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国実参考人 私、ただいま御紹介いただきました、全国
ダム災害被災者団体連絡協議会の事務局長をいたしております
国実と申します。
本日、当
委員会のほうに
参考人としての出席を要請されましたので、ただいまより、
ダム災害の全国組織協からの観点から、いささか所見を述べさせていただきたいと思います。
現在の
日本の
災害防止の
河川行政というものは、道路、港湾、その他の部門に比べてみますれば、全般的に非常に立ちおくれが目立っておりますのが
実情でございまして、
河川や
ダムに関しましては、特に
日本の地形や地質あるいは気象条件からも、もっと多角的な取り組みが必要ではないかと思うのでありますけれども、
あとを断ちません
ダム災害の
実態は台風や集中
豪雨のたびに問題になりまして、近年は特に山林の乱伐や無秩序な土地開発等がどんどん進められまして、雨水の
出水率が非常に早められ、
河川のはんらんがスピードアップし、大型化し、実に膨大な損害を生じてきておるような
実情でございます。
こうした
治水治山の行政は、
河川の
上流部で
支流を合わせまして小さく分割され、
町村自治体や国の出先で扱われておりますけれども、こうした
実情が統一された
治水対策が行なわれない
原因であり、また、防災予算の少ない
町村自治体に比べて、
河川下流の人口密度の非常に高い都市部に対しましては多額な予算がつぎ込まれるという、
河川の一体的
治水対策がとられないことも非常に大きな
原因ではないかと思われます。
これは、やはり全国的に見のがせない問題でございますけれども、この
治水治山の問題と同時に一番大切なことは、この
ダムと
河川のはんらんのつながりということでございます。
もちろんこうした
河川の総合管理という問題もございますが、一例をあげて申し上げますならば、昨年四十七年七月に発生いたしました西
日本の集中
豪雨災害は、湿舌と呼ばれる異常気象条件でございまして、これは九州から山口、
広島、島根、岡山と、
河川のはんらんを伴いまして北上したものでございますけれども、その大半の損害は
ダムの異常
放流によるものだと指摘されまして、現在訴訟中のものも三件ございます。
台風や集中
豪雨のたびに、
日本のどこかで必ず
ダム災害が発生しております。これらの
原因は、すべて
ダム管理の怠慢と
操作ミスによるものだといわれておりますけれども、現在の発達しました科学や土木工学がこの
災害を防止できないのではなくて、
災害を防止するための
ダム対策や
治水管理が十分なされていないというのが
原因でございまして、その証拠といたしましては、
ダム災害やこうした紛争問題がいつまでたっても
あとを断たないことを見ても明らかでございます。
こうした問題の根本は何であるかと申し上げますならば、これは現在の
日本の
河川法と
ダム操作規程あるいは
ダム操作規則にあるのであります。
その具体的な例といたしましては、同じく四十七年七月十一日夜半発生いたしました
広島県の一級
河川太田川のはんらんでございますけれども、同
河川上流にございます、先ほど
中本参考人も申されました中国電力株式会社の所有しております発電用
立岩ダムの
操作ミスは、わずか二、三時間くらいの間に数回の
洪水波を起こしまして、
下流千世帯以上が床下浸水以上の
被害を出し、個人
被害総額は概算十億以上も算定されまして、その
災害の責任者を中国電力株式会社と
建設省中国
地方建設局と見て、両者を岡山とともに追及してまいりました中で、実に驚きますことは、両者ともに気象庁の出しました
警報を全く無視しており、
災害の発生が十分
考えられたにもかかわりませず、事前に何の防災措置もとらず、また
河川法や
ダム操作規程に定めております通報、指令、記録その他連絡措置も全くなされておりません。
災害の発生は全然予測しなかった、こう断言しております中国
地方建設局は、事前に
災害発生の危険性は十分
考えられていたけれども、
立岩ダムはどうしようもない危険な
ダムであり、これを知りながら放置していたのは国の行政責任であると認めております。
河川法第五十二条は発動しても適応しない
ダムである。こうした発電用
立岩ダムの
構造的
欠陥も指摘し、何もしないで放置していたことは実に驚くべきことであります。こうした
河川理管者の責任感のない事実はゆゆしき問題でございます。
災害防止のための
河川法の適用さえできない
ダムが実際に存在しており、これを管理監督する
建設省が、中国電力の提出した
資料だけを分析して
ダムは悪くないというのはどういうことなのであろうか。国はまた、この重大な責任をどのようにとる気でいるのであろうか。
河川管理者がこの
実態でありますから、
利水ダムを所有しております中国電力はもっとひどいものでございまして、立岩
ダム操作規程全条二十一条中、十五条以上は不明確でございます。明らかに
操作規程違反が認められておりますのに、中国電力の法解釈のほうが正しく、被災
住民のほうが間違っている、そんなに
予備放流がしてほしければ金を出せば
予備放流はしてあげましょうと、言語道断なる発言をするに至っては、明らかに
