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1973-06-25 第71回国会 衆議院 建設委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月二十五日(月曜日)     午前十時十一分開議  出席委員    委員長 服部 安司君    理事 天野 光晴君 理事 大野  明君    理事 田村 良平君 理事 村田敬次郎君    理事 渡辺 栄一君 理事 井上 普方君    理事 福岡 義登君 理事 浦井  洋君       小沢 一郎君    梶山 静六君       林  義郎君    宮崎 茂一君       清水 徳松君    松浦 利尚君       渡辺 惣蔵君    瀬崎 博義君       新井 彬之君    北側 義一君       渡辺 武三君  出席公述人         東海大学工学部         教授      井戸  剛君         九州大学理学部         教授      菊池 泰二君         千葉市原市助         役       小林 茂衛君         全日本海員組合         中央執行委員  斉藤 吉平君         弁  護  士 田中  和君         東京大学工学部         助教授     西村  肇君  委員外出席者         建設委員会調査         室長      曾田  忠君     ————————————— 委員の異動 六月二十三日  辞任         補欠選任   佐々木更三君     中村  茂君 同月二十五日  辞任         補欠選任   浜田 幸一君     宮崎 茂一君 同日  辞任         補欠選任   宮崎 茂一君     浜田 幸一君   中島 武敏君     松本 善明君     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた案件  公有水面埋立法の一部を改正する法律案内閣  提出第一二〇号)      ————◇—————
  2. 服部安司

    服部委員長 これより会議を開きます。  公有水面埋立法の一部を改正する法律案について公聴会に入ります。  本日御出席を願いました公述人は、東海大学工学部教授井戸剛君、九州大学理学部教授菊池泰二君、千葉市原助役小林茂衛君、全日本海員組合中央執行委員斉藤吉平君、弁護士田中和君、東京大学工学部助教授西村肇君、以上六名の方々であります。  この際、公述人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございました。  申すまでもなく、本案は重要な案件でありまして、本委員会といたしましても慎重なる審議を続けているところであります。この機会に広く各界から御意見を拝聴いたしまして、審査の参考にいたしたいと存ずる次第であります。  何とぞ、公述人各位におかれましては、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  議事の順序について申し上げますと、まず公述人各位からお一人二十分程度意見を順次お述べいただき、その後、委員から公述人各位に対して質疑を行なうことになっております。  なお、念のため申し上げますが、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、公述人委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。  御意見をお述べいただく順序は、井戸公述人菊池公述人小林公述人斉藤公述人田中公述人西村公述人の順でお願いいたします。  それでは、まず井戸公述人にお願いいたします。
  3. 井戸剛

    井戸公述人 おはようございます。  今般公有水面埋立法を一部改正する法律案政府から提出され、今国会審議中でございますが、現行法に見られる公有水面埋め立て行為に対する規制でもかなりきびしいものがございまして、すでに五十年以上も前に、わが国ではかなり環境問題を真剣に取り上げていたということを物語っているのではないか、こう考えられます。それを今次の改正によりまして一そう強化することには、近年とみに問題となっている自然環境保全あるいは大規模プロジェクト技術アセスメントの検討などの見地から、まことに時宜を得たものと考えられます。  私は航空宇宙工学研究する者でございますが、かねがね関心を持ってまいりました海上空港建設が今回の法改正と密接な関連を持っておりますので、この問題を取り上げまして意見を申し述べたいと存じます。  わが国のみならず諸外国においても、これまで空港建設は主として陸上の平たんな土地に行なわれてまいりました。これは現在のように航空輸送需要が高くなく、運航機材便数も小規模でございましたから、空港もまた小規模で済み、したがって、その周辺地域に与える騒音などの影響も少ないことから、需要発生地に比較的近い場所建設されたわけであります。  しかし、わが国社会経済構造の著しい変革と成長並びに国際社会との交流の増大に伴いまして、近年航空輸送の伸びは目ざましいものがございます。  すなわち、三十九年度には国際航空旅客数は約八十六万人であったのが、四十六年度には四百三十万人強、また国内線は五百万人であったのが千六百四十万人と増大いたしまして、航空輸送量的増加のみならず、著しい公共的性格を見せております。  たとえば、東京——大阪間の旅客流動のうち実に一一%が航空を利用するという実績が示しますように、地域間の国民流動かなり部分航空が分担するに至り、特にわが国地理的特色であります多数の島々を連絡する上で、もはや欠くことのできない交通機関に成長したわけでございます。  このように、わが国で使用される航空機は次第に大型化並びに高速化されまして、便数あるいは目的地多角化が続いておりまして、それらに応じまして、中央、地方を問わず、大型空港必要性増大してまいったわけでございます。  その一方、かつて比較的人口が疎な位置にありました既設空港は、周辺都市化の進展によりましてその多くが人口密集地のただ中に位するようになり、空港の拡張が困難になるだけでなく、夜間あるいは早朝の発着禁止など、刻々運用上の制限が強化されている状態であります。  この傾向は、ひとりわが国だけでなく世界的なものでございますが、特にわが国は国土が狭隘であります上に、平地面積が全体の三分の一弱という条件を持っておりますために、ほかの陸上空港代替地を求めることも相当困難であると考えられます。  さらに、今後わが国環境保全対策の強化に伴う各種交通機関のなすべき環境並びに地域住民との調和、融合を考えますならば、陸上空港適地を見出すことは一そう難事となるものと考えられます。  増大する需要国民の負託並びにそれと背反する環境保全というこれらの問題を踏まえまして、今後のわが国航空輸送のあり方を考察いたしますと、技術的には騒音排気ガスなど、公害要因の少ない新型航空機を導入して事態の改善をはかるとともに、既設空港周辺土地利用計画の促進あるいは移転新設等を実施する必要があります。  すでにこれらの課題を盛り込んだいわゆる航空機騒音防止法改正案が今国会に提出されており、その発効が待たれている状態でございますが、さきに述べましたように、今後わが国空港移転あるいは新設にあたりましては、陸上適地を見出すことは困難と考えられますので、騒音防止効果を一そう引き上げることを目ざしまして、できるだけ海上に用地を確保することが望ましいと思います。  すなわち、わが国人口が主として沿岸部に集中しているという条件から見まして、輸送需要の大部分もまた沿岸部発生しているわけでございますから、空港の大部分は現在でも沿岸部に散在しております。このことからすれば、今後移転または新設する空港は、やはり利用者の便益を考えれば沿岸地域に立地することが望ましいのでありますが、騒音あるいは大気汚染防止の上からできるだけ人口密集地域を避けるためには、海上に立地する必要があると思います。  第二には、航空機運航にとって非常に重要なのは安全を確保するという点でございますが、空港周辺地域に高い山岳あるいは高層建築物などのないことが望ましいわけでございます。海上はその点理想的な条件を有するものと考えられます。  さらに、航空機の事故の発生は離陸あるいは着陸の際に多いという傾向にかんがみまして、空港とその周辺に人家があることは第二、第三の災害を招来するおそれがあります。したがいまして、海上空港建設されればその防止に役立つものと信ぜられます。  なお、副次的な機能でございますが、沿岸から数キロメートル前後離れた海上空港建設した場合、海岸線保護あるいは港湾の保全に、いわゆる防波堤のような役割りを果たすこともあげ得るかと存じます。  しかしながら、海上に大規模工事を進め、空港建設することが、海洋生態学的な影響を招来する可能性を指摘する声のあることを承知しております。したがいまして、海上空港計画にあたりましては、現在考え得る最大の考慮を払ってこの問題に対処する必要のあることは申すまでもございません。すでにこれらにつきましては各種研究並びに実験が進められておりまして、工事に伴う海洋汚染やあるいは完成後の各種影響効果が相当な精度で予測し得る段階になりつつありますので、万全の対策を講じつつ計画進行が可能と考えられます。  なお、海上空港として計画中のものの一つとして、関西国際空港計画が目下航空審議会審議中でございますが、そのつど各種の科学的あるいは技術的実験研究が行なわれましてデータを集積しつつあると聞いておりますので、いずれそれらのデータが公開されて一そう海上空港建設に伴う実態の把握が可能かと考えられます。  以上、申し述べましたような観点から、公有水面埋立法政府改正案について私は賛意を表するものでありますが、去る六月三日付の一部新聞に報道されました日本弁護士連合会の本法に対する意見書に見られる修正が万一加えられますならば、事実上海上空港建設は不可能となりまして、公共目的の達成並びにわが国国際交通上の連帯性の遂行などに大きな障害をもたらすものと憂慮し、本日公述を申し出た次第でございます。  御清聴ありがとうございました。(拍手
  4. 服部安司

