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1973-05-08 第71回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年五月八日(火曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 佐野 憲治君    理事 菅波  茂君 理事 登坂重次郎君    理事 林  義郎君 理事 森  喜朗君    理事 小林 信一君 理事 島本 虎三君    理事 中島 武敏君       上村千一郎君    小澤 太郎君       田中  覚君    戸井田三郎君       村田敬次郎君    岩垂寿喜男君       土井たか子君    木下 元二君       岡本 富夫君    小宮 武喜君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君  出席政府委員         北海道開発庁総         務監理官    山田 嘉治君         環境政務次官  坂本三十次君         環境庁長官官房         長       城戸 謙次君         環境庁大気保全         局長      山形 操六君         環境庁水質保全         局長      岡安  誠君         水産庁次長   安福 数夫君         通商産業省公害         保安局長    青木 慎三君         通商産業省公害         保安局参事官  田中 芳秋君         通商産業省繊維         雑貨局長    齋藤 英雄君         運輸政務次官  佐藤 文生君         運輸省海運局長 佐原  亨君         運輸省船舶局長 田坂 鋭一君         海上保安庁長官 野村 一彦君  委員外出席者         運輸省港湾局技         術参事官    大久保喜市君         運輸省航空局飛         行場部長    隅  健三君         建設省河川局河         川計画課長   飯塚 敏夫君         自治省財政局財         政課長     土屋 佳照君         消防庁予防課長 永瀬  章君         参  考  人         (中央公害対策         審議会委員)  伊東 彊自君         参  考  人         (中央公害対策         審議会委員)  鈴木 武夫君         参  考  人         (新東京国際空         港公団理事)  岩田 勝雄君         参  考  人         (新東京国際空         港公団理事)  池田 迪弘君         参  考  人         (新東京国際空         港公団理事)  杉野 信吾君         参  考  人         (新東京国際空         港公団工務部         長)      皆川 葉一君         参  考  人         (新東京国際空         港公団給油施設         部長)     福岡 博次君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ――――――――――――― 委員の異動 五月八日  辞任         補欠選任   松本 十郎君     上村千一郎君 同日  辞任         補欠選任   上村千一郎君     松本 十郎君     ――――――――――――― 五月一日  公害防止抜本的対策に関する請願高沢寅男  君紹介)(第三五〇九号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第三六九六号)  日光国立公園尾瀬地区自然保護に関する請願  (松尾信人紹介)(第三五八三号)  同外一件(山口鶴男紹介)(第三六九七号) 同月七日  日光国立公園尾瀬地区自然保護に関する請願  (八木一男紹介)(第三八四九号)  同(山口鶴男紹介)(第三八五〇号)  同(坂口力紹介)(第三九二五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月一日  阪神高速自動車道高架線建設工事に伴う騒音  被害に関する陳情書  (第二六七号)  窒素酸化物環境基準設定に関する陳情書  (第三〇五号)  瀬戸内海の環境保全のための法律制定に関する  陳情書(第三〇六  号)  琵琶湖の水質保全に関する陳情書  (第三〇七号) は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  公害対策並びに環境保全に関する件(大気汚染  及び水質汚濁対策等)      ――――◇―――――
  2. 佐野憲治

    佐野委員長 これより会議を開きます。  公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  公害対策並びに環境保全に関する件、特に大気汚染対策問題調査のため、本日、参考人として中央公害対策審議会委員伊東彊自君及び中央公害対策審議会委員鈴木武夫君に出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐野憲治

    佐野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  この際、参考人から中央公害対策審議会による大気汚染対策環境基準について意見を聴取いたします。伊東参考人
  4. 伊東彊自

    伊東参考人 窒素酸化物及び光化学オキシダントにかかわる環境基準設定並びに硫黄酸化物にかかわる環境基準設定につきましては、今般、四月二十六日、中央公害対策審議会から環境庁長官答申されたわけでございますけれども、これまでの大気部会における審議経過並びに答申概要について御説明申し上げます。  窒素酸化物及び光化学オキシダントにかかわる環境基準につきましては、昨年六月二十日、大気部会に対しまして環境基準専門委員会から、窒素酸化物につきましては、特に二酸化窒素注目いたしまして報告がございまして、それを受けまして、大気部会に設置されました小委員会答申案につきまして九回ほど委員会を開きまして審議を重ねてまいりまして、先般の大気部会で了承されまして、これが答申となったわけでございます。  まず、窒素酸化物から御説明申し上げます。  二酸化窒素など窒素酸化物につきましては、ものを高温で燃焼させますと、必ず出てまいりますが、現在のところその発生を防止しましたり、排煙中から窒素酸化物を除去するいわゆる排煙脱硝は非常にむずかしいところでございます。  しかし、専門委員会は、窒素酸化物のうち、健康への影響のデータが比較的よく得られておりますところの二酸化窒素につきましては、その影響が相当重大であることから、これについて世界的に見ましてもたいへんきびしい水準の値を提案いたしておりますので、こういうきびしい基準をどういたしましたら達成できるであろうか、また防止技術開発をどのように進めるべきであるか、いろいろな問題につきまして多くの側面から検討してまいったわけでございます。  このように窒素酸化物対策にはたいへんむずかしい問題がございますけれども、わが国大気汚染は最近のいわゆる光化学スモッグの問題をはじめといたしまして依然としてなかなか深刻でございまして、早急に窒素酸化物による大気汚染改善をはかることが必要でございます。  このようなわが国事情を考慮いたしまして、あえて専門委員会提案どおりのきびしい基準値を定めるべきことをきめたわけでございます。  しかし、このきびしい基準値達成は容易なことではございませんので、そこで脱硝技術等の画期的な防止技術開発を最優先の課題といたしまして、国家的なプロジェクトとして従来に例を見ない決意をもってこれに当たるべきこととするとともに、当面適用できる技術などによりまして、できるだけ早い期間二酸化窒素等窒素酸化物による汚染を減少させることとしたわけでございます。  改善のテンポは、達成期間及び中間目標値として取りまとめましたように、原則として五年以内におきましてできるだけ早期環境基準達成することといたしました。しかしながら、大都市や大規模な工業地帯では早急な達成は非常に困難でございます。それで、これらの地域にありましては五年以内に中間目標値達成いたしまして、環境基準は八年以内に達成することといたしました。なお、この中間目標値年間を通じて一日平均値が〇・〇二PPM以下である日数が総日数に対しまして六〇%以上維持されることとなっております。これは言いかえますと、環境基準を満足する日が年間を通じて六〇%以上あることということでございます。  この程度汚染状態ですと環境基準の二倍の汚染水準であるところの〇・〇四PPMをこえる日が若干見られることがありますけれども、東京、川崎、北九州など著しく汚染が進んでおります地域の現状の汚染水準の二分の一以下というレベルに相当いたします。したがいまして、この中間目標値改善目標としましては相当にきびしいものと考えられております。  次に、環境基準によりますところの地域大気汚染状況評価でございますけれども、現在の測定体制では一般に期待し得る精度に限界がございます。このほか、気象条件発生源状況などによりましても異常な測定値が記録される可能性がありますので、測定値評価は慎重に行なうべきであること、特に一年間などという長い期間にわたる測定結果の評価にあたりましては、WHOの考え方参考にいたしまして、その期間測定値のうちで高いほうから二%の範囲内にあるものを除外して行なうこととする原則的な考え方を示したわけでございます。  最後に、環境基準設定に伴う課題につきましては、答申にございますとおり国家的なプロジェクトによる防止技術開発、そのほか各般にわたりますところの施策を総合的、かつ強力に推進しまして環境基準維持達成をはかるべき旨を述べたわけでございます。  次に、光化学オキシダントにつきまして御説明申し上げます。  わが国における光化学反応による大気汚染は三年前の東京立高校事件以来大きな社会問題となっておりますことは言うまでもございません。  しかし、光化学反応による大気汚染実態とその影響につきましては必ずしも十分には解明されておりません。特に大きな問題となっておりますところの重篤な被害が局地的に一部の学校の生徒に見られることにつきましては、なお今後の調査研究にまたなければならないところが多いようでございます。専門委員会では、こうしました光化学反応による大気汚染のうちで、従来わが国米国等測定されてまいりました光化学オキシダントに着目いたしまして、その人の健康への影響を防止するための濃度条件を提案いたしてまいりました。これは国際的にもほぼ同様の水準環境基準設定されていることも考えまして、そのまま環境基準基準値とすることが適当と考えたわけでございます。そして、環境基準達成はできるだけ早く行なうことにいたしましたが、光化学オキシダントは直接発生源から出てくるものではございませんで、一たん発生源から排出された窒素酸化物炭化水素などが太陽光線の照射のもとで反応いたしまして、二次的に生成されるものでありますので、その達成のためには窒素酸化物炭化水素についての対策が必要でございます。  そこで、これらの物質反応による光化学オキシダントの生成の実態を明らかにしまして、それに基づきまして早急にこれらの物質の排出を押えることが必要であるという考え方に立ちまして、調査研究その他の施策推進答申いたしております。  なお光化学オキシダントとは特定の測定方法によりまして測定される酸化力の強い物質を総称しております。しかし、今後は光化学反応によって生成される個々の物質、たとえばオゾン、パーオキシアセチルナイトレート、ホルムアルデヒド、硫酸ミストなどにも着目する必要がございますし、また光化学オキシダントの植物への影響など、生活環境に及ぼす影響も重要であります。それで、これらにつきまして一そう調査研究を進めるべきことを答申では述べたわけでございます。  最後硫黄酸化物につきまして御説明申し上げます。  硫黄酸化物にかかわる環境基準につきましては、昭和四十四年二月にわが国最初環境基準として設定され、以後その維持達成のために各種対策がはかられまして、四十八年度中には全地域環境基準達成される見込みでございます。しかし、最近の科学的知見の進展によりまして、現在の環境基準は人の健康を保護する上で不十分であることが指摘されておりまして、人の健康に影響を及ぼすおそれのないレベル環境基準を改定することは緊急の要請となってまいりました。このため、昨年十月以来環境基準専門委員会において、硫黄酸化物影響測定する方法について検討が行なわれてまいりまして、本年三月三十一日、大気部会検討結果が報告されました。  専門委員会硫黄酸化物のうち二酸化硫黄注目しまして、人の健康を保護するため十分安全を見込んだきわめてきびしい濃度条件を提案いたしてまいりましたが、大気部会ではこれを適当と認めまして、二酸化硫黄環境基準値として定めるべきことといたしました。  この基準値昭和四十三年に生活環境審議会環境基準専門委員会が提案いたしましたいわゆる閾値をさらにきびしくしたものでございまして、現在の環境基準と比較いたしまして約三分の一程度のものとなるわけでございます。  また、環境基準達成期間につきましては、できるだけ早期達成するように、五年をこえない期間達成すべきことといたしました。  なお環境基準による地域大気汚染評価につきましては、二酸化窒素の場合と同様の原則を示したわけでございます。  最後に、環境基準の改定に伴う課題でございますけれども、このようにきびしい環境基準達成するためには原油脱硫排煙脱硫の大幅な導入など低硫黄化対策推進をはじめといたしまして、発生源に対する規制の強化、公害防止計画の策定と実施等対策を総合的かつ強力に推進する必要がある旨を強調したわけでございます。  以上、はなはだ簡単でございますけれども、大気部会における審議経過答申概要についての御説明とさせていただきます。  なお、窒素酸化物光化学オキシダント及び硫黄酸化物影響測定方法につきましては専門委員会検討されてまいりましたので、その点について専門委員鈴木委員長から御説明申し上げることにいたしたいと存じます。
  5. 佐野憲治

  6. 鈴木武夫

    鈴木参考人 では窒素酸化物光化学オキシダント硫黄酸化物環境基準専門委員会でどういうことが相談され、きめられたかを簡単に御説明いたします。  窒素酸化物は、いま伊東先生からお話しのありましたように、空気がある一定以上の高温度で熱せられますと出てまいりまして、その影響はいままで注目されておりました亜硫酸ガスその他のガスに比べますと激しいものがございます。と同時にいま御説明のありましたように窒素酸化物はいわゆる光化学オキシダントを生成いたします一つ原料物質として重大でございますので、窒素酸化物に関係します問題につきましては非常にむずかしい問題がございました。と申しますのは窒素酸化物影響というものを見るのに、どのような資料によってこれを判定するかということが最初問題になったわけでございます。  御存じのように窒素酸化物だけが空気中に存在して、そして一般住民の方に被害を与えているというような場所は、日本におきましてはほとんどございません。必ずほかの汚染物質が共存しております。そういうことの中から、窒素酸化物によりますところの一般市民に対する影響というものをどう判定するかということが一つ問題でございました。したがいましてこれはわが国だけではなくて国際的に考えましても、どこの国におきましても窒素酸化物だけを取り上げて人間への影響を考えるということにつきましては、実は困難をきわめている問題でございます。そこで私たちといたしましては、窒素酸化物影響を考える場合にどう考えるかとなったわけでございますけれども、まず窒素酸化物というものがこの十年間に急速に汚染が進行したこと、これにまず注目しなければならなかったわけでございます。かつて十年以前におきましては窒素酸化物は確かに空気が熱せられることによって出てまいりますけれども、その地域環境におきますところの濃度は必ずしも高くなかった。それがわずか十年の間に場所によりましては亜硫酸ガス濃度以上に達してしまっているというところも測定されるようになってまいりました。そういうことの中から、非常に困難ではあるけれども、この際窒素酸化物人間に対します影響というものを中心とした環境基準というものを諮問されましたので、人間に関する環境基準についての資料をできるだけ集めてみるということにしたわけでございます。  いわゆる窒素酸化物といわれるものは、空気中の窒素温度が高く熱せられることによって出てまいりますが、その種類はおそらく五種類以上ございます。そのうち比較的安定な状態にあるものは一酸化窒素といわれるものと二酸化窒素でございます。そのうちいま私たちが知り得る資料の中で、十分資料が整ってはおりませんけれども、比較的多いのが二酸化窒素によりますところの資料でございます。一酸化窒素につきましては、研究室段階におきましてはその毒性が非常に注目されておるところではございますけれども、これはまだ初期の段階でございまして、将来この一酸化窒素に対します研究が進むことによって、おそらく一酸化窒素影響というものは明らかになるでしょうけれども、現段階ではまだ環境基準をきめる資料として使うには早過ぎる。したがいまして二酸化窒素NO2につきましては比較的資料が整っておりますので、窒素酸化物という御諮問を受けましたけれども、その酸化物のうちNO2、二酸化窒素注目をして影響というものを判定するというように考えたわけでございます。それで、二酸化窒素影響につきましては、いま申し上げましたように諮問が、人の健康にかかわる環境基準ということに限定されておりましたので、人についての影響をいかに判定するかとなりますと、残念ながら現在のところは先ほど申し上げました事情もございまして、動物実験によってこの二酸化窒素影響を判定するという学問が進んでいるだけでございます。一般市民に対しますところの低濃度二酸化窒素がどのような影響が起きているであろうかということをはっきりと判定する資料をわれわれは必ずしも持っておりません。そこで、私たちといたしましては、二酸化窒素動物実験にまず注目をいたしまして、動物実験資料から人間への影響をどのように判定するかというところに努力したのでございます。お手元にすでに委員会報告がお配りされているというお話でございますので、その中でおもなるところだけピックアップしてお話し申し上げます。  二酸化窒素は、二酸化窒素だけで実は肺の奥深く侵入いたします。亜硫酸ガスといわれるようなものは、亜硫酸ガスだけでございますと必ずしも肺の奥深くまでは入りません。浮遊粒子状物質ないし粉じんといわれるものが共存いたしませんと肺の奥深く入りませんけれども、二酸化窒素はその紛じんがあろうとなかろうと肺の奥深く入っていくという一つの特性がございます。同時に二酸化窒素浮遊粒子状物質ないし粉じんが共存したりあるいは亜硫酸ガスSO2が共存いたしますとその毒性を強めるという実験室的結果が得られております。そういうことが一つ注目されたわけでございます。  そういたしますと、わが国におきましては先ほどお話いたしましたように、二酸化窒素だけで空気がよごれているという場所よりも、むしろ浮遊粉じん及び亜硫酸ガスが共存している場所のほうが多うございますので、NO2の影響を考えます場合におきましては慎重にこの点を考慮しなければならないということになりました。  それから低濃度SO2を呼吸いたしますと、まず呼吸器上部、私たちことばを使わしていただきますと気流抵抗増加、のどから気管支上部までの間の気道と申しますけれども、それが少し狭くなりまして、それで気流抵抗増加という生理学的反応が見られます。これは人間につきましてもすでに実験が行なわれているところでございます、この程度でございましたならば。  そしてさらに長期にわたりましてNO2に暴露をいたします実験動物実験ではすでに進められておりまして、まず動物実験に〇・五PPM程度の低濃度暴露いたしましても、直ちにそれが数時間の暴露でもって肺に影響が出てまいります。この肺に対します影響は必ずしも病気とは申せませんけれども、ひとつ反応として出てまいります。これは化学的性格でございますから暴露をやめますともとに戻りますけれども、好ましからざる影響でございます。そういうことをさらに長期にわたって続けてまいりますと、比較的低濃度の、動物実験といたしますと低濃度でございます〇.五PPMというような暴露は、そのような低濃度であっても動物長期にわたって暴露をいたしますと、そこに細菌感染ビールス感染というものを行なわせますと非常に感染しやすくなってまいります。すなわちSO2のときでも認められましたことでございますけれども、窒素酸化物窒素酸化物それ自身の呼吸器に対する影響と同時に、それがあることによって細菌感染ビールス感染というものが起こしやすくなる、わかりやすいことばを使わしていただきますと肺炎というような病気が起こしやすくなるという状態動物実験では確かめられております。さらに〇・二五PPMというようなものを、動物実験といたしますと長期になりますが、六カ月ないし一カ年暴露するという実験をいたしまして、そこにビールスあるいは細菌を感染させますと、これは激しい肺炎という症状動物で起こしてまいりますし、同時に気管支末梢気管支のすみのほうでございますけれども、末梢気管支の一番上をおおっております細胞の中で、医学のことばを使わしていただきますと腺腫増殖というような状態、これは非常に好ましからざる症状でございます。これはおそらく将来の像はまだはっきりわかりませんけれども、もしも腺腫増殖というようなものが悪い方向に行きますとガンになります。いい方向に行きますとガンにはなりませんで、もっといい状態で済みます。直接命にかかわりのない状態に過ごしますけれども、現在の世界じゅうの研究腺腫増殖でとまっております。これがガンを起こすというところまで行きませんけれども、影響のほうから考えさせていただきますと、そういう可能性を持った変化というものは注目しなければなりません。私たちはこの日本及びアメリカで行なわれました低濃度長期暴露による動物実験によるいま申し上げました腺腫増殖ということに非常に注目をしたわけでございます。  なお、窒素酸化物はもう少し度を多くして暴露いたしますと、肺を通りましておそらく全組織、全臓器に対しまして二次的な反応を起こすということは動物実験で確かめられております。呼吸機関影響だけでは済まない、全臓器にも影響を及ぼすであろうということは、一応動物実験では確かめられておるところでございます。  そこで、動物実験では相当の影響が出るということがわかっておりますけれども、これを人間に応用するのにどうするかということが非常に問題になりまして、普通の場合でございますと、これが人間に対します影響は、御存じ疫学的研究資料を利用いたしまして、そして疫学的調査結果から出ましたところの資料に対して動物実験によって説明をつけましたことからそれを総合判断いたしまして人間への影響説明することになりますけれども、残念ながら窒素酸化物注目いたしましたところの疫学的調査アメリカで一例、チェコスロバキアで一例、わが国準備状態疫学調査が一例と三例しか世界じゅうにございません。そしてそれらの状態を総合いたしますと、いずれも何か子供の呼吸器疾患の、ことにインフルエンザに感染症を増す。あるいはチェコスロバキアの例で申し上げますと、子供の血液の症状の悪い影響が見られる。病気とは申しません。悪い影響でございます。悪い影響が見られておる。それから日本におきますところの予備的調査によりますと、ある程度窒素酸化物がふえてまいりますと、大体おそらく年平均に直しますと〇・〇四あるいは〇・〇三程度濃度において慢性呼吸器疾患の症状を持った人たち、これは病気とは決して申しませんけれども、三カ月以上せきとたんが毎日続くという症状でございます。あるいはもっと正確に申しますと、そのような症状以上の症状を持った人を全部ひっくるめましてその悪い病気、慢性気管支炎にもいろいろ種類がございまして、悪い病気を含めた、初期症状から悪い病気を全部含めた、すなわちせきとたんの症状を三カ月以上毎日出すというような症状を持った人たちが大体いま申し上げました〇・〇四PPM程度以上においてどうもふえてくるというのが、日本の成績から、予備的調査でございますけれども、出てまいりました。  そこで、いま申し上げました動物実験によりますところの激しい症状、それからアメリカチェコスロバキア日本というところで行なわれましたところの疫学的調査などから、いかにしていわゆる環境基準参考になりますところの判定条件を専門委員会として提案するかということにつきまして非常に問題を起こしたところでございます。私たちといたしましては、いま申し上げましたことからすでにおわかりいただけると思いますけれども、大気汚染影響を受けるのは、成人よりも老人、乳幼児及び病人というような人たちあるいは一見健康な人と見えましても過敏な状態にある人たち、敏感性の高い人たち、感受性の高い人たちに対する影響、そういうものに人の健康というものを中心として考えますならば注目しなければなりません。しかしながらほかの汚染物質と違いまして、窒素酸化物につきましては、いま申し上げました老人とか病人とかあるいは感受性の高い人たちに対しますところの疫学的調査というものは資料が皆無でございます。そこでどうしても動物実験からある種の安全率をかけることによって、われわれはとりあえずこの環境基準設定いたしますところの判定条件をきめなければならないということになったわけでございます。  その際、一体どの程度影響をもって判定条件とするかでございますが、この環境基準というのは、ことばをかえさせていただきますと空気の質をきめていることになります。空気の質をきめますのには、すでにWHOが空気の質を四つの段階に分けまして、そして空気の質は四つの段階がある——簡単に申し上げます。レベル一という空気は、現在までに得られた知識に基づく限りにおきましては、人間及び生活環境に対しまして直接的にあるいは間接的に無影響であるという空気レベル一になります。レベル二はいわゆる生活妨害が出現するところでございます。レベル第三の空気の質といわれるようなものは慢性の影響が出てくるような空気の質でございます。それからレベル四という空気は、これは急性の影響が出まして、場合によりますと死に直結するであろうような空気のよごれというように分けておりまして、WHOは、もしも地域環境環境基準をきめるならば、三、四は絶対に定めてはならない。一、二あるいは——一が一番望ましいのですけれども、まあ市民の方々が認めるならば二の状態もしかたがない。しかしながらWHOとすれば一ないしは一と二の間くらいまでしか許せない。こういうのがすでに数年前にWHOから勧告されております。そういうようなことを参考にいたしまして、私たちといたしましては、環境基準というものの法律的な内容は別といたしまして、われわれは空気の質はかくあるべきであるという判定条件を出すといたしますと、いままで得られた知識に関する限り直接的にも、間接的にも影響の出ない空気、WHOで申しますレベル一というものをまず勧告すべきではないであろうかということで意見が統一いたしました。そしてそれは結局老人にも子供にも乳幼児にも影響がないということでございます。  そういたしますと、動物実験からの先ほど申しました三つの疫学的調査を総合いたしますと、どういたしましても——いままでの成績が健康人についてやられているということも判断いたしまして、思い切って〇・〇二PPMという数字を提案したわけでございます。同時に、現在までに得られました知識に基づきましては、短期間の、一時間程度のよごれあるいは五分程度のよごれという非常に短時間のピークのよごれというようなものにつきましての急性影響という面の資料はほとんどございません。したがいましてわれわれといたしましては、窒素酸化物は慢性の影響というものをまず防ぐための空気の質を準備しておけばよろしいであろうというので、二十四時間値だけを報告したことになっております。  それから、さらにつけ加えさせていただきますと、地域大気汚染の場合におきましては、出しましたところの環境基準がはたして正しいものであったかどうか。これを市民の健康を調査することによって確かめる方法はほとんど不可能でございます。  労働衛生におきましては、ある種の新しい毒物が出てまいりますと、ある職場でもって暫定的な環境濃度をきめることによって、まず労働衛生管理をいたしまして、そしてそれに暴露されます労働者の健康管理を厳重にすることによって、与えられましたところの環境濃度というものがはたして労働者の健康を守ることができたかできなかったかということをチェックすることができますけれども、いまの状態で申しますと、日本を含めましてどこの国でも一般市民の健康がいま与えられた環境基準によってどういう影響を受けているかということを見るためにはある程度の犠牲を払わなければなりません。それはすでにSO2の場合において見られたところでございます。そういう犠牲を払うことによって確かめるということは、専門委員会といたしましては採用できないということで、ここで思い切って安全率を高く取り上げることによって、二度と再び、チェックの方法のない地域環境基準空気につきましては厳重な空気の質というのを提案したいというので、いま伊東先生からお話のありましたように相当きびしい、絶対きびしい数字を提案したわけでございます。  それから次が光化学オキシダントでございますけれども、光化学オキシダントは、これは空気中で起きておりますところの光化学反応のうち、窒素酸化物炭化水素によって起きてまいります——そこに太陽照射が行なわれることによって生成されました酸化性の強い物質、同時にそのときには実は還元性の物質も出ておりますけれども、それの総称されたものが光化学オキシダントとしてすでに把握されているところでございます。これをもう一回繰り返します。光化学反応というものは、空気中で汚染物が存在いたしますと、汚染物が太陽の光のエネルギーをもらうことによって空気中で新しい物質を生成しております。それが光化学反応でございますけれども、そのうち窒素酸化物炭化水素を材料としてできてきたものが光化学オキシダントでございます。その光化学オキシダントにつきまして、アメリカ及び日本がいま一番調査が進んでおりますけれども、いろいろそれぞれの調査を経たことによって、先ほど伊東先生からお話しがありましたように、ある一定の測定法で与えられたオキシダントの値の大部分はオゾンであるということが確かめられているところでございます。これもわかりやすいことばで申し上げますと、光化学オキシダント測定されたオキシダント濃度のうちの大部分はオゾンである。同時に、それができておりますときには還元性物質としてのホルムアルデヒド及びアクロレインあるいはPANというようなものが同時に生成されている。それらが目の刺激をするところでございます。オゾンは目を刺激いたしません。それで還元性物質が目を刺激いたします。酸化性物質でございますとPANが刺激いたします。この目の刺激が一番先にアメリカで指摘されたところでございます。そしてこの目の刺激はいわゆるニューサンスでございます。生活妨害でございます。そうしてさらにその濃度が高まってまいりますと、のどの刺激症状、鼻の刺激症状及び息苦しさというようなものを覚えてくるものでございます。そしてオゾンというようなものが長期にわたってもしも暴露されるようなことがありますと、窒素酸化物に比べれば、もうより激しい症状を起こすものでございます。  窒素酸化物とオゾンの影響と申しますものは、いま地域大気汚染として注目されている濃度程度でございますと、大体同じ症状を起こしてくる、呼吸器に対しますところの、粘膜に対します影響及び感染に対する感受性を高める。あるいははっきりとまだわかっておりませんけれども、ガンというようなものに対する発生に対して、これを注目しなければならないという性質を持っております。そういうことがまず性質としてございます。  そして人につきましての成績につきましては、わが国におきましては約三年前からこの問題が問題になりましたけれども、アメリカにおきましては、これは十数年前から問題になりまして、人についてのいろいろの実験結果、あるいは市民の調査等によっていろいろ資料が得られております。その中において、わが国におきましてもアメリカにおきましても同時に認められますことは、オキシダントが一時間値に直して〇・一PPMをこえてくると、市民の中から目の刺激症状を訴える人がいよいよあらわれてくるというのが一つございます。これはアメリカであろうと日本であろうと同じでございます。  同時に、アメリカにおきまして病人に対するオキシダントの影響というものが詳しく調べられておりまして、〇・〇六PPMであるならば、肺及び循環器障害を持った人たちでありましょうとも無影響であるという非常に貴重な資料がありましたので、それらを参考にいたしましたことと、それからオキシダントにつきましては、すでにWHOにおいても若干の勧告がなされております。それらを総合いたしまして、大体どこの国もオキシダントにつきましては、目のちかぢかと俗にいわれております症状を防止すること。それからオキシダントというものは、先ほど伊東先生のお話にありましたように、絶えず出ているものではございません。気象条件に非常に強く左右されまして、太陽照射が強い場合、風が低まった場合におきまして発生いたしますので、もしもいまの日本状態で、いま日本でオキシダントの測定されている状態であるならば、これをいまのうちに押えてしまうならば、慢性の影響は出ないで済むであろうというので、いまの一時間値を厳重に定めることによって慢性の影響を防止できるであろうという想定のもとに、一時間値のみ、〇・六でございましたか、PPMを観測したところでございます。  それで、次は硫黄酸化物でございますけれども、硫黄酸化物につきましては、すでに一番先に大気汚染につきましての環境基準ができたところでございますが、その後、現行の環境基準というものを守っておりましても、若干いろいろと疑義があるというのが各地方の成績から出てまいりました。それでそれらのものを総合いたしますと、もう一回硫黄酸化物につきましては見直しをしなければならないということになります。そしてその場合におきまして、かつて硫黄酸化物というものをどう考えるかと申しますと、最初の硫黄酸化物大気汚染環境基準をきめましたときにおきましては、化石燃料によって起きてまいりますところの大気汚染評価いたしますのに、硫黄酸化物浮遊粒子状物質を総合的に考えるというのが各国及びわが国においてもとられたところでございます。したがいまして、硫黄酸化物というのは、最初の報告書におきましては、読みようによりましては、大気汚染の指標であるというような読み方もできるような考え方がとられておりました。そしてそれは現在でも、WHOにおきましては、硫黄酸化物浮遊粒子状物質を一緒にいたしまして、化石燃料によりますところの大気汚染状態を表現いたします。ところがわが国におきましては、残念ながら、その状態をすでに越えまして、先ほど窒素酸化物のところで申し上げましたように、すでに窒素酸化物が硫黄の酸化物濃度よりも高いところが出てきてしまった。といたしますと、硫黄の酸化物硫黄酸化物として単独に注目しなければならない面が出てまいりました。同時に、硫黄酸化物は、化石燃料によって起きておりますところの大気汚染というものを表現するのにまだ捨てることもできないというので、若干私たちといたしましては考え方を変えまして、亜硫酸ガスそのものも毒性がある、同時に、亜硫酸ガスは化石燃料から出てきます全汚染物の影響を代表するガス物質であるという考え方と両方を採用して、この硫黄酸化物につきましての判定をしようではないかということにしたわけでございます。ちょっとごたごたいたしましたけれども、若干前の硫黄酸化物考え方よりも硫黄酸化物そのものの影響により注目をするという態度にしたわけでございます。  そして、現在すでに硫黄酸化物につきましては各地で非常に広く測定されておりますので、その測定器は、すでに硫黄酸化物のうち亜硫酸ガスだけを測定するようにいま機械がセットされております。それ以外の硫黄酸化物は排除するように機械がセットされておりますので、現在得られております知識は、亜硫酸ガス濃度そのものでございますと推定しても大きな間違いはないということが一つ言えます。  と同時に、硫黄酸化物測定法の現在行なっておりますものは、実はほかの汚染物質によって影響を受けるものでございます。たとえば窒素酸化物というようなものは、この測定値に対しまして無影響ではございません。そこで、硫黄の酸化物につきまして、もしも硫黄酸化物注目をするということが必要となるのならば、二酸化硫黄というもの、すなわち亜硫酸ガスというものに注目せざるを得ないし、その亜硫酸ガスそのものを正確にはかることが必要であるというので、むしろこの専門委員会におきましては、二酸化硫黄亜硫酸ガス測定をいかに正確にするかということが論議の大部分でございました。しかしながら、現在におきましては、すでに各地方において得られております資料というものは、現在置かれている機械によって得られている、その資料をとりあえず利用しなければならないというので、私たちといたしましては、現在行なわれておって、硫酸ミストあるいは粉じんと硫酸塩というようなものを除外いたしましたものを、一応現在では亜硫酸ガス濃度として解釈をするということでもって説明をしてまいりました。そして第一回の硫黄酸化物につきましての判定をいたします場合におきましては、四つの疫学的調査によってこの硫黄酸化物影響を判定いたしました。すなわち、地域住民に対する全般的な影響という四つの条件を与えたわけでございます。  それは簡単に申しますと、疫学的の立場から見て、その地域の慢性気管支炎の有症率が増加していないこと、老人が極度によごれたときに死に至らないようなこと、子供の肺の機能が低下しないようなこと等々、四つの条件でございます。それに対しまして私たちは、第一回の専門委員会できめられましたことは、これはそのまま認めざるを得ない。そしてそれに加うるに、どういう考え方を採用すべきであるかということになったわけでございまして、その後昭和四十三年以後におきまして、各地において動物実験ないし疫学的実験というものが蓄積されましたので、それを採用することにいたしました。それは本質的に申しますと、第一回のときとあまり変わりがありません。ただし、よりよい資料が集まってきたということになります。  それは簡単に申し上げますと、子供のぜんそく症状の訴えというものが起きてくる場所濃度というものが、北九州におきます約八年間にわたりますところの調査から明らかになってまいりました。北九州のSO濃度が八年間平均で大体〇・〇二PPM程度でございますと、子供のぜんそく発作は起きない、少ない。起きないというと語弊がございますが少ないという状態、これが明らかになりました。  それから、いま日本におきましては慢性気管支炎の有症率調査というものが非常に各地で行なわれておりますけれども、その成績を整理いたしますと、先ほど申しましたせきとたんの症状が三カ月以上毎日続く、そういうような人たちがどれくらいあるかということが各地の調査で明らかになってまいりまして、それが空気がよごれていないところでございましても、四十歳以上の成人において約三%は存在する、そしてそれが年平均値に直しますと、大体〇・〇二から〇・〇三程度の年平均の濃度のところからそれ以上の濃度になってまいりますと、慢性気管支炎の有症率がそろそろ高まってくる。そしてそれは、統計的に有意の関係があるということが明らかになりました。これはわが国において初めて見出したことでございます。一般の人たちであっても、慢性気管支症状というものがあり得るわけでございますので、それがどの程度であるか、そして大気汚染がそれに加わってまいりますとどういう状態があるかということは、大体〇・〇二、〇・〇三程度のところでもって急にふえ始める。急にと申しますか、これからあとは有症率の増加濃度増加とが一致して関係づけられるということでございます。  さらに四日市におきますところのいろいろの対策の進歩に伴いまして、四日市の亜硫酸ガス汚染濃度が低下してきたときの状態というものがいろいろ資料が得られてまいりまして、その資料を過去の資料といろいろと突き合わせてみますと、亜硫酸ガス濃度が、空気がきれいになってまいりますと、新愚、新規患者の発生が減ってくるということが四日市の成績の中から出てまいりました。それに私たち注目いたしました。  それらを総合いたしまして、先ほど申しました窒素酸化物のときに考えました一般的条件というものを考えることによって、いま現在、空気がきれいなところで慢性気管支炎有症率は三%ある。かつて第一回に出しましたときには、農村において三%、工業都市において約五%から六%、すなわち二倍の有症率が出たところを悪いと申しました。今度は、先ほど申しました窒素酸化物と同じ考え方でもって、WHOの空気レベル一というところに置くといたしますと、それは有症率で申しますと、四十歳以上の成人ということに目をつけますと、三%のところでもってこれを押えるということが大体WHOのレベル一に相当いたします。したがって、それを採用いたしますと、〇・〇二ないし〇・〇三ぐらいになります。そこで、これを先ほど申しましたいろいろな条件、子供、病人、老人というものを全部ひっくるめて考えますときに、安全率をかけることによって、それを、〇・〇二を大体平均値にとるといたしますと、年最高値が〇・〇四になるというので、〇・〇四という最高値を二十四時間平均値といたしましては採用する。それから、急に空気がよごれたことによりまして死というものがもたらされる、あるいは病人の症状が悪化するといういわゆるピーク濃度というものが出たときの状態は、第一回のときに報告されました資料も今回それからあとつけ加えました資料もほとんど同じでございまして、〇・一存在いたしますと死亡者が統計学的に有意にふえてくる、あるいは病人の症状が悪化するというのが統計学的に有意にふえてくるということでございますので、一時間値のピーク濃度につきましてはそのままにしたわけでございます。  そこで、いままで申し上げましたことをもう一回繰り返さしていただきますと、亜硫酸ガスにいたしましても窒素酸化物にいたしましても、ここできめましたものは、同時にそこに窒素酸化物が存在していること、あるいは粒子状物質が存在しているということを考慮してきめた数字でございます。それらすべての環境基準が満足されませんと、たった一つだけが満足されましても、おそらく地域市民に対しますところの影響は無影響レベル一であるということを言い切ることはできないであろう、それだけつけ加えさしていただきます。
  7. 佐野憲治

