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1973-07-16 第71回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年七月十六日(月曜日)     午前十時九分開議  出席委員    委員長 佐野 憲治君    理事 菅波  茂君 理事 登坂重次郎君    理事 林  義郎君 理事 小林 信一君    理事 島本 虎三君 理事 中島 武敏君       小澤 太郎君    田中  覚君       羽田野忠文君    村田敬次郎君       阿部未喜男君    岩垂寿喜男君       土井たか子君    木下 元二君       岡本 富夫君    坂口  力君  出席公述人         日本弁護士連合         会公害対策委員         長       伊東 正雄君         全国漁業協同組         合連合会専務理         事       池尻 文二君         富 山 市 長 改井 秀雄君         四日市助役  加藤 寛嗣君         著  述  業 後藤 清忠君         医     師 河野 和夫君         三重県楠町助役 阪野  昇君         食糧品販売業  島田  実君         菓子小売業   能松 義次君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       城戸 謙次君  委員外出席者         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた案件  公害健康被害補償法案内閣提出第一二三号)      ————◇—————
  2. 佐野憲治

    佐野委員長 これより会議を開きます。  公害健康被害補償法案について公聴会に入ります。  本日御出席お願いいたしました公述人方々は、日本弁護士連合会公害対策委員長伊東正雄君、全国漁業協同組合連合会専務理事池尻文二君、富山市長改井秀雄君、四日市助役加藤寛嗣君著述業後藤清忠君医師河野和夫君、三重県楠町助役阪野昇君、食糧品販売業島田実君、菓子小売業能松義次君、以上の九名でございます。  この際、公述人方々に当委員会を代表いたしまして、一言ごあいさつを申し上げます。  本日は多用中のところ、また遠路にかかわらず御出席いだだきまして、まことにありがとうございました。  御承知のとおり、本案はわが国公害による健康被害者救済制度にとりましてきわめて重要な案件でありまして、当委員会といたしましても慎重な審議を続けているところであります。したがいまして、この機会に広く各界から御意見を拝聴いたしまして、今後の審議に万全を期する所存でございます。つきましては、公述人方々におかれましては、それぞれのお立場から率直な御意見をお述べいただきたくお願いを申し上げます。  なお、議事の整理上、最初に御意見を十五分程度に要約して述べていただき、そのあと委員からの質疑にお答えいただきたくお願いを申し上げます。  念のために申し添えますが、議事規則の定めるところによりまして、発言の際はそのつど委員長の許可を得ることになっております。また、公述人方々からは委員に対して質疑できないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきお願いいたします。  まず、伊東公述人意見の開陳をお願いいたします。
  3. 伊東正雄

    伊東公述人 ただいま御紹介にあずかりました日本弁護士連合会公害対策委員会委員長伊東正雄でございます。本日は、非常に重要な公害健康被害補償法案審議にあたりまして、連合会を代表して一言ここで意見を開陳する機会を得ましたことは、まことにありがたく存ずる次第でございます。何ぶんにも時間が十五分ということでございますので、法案を通覧いたしまして感じました二、三の点について特に申し上げてみたい、かように考える次第でございます。  なお、この席をおかりいたしましてお願い申し上げたいことがございますので一言申し上げますが、ただいま建設委員会におきまして公有水面埋立法に関する審議を願っておりますが、日弁連からもその案件につきまして意見を出してございますので、何とぞこの点も御参酌願いたいと存じます。また、公共用飛行場周辺の騒音の障害防止に関する件につきましても、日弁連公害対策委員会から先般意見書提出してございますので、あわせまして御参考、御審議をいただきたい、かように考える次第でございます。  公害健康被害補償法案成立過程におきまして、実は環境庁から何かあれば意見をという御要請がございまして、日弁連からもおもむきまして口頭で意見を申し上げたほか、さらに本年の二月二十八日に意見書を作成いたしまして、委員長先生はじめ諸先生方にもすでにお手元にお届けいたしまして、この法案審議に対して私ども委員会意見を十分反映していただきたい、こういうことで文書お願いしておる次第でございます。しかしながら、この日弁連意見につきましては、環境庁から法案として提出になりました形におきましてはほとんど採用されておらないのでございまして、非常に遺憾に存ずる次第でございます。しかしながら、日弁連といたしましては、公害予防、排除並びに被害者救済という点から純粋に意見を申し上げておるわけでございまして、そういう点におきましては人権擁護の点からの意見でございますので、被害者あるいは国民立場におきましての意見として、議員の先生方にはそういう点から日弁連意見につきまして今後とも十分なる御認識をいただきたい、かように考える次第でございます。  少し前置きが長くなって恐縮なんですが、実はこの法案を見ますと、健康被害という表題がございますように非常に限定的な法案でございまして、今日の公害現象というものが、単なる汚染物質によるところ被害救済という範囲からさらに私ども生存環境そのものに対するところの侵害であり、危殆感をもって迫ってきている次第でございます。これはすでに世界的にも、昨年の六月五日のストックホルムにおきますところの世界的な人間環境保全会議によりまして、私ども現代に生きる者としましては、この環境問題は一党一派あるいは一国家を越えまして、これは私ども人類現代に生きる人間、さらに将来の世代に対しての重大な責務をになっておる次第でございます。また国内におきましては、すでにいわゆる四大公害裁判によりまして、公害に対するところの非常にきびしい企業責任というものが明確になったのでございますけれども、何ぶんにも裁判によりますと非常に長年月を要しますし、またその間におきますいろいろな関係者の労苦というものはたいへんなものでございますので、そういう点におきまして公害被害者を迅速にしかも十分に補償するというこの法案成立いたしますことは、非常に意義もございますし、すでにございますところ公害被害者の健康に関する救済法につきまして、この法案成立いたしますと廃案になるわけでございますけれども医療給付に終始いたしておりますこの法律から比較いたしますと、その点におきましては数段と前進したということは確かに言えますし、そういう点において評価ができるのでございますけれども、ただいま申し上げましたような私ども環境を保全するという広い点から考えてみた場合、並びに現在の公害被害というものが単なる健康被害のみならず、いわゆる私ども環境汚染並びにそれによって起きますところ生業破壊というようなことからして、どうしても生業補償あるいは財産補償というものを加えなければ、これは公害補償法としての名に値しないものではなかろうか、かように考えるわけでございます。のみならず公害原因にいたしましても、すでに御承知のように、新幹線あるいは航空機あるいは食品、薬品、こういうような被害が現実化しまして、しかもそれが適切に救済されないということで、各地におきまして御承知のように訴訟が起きている現状でございます。そういうようなものをぜひ立法過程におきまして取り入れて、そしてそういうものを加えたほんとうの意味におけるところ被害救済に徹していただきたいということで、実は日弁連意見ではそういうようなことを具体的に申し上げておる次第でございます。そういうことでございますので、日弁連文書によって本年二月二十八日に公表いたしました意見を十分御尊重いただいて法案に生かしていただきたい、かように考える次第でございます。  時間もございませんので、法案につきまして二、三気づいた点を申し上げますと、公害の健康の回復につきまして、被害者福祉事業を行なうという規定がございますけれども条文の形におきましてはわずかに一カ条でございまして、健康の回復のためにどのような事業を行なうのか、あるいは予防措置としてどういうことを行なうのか、実は法案には全くその具体的な内容が明らかでございませんで、これは政令に譲るという形になっております。政令に譲りました場合には、これは行政官庁におきましてつくられるわけでございまして、遺憾ながら、先生方国民を代表する立場に立った意見が、この法案においてここで御審議をいただけないわけでございますので、そういう点において具体的内容を十分御審議いただきたい、こういうことを考えております。しかも、これが目的におきまして重要な一つ項目になっておるわけでございますから、その点の内容についての御審議お願いしたい。  それからもう一つは、賦課金につきまして延納ができるという規定が五十六条にございますけれども、しかしながら、これもそういう規定が一カ条あるのみでありまして、全く無条件に延納が許される。ところが、この賦課金徴収につきましては国税徴収法によるということで、公の金でございまして、賦課金徴収することにつきましての延納の期間とかあるいは担保とかいう条件が何ら定められておらないということは非常に問題ではなかろうか、かように考えるわけでございます。  そして賦課金徴収事務を、この条文によりますと、賦課金を拠出するところ団体に委任することができるという規定がございまして、ただ賦課金決定国税徴収法による強制徴収については、そういう委託の事務をしないけれども、そうでない事務については委託できる。こういうことになると、賦課金徴収される側の団体、どういう団体かわかりませんけれども、そういうような経済的な団体延納に関する決定権がもし移されることになると、これは重大な問題ではなかろうか、かように考える次第でございまして、こういう重要な項目につきましては十分ここで御審議をいただき、それを確保するような規定を挿入されるべきではないか、かように考える次第でございます。  それからもう一つは、いわゆる過失相殺に関する規定でございます。これは補償給付の制限として規定されてございますけれども、この条文自体から見ましても、何か公害被害者というものを非常に悪意に、いわゆる性悪説のような立場に立って規定されておられるのではないかという疑いが持たれるのでございまして、重大な過失あるいは故意に疾病を発生させたり、それを増大させたり、治癒することを故意に怠ったり、あるいは死亡に至らしめた、そういう者に対しては補償給付をしないというような条文でございますけれども、これは被害者救済法というような点、並びに現代における公害実態というものが決して公害被害者責任ではなくて、しかも、そういうような過失のない、多くの場合においてほとんど過失のない被害者救済するという立場に立ちながら、しかもそういう性悪説のような立場に立って、いま言ったような、条文ていさいからも非常にていさいのよくない、人を見たらどろぼうと思えというような、ことばはよくございませんけれども、非常に悪意的に規定されているというのは非常に遺憾でございまして、これはぜひ削除していただく。あるいはどうしても必要だということになれば、これは民法の四百十八条、不法行為の七百二十二条にございますとおり、簡単に規定ができるのでございまして、おそらくそういう必要は、公害被害実態から見ますとないわけでございますので、このような点に立って、しかもかなり詳細に規定してございますので、こういうような規定はぜひ本法案から削除していただきたい。  これは私ども法律家として気のついた点でございまして、そのほかのことにつきましては意見書にもございますし、後ほどまた御質問があればお答えするということで、私の意見を一応終わりたいと思います。(拍手)
  4. 佐野憲治

    佐野委員長 どうもありがとうございました。  次に池尻公述人
  5. 池尻文二

    池尻公述人 私は全漁連の池尻でございます。漁業者立場から健康被害補償法案について意見を述べさせていただきたいと思います。  私は、昭和四十二年だったと思いますけれども、本国会に初めて公害基本法提案されまして、そのときにも公聴会が開かれまして、公述人として意見を述べたわけでございます。これはわずか六年前でございましたけれども、ちょうどその時期は、ようやく、単に水質汚濁漁業被害だけではなくて、わが国における各般の環境破壊現象、いわゆる公害の問題が国民的な関心事になろうとしていた時期でございまして、今日ほどの深刻感はまだございませずに、ごく少数の識者は別といたしまして、公害政策基本にはまだ根強くいわゆる経済発展との調和条項必要性が大手を振ってまかり通っておった時点でございました。  そのときの五、六人の公述人公述の中にありまして、わが国における国民階層の中でも、すでに数十年前から公害に苦しめられてきた漁民歴史は、一口にいって公害による受難の歴史といってもいいと思うのでございますが、そういう漁業者立場から、公害基本法主張に反対をいたしまして、切迫した危機感をもちまして意見を述べたわけでございますけれども意見といたしましては、わずか六年前でございますけれども、孤立の状態でございまして、私の意見はむなしく空を切った記憶がございます。  そのときの公述人のお一人であったと思いますけれども、前の加藤東大総長、そのとききはたしか法学部長で、同じく公述人に列席されておりましたけれども加藤公述人は、私の耳になお記憶に残っておるわけでございますけれども経済発展との調和条項というのは絶対に必要である、卑近な例を申すならば、日本国民アユ隅田川にもう期待はしないけれども、つまり、アユは琵琶湖に期待をすればいいのであって、すでにだれもアユ隅田川期待をしていませんという意味公述を述べられた記憶がございます。  さほどの認識意見というものが、まだそのときは堂々と論じられていた時代でありました。しかも、わずか六年たちました今日、わが国公害様相はこのように危機的な様相を呈し、ますます深刻の度合いを増してきたのでございまして、いわゆる公害問題に対する対策の時間とその対応性関連というものは、為政者の方々に特に心に銘記していただきたいと訴えざるを得ないと思うわけでございます。なぜかならば、四十二年に公害基本法成立をいたしました。もうすぐに四十五年にはこの公害基本法から経済発展との調和条項というものを削除せざるを得ないというような事態、あわせて四十五年には公害関連の諸立法というものが成立をいたしております。そして四十八年の今日には、健康の被害に対する一つ法律というものが提案をされておるというように、わずか五、六年の間に、いわゆる次から次に立法がなされるということは、公害現象に対しまして政策というものが、先見的に、先行的になされて、後手後手になってはいけないということを実質的に証明をしていると私は考える立場から、あえて前回の公述のことをここに冒頭に述べました次第でございます。  私は、そのときの公述人といたしまして、ただ一人、そのときにも被害救済制度を早く確立をしていただきたいという提案をいたしたわけでございます。しかもそれも二つから成った制度提案をいたしました。  一つは、今日示されておりまするいわゆる健康、生命に対する被害対策を急げということでございまして、当時私は、企業から負担金を取るいわゆる損害賠償保険制度というものを提案をいたしました。  もう一つは、私ども漁業被害に対するいわゆる財産的被害、これに対しましては、なかなか原状回復保険での処理が困難な被害対策でございますので、国、地方公共団体企業が原資を拠出し合って基金創設をし、基金の立てかえ払いによって救済を実施した後に、被害原因及びその因果関係を明らかにし、原因者が明かになった場合には基金被害額損害賠償相当額を払い込むこととする制度創設提案したのでございます。  この問題につきましては、今日提案されておりまするこういった制度について公費負担原則というものが非常に問題になっておりますので、私はその六年前の時点におきましても、あえてこれを二つに分けまして、あとでも申し上げますけれども、われわれの漁業被害に対するいわゆる責任者というものは、企業がはっきりしている場合もございますけれども国民にまた大きな被害を与えるという原理がございます。赤潮の例がそのとおりでございますし、下水道排水による一般都市排水による漁業被害がそれでございますし、さらに屎尿投棄等によるいわゆる被害等もその例でございます。したがいまして、一般的に公費負担原則というものが悪であるという主張は、財産被害についてはまだ現段階においては貫けないのではないかという意味で、六年前にもあえて財産被害に対する国並びに地方公共団体の財政的な責任というものもそのときに掲げたわけでございます。  したがって、本日、提案になっておりまする補償法案につきましては、いま申し上げました趣旨で、おくればせでございましたけれども、これにはそれなりの評価をいたしまして賛成をするものでございます。  しかしながら、大事なことは、世界において初めての制度といわれまする本制度は、それだけにまさに裏を返してみますれば、公害原因あるいは責任をあいまいにしてきました、いわゆる日本的公害行政のもたらしたどろ沼の中にやむなく生まれざるを得なかった制度であるということもまた事実であろうと思うわけでございます。したがって、本制度による救済制度ができたからといって、かりに責任者が金を出したからといって、いわゆる公害免罪符というものをもらって、あとはどうでもいいというそういう責任のがれの風潮というものが、ややともすれば日本の社会の風土の中には根強く存することでございますので、りっぱな制度とはいえ、これを今後運営しあるいは推進していく行政立場というものには、そういった一つの大きな反省と将来に対する一つの良心がなければならない、かように考えておる次第でございます。  さらに私は、この際健康被害だけでは片手落ちでございまして、先ほども日弁連先生の御指摘のとおり、早急に財産的被害に対する救済制度というものもぜひ皆さま方の間で十分な御検討を賜わりたい、かように考える次第でございます。  私ども漁業者の受けておりまする公害被害は、まことに多種多様、複雑なものでございまして、それについての対策というものも、おのずからなかなか困難が予想されますけれども、現在起こっておりまする水銀PCBのあのいまわしい事態、あるいはさきに起こりました瀬戸内海におきまする赤潮被害における魚類の斃死のような事態を考えた場合に、まことに急がれなければならない対策一つではないかと思われるのでございます。  たとえば昨年の赤潮被害は、七十五億の被害ハマチ斃死によりもたらしました。七十五億の被害と申しますと相当な被害でございますが、これに対する対策といたしましては天災融資法一本しかございません。天災融資法は、御承知のとおり、どちらかと申し上げますと、農家のいわゆる天災被害というものに着目した一つ制度でございまして、ハマチを飼っている漁業者は、一網に三千万円も五千万円も、場合によっては一億円ものハマチを飼っている人が、赤潮被害によって一ぺんに死滅をする、そういう事態に、わずか一世帯当たり百万円、二百万円の融資というような措置では、全くこれはナンセンスといってもいいぐらいのものでございまして、そのほかに効果的な対策も見当たらないというのが現状でございますので、この点につきましても、私どもは早く何らかの手を打たないと、来年こういう事件がもう一ぺん起こったらもうこれは倒産をせざるを得ないというような事態でございます。  さらに、今次のPCB水銀汚染の問題は、この種の問題がいかに急がれねばならないかということを全く実例をもって実証していると思います。あの汚染問題によりまして、全国のといってもいいぐらいに魚が全般的に国民の不信を買いまして、いまもって販売の不能、魚価低落の状況が続いておるわけでございます。これに対しまして政府対応策は、御案内のとおりいわゆる問題水域に対しまして二百五十億の緊急融資をきめました。そして、特別に今度はその利子の負担分漁民に迷惑をかけないというような措置でございます。いまこれに対する漁業者対応は、皆さま方新聞ですでに御承知のとおりでございますが、あくまでもPPPつまり加害者負担原則というものが原則でございますので、企業群つまり汚染源のはっきりした県では、目下漁業者企業ないし企業群に対しまして実力行動をもってその交渉に当たっておるわけでございます。  ところが、そういう県があるかと思いますと隣のあるいは対岸の県では、何らそういう企業がなくてしかも漁業者の受けたいわゆる経済的な被害というものは全く同じであるにかかわらず、そういった企業のないところ漁業者というものはこれの持って行き場がないということで、どこに賠償の問題を持っていけるかということで非常に悩んでおるわけでございます。したがいまして、そういった企業のあるところ、いわゆる汚染源のあるところは、融資の最後の償いはそういう企業補償金でできるにいたしましても、そういったところのない漁業者というのは、これは全くの泣き寝入りで、自分でそれを払っていかなければならないということに追い込まれていきまするし、また問題水域以外の県におきましても、今日魚価低落その他の経済的な損失をこうむっておるわけでございまして、したがって、単に加害者負担原則原則であるからといって、それではどこまでが加害者負担原則でどこからは一体漁業者負担になるのかということは、なかなか不明確であるわけでございまして、今日の事態は、こういったものについて一体どういうふうな被害者対策というものをとらなければならないかということを全く事実をもって示唆している、かように考えておるわけでございます。したがいまして、私ども漁業被害に対しましては、いわゆるPPP原則ではっきりとそれで割り切れるもの。それからもう一つは、先ほどの例の赤潮等のごとく加害者が全く不明、因果関係が明らかでない。ただ明らかになっておるのは、工場排水あるいは都市排水あるいはし尿処理、そういったもの、そういったいろいろなものが複合的に海域を汚染をして、そしてある一つのメカニズムがあれば一ぺんに魚の斃死が発生するという、いわゆるそういう原因のわからないものについての対策というものは一体どうするかという問題があろうかと思います。  したがいまして、今次起こりましたPCBあるいは水銀汚染の問題は、将来私どもはもう絶対起こってもらっては困ると思いまするけれども、先ほど申しましたように、日本公害は、おそらくいままで何が隠れておるかわからない。どういう物質がさらに魚を通ずる一つ食品としてのある現象になってくるかわからないというようなことが、今後いろいろ想起されると思います。そういった場合に、そのときになってまた制度を考えていく、そして融資という制度でお茶を濁していくという制度は許されないと私どもは考えるわけでございます。六年前からの、公害基本法成立するいままでの過程で、いろいろな現象が次から次に起こってきておるわけでございまして、したがいまして、あと五年したら一体どういうことが起こってくるであろうか。もちろん公害の防止につきましては、徹底的な政策が必要でございまするけれども、ここまできた日本でございまするので、三年先、五年先を、どういうことが起こっても、制度としてはこれでカバーできるというものをいまから準備しなければならぬ、かように私どもは考えるわけでございます。  時間がございませんので、まだ申し述べたいことがございまするけれども、いままで歴史的にもこの公害被害の受難者でありました漁業者の声というものにつきまして、なお一そう先生方の御検討と御協力を賜わりたい、かように考える次第でございます。  なお、立ちましたついででございまするが、恐縮でございまするけれども、目下皆さま方、各党の手で瀬戸内海の環境保全法案が準備をされておると仄聞をいたしております。先ほど申し上げましたような瀬戸内海等の内湾の状況でございまするので、いろいろと問題はありましょうけれども、各党の諸先生方で十分御協議、御検討の上、ぜひ今国会で御成立を賜わりたい、かようにお願いをいたしまして、私の公述を終わらせていただきたいと思います。(拍手)
  6. 佐野憲治

