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1973-04-24 第71回国会 衆議院 社会労働委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年四月二十四日(火曜日)    午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 田川 誠一君    理事 伊東 正義君 理事 塩谷 一夫君    理事 竹内 黎一君 理事 橋本龍太郎君    理事 山下 徳夫君 理事 川俣健二郎君    理事 八木 一男君 理事 寺前  巖君       小沢 辰男君    大橋 武夫君       加藤 紘一君    瓦   力君       斉藤滋与史君    住  栄作君       田中  覚君    高橋 千寿君       戸井田三郎君    登坂重次郎君       中村 拓道君    羽生田 進君       増岡 博之君    粟山 ひで君       枝村 要作君    金子 みつ君       島本 虎三君    田口 一男君       田邊  誠君    多賀谷真稔君       村山 富市君    山本 政弘君       石母田 達君    田中美智子君       大橋 敏雄君    坂口  力君       小宮 武喜君    和田 耕作君  出席国務大臣         労 働 大 臣 加藤常太郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      坪川 信三君  出席政府委員         総理府総務副長         官      小宮山重四郎君         総理府人事局長 皆川 迪夫君         林野庁長官   福田 省一君         運輸省船員局長 丸居 幹一君         労働政務次官  葉梨 信行君         労働大臣官房長 藤繩 正勝君         労働省労政局長 石黒 拓爾君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君         労働省職業安定         局長      道正 邦彦君         労働省職業安定         局審議官    中原  晁君         自治省行政局公         務員部長    植弘 親民君  委員外出席者         議     員 田邊  誠君         議     員 田口 一男君         総理府人事局参         事官      梶谷  浩君         外務省アメリカ         局安全保障課長 松田 慶文君         国税庁直税部長 吉田冨士雄君         農林大臣官房審         議官      小山 義夫君     ————————————— 委員の異動 四月十九日  辞任         補欠選任   田中美智子君     諫山  博君 同日  辞任         補欠選任   諫山  博君     田中美智子君     ————————————— 四月二十一日  緊急雇用安定臨時措置法案田邊誠君外九名提  出、衆法第二九号)  失業保険法等の一部を改正する法律案田口一  男君外九名提出衆法第三〇号) 同月十九日  社会福祉施設労働者労働条件改善等に関する  請願北側義一紹介)(第二九五二号)  生活できる年金制度確立等に関する請願(大  野潔紹介)(第二九五三号)  同(増本一彦紹介)(第二九五四号)  同(浦井洋紹介)(第三〇二二号)  同(神崎敏雄紹介)(第三〇二三号)  同(木下元二紹介)(第三〇二四号)  同(柴田睦夫紹介)(第三〇二五号)  同(庄司幸助紹介)(第三〇二六号)  同(田中美智子紹介)(第三〇二七号)  同(谷口善太郎紹介)(第三〇二八号)  同(中川利三郎紹介)(第三〇二九号)  同(中路雅弘紹介)(第三〇三〇号)  同(東中光雄紹介)(第三〇三一号)  同(梅田勝紹介)(第三〇六一号)  同(田中美智子紹介)(第三〇六二号)  同(正森成二君紹介)(第三〇六三号)  同(梅田勝紹介)(第三一二一号)  同(大野潔紹介)(第三一二二号)  同(小濱新次紹介)(第三一二三号)  同(野間友一紹介)(第三一二四号)  同(村上弘紹介)(第三一二五号)  国民健康保険組合に対する国庫負担増額に関す  る請願荒木宏紹介)(第二九五五号)  同(池田禎治紹介)(第二九五六号)  同(稲富稜人君紹介)(第二九五七号)  同(梅田勝紹介)(第二九五八号)  同(浦井洋紹介)(第二九五九号)  同(春日一幸紹介)(第二九六〇号)  同(田中美智子紹介)(第二九六一号)  同(塚本三郎紹介)(第二九六二号)  同(平田藤吉紹介)(第二九六三号)  同(宮田早苗紹介)(第二九六四号)  同(佐野憲治紹介)(第三〇一四号)  同(島本虎三紹介)(第三〇一五号)  同(竹村幸雄紹介)(第三〇一六号)  同(松浦利尚君紹介)(第三〇一七号)  同(折小野良一紹介)(第三〇五六号)  同(神田大作紹介)(第三〇五七号)  同(瀬崎博義紹介)(第三〇五八号)  同(津金佑近君紹介)(第三〇五九号)  同(土橋一吉紹介)(第三〇六〇号)  同(青柳盛雄紹介)(第三一三一号)  同外五件(大野潔紹介)(第三一三二号)  同(瀬崎博義紹介)(第三一三三号)  同(不破哲三紹介)(第三一三四号)  同(正木良明紹介)(第三一三五号)  同(正森成二君紹介)(第三一三六号)  同(増本一彦紹介)(第三一三七号)  同(松本善明紹介)(第三一三八号)  同(矢野絢也君紹介)(第三一三九号)  健康保険法等の一部を改正する法律案反対等に  関する請願大野潔紹介)(第二九六五号)  同(神崎敏雄紹介)(第二九六六号)  同(東中光雄紹介)(第二九六七号)  同(正森成二君紹介)(第二九六八号)  同(村上弘紹介)(第二九六九号)  同(梅田勝紹介)(第二九八一号)  同外一件(斉藤正男紹介)(第二九八二号)  同(多田光雄紹介)(第二九八三号)  同(平林剛紹介)(第二九八四号)  同(村上弘紹介)(第二九八五号)  同外一件(岩垂寿喜男紹介)(第三〇〇九号)  同(梅田勝紹介)(第三〇一〇号)  同(平林剛紹介)(第三〇一一号)  同(村山富市紹介)(第三〇一二号)  同外四件(八木一男紹介)(第三〇一三号)  同(井岡大治紹介)(第三〇六四号)  同(加藤清二紹介)(第三〇六五号)  同(神崎敏雄紹介)(第三〇六六号)  同(久保田鶴松紹介)(第三〇六七号)  同(田邊誠紹介)(第三〇六八号)  同(正森成二君紹介)(第三〇六九号)  同外五件(八木一男紹介)(第三〇七〇号)  同(和田貞夫紹介)(第三〇七一号)  同外一件(板川正吾紹介)(第三一四〇号)  同(梅田勝紹介)(第三一四一号)  同外三件(枝村要作紹介)(第三一四二号)  同(大野潔紹介)(第三一四三号)  同(岡田春夫紹介)(第三一四四号)  同(久保田鶴松紹介)(第三一四五号)  同(瀬崎博義紹介)(第三一四六号)  同(田邊誠紹介)(第三一四七号)  同(芳賀貢紹介)(第三一四八号)  同外三件(八木一男紹介)(第三一四九号)  同外一件(渡辺三郎紹介)(第三一五〇号)  労働災害以外によるせき髄損傷者援護に関す  る請願灘尾弘吉紹介)(第二九八六号)  せき髄損傷者に対する労働者災害補償保険の給  付改善に関する請願灘尾弘吉紹介)(第二九  八七号)  腎臓移植患者治療費公費負担等に関する請願  (柴田睦夫君外一名紹介)(第三〇一八号)  社会保険診療報酬の引上げ及び健康保険制度改  善に関する請願金子みつ紹介)(第三〇一九  号)  同(金子満広紹介)(第三〇二〇号)  同(津金佑近君紹介)(第三〇二一号)  同(青柳盛雄紹介)(第三一二六号)  老齢年金増額に関する請願大柴滋夫紹介)  (第三〇五〇号)  同(佐藤敬治紹介)(第三〇五一号)  同(田中美智子紹介)(第三一三〇号)  医療保険制度の改革に関する請願田口一男君  紹介)(第三〇五二号)  優生保護法改正反対に関する請願多賀谷眞  稔君紹介)(第三〇五三号)  晴眼者を対象とするはり師、きゆう師養成学校  規制に関する請願伊能繁次郎紹介)(第三〇  五四号)  同(箕輪登紹介)(第三〇五五号)  歯科技工士資格付与特例措置に関する請願  (八木一男紹介)(第三一二〇号)  特定地域開発就労事業就労条件緩和等に関す  る請願田代文久紹介)(第三一二七号)  社会福祉の向上に関する請願東中光雄紹介)  (第三一二八号)  保育所増設等に関する請願寺前巖紹介)  (第三一二九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  緊急雇用安定臨時措置法案田邊誠君外九名提  出、衆法第二九号)  失業保険法等の一部を改正する法律案田口一  男君外九名提出衆法第三〇号)  港湾労働法の一部を改正する法律案内閣提出  第四〇号)  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 田川誠一

    田川委員長 これより会議を開きます。  田邊誠君外九名提出緊急雇用安定臨時措置法案議題とし、その趣旨説明を聴取いたします。田邊誠君。     —————————————     —————————————
  3. 田邊誠

    田邊議員 私は、提案者を代表して、緊急雇用安定臨時措置法案提案理由説明いたします。  ドルショックに続く円の大幅切り上げ、そして円再切り上げ必至という事態わが国社会経済にさまざまの影響をもたらしました。  円切り上げ不況当時、生産、出荷の大幅な減少企業収益の低下が顕著であり、また、産業界が全体的に生産調整に入り、減産体制をしいたことは記憶に新しいところであります。  また一方、企業は、不況を利用いたしまして、いわゆる合理化を進めてまいりました。ことに製造業においては、景気が回復していく過程においても、一貫して雇用減少をするという現象がそのことを物語っているのであります。  このような産業界政府の動向は、当然雇用面に強い影響を与えずにはおきません。  ドルショック当時、日を追うごとに労働力需給はゆるみ、ついに求人数求職数が同数になるという近年の労働力不足とは全く異なる現象が出てまいりました。新規学卒者採用取り消し電機化学繊維などを中心とする大量人員整理など雇用情勢はまさに悪化したわけであります。  雇用情勢の悪化は、量的失業も問題でありますが、今日むしろ重視しなければならないのは、産業界スクラップ・アンド・ビルド政府産業構造改善政策の進展は必然的に、現在職についている労働者雇用不安定化させるということであります。この雇用に対する不安感労働者の間に広がっていることを見のがすことはできません。  この場合に、最も注目すべきことは、雇用不安定化の原因について、直接、間接に政府がかかわっているということであります。鉄鋼業における生産調整は、通産省の指導によって、独禁法で許される行為として行なわれたものでありますし、化学肥料の場合も行政指導によるスクラップ・アンド・ビルドが行なわれたのであります。  また、田中内閣列島改造と称し、工場移転をすすめる、あるいは、知識集約型産業へなどと称して産業構造転換政策を進めている。このことが雇用不安を生み出しているという関係を重視しなければなりません。  しかしながら雇用不安の拡大に対しまして、わが国雇用制度は著しく立ちおくれております。公共職業訓練訓練を受けても再就職に必要な技能を修得することができないというのが実態でありますし、職安は単に職業紹介にとどまり、雇用の安定について国が何らかの責任を負うという形は全くないのであります。失業は、労働者にとりましては、生存にかかわる問題であることを深く認識し、雇用制度は早急に改善されなければなりません。  次に、法案概要について説明いたします。  第一に、政府政策転換等に伴い雇用情勢の悪化した業種については、労働大臣が指定した場合、当該業種失業者について、手帳を交付することといたしました。  第二に、手帳を交付された者について、労働省は、就職指導職業訓練等を行なうとともに各種の手当を給付することとし、手帳有効期間は三年といたしました。  第三に、臨時雇用安定委員会を設置し、この施策の運用の円滑をはかることといたしました。  どうぞ具体的に御審議の上、皆さん方の御賛同をいただくよう提案申し上げます。      ————◇—————
  4. 田川誠一

    田川委員長 田口一男君外九名提出失業保険法等の一部を改正する法律案議題とし、その趣旨説明を聴取いたします。田口一男君。     —————————————
  5. 田口一男

    田口議員 私は、提案者を代表して、ただいま議題となりました失業保険法等の一部を改正する法律案について、提案理由と内容について御説明いたします。  昨年の、いわゆる円切り上げ不況に際し、われわれは貴重な経験をいたしました。第一は、ドルショックによって、わずか二、三カ月の間に、繊維化学電機機械などわが国主力産業の、しかも大企業で、一千人、二千人という人員削減ないし削減計画が続々と出てきたことであります。すなわち、国際的あるいは国内的な要因により経済環境が変わる場合に、不況カルテルを結んだ鉄鋼が最もよい例でございますが、企業は、生産調整生産縮小の一環として雇用調整あるいは人員削減を行なうということであります。ここ十数年来、労働力不足ということが一般にいわれてまいりました。事実、この間は、全体的に、求人数求職数を上回る、いわゆる求人難であったわけですが、労働力不足あるいは完全雇用は、経済環境の変動によって、かくももろくくずれるものなのであり、したがって、常に失業という事態に十分対応できる体制を整えておかねばならないのであります。     〔委員長退席竹内(黎)委員長代理着席〕  第二は、企業人員削減を行なう場合に、中高年者からまず手をつける、という傾向にあることであります。これは企業の側から見るならば、賃金の高い中高年労働者を整理することは大きなメリットであり、ことに、技術革新とあわせて考える場合、中高年労働者は新しい機械、新しい技術に対する適応能力若年者に比較して、劣りがちであることも理由一つとされております。しかし、このことは同時に、中高年労働者は、一たん職を失えば、再就職がきわめて困難である、ということを意味するものであります。事実、昨年夏から景気は著しく回復し、それに伴って労働力需給関係は全体として逼迫してまいりましたが、四十歳を過ぎると職がない、という現象が統計にもあらわれております。したがって、失業者に対する生活保障措置期間について十分な考慮が払われなければなりません。  第三は、不況から景気の回復という経過の中で、異常なインフレ状態が現出したことであります。もとよりこれは、財界と一体となった政府経済財政政策がもたらした結果でありますが、これによって国民生活が著しく圧迫されていることは何人も否定できないところであります。ことに、失業者生活は、一般労働者よりもはるかに強く物価上昇影響を受けることは明らかであります。したがって、失業者に対する生活保障は、物価上昇にたえ得るものでなければなりません。  以上が、ここに失業保険法改正案提出する理由であります。  次に法案概要について御説明いたします。  第一に、失業保険金日額については、賃金日額の百分の八十に引き上げることとし、同時にその額は、五千三百円をこえず、かつ、千三百円を下回らないよう改めることといたしました。  第二に、受給期間については、三年間に延長することといたしました。  第三に、給付日数については、従来百八十日分であった者は二百七十日に延長するなど、それぞれ給付日数を延長することといたしました。  第四に、日雇失業保険日額について、区分を三等級に改めるとともに、それぞれ日額を引き上げることといたしました。  慎重審議の上、御賛同くださるよう、御提案いたします。      ————◇—————
  6. 竹内黎一

    竹内(黎)委員長代理 次に、労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑を行ないます。  質疑の申し出があります。これを許します。川俣健二郎君。
  7. 川俣健二郎

    川俣委員 時間が三十分の割り当てで理事会できまりましたので、問題を端的に伺います。  労働省の業務というか、労働問題は、雇用を安定させるというのが一番問題であります。そして、やむなく失業した場合は次の仕事をあっせんしながら失業保険金で一時の生活をしのげるようにしてあげる。これが両案相まってちょうどきょう社会党から提案されましたが、そこで私は失業保険法改正について提案されたことにちなんで、季節労務者、いわゆる出かせぎと失業保険との関係質問してみたいと思います。  そこで、私はこの出かせぎの法律、出かせぎ立法を考えていくべきだということを、わが党もいま建設労働法というのを考えておりますが、労働大臣にずっと要求してきました。そのつど、ただいま検討中である、こういう答弁であります。きょうは政務次官もすわっておられますが、かつて建設大臣労働大臣農林大臣の三大臣は、いま一体仕事をさがしておる時代か、人をさがしておる時代か、求職難求人難か、こういう私の質問に対しては答えが出ませんでした。求人難だろうか、求職難だろうか。代議士の家に、人をさがしてくれという選挙民が来るか、仕事をさがしてくれという選挙民が多いか、これはどうなんだ、こういう時代です。これは雇用安定政策がはっきりしていないからだと私は思う。さらに、過去数回の質問の中で、東北、北海道、北陸からやってくる冬場の労働力約百万、この百万の労働者の出かせぎ労働力というのは、一体政府から見てどうなんだ、こう言ったら、非常に貴重な労働力であり、重宝なものであるというところまで答弁が出た。感想が出た。もし出かせぎ労務者がいなかったら、地下鉄も高速道路も万博も何もできなかっただろうというところまでいった。     〔発言する者あり〕
  8. 竹内黎一

    竹内(黎)委員長代理 御静粛に願います。
  9. 川俣健二郎

    川俣委員 そこで、それじゃ一体この季節労務者、出かせぎ労務者というのは法律に守られて労働しているだろうか。去年の労働安全衛生法の大改正の際に、この季節労務者というのが委員会に出た。  そこでまず担当の局長に伺いたいのは、一体季節労務者、出かせぎ労務者というものに対してどういう労働政策を講じてきたか。季節労務者が本格的に出たのは昭和三十六年。十二、三年になるわけです。この十二、三年の間に、もうきょうは話を深めるあれはないのですが、タコ部屋生活のような時代もあります。事故を起こしたって見られないようなところもあります。したがって、労働省はこの季節労務者に対してどういうような政策を講じてきたか、これをまず第一点に聞きたいと思います。
  10. 道正邦彦

    道正政府委員 先生指摘のように、現在の日本は一般的には人手不足でございまして、新規求人倍率はこの一月、二月、二倍を上回っております。これは有史以来の最高の求人倍率になっております。しかしながら、反面、中高年齢者であるとかあるいは心身障害者であるとか、あるいは先生指摘の出かせぎの皆さんであるとか、雇用の不安定な状態にある方が一方においておられるということも事実でございます。特に出かせぎ労働対策につきましては、かねてより雇用政策の最重点施策一つといたしまして、その対策につとめてまいったところでございますが、基本的にはできるだけ地元で就労できるようにするのが理想であろうかと思います。そのためにいろいろの法律も御制定いただいておるわけでございます。しかしながら現実の問題といたしまして、依然として出かせぎに出ざるを得ないという実態があることも事実でございます。この対策基本はやはり就労経路正常化をはかる。端的に申し上げますならば、職業安定所を通す、あるいは市町村と連絡の上就労していただくということであろうかと思います。そういう就労経路正常化の上に乗りまして、各種援護措置をあわせて講じていくということで、たとえば賃金不払いであるとか、労働災害の防止であるとか、あるいは宿舎の改善であるとか、そういう点につきましては、強力な監督指導を行なうと同時に、留守家族の問題であるとか、あるいはそのほか季節労働者皆さんが安心して就労できるように、地元あるいは受け入れ先での諸般の施策を講じてきておるところでございます。
  11. 川俣健二郎

    川俣委員 一方、この季節労務者というのは、家業に農業というのを持っておるのが大半です。  それで、農林省が来ておるようですから伺いますが、一体いま農外所得農業所得との比率はどのようになってきたかということを伺いたいと思います。
  12. 小山義夫

    小山説明員 昭和四十六年の調査によりますと、一戸当たりの農業所得が四十六万九千六百円。これに対して農外所得が百八万一千九百円。合わせまして農家所得が百五十五万一千五百円、こういうことでございます。
  13. 川俣健二郎

    川俣委員 百五十万のうち、四分六の比率がくずれて、もう二対一の比率になったわけです。  そこでもう一ぺん審議官に聞きますけれども、一体東北のほうの農業、おもには米づくり、この米づくり一つ取り上げますと、一年間を割ると、種まきから収穫まであなたはどういうように一年間の農業期間というものをつかんでおるのか、ちょっと聞いてみたいと思う。何月の何日ごろから種まきやって、何月の何日ごろ収穫を終わる、それで農林省に納める……。
  14. 小山義夫

    小山説明員 どうも私ここに地域別農業の作業のあれを持っておりませんので、ちょっと適当なお答えができなくてたいへん恐縮でございますけれども、最近かなり、以前と比べて早場米が多くなっております。そういうことで、大体苗しろが相当期間繰り上がっておりまして、おそらく収穫が秋の初め、まだ暑いころに大体収穫が終わってしまうという状況になっておると思いますが、手元にはっきりした資料を持っておりませんので、具体的な数字で申し上げることができなくて申しわけございません。
  15. 川俣健二郎

    川俣委員 それで、大体言いますと、四月十五日から二十日前後まで苗づくり、それから五月十日ごろまでたんぼづくり、耕したりたんぼづくり、六月十日ごろまでに田植えが終わる、それから十月十日から十一月十日ごろまで収穫、これが典型的な東北米づくりです。  そこで失業保険の問題に戻る。  局長に聞きたいのですが、この前に、出かせぎ労働者というものに失業保険をやることを認めていながら、なぜこれは給付基礎日数を変えたか。簡単にいえば、一カ月に十一日働いて六カ月、これが失業保険基礎日数だったのを、一カ月十四日、しかもその一カ月の十四日というのは暦月であるというように改正したと思うのだが、ところがその改正したものがどうなっておるのか。まだ使われていないんだが、これはもう農林大臣も——きょういないんだが、農外所得で暮らさなければならない東北農民にとっては死活問題になるので、なぜこのように改正したか、どのように改正しようとして、いまどうなっておるのか、そこを聞きたい。
  16. 道正邦彦

    道正政府委員 失業保険性格論からいろいろ問題があるわけでございます。と申しますのは、失業保険保険制度でございますので、保険事故というのは偶発的なものでなければならないというのが基本だろうと思います。そういう角度から見ますならば、予定されている失業、これは本来保険制度になじまないのではないかという基本問題があるわけでございます。しかしながら、出かせぎの皆さん一定期間農業外で就労されまして季節的に失業される、これはいろいろ事情がございますから一がいにいえないと思います。  たとえば積雪寒冷地帯にまいりますならば、これは事業が冬場円滑に実施できない、やむを得ず離職するというケースもございましょう。あるいは、東京その他積雪寒冷地以外に出かせぎされますならば、これは事業としては可能で、就労の継続が可能でありましても、いろんな事情で離職して帰られるといういろいろのケースがあるわけでございます。いずれにいたしましても、出かせぎの皆さんから見れば、季節的に就労されまして、その期間の就労を基礎としての失業保険の受給、これが実際問題として非常に大きな生活のささえになっているというのも事実でございます。この二つの問題をどうやって調整しながら解決していくかということで、四十四年の法律改正の際に、国会におきましても非常な御論議があったわけでございます。  結論的に申し上げますならば、いろいろ制度的に問題はあろうけれども、季節出かせぎの皆さん失業保険の適用からはずすというわけにはいかぬ。しかしながら、現在のままでいいかというと、やはり問題もあろう。ついては、終戦直後の法律におきましては、一カ月十一日就労すれば一カ月働いたものとみなすという従来の規定、これは終戦後の特殊事情でやむを得なかった面があろうけれども、現在においてはそれがそのままいいかどうかということで、一カ月十四日というふうに改正が行なわれたものとわれわれは了解いたしております。施行期日は五十一年の二月以降というふうに法律で定められておる次第でございます。
  17. 川俣健二郎

    川俣委員 それじゃ局長、そういうような信念というか、強い提案改正した法律を、なぜ六年もクモの巣かけて労働省のたなに置くんですか。
  18. 道正邦彦

    道正政府委員 これは先生も御指摘のとおり、出かせぎの皆さんから見ますと、いままでは一カ月十一日で失業保険金が受給できたという実績がございますので、これを一挙に法律改正をもって十四日に改めるということは、生活に非常に影響が出てくるわけでございます。しからばこれが二年ならいいか、三年ならいいかという問題になりますけれども、国会の御審議の過程で、五十一年二月から実施したらどうかというふうに御決定があったというふうにわれわれは了解しておるわけでございます。
  19. 川俣健二郎

    川俣委員 いきなり使うと生活影響を来たすんだという考え方で、だからといって、PRするのに六年も要らないんだ。これはそこをよく聞いておいてくださいよ、農林省。  それで局長に伺いますが、失業保険というのは、あなたが考えているように、偶発的な失業失業保険のあれで、予定されていない失業にはやるが、予定されている失業失業保険法になじまないと、こう言うんだが、そんなのは全然関係ないよ。いいですか、農林省の林野庁に二万人という作業員がいる。その名前は定期作業員と称する。この定期作業員というのは、九カ月働いて三カ月失業する。予定どおり十二月の一日になったら、また雪が消えたら来なさいねという雇用なんです。そして、失業保険三カ月やっておる。これはもう予定されておる失業の典型なんです。これは二万人いる。そんなのは全然理論的に根拠ないよ。  失業保険というのはみんなから集めている金なんだが、それでは一体どれくらいになっているか、その金を知らせてください。
  20. 道正邦彦

