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1973-06-12 第71回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月十二日(火曜日)     午前十時五十九分開議  出席委員    委員長 佐野 憲治君    理事 菅波  茂君 理事 登坂重次郎君    理事 林  義郎君 理事 小林 信一君    理事 島本 虎三君 理事 中島 武敏君       小澤 太郎君    田中  覚君       羽田野忠文君    村田敬次郎君       阿部未喜男君    木下 元二君       岡本 富夫君    坂口  力君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 山中 貞則君  出席政府委員         北海道開発庁総         務監理官    山田 嘉治君         防衛庁参事官  長坂  強君         防衛施設庁長官 高松 敬治君         環境庁企画調整         局長      船後 正道君         環境庁自然保護         局長      首尾木 一君         環境庁大気保全         局長      山形 操六君         環境庁水質保全         局長      岡安  誠君         厚生省環境衛生         局長      浦田 純一君         林野庁長官   福田 省一君         水産庁次長   安福 数夫君         通商産業省企業         局参事官    三枝 英夫君         通商産業省公害         保安局長    青木 慎三君         通商産業省化学         工業局長    齋藤 太一君         自治政務次官  武藤 嘉文君 委員外出席者         通商産業省公害         保安局公害防止         指導課長    松村 克之君         通商産業省繊維         雑貨局原料紡績         課長      堺   司君         自治省行政局行         政課長     砂子田 隆君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ――――――――――――― 六月七日  環境保全基本法案岡本富夫君外一名提出、衆  法第四五号) 同月六日  日光国立公園尾瀬地区自然保護に関する請願  外二件(山口鶴男君紹介)(第六三六七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  委員派遣承認申請に関する件  自然公園法及び自然環境保全法の一部を改正す  る法律案内閣提出第一二一号)  公害対策並びに環境保全に関する件(水質汚濁  対策等)      ――――◇―――――
  2. 佐野憲治

    佐野委員長 これより会議を開きます。  委員派遣承認申請に関する件についておはかりいたします。  水俣病問題の実情調査のため、議長に対し委員派遣承認を申請いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐野憲治

    佐野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、派遣委員の人選、日時、派遣地等につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 佐野憲治

    佐野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。      ――――◇―――――
  5. 佐野憲治

    佐野委員長 内閣提出自然公園法及び自然環境保全法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。田中覚君。
  6. 田中覚

    田中(覚)委員 私は、自然公園法及び自然環境保全法の一部を改正する法律案につきまして、若干の質疑をいたしたいと存じます。   〔委員長退席小林(信)委員長代理着席〕  まず、質疑を申し上げる前に申し上げたいと思いますことは、今回のこの二つ法律の一部改正案は、最近各種開発行為全国的に取り返しのつかない自然破壊の弊害をもたらしつつある現状から見まして、きわめて緊要な措置でありまして、したがって、基本的には賛意を表するものでありますが、むしろ率直に申し上げますならば、この改正措置がおそきに失したというふうな感じを抱いておるものであります。と申しますことは、全国的に最近の開発による自然破壊の進展に伴いまして、各府県におきましては、すでに県独自の条例をもちまして、名称はいろいろありますけれども自然環境保全条例といったような条例制定いたしまして、この条例に基づいてすでに各種規制を加えておりまして、中には相当どぎつい規制をしておる場合もあるのであります。しかしながら、何といいましても根拠法規がないために、単なる条例だけでは、私権の制限にわたるような規制については法律上疑義があるというようなこともございまして、結局単なる行政指導に終わっておるというような面もございますし、また中には、どぎつい規制をいたしましたことについて、裁判ざたになっているというような県もあるわけでございます。したがって、各府県においては、すみやかにこのような根拠法制定を強く希望いたしておったのでありますが、ようやく昨年になりまして自然環境保全法制定となり、今回また自然公園法及び自然環境保全法の一部改正案提案をされるという運びになったわけでありまして、時期的にはおそきに失した、後手対策色彩がきわめて強いのでありますが、しかしなきにまさるのでありまして、そういう意味におきましては、一つの大きな前進である、かように評価をいたしまして、基本的には賛意を表しておるものであります。  次に、せっかくこの改正案提案をされておりますけれども、この改正案によって一体どれだけの実効をおさめ得るかという観点から若干の質疑をいたしたいと思います。  御承知のとおり、自然公園法及び自然環境保全法の一部改正がかりに厳正忠実に施行せられたといたしまして、はたしていま全国的に大きな問題になっておる自然の保全あるいは自然環境保護、こういったものがどれだけ一体実効があげられるか、まず面積的な面からお尋ねをいたしたいのであります。  そういう観点から、自然公園法対象になる公園面積は、先般提出されました昭和四十七年度公害状況に関する年次報告によりますと、昭和四十八年三月末現在における国立公園面積は百九十九万一千ヘクタール、国定公園が九十九万九千ヘクタール、都道府県立自然公園が百九十九万ヘクタール、大ざっぱに申しまして、国立公園が二百万ヘクタール、国定公園が百万ヘクタール、都道府県立自然公園が二百万ヘクタール、こういうことでございますので、合計いたしまして、自然公園法対象になる公園面積は約五百万ヘクタール、こういうふうに見てよいのでありますが、わが国国土面積が三千七百七十万ヘクタールでございますので、したがいまして、この自然公園法適用を受ける対象面積は、比率にいたしますとわずかに一三・五%程度に相なるわけであります。つまり、これだけの二つ法律を一部改正いたしまして、その対象になる面積というものは全国土面積の一割三分余にすぎないということであり、ことにそのうちの問題になる普通地域届け出制対象になっております普通地域から申しますと、さらにまた面積は少なくなるわけであります。  一方また、自然環境保全法によりまして指定を受ける普通地域というものは一体どの程度面積になるかという問題でございますが、この点につきましては、残念ながらまだ指定になっておらない、そういうことでございますので、この点につきましてお伺いをいたしたいのでありますが、自然環境保全地域のうちの普通地域というものは一体どういう地域指定をされるのか、さらにその指定一体いつごろ完了する見込みであるのか、さらには最終的に、この自然環境保全法による普通地域面積というものはどれくらいになる見込みであるのか。先ほど申し上げましたように、この二つ法律改正適用一体どの程度面積に及ぶかということを判断する前提といたしまして、まずお伺いをいたしたいのであります。
  7. 首尾木一

    首尾木政府委員 今回の改正によりまして及ぶ地域、これは普通地域対象にするところでございますが、国立公園普通地域等につきましては、先生のほうからすでにお話がございましたので、その点は省略をいたしますが、新たに自然環境保全地域指定するところはどういうところかということでございます。この点につきましては、現在の自然環境保全法におきまして自然環境保全地域普通地域と申しますのは、自然環境保全地域が、たとえば亜高山性植物の残されておるところでございますとか、あるいはまた原生的な森林でありますとか、動植物が特に豊富な場所でありますとか、そういったようなすぐれたといいますか、良好な自然環境地域というものを指定をいたすわけでございますが、これの核となる部分というものを特別地域ということで指定をしたい。したがいまして、こういった核となる部分を守るようなところで、その特別地域一体となっておりますところを普通地域とされるということでございます。この普通地域について最終的にどれくらいの大きさになるかということでございますが、これにつきましては私どもこの四月十二日に法律改正になりまして審議会も発足いたしましたので、早急に自然環境保全法に基づきまして自然環境保全基本方針というものをつくりたい。法律によりますと、その自然環境保全基本方針に基づきまして地域指定するということでございます。で、私どもこの地域指定を急いでやりたいと考えておりまして、各それぞれの候補地につきましては現在各都道府県の協力も得ましてその候補地について目下検討をいたしておる段階でございます。今後この自然環境保全基本方針につきましては、この夏じゅうにこれを確定をいたしまして、秋以降に指定の業務というものが開始される予定になっております。もちろんこの自然環境保全地域指定はこれは早急にそれを広げてまいりたいと考えておりますが、この指定につきましては、それぞれ各地方において公聴会等を開催する、さらに関係諸官庁との協議等の手続もございますし、またそれらの地域を守るための保全計画策定ということを地域指定と同時に行なっていかなければならないわけでございますので、本年度一ぱいに全部の地域指定が完了するというものではないと考えております。  で、私どもは今後国立公園なり、あるいは国定公園、そういった自然公園地域も含めまして自然環境保全地域というものについてはできるだけこれを広くつくっていこう、広くとっていきたいという考え方でありまして、その残されたわが国自然環境保全地域というものをいわば漏れなく拾っていきたいというような考え方であるわけでございます。その前提といたしまして、本年度自然環境保全法が施行されるに伴いましてこの法律による全国の自然の環境の一斉調査というものを行なうことで現在その準備を進めておるわけでございます。この調査はこの夏に行なわれまして今年度一ぱいには集計、解析をいたし、いわばわが国における残された自然環境の地帯というものを全国的な地図の上に落とせるというようなところまで今年度の調査を完了させたいというふうに考えておりますので、その調査ができますれば全体としてのもう少し広さといいますか、そういうものについてどの程度を目途にすべきかということが具体的な数字となってあらわれてこようかというふうに考えておりますが、目下のところ国土の何%までというはっきりしたところまで現在数字を持っておるものではございません。私どもは、繰り返して申しますが、現在の国立公園等自然公園地域全国でまだ御指摘のように一三・六%という程度でございますから、この地域を広げていきたいという考え方でございまして、そうなりますとそれの中の普通地域というのは当然現在よりも広くなっていくというふうに考えておるわけでございます。
  8. 田中覚

    田中(覚)委員 自然環境保全法制定それ自体がすでに冒頭に申し上げましたように後手になってきておる。せっかく法律制定されて施行されておるにもかかわらず、まだ基本方針策定ができておらぬ、また具体的な調査もこれからである、今秋には一部地域指定になるかもしらぬが年度内に全地域指定を終わることはできぬというような進行状況であることはまことに遺憾であります。一日も早くこれを促進をされまして、せっかく制定されたこの自然環境保全法が実際に機能し得るような状態に持っていくことがきわめて緊要ではないか、かように思いますので、その点につきましてはひとつ格別の努力を強く希望いたしたいと思います。  同時になお、もうちょっと掘り下げて伺いたいのは、この自然環境保全法による普通地域指定、この面積一体どの程度見当になるのか、およその見当があると思います。私の見るところでは、もともとこの地域指定の基本的な条件高山性植生であるとか亜高山性植生が相当部分を占めておる森林あるいはすぐれた天然林が相当部分を占めておる森林等のすぐれた自然の区域を中核にいたしまして、それらと一体になって自然環境を形成しておる地域普通地域として指定をしようということでございますから、おのずから面積的には相当の制約があるのではないか、この自然環境保全法指定地域というものはそれほど大きな面積にならぬのではないか、こういうふうに見当をつけておるのでありますが、まだ基本方針も立っておらぬ、調査も具体的にやっておらぬ、そういう状態のもとに具体的に面積がどれくらいになるのかわからぬといえばそれまででございますが、環境庁御当局として一体どのくらいの見通しを持っておられるのか、この法律効果を判定する前提といたしまして、お見通しがあればお聞かせいただきたいと思います。
  9. 首尾木一

    首尾木政府委員 自然環境保全法に基づきまして新たに指定をいたします地域には原生自然環境保全地域、それから環境庁長官指定をいたします自然環境保全地域、それから都道府県において指定をいたします都道府県自然環境保全地域、この三つの種類のものがあるわけでございます。  この中におきまして原生自然環境保全地域というのは、これはかなり限られた地域になると考えておりますが、自然環境保全地域のほうはそこに要件というものを書いてありますが、それについては、「自然的社会的諸条件からみてその区域における自然環境保全することが特に必要なものを自然環境保全地域として指定することができる。」というふうになっておりまして、その要件に該当をいたしまして、その要件のとり方というものにつきましては、かなり幅のあるものかと考えておるわけでございます。私どもはこういうような点につきまして、この法律をできるだけ弾力的に運用をいたしまして、なるべく広い地域につきましてこういう指定をやっていきたい、合意を得られるものにつきまして指定をやっていきたいというように考えておるわけでございまして、先生、この範囲がどのくらいかという御質問でございますけれども、ただいまのところこの自然環境保全地域がどれくらいになるかということにつきましては、これも今後のこの法律運用によりましてかなり幅が出てくるのではないかというふうに考えております。まあ全体といたしまして、これは私ども法案成立段階におきまして、検討段階におきまして、全部の自然公園地域あるいは自然環境保全地域、これらを合わせましてわが国における自然環境保全地域というものを現在の自然公園の倍ぐらいには持っていきたいというようなことを一つの目標として検討をいたしておりますが、これはあくまでそういう全体の客観的なものでございまして、現在のところ自然環境保全地域というものをさらにそれよりもたくさんとれれば私どもはそれよりも多くとっていきたいというような考え方であるわけでございます。
  10. 田中覚

    田中(覚)委員 現在の自然公園面積の倍ぐらいには指定をしたいというお話でございますが、自然公園面積にははるかに及ばないのではないか、私はむしろこういう推定をいたしております。先ほど申し上げましたように、この自然公園法対象になる公園面積が五百万ヘクタール・そのうち届け出対象になっておる普通地域というのはその半分にも満たないわけです、二百四十万ヘクタール未満でございますから。これに、いまお答えがありましたように、かりに自然環境保全法による地域指定普通地域面積がよほど大幅に指定されたとしても、この二つ法律でカバーできる面積は、国土面積の全体に比べますと非常にわずかな面積になってしまうのではないか。したがって、せっかくこの法律を一部改正いたしまして、開発規制を強化しようと企図せられましても、面積的に見てその効果の及ぶところは、かりに忠実厳正にこれが実行されたとしても、大きな限度があると私は見ておるのであります。それに引きかえまして、この国会に森林法の一部改正案提出をされておりますけれども、この森林法の一部改正による開発許可対象になる面積のほうがはるかに大きいのではないかというふうに私は見ておるのであります。  林野庁長官来ていただいておりますか。――つきましては林野庁長官にお伺いをいたしますが、今度の森林法の一部改正によりまして、開発許可対象になる林野の面積というものは大体どれぐらいに見当をつけておられますか。
  11. 福田省一

    福田政府委員 お答えいたします。  日本国土三千七百万ヘクタールの中で、国有林民有林合わせまして森林面積が約二千五百万町歩ございます。その二千五百万町歩のうち国有林は約八百万町歩でございまして、残りの千七百万町歩というのは民有林となっているわけでございます。今回、森林法におきまして、乱開発防止という意味におきまして許可制を設けることにしたわけでございますが、ただいま申し上げました千七百万ヘクタールのうち保安林であるとかあるいはその他の制約を持っております森林を除きますというと、その面積が――制約がありますのが約七百万ヘクタールでございますので、普通地域、いわゆる白地と申しますのはおよそ一千万ヘクタールになるわけでございます。その部分に対しまして許可制度を設けてまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  12. 田中覚

    田中(覚)委員 ただいまお答えいただきましたように、約一千万ヘクタールが新しい森林法の一部改正による開発許可対象面積になるということでございますので、自然の保護あるいは自然環境保全効果的に行なわれるかどうかということは、この森林法の一部改正運用いかんにかかるところが面積的にははるかに大きいのではないか、かように考えられるのであります。ところが、この森林法の一部改正案によりますと、許可制にはなっておりますけれども、しかしながら、土砂流出あるいは崩壊その他の災害の発生のおそれのないこと、あるいは水源確保に著しい支障を及ぼさない等の条件が充足されておる場合にはその開発許可しなければならない、こういう規定改正案はなっております。この規定条文から申しますと、むしろどちらかと言えば、自然の保護という問題もございますが、私権保護という色彩のほうが森林法改正案には強いのじゃないか、許可しなければならぬわけですから。そういう点から見て、この一千万ヘクタールの対象面積というものは、この森林法の一部改正によりまして、逆に開発が相当進むのじゃないかというふうな見方もできるかと思うのでありますが、この点につきまして環境庁長官三木副総理は一体どのようにお考えでございますか。全体の自然の保護自然環境保全という観点から見て、森林法の一部改正のこの内容というものは十分御承知と思いますが、これらの運用につきまして、環境庁として将来どういうチェック一体していけるのか、そういった関連の条文がどうも改正案には見当たらないようでありますけれども、どのようにお考えでありましょうか。
  13. 首尾木一

    首尾木政府委員 先生のおっしゃいました森林法の一部改正でございますが、これにつきましては、確かに仰せのように、水源確保に著しい支障を及ぼさないあるいは土砂流出または崩壊その他災害のおそれがないという場合には許可しなければならないというようなことになっておるわけでございます。この森林法は、当然でございますけれども、そういう森林に対する一般的な規制でございます。私どもやはりこの森林というものが広い意味における自然環境保全という意味において非常に大きな役割りを持っておると考えておるわけでございますが、自然環境保全法はそのような森林その他の地域も含むわけでございますが、森林につきましても、特に原生林的なものでありますとかあるいは人工の林でありましても特に樹齢の高いような地域でございますとか、生態系的に見まして人手が加わっておるというところが比較的少ない、こういう自然の地域というものを保全をするということでありまして、自然環境保全法規制目的森林法規制目的というものにはおのずから差があると考えておるわけでございます。森林につきましては、土石または樹根の採掘、開墾その他の土地形質変更につきまして――これは先ほど林野庁長官からお話がございましたように、すでにそういったようなものも保安林につきましては、これについて許可になっておるわけでございますが、このたび新たにそういったような森林の乱伐あるいは土地形質変更によりまして、森林森林でなくなるということによって生ずる災害の著しいおそれとかそういうことを防止するために、かなりこの森林法許可制については広い意味における自然環境保全という意味におきまして規制が強化されたものと考えておるわけでございます。  先ほど申し上げましたように、自然環境保全法は、そういったようなところの自然の度合いというものが高いところについては、森林法に加えまして、さらにこの地域をそういう地域として指定をしまして守っていく。そしてまた林業が行なわれております一般的な地域については、やはり森林法一般規定によって、今回の改正というものは自然環境保全に役立つような改正であるというふうに考えておるわけでございます。
  14. 田中覚

    田中(覚)委員 お話しのとおり、法律によりましてそれぞれねらうところが違うわけでありますから、抽象的なお答えをいただけばそういうことになろうかと思いますが、実は私が心配いたしておりますのは、率直に申しまして、いまゴルフ場だとかあるいは宅地造成だとかそういう開発が行なわれておるのは、もちろん自然公園区域内においてもありますけれども、量的に一番大きいのは、やはり森林法の一部改正になる対象地域じゃないか、こう見ておるわけです。ですから、これについて、いま森林法の一部改正考えておられるようなやり方では、開発がそう簡単にはチェックできないのじゃないか、こういう心配をいたしております。  したがって、特にもう一つ伺っておきたいのでありますが、この自然公園の場合でもあるいは建設省の緑地保全の場合でもあるいは歴史的風土保全の場合でも、開発等の一定の行為につきまして、許可制をとっておる場合には、私権との調整上、買い上げ措置が講ぜられておるわけです。これは御承知のとおり。ところが、この森林法の一部改正におきまして開発についての許可制がとられましたけれども、これについては買い上げ措置が何ら考えられておりません。したがいまして、そういうこともあわせ考えますと、この森林法の一部改正による許可というものは、いまとうとうとして進行しつつある全国的な開発ブームというものをほんとうに押えることができるかどうかということを私は非常に心配をいたしております。  そういう観点から、自然公園法なりあるいは自然環境保全法改正を企図されました環境庁として、これについてやはり十分なチェックといいますか、調整をすることをお考えにならないと、十分な成果があがらぬのではないか、こういうことを指摘しておるのであります。
  15. 首尾木一

    首尾木政府委員 私どもは、具体的な地域としまして、直接に、自然環境保全地域でありますとか自然公園地域につきまして権限を持ちまして、この地域における自然環境保全ということをやっていっておるわけでございますが、なお自然環境保全法は、これはわが国自然環境保全の全体に関する考え方というものをやはり総則において規定をいたしておるわけでございます。  したがいまして、私どもは単純に直接の権限のあるところについてのみ、こういう自然環境保全の行政を進めるということではなしに、広く、わが国自然環境保全につきまして今後必要なものについては発言をしていきたいというふうに考えておるわけでございまして、また、現に、特に森林との問題、林野行政との問題につきましては、私どものほうの自然環境保全行政は非常に密接な関連を持っておりますので、従来からも林野庁といろいろ各面につきまして協議をし、協力をし合っていっておるわけでございますが、今後ともそういう点につきましては十分に林野庁と協力をいたしまして、全体としての自然の保全ということをはかっていきたい、かように考えておるわけでございます。
  16. 田中覚

    田中(覚)委員 林野庁長官買い上げ制度を設けなかった理由について所見をひとつ……。
  17. 福田省一

    福田政府委員 先ほど申し上げました普通地域に対してのそういう許可制を設けました理由、それは極端な乱開発を防止するということが主目的でございます。そこで、その条件としまして、先ほど先生二つおっしゃいましたけれども一つ土地保全の問題、それから第二は水資源の確保の問題、第三点といたしましてやはり環境保全ということを基準に考えております。たとえば騒音防止であるとかあるいは風致の問題、そういったようなことも一応は基準としまして、三つを考えておるわけでございます。  そこで、はなはだしい乱開発規制するというのが趣旨でございまして、極端な私権制限はやらないということでございます。そこで、どうしてもこれはきびしく規制しなければならぬというものにつきましては保安林制度を導入しましてこれを規制する、こういう考えでございます。
  18. 田中覚

    田中(覚)委員 そういたしますと、つまり自然環境保全上特に支障ありと認められるような場合は、開発許可があったときに開発許可をしないかわりに、逆に保安林指定をして制限をする、こういう御趣旨ですか。
  19. 福田省一

    福田政府委員 森林法三十五条におきまして、保安林につきましては補償しなければならぬという規定がございます。ただ、問題は、やはり賢い上げ制度ということになりますと予算の裏づけが必要でございます。現在は運用といたしまして立木についての補償はいたしております。そういうきびしい規制をいたしますと、土地買い上げ制度にまで、これは三十五条の趣旨によりますとやらなければならぬわけでございますが、でき得れば予算措置の関連でこれは措置してまいりたいというふうに考えております。
  20. 田中覚

    田中(覚)委員 いずれにいたしましてもこの森林法の一部改正による開発許可運用につきましては、環境庁との間に事務的にこの調整をする制度というものは何もないわけでございまして、行政運営として現在連絡協調をはかっていただくというほかにないわけでありますが、特に環境庁長官、副総理であられますので、大所高所から、この森林法の一部改正運用につきましては、ひとつ十分な配慮をしていただくことが自然の保全あるいは自然環境保護という観点から見て絶対に必要ではないか、こう私は考えますので、この点につきまして、ひとつ副総理の御所見を伺いたいと思います。
  21. 三木武夫

    三木国務大臣 田中委員御指摘のように、自然環境保護の中に国有林の占めるウエートというものはたいへんに高い、そういうことですから、今後国有林などの伐採とか開発とかについては、十分に環境庁と協議をしなければならぬ。   〔小林(信)委員長代理退席、委員長着席〕 そうでないと、自然環境保護といっても、国有林などがその保護対象から林野庁側で一方的に処理されるということでは、それは自然環境保全ということになりませんから、そういうことでこれはそういうふうな行政措置の慣行にはなっておりますけれども、そういう自然環境保全ということが今日一段ときびしく求められておるときですから、この林野庁と環境庁との関係というものはさらに緊密、厳格な立場から自然環境保全に遺憾なきを期するようにいたしたいと思っております。
  22. 田中覚

    田中(覚)委員 特にいま副総理の御決意を承ったわけでございますが、国有林とおっしゃいましたが、むしろ問題は民有林開発許可対象になる許可ですね。先ほど林野庁長官から答弁のありましたように約一千ヘクタールに及ぶ面積対象になっておりまして、いま進んでおる具体的な開発等はそういうことにむしろ一番の問題が伏在をしておるというふうに考えますので、この点特に御配慮をいただきたいと思います。  次に伺いたいのは、国土総合開発法案がこの国会に提案されておりますが、これと自然公園法及び自然環境保全法の一部改正法との関連につきまして二、三の点をお伺いいたしたいと思います。  その第一は、国土総合開発法案によりますと、「都道府県知事は、当該都道府県区域について、土地利用基本計画を定める」ということになっておりまして、地域区分は、都市地域、農業地域森林地域自然公園地域、自然保全地域、この五つになっておるわけでございますが、まず最初に伺いたいのは、この新しい国土総合開発法が成立いたしました場合に実施をされる土地利用基本計画の中の自然公園地域は、自然公園法対象地域であり、自然保全地域自然環境保全法対象地域そのものになる、こういうふうに理解をしていいのでございましょうか。
  23. 首尾木一

    首尾木政府委員 都道府県知事は、当該都道府県区域につきまして、土地利用計画を定めるということでありまして、その利用計画における自然公園地域と、それから現実の自然公園法による指定地域というものが一致をするかということのお尋ねでございますが、自然公園地域につきましては、ほぼ一致をするということになろうというふうに考えております。ただし、その指定の時期等の前後関係といいますか、そういう問題につきまして、自然公園地域指定が先行をするのか、それともこの計画が先行するのかというような点につきましては、これは必ずしも一義的に割り切っておりませんが、しかし、自然公園地域というのは、自然環境保全地域にほぼ一致するというふうに考えております。ただし、自然公園地域の中に、たとえば、自然公園地域でありましても、いわゆる都市公園的なものというものが、現実に入ってくるということ、これは場合によってそういうものもあり得るというふうに考えておりますが、大体ここにいっておりますのは、ほぼ自然公園法による自然公園地域とお考えいただいてけっこうだと思います。  それから、自然保全地域でございますが、これも主としまして自然環境保全地域といったようなものが、自然保全地域の中核をなすものでありますが、さらにこれにはそのほかの緑地、たとえば首都圏の近郊緑地でありますとか、そういったような緑地として保全する地域というようなものも、この自然保全地域の中に入ってくるというふうに考えてよかろうかと思います。
  24. 田中覚

