運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1973-07-19 第71回国会 衆議院 交通安全対策特別委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年七月十九日(木曜日)     午前十時六分開議  出席委員    委員長 久保 三郎君    理事 大竹 太郎君 理事 唐沢俊二郎君    理事 左藤  恵君 理事 中村 弘海君    理事 野中 英二君 理事 井上  泉君    理事 太田 一夫君 理事 紺野与次郎君       足立 篤郎君    阿部 喜元君       越智 通雄君    片岡 清一君       斉藤滋与史君    平田 藤吉君       沖本 泰幸君    渡辺 武三君  出席政府委員         厚生省医務局長 滝沢  正君  委員外出席者         警察庁交通局交         通企画課長   鈴木金太郎君         大蔵省銀行局保         険部長     安井  誠君         運輸省自動車局         参事官     真島  健君         参  考  人         (日本弁護士連         合会交通事故相         談センター副会         長)      須藤 静一君         参  考  人         (早稲田大学教         授・日本交通政         策研究会自動車         保険研究プロ         ジェクト主査) 金沢  理君         参  考  人         (済生会神奈川         県病院院長)  大内 正夫君         参  考  人         (東京海上火災         保険株式会社専         務取締役)   塙  善多君         参  考  人 吉田  亮君     ————————————— 本日の会議に付した案件  交通安全対策に関する件(自動車損害賠償責任  保険に関する問題)      ————◇—————
  2. 久保三郎

    久保委員長 これより会議を開きます。  交通安全対策に関する件について調査を進めます。  本日は、お手元に配付いたしました名簿のとおり参考人の方々が御出席になっております。  各参考人には、御多用中のところ御出席いただき、厚くお礼を申し上げます。  最近における交通事故は、年々若干の減少傾向にあるとはいえ、被害者はなお年間百万人近くを数え、これら交通事故被害者損害賠償請求等、法律問題、医療生活更生、遺児の教育問題等各種生活問題の解決が事故防止対策と同様重要な課題となっております。昭和三十年に制定されました自動車損害賠償保障法も、制定以来十数年間にわたり自動車事故による被害者救済の中核として大きな役割りを果たしてまいりましたが、一方、最近の医療費物価生活費上昇のもとに、現在の保険金限度額が低過ぎるとの声も各方面で高まっており、当委員会といたしましても、これらの問題について調査いたしておりますが、本日は、自動車損害賠償責任保険に関する問題について、各界で御活躍の皆さん方に、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、本調査参考にいたしたいと存じます。  御意見の開陳は、須藤参考人金沢参考人大内参考人塙参考人吉田参考人の順で、お一人十五分程度お願いいたします。その後委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、須藤参考人から御意見を伺うことといたします。
  3. 須藤静一

    須藤参考人 私、日弁連交通事故相談センターにおります弁護士須藤でございます。  私ども日弁連は、去る五月二十六日の総会におきまして、自動車損害賠償責任保険自賠責と申しますが、これの現在額を倍額増額すること、すなわち死亡後遺症傷害ともに倍にする、死亡については、現在の五百万円を一千万円にしてほしい、それから後遺症並びに傷害は、現在五十万円ずつでございますが、これも上げてほしいというようなことを決議いたしまして、こちらの委員会を含めまして各方面にお願いに上がった次第でございますが、この私どもが倍に上げていただきたいという倍ということの根拠と申しますのは、これは御承知のとおり、死亡につきましては、もうすでに現在の五百万円につきましては、四年たっております。それから傷害につきましては、もうすでに四十一年から七年間据え置きになっております。現在の社会情勢物価上昇あるいは賃金高騰などと比べますと、これではあまりにも低過ぎるのではないか。ほかのいろいろな人身事故に見ますに、このいろいろな補償と比較いたしまして、まことに少な過ぎるのではないかというので、この程度であれば、容易に上げられるであろうということの意味でもって倍増をお願いする次第なのでありまして、私自身としては、もっとよけい上げていただきたいといいますか、もっと幅広いものでなければならないと考えておるのでありますが、現在のところ、このくらい上げることはきわめて容易であろうという前提のもとに、倍に上げるべしという一応の結論に達した次第でありまして、一面からして自賠責保険の収支が好転したら、黒字になったから上げてしかるべきだという意見もあるようでございますが、これが黒字であろうと赤字であろうと、本来からいったら損害てん補幾らでやるかということが前提で、そのために必要とする保険料をどうきめるかはあとの問題でなければならないと思うのであります。ところがどうも本末転倒のようなことで、黒字になったから上げるのだというのでは少しおかしいだろうと思うのであります。  ただ、これにつきまして、おそらく一番問題になってまいりますのは自動車保有者所有者でございますが、これの負担がふえはしないかという面でもって懸念される向きもあるかと思うのではございますが、しかし、考えてみますと、かりに私ども申しますように倍に上げるといたします。と申しましても、現在のいわゆる家庭用自動車ファミリーカーでございますが、これが一カ年の強制保険料というものは御承知かと思いますが、一万八千六百五十円でございます。月にいたしますと千五百円でございます。倍に上がりましたって三千円なんです。車を使っていて三千円くらいのものを保険料としてどうして払っていけないのかという問題でございます。一番保険料として高いのは、いわゆる東京を含めての大都市におけるタクシーでございますが、営業用乗用自動車、これが現在十二万三千七百円です。したがいまして、月にいたしますと一万円強になりますか、しかし、これもかりに稼働日数を一台について二十五日といたしますれば、一日四百円の負担でございますから、倍に上げましても八百円じゃないか。一日の水揚げから見ますと、八百円というものはそう大きいものとは私は考えないので、したがいまして、自動車保有者負担が過大になるという点は一応ネグレクトしてもいいのではないかと、かように考える次第であります。  それで、自賠責増額ということにつきまして、二つの点から必要を感じているのでありますが、その一つ任意保険との関係でございます。それからもう一つは、交通事故裁判に対する関係でございます。こういうふうに申し上げます。  この任意保険との関係におきまして、現在、自動車任意保険はかなりふえてきたそうでございますが、大体全車両の六〇%くらいになっているというふうに伺っております。しかしながら、これは近ごろ採算が合ってきたので、そういう傾向がかなり減ったようでございますが、いわゆるダンプとかトラックという危険を包蔵すること大である車につきましての任意保険加入について、過去においては保険会社があまり積極的でなかったという事実もあるようでございます。実際面から見まして、事故の発生する車というのは、任意保険に入っていない車について多いのではないかというふうに私考えるのでありまして、私ども手元で調べました四十四年七月から十二月までの裁判所判決の結果と申しますか、これは東京その他主要都市七カ所の総合でございますから、全体からしてみればきわめて一部ということも言えるのでありますが、判決なりました事件のうち五八%というものは任意保険に入っておらない、それから和解の場合は四五%入っていない、こういうのが実情でございます。  しかも、一方これが判決後の支払い履行状況を見ますと、判決後三カ月以内に全額支払われて事件落着したものは六一%、それ以外は三カ月以内では片づいておらない、はなはだしいのは二年たっても全然払われていないというのが、いま申しました間の判決のうちで二三%ございます。一文も払われていない。これが任意保険がありますれば、これも相当大幅に解決する問題ではないかという点がございますので、任意保険なるものがもっと普及すれば格別、さもない限りにおいては、現在は強制保険の額を増額して解決するより手がないのではないかということを申し上げます。  それから、次に交通事件裁判所に対する関係についてでございますが、本来裁判所は、独自の見解でもって損害賠償慰謝料その他をきめるべきではありますが、過去における実情を見ますと、自賠責保険というものをある程度意識していると申しますか、にらみ合わせておる。現在、東京地裁での遺族慰謝料の額でございますが、これは遺族が何人おりましても四百万ないしは四百五十万、これが限度でございます。いま裁判所の見方として一番高い慰謝料の額を見ているのは、京都が六百万というのがございます、これもきわめて安いものでございますが。これも、四百万になりましたのは自賠責が三百万から五百万になった後であります。それまでは三百万程度慰謝料と見られたわけで、履行可能という点をおそらく考えたからかもしれませんが、そのにらみ合わせと申しますか、自賠責幾らであるかということを考えに入れるということは、どうもやむを得ないような状態なのでありまして、その意味におきまして、現在の四百万、四百五十万というものは、ほかの各種事件におきまする慰謝料と比較いたしました場合に、はなはだしく均衡を失しているのではないかと考えられます。こういう意味におきましても、基礎となるところの自賠責を上げることによって、裁判所の認容する慰謝料その他も上げられるということが当然に望まれますので、そういうことをぜひやっていただきたいということなのであります。  と同時に、かりに自賠の限度額を一千万に上げますと、交通訴訟になるのがある程度減るのではないか、訴訟前に片づくものが多いだろうし、訴訟なりましてもきわめて容易に片がつくということが言えるのでありまして、と申しますのは、現在の東京の実例を申し上げるのですが、交通部訴訟というものがほんとうの意味訴訟かどうかということは疑問なのでありまして、もうすでに型がきまっている。何人いようが、慰謝料というものは一山四百万だ、四百五十万だ。と同時に、それがきまっていますので、訴訟進行自体がきわめて事務的といいますか、型にはまったことをやるので、被害者遺族そのものがその意味では満足しない。私、扱いました例で、たしか遺族四人かを三千分で本人尋問をしろと言われて、述べることは何もないのです。と申しますのは、これはやはり人情といたしまして、裁判所の面前に出まして恨みつらみを並べて、その上でもって判決をもらう場合には本人も比較的満足するのですが、何も聞かれないでぼさっとやられた場合に、はたして満足するか。これが一番問題なので、裁判所は何も聞いてくれなかったというのが遺族たちの言い方なんで、そういう点もありますので、訴訟自体も丁寧にやるためには、件数を減らさなければならない。そのためには、保険金額を上げておけばある程度減っていくということが言えるのではないか。大体慰謝料というものは遺族一人一人について各種事情に応じて発生すべきものでありまして、一山幾らということ自体がおかしいと思う。そういう点についても、今後の是正のためにも、いまの自賠責増額ということは望ましいことなのであります。  なお、次に自賠責傷害倍額ということ、倍額で済むかどうかという点について、私どもなり疑問は持っております。ものによっては倍以上かかるというものが幾らでもありますけれども、しかしながら、過去におきまして全部が医療費治療費に持っていかれて、本人の手に全然行かない例を幾つか聞きます。医療費というもの、医者の治療というものが非常に技術的なものであることもわかるのですが、ですから中を一段階なり段階ぐらいに分けて、かりに百万円としたら五十万は治療費だ、あとの五十万は本人慰謝料休業補償だと、ワクを二つに分けるような方法をとっていただきたいということが一つ、それからそれにつきましては、公的な医療機関をもっと整備していただきたいということをいろいろお願いしたいのであります。  それから、この自賠責についてわれわれ一番考えますのは、請求手続が非常に繁雑でございまして、これがしろうとでできない。といいまして、二十万、三十万というものにつきまして、私ども弁護士のところに持ち込まれても、まことに申しわけないのでございますが、手数だけかかるという問題がございます。したがいまして、ここにいわゆる事件屋というものが活躍するという余地があるという点でございます。これは何とかもう少し——と同時に、いろいろ書類を添付しなければならぬのですが、これは被害者側で手に入らないような、加害者側のサイドから出してもらうような必要書類を添付しなければならぬ。こんな無理なことはないので、おそらくたしか自賠の調査事務所というのは、八十何カ所、九十カ所ぐらいあるかと思いますが、これがもっと職権的に自分のほうでお調べになって、ある程度やっていただけるようにしませんと、まことに書類をつくること自体普通のしろうとには無理でございます。と同時に、一体五百万、一千万の請求も二十万、三十万の請求も同一手続でいいのか、こういうことがあります。ですから、実際トラブルの起こります例を聞きますと、小さい二十万、三十万というようなものについて事件屋が請負でやるという例があるそうでございます。あなたの場合、これは二十万だといって書類一切全部自分がとって、それで三十万なり四十万なり保険会社から取る、これが実際行なわれておるそうでございます。私ども日弁連交通事故相談センターとしては、全国でもって自賠請求手続の代行を、若干の実費はいただいてやっておりますが、とてもわれわれの手で全国まで及ぼすことはいまのところ不可能でございますから、何とかもっと簡易な方法でやることを考えていただきたいという点でございます。  それから、むろんこれは増額されることによりまして、支払い基準と申しますか、査定基準というものは変わっていかなければならない。現在でございますと、死亡者本人慰謝料が五十万、そのほかに遺族としては、遺族一人の場合には百万、二人であれば百五十万、三人以上になると一山でもって二百万、これが現在の自賠責査定基準でございます。これが実情に合わないのはあたりまえのことでございまして、それからそのほかに、いろいろ休業補償とか逸失利益とかを計算いたします基礎になるものにつきましても、いろいろの統計資料をお使いになっておるのですが、これが現在のものはたしか昭和四十三年の賃金センサスとか統計資料に基づいている。もう四年たっておるのです。ですから、これは少なくとも最も最近の時点における統計資料によって流動的にやるべきではないか。少なくとも事故発生時におけるところの資料でなければならないのではないか。と同時に、現在のような物価指数といいますか、物価の変動がありますときに、ある年度のものをきめておいて、それを三年なり五年なり据え置くということ自体が不合理ではないか。新しい統計資料幾らでも手に入りますし、それによるところの改定ということもきわめて容易だろうと思いますので、これはぜひ最も近い時点におけるところの統計資料に基づいてやっていただきたい。逆にいいますと、現在、生活費控除でもいまだに一人について一万五千七百円です。ですから、一万五千七百円という生活費控除というのはおかしい話です。ですから、その意味からすると、ある意味では不当によけいなものを払うことにもなりますので、この辺のところをもう少し考えていただきたいという点が一つ。  それから、この査定基準というものは、もう自賠責のように公的なものについては、これは公表されてしかるべきではないか。われわれは特殊の関係でいろいろわかりますけれども、一般の人がおわかりにならないので、一体幾らもらえるかということについて納得されないという点もございますので、これはどうしても公表されてしかるべきものだろうと思います。  それから、一体強制保険を今後どうすべきかという点にいきますと、私なり考えといたしましては、全部をもっと増額された二千万なり三千万のものにして、そのうち一千万はいわゆる社会保障と申しますか、そういう意味無過失責任保険にして、その上に双方の過失の存否を考慮したところの普通の責任保険を乗っけて支払うという、一つのものの中に二段階に分けてやるべきでございまして、これでもし、かりに合わせて二千万までにいたしますと、大体私どもの知っております関係で、昭和四十六年度の判決のうち、千五百万をこえて認容されたという例は死亡については六つしかございません。千五百万以下でもって片づいたものは六百十件あります。ですから、この底にありますのは、むろん五百万の自賠でありますか、あるいはその前の時代の三百万でありますかしますからして、合わせて二千万ということでもって大体片がついていくのではないかというふうに考えます。ですが、被害者複数という点を考えますれば、三千万までにしておくのが一番安全じゃないかと思うのですが、大体そんなような考えで、中でもっていわゆる無過失責任保険と、それからいわゆる過失を考慮したところの責任保険と二段階にやってしかるべきではないかと、かように考える次第でございます。  一応私の意見はその程度にしておきます。(拍手)
  4. 久保三郎