    道正政府委員 昭和四十八年度の失業保険の予算の総額は、四千七百五十一億五千八百万円でございます。
  21. 川俣健二郎

    川俣委員 そこで近く提案される雇用対策法、雇対法、いわゆる定年延長。定年延長をする企業には、定年延長しなさいしなさいという奨励の意味で奨励金を出すわけだな。その奨励金にみんなで集めた失業保険金を使うわけだな。そういう法案だな。どうですか、これ。
  22. 道正邦彦

    道正政府委員 御指摘のとおり雇用対策法の一部改正法案を御提案申し上げておりますが、予算措置といたしまして、定年延長をされました中小企業に対しまして、五十五歳以上の定年を就業規則その他労働協約等できちっと定年延長していただく場合に、一年につき一人年額二万五千円の奨励金を支出いたします。これは失業保険法の中に、被保険者に対する福祉施設に支出していいという規定がございます。そういうことで、被保険者の福祉を向上するという意味で失業保険会計から支出するものでございます。
  23. 川俣健二郎

    川俣委員 そういうことなんだ。だから、それは悪いとは言わない。それを国会で相談して、こういう方法ででも定年延長というのを世に広めようじゃないかということで近く提案されるそうだから、これは委員会で十分に審議していいと思う。そのように失業保険金というのは、これこれこういうものでなければだめだという尺度がないから、いろいろと使われておる。さっき言ったように、二万人の定期作業員に毎年、冬は失業保険やりますぞといって失業保険を使っているわけだ。ところが、この出かせぎ労務者季節労務者の場合、いま凍結になっているものを五十一年二月からたなからおろして使われる、こういうことになる。四月の十五日に種まきに帰るためには、十月の十四日に出てこなければ失業保険はもらえない。農林省、よく聞いておいてくれよ。十月十四日に出てこなければ、四月の十五日に帰って失業保険もらえない。この場合は、種まきはやるんだが収穫はあきらめる。それから、収穫を終わって十一月の十五日出てくると、五月の十四日までいなければならない。この場合は、種まきも田づくりのほうもやめて田植えにだけ帰る、こういう状態なんです、失業保険もらうためには。そういう法律改正をして、いま労働省のたなの上に上がっておる。きょうは時間ないから、さらにこの次にこういう質問をしたいからね。これから一体農民をどのようにするつもりなのか。あなたのほうは、出かせぎのない農業というスローガンを出したわけだが、なかなかできないですよ。出かせぎのない農業とは何だ、こう聞いたら、工場を遠くのほうに持っていくんだ。冗談じゃないというのだ。それは農業を知らない人の言うことだ。大の男が出かせぎしなくていいような工場を持っていくためには、膨大な土地を要するか、煙を出すか、水を出すかだ。いま誘致工場というのは、かあさん方の片手間の縫製工場とか弱電の工場とかでやっておるはずです。そうでしょう。そんな考え方はやめなさい。農林省、絶対にやめなければだめです。出かせぎのない農業というものは、そういうものじゃない。これは日本の農業の位置づけで、審議会を責めたってしょうがないんだけれども、そういったものをこの次は深めるから、大臣とか——そういう質問書を出すからね、いいですか。  それで私が思うには、時間がないので最後に労働省局長に伺うと、失業保険というのは予定されておるようなものにはやらないとか、反面、農民は生活影響するだろうということを自認しておるところから見ると、これはいま六年間凍結されて労働省のたなに上がっているやつも、少し一考を要することでないかなと思うがどうか。
  24. 道正邦彦

    道正政府委員 昭和四十四年末の失業保険法改正法の附則の規定におきまして、農林水産業を「当然適用事業とするための適切な方策について調査研究を行ない、その結果に基づいて、昭和五十一年一月三十一日までに、必要な措置を講ずる」と法律で定められております。四十四年度におきましては、林業について調査を実施いたしました。この場合、これらの産業を当然適用とするためには、これらの産業における雇用関係あるいは賃金支払い関係が必ずしも他産業に比べて明確でございません。そういう場合が多いのでありますが、特に先ほど来申し上げておりますように、季節性があるという特殊事情がございます。いずれにいたしましても、現実の問題といたしまして、出かせぎの方々の生活に非常に大きな影響を持つ重要な問題であり、るる申し上げておりますように非常にむずかしい問題をはらんでおりますので、労働省といたしましては関係省庁と密接な連携を保ちながら、農林水産業の当然適用あるいは出かせぎ労働者に対する法律の適用等につきましての所要の条件整備につとめまして、慎重に対処してまいりたいと存じます。
  25. 川俣健二郎

    川俣委員 まあわかったようなわからないようなあれですが、さらにこれは日を改めて意見交換したいと思っております。社会党のほうから出した失業保険改正案もひとつゆっくり吟味してもらいたい。  それから、これはあなたが言ったようなさっきのような失業保険法の論理性は、法律というのは政治を離れては——政治的に六年間凍結している面がある。農業の場合は特にそうなんです。減反奨励金くれるなんというのは政治的にやっているので、それと同じように失業保険を取り上げたら東北、北海道のあれはだめになるということと、それからもう一つ大事な三つ目は、もしも失業保険金を出かせぎ労務者から取り上げられたら、出かせぎ労務者というのは六カ月そこにいなければならないということで定着性があるが、今度はそうじゃないですよ。一日か一週間ごとだ。隣の飯場はおかずがいいとか、ちょっと賃金がいいようだからあっちへ行こうという労働者なんです。それはなぜかというと、失業保険の六カ月というところに定着性があるのだ。そういうところをやはりきめこまかく見なければ、これは労務政策はできないと思うから、特にそれを要求しておきます。  理事会の申し合わせ休憩ですから、これでやめます。
  26. 竹内黎一

    竹内(黎)委員長代理 この際、十二時まで休憩いたします。     午前十一時九分休憩      ————◇—————     午後零時八分開議
  27. 田川誠一

    田川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  休憩前の質疑を続けます。多賀谷真稔君。
  28. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 いま七三年春闘まさにたけなわ、しかも一両日を控えて交通関係労働者のストライキをまじえて春闘は頂点を迎えるわけですけれども、私は、振り返っていま一番問題になっております官公労の労働者、公務員並びに公企体の労働者のスト権について質問してみたいと思います。  現時点において、政府は、公労法あるいは地公労法、さらにまた国家公務員法と地方公務員法の争議行為の禁止の条項が憲法に適合しておるという法的根拠、これは現在どう考えておるか、どこに求めておるか、これをお聞かせ願いたい。
  29. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 公務員のことにつきましては、非現業公務員は私どもの所管ではございませんが、憲法二十八条の関連で一括して申し上げますが、公務員、公共企業体等職員の労働基本権につきましては、公共の福祉の見地から制約があるのはやむを得ないという最高裁の判例、全逓中郵判決、一〇・二六判決というものに基づきまして、私どもは憲法に適合しておるものと確信いたしております。
  30. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そういたしますと、国家公務員のほうもこの解釈でよろしいですか、総理府。
  31. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 いま労働省の労政局長が述べられましたとおりでございます。
  32. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうすると、従来マッカーサー書簡に基づく公労法の改正等のいわば中心法理論でありました、憲法十五条の、公務員は全体の奉仕者であって一部の奉仕者でない、この規定の根拠というものは、現在の政府は使っていない、こう考えてよろしいですか。これは公務員関係
  33. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 公共企業体職員はもとより、国家公務員、地方公務員も、もちろん憲法二十八条の勤労者に入るわけでございます。判例の示すところでは、憲法十五条を根拠として基本権のすべてを否定することはできない。しかし、当然、公共の福祉というような内在的制約を持っておるものであるから、制限はやむを得ないというふうに最高裁大法廷が述べているわけでございます。広い意味でいう公共の福祉というものの中に、公務員の特殊な地位というものは当然含まれているのではないかと私は思っております。
  34. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 現在の政府は憲法十五条の規定を根拠とする、要するに公務員は全体の奉仕者であって一部の奉仕者でないということの法理論を根拠とする公務員の争議禁止という法理論はもう捨てた、こう考えてよろしいですか。
  35. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 憲法十五条のみを根拠として労働基本権のすべてを否定するという考えはございません。
  36. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 現在の政府はそれをとっておる、こう解釈していいのですか。あなたは最高裁の判決を引用されておられますけれども、最高裁の判決はまさにそのとおり。しかし現在の政府が——政府というのは、いわばあらゆる訴訟において、政府が被告になっておる場合、あるいは政府がみずから——政府というか検察庁が上告しておる場合、こういう場合の法理論は、もう十五条を捨てたと見ていいのですね。
  37. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 たびたび申し上げておりますように、十五条だけを根拠として基本権のすべてを否定するということは許されないということでございまして、十五条は基本権に関係がないとは考えておりません。それで、労働基本権も公共の福祉の見地から種々の制約を受けるということは当然である。その公共の福祉の見地からの制約というものにつきましての具体的な内容については、公務員の特殊な地位、憲法十五条にも出ているような公務員の特殊の地位というものもまたその内容でございますから、十五条が関係ないとは申し上げておらない。しかし、十五条だけで基本権のすべてを否定するという立場はとっておりませんということを申し上げておるわけでございます。
  38. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 公共の福祉の中に、それではあなた方は十五条の法理論を一部含めておる、要するに、公共の福祉の中に十五条というものはファクターとして入っているのだ、こういう解釈をとっておるわけですか。
  39. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 種々の制約を受けるということの中には、私は十五条にあらわれているような公務員の特殊な地位というものも含まれておるものと考えております。ただし、この点につきましては私の私見でございます。
  40. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 公企体のほうは、労働省は公務員に準じて行なわれておるのですから、ひとつ総理府のほうから見解を承りたいと思うのです。
  41. 梶谷浩

    ○梶谷説明員 公務員につきましては、憲法十五条の全体の奉仕者であるということによって、特殊な勤労者の一人として制約を受ける、かように考えております。
  42. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 わかりました。石黒政府委員といまの総理府のほうの政府委員答弁が、まさに違います。この点はきわめて重大なわけであります。でありますから、私は、政府としてどういう見解を持っておるのか、ひとつ総理府長官にお尋ねをいたしたい。
  43. 梶谷浩

    ○梶谷説明員 私からお答えをいたします。  私の認識では、ただいまの私の答弁と労政局長の御答弁と、食い違ってはおらないと存じます。
  44. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 食い違っているでしょう。いまの総理府の梶谷参事官のお話は、やはり十五条を根拠にしております、こういう答弁だったのでしょう。ところが、最高裁の判決の中では、十五条を根拠とするものについて、否定をしていますね。ですから、この点やっぱり違っていると私は聞こえたわけです。これはきわめて重大なことなんですよ。いまの政府がどういう態度で臨んでおるかということは、非常に重要なことなんです。ですから、いまの政府は現在どう臨んでいるか、どういう法理論をとっているか、これを明確にしないと、いま行なわれようとしておる官公労のストライキに対する政府の態度が理論的にきわめて不明確なまま、政府は対処しておるということにならざるを得ないのです。ですから、私は、きわめて重要であるから念を押して聞いておる。ですから、総理府からもう一度御答弁願いたい。
  45. 梶谷浩

    ○梶谷説明員 お答えいたします。  憲法二十八条の勤労者の中には公務員も入るということが第一でございます。それから、公務員については、憲法十五条で、全体の奉仕者であるということも同時にいわれておるわけであります。したがいまして、先生が先ほどお述べになりました全逓中郵の判決によりますと、公務員の権利を全体の奉仕者であることのみを理由としてすべて否定し去ることはできないということでありまして、私どもの認識によりますと、全逓中郵判決では、全体の奉仕者理論そのものはまだ捨てていない、かように認識をしておるわけでございます。したがいまして、労政局長と私の答弁は少しも食い違っておらない、かように存じます。
  46. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 労政局長は、要するに、公共の福祉ということと、それから公務員は全体の奉仕者であるという法理論を並立してはおっしゃらなかった。すべて労働基本権を十五条を根拠にして否定してはいけないというこの理論は、これは公共の福祉の一部の中に含まれておるという、こういう見解。ところが、あなたのほうは、この法理論は捨ててはいないということになれば、少なくとも、公共の福祉論としかも憲法のいっている十五条の規定とを並立しているか、あるいは、あなたのほうは十五条を最大のものとして考えているかは別として、とにかく根拠にしているということは事実でしょう。これは非常に違いますよ、具体的に問題を進めていきますと。
  47. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 私の先ほどの答弁のしかたが、ことばが足らなかったかもしれないと思いますので、もう一度お答えさせていただきます。  中郵判決におきましては、公企体職員も公務員も「憲法二八条にいう勤労者にほかならない」、十五条だけを根拠として「右の労働基本権をすべて否定するようなことは許されない。」ということを申しております。同時にまた、すぐ続けて、「ただ、公務員またはこれに準ずる者については、後に述べるように、その担当する職務の内容に応じて、私企業における労働者と異なる制約を内包しているにとどまると解すべきである。」こういう判決であるのは御承知のとおりであります。それで、その公務員が私企業における労働者と異なる制約を受けるというのを全部大きくひっくるめれば、広い意味の公共の福祉といえるでありましょうが、しかし、その「異なる制約」の非常にティピカルなものとして、憲法十五条でいっているような全体の奉仕者というようなものが、そういうような種々の内容、それのみではございませんけれども、それをも含めて種々の内容を、民間とは異なる制約を内包しているという趣旨のことを私としては申し上げたわけでございますので、総理府と食い違いはないものと思います。
  48. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 石黒政府委員答弁一つの大きな落とし穴がある。と申しますのは、あなたは、先ほどから聞いておると、判決と違うことをおっしゃっているのです。それはるる述べられた中に、「一五条を根拠として、」と判決が書いてあるのに、唯一の根拠として、十五条を唯一の根拠として、速記録を見てごらんなさい、あなたの答弁は唯一の根拠として、ここに私は問題をいよいよ複雑にする要因があると思うのです。そんなことをいっていませんよ。唯一なんていっていませんよ。十五条を根拠としてその労働基本権を否定することは間違いだ、こう書いてある。たびたびあなたの答弁の中には唯一ということ——唯一なんて判決は書いてないのですよ。でありますから、唯一は否定しておるけれども、根拠とするのはよろしい、こういうように聞こえる。また、そういうつもりで言っておるのかもしれぬ。しかし、四十一年の十月二十六日の全逓中郵判決もあるいは四十四年の四月二日の都教組の勤評の大法廷における判決も、そういうように書いてない。唯一なんて書いてない。ことに、四十四年の四月二日の判決は軽く扱っておるんですね。要するに、「「公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」とする憲法一五条を根拠として、公務員に対して右の労働基本権をすべて否定するようなことが許されないことは当然である」、もうこれでごく簡単に問題をきめつけておるわけです。ですから、この条文は少なくとも根拠にならない。争議行為を制限をする根拠にならない。ほかの法理を持ってこなければならない。しかも公共の福祉と先ほど言われたけれども、かつてみな公共の福祉論だ。そんなばく然たるものをもって、一体具体的な争議権が制約できるかというと、この中郵判決だって公共の福祉なんてことばは一つも使ってない。きわめて具体的に問題を処理しようとしておる。ですから今日、あなたのような憲法十五条の規定であるとかあるいは公共の福祉論とか、もう通用しないんですよ。ですから、私が念を押して現時点において政府はどう考えておるかということを盛んに聞いておるのは、そういうことなんですね。ひとつもう一回総理府並びに労働省から御答弁願いたい。
  49. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 「憲法一五条のみを」という、あるいは「唯一の」ということばを入れましたのは私のパラフレーズでございまして、全然そういうことではございません。しかし、この文章を読みますと、そういうふうに私としては解釈されるということでございます。そうして先生は、憲法十五条を根拠として公務員に対して基本権を否定するようなことは許されないというふうにおっしゃいましたけれども、すべて否定することは許されないというのが判決のいうところでございます。したがって逆にこれを裏返して申し上げますれば、その一部を制限するということは許されないものではないと考えられるわけでございます。公共の福祉ということばは古いことばである、ばく然たることばであるということは、御指摘のとおりでございます。私もその点は同感でございますので、先ほど来の御答弁でも、「いわゆる広い意味でいう公共の福祉で」というような申し方をしておるのでございまして、そういう公共の福祉の内容というものは、さらに、公共の福祉というようなことだけで制限するのではなくて、労働基本権あるいは国民の基本的人権すべてについていろいろな観点から制約を内包しているということは、これはもう通説でございますので、そのいろいろな観点の制約の一つとして公務員の特殊な地位というものがある、それは憲法十五条にもあらわれているというふうに考えて申し上げたわけでございます。
  50. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 中郵判決の基本権制限の中に、公務員であるからという、こういう要素は、制限する根拠として何ら出てこないでしょう。公務員であるからということがどこにも中郵判決の内容に全然出てこないじゃないですか。公務員だからということがどこにも出てこない。だから少なくとも同判決というものは、私は、十五条を根拠にすることは、少なくとも労働基本権の制限には法的理論としては成り立たないのだということを大法廷は認めたんだと解釈せざるを得ないと思うのです。
  51. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 私どもといたしましては、いまの「一五条を根拠として、」「労働基本権をすべて否定するようなことは許されない。」というのに続きまして、「ただ、公務員またはこれに準ずる者については、後に述べるように、その担当する職務の内容に応じて、私企業における労働者と異なる制約を内包しているにとどまると解すべきである。」という文句がございまして、公務員またはこれに準ずる者というものについて、やはり特殊な考慮があることは、最高裁も認めておるものでございます。その公務員の特殊性というのは、もちろんその担当する職務等によって非常にいろいろでございましょうけれども、通じていえることは、全体の奉仕者であるということが非常に大きな重要なファクターであるというふうに考えておるわけでございます。
  52. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それを根拠にしてないと思うんですがね。この判決は、すなわち主たる内容というのは、「労働基本権の制限は、労働基本権を尊重確保する必要と国民生活全体の利益を維持増進する必要とを比較衡量して、」——比較考量説をとっているのですよ。「両者が適正な均衡を保つことを目途として決定すべきであるが、労働基本権が勤労者の生存権に直結し、それを保障するための重要な手段である点を考慮すれば、その制限は、合理性の認められる必要最小限度のものにとどめなければならない。」要するにこれは公務員であるからというよりも、その職務の内容が、ここに書いておりますように「業務の停廃が国民生活全体の利益を害し、国民生活に重大な障害をもたらすおそれのあるものについて、これを避けるために必要やむを得ない場合について考慮されるべきである。」こういうので、一応職務の内容にもうすでに入ってきている。ですから窓口論ではなくて、要するにその労働者がどういう職務の内容を持っておるかということによって、その制限が合憲性になるのだということを、少なくともこの判決はいっておる。ですから私は、全体の奉仕者であるという立論はもう労働争議の制限の法理からは消えた、少なくとも現最高裁の判決を政府が順守するならば消えておる、こういうように解釈せざるを得ないのですが、その点について総理府はどうですか。
  53. 梶谷浩

    ○梶谷説明員 先生のお説はお説としてそれなりに拝聴いたしますが、私どもは先ほどお答え申し上げましたように、やはり全体の奉仕者ということは公務員の特殊性をあらわすものとして、他の私企業の勤労者とは別に一つの制約の要素になるというように存じております。それから先ほど私が全体の奉仕者ということのみに言及いたしまして、労働省のほうから公共の福祉というような表現があったということで、若干そごを来たしたようにお感じになったかもしれませんが、私どもといたしましても、全体の奉仕者ということのみを根拠として権利を否定するのだということを申しておるわけではございませんで、やはり公共の福祉ないしは権利の内在的制約と申しても同じかと思いますが、そういう意味合いの広い見地からの制限というものを考えているというふうに存じております。
  54. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 総理府としては、この両判決、最高裁の一〇・二六と四・二判決、これはどう考えておるのですか。どういうように読んでいるのですか。やはり全体の奉仕者論というのはくずれてないというふうにあなたのほうは読んでいるのですか。もう少し言うならば、いろいろ公務員の争議行為が各地において起こるとする。そうすると政府としてはこれは違法な争議だ、こういうことで取り締まるとか、あるいは起訴するとかという、その根拠はやはり憲法十五条というのを根拠としておやりになるのか。憲法十五条というものは消えてなくなっていくのか、これをお聞かせ願いたい。
  55. 梶谷浩

    ○梶谷説明員 しばしば申し上げておりますように、全体の奉仕者ということだけで考えておるのではございません。したがいまして、先ほど申しましたように総合的な見地からやはり制約がある、このように存じます。それから両判決について全体の奉仕者という理論がどういうふうになっておるかという点につきましては、私どもはやはり両判決においても、全体の奉仕者という見地からする権利の制限を全く捨てたものであるというふうには理解しておらないわけであります。
  56. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 総理府の考え方はわかりましたが、すなおに読みますとそう読めないですよ。要するに、いままで伝統的に使ってきた全体の奉仕者論はここでくずれた。まず窓口でくずれた。だから職務内容であるとか利益均衡論であるとかいうのが出てくるわけですね。ですから全体の奉仕者というのがくずれてなければ、それ一本でいけるはずですよね。それがくずれた。ですからこの判決は職務内容について話をしておる。あるいはその争議の個々の実態について比較衡量するという立論を出しておる、こう考えざるを得ないのですね。ところが、あなたのほうは依然として全体の奉仕者論を捨ててない。そうすると、全体の奉仕者論を捨ててないならば、なぜ職務内容に入っていくのですか。全体の奉仕者論が捨ててないなら、全体の奉仕者論のままで突っぱねたらよいじゃないですか、その点はどうなんです。
  57. 梶谷浩

