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浦田政府委員 魚介類の
水銀の
暫定的基準について公表をいたしました際に、こちら側の
資料などの
説明の上で不
手ぎわ、不十分なところがございまして、
国民の
皆さまにいろいろと御迷惑をかけ、
混迷におとしいれた点につきましては、この席をかりて深くおわび申し上げます。
私は今度の
暫定的基準を発表するにつきまして、いかにこのように
学問的にむずかしい
内容を持ったものをわかりやすく
国民の
皆さま方にお示しするということがむずかしいかということを身をもって痛感したわけでございます。
一番私が気がつきましたことの
一つといたしまして、
学問というものは実は非常にむずかしい
用語、
定義の積み重ねでございます。
一つの
用語、
一つの
定義というものに、その
背景に何百年という歴史とそれから膨大な
研究と
資料というものがあるわけでございます。これらに基づいて、さらに新しい知見を加えていく、新しい
データを加えていくということでございまして、それらを端的に短い表現で、しかも短い時間にはっきりと相手に伝えるということは、実は私は至難のわざであると思います。
安全基準、お
ことばを返すようでございますが、
岡本委員が
安全基準という
ことばをおっしゃって、そして二転、三転したというふうにおっしゃっておりますが、事実は私はそうでなかったと思います。今日まで私の口からあるいは
厚生省から、少なくとも
安全基準という
ことばを使ったことはないはずでございまして、常に
暫定的許容限度、
許容量の
限度とかあるいは
暫定的許容摂取量あるいは
暫定的規制値というふうに申し上げておるつもりでございます。
いきさつを申しますと、これはいわゆる第三の
水俣病の
発見報告以来急速に高まってまいりました
メチル水銀に対する
国民の不安に
答えるために、
水銀等汚染対策推進会議が
環境庁長官の
三木大臣のもとに設定されまして、そしていろいろと協議があったわけでございますが、その中の緊急第一の
課題として、それはしかも本
委員会におきましてもそれが第一の
緊急事であるというふうな御
意見があったやに私も覚えておりますが、第一の緊急の
課題といたしまして、
対策推進会議では、魚の
水銀に関する
安全基準を早く設定しろということであったのでございます。
これにこたえるべく前後して発足しておりました
魚介類の
水銀に関する
専門家会議、
武内教授あるいは
椿教授等々世界的な
水銀中毒に関する
専門家、
権威者の
方々にお集まりいただきましたこの
専門家会議に非常に御無理をお願いいたしまして、それこそ最終的には連日連夜といったような形で御審議をお願いいたしました。実に膨大な
資料を
背景といたしまして、そしてまとめた。このような
背景に基づく
魚介類の
水銀の
暫定的基準の設定でございます。
意見でございます。
それで繰り返しになりますけれ
ども、たしかすでに
資料としてお手元にお配りしてあるはずでございますが、「
魚介類の
水銀の
暫定的基準についての
意見(
昭和四十八年六月二十四日)
魚介類の
水銀に関する
専門家会議」という見出しで、三枚つづりの刷りものとして
大かたのほうにお配りしたわけでございますが、その前文は省略いたしますが、この
内容は
二つのおもな点に分かれるわけでございます。
一つは、
総体として
一体メチル水銀は量としてどれほどとったら一生涯安全だ、一生涯その量以内に押えることができれば安全だという、そのような量の
限度というものはいかんということでございまして、これは
メチル水銀の
暫定的摂取量限度ということで、すなわち「成人(体重五十キログラム)に対し一週
メチル水銀〇.一七ミリグラム(
水銀として)とする。」となっておりまして、これが第一点でございます。これをどのような
学問的根拠、
背景のもとにきめたかということにつきましてはここでは省略させていただきます。ただ、その
背景には膨大な
研究、
調査、検査の
資料があったということを申し添えておきます。
それから第二点といたしまして、
水銀の
暫定的規制値というものを定めてございます。これは
濃度規制でございまして、総
水銀〇・四
PPM、総
水銀で〇・四
PPMをこえる場合には、
メチル水銀で〇・三