    田中(覚)委員 そういたしますと、この新しい国土総合開発法によりまして届け出ないしは許可を受けた土地につきまして、当該土地の利用の目的土地利用の基本計画に適合しておるあるいは周辺の自然環境保全上明らかに不適当なものでないというようなことが確認をされた土地につきましても、ただいま提案されております自然公園法なりあるいは自然環境保全法の一部改正による規制の手続を受けなければいけないのかどうか、その点はいかがでございましょうか。
  25. 首尾木一

    首尾木政府委員 当然実体法による許可ないし届け出を要するというふうに考えております。
  26. 田中覚

    田中(覚)委員 国土総合開発法でそういった点が確認されて、許可をされたりあるいは届け出が認められたという場合でも、あらためてこの自然公園法なり自然環境保全法による届け出はしなければいかぬ、こういうことですね。
  27. 首尾木一

    首尾木政府委員 さようでございます。
  28. 田中覚

    田中(覚)委員 いま提案されております二つ法律の一部改正案が、ただ単に法律ができただけというような結果になってはならないので、自然保護あるいは自然環境保全というものが効果的に確保されるように運営されなければならないという観点から、ほかの法律等で開発対象になる土地に対しまして、どのような配慮がなされるかというような観点からお伺いをいたしたわけでございますが、率直に申しまして相当心配が残っております。いま現実に行なわれておるいろいろの開発というものが、この二つ法律対象外で進展をするという心配がございますので、ひとつこの点につきましては格段の御留意をぜひお願いをいたしておきたい、かように考えるものであります。  なお、そういう観点から、せっかくこうして法律改正をされるのに、依然として自然公園法でも自然環境保全法でも従来どおり届け出制の範囲に規制がとどまっておる。なるほど三十日以内に開発行為に着手してはならぬという猶予期間は設けられましたけれども、若干隔靴掻痒の感があるような感じがするわけでありまして、いろいろほかの法律許可制度などとの関連を考えますと、百尺竿頭一歩が進められなかったのかという感じもいたしますけれども、この点につきましての環境庁のお考えを最後に伺っておきたいと思います。
  29. 首尾木一

    首尾木政府委員 今回の改正は従来から不十分でございました自然公園の中の普通地域でありますとか、あるいはそれと同列の扱いになっております新たな自然環境保全地域における普通地区の規制を強化をしようという考え方で出発をいたしたものでございまして、その実態から申しますと、これまでは届け出をすればすぐ着工をすることができるというふうになっておりましたものですから、したがってこれに対しての措置命令というものも実際問題として十分発動をしにくいというようなことがあったわけでございます。いわば届け出前提にして、すぐ着工してよろしいということでやられた工事でございますから、したがって、本人のほうではそのように許されたものとしてそれを考えるということで、規制が十分に行なわれがたかった、こういうことがありましたので、今回は事前に三十日間の着工制限の期間を設けまして、その間にその工事等が許されるものかどうかという点を十分審査をいたしまして、その間に必要なものについては禁止命令あるいはその他の措置命令を出す。それから指導も十分にやっていくというのが今回の改正のねらいであるわけであります。なるほど先生もおっしゃるように、その点について許可制にするということ、これは一つ考え方でございますが、この許可制にするということのためには、方法といたしましては特別地域の拡張といったようなこともあり得るわけでございますが、本来普通地域というのは、いわば現在までそのような許可制までは必要としないけれども届け出制でということで一応指定をした地域でございますから、したがってこれを許可制にするためには、やはり地域の見直しということもやる必要があるのではないか、こういう議論がございまして、したがって、現在の法制といたしましては届け出制で、しかし実質的には許可制に近い三十日間の着工制限を置くことによって目的を達成しようというふうに考えまして、この届け出制地域というものにしたままで規制を強化するということをやったわけでございます。
  30. 田中覚

    田中(覚)委員 そういたしますと、この自然公園法による公園等につきましては最近の新しい情勢に即して地域的な再編成といったようなことなども当然に検討をされる、こういうふうに理解をしてよいわけでございますか。
  31. 首尾木一

    首尾木政府委員 自然公園法地域の見直しといいますか、公園計画の見直しということを現在計画的にやっていっておるところでございまして、地域の編成につきましては、その地域の今後の拡大というようなことも含めまして、現在の情勢に即応するような形での公園計画の見直しという中で、先生のおっしゃるようなことをやっていきたいというように考えておるわけでございます。
  32. 田中覚

    田中(覚)委員 最後にもう一つ実効をあげる手段といたしまして、自然公園に対する管理の体制の整備充実の問題でございますが、従来、率直に申しまして、単に国立公園とか国定公園とか、あるいは県立公園だとか、指定はございましても、いわゆる指定のしっぱなしになって、ほとんど管理がなされておらない。そのことが、今日自然公園地域内における乱開発を誘発した一つの大きな原因になっておると思われるのであります。まあ私ども、実は県で実際に経験をいたしまして、せっかく国のほうから国立公園にしてもらったり、あるいは国定公園に昇格をしてもらいましたけれども、この面における管理体制ということになりますと、ほとんどたいしたことがなされておらぬということでございまして、先般行政管理庁の報告の中にもこの点が指摘をされておったようでございますけれども、今度提案されておりまするこの二つ法律の一部改正に伴いまして、自然の保護なり自然環境保全確保を期する観点から、この管理体制の整備充実ということについてどのようにお考えになっておるか、何か案があれば伺いたいと思います。
  33. 首尾木一

    首尾木政府委員 御指摘のございましたように、これまでの自然公園についての管理体制というものが十分でなかったという点については、私どもやはり十分でなかったというふうに考えておるわけでございまして、全般的な方針といたしまして、この管理体制の強化ということは、今後のこういう自然環境保全ということについての一番大きな問題であろうというふうに考えておるわけでございます。明年度以降の予算あるいは組織の拡充等につきまして、目下その点について特に力を入れて検討をいたしておるところでございます。本年度の予算におきましては、これは現在の国立公園理事務所が全国で八カ所でありますが、それがさらに二カ所増加になりました。管理人が全国で六十二名でございましたのが、ことし九名ふえることになっておりまして、七十一名ということになっております。私ども、まあ二百方ヘクタールに及ぶこういう国立公園だけのことを考えてみましても、これで十分な管理体制であるというふうには考えられないのでございます。  この管理体制の問題でございますが、非常に広い地域でございますので、これを十分に管理をするためには、単に国の直轄の人をふやすというだけでは、これは必ずしも十分ではなかろうというふうに考えておるわけでございまして、いろいろ現実の問題を考えますと、やはり国、都道府県において特にこの管理体制を強化するということ、さらに今後の問題といたしまして、そういう国立公園をかかえている地元の協力も十分得ていかなければいけないというふうに考えておりますが、さらに予算的な問題でありますけれども、管理費が十分でございませんので、こういう点については、国の直接の管理費の増額も考え、さらにそういったようなことに対する各種の助成といいますか、こういったことについても、今後検討をしていかなければならないと考えておるところでございます。
  34. 田中覚

    田中(覚)委員 実はまだこまかい点につきましてもお伺いいたしたいのでございますが、時間が参りましたので、最後に、重複をいたしますが、先ほど来申し上げましたように、自然環境保全法制定は、時期的にはむしろおそきに失したきらいがあるわけでありまして、各県もめいめいに条例をつくってずいぶん苦心惨たんをいたしておりますので、せっかくできたこの法律に基づく地域指定を一日も早く完了をして、府県に対する指導方針を明らかにしていただきたいこと。  それから第二点、森林法の一部改正あるいは新しい国土総合開発法その他開発に関連する他の法律運用との関連を十分に御留意いただきまして、その間の連絡調整に遺憾なきを期せられたいこと。  第三には、いま申し上げましたように、公園等の管理体制の整備充実、予算の裏づけを当然伴うことになりますが、以上三点にひとつ格段の御配慮をいただきまして、せっかく提案されておるこの二つ法律の一部改正案がざる法にならない、確かに実効があがるというような結果を得られますように、格段の御尽力をいただくことを要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。      ――――◇―――――
  35. 佐野憲治

    佐野委員長 公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林義郎君。
  36. 林義郎

    ○林(義)委員 私は、ここ最近急速に巻き起こっております水銀の汚染問題、PCBの問題につきまして質疑をいたしたいと思います。  質疑に入ります前に、一つ委員長にお尋ねをしたいのでありますが、先般来、国会が審議拒否によりまして流れてしまった。当委員会も残念ながら開会に至らなかったようなことがあります。問題は王制云々という話でありますが、これの発言はよその院で行なわれた発言であります。私は、王制問題もさることながら、やはりわれわれがいま考えなければならないのは、国民の健康を守り、福祉を高めていくことであります。そういった点からいたしますと、やはり当委員会におきましては、いろいろな問題があるにせよ、きわめて重大な問題が毎日のごとく新聞に出ておるわけでありますが、そういった問題にもかかわらず委員会の審議をすべきだっただろう。特別に、何をしてもいいからこの委員会の審議をすべきだったのだろう、こう思います。しかし、済んだことでありますから私はあえて申しませんが、私、委員長提案申し上げたいのは、水銀問題、PCB問題はきわめて深刻な問題であります。単に局所的に水俣でどうであった、岩国でどうだった、徳山でどうだったという問題ではありません。これは全国的に問題になってきているというような感じがするのであります。単に行政当局に対してどうしろこうしろというようなことでは済まなくなっているような問題だと思うのであります。まさに政治家がいろいろと考えて抜本的な対策を立てなければならない時期にきておると私は思うのであります。そういう観点から、当然当委員会においてお互いに与野党の立場を越えて議論をして、この問題の解決に当たるべきだろうと思うのであります。そういった意味におきまして、通常は定例日二日、火曜日と金曜日ということになっておりますが、そのほかの日におきましても、週五日制ということでありましたけれども、週五日でなくてもよろしい、週六日でも私は徹底的にこの問題について集中的な議論をすべきだろうと思いますが、これにつきましての委員長の御見解を承りたいと存じます。
  37. 佐野憲治

    佐野委員長 ただいまの林委員の御質疑、御意見、第一点につきましては、理事会におきまして委員会の運営につきましては腹蔵ない意見を交換しながら現在円滑に進めておると思います。またいろいろな点がありましたら、後刻理事会におきまして運営等の問題に関しまして討議を深めていきたいと存じます。  第二点の水銀あるいはPCB、たいへんな深刻な事態になりまして、行政も政治もきびしく自己批判が迫られておると思います。そういう意味におきまして、本委員会におきましても先般七名の水銀学者を呼びまして水銀問題の本質に関する諸問題につきまして十分意見を述べていただいたわけでありますし、またこの十六日から私たち委員会といたしましても二泊三日、水俣周辺の今後予想される危険な実態、そういうものに対するところの現実的な角度から検討を加えたい、こういうので委員派遣も決定いたしておるわけであります。  第三点といたしまして、今後の運営につきましても全力をあげて、いわゆる定例日に限らず、本問題の重要性にかんがみまして、当委員会のみでなく他の委員会の皆さんとの連合審査なりといういろいろな機会を私は積極的に活用いたしまして、国民の期待にこたえるために本委員会は前進してまいりたい、かように考えておりますので、一応お答えにかえて所信の一端を述べた次第でございます。
  38. 林義郎

    ○林(義)委員 どうもありがとうございました。  私は当面の問題としてまず取り上げたいのでありますが、まずPCBの問題からお尋ねをいたしたいと思います。  六月四日の日に環境庁から発表がされましたのであります。と同時にそのときの調査というのが、私はよく全体の調査がわからないのでありますが、これは全国的なPCBの汚染実態調査の一環として水産庁がおやりになったというふうに聞いております。これは調査の時点はことしの一月から三月までの間、こういう話でありますが、この調査と昨年、四十七年九月に行なわれました調査との関係はどういうことになっておるのか。初めにやった調査は何か非常に荒っぽいような調査で、私の地元で言いますと山口県でも岩国、徳山湾、宇部、仙崎湾、この四つをやった。その次にやったところの調査では岩国だけをやったのですかということになっておりますけれども、初めは言うならば定期検診的なものをやって、二番目に精密検診的なものをやったという形での調査でありますか。それともそれぞれ別個の目的での調査だったのですか、どちらですか。
  39. 安福数夫

    ○安福政府委員 ただいま御指摘になりました昨年の、四十七年の九月からこれは環境庁を中心にいたしまして、関係各省が協力いたしまして全国的に一応の概査をやったわけでございます。その結果、そのときの対象水域は百十地域であったと思います。その中で一応疑わしきといいますか、非常に危険水域としまして私ども内部で検討していた十四水域がさらに詳細な線密な調査をやる必要がある、こういう地域を選び出したわけでございます。それにつきまして、本年の二月から私どもその地域を重点的に水産庁が担当いたしまして調査をした、こういうことでございます。
  40. 林義郎

    ○林(義)委員 実は昨年の調査では問題がないという話であった。ことしになって問題がある、七九PPMも岩国でPCBが発見されたということでありますが、昨年の九月の調査ではそういったことがなかった。それはその対象が違うからそういうことになるのかどうかということです。  たとえて申しましょう。もう一つ言いますと、六月四日の調査のときの新聞を見ますと、水産庁の長官が新聞談話で東京湾などというのは一応問題ないんだ、こういうふうな話でありますが、きょうの朝の新聞を見ますと、東京都で調査したところでは「PCB、食品総汚染」というタイトルのもとに「東京湾も高濃度」、「コハダ出荷停止要請」こういうような見出しで出ているのであります。一体調査するたびに変わってくるということになりますと、私は非常に国民を不安におとしいれるだろうと思うのであります。その調査の態様というものが大体どういうふうな形で調査をやられるのか、その辺大ざっぱな話でけっこうでございますから、ひとつお答えをいただきたいと思います。これは水産庁でなくてむしろ環境庁のほうからお答えいただくのか、どちらか知りませんが、お願いいたします。
  41. 安福数夫

    ○安福政府委員 確かに御指摘のように調査の結果があとでまた指摘されるという地域が出てまいっていることは事実でございます。  ただ、これは全国的に一応の概査をやりまして、その中からしぼった結果重点的にやったということでございます。  したがいまして、そういう結果さらに脱落するということもわれわれ自身必ずしも否定はいたしておりませんし、そういう心がけのもとにさらに今後も問題といたしまして、必ずしも十四地域に限らず、一応私どもの予算としましてはさらに二十地域くらいの予算を今年度はとっているわけでございます。これではたして十分であるかということにまた問題はございます。したがいまして、ますます全国的に都道府県の試験場なり、そういったものも動員しながら、そういう地域はやはり一応自覚症状があると思いますので、そういったものについてはさらに考慮をしてまいりたい、このように考えております。
  42. 林義郎

    ○林(義)委員 最初の概括的な大ざっぱな調査をやったときにはたいしたことはない、だいじょうぶだと、こういうふうな発表をいたしまして、精密な調査をやればということになりますと、どこもかしこも全部精密調査をやらないとほんとうにだいじょうぶだと言えないではないかということが言えると思うのです。たとえば岩国で私は申し上げたいのです。岩国で申し上げるのは、岩国で昨年やりました調査では問題ない、こういうふうになっていた、一応問題ない。しかしちょっと問題がありそうだから、もう一ぺん調べてみよう程度の話だったのです。ところが、今度調べてみますと、検体から最高七九PPMもPCBが発見されたということであります。そういたしますと、一体初めにあった調査とそのあとの調査との間でPCBが一応たまったというふうに言うのか、あるいは調査の結果こういうふうな新しい事実が出たというのか。もしも新しい事実が出たということでありましたならば、むしろ全国的に精密的な調査をやらなければならないという私は論理的な結論になるだろうと思うのです。その辺はどういうことでしょう。
  43. 安福数夫

    ○安福政府委員 岩国の例で申しますと、昨年度の概査の場合には、一検体でございますけれども、一応われわれとしては疑わしきものということで注意をすべき問題が出ております。そういうふうに私ども自覚症状がある地域については一応網羅をして取り上げたというつもりでございます。それを一〇〇形十分であるというふうに私たちは考えておりませんで、さらに広範囲に今後も進めていく必要がある。そういう点で県を通じて試験場なんかにそういう地域についての、さらに概査と申しますと、語弊がございますけれども、そういう注意は十分する、こういう態度で臨みたい、そのように思っております。
  44. 林義郎

    ○林(義)委員 私から申し上げましょう。昨年の調査ではイダが一検体に四PPMだったわけですが、それで調査した結果、ボラから今度は七九PPM出た、こういうことであります。普通、常識的に考えますと、概査というのですか、概査をやったときにもやはりかかってくるのは四PPM、一ぺんに七九PPMにあがるということは、私は相当のあがり方だと思う。そういたしますと、その間においてPCBが流れたか、あるいは特別にPCBが流出していったということしか考えられないと思いますが、そういったことはいかがですか。
  45. 安福数夫

    ○安福政府委員 これは非常にむずかしい問題だと思うのですけれども、必ずしもその地域についての魚類を全部取り上げて、それを全部分析することには技術的にも形式的にも不可能でございますので、やはりどうしても抽出調査になるわけでございますので、たまたま濃密な検体がかかるということもございます。またその原因がはたして――理論的な空間の期間の場合には汚染が進んだという場合があると思います。しかし、岩国の場合には必ずしも私どもそういうふうに理解しておりません。ただ、工場その他の汚染の原因、企業体についての十分な監査はトレースはしなければいかぬと思いますけれども、今回の場合新しいそういう期間にさらに極端に汚染が進んだ、そういうふうには理解はしておりません。
  46. 林義郎

    ○林(義)委員 それでは私お尋ねしますが、実は岩国では東洋紡がやり玉に上がっておる。合繊工場でありますし、重合工程でやっているところで熱媒体でPCBを使っておったということであります。そこで、東洋紡が魚を全部買い上げをする、しかも東洋紡で何か埋め立てのコンクリートをつくっておりましたので、その中に買った魚を全部埋め立てる、きわめて手ぎわのいい話でありまして、四日に発表したならば直ちにもうそういったコンクリートができておる、そういうふうな話であります。調査をしたのでありますから、そういった調査というものは事前に会社のほうに通知をして、発表するからしかるべき対策をとっているようなかっこうをしておけ、こういうふうな指導をされておるのでありますか。どうですか、その辺、お尋ねします。実はこれは私あえてお尋ねするのは、地元の新聞でもそういうことが出ている。あまり手ぎわがよ過ぎるのではないか、企業と密着した行政ではないか、こういうことが言われておるのであります。この辺は一体どういうことでやっておるのか。水産庁としてもまた環境庁としても、山口県当局といろいろと連絡をとりながら実際に調査をやられているのだろうと思います。そういったときに、あまりにもちょっと東洋紡のやり方ができ過ぎているのではないか、こう思われるのであります。新聞にもそういった主張が出ております。この辺は一体どういうことになっているのか、お答えいただきたいと思います。
  47. 安福数夫

    ○安福政府委員 調査のたてまえといたしましては、一応水産庁の責任で各県に委託という形でされるわけでございます。したがいまして、方法論なり対象なり、そういった問題につきましては、十分事前に都道府県と連絡をとりながらやっておるわけであります。ただ、発表の責任は水産庁に形式的にはあると思います、そういう関係で、事前に関係の企業体に漏らすというふうな指導を私どもはいたしておりませんので、やはり発表した以降に適切な措置をするというたてまえで私どもはその問題については対処する、こういうことでございます。
  48. 林義郎

    ○林(義)委員 通産省にお尋ねしますが、そういった行政指導をしたことがありますか。
  49. 堺司

    ○堺説明員 特にございません。
  50. 林義郎

    ○林(義)委員 そういたしますと、東洋紡はなぜそういうことをやったのでしょう。この辺につきまして、東洋紡のほうにお尋ねになったことがありますか。
  51. 堺司

    ○堺説明員 御質問の件は、プールをつくったというようなことでございますが、あのプールはだいぶ前に東洋紡がつくっておりまして、それを利用していなかった。たまたま汚染魚が出てまいりましたので、そこに廃棄するように東洋紡として処置するということを申しておりました。
  52. 林義郎

    ○林(義)委員 実は東洋紡が一番たくさん、調べたところではPCBを持っておるようであります。しかしながら岩国地区でPCBを使用しておるのは、単に東洋紡だけではない、あそこにありますところの三井石油化学それから帝人ではなかったかと思いますが、これもやはり量は少いけれども持っておるのであります。  PCBの管理につきましては、それぞれやっておるわけでありますが、東洋紡が現在責任をとって全部漁業補償しておるということは、東洋紡みずからもやはり自分のほうに責任があった、何らかの過失があった――故意だったとまでは私もあえて言いませんけれども、少なくとも重大な過失があったということだろうと思うんです。魚を全部買い上げる、こういうふうな形で処理をしておるようでありますが、東洋紡に過失があったか、その辺は一体どういうことになっておるのか、この辺調査された結果を御報告いただきたいと思います。
  53. 堺司

    ○堺説明員 東洋紡がポリエステルの重合工程にPCBを使い始めましたのは昭和三十七年でありまして、それ以後約二百九十八トン、ポリエステルに使っております。現在その重合工程に使用されたのは二百七十トンでありまして、二十八トンが貯蔵されていたり、メーカーの鐘化のほうに返却されたりいたしております。しかしながら初期の段階では、PCBの処置についてはわりあい厳格でございませんでしたものですから、重合工程を修繕する場合等に若干の漏れがございまして、それがたぶん排出口より出たのではないかというふうに考えられるわけでございまして、その総量は必ずしも明確でございませんけれども、〇・二、三トンから〇・五トンくらいじゃないかというふうに会社のほうでは申しております。
  54. 林義郎

    ○林(義)委員 〇・三トンから〇・五トンのものが漏れたという話であります。昨年の四月二十六日当委員会におきまして、「ポリ塩化ビフェニール汚染対策に関する件」という決議をいたしております。この決議は、同時に衆議院の本会議の決議になったものでありますが、その第三項に、「PCBの製造、新規使用を禁止し、例外的使用の際は、完全な回収を義務づけること。」こういうふうに書いてあります。こういった問題につきまして、前文を言いますと、「政府においては、次の諸点につき早急に適切な措置を講ずべきである。」こういう決議文になっております。「完全な回収を義務づける」ということであります。〇・三トンであれ〇・五トンであれ、いつやられたかということにつきましてお調べになられましたかどうか。少なくともこの決議が出たわけでありますから、その決議が出た以後におきましては、完全な回収を義務づけていなければならない。もしも義務に反したならば当然この決議違反であります。こういった点につきまして、いまの〇・三トンなり〇・五トンというものがいつごろ出たかという調査をしておられるかどうか、それから今後においてどういった対策を東洋紡に対してとれというふうに言っておられるのか、この二点についてお尋ねいたします。
  55. 堺司

    ○堺説明員 東洋紡が二十八トンを処置いたしました、そのタイミングでございますけれども、四十一年にPCBの再生装置をつくりまして、再生装置以後に出てきたPCBといいますか、余ったPCBは、四・五トンを鐘化に返済しております。それから十二・二トンは自社の再生装置できれいにいたしまして、それは岩国に貯蔵してございます。四十一年前に、再生装置をつくる以前に鐘化へ返済いたした分が約四十ドラムで十一・二トンございますけれども、その四十ドラム、十一・二トンという分について若干の漏洩があったのではないかというふうに考えられるわけでございます。ですから問題の御指摘をいただきました件につきましては、四十一年に発生した事件であって、東洋紡の意見では、たぶん三十八年ごろに出た量が多いのではないかというふうに申しております。  それから第二点でございますけれども、東洋紡といたしましては、PCBをほかの熱媒体にかえるということで、KSK三三〇という化学品にかえることにいたしております。そのためにPCBをタンクに貯蔵いたしましてそれを処分するという必要がございますので、現在タンクを建設すべく手配しておりまして、東洋紡のほうでは十一月に完成という予定であったそうでございますが、私ども一日も早くということで、十月末に完成する予定になっております。
  56. 林義郎

    ○林(義)委員 いまの説明だと、三十八年ごろに製造工程をかえたからそのときに漏れたんではないかという報告を東洋紡からいただいておる、こういうことでございますね。
  57. 堺司

    ○堺説明員 製造工程をかえたということではなくて、若干修理したというようなことでございます。
  58. 林義郎

    ○林(義)委員 若干の修理をしたからその過程においてあったということでありますが、これは私は合繊紡のいままでやっておるところのPCBを使っておるところはみんな同じ問題があるだろう、こう思うのであります。修理をしたときに漏れるようなことにすれば、私は完全な回収を義務づけたことにならないだろうと思うのであります。絶対にいかなる場合におきましてもPCBというのは出ないような形で保障していかなくちゃいけない。修理をしたからPCBが出てよろしいというようなことは一つも書いてない、この決議文には。私はそういった意味におきまして、通産省当局として、PCBの完全な回収を義務づける。「例外的使用の際は、完全な回収を義務づけること。」製造、新規使用は禁止してあるわけでありますから、これをどういうふうな対策についてやっているか。いろいろな方法があるでしょう。合繊につきましてpcBを使う――そのほかいろんなものがあるだろうと思います。この辺につきまして概略御説明をいただきたいと思います。
  59. 青木慎三

