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1973-06-05 第71回国会 衆議院 社会労働委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月五日(火曜日)    午前十時五十九分開議  出席委員    委員長 田川 誠一君    理事 伊東 正義君 理事 塩谷 一夫君    理事 橋本龍太郎君 理事 山下 徳夫君    理事 川俣健二郎君 理事 八木 一男君    理事 寺前  巖君       加藤 紘一君    瓦   力君       小林 正巳君    斉藤滋与史君       志賀  節君    住  栄作君       田中  覚君    高橋 千寿君       戸井田三郎君    登坂重次郎君       増岡 博之君    粟山 ひで君       枝村 要作君    金子 みつ君       島本 虎三君    田口 一男君       田邊  誠君    多賀谷真稔君       村山 富市君    山本 政弘君       石母田 達君    田中美智子君       大橋 敏雄君    坂口  力君       小宮 武喜君    和田 耕作君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君         労 働 大 臣 加藤常太郎君  出席政府委員         厚生大臣官房審         議官      出原 孝夫君         厚生省保険局長 北川 力夫君         社会保険庁医療         保険部長    江間 時彦君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君         労働省職業安定         局長      道正 邦彦君         労働省職業安定         局審議官    中原  晁君         労働省職業訓練         局長      遠藤 政夫君  委員外出席者         運輸省海運局定         期船課長    深川  弘君         運輸省港湾局参         事官      高橋 全吉君         労働省職業安定         局特別雇用対策         課長      永場 久治君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ————————————— 委員の異動 六月一日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     西村 英一君   小林 正巳君     關谷 勝利君   住  栄作君     阿部 喜元君 同日  辞任         補欠選任   阿部 喜元君     住  栄作君   關谷 勝利君     小林 正巳君   西村 英一君     加藤 紘一君     ————————————— 六月四日  医療事務管理士法制定に関する請願外一件(粕  谷茂紹介)(第五八七三号)  同(佐藤文生紹介)(第五八七四号)  同外十七件(竹内黎一君紹介)(第五八七五号)  同外三十七件(松岡松平紹介)(第五八七六号)  同外十七件(足立篤郎紹介)(第五九六七号)  同(小沢辰男紹介)(第五九六八号)  美容師法の一部改正等に関する請願(斉藤滋与  史君紹介)(第五八七七号)  建設国民健康保険組合に対する国庫負担増額に  関する請願山田太郎紹介)(第五八七八号)  同外一件(渡部一郎紹介)(第五八七九号)  生活できる年金制度確立等に関する請願外一  件(石田幸四郎紹介)(第五八八〇号)  同(大野潔紹介)(第五八八一号)  同外四件(瀬野栄次郎紹介)(第五八八二号)  同(多田光雄紹介)(第五八八三号)  同外四件(三宅正一紹介)(第五八八四号)  同外一件(森井忠良紹介)(第五八八五号)  同(有島重武君紹介)(第五九五九号)  同(庄司幸助紹介)(第五九六〇号)  同(正木良明君紹介)(第五九六一号)  同(渡部一郎紹介)(第五九六二号)  社会保険診療報酬引上げ等医療制度改善に関  する請願加藤清政紹介)(第五八八六号)  同(小林信一紹介)(第五八八七号)  同(竹内猛紹介)(第五八八八号)  同(青柳盛雄紹介)(第五九七一号)  同(浦井洋紹介)(第五九七二号)  社会保険診療報酬引上げ及び健康保険制度改  善に関する請願大柴滋夫紹介)(第五八八九  号)  同(紺野与次郎紹介)(第五八九〇号)  社会保険診療報酬引上げに関する請願渡部  一郎紹介)(第五八九一号)  健康保険法等の一部を改正する法律案反対等に  関する請願梅田勝紹介)(第五八九二号)  同(山田太郎紹介)(第五八九三号)  同(小川新一郎紹介)(第五九七三号)  同(浦井洋紹介)(第五九七四号)  同(北側義一紹介)(第五九七五号)  同(松本忠助紹介)(第五九七六号)  同外二件(渡部一郎紹介)(第五九七七号)  健康保険法等の一部を改正する法律案撤回に関  する請願矢野絢也君紹介)(第五八九四号)  医療保険制度の改革に関する請願山田太郎君  紹介)(第五八九五号)  同(諫山博紹介)(第五九七〇号)  戦災被爆傷害者等の援護に関する請願松本善  明君紹介)(第五九六三号)  同(松本忠助紹介)(第五九六四号)  保険診療経理士法制定に関する請願小坂徳三  郎君紹介)(第五九六五号)  同外五件(地崎宇三郎紹介)(第五九六六号)  進行性筋ジストロフィー等神経筋疾患を対象と  する国立研究所設立に関する請願小沢辰男君  紹介)(第五九六九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  港湾労働法の一部を改正する法律案内閣提出  第四〇号)  船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第四八号)  雇用対策法及び雇用促進事業団法の一部を改正  する法律案内閣提出第八九号)  労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出第五五号)      ————◇—————
  2. 田川誠一

    田川委員長 これより会議を開きます。  この際、申し上げます。  運輸委員会との連合審査会は、明六日午前十時より開会することになりましたので、御了承ください。      ————◇—————
  3. 田川誠一

    田川委員長 港湾労働法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。  申し出がありますので、順次これを許します。島本虎三君。
  4. 島本虎三

    島本委員 今回、港湾労働法の一部改正法案が出されて、審議が進んでいるのであります。この内容を見ますと、幾多疑義と疑問が山積しておるのであります。私はそういうような状態からしてここに逐次解明していかなければならないと思いますので、ひとつ答弁のほうもよろしくお願いを申し上げたいと思います。  まずその第一。いま問題になっている港湾労働法改正法案と昨年六月のILO第五十七回総会で「新しい荷役方法による社会的影響」というのが条約勧告案として採択されたようでありますが、当然、本年六月、第五十八回総会では条約として採択されるということでございましょう。本改正案条約との関係は一致しているのか一致していないのか、また条約がはっきり採択されて、それにもとることがないのかどうか、この点について、根本的な問題でありますから、労働大臣の高邁なる御見解を伺います。
  5. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 島本委員の御質問でありますが、原則的には背馳することはない、大体同じ方向で行っておるという、労働省としてはその所存であります。  ILOの今回の勧告等趣旨は、一番が雇用常用化、二が最低の雇用期間と収入を保障する措置、三が安全衛生及び福祉、こういう三つが今回の条約の基本の方針でありますが、現行法からいきましてもこれと同様でありまして、従来の現行法では、登録せられておる港湾労働者を優先的に雇用せいというのが現行法でありますから、このILO条約と何ら抵触いたしません。当然同じ方向に行っておるのでありますが、二が、現行法では雇用の安定、そして日雇い港湾労働者を優先的に雇用し、福祉の増進、また雇用調整手当の支給、こういうのが現行港湾労働法でありますが、今回の改正案にいたしましても不就労の増大を改善する、事業主共同責任において雇用機会確保体制整備という点でありますから、現行法改正案においても今回のILO条約と背馳するところはないと思っておる次第であります。
  6. 島本虎三

    島本委員 雇用機会整備も十分配慮されているような答弁でございます。なるほど、こう見るとそのように見受けられるのであります。一番問題になるのは、何としてもこの中で共同雇用という問題であります。共同雇用という考え方、これがはたしてどういうふうな意味を持っているのか、これがやはり問題点一つだと思うのです。したがって、この共同雇用とは何をさすのか、この際具体的にはっきりしておいてもらいたいと思います。
  7. 道正邦彦

    道正政府委員 現行法におきましても、その基本的な立法趣旨は広い意味共同雇用という理念に基づくものというふうに申してもいいかと思います。と申しますのは、先生承知の通り、港湾労働におきます労務の波動性というのは日本だけでございませんで世界各国港共通の問題でございます。法制定の当初と、その点につきましては現在も変わっておりません。そういう波動性は、やむを得ないものとして港湾労働に伴って今後も続いていくと思います。これをどうやって解決するか、解決する場合に共同雇用理念に立って解決するということでございまして、この共同雇用理念に立って解決をはかるという基本的な考え方は、世界各国共通のものであります。ただ、各国のいろいろの事情がございます。したがいまして、共同雇用を具体化する方策につきましては、各国におきましてニュアンスの差がございます。しからば日本の場合にこの共同雇用理念をどうやって具体化するかということが、御指摘のように問題であったわけであります。この点につきましては港湾調整審議会におきまして、四十五年にすでに共同雇用理念に立って解決をはかれという建議をいただいております。自来われわれとして、どういう形のものが日本の実情に一番マッチしているかということを検討いたしましたが、昨年来、港調審の場におきまして、この問題につきまして長期間、しかも関係者がかなり活発な意見の開陳をされまして、まとまって、建議となって出てまいりましたのが十一月十七日の港調審建議でございます。現在の港湾労働を取り巻く諸問題を解決するためには、事業主団体による共同雇用体制近代的労使関係を基盤として解決しなければいかぬということで、原則として共同雇用体制を確立しろということをうたい、さらに具体的には、諸外国の例等も勘案しながら、日本においては事業主団体をもって構成する港ごと地区協会というものが主体になって登録紹介等仕事を行なうべきである、それが妥当であるという建議をいただいておるわけでございます。しかし同時に、いままで国がやっておりました登録紹介等仕事をまかせるわけでございますので、それに伴いまして規制が要るわけでございます。この点につきましても詳細あわせうたっておるわけでございます。要するに、事業主をもって構成する港ごと地区協会登録紹介等雇用調整仕事をする、これがいいだろうということであります。
  8. 島本虎三

    島本委員 なるほどおっしゃることをそのまま聞きますと、まことに共同雇用理念が確立しておるように思われるのであります。したがってこの法の二十五条の十二の第一項第四号並びに二十五条の十二の四項、それから二十五条の十五ですか、それぞれこういうような問題について触れてあるのであります。  では重ねてお伺いいたしますけれども、共同雇用はする、しかし、するという業者が、また港湾協会がこの規定を守らない場合には、大臣罰則をつけてあるのですかないのですか。
  9. 道正邦彦

    道正政府委員 先ほど申し上げましたように、いままで国がやっておりました仕事地区協会に委託するわけでございますので、それなりの規制が必要でございます。われわれといたしましては、建議円容は十分尊重し、かつ立法技術的に許される限りの厳格な規制措置を講じておるつもりでございます。  まず、地区協会設立につきましては労働大臣認可が必要でございます。また、その役員につきましては欠格条項を置くとともに、労働大臣認可が必要だということになっております。また職員につきましても欠格条項を置き、かつ解任命令措置役員と同時に職員についてもとり得る仕組みをとっております。毎日行ないます登録紹介等仕事が恣意に流れては困りますので、雇用調整規程というものをつくり、これまた労働大臣認可が必要である。地区協会雇用調整規程を定める場合には、中央協会が定めまする統一的な基準に基づいてつくり、かつ関係労働者意見を開き、労働大臣に申請をする、その際に労働大臣はまた関係審議会意見、これは具体的には中央職業安定審議会でございますが、その審議会には労、使、公益三者が入っております。そういうきわめて慎重な手続をとり、雇用調整規程認可いたします。それに基づいて業務が運営されるよう期待するわけでございますけれども、場合によりましては、調整規程どおり仕事が行なわれないということもあり得るわけでございます。その際には勧告をする、あるいは監督命令をするという措置があわせて取り得るように法律できめております。なおかつこれに従わないという場合には、地区協会解散を命ずるという、もうがんじがらめの法律のシステムになっておるわけでございます。
  10. 島本虎三

    島本委員 解散とは、これは容易なことではございません。したがって、その前にそれを全部食いとめるような方策があるのかということをいまお伺いしたわけであります。第二十五条の十五に「会員の責務」がきめられております。すなわちこれはもうそれぞれの、雇用機会確保とその他雇用の安定をはかるようにつとめなければならなくなっておるのであります。いま言ったことは全部了解の上で、会員がこの義務を怠った場合は、これは罰則があるのですか、ないのですかを聞いているのです。
  11. 道正邦彦

    道正政府委員 定款を地区協会がきめることになっておりますが、その中に除名に関する規定がございます。したがいまして、地区協会としては、労働大臣監督命令がある場合にはもちろんのこと、日常の業務遂行会員としてふさわしくない、雇用調整規程を守らないというような場合には、会員除名をするということになるわけでございます。
  12. 島本虎三

    島本委員 除名者がふえてしまえば、これは当然業界そのものが成り立たなくなり、会員そのものが少なくなる、当然これは職安が直接行なわなければならない、こういうことになるのであります。したがって、単なる努力目標訓示規定のようなものを設けておいて、これではたして円満なる業務遂行が可能かどうか。労働者に対してははっきり規制する方法がきめられてあるのであります。登録その他拒否の問題についてもそのとおり。しかしながらそれを守れない業者については努力目標であり、訓示規定よりない。そして除名することもあり得るというような、こういうような一つの要望的な見解より示さないのであります。なぜ、そういうようなことを守らなければ法によって厳罰に処せられないのか、こういうような点も一つの当然な疑問となるのじゃないか、こう思うわけであります。私はそういうような見解からして、やはりこれでは、業者の守れないことに対しての罰則というようなものに対しては、私はこれだけではだめだ、こう言わざるを得ません。  次に、就労確保する、こういうことになっております。就労確保するということが共同雇用になるのかどうか、この辺の見解を明らかにしてもらいたいと思うのであります。
  13. 道正邦彦

    道正政府委員 就労確保がまさに共同雇用体制をつくる最大のねらいでございます。いままでは、共同雇用体制が不十分であったために、必ずしも就労機会確保できなかった、これを何とか確保しようというための方策として、共同雇用体制体制整備するというのが今回の趣旨でございますので、まさに先生おっしゃるように、就労機会確保するそのための共同雇用体制でございます。
  14. 島本虎三

    島本委員 大臣もそのとおりですか。
  15. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 そのとおりであります。
  16. 島本虎三

    島本委員 大臣以下官僚そろってそのような見解であります。そうすると、単に就労確保する、これが共同雇用原則である、こういうようにするならば、またこの共同雇用意味がぼけるのではないか。ぼけませんか。というのは、就労確保することに力点を置く、けっこうですよ。その時点ではけっこうでしょう。仕事がなくなったら人減らしにならないかということについての見解はどうなのか。共同雇用というよりは、もう仕事がなくなっても首にはならないのだ、この原則があるのですかないのですか、それが大事なんです。そして雇用保障生活の安定、これがなければこの共同雇用の意義はなくなる。それをただ単に就労確保してやるのだ、これだけでは確かにその努力はあっても、ほとんどこれが生活するに足りないような就労しか確保できないような場合には、このILO条約精神に明らかに違反します。それと同時に、法律ができて単に就労確保されても、労働者生活の安定にも雇用保障にもならない、こういうようなことでは何にもならないのであります。これらを全部具備しているのかしていないのか。これは大事ですから——どっちでもいいです。
  17. 道正邦彦

    道正政府委員 大事な点でございますから、後ほど大臣からもお答えがあるかもしれませんが、私から事務的に御説明申し上げますと、おっしゃるとおりでございまして、就労機会をなぜ確保するかといえば、それがひいては雇用の安定になり、不就労のときには雇用調整手当が支給されるということでございまして、何と申しましても就労機会が増加しないことには、すべてのことが始まらないわけでございます。ただいま解雇というような御趣旨のお尋ねでございましたけれども、登録日雇い港湾労働者の数は定数として労働省がきめるということになっております。これは御承知のとおりでございますが、毎年港ごと荷動きの状況を予測いたしまして、それに必要な労働力をはじきまして、そのうち常用労働者でまかなえるのがどのくらいかということをはじきまして登録日雇い労働者が幾らかというのが出てくるわけでございます。定数の範囲内におきましては、就労確保を極力はかるわけでございますけれども不就労の場合があり得ます。その場合には雇用調整手当を支給して補完していくという仕組になっておりますので、解雇云々の問題は直接には出てまいらないと思いますが、定数のきめ方によって、あるいは荷動きが非常に大きく動くというようなことになりますと、あり得る問題ではございまするけれども、法律仕組みとして解雇問題は出てこないことになるわけであります。
  18. 島本虎三

    島本委員 あり得てはならないのです。したがってILO条約でもその点はきちっとされておるわけであります。しかしいまこの法律の中では、あり得るという疑念を残すということは重大です。これを運営するのは当然労働省じゃないからであります。そうなりますと、その辺の疑問の解明はどうしてもしておかなくてはなりません。  それで、共同雇用はどなたがなさるのですか。まずそれが第一点。
  19. 道正邦彦

    道正政府委員 釈迦に説法で恐縮でございますけれども、港ごとにできます地区協会が行なうわけでございます。
  20. 島本虎三

    島本委員 その港は今度輸送革新で新しい輸送計画をたてております。四十九年から四兆円程度のものをかけて今度全面的に整備されるような計画もあります。埠頭そのものは、これは全部荷主船会社埠頭になりつつあります。またその傾向政府は慫慂しているのであります。業者そのものはやはりその中でのいわゆる港運業者になるわけであります。そうなりますと、港は輸送革新の新しい輸送計画によってこれを運営するようになり、埠頭そのもの荷主船会社埠頭になる、その軒先で今度労働力の売買だけするようになる、こういうような傾向になるわけであります。したがって、夜間荷役廃止、こういうようなのは労働者一つの願望です。しかしながら船会社荷主、これのオーケーが出なければ、港運業者だけではどうにもならないのがいまの現状でしょう。いま国のほうでは、港も埠頭業者自身もそういうふうに細分化して運営しつつある、こういう中でこの港運業者だけを相手にして完全にできるのかどうか、この点もやはり、大臣、私は大事だと思います。この点では大臣はこの方面のオーソリティーだと聞くのですけれども、いまこのような計画とあわせて、この港運業者だけでできるというような確信をひとつはっきりお述べ願いたいのであります。
  21. 道正邦彦

    道正政府委員 島本先生指摘のとおりであります。港湾労働の問題は、船社荷主利用者協力なしにうまくいく性質のものではございません。しかるがゆえに港湾調整審議会には利用者の代表の方も入っておられますし、非常に活発な意見を言われております。十一月十七日にいただきました建議の第七、最後でございますけれども、港湾利用者協力が必要であるということをうたっております。この建議によりまして、たとえば船社荷主等港湾利用者は、従来から港運料金やその付加料金負担を通じて港湾労働改善協力をしてきているけれども、一そう協力をしろということで、今回すでに付加料金の五割アップというものを認めております。いずれにいたしましても、港湾労働はあくまで労使の問題でございますから、直接の当事者は港湾労働者港湾運送業者との関係になりますけれども、御指摘のように利用者協力がなければうまくいかないということも事実でございます。したがいまして、われわれといたしましては、現在非常に協力しようというムードが高まってきつつありますが、これをさらに高めまして、港湾労働の円滑な運営に利用者のほうの協力を得るように、今後とも努力をしてまいりたいと思います。
  22. 島本虎三

    島本委員 利用者協力ムードが高まっているということでございますが、私どもはこれがまた、高まってきつつない、こういうように言わざるを得ないのであります。したがって、いま言ったような前提条件からして、これはもう当然事務当局はずいぶん研究なさったと思います。大臣はこういうような方面業者の先輩でもあられたようであります。したがって、施設に金をかければかけるほど人をたくさん雇うというような状態であるならばいいのであります。施設に金をかけて近代化すれば、おっぽり出されるのは逆に労働者になるわけですね、大臣。そういうことでしょう。そうなりますと、施設はこのように四兆円もかけてどんどんとやっていくと、今度はおっぽり出されるのは労働者自体になってくるというような、この現実に対して目を向けないとだめでしょう。それと労働者への責任をはっきり持つ者でないとだめだから、その持つ者の体制港運業者だけでいいのかということになるわけでしょう。それともう一つは、港運業者だけに共同雇用さしても、今度は逆にうしろ協力体制がはっきりしない以上、効果があるのかどうかということも当然考えられるでしょう。したがって、いま協力ムードが高まっている、こういうような事務当局の御答弁がございましたが、逆にこれは港の中で埠頭業者船会社や、それらは自分らの手でやろうとする、細分化するという動きが多くなってきているのです。そういうふうになってくると、これはもう、共同雇用の名においてりっぱな一つ理念を確立した。これが法によって実施せんとする。しかし、そのしかれるレールは、きちっと二本走るんじゃなくて、もう少し行ったら三本になり、四本になり、五本になり、行く行くは脱線してしまうのです。こういうようなことがあっては一番困るのは労働者なんですから、その港湾労働者を、日雇いに限らず、常用者に限らず、これを救済し、これにサービスするのがこの法の精神でなければならないはずなんです。したがって、この施設を専用に供する、こういうような動きの中に、共同雇用努力目標になってしまうんじゃないだろうか。施設はだんだん専用化してきているのです。これからもそういうように指向されているんです。そうなると、専用に供されれば供されるほど、共同雇用努力目標になってしまう。大臣、今度はこの点ではどうですか、そんなことございませんでしょうか。
  23. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 港湾の荷役場が専用化される、これもいろいろ関係がありまして、やはり輸送の迅速化という点から、従来はたとえばバース、バースでいろいろ公共荷役場を利用する、こういうかっこうから、迅速にするためにこれを専用化するということも高度の立場から見るといたし方ない点もありますが、そうなりますと、いま言ったように共同雇用労働者の立場はどうなのかという懸念がある。私最初この港湾労働法田中議員の御質問に対しましても、今後このような点に対して、この法案が通過したからといって、御承認を願ったからといって万全のものではないかもわからぬ、やはり今後労働者の立場その他を、労働省全体、出先の機関も行政的措置を相当強化しなくちゃならぬということを申し上げたつもりでありますが、ちょっと舌足らずというか、その説明のしかたが悪かったために誤解を招いた点もありますけれども、今後労働者の立場が確保されるような方向は、やはり労働省が当然責任を持って行政的な措置を、この法律趣旨を生かすように持っていくのが今後の労働省の根本理念でなければならぬと、この法案が通過いたしましても、出先の機関なり関係係員、官僚連中を全部招致いたしまして、この法案がなお一そう完全に消化されるように行政的な監督、指導をいままで以上にやらなくちゃこの法案の成果があがらないと思います。そうしたら従来の法律でいいかと申しますと、事業主共同的な理念に欠けて、労働者の立場を考えずして、利潤追求という立場から不就労が増大する、やみ雇用が増大するというような現状では困るので、審議会意見を尊重して今回の法案改正になったのでありまして、いま島本議員からの御質疑の点は、今後の行政的な方法によってこれを改善する所存であります。
  24. 島本虎三

    島本委員 行政的な方法によって改善していく、そうでなければならないはずですが、行政は逆にそうでないほうに向いていっているのです。全部専用化、そして近代化、そしてそれによって機械化、この方向へ港湾の施設そのものも向いているわけです。そうすると、全部それが、埠頭そのもの荷主船会社埠頭になりつつございますから、そういうふうなことになったところにおいては、だんだん人が要らなくなり、おっぽり出されるのは労働者になってしまう。したがってここに共同雇用が必要なんだ、当然そこへいかなければなりません。したがって、もうそうであるならば、完全におっぽり出されることがないように、ただ単に就労確保してやるという努力だけじゃなくて、そうしないものに対してははっきり罰則をもって臨むのだ、罰則はある、ただし、これはもうそれをやめさせるだけだ、排除するだけだ、こういうことであります。しかし、法律をつくった以上、そういうふうに違反者に対してははっきりした態度をとらなければなりません。それで、その前に、当然いまのような港湾の現状からして、船会社荷主や港湾管理者が団体をつくってそれを登録する。そうして、常用、日雇い一体になってこれも登録する。これが受け入れられるという段階になったら、いま言ったように完全雇用、いわゆる共同雇用理念が確立する、こうなるんじゃないですか。これをなしに、ただ単に港が近代化する、機械化する、専用化する、その中で軒先を借りて仕事をする港運業者だけが雇用の対象になって、共同雇用の主体になってくる、こういうようなことでは、当然これは行なわれない議論である。したがって、もしほんとうの意味条約精神に沿い、そして共同雇用精神雇用保障であり、生活の安定だとするならば、当然船会社荷主、港湾管理者が団体をつくって登録し、常用も日雇いも一体になって登録する、こういうふうにしておいて初めてこれが可能になるんじゃありませんか。そうしない理由をお伺いします。
  25. 道正邦彦

    道正政府委員 重ねての御質問で恐縮に存じますけれども、利用者が港湾労使関係に非常に大きな影響力を持つというのはもうまぎれもない事実でございますけれども、労使関係はやはり雇う者と雇われる者ということになりますので、港運業者港湾労働者関係ということに論理上ならざるを得ないと思うのであります。しかし、御指摘のように、利用者協力がなければうまくいかないということも事実でございますので、先ほど申し上げましたように、利用者側の協力を促進するように建議もいただいておりますので、従来も努力をいたしてまいったつもりでございますけれども、今後はさらに一段と努力をしたい。現に港運料金は、基本的なものが二五%アップ、付加料金は五割アップということで、相当思い切った、利用者側としては、財政的な面ではございますけれども協力をしてくれておるわけでございます。幸いにしてこの法案が成立いたしましたならば、さらに一段と利用者側の協力体制も盛り上がるものというふうに私は思います。  なお、登録の問題につきまして、常用と日雇い合わせて一本にしたらいいじゃないかというお話でございました。日本の現状におきましては、常用労働者は各個別企業の労働者ということで一般の企業と同じでございます。しかしながら、定数をきめます場合に影響がございますので、登録という名称は使っておりませんけれども、届け出をさせております。届け出の内容は、日雇い労働者についての登録制度と全く同じ内容のものを届け出させておりますので、実質的には私は登録制度をとってきたと同じ効果を発揮しておるというふうに考えます。
  26. 島本虎三

    島本委員 やはりすれ違いがあるのであります。やはりそのすれ違いが、大臣も御承知のように、初め全港湾は賛成したじゃないか、法案ができて反対するとはまさにひきょうきわまりない行き方だ、こういうようにして官僚の皆さんは憤慨なさっておるのであります。しかし、いま詰めたただこの一点の共同雇用理念と実際、これを見るだけでも、これはやはりまだまだ不十分だということがわかってくる。総評や全港湾が初め確かに共同雇用に対しては全く賛成の立場をとったのは認めましょう。したがって、共同雇用はこれはもうかけ声ばかりでなく、内容そのものも充実するものであってほしいのは、これは当然なんです。しかし、それは選択雇用になってはならないという一つの懸念があるわけです。それと今度は、全港湾自身も確かにこの建議の段階で賛成した。私も聞いているんです。しかし、名実ともにこの時点で共同雇用そのものが、いま私が質問したようなこういうようなものになることをちゃんと考えており、こういうような法案になることを期待して、それによって賛成したんじゃないですか。したがってもうそのものはただ単にこれは就労確保するだけじゃなく、雇用保障生活の安定、これがはっきりここに確立される、それでなければ共同雇用というものの真の意義が生きないわけであります。したがってそれに対する期待感を当然持ったことに対しては、これは何人といえども疑う余地はありません。しかし最終の段階になって、共同雇用が名目的であり、実質が伴わない段階では、やはりそれに賛成することができなくなるのは当然であります。この内容そのものが問題なので、私はそういうような意味で、労働省自身ももっともっとその点を深く考えて、このILO条約精神に沿い、また答申の趣旨を十分盛り込んで、そうして就労雇用保障生活の安定、こういうようなイコールづけにしてやらぬといかぬのであります。それがはっきりしない。まして船会社荷主や港湾管理者が一本になって今度はやらなければならないし、そうでなければ、だんだん細分化してくるような現在の政治情勢なんですから、やはり登録そのものもそういうような団体が一本になってやったほうがいいんだ、だれしもそれを思うでしょう。したがって常用、日雇い、これも一本になってこれは登録しておく、これこそが理想なんであります。しかしながら、やはりそれは一本になっているようでなっておらないような答弁でありますけれども、常用は現行法どおりに業者が職安に一括して届け出をして、職安が常用港湾労働者証を業者に渡すことになっておる。そういうことになっているのは、いままでと同じ。擬装常用だってこれはあり得るじゃありませんか。そうなって、擬装常用になって日雇いを使わないようになる。そうなれば、やはり安く使ってILO条約精神から離れる、こういうようなことが懸念されるじゃありませんか。いま言ったような中から、では擬装常用の問題をどうするのか、これだけではもう擬装常用を防ぐことはできないと思うが、できるのか、その見解について、この際ですから、はっきり伺っておかないとだめですね。
  27. 道正邦彦

    道正政府委員 現行法におきましても、やみ雇用、擬装常用、これは大問題でございます。その理由といたしましては、基本的にはやはり共同雇用体制あるいは理念という見地から見ますと、職安に登録をして、個々の事業主は職安から紹介を受けるというシステムでございますと、自分たちのための労働者だという意識がどうしても希薄になる。不就労が増加して、それに伴いまして調整手当も増加し、その原資である納付金もふえていくということで、ますます登録日雇い労働者を雇いたくないという気分になってくるわけでございまして、悪循環が生じておるわけでございます。一方、現行法におきましては、登録日雇い労働者を第一順位で使い、第二順位といたしましては安定所に出頭している日雇い労働者を使う。さらに三番目に、なおかつ求人雇用が充足されない場合には直接雇用を認めておるわけでございます。今回はこの直接雇用を全面的にといいますか、天災地変その他の場合を除きまして、原則として禁止しております。したがって、直接雇用という形での日雇い労働者の使用はできなくなるわけでございます。また基本的には共同雇用体制を一歩進めまして、事業主みずからの責任で自主的に登録紹介をやるという体制をとりますので、いままでと違いまして、自分たちの労働者だという意識も持つと思います。その他料金のプール制というのもとりますので、それによりましていままでと違って納付金の負担も減少するわけでございます。そういうことが相互にからみ合いまして、私は、やみ雇用、擬装常用がふえてくる基盤が変わってくると思います。  しかしなおかつ、法律改正されましても擬装常用、やみ雇用をする業者は出てくると思います。これに対しましては厳格な指導監督を加えて是正をはかるということが必要でございまして、先ほど罰則がないないというお話がございましたけれども、直接雇用の禁止については罰則がございましたし、改正法におきましても罰金等を重課しておりまして、われわれの行政努力業者の自主的な改善努力によりまして、法律改正後は私はやみ雇用、擬装常用は大幅に改善されるものと考えております。
  28. 島本虎三

