○
鈴木参考人 では
窒素酸化物と
光化学オキシダントと
硫黄酸化物の
環境基準の
専門委員会でどういうことが相談され、きめられたかを簡単に御
説明いたします。
窒素酸化物は、いま
伊東先生からお話しのありましたように、
空気がある一定以上の高
温度で熱せられますと出てまいりまして、その
影響はいままで
注目されておりました
亜硫酸ガスその他の
ガスに比べますと激しいものがございます。と同時にいま御
説明のありましたように
窒素の
酸化物はいわゆる
光化学オキシダントを生成いたします
一つの
原料物質として重大でございますので、
窒素酸化物に関係します問題につきましては非常にむずかしい問題がございました。と申しますのは
窒素酸化物の
影響というものを見るのに、どのような
資料によってこれを判定するかということが最初問題になったわけでございます。
御存じのように
窒素の
酸化物だけが
空気中に存在して、そして
一般住民の方に
被害を与えているというような
場所は、
日本におきましてはほとんどございません。必ずほかの
汚染物質が共存しております。そういうことの中から、
窒素酸化物によりますところの
一般市民に対する
影響というものをどう判定するかということが
一つ問題でございました。したがいましてこれは
わが国だけではなくて国際的に考えましても、どこの国におきましても
窒素酸化物だけを取り上げて
人間への
影響を考えるということにつきましては、実は困難をきわめている問題でございます。そこで私
たちといたしましては、
窒素酸化物の
影響を考える場合にどう考えるかとなったわけでございますけれども、まず
窒素酸化物というものがこの十
年間に急速に
汚染が進行したこと、これにまず
注目しなければならなかったわけでございます。かつて十年以前におきましては
窒素酸化物は確かに
空気が熱せられることによって出てまいりますけれども、その
地域環境におきますところの
濃度は必ずしも高くなかった。それがわずか十年の間に
場所によりましては
亜硫酸ガスの
濃度以上に達してしまっているというところも
測定されるようになってまいりました。そういうことの中から、非常に困難ではあるけれども、この際
窒素酸化物の
人間に対します
影響というものを中心とした
環境基準というものを
諮問されましたので、
人間に関する
環境基準についての
資料をできるだけ集めてみるということにしたわけでございます。
いわゆる
窒素の
酸化物といわれるものは、
空気中の
窒素が
温度が高く熱せられることによって出てまいりますが、その
種類はおそらく五
種類以上ございます。そのうち比較的安定な
状態にあるものは
一酸化窒素といわれるものと
二酸化窒素でございます。そのうちいま私
たちが知り得る
資料の中で、
十分資料が整ってはおりませんけれども、比較的多いのが
二酸化窒素によりますところの
資料でございます。
一酸化窒素につきましては、
研究室段階におきましてはその
毒性が非常に
注目されておるところではございますけれども、これはまだ初期の
段階でございまして、将来この
一酸化窒素に対します
研究が進むことによって、おそらく
一酸化窒素の
影響というものは明らかになるでしょうけれども、現
段階ではまだ
環境基準をきめる
資料として使うには早過ぎる。したがいまして
二酸化窒素、
NO2につきましては比較的
資料が整っておりますので、
窒素酸化物という御
諮問を受けましたけれども、その
酸化物のうち
NO2、
二酸化窒素に
注目をして
影響というものを判定するというように考えたわけでございます。それで、
二酸化窒素の
影響につきましては、いま申し上げましたように
諮問が、人の健康にかかわる
環境基準ということに限定されておりましたので、人についての
影響をいかに判定するかとなりますと、残念ながら現在のところは先ほど申し上げました
事情もございまして、
動物実験によってこの
二酸化窒素の
影響を判定するという学問が進んでいるだけでございます。
一般市民に対しますところの低
濃度の
二酸化窒素がどのような
影響が起きているであろうかということをはっきりと判定する
資料をわれわれは必ずしも持っておりません。そこで、私
たちといたしましては、
二酸化窒素の
動物実験にまず
注目をいたしまして、
動物実験の
資料から
人間への