    佐野委員長 どうもありがとうございました。     —————————————
  8. 佐野憲治

    佐野委員長 次に、三木環境庁長官から、大気汚染対策環境基準答申に関する施策について意見を聴取いたします。三木環境庁長官
  9. 三木武夫

    ○三木国務大臣 二酸化窒素光化学オキシダント及び硫黄酸化物環境基準につきましては、本特別委員会の質疑において、私は中央公害対策審議会答申を得次第、すみやかに人の健康に影響を及ぼすおそれのないレベルにおいて設定あるいは改定強化する旨を明らかにしてまいりましたが、先般これに関する答申を受けましたので、この機会にあらためて本件について御説明をいたしておきたいと思います。  今日、わが国における大気汚染は、各地で深刻な問題となっており、一刻も早くこれが対策の強化をはかることにより清浄な大気を取り戻すことは私どもに課された最大の政策課題一つであると考えております。そのためにまずその目標となる環境基準を早急に設定する必要がありますことは申すまでもありません。  このたび中央公害対策審議会答申で示された環境基準の内容及びその考え方は、いずれも適切なものでありますので、二酸化窒素及び光化学オキシダントにつきましては、答申に沿って本日付をもって環境基準を定め、告示いたしたところであります。硫黄酸化物環境基準についても環境基準を定めております昭和四十四年二月の閣議決定の改正手続を終え次第、答申に沿って近日中に告示をいたす考えであります。  このような環境基準を早急に維持達成することは、わが国大気汚染の実情や防止技術開発の現況等から見て決して容易なことではなく、加えて国際的なエネルギーの問題の深刻な情勢のもとではさらに困難を加えるものと考えております。しかし、私としては、国民の健康保護と環境の保全を重視する立場から、今後は大気汚染防止対策目標であるこれらの環境基準維持達成に向かって、各般にわたる施策の充実強化に全力をあげていく決意であることを申し上げておきたいと思います。     —————————————
  10. 佐野憲治

    佐野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。村田敬次郎君。
  11. 村田敬次郎

    ○村田委員 私は、去る五月三日の深夜、伊良湖岬沖において発生をいたしましたタンカー事故と公害対策の問題につきましてきょうは御質問を申し上げたいと思います。  すなわち、五月三日の深夜に鳥羽市神島の北四.五キロの海上で、香川県の小型タンカーが西ドイツの大型貨物船に追突をされて沈没をいたしました。乗り組み員十人のうち五人は一時間半にわたる漂流のあとで鳥羽海上保安部の巡視船に無事に救助をされましたが、三人は四日午前六時までに遺体で収容され、そのうちまた残る一人の遺体が発見をされまして、現在なお一名行方不明であると聞いております。同保安部と隣接の各保安部、海上保安庁の航空基地から巡視船艇計九隻と航空機二機が出まして、沈没地点付近の海上を直ちに捜索を開始したわけであります。  また、沈没したタンカーから流れ出した大量の重油が幅百メートルから二百メートルの帯状になって南東に流れ、五月四日午前八時ごろには約四キロぐらい離れた渥美半島の伊良湖海水浴場まで達したわけでございます。したがって現地では油処理船などが防除作業を直ちに始めたわけでございますけれども、さらにこの事件を詳細に申し上げますと、五月四日午前零時十五分ごろ伊勢湾口を航行中の名古屋市港区港本町藤木海運のチャーター船神和丸、百三十九トン、山口孝二船長から鳥羽海上保安部に、三日午後十一時五十分ごろ、鳥羽市神島沖の伊良湖水道二番ブイ付近で小型タンカーが沈没、乗り組み員が漂流中であるという連絡が入ったわけであります。伊良湖港におりました同保安部の巡視船「あさま」が出動をいたしまして、四日の午前零時五十五分現場に着き、救命胴衣をつけ、足場板などにつかまって漂流をしていた乗り組み員五人を次々に救出、一遺体を収容して鳥羽港に運びました。  同保安部の調べでは、沈没した船は香川県小豆郡土庄町淵崎浜野海運有限会社所有の小型タンカー日聖丸、千百五十一重量トン、中野喜代勝船長、十人乗り組みの船でありまして、二日午後一時に重油千八百六十五キロリットルを積んで千葉県姉崎港を出港し名古屋港へ向かう途中、三日午後十一時五十分ごろ現場で大型船に追突されたというわけであります。  第四管区海上保安本部、これは名古屋に所在をしておりますが、四日の朝、名古屋港稲永埠頭に入港しておりました西ドイツの貨物船メリアン号、ヤン・ウーベ・ブロイス船長、一万一千三百九十一トンを調べましたところ、同号が日聖丸を追い越そうとした際にメリアン号の海面下の球形船首が日聖丸の右舷船尾に追突したらしいということがわかりました。  メ号は雑貨七百五十トン、綿花八百五十トンを積んで神戸港から名古屋港に向かっていた途中で、追突後に四管本部へ追突の事情を打電し、四日の朝八時名古屋港に入港いたしました。  こういったことからこの事件が発生をしたわけでございますけれども、この事故は私はいろいろな意味で非常に多くの問題を含んでおると思っております。  その第一は、この衝突事件が伊勢湾海域における事故であるということであります。それからその第二は、タンカーの衝突事故であるということであります。  それから第三点は、タンカーの衝突事故でございますために重油が周辺海岸を汚濁いたしまして漁業補償の問題を生じておるということであります。  それから第四点は、これは西ドイツの船でありますけれども、外国船との関係で国際的な問題をもはらんでおる。そうしたいろいろな問題点をはらんでおると存じます。  これらの問題について私は以下順次お伺いをしてまいりたいと思いますが、現在、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海の三海域におきましては全国の石油精製の八九%を占める石油精製を行なっておる。またタンカーの入港状況は、入港貨物で全国の実に八八%を三海域で占めております。中でも二十万重量トン以上の船舶については全国の九二%が三海域に集中をしておるという状況でございます。こういった状況から、先ほど申し上げましたような諸種の問題点が生じておるわけでございます。またこういったタンカーの海難事故というものは、最近の海難事故におきまして最も大きなケースであります。  たとえば最近における世界の著明なタンカー事故といたしましては、四十二年の三月に、英国南西沖合いで乗り上げて、原油約九万三千キロリットルが流出して、英仏海岸に大きな被害を与えました、かの有名なトリー・キャニヨン号事故、それから四十五年の二月に、カナダの南東端のノバスコシア岬で、乗り上げて、重油約一万キロリットルが流出したアロー号事件、それからまた四十六年の一月に、サンフランシスコ湾で、重油約七千二百キロリットルが流出したオレゴン・スタンダード号とアリゾナ・スタンダード号の衝突事故などがあるわけでございますが、さらに最近では、新潟において起こりましたジュリアナ号の事故がございます。そういったような大きな事故というものを考えてみますと、いずれもこれはタンカーの事故であり、関係の海岸、水域に非常に大きな汚濁問題を起こしておる。  またわが国におきましても、ただいま申し上げました昭和四十六年十一月三十日の新潟港外におけるジュリアナ号の事件と、それから昭和四十七年、すなわち一九七二年の十一月二十六日に、下津港外で起こりました富士興産石油の桟橋における、英国籍鉱石運搬船ウェストミンスター・ブリッジ号の破損事件、それから本年に入りましてから、昭和四十八年一月十日に、水島港外で起こりましたクリスタル・コブス号事件、これはパナマのタンカーで、五万八百十九トンでございます。こういった非常に大きなタンカーの事故が起こっておる。そしてまた特に伊勢湾海域とか東京湾、瀬戸内海等における汚染が著しい。こういった問題に関連をいたしまして、まず三木国務大臣にお伺いをしたいのであります。  具体的な問題については順次お伺いをすることといたしまして、三木国務大臣は、いわゆる内閣法九条による副総理といたしまして、こういった海難事故、またタンカーの沈没事故、そういった問題についてどういった感触を持っておられますか。まずそれから所見を伺いたいと思います。
  12. 三木武夫

    ○三木国務大臣 村田委員の御指摘のように、最近はタンカーの事故というものがかなり頻発をしておるわけでございます。タンカーの事故が起こりますと、重大な海上の汚染が起こるわけでありますから、この点については運輸省との間にも十分な連絡をとって、そして海難防止のためにできるだけの対策を講じてまいっておるわけであります。ことに七月一日からは海上交通安全法も実施されるわけで、この規定によって航路の整備、安全確保についていろいろな規制措置もとれることになっておりますので、これは単に環境庁だけの問題でもなく、各省、海難防止に対して今後全力を傾けていく必要がある、こういうふうな方針のもとに対処してまいりたいと思っております。
  13. 村田敬次郎

    ○村田委員 この事故の起こりました伊良湖水道でありますけれども、非常に狭いところを船が航行をしていくということで、いわゆる魔の海峡であるというようなこともいわれておるところでございます。すなわち伊良湖水道は、愛知県渥美半島の伊良湖岬と三重県の神島の間にある狭水路、さらにその間には多くの岩礁がありまして、一番狭いところはわずか千二百メートルの航路幅しかないわけであります。第四管区海上保安本部の調べによりますると、ここ一日平均で五百万トン未満の船舶が八十六隻、それ以上の大型船が百二十九隻、そのほかに漁船五百六十四隻の計七百七十九隻が通過をしておるわけであります。  したがいまして、日本におきましては明石海峡、備讃瀬戸東航路、それから来島海峡と並びまして、日本で四つのラッシュ航路だということがいわれておりますし、船舶の航行の多さから見ても超過密水道であるということが言えると思うのでございます。通航路は昭和四十二年当時は一日平均五百六十八隻でございましたから、それに比べて先ほど申しました七百七十九隻という隻数は非常に急激な伸び方であり、特に伊勢湾一帯の重化学工業化が進みまして、一万トン以上の大型船やタンカー、航路の事情をよく知らない外国船の増加が、たいへん目立っておるということであります。したがいまして、この伊良湖水道について、これをまずもっともっと航路に適するような港湾の掘さくその他の計画を立て、実施をすべきであるにもかかわらず、いままでそれをやっておらなかった、怠っておられたということでございます。  この問題について運輸省にお伺いをしたいのでございますが、いわゆる港湾五カ年計画、昭和四十六年から五十年の五カ年計画の中に、この伊良湖水道、中山水道の掘さく計画が入っているやにも承るのでありますが、現在まで発表はせられておりません。この伊良湖水道では、御承知のように明治時代にも軍艦「朝日」が沈没をいたしまして、その「朝日」の名前をとって朝日礁という有名な岩礁がございます。そのほかいろいろ大小の岩礁があるわけでありますが、そういった中山水道についての港湾整備あるいは調査、そういったことについてもっともっと具体的な施策を進めるべきであると思いますが、運輸省当局のお考えを伺いたいと思います。
  14. 大久保喜市

    ○大久保説明員 お答えいたします。  先生御指摘のように、伊良湖水道は千二百メートルの幅しかございませんで、いわゆる非常に狭水道でございます。そういうことからあそこの部分を、ちょうど伊良湖岬のほうから根が張り出したような部分と、それから神島のほうから張り出した浅いところと、こういうもので狭くなっておるわけでございますので、やはり安全に大型船が航行できるように、しかもすれ違えるような幅を持たせるようにするためには、最近の船型の大型化とそれから交通量の面を勘案いたしまして、本格的な航路の整備をしなければならないということで、四十三年ころからその航路の整備につきましての基礎的な調査を進めてまいったわけでございます。  それで一応、第五港湾建設局がそこを管轄しておりますが、第五港湾建設局で改良の案をつくっておったわけでございますが、気象条件、波浪の問題とか漂砂の問題、非常にむずかしい問題がございまして、なかなか計画の立案に手間どったわけでございます。しかし航路の整備は急がれるものでございますので、先生御指摘の現在の五カ年計画の中で、とりあえずマイナス十六メートルまでの水深を確保するということで、事業費を二十四億円程度見込みまして、それを具体的な計画として着工するための調査を進めてきたわけでございます。その過程におきまして、何ぶんにもあの辺は漁場でもございますので、漁業者の方々から非常に問題が提起されまして、実はその調査の続行も不可能な状態に立ち至っておりまして、一応五カ年計画で、事業費、いま申しましたような程度は計上したわけでございますが、いまのところ具体化のめどが立っておりません。それで、関係の方々の御了承を得られるならば、その調整がはかれるならば、一日も早く具体化したいという気持ちは持っております。
  15. 村田敬次郎

    ○村田委員 ただいま運輸省のほうから御説明があったわけです。大久保技術参事官のお答えがあったわけでありますが、五カ年計画の中には二十四億円程度を見込んで十六メートルの水深を確保したいという御答弁であったわけですけれども、これをさらに詳細にお話をいただきたいと思います。
  16. 大久保喜市

    ○大久保説明員 伊勢湾の広がりから申しますと、東京湾あるいは大阪湾よりも空間が広うございます。それで、あの伊勢湾周辺の海岸線の延長もまた非常に長うございまして、いろいろな意味合いであの空間を利用する可能性を秘めているものでございます。そういうことからいたしますと、最終的には伊勢湾の利用に見合って必要な航路の幅員なり水深なりを整備しなければならないという考えでございます。そういうようなことからいたしまして、十六メートルという案は、現在の五カ年計画が四十六年から五十年までの計画でございますので、その計画期間中に施行可能な量ということを当面の目安といたしまして、十六メートルの水深で、その十六メートルの水深の区間を千七百メートルの幅員で確保する。そのために、現在浅くなっているところの岩礁を除去するというようなための事業費として、これは概算でございますが、二十四億円をとりあえず計上したわけでございます。なお、具体化するにはやはり調査を詳細にいたしまして額が確定すると思います。
  17. 村田敬次郎

    ○村田委員 別のデータを申し上げますけれども、このタンカーの衝突事故が起きた伊良湖水道というのは、幅が先ほど申しましたように約一・二キロ、長さが約三・八キロ、水深は四十メートルから九十メートルあるけれども、まわりを小島、岩礁が取り囲んで、ちょっとはずれると水深数メートルの浅瀬がある。いわゆる魔の難所。瀬戸内海の各海峡の航路よりもはるかに幅が狭い。第四管区海上保安本部が衝突事故防止などにたいへん神経をとがらせておるところだということであります。同本部の調べによりますと、昨年一年間で約二十八万隻の貨物船、タンカー、漁船が行き来をしておった。これは約二分間に一隻の割合であります。そのうちでタンカーの出入りが約二万隻。五百トン、千トン級の小型内航タンカーから三十万トンクラスの巨大タンカーが出入りをしておりまして、このために運輸省の第五港湾建設局は、一昨年以来、岩礁もダイナマイトで爆破するというようなことで航路拡幅を計画してきたけれども、岩礁は魚の宝庫と言う漁民らの反対で計画はほとんど立ち消えになっていたということが新聞にしるされているわけであります。ただいまの参事官の説明とも符合をするわけでありますけれども、良好な魚礁の所在地であるということであれば、それはたとえば朝日礁その他の岩礁を爆破することによってさらに新しい魚礁を別途につくればいい問題であり、また沿岸漁民のいろいろな反対があったために実現されなかったと言われておりますけれども、これは補償問題として当然解決のできることである。そういった当然やるべきことをいままでしなかったためにいろいろなこういった海難事故が出てきたということについては、私は政府に責任があると思います。したがって、いま参事官のおっしゃったような二十四億円という五カ年計画の中の見込みは一応の見込み数字であって、さらにこれはもっともっと大規模な港湾設置のための、航路掘さくのための予算を計上しなければならないと思うわけでございますが、そういった新しい魚礁を設ける、補償問題、そういった問題を含めて二十四億円といったような数字でなく、さらに大規模な数字を計上いたしまして、ここにおけるいわゆる危険個所の除去ということに全力を尽くすべきであると思いますが、いかがでしょう。
  18. 大久保喜市

    ○大久保説明員 お答え申し上げます。  私ども航路の整備をいたすにあたりましては、非常に重要な事業でございますので、港湾法に基づくいわゆる計画の検討ということを慎重にいたさなければならないと思います。それで、現にございます港湾審議会に一応の計画の案を出しまして、その計画を確定した上で工事に着手するという段取りになるわけでございます。それで、実は十六メートルのしゅんせつということにいたしましても、その全体計画の一部ということでございますので、まず計画をつくるということが先行しなければなりません。そのために事前の調査もやっておったわけでございます。そういうことで、いま申しましたように漁業関係の方々から反対等がございまして、調査も続けて行なうことが困難になりましたので、とんざしているわけでございますが、私どもといたしましては現在の航路保全、幅員、水深等では安全上問題があると思われますので、漁業関係者との意見調整、これに今後とも努力いたしまして、その調整がつきますれば、いま申しましたような将来の最終的な姿まで含んだ航路計画というものを、海上保安庁はじめ関係各省ともよく御相談の上、計画を審議会にばかり、確定いたしたい、その上で着手するということに進めたいと考えております。そのためにもともかく漁業関係者との調整を、漁業関係の方にも十分御理解いただいて何とか調整をつけたいというふうに考えている次第でございます。
  19. 村田敬次郎

    ○村田委員 ただいま参事官の言われた港湾審議会に計画を提出する云々ということは手続問題でありまして、言うならばこれは当然のことでございます。私は愛知県におりましたので、しかも港湾改修についてのいろいろな計画に参画もいたしておりました。したがって、あの海域においては現在すでに相当詳細な海域図その他ができておることも承知をしております。したがって、調査をしなければできないと言われますけれども、相当の部分のデータは現在でも集まっているはずである。そういったデータを踏まえながら、具体的に補償問題なり、それからまた漁業組合との話し合いの問題、新しい魚礁の設置問題等についてぜひ話し合いを進めていくべきであると思うのでございますが、これについてぜひ早急に取りかかっていただきたいと思うのですが、いかがです。
  20. 大久保喜市

    ○大久保説明員 私どものほうといたしましては、地元の愛知県それから三重県、そちらの御協力も得ながらこの問題について早急に前向きに取り組んでまいりたいと思っております。  ただ先ほど来申し上げました点、非常に何か私どもも驚くような形で漁民の方々の反対の意見が第五港湾建設局のほうに押し寄せられましたもので、実はこの問題に取り組む手がかりを失ってしまったのが現状でございますので、これを解きほぐすために、関係の両県の御協力も得ながらこれに取り組みたいと考える次第でございます。
  21. 村田敬次郎

    ○村田委員 三木国務大臣にお伺いいたしますが、この問題が発生をいたしましてから、愛知県ではいち早く、愛知県日聖丸流油事故対策本部を設けました。それからまた現地渥美町のほうにおきましても、小中山漁業協同組合の中に現地の対策本部を設けております。また南知多町の師崎でも、師崎漁業協同組合の中に知多の現地対策本部を設けておるわけです。そういったところから私はいろいろの御要望も承ったりしておるわけでありますが、いまの港湾修築の問題は、こうしたタンカー事故を食いとめることができるためにはぜひ早急にやらなければならない大切な問題であると思います。これを国務大臣としての立場からいろいろ推進をしていただきたいと思うわけでございますが、御意見を承りたいと存じます。
  22. 三木武夫

