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田中(昭)
委員 私はその
被害の
実態の特殊性をお聞きしたのですけれ
ども、どうも用意してきてないようでございますから、私のほうから申し上げてみたいと思います。
たとえば死者二十四名。先ほど言いますように死者、行くえ不明、重軽傷者まで含めて
——今度の集中
豪雨はたった二、三時間、あまり降らないときも入れれば前後五、六時間でしょうね。翌日はからっと晴れた、青空が見える天気なんです。私も朝方になりましてすぐ事故現場にかけつけましたけれ
ども、普通一時間ぐらいで行くところに四時間かかって届いた。そういうことはどうでもいいのですが、いずれにしても四時間かかって届いてみますと、死者というのが、一カ所で二十四人やられたのではなくて、幾つもの町村で、いわゆる急傾斜地とか、先ほどから言いますようないろいろな宅造の
関係と思われるようなところ、森林の乱伐が行なわれていたようなところ、そういうところに点々と二十四名の死者を出している。これが普通のいままでの
災害と違うところであります。行くえ不明にしましても、いまだもって四名の行くえがわからないのです。こういう
災害は
——災害に対する
対策を一生懸命やっておると言いましても、こんなことではどうするのかと思うのですね。その行くえ不明の
遺族の気持ちになったら、一カ月近くになるのに遺体があがらないという気持ち、また現実に遺体が埋まっておるためにいろいろなことが進まない、こういう状態はいままでにない状態であります。おわかりいただけるでしょうか。
——どうも実感がこないようでございますけれ
ども……。
そのほか家屋の全壊にしましても、先ほど何べんも出ました四王寺山脈系の国分というところの全壊家屋でございます。この全壊家屋に
建設省のお役人さん、経歴から見ますと、おそらく小学校を卒業して給仕で入っておられる方でしょうが、三十年近くつとめて
地方建設局の係長になった。そしてようやく家を新築して間もなくこの水害にあった。その家の残骸というのは、爆風でやられたみたいにかわら一枚残っていないのです。紙を破ったようにばらばらになってしまっている。ここに写真もございますけれ
ども、お見せしなくてもわかると思います。全壊家屋といいましても、普通は家がばたっと倒れるか柱ぐらい残っているものです。ところがこの全壊家屋は、紙きれをちぎったようにこっぱみじんになってしまっている、こういう状態です。残された幼い二人の子供。私は、こういう状態がいつ起こってくるかわからないということを考えますと、ただここで議論するだけで終わらしていいものだろうかという気持ちもするわけでございますが、一応実情を申し上げればそういう状態でございます。
それから橋の流失についても、特殊な状態は先ほ
どもちょっと出ましたが、森林の伐採によりまして、伐採しました
あとの木の根といいますか、切り株といいますか、それが多量に流出しておる。大体これが、切りまして二、三年するとこういうふうに流れるのです。それが橋げたにかかりまして、普通流れないと思われておる橋が、その流出物の木の根っこがひっかかって流れる。その橋が流れることによってそこに布設されておりました水道管も流れて、水はあるのに、そして水害の
あとの日照りがしておるときに全町村が断水するというようなみじめな状態。水がないときには私も実際水を運びましたけれ
ども、あの水害後のかんかん照りのところに水が出なかったらどういう状態になるか、幸いにその後病人等も出ませんようでございましたけれ
ども、そういう特殊な状態があるということでございます。
そのほか道路にいたしましても、道路のことはぜひ言っておかなければなりませんが、いま
福岡の近郊でも
九州縦貫高速道路、そういう道路網の整備がどんどんなされております。その道路がなされますと、先ほどからお話がありましたように、川の流れも変わりますし、それから地形が変わるために、いままで流れてこないようなところに水が流れてくる。そこで私はぜひ図面で
——これはあまりいい図面じゃございませんけれ
ども、つくってきましたから
説明申し上げておくのですけれ
ども、これは大野城市の乙金というところで起こりましたがけくずれの状況でございますが、御存じのとおり、まん中に高速道路の工事がいまなされております。そうしまして、こちらがいわゆる山側になりまして、その山側ががけくずれを起こしたわけであります。いままで、高速道路ができるまではこちらのほうが低くなっておりましたために、水は全部こういうふうに流れておった。ところが、この道路がつくられたために水がこっちへ流れなくなった。その状態の中で土砂くずれが起こったために、ここに掘っておりますトンネルに全部集中したわけです。そこで、ここにありました家屋が全壊と同じような状態になった。全壊家屋の方から見れば、まずこういうところに
——家のそばにこういうトンネルを掘らなければならなかったということについては、いろいろ事情もございますけれ
ども、私は、この事故の現場に行っていろいろ事情を聞いてみますと
——道路公団に私、直接電話しました。この状況を見てどういうふうな理解をしておるかと言ったところが、公団としては、この道路ができたためにかえって上砂を防いで
被害を少なくしたのだという返事なんです。ほんとうですよ。私だけ確認したのじゃありません。秘書も確認しております。だれが考えてみても、この現場を見ればはっきりしますけれ
ども、道路ができたために、もちろんそれは、山くずれの場合に土砂を防いだということも事実でしょうけれ
ども、そういうところにトンネルを掘って、住家の近くにトンネルを掘って、通路でございますけれ
ども、そこに水が流れてきたことは道路公団の責任じゃないなんということは
——そういうことなんですよ、現場では。
市町村の責任だ、工事をやっておる国の責任なんだというような状態で、いまだもって避難場所にそこの人たちは住んでおりますけれ
ども、ほんとうにかわいそうな状態なんです。
そのほか森林の伐採によります
被害、いろいろな
公共土木施設、農林水産業その他の施設も相当やられておりますが、特にこの森林伐採で言っておかなければならないことは、この
地方には千数百年前の国の特定史跡がございます。いわゆる
太宰府でございますが、それに関連しました
太宰府以前の史跡がございます。千数百年間築造されてあった史跡が、今度の水害でずたずたにやられておるのです。そこを見てみますと、やはり森林伐採の林道が影響しておるようです。
それからまた国鉄の
被害でも、一番ひどかった宇美町に勝田線といいまして赤字線でございますが、その終点がございます。そこが現在復旧の見通しがつかない。全然列車が動いていない。その線路敷は現在川みたいになっております。その写真も持ってきて、お見せしたいと思いますけれ
ども、こういう状態ではいつ
災害復旧がやられるかわからない、どういう状況がございます。これは現場でなければその状況がなかなかよく理解できませんから、
あとで見ていただきたいと思います。
以上、私のほうから、今度の
福岡の集中
豪雨に対する
災害の特殊性というものを申し上げました。その特殊性を一日も早く除去していただいて、原状復旧並びにあたたかい手を差し伸ベてもらいたい、こう思うわけでございますが、私が申し上げました
被害の
実態に対するそれぞれの各省の今後の
対策といいますか、そういうものをお聞きしたいと思います。