    島本委員 その辺がやはりちょっとあいまいになるわけです。なるほど、もう直接雇用はしない、そういうような作文が方々にあらわれているからいいのでありますが、第六条の「日雇港湾労働者に係る事務の実施機関」という第一項から第三項、第四項、この中には地区協会が天災その他の理由によりその事務が不可能となった場合には同一の港にある公共職業安定所にやらせられることになっており、二十三条の一項にも天災により求人の申し込みができないと書かれているのと、これは関連がちょっとわからないのであります。天災地変が多過ぎるのであります。  そうなりますと、常時掌握していない公共職業安定所がこれをやるとしても、できない。したがって、業者に直接雇い入れの道を開く、こういうようなことじゃないか、こういうように思われるわけです。確かにそのとおりでしょう。そうなんでしょう。  そういうようなことからして第八条の登録の点を見ると、「常時港湾運送の業務に従事する」日雇い労働者——しかしこの常時港湾業務に従事するのは、これは常用港湾労働者、そうですね。そこで企業に雇い入れられている者が常用で、企業の団体である地区協会登録するのが日雇いだ、こういうようなことになるわけでしょう。そうなると常時港湾運送の業務に携わっている者、こういうような者はすべてこれは常時港湾業務に従事する常用港湾労働者といってしかるべきではありませんか。それを依然として、今度、法のたてまえからして、法が分かれているということで一方を改正しないで労働法だけを改正して、同じにこれは日雇いと常用を区別する、こういうようなことになるのではないか、こういうようなことです。どうせ港に雇われるのだから、働くのだから、みな常用でいいじゃないですか。全部常用にしたらいいじゃないですか。それを雇用関係が企業との間に成立するからこれは常用だ、その他、港湾協会にこれはちゃんと登録するから、これは日雇いだ、なぜそう分けなければならないのですか。やはりほんとうに雇用の安定、共同雇用ということなら、いまの精神がほんとうの共同雇用じゃないですか。その点もこれはばく然としている。この点に私は運用の面から危惧を感ずるものでありますが、どうしてこの点に踏み切らなかったのか、この点を伺います。
  29. 道正邦彦

    道正政府委員 港湾労働にどうしても波動性がつきまとうわけでございます。これをどうやって解決するかという場合に、常用労働者は個別の企業の常用労働者でございますから、これは企業の責任で処理をしていただく。しからばそれ以外の波動性に対処する労働者をどういうふうに処遇していくか、それを処遇するために関係事業主共同責任で一種のプールシステムをとりまして、常時港湾労働に従事できるような体制をとろう。全部を常用港湾労働者にできれば、これは理想だと私は思います。いつの日かそういうようにならぬとも限らぬと私は思いますけれども、現状におきましてはどうもそこまでいかぬ。外国の例を見ても、やはり波動性は不可避である。したがって、共同雇用体制を強化することによりまして、不安定な日雇港湾労働者に対しまして常用に準ずるような雇用の安定をはかっていこうというのが共同雇用体制理念考え方でございますので、全部を常用にすればいいではないかという御発言、お気持ちなり、基本的な考え方としては私はわかるわけでございますけれども、どうもいまの現状はそこまでいっていないというふうに思うわけでございます。
  30. 島本虎三

    島本委員 いまの状態がそこまでいっていないとすれば、この擬装常用といわれるような、こういうような悪質な行為をチェックするためにも、またこの共同雇用の真の意味に沿うためにも、職安が一人一人をチェックできるようにしてやったらどうですか。常用も日雇も、職安が全部これをチェックしてやる、これならばだいぶそれに近いことになるじゃありませんか。
  31. 道正邦彦

    道正政府委員 御指摘のとおりでございます。したがいまして、届け出制をとり、登録と同じように詳細の内容を職安として承知すると同時に、写真入りの証票を携帯していただきまして、われわれがといいますか安定所の職員その他が監督指導に参りますときにはっきりするような、そういうシステムをとっているわけでございます。要は、しかしながら制度の問題もございまするし、労使協力体制の問題もございまするし、われわれの努力もございまするが、システムとしてはそういうシステムをとっておりますので、監督にあたっての便宜という点については一応の保障措置をとっているわけでございます。
  32. 島本虎三

    島本委員 その努力はわかる。あとはもう局長以外の実際事務に当たっておる人だ。なぜこの疑装常用がなくならないのですか。局長はいいですから、これは実際に当たっている人に聞きたい。疑装常用がなぜなくならないのですか。
  33. 道正邦彦

    道正政府委員 現行法におきましても、擬装常用の問題は大問題でございます。したがいまして昨年来は、県庁あるいは安定所で処理させておりましたのを逐一本省に報告させる。本省といたしましても地方の業界等を通じまして、リストを渡しまして、これこれしかじかの事業場が違反をしている、この事業場は累犯である、あるいは——犯ということばはあれですが、再三再四にわたって違反しているということをいいまして、業界自体の内部のチェックもお願いしておるわけでございます。現実になおかつわれわれの指導監督あるいは業界の内部の指導監督にも服さない、違反を続けているという事業場につきましては、告発の措置もとるという体制で臨んでおります。これは御承知と思いますけれども、刑が確定いたしますと免許が取り消しになるというシステムになっております。せっかく法律改正をするわけでありますので、今後はやみ雇用、擬装常用があってはならないわけでございますので、われわれとしては、法律改正の暁には従来にも増して指導監督を強化してまいりたいというふうに思います。
  34. 島本虎三

    島本委員 ちょっとくどいけれども念のために、職安が一人一人チェックできるようなシステムにする、このことをいまの答弁の中に含んでいるのですか。
  35. 道正邦彦

    道正政府委員 写真入りの証票を持参させるということは、持ってない者はやみだということになるわけでございます。そういう意味では、システムをとっておる、これを励行していくことによってかなりの効果があがるというふうに思います。
  36. 島本虎三

    島本委員 共同雇用のうちのこれは一つ考え方であり、雇用保障生活の安定が基礎になるということを大臣はさっきから言っていた。そうすると、いまこの中で登録の取り消しと不就労の認定、こういうようなものがまた具体的な問題としてはすぐ問題になってくるわけですね。そうなりますと、登録の取り消しや不就労の認定などは、いままで職安がやっていたときよりもこれが有効で、なおかつ具体的で、なおかつよくならなければならないのじゃないかと私は思うのです。ところがこの十一条による登録の取り消しは、いままでは「取り消すことができる。」というふうなことになっておったのが「取り消さなければならない。」というふうになっておって、いままでは一定の自由裁量を認めておったのですが、今度は強制的な拒否に変わってきているわけです。それと同時に、第九条の登録拒否、これもいままでは「ことができる。」とあったのが、今度は「しなければならない。」となっておる。そうすると、登録の取り消しと不就労の認定については厳重きわまるものであって、かつ自由裁量を現在までは認めておったものを、今度は業者の手にそれがゆだねられるとたんに、これは強制措置になってしまう。これがはたしてILO条約精神にはっきり沿うのか。それと同時に、共同雇用という概念に沿うのかどうか。これも大いに疑問のところでありますから、明快なる答弁をひとつ願いたいと思います。
  37. 道正邦彦

    道正政府委員 御指摘のとおり字句は変わっております。これは国が従来行なった仕事地区協会にゆだねるわけでございますので、かってに自由裁量をやることは問題があるわけでございます。しかしながら、そのことによって過酷にわたるとか不当にきびし過ぎるということでは困るわけでございます。登録につきましては、しかるがゆえに、一件一件につきまして登録委員会の議を経ることになっております。登録委員会には労働代表も参加していただきます。そこできまってくるものでございますので、その決定に従って登録をするか拒否するかということを地区協会がきめるわけでございますので、その段階においてなおかつ自由裁量を認めるということは逆に弊害が出てくるわけでございます。登録の取り消しにつきましても、調整規程というものを定めて、それについては労働大臣認可が要るわけでございますので、そういうものについて登録なり登録の取り消しが行なわれていくわけでございますので問題はない。むしろ自由裁量を認めないほうが適当であるというふうに考えられるのでございます。
  38. 島本虎三

    島本委員 これはやはり、私としては、従来職安でやってきたものを今度まかせるのだ、従来よりこれはもうやりやすくしてやって、そしてなおかついまのようにきびしい条件というか、業者が公権力を実施する際にあまりかってなことをできないようにしてやるのが一つのチェックじゃないか、やり方じゃないか、当然だれしもそう思います。ところがこれは逆に、公権力を自由行使できるようにしてある。この場合には私はやはり重大な弊害があるのじゃないかと思うのです。まだまだこれは団交権さえも確立していないのでしょう。そうしてもう、あれは全日本港湾ですか、それと港運協会ですか、これの協定、三カ条のものもあるようでございますね。そうですね。そうすると、協定として取りかわしているのに、いまだに団体交渉権がない。ほとんど団体交渉らしきものをやっておらない。そして、これをやろうと皆さんも努力したことはあるでしょう。そして努力してやっても、結局下から暴力的な突き上げによってそれさえもできない。こういうような、いわばことばを悪くして言えば、暴力団に十手とりなわを与えるような、公権力を与えることになるわけですから、その場合には労働省としてはこれは十分考えてやらなければならないわけです。私はそういうような点からして、いまの労働省の所管行政そのものをこの法律によって結局放棄してしまうのじゃないか、そしてこれらの団体にいわば公権力というか、十手とりなわのような大権を与えてしまうのだ、これがもう労働者との間に団体交渉も一回もやっておらない、そしていつでもそういうようなものに突き上げられながら、かって気ままなことをやっておる、こういうようなものにはっきりと権力を与えるわけです。そしてこれをきびしく規制できるようにするわけです。そして、いままで自由裁量、こういうようなものもあったのに、今度はもう強制権限を与えるわけです。これでうまくいくということは、私どうも考えられない。私だけでなく、この点は港湾に働く労働者も大いに懸念しておるのじゃないかと思うのです。私だけではまだ解明できませんので、重ねてこの点をお伺いいたします。
  39. 道正邦彦

    道正政府委員 港湾労働の現状をこのまま放置できないという危機意識につきましては、労使は直接の当事者でありますから、一番強いわけでございます。しかし、われわれもあるいは利用者も、このまま放置できないという認識については同じでございます。しからばそれをどうやって解決していくかという場合に、共同雇用理念に基づいて現行法を考え直せというのは、四十五年の港調審建議以来一貫して、関係者が私どもに対して早くやれという御鞭撻があったわけでございます。で、たまたま昨年来の港調審の場で正式に検討がされ、研究をいただきましたので、われわれといたしましてはこれを忠実に立法化して御提案申し上げておるわけでございまして、今回のような改正を提出しなければ、われわれは依然として、何をやっているのだ、怠慢であるということで、おそらくおしかりを逆にいただいていると思います。  そういう意味で、われわれとしては今回の改正案はいわば関係者の衆知、英知を集めたものというふうに申し上げてもいいのじゃないかと思っております。ただ、そう申しましても、法律改正は幾らりっぱに行なわれましても、これをささえていくのは労使でございます。その点は建議におきましても、共同雇用体制を確立すると同時に、近代的な労使関係がないとうまくいかないということをうたっておるわけでございまして、それはそのとおりだと思います。  幸いにして労使交渉も、いろいろ労使交渉ございますから、紆余曲折はございますけれども、ここに持ってまいっておりますように、この一冊の本になるくらい何回も労使交渉が持たれております。九月二十五日には共同雇用体制ができるということをある程度前提にしての覚え書きも結ばれておるわけでございます。労使関係は生きものでございますから、いろいろございますけれども、基本的には労使関係は従前に比べますならば非常に前向きの方向に向かっておる。で、われわれとしては心から労使関係が近代化され合理化されることを期待すると同時に、側面から御援助も申し上げたいというふうに思うわけでございます。
  40. 島本虎三

    島本委員 やはりそれも基本的な問題の一つになるのじゃないかと思います。まず罰則もない、そのほかには、具体的手段としては注意をしてやることである、こういうような状態港湾協会ですか、そういうようなものが今後運営していくとすると、この法律に対してあまりにも無関心な状態でいままで運営されてきた、こういうような業態が今後は法律を順守して間違いなくこれを実施するというような急角度の変化ができるものかどうか。まして国が今度は金を出すわけでしょう。そうなったら、この労務供給事業者に公権力も与えることになるわけであります。これは、いまの日本の法人組織の中でこういうようなものはたくさんございましょうか、初めてでしょうか、どういうことになっておりましょうか。
  41. 道正邦彦

    道正政府委員 労働省の所管の範囲で申し上げますならば、訓練局の技能検定協会なんかは同じ性質のものでございます。
  42. 島本虎三

    島本委員 その技能検定協会、これもどういうふうに運営されて、どういうような権限が向こうに与えられているのですか。
  43. 道正邦彦

    道正政府委員 国が行なうべき検定を検定協会に行なわせ、それを国の検定として扱っていくというシステムでございます。ただ、御指摘のように、そういうものと今度のものとは違うじゃないかという点は、内容的に私はおっしゃるとおりだと思います。しかるがゆえに、ただ単にいままでやっておった仕事を白紙委任するというシステムにはしておらないわけでございまして、先ほど来申し上げておりますように、がんじがらめの規制措置をあわせ講じておるわけでございますので、運用よろしきを得るならば問題はないというふうに思います。
  44. 島本虎三

    島本委員 がんじがらめの規制措置が十分効果を発揮できないような状態で運営されるおそれがあるから言っておる、皆さんは、だいじょうぶだと言う。だいじょうぶな状態でないとこの法律が通らないから、そういうふうに答弁するのであります。実際運営される場合には、はたしていまあなたが答弁されたようなことになるのかならないのか、天のみぞ知る、こういうようなことであります。しかしながら、そういうようなことの状態にしてこれを通すわけにはまいらない。私どもとして、いま港湾の近代的な労使慣行が樹立されておらないし、諸外国の場合とはこれは状態が異なるのだ。しかし、相互にまだ依然として不信感があるでしょう、大臣。少しもこれは解決されていないでしょう。秩序が全く確立されておらない、依然として暴力支配が行なわれておる、こういうような状態のもとに公権力を付与するということが、はたしていまお考えのようにりっぱな運営になるのかならないのか。ましていままでわりあい皆さんのほうではいいような運営はされておったということになりますが、必ずしもそういうようになっておらないということが各種報告に出ておるのであります。そういうような点からしてこの地区協会自身の暴力支配もしありとするならば、どうして防ぐつもりですか。
  45. 道正邦彦

    道正政府委員 従来もやみ雇用、擬装常用あるいは手配師の問題等々問題があったことは御指摘のとおりでございます。それに対しましては、一つには行政努力なり関係者の自覚、協力というものが必要でございますけれども、法律仕組みとしても改善を要する点がございます。そういう点についてはもう繰り返しませんけれども、今回の改正案におきましては答申の線に沿ってかなりの改善を講じ、あとは改正の暁には従前に増して監督指導を強化すると同時に、先生のおことばを返すようで恐縮に存じますけれども、基本的には昨年来の各種審議会等の場での関係者の御論議を通じまして、港湾労働をこのままに放置できないという危機意識は、これは労使を含めて関係者全く意見が一致しております。その一致した意見の集約が建議でございます。その建議を忠実に立法化したのが今度の改正法案でございますので、この改正案が成立の暁には、労使はもとより関係者は従前にも増して港湾労働改善のために努力していただくことを期待することは、私決しておかしくはないと思います。われわれとしても十分努力いたしますけれども、関係者も御協力いただけるものというふうに考える次第でございます。
  46. 島本虎三

    島本委員 答申に沿うているから、答申に沿うているからということばがずいぶん出てくる。しかし、ほんとうに答申に沿うているのかどうか解明を要する点について質問をしているのです。頭から、沿うている、沿うていると言って、何かお経のように、それを信ずればいいのだという問題とは違うのです。ですから、その点等についてはもう少し慎重なる答弁をしないと、今度は大臣だけに聞くようなことになってしまいますよ。  これはどういうようなことになりますか。協会の役員職員規制については、人権の問題であるので、立法は無理である、ただし著しく適格性を欠く者については選任させないようにするのだ、こういうような以前からの答弁があったようであります。私はそれでいまここにはっきり伺いたいのは、最近確かに業界は変化してきておって、その全責任を法によってかぶることになる業者が突然賛成するに至ったのはなぜか、大臣、どういうわけですか。
  47. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 いまの御質問以外に、全体的にひとつ私の持っておる所見を申し上げますが、現在の港湾労働法そのものがうまくいっているかといえば、これはもう島本委員も各方面の御意見も聞いておるからおわかりになりますが、やみ雇用、いろいろな問題の欠点が山積しておる現状であります。こういうような現状を打開するのには事業主の自覚が大事だ、それと、私申し上げましたが、やはり港の安定所並びに本省の役人も、少し港湾に対する実情の把握に欠けて、少し不熱心であった、こういうような非難はよく反省しなくてはならぬと思います。そういう意味で、いまの御質問の事業主が急に賛成したのはどうだ、これは悪くとることも必要ないと思うのでありますが、このままではどうしても港湾運送がうまくいかないという自覚が燃え上がったのが最大の要素と思います。要はこの法律を通すことがいいか悪いかと申しますと、やはり現状から回復するためには、この改正案を通して港湾労働の問題を改善するという以外に方法がないと思いますけれども、この法を通したからといって、私は、なかなか難点が山積しておると思います。要は雇用調整計画に従って雇用調整規程を設ける、一定の就労日数を確保する、これを業者が守る、労働者も守る、こういうようなことの実行でありますが、今後港の職安はもう用はなくなった、こういうようなことではうまくいかぬと思います。やはり雇用調整規程、この内容をよく吟味して、個々に当たって、そして業者もいままでのような監督でなくして、いま言ったような欠格条項、取り消しの条項、大臣がこれを認可する、かようないろいろな条件をやはり行政的な熱意をもってこれを確保することが大事と思います。そういう意味で、雇用調整規程、この運用が今後この法案改正の根本眼目になると私は思います。  そういう意味で、最初私が申し上げましたように、今後港の職安も、いままでのような役人根性ではいけない。やはり業者の立場も考え、労働者のいろいろな福祉なり、また労働条件の問題に対しましても、労働省労働者の味方となって、これをよく指導、並びに業者に対する監督をしなくてはならぬ。  こういう意味で、この法案を通さないことがいいかというと、大臣といたしましては、この法案を通すことか——現下のILO条約の眼目も雇用常用化であります。先ほど局長から話があったように、理想としては、私は港湾は常用化雇用が当然と思います。しかし、波動性のために、登録日雇い労働者という、港湾労働者というものがおるのでありますから、これを活用して、最終的には常用化に進むような方向に持っていきたい、これが私の理想であります。いまさっそく、経済問題なりいろいろな関係なり、常用雇用に転換するということは、港の現状、波動性その他いろいろな関係からなかなか困難な点がありますので、やはりこの法案を通して、そしてこの理想に一歩近づける、こういう意味で、私が最初まあまあと言ったのも、決して提案者が——法案に対する否定ではありません。あのときに寸足らずで、おわびは申し上げましたが、あの当時の意見と何ら現在変わっておりませんので、やはりより一歩前進さす。それにはこの共同雇用事業主理念——これがいままで大いなる間違いがあったと私は思います。理念も大いに喚起するが、労働者も自覚する。やはり労使関係が、現状の港湾の重要性にかんがみて、利潤追求でなく、いろいろな立場で、労働者の立場も考えなくちゃならぬが、事業者も従来のような利潤追求ばかりでは——これが主要目的でないような自覚と、そして信念の確立が大事と思いますので、先ほど言ったように、この法案に対して全面賛成したのは、必ずしも島本議員が言われるように、ただ自分のためにいいのだということではなく、現在の港湾の行政関係、港湾事情などを勘案して、もうこれはいたしかたない、こういう自覚のもとに立った結果賛成したものと私は思っておる次第であります。
  48. 島本虎三

    島本委員 大臣はだいぶ、前の発言を気になさって、訂正すること二回であります。しかし失言問題がはやるといえども、労働大臣の場合はあまり気にしなくてもいいと思います。しかしながら、初め言ったことは何としても生きているのでありますから、その点もお忘れにならないように、議事録にはっきりとどめさせておいてもらいます。  それと同時に、大臣のその気持ち、わからぬわけじゃありません。それから局長はじめ皆さんがこの案を出すに至ったような、こういうような動機、それも理解しての質問です。  ただこの中で、四十六年度末で累積赤字が三億八千万です。まあこのままではだんだんふえる一方であり、登録労働者は減る一方である。こういうようなことからして、これはもう、今回この法律案を提出するに至った、こういうようなことも理由の一つのようであります。しかし現在の職安の能力では、この就労をふやすために業者の指導が困難であり、なおかつできないところに根本的な原因があるのじゃありませんか。したがって、そういうようなところからして、赤字はふえる、港湾業者の指導は十分できない、こうなると、法律をつくって公権力をそこに行使させ、与えてしまう。これは職安行政の、まあいわば国の責任を港湾業者に負わせて、就労をふやすということによって、赤字をなくするという、こういうような一つの大義名分を立てる。しかしはたして実際そういうようになるのかどうか、私はこれでは困難だと思っております。  ただし、いままでこの港湾労働者がこういうようなひどい状態になった原因は労働者が悪い、こういうように少しでも考えているのでしょうか。なぜこの三億八千万円もの赤字が累積し、そしてかつて三万人をこえた登録労働者がいまや五千人を下回ったような状態、こういうようになったのか、これの解明も十分しておかれないと、この立法が生きない。私はそういうような点からして、この点についてもう一回いまの質問、それから業者がなぜこれに賛成するに至ったのかという質問に対して、この辺も十分解明しておかれないとだめなんです。なぜこういうような、いままでのような状態を現出するに至ったのですか。
  49. 道正邦彦

    道正政府委員 赤字の問題は、それなりに大きな問題だと思います。しかしながら私は基本的には、赤字は付随的な問題、問題の裏側でございまして、要は、登録労働者の不就労がふえているということに問題の基本があると思います。その結果の赤字でございます。  なぜ不就労がふえたかと申しますと、繰り返しになりまして恐縮に存じますけれども、現行の制度におきましては、事業主が自分たちの労働者だという意識が足りないということに問題が一つございます。さらに、御指摘のように港湾労働をめぐる近代化、合理化はわれわれの目をみはるようなものがございまして、それに伴いまして労務の需要が減ってくるという面もございます。  さらに労働者側にも、私は率直に申し上げまして、一部の方ではございますけれども、問題なしとしないと思います。この点は建議を引用いたしますとおしかりをいただきますけれども、建議にも書いてあるわけでございます。そういう問題意識は組合の代表者の方もお認めになっていることだろうと私は思います。  そういういろいろな悪条件がからみまして、不就労の増大を見、結果的に赤字の増大を見ているわけであります。さはさりながら、このまま放置できないということで、使用者側の代表の方も相当激しい議論のやりとりの末、建議に御賛成いただいたというふうに考えております。
  50. 島本虎三

    島本委員 それは、この登録日雇い港湾労働者の不就労のひどいのは、労働者責任ではない。あなたはあると言ったけれども、これは現行法がざる法であること、それと港湾業者が法を無視していること、それを国が放任していること、したがってその指導がきわめて怠慢であったこと、この辺が重大な問題ではありませんか。ここに一つも触れないでおいて、そうして労働者や港湾業者が賛成したなんて、こんなことを言うのは少しおこがましい。それはまさにそういうような点からして、私は今回のこれは基本的な問題として、改正するに至るいきさつについては、業者にその責任を負わせて国みずからが責任をのがれようとするところに一つのポイントがあるのじゃないか。私はそれをいま聞いているわけです。したがって、いままで業者がこれに対してでも——全責任をかぶらされる全業者が、なぜにこつ然と賛成するに至ったか。こういうような不利な条件の中でも、自分の自由になるところにこのメリットがあるのじゃないか。自分の自由になるということ。そうすると、自分の自由になるということになればどうなるか。いまは苦しくても、将来は自分らの支配体制が確立することになる。その先を読んで、五年後のこと、三年後のこと、おそらく二年かもしれない、この先を読んで、これは賛成するに至っているのじゃないか、こういうように思うわけです。したがって、この全責任をかぶるはずの業者がなぜに賛成したのか。自分の自由になる利益、こういうようなものをはっきり認めているから、少々仕事はさせられるけれども、自分の自由になるのだから、結局は利益になるのだ。そこが一つ考え方じゃありませんか。したがって手配師、これはいままで口ではいかに撲滅する、排除する、こういうように言っても、依然として存在しているのが手配師、この手配師が今後は連絡係ということになる。求人連絡員になる。こういうような連中が、今度は地区協会職員になって、まあこれは困ることに相なる。おそらくそれを考えたならば、この法律自身はいい法律であるというけれども、いい法律であるその利益は、おそらく先のほうを見ているのが業者、そしてそれによってあぶらをしぼられるのが逆に労働者、そういうことになってはいけないわけです。したがって、手配師が連絡係になったり求人連絡員になって、今度は、十月以降にはこれはわが世の天下を謳歌するようになる、こういうようなことになって、はたして円満な職安行政が行なわれるでしょうか。おそらくこれが、いまの業界の一つの、全責任を負ってもやったほうが利益なんだ、こういう態度変更の重大な理由である、こういうようにわれわれには考えられるのです。もしそうでないとするならば、いまのような手配師が求人連絡員になったり、そして今後は地区協会役員になったり、その業界全体が今後暴力組織が動かない、絶対動かないということのはっきりした解明をこの際してもらいたい。
  51. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 それは私は、役所も全然ばかでありませんから、そうは問屋がおろさないと思います。そうなったら、これは法律改正趣旨が全然没却されますから、かようなことは欠格条項その他いろいろな規定の順守とかいろいろな面で、さようなことの絶対にないように行政指導、監督することは、ここでお誓いいたします。
  52. 島本虎三

    島本委員 行政指導をもって大臣はやるということはわかりました。そこをはっきり大臣の意思として、今度は官僚の皆さんが、そうじゃないということを解明してくれというのです。大臣の意思はわかった。大臣はもういい。今度は局長以下皆さんは、そうじゃないということを具体的に解明してください。
  53. 道正邦彦

    道正政府委員 いままで役所がやっておりました仕事地区協会に委託するわけでございますので、それなりの規制措置が必要でございます。繰り返して申し上げますのもいかがかと思いますので一言で言えば、がんじがらめの規制措置をとったつもりでございます。しかしながら、いかなる規制措置をとりましても違反が起き得るということも十分考えられます。そういう点につきましては、大臣がただいま言われましたように指導監督を強化するということで対処する。それに対していままでと違って、労使はじめ関係者協力体制も従前に比しまして高まってきているので、法律改正の暁には、私は運用よろしきを得れば法律改正趣旨はりっぱに達成されるというふうに考えます。
  54. 島本虎三

    島本委員 希望的願望を聞いているのじゃないのであります。しかしやはり、いままでの優秀なお役人さんの皆さんが手を引いて、今度はいま言ったようなおそれのある人たちがその実権を握る、また公権力も得る、またそういうような組織が動き出す。いままでの職安行政のエキスパートであり、優秀な皆さんが今度は手を引いて、そこにやらせるのです。やらされる人はいわゆる手配師といわれるような人たち、このような人が連絡係その他そういうようなものになって、盛んに中の職員として動き始める。そういうようなことであっては、せっかくの公権力が逆に利用されるのじゃないか。こういうようなことがないということを解明してくれと言うのですが、いつも希望的な願望ばかり言って、それではもうだめです。
  55. 道正邦彦

    道正政府委員 先生もう十分御承知かと思いまして私も省略させていただいたわけでございますけれども、かりに手配師といわれるような方が職員になれば、私は大臣の解任命令の対象になると思います。
  56. 島本虎三

    島本委員 大臣の解任命令を出してもらう、そういうふうに今度は当然運営しなければならないのでしょう。しかしあなた、それできますか。
  57. 道正邦彦

    道正政府委員 港湾労働改善を企図する法律でございますし、そういう仕組みがございますので、それを最大限に活用するのは当然かと思います。
  58. 島本虎三

    島本委員 当然かと思うわけです。しかしながら、当然でなかった場合、どうなります。
  59. 道正邦彦

    道正政府委員 事案を詳細に調べまして、かりにも解任命令を出すわけでございますから、その前段階といたしましては、関係者から十分事情を聞き、必要であれば解任命令を出す。これは私どもをひとつ御信用いただきたいというふうに思うわけでございます。
  60. 島本虎三

    島本委員 何か歯どめがありますか。
  61. 道正邦彦

    道正政府委員 まさに歯どめとして解任命令という制度をつくったわけでございます。
  62. 島本虎三

    島本委員 この就労に対して拒否であるとかまたはいろいろ取り消しであるとか、こういうようなことは今度は義務的に向こうが行なう、こういうような体系でいくわけです。与えられるわけです。今度はできるわけです。したがって今度はそれに対する十分なる歯どめをつけておかないことには、公権力の乱用になるわけです。ましてこのようなものは民間にはまだない。初めての公権力乱用罪、そんなのはないかもしれませんが、しかしそういうようなこともあり得るわけであります。もしそうだとすると、完全にこれの歯どめをつけておかないとだめだ。この歯どめは完全ですか。
  63. 道正邦彦