    ○梶谷説明員 全体の奉仕者論はこの判決において捨ててはおらないというふうに解釈しておりますが、同時に職務内容云々ということにつきましては、先ほど私からお答えいたしました権利の内在的制約であるとか、あるいはもっと広く公共の福祉とかいった見地で議論がされておるのであろうと思います。したがいまして、私どもの解釈としてはその前に矛盾があるというふうには存じておりません。
  58. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 この判決が最高裁大法廷だけでなくて、地方の地裁の判決においても裁判官の苦悩が非常にあらわれておりますよね。もう随所に苦悩があらわれておる。すなわち一〇・二六判決も四・二判決もまさに実質的には紙一重です。違憲立法であると書きたいとこるを無理に合憲と書いておる、そういう点が非常によくあらわれておると思うのです。これは為政者として注意しなければならない問題だと私は思います。ことに山形の判決、見てごらんなさい。すなわち全専売の山形支部の山形地裁の判決、これなどはこういっていますよ。要するにたばこが「コーヒー等とならび、いわゆる嗜好品に過ぎず、社会生活上欠くことのできない物品ではないから、たばこの供給停止は、喫煙との関係において国民生活に重大な支障をもたらすものでなく、したがって喫煙の利益の喪失は争議行為禁止の理由にはならない。」しかも三公社五現業のうち専売公社の事業は、憲法二十八条の趣旨に即して限定的に解される公労法十七条一項が適用されない事業であることを認めるのが相当である、こういうふうに裁判所のほうが、専売は三公社五現業というけれども公労法の争議行為の禁止からはずれておるのだといっている。裁判はここまできておるのですよ。このことを政府並びにわれわれ立法者はよく考えなければならない。石黒さん記憶があるでしょうけれども、かつて公労法の四条三項、地労法の五条三項という規定をめぐっていかに裁判所が苦労したかということですよね。機関車労組が解雇された役員をかかえておるということで、どうしても団交に応じなかった。そこで機関車労組は団交を求める訴訟をした。それに対して東京地裁は何といったか。すなわち、機関車労組は解雇された役員を含めておるから、憲法上の組合ではあるけれども公労法上の組合でない、こういっているのです。立法が悪ければ、裁判所はこういう苦労をしなければならぬのですよ。総理府長官、よく聞いてくださいよ。法律が悪いために、違憲というわけにもいかないだろうというので、非常に苦労した判決を出しておる。だれが公労法十七条一項が専売公社だけは別だなんて読めますか、読めないでしょう。しかし裁判所は憲法の条文から見てどうしても解釈できないのですよ。解釈できないものだからして、苦労して専売だけは別だ、こう扱っておる。ですからこれは立法の問題だと私は思う。だから最高裁判決が出たらもう立法者としては考えなければならぬです。これは当然そういう事態に処して、立法的に見てこの法律をどう改正するかという段階に入るべきである。それをじんぜん日を送って、そうして公務員制度審議会に逃げておる。政府として一体どうなんです。政府としてはどういう態度で臨もうとしておるのですか、総理府総務長官。
  59. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 先ほどからの多賀谷委員の御意見も十分お聞きもいたしておるような次第でございますとともに、私どもこの問題に対しましては、決して逃げておるというような態度、立場でこれを傍観しておるものではございません。ただいま公制審において基本をなす重要な問題について御審議をいただいておりますので、その御審議を踏まえまして、答申を踏まえまして、政府といたしましてはそれに対応する考えであります。決して傍観はいたしておりません。
  60. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 続いて私は、四十六年の十月十五日の都教組の東京地裁の判決を見てみたい。これなんか明らかですね。要するに、民事上の責任もないということを下した判決です。最高裁の合憲的に解釈する可能性について、それは法理論上間違いではないかということをずうっといってきて、最後にこういっているんです。「合憲的に解することが可能であるかどうかについては、相当に疑問がある」これはかなり長い間判決文の中に最高裁の、先ほど私が引用しました、皆さんがおっしゃいました大法廷の二つの判決を批判をしながら、非常に疑問があるといいながら、その疑問を利用して判決を出しておるのです。疑問を保留しながら、現段階では地公法三十七条一項は合憲であるという立場をとるのだ。全く論理は飛躍しているんです。最高裁の判決は本来間違いである。間違いというのは、労働者側に有利なように間違いだといっているんですよ、これは誤解されぬように。そうして間違いである、法理論もだめだといいながら、もうやむを得ぬから、現段階においては疑問を留保しながら地公法三十七条一項は合憲であるという立場をとって次のような判決をする——ですから、私は裁判官の苦悩がにじみ出ておると思うのです。ですから、これは明らかに立法者に対する警告ですよ。こんな大きな問題をやはり憲法違反だと言えない。言えないから、暗に言っておるのです。とにかく非常に疑問だということを暗に流しておる。そして論理は飛躍して、現段階では疑問を保留しながらもやはり合憲の立場をとって判決をするのだ。——ですから、政府としてははっきり出すべきだと私は思うのです。使用者でしょう。いま公制審のお話をおっしゃいましたけれども、使用者としての政府はどういう考えで使用者代表に政府の意図を託しておるのか、これをお聞かせ願いたい。
  61. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 御承知のとおりに労使の立場、また公益委員の立場、三者の代表がそれぞれの立場でいろいろの意見を交えて討議をされておる。しかし、政府が御審議をお願いいたしました以上、また使用者側が政府の代弁者であるからという解釈は私はいたしていないわけでございます。使用者側は使用者側としての立場で、公正な立場で審議をしていただく、いわゆる政府の代弁者が使用者側というような気持ちでお願いしておることはみじんもないのでございますから、私ども政府が使用者側のほうに対しまして、審議の拘束とかあるいはこれに対するところの制肘とか、そういうようなものを加えるというような考えはいたしてもおりませんし、今後もいたす気持ちは全然ございません。
  62. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は雇用者としての政府ということを言っているんですよ。公務員制度審議会は雇用者と労働者と公正な第三者が出るわけでしょう。第三者はおっしゃるように公正でなければならぬから、政府が圧力を加えたりしたらいけません。しかし、雇用者としての政府雇用者の代表を出しておるのでしょう、使用者側委員として。この雇用者の代表としての使用者側委員には、政府はどういう考え方をお述べになっておるのかと、こう聞いておるのです。
  63. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 多賀谷委員の心情はよくわかりますけれども、さっきも申しましたように、政府の代弁者として使用者側を選んだりお願いいたしておるということでないということは、従来から一貫した方針でございます。
  64. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私はふしぎですね、その点は。三者構成というのは使用者の代表と労働者の代表と、それからいわば中立の公正の人。ですから私は、使用者の代表に対して、雇用者としての政府が何ら意思表示をしていないというのは、これはおかしいじゃないですか。これは実に論理的でないですよ。
  65. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 論理的でないという——論理的な理論の展開から申しましても、私はどうもその点、公正な御審議を委託いたしました以上、政府がそれに対しまして制肘を、あるいは制約を、あるいは政府の意思を伝える、それであるなら公制審の目的は私は違ってくるんじゃないかと思います。あくまでも私は、それぞれの立場の第三者の各位が十分お話し合いを願うということでございまして、政府が前もって意見を申しましたり、それを制肘したり、指導したりすることは公正を欠くのではないか、こう思っております。
  66. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は三者構成というのはそういうものじゃないと思うのです。それなら初めから労使の推薦なんかやめて、そして初めから公正な中立だけで、学者先生方を集めてやればいい。そうでないでしょう。組合側は組合の代表を出しておるのですよ。ですから代表が言った意見は、日本の労働界を代表しておる。使用者としての政府は使用者代表を出しておる。ですから使用者としての政府は、かくあるべきだ、こういうことを当然使用者代表に言うべきでしょう。だから権限のないような委員ばかり出して、そして委員の発言は雇用者の政府は全然責任を持たぬ、こんなことで一体公制審がうまくいきますか。いかないから、七年六カ月もかかっておるのです。ですから私はそのルールというものを——委員会の運営のルールというものを御存じないのでしょうかね。長官、ちょっと違いますよ、これ。
  67. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 決しておことばを返したり反論する意味じゃございませんけれども、私はそういう議論で展開されてくると、いわゆる労働者側の立場からお願いしたということではございますけれども、われわれは学識経験者の大きい一つの見識を持っておられる方々に対してお願いしておるということでございまして、最初から君はこちらの側、われわれはこちら側というような不公平な委員の選び方とか、あるいはそれによるところの隠れた意図をもって行なうというようなことを——行なうということは、全く公正を欠くという意味でございますので、この問題は御承知のとおりに重要な国民的課題でございますから、国民の納得の上に立っての審議であり、構成されているものと私は解釈いたしておりますから、政府が一方的に意見を一方的な者に対して指導をしたり制附したりするということは筋の通らぬことだと、この点はひとつ御理解いただけると私は思うので、賢明な多賀谷さんにおいては……。
  68. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 公制審の所管大臣はだれですか。
  69. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 給与担当の責任大臣は私であり、またいわゆる公制審のそうした問題に対するところの、お預かりをいたしておりますのは総理府でございます。
  70. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 担当大臣が公制審の運営についてそういう混乱した考え方ではだめですよ。あなたのおっしゃるのは第三者委員の話なんです。私が聞いているのは使用者委員のことを聞いているのですよ、さっきから。こちらはどちら側に立つか、こちらはどちら側に立つか、そういうような区別をされては困ります。そうじゃないのですよ。初めから労働者側代表と使用者側代表と、そして中立代表がいるのですよ。大臣がそんな認識だから、この問題がじんぜん日を送って七年六カ月もかかる。それはあたりまえですよ、大臣がそういう考え方では。
  71. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 どうも私は理解でき得ないのでございます。お願いいたしておる側の私たちは、三者の皆さんに公平にひとつあらゆる角度から御審議をお願いしたい、こう言うているのでございますから、私どもが一方的に、労働者側の意見はこうあるべきであるからこうしてほしい、あるいは公益側の立場のなにはこうあってほしいというようなことを制肘したり制約したりということは、審議の上において、結論を出す上においては非常に公正を欠く、またそういう姿をとるべきものでない、こう考えております。
  72. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 委員を委嘱するというのは、政府労働者の代表の方々はだれですというように委託するのであって、委嘱する政府、国家権力を持っておる政府のことを聞いているのじゃないのです、さっきから私が言っているのは。雇用主としての政府として、使用者代表を出しておるのでしょう。その使用者代表には雇用主としての政府はどういうものを託しておるのですか、こう聞いておるのです。ですから使用者側の代表が何ら意見がなかったら、これはもう三者構成は成り立たない。やめたほうがいい。
  73. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 前もって意図的なものを託するなんということは審議会としての態度でもない、私はこう考えております。
  74. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私はさっぱりわかりませんね。国家権力としての政府は、いま審議を願っておるのですから、これははっきり意思表示をする場合もありますね。あるいはない場合もある。意思表示をする。米価なんかそうですよ。厚生年金だってそうですね。これは意思表示して、そしてはかる。あるいは意思表示なしではかる場合もありましょう。しかし私は、普通の場合と違って、雇用主としての政府はわざわざ使用者代表というものを入れておるのだから、それには雇用主としての政府は大体こういう考え方だということをやはり言うべきですよ。それを何ら言ってなくてそうしてやっておるものですから、右往左往して全くどこへ行っているのかわからないような船になっている。もう少し担当大臣としてルールに乗せてください。そして出ておる人が、私は個人のことを言うわけじゃないけれども、一体これはどこの省を代表して言っているんだ、あるいは公企体を代表して言っているのか、もうさっぱりわからぬでしょう。また、それらの人がはたしてそれを説得するだけの権限と実質上の力を持っているか。それもどうも労働者側に比べてはあまりにもその力がないのじゃないか。また力を与えるようなシステムになっていないのじゃないか、こういうように思うのです。これから本会議が始まるので、いまからの質問が本論なんですけれども、できませんが、これはひとつ政府は明確にすべきじゃないか、こういうように思いますが、まず使用者としての政府は使用者代表に何を託するのだ、使用者代表にどういう発言をしてもらいたいというのだ、それは当然やるべきですよ。
  75. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 御承知のとおりに、多賀谷委員もおっしゃったように、最初政府が意思表示をして、そしてこれを基礎にして御審議をお願いすると言うておるならば、あなたの理論も一つの理論として成立すると思うのです。私どもは何ら意思表示をいたしませず、国民的な重要な問題であるから、これに対しての公正な御審議をお願いすると委嘱いたしておるのでございますから、意思表示いたしての話ならまた別個の問題でございますが、その点はひとつ多賀谷先生御理解をいただけるのじゃないか。私はどうも頭が悪いのか、それは理解できないのでございます。
  76. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は雇用主としての、使用者である政府が、使用者代表としてわざわざ三者構成の一つの、三つの極の大きな極をになっておるわけでしょう。それに何ら政府というか、雇用主として意思表示をしないで、そしてそれはまたすべきでないなんという考え方は、少なくとも労働関係の調整にはできない、そういうことではできないと思うのですよ。それならもうやめてしまって、あなた方は学者先生を出すなら学者先生でおやりになったらいいですよ。使用者代表なんて要らない。何も代表するものじゃない。一体使用者側委員というのは何ですか。何を言おうとしているのですか。使用者側委員というのは何を託しているのですか。運営できないじゃないですか。
  77. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 どうも私は理解できないのですが、政府労働者側の敵では絶対ございません。労働者側のしあわせを願って、労働行政を公平にやっておるのでございます。どうも使用者側の代表が政府であって、労働者側の代表は、政府は敵のようなお考えを持っておられるのは、私はどうも理解できない。この点はほんとうに大事な問題ですから、多賀谷さんのようなりっぱな委員がそういう御質問になられるのは私はどうも解し得ないのでございます。
  78. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 賢明な総務長官が、わざわざそらとぼけて、そしてまるっきり食い違う答弁をわざわざなさっておる。私、非常に残念に思うのですよ。また、知っておってお話しになっておるのだろうと思うのですね。触れたくない、そこまでいきたくない、何らか言わなければならぬから、窓口で全然筋違いの答弁をしてごまかそう、こういうようなどうも気持ちじゃないか。最初私は、ちょっと誤解をされて答弁をなさっておると思ったのです。ところが続いて答弁をしておる。坪川総務長官ともあろう者が、そういう答弁をなさるはずがない。ははあ、これはとぼけてわざとすれ違い答弁を故意になさっておるのだ、こういうこととしか受け取れなかったのです。また受け取れません。  そこで委員長、大事な質問にいまから入るのですけれども、本会議が始まりますので、ここで一応中止をしておきたいと思います。
  79. 田川誠一

    田川委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十九分休憩      ————◇—————     午後二時四十八分開議
  80. 田川誠一

    田川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  休憩前の質疑を続けます。多賀谷真稔君。
  81. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 先ほど公制審の構成、並びに雇用主、すなわち使用者としての政府を代表する委員、使用者委員の問題について質問したわけです。大臣答弁は全く的はずれでありました。そこで私は、大臣答弁は全く総理府設置法に違反した答弁だと指摘しておきたいと思います。すなわち、総理府設置法の十四条、「公務員制度審議会」の中に次のように書いてあります。「審議会は、内閣総理大臣の諮問に応じて、国家公務員、地方公務員及び公共企業体の職員の労働関係基本に関する事項について調査審議し、及びこれらの事項に関して内閣総理大臣に建議する。」これは当然の任務ですが、三項に「審議会は、学識経験のある者、国、地方公共団体及び公共企業体を代表する者並びに国、地方公共団体及び公共企業体の職員を代表する者のうちから、内閣総理大臣が任命する二十人以内の委員で組織する。」要するに使用者というのは国、地方公共団体及び公共企業体を代表する者で構成されておる。ですから私は、使用者委員というのは当然国、地方公共団体及び公企体の代表者でなければならぬ。それについて政府雇用主としてどういうようにその意思表示をしたのかということを聞いておるのに、全然、こちらはこちら、そちらはそちらというようにおのおの区別をして扱いませんというような、全くわけのわからぬ答弁をされておる。総務長官いらっしゃいませんから、私はこれ以上追及しませんが、これは重大問題である。こういうような態度で総務長官が臨むならば、私は公制審議会は解散したほうがいいと思う。総理府設置法に違反した答弁をしておる。副長官見えられましたから、あとから速記録を調べて御答弁願いたいと思います。私は重大問題だと思うのですよ。要するに、はっきり国、地方公共団体及び公企体を代表する者を出さなければならぬことになっておる。それを、いやそういう性格のものでないと言う。それならば、公制審議会を三者構成にする必要はないのです。ですから、私はこの点だけを述べて別の機会に答弁をいただきたいとともに、これは重大問題であるということを十分銘記していただきたい、こういうように思います。  次に、ILOの結社の自由委員会から出されております百三十三次報告、これは百八十八回の理事会で承認になっております。この点で私は一つだけ質問したいと思いますが、要するにこれは総評、国労、動力車が行なった提訴に対する報告であります。「懲戒処分に関する申立について」という項でありますが、「(i)日本政府に対し、制裁の適用における非弾力的な態度は労使関係の調和的発展に資するものではなく、とくにこのような状態は、労働者間に永久的な賃金格差をもたらすような懲戒処分の結果、生じ得ることを再度指摘すること。(ii)公共部門において行なわれている懲戒処分の硬直性と厳しさを緩和するための諸手だてをとってはどうかと、前に政府に対して行なわれた示唆を想起すること。」こういうことが述べられておる。これに対してさらにジェンクスの示唆もあったわけであります。そうしていわば凍結をして話し合いということになった。ところが二月十日のストライキを前にして、政府の回答は次のようなものでありました。「懲戒処分の撤回はできない。懲戒処分に伴う昇給延伸については、その後相当の期間、特に良好な成績で勤務したと認められる者については、特別昇給制度の運用のなかで可能な限り配慮することを検討する。」これはまさにいま問題になっているマル生問題じゃないですか。「特に良好な成績で勤務したと認められる者については、」考えましょう。今日、マル生運動に対してこれだけ世間が指弾をしておる、そういう中でこういう性格のものを入れるべきでない、こういうように考えるのですが、なぜこういう文章を出されたか、これはひとつ労働大臣からお聞かせ願いたい。
  82. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 懲戒処分を受けた者は——現在の昇給制度は良好な成績をもって勤務した者について昇給をするということになっておりまして、その良好な成績に当たるかどうかの判断基準として、たとえば懲戒処分を受けたような者は良好な成績にならないということで定期昇給の対象からはずされる場合がある。その結果給与上の格差というものが生じるということでございます。そういう給与上の格差が生じて、それが不当に長く続くというようなことがあります場合には、それを是正する手段としては、懲戒処分を受けるというようなことが過去にあった者であっても、その後の成績が特に良好であるならばこの特別昇給制度の運用によってそれを回復しようということでございまして、マル生とは関係のないものと考えます。
  83. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 特に良好な成績で勤務した者、こういう条件は必要ないでしょう。この判断は使用者がするわけです。大体、愛社精神とか企業に対して忠実であるということが、いま日本経済では裏目に出ているのですよ。すなわち昔のような——天皇というものは国家の象徴である。でありますから、今日、企業のためならどんなことでもいいという考えが非常に強いのです。それが今日における公害なんかのたれ流しですよ。優秀社員が夜バルブをあけておく。個人としてはとてもできっこないようなことが、企業においては行なわれておる。商社だってそうです。商社の行き方というものはみなそうですよ。あるいはまた郵政だってそうですよ。郵政のマル生運動は出世主義につながっておるのです。ですから、今日企業に対して忠実だというような、こういうマル生につながる問題が日本においては悪の芽になりつつあるということを十分ひとつ考えてもらいたい。これは争議をしたということで懲戒になっておる。ですから、ILOが指摘しておるように、永久的賃金格差がつくような問題については考慮せいと書いてあるのですから、すらりとそのように従われたらどうですか。
  84. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 永久的賃金格差の問題につきましていろいろな御意見があり、また当局側にはいろいろな言い分がございますが、現行制度の運用によってこれを解決しようと思いますならば、特別昇給制度の適切な運用にまつほかはないという趣旨でこの提案をしたものであります。
  85. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうするとこれは修飾語であって、「良好な成績で勤務したと認められる者」というのは要らないわけですね。これは条件にならないことと考えていいですか。
  86. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 これは、書いてあるとおりでございます。
  87. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 いやしくも企業がマル生的な考え方を入れる余地のあるようなことはこの際慎むべきである、こういうように思いますが、どうですか、大臣
  88. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 日本がエコノミックアニマルとかいわれ、あるいは企業アニマルというようなことばもございますように、私企業におきましてその私企業だけの目先の利益を追求して国家、国民のあるのを知らないというようなことがございますれば、これはたいへん好ましくないわけであります。公務員等につきましては、そのような視野の狭い、目先だけのものの見方でやるというようなことは、決して公務員として非常に優秀な者であるというふうに認めるわけにはまいらないのでございまして、「特に良好な成績で勤務した」ということの中には、それは公務員あるいは公務員に準ずる公企体職員という非常に公の立場においての評価であるというふうに考えます。
  89. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 なぜそういう条件をつけますか。争議をしたことによって懲戒になっておるのですから、ですからそういうような事案の場合には、特別昇給制度でけっこうですから、特別昇給制度を適用する、こういうことで復活したらどうですか。そういう文句を入れることが非常に問題を起こしておるのではないですか。この点、大臣どうですか。
  90. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 特別昇給制度というのは、勤務成績特に良好な者に特別の昇給をさせるという制度でございます。したがいまして、この条件を落とすと特別昇給制度にならなくなります。
  91. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 では、特別昇給制度でない昇給制度を考えたらいい。復活昇給制度を考えたらいい。どうですか。
  92. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 そういうような御意見もいろいろございましたのですけれども、政府としては現行制度の運用でできるだけ誠意をもった配慮をするということで、こういう提案をしたということでございます。
  93. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、懲戒というようなみせしめ的なものを、しかも憲法が保障しておる労働基本権について行なうべきでないと思う。現にILOはこういうことをいっておるのですね。これは一九七〇年の公務員の合同委員会すなわちパブリック・サービスに関する合同委員会です。その七〇年の報告の中に「多くの国で、政府は前述したような罰の適用にあたって、重大な困難にであってきた、ということに留意すべきである。ストライキをおこなった公務員について、これらの国の経験が示しているものは、多数のストライキ参加者にたいして刑事罰を科すことは社会的に不可能であると同時に、懲戒措置の強制は政府業務の麻痺を長びかせることに寄与し、公衆にいっそうの苦難をしいることになりうる、ということである。職員団体に〔団体〕罰を科することの主たる障害は、このような罰が団結権および団体交渉権について、ならびに労働関係全体の雰囲気に否定的な効果をもたらすことに関連している。この点については、正常な交渉が、このような罰を加えたのちに長いあいだにわたってそこなわれやすいこと、労働団体の機能を妨げることは非公認ストライキ〔山猫スト〕の慣行を力づけることになりうることが認められてきた。」こういうようにいっておるのですよ。まさに日本を指摘しておるように考えられるわけですね。労使関係をそういういびつな形にすべきでないです。これは基本的には労働争議権を与えて、その上でそれを制限するとかあるいは調整をするとかいうことをやるべきであって、本来こんないびつな形態——あなた方が幾ら懲罰をもって臨んだってそれを阻止できますか。阻止できないのですよ。歴史の流れは阻止できない。だから私はその点についてひとつ労働大臣にお考えを願いたいと思うのですが、どうですか。いまの処罰の繰り返し——佐々木運輸大臣が言ったでしょう。こんなに懲罰と争議との繰り返しをやりたくない、これは何らか考え直さなければならぬ。これは本心ですよ。それをあとから、いやそうでもない、ああでもないといって統一解釈をしておりますけれども、この際政府みずからがはっきりすべきですよ。そして争議権を与えて、その上でその調整をするとかあるいは制限をするとか、そういう制度に早く切りかえるべきである。幾らいまの繰り返しをしたって、ILOの七〇年報告が指摘をしておるように、解決できない。逆にいびつな非公認ストライキを助長するだけだ、こう書いておるでしょう。この指摘をどうお考えであるか、労働大臣に御答弁を願いたい。
  94. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 これはこの国会が始まりましても大きな問題としていろいろ議論されておるところで、国内法では厳然として、違法なストをやつておる場合には処分しなくてはならぬ。ところが多賀谷委員から御指摘のように、繰り返しで何万何千という方を処分はできないとか処分するとか、いろんな問題でこれは不幸な現状でありますので、打開に対しましては政府は大いに熱意を持っておりますが、現行上とするととあらためて問われますと、これに対して現状の国内法を適用するのも万やむを得ない。しかし不幸であることは、これは私も多賀谷委員の御趣旨は十分よくわかります。それがために政府といたしましても、公制審において最大の努力をさすようにいま鋭意審議中であることは、先ほどから総務長官もお答えになりましたが、いまさっそくどうだこうだという、多賀谷委員の御質問に対しまして、それをお認めするわけにもいかない、こういうような段階でもありますので、御了承願いたいと思います。
  95. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、今日から続いておりますこのストライキ、これが一つのかぎだと思うのですよ。この労働争議権に対して政府があらためてはっきり意思表示をするということは、一つのきわめて大きな解決のかぎだ、こういうように思いますよ。私は金額の問題は解決すると思うですよ。この問題に対して政府がここでどう対処するかということが、一つのかぎだと私は思うのです。  現にILOでも七〇年報告の別の個所で次のように指摘しておる。「争議がストライキや政治的デモンストレーションとなって爆発した場合、いくつかの政府関係団体の代表と交渉をおこなおうと努力するが、他の政府法律に定められている制裁を適用することでみずから甘んじている。」日本は後者ですよ。罰則があり制裁があるから乗り出していかない。要するに政府、総理大臣みずからがこの大きな争議に解決をしようとするなら乗り出す。ところが日本は罰則があるから、大体違法なんだからそれでやっておけばいいじゃないか、こういう考え方では労働運動というものは解決できないということですよ。労働法の歴史というものは、一つ一つが戦いとった歴史なんですよ。その記録の集積がこの労働法でしょう。大臣、どう思われますか。総理大臣でも出してこの問題を解決しますか。あなた努力しますか。
  96. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 ILOの意見がいろいろあることも承知いたしておりますが、これは批准した問題でもありませんし、この争議権、スト権の回復の問題は国内法がある以上、また、私あとから来ましたけれども、先ほどからいろいろ議論しておったのを伺っておりましても、やはりこれは公制審で審議中の過程であり、これに対しまして見解を発表するということは総理といえどもなかなか困難な事情があります。これも最終的には国会の御審議を仰がなくちゃならぬ問題にもなると思いますが、いまこの時期にこの問題を多賀谷委員のお説のようにさっそく解決をすることが全部の問題だ、この御意見もわかります。しかし、いまこれに対しまして労働大臣としてああだこうだと言うことは、なかなか微妙な点もありますので、国内法がある以上、私の所管外であるこのスト権の問題に対しまして最終的な見解を発表することはなかなか困難と思います。いまの場合には法は厳然として国内に残っておる。ILOのいろいろな御意見も尊重しなくちゃならぬが、これとまた別個の問題でありますから、この点はあしからず御了承願いたいと思います。
  97. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それでは、労働大臣としてはこの争議に対して総理大臣を引っぱり出して解決するその意欲があるかどうか、最後にお聞かせ願いたい。
  98. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 これはなかなか重大な問題で、新聞の報道などいろいろ拝見いたしますと、総理は、政治ストに対しては会う段階でない、経済問題については大いに善処するが、違法なストに対しては会わない、こういうような発表もいたしておりますし、私がこれに対してどうこう言う段階でありませんし、また会うほうの関係者から私に正式な申し入れもありませんので、この点はいまここでどうだこうだと私の言うべき立場でありませんので、この点あしからず御了承を願いたいと思います。
  99. 田川誠一

