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1973-06-15 第71回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月十五日(金曜日)     午前十時五十分開議  出席委員    委員長 佐野 憲治君    理事 登坂重次郎君 理事 林  義郎君    理事 渡部 恒三君 理事 小林 信一君    理事 島本 虎三君 理事 中島 武敏君       小澤 太郎君    田中  覚君       岡田 春夫君    木下 元二君       多田 光雄君    岡本 富夫君       坂口  力君    小宮 武喜君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君  出席政府委員         警察庁警備局長 山本 鎮彦君         北海道開発庁総         務監理官    山田 嘉治君         環境庁企画調整         局長      船後 正道君         環境庁自然保護         局長      首尾木 一君         環境庁大気保全         局長      山形 操六君         環境庁水質保全         局長      岡安  誠君         林野庁長官   福田 省一君         通商産業政務次         官       矢野  登君         通商産業省公益         事業局長    井上  保君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      藤仲 貞一君         水産庁調査研究         部長      松下 友成君         運輸省港湾局計         画課長     鮫島 泰佑君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ————————————— 委員の異動 六月十三日  辞任         補欠選任  稻村左四郎君     渡部 恒三君 同月十五日  辞任         補欠選任   阿部喜男君     岡田 春夫君   木下 元二君     多田 光雄君 同日  辞任         補欠選任   岡田 春夫君     阿部喜男言   多田 光雄君     木下 元二君 同日  理事稻村左四郎君同月十三日委員辞任につ  き、その補欠として渡部恒三君が理事に当選し  た。     ————————————— 六月十三日  瀬戸内海の環境保全に関する請願(吉田法晴君  紹介)(第七二一二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  自然公園法及び自然環境保全法の一部を改正す  る法律案内閣提出第一二一号)  公害対策並びに環境保全に関する件(自然環境  保全対策等)      ————◇—————
  2. 佐野憲治

    佐野委員長 これより会議を開きます。  理事補欠選任の件についておはかりいたします。  理事稻村左四郎君が去る十三日委員辞任され、理事が一名欠員となっております。この際、その補欠選任を行ないたいと存じますが、先例によりまして委員長において指名するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐野憲治

    佐野委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決定いたしました。  それでは渡部恒三君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  4. 佐野憲治

    佐野委員長 公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますの、で、順次これを許します。島本虎三君。
  5. 島本虎三

    島本委員 いま長官を呼んであるのです。警察庁長官は時間はちゃんととって、理事会の了解もとりつけてあるのです。しかしまだ来ないのであります。私はこういうような状態の中でこのことに触れることだけはちょっと困るのでありますが、まあその間に来ると思いますから、一応環境庁長官並びに通産省関係質問から始めさしてもらいます。  すでに長官も御承知のとおりに、環境が破壊されるからということで地元住民から建設中止を求める環境訴訟が出されておるわけでありまして、その伊達火力発電所建設については、北海道電力はついに十四日午前五時に道警機動隊導入して強行着工をはかったのでありまして、これはいろいろな意味できわめて重要な問題をはらんでおるのであります。すなわち、長官ももう十三日に、こういうような不測の事態を招かないように、そして当然これに対して話し合いを継続しなさい、こういうようなことに対してはっきり申し出ているはずであります。そういうような状態であるにもかかわらずこれが強行された。同時に、これは委員長のほうにもそういうような要請がいってあったはずなんであります。しかし、そういうようなものは全部無視されて強行されたのであります。その結果けが人も出ておるのです。そうして公害環境問題としてきわめて重大であるばかりでなく、社会党としてもこの事態を予測し、憂慮して再三再四申し入れてあるはずです。公害に対する政府態度としても、現在こういうような状態をそのまま認めることはできないのは当然のことであります。政府の姿勢にしても、きわめて遺憾であります。政府はどういうような態度をとり、どのような指導をしたのか。環境庁長官、あなたに二回、三回と申し入れをしてあります。どういうような指導をし、どういうような措置をとったのか。通産省においてもしかりであります。その措置指導について伺います。
  6. 三木武夫

    三木国務大臣 島本委員自身からの御質問もありましたし、社会党からの申し入れもございましたし、そういう申し入れあるなしにかかわらず、やはり地元環境保全というものに対して非常な不安があるわけでありますから、それは一企業ばかりでなく、全体としての環境保全ということはみながやはり考えなければならぬ問題でありますので、北海道庁に対しても北電に対しても地元民の不安を解消するためにはよく話し合いをするようにと、そうしてそういう地元協力を得られるようにすることが企業というものの将来の経営上からいっても、そういうやり方のほうがずっと安定した経営ができるわけでありますから、強く申し入れをいたしたのでありますが、島本委員の御指摘のように、昨日機動隊導入して、そうして工事が開始されたことは非常に遺憾に思う次第でございます。それで直ちに私のほうからも、話し合いは継続しなければいかぬ、住民環境保全上の不安というものは大問題でありますから、今後とも話し合いを継続して、そういう機動隊導入などなくして工事が進められることが望ましいことであります。そういう事態が起こってもなおかつもう話し合いはしないという態度はよくない。話し合いを今後継続して、そして問題が円満に地元民協力の得られるような努力をするべきである、忍耐強くやる責任が企業にあるということを強く申しておいた次第でございます。
  7. 矢野登

    矢野政府委員 通産省といたしましては、四月九日に北海道電力社長あて文書をもって、計画推進にあたっては万一にも重大な事態を招くことのないように強く要望しております。「貴社伊達発電所第一号機については、昭和四十八年一月十六日付け四七公第一一六四六号をもつて工事計画を認可し、その後も発電所建設に対する地元理解を得るよう努力を要請してきたところですが、計画推進に当つては万一にも重大な事態を招くことのないよう強く要請します。」とこういう手紙を四月九日付で北海道電力社長あてに出してあります。  北海道電力におきましても、この趣旨には沿って、誠意をもって現地における反対派方々を説得する対策は講じておるようでございます。さらに公開の話し合いの場におきましても誠意をもって理解を深める努力を続けてきたといっております。このような話し合いの中で問題点が煮詰まってきたという判断のもとに、電力安定供給の確保をしなければならない、こうした観点から今回の着工に踏み切ったわけでございますが、着工後も引き続いて、残された諸問題については十分に話し合いを続けていくことが必要であると考えられますので、今後もこの方向で同社を指導してまいりたい。なお昨日も、問題発生後こちらから電話で、北海道電力に対して、あくまでも地元話し合いを続け、事態を平静のうちに進めるよう連絡をとっておる。以上でございます。
  8. 島本虎三

    島本委員 通産政務次官答弁うそであります。それはどなたが書いた答弁書か知りませんが、話し合いの中で、亜硫酸ガス最大濃度逆転層、そして排煙脱硫亜硫酸ガスの農作物に対する影響、人体への影響、そして建設に対する手続、こういうような点に対して話し合いがほとんど煮詰まっておりません。そのほかに温排水問題等の漁業に対する影響、それから公害防止協定、これは上程されておってもほとんど話し合いに入っておりません。何で円満に進めたと言っているのですか。うそじゃありませんか、それは。  そしてなお、この際に長官ほんとうに私は遺憾です。と申しますのは、党としてもこういうような流血の惨事を避けるように話し合いは継続せよという文書、ここに持っておりますが、前後三回にわたって文書でやっているのです。官房長官にもやっているのです。みんなそのときには賛成だ、そのように示達しているはずなんです。しかし十三日の午前十時二十分にも、このことを長官申し入れているはずです、文書で。数回申し入れても、同じこういう状態をつくり上げられたということは、副総理としての威令が行なわれないのじゃないか。同時にこれは対話路線、そういうものは幾らいっても企業サイドの前には無視されるのじゃないか。それと同時に、二階堂官房長官も当然要請しているのでありますが、これは無視されて茶番化されているのじゃないのか。同時に、井上公益事業局長、あなたもこれに対しては、新聞記者会見で残念だ、こういうようなことを言っているのです。会社側判断を前にしてまさに無力化しているじゃありませんか。そうでなければ、皆さん陰に回って別な指導をしているということになる。まさにこれは閣内統一である。それと同時に、指導力もなく威令も行なわれない、こういうようなことになった場合には、今後公害行政に対する重大なピンチです。これに対して環境庁長官、私は重大な決意を持たなければならないのですが、あえて言うと、環境開発、これがぶつかった場合、あなたは環境をとると言っておるのに、今度は開発という答が出てしまったことになる。そうすると、あなたが推進したいという住民運動にも暗い陰がさす、むざんに踏みにじられることになるじゃありませんか。副総理として、こういうような公害行政に対して、ちょっとこういうような態度は許してはならないと思います。私まことに残念であります。長官、これに対してひとつ決意を伺っておきたいのです。
  9. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、企業は各地域協力を得なければ、いろいろな面で、経営するについても不都合が起こってくると思いますから、地域社会との間に環境上の不安があったら、このような公害防止協定を結んで、その不安を解消するのだといってもう少し地域住民理解を求めるような努力を、各企業はしなければいかぬと思うのですね。そういう点で何か企業努力というものが、できるだけやっておるとはいうんでしょうが、われわれから見ると努力が足りないと思う。もう少しやらなければいけない。そこに永久に企業は行くのですから、地元民協力というものは絶対必要である、そういうことを考えれば、非常に困難はあっても、忍耐強く話し合いをするという態度企業が持たなければ、いつも機動隊導入して工事を始めるというような事態が各地に起こるということは、今後開発を進めていくにおいても、企業地域社会というものがそういう形になることはよくない、こういうことで、起こってしまったことで、もとに戻すということはできないことで、いろいろおしかりを受けるわけでありますが、今後はともかく環境保全という見地に立って話し合いを続ける。われわれもまた、環境のいろいろな基準を今後励行していくということに対して、これは本来の環境庁の仕事でありますから、きびしい態度を持していく。どうか島本委員いろいろ反対の側に立っていられる方々、そういう方々との間にいろいろ御連絡もあるのでしょうが、そういう人々も環境保全公害防止という見地に立って今後とも話し合いを継続するように、強大な島本さんの影響力を行使していただければ非常にありがたいと思う次第でございます。
  10. 島本虎三

    島本委員 警察庁長官はまだ来ませんか。当委員会地方行政理事間の協定によって十一時から一時間ここへ来てもよろしいということになっているんです。取りつけてある。それにもかかわらず、まだ来ない。一体、この伊達火力機動隊導入に対してどういうような状態だったのですか。それでけが人は何人ほど出たのですか。流血の惨は免れたのですか。この報告を願います。
  11. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  昨日の状況をまずお話し申し上げますと、北海道電力株式会社昭和四十五年四月、伊達市の長和地区火力発電所建設計画して、それぞれの所定の準備を進めておって、この工事着工のための重機類資材等の搬入が昨日午前五時ごろから車両二十二台をもって実施されたわけでございます。これに対して労組員地元農漁民極左暴力集団、こういう反対諸勢力が最盛時約七百五十人を動員されまして、路上にピケを張る、あるいはすわり込む、こういう阻止行動が続けられたわけでございます。これに対して北海道警察本部警察官五百人を動員いたしまして、警備に当たって、すわり込みなどの違法行為に対してはこれを引き抜く、排除を行なうという警察の必要な措置を講ずるとともに、警察の警告を無視してすわり込みを続けていた者十一名を威力業務妨害道路交通法違反、こういう容疑で現行犯逮捕をいたしております。  本警備に当たってけがをした方が三人出ておる状況でございます。この三人のけが状況でございますが、その第一の方は千石という方でございまして、この方は当日の午前八時ごろ火力発電所に通ずる道路反対同盟監視小屋付近ですわり込みを行なっておって、警察部隊がこれを排除したわけですが、その際、本人は飲酒しておったような様子で、一たん排除したところ再びすわり込んで、現場に戻ってすわり込みを続けるという状況で、排除に当たる警察官もその間の本人状況をよく考えまして、三人がかりで慎重にかかえるようにして本人を移動したところ、急に頭が痛いというようなことを言い出したので、急いで救急車伊達赤十字病院に運んで医師診断を受けたということでございます。医師診断によりますと、本人レントゲン撮影も行なったわけでございますが、透視の結果では何ら異常はない、外傷もないということで、神経的な障害ではないかという医師の回答になっております。  第二は、室蘭市の斉藤という人でございますが、この方は左のひじを捻挫して、通院加療四週間の傷害を受けたということになっております。本件について調べましたけれども、排除活動等現場において斉藤さんを排除したという警察官はいまのところ発見されておりません。警察官本件を認知いたしましたのは、九時十六分ごろ、建設用地横道路の上にいた社会党宣伝カーから警察のほうに救急車を呼んだという連絡がございましたので、救急車伊達赤十字病院に運んで同病院医師が診察したということでございます。医師から確認したところによりますと、斉藤さんについても、レントゲン透視の結果では何ら異常はない、ただ本人が痛みを訴えるので捻挫の疑いがある、こういう診断をしたという報告を受けております。  第三は、室蘭におられる南部という方ですが、これは左の上腕の二頭筋長頭腱部分断裂ということの診断加療四週間という傷害を受けたという事案でございますが、これは時間が九時十分ごろ、建設用地横道路上で反対同盟人たちがすわり込みをしておりた際、このすわり込みの人たちを指揮していたということで、現認した警察官二名が、両わきから腕をとるようにして引き立てて、威力業務妨害罪等現行犯ということで逮捕したものでございますが、逮捕伊達警察署に引致してきたあと、左腕が痛いということを申し出たので、直ちに伊達赤十字病院で診察を受けてもらったところ、先ほど述べたような病状であったということで、はっきりしたわけでございますが、警察官の加えた実力は、逮捕行為に必要な限度を越えたものではないという報告を受けてございます。  いずれにしろ、三人の人たちけがをしたということでございまして、これは非常に残念でございましたが、警察官の必要以上の不当な実力行使ということで起きた結果ではないというふうに考えております。  以上がその報告であります。
  12. 島本虎三

    島本委員 あとから報告を求めると、そういうような三百代言的な報告しか来ない、これが警察実態なんじゃありませんか。  もう少し先へいきますけれども、この千石正志さんという三十六歳の方は、内臓破裂疑い日赤病院へ収容されたんですよ。何も加えないのにどうしてこういうような状態になるんですか。相当な圧力です。それから斉藤哲身さん、これは二十三歳の人ですが、左手骨折じゃありませんか。こういうような状態なのにほとんど何でもないような報告。これはまさに現地からのなまなましい情報ですよ。証拠あるんですよ。全くそういうような状態では遺憾です、長官。  そのほか、今度南部忠夫氏に至りましては、全治四週間、左上腕二頭筋長頭部分断絶、こういうようなことで失神しているんですよ。それも環境保健裁判原告団の一人じゃありませんか。特にねらってやったような形跡さえあるじゃありませんか。  ほとんどけが人はこの三人だという。しかし敷き詰められたあの砂利の上に、ズボンはちぎられて、そして血が点々とこぼれておる。こういうような状態でも、そのほかは円満にやったということになるんですか、長官。敷き詰められてある石の上に、ちゃんとズボンが破れたのと同時に、今度は血さえその中にまみれているのです。血がにじんでいるのです。こういうような状態にしておいて、警察官ほんとう正当防衛かのように言っている。これはもうすでに訴えられていますから、刑事事件になるでしょう。いまのようなのが、これが実態なんです。あなたのところへ言ってきているのは、これはほんとうに三百代言的な、これはもう作為ですよ。実態はそうじゃありません。もう一回調べ直しなさい。
  13. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 ただいまの負傷者の件でございますが、これは警察といたしましては慎重に病院に問い合わせて、その結果を御報告しているわけであって、私どもはいいかげんなことで御報告しているわけではございません。  千石という方については、別に内臓破裂というようなことはない。それから斉藤さんについても、骨折というような事実は全くございません。まあ第三の方については、先ほど申し上げましたような四週間に及ぶ加療が必要だという診断が出ておるようでございます。
  14. 島本虎三

    島本委員 それよりもっと残酷なのがあるのです。この原告の人のけがをされたその南部さん、これはもう公害関係評論家としての第一人者なんです。十五日に「空よ−SO2−SOS」というNHKのビデオどり、こういうような約束にまでなっておった人なんです。まさにこれは、そういうような人をねらってやったような行為としか思われないじゃありませんか。ほとんどこれはすわっている人です。何ら抵抗していない人です。目撃者星野健三道会議員。そしてこれに対しては、小樽かららしい警官三名、それがもう強引にその人をやっている。逆に手をねじり上げているのです。そうして、そばに寄った高野弁護士、これも環境保健裁判担当弁護士、この人が、現行犯逮捕手続書、これを見せてもらいたいと言っても拒否しているのです。弁護士の当然の要求さえ拒否しているのです。そのほかに、そのままうちへ帰ってそのまま寝込んでいる人がずっとおるんです。その場では緊張していてわからぬけれども、うちへ帰ってきたとたんに足腰が立たなくなっているのです。いま私の手元ではっきりしているものの名前を言っても、管野正勝、三十八歳。けられたままで家でもう寝込んでしまっているんです。豊田正勝、これもぐあいが悪くなって、そのまま寝込んでいるのです、うちへ帰って。佐藤義行、これは農家です。これもうちへ帰ってそのまま寝込んでいる。現在寝込んでいるのです。こういうような状態にしておいて、その人の名前さえわかっているのにそれも発表しないで、当然弁護士手続というようなものを踏んでやっても、現行犯逮捕手続書なるものも見せない。まさに暴力行為じゃありませんか、こういうようなことをやるのは。そして、何でもない、軽く触れた程度のものが失神しているんです。そして報道陣がカメラを向けるとそれがない。カメラの放列からはずれると今度はそれをやる。暴徒と同じじゃありませんか、このやり方は。長官、こういうようなことでやられたんです。警察庁長官を呼んでもらいます。もう来なければ行って、すぐ委員長、もう来る時間でありますから、呼んでおいてもらいます。こういうような事務的な、そんなもの読み上げるだけじゃ権威ありません。  長官、こういうような状態なんです。私はまことに遺憾です。流血の惨を見ないように指導すると言って、この状態はどうなんですか。これが流血の惨じゃないのですか、長官。まだあるのですよ。こういうような状態で、何のために強行したければならないのですか。副総理としての威厳はもう地に落ちているじゃありませんか。一会社によってこれをやられる。これが公害行政ですか。まさに日本の将来のためにも嘆かわしいです。警察庁長官来るまではこの答弁保留しておきますが、長官、これはどういうことです。
  15. 三木武夫

    三木国務大臣 しばしばお答えしておりますように、そういう事態にならないためには、やはり環境保全という見地から公害問題などに対して、地元との間に非常に理解を得られるような努力をすべきであるということは繰り返し述べてきたわけですが、いま御指摘のような事態を招いたことは非常に遺憾に思っている次第でございます。
  16. 島本虎三

    島本委員 それだけじゃないです。じゃ長官まだ来ませんから……
  17. 佐野憲治

    佐野委員長 呼んでいますから。
  18. 島本虎三

    島本委員 あとのほうをやって、これは順序をちょっと交換いたします。通産省としては、これに対してはどういう指導をいままでしてきたんですか。これははっきりしてもらいたいです。石炭専焼火力発電を認める。そのかわりに伊達火力をすみやかに進めよ。石炭専焼火力発電所臨海地帯建設せよ、こういうようなことを堂垣内北海道知事通産大臣から言っているじゃありませんか。まさに皆さんのほうがそれをやらしたじゃありませんか。それで大事を呼んでいるのです。こういうめちゃくちゃな話ありますか。これは閣内統一じゃありませんか、長官石炭専焼火力発電建設をしたかったならば重油専焼伊達火力を早くやれ、このようにして堂垣内知事をそそのかして着工促進をはかった、こういわれているのです。また、それらしいことも新聞に出ているのです。そんなことしなかったのですか。これはあなたではわからぬ。とんでもないことです、これは。
  19. 井上保

    井上政府委員 石炭火力の問題でございますが、これにつきましては、その後の五十一年あるいは五十二年以降の需給上の必要な供給源といたしまして、現在石炭火力発電所建設をどうするかという点につきまして鋭意検討いたしておる段階でございまして、まだどこにつくるとか、どういう規模であるとか、そういうものがはっきりしている段階ではございません。非常に問題が多うございますので、現在検討している段階でございます。
  20. 島本虎三

    島本委員 あなたに言っているのじゃないです。これは中曽根通産大臣堂垣内北海道知事に、この点を言っているのです。伊達火力をすみやかに進めなさい、石炭専焼火力発電所臨海地帯建設するようにしなさい、こういうようなことを言ってやって、まさにそそのかしているのです。これは大臣が直接言っているのです。これは正否をはっきり確かめて、これに対してあとからこっちのほうへ知らしてください。文書によってはっきりさせてください。とんでもないことです。それだけじゃないです、長官。話を進めようたって、住民のほうが不信におちいっているのです。というのは、初め電調審できめたころ、そのころは重油の硫黄分の含有率が二・二%の油、これでも閾値以下になります、こういうふうにはっきり言っているのです。それから住民との折衝の中で、一・七%のものをたきます、これならいいです、こういうふうに言っているのです。そのうちに、また交渉で、一・〇%のものをたきます、まして一号機は一・〇、二号機になったら〇・八%のものをたきます、こういうふうにはっきり言っているのです。二・二%のものが電調審にきめられて、これで何でもないと言いながら、だんだんこれを下げていっている。漁民はこれに対して当然不安がらないでどうしますか。権威ないじゃありませんか。とにかく何でもいいから、つくればいい、こういう態度であります。まして苫小牧の東部関発、その方面に行くと、〇・四%のもの以外は使わせないと言っているのです。北電企業努力しているのですか。これでは殿さま企業ではありませんか。通産局の指導もこういうような状態で、数字そのものを見ても、ほとんど住民が信用できないような経過をたどっているのです。漁民と住民を納得させようとしても、これじゃしようないじゃありませんか。通産省指導もおかしいです。現在の公害の責任を何ら反省した行為だとは思われません。これに対して通産省ではどういうように考えているのですか。漁民との間にこんなことを言って、住民との間に信用がちゃんと取りつけられるのですか。
  21. 井上保

    井上政府委員 現在のサルファ対策でございますが、これは現在の環境基準——新環境基準でございますが、それに対しまして十分にたえるということだけではなくて、これは燃料の手当てその他ができます限り、できる限り低いものを使うようにということで強力に指導いたしております。たとえば現在九電力の平均サルファ分は一・〇%でございますが、これは五十一年度におきましては〇・五%程度にしたいという計画を持っておりまして、これもできるだけ下げようということで、いろいろローサルファの入手等に努力いたしまして、できる限り低くしたいということで、その地域地域の実情に応じまして、環境基準以下のものを確保したいということでやっているわけでございまして、現在の、いま話が出ておりました一・〇%では、閾値でいきますと、大体所要の環境基準の基準になっておりますものの八分の一程度である。従来のものですと五分の一程度でございますけれども、さらにそれをできる限り下げたいというのがわれわれの考えでございまして、その地域で手当てがつきます限り努力いたしまして、できる限りこれを低くしたいというふうに指導いたしておるわけでございます。
  22. 島本虎三

    島本委員 警察庁の関係はこれで終わっているのじゃないのですから、長官が来たならばこの続きをやるのですが、まずその問題と、もう一つ住民に不信を買っているのは、温排水の影響のことです。これについては、五月、六月、七月で北海道で再調査をするということになっているはずです。それをやる前に強行着工してしまった。何ですか、これは。そういうような企業状態皆さん指導しているなんということは、言語道断です。漁民の了解できないのは当然じゃありませんか。まして電源開発整備法を審議中でしょう。審議中であるにかかわらず、これもやってのけている。言語道断というのはこのことなんです。現在の公害に対しての反省は通産省に一つもないじゃありませんか。責任をもってこういうような行政官はかえてしまわないとだめです。政務次官どうですか、これは。やっていることみんなおかしい。——政務次官に聞いている。
  23. 井上保

    井上政府委員 法律の関係でございますが、法律の関係につきましては、経過措置を入れておりまして、法律が成立いたしました暁におきましては、すでに着工しているものでも特定のものについては法律を適用するという経過規定を置いてございます。  それから温排水の問題につきましては、しばしば申し上げておりますように、電調審の場、それ以後、いろいろなところで検討いたしまして、きわめて影響軽微の範囲につきましては実体的な話し合いを進めていくということで、行政的な指導をしていた次第でございます。
  24. 島本虎三

    島本委員 何ぼ聞いてもこれじゃだめです。いわゆる企業サイトで、公案んかもう——開発あとから環境行政がついていくような、こういうような考え方じゃだめです。私はここで長官によく聞いておいてもらいたいのです。  いま一つ一つやっても、長官がやっていることと逆じゃありませんか。まさに閣内統一である。こういうような状態で、いかに環境行政を進めようと思っても、やるそばからこれはくずれます。とんでもないことです。  それと同時に、なお解明できない点がたくさんあるのですけれども、警察の関係では、これは公害が現在のような状態になり、昭和四十五年の公害国会以来、警察そのものにも、いわゆる公害罪処罰法というような法律も、はっきり皆さんがそのもとに立って指導しなければならないような状態にあるはずです。公害に対しても、これはやはり警察権を乱用するようなことがあっては困るはずです。今度の場合には、どういうような根拠で機動隊を出したのでしょうか。この根拠法は何法で、第何条によるのですか。
  25. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 先ほどお話し申し上げましたように、電力会社のほうで建設資材を搬入する、これに対して反対勢力がそこにすわり込んで実力でそれを阻止する。こういうようなことはこれまで電力会社側反対側との話し合いの中においてもどうしても阻止するというようなことを言っておりますし、それから先日の新聞等においてもどこまでも阻止する、こういうようないわば緊迫した情勢が予想されるわけでありまして、そういう場合には警察としては公共の安全と秩序を維持する責任があるということで、警察法第二条に与えられた責任において、かつそれがまさに犯罪が行なわれようとするおそれがあるということで、警察官職務執行法第五条の規定によって出動をしてこれを制止する。そうして今回の場合は、阻止行動は明らかに威力業務妨害罪並びに道路交通法の違反であるということで制止あるいは警告、そして最後に何度警告してもそれに従わないという者に対しては、先ほど申し上げましたようなことで、いま言ったような罪名で十一名を逮捕した、こういうことであります。
  26. 島本虎三