    ○三木国務大臣 どうも役所は、やっかいな問題を避けて通る傾向がありますが、しかし、いろいろな問題には、やはり賛否が伴う場合がある。したがって、どうしても海上における汚染を防止するためにそういう航路の整備が必要であるというときには、これはやはり説得もしなければならない。しかし、また一方において地方の自治体も、単に運輸省まかせというのでなくして、愛知県、三重県なども、漁業組合などにおいては運輸省よりももっと密接な関係を地方自治体が持っているわけですから、全部運輸省たよりというのでなくして、やはり県当局も、この問題をひとつ解決をして、こういう海難事故を防止しようということに対して県も協力する必要があるのです。そうでないと、いまの答弁にもあったように、非常に反対の気勢が強いのでどうにも手がつけられぬようになったということでありましたが、そういう中に立って、やはり地元が協力をする。運輸省も、むずかしい問題を避けて通るという態度、これはいまそういう態度を変えなければ、むずかしい問題が次々にあとへ残っちゃって、どうにもにっちもさっちもいかなくなる時期が来る。そういう点で、やはり関係の省庁も従来の態度を変える必要がある。しかし地方の自治体も、全部中央におまかせしますという態度は、やはりそういう態度を改めて、そうして協力してやるということで、いま村田委員の言われるとおりに、やはり航路の問題というものが海難事故を起こしやすいような条件に置かれておることはお話しのとおりだと思いますので、この問題はひとつ決意を新たにして取り組むことにするべきだと、運輸省にも私からよく話をいたします。
  23. 村田敬次郎

    ○村田委員 愛知県は、実はこの伊勢湾の開発、それからまた海上汚染問題についてはきわめて熱心でございまして、いままででも、桑原知事を中心に地方計画をたびたび作成をいたしまして、特に伊勢湾の開発ということに非常につとめてきておるわけであります。  特に、これは先ほど大久保技術参事官からの御説明にもございましたように、四斗だるのような形をしておりまして、海域全体としては非常に広いわけです。したがって、これはたとえてみますと、私は、オランダのゾイデル湾のような地形をしておると思うのでございます。したがって、ロッテルダムがユーロポートとして非常に栄えるならば、伊勢湾は日本ポートと申しますか、そういうふうに、横浜や神戸と並んで、非常に大きくなっていく可能性を持っている。現に、名古屋港、四日市港あるいは衣浦港、三河港といったような、伊勢湾の中には二十三もの大中小の港があります。そういう問題には県自体は熱心でございますので、ぜひひとつ中央から活発に呼びかけていただいて、ただいま三木大臣のおっしゃったように、いわゆる避けて通るという態度ではなしに——避けて通っても、タンカー事故は避けて通ることはできません。そうすれば、人身事故が発生したとなれば、これはたいへんな国際的な問題にもなるわけでありますから、ぜひひとつ、港湾五カ年計画に計上せられた二十四億円、さらにそれを今後拡充していく計画によってそれをフォローしていただいて、港湾造成の面から、こういった事故が起こらないように十分の措置をとっていただきたい。これは三木国務大臣もただいま決意の表明をしていただきましたので、ひとつ副総理としてもそれを督励していただきたいと存じます。  それから、今回の海難事故につきましては、海上保安庁は非常な活動をされたわけであります。現地の第四管区におきましても、山本本部長以下現地にすぐに飛んでいきましていろいろな話し合いをしておりますし、また、非常に詳細な資料等も私いただいておるわけでありますが、たとえば遭難者の救助であるとか流出油の処理であるとか、そういった問題について、いろいろな対策を立てておられる。そして発見をされました四日からきょう八日までの間に、現地の海上保安庁として活躍をされましたいろいろな状況、そしてまたそれによって気づかれた新しい問題点といったような問題を、海上保安庁の野村長官がおいでになっておると思いますので、ひとつ野村長官からお答えを願いたい。
  24. 野村一彦

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  ただいままでの村田先生の御質問を通じまして、私どもいろいろと現地の声、それに基づく御示唆をいただいて非常に参考になったわけでありますが、私どもといたしましては、この事故の教訓にかんがみまして、いろいろなことを考えております。  それを要約して申し上げますと、まず第一点は、私どもの念願でございました海上交通安全法が、来たる七月一日から実施されるということになっております。この海上交通安全法におきましては、先生の御指摘の、非常に狭い航路でございますけれども、幅千二百メートルの航路でございます、したがいましてツー・レーンがとれないで巨大船が通る場合には一方通航しかできない状況でございますが、ここに管制所を設けまして、そして一般の船舶の通航あるいはその付近で操業される漁船との調整という問題、これをやっていくというこの体制の準備を進めておりますので、この海上交通安全法の施行について今後さらに一般の方の御協力を得るということで努力して、この励行をはかっていきたいというふうに思っております。  それからその次は、私どもといたしましては第四管区管内のこの付近に所在をいたしております鳥羽の海上保安部あるいは名古屋の海上保安部、衣浦の保安署、四日市の保安部、そういうものがございますが、ここにおります巡視船艇を動員し、また伊勢の基地にありますところの航空機を動員して、これは数も非常に少のうございますけれども、海上の交通の安全とそれから公害の監視、取り締まりということをいままで以上にやりたいという、そのやり方のくふうというものを、この事件の教訓をくんで重ねていきたいというふうに思っております。  それからもう一つは、特に本件の場合の教訓でございますが、相手が外国船でございまして、外国船につきましては、相当の高級免状を持っておられる船長等につきましても、わが国の港湾あるいはその他、海岸に関するいろいろな知識が不足しております。こういう方々に対する一そうのPRといいますか、代理店等を通じてのわが国の諸法令に対する熟知というようなことをさらにはかりまして、そして外国船の事故の防止というようなことにもつとめてまいりたいと思っております。  いずれにしろ、今回の事故というものは、私どもが最もおそれておりましたわが国の最も交通のふくそうする伊良湖水道で起こったということで、非常にショックを受けておりますが、この教訓をくんで、これを十分今後の防止に活用したい、かように考えております。
  25. 村田敬次郎

    ○村田委員 いま相手方が外国船であるという御指摘があったわけです。これで見てみますと、たとえば名古屋海上保安部の調べによると、メリアン号が十五・七ノットぐらいで走っていたということですが、井上鳥羽海上保安部警備救難課長は、伊良湖水道を深夜に十五・七ノットで走るなどとはむちゃだ、七月実施される海上交通安全法では、伊良湖水道全区間が十二ノットに制限されることになっているので、同法の施行前とはいえ、ひどいスピードの航行だと言っております。また、外国船というものが地勢を熟知しないために事故が非常に起こりやすいということがよくいわれます。たとえば、鳥羽海上保安部の調べによりますと、伊良湖水道の中を通る船の数、これは年々ふえる一方であるということは先ほど申し上げたとおりでありますけれども、いままでのところ、日本船同士の衝突、接触事故はほとんどゼロである。一日のうちに通る千隻の船舶のうちで、外国船はせいぜい二、三隻であるけれども、このわずかな外国船がたいへんなくせ者であって、そして井上課長の指摘によれば、「昨年七月の事故は外国船同士の衝突、今回は西ドイツのメリアン号が追突した。外国船は年々大型化して、大きな事故に結びつきやすい。そのたびに被害を受けるのは小型の日本船であり、沿岸の漁民なのです。」と非常に残念がっておるわけでありますが、そういった相手が外国船であるということに、いま長官は注意しなければいけないということを言われたわけですが、ただ注意しただけではなかなかそれはできっこないのであって、また海上交通安全法、これは海の道交法といわれておりまして、海の新ルールとして相当な効果を発揮していくかもしれない。しかし、ただこの海上交通安全法だけで足りるものとはとうてい思えないわけでございますけれども、特に相手方が外国船であるという点から、どういった点をこれから気をつけていかなければならないかということを伺っておきたいと思うのです。
  26. 野村一彦

    ○野村政府委員 お答えいたします。  外国船につきましても、申し上げるまでもなくわが国の領海内水域におきましては、わが国の法律に従うべきものでございます。したがいまして、海上交通安全法が施行されました後におきましても、これに定められた航法上のルールを守るべきことは、国内船、外国船といえども差異はございません。この点について、私どもは十分外国船に対して事前のPRをするとともに、IMCOといいます国連の専門機関がございまして、ここでいろいろと分科会等もございまして、航行の安全の確保のための専門家の会議等もしばしば持たれております。また、国際的なルールの規制ということについてもいろいろと検討されているようでございますけれども、そういう面からIMCOの場をかりまして、さらに周知徹底をはかるというようなこともやりたいと思いますし、外国船は、ことばの不自由な点あるいは代理店等が介在して、直接船主と話し合う機会が少ないという点から、日本船と比べましてハンディがございますけれども、わが国の沿岸における法律の規制の対象であるということは何も変わりはございませんので、私ども遠慮しないで外国船に対しても取り締まりをしていきたい。今回のメリアン号の船長に対しても、十分その旨を伝えて、こちらとしては十分な取り締まりをいまやっておるところでございます。
  27. 村田敬次郎

    ○村田委員 私は、昭和四十五年十二月七日に運輸委員会で、この伊勢湾の海域汚濁の問題につきまして、運輸大臣、当時は橋本登美三郎先生でありますが、橋本運輸大臣以下に伺いました。そのときに外務省の条約局長、当時は井川さんに出席をしていただいて、いま海上保安庁長官のおっしゃったIMCOの問題についても御答弁をいただいておるわけです。それで、今国会に提出を予定されております法律案、条約案の中に、油濁損害についての民事責任に関する国際条約というのがあります。油濁損害についての船主の民事責任及び強制保険等について定めるものと承っております。それから油濁損害の補償のための国際基金の設立に関する国際条約、この国際条約は、油濁損害に対する補償を十分にするための国際基金の設立について定めるというふうに承っております。それからまた、運輸委員会に提出を予定される法案の中に、船舶による油濁損害の賠償責任の制限等に関する法律案というのがございまして、これは油濁事故の被害者の救済を促進するとともに、油の海上輸送の健全な発達に資するために、タンカー所有者の油濁損害賠償責任に関し無過失責任制度を導入したい、金額責任制度による責任の制限をしたい、損害賠償を行なうための国際基金を形成したい等、所要の規定を設けたいという法律案であるということを聞いておるわけですが、ただいま申し上げました、こういう法律案、条約案等は、このたびのような被害が起こりましたときは、これは相当の効力を発揮するはずでありますけれども、こういった条約案、法律案はまだ国会に提出されたと聞いておりませんが、どういうふうになっておりますか。
  28. 佐原亨

    ○佐原政府委員 ただいま先生いろいろ御指摘のように、こういった事故が起こる前に万全の予防措置を講ずることが必要であろうかと思いますが、不幸にいたしまして、事故が起きたあとたいへん被害が大きい、これを救済する動きが国際的に起こっております。いま先生のおっしゃいましたトリー・キャニヨン号事件を契機といたしまして、国際的にいろいろな条約が採択されております。  一番初めに、現在の商法では船舶委付主義ということで、船舶の運航に伴って損害を与えた場合には、その船舶に委付すればそれで免責される。これは非常に非現実的な法規で、死文化されているということでございます。  それを補うべく、一九五七年条約というものができまして、一応金額責任主義というもののたてまえが採択されまして、トン当たり邦貨に換算いたしますと約二万二千円程度の補償をするということで船主の責任が免れる、こういう趣旨の条約でございます。これは商法の改正を伴うものでございますから、法務省が中心になりまして、長い時間をかけて審議をいたしまして、ごく最近になってやや答申が出たように承っておりますが、その一九五七年条約の特例法といたしまして、油濁事故に伴う損害が一般の場合と比較いたしまして非常に大きいという見地から、先生おっしゃいました一九六九年条約、油濁事故に伴う船主の責任条約というものが続いて採択されましたが、これは、その趣旨からいいましても、無過失責任主義を採用しておる。責任の限度はトン当たり約倍になりまして四万四千円、最高限度額を邦貨に換算いたしますと約四十六億円、こういう内容の条約でございます。  さらに、それでも被害がカバーできない場合に、いまの一九六九年条約は、タンカーの所有者が拠金して補償をするという制度でありますが、さらにそれでもカバーしきれないような大きな被害が起きました場合には、今度は石油を利用する業者が拠金をいたしまして国際基金をつくる。これは最高限百億円までカバーする。こういう三つの条約が採択されておりますが、この第一の条約以外はまだ批准、発効されておりません。  最近の情報によりますと、諸外国の動向からいいますと、昭和四十九年後半に各国が批准、発効をする運びになっている、こういうかっこうになっております。  ただ、趣旨といたしましては、なるべく早くこの条約を批准し、法制化をはかるべきであるということで、関係省庁、運輸省、法務省、外務省といたしまして作業を始めておりましたが、先ほどおっしゃいましたように、今国会の条約批准、それから法案提出の予定でございましたけれども、国際基金、それに伴う非常にむずかしい裁判手続の問題がございまして、事務的には残念ながら断念せざるを得なかった。来国会におきましては必ず三つの条約を合わせて批准、上程をいたしたい、このような所存でおるような次第でございます。
  29. 村田敬次郎

    ○村田委員 来国会におきまして必ず批准実現をしたい、こういうことで、たとえば国際基金の形成であるとか、金額責任制度による責任の制限であるとか、無過失責任制度の導入であるとか、そういった重大な問題が決定を見ることになるわけでございますが、これについてはひとつ三木大臣にも確認をしておきたいと思いますが、来年度必ず批准をするという方向で御努力していただきたいと思いますが、いかがですか。
  30. 三木武夫

    ○三木国務大臣 来国会には必ず提出をいたします。
  31. 村田敬次郎

    ○村田委員 次に、漁業補償の問題について伺っていきたいと思います。これは私は今回の海難事故が大きなポイントであると思います。事故が起こりましたときに「タンカー事故の最大の被害者はわれわれ漁民だ」ということを、三重県鳥羽市神島の神島漁協組の寺田組合長が言っております。「神島の住民は伊勢湾口での釣り、底引き網漁業とワカメ漁で生計を立てているが、昨年七月のタンカー「グランドフェア号」の衝突、沈没事故では大切な漁場を重油で汚され、操業不能になったばかり。四日朝は一部漁民が行方不明者の捜索に協力、大部分の人はいつものようにイカナゴ漁に出かけたが、漁場は〃油の海〃。とれるのは黒く汚れた売り物にはならない魚ばかり。早々に漁を打ち切り、一日の水揚げ約二百万円をフイにした。島に戻った漁民たちは「養殖ワカメの漁場を守ろう」と海岸に出て、監視にあたったが、「事故のたびに島民の生活がおびやかされるんです」とビクビク。そして「油だけなら災難としてあきらめもつくが、油処理剤を散布されると、二次被害で漁場が死んでしまうので絶対反対だ」と、さっそく三重県消防防災課に「油処理剤を散布しないよう」申し入れた。寺田組合長の話によると、重油は拡散あるいはボール状に固まるので被害はある程度防げるが、中和剤はそのまま海底にへばりついて、魚や貝類を殺し、シダ類もはえなくなってしまう」という指摘をいたしております。また現地渥美のほうにおきましては、ワカメはほぼ全滅をしてしまうということを指摘をしておるわけであります。「漁場を重油で汚された漁師約三百人はこの日の漁も休み、ふだんは約六十隻の漁船でにぎわう渥美魚市場も開店休業の状態。」そして「地元の漁民は、「ワカメはいま収穫の最盛期。六月上旬までに約五、六百万円の水揚げを予想していたのに、この重油でほぼ全滅した」とがっかりしていた。このほか、ミルガイやイノガイなどの貝類にも被害が出そう」と指摘をしておりますし、渥美郡渥美町の伊良湖の渥美町魚市場はこういった市場開設ができない。したがって同市場と関係仲買い人七十六人の損害補償千三百二十万円を要求することをきめ、愛知県の農林部にあっせんを申し入れることをきめたということが出ております。  また、地元の小中山漁業協同組合におきましては、アオノリの繁殖その他のことができないために約一億円の被害があるということを言っております。「一時、約六割の海面がうすい油膜でおおわれた福江港」これは渥美町でありますが、「五日午後になって干潮などのため重油がいったん港の外に出はじめた。」ということでいろいろな対策を講じておるわけでございますけれども、「アオノリの養殖場では一部のノリソダに黒い重油がべっとりついて収穫できなくなった。また、全般にノリに油のにおいがしみついたという。地元の小中山の漁協組の土井文二組合長は「これから六月上旬にかけてアオノリのつみとりシーズンだが、この事故で地元七漁協組約二千五百人の組合員が養殖中のノリ網約五万枚のうち、半数以上が使いものにならなくなった。金額にして約一億円の損害だ」ということを言っております。  また、「このほか、同港内で一年中豊富にとれるアサリ」、これはあの地域の特産物でありますが、この「アサリもこの日とったものには重油のにおいがついており、被害はさらに広がるもよう。また、伊良湖海水浴場など伊良湖岬近くの海岸の砂浜にも塊になった重油が打寄せられている。」というようなことで非常に漁業補償の被害が想定をされるわけであります。これについて、水産庁の安福次長がおいでになっておるわけでありますが、この漁業についての損害額の概要あるいはその補償についての考え方というものをひとつお伺いをしたいと思います。
  32. 安福数夫

    ○安福政府委員 お答えいたします。  先ほど御指摘になりました被害の実情の概要でございますが、それはその御指摘のとおりだと思います。私ども承知いたしております実情は、師崎から福江の線、そのあたりに非常に油が停滞しておる、こういう感じを受けております。さらにそれが渥美の内湾にあるいは拡大するのではないか、こういう地元の一つの観測もあるようであります。一方また三重県のほうにも一部ブリ網に若干の汚染が起きておる、こういうふうに私は承知しております。  それで具体的に漁業にどういう損害が生じているかということはいま御指摘のとおりでありまして、養殖のアオノリあるいは天然ワカメ、ミルガイさらに漁船漁業について操業ができないということで底びき網漁業、コウナゴ漁業、現在こういったものが操業を中止いたしております。  これがどういう直接、間接の被害額になるかということにつきましては、愛知県庁を通じて現在鋭意調査中でございまして、詳細な数字は私のほうに参っておりません。先ほど御指摘になりました養殖アオノリについて一億円の損害、これは新聞報道でそういう報道があるということは承知いたしておりますけれども、最終的にそれがどういう金額になるかということは、今後県庁を通じて調査いたしたいと考えておるわけでございます。  こういう損害が起きた場合の災害救済措置についての問題でございますけれども、こういう公害の問題につきましては、政府といたしましては、現段階におきましていわゆる原因者負担の原則ということで従来貫いているわけでございます。ことに今回のケースは明らかに原因がはっきりしているわけでございますので、そういった線でできるだけ早期に補償ができますように、そういうことを県を督励をいたしまして私ども指導いたしているわけでございます。しかし、一般に災害の特定の原因がはっきりしている場合はそれの追及ができる、こういう問題があるわけでございますけれども、何ぶんにも広い範囲でございまして、さらにいろいろ油のたれ流しが原因者不明で起きているわけでございます。そういった面で油の被害が現在全国的に頻発しているというのが現状でございます。こういった背景をバックにいたしまして、漁民の声といたしまして私どものほうにも非常に強く、こういった原因者不明あるいは原因者がはっきりしておりましても補償問題が長期にわたって係争になるということもございます。そういった面で何らかの制度をつくるべきであるという要請が非常に強く出てまいっていることは私ども承知しているわけでございます。ことに原因者不明の場合の何らかのそういう制度がなければ、結局漁民にだけしわが寄ってくるということでございまして、私どもそれに対する指導といたしましては、さしあたっては経営資金という問題が出てまいります。それからさらに極端な場合には、生活資金という問題も出てまいります。そういった問題につきましては、県等を通じまして資金的な手当てをしていく、そういう指導をいたしているわけでございますけれども、最終的な補償という問題については制度がないわけでございます。それらについて制度をつくりますと、いろいろ波及する面があるわけでございまして、広範囲にわたるわけでございます。そういった面を今後とも関係省庁等と十分連絡をとりながら、私ども水産庁の立場としてさらに検討を進めてまいりたい、このように考えているわけでございます。
  33. 村田敬次郎

    ○村田委員 いま次長の言われた何らかの制度ということなんですけれども、事故に関係の損害賠償に関する手当てとして補償の代位制度を確立してくれという要望を私は実は県その他から承っておるわけであります。いま次長もおっしゃいましたように、損害の種類が多種多様であって、責任者から補償をされるまで相当の長期間を要する。被害を受けた漁民は不安な状態に置かれることになるので、これは一時国の機関が代位をして早急に補償をするという制度を確立してほしいという要望であります。これは私は制度として非常に進んだものであると思うので、ぜひ検討をいただきたいと思います。  もう一つは補償基準を明確にしてほしいという要求であります。国が代位をする場合の補償基準を明確化して、国の機関による最低保障制度を明示してほしいという要望でありますが、この要望について次長ひとつ簡単に、ぜひやりますということをおっしゃっていただければそれでけっこうなんですが、お答えを願いたい。
  34. 安福数夫

    ○安福政府委員 ただいま御質問の中に、代位弁済の制度を早急に検討すべきである、こういうことでございますけれども、代位弁済を国がやるということになりますと、国が求償権を行使するということになろうかと思います。これはケースもだんだん多くなろうと思いますし、そういう制度も踏まえまして実質的にそういう形の何らかの成果が得られるということであればよかろうということで、私の個人的な感じでございます、ただいま唐突な質問でございまして、私自身そういう詰めができておりませんけれども、おそらく国が代位するということになりますと、そういう面で行政的にも非常に膨大な組織が必要になってくる、こういう感じがいたします。そういう問題、十分われわれを含めましてそういう方向に沿うような何らかの検討をすべきである、このように私は感じております。私のほうにも代位弁済について漁民の声として、このケースとは別に恒久的な制度を早急に確立しろということは先ほど申し上げたとおり要請が非常に強うございます。そういったものを踏まえて十分将来について検討してまいりたい、このように考えます。
  35. 村田敬次郎

    ○村田委員 補償基準の問題についてはどうですか。
  36. 安福数夫

    ○安福政府委員 補償基準の問題、これはケースが抽象的で、まだ基準になるということまで検討が進んでおりませんけれども、これだけ全国的に被害件数が出てまいっておりますし、そういう補償基準というのはできればと思いますけれども、これまた前向きにそういう方向で関係各省と十分連絡をしながら検討を加えてまいりたい、このように思います。
  37. 村田敬次郎

    ○村田委員 この問題は非常に重要だと思いますので、三木大臣からもぜひ伺っておきたいのですが、補償問題というのはたいへんなことなんです。私も県におりましたときに補償の担当機関で働いておったということもありますから、ただいま安福次長が非常に苦労の話をされたこともわかります。わかりますが、結論としては前向きに代位制度なりそれから補償基準の明確化については努力をするということを言っておられるわけであります。ひとつ三木大臣におかれましても、この問題を前向きに早急に検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  38. 三木武夫

    ○三木国務大臣 補償問題はやはり原因者が負担をするという原則は、もうくずすことのできない原則ですが、実際問題として解決するまでの間に時間がかかるわけです。したがって、何らかのつなぎ的な措置というものはやはり政府としても考える必要があると思いますので、この点は十分各省と連絡をとって、そういう問題に何らかのいい知恵を出せないものか検討をいたしたいと思います。
  39. 村田敬次郎

    ○村田委員 それから二次公害の問題でありますが、流出油用の処理剤の使用基準というものを定めておられるようでございまして、油による被害を有効に防止するとともに、処理剤による二次的な影響等を防止することを目的とするということで、使用方法、処理剤の規格それから雑則といったようなものを設けておられるようでありますが、この二次公害をぜひ防止してもらわないと、油の公害を防ごうと思ったらまた二次公害が出たというのでは何にもなりませんから……。この二次公害について考え方を聞いておきたい。
  40. 野村一彦

    ○野村政府委員 お答えいたします。  特に油処理剤のもたらします二次公害の問題につきまして御懸念のようなケースがいろいろございます。私のほうではいろいろと環境庁はじめ関係の各省庁の御協力を得まして、現在のところ海上保安庁及び運輸省としての、特に海上の公害に使いますところの使用基準というものにつきまして一応一つ基準をきめまして、そしてこれを処理剤を保有しております私どもの出先あるいは石油業者、海運業者、港湾管理者等に通知をいたしまして、この基準の規格に合ったものを使ってもらうということで、現在二十七種が認定を受けております。これは私どものほうの試験研究機関で一応認定はしたものでございますが、なおこの材質の改善については、今後とも関係方面の御助力を得て検討を加えなければならぬと思っております。  なお、使用すべきか使用すべからざるかの判断、これは実は私どもも非常にむずかしい問題でございます。特に、たとえば衝突をして油が流出をしたその現場とやがて油が風や波の状態によって漂着していくところと、これはまた状況が違うわけでございまして、結果から見て処理剤を使ったほうがよかったのではないかというケースもございますので、この点はさらに使用方法、時期等については研究をいたしたいと思っております。
  41. 村田敬次郎

    ○村田委員 時間が参りましたので、この辺で三木国務大臣にひとつ取りまとめて御答弁いただきたいと思います。  私は、このたびの海難事故は最初に申し上げましたようにそれが伊勢湾海域において起こった事故であるということ、さらに二番目に、最近非常に激増しているタンカーの衝突事故であるということ、それからまた海岸で漁業を営んでおります漁民について漁業補償問題というような大きな問題を含んでいるということ、それから外国船との関連において国際条約その他にも関係が非常にあるということ、こういった四点を中心にして御質問をしたわけであります。  先ほど来の御答弁でお聞きしましたように、たとえばあの港湾の造成については今後五カ年計画の中で根本的に取り組んでいきたい、積極的にやっていきたいということを三木大臣もおっしゃり、また政府御当局も言われたわけでありますし、漁業補償問題についての代位制度でありますとかあるいは補償基準の明確化、そういった問題について御答弁をいただきました。また外国条約との関連におきましては、来年必ず批准するという御答弁をいただいたわけでありますが、この海洋汚染問題というのは世界に起こっておる非常に大きな問題の一つなんです。したがってこのたびは伊勢湾の海域で起こりましたけれども、これは決して偶発的な事故ではない。御承知のように昨年六月五日から十六日までストックホルムで開かれた国連人間環境会議におきましても、第三部の勧告の中で環境汚染防止という議案をとらえまして、そうして海洋汚染について一項目特にあげているわけであります。こういった問題を踏まえまして、三木国務大臣のこの問題についての取りまとめと申しますか決心を承って、御質問を終わりたいと思います。
  42. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いま海域の汚染についてタンカーの衝突事故というものが重大な問題である。日本ばかりでなしに世界的にも大きな問題になっておるわけですが、いま御指摘のように一つには七月一日から実施される海上交通安全法、これによって海上保安庁の役割りというものは非常に大きい。したがって今後機能を強化していく必要がある。この法律などが実施されれば相当な規制も行なわれるわけですから、事前に外国の船舶に対しては注意を与えるとか海難を避けようとする努力、これは海上保安庁がやはり万全の対策を講じてもらいたい。根本的には御指摘になったような航路の整備という問題ですが、これは困難があっても、漁業組合の人たちにも補償問題とあわせて話をすればわからぬわけもないのですから、三重県、愛知県等の県庁の協力を得て、運輸省のほうとしてこれを実施の方向で取り組んでいくように私からも運輸省によく話をするというお約束をした。国際条約に伴う国内法の整備については、来国会に提出するというお約束をしたわけでございます。  いずれにしても、補償の問題についてはいま言ったような加害者負担の原則、これはその原則に触れるようなことはできないけれども、補償問題が片づくまでの間のつなぎの資金が私は実際に必要だと思いますから、何かそういうものの救済処置を政府として考えろということを申し上げたわけでございます。重要な問題の御指摘に対して政府の考え方は、一応述べた考え方でございます。
  43. 村田敬次郎

    ○村田委員 もう一点だけ言って終わります。  短期の問題で特に最後に要望しておきたいのですが、このドイツ船はいま横浜におるわけです。横浜におって十日間滞在するということですが、その間にできるだけ被害その他の問題についても取りまとめて研究してくださいということを向こう側の根本博美弁護士が言っておられるということを聞いております。したがって地元におきましては、五月の十日に養殖ノリ、アサリ、ワカメ等の漁業の被害を集計をいたしまして提出するということを聞いておりますが、先ほど水産庁の次長はまだ詳細がわかっておらないということを言われましたけれども、早急に手を打たなければならない問題であります。これは放置しておいていただいては困るので、ぜひ愛知県や地元漁協組とも積極的に話し合いをしていただいて、弱い漁民の立場でなかなか要求のできない点もありますから、できるだけ政府が介入をして、この事故の解決を促進していただきたいという臨時的な問題、それからいま三木国務大臣がおっしゃいました長期的ないろいろな具体的な課題にぜひ前向きで取り組んでいただきたいということを申し上げまして、本日の私の質問を終わらしていただきます。ありがとうございました。
  44. 佐野憲治