    服部委員長 次に、菊池公述人にお願いいたします。
  5. 菊池泰二

    菊池公述人 私、生態学という分野でございますけれども、海の生物を扱っております者の立場から、埋め立てによって生じる海の自然への影響という点からこの問題を考えてみたいと思います。  沿岸埋め立ては、近年臨海土地利用増大土木技術の発展によって非常に大型化されて、千数百ヘクタールというような広面積を埋められるようになってまいりました。この点、実施水面でなく、周囲の自然と人間生活に及ぼす影響という点でのその大きさというものは、十年前までに比べて飛躍的に増大しております。それで数十年前に制定された現行法改正については、私は当然必要であろうと考えるわけでございます。  しかし、今回の法案に対する意見を申し述べます前に、まず、では海に埋め立てが行なわれますとどういうことが起こるかということについて、意見を申し述べたいと思います。  現在の工業化に伴います臨海土地埋め立てに実施されております事業は、埋め立て可能深度が十メートルをこえ、すでに十五メートルに及ぼうとしております。そういう広い範囲を埋めるわけですけれども、ではその沿岸十メートルというのはどういう意味を持っておりますかといいますと、大体海草類太陽の光を必要としますので、海の深いところに、はえません。それでおのずからこういう海産の植物の生育限界をほとんどカバーするということになってまいります。  それから砂地の干がたを含むこういう非常に浅い海といいますのは、海に注がれます有機物の分解あるいは海草による酸素の供給という点で、水質浄化場所として海洋生態系の中で大きな意味を持っております。  また、水産的に申しますと、魚介類産卵とそれから子供、幼稚魚と呼んでおりますけれども、そういうものの生育場として非常に重要であります。十メートル以浅のところに大きな根になる魚がそれほどたくさんいないということは事実でありますけれども、しかし、かなりの沖合いでとれます漁業資源の相当の部分が、この浅海にその資源の維持を負うておるのであります。  それからまた、同一面積を埋めた場合にも、その影響は全く同じではありません。同じような環境がまわりに残っているかいないか、そういうことによって、同じ百ヘクタール埋めた場合の比重というものが非常に違ってまいります。そういうことを当然海の生物の面から考えていかなければならないだろう。  一例をあげますと、志布志湾の計画がございますけれども、それで鹿児島大学の水産学部調査団が鹿児島県の委託を受けて調査いたしましたが、その結果、沿岸十メートル以浅海域生物生産への寄与は非常に大きい。それから潮流が強いから湾の奥には汚染はたまらないとされているが、実際は意外にたまるというような数値が出ております。  それから現在の内湾内海漁業は、つくる漁業ということが非常に重点になっておりますけれども、そういう型の漁業の場合には、特にこういう浅海の健全な保持ということが大事になってまいります。現在の瀬戸内海で申しますならば、すでにノリ漁場に好都合な浅海の二八%から三〇%が埋め立て及び同予定地になっております。  それからもう一つ、これは私自身が多少関心を持って調査したところでありますけれども、古くから日本漁民が問題にしておりますものにモ場の問題というのがございます。これはアジモあるいはホンダワラというような海草類ですけれども、それが日の届く範囲水深三メートルから十メートルぐらいの範囲のところに繁茂して、いわばモ原のようなものをつくります。それは水の動きが少ないために、脆弱な稚魚、幼魚というものがそこへ逃げ込んで暮らすことができる、あるいはその葉っぱの上にたくさんの小型の動物がつきまして、それ自身がえさになるという点で、漁場としてよりはそういう漁業資源生育場として非常に大きな意味を持っているわけです。  ところが瀬戸内海の例でいいますと、この十五年ばかりの間に二万二千ヘクタールであったものが、一万ヘクタール弱に、実に五三%が減少しております。そのうち埋め立てが非常に大きな原因になっていることは明らかです。それからさらに、水質汚濁が加わりますと太陽の光線が水底に届く範囲が減りますために、これまたモ場が減少してまいります。こういうモ場の大切さということは慣性的に漁民は古くから知っておりまして、漁民自身モ場を大切に取り扱っております。また法的には、それをくみましてかなり古くに特別保護水面というものが規定されまして、モ場における引き網漁業禁止その他の措置が水産的にとられてきていたわけであります。  近年では外国でも次第にこのモ場いうものに着目するようになりまして、現在話が持ち上がっておりますのに、国際海洋開発十年計画といわれる国際共同研究プロジェクト一つ海草生態系研究というのがあります。その中でモ場貢献度というもの、それを広い意味での資源問題と結びつけて考察しようというふうに進んできております。日本のようにすぐ食える魚がとれる、とれないということよりは、そういうモが茂って、それがまた腐って、そしてそれが栄養になって小さな動物ができ、魚ができるという、一つのそういうシステム自身の基礎的な役割りを非常に高く評価しているようであります。  ここで実例として、現在一番焦眉の急だと思われます瀬戸内海のことについて若干申し上げます。  本来、瀬戸内海は、多くの二重湾と干がたを持つきわめて生産性の高い海域です。しかし、この十年、十五年の間に非常に工業化が進みまして、一九五五年には千七百七十七ヘクタールであったものが、一九七〇年現在で一万七千四百八十九ヘクタール、大体十倍の面積が埋められているわけであります。そしてさらに今度の新全総と呼ばれております計画では、周防灘総合開発で実に五万四千四百ヘクタール、それから備讃瀬戸水島工業地帯に匹敵するだけの規模のものが、これも埋め立て造成によってつくられようとしております。  ここで、そういうものが一体瀬戸内水産業あるいはそこの生物的自然にどういう影響を及ぼすかということにつきまして、水産庁瀬戸内海漁業調整事務局がつくりました「瀬戸内海漁業の実相」という本から少し引かしていただきます。瀬戸内海の十メートル以浅海域面積の中で埋め立てによりどの程度面積が直接的に失われるかを考えてみると、その面積は十メートル以浅を全部合計すると二十五万二千四百ヘクタールある。そのうちすでに埋められているものが一万八千ヘクタールと、埋め立て計画面積が六万九千ヘクタール、合計八万八千ヘクタールの浅海が直接失われる。これは瀬戸内全体の十メートル以浅海域の三五%に当たるだろう。さらに工事中当然どろが出ます。これは工事の進歩によってずいぶんそれは押えられるとは思いますけれども、現状ではまだまだそういう工事途中の水質汚濁というものはかなりシビアなものがあると考えられます。そのための漁場の荒廃と、もしこれが工業化のために使われるとしますと、当然そのあとに工業排水の問題が出てまいります。そうしますと瀬戸内海の十メートル以浅海域で十分に、私が最初に申し上げましたような浅海としての機能を持ち続ける海域はほとんど残らないのではないかというふうにこの水産庁報告では述べております。  この埋め立てによって水深十メートル以浅漁場を消滅させると、周防灘基幹産業であるノリ養殖業、採具漁業は全滅するし、稚魚産卵生育場である浅海、干がたも消滅するので、周防灘漁業は非常に大きな打撃をこうむることになるだろう。ここで沿岸漁業を全部あきらめることを前提瀬戸内を開発するかどうかという選択が一つ出てくることだと思います。しかし、現実には、その沿岸にはいまだに漁業によって暮らしておる人たちかなりの人数に及びます。そしてまた、そういう撹乱されない自然によって、沿岸のそれ以外の職業を持っておる人たち生活環境というものも現在は保たれているわけですけれども、この大規模埋め立てというものは、そういう漁業以外の人々にもかかってくる問題であろうと思います。  それから増養殖漁業ということが、一つはこういう沿岸漁業の救いの手として非常にはなやかに宣伝されました。現在もいまだにいいことを書いてある本もございます。実際水産庁試験研究漁場改良造成ということに数億の金を注ぎ込んで、モ場研究、そして失われたモ場の復元というようなことを考えております。それから別ワク研究というので、これも五年間継続でマダイとクルマエビ資源を、人間が種苗を育てて海へ返してやり、そうすることによって漁民一般が潤うような、そういう形の漁業振興を考えているわけです。  しかし、その前提としては当然海が健康でなければなりません。現にこの一連の研究の中で、愛媛県西条の干がたというのは、瀬戸内海でも非常にすぐれた干がたで、クルマエビも多産し、ノリの好漁場でしたけれども、五年間の年次の途中で埋め立て計画がほぼ確定し、そのために水研も、調査の主力を西条の干がたから撤回して内海西部周防灘に移そうとしております。しかし、すでにその周防灘にも、今度の新全総計画によれば周防灘総合開発計画の手が伸びようとしております。こういう形でいきますと、結局水産関係研究者あるいは技術者あるいは漁民というものが、一生懸命努力して日本沿岸生産を続けていこうとしても、片端からくずされていくというのが現状のように思うわけです。  内湾生物生産モデル研究というのを、これも広島の水産庁研究所が主になって数年間やりました。ところがそのフィールドになった笠岡湾というのはすでに干拓埋め立て計画進行中でして、報告書が出たときには現場がないという結果になってしまいました。  それともう一つ工業干拓の場合、埋め立ての場合には問題になりますことは、それは必ず港を伴い、大きな船が入ってくる。そのために埋め立て土地は大きな護岸に囲まれ、その外側は深くしゅんせつされなければならないということです。このために、農業干拓の場合には締め切って陸だけつくればその外側には再び干がたができ、再び浅海として生きていたものが、近年の工業干拓の場合には、もはやその港の外側の海はもとの海ではないという状態におちいりつつあるということです。  こういうことから一体どうやって瀬戸内海を生き返らせるかということで、前内閣の末期に瀬戸内海を救おうというキャンペーンが政府及び民間によって盛んに言われました。そのときには、十年後にはこのようにきれいにしたいという一応の青写真まで出たわけです。そして干がたが足りない、それで生物が少なくなるならば人工養浜、浜を養う事業をしょう、人工干がたをつくろう、そういう計画も出てまいりました。しかし、一方で十メートル以浅地域をほとんど埋めながらこういうことを考えるということは、たいへん矛盾に富んでおります。そして自然保護ということを考えますならば、それはただ土があればいいというものではなくて、長年存在する千がたは、そこにいる生物全部を含めて複雑な生きている系をなしております。そういうものを埋めるということについては、当然かなり深い配慮が必要だろうと思います。  今回の法改正の趣旨につきましては、公聴会の義務づけ、環境庁との協議、いずれもたいへん前進だと私は存じます。ただ、形式的にこれらが民主化され、民意をくみ上げる形になっていても、一番本質の問題としては、このままの勢いで、瀬戸内に限らず日本全体の内湾沿岸というものをどんどん埋めていっていいものだろうかという非常に根本のところへの疑問が残るわけです。  それで、この法律にどれだけを望んでいいのか、私自身としては判断ができませんけれども、むしろこの際重要なのは、こういう埋め立て開発というものについては、かなりきびしい歯どめをするような形での法案が必要なのではなかろうかという気がいたします。沿岸漁業というものあるいはそういう海辺の暮らしというものを全部切り捨てたところで、日本経済の将来、国民の福祉というものが考えられていくということについて疑念を持つわけです。この法律にどういう形でそれを盛り込むかということについては私の考えに余りますけれども、以上の問題点を指摘して公述にかえたいと思います。  御清聴ありがとうございました(拍手
  6. 服部安司