    佐野委員長 どうもありがとうございました。  次に、改井公述人お願いいたします。
  7. 改井秀雄

    改井公述人 御紹介いただきました改井でございます。  日ごろ各種の公害問題と取り組んでおりまして、いささか苦心をしておる者の一人といたしまして、国の被害者救済の施策が前進しようというこの際におきまして、特に国会審議過程におきまして公述人として意見を述べることができますことは、まことにありがたく存じておる次第でございます。  要約して、少しく申し上げたいと思いますが、まず第一の点は、経済の拡大と急激な都市化の進行の過程の中で、環境条件の悪化は加速度的に進行したわけでありますが、これが非常に複雑化あるいはまた広域化、こういう様相を示しておると思います。   〔委員長退席、小林(信一委員長代理着席〕  先般の第三水俣病の発表に伴いまして、全国の各地におきまして港湾における魚の汚染問題が大きく浮かび上がってまいりまして、たいへん深刻な問題になっておるわけでありますが、私どもの港湾におきましても同様なことが起こりまして、とりあえず緊急の措置をとってまいったところでございますが、ぜひともひとつこの機会に抜本的な公害防止対策並びに救済施策というものが大きく前進するようにお願いしたいという気持ちで一ぱいなのであります。  ただいま当面の緊急の手配を、手当てをしてきた、こう申しましたが、その一つは、漁業者被害につきまして非常に深刻でありますので、地方自治体としてはとりあえず何かしなければならぬ、毎日の生活に困ってくる、こういう状況でありますので、当面二億四千万余り貸し付けるということにいたしました。直接の漁業者、第一次加工者、そういった者には無利子でとにかく使ってもらう、流通面等の方面の皆さんには多少の利息はもらいますぞ、こういうことで手当てをしたことなのであります。  第二番目のほうの防止対策のほうでありますが、実は昨年から、本市におきまして、市条例に基づきまして公害が発生をすると思われる各企業とそれぞれ公害防止協定を結んできております。今年まで大体十一社、十一工場と防止協定を締結してまいったわけであります。それぞれ基準内にとどめるように示しまして、いろいろ会社、工場側にも異論も相当出ておりますが、しかし相当効果をあげよう、こういうことで防止協定を結んでまいっておるわけであります。  ことしに入りましてからは、昨年まで大体大気関係をやってまいりまして、ことしは水に移りまして、水の関係をやってまいりました矢先、ちょうど当市におきましても二社から水銀が出ておったということがあらわれまして、当面この会社との協定を急ぐ、こういうことにしておりましたが、全般的にやっておりますと時間がかかりますので、とりあえず水銀だけについての覚え書きということで、つい数日前そのような手当てをしたわけであります。  当面の手当てと申しますのはこのようなことをやっておるわけでありますが、地方自治体として非常に二面苦心をしておるということを申し上げたかったわけであります。  さて、今日まで公害といいますと重油などの燃料を大量に消費する重化学工業地域における大気汚染などが健康被害の発生を呼んでおるというふうに見ていいと思います。このことに関しましては、国におかれまして四十四年以来公害被害者に対しまして医療費の給付などを行なうという行政上の措置を講ぜられております。   〔小林一信一委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、これらの救済制度は、私どもの目から見ますと、いわゆる表日本の工業地域あるいは九州の一部、こういったところに限られておるような感じがしておるわけであります。私ども日本におきまして急激に工業化が進んでおる地域も多々あるわけでありまして、これらの多くの地域において適用が見落とされておるのではないか、こういう感を非常に深く持っておるわけであります。まあそれにはそれなりの経過、理由があったと思いますが、こういった見落としの要因と言いましょうか、そういうものを、私どもの目から見ますと、地域における公害の監視測定体制などの行政のおくれ、こういったものによりまして、環境汚染実態の科学的な調査解明がまだ正しく行なわれていないのではないか、こういう点がまず第一にあげられるように思います。これはわれわれ自分みずからにつばするような面があるかと思いますが、しかし偽らざるところ、そういった弱みはなおあるのではないかと思います。  第二点といたしましては、公害発生源の分布調査がまだ十分に行なわれていない、こういう点もあげられると思います。  さらにまた第三点としまして、企業自体の公害に対する責任認識不足といいますか、いまさらこういうことを言うのはおかしいのではありますが、本気になってということがまだ不足しておるのではないかというふうに私どもは感ぜられてならぬわけであります。  富山市の場合について若干申し上げますと、昭和三十年代からいわゆる国の施策に呼応いたしまして新産業都市の指定を受けまして、そしてまた工場誘致を基本とした都市づくり、こういう方向に進んでまいったわけでありますが、この間に、振り返ってみますと、火力発電所の立地やあるいは石油化学工業コンビナート化、こういったことが急速に進んでまいったというふうに見て差しつかえないと思います。化学やエネルギー生産規模が急速に拡大してまいったということでありまして、さらにまた、これらの産業を受け入れていくための道路交通網の拡大整備、そういったことに伴いまして汚染物質の急激な上昇、こういうことで大気、水質の汚染が非常に著しく進みまして、たいへん残念なことでありますけれども公害デパート県、こういうことが言われるような状態にまでなったわけであります。  こういったような公害の激化しております中で、諸先生方も十分御案内のとおり、神通川流域におきますカドミ汚染によりますイタイイタイ病が大きく浮かび上がってまいりまして、何十年来の私どもの難病、業病といってまいったものがその本質を明らかにしてまいったということなんであります。そういう過程におきましてイタイイタイ病だけは何とか解明していただきましたので、国の救済法の適用を受けておる、こういう現況なんであります。  しかし、ただいまも申し上げておりますように、急速な工業化の中におきまして、本市におきます北部工業地帯、こう私どもは言っておりますが、いわゆる富山港を包む北部工業地帯一帯のことなんでありますが、この辺におきまして四十二年ごろから盛んに呼吸器障害が訴えられるようになってまいりました。たいへんに私どもも心配をしてまいったところでありますが、しかし長い間顧みられなかったというのが現状であります。  これらの地域につきましては、国の環境白書にも記載されておるとおりなんでありまして、四十五年度、四十六年度は、国の環境基準に適合しない事実もあらわれておりますが、全般的にということではありませんでしたので、法の適用を受けておらぬわけであります。そういった大気汚染による健康被害が相当急速に進んでくるような状況を見まして、市独自の対策を講じよう、こういうことにいたしまして北部工業地域の健康調査ということに取りかかりました。市医師会の協力をいただきまして三年間ぐらい今日まで継続的にやってまいりまして、大体二万六千人ほど終了したわけなんでありますが、北部の中でも特に限定的に非常に心配される地点、このところ九・三平方キロを対象にいたしまして一万八千人、この辺を綿密にいろいろやってまいりました。その結果、国の救済法に準じまして医療救済を実施、こういうことを市独自でやり始めたわけでありますが、現在七十一人の患者認定をしておるというのが状況であります。今日まで大体一千二百万円余りつぎ込んできたという状況であります。しかし、こういう状況は富山市だけではないわけでありまして、県内におきましても、こういった独自の対策を講じておる市町が四カ所ぐらいありまして、高岡市、魚津市、大島町、大門町、こういったようなそれぞれの町におきましても、国の救済法を受けられないためにそれぞれ苦心をしておる、こういう状況なんであります。  次に、先ほどからもお話が出ておりましたが、私たちはこういった状況を見てまいるにあたりましても、もう少しこの実態に即してやっていただけないだろうかという一面と、それから人の健康被害と並行いたしましていろいろな問題が起こっております。特定の企業にぶつかっていける者は、これはまだしあわせなのでありましょうが、そうでない人々は、やはり何といいましてもしかたがありませんので、私ども自治体に大体訴えてくるわけでありますが、そういったものの中に樹木とか、あるいはまた家屋とか、いろいろな損傷を受けておる、こういうことが出てきておるわけであります。その一つといたしまして、だいぶん前からでありますけれども、市の全域、特に呉羽山一帯にわたってなんでありますが、樹木の枯死現象が発生してまいりました。これに対しまして、市といたしまして、横浜国立大学の加藤龍夫教授に科学的な解明を依頼してまいったのでありますが、ことし、三年目になりましてその結果が出てまいったわけであります。これによりますと、工場排煙による大気汚染が主要原因であるというふうに結論づけておられるように思います。  このような公害にかかる環境汚染は、人の健康被害だけでなくて、財産、植物の育成などにも及んでおることがだんだん明らかになってきておるというのが現況ではなかろうかと思います。したがいまして、こういった法案が出てまいりまして法律化される、こういう機会にはぜひともひとつ地域的な観念を排除していただきまして、国土全域にわたりまして公害実態をひとつ原点に返って見直していただきたい。人の健康被害のほかに、財産補償等を含めて実情に合致するような補償対策、そういうものをひとつ積極的に取り上げていただきたいものだ、こう思っておるわけであります。  いろいろ飛び飛びに申し上げましたので、少し集約的に申し上げてみたいと思います。  その第一は、現在の健康被害救済法では、医療救済に限られておりまして、補償の関係は民事訴訟にゆだねられておるのが現況であります。今回の法案には各種の補償を取り上げられましたことは、私どもとして非常に高く評価をしておるところであります。  第二には、現在の救済法の運用にあたりまして、地域指定に関してきわめてきびしく、制限的であるように思います。こういう状況の中で、今回の法案においてはこの補償制度が広く盛り込まれたわけでありますが、これがさらに地域指定を取り上げられる際にきびしくなるということが心配されます。したがって、この点の前進を大幅にひとつお願いしたい、こういうことであります。  第三に、実際の運営にあたりましては、地域の実情を十分踏まえていただきたい、こういうことであります。たとえば当該市町村長の意見を尊重していただきまして、法の精神が生かされるよう、こまかい配慮をひとつお願いしたい、こういう点でございます。  次に、この法案の中にうたわれております公害福祉事業につきまして、たとえばリハビリテーション施設、あるいは定期的な健康診断の設備、あるいは医療機関の家庭訪問による在宅医療面からの対策、あるいは社会復帰及び日常生活に関する保健指導、こういったものなど、こまかい具体的な施策をひとつ織り込んでいただきますならば、われわれ地方におきまして十分にこの法案をさらに生かしていくことができるのではなかろうかということで、大きく期待を申し上げておる次第でありまして、この辺のところをおくみ取り願いたい、こう思うわけでございます。  以上で終わらしていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
  8. 佐野憲治

    佐野委員長 どうもありがとうございました。  次に、加藤公述人お願いいたします。
  9. 加藤寛嗣

    加藤公述人 ただいま御紹介のありました四日市助役加藤でございます。  本日は、私に公述機会を与えていただきましてまことにありがとうございます。また、平素は諸先生方には公害問題で何かと御高配を賜わっておりまして、ここに厚く御礼を申し上げる次第でございます。  本日は、せっかくの機会でございますので、四日市市の大かたの市民にかわりまして、あるいは患者の方々の気持ちになって公述をさせていただきたいと存じます。  御承知のように、四日市市におきましては、大気汚染、すなわち石油化学コンビナート各工場よりの排煙の中に含まれます硫黄酸化物によるぜんそく性疾患の患者の救済問題が取り上げられましたのは去る昭和三十七年ごろからでありました。このため、本市におきましてはいち早く四十年の四月には市の単独費をもって患者の救済に乗り出したわけでございます。その後四十五年に国の制度で患者の医療救済制度が取り上げられまして切りかえられたわけでございますけれども、本年七月一日現在の患者の総数は、九百七十二名でございます。このたび患者救済のための法案によりまして、患者の生活補償を含めまして救済がはかられようとしておりますことは、たいへん時宜を得たものだというふうに考えます。つきましては、以下の点について本市の要望を申し上げたいと存じます。  まず第一点でございますが、本案が一日も早く国会で可決されまして実施に移されることを強く御要望申し上げたいと存じます。なぜならば、この制度が日の目を見ますことは、患者の方々の気持ちの安定を来たすということはもとよりでございますが、全市民にとりまして大きな関心事でございます。本案については、各方面の方々がいろいろな立場からいろいろな御意見もあろうかと思いますが、まずもって本制度を一日も早くスタートさせていただくということが、この際は非常に大切なことだというふうに考えております。  次に、第二点といたしまして、現在本市におきましては患者の生活救済のため財団の設立を予定いたしております。しかし、本制度が実施をされました場合には、この財団での救済が本制度に切りかえられる、あるいは本制度に吸収をされるようにぜひ御高配を賜わりますことをお願い申し上げたいと存じます。  第三点でございますが、これは本法案の第二条関係でございます。当市におきましては、認定地域外に二十数名の患者の方々がおられます。これらの人々の医療費というものは、現在市の単独費をもって救済をいたしておるわけでございます。それで、どうしてこうなっておるかと申しますと、これらの方々はいずれも法律施行前に認定地域に居住をしておられたわけでございますが、法律の施行前に認定地域外に移住をされた方々でございまして、現在でも依然としてぜんそく性疾患に苦しんでおられる方々でございます。したがって、これらの認定地域外に居住をしております人々につきましても、ぜひその救済をお取り上げくださるようにお願いを申し上げたいと存じます。  第四点でございますが、これは本案の第三条関係でございます。いろいろな補償が掲げられておりますが、本案には慰謝料的なものが全く考えられておりません。何らかの形で、これをぜひお取り上げくださるようにお願いをしたいと存じます。  第五点でございますが、これは本案の第四十六条関係についてでございます。患者救済のためのいろいろな福祉事業を公共的にやりました場合に、従来、国庫補助の基準というものと、実際にそれをやります場合の経費というものに大きく差がございます。それからもう一つ。この施設を運用するための経費、これらにつきましてもぜひ全額を見ていただくようにお願いをいたしたいと存じます。  現在四日市におきましては、公害防止五カ年計画を総事業費約二百五十四億ということで公共事業を行なっておりまして、四十六年度から実施中でございますが、四十八年度一ぱいで約百十六億の公共事業を実施いたしております。その費用負担を見てみますと、このうち国庫補助が二四・二%で、額にいたしまして約二十八億でございます。一般の市費負担というのは、一般市費あるいは市の起債が六七・二%の七十八億というような多額になっておりますので、公害防止事業の実施さえ財政面からしてたいへん苦しい状態にあるということであります。このような点からこの問題を強くお願いいたしますと同時に、この際、公害のあります自治体の財源確保についても特段の御高配を賜わりたいと存じます。  現在四日市においては原重油関税が百二、三十億あろうかと思いますが、その中の一〇%でもこの四日市のほうに還元をしていただきますと、公害防止の事業の実施はもとより、四十六条にありますこの福祉施設の運用等についてもかなり楽になろうかというふうに考えます。あるいは現在電気ガス税の減免ということが行なわれておりますが、こういった問題を減免をなくしていただくというようなことであるとかあるいは法人事業税割りの配分というものが各社の従業員数によって割り当てられておりますが、こういった面についても工場所在地にもっと多く配分をしていただくよう御配慮賜わりますようにお願いを申し上げたいと存じます。  最後に、魚の水銀汚染ということが、最近大きく取り上げられました。これは前の公述人方々もおっしゃっておられましたが、このため漁業者やあるいは魚の小売り商等がたいへんな打撃をこうむっておりまして、これらの方々の死活の問題にまでなっておるわけでございます。このような問題もぜひお取り上げいただけますればたいへんありがたいというふうに考えております。  以上、たいへん簡単に早口でおしゃべりを申し上げましたが、私の公述を終わらしていただきます。  どうもありがとうございました。(拍手)
  10. 佐野憲治

    佐野委員長 どうもありがとうございました。  次に、後藤公述人お願いいたします。
  11. 後藤清忠

    後藤公述人 私はただいま御紹介いただきました大阪の後藤でございます。大体大阪の事情を中心に皆さんにお話しいたしたいと思います。  現在の日本国民ほど気の毒なものはないと私は思っておるのです。企業優先と生産第一主義の政策の弊害がここに続出して、環境汚染は極度に達しております。  現実に大阪では、七月に入って八日の日曜を除く以外毎日、連続の光化学スモッグ警報を出しっぱなしという状態なんであります。その上に建築騒音に交通騒音、工場の騒音、空から飛行騒音。大阪は飛行場がほとんど市内にあるような状態で、非常な公害でみな悩んでおるのでございます。騒音というのも結局空気を通してわれわれを苦しめておるのでございますから、結局これも空気汚染の一種だと私は思っております。  カドミウムにクロム、そのようなメッキ工場は大阪には非常に多いのでございます。そこに六価クロム、カドミ、いまのシアンソーダ、メッキに使う原料としてはシアンソーダにシアンカリ、それから六価クロム、無水クロム酸ですね、これらをどんどんたれ流しておるために、水がまっ黒になっておる。そして一匹の魚ももちろんおりませんし、中性洗剤で川は汚染されておるから、どこの川もあぶくを一ぱい吹いておるわけです。  その上にまたわれわれが常食にしておる米が、作付の田地の付近に工場が続出して進出してきておりますので、これらの工場からはやはり汚染が出る。川沿いの鉱業所からもマイニングポリューション、これでもって排水汚濁。このためにカドミに鉛、水銀、銅、PCBその他で汚染されて、われわれはいつ何どき腰が曲がってしまうかわからぬ。全く風土ポリューションだと私は思っております。  それから水俣湾はもちろん御承知のとおり、有明の海、徳山、水島、明石沖、われわれが大阪での食料資源に多く使っておる魚が、水銀PCB汚染され、先ほども申されたとおり非常に漁民がお困りのみならず、われわれ市民のほうでも新聞やラジオでこういうような報道をどんどんしますもんですから、子供ら一切魚を食べません。そうすると生活費が三倍近くにも上がってくるわけです。物価高に生活費がますます上がるというのが現状であります。  結局、空気と水と食物、これはみな公害にやられているのですから、当然公害病というものも大阪には多いはずでございます。  そこで公害病の認定を受けまして、お医者さんや病院に行きますと、日本ではこのように薬をどんどんと配給しておるので、お医者さんもこの席においでになりますが、そのお方はそんなことはなさらないとは思うんですけれども、現実に日本の大阪での状態では、医療公害汚染というもの、これがまたたいへんなんでございます。いわゆるメディカルポリューション、これで非常に苦しんでおるわけでございます。結局、外国にない公害までが大阪におる、こういうわけです。その原因は、もちろん公害病の認定患者になって医者にかかりますと、とてつもないぎょうさんな薬を渡しておるのです。結局これは医療制度に大きな欠陥があるのじゃないかと私は思っております。  現実に大阪の西淀川区で、わずか五歳の女の子が、ばい煙と空気汚染で気管支をやられ、小児ぜんそくにかかって公害病認定を受ける。ここでもって付近の私立病院に行ったそうです。そうしたら、そこでは何とおとなの五倍以上という薬をどんどん投与しておる。まるきり飲み切れないのです。みな残っておる。そういうことが大阪朝日新聞の天声人語欄というところに出ておりましたので、国民層はそれを見てびっくりしたわけです。こんな大きな社会問題になってきた医療公害、つまり公害を治療してくれるお医者さんと病院が今度は医療公害をまき散らす、こういうことでたいへんなショックなんでございます。結局それは必要とした薬代だとかまた医療代をば保険基金のほうが平気で払っているわけです。だから何ぼ薬代ぎょうさん持っていっても払うというのだったら、医療公害汚染は結局政府、厚生省がつくっていらっしゃるのじゃないか、私はこういうふうに考えておるのでございます。結局だからこれはどないにしたら解決がつくか、私もいろいろ考えて、結局医療給付をば医薬分業制にしてしまって、薬は処方せんを出してもらって、薬局から処方せんをチェックをしてもらって調剤した薬をもらう、こういうふうに改革せねば解決しないのじゃないか、私はそう思っておる。現在では実際にようきく薬はお薬屋行ったかてちょっともないのです。だんだんそんなようきく薬は姿がなくなってしまって、結局あまり必要でない薬はどんどんとふえてきておる。結局安うてようきく薬がなくなって、きつうて副作用の多いような薬、こんなのがどんどんふえてくるのです。私らも若い時分からじんましんになったら、じきにアルシリンという薬を飲んでおるのです。これはすぐきくのです。ところが、このごろ行ったって、そんなもんは一つもないのです。何やらいろいろなアレルギーの薬をぎょうさんくれますが、ちっともきかへんのです。よけいかゆくなるわけです。こんなことをしておったんじゃ全然問題にならぬ、医療公害が起こってくると私は思っています。結局それやからドラッグ ポリューショニングで、国民がみなアレルギーになっていく。結局従来全く何にも異常のなかった薬でも、飲んだらすぐアレルギーが起こる、こういうことは、結局私は薬の飲み過ぎやと思います。結局こんなふうに国民をみんなかいかい病にして、いわゆるアレルギーになったら、今度はそのアレルギーをなおす薬をまたどんどんつくっているのです。それで薬は何やらコーチゾン軟こうやらで一ぱいあります。一ぱい薬局でもお医者さんでもくれるわけです。ところがそんなんはみんな高い薬なんですわ。ちょっと薬局で買いましてもじきに八百円、千円ととるわけです。そんなんせぬでも、アルシリン飲んだらぱっとなおるので、こんなのはわずか、安い薬なんです。そんなのは薬局さんでもお医者さんでも全然あらしませんねん。そんなんで、これは結局薬屋の製造メーカーがもうけている、そうとしか思われぬのです。いい薬はみんななくなってしまう。それからかいかいになる薬ばっかりくれる。こんなむちゃくちゃなことをさしておったんでは、国民は医療公害——今日の問題は水質やとか空気やとか、そういうような問題の公害に視点、目標が置かれているわけですけれども、現実にはそういうような薬で、また医療でもって公害をわれわれは受けている、こういうふうな現状でありますので、結局日本は外国よりは公害一つ多いということです。そういうことになります。外国では医薬分業制がきちっと行なわれているから、必要以上の薬は全然医者が出さない。薬屋も売りつけない、こういうような制度になっていますから、そんな余分な公害を受けるということはないはずなんです。だから日本では一つ公害が多いと私は思っています。結局は、一番欠点は私はいわゆる保険基金というもんがお医者さんから請求されたらそのままぱっと払っておるのじゃないか、薬代をお医者さんにあげてどんどん払っている間は、これはとてもやないけれども医薬分業というのは空論であってできないと思います。保険基金はお医者さんが薬をあげはっても薬代だけはカットしてしまって、診療費だけしかあげない、こういうふうにされたら、私は医薬分業も自然にできるのじゃないかと思っているわけです。結局は公害病を治療してくださるお医者さんのほうから公害が出る、こんなことでは、とてもじゃないけどこれはどうもぐあい悪いと私はこういつも思っているわけでございます。それでわれわれ国民は何とかこの環境汚染から救っていただきたい、公害から守ってもらいたいといつも切実な念願をもっておるわけであります。そのためには今度のいまの本法案にも成立には非常に賛成しております。また期待もしておるわけであります。だから公害汚染源でとめてもらいたい、これが私らの念願であります。結局公害物質回収ということが一番じゃないかと私は思うのです。早い話が関電が大阪でも非常にもめているわけです、関電が発電所をつくると言うたらもう公害物質が出るから。これは電気がどんどん足らないわ、片っ方は電気は供給せんならぬ、だからもう重油をたかなんだらできない、じゃ公害物質が出るからやめてくれ、これで争われているのはもう皆さんも御存じやと思うのです。結局こんな場合には回収装置というものを研究して、それをつけてもらって公害物質を回収したら一番効率的やと思います。結局、私らもちょっと化学をやっておりますので、煙道排気というて煙どんどん出してるけど、あれをようしさいに考えてみたら、成分というものは炭酸ガスである、いや亜硫酸ガスである、あるいは一酸化炭素である、それから結局は硫黄の二酸化硫黄、いわゆる亜硫酸ガスである、それから窒素、これはたくさん含んでいます、もう酸素供給して取ってしもうたあとやから。だから窒素からうまく回収したらアンモニアやらいろんな窒素化合物もできるということも思われます。だからそういうようなものを根本で回収していただいたらこれがまた国益に大きになるんやと私は常にそういうふうに考えておるわけなんです。で、政府はこんな公害源の無責任な放出をとめるためには、抜本的にこれを回収さすということをひとつ考えて、これは何かの法文で入れていただきたい、こう私は念願しておるわけであります。その回収方法をうまいこと発明したら奨励金をやるとか何かして公害をすべて公害源で回収する、これを私は提案したいといつも思っております。先ほどの医薬分業というものも医療公害公害源でとめる方法でございます。そういうようなことを政府のほうもまたよく考えていただき、また委員会のほうでもそういうこともひとつ念頭に入れて法案成立に努力していただきたいと私は念願しております。  結局、この法案内容をちょっと私も短時間でございましたが検討をさしていただいた結果、政府原案にはまだまだ不十分な点が多いように思われます。たとえば公害病の認定規定の場合でも、これはえらいお医者さんを前に置いて言うのはいきませんけれども、私立のお医者さんだったら実際ちょっとお金ようけ持ってきた人には有利な診断書を書いてくれるんじゃないか、そういうような実例も私は握っておるわけであります。そうするとそんなお医者さん一人だけ頼んでその診断書さえ持っていったらすぐ認定されて補償金ぱっぱっとくれる、こんな簡単なことであったら必ずにせものがあらわれると私は思います。少なくとも私は公立病院三カ所くらい指定してもらって、三カ所その診断書を集めてそれを公害病認定委員会が持ち寄って、ああこれは確かに違いない、こうしていよいよ公害認定委員会のほうで認定する、こういうような規定を盛り込んでいただきたいと思っております。それから、えらいお医者さんにまことに失礼なんでございますけれども、いわゆるちょっと心やすい患者さんとかあるいは年末やとかそんなときにちょっとよけい持ってきて要領よくする患者さんには有利な診断書を書いてくださる、そういうような場合にこれを見てみたところが何の罰則もないようなんです。だからやはりそういうような病人が偽って補償金をもらった場合、いまもよく見てきたんですけれども補償金さえ返したらあとは何も罪ないように思われるのです、もっと詳しく調べぬとそれはわかりませんけれども。そういうような甘い規定がどうも多いようで、やはりそんな間違った診断書を書いた場合にはお医者さんも責任を持ってもらう。それから、公害のにせ患者には金だけ返したら済んでしまうというようなことじゃなくて、やはりそれは罰金とかあるいは体刑処分にされるというぐらいな強い規制方式が要るんじゃないかと私は思っております。だから結局公害病に便乗してにせの診断書で国や企業から補償金をとるあるいは療養給付を受けるというようなことを防止するためには、そういうような条文の挿入が必要ではないかと思っております。現実にサリドマイドあるいは森永砒素ミルク事件、キノホルム事件等ではどうもこれはくさいな——腰か曲がったから、いやこれはおれはキノホルムでこないなったというて、にせの患者がどうも裁判の中へ入り込んでいるんじゃないかというような事実もちょっちょっと聞き及びますし、どうもそれはあるように思われるのです。そんなことのないようにひとつ認定をきびしくしていただきたい。よくキノホルムを飲んでスモン病になったというて、えらい因果関係があるがごとくに言っておる人も間々あるようですが、実際私も腸結核になりまして、それで阪大病院で処方せんもらって、これを薬局で調合してもらって約二十五年にわたってキノホルムというものは飲んでおるわけです。でも何も、腰もしゃあしゃあして、私もうことし七十一歳になりますけれども、若者同然に腰はぴんとしておるわけです。だからキノホルムはスモンになるというのはどうも疑問を持っておるわけです。もしそれが因果関係ありとすれば、これはおそらく分量をむちゃくちゃに飲まれたんじゃないか、またむちゃくちゃにお薬をお医者さんからもらって飲まはったんじゃないか、こういうように私は思っておるわけです。それやったらいよいよ処方せんを出してもらって、やはり私がやってきたように阪大でもって処方せんを書いてもらう、これを二十五年間にわたって飲めば何ともない、分量をちゃんと指定してありますわ、〇・五グラムと。そうしたら結局〇・五グラムのキノホルムは無害であるということは私自身生き証人となります。そやから厚生省とかそういうところで有利な証言がしてほしいというようなことがあったら、私はいつでも証人になろうと思っています。現実にしゃんしゃんして何にもキノホルムのスモンのスもおまへんわ。そんなことから見たらこれは確かに薬をむちゃくちゃに飲まはった、もし因果関係ありとすればですよ、と私は思っているわけなんです。そやから結局キノホルムを輸入してこんなに売ったからおまえ損害賠償出せ、あるいは何や厚生省が許可したから厚生省損害賠償を出せ、これはどうも理に落ちぬ。だから結局処方せんも書かぬと医者がどんどん薬くれて、飲む分量もちょっとも指定しないで何ぼ飲んだらええやらわからんへん、むちゃくちゃに飲んで病気になったんじゃないか。そうかほかの薬——あれは一色や二色じゃないんですからね、何十種と、もう七種ぐらいくれるお医者さんはざらや言っていますわ。私も現実に薬をいまここに持ってきておりますが、これだけの薬をどんどんみなこれ拾てているわけです。それでこれ名称が書いてあったらまだ薬局さんへ持っていって尋ねられますのやけど、何にもあらへんのです。ほんだらこれ何の薬に使うてええか知れない、ほうらなしようない。こんなもったいないことしていて、これ健康保険赤字や赤字や。そら赤字やなかったらおかしいと思うんです。これちょっと行ったらこんなぎょうさん薬くれます。それに表示がないんですよ。そうしたら薬局さんへ持っていったって、これ、わし何や知らぬ、こんな薬見たことないわ、何の薬やろな、書いてあるけどちょっとわからぬわ。こんなやったら結局はほうらななりません、こんなぎょうさん。これはばく大なる国家の損害と思います。だからこれは医療公害という問題であるだけでなくて結局根本からなおす。つまり抜本改革というものが絶対必要だと私は思っております。  まあ今日の結論といたしましては法案成立には賛成であります。だが付帯条件としてはこの公害認定の場合の認定規定は強化する。少なくとも国公立病院の三カ所ぐらいは診断書をもらって、それを公害病認定委員会というものが認定して、その結果に基づいて公害病補償の委員会がそれと査定をしまして、その両方を府県知事がかみ合わせて補償額を決定する、こういうような制度が必要じゃないかと私は思っております。それで、もしその府県知事がその査定した場合に不服である場合は環境庁長官に上申——これは上申できないように書いてあったと思いますが、やはりそのくらいな、民主主義でございますよってに、国民の利益をはかっていただいて、環境庁長官に上申して、それはある程度民意を尊重していただきたい、こう私は思っております。  それで結局、もう一つその問題としては、公害による健康被害補償協会という、これはいわゆる法人格を持って、それが政府の代行をするような方法があるじゃないかと思うのです。ところが、これは強制力が乏しいから、中にはそんな賦課金払えへぬというのができて、これは問題がごちゃごちゃしちゃって、しょせん民法の問題だったらとても片づかない。だから補償協会というような制度ではどうも甘っちょろい。おそらくこれは公害による健康被害補償基金、これは政府が、総理府が直接か、大蔵省がやるのか、それはこれから委員方々に検討していただくとして、結局その公害補償基金というのは、国家が直営でやらねばいかぬ。そしてそれが、まあいわゆる税金みたいに強制的に配賦を持っていって、強制的に国税徴収のようなぐあいに取り上げるというようにやってもらいたいと思います。そんなぐあいで、改正点が結局二本立てにしたい、こういうふうに私は思っているわけであります。  時間も参りましたのでこの辺で終わらしていただいて、大体これで意を尽くしたと思いますので、また質問がありましたら後ほどお答えいたしたいと思います。どうもいろいろありがとうございました。(拍手)
  12. 佐野憲治