    ○青木政府委員 昨年PCBの全国調査をいたしまして、その際いろいろなことが判明したわけでありますが、ことに熱媒体に使っておりますのは従来は閉鎖系と考えまして、外に漏洩しないという考えでおったわけでございますが、実情を調べてみますと、底土その他に若干の漏洩があるということが判明をいたしましたので、その後の措置はこういうことにいたしております。  まず工場の汚染状況を十分工場自体が把握して、汚染の実態を十分調査しろということが第一点でございます。  第二点は、排水からPCBが検出された場合及び底泥から高濃度のPCBが検出された場合には、現在PCBを使用している工場については早急にPCBの使用を中止させる。それを実施に移すことが困難な場合には、活性炭処理装置等の処理装置を早急に設置してPCBの今後の排出防止に万全を期するということであります。  それから底泥から一〇〇PPM以上の高濃度の汚染が検出された工場につきましては、工場内の水路の清掃、土壌の置きかえ等を行ないまして、汚染しております土が地下水と遮断された状態で埋め立てさせるという措置をとったわけであります。  現在なお熱媒体にPCBを使用する工場につきましてはPCBの漏洩がないように徹底させると同時に、本年の十二月までに、万全を期しまして全部これを取りかえさせる、こういう措置をとっております。
  60. 林義郎

    ○林(義)委員 そういたしますと私は一つ申し上げておきたいのです。私が先ほど申しました東洋紡、三井石油化学、帝人、それぞれにPCBを使っておるわけでありますから、やはり同じような考え方でやらなければならない。現在のところ、この岩国については東洋紡が非常に補償をしておるわけでありますが、とにかくとった魚を全部東洋紡が買い上げる、こういうふうな形でやっておるのですけれども、どこまで買うかというのがまた問題です。半径十キロのところまで買うとか十キロから先は買わないとかなんとかという話、これがまた問題になっている。岩国の沖での漁業組合については買うけれども、隣の漁業組合は買わないなどという話になっている。どうしてくれる。魚の値段はみな下がっているわけです。そういった点につきまして、これはやっぱりPCB問題、水銀問題通じての問題でありますが、私はやはり漁業との調整の問題でどうしても新規立法が要るのではないか。汚染した魚を回収する問題、それからそういった問題によって起こったところの魚の値段の下落の問題、こういったものを含めました特別立法を立てる必要があるのではないか、こう思うのでありますが、水産庁当局はどういうふうにお考えでございますか。
  61. 安福数夫

    ○安福政府委員 本問題をどういうふうに今後していくかという問題ともからむと思いますけれども、まず水産庁といたしましては、それぞれ魚の単体をつかまえてこれを措置するというわけにまいらぬと思います。したがいまして、ある一定の水域を画定して注意区域としてエンクロージャーしてまいる、こういう一つ前提を置かざるを得ないだろう、こういう感じがするわけでございます。  そういう場合に、前提としましてやはりその暫定基準と申しますか、基準はこれだということでまず画定をする。現在PCBその他、暫定的なものがございますけれども、それを前提といたしましてやはり区域を限ってまいる。これは先ほど指摘されましたように、これの精査なりそういった方法論なり、今後さらにその地域を画定していく必要があると思います。  そういうことをした場合に、それじゃどういう漁獲規制の問題をしてまいるかということでございますけれども、この問題につきましてはこれまでもそういう御質問があったわけでございますが、水産関係の法律では、やはり漁業の資源であるとかあるいは漁業相互の調整の問題であるとか、そういった漁業調整上の問題、資源の問題、そういう漁業プロパーの一つ目的を持った法律でございますので、現在ございます漁業関係法律ではその規制ができない、こういうことになっていることは御承知のとおりでございますので、そういう一つ前提を置きましてやはりそれを規制してまいる必要はいろいろの方々から御指摘願っているわけでございますが、そういった特別立法でそれを規制してまいるということをせざるを得ないんじゃないだろうかという感じでございます。それにはいろいろの前提なり詰めるべき問題が多々あろうと思いますけれども、そういった面で関係各省ともそういう関係について十分検討なりを今後とも努力してまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  62. 林義郎

    ○林(義)委員 いみじくも安福水産庁次長おっしゃいましたように、水産関係の法律では、水産資源の保護、水産の振興という観点からである。私はそういう観点からこの問題の解決はできないと思うのであります。問題は、環境保全という考え方、健康を守るという考え方からでなければならない。私はそこを基本に置いて考えていかなければならない問題だろうと思います。そのときに一体水産がどうしなければならないかという対応を考えるのがやっぱり法律の体系だろうと思うのであります。先ほど私申しましたが、イダとかボラとかいうものについてうんとPCBの汚染度が高いということも事実であります。私は単に地域を限ってだけ規制するんじゃなくて、魚の種類についてもやるということを考えたらよろしい。この前の当委員会での学者を呼んでの話のときにもありましたけれども、マグロというものは非常に水銀の汚染度が高いということでございますから、マグロの漁獲について、あるいはマグロを食用に供することについて一時停止をするというようなことも含めて私は御検討いただきたい、こう思うのであります。これは検討してもらえばよろしゅうございますから、御答弁は要りません。  それからさらに私もう一つ申し上げたいのは、山口県でも健康診断をやるということになっております。ところが岩国でとれた魚は必ずしも岩国の市民だけが食べるということになっておらないのであります。岩国から山の中に入ったところにも岩国の魚は持っていくわけであります。と同時に、広島は岩国の非常に近いところでありますから、広島の市場の値段が高ければその魚は広島に持っていって売ったほうがよろしいということで、みな持っていって売るわけであります。したがって、健康診断というものは相当広範囲においてこれを行なわなければならないだろう、こう思うのでありますが、一体その健康診断につきましてはどういうふうな形になっておるのか。山口県にまかしてあるということになりますと、山口県では岩国までしかやれない。広島のほうはやれない。岩国のすぐ隣の大竹市なんかでも相当に食べているだろうと思うのですね。その辺の健康調査をするということになれば山口県ではやれないわけです。一体どういう形でやるのか、この辺につきましては政府のほうでだれが御答弁いただくのか、お答えいただきたいと思います。
  63. 浦田純一

    ○浦田政府委員 これは環境庁が中心になってPCBの政府としての対策を進めているわけでございますが、健康に関する部分につきましては、厚生省がこれに一体となりまして協力して進めていくということでございます。現在PCBそのものに着目したいろいろな検査、分析というものは、厚生省が食品並びに母乳の調査を進めているところでございます。これらはいずれまた今年度の調査も計画されておりますので、昨年の調査結果と引き合わせまして、全体としてどのような傾向になるかということはつかめるかと思います。また食品は流通市場におきまして、私どものほうで、つまり魚市場において最終的なチェックとしてのPCBの検査をいたしております。このような状況でございますが、さらに全国八道府県におきまして、一府県五百名を見当として特に健康調査を進めておるところでございます。国民全体の方の健康調査もしてはどうかという、このような御意見も一部ございます。しかしながらなかなか、検査の項目あるいはその日時を要するというような点、技術的な面などから、国民の皆さま方全般のそういった要求を直ちに消化するというところまでは事実上無理かと思います。私ども環境庁を中心といたしまして、やはり問題のあるところを中心に、重点的に、しかもできれば保健所を動員いたしまして、たとえば直接健康診断はできないにいたしましても、たとえば健康相談といったような形でもって逐次国民の皆さま方のそういった御要望を吸収していきまして、全般的に国民の健康というものに対して、こういう状態であるということについて意見を示すことができるように努力してまいりたいと考えております。
  64. 林義郎

    ○林(義)委員 健康診断をするということでありますけれども、山口県ではさっそくに岩国において健康診断をするという話であります。私は、岩国だけでは足りないということを申し上げておるのです。大竹もやらなくちゃならぬじゃないか、こういうことであります。またさらには広島もやらなければならないのじゃないか、こういうことなんです。いまお話がありましたが、保健所を中心にしてやるという話でありますけれども、やはりこれは人の健康の問題でありますから、一番直接的にタッチすべきなのは医者であります。やはり医師会に呼びかけて医師会の協力を得てやったらいいんじゃないか。そういう形ではできないのかどうか。一日保健所へ行ってどうだこうだということよりは、相当大がかりな、広い範囲の調査をこの際やるのが適当ではないかと思いますが、医師会を使って、医師がずっとみておるのが、大体かかりつけの医者というのがおりますから、そういったところで調べるという形にする、それともそういうことではできないのか、医師会の協力が得られないのか、どちらなんです。
  65. 浦田純一

    ○浦田政府委員 有機水銀中毒も同じでございますが、私どもはやはり医師会それからあらゆる医療施設というものの御協力を得まして、できるだけやはり国全体としてこの問題に総力をあげて早く解決できるように努力すべきであるということで、実はきのう熊本県のほうからの陳情もございまして、これは環境庁のほうで有機水銀中毒並びにPCBの対策の本部ができるというふうにけさほどの閣議できまったというふうに私も聞いておりますが、そういったような形でもって厚生省といたしましてもあらゆる病院、診療所、それからもちろんその前に日本医師会、各県医師会の御協力を得てこの問題に全力をあげて当たりたいというふうに、きのう大臣のほうもお答えしておりますし、私どももそのように考えておるわけでございます。
  66. 林義郎

    ○林(義)委員 私は、一番守らなければならないのは人の健康である。これは政治の基本の問題であります。こういった観点から、私は、この辺の対策を早急に進めてもらいたい。いろいろなことがありますけれども、健康がなくなったらどうにもならないということを大前提に置いて、今後いろいろな対策を進めていただくことを切に要望しておきます。  次に、今週の土曜日から水俣地方に、熊本県、佐賀県、福岡県、長崎県、ずっと当委員会調査に参ることになりましたが、私は、水銀の問題についてお尋ねをいたします。  先般の公聴会の席でもお話がありましたが、水銀をかつて使いましたのはアセチレン水和法アセトアルデヒド製造工程、それからアセチレン法塩化ビニールモノマーの製造工程、それから第三番目が水銀法の電解ソーダ工業であります。先般の学者の御答弁では、日本では苛性ソーダをつくるときに九五%は電解法であり、五%が隔膜法である、こういうふうな話である、ヨーロッパでは電解法、隔膜をの比率が七対三である、アメリカは逆になって三対七である、こういうふうなお話がありました。私は、やはり水銀の問題を議論するときには、チッソの問題もさることながら、どうしても電解ソーダ法についていわなければならない問題だと思うのであります。外国におきまして、アメリカのように七対三ぐらいまでの比率になってきておる。しかも電解ソーダを使わなければならないというようなソーダは化粧品であるとかというような話があったんです。化粧品が、非常に見てくれがよくなくてもお互いにがまんしなければならぬと思うのです。この際思い切って電解法をできるだけ早く、すぐにやめろということにはなかなかいかぬかもしれませんけれども、電解法を早くやめて隔膜法に転換するような抜本施策的な施策をとるべきだと私は思いますが、通産当局の御見解はいかがですか。
  67. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 先生御指摘のように、わが国の現在の苛性ソーダの製造能力の九五%は水銀電解法でございまして、五%が水銀を使わない隔膜法というやり方でつくられております。こういうふうにわが国で水銀法が非常に伸びてまいりました理由は、水銀法によります場合のほうが品質が良好であるということと、大型の設備ができましてコストが安いという事情等々がございまして、水銀法のほうが発展をしてきたわけでございますけれども、この水俣病等に見られますように、水銀問題が非常に大きな問題になっておりますので、通産省としましても極力この水銀法から水銀を使わない隔膜法に転換をはかるべきであるというふうに考えまして、先般、今後の苛性ソーダの製造設備の新増設につきましては水銀法は一切認めない、隔膜法による新増設しか認めない、こういう方針をきめまして業界に通達をいたしたところでございます。したがいまして、今後はすべて新設あるいは増設は隔膜法によって行なわれていくと考えますが、なるべく隔膜法の増設のスピードを上げまして、従来の水銀法もスクラップを進めるということによりまして、なるべく早く隔膜法の設備に転換を進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  68. 林義郎

    ○林(義)委員 私はあえて御提案を申し上げますが、値段が違うのです。値段が違いますからどうしても電解法でやったほうがよろしいということでありますから、私は思い切って課徴金制度をつくったらいい、価格調整制度をつくって隔膜法でやるほうがうんと安くなるようにというふうな形をとるか、そういった形によってスクラップを促進していくことがどうしても必要じゃないか。それでなければ――私はあえて申し上げたいのです、電解法というのはやめたらどうかと。それくらいのことで取り組まなければならない問題だと私は思うのです。先ほどもPCBのときに話がありました。PCBのところで、修理の段階において漏れたのではないかという話であります。漏れて済むような問題ではないと思います。やはり水銀が流れれば、その汚染というものはたいへんな影響をもたらすということは皆さま方よく御承知のとおりです。水俣にしてもしかりである。さらにこれからあるところの有明海の問題にしてもおそらくそういった問題があるのじゃないかと思います。そういった問題でありますから、ひとつこの際思い切ってドラスチックな方法を講じなければならない。何年何月までには少なくとも電解法は全部やめてしまう。それまでにこういった対策を講じていくというぐらいのかたい決意を持って私は進めるべきだと思いますが、大臣おられませんからしようがないですけれども、この辺は局長からぜひ大臣にお話を申し上げていただきたい、これを私は強く申し上げておきたいと思います。  あとで三木大臣来られるでしょうから、そのときにもう一ぺん三木大臣にお尋ねいたします。  徳山地区で、徳山曹達と東洋曹達が水銀法を使いまして苛性ソーダをつくっておるのであります。これは聞いておりますが、徳山湾は相当に水銀の汚染がひどいのではないかということが前からいわれております。一体ここについての精密調査はいつやられるのか。また新聞によりますと、水俣病患者ではなかったかと思われる人が二人ほどおったという話であります。この辺につきまして健康診断その他はどういうふうな形になっていままで行なわれたか、またこれから行なおうとされるのか、御説明をいただきたい。
  69. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 今月の上旬からアセトアルデヒドを従来水銀触媒を使いまして製造をしておりました工場に――現在は全部昭和四十年ごろにやめましてやっておりませんけれども、そこの工場の堆積物等の調査のために、アセトアルデヒドの工場、それからアセチレン法で同じく塩化水銀を触媒としまして塩化ビニールをつくっておりました工場、これも大半はこの製法を現在はやめております。それから苛性ソーダを水銀電解法によりまして製造いたしております工場、この工場分につきまして現在通産省並びに通産局の担当官を現地に派遣をいたしまして一斉点検中でございます。  なお、御指摘の徳山曹達、それから東洋曹達につきましては先週現地調査をいたしましたが、まだ詳しい報告が参っておりませんけれども、電話によります報告によりますと、徳山曹達の場合には、会社の報告によりますと、これは昭和二十七年から事業を営んでおりますが、その間の約二十年の間での水銀の消費量が三百七トンでございます。ただ、三百七トンは投入しました水銀量と現在電解槽に残っております水銀量の差でございまして、これがいろいろ排水処理をされましたり、マッドと申しまして電解槽の底に原料の塩の不純分がたまってまいります、その中に水銀がまじって出てまいりますが、これが汚泥というかっこうで回収をいたしておりまして、そういうもので回収をした形で、従来は工場内の埋め立てをいたしておりましたし、法施行後はコンクリートで固めまして、やはり工場の埋め立てに使っておりまして、そういう形でほとんどは回収をいたしておりまして、工場の報告によりますと排水中に出ました量は三・七トンという報告であります。ただ、このこの数量につきましてはなお現地につきまして精査が必要でございますので、現在もいろいろ調査中のところでございます。東洋曹達のほうは昭和三十一年から水銀法で苛性ソーダをつくっておりますが、今回の通産局の調査によりますと、会社の報告では、この間の水銀の消費量は二百二十四トンでございます。これもただいま申しましたように、いろいろ排水処理をしましたり、マッドの中に出てまいりましたものをコンクリート硬化したりして工場内に保存をいたしておりまして、排水中に出ました量は二・九トン、こういうふうな報告を受けております。この数字につきましてはなお精査が必要かと思いますが、大体今月一ぱい全国調査を終わりまして、その結果整理をいたしまして、その後の対策をとりたい、かように考えております。
  70. 林義郎

    ○林(義)委員 私が聞きたいのは、現実に徳山湾では水銀で魚が非常に汚染しているということです。すでにもう調査が出ている。しかも漁民に対しては東洋曹達は漁業補償を何も問わずに一律一万円ということで払っている。四百人くらいの漁業組合ですから、四百万円払うんですね。先ほど東洋紡の話でありましたけれども、東洋紡では、とった魚は全部買う。徳山の東洋曹達のほうでは漁業補償は全部一律一万円、こういうふうな話です。こういったものはばらばらにやっていっていいのかどうか。一方では魚は全部買っておきましょう、一方ではとにかく漁業補償で全部払う、こういうのも非常に私はおかしなことだ、水銀だから漁業補償をしなければならない、PCBだから魚を買わなければならないという理屈は一つもないと思うのです。こういったことにおきましても、いわゆる機敏な対策というものが必要だろうと思うのです。漁業補償にしても組合員一人一万円ということになりますと、とってもとらなくても一万円。漁業協同組合ですから名目的な組合員もあります。そういった人についても一万円ということになると、非常におかしな問題が出てくる。その組合に入っておればあまり漁業をやらない人も一万円。隣で一生懸命漁業をやっている人はもらえないというような問題もあるわけです。私はそういった点もはっきりした対策を早急に立てていく必要があると思うのです。  大臣お見えでございますから、時間も時間ですから私は大臣にお尋ねしますけれども、実はこういう問題なんです。  一つは水銀の問題でありますが、水銀につきましてはアセトアルデヒドの製造、塩化ビニールの製造、それから苛性ソーダの製造この三つに使われております。苛性ソーダは九五%が水銀法によってやられておりますから、できるだけ早く水銀を使って苛性ソーダをつくるということをやめなければならない。  先ほどPCBなんかで話がありました、修理をしている工程で出てくるというような話でありました。こんなことではその怠慢は許されないのであります。そういった意味で一番いいのは水銀法を使わないでやるようにしたほうがいい。そのためにはスクラップダウンをしたり、いろいろありますけれども、価格問題もありますから、私は価格差補償金みたいなものをつくって、水銀法でやる会社からは高く出す、それから隔膜法でやるところはその金をもらうというようなかっこうで、業界内部でやってもいいのではないかと私は思います。早急にそういった方法をやり、できるだけ期限を切って電解法をいつまでにやめるのだということくらいまでをやらなければいけないのだというふうなことをお尋ねをしたいわけであります。  それからもう一つは漁業補償でありますが、現実の問題としてPCBにつきましては、東洋紡が現在買った魚は全部県と市とそれから会社と漁業組合の代表が集まって、価格調整委員会が、一匹百円という魚が五十円でしか売れなかったらその差額の五十円は全部会社が持ちましょう、こういった形で全部魚を買っているわけであります。  一方東洋曹達のほうは漁業補償ということで、漁民に対して補償を一人一万円という形でやっているわけです。漁業組合は四百人くらいおるわけでありますが、その四百人に対して一万円ずつ出す。そうすると漁業組合でもいつでも魚をとりにいかれる方ばかりではないと思うのであります。そうすると隣の漁業組合については補償が全然ないということになりますと、これはまた非常に不平等なことになる。自分のところでとった魚は全然補償も何もないということになりますと非常に不平等になりますから、この辺に対する対策も早急に立てていかなければならない問題だと思うのです。  先ほど水産庁のほうでは、関係当局と御相談いたしまして検討いたしますというような話でありますが、やはり緊急を要するような問題でありますから、緊急に対策を立てる必要がある。立法するならばわれわれも大いにこれをやらなければならない、こういうふうに考えているのでありますが、大臣の御所見を承りたいと思います。
  71. 三木武夫

    三木国務大臣 私も林委員と同じように、いろいろとこういう水銀汚染が拡大されて、発見をされてきている。その間にいろいろな住民の不安というものが起こっておるわけです。きょうの閣議に、従来からも各関係官庁の連絡協議会はあったのですけれども、この事態の緊急性、重大性にかんがみて、一段と政府の施策も強化する必要があるということで、水銀の汚染等に関する対策推進会議というものを置きまして、私が議長になって各関係省庁、これの会議体を持って、そして緊急に実行しなければならぬものは実行していくという措置をとりたいと思って、きょう閣議の了承を得てそういう推進会議を設置することをきめたわけです。さっそく明後日早朝八時からこの会議を開きたい。それできょう私のところで問題を整理して、あした一日ありますから、各省庁において研究してもらいたい。  その中に林委員の御指摘になった水銀問題、これはやっぱり汚染源から対策を講じなければ抜本的な対策というものは講じられない。環境庁もあと始末ばかりする役所ではかなわぬですからね。そういうことで、通産省の関係としては水銀という汚染源に対してどう対処していくか。実情も把握しなければいかぬですから。どれだけ使ったとか、一つの実情把握というものが足りないわけです。  この問題とか漁業補償、漁業のつなぎ資金の問題ですね。やはり漁業補償の問題も、汚染者がそれに対する補償をすべきであるという原則はくずさない方針ですから、その汚染者との間に漁業補償の話がつくまでのつなぎ資金というものは、これは政府のほうとしても現行制度のワク内でも最大限度の方法を考える必要があるわけですから、そういう問題等についても一体どう考えるかという問題を、政府としての態度をきめたい。いま御指摘のように、一匹百円ですか、一人に対して一万円、一方の漁業組合に対しては何らの救済措置がないという。どうしてもこういう問題はやはり地方の自治体がもっと介入しなければいけない。そしてやはり漁業家に対してどうしてもつなぎ資金の求償権は保留するわけでしょうから、漁業家もあるいは県が立てかえるにしても、そういうことでその間隣の漁業組合との間にオール・オア・ナッシングみたいなことはよくないですから、自治体がもう少し、実情を一番知っているのですから介入して、そして漁業家が補償の問題が片づくまでの間に、非常に生活をやっていくことにも困るというような状態はこれは救済しなければならぬわけですから、そういう点もその会議では十分に話し合ってみたいと思うのであります。  ちょうど林委員御指摘のことをわれわれもこれはやっぱり捨ておけないという考え方で、そういう推進会議を設け、そしてさっそくにその問題に対して政府間の見解をまとめたいということにいたしておる次第でございます。
  72. 林義郎

    ○林(義)委員 けさの閣議で推進会議をおつくりになったというお話でありますが、やはりたいへんな政治問題であります。大政治問題であります。そういった意味で、三木副総理が中心になって強力な対策を進めていただくことを切に私は期待し、まに要望するものであります。  こいねがわくば、ひとつこれはあまり事務当局によらずに、大臣みずからが責任をもっておやりになる。聞くところによりますと、三木大臣を中心にして関係各省の局長というお話でありますが、そういうことではいけない。やっぱり関係閣僚は全部出て、責任をもってこれに当たるという体制を私はぜひつくっていただくことが必要だろうと思うのであります。この点につきまして大臣の御所信を聞かせていただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  73. 三木武夫

    三木国務大臣 必要があれば閣僚会議でも随時開くつもりであります。こういう人間の生命、健康に関係することですから、何よりもプライオリティーを持っておるわけでありますから、私がみずから議長になって処置をいたすつもりでございます。
  74. 林義郎

    ○林(義)委員 ありがとうございました。
  75. 佐野憲治

    佐野委員長 島本虎三君。
  76. 島本虎三

    ○島本委員 長官にまず一言、姿勢の問題から具体的な問題について、やはりいままでの答弁とつなぎ合わしてはっきりここで申し上げておきたい。  確かに二階堂官房長官それから三木環境庁長官を中心にして、きょうの閣議で推進会議ですか、これをきめられたようであります。しかし、この有明湾沿岸それから水銀の汚染患者の発生、いま質問に出た徳山湾での汚染の表面化、こういうようなことの一つ一つがあと追いになってはならない、あと始末では困るという環境庁であります。今度ももうはっきりした対策をつくる、私はこれはあくまで心から期待いたします。しかし、対策に乗り出したというようないまの環境庁であっては困るのであります。環境庁ができたのは昭和四十六年の七月から、その場合には、あらゆる点で各法律に対して調整権を持っているはずです。環境保全に対しては、長官の命令でやほり差しとめも可能であるわけです。もちろん修正に至ってはそのとおりであります。しかし、いま魚介類に含まれている水銀の安全基準であるとか、水質の基準や底質基準の策定であるとか、それから漁業補償やそれに伴う漁民の生活保障の特別立法化であるとか、あるいは県の対策の財政援助であるとか、それから原因の究明、こういう点がいま出されている。というのは、きょういま現在熊本では、とった魚が売れないということで暴動一歩手前にあるそうです。そういうようなさなかにおいて、これから対策を練るというのでは、これはやらないよりはやるにこしたことはありませんが、昭和四十六年七月に環境庁ができてその対策に当たってきた、その環境庁としてはおそ過ぎるわけです。それで、環境庁自体の中で、まだまだはっきりした取り組みの姿勢ができないのじゃないか。機構の問題として、通産省から出向してきた者は非常に気がねをしてはっきりしたことを言えない。そして法律さえも出せない。まだまごまごして出ない法律一つあるでしょう。それと同時に、開発に対する取り組みは、長官がいろいろなことを言っても、そのとおり内部の機構が動いてないのじゃないか、こう思われるわけであります。私は、今後の対策とともに、環境庁自身があと始末では困るんじゃなくて、内部を締めることともう浄化のほうを先にすべきじゃないか。これをやらないでいかに推進会議をつくっても、またどうにもならない結果しか招来できないでは困るのでありますから、つくるのとあわせて、環境庁内部の強化をひとつ大臣にとくと申し上げておきたい。いま私が言ったおそれはございませんですか。
  77. 三木武夫