  5. 金沢理

    金沢参考人 ただいま御紹介にあずかりました早稲田大学金沢でございます。本日は、日本交通政策研究会自動車保険研究プロジェクト主査という資格で参考人として出頭させていただいたわけでございます。自賠責保険制度改善につきまして一言申し述べさせていただきたいと存じます。  まず、自賠責保険制度につきましては、昭和四十四年の十月七日の自賠責保険審議会答申に基づきまして法令の改正が行なわれたわけでございますが、その後の事情の変化、特に自賠責保険財政赤字の解消並びに航空機事故等における賠償額高騰などに伴いまして、再度の改善が現時の問題として取り上げられているようでございます。本日は、自賠責保険制度について当委員会において参考意見を陳述するように委嘱されましたので、日ごろ抱いております私の意見の一端を述べさせていただきたいと思います。  まず保険金額、いわゆる支払い限度額と申しますか、これの引き上げについてでございますが、第一に、理論的な問題点といたしましては、自賠責保険の機能あるいは守備範囲をどういうものとして規定するかという問題があるわけであります。具体的にはいわゆる最低保障であるべきかいなかの問題でございます。この点、昭和四十四年十月七日の自賠責保険審議会答申は、最低保障説をとっているようでございます。しかし、最低保障ということば自体が何らの法的根拠もないし、かつどのようにも解釈できるあいまいなことばであるのみならず、それをいわば補完すべき任意保険、特に対人賠償責任保険付保率保険加入率が五〇%程度の現在におきまして、はたして自賠責保険の給付が最低保障でよいと言えるかどうかは問題であるわけでございまして、もしこれが最低保障でよいということであるならば、任意保険と並びまして、たとえば賠償事業基金とか賠償事業公団など、被害者保護を目的とする賠償履行を確保する補完制度をあわせて完備することが前提となるだろうと思います。  第二に、政策的な問題点といたしまして、保険料率を現行のまま据え置くことが前提とされるのか、もしくは保険料率を再度引き上げてでも限度額引き上げ、ないし制度改善をはかるべきかが問題となるわけでございます。この点、保険契約者保険料負担能力考えますと、また保有者が企業の場合におきまして、引き上げ部分を運賃や商品価格に織り込んで利用者消費者に転嫁する場合の、消費者物価へのはね返りを生ずる可能性というようなものを考えた場合に、現時点におきまして、はたしてどちらの方法がいいかということはむずかしい問題だと思うわけでございますが、もしこの点に重点を置いて考えますと、保険料率を据え置いたという前提でものを考えるというようなことになろうかと思うわけでございます。  そうだといたしますと、保険料として集められました財源は、損害率が急激に低下でもしない限り、ほぼ固定しているものと見なければならないわけでございますので、これをどのような原則に基づきまして分配すべきかが問題となるわけでございます。すなわち、死亡後遺障害限度額引き上げ重点を置くか、あるいは傷害限度額引き上げにこれを充てるのか、あるいはそれ以外の制度改善にこれを充てるのかという問題になろうかと思います。  結論を先に申しますと、私は死亡及び後遺障害限度額引き上げを中心とすべきであるというふうに考えているわけでございます。  まず、死亡並びに後遺障害による損害についての限度額引き上げの問題でございますが、国民生活水準の向上、インフレーションによる貨幣価値の下落、人命尊重思想の普及、航空機事故による賠償金額との比較などによりまして、自動車事故に基づく死亡損害につきましても、裁判所判決による認容額裁判外示談額高騰しつつあることは周知の事実であります。したがいまして、限度額引き上げの必要は明らかであるわけでありますが、それでは、これをいかなる段階を経まして幾らまで引き上げるべきであろうかということが問題になろうかと思います。具体的な数字といたしましては、一千万円への引き上げが当面の目標となるものと考えているわけでございますけれども、五百万円から一千万円へ一挙に引き上げるか、あるいは国民所得消費者物価などの経済的要素並びに自賠責保険損害率の動向などの諸要素を勘案しつつ、適当な水準に達するまで小きざみに、たとえば昭和四十八年度八百万、四十九年度九百万、五十年度一千万というように行なうのが賢明であるかは議論の存するところであろうかと思います。前者の方法は、即効薬としての効果を期待できるわけでございますけれども補完措置としての任意保険付保率低下を顧慮いたしますと、後者の方法も検討に値しようかと思います。  次に、傷害による損害についての限度額引き上げの問題でございますが、死亡による損害が、保険金額の数次にわたる引き上げにもかかわらず、裁判上の請求にもつれ込むことが多く、限度額引き上げ必要性が痛感されておりますのに対しまして、傷害による損害保険金額は、昭和四十一年七月以降五十万円のまま据え置かれているわけでございまして、その引き上げを強く主張する声もございます。この場合、問題となりますのは、傷害に基づく損害についてのてん補請求充足率でございますけれども、これはちょっと古い数字でございますが、昭和四十六年現在で、請求件数の約八二・七%が五十万円の限度額内におさまっているわけでございまして、残り一二・三%がこれをこえているわけであります。大まかに申しますと、件数の点で死亡の約五十倍にのぼります傷害事故の大部分自賠責保険だけで解決されているわけでありまして、傷害による損害限度額は必ずしも適正でないとはいえない面を持っております。しかし、その請求金額の平均は年々高騰しておりますので、さしあたり昭和四十六年現在で約九〇%の件数がカバーされます七十万程度への引き上げ考えるべきではないかと思っているわけでございます。あるいは重傷者の保護に重点を置く必要があるということでございますれば、傷害二つに分けまして、長期加療を要する重傷者については百万円に引き上げる、それ以外の負傷につきましては五十万円据え置きというような方法考えられるだろうと思います。  先ほども御指摘がございましたが、実は傷害による損害につきましては、その内容は医療費、休業損、慰謝料に分かれているわけでございますが、当然被害者本人に渡るべきあと二つが、現実に本人の手に渡っていないといううわさもございまして、そのようなことがないような配慮、たとえばこれらを一本に扱わないで、それぞれ別ワクとするなどの方法を検討する必要もあるのではないかと思うわけでございます。  次に、制度改善でございますが、第一に自賠責保険傷害保険化ということが考えられるわけでございます。すなわち、自賠責保険の形式は、責任保険とされておりますので、被保険者である加害者の損害賠償責任の発生を保険給付の前提とするたてまえを採用しております。したがいまして、この保険が働きますためには、たとえ推定されたものであれ——自賠法三条は、責任推定の規定だというふうに考えられるわけでございますが、いわゆる条件つき無過失責任ということでございますが、自動車運行供用者、運転者などの加害者側過失及び責任がともかくも発生することが必要とされているわけでございます。そのため、依然として加害者の無過失を理由とする免責の事例、実はふしぎなことに、このような事例が比較的最近ふえているということを裁判例などで見ることができるわけであります。それから、被害者過失の存在を理由とする過失相殺の主張を生むわけでありまして、自賠法の守備範囲をはみ出しました被害者が、保護されないままに放置されるすき間が生じているわけであります。このようなすき間を埋め、保険による保護を自動車事故を原因とする人的損害被害者の一〇〇%に拡大するためには、民事責任という古い理念から脱皮いたしまして、傷害保険化をはかる必要があるというふうに考えられるわけでございます。そういたしますと、自動車事故により人身損害をこうむりました被害者は、加害者が責任があるかないか、あるいは自分過失があるかないかというようなことに関係なく、保険によるてん補を受けるということになるだろうと思います。  次に、保険保護を自損事故へ拡大すべきかどうかという問題がございます。すなわち、自動車損害被害者である運転者自身に対しても補償を行なうべきかいなかの問題でございます。自賠法におきましても、自賠責保険の給付を受ける範囲は、他人に限られているわけでございまして、自動車保有者及び運転者は除外されております。しかしながら、昭和四十五年度の統計によりますと、車運転中に死亡した者の数は全死亡者の三五%、昨年同期比、つまり四十四年同期比一七%増を示しておりまして、事故の先進国型への転換の傾向、すなわち車が「走る凶器」から「走る棺桶」への性格を強めつつあることを明確に知ることができます。  このような事情から見まして、たとえ一方に、自己の引き起こした事故による被害者が賠償を受けないことは正義である、事故防止の観点から必要であるという見解があるといたしましても、補償の範囲を運転者にも拡張することは、これらの者も同じく自動車事故被害者であり、本人はもちろん、その背後にある親族や遺族の保障の必要性を考慮すべきであるという点からいいましても、適切であるというふうに考えられるわけでございます。そうだといたしますと、運転者が車道に飛び出した幼児を避けるために、みずからは電信柱に衝突して起こした自損事故についても救済が受けられるというような、きわめて妥当な解決が与えられることにもなるわけであります。  次に、メリット・デメリット制の問題でございますが、すでに任意の自動車保険におきまして、事故抑止的な効果と保険料負担の適正化を目的として採用されているところのメリット・デメリットシステムの技術を、自賠責保険へも導入すべきかいなかが問題になるわけでございます。  自賠責保険にメリット・デメリット制を導入する際に考慮すべき理論上の短所は、自賠責保険が車両単位の保険であり、運転者単位の保険ではないために、これにメリット・デメリット制を導入いたしましても、運転者が被用者運転者であるとき、すなわちわが国では若年の被用者運転者によって運転される事業用自動車による交通事故が一番多いというふうにいわれておるわけでありますが、このような場合には、使用者ないし運行供用者の被用者に対する監督強化という間接的効果しか期待できません。したがいまして、当面の事故関与者であるところの、つまりみずからハンドルを握り、人身損害の発生に原因を与えている運転者に対しましては、直接的な効果を有しないという点でございます。また、実務面から見ても、事故と車両の結びつきがルーズであるのみならず、基礎となるデータが整備されておらず、実際的効果の予測が非常にむずかしい。また、これを実施する場合の技術的障害がきわめて大きいというような欠点があるわけでございます。具体的には、契約者を単位といたしまして、その保有する車両に関する過去の事故歴及び保険成績をもとにメリット・デメリット料率を算定することになるわけでございますけれども、そのためには、各保険会社の記録をセンターを設置いたしまして集中管理すると同時に、警察庁の運転者管理センターで収集している運転免許所持者ごとの記録を利用いたしまして、契約者単位に名寄せを行なうなど、種々のくふうと手数が必要になるわけでございますし、これに加えまして、車両の売買や実質上の所有者が同一でもデメリットを回避するために車両所有者の名義貸しが行なわれる、また被用者運転者の移動が行なわれるなど、フリート契約のみに対象をしぼりましてもなかなか実施はむずかしいのではないかと思うわけでございますし、また、実際的効果の面からいたしましても、割引率を高くしないと事故抑止的効果が期待できませんし、割引率を高くするということになりますと、最初に取る保険料が高くなってしまうという問題点があるわけでございます。  このほか免許証保険並びに原動機つき自転車の加入強制の強化の問題について申し上げる予定でございましたけれども、時間が参りましたので、私の意見はこの程度で終わらせていただきたいと思います。(拍手)
  6. 久保三郎

  7. 大内正夫

    大内参考人 私、済生会神奈川県病院の院長の大内でございます。  今日、私ら医療機関から見ました自賠責保険について意見を申し述べたいと思います。しかし、医療方面といいましても、私が担当しております救急センターから見たのでございますが、御存じのとおり私らの病院は横浜のちょうど第二京浜が横浜に入るところにございます済生会神奈川県病院という三百ベッドの病院に、神奈川県が百ベッドの交通救急センターを併設いたしまして、私、その四百ベッドを同じように管理しております。ただ、百ベッドのほうの神奈川県交通救急センターに対しましては、いわゆる県から委嘱を受けまして、いろいろのことに対しては県から補助を受けてやっておるわけでございます。ちょうど第二京浜がぶつかって二つに分かれたところでございます。その間にはさまっておりまして、大体救急患者は年間一万くらいあります。そして交通事故は大体その三分の一、三千内外が交通事故でございます。交通事故の入院患者は五百から六百くらいを取り扱っております。御存じのとおり、お金があれば、医師があればこういうものをつくることができると思いますけれども、たいへんなのは運営でございまして、われわれは自賠責を最近は一点単価十五円でやっておりますけれども、昨四十七年度は五千五百万円の赤字を出しました。そしてこれは県が補助しております。そのほかに県が二千五百万円の機械を買ってくれております。  大部分の患者さんは費用は自賠責でやっておりますが、新患の大体九七・五%、入院の七三・五%、これは自賠責でやっております。自賠責保険の問題は前からいろいろ言っておりますが、当局は前に、自賠責よりも健保でもって優先でできるのだということを言いまして、だいぶ医師会から反撃を買ったことがございます。われわれは公的医療機関でございますから、自賠責は十五円取っているといっても、健保のような手続をとってくれといえば、もちろん十円でやるようにしておりますが、この点、当局が非常に説明不足と思うことを私考えるのは、たとえば交通事故が起こった場合に、保険証を持っていけばすぐにそれでやってくれるような錯覚を起こしている患者さんが相当あるのであります。御存じのように、交通事故というものは第三者加害が多いのでございまして、これは社保では扱えません。社保に届けまして、社保が代替してお金を払うわけで、あとでもって社保がそのところの人とか他の保険自賠責とかからお金をもらうわけでありますから、保険者とか保険組合にとってはこういう手続をきらうところもございますし、またある国保では、そういうことは初めから困るのではないかということをいっておりまして、非常に徹底していない節がございます。ですけれども、われわれはそういう場合には、手続を教えて協力してやっていくようにしますが、これは公的機関でございますからもちろんでございます。  この際、ちょっと申し上げたいと思うことは、おもしろいデータがございまして、先ほど申し上げましたように、新患は九七・五%が自賠責保険である、入院は七三・五%だ。ところが在院中の者は六二・四%が自賠責である。退院者を調べると五四・五%が自賠責であるということです。というのは、これはいろいろ解釈があると思いますけれども、われわれのような性格の病院に入る患者さんというものは、軽い患者さんはおりませんでして、たいがい中等症ないし重症でございます。そういう患者さんは入っているうちにたいがい五十万がなくなってしまうということです。五十万がなくなりそうになれば、われわれのほうは、われわれのほうからこれも指導いたしまして、健保で仮払いして払うような形式の手続を患者さんに教えて差し上げます。でございますから、大体入ったときには大部分の者は自賠責でございますけれども、退院するときには大体半分は自賠責がなくなってしまうということでございます。この自賠責がなくなってしまうと——いろいろほかに理由があると思いますが、やはりどうしても五十万は上げなければいけないのではないかと思うのです。五十万を上げると一方では悪徳の医者——これは医者ばかりではなくて新聞記者でも議員さんでもあると思うのですが、一部分不徳者がいるからそれでいけないという意見は私はおかしいと思うのです。ですから、これは幾らにすべきかということは、私専門家でございませんからわかりませんけれども、どうしても増額をして、少なくとも重症者に対しては便宜をはかっていただきたいと思うのでございます。  それから、時間があまりございませんので簡単に申し上げますが、昭和四十四年の九月に自賠責委員会がございまして、私はこれの参考人に行きましたときに、一部非常識膨大の治療費請求する医療機関があるから、この歯どめを考えなければいかぬじゃないかということと、それから後遺症に関する問題としまして、自賠責では症状の固定とか再発ということに対して一定の基準がないではないか、それから後遺症の認定が医者により解釈がまちまちではないか、つまり患者さんは、重く書いてくれるところに持っていって、低く書いているところは困るというようで、医者を選ぶといいますか、動く患者が一部ありました。それから、後遺症の査定が事務官だけであって、これに医者が入ってない、これは困るのではないかというようなことを述べました。しかし、その後このことは非常に改善されまして、現在では非常にいいほうに向かっておると聞いておりますので、このことについては御質問があればお答えいたします。  最後に、その際、私は労災病院に匹敵するような交通病院でもつくって、重症者とかむずかしい査定などをすべきではなかろうかという意見を申しましたが、その後リハビリテーションの問題がやかましくなりまして、ほうぼうにリハビリテーションの施設ができまして、神奈川県では七十億、最終には百億かかるとか申しますが、総合リハビリテーションの施設をつくっております。しかし、この中期あるいは後期のリハビリテーションばかりではなくて、早くやらなければリハビリテーションというのは意味がないんだ、われわれ第一線のような病院に早期リハビリテーションをつくるべきだという意見を言っておりましたが、これもまだあまりいかないうちに、最近われわれとして非常に困る問題が出てまいりました。  これは自賠責に直接関係がないと思いますが、ちょっとお話しますが、いわゆる植物人間の問題でございます。植物人間ということばは非常に悲惨な響きがありますので、適当な訳がございませんで、植物状態患者さんとか、まあいろいろ言っておりますが、あえて植物人間ということばを使わしていただきますが、おもに脳外傷でございますが、脳の外傷を受けて、命は助かった、しかし意識はない、動かない。食べものも食べられない。排せつもできない。そうして植物と同じような状態でいるということでございます。これの患者さんが非常に少ないうちはよかったのでございますが、だんだんふえてまいりまして、私の病院では、先ほども申しました百ベッド、一部済生会のほうも使っておりますが、現在十三人おります。そのうち十人が交通事故でございます。ですから、おそらく全国の病院を考えましたら、相当数にのぼるのではないかと思うのです。これは、なくなった方はもちろん悲惨でありますが、生きても、命があっても、ただ生きておるというだけでございます。それも何年も何年もでございますので、病院はベッドふさぎになって次の新しい患者をとれない。それから、家族も非常な悲惨になるということでございまして、この収容病院をつくるべきではないかと私は考えておるのでございます。  それで、これに対しては国家が最終的には考えることでございましょうけれども、前に、たとえば戦争中に脊髄の損傷患者がふえまして、私、東一に召集中に、脊髄をやられまして下半身が麻痺して車いすの生活をしているという者、こういう方は一つの収容所をつくるべきだと皆さんと一緒に運動したことがございますが、そのとき、軍事保護院、風祭にございますいまの箱根療養所というものがあって、脊髄の患者さんを専属に入れておりましたが、脊髄患者というものは車いすで症状固定すれば動けます。おしっこも訓練によって、リハビリによって自動的にある程度できます。しかし、植物人間になった方は寝たきりでございまして、食べさせるのも排せつも褥瘡の予防もすべて介護を要します。こういう方はもちろんリハビリの適用もないでしょうし、これがますますふえれば、われわれの第一線医療機関でも非常に困る問題と思っております。最近これにつままして、脳神経外科でも非常に心配いたしまして、このことで全国の患者さんを調べ、それをどうしたらいいかということをやるということを聞いております。大体全国で千や二千はあるのかと思っております。  ではまた御質問がございましたら申し上げたいと思います。(拍手)
  8. 久保三郎