    佐野委員長 どうもありがとうございました。  次に、河野公述人お願いいたします。
  13. 河野和夫

    河野公述人 私は川崎で一開業医としまして市民の医療を担当しております。同時に、昭和四十四年四月から本年三月まで、川崎市医師会の理事として公害問題を専門に担当し、同時に川崎市公害被害者認定審査委員を兼ね、昭和四十七年十月から川崎市公害監視会議委員として現在に至っております。また、現在川崎市の医師会の公害対策委員長をつとめております。以上の経験を通じまして得ました知識に基づいて意見を述べさしていただきます。  公害病患者の救済に関しましては、公害に係る健康被害救済に関する特別措置法が昭和四十四年十二月に制定され、四十五年二月一日より実施されて今日に至っておりますが、給付の内容、範囲、方法等において、かなり限定され、不十分な点が数多くありまして、患者、医療担当者、認定審査委員及び地方自治体の行政担当者等、それぞれの立場から要望や陳情が行なわれてまいりました。今回提案されました本法案では、これらの要望がかなりの程度取り入れられて成案を見ましたことは、格段の前進と受け取り、賛成の立場からさらに要望及び意見を述べさしていただきます。  問題点として、六項目について述べます。その第一は指定地域の範囲について、第二は居住歴の要件について、第三は指定疾病及び関連する疾病の範囲について、第四は補償給付内容及び補償給付費の額について、第五は療養の給付及び診療報酬について、第六は公害医療機関という名称についてであります。以上六項目について、具体的な要望事項及び理由について述べさしていただきます。  第一の指定地域の範囲については、現行救済法に基づく指定地域の付近一帯は相当広範囲にわたり大気汚染が及んでいる現状にありますので、新制度の地域指定にあたっては広域的に検討していただきたいと思います。特に現在各地方自治体が独自に患者救済を実施している地域が各地にあり、川崎市では幸区を指定して、特別措置法に準じた救済を実施しております。新制度ではこれらの地域を漏れなく国の指定地域に包含していただきたいと思います。川崎市医師会が昭和四十七年、昨年の十月に行ないました気管支ぜんそくの受診患者の調査では、人口千人対率で全市にわたって全国平均をかなり上回る結果が出ております。これは亜硫酸ガスのみならず自動車排気ガスの加わった複合汚染の影響と解されます。大気汚染度については亜硫酸ガス濃度だけではなく窒素酸化物等も参考とし、また広範囲に有症者率を調査した上で地域を指定していただきたいと思います。  第二の居住歴の要件につきましては、現行の特別措置法では、三歳未満では六カ月以上、三歳以上は三年以上となっておりますが、抵抗力の弱い六歳未満の幼児については居住歴が短期間でも対象とされることを望みます。これは実際に川崎であった例ですが、きょうだい二人が認定申請しまして、症状の軽い弟のほうが三歳未満であったために認定され、非常に重症の兄のほうが三歳以上であったために十カ月しか川崎に来てから居住歴がないということで認定されなかったということで、主治医がたいへん矛盾を強く訴えておったという例がございます。また気管支ぜんそくでは、指定地域に居住してから発病した患者については同様に短期間の居住歴でも対象とされることを望みます。  第三の指定疾病については二つの問題があります。  第一は、現行救済法では閉塞性呼吸器疾患四病及びその合併症を対象としておりますが、どこまでを合併症とみなすかが実際上困難なケースがかなりあります。また認定患者は全身的に抵抗力が弱まっているので、各種の合併症を伴いやすいために、合併症と限ることなく、原爆被災者の医療と同様に併存症まで含めていただきたいと思います。  第二は、閉塞性肺疾患以外でも慢性咽喉頭炎のごとく大気汚染関連の深い耳鼻咽喉科疾患、眼科疾患についても疫学的に究明し、大気汚染との関連が認められる場合には指定疾病に加えるようにしていただきたいと思います。また光化学スモッグ被害に対しても対象に加えていただきたいと思います。  第四の補償給付内容及び補償給付費の額については、すでに自治体で実施している内容及び額を十分調査して、これを下回ることがないようにしていただきたいと思います。本法案では遺族補償費及び葬祭料については指定疾病に起因する死亡に限って支給することになっていますけれども、川崎市では他の疾病による死亡についても死亡見舞金を支給しております。  第五の療養の給付及び診療報酬については、まず看護料の問題があります。基準看護の指定をされていない医療機関では派出看護婦をつけた場合健康保険では現金給付がなされておりますが、実際に支払われる料金と健康保険で定められた金額との間にかなり差がありまして、これが患者にかなりの負担をしいております。また基準看護の医療機関でも重症者のために付添婦をつける場合があり、この場合は支給が受けられません。全く患者の負担となっており、大きな経済的な圧迫となっております。これらの看護料については、実際に必要とした場合は全額を支給していただきたいと思います。診療報酬につきましては現在健康保険の低診療報酬のために病院の病棟閉鎖が起こるなど、医療破壊が問題となっておりますので、本法による診療報酬では、医療担当者が安んじて患者の診療に従事できるよう適正な額を定めていただきたいと思います。たとえば気管支ぜんそくでは夜間時間外に発作を起こすことが多いのですが、健康保険では時間外の加算は診察料にたった三十円が増されるのみで、処置等には全く加算されません。また空気清浄室の入院料についても当然採算のとれる額にすべきであると思います。  第六の公害医療機関という名称については、医療担当者として全くいただけない名称でございます。先ほど加藤公述人も申しておりましたが、最近サリドマイドやスモン等の薬害や医療過誤に対しまして医療公害ということばが一部で使われております。また一部の医学者や社会保障学者が、いまやすべての医療担当者は加害者立場に立っていることを自覚すべきだと呼んでおります。公害医療機関という名称は公害企業という呼び名と似ていまして、医療担当者としては不愉快なる名称でございます。公害病取り扱い医療機関のごとき名称に変えていただきたいと思います。  最後に、これは環境庁だけでなく厚生省の所管にわたるかもしれませんが、公害病患者を診療するのに必要で十分な医療施設の拡充、医師、看護婦をはじめとする医療従事者の養成と確保充足をお願いします。たとえば気管支ぜんそくの発作重積状態のような重症患者をいつでも収容でき、万全の処置のできるICUを備えた救急病室、空気清浄病棟等を含む公害専門病院、公害病のための検査センター、小児ぜんそく患者施設、リハビリテーション施設、転地療養のための保養施設などの新設拡充とともに、これに従事する医療従事者の確保に力を注いでいただきたいと思います。老人医療費無料化によって全国の病院で病床が病人によって占居され、他の患者の入院に影響が及んでいる先例がございます。公害病患者の救済及び診療には、医療費を無料にするだけではなく、施設の拡充と同時に、特に医療従事者の確保がどうしても必要でございます。  最後に、わかりきったことでございますが、公害による健康被害者の救済や補償はあくまでも公害のしりぬぐいでございます。公害の発生を絶滅することが根本的な対策であります。不十分な補償を行なって、公害を防止するよりも低額な負担公害を発生している企業を免罪することがないように望んで公述を終わります。(拍手)
  14. 佐野憲治

    佐野委員長 どうもありがとうございました。  次いで、阪野公述人お願いいたします。
  15. 阪野昇

    阪野公述人 私、楠町助役阪野でございます。本日、町長が出ましてお願いする筋でございましたが、あいにくと病気入院中でございますので、かわりましてお願いに上がったわけでございます。私の町の立場から二点ばかりお願い申し上げるということでお聞き取りをいただきたいと思います。  その一つは、公害ぜんそく患者の救済でございます。四日市のすぐそばに面しておりまして、ただいま大体の地勢も申し上げたいと思いますが、そのための医療救済がなされておりませんということ、たいへん遺憾なことでございますので、そうしたことの地域の指定のことについてお願いしたい。  それからもう一点は、先日昭和四日市石油のほうで、私のほうにタンクヤードがございますが、その油送管が亀裂を生じまして、油の噴出した事故がございました。それによって接近しております部落の集団移転をお願いしたい、こういう二点についてお願いに上がったわけでございます。  それで一応私の町の状況を申し上げたいと思いますが、北に鈴鹿川を経まして四日市市の石油コンビナートのある塩浜地区に接しております。それから磯津という四日市の町がございます。公害裁判で有名な町でございますが、その町は地続きでございまして、もう町に接近しておるわけでございます。それから南のほうが鈴鹿市に接しておりまして、東が伊勢湾でございます。伊勢湾は四日市の港湾区域内に含まれております地域でございまして、ほぼ三角形のような形をしましたデルタ地帯と申しましょうか、そういうような地勢でございまして、面積は七・九一平方キロメートルでございまして、ごく小さな面積でございます。そこに人口が一万二千百人おりまして、人口密度からいいますと非常に高い密度を持っております。  それから生産面でございますが、農業、水産業——水産業は主としてノリあるいはコウナゴという小さな魚がございますが、その加工業、こういうものでございます。あとは商工業もかなり進出しておりまして、工業につきましては東洋、東亜の二大紡績が立地されております。そのほか酒造、製薬というような工場もございます。そういうようなわりあいにバランスのとれた小さな町でございます。  そこでいまお願い申し上げております公害のぜんそく患者でございますが、このことにつきましては、いま申しましたように北西のほう一帯が石油コンビナートの巨大な工場群に囲まれておるわけでございまして、その工場から排出されます硫黄酸化物を含んだ煙が、特に冬場でございますと北西のほうの風が吹きますので、これが町全体をおおうというような状況でございます。それでその率からいきますと、一年を通じて約六二%ということが調査の結果明らかになっております。とにかく年じゅう吹いております風の三分の二くらいが北西から吹いてくる風で、いわゆる公害をもたらしてくる風でございます。そうしたことによりまして、昭和三十八年ごろからだんだんこういうような健康を害するあるいは環境に思わしくないような影響が見えかけてきたわけでございまして、呼吸器系の疾患の増加が目立ってまいったわけでございます。たいへん心配しておったところでございますので、特に昨年におきましては、非常に権威あります疫学調査を三重県立大学の附属産業医学研究所に依頼いたしまして、約半年にわたってこまかい調査、検討をお願いしたわけでございます。その中で公害患者と思われる調査をやっていただいたわけでございまして、その結果につきましてはあとで申し上げたいと思いますが、そうしたことによって百五十名の公害患者と認められるものが出たわけでございます。そのことにつきましてはいろいろ各方面にわたって調べたのでございまして、その調査もただいま申しました権威ある疫学調査の結果でございます。これは四日市公害認定患者と何ら内容について変わらないということを思っておるわけでございます。  それでこうした患者の方々被害者救済する措置、これは一刻も早く講じなければならないことでございまして、このたび出ました特別措置法の地域の認定ということにつきまして、県を通じまして三年くらい前からいろいろ国のほうにお願いしておったわけでございますが、それがいまだに実現を見ておらないということで、まあ救済ができておらないということでございます。それで、このことにつきましては、先刻も町長が環境庁長官殿にもお願いも申し上げておるようなことでございまして、国のほうでも御配慮をいただいておることだと思っておりますが、今回の新しい法案ができますにつきましては、ぜひこうしたことについての御配慮をお願い申し上げたいと思います。  前後いたしますけれども汚染の調査の状況の概要を申し上げますと、先ほど申しましたような風向によります汚染ということの結果におきまして、公害患者の調査の状況でございますけれども、第一次対象者といたしまして、住民からまずアンケートをとって、それに該当する者を第一次対象者として検診をいたしまして、さらにそのうちから精密検査を要するという者百六十六名が出ましたので、それについて検診をしたわけでございます。これは一般の住民でございまして、学童を除いておりますが、その結果、受診者が百二十一名ございまして、百八名という所見者が出たわけでございます。その所見者はいろいろ学名はありますけれども、慢性気管支炎でありますとか、気管支ぜんそくでありますとか、ぜんそく性気管支炎でありますとか、あるいは反復性の気管支炎でありますとか、いろいろ名前はつけられますが、いわゆるぜんそくでございます。それが一般で百八名、それから学童、小中学生につきましては四十二名でございまして、合計百五十名の患者と認定される者が出たわけでございます。年齢別に見ますと、一歳から五歳までが二十人、それから学童が先ほど申しました四十二人、それから六十歳未満が五十一人でそれ以上が三十七名、こういうような数字で出ております。それから職業につきましても、このうち学童の四十二名、それから無職の者が六十七名という数字が出ておりますということは、やはりこうした疾病によりまして生業につけない実情にある方が多いのではないかと思われるわけでございます。  こうしたことによりまして、何とか地域指定によります医療救済を一刻も早くやりたいということで念願しておるわけでございまして、この新しい法案によります、政令によります地域指定によります救済ということを何とか一日も早くお願い申し上げたいということでございます。  それから四日市との比較でございますが、先ほども四日市加藤助役さんのほうからもお話がございましたが、現在四日市の指定地域内では九百七十二人の患者だと言うておられますが、この地域指定内の人口約十万くらいと推定しておりますので、パーセントにいたしますと一%弱ということになろうと思いますが、私どものほうの百五十人を人口一万二千で計算いたしますと一・二五%と、率からいっても四日市よりは高いということが立証されております。それから特に塩浜地区でございますが、これには四日市のほうで百三十九人と推定されておりますけれども、そういうようなことから考えますと、やはり磯津、塩浜地区も私どもの人口とほぼ同じくらいの人口でございますが、それからいっても患者の数が多いということをいわれております。  そうした検診の結果が出ておりまして、四日市の特に羽津とか海蔵とかいう指定地域から比べますと、汚染度も受診率も有病率もともに高く、大気汚染の影響は明らかであるということが立証されておるわけでございます。  いろいろ申し上げましたように、当町は、企業四日市市に立地しておりまして、税金などすべて四日市のほうに入る、いわゆる行政地域を越えて公害だけをもらっている、もらい公害だということをいわれて憂慮しておるわけでございますので、こうした点も先生方よろしく御配慮をいただいて、御協力をお願い申し上げたいと思います。  それから次は、二点目の四日市石油のタンクヤードの油送管の事故の問題についてお願い申し上げたいと思います。  この事故の起こりましたのは去る六月の二十九日でございまして、原油を貯蔵するタンク、昭和四十五年に国策に沿って、面積は約八万坪でございますが、当町に九基の十万キロリットル入りの原油タンクを設置しておりますけれども、このうちまず七基が昨年完成いたしまして、現在稼働しております。そこ七基のうちの一基に、原油をタンクヤードのほうに詰めておりましたところ、そのうちの油送管、これは大体外径一メートルの油送管でございますが、約八十センチにわたりまして亀裂が入って、約二十キロリットルの原油が高さ二十メートルくらい噴出をいたしまして、それが私のほうのタンクヤードに接近しております小倉新田という字、戸数は三十五戸で人口百二十人くらいの部落でございますが、そこの住民が非常に危険を感じたということでございます。一部用水池にも流出をいたしまして、相当噴出しました関係で霧状になって出たので、非常に引火の危険もあったということで、住民が恐々としたわけでございます。幸いにいたしまして事なきを得たのでございますけれども、絶対に災害が起こらないというようなことの説明をいろいろ得て立地いたしましたこのタンクヤードの中で、一年足らずの間にこうした事故が起こったということで非常に遺憾に思っておるわけでございます。  この原因につきましてはいろいろ調査もされておりますが、聞きますのには、原油のタンクに所定の量に達しましたので、四日市の三田というところにございますタンクに切りかえようと思って、遠隔操置によります油送管の配管のバルブを操作した際に、何かウォーターハンマーとかいう現象を起こして、異常な圧力が生じてその配管に亀裂を生じた、こういうようなことをいわれておりますけれども、いずれにいたしましても、こうしたようなことがあったということにつきましてたいへん遺憾に思われまして、当町といたしましてはさっそく会社のほうにも抗議し、また県のほうにも報告いたしまして、何とか今後の対策ということをお願いしておるわけでございます。  地域住民といたしましては、企業の言うことを信頼できないというようなこと、今後再びこういうようなことがあっては生命財産も非常に危険にさらされるということで、この際何とか集団の移転をしたい、都市改造ということでございますが、町といたしましても、何とか国の力によってこうしたことが実現できれば、住民の安心感あるいは企業の今後いろいろやっていただきます上の事柄について、まずそうしたことの心配もある程度除去されるのではないか、こういうように思っておるわけでございますが、集団移転、都市改造となりますと、御承知のばく大な金額が要りますので、こうしたことにつきましては、抜本的な国の御援助が必要だと思っております。何とぞ今後この法案の中にもそうしたようなことが加えていただければ非常に幸いだと思っておるのでございますが、国のほうの御援助をお願い申し上げたいということでございます。とにかく今度の法案が一日も早く施行されまして、当町の公害患者の救済につきましても何とか適用さしていただけるようなことにお願いを申し上げたいということでございます。  あちこち申し上げまして恐縮でございましたが、以上二点についてよろしくお願い申し上げたいと思います。終わらしていただきます。(拍手)
  16. 佐野憲治

    佐野委員長 どうもありがとうございました。  次いで島田公述人お願いいたします。
  17. 島田実

    島田公述人 まず初めに、私は尼崎の公害患者として本日の公聴会にお招きいただき、私たち公害患者の苦しみの実情や要望などを述べさせていただく機会を設けてくださった委員長はじめ、諸先生方のあたたかい御配慮に心から感謝を申し上げます。  私がこの公聴会出席するに際し、ぜひこれだけは言ってほしいと切実な願いと叫びが寄せられました。時間の都合がございますので簡潔に要約して申し上げたいと思います。  私たち公害患者には病身にむち打ち、もうこれ以上患者を出すまいと血の出るような努力をしてまいりましたが、尼崎の公害病認定患者は七月十三日、ついに三千名を突破し、死者は五十四名にものぼりました。国の救済指定地域になって以来、実に、一日二人強というハイペースの激増ぶりです。そこでまず最初に私たち患者とその家族がどれほど悲惨な状態に置かれているかを二、三の例をあげて申し上げたいと思います。  まず、私の例でございますが、私は四十五年、工場で災害のため休みました。ところが、四十五年の九月に突然発作に襲われ——四十六年の一月に国の救済制度のできた間なしでございます。認定を受けました。そして、それから半年後、妻と子が一度に発作のために倒れました。一家三人が同じ晩に同じような発作のために倒れたというような現状がしばしばございました。そして、私のところの家族三人、死んでしまおうという気持ちを持ったことも再々でございましたが、公害患者の仲間の方と一緒に助け合いをして、現在ここまで細々と生活を続けてきているというような状態でございます。  二点目に、尼崎の主婦の例をあげて申し上げます。  尼崎市の南の端のほうに初島というところがございます。そこの主人がトラックの運転手であり、奥さんが認定患者でございます。子供さんが三人あって、下の子供がまだ小さいので、医者が入院をすすめても入院ができないような状態なのです。それで、主人がわれわれ仲間のところへ来て、どうしても入院をさしたいのだと涙ながらに訴えます。私たちもその奥さんを説得に行きます。ところが奥さんは子供が三人あって、その子供のことが気になって入院できないと涙ながらに語っておりました。  また、もう一つは、お年寄りの患者さんの例でございます。そこの御主人が認定患者で、入院をなさって、奥さまが働いておられます。そこのおばあちゃんが仏さんに線香をあげるためマッチをすったわけです。そのマッチの火がたもとに入ったのでございます。そしてその老姿はなくなりました。そしてその主人は、私は公害のために入院した。その結果として老婆を殺してしまったというような形のものでございます。  まだこういうような問題は尼崎にはたくさんございます。一つ二つでございません。私の知っている範囲でも十も二十もございます。どうか、ここで尼崎の患者さんを代表してお願いしたいのは、われわれは裁かれているんじゃないのです。われわれはだれのためにこんな苦しみを得なければならぬのか、公害を発生している企業が裁かれるのだったらわかりますが、われわれは、指定地域内というきたない空気に閉じ込められまして、そこから出ていったら三年で治療を打ち切るというようなきつい制度がついております。これはわれわれにきれいなところで療養をできないような形になっておるものでございます。どうかこの祭、われわれに課せられたこの指定地域というおりを取り除いていただきたいわけでございます。それと最近でございますが、七月に三千名を突破した記念として、関西電力の尼崎第一、第二発電所がフル操業を私たち患者に押しつけてきました。どうかこの点を、代議士先生のお力添えを得まして、関西電力にわかるようにひとつ御指導願いたいと思います。  以上、申し上げた実態ばほんの一例であって、三千人にのぼる患者ほとんどが、言語に絶する病苦と戦い、まさにイバラの生活をしいられているという現状でございます。安心して治療に専念し、回復できる救済制度をつくり、公害発生源をなくしてほしい、これは私たち患者と家族に共通した血の出るような願いでございます。  このたび、私たち公害患者とその家族救済のために、公害健康被害補償法案が国会に提出されたことに対し、天からの救いとして心から喜んでおります。同時に、この法律に私たち被害者の切な願いをぜひとも盛り込んでいただきたく、貴重な時間をおかりして意見を申し上げたいと思います。  第一は、原状回復原則を大前提にして、これと並行またはこれを補完するものとし、金銭賠償制度をつくってほしいということです。私たちの願いは、きれいな空を返してほしい、からだをもとにして返せ、破壊された家庭生活をもとにしてほしいということでございます。私たちは、被害者の血の出るような叫びというべきこの願いは、決して金銭で償い切れるものではございません。まず最初にこのことを申し上げておきたいと思います。  第二は、発生源責任を明確にし、原因者負担主義を貰いてほしいということです。私たちの苦しみの原因は、汚染物質を排出している企業であり、その原因者は尼崎市が発表しているデータによりましてもすでに明らかになっています。このように明らかになった原因者賠償責任をきびしく追及していただき、公害被害者である国民の税金の一部を、公費負担ということで肩がわりすることのないようにしていただきたいと思います。  第三は、公害認定指定地域外の公害患者を、この際ぜひとも救済していただきたいということです。尼崎市の今年五月の東、西、南、北及び中部の五つの測定点でのSO2の平均値が、ことし五月環境庁が手直しした環境基準〇・〇二五PPMを大きく上回っており、認定患者と同じ苦しみにあえぎながら、救済制度の谷間で病苦と戦っている人が、医師の証言によって四倍とも五倍ともいわれています。指定地域外の患者さんたちは、空には境界線なんかないのに、なぜ地上でこんな線引きがされたのか、尼崎の空には、よごれた空気ときれいな空気を分けるカーテンがあるのか、怒りに声をふるわせながら涙ながらに訴えています。この際、指定地域を尼崎全域に広げていただき、認定されないで苦しんでいる患者に、ぜひともあたたかい救いの手を差し延べてくださいますようによろしくお願いいたします。  第四に、救済の対象となる疾病を、気管支ぜんそくなど四つの病気に限定しないで、目、鼻、のど疾患にも適用していただきたいということです。汚染物質が肺に達する経路からして、鼻やのどの疾患を救済対象にすること、及び汚染された大気と直接触れる目の疾患を救済の対象にすべきことが当然の理であろうと確信します。  第五は、具体的な救済についてでございます。私たち患者はぜんそくの発作で倒れたり家族もろとも寝込んでしまったりするため、世間並みのところにつとめていることはできず、またたとえつとめたとしても、会社から退職をほのめかざれたり首になることをおそれて患者であることをひた隠しにして病身にむちうつ毎日でございます。そのため生活は破綻の一途をたどっているのでございます。私たち、安心して治療に専心し、回復できる補償制度の実現を願ってやみません。同時に、十分な生活補償と物価スライド制を必ず取り入れてくださることをぜひともお願い申し上げます。  第六に、児童補償手当についてですが、児童の場合、学力が低下し、教育を受ける機会が奪われ、体力の劣弱化、発育不全、子供らしく遊ぶことができないなど、人間としての基本的人権を侵す深刻な被害を受けているのが現実であり、現に私の住んでいる近所でも発作をおそれて自宅から二百メートルをこえる範囲を出ることがほとんどないという痛ましい子供が何人もいます。認定患者の多くが十四歳以下の子供で占められており、この子供の救済なくして公害賠償法の名に値しないということです。将来の日本を背負って立つ児童に対する救済はだれよりも増して手厚い救済が必要であり、このことを切に要望しておきたいと思います。  第七に、遺族補償についてであります。各自治体で国の制度が確立するまで補完的な形で自主的に実施されている救済制度を見てみますと、尼崎で十五万円、川崎が五十万から百万、四日市市が四百五十万から一千万と、その格差が大きく、国の制度の実施段階では少なくとも四日市の基準を下回るものであってはならないと思います。この点、十分御配慮を願いたいと思います。  最後に、私たち被害者の言語に絶する精神的苦痛に対し、他の給付水準に慰謝料の要素を織り込むということではなしに、独立した条項を起こし、幾ばくかの御配慮をいただきたいと、いうことです。今日の公害裁判を見ても明らかなように、慰謝料が被害者救済の中で最も大きなウエートを占めており、これなくして実質的な救済にはほど遠いと言わざるを得ません。  以上申し述べたほかに、ただいま議題になっている法案について、まだまだたくさん申し述べたいことがございますけれども、時間の都合もございますので、これぐらいにとどめたいと思います。  最後に、このような発言の機会を与えてくださったことに対し、尼崎の公害患者を代表して深く感謝を申し上げるとともに、諸先生方のあたたかい御援助をお願いして私のつたない発言を終わりたいと思います。  ほんとうにありがとうございました。(拍手)
  18. 佐野憲治