    島本委員 あなたは公害に対しては被害者と加害者しかないということを御存じですか。犯罪の警告、制止、これもまさに加害者側にすべきじゃありませんか。公害においては加害者と被害者しかないのです。あなたのやっていることは加害者に対して応援していることになるじゃありませんか。警察の過剰権利行使ですよ。こういうばかなことをやる警察はあったものじゃありません。冗談じゃありませんよ。まさにこれは過剰権利行使です。これはもう警察官としてはこういうような場合いつでも——では今度は公害行政でこういうような場合には、要請があったならば、公害には加害者と被害者しかないのだから、会社側から要請があったならば、それはやはり加害者側につくことになるわけですね。長官、これは大事ですよ。
  27. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 警察官の出動をやるのは公害の問題というよりかも、あるいは会社からの要請というような問題ではないのであって、そういう形で阻止行動が行なわれた。会社側の……(「要請したじゃないか」と呼ぶ者あり)要請は、われわれとして独自な判断、要請も一つの判断の材料ではございますけれども、そういう形で資材を搬入する、これを阻止する。そういう力と力がいわばぶつかるというような形になれば、そこで犯罪が起こるおそれがある。放置しておけばいわば身体、生命あるいは財産にいろいろな損害が起こるおそれがある。こういう状況を警告し、制止し、そうしてその犯罪行為について警察権を行使するということであって、会社側の要請があればすぐ出ていくというような問題ではなくて、諸般の状況警察独自の判断判断してこれに出動したんだ、会社側の要請はその判断の一つの材料に過ぎないわけでございます。
  28. 島本虎三

    島本委員 判断の材料というけれども、警察はいつでも、では会社側が要請し、その資材を持ってきて、いかに公害発生のおそれがあり、環境の裁判でいま争っているその最中であっても、資材を搬入し、そこでもって電力会社がそういうような工事着工しようとする、強行しようとすると、それを排除し、それを円満にやらせるのが警察だということになりますね。いつでも加害者の味方だということになってしまうのですね。公害においては加害者と被害者しかないのですよ。なぜそういうようなことばかりあなたたちは指導するのです。やはりだめです、長官でないとだめだ。三木長官、こういうようなやり方ではだめじゃありませんか。何ですか、このやり方は。いつでも加害者の応援ばかりしている、こういうようなことで、長官、いいのですか。警察はどちらにも味方しない立場をとるべきじゃありませんか。
  29. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えします。  私どもはどちらに味方するというようなことはございません。一方的にどちらに加担するというようなこともございません。これまで北電の関係にも、ことしになって八回にわたって資材搬入の動きがございました。御承知のとおりだと思いますが、その際は別に警察は出動いたしておりません。(「出ているじゃないか」と呼ぶ者あり)実際にそれを阻止したり警告したりということはしておりません。だからそういうような生命、身体、財産、これに危害を及ぼすようなおそれがある場合に出るということであって、その公害闘争自体が正当にルールを守って行なわれている限りにおいては、何ら警察としてこれにタッチするというような気持ちはございません。
  30. 島本虎三

    島本委員 これはやはりどちらにも味方しない厳正な中立な立場をとるのが警察官の任務じゃないのですか。そうじゃないのですか。あなたじゃだめだ。長官警察庁長官来ないからあなたにかわって、副総理として答弁してください。警察ほんとうにどちらにも味方しない立場で厳正中立な立場をとるのがほんとうじゃないのですか。
  31. 三木武夫

    三木国務大臣 それは言うまでもなく、警察はどちらに味方するものでもございません。厳正な立場を守ろうとするのは社会の秩序であって、敵でも味方でもないということであります。
  32. 島本虎三

    島本委員 だから会社側の要請によって、会社側が有利になるように導いたのです。公害行政にはこれは加害者と被害者しかない。あえて言うと被害者の立場に立ってやるのが、いまの公害行政を実施しなければならないいわば行政の義務なんです。本末転倒している。ほんとうにもう中立の立場に立つならば、三木環境庁長官から話し合いを進めなさい、それをもう数回にわたって言っているのです。そして進めようとしないのが会社側でしょう。厳正な中立な立場に立つならば、そういうふうに排除しないで、そのまま双方に引き揚げさせて話し合いをさせるように導くのがほんとう警察態度じゃないですか。一方けがまで与えて流血の惨事まで出して、そうして会社側ばかりを導いてやっている。これが厳正中立ですか。とんでもないことです、これは。私はそう思うのですが、長官、どうなんですか。
  33. 三木武夫

    三木国務大臣 そういう原因を起こしたものは、地元会社との間に円満な話し合いというものがつかないということが原因でありますから、やはり根本は会社地元民との間でみんな問題にしておるのは公害防止の問題ですから、それで納得のいく説明をやはり会社がしなければならぬし。また地元のほうもやはりその問題に対して冷静に、公害防止というものに対して掘り下げて検討をする必要があるわけでありますから、そういうことで話し合いが継続すれば警察が出動するようなことはないわけでありますから、そういう原因はやはり話し合いというもので問題を処理する、これはこれからのいろいろな産業開発の場合においても、問題は警察の手をわずらわさないで当事者間で解決するという能力を持つことにしなければいけない。それはやはり企業側も地元人たちもともにそういうことで解決をするということにならないと、産業開発というものが非常な不必要な混乱を地方に起こす結果になると思います。
  34. 佐野憲治

    佐野委員長 関連質問の申し出がありますので、これを許します。岡田春夫君。
  35. 岡田春夫

    岡田(春)委員 関連質問ですから簡単に私伺いますが、先ほどから島本君のお話しのとおり、このように流血の惨事を招きましたことはきわめて遺憾であります。しかも私ここでどうしても申し上げたいことは、この事件が流血の惨事になるのではないかということをわれわれ心配したのです。ですから、われわれとしては関係の議員とともに三木環境庁長官並びに関係の大臣を歴訪いたしまして、具体的にいうと櫻内農林大臣、二階堂官房長官に、明日もしこのような事態が起こるならば、流血の惨事を招くことはもう明らかである。だからやめてもらいたいということを申し入れたのに対して、三木環境庁長官は、そういうことは今後の立地問題としてはきわめて不適当だから話し合いをさせるようにしましょう、こういう明快な答弁があった。それにもかかわらず実はこのような事件が起こったのだが、先ほど島本委員の言われた中でも私はきわめてふに落ちない点は通産省態度です。通産省は、通産大臣にはわれわれ会いませんでしたけれども、ここに来ておられる公益事業局長が、このような事件になることについて厳重に、これは流血の惨事の起こらないようにしてもらわなければ困るということをわれわれ強く申し入れたにもかかわらず、態度はきわめてあいまいであった。前に文書をもって重大な事件の起こらないようにするように北電申し入れてありますから心配はないと思うけれども、再度通産局に話をしましょうという程度のあいまいな答弁である。一番の当事者がこのようなあいまいな態度というのは、島本委員の言ったとおりに、むしろ北電あと押しをすることによって、こういうような事件の起こったことを、そういうことにむしろあと押しをしたと見られてもしかたがないと思う。大体私はこの機会に長官に伺っておきたいのは、あなたは副総理の立場において、閣内においてこういう不統一であっては私はもうこれはきわめて遺憾であると思う。特に先ほどの事件の詳細をお聞きになっておわかりのように、そういう妨害をしている者を排除するという中で、実際に暴行事件が起こった。この暴行事件については、排除をして、そのあと約三百メートル向こうまで連れていくときにこれは全部起こっているのです。現場から排除をして、約三百メートルのところでいわゆる手錠をはめている。その手錠をはめている間に全部これはけがをさせているわけです。南部忠夫君の場合においても、連れていく途中で痛い痛いと言って騒いでいるのを盛んにねじ曲げたのです。ですからこれはまさに警備上の行為を越えている、暴行ですよ。徹底的に長官調べていただきたい。はっきりここで申し上げますが、南部忠夫君については三人の小樽警察署の者だ。はっきり申し上げておきます。お調べになっていただきたい。小樽警察の者三人が縛り上げて骨折をさせて、しかも痛い痛いと言っているのをあえてやって、手錠をはめたのです。こういう事実は政府として副総理の立場において徹底してこれは調べてもらわなくちゃ困る。  千石君の場合においても三人の警察官が、苦しんでいるのにそれをあえて手錠をはめてやっている。そういう暴行事件が起こった原因はだれなんだ。さっきあの答弁を聞いていると私はきわめて心外にたえない。こういう事件が起こったのは被害者であるところの彼らが問題ではないのです。まさに加害者が警察官ですよ。警察官がこういうことをやっているという事実を見のがすわけにはいきません。これはやはり徹底的に副総理の立場においてひとつお調べをいただきたいということが一点です。  それからもう一点は、二階堂官房長官に、事件の起こったその日に島本君とわれわれはかけつけたのです。こういう事件が起こっているのはたいへんだ、直ちに警察官に対して、こういう事件が起こらないように押えてもらいたい、こういう申し入れをしましたときに、二階堂官房長官は何と答えたか。きのうあなた方から申し入れがあったので、警察官にはそのような暴行行為をやらせないように厳重に警告を発してある。そこでわれわれはその問題については十分自分としては知っておったので、けさも情報をとりました、ところが現在救急車で運ばれた者は二名だけであって、その二名もお医者さんに調べてもらったところが、そのような事実、特別なけががないということでこれは帰っております、心配ありません。だからそういうあなた方の言っているのはから騒ぎだと言わんばかりの言い方です。ところがどうですか。このような事実になってきているじゃありませんか。官房長官がなぜこういう答えをしたか。国警がうそをついて官房長官にそういうことを言っているからですよ。官房長官が見に行ったわけじゃないから、国警からの報告を聞いているに違いないからです。われわれから見れば官房長官の言い方もでたらめだと思う。こういう無責任なことを言って、われわれ現場と直接連絡をとっているのだ。そういう事実に対していいかげんなことを言ってこういうようなことをやらしているということは、われわれ見のがすわけにはいかない。副総理の立場においてこの警察の暴挙というもの、あえて言います、暴挙、警察の暴挙というものを徹底的に調べてください。小樽署の者だということもはっきり私は言いました。そういう点お調べになるかどうか、そこの点はっきりお答えをいただきたい。
  36. 三木武夫

    三木国務大臣 いま警備局長からいろいろ詳細な現場報告がありましたけれども、なおわれわれとしてもっと詳細なことは警察庁長官からも聞くことにいたします。
  37. 岡田春夫

    岡田(春)委員 このような事実は、きわめて遺憾な事実だと思いますが、再びこういうことをやらせないように三木長官として、副総理として、再びこういうことをやらせないということを明確に御答弁いただかないと、われわれは納得できない。そしていままで起こった問題については徹底的に究明することを明らかに御答弁願わないと、われわれは納得ができません。この二つの点をもう一度御答弁を願いたいと思います。
  38. 三木武夫

    三木国務大臣 国政全般からいいますと、やはり電力というものは開発を必要とするわけですね。そうするとやはり発電所の建設というものは必要になってくるわけです。そういう場合に、私は遺憾に思われるのは、こういう形で国として絶対に必要とする電力の開発が、もう少し地元人たちとの間に話し合いが進められるような、そういうふうなことにしなければ、こういうことが各地に起こるという事態になれば、電源開発というのは計画どおりにいかぬと私は思うのです。だから望みたいことは、企業側に対しても、心配しておるのは公害問題ですよ。もっともなことですから、これに対してデータを示してこうだということで、なおその公害防止協定を公にして不安を解消するように努力をすることは企業の責任だと思う。  また地元人たちも、問題をそういう公害防止という点で掘り下げて、一緒になって検討するという態度が私は望ましいと思うのです。そうしてこの問題を片づけなければ、これは各地にこういう問題になってきたら、発電所というものは計画どおりにできなくなりますよ。そういう問題を、全般としてこれからの発電所計画というものは、当事者がみずから解決する能力を持たなければいかぬ。これは第一番目ですよ。  警察の場合は、やはり秩序というものが破壊される懸念があるときに、これからそういうことはいたしませんということを私は答弁することはできませんよ。社会の秩序というものは……(岡田(春)委員「行き過ぎは取り締まらなければいけないでしょう」と呼ぶ)行き過ぎはいけません。それから社会の秩序というものを維持するために警察が発動する場合……(岡田(春)委員けがをさしたのは行き過ぎでしょう」と呼ぶ)だからそういう問題については私がいま話をここで聞きましたけれども、さらに島本委員からもお話がございましたし、岡田委員からもお話がありましたので、警察庁長官から詳細にそういう事情を私も聴取いたすことにいたします。
  39. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これで終わります。大臣はやはりそういう警察の行き過ぎ、暴力行為、こういうものを取り締まってもらわなければ困ると思います。やはりこの委員会においても、こういう点は徹底的に審査してもらわないと困る。私はいま三木長官の言われたとおりだと思う、前半の点は。これは北電に非常に責任がある。  私はこの機会に委員長にお願いをしたいのですが、この事件に関連をして、北電の岩本常次社長をここに呼んでもらいたい。並びに北海道道警の本部長を呼んでもらいたい。それから二階堂官房長官はわれわれに約束したことと違う結果が起こっているのであるから、二階堂官房長官と三人を喚問されることを要求いたします。
  40. 佐野憲治

    佐野委員長 ただいま岡田春夫君の北電社長並びに北海道警察本部長、二階堂官房長官の参考人としての召喚の件につきましては、後刻理事会において協議させていただきます。
  41. 島本虎三

    島本委員 いろいろこの問題に対しては問題が多過ぎるのであります。公害の問題に対しても国の意向を無視して強行着工に踏み切った。国の意向を無視してまでこれを踏み切ったという企業、その企業をそのまま許していいのかどうか、大きい問題じゃありませんか。そして警察は国民のどの部分を保護するんだ。環境問題がこのように大きくなって、解明がいよいよ重大になっているときです。その解明を求めてもあえて答えても出さないで、機動隊住民排除流血の惨事を引き起こしている。そうしてそれに対しても三百代言的なそういう報告しか来ていない。まことに遺憾じゃありませんか。今後この問題に対して長官——警察権力による強行着工、こういうようなことがいま北海道伊達に行なわれた。しかしやはり住民が各地でそれぞれ反対運動を展開している。みんな健康のために、生命のために、または漁業、農業、こういうような生業のための反対運動、こういうものは育成しなければならないというのが代々の環境庁長官の意向である。しかし反対運動がいまあるがために建設できない五、六カ所の建設に対して、今後やはり電源立地難の解消、このためにテストケースとして、今度は警察力による強行着工、これをどんどんやっていくということになれば、これは重大な一つの示唆になるのです。そういうようなことは断じてしてはいけないのです。したがって社会的責任は大きいのです、いまの場合は。こういうような意味があるということを長官、考えないといけません。あなたの考えと反対のことです。あるいは官房長官、あるいは三木環境庁長官、あるいは北海道開発長官の意向を無視して強行着工に踏み切ったような企業、それをそのままにして許していいのですか。私はこの点はまことに不満です。また今後に対しての示唆が大きいのである。ここで長官決意をはっきりさしておいてもらわないと、今後の公害環境行政のために重大な悪影響をもたらすおそれがあります。長官決意をこの際伺っておきます。
  42. 三木武夫

    三木国務大臣 いまも申し上げたように、発電所の計画というものは、やはり電力需要からして建設は必要である。その場合に環境庁が守るべき一つの大きな基準は、その発電所の計画というものが地元民の健康、生命に害を与えないような、それだけの公害防止の施設をした建設でなければならぬということであります。そういう点で今後環境庁としてはきびしく環境保全の行政を進めていくことには変わりがないわけです。ただこういう事態がどんどん起こるとは私は思わない。これが普通の状態ではないわけでありますから、そういうためには企業地元との間にやはり話し合いを進めて、円満に発電所の立地ができるような、そういう能力を、企業もまた地元民も冷静にその問題を取り扱うような態度が望ましいし、そういう方面の指導が必要であると思います。
  43. 島本虎三

    島本委員 ついに警察庁長官は来ないようです。私まことに遺憾です。そしてこの点の重大なことをここで皆さんに申し上げて私はもう終わることになりますけれども、住民との話し合い、答えは核心を全部はぐらかしておるのです。そして資料を全部拒んでいるのです。この重大な亜硫酸ガス最大濃度であるとか、逆転層の問題であるとか——大分で問題になっている問題です。排煙脱硫であるとか亜硫酸ガスの農作物への影響であるとか人体への影響であるとか建設に対する手続であるとか、こういうような問題に対しては、あえて言うと、うそと不十分さが明瞭になっているのです。そこを突かれているのです。そして核心ははぐらかしているのが答弁です。ましてこの温排水の問題、そして漁業に与える影響公害防止協定の問題、これから話し合いましょうということさえも全然やっていないままに強行着工しているのです。堀内寿郎という、前の北海道大学学長、これも、公害がないというならば一対一で公開論争してもよろしい、このことをいま伊達建設に対して知事と北電に対して申し出ているのです。そういうようなものに一切目をつぶりながら強行したのがいまの態度です。何らやるべき手を打ってないじゃありませんか。被害者と加害者しかない公害、いつも加害者の場に立っているのが警察、まことに遺憾です。いままさに、これは公害行政の重大なピンチだと思うのです。私はこういうような事態が起こったことはまことに残念なんですが、このことだけはっきり言っておきたい。今後のためにこういうようなことはもう二度、三度とやらしてはならないということです。長官がはっきり言っていた、住民とのコンセンサス、これが正しく理解されない計画遂行はしょせん無理だ、あたりまえじゃありませんか、こんなこと。閣内の不統一になるようなことがないように、今後の大事な日本国民の健康と生命を守るためにも、大事な環境行政ですから、長官、この際き然として今後の公害行政に臨んでもらいたいと思うのです。最後に決意を伺っておきます。
  44. 三木武夫

    三木国務大臣 これは何と申しましても生命、健康というものはもうすべての出発点ですから、生命、健康を犠牲にしてこういうメリットがあるというものは一つもない。そういう点で環境行政をきびしくやるということに対しては私も強い決意で臨みたいと思っております。
  45. 佐野憲治

    佐野委員長 林義郎君。
  46. 林義郎

    ○林(義)委員 ただいま島本委員岡田委員から現地状況につきましていろいろとお話がありました。私も聞いておりましたが、結果から申し上げますならば、何人かの負傷者が出たということはきわめて遺憾な事態であることは私も同感であります。しかしながら、私は、この事態がそれぞれ一つ一つの行為として考えてみるときには、これは長い問題でありますから、一つの行為が悪かったからといって、全体の行為をノーだというわけにはいかないと私は思うのであります。先ほど来警察庁のほうから御答弁がありましたが、どうも議論の焦点は過剰防衛なりやいなやという話であります。これはその後の具体的な事実をやはり議論してみないとわからない。一方的な話ではいけないだろうと思うのです。私は、これは単に伊達火力だけの問題ではないと思うのであります。各地でいろんな発電所につきましてこういった公害反対運動が出てきております。そこで私は少し冷静にものごとを考えていく必要がある。やはり今回のことを一つの鏡にいたしましてこれからの公害行政環境行政を進めていくのにおいて、いい前例か悪い前例かは別にいたしまして、今回の例は一つの大きな例としてやはりどうしても考えていかなければならないだろう、私はこう思うのであります。そういった点で島本先生なんかとちょっと意見は違うわけでありますからお尋ねいたしますが、電力の問題というのは、先ほど来長官が御答弁のようにやはり国民生活としてはどうしても必要なものであります。電気がもしもなくなったならば、第一こういった国会で議論することだってできなくなるだろうと私は思います。米も大切でありますが、米は一ぺん食わなくても——私は昼めしを食うつもりはありませんが、米は一ぺん食わなくてもいい。電気が切れたら人間の活動ができなくなるだろう。電気問題は私はたいへんな問題だろうと思うのです。それをどういう形でうまいぐあいにやっていくかという方式を考えていくことがどうしても必要だろうと思うのですが、実は長年の経過があります。昨年の十月に電源開発調整審議会の決定を見たわけであります。本来ならば、昨年の十月に電源開発調整審議会の決定を見たわけでありますから、そのときにはいろいろな審査がされたわけであります。しかも現在まで着工がおくれている。きょうは六月の何日でありますか、六月ですから、もうすでに八カ月もおくれておるわけです。八カ月もおくれるとやはり電力事情というものは相当に変わってくるだろうと思うのです。それがさらにまたもっとおくれる。たとえていうならば、ことしの十二月までに着工がおくれると一体電力事情というものはどうなるのか。当初の四十七年の十月の審議会のときの問題と現在——そのときにはおそらく二カ月ぐらいで着工するということだっただろうと思うのです。現在それがさらに四十八年の十二月——これは十二月になるかどうか知りませんけれども、そういったようなときにどういうふうな電力事情になるのか。あまり数字のこまかいことは要りませんから、供給予備率というのですか、というような形で御説明をいただきたいと思うのです。
  47. 井上保

    井上政府委員 現在の北海道の電気の需給の見通しでございますが、現在北海道におきましては適正予備率を一五%程度に考えております。このうち、これで伊達火力が入らなかった場合の五十年八月に、これは予備率で申しますと三・七%でございまして、非常に電力需給が逼迫するということでございます。なおかつ、現在三十五万キロワット程度の発電所の建設期間は、大体最も早くできましたのが二年二カ月、それから平均しますと二年三、四カ月おそいのは二年八カ月でございまして、現在五十年八月のピークに間に合うためにはぎりぎりの線である、こういうことでございまして、着工が若干でもおくれれば五十年八月のピークは非常に困難である状況でございます。
  48. 林義郎

    ○林(義)委員 もう少し伺いたいのですが、たとえば伊達火力着工しない、そうすると予備電力というものがありますけれども、予備電力でなくてもとにかく何とかしなければならない。こういったような事態になるのはいつのことになるのですか。
  49. 井上保

    井上政府委員 先ほど申し上げたように伊達火力が入らなかった場合の予備率というのは、五十年八月ですと三・七%、五十一年になりますと〇・七、五十一年十二月になれば非常に大きなプラスになるわけでございまして、これがもし入らなければ五十年以降の需給には大きなそごを来たすということでございます。
  50. 林義郎

    ○林(義)委員 たいへんな将来の問題、いまどうだこうだという問題ではない。やはり五十年、五十一年ということになれば相当にむずかしい問題が出てくる、私はそういったことを心配するわけなんですけれども、伊達火力だけの問題じゃない、全国的にそういった問題が私は出てきていると思いますからやっていかなければなりませんが、今回の事例を見てみますと、昨年の十月に調整審議会の決定がありましてからこんなに延びておった。いままで延びておったというのは、大体どういうことが主とした原因——いろいろな環境保全の訴訟もあったし、住民との話し合いがつかないということもあったでしょう。知事の問題もあったでしょう。そういったいろいろな問題があったと思うけれども、まずお尋ねしておきたいのは、電調審というものは一体こういった公害問題について十分な審議をする機関なのかどうかということであります。電源開発促進法というものが昭和二十七年か八年にできた。そのころにはあまりなかったわけでありますけれども、そういったところで審議をするのが適切であるかどうかということであります。その点につきましてどういうふうに考えておられるのか、お尋ねいたします。
  51. 井上保

    井上政府委員 お答えいたします。  電調審におきましては、これは内閣総理大臣が議長でありますけれども、そこへ関係各省、学識経験者集まりまして、火力発電その他電源開発計画につきまして審議をいたしまして、公害問題あるいはその他の問題につきましても審議をして、計画が国の基準にそれぞれ当てはまっておるということを確認いたしまして電調審をパスするということになるわけでございます。それにつきましては、その際地元の意見の代表といたしまして知事のオーケーをとるということが前提になっております。なお、地元の知事のオーケーをとりました前後におきましては——市町村長のオーケーはその前になると思いますが、関係の会社とは各市町村が公害防止協定をつくりまして、あるいは漁業補償の協定であるとかそういう具体的な協定、これは国の基準の上のせ協定になる場合が多いのでございますけれども、そういう協定ができてそれ以降の許認可のほうは進んでいくわけでございまして、現在の伊達の場合には、関係市町村との間には公害防止協定が全部できておるわけでございます。
  52. 林義郎