影響をどのように判定するかというところに努力したのでございます。お手元にすでに
委員会報告がお配りされているというお話でございますので、その中でおもなるところだけピックアップしてお話し申し上げます。
二酸化窒素は、
二酸化窒素だけで実は肺の奥深く侵入いたします。
亜硫酸ガスといわれるようなものは、
亜硫酸ガスだけでございますと必ずしも肺の奥深くまでは入りません。
浮遊粒子状物質ないし
粉じんといわれるものが共存いたしませんと肺の奥深く入りませんけれども、
二酸化窒素はその
紛じんがあろうとなかろうと肺の奥深く入っていくという
一つの特性がございます。同時に
二酸化窒素は
浮遊粒子状物質ないし
粉じんが共存したりあるいは
亜硫酸ガスSO2が共存いたしますとその
毒性を強めるという
実験室的結果が得られております。そういうことが
一つ注目されたわけでございます。
そういたしますと、
わが国におきましては先ほどお話いたしましたように、
二酸化窒素だけで
空気がよごれているという
場所よりも、むしろ
浮遊粉じん及び
亜硫酸ガスが共存している
場所のほうが多うございますので、
NO2の
影響を考えます場合におきましては慎重にこの点を考慮しなければならないということになりました。
それから低
濃度の
SO2を呼吸いたしますと、まず
呼吸器の
上部、私
たちの
ことばを使わしていただきますと
気流抵抗の
増加、のどから
気管支の
上部までの間の気道と申しますけれども、それが少し狭くなりまして、それで
気流抵抗の
増加という
生理学的反応が見られます。これは
人間につきましてもすでに
実験が行なわれているところでございます、この
程度でございましたならば。
そしてさらに
長期にわたりまして
NO2に
暴露をいたします
実験を
動物実験ではすでに進められておりまして、まず
動物実験に〇・五
PPM程度の低
濃度を
暴露いたしましても、直ちにそれが数時間の
暴露でもって肺に
影響が出てまいります。この肺に対します
影響は必ずしも
病気とは申せませんけれども、ひとつ
反応として出てまいります。これは
化学的性格でございますから
暴露をやめますともとに戻りますけれども、好ましからざる
影響でございます。そういうことをさらに
長期にわたって続けてまいりますと、比較的低
濃度の、
動物実験といたしますと低
濃度でございます〇.五
PPMというような
暴露は、そのような低
濃度であっても
動物に
長期にわたって
暴露をいたしますと、そこに
細菌感染、
ビールス感染というものを行なわせますと非常に感染しやすくなってまいります。すなわち
SO2のときでも認められましたことでございますけれども、
窒素の
酸化物は
窒素酸化物それ自身の
呼吸器に対する
影響と同時に、それがあることによって
細菌感染、
ビールス感染というものが起こしやすくなる、わかりやすい
ことばを使わしていただきますと
肺炎というような
病気が起こしやすくなるという
状態が
動物実験では確かめられております。さらに〇・二五
PPMというようなものを、
動物実験といたしますと
長期になりますが、六カ月ないし一カ年
暴露するという
実験をいたしまして、そこに
ビールスあるいは
細菌を感染させますと、これは激しい
肺炎という
症状を
動物で起こしてまいりますし、同時に
気管支の
末梢、
気管支のすみのほうでございますけれども、
末梢気管支の一番上をおおっております細胞の中で、医学の
ことばを使わしていただきますと
腺腫様
増殖というような
状態、これは非常に好ましからざる
症状でございます。これはおそらく将来の像はまだはっきりわかりませんけれども、もしも
腺腫様
増殖というようなものが悪い
方向に行きますと
ガンになります。いい
方向に行きますと
ガンにはなりませんで、もっといい
状態で済みます。直接命にかかわりのない
状態に過ごしますけれども、現在の世界じゅうの
研究は
腺腫様
増殖でとまっております。これが
ガンを起こすというところまで行きませんけれども、
影響のほうから考えさせていただきますと、そういう
可能性を持った変化というものは
注目しなければなりません。私
たちはこの
日本及び
アメリカで行なわれました低
濃度長期暴露による
動物実験によるいま申し上げました
腺腫様
増殖ということに非常に
注目をしたわけでございます。