    道正政府委員 われわれといたしましては、現行法の許す限りの厳格な歯どめをつくったつもりでございます。  繰り返しになりまして恐縮でございますけれども、地区港湾協会業務運営につきましては調整規程というものを定めます。それについては労働大臣認可が必要だという仕組みになっております。役職員につきましても、欠格条項のほか労働大臣認可が要る。さらに勧告をし、監督命令を出し、なおかつ問題が残る場合には役職員の解任命令を出す。なおかつだめな場合には地区協会解散を命ずるということでございますので、われわれとしては可能な限りの歯どめを法律上定めたつもりでございます。
  64. 島本虎三

    島本委員 六十四条の二はどういうふうなことになりますか。
  65. 道正邦彦

    道正政府委員 見出しにございますように、日雇い港湾労働者の不服申し立ての規定でございます。
  66. 島本虎三

    島本委員 これはやはり、そういうような労働者登録拒否または迫害を受けた場合は当然六十四条の二によって不服申し立ての機会がある、こういうふうなことじゃなかろうかと思うのです。そうですね。もしそうだとすると、これによって救済されなければならないわけですね。公権力がもし乱用されて、その人が不服審査を申し立てた、その場合には行政不服審査法によるわけです。昭和三十七年の法百六十号、それで不服申し立てをするわけです。それに対してこれはどこがさばくのですか。
  67. 道正邦彦

    道正政府委員 都道府県の知事でございます。
  68. 島本虎三

    島本委員 知事が直接はやらないでしょうから、県の職安部長か課長でしょう。そうしてその名は知事という名前でやるわけです。そうすると職安も諮問の中に入っている。そして同時に労働者の意向をただす、こういうふうなことになっても結局は同じ人たち、同じ機構がその問題、不服を取り上げる、こういうようなことになるわけです。不服申し立てそのものはさっぱり意味をなさないことになりはせぬかということをおそれます。まして労働者はこういうような機構やこういうような一つの組織のあることを十分知っていると思いますか。知らない人が多いのです。したがってその手続、こういうようなものに対してもわりあいに無知な人も多い。これだけはおわかりでしょう。それだけにやられっぱなしにして、やられたならば六十四条の二によって不服の申し立てがある、諮問機関によってやっている。この下部機関の——そしてそれをさばくのかやはり上部機関である知事という名の県の職安課長だ。同じ穴のムジナだというとおかしいけれども、同じことじゃないですか。これでどうして労働者の救済が完全にできましょうか。私はそれに対して一まつの危惧を持つのですが、この問題に対してもはっきり解明しておいてほしい。
  69. 道正邦彦

    道正政府委員 六十四条の二に明文がございますように、地区協会が行なった「登録に関する処分に不服がある者は」となっておりますので、同じ穴のムジナではないわけでございます。実際問題といたしまして、事実関係を確定するという場合に、補助機関として都道府県知事の手足となって動くことはあると思いますけれども、六十四条の二に関する限りは主体が違っていると思います。
  70. 島本虎三

    島本委員 そういうような場合には諮問機関がある。諮問に応じているのが職安局長であり、職安のこういうような機構です。職安の機構が諮問に応じてそれをやったのが、今度は県の職安課長がさばく、同じ機構じゃありませんか、同じ穴のムジナじゃありませんかということです。これはどうでしょうか。どうしてもそういうような不服申し立て、これを置かなければならないとすると、別個に何か審査委員会をつくるような発想は考えられませんか。地区協会ができ、そして登録を拒否され——また、しなければならないという強制義務まで今度の法律につけている。そうなった場合には生殺与奪の大権を今度は持つことになるわけです。不服審査そのものによってもこれまた十分救済の妙を発揮することができない。登録委員会があるからこれはだいじょうぶだ、こういうことを再三皆さんがおっしゃっている。しかし、それは、あえて言うと形式だけのものである。こういうようなことをしてはいけないのです。私もそれで、どうしても必要ならばこれは別個に審査委員会のようなものをつくる発想はどうでしょう。同じ穴のムジナにならないために。
  71. 道正邦彦

    道正政府委員 登録につきましては登録委員会が設置されます。そこには労働側も入り、公益側の立場でおそらく安定所関係職員も入るかと思います。そういう意味では関連がないわけではございませんけれども、都道府県知事が行ないまする不服審査というのは、行政機関というよりも公益の立場を代表して行なうというものでございますので、その公正が私は十分担保されるものというふうに考えますので、特別の不服審査機関を設ける必要はないと考えます。
  72. 島本虎三

    島本委員 ないとするならば依然としてそこに、私用としては救済の道が閉ざされるおそれがある あえて歯どめと言いながら歯どめにならないおそれがあると思う。このことだけは厳重に警告をしておかなければなりません。  それからこの二十五条の十四はどういう趣旨でございますか。
  73. 道正邦彦

    道正政府委員 地区協会雇用調整規程を定めるわけでございますが、これは労働者の権利に非常に重要な影響を持ちますので、「関係労働者を代表する者の意見をきかなければならない。」ということで、雇用調整規程の内容につきまして関係労働者意見を聞き、万全を期するという趣旨規定でございます。
  74. 島本虎三

    島本委員 関係労働者意見聴取。これは万全の措置でなければならないことはおっしゃるとおりです。雇用調整規程をきめるときに関係労働者意見を聞く、あたりまえのことであります。ただ、これは意見を聞くだけですか。これは同意または承認、これも要することじゃないですか。     〔委員長退席、伊東委員長代理着席〕 就業規則のように、ただ意見を聞けば、聞いたという行為だけでその手続は終わり、その効力は発効する、こういうようなことなんですか。これじゃあまりにもおざなりでありますが、この点はいかがでしょう。
  75. 道正邦彦

    道正政府委員 おっしゃるお気持は私、十分わかるつもりでございますけれども、雇用調整規程をきめる場合には、あらかじめ労働者を代表する者の意見を聞くのみならず労働大臣認可が要るわけでございます。さらに労働大臣中央職業安定審議会意見を聞いて認可するかどうかをきめるというシステムになっておりますので、実際問題といたしましては、私は労働者の権利、利益が害されることは、こういうシステムによりましてもないというふうに考えております。
  76. 島本虎三

    島本委員 もしないならば一歩進めて同意か承認、こういうようにはっきりされたらどうですか。  一番それがなくなりましょう。
  77. 道正邦彦

    道正政府委員 先生指摘のように、一般の就業規則の場合にも労働者を代表する者の意見を聞くというシステムをとっております。そういうことと、先ほど申し上げましたような念には念を入れたシステムになっておりますので、同意というシステムをとらなくても、労働者の権利、利益は害されることはないと思います
  78. 島本虎三

    島本委員 なるほど労働基準法による就業規則と同一の形態をとっておる、そのとおりであります。これは民主的に見せかけている、これだけの問題でありますので、同意も承認もなし、就業規則違反が平気で行なわれてるのがいまの労働運動の、争議の実態ではありませんか。そこをまたここで繰り返させるのですか。就業規則の点では確かに、これは同意でも承認でもありません。労働組合の意見を聴取することになっております。これは単に民主的な見せかけです。したがって、いま言ったような内容を伴った真に労働者保護法の意味に徹するならば、これは同意か承認、こういうような意味を含むのだ、こういうのでなければならないのです。一方的に行なえる形式的な手続を踏むだけだ。これでは民主的じゃないですよ。なぜ、紛争の根源になる現行基準法による就業規則と同じ形態をとらなければならないのか。ここにも多大な今後の問題点をはらんでいるものがある。一歩進めて民主的にするならば、名実ともに同意か承認を入れるべきです。これは大臣にお伺いいたします。
  79. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 これはいままででもいろいろな問題の場合に、こういうような文章になっておりますが、島本議員のような同意、承認という文句に改めることはなかなか慎重でなくちゃならぬと思いますけれども、御趣旨のような線に沿った運営をすればいいのでありまして、省令で定める場合に、先ほども私から再々申し上げましたように、今後かような問題に対する行政指導を労使の立場を生かすような方向で指導したい、こういう所存で、この法律の御承認を得られれば、御趣旨のような線を尊重して運営をいたしたという所存でございます。
  80. 島本虎三

    島本委員 御趣旨のような線を尊重して生かすならば、これは同意または承認、こういうような意味を持つものであるということをここに明確に議事録に残しておくべきです。もしそれと反対のことを言ったら、大臣の意思に反することになる。
  81. 道正邦彦

    道正政府委員 私ども大臣の御指示に従って仕事をするわけでございますので、大臣の御答弁のとおりでございますが、地区協会は国にかわって仕事をするものでございますので、その運営の民主化をはかる、関係者意見を聞くという意味意見を聞くということでございますが、その成否が同意にかかわるというシステムは、法律技術的に若干問題があるということだけ付言させていただきたいと思います。
  82. 島本虎三

    島本委員 そこももう少し具体的に……。なぜ問題があるのか。それでは、基準法によってこれまた、就業規則というようなものは労働者、それも過半数を占める労働者意見を聞くということになっております。そのためにまた、一方的に意見を聞いたという形態だけを形式的に手続さえ踏めば、極端にいうと、あとは何をやってもいいことになる。そういうようなことがいままで往々にして労働争議の発生した原因になっているわけです。今度の場合は、民主的にして、いろいろなトラブルをなくするための法案でしょう。そしてこれはまさに港湾の近代化に沿うための一つ法律であり、労働者保護法でしょう。もしそうだとするならば、現在までのような一方的な形式的な手続を踏むというだけのものを、もう少し内容的に真に民主的な、見せかけではないというような内容を伴ったほうがいいということなんですよ。あたりまえでしょう。これは。きわめてあたりまえなんです。それが諸般の関係でできないのだとすると、どういうようなわけでできないのか、これをはっきりしておいてください。
  83. 道正邦彦

    道正政府委員 運用上慎重に対処してまいりたいと思います。
  84. 島本虎三

    島本委員 運用上慎重にやる、それは同意か承認の意味だ、これが含まれる、ただ法的にそう書けないだけの話で、この意味は同意または承認だ、これを含むのだということでいいのですか。
  85. 道正邦彦

    道正政府委員 労働者の利益、権利に非常に重要な影響を持ちますので、労働者の意思に反したようなきめ方をしてもうまくいく性質のものではございません。したがって、運用上十分に労働者意見を聞き、その結果大臣認可申請を求めてくるわけでございます。またその際には、中央段階におきまして労働者意見もまた聞くわけでございますので、運用上よろしきを得るならば、御趣旨のような問題は起きないのじゃないかというふうに思っております。
  86. 島本虎三

    島本委員 同意または承認と入れることができない理由をちょっと言ってください。
  87. 道正邦彦

    道正政府委員 先ほどちょっと申し上げましたように、地区協会仕事は、安定所が従来行なっておりました仕事を代行するわけでございます。したがいまして、極端に申しますと、安定行政を進める場合に関係者の同意が要る、行政事務を進める場合に同意が要るというシステムは法制技術的になかなかとりにくいということが基本的にございます。ただし、実際の運用におきましては、十二分に意見を聞くということで、運用よろしきを得れば、御指摘の問題は起きてこないのじゃないかというふうに思うわけでございます。
  88. 島本虎三

    島本委員 その理念を聞くだけじゃないのだ。公権力までやる協会でしょう。この協会の性格は、どういう協会ですか。
  89. 道正邦彦

    道正政府委員 港湾労働法に基づく法人でございます。
  90. 島本虎三

    島本委員 何という法人ですか。財団法人とか、社団法人とか、何とか法人とか、一ぱいあるでしょう。
  91. 道正邦彦

    道正政府委員 特別の法律に基づく認可法人でございます。
  92. 島本虎三

    島本委員 特別の法律に基づく認可法人ということになると、簡単にいえば何法人というのですか。
  93. 道正邦彦

    道正政府委員 民法に定める財団法人、社団法人の区別に従って分類するならば、社団的な性格を持っている特殊法人でございます。
  94. 島本虎三

    島本委員 社団的な性格を持っている社団法人ですか。
  95. 道正邦彦

    道正政府委員 そうではございません。
  96. 島本虎三

    島本委員 どうもわからないのです。というのは、ばく然としたそういうようなところに大権を与え、労働者を拘束し、労働者に対して、承認でもない、同意でもない、就業規則と同じようにただ通知すればいいのだという程度の運営をされる、その主体が民法によるばく然たる法人でしょう。公権力を行使し得るような法人でしょう。しかし何かこうわからぬ法人です。私は法律はうといのですが、それをもう一回はっきり……。何々法人というのがあるのじゃないですか。
  97. 道正邦彦

    道正政府委員 民法には社団法人、財団法人がございますが、そのほかに各種の法律に基づく法人は一ぱいございます。そういうものを総称して特殊法人、特別の法律に基づく法人という分類をしているわけでございます。民法の財団法人、社団法人でないからいいかげんな法人だということではなくて、むしろ逆に、重要な団体であるから特殊の法律をもって法人格を付与しておるというふうに御理解いただきたいと思います。
  98. 島本虎三

    島本委員 これで時間をロスするのは惜しゅうございますから、このあとで多賀谷真稔社会保障部会長のほうからこの問題に対しては十分意を尽くすまでにやってもらいたい、こういうふうにいたしまして、一応この問題は不問——不問じゃありません、この程度で次に移らせていただきます。  定数よりも実数か多くなった場合の登録取り消し、または実施にあたっては、現行法では地区職業安定審議会ですか、こういうようなものの意見を聞かなければならないことになっているようであります。改正案はそういうようなのがちょっと見当たらないようでありますけれども、これはどういうようなことですか。
  99. 道正邦彦

    道正政府委員 登録委員会意見を聞くことになっております。
  100. 島本虎三

    島本委員 地区職安審議会は今後どうなるのですか。
  101. 道正邦彦

    道正政府委員 港湾労働に関する重要事項を審議するということになります。
  102. 島本虎三

    島本委員 重要事項の中に、定数よりも実数が多くなった場合の登録取り消しであるとか、こういうような諸般の登録に関するものを含みますか、含みませんか。
  103. 道正邦彦

    道正政府委員 法律仕組みとしては当然に含むという仕組みになっておりませんけれども、重要事項でありますので、審議を妨げるという性質のものではございません。
  104. 島本虎三

    島本委員 どうもそこがまたよくわからない。含むといってくれれば解明するのです。何か含むかのようで含まない。ここもまた一つ同じ穴のムジナが出てくるじゃありませんか。ひとつここもはっきりしましょう。
  105. 道正邦彦

    道正政府委員 法律上は登録委員会によってきめるということでございますので、諮問を出すという性質のものではないと思いますけれども、審議会が取り上げる、審議するということを妨げるというものではございません。
  106. 島本虎三

    島本委員 では、これはそういうような定数より実数が多くなった場合、この重大な問題をはらむところの取り消し、こういうようなものも今後は地区職安審議会の議になし得るものである、こういうように一応解釈しておきたいと思いますが、大臣、それでいいですね。
  107. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 諮問するということでありますが——そこでいろいろ論議するということは当然けっこうと思います。いま局長答弁したとおり、そこでいろいろ審議することは当然けっこうと思います。
  108. 島本虎三

    島本委員 これは大事な問題です、地方によっては。したがって、もう一回、くどいようでありますけれども、登録の取り消しであるとか、定数よりも実数がよけいになった場合のいろいろな措置であるとか、労働者の生死にかかわるような重要な問題でありますから、これは地区審議会意見を聞かなければならないのだというような部面が当然あってしかるべきなんですけれども、ないから、当然それも含むのだ、そういうふうになっていればいいはずなんですが、これもはっきり言ってくれなければちょっと困るのですね。これはもういいんでしょう。もう一回、議事録に残るようにはっきり言ってください。
  109. 道正邦彦

    道正政府委員 改正法の二十五条の三十五に登録委員会規定がございまして、登録委員会は、諮問に応じて、登録登録の拒否、登録の取り消しの処分について意見を述べるという規定がございますので、法律仕組みといたしましては、登録委員会意見を聞けば足りるわけでございますけれども、地区審議会がこの問題を取り上げることまで否定するものではないわけでございます。
  110. 島本虎三

    島本委員 これは地区協会の問題でありますけれども、前に田口議員のほうからこの問題でうんちくのある質問があったわけであります。そしてこの地区協会の運営がうまくいかない場合には、勧告改善命令を出す、そうですね。それでも聞き入れられない場合は地区協会解散させる、そして職安がこの業務を行なう、こういうように答えたのですが、これは間違いありませんか。
  111. 道正邦彦

    道正政府委員 いろいろ指導監督あるいは規制措置が仕組んでございますけれども、最悪の場合と申しますか、どうにも改善できないという場合には、二十五条の五十の規定によりまして設立自体の認可を取り消すということになっております。
  112. 島本虎三

    島本委員 実際問題として、そういうことが簡単にいきますか。いまの前段の私の質問のような——改善命令を出すところまでこれは勧告はいくと思のですが、聞き入れられない場合は、地区協会解散させ、職安がこれを行なう、これはもう間違いないところです。そういうようになっていますから。実際問題として、そういうようなことが簡単に行なえるのかどうか。これはもうそうでなければ、やらぬとだめなのです。全部手を引いてしまって、全部引き揚げてしまって、そして出ていって……。それをやるということは、実際可能でしょうか。その辺の見解を聞かしておいてください。
  113. 道正邦彦

    道正政府委員 港の職業安定所で従来港湾労働法の施行事務をやっているわけでございますけれども、そのうちの登録紹介等仕事地区協会に移りますが、監督、指導権限は依然として安定行政機関に残っているわけでございまして、港の職安がつぶれるわけではございません。御指摘設立認可の取り消し自体は、これはたいへんな問題でございまして、そう簡単にいく性質のものでもないと思いますけれども、それまでのいろいろな規制措置を講じまして、なおかつ改善できないという場合にはやむを得ず認可の取り消しを発動することもあり得ると思います。ただ、私は地区協会業務を始められた場合に、いろいろ欠格条項であるとか認可であるとか規制措置はございますので、その趣旨を十分生かして、こういう大臣認可の取り消し権を発動するというような事態は万起こらないものというふうに期待をいたしております。
  114. 島本虎三

    島本委員 これはいかがでございましょうか。常用の相互融通の問題がいつでも問題になり、この法律改正される一つのポイントもその問題にかかる点が多いわけですね。常用という立場の労働者、これらの人の相互融通をはかることは、日雇い労働者の首を締めることにも当然つながりますが、まして法ができても運営の面でこの辺が蹉跌を来たす重大な問題点になり得る可能性があります。この常用の相互融通の問題についてはどういうように締めていくつもりですか。
  115. 道正邦彦

    道正政府委員 港湾の利用者から各港湾業者仕事を受注するわけでございます。その場合に、特定の業者でまかなえない場合にほかの業者がその分を引き受けるということは基本的には問題がないわけでございます。要するに、仕事の量が多いので特定の業者ではまかなえない、したがって複数の業者に依頼するということは、このこと自体は問題がないわけでございますが、問題になりますのは労務供給にわたるような事態が出てくることでございまして、二つの業者に名目的には発注するけれども、一方の業者が他方の業者労働者も事実上使うというような形で利用される場合、これは労務供給に類する場合があるわけでございます。これは違法行為でございますので、厳に戒めざるを得ないというふうに思います。
  116. 島本虎三

    島本委員 日雇いを締め出すだけじゃなく、常用のたらい回しをやるということ、これが認められるということは職安法違反の合法化にもつながってくるわけですから、これは断じてやらしてはならないわけです。この法律の中には、今後は情勢の変化からして当然こういうようなこともやり得るような状態があります。もしこれに対して万全の手段を講じておいて、そんなこと絶対やらせない、こう言うならば、はっきり常用の相互融通の問題に対しては何かポイントをきちっとさせておかないとだめなんじゃないかと思います。いまの点では、説明はわかったわけです。しかし、実際の問題としてそれができるかできないかというのは、これは実際上の問題なんです。むしろそれのほうがやりやすいのですから、水は高いところから低いところに流れるのですから、一たんこれが常用としてやっていたら、千葉県にも東京湾にも大阪にも同類のものがあったらすぐ連れていってできるのですから、こういうようなことに対してやはり認めておくということは、法の今後の運用に重大なる蹉跌を来たすものであります。この問題に対しては厳重な対策を立てておかないとだめな問題だと思うわけです。私はそう思うのですが、大臣、どうですか。
  117. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 常用のA、B、C各業者の流用の問題でありますが、これがあまりルーズになりますと、雇用規定にも規則にも反します点もありますので、これは今後これがあまり乱用されないような方向に持っていきたいと思います。
  118. 道正邦彦

    道正政府委員 問題のポイントは労務供給事業になるかならないかということでございますので、これは大臣から御発言いただきましたように、労基法違反があってはならないわけでありますので、そういう問題に関連があるというのは御指摘のとおりでございますので、労基法違反が起きないように監督、指導にはなお万全を期してまいりたいと思います。
  119. 島本虎三

    島本委員 それに対して歯どめというようなものは十分考えて運営の一つの指針ができますかというのです。このままにしておけば、やはり依然としてこれが行なわれる可能性は十分ある、これによって日雇いがまた締め出されるおそれがある。法そのものの精神が滅却される。そうじゃないという歯どめを十分かけておきなさい、これはまさにありがたき天の声です。これを十分やらないといけないです。もう一回。
  120. 道正邦彦

    道正政府委員 登録日雇い港湾労働者の皆さんの雇用機会を狭める結果になってはいかぬわけでございまして、これは雇用調整規程のきめ方の問題でもあるし、運用の問題でもございます。一方、しかしながら労基法違反の問題でもございますので、両々相まって厳重にかつ慎重に運営してまいりたいと思います。
  121. 島本虎三

    島本委員 厳重かつ慎重に、ことばはそうなんですが、これでは実際話になりませんね。こういうようなのがあるからまたあぶないのです。ですから、この法律をこのまま通したらあぶないというのです。だから、この歯どめをこういうふうにするのだということをきちっとやったらいいのじゃありませんか。こういう業者に対しての処罰も何もないのでしょう。ただ訓示規定だけあるのでしょう。紹介の締め出しなんかに対しては、しなければならないというような強制義務を与えているのでしょう。業者に対してはそういうようなことをやれるような、相互融通をはかれるような、こういうような便宜を与えているのでしょう。だからこっちのほうに歯どめをかけないと、これは悪法になるのです。もう一回これ、はっきりさせないとだめですよ。
  122. 道正邦彦

    道正政府委員 適法に複数の業者に発注する場合は、これは法律違反の問題は起きないわけでございますが、御指摘のように労基法にわたる危険性があることも御指摘のとおりでございます。かりにそういう労基法にわたる事案が生じました場合には免許の取り消しに通ずるわけでございまして、行政上の指導、監督を強化してまいりたいと思います。
  123. 島本虎三

    島本委員 そこなんですね、やはり違うのは。与えないような行政措置をし、そういうようなことに対しては不可能な状態にしておいても、利益のためにはやるのですよ。ところが、やれるようにしておいて、やったら免許を取り消すぞ。ただしやはりそれをやるような仕組み、これができ上がってしまった以上、一たん走り出した汽車はとめることはできないでしょう。私はほんとうに心配して言っておるのですよ、これは。ですから、これはもう港湾の中に合法的な不当性がばっこする、こういうおそれがある、そうならないようにしなければならないということなんです。この点でも私は重大な問題点を提起しておきます。  あわせて、今度は十八条、十九条、この意味をちょっとはっきり言ってくださいませんか。
  124. 道正邦彦

    道正政府委員 十八条、十九条は、登録日雇い港湾労働者雇用期間の延長に関する規定でございます。本来登録日雇い港湾労働者でございますから、日雇いの形での求人が通常でございますけれども、中に一定の雇用期間を定めるものがございます。そういうものが無限に行なわれますならば、特定の日雇い港湾労働者だけが優先的に雇用されるという結果になりますので、延長については慎重な配慮をし、承認制度をとっているということでございます。
  125. 島本虎三

    島本委員 輪番の日々紹介原則とさせるべきじゃございませんか。
  126. 道正邦彦

    道正政府委員 登録日雇い港湾労働者就労機会の均等化をはかるという意味におきましては、輪番制が望ましいと思います。
  127. 島本虎三

    島本委員 輪番が望ましい以上、輪番の日々日雇い原則とさせる、こういうふうにはっきりこれは確認すべきじゃないかと思います。そうさせるべきです、大臣
  128. 道正邦彦

    道正政府委員 この規定はまさに裏から特例として雇用期間の延長を認めるということでございますので、立法の趣旨からいきまして機会均等をはかり、その一つ方法として輪番制があるわけでございますので、雇用調整規程をきめるというような場合には、その種のことが規定されるように行政運営上配慮してまいりたいと思います。
  129. 島本虎三

    島本委員 これは先ほど、港湾の業者労働者の間の非近代的な一つ状態について、それをもとにして諸外国と同一に見ていますぐ日本で適用することは危険性があるということを言いました。この港湾との団体交渉について、これは労働省としてはどのように指導を行なってきたのですか。今後はどういうふうにしてやろうというお考えでございましょうか。その点をこの機会にはっきりさせておいてもらいたいわけです。  全港湾に対しては、日本港運協会というのがございまして、団交権はあるはずです。共同雇用責任もあるんじゃないか。当然その問題についての話し合いも行なわなければならないんじゃないか、こういうように思うのです。この団体交渉権について、これはどういうふうにお考えであるか。
  130. 道正邦彦

    道正政府委員 この点につきましては、日本港運協会と全日本港湾労働組合との間におきまして、昨年の九月二十五日に覚え書きがかわされております。港に協会ができるけれども、労使問題については従来どおり事業主団体と各港ごと登録日雇い労働者の組合の問でやるという覚え書きになっておりますので、法律的にはこの地区協会が委任を受けて団体交渉権を持つことは可能でございまするけれども、労使地区協会は協会の狭い意味業務だけを行なうということで合意に達しておりますので、われわれのほうとしてはその合意の線で実施されることについてとやかく言う筋合いのものではないと考えます。
  131. 島本虎三

    島本委員 では、地区協会登録労働者の代表との間の交渉というようなものは今後やはりあり得るんじゃないかと思いますが、こういうような点に対してはどういうふうに指導なさいますか。
  132. 道正邦彦

    道正政府委員 組合法にいわゆる労働条件等についての団体交渉、これは先ほど言ましたように別個の既存の団体の間でやる。したがって地区協会は協会業務だけを行なうんだという覚え書きになっておりますので、いわゆる団体交渉というのは地区協会相手には行なわれないというふうに思いますけれども、労働組合と協会とが協会の固有の業務について話し合いをする、意見を交換するということはあり得ると思います。
  133. 島本虎三

    島本委員 私どもも当然あり得るものだと考えるわけです。これを今後あり得ないようにしていったならば、これは今後の運営に相当トラブルも起きる可能性があります。したがって、地区協会そのものに船内、沿岸業者、こういうような日雇いを必要とする業者が当然入ることはわかります。しかし日雇いを必要としない業者は、メリットがないわけですから入らないということになります。一種の元請業者、こういうような者も入れた交渉にしてやらなければ、これはあえていうと形式だけのものであり、現在のいろいろな港湾労働者に対して団交拒否または実がない、こういうようなものもその辺から生まれているのじゃないかと思います。したがって、現在船内であるとか沿岸業者なり日雇いを必要とする業者だけでなく、そのうしろにあって、それらをやらしている、言いかえると、メリットのない一種の元請業者、こういうようなものも入れた団体交渉でなければ意味がない、こういうように思います。今後こういうように指導すべきです。見解を伺います。
  134. 道正邦彦

    道正政府委員 御指摘の元請という意味船社荷主等であるならば、これは関連はありますけれども、いわゆる団体交渉の当事者ではないのではないか。あくまで雇用関係がありまする事業主団体と当該労働組合との間で行なわれるのがまさに団体交渉でございますので、そういう御指摘でございますならば団体交渉の当事者にならない。ただし、日雇い労働者を使わないアウトサイダーは、地区協会会員になってもメリットがないという企業も中にはあると思いますけれども、そういう場合になりましても私たちといたしましては、港湾全体にかかわる問題でございますので、ぜひ会員にはなってもらいたい、そういう線で行政指導もしてまいりたいと思います。
  135. 島本虎三

    島本委員 それでは二十五条の十二ですか、地区協会の(業務)の中に、「登録日雇港湾労働者雇用機会確保を図ること。」こういうようにあるわけです。二十五条の十五(会員の責務)の中で、「共同して、登録日雇港湾労働者雇用機会確保その他雇用の安定を図るように努めなければならない。」こういうようにあるわけです。そうすると、守らない者に対しては依然として罰則というものがないままに、いままでの行政指導や、今後は排除していく、こういうような方法しかないわけであります。そうすると守らない場合の措置、これは具体的な措置ということは排除することだけか。それとも今後はやはり罰則も考えて、そういうふうなことをさせないようにする指導もするのか。この辺は再三伺いましたけれども、私としてはまだ意を尽くせませんので、この機会にもう一回質問させてもらうわけであります。というのはやはりこの辺が一つの穴になるのじゃないか、こう思われるからなんです。その辺についてもう一回、私を納得させるようにひとつ答弁してもらいたい。
  136. 道正邦彦

    道正政府委員 最終的な制裁は除名であります。除名になりますと、港湾労働者紹介を受けられない。調整手当の中央協会からの地区協会に対する支給がございますが、それの恩典も受けられないということでありますが、要するに除名になります。それからその除名に至ります間に地区協会として内部的に十分指導していただくわけでございますけれども、われわれ行政的な立場で勧告あるいは監督命令というものを出す仕組みになっております。
  137. 島本虎三

