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若月参考人 御紹介にあずかりました、全交運
幹事の
若月でございます。
私は、同時に
日本航空空労働組合の
委員長もやっておりますので、民間航空の
整備の現場の労働者がどういう要求を持っているのか、その辺を中心に
意見を述べたいと思います。
私
たちが
整備の問題を考える際には、乗客の安全と私
たちの労働やあるいは職場環境が密接かつ不可分な
関係にある、こういう考えに立っているわけです。そういう意味で、
航空機整備の
現状と
経営者の安全の姿勢について
意見を述べてみたいと思います。
まず第一点に、
整備の現場の労働者がどういうふうな点に不安を持っているか、こういう問題でございます。
私
たちは、昨年の連続
事故以降、
整備現場から不安全要素を一掃するため、ことしの二月から三月初旬にかけまして、
国内運航三社を中心に、千三百六十六名の
整備士から安全アンケートを回収いたしました。その結果を要約し、特徴点をあげてみますと、三つあります。
一つは、
整備時間が時間がなくキャリーオーバーしている、こう答えている者が六八%もいます。すなわち
故障を持ったまま空を飛んでいる、こういうことだろうと思います。八六%の人が、空港における
整備時間、ステイタイムというふうに申しておりますが、これの延長を要求しています。さらに
整備員の絶対的不足を訴えている反面、定時制の
確保が要求されるために、約二〇%にわたる人が作業の一部を省略している、そういうふうな答えをあげています。
第二番目に、教育の問題についても不満や要求が強く、三〇%ないし四〇%の人が、教育施設の不備あるいは
訓練時間が少ない、
会社に教育をやる気がないのではないか、こういうふうな
指摘をしています。そして六五%の人が、人員不足で教育に出られなくて、この結果、自分の家庭で勉強したり、あるいはそれができない人は、そのまま
技術スキルと申しますか、そういうものが低下している、こういうことを言っています。
第三番目には、最近の
整備方式について不安を持っている人が四〇%もあり、これが
安全性の阻害になっているんだ、ぜひこの点を
改善してもらいたい、こういうふうに言っています。
それでは、これら
整備員が
指摘する問題がほんとうなのだろうかどうか、この辺について最近新聞紙上等をにぎわしている幾つかの
事故の例を考えながら御
指摘したいと思います。ほぼこの三つの要素は、直接的な原因になっているかあるいはその原因の要因になっているか、こういうふうなところがうかがわれます。
まず教育不足や
訓練制度の改悪から来る典型的な例として、
日本時間のことしの一月二日、日航のジャンボが、たぶんサンフランシスコだと思いますが、ランディング・ギア、足の
故障を起こしました。この直接の原因は
部品を間違って取りつけた、こういうふうなものです。よく調べてみますと、
日本航空の
会社が認めていることなんですが、なぜ取りつけを間違えたのか、この問題は教育、
訓練が不足していたということと、それから二重で確認すべき検査行為をしなかった、その点を反省として打ち出しています。
それから、人員不足による
事故ですね。この問題もやはり一月一日羽田発のパンアメリカンのジャンボジェット機なんですが、ドアロックを十分に締めなかった、あるいは半ドアのまま空港を出発しました。途中でそれがわかって羽田へ引き返してきたわけですが、その際、私
ども組合で作業員がどれくらいいたのかということを
調査したわけですが、わずか二名でした。二名の作業員でやっていたわけです。この状態は、私
どもの
調査でも、
現状でも変わっていないというふうに現場の労働者は訴えています。私
たちの人員不足が乗客の安全を脅かす端的な例ですが、この実態は多少の違いはあっても各社とも似たりよったり、こういうふうに
整備現場の人は言っております。
先生方のほうに参考資料をお配りしているわけです。私
ども日本航空の
整備員がどれくらいふえているのか、あるいはその
整備員の作業状況がどうなっているのかということを示した表がお手元に行っていると思います。その表6を見ていただきますと、
日本航空の
航空機保有機数は
昭和四十年度二十九機だったのが四十六年度は六十八機になっています。ジャンボ等を考えると非常に大きい
飛行機も入っているわけですから、単純な数字の比較はできないと思います。
整備人員はどれくらい伸びているかと申しますと、二千六百二十七人から
昭和四十六年では三千七百八十九人、約一・四倍しか伸びていないわけです。
それからラ整工場、
日常の
整備作業を
点検している工場でございますけれ
ども、最近非常に
事故がふえているということが職場の問題になっています。表7で見ていただけると明らかだと思いますけれ
ども、
昭和四十三年の人身
事故、物件
事故あるいは
航空機の損傷を含めますと四十八件あります。これが