なお、
窒素の
酸化物はもう少し度を多くして
暴露いたしますと、肺を通りましておそらく全組織、全
臓器に対しまして二次的な
反応を起こすということは
動物実験で確かめられております。
呼吸機関の
影響だけでは済まない、全
臓器にも
影響を及ぼすであろうということは、一応
動物実験では確かめられておるところでございます。
そこで、
動物実験では相当の
影響が出るということがわかっておりますけれども、これを
人間に応用するのにどうするかということが非常に問題になりまして、普通の場合でございますと、これが
人間に対します
影響は、
御存じの
疫学的研究の
資料を利用いたしまして、そして
疫学的調査結果から出ましたところの
資料に対して
動物実験によって
説明をつけましたことからそれを総合判断いたしまして
人間への
影響を
説明することになりますけれども、残念ながら
窒素の
酸化物に
注目いたしましたところの
疫学的調査は
アメリカで一例、
チェコスロバキアで一例、
わが国で
準備状態の
疫学調査が一例と三例しか世界じゅうにございません。そしてそれらの
状態を総合いたしますと、いずれも何か子供の
呼吸器疾患の、ことにインフルエンザに感染症を増す。あるいは
チェコスロバキアの例で申し上げますと、子供の血液の
症状の悪い
影響が見られる。
病気とは申しません。悪い
影響でございます。悪い
影響が見られておる。それから
日本におきますところの予備的
調査によりますと、ある
程度の
窒素酸化物がふえてまいりますと、大体おそらく年平均に直しますと〇・〇四あるいは〇・〇三
程度の
濃度において慢性
呼吸器疾患の
症状を持った人
たち、これは
病気とは決して申しませんけれども、三カ月以上せきとたんが毎日続くという
症状でございます。あるいはもっと正確に申しますと、そのような
症状以上の
症状を持った人を全部ひっくるめましてその悪い
病気、慢性
気管支炎にもいろいろ
種類がございまして、悪い
病気を含めた、初期
症状から悪い
病気を全部含めた、すなわちせきとたんの
症状を三カ月以上毎日出すというような
症状を持った人
たちが大体いま申し上げました〇・〇四
PPM程度以上においてどうもふえてくるというのが、
日本の成績から、予備的
調査でございますけれども、出てまいりました。
そこで、いま申し上げました
動物実験によりますところの激しい
症状、それから
アメリカ、
チェコスロバキア、
日本というところで行なわれましたところの
疫学的調査などから、いかにしていわゆる
環境基準の
参考になりますところの判定条件を
専門委員会として提案するかということにつきまして非常に問題を起こしたところでございます。私
たちといたしましては、いま申し上げましたことからすでにおわかりいただけると思いますけれども、
大気汚染の
影響を受けるのは、成人よりも老人、乳幼児及び病人というような人
たちあるいは一見健康な人と見えましても過敏な
状態にある人
たち、敏感性の高い人
たち、感受性の高い人
たちに対する
影響、そういうものに人の健康というものを中心として考えますならば
注目しなければなりません。しかしながらほかの
汚染物質と違いまして、
窒素の
酸化物につきましては、いま申し上げました老人とか病人とかあるいは感受性の高い人
たちに対しますところの
疫学的調査というものは
資料が皆無でございます。そこでどうしても
動物実験からある種の安全率をかけることによって、われわれはとりあえずこの
環境基準を
設定いたしますところの判定条件をきめなければならないということになったわけでございます。
その際、一体どの
程度の
影響をもって判定条件とするかでございますが、この
環境基準というのは、
ことばをかえさせていただきますと
空気の質をきめていることになります。
空気の質をきめますのには、すでにWHOが
空気の質を四つの
段階に分けまして、そして
空気の質は四つの
段階がある——簡単に申し上げます。
レベル一という
空気は、現在までに得られた知識に基づく限りにおきましては、
人間及び
生活環境に対しまして直接的にあるいは間接的に無
影響であるという
空気が
レベル一になります。
レベル二はいわゆる生活妨害が出現するところでございます。
レベル第三の
空気の質といわれるようなものは慢性の
影響が出てくるような