    服部委員長 次に、小林公述人にお願いいたします。
  7. 小林茂衛

    小林公述人 私は市原助役でございますが、専攻が都市計画関係で、全国的に幾つかの都市計画の面で勉強してきたわけでございます。そういう意味から今回の改正案に対して御意見を申し述べたいと思います。  御承知のように、日本列島の中に一億以上の人間が住んで近代生活と取り組んでいっておるわけでございます。なぜ日本列島の中にこれだけ多くの人が住みながら世界トップ級生活をやっていけるかということを考えますと、日本列島位置その他を考えてこられるわけでございます。御承知かと思いますけれども、昭和の初期におきましては、上水道の計画をするにしても、一人百五十リットル程度の一日の水の量で計画がされたわけでございます。今日では、千葉県等ではすでに六百七十五リットルというような水の使用量に、だんだん生活の水準が上がってくるとともに変わりつつあるわけでございます。  先ほど日本列島位置の問題を申し上げましたのはどういうことかと申しますと、日本にはつゆがあり、台風が来、あるいは冬になると積雪があるわけでございます。こういう条件に恵まれた列島であるために、その水資源によって、一億以上の人間が住んでいろいろの文化生活を営めるわけでございます。在来の陸地部につきましては、環境保全とかあるいは土地利用計画等々、いろいろ申しますけれども、われわれがこういう土地の中で文化生活を営んでいくためには、水資源を非常に必要とするわけでございます。在来の陸地のみにたよって日本の開発がされるならば、水資源地帯を失いながら、戦時中に樹木の伐採等によって災害を起こしたという実例も持っておるわけでございますが、これに匹敵する災害の原因にならないとも限らないわけでございます。  そこで、わが国の都市の形態あるいは公共施設の充実等を考え、その中核地区においての都市の開発、再開発、新設等あるいは産業の開発等を考えますとき、立地条件を考究しますと、恵まれた海岸線をうんと持っておるわけでございますので、その公有水面を埋め立てしながら公共施設の充実をはかっていくことが、近代生活を営む国民に対するほんとうの親切ではないかということが考えられます。  私どもが幾つかの都市計画をやってきながら、あるいは先輩が実現することのできなかったことを、次の都市計画においてはやはり住民の福祉のために理想に近い計画を進めていきたいと存じましても、土地の所有権の問題、補償金の問題等がつきまといますので、大型の都市の改造というものは、思うべくしてなし得ることができなかったわけでございます。都市の形態も順次進歩してまいりましたけれども、振り返ってみますと、在来の都市改造あるいは再開発等々いろいろありますが、これでほんとうに世界に列するところの理想的な国民生活の場である都市が建設していけるかと申しますと、公共用地にしてもなかなか取得が困難である。したがって存分な都市計画というものはできてこなかった。常に中途はんぱなものが多かったに違いないというように反省をしております。  こういう意味からも、新しく公有水面を造成して、そうして公共用地その他環境整備のための幾つかの問題を存分に解決していく計画を簡単に進められるという方法は、御存じのように、東京湾の埋め立てをごらんになりましてもわかりますように、鉄道、交通機関の敷地、道路、公園その他公共用地あるいは環境緑地等の整備につきましても、そこにどうしても理想に近い都市の建設をしていこうとするならば、そういうことがマッチしていかなければならないということを十分に考えているわけでございます。  そこで、埋め立て等による弊害の問題でございますが、公有水面を埋め立てるという技術の問題でございますけれども、これは私ども、琵琶湖においても湖流を生じさして水質汚濁防止を考えておるというように聞いております。琵琶湖でさえ公有水面の一部を埋め立てることによって湖流が生じてくるというようなことが考えられておるわけでございます。一例をとりますと東京湾におきましても、その埋め立ての技術的な問題を解決していけば、東京湾に湖流が起こってくるのではないか。したがって、水質汚濁防止、それから漁業の問題等も、これはすべて技術的な問題で解明できていくものと考えております。  そういうことからして、新しい事態と、そして限られた面積と、それから大切な、先ほど申し上げましたように逆に台風は歓迎すべきであるというような、雨及び雪の降る条件を備えた国であるならば、わが国の在来の環境保全しながら水源にし、あるいは環境保全に役立たせるようにできるだけ多く保存していかなければ、われわれが内陸においていろいろな開発事業を行なうことが即災害につながり、水資源を失うことにつながっていくんだということが考えられます。  こういうことで、公有水面埋め立てというものは往時からすでに行なわれておりました。しかし、社会事情によって、徳川時代に行なわれた農耕用の干拓が近代社会の実情に沿って工業地帯に変わりつつあることもやむを得ないと思いますけれども、士農工商という昔の時代から農業に対して公有水面を埋め立てて善政をしいておったという時代さえあるわけでございます。こういうことからして、限りある面積と、それから水資源涵養に大切な内陸を保存していくためには、どうしても公有水面埋め立てによる日本の国土の近代化というものが必要になってまいると考えております。  それから、この中にありますいろいろの問題あるいは所有権の問題等につきましても、徳川時代から所有権というものは国民の中に隠然として習慣として残ってきておるわけでございますので、この所有権の移転あるいは使用目的の変更等につきましては、都市計画において土地利用計画を明確にきめておくならば、たとえ所有権が変わっても、その公有水面を埋め立てた当時の目的と変わらないものが継続されていくのではないかというように考えられます。  そういうことからして、最も重要なことは、ただいま申しましたように公有水面埋め立てが必要である、そしてそれを改善して時代に即応するようにしていかなければならない、及び環境保全の問題につきましても、海洋の汚濁防止は現在のままでそれでは汚濁防止ができるかと申しますと、そうとも限らないわけでございまして、埋め立て工事の技術的な解決によって逆に潮流を起こさすこともできるし、先ほど申しましたように、琵琶湖の湖流も起こさすことができるとするならば、海洋汚染防止できるし、あるいは水産業に対する問題あるいは魚礁の問題等も技術的な解明によって解決されていくのではないかというように考えられます。  中を分解してまいりますと非常に小さい問題まで及んでまいりますけれども、ただ私どもが新聞等で知り得た今回の改正法案に対しては、将来の土地の処分問題、所有権の問題等は考えられますけれども、いま一気にそういうことを解決するという時期ではなくて、日本人自体の習慣、因襲によるものが多いと思いますので、現在の法案に賛成して、何年かたって社会の実情あるいはその時期が来たならば、なおこれを一そう近代的に改正するという条件で賛成の意を表します。  ありがとうございました。(拍手
  8. 服部安司