PPM、詳細は
説明は省略させていただきますが、
数字から申しますと、平均で総
水銀量が〇・四
PPM、
メチル水銀で〇・三
PPMという
暫定的規制値、この
二つに分かれておるのでございます。
実は、一
週間にどれだけの量を体内に取り入れることができるか。そのぎりぎりの限界は
幾らかということだけをきめておれば
学問的、
医学的にはほかは一切必要ないはずでございます。たとえば、たとえの例があるいは不適当かもしれませんけれ
ども、いわゆる
アルコール類、
酒類にたとえをとりますと、お酒好きな方は、
日本酒の好きな方は
日本酒で二合とか、
ビール党は
ビールで一本あるいは
ウイスキーの好きな方は水割りにするにしても、二はいとかあるいはストレートで飲んで三ばいとか、こういったようなことで、いろいろと飲み方はあると思います。しかし、いずれも
ほんとうは問題になっているのは
アルコールの度合いでございます。
ウイスキーはおそらく四十二、三度、それから
日本酒ですと十四、五度、あるいは
ビールですと、どれくらいですか、十度前後ですか、もうちょっと下ですか、私も
専門家でございませんのでよく覚えておりませんが、そういったようなことで
アルコールの度ということで示しております。おれは酒は一升飲んでも平気だといわれる方は、一升というと
幾らになりますか、千八百CC、これで十五度というのは一五%ですから、計算すると
アルコールの量が出てまいりす。それと同じだけの
アルコールの量を
ウイスキーで飲むとすれば
一体何ばい飲めるのか私存じません。そこまできょうは計算してきておりません。しかし、いわば目安は
アルコールの
度数でございます。お魚を
幾ら食べられるか、
メチル水銀で〇・一七ミリグラム一
週間まで食べてよろしい。これは何のことやらわかりません。お魚と申しましても、カツオもあればマグロもある。あるいはサバもあればヒラメもある。いろいろとございます。
イワシもあればサンマもあるということでございますが、そのおのおのの魚がどれだけの
メチル水銀を持って泳いでいるか。お酒ですと酒屋さんのほうで、これは
レッテルに
濃度が書いてございますけれ
ども、魚のほうはわき腹に、おれは
メチル水銀を何ぼ持っているという
レッテルを張って泳いでいるわけではございません。また店頭でそういうことはできません。それで結局どうしても人間のほうでこれをはかるわけでございますが、そのときに大きな魚であればきっとたくさんの
メチル水銀、かりにあるとすれば、同じ量であるとすれば、
からだの大きいほうにたくさん
メチル水銀があるにきまっております。そうすると、いつも
からだの大きいほうは損する。
イワシとかもっと小さいほかの魚は、
メチル水銀の
総体量が少なくなりますから何だか損する。いつものけものにされる。いや、逆かもしれませんが、かえって小さいほうがぐあいがよろしいということでございますが、そういうことでは何だか不合理でございます。結局比べる場合には、
からだの大きい魚、小さい魚、同じように百グラムなら百グラムのものを持ってきて、そして同じ量にして物を同じにしまして、その中に
一体メチル水銀が
幾らあるのだろうかということを比べるのでなければ不公平でございます。その
規制値、比べる値、
酒類の中の
アルコールの
度数に当たるものが
暫定的規制値でございます。これは総
水銀量で申しまして〇・四
PPMということでございます。
メチル水銀で〇・三
PPMということでございます。
そうしておきますと、
からだの大きい、小さいにかかわらず、魚類のいかんにかかわらず〇・四
PPMは〇・四
PPMということに相なるわけでございますから、そうしますと、
行政のほうの
手段としてはにらむだけではわかりませんけれ
ども、ちゃんと分析測定すればはっきりと区別が公平につけられます。合理的につけられます。そういうものが
暫定的規制値、
PPMでございます。この
週間許容摂取限度とそれから
暫定的規制値と両々相まちまして
行政的ないろいろな
対抗手段がとっていけるわけでございます。そうして冒頭にお断わり申しましたように、
水銀等汚染対策推進会議では、ほかのいろいろな
手段をとるための第一の
目標として、この
規制値あるいは
基準をつくれということでございましたので、そういった
目的はもございますが、私
