓練の義務づけということはされておりませんでして、職業訓練機関地区協会の仕事にするということは規定されておりません。しかも、地区協会がこういう訓練機関を持つことがいいか悪いかというまた別の問題がありまして、もっと職業訓練機関については重要な位置づけがされるべきではないかと考えます。  さらに、その次でありますけれども、この十七条の第二項目に関連いたしまして、もしもこの訓練を受けることをしばしば拒んだときは、第十一条の運用によりまして、港湾日雇い登録が取り消されるという、そういう条項が入っております。今度挿入された部分であります。これはきわめて労働者にとって危険があるのではないかというように考えます。以上が、第二点の港湾労働協会雇用調整紹介業務に関連した部分であります。  第三番目の部分としてたいへん大きな問題、今日の労働法の十六条ただし書きに関連した部門でありますが、今回の二十三条は現行法の十六条よりもきびしくそれが規定されておるということは、大きく特徴づけられるかと思います。ただし、十六条の二、三、四項、つまり職安を通じて非登録日雇い労働者紹介ということが認められている項でありますが、この場合の十六条の限りでは、登録日雇いと、それから非登録いわゆる青手帳労働者白手帳労働者との間で紹介順位というのが明確なのですが、しかし、十九条——この十九条というのは継続雇用というのが適宜地区協会権限によって縮小できる、短縮できるという項目であります。この場合には、登録日雇いと非登録日雇いとの紹介取り消し順位というのは、必ずしも優先が明確にはなっておりません。まあ私の考えるところでは、登録日雇いは、何はさておいても非登録日雇いよりも雇用への優先順位を当然持ってよいのではないか、これは港労法の精神ではないかというように考えております。  さらに、日雇いの定義が第二条第五号目で、二カ月から六カ月へ延ばされましたけれども、これは通常、従来は常用扱いであった季節工日雇い扱いというふうに切りかえられるという点で、身分の不安定につながることではないかというように思うのです。  このように考えてまいりますと、この現行法からの改正というのは、今日最も緊急の課題であり、しかも重要な問題であるということに直接触れたという部分がきわめて少ない。むしろこの問題を避けて通っているというようにさえ言えるのではないかというように考えます。一つは近代化技術革新の進む中で就労機会をいかに確保し、港湾以外の一般労働者とのいろいろな労働格差、就業の格差をなくすか、同じレベルにするかということであり、第二番目には、やむなく職種転換、縮小を余儀なくされた場合に、それの措置をどうするかということが、今日、港の中では最も緊急かつ重要な問題であります。  第一番目の問題では、労働時間、賃金その他について、少なくとも一般産業と同レベルをどう達成するかという道筋を明確にしなければならないし、第二番目のところでは、年金それから健康保険福祉その他をどう充実させていくかということになるのではないかと思います。  今日、御存じのように、ILO五十七総会、これは昨年の総会でありますが、そこで、この港湾労働問題というのは日本だけではなくて、世界的に大きな問題になりてきたというところから、今年の、いま開かれております第五十八回総会で大きな勧告、条約が出されるということ、根本的なものが出されるということ、これは五十七総会で、もうすでに示されております。わが国もIL Oに加盟をいたしております国として考えれば、当然このILOから出される結論を待ってから、もっとよりいい労働法改正がされたほうがいいのではないかというように考えます。早晩現行労働法改正せざるを得ないということは認めるのでありますけれども、改正の時期が少し早過ぎるのではないか。できるならば、ILO総会結論を待って、その筋に見合った形でもって改正がされるならば、これは業者労働者とも港湾の中で繁栄していく道の策定になるのではないかというふうに考えます。  ちょうど時間なので、これで意見を終わります。(拍手)
  4. 田川誠一

    田川委員長 次に、田尾参考人にお願いいたします。
  5. 田尾憲一

    田尾参考人 田尾でございます。  私は、海上労働者を中心に、港湾に働いております船員を含めまして、産業別組織をしております全日本海員組合の立場から、簡単に意見を申し上げたいと考えます。  ただ、現在私どもの組織には、この委員会審議をされております登録日雇い港湾労働者は在籍をいたしておりません。したがいまして、私は、港湾労働の全般にわたります各部共通をいたしまする港湾労働の問題について、簡単に二、三の意見を申し上げたいと考えます。  港湾海陸輸送の接点ということがいわれておりますけれども、この港湾に、いま近代化合理化あらしが吹き荒れておりまして、そこに働いております港湾労働者は、このあらしにほんろうされております。もちろん正しい意味の近代化なりあるいは流通合理化を否定するものではございませんが、現在、この港湾労働法の一部改正審議をされておりますのも、大きく港湾の事情が変化をしている、この変化に即応するために改正をしようとしているのであるというように理解はいたしております。ただ問題は、法の実施、運用にあたりまして、私は労使関係の安定が絶対的な条件であろうと考えます。この労使関係基盤がなければ、法の目的に沿った運用ができないことは明白でございます。  このような認識に立ちまして、現在の港湾労使関係を見まする場合、一口にいってきわめて不安定な関係にあるといわざるを得ません。この不安定な要因というものは、港湾運送事業そのものの置かれております位置をはじめといたしまして、港運業界自体がかかえておりますもろもろの問題があるわけでございますが、ただ、ここで私、見のがしてはならないのは、現在政府が進めております一連の港湾近代化政策が、この労使関係の安定を大きく阻害をしているのではないかということでございます。  いま少し具体的に申し上げますならば、もろもろ近代化政策というものが、いわゆる労働者を無視したといいますか、無視ということばが適切でなければ、いわゆる労働者が知らないところでどんどん進められておるということでございます。そのことによりまして、結果的に港湾労働者雇用不安をはじめとしていろいろな問題が起こっておりまして、これらの問題はほとんどが労使関係で解決できない問題でございます。この問題を労使間で解決をしようとすれば、必然的に混乱と摩擦が起こってくることは言うまでもございません。この端的なあらわれが、昭和四十三年のコンテナ船の問題であり、四十六年のラッシュ船の問題であることは説明をするまでもないかと考えます。  港湾近代化というものは、私は港湾を機能する港湾労働近代化であると考えます。具体的には港湾労働者雇用の安定をはじめとしまして、労働者労働条件改善をすることでありますし、その基盤の上に立って技術革新なり流通合理化が進められなければならないと考えます。しかし現実港湾近代化政策は、一口に申し上げまして経済優先といいますかそういう形で、さらには港湾利用者に偏した形で施策が強行されておりまして、港湾で働いております労働者雇用不安にさらされておるのが現状でございます。このように国の港湾政策労使関係阻害をするということにとどまらずに、港湾労働者の上にいろいろな形で雇用不安が起こっております。  今日、その端的なあらわれが、すでに御承知かと思いますが、はしけ曳船買い上げに伴います乗り組み員の雇用問題でございます。くだけたことばで申し上げますと、いわゆるこのはしけ曳船買い上げに伴いまして首切り問題が起ころうとしておるわけでございます。この問題もやはり要因は、経済優先に立ちました海上輸送革新港湾整備の結果によって、従来のはしけ需要というものが大幅に減少して余剰となるという考え方に立ちまして、政府は三カ月計画で大量のはしけ曳船解撤をするという施策を打ち出しました。すでに計画の五〇%に相当する船腹を今年度は買い上げるための予算がきめられております。このようにスクラップされる物件といいますか、物に対しましては国の助成というものがきめられておるわけでありますけれども、そこで働いております、いわゆる買い上げによって職場を失います乗り組み員、労働者雇用対策というものが何一つ立てられておりません。このはしけ曳船買い上げの問題につきまして、昨年の運政審のいうところの八・一八報告、さらには港調審の一一・一七建議、それぞれこのはしけ曳船買い上げに伴いますいわゆる特別な対策を提起をいたしておりますけれども、残念ながらそれは活字に終わっておるということでございます。ただ、しいて言いますならば、労働省予算といたしまして若干の離職対策費が組まれているにすぎません。私は、まさか今日の社会情勢の中で、国の施策が進められたことによって職場を失う、そして首を切られるのだということが通用するとは考えませんが、この離職対策費なるものは首を切られた後の対策でありますし、さらに一定条件を満たしたものでなければ適用されないという内容のものでございます。  港湾労働の問題が関係方面でいろいろと論議をされるようになりましたのは、港湾労働法制定をされました前後であろうと記憶をいたしております。その間、関係方面あるいは関係機関港湾労働改善につきましてかなりの論議が行なわれ、さらにはいろいろな形での活字にはなっておりますけれども、これが具体的な施策として出てこないということは、これは行政の責任であるといわなければならないと考えております。今後さらに一連の港湾施策が進められると考えますが、少なくとも今日までのようなアンバランスな施策を改めていただきまして、港湾労働の安定を第一義といたしまして政策を進めるために、関係各省はじめ、港湾利用者を含めました労使の協議によりまして適切な施策を進めるように要請いたしますと同時に、私がいま申し上げました、今日港湾労働の最大の問題になっておりますはしけの買い上げにあたりまして、早急に国として、これらに乗り組んでおります船員労働者雇用対策を確立をしまして、少なくとも失業だあるいは首切りという事態が起こらないように措置をされることを強く要請をいたしまして、まことに大ざっぱな意見でございますが、私の意見を終わらしていただきます。(拍手)
  6. 田川誠一

    田川委員長 次に、高嶋参考人にお願いいたします。
  7. 高嶋四郎雄

    ○高嶋参考人 港湾労働法が生まれましてから七年の経過を経ておりますが、港湾労働法制定された当時は、御承知の、今日港労法の一部改定を必要とする労働者数は二万強の登録日雇い労働者があったわけでございますが、当然港湾労働法は、年々一定率を常用化するということが法の精神でもございましょうし、また一般的な社会世相の労働力の逼迫という現状からいきまして、労働力が散っているというような形等もございまして、今日四千ほどの姿になっておると思われます。いずれとも労働省においては、登録日雇いの現状の姿よりはそれをある程度調整した姿を定数として常に雇用するというような考え方でものを進めてはまいっておるわけでございますが、現実の問題としてそのような定数を補足するということにはならない現状にあるわけでございます。  もともと港湾労働法は、当時一部の港湾暴力者による手配の排除、港湾から暴力を追放するんだ、あるいはやみ手配師をなくするんだというような目的のためにこのような法律が制定されて、円滑な港湾労働力の調整をしていくというためでございますので、そのような七年の経過の間におきまして、港から暴力が姿をどんどん消していったという経過もございましょうし、またやみ手配師もなくなっていったということで、それはもう幅広い全体的な姿の中からは、せつな的に一部そのようなことがあるとしても、大勢的にはそのような姿は消えていったというようなことでございまして、港湾労働法はその目的を大きく達し得たということは、われわれ業者側としては当然そのような考え方になっておるものでございます。したがって当時、七年前にできた港湾労働法というものは、今日になると、港湾の実態もまた労働者の要するに数も、あらゆるものが大きく変化を見た現状において当然の問題として何らかの変化を見ることが必要であろうというようなことを考えてきておったわけでございます。  御承知のように、昨年の、四十七年の三月以来、政府においては、港湾労働の共同雇用というようなテーマのもとに、小委員会等によって長い間審議を進めてまいったわけでございます。われわれ業界といたしましては、その審議の持つ内容に対しましては、審議の過程において、また審議会の結果としてまとめられていく建議については、かなり意見があるわけではございます。しかし今日まで港湾労働者として貿易に貢献してきたという方々雇用の安定と就労の確保という問題を生み出すという関係からいって、共同雇用体制への移行という問題は、この以外に、ほかに方法がないであろうというような考え方からいきまして、業界の内部としてはかなり不信があるわけでございますが、われわれ業界を預かる立場の者はこの考え方に賛成をしたものでございます。したがいまして、そういうことからいきまして、法改正がなされた場合におきましては、業界としては当然の問題として、共同雇用の理念の上に立って登録労働者雇用の安定のために全力をあげていくべきだというような考えを持っております。  なお、港湾労働改善につきましては、これは労使関係の信頼度の上に立って十分な話し合いの上で円滑化をはかっていくべきであり、今後ともそのような考え方に対しては十分な努力を続けてまいりまして、法改正がされた暁には、その目的の上に大きな成果をあげるというようなことに努力をする考えを持っておるものでございます。  このような考え方で、法の一部改正の問題に対する業界側の考え方を披瀝させていただきました。どうもありがとうございました。(拍手)
  8. 田川誠一

    田川委員長 次に、吉岡参考人にお願いいたします。
  9. 吉岡徳次

    吉岡参考人 全港湾の副委員長吉岡であります。  私はまず第一に、港労法改正に対する全港湾としての基本的な態度について明らかにしておきたいと思います。  その第一は、今回の改正案は全港湾の要求とは全くかけ離れたもので、絶対に反対であります。もし今回の改正案が通りますとすると、港労法制定以前つまり七年前の暴力的な労務管理に逆戻りする、こういう危険をはらんでおるといわざるを得ません。すでに港では手配師——いまは求人連絡員、こうなっておりますが、あるいはまた現場の責任者、こういう人たちのことばとして出ておりますのは、いままでは職安がやっていた、十月一日からはおれたちの天下になるのだ、おまえたちは覚えておけ、こういうことばが出ておりますし、また、おまえたちはいまのうちに全港湾を抜けておけ、そうしないと働けなくなるぞ、こういうことがあちらこちらで言われているわけです。私は、このことばは単に雑音として聞き流すわけにはまいりません。なぜならば、今回の改正案の基本は、日雇い労働者地区協会登録をさせ、職安業務をまかせることにあります。したがって、一定のワクはありますけれども、運営については業界の自由裁量が認められることになるわけです。業者にとってはこのことが最大のメリットだと思います。現場におけるこうしたことばもこのことを反映しているものであって、決して私は雑音ではないと思います。  第二は、現在ILO総会が開かれておりますが、この総会で決定されることになっております条約勧告案に沿っていないということであります。私どもの委員長も現在ILO総会出席をしていますが、過日現地から手紙が参りました。それによりますと、港湾労働問題に対する国際的な議論はかなり高い次元で行なわれている、日本がいかに立ちおくれているかということが痛感されるということを述べてきております。労働省は、今回の改正案はILO条約勧告案に沿ったものであるといっておられます。しかし先進国では全く議論にもならないような、つまり擬装常用だとかあるいはやみ雇用云々、こういうことが日本ではきわめて重要に議論をされているということであります。こうした労使関係雇用のあり方が根本的に違っている実態をそのままにして、条約勧告の案文だけを判断するところに、私は重大な問題があると思います。  次に、全港湾は建議に賛成しておきながら法改正案には反対している、こういわれていることについて見解を明らかにしておきます。全港湾は、建議の段階ではある程度の期待が持てましたので、積極的な賛成ではありませんが、反対はしませんでした。それがなぜ改正案に反対するかというと、それには次の理由があります。  その第一は、共同雇用体制の確立について建議の内容が十分に生かされていません。登録労働者は依然として日雇いのままで、共同雇用体制を確立するということですけれども、業者がその責任を負うといっても、法律的にはその責任体制が義務づけられていません。したがって守られなかった場合の罰則もありません。業者の団体に登録させることによって業者自身も、まあ自分たちの労働者であるという意識が高まってうまくいくだろう、つまり業者の意識変革を求めているにすぎません。しかし実態はそれどころではありません。常用労働者の相互融通は依然として行なわれているし、さらには業者同士が幾つかのグループをつくって、荷役作業の共同荷受け、共同集金をとる中で、常用労働者の共同配置が組合側に提示されているなど、登録労働者をできるだけ雇い入れない方向がとられようとしているのであります。  第二は、依然として近代的労使関係が確立されていないということであります。むしろ私たちの期待とは逆に、労働者業者に対する不信感が強まっているということであります。本年三月二十二日、港湾関係労組でつくっております全国港湾と日港協との間で、時間短縮問題について協定を結びました。ところが日港協はこの協定を一方的に破棄し、今後一切中央交渉はやらないと言明をしました。それだけではなく、従来登録日雇い港湾労働者の退職金については中央交渉で解決をはかってきましたが、この交渉も拒否してきました。こうなると昨年九月二十五日に結びました、登録日雇い労働者雇用の責任と団体交渉の確立についての協定すらも破棄する結果になっているのであります。特にこの九・二五協定は全港湾が建議に反対しなかった重要な条件であったわけです。これが守られないということは、全体の土台がくずれることになるわけであります。こうした約束違反は、今回だけではありません。前にも一時金問題で、個々の業者が、日港協の労働省に対する約束を守らなかったことがあります。これが業界の体質であります。こうした業界の体質を考えると、建議の段階がどうであれ、労働者の不信感が一そう強まり、改正案に反対するに至ったのはきわめて当然であります。  次に、全港湾改正案に反対するおもな点について申し上げます。これは時間がありませんので、項目のみを申し上げることにいたします。  第一は、共同雇用体制の確立がきわめて不十分であります。これは先ほど申し上げたとおり、これは船主、荷主あるいは国、地方自治体の責任を含めて考えるべきだ、こういうふうに思います。  第二は、常用労働者雇用問題が何ら触れられていません。労働者の定数は、常用と日雇いを合わせて定められているわけであります。ところが、常用についての雇用、雇い入れ、雇いどめ、これは自由で、別であります。これでは日雇いの就労保障にはなりません。つまり登録の一本化が私はこの際必要だと思います。  第三点は、雇用調整手当が、共同雇用体制の確立に沿っていません。  第四点は、最も重要である雇用調整規程について、関係組合の意見が十分反映されることになっていません。単に意見を聞くだけで、形式にすぎません。  第五点は、地区協会の役職員、特に職員の任命について暴力支配排除の歯どめが不十分であります。  第六は、業界の紹介のやり方が、選抜紹介に重点が置かれて、就労の機会均等をはかる日々輪番紹介の原則がくずれるおそれがあります。  以上、時間の関係で要点のみを申し上げましたが、なお具体的には御質問の中で申し上げることにいたします。  要は、今回の改正案は、労働者は依然として日雇いのままで、雇用生活の安定の保障のないまま職安からほうり出されるわけですから、何のメリットもありません。また、建議に述べてある公正の担保もありません。したがって、あくまでも絶対反対でありますので、今回の改正案はぜひとも再検討されるよう私たちは強く要望している次第であります。以上であります。(拍手)
  10. 田川誠一

    田川委員長 次に、米田参考人にお願いをいたします。
  11. 米田富士雄

    ○米田参考人 私はこの法律ができました昭和四十一年からスタートした港湾調整審議会委員をずっと仰せつかっておりまして、しかも法律のもとになりました建議をつくる段階におきまして、石井照久会長が病気のために委員会出席し司会することができなかったので、私が各委員の御了承を得まして、いわゆる委員長の代理の職務を扱わせていただきました。したがいまして、本日申し上げることは、この建議ができて、そしてそれが法律案に移されていくときに経緯がどういうふうになっておったかということについて、そこに重点を置いて御説明申し上げまして、あとはひとつ何か御質問でもございましたらお答えいたすことにいたしたいと思います。  率直に申しまして、昭和四十一年にこの法律ができましたときには、いわゆる港湾労働者が非常に不足しておるときでありまして、これを確保するためには一つの日雇い労働者登録制度をもって、これを基本にしてやっていくということよりしかたがないということが、あのときの法律の眼目になっておったというふうに思うのでございます。そこであの法律が今度施行されてみまして、毎回の委員会出席して労使方々の御意見あるいは公益の方々の御意見を承っておりますと、どうもその期待のように動いてなかったということを率直に感じざるを得ない。その一つは、この日雇い労働者登録制度の育成というふうなことが、どうもうまくいかなかった。そこでせっかくそういうものを設けながら、日雇い登録者の雇用ということが万全にいってなかった。片方で季節労働者その他、入り込んでくる者も相当ありましたし、あるいは常用労働者の中にもわりに短期間の者がございまして、そこら辺の区別がどうもうまくいかなかった。それから今度は日雇い労働者登録者のほうについて見ますと、必ずしも登録したということに徹底して職安に出頭してくるとかなんとかということがない、わりに休むときが多いのがある程度傾向に出てきたわけでございまして、せっかく港湾登録労働者を期待したけれども、どうもそれがそのまま出てこないというふうな形、こういうふうな形からどうもうまくいかなかった、これが私は大きな原因になっているかと思います。  それから何回となく、これを直すために、日雇い労働者を尊重し、常用労働者をはっきりさせ、そして日雇い労働者にはまず出頭してくるようにするということについて、委員会もあるいは実地に調べたりなにかして非常に努力したわけでありますが、どうしてもそのとおりにならない。そこで最後には、それではひとつ使用者側と労働者側と、あるいは政府もある程度関与して、一体になった共同雇用体制というものをつくって、それにひとつ責任を持っていくようにしたらばどうかということが出てきたわけであります。そこで委員会の中に共同雇用体制の小委員会を設けられまして、ここでまた何回となくこの体制の確立について検討が加えられたのでありますが、これもまた労使双方の御主張がかなり違っておりまして、どうしてもまとまらないというふうなことであったわけでございます。  そういう結果を受けまして、これではいまの法律ではどうもうまくいかないのじゃないか、共同雇用体制の精神をひとつ守るための法律改正というものを一ぺんやる必要があるのではないかというふうに考えてまいりました。たまたま先ほどの参考人の方の説明にもございましたように、港湾労働、事業が機械化その他によって非常に変わってきております。これに対応するということもあるいは必要になってくることからいたしまして、港湾労働法改正をひとつやってみようという方向に向かいまして、従来やっておりました共同雇用の小委員会と、それにさらに委員会の中の公益の方々も加わりまして、そしてこの法律の改正を前提とした検討を始めました。これを始めましたら、今度はかなり進捗してまいったわけでございまして、結局その内容は大体建議のもとになったのでございますけれども、すでに御承知のように、事業主をもって設立する港湾労働協会日雇い港湾労働者登録紹介等の業務を行なわせる、それからこの業務が公正に行なわれるためには登録委員会を公労使の三者で構成して、ここで登録というものの公正をはかる。さらに今度は調整、いわゆる職業の紹介その他のこともございますから、雇用調整規程を労働大臣の認可のもとでやるというふうなことになりまして、この結果、雇用の秩序を確立するために直接雇い入れを廃止していく。それから季節雇用の規制のために日雇い労働者範囲を拡大するとか、あるいは適用港湾外の労働者を臨時に使用する、こちらに持ってくるというふうなことも制限するというふうなことをいたしまして、大体一つの骨子ができたわけでございます。  これと合わせまして、ちょっとこれにはずれますが、港湾倉庫につきましても、あれを野放しにしておくというか、現在ではかなり除外規定範囲が広いのでありますけれども、ずっとその規制を厳格にしてきて、やはり港湾労働者のこの法律の適用の中に入れていくというふうなことをやってまいりました。また、こういう事業をやるためには利用者のほうの利用の利便のほうから考えまして、港湾運送料金の付加料金というものを利用者のほうで増加すると同時に、それを中央に一元的にプールするというふうなものを骨子にいたした建議案の内容の要綱ができたわけであります。  十一月の十七日でありますか、成文化された建議案を審議会の総会にかけまして、これでいかがですかということになりました。その結果は、先ほどもございましたけれども、労使双方とも全会一致の賛成でこれが可決されたわけであります。  そこで私が、ちょうど石井会長が病気でございますから、直ちにその決議を持って労働省に参りまして、労働大臣に対してすみやかにこの決議が法制化されるようにということを強くお願いして帰ったわけでございます。  その結果、本年の一月の下旬に港湾調整審議会が開かれまして、そのときに、労働省で大体まとめられました法律要綱というものがその総会に提示されて、各委員意見を聞かれたわけでございます。この際に、先ほど吉岡参考人からのお話もありましたが、前には全会一致でありましたけれども、ここでわれわれは賛成するということにはまいらないというふうな発言がございましたが、しかし、この会議といたしましては、前に出しました建議がそのまま法律要綱の中に盛られているかどうかということについて考えましたものですから、大体これで盛られているのじゃないかということで、これでよかろうということになった結果が、今回の国会のほうへ御提出になっておる改正法律案ということになっておるようであります。  なお、委員会ではなかったようでありますが、この運用を適正にするために、この協会の職員その他に対しても相当厳重な監督が付加されたようでございますが、これも当時問題なく皆さんが承知されたわけでございます。  そこで、こういう結果が今日になったのでございますが、それからあとの状態につきましては、私の私見も見通しも入っておりますけれども、前のときとはかなり違った労使関係の空気が出てきているように思われたのでございます。何とかしてこれをひとつ盛り上げて実現させてみようじゃないかというふうなことが各方面に出てまいりました。たとえば、利用主のほうからいたしましても、付加料金はなかなか問題があるところでありますけれども、けっこうだ、そういうものができるのならばひとつ出しましょうというふうなことで、それを出されていくというふうなこともございますし、それから、先ほど申し上げました港湾倉庫に対する港湾労働法の適用の拡大も直ちに行なわれるようになってまいりましたし、それから、労使関係近代化というふうなことについても、かなり進んでまいってきたようでございます。こういう関係でまいりましたので、私どもは、せっかくここまでまいったのでございますから、何とか建議を生かしたこの法律案をまずやって、そして労使の協調の精神というものも今後強く生きるような方法でまいって、従来のようなはなはだ停頓したような形でいるというふうなことがないようにいっていただきたいというふうに存じております。  私は、はなはだ何でございますけれども、直接業界に触れておるわけではございません。いろいろそういうことに動くためには、具体的にはいろいろ問題点があったかとも思います。そこらのところは、そういう精神にのって解決していただきたいというふうに思いますので、これをもって私のごくあらましの経過報告といたしまして、あとは何か御質問でもございましたらばお答えさせていただきたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
  12. 田川誠一