    島本委員 次に調整手当の点についてはどういうふうなことになっていますか、もう一回説明してください。
  138. 道正邦彦

    道正政府委員 従来は付加料金というのを徴収いたしております。それによってまかなっておるわけでございますけれども、その運営が必ずしもすっきりいたしておりません。要するに日雇い港湾労働者を使おうが使うまいが、この付加料金が支給されるという仕組みになっております。これは非常に不合理でございますので、今回はプール制をとることにしたわけでございます。したがいまして、一切がっさいが中央協会にプールされます。それが原資となりまして、国の補助と納付金とによって調整手当をまかなっていくということになりますので、従来の負担に比べますと相当大幅に軽減されるものと考えます。
  139. 島本虎三

    島本委員 調整手当の精神というようなものは、これはどういうことになるのですか。港湾労働者に対しては調整手当はどういう意味を持つのですか。
  140. 道正邦彦

    道正政府委員 発生的に申し上げますと、従来の日雇い失業保険が変わってきたわけでありますが、常用労働者ではございませんけれども準常用労働者的な性格を今回持ってくるわけでございます。となりますと、一種の休業補償みたいな性格も出てくるかと思いますけれども、ぎりぎりの性格としては休業期間中の生活保障というふうに申し上げられようかと思います。
  141. 島本虎三

    島本委員 日雇い保険的な性格を持つものであり、生活保障につながるものであり、失業保障にもつながるものであるとすると、これによってもらう労働者政府案によりますとあまりにも厳格過ぎて、おそらくこれによって生活できると考えられないのです。もっとこの点に対しては配慮しなければなりません。やはり六割の線だけははっきり確保してやるというふうになぜ出せないのですか。
  142. 道正邦彦

    道正政府委員 雇用調整手当のきめ方についてはいろいろ考え方があろうかと思います。要するに労働者の拠出するものと、それから使用者が拠出するものと国の補助とで成り立っているわけでございまして、ほかの社会労働保険の仕組みと原理的には同じでございます。したがいまして、ある程度拠出に応じて恩典を受けるという仕組みもとらざるを得ないと考えるわけでございまして、現在は賃金区分によりまして、それと就労日数を点数化いたしまして、一級から八級まで分類いたしております。このことがいいかどうかという問題はございますけれども、現行法におきましても失業保険の日雇い失業保険との調整をはかっておりまして、それをめどに七級、八級等の金額をきめる場合には参考にしてきめておるというのが実情でございます。
  143. 島本虎三

    島本委員 参考にしてきめたとすると、生活保障のための、または日雇い失業保険的な性格から、または休業補償的に運営するということになると、当然もらっている給料の六割の補償ということになるわけであります。それがこういうような八ランクを、こういうようにずうっとやることによって、あるいはこれまた生活のできないようなこういうふうな状態が現出されます。これは当然このままでは済みません。こういうふうな状態では労働者は反対するのはあたりまえです。法の精神そのものがILO条約精神にもとるじゃありませんか。はっきりこの中に「最低所得をその国とその港湾の経済的及び社会的地位にふさわしい方法でかつその程度まで保障しなければならない。」とある。八ランクにして、最低が幾らですか。こういうような状態ではこのILO勧告に反します。これは当然修正を要する点です。今後これは修正しなければなりませんよ。このままじゃ生活できない。できないのがわかりながらこれを提案することは、答申の精神にも違反します。IL O条約精神にも違反します。これはまさにバツであります。どうするのか。このままやるのですか。
  144. 道正邦彦

    道正政府委員 おっしゃるお気持ちはよくわかるわけでございまするけれども、極端に就労日数が低い場合になおかつ手当だけは高額を払うというわけにも——公平の原則からいって問題があろうかと私は思います。最低の補償をするという基準のとり方についていろいろ意見が分かれるわけでございますけれども、八級は八百円でございまして、日雇い失保の日給を上回っております。そのことがいいかどうかは別として、今後これは省令できめることになりますので、運用にあたっては十分検討してまいりたいと思います。
  145. 島本虎三

    島本委員 省令できめる場合には運用を十分検討しないといけません。というのは、これはやはりここまできてまた始めに行くのです。これはあくまでも共同雇用でしょう。共同雇用精神そのものは、日雇いも常用も一つになって雇用される体制が望ましいということは初めに皆さんおっしゃった。しかし実際はそうなってみれば、いずれに雇用されるにしても、失業保険的なこういうような精神をはっきり盛るとすると、六割という線が当然出てくるわけです。これを段階を付してやるということは、この精神からも、初めの皆さんの答弁からも格段のギャップがあります。これは言行不一致の標本であります。したがって、これはもう省令をやる場合には十分検討して、こういうようなぶざまなことのないように十分に配慮すべきである、こういうように思います。大臣、いいですね。
  146. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 御意見よくわかりますが、審議会意見もよく聞いて、その趣旨を尊重するような方向によく考えます。
  147. 島本虎三

    島本委員 もう一回、大きい声で言ってください。
  148. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 中央職業安定審議会意見を十分に聞きまして、できるだけ御趣旨に沿うように対処いたしたいと思います。
  149. 島本虎三

    島本委員 そういうようにしてやってほしいのは当然であります。私もいろいろ申し上げましたけれども、この法そのものもよく見ると、まだまだ内部にわたってはILO条約精神、答申の精神、また共同雇用の概念、こういうようなものからはるかに隔たりがあることを感じました。あとは行政措置によってこれを直してやるというような一つ努力の形態が示されたにすぎません。ことにいまのような状態のままで公権力を民間のいわば法人と称するこの団体に付与するわけであります。そして労働者に対してはきびしく使用者に対しては甘く、こういうように運営をさせるわけであります。そうなりますと、今後やり方によっては、これはかつてないような悪法になる可能性がある。かつてないような暴力法案になるような可能性さえ私は危惧を持つのです。そういうような点が十分解明されないのはまことに残念であります。私はいままでの答弁そのものからして、この法全体の中身からして、ほんとうに前時代的な法律案である、この法律案そのものは近代的な仮面をかぶった一つの暴力法案である、こういわざるを得ないことはまことに残念であります。  もう一回これは再提出する準備があるかどうか。最後まで強引にあなたはこれを行政措置にゆだねて、これを通してあとは運営の点にだけ民主的な点の期待をかけるだけか。もう一回これを引き下げて、そうして検討して提案し直すか、大臣としての決断を伺います。
  150. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 引き下げて再提出するというような気持ちは、現在のところはありません。現在の港湾行政、港湾労働法の欠点を是正してよりよくするための固い決意で、いま御指摘のように、これがかえって悪法になるというようなことがないようにしたい所存で改正案を提出いたしたのでありまして、先ほどからの御趣意に対しましても、これを通していただく場合には、従来の役所のやり方も根本的に改革して、港の職安も十分この法案趣旨を理解し、また事業主が、いま御質疑の点にあるようなことが絶対ないように、政府委員からの答弁ではがんじがらめといいますが、やはりいろいろな欠格条項認可条項、いろいろ労働大臣の権限を最大的に私は活用して、この改正案趣旨港湾労働行政並びに港湾労働法の現在の法を近代化するように運営いたしたいかたい決意であります。いまのままでは、これはちょっと何というか、行き話まった感を何とか打開したい所存で法の改正に向かったのでありまして、御指摘のようないろいろな点が、まだ何点もいろいろ御不審の点もありますが、かような点をよく意を体して法の運営に万全を期するように対処いたす所存であります。
  151. 島本虎三

    島本委員 前回は田口委員から、これまた的確に、羊の番をするのにオオカミをもってする法律案である、こういうような表現がありました。私もいまこの法律をいろいろ解明するために皆さんの御答弁を承りながら、これは前時代的な暴力団に十手とりなわを与えるようなものである、こういうように思った次第であります。まことにこれはもう、運営によっては史上最大の悪法に化するおそれがあるということを御警告申し上げまして、私の質問を終わる次第であります。
  152. 伊東正義

    ○伊東委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     午後一時三十二分休憩      ————◇—————     午後二時十八分開議
  153. 田川誠一

    田川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  休憩前の質疑を続けます。田中美智子君。
  154. 田中美智子

    田中(美)委員 港湾労働法の問題について質問させていただきます。  いままでと重複しますので、もう一度ちょっと確認いたしますけれども、大ざっぱに言いまして、今度の一部改正案というのは、いままで職安がやっていたことを地区協会がやるというところが基本的に変わったということなわけですね。——そういうことになりますと、まず地区協会の性格というものが、労働者にとっては非常に大きな影響が出てくると思うわけです。その点から質問させていただきたいと思います。  まず、地区協会の性格ですけれども、これはどういう人によって構成されるのか。
  155. 道正邦彦

    道正政府委員 各港ごと港湾労働を扱う事業主をもって会員にするということになります。
  156. 田中美智子

    田中(美)委員 港湾労働者を使っている事業主がこれに入るわけですね。そうすると、これまた港湾業者といわれている人たちと、それから倉庫の業者も入るわけですか。
  157. 道正邦彦

    道正政府委員 今回の建議におきまして倉庫の取り扱いについて触れております。いままでは、山側、海側と申しまして、陸上運送してきた荷物を倉庫に預けまして、今度は船に積むわけでございますが、海側のほうが三〇%以上では、港湾労働のときにはこれが少のうございますので、これをふやすということで一〇%以上に拡大いたしております。
  158. 田中美智子

    田中(美)委員 三〇%をふやすというのは、結局は日雇い港湾労働者の職域が広がるということになるわけですね。そういうことですね。そうしますと、倉庫業者も当然これに加入するということになりますね。そうすると今度は加入する人、業者ですけれども、日雇い労働者を使う事業主が全部入るわけですか。そこのところをもう一度正確にしていただきたい。
  159. 道正邦彦

    道正政府委員 一般的に申しますと、港湾労働波動性がございますので、常用労働者だけではまかない切れないというために一種のプールをつくるわけでございますが、私は全業者日雇い港湾労働者を何らかの形で使うので全員がお入りになるべきものと思います。ただ、中には常用だけで自分のところは十分だ、登録日雇い労働者を使わないというという業者も例外的にあろうかと思います。そういう方は会員になる実益がないわけでございますけれども、たてまえといたしましてはそれを排除するということになっておりません。私はそういう業者にありましても、港湾全体の問題でございますので、会員として入っていただいて御協力をいただきたいというふうに思っております。
  160. 田中美智子

    田中(美)委員 そうすると、入る事業主というのは任意に入ることになっているわけですから、入った人たちだけが納付金を払うことになるわけですね。
  161. 道正邦彦

    道正政府委員 納付金は、入らない場合でも、登録日雇い港湾労働者を使った場合には納めていただくわけです。ただし、いままでと違いましてプールシステムをつくりまして、トン当たり幾らという付加料金雇用調整手当の原資になっているわけでございます。これをバックするわけでございますが、その恩恵は受けられないということになるわけでございます。
  162. 田中美智子

    田中(美)委員 そうすると、任意に入っていても入っていなくても、港湾労働者は使うことができるわけですね。入っている人は船主のほうからお金、補助金がくるわけですね。それがこないということ、そのかわり納付金は必ず。それは何にどういう算定で払うわけですか、入っていない事業主は。
  163. 道正邦彦

    道正政府委員 四十八年度におきましては一人登録日雇い港湾労働者を使うと六百六十円納めることになっております。これは今後どうなりますか。毎年きめておりますけれども、きまった額を払っていただくということになるわけでございます。
  164. 田中美智子

    田中(美)委員 そうなりますと、そういう業者が今度地区協会をつくる、その業者の場合、その事業の中で役職をやっている業者ですね、そういう業者がこちらの地区協会役員というのはやることができるわけですか。兼職することができるわけですか。
  165. 道正邦彦

    道正政府委員 港湾業者会員になるわけでございますが、その中で規定に従いまして役員の御選出をいただくわけでございます。ただし、それには労働大臣認可が要るということになるわけでございます。したがって○○会社の社長さんが地区協会役員になるという例はもちろんあるわけでございます。
  166. 田中美智子

    田中(美)委員 そうすると、ほんとうの社長さんとか重役さんとかいう、そういう役職員がこの協会の役員をすることができるわけですね。そうすると、この地区協会はまさに業者そのものという感じですね。労働者はそういうふうに受け取っているわけですけれども、実際に中身もそういうわけですね。
  167. 道正邦彦

    道正政府委員 この協会の性格が業者をもって組織する団体でございますから、そういう意味ではそういうことになるわけでございます。
  168. 田中美智子

    田中(美)委員 そうすると、役職員というのは事業主のそういう役職になっている人たちがそのまま移ってくるということがあり得るわけですけれども、そこに働く職員ですね。こういう人たちが労働者にとっては一番密接な接触があるわけですね。こういう人たちの資格というのはどういうふうになっているのですか。どういう人を雇うようになるわけですか。
  169. 道正邦彦

    道正政府委員 職員につきましても欠格条項がございます。それから、労働大臣認可はございませんけれども、解任命令の規定は同じく動くわけでございます。その場合の処分は協会の職員であります。前歴がどういうことになるか、どういう方を職員にするか、それは別の問題でございますけれども、協会の職員でございます。
  170. 田中美智子

    田中(美)委員 もちろん協会の職員ですからそこで働くわけですからね。そうした人が窓口なり何なりにすわって、いまままでの職安と同じ仕事をするわけですね。この人たちの欠格条項というのはあるわけですか。
  171. 道正邦彦

    道正政府委員 ございます。
  172. 田中美智子

    田中(美)委員 どういうのでしょうか。
  173. 道正邦彦

    道正政府委員 改正法の第二十五条の二十七に役員欠格条項がきめてございますが、それを二十五条の三十で援用しているわけでございます。したがいまして、職員についても二十五条の二十七の欠格条項がかぶってくるわけであります。
  174. 田中美智子

    田中(美)委員 そうすると、こちらの欠格条項というのは普通の公務員と違うところがありますでしょうか。職安の職員を雇うときと。公務員になるときですが、ここの職員になる人のとは違いがありますでしょうか。
  175. 道正邦彦

    道正政府委員 公務員法との違いはすぐ調べましてお返事いたします。しかしながら、欠格条項自身は可能な限り厳格なものにしたつもりでございますが、公務員との比較はちょっと調べまして後ほどお答え申し上げます。
  176. 田中美智子

    田中(美)委員 これは、労働者が一番はだに感ずるのはこの職員なわけですね。何べんも申しますけれども、そういうところの人たちが前歴が何であるか何もわからない。そういうこともなしに、公務員ですとある程度——公務員にもいろいろあると思いますけれども、大体国民の良識として、公務員ならばある程度の常識は持っているんじゃないかというふうな軽い信頼感のようなものがあるわけですけれども、今度は業者が雇う職員なわけですから、そこのところが非常に心配なわけです。過去にどういう仕事をしていた人か、たとえばいままで手配師をしていたとか暴力団じゃなかったかと思うような人が、これははっきりわかりませんけれども、実際にいま目の前にいるわけです。御存じだと思いますけれども、実際にやみ雇用なんというようなことがやられているわけですから。名古屋の場合でも笹島あたりに、私も見ましたけれども、何々海運というトラックが堂々と来るわけです。そしてここから一日二十人、三十人、百人ぐらいのやみ雇用を連れていくということをしているわけです。そのしている人は横山さんとか郷さんとか、労働者はみんな知っているわけです。そういう人たちが、前の質問の中にも出てきましたけれども、今度この港湾労働法が通れば、いまに見ていろ、おまえたちひどい目にあうからなんというようなことをちょっとしたけんか、言い合いの中で出したりしているわけですね。ですから、現場の労働者というのは、職員にその人がなるのではないかという危惧を非常に持っているわけです。そういう人たちが窓口にすわったときには、理屈の上では多少いいように見えていても、それに対する労働者の信頼感というものはないわけですね。これは前の港湾労働法ができたときにても、結局前の暴力団と手配師が——全部暴力団ということではないけれども、暴力団のようにみんなに思われていた人たちが、港運業者の中の職員の肩書きをもっていろいろ動いているわけですね。そういう実績を見ているわけですから、今度もそういう人たちが職員になるのではないかという心配があるわけです。これが一番の心配だと思うのですけれども、この心配に対して労働大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  177. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 条項のどれに当てはまるか、あとで政府委員から答弁いたさせますけれども、条項はともかく、いま田中議員から御質問のような手配師だとか暴力的な行為をやる人、これは大体ブラックリストというか港の職安の者も知っております。そういう方が職員になるような場合には、条文のどれかにうまく当てはまればけっこうでありますが、当てはまらない場合でも労働大臣としてはさような地区協会認可はしません。これはこの委員会の私の答弁の中にはっきり出ていることと思いますから、さようなことがないように絶対行政的な措置でその対策を講ずる所存であります。  いま田中議員からいろいろお話しのように、この法案が通ったら見ておれというようなことを私もいろいろ聞きました。これはいろいろな方のいろいろな憶測とか意思というものはあると思いますが、さようなことがあったらこの法案趣旨が抹殺されますし改悪になりますから、さようなことは絶対にないように——この条項はあとから答弁させますけれども、当てはまろうが当てはまるまいが、さような地区協会設立認可しません。また、せぬからといってあとから入るような場合には、これに対しては勧告もし、または伝家の宝刀も抜かざるを得ぬという方針で、確たる方針で臨む所存であります。
  178. 田中美智子

    田中(美)委員 確たる方針というふうに言われますけれども、職員の一人一人の問題について労働大臣がそこまでできるというふうにはわれわれは思えませんし、そしていまの社会の中で、いつも労働問題のときに婦人の労働のことを言いますけれども、差別賃金の問題にしても、これは明らかに労基法違反であるということがわかっていても、ここで労働大臣がそれは誤りだと言われていても、それがすぐにはできないというふうな情勢の中にあって、こういうあいまいな職員が入ってくるのじゃないか、こういう要素は、ことばで確固とすると言われましても、非常に私も信じられない感じがしますし、労働者もこれは非常に不安だと思う、そういうふうに私は思います。第一これを雇う人が事業主なわけですから、この事業主が全部悪いということではないにしても、やみ雇用が間違っているということは、これは職安も知っているのでしょうけれども見のがされておるし、現に名古屋の笹島に行けばいつも見られるというので私たち行ってみたら、ちゃんと来ているわけです。そして一ぱい連れていっているわけです。それは業者がやっておるわけですね。それもこっそりじゃなく堂々と、さっき言ったようにトラックでやっておる。その張本人ですね。いわば罪を犯している人、この人が今度は地区協会にそのままの形で、役員としてその者が入ってくる。その人が雇った職員なんですからね。ですから今後、このあとで質問していきますけれども、いろいろないままでの欠陥、やみ雇用とか偽装の常用とか、そういったものが行なわれないという保証はいままでさえなかったのに、これからもっとそれがなくなる。だれが考えても、いままでの張本人が今度は職安の肩がわりをするわけですから、もっとそういうことを堂々と平気でやっていくというふうに考えられるわけです。これはだれが聞いても、自民党と共産党・革新共同の違いというのじゃなくて、堂々とそれをやっておる。きょうだって、おそらくけさだって笹島でやっていたわけですね。その業者が職安のかわりをやるのですからね。この地区協会の性格から見て、いままでの矛盾というものがなくなっていく保証というのがどこにあるのだろうというふうに、ふしぎに思うのですけれども、その点……。
  179. 道正邦彦

    道正政府委員 先ほどの公務員との比較でございますが、先に申し上げます。公務員につきましては、国家公務員法の三十八条に欠格条項があります。これは「禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者」となっております。改正法案欠格条項につきましては、さらに「二年を経過しないもの」ということでございますので、改正法案欠格条項のほうが厳重になっております。  それから手配師やあるいは適当でない者が入り込まないかという御質問でございますが、役員につきましては労働大臣認可でございますから、これは入り込む余地がない。それから職員につきましては、役員——労働大臣がこの人は適当だという人がやる人事でございますから、私は慎重に人選してくれるものと確信いたしますが、かりに万々一そういう適当でない者が入ってきた場合には、これは解任命令ということで排除するということになるわけでございます。
  180. 田中美智子

    田中(美)委員 ここは非常に微妙なところですので、労働大臣認可だからといって、大臣、あまり信頼性がないように私は思うのです。何しろそういう業者が雇っているわけですからね。ですから、そういう点で非常にこの地区協会の性格それ自体に問題があるというふうに思います。  次の質問に移りますけれども、特に倉庫は、いままで神戸とか大阪のほうではわりあいに倉庫業者というのは日雇いを使っていたようですけれども、東京港のようなところではあまり使っていなかった。そういう点では、多少東京港などでは倉庫の日雇い労働者の職域が今度の改正で広がるということはあり得るわけですね。ただその中身を見てみますと、倉庫で働いている労働者は常雇いのような形になった季節労働者がほとんどなんですね。この季節労働者が今度地区協会日雇いのほうに登録させられることになるというふうに聞きましたけれども、そうなんでしょうか。
  181. 道正邦彦

    道正政府委員 従来は二カ月ということで切っておりまして、したがってそれ以上は常用でございますので、ほんとうの常用として使うつもりはないにもかかわらず、法律仕組みがそうなっておりますので、一種の脱法的に季節労働者を使うという実態があったわけでございます。それがひいては登録港湾労働者雇用機会を狭めますので、従来とも行政指導である程度の規制を加えてまいっておりますけれども、今回の改正におきましては定義を六カ月というふうに拡大したわけでありまして、これによって脱法行為はかなり防げるというふうに思っております。
  182. 田中美智子

    田中(美)委員 私の言うのは脱法行為というよりも、季節労働者がいままでは多分に常雇いのような待遇を受けていたわけですね。労働者の立場から考えまして、法をゆるくして法に触れなくなったとか、そういう問題ではなくて、労働者の身分がどうなるかということがいま一番問題なわけですね。この季節労働者は多分に常雇いのような形で働いていたわけですね。今度は登録して日雇いになるわけですからね。そうしますと、季節労働者は非常に不安なものを持っているわけです。格下げというのはことばが適当でありませんけれども、むしろ何か非常に不安定になるんではないか、就労が不安定になるんではないかという心配をしているわけです。その点はどうでしょうか。
  183. 道正邦彦

    道正政府委員 港調審の場におきましてもそういう御議論がございました。登録日雇い労働者の保護といいますか、雇用機会確保するという意味からいけばそれはいいかもわからぬけれども、常用の労働者のほうから見れば不安定になるわけで、問題があるというような御議論がございました。しかし、登録日雇い港湾労働者雇用機会がなぜ大幅に減ってきているかという原因を深求いたしますと、何と申しましても非常に大きな原因の一つが季節労務の使用であったわけでございますので、しからば期間をどこで切るかという問題がございましたけれども、一応六カ月という線で切りまして、脱法行為を防ぐということをねらいとして今回の改正に踏み切ったわけでございます。
  184. 田中美智子

    田中(美)委員 いまの私の質問に対してはまっすぐに答えられないから、少しゆがんでお答えになったんだと思いますけれども、結局季節労働者にとってみれば、今度は身分が不安定になるんじゃないかという不安が非常にあると同時に、今度は日雇い労働者のほうから見ますと、結局数が多くなるわけですからね。季節労働者日雇い労働者の中に入ってくるわけですね。そういう点では、登録したいという人の数がふえてくるわけです。     〔委員長退席、伊東委員長代理着席〕 そして今度は、地区協会登録をさせたり、それから取り消したりする権限があるわけですから、そうなってきますと、いままでなれた季節労働者のほうをえこひいきするんではないかという不安というのが、今度は日雇い労働者のほうにあるわけですね。ですから、日雇い労働者のほうは自分たちのほうか排除されやしないかというふうに思うし、季節労働者は、いままで脱法であるか何かわからないけれども、擬装であるか何かわからないけれども、自分たちはある程度の恩恵が多少あったものがなくなっていくのだ、そういう意味で、両方に非常に不満が満ちているわけですね。そういう点から、結局いままで職安でやられていたような輪番制というものがくずされていくのでないか、そういう公平に就労できるというものがこういう内部の問題からくずされていくのではないかという不安を持っているわけです。これは絶対に公平にやるのが当然だと思うのですけれども、いまでも結局業者労働者の好ききらいを言うというようなことは非常にたくさんあるわけですが、もっとそれがひどくなるというふうに思いますけれども、その輪番制の保証というのがこういう情勢の中で一体どういうふうに保証されるのか、その点について……。
  185. 道正邦彦

    道正政府委員 これは雇用調整規程の定め方の問題になってくると思います。原則といたしましては就労機会の公平をはかるということはもう至上命令でございまして、したがいまして、いわゆる輪番制というのが一番望ましい紹介方式である場合が多いと思います。ただ、年齢であるとか体力であるとか、そういうものによって必ずしも一がいにいかない場合があると思いますが、これは別の問題だと思います。原則としましては紹介の公平を期するという意味で、これはいわゆる従来季節的に雇用されていた人であろうと従来の登録日雇いの方であろうと、同じに扱うべき性質のものと考えます。
  186. 田中美智子

    田中(美)委員 いまのお答えも結局、思うとか確信するとかいうことばが、さっきから協会の職員についてもそうですし、今度の場合でも、輪番制が公平にやれるであろうと思うということでは、実際には、現にいまでも非常に不公平になっている、それが今度業者が全部やるわけですから、輪番制がどういうふうに守られるのかという保証というものがない限りは、少なくとも労働者はいま、前よりももっと、職安の職員に対するよりももっと大きな不信感を持っているわけですから、そういう中で輪番制が守られる保証というものがきちっとなければやはり納得いかないと思うのですが、これはただ労働省として、思うということだけでは困るわけですけれども、どういうふうに輪番制が守られていくのか。
  187. 道正邦彦

    道正政府委員 いままでは安定所がやっておりましたので、雇用調整規程というものは役所限りで行政運営の指針として定めておったわけでございますが、今回の法律改正によりまして、地区協会に従来の安定所でやっておりました仕事をまかせるわけでございますので、白紙委任するわけにいかないわけであります。その細部は雇用調整規程できめるわけでございます。その雇用調整規程をきめる場合に、まず地区協会関係労働者意見を聞く、その意見を付して労働大臣認可申請が出てくるわけでございますが、労働大臣はその認可をする場合には、また中央職業安定審議会意見を聞いて定める、そういう過程で一番重要な問題の紹介、すなわち就職の機会の均等をはかるという問題は処理をされる。したがって、関係者がみんな入って議論をしてきめるわけでございますから、妥当な調整規程がきめられるものという仕組みになっておるわけでございます。
  188. 田中美智子

    田中(美)委員 結局、いままでよりもよくなるという保証は何にもないということだと思います。そして業者がやるわけですから、そういう点でやはりいままでよりも悪くなるのではないかというふうに、この輪番制というのは非常に労働者にとっては大切なことだと思うのですけれども、これも今度の一部改正ではいままでよりも悪くなるというふうに私は思うわけです。こういうふうになりますと、季節労働者はわりあいに元気な人も若い人も多数入ってくると思うわけですけれども、日雇い労働者のほうは、今度の改正の理由に、どんどん減っていっているというようなことも原因の一つになってきておりますけれども、やはり労働条件というものが悪いということから、結局ここで考えると、そこで働いていて年をとってきた人たちを追い出していくというふうに、非常にここの輪番制の問題のところで私は危惧をするわけです。その危惧がここに非常にあると思うわけですね。少しからだの弱い人とか、それから年をとった人たちというのがどんどん出されていくというふうに思います。その一つに十一条の登録の取り消しの問題があるわけですけれども、いままでは能力のない者とか適格性のない者とか、そういうふうな者を取り消すということがあったわけですね。こういう能力がない、適格性がないということは、これはいままでも同じですけれども、そうですね、ここは同じですけれども、いま非常に港湾労働の問題が日本だけでなく、世界の問題になっているわけですね。あちこちでストがあったり、アメリカの港湾労働者のストがあったので日本のレモンが上がったなんということを主婦たちは言うわけですね。そういうふうに港湾労働者の問題がこんなに大きくなってきたということは、世界の港湾労働者の共通点として、やはりコンテナ化とか機械化というものが進んできて、いままでの労働者のタイプでないものを求めるという方向に急速に進んでいるわけですね。ですから、きのうまでは能力があった労働者であるのに、極端に言えばきょうは不適格者であるというふうになるという、そういう情勢というのが出てきているんだと思います。そういうことからいろいろ訓練の問題とかも出てきているわけです。いままであった、能力のない者、適格性のない者というのが、新しい要素として、労働者のほうに能力がないのじゃなくて、そちらのほうが変わってきたことによって、それに適応しなくなってきているという問題であるならば、これは当然労働者責任ではない。それを登録を取り消していくというのは非常におかしいと思うのですね。そういう意味で、いままであったこの問題も、やはり労働者が年をとったり、からだが弱かったり、またはけがをしたり、非常にけがをする人が多いわけですから、けがのあとが十分じゃなかったり、多少障害が残っている人というのが能力がない、適格性がないということで切られていくということは非常にあり得るんではないかという危惧を持つわけです。それについてはどのように思われますか。機械化、近代化が進む中で、いままでは能力がないといわれなかった労働者が、自分は変わっていないのに、そうなっていくという状態というものについて……。
  189. 道正邦彦

    道正政府委員 御指摘のように、港湾荷役の機械化、近代化は目ざましいものがございます。その雇用に対する影響はいろいろあるかと思います。いままでの在来業種であれば年をとればできない仕事が、機械化されたために年をとっても就労が可能であるというふうな場合もあれば、いま御指摘のような逆の場合も、これはあり得ると思います。いずれにいたしましても、一年たてば一つ年をとっていくわけでございます。それが長年港湾労働者として働いてこられた方々であれば、年をとって能力が落ちたから、能力がなくなったのでだめだという扱いは、これはできないと思います。したがって、個々の労働者の能力というものを、近代荷役の方法は変わってまいりますけれども、各港ごとの実情に合わせて適当な職場にごあっせんするということで、きめこまかく対処していくということにならざるを得ないと思います。
  190. 田中美智子

