○
武藤参考人 私は、
全日本トラック協会の
専務理事の
武藤でございます。
先生方御存じかと思いますが、
全日本トラック協会と申しますのは、
トラック事業者が組織しておる
団体でございます。
トラックといいますと、
自家用もございますし、
営業トラックもあるわけでございますが、
自家用トラックにつきましては、私
どもの
団体の
関係でございませんでして、
トラック事業経営者の組織しておる
団体でございまして、各
都道府県の
トラック事業者が
都道府県トラック協会というものを組織いたしまして、その各
都道府県トラック協会が
連合会として
全日本トラック協会というのを組織しておるわけでございます。
本日の議題になっております過
積載による
事故防止の問題につきまして、諸
先生方にいろいろ貴重な御審議をわずらわしておるわけでございまして、
トラック事業経営者の
団体といたしまして、非常に衷心からこういう御迷惑をかけるのを残念に存じておるわけでございます。
この
事故防止の問題につきましては、
トラック協会といたしまして、長年にわたりまして、
トラックによる
事故を何とか減らそうということで
運動を展開しておるわけでございます。
きょう問題になっております過
積載の問題につきましても、私
どもの
協会では毎年
秋冬繁忙期、といいますのは、大体十月、十一月、十二月、
貨物の
輸送要請が非常に多い時期に、「正しい
運転・明るい
輸送運動」というのを毎年展開しておるわけでございます。その
実施要領の中で、
事故防止活動の
一つとしまして、「過
積みをなくして
安全運転」という一項目を常に取り入れておるわけでございます。
この「正しい
運転・明るい
輸送運動」の中の
骨子は、
輸送サービスの向上とかあるいは
事故防止活動とか、そういうようなことが
骨子になっておるわけでございますが、毎年
秋冬繁忙期で、非常に
トラックの動きが多い、
輸送要請が多いので
営業トラックの
活動が非常に活発であるという時期に、
事故を起こしては
社会に対して申しわけございませんし、また、
事業者としましても、
一つ大きな
事故を起こしますと
会社をつぶすわけでございまして、もちろん、その
事故の当事者になられた
運転者にはたいへん御迷惑をかけるわけでございます。こういう時期を目がけまして、「正しい
運転・明るい
輸送運動」というのを展開いたしておるわけでございます。
それから本年の四月四日でごごいますが、本年の四月四日に
全国協会長会議を開催いたしまして、過
積み防止につきましていろいろ
検討協議を行ないまして、
大要あとで読みますようなことをきめたわけでございまして、この
趣旨によりまして、現在、各
地方トラック協会におきまして、その
実施方を進めておるわけでございます。
四月四日にきめました、一ページばかりでございますが、少し読ましていただきます。
過
積公害防止対策について
過
積公害の
防止については、
事業者はそれぞれの創意と工夫により、
業界は
交通安全運動、正しい
運転・明るい
輸送運動、
騒音公害防止対策指導等、
各種運動の中で積極的な努力を傾注しているところであるが、この際、さらに次の
事項を実施して、過
積公害の
防止に万全を期し、円滑な
貨物輸送を確保するものとする。
(1)
事業者は、
固定荷主と緊密な連絡を保持し、相互に、
計画出荷・
適正配車を確認励行するものとする。
一般荷主からの
輸送要請についても、
適正配車のため、下見または
荷主の告知により、
貨物重量を確認するものとする。
(2)
都道府県トラック協会は、
関係荷主団体に対し、
交通をとりまく諸問題、
業界の
指導方針を説明し、
理解と
協力を得るものとする。
なお、
県単位または
地区単位に
指導パトロールを実施するものとする。
(3) 全
ト協は、
車両の改善、
共同荷受・
共同配車の
推進対策、
法律制度の
あり方等基本的事項の
検討を早急に行なうこととする。
さらに、
中央荷主団体に対する陳情について
通産農林輸送協議会に対して、
趣旨ならびに
業界の
指導方針について説明を行ない、過
積防止についての
協力方を要請する。
まあ、こういうようなことを四月四日の各県
トラック協会長
会議で決定いたしまして、現在この要綱に従って過
積み防止の
運動につきまして努力しておるわけでございます。