    ○林(義)委員 ここに「北電は「公開質問状」に答えよ」というのがあるのです。いろいろと書いてありますが、「亜硫酸ガス濃度の推定値について」云々、これは公益事業局のほうでは御存じだと思いますが、その「推定値について」、二は「「気象調査報告書」について」、「三、亜硫酸ガスの農業(植物)への影響について」、「四、亜硫酸ガスの人体への影響について」、「五、温排水などによる海水汚染等について」というのが出ています。こういった点につきまして、電源開発調整審議会では、火力発電所伊達につくれば当然亜硫酸ガスが出てくる、気象も調査しなければならない、農業への影響もある、人体への影響もある、こういった点につきましての調査はされた上での認可だろうと思うのですけれども、この辺は間違いないでしょうね。
  53. 井上保

    井上政府委員 ただいま御質問の点につきましては、すべて電源開発調整審議会その他におきまして、それ以降におきましても十分に検討されております。たとえばSO2の問題につきましては、環境基準のもとになっております閾値にいたしましても基準の五分の一、先ほどお話がございましたサルファをさらに下げますと八分の一になるというような上乗せ基準になっております。それ以外の点につきましても、それぞれ詳細な検討をいたしまして関係各省で問題がないということになっておりまして、なおかつ関係の市町村とはそういう公害防止協定を全部締結いたしております。問題はそういう公害防止協定にかかわらず地元方々との話し合いがつかない部分がある、こういうことでございます。
  54. 林義郎

    ○林(義)委員 私は公害防止協定のお話は申し上げていないのです。私は、認可をするときには、公害防止協定がどうであれ、公害防止協定があったところで認可をしてはならないものは認可をしてはならない。公害防止協定がどうであろうと、認可をしてもいいものは認可をしていいというのが私は基本的な態度であろう、こう思うのです。  そこで、この審査を具体的にやるところの審査基準というのは電気事業法に基づいて行なうのである、電気事業法の八条のそこか、あるいは同四十一条に工事計画の認可等にあたって基準に適合しているかどうかという審査をするということになっております。こういった形で、その審査の基準というものは電気事業法でありますから一般の基準であるけれども、それの運用にあたっては、大気汚染防止法、または水質汚濁防止法に基づくいろいろな基準というものがあります。それに準拠してやっているというふうに解釈してよろしゅうございますか。
  55. 井上保

    井上政府委員 公害関係環境関係のいろいろな法令がございますが、大気であるとか水質であるとか、そういうものを守るために電気事業法においては技術基準等をつくっております。したがいまして、十分にそれは満足しておる。先ほど公害防止協定と申しましたが、そういう基準よりも公害防止協定のほうがさらにシビアである。そのシビアなものを守ってやっておるつもりでございます。
  56. 林義郎

    ○林(義)委員 当委員会におきまして海流の調査の問題について、水産資源協会の調査がいろいろな問題があるというような話もありましたし、それから亜硫酸ガスの植物に対する影響についてはどうだという問題もありました。私は、そういう審議をされるにあたりまして、やはり公正な第三者的な機関であるこういったところに委託してやらなければならないと思うのです。それでないと一方に偏した機関ができ上る。そういった調査というものは、私は当然やってこられたと思いますが、こまかいことになりますから、私は時間があればやりたいと思いますが、一応考え方としては認可の際に十分にその辺については、少なくとも現在の公害防止基準には合致しているということで計画をお認めになったということは、この際はっきりしていただきたいと思います。
  57. 井上保

    井上政府委員 温排水等の問題につきましては、電気事業法でその必要性を確保するという前に、電調審におきまして詳細な検討がされております。中立機関の報告書等をもとにいたしまして関係の官庁で詳細な検討をいたしております。それを受けまして、そういうものを完全に守れるということで電気事業法の許可、認可を進めているということでございます。
  58. 林義郎

    ○林(義)委員 大気の問題亜硫酸ガスの問題につきましては、いろいろな基準があります。しかも最初は北海道電力では一・七%ですかの重油を使う、その後だんだんと下げてこられた、こういうことだと思うのです。下げれば下げるほど、普通の考え方からすれば、排出されるところの亜硫酸ガスの濃度というものは私は少なくなる、こう考えていいと思います。ところが、たくところの硫黄分が少なくなれば発生するところの亜硫酸ガスの量が少なくなるというのは当然のことでありますが、しかし、それはその最初のやつでやったときに基準に合致しておったのですか、どうですか。
  59. 井上保

    井上政府委員 最初のS分で十分に合致しておったと思います。相当まだ低かったと思います。
  60. 林義郎

    ○林(義)委員 最初のやつで合致しておって、それから下げていこうということですから、会社は相当高いものを買ってやる、こういうことだと思います。ただ、その問題でいろいろとあると思うのです。単に通常の状態でどうだとか、逆転層に入ったときどうかというような点、この問題につきましても電調審のときにもお調べになりましたか。
  61. 井上保

    井上政府委員 私、いまの御質問について、逆転層については最初どういう影響をしたか、ちょっと明らかにしませんけれども、大体全体の感じから申し上げますと、環境基準が〇・一PPMぐらいのところで、先ほどお話のありました一・七%で〇・〇一九、大体五分の一でございます。それから今回のさらに一・七から下げたという数字によりますと、環境基準〇・一PPMに対しまして〇・〇一一四、前が約五分の一、今回が約八分の一、その基準よりもはるかに低いところでございますので問題は全くない、こういうふうに考えているわけでございます。
  62. 林義郎

    ○林(義)委員 温排水の問題でありますけれども、温排水についてはまだ環境基準というのができていないと思います。したがって、温排水についてはどの程度の影響があるかということは、水産資源保護協会ですか、その調査というものを信頼してまいるよりほかに方法がない。これについてみな五十センチとか一メートルのところでどうだこうだという、五十センチのところではかったから一メートルのところではからなくちゃいかぬとかなんとかいう議論がありますけれども、私は、基本になるその水産資源保護協会の、何と言いましたか、平野式ですか、平野式という方式がありますが、この方式で測定するのがいいかどうかというのが一番大きなポイントだと思うのです。この方式というのは一体国際的にも認められた方式なのか、いや、それは日本人の学者が、もうしようがないからちょっと何かつくったというものなのか、一体どちらなんですか。この点、環境庁のほうでお答えをいただきたいと思います。
  63. 岡安誠

    ○岡安政府委員 御指名でございますから私から一応御説明いたしますが、水産庁も来ておりますので、さらに補足して説明していただきたいと思います。  拡散の問題でございますが、まず法律の関係では、現在環境基準はもちろんございませんし、排水基準もございません。私どもは、環境基準ではなかなかむずかしいと思っておりますので、実は排水基準をできるだけ早くつくりたいというふうに考えております。それまでの間はやはりできるだけ排出水の水温を下げまして漁業に影響を与えないような措置を講じていただくということと、それからやむなく漁業に影響を与える場合には完全な補償をしていただくということを指導をしているわけでございます。  方式につきましては、詳しくはまたいずれ申し上げますが、いろいろ現在でもございます。たとえば和田式とか新田式、平野式、坂本式、いろいろございます。それぞれ一長一短があるようでございます。  この伊達火力の温排水につきましては、日本水産資源協会がいろいろ試算した結果、まあ平野式でやるのが適当であろうという結論で採用になったというふうに聞いておりますが、私ども、この方式によりましても大体将来予測というものはある程度正確にできるのではあるまいかというふうに実は考えております。
  64. 林義郎

    ○林(義)委員 そうしますと、ここに、伊達から公害をなくす会からの「伊達火力発電所に関する公開質問状」、あて先は北海道電力株式会社社長岩本常次さんあて、という文章があります。これについては、これはあて先が北海道電力になっていますから北海道電力答弁するのかもしれませんが、私は思いますのに、これは認可をしたところの官庁では相当な審査をしているわけであります。しかも電源開発調整審議会で認可をしたものは、認可をしたからあとは各人の自由であるということはないと思うのです。やはり認可をした以上は建ててもらわなければならない。電力というものが不足するから建てなければならないからこそ、私はこの認可をしているのだろう、こう思うのです。法律は、電源開発促進法であります。電源開発を促進していかなければならないという一つの大きな目的がある。そしてその認可をするわけでありますから、普通のいわゆる認可とは違うわけだと思うのです。そういった意味で、やはりこの質問に対していろいろと各省の具体的な問題がありますけれども、各省のほうはこれに対しては十分な答えができる、あるいは十分な、公開討論に応じてやってもやれるというふうなことですか、どうですか。その辺、水産庁、環境庁から一人ずつ御答弁いただきたい。
  65. 井上保

    井上政府委員 電源開発の場合の各電力会社地元との話でございますけれども、それは、先ほども御答弁申し上げましたように、必ずしもその環境基準を満足しておればいいということではございませんで、非常に地元説得上……(林(義)委員「やれるかどうかということです」と呼ぶ)非常に困難ではないかと思います。先ほどちょっと御説明しかかりましたように、環境基準その他が国の基準と違った上のせの基準であるとか、あるいは非常に違った観点からできている場合もあります。個々の会社地元との話し合いが数カ月、あるいは数年続いておりまして、国の基準よりも非常にシビアなものになっておる場合が多うございます。ですから、その間の事情はこちら側から一律にどうするというよりは、会社側からよく話をしたほうがいいんじゃないか、こういうふうに考えております。
  66. 林義郎

    ○林(義)委員 あとの御答弁をいただく前に、私の質問をお取り間違えになっているんじゃないかと思います。私が申し上げたいのは、認可をしたときにこういった基準があって、その基準は必ず人体の健康、財産に対して悪影響がない基準であると、はっきりしているのでしょう。その基準には必ず合っていますということであるから、それ以下の基準であることは必要でないというようなことについて、政府は堂々と話ができるかどうかということです。
  67. 井上保

    井上政府委員 認可基準との関係においては、お説のように、できると思います。
  68. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 大気に関しまして、伊達火力発電所に関する電調審の審議の際に調査いたしましたときには、人体にも作付にも十分だいじょうぶということでありました。ただ、いまの質問のことは私まだ見ておりませんので……。
  69. 松下友成

    ○松下説明員 水温のいわゆる拡散範囲その他につきましては、資源保護協会で調査した結果につきまして、現在水産庁で検討しております。
  70. 林義郎

    ○林(義)委員 検討しているんじゃ困る。検討して、その結果について、水産庁は責任をもって、被害がないということを堂々とどこに対しても言えるかということです。
  71. 松下友成

    ○松下説明員 その内容についてはお答えできます。
  72. 林義郎

    ○林(義)委員 亜硫酸ガス濃度の問題が気象の条件によって相当変わってくる、また人体に対する影響が出てくる、それから農業に対する影響が出てくる、これはどうかという問題につきましては、やはり議論をしなければならない。現在の環境の基準がいいとか悪いとかいう問題も出てくるでしょう。それから、環境基準がどうだ、排出基準がどうだということだけではありません。そういったいろいろな状況について調べた上でやるのが環境アセスメントの考え方だろうと私は思うのです。その環境アセスメントの考え方をやはりやっていかなければならない。温排水による海水汚染等についても全く同様なことがいわれると私は思うのです。やはり認可する以上は、当然責任をもって、おれのところはかくかくの理由で認可をしたということはやってもらわなければならぬ。認可したけれども、あとはかってにやってくれというような態度では、これは困るのであります。  そういったことで、伊達から公害をなくす会から北海道電力にあててあるこの公開質問状は、むしろまさに政府当局に対してあてられるべきようなものではないかと私は思うのであります。出せというわけにもいきませんから、あれですが……。私は、そういった問題を取り上げていくときに、環境に対してどんな影響があるかということについてはもう少し政府が積極的に出ていくべきではないかと思うのです。長官、いまおられませんから、その辺の考え方はあと長官から聞きたいと思います。  もう一つ、問題を煮詰めておきますが、実はこれに関連いたしまして環境権訴訟というのが出ております。環境権という考え方は、四十五年十二月のいわゆる公害国会において公害対策基本法をやったときに、当委員会で私は申し上げたことがある。環境権の問題を政府当局は真剣に検討してもらわなくてはならない、こういうことを申し上げた。言うまでもありません、憲法二十五条には、健康で文化的な生活を営む権利を有するということが書いてある。これに基づくところの権利であります。ただこの権利は、現在の最高裁の判例では、今日、具体的な法律に基づいてこれを実現していくのである、一般的、抽象的な、たとえていうならば土地所有権と同じような権利があるものではないということになっております。これは大体学説の通例だと私は思いますが、この環境権という考え方につきましては、現在日弁連あたりでもいろいろといわれております。この辺の問題について政府当局のほうでは、環境庁あるいはほかの役所でもけっこうですが、何か少し勉強しておられるところがあるかどうかということがまず第一点です。  それから第二番目の問題でありますが、今度の訴訟の条項を見ますと、環境権に基づくところの差止請求という形になっておる。ところが、現在の法律の体制ではどうもそういう形じゃないので、むしろほんとう火力発電所をとめたいということであるならば、現在の訴訟の形としては、やらなければならないのは、行政処分の認可の取り消しを求めるというような訴えをしたほうがいいんじゃないか、こう思うのです。行政不服審査法とかいろいろな訴えの方法がありますから、それでやらなくちゃいかぬ。どうも現在の法律体制からすると、先ほど申しましたようなことというのはなかなかできないと思うのです。そういった法律に詳しい方がおられるかどうか知りませんが、この点につきましてどういうふうに考えておられるか、御答弁をいただきたいと思います。
  73. 船後正道

    ○船後政府委員 林先生の御質問、非常にむずかしい問題でございます。  まず第一点のほうでございますが、通常、環境権といわれております場合には、憲法二十五条あるいは十三条に由来する権利といたしまして、国民が良好な環境を享受する権利というふうに説明されておるわけでございます。この場合の良好な環境の内容でございますが、通常の公害行政で規制の対象といたしておりますような環境上の条件のほかに、日照、通風といったようなものも含まれて考えられておるようであります。さらに、このような生活環境のみならず、文化的、歴史的環境まで含むのであるというような御意見もあるわけでございます。環境権なるものの内容は、種々の学説、意見がございまして、具体的にはなかなか把握しがたい現状でございます。実定法上の扱いといたしまして、この環境権は行政法のサイドと民事法のサイドと両面から考えていかなければならぬわけでありますが、民事的な問題といたしましては、やはり国民の権利が不法に侵害されたという場合には、民法の一般規定に基づきまして損害の賠償あるいは差止めの請求ができるわけでございます。そういう面で保護されておると思います。行政上どのように扱うかということにつきましては、やはり行政法規にはそれぞれ目的があるわけでございますから、大気なら大気、水質なら水質——日照は現在ございませんでして、これは建設省で検討中でございますが、そういうふうに個々の行政法規の中でそういった環境を維持するためにそれぞれ具体的に規定し、取り締まっていくべきである、このように思うわけでございます。そういう現状でございますので、やはり現段階といたしましては、一般的な環境権というのは環境行政のすぐれた指導理念であるというふうにわれわれは考えておりますけれども、実定法上の権利としてこれを位置づけるということはなお検討を進めてまいりたいと思います。
  74. 林義郎

    ○林(義)委員 民事法的な考え方と行政法的な考え方というのは、現在の法律体系のもとにおいては明らかに分けてある。環境権という問題になれば当然民事法的なものであるから、行政法的ないろいろな監督をするということになりましても、それが直ちに権利になるとはならないというのが私はいまの御答弁であろうと思うのであります。大体学説、通例もそういうことになっているというふうに私は聞いているのであります。ただこれは、といってこれからそのままでストップさしてはいけない、こう思うのです。やはり何らかの形でやっていかなければならない。行政的な救済の問題をどうするという問題と同時に、ほんとうに民事法に基づくところの権利の問題というのは、試行錯誤を重ねてもいいから私は追求をしていくべきような問題だろうと思いますし、先般、この前の国会でありますが、そのときに無過失賠償責任の議論をいたしました。やはりそういった問題の一連のことで私は考えていかなければならない問題だろうと思うのであります。  私はそういった気持ちでおりますから、先ほど来くどくどと御質問申し上げました行政庁がいろいろと認可をする問題は、これはやはり行政権の問題である、行政法の問題であります。ところが一方、住民でいろいろと公害をなくす会ができたり、また先般来ピケを張っていろいろとなっておるというのは、やはり私人の権利であるから、これは言うならば民法的な権利であります。この間の調整というものをはかっていくためのシステムというものをどうしても考えていかなければならない。警察法にいたしましても、先ほど行政代執行法の問題が出ておりましたけれども、これもやはり行政権の問題でありますから、民法的なアプローチというものを少しやっていく必要がある。これは与党、野党を問わず、少し議論をしてもらいたいと、先生方がおられますから、心からお願いをしたいのであります。そういった意味で私たちもこれは十分に議論をする。もちろん政治家として、これは考えていかなければならない問題だと思うのです。何といったところでいろいろな問題の紛争が出てくる。そのときに解決するのはいろいろな手段を通じてやらなければならないと思うのです。  ところで、住民サイドの問題になりますと、一つの例として、虻田町において町長のリコール選挙がありました。これを聞いてみますと、そのリコールの理由というのは何か三つほどあったということでありますけれども、どこかお調べになっておられますか。伊達火力の発電所の反対の理由が一つ、それからあと何か二つほどあったと思いますが、私ちょっと知りませんから、どなたかお知りの方があったら御答弁いただきたいと思います。
  75. 井上保

    井上政府委員 私のほうで調べた内容でありますが、洞爺温泉郷の下水道の処理水の問題が一つあったと思います。それからいま一つは、町営住宅の家賃の高さの問題、そういう問題があったというふうに聞いております。
  76. 林義郎

    ○林(義)委員 リコールでありますから、理由を明らかにしてリコールの署名をとる、こういうことでして、その結果選挙が行なわれた。その三つあった理由で選挙をやったが、実は火力発電反対のほうが選挙は負けたのですね。相当、四千二百と二千八百ですか、九百か何かで負けた。(島本委員、「金、金」と呼ぶ。)そうしますと、やはりそこで住民の意思というのははっきりしていると思うのです、いろいろなことがあっても。やはり選挙というものは住民の意思をはっきりさせる一番大きな方法だと思う。あるいは、金だ、金だという話もありますが、これは公職選挙法でありますから、やはり公職選挙法によってやったのです。したがって、選挙の結果というのは尊重しなければならない。いま、リコールは三つ理由があった。しかもその三つの理由で選挙をやって敗れた。そうすると、一つの理由だったらますます敗れるのではないか。三つの理由があって敗れたのですから、私は一つの理由だったら全く敗れたと思う。そういった意味で、住民の意思を尊重してやらなければならぬということになれば、一番いいのは結局選挙によるほかに方法がない。これははっきりしておるのです。いろいろな意見があります。単に一部の人の意見を聞いただけではいけない。私ははっきり申し上げまして、住民の意思を聞くために選挙というものをやるべきだと思うのです。それから今回の選挙はリコールという形でやったのです。こういった形で住民の意思がどこにあるかということをはっきりさせるのは一つの方法だろう、こう私は思うのです。私ははっきり申し上げまして、これは一つの民主主義のルールだろうと思うのです。こういった——大臣、どこへ行かれましたか。これは事務当局では答弁できないと思うのですね、申しわけないけれども、そういった形でのルールというものは確かに一つありますから、それをどういうふうな形で実現していくかというものを考えていかなければならない問題だろうと思うのです。  ところで、私もう一つ聞いておきたいのは、この問題に関連いたしまして各地でいろいろな紛争が出てきておる。同じような形にやっていったならば、同じような結果しか出てこない。やはり新しい手法を発見して住民の意思をくみ上げていくということをやらなければいけないだろうと私は思うのです。そういう方式をやはり考えていくことがどうしても必要じゃないか、こう思っております。  そこで、さっきたまたまリコールというような形が出てきましたから、それも住民の意思をくみ上げる方法である。そのほかに、やはり公聴会を開くとか、あるいは住民の意見を聞くとか、あるいは関係市町村の意見を聞くとか、私はいろいろな手段があるだろうと思うのですね。こういった形のことというのは政府のほうは考えておられるのかどうか、この辺をお尋ねいたします。
  77. 船後正道

    ○船後政府委員 環境問題にいま関連いたしまして、私どもは、やはり地域住民に密着した問題でございますので、地域住民の総意を得る必要がある、こう申すのでございますが、しかし住民のコンセンサスあるいは総意と申しましても、これはいかなる方法でもって確認するか、これになってまいりますと、実は私の答弁し得る範囲を越える問題でございますが、ただ私ども行政当局といたしましては、少なくとも環境上の問題につきましては、あらゆる行政活動が環境保全の範囲内、これで行なわれるということが担保されることが第一でございまして、このような見地から、環境アセスメントを徹底的に行なうということを主張いたしております。  いま一つは、やはりこのように行政当局が環境アセスメントを徹底的に行ないましても、これが地域住民の同意を得るためには、どうしてもデータというものを住民に公開いたしまして、そして十分科学的な基礎の上に立って意見を戦わしていただくということがやはり何よりも必要でなかろうかと思っております。環境庁といたしましては、このような考え方のもとに、当庁発足以来データは公開いたしまして、そしてこれを十分、あらゆる角度から住民も参加して検討して、そして一つの意見をまとめていただきたいということでもつて行政を進めております。
  78. 林義郎

    ○林(義)委員 大臣に重ねてお尋ねをしたいのでありますけれども、私は先ほど来、大臣のおられないときに事務局の方に申し上げたのです。問題は、行政的なアプローチの問題もあります。それから民事的なアプローチの問題もあります。行政的なアプローチ——大気汚染防止法、電気事業法、水質汚濁防止法、いろいろな形の法律がありますが、これはあくまでも行政庁が監督をする形での問題である。それからもう一つのアプローチの方法というものは環境権という形ですね。民事上の権利、健康で文化的な生活を営む権利というものは私法的な権利であります。その権利のほうからずっとやっていくということをぜひ検討してもらいたいということを私申し上げたのですが、いま話を聞きますと、電調審——通産省が認可する、環境庁にも相談していろいろとやります。そういう行政庁が認可をしたときには、行政庁が認可したのですから当然認可については責任を持たなければならない。行政庁が積極的に乗り込んでいってもいいから、住民に、自分のほうはこういう形で認可したんだ、しかも電気はこれだけ足りないのだからこれだけどうしてもやらなければならない、健康に対する被害は絶対に与えない、温排水に関する影響はない、こういうような形で言うような政府の姿勢が必要だと思うのです。政府の姿勢はやはりその辺に考えていかなければならないと思うのです。  同時に、関係住民の意見をくみ上げるという方法でありますけれども、一つの方法として、たまたま虻田町で町長リコール選挙かありました。伊達火力反対というような形が一つの大きな理由でありましたし、そのほかに住宅の払い下げがどうだこうだというような理由が三つあったのです。そういった形で住民の意思をくみ上げるのは、私は、選挙でやるというのが一番直截簡明な方法だろうと思う。しかも、この場合には選挙で勝ったのです。現職の町長が勝った。それで伊達火力反対というのが負けた。三つの理由があって負けたんですから、伊達火力反対の一つの理由だけだったら、ますます負けたんだろうと私は思うのです。住民の意思というものは、一部の人の意思ではない、その地域住民がどんな意思を持っているかということをやる方法を考えていかなければならないのです。先ほど来いろいろとやじが出まして、金を使ったんだとかなんとかという話がありましたが、やはり選挙ですから、選挙は公職選挙法でやらなければならない、こういうことですから、やはりそれは一つのやり方だと私は思うのです。住民の意思をくみ上げる方法だ。そういったものを積極的にやっていかないと、もうたくさん、電力の問題はどこでもみんなひっかかっているのです。やはり住民の意思をくみ上げる、それは電調審をやって、知事の意見を聞いたということで済む問題じゃないだろうと思うのです。何か、その辺を少し考えていただきたい。  聞くところによりますと、原子力発電につきましては何か公聴会みたいなものをつくろうというようなお話もあるようであります。そういったような形のものを、住民の意思を何らかの形でくみ上げる、それから住民に対して納得を求めるというような組織というかシステムを考えていくということが必要だろうと思うのですが、大臣、どうお考えになりますか。
  79. 三木武夫