    田中(美)委員 そういう意味からしましても、やはり労働者が一番心配なのは、いま言ったような地区協会の性格がどうだとか、それから取り消しの問題とか、輪番制がどうなっていくとか、そういうことが非常に心配なわけです。それに近代化に自分が落とされていかないかという不安というものを持っているわけです。いままでのものでも不安である。だからそれを一部改正していいものになるんだというなら納得がいくわけですけれども、今度はもう一つ地区協会のきめた訓練や教育というものをしばしば拒んだ場合には取り消しをするというふうなことが、今度新しく挿入されているわけですけれども、これは一体どういうことなんですか。
  191. 道正邦彦

    道正政府委員 登録制度をとります場合に、不就労の場合にどうするかという問題が大きな問題になるわけでございます。基本的には不就労の手当を支給して生活をささえていただくということでございますけれども、せっかく手当を支給するわけでございますので、当該労働者の希望、能力等を十分参酌しながら、訓練を受けてもらう、これも私はいわば当然だと思います。その訓練を受けることによって職場もそれだけ広がるわけでございますから、そういうことは制度として十分合理性がある。ただその場合に、あくまで本人の希望あるいは能力というものを十分しんしゃくして訓練のごあっせんをするわけでございます。その際に、だれが見ても正当な理由がなく、訓練を受けることを、しかもしばしば拒むというような場合に、これは登録の取り消しの事由になるということは、それなりにまた合理性があるのじゃないかというふうに思います。
  192. 田中美智子

    田中(美)委員 登録取り消しというのは、労働者にとっては首切りのことですからね、代議士にすれば落選するようなことなのですからね、たいへんなことなわけですよ。そういうものを教育を受けなかったから——確かに教育や訓練というものをさせてほしいということは労働者の希望ですから、こういうものを第三者がつくって、そういうところに行って技術をつけてくれば、またいままで以上にそこで働けるというのであって、労働者は安心するわけなんですね。しかし今度地区協会がその教育をするわけなのです。業者ですから、これはどう考えたって、笹島あたりに来ている業者のやり方を見ていますと、私どもすべてを知っているわけじゃありませんけれども、どう見たって労働者にとっては信頼できないと思う。そういう人たちがするわけですね。ですから全部をだめとは言いませんけれども、地区協会がやる教育を受けなかったから首——これは、こういうものがあるから、ここでずっと働きたい者はここで訓練してくれば、よりここでいやすく、働けるんだというのならよくわかるわけです。行かなかったから首ということですからね。いま局長がおっしゃったように、だれが見てもということは、これは人によって価値観は非常に大きく違うわけです。その中でどういうような教育がされるかということは、見ないことには、だれが見てもとはいえないわけです。たとえばほかの会社にしても、普通の会社で技術訓練をするというふうな場合に、大学を出てきたばかりの人に、ドイツ語をやったことのない人に、いまからドイツ語をやらなければ、できなければこの会社ではおられないからやれといえば、若い人はそれからでも、その会社で働きたいのなら一生懸命ドイツ語を最初からやるでしょう。しかし五十を過ぎた人で、いままで語学をやったことがない人が、いまからそれをやらなかったら首なんだということは、どんなに過酷なものかということはわかるわけですね。そういう意味で、教育を受けなかったら首だということは非常におかしいし、それからそういうドイツ語の例ではなくて、今度はその中でどういうことをやっているか。たとえばその中でいま職場訓練というのを——私などもいままで、過去にいろいろな会社で職業教育というものを、トヨタなどで頼まれてやったことがあるわけです。そういう中でほかの人がどういう教育をやっているかを見ますと、やはり事業主に対して忠誠を誓って、すなおに、まじめに働く労働者がりっぱなんだというふうな教育を非常にしているわけなんですね。私はそういうことをしなかったということで三年くらいで首になりましたけれども、そういうふうな教育をされる、そういうものを拒んだという場合にこれが首につながるということでは、ここのところは私は非常に問題があるというふうに思う。どうしてこんなものを、いままでなかったこんなものを入れたのか、それも、どこか別でつくっているものでも問題ですのに、地区協会が教育するわけですね。この中で思想教育みたいなものを一般教育という名によってやるということは多分にあるわけです。ですから、ものの考え方とかそういうものは、労働組合がやるというなら別ですけれども、ここでやって首というのは、とてもおかしいというふうに私は思うのですが、労働大臣はそれをどう思われますか。教育を受けないと首ということは、どう思いますか。
  193. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 田中先生の御質問の中にあります御懸念はたいへんごもっともだと思いますが、この港湾労働法規定されております訓練事項の任務といいますか、これは実は改正前の現行法にも不就労時に訓練するという規定がございます。ただこの場合は詳細な規定がございませんので、確かにそういう御懸念があるかと思いますが、今回の改正法によりますと、訓練の基準は、一般職業訓練の職業訓練法によりまして、訓練の内容、施設基準とかいったものは定められております。それに準じまして港湾労働法に基づきます規程で、どのような訓練をするか、基準が定められることになっております。この基準をきめるにつきましては、関係労働者意見を聞き、それをもとにして労働大臣が規程の認可をいたしますが、労働大臣認可をいたします場合にはさらに審議会意見を聞いて、その上で認可がなされることになっておりますので、そういう一般教養訓練とかあるいは思想的な教育とか、そういったことは全く内容に含まれておりません。そういうことは万あり得ないことでございます。  したがいまして、先生先ほど御指摘のように、この港湾労働法が制定されました当時は、港湾荷役の内容もてんびんとか肩とかハリとか非常に旧時代的なものでございましたけれども、それから技術革新が進みまして、港湾荷役の機械化が進んでおります。港湾荷役の作業も非常に大きく変わってきております。今後もさらに変わるだろうと思いますが、そういった港湾荷役の近代化、機械化が進むことによりまして、新しい港湾荷役の態様がこれからますます出てまいります。それに対応し得るような能力をそれぞれ登録日雇い労働者に備えさせる、そのための訓練でございますので、したがって、基準を定める場合にはそういうことを趣旨として定めることになりますので、先生の御懸念のことは万あり得ないと確信いたしております。
  194. 田中美智子

    田中(美)委員 訓練局長が万あり得ないと確信しただけでは困るんで、実際にそういうのが行なわれなければいいわけですけれども、いまは実際、会社の中なんかでどんどん社内教育をやっているわけです。極端にいえば反共教育をやっているわけですからね。私たちは会社が反共教育をやっているのをいまどうのこうのと言うわけではないですけれども、首につながる、それをしなかったら首につながるということは、幾らここのところで万あり得ないと思いましても、これは地区協会がやるのですからね。こんなことは常識で、だれが考えてみたってやられるおそれというのはあるわけですよ。だからそれがどうなるかということは、どういう形でつくるかということは別ですけれども、どこかにそういう訓練所を第三者団体でつくるというならあれですけれども、首切りにこれがつながるというところに——今度の港湾労働法どこを見まわしても、何しろいわゆる業者が自由自在に労働者を動かせる。自由自在というのは少しオーバーな言い方で、どこかにちょっちょっと歯どめがあるわけです。そうした歯どめを理由にしてこれを運用すればといったって、そうではない、反対ですよ。全部がほんとうに労働者にいいようになっていて、その中であまりにもわがままするならば歯どめ、こういうならまだわかりますけれども、逆に何でも業者が好きなようにできるようになっていてちょっちょっと歯どめが置いてある、こういうことです。いまの社会の中では憲法さえ守られていないということは、労働大臣いらっしゃるからよけい言いたいわけですけれども、男女同権というのはほんとうに守られていないわけです。具体的にいろいろなものが出ているわけです。そんなものでも守られない世の中で、ここで差別賃金のことを言ったってそれがすぐにはいかない、そういう中でこういうことかやられて、守られるという保証はない。これは決して私がいやがらせの年齢だからそういうように思うのではなくて、ほんとうにひどいと思うのですね。だれが見たってひどいというふうに私は思うのです。それでちょっと心配になりますので、どういうものができるのかということかできてないところについて、だいじょうぶだ、けれども首につながるわけですからね。通ってしまえば、法律ですから、どんな悪い法律でも触れれば犯罪者になってしまうわけですから、首切られてしまう。  いま横浜に横浜港湾カレッジというのがあるわけですね、これは一体どういうふうになっているのですか。
  195. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 ただいま私が万さようなことはあり得ないと確信いたしますと申し上げましたが、少し申し上げ方が弱いと思います。先生指摘の訓練の主体あるいは内容、これについて先ほど来非常に御懸念を御開陳になりましたけれども、港湾運送事業者が自分のところの雇用している常用労働者を教育訓練いたしますのと、それからこの法律に基づいて地区協会が不就労時に登録日雇い労働者を訓練いたしますのとは全く別でございます。業者が自分のところの従業員を訓練するのは、これはこの会社あるいは業者の必要に応じて訓練内容はきめられると思いますが、登録日雇い港湾労働者地区協会が訓練いたします不就労時の訓練は、業者が自分でかってな訓練をやるのと全く違いまして、法に定められました規程に基づいて、その基準に応じた内容の訓練しか行ない得ないことになっております。したがって、私は遠慮いたしまして、万あり得ないと確信いたしますと申し上げましたけれども、そういったことは絶対に起こり得ない問題でございます。その点業者の訓練と、それから法律に基づきます登録日雇い港湾労働者の訓練とは全く別ものであるということを申し上げておきたいと思います。  それから、ただいまお話しの横浜の神奈川県港湾職業訓練センターでございますが、昨年四月に完成いたしまして、神奈川県港湾教育訓練協会という業者団体がございますが、そこでの先ほど来先生指摘になっております港湾運送事業者のいわゆる事業内訓練と、雇用促進事業団が設置いたしております神奈川総合高等職業訓練校、これの港湾分校、これが両方併設されております。そこで港湾運送事業者がやります事業内訓練は、自分のところの常用労働者の訓練を実施いたしております。同時に並行いたしましてその施設の内部で、神奈川総合高等職業訓練校では港湾荷役科という科を設けまして、高等学校の新規卒業者を対象にいたしまして港湾荷役の機械関係の訓練を実施いたしております。横浜港の場合の例をあげますと、この法律ができました場合に、この施設がかなり大きなものでございまして余裕がございますので、登録日雇い港湾労働者の訓練もこの総合高等訓練校、ここに委託いたしまして、そこで実施いたす、こういうことになろうかと考えております。
  196. 田中美智子

    田中(美)委員 そうするとこの中のたとえば職場適応訓練のようなところとか、資格取得、質の向上とか、そういうところに日雇い労働者を連れてくるということはあり得るわけですね。するとこれは地区協会がやる教育訓練とどういう関係があるわけですか。これは地区協会がやっているわけではないですね。
  197. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 この職業訓練センターは港湾荷役関係の訓練を専門に行なっております。その主体は、ただいま申し上げましたように、港湾運送事業者を主体にした団体の訓練とそれから神奈川総合高等職業訓練校と、この二つが併立いたしております。したがいまして、もし地区協会がこの法律に基づきます訓練をやる場合には、その総合高等職業訓練校に委託をしてやる。地区協会みずからやるわけではございません。したがいまして、その高等訓練校に委託をして、そして定められた基準によって訓練を実施していく、こういうことになるわけでございます。
  198. 田中美智子

    田中(美)委員 私の質問は、何しろその訓練を拒否する人がすぐに首につながるということが、これが私から見れば非常にくせものだというふうに思うわけです。それと、取り消すときのことばづかいというもののいままでの対比が出ておりますね。こういうのでずっと比べてみていったわけですけれども、先ほどもちょっと出ておりましたけれども、同じことを言うにもことばづかいが非常に変わってきているわけですね。それは制度が違ってきたから違うということもあり得るかもしれませんけれども、たとえば取り消しについていままでは、労働大臣の指示でもってやるということになれば労働大臣責任があるわけですね、主体性があるわけですね。今度は労働大臣の承認を得てということですから、ですから職安のときよりも——職安のときでしたら労働大臣の指示で取り消す。今度の場合は労働大臣の承認を得て地区協会が自由に取り消せるわけですね。こういうところを見ましても、最も労働者にとって切実な問題というのは、首はどうなるかということが一番切実な問題です。その点が今度は法の上で見て非常に不安定になっている、そういうふうに私は思うわけです。
  199. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 最近、職業訓練というのは各界、各方面から非常に強い要請を受けておりまして、労働者として働く以上は生涯にわたってそれぞれの希望あるいは時代の流れ、あるいは新しい作業内容、新しい作業機械、こういったものに応ずるような訓練をすべきだ、こういう話をあちこちから承っております。港湾労働者の場合でも登録日雇い港湾労働者というのは、要するに自分は登録されている限りは港湾労働者として港湾荷役に従事したい、こういうことだと思うのです。したがいまして、不就労の場合に何らかの形で、できるならば、能力があるならば、受け入れ能力があれば不就労時にはすべて訓練に当てるというのがたてまえだと私は思うのです。そうしていろいろな港湾荷役に新しい機械が導入される、新しい作業が取り入れられる、それに適応できるような能力を備えさせるのが港湾労働法の目的であり、登録日雇い港湾労働者としての希望だろうと思います。したがいまして、先ほど申し上げましたように、訓練の基準が適正な基準が定められるということになりますと、その訓練をすら受けない、受けたくないという、正当な理由がなくて——たとえば病気でぐあいが悪いから受けられない、そういった理由の場合は別といたしまして、何ら正当な理由がなくて、定められた基準による訓練を受けることを希望しないということは、とりもなおさず登録日雇い港湾労働者であることをみずから否定することになるだろうと私は思います。そういう趣旨のことを先ほど来安定局長は申し上げておるわけでございまして、地区協会の恣意な決定によって取り消されるものではない、私はかように考えております。
  200. 田中美智子

    田中(美)委員 それはもう、何も訓練を拒否したから——それにはいろいろ訓練の中身を、どんなことをするか見てみなければわからないことですから、それが首につながるというそれをそういうふうに解釈しなくたって、もしほんとうにだれが見ても、これを受ければ、楽に訓練も受けられるし、一定の時間がたてば適格性が出るというならば、それを受けない場合だったら前のままで、能力がないとか適格性がないというところで取り消しはできるはずなんですね。それなのにこれをわざわざくっつけているというところに非常に私は疑問に思います。  それで今度は大臣に伺いたいのですけれども、いままでは大臣が指示していたものを、今度承認にしていったということはやはりこれはゆるめてないですか。それだけじゃないですよ。全体の取り消しの場合に。
  201. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 指示は、御存じのとおり、私がやらなくても関係の港の所管のところから指示する。承認となると、向こうからいってきたものをこちらが承認する、字句からいくとそうなりますが、字句にこだわると何だか弱くなったような感じがありますけれども、これは同じと見て間違いありません。事業主が訓練をするというたてまえでありますから、そこから申し出があってこちらが承認する、せぬということに法律がなったと思いますけれども、決して首を切るのを承認するとか、そういうことはない。これも懸念がないと思います。特別の訓練をしない、私はやめた、こういう特殊な方以外はさようなケースが起こることはあり得ないと私も思っておりますし、またこれは行政措置で、ただもうおどしてやるというようなことも、訓練そのものが地区協会がやるのではありませんし、従来の訓練関係政府がやっておる訓練の委託でありますから、この点だけはそう神経質にとらなくても心配ないと思います。ただ、なかろうというようなことでなくて、これはない。  それから前の点で、田中議員にもう一度はっきり申しますか、役職員の問題、これはなかろうと言ったのではありません。私は速記にも残して、かようなことは絶対ないようにという行政措置で必ずやります、こう言って確約いたしておりますから、どうぞ役職員の問題、手配師とか暴力に関係あるような者は、これが職員としても入り込まないように、これは厳重に監督をするようにいたします。
  202. 田中美智子

    田中(美)委員 いまおっしゃったように、指示と承認とは実際には変わらないのだというのならば、何も弱めなくてもいい。私はこれ一つだけでなくて、ずっと前から言ってきたように、どこを見ましてもゆるめられている。どこを見ても労働者にとっては不安定になる、不安だというものの一つとして、やはりこの指示と承認のことばというのは、神経質のようですけれども、やはり何かここにそちら側の本心かちらりと出ているのではないかというふうに感ずるわけです。  それから、訓練をするときに雇用調整手当でするわけですか。これはどうしてですか。普通は会社なんかで社員教育をするというときは、ちゃんと月給をもらいながらやっているわけです。これはどうしてこれでやるわけですか。
  203. 道正邦彦

    道正政府委員 指示と承認の関係でございますが、誤解があるといけませんので、承認が要るのは十二条の場合でございまして、定数が減少した場合のことでございます。一般的には登録委員会意見を聞いてきめるということになっておりますので、十一条の場合は登録委員会意見を聞いてきめるということになっております。労働大臣の承認の問題は出てまいりません。  それから、訓練の場合でございますが、これは不就労時にただ単に手当を支給して何もしないというよりは、訓練を受けて能力を向上させるということが労働者にとってもプラスであるという趣旨からこういう制度を設けているわけでございますので、手当については同じく不就労の際の生活保障という趣旨の調整手当というようなことにとどめているわけでございます。
  204. 田中美智子

    田中(美)委員 先ほどからILOの問題が出ておりましたけれども、他の工業と変らないようにということがいわれているわけですね。そういうところに何でも少しずつ、非常に労働条件も悪い、労働時間が長いということも、いま問題になっているわけです。そういう点から見ましても、ここでも私はやはりおかしいというふうな感じがするわけです。  時間がどんどん過ぎてしまいますので、次に移りますけれども、日雇い労働者の共通の願いとしてあることは、雇われる数というのは絶対数が減っていくという傾向にあるわけですから、そういう中で、何とかして職域を広げていくということは、労働省としても十分にやっていく必要があるというふうに思うのですね。そういう中で、名古屋で共同手配をやっているわけです。これはどういうことば使いをしたらいいのか私わかりませんけれども、グループ制とかブロック制とか共同手配とか、そういうようなことを言っております。名古屋はこれは有名なんですね。前からやられているわけです。これはブロックをつくりまして、たとえば藤木海運とか伊勢湾海運とか名港海運とかいう、そういうのが集まっておりまして、その中で常用している労働者というものをほかのところにそのブロックの中では相互融通をするということをやっているわけですね。これは職安法四十四条に違反しているのじゃないかと思うわけです。こういうことが公然とされているということは、そういうことから結果は、表を見ますと、名古屋港は登録が圧倒的に少ないです。名古屋港だけが少ないわけですね。それを見ましても、なぜそこが少ないかということをお聞きしたいわけですけれども、どう考えても、こういう共同手配というのかブロック制というのか、こういうものがあるということ、そういうことが日雇い労働者仕事をここでずっと取ってしまっているわけですね。そこでまた、そこの常雇いの労働者は非常に長時間労働になっているというような状態になっているわけです。その点をどの程度労働省側ではつかんでいらっしゃるのか、それに対してどういうふうにいままで対処してこられたのか、今後どうしていくのかということをお聞きしたいと思います。
  205. 道正邦彦

    道正政府委員 先ほども島本委員にお答えしたのでございますけれども、元請事業主が下請事業者の使用について調整をするということ自体は、荷物が一ぱい来れば、これは一つの下請業者ではまかない切れないということになれば、複数の下請業者に出すことは、これは許されると思うのでございます。しかし、その間に御指摘のように、労基法違反の事実があれば、これは厳正に措置をしなければいかぬという問題になろうかと思います。要は、法律違反のない形で、すっきりした形でいわゆる下請調整が行なわれるならば、これは法律違反という問題にはならぬかと思います。  ただ、御指摘のように、そのことによって登録日雇い労働者就労機会を狭めるという懸念、これは適法に下請調整をやるならば問題ないわけでございますけれども、実際問題としてそういう場合があることも事実かと思いますが、この点につきましては、登録日雇い労働者について雇用調整計画に、月何日にするか、これは港ごとの事情もございましょう、労働大臣法律規定で定めるわけでございますから、その日数を確保する、これは日雇い労働者については当然やらなければならないことでございます。いずれにいたしましても、下請調整については、下請調整と称して労働者の相互融通が行なわれ、法律違反の事態を生ずる、これは絶対に避けるように指導、監督してまいる考えでございます。
  206. 田中美智子

    田中(美)委員 指導監督してまいるつもり——つもりはいいんですけれども、実際にそれがきちんとなされない限りは、名古屋港の場合は、ほかは大体定数登録数というのがとんとんにいっているわけですけれども、名古屋港だけは表を見てみましても、ぱんと半分ぐらいですね。ですから、これはどう見たって相互融通している。ほかにどういう理由があるかというふうに私は思うわけです。  それで、いまここに、私どもが名古屋港に行って調べてきたわけですけれども、これは四月三十日の表なんですね。これで相互融通している確かな——会社側は、貨物がたくさん来たから、これはハッチごとに違う業者に頼んでいるんだから、同じ船のところで働いているが、それは違うんだ。外から見ればそんなふうに見えますね。ですけれども、実際彼らが——だれでもこれはもう常識になっているんです。名古屋港だけでなくて、ほかの港でも、名古屋ではああやっている、ああいうことになったら困るんだぞと、こう言っているわけです。今度の港湾労働法の一部改正が出たときに、こういうふうになるのじゃないかというふうな懸念というものを持たれるくらいに、これは公然の秘密のようにやられている。これを労働省が指導監督していくつもりだという口の下からやられているわけです。これは私は四月三十日の一日のものを見てきたわけです。これはこまかく出ているわけです。どこがやったかというのが、これは暗号みたいにして書いているのですね。これは暗号と合わせてみますと、藤木工業というところからカムカットとかなんとかという船に十人来ているというふうに、常用労働者が来ている数なんですね。これを総計してみますと、一口というのが何名か、十三名から十四名ですから、必ずしも数ははっきりしませんので総計ははっきりしませんけれども、ここに口数が書いてあるわけです。そうして足してみますと、大体百四名から百十二名という数になっているわけです。こういうのが毎日出ているわけですね。こういうことがなされているわけです。ですから、こういうことがあるから、これは毎日百名前後ということがなされているとするならば——これは偶然四月三十日です。これはもう当然定数に満たない。そうすると、定数に満たないから、この次定数を減していくというふうにすれば、どんどん削られていってしまうわけですね。この問題というものは私は労働省としては、やっていく、指導監督していくというなら、至急この調査をしていただきたい。こういうものは絶対にだれが見てもあり得ません。これは名古屋港の特徴なんですから、特徴としてだれでも港湾関係の人なら常識のように知っている。あああれかと、こう言っているわけです。理屈をいえば、荷物はこうなっていると言うけれども、こういうものが出ているわけですから、ちゃんと労働省が——私のような者が行ったってこういうものが手に入るわけですから、それほど公然とやっているのです。ですから、御存じないとすればずいぶん怠慢だと思うのですけれども……(「知っているんだ」と呼ぶ者あり)知っていて知らないふりをしているんだと私は思いますけれども、それをやはり徹底的に調査するほうが先じゃないかというふうに思うわけです。こんなことを許しているということは許されないと思います。
  207. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 これはまあ政府委員から答弁するよりも、私が信念を持ってお答えいたしますが、下請請負関係は、元請がこっちの下請にやる、こっちの下請にやる、これは、そのときによって、その事情事情によって、これは供給事業で許されておるのでございますが、それが、下請業ということに名をかって結局共同手配ということで手配をしてあっちこっちやるということは、現在でも行なわれておるということを私、良心をもって否定することができないということもあろうと思われます。このことにつきましては、現行法であろうが今回の改正が通った場合でも同様でありまして、これはもうさっそく港の職員を通じて、かようなことが現時点においてもないように厳重にこれが指導、そして違反の場合にはびしびしとやらなくてはならぬと思います。こういうことが、いろいろなことが山積して今回の改正案になった要素にもなっておりますので、改正法が通ろうが通るまいが、これはやらなければならぬことでありますから、厳重にやらすように行政指導をいまからやらせます。
  208. 田中美智子

    田中(美)委員 それではさっそく行ってください。それこそもう私が行ってもこういうものが手に入るくらいなんですから、労働大臣、お連れしますから、もしあれでしたら名港に大臣みずから乗り込んでどうなのか見てくる、それくらいの熱意がなければ、こんな疑問だらけの一部改正をするなんていうことは、ほんとうにおかしいというふうに思うのですよ。こんなことさえいままでやれていない。そうして業者が今度はそれをやるわけですから、もっとやられてない。  これは御存じだと思いますけれども、日港協との団交が決裂したのは御存じだと思います。この五月二十九日にまた団交して決裂しているわけです。いま港湾労働者というのは、この間石母田委員が非常になまなましいことを話されましたけれども、あそこで働いている職種によっては、ほんとうにひどいものがある。私なども調べるうちにほんとうに胸を打たれるようなことがあるわけですけれども、たとえば原皮という、牛のなまの皮を塩づけにしてあるわけですが、それを運ぶ仕事というのは、マスクをしてもくさくてほんとうにたいへんなわけです。そこで長時間働いた労働者というのは、おふろに入っても犬がついてくるというくらいにそのにおいがしみ込む。毎日その仕事でないにしても、そういう仕事もあるわけです。そういうものの労働時間を十時間も十一時間も——むしろ船の中に入ってしまいますと、拘束時間は三十何時間というのがある。それに対してトイレもない。そして特に外国船なんかですと、日本日雇い労働者が外国船のトイレを使ったというので袋だたきになったとか、そういうふうな待遇をされているわけです。それを、せめて労働時間を少しでも一般の労働者と同じようにしたい。普通ならば私は、ああいう労働だったら一日四時間で同じ賃金が出て普通だと思うのです。これは労働大臣のようにたけた政治家ですと思わないかもしれませんけれども、私のような新米の政治家ですと、中学生のような頭で考えるわけですから、こんなにたいへんな仕事でしたら、どう考えたって労働時間が短くて賃金が一人前に出るのがほんとうだ。それがもっと長い時間出ているというのは、どう考えても——明治時代じゃないのです。かつては原始の国といわれたアフリカだって、どんどん近代化して独立して、どこの国も地球上の人類は人権意識が高まってきている。そういう中でまだこういうことが行なわれている。その団交さえ拒否しているような業者団体がやるのですから、こういった業者団体が労働協会をつくるわけです。職安がやっていたってこういうことが行なわれている。それをこんな業者団体が今度は職安の肩がわりをする。これはとんでもないことだと私は思うわけです。  それからその次にいきますけれども、いま名古屋から盛んに私のところに言ってきているやみ雇用の問題があるわけです。これは太洋海運というところの問題で、ことしの四月からいま起きている問題なんです。これは大阪にしても何々港湾のトラックが愛隣地区ですか釜ケ崎地区といわれているところに行くということは、もうだれでも知っていることですけれども、これは名古屋の笹島地区というところに太洋海運からトラックでやみ雇用をしにきているわけです。太洋海運に雇われている横山さんという人がやっているわけなんです。私はそこの労働者から聞いたことですので正しいかどうかということはわかりませんので、ちゃんとそちらで調べていただきたいと思うのですけれども、前からそういう手配師かいるのです。前は郷さんという人がいた。その人のかばん持ちをして歩いていた横山という人が、今度はいつの間にか手配師となってやっている。労働者はそういうふうに顔なんか全部知っている。笹島に来ると、あれが横山さんであるとか、あれが郷さんであるとか教えてくれるわけです。横山さんという人が二十名、三十名、百人というのを、会社から頼まれたか会社の職員になっているのかわかりませんけれども、送り込んでいるわけです。それを雇うときに、いま労働者は一日の賃金を四千円というふうにいって、四千円を払っている海運もあるのです。同じ名古屋港です。ですけれども、この太洋海運というところは日雇い労働者に対して三千五百円しか払わない。登録に対しては三千五百円しか払わない。そして笹島で連れてくるやみ雇用の場合、これは表向きは三千五百円と言っていますけれども、五百円から六百円の金を手配師が渡しているわけです。その金がどこから出ているかということはわかりませんけれども、おそらく会社から出ているというのは常識だと思うのです。そういうお金を横山が渡しているが、全部の人に五百円から六百円正しく渡しているかどうかも疑問だと労働者は言っているわけです。そこにちょっとぴんはねがあるのではないか、人によりて違う、こう言っている。そうすると、笹島から来たやみ雇用は六百ぐらい高い。その上に足代が要らない。そこまでトラックで迎えに来てくれるわけですから。そういう形でやみ雇用しているわけです。これを何べんも職安にも抗議に行って、これはおそらく御存じだと思いますが、太洋海運にも抗議に行った。そこで太洋海運の青木取締役という人が、非常にあいまいですけれども、一応そこで認めたような結果になっている。そして、さかのぼって五百円か六百円を払うということを言っているわけです。ですけれども、それは非常にきちっとした契約をして払うというふうにまだなっていないけれども、いまそういう交渉をやっているわけです。  それで県の労働部長やなんかもこの調査に動き出しているということを、現場の労働者が私のところに言ってきているわけです。こういうことが、労働者が何回も何回も太洋海運に行き、職安だって何べんも抗議して、やっと動き出す。そしてやっと今度は県の労働部長が動き出す。こういうことは、労働省にしてみれば、どこでもやっているから、訴えがあったからといってほうっておくのかもしれませんけれども、これほど明らかに出ている問題というものは早急に解決していただきたい。青木取締役が、五、六百円をさかのぼって払ってもいいようなことまで言っているわけですから、これを早急に解決して、今後こういうことを一切させないだけでなくて、いままでの登録日雇い労働者にさかのぼって支払うということをきちっと指導していただきたいと思うのですけれども、その点について……。
  209. 道正邦彦

    道正政府委員 この点につきましては、最近愛知県庁を通じまして是正をいたさせました。
  210. 田中美智子

    田中(美)委員 是正というのは、どういう結論になったのですか。こまかくおっしゃってください。
  211. 道正邦彦

    道正政府委員 現在は、登録日雇い港湾労働者が第一順位。第二順位が安定所に来ております日雇い労働者。第三順位が、なおかつ充足できない場合は直接雇い入れ。笹島のケースは第三のケースになるわけであります。その場合の求人条件が違うではないかという問題でございますが、安定所で出す求人条件と笹島の場合同じにするということで措置をするという方法をとっております。
  212. 田中美智子