    佐野委員長 どうもありがとうございました。  次いで、能松公述人お願いいたします。
  19. 能松義次

    能松公述人 私は、ただいま御紹介にあずかりました富山県高岡市吉久地区の住民でございますが、単に吉久地区というのは大体吉久町の七町内と富岡町と能町北部地区を名づけて一応吉久地区と称しておるのでございます。ここは六平方キロメートルありまして、この中には世帯数約六百戸、人口二千七百人住居しておりますが、この中に重金属工業であるとかあるいは合成化学工場あるいは製紙工場などが操業しておるのであります。この工場群の中から排出しておるのでありますが、御承知のとおり富山県は、冬季渇水期が十一月から翌年の三月一ぱいまでで、その間電気が少ないために、三十四、五年まではこの重化学工業会社等は冬季はほとんど操業していなかったのでございますが、その後必要に応じて年じゅう操業するようになって、この付近の住民はほとんど煙の中に住居しておるような状態に立ち至ったのでございます。  住民の中にはぜんそく患者が非常にたくさん出てきまして、もう夜も寝られないというような患者がたくさん出たために、高岡市長に向かってこの状態をどうするかということを声を大にして強く訴えたのでございます。ところが市長もこの状態はまことにほっておけないというようなことで、全住民の検診を行なったのでございます。それに参加した人員は約六百五十人でありましたが、設備のないところで医者が検診しても確実にこれが公害病であると言うことはできないというようなことで、その中から重病な患者六十五人を選び出して、それをまた再検査したのであります。ところがその中でもほとんど病が三期になったような者のみ二十八名、これを公害病患者として、高岡市がこれを無料で検診いたしましょうということに決定したのであります。なお乳幼児に対しましては、土地の小児科の医師は、現在の医学ではどうもこれらの子供を公害病患者と認定するような学問に進んでいないというようなことで放任されておるのでございます。  その後、健康保険に入っておる者であるとかいろいろな者は、このようにしてもらったところで何も効力はないからわれわれは健康保険でやろうというようなことで来ない者も続出してくるというような結果になりまして、しかもそれらの連中はほとんど経済力のない者が多いために、半日の日を費して公共の市民病院で治療を受けるということが困難なために地元の開業医のほうへ行って治療を受けておる。そうするとほとんど注射でもってこれを行なっておるために、ついにその患者が終生なおらない患者に立ち至ってずいぶんたくさんの人が死んでしまったというような状態です。初めからそういうところへ行かずにぜひ市民病院へ行ってよく治療しなさいということを私が勧告したのでございますけれども、なかなか経済的なものに応ずることができずしてこれに応じないので、現在は私が第一の患者として昭和四十三年の五月から今日に至るまで高岡市民病院でただ一人終始治療を受けておりますところが、ごらんのとおりで七〇%まで回復してきておるのであります。そのような状態であるから、地方の医者で注射のみしておってはだめだから、どうあっても行きなさいということを今日まで声を大にしてやっております。本年の一月一日から満七十歳以上の老人は公費負担になったために、全部の連中が続々と、私もぜんそくである、私もぜんそくであると言って治療を受けに来る者が続出したというような状態でございますが、一時吉久地区は公害病患者が非常に少ないからこの認定から除外されたということを聞きまして、われわれはまことにがっかりしておるのであります。どうか、このようなきたない土地におる人間もやはり住民でございますから、これらを公害病地区として認定してもらいたいのでありまして、そういうことをお願いに上がったのでございます。  なおこの土地には、付近にはいろいろな公聴会などがございまして、それに対して私のほうから再三にわたって陳情いたしましたところが、やはり知事やその他の連中は、ほとんど一考に付せなかったのでありまするが、当時の通産省の参事官は、まことにお気の毒であるから、この土地はやはりまことにひどい土地だということを私が目撃したから、これからは必ず、本省へ帰ってから操業に対する改善命令をするということで、非常にきびしい、ありがたいおことばをいただいて、その後その地方の重工業会社は、バックフィルター等をつけましてだいぶよくなったのでありまするが、なお反面には、降下ばいじんは目には見えませんが、亜硫酸などがまた多くなったというような統計が出ておるのでございまして、ぜひこの土地には、やはり少数といえどもこれから必ず、細密に調べたなら患者がたくさんおるという認識のもとに、この地区を現在の法律に即した公害地区として認定してもらいたいので、本日お願いに上がったような次第であります。  なお、この土地のなには、この降下ばいじんのために、粘土でつくったかわらが腐食して水の流れが悪くなるために、雨漏りがして、三年に一度ぐらいは、かわらのふきかえをしなければならないという状態になっておりますので、これらについては直接、付近の重工業会社に向かってがんこな交渉をいたしましたところが、かわらのふきかえに対しましては七〇%補償しましょうという契約をとっております。しかしこれらの下の屋根板であるとかあるいはたるきなどの腐朽に対してはこれは補償するわけにいかない。かわらのふきかえのみでは、それはまことに、言うようなことばであるけれどもありがたくないというようなことで、これらの点についてもぜひ、やはり国家の力で法律に即した補償をしてもらいたい。高岡市に向かっては、このような状態をいかにするかということを強く交渉いたしましたところが、それはまことに気の毒であるから、その土地におる六百戸余りのものに対して、全部の固定資産税の一割を減免するという法律を、現在は市長が行なっておるのでありまするが、わずか六百戸余りに対するその減免の金額は三十六万円、こんなこそくなやり方では、われわれはとうてい満足できないのでありまして、この点を強く、この地区もぜひ公害地区であるということで補償してもらいたい。  なお、この三、四年前には、能町北部地区にある小学校は、こんなところに学校を置くところじゃないということで、県の教育委員会のほうで廃校をするように計画を立てまして、実際は昭和四十八年度までは全部改築をするという地元に対する約束でございましたが、貧弱なる公共団体では、なかなかそれが早くできないということで、現在は移転地区の埋め立てであるとか付近の道路及び排水路をば完備しておりますが、もう建築するだけになっておりますが、聞くところによりますと、五十一年度には必ずやりますということを市長が言うておるのでございますが、これらについてでも、今後の児童が、いままではひた隠しにしておったにもかかわらず、本年度の発表によりますと、六百人余りの児童の中に二百八十人の気管支患者がおる、これだから、とてもおもしろくないからということで、年間三回林間学校を開設するというようななまけたことを言うておりますが、一年に三回ぐらい行ったところで、そんな患者がなおるわけはないのです。それで、ぜひともこれらに対しても財産補償の地区として認定してもらいますならば、学校も早くできるだろうというふうにわれわれは念願しておるのであります。  なお、この学校を改築するについても、地方の公共団体の力のみではとうてい、なかなか急速にできないのは現実であります。そうかといって、教育委員会なりあるいは地元の者がこういうところに学校を置いてはだめだということを強く認識しながら、金がないからできないというような、大切な教育がなおざりになるということに対してもわれわれは非常に苦慮しておる次第でありますから、今回皆さま方のお力によって、少数の住民であるといえども日本民族である以上は、お互いがやはり、煙の中に住ませるというような苦しい生活を続けさせることに対しては、どうか今日のありがたい公害法規に即した、現実に即した法律の地区に認定してもらいたいということを私はここで強く皆さん方にお願いするのであります。認定された暁には、必ず、いままで治療を受けなかった者でも、ありがたくこれらのほうに、公共の病院に向かって治療を受けに行く者が続出するのは明らかであります。こういうことを考えたならば、まことに寒心にたえないような次第でございますから、わずか二千七百人余りの住民は死んでもいいのだというような考えでなく、きたないということは通産省の参事官が現実に見に行っておるのでありまして、そうして地区の改善命令をする。こういうところをほっておくということはまことに遺憾なものであると私は思うのであります。  なお、地方の製紙会社、中越パルプという会社でありますが、もと小企業の会社であったけれども、現在は大企業の傘下にある会社でありますが、においが非常に悪いので不快感を感ずるのでございますが、地元の約百三十戸の連中は七百五十万円の補償金をもらって引っ込んでおるというようなことでございますが、その臭気は、地元の小さいところだけ来るのでなく、われわれのほう二キロ余りのところへもくさい煙がどんどんと流れてくるのであります。私は確かなことは、ちょっと工場の名前は忘れましたが、日本に二カ所あって、その一工場は、非常にたくさんの金をかけてやったところが、現在のところではまず六〇%まではくさみが抜けたということを発表されておりまして、学問の力によってやるならば、必ずやれるのであります。それは金がないからやれないとか、現在の科学力ではどうにもならないというようななまけたことで、自分さえよければいいというようなやり方を、すべからく公害基本法によってこれを適用してもらいたい。しかも日本で有数な大きな王子製紙系統の会社であるから、これらのものは、やれば必ずやれるのであるということを私がここで皆さんに御発表して、ぜひお願いしたい。高岡市のほうは、市の二階におってでもくさいにおいがして弱っておるというのに、小さな公共団体がそれに向かって対抗し得ないというような現実もございますので、はっきりと私が申し上げますから、この際住民の代表である皆さんの力によって、こういうようななまけた工場に対しては早く改善するように改善命令を出して、そして不快感を住民から一日も早く撤去するようにお願いいたします。  たいへん長い間われわれが戦ってきて、しかも昭和四十年ごろ——その以前までは、昭和二十一年から三十二年まで長い間私は地区の自治会長をして、いろいろなことをしておりましたが、その間だんだん老齢になったためにやめておったのでございますけれども、年寄りでもぜひやってもらいたいということで、四十年からこの運動にかかって、公害対策委員長にみずからなって運動してきたのでございますが、たまたまあまり年寄りなのに出しゃばったために公害病にかかって入院しなければならないという結果になりましたが、幸い公共の病院で昭和四十三年の五月から今日に至るまで治療を受けておりますところが、このような健康な状態に回復しておるのでありますから、なおせば必ず現在の医学ではなおるのでございますから、これはやはりそのようななおされるような施設に皆さまの力でもって御指導してもらいたいということをこの際皆さんにお願い申し上げまして、まことに簡単でございますが、時間の都合もございまして、これをもって公述人としてのあれを終わります。どうぞお願いいたします。  (拍手)
  20. 佐野憲治

    佐野委員長 どうもありがとうございました。  以上で公述人意見の陳述は終わりました。  この際、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時三十分休憩      ————◇—————    午後一時四十四分開議
  21. 佐野憲治

    佐野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  公述人に対する質疑を行ないます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。菅波茂君。
  22. 菅波茂

    ○菅波委員 公述人の皆さまにはたいへん御苦労さまでございます。  私に与えられた時間が四十分でございます。したがいまして、はなはだかってではございますけれども、お答えのほうもできるだけ簡略にしていただければ幸いだと思います。  特に、私は伊東さんと池尻さんと改井さんと加藤さん、河野さんと阪野さん、六名の方にだけお伺いしたいと思います。  最初に伊東さんにでございますが、伊東さんのお話の中で、日弁連としては、環境庁意見の交渉をし、ディスカッションをおそらく数度なさったと思うのです。その中で、本法に重要と思うものを何かほとんど取り上げておらない、こういうお話があったようであります。そういう中で、伊東さんが、日弁連で出した中の特に重要と思った項目などについて、簡単にその項目だけでもけっこうでございますから御説明いただければ幸いに思います。
  23. 伊東正雄

    伊東公述人 ただいまの御質問に対しまして簡単にお答えいたします。  私ども基本的な立場といたしましては、公害原因者責任負担するという点と、それから被害の補償につきましては、金銭賠償にとどまらず、すべての補償、すなわち被害前の状態に返る、すなわち原状回復という、こういう点について申し上げているわけでございますけれども法案にございますように、原状回復という点については出ておりませんし、汚染負担原則につきましてもはなはだ徹底を欠いておる次第でございまして、ただ私どもが申し上げました移動発生源の問題につきましては、これはこの法案において同一に規定するということは、企業責任の関係におきまして、やはり原因者負担主義の関連からあいまいにするということから除外いたしておりましたのが、この法案自体におきましては、これは別に法律に定めるということで、別個になったという点につきましてはこちらのほうの意見が取り入れられているように思います。  そのほかほとんどの点は、法案に具体化を見ますとかなりの径庭があるように思います。そういうことでございます。
  24. 菅波茂

    ○菅波委員 次に池尻公述人お願いしたいのです。  池尻さんは全漁連の専務で、特に四十二年のときにも公聴会に出られて、そうしていまからいえば非常に先見性のあるとうとい意見を申し述べられ、そのときにもやはり生業被害ということも当然予見しなければならないとおっしゃった。現実的な問題として、いま健康被害のこの制度を出すにあたって、生業被害というのは先見性どころか現実の問題として出ているわけですから、当然この問題に触れるべきであるというのが、当委員会としてなども総括の中で皆さんからも出たわけであります。私もそう思うのですが、ただその中で特に先ほどおっしゃったように、たとえば公害を出す工場あるいはまたそういうような指定された水域、それ以外でもいろいろな生業被害赤潮とか油濁とかいろいろな問題が出ております。ですからそういうようなそれ以外の水域でもいわゆるかなりの漁業被害——漁連ですから漁業問題を主としてお尋ねするわけですが、それが出ておるわけです。そういうものに対して全漁連などの立場としても、対策救済のしかたを一体どう考えたらいいのか、あるいはどうすべきであろう、何かそういうお考えをたぶん池尻さんは持っておられると思うので、お聞かせ願いたいと思います。
  25. 池尻文二

    池尻公述人 公害の問題でございますので、最も大事なことは、早急に汚染源というものを断ち切っていくということだろうと思います。特に今次PCB水銀等の問題は、何よりも魚の信用を回復する上におきましても、これが基本問題でございますので、これに対する正しい行政の取り組み方というものを基本的には要求するわけでございます。  なお、現在受けております漁業被害の態様は、先般申し上げましたとおり、かなり多種多様、複雑でございます。したがいまして、目下審議されております健康被害の補償法の中に直ちに漁業被害のものを全部一緒くたにしてこの制度の中に取り込めというようなことは、理念的には申し上げられましても、まだまだ煮詰められていかなければならない問題があると存じております。たとえば漁業被害の中にも、先ほど申し上げましたように、内湾等においてしばしば起こりますような赤潮被害、これは原因者がきわめて不明瞭でございまするし、それから、夜どことなく流れてきた、あるいは船舶からかあるいは工場からかわかりませんけれども、そういう油によって、翌朝日がさめてみるとノリがやられているというような被害、こういうものにつきましては、私が先般申し上げましたような一つの、たとえば基金制度というようなものの取り組み方があるのではないだろうか。ただ、今般起こりました水銀PCBのいわゆる間接被害まで含めてこの問題を一つの器の中に押し込めてしまえと言う勇気は持っておりません。この問題につきましては、特に一部の汚染源を遮断する。つまり漁業操業の禁止をやむを得ない場合はするとか、あるいはヘドロ等の除去、埋め立て等をやって水俣湾等のものは一切そこをシャットアウトをするとか、その他、受けた漁業被害に対して、単に天災融資法という発想でなくて、できるだけの、たとえば融資であるならば、それに対して国あるいは地方公共団体がどういうような損失補償をするのかとか、条件はどうであるとか、期限はどうであるとか、そういった一つの特別な立法等はぜひ必要ではないのだろうか、かように考えております。
  26. 菅波茂

    ○菅波委員 次は富山の市長さんですか、改井さんにお伺いいたします。  お話しの中で、現在独自で七十一名の公害の認定患者を救済しておる、たいへん御苦労な話だと思うのです。そのお話の中でも、たとえば本法などでも実態に即したようにひとつつくっていただきたい、こういう何か実態というようなお話が出たように思うのですけれども、現実に認定患者を持って救済なすっている市長さんとして、実態に即したというその実態とは具体的に一体どういうことなのか、これをひとつお聞かせ願いたいと思うのです。  もう一つは、財産被害の中の樹木などの被害、農作物の被害も同じですけれども、そういうものに対する一つ救済制度ですか、と同時に、そのとき、たとえば樹木の被害がある、これは大気汚染によるばい煙が風向によって飛んでいっておかされるというわけですけれども、亜流酸ガスなどのあれによってその樹木がやられるというわけですけれども、それとおたくのほうの場合に認定される、あるいはそれとおぼしき患者との発生率といいましょうか、それが一体どうなっておるか。風向きによってはかなり遠いところまで飛んでいくわけですから、かなり遠くのほうにまでそういう患者、疑わしき者も発生しておるのかどうか。つまりこれはその地域を限定する場合に非常に大事な問題となってくると思うので、ひとつお聞かせ願いたいと思うのです。
  27. 改井秀雄

    改井公述人 お答え申し上げたいと思います。  私どものほうで七十一人の市独自の患者救済をやり始めておるわけであります。先ほど申しました実態に即してといいますことは、記録によりますと部分的に環境基準をこえておるわけでありますが、永続的に非常に広範囲にわたって何カ地点もそういう数値が出なかったということなんであります。したがって適用にはなってこなかったと思います。しかし現実の問題といたしましてそういう患者が出ておったということから見まして、画一的な適用ということではやはり漏れが出てくるのではないか、こういうことをおそれておるわけであります。  第二番目の点でありますが、樹木の被害が起きました呉羽丘陵一帯といま患者か出ております地域は、相当密接に関連をしていると思います。相当離れておりますが、風向きその他からいいまして、同一系統のものというふうに考えて間違いないのではないかというふうに存じておるところであります。
  28. 菅波茂

    ○菅波委員 次には四日市助役さん、加藤さんにお願いしたいと思います。  たいへん御苦労なすっておるわけでございますけれども行政をしておる側といたしまして、先ほどお話の中に、本法の中に慰謝料的な要素云々と申されておったように思います。行政サイドから見て、慰謝料的な要素というものをどういう理由で一体繰り入れていかなきゃならないのか、何かそういう御意見がありましたら……。実は慰謝料というものを今度のものには取り上げてないわけです。基準の中には慰謝料という項かないわけです。ですから、そういうような要素をどうして取り上げていかなければならないかという一つの根拠、行政上から見た理由、そういうものをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  29. 加藤寛嗣

    加藤公述人 お答え申し上げます。  四日市では、磯津の裁判、磯津の自主交渉等がございまして、患者に対する救済企業側からなされた。その際に、やはり慰謝料というものがいずれの場合でも入っておった。こういったようなことから患者の方々は、単に将来に向かっての生活保障なり、あるいはなくなられた方の遺族補償なりということだけでなしに、過去苦しんだことに対する何らかそういうような形であらわされてしかるべきじゃないかというのが大部分の声でございますので、それをそのまま率直に申し上げたということでございます。  以上でございます。
  30. 菅波茂

    ○菅波委員 たいへんありがとうございました。  次は河野さんにお伺いしたいわけですけれども河野さんの場合に、後藤さんもお話しになった中で、医療公害ということを申したわけでございますが、たいへん何か後藤さんも河野さんにすまないような皮肉めいたことでなんておっしゃっておったように思います。よくわれわれ医療公害ということを耳にするわけでございます。医者としての立場上、たとえば認定患者などを治療しておって、あるいは診断なすっておって、そういういま後藤さん、前者の言ったような意見、医療公害という点はよくいわれるのですけれども——私も実は医者なんです。私はほとんどやめておるわけですけれども、よく耳にするので、それをお医者さんの立場として一体どうおくみ取りになっておるか、これをひとつお伺いしたい。  それからもう二つ三つあるのですけれども、最近居住歴ということで、先生は何か三歳、六歳という限界で非常にむずかしい、片方が六カ月で片方がちょっとこえるともう三年で……。そういう居住歴の場合に、年齢的な何か参考になる御意見があれば、これもまたお聞かせ願いたいと思うのです。  もう一つは耳鼻科とか眼科とか、光化学だとかそういうわけですけれども、この指定された疾病以外にかなり耳鼻科の範囲に属する、あるいは眼科に属するそういう病名のものがかなり多発しておると思うのです、閉塞性のもの以外に。そういうものの中で、持に川崎などの場合で耳鼻科に属するあるいは眼科に属する病名で特に多いものを、二、三でけっこうですからお聞かせ願いたいと思うわけでございます。  それから川崎の場合にぜんそく、御承知のとおりあれは自然発生があるわけですからつまり公害によらないでも自然発生しておるんだなあと思うのと、その区別は非常に医学的にむずかしいわけですけれども、実際上これは自然発生だとか何か医学的に区別できるようなものがほんとうに全然ないのかどうか、あるいは家族歴の中だとかいろいろな病歴の中で何か参考にでもなる御意見がないのかどうか、こういう点をちょっとお伺いしたいと思います。
  31. 河野和夫

    河野公述人 先ほどの医療公害という問題は最近たいへん問題になっております。確かに次から次へ新薬が開発されてきまして、その副作用もなかなか、実際ある時日を経過してみないとわからないという問題がございまして、われわれ自身もこれは悩まされておる問題でございます。ただ、薬の多用につきましては、確かに極端な例もあると思いますけれども、私の感じでは、昔のように簡単な病気が少なくなってきている。大気汚染に影響された疾患がまず第一にしかりでございます。昔のように空気のきれいなときにかぜを引けば、アスピリンを飲むかあるいは卵酒を飲んで一寝入りすればなおったのですが、絶えず有毒ガスに暴露されておるものですから、ちょっとかぜを引いてもそのあとのどが赤くはれて、いつまでたってもせきがとまらない、のどが痛いと訴えて患者さんが通ってくるわけです。それで、いろんな症状に対して何とかしようということで薬を使わざるを得ない。それからいまの生活を維持するために休めないという問題があります。たとえば腰痛のような患者さんでしたらやはり休むことが大事だと思うのですが、痛みを押して仕事をすると、やはりそれには対症療法が必要ということになって、これは医者の問題だけではなくて、いまの社会あるいはいまの疾病構造というものをある程度変える努力をしないと、薬多用の問題も解決しないのではないか、このように思っております。  それから、先ほど公述のときにもうすでに述べましたけれども、少なくとも居住歴については、就学前の児童についてはできるだけ短期間の居住でも認定するようにしていただきたい。  それから気管支ぜんそくの場合に、指定地域に移ってきてから急に発病したというようなものについては、これは年寄りであっても居住歴をあまり、現在のように三年というようなことでなしに認めていただきたい、こういうことでございます。  それから公害じゃない、公害に関係のないぜんそくと公害病に関係のあるぜんそくについて区別する手段があるかということですが、これはちょっと専門の学者も、たとえば四日市の患者、川崎の患者を大学の学者で調べている先生方の結論でも、普通のアレルギー性のぜんそくと区別する根本的な区別はない。ただ一般のぜんそくに比べるといろいろなアレルギー反応があまり陽性でない例が多いということは一般的な傾向としては言われております。結局大気汚染関係の疾患というのは、それが直接原因になるのかあるいは体質的にアレルギーがあるところへ大気汚染が影響してそれが引き金になるのか、その辺のところは区別がつきませんので、結局空気のきれいな地域に比べて多発しているかどうかという疫学的な数字に基づいて判断する以外にないというふうに考えます。  それから閉塞性疾患以外に、先ほどあげましたように、われわれが非常に目につくのは、かぜを引くとなかなかなおらないというような慢性の咽喉頭炎というのは非常に目につきます。それから目の疾患では一般に川崎あたりの眼科医会の調べによりますと、結膜炎のようなものがほかの地域に比べては多いというようなことが出ておりますけれども、これもやはり公害の影響による病気はこれとこれだということをなかなか言いがたい。普通の原因による病気と区別しがたいという点があるので、なかなかはっきりしないという困難な問題がございます。  以上でございます。
  32. 菅波茂

    ○菅波委員 最後には阪野さんにお伺いしたいのですが、三重県の楠町の助役さん、何か承っておりますと、私も現実を知らないのですけれども四日市に非常に近いところ、やはりおそらくは一つはこの指定の限界を広げてくれろ、広げるべきだという意見だと思うのですが、そういう場合に、おたくの場合に、たとえば四日市汚染というものが最もひどかった三十八年から四十三年ごろまでのことをわれわれも知っておるわけです。その間におたくのような隣接のところ汚染の調査というものをなすったことがあるのかどうか、あるとするならば、その三十八年から四十三年ごろまでのデータがあれば、非常に指定というものにも根拠ができてくると思うのです。そういうものは一体おありになったのかどうなのか、調査をしたのかどうかお伺いしたいと思います。
  33. 阪野昇