    三木国務大臣 環境庁の行政に対しては私は全責任を負うわけでありますから、私の方針に従ってみんなが非常に一生懸命にやっておるわけでありますから、島本委員の御懸念のようなことはない。ただ、こういう点はあるのですね。過去にいろいろな汚染の原因というものは蓄積されたものがある。これに対しては、あと始末ばかりだという御批判もあるかもしれぬけれども、それはやはり処理しなければ、現にやはり汚染があり、汚染からいろいろな被害が起こっておるわけでありますから、これは処理するということも大きなわれわれの仕事である。そういうことで、将来はなるべくこういうことのないように、どういう事態が起こるかということを見通しをして、そういう手を打っていくことが必要ではありましょうが、現にそういう水銀なら水銀の汚染というものが相当広い海域にあるわけですから、これを処理することがわれわれの責任であるということで、この問題にも取り組んでいくことは当然のことであると考えておる次第でございます。
  78. 島本虎三

    ○島本委員 と申しますのは、やはりこの推進会議をつくって、今後この緊急対策に当たる、けっこうです。そのときに、さすが長官は言いませんけれども、二階堂官房長官は、いままでのような各省庁のばらばら行政では困る、したがって、これが進まないのだということを自己批判しているのです。あなたも聞いたはずです。そうすると、環境庁は、そういうようなことでないために強力に一本化するために環境庁という庁ができたのでありますから、そのできたときの趣旨に沿っておらないということでありますので、今後――やはりこういうばらばら行政がこういう結果になったんだ、こういうようなことはまことに環境庁に対して侮辱なんでありまして、私はなぜそういうふうになっているかというところに問題があろうかと思います。その証拠の一つとして私はここではっきりさせておきたい。  中央公害対策審議会でいろいろ開発に対しての危惧すべき点をやりました。八つの罪というこれに当たるかどうか知りませんが、その中で、開発を始める前の調査が不十分だったということが現在のこういうような乱開発の基礎的な要因であること、自然についての調査を事前にしなかった、こういうような反省点をあげているのであります。今回いよいよ北海道の苫小牧の東部工業基地開発、この着工が事実上きまった、こういうような報道がなされております。環境庁もこの計画に同意した、こういうように言われておるのであります。はたしてそうだというならば、環境庁自身が環境破壊のこういうようなやり方に対して賛成したというやり方は、もうすでに環境庁を裏切る行為であります。しかして、これがどうなるのか、私は重大な関心を持っておるのでありまして、これに対してははっきりさせてもらわなければなりません。長官、これははたしてそういうような意味でもう認めたのですか。
  79. 三木武夫

    三木国務大臣 今月の末に法案の審議会、どれに正式にかかって、きめるというのはその段階でありますが、とにかく苫小牧は現在でもいろいろな環境基準の点から申しましていろいろ問題点があるわけでありますから、今後いろいろな工場の立地を進めていくについては、きわめて厳重な規制を行なって、そういう環境容量全体とにらみ合わせて、工場の立地というものを認めていく。とにかく公害防止あるいは環境保全ということ、このことを前提としながら苫小牧の開発は進めていくという基本的な態度でございます。
  80. 島本虎三

    ○島本委員 それについてはもう前例もあるはずです。第二期、第三期の計画が第一期の終了しないうちにもう着工しようとして、大分の例がここに歴然としてあるわけです。あれは開発の失敗でしょう。同時に、響灘にもそういうような事例が埋め立てに関してあるわけであります。これはもうすでに御存じでしょう。そうしてそれが瀬戸内海十一府県の中にこれが見られてきたのが、現在死の海にした瀬戸内海の現状だということ、原因だということははっきりわかっているはずです。したがって、今後やる場合にはそうであってはならないはずであります。したがって、ここではっきりした、あくまでも環境保全公害防止、これに全力をあげて、事前調査に徹底的に取り組まなければならないし、そうして何よりも環境保全を第一に取り上げるべきだ、これにそぐわないものは許可しないというような基本方針になったじゃありませんか。では、試みに苫小牧の場合には東部開発、これは巨大開発でありまして、これはもうすでに日本がこれほどの大きな開発はないような巨大開発になります。その中でいろいろな要件があったはずでありますが、環境保全公害防止、これを第一に取り上げて、絶対にこれは安心だというはっきりした確証と施策ができてから、これをお認めになっているのですか。そしてどういうようないきさつで認めたのですか。これについて事務当局から伺いたいと思います。
  81. 船後正道

    ○船後政府委員 苫小牧の東部工業開発先生御指摘のようにまさに巨大開発でございまして、これを環境保全という見地から慎重に進めていかねばならないと考えております。  当面問題になっておりますのは、港湾をどのような計画で着工するかという問題でございます。まず港湾計画と開発計画との関係でございますが、港湾計画はある程度開発計画というものを前提にして考えねばなりません。したがいまして、現在のところ、港湾計画を進めるについて、必要な範囲内におきまして開発計画というものを検討いたしておるわけでございます。北海道の東部の苫小牧開発計画は、御承知のとおり、基本計画では鉄鋼二千万トンあるいは石油精製百万バーレルという、かなりといいますか、日本でも最大の規模を考えておるわけでございます。しかし御指摘のように、現在まで環境上の諸条件につきまして種々検討いたしました結果では、現在のところ、この基本計画に示されておりますような生産規模がそっくりそのまま入って、しかも環境保全上絶対だいじょうぶであるということにつきましての見通しは得がたい段階でございます。そのようなことから、当面の港湾計画を進めるについて環境保全上絶対必要な条件は何であるかということにつきまして、道を中心にいわゆる環境アセスメントを進めてまいったところでありまして、この結論に基づきまして、基本計画そのものの検討はさらに今後に譲りつつも、当面の港湾計画というものをきめたいという北海道の御希望がございまして、この六月の末には港湾審議会に付議する予定になっているということでございます。
  82. 島本虎三

    ○島本委員 環境基準や環境保全をあと回しにして、とりあえず着工をきめた、こういうようなことはいままでと同じやり方じゃありませんか、長官。いままではそれをやっていたからあと追い行政になり、日本列島がいまのような公害列島になってしまっているのです。今度だけはそういうことじゃない、こういうような発想だったと思うのですが、それも依然として同じような状態じゃありませんか。この開発姿勢は経済成長時代の開発路線と考え方が同じだ。第三期の開発計画だけは、いまのように社会情勢が変わっています。経済情勢も変わっています。長官はこれに対して、経済成長率は七%か八%程度に押えるのが望ましい、そのようなことをはっきり言っている。しかし、この計画は一一%から一二%の計画ではありませんか。環境庁長官が言っていることと事務当局が指導していることとは全然違う。これが現在の有機水銀や現在のカドミウムや現在のPCB、こういうようなもののはんらんを起こすもとなんです。これはまさに経済開発優先主義じゃありませんか。こういうようなやり方では、もう全然なっておりません。港を認めることは、すでに後背地の設置を認めることです。こういうようなやり方はもうすでに日本では禁止になっているはずなんです。どういうわけでこれを認めたのか。いまだにむつ小川原の開発を認めておらない。志布志湾、これとて重大な問題であって、これも認めておらない。北海道が手薄だといって北海道に巨大開発のオーケーを出す。これではまさに環境破壊の元凶は環境庁ということになるじゃありませんか。環境庁長官、これは重大ですよ。
  83. 船後正道

    ○船後政府委員 先ほどは現状における経緯を申し上げたのでございますが、この東苫小牧の問題を考えます場合に、私どもといたしましては、人の健康が絶対にそこなわれないという厳重なる環境目標を設定いたしまして、開発のいかなる段階においてもこの条件が維持されるということを絶対的な条件として、開発を進めていくという方向でもって検討いたしておるところでございます。  それにつきましては、まずここに立地を予定いたしておりますような先ほど申し上げました生産規模、これを前提とするならばどのような汚染負荷の排出量があるかという予測をし、他方、このきびしい環境基準を維持するためにはどの程度に排出量を抑制しなければならないかということを予測し、両者との関連から、ここに立地すべき業種及びその規模あるいは絶対守るべき排出上の条件というものをはじき出し、その結果に基づきまして、どの程度開発計画ならば環境保全上問題はないかという検討を進めておるわけでございます。  現在までのところ少なくともいえますことは、現状のような技術を前提といたします限り、当初基本計画で示されております鉄鋼の二千万トンあるいは石油の百万バーレルというものを同時に達成することは、これは至難であるということでございますので、当面鉄鋼の二千万トンはこれをたな上げいたしまして、それによって当面の港湾計画策定に必要な開発規模というものを想定する。  なお、これは十五年、二十年にわたる長期の計画でございますから、当然のことながら、今後環境アセスメントも客観的な自然条件その他のデータの整備をまつ、あるいはアセスメント手法の開発も期待いたしまして、今後も引き続き細部にわたるアセスメントを行ない、それによりまして現実に工場のレイアウト等の観点から環境保全ができないという見通しがつきました場合には、直ちにその部分は修正する。それに伴いまして当然港湾計画も後ほど修正されるべきであるというふうに、絶えず、工事の進行と現状の把握、そして将来の予測というものを勘案いたしまして、これが冒頭に申しましたように、開発のいかなる段階においてもきびしい環境保全目標が維持されるという条件のもとに開発を進めていく、そういう新しい開発にすべきである、かように考えて、北海道及び北海道開発庁におきましても、このような環境保全を大前提とする開発の進め方につきましては同意を得ているところであります。
  84. 島本虎三

    ○島本委員 じゃ念のために言うが、新産都市計画においても同様に公害を出してもいいという開発だったのですか、この点はっきりさせてください。新産都市の場合の指導はどうだったのですか。
  85. 船後正道

    ○船後政府委員 過去の新産、工特等、このように計画的に工業開発が進められました場合、先生御指摘のように、開発主体は無公害を標榜しておったわけでありますが、結果といたしましては現状に見るがごとき非常に問題が起こっておる。この反省に立ちまして、私どもは、当初の、まず開発計画そのものが単なるフィジカルプランに終わることなく経済上の指標以上に環境上の目標の厳守ということから開発目標それ自体を修正する。さらに先ほど来申しておりますように、やはり将来の汚染予測という問題がからまることでございますから、開発のあらゆる段階におきましていろいろな条件をそのつどチェックしながら、もし当初の予想と合わないようなあぶない問題が起きるような見通しが立てば、その開発計画はそのつど厳重に修正していくという方向で進めてまいりたい、かように考えております。
  86. 島本虎三

    ○島本委員 長官、いままでも同じ方法なんです。いまのようにして工事の進行と現状の把握、いままでしておりませんでしたか。これもしているのです。通産省やその他の官庁、指導もしているのです。環境庁ができて四十六年以来直接調整権を発動してまでもやっていたのです。それでもだめだったのです。まして将来の予測も把握してやるんだ。将来の予測の把握、これはどういうことですか。具体的にこれが港湾の審議会にかかって許可されたら、まっこうに立ちはだかるのは後背地における鉄鋼なんです、石油なんです、石油の精製なんです。そういうような一つのプランがあるのに港を切り離してやるからいいんだ、こういうような考え一つ一つチェックするんだ、こういうような考え。いまは鉄鋼を抜いているからいいんだ、鉄鋼を引っ込めたからこれを認めるんだというならば、鉄鋼は将来認めないという方針でこれを進めなければ合わないことになるじゃありませんか。そういうような方法でこれをやっているのですか。
  87. 船後正道

    ○船後政府委員 鉄鋼につきましては、先ほど来申しておりますように、道におきましてきびしい環境目標の維持を前提条件として種々環境アセスメントをいたしたのでございます。現在の技術をもっていたしますれば鉄鋼二千万トン、石油精製百万バーレル等の当初の基本計画を同時に行なうということは環境保全上きわめて問題が多いという結論に達したわけでございます。一番問題の多い鉄鋼につきましては、これを留保するという前提のもとの開発計画に対して港湾計画を考えていこうということで港湾計画の作業を進めておるわけでございます。もちろん鉄鋼につきましては、現状の予測をもっていたしましてもきわめて問題が多いことがわかっているのでございますが、鉄鋼以外のものにつきましても、私が先ほど来御説明申しておりますように、当然このアセスメントは一回限りで終わるわけではございません。その後種々のデータ、条件等を勘案いたしましてそのつど検討し、さらに細部を詰めてまいって、業種、企業の規模あるいは排出上の条件等につきましては明らかに定めてまいりたい、かように考えております。
  88. 島本虎三

    ○島本委員 まさに開発を認めるという前提に立ってこれをやることです。環境庁はできて以来いままでこういうことをやっておりません。今回初めてです。いままではそういうものに対してチェックをしていた。そういうおそれのあるものを認めなかった。今度の場合は鉄鋼を引っ込めさせて認める。自分で提案している。そして鉄鋼を引っ込めさせたのも、じゃ今後は認めないのかといったらそうでもない、開発を推進する。いままでの考え方と同じじゃありませんか。長官、これじゃ困るのです。当然これは問題になります。まだまだそのほかにやらなければならぬ問題がたくさんある。それをやらないでまず窓口、入り口をちゃんと開く、後背地を目的にして港ができるのですから、やった以上道東のようにこれはつくり上げられていくのです。もうすでにはっきりわかっていることじゃありませんか。何のために再びこういうような失敗をおかすようなことをするのですか。まさに政治的な配慮である、こういわざるを得ません。それで、環境庁からこういうような提案をしていくというのはそもそもおかしいことだ。現段階でなぜチェックすることに重点を置いてやらぬのか。少なくともそうであるならば、環境を侵すおそれがある以上鉄鋼は認めない方針はあるのかと聞いておるのに、そうではない、認める、ただ保留するだけだ、こういう開発です。とんでもない時代錯誤です。長官の意向を聞きます。
  89. 三木武夫

    三木国務大臣 この問題はいろいろな過去における開発からくる環境の破壊、環境の汚染というものに対して反省の上に立ってわれわれはやらなければならぬわけであります。そういう意味でありますから、われわれとしては開発を否定するということは現実的ではありません。しかしその開発というものが、人間の健康というものを中心に考えてみて、そういう環境の汚染ということは絶対の要件として認められないという立場でありますから、われわれが、環境庁としては苫小牧の臨海工業地帯全体の環境容量というものを頭に入れて、その範囲内でなければ工場の立地は認められないという立場でありますから、環境庁としては何がいかぬ、これがいかぬということよりも、もし新たなる産業の立地が行なわれれば汚染に対しての度合いが非常に増すわけでありますから、そういう全体を勘案をしながら今後の産業立地に対しては規制を加えていく、環境の汚染というものに対して問題が起こるような場合は事前において開発は認めない、こういうことで島本委員との少しの意見の相違は、開発の全面的否定という立場には立っていないわけであります。まだまだ開発の必要な面はあるけれども、その開発前提になるものは、やはり環境の汚染というものが前提になります。だからいろいろな計画を北海道の側において立てておっても、それがやはり人間の健康を害するような環境の破壊を伴ったときにはその開発は今後認めないという立場は堅持するつもりでございます。そうでなければ――これだけいろいろ問題が起こってきて、その反省の上に立った行政を今後進めていきたいという考えでございます。
  90. 島本虎三

    ○島本委員 したがっていま言ったようにして汚染が認められないし、工場立地もその点では認めないのだ、そういうおそれがないからいま鉄鋼だけをはずして一応認めるようにしたのだ、こういうお話だったのですが、おそれがある以上、保留はしてあるけれども保留のままで、鉄鋼は汚染のおそれがあると思えば認められないことも当然あり得るのだ、こういうふうに考えられるわけです。そうですか。
  91. 三木武夫

    三木国務大臣 それは当然のことです。全体の環境容量を考えて、そして環境容量をオーバーするような産業の立地は認めないということが基本の態度でございます。
  92. 島本虎三

    ○島本委員 おそれがあるものは認めない、この方針、これだけでも一つの前進なんです。しかしこれでもまだまだ前進といえない。それならば試みに、これはどういうようなことになっておるのですか。この開発地帯に、勇払地区の住民五千四百人、千百世帯があって、サンドイッチのように巻かれておるのです。いまの四日市、大分と同じ状況です。そういうような工業計画、それに対してどういうような意向でこれを認めたのか。これは重大な環境破壊じゃありませんか。五千四百名、千百世帯もその中にあるのですよ。埋没してあるのですよ。周囲は全部取り巻かれているんですよ。もちろんこれは環境は破壊しない、全然公害はないからそこにおってもよろしいんだ、こういう発想法だと思うのです。まあこの計画は公害を出さないんだからその中にいてもインダストリアルパークという発想で、これは楽しくそこに住居をかまえていられるのだ、そういう発想でしょうかね。
  93. 船後正道

    ○船後政府委員 勇払につきましては、御指摘のようにこの東部苫小牧の工業地帯が完成いたしますと、現在の苫小牧とその東部とのちょうど中間地帯になるわけでございまして、環境保全上一番問題のある地点になることは御指摘のとおりでございます。したがいまして、この北海道の開発計画を進めるにあたりまして、勇払をいかに考えるかというのは最大の問題であります。考え方によりますれば、住工分離ということを徹底いたしまして、勇払につきまして移転等の措置考えるというのも一つの解決方法である。あるいはまた先生御指摘のように、勇払につきましてはこれを住宅地といたしまして残し、しかもおっしゃるようなインダストリアルパークでございますとか、そういった構想のもとに勇払は公害を受けない地域として保全していくという一つ考え方もあるわけでございます。これらにつきましては、私どもは問題点は指摘いたしておりますが、なお北海道開発庁及び道におきましては、この取り扱い方につきまして最終的な判断は現在のところなかなかむずかしいという状況のように承っております。  そういたしますと、問題になりますのは、先ほどの鉄鋼の立地いたしております予定地域でございますが、これが一番勇払地区に近いわけでございまして、鉄鋼留保は、同時にこの地区の開発計画というものも留保いたしておるわけでございます。したがいまして、今後この勇払問題をどうするか、これはもうまさに道あるいは苫小牧市の決心でございますから、その条件いかんによりましては、先ほど長官も申しておりますように、鉄鋼立地は決定的にむずかしくなるというような事態も考えられるわけでございます。
  94. 島本虎三

    ○島本委員 北海道ではこれに対してどういうふうな計画を進めようとしているんですか。
  95. 山田嘉治

    ○山田(嘉)政府委員 勇払の問題につきましては、ただいま船後調整局長からお答えがございましたようにこれは一つの問題の焦点であるというふうに考えておる次第でございます。この苫小牧開発計画の基本になりますわれわれの考え方からいたしますと、住工分離ということが最も望ましいのでございまして、そういう観点から申しますと、勇払の地区は西のほうに現在の苫小牧の工業地帯がございます。それに加えて今度東のほうに大規模工業基地をつくるということになりますと、ちょうどその中間に位することになりますので、先ほど船後局長からもお話がございましたように、住二分離というような観点に立てば、現在でもパルプ工場のもとにある場所でございますけれども、住区の移転ということが一つの方法として考えられてしかるべき地域ではないかというふうに考えております。しかしこれはあくまでもこれを決定いたしますのは地元の苫小牧市なりあるいはそこの住民の考え方が最終的にこれをきめることでございまして、開発庁としては、この問題につきましてはきわめて慎重に北海道庁等と相談、合い議いたしておりますが、最終的な結論が出る段階にまだ至っておりません。したがいまして、鉄鋼をこの際留保しなければならないというようなことも、実はこの問題と深いかかわり合いを持っておりまして、もしこの住区の移転ということがどうしても最終的にないというようなかりに結論になったといたしますと、これは東部の計画にも相当な影響を与えまして、現在、いまお話ございましたように、それに東に隣接するような形で計画しております鉄鋼の地域につきましては、相当これは考え方を修正していかなくちゃならぬことになるであろうというように考えておる次第でございます。
  96. 島本虎三

    ○島本委員 まず第一に、開発庁自体がどうするかということをはっきりきめないで開発を進めるという考え方はどうなんですか、一体条件が整わないのにもう入り口のこの港、大型港も認めてやる、こういうような手続を二十八日とる。一体どうなんですか。はっきりこれはさまってからやるべきじゃないですか。これは集団移転という考えもあるかのように承る。またそうでないような考えもあるように承る。論がわからないうちに進めてしまえば、あとは住民の意向がどうであろうと追いやられるのですよ。こういうようなやり方でも長官、やはり認めてやらせるのですか、こういうようなのは。これは重大じゃありませんか。きまってないというじゃありませんか。
  97. 山田嘉治

    ○山田(嘉)政府委員 お答え申し上げます。  港湾の計画との関係でございますが、先ほどからお話ございましたように、鉄鋼にかかわる部分の港湾計画につきましては、これを留保するという形で次の港湾審議会にかけたらどうであろうかというようなことで、現在相談が行なわれておるわけでございます。  それで配置につきまして申し上げますと、この東部の港は、一番東のほうに石油、それから西のほうに鉄鋼という順序で配列を予定しておりますので、それに伴いまして、三本の水路及び埋め立てということを予定をしております。一番その西のほうの鉄鋼にかかる部分につきましては、先ほど申しましたように、鉄鋼にかかる計画を留保するということになりますと、これはその部分では港湾計画に載りませんからそこは着手されないということになります。  それから港湾をつくっていく場合の技術的な問題でございますが、これは現在の港でもそうでございますが、あの辺の海岸の自然の現象、漂砂等々の問題がございまして、そういった観点から申しまして港の着工は、これは運輸省のほうの御管轄でございますけれども、東のほうから逐次手をつけていく。まず防波堤を一本出しまして、東のほうから逐次手をつけていくということに相なりますので、東のほうの石油の関連のほうの部分といま考えておる地点でございますが、そちらのほうから逐次着工してまいるということになりますので、当面鉄鋼の最終的な姿がどうなるかわからないままで留保して着工するということにつきまして、技術的な問題はないと申しますか、手戻り等の要素はないというように考えておる次第でございます。
  98. 島本虎三

    ○島本委員 それも重大な誤りです。東からやろうと西からやろうと、東部防波堤、そうしてこれはもう十九億円、八千メートルの延長でしょう。そうしてこれは全貨物量は二億六千万トン、そしてこの入港船舶は三万八千隻を予定している。それも七万トンか八万トンクラスの船舶も自由にやられるようにしてある。こういうような大きい計画そのものはまさに、どっちから着手しようと、着手したら後背地にこういうものをつくることが前提条件なんだ。したがって、環境基準、これをはっきりおかすようなおそれがある場合には、これは厳重に鉄鋼あたりもやらせないんだ、この決意があるのかと言うのですよ。長官は、これはもうそういう場合にはやらせない、こういうように言うから私はいま進めているのです。ところがいまの話を聞いてみると、どっちからやってもこれは同じなんだ、こういうように進めるんだ、こういうふうにとられますと、とんでもないことになる。ましてこの中に入る勇払の地区の住民、これに対して、もうすでに集団移転の計画を出して住民に反対を受けているじゃありませんか。何にもないというけれども、もうすでにそれを出して反対を受けているじゃありませんか。苫小牧の大泉市長も、勇払は残すんだ、したがって公害は出さないんだと市長自身がそれを言明しているじゃありませんか。そういう状態なんです。そういうようなのも無理してこれを許可してやったのがおかしいというのです。長官、そういうような状態ですから、もしそのおそれがある場合には、鉄鋼に対しては将来これをやめさせる、やらせないようにしながらも環境基準を守る、これでないとだめですよ。あえていまの答弁を聞きながら、また心配ですから、長官に一つだけただします。
  99. 三木武夫

    三木国務大臣 それは住工分離というのは好ましいですからね。勇払の移転ということが、地方の事情というものもあるでしょうけれども、それは一番好ましいことでありますが、それができないということになれば、環境基準はきびしくなる、当然のことであります。そういうことでいろいろ予定をしておる工場、たとえば鉄鋼のほうも、そういうことで、勇払の移転ということなくして、そのままの現状において、いま予定しているような工場立地が行なわれることはありません。それは相当にきびしい規制を受けざるを得ないことは当然でございます。
  100. 島本虎三

    ○島本委員 硫黄酸化物それから窒素酸化物の防除に対して明確な汚染予測が行なわれましたか。
  101. 山田嘉治

    ○山田(嘉)政府委員 私からお答えするのが適当かどうか、ちょっと疑問点がございますけれども、現在の状況について申し上げますと、これは先ほど船後局長から御答弁申し上げましたように、環境庁の御指導を受けまして、北海道庁のほうでこの工業基地の企業立地を決定するための環境の事前調査ということを現在鋭意詰めておる段階でございまして、私ども承知しておりますところによりますと、最近、国の環境基準として非常に厳正な、きびしい硫黄酸化物及び窒素酸化物の環境基準がきめられたのでございますので、もちろんこの環境基準を達成できるという範囲内に工場全体、工業基地全体の総排出量を押えるということで作業が行なわれているように承知しております。これはもちろん新しい東部の苫小牧だけではございませんで、現在のいわゆる第一苫小牧のほうと合わせて排出量の規制をしなければならないことはもちろんでございます。
  102. 島本虎三