河川下流住民を無視しており、社会的権力で押し切ろうとする姿勢でございますけれども、中国電力の提出しておりますすべての
資料はでっち上げでございます。われわれはこれに反証することはできますけれども、こうした
災害防止をたてまえといたしております
河川法五十二条の発動されないゆえんは、こういう電力
企業の思い上がった姿勢にありまして、
ダムの
実情を何ら把握することができないままに、電力
企業の言うままになっている監督官庁の責任でもあると思います。電力
企業の補償には気を使っても
住民の安全には何ら配慮されていない
河川行政そのものをわれわれは問題としております。
こうした五十二条の問題は、
ダムをかかえた
河川流域に居住するすべての国民の重要な問題でもございます。中国電力も中国地建もともに一切の
資料と記録を公開することができず、
操作規程の通報の義務も完全に怠っておりますし、
災害を助長させ、
治水の責任はないと開き直るに至っては、全く許すことができない
実情でございます。
ダム災害は、防止権限も何もない管理者の責任と、いいかげんな
ダム操作規程や地方自治体の
ダムに対します認識の甘さによって引き起こされているのではないかと思いますけれども、これは同時に
災害対策基本法あるいは水防法等を無意味にしているのが
実情でございます。問題は、
災害防止に対します行政と
企業の責任感の有無であると
考えますけれども、そのためには、
現行の
河川法や
ダム操作規程を根本的に洗い直し、ほんとうに大害をなくするものに改正しなければ、こうした
ダム災害は絶対に解決できないであろうと
考えます。
全国で多発しております
ダム災害は、こうした電力
企業の法の曲解から紛争を発生させておりまして、電力
企業の責任がとらされなかったことにも基因しておるのではなかろうかと思います。
洪水時の異常
放流だけは絶対やめさせなければならないのが第一番でございますけれども、即刻全国の
ダムの一斉点検を実施していただきまして、危険な
ダムは緊急規制を講ずる、あるいは使用中止や禁止、改善命令を出していただき、場合によっては撤去をしていただけるような措置を講じていただけるのが最上ではないかと
考えております。
こうした
河川の
災害の
原因は、大半がこうした
ダムに基因しております。電力
企業のわずかな人員の
操作で
下流住民の生活が左右されるいわれは全くないのであります。そうした点ももちろん電力側にはあるわけではございませんけれども、電力
企業の社会的責任は、それだけ重大であるということは一方では言えるのではないかと思います。こうした非常に危険な
ダム下流におきましては常に不安でございまして、一日も安心して生活ができないのでございます。
利水ダムであろうと
治水ダムであろうと、
ダムはあくまでも
ダムでございまして、水をためることそのものがすでに
ダム災害発生の要因を持っているわけでございますから、
利水ダムであるから
洪水調節はできないとか、それだけの
機能、幅が持たされていないとか、こうした理由で
下流の
住民が
災害にあってもやむを得ないといったことは、これだけは絶対に許されるべきものではないと思います。
災害復旧が何百億円とかかりますのに、こうした大きな損失がありますのに、なぜ金の要らない法五十二条等の指令が出されないのか、私どもはまことにこの点がふしぎでなりません。
一方ではこうした多くの問題を投げておきながらも、水資源の開発だけはどんどん進められておりますけれども、
ダムによる環境破壊の問題もあらためて検討されなければならないのではなかろうか。あるいは償却の済んだ古い
ダム等は、すみやかに撤去さしていただきまして、限られた資源は有効に使われなければならないのではなかろうかと思っております。現在のまま進められました開発からはまた新たな
ダム問題が生まれ、同じように、責任をとれ、いや私は悪くない、こうした電力
企業と
住民との押し問答の繰り返しが続くばかりでございまして、何の罪もない善良な国民が、ただ川ばたに住んでいるという理由だけで
被害を受けては苦しまなければならないようなことだけは、何としても避けていただきたいと思います。
公共の
ダムは、何らかの形で責任をとっているところもございますけれども、電力
企業の
ダムだけがいつまでたっても公共性をたてにとり無責任な態度をとっておりますけれども、これは明らかに
利水権の乱用でございます。
住民感情といたしましては、銭金の問題よりも、自分の生活が現在どうなるかわからない
実情にさらされているわけでございますが、こうした電力
企業の
ダムに対する無責任な言いわけやへ理屈は聞きあきましたので、
現状のままでございましたら、いつまた
災害を受けるかわかりません。国民の生命、生活
財産の安全よりも現在の電力エネルギーの生産のほうが大切にされるのでございましたならば、
住民はみずから身を守るしか方法がございません。そのためには、必要があれば実力行使をもってでも
ダム管理をせざるを得ない。こうしたせっぱ詰まった気持ちに
現状では追い込まれておりますけれども、何とぞ
現行河川法の改正をよく御審議いただきまして、
ダム災害の防止と
河川の安全が一日も早く確立されるようお願いいたしまして、まことに内容不備ではございますけれども、私の公述にかえさせていただきます。