    田川委員長 以上で参考人意見の開陳は終わりました。     —————————————
  13. 田川誠一

    田川委員長 質疑の申し出があります。順次これを許します。住栄作君。
  14. 住栄作

    ○住委員 ただいま参考人のほうから、当委員会審議中の港湾労働法の一部を改正する法律案につきまして、たいへん貴重な御意見をお伺いしたわけでございますが、これに関連しまして、時間が限られておりますけれども、若干の質問をさせていただきたいと思います。  全参考人に御質問できるかどうかわかりませんが、的をしぼってまず米田参考人にお伺いしたいと思うのでございますが、ただいまこの港湾労働法の一部改正法案のもととなりました建議、この経過について詳細な説明があったわけでございます。建議の段階におきまして、もちろん建議でございますから、港調審で全員の賛成——まあいろいろこまかい点があったと思うのでございますが、こういう方向で行かなければ現在の港湾労働の置かれている状態が打破できないのだという趣旨で、全会一致で建議が行なわれた。しかし、その建議に基づいて労働省のほうで法案作業を始めた。一月にはその法案要綱という形でさらに港調審総会にかけられたそうでございますが、その際特に労働側のほうから、この法案は特に共同雇用体制の確立について建議の趣旨が生かされていない、こういうような御意見があったそうでございますが、先ほどもちょっと触れられたのでございますけれども、できればその間の事情をもう少し御説明願えればと思います。
  15. 米田富士雄

    ○米田参考人 お答え申し上げます。  共同雇用体制ということがどういうことであるかということは、労使ともに真剣な意見が出て、しかもそれは対立した一つの意見でございます。まず先ほど高嶋参考人から言ったように、これはちょっと早過ぎるじゃないか、それから片一方からいえば、これは純粋の共同雇用ではないじゃないかというふうなことでございましたが、しかしこの建議の中では共同雇用体制の一つの精神を生かしていく、共同雇用とはいってないのでありまして、共同雇用体制というものをひとつ生かしていこう。したがいまして、片一方で登録紹介その他は新しい団体に残っているわけでございますから、とにかくこういうふうにしてきめられて、登録された者の就職といいますか、そういうものはこの団体が責任をもってやっていくということを眼目にして考えられた。そこら辺が共同雇用体制、たいへんな長い時間かかりましたが、最後はそこら辺で落ちついて、これは皆さんが一応そのときは御賛成いただいたということでございます。
  16. 住栄作

    ○住委員 大体その、共同雇用ではなくて、そこまでいろんな事情もある。共同雇用そのものではなくて、それに近づくといいますかその第一歩として共同雇用体制、共同雇用の理念に沿った共同雇用体制の整備、そういうことを確立することによって日雇い港湾労働者雇用の安定をはかろうというのがそもそも建議の趣旨であった、こういうように理解して差しつかえございませんか。
  17. 米田富士雄

    ○米田参考人 お答え申します。  そのとおりでございます。
  18. 住栄作

    ○住委員 次に、高嶋参考人にお願いしたいのでございますが、今度の港湾労働法の一部改正、これは登録日雇い労働者の就労の確保、これが大きな眼目になっている。いままで、法制定の当初はその点はかなり円滑にいっておったのでございますが、港湾労働を取り巻く客観情勢の変化によって、登録日雇い港湾労働者の就労が非常に不安定になってきた。そういうところから、いまもお伺いしましたように、共同雇用体制の確立というところでこの危機を突破しようじゃないか、これが建議の趣旨といえば趣旨だと思うのでございますが、一部には先ほど吉岡参考人も述べられたように、協会をつくってそこへ登録する、それで紹介する、そうして雇用調整規程に基づいて雇用機会の確保をはかっている。その協会の会員というのは事業主、これは加入が強制されていない、あるいはまた雇い入れについて努力義務の規定はあるけれども強制はされていない、こういうような点についてかなり意見が述べられたのでございますけれども、これについてはいろいろ議論があると思うのですが、それは別といたしまして、先ほども出ておりました昨年の九月の港運協会と全港湾の協定、これには明瞭にその登録日雇い港湾労働者雇用について事業主は共同して責任を持つのだ、こういう協定ができ上がった。こういうものが契機になって、私は建議が全会一致でまとまる方向に行ったのだろうと思うのでございますが、先ほど吉岡委員からは、それがどうも怪しいというような御発言があったのでございますが、それと同時に非常に労使関係に信頼感がないというようなことも、先ほど各参考人意見からもうかがえたわけでございますが、そういうような点についてどのようにお考えになっておられるか、お伺いしたいと思います。
  19. 高嶋四郎雄

    ○高嶋参考人 あとからの御質問に対するお答えになると思いますが、労使関係における信頼感が比較的薄いということに関しましては、われわれ日本港運協会にいたしましても、全国港湾なり、あるいは全港湾にいたしましても、要するにそれぞれの地域におきましては非常に環境の異なる組合員をそれぞれ持っておる関係上、またわれわれ業界も非常に企業意欲の強い、労働者との関係を持つ事業者との関係を持っておるだけに、したがいまして、中央で行なう労使関係の問題に関しましては、双方とも地区なりそれぞれ企業ごとには、話を取り進めていく上においては大きな問題点がある。そういうことからいきまして、中央自身が話し合いをする場合に、相手方に対して、それが責任持てるだろうかというような疑いの気持ちが多くあるでありましょうし、また反面、このようなことを話し合っても地域でそれが理解されるだろうか、実施できるだろうかというような気持ちを相互に持っておるということが、現状における相互の不信感という表現につながる問題だと思いますが、これはこれからのいろいろな諸問題をつかまえて問題をお互いに誠意をもって話し合っていく関係において、それから得られる結果から見て段階的に不信感がなくなっていくというように考えられるとお答えをさしていただくわけでございます。  なお、冒頭の御質問である共同雇用の体制への移行という問題に関しましては、現状行き詰まった姿の中から、登録日雇い雇用の安定と就労の確保ということは共同雇用の体制の道しか他に方法がなかろうということは、これは労使ともに当然の問題として意見の一致を見る一つの方法論でございまして、したがってそのような考え方で小委員会がスタートしておりますので、共同雇用の体制への移行という問題に対しては、われわれ業界内部におきましてもこのような進め方に対してはあくまでも疑念を持つものではございますが、中央の労働組合、業界というものがほんとうに一体になってそのような共同雇用の体制における最大の成果をあげていくべきだという考え方は、今日といえども何ら変わっておらないという考え方を持っております。  御質問のお答えに少しはずれたかもしれませんが、そんなようなことでございます。
  20. 住栄作

    ○住委員 労使関係労使の信頼感について若干まだ自信のないようなお答えでございましたが、やはり何といってもこの制度を生かしていく上において、これは全部が全部法律で縛るということもできないわけでございますので、その前提には労使関係が安定する、これはどうしても必要であると思うのでございます。そういう意味で私は、九月二十五日の港運協会と全港湾の協定というものを非常に高く評価しておるわけでございますが、やはり協定された以上その線に沿って実行していただく、それがまた信頼感を取り戻すもとになる、こういうように考えるのでございますが、これはまあ私の意見でございます。  そこでもう一つお伺いしておきたい点は、協会への事業主の加入というのは強制されていない。したがって、港湾運送業者で協会に加入しないということは万々ないと思うのでございますけれども、もしそういうようなことがございますと、共同雇用体制というこの制度がくずれていく。これも私は、これに取り組む業界の考え方が基本になると思うのでございますが、そういうような点について御意見を承りたいと思います。
  21. 高嶋四郎雄

    ○高嶋参考人 現在、港湾運送事業を営んでおりまして港運協会に加盟をしておらないという業者は、千五百社ほどの業者のうち特に一、二社の特例はあり得ると思いますが、この特例の業者というのは直接日本港運協会には加盟しておらなくても、日本港運協会の下部組織であるそれぞれの業種別の団体に加入しておりますので、結果的には日本港運協会に加入をしておらない、関係を持たない、独自のものの考え方であるという港湾業者というものはあり得ないと思います。  また港湾労働法におきましても、これを直接運用する関係者というものは全部ではなくして一部ではあろうと思いますが、当然一部になるわけでございますが、千五百社全部が港湾労働法のいま言う登録日雇いの供給を受ける対象ではございませんが、反面、先ほど米田参考人からお話しのありましたように、今回の法改正に基づく原資の調達ということからまいりまして、港湾作業料金の上積みをした付加料金をトン当たりですべての利用者からちょうだいして、それを中央拠出していただくという形になっておりますので、将来地方協会が生まれるとするならば、全部が地方協会の構成員であるということに通ずる問題だと思っております。以上です。
  22. 住栄作

    ○住委員 最後にもう一つお伺いしておきたいと思うのですが、私、最初にも申し上げましたように、やはり労使の信頼関係労使関係の安定が非常に大事だと思うのでございます。まあ、この法案に直接関係することではございませんが、先ほども吉岡参考人が述べられましたが、いわゆる港運協会と全国港湾労働組合協議会との間に労働時間短縮を中心とする交渉が行なわれました。それが協定としてまとまった。ところが、どういう事情だったのかわかりませんけれどもそれが撤回された。やはりそういうようなことが非常に不信感を持つことにもなると思うのでございますが、この問題について、現在どうなっておるのかちょっとお伺いしておきたいと思います。
  23. 高嶋四郎雄

    ○高嶋参考人 いまの日本港運協会と全国港湾労働組合との間におきまして、港湾労働の安定化策という問題を中心として、昨年の八月から中央において団体交渉を続けてまいっておるわけでございます。で、御承知のように、われわれ日本港運協会の会員なりあるいは全国港湾の組合員以外の港湾労働者というものは、常用にして、企業内労働組合と申しますが、半分以上が全国港湾関係を持たない労働者ではございますが、われわれといたしましては何としてもこれからの中央交渉というものあるいは港湾労働というものを育成する必要があるということからいきまして、日本港運協会の会員は中央の団交で取りきめたことに対してすべて従うべきなんだということで、少し強引に業界政策を推し進めてまいったわけでございます。  そのような関係からまいりまして、三月二十二日の時点までにおきまして十三回の中央団交を行ないまして、その間船内なり沿岸なりはしけなり検数なりという業務につきましては特別な専門委員会を十二回行なわせまして、港湾労働における改善策という問題、いま御質問のございました時短等の問題に対しまして、港湾労働というものを魅力ある形に、また秩序ある労働慣習というものを打ち立てるために、そのような方向をこの中央団交においてまとめまして、そして三月二十二日でその考え方をセトルして、その後の問題として関係行政機関あるいは船社、利用者の皆さん方にこのような団交の結果を御理解を得て、この五月二十八日から新制度に踏み切ろうということで、労働組合から見れば当然の問題ではないだろうかという見方をしましようが、われわれ港運業者としましては、今日まで、荷役作業について深夜作業を行なわないとか、あるいは日曜の二日以外は完全休日とするだとかというような思い切った考え方というものは、港湾運送事業という事業の性格からいくと少し行き過ぎではないかとは考えられますけれども、しかし今日の港湾労働に魅力を持たせる、またよい慣習をつくるという上からいって、そのような方向に労使関係をまとめまして、関係利用者方面に問題の理解を得るという方向にして、一応横に置いておきまして、次の問題として、春闘にからむ賃上げ問題の交渉が推し進められたというわけでございますが、残念ながら、この賃上げ問題におきましても、四月四日から四月二十五日までの間に四回の中央団交を行ないまして、非常に精力的に——過去においての中央交渉として、労働賃金を中央が画一的に行なうというようなことは、日本港運協会の歴史にもない。自由な事業者団体ですから、そこまで拘束することには問題がございますが、しかし何としてでもここで思い切った一つの制度をしこうということからいきまして、賃上げ交渉も中央で一括、基準線を引こうということで問題を進めたわけでございますが、不幸にして、最終時限の上に立ちまして、基準内一万三千五百円以上という回答の上に立って、われわれは、地区に持って帰ってそれ以上のことは地区でそれぞれやりなさい、中央が全国的に一本の線を一挙に引いてしまうということはでき得ないので、一万三千五百円以上という考え方で地区に持って帰って、あとは地区のベースでやりなさいということではございましたが、そのことに対して、理解できずに、賃上げ交渉が決裂したということでございますが、問題は、その賃上げ交渉の決裂ということよりは、もうこのような、要するに中央が労使の信頼度の上に立って、秩序のある団交を進めていく過程において、地区の組合関係関係者としては、日本港運協会と全国港湾がそんなようなことがなし得られるかというような、先ほど来の話ですが、不信感を持っておりますので、この中央の流れを見つつ、先に先に先行していくというようなことからいって、業者側から言わせれば、中央交渉がそんな中央交渉では理解できないというようなことで、決裂しなきゃならないんだというような結末に相なったわけでございます。  そういうようなことで、一応決裂はいたしたわけではございますが、今日においても、われわれ日本港運協会としては、当然の問題として、二者協議制団交というものは今後といえども継続していくべきだ、再開していくべきだという考え方は持ってはおりますが、これには、今後行なっていく場合の一つの問題点として、中央団交というのは一体どれだけのワクで、どれだけの権限を持って行なうべきであるかということを事前に十分協議する必要があるというふうなことで、労働省等のごあっせんもございまして、全国港湾労働組合の執行部の幹部とは、労働省のあっせんによって今日まで二回懇談をしてまいっておりますし、また直接の関係として協会にお出かけ願って、それぞれ幹部と話し合いをしておりまして、中央交渉の再開については今後できるだけ早い時期に事務折衝を労使で行なってものを進めていくようにいたしたい、こう考えておりますし、同時に、そのような時点で時短問題等も最終的に取りまとめて再出発したいというように考えております。以上です。
  24. 住栄作

    ○住委員 ぜひその綱を切ることのないように、これからひとつ労使交渉をりっぱにやっていただいて、労使関係の安定につとめていただきたいと思います。  ほかの参考人の方にもお聞きしたい点があったのでございますが、時間がきましたので、残念でございますが、私の参考人に対する質問は以上で終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  25. 田川誠一

  26. 枝村要作

    枝村委員 米田参考人にお伺いいたします。  先ほどの住委員の質問に対してお答えがありましたのですが、建議の段階で、共同雇用の具体的な施策ですか、取り組みについての意見は、根本的に労使の間ではやはり対立しておった、したがって、何とか建議をまとめるためには、その精神を生かすために努力し合おうということで、その意味では満場一致であの建議全体がまとまったと、こういうふうにおっしゃいました。ところが、法改正を見ますと、たとえば先ほど質問がありましたように、労働省のこれに対する、いわゆる精神を生かすというほんとうの取り組みがなされていないような点がたくさん発見されるというような意味から、先生は必ずしもこれは満足でないという意思の表示をされたと思いますし、私ども仄聞すれば、会長もそういう意味のことを病気の中からおっしゃったというふうに聞いております。そうすると、では、実際にこの法をそういう精神によって生かせるためにはどうしたらよいかという問題が一番最初にやはり提起されてくると思います。その中心はどうしても、非近代的な今日の労使関係を少なくとも直していくために、労使双方がやはり一生懸命取り組む必要があろうと思うのですけれども、今日の現状のままではたして港湾荷役に関する労使関係が精神を生かされるような方向になるであろうかどうか、こういうのが私ども含めてみな心配されるところだと思うのです。そこで米田参考人に率直な御意見をお聞きしたいのであります。
  27. 米田富士雄

    ○米田参考人 お答え申し上げます。  たいへんむずかしい問題なんですが、共同雇用ということを厳格に解釈しまして、ほんとうに雇用関係に尽きるんだ、それを共同にやるんだということになりますと、なかなかこれは使用者側のほうは、そういうことに対しても経験もありませんし、どうなっていくかわからないということで非常に不安な感じを持ってくるわけでございます。そこで、それでは、いまのままでは絶対にいけない、まあ共同雇用に近い一つの体制をつくろうというふうなことが出まして、これはよけいなことかもしれませんが、建議の中にこういうふうなことを一応書いたわけです。「登録日雇港湾労働者就労機会港湾のすべての事業主の共同の責任において十分確保され、また、労働者側においてもこれに対応する姿勢を確立し、共同雇用の理念にそった体制の具体化をはかることが必要である。」ここら辺でひとつ結論を出したわけです。このためには、それを受けまして「事業主をもって構成する団体を設立し、日雇港湾労働者登録紹介訓練その他雇用調整の主体たらしめ、その構成員である事業主の共同の責任において登録日雇港湾労働者雇用の安定、労働条件の向上その他福祉の増進をはからせることとするのが望ましい。」こういうふうな一つの具体策を出したわけです。さてこれで十分であるか、これから先どうなるかということが先生の見通しに対する御質問であったかと思いますが、私は率直に申しまして、今日の労使関係その他からいたしましたらば、まずこれでいくのがぎりぎりの最善のものじゃないかというふうに考えたのでございまして、これは各委員ともそういうふうに考えて、従来のようにただ登録制度だけがあればいいんだということじゃなくて、共同の責任において、雇用の安定、労働条件の向上等をはかるべきであるということにしている、この点でまず満足すべきじゃないか。将来これを、ただこういううたい文句ではなくて、ほんとうに実施していただきたい。それがためには、一つの法律に基づく法人も置きますし、また各港運業者も、先ほど高嶋委員の言われたように、利用者側のほうもこれに対する付加料金として相当のものを各トン数について出しているようでございます等、みんなの協力体制が大体できているのじゃないかというふうに考えます。まずこれで許していただきたい。お答えになったかどうかわかりませんが……。
  28. 枝村要作

    枝村委員 先生はもうお帰りになる時間ですね。もう一言いいですか。——建議の中には諸外国の進んだ例が引用されまして、そして少なくともこれに近づけねばならぬというたてまえをとられておるのですけれども、諸外国の例をいろいろ調べてみますと、やはり国あるいは業者それから労働者、この三者構成あるいは二者構成その他法によるいわゆる協約、協定ですか、そういうものに拘束されて、ほんとうに責任を持ってこの共同雇用というものが進められていくということになっておるのですけれども、日本の場合、これは明らかに業者にすべての公権力を、悪いことばでいえばまかしてしまう、こういう結果になっておるのです。建議はそういうふうに諸外国のいい例を参考にしろというたてまえになっておるのにかかわらず、法改正だとそれが見向きもされないようなかっこうに結果的になっておるということになりますと、これはどういうことになるでしょうか、その点一言お伺いしたいと思います。
  29. 米田富士雄

    ○米田参考人 お答え申し上げます。  諸外国の例も委員会では検討されました。こういう委員会で考えたような形がオランダその他にもございますので、大体これでいけるだろうというふうなことを当時考えたわけでございます。
  30. 枝村要作

    枝村委員 では、柴田参考人にお伺いいたします。  先生は先ほど最後のところで、いまILOの五十八回の総会がこの六月に開かれておるわけなんですけれども、それが済んでから港湾労働法改正をしたらいいのではないか、これは少し早過ぎるという、時間がありませんから、簡単な意見が述べられたわけなんです。ILOの、いま提起されておる、新しい港湾荷役方法の社会的影響に関する条約、特にその中の二条が、いまの現行法並びに改正されようとする法案とは全く相いれないような内容になっておるのではないかという懸念をわれわれは持っておりますだけに、もう少し詳しく説明を願えればいいと思います。
  31. 柴田悦子

    柴田参考人 ILOの五十七総会におきまして、かなり長文——これは昨年の六月に策定されたものでありますが、かなり詳しい港湾労働者の、特に日雇い労働者雇用の安定についての勧告が出されたわけであります。実はILOがこういう問題を取り上げてきたといういきさつでありますけれども、これは一昨年、一九七一年でありますが、七一年というのはたいへん大きく世界的に港湾労働者の争議が起こった年でありまして、ILWU、これはアメリカの太平洋岸の労働組合であります。この労働組合では、百三十数日に及ぶ長期の荷役拒否をやりました。これは協約の切りかえ期に行なわれた争議でありますけれども、その中でILWUが最も強く主張いたしましたのは、コンテナリゼーションによりまして港湾労働者雇用の機会というのが急速に低下してきている、職域が次第次第にトラックの自走によって失われていくという問題であります。そこでILWUの主張は、インランドデポ、内陸のデポでありますが、そこまで港湾労働者の職域に拡大をしろということと、もう一つは雇用機会の縮小に対しまして週労働時間、これは三十五時間、その賃金保障をしろという要求でありました。これにつきまして非常に長期の争議の結果、先のほうのインランドデポまで拡大するという職域拡大については、新しい労働協約にも盛り込むことができずに、ただ港湾の中で港湾労働者以外の手にかかる貨物については、PMAという使用者団体が一定のロイアルティーをILWUに支払うということで決着がついたわけであります。ところが週労働時間の保障については、三十五時間の保障が新協約の中に盛り込まれたのでありますけれども、これはかなり大きな世界じゅうの——特に日本海運業界などは大きな影響を受けたストでありました。続いてイギリスにおきましても、港湾労働者の争議が起こっております。これも同じくコンテナリゼーションによる職域の縮小ということでありまして、こういう問題というのは、わが国だけではなくて世界の、いまや傾向になってきている。  そこでILOの五十七総会における勧告の主要な命題というのは、このような縮小されていく港湾労働に対して、それをどのように受けとめていくかということ。この総会の勧告を見ますと、登録制を採用していくこと、さらに登録労働者優先雇用制を確立してその保障をつけるということ、それから機械化による影響を最小限にとどめるようなあらゆる手だてを施せということなどがその主要な内容になっております。  さらにもう少しつけ加えて細部にわたって申しますと、勧告の第七項におきましては、新しい機械化並びに技術革新というのは、国内及び地域開発とそれから労働計画あるいは労働政策調整をした上で行なうべきだ、つまり新しい機械導入をそれだけ切り離して港でやるのではなく、国内並びに地域の諸開発並びに労働計画あるいは労働政策全体との関連の中でやるべきだという命題を踏まえております。  それから第十一項におきましては、雇用保障という考え方をただ単に雇用機会の保障だけにとどまることなく、所得の保障を含めて考えるべきだ。これについては、週間保障賃金あるいは出頭手当、失業手当というようなものを含めた概念としてとらえるべきだということの内容を含んでおります。  それから第二十二項におきましては、やむなく削減をしなければならないときのやり方としまして、一挙に縮小するというようなやり方をとるべきではなくて、漸次的に自然減を待つべきだ。それからもう少し積極的に新たな労働への転換のための職業訓練とかあるいは補導の機関を整備していくとか、あるいは新しい機械化に順応できるような労働力になるように一定の手だてを施すべきだ。繰り返しになりますが、雇用中止というような手段はとるべきでないというようなことが述べられております。そのあとのほうで、これは三十二項に属するかと思います。そこでは労働組合とそれから担当の事業者の間で協定を策定して、その協定の中で合理的な休憩時間であるとか安全基準であるとか、あるいは作業能率であるとかというようなものを中に含めて考えるべきだ。これは業者との間の協定を大いに進めろというような意味のことが勧告内容として出されております。これらはすべて五十七回総会における勧告案の中身でありまして、これを踏まえて今年度の五十八回総会で条約として出されるということでありますけれども、この中身を見てみますと、現在の港湾日雇い労働者就労機会とそれから身分保障、それからやむなくそれを縮小する場合に一体どのような形が最も日雇い労働者の身分保障なりにつながっていくかという、そういうことを踏まえられた勧告だというように私は読んだわけであります。ですからこういう内容を大いに盛り込まれるならば、港湾労働法というものがかなりいい方向に改正されるのではないかというように考えた次第であります。
  32. 枝村要作