    ○島本委員 これはなされていないのです。それなのに、もうすでにそれを認めようとしているのです。また過去の同じようなことを繰り返すじゃありませんか。いま大分でもあの開発が問題になっているのは、汚染物質の拡散に対しての逆転層の発生条件についての調査をしないで向こうは許可して、いま問題になっています。この気象状況と逆転層の調査、こういうようなものをして、これを認めるようにしているのですか。認めたのですか。
  103. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 お答えいたします。  硫黄酸化物と窒素酸化物と逆転層の問題につきましては、私ども測定の行なわれておりますデータをもとに、図上の計算をいたしました。――図上といいますか、机上の計算をいたしました。  硫黄酸化物につきまして現在測定しておるところが七カ所ございますが、データとしては五カ所ございます。現在の硫黄酸化物の自動測定の新しい環境基準に照らしてみますと、現状で九九・六あるいは九六・二%が新しいきびしい環境基準を満足しておるところ、それ以外のところは一〇〇%満足し得るというデータを得ました。ただし、一番初めの計画の膨大な計画でございますと、硫黄分一・〇の重油を使って一万六千立方メートル・パー・アワーの排出総量になりますので、新しい環境基準に適合させるためには、これだけのものはできませんで、八千ノルマル立米という計算が出て、その際はS分が〇・四%にならなければならないという計算が出たわけであります。なお、鉄鋼立地を留保した場合には、総排出量が八千よりさらに下がって、六千という計算が出されました。  窒素酸化物につきましては、これは計測が四十八年四月から二カ所で測定器を設置して計測しておりますので、実質上のデータは今後でございます。ただ、苫小牧地区のバックグラウンドを調査したところ、〇・〇〇三PPMという計測が出ております。ただし、目標値は非常にきびしいものが先般出されましたので、これは初めの計画でございますと一万九千余の排出窒素量のノルマル立米パー・アワーが出ておりますが、これでは相当むずかしく、私どもの計算では、総排出量は五千立方メートルにしなければいけない。ただし、鉄鋼立地が留保された場合には四千ノルマル立米という計算が出てまいりました。  それから、逆転層につきましては、この観測は四十七年度の通産省の産業公害総合事前調査で七月に行なわれました高度別の五十メートルから五百メートルの五十メートルずつのデータが、乱流、気温、風速、風向の特性について調査が出ておりますが、これではなお不十分でございますので、四十八年度から三カ年計画で諸調査を実施するように指導しております。
  104. 島本虎三

    ○島本委員 全然これじゃだめです。まずその前に、大分の逆転層の調査、現にもう開発されているこういうふうな重大な際に、これは通産省ではやっているのですか。そして大分の場合はどういうような指導をしておるのですか。
  105. 松村克之

    ○松村説明員 お答えいたします。  大分につきましては、大分県と通産省と合同して調査を行なったのでございますけれども、その場合には、気象条件といいますか、現地における気象データを調査いたしたということでございまして、気象実験と申しますか、そういったことはやっておりません。
  106. 島本虎三

    ○島本委員 十分調査をしないままに第二の計画なんか実施さして、その結果がいまの大分の惨状です。そしてもうすでに公害罪処罰法によって住友は告発されたりしているのです。これも通産省はじめ政府の責任、こう言わざるを得ないと思うのです。現にこれをやっていながら、新しいところは新しいところで、それをやるといいながら、旧苫小牧、いわゆる新産都市で開発した旧苫です。その方面の施策は十分ですか。念のために言っておきますけれども、これは不十分です。こんな中にまた新しい計画をどうして入れてやっていけるのですか。いま苫小牧の王子製紙の砒素のたれ流し事件というのが大きい問題になっておりますが、一体これはどういうようなことなのですか。いつ起きて、そして砒素のたれ流しによってどういう被害を受けているのですか。これは通産省並びに水産庁のほうから報告してもらいたい。
  107. 岡安誠

    ○岡安政府委員 現在の苫小牧におきます王子製紙の砒素の問題でございますが、北海道庁で苫小牧川におきまして五月二十一日から二十四日までの間におきまして実施いたしました水質環境基準監視調査の結果によりますと、環境基準を上回ります砒素が検出されたわけでございます。同時に、王子製紙の苫小牧工場からの排水水質の調査をいたしました結果、やはりその排水水質におきましても排水基準を上回る砒素が出されたということがわかったわけでございます。これに対しまして、北海道庁は、同工場に対しまして直ちに水質汚濁防止法に基づきます改善命令を発しまして、砒素を排出する工程を廃止をする、やめるという命令をいたしまして、現在すでにそのような措置がなされておるわけでございます。
  108. 島本虎三

    ○島本委員 したがって、旧苫においてもこれは不完全。工場は除去施設もつけておらないでしょう。そのままのたれ流しでしょう。砒素の排出量は幾らなんですか。そして何年間たれ流したのですか。それをはっきりつかんでおりますか。応急の措置をさしたという。どういう措置をさしたのですか。いまのような三つについて答弁してみてください。
  109. 岡安誠

    ○岡安政府委員 現在までの総排出量につきましてはまだ調査をいたしておりませんが、当時におきます水質といたしましては、排水基準を越えるような、一PPMをこえるような水質の水を排水いたしておったわけでございます。措置といたしましては、砒素を発生するような工程をやめるというふうになりましたので、今後は砒素は絶対に出ないというような措置を命じて行なわれておるわけでございます。
  110. 島本虎三

    ○島本委員 今後出ないのはわかったけれども、いままで何年間、どれだけ流しておったかというのです。被害が出ているから。通産省のほうではそれを知らないのですか。どういう指導をしていたのですか。排水基準の二倍から三・六倍、これは工場の排水口で検出できたのです。下流の苫小牧側では環境基準の四・七倍、これだけのものを検出しているのです。そういうような施設がないはずのものを、使ってならないというものをやっていたのです。過去にどれだけ流したか、これはつかんでないですか。
  111. 青木慎三

    ○青木政府委員 現在のところその数字はつかんでおりません。
  112. 島本虎三

    ○島本委員 まことにお粗末でありますが、つかまなくてもいいのですか。
  113. 青木慎三

    ○青木政府委員 実情調査しまして数字をつかみまして御報告いたします。
  114. 島本虎三

    ○島本委員 いままでは実情を全然調査してないのですか、こういうような重大な事態でも。
  115. 青木慎三

    ○青木政府委員 現在のところ取り締まりのほうは道のほうにまかしてございますので、私どものほうは事実をキャッチしておりませんでしたので、今後、過去の分につきましてはよく事情を聴取いたしまして調べた上で御報告いたします。
  116. 島本虎三

    ○島本委員 これは電話でもわかることですからすぐ調査してすぐ報告してもらいたい。  これだけじゃないのです。苫小牧の旧苫の中に共同火力発電があります。共同火力発電の温排水を――この周辺の海域で漁民の生活をささえているホッキ貝が大幅に激減してきている。本年の五月三十一日にこれが苫小牧の漁業協同組合で問題になって調査した。東西五百メートル、沖合い五百メートル、そして共同火力発電操業前と操業後、これを調査したところが、四十五年推定では百十万個、操業開始後、四十八年三月の調査では三十三万個、三分一以下に減っているわけです。そしてこれは、水揚げの四七%を占める海域、これが奪われる漁民の残っている海域がこのようにして汚染される。一体、これはどういうことなんですか。水産庁もこういうようなのを黙って見ていって、いいわけはないでしょう。これは報告を受けておりませんか。
  117. 安福数夫

    ○安福政府委員 現在までのところ道庁のほうから私ども聞いておりませんので、早速照会いたしまして、また報告さしていただきます。
  118. 島本虎三

    ○島本委員 それにしても、これもまた漁民と水産業を守る立場にあるのが水産庁ですから、すぐ手を打たないといけません。  それに対していろいろございますけれども、苫小牧ケミカル、ここでは五月中旬に亜硫酸の大量排出事故があって、操業を停止して工場を五日間にわたって総点検した、こういう事故がございましたが、こういうような旧苫の中にある事故、これは通産省では知っておりませんか。
  119. 青木慎三

    ○青木政府委員 現在までのところ報告を受けておりません。
  120. 島本虎三

    ○島本委員 昭和四十八年六月六日の朝にもう黒いタール状の雨が降ってきた。そして雑草が全部色が変わり、中には枯れたものもある。早速調査したところが、これは王子製紙の八号ボイラーの排煙脱硫装置の定期検査を行なった際に、ボイラーをそのままにしてやったためにそういうようなばいじんを吹っ飛ばしたのだ、こういうような事故があったようでありますけれども、こういう点についても全然知っておりませんか。
  121. 青木慎三

    ○青木政府委員 その点につきましても報告を受けておりません。
  122. 島本虎三

    ○島本委員 苫小牧の沖合いのホッキ貝の怪死事件に対して、王子製紙が千五百万円、水産振興費、こういうようなことで出したということが新聞に載っておりますが、これは一体どういうことですか、水産庁。
  123. 安福数夫

    ○安福政府委員 ただいま御指摘の点について、私、承知いたしておりませんけれども、温排水の関係でそういう事実があったということを会社が認めるということに関連して別途水産に対する振興費を会社が持った、こういうふうに理解するのかと思いますけれども、私どもそういった事態についての報告がございませんので、そういった点についても十分、後ほどまた報告さしていただきます。
  124. 島本虎三

    ○島本委員 この調査の結果、工場排水等によって蓄積されたヘドロが原因である可能性が強い。こういうようなことだけで原因の断定はしないわけです。したがって、こういう措置がとられておるわけです。そこをまた五百万円を足して二千万円にして、また同じところへホッキ貝の養殖をしよう、放し飼いをしよう、こういうのがいまの対策のようであります。全然、これはなっていないじゃありませんか。水産庁も、通産省も、現苫の状態で、こういうようにして、いまめちゃくちゃです、その報告さえも受けていない。そこへいま新たに勇払原野、約一万ヘクタールを切り開いて、鉄鋼や石油精製、石油化学、アルミ製錬、電力、このような重化学コンビナートを形成しようとしておるのです。その完成時には、昭和六十年代でありますが、工業出荷額は三兆三千億。鹿島が二兆円台ですから、それを上回る最大の巨大開発。それをいまやろうとしておるのです。そして現苫がこのような悪い状態にあるのに、そのままにして、これも不十分な調査の上に立って許可だけ先にしておく。こういうようなことは私は許されないことだと思うのです。  現苫の対策に対して、一体環境庁はどういうようにこれを把握しながら、いまの新しい計画に対して一歩踏み出したのですか。いままでいろいろ答弁がありましたが、それを環境庁は全然キャッチしていないのですか。
  125. 船後正道

    ○船後政府委員 現在、苫小牧地区につきましては先生御指摘のとおり環境保全上かなり問題がございます。一つは大気に関するSO2、NO2等の汚染状況でございますが、SO2につきましては先ほど大気保全局長から御報告申し上げましたようにいままでの環境基準は満たしておりますけれども、今回設定されました環境基準は全部満たすには至らないという状況でございました。NO2につきましてもほぼ同じような状況でございます。でございますから、私どもは現在の苫小牧地区につきまして、こういったSO2とかNO2に関しましては現在のきびしい環境基準を満たすように早急に規制の強化をはからねばならない。同時にまた、先ほど来種々御指摘のように、水質や大気に関しましてあるいは有害物質の排出等によって被害が起こっておるわけでございますから、こういったことにつきましては絶対にそのようなたれ流しをしないという取り締まりが必要でございます。これらを総合的に担保いたしますために、現在苫小牧地区につきましては公害防止計画をつくって、これを計画的に是正していくということを強力に推し進めたいと考えております。
  126. 島本虎三

    ○島本委員 もっと重要な問題があるのです。そういうのが前提条件となっていま開発をしようとするその土地、これが苫小牧の東部大規模工業基地の用地取得に対する疑惑、農地買収を不当な手段で行なったという問題となって、道議会でも地方自治法百条委員会ができて調査中です。それと同時に道警が入って、その問題に対していま手入れをしている最中です。何ら基礎ができ上がっておらない、こういうような疑惑のような問題に満ちているところを、何で急いでこれらをもう君主させるかのような、こういうような準備をさせるのですか。これが全部整わない以上、これをやってはいけません。これ知っていますか。知っているのになぜ二十八日に審議会にかけてこれを進めようとするのですか。条件が整っていないじゃありませんか。だめです、これはもう長官。これは長官のほうから二十八日のこれは、いままで数回にわたって留保してきたのですから、今回これをまたはっきりきわめるまでの間保留にしておかないととんでもないことになります。
  127. 佐野憲治

    佐野委員長 この際、午後二時四十分まで休憩いたします。    午後二時三分休憩      ――――◇―――――    午後二時四十三分開議
  128. 佐野憲治

    佐野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。島本虎三君。
  129. 島本虎三

    ○島本委員 先ほども申し上げましたが、この苫小牧東部大規模工業基地の用地取得に対して、現在北海道では不動産業者をはじめとして、道までも農地法に違反するでたらめな売買をしたということで、いま北海道議会で厳重な追及をされているところであります。それと同時に、並行して苫小牧に関して道警本部等でも、四十八年六月二日、農民から違法な取得をした農地をそのままにして道に販売していった日本企業ドックなどをはじめとした五社八カ所を、同法の三条の疑いで家宅捜索や関係書類の押収、こういうものをしている最中であります。それと同時に、摘発された関係業者から土地を買ったという北海道の企業局自体もいま任意出頭を求められ、そしてこれが拡大する様相があるわけであります。こういうような状態で、はっきりと取得されたこの土地さえも不当なやり方と思われるようなやり方でこれは売買しておった、こういうようなことで司直の手が入っているわけです。こういうような状態の中で、なぜ急いでこれをやらなければならないのかということが問題なんであります。  私どもそれでまず第一番に、いま北海道議会でも道議会地方自治法第百条委員会というのをつくって、この委員会調査中であります。道警本部でも当然いまのような疑いで、これはもう捜査に入っているのであります。そして、今月の初めに農地法違反の疑いでそれら不動産会社は捜索されて、関係書類を押収されています。関係書類までこれはもう長官、押収されているのです。これじゃ前提条件がもうほとんどくずれているじゃありませんか。それだのに今度突破口を開くように、いま港湾審議会にかけてひとつこれを実施させようとするわけです。これは重大なことであります。したがって、いま問題になっているのは、ストップしているのです、地方自治法百条委員会。この審議の対象となった書類も道警本部のほうに押えられてしまっているわけであります。同じ容疑でこれは押えられているのであります。したがいまして、これはもう道警本部のほうでは、捜査の機密保持のために押収した関係書類は百条委員会のほうには、調査委員会のほうには見せられないという。そして、百条委員会のほうでは地方自治法百条に基づく議会の調査権、これは強い権限を議会に与えられておりますから、それによって事態を解明しようとするその資料の提出を要求するわけです。警察のほうでは、刑事訴訟法に基づく捜査権の発動によってそれを拒否する、こういうような事態がいま起こっておるのであります。一体この場合は、議会の強力なる権限を与えられているこの調査権が優先するのか、刑事訴訟法に基づくところの捜査権が先行するのか、これはわれわれもはたと困るところでありますが、自治省の見解をひとつ述べていただきたいと思います。
  130. 砂子田隆

    ○砂子田説明員 ただいま自治法の百条の調査権に関しまして、いずれが優先をするかというお話でございますが、実はこの地方自治法百条の規定は、すでに御案内のとおり、地方自治法自身が公共団体の組織なりあるいは運営について定めている基本的な法律であります。しかも百条の規定と申しますのは、地方自治体の議会に関しましてきわめて重要な、かつ強い機能を与えておるものでありまして、その調査機能によりまして、住民の公益をはかろうとしている規定でもあります。そういう意味で、いま先生おっしゃいましたこの規定が、当該公共団体に関する限り、警察に関しましても、百条の規定を排除するものではないというふうにわれわれ考えております。
  131. 島本虎三

    ○島本委員 そういたしますと、当然私どもの見解でも、これを早く解明させるためにも、やはり地方自治法百条の権限に基づいて、そして議会の調査権というものがあるわけですから、その調査権をやらないと、この解明にならないわけです。その際に、やはり刑事訴訟法に基づく捜査権ということで関係書類を押収してありますから、これはそうすると押収された関係書類の中にそれらのことが全部ありますから、それがはっきり出されない以上は調査が進まない。それをやったのではこれは秘密の漏洩にもなり、警察自身も捜査権がある以上これは困る、暗礁に乗り上がっているのが現状なんです。私どもとしては、やはり強い権限を与えられているんですから、当然道警も、その点は確かに秘密保持のため必要でありましょうが、秘密の保持は双方ともに必要であるはずであります。百条委員会とてもあるはずであります。したがって、道警察自身も、あまりこれは強力に主張しなくても、事件の解明を早めたほうがいいんじゃないか、こういうふうに思うわけでありますけれども、この点については自治省ではどう思いますか。
  132. 砂子田隆

    ○砂子田説明員 ただいま百条の調査権に関します基本的な考え方というものをお示し申し上げましたが、この百条の規定の中にいろいろな規定がございまして、特にいまお話がございました秘密の漏洩ということで警察が刑事訴訟法上これを提出をしないという問題がまた出てくるのではなかろうかと思います。しかしあくまでもこれはこの法律の中にありますように、やはり住民の利益を守る、あるいは公の利益を害するということのない限りはこの請求に応ずべきだというふうに考えております。結果的には刑事訴訟法のいろいろな規定をどう考えるかということはございますが、この地方自治法の規定の中におきましても、一応警察のほうにそういう資料の提供を要求をして、これに対して警察がもしもほんとうに出せないということがありますならば、やはりその旨を疎明をしなければならぬという規定もございます。疎明をした結果、さらに議会としてはこれを承服しがたいということがありますならば、警察においてさらにこれは公の利益を害するから公表できないのだ、提出できないのだということをまた声明をしなければならぬという規定もございます。さらに、そういうことをしない限りは警察署長なり何かが出ていっていろいろ記録について話をしなければならないという規定もございまして、いろいろ地方自治法の中の規定条文を適宜適用しながらこれを解明をしていかざるを得ないだろうというふうに考えております。
  133. 島本虎三

    ○島本委員 長官、こういうふうにして肝心の後背地、工業用地としてこれが行なわれる後背地がいまのような状態でまだ不完全な状態、不完全などころかもうすでに検察の手が入っている、不法な取引で。これが道にまで及ぼうとしているわけです。こういうような状態の中に何を急いで二十八日に港湾審議会に諮問に応じさせようというのですか。これはやはりそういうようなことが全部解明して、そして安心して今後の開発が期待できるような状態になってこそ、長官として踏み切るべきであります。いまこういうような状態の中に、環境庁がいままで環境の破壊であるということでこれを留保してきた、それを今回ばく然たる状態の中で認めたということ。その背後にはもう現苫の中にもいろいろな状態がある。先ほど言ったようにいろいろなもう不当な状態がありましょう。それをそのままにしておるわけです。そのままにしているだけではありません。今度はそれで新しい東部開発、これも日本にかつてないような巨大開発を実施しようとするわけです。いままで十一省庁の中で環境庁環境保全のためにがんばってきたはずです。ところがいままで聞いたところによると、はたしてそれが完全なのか不完全なのか、将来に持ち越しているわけです。将来の時代の進展とともに完全なものにしてこれを実施させようとするわけです。これでは環境庁は一歩後退したのではないか、こういうふうに思わざるを得ません。  そこで、長官に聞きますが、苫小牧の東部工業基地開発計画、これを環境庁は認めて、同意して、港湾審議会の答申に応ずるということにしたのですか。これに応じない、認めない立場をいまでもとっておるのですか。この点はいままでの答弁ではまことに不分明であります。これを明確にしてもらいたいと思います。
  134. 三木武夫

    三木国務大臣 環境庁としては環境保全ということが中心でありますから、土地の問題などは、これはやはりいま問題になっておるわけでありますが、検察当局の手も入るということ、それは別個の問題として処理されなければならぬ。われわれが守らなければならぬのは環境保全でありますから、今後そういう港湾審議会等においてもやはりいろんな計画というものは全体の環境の容量というものとにらみ合わして、そしてそういう条件といいますか、環境保全できるという条件で同意するということ、初めから何でも全部同意するというわけにいかない、われわれとして環境の諸条件が許す範囲内において同意ということにならざるを得ないと思います。
  135. 島本虎三

    ○島本委員 これは後背地の問題で検察当局の手も入っている。現苫のほうでもいままで言ったようにしてまことに漁民や住民に対して不当だと思われるような状態が現出しておる。そして新たに苫小牧の東部巨大開発、その点においても環境保全上いますぐこれをやるわけにはいかないけれども、いま鉄鋼ははずして将来の情勢を見ながら開発を認めた、こういうようなことになるのじゃないかと思いますが、環境保全上これは重要な問題なんです。環境保全されなければこれは認めない、環境保全される以上はこれは認めるというわけです。この点においては計画を認めたということが先行してしまうんじゃないか。環境基準は、計画を認めた以上これは暴走することになるじゃありませんか。前にこれをチェックするようにする、ちゃんとそういうような計画を立てさせないようにして、これを完全にチェックするのが私は環境庁としてのほんとうの立場だと思うのです。真の住民に依拠した立場だと思うのです。企業に依拠した立場は、先にやらしておいてあとから規制することなんです。いま長官のおことばをそのまま聞くと、やはりこれは認めておいてそしてあとから規制するという立場のようであります。これは重大な後退です。そうだとするならば、長官自身は、これはほんとうにいままで言ったことといま認めたこととは全然天と地の違いをここで表明したことになります。いずれが正なる答弁ですか、はっきり伺います。
  136. 三木武夫

    三木国務大臣 私の言っておることは、開発を否定する立場ではない。しかしその開発環境保全前提にするものでなくてはならぬ、そういうことでありますから、今後いろいろ産業の立地計画というものがなされるけれども、その立地計画の中で環境の容量といいますか環境保全上の諸条件を満たさない立地というものは承認をしない、これがわれわれの基本的な態度でございます。
  137. 島本虎三

    ○島本委員 生産と住民の生活の調和、これが以前の三年前の一つの基本的な態度、今度はそれが直ってしまって、いまの長官のことばをそのままちょうだいすると、これは住民のための開発計画ならばよろしいのだ、こういうことになると思います。そうするといま言ったように勇払の住民に対する対策が何らなされておらない。それから現苫に対するこういうような対策も現在時点においてもはっきりしておらない。それで、それに新しい計画を上のせするような行き方、こういうようなことを認めることは結局いままでの大分と同じやり方で、環境庁長官の言うておることは、結局企業が先にやることはやって、あとから公害が出たならばそれは排除しますといういままでと同じ態度にすぎないんじゃないかということです。そうでなければいいのです。これはほんとうに住民のための地域開発なんだ、こういうようなことで徹底するならばいいのです。しかし、いまの長官のことばを聞いていますと、まだそこまでいかないと思うのです。これは長官に言うたって、そこまでは言っても無理なんです。というのは、長官自身の気持ちで答弁しているからなんです。実際の事務は一体これは認めたのか認めないのか、どっちなんだ。もし疑義があるならばもう一回二十八日はずしてはどうなんだ。その間に意思を統一して、月に二回もあるのですから十五日おくらしたって何でもないじゃありませんか。こういう重大な問題であってこれはなぜ急ぐのですか、これがわからないのです。したがって二十八日に急遽これをきめるというような点は当然はずして、もう少し庁内で意思の統一をはかるべきです。そうでない以上、これをやることは結局いままでの轍を繰り返すととになるのです。一回はずして、十五日おくれて国民のためになることなら進んでやるべきじゃありませんか。なぜ急がなければならないのですか。ここが私の最も疑問とするところなんです。長官の言うのはわかったんだ、長官はそれ以上わからないんだから。事務的な点はどうなんです。これは全部認めているわけですか。もし不分明な点があったら二十八日をはずすという点も、一つの留保条件なんですよ。
  138. 山田嘉治

    ○山田(嘉)政府委員 二十八日の港湾審議会は運輸省の港湾審議会でございまして、これは港湾管理者でございますところの北海道庁のほうから、二十八日にこの計画を審議していただきたいということで、申請と申しますか手続がなされておるわけでございます。この日を目標にして港湾審議会で御審議を願うように、その内容等につきましては、環境庁、私どもをはじめ、関係各省でもって、その日を目標にして現在話を詰めておるという段階でございます。
  139. 島本虎三

    ○島本委員 山田総務監理官、あなたの言うのはわかっているんだ。それに対してチェックできるのは環境庁なんです。だから、環境庁環境保全という立場からこれをチェックできるようになっている。それでいままで延びてきているんだ。それが急遽二十八日ときめた。内容を聞いてみたら、まだ不十分な点が山積している。現苫に至ってはもってのほかである。こういうような状態です。したがって、これは環境庁としてもう少し慎重に考えて事を運ばせないと、日本自身また再び汚染することになるのではないか。こういうような起点に立ってもう一回考えなさいと言うのです。二十八日をもう一回はずして考えたらどうですかと言うのです。
  140. 三木武夫