    田川委員長 石母田達君。
  100. 石母田達

    ○石母田委員 私は、前回に引き続いて春闘の問題について質問したいと思います。  四・一七ストライキのあとに続いて、労働者はいま月末を期して、大きなストライキ闘争を含む闘争を行なおうとしております。それは、この間も申し上げましたように、やむにやまれない労働者の切実な要求があるからであります。その要求は、大幅賃上げ、労働者基本権あるいは年金、健保の問題など、国民的な要求も一緒に掲げられて行なわれております。  この問題について、有額回答が三公社五現業に出されました。特に国鉄では七年ぶりで有額回答が出された。前回の春闘共闘委の代表との間でかわされた中で、労働大臣は、国鉄の有額回答は非常にむずかしい、こういうことを答えられた。いまこうして有額回答が出されましたけれども、この問題について、この間で政府がどのような努力をし、またあなたがどのように努力されたか、まず初めにお伺いしたいと思います。
  101. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 私は前回、有額回答については、四十二年以来回答がなされておらない、なかなか困難な事情がある、しかし努力はいたしますとお答えをいたしましたが、最近の、春闘を控えまして、政府経済問題に対しましては誠意をもってこたえたい、こういうようなあらわれが、今回の国鉄が何年ぶりかで有額回答をしたことで、これに対しましては組合側もその意思を大いに買って評価していただきたい、私はこういうようなつもりでおるのでありますが、その内容の進展その他内部の打ち合わせ問題についてどの程度大臣がやったかということは、まあ一々家庭の事情まで申し上げることもなかなか困難な点もありますので、大臣としてはできるだけのことは努力した、御趣旨の点なりいろいろな御意見、また国民の立場から、この際は大蔵省関係その他いろいろあるが努力をした、こういう程度で申し上げたいと思います。
  102. 石母田達

    ○石母田委員 その内容でありますけれども、八千九十七円、これは前の年の裁定額と同じであります。この間に御承知のように物価高、インフレは進んでいる。こういう状況の中で、こうした昨年並みの低額回答というものが、はたして三公社五現業に働く労働者の納得を得られるものであるか、妥当なものであるかどうか、これについての見解を聞きたいと思います。
  103. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 公共企業体等の賃金につきましては、長年の慣行で、大体民間賃金の動向に見合った改善がなされるというふうになっており、これは妥当なことであるとわれわれは考えております。したがって、回答の段階におきましても、民間の動向ということを非常に私ども気にして見ておったわけでございます。  ことしは、たいへん回答の状況がまちまち、ばらばらでございまして、昨年の妥結額よりも高い回答を出しているところもたくさんございます。低い回答を出しているところもある。しかし、まあわれわれとして非常に参考になりますのは、私鉄なんというのは非常に影響力の大きいところであります。私鉄あるいは造船あたりが昨年の妥結額並みの回答をしているという点は、私どもとして大いに参考になった点でございます。
  104. 石母田達

    ○石母田委員 大臣もそのとおりですか。
  105. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 いま政府委員答弁したとおりであります。
  106. 石母田達

    ○石母田委員 どういう調べをなさったか知らぬけれども、ことしの春闘は、四月二十三日現在で、一万五千円以上を獲得した組合が九百七十組合あるわけであります。そして平均して昨年の妥結額よりも上回っているということが、一般の新聞でもわれわれの調査でも明らかになっておるわけです。  ところが、去る十九日の第二十六回日経連総会におきまして、最近の春闘に対する回答が昨年並みよりも多いというのは困る、昨年並みに押えるべきだという内容のことがきめられております。そうしたことが私鉄への回答あるいは造船、造機への回答となってあらわれておる。こういう状況の中で、とりわけ私鉄の昨年並みの回答を見て、三公社五現業のこのような回答を出したということになれば、これはそうした日経連の、大資本の動向と軌を一にするものではないか、こういうふうに考えますが、どうですか。
  107. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 この問題は、いろいろな労使の関係で、やはり経営者のほうは、今後の経済の、円の変動相場制移行、また前回の不況の問題、いろいろなことを勘案いたしまして、日経連は日経連の立場として発表いたしたと思いますが、今回の三公社五現業に対する有額回答の問題については、これとは何ら関係がないと思います。
  108. 石母田達

    ○石母田委員 この回答、特に国鉄の場合をとりますと、国労が家計調査をやりまして、三十七歳、勤続十七年八カ月、四人家族、こういう人が基準外を含めて九万六千何がしで、実際の家計の支出は十三万になって、その差が三万四千円ほどあります。こういう実態から見ても、このような賃金では食っていけない。しかも昨年並みということになれば、物価高とかインフレという要因について一体どのように考えておるのか、こういうことについて妥当なものであるかどうか、お答え願いたいと思います。
  109. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 三公社五現業当局がせんだって回答をいたしましたが、それについては組合側は金額において不満であるということを言われたということも承知いたしております。それで、この団体交渉の過程、あるいは自主団交できまらない場合には公労委のお世話になるということになるわけでございましょうけれども、そういった過程におきまして、労使の当事者の要求、回答というものにつきまして、一々それは高いの安いの、あるいは妥当だの妥当でないのというふうに政府が見解を申し述べることは、差し控えさせていただきたいと思います。
  110. 石母田達

    ○石母田委員 先ほどの答弁労働大臣は、有額回答を出したことは非常にいいことだ、どういう評価をなさっています。組合のほうでもその点では認めておるようです。さて、同じ働く労働者である公務員の賃金についても、やはり有額回答を出さなければならぬ。ことに公務員の場合は、先ほどの調査をして、そして民間と比較するわけですね。これが人事院勧告その他となって、もらうときには一年近くおそくなってしまう。こういうことで、インフレや物価高の中で非常に困っておる。ですから、雇用者としての政府が、公務員に対しましてもそうした有額回答を出すつもりはないのかどうか、これをお伺いしたいと思います。
  111. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 これは総理府の関係でありますので、総理府副長官からお答えします。
  112. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 人事院の勧告を待って改定をしていく、これは人事院の勧告というのは、御承知のとおり民間のレベルを平均化した勧告でございますので、そのようにことしもやっていきたいと考えております。
  113. 石母田達

    ○石母田委員 ですから、そういうことはわかっているんですよ。そういう仕組みでいけば、公務員だけが非常におくれるということになるでしょう。いまの調査といったって、結局ことしの民間の調査でしょう。そうして、もらうのは一年あとでしょう。それでは公務員の人たちが困るでしょう。あなたたちも公務員でしょう。最近、きのうでしたか、大蔵協議会での席上でそうした問題について愛知大蔵大臣が、一両日中に政府の見解を示したいと、こう言っておられますけれども、その内容について、またそういうことの発言についてもし知っていればお答え願いたいと思います。
  114. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 そういう内容については聞いておりません。
  115. 石母田達

    ○石母田委員 聞いておりませんというのは、そういうことがなかったというふうなことですか。
  116. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 そういう相談も受けておりませんということでございます。     〔委員長退席、伊東委員長代理着席
  117. 石母田達

    ○石母田委員 いま石黒政府委員もおっしゃいましたように、このような低額の有額回答については非常に組合も不満である、私は当然だと思います。そうした問題について労働者に与えられている権利というものは、これはストライキ権であります。これはどこでも文明国では認められている権利である。そして組合と雇用者というものが対等の立場で、そういう自分たちの労働条件の改善がどうしても聞き入れられないとき、そうしたときに労働者に与えられている基本的な権利であることは、わが国の憲法の第二十八条によっても明らかであります。しかも最近の最高裁の判決は、先ほどの論議の中にもありましたように、全面的な禁止論について否定をしております。公務員並びに公共企業体の問題につきまして毎回ここで論議をしておりまして、石黒政府委員が刑事罰についての免責があることについてはこれは認めた。最高裁ではそうなっている。しかし、最高裁の判決はあなたも御承知のように、政府も御承知のように、四十一年十月二十六日の最高裁の判決では、「憲法自体が労働基本権を保障している趣旨にそくして考えれば、実定法規によって労働基本権の制限を定めている場合にも、労働基本権保障の根本精神にそくしてその制限の意味を考察すべきであり、ことに生存権の保障を基本理念とし、財産権の保障と並んで勤労者の労働権・団結権・団体交渉権・争議権の保障をしている法体制のもとでは、これら両者の間の調和と均衡が保たれるように、実定法規の適切妥当な法解釈をしなければならない。」「公共企業体の職員はもとよりのこと、国家公務員や地方公務員も、憲法二八条にいう勤労者にほかならない以上、原則的には、その保障を受けるべきものと解される。「公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」とする憲法一五条を根拠として、公務員に対して右の労働基本権をすべて否定するようなことは許されない。」これが最高裁の判決であります。そしてこれに基づいて具体的にどのような制約が合憲つまり憲法に合うかということについて四つの条件をあげております。このように現在の最高裁の憲法に対する解釈、到達している水準というものはこういうものであります。この判決は明らかに全面争議行為の禁止というものとはとっておりません。そこには合憲的な、ある制約された争議権というものを認めている。こういう考え方に立っているわけであります。そうした問題について政府の見解はどういう考えなのかお聞かせ願いたいと思います。
  118. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 非現業の公務員につきましては総理府のほうからお答えがあると思いますが、労働省は五現業の公務員並びに公共企業体についての労働関係を所管しておりますので、これにつきまして非常に貴重な判例というのが全逓中郵事件。全逓中郵事件につきましては、中郵事件の判決におきましては、御指摘のように憲法二十八条の労働基本権は——憲法二十八条の勤労者には公務員も含まれ、公企体職員も含まれるということを明らかにいたしております。同時に、これに対して刑事罰を及ぼすのは、これは一定の限度があるものであるというふうに申しておりますが、同時に半面におきまして、民事責任あるいは行政責任を問うということは、これはまた別の問題ということで、公労法十七条は憲法違反ではないのだということを申しておりますので、私どもそういった最高裁の法解釈の線に沿いまして法律の解釈を考えている次第でございます。
  119. 石母田達

    ○石母田委員 質問の意味は、全面的な禁止、いかなる目的、いかなる場合でも争議は全面的に禁止されるというふうな見解を最高裁はとっていないのじゃないかということに対するお答えをもう一度お願いします。
  120. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 ただいまの御質問、私正確に聞きましたかどうですか、もし間違っておれば訂正さしていただきたいと思いますが、最高裁は憲法十五条を根拠にして労働基本権のすべてを否定してはならないというふうに申しておるわけであります。基本権は団結権、団体交渉権、争議権でございます。一般の公務員につきまして、あるいは公企体職員につきましては争議権は禁止されておって、公労委あるいは人事院勧告といったような代償措置があり、しかしそのほかの権利につきましてはそれぞれ認められておるところでございます。私ども最高裁の判決の趣旨と現行法と背馳するものではないと考えております。
  121. 石母田達

    ○石母田委員 それは政府の正式の見解ですか。あなたが言うように、最高裁のこの判例の内容は争議権は除外されている、団体交渉権だけだ、争議権についての全面禁止の立場に立つといわれて  いますか。
  122. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 この全逓中郵判決の趣旨は、憲法十五条などを根拠にして労働基本権を全面的にすべて否定するということは許されないのだということであります。したがって、労働基本権の一部を制限するということはあり得ることであるということも他面で言っておる。労働基本権の一部を制限するというので、現行法でどういう一部制限があるかといえば、三公社五現業についていえば、争議行為は行なってはならないという公労法十七条の制限がある。そういう制限はあり得ることであるから、憲法に違反するものではないというふうに、この行政罰の問題については、あるいは民事責任の問題については憲法に違反するものではないというふうに中郵判決は言っておるというふうに私どもは考えております。
  123. 石母田達

    ○石母田委員 これは非常に重要な問題なんですね。私は時間が非常にないのです。ですから、このあとの判決を読めばそういうものじゃない。これはそういう意味でじゃそちらのほう、あなたのほうは、その全面的な禁止、争議権ですよ、そういうものの見解をとっているのかどうか。この四つの条件、具体的にどのような制約が合憲とされているかどうか、これは内容は決して団体交渉権の問題じゃないのですよ。争議権の内容について合憲性の認められる必要最小限度のもの、あるいは国民生活全体の利益を欠いて、国民生活に重大な障害をもたらすおそれがあるものは制約する、これは決して団体交渉権の問題じゃないですよ。争議権のことを言っているのですよ。それについてちょっと。
  124. 梶谷浩

    ○梶谷説明員 私のほうも非現業の公務員につきまして、ただいま労政局長からお答えがありましたと同様の見解を持っております。すなわち、現行法規はいわゆる限定解釈によりまして、その法規自体は合憲である、そのどこからどこまでが具体的に権利が認められる、認められないかということについて、いわゆる限定解釈によりまして、全逓中郵判決なりあるいは四十四年四月二日に出ました東京都教組判決において、これは後者は非現でございますが、その判決においてそういう解釈を打ち出しておる、こういうことだと思います。したがいまして、全体の奉仕者ということですべての公務員の権利を停止し去ることは、これはできないということはこの二つの判決でいっておりますが、しかしながらそうかといって、全体の奉仕者というものが全く理論としてなくなったというふうに私どもはこの判決を理解しておりませんで、やはりいろいろな要素の一つとしてこれを取り上ぐべきものである、かように存じております。
  125. 石母田達

    ○石母田委員 わざとそらしているのか、質問の意味がわからないのか、争議権について全面的な禁止の問題についてはどうか。じゃ、これは公務員の場合はどうですか。
  126. 梶谷浩

    ○梶谷説明員 したがいまして、公務員について争議権が禁じられているかどうかということについては、私はやはり基本的には禁止だと思いますが、ただ全逓判決等によってその禁止の範囲において一定の限定の解釈が行なわれたというふうに承知しております。しかしながら、いずれにいたしましても、この問題については具体的にどこからどこまで禁止であるかということについての抽象的な基準はございますが、はっきりした基準は打ち出されていないというふうに考えております。
  127. 石母田達

    ○石母田委員 いまの答えは、つまり限定解釈だということでしょう。全面的な禁止という立場に立っていないということでしょう。しかしその範囲はまだよくわからぬけれども、ということですね。石黒局長、どうですか。
  128. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 御指摘のごとく中郵判決等は、刑事制裁、刑事責任につきましては限定的な解釈をする、すべての争議行為がすべて刑事責任を伴うというふうに解釈されるべきではないというふうにいっております。しかし、これは刑事責任のみでございます。民事責任のことにつきましては、先ほど申し上げたようなことをまたいっております。
  129. 梶谷浩

    ○梶谷説明員 ちょっと補足させていただきます。私のほうで先ほど答弁いたしました争議権の禁止云々につきましては、あくまでもただいまあげられました二つの判決について申しております。したがいまして、これについてはあくまで刑事事件として理解をしておる、刑事罰がどこまで及ぶか、こういう問題として理解をしておるわけでございます。
  130. 石母田達

    ○石母田委員 そんな刑事罰なんということはすでにもう、とうに解決ついているのです。ここでは刑事罰がどの範囲でどうのこうのという問題じゃないのです。ここで言っているのは、この最高裁の判決でいっているのは、そうした全面的な禁止という問題で違憲の疑いがあるということについて、一定の制約されたものについて条件を述べているわけです。ですからこれをあくまでもあなたたちが、これは争議権については全面的にいいんだ、その他の基本権についての問題だ、こういうふうに言い張って、あるいはこれは刑事罰だけの問題であって、全面禁止論を否定してないんだ、こういう立場に立つということについては、いずれあらためて論争を展開していきたい、こういうふうに思います。  さて、そういう中で、先ほど公務員制度審議会の設置の問題がありましたけれども、そういう中で総務長官があの使用者代表は政府の代弁者じゃないのだ、ただ個々の企業を代表しているのにすぎないんだ、こういうことを言われましたけれども、総理府設置法の第十四条の3「審議会は、学識経験のある者、国、地方公共団体及び公共企業体を代表する者並びに国、地方公共団体及び公共企業体の職員を代表する者のうちから、内閣総理大臣が任命する二十人以内の委員で組織する。」こういう内容で組織され構成されたものじゃないのかどうか、お聞きしたいと思います。
  131. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 総理府設置法の第十四条第三項にいう「国、地方公共団体及び公共企業体を代表する者」とはいわゆる使用者側の委員のことでございますけれども、この使用者側委員は使用者当局の立場を生かして、諮問事項について審議に参画するものでありますが、審議に際してはあくまで独立をした委員として参画しているのであって、政府として参画しているものではございません。事柄の重要性にかんがみ、審議会の公正な審議を期するということで、委員会を含めていかなる委員についても、政府は一定の見解をしいるようなことは考えておりません。
  132. 石母田達

    ○石母田委員 運営上の問題で私が言っているんじゃないんです。資格の問題で、この設置法に基づく国及び地方公共団体あるいは公共企業体を代表する者、このうちの国を代表するものは一体だれなのか、いないのかどうか、そういうことを聞いているんです。
  133. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 国、地方公共団体及び公共企業体を代表している者であって、これは公的機関を代表する者であります。
  134. 石母田達

    ○石母田委員 国は含まれているんですね、使用者の代表には。あなたの答弁だと、国、地方公共団体及び公共企業体の代表だというんでしょう。そうすれば国も入っているわけですね、いまの使用者の代表の中には。
  135. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 国、地方公共団体及び公共企業体を代表しております。
  136. 石母田達

    ○石母田委員 だから、その中にもちろん国も入っているんですね。イエスかノーだけでいいんです。当然ですね。そこに国と地方公共団体とあるわけだから、その中で国も代表しているわけですね、それはそうでしょう。
  137. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 ここに書いてあります国というものを代表するのではなく、国、地方公共団体及び公共企業体を代表するものでございます。
  138. 石母田達

    ○石母田委員 こういう形式論を私は言っているんじゃなくて、したがって国が全然無関係じゃないでしょう。じゃ、こういう聞き方をしましょう、全然国は関係ないんですか。
  139. 梶谷浩

    ○梶谷説明員 私からお答えいたします。  関係がないという意味においては——関係がないかという御質問に対しましては、もちろん国も含めて代表しておりますから、そういう意味で関係がございます。ただし先ほど副長官から答弁がありましたように、あくまで委員は国、地方公共団体それから公共企業体全体を代表いたす立場でございますが、一個の独立した委員として審議に参画しておる、こういう意味においては政府のほうでこれを個々に規制する立場にない、こういう意味でございます。
  140. 石母田達

    ○石母田委員 いまの答弁の中にあるように、運営の中ではそれは独立した委員として、使用者の個人の見解とかいろいろあるでしょう。しかし、その使用者側委員という場合には、あなたもいま言われたように、国の代表でもあるのです。国だけの代表じゃないということでしょう。そうしますと先ほどの総務長官の答弁は、私は違うと思うのです。きょう総務長官、私お呼びしましたけれども、参議院の関係で来られないというので、この点については質問を保留します。先ほどの話ですと、政府は公正だといって、関係ない第三者だというような話をしておりました。そのことがさっき非常に論議された点でありますが、いまの答えで明快になりましたので、この点の食い違いについては質問を保留してあとでやります。  そういう中でいま審議会が、八年たってまだ審議の結論が出ていない。この問題が公務員を含む公共企業体その他のいわゆる労働基本権の問題であります。この公務員制度審議会ができて政府が諮問しなければならないという内容、こうした問題を審議会にゆだねなければならぬということは、こうした法体系、法体制のもとでやっていけなくなった、これをこの根本から検討し直す、審議し直すということで審議会に提案しているわけでしょう。矛盾があるからですよ。そうでなければ何も審議会になんか出さなくていいんです。そういった問題の中で八年間も結論が出ない。しかもその間に、法を無視したといって、これまで組合の発表によると百五十七万人の官公労労働者を処分しておる。一方で審議にかげながら、一方では全面的な禁止論という立場に立ってどんどん労働者を整理していく、あるいは処分していく、こういうようなやり方がはたして公正な政府の態度といえるかどうか、審議の結論を出す上においてプラスかどうか、こういう問題で私は、政府一体諮問した責任者としてこのままいつ出るかわからない審議会の結論を待っているのか、それとも審議会に対してどのくらいの時期に審議の結論を出してほしいという要望を持っておられるのか、あるいは審議会という方式によらずに直接的な見解を示されるというような意向もあるのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  141. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 現在御承知のとおり公制審は鋭意審議中でございます。政府といたしましてはその審議会の結論を待っておりますし、時期についても審議会におまかせしているところでございます。
  142. 石母田達

    ○石母田委員 これはここでは何十ぺんも聞いているのです。この審議会がそうやって八年間もきたわけだから、それが近く出る見込みがあるのかどうか、政府はただおっ放して、諮問したままでいつ出てもいいよという態度でいるのかどうか、それともこの時期には出してほしいということを具体的に言っておられるのかどうか、その点を諮問者としてどう考えているかを言っていただきたいと思います。あなたでわからなかったらわからないと言ってください。
  143. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 お答えがまた同じになりますけれども、政府といたしましてやはり、公制審が鋭意いま結論を出す努力をされているところでこうしろああしろというのは、たいへん中に入って審議会をリードするような形になりますので、政府といたしましては結論を待つ以外にございません。
  144. 石母田達

    ○石母田委員 それがいつ出るかは見通しはわからぬ、こういうことですね。
  145. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 いま公制審のほうでは公益側が使用者側、労働者側といろいろ討論をいたして、積極的にその結論を得るべく努力をしている最中でございます。
  146. 石母田達

    ○石母田委員 その使用者側の公益側の質問事項に対する回答というものが第十六回審議会、四月二日に示されております。その「労働基本権の制限の限度」という中で「公務員は憲法十五条で全体の奉仕者となっており、公務は瞬時も停廃が許されない。また民間では賃金を上げすぎてもストをやりすぎても経営が圧迫されるので無茶はできないが、「親方日の丸」の公務にはこの「歯どめ」がないから止まるところを知らず国民に高いツケがまわってくる。故に単にストライキによる迷惑度だけで論議するのは根本的に誤りである。」そしてさらに、国鉄の問題についてはこういっております。「なお、国鉄の今回のような争議行為の防止のためには、国鉄関係の争議行為について刑罰規定の創設も考えられる。」先ほど、刑事罰についてはもう最高裁ではなくなったのだ、政府もそう考えているのだ、改めざるを得ないと。ところが国をも代表するといわれるこの使用者側の見解が、まさに労働基本権の否定だけじゃない、もっと刑事罰を強めるのを鉄道営業法の中にも入れたらいいじゃないかといった、こういう発言をしていることについて、政府としてはどのような責任あるいは見解を持っておられるのか、これをお聞きしたいと思います。
  147. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 確かに第十六回総会、四月二日に行なわれました公制審では、公益側から出した質問に対して使用者側から意見が述べられたことも承知しております。しかしいま審議の途中ですから論議を差し控えさしていただきたいと思います。
  148. 石母田達

    ○石母田委員 これはあなたたちからのメモなんですけれども、この事実、内容については認めますか。これはメモの要旨だそうですけれども、要旨でいいですよ、あなたのほうから文書できているのですよ。
  149. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 メモがお入りになったか——大体の要旨だけは入っておりますけれども、的確なところは存じません。
  150. 石母田達

    ○石母田委員 こういう態度では絶対公制審では結論が出るはずがない。そうでしょう。審議しておいてこういう見解を述べる。これは労働者に、公務員に納得されるはずがない。そういう中で八年間も続けられているのです。この見解を今度は行動で示しているのがあなたたちですよ。今度のストライキについて「昭和四十八年度春闘における統一行動対策要綱」こういうものを三月二十八日付で出しております。これはどこで、どこの局で出したものですか。これは昨年の一一・一三のときにも出ていたものですけれども。
  151. 梶谷浩

    ○梶谷説明員 総理府のほうで「春闘対策要綱」というものはこしらえております。いま御指摘のものはおそらくそのことを意味しておるのではないかと存じます。
  152. 石母田達

    ○石母田委員 こういうものはどういう法的根拠とそれからどういう拘束力を持つというのか、その性格ですね、そういうものをちょっと説明してください。
  153. 梶谷浩

    ○梶谷説明員 これは政府部内において単に内部の訓示的な効果を持つということを期待して出されたものでございます。
  154. 石母田達

    ○石母田委員 じゃ、これに違反したからどうかとかということで、何か特別に指導的な基準ですか。これはいわゆるあなたたちのほうでいうと総合的調整という仕事の内容のものですか。
  155. 梶谷浩