    田中(美)委員 そうすると、それは結果的に労働者にとってどうなるのですか。そういう指導を労働省がしてくださると、太洋海運に雇われた日雇い登録労働者はどうなりますか。
  213. 道正邦彦

    道正政府委員 求人条件については差がないということになります。
  214. 田中美智子

    田中(美)委員 もうちょっと、中学生にでもわかるように言ってほしいのですけれども、差がないということは、その五百円か六百円を払うということですか。四千円にするということですか。
  215. 道正邦彦

    道正政府委員 求人条件が違っておることに問題があるわけでございまして、それをそろえるということで、格上げをして高いほうにそろえたわけでございます。
  216. 田中美智子

    田中(美)委員 一ぺんに言っていただくといいのですけれども……。そろえたということは、これからそろえるということと、それから過去の問題はどうなるのですか。
  217. 道正邦彦

    道正政府委員 詳細は現地について調べまして、後刻御報告申し上げてもよろしゅうございますけれども、基本的には今後の問題として解決をするということだろうと思います。
  218. 田中美智子

    田中(美)委員 いま労働者は、それはずっともう何年も前にさかのぼってといえば、これはどこにさかのぼるのかむずかしいわけですけれども、やはりどろぼうは見つかったときからどろぼうなんですからね。ですから、見つかったときにさかのぼってやってもらわないと——その前にもやっていたかもしれないというのは、これはしかたがないです。ですけれども、少なくとも四月、三月、ここ何ヵ月ですね、やっていたわけですから、少なくともここのところをいま労働者が要求しているわけですよ。それをやはりはっきりと、どろぼうと言えた時点からの補償というものをしていただかないと困ると思うのですけれども、それはどうでしょうか。
  219. 道正邦彦

    道正政府委員 六月一日からの分は是正をしたということでございます。
  220. 田中美智子

    田中(美)委員 何べんも言わないで……。私が言っているのは、その前はどうかと聞いているのです。(「どろぼうはどうだ」と呼ぶ者あり)
  221. 道正邦彦

    道正政府委員 どろぼうという御発言でございますけれども、求人条件がそろってないことがおかしいではないかということでございますね、それをそろえるということで、六月一日からは求人条件をそろえた。したがって、安定所に求職をしようが笹島で就職しようが、同じ条件でいけるという態勢を六月一日からとったということでございます。
  222. 田中美智子

    田中(美)委員 そうすると、その前のものを補償するということは、そういう指導はしていないということですね。
  223. 道正邦彦

    道正政府委員 愛知県庁が指導して是正さしたのは、六月一日からでございます。
  224. 田中美智子

    田中(美)委員 しつこいようですけれども、愛知県庁がやったのはそうだというのは、何か人ごとのようですけれども、労働省はどうなんですか。
  225. 道正邦彦

    道正政府委員 過去のものについてどろぼうしたということでもないと私は思いますので、求人を出すのに、同じ人を使うのに、ところによって求人条件が違うということが適当でないわけでございますね。そういう意味で指導を加えて、六月一日からは是正するということでございますので、過去のことについては、なお現地の事情は聞いてみますけれども、労働省としていまここで、過去にさかのぼって全部是正措置をするということまではお約束できかねます。
  226. 田中美智子

    田中(美)委員 私がどろぼうと言ったのは、何も太洋海運がどろぼうと言ったわけじゃないのです。ものを盗んだんじゃないてすけれども——まあ賃金を盗んだようなものですけれども、私が言ったのは一般の、世の中にはほんとうに浜の真砂のようにどろぼうはいる、だけれども見つかったときからどろぼうというのであって、そういうことを言っているのです。ですから太洋海運が、はっきりした証拠があって、見つかったときからは、そこから同じにしていかなければいけないことだというふうに私は言っているわけなんです。それはもう当然だと思うのです。それは何年先にさかのぼるのか、いや百年先にさかのぼる、そんなことを言っているわけでなくて、この間見つかったのですから、その見つかった時点から同じにするのは当然だと思うのです。その指導を私はしていただきたい。愛知県庁がだめならば労働省が現地を調べてしていただきたい、こう言っておるのです。
  227. 道正邦彦

    道正政府委員 理屈を申し上げるようで恐縮でありますけれども、求人条件が違うということに問題があるわけで、これは適当でないから是正をさせる、しかも六月一日からは高いほうにそろえたということでございます。賃金の不払いがあるわけでもございませんし、補償をどうするかということは労使の問題でございますけれども、一応問題を解決する意味で、六月一日以降は今後の問題としては差別をしないということで解決をしたわけでございます。したがって、過去の賃金について不払いでもあれば、これは賃金不払いで追及できますけれども、そういう性質のものとはちょっと違うんじゃないかというように思います。
  228. 田中美智子

    田中(美)委員 もう早くやめたいと思うんですけれども、そういう返事をされるともうほんとうにやめられなくなってしまうんです。差別があったからといいますけれども、そういう考え方、そういう感じ方をしていたら——これはやみ雇用と言っているんですよ。それは逃げ方によって、あとから人数は出したとか届け出をしたといえば、第三のあれに当てはまっている。ただそのときの賃金の差があったからというふうにすれば、これは法に触れてないんだというような解釈をなさるのかどうか知りませんけれども、これは明らかにやみ雇用ですよ。やみ雇用ですから、法に触れる。これはただ差があったというふうな、そういうふうに少しいけなかったからお直しなさいという問題ではないんです。やみ雇用なんですから。だからそういう考え方でいられるから、もう大っぴらにやっているんですよ。道正さん、笹島にお連れしてもいいですけれども、いつだって朝六時ごろ行ってごらんなさい、朝早く行かなければ見られませんけれども、行ったら、だっと海運の車が来て、とっとことっとこ入れているんですよ。どうしてそんなに早くからできるんですか。職安の登録が来ない前からやっているんですからね、これは明らかにやみ雇用です。それをそんな甘ったるい考え方でいるということは、私はまさに、政府労働省の役人と話しているんじゃなくて、太洋海運の賃金課長か労務課長か何かと話しているような、そんな気かするわけですよ。もうちょっときちっとした姿勢で、間違っているのはいまの法律の不備である、その不備をわれわれはついている。不備だからしかたがないというかもしれませんけれども、法を守らせるのは労働省はきちっとやっていただきたいと思うんです。
  229. 道正邦彦

    道正政府委員 十六条ただし書きの違反の事実は即刻調べます。そして違反があれば厳正処分をいたします。
  230. 田中美智子

    田中(美)委員 けっこうです。それできちっとやっていただきたい、そしてそのあとの報告をしていただきたいと思います。
  231. 道正邦彦

    道正政府委員 承知いたしました。
  232. 田中美智子

    田中(美)委員 それではもう一つ、運輸省ですか、カーフェリーのことについてお伺いしたいと思います。  いまカーフェリーがこの七、八年ぐらいの間に四、五倍にふえている、今後もどんどんふえていき、大型になっていっているというふうに新聞で報道されておりますけれども、大体そういう傾向をたどっているのですか。
  233. 深川弘

    ○深川説明員 お答え申し上げます。  先生指摘のように、カーフェリーが年々非常にふえてまいっておりますけれども、このカーフェリーにつきましては二つのタイプがございまして、一つはもともと普通の旅客船が就航しておりました、たとえば離れ島とかそういったような航路に、最近非常に車がふえてまいりまして、車も一諸に運べるという形で、在来船がフェリー化したという航路がございます。それからもう一つのタイプは、本来はたとえば陸上を走行していけるような二地点間につきまして、いわば海のバイパス的に、たとえば東京から南九州あるいは阪神から南九州といったようなショートカットのコースといったような形で設定されておりますフェリーと二通りございます。  特に最近目ざましくふえてまいっておりますのは後者のほう、いわばこれを私どものほうでは中長距離フェリーと称しておりますが、比較的距離も長く船型も大きく、したがって積載できる車の数も比較的多いというような大型のカーフェリーが、最近特にふえてまいっております。第一のタイプのフェリーも、これはモータリゼーションの進展に伴いまして、かなりの航路におきましてフェリーがふえております。  ちなみに現在、フェリーの数を申し上げますと、事業者にいたしまして百六十六事業者、航路数で二百二十三航路ございまして、これらの航路に就航しておりますカーフェリーは四百三十八隻ございます。そして先生指摘のように、今後の傾向といたしましても、やはり陸上におきますところの道路交通の逼迫とかあるいはトラックドライバーの確保なり、あるいは人件費の高騰等に伴ういわゆる経済上の要請から、陸上輸送交通よりは海のバイパスのようなフェリーに変更するという傾向は今後かなり見られるのではないか。     〔伊東委員長代理退席、委員長着席〕 また一方、旅客輸送の面におきましても、乗用車を使いましての観光旅行等の普及が非常に目ざましいものがございますので、そういう乗用車輸送という面におきましても最近かなり伸びてきておりますし、やはり今後もそういった傾向は続くのではないかというぐあいに考えておるわけでございます。
  234. 田中美智子

    田中(美)委員 そうすると、結局これに載る荷物ですね。いろいろトラックのうしろに載っているもの、それから旅客が乗る——第一のフェリーですと旅客が乗るわけですね。第二のやつだと荷物がおもになるわけですね。
  235. 深川弘

    ○深川説明員 第一のタイプと第二のタイプ、ともに旅客と合わせまして車——車もトラックもございますれば乗用車もございます。合わせて運送するという形態は各航路とも共通でございます。
  236. 田中美智子

    田中(美)委員 そうしますと、そこに載る荷物というのは、もし貨物であった場合にはこれは港湾労働者仕事になるんじゃないですか、労働大臣
  237. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 私が答弁していいか悪いかちょっと……。運輸省の管轄ではありますが、たまたま私専門家でありますので、定期船課長よりは私のほうが詳しいかわからない。そういう意味で御説明いたしますが、フェリーの場合には荷物が、実際は港に来て港湾労働者の手にかかる荷物とかからない荷物がふえてくる、こう申しますとちょっとわかりにくいのですけれども、アメリカから来る荷物、これはカーフェリーで来たら港湾労働者仕事が減ったのでございます。ところが最近の中距離その他の荷物というのは従来は近くから、たとえて言いますと四国から名古屋へ行くという場合に、四国の港から対岸の中国の港に船で行った。それから今度トラックで行った。こういうような関係港湾労働者の手にかからない荷物、それが中国を経由して行く、自動車が四国から今度名古屋に行く、こういうように自動車に積むべき荷物が名古屋のほうへ中距離カーフェリーで行った場合と——まあカーフェリーの発展した初歩においては、私四国でありますが、四国から大阪に行く。貨物船に積んで港湾労働者の手にかかって揚げたものが、それが中国を通って自動車で行く。積みおろしの手間が省けますから。そういうような変革がありましたが、最近のカーフェリーの荷物の関係はどちらかといえば、いままで四国から中国に行ってトラックで名古屋に行ったものが、今度直接四国からカーフェリーで名古屋に行く。陸上の関係その他運転手の疲労とか人員とかの関係であります。いまお聞きになっている主眼点がどこかわかりませんけれども、従来カーフェリーで来るものの荷物が減ったと思われると、そうでないのが最近のカーフェリーの発達の原因であります。そういう意味で御質問の主眼がどこかわかりませんが、またお答えする何があったら……。
  238. 田中美智子

    田中(美)委員 社長さんだか何だかずいぶんお詳しいようですけれども、そこに載る荷物というものは貨物扱いされていないわけでしょう。
  239. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 貨物よりはトラック輸送がカーフェリーに転換した、こう言うほうが最近のカーフェリーは適切かと思います。七、八年前はそうでなかった傾向でありますが、最近は陸上を通していったトラックが直接港から港に行く。カーフェリーに転換したというほうが多いので、港湾労働者の扱う数量が減ったというのはもうほんとうに僅少であります。
  240. 深川弘

    ○深川説明員 実は、いま先生の御質問のトラックに積まれている貨物というものが貨物取り扱いかどうかという御指摘でございますが、先ほど私フェリーの実態について御説明申し上げましたように、フェリーに積まれます車の場合には、トラックもございますれば乗用車もございます。さらにまたトラックの場合、いわば帰りのから車というようなものもございますし、積んでおります貨物も種々雑多、量も種々雑多でございます。したがいましてフェリーの場合は、私先ほどたとえば海のバイパスと申し上げましたけれども、いわゆる有料道路を通るようなものでございますので、それに積まれております貨物の多寡、種類というものは直接問題ではなく、現実に船のスペースをどのくらい占めるかということによって船の航送能力がきまってくるわけでございます。したがいまして、その貨物自身はいわば陸上の道路をトラックが走るかわりに海の道路を走っているという形でトラック事業者が利用しているわけでございますので、貨物という考え方はフェリーサイドからはいたしておりません。
  241. 田中美智子

    田中(美)委員 私は、いま労働大臣港湾労働者の働く場が減ったのは僅少だと言われますけれども、やはりフェリーというものがどんどんふえていっているわけですから、これは港湾労働者の職域を減らすというよりも、むしろ先ほどから言ったように、港湾労働者の職域を広げていくという意味で、当然大きな荷物を扱うというのはチェックしなければいけないだろうし、いまのチェックがないような形で、旅客の荷物のような形で貨物がどんどん送られていくというようなことは、これは港湾労働者仕事を縮めるので、職域を広げるという問題点がいま一つあると思うのです。これはあるとかないとかいうことをここで話し合っていても、これは私はあるというふうに思うわけです。いま私が一番問題にしておりますのは、いま言ったように、トラックが有料道路を走っているように海の道を走っているのだというふうに言われましたけれども、最近はヘッドレスというのがふえてきている。トラックが来て、トラックのうしろの荷物だけ船に載せておいて、向こうへ行くと、うしろに荷物の載ってないトラックが来ている。それに載っけていくというように頭を隠して港、港でやっていて、荷物だけが行くわけですね。そうすれば、どうしたって有料道路をトラックの荷物だけがひとり走っていくというようなことはあり得ない。やはりここら辺のところは非常に問題だというふうに思うのです。  時間が非常に少なくなりましたので本題に入っていきたいと思いますけれども、そういう状態の中で、この間播磨灘のところでフェリーが爆発した、こういう大きな事件があったことは御存じだと思います。これについて、これは産経新聞ですけれども、「浮かぶ火薬庫 初の大事故」という書き方をしているわけですね。まさにフェリーが浮かぶ火薬庫ということから新聞記者もそういうふうに言っていますし、「積み荷に誘爆か」というのも出ているわけですね。こういう事故というものは初の事故というふうに書いてありますけれども、私はこういうものが非常に出てくるのではないかという不安を持つわけですね。港湾労働者の問題だけでなくて、やはり荷物をきちっとチェックするところがなく、じゃんじゃん通っていくわけです。そして一体中に何があるかわからないわけですね。自動車自体が、たとえ乗用車にしても中には自動車が使う、荷物でないガソリンがあるわけですから、それに引火しやすいわけです。それがそのまま載っている。船の上での安全の問題というのは別の問題として厳重にやってもらわなければならないことですよ。いまここでやっている荷物のチェックというものはきちっと貨物扱いにしなければ、港湾労働者の手によってチェックするなり、あるいはそれをどこに置いてどうするというような問題はきちっとされるのに、いまごっちゃにほうり込んであるわけですからね。ですから一たび事故があった場合にはたいへんな事故になるという、これは新しい分野の問題なんです。こういうものに対して、どんどんふえているのに、一体貨物扱いというふうなところを労働大臣はどういうふうに考えて、どうこれからチェックしていくか。
  242. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 これは運輸大臣のほうから答弁すべきであるかと思いますが……。
  243. 田中美智子

    田中(美)委員 だいぶお詳しいようなので……。
  244. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 詳しいことはないんです。カーフェリーというのは迅速なという意味でさあっと乗っていきますから、荷物をチェックするのがどこでもないというか、やはり専門家は専門家で詳しいので、そのフェリー業者は、かりにごまかしても、当事者はこういうものはこういうものだと知っております。早い話が死体の運搬、これはいけないのでありますけれども、いままで鉄道に積んでくることができない。四国の人が中国で死んだ場合には、そこで火葬して遺骨で持って帰る。このごろ乗用車が発達し、フェリーが発達してきたので、さあっとトラックのうしろへ積んで黙っていても、それでも大体業者は顔つきやその他でこれはくさいなということでわかります。それから危険物やその他の関係でも、大体日常チェックしなくてもわかっているのです。やはりフェリー業者自体が監督する、そしてなお一そうその上に海運局、海上保安庁が監督いたしておりますから、かえって港湾業者日雇い労働者とか港湾常用の方がチェックするよりは、責任体制からいって、運搬する方並びにそれを監督する海上保安庁、海運局が監督するのが当然であります。しかし御指摘のように、やはり自動車が入ってくるんでありますから、自動車にはやはり燃料を積んでおりますから、この間の播磨灘の場合には、火薬庫だといったのは、それは自動車自体燃料を積んでいる。それに引火をする、こういう危険性が、あの場合には機関部から油に引火して、それが燃え上がったのか——一つの自動車のガソリンに引火した、それが爆発を、ぱっぱっといってたいへんなことになったんですが、やはりこれは自動車自体も危険だが、そういうことで申しますと、もう東京中が火薬庫で、フェリーどころじゃない、何万台、何十万台、何百万台の火薬庫があるわけでありますから。これは文明の利器の関係上、いたし方ない点もありますが、それに引火しないように、もとの船自体も気をつけてもらう、こういうことで、現在のフェリーを規制するという方法もありますが、やはり船体その他の構造だとか復元力とか、いろいろな専門的なことは海運局の船舶部でよくやっておりますから、なお一そう安全性が保てるように、そしてかような危険性があるような事故のないように、運輸省の船舶局がよく監督いたしております。また日常のいろいろな業務の指導に対しましても、地元に海運局がありますから、立ち入り検査なりどんどんやっておりますから、今後はそうそう御心配ないと思いますので、はなはだ労働大臣答弁としては言えないことを言いましたが、以上のとおりです。
  245. 田中美智子

    田中(美)委員 安全性という問題はいまここで言うよりも、当然もっとそれを中心にして、この事故というのはむしろ運輸省のほうでも、これを安全性という点を中心にしてもっとやってもらわなければならないことだと思います。きょうはそれも含めておりますけれども、無人トラックになった場合、全くフェリーの中に人もいない、自動車にも乗らないわけですから、荷物だけがどんどん載っていくわけですね。そういう問題というのは、港湾労働者仕事ではないかというふうに私は思うわけです。そういうことなどが新しい分野として出てきている、それで職域を広げるというようなことも考える必要があるのではないかということです。
  246. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 これは港湾労働者がそれにかわってするというような仕事自体、その他いろいろな経過から見まして、それはちょっと無理と思います。これは荷物であるから港湾のほうだというような考え方もありますけれども、これは港湾労働者、港湾日雇いその他常用労働者をそこへ持っていってというのはちょっと飛躍的な見方で、田中委員のおっしゃることですけれども、ちょっと私、専門家でありませんから、これは運輸省のほうから……。
  247. 深川弘

    ○深川説明員 労働大臣がお答えいたしましたが、このヘッドレスの車の輸送、これはいわばエンジン部分、動力部分を切り離したものでございまして、それ自体海上運送法上の「自動車航走に係る自動車」になっております。この自動車の場合は、いわば牽引車によって引っぱられます被牽引車ということになるものでございまして、これは各車に全部動力がついておりますということと、それから動力部を各車がその部分を共有いたしまして、共通的に利用するということ、これは経済的にそういう形をとっているものでございまして、先ほど来いわゆる港湾運送の貨物ではないかという御指摘の点につきましては、私、港湾運送関係にタッチしておりませんので直接的なお答えはできませんけれども、現実にはやはりいろいろと輸送手段が、内航海運によって運ばれ、あるいは鉄道によって運ばれ、あるいはトラックによりまして道路運送として運ばれる等、いろいろな形態がございまして、しかもその間にやはりいろいろな時間的あるいは運賃上のメリットという問題から、これをどの輸送手段によってやるかという選択が生まれるわけでございまして、私どもこのカーフェリーを利用いたします車につきましては、陸上の道路を走るかわりに、その間は運転しなくて済む、あるいは燃料を消費しなくても済む、あるいは車の損耗もなくあるいは危険もなくて済むといったような点から選択的に選ばれているわけでございまして、さらにそれをいわゆるエンジンのついた車からあるいはエンジンを共有する車にという形で、いわば経済的な合理化が進められているものでございまして、直接的に内航海運が行なっております貨物との競合関係につきましては、全く皆無とは申せませんけれども、現実には従来陸上を走行しておりました自動車が、陸上走行のかわりにフェリーを利用している形態が大部分でございます。そういう観点からいきますと、それは港湾運送事業者の手を経なければならないといったようなことにすべきかどうかということは、やはり問題があろうかと感じておるわけでございます。
  248. 田中美智子

    田中(美)委員 それは、新しい運送の手段というのはいろいろ出てきているわけですから、いままでのそうした体制をどういうふうにしたらいいかという問題というのがあると思います。これにはそういう問題と、それから安全性というものが含まれているわけですね。いま横浜港なんか見ましても、こういうものの事故のときには、普通の救急船のようなものではもちろんだめだと思いますけれども、横浜港のような大きなところにでも、港湾労働者がけがをしたときには、船が一隻しかないというふうな矛盾というものがたくさんあるわけです。そこの港湾労働者の安全というものを見ましても、全く手をつけられていないというふうに思います。  時間が来ましたので、まだ非常に、今度の港湾の問題というのは、もとの法律にもいろいろな問題点があるわけですけれども、今度の改正案というものがそうした矛盾をほとんど解決されていないだけでなくて、一歩後退しているということがたくさんあるわけです。そういう意味で、ILO勧告に対してもほとんど沿っていないし、一番大切な雇用保障、労働の改善、こういうものが努力されていないというふうに思います。  時間が参りましたので、これで質問を終わります。
  249. 田川誠一

    田川委員長 大橋敏雄君。
  250. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 ただいまから質疑に入ります法案が今国会に正式に提案されようとした前後に、関係者からいろいろとお話を伺ったわけでございますが、特に政府側の専門家からお話を伺ったときには、この法案は、法案作成の前提条件であるところのいわゆる各審議会段階においては労働者側の代表も加わりまして、その労働代表の意見も十分反映された、いわゆる了解された中身である、したがいまして、おそらくは全会一致の賛成法案ではないでしょうかというような意味のお話を伺ったわけです。私もそんなものかなと思っていたわけでございますけれども、そのうちに労働代表がやってまいりまして、いや、とんでもございません、これは途中からずいぶんとわれわれの期待が踏みにじられた姿になっておりますという話を聞いたわけでございます。確かに昭和四十五年十一月における総理府の共同雇用理念の答申から始まりまして、翌四十六年に全港湾と日本港運協会との中央交渉における、いわゆる就労保障体制をめぐる団体交渉までは、政府の姿勢も、いわゆる登録日雇い港湾労働者に対する不安定就労を解消しよう、一定の就労確保するかに見えたと言うんですね。これは事実だと認めます。またそれに引き続きまして、昭和四十七年十一月における総理府の港湾調整審議会における共同雇用体制の確立という問題提起にも、前回の答申を受け継ぐものとして労働者側も評価をしていた。これも事実だと認めてもけっこうです。ところが、この法案がいよいよでき上がる段階になって、つまり労働者の期待していたものは、皆さんから聞いたことばで言うならば、こっぱみじんに砕かれた、こういうことなんですね。ほほう、それはたいへんなことですねということで、いろいろお話を伺ったわけでございます。  これまでの多くの方々の質疑の中でそのほとんどが出たと思われますが、このいきさつといいますか、どういう点で労働者を裏切るようなことになったのか。もし裏切っていないというならば、その辺の事情を納得いくように説明願いたい。
  251. 道正邦彦

    道正政府委員 御指摘のとおり、四十五年に港湾調整審議会から建議が出ておりまして、その骨子は、港湾労働に問題があるから共同雇用理念に基づいて改正案を考えるべきであるということであったわけであります。その後数年間私どもなぜ早くやらぬのかというおしかりを労、使、関係者の皆さんから実はいただいて、毎国会のように国会でもおしかりをいただいてまいりました。その後港湾労働の実態をいろいろ見てまいりますどきに、労使関係者がおっしゃるように、このまま放置できない危機的様相にあるという判断について、私ども全くそうだというふうに判断いたしまして、昨年の七月以除、港調審の場で本格的な御審議をお願いしたわけでございます。審議の過程におきましては、労使はもとより関係者の皆さんからかなり活発な、あるいは論戦も相当激烈なものがございました。しかしながらいろいろ関係者意見を総合されまして、港調審として十一月十七日に満場一致で御建議をいただいたわけでございます。同じく、本年の一月十二日に中央職業安定審議会からも同じような趣旨建議をいただきまして、これも満場一致でございます。私どもといたしましては、この二つの建議法律技術が許す限り、良心にかけて忠実に法案化したつもりでございます。したがいまして、率直に申し上げまして、私どもどこが答申と違っているのか実はわからないくらいでございます。  ただ、その後組合の皆さんから私ども、反対であるという意見をお聞きいたしました。反対の理由はいろいろ伺いましたけれども、率直に言って、この答申とどこが違うのか私はいまだにちょっとわからないのでございますけれども、それは横に置きまして、組合の皆さんがいろいろ現実に御反対になっているというのは事実でございます。これは私批評がましいことを申し上げるつもりは毛頭ございません。労使関係というのは生きものでございますから、時々刻々時代の推移に応じて変わってくることもあり得ることでございます。要はせっかく労、使、関係者がおまとめになりました建議であり、これ以外にないという、いわば英知を集めた建議、それに基づいた法案承知いたしておりますので、私どももどうか関係の皆さんが、港湾労働をこのまま放置できないというお立場からもう一回お考えをいただきまして、ぜひ法案成立に御賛同、御協力をいただければというのが率直な私の意見でございます。
  252. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 局長さんのお話によれば、答申あるいは建議のその線に沿って法案がつくられたのであって、むしろどこに問題があるのか明らかではないのだ、しかし確かに労働者の皆さんは反対だとおしっしゃっている、この気持ちもわからぬでもない、非常にあいまいな御答弁だと思うのでございますが、これまでいろいろと質疑がなされました。大体そういう線が、いわゆる労働者の言わんとするところであるわけです。また、実はきょう私がここに手に持ってきております資料は、全日本港湾労働組合から出ております資料集なんですけれども、この冒頭に、われわれは今度の改正について改正と思わない、いわゆる改悪である、なぜならばこうこうこういう理由によるのだということがるる述べられているわけですけれども、百歩譲ってこれに賛成の立場に立とうとするならば、いまから言う六つの条件だけは絶対的にのんでいただきたい、これがのまれない限りはだめだ、このような意見を六項目にわたって述べていらっしゃいます。私はこれをすなおにそのまま項目別に読み上げますから、その項目について、表現は違っても実体的には同じであるかあるいはそれはとても無理でございますか、また無理ならばなぜ無理なのかという理由を付して御答弁を願いたいと思うのです。  まずその第一は、「港湾労働法改正の基本は現行法の欠陥部分を補強するにとどまらず、抜本的に改めることが先決である。そのため共同雇用体制による港湾労働者雇用生活保障が基本であることを明確にすること。」これが第一番目です。この点についての見解をお願いします。
  253. 道正邦彦

    道正政府委員 おっしゃるとおりでございまして、欠陥部分を補強することもいたしております。たとえば原則としての直接雇用の禁止、これは抜本的な改正か欠陥部分の補強かはおきまして、そういうこともやっておりますが、抜本的に改めるという趣旨共同雇用体制を確立するということだろうと思います。従来の安定所でやっております登録紹介というのは、共同雇用理念から見るならば不十分である、事業主をもって構成する団体設立して、その団体日雇い港湾労働者登録紹介等を行なわせろという建議になっておりますが、そういうことをおさしになっているとすれば、まさに今回の法律は抜本的な改正を意図したものでございます。  生活保障ということがございますが、これは当然でございまして、いままでのように月の三分の一不就労だ。その間不就労手当は出ますけれども、生活保障ということにはほど遠いわけでございまして、就労機会をふやし、それによっていわゆるあぶれ手当にたよるということではなくて、就労し、相応の賃金を得ていくというのが生活保障の基本だろうと思います。そのほかにいろいろ補強すべき対策はございますけれども、就労機会を増加する、これがまさに生活保障の根っこでなければならぬ、このように思います。そういうことで、この御批判はそのとおり受けて私どもは今回の法律改正をつくったと言っても過言ではないというふうに思います。
  254. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 要するに小手先の改善ではだめだ、抜本的に改めなさい、こういう労働者側の強い意見ですね。これに対しておそらく、抜本的というのは共同雇用体制を確立することではなかろうか、建議趣旨から言ってもそう思う、そういう立場からいけばわれわれはこの第一項目には沿っているつもりだ、こういう答弁が返ってきたわけでございますが、私はおそらく労働者の皆さんが言わんとなさるところは、要するに登録日雇い労働者の皆さんが安定した雇用体制に置かれること、そして確かに生活保障される状態にあることこそが抜本改正である。私はそういう立場から見れば、やはり大きく後退しているのではないだろうか。これはあとあと中身については質問いたしていきます。  では二番目の問題になりますが、「このため官(国及び地方自治体)、労(港湾労働に常時従事する者を代表する)、使(船会社荷主を含めた港湾関係者)の三者構成による港湾労働委員会(仮称)を設立しすべての登録港湾労働者に対する雇用の最終責任を義務づけること。」こうありますね。この点についての見解はどうですか。
  255. 道正邦彦