    枝村委員 あまり時間がありませんからお聞きするわけにいきませんが、とにかくいまの条約ができ上がりましたら、日本もこれにならって国内法のすべてを整備してこれを受け入れるかどうかということをきめなければならぬことになるわけでありますけれども、その場合に、法改正あるいは現行法、それはいずれになるか、この国会が結末をつけるわけでありますが、いまのままではILO条約に適応できる法律として成り立つものかどうかという懸念がわれわれ側にはあるわけなんです。先生は具体的にいろいろお述べになりましたけれども、一口で言って、いま私が質問したことに対してどのようにお答えできるのでしょうか。
  33. 柴田悦子

    柴田参考人 今回の港湾労働法改正の最も重点であります港湾労働協会性格からしまして、ILOの勧告の中に盛り込まれているような雇用の安定それから常用化への方向それから日雇い労働者の就業の保障というようなことが、この機関を通じて、つまり港湾労働協会機関を通じて保障が可能かどうかということには大きな疑問を持っているわけであります。  それからさらに、二十三条の直用禁止条項はありますけれども、先ほど若干ここで参考人供述させていただきましたように、十九条の三項などで非登録日雇い港湾労働者への雇用の余地を残しているというようなことあるいは紹介順位などについても、具体的にいいますと登録日雇い労働者優先順位が不明確であるというようなことから、今回の港湾労働法改正が必ずしもILOの勧告に沿ったものとは言いにくいのではないかというような懸念を大きく持っているわけであります。
  34. 枝村要作

    枝村委員 高嶋参考人にお伺いいたします。  先ほどのお答えの中で、九・二五の協定書はこれは破棄されたようなかっこうになっておるのではないかというようなことに対して、そうではない、依然としてこれは生きておるのだ、こういうふうな答弁があったようであります。そうなりますと、吉岡参考人との間に若干の食い違いがあるようでありますから、あとから吉岡さんにはまたお聞きいたしますが、お話を聞きますと、中央では相当努力をされて統一の交渉に力を注いでおる、そして成果もあげてきた。しかし地方地区ではなかなか中央のその努力が認められずに、いろいろな事情から不満を持つ人たちがたくさんおる。今日のこの法改正そのものにもやはりそういう懸念が多分に含まれておるけれども、しかしわれわれは一生懸命になって努力をしておるのだ、こういう御答弁がございました。その努力に対してはたいへん感謝するわけでありますが、そうなりますと、いまの九・二五の協定は生きておるということになれば、これを中心にいまからも労働者側との間に誠心誠意御努力を重ねていくということを、これは念のためでありますけれども、もう一度確認の意味で質問をしておきたいと思いますから、ひとつよろしく御答弁をお願いいたしたいと思います。
  35. 高嶋四郎雄

    ○高嶋参考人 お答えさせていただきます。  この九・二五が破棄された、協定がないのだ、そのようなことに関しましては、今度といえどもわれわれとしてはいろいろなものを処理していく、要するにものを話し合っていく過程において、ときには挫折することもあり得るでしょうが、根本的にはものを段階的に前へ進めるためのいろいろなテクニックとして労使の間に起きる問題の進め方であろうと思います。あくまでもわれわれも正常な労使慣行の育成ということは、業界人として当然望むべきものでございますので、この九・二五協定が破棄されて、要するに今後ないのだという考え方を現状持っておりませんし、なおそれらが今後継続審議されていくような努力を重ねるつもりでおります。以上です。
  36. 枝村要作

    枝村委員 吉岡参考人にお伺いいたします。  いま高嶋参考人からお答があったのですけれども、先ほどのあなたの意見によりますと、全く今日の段階では、労使の間では円満に路線を遂行するというだけではなく、せっかく約束したものまでも破棄の状態に追い込まれてきた、それもやはり使用者側のほうにそのすべての責任があるというような内容のものであったと思うのです。それに対して高嶋参考人から、そうではなくして、われわれは努力したのだがこうなったという事情が述べられました。若干食い違いがございますので、もう一度あなたのほうで御意見がありますればお聞きしたいと思います。
  37. 吉岡徳次

    吉岡参考人 九・二五協定が破棄されたのも同然じゃないかというふうに私たちが判断をしましたのは、例の日雇い退職金の交渉を、こちらがいま値上げ要求をしてきているわけです。第一回の団交を持ちましたが、その後例の全国港湾との協定が破棄されたことに関連して、これも中央交渉は拒否だ、こういう答えが私たちのほうにきたわけです。とすれば、九・二五でいわゆる労組法に基づく団体交渉をやると、こう約束したことも、これもここにあったじゃないか、こういう考え方に当然私たちは立たざるを得ないわけです。なおこの際私は申し上げておきたいわけですが、これがもとに戻ったからどうとかということではなくて、ことごとく、このように労使が協定したものを、いわゆるお天気の都合によって死んだり生きたりするところに私は問題があると思うわけです。ここのところを私たちは非常に不信感を持っておるわけで、少なくとも協定したものを一方的に破棄だというふうにやられるということは、それでまた一時期来たらもとへ戻す、こういうことがあってはならない、こういうことを申し上げているわけでございます。以上です。
  38. 枝村要作

    枝村委員 そこで労働省にお伺いします。あなた方はいま中に入ってなかなか努力をされておるようでありますが、こういうふうに労使の間で協定、協約が結ばれる。たとえば九・二五の問題は、この法改正をするということに対する労働者側の一つのポイントでもあったわけですね。あれを前提として建議の段階で、不満ではあるけれども満場一致という形になったという、そういういきさつもあるような重要な協定なんですよ。それをも含めて、破棄の状態に行くというようなそういう労使関係は、これは正しくないと思うのですけれども、この法改正とあわせてそれらの問題についての御所見をお聞きしたいと思います。
  39. 道正邦彦

    ○道正政府委員 お答えいたします。  委員会の席上でもたびたびお答え申し上げましたように、今回の法律改正の基礎になっております建議にも明確にうたわれておりまするように、港湾労働改善のためには共同雇用体制を確立する必要があると同時に、それをささえる近代的な労使関係が確立されでなければ運用がうまくいかないんだということを言っておるわけでございます。したがいまして、法律改正がなされましても、労使関係の信頼関係が確立されないならば、法律の運用はうまくいかないことはもう当然でございます。そういう意味で、私ども労使が信頼関係を確立されまして、相ともに協力し合って港湾労働改善に努力されることを心から願うものでございます。そういう趣旨から、本来労使関係労使の自治の問題でございますけれども、労働省といたしましてごあっせんも申し上げ、先般来問題になっておりまするいわゆる三・二二協定、これはいろいろいきさつがございましたけれども、中央団交を一日も早く再開し、労使がテーブルについて三・二二協定を順守し、それによって労働条件その他の改善をはかられると同時に、港湾労働改善にも御協力をいただきたいという趣旨でごあっせんを申し上げました。  具体的に申し上げますと、五月二日以降数回にわたりましてごあっせんの結果、現在におきましては中央団交の再開については労使双方とも努力をし、近い将来に必ず再開をする。そして三・二二協定は順守するというふうに私ども承っておりますので、近い将来に労使の信頼関係は回復し、協力関係が確立されるもの、ひいては港湾労働改善に大いに御協力いただけるものと心から期待をいたしている次第でございます。
  40. 枝村要作

    枝村委員 引き続いて吉岡さんにお伺いいたしますが、いまそういうような労働省の側と、そして協会側のお話がありました。全港湾としてはどういう態度をとるかというようなことは質問いたしませんけれども、このいままでとってきた使用者側の、あるときは協定し、あるときは天気の都合によっては破棄するという、そういうふうな態度そのものに根本の不信がある。そこから結局この港湾労働法の法改正によって業者間の集団に公権力をすべてまかせる、白紙委任するということになるとたいへんなことになる、こういう問題をきわめて重要視されて反対の態度を出されておるんだと私は思うんですが、先ほど時間がありませんでしたから、あなたは要点だけの意見の陳述をされたんですけれども、もう少し、七項目か六項目にわたりましておもな反対の点を述べられました中で、言っておかねばならぬという点がございましたら承っておきたいと思いますから、おっしゃってください。
  41. 吉岡徳次

    吉岡参考人 先ほど六項目申し上げましたが、時間の関係もありますので、その中のまた重要な点について私どもの考え方を申し上げさせていただきたいと思います。  その第一点はやはり共同雇用の問題であります。先ほどからいろいろと参考人意見もありましたが、米田参考人が申し上げました、共同雇用そのものではない、なるほど建議は共同雇用そのものではありません。それはそのとおりであります。しかし共同雇用そのものではないが、共同雇用体制の確立とはしからば一体何だ、こうなります。それがあいまいであります。いわゆる何も担保がないわけです。依然として日雇いなんですから、共同雇用の体制とは具体的には何だ、こう聞きますと、法二十五条の十二、地区協会の「業務」のところの第四号、それから法第二十五条の十五、つまり「会員の責務」です。それともう一つは、労働省がいつもおっしゃっているのは、直接雇用を禁止したではないか、それから納付金をプール制度にしたではないか、それから季節を使わないようにするために六カ月以内を日雇にしたではないか、そういうあの手、この手でやっているからうまくいくじゃないかという論法にすぎないと私は思うわけです。私どもがいろいろと要求しておりますのは、一番当初は、共同雇用ということについてどこがやるのか、地区協会なのかどこか、こう詰めたわけです。しかしそこのところは、地区協会雇用関係を持たせるということは、こうなりますと完全に総合常用になりますから、そうなると雇用調整手当の財源の補助である国の予算が出なくなる、こういうことで依然として日雇いのまま置いたわけです。それの裏協定として例の九・二五の協定が出たわけですけれども、本来ならば、たとえば二十五条の十五の「会員の責務」のところにもっと明確にすべきだと私は思うのです。これについては何の明確な担保もありません。これは共同雇用の問題について、建議の精神と実態が違うじゃないか。つまり私どもは二十五条の十五の「会員の責務」を、努力ということではなくて義務を負う、そしてそれが守られなければ一定の罰則がある、こういう形になりませんと、これは何の意味もないではないか、これが第一点の一番重要な点であります。  それからもう一つは常用の問題です。先ほど柴田先生のほうからもありましたが、ILO条約の中では常用も日雇いも一体となって登録制、こう書いてあります。日本の場合には常用は個々の企業の常用ですから自由なんです。そして日雇いだけがプールに登録されているわけです。そして先ほど申し上げましたように、全体の定数の定めは常用も日雇いも一体として定めるわけです。ところが常用は自由ですから、個々の企業が雇い入れ、雇いどめは自由ですから、昔ありましたけれども、神戸の港あたりは定数が常用よりも一一%上回るということすらも出たわけです。そのことによってふくらんできますから、だんだん登録労働者が締め出されるという問題があります。それと同時に、いわゆる偽装常用とか相互融通というのが各所に行なわれているわけです。ですから、共同雇用体制ということでいろいろいわれますけれども、それはあくまでも就労の確保ということが重点になりまして、その労働者をいかにして生活保障させ、雇用を安定させるかということになっていない。それをほんとうにやるとすれば、常用も含めた一本のものでなければ問題は成り立たないのではないか、そういうふうにしませんとこれは意味がないということを言っているわけです。現に登録労働者は一番最初は三万幾つの定数でありましたが、今日は五千百二十の定数であります。実数はそれよりも下がっております。これはなぜ下がったかといいますと、必ず労働省はややこしい計算をするわけですけれども、その計算をずっとやっていきますと一定の数字が出ます。それは必ず実数を多少上回ったものでいつも計算してくるわけです。計算はちゃんと方程式が成り立っていますけれども、答えを先に出しておいてずっと式を立ててくる。私はいつも東大方式でわけがわからぬと言っているのです。そういう形でやられてだんだん減らされてきたわけです。そしてしかも新規登録をさせないわけです。させないから実数が減る、その実数の上に立って定数がきめられる。こういう形でずっと来たものですから、今日定数が下がってきているわけです。これをもし今度の法律の改正案でそのままいきますと、またぞろ一定の保障を確保するためには、人間が多いから減らす、減らす、減らすということで、もはやいわゆる三千何ぼ、四千くらいの登録労働者で一つの法律が要るかという議論にまで発展するところにいま来ているわけです。これが一番重要な点であります。  それからもう一つは雇用調整手当の問題ですが、いまの手当制度は就労日数と賃金によってきめます。点数制ですから、二カ月通して二十四枚の一級印紙がちゃんと張られれば、これは一級の手当がもらえます。ところが本人は仕事がしたくても仕事がない、そういうのが続きますと日数が減りますから点数が下がります。いまは二千二百五十円が一級で、最低が八百円であります。八段階であります。とすれば、就労と賃金でかけ合わしていきますから、その人の賃金は当然一級の二千二百五十円の手当をもらう資格のあるものが、自分の意思でなく、仕事がないために就労日数が下がって点数が下がり、極端に言えば八百円に下がるという状態になるわけであります。ですから、これも一定の就労保障生活保障にはなっていない。このことを先ほど第三点目に申し上げたわけです。  それからもう一つは、地区協会の役職員の問題です。役員はまあ別としまして職員の問題なんですけれども、私どもが一番心配しておりますのは、九月三十日までは職安がやっていた、十月一日の朝になったら前に入れ墨もんもんが並んだ。こういう形になったらたいへんなことになると思うのです。ですから、そういう暴力的な手配師、いまの求人連絡員です。これを一体どうするのか。これがそのまま職安の仕事を——窓口に並ぶといいますと、これはたいへんなことになります。それのチェックがないと言っているわけです。なるほどいまの法律の中に、一定の刑を受けた者、そしてそれが刑の執行後二年たたない者、こういうのがあります。しかしながら、それでは問題の解決にはならぬと思います。私どもはやはり「おそれのある者」ということを入れるべきだと言っているわけです。ところがそれに対しては、なかなかそうはいかないと言っているのです。ところがもう一つのほうの労働者登録取り消しのほうは「おそれのある者」というのが入っているわけです。「業務の正常な遂行をみだりに妨げるおそれのある者」というのがありまして、これは「おそれのある者」が入っているわけです。ところがこちらは、地区協会の役員の任命については「おそれのある者」とは一つもありません。労働者のほうはおそれのある者を罰して、そして協会の職員についてはそれがないというのは片手落ちだ、こういう点を私たちは重要な問題点として取り上げているわけです。以上です。
  42. 枝村要作

    枝村委員 では最後に一つだけ。いまあなたがお述べになりました反対の理由、これは単にいわゆる全日本港湾労働組合だけのそういう見解ではなく、ほかにもたくさんあるわけですか。どういう組合がありますか。——私のほうから言いましょうか、それでオーケー言うてください。そのほかに全日本港湾労働組合連合会、全日本倉庫運輸労働組合同盟、全国検数労働組合連合、大阪港湾労働組合、日本海事検定協会職員組合、検定新日本社職員組合など七つの組合が、この港湾労働法の一部改正案に対しては反対の見解を持っておる。だからほとんどの組合が、労働者がこれに反対しておる、こういうふうに見てよろしゅうございますね。
  43. 吉岡徳次

    吉岡参考人 そのとおりでございます。
  44. 枝村要作

    枝村委員 終わります。
  45. 田川誠一

  46. 川俣健二郎

    ○川俣委員 当委員会審議に入って約二カ月になるわけですが、しかし国会のいろいろな障害で委員会審議そのものはたいして煮詰められたとは言えないと思います。しかしその間それぞれ専門の関係団体にも伺ってまいりましたが、きょう各参考人に貴重な御意見をいただきまして、ほんとうに御礼を申し上げたいと思います。  そこで参考人の御意見を伺いますと、ますますこの法案というのは、なぜ無理やりに今回出さなければならぬだろうかという気持ちに、率直に言ってなったわけです。柴田参考人によると、先生は現行法よりまだあと戻りだ、ILO条約締結後でもよいではないか、早過ぎる、なぜ急ぐのだろうかということをおっしゃる。田尾参考人労使関係に問題があるのではないか、こう言われる。高嶋参考人はやみ手配師などはなくなるのだ、むしろ前進なんだ、こうおっしゃるのだが、労働組合に当たっておる吉岡参考人は、労働団体の要求が全然通らないで何が前進だ、暴力的な労務管理、いわゆる手配師の横行に逆戻りするのじゃないか。そして最後に公益代表で、しかも審議会の委員長代行をやっておられる米田参考人は、建議どおりに法制化されていないというか、期待どおり運ばれていないというおことばを出しておりました。そして法案の提出者の労働省は、率直に言うと、まあこの段階じゃこの程度の法案でということば審議中にあったわけです。こういう段階でわれわれ委員が態度を表明せいといったって、なかなかこれは容易でないというふうに、私もまだ審議が尽くされていないのじゃないかなというような感じもしながら、もう少し質問してみたいと思います。  柴田参考人にまず伺います。ずばり言って、このような不穏当な、正常でない労使間、こういう労使間になったのは港湾労働法が提示されたためにそうなろうとしておるのか、それともこういうようにほかのほうに労使間の不穏な原因があって、そういうような摩擦を起こしておるときに、こういう港湾労働法が出されたからぎくしゃくしておるのか、こういった面を先生は専門に研究なさっておりますから、もう少しお聞かせ願いたいと思います。  さらにその際に、労使間が非常にこの法案をめぐってはっきり言って対立しておる、委員会でもずばり言って対立しておると思います。そこで、この法案だけを取り上げると、この二つの対立が折れ合う余地がないものかどうか、純学問的にお教え願いたいと思います。
  47. 柴田悦子

    柴田参考人 先ほどの労使間の摩擦は港労法改正案がきっかけかという御質問なんですけれども、労使間の諸問題というか諸関係につきましては、かなりこまかなことでも対立の内容にエスカレートしていく問題が多いかと思いますので、私がよく知らない部分もたくさんあるかと思います。しかし私の考えとしましてはそうではなくて、労使間の関係が——これは労使間の関係というか労働組合側の非常に業に対する不信が増大されていく背景というのは、まさに今日の労働機会の縮小というのが急テンポで進んでいっている。そしてそれが日常の雇用の安定というかそういうものとおよそ離れていって、そしてせっかく四十年施行の港労法があるのにもかかわらず、それよりまた別の次元で進められる。そこでILOの先ほどの勧告が生きてくるわけなんでありますけれども、機械化、近代化というのが港湾労働政策とは全く切り離された次元でもって、切り離された速度で進んでいくというところから、その就労に対する不安というのが急速に高まってくる。それに対して適切な対応がとれなかった場合には、その不安というのは直接使用者の側にぶつかっていくというのはこれは当然ではないかと思うのですが、しかしこれは使用者の側に当然ぶつかっていく面だけではなくて、もっと違った次元からの大きな近代化技術革新の波が港へ出てきている。そういう点ではこの大きな近代化技術革新によってしわ寄せを受ける一番最底辺の労働力、労働者に対しまして、その人たちを不安から救い、それからできることならばある程度新しい技術などを身につけて、そして新しい就労機会保障させていくというのは、業者だけで不十分なところは当然第三者的な国家機関、ここでいえば労働省関係の指導というか援助というのが当然なされてしかるべき部分ではないかというように思います。ですから、そういう点では港湾労働法というのが業とそれから使用者だけの問題として論じられておりますけれども、実は使用者も含めまして今日の技術革新の中では方向がわからないというか、業者自体も大きな壁というか矛盾というのに巻き込まれている。そういう段階では港湾労働法だけですべてが解決されるわけではなくて、当然港湾運送事業法の改正もからんでくるわけであります。ですから、これだけ切り離してということで言うならば、先ほど言いましたように、今回の改正というのはやはり現港労法の精神がゆがめられている部分があるということ。しかし、これは全面的に前よりも悪くなったと言っているんではなくて、直用の部分などはよりはっきりしたわけですから、これはそれなりの位置づけができるでしょうけれども、しかし同じ港労法をよりいい立場で改正を試みるのであるならば、これと同時に港湾運送事業法の問題、さらにそれの前提になっております今回のILOの勧告なども参考にされて、そして大きくいい方向へ改正がされるならば、これはたいへん望ましいことではないかというように考えるわけであります。  そこで労使間だけの問題、摩擦をこの港湾労働法範囲内でも最低限に縮小する、そして根本的縮小というのは、先ほど言いましたように、業者ももろともに進められているコンテナリゼーションというようなことにある港湾合理化近代化というのに一体どう対処していくかということにかかっているということになるのではないかと思います。
  48. 川俣健二郎

    ○川俣委員 その辺が一番核心だと思うので深めたいのですけれども、時間がないから、現実に具体的に高嶋参考人吉岡参考人に同じような質問で確認的にここでお伺いしたいのですが、高嶋参考人は特にいま会長不在で代行、そうやってみると、労使間の一方の責任者、吉岡さんのほうもきょうは全港湾の代表の立場で出ておられますが、特に高嶋参考人は、昨年の十一月出された建議、いわゆる港湾調整審議会から出された建議にも、労使間の信頼関係が何といったって基盤だということを申し述べられておる。そうなりますと、三・二二の協定を破棄してまだ交渉に入っていないという、こういう労使間をわれわれが知っている間は、この港湾労働法はいかによいものにしろ、これは国会の立場ではちょっと、こう言っては悪いけれども預けられる法案じゃないというように考えられます。その点を一体、私も理事の一人として、そういう労使間の正常化に努力せいということを労働省のほうを通して話しておるのだが、その気がまえがあるのかどうかという、その辺を聞かしてもらいたいと思います。  それから、時間がありませんから吉岡参考人に同じように、労使交渉に入れない何かほかに原因があるのか、こういった面をいま少し聞かしてもらいたくて、どっちが入らないということになるとそれぞれ原因があるでしょうからこれをお伺いして、双方に聞きたいのは、きょうあすじゅうに入る用意があるかどうかということ、特に三・二二協定を尊重して入るかどうかということの確認を、たいへん短時間で恐縮なんですけれども聞かしてもらいたいと思います。
  49. 高嶋四郎雄