    阪野公述人 お答えいたします。  お尋ねの件でございますが、昭和三十八年ごろから四十二、三年ごろにかけてでございますが、その当時は観測点は楠のほうにもございまして、それでいろいろその資料はとっております。それでそのいろいろ汚染度でございますけれども、それの資料がございますが、ただ患者がその間にどうなっておったかという調査がなされておらなかったということは事実でございまして、最近いろいろのそうした声、特に四十四年からの特別措置法によります医療救済制度ができてから患者の声として上がってきまして、その後に患者の実態の調査、先ほど申しました医学調査によります権威ある調査をいただきまして、百五十名という公害であろう、認定に適合する患者であろうというものが出てきておりますので、そうしたことによって最近特にそうしたことに、医療救済を受けるには地域指定が第一条件だという観点のもとに、地域を御指定いただきたいということをお願いしておるようなことでございます。
  34. 菅波茂

    ○菅波委員 終わります。
  35. 佐野憲治

    佐野委員長 島本虎三君。
  36. 島本虎三

    ○島本委員 まず、ほんとにきょうは御苦労さんでございます。  私自身この公害健康被害補償法、この立法過程においてぜひ皆さんの意見を伺いたい、こう思っておったのでございましたが、きょうは十分それを聞かしてもらうことができたのでありまして、この点、心から感謝を申し上げる次第です。  一、二これに対しての私自身日ごろ考えておることと、そして疑問に感じたことについて解明を願いたい、こう思った次第であります。  まず、伊東公述人にお伺いしたいのですが、伊東公述人も本法案については医療給付については数段前進したことは評価に値する、このようなことでございます。もちろん私どももそう思うのであります。これはやはり日弁連という立場から、また公害対策委員長という立場からして、四大裁判において企業責任がきびしく追及されまして、その後、無過失賠償責任法も不完全ながらも成立している状態であります。そして今回は、本法案はあくまでも基礎を被害者保護に置いているはずであります。そしてそういうようなことからして、やはり当然企業としては四大裁判の結果、公害に対しては汚染源排出企業同士は最大限の汚染防止の努力をする必要と義務があるはずであり、公害の諸立法は十分措置でき得るようにしてあるのが第一番でなければならない、こう思うわけであります。しかし、この両方とも不完全なままに、その上に公害をふやさないための裏打ちが当然必要であると思うのでありますが、そのためには、それをおかすものは刑事罰、こういうような考え方に立たなければならないのじゃないかと思っております。そうでなければ、本法は公害の発生は容認するが、賠償はしなければならないという免罪符的な動きがあるおそれが感じられるわけであります。そうなると、加害者保護法に通ずるようなことになるのじゃないか、こう思います。五十四程度の、いわば政令委任事項があるという、きわめて多い法律でありますから、その運営いかんによっては立法外に隠された運営も考えられるわけでありますが、もしそういうようになると、いままでの趣旨とは別に動くおそれが感じられるのでありますが、専門の立場から、この点に対してはいかがでございましょうか。
  37. 伊東正雄

    伊東公述人 公害に対します基本的な姿勢から、本案に対する概括的なお考えについてただいま島本先生から御質問のありました点は、全く同感でございます。  この被害者救済ということは、そもそも事後的な処置でございまして、公害の点につきましては、何よりも事前にこれを防止するということが最も必要でございますけれども、遺憾ながら現在の公害対策基本法以下の考え方というものは、そういう事前の発生源をきびしく絶滅する、防止するというような点に欠けておる次第でございます。そういうような状況におきまして、しかもこの限定的な公害被害の中のわずかに大気汚染水質汚濁という二つの、しかも健康被害に限定するというような、そういう姿勢そのものがすでに現在の公害に対する現状認識からはなはだおくれているということは、もとよりいま御指摘になりましたとおりでございます。  そこで、日弁連公害対策委員会といたしましては、昨年の、先ほど申し上げましたように国際的な環境保全並びに四日市判決に至りますきびしい国内の企業責任を明確にするというような点、ことに昨今にあらわれておりますような、ほんとうに私どもの生存の基礎まで破壊して、いわゆる人間破壊にも通ずるような状況でございますので、この法案は従来から見ますと非常に前進はいたしておりまするけれども公害現状認識からしますと非常に限定的であるわけでして、そういう点においてははなはだ遺憾でございます。さりとて、すでに法案作成段階におきまして日弁連といたしましては、公害の発生の原因にいたしましても、単に大気汚染水質汚濁に限らず、騒音、振動、地盤沈下その他あらゆる公害被害に及ぼすべきでもあるし、また健康被害にとどまらず、すべての生業、財産さらに進んでは環境保全まで必要であるというようなことを申し上げて、そういう趣旨で意見書もまとめてあるわけでございます。そういう立場ではございますけれども、現実の問題といたしまして、この法案において直ちにそれが、ただいま御審議いただいておりまするけれども、そういうような大きな問題をここで直ちに実現するかどうか、はなはだ疑問でございますので、さしあたってのこの法案に対します態度といたしましては、やはりこれを生かす意味におきましては、ただいま御意見もございましたわけですけれども企業責任が、公害に対する責任があいまいのままに賦課金、要するに公害企業側からそういった金銭的な支払いがなされることによって公害責任を果たした、要するに、先ほど他の公述人の方からも現地の体験によりましてそういう御意見がありましたように、免罪符になるというようなことであってはとんでもないことでございまして、これは公害によってこうむった損害をてん補するのだということがこの法案の第一条にございますので、その趣旨において少なくとも完徹されなければならないわけでございます。したがいまして、賦課金を支払わないようなものに対しましては操業停止も求めるとすべきではないか、また賦課金負担につきましても、大量に汚染物質を排出しているものに対しては累進して課徴すべきではないかというような点が、さきに私どもが発表しました意見の中に盛り込まれておるわけでございます。  ことにこの法案はなるほど健康被害補償法という法律ではございまするけれども、実際の運用面におきまして非常に重要な効果を持ちますところの重要な法案内容が、先ほど委員長からいただきました五十数個も政令にまかされている。これはほんとうに法案の大事な実態行政庁に一方的になされるということになりますので、委員先生方におかれましてはその大事な骨子、こういう点を十分ここで御審議いただいて、そうして被害者救済の実をあげていただく、そういう点で島本先生も古く公害を御担当なさっていますから、ひとつ十分御意見を出して、これは日弁連立場もほんとうに国民立場に立って純粋に人権擁護の点でいろいろな意見を申し上げているわけなのですから、いまの御意見は全く同感でございます。ことに政令の点につきましてはすべて委任すると、白紙委任のようなことは絶対反対でございますから、十分御審議いただきたい、こういうぐあいに考えております。
  38. 島本虎三

    ○島本委員 それで私ども常に考え方としては、公害に関しましては被害者の責めに帰せられるごうまつの理由もない、こういうように思っておりましたが、この補償給付の制限の中に、四十二条、四十三条、この両条とも「重大な過失により、」とか「正当な理由がなく療養に関する指示に従わなかつたとき」こういうようなのがあるわけであります。公害に関しては一方通行でありまして、被害者の責めに帰せられる理由はほとんど考えられないのであります。その際にやはり性悪説をとるような補償給付制限は要らない。したがって、これを削除せよ、民法四百十八条並びに七百二十二条でしたか、これを適用して簡単にせよということは、まことに論旨明快でありまして、私はこれを高く評価するのにやぶさかでありません。ほかに同じようなところはございませんでしたかどうか。
  39. 伊東正雄

    伊東公述人 恐縮でございます。  先ほど性悪説というようなことばをここへ使いましたけれども、これは日弁連意見としましては、公害の場合におきましてはそういう過失相殺を適用する余地がない、これはもう四日市判決でも公害の場合に、多くの場合過失がないんだ、過失がないどころか一方的に被害を受けてそれの救済もできないんだ、そういうものを目して——あるいは万が一あるかどうかわかりませんけれども、おそらくそういうことはないわけでして、そういうことをおもんばかるよりも、公害被害を全くなくするという点に配慮をいたしてやっていただきたい、かように考えるわけでして、これはいま島本先生御指摘になりましたけれども、たとえばこの法案の第一条にございます福祉の事業ということ、それに対して広義にも使われるようですけれども、そういう重要な点についてはこの四十六条ですか、一カ条規定されておるのみでして、こういう点につきましては、先ほど他の公述人の方も一部述べておりますし、日弁連意見にございますけれども、十分具体的内容を盛っていただきたい、かように考えるわけでございます。
  40. 島本虎三

    ○島本委員 ありがとうございました。  ついでにもう一カ所お願いいたします。五十四も政令委任事項があるということで、法の性格が加害者共同防衛的性格に変えられるおそれがないか、これも心配しているところであります。そうしないためには、専門家として、政令移行するような、こういうような重大な問題に対してはどの点を気をつけて、今後国民のためにわれわれは論ずべきであるかという点をひとつ御指摘と御指導を願いたいのであります。
  41. 伊東正雄

    伊東公述人 これは、不可欠の要件を具体的に法案に明示していただくということがやはり必要だろうと思うのですね。ですから、ただ政令に定めるというようなことでは、その定め方によって、またその方法その他すべて政令に委任する形になるわけですから、具体的な不可欠の要件をやはり具体的に法案に盛っていただく、それの具体化として政令でやるということでないと、その法案の趣旨が実現されないおそれがあるんじゃないか、こういうふうに考えるわけです。まあ、してございましても、先ほど問題になりました認定のしかた、これは他の公述人の方も実際に即して意見を申し述べましたから、申し上げませんでしたが、現実には認定がきびしくて、現実に存在する潜在患者のおそらく何分の一しか認定されてない、こういうような運営の実情もございますので、そういうことが、いかに法がりっぱでも運用においてそれが十分生かされなければなりませんので、その保障としてはやはり行政機関に専権的に大きな権限を与える前に、もっと具体的に制度的な正義が保障される、法案の趣旨が具体化されるという趣旨で、できるだけやはり具体化していただくのがよろしかろう、かように考えるわけでございます。
  42. 島本虎三

    ○島本委員 ありがとうございました。なお、われわれも勉強のために余された点等についていろいろ今後もお伺いしたいと思いますので、ひとつよろしくお願いしたいと思います。  ただいま伊東公述人の申されましたように、認定のしかたが現実きびしいものになる、こういうようなことのようであります。  四日市助役加藤公述人にお伺いしますが、先ほど公述された中の第二点の患者の生活救済、これは現在は四日市では財団によって行なっているそうであります。本制度ができたならばすぐこれを切りかえたい、こういうようなことのように先ほどお伺いいたしましたが、私ども自身もその点等については特にこうでなければならないというようなことではもちろんございません。しかし、都道府県ですでに実施されている企業拠出金または条例による救済制度、こういうようなものが、本制度ができましても、すぐこれに吸収されてなくするのがいいか、または、国がやろうとしてもきびしかったら漏れるのがありますから、補完機関として残すのがいいか、この点については十分考えなければならないのじゃないかと思っておるわけであります。幸いにして——幸いじゃございません、ほんとうに悪いことには国のやることはおそいのであります。おそいほかきびしいのであります。そうなりますと、幸いにして先に実施されている都道府県、その方面では、国のきびしい認定基準に満たない人も救済する、こういうような意味で地域の特殊性を反映するというきめのこまかい対策ができるのではなかろうか、こう思うわけであります。いたずらに制度の一本化でなく、既存の制度を補完的に、完全な機能発揮のためにも十分使うべきじゃないだろうか、こう思ったのであります。ただいまの伊東公述人公述に引き続いて、この点についてひとつお伺いしておきたいと思います。
  43. 加藤寛嗣

    加藤公述人 お答え申し上げます。  先ほどは十五分という制限時間がございましたので、私は具体的なことだけ簡単にまとめて申し上げました。  現在四日市市では生活救済ということはまだ行なわれておりません。いま財団の設立をめぐりまして患者の団体の方あるいは企業側と話し合いをしておる最中でございます。そこで、財団を設立した場合に、財団で考えております生活補償あるいはその他の補償が、全面的に国の制度に切りかわった場合に全面的に国の制度でそれがやれるのかどうかということについてはなお疑問がございますので、確かに先生のおっしゃるように補完的な意味で将来とも財団は残しておく予定をしております。どうぞその点御理解をいただきたいと思います。
  44. 島本虎三

    ○島本委員 次に、池尻公述人にお伺いいたしますが、池尻公述人は四十二年当時からほんとうに長い間の苦労は私どもはこの国会の場所でよく知っておるのであります。われわれも大いに示唆されるものがございました。力足らずして残念に思うのでございますけれども、やはりこれは現在のいろいろな水質関係の汚濁問題、こういうような問題を、いわゆる第一次水俣病発生の当時から考えますと、それが第二、第三になり、第四、第五がいつどこでどうなるかわからないような状態のもとにあるのでありますけれども、いまなお、きのうの四国地方紙によりますと、愛媛県側と高知県側とで入り会い漁業権の問題で紛争を起こしている。これは高知県側が他のほうを拒否して分裂状態になっている。それは埋め立て問題にも及んでいる。愛媛県側では、あれは川之江でございましたか、その方面だとか、その他ヘドロの排出が多い場所を埋め立てるようにする。しかしその前に全部漁業権を放棄してしまって、売ってしまって、もうそれに対しては求償ができない状態であるから、高知県のほうへ今度進出していってそこで漁業をしようとする。そういうようなことで、埋め立てによってまた起こる被害等を考えて、高知県でもこれに対してがえんじないのだ。大体こういうようなことであったように思ってきたわけであります。そうすると、まず問題の発端は漁業権にあって、それを簡単に売り渡しをしてしまって、そしてそれが現在の紛争の種になり、それがずっといままで尾を引いているのじゃないかと思うのであります。しかしそれも地先だけを認めていくというこのやり方、埋め立てによって巨額の金でほっぺたをたたかれる漁民立場というようなことになると、やはりそれで全部のんでしまうのが原因だったわけであります。全漁連という全国統一体の立場からして、現在の法令的な、公有水面埋立法なんかも現在審議中なのでありますが、これに対して過去からの経過を考えてひとつこの際どういうふうにしたならばいいかという御所見あったならば、この際ですからはっきり伺いたいと思います。
  45. 池尻文二

    池尻公述人 お答えをいたしたいと思います。  いま先生から御指摘の埋め立て問題と漁業権の問題は単に愛媛県、高知県のみならず全国の問題で、その本質を大なり小なり含んでおる問題だろうと思います。御案内のとおり埋め立てする場合に漁業権者のいわゆる同意という現行のシステムがございますために、いわばイエスかノーという答えをするのは漁業権者である農業協同組合の絶対の権利になっておるわけでございます。これは埋め立てを防ぐ意味からおきましては、一つの大きな自衛かになっておるわけでございますが、最近の漁場の連帯性と申しますか、そういう見地に立ちますと、逆に今度は漁業協同組合のエゴイズムの発揮ということになりかねない問題を内在しておるわけでございます。つまり自分のところは金をもらって埋め立てに賛成をしたけれども、そこに工場が進出してたれ流しをして隣の非常に純粋な漁業者が今度は苦しみ出すということについて責任はないかという問題がいま問われつつあると思います。したがいまして、この問題の制度的な解決というものはいろいろあろうと思いますが、へたにいじくりますと、これもまた非常な問題を起こしかねない問題でございます。  一つは、私の私見でございますが、まずいま国会で議論になっておりまする公有水面埋立法の一部改正の問題でございます。この改正に対しまして政府案はそういう利害関係者意見を書類にして意見書として出せということで終わっておるようでございます。私はこれではその意見書の判断というものがどういうふうになされるかということがきわめておぼつかないわけでございまするので、ある程度の発言権というものを確保する場というものを与えてやる必要がある、こういうふうに私見として考えます。これは一例をたとえばアメリカの現在環境問題として非常に問題になっておりまする原子力発電の設置につきましては、御承知のとおりアメリカは公聴会制度というものを非常にフルに活用しておるわけでございます。公聴会制度というのは日本では何か非常に毛ぎらいをされまして、その公聴会を開きますと、特定の政治勢力があばれ込んでくるとか、あるいはそこにむしろ旗が立つとかいうことのみを非常に危惧されて、公聴会制度の本旨が生かされてない風土があるわけでございますが、アメリカ等におきましては、公聴会制度の中で発言されました発言はきわめて権威を持っておりまして、そこには環境主義者の代表である弁護士さんも、あるいは学者もみんな堂々と意見を出すわけでございます。反対は反対、賛成は賛成。で、それはマスコミあるいは一流の新聞紙によって公開をされまして、そのまた反論というものがいろいろな形で出るということでありまして、そこで責任ある一つの賛成、反対の討論が展開される。これは何べんでも開くというような制度をがっちりととっておりますために、環境問題のとらまえ方というものが一つ参考になろうと思います。  それからもう一つは、公有水面埋立法制度の問題ではなくて、あるいは漁業法、つまり漁業をする仕組みの法律の上で、この問題の調整をはかる必要がありはしないかという点が考えられます。つまり漁場というのは単に地先主義だけではないわけでありまして、時代の進展とともに変遷をしてまいります。そういったときに単なる一漁業協同組合の漁業権者である組合員の意思のみが、未来永劫にそれを束縛するという行き方も必ずしも妥当ではございませんので、漁業権の制度の問題と、これを得喪する場合に、いわゆる関連をした他地域の漁業者との意見の調整というものをどういうふうに実現をさせるかという漁業法土の問題でもあろう、かように考えております。しかしながらへたをしていじりますと、なかなか問題になる点もあろうかと思いまするので、この点はひとつ十分研究をしながら、先ほど申し上げましたアメリカの公聴会制度——法律上の改正ではなくてそういう現実上のシステムを有効に動かしていくというようなことも一考する必要があるのではないか、かように考えております。
  46. 島本虎三

    ○島本委員 同じ池尻公述人お願いしたいのですが、先般の有明湾の沿岸の漁業に対する被害であります。これにはやはり長崎、佐賀あたりでは直接自分の県に公害排出企業がなくて、ふんまんの持っていきどころがない、こういうようなことであったわけであります。自分の県になくても、排出した源が三井東圧であるならば、当然県外であってもそれを問題にしてよい事件であるということで、公害発生源が自県にない被害県は泣き寝入りできるわけの問題でもなかろうと思うのですが、漁連としてもこの点はどうお考えなのか、この際一言でいいですから……。
  47. 池尻文二

    池尻公述人 有明地区の汚染源に対する目標といいますか、それは四県連合である程度歩調をそろえて汚染源に対するいろいろな交渉をやっている、こういうふうに私は理解しております。むしろ問題は午前中に述べました瀬戸内海の、これは県の名前をあげるのは非常にあれと思いますけれども、——県と、たとえば——県の関係というものは非常に問題になっておるわけでございます。——県等は明らかに責める相手かございますが、——県等はない。——県も一緒になって責めればいいではないかというようなこともそう簡単にいえる問題ではございません。そこでそれはそれで最終的にどうするかという問題になるわけでございますが、知事さんは、たとえばある県の知事さんはそういう工場誘致というものにまでさかのぼって責任を感ぜられておりまして、単にPPP原則にまかせることなく、自分のところもひとつ損失補償をしよう、ある金を信連に預託しよう、こういう解決法をはかっておられるわけですけれども、たとえば——県のごときは工場誘致したような覚えもなしというようなことで、知事さんの漁業者に対する配慮というものも、あまり他県に比べてそう積極的ではないというところに、実は漁業者の非常な不満というものがあるわけでございます。  なお特定の県を申し上げましたけれども、これは誤解があると困ると思いますけれども、できれば速記録から削除させてもらえばけっこうであります。
  48. 島本虎三

    ○島本委員 よくわかりました。やはり瀬戸内海環境保全の必要性もわかってきたわけでありますけれども委員長の御配慮によって、いまの特定の県の名前は私どもは大体わかりましたから、わかった段階で速記録から排除してもらいたい、こういうように思うわけであります。
  49. 佐野憲治

    佐野委員長 ただいまの池尻公述人並びに島本委員からの申し出の件、了承いたしました。削除いたします。
  50. 島本虎三

    ○島本委員 河野公述人にお伺いいたします。  先ほどから十分の経験と長い間の研究、ほんとうに感謝申し上げます。敬意を表する次第です。その中でこの六項目、これは全部本案の参考資料として貴重なものであります。速記録ができるまでには相当時間がかかりますので、もし原稿がおありでしたら、その間責任をもって保管させてもらいたい、こういうふうに思うわけでありますが、その点ひとつお貸し願いたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。
  51. 佐野憲治

    佐野委員長 河野公述人了承だそうです。
  52. 島本虎三

    ○島本委員 第二項目に申されました三歳未満の子供の場合には現行で六カ月、三歳以上は、重症であっても六カ月以上で、こうなっているために、その重症のほうの患者は認められなかった、こういうような問題があったようであります。これは気管支ぜんそくとしてもとうてい、ほんとうに医師としては忍びがたかっただろうと思うのであります。しかし、現行法で、こういうような特殊事情と具体的な問題があっても、その救済はできなかったのですか。実際問題を取り扱った立場からこの点をひとつはっきり解明願いたいと思います。
  53. 河野和夫

    河野公述人 現在の特別措置法では、三歳未満の場合には六カ月以上の居住歴があれば認められる、三歳以上になりますと三年以上の居住歴が必要ということで、おとなと同じ扱いになるわけです。いまの法律では、特に大気汚染系統の疾患については、大気汚染と直接疾病との因果関係というのは明らかでないということから、指定地域に法律で定められた期間以上居住していて、そして指定された疾病にかかっている場合に認められるということがすべての要件になっておるわけで、疾病にかかっておっても、その居住要件が条件に満たない場合には、もう初めからこれは認定審査委員会の権限外のことでして、行政の段階ではずされてしまうという問題が現在の措置法にはあるわけです。
  54. 島本虎三

    ○島本委員 なお、これも実際認定の業務に当たり、長い間これに携わってまいりました、特に河野公述人には、本法の補償給付の中にも療養の給付及び療養費と、介護加算を含む障害補償費と児童補償手当があるわけであります。実際水俣のあの患者の実態を見て、われわれ訴えられ、なお最後まで残ったのは介護手当です。というのは、人員の配置もできない。できないままで一万円で打ち切られておる。一万円で来る人もいない、こういうような実態であります。介護補償、介護加算ということになりますと、介護手当はどれほどなければならないものでございましたでしょうか。この点ひとつ歯に衣を着せないでずばっと言っていただきたいと思います。
  55. 河野和夫

    河野公述人 現在専門的な派出看護婦を頼みました場合、大体東京近辺で一日三千五百円から四千円ちょっとくらいの料金であろうと思います。これに重症患者で徹夜したとかいうことになりますと、さらによけいにかかるということで、普通の介護手当とは別に、療養の給付の中に看護という項目がございまして、この看護は、健康保険でいいますと基準看護の場合には病院の専門の看護婦がやる看護をさしておるわけであります。看護でないところは、先ほど申しましたように現金給付として、あと保険のほうから金が出ている。そうすると、現行で実際に一日四千円近く払ったもののうち、保険で定めた料金ではその一部しか支給されておらないということがございますので、今度の制度は一応保険と切り離した医療費体系を考えるということでございますので、その場合には全額を出すようにしていただきたいというのが希望でございます。この看護料の問題が、これは健康被害法律とは関係ありませんけれども、健康保険で、たとえ被保険者本人で、直接かかる医療費については無料であっても、この看護料とベッドの差額料金が、長期疾患になるとかなり巨額の金になるということで、これが実際に健康保険がありながら、非常に患者負担があるという問題があります。そういう問題がありますので、普通の健康保険の被保険者よりもっと気の毒な、こういう公害病の認定患者を見る上では、そういうことがないようにぜひしていただきたいと思います。
  56. 島本虎三

    ○島本委員 第六項目に同じ公害医療機関の中で、公害病患者取り扱い機関という名称のほうがいいのじゃないかと、これは私そう書いたのですが、ちょっとそういうようなことがございましたが、この辺の理由をもう一回はっきりおっしゃっていただきたい、こういうふうに思うわけであります。
  57. 河野和夫

    河野公述人 先ほども他の公述人からありましたが、最近薬害とか医療過誤に対して、医療公害ということばが使われておりますし、それから公害を発生する企業については公害企業ということばが使われております。そういう関係で、公害医療機関といいますと、医療公害を発生している医療機関のような感じがしますので、これはどうも医療担当者にとってはちょっと不愉快な名称であります。それで、公害病を取り扱う医療機関、公害病取り扱い医療機関というような名称にでもしていただいたらけっこうかと思います。
  58. 島本虎三

    ○島本委員 ありがとうございました。  なお、島田公述人、患者として尼崎でほんとうにいろいろ御苦労なさっておって、先ほどから私も涙して公述を承っておったわけです。地域指定のおりを取り除け、このことばでございますが、今回の公害健康被害補償法にもやはり地域指定というか、指定があるわけであります。それと同時に病気にまでそれがかぶるのであります。それで、いまの一から八ですか、いろいろ要請はそれぞれ承りました。私も同感でありまして、この点は今後法の中で善処していきたい、こう思っておりますが、遺族補償の問題で、いろいろ申されましたが、補完的な形で実施されている市独自の救済、これは五十万円から百万円、四百五十万円から一千万円と、いろいろ地名をあげて言っていたようでございます。これをもう一回おっしゃっていただきたい、こういうふうに思います。
  59. 島田実