    道正政府委員 おあげになりましたそれぞれの立場の者が港湾労働改善努力をする、協力をする、これはもう当然でございます。しかしながら、港湾労働といえどもやはり雇用関係雇用関係でございまして、雇う者と雇われる者というのがおのずからあるわけでございますが、船主や荷主等雇用責任まで負うというのは現在の法制上私はできないと思うのであります。しかし協力すべきことは当然でございます。国も港湾労働者雇用主になるというわけには私はまいらないと思います。結局直接港湾労働者を使う事業主とそこで働かれる労働者との間の関係雇用関係になるわけでございますので、基本的な雇用関係というのはこの両者になってくる、ただしその場合にばらばらの事業主では、港湾労働波動性という特殊事情から見て適当でないので、その事業主をもって構成する団体設立すべきであるということに今度の建議はなっているわけでございますので、そういう形において、あくまで事業主をもって構成する団体登録日雇い港湾労働者との間の問題であるというふうに考えるわけでございます。
  256. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 今度の改正内容が、要するにいままで国の職安が握っていた仕事をつまり業者団体が肩がわりをする、そういう姿に変わるわけですね。そういうことから非常に労働者の皆さんは不安を抱いているのではないかと思うのです。そういう立場から、いわゆる官労使という三つの代表が寄り合ってスムーズな運営をしていくべきである、こういう主張をなさっていると私は思うわけです。現実問題といたしまして、確かに労働者の皆さんが不安を抱いていらっしゃるような事実が今後起こってくるかもしれませんし、おそらく起こるであろうと私も思います。それだけに法律上にこういう形でうたわれないといたしましても、運営面においてはこの三者が同じテーブルについて真剣にそれを議論していく、その線に沿って運営されていくというようないわゆる運営審議会的なものをつくるべきではないか、これは私の提案なんですけれども、この意見についてはどうお考えでしょうか。
  257. 道正邦彦

    道正政府委員 改正法案の中におきましても、たとえば登録委員会というようなものについては、公益を代表する者の参加が予定されておるわけでございます。これはいままで国がやっておりました仕事を委託するわけでございまして、そのためには白紙委任するわけにいきませんので規制措置が必要になってまいります。そういう意味で官側の代表も入ったらどうかというのが立法趣旨でございますが、それ以上を越えまして雇用責任まで持つというのは、国営企業になってまいりますので、できない相談になってくると思います。しかしながらいま御指摘のようにそれは横に置いて、関係があるんだから関係者が集まって同じテーブルにつくような場があっていいじゃないか、これはごもっともでございます。そういう場といたしまして港湾調整審議会という場がございます。この十一月の建議も、港湾調整審議会で狭議の労使だけでなくて関係者が全部集まって議論の上にまとめられたものでございます。そういう場を活用することによりまして御指摘のような効果はあげ得るんじゃないかというふうに考えます。
  258. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 調整審議会の中身は、広範にわたってのいわゆる根本的な問題の議論でありますけれども、いま私が言わんとするのは、技術面の具体的な運営面における三者の話し合いを常に持っていくべきではないか、そして登録日雇い労働者雇用の安定を確保していく、こういうことがいま言わんとしておるところです。これは議論になるところでございまして、あとに譲らしていただきます。  それから次に行きますが、「港湾労働者に関してはすべてを登録制とし、その登録は、常用、日雇の雇用種別にかかわりなく一括登録制とすること。」こういう御意見なんです。これは当面は無理だとしても、当然このような方向に進むべきであるという意見なんですよ。これはどうですか。
  259. 道正邦彦

    道正政府委員 諸外国の例を見ますと、常用、日雇いを通じて登録制度をとっている例もないわけではございません。ただその場合の社会的な実態といたしまして、労働組合が日雇いに限らず常用労働者も掌握をしている、コントロールをしている、使用者のほうで港湾労働者を使う場合には組合に頼まなければ使えないというようなシステムが社会的実態としてある場合に、そういう制度が行なわれているわけでございます。日本の現状は「ただし当面、」というところにございますように、常用の労働者は個別の企業の労働者だということでございまして、そういう社会的な実態から見ますと、いま直ちに一括登録制をとることは現状にそぐわないというふうに思います。しかしながら、日雇い労働者についての登録制をとるにいたしましても、常用労働者の数というものが当然関連してくるわけでございまして、現行法におきましても、改正法案におきましても、常用労働者につきましては届け出制をとっております。その中身は日雇いの場合の登録と全く同じような内容のものでございますので、実質的には一括登録制の趣旨を満たしているような点もございます。しかしながら、社会的実態が違いますので、完全な意味で、アメリカやイギリスでやっているような意味での一括登録制ではございません。
  260. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 実質的には一括登録制のようなものだというお話ですけれども、たとえば常用の場合は運輸省に届け出、あるいは職安に届け出になっていますね。それから日雇いの場合は地区協会登録というようなことで、窓口がばらばらであるというところも、これは私が言わんとしているところなんですよ。ですからそういう点も思い合わせまして、今後検討の重要課題にしていただきたい。  時間もずいぶんたちますので次に移りますが、その次は「すべての港湾荷役作業に就労する者は、登録港湾労働者のみに限定し、登録労働者就労は一切禁止すること。」これも強い要望なんですが、どうですか。
  261. 道正邦彦

    道正政府委員 現行法におきましては、第一順位が登録港湾労働者、第二順位が安定所に出頭してきている一般の日雇い労働者、第三順位が直接雇用する日雇い労働者、こういうことになっているわけでございます。しかしながら、第三順位の直接雇用につきましてはいろいろ問題がございますので、今回の改正におきましては、天災地変その他のごく限られた場合を除きまして、原則として禁止するということで措置をしたわけでございます。いま直ちに登録労働者は一切禁止するということは、現状にそぐわないものというふうに考えます。
  262. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 掘り下げた議論はあとに回すとしまして、その次、五番目ですけれども、「雇用調整手当(日雇のみ)の算出基礎を就労日数に関係なく賃金のみを対象として決定し、その財源確保については、港湾の通過貨物量に応じて徴収するように改めること。」これはどうですか。
  263. 道正邦彦

    道正政府委員 調整手当の算出基礎につきましては、いろいろの考え方があると思います。  発生的に申しますと、従来日雇い失業保険の適用があった港湾労働者につきまして、登録日雇いに限り別途の体系をつくったわけでございます。それは現行法におきましても、一般の日雇い労働者と違って、一種の広い意味共同雇用的なプール制度ができたのだから、一般の日雇い労働者と同じに扱うのはおかしいではないか、一種の休業手当的な色彩もあるではないかということで、賃金とのリンク制を入れてきているわけでございます。これを技術的に点数制ということで処理いたしまして、その決定にあたりましては、中央職業安定審議会意見を聞いてきめるということにいたしておるわけでございます。  就労日数に関係なく賃金のみという御意見でありますけれども、これはやはりその労働者間の公平の見地ということもございますし、一種の共済的な面もございますので、やはり応分の負担をした者が応分の給付を受けるということでなければ、基金として公平を欠くというふうに思います。  なお、財源につきましては、この原資になりますのは港湾の付加料金でございまして、トン当たり幾らというふうにきまっておるわけでございますが、これの原資の五割アップ、これは関係の船主、荷主等にお願いいたしましてすでに決定を見て、五割アップ。なお、いままではトン当たり、港湾労働者を使えば、登録港湾労働者を使おうが使うまいが、業者の手に渡ったわけでございますが、これはガラス張りにいたしまして、中央プール制をとったわけでございます。そういう意味での改善はやったわけでございますけれども、賃金のみを対象としてやるということについては、遺憾ながら現状においては了承するわけにまいらないというように考えております。
  264. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 では、要望の六つ目です。  「登録日雇港湾労働者就労機会の公正、均等を確保するため、就労配置に当っては当該労働者の職種、能力等を勘案した完全輪番紹介を堅持すること。」これについてはどうでしょう。
  265. 道正邦彦

    道正政府委員 基本的には異存がございません。ただ、これは法律事項ではなく、雇用調整規程なりあるいは行政と申しますか運用の問題ではないか。運用の過程におきまして、労働者紹介就労が公平に行なわれるという趣旨から見て、原則として異存はございません。
  266. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 要するに、いままで申し上げました六つの項目が全港湾労働組合のまとめられた、今回の法案に対する強烈な要望です。今後法案のいわゆる政正にあたっては、こうした労働者の要望を十分踏まえた上で事を処していくということでなければならないと私は思うのであります。  そこで、この港湾労働法は、申し上げるまでもなく、四十一年の七月ですか、施行されたわけでございますけれども、午前中に質問していらっしゃった方が、現行法はざる法だとおっしゃっていましたけれども、私は必ずしもそうは思いません。港湾荷役の波動性に対しまして、その対処要員として日雇い港湾労働者を職安がプールをする、すなわち登録して事業主がこれを優先的に雇い入れることとしている。また、日雇い港湾労働者の直接雇用規制するという中身になっている限りにおいては、これは港湾労働者雇用の安定の立場からはむしろ画期的な措置をとった内容である、こう実は私は見てきたわけです。ところがどういうわけか、先ほど労使の要望から今度の改正がなされるんだとはいうものの、労働者の要望はほとんどいれられていないというような印象を与えて反対を受けている。労働者の皆さんはむしろ今回の改正をされるよりも、現状のままのほうがいいんだと言われる方もかなりあるわけですね。そういう点から考えてまいりますと、私は今回の港湾労働法の大きな問題点というものは、この法の運用にあたって、運用に対する労働省の行政姿勢に根本的な欠陥があるんだ、私はこう見ますね。法案そのものよりも、労働省がこの港湾労働法を忠実に行政に生かしているかどうか、そこに問題があるんじゃないかと思うのですよ。その点についてはどうお考えになっていますか。
  267. 道正邦彦

    道正政府委員 現行法の運用につきまして私ども一生懸命やっているつもりではございますけれども、至らない点が多々あったことも事実だと思います。しかしながら建議をいただき改正法案を御提出申し上げているわけでございまして、この法案が成立いたしますならば私どもも一段と馬力をかけてまいりまするし、また労使はじめ関係者からも御協力を一そういただけるものというふうに思いますので、今後はそういう関係者の御協力を前提として私どももできる限りの行政努力をすることによりまして、いままで御批判をいただきました行政面を改善してまいりたいというふうに思います。
  268. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 今度の法改正にあたって一般的にいわれていることは、登録日雇い労働者の不就労の増大である、あるいは法をくぐるためのやみ雇用、あるいは擬装常用の一般化、それに雇用調整手当金に大きな赤字が、四億円ですか、生じた。こういう状態になったので何とかしなければならないということのようでございますけれども、こういう問題が発生してくるいわゆる根本的な原因といいますか理由というものは、基本的には登録日雇い労働者、要するに登録制度を採用しても、事業主紹介を受けるまでは労働者の資質がよくわからぬという不安がある、そういうことでなかなか日雇い労働者を雇おうとしない、あるいはコンテナ輸送の拡大等による輸送革新による省力化の進行等々であるというようなこともいわれておりますね。しかしながら一番当面の問題としては先ほど言った調整金の問題、つまり業者側から言わせれば納付金が非常に高い、こういうことからやみ雇用か出てこようし、あるいは擬装常用といいますか、こういう問題が出てくるわけでありまして、これについてはどのように根本的に改めようとなさっておるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  269. 道正邦彦

    道正政府委員 ただいま先生指摘のとおりでございまして、そういういろんな要素かからみ合い悪循環を来たしまして、ますます就労日数が減少していく、それに伴って雇用調整手当の赤字もふえていくというのか現状でございます。これを抜本的に解決するために共同雇用体制で処理をすべきであるというのが建議趣旨でございますので、われわれといたしましては、幸いにして法案が成立しますならば事態は大いに改善されるものというふうに心から信じております。
  270. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 たとえば港湾労働者の「常用労働者及び登録日雇労働者定数と実数の推移」という、これは労働省から出ている資料ですけれども、これを見てまいりますと、日雇い労働者定数、四十一年度で三万七百十人、これが七年たった今日、四十七年五千百二十人に減少していますね。約六分の一に減少しているわけですよ。これは輸送革新あるいは常用化が促進するのだ、日雇い労働者就労機会が少なくなったためだなどといろいろ理由づけはなさいますけれども、私はこれは違うと思う。本質は業者日雇い労働者をできるだけ雇用しないで、常用の相互融通といいますか擬装雇用、やみ雇用をやっているんだ。しかも労働省は新規雇用を認めないでしょう。ですからこのように日雇い労働者の数がぐんぐん減っていくわけですよ。私はここに問題があると思うのですね。  大臣、いろいろ改正の理由あるいは問題点は述べられておりますけれども、私は、それのほかに労働省の行政姿勢、ここに問題がある。つまり業者日雇い労働者を忌避している、避けている、そういう姿を改めさせようとしない。あるいはやみ雇用あるいは擬装常用が発見された、では、はたしてそれに対してどのような手を打っているかというのです。違法行為は指摘しても、処分したことがあるかというのです。ないでしょう。一つだってないはずですよ。あるなら言ってごらんなさい。そういう点が非常にあいまいなんですね。どうでしょう。
  271. 道正邦彦

    道正政府委員 私どもの従来の行政姿勢についての御批判でございますが、私ども反省すべき点は大いに反省しているつもりでございます。今回いわゆるやみ雇用、擬装常用を撲滅するために、改正案におきましては、日雇い労働者の直接雇い入れを原則として禁止するというかなり強硬な改正案を御提案申し上げているわけでございます。そのほか六カ月未満の短期の雇用の者は日雇い労働者として取り扱うということで、従来季節労務という形で脱法的に行なわれておりました穴をふさいだつもりでございます。また、六カ月以内で退職した常用労働者からも納付金を徴収するというようなことで、いままで制度的に問題があった点は、この際共同雇用体制の確立とあわせまして手当てをしたつもりでございます。  やみ雇用、擬装常用等の取り締まりでございますけれども、従来は都道府県あるいは安定所を通じてやらしておったわけでございますけれども、昨年度当初からはすべて本省に報告をさせまして、本省からは中央の業界等を通じ、業界内部の自主的な指導監督体制もとってもらう。文書も正式にお出しして協力をお願いしております。それから第一線におきましては、事業場の立ち入り検査もかなりひんぱんに行なっております。改善の指導も強力に加えております。  告発した件数は絶無ではないかというお話がございましたけれども、最近二件ほど、告発をしたケースもございます。要は、立ち入り検査を今後とも励行し、悪質な違反に対しましては厳正な態度で臨んでまいりたいというふうに思っております。
  272. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いま、いろいろ問題はあるけれども、労働省の行政姿勢に問題があるんだ、その証拠には、違法行為は指摘しても処分までいかないじゃないか、一人だってあるのかと私が指摘しましたら、最近になって二件ほどはちゃんとやったというようなお話ですよ。七年間いろいろと議論されてきましたやみ雇用あるいは擬装常用等々は、それこそ一般化されるほど問題が山積しているわけですね。それに対する処分の問題は非常に甘い。こういうことだから、改善されないのですよ。私はそう思う。いかに、脱法、違法行為に対してはこのようにします、あのようにしますという条文的な手当てはやってみたところで、それを現実に生かさなかったら何にもならぬでしょう。どうですか。
  273. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 午前中の島本議員に対しましても私は率直に、どうも役所のやり方に対して不満を大臣みずからが吐露することは、これは不謹慎きわまるのでありますが、従来の港湾労働法でも相当効果があがるべきであります。また、雇用の安定、福祉の増進にも寄与いたしておりますけれども、先ほどから御指摘のように、やみ雇用、そしていろいろな違反行為、常用手配というようなかっこうで、もう少し法の厳正なる運営が欠けておったということは、これは労働省自体も反省しなくてはならぬということを私は認めます。この法案が通ったからといって、私は完全無欠でいけると思っておりません。法案が通ったからといったって、これに対する行政指導を的確にやらなくては、これは有名無実であります。やはり労働省というのは、法案に出したら、法案通ったら、もうこれでいったんだと、こう外面的にお役所の人は言いますが、私は業者出でありますので、この関係から見て、ちょっと失言のようでありますが、率直にいって、やはりこの法案を通すと同時に、行政的なあらゆる面に対して労働省が抜本的にやり方を変えてもらいたい、こういう大臣としての強い希望を持っております。その意味で、この法案が通りましたら、これは私の信念で、港の職安がなくなるのではありません、ありますから、六大港湾のそれを全部招致して、私みずからが説明いたしまして、従来の港湾行政に対する御熱意は感謝するが、この法案が通った場合でもこの法案を完全に遂行するように厳重な指導をしてくれと……。  しからば現在の法律でいいでないかというが、なかなかこれだけでは改正せられません。いろいろな関係からいくと、労使関係が、協力体制がいままでのかっこうではできておりません。事業主はただ利潤追求で、納付金が高いからいろいろな、役人の目をごまかす、いろいろな理屈をつけましてやみ雇用が実際は行なわれる。共同手配だとか何だとかいって、なかなかこれが取り締まりも困難だという立場があります。そういう意味で、この法案のいい点は——いままで登録日雇い労働者、これがわれわれの、事業主のための日雇い労働者だと、こういう信念が欠けております。なるべくそれを忌避してほかのほうからいろいろそれを引っぱってこよういうような信念があります。これでは真の労働行政というものは改善されません。そういう意味からも、この改正案はいままでの港湾法よりはこれはよりベターだと私は思います。そういう意味でこの法案改正に対しては賛成でありますけれども、いま御指摘のように、現在のような行政面のいろいろな取り締まりその他のことに関しましては、やはり峻厳に、いままで以上に役所のほうもこれを改革するというか、反省すべきは反省してやらなくちゃならぬ、これは大橋議員の御指摘のとおりで、大臣としてはなはだ妙な答弁をいたしますけれども、良心に従って、私はかように答弁いたします。
  274. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 労働大臣の一生懸命の答弁はわかるのですけれども、もう少しやはり責任ある答弁をしていただきたいと思いますですね。労働大臣は非常に笑顔がよくて、その顔を見ていると非常に指摘しにくくなるのですけれども、私が一番心配しますのは、これまでの港湾労働法でも十分取り締まりができるはずなのに、それもやってこなかった、ここに問題があるのですよと言っているわけです。しかも今度は、共同雇用理念は私もわかります。あるいはそういう体制になることも反対ではないのです。が、今日職安が直接日雇い港湾労働者を掌握しているにもかかわらず、そういう立場であるにもかかわらず問題が山積しております。それが今回は、事業主団体の手にゆだねられるわけですね。それだけに私は不安を感ずるわけですよ。つまり今回の改正案というものは、先ほどお話があっておりましたように、去年の十一月十七日の港湾調整審議会からの建議趣旨に基づいてこうして行なわれたというわけでございますけれども、結論からいうならば、職安のやる仕事事業主団体が肩がわりしてやるのだ、こういうことになるわけです。つまり事業主団体登録紹介あるいは雇用管理を行なうということになるわけでありまして、こういう立場を率直に見た場合、いわゆる立場の弱い労働者のほうから見たとき、非常に不安を感ずるのですね。労働省責任転嫁するのではないか。ですから、今回の法改正はむしろ法の趣旨に逆行するような結果になるのではないか、こういう不安で一ぱいなんです。そういう点も含めまして、違法行為を犯した者、いわゆる脱法行為をやった者に対しては、もっとびしびしと労働省の監督の立場からやってもらいたい、この決意をもう少し具体的に披瀝していただきたい。
  275. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 大橋議員の御指摘は私も同感で、もうこれは意見は同一であります。現在の港湾法でも、やればもう少し効果があったという感じがするのも、大臣としてはなはだ申しにくいのでありますが、そういう点も認めざるを得ない、反省しなくちゃならぬという気がいたします。  いま、港湾労働者のほうが反対に、事業主がその権力を持った場合にはこれを乱用するのではないかという御心配の点も十分よくわかります。しかし、いままでのままでいいかといえば、改正案でやるほうが私はよりベターだということの自信も十分持っております。そういう意味で、いろいろ雇用調整規程、この運用、この認可、または、やはりいろいろなことは人がするのでありますから、役員職員、これの欠格条件の問題、解任の問題その他、いまのいろいろなやみ雇用だとか共同手配だとか、こういう問題も現行法でもできるのでありますが、どうもそれが手ぬるい感がありますので、かような問題に対しまして的確な行政指導というか、厳重な行政指導をやらなくちゃ改正案意味も変な形になる危険性がある、御指摘のような点もあると私は思いますので、先ほどから再三ことばを強くして私が申し上げましたのは、この法案が通った場合にはなお一そういろいろな面について指導監督をびしびしやる、こういうことはこの席でお誓いすることができると私は思います。さような意味で、この法案が通ると同時に関係係官とともに、この運営については従来にかわる方法でこれに対処するという真剣な決意でありますことを、大橋委員に申し上げたいと思います。
  276. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 要するに私たちが一番心配するのは、今度の共同雇用体制がしかれまして、登録日雇い港湾労働者が何だか事業主のために確保された労働者である、このような意識が事業主側に徹底されるのではないか、こういう心配が一つあります。それから事業主側か労働者のいわゆる生殺与奪の権を握って、いよいよ日雇い労働者は弱い立場に立たされていく、こういうことでは私たちは労働者を守る立場から許されない、こういう気持ちで一ぱいなわけです。結局、恣意的な運営が行なわれるのではないかということなんですね。まあこの点は先ほどから何べんも質問いたしましたので割愛いたしますけれども、結論的に労働省といたしまして、今回の法改正によって登録日雇い港湾労働者雇用機会確保が必ずはかられるという自信があるのかどうか、この点をまずはっきり答えてもらいたいのです。
  277. 道正邦彦

    道正政府委員 一言で申し上げれば、自信があるし、しかも就労機会確保をはからなければならないという至上命令をもって万全の努力をする。制度的にも雇用調整規程というので地区協会仕事をするわけでございますが、港の実情に応じて雇用調整規程の中身はきまってくると思います。そういうものを受けまして労働大臣認可をするわけでございますけれども、その認可にあたりましては関係労使意見も十分聞いて妥当な雇用調整規程を定め、それに基づいて地区港湾協会が運営され、足りないところは労働大臣勧告をし、監督命令を出すということによって就労日数の確保は十分できるというふうに私は考えております。
  278. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 雇用調整手当金の問題をちょっとお尋ねいたします。  現行五百九十円、改正六百六十円ということでございますが、これには国の補助があるわけですね。港湾労働法第五十二条に国の補助規定があるわけです。「国は、政令で定めるところにより、事業団に対し、第二十九条第一号の業務に要する費用の一部に相当する金額を補助する。」こういう規定がございます。また政令の第三条に補助金の額が定められているわけでございますが、納付金の徴収総額の二分の一、雇用調整手当の支給総額の三分の一のどちらか低いほうの額を支給する、こうあるんですね。このどちらか低いほうの額を支給するという、ここのところですけれども、非常に消極的な補助姿勢だと私は思うんですが、これはもっと積極的な姿勢に改めるべきだと思うんです。どうですか。
  279. 道正邦彦

    道正政府委員 御趣旨はごもっともでございます。そういう方向で臨んでまいりたいと思いますが、これは法律事項でございませんので、法律改正の暁に十分考えてまいりたいと思います。
  280. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 大臣
  281. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 御趣旨を尊重しまして、審議会とかいろいろな意見を聞きまして御趣旨の線に沿うように対処いたしたいと思います。
  282. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いまの問題は非常に重要な政府の姿勢の問題ですから、しっかり改善していただきたいことを強く要望しておきます。  それからよくいわれる手配師の問題ですね。かつて港湾労働者雇用に際しまして手配師が介在して、中間搾取あるいは強制労働という数々の弊害を生じてきたわけでございますが、これらのいわゆる手配師を排除するために、職安を通じて日雇い労働者紹介が行なわれてその安定をはかってきた。そういう目的をもちまして港湾労働法の制定がなされたと私も理解しているわけでございますが、今回の改正内容からいきますと、この心配される手配師が復活してくるんではないか、このように懸念されているわけでございますよ。この点についてはどうお考えですか。
  283. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 先ほど島本田中委員の質問にもお答えいたしましたが、この問題に対しましては、今回の改正案雇用調整計画、これは労働大臣認可するんでありますが、これに従って雇用調整規程というものができます。これによっていろいろな手配師の問題も十分チェックできますが、この役職員の欠格条件、また解任の権限が労働大臣にあるというような面から、今後、擬装雇用だとか、いろいろな問題の場合に手配師が介在する、先ほどの御質問の中には、手配師が職員なり、ことによったら役員に出てくるんじゃないか、こういう懸念がある。手配師の中には、これからはわれわれがその衝に当たるんだというような暴言をはいている方もあるということですが、かような問題に対しましてはこの法のあらゆる面を適用するし、また、さような面はこれは十分わかります。港湾、港湾によって大体もう目星がついておりますから、この点は、先ほど私からも申し上げたように、かようなことのないように、手配師がばっこしたり、またやみ雇用が起こらないように、この点は今回の改正案のほうが取り締まりその他の点についてもやりやすいと思います。私、先ほど業者と言いましたが、四十何年前に関係したことがあるんでありますから、そのときの体験も生かしてかような手配師の防止、これには行政的に大いに考慮いたしまして、御指摘のような点のないように大いに行政的な面でも指導、監督いたしますことをここに確約いたしておきます。
  284. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 体験を生かしての監督、指導とあれば私は非常に心強く思いますが、直接の衝に当たるといいますか、それは職安局長だと思うのです。いまの大臣の気持ちを十分掌握して、生きた指導体制をとられることを望みます。局長答弁を伺います。
  285. 道正邦彦

    道正政府委員 気持ちは大臣のお気持ちと全く同じでございまして、かりにも改正法案趣旨が没却されるようなことのないように最善の努力をいたします。最悪の場合には解任命令というものをどしどしと——こう申しますとちょっと言い過ぎかもわかりませんが、大臣の御指示もいただきまして、あらゆる法律的な措置を含めて対策をとっていきたいと思っております。
  286. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 一番大きな問題点だろうと思います。その点は十分しっかりと指導をお願いしたいと思います。  では次に移りますが、いまから申し上げるのは日本港運協会と全国港湾労働組合協議会が、去る三月の二十二日にお話し合いをしまして協定書を取りかわしているわけです。私はその写しを持ってきておりますけれども、これは日にちは四十八年三月二十二日に協定書の取りかわしが行なわれております。まず確認しますが、これは間違いありませんか。
  287. 道正邦彦

    道正政府委員 私も三月二十二日の協定書を手元に持っておりますが、おそらく同じものだと思います。
  288. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 過日組合のある方が参りまして、次のような話をなさいました。組合側が春闘のときに賃上げ要求、何か一万三千五百円程度の要求をなさったそうでございます。ところが、この賃上げ要求が拒否されるのみならず、港運協会のほうから、そんなことを言うのだったら協定書も破棄するぞ、この協定書を破棄してしまう、こういうことを言ったという話を私は伺ったんですが、もしそれが事実ということになれば、これはどえらい問題だ、私はこう感じました。よく言われますように、言いがかりで言ったのかもしれませんけれども、こういうことがちらほら耳に入っているのですけれども、労働省のほうにもそういう話が入っていますか。
  289. 道正邦彦

    道正政府委員 私ども、三月二十二日に労使の間でいわば画期的な協定が結ばれたことを非常に喜んでおったわけでございます。その後、ただいま先生指摘のような経過でトラブルが起きておることも事実でございます。労働省といたしましては、労使双方に対しまして、中央団交の再開について労使双方少数の代表による事務折衡を開始したらどうかということを申し上げまして、それによりまして五月二十九日の午後、労使のトップレベルの方のお話し合いが持たれております。中央団交が再開された場合には、三・二二協定を確認するというところまでいったようでございますが、いま直ちに中央団交を再開することについては業界内部に問題があって直ちに開始できないというようなやりとりがあったようでございます。しかしながら、今後も必要に応じ話し合いを続けるということは確認されておるようでございます。われわれといたしましては、せっかく盛り上がってきた労使協調のムードがこういうことでこわれるのは非常に残念でございます。どうか一日も早く労使が円満に話し合いを積まれまして、三・二二協定を実施に移していただくように心から願っておるものでございます。
  290. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私は三・二二のこの協定の中身を云々しているわけじゃないのです。これは労使の話し合いの上につくられた中身ですから、われわれがそれに介入する何ものもないわけです。問題としているのは、こうして労使の代表が話し合ってきめた協定書を、一方の賃金要求を拒否したときに、そんな要求をするんならこちらまで破棄するぞという業者側、日本港運協会のそうした態度、ここに私は問題があると言っているわけですよ。これは重大問題だ。このような業者側の態度というものは、労働者側に大きな不信感を抱かせております。これは今後の港湾労働における運営面、あるいは交渉面に甚大な悪影響を及ぼすであろうと、私はこのように心配するわけです。ですからこのような労働者側に不信感を抱かせるような言動は間違っても吐かないように、業者側、いわゆる日本港運協会側に十分指導、注意をしてほしい、こういうことですが、どうですか。
  291. 道正邦彦

    道正政府委員 先ほど申し上げましたように労働省といたしましても、労使双方の間に入りまして一種のあっせんをしたわけでございますけれども、今後もそういう方向努力をいたします。おっしゃるように、法律が幾ら改正されましても、労使の信頼、協力関係がなければ法律は動きません。そういう意味で私どもといたしましては一刻も早く労使関係が正常化し、信頼関係を回復していただくように、それによりまして三・二二協定も履行されるということを心から願っておるわけでございます。
  292. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それではもう一つ。これは四十七年九月二十五日にかわされた同じく協定書でございますが、これは団体交渉の中身になっておりますけれども、まず「登録日雇港湾労働者雇用について、各港の事業者共同責任を負うことを確認する。」ということと、それから「前項の目的のため事業者は、登録日雇港湾労働者を代表するものと労組法にもとづく団体交渉の機関である事業者団体一地区港運協会一が各港ごと登録日雇港湾労働者の労働条件等、その他必要な問題について誠意をもって協議することを確認する。」というような、やはり協定書ですが、これも生きると理解してよろしいですか。
  293. 道正邦彦

