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橋本(道)
政府委員 いま
先生の御質問のあったポイントでございますが、先ほど
局長がお答えいたしましたのに若干補足して申し上げたいと思います。
まず第一に、
現行の
健康被害救済特別措置法、あの
法律をつくりますときには、
四日市の
汚染であるとか、
川崎の
汚染であるとか、尼崎の
汚染であるとか、そのような固定
発生源の
工場群があって、そこで非特異性の呼吸器系疾患が多発しておるというような状態をもっぱら頭に置いておったわけでございます。そういうことを頭に置いてやっておりましたので、この
地域指定もそのような
地域をまず頭に置き、またそのときの
汚染物資といいますのも当時はNOxはあまり計っておりませんでした。非常に量は乏しゅうございました。浮遊粉じんであるとかあるいは硫黄酸化物というようなものを対象といたしまして、そのようなものの
汚染の水準と有症率というようなことを中心としまして、
指定地域をきめてまいりました。そうしてその
費用を負担させるという点におきましては、経団連の中に財団を設けまして、そうして十四業種でございましたか、十四の数字はひょっとして間違ったらお許し願いたいと思いますが、この固定
発生源を持っておる業種から金を拠出させまして、そうしてこの
救済法の
費用の半分に充てるというようなことをしておったわけであります。そのうちにこの自動車
公害の問題が次第に大きくなってまいりまして、またそれが急速に大きくなってきまして、
先生の御
指摘は阪神間の国道沿いの
汚染をどうするかという具体的な実例を引かれたわけでございますが、尼崎は非常にどちらもよごれておるが、芦屋ということになりますと一般の浮遊粉じんとか硫黄酸化物とかいう
汚染はこれは尼崎とか西淀とは非常に違うということは事実でございます。現在の測定
データをちょっとよく存じませんが、そこの場合にはおそらくその道路のまわり何メートル
範囲というところはやはり拡散圏といたしまして一番暴露されるということが理屈の上では考えられるのではないか、そのような事実につきましては昭和四十年度以来ずっと調査研究を続けてこられまして、道路のまわり何メートルぐらいのところに
汚染が起こるかというところは理論的にはかなり予測ができてくるというような調査研究も出てまいったわけであります。
本法におきましては非常に問題として、御
指摘になりましたような交通
公害による
大気汚染の問題というものはとうてい無視できないということを私
ども考えたわけであります。で、日本弁護士会等では自動車の
発生源なんかを含めるのはもってのほかだというような反論があったわけでありますが、私
どもはいやそうではない、これは当然にこの対象として含めるべきであるということを強く主張いたしまして、そしてこの
法案の中にはこの
費用の徴収の点につきましては「別に
法律に定めるところ」ということで、先ほど来阿部
先生からもいろいろな御
指摘を受けたところでございますが、そういうような体系になっておりますが、移動
発生源からの
汚染ということを当然に念頭に置いてこの
法律が通過して実施される暁においては対処をしていきたい、こういうぐあいに考えております。その場合に、先ほ
ども芦屋と尼崎の例で申し上げましたように従来の
地域指定のところではSO2、粉じん、それから最近窒素酸化物の
データがここ一、二年で急速に集まってまいりましたが、やはり従来問題にしておるところは、
指定地域のところは浮遊粉じんもSO2も窒素酸化物も全部高いところでございます。ですからその意味におきましては、それでは浮遊粉じんと硫黄酸化物と窒素酸化物の
影響を分離できるかといわれますと、
影響としましてはやはり同じ非特異性の呼吸器系疾患ということで、これはなかなか分離できないというような問題があるわけであります。そこで、自動車の排気ガスとして自動車高速道路の沿線という問題になってきますと、従来の
指定地域とは異なりまして浮遊粉じんとか硫黄酸化物というのはあまり高くない、しかしながら窒素酸化物だけ高いという状態があるだろうというぐあいに考えるわけでございます。あるいはほかの炭化水素等の問題があるやもしれません。一酸化炭素の問題がありましょうが、一酸化炭素の問題が非特異性の呼吸器系疾患に
影響があるという学問的な知見は現在のところございません。そういうわけでございますので、私
どもの
判断といたしましては、現在の学問的知見によれば窒素酸化物あるいは炭化水素がかむかかまないか、ある程度浮遊粉じんがかむかというところが自動車の排気ガスによる
汚染によって非特異性の呼吸器系疾患を多発させているかいなか、こういう問題になるわけであります。現在その点につきまして昭和四十五年度以来窒素酸化物の
影響ということでの
影響調査が一方に進んでおりますが、いままで得られた
データは、その調査のゾーンといいますのは、つまりやれた
地域と申しますのは、やはり
工場と自動車の複合したポイントの
データしかまだございません。そういうことで私
どもはこの
法律が通りましたら、今度は窒素酸化物だけの
汚染がある、あるいは自動車の排気ガスとして窒素酸化物以外の炭化水素等の
汚染があるという
地域をどう扱うかということは、この
法律で自動車からも金をとるというわけでございますから、当然にその対象として検討を加えなければならないというぐあいに考えております。そういう点で、いままでのところでは窒素酸化物だけの
汚染のあるところで有症率がどのような程度で多発しておるかという点については私
どもは残念ながら
データを持ち合わせておりません。
先生の御
指摘のような四軒に一軒おるではないかとかあるいはぜんそくの
患者が多いというような話は私
どもよく伺います。伺いますが、この自動車排気ガスの調査として大阪市内で約二年間継続されたものもございますが、これとてもやはりSO2と両方の完全にまざったやつでございますので、どうにもその点の分離がきかないということでございますので、この
法律が通りました暁にはそのような道路の沿線における
汚染とその
影響、それに伴ってどのように
地域指定をしていくかということを積極的に対処をしていきたい、そういうぐあいに考えておるわけでございます。