    三木国務大臣 地域開発は、全体としての地域の水準を高めようというのですから、ほんとうに説明をすれば——別の意図を持っているものは別ですよ——私は、やはりコンセンサスというものが得られぬものだとは思わぬのです。それだけに企業自体も、大きくいえば地域社会に貢献するという意識が要るんではないでしょうか。それはアメリカなんかでも、ピッツバーグなんかの大学は、鉄鋼業者が寄付したのですよ。だから、企業がぼつっと地域社会で孤立するという考えでなくして、その地域に進出していけば、全体としての地域社会に寄与するという態度企業家にもこれから望まれるのではないか。そういうふうな心がまえでいけば、住民との対話ということもよっぽど違ってくるのではないか。企業が、昔のように行ってやるんだという意識は、今日は持てないですよ。どうしたって、やはり地域社会と一緒になって、地域社会の水準を高めるという意識が、企業が進出する出発点になるのですから、もう少し企業地元の接触というものが私は足りないと思う。企業が行けば地域社会に貢献しなければならぬ。その地域社会の中に企業がやはり存立していくのですから、そういうふうな結びつきをもっとみなで研究する課題だと思いますよ。発電所がこれからやはり要るんですからね。今年でも、計画の二割程度しか進まないでしょう。やがて電力需要というものはにっちもさっちもいかなくなることは明らかですから、そこでこれはみんな政治の課題として、もう少し企業地域社会で受け入れられるような一つのシステムというものがあるんではないかということが一つ研究されなければならぬ。ここで思いつきを申し上げるようなことは適当ではないけれども、私はいろいろあると思うんですね。そのことがやはり紛争解決の前提ですよ。企業が進出するときの心がまえ、これが前提ですよ。  そしてまたもう一つは、電調審もありますが、やはり電調審が行って説得せよと林委員が……(林(義)委員「いや、政府です、通産省がと言っているのです」と呼ぶ)それは公聴会というものも一つの方法だと思いますよ。みながそういう心がまえで地域社会とともに存立していくのだという心がまえになれば、地域社会人たちに対して説く説き方も違いますよ。自分も一緒ですから。自分も公害を受ければ困るのだから。そういう考え方で、そうしてみなデータを公開して、こういうことだ、窒素酸化物はこうだ、硫黄酸化物はこうだ、そういうことで説明すれば——どうしても反対だという人もおりますよ。しかし、もう少しコンセンサスを得られるくふうはあるのではないか。だから私は、実際は企業努力も少し足らぬと思っているのですよ。そういう点で、これからやることによって、そしてまた電調審も、これは省か各省に分かれておるけれども、みなが——大きな前提は、通産省も産業保護というのでないと思いますよ。守ったつて、一方において生命や健康を害している、そのことが場合によったら地域社会企業との間に大きな摩擦が起これば、そのことの解決のために企業の本業のほうはお留守になるくらいのところまでいくでしょう。だから、みながやはり環境保全ということを前提にして、たとえば発電所をつくるにしても、立地場所もこの場所が適当かどうかというところからそれは考えなければいかぬ。環境保全というものが前提だとしたならば、発電所をどこへでもつくっていいというわけでもないでしょう。  そういうところから出発して、行政ももう少し——こうきめればいいというのでないのですから、きめる出発点からの心がまえを変えなければいかぬ点もありますね。環境庁の場合も、これは実際、いまここが守ろうとするのは環境ですからね、どうしても環境庁だけで発電所も自由につくったりとめたりというわけにもできないのですよ、林委員。やはりどうしても全行政機構が政治の大前提として環境保全するということから出発をするという心がまえでなければ、これはもう環境庁だけで守れるものではない。こういう企業の心がまえ、行政の心がまえ、この大きな転換をはからなければ地域開発における紛争は絶えない。反省も込めて、お答えをいたす次第でございます。
  80. 林義郎

    ○林(義)委員 大臣のお話のとおりでありまして、私も、当面の北海道問題で言うならば、北海道電力の責任が、十分にやっていたとは一つも申しません。ただ、北海道電力に全部住民との話し合いをまかしておいて、通産省環境庁はのほほんとしておったのではいけないと私は思うのです、はっきり申し上げたら。やはり、自分が認可したことですから、認可については責任をもってその辺は住民の説得をしていかなければならない問題だろうと私は思うのであります。しかもその中で、大臣もちょっとおっしゃいましたけれども、明らかにほかの目的をもって反対する人があるかもしれませんけれども、それは地域社会の発展の問題でありますから、それはほんとうに一握りだろうと私は思うのです。そこをきめるのはやはり多数決原理だろう、こう思うのです。そういった形もずっと考えていって、いろいろに説明会もします、あるいは住民の意見を聞く会もやりましょうといったようなシステムをほんとうにつくっていかなかったら、電力の問題というのは解消できない。これはやはりほんとうに新しい決意をもってやらなくちゃいけない。大臣がおっしゃったように、まさに発想の転換をして、この問題に勇敢に取り組まなければならない時期に来ていると私は思うのであります。  岡本委員から関連して質問があるようでありますから、お許しをいただきたいと思います。
  81. 佐野憲治

    佐野委員長 関連質問の申し出がありますので、これを許します。岡本富夫君。
  82. 岡本富夫

    ○岡本委員 林委員の持ち時間内で関連して質問いたします。  いま長官から非常に当を得たお答えがありました。と申しますのは、当委員会で先ほどからの質疑の中で明らかになりましたことは、温排水の問題については漁業者に被害があるかないかということをこれからまだ検討しなければならぬというのが水産庁の答弁であります。また環境庁の大気保全局長からは住民から出ているところの公開質問はまだ読んでないということであります。伊達火力を許可したときは現在の大気汚染の環境基準の中で許可をしておると思うのであります。しかし、先般の委員会環境庁のほうからこの環境基準を約四倍きびしくするのだというようなことが近く答申が決定しますから、それを基準として決定するということであります。  それからもう一つは、北海道電力公害防止協定を結ぶときに示した中に、排煙脱硫というものが入っております。ところが排煙脱硫は大型の実用化というものがまだはっきりしておりません。以上の点から見ましても、私はいま住民皆さんが、直ちに着工してもらったのでは困る、こうおっしゃる気持ちというのは決して理解できないことはないと思うのです。したがいまして、私どもも矢野書記長を中心にしまして、再三通産大臣にも申し入れをし、あるいは官房長官にも申し入れをしましたが——このときは社会党さんも一緒でしたが、ところが、いま直ちに強行着工しようとしている姿、これは私は許せないと思うのです。したがいまして、環境保全の立場から考えますと、もう一度この許可については、先ほど長官からああいったところのコンセンサスを住民のコンセンサスをきちっととる必要があるという理解あるお話もありましたから、まだこれからつくるのですから、しばらくその点を待ったほうがいいのではないか、こういうように考えられるのですが、まず通産省のほうからその答弁をいただきたい。
  83. 井上保

    井上政府委員 お答え申し上げます。  S分の問題でございますが、先ほど申し上げましたように五分の一ないし八分の一というように申し上げましたが、これは排脱前でございまして、排脱後になりますと今回から一・〇%といっているのが〇・八%程度に下がるわけでございまして、なお一そう下がる。これは新しい環境基準に比べましても三分の一程度になるというようなことで、いずれを見ましてもいまの基準に合致をしている、こういうふうに考えているわけでございます。  なお、電気事業法の八条それから四十一条の認可は全部済んでおりまして、これを取り消すことはできない、こう考えております。     〔委員長退席、島本委員長代理着席〕
  84. 岡本富夫

    ○岡本委員 私は長官に明らかにしていただきたいことは、通産省は電気事業法に基づいて許可しているのだ、それから温排水の問題そういういろいろなものについては環境庁やあるいは水産庁でやるのだ。許可するときにそこまでの問題をきちっとやり、先ほど林君からも話があったように調査の上こうなるのですよという住民の納得できるようなそういった着工でなければ——事業法に基づいてやったんだから、こういうことでは納得できないと思うのです。時間もあれでございますから、これはひとつ長官にひっくるめて副総理として、今後の問題ではなくして伊達火力の問題について——理想の話をしていただいても現実とは違います。ですから長官のほうから一ぺん通産大臣にもこの点もう一ぺんよく調査して、水産庁その他各省の意見も聞いて、そうして住民が納得できる答えを出してから着工する、こういうような意見をあなあのほうから勧告するのが私は正しいのではないか、こういうふうに考えるのですが、長官からひとつお答えをいただきたい。
  85. 三木武夫

    三木国務大臣 この問題は電気事業法によって工事計画通産大臣が認可をしたわけですね。この通産大臣の認可の取り消しを私が勧告する考えはありません。私がやろうとすることは、住民公害防止についていろいろな不安があるのだから、今後とも会社側地域人たちとの間に話し合いを継続してその不安を解消するように努力せよ。それから環境庁としては、そういう環境基準もだんだんと強化してきびしくしていこうとしているわけですから、その環境基準に従って今後の、これから建設するわけですから、そういうことでこれをチェックしていく、こういうことでございます。
  86. 岡本富夫

    ○岡本委員 ちょっといまの答弁では私納得しかねるのです。許可したものをすぐ取り消せというのではなくて、着工をもう一度よく検討して、水産問題から先ほど話がありましたようないろいろな問題を全部検討させてから、しかも各省の責任者がやはりそこに行って全部調査をして、これはこうだから心配ありません。先ほど林君からもそういう意見があったと思います。今後やるものはそうしますけれども、これにはそうできませんというのであれば、これはいつまでたっても発想の転換はできないと思います。これはひとつ長官に要求をいたしておきます。  そこで、時間がありませんからもう一つ。この機動隊の出動による着工について、岩本北電社長から、過去の状態からしてどうしても自力で入ることができないので要請した。これは北電の要請によって出ていった。ところが反対派との話し合いはどういうふうにされたのか。先ほど長官が話されたように、警察というのは中立の立場である。反対派との話し合いは全然していない。その要請はどうなんですか。要請というのもおかしいが、片一方だけ聞いて一方的にやるのではなくして、やはり反対派との話し合いはどうなっているのか。これを考えていないように思うのですが、これは長官どうでございましょうか。     〔島本委員長代理退席、委員長着席〕
  87. 三木武夫

    三木国務大臣 警察は中立の立場ですから、一会社から要請があったら直ちに機動隊が出動するというものではありません。これはやはり警察当局が秩序維持という責任を持っておりますから、その判断でやったので、会社の要請があったからそれで機械的に出動したものではないし、またそういうものもあり得ないわけでありますから、その点は警察独自の判断である。これは各企業機動隊の出動を要請したらいつでも警察が出動する、そんな性質のものではありません。独自の判断を加えなければ、何回要請かあっても出ない場合もある。要請がなくたって出ていく場合もあるであろうし、それはやはり警察自身の判断でございますから、北電の要請があったので出てきたんだから、警察北電の味方だ、そのことは警察の名誉のために断じてないということを私は申し上げておきたい。
  88. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、あの新聞報道というものは、新聞の報道にそういうように出ておりますからね。いずれにしましても長官に最後にここで申し上げておきたいことは、この問題は今後の電力の問題、立地の問題につきましても非常に大事な問題であろうと私は思うのです。したがってこういった、住民皆さんから質問状が出ましても、それに半分も答えられないようなことで、こんな不安で、そうして強行着工しようという姿勢に対しては、先ほど長官から話がありましたように、もう一度きびしく住民との話し合いをきちっとやる。また官庁もその中に入って、そして住民皆さんを納得させて、そして着工する、こういうように私は確認をしてよろしゅうございますか。それだけ……。
  89. 三木武夫

    三木国務大臣 私はしばしば言っておるのは、会社側はいま工事を進めておるわけですから、そういう中においても話し合いというものを——もう工事話し合いを打ち切って進めるんだという態度はよくない。工事をやりながら話し合いは継続して、また相当期間が、二年半か三年くらいかかるのでしょう。それまでの間に時間もあることですから、話し合いをして、そうしてみんなの協力を得られるように努力をすることが企業の責任ではないか、こういうことを申し上げておるのであります。
  90. 岡本富夫

    ○岡本委員 お約束の時間ですから、終わります。
  91. 佐野憲治

  92. 多田光雄

    多田委員 長官、きょう私、実は緊急に質問いたしますのは二つの理由なんです。一つは、いままで同僚議員が述べてきた伊達火発の着工の問題、これが非常に大きな問題になってきている。それからもう一つは、この伊達火発を含めていわゆる北海道開発の問題、この北海道開発のいわば推進役ともなる苫小牧の東部工業港、これの着工が迫ってきている。そして六月二十八日には港湾審議会が開かれて、どうやら新聞報道によればそれを認めるという方向にいきそうですし、あすの六月十六日にはこの問題をめぐって十一省庁の連絡会議が開かれるということも伺っているわけです。したがって緊急質問をするわけですが、いままで与党の議員を含めて、発想の転換ということがまるででき上がったかのようにいわれているのですが、私は、これは発想の転換どころじゃない。根本的には従来の住民不在、公害のたれ流し、そして過疎過密の激化、こういうつまり工業生産を優先させる結果、その被害を地域住民、国民に与えるという開発計画、これが根本的には発想の転換になっていない、私はそう理解します。これはあとで事実でまたお尋ねしたいわけですが、特に私は北海道総合開発について、列島改造の提案者の田中総理が、北海道開発を列島改造のひな形である、模範である、こういって年来ほめたたえてきた。その北海道開発の中心になる苫小牧東部工業開発、これが一体どうなるのか、この問題から私はお尋ねしたいと思います。  そこで、これは開発庁にお尋ねしたいと思うのですが、開発の基本にかかる問題ですが、四十四年九月でしたか、苫小牧東部の基本計画案が発表されて以来四年たつわけですが、この間この開発計画の詳細、これを特に苫小牧を中心にする地域住民に対してどのように一体説明をしてきたのか、徹底してきたのか、これをひとつ伺いたいと思います。私は非常に持ち時間が少ないし、このあとまた別な委員会で用事もありますので、できるだけ簡潔に答えていただきたい。
  93. 山田嘉治

    ○山田(嘉)政府委員 苫小牧東部の大規模工業基地の開発につきましては、第三期北海道総合開発計画を閣議決定いたしました際に、確かに先生御指摘のように、北海道第三期計画の中の一つの重点項目として、その中に説明をされているところでございますが、この大規模基地の開発計画案と「案」がついているわけですが、そういうものを開発庁といたしまして策定いたしまして、北海道開発審議会というのがございますが、これにお示しして御意見を聞いたというのは四十六年の八月でございます。それと前後いたしまして、それ以来もちろん地元の苫小牧の市をはじめといたしまして、関係の市町村の当事者とは、たびたびこちらから現地へ出向いたこともございますが、あるいは道庁を通じなといたしまして、たびたび説明を繰り返し意見を聴取してきたところでございます。
  94. 多田光雄

    多田委員 そうすると、この北海道並びに地域住民——ある意味で言ったならば残された最大のプロジェクトであるといわれる苫小牧東部のこの巨大開発について審議会でやった。それから市町村、当事者に伝えたということであって、実際の生きた地域住民にどのようにそれが浸透しているかという問題について、あなた方は点検し、あるいはまた直接やられましたか。
  95. 山田嘉治

    ○山田(嘉)政府委員 地域住民方々の一人一人にどの程度徹底しておるかということの点検は、これはなかなか行なうべくしてむずかしい問題ですが、これは先ほど申しましたように、もともとこの基本計画が閣議決定という形で第三期計画の中にございますので、一応地元新聞等につきましては、この計画の内容等につきましては、もう枚挙にいとまがないくらいしばしば報道されておりますので、関係の住民の方にはこれは相当徹底しているものというように私どもは考えておる次第でございます。
  96. 多田光雄

    多田委員 新聞発表は、これは新聞社がやることであって、開発庁や道や市町村の中心的な責任じゃありません。その新聞自体が、住民の七割はいまだに不安を持っている、開発の重大な内容を知らない、こういうことを多くの新聞が発表しているのです。  そこで次に伺いたい。開発計画の内容が幾つか重要な点で変更になっています。開発庁と道庁は四十七年一月ごろから例の鉄鋼と石油の立地、これを振りかえてきましたね。これをどうやって住民に知らせましたか。これは重大なことですよ。
  97. 山田嘉治

    ○山田(嘉)政府委員 先ほどもお答え申しましたように、直接住民の方ということではございませんけれども、苫小牧市等にはこのことは十分に話をしながらやってきているところでございます。
  98. 多田光雄

    多田委員 次に、本年四月から鉄鋼留保、つまり二千万トンの鉄鋼立地を考えていた。ところがこれはむずかしくなってきた。環境保全の関係からも、内外の経済情勢の変化からも鉄鋼の立地がむずかしくなってきた。鉄鋼の立地をきめたが、それを住民にどうやって知らせましたか。
  99. 山田嘉治

    ○山田(嘉)政府委員 鉄鋼の立地を保留するかどうかという問題は、確かにことしになってから非常に政府部内において真剣に議論が重ねられてきておるところでございまして、ただいまそういう方向で結論が出るほうに非常に傾いておりますけれども、これはもちろん、まだこういうふうにきまりましたということを発表する段階にはないわけでございますが、先ほど先生のお話にもございましたように、今月の二十八日に予定されておりますところの運輸省の港湾審議会に、地元の港湾管理者のほうから港湾計画の変更の計画が上がってまいりまして、御審議を願うわけでございますが、その内容として、鉄鋼にかかる港湾の計画は留保するという形のものが上がってくるであろうというようにいま考えられておるわけでございますけれども、これはまだ決定したという段階でございませんので、もちろん、これからそういうふうにきまれば住民に周知徹底する必要があると考えております。
  100. 多田光雄

    多田委員 六月十一日の日本経済新聞、これをちょっと読んでみますと、「わが国最大の重化学コンビナートとなる北海道・苫小牧東部大規模工業基地開発計画が、いよいよ具体化することになった。これは環境問題を重視し、同計画に“待った”をかけていた環境庁が鉄鋼立地計画の留保を条件に、着工に同意する方針を固めたことで、政府関係各省の足並みがそろったためである。これに伴い、運輸省は計画全体のカギを握る港湾建設計画について、二十八日、港湾審議会に諮問する運びとなった。」日経に非常に大きく扱われているわけです。各省の意見を聞いても大体そういう方向らしい。つまり、二十八日に港湾審議会があって、あと余ますところ幾日もない。こういう中で、いままで鉄鋼と石油の立地外の問題についても、関係の道や市には言ったけれども、住民は知らされていない。それから鉄鋼保留というこの重大な問題について、二十八日まで二週間もないのに、依然としてこれが一般住民に徹底しない。こういう実情なんです。  そこで長官、発想の転換と与党の議員も含めて言ったけれども、発想の転換になっていない最大の原因はここにある。いままでの開発計画は、地域住民の声を無視して、あるいは十分聞かないで全部天下りでやってきた。だからいまになって公害の問題、重大な問題が起きる。地域住民の抵抗が起きる。このことをやらないで、幾らきれいごとを並べても発想の転換にならない。  私どもは四月、苫小牧のあの勇払原野の人に会ってきました。先ほど言ったように、七割の人は不安を持って、どういう公害なのか、どこにどういうものが入ってくるのか、どのように進行しているか、肝心の主権在民の御主人である住民がわからない。不安がっている。知っているのは町の有力者です。伊達開発はこういう中で起きている。先ほど警察は中立であり云々という話がありました。伊達開発を誘致するために、道や通産の出先やあるいは町が、私企業である北海道電力の下請のようになってどれほど走り回ったか皆さん知っていますか。たとえば他の火力発電所を見学するために市や町が主催しながら、そのお金は北電から出ているのです。これは地方財政を十分検討してみれば違反になるかもわからない。こういう経過が長官あるのです。住民が怒るのは公害だけではない。パンのみによって生きるのではなくて、まさに権利や生活を無視して、天下りに上からおろしてくる。しかも企業と官庁が一緒になっている。こういう権利無視に対して住民がおこるのです。  そこで環境庁にもう一つ伺いたい。あの五千人から住んでいる、百年の北海道開発の拠点になった勇払の集団移転の問題。五千名です。これについて住民にどのように説明していますか。
  101. 山田嘉治

    ○山田(嘉)政府委員 勇払の部落の問題でございますが、これはせんだっての当委員会において、島本委員の御質問にもお答え申し上げたのでございますけれども、あの勇払という場所が現在の苫小牧と今度できる東苫小牧の中間に位置するということでございますので、住工分離という観点から申しますと、あの部落がもう少し環境のよろしいところへ移ったほうが望ましいのではないかというように私どもとしては考えますけれども、これにつきましては、移るかどうかということの最終的な決定はもちろん地元の苫小牧市でやることですし、それから何よりも、先生おっしゃるように、関係の住民の方の決意いかんによってきまる問題でございますので、当方といたしまして、たとえばこういうプランで移転計画を進めるというような話は全然まだ地元の方といたしておりませんので、北海道庁とこの問題をどう考えるかということをまだ慎重に検討している段階でございます。まだ、こういう問題についてわがほうの案を示して御相談するという段階までいっておりません。
  102. 多田光雄

    多田委員 長官、これは環境庁で聞いたら、環境庁のほうは、五千名はいまの立地条件であれば引っ越したほうがいいといっている。五千名の住民が引っ越しをするということは、大げさにいえば民族移動に近い。こういうことが論議されておりながら、一度の公聴会も持たれていない。住民が不安を持たないとすればおかしいことです。これをもし深刻な問題として理解しないとするならば、通産省は発電所を幾つつくる、厚生省は幼稚園を幾つつくる、文部省は学校を幾つつくる、その幾つつくるという数字を官僚的に追って、住民の生活と権利にどういう深刻な影響を与えるのか、地方自治体にどういう被害を与えるのか、こういう問題を考えていない。考えていないといえば語弊があるが、そこにいま総合性がないのです。そこに発想の転換がないのです。絶えず成果を追って、そのしわ寄せが住民になってくる。これはこの程度にします。  私は、長官に認識していただきたいとして、いまこう聞いた。そこで次に環境庁に伺いたい。  環境アセスメントについて伺いたいのですが、硫黄酸化物については先般来ここでも論議されていますので、ここでは大気汚染の中の窒素酸化物について私は伺いたいと思います。道のつくった開発計画に基づいて、本年五月に二酸化窒素の環境基準が一日平均値で〇・〇二PPMときまったが、これは満足しているのかどうか、これをまず伺いたい。
  103. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 お答えいたします。  窒素酸化物につきましては、北海道のほうにおきまして、自動測定については昭和四十八年四月から計測し始めたばかりでございます。したがって道のほうでバックグラウンド調査を幾つかやりました。その結果が一応〇・〇〇三PPMと計測されております。これは苫小牧地区のバックグラウンド調査でございますので、窒素酸化物についてはそのバックグラウンド調査をもとにして計算をいたしました。
  104. 多田光雄

    多田委員 それでは、これは現苫を含めて苫小牧の背後地と周辺の二酸化窒素のバックグラウンド汚染、こういうふうに理解してよろしいですか。
  105. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 これは現苫を含んでおりません、バックグラウンド調査ですから。現苫を含めない地区におけるバックグラウンド調査でございます。
  106. 多田光雄

    多田委員 それでは苫小牧の二酸化窒素の測定データ、これをどのようにして算出したのか、もう一度日付、測定値、測定点、これを言ってください。
  107. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 硫黄酸化物につきます測定を申し上げます。  現在までに測定がわかっておりますのは啓北中学校、苫小牧保健所、双葉公園それから明野、ウトナイ、この五カ所でございます。  なお弥生というのと沼の端にも置きましたが、これは設置した四月からの計測でございますからこのデータは出ておりません。  この五カ所のデータを申し上げますと、年平均で申し上げますと啓北中学校〇・〇一二PPM、苫小牧保健所が〇・〇〇八PPM、双葉公園が〇・〇二〇PPM、明野が〇・〇二一PPM、ウトナイが〇・〇〇九PPMという数値を出しております。
  108. 多田光雄

    多田委員 私の伺ったところによれば、四月から明野で自動測定器を設置してやった……
  109. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 失礼いたしました。いまSO2の数値を申し上げました。NO2をもう一回。  苫小牧地区のバックグラウンド調査としてNO2の測定結果を申し上げます。これは五月二十三日から二十五日までに行なったものであります。  まずA地点……(多田委員「日平均でいいですよ」と呼ぶ)A、B、Cとございまして、まずA、B、Cは勇払から向こう側の間でございますが、その間第一日の平均が、これはPPBでございますが、Aが五、Bが三、Cが二でございます。それからD、E、F、G、H、I、これは共栄から美里という範囲に置きましたもので、Dが三、Eが四、Fが二、Gが二、Hが二、Iが三PPBであります。平均して三という数字が出ております。第二日目の平均について申し上げますと、五月二十四日から二十五日ですが、Aが五、Bが三、Cが三、Dが四、Eが二、Fが二、Gが二、Hが二、Iが四、平均して三PPBという数値を得ております。
  110. 多田光雄

    多田委員 四月からやった明野地区の自動測定器、これはどれくらいの数値を示していましたか。私の手元に「エネルギーと公害」という冊子の二百六十五号なんですが、これを見ると「苫小牧地区のNO2自動測定器は四月に設置した明野地区(ウトナイ沼のそば)一台のみ。測定値は、日平均値〇・〇二PPMの環境基準値をわずかにこえる疑いがあると聞く。」こういうのが手元の資料であるのですが、これは事実ですか。
  111. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 いまの先生のお話と私がいま答えましたバックグラウンド調査のデータとは違います。したがって苫小牧市の明野地区というところで測定いたしました数値を申し上げます。これは一時間についてだけ申し上げます。四月では〇・一三〇、それから五月では〇・〇四二、これの最大値を得ております。したがって現在つくりました環境基準の適合率からいいますと、九一・九%満足しておるということになります。
  112. 多田光雄

    多田委員 そうするといま言った「エネルギーと公害」のこの記事とは違うということですね。
  113. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 表現があれでございますから、わずかにこえているという点では同じでございます。私環境基準の適合率は九一・九と言いました。
  114. 多田光雄

    多田委員 わかりました。つまり現状でさえも日平均で〇・〇二PPMでこの環境基準をわずかにでもこえておる疑いがあるというのに、今度苫小牧東部の二酸化窒素の汚染粒子が入り込む余地があるでしょうか。それを伺いたい、環境庁
  115. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 窒素酸化物に関しましては非常に高いきびしい環境基準を今度は示したわけでございます。なお今後の技術開発を大いに導入しなければならないこともございますし、それから先生御指摘のように、現状で適合ができてない点があるというのもよく私どもわかりますが、何せこれは測定が始まったばかりでございますので、いましばらくデータを積み重ねる必要もあると思います。五月に入りましてからの測定データではだんだんと数値が下がってまいっておる点もありますし、計器のほうの見方等の管理等、技術的な問題も含まれておりますので、私はもう少しこのデータの積み重ねが必要だと思っております。
  116. 多田光雄