この中で、これは
荷主さんとの
関係がございまして、
荷主さんの御
協力を得ないと、なかなかこの問題うまくいかないというようなことで、
荷主さん、
トラック事業者のほうの
荷主さんと申しますのは、
固定荷主がかなりありまして、事業規模が小さい、たとえば五台、十台の
事業者でございますと、数軒の
荷主さんを主としてお得意さんとして
活動しておるわけでございますが、そういう
荷主さんとよく連絡をとって、
計画出荷あるいは
適正配車ができるように進めていこう。
それから、
荷主さんから
輸送要請があった場合には、どのくらいの大きさの車を持っていくといいか、一応何トン運ばなければならないかというような問題をよく
荷主さんと連絡をとって、それに会うような車を配車していくというような、常に
荷主さんとの連絡協調をとってこの問題を進めたい。
もう
一つ、これは中央
団体でも
お願いしておりますが、
都道府県の
トラック協会でも、
関係の
荷主団体に対して、
トラック業界としては過
積み防止のために懸命な努力をするから、
荷主さんのほうでもひとつ御
協力をいただきたいという
お願いに上がると同時に、各県の
トラック協会で
指導者を出しまして、極端な過
積みをしておる
トラックはつかまえて、もちろん
営業車だけです。
自家用車につきましてはこれはもう全然触れられない問題でございますが、
営業車につきましては
指導をしていく。
もう
一つ、さらにいろいろ根本的な問題がございまして、
車両の構造改善の問題と、あるいは
法律制度の問題と、こういうような問題を中央
団体ではさらに
検討を進めていくということをいま考えて進めておるわけでございます。
それから私
どもの
協会では、毎年三月
トラック事業者年次大会というのを開催しておるわけでございますが、その
事業者大会では
事故防止部会というのを毎年設置いたしまして、どうしたら
事故が減らせられるか、あるいは特定の
会社で非常に
事故防止に顕著な成績をおあげになっているところの
関係の責任者の方に来ていただいて、セミナー式にいろいろ説明をする、ほかの
業者もそれを
参考にして
自分の
会社の
事故防止に役立てていくという催しをやっておりますとともに、
事故防止に
最大の努力を払う旨の宣言を行ないまして、
事故防止につきまして、
事業者の誓いを固めておるわけでございます。おかげさまで、逐年
営業トラックの
死亡事故件数は減少の傾向を示してきておりますが、先ほど
田井さんがおっしゃいましたように、
トラックは非常にがんじょうなものですから、歩行者の
事故は問題外でございます。これはどの車がぶつけましても、歩行者は無装備でございますので大きな
事故になるわけでございますが、乗用車とぶつけた場合、あるいは乗用車からもらい
事故を受けましても、
トラックのほうががんじょうなものですから、
トラックのほうじゃなくて、相手方の、ぶつかった車のほうが
死傷者を出すというようなことで、
トラックの構造装置からいろいろ悲惨な
事故を起こしておるわけでございまして、その点、さらに私
ども事故防止に努力を払ってまいりたいと存じております。
それから、中央
団体の指令でなくて、各
都道府県トラック協会でそれぞれ過
積み防止運動をやっております。例を申し上げますと、
東京都の
トラック協会あるいは茨城県の
トラック協会、岩手県の
トラック協会、福井県の
トラック協会、こういうようなところでは、過
積み防止を主目的とした特別の
運動を行なっておるわけでございまして、その他の県におきましても、
事故防止運動の一環としてこの問題を取り上げ、
活動しておるわけでございます。
東京都の例を申し上げますと、一昨年の六月から過
積み防止運動を始めまして、昨年の四月からは四十七年度の
最大行事として推進しておるわけでございまして、
トラック事業者の営業所に張ってもらうポスターを五千枚、それから「過
積みをなくして
安全運転」というようなステッカーをつくりまして、車体の横腹に張らしておるわけでございます。それ以外に
指導班をつくりまして、
警視庁の
協力を得まして
指導に当たっておるわけでございます。特に、非常に過
積みが起きやすい鉄鋼
輸送部会では、非常に熱心にこの
指導に当たっておられまして、実績を申し上げますと、私ただいま手元に持っておりますのは昨年の五月九日からの