  45. 上村千一郎

    ○上村委員 限られた時間でございまするので、まとまった御質問ができかねると思いますが、要点だけ御質問をいたしたいと思います。  なお、村田委員からも質問がございましたので、できるだけ重複のないようにいたしたいと思います。  実は今回のこの事故の発生地は、ちょうど私の生まれ故郷の渥美町伊良湖、こういうような関係でございまして、連休になっておりましたが、私、二日間にわたりまして現地を見たわけでございます。この海洋汚染の問題、あるいは海洋の災害の問題につきましては、国会でもいろいろと重要な討議がされており、また立法措置もされ、検討事項としましても提起されておるわけでございます。けれども、現実に見ますというと、また感慨ひとしおであるわけでございます。  まず感じられますのは、海の災害は、陸上の災害もさることながら、非常に特異性を持っておる。ちょうど水が器に従ってその形をつくりまするように、海上における災害というものは陸上その他の形に沿いましてずっと流れ込んでくる、こういうことでございますので、普通に予期した以上に思わざる被害を与えるということになるかと思います。  なお、この質問に先立ちまして、本件事故において人命を失われた方々の御冥福を祈るとともに、その御遺族の方々に対しましても深く哀悼の意を表するわけでございます。  私ども、幼い時分からこの地方で育ち、そしていろいろなじんだ者としましては耐えられない感じがある。きわめて風光明媚と申しましょうか、景色のいいところが、この黒い重油によりまして全く汚染されておる。しかも岩々の中にいまもって滞留をしておる。それから、渥美半島の先端だけを見ましても、先ほどお話のございましたようないろいろな漁業特産物がある。ワカメとかアサリ、ミル貝、イノ貝あるいは青ノリというようないろいろな資源があり、それによって生活を立てておられる人々も多い。それが悲嘆にくれておる。この姿を見ますと、この際いろいろと深い検討をいたしておかなければならぬというふうに感じたわけでございます。  この汚染状態につきましては、もうすでに関係御当局では御存じかと思いますが、私の手元に、その滞留しておりました油の写真がございますので、私が質問する前提としまして、どういう被害状況であるかということの御参考にいたしておきたいと思います。  それで、こういう事故につきましては、何といいましても予防措置をして発生を未然に防ぐということが第一の課題であろう。また、発生した以上は、一刻も早くその汚染状態なり災害状態を除去するということが第二番目に必要であり、さらに、これに伴って発生しましたところの被害というものについて、一刻も早くこれを補償するということが必要であろうと思うのであります。  この予防措置でございますが、私さっそく現場へ行きました際に、海上保安庁のあそこの管区の、いわば巡視船でございましょうか、そういうものが見えておりました。それから責任者が見えておって、非常に適切な措置を何かと講じられておった。なお、この事故発生の直接の原因になりました日聖丸のほうあるいはそれに関連をいたしまするところの千葉の出光さんのほうですか、そういうほうからも人が来まして、この事後処理につきましていろいろと措置をされておったその現場も拝見した。きわめて誠意をもってやられておる姿はわかります。しかし、この発生しておりまするところの被害というものは、いわば陸上の場合とは異なった一つの形態を持ちまして、深いまた広い被害になっておる、こういうふうに思われるわけでございます。  この予防措置の関係で、海上交通安全法案に対する附帯決議がなされております。この附帯決議につきまして、これに関連する点をひとつお尋ねいたしていきたい。と申しますのは、この法案に対する衆議院のほうでの附帯決議は、四十七年五月十一日に交通安全対策特別委員会でなされております。そして同年六月十六日に参議院の交通安全対策特別委員会でも附帯決議がなされておる。この事故は、本年の七月一日から交通安全法が施行されるという段階の前のことである。この事故発生というものはこういう期間に関係がない。実施時期に関係なく発生するのである。附帯決議という場合、これは成立したと同時に、この附帯決議に基づきまして何かと御検討されておられるであろう、私はこう思いますから承るわけであります。  まず第一に、本件の航路につきまして、現在巨大船舶というものがずっと航行しているわけでございますが、あのいわゆる伊良湖水道と申しましょうか、巨大船舶というのはどのくらいの限度をお考えになっておられるかという点です。と申しますのは、衆議院の交通安全対策特別委員会の附帯決議の第一項に「外海の適地に中継基地を設けパイプライン網の整備を急ぐ等、船舶航行ふくそうの緩和をはかると共に将来長期的に巨大船舶の内海航行について、上限規制等歯止めの措置を講ずること。」ということがある。そうすると、この巨大船舶の航行ということは、これはどうしてもいろいろと船舶が巨大化されてくるというわけですが、本件の伊良湖水道の場合、どのくらいの船舶の大きさを考えておるのか。そうしなければ、これはどんどん大きな船舶が通っていくということになりますと、ほかに対する影響がある。この点につきましてまずお尋ねをいたしておきたい、こう思います。
  46. 野村一彦

    ○野村政府委員 お答えいたします。  一般に海上交通安全法で定められております巨大船といいますのは、長さが二百メートル以上の船でございまして、タンカーにいたしますならば総トン数六万トン以上の船でございます。したがいまして、伊良湖水道につきましても、そういう二百メートル以上の巨大船が入港するという想定のもとにこの法律及びそれに基づく政令、省令が成り立っているわけでございまして、私どもの調査では現在まで伊勢湾に入港いたしました、すなわち伊良湖水道を通過いたしました一番大きなタンカーは二十五万重量トン、総トンにいたしますと、その約半分くらいになると思いますが、喫水が十七、八メートルから十九メートル程度の深さの喫水を有する船、これが通過しておりまして、そういうような巨大船が今後も通過するであろうということを想定いたしております。
  47. 上村千一郎

    ○上村委員 あそこの航路の幅員、それから水深、そういうようなものを考えて、この巨大船舶というものの場合、いまのお話では六万トンですか、それ以下に押えるというようなお考えがあるのかどうか、あるいはそういうようなことを検討をするお考えはあるのかどうか、一回お尋ねをしておきたいと思います。
  48. 野村一彦

    ○野村政府委員 お答えいたします。  伊勢湾だけでございませんが、この海上交通安全法が適用されます東京湾、伊勢湾それから瀬戸内海、こういう海域におきまして通過する船につきましては、一般論として一律に巨大船というものの通行を制限をするということは考えてございません。したがいまして、伊良湖水道におきましても、いま申し上げましたような長さ二百メートル以上の巨大船が入るということについては、これを想定してあの法律を考えておるわけでございます。  ただ、ここで申し上げますのは、それは無条件に通すわけではございませんで、航路航行義務、つまりあそこの政省令によってきめられました幅の、先生御指摘の千二百メートル幅、それから長さ三千九百メートルの矩形状になっておりますあの航路をなるべく右に寄って航行しなければならないというルールのもとに、速力は十二ノット以下に制限をして航行をする、そういうルールに従って航行をするという体制になっております。それから航行の時間等につきましては、そういう巨大船が伊勢湾内の港に入ってまいります場合には、入港予定日の正午までに、まず、いつ幾日、どのような大きさの船がどこに入湾するというあらかじめの通知を私どもの出先にすることになっておりますし、さらに三時間前、入港の三時間前といいますと、いよいよ大王崎を回って入ってくるころになると思いますが、そういうころにさらに最終的な時間の通知をする、そしてその通知を受けまして私どものほうでは現在計画、予算もつけていただきまして、伊良湖岬もしくは神島のいずれかに航路管制所を設けまして、そこで付近の航行船舶あるいは操業漁船との関係を調整しながら、入港時間を早めたりおくらせたりする規制をする、そういう航行規制のもとに巨大船の通行ということを認めていこうという趣旨でございます。したがいまして、私ども海上交通安全法の趣旨にのっとりまして、そういういろいろな前提条件のもとに、また厳重な航路管制のもとに巨大船の入港を認めていきたい。  ただ、将来の問題といたしましては、先生御指摘のように、あの衆参両院の附帯決議でほぼ同趣旨の巨大船の入港についてのいろいろの規制の御要望が出ております。これは工業立地の関係、パイプラインの整備、シーバースの整備等いろいろ問題がございまして、非常に政府全体として対策を講じなければならない問題がございますが、将来の問題としてはそういう方向で私どもも加わりまして、政府全体のレベルでこの問題を取り上げてあの御決議の趣旨に沿って対策を考えていきたい、こういうことに相なろうかと思います。
  49. 上村千一郎

    ○上村委員 なぜ私がこの点について御質問しておるかと申しますと、どうしても経済的な理由から船は巨大化するというような傾向にあるであろう。けれども、あそこにはもうすでに当局におかれても関係漁民との間についていろいろと問題のあったのをおまとめになって——あそこでは朝日礁その他いろいろな礁がある。だから巨大船舶をお考えになると、そこでまたそれを撤去するとか、あるいはいろいろな問題が起きてくる。だからもうこの程度で、あの自然の状態で、どういうふうにその航行の安全を確保していくかということをお考えになったほうがよろしいであろうというような見解のもとにいまのことを申し上げた。  そうすると、この巨大船舶の通行によりまして他の船舶の航行が非常に不自由になったり、あるいは出漁されておりますところの漁民の生業の上に非常に圧迫の材料になる、こういう意味から非常にむずかしい問題です。いつもこの公害問題とその経済的な要請の調和ということはむずかしい問題でありますけれども、この点について私は新しい公害の問題、環境保全の問題という見地のもとにひとつこの規制という問題について前向きに取っ組んでいただきたい、こういう意図のもとに御質問いたしておるわけでございます。  時間もございませんので先へ進んでまいりますが、この被害の問題でございますが、先ほどの二次公害の問題という問題ですが、元来この海洋汚染防止法のたてまえからいいますれば、考え方は原因者がこの損害補てんをするということでしょう。でございますが、たとえばこの損害補償の法律的な原則からいいますれば、これは民法の基本原則からいえば、まず第一に故意過失が前提である。けれども、その故意過失の責任を立証するというのは請求者において立証するというのが日本の民法上の原則である。けれども、これでは現下の公害対策、その他いろいろなものに対する適切な救済措置にならぬというところでこの挙証責任を転嫁するとか、あるいはそれが進んで無過失損害賠償責任論が展開されている、こういうことになったと思うのであります。そうすると、第二次公害の場合におきましてこの油の被害というものがずっと及んでくる。現に、これを放置するわけにいかぬ。政府は知らないというわけにはいかないと思うのです。また、一刻も早くこの被害の拡大を防止しなければならぬ。その策を政府としても施さなければならぬ、こう思うのです。ですからその点はいろいろと対策を講ずるでしょう。けれども、そのいわば補償金の問題につきましては、責任を原因を発生さした者にやる、こういうことになるでしょう。けれども、その発生さした者につきまして責任の範囲というものが、少なくとも他の者の積極的な行為が介入したものについても責任を負うかどうかという問題になると思うのです。そうすると、二次公害の場合は要するにこの原因を発生さした者、ここでは日聖丸そのものが二次公害防止の措置を講ずる、要するに油を溶かすという意味ですか、それの措置を講ずる。二次公害が発生したというわけですね。これはもちろんその公害を受ける者としましては、被害を受けておりますから、損害の請求はできる。その際に政府のほうとしても二次公害の生じないような措置を講ずるでしょうが、たまたま生じたという場合においては、これは政府としてはどれだけの責任を持ってくるのか。ちょっと御質問の趣旨がはっきりしないかもわかりませんが、その点につきまして御検討をしなければならぬ時期になってきておる、私はこう思うのでございますが、この問題につきましては、国が回避していくというわけにはいかない。要するに損害の額というものをあげて国が補償していくというわけにはいかぬ。それかといって、見て見ぬふりをするわけにもいくまい。これはいろいろと第二の補償という問題の考え方にも転ずるでございましょうし、あるいはある意味で二次公害を国家の介入行為において生じたという場合にどう処理をするか。責任をどういうふうに国が負担するかということも考えなければならぬと思うのですよ。それならそれをおそろしいからといって黙っておって、そして原因を発生した者だけにまかしておくというわけにはいくまいと思う。こういう点につきまして何か御検討されておるかどうか、お尋ねをしておきたい、こう思います。
  50. 野村一彦

    ○野村政府委員 ただいま先生の御質問、法律的にも非常にむずかしい問題でございまして、はたして私がお答えするのが適当かどうかわかりませんが、私の理解しておる範囲で申し上げますと、一般に公害の場合の補償につきましては、先ほど三木大臣からも御説明がございましたように、原因者がその補償ないし賠償の責めに任ずるということは当然でございます。また、その原因者の中に、いま先生御指摘のような第二次の原因者と申しますか、公害を除去するためにある操作をして、そしてその操作の結果二次公害が起こった場合の責任、たとえば具体的に申し上げますと、私どものほうの海上保安庁あるいはこれに協力される外部の方々が処理剤を散布した。その結果それが二次公害を起こして漁業等に被害を及ぼしたという場合に、その処理剤を散布した人が第二次公害の原因者であるべきかどうか。私はこれは法律上いろいろ問題があるところだと思います。私どもの海上保安庁といたしましては、公害の補償の問題に先立ちます除去の問題につきましては、原因者に除去させる。これは災害の補償と同じケースでやっております。しかし、原因者がなお十分に除去をやらない場合には、海上保安庁がみずからこれをやる。あるいはみずからやれない場合、他に適当な者がある場合には、外部のサルベージ業者等にその除去をさせるということをやって、そしてその費用を原因者に求償する。これは海洋汚染防止法のたてまえで、法律上そういうことになっておりますが、これは損害になった場合にだれがどの程度責任を持つのかということについては、私ども関係法律とのいろいろのつり合わせがございまして、ただいま私としては明確なお答えができませんが、そういう二次公害のおそれが、実は処理剤の散布をちゅうちょさせている一つの大きな原因であると思います。この点は新潟沖におきますジュリアナ号の教訓にまちましても、いろいろとどこがどの程度の責任を持つのかということにつきまして、関係省庁間においてもまだいろいろと意見の未調整の分野があると思いますので、ただいま先生の御指摘、これを私ども十分検討して、法律上の問題からも、また実際上の処理問題からも研究しなければならないというふうに考えております。
  51. 上村千一郎

    ○上村委員 それは衆議院の交通安全対策特別委員会の海上交通安全法案に対する附帯決議の第二項の場合、「国の責任において漁業者に対する補償の制度を確立すること。」ということがあります。これはいま言ったような問題は非常に法律技術的な問題になり、法律の基本的な理論構成にも関連をしてまいります。けれどもそういう微妙なことがあるからこそ、こういう問題につきましても国の補償制度というものをひとつ総合的に検討していく必要があると私は思うのです。それは海の場合の公害、災害というものは予測し得ないいろいろな問題を含んでおりますし、被害も相当深刻になってくる、こう思うのであります。今回の事故につきまして、日聖丸ですか、これは保険に入っておるのですか、入っておるとすればどれだけ入っておるか。それから強制保険の制度はまだできてないだろうと思いますが、この強制保険の制度につきまして考えておるのかどうか、こういう点につきましてお尋ねをしておきたいと思います。
  52. 野村一彦

    ○野村政府委員 目撃丸はPI保険といいますか、船主相互責任保険法に基づく保険、これは組合によって運営をされておると思いますが、この任意加入の保険に入っておりまして、その額はちょっとただいま正確な額は把握しておりませんが三億円程度の保険、これは積み荷とそれから船体等に関する保険を内容とするものでございますが、それに加入しておるということでございます。なお正確な保険額は後ほど調べまして御返事いたします。
  53. 上村千一郎

    ○上村委員 これは任意保険のようですが、強制保険制度を考えておるかどうか、その点について。
  54. 佐原亨

    ○佐原政府委員 先ほど私が村田先生にお答えいたしました一九五七年それから一九六九年の国際条約、この条約が発効いたしまして批准いたしますと、無過失責任主義を採用することになっております。それに伴って国内の法制化がはかられれば、その点はそれで一歩前進するものと思います。その場合に一九六九年条約では二千トン以上のタンカーは強制保険に付する、こういう仕組みになっております。まだ国内立法がおくれておるわけでございますが、われわれが事務的に作業しております段階では、タンカーにつきましてはトン数にかかわりなく強制保険に加入するようというような考え方で現在作業を進めておるような次第でございます。まだ法律はできませんけれども、現実の指導といたしましては、タンカーはトン数にかかわらずなるべくPI保険に入るように指導いたしておりますし、この場合の日聖丸につきましてもPI保険に加入しておるはずでございます。保険金額につきましてはただいま保安庁長官からお答えいたしましたようにまだはっきりつかんでおりませんけれども、PI保険に加入しておるはずであります。
  55. 上村千一郎

    ○上村委員 災害という場合は、その時期を待っておるというわけにいかないですね。というのは本件の場合、この七月一日からは要するに海上交通安全法が施行される、実施される。五月でしょう。これで起きておる。けれども起きたのは人身事故まで起こるような事故を起こし、被害はものすごい被害を起こしておる。こういうことですから、その間に少なくとも公害とか災害という問題についてはどう措置をしていくのかということは、立法行為については国会の審議もあるでしょうし、いろいろあるでしょうけれども、いまの対策というものは必要だ。いま承りますれば行政措置でこれの補いをしようとしておられる、こういう御答弁のようです。なお、これは原因がわかっておる。原因発生者はわかっておる原因不明な事故につきましては現在の損害補償の問題についてはどういう仕組みになっておるか、お尋ねをしておきたい。
  56. 野村一彦

    ○野村政府委員 私がお答えするのは適当かどうかわかりませんが、この附帯決議にもございますように原因者不明の問題につきましては、この附帯決議にございますように基金制度を設けて、そしてそれによってカバーをされる、つまり原因者が明確でないがゆえに、同じく被害を受けられた方々が補償をされないというようなことのないような措置を講じろという御趣旨でございまして、その趣旨に沿って私ども運輸本省におきましても一つ考え方をまとめ、さらにそれを関係の各省と協議する。おそらくこれは総理府と申しますか、内閣と申しますか、政府の数省にまたがる問題として御検討をいただくととになっておりまして、私どもも運輸省の立場から、また海上保安庁は海上保安庁の立場からいろいろ検討しておる。調査費につきましても運輸省に関しましては一部調査費がつきまして、四十八年度予算調査を開始しておる、こういう状況でございます。
  57. 上村千一郎

    ○上村委員 時間も来ておるようですから、できるだけはしょってお尋ねをしていきます。  実はあそこの伊良湖港というのがございますね。あの中に渥美魚市場というのがございます。あそこに篠島とか日間賀とか、きょうも本会議で御討議があると思いますが、沿岸漁業振興の方策というものが大きな国策の一つであります。そういうのがあそこに集約しております。それで、先ほども新聞紙上にも損害のいろいろな記事が出ておりまするが、相当大きな損害を及ぼしておる、こう思うのであります。そういう際に、損害の補償というものにつきまして、今回はこれは原因者もわかっておりますが、原因不明という問題もこれから海洋では起きてくる、そういう際の諸対策という問題につきまして、これは私は一刻も早く御検討を始めていただきたい、こういうふうに思うし、なお附帯決議ができてもう一年になろうとしておるわけでございます。そういう際ですから、検討検討では済まされぬであろう、こういう意味でお尋ねをいたしたわけでございます。  なお、自治省関係の方が見えておるかどうか知りませんが、現場へ行ってまいりますと、地方自治団体が沿岸の漁民のためあるいは環境保全とか福祉というような意味で、上から指令が来る来ぬにかかわらず、地方自治団体としては直結しておりますから、あるいは町長さんなり助役さんなりその他県のほうも介入しながらこの対策本部その他をつくって出ておられる。私もその場へ行きました。そうするといろいろと今回は消防関係というものはございませんけれども、出火というようなことも起きないと思いますが、いろいろな出費が出ておると思うのです。こういう問題について自治省は特別交付税か何かで見るというような状態になるのかどうか、その点一点お尋ねをいたしておきたいと思います。そして最後に三木大臣に対しまして簡単にお尋ねをして私の質問を終わりたい、こう思っております。
  58. 土屋佳照

    ○土屋説明員 一般的な汚染の防止とか海洋汚染防止といったようなことは、これは直接地方団体がやるわけではございませんが、いまお尋ねがございましたように、実際上そういった被害が海岸のあたりで起こって、そのためにいろいろ見舞いもしなければならぬし、いろいろな救助作業なりなんなりそういった需要というものが出てくることがあろうかと思います。そういったもので非常に予期せざる大きな財政需要が生じたというようなことがあります場合は、相対的に当該市町村等の財政事情等も勘案しながら特別交付税で措置するということも考慮せざるを得ないという場合もあろうかと思っております。
  59. 上村千一郎

    ○上村委員 それでは三木国務大臣に一点だけお尋ねしておきたいと思います。  最近海洋という問題につきましての関心は非常に強くなってきております。特に自民党などにおきましても、最近海洋議員連盟を発足させるというような動きもあり、将来は海洋省の設置というようなものも目ざそうというふうな考え方であります。と申しますのは、海洋というものにつきましては、元来日本は立地条件からいいましても、海洋に取り巻かれておる海洋国家であります。そして海洋資源の問題が起きておる。そしてまたいろいろな問題が起きておるが、ある一面におきましては、その海洋という問題は、広かったそしてあらゆる汚物といいましょうか、そういうものも浄化し、含んでいくという観念だった。最近ではその広いと思われた海洋というものがきわめて狭くなってきた。しかも気がついたときには、あのヘドロの問題ではございませんけれども、非常に大きな公害のたまり場になってしまった。こういう諸般の事情を考えますると、このたびたび起こってまいっておる海洋上の事故を考える際におきましても、この際ひとつ海洋汚染という問題につきましてはひとつ最も前向きな処置を講ずるとともに、この損害問題につきましては一刻も早く補償制度を確立していただきたい、こう思っておる次第でございます。重ねて最後の御所見を承っておきたい、こう思います。
  60. 三木武夫

    ○三木国務大臣 海の汚染についてはいろいろな原因があるわけです。御指摘にもあったように、自然の浄化能力を越えておる、したがっていろいろな工場立地の問題、埋め立ての問題等いろいろありますが、いまここで問題になっておるタンカーの衝突事故というものはやはり非常に大きな影響を与えるものですから、どうしてもこれを事前に防止するという対策が必要ですね。そういう意味で、私は海上保安庁というものの機能はやはりもっと強化をしたらいい。海上交通安全法なんかも施行されるわけですから、相当な権限を持つわけですから、そういうことでまだ事故を未然に防止するための外国船などに対しても、航路にふなれな点もあるでしょうから注意を喚起する方法もあるだろうし、そういう点で事前防止ということに対して海上保安庁の機能、予算も強化したらいいと思うのです。そしてやはり第一線では、どうしても海上保安庁というものは第一線に立って、そして事故防止の第一線に活躍してもらわなければならぬ。起こったときにその油なら油の処理をする方法というものに対しても、未然に防止するといっても事故は絶対防ぐというわけにもいかぬわけですから、そういう場合もあり得るわけですから、そういう点で汚染物、これをどうやって除去するかという、これに対して、これもまた海上保安庁の機能を強化しなければならぬ面が非常に多いと思います。  あとの補償の問題については、これはやはり基金制度というものを、事故保険というか、事故の原因者が明白でない場合もあり得るでしょうから、基金制度というものはこれは運輸省においても一年研究されたのでしょうから、やはりこれは具体化されなければいかぬ時期だ。また自治体もいままでは地方の財政の均衡という角度から地方交付税など考えておったのですが、私はやはり公害とか環境の保全というものに対する自治体の出費というものは多くなっていくわけですから、単に財政の均衡という面ばかりでなくて、公害防止とか環境保全に対して自治省の財政的支出がふえていく一方ですから、特別交付税の一つの算定の基準というものは従来のような考え方はやはり少し検討をする必要がある。これは自治省にも話すつもりでございます。そういうふうに考えております。
  61. 上村千一郎

    ○上村委員 たいへん長く失礼いたしました。これで質問を終わります。
  62. 佐野憲治

    佐野委員長 島本虎三君。
  63. 島本虎三

    ○島本委員 自然環境審議会の委員が新たにきまったわけです。そして午前中には参考人として中央公害対策審議会答申についての説明をそれぞれ伊東彊自、鈴木武夫両君から承ったわけです。それに三木環境庁長官からその施策についての意見の聴取があったわけであります。私どもは、そういうふうにして見て、一回、一回出されたそういうような諮問答申、こういうようなものに対して次々と対策だけ新たに練る——それはあと追い行政だ、そういうようなことじゃなしに、もっとこの際、自然環境審議会の委員も任命されたことですから、いまある法律を改めて、再びあと追いだ、このようなことがないように、今後は大臣としては、調整権もあるわけですからき然とした態度をとるべきだ、こういうふうに思います。新しい委員を任命し、その活動も開始されるわけでありまして、この点について長官の決意も十分できておると思いますが、まず決意を承っておきます。
  64. 三木武夫

    ○三木国務大臣 きょう一つの御説明も申し上げました窒素酸化物とかオキシダントの問題についてもやはり相当にきびしい環境基準ですから、その環境基準というものに対して公害防止技術開発等を企業側としてもやはり精力的に進めなければこの基準に適合しないわけでございますから、そういうきびしい環境基準をきめるということで、企業側が公害防止に対して全力を傾倒しなければいかぬ、企業の存立にも関係する、そういう指導を行なうことがあと追い行政だとは私は思わないのであります。尊敬する島本委員のお話でありますけれども、そういうふうには考えていないわけです。大いに事前に防止しようということに焦点をあてておるわけでございます。  それから自然環境保全審議会についても、メンバー等についてやはりいろいろな角度から検討を加えた委員の選任を行なったことは、これはお認めになられることだと思う。このことの中にも、やはり自然環境の保全においても事前に環境の保全というものの一つの方針を確立して、あとから追っかけるようなことのないようにという配慮が加えられておるわけでございます。
  65. 島本虎三

    ○島本委員 そういうような意向を中心にして具体的に水質汚濁の点、大気汚染防止の点、この行政措置についてちょっと伺っていきます。  昭和四十五年九月一日閣議決定した公共用水域が該当する水質汚濁に係る環境基準の水域類型の指定、これがなされたわけであります。これは各方面やってあります。これは四十五年からなされておるわけですが、このやり方というか、成果というか、これは徐々に予定どおりにいっておりますか、いっておりませんか。
  66. 岡安誠

    ○岡安政府委員 環境基準設定につきましては、私どもはなるべく早く全国の主要水系につきましてこれが設定せられるように促進をしておるところでございまして、そのうち国が定める環境基準につきましては、間もなくほぼすべて完了する予定でございます。県が指定する分につきましては、これは急いでおりまして、昭和五十一年には主要水系につきましてこれが設定できるように現在促進をいたしております。  達成程度でございますが、環境基準の中には直ちにこれを達成するというふうに要請しているところと、それから期間を区切りまして、期間内にこの環境基準達成するというような指定のところもございます。私どもは環境基準は行政の目標でございますので、目標達成のためにあらゆる手段を講ずるように督励をいたしておりまして、もちろんすべての水域につきまして環境基準達成されているというわけにはまいりませんが、ほぼそれが達成されているというふうに考えております。
  67. 島本虎三