    服部委員長 次に、斉藤公述人にお願いいたします。
  9. 斉藤吉平

    斉藤公述人 私、斉藤でございます。まず最初に、私の立場を申し上げさせていただきたいと思います。  私のほうは、全日本海員組合と申しまして、乗り組み員を中心として組合を組織しているのでございますが乗り組員の中には、大型汽船あるいは内航を航行しております内航船の乗り組み員あるいは国際漁業に従事しております漁船の船員、沖合い漁業に従事する漁船の船員あるいは港内でもってはしけに従事する者あるいは引き船に乗る者あるいはしゅんせつ船等に乗り組んでいる方々というように、非常に多種多様の乗り組み員を持っておりますので、船員の間におきましても必ずしも具体的な利害関係については同一歩調がとれないという場合もございます。しかし、私ども組合という力のある団体といたしまして、社会的に、あるいは、大げさな言い方かもしれませんが、全人類的な立場から行動をする社会的な責任があるという立場で、私どもの意見を申し上げさせていただきたいというように考えます。なお、その上に、私どもは海面で働く現場の乗り組み員でございますので、現場の立場からも申し上げさせていただきたいというように思います。  まず第一に、これは私ども昭和四十五年の大会でございましたけれども、潮流公害対策の決議ということが行なわれました。たいへん聞きなれないことばでございますけれども、具体的に申し上げまして関門海峡をとり上げますと、関門海峡の周辺埋め立てられました。なおかつ、現在完成が近いのでございますけれども、関門に渡る橋ができておりまして、その橋げたが海峡の中に突き出ております。たまたまその突き出ている面積が幅の約一〇%ございまして、埋め立てて海峡が狭くなったという立場から、潮流が速さを増して流れてきております。これは実際にわれわれ組合員が航行をいたしまして感じてきている点でございまして、いままで二十馬力のエンジンでもって、いわゆるさんぱん、汽船の乗り組み員を運ぶ船でございますけれども、通船が海峡を最強流のときでものぼることができました。ところが、現在は二十馬力ではこれを越えることができませんで、四十馬力ないしは六十馬力というエンジンを換装することによりまして、ようやくこれを乗り切ることができる。あるいはいままで船乗りのことばでY潮という言い方をしておりました、本流のかたわらに反対にころがる潮という流れができるわけでございまして、小さな船等はこのY潮を利用いたしまして本流に近づき、一挙に海峡を渡るという航法を昔からとってきていたわけでございますが、埋め立てその他によりましてこのY潮が姿を消してきた。あるいはほかに平行した流れが逆に生じてきたといったようなことから、航行する時間が非常に制限をされてきた。それが組合員の場合、あるいは小さな企業に与える影響が非常に大きな問題として出てきているわけでございます。  さらに私ども注目しなければならないと思いますのは、レジャーが発達をしてまいりまして、いわゆる遊漁船、魚をつるお客を乗せていく遊漁船の数がふえてまいりました。関門海峡等におきましては、二十隻、三十隻、あるいは多いときになりますと百隻になんなんとする遊漁船があそこで魚をつっているわけでございますが、潮が速くなってきたために、一たんかじをとりそこないますと急速に沿岸に流れつく、あるいは航行している汽船に接近をするということでございまして、衝突の危険というのが非常に増大をしてきております。そこで、現地におきます関門水域潮流公害対策協議会というのが二十六団体で設置をされまして、具体的にその対処の方法等を行なっているわけでございますが、このような私が申し上げましたような問題というのは、意外に陸上の方々には知られていない問題でございますが、私どもにとりましてはきわめて重要な問題であるということでございまして、埋め立て等につきましては、こういうわれわれの社会があるということをぜひ知っておいていただきたいというように考えるものでございます。  これは、全国的に海上埋め立てということが出てまいりますと、先ほど関門で具体的に申し上げましたような潮流の変化、流速の変化という問題が第一ございます。  それから、海底の変化がございます。これは、流れが変わることによりまして、海の底の浅い、深いが変わってくるわけでございます。これによりまして最近小型船の海難というのが意外にふえてきておりまして、私どもの心配している点でもございます。海上保安庁に水路部というのがございまして、沿岸水深を常に観測をして、それを表にして表示するのでございますけれども、日本沿岸におきましては、大体十年に一回観測をしてくださる、そしてそれを表にあらわす、あるいは海図に載せるということをやっていただいているわけでございますが、最近は、急速な埋め立て、急速な開発ということが起きまして、十年の間に非常に大きな変化があって、十年はとても待てないというのが現状でございます。  それからさらに、これも小型船に影響を与える点が大きいのでございますが、沿岸埋め立てられてまいりますと、航路が沖に出されてまいります。沖に航路が出されていくために、いままで風その他の陰にたよって安全な航行を確保しようとしていた航法が、直接風浪にさらされるというような場合も出てまいりまして、小型船の航行の安全を確保するという意味にも一つの問題が出てきております。  それから、自然の海岸線、これは私どもにとりまして波殺しの役目を果たすということで、たいへん大事なことと見ているわけでございますが、海岸が造成をされますと、そこに障壁あるいはコンクリートの大きな壁というものができてまいりまして、波がそこで自然に消滅をせずに、返し波の形をとります。返し波の形をとるために、その波が一般の波と同調をいたしまして、非常にきつい高い波になる。これが最近小型船の安全にとりましても、非常な危険ということが増大をしてきているということが言えるかと思います。最近モーターボートの増加、ヨットの増加が急速でございまして、いわゆる海の専門家でない人方が多数海上に出ているわけでございますが、この増加の速さと、先ほど申し上げました波の高さというものが、非常に悪い意味での相関関係を持ちながら進んでいるということで、さらに海浜におきます事故防止という立場からも私ども心配をいたしている点でございます。  さらに、私ども漁船船員を持っておるわけでございますが、多少これは話が外にそれるかと思いますけれども、いま漁船の中で一番心配しておりますことは海洋法会議の行く先でございます。この海洋法会議が、ちまたに言われておりますようにたとえば漁業専管区域というのが二百マイル、あるいは領海におきましても二百マイルというような幅広いことにきまるといたしますと、私ども遠洋漁業、国際漁業に従事しております者の八〇%がその職場を失うというきわめて重大な問題でございまして、私どもその意味におきましてこの海洋法会議を重要視しているのでございますが、もしそれが二百マイルが他国の水域になったと仮定をいたしました場合、われわれ日本人はいずれにしても魚を食べなければならない、われわれ乗り組み員はその魚を供給しなければならない。そういたしますと、何としてもそれらの国々に対しまして、魚をとらしてほしいということをいろいろと説得をしながら漁業に従事するわけでございますが、その場合に、われわれみずからの足元、日本沿岸における漁獲物というのが非常に問題になろうかと思います。日本の近海は世界におきましても一、二を争います好漁場、たいへん魚のとれるいい漁場というふうに世界では認めれらている海域でございます。そのまず足元の海域におきましてみずからの食べものをとらないで、むしろそれをよごすあるいは殺すというような形で何でわれわれの国に魚をとらしてくれということを言ってくるのかというのが、もう具体的にわれわれのところに入ってきておりまして、その点におきましても、日本沿岸がまずみずからの食糧が供給できるきれいな海になるということが、遠洋漁業に従事している乗り組み員の問題についても同じように大きな影響を持ってくるということで、この点につきましてはいろいろ生態学者等が御研究されておりますけれども、きれいな海にしていきたい。そのためには、沿岸埋め立てというものについても慎重な配慮がほしいというように考えられるわけでございます。私ども埋め立てに接しますと、何といいますか、ごみ捨て場である、陸上のかすを全部海に捨てるのだというようなごみ捨て場的な感覚でございまして、産業廃棄物等もいままで平気で投げられていたわけでございますが、たとえば東京湾等を見ましてもシアン化合物であるとか硫酸ピッチであるとか、とても生物が生存できないようなものが平気で投げ捨てられてきているということで、これは私どもにとりましてもたいへん憂慮すべきことでございまして、われわれ自体の食糧がある海なので、これはごみ捨て場ではないというような考え方というのをぜひ徹底していく動きというものがほしいというふうに私ども考えるわけでございます。  もう一つ、これは大きな汽船にとりまして一つの問題がございますのは、たとえば台風等がまいりましたときに、現在港に入っている主として大きな船は、港外に出まして難を避けるのが通常でございます。ところが、御存じのように、たとえば東京湾、大阪湾あるいは伊勢湾等々を考えてみましても、あるいは羽田から飛行機で上がられる場合に、下に停泊をしております船を見ていただいてもおわかりかと思いますが、たいへん船舶数が増加してきておりまして、錨地、いかりを入れて休む場所が非常に狭くなってきております。これは今後台風等がまいりました場合には、とても現状の東京湾、大阪湾では不足するであろう、そうしますと、どうしても台風の荒れ狂う直接の大洋に出なければならないということが出てくるわけでございまして、これも私どもたいへん心配している点でございます。これ以上東京湾なり大阪湾なり港外に出て避泊できる海面というのを狭くされますと、船自身の行動もできなくなるという点もございまして、これも可能な限り注意をしていただきたいということを考えるわけでございます。  もう一つ、これは間接的といいますか、われわれにとりましては非常な不安の対象でございますが、戦争中に投下をされました機雷の問題がまだございます。これはまだ年に三個ないし四個発見されたりあるいは爆発をしているわけでございますが、関門海峡等、一番投下をされました地域だけを見ましても、現在まだ二千個弱残っているというのが計算上出てきているようでございまして、現在盛んに探査といいますか機雷をさがしている状況でございます。ところがこれが潮流の変化によりまして、いままで深いところに入っていたのがむき出しになる、あるいは土砂をかぶって底にもぐっていくということで、なかなか見つけにくかった点もございました。さらに、その上に埋め立てということがございまして、その辺についての配慮もなしに埋め立てをしていく。いつの間にか、機雷がどこにあったのか、さがす範囲から姿を消してしまう、ところがそれが埋め立て地に大きな構造物を建てるときに掘り起こしていくことによってまた爆発をする、発見をされる等の危険もございまして、私ども早いところ、もり戦後三十年もなろうかと思います現在、まだ機雷によってわれわれ自身が悩む、不安があるというような条件というのは早くなくすることである、その意味におきましては早く、そのような埋め立てによってわからなくなるというようなことではなくて、早く見つけ出して処理をするという意味での慎重な配慮ということもお願いをしていきたいというふうに考えているわけでございます。  以上、等々をまとめまして、私ども今度の一部改正というのは、意欲的な点も中にいろいろと拝見さしていただきまして賛成なのではございますけれども、なおかつこの段階におきましては、水面の埋め立てということにつきましては慎重な配慮が必要であるということから、私どもは原則といたしまして基本的に見直しをすることが現在必要なのではないかということで、今日のような一部改正ではなくて、もうちょっと基本的な改正ということを考えるべきであるというふうに考えるわけでございます。私ども原則といたしまして、絶対に港等々、あるいは埋め立て地等々をつくってはならないということは申し上げる立場にはございませんけれども、少なくとも原則としてはこれ以上埋め立てないという立場に立ちまして、さらにここに埋め立て等を必要とする場合にはシビアな条件を付すべきであるというように考えます。  あの中を読ましていただきますと、地元関係者の御意見を聞くようになっておりますが、さらに地元関係者も、先ほど申し上げましたいろいろな立場影響があるということで、広く関係者の意見を聞かれるようにしていただきたいということ。それからその影響するところがいかなる方向に行くのか、もっと科学的に広い範囲にわたっての総合的と申しますか、そのような調査というのをぜひ行なうようにしていただきたい。さらに環境庁の御意見を求めることができるというように書いてございますが、環境庁の意見というのは一つ条件であるべきであるというように私どもは考えるわけでございます。  以上を私どもの立場ということで申し上げまして、私どもの意見とさせていただきます。  ありがとうございました。(拍手
  10. 服部安司