    ○高嶋参考人 お答えさせていただきます。  労使間の信頼度なり労使間の正常化をはかるということに対しては、先ほど来お答えしておりますように、今後とも格別な努力をいたす考え方でおります。  三・二二協定が何というかほごになった、あるいは決裂したというような問題等におきましては、これはいま全国港湾の執行部の幹部と、今後にあるべき心がまえをお互いに労働省のあっせん等で話し合いをしておりますが、いずれにしましてもわれわれ業者側は比較的、港運協会の指導に対して無理なことであってもせつな的には従うという考え方を持っております。が、やはり幅広い労働組合の御関係になりますと、問題点によってはなかなか中央交渉にすべてをまかしていくのだということには、むずかしい従来の慣習なり要素があると思います。しかし労使関係の正常化は、あくまでも組合側も業者側も中央のそれぞれ関係に当たる者にすべてをまかして、そうしてその経過の上に立って、意見のあることは意見を言うべきではあろうが、すべてをまかしていくという根本的なものの考え方が必要であろうと思われますが、現在あすにもあさってにもという、あさってにでも再開する意思はあるのかという御質問でございますが、昨日も話し合いまして、むしろ私のほうよりは、あしたから話し合う姿勢について、相手方のほうに少しの期間を持たなければならない事情があるということを御報告申し上げておきます。以上です。
  50. 吉岡徳次

    吉岡参考人 この辺になりますと少し意見の違いがあるわけですが、さも労働組合のほうが中央交渉が持てないみたいなお話ですけれども、決してそうではありません。私どもは早く持てということを盛んに言っているわけです。なぜそれが持てないのかというのは、いわゆる日港協の幹部であられる高嶋さん自身は早く持ちたいという気持ちを持っておられるかもわかりません。しかし下が言うことを聞かないわけですよ、つまり業界が。なぜというに、今度の三・二二協定がああなって持たれない理由は何かといえば、三・二二協定の中身について業界に不満があるということです。つまりあのとおりに約束できないという不満が業界にあるわけですから、そのことが解消しませんと簡単に中央交渉が持たれないだろう、また持ってもなかなかうまく話が進まないだろう。したがって私どもの気持ちは、率直に申し上げて一日も早く持ちたい、そうして早く解決をしたい、この気持ちは変わりありません。持てない理由は私どもにあるのではなくて業界の内部にある、このことを申し上げておきたいと思います。
  51. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それでは最後に、時間があれですが、行政指導をする労働省がだらしないからこれはそういうことになるのじゃないかと思うんだが、この法案委員会が預かるというような話じゃないのですが、労働省は、こういうふうに率直に労と使の代表の方々からお話を承りました。そこで、労にも使にも下部とトップがあるわけですから、その辺を含めて、きわめて近日中に労使間のあれが行なわれるかどうかという見通しを最後に聞かしてもらいたいと思います。これは局長でも大臣でもけっこうですから……。
  52. 加藤紘一

    加藤国務大臣 この問題は重要な問題で、私も何とか相互信頼のもとに三・二二の協定を順守する、これはどちらがいいとか悪いとか私申しませんが、これはもう協定したものを、いろいろな事情があろうが、これは何とか解決しなければならぬ、こういうような決意で、事務折衝は五月二日から四回やって、二十九日にトップレベル会議をやりまして、協定を順守いたしますということを確認いたしたのでありますが、それでもどうも足りないと思いまして、数日来から省議に近いような会議を開きまして、私が直接当たろうか、こういうような決意も述べたのでありますが、労政局長が、大臣、とりあえず当たるからというので、昨日二時間近い労使意見を聞きまして、双方とも熱意がある、何とかこれがうまくいくというような見通しだ、こういう報告を受けましたが、こういうことの見通しでありますけれども、いまの労使のいろいろの話も聞きまして、万一これがいろいろな曲折があるような場合には、私も直接乗り出しまして、この問題の解決に、団交が再開されるように行政指導を強力にやるかたい決意であります。どうか御安心を願いたいと思います。
  53. 川俣健二郎

    ○川俣委員 終わります。
  54. 田川誠一

    田川委員長 寺前巖君。
  55. 寺前巖

    ○寺前委員 運輸省、お見えになっておりますか。——港湾整備の五カ年計画というのがありますね。港湾整備に対して国もかなり投資をやっているようですが、私の手元にあるこの数字は間違っておりますかちょっと聞きたいのですが、第一次が昭和三十六年から四十年ですか、第二次が四十年から四十四年、第三次が四十三年から四十七年で、第四次が四十六年から五十年ということで、事業費の総額で三兆六百八十億円ですか、そのうち国費を投ずるのが一兆六千五百十八億三千五百万円、五三・九%国のお金を投じて港湾整備をやって、そして近代化をしていく。まあ私の手元にある数字が間違っておったら直してください。  そうすると、この港湾近代化というのはかなり国が積極的な位置を占めて進めてきておるのですが、先ほどからも話が出ておったように、近代化が進むのと関連していままでの諸事業が、はしけはもちろんのこといろいろの、荷物を積んだりいろいろありますね、そういう事業者の中に近代化に伴うところのいろいろなしわ寄せが生まれてくると思うのですね。そういうしわ寄せに対してどういう措置を今日までとってきたのか。これからどうしようとしているのか。それは業者に対するしわ寄せがいろいろあらわれるだけじゃなくして、業者労働者を雇っておりますから、したがって労働者にもいろいろ生まれてくるであろう。それに対してどういう措置をとってきたか、これからどうしようとしているのか。運輸省と、労働省関係するでしょう、ちょっと説明を簡単にしてくれますか。
  56. 高橋全吉

    高橋説明員 いま先生のおっしゃいました数字でございますが、私手元に持っておりませんが、先生のおっしゃったとおりの数字が正しいと思います。  いま先生が読み上げられましたように、港湾整備五カ年計画というのは、数次にわたりまして立てまして港湾整備をしてまいっておりますが、合理化近代化をはかって港湾整備をしてきたわけでございますが、それによって港湾運送事業に及ぼす影響がどうなるだろうかということで、一昨年の六月以来運輸政策審議会の特別部会の下の専門委員会、専門委員会には労働者側あるいは事業者側、これも入れまして、約一年有余にわたりまして審議をしてまいりました。  その審議の結果がことしの三月二十日に答申となりましたが、その骨子といたしましては、近代化に対応してやはり事業法の改正が必要であろう。それで事業法の改正の点は、大きく分けて二つの点をその答申では指摘しております。一つは、近代化されていわゆるコンテナバースの整備やあるいは大型荷役機械の整備によりまして荷役の合理化が行なわれますが、そういうふうな埠頭におきましてはやはり免許という問題を考える必要があるだろう。それから法律的な点といたしましては、もう一点は、現在元請、下請という制度を法律上認めております。法律上明定しておりますが、この二重構造を解消して、だれでも元請ができるような方法を考えたらどうか、いわゆるいまの業種が非常に分かれておりますが、それらの統合を考えたらどうだ、この二つの点が法律上の問題でございます。そのほかに、さらにその答申の中では、労働力を確保するためにやはり労働条件改善等をはかっていくべきであるが、これは港湾運送事業者だけの責任ではなくて、これを利用する船会社なりあるいは荷主も協力をしなさい。それからさらに構造的な問題でございますが、はしけが過剰になってまいりましたので、これに対してもやはり政府買い上げるなり何なり措置をとりなさい。これらの財源につきましては、国はもちろん助成に努力すると同時に、残った事業者及び利用者も財源の確保について応分の負担をすべきであるというようなことがこの内容に盛り込まれております。したがいまして、運輸省といたしまして四十八年度予算に要求いたしましたのは、はしけの買い上げ解撤のための補助金を要求しまして、三億五千六百万の予算を計上したわけでございますが、これに伴いまして、あと離職するはしけの乗り組み員につきましては労働省のほうにお願いしまして、一億数百万の予算を計上していただいたわけでございます。以上でございます。
  57. 道正邦彦

    ○道正政府委員 ただいま運輸省のほうから御答弁がございましたように、国の買い上げに伴いましてはしけ関係の離職者が出る、これにつきましては、たとえば石炭であるとか駐留軍であるとか、あるいは近くは繊維等の先例がございます。一般の離職者に比較いたしますとかなり手厚い離職対策がすでに先例としてあるわけでございますが、その先例にのっとりまして、労働省としては手帳の発給その他転換給付金等につき所要の予算措置を講じた次第でございます。ただ、最近の雇用・失業情勢にかんがみまして、年齢につきましては四十歳以上ということにしたわけでございます。なお訓練等につきましては、しかしながら、若い方でも転職をされる方が多いわけでございますので、訓練関係につきましては年齢制限を取っ払っているということでございますので、現時点におきましては、労働省としてはあとう限りの離職対策予算化したつもりでございます。     〔委員長退席、山下(徳)委員長代理着席〕
  58. 寺前巖

    ○寺前委員 近代化するのに一兆六千からの金を注いで、いまの話を聞いていると、はしけを買うのに三億何千万円ですか、それから労働者対策のために幾らかの金を組んだ。微々たるものですが、非常に多くの犠牲を受けていると思うのですね。どうなんでしょう。近代化の影響を受けるのははしけの問題だけじゃないでしょう、事業から見ると。近代化していく場合に、たとえば麦だったら麦を積んでくる。いままでだったら何か袋に入れて、かついで、ミシンでかけて、こうやっておったわけでしょう。それを直接ばっと入れるようになったりする。事業というのは、非常に近代化することによって港で一ぱい変化が起こっているんじゃないですか。私はしろうとだから詳しいことはわからぬけれども、想像はつきますわな。近代化するんだったら、わしだったらこうするということは大体見当つくよ。そうすると、その分野の事業に対してはどうしたのか、その分野の労働者はどうするのか。全般的に対策を組むんだったら全般的にやらなければいけないと思うのだけれども、はしけは一番目立つでしょう。それはスクラップ化するという問題が出てくるでしょう。だけれども全面的にもう少し検討する必要があるんじゃないかというふうに私は思うのですが、実態はどうしてきたのか、今後どうしようとしているのか、ほんとう言うと私はもう少し聞きたいところなんだ。  それと、いま労働省のほうは、駐留軍とかあるいは石炭とか繊維の場合に特別な対策を組んだ、こうおっしゃった。今度についてもそういう特別に対策を組むとおっしゃるんだけれども、ほんとうに特別な対策を組んでいることになっているのかどうか、私は率直に、今度は組合の側から、いままでやってこられたところの国の施策に対する意見と、またいまやろうとしていることに対する率直な組合の側の意見を聞かしてほしいと思うのです。
  59. 田尾憲一

    田尾参考人 先ほど私、意見のときに簡単に申し上げたわけですけれども、いま労働省のほうから説明がありました離職対策といいますか、これはあくまでも失業したあとの取り扱いの問題でございます。私のほうの組織としては、これは今回初めての問題でございますが、私のほうが問題にいたしておりますのは、そういった失業したあとの取り扱いでほんとうの意味の対策になるのかどうかということです。  御承知のとおり日本雇用形態というものは、たてまえとしていわゆる終身雇用のたてまえをとっております。そういう中で、いわゆる国の施策によって転職を余儀なくされる。職場を失う。結局生活をしていくためには職を求めていかなくちゃならないわけですが、そのいわゆる失業した後に、たとえばいま労働省のほうから説明がございましたが、職業訓練云々の問題等もございました。いわゆる離職対策の中身については、私のほうは率直に申し上げまして、そのものを否定いたしておりますから、中身の批判といいますか意見を申し上げませんけれども、とにかくいま申しましたように、日本雇用体系の中で、退職をしたあとにどのような職業訓練をやりまして、別な技能を身につけましても、就職の保証、職場の保証というものは全然ないわけです。その辺がやはり根本の問題であろうと思います。  それと、やはり特に港湾の問題でございますが、はしけ関係の年齢構成の問題等もございます。いわゆる技能的な問題等もございます。いろいろな問題があるわけですけれども、これまた十年前といいますか、かなり以前にきめられました炭鉱離職者の問題、そういうものを一つの基準にした形で対策が立てられておるようでございます。そういった画一的な対策でほんとうの対策にはならない。  それからもう一つは、いわゆる背景が全く違うということが言えると思います。まあ炭鉱の場合、一時的な問題ではございませんけれども、一応炭鉱の問題が出た当時の経済情勢、経済的な背景と今日の経済的な背景というものはまるっきり違うということです。  そういったもろもろ条件というものが異なる中で画一的に、従来の基準といいますか、そういう形でとられておることに、やはりほんとうの意味の政策ではないということをいわざるを得ないと思います。いままでの取り扱いは、先ほど申し上げましたように今回初めてでございます。いままではそういう経験といいますか、あれはないということでございます。以上でございます。
  60. 吉岡徳次

    吉岡参考人 この問題について、私ども労働省に対して審議会の場でも申し上げたわけですが、確かにはしけ労働者だけの問題でないわけでして、港湾労働者全体に対してどうするかということを私どもの要求としてはかなり出しました。しかし残念ながら、例の繊維と同じように、はしけを買い上げるという、この中での国家補償という形、つまり離職者対策ということだけに重点が置かれていますために、一般的なこの問題についてはそこまでどうしても言うことを聞いていただけないわけです。どちらも離職者対策ならば船内だって沿岸だって一緒じゃないかということを言うんですけれども、どうしてもそこが、買い上げという問題とからんでおりますので、なかなかそれがむずかしいというのが労働省側の言い方であります。  そこでもう一つ、私たちは、しからばはしけ、引き船の労働者だけ——その会社がつぶれれば勢い事務職も、つぶれれるわけですから職員もやめていかざるを得ないんですから、それじゃその事務職の場合にはどうするのかと聞くと、これは適用にはならない、こうおっしゃるわけです。これも私どもはたいへん矛盾をしていると思います。現状はそうでございます。  それからもう一つは、繊維の労働者並みとこうおっしゃっております。したがって、一番最初は年齢制限がありませんでしたが、途中で年齢制限が出てまいりました。しからば繊維と同じようならば、繊維の場合は、一定の勤続年数以上の労働者については、退職金というわけではありませんが、一定の金を通産省が予算をとって労働省にそれを渡して、労働省が渡しているという実態があります。ところが残念ながら、運輸省はこれに対して一銭の予算もとりません。ただ、はしけの買い上げの金を出しただけで、これらの労働者に対する、そういう繊維並みの資金を運輸省がとって労働省に渡すということは、私ども聞いてもおりませんし、その辺も私どもとしては大いに不満のあるところであります。これらについていろいろ私たちも要求をしておりますが、問題は結局離職者対策。私どもの重点は今日、離職者対策というよりも、いわゆるいかにして首を切らさないかというところに重点がかかっておるものですから、そこまでの交渉がうまくまだ進んでないのが現状でございます。以上です。
  61. 寺前巖

    ○寺前委員 政府のとっている態度は遺憾だというのが労働組合の側から出ている以上は、政府としては検討しなければいけない話だと思います。時間がないので私はそれだけにしておきますけれども、次に聞きたいと思います。  今度の法案の何といっても大きな特徴点は、登録日雇い港湾労働者雇用の安定が非常に大きな位置を占めていると思うのですね。そこで、「登録日雇港湾労働者の就労状況は逐年悪化しており、港湾労働法の目的とする港湾労働者雇用の安定にとって好ましくない事態を招いております。」したがって、次のように法案を直すんだ、これを中心に説明されていましたね。  そこで、この法案を全体として見ていくと、十六条の、先ほど御説明がありましたが、ただし書きの削除、かなり強化するという問題とか、あるいは季節労働者を排除するというのですか、この月数も六カ月にするというふうにしているという形で、日雇い労働者雇用の安定をはかる、こういうようないろいろな措置がこの中に出ていますね。はたしてこのような措置によって登録日雇い労働者雇用が安定する、生活保障されていくという状態になるのかどうか。柴田さんのお話を聞きますと、十六条の二項、三項、四項の問題などは、明らかに未登録のところでまた強化しているようだけれども、抜け道があるのじゃないかとか、あるいはまた、やみ雇用の問題、従来からも問題になっているけれども、こういうような問題ではたしていくのだろうか。そこで、今度の法案の一番の中心点が雇用の安定にある、こういう以上は、この法律によってはたして安定するのかどうか、その保証はあるというふうに見ることができるかどうか、このことについて、吉岡さんと柴田さんにひとつ見解を聞かしていただきたいと思います。
  62. 吉岡徳次

    吉岡参考人 率直に申し上げまして、ないと申し上げたいと思うのです。そのわけはなぜか、先ほども私申し上げましたし、それから柴田先生のほうからもありましたが、この法律はいわゆる港湾労使だけにまかしていこうとするねらいがあるわけです。これは柴田先生の御指摘にもありましたように、それだけでは問題の解決にはならないと思います。荷主なり船会社なり、つまり港湾を利用する側、それから港をどんどんばく大な金を使って整備していく側、つまり国、地方自治体、つまり港湾管理者であります。そのことによって労働者がどんどんおっぽり出されているわけですから、そのことについて一体どういうふうに責任を持つのかということがなければ、雇用の安定というのは、港湾労使だけにまかしていたのではとてもできるものではない、私はこういうふうに考えます。  それからもう一つは、いわゆる港湾労使で近代的な雇用関係が確立されればうまくいくんだ、こう言われますけれども、一つは近代的雇用関係が確立されるという見通しがなかなかない。よしや確立されたとしても、先ほど申し上げますように、利用する側のほうが雇用の責任を持ちませんと何の意味もない、こういうふうに思います。  そこで少し申し上げたいのですけれども、いろいろな違反事項がたくさんあります。たとえば大阪では、何々会社、何々会社の寮が二つの看板を掲げて、入り口が一つであります。ところが寮としては、何々会社、何々会社——何々会社というふうに名前をはっきり言わないのは御理解願いたいと思います。あまり言っているとあとで差しさわりがありますから言いませんが、何々会社、何々会社の寮が二つ、入り口が一つであります。そして、そこを管理しているのは〇〇某が管理をしているわけであります。これをもって何々会社の常用寮、こういうわけです。これは八幡の場合だって同じであります。こういう形の寮がたくさんあって、現金常用ということばが大阪ではあります。現金常用とは何か、その日に働いてその日に銭をもらうから現金常用という。これを常用と称されるわけです。つまり、そういうところで募集を堂々とやるわけです。寮で募集をするわけですから、何々会社が会社の窓口で、玄関口で募集をするのではないのです。〇〇会社の玄関口には募集の看板は一つもかかっておりません。ところが、何々会社の寮の前に看板がかかっているわけです。これを、現金常用ということばがよく使われております。こういうふうに、結局常用という名の日々雇用、これがどんどん行なわれている。  あるいは、業者の相互融通というのが平気で行なわれているわけです。前日、手配会議が行なわれます。手配会議が行なわれますと、きょうはおまえのところは何口、うちは何口、そうすると、おれのところにこれだけ余っておるからこの口を、よし、おまえのほうに回す、こういうことが公然と行なわれているわけです。ところが、それを私どもが追及しますと、いや、あれは港湾運送事業法でいわゆる元請、下請の関係で、七〇%は自分の子飼いの下請に流さなければならぬけれども、三〇%だけは、ことばは悪いのですけれども、うわ気してよろしいということがあるから、この三〇%のうわ気のところでやっているんだ、こういうのです、形は。しかし実態はそうじゃないのです。完全に相互融通が行なわれているわけです。このことを私たちはいろいろと追及しておりますし、特に横浜のごときは、一カ月に登録労働者の延べ人員が五千人から七千人であります。登録労働者が同じく五千人から七千人であります。これはよく労働省が言われる、あるいは業者のほうも言われますけれども、おまえらがより好みをして働かないからだ、雨の降る日だけばあっと来るじゃないかとよく言われますけれども、かりにそのことが若干あったにしても、半々であります。登録外とそれから登録労働者と半々であります。これは安定所にちゃんと届け出した数だけであります。それ以外にまだやみ雇用がたくさんあるわけですから、こういう問題を考えますときに、決してうまくいかない、私はこういうことを申し上げたいわけであります。  それからもう一つは、労働省は先ほどもしっかりやります、今後は断固としてやりますと、本委員会でもいろいろと述べておられますけれども、私どもにしてみれば、過去七年間あまりやられていないのであります。やられていません。あまりというよりも、まずほとんどといっていいくらいやられていません。最近になって、例の大同航運の川崎における事故で告発をされました。これは当然のことだと思います。しかしそういう告発をした業者に——この業者というのはいままで絶対に登録労働者を使ったことのない業者でありますが、告発されて、安定所に求人を申し込んでいったら、安定所がそれに対して平気で受け付ける。そういう状況ですから、いままでの労働省のやられた実績から考えますときに、過去はどうか知りませんけれども、いままでの実績から考えますときに、私どもはその実情をよく知っているがゆえに、いろいろ言われますけれども、どうもオオカミの話に聞こえてならないのであります。そういう点から考えますと、決してこのままではうまくいくものではない、こういう考え方に立っております。以上です。
  63. 寺前巖

    ○寺前委員 柴田さん、あとのとで一緒に答えてください。  これは現実に働いている労働者の声なんだから、労働大臣、これは信用にならぬような法律だということや。これは考えにゃあかぬな。  時間がないからその次にいきますよ。労働協会というのが今度は雇用の安定を促進させるための一つの位置を占めてきたのですね。従来職安が窓口で仕事をしておったのを、労働協会ということになってくるんでしょう。従来職安法の四十四条で、何人といえども供給事業をやってはならないというやつがありましたな。ただし三十一条の二でその適用除外がある。これは職安法の制定当時からの精神からいうと、中間搾取、強制労働など不当な労働者支配が行なわれていた実態から見て、このような建設業とか炭鉱とかこういう分野のことを特に考えて、全体として労働者供給事業の禁止ということをつくったと思うのです。で、昭和四十一年の六月に労働省の職業安定局長名による職発第三百五十八号で「労働者供給事業についての対策の強化について」という通達も出て、その中にはわざわざ「建設業、港湾労働者等についての就労経路、就労条件、就労形態等の正常化を図るため労働者供給事業に該当するおそれのある事業についての指導、調査等を強化する」ということをその通達の中でもいっているわけですね。そういう特別に労働者供給事業では問題になる業態だということになっているわけでしょう。その特別に問題のある業態のその業者に金を出させ合わして、そして法人をつくらして、そこで自分のところに適当な人をその法人が今度はまた世話をするというような協会をつくるということになるわけでしょう。そうすると、従来この分野の非近代的な労務状況、いまも説明あったとおり、そういうところの分野で労働者供給事業を、業者が法人をつくってその業者が自分のところの労働者をそこを通じて世話をさせるんだというやり方を認めさせるということは、かつてないことである。いままではこういう供給事業というのは自衛隊とかあるいは船員なり、特例でやられておりましたけれども、それ以外にはやったことがない。全部供給事業というのはちゃんと職安でやっておった。それを民間の事業会社につくらしてやっていくということは、これは従来の供給事業を認めないという基本問題から著しく後退する、あの精神を踏みにじるものであるという見解が私の見解なんだけれども、はたしてこれはいまのわれわれがやってきた職安法四十四条のあの精神よりも、今度のこの法律の改正案が前進するものなのか後退するものなのか、私はその点について柴田さんと吉岡さんの見解を聞いて終わりたいと思います。
  64. 柴田悦子