    多田委員 長官、お聞きのとおりです。これは非常にあいまいです。だんだんこれから技術改善していく。いまはそうでもない。だんだん技術改善していくことは私も了承しています。一体その保証がどこにあるのか、しかもそれにいま目をつぶっているのです。  次に伺うのは、結局この開発の基本計画は四年前からあった。二酸化窒素の測定データはわずかことしの四月にいまおっしゃった自動測定器の値と五月の二十三日、二十四日ですか、何カ所かで選んだこういう貧弱な測定データで窒素酸化物の環境アセスメントをしたといってよいのでしょうかね、道から。それで一体環境庁は満足されてこの巨大開発のはしりとなる、それはいま港湾審議会に出されるのでしょう。それを伺いたい。
  117. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 御指摘の意味はわかりますが、窒素酸化物につきましては技術的に非常に多くの問題が従来ございまして、しかも自動測定に関する計器の問題は昨今だんだんと整備されてきておる最中でございます。したがって、従来いろいろな手分析等で行なわれましたデータもございますけれども、私どもは今後、新しくつくりました環境基準をきめるにあたって計器でもって判定していこうということでやりましたので、窒素酸化物については今後各地においてもこれからなお勉強していかなければならない点があると思っております。
  118. 多田光雄

    多田委員 次に粉じん、ばいじん、浮遊粒子状物質の汚染予測、これは環境基準値と比べて道のアセスメントはどうですか。それからこの現状汚染は環境基準に適合しているかどうか、これを伺いたい。
  119. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 浮遊粒子状粉じんをいま浮遊粒子状物質として申し上げますので御了承願います。  これは四十七年の十二月から四十八年四月まで、これは従来やっておりますデジタル分析計というので測定値をもととして出しております。で、最大値を申し上げますと、十二月が〇・一〇、四十八年になりまして一月が〇・一一、二月が〇・〇九、三月が〇・〇七、四月が〇・〇四でございます。この測定の日にちが百十八日ございましたが百十六日は適合しておりました。したがって九八・三%適合率という数字が出ております。
  120. 多田光雄

    多田委員 それでは水質汚濁について伺いたいのですが、CODの汚染予測をやったようですが、油分とSSの汚染予測をしたのか、それから負荷量の予測をしたのか、これをひとつ伺いたい。
  121. 岡安誠

    ○岡安政府委員 CODの負荷量の予測はいたしております。ただ、油分とSSのほうはいたしておりません。
  122. 多田光雄

    多田委員 それから昨年通産省が行なった全国八コンビナートの公害総点検の調査結果によると現苫のCOD排出負荷量は四十五年が一日当たり二百五十五・一トン、四十六年が二百七十一・七トン、四十七年が二百二十一・七トンと出ていると聞いております。この値は文句なしに八コンビナート第一位の汚染負荷量である。これは皆さんも御承知だろうと思うのです、いろんな雑誌にも出ていますから。参考までに言えば、二番目の川崎・横浜では四十七年度百三十一・五トン、残り六地域ではいずれも三十六トン以下なんです。いいですか。これほど大きな汚染負荷量を持っている現苫との重合汚染をどう考えたか。東部のすぐ隣りには山陽国策パルプ勇払工場があるのです。この山陽との重合汚染をどう考えたのか、これをひとつ伺いたい。
  123. 岡安誠

    ○岡安政府委員 負荷量計算にあたりましては、新しくできます東部苫小牧に立地する予定の各工場の汚染負荷量につきまして検討いたしておりますが、海域につきましては一部やはり現苫小牧のほうからの影響というものも加味いたしまして検討はいたしております。
  124. 多田光雄

    多田委員 非常に不十分ですね。それから長官、なぜ水のことをうるさく言うかというと、あそこだけじゃないのです。北海道の日高沿海というのは世界でも有名な漁場ですよ。そして漁民が営々としてさまざまな、あのホタテだとか魚を養殖してきているのです。こういう大きな影響を与えるから漁業権の問題で漁民が騒いでいるのです。苫小牧の住民だけじゃないのです。だから私はさっき言ったのです。開発というものが地域の地場産業を衰えさせるような開発であってはどうしても過疎過密を激しくしていくし、大工業優先といわれてもこれはどうにも否定のしようがない。こうなるから言っているのです。  次に、自然保護のアセスメントについて伺いたい。  これは一体どういう組み立てになっていますか、道からひとつ……。私が聞いたのでは相当あわててこれをつくったようですが、これはどういうふうになっていますか。
  125. 山田嘉治

    ○山田(嘉)政府委員 私からお答えするのは適当かどうか疑問がございますが、私どもが承知しておりますところでは、北海道庁におきまして四十六年以来あの基地が予定されております地域の植生、植物帯の態様についての調査を北大の先生のほうにお願いいたしまして行なっている。もちろんこれはまだまだ精度をもう少し高めていく必要があるので引き続き調査を行なう予定だというように伺っております。
  126. 多田光雄

    多田委員 道が四年前に開発計画を立てた。これは開発庁もそうなんですよ。ところが環境庁から水が入った。あわてて一次レポート、二次レポートを出しておる。いよいよどん詰めにきた、二十八日港湾審議会がある。これに間に合わせるために徹夜の勉強です。しかも私が残念なことは、環境庁のいまお話にあったような非常に不十分な調査、つけ焼き刃、自然保護のアセスメントについても環境庁でもまだ答えていない。こういう問題を了承してこの巨大開発を認めるということは一体どういうことなんです。  そこで質問したいことは、環境アセスメントから見ると鉄鋼を留保しても二酸化窒素とそれから浮遊粒子状物質、この環境基準をスケールオーバーするおそれがあるし、またさっきの報告のとおりこの状況からいうと鉄鋼立地の可能性があると思えない。ましてこの問題とうらはらの関係にある勇払住民の移転の見通しも立ってない、沼の端には二千五百人いる。  そこで長官に伺いたい。将来この苫小牧東部基地に鉄鋼が立地できると思いになりますか。
  127. 三木武夫

    三木国務大臣 苫小牧の臨海工業地帯があるし、その上、苫小牧の東部工業地帯、全体としての環境容量というものを考えなければなりませんから、鉄鋼の工業立地はきわめて困難であると考えます。
  128. 多田光雄

    多田委員 鉄鋼の立地が困難になれば、二千万トンですね、そうすると三期計画というのは一体どういうことなんでしょうね、これは。  しかも、私はこれは運輸省に伺いたい。苫小牧東部港の計画は二十五万トン級の鉱石船の横づけを前提にしている巨大な掘り込み港の計画なんです。これは日本で最大なんです。ところが鉄が立地しないとなれば防波堤、掘り込み水路それから航路の水深など、すべての点で港湾計画を白紙再検討する必要があると思うのですが、これはどうですか。いま長官はなかなかむずかしいと言っている。
  129. 鮫島泰佑

    ○鮫島説明員 お答えいたします。  今回、一応鉄鋼留保の形で港湾管理者から計画が出てくるだろうと思っております。いまお話しの点でございますけれども、これは鉄鋼以外にも石油関係とか非常に巨大な船舶を予想した港湾でございます。現在考えられております港湾計画におきましては、鉄鋼に関連いたします部分の計画はやはり留保されるわけでございまして、それを除きましたものが、それなりの規模に見合いました港湾計画になっておると私は思っております。
  130. 多田光雄

    多田委員 この苫小牧東部大規模工業基地計画の工業規格というのは、鉄鋼が六十年二千万トンです。石油精製が百万バーレル、実際は石油だけがいま倍以上の三百万バーレルが立地を希望してきているのです。それから、石油化学百六十万トん、自動車五十万台、この自動車だってどうなるかわからぬでしょう、鉄鋼が来なくなれば。こういう骨格になるものかどうかわからないんでしょう。ところが規模が大きいという。どこが大きいんですか。つまり将来それはまた鉄鋼が留保だから入れるかもわからないということで予想を立てているのですか。それとも石油の百万バーレルを三百万バーレルに入れるということですか。どういうことなんです。
  131. 山田嘉治

    ○山田(嘉)政府委員 鉄鋼の立地につきましては、現在の窒素酸化物その他の公害の防除技術の開発の現段階、それから勇払等の集落の現在の段階からいいまして、現状のままではなかなか立地が困難であるといち環境庁長官の御意見どおりでございますが、鉄鋼等にかかるところの公害防除技術が将来大いに各段と進むということと、この集落問題等がもし解決すればというもちろん仮定でございますけれども、まだ鉄鋼をいまの段階でもって完全にこれを消すというところまで決定を下すのは早かったんじゃないかというふうに私どもは考えておる次第でございます。もちろん鉄鋼は、先生御指摘のように、非常にこの計画の大きな部分を占めることは事実でございます。たとえば工業出荷額で申しますと、六〇年代、だいぶ遠い将来の話でございますけれども、三兆三千億円というなうな出荷額と予定しておりますが、そのうち鉄銀の部分が八千六百億円、それからこの東だけの港湾の取り扱い貨物数量だけから見ましても、鉄鋼が約三分の一以上の量を占めることは事実ございますので、鉄鉱がやれないということではっきりきまります場合には、もちろんこれは計画に相当大きな影響があり、先生御指摘のように第三期計画にも相当大きな影響があるだろうということは言わざるを得ないと思います。
  132. 多田光雄

    多田委員 大蔵省来ていますね。主計官来ていますね。鉄が立地しないかもしれない、いまのような答弁だ。この鉄の立地を前提にして苫小牧東部港の巨大な港湾計画を決定している。しかもばく大な税金をいま使おうとしている。しかもその計画はあいまいなんだ。一億や二億じゃないんですよ。いいですか。小学校を建てるときに、アルミサッシにするかどうかですらも交付税でいちゃもんをつける大蔵省が、一体こういう問題についてどうお考えになっていますか伺いたい。
  133. 藤仲貞一

    藤仲説明員 お答えいたします。  苫小牧東部地区につきましては、総体の事業費は、将来計画も含めまして約千五百億をこえるということをわれわれは承っておるわけでございますが、現行の港湾整備五カ年計画におきます予定事業費は、先生御案内のとおり二百九十億円でございます。防波堤を中心に、航路、泊地それから岸壁、これを一部整備するということでございますが、現行の港湾整備計画におきまする予定事業におきましては、水深を七メートル五十、こういう程度にとどめておるところでございまして、もし将来におきまして、ただいま御議論がございましたように、鉄鋼の立地が困難であるということに相なりました場合には、港湾計画全体として再検討を要するものと考えております。ただ、ただいま申し上げましたとおり、現在の港湾整備五カ年計画におきましては、まだその辺まで入っておりませんので、この港湾の計画全体をどういうぐあいに持っていくかということは今後の問題であろうかと思います。
  134. 多田光雄

    多田委員 では大蔵に聞くけれども、二十八日の港湾審議会、ここですべり出すのですか。これに対してどうですか。
  135. 藤仲貞一

    藤仲説明員 港湾整備五カ年計画と将来においては関係してくると思いますけれども、今回の港湾審議会で決定されますのは港湾の法線計画でございます。どちらかと申しますと、御案内のとおり、まず技術面からの御検討であろうかと思うわけでございます。もとよりそういうことで港湾の法線が決定されましても、これは現行の港湾整備五カ年計画では足りないわけでございまして、当然次の港湾整備五カ年計画においてこの計画全体をどう考えるかということもございます。財政当局としまして、いろいろ私どもとしましても、考えておるところもございますし、また関係省庁といろいろ協議すべきことも多かろうと思います。今後の問題として十分検討したい、かように考えております。
  136. 多田光雄

    多田委員 おそらく地域住民の橋をかけるとか学校を建てるとか、そういうものではそういうあいまいなことは許されませんね。あなたが一番よく知っている。ところが何でこの巨大開発にそういうあいまいな、環境の観点からいっても立地の内容から見てもきわめてあいまい、厳密にいうとこれはずさんですよ。そしていま二十八日にすべり込もうとしている。まことに大企業というのは至れり尽くせりの援助を受けている、私はこう思わざるを得ないのです。  そこで私は長官にちょっとお話申し上げたいのですが、これまでの開発庁それから環境庁、運輸、大蔵、このお話を聞いて、たとえば環境アセスメントの面で、代表的な大気汚染物質である硫黄酸化物、それから窒素酸化物、それから粉じん、ばいじんいま私が聞いた範囲では第三物質のうち、アセスメントできているのは何とか硫黄酸化物だけではないかと思う。ことに重大な窒素酸化物の測定データの不足は致命的だと思う。わずか二回じゃありませんか。しかも水質の油分のSS、これもやっていないじゃありませんか。あるいはやっていないに近い。しかも自然保護のアセスメントが何もないといっていいくらいです。実態はそうなんです。こんな状態で苫小牧東部の環境アセスメントといえるのですか。これで発想の転換といえますか。環境庁がでたらめなアセスメントを通達することによってこの巨大開発はいますべり出すのです。しかも巨大開発の目的、魂ともいうべき住民の総意的な参加、これは皆無に近い。ですからこれまでの開発というのはまず開発が先に立って、そのあと公害対策あとを追っているのです。これまたあと追い行政じゃありませんか。科学的に数値的に、そうでないという保証がどこにありますか。しかも勇払五千名、沼の端二千五百名の住民の移転問題があなたたちの頭の中で空転しているでしょう。生きている住民はどうなるか。行き場所もまだきまっていない、長官、こういうことで環境庁がこの事態に対処していいのでしょうかね。それで発想の転換といえるでしょうか。発想の転換がそんなに甘っちょろいものであって一体いいのでしょうかね。長官に伺いたい。
  137. 三木武夫

    三木国務大臣 しばしば申し上げておりますように、単に環境庁のみならず各官庁においても、環境保全というものが前提にならなければ、これからはやっていけない時代だと思います。そういう点で、われわれとしては、環境基準あるいは環境基準というものに基づくいろいろな排出基準等により、環境保全のために今後きびしく対処していきたいと思っております。環境アセスメントについてもいろいろ問題はあるのですね。今後はやはりアセスメントの手法などについてもいろいろ研究すべき点は確かにあると思います。あとから追っかけてやるということでは国民の期待にも反するわけでありますから、環境アセスメントというものが地域住民にも不安を与えないで、環境庁がこれだけのことをしたんだからだいじょうぶだという信頼感を確立するためには、われわれのほうとしても今後いろいろと研究しなければならぬ問題は確かにあると思いますが、この苫小牧東部工業地帯、あるいは苫小牧の臨海工業地帯もひっくるめて、環境保全ということに対してはきびしく対処していきたいと考えておる次第でございます。
  138. 多田光雄

    多田委員 長官、きびしく対処するとおっしゃいますが、発想の転換というのは、いま手をつけないではできないということです。これは戦いですよ。政府の中でも戦い、思想的にも戦い。ときによっては、自分の地位も投げるという戦いです、これは。それくらいのものです。それをやらないで——長官かもしこれから十年も二十年も環境庁長官をやっておられるというなら、私はある程度あなたのことばを信用するでしょうが……。  そこで、地元住民に非常に不安を与えているこの問題について、開発庁、道はこの開発計画の内容を知らせる、環境庁は道から上がっているアセスメントを伝える、そういう公聴会を即座に開くべきだと私は思う。しかも、公聴会はたった一回という、おざなりの形式じゃだめです。住民の納得がいくまで公聴会を開くべきだと思う。特に民族の大移動ともいわれる五千名、二千五百名の移転がうわさにのぼっている沼の端と勇払、ここでは批判を受けますよ。あなた方がその批判に耐えられるかどうか。私は長官も行ったらよろしいと思う。あと追い行政にもしいまわれわれが終止符を打つとすれば、せめてこれくらいのことをやるべきだと思う。どうですか、開発庁。
  139. 山田嘉治

    ○山田(嘉)政府委員 これから港湾計画の変更をするに伴いまして、鉄鋼等の企業の立地等をどうするかというような問題をかかえて、一つの非常に大きな曲がりかどと申しますか、そういう段階に来ておりますので、新しい観点から、環境アセスメントの内容等を含めまして、計画の内容の地域住民に対する周知徹底ということは申すまでもなく十分にやるべきである。まだ公表しておりませんのは、これはまだきまったわけではございませんで、内部で議論をしている段階でございますが、これをきめれば、地元の関係の方によく知らせて、周知徹底する義務はもちろん開発庁にもございますし、何よりも北海道庁あるいは地元の苫小牧市というような港湾管理者にも責任があると思います。そういう意味におきまして、これから大いにその内容を広報して周知徹底してまいるように努力したいと思いますが、先生から御示唆のございましたような、開発庁が主体になって、たとえば勇払とか沼の端の住民の方に対して、この集落の将来のあり方についてどうするかというようなことで討論会、公聴会をやるということは必ずしも適当ではないのではないか。地元の市もございますし、地元の方の考え方というものが——これは将来の用途地域の指定等とも関係いたしまして、線引きの問題は道庁の責任であり、また地元の市の責任でもございますので、そういう形でみずからこの地域のあり方をどうするかということで討論されるほうがより民主的であり、適当ではないかというように考えます。ただ、これは車払、沼の端の問題を例としてあげましたけれども、もちろん、公聴会等を現地でやるということ自体、一般論といたしましては一つの方法として十分検討していく必要があるというように考えます。
  140. 多田光雄

    多田委員 どうも歯切れが悪いね。この公聴会を開発庁が開かなければ——三千億からの予算な使って道にいろいろサゼスチョンや指導をしているんだから、ほんとう北海道の五百万道民の総意や参加のもとで開発をやろうという、それこそ発想の転換をやられるのであれば、道に、やりたさい、これくらいの指導はできるでしょう。そういうことをやられるかどうか、私の伺いたいのけそのことなんです。どうですか。
  141. 山田嘉治

    ○山田(嘉)政府委員 御趣旨はよくわかりました。地元の自治体としてそういうことをこれからやっていくことは、当然検討することであるというように考えておるわけでございます。
  142. 多田光雄

    多田委員 検討に値するということは、前向きで取り組んでもらうというふうに私は善意に解釈したいと思います。  次に、開発庁は、六月二十八日予定の港湾審議会から、苫小牧東部のこの港の計画を取り下げるべきである。住民の十分なコンセンサスも得ていない。それから計画の内容は御存じのとおりである。長官がさっき言った、環境保全の問題を前提にすべきであるというその趣旨からいっても、前提になるべきアセスメントがこういうあいまいさである。常識から考えたら取り下げるべきだと思う。したがって、この提出を中止またはほんとう住民が納得できるまで延期すべきだ、こう私は思いますが、どうでしょう。
  143. 山田嘉治

    ○山田(嘉)政府委員 港湾審議会の審議は、地元北海道庁と苫小牧市——苫小牧というのは両方の共管になっておりまして、この二つがいわゆる港湾管理者でございますが、この港湾管理者が港湾計画の変更を運輸省のほうに提出されまして審議会にはかるという問題でございますので、北海道開発庁のほうでこれを取り下げるとかやめるとかいう性質のものではないと判断しております。
  144. 多田光雄

    多田委員 私は十分了承しています、管理者が道であり、そしてまた苫小牧であるということは。しかし、さっきの公聴会と同じように、この港湾は北海道総合開発の中で政府から予算を裏づけしてやられるものだ。本気にそう思うなら、そういう指導的な立場をとるべきじゃないですか、責任回避ではなくして。  そこで、私の持ち時間がきましたので、長官、私はいま伺った範囲でも発想の転換ということはどうにも納得できない。私どもは日本の経済、産業の発展を否定しているのじゃないのです。近代の科学技術の発展を最大限に私は利用すべきだと思う。この点ではだれでも一致する。大事なことは、その科学技術がだれに奉仕するのかということです。生きた人間であり、日本の国民に奉仕しなければならないのです。だからこそいま大事なことは、長官の発想の転換というのは、そのことによって、いま公害がはびこり、過疎、過密がひどくなり、世界の問題になってきておる。だからそれを最優先させろ、こう言っておるわけでしょう。ところがその最優先させるべきものをこういうあいまいさでいくということは、一定の前進ではあるけれども、私は根本的に変わってないと見ております。だれも電力なくして生きていけないのです。これはわかり切ったことです。その電力の立地の場合に、ほんとう伊達住民のコンセンサスを得たかどうか、ここが問題なんですよ。いや、町議会が決議しました、こうなんですね。それは大事なことです。その町議会から住民にどうなっていっているのか、問題はここなんです。町議会が一人走りをしてしまう。この間私は北海道開発長官にも言ったのですが、いかにこの開発地域住民と自治体を破壊しているか。特に地方財政をゆがめて、しかも日本の民主主義の土台になる地方自治に重大な影響を与えているか。一例をあげましょうか。北海道開発計画が比較的順調に進んだと見られているのは何かというと——むつ小川原の場合は県やその他がまだある程度主体的でしょう。開発庁というのがあり、その開発法があり、三千億の予算がついて、これが北海道の地方自治体に逆にのしかかってくるのです、一つの行政権を持って。その結果はどうなっているか。道は乏しい中で三百億、当初予算百八十億をこえる三百億の金で土地を買う、先行投資をやった。財政が硬直するでしょう。しかもその中身はどうか。土地を買うために、道自身が農地法に違反してまで土地を買っているのです。法を守るべきものがそうなっていくのですよ。長官、それがいま道議会で地方自治法の百条委員会にかかっている。警察まで入り込んできた。汚職がある。これは人間の精神の腐敗です。私はこの開発というものを真剣にいま考えていかなければならないときだと思う。その大事なキーポイントとして、この残されたといわれる苫小牧の大湿原の原野の巨大開発、ここにたよりになる環境アセスメントが一体どうであったかというとあのとおりだ、計画の内容がどうであったかというとあのとおりだ。これで一体、真剣に住民のことを考える者、真剣に科学的にやりたいと思う者、そういう人は一体満足できるでしょうか。私は、住民は満足できないと思う。  最後に私は長官の御決意を伺って、最後に私の締めで終わりたいと思います。
  145. 三木武夫

    三木国務大臣 開発地域住民の人間を対象にしたことであるということはお話しのとおりだと思います。そういう意味で、今後は企業のための開発というようなものは、もうそういうことは考えることも無理なことでもあるし、また考えておる人もいないでしょう。やはり人間でありますから、そういう環境という問題が人間の生命、健康の保持という点から重要になってくるので、いま完全にみんなの発想の転換がそこまでいったとは正直にいって私は思わない。しかし、やはりいかざざるを得ない大きな転換期である。そうでなければ、地域開発というものは至るところに問題が起こる。そういうことで、われわれの環境アセスメントについてもいろいろな手法について研究の余地はあると私は率直に言ったわけであります。しかし、発想の転換はもうせざるを得ない一つの時代である。そうでなければ、地域開発というものは万人のために喜ばれるような地域開発にならないわけでありますから、そういうふうな考え方に徹して今後は地域開発を進めていかなければならぬ、そういう点には、私もそのように考えるわけでございます。
  146. 多田光雄

    多田委員 最後にひとつ……。  いま大きな転換と言われた。一体その転換は何で起きたのでしょうか。先ほど、企業地域社会のことを考えなければならぬと大臣はおっしゃいました。私はことばとしてそのとおりだと思う。また、そうでなければならぬと思う。私はあの水俣の裁判その他を見て、企業の生産第一、地域社会の利益を無視するということに断罪を下された、私はここに歴史の発展があると思う。そのときに企業が一体納得したでしょうか。何回も裁判のやり直しです。企業が幾らか頭が変わったのは、企業自体から生まれたのではないのです。住民の戦い、二十年、十五年の苦しい戦いの中で、裁判にもかける、押しかける、ときには官憲にこの伊達のようにやられながらも、みずからの権利と生活を主張して戦ってきた、そして歴史の流れの中で断罪を下されたのです。つまり、民主主義を守っているのは企業ではないですよ。まさにこのみずからの生活を守って、民主主義を守っているところの住民の戦いです。それが企業の頭を変えさせつつあるのです、変えるとすれば。先ほど、公害には被害者と加害者しかないと言われた。そのとおりなんです。ほうっておけば企業は必ず加害者になる。それをほうらせないようにしたのは住民の戦いです。それ以外にないです。政府だって資料を出さなかったんだから。いまでも通産省は出していませんよ、重要な問題では。住民に隠す。その真実をえぐろうとして住民が十年、十五年戦うのだ。日本の民主主義をささえてきたのはだれですか。公害反対ほんとうにやってきたのはだれですか。地域住民でしょう。伊達はまさにそうなんです。先ほど長官が多数と言われた。多数決原理は民主主義の一つなんです。一番大事なことは主権在民なんです。多数が不正を行なう場合だってあるのだから、重要なことは、ほんとう住民の声が反映するかどうか。だから、伊達の戦いは官憲がこれを弾圧した。まさに伊達において、生活と権利を優先させるという、先ほど長官の言った発想の転換を住民が始めている。それに警察がかかってきたということです。私は警察は中立だとはいささかも思いません。  最後に強調しておきたいことは、どうぞ長官、こういう北海道開発計画、それから環境アセスメント、これらについて閣内でも副総理の地位にあるあなたがこの委員会における各同僚議員の声を反映さしていただいて、この北海道の港湾審議についても十分な御決断をひとついただきたいと思います。  これで終わります。
  147. 佐野憲治