    服部委員長 次に、田中公述人にお願いいたします。
  11. 田中和

    田中公述人 私は、お示しのこの改正案に全く反対であります。  公有水面は、申すまでもなくわれわれ国民の共有の財産でございます。その共有の財産を、多数の権利者を排除いたしまして、埋め立て免許を得たという一個の者に与えるということにつきまして、国民共通の立場から十分慎重でなければならないと存じます。しかも、その対象である公有水面というのは、現実におきましては海面が主であります。したがいまして、この海面に対し権利を有する者はもちろんのこと、沿岸住民に対する公害の防止環境保全をはかる必要があると思います。のみならず、埋め立てによりまして自然が変化いたしまして、それによって生じた潮流とか気象条件の変化は、この沿岸地域のみならず、隣接地域の住民あるいは水産資源にどういう影響を及ぼすかということにつきましても、十二分に検討してかからなければならないと信じます。  この観点に立ちましてこの改正案を拝見いたしますと、次のような欠陥が発見されるのであります。  第一には、権利者及び沿岸住民に対する配慮がはなはだしく不十分であると存じます。なるほど第五条によりますと、「権利ヲ有スル者」が第四条によって同意権を与えられるということが書いてございます。しかしながら、しさいに検討すれば、その「権利ヲ有スル者」というのは「埋立ニ関スル工事ノ施行区域内ニ於ケル」という限定がされております。したがいまして、工事の施行区域外の、要するにこの海面に隣接したところに漁業権とか入漁権を有する漁民に対する保護はどうなるか、さらに埋め立て地の利用によりまして、それに隣接した地域住民生活環境がおそらく破壊されるであろうということを予想する場合にはどうなるか、またこの埋め立て自体によって面接損害を及ぼすであろうと思う人に対する配慮はどうなるか、またこれが自由海面である場合には、海面を汚染されて損失を受ける漁民の人々はどうなるのだろうか、これらに対しては何ら同意権を与えておらぬし、また種々の配慮もなされていないと思います。  なるほど改正案の第三条によりますれば、埋め立て免許の願書とか図画を公衆の縦覧に供する、しこうして利害関係人は縦覧期間満了の日まで意見書を提出することができるという規定がございます。しかしながら、告示の日からわずか三週間という短期間で、利害関係人として数値をあげて、あるいは科学的根拠をあげて十分説得できる反対意見書を出せるかどうか、この点について十二分に御検討願いたいと思います。  またかりに、期間内に意見書が提出されたとしても、その取り扱いにつきましては何ら法律上の明文をもってはなされていないのであります。換言すれば——極言いたしましょう。意見書を受理しておけば法律上は足りるというようなふしぎな事態が発生するのであります。  さらに、いままでの事例といたしましては、公有水面の埋め立て事業者は都道府県もしくは市町村でありました。これが第三条におきまして、事業者が市町村の場合に「市町村長ノ意見ヲ徴スベシ」とすることは、ほとんどその規定自体が無意味であります。また事業者が都道府県である場合、免許権者は都道府県知事である。これまた、意見書をかりに提出しても、その意見がいれられるかどうかということは、はたして期待できるでありましょうか。たとえて申し上げるならば、弁護士の役目も検事の役目も、またそれを裁判する役目も、同じ一人の裁判官がやるというような規定であります。  したがって私は、埋め立て計画並びに環境調査したり意見書を審理するには、埋め立てによって不利益をこうむる漁民あるいは地域住民を加えた独立の審査機関を設けるべきであると信じます。また、そうすることがチェック・アンド・バランスという民主主義の常道ではないかと確信いたします。  次に、自然環境保全とか資源保護については、改正案におきましてははなはだ配慮が欠けていると思います。  なるほど、免許の基準につきまして、環境保全及び災害防止につき配慮せよ云々と第四条にございますが、埋め立て自体の施工方法をどうするか、または、利用に関してどうするかというような規定がございません。また、資源保護に関する規制が見当たらないようであります。  かつまた、「環境庁長官ノ意見ヲ求ム」という一項がありますけれども、これまた意見だけであって、責任の所在が明確でないというような不合理があります。  第三に、この改正案においても、将来の利権の発生あるいは特定の政治的目的の利用を防止するという対策が何ら盛られていない。  なるほど、現行法規の十六条「埋立権の譲渡」とか、第二十七条「埋立地に関する処分の制限」という規定がございます。これは、埋め立て権を他人に譲渡する場合、もしくは埋め立て地の所有者とか相続人が、これを第三者に転売したりもしくは賃貸したり担保に入れたりする場合の制限である。したがって法律的に言うと、自然人だけに対する規定はこれで尽きておるでありましょう。しかしながら、法人、特に私法人の場合に対する抑制は何らありません。砕いて言うならば、法人である場合、役員を変更しあるいは名称を変更する、その間に裏において何らかの利益が動いた場合に、法的にはあくまで形式上法人としての同一性を保つから、これらの制限には触れないというような不合理がありまして、この点、将来に対し利権発生防止という点からも、何らかの規制を設けるべきだと存じます。  さらに二十九条、異なる用途の制限の項でありますが、これを見ましても、改正案の第二号あるいは第三号におきまして、「告示シタル用途ニ供セザルコトニ付已ムコトヲ得ザル事由」それから第三号の「適正且合理的ナルコト」このやむことを得ないか、適正かつ合理的であるかどうかという判断は、すべて免許権者の都道府県知事の専権に属しております。したがって、利害関係人もしくは公衆は、これに対する意見陳述の機会を閉ざされております。この点からも考えてみますると、あるいは将来何かの特定の政治的目的に利用されはしないかという危惧を抱くものであります。  それでは、これらの私の申し上げた不備を補正すれば、現行法部分改正をもって足るかという点でございます。しかしながら、現行法は大正十年の制定でございまして、すなわち旧帝国憲法下におきまして、天皇主権の時代、長官も天皇の官吏であった時代に制定された法律であります。公有水面も、学問上は別といたしまして、思想的には天皇、国家のものと考えられた時代のものであります。したがって、いかに部分的に枝葉末節を変更しようと補足しようと、この幹、根源は変えることはできません。主権在民の今日、人間尊重のための環境保全という見地から、抜本的な全面的改正が必要であると思います。  終わります。(拍手
  12. 服部安司