    柴田参考人 二点にわたって述べたいと思います。  第一点の、今回の港労法改正案で雇用の安定が得られるかどうかという御質問についてでありますが、雇用が今日狭められてくる原因を明確にすればそれの回答が出るのではないかと思います。今日港湾雇用が狭められている原因というのは、大きくいえば二つあります。これは在来埠頭の場合であれば、非常に荷役の方法が変化しまして急速に省力化が進んでいるということ、それからもう一つ、別の埠頭つまり専用埠頭、この専用埠頭にはコンテナ埠頭のような形もあるけれども、工場の中に敷設されている埠頭がたいへん今日ふえてきておりまして、このような専用埠頭扱いの貨物が公共埠頭扱いの貨物を上回って出てきているという最近の傾向を見れば、ここから雇用が狭められてくる原因というのが導き出されるかと思うのであります。  ところで、コンテナ埠頭が省力化されたといいますけれども、港湾労働者がコンテナ埠頭にいないかというと、実際はおりまして、この前も何人いるか調べてみようなんていうような話がありましたのですが、CFS、コンテナフレートステーションの中に働いている人も含めれば少なくとも二百人、多いと三百人の港湾労働者が一つの埠頭に対して働いているわけであります。ところがこの人たちは港湾労働法の適用を受けていない労働者でありまして、つまり日雇いの人たちはこういうところへは出入りができない、これは別の業によってされている、港湾運送事業外でやっているわけであります。  それからまた専用埠頭の場合、工場用の埠頭の場合でも工場の下請労働者港湾の荷役をやるという場合もかなりあるわけでして、実際上は港湾の荷役をやりながら港湾労働者ではない、港湾労働者の範疇に属さないという、そういう労働者も存在するわけであります。しかも、そこの部分が急激にふえてきているということであります。  こういうことを考えてみますと、先ほどから何人かの方が言われましたように、港湾労働法というのはやはりここら辺で働いている人も含めて、つまり港湾の荷役に関係している人ならば、雇い主がどういう形態であろうともすべて港湾労働者であるということに立たなければ、これは意味がないわけでして、ここで日雇いだけではなく常用の人たちも含むべきだ、こういう論理が出てくるわけであります。ですから一つは日雇い、常用の区分をつけないで、やはり港湾労働者範囲を拡大して、それらの人すべてにわたって網羅できるような港湾労働法にしていくということが第一点。  それから第二点は、先ほどもちょっと別の機会に申しました、ただ単に港湾労働法だけではなくて、港湾運送事業法その他の法律との関連でもって、港湾労働者の職域が今後狭められないような、そういう保証というものがなされないかということ、こういうところで解決できると思います。ということは、つまりこの港湾労働法の今回の改正案では、いま言いました目的を達成するのにはきわめて不満足だという結論が出るのではないかというふうに思います。  それから第二点の御指摘にございました、職安法の四十四条に抵触するのではないか、つまり地区協会業務にわたってのことでございますが、この点は今回の改正案の中でもしばしば——どういうんですか、職安所長の権限とそれから地区協会権限とが錯綜してくる原因がここにあるのじゃないかと思います。私もこの港労法改正案を読ませていただきまして、職安所長の、つまり公共職安権限というのがかなり後退しているのですけれども、しかし形式的には、最終的には職安所長の権限になるようになっているわけでして、その点、業務を遂行する上で大きな矛盾が起こるのではないかという可能性に危惧を持ったわけなんですけれども、従来この職安法が出てくるいきさつといいますのも、先ほどおっしゃいましたように、この港湾労働者の場合はもう言わずもがななんですが、船員の場合でも、戦前掖済会等によって有料紹介がやられておりまして、この有料紹介業務というものが、現実紹介を受ける人たちの人権をいかに無視し、そして賃金を低下させるものかというようなところから、職安による紹介というのが出てくる。     〔山下(徳)委員長代理退席、委員長着席〕 船員の場合には、昭和二十九年にユニオンショップ制度の確立によって常用化が完全に進みましたので、そういう危険というのはいまなくなっているわけですが、港湾労働者の場合にはそれが依然として残されたままになっておりますので、今回のやみ雇用であるとかいろいろな問題が生じてくることになっている。ですから、これを根本的になくすためには、すべて船員のような常用化になれば問題ないわけですが、そこが港湾労働の特質からして不可能な側面があるとするならば、やはり業者組織で行なうのではなくて、もう少し——そこが、私が今日の港労法と比べても後退をしている部分というふうに言ったゆえんでありまして、同じ職安紹介のいまうまくいかない点を是正するのならば、こういう一つの業について事業主による紹介業務を達成させるということじゃなくて、もっと職安自体の機能を強化することによってそれが達成できないものかというようなことも考えられるわけであります。
  65. 田川誠一

    田川委員長 途中でありますけれども、時間がありませんから、なるべく簡単にお答えいただきたいと思います。
  66. 柴田悦子

    柴田参考人 そういうわけで、職安法との関連では、改正法内容についても、あちこちで、矛盾というか、職安所長の権限地区協会権限との錯綜が見られるというように私は考えるわけでございます。
  67. 吉岡徳次

    吉岡参考人 時間の関係がありますので、簡単にお答え申し上げたいと思います。  結論は、やはり荷主、船会社、国、こういうところが、地方自治体も含めてですが、雇用の責任をどう果たすかというところが前進をしませんと、いまの業者だけにいわゆる労務供給的なものを与えても、これはとてもうまくいくものではない、こういう考え方でございます。
  68. 田川誠一

    田川委員長 参考人に申し上げますが、二時から本会議が行なわれますので、それまでにはどうしても終わらなければなりません。質問者があと二人ありますので、できるだけ答弁を簡略にしていただくようにお願いをいたします。  大橋敏雄君。
  69. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 いま委員長から述べられたように、時間がきわめて限られておりますけれども、質問の中身はまたきわめて重要な問題でありますから、ひとつ要領よく御答弁のほどお願い申し上げます。  きょう参考人の皆さまから長々と貴重な御意見を伺ったわけでございますが、それぞれに質問してみたいと思います。  そこで、まず最初に柴田参考人にお尋ねするわけです。きょうは非常に明快な御意見をお述べになったわけですが、その中で特に印象に残りましたことは、ILO総会結論が出てからこの法改正をなさるべきではなかったんだろうか、今回の法改正は時期尚早である、こういう御意見だったと思います。ところが、かりにILO総会結論が出て法改正をなされたとしてみた場合、今回の法改正とどこがどのように大きく変わるんだろうか。きょうの御意見を裏返した立場が全部そういうことになるということでしょうけれども、その中で特にこういう問題がはっきりと変わるのではないか、今回の法案ILO総会の終わった後に出ると推測した場合の改正案とでは、どこに大きな問題があるかということと、それからILOは、共同雇用体制についてはどのような見解をもって進んでいるか、この二点をまずお尋ねしたいと思います。
  70. 柴田悦子

    柴田参考人 ILOの勧告文等を読んだ限りにおきまして、今回の労働法制定されたあとで、一体それがどのようになるかという見通しみたいなことでございますが、そういうことが明快にできるかどうか、これはなかなか問題ですが、まず第一番目にやはり問題になるのは、港湾労働協会それから地区協会紹介業務範囲ですね。それから地区協会権限というようなものははたしてこのままでいいかどうかということが非常に大きく問題になるかと思います。もう一つは、機械の導入に伴いまして起こってくる労働者数の変化、つまり雇用調整の問題でありますけれども、それは一体どのように計画を立てていったらよいかというようなことは、おそらくILOのあとで大きく問題になってくる部分ではないかというように考えております。  それから第二番目の、ILO雇用についてどういう規定をしているかということにつきましては、いまの五十七総会結論だけを読んでみますと、それほど明快に、どういうふうな雇用期間を置くのがいいかというふうには出ていないのですけれども、しかし、港湾労働者の正規または恒久的な雇用の達成、最低雇用期間、それから最低収入の保障の必要性というようなものが書かれて、そして登録制の採用、登録港湾労働者優先雇用権の保障というようなことになっております。ですから、雇用期間につきましては、必ずしも明快にここに、こうこうこういうのがいいなんということが出てくるかどうか、これは問題でして、それはそれぞれの国内の法規のあれではないかというように考えております。
  71. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 では、もう一点。ILO条約第二条第一項には「港湾労働者に対し正規のかつ、または期間の定めのない雇用をできうる限り得させることをその政策の目的としなければならない。」というように、いわゆる常用化のことがうたってありますですね。そしてその二項では、要するに社会的地位にふさわしい水準を保障しなければならないということで、賃金問題等にも触れておるわけですが、今回の法改正の中身とこれとの関連性はどうでしょうか。簡単でけっこうです。
  72. 柴田悦子

    柴田参考人 今回の場合は、先ほど来問題になっていましたように、日雇い労働者を対象にしました法改正でありますから、常用化を進めるということが当然前提になっているといわれれば、そう解釈もできないことはないですが、しかし、ILOがいっているような、そこのところに最重点があるというような踏まえはされておりません。ですから、ILOの精神からいえば、常用化をもっと進めるというところにウエートを置いたものにならなければならないんじゃないかというように考えます。  それから、労働条件の問題につきましては、ILOの中でも、一般産業と比較をしまして著しく劣ったような労働条件というのは急速に解決されなければならないということがうたってあるのですが、就労日数が一月のうちの十日前後であるというようなことであるとか、あるいは労働時間が深夜にわたって非常に長いというようなことについては、やはり今後解決していかなければならない大きな課題ではないかというふうに考えております。
  73. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 時間がございませんので次に移りますが、田尾参考人にお尋ねいたします。  あなたの御意見を伺っておりますと、現在の港湾労働界の一番の問題点は労使関係である、きわめて不安定である、この要因政府港湾近代化政策にあるのだ、しかもそれが労働者無視、労働者が知らない立場で推進されていっているところにある、このようにおっしゃられたわけでございますけれども、この点のきわめて問題点であるというその具体的な問題を簡単にお願いします。
  74. 田尾憲一

    田尾参考人 先ほど私は本委員会の議題とは若干離れました、はしけの問題を申し上げました。結論から申し上げまして、はしけの解撤の問題がその端的なあらわれでございます。いわゆる国の施策によりまして俗に言う港湾近代化をされた。そのことによって、従来港湾荷役の中心的な役割りを果たしておりましたはしけ運送といいますか、はしけ荷役というものが減少といいますか、要らなくなってきた。そういうものが、何といいますか、いわゆる港湾利用者、荷主とか船主、そういう人たちの側に立った、一方的な側に立った形でどんどん輸送革新が行なわれる、あるいは港湾の整備が行なわれる。先ほどから他の参考人の先生方も言っておりますけれども、総合的な対策といいますか、総合的な近代化というものが行なわれずに、いわゆる利用者の側に立った形での港湾政策というものが進められている、この一言に尽きると思います。
  75. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 政府にお尋ねしますけれども、いまの参考人の御意見に対してどのような見解を持っているか。
  76. 道正邦彦

    ○道正政府委員 はしけに限らず、港湾合理化あるいは近代化に伴いまして出てくる離職者について、雇用面についての配慮をすべきであるということは、昨年十一月十七日の港調審におきましても述べられているところでございます。われわれといたしましては決して、離職者の発生を待ちましてびほう的な対策を組むということではなく、それも大事でございますのでそれ相応の対策は講じておりますけれども、その前段階と申しますか、近代化合理化の過程におきまして、雇用面についての配慮ということが従来以上に今後も必要になってくるというふうに考えます。この点につきましては労働省だけではできません問題でございますので、運輸省とも十分連携をとりまして、運輸省でもそういうお考えでございますので、今後なお一そう慎重に対処してまいりたいというふうに考えます。
  77. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 高嶋参考人にお尋ねいたしますが、法改正の有無にかかわらず、登録労働者の就労の増大、あるいはやみ雇用あるいは擬装常用等々は解決しないのじゃないか。なぜならば業者側にそうした日雇い労働者雇用しようという姿勢が弱い、私はここに問題があると思うのです。これまで労働省もそうした指導面に非常に弱い姿勢があったのではないか。法改正の有無にかかわらず、業者の姿勢に根本問題があるのではないかと私は感ずるのでございますが、今回の法改正とこの点についてどのような考えに立っていらっしゃるか、聞かしていただきたいと思います。
  78. 高嶋四郎雄

    ○高嶋参考人 現在の港労法は御承知のように、港運業者からまいりますと十六条なり十九条なり、季節労働者の運営なり、いろいろ常用労働者を中心とする幅の広い運営ができる関係にあるわけでございますが、今度の法改正は少なくともそういうような港運業者が常用労働者をそれぞれ一社一社の単位で、かってきままに要するに運営することが中心ではなくて、日雇い港湾労働者を含めて正常な日雇い港湾労働者雇用の安定ということを中心にして調整変化を持たせるのだということで、従来の非常に幅のある自由な姿が、運営上非常に自由であった姿が強く拘束されて、しかもその結果として、この地方協会の運営等が業者関係に責任を持たされて、結果的にはそういう拘束された姿の中で、当然日雇い労働者雇用の安定が確保されていくのはあたりまえだということで、あらゆる関係方面から責任を持たされて、自由が拘束されて、今後強く批判されて、このワクの中で締められていくというような結果を持つものだということでございますので、少なくともこの法律が施行される時点になれば現状のような問題点はなくなるのではないか、こう思っております。
  79. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 時間がございませんので、最後に吉岡参考人にお尋ねしますが、あなたのお話を総合いたしますと、今回の法改正改正ではない、改悪だ、むしろわれわれは現状のままのほうがよい、このように聞こえたわけでございますが、これまでの指摘されております各種の問題点に対してどのような歯どめが必要なのかということですね。それから雇用調整の規程については形式的であるというきわめて強い御意見のようでございましたけれども、こういう点を含めて総合的な御意見を述べていただいて、私の質問を終わります。
  80. 吉岡徳次

    吉岡参考人 現在の港湾労働法そのものに多くの欠陥があるということは、私どももたくさんあると思います。そういう意味ではやはり現在の港湾労働法が抜本的に改正をされるべきであるという考え方はいまも変わりません。しかしながら現在のあの改正案をそのまま施行されるのならば、現在の法律のそのままにしてくれというのが私どもの意見であります。いまも御質問がありましたが、たとえば雇用調整規程というのはいわば一つの企業にとってみれば就業規則と同じでありまして、いわゆる運営についてのいろいろなこまかいことを雇用調整規程はきめることになると思います。もちろん一定の基準はいろいろ法律的にも定めてありますけれども、いわゆるそういう企業の就業規則的な運営について、いまも就業規則については基準法で、関係代表の意見を聞くと、こうなっておりますが、あれと同じようにまさに意見を聞くだけでありまして、これはもう聞きっぱなしであります。だからこれではまずい。少なくとも私どもは同意ということを言っているわけですけれども、かりに同意ができなくてもそれに近いような方向でのやはり協議というものが行なわれていくべきではないか。  全体的に見ていまの港湾労働法というのは、改正案についてはかなり多くの問題がありますし、先ほども申し上げましたが私どもとしては、これはもうこのままいきますと、またぞろ昔の姿に戻るという懸念というのはあるわけですから、そういう意味で再考をお願いをしたい、こう思うわけです。以上であります。
  81. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 終わります。
  82. 田川誠一

  83. 和田耕作

    和田(耕)委員 先ほど来の各委員との質疑で大体の様子を理解することができました。そしてまた、この法律はいろいろ問題点の多い法律だということもよく理解ができたわけでございますけれども、いままで質疑されなかった二つの問題について御質問をしてみたいと思います。  率直にお伺いしたいのですけれども、この日雇い港湾労働者の仕事のしぶり、あるいは就労の態度等についていろいろとうわさを聞くのですけれども、この問題、高嶋さんと吉岡さんと、そして労働省の局長さんに率直にお伺いしたいのですけれども、現在までの日雇い港湾労働者の仕事のしぶり、就労の態度をどのようにごらんになっておられるのか、大体良好、あるいはどうもぐあいが悪い、あるいはまあここらあたりという程度でもけっこうですけれども、お答えいただきたいと思います。柴田さんも含めてです。
  84. 高嶋四郎雄

    ○高嶋参考人 日雇い労働者も数多くございますので、全体的な面からでございますと、何といっても、日にちを詰めて働くという、拘束された就労意欲というものが比較的薄いということが欠陥だと思います。中には、一人一人の個人的な面には非常に技能がすぐれておりまして、よい労働力が提供できる方々もおりますが、何といってもある程度拘束されて日数を詰めて働くという考え方に欠陥がございますというお答えにさせていただきます。
  85. 吉岡徳次

    吉岡参考人 仕事ぶりは、私に言わせればなかなか常用よりも腕は達者ですよ。というのは、常用はいま四割ぐらい新陳代謝しているわけであります。そうして常用のほうはほとんどしろうとが多いのですが、日雇いのほうは定年で日雇いになってくる者がいるわけですから、それはなかなか腕は、極端に言いますと、よく訓練のことを言いますけれども、こういう国宝クラスの人に何を訓練するのかということを私はよく言いますけれども、そのくらい腕はかなり達者な者がおります。ただ、詰めるとか詰めないとかという問題は、いま業界の代表からありましたけれども、かなり日雇いにはきつい仕事が回るわけです。つまり、一番いやな仕事いやな仕事を回すわけですよ。毎日百キロのものをかつがせられて、それは毎日続くものではありません。ですから、非常にかすの仕事かすの仕事をやられる。それじゃ、常用と日雇いは一緒になって仕事をしていますから、常用でも一緒じゃないかといいますけれども、常用はそんなところに回るのは二カ月に一回か三カ月に一回ほか、一日ぐらいほかないのです。日雇いは連日であります。そういうことを考えれば、とてもとてもああいう仕事を毎日詰めるということは困難であります。それからもう一つは、詰めたくとも、もっとやさしい仕事をやりたくとも、それはなかなか仕事がないということであります。そういうことでありますので、お答えしておきたいと思います。以上です。
  86. 柴田悦子

    柴田参考人 私は大学におりますもので、あまり直接日雇いの方の仕事ぶりを見る機会はないのでありますが、たまたま神戸の商船大学の専攻科へ非常勤講師で港湾経済の講義に行っておりまして、そこで船員の人が一年あがって陸で勉強をするわけですけれども、その人たちの話を聞いてみますと、船員の人に、世界を回ってみて、日本港湾日雇いというのは、仕事ぶりはどうかというようなことを話し合ったことがあるのですけれども、その船員さんの意見によれば、少なくともヨーロッパのところと比較をしてそれほど遜色はないという答えをされております。こんな、人の言ったことをここで申し上げて申しわけないのですが、私自身比較対照した経験がございませんので、これで許していただきたいと思います。
  87. 道正邦彦

    ○道正政府委員 率直に申しまして非常に個人差があり、また港によりましても出頭状況等はかなり違っております。それにはいろいろの事情があると思いますけれども、今回法律改正がされまして労使関係の協力がいただけるならば、私はいままでいろいろ問題が指摘されておりました就労状況も著しく改善されるものというふうに期待いたしております。
  88. 和田耕作

    和田(耕)委員 これはこの法案の背後になる大事な問題だと思いますので、参考人から御所見をお伺いしたわけでございますけれども、時間ももうございませんから、次の問題としまして、この法案ができる過程で、これもまた裏でいろいろ話をされている重要な問題だと思うのですけれども、建議がつくられる段階で中央の代表の方々は全員がこの建議の趣旨を賛成をなさった、法案になった段階でいろいろ問題が出てきて、次第にこれがエスカレートしてきたというふうに私承知をしておるんですけれども、これが事実かどうか。  時間がありませんから、先ほどの米田さんの経過の話がありましたので、大体ああいうふうな経過、あるいは吉岡さんからのお答えがありましたので、そういう経過としての前提で質問するんですけれども、高嶋さんの御発言の中に、中央では話がわりあいスムーズにいくけれども、地区のほうになるといろいろ問題があるのだ、これは使用者もあるし、労働者側もあるのだというようなお話だったんですけれども、その内容はどういうふうな点で食い違いが起こりやすいのか、これについて高嶋さんと吉岡さんからお伺いしたい。
  89. 高嶋四郎雄

    ○高嶋参考人 まずもって中央の労使の間において話し合いされることは、労働組合側から言わしめれば、できるだけ地方に持っていってわずらわしくないようなところまで問題を煮詰めてほしいという要望を持つものでございますし、私らとしてもできるだけその気持ちに沿うような考え方でものをまとめていきたいというようなことではございますが、それだけに、地方へ持って帰ってあまり問題にならないだけ問題を煮詰めようとしますと、それにはいろいろ期間がかかるということに対して、やはり組合側としても、現地の機関になれば、まだ未完成な中央の労使交渉ですから、そういうことに対して信頼感が薄いですから、地方が常にざわついて中央信頼度が薄れていく、問題を解決するのに薄れていくというような結果が生まれがちだということでございます。
  90. 吉岡徳次

    吉岡参考人 簡単に申し上げますが、私どものほうには中央できめたことについて現地でがたがた言うということはありません。時間の関係もありますので簡単に例を一つ申し上げます。  三十五年でしたと思いますけれども、一時金の問題で、当時政府が二千円近く出していたわけです。これを全部業者に肩がわりさせるということで、日本港運協会から当時の中島参事官が一札とったことがあります。これを小川書簡と私たちは言っているわけです。つまり、わかりました、私のほうで引き受けますということの手紙が来て、それでもって国は打ち切りと、こうなったわけです。ところが、それをさて現地において交渉を始めると、小川書簡なんか関係ないという話が今度は現地でどんどん、どんどん出てくるわけでして、そういうところに私どものやはり不信感というものがあるということを申し上げておきたいと思います。以上です。
  91. 和田耕作

    和田(耕)委員 やはりこの法案にもうたってありますし、そうして田尾さんも劈頭にその御所見があったんですけれども、この法案がかりに成立しましても、実際に労使の問題がうまく調整されていかないと、全くこれは意味のないものになってしまうというわけだと思いますけれども、そういうふうな状態のもとで、先ほど吉岡さんが重要な発言をなさったと思うのですが、今度の法案は、いままで職業安定局が乗り出して、職安が中心に登録あるいは紹介をした。けれども、今度は労使にまかせられるという方向だということですけれども、これは、私、先ほどから聞いているいろいろな状態から見て、ごもっともな発言だと思う。この問題について、労働省としてどういうふうな御方針を持っておられるのか。
  92. 道正邦彦

    ○道正政府委員 港湾労働の現状はこのまま放置できない。しからば、どういうふうに改正するか。共同雇用の理念で対処すべきである。その場合に、共同雇用理念を具体化する場合、いろいろな考え方がございます。国によっても、国情の差によって違っておりますが、日本の現段階におきましては、十一月十七日の港調審の答申がございますように、事業主をもって構成する港ごとの地区協会、これをもって登録紹介その他雇用調整の主体たらしめるのがいいであろうという内容になっておりますので、それに基づきまして立法化したわけでございまして、言うならば、いままでの職安登録紹介方式と完全な常用化、共同雇用化との中間的な姿でありまして、共同雇用のほうに一歩大きく前進したものというふうに考えております。
  93. 和田耕作

    和田(耕)委員 いろいろ問題の多い法案だということがよくわかりましたので、今後の質疑の参考にさせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  94. 田川誠一

    田川委員長 以上で、参考人に対する質疑は終わりました。  参考人方々におかれましては、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、ありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚くお礼を申し上げます。  この際、暫時休憩いたします。     午後二時二分休憩      ————◇—————     午後二時二十九分開議
  95. 田川誠一

    田川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  港湾労働法の一部を改正する法律案を議題とし質疑を続けます。  申し出がありますので、これを許します。多賀谷眞稔君。
  96. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 港湾労働者雇用安定の問題が、本院の当時労働常任委員会といいましたその委員会で小委員会がつくられまして、かなり各党間で問題になりました。しかしその小委員会も結局実を結ぶことができずしてそのまま放置をされておりました。昭和三十一年に社会党提案として港湾労働者雇用安定法を本院に提案をいたしたわけです。それ以来九年後に、昭和四十年に政府が現行の港湾労働法を出されたわけです。そして今日また、かなり基本的な部分において改正をされようとしておる。私もこれらに関係をいたした一人として非常な感慨があるわけですが、そこで、現在の政府の立場に立って御答弁を願いたいと思いますが、港湾労働者に一体なぜ特殊な港湾労働法が必要であるのか、これをひとつお聞かせ願いたい。
  97. 道正邦彦