    三木国務大臣 いままで各地の産業立地についていろいろな問題が起こっていますから、そういう反省の上に立ってやるわけです。だから、企業が先へ行ってしまって、環境庁がこれを合理化するという考え方は全然ない。こちらのほうで環境の諸条件というものをきめて、それに当てはまらないものは工場の立地は認めないというわけですから、環境の容量といいますか、環境保全のための諸条件というものが先にある。企業はあとである。だから、それに合致しない産業立地の計画があるといったならば、環境保全上の条件があるのですから、それは認められないという立場です。日本の行政は、いままでの日本の新産業都市などを通じて反省をしなければならぬものをたくさん持っている。そういう反省の上に立ってやるわけですから、先に企業というのはありません。先にあるものは環境保全である。そして、どんなに北海道庁が計画しておっても、われわれの環境保全の諸条件を満たさないときには工場の立地は認めない、こういう態度でございます。
  141. 島本虎三

    ○島本委員 これで終わりますけれども、長官、やはりその態度でもあいまいなところがあることを指摘せざるを得ません。  六月五日のAP通信によると、ワルトハイム国連事務総長がはっきり言っていますね。あらゆる代価を支払って向こう見ずに成長を追求する場合に、長期的に深刻な結果が生じることを知っている、これに対して対処しなければならないと言っています。長官のほうでも、やはり経済成長率は七か八%程度に押えるのが望ましいと言っております。これは反省の上に立っている。しかし、同時に、電力を起こし、鉄鋼や石油精製、こういうようなものによってどんどん輸出が増大している。鉄製品は三割、間接に使っているものは五割、コンビナートをやればやるほど輸出がだんだんふえていっているのです。そして、それによって日本の国民の生命と健康はだんだんそこなわれていっているのです。いまの計画そのものは、七%か八%じゃなく、一一・五%の計画に乗ってこれが行なわれているのです。ですから、環境保全をしなければだめなんだといいながら、そういうようなことをそのまま認めておいて、こういうことができるわけがないじゃありませんか。環境庁長官はすばらしい人だと私は思います。もう一回このような事態を考えて、国民の期待にそむかないように十分考慮してやってもらいたい。いろいろな条件が整っていない、同時に、後背地の取得の問題では検察がもう手を入れている、こういうような状態の中で二十八日に急いでこれを出すということは、環境チェックする立場からしても望ましくない。このことを環境庁は十分に考えて実施すべきであるということを警告して、私の質問はこれで終わる次第です。
  142. 佐野憲治

    佐野委員長 木下元二君。
  143. 木下元二

    ○木下委員 中島議員が質問する予定であった問題をまず第一にします。  四日市の問題でありますが、四日市の大気汚染による公害病患者の人たち、四日市公害認定患者の会の人たちが、今月の六日水曜日からきょうに至るまで、四日市の商工会議所ですわり込みを行なっております。もともとこの問題は、四日市公害対策協力財団設立準備委員会が、四日市公害認定患者の会の意見を全く聞こうとせず、そのような話し合いの場をつくる機会さえも拒否しまして、この財団である公益法人の設立許可申請書を三重県に提出したことに端を発しております。患者の会の人たちが、患者の完全救済と発生源対策の旗を掲げて大きく活動するようになってきましたのは、昨年の十一月六日、四日市市の呼びかけによりまして、市、各企業と患者の会の懇談会の席上、市、各企業側から患者の会に対しまして、患者救済は協力財団で、発生源対策は県、市の指導でという発言があって以後のことであります。そして患者の会は、少なくとも磯津並みの補償をせよという要求をしてきたのであります。市、各企業は、患者救済は協力財団で、発生源対策は県、市の指導でというだけでありまして、患者との話し合いは一切拒否をしてきておりました。その中で、県、市の仲介がありまして、六日の夜、四日市公害認定患者の会と四日市公害対策協力財団設立準備委員会の話し合いが持たれることになったのであります。そしてここでは、準備委員会の患者救済案に対して患者側が対案を出すということが予定されておりました。ところが、準備委員会側は初めに、出席をする患者代表を七名に制限することを要求し、さらに弁護士の参加は認めないという条件をつけてまいりました。この問題をめぐりましてなかなか話がつかずいたしておりますところに、弁護士が姿を見せましたのを機会に、準備委員会側はちょっとトイレに行ってくる、こう言って席を立って退席してしまいました。そのままであります。そして翌日、県、市もこの準備委員会のメンバーをさがしてくると言って出ていって雲隠れをしたままであります。こういう状態で現在まですわり込みが行なわれておる、こういう状況であります。  これが経過でありますが、ひとつまずお尋ねしたいのは、この汚染者負担の原則の討論研究のためということで都留調査団というのがつくられ、これが三月に派遣をされておりますが、この調査団の意見も出ておりますけれども、何よりもこの被害者の患者の人たちの意見、考え方を聞くように、尊重するように、こういうふうに言っておるのであります、この財団をつくるに際してですね。これに対しまして一体環境庁のほうはどのようにお考えでございましょうか。
  144. 三木武夫

    三木国務大臣 六月の二日であったと思いますが、患者の代表が私のところへ見えたわけです。それで私は言ったことは、これはどうしても当事者同士で話をしなければ、救済のための財団をつくろうというのですから、その対象になる者は患者の人たちですから、その対象になる人と意思の疎通をはからないで財団をつくっても運営がうまくいきませんから、話をするようにということを言って、会社側にもその旨を伝えたわけであります。  そこで、私は思うのは、各地にいろんな問題が起こったとき、公害対策というものをこれから推進していく上について、地方自治体の役割りというものをやはり重視せざるを得ないのです。木下委員、おまえが行って話をつけろというような御希望もあるかと思いますけれども、一々環境庁が出向いていって問題の処理ということは必ずしも――これは一カ所ならいいですよ、各地にそういう問題が起こったときに適当だとは私は思わない。だからこういう問題が起こったときに、公害対策を推進していくためにはどうしても政府、地方自治体、地域住民、この三つが一体になって協力し合う体制ができなければ適切な公害対策というものは進まない。だから、こういう意味からしてこの問題は、地方自治体、四日市市当局あるいは三重県当局というものがこの間に入って、そうして患者側と企業側との話をできるだけ調整する努力をもっとすべきだという意見を私は持っておるものでございます。  こういう点は市、県当局にもこの意図は伝えてあるわけありますから、今後いろいろな問題が起こったときに、地方自治体がもう少し両当事者の間に立って調整をするような努力をする必要がある、こういう点でさらにまだ――いま私も初めてすわり込みということを聞いたわけでありますが、さらに市当局あるいは県当局にも、私のそういう考え方を企業側にもさらに伝えまして、この問題が、そういう地方自治体が入り両当事者で話し合いが持たれるように努力をいたしたいと考えております。
  145. 木下元二

    ○木下委員 この公害対策協力財団というのは患者の問題を扱うのだから、何よりも患者の意見、患者の考えを尊重し、これを聞いて、準備を進めるべきだ、こういうふうに伺ったので、それはけっこうだと思いますが、いま言われますように、県や市、地方自治体がもっと本腰を入れてかかるべきだ、言われるとおりだと思います。  ただこの問題は、先ほど私が経過で申しましたように、県や市が仲介をいたしまして、この準備委員会と患者の人たちが話し合いを持つということになって、県や市も積極的にこの問題に介入をして、問題解決に進んでおったわけであります。ところがこういう経過になってしまった。県や市のほうにいわせますと、もうとてもこれは県や市のレベルではやっていけない、こういうふうにいっておるそうであります。もう一切何ごとも県や市にまかせて、県や市がやるんだということであってはこれは非常に困るわけでありまして、特に問題がこのようにこじれまして、しかもこの環境問題で問題がこのようにこじれておる、こういう場合には、やはり環境庁といたしまして積極的にこの問題解決のためにひとつ御配慮をいただきたい、こういうように思うわけでございます。  特に、いま経過で申しましたように、準備委員会のほうが話し合いの人数をしぼり――人数をしぼるというのはある場合には合理的な場合があるでしょうけれども、七名というような少人数にしぼり、しかも、弁護士が関与することを拒む。これは私は全くけしからぬと思うのです。弁護士というのは当然こうした問題についての正当な適法な代理権を持っておるわけであります。その弁護士が顔を出すとすぐに姿をくらましてしまう、こういうことでございますので、私は、この問題が正しい方向で解決を見ますように、誠実に交渉が進むべきだと思います。  そこで、ひとつテーブルにつかせてもらうように、企業側あるいは県、市の側を強く指導をしていただきたい、このことを特に要請をする次第であります。御所見を承りたい。
  146. 三木武夫

    三木国務大臣 こういう複雑な世の中になってくると、いろいろな問題が起こるのですね。起こった場合に、もう簡単に、地方自治体の手に負えないから、政府にこの問題の解決をゆだねるという態度は、私はよくないと思う。これは一番実情を知っておるものは地方自治体ですよ。だから人数にしても、両当事者というからいろいろな問題が起こるのですよ。県や市が中に立っておのずからやはり交渉をしてものをまとめようとすればまとめられるような、テーブルにつくにしてもそういう諸条件があるわけですから、それを第三者がおって、こういうことで話し合いを進めるのが適当ではないかという――どうしても、自治体が中に入ってやらないと、直接患者側と企業側がぶつかって、人間を何名に制限するとかというと、そこでそういう問題で話が入り口でとまる危険がありますので、簡単に自治体が、もう地方では片づかないんだといわないで、地域住民に対して日常いつも接触をしておるわけでありますから、地域の問題を解決するということが地方自治体としての大きな役割りでもありますから、そういう点で、簡単に地方自治体が、これはもうだめだといわないようなことを私は地方自治体にも要請をしたい。しかしこちらのほうとしては、自治体に対しても企業側に対しても、やはり話し合いを進めるように――患者の救済ですからね。患者がいろいろと注文を出したことを聞けるようなことについては、最大限度それを聞くという態度が、そういう救済の財団をつくっても財団の運営がうまくいく道ですから、そういう注意はいたします。しかし、こういう問題は、自治体がもう少しこいつを処理しようという態度、やはりそれを自治体は持つべきだという率直な見解を持っておるわけでございます。
  147. 木下元二

    ○木下委員 その問題はけっこうでございます。  次に、水産庁が発表をいたしました魚介類のPCB汚染の問題、これは午前中の質問でも触れられましたけれども、重複をしないようにお尋ねをしたいと思います。  このたびの調査でありますが、この調査の方法について、まず伺います。これは水質、底質、魚介、それぞれどのような地点で調査をしたものでしょうか。水深はどのくらいの地点で行なったものでしょうか。また、調査対象とされた魚はどのような基準で選ばれたものでしょうか。底質についてもその地点と濃度、そうしたことについて一応伺います。
  148. 安福数夫

    ○安福政府委員 大体十四地域について、一地域二百検体をとって調査、分析したのでございますけれども、それぞれの海底の地形なり海岸線の態様が違いますので、一がいにこうだという方法はないと思いますけれども、たとえば、ある一定地点を中心にいたしまして同心円を描きまして、A、B、C、たとえば五百メートルの同心円を描き、あるいは一キロの同心円を描き、そういう形で、海岸線からの距離で汚染地域を一応前の概査で大体のところを押えたところ、そういう形で調査方法をきめたというところがございます。さらに、湾であれば、湾の海延に非常に近いほう、それからまん中あるいは湾の奥のほう、そういう形でだんだん沖合いに出るに従いまして汚染度が薄まってまいりますから、汚染度の濃厚なほうからそういう形で地区を区切って調査する、そういうような調査のしかたをしておりますので、一がいにこうだというふうにはきめかねるかと思います。  それから検体の選び方でございますけれども、これは、昨年度概査をいたしております。それからさらに、県の水産試験場その他がずっと過去におきましていろいろと検査の結果の蓄積がございますので、そういったものを前提にいたしまして、私どもと県と、実態を十分勘案しまして、どういう魚種をとる、この魚種については何検体、そういった打ち合わせをしながら、それぞれの地区でそういう方法で調査対象魚種をきめてまいっております。  それから底質と水質、それから魚介、この三つの分野に分けてそれぞれ何検体かとってそれを分析した、大体大まかに言いましてそういった調査方法をとっております。
  149. 木下元二

    ○木下委員 水深はわかりませんか。
  150. 安福数夫

    ○安福政府委員 水深も、先ほど申し上げましたように、海底の事情なり、それぞれの地区によって違いますので、それが必ずしも何メートル、何メートルという形では統一的に把握できない、こういう事情でございます。
  151. 木下元二

    ○木下委員 調査方法についてきちんとした基準がないようでありますが、水産庁がお出しになっておるこの「調査の結果について」という報告書を見ますと、たとえば東京湾で申しますと、東京湾東部水域、西部水域、こう二つに分かれておるだけであります。兵庫県でいいましても、大阪湾北西部水域、播磨灘沿岸水域、こういうことで、非常にばく然としておるわけであります。先ほど午前中の質問にもありましたけれども、今度の調査の結果のあとでまたもっとひどい状況というものがあらわれておる。これは新聞にも出ております。たとえば兵庫県でも水産庁検出の結果よりもひどい結果が出ておる。高砂のPCB汚染魚ということで、ずっと高いPPMが検出をされておるということであります。  そこで、私は、こういうふうに、調査方法について一定していない、調査の結果というものがまちまちなものが出てくる、どうもあとからあとから検査するほうがひどい結果があらわれておるようであります。そこで伺っておるのですが、今度のこの調査結果というのは、そうしますと、この報告書に出ておりますようなばく然としたものではなくて、水産庁としては、具体的にどの水域、どの地点で、水深は幾らで検査をしたか、その具体的な資料はお持ちになっておりますか、どうでしょう。
  152. 安福数夫

    ○安福政府委員 具体的にこのポイントで何検体とったという地点は把握いたしております。対象をとった地点ははっきりいたしております。
  153. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、水深もわかっておりますね。底質もどの地点の底質か、それから水質の場合も、水深はどの程度のところか、それからとった魚もどの地点からとった魚か、これはきちんと把握しておられますか。
  154. 安福数夫

    ○安福政府委員 具体的にここがポイントということは全部地図に落としてございますから、それは具体的にその地点は水深幾らかということは確認すればわかると思います。
  155. 木下元二

    ○木下委員 そういたしますと、水産庁は、今度の調査結果では非常にばく然とした調査対象しか発表しておられませんけれども、具体的につかんでおられる。そうしますと、汚染原因者をつかむのにも、非常につかみやすいと申しますか、汚染原因者を類推することもできると思うのですが、どの水域のどの地点でどういう結果が出ておるということをきちんとつかまえておられれば、その汚染原因者もおよそわかってくるのではなかろうか、こう思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  156. 安福数夫

    ○安福政府委員 私ども調査は汚染源を追及するという調査では必ずしもございませんけれども、その水域に対してPCBを排出するということは、おのずからその水域の海流なりそういう関係で、この範囲のところが、寄与率というとおかしいですけれども、それぞれ使っておる工場がまた別の面からはっきりいたしますから、そういう面で一応の類推はできるのではないかと思います。ただ私どものは汚染源を直接追及する、こういう調査ではございませんので、その点につきましては、通産省のほうでそれぞれの関係におきましてある程度の類推的なものができるのではなかろうか、そういうふうに考えております。
  157. 木下元二

    ○木下委員 通産省のほうは、これは新聞発表もありましたけれども、今度水域を調査しましたのに関係のある八府県のPCB使用工場、三百三十八工場を公表されました。これはPCBを生産していた鐘淵化学高砂工場、三菱モンサント四日市工場の出荷先リストから明らかにされたものであります。したがって、そのリストの結果だけではこれは汚染原因者がこの中にあるということはわかりますけれども、それがすなわち全部汚染原因者であるということはいえないわけです。したがって、この通産省の公表されたものと、それから水産庁のこのたび検査せられたその具体的な検査の結果、それを発表されますと、汚染原因者を断定はできないにいたしましても、それを把握するのに非常にプラスをする、こういうふうに考えられる。そこでどうでしょうか。このいま言われました水産庁のその調査結果が、公表されましたものと別のもっと具体的にどこそこの水域をこういうふうに調査したというその資料をお出し願えないでしょうか。
  158. 安福数夫

    ○安福政府委員 私どもこの調査を何も秘密にしようという気はございませんので、委員会のほうで出せということであれば……。
  159. 木下元二

    ○木下委員 いま問題になっておりますその水産庁の調査の結果の資料を、委員会のほうへぜひとも提出をされるようにひとつ要請を願いたいと思うのです。
  160. 佐野憲治

    佐野委員長 水産庁のほうはいいですね、資料、いまの要求に対して――了解されておりますから。
  161. 木下元二

    ○木下委員 そこで、これまで国民はPCBの汚染魚を知らずに食べさせられていたわけであります。この汚染魚について、その水揚げ高、それから流通経路、こうしたものは調査をされたのかどうか伺いたいと思います。
  162. 安福数夫

    ○安福政府委員 直接今回の調査では流通経路までは私ども調査いたしておりません。ただ、従来から一応水産物の流通というのはどういうことになっているかということを大体の掌握は私ども考えております。県自体でもそういった流通経路についての一応の常識での線はあると思いますけれども、これは流通というのは生きているものでございますから、価格の高いところに流れるということはございますので、どんぴしゃこういうふうに必ず流れるんだということになりませんので、そういった関係で大体の流通経路という見当しかつかんでおりません。
  163. 木下元二

    ○木下委員 水揚げ高はどうですか。
  164. 安福数夫

    ○安福政府委員 今回の調査じゃなく……
  165. 木下元二

    ○木下委員 そうでなくて、このPCBの汚染地域の水揚げ高が、大体このPCBが問題になった以降の水揚げ高というのは大体わかりますか。
  166. 安福数夫

    ○安福政府委員 ただいまの御質問は、いまの問題になっている水域についての水揚げ高、こういうふうに思いますけれども、私ども必ずしも全部、十四水域にどんぴしゃどのくらいの水揚げがこれこれの魚種についてあるということは把握しておりませんけれども、その中のティピカルなものについてはこの程度の水揚げ高があるんじゃないだろうかという概算的な推定数字はところによっては持っております。こういった問題も県自体にそういった点についての照会はいたしておりますのがいろいろあるわけでございますけれども、必ずしもまだ正確に魚獲高、魚種別にというところまでは把握いたしかねている、こういう実情でございます。
  167. 木下元二

    ○木下委員 どの程度の汚染魚をどの地域の国民がどのくらい食べさせられているか、これは非常に国民の健康問題にとって重大であります。午前中の質問でも、回答によりますと、健康相談くらいはやるようなことをいわれていたと思いますが、これは放置をしておくべき事柄ではありません。直ちに健康被害について調査をすべきものと思います。そのためには、これは当然汚染魚の水揚げ高、流通経路というものが前提になるわけであります。そうしたものも含めて国民の健康被害ということを私は特にこの被害地域につきまして大規模にやるべきだと思いますが、この点は環境庁としてはどのようにお考えでしょうか。
  168. 三木武夫

    三木国務大臣 こういう水銀などの、PCBその他有害物質の被害が各地にいろいろと問題になってきておるときでありますから、そういう汚染のおそれのある海域については一斉な点検をやるということになっておる次第でございます。
  169. 木下元二

    ○木下委員 一斉の点検といわれるのは、健康調査を含めてのことでしょうね。
  170. 三木武夫

    三木国務大臣 環境調査であります。その環境調査の結果に基づいて、必要があれば健康調査を行なう。
  171. 木下元二

    ○木下委員 特に被害の出ている地域などを調査をせられて、そしてその上で健康調査をやられる、こういうふうに伺っておきます。  このPCBというおそるべき有害物資が水質汚濁防止法による有害物質としまして政令で指定をされておりません。したがって同法上の排水基準も設けられていないのであります。この「PCB汚染防止総合対策の推進について」というPCB汚染対策推進会議の文書がありますけれども、これによりましても、可及的すみやかに排水基準を設定するということになっておるのであります。これはつくられていないのではないでしょうか。
  172. 岡安誠

    ○岡安政府委員 PCBにつきます環境基準並びに排水基準でございますが、現在は排水基準につきまして暫定的な指導指針という形でもって、現在ございます分析方法によります検出限界の〇・〇一というような基準をこえて排出しないようにということを指導いたしております。これはまだ水質汚濁防止法に基づきます正式の排水基準ではございません。と申しますのは、現在の分析方法によりましては、複雑な工場排水の中からPCBだけを純粋に分析いたしまして抽出する方法が確立されておりませんので、ほかの方法によりまして現在分析させておりますので、法律上の排水基準とはいたしておらないのでございますが、近くその方法も確立されるように聞いておりますので、私どもは排水基準につきましては、政令によります正式の排水基準を設定をいたしたい、かように考えております。
  173. 木下元二

    ○木下委員 近海魚はこれは三PPMという許容基準になっております。これはきわめて科学的根拠に乏しいといわれております。大体これがつくられるときに、日本人は魚をたくさん食べておるのに一体これでだいじょうぶかという批判もあったのであります。これは再検討すべきではないかと思います。一体この三PPM以下がいいというなら、二PPMあるいは二・五PPMなら幾ら食べても安全かというと、決してそうではないと私は思うのです。特にこれは魚介類をたくさん食べている漁民あるいは妊産婦あるいは乳幼児、こうした層の人々に対しては、私は早急に絶対確実に安全な基準というものが示されるべきだと思うのです。この点については、厚生省は一体どのようにお考えになり、またどのような方針なり計画をお持ちでしょうか。
  174. 浦田純一

    ○浦田政府委員 食品の中のPCBの暫定規制値ということで、昨年八月食品衛生調査会の答申に基づきまして、近海魚につきましては三PPMという濃度の基準を設けたのでございます。  この考え方のもとになりましたのは、アメリカにおきまする動物実験、これはラットを使ってやったのでございますが、二年間の観察を続けまして、その結果体重一キログラム当たり毎日〇・五ミリグラムを与えても、一番敏感な臓器である肝臓に何らの異常を起こさない、あるいはその他の機関に異常を起こさない、また亜急性中毒、急性中毒及び催奇形性等の異常も認められないという事実と、それからカネミ油脂症におきまする最小発症量、あるいはその他の動物実験等の試験をもとといたしまして、食品衛生調査会でもって、人間の場合には成人で一日体重一キログラム当たり五マイクログラムということで、アメリカにおきます動物実験に百倍の安全量を見込んできめたものでございます。したがいまして、五十キロの体重の人では、毎日二百五十マイクログラムのPCBの摂取まではいまのところ安全であるという見解のもとに、食品中魚介類以外から大体七十マイクログラム摂取されるであろうということを見込みましてきめたものでございます。  三PPMというふうに近海魚の最高基準をきめることによりまして、平均的に摂取する魚介類を通じてのPCBの濃度は一PPM以下になるということが調査の結果わかっております。したがいまして、二百五十マイクログラムを毎日成人が摂取することについては安全であるということは言えると思います。ただし、食品衛生調査会におきましては、多食者の例あるいは乳幼児、妊産婦、こういったような非常な敏感な方々、あるいは特別な事情にある方々につきましては、なお慎重に考慮する必要があるということで、現在それに必要なデータを集め、御審議を願っておる最中でございます。
  175. 木下元二

    ○木下委員 いまの問題ですね。一体いつごろまでかかるのでしょうか。これは非常に差し迫った問題でもあるし、そうゆうちょうにいつまでといった問題ではないと思うのですね。一日も早くその基準をつくって、確実に安全な基準をつくって示すべきだと思うのですが、それはどうでしょう。
  176. 浦田純一

    ○浦田政府委員 体重一キログラム当たり毎日五マイクログラムという数字は、大体日本人全部に適用してほとんど間違いない数字であると思います。思いますが、なお用心のために、非常に敏感な方、あるいは過去においてPCBを体内に蓄積しているかもしれない、毎日たくさん魚を食べるというような条件にある方もあるかもしれないということで、特別な場合においてさらに特別の基準をきめていこうということでございますが、現在まだ資料が十分にそろっておりません。もう一度近く、中間的でございますけれども、その辺のデータの読み合わせといいますか、専門の先生方のその後の研究の状況などをお伺いする機会を得たいと思っております。
  177. 木下元二

    ○木下委員 非常に大事な問題ですから、ひとつ早急に結論をお出しになるように特に要請をしておきます。  それから通産省に伺いますが、このたびの問題について汚染検出率が二〇%をこえた七県八水域の各魚種について、漁獲禁止あるいは廃棄処分の行政指導をするというふうに聞いておりますが、こうした行政指導はもうすでにやっていられるのですか。どのようにやっていられるのですか。
  178. 安福数夫

    ○安福政府委員 六月四日に今回の調査を発表いたしましたが、それと同時に、同日付で県に対してそういう趣旨の指導をいたしております。
  179. 木下元二

    ○木下委員 どうも抽象的ですけれども、汚染検出率が二〇%をこえた場合についてそういう指導をやっているということですが、二〇%未満の場合はどうなるのか。一体安全なのかどうか。特にこれは一つの水域から二百匹前後、二百匹足らずくらいの魚をとってやっているだけなんですね。魚の種類も十種類足らずであります。これでは私は安全度が高いとは言えないと思うのですよ。この二〇%未満の場合についても、やはり相当な措置がとられるべきではなかろうかと思うのですが、どうでしょう。
  180. 安福数夫