    島田公述人 遺族補償について、尼崎では十五万という金が見舞い金として出ております。川崎では五十万から百万という線がこの前川崎の研修会に出て教わったのでございます。四日市は、四日市判決の後に四百五十万から一千万というあれが出ました。それで、尼崎の場合に、なぜ尼崎に住んで十五万の値打ちしかないか、これが川崎に来たら五十万から百万になり、四日市に行ったら四百五十万から一千万になるという、この矛盾が私らには納得ができない。だから少なくとも人の生命をとった以上、企業から責任として取る金において、できることなら四日市の精神を生かしてもらって、それより下のあれでは困るということです。
  60. 島本虎三

    ○島本委員 わかりました。  それと同時に、この救済対象を気管支炎等四つではなく、その他日、鼻、のどなどに及ぼせ、こういうような一つ公述がございました。目、鼻、のどまではわかりましたが、実際として及ぼされるものは、これにつけ加られるものはその程度でございますか。そのほかにもありましたら、この点ではひとつ河野公述人のほうからもお伺いしたいと思います。そのほかにまた四日市加藤公述人のほうからもこの点をお伺いしたいと思うわけです。大体救済対象、これを目、鼻、のどなんかもこれに上積みせよということであります。そのほかにありませんか。
  61. 島田実

    島田公述人 私は患者として現在医者にかかっておりますけれども、目、鼻、のど以外に心不全というような病気になった場合がございました。たいがいの患者さんはそういう心臓障害とか心不全とか、そういうような病気に悩んでおります。現実に治療費が無料になっておりますが、病院に行くのにそういう金が要りますので、ちゅうちょして医者にかかれないというような現状がございます。だから、できることなら公害病認定患者は一切の治療費は無料で見ていただきたいというのが全部の患者の願いなんです。よろしくお願いします。
  62. 河野和夫

    河野公述人 目、鼻、のど以外の疾患についてはちょっと思い当たりません。  この疾患の問題につきましては先ほど申し述べましたが、二つの問題点があります。  一つは、四疾患によって認定された患者の同時に存在する、いま述べられました同時に心臓が悪いというような問題あるいはその他の病気を持っているという問題、この場合に認定患者だったら別の併存する病気も含めてこの法律で補償してほしいという点については、私も医者の立場から同感でございます。  これは現在の措置法では閉塞性肺疾患及びその続発症ということになっておりますが、その続発症につきましては、閉塞性四疾患との関連があるのかないのか非常にあいまいな部分が現実にかなり存在しまして、これが患者さんと医療機関の間でのトラブルの問題にもなります。たとえば気管支ぜんそくで認定された患者さんがかぜを引いて来ます。そうすると、医者の立場から言うと、かぜと気管支ぜんそくは、一応かぜのほうが先に起こってきた場合は、別の問題だからきょうはどうも公害病の適用ができないから、窓口でお金をいただくというようなことを言うお医者さんがございます。そうすると、患者さんにしてみれば、かぜも気管支ぜんそくも同じ呼吸器の疾患でございますから、これは公害病で見てほしいというようなことを言われます。それからまた、ぜんそく薬を服用して、連用しているうちに胃のぐあいが悪くなったという場合に、これはやはりぜんそく薬の影響があったと考えれば、やはり関連する疾患ということになりますので、どのあたりにまで適用するかというのが、現場の医者の判断にまかされてしまう面が非常にあるわけです。それで人によって、その医者の立場によって、解釈によって、取り扱いがどうしても変わってくる。そうすると患者さんのほうから、甲の医療機関では公害病に含めて治療してくれたのに、乙のお医者さんでは金を取られたという現実の問題が起こってくるので、この辺はやはり指定四疾患で認定された患者の他の病気については、全部含めてこちらの法律による医療体系に組み込んでほしいということが第一点です。  それからもう一つは、慢性咽喉頭炎のように確かに大気汚染と関係のある疾患にかかっていたら、その閉塞性四疾患にかかっていなくても、そういうものも関連ありということになれば、そういうものも検討して含めていただきたい。この二つの問題点があると思います。
  63. 加藤寛嗣

    加藤公述人 四日市では、この四疾患以外にあまり聞いておりません。ただ鼻血が出るとかあるいは結膜炎になるとかというような障害は間々あるようでございますが、特に四日市の市民の間ではそれが公害病ではないかというような声はあまり聞いておりません。  ただ、四日市の患者の傾向を見ますと、九百七十二名のうち四十歳から七十歳までの患者が約五百名、それから十一歳以下の患者が約三百名と、圧倒的に老人と子供の間にこういう疾患が多いということはいえようかというふうに考えております。したがって、ほかにどういう公害病があるかということについては、まだはっきりしていないということが事実でございます。
  64. 島本虎三

    ○島本委員 ありがとうございました。
  65. 佐野憲治

    佐野委員長 阿部未喜男君。
  66. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 日弁連伊東先生に教えていただきたいのですけれども、この制度が大体民事責任主義に基づいての損害賠償補償制度、こういう思想に立脚をしてつくられておるとするならば、公害病に認定された方々、あるいは認定をされる方々のこれは権利ともいうべきものだというふうに理解ができるのでございますけれども、そういう国民の権利にかかわる問題が、先ほど先生もちょっとお触れになりましたけれども、特に給付の内容等についてほとんど政令にゆだねられておる、こういう点について先生の御意見はどういうものでございましょうか、お教え願いたいと思います。
  67. 伊東正雄

    伊東公述人 これは民事責任ということになりますと、公害原因者負担するというのがたてまえでございまして、そういう趣旨からいきますと、まさに御指摘のように権利があるということになるわけでございます。  ただ、それを確認いたしますのに裁判的な手続もございますので、本法の冒頭にございますように、迅速にしかも公正に補償する、こういう表現でございますけれども、この迅速性とやはり被害の十分性、この二つの要請があって初めてりっぱな法案であろう、かように考えるわけでございまして、裁判の手続が省略されて、その意味で費用もかからないし迅速なんだから、補償が、たとえば一〇〇%と裁判でなるものが、では七〇%あるいは六〇%でよいのではないか、そういうような観点で給付の水準がきめられるということになりますとこれはやはり問題でございまして、それではやはり被害の補償の十分性を果たさないわけでございます。そういう点から見ますと、本法の内容は判決の結果をこれまでの四大公害裁判の結果並びに公害の悲惨な——普通の民事上の損害でございますと損害は多くの場合一回で終了するわけですけれども、御承知のように公害の場合には非常に被害が広範でありますし、胎児性の水俣病に見られますように数代にわたってその影響があらわれてくる。これは森永砒素ミルク事件におきましてもやはりそういうことでございまして、その被害の及ぼす範囲が深刻であり影響が大きいという点から考えましても、やはり給付水準につきましてはできるだけ十分な一〇〇%の給付をすべきである、こういうことは当然の要求として盛り込まれるべきでありまして、迅速であるから減額をしていくというようなことはやはり被害補償の理念からいたしますと間違っている、かように考えるわけでございます。
  68. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 もう一つお伺いしたいのですが、そこでいわゆる給付の内容等は法律によって明確に規定をすべきものか政令に委任をしてしかるべきものかという点はいかがでしょう。
  69. 伊東正雄

    伊東公述人 それはやはり法律でできるだけおきめいただいたほうがけっこうだと思います。ですからその点につきまして現在の水準に合わせましてまた将来の問題につきましてやはり物価にスライドしていくなり、やはり手続の簡易化であって、しかも争いのないように明確にするということが一番でございまして、法案自体がうまくできましても、そのために手続が非常に煩瑣である。現在の多くの場合にそういう例外もございますので、そういう点でやはりできるだけ法案に具体化していただきまして、あまり政令のほうでまかされるということはやはり骨抜きになるおそれもございますので、十分先生方の御審議をいただきたい、かように考えております。
  70. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 もう一点お伺いしたいのですが、物の被害に対する補償、特に生業補償について早く検討すべきであるという御意見は大かたの皆さんの御意見だったと思いますけれども、特にその場合に発生源が明らかなものは別にして、瀬戸内海の汚染の話題になっております赤潮等のような原因者が非常にわかりにくい、あるいは油が夜間に流れてくるというふうな、原因者をつかまえることが困難である、そういう被害について生業補償法律をつくる場合に、どういう費用の負担をさせるべきでございましょうか、御意見を承りたい。
  71. 伊東正雄

    伊東公述人 実はただいまの瀬戸内海の海洋汚染、ことに漁業補償その他私どもの直接台所にまで影響しているわけでございますけれども、この補償をどうするか、生業補償の考え方はいろいろございまして、実は私どものほうもこの問題に近く取り組みまして、その結果やはり法律的にこの問題を至急検討したい、こういうことで委員会でやる考えでおりますので、現在ここでどういうことにやるかということはちょっと申し上げられませんが、年内に至急結論を出しまして、できるだけ私どもの考えでそういう被害補償の観点に立ってできるだけそういう補償の生業補償、漁業補償、そういう問題を含めましてあるべき姿の意見書なりあるいは法案の形なり出したい、かように考えております。
  72. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 次に河野先生お願いしたいのでございますけれども、この指定地域については、特にいまの指定地域の周辺等についても広げていくべきであるという御意見を伺ったわけでございますけれども、窒素酸化物等の問題も今日重要になってまいっておりますが、特に大きい道路の両側など、こういうところは帯状と申しますか、そういう形でも指定というふうなものも行なわれていかなければならないのではないか、指定地域についての留意すべき点についてお聞かせを願いたい、これが一点でございます。  それからもう一つは、いまの対象になっていない、いわゆる指定疾病のうちで、先ほどからいろいろお話がございましたけれども、特に騒音等が人間の健康に被害を及ぼさないものかどうかについて教えてもらいたいと思います。
  73. 河野和夫

    河野公述人 特に私川崎におります関係上、川崎の例にとってお話ししますけれども、川崎市の場合にぜんそく患者の発生率を調べましてたとえば昨年の十月に川崎市の国保に請求書が出た国保の請求書の中からぜんそくの患者が何人月に医療機関にかかっているかという数を調べて、これを国保の加入人口で割って、人口千人対の率を出してみたわけですが、川崎の場合には、現在国の指定地域になっている地域だけが高いというわけでありません。逆に現在市が指定しております幸区のほうがこの月では高い結果が出ております。それから一番はずれにあります多摩区というところでも、たとえば人口千人対で七人という数字が出ております。全国平均で大体いま気管支ぜんそくの人口千人対率は二・三、二人をちょっと上回るぐらいが全国平均ですから、かなり上回っているということが言えると思います。ですから川崎市の場合には海岸に近いほうは亜硫酸ガス濃度が確かに高い、ところが高津区、多摩区というような、丘陵地帯に近いほうは局部的ではありましょうが高速道路が、第三京浜とか東名高速道路とか幾つもありまして、その上に市道、県道等も交通渋帯があるために、逆に海岸地帯を離れた地域でオキシダント濃度がかえって高いという地域もございますので、こういう結果も出たんじゃないかというふうに、私の個人の解釈として持っておるわけです。そういう点で現在は亜硫酸ガス濃度だけを尺度にして、その亜硫酸ガス濃度が高い地域で発生率が高ければ公害病とみなすということになっておりますけれども、やはり異常に閉塞性の呼吸疾患が高い、多発地帯であったら亜硫酸ガス濃度以外の因子も考えてそういう地域まで拡大してもらいたいというのが私の希望でございます。ことに現在市が実施しております幸区という地域では認定患者の数が現在二百十名あります。それから、川崎市では全市にわたって十二歳以下の小児ぜんそく患者を公害病とは別の形で医療費を支給しておりますけれども、同じく幸区で百六十四人が対象に申し出ております。そういう関係でぜひこういう地域、もうすでに自治体が独自に指定して国の法律と同じような方法で救済している地域は、住民感情等も考慮してこの際全部漏れなく含めていただきたい、こういうことでございます。  それからもう一つ何か……。
  74. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 騒音によって健康被害が起こるかどうかという点について……。
  75. 河野和夫

    河野公述人 確かに騒音による健康被害というものもあると思います。川崎市では東名高速道路のすぐそばに南平台団地という大きな住宅公団の団地がございまして、そこで騒音のために難聴が起こる、それからいらいらして非常に血圧が上がるということで、健康に被害があるということで住民が健康診断を希望しているという地域もございますので、これらもやはり一つ健康被害だろうと思います。
  76. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 河野先生からついでにもう一つだけお伺いしたいのですが、しからば今度のこの法律の施行にあたって、いわゆる公害疾病に騒音の健康被害というようなものも含むるべきであるというふうなお考えでしょうか。
  77. 河野和夫

    河野公述人 特に問題の起こっているそういうひどい地域は、できたら対象にされたほうがいいんじゃないかと思います。
  78. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 それからこれはまた河野先生で恐縮ですが、河野先生と、それから後藤公述人お願いしたいのでございますけれども、本法によると大体最終的な公害健康被害の認定は公害健康被害認定審査会において行なうというのが最後のあれになるようでございますけれども、若干の議論の中で特に主治医の方の意見というのが非常に大切ではないか、いわゆる審査会に出てきたときは書類の上の審査であって、なかなか実態は把握しにくいので、審査会としては主治医の意見を尊重すべきである、こういう議論もあるわけでございますが、これについて先ほど後藤さんのほうからは、どうも開業医の場合なかなか措信しがたいのではないかというような御意見もあったようでございますので、河野先生、お医者さんの立場からと、それから後藤さんの一般としての立場からとそれぞれの御意見を聞かしていただきたいと思いますが。
  79. 河野和夫

    河野公述人 現在の認定審査をしてます仕組みは、主治医の診断書が出ますと、一応必要な検査を行なって、その検査データ、それから胸部写真、それから主治医の診断書、地域によっては患者自身に書かせましたりあるいは保健所で保健婦が聞き取りをやった症状調査、これらを参考にして認定しておるわけです。実際に認定審査委員が患者を見ておるわけではありませんので、もちろん参考にはなりますけれども、やはり実際に患者を診療しておる主治医の先生でなければわからない問題というのはありますので、やはり主治医の意見が第一ということになると思います。ことに気管支ぜんそくというような病気の場合に、発作の起こってない間は全く普通の人と変わらない状態の日もあるわけで、その発作に出合った主治医でなければこれを否定するということは絶対にできないわけでございます。それから認定申請を乱用されるんじゃないかという御意見がありましたけれども、実際にいま認定申請されている患者というのは、実際に存在する患者の何分の一かでしかありません。むしろ医者がすすめても患者さんのほうでいやがるケースもございます。たとえば公害病患者というレッテルを張られたらお嫁にいけなくなってしまう、結婚の障害になるから苦しいけれども認定は受けたくないという人もございますし、それからまた医者というのはとかく社会的な問題には鈍いものですから、どうしても病気についてだけ配慮するという点がありますので、公害との関係を考えるよりはやはり病気の軽重を考えるということで、これは重いから認定患者に出そうじゃないかというような考え方がありまして、軽症患者までどんどん出すというようなことはむしろ少な過ぎるんじゃないかと私は思っております。
  80. 後藤清忠

    後藤公述人 先ほどの公述先生のお話もしごくごもっともと思います。だが中には便乗者はないということは、これは断言できないということは私は思うのです。ある程度の厳格さは必要だと思うので、なおせめて公立の一カ所か二カ所でも補足していただいたらなおけっこうと思います。その程度でございます。
  81. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 どうもありがとうございました。終わります。
  82. 佐野憲治

  83. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 社会党に割り当てをいただいた時間がもうオーバーをしておりますので、ごく簡単に質問をいたしたいと思います。  最初に伊東先生にお伺いをしたいと思うのですが、日弁連のこの意見書の中にも指摘をされておりますけれども、騒音、振動、とりわけ新幹線、航空機、道路を含めた、あるいは土壌、食品、薬品などの健康被害という問題についてこの法律は触れておりません。幾つかのところからその問題を含めてという議論が出されているわけですが、残念ながら法律の中には生かされていないわけであります。これがこのまま成立をするという事態になりますと、それらの問題が積み残されていく事態を実はおそれるわけであります。積み残された場合に、生業被害というものと健康被害というものを二本建てにして、たとえばこの法律の中にあとからこの法律を追加していく、いまのさまざまな条件を追加していくという立て方について、これはいま法律成立をする以前に聞くのも変な話なんですけれども先生の率直な御意見を承っておきたいと思います。
  84. 伊東正雄

    伊東公述人 日弁連のほうでは、ただいま御指摘になりましたような本年二月二十八日付で、あらゆる公害被害につきまして補償すべきであるということの意見を申し上げております。したがいまして、この公害健康被害補償法ではございますけれども、御修正の上にいま言ったあらゆる公害並びに公害被害の態様につきましても、健康被害に拘束されない広い立場法案化していただくということはたいへん私ども意見から言えばけっこうで、そうあるべきであると、こういうことになるわけでございますが、ただそれがこの審議におかれまして、そういうことがどのように生かされるかわかりませんですが、ただ、法案の中で、法案の形式といたしましてそういうような被害については別に法律で定める。これは移動発生源か何か、そういうここに内容でございまするから、法案の形式としてはできないわけではないと思います。そういうことでございますし、それもどうしてもできないということでございましたら、附帯決議で必ず次回には法案化するというようなことを御決議いただければたいへんしあわせだと思うのです。
  85. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 もう一つ先生にお伺いしたいのですが、移動発生源、とりわけ自動車の賦課方式の問題について、この答申の中にも実は原燃料賦課方式やら重量税方式やら適用されているわけです。この賦課方式の問題について日弁連の中で、あるいは先生個人としてどういう方式がいいかという課題について検討なさったことがございますか。
  86. 伊東正雄

    伊東公述人 これはまだ日弁連のほうで具体的に検討して一つ意見という形ではまだいたしてございません。
  87. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 先生の個人のお考えでもけっこうですが……。
  88. 伊東正雄

    伊東公述人 これはやはり自動車のいろいろな問題もございまして、ここでこれがいいということを私として現在において申し上げるまでに至っておりませんですが、これが現在の法案化されますと、これは別に法律ということでございますので、やはり日弁連もこれに対応していかなければならぬ、かように考えております。
  89. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ありがとうございました。  次に、池尻公述人に伺いたいと思うのですが、先ほど池尻さんは、数年前からこの被害に対する考え方として二つの立て方をなさっておられたというふうに伺っております。たとえば健康、生命に対する被害、もう一つは漁業、特にそこでは財産、生業の問題という立て方を指摘をされたわけでありまして、最近、政府あるいは自民党が水銀PCBあるいは赤潮の発生に伴う漁獲禁止水域をつくって、その中で汚染源と見られる企業に漁業補償を行なわせるという考え方、つまり漁獲禁止に伴う特別措置法案という名前がかりについているようでありますが、こういう考え方が実は成り立っていて、もう一つは、発生源が必ずしもつまびらかでない問題については、この法律と同じような方式で法律体系を考えようというふうに伺って、政府自民党の立法化の動きがあるようでありますが、それについて全漁連はどのようなお考え方をお持ちになるか、その場合に、最低盛られるべきいわば要求といいましょうか、主張といいましょうか、そういうものについてお伺いいたします。
  90. 池尻文二

    池尻公述人 無実な魚を救うために一部の水域を隔離して、やむを得ない場合にはそこで漁業操業の禁止を暫定的に行なうということは聞いておりますが、この場合もそれの補償は当然加害者負担原則を貫く。汚染源が明らかでない場合の措置といたしまして、いま御指摘はこの法案のような体系でというふうにおっしゃいましたけれども、まだそこまで自由民主党の先生からは私はっきりと聞いていないわけでございます。いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、非常に魚の信用を失墜いたしまして、魚そのものは決して危険でも何でもないわけでございますけれども、現実に売れなくなっているというようなものに対してそれをどうするかという問題は、先ほど菅波先生の質問に対してお答えいたしましたけれども、そういうものも含んで全部一緒くたにしてこの器の中に盛り込んでいくというふうになるのか、あるいは現在の水銀PCBのいわゆる間接的にずっと広がっている被害というものについての救済対策のあり方というものは、それはそれなりに考えれば出てくるんではないだろうかということで、一応この制度と全く一緒のカテゴリーの中でそうしなければならないというふうには、私どもまだ考えておらないわけでございます。
  91. 佐野憲治

    佐野委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕
  92. 佐野憲治

    佐野委員長 速記を始めて。
  93. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いま池尻さんからお答えがありましたけれども、たとえば特定の原因が明らかでない赤潮の問題そういう問題がやっぱりあるわけですね。そうしますと、それはそれとして、つまり生業補償の問題は別建てで考えていくという考え方のほうがいいと思うのか、つまり、この法律と別にお考えになったほうがいいのか。その点について御意見を承っておきたいと思います。
  94. 池尻文二

    池尻公述人 漁業被害の典型的なものとしての赤潮と、もう一つは油の汚濁の被害があるわけでございます。こういう問題は、私は先ほど申しましたようにこの法律の延長としてでもいいし、あるいは別の基金制度でもいいしというふうに考えております。ただ、午前中にもお断わりしましたけれども公費負担原則という問題についてなかなかいろいろとやかましい議論もされておりますけれども健康被害の場合と財産被害生業補償の場合は、公費負担をめぐっての考え方にひとつ問題は必ず出てくる、こういうふうに考えております。
  95. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 時間がないそうですので、もう一、二問ほどお願いをしたいと思うのですが、これは河野先生にお伺いしたいと思います。  いま先生御指摘のとおりに、私も実は川崎に住んでいるわけでありまして、線路一つを隔てて、片方が国の認定地域、片方が市の認定地域ということになっているわけですが、現実に医師会などの調査も含めて、線路一つ隔てた、たとえば川崎区と幸区の空気の汚染状況あるいは空気の移動の状況あるいは有症率の問題、有病率の問題その他についての矛盾を先生やはり日ごろお考えになっていらっしゃると思うのですが、その点について御意見を承っておきたいと思います。
  96. 河野和夫

    河野公述人 汚染度につきましては、確かに一番海岸地帯に近い大師とか田島のほうが高いわけでございますけれども、川崎区の駅周辺の汚染状況と線路一つ隔てた幸区の汚染状況と、そう大きな差がございません。  それから先ほども申しましたように、幸区における気管支ぜんそくの患者数と川崎区における気管支ぜんそくの人口に対する割合でいうと、今回の調査では逆に幸区のほうが高いような結果が出ておりますので、当然幸区は指定地域に入れていただきたい、このように考えております。
  97. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 あと一問だけお願いしたい。これも河野先生にお伺いいたしたいと思うのですが、今度の四十六条で公害保健福祉事業の問題が指摘をされております。これは多くの先生から御指摘をいただいたように、ただ一条だけそういう文章があるだけで、内容については全く触れられていないわけでありますけれども、現実に川崎で地方自治体としてやっている問題もありますが、最低、これらの保健福祉事業の中で患者の健康を回復させる事業としてはどんなことが考えられるべきか。先ほど先生もこの点について若干触れておられましたけれども、この点について御意見を承っておきたいと思います。
  98. 河野和夫

    河野公述人 特に気管支ぜんそくの場合に、重症な状態になりましたときには、絶えず監視するというような治療が必要でございますので、そういう重症患者をいつでも収容できる公害病専門のベッド、それも集中監視システムのできるICUを備えたような救急病室、それから川崎市では、現在社会保険川崎病院に市が補助金を出しまして、三十床ばかりの空気清浄病棟というのをつくっております。ここでの話を聞きますと、軽症の発作の場合にはそこへ入院させておくだけで二日間以内に発作がとまってしまうということで、たいへん役に立っておるようでございます。ですからこういうものもぜひ備えなければならない。  それから気管支ぜんそく患者の、ことに小児の場合にはしょっちゅう病気で学校を休むために、学業に差しつかえるという問題がありますので、川崎市では青空学園というものを市の丘陵地帯に設けまして、そこに入院と学校をかねたような施設をつくっておりますが、こういうのもぜひ必要ではないかというふうに思っております。  そのほかに転地療養、ぜんそくの場合には転地療養が非常に有効ですから、転地療養できるような何か保養施設とか、それから公害病の診断のために、また認定のために必要な検査ができるような検査センター、こういうものも必要じゃないかと思います。
  99. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 どうもありがとうございました。
  100. 佐野憲治

    佐野委員長 一応委員長から御報告さしていただきます。  ただいま伊東正雄公述人は、午後四時から法廷において証人として出席しなければならないというので、退席の旨了承を求めてまいりましたので、これを許しました。  なお、伊東公述人に対する質疑がありましたら、文書をもって提出していただければ、伊東公述人から後刻返答する、こういう申し出もありましたので、申し添えておきます。  続いて、木下元二君。
  101. 木下元二

    ○木下委員 改井公述人加藤公述人河野公述人に伺いたいと思いますが、この大気汚染による指定疾病につきましては、川崎ぜんそくであるとか四日市ぜんそくなど、硫黄酸化物を主原因とする現行救済法上の認定疾病を指定疾病とするという考えのようでありますが、たとえば光化学スモッグ、鉛中毒、一酸化炭素中毒などの自動車の排気ガスが主原因と考えられる疾病は指定疾病として採用されないような動きのようでありますが、この点について、こうした自動車の排気ガスが主原因と考えられる疾病を指定疾病とするべきではなかろうかと思うのですけれども、御見解を承りたいと思います。
  102. 改井秀雄

    改井公述人 お答え申し上げたいと思います。  いま、私どもの地方都市におきましては、そういう測定を相当広範にわたってやり始めておる段階でございます。逐次、そういう実態が把握できるようになるのではないかと思いますが、現況ではそれに先行しておるものがありますので、そこを重点に申し上げておるということでありまして、御了承をいただけるのではないかと思います。
  103. 河野和夫