    ○道正政府委員 港湾労働の特殊性は、一言で申し上げますならば波動性ということであろうと思います。これは法制定の時代におきましても波動性がかなりあったわけでございますが、基本的には現在におきましても変わっておりません。また、波動性は欧米先進諸国におきましてもいまなおございまして、したがいまして、日本を含めまして世界各国が港湾労働について特殊な法制的な手当てをしているというのが現状でございます。
  98. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 要するに港湾労働には波動性があるというその特殊性、本来ならば、すなわち一般産業であるならば当然雇用が継続をされるのに、港湾労働者である場合はそれが断続をされるというところに港湾労働法というものの必要性があるわけです。そこで、本来雇用が継続される者が、常用を除きますと日々雇い入れという形になっておる。それがいわば今度の法律改正の対象の労働者になるわけです。  そこで一歩進めて、本来雇用されるべき性格のものがこの産業の性格からいって波動性になり、日々雇用になっておる。だから、雇用継続と同じようにするというならば、そういうような方式で進むべきだと私は思うのですよ。そこで今日、共同雇用ということが言われておるのですが、いわば理論的には従来の方式を廃して共同雇用でいくということであるならば、私は共同雇用でいく方式にすべきではないか、こういうように考えるのですが、その点どういうように思われますか。
  99. 道正邦彦

    ○道正政府委員 日本におきましては、御承知のように現行法は、職業安定機関登録をいたしまして紹介をするというシステムをとっておるわけでございますが、波動性に対処して、各国それぞれ国情に即しまして苦心の法制化、制度化をしておるわけでございます。アメリカやイギリスのように労働組合が労働者を常用、日雇いを含めましてコントロールしている場合には、一種の労務供給事業を組合が行なう、使用者のほうがむしろ使わしてもらうという形で雇用が行なわれておるわけでございます。ところがヨーロッパ諸国におきましては、常用は常用で個別の企業がかかえる、波動性の対象になる日雇い労働者をプールいたしまして、そこが登録をし紹介をするという形をとっておりまして、その場合あくまで雇用関係紹介先の雇用主と労働者との間にあるというたてまえになっております。日本の国情からして現行法制が不完全である、不十分であるという場合に、そういう諸外国の立法例を踏まえまして、共同雇用の理念に基づいて一歩前進すべきではあるけれども、完全にプール組織雇用関係まで維持するということは無理であるということで、言うなればドイツ、オランダ等の先例にならい、共同雇用体制に一歩近づいた形の登録紹介のみのプールシステムを、今回改正案として御提案申し上げたわけでございます。
  100. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 日本の今回の改正案、すなわち港湾労働協会あるいは地区協会、こういう形をとっておるところがほかにありますか。
  101. 道正邦彦

    ○道正政府委員 技術的な点は若干の相違がございますけれども、考え方といたしましてはハンブルグ、ロッテルダム等、要するにドイツ、オランダが先例になると思います。なお、オーストラリア、ニュージーランド等も同じような考え方で仕組まれているというように承知いたしております。
  102. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私の調べたところによると、イギリスでは港湾労働委員会——これは行政委員会ですが、これが雇用しているという形です。その行政委員会においては議長、副議長、それから委員十名ないし八名、このうちの議長、副議長、委員二名は労働大臣が任命して、他は労使が同数の構成になっておる。そしてそれは行政委員会であって、それが雇用しているという形になっているわけですね。そうしていまお話しの西ドイツ、オランダでも、西ドイツの場合は全港湾経営体ということですが、このGHBは労働局の監督下にあって、議長は公益で他は労使同数の構成体になっている。ですから、今度あなたが提案されようとしているのとは非常に違うわけです。わりあい似ているのがオランダですね。雇用センターは港湾関係業者によって構成されておりますが、ロッテルダムの場合は南部海運協会です。しかし不就業手当が一〇〇%というのですから、内容が全然違うし、また確立もしている。しかし細部に入ると、まず使用主要するに南部海運協会の構成が違うのですね。すなわちこれは船舶所有者、海運代理店、海運仲立ち業者倉庫業者それからサイロ業者、船内荷役業者、エレベーター業者などで構成している。ですから船主も入っておるということですね。そうしてこの不就業手当についても一〇〇%出しておるというように、内容的にも全然問題がないほど確立をしておる。ですから、共同雇用と言っているけれども、日本の今度あなたが出されようとしておるのは一番特殊な例ではないか、こういうように考えるわけですが、それについてどういうようにお考えですか。
  103. 道正邦彦

    ○道正政府委員 御専門の先生から御指摘いただきましたけれども、定数決定機関といたしましては、先ほどお述べになりましたように西ドイツの場合には三者構成がとられております。定数の決定につきましては、今回の改正案におきましても現行法どおり労働大臣が決定する、その決定にあたりましては港調審意見を聞くというシステムをとっております。就労配置につきましては、全港湾経営体協会、GHBVというのが行なっております。  それから賃金につきましては、西ドイツの場合は第一日目は四分の一、次の日からは全額でございまして、この点は初日から全額補償をやっておるオランダと同じでございます。ただこの考え方につきましては、いずれも共同雇用的な理念に基づいて知恵を出しておるわけでございますけれども、雇用関係はあくまで個別のあっせん先の事業主との間に生じているという点におきましては、今回の日本の場合と同じというふうに考えます。
  104. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 率直にいいますと、今度の法案というのは外国の悪いところばかりとっておるような感じなんですよ。そうでないでしょうけれども、できたものはどうもいいことばかり集めておるのじゃなくて、それは外国のもありますよ。ありますけれども、基盤も違うし、日本で一番抜けている面は隠しておるという。ですから私は、全港湾の人々が法文を見て、ああこんな状態だったかという、建議案と違うじゃないかという感じを持ったのは、あるいはそういうところからきておるのではないか、こういうように思うのですよ。ですから私は、特に日本港湾の非近代的なところをどう改革をするかという問題について、これは率直に知恵を集めなければならぬと思いますがね。  そこで、外国の場合は船主という大株主が前面に出てきておるわけですね。ところが日本の場合はそれは引っ込んでおるわけです。荷主、船主というのは引っ込んでしまっておる。いわば港湾運送事業ということ自体が、荷主あるいは船主の委託を受けた一種の労務供給事業を法制化したようなものですよ。公認したようなものですね。ですから、そこにやはり私は問題がある。そういう経営の主体が非近代的、といったらなんですけれども、そういうようなことを公認をしておるという、そうしてほんとうの近代的な経済基盤を持つ船主とか荷主はうしろへ下がっておるというところに、一つ問題があるのじゃないかという感じがするわけです。私の経験によりますと、炭鉱も非常に非近代的な封建的なところがありましたよ。いい悪いは別にしまして、やはりいまの日本の財閥会社が炭鉱を経営するようになってから、たとえば入れ墨を入れた者は採用はしないとか、大納屋制度を早く廃止するとか。ですからかなり炭鉱も、犯罪の発生がかつてあったわけですけれども、戦後に見られるように非常に近代化したわけです。ですから私も、この使用者というもの、これの中には当然船主や荷主を入れていくほうが近代化になるのじゃないか、こういう感じを持っているが、どうですか。
  105. 道正邦彦

    ○道正政府委員 雇用関係はあくまで事業主紹介をした労働者との間に生ずる、これは事実で、否定のしようがないと思うわけでございます。ただ、一種の共同雇用体制を考えます場合に、船主や荷主のあり方をどういうふうに考えるか、この問題になりますといろいろ議論が出てくると思います。港湾調整審議会の場におきましても、その点については非常に熱心な御検討がございました。基本的に船主や荷主の協力がなければ、港湾業者港湾労働者だけの問題として解決するには、あまりに船主や荷主の影響力が強うございますので、それは不可能でございます。先ほど参考人として御出席になっておりました米田さんも船主のほうの代表でございますけれども、港湾調整審議会の場には船主や荷主あるいは倉庫等の関連業界の方もお入りになりまして、非常に御熱心な御検討があり、たとえば調整手当の原資になります港運料金の付加料金の増額につきましては、五割アップというようなことを業界としては認めて協力をされておるわけでございます。ただ日本の現状におきまして、雇用関係の主体はあくまで港湾業者であるのだから、港湾業者労働者との間の関係ということで割り切り、港湾調整審議会であるとかそのほかの場を通じて船主や荷主の協力を求めるというのが現状に即しているというのが、港湾調整審議会結論でございました。今後の検討の課題としてはいろいろな形があり得ると思いますけれども、日本の現状におきましては、今回御提案申し上げたような形が望ましいということで関係者の意見が一致したわけでございます。
  106. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 現行法からいえば、それはいまの港湾労働者の使用者は港湾業者でしょう。しかし外国立法を見ると、みな船舶所有者が出ておるのですね。これは、イタリアの使用者というのはいわゆる荷主と船主です。それからイギリスでは外航船主それから近海航路の使用者、船舶荷役下請者、これはいまの港湾業者ですが、等々でありますね。それからニューヨーク港も水上運送事業者、船舶荷役業者。ですから、一つは水上運送事業者が出てきておる。それからフランスでもそうですね、もう言いませんけれども。オーストラリアでもそうですね。ですから日本港湾運送事業が法律によって使用者というのは港湾運送事業者だけと規定したところに、やはりいままでの長い間の慣習を踏襲した法律になっておるのじゃないか。やはりこれが一つ問題点じゃないですか。外国の場合は、使用者というのは船主が出てきておる。中には船長並びに高級船員の指揮下にある、こういう場合もある。日本の場合はそうでなくて、船主や荷主は全部後退をして、いわば労務供給業が公認をされた形で港湾運送事業者が出てきておるというところに、港湾労働法をわれわれが幾ら創意くふうしてみてもなかなかうまくいかない原因が一つあるのじゃないか、こういうように思うのです。そこで運輸省はこれについてどういうようにお考えであるか、お聞かせ願いたい。
  107. 高橋全吉

    高橋説明員 いま先生のお話の港湾運送事業のあり方の問題だと思うのですが、現行法におきましては、港湾運送事業というのは荷主あるいは船舶運航者の委託を受けて港湾運送をやる、これを港湾運送事業者ということで定義しております。したがいましていまの先生の御発言はこの港湾運送、確かに根本を直さないと不可能かと思いますが、私午前中答弁しましたけれども、現在運輸政策審議会からの答申を受けまして、私たち法律改正をやるべくいま検討に入っております。その段階で、いろいろこまかい点もございますけれども、検討しなければいかぬ点かと思いますが、現在この港湾運送事業あるいは労働問題につきまして労働組合側からは、使用者それから労働組合それから官側この三者といいますか、荷主、船会社を入れれば四者になりますが、四者の協議会をつくってほしい、こういう御要望が再三出ております。これに対しまして、要するに港湾運送事業者とそれから利用者側との話し合いがまとまって、それで労働者側と話をまとめれば、これは官側が出ていって四者協議も成り立ち得ると思いますが、現在はそういう段階でございますが、片や運輸政策審議会の答申の中にも、港湾労働の重要性というものを認識して、これは港湾運送業者だけにまかしておいてはいけません、したがいまして、利用者の船会社なりあるいは荷主がこれに協力すべきであるということがこの答申にうたわれておりますので、その方向でいまわれわれも法律の改正ということを検討している段階でございます。
  108. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 日本のたとえば郵船というのは、ニューヨークならニューヨークに行けば、アメリカの港湾労働者の使用者になるわけでしょう。そうでしょう。外国へ行けば、日本の船の郵船は、アメリカの港湾労働者の使用者になるわけでしょう。
  109. 高橋全吉

    高橋説明員 その点、私はっきりわかりませんけれども、アメリカにおきましては、これはハイヤリングホールという何か組織をつくっておりまして、労働組合が組織したいわゆる労働者をプールした機関、それから船会社が入りまして、船会社と、いわゆる日本でいう港湾運送事業者みたいなものが入って、そこで、郵船の船が着きますと、そこの労働組合の本部に対しまして労務を提供してもらう、こういうことになっておると私は認識しております。ハイヤリングホールということで呼ばれております。
  110. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 その法律上は、ニューヨーク港ならば、具体的に書いてあるのは、水上運送事業者とこの船舶荷役業者と明記されておるけれども、団体交渉の当事者は、事実上は船主協会であるわけです。ですから、その日本の郵船は、アメリカへ行けば、アメリカの港湾労働者の交渉相手になるわけですよ。ところが、日本に来れば、もう港湾業者というのが前面に出て、そうして船会社のほうはそのうしろへ下がってしまって知らぬ顔をしている、こういう形になっておるわけですよ。ですから、私は、そこに片載落ちの問題があるのではないか。ことに日本のような、港湾運送事業者の経済的基盤も弱いでしょう。それから、いままでの長い間の慣習によって、御存じのように暴力も入ってきているでしょう。それをやはり近代化するためには、この際、船主協会が出ていくべきではないか、こういうように思うのですがね。
  111. 高橋全吉

    高橋説明員 先生の御発言、ごもっともだと思いますが、先ほど私が申し上げましたように、荷主あるいは船会社ですか、これと港湾運送事業者と、それから労働組合と、三者協議といいますか、そういうことで今後いろいろ進めたい、こういう要望がいまありますと私が申し上げましたけれども、それにつきましては、運輸省としましても、これはそういう協議会を持つことにつきましては非常にいいことであるから、それぞれの団体の話し合いがまとまれば、それを前向きに構成すべきである、こういう見解を運輸省としては持っております。
  112. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、ぜひこの船主協会が前面に出るようにしないと問題は近代化しないのじゃないかという、事実上の問題として指摘をしておきたい、こういうように思います。  次に私は、一歩進めて共同雇用というならば、共同雇用らしい具体的な法制の改正をすべきではないかと思う。先ほど参考人が言われましたように、その共同雇用の理念を入れておるというけれども実際は日雇い登録者のままだと、こう言う。共同雇用というならば共同雇用らしい——それはなぜかというと港湾特有の波動性があるからだということになれば、そのとおりにやったらどうかと思うのですね。ですから、登録しておるというのは、官は一種の雇用関係があったと見ていいわけですよ。ですから、有給休暇もやったらいいでしょう。失業保険だって、登録が消されたら一般の失業保険をもらうべきですよ。そうでしょう。登録という行為はやはり雇用が継続をしておるということにみなすならば、それは私は、登録取り消しは一般の失業保険がその後は適用されるのだ、こういうように考えるわけです。  それから、やはり当然、退職金の問題はもうすでに現行法にありますから、年金の問題だって同じでしょう。これらの大事な点は、なぜサボっておるのですか。
  113. 道正邦彦

    ○道正政府委員 その点は基本的な問題でございます。  擬制をいたしますならば、地区協会が使用者責任を負う。これはすべての社会保険についても負う。そのかわり団体としては法律に基づいて労務供給事業を行なう、こういう仕組みになるわけですね。それも一つのやり方でございます。その点についてさらに港調審の場においては、先生が御議論をお進めになっておるように、第二の問題としてございました。われわれとしては、そういう考え方をとるのも一つの考え方だ、十分成り立つ案というふうに考えないわけではなかったのでございますけれども、いまの日本の現状におきましてそこまで一挙にいくには意見がまとまらないという経緯もございまして、とりあえず、いままで職業安定所が登録をし紹介していたその業務地区協会がかわって行なうということで、具体的に詳細内容まで確定して御建議いただいておるので、それに従って法案を作成したわけでございまするけれども、今後の検討課題といたしましては、港湾協会の業務の遂行状況等を見まして、一種の擬制を行なって、使用者責任に似たような責任を協会に負わしていくというようなことは、今後の検討課題としては十分検討に値する問題というふうに考えております。ただ現状は、遺憾ながらそこまで踏み切れなかったというのが実情でございます。
  114. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 その共同雇用の理念を入れるならば、これは一歩進めてやれば、法律そのものが成り立たぬ形になると思うのですよ。中途はんぱはいけないですよ。共同雇用なら共同雇用らしく政策を進めなければ意味をなさない。いままでどおり形態は日雇い雇用にしておいて、そうして紹介だけをこの共同雇用のいわゆる業者団体にまかす、こういう中途はんぱな形がいけないのですよ。ですから、いままでのたとえば失業手当が増大をしたとか、あるいはやみ雇用があとを断たないとか、これはやはり経営者の、いわば自分が雇っておるのだという認識がないから、今度は形態を変えまして労働協会で雇っておるようにするんですと言うならば、ただ精神論じゃだめなんですよ。だから、具体的にそれに対して政策をつけてやらなければ共同雇用にならない。この中途はんぱが一番いかぬです。政策は、切りかえるならば切りかえるようにやればいいのですよ。ですからここが、私は一番悪いところばかり持ってきてやっておるということを言ったわけですけれどもね。一歩前進と言うけれども、前進になるかどうか判断ができない。おそらく委員の方、みんなそうでしょう。きょうの五人の参考人の方の意見を聞いても、はたして将来前進をするのだろうかどうだろうかという危惧があったのですよ。やはりそれは、あなたのほうで前進をするような政策がくっついてないからですよ。ですから、経営者の団体にそれをまかすというならば、私は共同雇用の理念をさらに前進してもらいたいと思うのですね。そうすると、やはり労働者のほうもわれわれは共同雇用をされているのだという認識が出るでしょうし、経営者のほうも、自分が金を出しておるのですから、当然それだけの認識を持つでしょうし、ただ空ではだめですね。形式だけを変えたのではだめだと私は思うのですがね。
  115. 道正邦彦

    ○道正政府委員 御意見はよくわかるわけでございますけれども、先ほど申し上げましたような経緯で、当面一歩前進ということでこういう形の法案を御提出申し上げたわけでございます。  なお、外国におきましても共同システムは各港ごとにできておりますけれども、雇用関係は依然として個別の事業主との間にあるという点も、あわせてつけ加えさせていただきます。
  116. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 しかし、年次有給休暇とかそういうのはちゃんとできているのですよ。それから年金制度だってできているでしょう。ですから、そういった実質、実のあるような政策が付随していないところに問題があるでしょう。こういうように考えるわけですがね。ですから、それは共同雇用といってもやはり擬制をして個々の企業にくっついているのだとおっしゃっても、制度としては、政策としては前進をした、その点がないわけですね。ですから、これをつけてやらなければ意味をなさないのじゃないですか。というのは、こういうものはあくまでも港湾の波動性から来ているからね。本来ならば雇用を継続するべきであるにかかわらず、それができないという特殊性ですよ。今度のILOの条約、勧告案というのは全部そうなっているのでしょう。
  117. 道正邦彦

    ○道正政府委員 ILOの考え方としましては、プールシステムを前提にしていろいろ条約案、勧告案ができているというふうに思いますけれども、条約案につきましては、少なくともどういう形のプールシステムをとるかということは明記されておらないというふうに思います。いずれにいたしましても、波動性に対処するためのプール制でございます。したがいまして、いろいろ考え方がございますので、擬制をいたしまして、個々の事業主との間で雇用契約が事実上生ずるのを使用関係と見まして、プール組織におきまして事業主としての責任をとらせるというのは、考え方としてございます。ございますけれども、先ほど来申し上げましたような経緯で、こういう形にとどめざるを得なかったわけでございます。それではこれで意味がないかということになりますと、私どもはいままでよりは一歩、二歩の前進である、いままでよりは少なくとも改善であるというふうに考えるわけでございます。
  118. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 建議案にも年次有給休暇の点には触れてないのですけれども、役所としてはどう考えるのですか。
  119. 道正邦彦

    ○道正政府委員 これは、こういうシステムをとりました場合には、労働基準法の一般原則に戻って適用するということにならざるを得ないというふうに思います。
  120. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうすると、ないということじゃないですか。日々雇用される者は年次有給休暇はないということでしょう。
  121. 道正邦彦

    ○道正政府委員 労働基準法の規定による年次有給休暇制度はないということでございますが、労使関係の交渉によりまして、何らかの形で今後積み上げていくというととは可能でございますけれども、労働基準法による年次有給休暇は、御指摘のような条件が必要でございますので、適用がないわけでございます。
  122. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 その点、各国みな年次有給休暇もあるのですよ。ですから、ヤマブキの花じゃないけれども、全く実のない港湾労働法改正になる、こういうことですよ。  それから、建議案にありました年金の制度の問題はどういうようにお考えですか。というのは、二つ考えがあるのですね。一つは、石炭特別年金のように、いまある厚生年金にプラスをして、港湾労働者特有の年金をつくるという考え方がある。そのもとになる厚生年金の適用が実は日雇い労働者にはない。この厚生年金の適用がない労働者については、波動性の点からきて、特殊な港湾労働者年金をつくるのか、あるいは法律をつくって厚生年金の適用を登録労働者に関しては受けさすのか、これはどういう考えですか。
  123. 道正邦彦

    ○道正政府委員 港湾労働者福祉政策を考えます場合に一番問題になりましたのが、実は年金の問題でございました。これは常用の港湾労働者についても問題でございますけれども、日雇い港湾労働者についても年金制度について何か検討すべきじゃないか、そうでないと魅力ある職場というふうにいえない、一般的に年金が拡充され、五万円年金というのが問題になっている時代に特にそうであるという議論がございました。この点については、十一月の十七日に建議をいただきまして、労働省専管でできますことであれば割り切りもできたかと思いますけれども、何分にも他省庁にまたがりまして、具体的に申し上げますと厚生省との折衝に手間どったわけでございます。しかしながら、審議会におきましての議論の経緯にかんがみまして、何らかの形で年金制度を検討したい。常用につきましては特別な上積み制度が可能かどうか、あるいは日雇いにつきましては擬制適用をして、年金制度については常用と同じように扱うようなことが可能であるかどうか、これはしかるべき研究の場も設けまして、至急詰めたいというふうに考えております。
  124. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 退職共済につきましては、あなたのほうでいわば擬制をして退職共済の規定を設けられたわけですから、私は日雇い登録労働者についても、まず第一には厚生年金の適用を受けさすということ、第二段階は上積みをするという、このことがやっぱり必要ではないかと思います。これはひとつ早急にやってもらいたいが、大臣どうですか。
  125. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 御趣旨の点のように、年金制度改善の問題については、研究する機関をつくって年金制度の問題に大いに善処いたしますことをかたく申し上げます。
  126. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 少なくとも特別年金制度は、上積みの分についてはいろいろ財源等の問題はあろうと思いますが、日雇い登録労働者を厚生年金に入れるということぐらいは、もう簡単に、今度の法律を出すときには、これだけ年金問題が騒がれているときに、当然でしょう。そのくらいできませんか。
  127. 道正邦彦

    ○道正政府委員 われわれといたしましては事務的に厚生省当局と折衝をしたのでございますけれども、結論を得なかったわけでございます。今後も、非常にむずかしい問題でございますので、必ずしも前途は容易じゃございませんけれども、何らかの形におきまして年金制度について手厚い措置が受けられるように検討をしてまいりたいと思います。
  128. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 次に、若干条文について質問したいと思います。  先ほどの参考人のお話もありましたけれども、要するに港湾労働協会に加盟をするという義務性、強制力がないわけですね。これは私は、これだけ改革するというなら強制力をつけるべきじゃないですか。あえて言うならば、港湾運送事業法の中に当然、資格要件として港湾労働協会に加盟するというぐらい入れたらどうですか。これがなくて、何か入ってもいいが入らなくてもいいという法制的な状態になっておるというのは許されないと思うのですが、どうですか。
  129. 道正邦彦