    久保委員長 次に、塙参考人
  9. 塙善多

    塙参考人 私、東京海上火災におります塙でございます。  すでに皆さま御案内のように、日本のモータリゼーションの進展はまことに著しいものがございまして、自動車損害賠償保障法が制定されまして自賠責が発足しました昭和三十年当時と今日とを比較いたしますと、自動車の保有台数は百四十六万台から二千四百万台へと実に十六倍にふえております。年間の死傷者数も八万人から九十一万人へと実に十一倍にふえておるわけでございます。  ところで、わが国におきましては、自賠責保険とその上積みの任意の対人賠償責任保険によりまして、被害者救済もしくは加害者の損害賠償資力の確保がはかられる仕組みになっておりまして、その仕組みによりまして今日まで運営されておるわけでございます。  まず自賠責について申し上げてみたいと思います。自賠責は発足以来数回にわたりまして限度額引き上げ保険料率の改定及び制度の改善が行なわれました。今日におきましては、自動車事故による被害者救済の制度として重要な役割りを果たしております。  この自賠責保険の運営は、私ども民間の損害保険会社及び農業協同組合にゆだねられております。その理由は、自賠責保険の運営、すなわち契約の引き受け、契約の管理、事故が起こった場合の事故状況の把握、損害額の調査決定、こういった仕事につきましては、損害保険会社及び農業協同組合が全国津々浦々に持っております組織を使い、その長年の経験を生かすことが妥当かつ適切であろう、こういうことからこのようにきめられたんだというふうに考えております。ちなみに損害保険会社全国の営業店舗は約二千三百、代理店は十数万ございます。私どもは全力をあげて自賠責被害者救済機能が十分に働くようにつとめてまいりましたが、今後ともさらに努力を重ねる所存でございます。  損害保険会社の収入保険料は、日本経済の伸展とともに増大の一途をたどっておりますが、その中にありまして特に自賠責保険の伸長は著しいものがございます。全損害保険会社の元受け収入保険料の中で自賠責の占める割合が、昭和三十五年には六・八%でございましたが、今日では三分の一近くに達しておる状況でございます。  ところで、この保険はすでに御承知のことではございますが、自賠法の二十五条の規定によりまして、保険料率算定上は利益も損失も出ないようにという、いわゆるノーロス・ノープロフィットの原則が適用されておりまして、滞留資金の運用益も、損害保険会社の収支とは切り離されて別途区分経理されておりまして、保険料率の引き下げないしは救急医療体制の整備充実その他事故防止のために使用するということになっております。  以上のように、損害保険会社の元受け収入保険料の三分の一近くを占める自賠責保険には利潤が認められておらず、むしろこの一、二年は経費面でも赤字になっているというのが実情でございます。しかしながら、私ども損害保険会社といたしましては、自賠責保険の持っております社会的意義を考え、公共的要請にこたえまして、この保険の円滑な運営に当たっているわけでございます。  昭和四十四年十一月に、自賠責限度額が、死亡後遺障害につきまして三百万円から五百万円に引き上げられ、その後数年を経過いたしましたが、この間に損害賠償水準上昇しておりますし、かたがた自賠責の収支が黒字基調というようなことも関係いたしまして、この委員会におかれましても、自賠責保険限度額引き上げが決議されたというふうに伺っております。  ただいま申し上げましたように、自賠責保険の運営に携わっておりますところの私どもといたしましては、この限度額引き上げの問題について多大の関心を持っておりますので、そのような立場から若干意見を述べさせていただきたいと思うわけでございます。  昭和四十四年十月の自賠責保険審議会の答申では、「責任保険最低保障であるという本来の性格にかんがみ、今後の保険金額の改定には慎重な態度をとるべきであると考える。」というふうに述べられておりまして、ここでは自賠責保険の性格は最低保障として規定されているわけでございます。私どもといたしましては、この保険は、自動車事故による被害者救済制度の基本的構造といたしまして、社会保障的色彩を帯びた最低保障としての性格を有するものだというふうに考えております。  ここで御参考までに、御承知の方も多いと思いますが、アメリカの例をちょっと申し上げてみますと、自動車事故による損害賠償責任制度は、過失責任主義によっておりますが、被害者救済の実をあげるために、過失の有無を問わないノーフォールト保険が各州の単位で導入されております。このノーフォールト保険におきましては、たとえばマサチューセッツ州の一名二千ドル、約五十三万円でございますが、こういうように必ず補償限度額が定められております。  その理由として考えられますのは、現代のように高度に発展した車社会におきましては、加害者も被害者も、いかに注意を払っていたとしても、自動車事故の発生を完全に避けるということはむずかしい。そこで加害者、被害者過失の有無あるいはその割合をしさいに検討して決定することに非常にむずかしい問題が出てまいりました。また、その反面、発生した損害をすべて加害者に負担させることは、加害者にとってきわめて酷な結果となる。そこで、この双方の問題の調和をはかるために、社会的なコンセンサスを得た最低保障の範囲内において、無過失責任主義による被害者救済をはかるのが妥当であるというふうに考えられたからだと思います。そして最低保障の範囲をこえる損害については、従来どおり過失責任の原則に基づく適正な損害賠償額を加害者に負担させるのが今日において最も合理的な制度であるというふうに考えられております。  このように最低保障という性格づけという面から見ますと、日本の自賠責保険とアメリカのノーフォールト保険とは、まことに軌を一にした、似通った点があると思われます。  なお、いま一つ申し上げますと、自賠責は、実質的には無過失責任主義によっておりまして、過失相殺の適用を大幅に制限しており、また補償額も治療費の実費支給などを除きましては、定額的支払いとなっております。このことも自賠責保険最低保障であることの証左であるというふうに考えております。  このように自賠責保険最低保障としての性格を持つ以上は、その限度額の妥当性を論ずる場合には、一般の不法行為責任に基づく損害賠償額の社会的水準とも比較しながら、慎重に検討すべきであると考えております。したがいまして、限度額を一挙に大幅に引き上げるということになりますと、一般の損害賠償水準に重大な影響も与えることになりますので、私どもとしては反対をせざるを得ないのであります。  次に、自賠責保険の大幅な限度額引き上げがあった場合に、損害保険会社並びに損害保険代理店へどのような影響を及ぼすであろうかということに若干触れてみたいと思います。  このような場合に、任意の対人賠償責任保険の普及率が下がる、あるいは保険金額が下がってくるということで、保険料収入は大幅に激減するであろうことは明らかであります。  問題は、この対人賠償責任保険保険料が減るということだけでありますと、これはたいして重大なことではないと思いますが、しかしながら、特に申し上げたいと思いますのは、任意の対人賠償責任保険保険料の大幅な減収があった場合に、あとで申し上げますが、損害保険会社の保除金支払いのための査定サービス体制及び事故相談体制の整備拡充というような制度改善の努力を私ども必死になってやっておりますが、そういうような進展をおくらせることになってくるということになりますと、自賠責保険の円滑な運営に支障を来たすのではないかということを心配するわけであります。また、全国十数万の損害保険代理店は、扱い手数料が減ってまいりますので、生活が脅かされるということになりますと、損害保険の普及、発展に大きな障害になるのではないかということも、この際申し添えておきたいと思います。  以上、若干の意見を申し上げましたが、私どもとしては、自賠責保険限度額引き上げに反対するものではありません。むしろ、最低保障という意味賃金物価上昇率に見合った程度引き上げは必要であるというふうに考えておりますが、いま申し上げましたようないろいろな問題もございますので、慎重な御配慮をお願いしたいというふうに考えているわけでございます。  私どもは、交通事故被害者救済をはかるために日夜努力を続けておりますが、御参考までに私どもが任意対人賠償責任保険改善のためにとってまいりましたもろもろの方策の中で、若干の点について申し上げてみたいと思います。  まず第一に申し上げたいことは、普及率向上の努力であります。このために自動車保険保険料は、一年間の保険料を一括して支払うというのが通常のやり方でございますが、これを支払いやすくするために、保険料の分割払いの制度を大幅に導入いたしまして、民間企業や官庁に勤務している契約者については、給料からのチェックオフによりまして、その他の一般契約者につきましては、銀行預金口座からの自動振りかえ等によって月払いを可能にいたしました。これは任意自動車保険の普及率を大いに向上させたいという私どもの努力の一つであります。  また去年の十月には、保険約款の改定を行ないまして、担保範囲を拡充いたしました。たとえば、酒酔い、無免許による事故に対しても、保険金を支払うことによって被害者救済をはかったわけであります。  さらに、事故処理サービス体制についても、拡充強化をはかり、近いうちに家庭用乗用車を対象として示談交渉サービスを提供する新しい商品の発売を予定しております。  一方、事故相談の体制も整いつつありまして、各社の全国二千三百の窓口のほかに、現在全国二十八カ所に自動車保険金請求センターを設置しておりまして、今後は、日本弁護士連合会の交通事故相談センターと提携いたしまして、相談体制の強化をさらにはかりたいというふうに考えておるわけでございます。  また、保険金支払い基準につきましても、裁判例に準ずる程度にこれを引き上げることにいたしました。従来、保険会社保険金支払いにあたって値切っているというふうな批判が間々ございましたが、このようなことのないように、裁判例に準ずる程度支払い基準を上げることをきめまして、近く実施に移したいと考えておるわけでございます。  また、万一紛争が生じた場合に備えて、日本弁護士連合会と協力して、被害者のために和解のあっせん、仲裁を目的とする中立機関を設置することも検討いたしております。  その他、自賠責と任意の対人賠償責任保険の二重構造から生ずる手続の二重手間がございますが、契約者、被害者に対するサービス向上を目的といたしまして、自賠責保険金と任意の対人賠償責任保険保険金とをまとめて立てかえ払いする、一括払いと申しておりますが、これをすでに一部実施しつつあります。  このように、いろいろと私どもとしては創意くふうをいたし、努力を続けておりますが、ここで、根本的に現行の制度が自賠責保険と任意の対人賠償責任保険の二重構造になっているということが、契約者サービスの面からも被害者救済の面からも非常に大きな問題点として浮かび上がってきたわけであります。自賠責と任意の対人賠償責任保険の二重構造は、被害者、あるいは契約者の立場から見ましても、いろいろな不都合がございます。契約者にとってみますと、同じ自動車について保険機関の違う二つ保険を手配をしなければならない。また、事故が起こりました場合には、それぞれ別の保険会社保険金請求手続をしなければならないというような状況であります。また、被害者にとってみますと、一回の事故について別々の保険から支払いを受けることになり、二重手間になっております。  ちなみに申し上げますと、諸外国では対人賠償責任保険の付保を法律で強制しておりますが、適正利潤を認めた上で、その運営を全面的に民間の損害保険会社にゆだねておる、こういう状況になっております。  自賠責保険被害者救済に徹した非常にすぐれた点がございますが、この点を生かしながら、また、私ども損害保険会社の創意くふうと任意対人賠償責任保険のメリットが十分に生きたような形で、現在の二重構造を根本的に改定し、この保険を一本にまとめ上げることが、対人賠償責任保険制度として最もすぐれているのではないかというふうに考えておるわけであります。  もちろん実現に至るまでにはいろいろ困難な問題がございまして、自賠責の運営を担当する私ども損害保険会社としましても、なお一そう努力が要るわけでございますが、契約者、被害者に対し十分なサービスが提供できる、よりよい対人賠償責任保険制度を目ざして、私ども損害保険会社は今後とも真剣な努力を続ける所存でございますので、よろしく御指導をいただきたいと思います。  以上で終わります。(拍手)
  10. 久保三郎