    河野公述人 鉛の公害のように、客観的に排気ガスによって鉛の中毒が証明されるような例につきましては、やはり公害病に認定すべきであると思います。  それから、光化学スモッグについても、この法案では触れておらない点について問題があるということで、できたら含めるべきであるという考えは先ほど申し述べました。
  104. 加藤寛嗣

    加藤公述人 自動車の鉛公害について、どういう疾病があるのかということについては、当市のほうではまだつまびらかにしておりませんので、これはもう少し研究をさしていただきたいと存じます。  それから、オキシダント、いわゆる窒素酸化物による公害でございますが、これはすでに四日市にあります県の公害センター等で詳細な観測を続けております。ただ、オキシダント公害によって起こります疾病と申すのが、私の聞き及びます範囲では、硫黄酸化物によって起きます疾病とほとんど同じような疾病であるというふうに聞いておりますので、四日市ではそれだけを取り上げて云々ということでなしに、いわゆるぜんそく患者、閉塞性のぜんそく患者を取り上げておりますので、もう少し研究をさせていただきたい、かように存じます。
  105. 木下元二

    ○木下委員 改井公述人加藤公述人に伺いますが、この障害補償費の額の問題でありますが、これにつきましては法案の二十六条に規定がありますが、結局のところ政令にゆだねられているかっこうであります。全国の性別、年齢別による労働者の平均賃金というのが障害補償標準給付基礎月額ということになるようであります。平均賃金の八〇%ですね。  そこで、これはいろいろ問題があるわけなんですが、伺いたい一つは、この平均賃金をなぜ基礎にするのかという問題なんです。これは行政事務の画一化と申しますか、一律化のために割り切ってやるのだ、こういう説明を政府のほうからもらっておるのですが、しかしこれは非常な不合理さを含んでおると思うのです。特に平均賃金より高い所得の場合にこの不合理さは顕著であります。この制度というのが、いわれるように民事責任を踏まえた損害賠償制度というならば、これは明らかに矛盾しておると思うのです。結局この画一化とか一律化の要請というのは、こうした行政事務の迅速性あるいは能率性といった観点から求められていると思うのですね。しかし、この迅速性や能率性をそこなわずにこうした不合理さをなくすことは可能ではないかと私は思うのです。たとえば、平均賃金より高い所得が証明されるときは、その所得を基礎にして処理をするというふうな、そういうことにいたしましても所得証明の手続というのは決してさほど複雑ではないし、煩瑣ではないと思うのです。だからこれによって格別手続が遅延するわけでもないと思うのですが、こうした問題については、行政事務を担当しておられます公述人といたしましてどのようにお考えでしょうか。
  106. 改井秀雄

    改井公述人 お答え申し上げたいと思いますが、この辺になりますと相当争いの出るところだと思います。いま一番大きな一つの補償問題といたしまして、自動車の損害賠償等が大きくわれわれの前に横たわっておるわけでありますが、そういった問題におきましても非常にその個人個人の生活に関連をして算定されておるわけでありますが、そういう観点からいいますと、画一的な方式というのはなかなか問題があるのではないかと思いますが、私どもはいままで十分にその点についてなお研究がされていないのではないかというふうな感じがしておりますが、これはいままでのところの感じであります。
  107. 加藤寛嗣

    加藤公述人 平均賃金の八〇%ということがいわれておりますが、四日市ではすでに裁判あるいは自主交渉等の結論が出ております。したがって、裁判や自主交渉等の結論との比較においてこの問題が論ぜられておるというのが現実でございまして、まあ問題はあろうが、その問題を論ずるよりも、先に、とにかく法律を早く可決してほしいという希望が非常に強いということでございまして、その問題についてはまだまだこれからいろいろ研究をしなければならないかというふうに考えております。
  108. 木下元二

    ○木下委員 それから、補償給付の制限というのがあるわけなんですが、四十二条にあります「被認定者又は認定死亡者が、重大な過失により、指定疾病にかかり、指定疾病による障害の程度を増進させ、指定疾病がなおるのを妨げ、」云々とあるわけであります。そういう場合には「補償給付の全部又は一部を支給しないことができる。」こういうたてまえになっておるのですが、これは河野公述人お願いいたしたいと思いますが、この重大な過失により指定疾病にかかったとき、こういうことが実際に起こり得るのでしょうか。それからまたこの重大な過失により指定疾病による障害の程度を増進させるというのはどういうふうな場合をさすとお考えでしょうか。こういう場合は私はないように思うのです。そういう点についてのお考えを承りたいと思います。
  109. 河野和夫

    河野公述人 「重大な」という表現がついておりますので、具体的にどういう場合があるのかちょっとわかりません。あまり該当するものがないのじゃないかと思います。重大じゃなく、過失というようなことになれば、広く範囲をとっていけば——閉塞性肺疾患の場合にはたばこは一番悪いわけでございますが、たばこを吸ってて治療して医者の言うことを聞かぬということまでこの制限条項に触れるとするならば、この条項はたいへん問題だろうと思います。
  110. 木下元二

    ○木下委員 それから同じ条項に「指定疾病がなおるのを妨げ、」とあるのですね。「重大な過失により、指定症病がなおるのを妨げ、」というふうに読むのだと思いますが、「妨げ、」というのは故意のような感じがするので、どうも重大な過失と結びつかないような感じがするのですけれども、これは一体どういう場合に当たるとお考えになるか。わかりませんか、わからぬならわからぬでけっこうでございます。
  111. 河野和夫

    河野公述人 先ほど述べただけのことです。わかりません。
  112. 木下元二

    ○木下委員 公害病患者の人格を無視するもはなはだしいと思うのですが、それはさておきまして、最後にもう一つ聞きますが、これはどなたでもけっこうですが、汚染負荷量賦課金ですね。賦課金の額というものがきめられる。これは単位排出量当たりについてきめられるということでありますが、これは五十四条できめられております。非常に五十四条というのはむずかしい条文になっておりますが、結局これもその具体的な額については、この条文によりますと、「当該物質による大気の汚染の状況に応じた地域の別に従い、政令で定める。」こういうことになっております。つまりその賦課金の額が大気の汚染の状況に応じて地域ごとに違うのだということになっておるのです。地域によって額が違うという点は、これは非常に私は問題があると思うのですが、そういう地域ごとに賦課金の額を定めていくという方法がとられておる。この点はいかがお考えでしょうか。むしろ地域ごとということでなくて、たくさんの汚染物質を排出をずる企業ごとに——企業によってたくさん排出をする、その企業ごとに負担額が違うというのならわかるのですね。累進賦課方式というふうに私たちは呼んでおりますけれども、そうではなくて地域ごとに額が違ってくるということになると、たとえば尼崎と西淀と額が違ってくる。いろいろ具体例があると思いますが、そういうことについてはどのようにお考えでしょうか。
  113. 後藤清忠

    後藤公述人 最初のほうのお説はまことにもっともと思います。結局これは地域ごとじゃなくて、企業の排出量、つまり煙突の大きさとかそういうようなものによって賦課するのが妥当と思います。地域ごとということになると、先ほどおっしゃられたとおりに、地域によって全然違う額が出る、これは非常に不合理だと思います。やはり煙突の容量とかそういうようなもので企業ごとの賦課か妥当だと思います。
  114. 木下元二

    ○木下委員 それではその問題を終わりまして、最後に島田公述人に尼崎の状況を伺いますが、先ほど言われましたように、救済の対象となる疾病を四つの病気に限定をするということをしないで、目や鼻、のどの疾患にも適用されたいという御意見がありました。実際に目や鼻、のどを痛めておる人たちというのはたくさんおるでしょうか、また、おるとすればどういう層の人たちでしょうか。その実態、実情についてもう少し詳しく伺いたい。
  115. 島田実

    島田公述人 私は、尼崎に公害患者家族の会というものができております、そこの代表世話人をしておる。で、いろいろな患者さんからいろいろな相談を受けるわけです。学校のほうにもちょいちょい顔を出すわけなんです。学校の先生の話を聞きますと、たいがいの子供さんは鼻が悪い、目も悪いということですね。私も町を自転車に乗って会員さん、認定患者さんの家を訪問するのですけれども、目に粉じんですか、かねが入る場合があるわけなんです。それでどうしてもめがねをかけて出歩くことが多いわけなんです。それと、鼻とのどですけれども、これは、おとなでもそうですけれども、たいがいの患者さんが耳鼻科に行かなければいけないというような状態です。それで、これは政府なりこの委員会からでもけっこうです。現地を調査してもらったらこの答えははっきりしたものが出てくると思うのです。それで、先ほどから木下先生もおっしゃっておりましたが、この公害被害者補償法案は、患者を取り締まるものでなく企業を取り締まってもらわなければ、私は公害患者としましてはなはだ残念にたえないような次第です。
  116. 木下元二

    ○木下委員 それから児童の健康被害の問題ですが、この児童あるいは生徒の公害病による健康被害というのが大きな問題になってきておるというふうに聞いておるのです。特に教育の上で大きな支障を来たしておる。そこで教育現場の、学校ですね、学校などの状況について伺いたいと思うのです。  尼崎の認定地域で小学校あるいは中学校を含めて幾つくらいあるのか。それで、認定患者の児童、生徒の数、状態、そしてそれに対する施設、そういう問題について、簡単でけっこうですから。
  117. 島田実

    島田公述人 尼崎の場合に認定地域内に——私は役人でも何でもございませんので資料も何もございませんが、約二十校以上の小学校、中学校がございます。そして、私の住所は尼崎の杭瀬にございます。杭瀬小学校の例で申し上げますと、一昨年は、認定患者の子供さんは三十六名でした。ところが去年は、その倍の七十名の、認定患者の子供がおるということです。ことしは、それよりまだ多くなりまして、七十名を突破して八十名近い患者さんがございます。そして保護教員がたった一人でやっているというのが現状でございます。だから、金を出して救済したからそれでいいというものではないんだと私は思います。たとえば指定地域内の小学校を見ますと、うがいする設備すらない学校が現実に尼崎にはございます。うがいする設備、うがい薬のついた学校は、尼崎には一つもございません。これは基本的な人権である子供の健康を守らなければいけない文部省が何を一体考えておられるのかということなんです。私たちは子供を学校に預けるときには、安心して子供を学校にやれるような状態にしていただきたいわけなんです。それで、先日、尼崎において光化学の被害者が出ました。杭瀬小学校で四十四名の子供がそのために倒れました。難波小学校で約百名近い子供が倒れ、大庄西中学で約三十名ぐらいの生徒さんが倒れたわけです。そのときに保護教師が一人しかいないということは、はたして——この政治そのものが人間を本位に考えてくれる政治でなければならない、私はそう思います。ところが、現実にそういうような設備すらつくってくれないということにつきまして、私は、一体どこを信用していいのかさっぱりわからないというのが現状でございます。だから、これから、光化学の被害も出てきていますので、できることなら——大気汚染被害、その上に光化学の被害をこうむった場合に、人体に及ぼす影響はたいへんなものだと私は思います。そのために、公害患者がその被害のためになくなる可能性もあるんじゃないかと私は思います。私は医者でないので、はっきりしたことはよう申しませんが、その点、十分政府に考えていただきますように、委員会からひとつよろしくお願い申し上げたいと思います。
  118. 木下元二

    ○木下委員 それからあなたの公述の中にあったのですが、会社から退職をほのめかされたり、首になることをおそれて、患者であることをひた隠しにしているという状況があるようですが、どうも一般の人から見ますと、何もそこまで隠さなくてもよいと思われがちなんですが、どうして一体隠すのでしょうか。また、そういう人たちをあなた自身知っておるのでしょうか。またあなた自身の体験からいって、そういうことが言えるのかどうか。そうしたことについて、簡単でけっこうです、最後に……。
  119. 島田実

    島田公述人 つらいことには、私たち、企業のために公害病認定患者になり、それがばれると、企業のほうはおそらく使ってくれません。私も、現実におととし、会社の名前は伏せますけれども、セールスをやったことがございます、二つの会社で。そしてセールスの途中で発作のために倒れまして、二つともやめなければいかぬというような状態になりまして、やめました。現実に、いま安定所に、私は公害病認定患者ですと言っていきますと、どこも相手にしてくれません。自治体の市役所ですら、君のからだには無理だというような形で、現実に断わられております。  それと、これは名前は伏せさしていただきますが、年老いた公害認定患者、五十歳以上の方はみな条件の悪い会社で働いております。それというのも、救済制度そのもので食事はできません。そして物価値上がりの影響で一番大きく被害を受けるのは、公害認定患者であって、私らには物価スライドも何もございません。政府のきめてくださった手当三千円は、まだそのままの状態で、いまずっと現実に来ておる。七月から千円上積みされるような形になっておりますが、少なくとも公害認定患者というて、もしそこの会社が首になった場合に、次雇ってくれるところがないので、皆さんは公害患者を伏せて、無理しもって仕事をやっているように、私はそういうぐあいに思われます。
  120. 木下元二

    ○木下委員 以上で終わります。
  121. 佐野憲治

    佐野委員長 岡本富夫君。
  122. 岡本富夫

    ○岡本委員 公述人の皆さんには、たいへん、午前中、午後とお疲れのところですが、もうしばらくごしんぼう願います。  そこで、まず最初にお聞きしたいことは、改井さんに……。富山市が公害の指定地域にまだ入ってないわけですが、私は、四十五年だったか、尼崎を公害の指定地域にしていただくために、ずいぶん委員会でやりましたのですが、地方自治体で、すでにこうして指定地域にしておる。ところが国のほう——当時は厚生省たったですね。厚生省がもう一度調査しなければしないというようなことで非常におくれたわけですが、現在ですと、あなたのほうで、いま環境庁のほうに指定地域にしてもらいたいという申請はなさっておりますか。それから環境庁からどういう動きがありますか。これをひとつお聞きしたい。
  123. 改井秀雄

    改井公述人 お答えいたします。  先ほどもちょっと申し上げたところでありますが、四十五、四十六年の調査の結果、部分的に基準を越えておるところがありましたが、その後、市は、公害防除対策というものを非常に積極的に進めておるところなんであります。先ほども申しましたように、各企業とも協定を結ぶなど、いろいろ大気汚染防止についてやってまいりました。したがいまして、ずっと引き続きやっておりますデータでは、いままで厚生省の示されております基準を下回ってきております。したがいまして、申請をいたしましても、これは指定にはならぬだろうからという理解をして、今日まで来ております。
  124. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうすると、環境庁のほうには申請はしていないということなんですね。——実は、環境基準というものが見直されまして、現在の〇・〇五PPM——亜硫酸ガスですが、これ以下でも、どんどん被害が出ておるというわけで、今度この環境基準を見直すということになっておりますから、やはりこれは申請をなさったほうがいいのじゃないか。それで、市の独自の問題も非常に多くて困るのじゃないか、ましてこの法律が通りましても、そういうことだったら、結局申請しなければ、いつまでたってもしないということでございますか。  時間があまりありませんから、そこで、尼崎の島田さんでしたかね、現在入院手当も少ないのですが、通院手当、十五日以上通院しますと四千円、これは四十八年十月から五千円になりますけれども、通院するのにバス代が要りますね。そうすると、一ぺん行きますと、今度バス代も上がりましたし、それから四日以上十五日未満が三千円、これが四千円となりますけれども。こういうことになりますと、とても通院ができないのではないかというように思うのですが、自分で身銭切ってやっているんだろうと思いますけれども、この点の実態を教えてもらいたい。  それからもう一つは、私どもの調べた調査によりますと、鼻炎が非常に多いのですね。小学校のお子さんがよその五倍くらい来ているという医師会の発表が出ているわけです。こういうものも指定疾病にしてもらいたいというのがあると思うのですが、そういう点お気づきでしたら聞かしてもらいたいのです。  もう一つは、尼崎の現在の大気汚染の八〇%というのが、関西電力の尼崎発電所。いま電気が足らぬというわけでフル操業をやっていると思うのですが、これは尼崎市長と関西電力で協定を結んでいるはずです。ですから、これは当委員会でも前にも一ぺん調査したことがあるわけですが、市長はその協定書に基づいてどういうように関電に対して申し入れをしておるか、あなたが知っておる範囲でお答えいただきたい。
  125. 島田実

    島田公述人 先の質問のバス代の件でございますが、実は、私ら政府からいただく金は、何の足しにもなっておりません。実際、月十五日以上通院しまして四千円もらっても、これは何の足しにもなってません。ただ単に患者救済としての意味のものであった場合には、患者が安心してお医者に行かれるような救済制度をしいてほしいわけです。  現実に、いま岡本先生もおっしゃったように、私らは、医者に行くにもバスに乗らなければいかぬ人があるわけですね。それで人によったら、老人の場合には、タクシーをお願いして病院まで行く方があるわけです。それというのも、年いってきたら、つえをついてバスに乗って県立病院の塚口に行く——これはハスに乗っていくほうが無理なんです。私自身、東京に出てきますのも、医者と相談しまして、だいじょうぶだろうということで来ているのですが、実際いつ発作が起こるかもわかりません。  だから、病人を救うという意味からしても、やはり政府そのものが、公害問題につきましては、これは人間を救う法律でございますので、そこのところはもうちょっと血の通った法律をつくっていただきたい。  二点目の鼻炎のことでございますが、これは先ほど先生おっしゃったとおり、尼崎市内の全校の生徒さんは、非常に鼻炎の方が多いということです。  それと三点目の関西電力でございますが、昨年七月二十六日から、尼崎において、関西電力の取締役加治木さんに出ていただきまして、四回の住民集会を持ちました。その結果、公害患者被害者基金ですか、市がやっています、その金を出して、次に私たちが本社に行って集会を申し込んだところ、金を出したんだからもういいだろうというような形のもので、いまのところ全然話し合いをしてませんし、市のほうも何べんか、企業に対して、集会を持つようにということでやってもらっていますけれども、関電のほうからはいい返事が来ていないというような状態です。  それと、現実に、先ほど岡本先生がおっしゃったように、尼崎において、六月、七月、八月が最悪な状態なんです。それというのも、南西の風に乗りまして、それが南部から東のほうにかけて、公害指定地域の上空をよごすわけです。実は私、科学者でもないので、詳しいことはよう言いませんのですけれども、できましたら関西電力が——私も電気が要るということは十分知っていますし、電気がなかったらまた生活もできないことは十分知っています。だから、電気が要らないと言いませんが、できることなら公害対策はちゃんとして、電気を起こしていただきたい、こういうのが私ら患者の願いでございます。
  126. 岡本富夫

    ○岡本委員 それから後藤公述人ですか、先ほど医薬分業の話が出ましたが、確かに私も薬をもらったことがありますが、たとえばおなかが痛いあるいは歯が痛い、いろいろなところがありますとそれぞれの医者へ行くわけですね。そうすると、薬をそれぞれくれる。それをみな飲むとぐあいが悪いわけですが、だから適当にセーブして捨てているわけですけれども、医薬分業がなぜできないのか。政府としてやらないのか。ぼくら提唱しておるのですけれども、あなた、どういう考え方を持っていますか、ひとつ……。
  127. 後藤清忠

    後藤公述人 現在の状況では、私は先ほども申しましたように、保険基金がお医者さんから薬の請求をされているのをお支払いになっておる限りは、おそらく医薬分業はできないと思います。これは諸外国では、お医者さんの投薬は禁止しておりませんが、薬代は払わないという原則になっています。これが医薬分業の原則でございます。そのように保険基金がお金を払わなかったら、いやでも処方せんを出すと思います。そのような改善方法で解決できるのじゃないかと思うのです。  それはたぶんお医者さんも御同席ですから、そんなことをされたらと言われるかもしれませんが、国民のためから考えましたら、どうしてもそういうようにして必要なだけの薬しか患者に渡さないようにしてもらったら、そんなにぎょうさん薬を飲まんならぬ必要はないはずなんでございます。実際私らでも病気して薬を飲んでおる場合もありますけれども、薬のほんとうにきくものは一色でききますわ。たとえば下痢してワカマツ三錠飲んだらこれでけろりとなおるのです。それがお医者さんに行きましたら、ものすごいぎょうさんくれますわ、先ほどお見せしたように。これは七色も八色もざっとくれますのは、実際におかかりになった方は委員の方の中にもたくさんあると思います。現実に田中総理さえも、薬はやり過ぎだ、こんなことしていたんじゃどうもならぬと言われたことをラジオで聞きましたが、現実にそういう必要なものじゃないんですわ。歯が痛いといったら、たとえばバッファリンくれるところもあれば、あるいはアスピリンで押えておけ、あるいはナロン飲んでおけといっていろいろくれますが、一色飲んだらこれでけっこうききますよ。それを七色も八色も、飲む必要のないのを何でくれるかということは、やはりお薬代をお医者さんに払うからですわ。ですから、払わなかったらいやでも分業いたします。そういうようにして私は解決できると思っております。
  128. 岡本富夫

    ○岡本委員 河野先生にちょっとお聞きしますが、私は、一つは医師の技術料というのですか、これを非常にはっきり見てないと思うのですね。たとえばお産するときに、通常分べんで三時間かかっても四時間かかっても安くて、帝王切開すれば非常に高いというようなことで、そういうのはやはり医者の技術料というものをはっきり見ていないということが一つの障害になっておるのじゃないかということが一つと、それから話が余談になりましたが、実際に公害患者を認定するときに、地域指定なくとも、大体この辺はこういう非常に大気汚染がある——水質汚濁のほうは、もう地域指定はありませんから、これは原因者はわかっておるのですから、そういうようにすれば、たとえば一本道路があるから隣は——まあ尼崎でも川崎でもそうですが、こっちは指定されている、こっちは指定されてない、同じ煙はかぶっているというようなことですから、私は、地域指定なくしても、大体医者の判断で、この方は公害病である、この方は公害病でないということがわかるのではないかというようなことを考えるわけですが、その点についての、この二点についてひとつお聞かせ願いたい。
  129. 河野和夫

    河野公述人 第一に、診療報酬の問題について、先ほども例をあげましたが、気管支ぜんそくのような病気の場合に、夜間発作が起こることが多いわけです。ところが、現在の健康保険の料金では、時間外の加算というのは、外来患者についてのみ一回三十円の加算がつくだけで、医師一人だけじゃなく、看護婦まで時間外に働いても、その時間外の手当を出せるような額ではございません。それ以外にもいろいろ、たとえば水俣病のような病気になりますと、リハビリテーションのような治療が非常に重要になると思うのですが、現在日本の医療費の体系の中では、たとえばマッサージを全身しましても百五十円というような低料金でございまして、とても成り立つものではございません。  それから地域の指定問題ですが、これは、大気汚染の影響による疾患の場合には、イタイイタイ病とか水俣病のように、特定物資が体内に滞留しているという証明ができませんので、ちょっと医者の判断で、これは大気汚染に基づくものか基づかないものかということは非常に困難なわけです。だから、やはり大気汚染が現に存在する地域で患者が多発しているときは、一々原因を問わずに、その指定疾病についてはもう公害病患者とみなすというふうに割り切って考えないと、一人一人の患者について、これは公害に基づく、大気汚染に基づく気管支ぜんそくなのか、別の原因によるのかということは、非常に判断が困難ですので、やはり大気汚染が著しい地域という地域を定めることは、どうしても必要だと思います。ただ、現在の状態では、あまりにもその範囲がちょっときびしいんではないか、もう少しゆるやかにその周辺まで広げていただきたい、こういうふうに考えます。
  130. 岡本富夫

    ○岡本委員 最後に池尻公述人に……。  今度のこれは健康の被害の損害補償だけですから、私たちは非常にこれは不満としているわけですが、それはそれとして、現在、漁業者の皆さんですね、全国的に水銀PCBの含有された、汚染された魚というものは、ほとんど企業から休業補償が出て、そして漁業規制していると思うのです。したがって現在出回っている魚はほとんど安全であるというように私たちは解しているのですが、この間、厚生大臣が安全宣言しますと、とたんに売れなくなった、こういうようなことで、非常に漁業者の皆さんがお困りであると思うのですが、これについて、漁業者の組合の幹部の方として、どうしたら一番いいのかということを、ひとつ適切な手段がありましたら参考に答えていただきたいと思います。
  131. 池尻文二

    池尻公述人 魚の信用を回復することが、もう第一だろうと思います。今次の汚染原因は、私は厚生省そのものが誤った発表はしてないと思っております。発表のしかたが非常に不手ぎわだったということは、これはもう非常に大きな責任だろうと思いますけれども……。極端なことを言いますと、何々川のここでは、ただ一種ウナギがPCBの基準を上回っていた、ここのスズキとコノシロが上回っていた。あるいは水銀におきましては、まだそのときは基準は発表されていないときでございましたが、水銀PCBが一緒に重なりましたということもありまして、全体の魚があれだけのいわゆる国民から不信を食らって、現在もあまり売れていないというような状況だろうと思います。  そこで、まず、政府といたしましても、また国会におかれましても、現在のPPM方式というのは、なかなか国民には理解されにくいものでございますが、理解はされなくても、あれの持つ科学的な意味というものはPRしてできないことはないと思います。たとえば水銀の〇・三PPMにいたしましても、満度にどこの水域の魚もあれだけよごれておるとすれば、アジは十二匹しか食べられませんよという発表をしたわけですけれども、決してそういう状況にはなっておらないわけですから、一般の魚というのはいわゆる安全であるということが立証されると思います。ただ、PPMの議論ばかりいかに力説をいたしましても、国民の皆さまにはまだまだ納得いかないわけでございますので、先ほど申しましたように、どうしてももうこの水域は、かつての水銀のヘドロがたまって、一部魚には相当の基準値の高いものが濃縮をするというようなところは、明らかにいわゆる市場から隔離する意味で、暫定的に操業を禁止させる。そしてそこの漁場の埋め立てをするなりあるいはヘドロの除去をするなりをして、漁場の回復というものを相当の時間をかけてやります、したがって、ある程度危険性のある魚というものは一応シャットアウトいたしましたということが、まず非常に必要なことだろうと思います。次には、生産、流通の各段階において、絶えず検査がホローしているということが非常に必要だと思います。たとえば私どもも消費者でございますので、食卓にのぼされた魚はどこかの関所を通ってきているというその安心感さえあれば、国民皆さま方には最終的に魚の信用というものは定着してくる、かように考えます。したがいまして、科学的な意味における魚の正しい科学的なPRと同時に、やるべきことは総合的にこの際何でもやっていくということが非常に必要ではないかと思います。同時に、汚染源、たとえばPCBにしましても水銀にいたしましても、汚染源の根を断つということは絶対に必要なことは言うまでもない、かように考えております。
  132. 岡本富夫