    服部委員長 次に、西村公述人にお願いいたします。
  13. 西村肇

    西村公述人 西村でございます。私は、環境あるいは生態学というものを十分に考えた上で今後の産業のあるべき姿というものを考えようという、新しい学問である産業エコロジーというものを研究しておる者でありますが、特にその中でも瀬戸内海を対象にして研究を進めておるものであります。その過程で、今回の問題に関連をしまして、気づきました点を二、三申し上げて公述にかえさせていただきたいと思います。  埋め立て環境への影響ということにつきましては、埋め立てそのものが生態系または漁業にどういう影響を与えるかということがまず第一であります。これにつきましては、すでに菊池先生のほうから御指摘がありましたので簡単にさせていただきますが、ただいまお配りした資料によりましてもおわかりになりますように、たとえば二という図を見ていただきますと、瀬戸内海漁業生産の中で、カニとかクルマエビとかタイとかというような漁獲が非常に激減しております。これは主としてモ場の減少に基因しているものと考えてよろしいと思います。なぜモ場がこれだけ減少したかということは、水産庁の調べによりますと、その次の三という表に書いてありますように、埋め立てによって消失したモ場の割合が圧倒的に多いわけであります。このように埋め立てということは、直接漁業生産に大きな被害を与えているということをまず第一に指摘したいと思います。  しかし、この点に関しましては、すでに菊池先生も御指摘になったことでありますし、これでとめさせていただきまして、私は、現在の埋め立てというのが、単に埋め立てという側面だけに注目するのでは不十分でありまして、むしろしゅんせつ埋め立てという方式をとっておる、そのために、むしろ埋め立ての直接の影響よりもしゅんせつに伴う影響のほうがはるかに大きい、この点を十分に考慮していただきたいということを訴えたいと思います。  そのために、これはもうよく御存じの方もあられるかと思いますが、念のために現在におけるしゅんせつの方法を簡単に紹介させていただきますと、しゅんせつの埋め立てはこういうふうに行ないます。つまりプロペラ状のものを持ったスクリューのようなものを使いまして、それを海底に、おもに砂地のところですが、砂地のところに持っていきまして海底をひっかき回す。そして底の砂を浮遊させます。浮遊させて砂と水との混合物、これはスラリー申しますが、そのスラリーをつくりまして、そのスラリーをサンドポンプで、パイプでずっと運んでまいります。長いパイプ、または船で運ぶこともありますが、パイプで運びまして、水と砂のまじったスラリーを埋め立て地に運んでくるわけです。埋め立て地では仕切りをつくっておきまして、その水と砂のまじったスラリーをワクの中に入れますが、そのときに大部分の砂はそこで沈でんをしまして埋め立てに使われますが、水は当然海に返ってまいります。その返っていく水の中にかなり大量の微細などろが残っておりまして、それが一種のこまかい砂の汚染となって海に広がっていくわけであります。  ですから、しゅんせつという方法を使いますと、二つの地域で浮泥、つまり砂の浮遊化による濁りが生じます。一つはしゅんせつを行なったその場所でありますし、一つはそれが埋め立てられた場所であります。  それで、そのような浮泥による濁りの範囲がどのぐらいになるかということを考えてみますと、三つの面から考えられると思います。  一つは、ある個所を埋め立てるという場合に、しゅんせつををする場所というのは埋め立てられる場所よりもはるかに広いんだということを指摘したいと思います。お配りした資料の中で八図を見ていただきますと、これは四国の番の州というところの埋め立てをしたときにどの地域からしゅんせつしたかということでありますが、そこに書いてある直線の道は航路でありまして、この広い地域の航路をしゅんせつしたどろでもって香川県の番の州というところの埋め立てが行なわれております。埋め立てられた地域は数平方キロメートルの比較的小さいところでありますが、しゅんせつの範囲が教十キロメートルに及んでいるということを指摘したいと思います。  それで、まず第一義的に申しますと、しゅんせつ地域において浮泥によって生じた濁りというのは潮流によって運ばれてまいります。どのぐらい運ばれるかといいますと、この備讃瀬戸埋め立てのときに実測したデータがありますが、約十キロぐらいの範囲にわたって運ばれるわけであります。明らかに濁りが認められる海水が、十キロの長さにわたって広がってまいります。それらがさらに沈でんいたしまして、そこの下にあるモ場その他に損害を与えるということになろうと思います。  さらにその先のほうで、一応濁りは目には見えなくなります。それは、そのように浮き上がりました砂が海水とまざってしまうために、濁りは一応見えなくなってしまうわけでありますが、ここで注意したい点は、一応目には見えなくなった砂でありますが、砂の中でも五ミクロンというような非常に微細な砂は、海の中で決して沈降することがないということであります。これは海の中に乱れがあるために、沈降しようとしますと乱れで巻き上げられるということになりまして、一度巻き上げられた五ミクロン以下の砂というのは決して沈降を起こすことがありません。ずっと濁りとしてとどまってしまいます。これは目にははっきりと見えませんが、実は瀬戸内海全域にしゅんせつによる浮泥が広がっているということを、私は最近の研究の結果確かめたものですから、そのことをちょっと御紹介したいと思います。  濁りということを考えます場合に、直接的な指標として海の透明度というものが考えられております。その四図に書いてありますように、瀬戸内海というのは、以前にはどの場所をとりましても約十メートル近くの透明度がありました。どの場所でも十メートル近くまでは底がずうっと見えていたものであります。ところが、去年の環境庁の調査結果を一図に示してありますが、これを見ましても透明度が四メートル以下という非常によごれた海域が大きく広がっておりまして、瀬戸内海の半分ぐらいが四メートル以下というような濁りを生じております。  このような濁りがいつから生じたかといいますと、六〇年代に入りましてから特に急激に進行しておるということが特徴的なことであります。もう一点は、一図を見ていただいてもわかりますように、備讃瀬戸、播磨灘、大阪湾というところが濁りがひどい。特に備讃瀬戸のようなところは、前は非常に透明度の高いところであったものが、近年非常に透明度の低下が激しいということが指摘されます。これは四図を見ていただいてもおわかりになると思います。  さて、そのような濁りの原因として二つのものが考えられております。一つは植物性のプランクトンでありまして、一つはいろんな微細な砂、無機物のこまかい粒子であります。このうち、近年の濁りの発生、濁りの増加がどちらによるものか。赤潮その他プランクトンの増加によるものであるという説と、砂の粒子によるものであるという説、二つのことが考えられるわけであります。まだむずかしい問題でありますが、私の研究によりますと、まとめてみますと五図のようになると思います。  つまり、この図では瀬戸内海各地における植物プランクトンの量をあらわすものを横軸にとりまして、濁りをあらわすものを縦軸にとったわけであります。この斜線で響きましたところは、植物プランクトンだけであるならばこの程度の濁りが生ずるはずだということの範囲をあらわしておりまして点であらわしてある部分は実際の濁りです。これを見ていただきますとわかりますように、実際の濁りは、植物プランクトンだけから推定される濁りの約倍程度になっております。つまり、現在の瀬戸内海の濁りというのが、半分が無機性の砂のような粒子によって起こされているということがかなりはっきりしたわけであります。  