  11. 吉田亮

    吉田参考人 私は、本日ここへお集まりいただきました各参考人の方と異なった立場にあります。被害者当人でありまして、被害者の会も、一株運動から、あらゆる自賠責関係書類に至るまでも目を通してやってきた次第でございますが、実はここに請願はしたためてはおりますが、時間に制限がありますので、この前のほうは省略させていただきます。  まず、自動車事故にあった場合、一般の人々はどういうふうにとらえておるかということ。まず九〇%は全然なすすべを知らないということです。しかるに保険の代理店、この人たちが、被害者、加害者ともにひどい言動を飛ばし、双方ともに心配のどん底にたたき落としておる例は幾つもあるのでございます。  最近ではありますが、後遺症のない小さな事件が池袋に起こった。これに対してけんけんがくがくの論争がありましたので、私が、ではちょっと介入してあげましょう。わずか十二万円の示談金で終わるような事件を、十五キロによる、徐行による傷害であるから歩行者に過失があるのだ。十五キロに対する徐行ということばは、交通法規を根本から直さなければだめだ。十五キロというキロ数は徐行の項目に入っていない。法規からいえば、徐行とはすぐとまれる状態をいう。だから十五キロであった場合は前方不注意である。これに対して、歩行者に対しては何ら過失はない。このような無過失のような状態のものを過失過失と片方で責め立てていると、本人もだいぶ心配も深くなり、また加害者のほうの心配も著しいものがここで生まれてきておるわけなのであります。それで私が行きまして、結局損害はこの程度慰謝料はこれで、後遺症は現在のところはない。だから十四万そこそこの示談で済んでしまった。それでも入院は二十六日やっておった。まだこれは自賠責には余りがあります。  しかし、これは単なる軽い例でございますが、交通事故において一律傷害による損害の五十万円というこのもの自体が非常に矛盾しておる。交通事故で同じ事故はない。擦過傷から軽症、中等度、重症、それから先ほどお医者さんの参考人がおっしゃった植物人間に至るまで、さまざまな状態が演じられている。  そこで、私が一番考えることは、この自賠責にはしんしゃく規定が全然なされていないことが残念である。金額のみ一律にただ出せばいい、やればいいのだ、このような状態であって、一般の庶民は絶対救うことができない。盛んに新聞で、自賠責黒字というのは、そういった新聞や何かが出ますけれども、これは表面上のことであって、裏で泣いている人が九〇%以上なんです。しかもこの九〇%の人は一〇〇%の傷害者のうちの一〇%の集まりのことを私はいま申しておる。軽症者は私のところにはあまり来ない。大阪から一時間も電話で来る。だれも話を聞いてくれない。入院しておっても、完全看護のキリスト病院でさえも、話をすればノイローゼだ、更年期障害だ、あなたは少し精神に異常があるのではないか。医者が自分の発見し得ないことに対しては非常に無礼な口をきいておる。  それで、結局は損害のほうに入っていきますけれども傷害による損害後遺症として第一にあげられるのは手、足の切断事故、切断事故に対しては、それが治癒してしまえば等級に該当されて示談もそうむずかしくない。二番目になると用廃はちょっと値段がかかってくるわけです。かりに関節が動かなくなる、仮関節の併用、そういったことや、関節のきかなくなった用廃、これに対しては局部にいろいろな神経症状もあり、また関節の不能があり、これは第二番目によろしい。次に三番目は失明、これは外見から見てもすぐわかることで、後遺症の等級にも載っておる。それと四番目は醜状、要するに極度に醜状が外面にあらわれておる、こういうものは一見して皆さんがわかり得る状態であるから同情も買うし、示談も成立が早い。しかしここで一番難病なのは、頭部神経系統の損傷者である。これは国において、もはや昭和四十四年において打ち切っておりますが、まだこれに対する完治の方法はなされていない。私も四十一年の九月十四日に追突を受けまして、それ以来ほんとうに毎日、気候の変わり目とか、またはいやみを言われたり、いろいろな角度からひどい症状が出ている。この頭部または神経系統障害者は公で認めていないかというと、これは労働省でりっぱに認めておる。結局、業務中の事故であった場合は自賠保険の金を消費した時点において休業補償に切りかえる。それで五年、八年と長い期間を休業補償を受けている患者も大ぜいいるはずです。ところが、それにも該当できない人たちはひどい生活苦に追い回され、家族全体が被害者になってしまう。私は娘三人と妻と五人の家族でございますが、一たん乗り出した船はとめるわけにはいかぬ。教育問題においても民生保護を受ければ差別待遇される。それでなくてさえも、学童の特別資金を国が出してくれる制度が出ていることは皆さんも御存じだと思います。これは義務教育完全国負担前提だからもらってくれませんかと教員から言われて受けたところが、わずかその年の九月に、すでにもうおまえはこじきじゃないか、こういうことばを弄されて学校当局に厳重な抗議を申し込んで、その日をもってその救済制度も打ち消しをしておるような始末でございます。ですから、弱いとなったらどこまでも弱くなってくる。これは一般庶民のほんとうの重症者を抱えた家族の悲嘆のどん底は、皆さんにははかり知れないものが確かにある。  ですから、保険審議会があっても、皆さん各代表の方々の名前も全部知ってはおりますが、その中に肝心な病気の経験者またはそういった人たちを親身になってお世話した経験者がいないということ、それで皆さんは傷害による損害の百万円を叫んでおりますけれども、擦過傷程度のものは五十万でも間に合うことがある。しかし神経傷病では六年、七年、いや一生かもしらぬ。もう私もいまちょっと言語障害が出ておりますので、非常にしゃべりにくいのでございますが、そういった人たちの苦労を皆さんはよくキャッチして、これを何とかしなければいかぬ。私はそのために自費をはたいて無料でもって飛んで歩っておる。これはいま保険士や何かというものも多少出てきております。後遺症のない人も補償は大丈夫。これはその人たちに私の目の前で計算させて、それでよろしいとなれば払ってくれる。これは一人は、相手は弁護士さんの場合が一件と、一件はタクシーのそういった保険士と称する人が一件で、これは二件とも後遺症のない人の立ち会いをやってやったことがあります。ですから、その点に対しては後遺障害や何か、軽症患者に対しては心配はないんだが、問題はこの傷害の重症者をどうするかということなんですね。この場合ですと、ほんとうの重症者は三日間で五十万が飛んでしまう。上腕の場合は治療費だけでもって複雑骨折、あまりひどくなくてもまず五十万は消費する。そして休業補償慰謝料は支払われない。下肢の場合は大体百万ぐらいかかる、というのは入院日数が多いということです。しかし神経傷病に対しては限度がない。どんどんどんどん悪化の一途をたどっておるということ。一般の人には査定基準でもって六級とか七級とか言われておりますが、私は、裁判所で脳神経外科の専門医の主治医が二時間も説明したにもかかわらず、弁護士のうまいうその実現と医学書のコピーによって、残念ながら裁判のほうは敗れましたけれども、しかし司法といえどもこれであってはならない。もう一般の失業補償を受けてない人々は、どこからも休業補償は受けてない。ほんとうのどん底生活であって、家族全部でもって働かなければならぬということ、この事態を先生方はどう考えるかということであります。  特に都会の人たちは、まだわれわれのような者がいるから何とか力はつけてあげますけれども、いなかの場合には、これが通用しないことが往々にして聞かれる。これはなぜか。損害賠償をうんと取ったために、あいつは自動車事故をいいことにしてだれだれの田をあれだけ取ってしまった、また山を取ってしまった。むしろ自分が殺人者であり、殺人未遂者であることを忘れて、なぜ欲のほうにだけいっておるのか。また、それが本来の姿のように聞く人々の神経がどうかしておるのではないかと思う。実際これは日常茶飯事になっておる事件でありますので、もうなれが皆さんを麻痺させておる。  水俣患者が一千五百万から三千万円、飛行機事故がやはり三千万円、交通事故は私もここに一千万円は唱えておりますけれども、一千万円では人によっては足りない。これはやはり物価上昇とともに、家族構成、またはそれに準ずる詳細な調べのもとに、一千万から三千万の間を国家において支払うべきが当然ではないかと思う。  それと傷害による損害、これはここに参考人にあがられた方たちの意見を総括しますと、大体百万説が多いようですが、私は五十万から五百万までの線を強調したい。なぜならば、十年、十五年、一生、治療に通わなければならない患者も、この頭部神経系統患者には大ぜいおるのであります。重症患者と目された人は、おそらく再起は不能であり、しあわせが今後絶対にないことは確証できるはずであります。ですから、その意味におきましても、最低額は五十万であっても、最高額は五百万までの、傷害による損害のしん酌の規定を持たなければいけない。これを持つには、やはり審査委員会がうんと勉強をしなければいけない。これに対しては、やはり被害者または被害者の指導者、そして病気の経験を持つ者を三分の一加えていただけたら、何らかの形でこの人たちを救うことができるのではないか、私は常にそう痛感している。  ですから、子供たちとうちの中で内職をしながらいろいろ話をしておりますけれども、電話がかかってくる、さあ被害者だということになれば、おとうさん行ってあげなさいとみんなで励ましてくれる。しかし、人間の心は常に平らではないということ。これにかかって家庭紛争を起こして離婚している人は大ぜいいるのです。自殺者もいる。私自体が三回家出しております。いやみを言われると、からだが縮まってしまう。夫婦げんかもできないのかと妻に言われた。私も実は情けないけれども、それをやられると、からだが縮んでしまってどうにもならぬ。しびれてきてしまう。それで何も言わずにぱっと出て、十日間ぐらいうちに帰らぬ。宿屋や知人宅を転々と歩いているような始末であります。ですから、これは私のみならず、このような境遇におとしいれられた人々の苦しみは、じょうぶな人には絶対に考えつくような症状ではないのであります。ですから、この傷害に対する損害は——水俣病患者が新聞またはテレビをだいぶにぎわしておりますが、われわれ重症患者が坐り込みや泊まり込みをやったら、まずもって一晩か二晩じゃないかと思います。おそらくからだを相当増悪することは、断固として言い切れることであります。しかしこの神経系統の損傷者は、自賠責においても非常にごまかされる点が多いということ。また十二級である、十二級しかやれないといって十二級で下がってきたような人が、夜中に猛烈にからだが悪くなって、脳神経外科の門を午前二時ごろたたいて診察を受けるような、認定後ですらそういうことになっている。また、この病気は特質がありまして、普通の者は現時点より障害が始まっておりますが、大体二十日から一カ月後、それから三カ月後、一年後にも重症患者が出ていることは事実なんであります。もっと長いのでは五年後に出ているのもいる。しかし、この場合は、お医者さんも、あなたはあのときのけががもとであるということをおっしゃっても、もう保険関係も何も関係ないから、詳細に話はしてくれるが、まだ自賠責保険関係や金銭的示談の取引云々がある場合は、なかなかこの査定の等級のあれがむずかしいということであります。  以上、とりとめない話で時間になってしまって残念でございますが、一応私の言ったことばを頭に入れて、今後ひとつよろしくお願いいたします。(拍手)
  12. 久保三郎

    久保委員長 以上で参考人からの御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  13. 久保三郎

    久保委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺武三君。
  14. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 参考人の皆さま方、たいへん御苦労さまでございます。  私どもは、交通安全対策委員会ですから、主として被害者を救済しようという立場、なるべく事故を絶滅していこう、こういう立場でございます。したがって、そういう角度からの御質問になろうかと思います。  まず須藤参考人にお伺いをいたしますが、交通事故相談センターでございますから、いろいろなことが相談に上がってぐるかと思いますが、私どもは、この自賠責が適用をされて実際に査定をされ、賠償額が決定される、それの大もとになるものが、大体警察の調書というのが非常に重要視をされてくるのではないか、こういうふうに考えているわけですが、この警察の調書に関していろいろ問題のあったようなことはないかどうか、この点についてまずお伺いをしたいと思います。
  15. 須藤静一

    須藤参考人 お答え申し上げます。  私ども自賠責請求についてすぐ警察の調書そのものをということはございません。御承知のとおり、警察の事故証明というものがございまして、あれでやっております。  それから、被害状況につきましては、これは請求者あるいは近間の者がっくり上げて出すというのが実情でございます。  ただ一言申し上げたいのは、これは訴訟なりましたような場合でございますが、いわゆる不起訴記録というものの取り寄せができないということで非常に私ども難儀することがございます。と同時に、検察庁にあります書類のうちでも、再現不能のものということで、実況見聞調書のようなものは出してもらえますが、それ以外のものは、実際裁判所のほうで提出命令をされても取り寄せができないというようなことで、実情の発見と申しますか、それが非常に困難になるということがございます。これは、しばしば最高検あたりにいろいろ促してはおるのでございますが、これがやはり捜査の秘密とか、あるいは不起訴になれば個人的名誉の問題というのがございますので、ある意味で、ある点で了解がついてかなり出してくれている検察庁もございますが、全然出さないところもあるし、これを上のほうから一本でもって命令でと申しますか、最高検の通達などで出させるようにすることがいいか悪いか、もしまずくなると、現在便宜をはかってもらえているようなところが全然出さなくなるというのが痛しかゆしで、この問題は常に私ども委員会といたしまして問題にはいたしておりますが、まだ結論と申しますまではいっておりません。これが実情でございます。
  16. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 それでは塙参考人にお伺いいたしますが、保険会社として保険代理店があって、それぞれ事故調査をおやりになっていると思います。そこで、実はこの場合でも警察の事故証明書ですか、これがやはり一番重要視をされているようですが、その事故証明書そのものに疑問を持つということは、ほとんどどうもなされていないようでありまして、私、実はそういう事件に直接関係したことがあります。私がその事故証明書を見ましたら、とたんに疑問に思った、そうしておかしいじゃないかと言ったら、いや私どもは何と言われようと警察の言っていることを一番信頼しているのです、こういう御返事なんです。それはおかしいということで再度私が乗り出して調査をさせ直したら、初めてそこで再調査ということが出てきた。その結果は、いや実は間違っておりました。それで、三条件に適用するので、これは免責条項になって保険金支払いませんという第一回の決定、それはあくまでもその警察の事故証明書が基になっているわけでございます。そのもの自身には疑いを持たない、常識的に判断してもちょっとおかしいのではないかということですら、実はそういうことがあるわけですが、その辺の指導はどういうふうにおやりになっているでしょうか。
  17. 塙善多

    塙参考人 お答えいたします。  自賠責保険金支払いにあたりまして、警察の事故証明を添付することを原則にいたしております。したがいまして、私どもとしては警察の事故証明を見まして、特に疑問がない場合はそのとおり手続をするということでございまして、いま御指摘のように一見しておかしいというふうな場合には、さらに詳しく調査をいたしまして、現実の事故の状況を確実に把握してから保険支払い手続をするというようにいたしております。御指摘のように、中には事故実情と警察証明の書いた内容が符合しないというふうなケースが間々ございますが、その点は両当事者を呼び出して詳しく実情を確かめるというふうに指導いたしております。
  18. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 指導されて、そのように実際に行なわれておればけっこうなんですが、実は現実はそうではないのです。そうではないものですから、こちらから指摘をしておかしいではないか。第一番の質問に対しては、いや私どもは警察の言っておることを最大に信頼をしておるのです。こういう事故なりますと、ほかの方がいろいろがたがた言ってこられます。しかし、一番信頼をするのは警察の言っておることなのです。こういうことですから、現実はそういうふうに行なわれておるのですから、もっともっとそういう面を厳重に指導されることが必要ではないだろうか、私はこう思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。  それから、金沢先生にお伺いをいたしますが、確かにメリット・デメリット制の採用については、いろいろ非常にむずかしいものがあると思います。しかしながら、現状はいわゆる災害頻発者といいますか、あるいは非常に無謀な運転をするといいますか、そういう者でもその期間中は何回事故を起こしても補償がされる、こういう制度になっておりますね。これについては若干不合理だと私思うのですが、確かに現実の面としてメリット・デメリット制で、まじめに運転し、安全運転を行なって事故を起こさない者に対する保険料率の割引、この辺まで広げていきますとたいへんむずかしいかと思いますが、そのような不注意といいますか無謀運転を繰り返して何回も事故を起こしておる、こういう者に対する何かいい方法考えられないものかどうか、お聞かせを願いたいと思います。
  19. 金沢理

    金沢参考人 お答えさせていただきます。  先ほども申し上げましたように、メリット・デメリット制を自賠責保険の中に導入する根本的な問題点と申しますのは、繰り返しになるかと思いますが、自賠責保険が車単位の保険である。それと運転者を結びつけるということが非常にむずかしい。  ただ、これは先ほど申し上げませんでしたけれども、決してできないことはないわけでございます。理論的に不可能だということではございませんで、お金をかけてやれば、たとえばコンピューターのけた数をふやしまして、お金をかけてやるということでございますればできるだろうというふうに考えられるわけでございます。  ただ、問題はいまも御指摘がございましたように、優良な運転者のほうが、運転者と申しますか、車単位でございますので車でございますが、その優良なほうが大体九五%くらいを占めておりまして、劣悪なほうが五%くらいということになりますと、割引をするほうはむずかしいのではないかと思いますけれども、悪いほうに対しまして割り増し料率を取っていくのだということは不可能ではないというふうに思います。  それからもう一つは、従来いろいろ御議論のあったところでございますが、いわゆる運転者を単位にした保険制度に切りかえるということが、被害者保護というような観点から考えますと、私などはたいへんむずかしいのではないかというふうに思っておりますけれども、かりにそういう方法をとれば、事故多発者というものに対する割り増し料率を課するというようなことは比較的簡単にできるだろうと思うのですが、私個人の考えを申し上げさせていただきますと、根本的にはやはり事故多発運転者というのは、社会にとってたいへんに好ましからざる運転者でございますので、行政処分、免許証の取り上げというような形で運転者群から排除してしまうほうが筋論としては正しいのではないかというふうに私は考えておる次第でございます。保険を用いまして悪質運転者を排除するというのは、いわば二の次の方策ではないか。まず第一に、行政処分による運転者集団よりの排除というほうがまず先ではないかというふうに考えております。
  20. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 私ども交通安全という立場から見ると、そのような一種の制裁的なものを加えることによって交通安全がより一そう守られていく、こういうふうに考えたものですから、そのような質問を申し上げたわけでございます。  それから、大内先生にお伺いをいたしますが、とかく医療の問題が非常に多いのです。確かに先生は公立病院でございまして、たいへんまじめにおやりになっておるから赤字になってくる、こういうことでございますが、実は前回の自賠責保険料率の引き上げを審議した場合にも、いろいろな例が出てきておりまして、私どもが実際に施療の内容を見ていきますと、医者に行っておる時間で、こんな何十本もどうして注射が打てただろう、一秒に一本ずつ注射を打っておらなければとうていできないのではないかというような、いわゆる過剰診療といいますか、そういう例が幾らもあったわけなのであります。  私は、日本の救急医療体制そのものに実は問題があると思うのです。救急車が拾い上げて、もよりの病院へ連れていくということになりますから、入ってきた、そこの医者がたまたま悪い医者であれば、ああ五十万円ころがり込んだ、こういう実は情ない状態にあろうかと思います。そういう状態の中で傷害保険金、その陰に泣く方が非常に多いわけですから、私は引き上げなければならないと思うわけですけれども、一方そういう悪徳の制度そのものにやはりメスを入れなければいけないのではないだろうか。  確かに公立病院その他はこの問題でたいへん困っておられるのですが、一方そういう制度を悪用してたいへんにもうけていらっしゃる方もたくさんおる。こういうことでございまして、そういう面ではたいへん疑問に思っておるわけでございます。お話のございました健康保険と例の交通事故の任意診療の問題も、実際はそういうことはほとんど一般の方はおわかりになっていない方もあろうかと思いますが、医者のほうでは、もう頭から拒否をする医者がある、全然そういう制度すら教えない、こういうのが実は大半でございます。  いろいろ調べていきますと、保険と任意診療とでは、任意診療はべらぼうに治療費が高い。なぜだ、こう言っていきますと、いや保険のほうは実は租税特別措置法による七五%の控除が認められておるけれども、任意診療は全然そういうものがないのです。したがって、税金ががっぽりかかってきますから治療費は高いのですよ。こういうわかったようなわからないような説明をするわけです。しかも、それだけならいいのですが、東京あるいは大阪、ところによって同じ傷でも治療費がだいぶ違うのです。調べていくと、そういう制度になっているのです。  私はそういうところにたいへん問題があると思うのですが、さらにこの保険の制度そのものの中では、傷害というものは先ほど来お話がございましたように一律に取り扱われてしまっておる。軽い者も重い者も中等の者も全部五十万ということでやられてしまっておる。ここに問題があるのであって、これも逆に悪徳医者には利用されておりまして、ちょっとひどいような、これは五十万以上かかるというようなものは、うちではとても手がつかぬからよそへ行ってください。大体かすり傷くらいの、この範囲で十分もうかるぞと思うものはどうぞいらっしゃいというような、被害者にとってはたいへん情けないような状態があると思うのです。こういう問題を、先生は医師会ではないわけでございますからあれですが、医者の立場として何とかうまい方法はございませんか。
  21. 大内正夫