    ○梶谷説明員 おっしゃるとおりでございます。総理府といたしましては指導的な意味で、あるいはまた調整的と申してもよろしいかと思いますが、そういう意味で政府部内でこういうお願いをしておる。これに基づいて関係当局においてそれぞれ自己の権限において処理される、こういうふうに思っております。
  156. 石母田達

    ○石母田委員 この内容を見ますと、たとえば「庁舎管理」についていろいろ出しております。たとえば場所について、当該職員団体が時間外職場大会をやるとき、あるいは時間内に食い込む場合、そういうおそれのあるときには絶対に許可しないこととか、あるいはその条件として、違法不当な言動を起こさせないとか喧騒にわたらせないという条件をつけるとか、特にリボン等の着用、これについては勤務時間中における職員のリボン等の着用行為は違法であるので、事前に職員にその趣旨を周知させろ、あるいはまた「責任の追求」について、いろいろ職員の言動をよく記録しておけとかいうような問題があります。  私は、特にリボンの着用が違法であるというのはどういう見解か、どういう法的根拠があるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  157. 梶谷浩

    ○梶谷説明員 リボンの着用が違法であるということでございますが、もとよりリボンの着用も勤務時間外において行なわれるというのなら、これは関係ございませんが、勤務時間内において着用した場合には、これはやはり違法になるという見解でございます。  そこでその根拠といたしましては、国家公務員の場合でございますと、国家公務員法に、職員は勤務時間中は職務に専念すべき旨の規定がございます。いわゆる職務専念の義務でございまして、この職務専念義務と、同じ勤務時間中においてリボン着用ということによって組合活動を行なうという行為とは全く論理的に両立しない、こういう見解をとっておるわけでございます。
  158. 石母田達

    ○石母田委員 つまり九十八条ですね。そうですね。職務専念の問題について、違法行為だ、こういう見解だ。しかしこの問題については、これは昭和四十二年の十月二十六日の全建労の不当行政措置要求に対する人事院の判定ということで、こうしたリボンの着用については、それ自体職務の遂行に支障を来たしたとも認められないので、不法な組合活動とは認められない、こういう人事院の判定が出ていること。あるいはリボン着用に対して、昭和四十一年の十月に全医労の福島支部の照会に対する人事院の見解、これは職員局長の回答だそうですけれども、「ベトナム侵略反対、小選挙区制粉砕」のリボンをつけていた、そういう問題について、リボン、プレートを勤務時間中に着用することは違法ではない、こういう見解。その他いろいろな、四十二年四月七日の神戸地裁判決にも、本件「リボン闘争」または腕章の着用がそれ自体職務専念義務に違反し、また専念義務軽視のあらわれである上見ることはできない、こういうような判例や人事院の見解が出ているということを承知の上での違法行為、こういう見解でしょうか。
  159. 梶谷浩

    ○梶谷説明員 現在係争中の事件でもございますし、そういうことについては私どもは論評を差し控えたいと思います。ただ、私どもの見解といたしましては、先ほど申し上げたとおりでございます。
  160. 石母田達

    ○石母田委員 これは全部判定が下されたわけでしょう。係争中というのはどういうことですか。これは五年前、六年前の話だ。
  161. 梶谷浩

    ○梶谷説明員 現在、灘郵便局の問題につきまして、高裁において係争中と聞いております。したがいまして、まだその点で私どもは、この件については論評を差し控えたい。ただし、政府の見解としては、先ほどのように一応違法な行為であるというふうに存じております。
  162. 石母田達

    ○石母田委員 政府の見解というのは、人事院は政府のうちじゃないのですか。これは政府の見解じゃないのですか。それとも変わったのか。なぜ変わったのか。それじゃ根拠を示してください。
  163. 梶谷浩

    ○梶谷説明員 人事院は準司法的機関といたしまして、そのつどいろいろな判定を出しておるわけでございますが、人事院の判定につきましては、私どもの知る限りにおいていろいろな判定が出ておりまして、いまの点、違法でないというふうに固まっておるようには必ずしも存じないわけでございます。
  164. 石母田達

    ○石母田委員 ちょっとしまいのほうの語尾がはっきりしないのだけれども、違法なものとなっている……。もう一回言ってください。一番しまいのことば……。
  165. 梶谷浩

    ○梶谷説明員 人事院の判定は、現在リボン活動が違法でないといっておるとは私どもは承知をいたしておりません。
  166. 石母田達

    ○石母田委員 先ほど私が読んだのは事実ではない、こういう判定はなかったということでしょうか。
  167. 梶谷浩

    ○梶谷説明員 判定が区々に分かれておりまして、いろいろな判定が出ておる、こういう意味でございます。
  168. 石母田達

    ○石母田委員 つまり政府部内でもいろいろ判定があるということでしょう。それをあなたのは、そのうちで一番労働者にとって不利益な反動的な見解ですよ。これは論外ですよ。リボンつけたから職務専念についてどうだ、こんなことはどこで通用しますか、文明国で。これがいまの自民党、政府の態度なんです。その一つとしてあなたもやっておられるのだろう。こういう公務員のストライキあるいは三公社五現業の争議行為という問題について、なぜ争議行為をしなければならぬか。生活していけない、自分たちの民主的な権利、自由がほしい。こういう問題についてはきわめて冷淡な立場をとりながら、そうして法があるんだからといってどんどん処分をする。しかしその法体系そのものがいま審議をされなければならないという状況で、自分たちも諮問しておきながら、そのうちで一番反動的な見解を押しつけてくる。このことがこうした今回の労働者の要求闘争に対する、春闘に対する強圧的な態度になって出ておる。これは一方で、今度の国会でいよいよ小選挙区制を出して民主主義に挑戦する、こういう反動的な体質と全く一体のものと私は考えております。こうした問題については、われわれは民主主義を守るためにも、国民の生活を擁護し、働く者の権利を守るためにも断固として戦うということを表明いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  169. 伊東正義

    ○伊東委員長代理 大橋敏雄君。
  170. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 私も春闘に関連いたしまして若干質問いたします。  御承知のように、賃金のベースアップあるいはスト権奪還要求並びに処分撤回の要求、さらに生活できる年金要求等を掲げまして、いま春闘はいよいよその山場を迎えようとしているわけでございます。このような毎年行なわれている春闘の中においても、ことしはきわめて深刻なその場を示そうとしているわけでございますが、私は何と申しましても、いわゆる官公労働者がやはり一般労働者と同じように労働三権を獲得し、使用者と対等の立場で話ができる状態にすることが、いろいろな問題の解決の最大の問題であろう、このように考えているわけでございます。  最初に総理府の方にお尋ねいたしますけれども、この官公労働者の労働基本権問題は、公制審で審議が続けられているわけでありますけれども、一向に結論が出ない。先ほども同じことが質問されておりましたけれども、副長官の答弁はきわめて不親切だと思います。熱意がない。ほんとうにわれわれが心配しているこの気持ちをわかった上での答弁なんだろうかと、むしろ憤りを感ずるような答弁であったと私は思います。先ほどのような紋切り型の場当たり的な答弁ではなくて、公制審の審議も大体この程度の見通しは立てられるのだというくらいの答弁がほしいものだと思いますが、いかがですか。
  171. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 たいへん不親切と言われましたが、私としては、現在公制審がいろいろ審議の最中でございます。一日も早く結論が出てもらう、そういうことを願っておるのでございまして、それが私の現在の立場では、公正な審議を求めるときに政府がこうしろああしろということはなかなか言えない立場にございます。心情としても、政府といたしましても、一日も早い結論を願っております。
  172. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 表向きは言えなくとも、情勢の変化、時代の変化に応じて急いでほしいということは当然示唆されていいはずでございます。また、あるべきだと私は思うのです。これは健康保険の話ではございませんが、いつも問題になっているわけでございますけれども、それでも審議会に対してやはり内々に、いつごろまでにどうやってほしいということはよくなされたことですよ。この官公労働者基本権問題だけに限って、一たん諮問したら全く触れられない、そういうことではないと私は思うのです。血の通った政治というものは私はそこにあるのじゃないかと思うのです。それこそあなたは副長官ですから、長官のほうからこれ以上のことを言っちゃいかぬぞと押えがあるのかどうかわかりませんが、そういう立場で答えられないのかしれませんけれども、私はいまのこのような情勢を判断する場合、もう少し何か糸口を見つけるだけの、あるいは示唆するだけの答弁があってしかるべきだ、こう思うのですが、どうですか。
  173. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 長官からそういう指示を受けているわけではございません。大橋先生のおっしゃいます意味も、私十分わかりますし、できるだけの努力をして一日も早い結論を得たいと思っております。
  174. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 一日も早い答申あるいは結論ということでございますが、これがもう数年続いてきているわけですね。では私のほうから申し上げますが、少なくとも本年じゅうに大体結論が出ると見ていいですか。
  175. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 任期が九月でございます。公制審がそれまでには出していただきたいと、政府としては願っております。
  176. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 要するに、今日の国鉄をはじめとする官公労使間の深刻なもろもろの問題というものが、その根本的な解決というものは、先ほども申し上げましたように、まず労使が対等の立場に立つことである、それが先決問題だということだと私は思うのでありますが、要するにこのような問題解決の最大の一つの糸口というものは公制審の答申、結論、それがどのような結論になるか私はわかりませんけれども、いずれにしましても、これが出てさらに一歩前進するということになるわけでございますので、これを急ぐことは何よりも重大な要件であろうと思います。  そこで、労働省にも総理府にもお尋ねしたいのですけれども、官公労働者といえども労働者であることには間違いないわけでございますし、労働者であるならば当然労働基本権は保障さるべきである。したがいまして、スト権を付与することについて私は当然であろう、こう考えるのでございますけれども、この点についての御見解をそれぞれ述べていただきたい。
  177. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 公務員及び公企体職員も、これは憲法二十八条に言う勤労者である。したがって、その労働基本権というのはできるだけ尊重されるべきものでございますが、同時に、こういったものは民間の一般労働者と異なり、職務の公共性にかんがみて争議行為を禁止されております。その代償として公労委の仲裁なり人事院勧告という制度がございます。こういった公務員、公企体職員等についてスト権まで全部認めるかということになりますと、これは国民生活等に、あるいは国民全体の利益という点から見て非常に大きな問題がございますので、従来は、現行法はいま申し上げたように制限されておるわけでございますが、この制限を取っ払うということは容易な問題ではありません。したがいまして、総理府から繰り返し申し上げておりますように、最も慎重な検討を要する問題でございますので、現在公制審において御審議を願っておるところでございますから、労働省といたしましても、公制審の公正な御審議により適切な結論がすみやかに出されることを心から期待している次第でございます。
  178. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 いまの労働省からのお話しのとおりでございまして、たいへん毎回同じような答弁でございますけれども、私たちとしてはいまの段階では論評を差し控えさせていただきます。
  179. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 一番聞きたい方から答えがないというのは非常に残念でございますが、しょせん公労法の第十七条の「争議行為の禁止」、この条文というものは、御承知のように占領行政下にある政令二百一号による異例的な措置を法制化したものであるということでございます。これは憲法及び労働法の原理からは逸脱をしているきらいがあるということを、憲法学者あるいは学識経験者等がきびしく指摘しているところでございますけれども、このいまの問題について労働省はどう考えられていますか。
  180. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 公労法の現在のあり方につきましていろいろ御意見のあることは私どもも承知しております。しかし公労法も昭和二十三年、政令二百一号直後に制定せられまして以来、数回にわたって改正をせられてきておりまして、その時代時代の進展に応じて実情に即するような措置がとられておると存ずるわけでございます。そしていまスト権付与についてどうするかということは公制審で審議中でございますが、現行法が憲法と全く矛盾するというようなものではない、公労法の十七条「争議行為の禁止」は合憲であるということは、最高裁判所においても認められているところでございます。
  181. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 総理府の方にお尋ねしますが、一九四八年にマッカーサー書簡、政令第二百一号に伴って公務員法の改正が行なわれたわけです。人事院と引きかえに成立したわけでございますけれども、先ほど言いましたように、いわゆる占領行政下における異例的な措置としてなされて、今日もう二十三年の間そのままの姿できている。しかもこれはいまも申し上げましたように憲法及び労働法の原理からは逸脱しているのではないかという意見が非常に強く出ているわけでございますけれども、その点はどのようにお考えになっておりますか。
  182. 梶谷浩

    ○梶谷説明員 おっしゃるごとく政令二百一号によりましてスト権がないということは当時の事実としては間違いございませんが、その後国会の制定によります法律によりまして、これは裏打ちがなされておるわけでございます。まあ私どもの聞きますところによりますと、当時はいろいろな情勢等があり、その情勢の判断のもとにそのようなことがなされたということを伺っております。いずれにしましても、公務員の労働基本権に関する事項につきましては国民生活に及ぼす影響がたいへん大でございますので、私どもといたしましても、その労働基本権はできるだけ認める方向という趣旨そのものには賛成でございますが、しかしながら一方、ただいま申しましたような国民生活というような事柄もございます。そういったようなことにつきまして現在公務員制度審議会で鋭意審議が行なわれておる、かように承知しておるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、いずれにいたしましてもその結論を待っておる、こういうわけでございます。
  183. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 私は、憲法及び労働法の原理から逸脱しているんではないかという憲法学者あるいは学識経験者等の意見があるがどうかと、こう聞いたわけですね。その理由は公共企業体等のいわゆる企業主体が国または公法人であること、及びその社会的機能の特色である公益性、社会性、独占性ということからしても、直ちに職員の争議行為を全面禁止するということは、これは法的理由はない、私はこう考えるわけですけれども、この点についてはどのような見解ですか。
  184. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 争議行為は労働基本権といえども、国民全体の利益というような立場、あるいはいわゆる公共の福祉というような立場、そういったような点から制約の内在するものであるということは最高裁の判例でも明らかにしておるところでございます。  どの程度の制約が最も適切であるかという点につきましては、いろいろ御意見の分かれるところであろうかと存じます。国会の制定されました法律によりまして、争議行為については全面的に禁止しようという現行法制になっておりまして、これは憲法上は合憲であるという判断が下されておりますので、もう全然問題にならない、間違った制度だというふうには申せない、私どもとしてはやむを得ないものであると考えております。しかし、なおこの点につきましても、時代の進展に伴って何か考えるべきことがあるかどうかということで、公制審にいま御審議願っておるという次第でございます。
  185. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 先ほど総理府の方から公共の福祉というようなことを理由として云々というお話があったように聞いたのですけれども、要するに公共の福祉ということを理由として労働基本権をどのようにでも否定することができるとすることは私は認めがたいと思うのであります。なぜならば、それは憲法第十一条あるいは九十七条ですね。十一条は、「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」また九十七条も大体そのような中身でありますけれども、要するに、労働基本権も侵すことのできない永久の権利として保障されているわけでございまして、こういうことから考えまして、そういうことで、どうにでも否定できるのだという考え方は認められない、私はこう思うのです。両方ともこれについては答えてください。
  186. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 憲法十一条等に御指摘のような条文があるわけでございますが、同時に、第十二条、第十三条によりまして、第十二条では「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」十三条では「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」ということで、基本権というものは最も大切にすべきものでございますけれども、同時に、国民生活全体の利益というような立場からの制約、あるいは十二条、十三条のことばをかりて申しますと、公共の福祉というような点からの制約というものもまた、これはやむを得ないものであるというのが憲法の精神であると思います。
  187. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 それではお尋ねしますが、公共の福祉と労働基本権との関係についてでございますけれども、先ほど憲法第十二条を引っぱられましたけれども、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」と、こうありますね。このように規定している。公共の福祉というものは労働基本権に内在する制約であって、基本権の行使に対する究極の目的としての意義を持っておるのだ、私はこのように考えるわけですね。その点について御見解を……。
  188. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 私どもも同様に考えておりまして、それから最高裁の中郵判決におきましても、「憲法二八条の保障する労働基本権は、さきに述べたように、何らの制約も許されない絶対的なものではなく、国民生活全体の利益の保障という見地からの制約を当然に内包しているものと解すべきである。」というふうにいっております。私どももこのように解すべきものと考えます。
  189. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 したがいまして、基本権の行使というものがその究極の目的であるところの公共の福祉に反する場合には、その権利行使は正当な権利行使とはいえないわけですから、当然内容的に制約されるということになるでしょう。これはあなたがおっしゃったとおり、憲法十三条の内容そのものだと私も思います。ですから、私が言わんとするところは、いわゆる公共の福祉によって制約されるということは当然考えられますけれども、要するに争議権の行使についての内容的制限であるべきものでありまして、争議権そのものの剥奪あるいは争議行為の全面的否定というものではない、私はそう思うのです。その点はどうですか。
  190. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 憲法二十八条では、いわゆる労働基本権あるいは労働三権といわれているものを保障しております。この労働三権がいろいろな制約を受けるという、その制約の具体的な形というのは、これはやはり立法において表現されるものである。その表現として、現行法は労働三権のうち、ストライキ権というものは全面的に禁止しておる。しかし、これは労働基本権の制約の一つのあらわれとして、立法府のつくられた法律によってなされたものでありまして、これにつきましては、御意見がいろいろあることは承知しておりますけれども、私ども憲法に反するものではないと確信いたしております。
  191. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 労働基本権といっても無制限な権利行使が行なわれるわけではないということは私も理解できるわけでございますが、その性質上、当然に先ほど言いました公共の福祉によって場合によっては制約されること、これは当然考えられるだろう。それを争議権を剥奪する、あるいは否定するという考え自体、それだけが制約の対象なんだという考え方は、これは改めるべきではないかと思うのですがね、どうですか。
  192. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 そういう考えを改めるべきだという主張が、いろいろな各方面からなされているということは、先生指摘のとおり事実でございます。これは立法論の問題であろうかと存ずるわけで、これについては公制審で審議をしているところでございます。私どもが申し上げているのは、そういう主張というのは頭から問題にならないということを申し上げているんじゃない。ただ、現行法というものはこういうふうになっておる。それもまた憲法のもとで許されている立法の一つの形である、合憲的な立法の形であるというふうに申し上げておるわけでございます。
  193. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 ちょっと大臣、結論的になるんですが、争議権というものが労働基本権の一つとして、経済条件を整えるために民主政治において欠くことのできない前提条件である、私はこのように考えます。そこで、法律で制限することはできましても剥奪することはできない、こう私は考えるわけですね。その点についての大臣の御見解を伺っておきたいと思います。
  194. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 先ほどから政府委員との間に憲法、また対等の立場の労働組合法、いろいろの点から質疑応答がありましたが、私の考えは、憲法学者ではありませんけれども、やはり憲法そのものも組合法も労基法もあらゆる面で、国民大多数の福祉というか利益というか、大多数にあまりにもこれが影響あるというときには、多少憲法であろうがいろいろな、十二条十三条でも法の一つの逃げ道があります。あらゆる、刑法でも何でも逃げ道があるのは当然でありまして、これは政府が三権の問題についてもうどこもここもこれを認めぬというような暴挙ではありません。ただ三公社五現業、これについてもいろいろな意見がありますけれども、前回のいろいろな国鉄の問題などを見ると、これがいまさっそく公制審の結論によって労働三権を認め、スト権を認める、これもやはり国民全体がこれに対して納得するかせぬかということが民主政治の根本の理念と私は思います。そういう意味で、いま大橋議員からの御質問の点は、スト権は三権だから認めて——まだそこまでは質問がいっておりませんが、何かもうそれに対して認めるのを認めてこうという御意見のような感じがいたしますが、それらを含めて、公制審が五年も六年も、相当長い期間やったのだから、隠れみので逃げ口上だといいますけれども、私はやはり公制審そのものも、国民全体の意見の動向を見るのが公制審のつとめだと思います。それについて、公制審は私の所管でもありませんので、労働大臣としてこれに対して早くせいとかどうとかいう意見は言いませんが、やはり公制審も国民の声は私は十分わかると思いますので、労働省としては公制審の、なるべくこれに対してこたえるような、鋭意検討して何とかこれに対する結論が出ることを心から期待しておるものでありまして、スト権の問題に対しまして、大臣として、所管外でありますので、いろいろ見解を申し上げることは差し控えたいと思いますが、ただ、そこにいま言ったように、国民全体の利益という見地から、多少の制限的なことはもうこれはいたしかたないし、大橋議員の御趣旨と多少答え方が違いますが、あしからず御了承願いたいと思います。
  195. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 総理府の方にお尋ねしますが、いま労働大臣が、労働三権というのは労働者基本的な権利である、当然スト権を含めて労働三権を保障すべき方向で行くべきだというようなお気持ちを述べられたかに私は思いますが、当然そうあるべきだと私は思うのですよ。ですからそれは公制審、公制審でまた逃げられるでしょうけれども、基本的な方向はやはりそこに持っていくべきだと思うのです。どうですか。
  196. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 大橋議員に釈明するようでございますが、どうも私は甘いほうでありますから、すぐにこういうように、私の意見のところから、もう三権は労働大臣認めたでないか、こう言われますと、ちょっとそこまではいっておりませんので、私の答弁の内容などを見ていただけば、いま私は大多数の国民の見地から、国民が納得するかせぬか、これが疑問だということをお答えいたしましたので、認めるところまでは私はいっておりません。どうぞあしからず。
  197. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 公務員等の労働関係基本に関する問題はたいへん複雑でございまして、ただいま労働大臣がおっしゃったことは総理府としても同感でございます。一日も早くやはり結論を得たい、また出していただきたいということを願っております。
  198. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 時間の関係もありますので次に移りますけれども、春闘の主要目標にいろいろ要求が掲げられておりますけれども、その要求達成の手段としまして、いよいよ統一スト等が実施に移されようとしておるわけでございます。国民の大多数の皆さんが複雑な心境でこれを注目しているわけでございますが、政府といたしましてこれを黙って見ておられるのか。いわゆる手をこまねいておられるのか。あるいはそのほかに収拾策があるのかどうか。その点についてまず労働省のほうから伺いたいと思います。
  199. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 今週の後半に大規模な争議行為が行なわれる計画になっておるということにつきまして、私ども非常に憂慮の念にたえないわけでございます。これの収拾策と申しましても、これは労使の当事者がやるのが主体でございますので、なかなかむずかしゅうございますが、政府といたしましては、三公社五現業の公労法適用のケースにおきましても、経済問題についてはできるだけ誠意をもって当局が対処するように指導をいたしておるところでございます。昨日の当局の回答というものもそういう誠意のあらわれだというように私どもは考えているわけであります。労使が誠意と熱意をもって団体交渉をし、どうしても合意のできないときは公労委にいくということで、すみやかに平和的に解決されることがきわめて望ましい。そしてまた、現行法制につきましていろいろ御意見はそれぞれおありでございましょうけれども、法律があります以上は、その法律に定めるルールに従って良識をもって処理され、国民に対する迷惑というものをできるだけ避けるように、労使の最後までの努力を私は切に期待しておるところでございます。
  200. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 現実問題といたしまして、これまで大きなストが実施されますと、そのつど多くの人の処分といいますか、犠牲者が出てきたわけです。これは法に照らしてやむを得ないといえばそれまでですけれども、そのつど労使間の対立はいよいよ深まってきたように私は思っております。このような悪循環は一日も早く切らねばならない。また、このようなストが国民に及ぼす影響もはなはだ大きいものだと私は思います。何とか解決する方向で努力をしていただきたい、こう念願するところですが、大臣、これはどうですか。
  201. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 特に労働省として、組合関係、争議関係を担当しております私といたしましても、大橋委員の御意見のとおり組合の方もやはり処分せられ——それよりもう一つ大きな問題は、何ら力ないというか、これに対してタッチできない国民に多大な迷惑を及ぼす。今回も仄聞いたしますと、新聞などの報道では有史以来の争議行為というような報道がされておることを聞きまして、りつ然たるものがありまして、当局としてもまた組合も、やはり良識に基づいて相互信頼のもとに、かような不祥な事態に立ち至らないようにしていただきたい、こういうことにつきましては政府としては最善の努力をいたします。昨日発表になったように、政治的な問題のストに対しては厳たる態度で臨むが、賃上げ問題については相当誠意をもって、熱意をもってこれをいろいろ行政的な関係をしたい、こういうので、かつて見ざる国鉄の有額回答もいたしましたし、今後これが民間の場合には中労委、また公共企業体等は公労委等に移ると思いますが、すみやかに事前に、予想されるような問題を解決したいのは、これはもう大橋委員と同感であります。
  202. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 今回有額回答がなされた、これはいろいろな意味で非常に評価されているみたいでございますが、考えてみれば、組合がベースアップを要求する、当局がそれにこたえるというようなことは、ごく一般的な、いわゆるあたりまえの労使の交渉問題だと私は思うのであります。したがいまして、国鉄のこうした賃金交渉については、常識以前のものとして今日まで続いてきた。それだけに二十三日の内示された国鉄の有額回答というものの持つ意義といいますか、意味というものは大きいと私は思うのでございます。そこで、今回の有額回答の姿というのは、きわめて常識的な姿に立ち返った。今後はこのような方向で進むように労働省としてあるいは総理府として指導なさるのかどうか、この点お尋ねします。
  203. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 私ども直接労使を指導するという立場にはございませんけれども、私どもの考え方からいたしましても、国鉄がゼロ回答という長年の慣行を振り切って有額回答ということをしたのは、労使の慣行として一歩前進であろうと考えまして、こういった前進する方向がさらに続くことを強く期待しております。
  204. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 公務員については、賃上げについては人事院が民間の賃上げの状況を見て、把握して、いままでその勧告を行なってまいりました。政府といたしましては公務員、公共企業体の賃金その他勤務条件については、民間の動向に見合ったような適正な改善が今後行なわれることが望ましいと考えております。
  205. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 要するに、有額回答は一応評価されているというわけですよ。しかし今回の額が低いために、せっかくのとられた措置が死んでしまっている、私はこのように判断しております。むしろ、今回の有額回答というのがとられた措置は非常にいいことですから、今後もそういう姿勢で進まれることを望むということと、同じとる措置ならばもっと実効ある決断と措置に踏み切るべきである、こういうことを言っているわけです。その点についてもう一回御答弁を願います。
  206. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 先生の御趣旨を体してできるだけ労使間が協調し、改善に向かってこのようなストを回避できることを望んでおります。
  207. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 ちょっと答えが違うけれども、もう時間がきているようですので最後に要望申し上げておきますけれども、要するにいろいろと問題が複雑になってきておりますけれども、このような問題を手をこまねいているということは事態の解決にならない。国民の不満をますますつのらせるだけだ。その政治責任の追及は免れないだろうと私は思うのであります。そこで、私はむしろ早急に総理と労使代表のトップの対談を実現して春闘ストが回避されること、これが最も国民の願いではなかろうかと思うのでございます。これを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  208. 伊東正義