    道正政府委員 トラブルが起きておるのは三・二二協定でございまして、御指摘の昨年の九月二十五日の協定については、これを破棄するとかどうとかいう問題は起きていないと承知しております。
  294. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 これは労使関係のいわゆる近代化という問題にも通ずることでありまして、そういう意味で確認したわけでございますが、要するに日雇い港湾労働者あるいは労使交渉のルールの確立はきわめて重大な課題であると私も思います。これまで団体交渉権、あるいはスト権等は当然認められてきたはずでありますし、今後もいまの協定書に見るとおり、これは間違いなく団体交渉権、スト権が行使できる、このように理解して間違いないかどうか。どうですか。
  295. 道正邦彦

    道正政府委員 そのとおりでございます。
  296. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 実はILO条約第二条第一号——「昨年六月のILO第五十七回総会は、「新しい荷役方法による社会的影響(港湾)」という議題を条約勧告案として採択し、本年六月の第五十八回総会では、これを条約として採択する予定になっている。」こういうことでございますが、これと今回の法案との関係をいまからお尋ねしようとするわけでございます。「四十八年六月に予定されているILO総会に提出されている「新しい(港湾)荷役方法社会的影響に関する条約案第二条」によれば、次の通り定められようとしている。」ということでございます。その一つは、「国はすべての関係者をして、港湾労働者に対し正規のかつ、または期間の定めのない雇用をできうる限り得させることをその政策の目的としなければならない。」これが一つですね。二つには、「いかなる場合においても港湾労働者には、最低就業時間及びまたは、最低所得をその国とその港湾の経済的及び社会的地位にふさわしい方法でかつその程度まで保障しなければならない。」このようにあるわけでございますが、先ほど述べました一番のほうですね、これは改正案の内容とこの趣旨はほど遠いものではないだろうかと私は感ずるのですけれども、どうですか。
  297. 道正邦彦

    道正政府委員 趣旨におきましては改正案趣旨と私は合致しておるというふうに考えます。先生のお手元の資料が私の手元の資料とちょっと違いますので食い違うかもわかりませんが、「常用化及び恒久化」というふうになっておりますのはパーマネントエンプロイメントという原語になっておりまして、要するにその趣旨は、常用でなくとも港湾労働者として就労確保できればこの条約規定を満足するものだというふうに考えますので、そういう意味では、そういうふうにすることが国内政策であるということは、まさに今回の法律改正と同じことをねらっているわけでございまして、合致するというふうに考えます。  それから「最低の雇用期間または最低所得を保障される。それは当該国および当該港湾の経済的社会的事情に応じた方法で」こうなっております。これも雇用期間とその定数を定め、その範囲におきましては日雇い港湾労働者を含めまして雇用保障しようという目的の改正案でございます。また最低所得を保障する、これも雇用調整手当の額の問題であろうと思いますけれども、これも今後引き上げには努力いたしまするけれども、現在におきましてもこの条約の最低の基準は守っているんではないかというふうに考えて間違いないというふうに考えます。
  298. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いまの答弁では、ILO条約第二条第一の問題は、いわゆる常用化ではなくても、恒久化という立場から見ればその趣旨に沿った法案の中身になっているはずだ、こういうことですね。  もう一つのほうは、その港湾の経済的及び社会的地位にふさわしい水準を保障しなければならないというその立場に立って見た場合、雇用調整手当金、この金額の問題はあろうけれども、あるいは将来引き上げていかなければならぬとは思うけれども、これがその趣旨をカバーしているはずだ、こういうことですね。
  299. 道正邦彦

    道正政府委員 来たる六月から開かれますILO総会におきまして第二次討議が行なわれ、最終的に条約案が固まるわけでございますが、論議の過程を通じまして、先ほど私が申し上げましたようなことで、われわれとしてはこの二条の要件を満たすものと考えるけれども、ILOの意思として、論議の過程でそれでいいのかどうかということを確認したいと思っております。私どものいまの判断では、それはそれでよろしいということになるだろうというふうに考えております。
  300. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いまの問題は、やはりILO条約趣旨に沿っていく姿こそが理想であるわけですから、その問題も十分確認していただきたいと思います。  話はちょっと変わりますけれども、わが国の港湾労働の労働条件あるいは職場環境というものは、あまりいいとは私思いません。これを改善し、港湾労働を明るい魅力ある職場とするための対策を積極的に推進していかなければならぬと思うわけでございますが、そういうことが港湾労働法の真の目的ではなかろうかとも思うわけです。こういう職場環境の改善あるいは魅力ある、職場とするための具体的な方策といいますか、具体的にこうしていきたい、こうやるのだというものがあればここで明らかにしていただきたいと思います。
  301. 道正邦彦

    道正政府委員 法案の骨子になっております昨年十一月の港調審からの建議並びに一月十二日の中央職業安定審議会建議、これは法律事項だけではなくて、行政措置で処置すべきことも含まれております。そういうものは今後の港湾労働対策等を考える場合に、法律改正と合わせまして十二分に尊重してまいりたい。特にその中で、今後の課題といたしまして年金制度の検討をやれという一項目がございますが、そういう点を含めまして行政当局としてできるだけの努力をしたいと考えております。  なお、一つ付言させていただきますならば、労働条件の向上につきまして、私どもやるべきことは一ぱいあるわけでございますけれども、しかし基本は労働条件の向上、これは労使の話し合いによってきめるべきものでございます。そういう趣旨からいいまして、昨年来港湾労働のあり方をめぐって、関係審議会の場で労使はじめ関係者が非常に活発な御論議をなさいまして、そのことは同時に労働関係者協力関係を深めるという効果もあったと思います。三・二二までは非常に順調に来たわけでございますが、基本的には労働条件の向上は労使の話し合いだという趣旨からいいまして、一刻も早く労使が信頼関係を回復されることを心から願っているものでございます。
  302. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 じゃ次に、常用港湾労働者雇用管理についてお尋ねいたします。  人間でたとえて言うならば、人間は立てばそこに影が映るわけですけれども、常用港湾労働者が主体ということになれば、影が日雇い港湾労働者である、こういうことになるわけです。いままでおもに登録日雇い港湾労働者問題点を取り上げてきたわけでございますが、実はこの登録日雇い港湾労働者雇用機会が非常に不安定であるという大きな要素は、この常用港湾労働者の姿が問題である。というのは、先ほども話が出ておりますように、擬装雇用の常用雇用ですか、この実態がそれを何よりも物語っていると思うのであります。私はこの常用港湾労働者雇用管理が適正でない限りは、結局は登録日雇い港湾労働者雇用機会確保が安定しないのだ、こういうふうに関連してものを考えているわけでございますが、その点の理解は間違いでしょうか。
  303. 道正邦彦

    道正政府委員 全く間違っておらないと思います。
  304. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それでは、この常用港湾労働者のための対策といいますか、これが非常に不十分だと私は考えるのでございますが、具体的に対策を示していただきたい。     〔委員長退席、伊東委員長代理着席〕
  305. 道正邦彦

    道正政府委員 今回の改正の重点が日雇い港湾労働者の皆さんに対する対策であることは、先般の建議がそうであるのみならず、現在の港湾労働におきまする最大の問題が、実は登録日雇い労働者の皆さんの問題であるからであろうと思います。しかしながら、そのことは決して常用港湾労働者のことをないがしろにしていいということではございません。今回、法律事項ではございませんけれども、はしけの買い上げに伴いまして離職者が出る、この対策が実は非常に大きな問題であったわけでございます。要するに、不用のはしけを政府が買い上げる、それに伴いまして離職者が出るわけでございます。そういう離職者対策につきましても、いわゆる石炭、駐留軍等に準じたかなり手厚い対策を実施すべく予算も計上したわけでございます。  そのほか、港湾労働の近代化あるいは合理化の前進に伴いまして影響を受けますのは、日雇い労働者に限らず常用労働者も同じでございます。そういう点について改良すべきであるという建議にもなっておるわけでございまして、そういう点については、常用労働者日雇い労働者を問わず、われわれとしては、同じく港湾労働者として今後とも対策は抜かりなく講じてまいりたいと思いますが、当面重点の日雇い労働者対策に主力をあげてきておるところでございますが、そのことは決して常用労働者をないがしろにしていいというふうには思っておりません。
  306. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 擬装常用の問題は、もう一般化されているというほど定着しているのですね。悪いほうに定着しています。これを一掃して、真の意味港湾労働者の労働確保をはかっていただきたいことを強く要望しておきます。  そこで、運輸省の方いらっしゃいますね、いままで港湾労働の問題が、いわゆる近代化がおくれていることがいろいろ議論されてきたわけですけれども、この根本の原因は何かといいますと、港湾運送事業のその姿にある、つまり、前近代性にあると、われわれはこのように思うわけです。つまり、港湾労働対策がその実効をあげるためには、このような業界の体質の改善をはかることが不可欠であると私は思います。港湾では最近輸送革新が著しく進展していることは御承知のとおりでございますけれども、港湾運送事業というものは全く旧態依然の状態にある、こう言っても過言ではないと思うのです。このためにも、港湾運送事業を抜本的に改革すべきであると思うのでございますが、運輸省としてこの点はどうお考えになっていますか。
  307. 高橋全吉

    高橋説明員 いま先生がおっしゃったとおり、最近の輸送革新が進展しております港湾におきます港湾運送業のあり方というのは、先生のおっしゃっるとおり、全くそのとおりだと私たち思うわけでございますが、実は運輸省といたしましては、運輸政策審議会に諮問しまして、一昨年の六月以来特別委員会が設けられまして、一年有余かかりまして、輸送革新に対応した港湾運送事業のあるべき姿はどうしたらいいかという答申をこの三月二十日にいただきました。  そこで、この内容はいろいろございますけれども、港湾運送事業法を改正すべきであるということをこの答申でうたっておりますが、その大きな点を申し上げますと、大体二点にしぼられると思いますが、第一点は、コンテナ輸送埠頭、それからその他いわゆる専用埠頭と申しまして、大型の荷役機械で運送するという埠頭におきましても、免許のあり方はもう少し合理化すべきではないかという点が第一点でございます。それから第二点は、埠頭整備が非常に進みまして、いわゆるはしけの荷役がだんだん減ってまいりまして、いわゆる係岸荷役と申しますか、その面が非常に拡大してきました。そうしますと、いまいろいろ分かれております業種を、たとえば沿岸荷役業あるいは船内荷役業、こういうものを一本化する、あるいはその他の業種の合理化をはかるべきである、このような点がその答申にうたわれております。大きくいいましてその二点でございますけれども、その他にも、港湾運送事業法の改正すべき点は多々ありますので、実は私たちせっかくいまこの検討に入っているわけでございます。したがいまして、もちろん結果が出れば国会で御審議を願うわけでございますが、最終的な結論が出るまでにはまだいろいろな問題があると思います。そこで私たち、この答申が出る前からでございますけれども、検討に入っておる、こういう段階でございます。
  308. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 運輸省のほうは、三月二十日に答申を受けて一生懸命検討しているということでございますけれども、労働省のほうは、やむにやまれず、こうして港湾労働法改正に手をつけたわけですね。先ほども申し上げますように、こうした港湾労働の近代化がおくれている根本の原因というものは、むしろ港湾運送事業の前近代性にあると私は指摘したわけです。だから大臣、あなたは先ほどから、自分は港湾関係の経験者であり体験者である、こういうふうに自負なさっておりましたが、それこそ経験、体験を生かして、この運輸省のいまの検討の中に積極的に入って示唆なさったらどうですかね。その点はどうお考えになりますか。
  309. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 主管でありませんが、運輸大臣と相談して御趣旨のような点を改善するように努力いたしたいと思います。
  310. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 要するに、これは車の両輪だと思うのですね。労働省だけが幾ら一生懸命手を打ってみたところで、一方でそれが進まなかったならば、これは無意味だと思うのです。いま労働大臣も、運輸大臣とこの点については真剣に取り組んでいくという意味の御答弁がありましたので、これはこの辺で終りたいと思いますが、運輸省も、港湾労働の問題は非常に特殊な事情がありまして、深刻な問題もかかえております、そういうことをよく理解した上で、今後の検討を進めていただきたいことを強く要望しておきます。  それから、こういう問題があるのですよ。これはまた前に戻りますけれども、全日本港湾労働組合のまとめられた資料の中に出てくるのですけれども、私が北九州の出身だからというのじゃないのですが、一応地名を知っておりますので、その中の問題点を二、三取り上げます。「各港の実態」としまして、まず若松の問題が取り上げられております。「港労法発足当時は、臨時常用と称する偽装常用者が凡そ二千名を数えたのに、日雇登録者の数はわずか百十名ほどであった。それが現在は十五名(男子一名、女子十四名)に減少している。」ということが冒頭に書かれているのですけれども、この北九州の実態を御承知の方、いますか。
  311. 永場久治

    永場説明員 若松港におきましては、石炭の積み出し港といたしまして三十年代におきましては相当の荷役があったわけでございます。港湾労働法の施行前におきましては、非常に日雇い労働者が多かったのであります。港湾労働法が四十一年の七月に施行されました以降、まだ登録労働者は相当数がおったわけでございます。その後、若松港におきまして、ますます石炭の積み出しが少なくなった、こういうことで現在はほとんどやられていない。そういったような港湾荷役の需要というものが大幅に減少いたしまして、現在ここにございますように十五名程度の登録日雇い労働者になっているわけでございます。ただ現在は非常に日雇い求人というものが減少しておりまして、これは先ほど申しましたような港湾荷役の需要の減少でございます。したがいまして、ここにおきましては現在登録労働者以外の人たちが働きます場合というのは非常に少のうございます。登録労働者では扱えないような非常に特殊な貨物、そういったものを扱う場合に登録外の日雇い労働者の方が働かれる、こういう場合がある程度でございまして、全般的に申しますと、若松港につきましては非常に港のあれが減少してまいりまして、それだけに需要が減少している、それがこのような事態になっているということでございます。
  312. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 石炭荷役の立場からいえば、いまあなたがおっしゃったようなことも理解できないわけじゃないのです。が、決してそういう問題だけではない。要するに皆さんがおっしゃっていることは、こういう姿になった原因のすべては、当初から一貫する業者側の非あるいは反港湾労働法的態度と現地職安の無策、無能ぶりにあるのだ。要するに港湾労働法という法律に対する業者の認識がこれを無視しているんだ、こういうことなんですね。これは表面的な問題だけに終わらないで、皆さんの意見にも真剣に耳を傾けて今後の実態調査に乗り出してもらいたいと思うのです。  それから「八幡・戸畑港における問題点」としまして、全部申し上げては時間もたちますので一部を申し上げますと、「港の特殊性」としまして、「八幡、戸畑港の殆どの部分が、新日鉄・三菱化成の専用港、専用岸壁である。この為これらの独占」、独占というのは大企業ということですけれども、「は港を私物化し、単なる生産工程の一部門と考えて港湾の合理化をすすめている。その為港湾労法の施行上の諸問題の解決は、これら荷主である独占の生産方針に逆っては実施に移せない面がある。」こういうふうに皆さんは指摘なさっています。つまり大企業がひとり占めしている、港を私物化しているんだ。そういう立場から職安にしろ、行政当局が強い指導をしようとしてみてもなかなかできないんだ、こういうことを指摘していますけれども、この点についてはどう考えますか。
  313. 永場久治

    永場説明員 八幡、戸畑の両港でございますけれども、内容的にはほとんどが八幡港でございまして、八幡新日鉄の鉄材運搬、これが港湾荷役の主体になっています。そういう関係でございますので、取り扱います業者も二社程度でほとんどやられている、こういう実情でございます。新日鉄の非常に奥の深いところの埠頭でやっております。私どもも、そういった悪条件はあるわけでございますけれども、立ち入り検査等相当やっておりまして、違反等の摘発等につとめておる次第でございます。今後ともさらにこの面を強化してまいりたいこう思っております。
  314. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 時間の関係もありますので割愛していきますけれども、労働下宿というものを聞かれましたですね。知っておりますか。この「労働下宿とは、端的に言って職安と宿泊所の機能をもった半強制労働収容所である。昨今、港運業者は大型バスをこの労働下宿に直接横付けしている。」これは先ほども田中美智子さんの質問の中にもありましたですね。つまりやみ雇用。「なかには○○運輸(株)○○寮という名に変身しているが中身は労働下宿そのものである。手配師は、この地区では協力会社といわれ、電話一本机一つ港運業者のピーク処理に正しく門前雇用で「協力」している」つまりこれがやみ雇用の実態を一言で表現なさったところであろうと思う。「職安法違反の事実を職安につきつけても立証困難と職安はその摘発を放棄している。」これが事実だ。つまり職安のほうに、あれはインチキではないか、違法行為ではないかとわざわざ訴えに行っても、その違法の立証が非常に困難だといって取り合ってくれない、こういうことも訴えています。この労働下宿の問題、やみ雇用の問題、こういう実態があることを御承知ですか。
  315. 永場久治

    永場説明員 労働下宿があることはよく承知しております。ここに、先ほど先生おっしゃいました○○港運の○○寮、何々運輸会社の○○寮、おそらくこれは常用港湾労働者がその社宅として使われているからそういうふうになっているのじゃないかと思います。     〔伊東委員長代理退席、委員長着席〕 私どもが、登録日雇い労働者がここに何人下宿しているかという点につきまして調べているところでは、大体二、三十人というふうな押え方をしているわけでございます。したがいまして、それ以外の登録外の日雇いも、たまには安定所の紹介でここに居住しております者が紹介される場合がございますけれども、これはほとんど皆無でございます。したがいまして、この労働下宿に○○寮という形で住んでおられる方は常用港湾労働者ではないか。したがいまして常用港湾労働者につきましては、やみ雇用という問題は出てまいりません。したがいまして、環境的には非常にいろいろ問題がございますけれども、やみ雇用問題には即ストレートには結びつかないというふうに考えているわけでございます。
  316. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 この労働下宿問題云々の、私が言わんとするところは、北九州はいわゆる前時代的じゃないけれども、タコ部屋とよくいわれましたですね、タコ部屋方式がいまだに散見するんですよ。あちらにもこちらにもあるんですよ。大臣、これはほんとうなんですよ。まさかと思うでしょうけれども、北九州のこうした実態というものはあ然とするものがあります。これはやはり徹底的に実情調査をして、そして手を入れてもらいたいですな。どうですか。
  317. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 御指摘のような点につきましては私、まだはなはだ至らぬ点がございまして聞いておりませんので、なお十分港の職安局をして実態の調査並びにこれに対してことによったら立ち入り検査もやりまして、厳重に指導いたす所存でおります。
  318. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 ひとりそこをしっかりお願いいたしますね。  もう一つ。これは問題は変わりますけれども、八幡、戸畑港には船内、沿岸の合計で、港運業者は二十二社あるそうです。港湾労働法施行時の四十一年七月以降、いまだかつて一回も求人を出したこともない、あるいは港湾の求人を出さねばならないとき、いわゆるピーク時には自分の会社の陸上関係常用労働者でそれを補充し、陸上にいわゆる日雇いを使用して納付金をのがれようとする悪質な業者がかなりいる、要するに港湾だけの専業者がいないだけにこの問題はあとを断たない、こういうことも皆さんは指摘なさっているわけでございますが、この点はどう理解しますか。
  319. 永場久治

    永場説明員 その点につきましては先生指摘のとおりの事情がございまして、指摘もありまして私ども数回調査したことが現にございます。ただ、実情を申し上げますと、港湾運送業者で陸上運送をやっているものが相当ございまして、それでむしろ港湾で使っております常用港湾労働者をひまなときに陸上のほうに回して使う、こういったような実態があるようでございます。先ほど先生指摘になりました事例は、むしろ陸上で使っている者を港湾のほうに使うというふうな御指摘でございましたけれども、私どもが調べましたところではむしろ逆になっておるようでございます。ただ、いずれにしましても、この問題は、従来から非常に問題が指摘されているところでございます。私ども今後ともこれがかりそめにも常用港湾労働者につきまして臨時に使用する、こういう例にかりに該当するといたしますと、陸上で使っておりました者を港湾に使うということになりますと、現行法でもそうでございますし、改正法案でも同じでございますけれども、常用港湾労働者として使用の届け出をしなければならないということになっているわけでございます。その辺はきっちり把握いたしまして、違反につきましては摘発したい、こう思っておるわけでございますけれども、現状私どもが調査いたしましたところによりますと、先ほど申しましたような事情でございます。
  320. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 多少認識の相違もあるようでございますが、いずれにしましても、問題点は認めております。ですから、労働省といたしまして、特に北九州方面の混乱しているといいますか、複雑微妙な港湾労働関係の問題について一掃していただきたい、つまり港湾労働者を真に守る意味においてあらゆる不合理、そうした欠陥を是正してもらいたいということを強く要望いたします。  最後に、もう一つ大臣にお尋ねいたしますが、労働省は今回の法改正によって港湾労働対策についての責任をのがれるつもりはない、このような答弁が繰り返されたと思うわけでありますが、、労働省責任を持って港湾労働法を運用するのでなければ、再び登録日雇い港湾労働者の不就労の増大という事態を招いて、現行法の二の舞いとなるのではないか、労働省としては立ち入り検査を強化して、やみ雇用、擬装常用の一掃をはかるなど、港湾労働法の運用についてき然たる態度でもって今後臨んでいくべきであると思うのでございますが、これについての大臣の決意をお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  321. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 先ほど来いろいろ有益な御意見を述べられまして、われわれも大いに参考になりました。改正案が通った場合には何といっても雇用調整計画、これに基づく雇用調整規程、これを労働省といたしたしては十分指導監督する、もう一つは、従事者の欠格条項並びに解任の問題、また地区協会業務の公正な運営、かようなことに対しましては従来のことをよく反省いたしまして、き然たる態度で臨むことをここでお約束すると同時に、なお、立ち入り検査その他も当然いままでよりは、先ほどから再々申し上げたように厳重にして、やみ雇用規制その他に対しましても、お説のとおり対しますことをここでお誓いいたしまして答弁にかえたいと思います。
  322. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 終わります。      ————◇—————
  323. 田川誠一

    田川委員長 船員保険法の一部を改正する法律案雇用対策法及び雇用促進事業団法の一部を改正する法律案労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案、以上三案を議題とし、順次提案理由の説明を聴取いたします。
  324. 田川誠一

    田川委員長 厚生大臣齋藤邦吉君。
  325. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 ただいま議題となりました船員保険法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。  今回の改正趣旨は、労働者災害補償保険において、通勤の途上においてこうむる災害に対して業務上災害の場合に準じた保護をはかることとしたこととの見合いにおいて、船員保険においても、通勤災害に関して、これに準じた改正を行なうこととするほか、職務上の傷病手当金について、職務上の年金の場合に準じ、その額の改定を行ない得るように措置しようとするものであります。以下、改正の内容について概略を御説明いたします。第一に、通勤災害に関する改正について申し上げます。  まず、保護の対象とする通勤の範囲についてでありますが、労働者災害補償保険法規定する通勤の範囲と同一とすることといたしております。  次に、通勤災害に関する保険給付の内容についてでありますが、保険給付の種類は、療養の給付、傷病手当金、障害年金、遺族年金、障害一時金、遺族一時金及び葬祭料とし、これらの保険給付の支給要件及び給付の額については、職務上災害に関する保険給付の場合に準ずることとしております。なお、療養の給付を受ける被保険者は、初診を受ける際に二百円の一部負担を行なうことといたしております。  また、これに要する費用は、船舶所有者が負担することといたしております。  第二に、職務上の傷病手当金に関する改正について申し上げます。  職務上の傷病手当金は、傷病が治癒するまで支給されることとなっている関係上、職務上の年金の場合と同様、その額を、政令の定めるところにより、労働者災害補償保険における長期傷病補償給付の額の改定の措置等を勘案して改定することができるようにいたしております。  最後に、実施の時期につきましては、公布の日から起算して六月をこえない範囲内で政令をもつて定めることとしております。  以上がこの法律案の提案理由でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  326. 田川誠一

  327. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 ただいま議題となりました雇用対策法及び雇用促進事業団法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  最近における雇用の動向から見ますと、特に高年齢者、心身障害者等に関する雇用対策の充実をはかる必要があります。  すなわち、高年齢者につきましては、雇用が全体的に改善された中で、なお就職が困難な状況にありますが、特に、五十五歳を中心とする定年制は、高年齢者の生活の安定やその能力の有効発揮にとって、少なからざる障害となっております。今後、労働力人口の高齢化が急速に進むことを考慮いたしますと、高年齢者の職業の安定をはかることがますます重要となってきていると考えます。  次に、心身障害者の雇用の状況は、健常者の場合に比べ、依然として改善がおくれておりますので、心身障害者に職業の場を提供し、健常者とともに社会経済活動に参加する機会を拡大することが肝要であると考えます。  また、工業の再配置を推進するにあたりましては、工場の施設等の移転と並んで労働者の移転が円滑に行なわれるようにすることが必要であると考えます。  このような事情にかんがみ、政府といたしましては、雇用審議会にはかり、その答申を得て、この法案を作成し、提案した次第であります。  次に、その内容の概要を御説明申し上げます。  第一は、高年齢者の職業の安定をはかるための施策を充実することであります。その一は、国が、定年の引き上げの円滑な実施を促進するために必要な施策を充実するとともに、定年の引き上げを促進するため、関係者に対し資料の提供その他の援助を行なうことであります。  その二は、一定年齢未満の年齢を定年としている事業所の事業主に対して、定年に達する労働者の再就職援助計画の作成と再就職援助担当者の選任を行なわせるとともに、国としても、職業訓練等の実施により、定年に達する労働者の再就職を促進するようにつとめることであります。  第二は、心身障害者の職業の安定をはかるための施策の一環として、雇用促進事業団が、心身障害者を多数雇用する事業所の事業主に対して、その事業の用に供する施設の設置等に要する資金の貸し付けを行なうことであります。  第三は、工業の再配置に伴う労働者の移転の円滑化をはかるための施策の一環として、雇用促進事業団が、工場の移転に伴い住居を移転するために宿舎を必要とする労働者に対して、移転就職者の利用に支障がない限り、移転就職者用宿舎を貸与することができるものとすることであります。  以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。  何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  次に、ただいま議題となりました労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  近年、わが国における交通事情等の変化に伴い、労働者が通勤の途上においてこうむる災害もまた多くなってきております。こうした情勢を背景に、通勤災害についても、より手厚い保護を行なうべきであるとの声が関係者の間で強くなってまいりました。  このような状況にかんがみ、労働省は、昭和四十五年二月、通勤途上災害調査会を設置し、通勤災害にかかる諸問題について検討をお願いしたいのであります。同調査会は、二年有余にわたる審議の結果、昨年八月、通勤災害の発生状況及び通勤と業務との密接な関係等にかんがみ、通勤災害については業務災害に準じて保護する必要があるという趣旨の報告を労使公益各側委員全員一致によって決定し、提出されたのであります。  政府といたしましては、この報告の趣旨を全面的に尊重し、鋭意検討を進めてまいりましたが、その成案を得ましたので、これを、労働者災害補償保険審議会及び社会保障制度審議会に諮問し、労働者災害補償保険審議会からは本年一月十七日に、社会保障制度審議会からは一月三十日に、それぞれ了承する旨の答申をいただきました。その結果に基づいて、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案を作成し、ここに提案いたした次第であります。  次に、この法律案の内容の概要を御説明申し上げます。  まず第一は、従来の業務災害に加えて、通勤災害についても保険給付及び保険施設を行なうことができるように、労働者災害補償保険の目的を改正することであります。  第二は、労働者災害補償保険において保護の対象とする通勤の範囲であります。  この法律案では、通勤とは、労働者が就業に関し、住居と就業の場所との間を、合理的な経路及び方法により往復することをいうこととしておりますが、労働者が通勤の途中で、往復の経路を逸脱したり、往復を中断した場合には、それ以後は、この法律案にいう通勤とはしないものとしております。ただし、その逸脱、中断が、日用品の購入など日常生活上必要な行為をやむを得ない事由により行なうための最少限度のものである場合には、その間を除き、その後の往復は、通勤として認めることとしております。  第三は、通勤災害に関する保険給付についてであります。  通勤災害に関する保険給付の種類、支給事由及び内容は、業務災害に関する保険給付の場合に準ずることとしております。  第四は、通勤災害に関する保険給付等に要する費用の負担についてであります。  通勤災害に関する保険給付等に要する費用に充てるための保険料は、事業主負担することとしており、その保険料は、労働保険の保険料の徴収等に関する法律規定による労働保険料として徴収することとしております。  なお、療養給付を受ける労働者は、二百円以内の一定額の一部負担を行なうこととしております。  第五は、通勤災害に関する保険給付の特例についてであります。  保険関係が成立していない事業場の労働者であって、この法律の施行後に通勤災害をこうむった者に対しても保険関係成立後の被災者と同様の保護を行なうため、業務災害に関する保険給付の特例に準じた措置を講ずることとしております。  以上のほか、この法律案においては、その附則において関係法律について所要の整理を行なうとともに、必要な経過措置を定めております。  なお、施行期日につきましては、公布の日から起算して六月をこえない範囲内において政令で定める日から施行することとし、この法律案による政正規定は、施行の日以後に発生した事故について適用することとしております。  以上がこの法律案の提案理由及びその内容の概要であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  328. 田川誠一

    田川委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後六時七分休憩      ————◇—————     (休憩後は会議を開くに至らなかった)