    大内参考人 お答えいたします。  先ほどちょっと触れましたけれども、私も公的病院の院長でございますが、医師会の会員でもございますので、非常にむずかしいのでございますが、かつてそのときに、自賠責委員会で、さっきお話したように、どこでも悪いやつはいるんだから、医師会のほうでもやはり良心的な先生は困っているんだ。だから、これはどうしても排除すべきだし、また、医師会がこれをやるということは非常にむずかしいのではないかと思っておりますが、医師会自身は、その地方の医師会でもってそういう人に対する査問とか審査等をすればいいのではないか、こう言っておるのですが、この前弁護士会の会長さんに言われましたが、医者は自分たちの同族をかばって困る、大内さんもほんとのことを言わないのではないかとだいぶ言われましたけれども、医師会自身がやるということも非常にむずかしいのでございまして、私個人の考えとしては、医師会も含んでもけっこうでありますが、そういうものを含んだ査定機関をつくるべきではないかという意見をそのとき申し上げました。それは私個人の考えでございますから、あしからず……。
  22. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 もう一問だけさせてください。  厚生省の滝沢局長お見えになりますか。——いまもお聞きをしておりますように、いろいろ問題があるわけです。特に交通事故で任意診療で入った場合には、交通事故自賠責会計に請求をせられる制度は、いわばノーチェックです。健康保険組合のほうはたいへんその診療内容がチェックされる。そうして健康保険会計から支払われるわけですけれども、任意診療の場合はとかく医者が書いたままになっておって、診療内容そのものがチェックされてない。ここにも一つ大きな問題があるわけですけれども、こういう点についてはどうなんですか。厚生省はどのようにお考えでしょうか。
  23. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 具体的に先ほど大内先生からもお話もございましたように、この制度なりのチェック方式をおつくりになるということは可能性考えられますけれども、一般的に健康保険というような制度はチェック方式を採用いたしておるわけでございます。したがって、支払い基金等にこういうような問題を委託してチェックするというようなことが制度的にできれば、可能性はないとはいえないと思うわけでございます。  それから、一般的に地域の医師会その他が、医療の内容について会員のそれぞれを検討すると申しますか、評価すると申しますか、そういう制度というものは、わが国には非常に成長していない実態がございます。外国では、特にアメリカにおきましては、地域医療関係者がその医療内容をチェックするという制度が歴史的にも非常に強化されておるわけでございますけれども、わが国におきましては、そのようなお互いの医療内容を、公的な立場で会員相互の立場においてチェックするというようなことについての考え方が成長しておりません。これが一つ、今後の医療全体の立場からは大きな課題であるというふうに思うわけでございます。
  24. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 思ってもらっておるだけじゃ困るので、そういう現実があるんだから、厚生省としては一体どうしていかれるのですか。今後もそういうノーチェックでやっていかれるのか。そういう気持ちはないのですか、いま非常に問題があるのですよ。
  25. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 いまお答えしたのは、要するに制度として、この制度の中でチェック方式を御採用になれば可能性があるのではなかろうか。厚生省という立場では、所管しております社会保険の中でチェック制度をいたしております。そういうところに委託するというようなことについても検討されて、それが実現する可能性はなしとはしないというふうに思いますので、お尋ねの、厚生省としてこの自賠の問題なり医療機関のそのような医療請求の内容に対するチェックをどうするかということについては、この制度自体としてお考えいただきたいとういふうに考えるわけです。
  26. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 医療制度としては考えられないわけですか、そういう保険とかその他と関係なく。
  27. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 医療制度として考えることで、後段に申し上げたような医師会員相互における地域医療におけるチェック方式というものが、外国ではございますし、そういうことが考えられるのでございますが、個々の医療について、いわゆる行政の立場からその可否を論ずるということは、どこの国でもこれは不可能に近いむずかしい問題でございます。したがって、やはり医療相互の団体等におけるそのような考え方が今後成長しなければならないというふうに考えます。
  28. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 時間が参りましたので、あとの方に質問を譲ります。
  29. 久保三郎

  30. 唐沢俊二郎

    ○唐沢委員 各界で活躍せられておる参考人の皆さま、きょうはいろいろ貴重な意見を聞かしていただきましてありがとうございます。また、皆さまは各方面において被害者救済に御努力せられておりまして、心から敬意を表します。  最初に、須藤先生にお伺いしたいのですが、いま先生から保険金額引き上げ等のお話がございました。物価の値上がりだとかあるいは保険収支の改善だとかいろいろ理由をあげられました。実際、保険金額の問題は保険料ともからんでくるし、さらに保険料を上げるということになると、これはいろいろまた物価の値上がりにも関係する非常に複雑な問題だろうと思うので、ここでは先生に一問手続のことを伺いたいと思うのです。  いま相談所は、自治体の役場にあったり警察にもあるとか、また先生方にもお世話になっておる。しかし、私も調べたのですが、地方自治体ではあまりそういうのは普及してないのがあって、被害者がどこへ行ったらいいかわからないようなこともあった。今度自動車事故対策センターというのができまして、その支所も各県にできるということで、相談をするところはだんだん整備されてくると思うわけです。  そこで、今度は内容になりまして、請求手続の問題で、先生がいま改善しなければいかぬというお話がございましたけれども、時間がありませんので、端的にいってこういう点を直したらどうかという点がありましたら教えていただきたいと思います。
  31. 須藤静一

    須藤参考人 現在、公的の相談所というのもたくさんございますが、その間の連携がいまのところきわめてとれていない。東京は、東京都と私どもとが一緒に提携してやるのでかなり能率はあがっておると思いますが、実際その被害者が、一体どこへ相談に行くかということ、まず行くところからして問題でございます。と同時に、今度の運輸省のほうの新しい対策センターでございますが、これは相談は全然お扱いにならないというお話でございますが、こういうものがばらばらにあってはいけないんだ。  私、この前参議院で申し上げたのですが、一つのところへ行って、いわばデパートの地下の名店街みたいになって、そこでもって相談はここでやる、それから保険金請求は次のここでやるというように、一つのところで全部やれるようにしなければ、ほんとうのところはいけないんだということでございます。ですから、その実際わからない人がどこへ行って何をやるんだということのために、一カ所でもって全部やれるような組織といいますか、形態をつくるべきである。  私ども弁護士会でやっておりますが、御承知のとおり、弁護士会というものは裁判所の中にありまして、裁判所というのは、皆さんは別でございましょうが、なかなか人が来にくいところでございまして、思ったような能率はあがらない。今後の保険金請求手続につきましては、現状では自賠責請求の代行手続をわれわれの弁護士会、つまりセンターの各支部で手広くやってはおりますが、いま申しましたように、場所が悪いというせいもありまして、能率が期待したほどいってないところが多うございますし、手続の簡易化という点につきましては、何といったって一般の人は印鑑届けしてない人が多いのですね。ところが請求についてはみんな実印でべたべた押さなければならないというような点からしてまず変えて、ほんとうに信頼できる人が代理請求するような場合は、その辺の手続からしてまず変えるべきではないかということと、もう一つは、調査事務所が積極的に職権調査すればもっと早くいくのではないかいう点を私はまずもってしたい、かように考えている次第でございます。すべて一カ所に行けば何でも済むのだという組織をつくりたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  32. 唐沢俊二郎

    ○唐沢委員 次に、金沢先生にお伺いいたしたいわけでありますが、いまも話が出ましたけれども、いまの保険は公平の原則に反するのではないか、もっとメリット・デメリット制を大幅に導入をしたらどうかというようなお話がありました。先生は、われわれが聞いているところでは、ドライバー保険の権威ということになっておられるわけでありますが、メリット・デメリット制の話が出てくると、当然ドライバー保険が関連して出てくるわけでございますが、このドライバー保険に対して反対の意見もいろいろあるわけでございます。たとえば責任の主体を運転者から運行供用者へと次第に移してきたという歴史的経緯があるわけでございます。ですから、今度ドライバー保険を導入するということになると、営業車などの場合、経営者の責任が軽くなる、あるいは実際に運転している人の責任が非常に重くなるのではないかというような疑念があるわけでありますが、これに対してどういうように考えておられるか。  もう一点、ついでにお願いしたいのですが、ドライバー保険を現行の自賠責保険に代替するというようなものとして考えておられるのか、あるいは補助的な機能をこれに果たさせようとお考えになっているのか。もし先生がお考えになっているというよりも、そういうような考え方があるわけですが、その場合、補助的なものとしてこれを使うと、保険システムが非常に複雑になって、事務量の負担も増加するというような、こういう反論もあるのでございますが、こういう点について先生の御意見を伺いたいと思います。
  33. 金沢理

    金沢参考人 ただいまドライバー保険につきましてたいへんに御造詣の深い御意見を承りまして、実はいまの御質問でかなり部分が御説明されているようなふうに承ったわけでございますけれども、これは御承知のように、運輸省に設置されましたドライバー保険研究会というのが、十数回にわたりまして、当時運輸省の自動車局の参事官でございました山上参事官が座長をつとめられて十数回の会合をしたわけでございますが、これは御承知のように、実はまだごく簡単な中間報告をしているだけでございまして、結論が出ておらないわけでございます。と申しますのは、この免許証保険につきましては、すでに公明党の交通部会案、それから自民党の参議院議員であられます岩動道行氏の案が二つ具体的なものとして発表されたわけでございますけれども、これは先ほど御指摘もありましたような、運転者の責任が運行供用者のほうに移りつつあるということ、これは世界的な趨勢でございますし、かりに運転者に責任保険をつけさせるということになりましても、運転者の責任が機能する、つまり保険が働くためには、責任保険でございますので、運転者の責任が働かなければいけないのだ、ということになりますと、現在の制度では、運転者の責任は、現行民法七百九条の一般の過失責任であるというふうにされておりますので、その過失責任を呼び起こすためには、過失責任を運転者に負担させるためには、故意、過失、因果関係損害の三つの要素被害者側で立証しなければいけないというような結果になりまして、現実に保険をつけさせても、現在の民法七百九条の過失責任を運転者に課するという前提である限り、保険が機能しないというような仕組みになってしまうということになりますと、運転者の責任を自賠法三条の責任にまで強化しなければいけないけれども、それでははたしてそういうことが社会的に妥当であるかどうか、それからまた、運行供用者と運転者の責任の関係をどうするかというふうなたいへんにむずかしい問題が出てくるわけでございます。  したがいまして、実はこれは最終的な結論ではなくて、現在ドライバー保険研究会は、いわばペンディングの状態と申しますか、中断された状態であるわけでございまして、委員会結論につきましては、これはあるいはいずれ出るのか出ないのか私にはわかりませんので、運輸省のほうにお尋ねいただきたいと思うわけでございますけれども、その研究会の経過から申しまして、大勢の意見は、責任保険としてのドライバー保険というのは、構造的に非常に無理があり過ぎるというふうな考え方におよその意見は一致しているというふうに考えてよかろうかと、これは私の印象でございまして、別に決をとったわけでも何でもないわけでございますが、そういうような研究過程になっているわけでございます。  ただ、もしもせっかくいろいろと議論されておりましたドライバー保険というものを生かして使うのだというふうな方向でものを考えた場合にはどうすればいいかというふうになりますと、私はむしろドライバー保険というのは、責任保険ではなくて、運転者の自損事故を対象とする一種の傷害保険のような形で実現させることは十分意義があるというふうに考えておりますし、その仕組みとしては、やはり自賠責保険というものの体系を乱さないように、自賠責保険の一環として、いわば保険保護の拡大という形でこれに組み入れるというふうなことを考えているわけでございます。  これは私見でございますけれども、すでにある出版物にも発表してございますので、詳細はそれに譲りたいと思いますが、基本的には、いまのような考え方をしたらどうだろう、メリット・デメリット制というようなことに関連いたしまして、免許証保険は非常に議論されたわけでございますけれども、これも実は詳細は「交通学研究」の第二号というのに私書かせていただいておりますけれども、実際問題としてこれを責任保険として機能させることはなかなか困難だというふうな、現在ではそういう心境に至っております。  たいへん簡単でございますが、お答えになっておりませんかもしれませんが、これで……。
  34. 唐沢俊二郎

    ○唐沢委員 次に、大内先生にお伺いいたします。  治療費の問題は、いま質問がありましたので、私も繰り返しませんけれども、非常にひどい人は乱診乱療が行なわれているという人もあるし、実際にはもうちっとももうかっていないのだというお話で、いま先生のお話だと、赤字であるということで、私は非常に驚いた次第でございます。ただ、大内先生のような先生ばかりではないわけでございまして、どこにも悪い者はいると開き直らないで、ひとつ医師会としてぜひ誤解のないようにしていただきたいと思いますのは、自賠責の問題というのは、当然保険金額引き上げという問題が出てくるわけですが、そのときの一番ネックになるのは、やはり治療費の問題ではないかと思うので、ひとつ局長のほうもよろしくお願いいたします。  たいへん原始的なことを伺って恐縮なんでございますが、私も四年間交通安全をやっているものですから、ときどき地元で聞かれるのですが、自動車事故だとよく脳をやられる方が多い。脳外科の先生を探しているうちに非常に不幸な結果が出てくる。それで、緊急医療センターですか、ここには先生方おられるのでしょうが、ここにも三交代で先生のいないこともある。いわんやわれわれのほうは過疎の無医村もございますものですから、あっちこっちの村に行って脳外科の先生をさがすのに何時間かかるということなんです。どうしても脳外科の先生をふやしていただくほかはないと思うのですが、ほかにこの対策はないのか。これがもしできれば、先ほどおっしゃった植物人間、こういう不幸な事例も減るのではないか、かように思うのですが、その点はいかがでございますか。
  35. 大内正夫

    大内参考人 お答えいたします。  治療費の問題は先ほどお話しいたしましたので、脳外の問題でございますが、脳外の一人前といいますか、先生方はみんな一人前と思っておるかもしれませんが、脳神経外科学会で認定する認定医という制度がございまして、大体一人前の脳外にするのに七年かかります。いまは五百から六百くらい一これは学会のことを見てまいりませんのでわかりませんが、五、六百人は認定医というものがおると思います。それから、認定医をとらなくても、一人前だと自他ともに許しておる方も相当数ございますから、数としては相当あるわけでございます。  ただ、一つの外科の手術なりあるいは診療なりは一人ではできませんで、最低二人、どうしても一カ所に三人の脳外科が大体必要でございます。これは脳外ばかりではなくて、医者がやはり都会のほうとか、また研究機関とかいうものに寄っておりまして、全体としては脳外科が少ないと思いますが、これはもしかわれわれのセンターというような二次的のものが——ファーストエードをやるところはどこ、二次的にやるところはどこというようなことが行政的にうまく分配できるようになれば、そこへ持っていけば必ずそれがいるというようになるのではないかと思います。  私らの病院も脳外科三人おりますが、三人おりましても、毎日の当直というものは不可能なのでございます。それで外科と一緒になりまして、うちは五名ないし六名当直しておりますが、外科医がいないときは宅直でおって、そのときは呼び出すというようなかっこうにしております。これはなかなかいろいろなことがまじりまして、今後の問題と思っております。
  36. 唐沢俊二郎

    ○唐沢委員 次は、塙さんにお伺いいたしたいわけであります。  被害者救済の立場から、われわれは何とか保険金額限度額その他支払い基準引き上げたいと考えておりますが、もし保険料据え置きということを前提とすると、これに限度がありましてなかなか十分なことができない。できれば全部の人に任意保険に入ってもらえばいいわけでありますが、いまのところ半分くらいというようなお話だと思っておるわけです。  そこで、いま塙さんからお話がありました二重構造がいけないのだということでしたね。自賠青と任意の両方一緒にしたものを大体考えて言われたのではないかと思うのでございますが、そうすると、たとえば任意保険強制保険一緒にすれば、これは違うものを手続的に一緒にするということだと思うのですが、契約も支払いも事務手続は簡素化されるのだ。だからそれだけ経費が安くつくのだから、保険料はそれほど上げなくても保険金額を上げられる。これは経済の原則からいって当然だと思うのでございますが、そこで、任意保険のほうは利潤を生んでいいのだ、自賠責はノーロス・ノープロフィットだ、こういう原則があるわけですね。そういう全然原則の違った二つのものを手続的に一緒にするということがほんとうにできるのかどうか。もしできた場合には一ほんとうの私見でけっこうなのでございますが、任意保険強制保険を一緒にした保険金額は、どの程度上げたら普及率は減らないで十分な効果をあげることができるのか、この二点についてちょっと教えていただきたいと思います。
  37. 塙善多