    ○道正政府委員 強制加入の点につきましては、地区協会をせっかくつくるわけでございますので、その地区協会の会員になることによって、波動性に伴う日雇い港湾労働者の使用が円滑にいくというシステムになっておりますので、例外はあると思いまするけれども、大部分事業主に加入いただけるものというふうに考えるわけでございます。もし加入をしない場合に同じ扱いであれば、これは入っても入らなくても同じであるということになりますけれども、入らない場合には、たとえば登録日雇い労働者紹介順位が後順位になるとか、あるいは中央にプールいたしまする付加料金のバックペイの恩恵が受けられない。要するに割高な納付金を納めなければいかぬというシステムをとっております。また、せっかくできた地区協会の会員にならないということは一種の権利放棄みたいなものであり、その業者登録日雇い労働者を全然使わないでいいということであればともかく、何らかの形で、脱法的な意味で使うというおそれは十分ございますので、いわゆるやみ雇用あるいは擬装常用の監督指導の重点事業場に指定して徹底的な監督を加えるというようなことを行ないますならば、罰則づきの強制力をもって加入を強制いたしませんでも、法制定の趣旨は達成するものと考えた次第でございます。
  130. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、これだけ労働協会に公権力を付与するならば、なぜ港湾運送事業法の資格条件にしないかと言うのですよ。私は刑罰を科すとかなんとかということを言っているんじゃないのです。当然あなたのほうで全面的に、いわば職業安定所が持っている紹介業務というもの、登録業務というものをこの地区協会に移す、それだけの大きな改正をするならば、あやふやなことではいけないと思うのですよ。それならば、運送事業法の資格要件にすればいいじゃないですか。そのくらいしなければ、これは守られませんよ。そして、地区協会に入らなかったものあるいは違反したものに対して十分な処断ができないということでは、私は法律が守られないと思うのですよ。ですから当然、強制力をそれだけあなたのほうが地区協会に持たしている、すなわち公権力を持たしておるならば、なぜ強制加入にしなかったか、これを聞きたいのです。指導が問題じゃないでしょう。法律の立て方の問題ですよ。
  131. 道正邦彦

    ○道正政府委員 法律の立て方、要するに理屈の問題といたしましては、港湾業者の中に、自分のところは全部常用でまかなうのだという事業場もあり得るわけでございます。そういう場合に、われわれといたしましては、そういう場合であっても加入をしていただきたいというふうに思いますが、これは法律の仕組みとしては加入強制がしにくいということで、現在のような仕組みにしたわけでございます。したがって、一人でも多く、一事業場でも多くというか、全員、全事業場に地区協会の会員になっていただくような指導をいたしますけれども、法律の仕組み、理屈の問題としては、先ほど申し上げたようなことでございます。
  132. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私はどうも解せないのですよ。港の運営ができなくなるというのでしょう。     〔委員長退席、伊東委員長代理着席〕 港全体のその広い立場ですよ。自分のところが日雇いを使おうが使うまいが、そんなことを言っているんじゃないのですよ。要するに港湾荷役全体の運営が円滑にできないというところから出てきているわけです。個々の事業所の問題を言っているわけじゃないのです。ですから私は、当然地区協会にこれだけの公的な権限をゆだねるくらいの改正をするならば、なぜ強制加入といいますか、そういう方式をとらないのか、こういうように思うのです。
  133. 道正邦彦

    ○道正政府委員 港の運営について例外なくすべての事業主の協力が必要だ、また自分のところでは登録日雇い労働者は使わないという場合であっても、一港湾業者として全体のために奉仕すべきである、これは御指摘のとおりだと私も思います。ただ法律の仕組みとして、自分のところは全然使わないという事業場、これは少ないと思いますけれども、あり得るわけでございます。また、現にあるわけでございます。そういう事業場にまで加入強制をすることはどうか。これはあくまで業界指導の問題として、港湾労働改善のために大局的見地から参加を願って協力をしてもらうということで処置すべきが適当であろうということで、加入強制の措置はとらなかったわけでございます。
  134. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、地区協会に公的な権限を付与しなければいいですよ。相当な権限を付与しておるわけでしょう。付与しておったら、なぜそのしり抜けのようなところをつくっておくのかと言うんですよ、その意味がぼくはわからない。ですから、さっきから言うように、やるならやる腰がまえでやらなければだめですよ、こういう法律は。形だけつくってやろうとするから、ほんとうにうまくいくんだろうか。大臣が最初の質問に答えられたとおりですよ。率直で私はよかったと思うのです。そのとおりですよ。ほんとうにうまくいくかどうか、大臣でさえはっきりしないんでしょう。ですから、これはやはり私は、強制加入なんということばは悪いから、私は港湾運送事業法を改正してもらって、むしろ入ることが資格条件である、こういうようにしたらどうですか。運輸省、どう思っておられますか。
  135. 高橋全吉

    高橋説明員 いま先生の御意見、実は労働者ともよく打ち合わせをして検討してみたいと思います。
  136. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 これはなかなか重大な問題でありますが、多賀谷議員の御質問はごもっともと思います。あまり大臣が出しゃばるのはどうかと思いますけれども、今後の推移を見まして、港湾運送事業法の中に入れるか、この法律のほうへ入れるか、これは考慮する必要があろうと思います。いますぐにどうするということも、運輸省とよく相談いたさなくちゃならぬと思いますので……。なかなか要を得た御質問で、その御趣旨を尊重するような方向にひとつ善処いたしたいと思います。
  137. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今度の法律改正の建議案を見ましても、反省をしておる、反省をしておると言うけれども、どうも具体的にない。ただ、おっしゃるように、共同雇用の理念を入れていままでの職安の持っている公的権限地区協会に渡すと、こういうだけのものですね。ですから、私はそこにどうも不安でならない問題がある、こういうように感ずるわけです。  そこで、時間もありませんから具体的にお尋ねしますが、就労日数の確保について大臣は、どういうように達成をされる見通しであるか、また気持ちであるか、お伺いいたしたい。
  138. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 お答えいたしますが、今回の改正法案におきましては、港湾労働協会登録日雇い港湾労働者について港湾雇用調整計画をきめます。これは、御承知のように、労働大臣がきめて官報で告示して、計画的にやるものでありますが、この計画に定められた一定日数以上の就労日数を確保するため、その具体的な方法は雇用調整規程でまたこれを定めまして、これに基づいて会員が、事業主の共同体制によって必要とする日雇い求人を確保し、登録日雇い港湾労働者の適正な就労日数を確保することであることは御承知のとおりであります。この問題は大問題でありまして、さきの参考人もこの点についていろいろ陳述がありましたが、労働省としては、この体制が実際に、理屈でなく確保されるよう、港湾労働協会及びその会員に対して強力に十分指導、監督を行ない、必要な場合には勧告、改善命令その他、登録日雇い港湾労働者雇用の機会を確保するため、共同責任を持って、果たさない事業主に対しては重的点に、従来もやっておるのでありますけれども、この点が、この法律が通りました場合にはなお一そう重点的に立ち入り検査を行なう等の措置を講じまして、日雇い港湾労働者雇用機会の確保をはかりたい、これが今回の法の改正の眼目であります。
  139. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 局長にお尋ねいたしますが、この法律改正によって、就労日数はどのくらいふえるのですか。
  140. 道正邦彦

    ○道正政府委員 ただいま大臣からお答え申し上げました計画におきまして、積算上、いままでは月十六日というふうにきめております。ところが、実際は十日前後ということになっておりまして、十六日の計画の日数まで到達しておらないのが現状でございます。  今後の運用につきましては、港ごとに事情も違ってくると思いますので、この点は各港の雇用調整規程の問題でもございますので、全国的な調整は必要でございまするけれども、港の実情に応じ、十六日を下回ることはないと思いますけれども、十六日以上の月間の就労を確保するという線で臨んでまいりたいというふうに思います。
  141. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 確保する方法に二つあるのですね。それは、定数を減らすという方法、それからもう一つ、いままで問題になっておりましたやみ雇用であるとかあるいは直接雇い入れとか、いろいろ方法はあります。ルーズな問題もあります。一体これらを、具体的にはどういうようにされようとするのですか。たとえばやみ雇用その他で、先ほど吉岡委員長からお話がありましたが、横浜の場合は登録労働者と非登録労働者は大体同じぐらいの人員であるという話をされました。ですから、非登録労働者を、やみ雇用のいわば絶滅によって明るみに出すということになると、就労日数がどの程度増加すると見るのか。あるいは定数についても、これは削減をせざるを得ないという状態にあるのか。どういう見通しですか。
  142. 道正邦彦

    ○道正政府委員 現在、定数は五千百人程度でございます。実数はそれを下回っております。なおかつ、月間の就労は十日前後ということでございます。今後法律改正の暁には、着実に就労日数がふえてまいると思います。したがって、現在の定数をさらに削減するということは、現在のところ全く考えておりません。
  143. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうすると、やみ雇用の征伐というとことばはなにですが、やみ雇用の征伐によって実際の就労日数はかなり大幅にふえる、こういう確信ですね。
  144. 道正邦彦

    ○道正政府委員 そのとおりでございます。
  145. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 この従来の、日雇い登録労働者の定義の中で、二カ月以内というのを六カ月にされた理由は何ですか。
  146. 道正邦彦

    ○道正政府委員 現行法は、二カ月以上であれば常用ということになっておることは御承知のとおりでございます。常用であれば、港湾労働法日雇いについての規定の適用がなくなるわけでございます。要するに、常用ならば自由に雇えるという仕組みになっておったわけでございますので、その規定を活用といいますか利用いたしまして、いわゆる季節需給的な雇用者を常用という名目でかなり多数採用し、これは大体登録日雇い労働者の三分の一ぐらい、三割ぐらいの多数にのぼった時期もあったわけでございますが、われわれとしては一種の脱法ではないかというふうにも考えました。そこで現行法のワク内におきましても、関係者の協力を得まして季節的な使い方を自粛してもらうように呼びかけ、かなりの成果もあげてきておりますけれども、これをこの際正式に、脱法行為を防ぐ意味で、日雇いの定義を二カ月から六カ月というふうにしたわけでございます。
  147. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうしますと、これは失業保険、健康保険関係はどうなんですか。要するに失業保険は、四カ月未満は日雇い失保ですね、それ以上は一般失業保険。それから健康保険の場合は、二カ月以内の場合は日雇い健保、それ以上は一般健保ですな。こういう点はどうなんですか。
  148. 道正邦彦

    ○道正政府委員 法律の専門家の先生に恐縮でございますけれども、要するに、法律概念の相対性と申しますか、本法にいわゆる日雇い労働者は六カ月ということにしたわけでございますから、ほかの法律は従来のとおりということになるわけでございます。
  149. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうしますと、たとえば五カ月の雇用労働者、これは今度の法律では日雇い登録労働者になりますね。この人の失業保険はどうなるのですか。
  150. 道正邦彦

    ○道正政府委員 現行法におきましても失業保険の適用はございませんから、改正法におきましてもございません。
  151. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 現行法では常用ですから、一般の失業保険を払っておるのですよ。そうすると、今度の場合は日雇いになりますから、日雇いの失業保険を払うけれども、それは払わないで調整手当金の財源になるわけでしょう。そうするとその人は今度は、登録がなくなった、登録が取り消されたあとは、日雇い失業保険を払っておるとみなすわけですね。日雇い失業保険に返るわけでしょう。ところがこの人は二重に払わなければならぬのですか。どうなんですか。
  152. 道正邦彦

    ○道正政府委員 先ほどお答えが舌足らずでございましたけれども、いままでは二カ月以内が登録日雇い労働者、今度は六カ月になりますから、六カ月以内の方は登録日雇い労働者になります。そうしますと、失業保険の適用ははずれます。そういうことで、いままでの二カ月以内の日雇い労働者と全く同じ扱いになるということでございます。
  153. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 その点は法律関係、失業保険法のほうは全部整備しているわけですね。
  154. 道正邦彦

    ○道正政府委員 整備いたしております。
  155. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、登録を取り消されたら一般失対に返るべきだと思うのですよ。登録期間は普通の雇用形態になったと同じ、そうすべきですよ。本来ならば常用であって一般失業保険を受ける資格のあった者が、この港湾労働法によって日雇いにみなされて、登録を取り消されたとき、すなわち仕事が終わったときには、日雇いであったから一般失保の恩恵に浴さないというのはおかしいですね。  私がなぜそんなことを聞いておるかというと、この事例は多くなるわけですよ。季節労働者なんかで多くなるのです。港湾に行ったばかりに一般の失業保険に入らないで日雇い失業保険になるというのは、いま川俣さんがおられますけれども、秋田県あたりではこれは大問題になるのですよ。それで私はあえて聞いておるわけです。
  156. 道正邦彦

    ○道正政府委員 六カ月以内は登録日雇い労働者の扱いになるということでございますから、それから登録を辞退されまして一般に移られる場合には、日雇いになれば日雇い、常用になれば常用の扱いにその時点からなるわけでございます。  問題は、やめた時点においての過去の実績の扱いをどうするかということでございますね。その点については、六カ月までは日雇いの扱いになるということでございますけれども、これは先生が当初に言われました、一種のプールシステムとしての地区協会における登録日雇い労働者の身分の扱いをどうするかという問題とのかかわり合いにおいて検討し、解決する筋合いのものではないかというふうに思うわけでございます。
  157. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 この港湾労働法によって不就労手当の脱法行為が防ぎ得たとしても、その労働者が逆にまた季節労務者として郷里に帰る場合は、日雇いですから一般の失業保険がなくて——その人はもう日雇い労働者にもならぬわけです。ですから、ここに問題があるということも提起をしておきたい、こういうように思います。  続いて、田中委員から質問があった点、きわめて重要ですから、もう一度私は聞きたいと思いますが、それはやはりブロック体制の問題ですよ。それで、これは労務供給事業であるかどうかという判定もなかなかむずかしいのですけれども、要するに労働者を貸すということですね。労働者を貸すという形の場合、具体的にはどういうチェックをするのですかね。
  158. 道正邦彦

    ○道正政府委員 いわゆるブロック体制と称します中に、実際には労働者の相互融通が行なわれる場合、これは安定法四十四条違反になる場合があり得ると思います。それで、労働省といたしましては、そういう違反の事実が予想される場合には、監督を強化して、違反事項については厳正な態度で臨むという以外にないわけでございます。  ただ、いわゆるブロック体制というものの中には、事業法によりまして一定の限界内で認められておるものもございます。それがしかし安定法の違反になればこれは問題でございますけれども、ならない形のブロック体制というものもあるわけでございます。そういう場合には業法によっての成規の手続をとっていただく、これは当然かと思います。
  159. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 この点はきわめて重要ですし、また判定がむずかしいわけです。ですから、よほど厳重に注意をしておかなければならない、こういうように思います。  そこで、なかなか痛しかゆしの問題が多いのですけれども、短期雇用の者と日々雇い入れとの関係、そしてそれが輪番制との関係ですね。輪番制を円滑にするためには、短期雇用労働者という形の者は逆にちょっと制限をしなければならぬというところで、むしろ十九条等が改正されたと思うのですけれども、この輪番制というものをあくまで原則として貫くかどうか、これをお聞かせ願いたい。
  160. 道正邦彦

    ○道正政府委員 就労機会の公正を確保するという見地から、原則として輪番制により紹介をするという方針で臨みたいと思います。ただ、本人の能力あるいは希望というものもある程度参酌しなければならないと思いますけれども、これは例外でございまして、あくまで原則としては輪番制で処置をしていく方針でございます。
  161. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 よく局長は、天気のいいときには職安に集まらないで、雨の降るときに職安に集まる、と労働者の責任のように言われておる。ところが問題は、やはり手配師が持っておる仕事というのはわりあいに楽で収入も高いのですよ。職安に頼むのは、非常に労働がきつくて、金にならぬ仕事を持ってくる。そこで、みんな職安なんか相手にしないで手配師のところに集まるというのは、そういう経済的な要因があるのですよ。ただ手配師のところに集まるのはけしからぬと言うけれども、手配師のところにはそういう甘味があるような仕事がある。これが一つ問題じゃないかと思うのですよ。全体の港湾の運営をやるには、手配師は金になるいい仕事を持っておるから手配師のところにだれでも集まります、それをどういうふうに公正に扱うかということです。  いままでは職安で、今度は地区協ですけれども、地区協に紹介を頼むのはあまり金にならぬ仕事で、自分のところは、短期雇用で集める労働者についてはわりあいに金になる仕事をやるというんだったら、やはりくずれますよ。それは形式は手配師じゃないかもしれぬが、やはりくずれますよ。ですから、それを一体どういうように考えるのか。そこで、短期雇用労働者についてもそういうチェックをするのかどうか。全体的な労働条件というようなものについてもバランスをとるのかどうか。それは労働者本人からいっても、日々雇い入れよりも短期雇用がいいでしょう。しかし、全体の運営から見ると非常に乱れてくるということですよ。ですから、おれのところは短期雇用ばかりで、もうあまり地区協には頼むこともないなんということになると、結局地区協の運営もうまくいかない、こういうことになると思うのですが、その点どうですか。
  162. 道正邦彦

    ○道正政府委員 その点は御指摘のとおりでございまして、法律の運用にあたりましては、原則として認めないという方向で処置をしてまいりたいというふうに思います。
  163. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それから調整手当の財源問題ですけれども、これは休業手当と同じように当然使用者の責任で行なうべきだという報告書もイギリス等では出ているわけですけれども、現実の問題としてはやはり政府の援助というものは必要であろうと思いますが、それで調整手当の額の引き上げというものについてどういうようにお考えであるか、これをお聞かせ願いたい。
  164. 道正邦彦

    ○道正政府委員 調整手当はこれは法律事項でございませんで、業者内部の扱いにまかされているわけでございますけれども、御承知のように発生的に見まして、日雇失業保険が移ってきたわけでございますが、現行法におきましても一種の準常用的な扱いになるということで、休業補償的な性格もあわせ持ってきたということで、両者を点数制という形でつないで処置していること、御承知のとおりでございます。現在八等級ございますが、今後法律の改正によりまして就労日数が増加するということも十二分に予測されることでもございますので、低等級を中心に手当の改善については誠意を持って努力をしてまいりたいというふうに考えます。
  165. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 私からもお答えいたしますが、この問題はもう少し国のほうで、これが少ないとやはり優秀な労働者が集まってこぬ、それがいろいろなやみ雇用の原因にもなりますので、国の助成につきましては中央審議会の意見を十分聞きまして、御趣旨のような線で国庫の増額とかという問題につきましても大臣として、労働省として努力いたしますことをお誓いいたします。
  166. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 具体的にはいまどういう比率になっていますか。あるいは金額でよろしいですが、四十七年なら四十七年度の金額はどういうようになっていますか。
  167. 永場久治

    永場説明員 四十七年の十月から四十八年の三月までの六カ月問の状況によりますと、第一級と申しますのが二千二百五十円でございますが、これが全体の構成比としまして五一・五%になっております。以下、二千円が二級でございまして、二百円刻みで八級が八百円、こういうことになっていますが、二級が一一・三%、三級が九・三%、四級が八・六%、五級が七・七%、六級が五・六%、七級が四・八%、八級が一・二%、このようになっております。
  168. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 財源の出どころを全部……。
  169. 永場久治

    永場説明員 財源につきましては、まず国の補助でございますが、これは納付金の二分の一か手当の支給額の三分の一か、いずれか低いほうということになっております。それから納付金につきましては全体を一〇〇といたしますと、使のほうが、実績で見ますと九四%から三%くらい、あとは労働者の負担、こういうことになっております。
  170. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これはわずかですけれども、労働者の負担というのもおかしいですよ。これは休業補償ですからね。このものの考え方が、本来、日雇い失業保険を払わなくてもいいじゃないか。だからぼくは日雇い失業保険はだめで一般の失業保険をかけろ、こう言っているわけで、そうして登録を取り消されたときには一般失業保険が発動されるようにしなさい。労働者に、わずかでありますけれども、日雇い失業保険をかけなくてもいいから、その分だけよこせなんという、そういう政策はないですよ。政策としては、ですから、波動性から来る問題ですから、当然本来ならば休業補償でしょう。休業手当ですよ。その休業手当を使用者が出すべきなのに、それを労働者からも取ろうという、そういう考え方、要するにこの考え方が法律全体の体系をこわしておるのですよ。このみみっちい考え方が実際は法律体系全体をこわしているのです。だから、波動性とは何かわからないですね。共同雇用とは何か、大臣、どういうように思われますか。
  171. 道正邦彦

    ○道正政府委員 先生のおっしゃるように、地区協会事業主とみなして扱うならば、当然休業手当の財源としての現行の失業保険はなくなりますですね。そのかわりに一般失業保険が適用になってくるということになろうと思いますが、そういうことは制度全体のあり方との関連で今後十分検討したいと思います。
  172. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 大臣、これはやはり休業手当ですからね、休業手当なら休業手当らしく出すべきですよ。何か労働者日雇い失業保険をかけなくてもそれだけで済むからと言う。ところが労働者のほうはむしろ、登録を取り消されたあとには一般失業保険をもらいたいのですよ。私は実はこの港湾労働法を最初三十一年に提出するときに非常に困った問題はこの点なんですよ。やはりこの点には非常に苦慮した。当時日雇い失業保険というものはなかったのです。ですから、いまと違って周辺の付随する法律の体系ができていなかったので、港湾労働者をどうするかというのに非常に苦心をしたから、私はこれを執拗に聞いておるわけです。ですから、これは私はわずかな金額ですから、ですから、ひとつ休業補償なら休業補償、これは使用者の責任、こういうふうに明確に出してもらいたい。しかし、国は援助をする。それによって免れてはいけませんから、国は出すべきものは出す。どうですか。
  173. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 いまごらんのように局長とも私語いたしておりまして、ちいと何とかせいというふうに言っておりますが、審議会なり、また関係方面とよく協議いたしまして、御趣旨に沿うように研究して何とか前向きで対処するように大臣として大いに指導してみます。いまさっそくこうだと言うて、なかなかむずかしい点が局長から聞くとありますが、御趣旨に沿うように対処いたします。
  174. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 この法律の一番大きな前提は労使の信頼関係であるということは、たびたび言われたわけです。そこで先ほどから参考人にいろいろ聞いておりましたけれども、やはり労使とも意見が違うのですね。すなわち港運協会の代表者は、いや、組合のほうがなかなか踏み切らぬのだとおっしゃる。ところが組合のほうは、いや、経営者のほうにいろいろ内部事情があって話が進まないのだと言う。一体政府はどうするつもりですか。どんなわれわれがりっぱな法律をつくってみても、前提がくずれたら何もならぬですよ。このくらいな協定をしたことが破棄されて、その交渉の再開もできない、こういう順守もできない、こんな状態でわれわれが幾ら議論してみても、また法律をつくってみても意味がないから、ですから、労働省は一体それに対してどういう決意で臨まれるのか。
  175. 道正邦彦