しからば、そのような無機性の微細な粒子というのが一体何に原因しているかということでありますが、一つには、産業側または都市排水その他から排水とともに出てくる微細な粒子というものを考えなければならないと思います。その量を大まかに見積もってみますと、瀬戸内海の場合一日に約二千トンという量になります。これに対しまして、しゅんせつ埋め立てによって排出される土砂の量というのは、たとえばしゅんせつされる量そのものは一日に約百万トンのオーダーに達しております。そのうち何%が、先ほど申しましたように沈でんせずに水とともに海へ返っていくかというのは非常にむずかしい推定でございますが、約五%程度と考えてよろしいと思います。そうしますと、一日に五万トン程度の土砂がしゅんせつのために瀬戸内海の中にいろんな形で放流され、それはほとんど沈むことなく水の濁りとなっております。先ほど申しましたように、産業排水側から出てくるものが二千トンでありますと、片やそれの二十倍程度の量が土砂となって放出されておるわけでありまして、この瀬戸内海の濁りのおもな原因というものは、やはりしゅんせつによるものと考えざるを得ないわけであります。そのことは、先ほど濁りが増した時期が六〇年代の後半である、それから場所が特に播磨灘を中心にしているということを申し上げましたが、しゅんせつが盛んになった時期というのが、七図を見ていただきますとわかりますが、これは瀬戸内海沿岸埋め立て実績の経年変化を示した図であります。以前は一年間に〇・一平方キロメートルで推移しておりましたものが、六〇年代に入りましてから、一年間に約十平方キロメートルというふうに多くなっております。つまり百倍以上にふえたわけでありまして、透明度が低下した時期とよく一致しております。また六図に書いておりますものは、どこでしゅんせつがよく行なわれたかということでありまして、これを見ていただきますと、兵庫県及び岡山県でしゅんせつが進んでいるということがわかります。つまり、播磨灘が透明度の低下が最も著しいということとよく符合するわけであります。  以上のように、濁りがしゅんせつに大きく基因しているということが確かなことであろうと思いますが、そのような濁りが生態系に対してどういうふうな影響を与えているかということでありますが、一つは、先ほど菊池先生が御指摘になりましたように光が届かなくなり、モ場が死滅してしまうという影響一つあります。もう一つ影響といたしまして、赤潮の深刻化、頻発化とその悪性化という問題を指摘したいと思います。  御存じのように、播磨灘では去年非常に大規模に赤潮が発生いたしまして、特にそれが悪質であったために養殖ハマチが大量に死にまして、数十億の被害を出しておりますが、赤潮が起こる。なぜこういうことでいまの濁りが赤潮を助長したかと申しますと、海底の砂を巻き上げたときに、海底にいままで蓄積された有機物を巻き上げて、いわゆる窒素、燐という栄養物を海水中に補給したことが一つあります。それともう一つ、非常に悪質な赤潮というのは、最近の研究で明らかになりましたところによりますと、ビタミンまたはチアミンというようなビタミン類を要求する赤潮、双鞭毛藻という赤潮で、これは非常に悪質なわけでありますが、そのようなビタミンとかチアミンとかいうものは、海水中にあるバクテリアの生産物であります。つまり、たくさんの濁りが発生して、そのまわりにバクテリアが巣をつくって、そうしてたくさんのビタミン類を生産するために悪質な双鞭毛藻類というものの繁殖が助長されたのではないかと考えられます。  以上のようなわけでありまして、私は結論としていままでの話をまとめてみますと、しゅんせつの埋め立てによる影響範囲というのは非常に広い。またその影響が、先ほど申しましたように微粒子は決して沈降しない。海水の交換で瀬戸内海から水が出ていかない限りそれが消えないという意味で、非常に持続的であるという点を指摘したいと思います。ですから、瀬戸内海のように閉じられた海の中では、しゅんせつ埋め立てという方法は今後とるべきではないんではなかろうかと考える次第であります。  それで今回の法案に関連いたしまして私の意見を述べさせていただきますと、旧法が改正されるということはたいへん喜ばしい、賛成いたしますけれども、いま申し上げましたようなことに関連して意見を申し上げますならば、こうなると思います。つまり、しゅんせつ埋め立てという方法によりまして、先ほど申しましたように影響する範囲が非常に広いということを指摘したわけであります。それでその範囲というものも、いわば生態学者、海洋学者が十分に審議いたしますれば、ある程度予測可能なものだと思います。ですから、いわゆる埋め立てにより直接影響を受けるものばかりでなく、間接に影響を受けるものの範囲というのは、専門家の意見によりかなり正確に予測できると思いますので、影響が及ぶ範囲を確定するための審議会というようなものをぜひつくっていただきたいと思います。それで、そういうふうな審議会によりましてこの範囲まで影響が及ぶということが確定されたあとで、その範囲におられる権利者の同意を必要とするというふうに改めていただければと思います。もちろん、権利者の中にはそこで漁業をする漁民ばかりでなく、市民も含められるべきではなかろうかと思います。  それに関連しまして一言だけ実例を申し上げますと、特にいままで、埋め立ての中で直接の利害関係者だけに権利が認められていたということのための弊害が著しく出ている例が、別府湾における埋め立てであろうと思います。御存じのように、別府湾では鶴崎地区を第一期工事といたしまして、さらに鶴崎から佐賀関に向けての埋め立てが行なわれようとしております。第一期工事として大野川から別府のほうに近い側の第一期工事ができておりまして、そこはもう多くのコンビナートが建っておるわけですが、現在第二期工事が進められようとしております。この部分は、ほとんどは漁業者が漁業権を放棄しております。ところが最後に、一番佐賀関に近い側に神崎という場所がありますが、ここの漁業者は漁業権を放棄して、漁業組合が漁業権を放棄していないためにまだ工事ができないでおります。ところがよく調べてみますと、佐賀関にいる漁民はその部分漁業権を放棄することに賛成なのであります。ところが、それを含めた佐賀関漁協は反対という立場をとっております。市民も埋め立て反対という立場をとっておりますが、なぜ神崎の漁民が賛成をするかといいますと、神崎の隣のところまで漁民漁業権を放棄して埋め立てが行なわれてしまいますと、それと隣接した漁区である神崎は、埋め立てをしなくても漁区の破壊ということは同じことでありまして、全然漁業ができなくなる。全く漁業ができなくなるのであれば、自分たちはむしろ漁業権を放棄したほうがましだという考えに立っておるわけであります。つまり、漁業権を放棄したいというわけではないんだけれども、隣まで埋め立てられれば漁区の破壊は目に見えておる、ですから漁業権を放棄したいということであります。  いままでの埋め立てによります被害——埋め立て地域が広がったメカニズムというのは多分にこれと同じメカニズムをとっております。つまり一部が放棄する。そこでの汚染が当然に広がるにもかかわらず、その間接的な影響を受ける部分の権利者は保護されていない。そのために補償もされない。ですからその部分はむしろ放棄したほうがましだということで、その部分も放棄する。その次には、また隣接した部分が放棄するという形で進みます。つまり、これはいわばドミノ作戦と全く同じ形で進んでおるわけでありまして、そのために、漁民が欲するといなとにかかわらず埋め立てが広がっておるというのが現状であろうと思います。ですから、必ず隣接する漁区または間接的に影響を受ける漁区の権利者の利益というものは十分に考慮されるべきであろうと考えます。  以上をもちまして私の公述を終わらしていただきます。(拍手
  14. 服部安司