    ○安福政府委員 一応、現在暫定的な規制値で措置する場合に、そういう一つの抽出率でもって措置をして大体間違いがないだろうという一つの想定のもとに、現在そういう形でしているわけでございます。  ただ、いまの二〇%未満のところでそういう不安があるじゃないか、こういう御指摘でございますけれども、二〇%近いと申しますか、そういうところはさらにわれわれとしても十分注意をしながら今後続けてまいりたい、このように考えております。
  181. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、特にこの二〇%という線にこだわらずして、一七%でも一八%でもやはり危険はあるのですが、そういう地域にも行政指導を強める、こういうふうに聞いていいですね。
  182. 安福数夫

    ○安福政府委員 現在の行政指導一つの基準はそこで引いておるわけでございますけれども、そういうある程度それに近いようなところについては今後さらに調査検討を続ける、こういうことでございます。  そういうところでそういう線がさらにはっきりすれば、そういった事態についてはさらに自主規制なりそういった適切な措置をとってもらいたい、こういうふうにお考え願えればいいんじゃないかと思います。
  183. 木下元二

    ○木下委員 通産省の発表によりますと、今度問題になった三百三十八工場、一万四千トンのPCBでございますが、これが使われておるということで、今週から立ち入り調査を行なう、そしてさらに一そうの究明に乗り出す、こういうふうに聞いているんですけれども、これはもうやっていられるのかどうか。これは直ちにやるべきだと思うのです。それと、調査をやられまして収集をせられた調査の結果、これを一体どうされるか。これは当然必ず公表されるべきだと思いますが、その点について伺います。
  184. 青木慎三

    ○青木政府委員 今般水産庁から発表になりましたPCB汚染の結果は非常に深刻でございますので、通産省としましては、この水域に関係のあると思われる工場につきまして、調査を実施しようというふうに考えております。  ただし、この調査は、水産庁関係の調査をやりました県と十分連絡をとってやるというのが最も望ましいと考えますので、通産局に連絡いたしまして、県と至急に連絡をとって、県と共同してこういう調査に当たるようにという指示をしておるわけでございます。この結果がわかれば、当然公表せられることになると思います。
  185. 木下元二

    ○木下委員 その結果がわかれば公表する。これは必ず公表をされるもの、調査をせられた全結果について公表をするというふうにお約束できますか。もう一度その点念を押しておきます。
  186. 青木慎三

    ○青木政府委員 これは調査した事実でございますから、公表すべきことだと思いますが、この点も十分県と連絡をとって決定いたしたいと思いますが、通産省としては公表すべきだと考えております。
  187. 木下元二

    ○木下委員 それから一つ、この点は今後の問題もあるので申しておきますが、まあこれ調査をやられましても、工場に行かれる、会社のほうは使っておるPCBの全部をほんとうに通産省のほうに見せるかどうかという問題があると思うのです。あるいは隠すかもしれない。だから、こういう問題は、先週立ち入り検査を行なうということを発表されたのですけれども、そういうふうな余裕をおくのでなくて、やはり、立ち入り調査と申しますのはいきなり調査をしてこそ意味があると私は思うのです。何日も猶予期間をおいて、いまから調査に行きますよということで調査をやるということでは、ほんとうに調査効果があがるかどうか、私は心配するものであります。今度の場合は発表してしまったわけでありますから、今後はこういう調査はやはり抜き打ちにやるべきだ、こう思いますが、どうですか。
  188. 青木慎三

    ○青木政府委員 こういう立ち入り調査というのは、本来抜き打ちにやるのが効果的であると思いますけれども、PCBに関しましては、大体の出荷のリストによりまして、使用量、それから使用場所、目的等がある程度判明しておりますので、ほかの物質と違いまして、比較的大量に使用しているところのPCBの量としては、つかみやすい部類に属するのではないかというふうに考えております。  それから、回収も、大量に使っておりますところは、そのPCBを生産したメーカーのところに回収しておりますので、その辺の数字も比較的ほかの物質に比べますとわかりやすいものであろうかと思います。  ただ、今後こういう立ち入り検査に対しては、抜き打ちでやるほうが効果的である場合には抜き打ちでやるという方向で、考えてまいりたいと思います。
  189. 木下元二

    ○木下委員 このたび発表になったのは、三百三十八工場、つまり大阪、兵庫など水産庁が水の検査を行なった。その地域に関連のある地域の三百三十八工場であります。八府県だけであります。全国のPCBの使用工場を明らかにするべきだと思うのですけれども、この点はいかがでしょうか。
  190. 青木慎三

    ○青木政府委員 今回の水産庁の調査に関連のあるところは三百数十工場でございますが、全国で申しますと約千二百工場ございます。これは必要があれば資料として提出する用意はございます。
  191. 木下元二

    ○木下委員 対策でありますが、この汚染をこれ以上発生させないために、PCBは一切使わせないようにすべきではないかと私は思います。生産と出荷は禁止をされておりますけれども、現に使っている企業については切りかえ困難という理由で使用を認めておるわけなんですが、これはことし一ぱいというお話でありましたけれども、これをおきめになったのももう相当以前だと思うのです。企業に対して相当な猶予期間を置いておることになりますが、PCBがこれだけ問題が起こり、大きな社会問題になっておるのでありますから、直ちにその使用をやめるという方向で進めていただきたい、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  192. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 PCBを使っております製品につきましては、開放系、たとえば塗料でございますとか接着剤あるいは感圧紙、こういったものにつきましては、一昨年の暮れまでに全部新規出荷は停止させております。それから閉鎖系のトランス・コンデンサー及び熱媒体につきましては、昨年の八月末で、原則として新規出荷は停止をさせましたが、それまでに出荷されまして使われておりますトランス・コンデンサー、熱媒体は現在も使用をいたしておるわけでございます。トランス・コンデンサーは完全に密閉された容器に入れられて使われておりますので、これが漏れるという気づかいは、使われておる限りにおいてはないというように私ども考えておりまして、これが耐用命数が終わりまして廃棄をする場合に、その処分のしかたが問題でございますので、これにつきましては計画的に回収をはかりまして、無害な形での処理をいたしたい、こういうふうに考えております。  それから熱媒体につきましては、一応私ども閉鎖系と考えておりましたが、なお安全を期しますために、一応今年末までに全部他のPCB以外の熱媒体に転換するようにということを、昨年末に指示をいたしまして、大体工場数にいたしましてただいまのところ八割くらいが転換を終わっておりますが、大口等につきましては代替品の供給がまだすぐ間に合わない等々の事情がございまして、まだ延びておりますが、年末までに完全に非PCB系に転換をさせたい、かように考えます。
  193. 木下元二

    ○木下委員 ですから去年の末に一年間の余裕期間というようなことをきめられておるわけなんですけれども、やはりこれは人間の命と健康にかかわる重大問題ですから、そういう猶予期間、特にいまのお話ですともう大半が切りかえを終わっておるということもありますから、残りはわずかでもあるし、こうした新しい事態がどんどん起こってくるということになりますと、そうゆうちょうに考えられない問題だと思うのです。ことし一ぱいなんということを言うのでなくて、ひとつできるだけ早い機会に使用を一切禁止をする、こういう措置に変えるべきだと思う。そのことを特に要請しておきます。  今回のこの水産庁の調査の発表にいたしましても、あるいは通産省の発表にいたしましても、たいへん不十分な場当たり的なものでしかないと思います。それだけPCB問題が以前から騒がれておりながら、水産庁は全国の魚介の汚染調査をやったのはやっと昨年十二月。そしてそれに基づいて特に汚染の著しい沿岸あるいは河川について調査をしたのがことしの二月。そしてそれが公表されたのが六月というぐあいであります。この際総合的な調査体制を確立し、あらためて日本全国について魚介類の汚染状態についても調査をし直すべきだ、こういうふうに当然思うわけであります。最後にこの点についての所見を伺っておきたいと思います。
  194. 安福数夫

    ○安福政府委員 お答えいたします。  今回の調査を、一応私どもとしましては詳細な調査としての第一回と考えております。本年度の予算におきましても、十四水域はもちろんでございますけれども、先ほど申し上げましたような、さらにそれに近いような疑わしき地域、そういったものも含めまして、さらにそれより多い地域について年に二度ばかりの詳細な調査をする予算も組んでおります。これで必ずしも十分だとは考えておりませんで、さらに今後とも全国的な県の協力も得まして、沿岸水域の汚染状況についてはさらに別途監視を続けてまいりたい、このように考えます。
  195. 木下元二

    ○木下委員 それから汚染魚介とその漁獲禁止の問題、それから漁獲禁止されました漁民に対して完全な補償をする問題、これについての計画なり方針なりを伺いたいと思います。
  196. 安福数夫

    ○安福政府委員 公害一般につきまして、公害の原因者がそういった被害その他についての責任を持つという原則は従来から確認されているとおりでございまして、今後もそういった原則はやはり貫かるべき問題であろう、このように考えます。  さしあたって水産庁といたしまして、現在汚染地域において魚が売れないあるいは値段が下がる、そういった関係で漁業経営が続けられない、さらに生活問題まで響く、こういう問題がございます。そういったものにつきましては経過的に現在の制度あるいはワク、そういったものをフルに活用いたしまして、それの臨時的な手当てをしてまいりたいということでございます。  さらに恒久的な問題でございますけれども、これは水産庁だけで解決するという問題では必ずしもございませんので、いろいろ漁民の要求、要請が私どものほうに参っていることは承知しております。そういったことも踏まえまして、幅広く関係省庁とさらに検討を加えながら前進してまいりたい、このように考えます。
  197. 木下元二

    ○木下委員 これで終わります。  実は少し私の持ち時間が余っておりまして、実は道路公害の問題について伺う予定をしていたのでありますが、あとの質問者の方がちょっと環境庁長官のいられる間にぜひ質問したいということでもありますので、道路公害の問題については保留をいたしまして、きょうはこれで終わりたいと思います。
  198. 佐野憲治

    佐野委員長 坂口力君。
  199. 坂口力

    ○坂口委員 先ほど木下委員から出ました四日市の問題でございますが、関連で少し、二点ほど質問させていただきます。  実は私、地元でもございますので、二、三日前から現地に行ってまいりましていろいろと様子も見てまいりました。先ほど長官から、地方自治体のことは一応地方自治体が責任を持つべきであるという御発言でございました。いずれにいたしましても、いわゆる患者さんがああいうふうなところにすわり込みを続けるということは、一刻も早くこれは解決しなければならない問題であると思うわけでございます。いろいろ地元の話を聞いてみますと、県や市の指導というものに対して企業がなかなか聞き入れなくなっている、これは事実でございます。こういうふうな現状になりました以上、やはり国が乗り出して、そして指導をしていただくべきではないか。企業が県なり市なりの指導というものに対して聞き入れないということであれば、これはそういうふうなものを聞くように指導をしてもらうべきであります。あるいはまたこの話し合いの場につきましてもいろいろむずかしい問題はありますが、しかし一定の条件をきめてやはりこういった話し合いの場というものは持つべく指導していただくべきである、こう思いますが、再度長官の御答弁をお願いします。
  200. 三木武夫

    三木国務大臣 先ほどもお答えいたしましたように、われわれが企業側に対してもあるいはまた自治体側に対してもできるだけ円満な話し合いを進めるようにという指導はいたします。しかし何といっても、私は政府としての責任を回避する意味ではないのです。しかし現地に地域住民と一番密着しておるのは自治体ですからね。だからそういう地方の紛争に対しては自治体が中に入って、そして話し合いを円満に進めていくような場を提供するということも考えられるでしょうし、そういうことで、四日市市とか三重県とかいう当局が――なかなかむずかしい問題がいつもあるわけですよ。そんなに簡単な問題なら解決するのですよ。なかなか解決しないということは両者の対立があるということですけれども、それは自治体ができるだけ第三者の立場に立ってそしてあっせんをすることが問題の処理としては一番好ましい形である。そういうことを県あるいは市にもわれわれが意向を伝えまして、企業側にも伝え、そしてこの話で、すわり込みが行なわれておるというのですが、こういう事態はもっと話し合いをして解決をするような方向に指導していきたいと考えております。
  201. 坂口力

    ○坂口委員 長官のおっしゃいますとおり、県や市が積極的にみずからの責任でこれを解決をしていくということは最も重要な基本的なことであると思いますが、しかしそれが、いまも長官もおっしゃるように、たいへんこじれまして、そして患者さんがすわり込んでいるというような事態を招いているわけでございますから、何とかしてその事態だけは避けたと申しますか、その以前の状態にまではどうしても戻らないといけないのじゃないか。現在の段階では県ではどうにもならないような状態にもうなっているようでございますので、そのもう一つ前の状態に戻る点まではやはり長官の御努力をいただかざるを得ないのではないか、こう思いますが、いかがですか。
  202. 船後正道

    ○船後政府委員 四日市の公害対策協力財団の問題でございますが、これにつきましては、先ほど来長官が述べられましたような趣旨を私ども強く県、市及び企業側に伝えまして、すみやかに患者側と円満に話し合うように要請してまいったわけでございますが、現在県、市でも強く企業に働きかけまして、企業側も今回の事件の発端となりました六月六日以前の状態に戻って新たに対応するという考え方を示し始めた、このように聞いておりますわけで、引き続きまして県、市におきましても副知事、助役レベル、それでだめなら知事、市長レベルということでもって強く円満解決に働きかけるようにわれわれもさらに努力を続けたいと考えます。
  203. 坂口力

    ○坂口委員 もう一点だけお聞きしたいと思います。  今回の話がこじれてきましたその原因は、生活保障金の性格をめぐっての問題でございます。この性格をめぐりまして、いわゆる加害責任を踏まえたものか、あるいは社会的責任かについての論争が起こって、それがもとになりまして今回のすわり込みの原因へと発展をしているわけでございます。長官に、これはたいへんむずかしい問題でございますけれども、この問題につきましてどういうふうにお考えになっているかということをもう一ぺんだけひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  204. 船後正道

    ○船後政府委員 四日市における協力財団による救済措置の性格は非常にむずかしい問題でございますが、私ども、企業側における主張として承っておりますのは、これは地域社会における、つまり企業の社会的責任に基づいて生活安定をはかるための仕組みである、このように企業側は考えておると承知いたしております。参加企業の中にはいわゆる大気汚染に直接関係のないというような企業もあるとのことでございますから、そういったこともこういった考え方の一端ではないかと理解しておるわけでございます。  しかし他方におきまして、四日市の大気汚染の発生原因者である企業がこの協力財団の参加者の大部分であるということも明白な事実でございますので、患者側からいたしますれば、こういった工場群は程度の差はございましょうけれども、やはり加害工場であるとする見方が出てくるのも、これまたもっともなことであろうと考えるのでございます。  そこで、じゃこの制度を患者側が主張いたしておりますように、明白に加害責任と申しますか、民法上の不法行為の責任ということに基づくものとして割り切ることになりますと、これは当事者間の問題でございまして、裁判か調停かあるいは自主交渉というようなことによらざるを得ないわけでございます。こういう司法的、準司法的あるいは当事者間の話し合いということに行政が立ち入るということにつきましては、やはり一定の限界があるわけでございまして、このむずかしい問題をどのように性格づけて割り切って組織をつくっていくかは、もう少し当事者双方間でひとつ隔意なき意見を戦わしていただきたいというのがわれわれの現在の立場でございます。
  205. 坂口力

    ○坂口委員 最後にもう一言だけお願いをしておきたいと思うわけでございます。いまおっしゃったように、当事者間で意見を戦わさなければならないわけでございますが、その場がなかなかできない。それは先ほど木下議員も言われたとおりでございます。そこでその場をつくるべく、もう一度重ねて申し上げるわけでございますが、これは長官にやはりその労をとってもらわざるを得ない。それはどうしてもお願いをしないことには解決の見通しがつかないのじゃないかというふうに私は思うわけでございます。  いずれにいたしましても、四日市裁判で企業の加害者としての責任が明らかになったわけでございますから、加害者のことばはどうであるにいたしましても、実質的には当然加害者の立場からの補償費ということになるであろうと思うわけであります。ひとつ長官にもこの問題に対する積極的な御援助をお願いいたしたいと思いますが、いかがでございますか。
  206. 三木武夫

    三木国務大臣 積極的に自治体を指導いたします。  実際問題として環境庁が、場所といいましても、東京というようなことはなかなか適当でもございませんし、だから自治体が両当事者の間に立って話し合いを進められていくようにもっと積極的に努力をするようにということを伝えます。企業にも伝えますし、自治体にも伝えます。  いまの問題にしても、よく社会的責任と加害者の責任、これはそういうことで議論をしておっても、患者の救済という目的から、そのことで入り口で議論しておっても目的は達成できませんから、そういう点で両方を踏まえてあることは当然ですけれども、そういうことですから、私のほうから企業や自治体に対して強力な指導を行なうことにいたします。
  207. 佐野憲治

  208. 岡本富夫

    岡本委員 坂口委員の四日市のすわり込みの問題について、私は特に感じますのは、環境庁公害賠償保障法を検討しておる、これがはっきりしておれば、すわり込みをしなくたって、基金から出していって先に救済してあげて、そして原因者からそれだけの金を取る、こういうことになりますから非常にスムーズに、いま長官が言われたように、そんなすわり込みをして気の毒だ、こういうのは解決するのだということでありますが、これが聞くところによると、この国会に出すという話があったのですが、おくれておるのはどういうわけでおくれておるのか、あるいはいつごろこれがきちっと出るのか、これをひとつはっきりしておきたい。
  209. 船後正道

    ○船後政府委員 公害による健康被害を補償する法案につきましては、鋭意検討を重ねてまいったわけでございますが、何ぶん内容が二百条にも近い、百八十条程度かと思いますが、その程度の膨大な法律でございまして、内容につきましても財源の徴収のしかたからさらに給付というふうに広範にわたりますので、法文の整備にかなりの時間がかかったのでございますが、来たる十五日でございますか、今週の金曜日に閣議決定ということを目途に、現在鋭意最終段階の作業を進めておるところでございます。
  210. 岡本富夫

    岡本委員 この公害賠償保障は、何か聞くところによると健康被害だけに後退したようでありますが、長官にこの前お聞きしたときには、生業補償も含めるんだ、こういう明確なお答えをいただいたのでありますが、われわれは、なかなか政府のほうで出してこないものですから、わが党でも要綱を発表したわけでありますが、やはり損害賠償責任保障制度でありますから、汚染源者が責任を持つという責任の確立、責任体制はきちっとしておるのかどうか。それからいま私申しましたように、健康被害のみならず、財産被害すなわち生業被害もその中に含まれるのかどうか、これをひとつお聞きしておきたいのです。
  211. 三木武夫

    三木国務大臣 私がしばしば申しましたことは、損害補償法の制度というものは、日本がそれだけ公害の問題が重大だということでもありますけれども、各国におけるこの種の制度というものはあまり先例に乏しいわけですから、しかも二百条にもわたる法案でありますので、まずこれを軌道に乗せることが第一である。  そこで、やはり健康被害というものを中心にした制度としてこれを軌道に乗せて、その次には生業の被害という問題にも取り組んでいきたい。四十九年度から生業被害についても検討を加えますということは、毎回の答弁でしておる点でございます。何もかも一ぺんに新しい制度で、健康も生業もということになれば――私はこの制度というものを定着させたいのですね。そのためにあまり一ぺんに間口を広げることは、こういう制度を健全に発展させていく道でないと思いますので、まず健康から、その次は生業と、こう順を追ってこの制度で対象を拡大していきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。後退ではなく、いつもそういうことを繰り返し申し上げておる次第でございます。
  212. 岡本富夫

    岡本委員 先ほどから論議されておりましたように、水俣病の問題は水銀中毒でありますが、あるいはまたPCBの問題、こういう問題で漁業被害が非常に出ておるのですね。これは即座に生業被害になるわけです。そういうことになりますと、ただ健康被害だけでしたら私はいまの臨時措置法の健康被害の救済法、あれを少し手直しをしたら大体いけるのじゃないか。われわれはあの法案を審議したときもやはり附帯決議として当委員会で決議しまして、そして生業被害も入れるように、こういうふうに言ってからずいぶんたちます。もう三年くらいたちますかね。それなのに、まだこれから生業被害までも入れるとなかなか法案ができないのだというのでは、だれが反対するのですか。これはだれが反対してできないのか、これが一点です。  それから被害の救済方法について、原状回復、これをもとにしているのかどうか。ということは、ただ金銭だけ払い、この健康被害だけ救済してそれでもうおしまいだ、企業責任はなくなってしまうというようなものでは、これは話にならないと私は思うのです。現在と同じことなんです。この二点について承りたい。
  213. 三木武夫

    三木国務大臣 生業被害については、だれか反対があるから最初健康被害に限るということではないので、この制度を健全に育てていくためには、あまり当初から間口を広げて、生業の補償ということになれば非常にその態様もいろいろ多岐にわたっておりますし、なかなかその法案の作成という段階に至らない。だから、まず健康の被害から入って次の段階は生業の補償の問題も取り扱いたいということで、反対があったからそうしたのではないのであります。  第二点は、こういう損害の補償の制度によって企業側の責任の免罪符にこれが使われるという性質のものではありません。ただ、訴訟から実際に給付が行なわれるまでの間に相当の時間がかかりますから、患者の人たちにもその間は医療費の自己負担分などに対して、特別措置法によってこれに対する補償にありますけれども、いまの特別措置法は生活の保障という面ではありませんから、そういうことで、損害賠償制度がいまの特別措置法とたいして変わらぬという岡本委員の認識は改めてもらわなければ困る。それはやはり国民健康保険の自己負担分の負担というのが中心でしょう、いまの特別措置法は。そういうのではないのですから、やはり遺族に対する扶助料もあるいはまた葬祭料も生活の保障も、自分が働けたら得たであろう収入の相当な部分を見ようというのですから、やはり根本的にこの制度は差違があるということでございます。そういうことで、これは違っておる。そういうことで、訴訟を行なってその判決が行なわれるまでという、そういう間にも患者のいろいろな生活上の問題も起こりますから、その間患者を救済しようということで、患者が裁判所に対して害を加えた者に対する損害賠償の請求を起こすということは、患者がこの制度の適用を受けても、この訴訟というものに対しては何らの訴訟も起こしていいわけでありますから、そういうことは棄却をするわけではない、こういうわけでございます。
  214. 岡本富夫

    岡本委員 この問題についてはこればかりやっているわけにいかないので、今度法案が出たときにやりますから……。  いま、前の健康被害の特別措置法と考え方が今度違うと言いますけれども、あのときにもうすでにその生活保障やあるいはそういうことはやらなければならぬものだったんですね。ですから少し延長しただけなんです。ほんとうの損害賠償でないように私は思うんですね。これはまあ次の機会に論議をいたしたいと思います。  そこで長官は先ほどから聞いておりますと、水俣病の総合対策推進会議ですか、これは二階堂官房長官らと相談して閣議で決定するそうでありますが、沢田知事からきのう聞いたときは、水俣病の総合対策本部をつくってもらうのだ、こういうことで非常に喜んだ話だったんですが、ちょっと会議というと性格が後退したようにも考えられるわけであります。  そこで漁業被害ですね。漁業者の被害もありますよ、魚をとってくる人。それからもう一つはそれを仲買いしている方。これはもう仕事がなくなって生活に苦しむ。それから小売り業者。それから観光客を相手にしてアサリとかシジミとか、こういうのを売っている方。今度委員長を中心にして向こうに行くわけですけれども、私はこの前行ったときも、そういう人たちはたちまち生活に困るわけですね。こういう人たちの救済、そういった者に対する対策もこの推進会議で立てるのかどうか。たとえば熊本県知事の話では、今度の県会で九億ですか予算を組んだ、しかしこれはもう九月ごろまでに全部使ってしまうんだ、すぐまたそれだけの予算を組まなければならない。これについてぜひ予備費を政府のほうから回していただくようなことにしなければ地方自治体ではどうにもならないという、そういうような話だったんですが、そういった予備費も含めた救済も関係閣僚で相談をしてやっていくのか、これをひとつお聞きしたいのです。
  215. 三木武夫

    三木国務大臣 漁業者に対しての補償の問題は原因者が負担するという原則は曲げない。したがって、この問題は漁民が原因者に対して補償の請求権というものを持っておるわけですね。ただ、しかし、その問題が解決するまでの間のつなぎ的な資金というものは政府がこれを融資をする必要があるというのが私の意見であります。そういうことで、この会議にかけて、そして何らかの方法を現行制度のワクの中ででも、融資ですから、またそれは加害者に対する請求権というものを留保した融資でありますから、これは何かの解決策を見出すために、会議にこれをかけたい。そのときにいま岡本委員の御指摘になった魚やあるいはまた観光業、旅館の人たちも被害を受けているでしょうから、これもまた中小企業金融公庫などからやはり何らか融資の道というものを講ずる方法がないか、これも会議の議題にいたしたいと思っておる次第であります。
  216. 岡本富夫