空気の質でございます。それから
レベル四という
空気は、これは急性の
影響が出まして、場合によりますと死に直結するであろうような
空気のよごれというように分けておりまして、WHOは、もしも
地域環境の
環境基準をきめるならば、三、四は絶対に定めてはならない。一、二あるいは——一が一番望ましいのですけれども、まあ市民の方々が認めるならば二の
状態もしかたがない。しかしながらWHOとすれば一ないしは一と二の間くらいまでしか許せない。こういうのがすでに数年前にWHOから勧告されております。そういうようなことを
参考にいたしまして、私
たちといたしましては、
環境基準というものの法律的な内容は別といたしまして、われわれは
空気の質はかくあるべきであるという判定条件を出すといたしますと、いままで得られた知識に関する限り直接的にも、間接的にも
影響の出ない
空気、WHOで申します
レベル一というものをまず勧告すべきではないであろうかということで
意見が統一いたしました。そしてそれは結局老人にも子供にも乳幼児にも
影響がないということでございます。
そういたしますと、
動物実験からの先ほど申しました三つの
疫学的調査を総合いたしますと、どういたしましても——いままでの成績が健康人についてやられているということも判断いたしまして、思い切って〇・〇二
PPMという数字を提案したわけでございます。同時に、現在までに得られました知識に基づきましては、短
期間の、一時間
程度のよごれあるいは五分
程度のよごれという非常に短時間のピークのよごれというようなものにつきましての急性
影響という面の
資料はほとんどございません。したがいましてわれわれといたしましては、
窒素の
酸化物は慢性の
影響というものをまず防ぐための
空気の質を準備しておけばよろしいであろうというので、二十四時間値だけを
報告したことになっております。
それから、さらにつけ加えさせていただきますと、
地域の
大気汚染の場合におきましては、出しましたところの
環境基準がはたして正しいものであったかどうか。これを市民の健康を
調査することによって確かめる
方法はほとんど不可能でございます。
労働衛生におきましては、ある種の新しい毒物が出てまいりますと、ある職場でもって暫定的な環境
濃度をきめることによって、まず労働衛生管理をいたしまして、そしてそれに
暴露されます労働者の健康管理を厳重にすることによって、与えられましたところの環境
濃度というものがはたして労働者の健康を守ることができたかできなかったかということをチェックすることができますけれども、いまの
状態で申しますと、
日本を含めましてどこの国でも
一般市民の健康がいま与えられた
環境基準によってどういう
影響を受けているかということを見るためにはある
程度の犠牲を払わなければなりません。それはすでに
SO2の場合において見られたところでございます。そういう犠牲を払うことによって確かめるということは、
専門委員会といたしましては採用できないということで、ここで思い切って安全率を高く取り上げることによって、二度と再び、チェックの
方法のない
地域環境基準の
空気につきましては厳重な
空気の質というのを提案したいというので、いま
伊東先生からお話のありましたように相当きびしい、絶対きびしい数字を提案したわけでございます。
それから次が
光化学オキシダントでございますけれども、
光化学オキシダントは、これは
空気中で起きておりますところの
光化学反応のうち、
窒素の
酸化物と
炭化水素によって起きてまいります——そこに太陽照射が行なわれることによって生成されました酸化性の強い
物質、同時にそのときには実は還元性の
物質も出ておりますけれども、それの総称されたものが
光化学オキシダントとしてすでに把握されているところでございます。これをもう一回繰り返します。
光化学反応というものは、
空気中で
汚染物が存在いたしますと、
汚染物が太陽の光のエネルギーをもらうことによって
空気中で新しい
物質を生成しております。それが
光化学反応でございますけれども、そのうち
窒素の
酸化物と
炭化水素を材料としてできてきたものが
光化学オキシダントでございます。その
光化学オキシダントにつきまして、
アメリカ及び
日本がいま一番
調査が進んでおりますけれども、いろいろそれぞれの
調査を経たことによって、先ほど