    ○伊東委員長代理 小宮武喜君。
  209. 小宮山重四郎

    ○小宮委員 すでに御存じのように、ベトナム戦争の終結に伴ってMSC所属のLSTが昨年の暮れから逐次係船されまして、いよいよことしの六月末をもって全船が係船されることになってまいります。そうなりますと、現在のLST乗り組み員の六百名が解雇されるということが出てまいります。またこれまでも大体六百名から七百名くらいが解雇になっておりまして、合計千二百名から千三百名のLST乗り組み員の解雇の問題が出てまいりましたが、この問題で従来から直接雇用か間接雇用かという問題をめぐっていろいろ論議が続いておるわけです。ところが、現実に六月末になると、この人たちはもう解雇されるわけですから、そういったゆうちょうなことを許されないような事態になってまいっております。  そういうような意味で、まずあらためてもう一回質問しますが、このLST乗り組み員の地位、身分というのは、地位協定とどういうように関係があるのか。地位協定との関係についてまず外務省からひとつお答えを願いたい。
  210. 松田慶文

    ○松田説明員 お答え申し上げます。  米軍が直接雇用しておりますLST乗り組み員の地位協定上の地位と申しますのは、先生御承知の十二条第四項におきまして、労務に対する需要は日本国当局の援助を得て充足されるという、いわば間接雇用の規定との関連での御質問だと拝察いたします。従来より一貫して政府が御説明申し上げておりますとおり、この十二条四項の規定は間接雇用を規定した規定であることは当然でございますが、しかしながら、米軍がすべての労務を間接雇用でなければ充足できないかといえば必ずしもそうではなくて、日本政府の援助を得て間接雇用を行なうこともあるが、それ以外に直接雇用を行なうことも禁止または排除されてはいない、これが政府の、及び日米双方の従来からの解釈でございます。したがいまして、LSTの乗り組み員の方々は地位協定十二条四項で間接雇用として日本政府の助力によって提供している労務ではなくて、米軍が地位協定上禁止されていない直接雇用というワク組みで雇用している方々である、このようにお答え申し上げます。
  211. 小宮山重四郎

    ○小宮委員 あなたのいまの答弁は外務省としての見解ですか、それとも政府としての統一見解ですか。いまのような答弁をされると、私のほうはまた運輸省、大蔵省、自治省、各省に質問をしなければならぬようになってまいります。だから大蔵省の考え方は、いま松田課長が言われたようなことは、いままでの議事録を見ても、あなたのところの愛知国務大臣も、みな何回も言っておるわけです。しかしそれが政府部内において、運輸省の見解が違う、それに今度は自治省も違う、こういうようなことで、いままで政府部内が意見が不統一になっておるので、この問題についてそのつどいろいろ問題をかもし出してきておるわけです。たとえば、ここに昭和四十六年の二月二十四日の第六十五国会の予算の第二分科会の議事録もありますが、そこでもこの問題について、当時の愛知外務大臣が、政府側がまことに不統一で申しわけないと思いますので、早急に検討して、政府としての統一見解を明らかにしたいという答弁がなされておるのです。ところが、今国会の三月三十日の予算委員会における質問でも、それから一歩も出ていないわけです。やはり各省ばらばらなんです。だから、私が聞いておるのは、いま松田課長の言われたのは、外務省の見解ならば、一貫してそのような見解を表明されておるけれども、各省の見解がばらばらであるから、いまあなたが言われたことは、政府——政府という名前は松田課長が使われたから、政府としての統一見解かということを念を押したいのです。
  212. 松田慶文

    ○松田説明員 政府としての見解であります。その事由は、地位協定は国会の御承認を得た条約でございますが、条約締結権は、政府部内の仕事の割り振りといたしましては外務省にございまして、外務省が条約締結という立場から及び条約の運用解釈という立場から、そのように解釈しておりますし、なお本件につきましては、従来から法制局とも意見は一致している点でございます。いま先生、各省意見が違うではないかという御指摘がございましたが、それは地位協定十二条四項、五項の解釈の問題ではなくて、このワク組みの中における運用の扱いという点ではなかろうかと私推測いたします。同じく十二条五項には、御承知のとおり、駐留軍労務者関係については、税の問題はこうである、労働条件はこうであるというふうに定めがございます。そして四項、五項を合わせて読みますと、間接雇用の方々については非常に一致したぴたりとした運用ができているのでございますが、五項で、わが国の労働法規の対象となると規定しておきながら、船員法において、外国船舶乗り組み員が適用除外になっているという実態のために、一見、四項、五項並べ合わせると実態がそぐわないという中身があるという点は御指摘のとおりであり、これがまた先般来皆さま方から御指摘を受けている問題点であろうかと承知している次第でございます。
  213. 小宮山重四郎

    ○小宮委員 松田課長、それでは地位協定の第十二条の五項については、適用されるということで政府部内の見解も一致しておるということですか。
  214. 松田慶文

    ○松田説明員 そのように承知しております。外務省としては、そのとおりだと考えております。
  215. 小宮山重四郎

    ○小宮委員 いや、外務省としてはということでは困るのです。外務省はそういうような見解をしておるし、大蔵省もそのために所得税の源泉徴収もやっているわけですから、外務省だけじゃ困るのです。ということになれば、これが十二条の五項が、いまあなたが言われたように——これはあなた責任を持って言えますね。課長として、言えますね。そうしないと、いままで大臣答弁を見ても、この問題については非常にあいまいなところが残っておるし、いろいろな答弁がなされておるので、できればきょうは大臣も来てもらいたかったんだけれども、そうもいかないので、松田課長が来られたので、外務省を代表してという立場でその政府見解というものを述べられたというように理解していいですね。
  216. 伊東正義

    ○伊東委員長代理 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  217. 伊東正義

    ○伊東委員長代理 速記を始めて。
  218. 松田慶文

    ○松田説明員 政府各省の一致した政府の見解であります。
  219. 小宮山重四郎

    ○小宮委員 それを聞いて安心しました。  ところで、そうなりますと、いまのたとえば所得税の源泉徴収についても——いままでは直接雇用だということで国内法は適用されない——いわゆる十二条五項の前段のくだりは適用するけれども、後段の労働法の面については適用しないということで、いろいろ運輸省の見解が違っておった。したがって、そうなると、前段の外務省、大蔵省は、これは十二条五項の適用を受けるんだ、だから、間接雇用を四項は規定しているけれども、これは直接雇用を禁止したものではないという立場に立って所得税をかけてきたわけですね。だから、その意味では、いま所得税の還付請求の訴えが税務署になされておりますね、あちらこちらで。その点は、いまの政府見解で、十二条五項が適用されるというふうになると、またおのずから話が変わってまいりますけれども、それではこの訴えに対して、これは国税庁あるいは外務省でもいいですが、どのように対処するのか。それで、いままで所得税を源泉徴収したその総額は幾らになっておるのか、ちょっと参考までに御答弁願いたい。
  220. 吉田冨士雄

    ○吉田説明員 所得税のことでございますが、LSTの乗り組み員は、私どもといたしましては、国内に住所を有する居住者と考えており、またただいまお話しのように、十二条五項によりまして国内の法、つまり所得税法百八十三条の第一項の規定によりまして、国内において支払いを受ける源泉徴収の対象ということで税金を取ってまいりましたので、ただいま先生のお話しのその税額でございますが、税額は過去五年間——四十三年の四月以前はもう時効でございますので、四十三年四月以降去年の十二月までで約七億円でございます。こういうように私どもといたしましては、源泉徴収で、納税義務ありという立場をとっておりますので、ただいまお話しの還付請求が厚木とか横浜とか藤沢という税務署にただいま四件提出されておりますが、これに対しまして国税庁といたしましては、先ほどの見解、つまり納税義務があるあるいは源泉徴収の対象となるということで、訴え自身は、納税義務はございません、あるいは源泉徴収の対象にすることは不当であるということで還付請求しておられますので、私どもとしてはその請求を認めるわけにはまいりません。そういう考えております。
  221. 小宮山重四郎

    ○小宮委員 それじゃ運輸省のほうは、従来の議事録を見ても——これは外務省はいま答弁があったように、一貫して、地位協定の十二条四項は間接雇用の規定であるけれども、直接雇用を禁止したものではないということで、それを受けて、五項では当然この労働法の面についても適用されておると思っておったというような答弁をなされておるのです。ところが、運輸省のほうは、船員法の関係については、これは直接雇用でありますから適用されませんということをはっきり、これはもう議事録に載っておるわけですね。いまの統一見解が出されたという立場に立って、運輸省として、この労働法の面についてはどのように考えられるか、ひとつ運輸省の所見を聞きたい。
  222. 丸居幹一

    丸居政府委員 船員法の適用があるかないかということですけれども、それはただいまの問題には直接関係がないように思います。船員法の適用はやはりございません。ただ、そういった人たちを平等に扱っておるという考え方はどういうことかということになるのじゃないかと思いますけれども、それは、日本の船員でも外国船主に雇用されているようなものがございます。それらとは別に違った取り扱いではないということしか言えないのじゃないかと思います。船員法の適用そのものを行なうということは、船員法のたてまえとして私はできないと思います。
  223. 小宮山重四郎

    ○小宮委員 それでは運輸省に質問しますが、直接雇用、直接雇用という態度を運輸省は従来から一貫してとっているわけですが、直接雇用する場合に、たとえばアメリカ軍であっても直接雇用という方法で——どういうような方法でやられたか、まずお聞きしましよう。
  224. 丸居幹一

    丸居政府委員 これが始った最初のころだったと思います、時期は忘れましたけれども、船員職業安定所を通じてお世話したことがございます。その後は米軍が直接これを雇用しております。
  225. 小宮山重四郎

    ○小宮委員 直接雇用の根拠はどこにありますか。たとえば船員職業安定法を見ても、いまいう文書による広告、委託をして、依頼をして募集する、いろいろな方法がありますね。その場合といえどもやはり運輸大臣の許可を得なければならぬ。まあ適用除外の例はありますよ、たとえば船員の職業あっせんを運輸大臣が許可をしている組合がそれをやるとかした場合は、それはほかに問題ないですが、しかしいずれにしても一般のほうをやる場合は運輸大臣の許可を得なければならぬというような項目があらゆるところ、至るところにある、募集する場合も全部。そうすると、運輸省としては直接雇用、直接雇用と言うけれども、全部向こうでやっておるんで、おれたちは知らぬのだということにはならぬのじゃないですか。しかも三十七年には船員手帳からパスポートに切りかえておりますね。だから、そういうような国内法との関係はどうですか。     〔伊東委員長代理退席、委員長着席〕
  226. 丸居幹一

    丸居政府委員 直接雇用のやり方でございますけれども、船員職業安定所がお世話をいたしまして、そして米軍に雇われる場合、これも形式は直接雇用でございます。そういうことで私たちのほうに米軍のほうから求職があった場合は、船員職業安定所がお世話している。それは最初のころ一回きりだったように思います。その後は米軍のほうが直接、縁故等で採用しておられる。職業安定所を通じておりません。それが職業安定法に違反するんじゃないか、こういうお話じゃないかと思います。  職業安定法で運輸大臣の許可が要る場合でございますけれども、これは業として職業紹介をする場合には運輸大臣の許可が要る。もう一つ、新聞だとか雑誌だとかそういったもので募集広告をする場合は、運輸大臣の許可、承認が要ることになっております。しかし米軍の現在やっておられる雇い方の状態というのは、たとえば縁故で友だちを連れてくるとかなんとかというふうなやり方をしておられまして、募集広告をしておるということはないようでございますので、これも安定法違反とは言えないんじゃないか。それからまた、米軍自身がもちろん職業紹介を業としておるわけではありませんので、安定法に触れることはないんじゃないかというふうに私たちは考えております。
  227. 小宮山重四郎

    ○小宮委員 それでは外国の軍隊がだれでもかってに来て、人を調達したり集めたりするのはかってにやってよろしいということでしょうか。特に船員職業安定法の六条の「定義」だって、「この法律で「船員」とは船員法による船員及び同法による船員でない者で日本船舶以外の船舶に乗り組むものをいう。」とある。これはもちろん相手が軍艦ですから、そういうような問題はどうなるか知らぬけれども、しかし軍艦はこれを除外しておるという規定も何もないわけです。「日本船舶以外の船舶に乗り組むものをいう。」軍艦は外国船になっているわけでしょう。そうでしょう。この規定の中に軍艦を除くという規定も何もない。だから、直接雇用する根拠はどこになるのかということです。また運輸省としてはそういうようなことは知らなかったとは言えぬ。たとえば三十七年にいままでの船員手帳をパスポートに切りかえておる。パスポートはちゃんと行き先も書いてある。だから運輸省としては、直接雇用だからわれわれ関係がありません、知りませんというようなことでは済みませんぞということです、私の言わんとするところは。
  228. 丸居幹一

    丸居政府委員 私たちも船員法の適用がないから知らぬということは言えぬ立場にあると思います。あるいは船員としての免状を持っておられる方もありますし、またかりに免状を持っておられなくても、船員であることには変わりないと思います。私たちもLSTの問題については深い関心を持っておりまして、現に再就職をされる方々が横浜あたりではだいぶん安定所を訪ねてきておられます。いろいろ御相談にも乗ったり、あるいは現に再就職のお世話をした方も何人かございます。それはわれわれ全然関係ないんだと言うつもりはありません。  それから最初のお尋ねの問題でございますけれども、日本船舶以外の船舶に対して船員職業安定法が適用されておるという問題は、日本の船員が外国の船会社あたりに雇われていく場合に、やはり船員職業安定所を通じてまいりますので、そういった者をお世話するためにそういう規定になっておると思います。  ただ、それだから船員法がそこに適用されるか、こういうふうな御質問に対しましては、船員法のたてまえがそうなっておりませんで、船員法は船舶所有者に対して義務その他を課するようなものが大体中心になって規定されております。したがいまして、少なくとも日本の国内法が適用される相手でないと、船員法の適用をすることは不可能でございます。したがいまして、安定所から外国へお世話した、そういった船員に対しましては、やはり同じように船員法の適用はないわけでございます。
  229. 小宮山重四郎

    ○小宮委員 いや、私は、たとえば直接雇用であっても、直接雇用の契約を完了して——募集をする。それに応募する。それで契約をする。契約をされた時点で直接雇用というものに変わっていく。それまでは、雇用契約が完成されるまでは、募集をする方法だとか、そういうようないろいろなことは、当然国内法に照らしてやるべきだ。そうして募集をして相手方と、アメリカ側と、雇いましょう、雇われましょうという契約を終わる。それからあとは直接雇用という形になって、それは船員法の適用を受けない問題になってきますけれども、契約をするまでの、たとえば職業あっせんをするとかそういうような問題の場合、当然国内法が適用されるんじゃないですか。
  230. 丸居幹一

    丸居政府委員 それが、さっき申しましたような縁故で就職をするような場合には、この安定法は適用されないことになっております。
  231. 小宮山重四郎

    ○小宮委員 それはいいです。  私は、この問題を考えてみますと、どうも何か割り切れぬものを感じておるのです。これは案外日米合同委員会あたりで、外務省は暗黙の了解を与えたのではないかという疑いすら持っておるのです。これは私がそうじゃないかと言っても、そうでありませんと言うにきまっておると思いますが、こういった雇用の問題については、外務省とアメリカのほうで、日米合同委員会あたりで協議されたという事実は全然ないのですか。
  232. 松田慶文

    ○松田説明員 合同委員会で日米間の協議の対象となったということはございません。しかしながら、ただいま論じられております地位協定は、現行安保条約とともに昭和三十五年に締結されたものでございます。それ以前の昭和二十七年の行政協定を継承したものでございますが、条約的には前のを廃止し新しいものをつくり上げたわけでございまして、この新しい条約たる地位協定をつくり上げるに際しまして、行政協定の若干の部分は交渉の結果変えてございます。十二条四項につきましても、日本側といたしましては当時、昭和三十四年から五年にかけて米国と交渉いたしました過程の中で、直接雇用を一切禁止して一〇〇%の間接雇用制度を考えてはどうかということで交渉した事実がございます。しかしながら米側といたしましては、昭和二十七年から三十四年までやっておりましたいわば両建て、間接を旨とするが直接雇用も排除しないというやり方でないと軍隊としての任務達成に支障があるということで、交渉の結果といたしまして現在のようなものになったという経緯がございます。そのような形で日米間で間接雇用、直接雇用の問題をLSTを含めて論じられたことはございますが、三十五年の地位協定成立以来は、合同委員会で御指摘のような議論をいたしたことはございません。
  233. 小宮山重四郎

    ○小宮委員 そこでもう一つ松田課長に確認しておきますが、そうしたら政府の統一見解として、結局LSTの乗り組み員も十二条四項の解釈の中に入る、それを受けて、五項の後段の「賃金及び諸手当に関する条件その他の雇用及び労働の条件、労働者の保護のための条件並びに労働関係に関する労働者の権利は、日本国の法令で定めるところによらなければならない。」というこの問題について、前段の住民税とか所得税は徴収しておるわけですから、後段の労働保護の面についても、LSTの乗り組み員についても適用されるというふうに理解していいのですか。
  234. 松田慶文

    ○松田説明員 これは法の適用という側面と、適用されるべき法律に適用除外があるか、あるいは実体的な問題があるかないかということと分けて御議論いただく必要があろうかと存じます。たとえば前段の税の問題を御指摘になりましたが、これは税法上居住者であれば、その勤務がたまたま外国であっても税の対象となるのは、制度の定めるところでございます。私どもが外国の大使館に行って勤務いたしまして三、四年日本を留守にいたしておりましても、本俸から所得税は源泉徴収される次第でございます。これは商社の駐在員であろうと外国船舶の乗り組み員であろうと、税制度のもとの立て方はすべて均一でございます。後段の保護規定のほうは、船員法の中に外国船舶の乗り組み員については、船員局長指摘のとおりの規定があって、外国船舶乗り組み員は対象外という実体規定があるわけでございます。そういう実体規定を含んだところの船員法の体系は適用がある。これは表現の問題でございまして、先生のように実体に着目しておっしゃいますと、確かに穴があるではないか。しかし法形式面で論じますならば、これはLSTの方々だけを特に差別待遇しているわけではないという政府の従来からの御説明も、御理解いただけるのではないかと思います。
  235. 小宮山重四郎

    ○小宮委員 その問題は論議すると時間がなくなりますが、ただ実体の面からいって、これも愛知大臣が労働保護の面についてこういうような答弁を四十六年二月二十四日の分科会でしております。本日を契機に、「あらためて政府の部内で検討し直せばあるいはよい方途が発見できるかもしれないと思います。そういうことでひとつ、関係省庁に私からも訴えまして、善処いたしたいと思います。」という答弁をやっているわけです。大臣答弁を受けて外務省は、この労働保護の面についても善処しますということを大臣が言っておるわけだから、そうするとこの問題について各省庁に呼びかけたのか、どうですか。
  236. 松田慶文

    ○松田説明員 御指摘の国会の御質疑及び大臣答弁は、お話にございましたとおり昭和四十六年二月二十四日でございます。一週間後の三月一日、外務省は関係省庁においでをいただきまして、外務省において第一回目の打ち合わせ協議を行ない、それ以降数次にわたりましてこの大臣答弁を受けて私どもとしてのフォローアップにつとめたわけでございます。御指摘のとおり、この問題は竹本先生が主としてLSTの方々の所得税の源泉徴収に論点をおしぼりになって御論及になりました。また当時、御承知と存じますが、海員組合のほうから、源泉徴収はひどいではないか、申告納付にしてくれないかという御要望がございまして、国会で二月二十四日いろいろ御議論がございました。おもなる論点は、必要がございますれば国税庁のほうから御説明いただきたいと思いますが、税の徴収方法の問題である、したがいまして、当時竹本先生の御指摘を受けまして国税庁において御論議、御検討なさいまして、若干の措置をとられたと承知しております。
  237. 小宮山重四郎

    ○小宮委員 若干の措置というのは、具体的に言えばどういうことですか。たとえば、この人たちは解雇されても失業保険ももらえないし、もちろん退職金なもい。そういうようなことで、いままでにもうすでに退職された六、七百名の方々のうち、まだ就職されておられる方は一人もおらないという状況なんです。だから私が言わんとするのは、そういった地位協定の十二条の四項、五項の問題もさることながら、そういうことを言っておるうちに、六月三十日が来たらこの人たちは首切られてしまう。そうしたあとそういうことを論議しても、もう論議する必要もないのです。だから問題は、現実に首を切られようとしておるこの人たちをどう救済するかというのが焦眉の急なんです。労働保護の問題について愛知外務大臣がこういうように言っておるけれども、どういうような措置を検討したのか、各省に呼びかけたのかという問題について、いまの答弁は私の納得のいくような答弁でなかったので、たとえば運輸省に呼びかけがあったのか、労働省には呼びかけがあったのか、ひとつ労働省、運輸省の立場から答弁してください。
  238. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 労働省にはただいまお話のありました協議はございませんでした。というのは、従来から私どもは、お話しの乗員につきましては、先ほどから御議論がございますように、一般に外国船舶に乗り組む人と同様の取り扱いを受けるべきものと考えておりまして、そういった立場からは労働省所管の法令は一般的には適用がないというふうに考えているわけでございます。
  239. 丸居幹一

    丸居政府委員 運輸省には呼びかけはございました。記録によって調べますと、主として船員法の適用についてどうだということで議論があったようでございます。
  240. 小宮山重四郎

    ○小宮委員 あなたたちのやることは、たぶんそういうことだろうと思っております。だから何回かにわたって検討を加えたというが、何一つとして具体化されたものはない。しかし現実に、この人たちは六月三十日に首切られるのですよ。外務省、少なくとも、この人たちは失業保険ももらえないような状態の中で、どうですか、アメリカ側と交渉して、失業保険に相当する金ぐらいこの人たちに取ってやるくらいの考えはないですか、どうですか。
  241. 松田慶文