数字でございますが、月に一回ないし二回、
警視庁の警官の臨席を得まして、これは一緒じゃないと過
積みをしておりましてもとめられませんので、警官に出ていただきまして、両方合同で過
積み車の取り締まりをやっておるわけでございます。この鉄鋼部会がやりました監査によりまして、取り扱い
車両数が六百八十一で、過
積みをしておる
車両の現認数が百六十九台というような
数字が出ておるわけでございます。もちろんこの百六十九台の中には
営業車もございます。
自家用車もかなりあるわけでございます。こういうようなことで、
荷物の大きさの割りに非常に重量がかさむ、したがって過
積載が起きやすいというような問題がございまして、鉄鋼
輸送部会では非常に活発に過
積載の取り締まりに当たっておるわけでございます。が、
現実はきのうのテレビにございましたように、鉄鋼につきましてはまだかなり過
積載が行なわれておるのは非常に残念でございます。
それからさらに
東京都の
トラック協会では、
業者の意識の革新をはからなくてはならないわけでございまして、過
積み防止の文書を各
事業者に、
東京では四千か五千くらいございますが、配りますとともに、
荷主さんあてに、
警視庁陸運事務所、それから
トラック協会連盟で、過
積み防止についての御
協力の依頼状を出しておるわけでございます。
さらに、一昨年の春、
運賃改正の認可を受けましたのですが、その
運賃改正の際には、いままで区域
トラック、貸し切り
トラックにつきましては重量制
運賃になっておりまして、五トンの車に十トン積めば十トン分の
運賃がいただけるというような制度であったわけでございますが、それを改正いたしまして
車両制の
運賃にしていただいたわけでございます。五トン車には何トン積もうが五トン分の
運賃しかいただけないという形の
車両制
運賃に変えていただきまして、この
運賃制度の改正によりまして、過
積み防止をはかっておるわけでございます。ところが、実際の契約におきましては、トン建て契約というのがございまして、
荷物が千トンあると一トン幾らというような契約が行なわれておりまして、そうしますと、従来と同じような、
車両制
運賃じゃなくてそれはもう重量制
運賃で、そこらから過
積みという問題が発生してくる心配があります。ただ、トン建て
運賃と申しますのは、長い商慣習で行なわれておりまして、急にはなかなか変わらないわけでございます。私
どもこの
車両制
運賃を持ち込もうというので一生懸命努力しておるわけでございますが、これは少し時間がかかるか、こう思っておるわけでございます。なるべく早い機会に
車両制
運賃の確立をはかりたい、こう思っております。
それから過
積みの起こる
原因につきましては、
事業者側と
荷主側と問題が二つあるわけでございますが、
事業者側としましては、認可
運賃は現在二割の幅を持った
運賃を認可していただいておるわけでございます。スタンダード
運賃の上一割、下一割、二割の幅を持った
運賃を認可しておっていただくわけでございますが、
トラック業界は非常に競争が激しいものですから、最低
運賃、二割幅の一番下の
運賃よりもさらに低い
運賃で
荷主さんと
運賃の契約をされる
事業者がかなりあるわけでございまして、そうしますと、たとえば最低
運賃よりも四割引きあるいは五割引きというような
運賃で契約が行なわれた場合には、それは採算はそのままでは合わないものですから、何とか採算を合わせるために過
積みという形で採算を合わせておられる
事業者がかなりあるんじゃないか。だから私
どもとしては、
荷主さん側に認可
運賃の最低線だけは少なくともいただきたいという
お願いをしょっちゅうやっておるわけでございますが、
トラック事業は力が弱く、
荷主さんは神さま、
荷主さんは王さまというようなかっこうでございまして、なかなかそういう話が
荷主さんに聞いていただけない、これが非常に悩みの種でございます。
それからもう
一つ、これは非常に
たちが悪いのですが、五トン車に二トンよけい積めば二トンは
会社のもうけだというような考え方の
事業者も、二万六千の中にはあると思います。非常に
たちの悪い考え方でございますが、大多数といたしましては、何とか採算を合わせるために、いろいろな非合法な
積載をやっている。その結果が
運転手さんのほうへ非常に御迷惑をかけておる、あるいは
