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加藤国務大臣 ただいま議題となりました
雇用対策法及び
雇用促進事業団法の一部を
改正する
法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
最近における
雇用の動向から見ますと、特に高年齢者、心身障害者等に関する
雇用対策の充実をはかる必要があります。
すなわち、高年齢者につきましては、
雇用が全体的に
改善された中で、なお就職が困難な状況にありますが、特に、五十五歳を中心とする定年制は、高年齢者の
生活の安定やその能力の有効発揮にとって、少なからざる障害となっております。今後、
労働力人口の高齢化が急速に進むことを考慮いたしますと、高年齢者の職業の安定をはかることがますます重要となってきていると考えます。
次に、心身障害者の
雇用の状況は、健常者の場合に比べ、依然として
改善がおくれておりますので、心身障害者に職業の場を提供し、健常者とともに社会経済活動に参加する
機会を拡大することが肝要であると考えます。
また、工業の再配置を推進するにあたりましては、工場の
施設等の移転と並んで
労働者の移転が円滑に行なわれるようにすることが必要であると考えます。
このような事情にかんがみ、
政府といたしましては、
雇用審議会にはかり、その答申を得て、この
法案を作成し、提案した次第であります。
次に、その内容の概要を御説明申し上げます。
第一は、高年齢者の職業の安定をはかるための施策を充実することであります。その一は、国が、定年の引き上げの円滑な実施を促進するために必要な施策を充実するとともに、定年の引き上げを促進するため、
関係者に対し資料の提供その他の援助を行なうことであります。
その二は、一定年齢未満の年齢を定年としている事業所の
事業主に対して、定年に達する
労働者の再就職援助
計画の作成と再就職援助担当者の選任を行なわせるとともに、国としても、職業訓練等の実施により、定年に達する
労働者の再就職を促進するようにつとめることであります。
第二は、心身障害者の職業の安定をはかるための施策の一環として、
雇用促進事業団が、心身障害者を多数
雇用する事業所の
事業主に対して、その事業の用に供する
施設の設置等に要する資金の貸し付けを行なうことであります。
第三は、工業の再配置に伴う
労働者の移転の円滑化をはかるための施策の一環として、
雇用促進事業団が、工場の移転に伴い住居を移転するために宿舎を必要とする
労働者に対して、移転就職者の利用に支障がない限り、移転就職者用宿舎を貸与することができるものとすることであります。
以上が、この
法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
何とぞ慎重に御
審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
次に、ただいま議題となりました
労働者災害補償保険法の一部を
改正する
法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
近年、わが国における交通事情等の変化に伴い、
労働者が通勤の途上においてこうむる災害もまた多くなってきております。こうした情勢を背景に、通勤災害についても、より手厚い保護を行なうべきであるとの声が
関係者の間で強くなってまいりました。
このような状況にかんがみ、
労働省は、昭和四十五年二月、通勤途上災害調査会を設置し、通勤災害にかかる諸問題について検討をお願いしたいのであります。同調査会は、二年有余にわたる
審議の結果、昨年八月、通勤災害の発生状況及び通勤と
業務との密接な
関係等にかんがみ、通勤災害については
業務災害に準じて保護する必要があるという
趣旨の報告を
労使公益各側
委員全員一致によって決定し、提出されたのであります。
政府といたしましては、この報告の
趣旨を全面的に尊重し、鋭意検討を進めてまいりましたが、その成案を得ましたので、これを、
労働者災害補償保険
審議会及び社会
保障制度
審議会に諮問し、
労働者災害補償保険
審議会からは本年一月十七日に、社会
保障制度
審議会からは一月三十日に、それぞれ了承する旨の答申をいただきました。その結果に基づいて、
労働者災害補償保険法の一部を
改正する
法律案を作成し、ここに提案いたした次第であります。
次に、この
法律案の内容の概要を御説明申し上げます。
まず第一は、従来の
業務災害に加えて、通勤災害についても保険給付及び保険
施設を行なうことができるように、
労働者災害補償保険の目的を
改正することであります。
第二は、
労働者災害補償保険において保護の対象とする通勤の範囲であります。
この
法律案では、通勤とは、
労働者が就業に関し、住居と就業の場所との間を、合理的な経路及び
方法により往復することをいうこととしておりますが、
労働者が通勤の途中で、往復の経路を逸脱したり、往復を中断した場合には、それ以後は、この
法律案にいう通勤とはしないものとしております。ただし、その逸脱、中断が、日用品の購入など日常
生活上必要な行為をやむを得ない事由により行なうための最少限度のものである場合には、その間を除き、その後の往復は、通勤として認めることとしております。
第三は、通勤災害に関する保険給付についてであります。
通勤災害に関する保険給付の種類、支給事由及び内容は、
業務災害に関する保険給付の場合に準ずることとしております。
第四は、通勤災害に関する保険給付等に要する費用の
負担についてであります。
通勤災害に関する保険給付等に要する費用に充てるための保険料は、
事業主が
負担することとしており、その保険料は、労働保険の保険料の徴収等に関する
法律の
規定による労働保険料として徴収することとしております。
なお、療養給付を受ける
労働者は、二百円以内の一定額の一部
負担を行なうこととしております。
第五は、通勤災害に関する保険給付の特例についてであります。
保険
関係が成立していない事業場の
労働者であって、この
法律の施行後に通勤災害をこうむった者に対しても保険
関係成立後の被災者と同様の保護を行なうため、
業務災害に関する保険給付の特例に準じた
措置を講ずることとしております。
以上のほか、この
法律案においては、その附則において
関係法律について所要の整理を行なうとともに、必要な経過
措置を定めております。
なお、施行期日につきましては、公布の日から起算して六月をこえない範囲内において政令で定める日から施行することとし、この
法律案による政正
規定は、施行の日以後に発生した事故について適用することとしております。
以上がこの
法律案の提案理由及びその内容の概要であります。何とぞ慎重に御
審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。