    ○岡本委員 約束の時間がちょうど二十分ですのでこれで終わりますが、あと委員長、日弁連先生に質問しょうと思っておりましたので、その点はひとつよろしく御配慮のほど……。
  133. 佐野憲治

    佐野委員長 ひとつ文書提出してください。  土井たか子君。
  134. 土井たか子

    ○土井委員 きょうは、わざわざ遠路はるばる公述のためにおいでをいただきました方も中にいらっしゃるわけでありますから、たいへんにふだんから健康を害していらっしゃる上に長時間の御労苦でおつかれのところと思います。端的に二問だけお尋ねをいたしたいと思います。  一つは、現行法にございます公害に係る健康被害救済に関する特別措置法、これは御承知のとおりに四十四年につくられたわけですが、四十四年につくられて以後、この法律それ自身に対していろいろな批判がある中で、特に一つは指定地域制に対する批判というものは現に被害者方々の中から強く出ていることは御承知ところであります。  ところで、きょうおいでをいただきました能松さん、高岡にお住まいの能松さんでいらっしゃいますが、以前この法律成立される前から自治体のほうでは独自で医療救済措置を施していたわけですね。それにもかかわらず四十四年にこの特別措置法が制定されて以後、指定地域からははずされております。きょうも御発言の中に、やはり指定地域に指定をしてもらわなければ困るというふうな御趣旨の御発言があったわけでございますけれども、この点はほかに、やはり四十六年になって富士市あたりも独自の医療給付を行なうというふうなことを、たいへん限られた地方自治体の財源の中から無理をしてやらなければならないという実態があったりいたします。きょういろいろ御質問をさせていただいた中にも十分に出てまいったわけですが、指定地域の拡充ということはどうしてもやらなければならない問題だと私は思うのですが、ひとつ能松さんに、この特別措置法が成立をして以後指定地域からはずされたことに対しての理由をお聞きになっていらっしゃるのならば、どういうわけではずされたかということを一つはお尋ねしたいわけであります。それからその後に今日に至るまでこの地域指定にしてもらうことのためにどういうふうな努力を積み重ねてこられたかという点も、簡単でけっこうでございますから経過について御説明を聞かせていただければ幸いだと思います。お願いいたします。
  135. 能松義次

    能松公述人 お答えいたします。  私のところは早くから非常に大気汚染のためにまっ黒の中に六百戸の世帯主が生活しておるのであります。そこでぜんそく患者が非常に多量に出たために、地方の市長に向かって、これはどうするんだ、こんなことをほっておいてだめだということで、その他県知事にも申しました。なおその当時、園田厚生大臣だと思いますが、それにも陳情書を出したのであります。ところが早急な、非常にこれはたいへんだぞというような考え方から市長が全住民の健康診断をしたのであります。ところがその当時法律がまだなし、それからまた、これがはたして公害病であるかという認定する医者の認識も足りなかったのでありますが、いろいろな学会にかけた結果、重症患者のみ二十八名公害患者として取り上げたというのでありましたが、やがてあの年もやはり公害地区になるだろうと思うて待っておったのでありますが、四十四年にはそれからはずされた。これはどういうわけだということから市当局から県厚生課に向かって質問いたしましたところが、人数が少数のためにこれを取り除かれたという返事であったのであります。そんなばかなことはあるかと、人数が少数であるから死んでもええのかということで、その後、県やあるいは市に向かって条例の改正やその他国の改正に伴う条例の改正を要求して早くこれをしてもらいたいということを盛んに運動を続けてきたのでありまするが、今日に立ち至ったのであります。  以上が私の知っておる範囲内でのお答えであります。
  136. 土井たか子

    ○土井委員 わかりました。  さあそれで時間のかげんもございますからあと一問なんですが、これは実はお伺いをいたしますのは、やはり現場で現に苦しんでいらっしゃるという立場で尼崎の島田さん、それからやっぱりお医者さんという立場、特に大気汚染で有名な川崎にいらっしゃるというふうな立場河野さん、それから自治体の側で、特にやはり大気汚染の場所としてこれまたいろいろ行政サイドからの取り扱いに苦慮をなすってこられた四日市助役でいらっしゃる加藤さん、以上三人の方に同一の問題についてひとつ御意見を伺いたいわけでございます。  それは、きょう尼崎の島田さんは特に尼崎の大気汚染による気管支系の病患の原因について、その大部分があそこにある関電、これが発生源である、汚染源であるという趣旨の御説明もございました。確かに救済も含めて公害問題は何としても発生源対策が始まりで終わりであります。何といったってこれなくして救済なんというものはないと考えてよいと私は思うのです。そういう点からいいますと、いま問題にいたしております公害健康被害補償法案の中身を見ますと、関電も含めまして固定した発生源に対してはある程度それに対していろいろな財政上の救済あるいはそれに対しての拠出ということを問題にしていかなければなりません。ところが大気汚染源というものを考えてみますと、固定していない、移動する汚染源というのが実はたいへんに取り扱いがむずかしい問題としてあるわけです。今回の法案ではそれが全部見のがされているわけですね。移動する、このたいへんやっかいな相手方はいろいろありますけれども、わけても多いのが自動車、車の問題であります。ところがいままで指定地域になって大気汚染で多数の気管支系の患者さんがいらっしゃることが現実はっきりしている場所についても、実は移動しているところの発生源に対する対策というのはその後何ら取り組まれていないと申し上げても過言でないようなありさまなんです。そこで発生源対策というふうな意味からいたしますと、この地域指定は政令でもって指定が行なわれるわけですから、これは国がきめる問題なんですね。そこで自動車については自動車の台数を減らすとか交通規制をやるとかいろいろ問題がございましょうけれども基本的には道路をつくれば必らず車は走るという問題を抜きにしては考えられない。したがってここでお尋ねしたいことは、実はこの問題なんです。  政令でもって指定地域になって大気汚染が著しいと考えられている地域についての都市計画なり道路計画については法律で都市計画法、道路法等とございますけれども、少なくとも国が国道とか高速道路をつくるという際に、やはりこの指定地域については特別の配慮があってしかるべきだと思うのですが、そういうことについて御意見があればひとつ聞かせていただきたいと思います。
  137. 島田実

    島田公述人 いま土井先生からの質問の中にあったように、尼崎では公害指定地域のまん中を四十三号線が走っております。その上に阪神高速道路を建設しようとしております。この地一帯は尼崎でも一番公害の激しい、公害患者の多いところでございます。そこへ、四十三号線の上にまた阪神高速道路というような国道をつくろうとしております。その反対運動がいま尼崎では盛んになされております。その中心は何といったって公害患者が中心になってへたり込んでおるような状態です。なぜならば、あそこに国道をつくられた場合に、車の汚染、これで私たち公害のためにからだをこわした人間は皆さんの半分でいってしまうわけです。だからどうしても命がほしいので、私たち四十三号線沿いの患者は炎天下百日以上もすわり込み、また差しとめ請求の訴訟を起こして戦ってまいりました。そういうような中で私は現実にしろうとでございますが、政府がこういう基金救済制度をつくるという中で、片一方では公害をばらまく道路をつくるというようなことは、私ら国民の側、また被害者から見た場合に、何が何だかさっぱりわからぬわけです。実際患者をつくっておって、それで金でその患者の命を買ったらいいんだ。国道をつくってもし万が一それで被害者が出たら、それなら政府の今度つくります法案で援助したらいいんだというような考え方が、私ら庶民としては全然もうわからぬわけなんです。  そういうことで、これで十分とは思いませんけれども、御勘弁願いたいと思います。
  138. 加藤寛嗣

    加藤公述人 お答えをいたします。  確かに移動汚染源に対する直接的な対策は何も打たれてないわけでございますので、われわれとしては非常に困るということでございます。これは直接自動車に何らかの対策を立てるべきであろうということは十分考えております。  ただ四日市の場合に、固定発生源から排出をされます硫黄酸化物が非常に多い、あるいは窒素酸化物にいたしましても圧倒的に固定排出源から排出される量が多いということから、発生源対策としては、この固定排出源から発生をされる硫黄酸化物なりあるいはNOxなりを除去することがまず最初であるということで、現在、四十六年度から五カ年計画をもってそれの減少につとめてまいっておるというのが実情でございます。  そこで、ただ都市計画上、行政担当者としてお願いをいたしたいことは、都市計画の事業がないことにはやはり市の整備、発展ということは将来あり得ないだろうということで、どうしてもこれは進めなければならない。その場合に、やはり公害地域に対する都市計画上の諸事業については、これは建設省関係だと思いますけれども、特段の御配慮をお願いしたい、かように考えております。
  139. 河野和夫

    河野公述人 確かに自動車の排気ガスにつきましてはたいへん問題だろうと思います。特に川崎市の場合には過密都市でございますし、東京に隣接しておりますので、公害病の指定区域だけでも高速道路が一本と国道が二本通っております。ですから亜硫酸ガスと排気ガスと両方の影響を受けていると考えざるを得ません。それで固定発生源の場合には最近規制がきびしくなりまして、まだ目標値には達しておりませんけれども、徐々に下降の傾向をたどっております。しかし一方患者の発生は依然として減っておりません。これは川崎だけでなく大阪あるいは尼崎等の話を聞いても同様でございます。ですから、どうしても自動車の排気ガス規制をやらないことには根本的な解決ができない。ぜひこれはやるべきだと思います。ただ、非常に行政的にもむずかしい問題が多々あるということであろうと思います。
  140. 土井たか子

    ○土井委員 時間の都合がございますので、以上二問で終わりたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)
  141. 佐野憲治

    佐野委員長 坂口力君。
  142. 坂口力

    ○坂口委員 公述人の皆さんにはたいへん長い間申しわけございませんが、私で終わりでございますので、しばらくよろしくお願いいたします。  まず加藤公述人改井公述人お願いをしたいと思います。  改井市長さんのほうの様子につきましては私はあまり存じませんが、加藤助役さんの四日市のほうにつきましてはある程度存じ上げております。  企業を誘致しますときには、よくいわれますが、ちょうちん行列で迎えた。ところが、でき上がってしまった現在においては公害がどうにもならない状態になっておる。そういう意味では、自治体の皆さん方としてはたいへん複雑な心境をお持ちではなかろうかと思うのでございます。その点については元三重県知事の田中議員にお聞きするのが一番いいのでございますが、そういう地域でこの公害の問題と取り組んでおみえになります皆さん方には、いろいろのお考えがあろうかと思います。  まず第一にお聞きをしたいと思いますことは、いまから振り返っておみえになって、行政立場から、地方自治体としてこの公害の問題に打つ手があったのであろうかどうかということでございます。それとも、これは国の大きな流れであり、方針であり、地方自治体ではいかんともしがたい問題であったのであろうか、この点につきまして何かお考えがございましたらひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  143. 加藤寛嗣

    加藤公述人 行政体としては、確かに企業誘致については努力をいたしました。したがって、振り返ってみれば、企業を立地をさせるための条件というものは、誘致をする前に検討しておくべきではなかったか、こういう反省はいたしております。いまになってそういうことを申し上げてもせんかたないことだと思いますけれども、そういう点では確かに自治体としてはもう少し慎重な態度で臨むべきであった、かように考えております。
  144. 改井秀雄

    改井公述人 私どもは地方におりまして、特に日本海岸の小都市のある時期におきましては、やはり生活水準を上げるために最も手早いのは、工業生産を上げるのが一番早い、こういう考え方に立ってまっしぐらにかけ出した時期があったと思います。しかしそのときすでにそのことについて相当の批判も持っておったと思います。がしかし、時の流れは非常に大きい勢いで流れましたために、今日のような状態になったわけでありますが、しかしそうはいいながら、やはりそれぞれの地域の均衡のある発展、あるいはまた住民福祉、そういうものとの関係におきまして、企業における公害防止措置というものをやはりもっともっと手当てをしてこなければならなかったのかというふうに思います。それがごく最近までなお裏日本の状況といいましょうか、引き続き十数年、二十年にわたりまして工場誘致条例をそのまま存続しながら会社、企業に対していろいろな優遇措置をとってきた、こういう状況なんであります。したがって、そういう総反省に立ちまして、たとえば工場誘致条例を昨年打ち切りましたが、そういう打ち切る中でさらに積極的にいままでの足らなかった分としての公害防止、防除対策、施設というものの強化を迫っておるのが現況ではないか、こういうふうに考えております。
  145. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。予防にまさる治療なしということばもございますし、あるいは改井市長さんからのおことばは三割自治の悲劇というような点もあろうかと思います。  次に、楠町の阪野公述人お願いをいたします。  楠町の場合に、四日市のいわゆるもらい公害としていろいろ悩みを持っておみえになりますことは以前から伺っておりますし、この委員会におきましても私再三取り上げさせていただきました。そして指定地域の拡大を訴えてきたつもりでございます。きょう阪野公述人からもいろいろお話が出ました。  そこでお聞きをしたいと思いますことは、私がお聞きしている範囲内では現在のところは大気汚染がさほどではなくなっている、しかしながら以前は四日市同様かなりよごれていた、そうしてそのころに病気になられた方がいまなおぜんそくのままでたくさん残っておみえになる、こう私お聞きしているわけでございますが、その間の事情をひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  146. 阪野昇

    阪野公述人 先生には過去いろいろ御高配いただいてありがたく、厚く御礼申し上げたいと思います。  御指摘いただきましたとおりでございまして、現在は、特に昨年から総量規制でございますか、それが行なわれた結果、大気汚染のほうの濃度でございますが、たいへんよくなりつつあるということは事実でございまして、昨年のデータですと〇・〇二一PPMという数字が楠町で出ております。これは四日市の中央部に比べますと、ある程度低いわけでございますが、それまでは、規制を受けるまでは、特にけさほど申し上げましたように、冬場の北西の風の季節になりますと、四日市の地区よりはるかに大きく高い濃度を示しておったことも事実でございます。そうしたことが原因と推定されるわけでございますが、現在地域的に小さな地域に比べて患者の数は非常に多い。この患者の数も、けさほど申し上げましたように、相当権威ある産業医学研究所のほうの医師の方に見ていただきました結果でございますので、四日市の現在の患者の方と変わりないと思っておりますが、そういう方が百五十名もおるということ、それも事実でございますので、過去の高かった汚染度の結果によるということも立証されておりますので、こうしたことの患者救済のためには、どうしても地域指定ということが前提ということを伺っておりますので、地域指定のお願いということを特に申し上げてまいってきておるわけでございますが、その点よろしくお願い申し上げたいと思います。
  147. 坂口力

    ○坂口委員 続けて阪野公述人にもう一つお尋ねいたしますが、先ほどもお話が出ておりましたが、いままでいろいろと地域指定の中に入れてほしいという要望をなすってきたと思いますし、運動も進められてまいたと思いますが、現在までの荒々でけっこうでございます、どういうふうなことをおやりになってきたか、それをひとつこの席でお聞かせいただきたいと思います。
  148. 阪野昇

    阪野公述人 現在まで運動を進めてまいったのは、県の環境部を通じまして特にいろいろお願い申し上げておるということと、それから五月の末でございましたか、町長が三木環境庁長官殿をお尋ねさしていただいて特にお願い申し上げましたところ、三木長官のお話ですと、近く実態の調査をする、こういう御返事をちょうだいしたということを伺っております。  それと町議会のほうにも、請願の形で地域指定の請願が出てまいりました。これは御承知だと思いますが、非常にやはり公害病患者で結成しております楠健全を守る会というのがございますが、そうした代表者の者から請願が出てまいりまして、六月の町議会でこれが採択になっております。  それからまたその患者の会の代表もたびたび役場へやってまいりまして、いろいろ願い出ておるような状況でございまして、町としましても県を通じていま強力にお願いを申し上げておる状況でございますので、今後一刻も早く、特にこの法案にもうたわれております地域指定をぜひお願いしたいということを念願しておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
  149. 坂口力

    ○坂口委員 河野公述人にお聞きをしたいと思いますが、いわゆる医師としての立場からひとつお教えをいただきたいと思います。  いま阪野公述人からお話が出ました以前に非常に空気がよごれてそのときにぜんそくになって、しかる後にだんだん空気はきれいになっているけれども、依然としてその病気を持った人はそのまま続いている、こういう例が出されましたし、私もそういうことを聞いているわけでございますが、やはり一度なってしまいますと、なかなかもとに戻らない、そういう特にお年をとられた方なんかは多いのでございましょうか。それから一度そういうふうになれば、これは半永久的ということばは適当かどうかわかりませんが、やはりそういうふうな症状というものは続いていくというふうに考えるべきなんでしょうか、その点ひとつお教えをいただきたいと思います。
  150. 河野和夫

    河野公述人 小児の患者の場合には、ある年齢に達するとかなりの数治る可能性がございます。しかし、現在公害病の患者のうち半分くらいが小児で、あとは高齢者に多いわけで、高齢者についてはなかなかこれは治らないのじゃないかと思います。ことに肺気腫になった者はもうこれは医学的には全く健康な状態に回復するということはできない状態になっておるわけでございますし、なかなか老人については困難であろうと思います。
  151. 坂口力

    ○坂口委員 そういたしますと、一度なってしまった者はもとに戻らないということでございますと、そのときのいわゆる大気汚染の度合いをもって地域指定をするということは非常に不適当であるというふうに私どもいままで主張してまいりましたし、いま先生のお話を聞いてさらにその感を強くするわけでございますが、先生の地域指定に対するお考えがもしございましたら、どんな形でもけっこうでございますので、一言お教えいただきたいと思います。
  152. 河野和夫

    河野公述人 先ほどお話のありましたように、かつて大気汚染が著しくて、そのときに発生した患者さんがいまだに治らないとすれば、現在環境がよくなっていても過去にさがのぼってそういう人を救済するのが、本来だと思います。
  153. 坂口力

    ○坂口委員 もう一度阪野公述人お願いをしたいと思いますが、いま河野公述人からも御意見がございましたし、おそらく阪野公述人も同じようなお考えをお持ちではなかろうかと思うわけでございます。  そこで現在楠町には苦しんでおみえになる患者さんがたくさんおみえになりますし、この人たちをどうするかということについていろいろ悩んでおみえになると思いますが、今回こういうふうな法律案が出ました機会でもございますので、やはり地方行政の中で特に悩んでおみえになるようなこと、もし一つ二つ特別なものがございましたら、この際でございますので、ひとつ御発言をいただきたいと思います。
  154. 阪野昇

    阪野公述人 現在の患者につきまして一応特別措置法の制度で現在医療費の救済をするならばどれくらいの予算が要るだろうというようなことにつきまして、年度当初に積算をいたしました結果によりますと、約千九百万円という金が要るわけです。小さな自治体で千九百万円、しかもこれが一、二年の額でございませんので、毎年こうした額が永続されるということになれば、これは大問題でございまして、とうてい一小さな自治体でまかない得るべき額でございませんので、やはり国の力を得なければならないということでるるお願いを申し上げてまいってきておるわけでございます。  それと実は小学校の児童、中学校の生徒四十二名という数字を申し上げておりますが、この方々につきましては昨年度町条例を制定いたしまして、お見舞い金という形でございますが、一人五千円の額で、少額でございますけれども、支出をいたしたような実情でございまして、この国のほうの制度ができることをほんとうに期待して、一日もすみやかにその実現をお願いしつつあるわけでございまして、早くこうしたことが実現できますことをほんとうにお願い申し上げたいと思います。患者側にとっては、いろいろ病状につきましての実情は御了承のことと思いますが、たいへん苦しんでおられますし、町としましても一刻も早くそうしたことの実現を期させていただきたいということを念願しておる次第でございます。よろしくお願いしたいと思います。
  155. 坂口力

    ○坂口委員 阪野公述人からの切々たる訴えがございましたけれども、この法律案なるものが、いままでの現行法と申しますか、現在までの考え方と同じようにその地域指定の問題を考えているとしましたら、やはり新しい法律案ができてもなおかつそこからはずれるということもあり得るわけでございます。私どもとしましては、何としてもこの地域指定のものの考え方を変えてほしいということを主張しているわけでございますが、これは楠町だけではございませんで、きょう公述いただきました皆さん方の多くの方から、この地域からはずれたために起こってくるいろいろの問題が出されましたが、同じ思いの方がたくさんお見えになると思うのでございます。  そういう意味でもう一度加藤公述人にお聞きをしたいわけでございますが、やはり四日市市内におきましてもはずれている地域もあろうかと思います。今後大きな問題を残していると思います。特にこの法律案につきまして加藤公述人のほうから御要望がございましたから、ひとつお出しをいただきたいと思います。
  156. 加藤寛嗣

    加藤公述人 四日市では、認定地域外の居住をしております市民の中での患者が約九十名近くおります。したがって、全体の声としてはやはり地域を拡大してほしいという声がございますので、この際それを申し上げておきたいと思います。
  157. 坂口力

    ○坂口委員 第四十六条に公害保健福祉事業というのが書かれているわけでございますが、この中で、公害福祉事業として事業を行なうことができるということになっておりまして、「指定疾病によりそこなわれた被認定者の健康を回復させ、その回復した健康を保持させ、及び増進させる」云々とございます。いままでにも公害がたくさん発生している市では、公害福祉事業なるものをおやりになっていた経験がおありかと思います。  改井公述人にお聞きいたしますが、こういうふうな公害福祉事業なるものについていままでおやりになった経験がございましたら、こうあるべきだというような御意見がございましたらひとつこの際お聞かせをいただきたいと思います。
  158. 改井秀雄

    改井公述人 本件につきましては、午前中に御意見を申し上げました中で集約的にこの点希望を申し上げたわけでありますが、実はそういう点は非常に徴々たるものでありまして、したがって、地方自治体としてはまだそこまで手が伸びておらぬというのが実況だと思います。これには非常に多くの資金的な面が必要になってまいります。それぞれの施設をつくってまいりますためにも、あるいはまたそれを運営してまいりますためにも、いろいろな点からいいまして非常に大きな予算的、財政的な措置が必要になってこようと思います。したがいまして、いままで私どもが講じておりますようなごく初歩的なことというようなものよりも、さらに大きなこの面での前進を期待しておるわけでありまして、ぜひともひとつお願いしたいと思うわけでありますが、ただ、いまの面では法律に一条設けられておりますが、中身はどのようになってくるのかということが明らかでありません。したがいまして、午前中その点について数カ条にわたりまして申し上げた、こういうのが実情でございます。
  159. 坂口力

    ○坂口委員 私どもも、この公害保健福祉事業というふうなものは必要なことは必要でしょうけれども、しかしこれが公害をカモフラージュするための一つの道具であってはならないということを考えております。そう信じております。何と申しましても公害発生源を押えるということが最も重要でございまして、もしも不幸にして出ました場合に、この公害保健福祉事業というものも必要ではございますが、しかしこれによってカモフラージュしてはならないというように思うわけでございます。  時間がまいりましたので、最後に一つだけお尋ねをいたします。島田公述人にお伺いいたしますが、いわゆる患者さんの立場からいたしまして、いままでいろいろ御苦労をなさっておみえになったと思います。そこで、現在まで皆さん方がいろいろ述べてこられた声がいかに地方自治体あるいは国の段階に反映されてきたか、その点非常に苦しい思いをなさったと思いますが、その点につきまして最後に一言お聞かせをいただきたいと思います。
  160. 島田実

    島田公述人 実はきょう、患者の一員としまして初めてこの国会の委員会の席上で患者の苦しみを訴えられたということは、私たち公害患者にとりましては偉大な進歩だと思うのです。過去に私たち患者が集まって何ぼ声をあげましても、その声は一地方自治体でとまっているように思われます。だから私らは、尼崎市におきましても何べんも市に請願もしましたし陳情もいたしました。そしてその中で感じたことは、やはり地方自治体には限度があるということです。三割自治ということで、何ぼ市長さんがやってあげようと思いましてもできないのじゃないかと思います。だから、私の感じたことを率直に申し上げますが、やはりこれは国がやってもらわなければわれわれ患者は救済されない、こういう気持ちでいまおります。
  161. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。  これで終わらせていただきます。
  162. 佐野憲治

    佐野委員長 この際、おはかりいたします。  伊東公述人より文書で補足意見の提示がありました場合は、これを会議録に掲載することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  163. 佐野憲治

    佐野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  以上で公述人に対する質疑は終わりました。  公述人方々におかれましては、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  これにて公聴会は散会いたします。    午後四時五十九分散会      ————◇—————