    佐野委員長 この際、午後二時五十分まで休憩いたします。    午後一時九分休憩      ————◇—————    午後三時六分開議
  148. 佐野憲治

    佐野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、最近における水銀やPCB等による環境汚染の問題はますます重大化しつつあり、政府は去る六月十二日の閣議において水銀等汚染対策推進会議の設置をきめ、十四日にその第一回の会議を開催したと聞き及んでおりますが、環境庁長官からその会議の模様並びに決定した対策の内容について御報告をお願いいたします。三木環境庁長官
  149. 三木武夫

    三木国務大臣 ただいま委員長からお話のありましたように、去る十二日の閣議で、水俣等の水銀の問題が起こりましたときには、各省庁緊密な連絡をとって対策推進しておりましたけれども、その後、水銀の汚染というものは拡大する傾向にあり、漁民及び地域住民に非常な不安を与えておりますので、この際、水銀汚染対策推進会議というものを組織いたしまして、関係各省庁がこの際一段と対策を強化する必要がありと認めましたのでそういう会議を持つことになり、十四日の木曜日に午前八時から会議を開いたわけでございます。参画各省庁の局長クラスをもって組織をいたしました。経済企画庁、科学技術庁、環境庁、大蔵省、文部省、厚生省、農林省、通商産業省、運輸省、労働省、建設省、自治省というのが参加をいたした省庁でございます。そして決定を行ないました項目について申し上げたいと思います。  第一には魚介類についての安全基準の設定の問題であります。いろいろ海域に水銀の汚染の問題が提起されて、魚介類に対してはたして食べて安全かどうかということに対する不安が増大をいたしてまいりましたので、単にPPMというような基準のみではなく、日常の食生活の指針となるような安全基準を設定する必要があります。六月中にこの安全基準を設定するということが決定した項目についての第一点であります。  第二点は、水銀の暫定基準は六月中に設定をする。また既存のPCBに関する暫定基準のフォローアップを行なうことにする。それからカドミウムの基準についても設定を急ぐ。こういう点が第二点であります。  第三点は、水銀関係の工場については六月中に全国的な総点検を行なう。そして七月末までに調査の結果をまとめる。またPCBに関してはまず危険八水域周辺の工場について実施して、次いで全国的な点検を行なう。  第四点は、水銀とかPCBその他の有害物質を扱っている企業から各四半期ごとに定期的に有害物質の収支の報告をさせる。  第五点は、水銀を排出するおそれのある工場(ソーダ工業)については、四十九年九月末までに水銀関連作業工程については、すべてクローズドシステム化を完了し、水銀を外に排出しないようにする。さらにあわせてソーダ工業については、五十年九月を目途に極力隔膜法への転換をはかる。  第六点、有明海、八代海を含め、全国的な規模で環境調査を実施するものとし、六月中に着手する。またその内容としては、水質、底質、魚介類、プランクトン等について、水銀、PCB、カドミウム、その他の有害物質について行なう。  第七点、有明海沿岸の住民に対する健康調査は七月以降に実施するものとし、国立病院等の医師を動員してこれを応援する。なお他の水域についても環境調査の結果、問題のあった地域においては健康調査を実施する。  第八点、水俣湾の埋め立てについては、県の事業ではあるが、国において全国的に応援するものとし、運輸省において今年度中に着工の方針で進める。  第九点、一般の河川や海岸については、建設省において来年度から直轄で浄化事業を行なう。  第十点、漁民に対するつなぎ融資として、農林漁業金融公庫の漁業経営資金をもって措置するとともに、天災融資法に準じた措置を行なうこととして、農林中金や信連の資金を利用し、低利なものとなるよう、関係省庁で話を詰める。また県の応急措置について援助方法を講ずる。  第十一点、今後における漁業振興策を至急検討する。  第十二点、漁業関連企業対策については、国民金融公庫資金等の活用をはかる。  第十三点、世帯更生資金の活用をはかる。  第十四点寸環境調査にあわせて原因者の追求を行なう。  第十五点、水俣病治療研究センターの設立を目途に専門家会議を設ける。  第十六点、大学における公害病の研究体制を整備する。  第十七点、水俣病等の公害病にかかわる国公立医療機関に対して補助する等、体制の整備充実をはかる。  第十八点、海上汚染、工場排水等について、海上保安庁による監視体制の強化をはかる。  第十九点、職場環境保全と保健対策をはかる。  この項目は一緒になっているのもありますから、実際は十一項であったわけですが、大体いまのようなことを推進会議できめまして、ここでまだ解決をしてないのは、つなぎ融資として漁業家に対しての融資の金利の問題であります。これはできるだけ低利に天災融資法に準ずるくらいの優遇措置をとるようにということを私から申しまして、大蔵、自治、農林で一両日中にこれに対して結論を出すということ、これがまだ決定をしておりませんが、ほかの点については具体的に決定をいたしまして、きょうの閣議においてもこの決定に対しては各省庁が責任を持って具体化をはかるように強く要望いたしておいた次第でございます。
  150. 佐野憲治

    佐野委員長 ただいまの長官に対する質疑は、水俣の現地視察後の委員会に譲ることといたします。      ————◇—————
  151. 佐野憲治

    佐野委員長 内閣提出自然公園法及び自然環境保全法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林義郎君。
  152. 林義郎

    ○林(義)委員 自然公園法及び自然環境保全法の一部を改正する法律案につきまして、若干の質疑をいたします。  まず、今回のこの改正法律案でありますが、昨年の六月に自然環境保全法の成立を見ました。その法律の附則では、第一条で公布の日から一年をこえない範囲内においてこの法律は施行するとしてある。昨年の六月でありますから、ちょうどいまごろでありますから、やっと施行になったばかりであります。その段階におきまして、すでに新たな改正をしなければならないということ自体が私は非常に異常な事態だろうというふうに考えるのでありますが、いまの段階においてどうしても今回の改正をしなければならなくなった理由を、具体的にまず御説明していただきたいと思います。
  153. 首尾木一

    首尾木政府委員 今回の改正は、自然公園法につきましては自然公園の国立公園あるいは国定公園の普通地域における従来の届け出項目に対しまして、新たに届け出項目を追加したという点と、それから自然公園法における普通地域における届け出、それから自然環境保全法における同じく普通地域における届け出につきまして、三十日の着工制限の期間を設けたという点が今回の改正の要点でございます。  まず、自然公園につきましては、これは従来から届け出項目というところに届け出の規定がございまして、これについてはそれに従ってやっておったわけでございますけれども、その届け出項目の中に、たとえば土石の採取でありますとかあるいは土地の造成等に関しましての届け出規定がなかったという点がございまして、普通地域におけるそういう届け出事項になっておりませんものが、実は非常に普通地域において、自然環境保全と自然公園の保全という点から問題があった事項でございますので、その点につきまして、今回新たにそれをつけ加えたわけでございます。それから従来の自然公園法の普通地域における届け出の状況を見ておりますと、どうしても届け出と同時に着工できるというような規定になっておりますために、その点について、十分届け出によって規制しようとする目的を達し得なかったというような事情があったわけでございますが、その上に最近におきまして非常にそういった土地についての、たとえばゴルフ場でございますとかあるいけ分譲別荘地の造成でございますとか、そういったものが非常に進行をしてまいりまして、やはりこれについては規制を強化しまして、的確にこれを守っていくのでなければ、現地自然公園法における普通地域の目的は達し得ないということになりましたので、それを強化しようとしたわけでございます。これとの関連におきまして、自然環境保全法はこの四月十二日からの施行でございますけれども、やはり自然公園と同じように届け出事項というものにつきすして、これはまだ具体的な施行になっておりませんけれども、これを強化するということが自然公園法との関係から申しまして、どうしても必要であろうということでこれの改正を提案いたした次第でございます。
  154. 林義郎

    ○林(義)委員 法律案の提案理由の説明はよくわかりますが、私が申し上げているのは、たった一年前に考えられなかっただろうか、こういうことであります。一年前です、相当な大法律でありますから、実は今回の改正というのは非常に小さな部分の改正でありますから、やはり大法律を出すときには相当先のことも考えるし、いろいろなことを考えてやっておかなければいけない。どうしてもいまの法律ではできなくなっちゃったというような何か具体的な事例でもあるのかどうか。施行されましたのがごく最近でありますから、その施行前は前の法律の規定が、自然公園法か何か動いていたわけでありますから、大問題になったということはあまりないのじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  155. 首尾木一

    首尾木政府委員 私は、実態的にもそういったような点につきましては、今回の改正が非常に必要になったというふうに考えておりますが、一方におきまして国土総合開発法というものを政府において考えておる、今国会に提案をいたしておるわけでございます。この国土総合開発法というのはやはり環境保全という観点も考えまして、全国の地域を幾つかの利用地域に分けるということになっておりまして、その中に自然公園地域あるいは自然保全地域というものを設けまして、それについて国土の計画的な利用あるいは保全ということを考えていこう、こうしているわけでありまして、この法律はそのような地域を設けますが、その地域についての各種の規制はそれぞれの法律においてやっていくということでございますので、そういう点から申しますと、今度の国土総合開発法を裏打ちにいたしまして、全体としてそういう土地に対する規制を強化しようというような政府の方策というのが前提としてございまして、今回もそういう点から見直しまして、特に先ほど申しましたような実態も考え合わせますと、自然公園法あるいは昨年御審議を願いましたばかりでございますけれども、自然環境保全法につきましても、この際やはり規制を強化するということが全体の政策として好ましいということで、この法律を御提案を申したわけでございます。
  156. 林義郎

    ○林(義)委員 私も立法の途中から参画をしておりましたし、政府委員だけを責めるわけではありませんが、昨年の六十八国会のことを思い出しますと、昨年の六月十六日にこの法案は成立した。当委員会におきましても審議はほとんどなしで、理事会で話をしてやったというのがこの法律の実態であります。     〔委員長退席、中島委員長代理着席〕  ところで、ことしの三月に行政管理庁から、自然保護に関する行政監察結果に基づく勧告というのが出ているわけであります。いま申しましたように実は相当急いでつくった法案でもあるし、それから法案を作成する間におきましても、私は記憶しておりますのは、昨年の初めくらいから話があって、関係各省と環境庁がいろいろとやり合ってやったということでありまして、言うならば妥協の産物のような点がたくさんあるわけであります。私は、先ほど申しました行政管理庁のこういった勧告も出ているし、これから自然環境をどうしていくかというのは、国土総合開発法が出ていますし、やはりもう一ぺん新しい観点から見直してやらなければならない問題だろうと思うのであります。この国会にそういったことを出せということではありませんけれども、やはり自然環境保全というのは、やはりこの際検討してみる必要があるような気がするわけでありますけれども、この辺について大臣、どういうふうにお考えでございますか。
  157. 三木武夫

    三木国務大臣 私が環境庁長官に就任しましたときに考えましたことは、どうも乱開発という、開発は必要なんですけれどもね、あまり手っとり早い営利追求のために自然の環境というものが破壊されていくことが少し目に余るものが、私など地方を旅行しましてあるものですから、これはやはり何か歯どめをしなければならぬ。ただ、その歯どめをする場合に、だめだだめだというだけでは説得力ありませんからね。ひとつ全国的な地図をつくってやろう。環境保全地図というようなもの、こういう自然環境というものはどうしても残さなければならぬものである。その自然の重要度というものを地図の上においてあらわせないかということで、別に予算をとりまして、そのとき私が行ったときは予算の大体大筋は済んでおったのですが、これを上のせしまして、そして予算をとって、いま全国の専門家あるいは地方の大学等の協力を得てやっているのです。そういうものができれば、少し日本の自然的な環境というものに対しての重要度合いというものが、国民の側においてもいろいろ考える参考になると思いますので、そういうことから何か今後の開発をする場合に残すものあるいは開発する場合にも特にやはり開発やり方に対して注意するもの、いろいろな点を考慮する際に参考にしたいと思っておるのです。次第次第に環境に対する国民の意識の変化が起こりつつありますからね。どうも環境と人間との相互関係、この微妙な関係というものはみなが気づき始めておるでしょう。いろいろなものでも、ホタルもいなくなり、赤トンボもいなくなり、それから小鳥も少なくなりということ、緑は少なくなる、こういうものが人間の生活の中に非常に大切な要素である。人間をはじめ生物の生存の基盤ですからね。環境を離れて人間というものの生命というものはあり得ないわけです。非常に急激な意識の変化があるのですね、環境というものを守ろうということで。こういうことですから、そういう国民の意識の変化等もうしろだてにして、自然環境保全ということには環境庁の行政というほうからもう少し強い立場を持つべきであるというふうに考えるわけでございます。いままでも、今度の自然環境保全法の改正なども、それは国土総合開発ということで土地の利用ということが、全体の国の土地の利用というものが考えられてきたから、どうしてもその中で自然環境というものの保全というものが、その土地の利用の中で相当重きをなされなければならぬというので、いろいろな特別地域として自然の原生林保全のための特別地域であるとかその他の重要な地域に対する特別地域としての指定を行なって、土地の利用の中における自然環境保全というものを一つの柱にしようという、そのためには開発に対する規制も加えていく必要があるというので、こういう改正を出してきたと思うのですよ。ついやはり一年もたたぬくらいですから、つくるときにこういうことも考えてしかるべきであったのでしょうが、国土総合開発という開発法というものも一つのそういうこともこういう改正を出す動機の一つにはなっているのでしょうが、大きくはやはり自然環境保全に対する義務も含めて意識の変化があったということだと思います。
  158. 林義郎

    ○林(義)委員 自然環境保全ということでありますけれども、やはり国土総合開発という体系の中において考えていかなければならない。やはりその自然環境保全ということばはいいのですけれども、どこまで守っていくかというような点の具体的な問題というのがあると思うのですよ。この法律を見ましても、自然公園法を見ましても、自然の景観が云々と書いてある。自然環境保全に対して悪影響を及ぼさないこととかなんとかというような形で書いてある。しかし具体的なそこのルールづくりというものをやっていかれなくちゃならないだろうと私は思うのであります。その辺につきまして、一体大臣または政府当局、自然環境保全というものを哲学として、基本的な考え方としてどういうふうなものをやっていくのか。国土総合開発、いまおっしゃったようにやはり工場もつくらなければならないし、住宅もつくらなければならない。いろいろな開発を進めるのでありますけれども、自然環境保全というものは一体どういう形で当局はやっていくのか。原生林とかなんとかということははっきりいたしますが、そればかりではないと思うのであります。特に今回問題になっておりますところでは、そういった問題ではない。いわゆる普通の地域におけるところの制限であります。普通地域における自然というものはどういうふうにあるべきかということについて、何か大臣、お考えがあれば聞かしていただきたいと思うのです。
  159. 三木武夫

    三木国務大臣 自然環境というのはむずかしい問題ですね。いま言った原生林なんかのようなところはわかりやすい。だからこれはいろいろな専門家が、私は地図をつくろうというのも、専門家が寄って、これは植物の学者だけではいかぬから、一つの生態学的な視野でやらなければならぬですから、そういうことだったら、目に見える景色がいいということだけでは意味かないのです。——意味がないことはないけれども、そればかりではいけない。そういうことで、ひとつ日本の自然を見直してみる必要があるので、いま林委員がここで私に自然環境を保護しろという自然環境は何かという御質問に対してお答えするのが非常にむずかしい。そこで私は、専門家を入れてそうしていま言ったような広い生態学的な見地から残さなければならぬ自然というものはどういうものであろうかということの地図をつくってもらいたい、こう願っておる次第でございます。
  160. 林義郎

    ○林(義)委員 非常にむずかしい問題でありますが、そこはどうしても詰めておいてもらわなければならない問題だろうと思います。大臣からおことばがありましたが、生態学的な観点というものも一つ必要であります。単に自然だけだというわけにもなかなか私はいかないだろうと思うのです。やはり自然というものは、人間が一緒に生きているから自然というものがどうだこうだいわれるわけでありますから、人間が死んでもいいということになりますとこれはやはり困るわけでありますから、そこでおそらく自然環境保全ということばを使っておられると思うのですが、やはりこの辺はその一つ一つ行政的なケースとすればケース・バイ・ケースで判例法的に積み上げていくよりほかに方法がない。その中にいろいろな学者の知恵であるとかなんとかというものも入れてやっていくというのが筋だろうと思いますが、その前に一つ私はここでお尋ねをしたいのですが、今度の場合の問題で二つ問題があります。一つは、届け出を要する行為を新しく追加したという問題であります。もう一つの問題は、届け出をしてから三十日以内に改善命令を出せるというのは、最低三十日前には届け出をしなさい。三十日前に工事に着手してはならない。その間に改善命令を出します、こういう形になっている。その二点だと思います。それで、届け出の問題でありますけれども、私は行為に着手する三十日前に届け出しなさい、こういうふうにいって、その間に審査をしてそれでよろしい、改善命令をその間にも出します、こういうことは、いうならば普通の許可制と同じことだと思います。許可制に三十日の期限をつけたのと同じことです。許可でありましたならば一般的に禁止をしているのですから、その間においていろいろな問題があったところで補償の問題等は起こりません。     〔中島委員長代理退席、委員長着席〕 ところが、届け出制になりますと、やはりそこに対していろいろな改善命令を出すといった場合には、補償の問題とか何とかというような問題が出てくるだろうと私は思うのです。法律論としてそういった違いがある。そこが届け出制と許可制の違いだろうと思うのですが、私がいま申し上げていることが合っているかどうかということが第一点。  それからもう一つは、それだけ実際に違わない、しかも補償のような問題がないのでありましたならば、一般の許可制にして、許可については迅速果断なる許可をとらなければなりませんから、三十日間以内において許可をいたす、もしも許可をしなかったならば自動的に許可があったものと見なす、こういう規定を置いても少しもおかしくないのではないか。むしろ自然公園法及び自然環境保全法をこれから大切にしていかなければならないということであるならば、たてまえ上、届け出にするよりは許可制にしておいたほうが立法の趣旨にもかなうのじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  161. 首尾木一

    首尾木政府委員 第一点でございますが、補償の点につきましては、許可の場合もそれから届け出につきまして改善命令あるいは禁止命令を出しました際も、やはりそれによって生ずる通常の損失についての補償規定がいずれもございまして、その点は許可の場合も届け出の場合も同じようになっておるわけでございます。  それから第二点でございますが、なぜそれを届け出制にしたか、許可制にしなかったか、こういう点でございますけれども、これは、今回のものが実質的には許可制に近い届け出制であるということは仰せのとおりでございまして、いわゆる行政処分としての形の上から考えられるわけでございますが、考え方としましては、許可制というのは一般禁止に対する解除といいますか、そういうことが前提になっておるものでございます。届け出制でございますからこれは一般禁止ではございませんで、行政処分の型としましては許されておるけれども、その一カ月の間には着工ができない、そういう制限が外からかかっているということで、法律上の性質としてはそうなるわけでございます。  それで、実は今回の法律改正にあたりましても、われわれはその点を法制局をまじえましていろいろ議論いたしたわけでございますが、現在すでに自然公園の普通地域に指定をしておりますところは、いわばただいま申し上げましたようなそういう一般禁止ということを前提にした地域としては指定をいたしておらなかったということでございますので、もしそれを一般禁止の形の制度としてやるならば、それについては新たに地域の指定を必要とするのではないかというような法律上の議論というものが起きてまいったわけでございます。こういう点につきまして私どもは、実質的な意味において、届け出制ではあるけれどもその強化をするというような観点で、地域の指定のし直しまではしないでそのままでやれる限界というところで強化をしていこうという方針をとったわけでございます。この点につきましては、もし許可制にまでどうしても移行する必要があるというような地域につきましては、実は基本的に現在の普通地域というものをさらに特別地域に見直して指定をし直すということをやるならば、その地域については許可制になるわけでございますから、したがって、一方ではそういうようなことももし事体としてやろうと思えばやれるわけでございます。  ただ、地域の指定を特別地域にするか普通地域にするかということにつきましては、技術上の問題といたしまして、やはり地域を指定する際には、地域住民の意向やあるいは都道府県との協議の問題でありますとか、あるいは関係者との協議の問題ということで、地域の指定というものは実際問題としてこれを変えるということについては相当の時間がかかるわけでございます。そういうことを考えますと、現在の普通地域のままでそこについてもやはり措置を強化していくことがどうしても必要だということで、今回のような改正のやり方をやったわけでございます。
  162. 林義郎

    ○林(義)委員 その普通地域という地域がある、特別地域という地域がある、特別地域については許可制になっている、普通地域については届け出制になっている。その普通地域と特別地域の間で今度普通地域のほうを許可制にするならば、普通地域の中を二つに分けて、許可を要するところの普通地域と届け出で済むところの普通地域と分けなければならない、こういうふうな話でございますが、そういうふうな議論があるから依然として届け制を置いておく、こういうことですか。
  163. 首尾木一

    首尾木政府委員 お答えいたします。  普通地域と申しますのは、これはまず国立公園地域の指定がございまして、その中で特別地域の指定がさらにあるわけですが、その地域を指定されてないところを普通地域といっているわけでございます。したがって、公園地域を全体として指定をいたしますには、やはり地域住民とか都道府県とかあるいは関係各省とか、そういったようなところと協議いたしまして各種の調整が必要でございますから、そういう協議をしてきめなければならないわけでございまして、さらにその中で特別地域をやることについても同様の協議を必要とするわけでございます。したがいまして、そういう特別地域の協議をしてない残りの部分については、もしそこについてやるということになれば、そういう協議を経てはおらないわけですから、これは特別地域の協議の際にさらにあらためて協議をしなければならぬ、こういったような問題が出てくるわけでございます。その協議が時間的に非常にかかるという問題がありますから、したがって、この点について普通地域としてもやはり強化をしていこうということで今回の改正をした、こういうふうに申し上げておるわけでございます。
  164. 林義郎

    ○林(義)委員 ちょっとよくわからないのですが、普通地域というものがありますとそこは届け出であります。それはいろいろと問題があるというのは、都道府県知事と相談をする手続が必要であるというのですが、その都道府県知事との協議の問題は、許可制をするか届け出制をするかという問題とは、法律論としては一応別個の問題ではないかと思うのです。ですから、私が申し上げておるのは、三十日の間云々ということで届け出ということですけれども、実体的には許可制なんですね。三十日の期限つきで許可、不許可をしなさいという許可制なんです。私はそういった制度を一つつくる、普通地域と特別地域を一緒にするということではないのです。こちらのほうを届け出を許可制という形にして、しかもその許可制は三十日という期限つきである。一方は長い間かかって慎重にする許可制をとっているのですから、こういうふうな形に並べたところで法律論としてもおかしくないだろうと思うのです。それを届け出制に置いておかなければならなかったという何か必然的な理由があるのかどうか。
  165. 首尾木一

    首尾木政府委員 私の御説明が少し混同しておったと思いますけれども、これはやはり特別地域と普通地域というものがあるわけでございますから、したがって、特別地域のほうが当然行為に対する規制というものは強いわけでございます。その地域は一般的な禁止の地域ということで観念をいたしておるわけです。一方、普通地域のほうは、そもそも普通地域の目的がやはり特別地域と違いまして、特別地域を守るための普通地域でございますとか、特別地域の周辺の自然を守るための周辺地域でございますとか、あるいはそれほど自然の状況から申しますと、特別地域ほどはすぐれたものでないというようなところが自然の地域になっておるわけでございますから、そういう地域につきましては、一般的な禁止というようなもので扱う地域ではない。したがって一般的なものではないけれども、しかしそこについての制限があまり弱ければ普通地域がある使命も果たさないということでございますから、その辺について今回届け出地域として許可をしたということでございまして、その点につきましては先ほどから何回か申しますように、その過程の議論として、もし許可地域にするならば、やはり法制上普通地域というものをもう一ぺん見直してみなければいけないというような問題が法律問題として生じたということから、届け出制の形にしておるということでございます。
  166. 林義郎

    ○林(義)委員 その法律の問題として生じたというところですね。その法律問題として生じたというのは、一方は原則禁止の地域であるところの特別地域と、届け出のところでは原則は自由であるけれども届け出によっていろいろな原状変更ができるということであるから、それは自然公園法または自然環境保全法の中において特別地域というものは原則禁止をたてまえにする、普通地域は原則自由をたてまえにするというような何か立論の法律的な根拠か何かあるのですか。
  167. 首尾木一

    首尾木政府委員 地域を特別にいじりませんで、従来普通地域であるということの前提のもとに地域指定に応じておったという状態のもとで、さらにここで一ぺん指定しておいて、それがそういう前提のもとで指定されておったものがいきなり許可地域になるということについては、これは法律問題としてやや適当でないのではないか、これは結論的にそういうふうな結論が法律上の結論として出ておるわけではございませんけれども、そういったような議論が非常にございまして、したがってそういう議論が一方にございますので、それを踏まえまして届け出制という形のままで着手制限という形で実質上の許可に近い届け出にした、これが今回の改正でございます。
  168. 林義郎

    ○林(義)委員 次に入ります。  今回の改正のもう一つの大きなポイントは、自然公園法及び自然環境保全法の中のいろいろな普通地域における行為の制限をすることであります。その行為を整理したのだろうと思いますが、自然公園法の中で普通地域の第四号の中で、第四号を改正して、「海面」としてあるのを修正して「水面」にするということでありますが、その五号のほうには「海面内においては、海中公園地区の周辺一キロメートルの当該海中公園地区に接続する海面内においてする場合に限る。」こういうふうな規定があります。そういたしますと、「海面」を「水面」に変えたのですから、河川を含めた、こういうふうに考えられるわけでありますが、河川の場合においては「鉱物を掘採し、又は土石を採取すること」というのは、反対解釈としてよろしいということになるのではないか、こう思うのですけれども、この辺はやはり法をいじらなくてもいいのかどうか。
  169. 首尾木一