伊東先生からお話しがありましたように、ある一定の
測定法で与えられたオキシダントの値の大部分はオゾンであるということが確かめられているところでございます。これもわかりやすい
ことばで申し上げますと、
光化学オキシダントで
測定されたオキシダント
濃度のうちの大部分はオゾンである。同時に、それができておりますときには還元性
物質としてのホルムアルデヒド及びアクロレインあるいはPANというようなものが同時に生成されている。それらが目の刺激をするところでございます。オゾンは目を刺激いたしません。それで還元性
物質が目を刺激いたします。酸化性
物質でございますとPANが刺激いたします。この目の刺激が一番先に
アメリカで指摘されたところでございます。そしてこの目の刺激はいわゆるニューサンスでございます。生活妨害でございます。そうしてさらにその
濃度が高まってまいりますと、のどの刺激
症状、鼻の刺激
症状及び息苦しさというようなものを覚えてくるものでございます。そしてオゾンというようなものが
長期にわたってもしも
暴露されるようなことがありますと、
窒素酸化物に比べれば、もうより激しい
症状を起こすものでございます。
窒素の
酸化物とオゾンの
影響と申しますものは、いま
地域大気汚染として
注目されている
濃度の
程度でございますと、大体同じ
症状を起こしてくる、
呼吸器に対しますところの、粘膜に対します
影響及び感染に対する感受性を高める。あるいははっきりとまだわかっておりませんけれども、
ガンというようなものに対する
発生に対して、これを
注目しなければならないという性質を持っております。そういうことがまず性質としてございます。
そして人につきましての成績につきましては、
わが国におきましては約三年前からこの問題が問題になりましたけれども、
アメリカにおきましては、これは十数年前から問題になりまして、人についてのいろいろの
実験結果、あるいは市民の
調査等によっていろいろ
資料が得られております。その中において、
わが国におきましても
アメリカにおきましても同時に認められますことは、オキシダントが一時間値に直して〇・一
PPMをこえてくると、市民の中から目の刺激
症状を訴える人がいよいよあらわれてくるというのが
一つございます。これは
アメリカであろうと
日本であろうと同じでございます。
同時に、
アメリカにおきまして病人に対するオキシダントの
影響というものが詳しく調べられておりまして、〇・〇六
PPMであるならば、肺及び循環器障害を持った人
たちでありましょうとも無
影響であるという非常に貴重な
資料がありましたので、それらを
参考にいたしましたことと、それからオキシダントにつきましては、すでにWHOにおいても若干の勧告がなされております。それらを総合いたしまして、大体どこの国もオキシダントにつきましては、目のちかぢかと俗にいわれております
症状を防止すること。それからオキシダントというものは、先ほど
伊東先生のお話にありましたように、絶えず出ているものではございません。
気象条件に非常に強く左右されまして、太陽照射が強い場合、風が低まった場合におきまして
発生いたしますので、もしもいまの
日本の
状態で、いま
日本でオキシダントの
測定されている
状態であるならば、これをいまのうちに押えてしまうならば、慢性の
影響は出ないで済むであろうというので、いまの一時間値を厳重に定めることによって慢性の
影響を防止できるであろうという想定のもとに、一時間値のみ、〇・六でございましたか、
PPMを観測したところでございます。
それで、次は
硫黄酸化物でございますけれども、
硫黄酸化物につきましては、すでに一番先に
大気汚染につきましての
環境基準ができたところでございますが、その後、現行の
環境基準というものを守っておりましても、若干いろいろと疑義があるというのが各地方の成績から出てまいりました。それでそれらのものを総合いたしますと、もう一回
硫黄酸化物につきましては見直しをしなければならないということになります。そしてその場合におきまして、かつて
硫黄酸化物というものをどう考えるかと申しますと、最初の
硫黄酸化物の
大気汚染の
環境基準をきめましたときにおきましては、化石燃料によって起きてまいりますところの
大気汚染を
評価いたしますのに、
硫黄酸化物と