    ○松田説明員 ちょっと私、ただいまこの場で責任ある御答弁を申し上げることができないのを御容赦いただきたいと思いますが、外務省の立場といたしましては、毎度申し上げておりますとおり、この直用によるLSTの方々の問題については、条約上のたてまえとして国内法令は適用あるとなっているけれども、その保護を援用すべき実体的な規定がないというところが問題であろうかと思います。かつまた、あるいは他省の所管に若干立ち入るかもしれませんけれども、一般的な失業された場合の再就職のお世話であるとか職業訓練であるとか、そういったものはLSTの方だからできないということでは全然なくて、一般のその種の問題をおかかえの方と同様にそれぞれの省庁において、たとえば先ほどの船員職業安定法の問題あるいはその他の雇用促進特別措置法の問題等、一般的な措置の一環としての制度はできている次第でございます。私どもはそれらの措置によってこれらの方々が、LST解雇後の新しい御生活を見出されることを切に希望するものでございますけれども、ただ、いま直ちにそのような過程にいく前に、米側に金銭支払いの側面につきまして交渉すべき段階であるとは私どもまだ考えておりませんが、ただいま先生指摘の問題はかなり大きな問題でございますので、私は直ちに上司に報告いたしまして、御議論のあったことは報告させていただくつもりでございます。
  242. 小宮山重四郎

    ○小宮委員 単なる議論があったということだけではなくて、やはりこの問題については外務大臣として積極的にひとつ取り組んでもらいたい、これを国内法によって失業保険給付がどうにかならぬかということを運輸省に言っても、これはむずかしい問題だと思いますけれども、しかしそこでそういうような、失業するというような状態をなくするためには、LSTの乗り組み員の雇用対策あるいは就職対策、離職対策、こういうようなものについて、これはアメリカ側から、MSC側からでもけっこうですが、日本の政府あてに、六月一ぱいでこういうような人たちを全部解雇しますよ、したがって、何らかのそういうような対策について日本政府としても考えてもらいたいというような何らかの要請があったかどうかということ……。
  243. 松田慶文

    ○松田説明員 御言及になりましたような要請は一切来ておりません。解雇の計画と申しますか、予定と申しますか、その事実関係につきましては連絡が来ておりますけれども、直接雇用であって、米国政府の責任で一つの契約を結んでいる相手方であるので、自分たちで関係の向きと話して事柄を処理するという一般的な体制のように思います。
  244. 小宮山重四郎

    ○小宮委員 それでは、このような方々の雇用対策についても、運輸省、外務省あたりにも関係者からも要請があっておると思うのですが、これに対して運輸省、それから外務省、両省でこの問題について検討されつつあるかどうか。要請がなされておることはもう事実でしょうから、それでその点についてはいま要請に対してどういうような措置をとろうとしておるのか、運輸省と外務省に御答弁願いたい。
  245. 松田慶文

    ○松田説明員 私がただいま御報告申し上げました、米側から解雇の予定について連絡が来ておると申し上げましたのは、実は率直に申し上げますと、きょうの午後正式に参ったわけでございます。内容を御報告申し上げますと、四月三十日で九十六名、五月三十一日で百四十四名、六月末日で残りの方すべて、すなわち三百三十六名、合計いたしまして五百七十六名の方々は業務の縮小、LST業務の廃止に伴う解雇をせざるを得ないという連絡が、きょう午後三時ごろ外務省に在日米軍司令部から参った次第でございます。実は、このような動きがあることはもちろん前々から伝わっていた次第でございますけれども、ここまで数字と日付を入れての正式な通知というのはきょうの午後参った次第でございます。ひとつ、各省には御連絡いたしましたけれども、私たちといたしましては前々から国会で御指摘を受けております諸問題について、さらに各省との協議を早急に進めたいと考えております。
  246. 小宮山重四郎

    ○小宮委員 そういう意味で、とにかく六月三十日には首になる。国内法、地位協定の問題がどうであれ、現実にやはり解雇者が出る。いままでの解雇者も六、七百、両方合わせますと千二、三百名いる。この人たちは失業保険ももらっていない、なかなか就職も困難である、そういう状態の中で、先ほど私が申し上げましたように、外務省あたりが音頭をとって、労働省それから運輸省あたりで十分お互いに話し合って、このLST乗り組み員の雇用対策就職対策、それに失業保険金の問題を含めて国内法に準じて何とかならぬか、ひとつ十分検討してもらいたい、これは強く要請しておきます。ひとつ所見を聞いておきましょう。
  247. 松田慶文

    ○松田説明員 関係省庁と十分連絡を密にし、積極的に協議を進めていきます。
  248. 小宮山重四郎

    ○小宮委員 最後にちょっと、今度は林野庁のほうに、せっかく来ておりますから、質問せぬということになると、せっかく来ていただいて申しわけないから、簡単に。  御存じのように、昨年十二月二十二日、林政審議会の答申がなされて、政府としても答申を受けて国有林の改善策を四十八年度から実施しようとしておりますけれども、ひとつ改善策の具体的な概要についてちょっと説明を願いたい。あとは質問はもう簡潔にしますから、よけいにしませんから。
  249. 福田省一

    ○福田政府委員 それではお答えのほうも、かいつまんで簡単に申し上げたいと思います。  昨年、林政審議会の答申を受けまして、林野庁といたしましてもその検討を急いでおるところでございますが、すでに四十八年度の予算の中にこれを盛り込んだものもございます。要は、一つは森林に対する公益的な要請、これに対する答えが一つ、具体的に申しますと治山事業の拡充、あるいはまた森林保全事業の拡充ということに重点を置いてまいりたいと思うわけでございます。保安林についても含めております。  なお、従来の事業つまり経済の高度成長に伴い事業規模を拡大しました事業につきましては、自然保護を重点にしましたために、伐採量の減、特に大面積皆伐の減、あるいは択伐の増、禁伐の増ということになりますので、造林面積は縮小してまいります。したがいまして、林野庁事業も縮小する傾向にあります。あわせまして、全体の中で特に問題となりますものは、組織の問題あるいは人員の問題になるわけでございます。これらにつきましては、ただいまのところでは林政審議会の中になお労働部会を設けまして、慎重に検討してまいりたいと思っております。簡単でございますが、ただいまの段階のところを御報告申し上げます。
  250. 小宮山重四郎

    ○小宮委員 四十八年度から実施しょうということになれば、営林局だとか営林署の統廃合、こうなれば農林省設置法の改正という問題がひっかかってくると思うのですが、四十八年度から実施するとすれば、そういうような問題との関連で、農林省設置法の改正案というのを今国会にも提出するお考えですか。
  251. 福田省一

    ○福田政府委員 四十八年度におきましては、一応営林署の問題であるとか、あるいは事業所の問題であるとか、あるいは担当区の問題であるとか、そういった問題につきましてただいま検討を急いでおるわけでございますが、これは設置法改正とは関係ございませんで、農林省の規程の中で解決できる問題でございます。  なお営林局あるいは林野庁の組織の問題になりますと、御指摘のように設置法の問題でございます。これらの問題を踏まえた上で、さらに検討してまいりたいと考えておる次第でございます。
  252. 小宮山重四郎

    ○小宮委員 最後に一つだけお願いします。特にこの問題で、人員の削減の問題、合理化の問題が含まれておりますので、われわれが新聞紙上で拝見するところによれば、十年間に一万三千名の合理化を行なうというような問題が出ておりますし、特に四十八年度から実施しようということになれば、この問題で一番影響を受けるのはやはり林業労働者ですから、その意味で国有林野の労働組合、こういうような人たちの意見を十分聞くべきであって、この問題については従来の労使慣行にとらわれぬで、とにかく人員の削減とか合理化の問題は労使の間で十分煮詰めて、双方合意に達した上で実施をする。だから、それがなければ一方的な強行実施はしないということを、ここでひとつ長官がお約束していただけばそれでいいわけです。
  253. 福田省一

    ○福田政府委員 御指摘のとおりでございまして、まことに重要な問題であると思っております。そこで、労働条件につきましては、労使の間で十分協議してまいりたいと考えておりますし、ただいま御指摘のその他の労働に関する問題につきましても、十分納得がいくように説明いたしまして、意見を聞き、対処してまいりたいと思います。  なお、よけいなことかもしれませんですけれども、地元関係も重要でございますので、それらについてもよく十分意見を聞きまして、万全の策を講じてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  254. 小宮山重四郎

    ○小宮委員 これで質問を終わります。      ————◇—————
  255. 田川誠一

    田川委員長 港湾労働法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出があります。これを許します。枝村要作君。
  256. 枝村要作

    枝村委員 前回の委員会で、大体のいわゆる港湾調整審議会における論議の中心になりましたいろいろな問題について明らかにしたのでありますが、きょうはひとつ冒頭で、一応総まとめという意味で質問を繰り返してみたいと思います。  それで、まず第一に言えるのは、港湾調整審議会で論戦のきっかけとなったのは、毎年登録港湾労働者の定数が減らされていく、これはよくないことであるということから始まったというように理解してよろしゅうございますか。
  257. 道正邦彦

    道正政府委員 原則としてそうでございます。若干繰り返しになりまして恐縮でございますけれども、法律をもちまして国が介入してつくった制度のもとにおきまして、当初四日程度でありました月平均の不就労が、最近におきましては十日を上回ってきている、この状態は放置できないというのが問題の出発点でございます。
  258. 枝村要作

    枝村委員 わかりました。  その次に、共同雇用の理念に立った体制の具体化をはかることが必要であるという問題について、その一つとしていわゆる労働者側は、業者協会に登録されること即それが雇用関係が生ずるという認識に立っておる。ところが、そうではないという反論がされた。ここにやはり大きな相違点があったという点について審議の過程の中で明らかにされておると思うのですけれども、そういう認識に立っていいですか。
  259. 道正邦彦

    道正政府委員 共同雇用の理念で法律を見直すべきである、これは四十五年の十一月に港調審から建議が出ております。また今回の法律改正をめぐりまして、昨年来の港調審の場におきましても、その理念に立って検討すべきであるということについては変わりがなかったわけでございます。  共同雇用の理念に基づいて考えるといたしました場合に、いろいろな考え方があろうかと思います。その際、外国の立法例等も検討されたわけでありますが、これもまた国情によりましていろいろのケースがございます。  日本の現状においてしからばどういう形がよろしいか。理想的にいえば、各企業が常用労働者約六万人を雇用しておりますように、完全に常用雇用労働者と同じように安定した雇用につければこれは望ましいわけでございますけれども、港湾労働における労務状況の波動性、これは法制定当初と比べまして原則的に変わっていないということから、一挙に常用労働者にするわけにいかぬ、しかしながら現状のままではいかぬということで中間的と申しますか、事業主をもって構成する団体を設立し、そこに日雇い港湾労働者の登録、紹介訓練その他雇用の調整を行なわせ、雇用の安定に資するのが望ましいというふうに審議会の結論はなったものというふうに考えられます。
  260. 枝村要作

    枝村委員 共同雇用の理念の問題についてはまたあとから質問をかわしていくのですけれども、その一つの具体的な問題として、論議をされた過程の中で、たとえば業者協会を設けるとして、その場合、いま言いましたように、協会に登録されることによって即それによって雇用関係が生ずる、こういう主張を労働者側はしたけれども、あなた方その他の人たちはそれに対して、そうではない、こういう意見の対立が審議の過程の中であった。その事実を認めるかどうかということを私は言っているのでして、いまあなたの説明のようなことももちろん必要でありましょうけれども、その事実行為そのものをいま確認をしておる。それ、認めますか。
  261. 道正邦彦

    道正政府委員 かなり時間をかけました審議でございましたから、審議の過程におきましていろいろな御意見がございましたことは事実でございます。しかしながら最終的な建議の内容につきましては、その趣旨は、先ほどお答え申し上げましたようなことであったというふうに私どもとしては理解しているわけでございます。
  262. 枝村要作

    枝村委員 じゃ、そういう論議があるいは反論というものがあったかなかったか、あなたは覚えないということなんですか。  それから審議会におけるいろいろな論議を収録した議事録などというものはあるのですか。
  263. 道正邦彦

    道正政府委員 この法案につきましては、総理府に置かれております港湾調整審議会と労働省に置かれております中央職業安定審議会と両方に関連があるわけでございます。私どもの所管の中央職業安定審議会の議事録はございますが、港湾調整審議会につきましては、ただいま総理府来ておりませんが、私は何らかの形であろうかと思います。
  264. 枝村要作

    枝村委員 じゃあなたはその議事録でも見なくては、いまはっきりとそういう——これは大きな意見の相違ですからね。これがあとあと引くのですから、あったかなかったかわからないということにいまの段階では答弁されておるということなんですね。そういうふうに理解していいですか。
  265. 道正邦彦

    道正政府委員 先ほどお答えいたしたつもりでございますが、審議の過程におきましてはそういう御意見もあったと私も思います。ただ、最終的には、そういう御意見を主張されました方々を含めまして全会一致で、先ほどお答えいたしましたような建議が出されたものというふうに私は考えているわけでございます。
  266. 枝村要作

    枝村委員 その次に、論議の中で、いろいろありましたのですが、特に雇用の安定と就労の安定という目的と意義について、大論戦ということまでいかなくても大きな意見の食い違いがあったということを聞くわけなんです。これはやはりここの場でも行なわなければならない問題だと思うのですけれども、まあ私ども考えても、就労の安定なんというものは、たとえば定数を減らせれば操作によって就労の安定はできるわけなんです。雇用の安定というのは全体の政策を含めた重要な問題として、もしこれが取り入れられるならばたいへんに重要な意義を持つわけなんですが、いまの就労の安定だけでは、いま言いましたような意味からしても、軽々しいという意味ではありませんけれども、きわめて意義が低いような気がいたします。そういう意味のいわゆる意見の相違、論戦というものが審議の過程の中に行なわれたかどうか。
  267. 道正邦彦

    道正政府委員 用語の使い方といたしましては、雇用の安定というのがやや広くて、需給の調整と申しますとやや狭い概念になろうかと思います。しかしながら、雇用の安定なのか需給の安定なのかという議論は、私の記憶する限りそう大きな論点ではなく、要は不就労が非常に大きくなっている、日雇い港湾労働者皆さんの就労の安定を何とか確保しなければいかぬ、これが問題だ。この点につきましては皆さんもう共通の認識でございまして、その点をめぐってしからばどうするかという点に論議が移っていったと理解いたしております。
  268. 枝村要作

    枝村委員 その次に、改正要綱案というものが審議会に示されたはずなんです。その中で、最初の案では共同雇用について全く触れられていなかった。で、若干の追及があって、法改正の中で、まあ私どもから言わせれば一言ちょっぴりとそれに見合うような提言がされた。たとえば二十五条の十五に共同で責任を持ってという文句が入っている。あなた方が最初につくりました要綱案の中には全然それすら触れていなかったという点が指摘されておるわけなんですが、これは事実かどうか。
  269. 道正邦彦

    道正政府委員 最初に出した要綱というのがどの文書をおさしになるのかにもよりますけれども、私どもが最初に港湾調整審議会に御提出申し上げたのは七月三日付の文書であろうかと思います。その文書におきましてはイの一番に、共同雇用体制を確立する必要があるということから問題点を整理しておるわけでございまして、要綱に触れていないというのは、私どもの理解に関する限り何らかの間違いではないかというふうに思います。
  270. 枝村要作

    枝村委員 私は直接一番最初に出した要綱案そのものを見ておりませんから、ここでそれ以上追及することはできませんが、いずれにしても労働者委員から言わせれば、最初出された案には全然触れていなかったということを言っているのですから、これは全くうそじゃないと思うのですね。先ほど言いましたように、やかましく言って、それではといって二十五条の十五の中に共同の責任という文句をちょっぴり入れた、こういうことになっております。返答は要りません。  その次に、調整審議会の中でいままで言ってきたようなものを含めて第一に定数、第二に雇用の安定と就労の保障、第三に一時金と退職金問題が中心的に論議されてきたということなんです。ですから、労働者の主張は常に一貫して今日までに及んでおる。ただ建議の最終取りまとめでは確かに全会一致でありましたけれども、しかしそれは、そういう労働者側の一貫した主張が建議の中にも表現としてはっきりあらわれたかあらわれないかは別として、取り入れられたという前提に立っての全会一致である。そういう立場に立っての一定の評価としてこれを認めたんだという態度を、労働者側はとってきたのである。そうでなかったら、建議をまとめる場合にあくまで反対するはずだと私ども思っております。全然自分たちの主張しておることが取り入れられないような建議であったら、それに反対するのはあたりまえのことなんですね。それを賛成したということは、結局いままで言ってきた問題が不十分であっても次の法改正では生かされていくだろう、こういう期待のもとにこういう賛成の態度をとってきたんだということについて、まあそれをあなたのほうで確認せよという、こういう迫まり方はいたしませんけれども、お互いに十分認識する必要があると思うのです。  さて、そこでもう一つ申し上げておきたいのは、当時の石井会長の積極的な姿勢ですね。そして労働省の当時の姿勢も確かに好感が持てるといわれておったのです。とりわけ道正局長、あなたの態度は、今日とはまるっきり反対かどうか知りませんけれども、非常に労働省側には好感の持てるような発言もなされておったように聞いておるのです。そこで一つ聞いておきたいのは、あなたがお話し合いの中で労使協議会、登録委員会か何か知りませんけれども、協議会のような構成の機関を設ける、国会審議の中で。その場合には利用者、いわゆる船会社、荷主を入れるというような、これは一つのことばでいえばウルトラ方式によって可能性もあるというようなことを言われたとか言われないとか、話を聞いておるのでありますが、それは事実でありますか、どうですか。
  271. 道正邦彦

    道正政府委員 審議の過程におきましていろいろな議論がございました。しかしながら関係者が、いろいろ御不満もあったかと思いますが、その中で最大公約数と申しますか、そういうものとして満場一致で十一月十七日に建議が出て、一月十二日には中央職業安定審議会から同じく満場一致で建議が出されまして、私どもといたしましてはその線に沿って法案を忠実に作成したつもりでございます。したがいまして、いまの時点におきまして私は両審議会の答申をそのまま尊重いたしまして御提出申し上げた法案でございますので、政府といたしましてはこの法案が最善のものというふうにいまでも考えております。
  272. 枝村要作

    枝村委員 あなたは私の質問に対して答えておりません。それが事実でないとするならば否定されてもいいし、もしそういうふうに受け取られる発言をしたというならば、それは素直に認めてもらいたいと思うのです。もう一ぺん繰り返しましょうか。たとえば登録委員会にいま言ったように船主やら荷主も入れるという方法については、国会の審議の中で十分考えられることだというようなことを言ったということなんですね。これは先ほど言いましたように、当時の労働省の態度にもたいへん好感を持っていただけに、たいへんな影響を受けておるのですよ。そういう発言があるからこそ建議の段階で賛成の意を表するし、そうしてそれに対する大きな期待を労働者側は持った。それだけにまた、今度の法改正で出された内容を見ると全くそれとは逆になっておる。いわゆる労働者側のことばで言わせれば、こっぱみじんにわれわれの期待は粉砕されたという表現が使われるようなそういう内容になっておる。法改正は改悪だという表現をしておるのですよ。そうなりますと、あなたの言われた、まあそれは冗談ではないと思うのですけれども、場当たり的か何か知りませんけれども、気やすさに言うたか、あるいはそういう労働者の気持ちをそんたくして善意で言うたか知りませんけれども、そのことばがいま言ったような労働者の期待になり、それがまた憤激に逆に今日ではなっておるという、そういう影響になっておるということを思うと、これは重大なる発言のような気が私はするのです。そういう意味で、これ以上しつこくは聞きませんけれども、お答えできるものならしていただいたほうが、あとあとの審議のためにもいいのではないか、こういう意味で再度質問するわけであります。
  273. 道正邦彦

    道正政府委員 審議の過程でいろいろの方がいろんなことを言われました。私も私なりに意見も申し上げた経緯がございますけれども、いろいろ審議の結果全会一致でまとまった建議に沿った現在の法案、これが現段階においては最善のものであるというふうに私は考えておる次第でございます。
  274. 枝村要作

    枝村委員 まあその問題について否定も肯定もしないということは、ある程度肯定したということに常識的にはなるわけでありますから、そのように理解をいたします。  そこで、今度の法改正を見て、たとえば石井会長自身もこれは共同雇用ではないという批判をしておるようでありますね、御存じですか。
  275. 道正邦彦

    道正政府委員 港湾労働の現状がこのままではいけないという御認識は、労使関係者はもとよりでございましたが、それ以上に実は危機感をお持ちであったのは石井会長御自身でございました。非常に御熱心でございまして、私どもは事務当局としまして非常に御鞭撻を受けたわけでございます。プライベートのことにわたりましてどうかと思いますけれども、夏以降石井先生は病気になられましたけれども、その病床からも、ほかはともかくこの港湾労働法だけは非常に気になるのだ、どうなっている、どうなっているというお尋ねがございました。最終のお取りまとめは石井先生趣旨に沿ってなされたものというふうに考えているわけでございまして、私寡聞にいたしまして、石井先生がこの法案が自分が出した建議に反している不十分なものだというふうな御批判をなさっていたかどうかまだ存じ上げない次第でございます。もしそういうことが事実とすれば、これは審議会会長御自身でございますので私どもも十二分に勉強さしていただきたいと思いますが、寡聞にして知らないわけでございます。
  276. 枝村要作

    枝村委員 そこで、あまり時間がありませんので……。特に石井会長が熱心であっただけに、それに基づいて建議がまとめられたと思うのです。その中で特に石井会長が主張されておるのは、やはり欧米諸国を範とすべきだ、こういうことば、意思がしばしば出されておる。日本の場合非常に立ちおくれておるというのは、それと比較してのことだと思うのです。そこで今度の法改正にあたって、その根本となる共同雇用体制の確立、これを目ざしての法改正であろうと思うのですけれども、そのために欧米諸国の一般化された事情を十分考慮されてこれが法律化されておるかどうかという問題を、まず第一に質問していきたいと思うのです。  それで、諸国の名前を全部あげてそれがどうなっているかという説明はここでは時間がありませんから求めるわけにはいきませんけれども、いまあなたのほうで調査された範囲で、おもな諸外国の港湾労働の実情、そしてそれに対する政府や労使の関係はどうなっておるかということをひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
  277. 道正邦彦

    道正政府委員 主要先進諸国におきまして港湾労働をどういうふうに扱っているかということでございますが、一言でいえば、何らかの意味におきまして共同雇用体制のもとに運用されているというふうに申していいかと思います。つまり常用労働だけで港湾労働を処理するにはやはり波動性が各国ともあるようでございまして、その波動性対策として何らかの形の共同雇用体制がとられております。  それで、具体的な内容につきましては、それぞれの国の労使関係であるとか、あるいは歴史的な事情であるとか、あるいは社会的な実態等によって異なっております。アメリカやイギリス等におきましては、実質的には労働組合が港湾労働力を把握いたしております。そういうことを踏まえて体制がとられておるわけでございますが、一方におきまして西ドイツ、オランダ、オーストラリアさらにニュージーランドにおきましては、日本と似ておりまして、個別企業が常用港湾労働者雇用しておりまして、日雇い港湾労働者につきまして事業主団体が登録制度をとっているということでございます。今回の改正案は主として日本と国情その他いろいろな点で似ておる西ドイツ、オランダ等の方式にモデルとしてならったというふうに申し上げられるかと思います。
  278. 枝村要作

    枝村委員 本年の六月ですか、第五十八回のILOの総会で新しい港湾荷役方法の社会影響に関する条約というのが採択される運びになっております。それに先立ちまして一九七二年の第五十七回の総会でそれを取り扱うための議題が決定したわけなんですけれども、それに対して、各国の港湾労働の実情を報告を求めて収録したものがあるはずなんです。その資料は持っていらっしゃいますね。いまあなたの報告はそれに基づいてされたわけなんですか、それともほかの何かによって御答弁になったのですか。
  279. 道正邦彦

    道正政府委員 ILOの条約と申しますか、昨年は勧告案という形で原案は出されて、審議の過程で一部条約にしたほうがいいということで第二次討議においては条約勧告案となったわけでございますが、いずれにいたしましても各国からいろいろ報告が出ておりまして、それは一応検討はいたしました。ただ、必ずしもそれだけでも要を得ない点もございますので、諸外国の実例等につきましては、各国に駐在いたしておりまする、いわゆるレーバーアタッシェ等を通じ、その他調査等にも当たらせまして、われわれとして可能な限り調査をしたその結論に基づきまして申し上げたつもりでございます。
  280. 枝村要作