    首尾木政府委員 いまの「水面を埋め立て、又は干拓すること。」という点でございますが、これは河川とかそれから湖沼が、内水の問題が重要な問題でございますので改正をいたしたということでございます。  それから第五号のほうのカッコ書きのことを言っておられると思いますが、この五号につきましては、従来は海のほうについてはこれを限っているわけでございますから、その他のものについては「鉱物を掘採し、又は土石を採取」というのは全部入っておったわけでございます。したがいまして、今度の場合もただいまの先生の言われるような解釈にはならないわけでございます。
  170. 林義郎

    ○林(義)委員 わかりました。  それから次に、自然公園法環境保全法と行為制限のところを比較してみますと、若干ずつ違いがあるのです。自然公園法のほうは二十条第一項第一号ですが、この中では「その規模が総理府令で定める基準をこえる工作物を」となっている。一方の自然環境保全法のほうは二十八条第一項第一号、「その規模が総理府令で定める基準をこえる建築物その他の工作物」となっております。一方は「工作物」になっておるし、一方は「建築物その他の工作物」となっておりますが、ここは全く同じと解してよろしいのですか。違うのですか。
  171. 首尾木一

    首尾木政府委員 「建築物その他の工作物」と書いてございます「建築物」は単なる例示でございまして、内容的に変わりはございません。
  172. 林義郎

    ○林(義)委員 第二は、自然公園法のほうでは今度新しく「土地の形状を変更すること。」こういうことになっている。これは新しく改正条文に入っている。それに対応するものが自然環境保全法のほうでは「宅地を造成し、土地を開墾し、その他土地(海底を含む。)の形質を変更すること。」となっております。「土地の形状を変更すること。」というものと、いま申し上げた「宅地を造成し、土地を開墾し、その他の土地(海底を含む。)の形質を変更すること。」というのは同じでありますか。違うのですか。
  173. 首尾木一

    首尾木政府委員 これは実体といたしまして同一のものでございます。
  174. 林義郎

    ○林(義)委員 そういたしますと、私は、同一のものならば、同じ法律の体系のものでありますからできるだけ同一のことばを使ってもらいたいのであります。自然公園法といい、自然環境保全法といい、大体同じ目的を果たしている。一方は自然景観を保護するという、一方は自然環境保全する。大体国土総合開発法の中におきましても同じようなものであります。なぜ違うことばを使われるのかということでありますが、もう一つ申し上げますと、自然公園法のほうでは「海底の形状を変更すること」という規定がありますが、自然環境保全法のほうではそれがない。これはやはりさっきのことばの中で読めるということでありますか。それともわざわざ自然公園法のほうで「海底の形状を変更すること」ということを残してあるのは何か意味があるのですか。
  175. 首尾木一

    首尾木政府委員 この点は、海中公園の景観の保全という点で、自然公園につきましては、特に海底についての形状の変更というものが規制の必要があるということで、自然公園法のほうにだけ置かれておるものでございます。
  176. 林義郎

    ○林(義)委員 それからもう一つ自然公園法の中で「広告物その他これに類する物を掲出し、若しくは設置し、又は広告その他これに類するものを工作物等に表示すること。」こう書いてありますが、自然環境保全法のほうにはその規定がない。ないのは、それは反対解釈として自然環境保全法における特別地区はそれが許される行為と解してよろしゅうございますか。
  177. 首尾木一

    首尾木政府委員 結論的にさようでございます。これは特に自然公園というのは目で見た風景といいますか、そういうものを法の対象にするということでございますので、そういう工作物にいろいろな広告の見苦しいものが出ておるというものにつきまして規制をやっていくという観点から自然公園法の中にあるわけでございまして、自然環境保全法におきましては、そういった建物に特に看板が出ているということ自体が自然環境保全ということからいって、それほど重要な問題ではないということで規制の対象からはずれておるものでございます。
  178. 林義郎

    ○林(義)委員 趣旨はわかりました。  最初の問題に返ります。自然公園法では「工作物」と書いてある。自然環境保全法では「建築物その他の工作物」と書いてある。広告を掲示する云々というのは建築物になるわけでありますから、そういったところで読むということでやるのではないのですか、違うのですか。
  179. 首尾木一

    首尾木政府委員 自然環境保全法それから自然公園法でそれぞれ特別地域について同様な項目がございますが、そこのところにそれぞれの法律を合わしたということでございます。一方で工作物の建設ということだけが書いてあるほうはそちらに合わしたということでございまして、これは実は法律の条文につきまして、できればそういったような点についての統一を今後とっていくということが望ましいものでございますけれども、これにつきましては、たとえば建築関係の法規でございますとか、あるいは都市計画関係の法律でございますとか、そういったような点にも若干字句の使い方というものが違っておる点がございまして、これらの問題についての整理ということは、私ども将来の問題として必要かというふうに考えておるわけでございます。
  180. 林義郎

    ○林(義)委員 たとえて申しますが、自然環境保全法のほうでは「その他土地の形質を変更すること。」となっておる。一方自然公園法のほうでは、新しくつくった条文では「土地の形状を変更すること。」となっておる。「形質」と「形状」とことばが違いますと、やはり違うような問題になってくるだろうと私は思うのです。これは将来そういったことも含めて検討してもらわなければいかぬと私は思うのです。「形状」といいますと、普通われわれがながめた字のかっこうからいいますと、表にあらわれたところのもの、「形質」といいますと、中の土質とか、腐葉土がたくさんだまっているとかどうとかいう感じが出てくるわけであります。そういった意味でこれは禁止行為でありますから、どこまでやっていいかどうかというのは国民の側からすればたいへんな行為でありますので、この辺はできるだけ早くひとつ整理をしてもらいたい。また法律条文としてこういうふうに書かれましても、具体的なことではこれは当たるとか当たらぬということがあるでしょうから、実はそういったことで自然公園法関係あるいは自然環境保全法に関係するところではできるだけわかりやすく解説をしてもらいたい。解説をしてもらわないと、これはわからないですよ。法律を読んでこれは「形状」だ、「形質」だということが出てきても、これははっきりいってわからない。もう少し親切な法律をつくってもらいたい、こう思うのです。この点は今回はどうだこうだということではありませんから、ぜひひとつ御検討をしていただきたいと思いますが、この辺についてどういうふうにお考えになりますか。
  181. 首尾木一

    首尾木政府委員 現在の自然公園法もかなり古くなりました法律でございますし、自然環境保全法との関係につきましても今後こまかい点でいろいろ調整をしていかなければならないというふうに考えております。私ども、将来自然環境保全法なり自然公園法というものにつきまして、その運用等につきましても総合的に見直しまして、こういったようなことについての法律改正ということが必要なのではなかろうかというふうに考えておるわけでございまして、その際に十分整理をしたいというふうに思います。
  182. 林義郎

    ○林(義)委員 末端の字句的な問題についての整理も必要でありますし、最初に申し上げましたように、基本的な考え方におきましてもいろいろな問題がありますから、やはり時間が来たならば相当な整理を考える必要があるだろう、こう思っております。  時間もあまりないようですからもう一つお尋ねいたしますが、今度罰金が上がっておるのです。これは自然公園法の四十九条、五十条、五十一条で罰金が上がっており、自然環境保全法のほうも五十六条で、新しく「二十八条第四項の規定に違反した者」というのをつけ加えておりますが、罰金の規定は、四十九条は十万円を二十万円に、五十条は五万円を十万円に上げて倍にする。それから五十一条は五万円を十万円にする。倍にする。五十二条は一万円を五万円にするというふうに、大体倍に上げておるのですが、最後のところだけ五倍に上げたというのは何か理屈があるのですか。
  183. 首尾木一

    首尾木政府委員 これは自然環境保全法のほうに合わせたものでございます。
  184. 林義郎

    ○林(義)委員 これで終わります。
  185. 佐野憲治

    佐野委員長 暫時休憩いたします。    午後四時九分休憩      ————◇—————    午後四時五十六分開議
  186. 佐野憲治

    佐野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。木下元二君。
  187. 木下元二

    木下委員 自然公園法の問題で質問いたしますが、具体的な問題からお尋ねをいたしたいと思います。  私は日本の公園といわれる伊勢志摩国立公園問題からお尋ねをいたします。  この伊勢志摩国立公園、特に鳥羽、志摩の地域は特に景観のすぐれたところであります。海岸はりアス式海岸で深い湾入や複雑な入江、なだらかな丘陵の段丘からなっております。沿岸ではイセエビ、アワビ、サザエ、こうした魚介類も豊富にとれておりまして、有名な真珠の養殖も昔から盛んであります。このような美しい自然の残されました志摩半島にいまパールロードという観光有料道路が横断し、その近辺の土地が大手観光資本によって買い占められようといたしております。買い占められつつあります。そして大規模なレジャー施設、高級別荘地がつくられようといたしております。  そこでまず、このパールロードについてお尋ねしたいのであります。  パールロードは一昨年一月三重県が総工費二十八億円をかけまして着工したのであります。現在鳥羽市から志摩郡の磯部町までの約十八キロメートルの第一期工事が終わりまして、さらに奥志摩へ延びる第二期計画が始まっております。すでに行なわれました第一期工事によって、土砂やコンクリートの流出による田畑への被害、森林資源への被害、海の汚染による魚介類への被害が出ておると聞いておりますが、環境庁はこうした点を御存じでしょうか。このような自然破壊を環境庁長官はどのように認識をしておられるでしょうか。
  188. 首尾木一

    首尾木政府委員 御指摘の伊勢志摩国立公園の中のパールロードでございますが、これは国立公園の普通地域内を走っております道路でございまして、今年の四月から開通をいたしておるというものでございます。  ここの道路建設に伴います自然破壊の問題でございますけれども、私どもとしましては、重要な自然破壊というものが道路建設によって生じたということにつきましては報告をいまだ受けておりません。ただ、先般の四月末における集中豪雨によりまして、のり面のくずれでございますとか、そういった土砂の崩壊等があったということにつきましては報告を受けておりまして、この点につきましては、ただいま復旧工事を行なっておるという状況でございます。
  189. 木下元二

    木下委員 この道路がつくられまして、いわゆる車等の通行による道路公害ですね、そうした道路公害の被害の状況については認識していられないということですか、そういう状況はあるいは起こっていないということですか。
  190. 首尾木一

    首尾木政府委員 道路の、車のふくそう等によるそういう一般的な好ましからざる状態というものにつきましては、当然そういうことは予想されるところでございまして、私どもその点について、ないということを申し上げているわけではございません。
  191. 木下元二

    木下委員 現在の状況はよくわかりにくいけれども、そうした車公害等の被害のこれからの問題として、そうした状況が起こるであろうということは予測をしておられるようであります。  そこで私聞きたいのでありますが、県のほうは、このパールロードの両側の幅二百メートル、延長十キロメートルの道路の沿線の土地を購入して緑化につとめるといっておるようであります。ところが、これはあの悪名の高い富士山ろくの富士スバルラインの教訓をどのようにとらえておられるのでしょうか。この富士山ろくのスバルラインにおきましては、観光道路スバルラインの建設によりまして周囲の森林は立ち枯れなどの被害を受けております。自然破壊はもうすでに深刻に進行いたしております。立ち枯れをしたそのあとに植林をしました若木さえすでに枯れつつある、こういう状況が富士では生まれております。これは環境庁のほうも御存じだと思うのですけれども、このパールロードを第二の富士スバルラインにしようとするのではないか、こう思うのです。この点の考え方を環境庁にお聞きしたいと思います。
  192. 首尾木一

    首尾木政府委員 御指摘のございました富士スバルラインでございますが、この地域とパールロードの通過をいたしております地域というのは自然の状態がかなり違うと考えております。パールロードにつきまして、特に森林の立ち枯れ等の起こっております地域は、いわゆる亜高山地域と申しますか、そういったような植生の地域でございますので、特に弱い自然といいますか、そういう部類に属しているもの、森林等につきましても、そういったような点が問題でございまして、一般的に伊勢志摩国立公園の場合における植生状態というのは、あの富士スバルラインにおけるような植生状態というものとは違いますので、あのような形での森林破壊というものは考えられないのではないかというふうに考えております。
  193. 木下元二

    木下委員 そうしますと、条件が違うとか何かいわれましたけれども、森林の種類が違うということだけですか。どういうことですか。
  194. 首尾木一

    首尾木政府委員 重要な点はやはり森林の種類が違うという点でございますが、その他気温の条件でございますとか、あるいはまた風向の問題でございますとか風の問題でございますとか、特に富士の場合の破壊といいますか、あの森林の破壊というものはそういったような点が非常に大きな問題になっておるわけでございまして、この伊勢志摩公園における道路の問題というのは、そのような形における破壊というものはないであろうというふうに考えております。
  195. 木下元二

    木下委員 富士と同じような破壊はないであろう。それは条件が違うわけですから、条件は幾らか違いましても、ではこのパールロードができても、この周辺の自然は破壊されないのか。そうではないと思うのですよ。やはり幾ら条件は違っても、そういう富士のあの教訓を生かしてこうしたことが、これに似たようなことがあるいは近いことが起こらないように、十分な対策を考えるということでなければならないと思うのです。  そこでお尋ねしたいのですけれども、いま言われましたパールロードの建設をされます地域というのは、先ほど少し言われましたけれども、国立公園の普通地域ですか。
  196. 首尾木一

    首尾木政府委員 さようでございます。伊勢志摩公園は、約八〇%が現在普通地域になっておりまして、このパールラインの通っておりますものも普通地域の中を通っておるわけでございます。
  197. 木下元二

    木下委員 そうしますと、あとの二〇%はどういう地域ですか。
  198. 首尾木一

    首尾木政府委員 特別地域でございます。この特別地域でございますと私が申し上げましたのは、伊勢志摩国立公園の全体の中では八〇%が普通地域でございまして、このパールロードの通っております地域は全部普通地域でございます。
  199. 木下元二

    木下委員 このパールロードの通っておる周辺を、近く特別地域に指定がえをするというふうに聞いておるのですが、それは事実でしょうか。そしてまた、そうだとすればどの区域がそのような特別地域に指定をされるということですか。
  200. 首尾木一

    首尾木政府委員 ただいま現地において計画を検討中ということでございます。
  201. 木下元二

    木下委員 ですからその内容を言ってくださいよ。私がいま言いましたように、特別地域に変える、普通地域を特別地域にするということなのかどうか。もしそうだとすれば、それはどの部分を特別地域にしようとしておるのか。大体でけっこうです。
  202. 首尾木一

    首尾木政府委員 伊勢志摩公園につきまして、ただいま八〇%が普通地域と申しましたが、特別地域を約五〇%にしたいということで目下検討中というふうに聞いております。
  203. 木下元二

    木下委員 いや私の問いに答えてくださいよ。私が言っているのは伊勢志摩半島全体のことを聞いているのじゃないですよ。パールロードがつくられている。そのパールロードの両わきのところ、その周辺、そこが、いまのお話では全部普通地域になっているということでございました。その両わきの周辺を特別地域に指定をしようという動きがあるじゃないか、これが第一の質問です。  それから、そうだとすればそれは一体どの部分か、おおよそのことを言っていただきたい。その道路の何メートル先までそういうことにされようとしておるのか。それは私がさっき質問しましたように、幅二百メートル、延長十キロの範囲で緑化につとめるために努力をしておられる、こういうふうに聞いているのですが、その範囲を特別地域にしようとしておるのか、そういう質問です。
  204. 首尾木一

    首尾木政府委員 その範囲を越えまして海側を相当特別地域にしたいということでございます。
  205. 木下元二

    木下委員 どの範囲を越えて……。
  206. 首尾木一

    首尾木政府委員 いま先生の御指摘になりました県が土地を購入して緑化をやっていくという、そのところはもちろん特別地域ということでございますが、それを越えまして海側のほうにつきましては、さらに特別地域を拡張したいということでございます。
  207. 木下元二

    木下委員 そうしますと、その道路の両わきの緑化の部分は全部特別地域、それからもう一つは海側——海側と言われましたが、それはとの範囲でしょうか。面積でいいますとどの程度の面積、しかも何カ所も分かれておるのでしょうか。その海側というのはよくわからなかったのです。私が聞いておりますのは、道路の両わきを特別地域に指定をするというふうな動きがあると聞いておったので……。
  208. 首尾木一

    首尾木政府委員 具体的な地図に落とすというような点につきましてはまだ私どものほうは資料をとっておりませんが、パールロードの沿線百メートルのところについて土地の買い上げを行ない、それから海側のほうと申しますのは、結局そのパールロードから海岸寄りのほうでございますが、それにつきまして約三千ヘクタール、これを特別地域にしたいということで県のほうで計画を検討中ということでございます。
  209. 木下元二

    木下委員 沿線百メートルですか。
  210. 首尾木一

    首尾木政府委員 両側百メートルということでございます。
  211. 木下元二

    木下委員 緑化の部分は沿線それぞれ二百メートルと聞いておるのですが、違いますか。百メートルですか。
  212. 首尾木一

    首尾木政府委員 それは片側百メートルということでございますから、両方で二百メートルでございます。
  213. 木下元二

    木下委員 いまの道路の南側になりますか、海側ですね、海側三千ヘクタールというのは、それはパールロードの沿線の海側、全体のうちの何割くらいになるのでしょうか。おおよそでけっこうです。つまり、全部ではないでしょう。
  214. 首尾木一

    首尾木政府委員 正確な数字についてはただいまお答えが困難でございますが、地図の上で落としてみますと約七割近く、パールロードから海側の地域についての七割近くが特別地域になるという見当でございます。
  215. 木下元二

    木下委員 このことを特にお尋ねいたしますのは、一体なぜ、初めから特別地域というふうに指定をされなかったのか。これはもう、こういうふうにパールロードのようなものをつくって、道路をつくって車がどんどん通るようにしておいて、そして道路の両わきなどを特別地域に指定する、私は順序を間違えておると思うのですよ。こういうふうに大資本のために開発をしてから、そしてそれがし終わってからその周辺を特別地域にする、順序が逆だと思うのです。
  216. 首尾木一

    首尾木政府委員 御案内のように、伊勢志摩国立公園は近畿地方あるいは中京地方の非常に人口稠密なところを背景にいたしておりまして、この地域についてはかなり観光客でございますとかの多い地域でございます。それから公園指定当時にすでにかなりこの地域につきましては、やはり開発といいますか、そういうものがございまして、地域の設定にあたりまして十分特別地域というものが確保されておらなかったということがあるわけでございます。この伊勢志摩国立公園は、先ほど申し上げましたように約八〇%が普通地域ということでございまして、これは他の公園に比べますと、非常に普通地域が多い、特別地域の少ない公園でございまして、このことはいま申しましたような地域にかなりの人口が張りついておるということのいわばうらはらといたしまして、そういう特別地域の設定ということが技術上非常に困難な地域であるということを示しておるわけでございますが、今回、普通地域にしておいて道路をつくるということではございませんで、やはり道路をつくりましてもなおその周辺が、道路をつくりますと当然またそこにいろいろの施設もできてまいる、こういうふうなことでございますから、そういうものに伴う乱開発というものを防ぐためにこの地域を特に特別地域にしたいという考え方で現在進められておるわけでございます。
  217. 木下元二

    木下委員 ですから、私が聞いているのは、そういう、車がどんどん通るパールロードというようなものをつくって、自然がますます破壊されていくわけです。そういうものをつくってからその周辺を特別地域というふうなことにするのでなくて、もともとこれは初めからこういう道路がつくられる前に特別地域に指定すべきではなかったか、こう聞いているんですよ。その点は、これは過去のことでいたしかたないとしても、この道路沿いだけではなくて周辺一帯をもっともっと、いまのお話では人口があってどうのこうのと言われましたけれども、人口があるのは、これは人口があるから特別地域に指定しにくいということでもないと思うのですが、もっと広範囲に特別地域の指定をして国立公園としての保護をはかるべきだと思うのですよ。その点は環境庁としてはどのように考えておられるか。
  218. 首尾木一

    首尾木政府委員 私どもといたしましては、やはり今後残された自然環境保全するという見地から申しますと、できるだけ特別地域というものを広くとってまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  219. 木下元二

    木下委員 次の問題に移りますが、現在このパールロードに沿った地域と、それから奥志摩、それから英虞湾というのがありますが、この英虞湾一帯で、近鉄、名鉄、西武鉄道、こうした大資本による土地の買い占めが大規模に進んでおります。このことは御存じでしょうか。
  220. 首尾木一

    首尾木政府委員 具体的にどの土地をどこが買っておるというようなことについては十分把握をいたしておりませんが、これらの点については、一般的にそのような買い占めといいますか、そういう土地についての買い占めが行なわれているという事実については承知をいたしております。
  221. 木下元二

    木下委員 ここに志摩地域の土地買い占め状況を示しました地図があります。これは県の資料に基づいて三重県の共産党の県委員会がつくったものでございます。こういうふうに色を塗ってありますけれども、この塗られたところが買い占め地域であります。色が違うのは会社が違うということなんですけれども、こんなにたくさん、志摩半島がもう大資本によって食い荒らされておるということを示しております。こんなにひどい状況です。こういう買い占めの状況は、個々のことはよくおわかりにならないようですけれども、おおよそのことはわかっておられる、こういうことであります。そこでもう少しこの問題について伺いたいのでありますが、三重県志摩開発公社というのがあります。これは御存じだと思います。三重県の外郭団体です。これが市有地や民有地をどんどん安値で買いたたいてきたのです。たとえば鳥羽市の市有地は坪当たり二百五十円から三百円の安値で購入されておるということです。これを大資本にどんどん売却しておる。しかも、西武鉄道とか名鉄、近鉄、こういった私鉄三会社は、これ自身が買うのではなくて、それぞれ県や市からおのおの一〇%ずつ融資を受けた新会社をつくりまして、いわゆる第三セクター的な装いをこらしておるが、こういう新会社が、いま申しました三重県の志摩開発公社から土地をどんどん購入してきたわけであります。まさに官民一体となって、これはもう地元紙も報道をいたしておりますけれども、大資本本位の観光開発政策が進められてきた、まさにこれは、地元新聞にも出ておりますけれども、志摩を観光植民地にしようとするほかの何ものでもない。一体、こういう事実について環境庁としては、土地の買い占めとかそういう問題はあまり関係ないんだということで問題にしていないのかどうか、放置しておるのかどうか、伺いたいと思います。
  222. 首尾木一

    首尾木政府委員 土地の乱開発というものを誘発をいたして、結果としてそういうものの誘発につながる土地の買い占めといったようなことにつきましては、これはやはり自然環境保全という見地から申しまして、決して好ましいことではないというふうに考えておりますが、現在のところ、私どもの法律におきまして土地の買い上げ等についてこれを規制するという手段を持っておりません。この点につきましては、私ども政府全体として、ただいまそういう問題に取り組んでおるところでございまして、それを期待したいと考えておるわけでございます。  なお、観光開発の問題でございますが、この点につきましては、私どもやはり自然性の非常に高い地域における野外レクリエーションのあり方といったようなものにつきましては、従来、いままでのような形におけるいわゆる観光開発というものが決して好ましいというものではないと考えておるわけでございまして、これらの点につきましては、具体的な許認可等におきまして、十分そういったようないわば自然を荒らすような形におけるそういう施設の建設といったようなことにつきましては、今後関係法規におきまして十分規制をていきたいというように考えておるわけでございます。
  223. 木下元二

    木下委員 こうした観光開発計画が徹底的に住民無視の形で進められてきましたが、さらに重要なことは、この計画が実現されましたならば、いわゆる観光公害によってごみ、屎尿、排水、排ガス、交通事故、それに風紀の紊乱といったことが予想されるわけであります。それによって漁業とか農業に携わる住民の生活に大きな圧迫が加わる、こういうことになるわけであります。被害が現実に続出をしてからではもうこれはおそいのであります。あと追い行政とならないようにきびしい行政指導を進めるべきだと思います。  そしてまた、この問題とともに、先ほどお答えがあったわけでありますが、土地を買い上げることについては、確かに環境庁としてはこれを規制するという手段はお持ちになっておりません。けれども、たとえば前にいろいろお尋ねをしたんですけれども、普通地域を特別地域に指定がえをする、これは自然を守っていく上でも非常に大事なことでありますけれども、そういうことを意識的に政策として進めていくことができるわけですね。特別地域になれば、そこに工作物をつくったりいろいろ設備をつくるということが禁止をされるわけでありますから、そういうことになりますならば、観光資本もそこへ来たってもうけができないわけだから、来ないわけです。観光資本がどんどん乗り出してくる地域はそのままにしておいて、そして一部だけ特別地域にする、そういうことをやるから観光資本がどんどん来るし、また自然は破壊をされる、こういう結果を招くのだと私は思うのです。だからもっともっと、これは先ほどもお尋ねをしたんですけれども、特別地域にこの国立公園全体を大幅に拡大をしていくということが必要だと思います。この点についての見解を賜わりたいと思います。
  224. 首尾木一