    ○島本委員 それなら具体的に伺っていきますが、北海道、石狩川の上流から下流まで、中流を含めて、これの該当類型と達成期間、それぞれ閣議決定したのがあります。これをずっと見ていくと、加古川上流、これは加古川水域であります。それの該当類型はA、下流はB、それぞれ達成期間はイ、ロになっております。それから武庫川上流、これは武庫川水域になっておりますが、上流はAで、中流がBで、下流がCになって、それぞれ達成期間はイになっております。こういうのはそのまますなおにわれわれとしては認められるわけであります。まして鈴鹿川の上流、これは曲であります。鈴鹿川の上流、同じく(2)、この地点は「勧進橋から鈴国橋まで」になっておりますが、これはAであります。それから鈴鹿川中流、これはBであります。鈴鹿川の下流、これはCであります。それぞれ達成期間はイ、イ、ロ、ロ、こういうふうになっていて、これも順序として見たらわかる。ところが石狩川のほうへ来ると、石狩川の上流、これは「留辺志別川合流点より上流」は船であります。石狩川上流、これも「合流点から旭川市取水口まで」はAであります。石狩川の上流、同じく「忠別川旭川取水口より上流」これもAであります。ところが石狩川の上流(4)とあります「忠別川旭川取水口、旭川市取水口から雨竜川合流点まで」はCになっております。それから石狩川の中流、下流はBということになっております。達成期間は、曲の上流がイ、Aはイ、それから(3)の忠別川旭川の取水口より上流、これはAであって、達成期間はイです。ところが石狩川の上流の(4)、忠別川旭川取水口それから旭川市取水口から雨竜川合流点まで、これはCになって、口になっております。Cとして認めておりながら、河口のほうをBにして、口にしておる。これは順序が逆じゃないですか。こういうふうなやり方であと追い行政にもならない。ほかのほうはきちっとやっていて、上流がAAであるならば、中流はAである。下流はBである。なぜ北海道の石狩川だけ中流がCであって、河口付近がBでなければならないのですか。この辺はなかなかやってもできない。まさにこれは企業を擁護せんがための当該類型の当てはめでありませんか。ただ単に、ほかから流入する川の水で薄めるというやり方で、これは徹底的な規制を主にしたやり方でないでしょう。現にこれはうまくいっているのですかいっていないのですか。
  68. 岡安誠

    ○岡安政府委員 御質問のとおり、大体普通河川の環境基準というものは、上流がよくて下流に至ると程度が下がるというのが通例でございます。ただ石狩川のように、途中で流入河川がございまして水量がふえるというような場合には、まさに下流のほうが環境基準が上になりまして、その上流が悪くなるという例もほかにもあるわけでございます。もちろん私どもはすべての河川につきましてできるだけいい状態を取り戻すということに心がけておりますので、現状をそのまま是認するつもりはございませんが、石狩川につきましては、このCの部分について、これは汚濁の原因が、私どもの考えておりますのは山陽国策パルプ旭川工場からの汚水、それから旭川市の家庭下水等の流入がございまして、これによって非常に汚濁しているわけでございます。私どもは現状を認めませんで、これをなるべく早い機会にC類型まで持っていくということで環境基準設定いたしましたけれども、これを直ちに達成するというわけにはまいりませんので、環境基準設定してから五年以内にこの環境基準目標達成するようにということを指導をいたしておりまして、私どもは、これが達成できればさらにこの環境基準を引き上げるということも考えておる次第でございます。
  69. 島本虎三

    ○島本委員 山陽国策パルプの旭川工場、これは汚濁源として約六〇%を占めておる。合同酒精、紙工業その他を合わせて五%程度、ほとんど大部分は山陽国策パルプ旭川工場なんです。その他市内の都市排水、これはあるでしょう。これは行政的な指導によって一生懸命急いでいるはずですし、急がなければならないし、とっくにこれは到達していなければならない。四十五年から五年以上要する計画になっている。この辺あたりも少しおかしいじゃないですか。これだったら、結局はこの辺あるがために全部よごれるということだ。そうすると山陽国策パルプの旭川工場のために石狩川の水系は全部よごれることになってしまっているじゃありませんか。これが企業擁護じゃなくて何と言うのですか。これがあと追い行政じゃなくて何と言うのですか。そこなんです。私はこれの指導をどうしているのか通産省に伺います。
  70. 齋藤英雄

    ○齋藤(英)政府委員 お答え申し上げます。  山陽国策パルプの旭川工場の問題につきましては、従来から一律基準達成のためにいろいろ技術の組み合わせによりまして対処いたしておりますが、何ぶん寒冷地のために、BOD対策としまして有効でございます活性汚泥法は採用できないというふうな点もございます。会社側は従来からいろいろの施策、たとえばKP廃液の燃焼装置でございますとかいろいろやっております。現在規制値でございますところのBODで百五十PPMでございますけれども、百四十七ぐらいのところまで一応なっておるわけでございます。今後とも本問題につきましては、会社はもちろん、われわれとしても指導につとめたいと思っております。
  71. 島本虎三

    ○島本委員 そこが問題なのじゃありませんか。初めから寒冷地だからやれないんだ、そういうようなきめ方は認められるのですか。もし寒冷地だからやれないなら、バイカル湖付近のバイカルパルプ、これはソ連ですけれども、ここはりっぱにやっているじゃありませんか。それよりも優秀な技術を誇る日本の企業がなぜできないのですか。行政指導がないからできないのじゃありませんか。バイカル湖のバイカルパルプでは、十万トンコードパルプの生産で第二期の工事分、これは産業廃棄物の再利用工場、こういうようなものまでやって排水処理を行ない、木材パルプとして九三%から九五%まで利用して、残り五%から七%を処理施設で処理している。あそこでさえも有機排水中和を生化学処理をしておる。沈でん池で脱色までしている。そうしてスーパーろ過器を通して清澄ろ過して、ほとんど飲み水にひとしいものをバイカル湖に注いでいる。こういう資料が来ているのです。なぜ寒冷地だからできないというようなことを言うのですか。結局企業の採算を考えて、企業擁護のために水をよごすことを認めておる。こういうようなことになるじゃないですか。そうじゃないですか。どうしてもできないなら、ソ連のものはどうしてりっぱにできているのですか。こういうような態度がよくない。したがってこういうのがあと追い行政以上に悪いじゃありませんか。あの川は、下流へ注ぎ込む川はほとんどよごれている川です。ただ一ついい川がある。支笏湖に注ぐ千歳川、あれだけはりっぱな川ですが、あれが石狩川へ入ったとたんに夕張川と重なってきたなくなってしまっているのです。そういうようなので、河口付近をBにするというようなことをしちゃいけません。あくまでも上流、中流の旭川付近をBにして、徐々に上のほうからAにしていく、これが決定打じゃありませんか。こういうようなことをしないで企業の態度ばかり認めてやる、これでは百年河清を待つにひとしい。企業擁護の立場をとる限り水はきれいになりません。これは一例です。いまでも旭川の山陽国策パルプ、ここでは牛乳びんですくうと、鶏の羽をほぐしたような浮遊物が流れてきているのです。茶色の水。これは実験室ではとれぬ。しかしながらこれは二十五万トンもの水を使う、したがって採算上やれないのだ、こういうようなことじゃありませんか。石狩川からとって、旭橋の下で合流する。これは牛朱別川へ流しているのです。それがその場合石狩川に流れて、神居古湾に入る。あすこは景勝の地です。黒い水があわを吹いて流れているのです。それが石狩川の上流の実態なんです。そして北海道でも国の基準を上乗せしていると言いながらも依然としてまだそういう状態です。現に公害防止協定を旭川市で国策パルプと結ぶという要請があって、これは三月三十一日に締結する予定だと聞いておりましたが、どうなっておりますか。
  72. 齋藤英雄

    ○齋藤(英)政府委員 お答え申し上げます。  私ども聞いておりますのは、旭川市から四十八年の五月末目標公害防止協定を結びたいというふうな申し出を受けておるわけでございますが、現在、市から原案がまだ示されておりません。したがいまして、会社側としましては、原案が示された段階で誠意をもってこれに対処したいということを申しております。私どもとしましても、市から相談がございますれば、これは誠意をもって指導いたしたいというふうに考えております。
  73. 島本虎三

    ○島本委員 これはあくまでもSS分、これを下げる点で合意に達しないのでしょう。あくまでもよごして流すということに、そういう立場をとるから協定が合意に達しないのでしょう。そしてどうしてもだめで、そして旭川市のほうでいまつくって、それができたならば再び協議しよう、こういうことになっているのでしょう。一体この企業に対して立ち入り検査をしたことがありますか。
  74. 岡安誠

    ○岡安政府委員 企業の立ち入り調査は、水質汚濁防止法によりまして現在道庁に立ち入り権限があるわけでございますが、現在、道庁がいつ立ち入り調査をし、どういう結果があったということは私ども報告を得ておりません。
  75. 島本虎三

    ○島本委員 これはこれからのために必要ですから、このデータを要求いたします。私が知り得たデータによると、旭川市で立ち入り検査をしたいと言うと、これは道ですから拒否される。道と通産局が行く場合にはあらかじめ通知をしてから行くからいつもきれいな水を出しておる。こんなことで一体直るのですか。協定が結ばれない原因もそこなんです。立ち入り検査は、いまの状態では道しかできないのですよ。それでちゃんとCに指定させてある。それで下のほうをBにしてある。その上はAとAAじゃありませんか。なぜこういうようなことをするのです。企業擁護以外の何ものでもないじゃありませんか。すぐ態度を変えるべきです。せっかく自然環境審議会ができながら、あと向きでないと言いながらこんなあと向きがあるじゃありませんか。これはだめですよ、大臣。あなた一番進歩的な人だと思って私は尊敬しているのですけれども、やってみると依然としてこういうようなものが残っておる。どうするか、大臣決意してください。
  76. 三木武夫

    ○三木国務大臣 島本委員の言われるように、中流のほうがよごれているということは普通の川の状態からいったらおかしいことですが、そこには山陽国策パルプ、あるいは旭川の下水というようなものもあるでしょう。しかし一番大きなのはやはり山陽国策パルプ工場の工場排水だと思いますから、これは公害防止協定を早く結ばなければならぬ。北海道庁にも強力に指導いたしまして、そして防止協定を結んで相当きびしい工場排水の規制を行なうことによって石狩川の汚染をできるだけ防止するようにしなければいかぬ。また下水なども、来年度から大々的に政府は下水の処理というものを取り上げようとしておりますから、こういうことと相まってわれわれも石狩川——北大の歌にもあるように非常に美しい川である。この川の美しさを取り戻さなければいかぬ。そういう点でいま言ったような山陽国策パルプなどに対しても道庁を通じて強力な指導を行なって、きびしい公害防止協定をすみやかに結ぶようにいたしたいと思います。
  77. 島本虎三

    ○島本委員 まして閣議にかかった四十五年九月一日のこの該当類型と達成期間、これを見たら一目瞭然なんです。この国策パルプの上流まではA地域ですよ。それもイですよ。つまり直ちにきれいにするとしておいて、今度その排水口のほうにくるとCです。これは口です。五年間かけてやっている。こういうようなばかなやつはないのですよ。これは堂々と閣議決定になっている。そして河口付近になってBになっている。これはAのまま流したらCにしても合算したらBになる。これは企業努力じゃありませんよ。自然累加していくとこうなるのですよ。まことに奇々怪々だと思います。あまりこればかりやっていてもしようがありませんから次に移ります。大臣、これは十分注意してやっていただきたいと思います。それから環境庁も、せっかく出すのにこんな企業べったりのような企業擁護の姿勢をいつまでもしておくようなこういう水質汚濁に係る環境基準の関係、こういうようなものを出すべきじゃありません。もっと厳重にやらなければいけないです。  次は大気汚染防止法の関係です。これは「ばい煙発生施設において発生するばい煙を大気中に排出する者は、そのばい煙量又はばい煙濃度が当該ばい煙発生施設の排出口において排出基準に適合しないばい煙を排出してはならない。」これは大気汚染防止法の十三条にはっきりありますね。  それから今度は法十六条、それと同時に四十六年六月二十二日の施行規則の十五条、ばい煙量等の測定、「法第十六条の規定によるとばい煙量又はばい煙濃度測定及びその結果の記録は、次の各号に定めるところによる。」こういうふうにしてあるわけです。そして一は、いおう酸化物に係るばい煙量の測定、これはいろいろあって、二カ月をこえない作業期間ごとに一回以上これを行なえということになっておる。それから、ばいじんに係るばい煙濃度測定、これは二カ月をこえない作業期間ごとに一回以上行なえということになっておる。行なったあとどうなるのですか。どういうふうに指導しておるのですか。
  78. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 お答えいたします。  都道府県において記録を立ち入りでもって見る場合もございますし、それから大きい施設におきましてはオーマチックにこれを地域の環境濃度として把握することもできますので、そのつど都道府県のほうにおいてその事情を察知したければ常時見ることができる状態になっておるのでございます。ただ、定期的に何回これを報告させて云々というふうな処置はとっておりません。
  79. 島本虎三

    ○島本委員 大臣、この中にもこういうようなのがあるのです。大気汚染防止法第十六条ばい煙量等の測定、これは十六条ではっきりきめて、その結果を記録しておかなければならないだけなんです。罰則がない。そして今度、二十二条に常時監視「都道府県知事は、大気の汚染状況を常時監視しなければならない。」ほとんどこういうものは、監視しなければならなくてもやってない。立ち入り検査もしてない。それと同時に、「報告及び検査」この中に立ち入り検査をする、これがようやく生きてきているのです。すなわち書いておく、それを立ち入り検査して見る、このための資料なんです。一体これでばい煙の排出は規制されていますか、環境庁。
  80. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 罰則の問題に関連いたしますので、追加してお答えいたしますと、以前はこの記録の項に関しましては罰則規定がございました。昭和四十五年十二月の法改正の際に罰則規定が入りましたので、これは訓示規定としてとどめるということとして、排出者が当然その汚染状態測定することとなって、これをあえて罰則を規定として定める必要がなくなったために、一応念のための規定ということに「記録」はなったのでございます。ただし、私どもは地方、都道府県の監視測定体制の整備にうんと力を入れておりますので、都道府県において十分指導する力を持っておりますとともに立ち入りはいつでもできる状態にしてございますので、問題がありそうなときにはどしどし立ち入りをしてやるように指導しております。
  81. 島本虎三

    ○島本委員 うそもいいかげんにしなさい。どこの県で立ち入り検査を十分にやっている県がありますか。こういうようなものを一生懸命やっている東京都でさえもまだまだ立ち入り検査は不十分なんです。じゃ、北海道十分にやっているとお言いになるなら、何回立ち入り検査をしたというのをデータとして出せますか。ほとんどやってないのですよ。それじゃだめなんです。そしてこれはだれが検査するのですか、ばい煙の排出量を。そしてだれが記録しておかなければならないのですか。せっかくの罰則もこれによってもう訓示規定にされちまって、大体これも後退なんです。立ち入り検査できるからということでこれをとってしまったあと、立ち入り検査不十分、ばい煙の出しっぱなしでいいんです。立ち入り検査したときにようやくそれを発見する。それまでだれが検査するのですか、これは。
  82. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 記録はそこの事業者が記録しております。で、県のほうでは御指摘の地域等につきましては測定のステーションがございますので、地域環境濃度を十分把握しておりますし、先生御指摘のとおり立ち入り検査の件数そのものは全国的に高くございませんが、その事態を察知し、あるいは疑いがあるということになりましたら都道府県においては十分立ち入りができるということを申し上げた次第です。
  83. 島本虎三

    ○島本委員 だめなんです。これ調べるのは工場側にあっても、工場は、現在法人格を持った測定分析協会があるのです、それに頼んで月に一回なら月に一回、二回なら二回、これを検査してもらっているのです。それをただ記入だけしているのです。そして立ち入り検査に来ない以上、これはいけないのです。黙って出しっぱなしなんです、いまの法律でも行政指導でも。もしこれをほんとうにそうだとするならば、分析測量したもの、これをおやじさんに、工場主にいっても、そのまま記録にとどめておいて、都道府県知事にも市町村長にも報告してないのです。どうしてこれを報告するようにしないのですか。報告するようにすべきじゃありませんか。これは通産省はどう考えますか。
  84. 青木慎三

    ○青木政府委員 私どもとしましては、現在の法制のもとで企業を指導しておりますが、法制全体の問題については環境庁の問題でございますので、環境庁のほうの指導に従いましてそれを励行するように企業を指導してまいりたいと考えております。
  85. 島本虎三

    ○島本委員 じゃ、環境庁。
  86. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 立ち入り検査した際に、その記録を見るという現在のやり方を進めておるわけでございます。
  87. 島本虎三

    ○島本委員 この検査は普通の状態では年に一回、そして多量に排出するようなばい煙の場合、これは、「いおう酸化物に係るばい煙量の測定は、ばい煙発生施設において発生し、排出口から大気中に排出されるばい煙量が、温度が零度であって、圧力が一気圧の状態に換算して毎時十立方メートル以上のばい煙発生施設について、別表第一の備考に掲げるいおう酸化物に係るばい煙量の測定法により、二月をこえない作業期間ごとに一回以上行なうこと。」こういうふうになっていて、これはもうもうと出す鉄鋼業者です。二カ月に一回、その他は年に一回、そしてそこへ記入していても、そこでさえも立ち入り検査なんかほとんどないのです。出しっぱなしなんです。それでもやはり検査に行く人は法人格を持った、分析測定は依頼されていますから、それを協会をつくってやっておりますから、その人に対して、測定したそれを都道府県知事になぜ報告させないのですか。なぜ工場のおやじさんだけにそれを報告させるのですか。その辺が行政のミスじゃないかと言うのです。幾ら言ったってだめです。具体的なこういう事例を環境庁知らないわけはない。これとても法の網を正々堂々とくぐって、そしてこれも罰則規定があったのを抜いてそして企業擁護そのものじゃありませんか。こんなことでできますか。濃度を越えて排出したもの、これはだれが指摘するのですか。一番よくわかっているのはもちろん検査した人です。一たん書いてしまうと——いつのまにかこれだって変わるかもしれない、報告だけですから、あと書いておけばいいだけですから。分析測量した者になぜ行政庁への報告を義務づけないのか。これをやったならばすぐわかるじゃありませんか、調べたのが。それこそ前進的な姿じゃありませんか。なぜやらせないのか、その理由を聞きます。
  88. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 先生おっしゃるとおりな措置をいたしましたほうが的確な判断ができると私は思います。ただ現実問題として都道府県の指導においてなかなか全国的に十万ある対象施設についての立ち入りというのは非常にむずかしいかと思います。現段階で私どもは監視測定の精度を高めるということから都道府県の監視測定体制には大いに力を入れて、いまその指導をしている最中でございますので、こういう問題に関しましては、現地の指導能力がつきまして、そして立ち入りしてそのチェックのしかた等々に十分自信のあるような指導の力ができたときに初めてこういう問題がチェックできると私は思っております。立ち入りそのものをしても技術的な問題が大企業等等にございますので、そちらのほうの都道府県の力を強めるということに目下力を入れておる最中でございます。
  89. 島本虎三

    ○島本委員 大企業は当然それはやるべきです。ところがその中間の企業体、大企業から下請をされている企業体、そういうようなところではやはりばい煙を排出しているのです。法によって当然これは記入しなければならないところなんです。資格のあるもの、これは法人格を持っていますから、分析測量をそこに依頼してやっているのです。やっている人はちゃんとそういう報告をおやじさんにするのです。それでも結果は変わらないということでもう悲憤慷慨しているのです。そういう法的な資格のあるもの、はっきり法によってでもそれを資格づけたでしょう。この資格ある人がはっきり調査をした場合には、これは行政庁へいわゆる報告を義務づけるべきだ、そうしたならば、おやじに、工場主に言う。それと同時に行政庁でもそれをつかめる、これなら一挙両得ではありませんか。なぜこういう指導をしないのか、こういうことなのです。前向きだというが、これが前向きじゃありませんか。どういうふうにするんですか。本会議のベルが鳴っても、このはっきりした答弁をしない以上は退席しませんよ。
  90. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 おっしゃる点はよくわかりますが、それらの法人格のいわゆる分析を中心としてやっておるものが全国的には非常にふえております。それらの点の指導も私どもやろうといま考えておりますが、これは通産当局とも相談して、力のあるものにしなければなりませんので、私ども、いま、先ほど言いましたように、都道府県の実力を強める、向上させるほうに力を入れておりますが、あわせてこれらの検査、分析を中心にしているものの指導も十分今後、はかっていく所存でございます。
  91. 佐野憲治

    佐野委員長 この際、暫時休憩いたします。  本会議散会後直ちに再開いたします。    午後二時一分休憩      ————◇—————    午後四時五分開議
  92. 佐野憲治

    佐野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  公害対策並びに環境保全に関する件、特に地盤沈下及び水質汚濁対策問題等の調査のため、本日、参考人として新東京国際空港公団理事岩田勝雄君、同じく理事池田適弘君、同じく理事杉野信吾君、同じく工務部長皆川葉一君及び同給油施設部長福岡博次君の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  93. 佐野憲治

    佐野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。      ————◇—————
  94. 佐野憲治

    佐野委員長 公害対策並びに環境保全に関する件について質疑を続行いたします。島本虎三君。
  95. 島本虎三

    ○島本委員 政府委員出席は、前回委員長に要請したとおりのメンバーでございますか。
  96. 佐野憲治

    佐野委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕
  97. 佐野憲治

    佐野委員長 速記を始めて。
  98. 島本虎三

    ○島本委員 いま諸般の事情で、長官でなければならないような様子だったのでありますが、しかし重大な環境問題でありますので、政務次官がよしあしにかかわらず責任ある答弁をしてもらいたい、こういうふうに思っているわけです。  まず問題点を、先ほど水と空気の行政措置について煮詰めました。長官自身の発言としては、決してうしろ向きではない、あと処理でもないというりっぱな答弁だったのでありますけれども、具体的な例をあげたならばあと向きであったということであります。  したがって今後、この例としてあげた石狩川の公共用水域が該当する水質汚濁に係る環境基準の水域類型の指定、これについては上流がAAであり、その下の上流がAであり、またそれより下もAである。旭川付近にきて、山陽国策パルプの廃液がまじってからCになり、それも達成期間については口である。そして下流にいってBである、こういうようなことであります。この決定そのものはまさに企業寄りであり、企業擁護の姿勢そのものであるということ、それについての答弁もはっきり伺いました。やはりその線に従って今後も十分に対処してもらいたい。これはもう前からの確認がありますから、そのとおり進めます。ところが、寒冷の地であるために化学的な作用ができず、そのために汚濁の防止、汚濁源の排除というようなものは十分できないという通産省側の答弁、これはまさに違うのであります。それからそれについての答弁もありましたから、今後十分気をつけてもらうことにして、この色の問題があるのです。あのパルプの色、この水だけはどうにもなりません。牛乳びんですくうと、鶏の羽をほごしたような浮遊物が流れてくる。実験室では、茶色の水をちゃんときれいにすることができる。しかし二十五万トンもの水を使うので、経営上これはやれないというのが企業側の考えのようであります。これでは水は使いほうだい、よごして流してもいいんじゃないか、こういうような考えのようであります。その考えは全然違いますから、今後はこれを是正すること。  それで、いまのような色の問題があるのです。この色はやはりあめ色であって、それがとうとうとして流れて、景勝の地である神居古潭のほうに注いでおります。ですから、あの場所は自然休養林として政府が指定した場所なんです。そして、自然休養林として政府が指定していながら、その水がきたないために、これも御破算になろうとしておる。とんでもない話だ。どうしてこれが企業寄りでない、前向きの態度だ、こう言えるのですか。この色の問題の解決、同時に自然休養林として政府の指定、これも十分生かすためには、早くこの類型の指定等達成期間、これを急がなければならないはずであります。この点について、せっかく大臣のかわりでありますから、次官の誠意ある御答弁をひとつ伺ってみたいと思います。
  99. 岡安誠

    ○岡安政府委員 色につきましては、やはりこれは水の汚染には相違ないわけでございまして、私どもいずれ規制をやりたいと思っておりますけれども、現状におきましては、いま先生お話しのとおり、なかなか脱色につきましての技術問題がございまして、私ども現在いろいろ研究中でございます。なるべく早く結論を出しまして、規制の方向に進みたいというふうに考えておる次第でございます。
  100. 島本虎三

    ○島本委員 通産省、この色については、どうにもしようがないのですか。
  101. 青木慎三

    ○青木政府委員 先生御指摘の色につきましては、非常に技術的にむずかしい点がございますのは、事実でございます。ただいま私どものほうとしましても、企業のほうと協力いたしまして、何とかこれに対する技術的解決の方法研究中でございます。ただ現状では、まだその技術開発されておりませんし、むずかしい問題であるということは事実でございます。
  102. 島本虎三

    ○島本委員 先進国としては、もうすでに簡単な方法で、先ほど言ったように、飲料水にも匹敵するようなぐらいの清澄ろ過装置が施されればできるのだということは、すでにソ連では実行済みなんです。バイカル湖でさえもその水を注ぐことによってきれいにしていると言われている。そのろ過装置を一つつけたらいい。沈でん池を一つつくったらいいじゃないですか。そういうようなものを一つつくればりっぱになるのに、それさえもやらないなんて、こういうようなことは環境を完全に守るためのやり方ではない。国内だけの企業、これを見るのじゃなくて、もう少し他の国のやり方も参考にして、日本は一番汚濁が強いのですから、はげしいのですから、そういうようなことはないようにすべきである。これが公害に対しての前向きの姿勢なんです。これほど日本は工業的に発展しておるのに、できないはずはないでしょう。だから企業擁護だって言うのです。だから企業べったりだって言うのです。だから通産省に振り回されておると言うのです。できるのは、コストの点はコストの点で考えながら、試験的にもやらしてみたらいいじゃないですか。まして、SSの問題なんですから、鳥の羽のようなものを溶かしたようなものが流れているのですから、それを取るような努力もしてないのですから、なっていないじゃありませんか。石狩川は母なる川だと言われているのです。しかしながらそういうような状態にして、企業の存在だけを許しておくとというようなやり方は、これはもう矛盾もはなはだしい。これじゃ環境庁はあってなきがごときものじゃありませんか。だれでもいいから答弁してみてください。
  103. 岡安誠

    ○岡安政府委員 私どもも色の問題につきまして何もしないというわけじゃございません。現在予算もいただきまして、それの除去の方法等につきまして、斯界の先生方、権威の先生方にお願いして研究いたしておりますが、なかなか具体的な方法が発見できないということもございまして、私どもの基準設定まで至らないわけでございます。先生おっしゃるとおり外国等で有力な技術、手段がありますならば、私どももそれを研究いたしまして、これを導入するようにつとめてまいりたいというように考えております。  一般的に私どもは現状を維持するとか現状に満足するわけではございませんので、やはり目標を示しまして、その目標に向かって努力をしていただくというようなことで、環境基準、排出基準を定めているつもりでございます。今後ともその方向に向かってさらに一段と努力してまいりたい。かように考えております。
  104. 島本虎三

    ○島本委員 実際長官の言うのと、あとから局長のほうから答弁してもらうのとでは、格段の相違がある。  じゃ、まず聞きますけれども、国の基準、これに北海道が横出し、上乗せをした基準の上にこれを乗せて指導しておりますか。国の基準どおりですか。
  105. 岡安誠

    ○岡安政府委員 上乗せについての御質問だと思いますが、パルプにつきましてお答えいたしますと、特に山陽国策パルプ関係につきましては、現在パルプについて国の基準は一律基準ではなしに暫定基準が適用されておりまして、一律基準よりも相当緩和された基準になっておりますが、北海道におきましてはパルプについてのBODは、四十八年の十月までは二八〇というふうに、きわめてきつい基準を示しておりますし、四十八年十一月以降はこれを一五〇PPMにするということになっております。それからSSにつきましても日間平均一〇〇PPMというように、一律の基準よりも強い基準設定しておりまして、北海道庁といたしましては、山陽国策パルプの汚濁負荷量につきましては過去の負荷量のこれを四〇%以上カットをするというような考え方をもちまして、現在上乗せ基準設定をいたしておる次第でございます。
  106. 島本虎三

    ○島本委員 何と言ってもだめであります。そういうふうにして、なおかつ現在の汚染度だとしたならば、そういうふうに上乗せしないと相当ひどい廃液を流しているということになるのですね。そういうようなことを北海道は指導しているのですか。これは道の開発調整部、とんでもないではありませんか。上乗せ、横出しをしながら、そういういまのようなひどい廃液を出しておる。これをしないと、国の基準のみだったらとんでもないことになるじゃありませんか。それほどまでに企業はでたらめな排出をしているのですか。そういう指導をしているのですか。
  107. 岡安誠

    ○岡安政府委員 私の説明がちょっと足りなかったかもしれませんけれども、北海道庁の上乗せ基準設定によりまして、山陽国策パルプは現在その基準に合致するような排水をいたしておるというふうに北海道庁から報告が参っております。
  108. 島本虎三