浮遊粒子状物質を総合的に考えるというのが各国及び
わが国においてもとられたところでございます。したがいまして、
硫黄酸化物というのは、最初の
報告書におきましては、読みようによりましては、
大気汚染の指標であるというような読み方もできるような
考え方がとられておりました。そしてそれは現在でも、WHOにおきましては、
硫黄酸化物と
浮遊粒子状物質を一緒にいたしまして、化石燃料によりますところの
大気汚染の
状態を表現いたします。ところが
わが国におきましては、残念ながら、その
状態をすでに越えまして、先ほど
窒素の
酸化物のところで申し上げましたように、すでに
窒素の
酸化物が硫黄の
酸化物の
濃度よりも高いところが出てきてしまった。といたしますと、硫黄の
酸化物は
硫黄酸化物として単独に
注目しなければならない面が出てまいりました。同時に、
硫黄酸化物は、化石燃料によって起きておりますところの
大気汚染というものを表現するのにまだ捨てることもできないというので、若干私
たちといたしましては
考え方を変えまして、
亜硫酸ガスそのものも
毒性がある、同時に、
亜硫酸ガスは化石燃料から出てきます全
汚染物の
影響を代表する
ガス状
物質であるという
考え方と両方を採用して、この
硫黄酸化物につきましての判定をしようではないかということにしたわけでございます。ちょっとごたごたいたしましたけれども、若干前の
硫黄酸化物の
考え方よりも
硫黄酸化物そのものの
影響により
注目をするという態度にしたわけでございます。
そして、現在すでに
硫黄酸化物につきましては各地で非常に広く
測定されておりますので、その
測定器は、すでに
硫黄酸化物のうち
亜硫酸ガスだけを
測定するようにいま機械がセットされております。それ以外の
硫黄酸化物は排除するように機械がセットされておりますので、現在得られております知識は、
亜硫酸ガスの
濃度そのものでございますと推定しても大きな間違いはないということが
一つ言えます。
と同時に、
硫黄酸化物の
測定法の現在行なっておりますものは、実はほかの
汚染物質によって
影響を受けるものでございます。たとえば
窒素の
酸化物というようなものは、この
測定値に対しまして無
影響ではございません。そこで、硫黄の
酸化物につきまして、もしも
硫黄酸化物に
注目をするということが必要となるのならば、
二酸化硫黄というもの、すなわち
亜硫酸ガスというものに
注目せざるを得ないし、その
亜硫酸ガスそのものを正確にはかることが必要であるというので、むしろこの
専門委員会におきましては、
二酸化硫黄、
亜硫酸ガスの
測定をいかに正確にするかということが論議の大部分でございました。しかしながら、現在におきましては、すでに各地方において得られております
資料というものは、現在置かれている機械によって得られている、その
資料をとりあえず利用しなければならないというので、私
たちといたしましては、現在行なわれておって、
硫酸ミストあるいは
粉じんと硫酸塩というようなものを除外いたしましたものを、一応現在では
亜硫酸ガス濃度として解釈をするということでもって
説明をしてまいりました。そして第一回の
硫黄酸化物につきましての判定をいたします場合におきましては、四つの
疫学的調査によってこの
硫黄酸化物の
影響を判定いたしました。すなわち、
地域住民に対する全般的な
影響という四つの条件を与えたわけでございます。
それは簡単に申しますと、疫学的の立場から見て、その
地域の慢性
気管支炎の有症率が
増加していないこと、老人が極度によごれたときに死に至らないようなこと、子供の肺の機能が低下しないようなこと等々、四つの条件でございます。それに対しまして私
たちは、第一回の
専門委員会できめられましたことは、これはそのまま認めざるを得ない。そしてそれに加うるに、どういう
考え方を採用すべきであるかということになったわけでございまして、その後
昭和四十三年以後におきまして、各地において
動物実験ないし疫学的
実験というものが蓄積されましたので、それを採用することにいたしました。それは本質的に申しますと、第一回のときとあまり変わりがありません。ただし、よりよい
資料が集まってきたということになります。
それは簡単に申し上げますと、子供のぜんそく
症状の訴えというものが起きてくる
場所の