    ○道正政府委員 この点は多賀谷先生と全く同意見でございます。幾らいい法律をつくりましても、それをささえる労使関係に信頼関係がなく協力関係がないならば、砂上の楼閣でございます。そういう意味で、過去一年間港湾調整審議会の場等を通じまして、港湾労働の現状を放置できないという労使の危機意識が高まりまして、港湾労働法の検討とあわせて、労働条件改善につきましてたびたび労使交渉が持たれました。これは戦後二十数年かつてないことでございました。非常に協調ムードが高まってきて、その最高の高まりが三月二十二日の協定、いわゆる三・二二協定であったかと思います。私ども三・二二協定が締結されたということを聞きまして、諸外国にも例がないような内容のものを締結するまでに労使関係がなったかと心から喜んだわけでございますけれども、四月末それがどうもおかしくなったということで心痛をいたしておりました。しかし、ただ労使関係は自主であるということで放置もできませんので、労働省といたしましては事態をきわめて重視いたしまして、五月二日以来前後四回にわたりまして労使双方から事情の聴取を行なうとともに、団交の正式再開がむずかしいとしても、事務折衝を持ったらどうか、それもごく少数のトップレベルでやったらどうかという示唆をいたしました。それに基づきまして、五月二十九日に話し合いが持たれまして、結論といたしましては、中央団交の再開については、今後いつでも労使が話し合いを行なうということが確認され、三・二二協定もその際は順守するということも確認されたわけでございます。さらに昨十一日には、再び労使を呼びまして、事態の早期解決を要請し、日本港運協会においてもそのために最大の努力を払うということを約束しております。私どもは、近々のうちに中央団交が再開され、三・二二協定があらためて確認され、労使関係が正常化し、信頼関係が回復することを心から願っております。われわれの気持ちとしましては、あしたにもあさってにもというつもりでございます。そういう方向で極力、大臣の御指示もございますので努力をしてまいりたい。これなくしては、御指摘のように法律改正の意味はなくなるわけでございますから、われわれとしても極力、最大限の努力をしたいというふうに考えます。
  176. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 大臣、決意を……。
  177. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 この問題は、労使関係が相互の信頼をもって協定を結んだ場合には、これはいろいろな事情があっても円満に遂行するのは当然で、この経緯について、私の決意については先ほどの参考人の陳述の場合に川俣委員からの質問でお答えしたとおりでありますので、重複をいたしますので避けたいと思います。その趣旨で努力をいたします。
  178. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ひとつ再度……。
  179. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 いま道正局長からも話がありましたので、昨日も省議に近い程度で協議いたしまして、双方から呼んで何とか解決するという確証をとりましたが、なお今後の推移を見守って行政的に当然やるべきでありますから、労働省はこの点に重点を置いてこの問題の解決に邁進をいたします。
  180. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 率直に言いますと、私は、今度の法律というのは行く先がわからないのです。立法者としても非常な不安がある。これは先ほど参考人柴田さんがおっしゃったように、後退をする面がある。その後退をする面がきわめて重大であるということです。ですから、もう一ぺん、前進をしたいとするならば、それにさらに前進をするような政策が伴う必要がある。それがないというところに行く先が非常に不安だ、立法者としても非常に苦慮する法案だ、この法案は。それは、あなたのほうが弾圧する意図だという意味で私らは考えてはおりません。おりませんけれども、この法案の行くえというものが非常に心配であるということです。そうして、あと戻りがきかなくなるんじゃないか、こういう感じを持っておるわけですよ、率直に言いますと。  そこで、一体この法案についてどういう自信と、それからもしうまくいかなかったときはどういう責任をとるのか、これをひとつ大臣から最後に承りたい。
  181. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 いままでの港湾労働法がわれわれとしては大いに改善されたと思いますけれども、その根本の不就労の増大の最大の原因は、やはり使用者がこの雇用の確保というものに対する自覚と認識と責任という点が欠如しておることが最大の要素であろうと思いますので、この改正案によってこれを改善して、そしていろいろやみ雇用その他の問題も、これが改善するように、確信を持って法案を提案いたしたのでありますが、先ほどの参考人からも、いままでどうもなっておらぬ、こういうような御叱責もありますが、いろいろこれに対する対策なり、時によっては告発もいたしておるのでありますが、この改正案が出た場合には、なお一そう労働省といたしましてもよくこの法の趣旨が生かされるように、そしてなお一そう港湾労働行政が雇用の安定、福祉の増進、かような問題が確保できるように、責任をもって労働行政においても抜本的に、強力に推進いたして、この改正案の趣旨を体して、いままでの非難のある点を改善いたしたいという重大な決意でこの法案を提出いたしたので、いろいろの御不満も各方面から聞きますけれども、この改正案が通った場合には、これが画期的な改正案であるという所存で邁進する決意であります。
  182. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 最後に運輸省にお願いしておきたいのですが、やはり港湾労働法に違反した場合とか、あるいは地区協会から除名された場合とか、そういう場合には資格の取り消しをするという事業法上の改正並びに決意がないと、これは守られないわけですよ。港湾労働法の中で幾らやろうといったって、限度があるわけです。この点をひとつ運輸省としてはどういうふうにお考えであるか、最後にお聞かせ願いたい。
  183. 高橋全吉

    高橋説明員 先生の御意見、ごもっともでございますが、現在の港湾運送事業法の中にも労働法違反、たしか十六条、十七条違反あるいは職安法の四十四条違反、これは業務の停止あるいは免許の取り消し、こういう行政処分ができることになっております。したがいまして、今後はこれらにつきまして厳正に私たちは処置してまいりたい、このように考えております。
  184. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今度の建議案を見てごらんなさい、いままで現行法がうまくいかなかった理由をるる書いておるのですよ。なぜいかなかったかということをるる述べておる。るる述べておるならば、その事業法による資格の喪失をした者がおるかというと一人もいない。おかしいじゃないですか。現行法が守れなかった、守れないから何とかしなければならぬ。ところがあなたがおっしゃるには、港湾労働法違反の場合は資格を取り消すことができるんだ、そういう形式にはなっておるけれども、一回も発動したことないでしょう。それを発動しなければうまくいかないのですよ。どうですか。
  185. 高橋全吉

    高橋説明員 ちょっと私足りなかったのですが、いまの労働法あるいは職安法違反を犯して罰金刑以上になった者に対してその業務の停止あるいは免許の取り消しができる条項が、港湾運送事業法の第二十二条にございます。それで、先生おっしゃるように、いままで業務の停止あるいは取り消しをした前例はございませんけれども、今後は労働省のほうともいろいろ連絡をとりまして厳正に対処したい、こういうふうに考えております。
  186. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 これは港湾運送事業法が運輸省の管轄でありますし港湾労働法労働省と、こういうような関係でありますけれども、やはりこれは労使関係の監督官庁も、これは立場にはいろいろありましょうけれども、やはり両者がよく調整をして、よく連携をとって、そしてよく連絡をとって港湾運送事業を監督する。運輸省は事業者のみの監督官庁だという観念を、私は、払拭することは当然であります。これはまあ国鉄においてもどこにおいても、あらゆる企業において当然すべきことでありますので、この点いままでもやっておりますけれども、今後は——先般も運輸大臣とも話をいたしまして、この改正案が通ったときには運輸省もこの法案内容を十分よく認識してもらって、今後緊密な連携をとって港湾運送事業全体の労使関係改善するようにせぬか、こう言って、御本人も大賛成でありますし、運輸省のほうもこの点に対して十分な理解を示しておりますので、今後なお一そう連携を緊密にいたしまして、御質問の御趣旨に沿うように対処いたす決意であります。
  187. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は運輸省にお尋ねしたいのですけれども、港湾運送事業法によって何か刑事罰があって罰金以上という場合にのみ取り消すんだという、そういう刑事罰の中に入れる必要はないと思うのです。これは経済法ですからね。ことに自由経済の自民党の政権下の中で一つの規制をしようというのですから。それは必ずしも悪ではないかもしれませんよ。ですから刑事罰が入れば資格を喪失するんだ、こういうことでは運営ができない。しかし経済運営が、そういうように除名をした、その除名された者は、刑事罰でなかったかもしれないけれども資格は喪失したわけで、こういう刑事罰が中に入る必要はないと思うのですよ。ですから港湾労働法によってある違反を起こした、それは刑事事件にはならなかった、しかし経済立法でそれは資格を喪失した、こういうことでいいと思うのですよ。ですから私は、そこで罰金だとか懲役だとかそんなものを入れるから刑の均衡を失するということになると思うのです。それは自然犯の悪じゃないのですよ、経済運営上の問題で、それがうまくいかなかったのですから。それは経済的ないわゆる処罰をすればいい。それは資格の問題であるとか、あるいは停止の問題であるとか、そういうことでひとつ考えていただきたい。何でも刑事罰を発動して、それによって停止をするとかあるいは資格をなくするというものの考え方は通用しないんじゃないか、だから現実に法律が、動かない法律になっておるんじゃないか、こういうように私は思うんですがね。
  188. 高橋全吉

    高橋説明員 先生のいまのお説、ごもっともだと思いますので、先ほど申し上げましたように港湾運送事業法の改正についていま私たち検討しておりますので、その際に、よく先生の御意見を参考にして検討いたしたいと思います。
  189. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 わかりました。
  190. 田川誠一

    田川委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  191. 田川誠一

    田川委員長 これより港湾労働法の一部を改正する法律案を討論に付します。  申し出がありますので、順次これを許します。住栄作君
  192. 住栄作

    ○住委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております港湾労働法の一部を改正する法律案につきまして、賛成の意見を表明するものであります。  私は、今回の法改正は、現在の港湾労働の最大の問題であります登録日雇い港湾労働者の不就労の増大という事態を解決し、せとぎわに立った港湾労働法を立ち直らせるための緊要な方策を盛り込んだものであると考えております。もし、いま、この改正をしないで現状のまま推移することになるとすれば、就労日数が減少し、さらには定数の削減等を通じて、港湾労働法の骨子となっております日雇い港湾労働者登録制度が崩壊し、港湾労働者雇用の安定が期せられなくなるおそれがあるばかりでなく、今後港湾労働近代化を進めていく上に重大な支障を及ぼすことになることは明らかであります。  本法案内容につきましては、関係審議会の意見等も十分尊重されまして、制度的に考えられる措置を最大限に取り入れているものと考えておりますが、同時に、今回の法改正の成否はその運用のいかんにかかっていると言っても過言でありません。  したがいまして、政府としては、先般来本委員会において各委員から指摘されました問題点を十分考慮し、特に港湾増働協会に対する指導監督の徹底、港湾労働者雇用規制の適正化、法違反に対する厳正な措置、労使関係改善に万全の努力を払われることが絶対に必要であると考えております。  私はこの点を強く御要望申し上げまして、本案に対して賛成の意を表する次第であります。
  193. 田川誠一

  194. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私は、日本社会党を代表して、港湾労働法の一部を改正する法律案に対し、全面的に反対の立場をここに明らかにし、討論を行ないます。  港湾における労働近代化雇用の安定を法制度として確保するため港湾労働者雇用安定法をわが社会党が本院に提案したのは昭和三十一年でありました。それから九年後の昭和四十年に現行港湾労働法が施行されるに至っております。  港湾における労働を法制度として規制していくに至ったのは、当時いわゆる手配師が暗躍する非近代的労働関係港湾機能の円滑な運営を妨げる原因ともなり、著しい不安定雇用を温存する原因をなしていたからであります。  昭和四十年に施行された港湾労働法は、したがってその立法の精神は、この非近代的な労働関係を改め、雇用の安定、就労・所得の保障を中心とする労働者保護に立脚していたのであります。しかし、残念ながら今日、この立法の精神は全く裏切られたと断言するほかはありません。  すなわち第一に、昭和四十年法施行当時三万人をこえた登録日雇い労働者は、常用化されたとはいえ、ほとんどはむしろやみ雇用に多く回され、今日五千人を割る登録に激減していることからして、雇用は安定どころか不安定の度を年々強めてきているのであります。  第二に、就労の確保はどれほど改善されたかということであります。いま日雇い港湾労働者の就労日数は一カ月当たりわずかに十二日程度であり、改善のきざしは全くありません。したがって所得の保障もまた実現できるわけがないのであります。かくて港湾労働行政は全く行き詰まっているのが現状であります。  しからばなぜにこのような事態に至ったのでありましょうか。今日多くの識者が指摘し、かつ港湾における実情そのものが示すとおり、その原因の第一は直接の労使関係を結ぶ一方の当事者である港湾運送事業者が、法施行当時から今日まで一貫して港湾労働法の切りくずしを企図しており、かつ法自体、行政自体もこれを許容してきたのではないでしょうか。すなわち港湾労働の非近代性の根が手配師による選抜雇用にあることは明らかであるにもかかわらず、法第十六条はこれを許し、行政もまたこれを取り締まる能力と努力を欠いてきたことは否定できない事実であります。その結果、今日では就労者の七割はこの選抜雇用によっているというのが実情であり、登録労働者優先雇用の原則は全くくずれ去っているのであります。加えて、業者がいわゆる偽装常用という雇用形態で登録日雇労働者の締め出しをはかってきたことに対し、行政は何の対策も講じ得ていないのが実情であります。  原因の第二は、港湾労働者の就労確保、雇用の安定は運送業者のみの関係では不可能であるという実態認識が、現行制度にも政府政策にも欠如していることにあると考えます。港湾労働者の就労を左右する船舶の出入港は、船主・荷主の事業活動の範囲内にあるものであり、港湾運送業者は関与できないのであります。したがって就労の確保、雇用の安定は、船主、荷主、運送業者を一体として使用者となし、港湾管理者である自治体、国政上運輸・労働行政に責任を負う国がこれに関与するという形があって初めて実現する課題なのであります。残念ながら関係者、関係機関においてこの面における努力がなされてきたとはどうしても言えません。  法制度の改正にあたっては、当然、現行制度の欠陥はどこにあるのか、雇用安定、就労保障が進まない原因は何か、これらが究明されなければならないのでありますが、今回の改正案は問題の根幹にふたをし、患部をそのまま放置して、かえって事態を悪化させるものにほかなりません。  それは第一に、労働者登録紹介という職安の権能を業者団体にまかせるということは、ちょうど羊の番人にオオカミを充てるのと同じであります。したがって第二に、労働者も希望し、われわれもたびたび指摘してきた共同雇用による雇用の安定、就労の保障は全く望むべくもありません。第三に、港湾という公共的事業をささえる労働者にかかわる制度から政府が手を引く、逃げるという態度は、国政の基本姿勢として許さるべきではありません。  今日、港湾は輸送手段の合理化港湾自体の合理化によって、労働者はその職域を追われつつあります。このときにあたり、これら労働者に追い打ちをかけるがごとき本改正案は、まさしく港湾労働者の生存権さえ侵害するものであり、とうてい賛成できるものでなく、絶対反対するものであります。  以上、反対討論を終わります。
  195. 田川誠一

  196. 石母田達

    石母田委員 私は日本共産党・革新共同を代表いたしまして、本案に全面的に反対する立場から討論を行ないたいと思います。  この港湾労働法改正案は、第一に日雇い港湾労働者の首切りの武器を使用者団体の手に渡すものであり、日雇い労働者の働く職域を奪う危険を持つものであるからであります。  第九条は「登録を拒否しなければならない。」という義務条項の中で、「必要な能力を有しない者」とか、あるいは「適格性を欠く者」とか、第二項では健康診断、体力・技能の検査の指示に従わないときは登録を拒否する。あるいは第十一条では、登録取り消しの義務条項として一号より八号まであり、特にその第一項三では、協会が「指示する訓練を受けることをしばしば拒んだとき。」同六では「出頭をしばしば怠ったとき。」こういうふうになっております。また定数を上回るに至った場合、労働大臣の指示したとき、これを変えて労働大臣承認を受けて取り消しができることになっております。このように、使用者団体がいま何をしようとしているか、われわれがこういうことを考えているときに、できるだけ人減らしの合理化、そしてこれまでの労働者に加えてきた態度から見まして、このような使用者団体に登録の拒否あるいは登録の取り消しの権限を与えることは、まさに日雇い港湾労働者の首切りの武器を使用者団体に渡すもの以外の何ものでもないと考えるからであります。  第二に、改正案の内容といたしまして、日雇労働者の就労の拡大、雇用の安定を保障するものではないからであります。答弁の中にもありましたように、日雇い労働者雇用の安定あるいは就労の拡大という問題は、単に日雇いだけの問題ではありません。これは常用労働者を含む全港湾労働者を一体として解決されなければならない問題であります。  しかも現在の日雇い労働者を含めまして、港湾労働者雇用が非常に不安定になり、就労日数が減少している最大の原因はどこにあるのか。それは現在自民党政府が進めている大資本本位の港湾近代化政策によりまして港が専用化された状態の中で、先ほどの参考人のお話にもありましたように、いままでの既存の港湾労働者が使われなくなってきている、こういう関係で公共埠頭という狭い範囲内に職域が狭められている、そういうことが最大の原因になっているのであります。しかも今度の第十六条第二、三、四項にありますように、非登録日雇い労働者紹介が法的に裏づけられている、あるいは、先ほどのお話にありましたような偽装常用、やみ雇用現実として残っている。また常用労働者が相互融通によってどんどんブロック的に使われるとなれば、ますます日雇い労働者の就労する機会が奪われることは現実の問題であります。こういう中で、今度の国会には出されませんでしたけれども、いま港湾運送事業法の改悪が準備されておることは答弁によっても明らかです。この港湾運送事業法の改悪が通るならば、もうすでに業界の中でもいわれているように、年収十二億円以下の業者は存在しない。ブロックをつくらなければならぬ、こういう状況で、いま港湾労働協会雇用の安定をはからなければならないその業者自身が大きな打撃を受ける。このような港湾運送事業者が何で日雇い労働者雇用安定とか就労機会保障することができるでしょうか。絶対にできない問題を、こうしてあたかもこの港湾運送事業者の手によってあるいはこの港湾労働法改正によって就労の拡大、雇用の安定ができるかのごときことは全くのペテンにすぎないと断ぜざるを得ないのであります。  第三番目に、この改正案の施行によって暴力手配師の復活、暴力支配的な労務管理が早められ、また一そう強められるということであります。きょうの答弁にもありましたように、かつて港湾においては暴力的な労務管理が支配していたことは、業界の高嶋代表自身が認めるところであります。この暴力手配師を一掃するために、この港湾労働法制定するために、だれが一体中心になって運動したのか。この暴力的な労務管理にだれが依存してやってきたのか。それは労働者ではありません。現在の業者自身がこの暴力的な労務管理に依存して今日の大をなしたのであります。こういう点からこの使用者の団体に、業者にこのような改正案の実施を行なうことになれば、必ず再び暴力手配師を復活させるような、そういう体質を現在の業者自身が持っていることははっきりしております。しかも、労働協会の雇用調整業務を行なう職員に対する欠格条項がきわめて不十分でありますために、旧来の暴力手配師がこの中にどんどん入る余地を残すことから見ても、この危険は一そう増大していると考えられます。  第四に、私はこの質問の中にも申しましたように、地区協会といういわゆる業者の団体、使用者の団体に、政府が行なう公的な権限を与えることがどんなに危険なものであるか、しかもこのようなことはこれまでの法体系の中にもないということが答弁の中でも明らかになりました。いま業者自身が必死に生き延びようとするために、できるだけ少ない人員で、できれば暴力支配の手によってでも何とかして自分は生き延びようとして、そのしわ寄せを労働者に加えようとする、その利害関係を持つ使用者の団体に登録紹介業務ばかりか、公的な権限を与え、登録拒否権限を与えることによってどうなるかということは、これは目に見えて明らかです。このような公的な権限を使用者の団体に直接与えるということは、今後の反動的な法案をつくる突破口として、われわれは絶対に容認できるものではありません。  以上のように、日雇い労働者の就労の確保、雇用の安定などの保障は全くなく、今回の改正案はILO港湾労働者に対する勧告等に逆行する、国際的に見ても、内容から見てきわめて逆行するものであります。わが党・革新共同はこの改正案について断固反対を表明するものであります。  以上をもって討論を終わります。
  197. 田川誠一

    田川委員長 大橋敏雄君。
  198. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 私は公明党を代表しまして、港湾労働法の一部を改正する法律案に対し強く反対し、討論を行なうものであります。  申すまでもなく、海陸の連結点としての港湾は、国内運輸はもちろんのこと、諸外国との交易上からも、その国際性と重要性はきわめて大きいものがあります。  それにもかかわらず、港湾の近代的な秩序を確立し、港湾労働の波動性に対応する雇用の安定、福祉の増進という最も基本的な問題は、今日まで依然として大きく立ちおくれたまま放置されていると言っても決して過言ではありません。  そればかりか、港湾労働法施行後六年有余を経過した今日、やみ雇用、偽装常用、そしてこれにまつわる暴力的雇用状態等々はいまだに解消されておらず、さらに荷役方法の革新など、港湾における輸送革新と省力化は著しく進展し、これが港湾労働に及ぼす影響はきわめて深刻なものがあります。  このときにあたり、政府港湾労働法の一部改正案を提出し、共同雇用体制の確立をはかると称しながら、実質的には、登録日雇い港湾労働者雇用機会の確保をするための国の重要な行政権限港湾労働協会という事業主団体に代行させ、港湾労働者の運命を完全に事業主にゆだねさせようとしているといえます。このような改正の基本線は断じて許されるものではなく、まさに政府の暴挙だといわざるを得ないのであります。  本法案は、新しい措置を講ずることによって、登録日雇い港湾労働者就労機会を確保するといわれておりますけれども、完全輪番紹介等による就労機会の均等化すら法文上何ら明確な保障を見出すことができません。まして、常用港湾労働者を含めたすべての港湾労働者に対し、所得保障を含めた真の雇用の安定をはかるための具体的な措置は皆無であります。  今日港湾労働者は、単に雇用の不安定というだけではなく、労働災害の多発、劣悪な労働条件福祉施設の未整備等々の問題に直面し、年金制度すら持ち得ない状況に置かれております。  このような好ましからざる状況に追い込まれた最大の原因は、ひとえに政府港湾労働に対する行政指導の怠慢にあったといえると思います。また、港湾労働近代化港湾運送事業そのもの近代化とまさに表裏一体、車の両輪として作用させなければなりません。しかるに政府は、今国会に港湾運送事業法の改正案を提出すらしていない状態にあります。政府の無責任な態度は、この一事をもってしても明白といわざるを得ません。  さらにILOは今日、港湾労働に関する新しい条約を採択しようとしております。そして政府は、この条約の採択の動向をも見定めず、ただこの改正案の成立を目ざすことは、きわめて不適切であると指摘せざるを得ません。  私は、港湾労働者雇用調整を適正かつ円満に行ない、真の雇用の安定と福祉の増進をはかるために、あえて本法案に対して反対の意を表明し、政府の行政の姿勢について強く反省を促したいと思います。  以上、簡単ではありますが、本案に対する私の反対討論を終わります。
  199. 田川誠一

  200. 和田耕作

    和田(耕)委員 私は民社党を代表いたしまして、本法律案に対しての反対の討論をいたします。  この法案は、長期間にわたって関係審議会の専門家たちの審議の結果出てきた建議に基づいておるということは、私も理解しております。しかもその建議案というのは、全員、つまり労働者代表を含めて全員がこれを了承したという歴史的な経過があることも承知をいたしております。そのような意味で、この法案がつまり現在の日雇い港湾労働者の現状の中にある、いろいろの改革をしなければならない矛盾という問題を見詰めて、何とかしたいという努力のあらわれであるということも了承したいと思います。  しかしながら、この建議案にもありますように、この法案が目的どおりに施行される絶対条件というのは、労使関係の安定あるいは正常化という条件だと思います。最近、この半年間の労使関係の動向を見ましても、きわめて不安定であるということが一言でいえると思います。  特に、今後のこの法案運用にあたって考えなければならないことは、労働者側もあるいは使用者側も、本部段階で一応妥結あるいは了解し合っても、その下部段階、実際にこの法案地区協会というものがかなめになっておるわけですけれども、ここに対して、その本部段階で考えられる良識のようなものが通らないというようなおそれを私は感ずるわけでございます。  こういう意味におきまして、この法案は、せっかくの努力の結果だと思いますけれども、時期尚早ではないか、このような感を深くする次第でございます。  そして第二点は、最近、他の問題でもそうでございますけれども、当事者、つまり労使に問題の解決のすべてをまかせるということはあまり成功してないと思います。したがって政府は、これに第三者として、公正な立場で介入をしていく、そして直ちに解決をはかっていくという努力をはからなければならないわけです。ところが、この法案によりますと、各野党の皆さんがおっしゃるとおりに、いろいろと使用者側に対して義務を与えております。義務を与えておるけれども、労働者を使用する法的な権限も重要な権限を与えておるというのが特徴だと思います。先ほど申し上げたように、労使関係の安定があれば、これは施行できる可能性があるわけですけれども、その前提条件が不十分である上に、労使にこの困難な問題の解決をまかせてしまう。ことばをかえていえば、労働省はこのむずかしい問題から逃げてしまったという印象さえある。これは私の印象だけでなくて、そういう議論があるわけです。そういうふうに、一般的に見てこのような問題については、政府の公正な介入というものなしにうまくいく保証がない時期に、その責任を業者団体にまかしてしまうということはいかがかと思うわけでございます。  こういう点から見て、細部についての討論は省きますけれども、私どもは、この法案は時期尚早であるという判断に立って、反対の意見を表明したいと思います。
  201. 田川誠一

    田川委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより港湾労働法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  202. 田川誠一

    田川委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  203. 田川誠一

    田川委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  204. 田川誠一

    田川委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十二分散会