    塙参考人 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、自賠責と任意の対人賠償責任保険、この二つが両々相まちまして被害者救済なり加害者の賠償資力の担保がはかられておるわけであります。私ども、いろいろと日夜考えておるわけでありますが、どうしても行き着きます問題は、二重になっておることが契約者サービスなり被害者救済の面から見てもやはり一つの非常に大きな問題ではないかというふうに考えたわけであります。  すでに御案内のように、自賠責と任意という二本立ての制度は日本だけであります。世界各国どこにもこういう二重でやっておる国はないわけであります。諸外国は御案内のように、車を運転する場合には対人賠償責任保険幾ら以上つけなければならぬという法律がありまして、あとは民間の保険会社へ行ってその保険を買うということになっておるわけであります。ただ、日本ではいろいろの事情がございまして、昭和三十年に自賠責が発足をして今日に至ったこの十数年間における実績というものがすでにでき上がっておるわけであります。  そこで、一本化をわれわれとして何とか考えたいと思っておりますが、この実績というものを一応現実の姿として認めながら解決をはかっていくというところに、いろいろのむずかしさがあると思います。ただいま御指摘のように、一本化することによっていろいろ合理化がはかれるということもございますし、さらに任意保険の持っておりますいろいろなメリットを生かすということができると思います。  私ども考えておるのは内容的に幾つかの方法がございまして、まだ一つのものに固まったわけでもございませんし、また、それぞれについて具体的に細部まで煮詰めておる状態ではございません。  そこで、私見にわたるわけでございますが、いずれにいたしましても、私どもとしては、現在自賠をつけて、さらに任意保険をつけるというようなことが、一つは普及率を十分に高められない理由ではないかと思います。そこで、現在世の中から求められておりますのは、たとえば保険料を一ぺんに払うというのでなしに、毎月払うようにしてもらえればもっとつけやすいというよりな声もございます。それから先ほど来問題になっておりますように、メリット・デメリット制を十分に生かしてほしいというような希望もあるわけであります。そういった世の中のいろいろな希望を受け入れた形で新しい商品をつくり出して、この商品を徹底的に宣伝をして売る。この新しい商品には、事故が起きた場合に、契約者である加害者がいろいろなことにわずらわされないで、保険会社被害者と直接話し合う、円満に話をつけるというふうないろいろなメリットを入れるならば、この商品は相当広く売れていくのではないか。そういう形で保険の普及をはかることが被害者救済にそのままつながっていくのではないかというふうに考えておりまして、実現までにはいろいろとむずかしい問題もございますけれども、私どもとしては、ぜひこの問題に正面からぶつかっていきたいということで、いろいろと努力を傾けておる次第でございます。  以上でございます。
  38. 唐沢俊二郎

    ○唐沢委員 最後に、吉田さんにお伺いしたいと思うのですが、自動車事故の救済というのは、お金だけではないと私思うのです。自賠責はいま先生からお話がございまして、アフターケアのことでちょっと伺いたいのですが、たとえば非常に重度の脳障害の方は一つの病院に収容したらどうかという大内先生からお話がありましたが、一家の支柱をなくされた御家族の方で、たとえば交通遺児とかなんかの問題でずっと長い間の対策なんでございますが、今度自動車事故対策センターの法案ができて結局交通遺児の方に若干でありますけれども、貸し付けができることになりましたが、そういう一家の支柱をなくされたあとの残された家族の方に対して長期的な対策として、ちょっと時間がありませんので、特にこういうことだけは考えてほしいというのがありましたら一言お願いしたいのですが……。
  39. 久保三郎

    久保委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  40. 久保三郎

    久保委員長 速記を始めて。
  41. 吉田亮

    吉田参考人 それでは簡単に御説明申し上げます。  一家の支柱をやられた重症患者の家庭においては、補償対象が、税金の裏づけのとれない人は、現在でも七百円しか支払われていない。それと、今度長い闘病生活に入っておる場合には、子供たちも一緒になって働かなければならぬ。結局は教育の機会均等化がここで大きく破られておるということ。これに対しては、親の不幸をしょわなくてはいかぬということで、平等の線から大きくはずれるから、この点は子供の平等性、教育の平等性は特に国会において強調してやっていただきたい、そういうことであります。
  42. 唐沢俊二郎

    ○唐沢委員 終わります。
  43. 久保三郎

    久保委員長 次、井上泉君。
  44. 井上泉

    ○井上(泉)委員 須藤先生にまず最初にお尋ねしたいのですが、判決を受けてもまだ支払いを受けてない方がたくさんある、こういうお話でありましたが、そういうような人に対しては救われないものか。それに対する措置というものは、救われないものとするならば、これは非常に気の毒なことであるし、それに対する欠陥を補助しなければいかぬわけですが、これについての御説明を簡単に承りたいと思います。
  45. 須藤静一

    須藤参考人 お答え申し上げます。  先ほども申し上げましたように、二年たって全然払われていないというものは、たしか二三%ございます。これは大体二年間というものは強制執行をやるなりなり、やってやり抜いた上でどうにもならない、これは交通事故判決にかかわらず、大体不履行といいますか、救済されない例としてはそのぐらいあるということは普通考えられます。ですから、これは一般的にいってどうにもならないんだ、だからぼくはよく言うのですが、もうしようがないから判決を額にしてかけておけということを言うぐらいで、これはどうにもなりません。  したがいまして、今度の新しく運輸省でお考えなりました対策センターのほうで、こういったものについての貸し付け金の制度をお設けになったということは非常にけっこうなんでございますが、私、この前も申し上げましたのですが、貸し付け金というものはあとで返さなければならぬという負担つきの金で、またそれをどこからどうやって回収するのかという点も非常にむずかしいので、これはむしろ給付金にしてしまったほうがほんとうじゃないかということを、この前たしか参議院で申し上げたのですが、立てかえ払いにしてあとから加害者、判決による被告のほうから何かの形で取るかどうか。貸し付け金で回収するということになりますと、これは負担つきのものを、判決で勝った人が、借りたはいいがまた返さなければならないというために、負い目を負うということはまことによろしくないので、そのぐらいの金でしたら、むしろ立てかえ払いというようなもので給付金にするのがほんとうじゃないかと私は考えます。私の例では、ほかに方法はございません。
  46. 井上泉

    ○井上(泉)委員 その方法を見出さないと、被害者としてはたいへんなことだと思いますので、そのことについてはまた後日審議をいたしたいと思います。  そこで、塙先生にお尋ねするわけですけれども自賠責保険もやっと赤字がことしは解消されるということ、黒字になったということは、その自賠責黒字であるということになると、今度は任意のほうはまた大幅な黒字になっておるということが考えられるわけでありますし、保険会社の会計をどうこうとここで論議をするつもりはありませんけれども、いま塙参考人も、自賠責限度額引き上げその他については御異論がない、こういうふうなことが最後の御意見として出されたわけでありますが、そのお気持ちには変わりはないのかどうか。
  47. 塙善多

    塙参考人 お答えいたします。  自賠責限度額、現在の五百万、五十万、これが現在のもろもろの情勢の中で十分だというふうには考えておりません。物価水準賃金上昇、こういうものと見合う形に是正されることは当然であろうというふうに考えております。ただ先ほど申し上げましたように、いろいろな問題がございますので、その辺を十分御勘案いただきたいということをお願いしたいと思います。
  48. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そこで、きょうの参考人の方ほとんど全員が自賠責限度額引き上げをそれぞれの立場から言われて、そのことについては賛成されておると思うわけです。  そこで、金沢先生にお尋ねするわけでありますが、この強制加入の中に、原動機つきの自転車というものがまだたくさんあるけれども、これがまだ取り残されておるわけですが、これについて先生方の間ではどういうふうな研究がなされておるのか、御見解を承りたいと思います。
  49. 金沢理

    金沢参考人 それでは簡単にお答え申し上げます。  このたび軽自動車につきましては、車検制度が近く導入されるということで、車検とリンクするので、自賠責加入強制の手段があることになったわけでございますが、付保率五〇%台というバイクにつきましては、現在のところは強制加入ということになっておりますけれども、これは履行を確保する手段がないわけであります。これは被害者保護の見地から非常に憂慮すべきである。まして、今後自賠責がかりに自損事故——これはバイクは非常に自損事故が多いわけでございますが、自損事故保険保護を拡大するということになりますと、なおさらのこと強化する必要が出てくる。非常に簡単な方法でございますけれども、たとえばバイクの耐用年数と申しますか、寿命がかりに三年とか四年であるということになりますれば、最初原動機つき自転車を購入する際に、耐用年数と見合った保険期間の長い自賠責保険加入をさせるということが一番簡単な方法なんでありますが、保険料等の関係で、保険料を四年分払うのはたいへんに負担だというようなことになりますと、これは一番簡単な方法でありますが、採用しにくい。簡単に申しますと、いまの方法が私としては一番適当な方法ではないかというふうには思っております。
  50. 井上泉

    ○井上(泉)委員 警察庁の鈴木交通局交通企画課長さんにお尋ねするのですけれども、原動機つき自転車による被害というのはかなりあるわけですが、いま金沢先生の御意見等を拝聴して、原動機つき自転車をやはり強制保険の対象にすべきであるという、こういうふうなお考え方が浮かばないのかどうか、その点について御見解を承りたいと思います。
  51. 鈴木金太郎

    ○鈴木説明員 私のほうは実は保険のほうは直接担当いたしておりませんのですが、何ぶんにも、たとえば免許の年齢から申し上げますと、原動機つき自転車の運転者というのは若うございます。十六歳からでございますので、そういう意味合いにおいて、やはり被害者補償関係から、先生の御配慮のような方向は私は首肯できるのではなかろうか、こういうように思っております。
  52. 真島健

    ○真島説明員 ただいまの件に関しましては、確かに強制保険といいますか、そっちの方向に持っていくべき性質の問題だとわれわれも考えておりますが、金沢先生のおっしゃったように、履行確保の問題あるいは保険料を、一括して四年分とか五年分とか取ってしまえるかどうか、そういうような問題をいろいろ含んでおりますので、われわれとしても検討中でございますが、ここですぐにやれるというところまで申し上げる自信はございません。
  53. 井上泉

    ○井上(泉)委員 大蔵省の安井保険部長さんにお尋ねするわけですが、けさの日経新聞に「自動車保険を抜本改正、大蔵省意向」こういう記事が載っておりますが、この記事の内容のような改正の意向であるのかどうか、あらためて御見解を承りたいと思います。
  54. 安井誠

    ○安井説明員 先に結論から申し上げますと、私どもが大蔵省として意向を固めたわけでも何でもないわけでございます。この委員会等でいろいろ御意見が出ておりますので、私ども一生懸命にどういう形がいいだろうかという勉強はいたしておりますが、その勉強の一部というと、また語弊がございますが、そういうはっきりした形ではまだ出ておりませんで、こういう議論もあるだろう、こういう議論もあるだろうということをやっている段階でございまして、どうもそこまではっきりした形での意見ではないということでございます。
  55. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それでは、意向が固まっていないとするなら、これを改正するについて、たとえばいま国、地方公共団体、三公社の持っている保有車両、これもやはり強制保険の対象になっているわけですが、これがやはり保険料は四億円であって、受け入れの保険金が約三千万円、そうすると、保険会社としてはほんとうに大もうけの対象になる。そのことは反面、地方公共団体としては、保険料負担というものがたえられない状態にあるわけですが、こういうふうな場合のこういう保有車両についての特例の措置というようなものはやはり考える必要があるのではないかと思いますが、その点についての大蔵省の御見解を承りたいと思います。
  56. 安井誠

    ○安井説明員 先生の御指摘のように、国だとかあるいは都道府県等の車両の事故率が低いことは事実のようでございます。しかし、現在の自賠責保険というのが、全車両が加入して保険数量をなるべく広い範囲で広げて、それによって損害のてん補をしていこうというたてまえをとっておりますので、これらの自動車だけが事故率が低いから、その中からはずしていくということになりますと、それに類似するいろいろな形が出てくるわけでございます。その辺が、あるいは先ほど来御議論になっておりますメリット・デメリットの問題として片づけるべき問題なんだろうと思うのでございますけれども、この問題も、これからの自賠責審議会の際にはおはかりいたしたいと思いますが、現在まだこの段階で確定的な御返事はいたしかねるわけでございます。ただこれが、いま保険会社は、自賠責保険でございますから、例のノーロス・ノープロフィットになっておりますので、それは別に保険会社自身の収益には関係がないということでございます。
  57. 井上泉

    ○井上(泉)委員 保険会社の場合でも、一つ保険手続をするのに任意と強制とは、これはやはり一人の人がいて一人の手続をするわけですから、保険関係では、事務量まで配分をしてやっていると、こういうふうな話をされるわけですけれども保険会社としては、実際はそこまではやっていないと思います。自賠責のほうに事務費がかかってしまって、任意のほうの事務費を負担しているというようなこと、実際問題として保険会社も利益を求める会社ならそのくらいのことはやっていると思うわけでありますが、そこで、やはりこういうふうな特に事故率の低い、しかも公共団体の車等については、特例等を考えるべきであるということを念頭に置いて御検討願いたいと思います。  そして、またそれに関連して損害保険協会でも、七月一日から交通傷害保険の料率を、死亡あるいは後遺障害担保二〇%、治療費担保一四・三%に、こういうふうに引き下げをやっているが、こういうことは、やはり自賠責保険というものの料率も、こういうものと関連して考えなければならないと思うわけですが、これについてどのような指導をしようとしているのか、その点を保険部長から御意見を承りたいと思います。
  58. 安井誠

    ○安井説明員 先生、いま御指摘ございました傷害保険の問題でございますが、これも実は保険会社の料率につきましては、大蔵省の認可事項になっているわけでございます。事故率が下がってまいりますれば、当然保険料率を下げていかなければいかぬというのがたてまえでございまして、認可を与えますときに、利益が過剰にならないように、また逆に損失も生じないようにというような見方を常にいたしているわけでございまして、昨年も任意の自動車保険の改定に、保険料率の引き下げはいたしませんでしたが、担保範囲の引き上げ、範囲の拡大等による実質的な料率の引き下げもいたさせておりますし、また火災保険等につきましても、昨年来三度ばかり引き下げをいたさせているわけでございます。  こういう意味で、少なくとも保険会社のほうは、半ば公共機関でございますので、配当も最高率一一%以上はさせないという規制をいたしているわけでございまして、この料率につきましては、常に見直して、現状に合うようにさせていきたいというふうに考えているわけでございます。
  59. 井上泉

    ○井上(泉)委員 塙参考人にお尋ねするわけですけれども自動車損害保険は、農協の共済と損害保険協会の関係保険二つあるわけですが、農協関係がこの事業を始めてからまだ日がたっていないけれども、やはり交通安全対策に類するようなものに資金を投入しておる額は約百億に近い、こういうことが、さきにここで参考人を呼んでお聞きしたときにあったわけですが、それに引きかえて、農協の保険関係とは比較にならぬほどの保険料収入を持っておる損害保険協会のほうでの交通安全対策等に出す金というか、いわゆる社会に還元する金というようなものは、非常に少ないように思うわけですが、これについての参考人の御意見を承りたいと思います。
  60. 塙善多

    塙参考人 お答えいたします。  先ほどもちょっと触れましたが、滞留金の運用益につきましては、定められました方式に従って、毎決算ごとに一般の勘定とは別に区分経理いたしまして積み立てております。その中から赤十字あるいは済生会等への寄付を行なっておりますが、なお百数十億の中から税金を払いまして、現在約百億余りの金が留保されております。この金を、審議会の答申の中に述べられておりますように、主として交通安全対策のために使用するということで、大蔵省、運輸省の御意向も伺いまして、これを有効に使用するというような考えでおります。
  61. 井上泉

    ○井上(泉)委員 有効に使用されるように、これは期待をして、その経過を見守っていきたいと思うわけです。  そこで、大蔵省に再度お尋ねするわけですが、こういう農協の共済で百億余りのものがそういうふうに支出ができるというようなことから考えても、損害保険協会としての自動車保険による利益というものはかなりあるのではないか。それともまた、農協共済のほうが特別な操作をやってそういう資金を捻出しているのかどうか。これは大蔵省の監査の対象、所管ではないと思うわけですけれども、員外利用等が農協共済の場合にはかなり多くなっているわけですが、その員外利用がいいのか悪いのかということの論議は別といたしましても、保険会社自動車損害保険による利益というものはやはり被害者に還元をするような、そういう指導をなすべきだと思うわけでありますが、この被害者に対する還元の状態というものが、今度の審議会の中でもかなり重要に論議をされねばならないと思います。その点についての保険部長の御見解を承って、私は質問を終わりたいと思います。
  62. 安井誠

    ○安井説明員 いま御指摘ございました自賠責の運用益につきましては、先生も御指摘のように、自賠責審議会において議論されましたときにも、保険料の引き下げのほか、救急医療施設の整備その他の交通事故対策に還元しろという意味で、まさに被害者に還元をしろという指摘がなされておるわけでございます。  農協の場合、私よりもあるいは先生のほうがお詳しいと思うのでございますけれども、農協共済の対象としております自動車が実は交通事故の発生率が低いものでございますから、どういたしましてもそこに金が残ってくるという形になるわけでございます。それでは農業協同組合の分だけ保険料を引き下げればいいという議論になるわけでございますが、全国一律にこの自動車保険自賠責というものはやっていこうというたてまえから出てまいりますために、五年ばかりたちますと、その残りの分を——先生御指摘の百億円の中には、運用益のほかにその残りました調整準備金というものも含まれておりまして、それを農協のほうではリハビリテーションセンターその他に非常に有効に使っておられるということでございまして、私どものほうも損害保険会社の運用益等につきましては、これを運輸省とも御相談して、先生の御趣旨のように極力有効に使っていくように努力してまいりたい、かように考えております。
  63. 久保三郎