昭和四十六年では七十七件になっています。労働者が負傷のために休んだ休業日数、これが四十三年百四日に対して七千七百四十六日こういうきわめて脅威的な数字を示しているわけです。いわばこの職場環境は私
たちの健康をむしばむ、こういう問題だけではなくて、安全の低下につながっているというふうに私
どもは考えているわけです。
それから、
整備方式の変更についての
安全性の低下、これを
指摘したいと思います。これも
日本航空のDC8型機、これについて例をとって申し上げたいと思います。
昨年からことしにかけて、
飛行中にエンジンのカバー、カウリングを落とした、こういう事件が新聞でも二回ほど報道されたと思います。さらにエンジンの排気部分のケースにクラックが生じているということが最近多くなっております。私
たちが
指摘するまでもなく、この原因は、TBO、オーバーホールの期間が長くなった、あるいは定時
点検の期間が長くなった、こういうことや、それから、これまでオーバーホールをやっていたものを、
故障が出てきたら直すとかあるいは重点部分だけを
整備するとか、
会社のほうは信頼性
管理というふうに言っているわけですけれ
ども、こういう作業実態に変更した、あるいうこういう作業実態に変更し、簡略した結果だ、こういうふうに現場の労働者も言っています。同時にこの辺は、最近問題になり、
会社も認めています。DC8型機にこういう信頼性
管理による
整備方式を採用したことば時期が早かったのではないか、こういうことを言っています。私
たちは安全の立場から、こういうふうな
整備方式を直ちに中止して、以前行なっていたようなオーバーホールに戻し、
安全性の阻害要因を一掃すべきであるというふうに考えております。
それから、いま具体的には、
整備員の不安の問題と
事故例を紹介しながら私
どもめ分析を申し上げたわけですけれ
ども、航空産業の働く者が、あるいは航空産業にかかわる
経営者を含めて、安全確立をする上で
基本的な態度とはどういうふうにあるべきか、この問題について
意見を述べたいと思います。
まず、私
どもは、これまでの利益第一主義の
経営体質、これを改め、安全第一の政策に変更する、これがきわめて重要な時期に来ておるのではないか、かように考えています。
これも
日本航空の例で申し上げますと、表3を見ていただければ明らかだと思いますが、アメリカの
会社、イギリスの
会社あるいはドイツの
会社、こういうところを見ましても、減価償却の期間が
日本航空は一番短くとっています。西欧あるいはアメリカの
会社は、約倍以上になっているわけです。それから、
日本航空のこういう減価償却率を見ますと、表5を見ていただくと明らかだと思いますが、IATA上位六社の中で、
日本航空が、
整備比率、
整備費にかけるお金の比率が一番低い。これは
会社の統計資料に出ているわけです。こういう問題もございます。
こういうふうな、従来とってきた営利第一主義といいますか、もうけ第一主義といいますか、こういう問題を、減価償却費を延ばすなり、あるいは、あるいは広告宣伝、こういう費用に使う金があるなら
整備費に回すとか、そういう方向で、少なくともこの比率をパンアメリカン並みなりあるいはBOAC並みなり、この辺まで引き上げていく、こういうことが重要なのではないかと思います。
もう一つは、先ほど
朝田社長の御発言の中で、組合と話をしている、今後やっていきたい、こういうことを言っています。私
どもは、
昭和四十六年以来、
会社に再三にわたって安全問題の要求を提出してきましたが、いまだかつて一度も団体交渉をやったことがございません。残念ながら、私も労働組合の
委員長をやっているわけですけれど
朝田社長のお顔を直接的に拝見したのはきょうこういう席上で初めて、いわばこういうふうな
関係にあるわけです。私は、この問題は、過去にさかのぼりますと非常に根深い
会社の分裂攻撃やあるいは日航労組に対する差別攻撃、あるいは
会社の気に入らない人は外地まで飛ばす。元日航労組
委員長は、九年間、カラチやカイロや、それから現在ナイロビまで飛ばされ、まだ戻されていません。こういうふうな労働組合政策を直ちに改め、謙虚な気持で安全の問題を労働組合と率直に話し合うべきだ、かように考えているわけです。
もう一つ最後に申し上げますが、
会社は
安全性の問題について、自社
整備体制を確立すべきだ、こういうふうに考えています。昨年の
事故以降、残念ながら、
整備部門が下請に出されたりあるいはこれまで戦闘機等を
整備していた他社の
整備員がいま
日本航空の職場に入ってきて
整備をやっています。これは人員不足を補うための暫定的な
措置だ、こう申しておるわけですが、私
たちは、それに対してもやはり自社
整備を確立し、人員が不足していたらちゃんと補う、こういう方向で解決していただきたい、こういうふうに思っているわけです。
以上をもちまして私の
意見を終わります。(
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