    ○島本委員 通産省はそれに対して、環境庁から指定されてようやくそうなった。通産省は無制限に廃液を流すのをいままで認めていたのですか、それでは。
  109. 青木慎三

    ○青木政府委員 上乗せ基準ができますまではさらによごれた水が出ていたわけでございますが、現在では上乗せ基準に合致するようにやっておりまして、現在BODでは約一四七PPMであるが、SSでは七〇PPM前後というふうな実績になっているように聞いております。
  110. 島本虎三

    ○島本委員 現在そういうふうになってもなおかつ汚濁はひどい。それは何回も言うとおりなんです。実際こんなことを言っていてもしようがないのだけれども、それにして見てもどうですか。公共用水域が該当する水質汚濁に係る環境基準の水域類型の中で、石狩川の中流から下流がBであって、旭川付近だけCである。それももう該当類型であって、達成期間は口を指定している。ますますおそくてもいい、こういうようなことを指定することになる。どうもこのやり方が、環境庁は答弁だけで内容がないようだけれども、この国策パルプで使っている工場の油は、硫黄分何%のものを使っていますか。
  111. 青木慎三

    ○青木政府委員 ただいま手元にその油の資料を持っておりませんが、大気関係で申しますと、規制値がK値で四十七年一月より二二・二でございますか、現状ではK値が二八・四という数値になっているというふうに聞いております。
  112. 島本虎三

    ○島本委員 特に国策パルプのほうでは、ただ一つよりないということで、あの自然公園、国立公園の大雪山の付近にありながら、道内で一番硫黄分の高い油をわざわざ使っている。ですから、この硫黄分は何%なんだということを聞いているのです。こんなことありませんよ。水として汚水を出すだけ出す。それはもうまた自分のほうだけだからよごしてもいい、こういうような考えでやる企業の指導なんてありますか。きれいなところこそ保存しなければならないし、それが七〇年代のりっぱな環境であり産業でしょう。使っている油、これはおわかりになりませんか。ならなければ、至急調べて——私は資料として要求いたします。
  113. 青木慎三

    ○青木政府委員 さっそく調べまして資料として提出いたします。
  114. 島本虎三

    ○島本委員 最後ですけれど、これはどうですか。先ほどからずっと追及して、大気汚染防止法によるところのこの法並びに施行規則、この規則によって相当程度これは規制が強化されているようであるけれども、それは努力目標にしかすぎなかった。しかしそれを現にやっていても、企業がそれを記入しておけばいいだけである。そして、以前にあった処罰が今度はなくなってしまっている。立ち入り検査によってこれは自由に指導するような体制をとったといいながらも、立ち入り検査は不十分である、これが指摘されました。しかしこれはそのままにしておかれません。今後やはりきれいな空に取り戻すためには、法自身、これも、施行規則自身が不十分ならば、これは補うようにしなければなりません。一番問題は、いろいろな調査、分析、測定をやっております。そのやるのは、特定の資格を持った人たちに委任してやらしています。その人たちは一番よくそれをわかっています。それを通告するのは工場主だけに通告するのです。工場主は、いかに汚染された濃度でばい煙を出しておっても、それをそのまま年に一回ないしは二回、ひどいところで二カ月に一回、そういうようなものに記入すればいいというだけで、そして何ら罰則はない。したがって、立ち入り検査以外にはそれを発見することができない。立ち入り検査はほとんど行なわれておらないというような現状、法あって行政は生かされておりません。一番これで困っているのは、これら、測定し、分析して、それをいかに通告してやっても、その会社、法人は直さない。これに対してはやはり義憤を感じている人たちもあるのです。したがってそういうふうな盲点をなくするために大気汚染防止法並びに水質汚濁防止法、これらの施行規則による測定記録、こういうふうなものが真になされた場合には有効な行政への反映をはかるようにすべきである、私は強くこれを要請したいのです。環境庁、やはりこのような不備な状態でもあなたはこれをおとりになりませんか。
  115. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 先生御指摘の部門で二つ私解釈してお答えいたしますが、まず事業者に対して測定義務を定期的に課すべきだという御議論でございますが、その事業者が排出基準に違反していないかどうか、これは事業者からの報告に基づいて行なうのは私は適当でないと思います。むしろ先生おっしゃったようにこれは行政府の責任でございますから、行政庁において立ち入り検査の監視取り締まりを直接行なうことによって検査、確認するのが適当と考えます。  いま一つは、民間法人格の中小企業の場合にはみずからができなくて、そういう法人格のところに検査をやってもらって、事業者がそれを記録義務としてとどめておく、その報告を直接道なり県知事のほうに求めるべきであるという御議論に対しては、排出基準に適合しているかいなか、この測定結果について直接の当事者である事業者から事業みずからの責任において報告を求めるのが適当でございますし、現在の法二十六条で、知事はいつでも報告を求めることができるようになっておりますので、私は、第三者のものから知事のほうに報告を求める必要はないと思います。そしてあくまで私どもは道が直接もっと力を発揮して立ち入り検査をし、その実情を把握するほうに努力するよう指導してまいりたいと思います。  御指摘の、国策パルプの旭川工場の立ち入り状況を調べましたが、確かに四十六年度は一度もしておりません。ただ四十七年度、八月二十二日から二十五日間に対象として発電用のボイラーあるいは焼成炉について立ち入り測定をやりました。  このように、だんだんと立ち入り検査の実施状況が少しずつ伸びておりますので、今後も大気の場合にはなお測定局があってオートマチックに記録されておりますので、それらのもとにいつでもあやしいと思ったときには現地におもむくことができますので、現状をもう少し積極的に強力に推していく体制を整えたいと思っております。
  116. 島本虎三

    ○島本委員 うしろ向きであります。確かに法律には、あなたは知っているとおりに、そのとおり書いている。大気汚染防止法十六条、これにはばい煙等の測定、これは総理府令で定めるところによって、ばい煙発生施設にかかるばい煙量またはばい煙濃度測定し、その結果を記録しておかなければならないだけなんです。だれが行ってそれを指導するのですか。一年に一回、三百六十四日これをやって、たった一日だけそれを出さなくてもいいような結果になるじゃありませんか。そうして二十六条、報告及び検査、この中で立ち入り検査をする、この権限が認められているでしょう。これもちゃんと了解しての上です。二十二条に、常時監視として、「都道府県知事は、大気の汚染状況を常時監視しなければならない。」と義務規定があるでしょう。これが行なわれるという前提であなたは言っている。他の都道府県でほんとうに、東京でさえこれが不十分だというのに、企業べったりだあるいはそれに近いような、こういうような状態の知事がいないというわけはないでしょう。人間の性善なり、こう考えるのもいいけれども、企業まさに正しいものである、こういうふうに考えて、水俣の判決が出たのをあなたは知っていますか。また同じことをやらせようとするのか、これは。したがって、もうこういうような権限があっても検査に行くのは普通の状態では年に一回報告すればいいだけのものもあるでしょう、ばい煙排出の中には。それと同時に、二カ月に一回または一回以上、それを報告すればいい、こういうようなことであってはあまりぬるいじゃないか。したがって、ここに私が提案しているのは、施行規則によって測定記録がちゃんと出るのです。出るからこれを見せても工場経営者はそれに従わないのです。そして一年に一回くらいしか立ち入り調査に来ないのです。ですからこういうふうに出たときには、出て記入したそのものをすぐ知事なりが知らなければ何にもならないじゃないですか。ただ帳面に記入して一年間眠らしておいても何にもならぬじゃありませんか。そこが行政の一つの欠陥だと言うのです。そういうようなことがいまの日本一つのこの公害列島の主たる原因になっているのです。ですから、そういうのは調べられたならば知事までわかるような、行政がわかるような、こういうような仕組みにするために、したがって、この有効な反映をはかりなさいということなんです。あなた、はからなくても、あくまで知事が立ち入り検査に行くからそれまで待って、あとは自由に出していればいいというもし私が言ったことの答えだとするならば、私はあなたにあくまでも、これではだめだということでわかるまでやります。大体そういうような意味なんですか。意味ならばあなたの答弁、もう要りません。補足することがあったならば補足だけしておいてください。
  117. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 私の申し上げておるのは、第三者に罰則をもって測定結果の報告を義務づけるのは適当ではないではないかということを申し上げたのであって、いつでも知事はその報告を要求することもできますし、それで罰則を科することに法改正をしたわけでございますから、先生のおっしゃるように、自分のほうが合っているかいないかということを事業者自身が届けたり、あるいは第三者が罰則規則をもって測定結果の報告をやるように義務づけるということでなしに、やはり知事のほうで報告を出さして、それでいつでも立ち入り検査ができるような現体制でやっていかれるのではないかということを申し上げたのであります。
  118. 島本虎三

    ○島本委員 それならばもう一回重ねて聞きますけれども、その濃度を越えて排出したもの、これはだれが指摘するのですか。
  119. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 大企業の場合には、事業者のところの技術専門家が当然やると思います。また中小企業のところで、自分のところでその能力がない場合には、第三者機関で技術的にやって記録をしておくということになりますし、知事のほうでは、道なり県のほうから出向いていって技術的にその記録をチェックするわけでございますから、技術的には十分検討できると考えております。
  120. 島本虎三

    ○島本委員 くどいようだけれども、そこが手を抜かれているから何回も言っているのです。これは大企業という特定の水俣やあるいはまた特定の大鉄鋼業や、こういうようなものに対してはそれぞれあるのです。しかし、それだけじゃないのです。そういうようなものや発電関係はいわば元凶のようなもんですから、そういうようなものをもっともっときびしく取り締まらなければならないのです。それ以外でも法によって規定されておって、やはりこの測定の結果を記録しておかなければならないところがあるのです。そういうような記録するようなものに対して、何回記録しておいても記録だけじゃどうということないから、したがって、もうここが行政の欠陥でしょう、あとは野となれ山となれ、立ち入り検査に来るのを待っているだけです。そういうようなことがあってはだめだから、少なくとももう法的に整備された人たちが調べているのですから、調べて数値がここに記録されるのですから、その記録はそのままにして必ず知事が、行政機関が目に触れるような装置を考えなさいと言うのです。それも考えなくともいいのですか。私は、くどいけれども、日本の空を浄化するためにこういうように置き去られているこの部分に対してメスを入れているのです。環境庁はほんとうにもう環境保全のために指導する官庁なんですから、行政の至らないところは進んで、どのような手段でも講じてこれはやる必要があるじゃありませんか。やはり知事に権限を委任している、知事がやるのを待っているのだ、こういうような姿勢ではだめだと思います。私は、やはりそういうようなのが帳簿に載ったならばすぐそのまま、一年も寝ることなしに、必ずもうこの行政機関のほうにわかり、そしてそれが的確な対策となってあらわれてくる、こういうような一つのメカニズムをつくっておいてもらいたいということなんです。おわかりにならないことにはしようがないから、大臣代理にひとつこの点はお聞きしたい。
  121. 坂本三十次

    ○坂本政府委員 企業といえども一〇〇%信頼はできない、過去の公害の反省に基づけばまさにおっしゃるとおりの点が多々あります。しかし、一方、地方自治体というものがほんとうにやはり公害に取り組んでいくというこの姿勢は、最近これはなかなか、直ちに満点とは言えぬにしても、それは相当な進歩を遂げてきておるし、相当な意気込みになってきておる、こういうふうにも私どもは評価をしておる点もあるわけなんです。まあ都道府県知事が必要とあればいつでも立ち入り検査もできるし、記録の提出を求めることもできる。それで一生懸命やれば行政の成果をあげらるべきものであるが、いま島本委員がおっしゃったように、しかし、そこでやはりいつでもその記録が都道府県の目に届くところまで持っていくことが親切ではないか、こういうお話でもございます。事業者からの虚偽の届け出などというようなものがあっちゃ困りますけれども、そういうことをやらすよりも、行政官庁のほうで積極的にもっともっと乗り出してやるべきであるということを期待しておるのが環境庁の姿勢でありまするが、いまおっしゃられましたように、もっと親切なそういう検査のメカニズムをつくれという点につきましては、ひとつ私どもとしても、きょうのこの問答を機会として検討をさしていただきたいと思っております。
  122. 島本虎三

    ○島本委員 それではこれで終わりますが、大気保全局長、いまの次官の答弁についてどう思いますか。
  123. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 十分検討さしていただきます。
  124. 島本虎三

    ○島本委員 じゃ、これでやめます。
  125. 佐野憲治

  126. 土井たか子

    ○土井委員 当委員会におきまして、すでに二回にわたり、私は、新東京国際空港のパイプライン並びにパイプライン事業の安全性という問題について、環境保全の立場から、さらに公害予防という立場から質問を続けてまいりましたが、今回も引き続きこの問題について、特に地盤の沈下、それからさらには水資源の確保、それから水質保全という問題から、さらに質問を続けたいと思います。  さて、その質問に入る前に、二つばかり実ははっきり確かめておきたい問題がございますので、これは前回の質問についてさらに続行する問題でありますから、まずお答えをいただきたいと思うのです。  永瀬消防庁予防課長さん、どうぞお願いしたいと思うのですが、四月二十日の日に私は、石油パイプライン事業法によれば、工事現場について消防庁は逐一具体的に点検をする必要があるという点を取り上げまして、逐一具体的に点検をなすっているかどうかを質問したわけであります。永瀬課長の御答弁は、間違いのないように、きょう私は議事録を持ってまいりましたので、その部分をここに読み上げてみます。「暫定パイプラインにつきましては、お話を承っている段階でございまして、これの中身について現在検討を続けております。したがいまして、いままで現に埋設されましたものについて一々こまかい安全検査ということを行なうまでには至っておりません。」という御答弁なんですね。これは確認してようございますね。議事録にそう書いてございます。  ところが、これはもう言うまでもなく御承知のことだと存じますが、昨年の六月十六日に参議院の商工委員会で、石油パイプライン事業法に対して、これが可決されましたそのとき、これに対する附帯決議がついております。この附帯決議の中身は、全会一致をもって決議されているわけであります。その項目の第四に「石油パイプラインの事業用施設に関する工事の施行および各種検査の実施については、主務大臣は、保安のための技術基準に適合させるため、とくに消防職員立会いのもとに厳重な点検を励行するものとし、不良工事に対しては、必ず工事のやり直しを命ずること。」という項目がちゃんとあるのです。しかもこのときに、当時の通産大臣であった田中角榮大臣が、「ただいま御決議をいただきました附帯決議につきましては、政府といたしましてその趣旨を尊重し、万遺憾なきを期する所存でございます。」という、ちゃんとした意思表明があるのです。  さて、もとに戻りましょう。この四月二十日の御答弁というのは、ここで再確認させていただいていいですか。いかがです。
  127. 永瀬章

    ○永瀬説明員 お答えいたします。  四月二十日、御質問に対しましてお答え申し上げました内容につきましては間違いございません。  なお、既存のと申しますか、この成田空港に送りますところのパイプライン、これの本ラインと申しますか、これにつきましては、まだ私どものほうに、このパイプライン事業法の十五条に基づきますところの工事の認可申請、これは出てきておりませんので、立ち会いに至る段階にはなっておりません。
  128. 土井たか子

    ○土井委員 しかし、現に既設のパイプラインがあることは事実であります。歴然たる事実であります。そして、それに対して立ち合いをなすっていないということも事実であります。しかも、いま私が申し上げました、この国会で法律が可決されるときに附帯決議があるということも事実であります。この附帯決議に対して、そうすると堂々たる違法行為、国会に対しての無視ということが現実に行なわれているというふうに認識していいわけでありますか。
  129. 永瀬章

    ○永瀬説明員 この点につきましてどのように現実を解釈していったらいいか、いろいろ考え方があろうかと思いますが、法令の立場からながめますと、やはり手続がされて初めて、私どもの事務手続といたしましては、パイプラインが建設される、工事がこういうぐあいになされるということがわかるわけでございまして、内容が出てこない限りは検査のしょうがない、かように考えております。
  130. 土井たか子

    ○土井委員 検査じゃないのですよ。特に消防職員立ち会いのもとに工事について点検をやらなければならぬと書いてあるのです。これがちゃんと附帯決議の項目の中にあるわけですね。したがいまして、これからしますと、いますでになされているこの工事については違法になされている、国会無視でなされているというふうに考えていいわけでありますか。それとも、手続がまだ行なわれていないから、私たちとしてはこれは立ち会うわけにはいかないという消防庁のお考えであるならば、手続が何ら行なわれないままにいままでパイプラインというのは全部埋設されたというふうに考えていいわけでありますか。たいへん変なことであります。いかがです。
  131. 永瀬章

    ○永瀬説明員 現実に埋まっているようでございますが、私現場に行っておりませんので、話としては埋まっているように聞いております。ですが、先ほど先生の御質問の、現実に埋まってはいても、手続がなされていないので、その検査をすべきあるいは立ち会いをすべき内容については、いまだ私どもといたしましてはわからない、したがってやっていないということであると思っております。
  132. 土井たか子

    ○土井委員 いまの認識からしますと、そうすると一まさか参議院のあの石油パイプライン事業法を可決するときの附帯決議を御存じでないはずはないと思うのです。附帯決議の中身から考えて矛盾していることだというふうにお考えになりませんか。あの附帯決議の中身が現に実行されていないというふうにお考えになっていらっしゃいませんか。その間はいかがです。
  133. 永瀬章

    ○永瀬説明員 参議院並びに衆議院の法案成立に伴いますところの附帯決議は十分承知いたしております。しかし、いま御質問の、これに反しているかどうかという考え方と申しますか、見方に対しましては、先ほどお答え申し上げましたように、その検査し、あるいは立ち会う内容がいまだ私どものほうには出ていない、かよう感じております。
  134. 土井たか子

    ○土井委員 きょうは運輸政務次官の御出席を求めましたが、ただいま参議院の運輸委員会のほうにいらっしゃるようでありまして、ここへの御出席がかないませんから、それじゃひとつ、運輸省の隅飛行場部長に御答弁をお願いしたいと思うのです。  この問題について、これは主務大臣ということになれば運輸大臣ということになるわけでありますが、一体どのように理解され、どのようになさろうとしているのであるか、ひとつお聞かせ願います。
  135. 隅健三

    ○隅説明員 新東京国際空港公団の行ないます石油パイプラインにつきましては、これは法の施行前に、新東京国際空港公団法第二十六条の規定によりまして運輸大臣の認可を受けた事業計画に基づく石油パイプラインに関する工事でございまして、この法律が施行してから一カ月以内に、このパイプライン事業法の五条第二項に基づきます届け出を運輸大臣にすることになっております。これは一月の二十五日、新東京国際空港公団から届け出を受理いたしました。一応これは、パイプラインの事業につきまして同条第一項の許可を受けたものとみなされておるということでございます。そのように、現在の本格パイプラインにつきましては運輸省としては解釈いたしております。
  136. 土井たか子

    ○土井委員 私の質問に対する御答弁にはなっていないのです。附帯決議の第四にいうところの中身についてどのように理解され、どのように行なおうとなすっているかということについて質問をしているわけであります。したがいまして、いまの御答弁からしましても、あと追い手続なんですね。現にもうパイプラインについての埋設工事が終わっちゃって、それをあとを追っかけるような手続が現に出てきているわけです。この前の委員会にも私申し上げましたけれども、実は順序からいうと逆なんであります。御承知のとおり日本は法治国家でございますから、一体あらゆる事業というのは何に基づいて、どういう手続のもとに実行されるかということは、ひとつ本則に立ち戻って考えていただかなければならないようでありますね。そういうこともひとつは念頭に置いていただいて、この石油パイプライン事業法の附帯決議の四、この中身について御答弁願います。
  137. 隅健三

    ○隅説明員 参議院の商工委員会におきます附帯決議第四項は、十分運輸省といたしましても承知いたしております。それで、これの監督と申しますか、厳重な工事についての点検というものは、一応いままでの体制といたしましては、公団職員がそれぞれの班を編成いたしまして、監督、点検を行なっておるところでございます。一応消防庁のほうの関係といたしましては、今後この点については詳細に御連絡を申し上げてやっていきたいというふうに考えております。
  138. 土井たか子

    ○土井委員 はっきりしました。一体何ですか、これは。公団のほうからの連絡に基づいて、運輸省のほうはいま点検を行なっているとおっしゃる。消防庁のほうには、これから種々こまかい連絡もしながらやろうということをいまおっしゃったわけです。いままでにどうしてできなかったのです。いままでにどうしてこの附帯決議の四というのが無視されてきたのですか、理由を聞きます。いかがですか。
  139. 隅健三

    ○隅説明員 昨年から本格パイプラインの工事を始めておりますので、この点につきましては、法が施行前につきましては、公団の監督だけでやったように聞いております。
  140. 土井たか子

    ○土井委員 この法が施行されたのはいつからでございますか。
  141. 隅健三

    ○隅説明員 昨年の十二月二十六日でございます。
  142. 土井たか子

    ○土井委員 本日は五月の八日であります。その間一体どういうことをなすっていたのか、その理由を聞きます。先ほどの質問の繰り返しであります。
  143. 隅健三

    ○隅説明員 パイプライン事業法が施行になりましてから、若干の部分の本格パイプラインの工事は施工いたしました。その点、ただいま説明を求めましたところ、消防庁に御連絡はしてないそうでございます。
  144. 土井たか子

    ○土井委員 してないとおっしゃって済む問題じゃないわけであります。なぜ御連絡をなすってないのか、その理由をひとつお伺いしましょう。
  145. 隅健三

    ○隅説明員 この点につきましては、実は十五条の工事の認可の件に関係いたしまして前の委員会からお話のございました告示につきまして、その告示をできるだけ早くということで、基準の告示ができた段階において御迎絡を申し上げようということでおったわけでございます。
  146. 土井たか子

    ○土井委員 しからば、告示ができ七からあと消防庁に対して連絡をなさる、そして消防職員の方の立ち会いのもとに厳重な点検を励行なさる、そうして不良工事に対しては必ず工事のやり直しを命じられるわけですね。その節、消防庁のほうのこの厳重な点検に対しての意見というものは、徹底的に尊重なさいますね。これははっきりさしていただきましょう。告示についても、これはもういままで二回にわたって、私はこの問題については質問をし続けてきたわけであります。いまだに告示がないままで工事がどんどん進んでいるわけですね。安全性の基準というものは一体どこに置いて考えていいのか、技術基準というものは一体どこに置いて考えていいのか。まあまかしておいてください、まかしておいてくださいの一点ばりであります。まかしておいてこういうことになりますよということを、きょうは問題にしたいのであります。したがいまして、この告示のまだ出されていない間に工事がどんどん進んでいるということ自身が、実はさか立ちしているわけであります、工事の順序からいいますと。そのことを念頭に置いていただいて、告示が出るやいなや消防庁に対して連絡なさる、しかし消防庁のほうが立ち会いをされた結果、厳重な点検に基づいて不良であるといわれている中身については、これは重々尊重なさいますね。
  147. 隅健三

    ○隅説明員 告示が出ました段階におきまして消防庁に御連絡いたしまして、立ち会い、それから厳重な点検を、当然いたします。それから、不良工事に対しては必ず工事のやり直しを命ずるということは、はっきりお約束できます。また、成田市内におきますあの暫定パイプラインにつきましても、成田市と密接な連絡をとりまして、工事の施行体制につきまして、ことに監督体制については万全の備えをして工事にかかる所存でございます。
  148. 土井たか子

    ○土井委員 これはまず告示ということで逃げられましたが、しかし、本来、石油パイプライン事業法についての附帯決議の四では「保安のための技術基準に適合させるため」ということがありまして、この基準の中身については、すでにお考えになっている基準が事実あるはずなんであります。形式的に告示になっていなくたって、技術についての基準があるから技術は進行しているわけですよ。そうでなければ、いままで私がここで安全性についての質問をやった際に、だいじょうぶですという御答弁ば出てこないはずであります。すでに実質的には技術基準があるのじゃありませんか。したがいまして、形式的な告示が日の目を見るまで消防庁に対しては連絡を差し控えているというふうな態度については、私は、これは非常にうしろ向きだと思うのです。この問題、どうお考えになります。
  149. 隅健三

    ○隅説明員 この基準につきましては、先回あるいは先々回のこの委員会で通産省から御説明がございましたように、通産、建設、自治、運輸の四省でいろいろ検討いたしております。なお、さらにもう一度の実験を行なってからこの基準を定めるというふうに承っております。その基準案というものは、確かに専門委員会でそれをもとにいろいろ議論が行なわれていることは承知いたしております。
  150. 土井たか子

    ○土井委員 この工事について基本において考えられなければならない技術基準、安全性の確認、これを裏づけするところの告示がないことには万事どうにもならぬというのが現実じゃありませんか。いまの御答弁からしたって、それは浮き彫りにされていると思うのであります。その告示がないままに工事が進んでいるということをひとつお忘れなきよう、重々これは留意していただきたいと思うわけであります。  さて、消防庁の倣う、この問題については、運輸省といままでに何らかの連絡をなすっていますか。いかがです。
  151. 永瀬章

    ○永瀬説明員 本格ラインのアウトライン等については、話としては連絡は受けてまいりました。しかしながら、具体的な工法その他につきましては、まだ露類としての決定的なものをいただきませんので、中身としてどういう形でやられるのか、計画は聞いておりますけれども、こまかいところは十分承知はいたしておりません。
  152. 土井たか子

    ○土井委員 かくのごとくであります。もうこれは、連絡の点での不行き届きというだけの話じゃありません。大体工事に対する基本姿勢がどんなものであるかということを、はしなくもここに物語られていると思うのであります。そういう点から考えましても、ひとつこの石油パイプライン事業法に基づく工事であるということを重々認識して、やはり国会で審議されて可決されている法律に基づく工事であるということからすれば、いまもう現に行なわれている工事自身は、国会無視もはなはだしい事業だといわなければならないと私は思うのですよ。このことについては、どれだけ言われても、おそらく反論ができないだろうと私は思います。いかがです。そのことについて一言聞いておいて、先に進みます。
  153. 隅健三

    ○隅説明員 新東京間際空港公団法に基づきましての事業計画に基づく本法、石油パイプライン事業法が施行後、残念ながらまだ告示が出ておりませんので、その間のギャップがございましたことは、運輸省といたしましてもこれを十分認めております。
  154. 土井たか子

    ○土井委員 ギャップとおっしゃるけれども、これはそんなきれいごとではないのですね。やはりそれは法無視、国会無視ですよ。つまり国会無視というのは国民無視ということにもなるわけでありまして、これは国家的事業なんですから、国家的事業の中身が国民を無視して行なわれたということぐらいずさんなことはないと私は思うのです。これは悔いを千載に残すといったっていい中身だと思いますよ、このまま進んでいくと。たとえ工事自身が何ら支障のないような結果であったとしても、しかし、やり方自身においていろいろと糾弾されるべき問題点を残したままに進んでいく限りは、私はこの汚点をぬぐい去るわけにはいかないだろうと思うのです。ひとつこのことを重々まず申し上げて、そしてもう一つ、これは実は私は、運輸政務次官にじきじきにお伺いしたいことがあるわけであります。政務次官の前回の委員会における御答弁の中身から実はお伺いをしたいことがあるわけでありますから、もし参議院のほうの運輸委員会が終わりましたらこちらに御出席していただけるであろうということも予想しまして、ひとつ先にきょうの問題に移りたいと思うのです。そして、あとでもう一つの、私が申し上げたい、確認したいことを質問させていただきましよう。  さて、先日、和光大学の生越忠教授、理学博士でありますが、生越教授のほうから「新東京国際空港パイプラインの安全性に対する疑義」という意見書が千葉県知事のほうに提出されました。その中身は、地盤沈下の問題と、もう一つは水質の問題、基本的にはこの二つの中身からして、現在進められつつあるパイプラインの事業に対して疑義を提起なすっているわけであります。  言うまでもございませんが、この千葉県下の地盤沈下というのは、現在全国でも加速度的に進んでいるという意味において最悪の状況だというふうに申し上げてよいと思うのです。特にいままで市川、船橋両市を中心とする地域から、いま地盤沈下の特に激しいのは千葉市に地域が移っていっております。この千葉市におけるところの最大沈下量というものは年を追って増大しつつあるわけなんですね。現に千葉県のほうのこれに対する調査の結果が報告されているわけでありますが、一九七〇年からこの方ずっと、この最大沈下量というのは大きくなってまいっております。一九七〇年から一九七一年の二月までの一年間、大体百五十四ミリメートル。それがさらに一九七二年の二月までの一年間には二百十二ミリメートル。そしてそれからこちらに半年の間、つまり一九七二年の八月一日に至るまでには百五十ミリメートルも沈下しているという指数を示しているわけです。これは御承知だと思うのです。  そこで、まずお尋ねをしたいわけでありますが、パイプラインの埋設地域実態に基づいて地盤沈下の調査と予測調査、この調査をなされているかどうか、これをまずお伺いいたしましょう。  現に公害対策基本法の中には「公害」ということの中に「地盤の沈下」というのが入っております。そして、言うまでもないことでありますが、その十七条には「政府は、都市の開発、企業の誘導等地域開発及び整備に関する施策の策定及び実施にあたっては、公害の防止について配慮しなければならない。」ときめてある。したがいまして、いまパイプラインが敷かれるあたりについての地盤沈下の実情をどのように調査なすっているかを、まずお伺いしたいのであります。
  155. 福岡博次