    久保委員長 平田藤吉君。
  64. 平田藤吉

    ○平田委員 私は日本共産党・革新共同の平田です。参考人の皆さんに幾つかの点について意見を聞かせていただきたいと思っております。  まず最初に、塙さんにお聞きしたいのですけれども、損保業界の立場から見て、現在の自賠責補償限度額は、先ほどのお話ではいずれにしても引き上げねばなるまい、しかし大幅に引き上げることにはどうも賛成しかねるという御意見を述べておられますけれども、今日の段階でどれぐらいまで引き上げるべきだとお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
  65. 塙善多

    塙参考人 お答えいたします。     〔委員長退席、太田委員長代理着席〕  金額的にどのぐらいがいいかということについて、業界としてまとまった見解は持っておりません。したがって、全くの私見としてお聞き取りいただきたいと思います。  昭和四十四年に五百万にやって、それからすでに約四年近く経過しております。その間の物価上昇状況、賃金上昇考えますと、この五百万は、私個人の見解では七百万ないし八百万ぐらいの線が妥当ではなかろうかというふうに考えております。
  66. 平田藤吉

    ○平田委員 もう一つお伺いしたいのですけれども、損保業界として自賠責はどういう位置にあるのだろうかということなんです。そして先ほどもちょっと触れられましたけれども自賠責補償限度額を大幅に引き上げるということになると、損保業界に具体的にはどういう影響をもたらすのか、損保業界として自賠責そのものについてやはり位置づけがあって、そして引き上げをめぐる問題が出てきているのだろうと思うので、お伺いしたいわけです。
  67. 塙善多

    塙参考人 お答えいたします。  自賠責そのものは、先ほどもちょっと申し上げましたが、経費の部分はこの一、二年来赤字を出しております。それから保険金支払いに充てる部分、これは純保険料と申しますが、純保険料部分は別途区分経理されておりまして、自賠責の純保険料だけを、入ったもの出たものということで毎年繰り越していきまして、保険会社の収益とは全然関係させない形で経理されております。そういう意味で、自賠責そのものは、保険会社から見ますと、収益を生む源にはなっておりません。一般の経費のほうがむしろ赤字になっているということであります。  ただし私どもは、一つには被害者救済あるいは自賠責の持つ社会的な意義というような面から、私どもと農協にゆだねられました以上、これを公正に運営していくという責任がございますので、そのような姿勢のもとにやっております。ただ、この自賠責保険損害保険の思想を非常に一般の人に植えつけたということは、間接的に保険会社の運営にとってプラスになっていることは事実であります。また、任意の自動車保険を普及させる上にもこれが非常に役立っておるということはまさしく事実だと思います。  そういう意味におきまして、私どもとしては、自賠責そのものは収益を生む源にはなっておりませんけれども、これを公正に運営をしていきたい。同時に、これが保険の普及発展に十分に役立つ作用をもしているという認識を持っております。     〔太田委員長代理退席、委員長着席〕
  68. 平田藤吉

    ○平田委員 はっきりお聞きしたかったわけですけれども、いまのお話で、大体自賠責が任意のお客さんを拡大していく推進力になっているという位置にあるのだというふうに私は理解しております。  それから、塙さんの書かれた幾つかのものを拝見しておりますけれども、大体そこのところにポイントが置かれていろ。そこから大幅引き上げ任意保険に影響を及ぼすということで、大幅引き上げの問題について御意見を述べておられるというふうに理解しております。  次に、金沢さんにお伺いしたいのですけれども、先ほどの話で、死亡の場合限度額一千万、それから傷害の場合百万、これくらいにはすべきじゃないかという趣旨のお話でしたけれども、やはり一応の根拠をお持ちなんだろうと思うのですが、そこら辺をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  69. 金沢理

    金沢参考人 ただいま御質問ございましたのですが、数字的な根拠というのは別に持っておりません。ただ、航空機事故死亡者に対する損害賠償額との比較でございますとか、それから昭和四十四年の改定以来のいろいろな社会情勢の変化というようなことから、切りのいい数字で言うと、死亡による損害についての支払い限度額は一千万円が目標であろう、それから傷害については先ほどちょっと申しましたけれども、一律に引き上げるということであれば——一律と申しますのは、現在の形で引き上げるとすれば、充足率九〇%というふうに見ると七十万円ぐらいでよろしいのではないか、重傷と軽傷と分ければ、重傷のほうを百万円、それ以外は五十万円というような形での引き上げ考えられるというふうに申し上げましたのですが、ただ、いま御指摘のような数字的な根拠はちょっと持っておりませんので、申しわけございません。
  70. 平田藤吉

    ○平田委員 私は、平均七十万というのは支払った結果のものだろうと思うのです。したがって、限度額が相当額でなければ間に合わないというのは、私もずいぶん交通事故問題を持ち込まれていろいろやっておりますけれども、ぶつかる問題、ぶつかる問題、この矛盾にはいつでも悩んでおるわけです。そういう意味で、一定の基礎があればというふうに考えましてお伺いしたわけです。  次に、須藤さんにお伺いしたいのですけれども、最近の交通事故訴訟判決で示された総損害認定額、これはおおよその目安が出ていると思うのですけれども死亡傷害、それから慰謝料認定基準などについて、最近の例でけっこうですが、お聞かせいただければ幸いだと思います。
  71. 須藤静一

    須藤参考人 先ほどもちょっと申し上げましたが、裁判所の認定いたします慰謝料といたしましては、京都地裁の六百万というのが最高でございます。それから東京におきましては、四百万ないし四百五十万というのが目一ぱいのところでございます。それから地裁におきましてのいわば一審判決といたしまして、あるいは一審の和解といたしまして認容されました金額につきましては、手元に四十六年までの分はございますが、死亡につきまして申しますと、これは一番高いものだけでございますが、昭和四十一年には千二百二十八万円というのが最高でございます。それが逐次上がったり下がったりもその年によってございます。四十二年が千八百八十九万、四十三年になって下がりまして、千七百万が最高になっているというようなことでまいりまして、最高の判決というのは四十四年の二千七百三十七万、現在手元に四十六年までの分しかございませんが、これが最高でございます。四十五年が二千百四十五万、四十六年になりまして二千四百四十七万ということになっております。  それからまた、負傷の場合でございますが、これはやはりおもしろいことに四十四年が最高で、二千八百五十三万という判決がございます。これが最高でございます。それで四十六年が千四百三十四万。これはいろんな事件がございますせいですが、これが最高のものは、過去において負傷については二千八百五十三万が最高であり、死亡については二千七百三十七万が判決として最高だ、こういうふうに申し上げていいかと思います。  それから和解の場合でございますが、これは話し合いになるのですが、和解で最高と申しますのが、死亡の場合、四十五年の三千百万という例が最高になっております。それから負傷につきましても、同じく四十五年に二千七百万というのが最高の和解の例のようでございます。
  72. 平田藤吉

    ○平田委員 もう一つお伺いしたいのですけれども、現在損保業界で示談代行保険とかいうのがいよいよ売り出し間近というふうに聞いておりますけれども須藤さんのこの問題についての見解をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  73. 須藤静一

    須藤参考人 これにつきましては、われわれ弁護士仲間では、要するに保険会社加入者、契約者のために示談代行するということは弁護士法違反ではないかという意見がかなり強うございました。しかしながら、これは代理でかわってやると言い条、やはり保険会社自分のふところに関することでございますから、他人性ばかりじゃなくて、自分の利害得失にも関係することでございますし、これはまたそれである程度考えなければならないのじゃないか。と同時に、これはわれわれもうっかりしていたのでございますが、外資系の会社でございますAIUなんか早くから示談代行ということを約款にうたっておりますので、これをいままで見のがしておいて、ここに来て日本の会社が売り出すについて文句を言うのはいささか手おくれになりますのと、同時に、この保険加入者である加害者に有利になることは間違いないのでございますが、それならばどうして被害者に有利になるようにはかるべきかということで、私どもはいろいろ損保協会側と折衝いたしまして、その結果として、今度は被害者が直接請求保険会社に認めさせるということになりまして、直接請求して保険会社被害者ということになりますれば、いわゆる他人性というものは保険会社について薄くなります、本人なりますから。そういう意味弁護士法違反という問題はなくなってくるというか、かなり問題がなくなってくるというので、一部弁護士の中にはかなり強硬な人もありましたが、私どもとしてはどうしたら被害者に有利に転換できるかという点で直接請求を認め、かつ支払い査定基準もある程度われわれのほうに公表してもらうとか、それを毎年裁判所の例にならって改定していただく、あるいは被害者保険会社の間のトラブルにつきましては、われわれのセンターのほうでもって何とかあっせんする、あるいは純然たる第三者機関としてのあっせんということも考えるとか、そういうようなことで、この新しい保険がどうすれば被害者に有利になるかということをはかってやっていくつもりでおりますから、ひとつ御了承いただきたいと思います。
  74. 平田藤吉

    ○平田委員 厚生省にお伺いしたいのですけれども、健保でいま交通事故の診療を認められていないようですが、それは立てかえでやるなどはやられてはおるけれどもあとから限度額内は自賠責のほうを押えるという形になっておりますね。なぜこれを健康保険で全面的に見ないのだろうかという点について、ひとつ見解を聞かせていただきたい。
  75. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 保険局の責任者でございませんので、法律的な正確なお答えというわけではございませんけれども、先ほども参考人のお話にございましたように、健康保険あるいは国民健康保険等では第三者被害のものは一応取り扱わないという一つの原則がございますので、そういう観点からこの自賠の問題についての取り扱い、それがあとから保険のほうでめんどうを見るというような直接的な形でない姿になっておるというのであろうと思われます。
  76. 平田藤吉

    ○平田委員 それから、いまいろいろ検討を始めているというふうに聞いておりますけれども、その検討の中に、先ほど大内さんのほうからもお話がありましたけれども交通事故病院、それから脳外科の問題、さらにリハビリテーションを建設する問題、また植物状態にあるといわれる患者の休養病院、こういうものがどうしても必要だ、このことについてはどなたも痛感されているわけですけれども、政府としてこれをつくっていくというふうに考えて検討されているかどうか、お聞かせいただきたい。
  77. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 脳神経外科の医師の養成につきましては、一般的には、先ほど大内先生からお話のございましたように、七年ないしは十年自信を持つ医療ができるようになるためには必要でございまして、これについては、数年来厚生省で予算措置をいたしまして、それぞれ脳神経外科学会等に御依頼申し上げまして、講習会を実施し、専門医の養成につとめておりまして、現在約千四百名程度の医師がおります。しかしながら、全国に四千七百に及ぶ病院、診療所を含めた救急告示施設に医師を分配された姿を見ますと、まだきわめて不十分でございますので、この点につきましては一そう努力いたします。  リハビリテーションにつきましては、ただいま五カ年計画の医療供給体制を検討いたしております中に、重要な医療供給の柱といたしましてリハビリテーション、特に初期リハビリと慢性リハビリとに分けまして、これの対策を講ずることにいたしております。  それから専門病院等につきましては、救急医療センターというものを、ただいま全国に約百七十カ所、補助金等によりまして整備を急いでおりますが、これも地域的に見ますとまだ不十分でございますので、大体広域市町村圏単位にきめをこまかくいたそうということで、第二次的な計画に入っております。これを整備いたしますと、約三百六十の広域市町村圏に特に交通に関係する救急センターの整備が実現できるものと思っておりまして、先ほど大内先生がおっしゃったような交通災害だけを特段、専門に取り扱う病院というものでなくて、一般病院の機能の中にそういう機能を付与いたしまして、センターとして充実いたしてまいるという構想でございます。  それから、植物人間についての専門病院の設置につきまして御指摘があったわけでございますが、この点につきましては、医療関係者にとりましては、植物人間という病状の方の医療看護は、看護、医療ともに非常に困難な問題でございますので、その方だけを集めた病院というものの医療関係者の姿を考えましたときに、私は専門病院の設置は非常にむずかしかろうと思います。ただ国立の療養所等、結核患者の減少等に伴いまして、将来やはりその病棟の一部にそういう特定な方を収容することによって、一般病院のベッドがそういう方で長く埋められておるというような医療機能全体を考えましたときに、やはり国立等においてこの問題に取り組む必要はあろうというふうな見解を持っております。
  78. 平田藤吉

    ○平田委員 次に、大内さんにお伺いしたいのですけれども、先ほどもおっしゃっておられたのですが、交通事故患者に対する救急体制、これはかなり問題を持っておるわけですけれども、当面特に力を入れなければならないとお考えになっている点をお聞かせいただきたいと思います。
  79. 大内正夫

    大内参考人 私は行政に携わっておる者じゃございませんから、ほんとうの私の意見でございます。  救急センターができまして、私のほうも救急センターを一つ扱っております。方々にできましたけれども、建てるだけでなくて、やはり運営がたいへんなのでございますから、私、書いたとともございますけれども、やはりそれをやるという情熱を持っておるところにやらせるべきじゃないか、これが必要じゃないかということと、それから行政的に、いま交通救急というものが私的医療機関にだいぶ負わせられまして、われわれ公的機関との連絡がどうしても不十分なところがございますが、やはり最終的には行政をもって第一次収容施設、それからセンターあるいは後方の病院というように分けて、そしてどういうふうにするかということを皆さんで考えて、いわゆる系統を立てなければなるまいと考えております。平田委員 最後に、吉田さんにお伺いしたいのですけれども、先ほどもなり具体的な事例をあげられてお話しになられた。非常にたいへんだと思うのです。私どもも見聞きしており、自分のところ自身でもやはり被害を受けておりますから、そういう意味では深刻だと思っております。特にやはり、たとえば限度額を、おっしゃったように五十万から五百万にし、一千万から三千万にして、重症者やたいへん困難な家庭でそれで間に合うだろうかということになりますと、とてもこれは間に合わない。そういうことで当然社会保障体制との結合を考えなければならないのじゃないかというように考えているわけです。そういうふうに打開策を講じていかなければならないと思うのですけれども、いまやはり被害者の立場から見て、特に力を入れてもらいたいというふうにお考えになっている点をお聞かせいただきたい。
  80. 吉田亮

    吉田参考人 神経系統または脳をおかされた患者、これは外見非常に健康そうに見えて、その実はからだの復帰は望めない。こういう人たちは百人中十人くらい、一割くらいじゃないか、結果論としては。私のまわりに集まってくる方々はほんとうの重症者が多いということ。軽症者の人たちは示談屋や何かがどんどんきめていってしまう。ですから軽症者の人の来るのはまれであって、私のところに来る人はもう何も相談の対象になれないような気の毒な方々ばかり集まってきておる。ですからそれをしんしゃくいたしますと、軽症患者に至っては五十万やって間に合う人もだいぶあるわけです。しかし五百万まで補償されても、傷害による損害はそれでも全然間に合わない実情の方方のほうが多い。五百万でもまだかけ足りないのですが、そういうことは保険云々よりもこれは国家において保護しなくちゃいけない。私はそう考えております。ですから私もこういったことに対しては、重労働者でありましたけれども、重労働者でまじめな人間ほど追突に弱いということは脳神経外科の先生からも言われておる。まじめな人間がこれにおかされた場合にはほとんど助からない。結果論からいって、結局は重労働によって脊髄がつぶされている。それにより、衝撃によって起こる症状が大きな症状となってあらわれてくる。だから、まじめな人ほどこの悩みに苦しみ、結局は自分の、主人という座を捨ててほとんどの人がうつ病的な症状になってしまう。壁に向かって話をして泣いて叫ぶ、そのようなことであって、大阪から電話でもって一時間以上も来る、九州からも来る。こんな始末でございますので、こういうことは保険賠償その他を含めまして、これは別に国家においてもなお考慮の幅を広げていただきたい、そう思っております。
  81. 平田藤吉

    ○平田委員 いま参考人の皆さんからたいへん貴重な御意見を聞かせていただいたわけですけれども、私どもは、やはりここで何としても限度額は大幅に引き上げなければならないし、これだけでは片づかない。これは大内先生にお伺いしたがったのですけれども、先ほど来問題になっておる医師会単位の額、交通事故の場合には何割増しあるいは二倍、二倍半、三倍というふうにきめられておるところもあるようですが、医療機関がそうならざるを得ない日本の医療体制全体にも問題があるんですね。ですから、そこだけついて解決する問題じゃないというふうに考えているのです。そういう意味で、事故の発生から手続上の問題、補償額の問題、それから後遺症に対する治療の問題、遺家族に対する問題など山積しているわけですが、われわれも大いに研究いたしますが、ぜひひとつ今後も大いに発言されて、いま検討中だと言われているわけでありますから、多くの皆さんが満足できるものを政府がつくり上げるように努力をともにしていきたいと思います。  きょうはどうもありがとうございました。
  82. 久保三郎