濃度というものが、北九州におきます約八
年間にわたりますところの
調査から明らかになってまいりました。北九州の
SO2
濃度が八
年間平均で大体〇・〇二
PPM程度でございますと、子供のぜんそく発作は起きない、少ない。起きないというと語弊がございますが少ないという
状態、これが明らかになりました。
それから、いま
日本におきましては慢性
気管支炎の有症率
調査というものが非常に各地で行なわれておりますけれども、その成績を整理いたしますと、先ほど申しましたせきとたんの
症状が三カ月以上毎日続く、そういうような人
たちがどれくらいあるかということが各地の
調査で明らかになってまいりまして、それが
空気がよごれていないところでございましても、四十歳以上の成人において約三%は存在する、そしてそれが年
平均値に直しますと、大体〇・〇二から〇・〇三
程度の年平均の
濃度のところからそれ以上の
濃度になってまいりますと、慢性
気管支炎の有症率がそろそろ高まってくる。そしてそれは、統計的に有意の関係があるということが明らかになりました。これは
わが国において初めて見出したことでございます。
一般の人
たちであっても、慢性
気管支炎
症状というものがあり得るわけでございますので、それがどの
程度であるか、そして
大気汚染がそれに加わってまいりますとどういう
状態があるかということは、大体〇・〇二、〇・〇三
程度のところでもって急にふえ始める。急にと申しますか、これからあとは有症率の
増加と
濃度の
増加とが一致して関係づけられるということでございます。
さらに四日市におきますところのいろいろの
対策の進歩に伴いまして、四日市の
亜硫酸ガスの
汚染濃度が低下してきたときの
状態というものがいろいろ
資料が得られてまいりまして、その
資料を過去の
資料といろいろと突き合わせてみますと、
亜硫酸ガスの
濃度が、
空気がきれいになってまいりますと、新愚、新規患者の
発生が減ってくるということが四日市の成績の中から出てまいりました。それに私
たちは
注目いたしました。
それらを総合いたしまして、先ほど申しました
窒素の
酸化物のときに考えました
一般的条件というものを考えることによって、いま現在、
空気がきれいなところで慢性
気管支炎有症率は三%ある。かつて第一回に出しましたときには、農村において三%、工業都市において約五%から六%、すなわち二倍の有症率が出たところを悪いと申しました。今度は、先ほど申しました
窒素の
酸化物と同じ
考え方でもって、WHOの
空気レベル一というところに置くといたしますと、それは有症率で申しますと、四十歳以上の成人ということに目をつけますと、三%のところでもってこれを押えるということが大体WHOの
レベル一に相当いたします。したがって、それを採用いたしますと、〇・〇二ないし〇・〇三ぐらいになります。そこで、これを先ほど申しましたいろいろな条件、子供、病人、老人というものを全部ひっくるめて考えますときに、安全率をかけることによって、それを、〇・〇二を大体
平均値にとるといたしますと、年最高値が〇・〇四になるというので、〇・〇四という最高値を二十四時間
平均値といたしましては採用する。それから、急に
空気がよごれたことによりまして死というものがもたらされる、あるいは病人の
症状が悪化するといういわゆるピーク
濃度というものが出たときの
状態は、第一回のときに
報告されました
資料も今回それからあとつけ加えました
資料もほとんど同じでございまして、〇・一存在いたしますと死亡者が統計学的に有意にふえてくる、あるいは病人の
症状が悪化するというのが統計学的に有意にふえてくるということでございますので、一時間値のピーク
濃度につきましてはそのままにしたわけでございます。
そこで、いままで申し上げましたことをもう一回繰り返さしていただきますと、
亜硫酸ガスにいたしましても
窒素酸化物にいたしましても、ここできめましたものは、同時にそこに
窒素の
酸化物が存在していること、あるいは粒子状
物質が存在しているということを考慮してきめた数字でございます。それらすべての
環境基準が満足されませんと、たった
一つだけが満足されましても、おそらく
地域市民に対しますところの
影響は無
影響、
レベル一であるということを言い切ることはできないであろう、それだけつけ加えさしていただきます。