    枝村委員 その報告によりますと、労使の関係と協議機関という部門があるわけなんです。  そこで、大体港湾に従事する労働問題とか、あるいは雇用登録、取り消しとか、そういう一切の問題はどこで取り扱うかというのが明らかにされておりまして、その他賃金の問題、労働条件もありますけれども、それによりますと、少なくともベルギー、フランス、西ドイツ、イタリア、ニュージーランド、スウェーデン、イギリス、これらは労使が協力してこの労働問題を取り扱う。そして、何らかの形の機関を設置しておる。そしてそれに対して、あるいは政府が積極的に関与しておるところもある、こういう実情です。そして、オーストラリアとかカナダあるいはオランダ、アメリカのようなところは、そういう機関のないところは、労使の団体交渉によってきめられた労働協約で一切が縛られておる、こういうことになっております。ここにありますから読めばすぐわかるのですけれども、そうなりますと、共同雇用によって雇用の安定、生活の保障をするという、やはりそういう理念が実際的に方法としてとられていくならば、いま言いました西欧諸国のこういう例を見ましても、労使がほんとうに一体になってそういう機関を設けて、そこですべての責任を持って運用するというやり方がとられておるわけなんですよね。今度のあなた方が提案されたこの法改正には、確かに諮問機関は二つか三つありますけれども、これは単なる諮問機関であって、実際の効力を発するような機関ではありません。すべては業者間の集まりであるいわゆる協会に責任をまかせる。いままで国がすべての権力を行使してこの港湾労働者の保護あるいは運営に当たっておったのを、すべてそういう協会にまかして逃げてしまおうというこういうやり方は、いまの諸外国の例に従って、それを学びながら、日本も先ほど言った趣旨、目的のためにりっぱなものをつくっていこうということに比べたら、およそ反するものではないかということが、この一つを見ても言えるのですが、あなた方はそれをどう思いますか。その点を率直に答えてください。
  281. 道正邦彦

    道正政府委員 先ほどお答えいたしましたように、各国によりましてそれぞれ事情が異なっております。イギリス、アメリカにおきましては、法律あるいは労働協約で、やり方についてはいろいろまちまちでございますけれども、基本的には労働組合が常用労働者を含めまして労働力を掌握している、それを使用者側と協議して使うという実態がございまして、そういう実態の上に立ちまして、労使で構成する委員会制度というのをとっております。  しかしながら日本の場合は、常用労働者につきましては個別の企業が直接雇用をしておりまして、その点につきましてはほかの一般企業と全く同じでございまして、労働組合も企業別につくられているというたてまえになっております。その点につきましては、西ドイツのように、常用労働者企業が雇い、港湾労働の波動性に対処するために港湾日雇い労働者につきましてプール制をとっているという、西ドイツ方式に日本の実態は非常に近いわけでございますので、先ほど来お答えいたしましたように、西ドイツあるいはオランダ方式を一応のモデルにしたというふうに申し上げておるわけでございます。
  282. 枝村要作

    枝村委員 いまイギリスの例が出たのですけれども、これはもう一九四七年に設置されました港湾労働審議会、これが中心になって一切の仕事をしていくという典型的なやはりいい例だと思うのです。それで、これを範とすべきだと思うのですけれども、これはまた別にしても、西ドイツでもいまあなたが言われたようなことではないのですよ。一九五〇年、法に基づいて設置された労使合同機関である港湾雇用機関が、労使関係委員会としての任務を遂行していっているのです。西ドイツでもですね。それからフランスは、またこれもりっぱなものであって、何かそういう機関を設けて、そしてそこで労使が協議していろいろな問題を処理するという形がとられておるわけなんです。まあアメリカはあなたが言われたようなことですけれどもね。これは労働組合が経営そのものにも参加しておりますから、ちょっと変わっておるのですけれども、そういうふうな方向でみんなとられておるのです。そこにやはりうまくこういう問題が処理されていくし、そうして雇用の安定とか生活の保障というものがそこから初めてなされていくんだというように私どもは思っておるのです。何回も言うようですけれども、日本は全くそうではないのです。この法改正は全くそれとは反する。業者にすべてをまかせる、こういうやり口になっておるのですから。あとからいろいろ論議がされるでありましょうけれども、今日のいわゆる港運業者がどういう性格を持って、経験を持っておるかということなど考えていきますと、それはたいへんなやはり心配がそこからも生まれてくる。だから、労働者側がほんとうに不満を持って、不安を持ってこれを見詰めていく。そうして審議会過程の中で外国のそういう事情をいわゆる範として日本にも取り入れるという、そういう基本的な方針、建議があるにもかかわらず、この法改正は取り入れておらないというところに、いま言いましたような期待が全く実現できないというようになっていくわけなんです。  それで、ぼくらもこういうふうに調べてみますと、全く共同雇用とかなんとかいうのもことばの上だけであって、実際に効果のあるものかどうかということは疑われるわけなんですよ。その点、労働大臣は正直だから、この前やはり、十分でないという発言をしたと思うのです。このままの法で、もしそれを生かして運用されたら、かえって昔のようなみじめな港湾労働者状態に逆戻りするのではないかというおそれすら出てくるわけなんです。ただ、ぼくたちが心配するのは、五千何がししか東京に港湾労働者がいない。その上にこの港湾労働法というものが成り立っておる。このままでほうっておくと、法律はあってもないようなものになっていきはしないかという、そういう心配は、あなた方含めてあるわけなんです。どこかでやはり歯どめをしていかなくてはならぬという、この点は一致しておると思うのです。歯どめをするためにはどうしたらいいか、そういうまじめな意味でわれわれはこの法審議に臨んでおるわけであります。そして先ほど言いましたように、外国の一つの事情を見ただけでも、今度の法改正はそれとは全く合わないものが出されている。私どもは、外国を模倣することはありませんよ、日本には日本の事情がありますから。しかし日本の事情を見たら、さらにこれはたいへんなことになるという、こういう心配が出てくるわけなんであります。そういう意味で、私どもはこの問題については慎重にひとつ審議をしていかなければならぬというように考えております。時間が来ましたので一言あったら……。
  283. 道正邦彦

    道正政府委員 事実関係につきまして、私の説明に誤りがあると申しわけございませんので、補足させていただきますと、確かに西ドイツの場合はGHBVという、全港湾経営体協会というのが就労配置に当たっておりまして、定数の決定につきまして、三者構成の審議会によって管理されております。日本の場合におきましても、また今回の改正案におきましても、定数の決定につきましては労働大臣の決定、その労働大臣の決定の過程におきましては、労使がお入りになっている関係審議会の議を経てきめるという手続をとっておりますので、基本的には定数関係につきましては西ドイツと変化がないように思います。その点だけ補足御説明申し上げておきます。
  284. 枝村要作

    枝村委員 まあ私のほうは大体総括的な質問ばかりになってくるわけなんですけれども、まず第一に、一番問題にされるのは、近代的な雇用関係が確立されていないということです。常用港湾労働者の雇い入れば港湾運送事業法でやる。それから日雇い労働者港湾労働法でやるという、こういうふうに二つに分けておる。このようなやり方でありますから、結局労働者基本的な権利というものがしっかりと守れるという立場に置かれていないというところに、先ほど言いましたように近代的な雇用が確立されておりません。こういうふうに、根本的な問題として私どもは心配しておるんです。その点についてどういうふうにお思いになっておるか、御答弁を願いたい。
  285. 道正邦彦

    道正政府委員 港湾の関係業者が営業をするためには運輸省の認可が要るわけでございまして、これは運輸省の所管でございます。労働問題につきましては、港湾労働法の中におきましても、常用港湾労働者につきまして届け出制をとっております。これは改正法におきましても維持いたしております。それによりまして、逆に必要な日雇い港湾労働者がどのくらい要るかということが出てくるわけでございまして、労働法のたてまえにおきましては、分野におきましては二つに分かれているということではないんじゃないか、相互関連をもって法の中に規定されているというふうに考えております。
  286. 枝村要作

    枝村委員 しかし、分かれておることについては事実ですから、できれば一つにまとめて、そういう労働者雇用の安定とか生活の保障などをしていくという、そういうシステムをつくることが大切だと思います。それから、ばらばら政策というのは今日の為政者のとる常套手段でありますだけに、労働者側から見れば、もっとこれは悪質といったら悪いですけれども、ある意味でいえば団結権を侵害する、団結権を侵害するということは、いまの憲法で保障されておる労働者のすべての権利を妨害していくということにも通ずるわけなんです。そういう意味で見ていきますと、ここには確かにあなたの言われたようなこともあるかもしれませんけれども、基本的に見た場合にはやはりわれわれとしては納得できない。それで、今日の港湾労働者がみじめな状態に置かれておる。これは常用であろうが日雇いであろうが、実態を調べてみたらすぐわかる。企業に雇われた者は常用であるからといって、その人たちが格段にいい取り扱いをされておるとはあなた方も思っていないでしょう。そういうふうに見てくれば、ますますそういうことが言えるのではないか、こういうふうに思っておるわけなんです。  それからもう一つまだあるのですけれども、こういうふうにばらばらに雇い入れることができるように、いわゆる合法化しておる。合法化されたその上に、ほんとうの雇用の責任を負わなければならない海上の運送人、船会社やらあるいは荷主といわゆる団体交渉をして、そして先ほど言いましたような雇用の問題にしても、生活保障、労働条件の問題にしても改善していくという権利すらも認られておらないということなんです。そして実際には名目上の末端の使用者にすぎない、いわゆる業者との間でちょこちょこいろいろなやり取りをやっているにすぎない。このようなことでは、先ほど言うように、ほんとうに労働者の利益や権利を守ることはできないと思うのです。ですからもう一度この意味で質問をするわけなんですけれども、労働大臣のそれに対する考え方をひとつ明らかにしてください。
  287. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 この問題はなかなか重大な問題で、いままでの港湾の法律では、このままでは行き詰まると私は思うのです。やはり接点でありますから、接点がスムーズにいかなければならぬ、こういうふうな全体の重要な課題、それから労働者のいろいろな問題、これをこの法律でうまく運用したら、私はこの法律はうまくいくと思います。それについては不就業の増大を防止する雇用関係の確立、それともう一つ大事なのは今後のやり方について、やはり労働協会の運営、これについて労働省が、大臣としてもこれに対するいろいろなやり方を私は監督指導しなければいかぬ。一面いま御指摘のような労働者の立場の福祉の問題、条件の問題、これもあわせてこれが侵害されないようにいろいろ労働省がこれを指導監督し、行政面からの運営をうまくやらなければいかぬ。私も去ったことは言いませんが、この問題がなかなか重要だというので、舌足らずのところはありましたが、いろいろ運営の面について今後よく考えなくてはならぬという気持ちはあります。いま御指摘の点は私も同感であります。
  288. 枝村要作

    枝村委員 あとから具体的にはいろいろな問題であらゆる角度から質疑はかわされると思いますけれども、一言だけ労働大臣の言っていることに反論するならば、そういうふうになればいいですよ。いいですけれども、いまの業者に国の公権力をまかせるのですから、業者がたいへん思想的にも進んでおるし、りっぱなものであるし、そして労使関係にもいままで非常に近代的な経験を持っておるならあるいは考えられないことかもしれませんが、いま見てごらんなさい、業者に対する世間一般の批判、それから業者そのものは今日一体何をどういうふうにしておるかということは、労働省が一番よく知っているじゃないか。昔のように確かに暴力ざたを起こしたりなにかということは、実際には港湾労働法ができてから、手配師とか暴力団を一応形の上では締め出した、労働者が団結していきますから。しばしばそういう傷害ざたとかなんとかいうものは出てこないように、われわれの力でなってきておるのですけれども、その思想そのものは実際変わっていないのですよ。そうして法違反なんかもものすごくあるでしょう、実際問題として。それからあなた方がそれを摘発しようと思っても、おそろしくてよう行かぬでしょう、職安の職員が。労働省が管理に行ったらいつどういう仕返しをされるかしれないからといって、みすみすこれは法違反だとわかっておってもよう摘発しない場面がたくさんあるはずです。そういうふうな事情なんです。環境なんですよ。そういう人たちに今度強大なる権力をまかせるのですから、どうなるかわかるでしょう。あなた方が国の権力でこうしようとしてもできなかったことを、それならそういう集まった人たちができるとでも思っているのですか。反対になりはしないですか。そういう心配があるから私たちは、こういうやり方ではいけないということになってくるわけなんです。具体的にはまたあとから質疑がかわされるでしょうけれども、それはあなたが経験者だけに一番よく知っていらっしゃると思うのです。ですからどうしてもほんとうに目的を完遂し、石井会長あたりが一生懸命になってつくられたこの建議の精神を生かそうと思えば、やはり国やあるいは労働者や使用者、この人たちが一体となって今日の港湾労働者のすべての取り扱いを責任をもってやることが大事であるという結論になってくるわけなんです。  いまの質問は、いわゆる使用者側の中に、先ほど言いましたように、いわゆる業者だけでなく、いわゆる真の雇い人である運送人をやはり入れるようにしていかなくてはならぬではないか。これは自民党の田中さんもそういう意味の質問をされたと思うのですよ。だからそのことを言っているのでして、そういう意味では労働大臣の意見と一致しておるかもしれませんから、一致しておるならばそういうふうに改めるべきが至当だと私は思うのです。  それで、もう一ぺんあらためて言いますけれども、船会社との団交権を認めるような方向でひとつ検討する。それから道正局長審議会の過程の中で何かの協議機関の中にそういう人たちまで含めて運用するようなことを国会審議の中でウルトラ式にでもできればいいではないかという発言をされたということを聞いておりますだけに、ひとつこのあたりでまとめる、まとめてもらわなくてもいいのですけれども、一つの前向きの意向を言えるものなら言ってもらいたいと思うのです。
  289. 道正邦彦

    道正政府委員 港湾労働につきまして、船社、荷主等の利用者が非常な影響力を持つ、これは事実でございまして、その協力が非常に重要であるということはこの建議にもうたわれているとおりでございます。ただしかしながら、港湾労働の場合でありましても、直接の労使関係というのはやはりあくまで労使関係でございまして、船社、荷主が直接労使関係の当事者になるということは私は適当でないだろうと思います。しかしながらそれぞれの立場において御協力をいただく、これはもうぜひとも必要でございまして、その一例といたしましてこの建議が出たことも手伝いまして、港湾労働の原資をまかないまする運送料金の付加料金、これは五割アップを関係の業界としてはいち早く認めてまいってきております。また私の信ずるところによれば、港湾労働につきまして船社、荷主とも利用者側が非常な関心を持っており、協力体制を持っておるということも私は事実だと思います。そういう意味でいろいろな形で協力は仰ぎまするし、港湾調整審議会の場にもそういう意味で代表者が入っておりますが、直接の労使関係の当事者ということにはならないのじゃないかというふうに思います。  それから蛇足になるかと思いますが、同じことを申して恐縮でございますけれども、御指摘のように幾ら制度を変え、法律を変えましても、あるいは共同雇用体制をかりにどんなりっぱなものを法制化したといたしましても、それを生かすも殺すもやはり労使関係であることは御指摘のとおりでございます。従来港湾労働の労使関係が必ずしも円滑にいっていなかった、あるいは言わしていただけますならば前近代的要素を持っていた。その点はこの建議の中にも書いてございます。しかしながらこういう労使双方が危機意識を持ち、関係者の協力を得て審議をする過程におきましては、私は従来に比しまして労使関係は各段の改善をされておるものと思います。  その一例として申し上げますならば、去る三月の二十二日には港湾労働としては画期的な、深夜業を原則的にやめるという労働協約をすでに両当事者との間で御締結になっております。また勤務時間につきましても、かなり進歩的といいますか、近代的な、諸外国から見ましても驚かれるような内容の協約をすでに結んでおります。そういうことで私は、いままでいろいろ問題がございました港湾労働の労使関係でございますけれども、こういう法案作成の過程におきまして従来にない信頼関係が芽ばえてきているというふうに私は思っております。
  290. 枝村要作

    枝村委員 いまいわゆる社団法人の日本港運協会と全日本港湾労働組合、全港湾との間で結ばれたいわゆる協定書ですか、この問題に触れられましたから、私もちょっと言います。  確かにいま時間その他を含めて、一定の評価をされるべき内容であります。ところがこの内容に基づいてこの法改正を見た場合でも、この協定の精神が生かされていないということはいえるのではないですか。いまの個々の問題については確かにそうかもしれませんけれども、この協定の主要な目的は、第一に書いてありますように、「港湾労働法の適用港に設置される協会に登録した登録日雇港湾労働者雇用について、各港の事業者が共同で責任を負うことを確認する。」こういうことですね。そして二番目に、「前項の目的のため事業者は、登録日雇港湾労働者を代表するものと労組法にもとづく団体交渉の機関である事業者団体が各港ごとに登録日雇港湾労働者の労働条件等、その他必要な問題について誠意をもつて協議することを確認する。」というふうになっておるわけですね。だからこれをわれわれの側の精神で解釈していけば、やはり労働者側も責任をもってこの問題を処理するということなんですから、単に諮問機関とかなんとかいうことでなくして、実際に労働者の問題を取り扱う何かの機関を設ける。それはたとえば協会の中に入れるかその他の中に入れるか、あるいは登録委員会の中に、真に問題を解決するために業者だけでなく使用者の代表としていま言われましたように運送人を入れるかといういろいろな形はあるでしょうけれども、発展していかなければならぬ要素があるわけなんです。そういうことがかなえられて、はじめてこの協定が生かされるものだというように、私はちょっと見て理解したわけなんですけれども、実はこの協定文そのものもどうも死んだような気がしてならぬわけです。そのことを一言だけ言っておきたいと思います。  そこで最初の質問に戻るわけなんですけれども、船会社や荷主あたりと団交権を認めるような方向で今後ひとつ検討していくという、こういうお考えはいまのところ全然ないのですか。
  291. 道正邦彦

    道正政府委員 これは労使関係はあくまで労使関係でございますので、雇用関係があるもの、つまり使用者との間の関係ではないかというふうに思いますので、関連はございますけれども、直接団交の対象には本質的になり得ないものではないかというふうに思います。
  292. 枝村要作

    枝村委員 その次に、先ほど、近代的な雇用関係が確立されていないということを言いました。それは二分されておるということの意味ですが、そこで港湾労働者雇用については一本化するということですね。登録日雇いであろうが常用の労働者であろうが、区別をなくしていくという考え方ですね。これは諸外国でもそのような取り扱いをされておるところがあると思うのです。こういう考え方について、労働省のほうで何らかのそういう前向きの措置を今後していくお考えはありませんか。
  293. 道正邦彦

    道正政府委員 諸外国のそれぞれの国によりまして、社会的事情が違います。イギリスやアメリカの場合におきましては、労働組合が常用を含めまして労働力を掌握している。一種の労務供給のような形で港湾の労働がまかなわれておるというのが実態でございます。それに比べまして、西ドイツやオランダの場合は日本とやや似ておりまして、常用労働者は個別企業雇用されており、それ以外の日雇い港湾労働者については、波動性に伴う問題を解決するためにプールシステムをとっておるということでございます。ただ日雇い港湾労働者のプール制をとりまして登録、紹介等をやる場合に、常用港湾労働者との調整が必要でございます。そういう意味では、現行法におきましてもまた改正法におきましても、常用労働者につきましても届け出制を堅持いたしておりまして、氏名、職種等を届け出させまして、それを見ながら日雇い港湾労働者の定数をきめるシステムになっております。そういう意味で関連はございますけれども、おっしゃる意味がアメリカやイギリスがやっておるような制度をとったらいいではないかという御趣旨であれば、日本の実態はそういうふうにはなっておらないということでございます。したがって似たような制度もとりにくい、とれないということでございます。
  294. 枝村要作

    枝村委員 私の意見は、抜本的な改正につながる問題を言っているのですよ。いまの法改正の中でごちょごちょいじくり回してもしようがない問題である、それに対してあなた方がどういう態度をとっておるかといまただしておる。これはあまりむずかしいことを言うことはない。一つの港が一つの総合工場だと見ればいいわけです。そういうふうに見ていく。そしてその工場にすべての責任を持たしていく。工場につとめる者はすべて労働者でしょうから、そういうものを含めてその体制をつくっていく、こういうきわめて常識的な考え方でやることが——日本の場合、特に業者の思想の問題とか経験の問題とか世間一般の批判の問題とか、今日業者の国に対する見方は、たとえば労働基準法なんかに私は参加しておらぬとかいう業者がたくさんおるようですね。国の法律は何のためにあるか、これは破るためにあるんだということを極端に言う人たちもおるのです。そういう業者がおるだけに、一挙に権力を渡してしまう、そしておまえたちで好きかってにやりなさい、こういうやり方がほんとうの意味であなた方の思っているようになるかどうかということです。これはだれが考えてみてもなりやしないという結論になってくるのですね。一つの港は一つの総合工場である、工場が責任を持たねばならぬという立場に常識的になってきたとしても、いまの法改正ではその工場のすべての窓口は業者だけに与えておる。労働省なんかというものは、いろいろな義務は各工場へ押しつけております。きつい強制的な条文にまで改めて、労働者に一方的な押しつけをやっておるというところもしばしば見えるのですね。そうなってくると、どうしてもこれはりっぱなものにはならぬ。今日の港湾労働法の目的にも沿わない、改悪になっていく、このように考えられるわけです。ですから何回も言うようでありますけれども、こういう問題について、いまの労働者側とあなた方との大きな意見の相違が審議会の中でほんとうに展開されたかどうかは知りませんけれども、実はあったということが明らかにされ、そしてこの意見の相違は、国会の本委員会の中でわれわれを通じて政府側と論戦をかわしていくということになるわけであります。そういう意味で第一の問題としてこの問題をあげたわけでありますから、先ほど二つばかりあげました問題についてもひとつ十分検討してもらわなくては、これは入り口のところでたいへんな障害にぶつかって、いわゆる基本的な労働省の態度についてお考えいただかざるを得ないことになってくるわけであります。これをたいへん心配するわけであります。そういう意味で、もう時間が来ましたので、労働大臣のこの場における所見をひとつ述べていただきたいと思います。
  295. 道正邦彦

    道正政府委員 非常に重要な問題でございますので、繰り返しになりまして恐縮でございますが、申し上げさせていただきます。  おっしゃるようにいろいろ問題がございまして、いまのままでは港湾労働は危殆に瀕するということは、関係者だれでも言うところであります。それを解決するために共同雇用の理念に立って対策を考えろということで、実は四十五年の審議会での建議以来一番強く御主張になったのが、労働組合員の皆さんでございます。組合に限らず、関係者の皆さんから、なぜ早くやらぬかといって実はおしかりを受けて数年経過したものでございます。その理由として、この四十七年の建議でも書いてございますが、「行政機関が日雇い港湾労働者の登録機関となっていること等の事情から、事業主に共同雇用の考え方が浸透せず、また、労働者の側にこれに対応する姿勢に欠ける面があった。」、だから共同雇用制をとれ、こういうことで今回きめたわけでございます。そういう意味では、地区港湾労働協会に関しまして職安の仕事をまかせるわけでございますけれども、御指摘のように公権力をまかせるわけでございますから、十分な監督が必要でございます。それにつきましては詳細にわたりますので、また別の機会にさせていただきますけれども、法制上可能な限りの監督規制措置を講じておるつもりでございますので……     〔発言する者あり〕
  296. 田川誠一

    田川委員長 御静粛に願います。
  297. 道正邦彦

    道正政府委員 労使の信頼関係の高まりと相まって、私は所期の目的を今度の改正案は達成してくれるものというふうに心から確信をいたしておるものでございます。
  298. 枝村要作

    枝村委員 大臣、ひとつ答弁してください。もう私はきょうの質問はここで留保しますから。もう一ぺん言いますが、先ほど言いましたように、四十一年のあの施行以来、一応暴力団を港から締め出す、やはりこういう民主化の方向へ、これは非常に不十分でありましたけれども、お互いに努力してまいったのです。しかし、この法が改正されて運営されていきますと、またもとのもくあみになるおそれがあるとわれわれは思うのですよ。あなた方もそのおそれを持っておると思うのですよ。だからそういうふうにならないために十分監督すると言っているのは、そういう心配があるからなんです。しかし、この法で監督できるかどうかという問題になるでしょうが。そういうことを言っているのです。権力をすべて向こうさんにまかせるのですからね。ひとつ最後に答えてください、大臣
  299. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 その点についてはよく先ほども申し上げましたとおり、権力を与えるのでありますから、この協会の監督指導が重要なポイントとなります。これに対しましては十分いろいろな点を勘案いたしまして万遺憾ないように、そしてその反面、やっぱり労働者の問題も低下することのないように、これはいろいろな労働条件などが妙なことにならぬように、力を与えて、それが反動的なネックになるようなことのないように十分対処する所存であります。
  300. 枝村要作

    枝村委員 質問を留保します。
  301. 田川誠一

    田川委員長 次回は、明後二十六日午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後六時三十三分散会