社会的にもたいへんな御迷惑をかけるというような形になってきておるわけでございます。それから、
荷主さん側のほうとしましては、少しくらいよけい積んでもいいじゃないか、五トン車で運べると思って五トン車を頼んだが、
積みにかかったら六トンあるいは七トンあった、それだけなら積んでいけやというような形や、あるいは、
運賃は安いほうがいいものですから、十トンを運ぶのに、二台の
トラックで運ぶよりも一台で十トン積んで運んでもらったほうが
運賃としては安上がりになるものですから、なるべく
運賃の安いほうで契約したいということで、結局、間接的に
事業者としては過
積みで採算を合わせなければならぬというような形になるわけでございますので、
荷主さん側に対しましては、できるだけその幅の最低の線で契約を結んでいただきたい、最高の
運賃でいただきたいというのでございませんでして、認可
運賃の少なくとも最低
運賃はいただきたい、
業界側としてはこう思っておるわけでございます。
なお自営の
運転手がございますが、これは
自分で
運転して
自分で商売をおやりになっている方で、
事業者と同じようなことでございます。そこで、どうしたらこの過
積みをなくせるかという問題でございますが、もちろん
業界側として、
事業者の意識の革新をはかりまして、過
積みをしないように
運動を展開してまいりたいと思います。
もう
一つ、その裏の
原因になっております
運賃ダンピングの
防止、これはうらはらの問題と私
どもは思っておりますが、
業界活動として強力に展開していかなくてはならないと思います。そしてこの問題は、鉄鋼
輸送に関連いたしまして、私
どもしばしば考えたわけでございますが、
営業車と
自家用車とが同じように
仕事をやっておる分野が非常に多いわけでございまして、最終的には、これはもう
交通警察の取り締まりの強化という
方法しかいまの
法律制度のもとではないというふうな考え方を私はしているわけでございます。
業界の意識の向上と
交通警察の取り締まりの強化。そして、
道路運送法関係では、この過
積みの問題につきまして取り締まれる根拠が全然ないわけでございます。たとえば
自家用トラック、もぐり
トラックが過
積みをやって
運転している、これをつかまえましても、
運輸省のほうではどうにもしようがないわけでございます。
道路運送法の百二条では、一応、有償運送をやったら使用
禁止ができるというふうになっておりますが、国会のほうで、
最大積載量をこえて運送したときには使用
禁止ができるというような改正が
お願いでさましたら非常にけっこうだと思います。同時に
事業者のほうも、常時過
積みをやって
仕事をやっているという
事業者につきましては、
車両の使用停止なり事業停止ができるような形、
道路運送法で
処理しようといたしますれば、そういうような改正が必要かと思います。
さらにもう
一つは、さしあたり
高速道路の入り口、インターチェンジ、ああいうところに検量計を置いていただいて、入ろうという車につきましては検量計にかけて、おかしいのはそこでもうはねてしまうというような形がとれると非常にいいかと思います。
高速道路に入るには一般道路を通らなければならぬわけでございますから、
高速道路ではねられるから一般道路も走らない。さらに進んで、幹線国道につきましても検量計が各所に設置されて、そこへ警察が立って、ときどき
積み過ぎだなと思うやつはそこにかけて取り締まりをやる、これは予算が伴う問題でございますが、そういうようなシステムがとれるとけっこうかと思います。
この間、西ドイツから百人ぐらいの視察団が来まして、談たまたま過
積みの問題になったわけでございますが、西ドイツでは、国道のところに検量計を設置して、ときどき警官が出て取り締まりをしておる。日本よりもひんぱんにやっておるようでございます。過
積みの問題は日本だけかと思いましたら、西ドイツにも同じような問題がありまして、そういうような対策をとっておるようでございます。
そういうような形で警察が取り締まりのやりやすいような体制づくりも、国会で御審議をいただければ非常に幸いかと存じます。
時間が超過いたしたようでございますが、以上で終わらしていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)