どもは
一般国民の方の食生活の安全を確保するという
立場、そういった両方の
立場からこの
規制値なりあるいは
週間の
許容限度というものをきめたわけでございます。これにつきましては、繰り返しになりますが、
専門家の
先生方の
ほんとうに非常な御苦心、御
努力でもってでき上がったものでございます。
それから暫定的と申しておりますが、実はこれはまだサルの実験等々、一応いましばらくお待ちいただければ、もっとよりよい
研究結果が出てくるという
背景もございますので、暫定的と書いてございますが、これはおそらく世界的な
水準から照らしてみても、最も
権威ある
基準値であると思います。
規制値というのは
行政上の
目的な
ども多少加味されますので、
規制値については申しませんが、暫定的な
週間摂取限度というこの
数字の
根拠、これは
専門家会議のいままでのいろいろな
結論というものは世界的にも
権威の高いものだということはいえると思います。
それできまったのは実はそれだけでございます。これに私
ども頭の悪い
行政官が、何とかしてこのようなむずかしい
お話をわかりやすく
国民の
皆さまにお伝えしたいということでいろいろと苦心したのでございます。これをお読みいただければあるいはわれわれの気持ちは誤りなく伝えられると思いますし、またそう申してはなんですけれ
ども、その発表した時点において各紙をよくごらんになっていただきますと、私は各新聞紙とも実に正確にこの
暫定的基準についての記事は載せられてあったと思います。私はよくお読みいただきたいと思います。
それとともに、私
どもは悪い頭を知恵をしぼりながら、いまのような
お話をできるだけわかりやすくと思いまして、よせばよかったと思いますが、こういったようないわゆる
手引き書、
解説書というつもりで、
水銀汚染から健康を守るために未定稿としてお示ししたわけでございます。それがやはり舌足らずの点あるいは
説明不足の点等々もございまして、何だかこれ
そのものが
安全基準の本文である。これ
そのものが、お魚が何匹食べられるというのが
安全基準であるといったような
誤解を生んだようでございまして、その点初め
規制値〇・三
PPM、
一ぱい満度によごれた魚ばかり食べるとして、一
週間〇・一七ミリグラムを
目標とした場合に何匹食べられるのだろうか、こんなことはあり得ないわけですけれ
ども、これだけぎりぎり
汚染度一ぱいまでよごれた場合に何匹食べられるだろうかという計算をしてアジが十二匹とか、ちょっと例が悪かったのでしかられましたが、イカが何枚とか、あるいはハマチが
幾らといったような
数字絵解きをしたわけでございます。それが非常に
誤解を生んだのでございまして、その点私
どもはたいへんに恐縮いたしておる次第でございます。
それで、どうもこれだけしか普通でも食べられないというふうにたいへんな不安というものが広まっているということで、もう
一つそれでは例を引きましょうということで、たとえばをもう
一つふやしたわけでございます。そのたとえばという
根拠になりましたのが〇・〇八
PPMということで、これはいままで
厚生省時代から
環境庁に引き継ぎまして、いろいろと
汚染状況を調べておりました過去の
データを平均した
濃度が〇・〇八
PPMということでございました。じゃこれが架空の
数字、たとえを引くにしても、まあまあ
根拠のある
数字でございますから、それをもととして計算してみると
幾らになるかというと、これは簡単でございます。〇・一二
PPMが〇・〇八
PPMになったのでございますから、約四倍近く魚が食べられるということになることはあたりまえのことでございます。決して
厚生省はがたがたしているわけでもないし、その限りにおいては
基準を変えたわけでもございません。ただその
資料の示し方に不
手ぎわがあったことは、これは率直に認めます。そういったことでたいへんにはたから見ますといかにも自信がないことを
厚生省は繰り返している、あげくの果てが、御
指摘にございましたような
大臣談話発表の
いきさつな
どもございまして、ますますその点
混迷の度を深めたごとき印象でございましたが、あくまでも事実はこのとおりでございますから、その点はどうか誤りのなきょう御了解いただくようにお願い申し上げます。
たいへん長くなりましたがお
答えといたします。