    久保委員長 沖本泰幸君。
  83. 沖本泰幸

    ○沖本委員 きょうもまた平田さんから結論を言われてしまいまして、あとつけ足しみたいになるのですが、この次は順番を変えてもらったほうがいいと思うのです。時間がありませんので、ばらばらになると思いますが、とりあえず急ぐものから御質問したいと思います。  厚生省にお願いしますが、沖繩が復帰して一年で、いろんな問題が出てきているわけです。先ほどから救急医療体制あるいは救急患者の問題、いろんな点が出ているわけですけれども、とりわけ沖繩の復帰に伴って沖繩関係のおくれというものが重大な問題になってきております。マスコミも取り上げてきておりますが、現在の沖繩の救急医療体制をどうするかということはもう緊急かつ重大な問題だと思っているのですが、この点について厚生省はどういうとらえ方をしておりますか。
  84. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 沖繩の復帰に伴いまして、社会保険、国民健康保険等の適用が、従来は療養費払いでございましたものが現物給付に変わりまして、この普及率が九八%という現状でございまして、きわめて急激な医療保障の一面が生まれたわけでございます。したがって、沖繩におきましては、交通災害のみならず、一般的な時間外診療が非常に多くなってまいりまして、個人の開業医は保険請求にふなれでございまして、これに追われるというようなことから、救急医療を一部医師会等が担当していましたものが不可能になってまいりまして、その患者が中部病院に集中したということで、沖繩の医療体制のたいへん大きな問題になったわけでございます。  四十七年度予算で、厚生省は沖繩に救急医療センターを設置するということで措置いたしておりましたが、これが沖繩県の措置で逐次おくれておりましたが、旧県立那覇病院を模様がえいたしまして、救急医療センターがこの六月一日から発足いたしまして、従来中部病院に集中しておりました、一次、二次も、重いも軽いも含めた大量の患者を、まず一次的な患者だけはそのセンターでさばくことができるようになりまして、重い二次患者を中部病院に送ります。それから文部省所管になりました琉球大学の保健学部の附属病院、これも従来救急医療をやっておりませんでしたが、社会の要請にこたえまして、週一ぺんだけ救急医療部門を開設いたしております。  以上のような状態でございますけれども、沖繩の医療状態は、きわめて急激に医療需要が高まっておるという中で、医療の供給のほうが非常におくれておるというのが実態でございまして、その象徴的な姿が、救急医療にあるいは時間外診療という姿にあらわれておるということでございまして、新たに県立病院の設置あるいは国立の総合病院の設置ということをただいま検討いたしております。
  85. 沖本泰幸

    ○沖本委員 これはことばの上でいまおっしゃったわけですけれども、現実は切迫しているわけですから、早急に医療担当者なり病院なり施設なりという点は特別に考えていただいてやっていただく、こういう方向をとっていただかなければならない、こう考えます。  厚生省はその程度で、須藤先生にお伺いしたいのですが、最近訴訟の遅延ということが法曹界では非常に大きな問題になってきておりますが、またそれとあわせまして、交通裁判におけるいわゆる早く済ますという点が先ほど先生が少しお触れになりました形で出ているのじゃないか。簡易裁判所なりなりが早く済ますということで、時には一分半で一つ判決を終わっているような内容のように聞いたりする場合があるわけですが、そういう点につきまして、現在の訴訟形態というふうなものの中で、交通訴訟に関して日弁連でお考えになっているこれからのあり方というものについて、お考えを伺いたいと思います。
  86. 須藤静一

    須藤参考人 東京裁判所の例で申しますと、東京地裁に第二十七部というのがございまして、裁判官が全部で十人以上おります。しかしながら、そこに事件が山積しているというのが実情でございます。したがいまして、本来からいえばケース・バイ・ケースで一件ごとに十分な審理をすべきなんでしょうが、それができないので、先ほど申しました定型訴訟と申しますか、型にはまったような訴状を出してやっているというのが実情でございまして、それにつきまして裁判所のほうは、先ほど申しました慰謝料一山四百万だ、それから休業補償はこうなるのだということで、和解をすすめますのも、まず当事者の意向よりか、裁判所がこれでどうですかと言ってやっているのが実情でございます。それほどにやって、いわば一種のベルトコンベヤーに乗っけるようなやり方をやっているのでございますから、本人にしてみればまことにおさまらないというのが、これも実情でございます。と同時に、それをやってもなおかつ判決がかなりおくれている。最近の例でございますと、大体裁判所一般に、あれは何か訓示規定でもって民事事件については終結後十四日以内に判決しろという規定があるようでございますけれども、十四日どころか、まあ半年は判決を待たなければならぬというのが実情です。ですから、私が交通部でやった事件につきましても、これはちょっと国も相手になるような事件でございましたせいもあるのかもしれませんが、やはり催促をいたしまして、五月に終結して十二月に判決がありましたか、何かそんなような割合でございます。  ですから、急いで流れ作業式にやっているにしても、能率があがっていないということは事実でございますし、それが一体ほんとうの意味裁判になるかどうかということについては、私は多大の疑問を持っております。ですから、もっと裁判官の人数をふやすか、さもなければ、いわば訴訟に持ち込まれないように、保険金なりなりでもって多くの事件が落ちていくかどっちかでないと、ほんとうの意味訴訟というか、裁判というものはやれないのじゃないかと私は考えております。
  87. 沖本泰幸

    ○沖本委員 ただいまのお話でございますが、この点は法務委員会等でも相当問題になって、訴訟の遅延を解決するということでは法務省側のほうもだいぶ意見を出しておりますし、裁判所のほうも、最高裁のほうでもお考えのようなんですが、現在具体的な例が示されてどうこうということではないわけなんです。ですから、人数をふやすということになりますと、これは裁判所の定員に関係があることで、そういう点司法の独立なりなりいろんなことがからんできて、非常にむずかしい問題になりますけれども、そういう観点からでもなおかつ数をどうしてもふやさなければ解決できない問題か、あるいは裁判所の方針を変えてもらうべきが一番重要な問題であるか、その点いかがでございましょう。
  88. 須藤静一

    須藤参考人 全国的に見て裁判官の人数が足りるか足りないかという問題でございますが、大都市のように事件が集中するところをもう少しやりくりして、配置転換でもってふやしていくという方法をとれば、必ずしもすぐ定員増ということまで考えなくてもいいかもしれません。と同時に、現在どうなんでございますか、ちょっと私、記憶ありませんけれども、定員には足りないのじゃございませんか。と申しますのは、毎年研修所を出て修習生から一本になる連中で、裁判官希望という者は、近ごろ昔と違っておりますから、なぜそうなったかということについてはいろいろ説があるようでございますけれども、そういう問題もございます。ですから、そういった全国的な配置転換、それからこれは当委員会で言うことかどうかわかりませんけれども裁判所のある場所でございますね、そういった問題の、いろいろ地域的な再配転ということも考えなければならないのじゃないかと思います。そうすればそう定員をふやさなくてもやれるだろうと思います。  と同時に、その事件によって急ぐ事件、急がない事件というのは確かにございまして、われわれ民事事件でも、これは冷却期間を置いたほうがよろしいわというものはかなりゆっくりやるのですが、それ以外の急ぐ事件と急がない事件とを裁判所がどうわきまえてくれるかということについては、どうも裁判官はあまり世情に明るくないようで、なかなかやっていただけないというのが実情でございます。そういうことでございます。
  89. 沖本泰幸

    ○沖本委員 須藤先生はいわゆる示談屋の現在の傾向についてお触れになっていらっしゃいましたけれども、一番問題にするところはどういうところにあるか、あるいは各都道府県にはこれに類するような交通相談所なりなりが置かれてはおりますけれども、究極的にはほかのところに振り分けて、弁護士会に行って相談しなさいとか、あるいは無料相談所で相談を受けるとか、あるいは都道府県の相談所でそういう問題を扱っていくとか、こういう形になりやすいわけなんですけれども、そういうものと示談屋との関連、こういうのは現在どういうふうな形になっておるのでしょうか。
  90. 須藤静一

    須藤参考人 いわゆる示談屋が近ごろ保険士とかあるいは調査士とかいうような名称でもっていろんなことをやりかけていることは事実でございます。法律の専門知識がない者が法律について意見を述べる、あるいは保険金請求をするということ自体が法律行為であるからいけないのだという裁判所判決もあるぐらいでございまして、これは避けなければならないし、と同時に、われわれ弁護士のほうもまだ人数が足りませんし、弁護士の過疎地帯というのもございまして、交通事故はどこで起きるかわかりませんので、われわれがどうも末端まで手を伸ばせないというのははなはだ残念なんで、それに対して巡回法律相談その他によっていろいろやっておりますが、問題は、われわれのほうは弁護士会という一つの統制ある機関になっておりますが、いわゆるそういった統制のとれない連中がいろいろやることによって発生する被害というもので、被害者がさらにまた被害をこうむるということがわれわれとしては耐えられないところでございます。先ほど申しましたように、それがいわば少額の二十万だ三十万だという傷害請求手続についてかなりトラブルがあるようでございまして、これは算定会のほうからも聞いたのですが、大口の五百万だ何だというものは、どっちかと言えばむしろ弁護士が介入しておる場合が多うございますけれども、小口についての問題でございまして、それを末端まで私どものほうでめんどうを見るように努力するつもりではおるのですが、何と申しましても手が足りませんことですし、手数からいってみれば同じ手数かかりますことですから、ですから先ほど言ったように、もっと請求手続の簡素化ができないか、これは一種の泣きごとになるかもしれませんが、それを簡素化することによって被害者の被害をさらに食いとめ得るのじゃないか、かように考えておる次第でございます。
  91. 沖本泰幸

    ○沖本委員 須藤先生ばかりにお伺いするようですが、簡素化、それをお聞きしたかったわけですが、簡素化するにはどういう方法が一番現行としてはしやすい問題でしょうか。この前も参考人をお呼びして御質問したのですが、窓口が非常に複雑で取り扱いが悪かったり、そういう窓口事務のために、被害者被害者意識がありますから、最初から被害者請求という点でもうおっくうになったり、いやがったりということから、自然に代行する人たちがだんだんふえていく、こういうかっこうがおもにとられて、それがだんだん形式みたいな形になっておる。すべての人が先生おっしゃるとおりに被害者の立場に立って最大限の考慮を払ってあげたり努力をしてあげればいいのですが、先生もお触れになったような、被害者がさらに被害を受けたり、どういう手続がとられて幾らもらったのか、おしまいにもらってみたら、費用を払ってまだ足し前が要ったというのが現実であるということを私もよく承知しております。そういう関係で、保険業務なりなり自賠責請求をするには、窓口なら窓口でどういうふうなことをしてやれば被害者自身が最初から被害者請求をしやすくなっていき、むずかしくなったときにはそれぞれのところに相談に行ける、こういう点はやはり保険会社のほうも配慮していただかなければならない事務的な問題がいろいろあると思うのですが、そういう点について、直接お携わりになる先生のほうからお答えいただけたらと思うのです。
  92. 須藤静一

    須藤参考人 現在の保険金請求必要書類というのは、この一覧表に書いてあるようにたくさんございます。これは万全を期する意味からいってこれだけのものが必要であろうことはわれわれとしてはわかるのでございますけれども、これがしろうとになじめない。先ほど申しました印鑑届をしている者がはたして何人いるかというような問題もございます。それから戸籍謄本をとるといったってどこでとったらいいのかわからない。戸籍よりもう一つ前の除籍とか、原戸籍とかいうものをとらなければならない。そういうことが一般の人にはわからない。あるいは診療明細書をつけて出さなければならぬといったって、これは医者のほうで、おまえ、いままでの金を払わなければそういうものを書いてやれないというような例もございます。こういうことと同時に、それからあと加害者側からの証明と申しますか、たとえば自動車を貸し借りしているとか譲渡した場合には、加害者側のほうからその証明をとらなければならないとか、それから加害者がどこかの会社なりに雇われている場合にはその雇用関係を証明する書類も必要になってきますが、こういったものは被害者側で実際とれるかというと、とれないと言ったほうが間違いないと思います。こういうものはむしろ算定会の下部組織の調査事務所がもっと積極的に電話で照会しても済むことでしょうし、あるいは足を向けてやってもいいでしょうし、そういうことでやれるのじゃないかという点が一つ。それから少額のものについて、それほどやかましい、あらゆる書類まで揃えるか。それとも確たる人が保証人か何かになればそれでもっても済まされるのじゃないかという気がするのでございますが、そういうことによって手続はもっと簡素化できるのじゃないかと思います。安全をはかる上からいって、現在の要求している書類があるということはわかるのですが、そこまでしなくたってほかに、と申しますのは、いま言った少額のものについては適当な保証人なり、また請求書がちゃんとはっきりしたものについては、弁護士なら弁護士がそれに判を押してやるということでできはしないかということを私は申し上げたいと思うのでございます。
  93. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いまの問題に対しまして塙先生の御意見なり、あるいはどういう点ができますというようなお考えなり、それから吉田さんのほうから同じ関係で御意見と、それから国のほうの関係は運輸省と大蔵省になりますか、その辺のいまのお話に対するお考えなり、これは私も感じておったことですから、具体的にこれからのためにお答えいただきたいと思います。
  94. 塙善多

    塙参考人 お答えいたします。  ただいま御指摘の自賠責保険金請求手続が非常に煩瑣であるということは、私どもも何とかこれを改善したいというように考えております。  ただ私どもとしましては、そこに不正が行なわれないように、できるだけ手続を十分にやりたいという基本的態度は御了解いただけると思います。ただし、ただいま須藤参考人もおっしゃいましたように、そこにいろいろのくふうの余地があろうかと思います。調査事務所でみずから調査することによって確実に事実をつかめれば省略してもいいというようなこともありましょうし、それから、金額によって必要な書類を区分けをするというふうな方法もあろうかと思います。私ども請求手続を簡素化する方向で現在いろいろと検討いたしておりますので、近く何らかの措置がとり得るのではないかというふうに考えております。
  95. 吉田亮

    吉田参考人 示談の件ですね。その件ですと、結局軽い人たちがいろいろと示談屋や何かに加入されておって、私のところに来る人たちは、あらゆる相談所を経てきてそれでだめな人が来る。そういう重症の方が多い。また、たまに軽い人が来た場合、一応矛盾する点が一つある。この補償のことなんですが、筋肉労働者であって税証明または公的証明など裏づけがとれない場合においては、現在であっても一日七百円の補償しか行なわない。しかし加害者が良心的な人で、そのときは十万と七千円ばかりやっておったというケースもありますから、自賠責のほうもひとつその労働の値のランクによってしんしゃくしていただきたい、そう思っております。
  96. 真島健

    ○真島説明員 具体的には保険会社の窓口あるいは算定会の窓口での被害者請求の方々の便宜をはかるということでございまして、これは当然私ども常に心がけなければならない問題だと思います。最近私ども関係では、政府保障事業の保障の査定基準、あるいは大蔵省ともいろいろ御相談いたしまして、保険損害査定基準といったようなものの改善あるいは簡素化という点を通じまして、そういうような面について検討いたしまして、できるだけ前向きに対処してまいりたい、このように思っております。
  97. 安井誠

    ○安井説明員 保険と申しますのは、非常に常識的に考えてみまして、事故が起きましたときにいかにしてその被害者のところへ金を届けるかというところまでいかないと、保険のサービスは完了しないのだろうと思います。いま保険会社のほうが示談代行あるいは示談援助というような保険を発売するのも、私どものほうも大いにそれを進めたらどうかということを言っておりますが、まさにそれを進めていってほしいということでございまして、窓口の請求事案につきましても、やはり保険会社の窓口が十分にサービスをやるようにするということが私ども一番早い解決の方法だろうというふうに考えているわけでございます。手続等も損害保険協会の自動車保険委員会のほうでも考えておるようでございますので、十分検討してまいりたいと思います。
  98. 沖本泰幸

    ○沖本委員 これで終わりますが、ただ、お役所のほうのお答えは具体性を欠いているわけですね。考えております、考えておりますということで、おしまいまで考えて終わったのでは困るわけです。具体的にいま御意見が述べられたわけですから、それがすぐ政治に反映して答えが出てくるような形にしていただかないと、委員会を開いてやったことが何にもならないということになりますので、その点十分答えが出るように、この場で、いま時間があれば、いつごろだということをお伺いしていきたいし、どういう点を改善してほしい、改善できるというところまで詰めたいわけですけれども、時間がありませんから省略しますが、その点は十分お心がけになっていただいて、いま指摘されたような問題点は早急に改めていただきたい、こういう点をお願いして、質問を終わります。
  99. 久保三郎

    久保委員長 ちょっと委員長から、いまの最後の話ですが、これは運輸省と大蔵省の話だろうと思うのですが、いま沖本委員からも要望があったように、抽象的な答弁じゃなくて、すでにもう自賠責も制度を改正しようという話ですから、いまの問題等は特に問題の多い点なので、請求手続あるいは制度、そういうものについて、この次の委員会に、検討する気持ちがあるのなら、具体的に答弁してほしい。きょうはよろしゅうございます。  以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼申し上げます。  次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時三十四分散会