    首尾木政府委員 先ほども申し上げましたとおり、全体の方針といたしまして、できるだけ特別地域を広くとっていくという方向はこれを進めたいと考えておるわけでございます。
  225. 木下元二

    木下委員 環境庁長官、その点は一体どうでしょうか。いま言われましたけれども、その点についてもう少し詳しくお答えをいただきたいと思うのです。
  226. 三木武夫

    三木国務大臣 伊勢志摩国立公園のパールロードについていろいろお話がありました。これは、ま環境庁としても県から報告を受けてないんですが、あの付近は非常に美しい地域でもあるし、自然環境として保護を強化しなければならない地域でありますので、一ぺん環境庁からあそこの地域に派遣をしたいと思っているんです。実情をひとつ見てみる必要がある。そのようにして、やはり自然の何というか、普通地区は民有地が多いでしょう。そこでやはり私権との問題がありますから、やはりそういうところは国有地とか公有地になっておれば一番いいんですが、急にはそういうことはできない。そうなってくると、やはりこちらのほうがそういう県の協力も得て、実際問題としてそういう計画が行なわれておるが、その計画によってどういう影響環境に与えるかということを少し常時把握しておく必要がありますので、この問題はそういうふうにいたしたいと思っております。
  227. 木下元二

    木下委員 環境庁としてもひとつこの問題を積極的に、いま言われましたように、現地にも人を派遣して調査をし、自然保護をより積極的に進めていく、こういうふうにお答えをいただきましたのですが、一つ申したいことは、この観光開発の将来を予想させる顕著な例を一つ申し上げたい。  それは現在英虞湾の北海岸に二百三十ヘクタールにも及ぶ広い地域でありますが、ここに合歓の郷というのがつくられております。合うという字と歓ぶという字を書きまして合歓の郷であります。大レジャー基地であります。これはこの町の面積の約十分の一にも当たります。ゲートがつくられまして、入郷料、入場料金でありますが、入郷料といたしまして一人五百円が取られるという仕組みになっております。日本国内でありながら、もうまるで租借地のような感じであります。住民や一般の国民は多額の金額を払わなければ国立国園の景観に接することもできない、こういう状態環境庁はどうお考えでしょうか。
  228. 首尾木一

    首尾木政府委員 日本楽器が開設をいたしております合歓の郷でございますが、非常に広い地域にわたっておるわけでございます。ただ、この問題につきましては、いわゆる営造物ということでございますので、法律的に申し上げますと、ここについての管理権というのは当然日本楽器のほうで持っておるということでございまして、そういう点で、少なくとも、たとえばそこの中における各種の施設等について入場料を取るということにつきましては、これは他の法律上から申しますと当然だということになるわけでございます。ただ、問題は、そこに道がございまして、この道について、この道を通ってその中に入っていくという者について入場料を取るということの可否につきましては、なお実態をよく調べまして、必要であればこれをやめさせるというようなことにつきまして、日本楽器を指導いたしたいというふうに考えております。
  229. 木下元二

    木下委員 レジャー基地があって、たとえばその基地の中にいろいろな特別の施設がある。その施設を利用するのに、料金を出してその特別の施設を利用するというならわかりますよ。そうでなくて、大レジャー基地、その入り口に入っていくのに、そんな五百円も取られる。中へ入って風光明姉な国立公園の景色をながめる、そのためにお金が要るということなんでしょう。だから問題があるわけなんですよ。もっともここの町民に対しては料金は取っていないようであります。ところが、その町民に対する問題で非常に大きな問題が残っております。というのは、この合歓の郷の中に町道が通っておるわけです。だから、町民はそのゲートを当然通って、町道を通って通行をする、こういうことになる。ところが、住民はゲートのところで一々検問をされる。それは一般の入場者か町民かということを区分けをするということになると思うのですけれども、町民はそういう自分たちの町の町道を通るのにゲートのところで一々検問をされる、こういう問題があるわけなんです。これも私は、こういうやり方は改善すべきだと思います。どうでしょう。
  230. 首尾木一

    首尾木政府委員 私、合歓の郷の実態につきまして、どのような契約の内容になっておるのか、これが、たとえば一つの完全な施設といいますか、私有地であって、そこについて私有地の中でありますれば本来ならば町道というものはないはずでございますから、そのあたりの実態につきまして、十分調べてみませんと、最終的にどうだというふうな御返答を申し上げかねるわけでございますが、かりにそれが町道であるということでございますれば、いま先生のお話しになりましたような事態というのは、これは問題があるというふうに考えます。
  231. 木下元二

    木下委員 問題がある。そこで、その問題については、よく事実を調査して、そういう私が言ったようなことがあれば、改めさせるように行政指導を強める、こういうことですね。
  232. 首尾木一

    首尾木政府委員 よく実態調査いたしまして指導いたしたいと思います。
  233. 木下元二

    木下委員 観光開発を大企業に野放しにさせますと、いまに全志摩が、いや、全日本がこういうような状態になることは明らかだと思うのです。合歓の郷も含めて、私はこういうふうな扱いをやめさせるように指導すべきだと思います。特に、さっきも言われましたけれども、レジャー基地の中に、特別な施設は除外して、ただその中を風景をながめたりあるいはたとえば芝生の上に休息をするというふうなことだけでこういう特別の料金を取るというふうなシステム、これは改めさせるべきだと思うのです。これは国立公園なんですからね。そういう自然の景観とかそういう土地の状態とかそういうものを住民なりあるいは国民が自然に利用するというのは、これは当然の権利でもある。この点についてもよく御検討をいただきたいと思います。  それから次に、この計画の中に広大なる別荘地をつくる計画があるようであります。その規模と位置についてお答えをいただきたい。
  234. 首尾木一

    首尾木政府委員 まだその計画については承知をいたしておりません。
  235. 木下元二

    木下委員 それは、環境庁はいろいろなパンフレットが出ておるのは御承知ないのですか。たとえばここに「パールロード沿線開発計画」という三重県志摩開発公社の発行したりっぱなパンフレットがありますけれども、そこに図面が出ておりまして、「ブロック別開発図」というのがあって、A、B、C、D、Eという五つの地区に分けて計画がつくられております。その中のたとえばA地区を見ると、別荘ゾーンとして幾つも書かれております。こういうものは御存じないのですか。
  236. 首尾木一

    首尾木政府委員 環境庁としましていまだそれを把握をいたしておりません。
  237. 木下元二

    木下委員 環境には関係ないというお考えかもわかりませんけれども、海岸の特に景観のよいところが別荘地になるということなんであります。別荘を持てるような一部の金持ちにとってはこの上なくよいことでありますけれども、付近の住民や一般の国民にとりましては、せっかくの休日などを利用して、日ごろの労働の疲れをいやすために美しい自然を求めて志摩にやってきましても、どこもここも別荘地だというのではお話になりません。このようなものをつくらずに、低料金の国民宿舎あるいは国民休暇村、こういったものをつくるほうがほんとうに国民のためにもなると思いますし、またそれは自然環境保全にも役立つと思うわけであります。この点は環境庁長官はいかがお考えでしょうか。
  238. 三木武夫

    三木国務大臣 開発する場合に、別荘地というのも実際問題としてそういう計画もあり得ると思うので、一切別荘を建ててはいかぬのだということも現実的ではないと私は思いますが、できるだけそういう美しい景観の場所は、国民の多数がその美しい景観に接しられるようないろいろな施設をすることが、一般的な問題としては私は好ましいと思います。
  239. 木下元二

    木下委員 現在、いま地図をお見せしましたように、たとえばブロック別開発図のうちのA地区、これは石鏡、本浦という地名の地区でありますが、たくさん別荘がつくられるということなのです。どの程度進行しておるか、私も実はまだ調査をいたしておりませんけれども、こうした面につきましても、それは別荘が一切あってはいけないというようなことは私は言っていないのです。風光明媚な国立公園のいいところがみんな別荘だというのでは困ると思うので、こうした点についても、環境庁としてもひとつよくお考えいただきたい、こういうふうに思います。  それから次に、ゴルフ場の建設でありますが、三重県のこの資料によりますと、この伊勢志摩地域計画中あるいは買収中などを含めまして、八カ所、八百七十八ヘクタールのゴルフ場がつくられるという計画があります。これはどの地域建設をされるのか御承知でしょうか。
  240. 首尾木一

    首尾木政府委員 八カ所全部につきまして、それが具体的にどの地域にやられるかということについては、まだ承知をいたしておりません。私どもは、現在ゴルフ場の建設につきましては、特別地域内については、ゴルフ場を公園施設として認可をすることをしない、それから許可につきましても、一般的な方針として、当分そのようなものは認めないというような方針で来ておるわけでございます。それらが許可の対象になる事項でございますれば、そういうものにつきましては、そういう点で当然きびしくこれを規制していくというような考え方でおるわけでございます。
  241. 木下元二

    木下委員 ゴルフ場の建設というのは、広大な地域にわたって森林を代採したりあるいは自然を破壊したり、美しい景観をこわすことになります。国立公園内にゴルフ場をこんなにどんどんつくるということは許されないと思うのです。現在どの程度進行しておるのか。現にゴルフ場建設が進んでおるというところもあるかもわかりませんが、少なくとも今後はつくらせないように、また現に計画中のものも含めて、これはもうつくらせないようにすべきだと私は思います。環境庁長官いかがでしょう。
  242. 三木武夫

    三木国務大臣 委員会質問があって、国立公園の特別地域にゴルフ場は認めませんと私は答えたわけです。しかし、自然公園は府県がみな管理しておるわけです。そして、それは私有地が一ぱいあるわけですから、そういう点でそれまでもゴルフ場は一切つくっちゃいかぬということを申すことは適当でないと思います。  私はゴルフをやらないのですよ。日本各地にずいぶんゴルフ場というものが建設されるが、もう少しパブリックで安く——外国などへ行っても、オーストラリアなんかに行ったら、一日百五十円くらいで遊べるのです。そういうことになれば木下さんも、非常にまたゴルフ場に対しての考え方も違ってこられるかもしれませんが、いまはどうも一般の庶民のスポーツというところと距離がありますからね  そういうことで、公園という自然の環境に恵まれたところを、どこもかしこもゴルフ場として利用するということは適当だと思いませんが、しかし、日本の現状から、未来一切ゴルフ場をつくってはいかぬということも、これはやはり現実的でないと思いますから、それは、ゴルフ場をつくる計画などを知って、そのことの環境に対する影響等も考えて指導をするということが、一番適当な措置だろうと考えております。
  243. 木下元二

    木下委員 まだほかにいろいろ国立公園の問題でお尋ねをしたいことがあるわけでありますが、もうあまり時間がありません。とにかくこうした観光開発計画というものが、住民不在、国民無視、大資本のもうけ本位の開発計画として進行してきておるということは明らかであります。こうした点について環境庁としてもいろいろと言われましたが、国民本位の、そしてまた自然環境を守っていくという立場で行政指導を強くお願いをいたしたいと要請する次第であります。  次の質問に移りますが、三河湾国定公園であります。実は、この三河湾の国定公園の一部指定解除の問題が起こっております。ことしの二月十七日に、愛知県は三河湾国定公園の一部指定の解除申請を環境庁に対して行なったということを聞いておるのです。その点はどうでしょうか、事実ですか。
  244. 首尾木一

    首尾木政府委員 国定公園につきましては、これは法律上県の申し出を待って行なうということになっておるわけでございますが、そのような申し出はいまだ参っておりません。
  245. 木下元二

    木下委員 そのことが問題になっておることはあるのでしょうか。これは新聞にも出ておるのです。新聞によると、県が解除の申請をするというふうに出ておるのですけれども、申請は現実にいまはないとしても、行政指導を求めてきておるとか、あるいは話し合いがあるとか、そういうことはあるわけですか。
  246. 首尾木一

    首尾木政府委員 国定公園の地域の範囲あるいはその計画等につきましては、県の申し出によって国が検討するということになっておるわけでございますが、先ほども申し上げましたように、いまだ申し出は行なわれておりません。ただ、県においてこの国定公園について計画あるいは地域について、県の中においてそういったような再検計をやっておるということは伺っております。
  247. 木下元二

    木下委員 二月十八日付の読売新聞の記事に上りますと、県が指定解除することをきめて、県立自然公園審議会にはかった、審議会では利用計画があいまいであるということで、継続審議にした、こういうふうに書かれているのです。そうすると、まだ申請はないというふうに……。
  248. 首尾木一

    首尾木政府委員 いまだこちらに対する申請はございません。
  249. 木下元二

    木下委員 この地域は、実は三十九年に制定をされました工業整備特別地域整備促進法、これに基づいて指定をされた地域であります。豊橋を中心として、埋め立てがどんどん行なわれてきたところであります。今度、この解除申請が出ていないのですけれども、出るという話のある地域というのは田原地区と申しますが、その田原地区には美しい砂州で有名な大洲崎というところが含まれております。また、蒲郡市の大塚地区も自然環境の特にすぐれている地域であります。これらの解除申請が問題になっておる地域というのは、特別地域なのか普通地域なのか、どうでしょう。
  250. 首尾木一

    首尾木政府委員 ただいま先生の御指摘のありました大洲崎につきましては、県で公園の拡張地域として考えたいと言っているところのように聞いております。
  251. 木下元二

    木下委員 その問題になっている地域一帯ですね、特別地域か普通地域かということを聞いているのです。
  252. 首尾木一

    首尾木政府委員 私どもがただいま把握をいたしておりますのは、県において面積として拡張する地域、それから削除する地域というものの広さをどの程度のものとして考えておるかというような動向、その検討されていることについて、それの概括的な点について、そういう県からの答えを得ておるわけでございますが、具体的に先ほど申し上げましたように、申請書も出ておりませんし、どの地域をどのようにしようとする動きであるのか、その点については私ども現在のところまだ十分に把握をいたしておりません。
  253. 木下元二

    木下委員 解除申請というのはないわけですから、そのことは別問題として伺っているのですが、大洲崎とか蒲郡とか、この地域一体、ここは国定公園になっておるわけでしょう。だからここの地域というのは特別地域あるいは特別地域と普通地域と両方含まれておると思うのですが、どういうことになっておるかと聞いているのです。
  254. 首尾木一

    首尾木政府委員 蒲郡市それから田原町等が問題になっておるわけでございますが、これは市街地を除きましては特別地域ということになっております。
  255. 木下元二

    木下委員 特別地域ということになっていて、これはさっきも私指摘をいたしましたけれども、どんどん開発埋め立てが行なわれてきた。特別地域であるのに埋め立てを許可してきたわけですか。
  256. 首尾木一

    首尾木政府委員 埋め立て地域は海面でございますので、これは普通地域でございます。
  257. 木下元二

    木下委員 特別地域になっているところの海岸一帯がですね、そこの特別地域になっている海岸に接触する形で海面をずっと埋め立てをする、こういうことをやられているのでしょう。そういうことになりますと、これは特別地域に指定しておる地域が台なしになってしまうと思うのですよ。海面はなるほど普通地域かもしらぬけれども、特別地域に接した海面をどんどん埋め立てて工場をつくっていくというようなことになると、特別地域は台なしですよ。こういうことをやられたのですか。
  258. 首尾木一

    首尾木政府委員 埋め立てにつきまして、許可行為ということでございますので、その特別地域にそれがかかる部面につきましては、それは当然許可の対象になるわけでございますので、過去におきましてそういったような問題につきまして許可が行なわれているということは事実でございます。ただ問題は、これは当然許可でございますので、一切を許可しないというのではございませんで、そういう特別地域内においては、自然の破壊ということを十分考えました上で、その許可を行なうというのがたてまえでございます。この事例につきまして、それがはたしてよかったのかどうかといったような問題につきましては、それは具体的に過去の事例につきまして反省をしなければならない点があろうかと思いますが、具体的なこの三河湾国定公園の埋め立ての問題でございますが、これにつきましては都道府県知事の権限ということでございまして、都道府県知事がそのような許可を行なって埋め立てをやられたという事実は、そのとおりであろうと考えております。
  259. 木下元二

    木下委員 一般的には禁止をしておって、特別の場合に解除をするのが許可である、そういう許可制度をしいているのは、その国立公園あるいは国定公園の自然を守るためにそういう許可制にしておるわけでしょう。だからたてまえは、そういう自然を守るために、あくまでも禁止なんですよ。それで、特別の場合に解除をする。それはいまあなたも指摘をされましたように、その美しい自然を破壊しないというたてまえでもって解除をしていく、許可をするわけですね。だから、たとえば民家ができるとかあるいは別荘をつくるとか、そういうことなら許可はできるかもわかりませんけれども、工場をつくるのでしょう、どんどん工場をつくるために埋め立てをする。そうしたらもうたいへんなことになるということは明らかですね。なぜ一体そういうのを許可するのですか。これは県の管轄になるかもわかりませんけれどもね、ちょっとひどいと思うのですよ。もうこれでは、国立公園や国定公園または特別地域というものをつくった意味がないじゃないですか、そんなところにどんどん工場をつくっていくために埋め立てをやる、許可をするというのでは。
  260. 首尾木一

    首尾木政府委員 御指摘のように自然公園でございますから、そこが工業地帯に近いものになってくるということは、自然公園の概念と反するわけでございまして、したがいまして、そのような形の大きな開発というものにつきましては、これは自然公園である限り認められないというのが原則であろうというふうに考えております。ただ、わが国の国立公園あるいは国定公園その他都道府県立公園は、これはいわゆる地域性の公園でございまして、その地域というものは必ずしも公園専用の地域でないという点が、わが国の国立公園制度、自然公園制度の、いわばこれを十分に理想的な形で守っていくことにおいて、弱い点であろうというふうに考えておるわけでございまして、その点につきましては、私ども従来の行政運営の中において、そういったような点で弱いといいますか、そういったような点で他の目的というものとの調和ということについて、調整ということについて、いわば自然公園を守るという面からの主張というものが非常に弱かったという点はあろうかと考えておるわけでございます。そういう点において、今後の問題としまして、私どもは自然公園行政の運営においてやはり、これは本質的に地域性の公園でございますから、一切他の目的に使えないという主張もできませんけれども、自然公園を守るという立場から、さらに今後こういう問題については自然公園を守るという立場からの主張というものをより強くしていくという方向で、この地域性公園のこの制度の中において自然公園というものを守っていきたい、こういうのが私どもの考え方でございます。  しかし、理想的に申しますと、いわゆる営造物公園と申しますか、自然公園の専用の地域というものを持っていきたい、そういうものでございますれば、他の目的のためにその土地を使用するということは、これはもう簡単に排除できるわけでございますから、そういうものに持っていくことが理想でございます。しかしわが国全体の土地の情勢から申しますと、そのようなぜいたくな形の広大な地域というものの確保は非常にむずかしいわけでございますので、今後そういう特に重要な点については、たとえば土地の買い上げを促進するとか、そういうふうな方向によりまして公園の中にもいわゆる営造物公園に近い形のものをこれからつくっていくのが一方において必要だというふうに考えておるわけでございます。
  261. 木下元二

    木下委員 自然公園を守るという立場がこれまで弱かったと言われました。確かにそのとおりだと思います。この点についての深刻な反省なしに、ただ単に法律を幾らかいじって事済むという問題ではないと思います。  そこで、もう時間が来ましたけれども、最後にこの法案の問題点に触れて幾らかの質問をしたいと思います。全国の国立公園、国定公園、これは数は幾つありますか。
  262. 首尾木一

    首尾木政府委員 国立公園が二十六、国定公園が四十八でございます。
  263. 木下元二

    木下委員 いま言われた国立公園、国定公園で、埋め立てが行なわれた地域は幾らありますか、いまの三河湾のように。
  264. 首尾木一

    首尾木政府委員 国立公園はかなり以前から指定をされておるものでございまして、その中におきまして埋め立て公園とかいろいろなケースについての許可が行なわれてきておるわけでございますが、その累積をしました数字というものをただいま手元に持っておりませんので……。
  265. 木下元二

    木下委員 自然公園法の十七条、特別地域の場合の許可ですね、これに基づく許可件数というのは幾つありますか。
  266. 首尾木一

    首尾木政府委員 国立公園の中の許可件数でございますが、四十七年度におきまして総数で七百二十四件でございます。環境庁長官の許可をいたしましたものでございます。
  267. 木下元二

    木下委員 申請件数は幾つでしょう。
  268. 首尾木一

    首尾木政府委員 ただいまのは許可をいたしました件数でございますが、このほかに四十七年度において不許可にいたしましたものが七件でございます。それから申請をいたしましたが、これに対して指導の結果取り上げたというようなものがかなりございます。それからなお、申請以前において指導によってその申請にまで至らないでこれを取り下げるといったようなケースもございます。
  269. 木下元二

    木下委員 許可になったのが七百二十四件で不許可が七件ということ、一%ですね。非常に少ないですね。  それからさらに聞きますが、二十条、これは普通地域について一定の行為について届け出を要するという制度になっておりますね。この二十条の一項はそういうことになっておりまして、二項によりまして、特に必要があるという場合にその行為を禁止、制限あるいは必要な措置をとるべきことを命ずることができるというたてまえになっておる。この二十条二項の禁止、制限もしくは必要な措置、そうしたものをとられたケースというのが、これまで国立公園についてあるでしょうか。
  270. 首尾木一

    首尾木政府委員 二十条の二項の措置につきましては、これは現実の形で、命令という形で行なわれましたものはほとんどないというのが実情でございます。
  271. 木下元二

    木下委員 いや、ほとんどと言うが、あるかないか聞いているのです。幾らかあるように言っておりますが、ないのじゃありませんか。
  272. 首尾木一

    首尾木政府委員 これは私どものほうで具体的に把握しておりますものはございませんが、これにつきましては都道府県においてこのような命令を出しておるというものは、これは過去において……
  273. 木下元二

    木下委員 都道府県の国定公園は聞いてないですよ。国立公園について聞いている。
  274. 首尾木一

    首尾木政府委員 国立公園につきましても届け出の事項は都道府県知事ということになっておりますので、都道府県においてこの命令を出す、あるいは環境庁長官もこれについて出せるようになっておりますが、環境庁としましてこれをやりましたものは、先生の御指摘のようにございません。
  275. 木下元二

    木下委員 結局二十条二項の禁止、制限、必要な措置というものをとられたケースというのはないということなんですね。今度の法改正というものは届け出事項の幾らかの追加であります。一体こういうことで自然や風景の保護というものがほんとうにはかれるのかどうか、私は非常に疑問に思うわけであります。大事なことは、この二十条二項の活用ということをこれまでどうしてもっともっと積極的にやらなかったのか。これはどんどんやるべきですよ。法のたてまえだけは禁止、制限あるいは必要な措置をとることができるということになっておっても、これは全く使われずに眠っておる。こういうことだからこそ環境がどんどんよごされていくのです。  それから、もう時間がありませんので、もう一つ聞きますが、埋め立てあるいは干拓行為、これを海面以外の水面も禁止し、届け出事項にするということでありますが、この趣旨が、私もう一つわかりにくいのですけれども、海は現在よごれ切っておりますね。きれいなところも幾らか残っておりますが、海はたいへんよごれておる、瀬戸内海を見てもわかるように。湖やあるいは川をよごさないようにするために、海と同じように扱うのだという、そういうふうな感じがするのですけれども、その海そのものがよごれておるのに、海面と同じように扱ったって、これはナンセンスじゃないかという気がするのですよ。そうでしょう。その点どうですか。
  276. 首尾木一

    首尾木政府委員 御質問の趣旨を取り違えておるかもしれないのでございますが、このたび内水面につきましてこれを届け出事項の対象にいたしましたのは、たとえば霞ケ浦とかそういったような湖水等につきましての埋め立てが考えられますので、そういったような点について特に従来はそれが届け出事項の対象になっておりませんので、これを届け出の対象として把握し、これを十分に指導していきたい、こういうふうに考えたわけでございます。
  277. 木下元二

    木下委員 もう時間がありませんので、これで終わります。  最後に環境庁長官にお尋ねしますが、国立公園あるいは国定公園がこのようにどんどんよごされていく、美しい自然が破壊をされていく、これはまさに大資本優先の政治の姿そのものだと私は思います。このことについての根本からの反省が私は何よりも必要であるというふうに思います。特にこれは環境庁がき然とした姿勢を堅持して、自然と環境を守り抜くという、そういう立場、姿勢というものが求められておると思います。幾ら法律を改正したって、これでは、私はこれまでのような態度では実効はあがらないと思います。この点について環境庁長官決意を承りたいと思います。
  278. 三木武夫

    三木国務大臣 どうしても自然というものはいろいろな観光開発に比べてものを言わぬですからね。これはやはり環境庁が強力に自然の保全ということに対しては強い態度をとることが必要であると思います。しかし、このごろは国民の間にも自然環境を守ろうという意識の非常な変化もありますから、やはりささえられるものは、国民全体がよい環境を守ろうという国民の意識、それでないと法律といってもなかなかやはり法律よりも先回って知恵を使う者もおりますから、やはり一番大事なささえるものは、いま言ったような、将来子孫のためにもよい環境は残そうではないかという、そういう国民的な意識だと思いますね。法律ではない。しかし、一方においていま言ったような何か安直なコマーシャリズム、これがやはり乱開発いたしますから、そういう点では環境庁がやはりチェックする責任があると思います。
  279. 木下元二

    木下委員 終わります。
  280. 佐野憲治

    佐野委員長 次回は、来たる十九日火曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時十三分散会