    ○福岡参考人 いまの御質問でございますが、公団のパイプラインのルートは、千葉県の中でも洪積層の台地をおもに選んでおりまして、大部分が、地盤が安定したところに入っております。そういう点から見まして、地盤沈下の問題も、非常に心配が少ないということが言い得ると思います。千葉市内でも、現に私どもの選びましたルートは、二十ミリ内外の沈下量でございまして、地盤沈下は特に深い層からの沈下が多うございまして、局部的な沈下であらわれませんので、パイプラインに対する影響というものは微々たるものであるということが言い得ると思います。
  156. 土井たか子

    ○土井委員 いまの御説明は、すでに昭和四十七年の六月に、新東京国際空港航空機給油施設埋設工事中止仮処分命令申請事件の中で公団が述べられていることと寸分違わないことであります。この中で公団側は、ルートは地盤沈下の少ないところを選んであり、年間沈下量は二十ミリメートル前後であるというふうにおっしゃっている。そういうふうに答えられている。ところが、これについてさらに住民側が再反論をいたしまして、具体的ないろいろなデータを出しているわけですけれども、それ以後に公団のほうからこの答弁書というようなことが出ている限りにおいては、この問題に触れられていないわけであります。  そこで、いま、地盤については大体沈下の少ないところを選んである、大勢に影響ない、大体パイプラインについても支障がないであろうというふうなお答えでありますけれども、それは非常にずさんなものの考え方だろうと私は思うのであります。私は地質学者じゃありません。したがって、専門的にどうこうという知識は持ち合わせておりませんけれども、しかし、いま地盤沈下のはなはだしいといわれております全国の、たとえば東京に起こっている現象、大阪で起こっている現象、それを見てまいりまして、いまここで埋設されていくパイプライン、このパイプラインを埋設した場合に一体どういうふうな事態が起こってくるかというふうなことは、やはりちゃんと地盤沈下の経年的な変化の状況を見て測定していかなければならないだろうと思うのであります。特にパイプライン事業のような、ある特定の事業目的のための調査というものは、きめこまかになされなければならないと思うのであります。地盤沈下についての既成のデータというふうなものだけでだいじょうぶだというふうなお考えというものは、実に甘いと私は思うのであります。現に東京でも、地盤沈下の場所が刻々と変わってきている。山の手の台地はおそらく地盤沈下というものはないであろうと、数年前まで学者間では考えられていた。それは学者間のデータによる結果そういう結論があったわけであります。ところが、いかがでありましょう。現にいまは、山の手の台地においても地盤沈下が起こっているじゃありませんか。  こういうことからいたしまして、きめこまかに、既成のデータももちろん参考にはなさってけっこうですけれども、やはり独自のこれに対する責任ある調査というものをなされたかどうかを私は聞きたいのであります。いかがでありますか。
  157. 福岡博次

    ○福岡参考人 いまの御質問でございますが、私どもといたしましても、十分の処置をするのが責務でございまして、考えております。  で、いま私が最初に触れましたような十分な調査をいたしました上に、また、今後の問題といたしまして、沿線に水準点を設けまして、そこからパイプラインがどれだけ沈下したかという問題等も全部調査をして、至急点検を行なうという処置を行なうように考えております。
  158. 土井たか子

    ○土井委員 それまた、順序が逆ではありませんかね。すでにパイプラインは、埋設されてしまっている部分が大半なんでしょう。それから、地盤については調査をなすっているわけでありますか。すでに独自でこれだけ調査したというデータがあるのなら、ぜひ公表をまずしていただきたいと思うのであります。公表して、まずは地元への説明ということがどうしても必要だと私は思います。このことに対しては、いままで努力をなすっているかどうかということを、ひとつ御説明賜わりたいと思うのです。
  159. 福岡博次

    ○福岡参考人 工事をいたします前に全部、沿線のルートにつきまして、ボーリング、地質調査をいたしております。それの結果に基づきまして、先ほど申し上げたような考え方をとっているわけでございます。それで、沿線の各市町村の方々につきましては、こまかい地質の内容までは御説明しておりませんが、そういうような問題につきまして、私どもが全部参りまして御説明をしております。
  160. 土井たか子

    ○土井委員 そうしますと、いままでにそういうデータについても公表して、そして地元への説明もこれで十分だということを、自信をもっておっしゃるわけでありますね。いかがです。
  161. 福岡博次

    ○福岡参考人 私のほうといたしましては、当然自信をもってやっておるわけでございます。
  162. 土井たか子

    ○土井委員 これはしかし、たいへんに一方的であり、独善的だと思うのですよ。いままでこういう問題については、事業そのもの、パイプラインの安全性、パイプラインの埋設工事そのものの安全性というのが非常に問われてきたわけであります。ところが今回、先ほど私が申し上げましたこの生越教授の意見書が出まして、にわかに地盤の問題だとか水質の問題に対して注目をされる動きが出てきたわけであります。公団がいままでこれに対して十分な配慮、努力ということをやってこられているのならば、私は、この問題はおそらくはもっと違った形で出ただろうと思うのであります。いままでに十分な調査、それから十分な説明をなすっているのならば——ここに写真を私はお見せしましょう。これでもって、住民の方に対する説明を、住民の方は納得なすっているかどうか、それからまた、公団側はこれに対する十分な努力をなすっているかどうか、一目りょう然わかる写真だと私は思うのであります。ここにあるのは、埋設されたパイプラインの横の大きな地盤割れであります。歴然と不同沈下を物語っている。そうしてしかも、数十メートル離れた二つの地点で同じような地盤の陥没が見られるわけでありますから、偶然のできごととはいえないようであります。これはパイプラインが埋設されているあたりの地盤の特徴を示すものというふうに考えざるを得ないのじゃないでしょうか。まずこれが一つの写真。  あともう一つ、ここにある写真をお見せしましよう。これは、大の男性のおとながすっぽり入ってしまうような大穴があいているのです。パイプラインが埋設された横にこんな穴があいているのですよ。これはまた偶然のできごとじゃない。埋設されたパイプラインの横にこういう亀裂が生じ、穴があき、なおかつ公団は、地盤については十分に事前にこれに対する調査をやっておりますじゃ済まないだろうと私は思うのです。いかがでありますか。
  163. 池田迪弘

    ○池田参考人 池田でございます。  最初に、お示しくださいました舗装のクラックでございますが、これはその横に水路がございまして、その水路の水が掘さくのところに入ってくるわけでございます。したがいまして、完全な工事をするためにはウエルポイントをかけまして水を抜きます。そうすると当然圧密がかかりまして、そこにクラックが入るわけでございます。これはクラックが入ったあと、もちろんクラックと別に掘さくをし、それから配管をし、それから埋め戻し、そのあとその道路の補修をするということでございまして、これはウエルポイントをかけた結果でございます。それだけ圧密が進んでいくということでございます。その補修につきましては、市のほうでお直しになるということになっておりますので、公団のほうとしては手がけておりません。
  164. 土井たか子

    ○土井委員 これはまことに無責任きわまる御答弁だと思うのですね。先ほど来、地盤については責任をもって調査もし説明もやっております、自信をもって言えますというふうな御答弁があったものだから、私は事実を写真によってお聞きしたわけでありますけれども、公団のほうには責任はない、市のほうがあとあいた穴を埋めればそれでよいというふうな御答弁の向きにさえ聞こえてくるのです。これでもってはたして地盤についての調査は十分だとお考えですかということを、私は再度お聞きしたい気持ちであります。いかがです。
  165. 池田迪弘

    ○池田参考人 これは千葉の埠頭、それから埋め立て地の地区でございまして、まず護岸地区につきましては、これは海に面した地区でございます。ここでは、ボーリングの結果どうしても地盤改良を必要といたしますので、サンドコンパクションによってやりました。それに引き続きまして、黒砂水路のわきにつきましては、道路が護岸との間約十メートルほどしか余裕がありませんので、そこでは約十四メートルの、六十センチの径の鋼管パイルを四メートル八十おきくらいに打ちまして、その上にコンクリートのボックスをつくり、そこへ配管をいたしまして埋め戻しをする。  それから、いま御指摘のところは、さらに稲毛地区のほうで黒砂水路に沿うたところでございますが、これは市のほうとのお約束で、復旧は市のほうでおやりになるということでございまして、土質に対する手当ては十分にしております。ただ、その時期がおくれておるということにつきましては、市のほうで約半分までは検見川地区のほうからやってきておりますが、引き続いていまの個所に来るようになっております。
  166. 土井たか子

    ○土井委員 いま私が質問をしている中身は、路面に亀裂ができた、穴ぼこができた、いかにして穴ぼこを埋め、亀裂をふさぐかという問題を質問しているのじゃないのです。地質の問題ですよ。地盤の問題であります。このことについて十分に調査なすった上での埋設工事であるかということを聞いているわけであります。  そうしてしかも、私はもう時間の制約がありますから、はしょってこの点も申し上げておきますが、いま現在、年間二百ミリメートル前後の沈下量を示す東京都の江東地区、これは明治の終わりから大正の初めにかけては、年間わずか十ミリメートル前後の沈下量しか示していなかった場所です。同様に、いま私がここで問題にしている千葉市についても、現在、年間二百ミリメートル以上の沈下量を示している場所も、四、五年前までは、年間わずか二十から三十ミリメートル前後しか沈下していなかった。地盤沈下の状況というのは、これは地層の粒度組成や地下水の含まれ方なんかの自然的条件、それから都市化の進行に伴う地下水の揚水量、そういうことによって左右されるものだというのは、これは常識ですね。そういうことから考えまして、現在、千葉市の年間二百ミリメートル前後の沈下量で進んでいる場所については、今後ひどくならないという保証があるのかどうかということも、あわせて御答弁願いたいと思うのであります。いかがですか。
  167. 福岡博次

    ○福岡参考人 いまおっしゃっておる点は稲毛の埋め立て地の問題でございまして、ここはいま申し上げたような埋め立て地の地質であるということは、十分調査の上認識しております。それで当然ボーリングも実施しておりますし、わかっておりまして、先ほど池田参考人が申し上げたように、埋め立て地であれば当然十分な水を排除して施工するために、真空ポンプをもちまして抜きますウエルポイントという工法で施工するということになれば、表土の部分は下がるというのが常識でございます。ただ、深層からそういう現象は起こり得ないというふうに私ども判断しております。
  168. 土井たか子

    ○土井委員 それは埋め立てのほうが、おっしゃるとおりの現象を引き起こすというのは常識だと思うのですね。ただしかし、埋め立ての問題については、それはどういうふうな善後措置をとるかというふうなことをるる先ほど御説明になったわけでありますが、私が先ほどから言っているのは地盤の問題なんです。地盤についてそれは埋め立てのほうがもろい、それは新潟の地震の際だって、そのことは立証され尽くしているわけでありますから、だれでもあざやかにそのことは、わかり過ぎるぐらいわかっているわけであります。  ただ、現在、私が先ほどから質問している問題の中心は、千葉市の年間二百ミリメートル前後の沈下量で進んでいる場所については、今後ひどくならないという保証があるのでしょうかということを聞いているわけであります。ここはパイプラインがやっぱり通過する場所なんですね。埋設される場所になっているのですよ。したがいまして、このことに対しては、科学的に説明が現にされなければならないと思います。いかがです。
  169. 岡安誠

    ○岡安政府委員 地盤沈下一般の問題でございますから、私のほうからお答えいたしたいと思います。  結論から申し上げますと、先生おっしゃったとおり、千葉市並びにその周辺地区において今後絶対に地盤沈下が起こらないか、保証ができるかという御質問につきましては、なかなか地盤沈下はむずかしいメカニズムでもって起こっておりますので、保証というほどのことを私ども申し上げるわけにはまいりません。  ただ、私申し上げたいことは、千葉市周辺の地盤沈下は、主として天然ガスの採取並びに一般地下水の揚水によりまして起こっておるというふうに私ども考えておりますが、それに対しまして現在千葉県においては、条例によりまして、四十七年五月から新しい井戸の設置は全面的に規制をいたしております。それからまたさらに、私どもといたしましては、ビル用水法または工業用水法に基づきまして地区指定をいたしまして、やはり揚水の規制をいたしたいというふうに考えております。  さらに天然ガスにつきましても、四十七年九月から、業界の自主規制によりまして前年対比五〇%の採取の規制を現に実施いたしております。これにつきましては、さらに将来きびしい規制をするというふうなことも考えておりますし、また千葉市の地区におきましては新しい井戸、天然ガス用の井戸の開発は認めないというふうなこともいたしておりますので、私どもこれは推定でございまして、必ずしもはっきりそういうことが保証できるかという点につきましてはむずかしい問題でございますけれども、千葉市周辺におきます地盤沈下は現在以上に激化することはなかろうというふうに実は考えておるわけでございます。
  170. 土井たか子

    ○土井委員 この事業主体は公団であります。したがって、公団がこのパイプラインの埋設工事をなさるに際して、やはり地盤沈下に対する予防施策をいろいろと調査の上考えられるのが、公害対策基本法の先ほど申し上げた条文からするとなさねばならない問題じゃないでしょうか。  しかし、いまの御答弁について、せっかく御答弁なすったんだから申し上げましょう。  なるほど千葉県の条例、四十七年の四月にございます。そうして地下水の枯渇というふうなことが問題になってきて、井戸については、掘ることは市町村長の許可が必要ということになっています。指定地域には、なるほど七市二町の中に千葉市が入っております。これは千葉県のとられている措置であります。  そのあと御答弁の中には、建築物用地下水の採取の規制に関する法律、これに基づいて指定地域として国のほうも施策を講じたいという御答弁だったのですが、いままで国のほうとしてはやっていらっしゃらないわけですね。国のほうとして、なぜこの法律に基づくところの措置をいままで講じていらっしゃらないのか。国としての対策は、いままで無策なんです。東京、大阪については、国のレベル対策をいままで講じていらっしゃる。しかし千葉についてはいま、これは大々的な国家的な事業というふうにいわれるけれども、土を掘ってそこに石油パイプラインを埋設するわけでありますから、これはやはり地盤の沈下の問題と絶対無関係ではない。地盤沈下ということに対しては、ここに埋設してよいかどうかというのは非常にゆゆしい問題なのでありますから、国のほうとしては黙視するわけにはいかないはずであります。いままでどうしてこのことに対して、国のほうは策を講じられていらっしゃらなかったのか、その辺のいきさつをひとつ説明してくださいませんか。
  171. 岡安誠

    ○岡安政府委員 まず前段の、地盤沈下一般につきましての御質問と思いまして、私いまお答えいたしたわけでございまして、おっしゃるとおり、パイプラインを埋設する事業団としましては、いろいろ事前に調査をするということは当然のことだと思いますが、二段目の御質問の、国は何もしてなかった、無策ではないかというお話でございます。  現に、先ほど御答弁申し上げましたとおり、県の条例が先行いたしておりまして、私どもの地域指定はこれからということでございます。  その理由をちょっと、弁解ではございませんが申し上げますけれども、現在の工業用水法並びにビル用水法におきましては、やはり代替用水の確保ということが条件になりまして、いろいろな規制措置ができ得るというような法体系になっております。私ども、この法律等につきましてはなお問題があるということで、現在中央公害対策審議会諮問いたしまして制度の改正を考えておりますけれども、現状はそうなっておりますので、工業用水並びに上水の供給施設の進捗状況とあわせまして、新しく地域指定をいたしたいということで現在検討いたしておるというような次第でございます。
  172. 土井たか子

    ○土井委員 国のほうとしては、したがっていままで積極的な施策を講じていらっしゃらないということを、いまはしなくも、御答弁の中にはっきり言われているわけでありますが、しかもなおかつ、これから千葉県のほうの地盤沈下はいまよりひどくならないだろう、だいじょうぶだろうという御答弁もあったわけであります。  これは言い切れますかね。千葉県自身が条例をつくって、これ以上地下水の枯渇というものがあってはたいへんだ、地下水のくみ上げをしてはたいへんだということで、種々手を打っていらっしゃるわけでしょう。しかも、水の需要量というものは年々ふえるのです。一体どこに水源を求めるか、これは大問題でしょう。だいじょうぶと言い切れますか、どうですか。
  173. 岡安誠

    ○岡安政府委員 したがって、私最初に申し上げたと思いますけれども、私がここでだいじょうぶですということは申し上げかねるということは申し上げております。ただ、やはり規制を講ずれば地盤沈下の激甚化というものは防げるというふうに私は考えておりますし、私ども、井戸の新設の規制並びに揚水の増加の防止をはかることによる効果は相当あらわれるというふうに考えております。また、公団の水の供給でございますけれども、現在直ちにすべての水を表流水に切りかえるということは不可能でございますが、現に工業用水並びに上水道施設が着々と進んでおります。近い将来は相当部分が表流水によってまかなわれるものというふうに考えておりますので、私どもは、諸般の施策が相まって、いまよりも地盤沈下が激甚化することは万あるまいというふうに考えるということを申し上げておるわけでございます。
  174. 土井たか子

    ○土井委員 実にずさんであり、実にのんきなものの考え方だと私は思うのですね。第一、表流水に切りかえていくとおっしゃるけれども、表流水に切りかえてどこに水源を求められるのですか。この問題が現実の問題としてあろうと思います。しかし、いずれにしろ、国のほうで代用の水源確保というふうなことがなされない限りは——ビル用水法を適用するわけにいかぬ、地域指定ということに対してはいままで消極的であったというふうな御発言でありました。しかし、そういうふうなことも背後にあるのならば、公団のほうとしては、よほどこの地盤沈下の問題に対して意を用いて、これはもうよほどがんばってもらわなければならなかった問題だと思うのですよ。  先ほど、だいじょうぶ、調査もし、データについても公表し、地元への説明もやったかごとくの御答弁でありましたけれども、現に、あの埋め立て地に亀裂が起こって穴ぼこがあいたとき、地元の方々はたいへん不安がられたわけであります。説明を聞いてなるほどと納得がいっているのならば、私はおそらく不安なんというものは起こり得ないだろうと思う。このままで続々工事が進行していったら、地盤沈下というものはこれから先もっと深刻になるだろう。そのときには一体どういう現象がこのあたりに起こるかというのは、先日の四省立ち会いのもとで火災についての実験現場、新聞にちゃんと出たわけでありますから、それを考えて心中穏やかでないというのが、普通の住民意識としては起こり得る現象だろうと思うのです。  こういうことに対して、公団は、データがあるのならぜひひとつ出していただきたいと思います。いまお手元にデータを出していただけるようなのがございますか。
  175. 福岡博次

    ○福岡参考人 先ほど申し上げましたように、きょう手持ちでは持ってきておりませんが、地質調査をいたしました資料はございます。
  176. 土井たか子

    ○土井委員 これは資料要求として、ひとつ提出していただくように要求をします。委員長、そのようにお取り計らいを願います。
  177. 佐野憲治

    佐野委員長 いいですね。
  178. 土井たか子

    ○土井委員 そして、そのデータに従って地元への説明というのは、やはり十分にというより十二分にやっていただかないとならない問題だと思いますよ。これはいままでだいじょうぶ、やってきたというふうにおっしゃっているけれども、しかし、こういう問題については、そこで生活をなすっている方にはなかなか不安がつきまとう問題であります。ひとつそういう点での責任を十分に果たしていただきたい。そういうことをまずもって、ここではっきり申し上げておきたいと思うのであります。  さて、先ほどから水資源の問題が出てまいりました。そうして、これは地盤沈下と結びつく問題でありますから、ひとつ水資源の問題に歩を移したいと思います。  昭和四十六年五月一日、建設省が、昭和六十年にはこれだけ水不足になるというデータを発表なさいました。それを見てみますと、全国で大体五十五億トン不足の六割が、この千葉かいわいで不足をするということになっているわけであります。千葉県のほうで出されております数字を見ますと、昭和四十五年現在で一日需要量は約千四百万トン、五年進んで昭和五十年で千七百三十七万四千トン、五十五年になると千九百六十七万四千トン、六十年になると大体二千百万トンの一日需要量が考えられているようであります。二千百万トンの需要量にこたえようとすると、概算見積もりで大体二千四百万トンは水を確保しておかなければならない。しかし、県のほうでお考えになっていらっしゃる新規開発は二五%、そして七五%を県外、おもに利根水系にたよるということになっているようであります。しかし、この問題は、国の水資源開発計画、建設省の五カ年計画の中身を見た場合にも、それ自身は供給計画ではないわけでありますね。実際に水が供給されないという状況をもたらすかもしれないことを、県自身が認めていらっしゃるわけであります。そういうことも含めて成田空港、成田空港周辺、さらにもう一つ大きく千葉県についての水の供給、水資源確保ということをどのようにお考えになっていらっしゃるかということを一つ、まずお聞きしたいと思います。
  179. 飯塚敏夫

    ○飯塚説明員 ただいま、私どもの発表いたしました先般の広域利水調査報告書に基づく御説明がございましたが、首都圏の水需要につきましては、昭和六十年におきまして年間約二十億立方メートルの供給不足がございまして、これを京浜、京葉地域で見ますと、年間約三十一億トンの大幅な供給不足となっておる状況でございます。このため私どもといたしましては、利根川簿域内主要水系の水資源開発を積極的に進めるとともに、産業の再配置、地方分散、その他回収率の向上とか農業用水の合理化、下水処理水の町利用等の水利用の高度化について、現在一般的な共通の問題として検討しておるところでございます。  ただいま、成田空港並びに千葉周辺の水需要の問題について、地下水の問題と関連してお話がございましたが、現在はこの地域の水は利根川に依存するところが非常に大きゅうございますが、現在、利根川水系におきましては利根川の水資源開発計画というものがございまして、これは水資源開発促進法に基づいておる事業でございますが、これを鋭意進めておるところでございます。千葉市及び成田空港周辺地区につきましては、この利根川の水資源開発計画によりまして、水資源の供給について具体的に措置してまいりたいと考えておりますが、これらの事業につきましては、事業の進捗につきましていろいろな諸問題がございます。これらにつきましては、今国会に御提案申し上げております水源地域対策特別措置法等の成立等と相まって、一そうの水源地域開発を踏まえまして水資源の開発に努力してまいりたいと考えておる次第でございます。
  180. 土井たか子

    ○土井委員 それでは、まず成田市の現状について、どのように生活用水というのが確保されておるかということを示します表をここに提示しましょう。これは、成田市の生活用水というのが大体地下水によっている——どうぞ、この前に来て見てください。成田市上水道の水源というのは大体地下水によっている。そして、マルじるしがつけてあるのが大体市の上水道の水源なんですよ。1、2、3、4と算用数字がふってある。だから、どの程度の深さに井戸を掘って地下水を求めているかということが一目瞭然の表であります。そして、もう一つは成田市の地図でありますが、いまの井戸が大体どの地点にあるかということを示す表であります。これはやはり算用数字がふってありますね。したがいまして、今後水資源確保というふうな点から考えまして、先ほどるる御答弁があったわけでありますが、地下水というふうなものに対して、これを汚染させないように、しかも確保していくという対策を講ずるということは非常に大事だとお考えになりませんか。いかがですか。
  181. 岡安誠

    ○岡安政府委員 実は地下水の汚染問題は、現在まだ水質汚濁防止法の体系で手をつけておりませんので、何とも申し上げるわけにいかないのでございますけれども、私どもといたしましては、もちろん重要な水道資源、また一部につきましては工業用水源になっておりますので、当然汚染の防止というものにつきましては配慮しなければならないと思っております。
  182. 土井たか子

    ○土井委員 汚染の防止というようなこともさることながら、先ほど、深いところに地下水を求めて水源とする上水道を完備するというような御趣旨の御説明がございました。そういう点から考えますと、この地域についていうと、深層地下水というのは、数十年ないし百数十年程度の年齢を有する古い地下水というように推定されておるわけですね。これは地質学者世々の調査の結果そういうふうに推定されておるわけです。したがって、補給量がきわめて少ない。揚水量が大した量に達しなくても、補給量を上回って揚水いたしますと、地盤沈下が引き起こされるのは当然なんです。そういう点からしますと、現にあるところの地下水については、さらに掘り下げて地下水を確保するというのにも限度がある。さらに掘り下げて、水の需要というものに対してこたえるだけの供給源をそこに求めようとしますと、必ず地盤沈下に結びついて危険性というものを伴うわけでありますから、そういう点からしますと、地下水については、いまあるところの地下水源というふうなものを大体温存することがまず第一大事であると同時に、さらにこれを掘り下げるということは厳に慎むべき問題だということがまずいえると思うのですね。それと同時に、大地震などの際には、地割れや上水道施設の電気系統が故障するために、深い井戸の大半は使用できなくなる可能性がありますね。そういうことから、地下水を深層地下水だけにたよるということはむしろ適切じゃないということもいえるわけです。したがって、浅い層の地下水を一定量確保するということが必要になってきますので、この点について、埋設されていくパイプラインというものが、こういう地下水を大事に考えるということを配慮しながらなされなければならないということが必須の条件になってくるわけですよ。この点が不十分なものの考え方で進められますとたいへんだと思うわけでありますが、ひとつそれで聞きたいのがあります。  私は四月二十日の以前に、四月十七日でしたか、質問をいたしました。その節、生活用水とか飲料水に対しては、具体的にきめこまかに保護をしていくことを考える必要があるのじゃないかというふうなことを問題にいたしまして、そうしてパイプラインを埋設するのについて、省令の二条の一項の五号のところに、「事業用施設は、次の各号に掲げる場所に設置してはならない。」とあって、そしてその中に「利水上の水源である湖沼、貯水池等」というような条文があるわけであります。この「利水上の水源である湖沼、貯水池等」というのに、地下水源の場合についてはどういうふうに取り扱われるかというふうなことをお尋ねしましたら、その節、地下水源については、付近において非常に水源を使っているという例があるとこの項目に該当するという御答弁が現になされているわけなんですね。  そこで、私がお尋ねしたいのは、出監、寺台、山ノ作地区についてあるところの水盆の問題であります。この水盆は現にここにいうところの地下水、水の地下供給源というふうに考えなければいけないわけでありますが、現にこの上にパイプラインを敷設するということになっているわけなんですね。  その地点についておわかりにくければ、ここに略図がございますから、それまた、ぜひ見ていただきたいと思うのであります。遠いところでちょっとおわかりにくいかもしれません。近くに寄って見てください。   〔土井委員、地図を示す〕  この成田市の近郊にあるところの水盆の上にパイプラインが埋設されることになるわけですね。これは、この地図によっておわかりになりますね。そうしますと、これは、いまの石油パイプライン事業法からすると認められない場所に石油パイプラインを埋設するということになるわけでありますが、この事実を一体どのように認識されているわけでありますか。
  183. 飯塚敏夫