    岡本委員 これは相当きめこまかく対策を立てて、会議で議題になっただけでは話にならない。だからやはり長官が先頭を切って、そしてきめこまかく手を打っていただきたい。  そこで、おとついでしたか、実は農林大臣の機内さんと一緒に港戸内海のほうに行ってきたんです。そのときに一番強く要請がありましたのが、PCB問題で魚がとれなくなっている、あるいはまた高砂とかそういうところでは、企業のわかっているところは一業者に対して毎日一万円ずつの補償をして、それで魚を買い上げてセメント詰めにして埋めているというのですが、そのすぐそばあるいはその対岸である淡路島、こういうところでは企業責任がはっきりしないというようなことで、もう魚をとっても売れないというわけでみんな休んでいるわけですね。それが一点と、それから赤潮の異常発生がまたあるんじゃないかと非常に心配している。それから、すでに御承知のように、これは先ほど林君から話がありましたように、岡山県でこういった水銀のたれ流しですか、ここも私のほうも調査いたしましたら、水島付近の人の頭の髪の毛を分析しましたら、最低が三九・二PPM、最高が四四四PPMというような水銀が出ているということで、どうしても一日も早く瀬戸内海環境保全法案、これを非常に希望しておるし、やらなきゃならぬということでありますが、そこで自民党さんのほうもいま用意しておるそうでありますけれども、私ども提案しているわけですが、これはなぜ環境庁として、政府として提案できないのか、これをひとつ明確にしておいていただきたい。また全然用意もしていないのか、それではおそきに失するわけでありますが、この点をひとつ明確に御寺弁をいただきたい、こう思います。
  217. 三木武夫

    三木国務大臣 前段の漁業組合によって、ある漁業組合は魚を買い上げあるいは生活保障的な貸し付け金ですか、そういうものを出す、ある漁業組合は全然そういうことの救済措置がない、こういうようなことに対して非常に甲乙ができるわけでありますから、そういう意味でこの問題もひとつ議題として取り上げて、漁民の保護という立場からこの問題をいま申したような推進会議の議題として取り上げてみたい。  それから、瀬戸内海は出せないという理由はないわけであります。われわれも研究しておりますが、また国会側としてもこの問題は各党が軌を一にして瀬戸内海の特別立法をしようという機運があって、立法機関でもそういうふうな問題が非常に進んでおるということで、われわれとしては瀬戸内海の環境保全ということに何らかの特別規制が必要であるという立場でありますから、これは政府が国会がということを競う必要はないのでありまして、国会のほうで、しかも各党が共同してそういう法案が提出されるというのは画期的なことでもありますので、そういう国会の一つの大きな動きに対してはわれわれとしても賛意を表しておる次第でございます。
  218. 岡本富夫

    岡本委員 防衛庁長官が見えましたので、ちょっととの問題はあとにしておきまして、防衛庁長官に、これはさきの委員会でも私取り上げたことがあるのですけれども、ということは基地公害ですね。基地から排出する水の中から非常に高濃度な鉛が出てきたり、あるいはまた廃油ですか、たとえば廃油は基準の六百十四倍、これは沖繩の牧港基地でありますけれども、鉛、カドミウム、こういうものが検出されておるわけであります。そこでほかの場所についてはこの前当委員会環境庁に要求をしたわけでありますけれども、なかなか立ち入り調査がむずかしい。中には東京都は断わられておる、そういう場合もある。今度は立ち入り調査をしたとして、行政権、要するに米軍に対してこういうような何といいますか施設をやれとか、この行政権が環境庁にはないわけです。そうすると、ただ入っただけ、あるいは相変わらず同じだということでは私はならないと思うのです。  そこで長官にお聞きしたいことは、安保条約の地位協定の第七条には、米軍が基地内では何をしてもよいというような規定になっていますね。米軍の基地内は治外法権になっておる。したがって、そういうことから考えますと、排水を調査をしてやかましく言ってみたところで解決しないのではないか、こういうような危惧もあるわけでありますが、これについて防衛庁長官はどういうような所見を持っておるのか、これをひとつお聞きしたい。
  219. 山中貞則

    ○山中国務大臣 いまの第七条は、これは「日本国政府の各省その他の機関に当該時に適用されている条件よりも不利でない条件で、日本国政府が有し、管理し、又は規制するすべての公益事業及び公共の役務を利用することができ、並びにその利用における優先権を享有するものとする。」こういうふうになっているわけでありまして、何をしてもいいということには実はなっていないので、関税から所得税から物品税から、それぞれきびしい条件のもとに免除されあるいは免除されないもの、あるいは売り払いを禁止するもの、そういうもの等いろいろ制限がありますが、同じ地位協定といわれておる第十六条には、「日本国において、日本国の法令を尊重し、」という一項があります。これは明らかに日本国の必要として定めた法令というものは、米軍もこの中に排除されている法令でない限りは尊重しなければならぬという立場に置かれていることを示すものと思います。この当時はわが国公害規制立法というようなものを持たなかったわけでありますから、そのことが念頭にあったとは強弁しないわけでありますけれども、私自身が御承知のような公害立法の作成提案者でありましたから、基地に対して及ばないという問題については逆に攻める立場でずいぶん議論をして政府部内でやってみたものであります。しかし結局はやはり基地機能の機密その他によって、日本国の法令がもろにかぶるということは困難であろうということで私も断念しました。しかし一半の経過上の責任は私もあります。  ところで、今回は防衛庁長官として、基地の提供は外務省が外交案件として処理したものでありますが、それに伴うもろもろの役務その他の提供、調達、紛争、そういうものを所掌する立場に立つわけであります。したがって、昨年の十一月に一応政府としてはこのような基地については野放しではいけないし、環境庁が中心になって積極的にやろうというような申し合わせをされているようであります。当時私は閣僚ではありませんでしたが。その結果、国内のアメリカの主要な基地十九カ所についていろいろな公害に関する基礎的なデータ提出を要請した。ところがそれに対して大体応じております。ただ沖繩のマリン関係がまだ確とした回答書を出していないやに聞いておりますけれども、おおむねアメリカも環境行政というものは非常に良心的なように、いままでの行為は別でありますが、そういう要請については見受けられる点があると思います。  そこで、いまの牧港の件でありますが、これは確かに浦添市が調査しましたところ、驚くべき高濃度の廃油並びに鉛、カドミウム、こういうものが規制量をはるかにオーバーして出てきておる事実が認められました。米軍当局もこれは認めて、その後立ち入りも認めて、さしあたり水と油の分離槽というようなものを先月末に一基つくろう、それが効果があったら逐次五基つくってそれを完全に分離しよう、こういうような姿勢も、これは油だけでありますけれども改めておりますし、沖繩の県知事と基地司令官との間の話し合いも円満に、かような県が委任された行政事務の分野において積極的に立ち入って、共同で排除しよう、そういう問題等についても協力姿勢を示しております。これについても私どもの防衛施設局において、現地を含めて、もちろんそれに対する助言あるいは米軍との仲介あるいは立ち会い、こういうようなもの等も予定いたしておりますので、すでにこのようなことが発生していること自身はきわめて遺憾なことでありますけれども、今後これらのことが起こらないような基地内の処理というものが、単に牧港のみならず、極端な例が牧港でありますけれども、逐次それらは改めさしていく姿勢は私どもとして堅持してまいりたいと思います。
  220. 岡本富夫

    岡本委員 そこですでに、これは金武湾のすぐそばにあります米軍貯油施設から廃油のたれ流し、これは当委員会でも私調査してもらいたいということを言ったわけですけれども、この土壌から最高三〇〇〇PPMも検出されておる。それから農産物に相当被害が起きている。こういった被害の完全補償は、ここだけではありませんけれども、米軍からの公害被害、こういうものに対する損害賠償、これは日本国政府が払うのかあるいは米軍からこういうものを補償するのか。いま国内では御承知のように農地汚染防止法とか、こういうもので企業責任がいわれておりますけれども、これについてお考え方をひとつお聞きしておきたいと思いますが、いかがですか。
  221. 山中貞則

    ○山中国務大臣 いまの御質問の中で金武湾の貯油施設と聞こえたのですけれども、よくそこのところはわかりませんでしたが、たとえば嘉手納で航空用燃料と明らかに推定される油が浴場を営んでおられるところの必要な五尺そういうものに流れ込んで、燃える井戸事件が起こったということは御承知のとおりですけれども、これについては施政権がある当時でも、アメリカ側は一応賠償の最高限度額については応じて、手続はいろいろ複雑でありましたけれども回答を出しております。したがって、直接基地内のアメリカの軍の活動によって、日常活動も含めて、そういうものが周辺地域に迷惑をかけているという事実が明らかになった場合には、これは米側の、形態はいろいろありますけれども、補償責任のあることは、復帰前からも認めておりますし、今後もその態度はアメリカ側に堅持させていきたい、そう思います。
  222. 岡本富夫

    岡本委員 防衛庁長官にもう一つ。それはこの前当委員会で、富士の演習場、これは自然公園の中にある演習場ですが、ここで不発弾によって一人が死に一人がけがをした。また同じ事故が起こっておる。これに対してこの前長官の答弁では、この補償は本人の過失であるからこれは払えないというようなことであった。この前の人はですね。今度は十九歳の少年ですか、今度についてはどういう考えを持っていらっしゃるのか、点検されたのかどうか、ひとつお聞きしたいのです。
  223. 山中貞則

    ○山中国務大臣 先般の北富士の事件は、私が書きものを念のため読んだものは、法務省が警察の事実調査に基づいて、その当時の時点において一応そういうことで処理せざるを得ないのではないかと考えているという段階の説明をいたしましたので、最終的に責任者である私が、自衛隊の管理演習場における死亡事件について、最終的にそのように処理すると申し上げたわけではないわけであります。検討中の事項とお考えになっていただいてけっこうであります。  今回の事件は、さらにここしばらくありませんでした東富士で起こった事件でございまして、これもまたことしに入ってから米軍は発射していないと思われる対戦車りゅう弾砲であったらしい。これは先般のようにトラックのところまで運んでいって、周辺の人があぶないからおやめなさいよというのを、制止を聞かなかったというような事態ではなく、目撃者はほとんどいなくて、重傷を負われたおとうさまも、音がしてうしろのほうを振り向いたら、自分のむすこが、高校生の方が白煙の中にうずくまっていたというようなことであるようであります。したがって、一応いま警察で調べておりますが、その状態から見ますと、下半身の傷がほとんどなくて、上半身、右手が手首がふっ飛んでおって非常に上半身がひどいということは、やはり一ぺん持ち上げた可能性があるというようなことがありますけれども、先般のようにトラックまで運んでいったということと違いますし、また今回の方は立ち入り慣行のちゃんと認められた、いわゆる立ち入りの権利と申しますか、そういう立場を持っておる人でありますので、今回の場合はややそのニュアンスを異にするのではないかと私は見ております。  いずれにしても、これは過去の事例等もいろいろいま私も自分で調べておりますが、さらに今回の事件についていろいろとまた解剖結果あるいはその他の周辺の付属物の飛散状況、たまの破片、その他全部調べておりますから、これはいまのところ経過中であるということを申し上げざるを得ません。  そして、御質問があると思うのですけれども、私が大臣になりましてから立て続けに二件という感じでこういうことになりまして、私はたいへん心痛いたしております。先般もお答えいたしましたが、米軍射撃といえども日本側が観測する、そして直ちに処理すべきことを連絡し、できない場合は当方において処理しておく、そして全面的に旧着弾地であったところまで探査します、こう申し上げておいたのですが、東富士のほうは行動がなかったものですから……。その全面探査をやったやさきこれが起こったということで、まだその探査あるいは清掃という名で呼んでおりますが、不足な点もあると存じます。きょう、あすにかけて大量動員で全面的に探知器による探査、清掃を行なっております。しかしながら、くいが五十メートルおきに打ってあって、そこが着弾地域である、こういうことになっておると申しますけれども、やはり大体なれておる皆さんであっても、くいとくいとの間というところは、くいが実は見えないとともありましょうし、見ないこともありましょうから、立ち入りを禁止するという姿勢はとらないということを申しましたけれども、非常に危険である地域というものは知らせる必要があるのではないかと思いまして、私のほうで昨日陸幕のほうに資料を出しました。そのくいとくいのに間に鉄線を一本だけ全面的に着弾地においては張りめぐらせる。くぐればくぐれるわけです。しかし目をつぶって歩いておってもそれにはぶつかる。危険地域はそれで表示されるということで命じましたところ、全面的にやるには、やはりいまの木造のくいよりも鉄筋で永久的なものにしてきちんとしたくいをしたい。鉄線一本横に張るだけでありますが、柱をきちんとしたい。その間は白いビニールテープを張って、目でも手でもやはり危険区域でありますということは表示するように緊急にいたします。こういうことがございましたので、全面清掃と、そして立ち入り禁止の区域が明確にわかるようにという点と、それから地元市町村、それから入り会い関係の各種の幾つかの組合の人たちと結んでおります各協定、そういうものに基づいて当方も全力を尽くしますが、入ってこられる方々もさわってはいけませんよ、あるいは見つけたら知らせてくださいよ、いろいろなことを了承しておられるわけでございますので、事人命に関する限り、失ったら取り返しがつかないという事柄でもございますし、これらのことも皆さんわかっていただいておりますが、もう一ぺん行政当局、市町村からも、あるいはまたそれらの組合の人たち個々にも十分に話し合いを持たしております。  以上です。
  224. 岡本富夫

    岡本委員 防衛庁長官は何か時間があるそうですから、もっと聞きたいことがありますけれども、これで終わります。けっこうです。  次に、自然公園あるいは保安林、そういった規制地域はありますが、規制地域以外の民有林で全然無規制地域というのが日本には非常に多い。この無規制地域をどうするのか。御承知のように、これは一つの例でありますけれども、最近集中豪雨、あるいはいろんなことで非常に事故が起こっておる。この中でそうした無規制地域民有林ゴルフ場等に開発される。そして前のような開発しないときであれば、これは少々集中豪雨があってもだいじょうぶだった。ところがゴルフ場開発されたために集中豪雨あるいはそういった大雨によって事故が起こっておる。またそれによって自然破壊がどんどんされておるということを考えますと、こういった無規制地域に対する問題については各市町村でもどうしようもないというのですね。そろそろこれに対する規制をし、あるいはまたそういうことを未然に防がなければならぬと思うのです。この所管庁はおそらく林野庁だと思うのですが、林野庁はどういうふうに今後それに対して考えを持っているのですか。
  225. 福田省一

    福田政府委員 御指摘の保安林以外の普通地域でございます。これは御承知のとおり、森林面積二千五百万町歩のうち、そういった民有林の白地地帯というのは約一千万町歩あるわけでございます。これに対しましては従来は、森林の計画制度というものがございまして、伐採、造林その他計画的に施業させるように都道府県を通じて指導をしてまいっておりますけれども、ただいま御指摘のような開発規制については勧告制度以外にはなかったわけでございます。そこで結論から申し上げますと、今回森林法改正案の中で、乱開発規制をするということによりまして、ある一定限度以上の森林につきましては都道府県知事の許可制度というものを導入する案を実は提案しているわけでございます。その内容の詳細については  一応省略いたします。
  226. 岡本富夫

    岡本委員 今回そういう意味森林法改正によって何とかしようということでありますが、ではすでに行なわれたところ、たとえば一つの例をとりますと、これは兵庫県の猪名川町というところでありますが、この猪名川町の上流、町の中ですけれども、ここにゴルフ場が無秩序に大規模の開発をされて、その不良工事によって死者二名も出しておる。これが土砂がどんどんくずれて、その下に猪名川という川がありまして、これを建設省で何べん河床を河川改修しましても、どんどん上からこれが流れてくるわけです。ここについて、これは町にしても県にしても無規制地区だからどうしようもないというような現在の状態でありますが、林野庁としてはこれに対してどういうような手を打って、そしてこの問題を解決しようとするのか。ここの場所についてはあなたのほうにお知らせをしておいたはずですから、この対策をひとつお聞かせ願いたいと思うのですが、いかがですか。
  227. 福田省一

    福田政府委員 御指摘のございました兵庫県の猪名川町のゴルフ場の問題でございます。ここは昨年の六月に降雨量百五ミリでございますが、集中豪雨がございまして、ここで崩壊する被害が出たのでございます。一つは阪神カントリークラブ、もう一つは川辺カントリークラブでございまして、ここにおきまして御指摘のように死者二名、軽傷一名、住居流失、工場流失、床下浸水、田畑流失、田畑冠水、道路欠壊、橋梁流失、堤防欠壊、水路埋没、あるいはその下にございました保安林の立木の損傷、こういった被害でございます。  との被害を及ぼしました結果、兵庫県におきましてはゴルフ場の造成しました業者に対しまして防災計画の提出を求めまして、計画に即した防災工事の実施について指導を行なっております。ゴルフ場の造成業者は防災工事を実施中でございまして、その適正な施工について十分指導、監督してまいりたいと考えておるところでございます。  具体的に申し上げますと、このゴルフ場の造成業者は二つございまして、一つは大日本ゴルフ観光株式会社、もう一つは猪名川開発株式会社でございます。この内容としましてはじゃかごの谷どめ工あるいはコンクリートの谷どめ工あるいはそういったような水路工というようなものを施工いたしましてこの工事を進めているところでございます。  なお、この被害につきましては、この造成者から補償としまして、城東町が二千万円、三田市が一千百三十八万円、猪名川町が一千四百万円、補償を出しております。なおそのほかに死者等への補償金としまして、あるいは工場、住家のつぶれたところに対する一つの補償としまして迷惑料というものがございます。ただいま申し上げましたもののほかに三千六百万円の補償金を支出しておるというふうに連絡を受けたわけでございます。ただいま復旧工事は進行中でございます。
  228. 岡本富夫

    岡本委員 あなは、はだいま復旧工事を行ないつつあるという話でありますけれども、実際に調査いたしますと、町の行政命令に対して、昭和四十八年の雨期までに防災工事と災害復旧工事を完了することについて了解をしているが、実際の工事施工に対しては、下請業者が次々と入れかわり未着工の状態である。これは阪神カントリーのほうですが、またいよいよ雨期に入るわけです。川辺カントリーもそうです。町のほうで盛んにいろいろなことを言いましても、そういうようなことで全然着工しない。要するに命令権が、町から言ったところで聞かないということなんですね。こういうことなんです。これまた雨期になりますとたいへんなことが起こるということで、みんな非常に不安なんです。この責任の一端は、そういった未成立をそのままほうっておいた、これはおそらくここだけではなくて、ほかをさがすと相当いろいろなところがあると思うのです。これは前に建設大臣がしかたないのですというようなことを言ったのですが、いまになってやかましく言って、環境保全の問題あるいはこの災害の問題からあなたのほうで規制しなければならぬということになってきたと思うのです。ですからこういった問題について、町としてもどうしようもない。あなたのほうはほかにどういう打つ手があるのか。いかがですか。
  229. 福田省一

    福田政府委員 御指摘のとおり、現在のところではまだ先ほど申し上げました森林法は未成立でございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように都道府県を通しまして指導してまいるということでございます。ただいま私が報告いたしましたのは県との電話連絡でございまして、御指摘のような点があってははなはだ遺憾でございます。なおよく都道府県のほうと連絡をいたしまして、そういった点がありますならば、この点は厳重に指導してまいりたい、かように思います。  なお、今後の問題といたしましては、ゴルフ場のほかにあるいは宅地造成その他いろいろと開発の問題が出てまいるわけでございまして、これにつきましては、先ほど申し上げましたように、ある一定の規模以上のものにつきましては都道府県許可制度を導入して、なおそれで足らぬところは保安林の制度を導入しましてきびしく取り締まってまいりたい、かように思っているところでございます。
  230. 岡本富夫

    岡本委員 では環境庁、これが自然公園の中であればあなたのほうで自然公園法、そうでないと森林法の一部改正、そんなわずかなことでいけるのかどうか。あちらこちらで山が坊主になったりあるいはくずれているというところはどうしようもないというのが各県の意向なんですよね。ですから、この点について環境庁として何らかの手を打たなければならぬようになってくるのじゃないか。ですからこの点はひとつ検討をしていただきたい、こういうように思います。  そこで自治省の武藤政務次官に、実は一つの事例を引いてでありますけれども、猪名川町は小さい町なんですが、約一億以上のこういった被害が出ているわけです。それで請求するところはどこもない。いま二千万とかいろいろな補償をしているというのはなくなった方に対する補償でありまして、あとこの河川の改修あるいはまたその付近の農地の復旧、そういったものに対する費用というものはこの町ではとても持てない。そういうわけで、そのまま置いておくとまた雨期に被害が起こってくるということで、どうしようもないというのが現在の状態であります。  私は昨年でしたか、この状況を自治省に話をして特別交付税あたりでも何とかしてめんどう見てもらいたい、そしてこの下流の皆さんの生活の不安を――また雨がありますとたいへんですから、それをお願いをしておいたわけですけれども、本年の工事費の中にはわずか三百万しか入っていない。一億に対して三百万ではどうしようもないというようなことでやかましく言ってきているわけでありますが、これに対する対策を自治省ではどういうように考えていただけるのか、ひとつお聞きしたいのです。
  231. 武藤嘉文

    ○武藤政府委員 いま御指摘の兵庫県猪名川町のゴルフ場近辺の災害に伴いまして一億二千幾らの被害額が出ておるのに、町の財政ではなかなか苦しいじゃないかということでございますが、私どもの聞いておるのでは、ある程度災害復旧事業として国庫補助の対象になっておると承っております。しかしながら、その災害復旧として採択されている分が全部ではないために結果的にその町の財政を圧迫しておるということがあるようでございまして、それに伴って特別交付税で何とか配分をしなければならぬじゃないかという御指摘をいただいておったようでございます。  いま三百万というお話でございますが、自治省のほうの計算といたしましては、正直もっと災害関係の分として特別交付税で見ておるようでございまして、ただ単純に四十六年度と四十七年度の特別交付税の金額を御比較いただきますと、結果的には三百万少ししかふえていないということは事実でございまして、四十六年度と四十七年度の算出が同じであれば当然御指摘のとおりだと思いますけれども、私が事務当局で承っておるのでは、算出の基礎がいろいろございまして、当然四十七年度に減になる分もあるようでございます。でございますから、結果的にその差額の三百万だけではなくして、もう少し特別交付税で見ておるようでございます。しかしながら、確かに一千万以上というようなところまではいっておりません。その点についてはよく事情を調査いたしまして、町財政に負担がかからないように極力配慮していきたい、こう考えております。
  232. 岡本富夫

    岡本委員 政務次官、ただ書いてもらったのを読んだだけでは話にならぬのです。ほんとうに実情を調査して、一億二千万という――これも一つ一つ調べてみましたら、みんな相当内輪目に見に復旧なんですよ。この町はそんなに大きな町でありませんし、これを早くやらないと、まだ開発した、造成した赤はだのそのままなんですよ。ゴルフ場が一応使っているのですが、あとは赤はだそのままです。ですから、雨が降ればどんどん流れてくるのですよ。いまのままであれば費用がかさむわけです。河床が上がるから付近はみんな災害が起こる。昔はあんなことはなかった。  ですからあなたに申し上げたいことは、もっと現地調査をして、ここはこうしなければならぬという政治的な配慮をしてもらいたい。よろしいでしょう。一千三百万が一千六百万になったんですか、それは三百万ふえておるだけではないのだと言うけれども、一億何ぼの被害に対してはもともと少ないのです。ですから四十九年度で何とかするとか、それがわかれば町は銀行から借金して早く工事を終わらして被害者を救う、こういう手を打つしかないと私は思うのですが、いかがですか。
  233. 武藤嘉文

    ○武藤政府委員 私はいま自治省におりまして、われわれ政治家といたしましてはいまの御質問よくわかるわけでございます。しかしながら災害復旧そのものは、建設省なりあるいは農林省なりの所管でやっておられるわけでございまして、自治省といたしましては、この災害復旧に伴ってのそれぞれの地方負担分、これをいかにするか、こういうことをやらなければならないわけでございまして、その中で、いま銀行から借金ということでございますが、私ども、当然、災害復旧の補助の残りの分を地方財政で負担していただくわけにいかないので、これは起債でも見るわけでございますし、あるいはそれによって、いま御指摘のように、調査の結果四十七年度の特別交付税で十分見ていないというものがはっきりすれば、四十八年度の特別交付税で見ることも、私ども当然やらなければならないと思います。しかしながら、災害全体の工事をどうこうしろということは、どうも私どものほうとしては少し権限が違いますので、政治家としては私はよく理解はいたしますけれども、これは建設省なりあるいは農林省なり、それぞれ所管の省が積極的にこの災害復旧に取り組んでいただいて、従来の採択になっておる分だけで十分であるのかどうかよく見きわめていただく必要もあろうと思いますし、また私どもとして町に対しましては、それぞれのゴルフ場に対し、いま御指摘のように、まだ赤はだのままで残っておるということであれば、極力、その地域住民のために、そのそれぞれの会社が少なくとも自分のところの赤はだを一日も早く、特にこういう雨季に入っておりますから、一日も早く改善をするように、これは町当局からよく指導することだけは自治省としてやれることでございますから、これはぜひやりたい、こう考えております。
  234. 岡本富夫

    岡本委員 お約束の時間が参りましたので、あと水産庁にまだ聞かなければならぬことがあったのですが、次の委員会に譲ることにいたします。  自治省の政務次官に、ただ通り一ぺんじゃなくて、よくその点も調整できるようにして、そして一日も早くこの付近の住民の皆さん――また、あの川も全然汚濁してしまって、ものすごい公害になっている。魚がみな浮かんでしまっておるわけですから、その点もあなたのほうで十分検討して、まずここから解決していく、そして次はどうしていくということがまた起こってくると思うのです。ひとつその点を検討していただくように要求いたしまして、きょうは終わります。どうも委員長ありがとうございました。
  235. 佐野憲治

    佐野委員長 次回は、来たる十五日金曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時十三分散会