    ○飯塚説明員 ただいま事業法に基づきます省令の条文で、第二条の一項の五号ですか、「利水上の水源である湖沼、貯水池等」ということの中に、前回栂野治水課長が答弁したかと思いますが、直接の責任担当者ではございませんが、そのときに地下水を含むというような答弁をしたようにただいま先生のほうから御指摘がございましたが、そうしたといたしますならばそれは誤りでございまして、この「貯水池等」の中には表流水だけを考えておりまして、私ども、地下水は考えておらないという解釈をしておる次第でございます。  それから、ただいま、石油パイプラインをそういうところに設ければ地下水に当然に悪い影響を与えるのではないかというようなことでございますが、私どもの承知しておる限りにおきましては、パイプライン等に対します湖沼につきましては、十分配慮してあるというようなことでございまして、私どもといたしましては、別に地下水をどう転換するかというような問題につきまして、千葉県の水道管理者である担当部局からの水資源の要請につきましては十分配慮いたしまして、今後の水資源開発——現在の計画は昭和五十年度を目途としておりますが、その中でももちろんのこと、それ以後につきましても、成田地域、千葉周辺も全部含んでおりますが、千葉県の水道管理者と十分協議をととのえまして、関係行政機関として企画庁を中心といたしまして計画を立てさせていただきたい、そしてその事業を鋭意努力して進めてまいりたいということに考えております。
  184. 土井たか子

    ○土井委員 いまのは飯塚課長さんですか。——そうしますと、これは、四月の十七日に御答弁になった同じ建設省の河川局の治水課長さんとは意見が違うわけでありますね。同じ省の中で意見が違うというのは一体どういうことでありますか。
  185. 飯塚敏夫

    ○飯塚説明員 たいへん失礼しておりますが、治水課長に確認の上、後日訂正させていただきたいと思います。私どもの河川局の見解といたしましては地下水は含まない、表流水のみであるという考え方でございます。
  186. 土井たか子

    ○土井委員 「利水上の水源である湖沼、貯水池等」というのに対して、地下水は含まないというふうに理解されているわけですか。正確にこの条文に対しての解釈というのを条文に即応して考えますと、これはいかがですか。もう一度言いますよ。「利水上の水源である湖沼、貯水池等」と書いてあるのです。地下水源はどうして含まないのですか。その理由について述べていただきましょう。
  187. 飯塚敏夫

    ○飯塚説明員 通常、私ども、事業計画を立てます場合の貯水池、湖沼等につきましては、地下水にもいろいろ深くから浅くまであろうかと思いますが、その間の授受等については技術的にも十分解明しておりませんので、そういう関係は考えておりません。したがいまして表流水ということで、地下水というものはまた別途な配慮に基づくものだということで考えておる次第でございます。
  188. 土井たか子

    ○土井委員 それでは、先日の治水課長さん、きょうは御出席ではないのですか。
  189. 飯塚敏夫

    ○飯塚説明員 本日は出席要求がございませんので、出席しておりません。
  190. 土井たか子

    ○土井委員 これはしかし、水資源の確保というような上からいくと大きな問題でございますよ。単に建設省内で意見が食い違っているという問題だけではないと私は思うのです。そういうことにとどまらないと思う。ひとつこの点については、あらためてはっきり統一見解というものを出していただきたいと思うのです。それに従って、私はこのことについてはあらためて質問したいと思います。  さて、いままでずっと水資源について、いま成田空港とその周辺の用水の供給については、やはり地下水という問題と、それから表流水ということが出てきているわけですが、表流水については利根川にたよって利水率を上げることは今後もうむずかしいということは、事実としてあるわけでございます。すでにダムをつくり過ぎたために、江戸川の流量というのが毎秒七十トンから大体四十八トンに減っていっているわけであります。江戸川の川底が地盤沈下して、松戸の辺まで沈下がずいぶん目立っているという現象も来たしているわけです。塩水がさかのぼっていっているというような現象もある。だから、そういうことからしますと、表流水にたよるということについても限度があるということは、ひとつ念頭に置いておいていただかなければならないと思います。かといって、深く地下水を求めるために掘り込んでいくと地盤沈下につながるという問題もあります。したがって、この間非常にむずかしい合い間を縫って、しかし現に深刻な地盤沈下の恐怖に年々おののいているところの千葉で石油パイプラインの埋設をなさるわけでありますから、いま申し上げたことを重々慎重に調査検討なすった上での工事でなければならぬと私は思うのですよ。いかがですか。  現にいままで浅層地下水が、地下に埋設された給油施設からの漏油によって汚染された例というのは、いろいろな例をあげることができます。たとえば沖繩の米軍の嘉手納基地の問題、これは御承知だと思いますが、四十二年に、嘉手納村の屋良地区の十五カ所の井戸の水が、導管からの漏油で汚染されるという事件が発生しました。四十三年には、そこからあまり遠くない市街地で同様な汚染発生しているわけであります。私も現地に行って、井戸水をくんで、それにマッチをすってつけたらばっと火がつくということをまのあたりにして、びっくりしたのです。そういう現象が沖繩ではすでにあったわけであります。東京でも、青梅市の成木では昭和四十六年に、成木台病院のボイラー用ポンプから、地盤沈下によると思われるひずみのために生じた穴を通じて重油が漏れて、これが地中に浸透して民家の井戸を汚染したという例だってあります。それから立川では、これはもう二十四年ごろから何回も井戸水が油で汚染されて、それが原因となって火災も生じたという実例がある。これは、やはり米軍の横田基地で使用されている航空機燃料が、地下の水脈を流れて井戸に入り込んだという実例であります。  そういうふうないろいろな例をずっとあげてまいりますと、いま住民の生活用水、農業用水の多くを現実に地下水に依存しているという地域に、空港の建設のために必要なパイプラインが埋設されるという事実があるわけでありますから、いままで引き起こされているようなこういう実例などについても重々検討するということが、私は必要不可欠な問題だと思うのですね。そういうことについて、これはいままで十分に責任をもって私たちはやってきておりますとおっしゃるのにはどうも矛盾をしているような実例を、きょう私は写真を持ってきたり、それから成田というのが現に上水道はこれだけ地下水にたよっているというふうな表を持ってきたりして、説明をしながら質問をしたわけでありますから、そういうことを全部総合して、ひとつ公団においてはデータ並びにデータについて住民に納得のいくような説明、これをぜひ展開していただかなくちゃ困ると思うのであります。すでにやっておりますじゃ済みません。やはりこれからが公団にとっても大事な時期だと、公団自身お考えになっていらっしゃるのじゃありませんか。だから、そういう点からすると、ひとつ住民の方々に納得のいくだけの、こういう問題についても安心できるデータと説明というものを展開していただかなければならないと思います。そのことを約束してもらえますか、どうですか。
  191. 佐藤文生

    ○佐藤(文)政府委員 参議院の運輸委員会に出たためにおくれましたことを冒頭お断わりいたします。  先般より先生から、パイプライン問題につきまして、あらゆる観点から貴重な御意見を承りました。私も、先般申し上げましたとおりに、成田空港の建設の中途でありますが、政務次官になりましてから、各般にわたって私自身もいろいろ調査をしまして、特にその中で、パイプラインという事業は非常に慎重にやらなくちゃならぬということを私自身も考えまして、まず第一にパイプラインというものは、運輸省としては、先般も申し上げましたとおりに安全が第一である。そして陸上における交通の緩和、要するに四千キロリットルが必要であるとするならば、十キロリットルのタンクローリーが四百台必要だ、それが成田の周辺を走り回るよりも、パイプラインというこの近代的な事業に取り組んで、それによって交通の輸送緩和をはかる、これが運輸省の任務である、こう考えました。もちろん通産省は経済面から考えるわけです。したがって、安全面について先生からいろんな御意見を承った中で、やはり材料の問題、材質の問題、これには要するに学者の知恵も借りなくちゃならぬ。それから専門家以外の方々、国会、あらゆる観点から、この安全追求の面についてのパイプラインのいろんなサゼスチョンもいただかなくちゃならぬ。それからまた、地域住民の素朴な意見というものを十分に入れなくちゃならぬ。こういう面で材料の面につきましても十分検討する必要がある。  それから第二番目に必要なのは、先生が常に申されているところの設計施工であります。この設計施工は、公団が実際やるわけであります。そして日本鋼管なら日本鋼管にやらして、そして下請けにやらしておる、こういったような経過も私は知っております。設計施工というものが完全に、いろんな観点からいただいた注意を確実に守ってやっているかどうか、そこの確認を私はしなくちゃならぬ。  それから三番目が検査であります。要するにパイプラインの継ぎ手をつなぐその技術者というものが、ほんとうに確実に溶接をしているかどうか。それも科学の総力を使ってやっておるのですけれども、これもやはり、確実にやるかどうかということの点検をする必要がある。いわゆる検査体制というものを十分にやる必要がある。バルブ一つにしても、圧力試験というものが確実にいっているかどうか、こういうことも必要である。  そして最後に保安体制であります。この保安体制は、もう先生が言われているとおりに、住民の協力とその管理者であるところの公団の協力なくしては、保安体制の完全は期し得ません。  したがって、この四つの観点から、私が政務次官になりましてから一つ一つチェックをしながら現在までやってきたわけであります。したがって、この中で先生が御指摘になりました住民対策、住民にほんとうに納得していただくような対策が十分であったかどうかという点になりますと、私は先生と同感であります。非常に不十分であったと思います。そこで、私は次官になりましてから、あらゆる毎度から住民にわかりやすく説明をしながら、協力を求めながら、理解ができない住民でも、どんどんと出かけていって少しでも理解を求める、こういう努力を公団はすべきである、公団のそういう努力が実って初めて一メートルごとにパイプラインの敷設というものはできていくんだ、こういう指導を私はいたしました。したがって、住民に対して、地域の方々に対して御理解を求める努力が足らなかった点に対しては、今後私は全精力をもって、先生の御意向を体して、公団にさせるつもりであります。どうぞ、そういう点で御理解を賜わりたいと思います。
  192. 土井たか子

    ○土井委員 いまの次官の御答弁を私伺っておりまして、さらに二つ最後に確認をし、次官にひとつ質問を申し上げて、きょう終わりにしたいと思うのです。  先日この委員会で、私が安全基準技術に対しての基準の質問をさせていただいた節、次官が、大体外国のいろいろこういう技術についてまさるとも劣らぬ安全性の確認ということを逐一やりながら、いま工事は進行中であるという御趣旨の御答弁がございました。そこできょうは、まず一つは、先ほど来問題にしてきたのは地盤沈下、それからさらに水資源の確保、水汚染に対する防止対策、そういう問題でありました。いま水の問題について言うならば、外国にまさるとも劣らぬと言われておりますこの工事——スイスの場合のパイプライン規制に関する法律というのを見てみましょう。一九六六年の七月に施行されておりますけれども、十七条の二項でこういうふうに規定されています。「飲料水の浸水が予想される地帯は、州が指定する。この地帯にはいかなる液状物導管も設置することができない。」と書かれているわけであります。スイスの場合に比べて水の汚染は、日本の場合、水資源が少ないだけによけい深刻だと考えておかなければならない。ところが今日、もうすでに日本において施行されておりますビル用水法に従って講じられてよいはずの国としての対策についても、いまだ十分な対策が講じられていないありさまであります。ただ、需要に対する水の供給をどういうふうにするかという頭の痛い問題をひっかかえてどうにもならないとおっしゃるかもしれないけれども、しかし、いま現に成田ではパイプラインの敷設工事が進行中なんでありますから、いまこの問題について、やはり具体的に打つ手を打ってもらわなければ困るのですよ。したがいまして、外国に比べてまさるとも劣らぬということを言われた次官については、やはりこの水の汚染の問題、地盤沈下の問題に対して確とした姿勢なり、今後の対策なり、臨まれる方針というふうなものをはっきりしていただかなければ困ると、一つは思うわけであります。  あともう一つ、いま先ほどからるる御説明の中心は、住民に対してやはり納得のいくような説明が欠けていたということをお認めになった点であります。すでにもう新聞紙上公表されておりますから、このパイプラインの問題について新聞を読んだ人で、なるほど、もう事はそこまで行っているかということをお考えになった方が多いと思いますが、五月の二日に寺台地区で、公団と寺台地区の区長との間で、暫定パイプライン工事というものについて認めるというふうな協定書が結ばれたごとくであります。この場所には運輸政務次官もお立ち会いになっていたはずであります。ところで前回、四月二十日の委員会で私が、住民の方々に対して納得のいくところの説明を十分にしなければいけないのじゃないかというふうな趣旨の質問をした節、政務次官の御答弁はこのようでございました。これも間違いないように、私は議事録を持ってきたわけであります。「地域住民の意思をもう十分に尊重しなければ、このパイプライン事業というものはやるべきでないという基本的な観念に立ちまして、たとえ完成してもパイプラインというものは、地域住民の協力なくしてこの安全は保たれないのであります。これはアメリカの例を見ましても、あるいは欧州の例を見ましても、特にロサンゼルスあたりの地震後におけるパイプラインの影響、それを見たときに、地域住民のいち早い通報、そういったことによって最小限に被害を食いとめているという諸外国の例を見ても、地域住民の協力なくしてはこの事業はできないということで、空港内は三月末全部できたんです。ですけれども、パイプラインだけは私は空港公団にも言いました、一人一人の住民のほんとうに納得する協力体制ができなければ強行すべきでない」云々と書いてあります。このとおりの御答弁だったわけであります。  ところで、先日、五月二日に結ばれましたこの協定書に対しては、一度だにも説明を聞いてないという地域住民の方々の声があるのです。したがいまして、この次官の御答弁からすれば、この協定書の中身は、住民の協力に先立つ十分な説明なしに結ばれたとしか考えられない。したがいまして、住民の協力体制のもとにこれから行なわれる暫定パイプラインの工事に対して、次官のお考えどおりに事は進まないということであろうと私は思います。一体、この協定についていまどういうふうなお考えをお持ちでいらっしゃるか、この二つですね。  一つは、地盤沈下あるいは水質の汚染対策、このことに対して十分な予防対策を講じない限りはパイプラインを敷設すべきでないだろうという問題と、あともう一つは、住民に対する説明なくして協定書は結ばれるべきじゃないだろうという問題であります。お願いいたします。
  193. 佐藤文生

    ○佐藤(文)政府委員 第一点の、先般私が申し上げましたパイプラインの国際的な水準を維持しておるという件ですが、私は、これは先生も御同感がいただけると思います。諸外国特にソ連あたりから、西独のパイプラインか、日本のパイプラインか、アメリカのUSスチールのパイプラインか、この三つのうちのどれがいいかということで、零下七十度、六十度、こうなっても耐寒性がある、しかも柔軟性がある、しかも地震に対して強い、こういったようないろいろな角度から、日本のパイプラインが国際的水準にようやく四、五年前からなったということは、先生御承知のとおりであります。問題は、このパイプラインの設計、施工の過程で、たとえばいま先生が御指摘になりました不等沈下をするという、そういう特殊な地帯におけるところの設計、施工というものは慎重にやらなくちゃならぬ、こう思います。私は専門家じゃありません。が、技術者の話を聞きますと、不等沈下をした場合の、そのおそれがあるという場合における事前の予防措置として、いわゆる沈下測定器というものを必ずつける。そうして沈下測定器をつけながらそれを必ずチェックしていく。ある年限で一定の沈下をした場合には、その埋設がえをやる。それから今度は、沈下測定器のほかに応力検査の——いわゆるこういうぐあいの応力型になるそうであります。そうなった場合における応力検査の体制もあわせてやっていく、そういうような不等沈下地帯を通過するパイプラインについては、そういう検査体制を十分にやるべきである、いまやっておる、それを私は確認したいと思います。したがって、何メートルか不等沈下のあるような個所については、厳重に公団に、どの個所に何カ所つけておるということを私に報告せよと実は命令をいたしております。したがって、それによってわれわれは確認をしていきたい、こう思います。  さらに、先生が飲料水の問題について非常に御心配であります。私も同感です。あれは戸村一作さんですかが、沖繩のびんを持って、そして下は水で上はオイルか何か浮いている、これを見せて、こんなところが井戸水の中にあるんだ。私は、そういう話を聞きまして、そういうことがあってはいかぬということで、厳重に検査体制をすれば、私は、作業の直後というものは漏洩の心配は要らないという自信があります。それだけの安全確保で設計、施工しております。しかし五年、十年、二十年、三十年、四十年と、こういうぐあいな先を考えたときに、他の器物によるところの物的な障害を受けるとか、あるいは腐食というものは、ほとんどないといってもいいほどに電気防食なり特別な装置による防食をしておりますから、ほとんどありません。しかも、現在埋めているままのパイプラインを海中に入れてもいいのですから、それくらいの高度な技術をもってやっているのですから、相当な腐食対策はできておるわけです。したがって、そういう御心配は当分ありませんけれども、しかしどんなに安全を考えても、技術をどこまで追求しても、これで完全に安全だということはできません。したがって、万一漏洩した場合、それが地下水にいく、そこでスイスあたりのどんな国よりもバルブの距離を縮めて、たくさん詰めて、しかも漏洩時間を、現在十八秒で三十リットルの範囲で出たときには、すぐそれを感知してバルブを締める操作ができるけれども、私は言いました。さらに最高のものがあるじゃないか。音波測定器というのがいま開発されつつある。それは一時間でもって十八リットルですか、そのわずかなものでも感知できるということまで公団は追求していくべきである。それもできたならば、音波探知器を採用すべきである。こういうような装置をいたしまして、最悪の場合の漏洩の対策を十分にやるべきである。  さらに、今度の成田の暫定パイプラインが皆ささん方の御協力を得てオーケーだという時点が来て作業が始まる時点においては、十分な市民の監視のもとでこの作業を進めなさい、そうして、その作業の過程において、漏洩問題で将来飲み水にいくような可能性がある場合においては、特殊なパイプのおおいをすることもこれは考えねばならぬのじゃなかろうか。予算がかかります。しかし、そういう御心配があるところはそういうことも考えて、一部にはそういうところを採用する必要もあるかもしれない。特に井戸水の近いところあたりはそういうことも必要あるかもしれない、これはひとつ検討しようじゃないかということを話しております。したがって、地盤沈下あるいは飲料水に入っていくところの汚染、こういう問題について、公団だけでもできません。先般申し上げたとおりに、地域住民の協力なくしてパイプラインはできないということを私はほんとうに身にしみて感じておりますので、最後の完成した暁でも、地域住民がその標識のところをときどき監視する、パトロールが回る、そして何かの異変があったときには地域住民の速報によってバルブを一定の期間締めていく、こういったような装置をやっていくというような万全の措置をとっていきたいと思います。  ただ、ここで言ったって現地はしないじゃないか、こういうぐあいに言われるところが問題であります。そこを私は、先生が何回にもわたってこの委員会でおやりいただくことはほんとうは感謝しているわけであります。私は、公団職員も、こういうことはないと思うのですよ。それでやらせるように私は責任をもってしますので、ひとつその点御了解をいただきたいと思います。
  194. 土井たか子

    ○土井委員 二番目の問題に対しての御答弁はいかがですか。協定の問題……。
  195. 佐藤文生

    ○佐藤(文)政府委員 協定の問題は、あそこの寺台地区の方が——住民は二千名ぐらいの住民の方だと思うのです。私は、二千名の全部の方にお会いすることはできませんでしたが、少なくとも二回代表の方とお会いいたしまして、パイプラインの安全性について私の知る範囲内のことを御説明いたしました。ただ問題は、一人一人の住民の協力なくしてはパイプラインはできないのです。寺台地区の代表の方とお話ができました。けれども、パイプを実際通す地権者、地主の方一人一人の了解がなければできないのですから、あれだけでもってすべてができたとは私は考えておりません。パイプラインの通る地権者一人一人の御理解と御協力がなければできません。したがって、これは何日かかろうが何年かかろうが、私はお願いする以外にないのです。そういうつもりで御理解を求めていきたい、こういうぐあいに考えております。
  196. 土井たか子

    ○土井委員 それじゃ最後に詰めのようなことを申しますが、協定書はすでに形式的には結ばれているわけですが、まだ結ばれていないというふうにもとに立ち返るようなつもりで現地に出かけて、次官は住民の方に逐一一人一人に対して説明をなさるおつもりで、この間の事情についての話し合いをなさいますか。それが一つであります。  それからもう一つの問題については、これはあとで言いましょう。
  197. 佐藤文生

    ○佐藤(文)政府委員 きょうのお昼、木原先生と地元の小川県会議員さんも参りまして、そういう地元の住民と十分政府として話す努力をせよ、こういう御忠言をいただきました。したがって、私はいつでも出かける準備がありますと、その先生に申し上げました。したがって、公団の専門家もおりますし、私がしろうとで話すよりも専門家が話したほうがいい場合もあるし、また、私が誠意をもって話したほうがいい場合もありますし、ケース・バイ・ケースで積極的に住民の方の御理解を求める努力をしていきたい、こう考えております。
  198. 土井たか子

    ○土井委員 それは協定はなきものと考えての話し合いから始めていただかないと、この間の説明なくして協定が結ばれてしまったということに対しての住民感情というものは、決してほぐされるものではないと私は思うのであります。この協定はすでに結ばれてしまっている。したがって、これに対しての説得をしていくのだというふうな説明では、これはだめだと私は思うのです。したがいまして、この間、いかがですか。その間、これは御認識というのは非常に大事だろうと私は思うのです。
  199. 佐藤文生

    ○佐藤(文)政府委員 国の行政で地域住民の代表と申しますと、やはり成田市議会という一つの形式になりますね。それから市議会の方とお話をする、まだ先に行きますとその部落の区長さんを中心にした役員、こういうようなかっこうになっていくわけでございます。そういうことで、それを抜きにして地域住民の方だけのお話というわけにもなかなか——技術的に非常にむずかしいのですよ。そこで、市長さんも、それから空対委員長さんもお立ち会いを願いまして、そして皆さん方のいろいろな意見もございまして、現地視察も行かれるというので十分見ていただきたいといろいろな配慮をいたしまして、そして寺台地区の区長さん方の御希望であるあの交通緩和の高架をひとつ早くやりなさい、それから道路の拡幅を早くやりなさい、この二つの条件を中心に御要望がございましたので、建設省当局と話をしてできるだけ御期待に沿います、こういうことで、部落の代表の方とそれから市長さん、千葉市議会の空対委員長さん立ち会いのもとにやったわけでございます。ですから、やはりそういうことを踏んでいかないといけないと思いますので、さらに部落の方で御不満の方があるようでございます。したがって、そういう方にはいつでも公団職員、私、あげまして、お話をする機会があれば積極的にしていきたい、こういうぐあいに思っておる次第であります。
  200. 土井たか子

    ○土井委員 もう時間が経過しておりますが、これは非常に大事な問題ですから、あと一問だけ申し上げておきたいと思います。  それは、いま道路の拡幅工事なんかの問題を持ち出されましたが、本来、石油パイプラインのこの工事については別問題であります。いまそれが協定の中身に出てきていること自身、私は実に解せないわけであります。おかしいなと思って見ているわけであります。やはり、石油パイプライン工事について一体どうなのかという説明から始めてもらわなければならない。それで、これは次官に対しては釈迦に説法のようなことになりますが、公有水面埋め立ての問題にしても、確かにいまおっしゃったとおり、地区代表という意味では自治体の首長、さらには議会を無視しては行ない得ません。しかし、その関係の地域住民に対しては閲覧の機会というのが、これは義務としてあるわけであります。これはやはり一人一人のそこの場所に居住をなすっている住民ということを第一に考えるということでなければならないということが、いささかその間には見えているわけでありまして、今回のパイプラインの工事についても、やはり地域住民本位で考えてもらわなければならぬ。ここは、どこまでいってもこの線はくずしていただきたくないわけであります。したがいまして、その点からすると、区長さんが同意されたからとか、あるいは地区代表の評議員の方がこのことに対して同意されたからで、地域全体の住民が同意されたと誤解されては困るわけであります。住民に対しての説明から始めていただきたい、これを再度繰り返して申し上げたいと思います。いかがですか。
  201. 佐藤文生

    ○佐藤(文)政府委員 先生の言われる御趣旨、よくわかります。そこで、何といってもパイプラインの安全性の問題についての疑義が一部あられるようでございますので、こういう問題について地区住民の方の、反対であるという陳情もいただいております。したがって、そういう方とお会いをいたしまして、時間をかけまして、私はこちらの考え方を申し述べて、少しでも御理解いただきたいという努力は並行してやっていきたい、こう考えております。  なお、道路の拡幅の件は、実は成田の飛行場ができることにおいて、あすこに二キロに及ぶ寺台の十字路のところに自動車がばあっと集中するのでございます。これは寺台の方が商売もできなければ、交通災害の上においても非常に御迷惑をかけておるという面でございますから、パイプラインとは直接関係はありませんが、成田空港開港の時点においてひとつこれを解決しなさいというのが強い意向でございましたので、あわせて申し上げたわけであります。
  202. 土井たか子

    ○土井委員 その意向は意向としてあると思いますが、ひとつ次官、出直すつもりでこの協定をないものにして、もう一度御説明から始められるというお気持ちはないですか。
  203. 佐藤文生

    ○佐藤(文)政府委員 これはなくすとかどうだというふうにたてに使ってこういうものはすべきじゃないと思います。したがって私は、フランクな気持ちで結ばれたことは事実でありますけれども、だから賛成しろなんてそんな態度ですべきじゃない、こう思っております。したがって、地区住民一人一人の説得に時間がかかっても、公団職員は全力をあげてやるべきである、こういうことで基本的に考えていきたい、こう考えております。
  204. 土井たか子

    ○土井委員 それでは最後に一言。  その地域住民の方々の、御説明による御納得がない限りは工事は着工しないということも、確認してようございますね。
  205. 佐藤文生

    ○佐藤(文)政府委員 地区住民の方の納得がいかないという点が、百人の方が百人全部もう御協力願うというわけにはなかなかいかないと思うのですよ。しかし、全部していただければ一番幸いでございます。しかし問題は、パイプラインがどうしても通らねばならないところの方が、ここを通させない、こうなってどうにもならなくなったときには、実際パイプラインというのはできないのですよ。したがって、そういう方の説得に時間をかけてでも一生懸命にやっていくという姿勢、そして成田の市議会の、道路を占有してやるという許可もなければできませんし、一人一人、個人個人の、パイプラインが通るその地権者のオーケーをとらなければパイプライン事業もできませんので、あわせて一本、私は並行しまして、やはり一人一人の方に御理解をいただく努力を続けていかざるを得ない、そういうような気持ちでおります。
  206. 土井たか子

    ○土井委員 以上できょうの質問を終わりたいと思いますが、いままで説明が一回もなかったのですよ、この地域の住民の方に対して。そして協定が結ばれたという事実は、ひとつはっきりと次官も御確認をいただきたいと思うのです。説明から始めなければならぬのです。したがって、納得があるなしの問題じゃない。説明がないのに協定が結ばれたというこの事実に対して出直せということを私が言っておるわけですから、その辺については次官も御理解いただけると思うのですよ。説明が一度だにもない。やはり住民対策というものがいままで不十分だったということをお認めになっておる次官ですから、ひとつその点は重々に御留意を要望したいと思います。  さて、質問をこれで終わりますが、最後委員長に一言、私は要求を申し上げておいて終わりにします。  それは、前回、学識経験者に参考人としてこの委員会への御出席を求めたいということを、私は委員長に要望として申し上げたわけでありますが、この告示の問題が、きょうの私の質問の中からいたしましても、やはり技術基準、安全性の確認というふうな点からすると、どうしてもまず先立つ問題になってまいります。そこで、具体的に告示が出される以前に、近い日にひとつ、前回私がもう具体的な名前を出しておりますが、奥村教授あるいは渡辺教授、それにさらに、工事は現に進行しつつありますし、さらに予定されている地域もあるわけでありますから、そういうことから考えまして地質学者ですね、それから地域の住民、そういう方々にぜひここに来ていただいて、参考人として意見を聞かせて、いただきたいと思うのであります。私たちは、この国会で石油パイプライン事業法というものを制定した責任があります。したがいまして、その中身については、現に行なわれつつある事業についてやはり責任の持てるものでなければならないということは、どこまでもつきまとう問題でありまして、ぜひこのことは、委員会においてこの参考人をお呼びいただいて、そしてそういう機会を設けていただくことを切にひとつ要望として申し上げて、終わりにしたいと思います。
  207. 佐野憲治

    佐野委員長 ただいまの要望につきましては、追って理事会において協議したいと思います。
  208. 土井たか子

    ○土井委員 終わります。
  209. 佐野憲治

    佐野委員長 次回は来たる十一日金曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時三十分散会