    服部委員長 以上で公述人各位の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  15. 服部安司

    服部委員長 公述人に対する質疑を行ないます。  なお、質疑の際には公述人を御指名の上お願いいたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林義郎君。
  16. 林義郎

    ○林(義)委員 六人の公述人の方々から非常に貴重な御意見をいただきまして、たいへんありがとうございました。  実は、先ほど来斉藤さんからも西村さんからもまた菊池さんからも、それぞれ瀬戸内海につきまして非常に学問的なお話をいただきました。私は瀬戸内海でとれた魚を食って育った人間であります。実は瀬戸内海につきましては現在自由民主党、私のほうでも案をつくりまして、各党に呼びかけをいたしまして、瀬戸内海の特別立法をつくらなければならない、こういうふうなことを考えておるのです。単に埋め立ての問題だけではない、瀬戸内海の工場から流れ出るところの汚水をカットする必要がある、さらには生活排水その他についてもカットする必要がある、こういうことでやっておるわけであります。そういったことでございますが、きょうはいろいろと汚染の問題をやりますとたいへんなことになりますから、問題をしぼりまして、私はひとつお尋ねをしたいのですが、まず斉藤公述人にお願いをしたいのです。  関門海峡のお話が出ました。私の生まれたところのすぐ前であります。私もいろいろなお話を聞いておるのです。ただ、関門海峡の流れが非常に速くなるということは事実であります。確かに、埋め立てをすれば、橋をかける、その橋げたが海に出ておりますから、流れが速くなるということは事実です。海流の状況も変わるということは事実でありますが、同時に問題がありますのは、海流の流れによりまして下の土砂が相当に遠方まで行く。現地の御事情は御承知でございましょうから申し上げますが、満珠、千珠という島がある。その先のほうに、瀬戸内海の一番急流のところがどろを持っていかれるわけです。ここはどうしてもしゅんせつをしないと、関門海峡が通れても先のところが通れなくなってしまうという問題が実はあるわけであります。これは必然的にそういったような問題が出てまいると思うのでありますけれども、こういった点につきまして、海員組合その他のほうではどういうふうなお考えであるのかということです。  と同時に、実は必然的に、まあしゅんせつをしてこちらに持ってくるということでありますから、西村先生にお尋ねいたしますが、実は先ほど、浮いたどろというふうなお話がありました。それは関門海峡の例で言いますと、おそらく浮いたどろになって出るのだろうと私は思うのであります。その辺が相当よごれますし、もう少し行きますと、埴生であるとか厚狭であるとかあるいは小野田の周辺のところまで関門海峡の浮泥がずっと行くということは当然に考えられるわけなんですね。そういったものが、すでに橋ができちゃった、じゃこれをどういうふうな形でこれからとめたらよろしいか。現実にこれはもう発足しているわけですから、具体的に何かとめる方法が一体あるのかどうか。いまからやるものにつきましては、問題はまたいろいろ考えていかなければなりませんけれども、現実に発生しているものに対して何か方法があるのか。十キロメートルの範囲内で浮いたどろが拡散される、こういうふうな話でありますけれども、こういった点について何かお話がございましたら御教示いただきたいと思います。  それから田中公述人にお尋ねをいたしますが、その埋め立てをしようとするところの漁区については同意があるけれども、隣接漁区については同意がない、こういう話であります。私たちも実は立案にあたりましていろいろとその点は検討したのです。問題はどこら辺まで隣接漁区というふうに考えるかということであります。響灘で埋め立てをやっている。北九州市の沖合いの漁業組合については同意をもらっておる。隣の漁業権については同意がないというので、現地の漁業組合では非常に不満がある。たった五百メートルしか離れていないところで、私のほうは補償金をもらえない、こちらは補償金をもらったという問題があるのです。そこもよごれていますが、及ぶところの影響というのは非常に範囲が広いわけであります。先ほど十キロメートルということで西村先生はおっしゃいましたが、私は必ずしも十キロメートルだけでもないと思うのです。海流の流れによりましてずっとこう行くわけであります。その辺を言いますと、北浦の沿岸をずっと上がりまして、さらに仙崎港というのが日本海に面したところにあります、玄海難からずっと上がりまして北のほうまで、その辺までの漁業についても影響が出てきているということがある。またないという説もあるわけであります。その辺で、確かにおっしゃるとおり漁業組合その他、あるいは自然環境保全についての配慮というものをするという場合におきまして、どこまで持っていったら線が引けるのか。はるかに行きますと、山口県と島根県の県境くらいまで話をしなければならないということになると、これはいささか常識の範囲を越えるだろうと私は思う。しかし、その辺はやはり個々具体的な話としてやっていかなければならない。埋め立てというものは当該府県だけで行なわれることではない。関係府県に対しても概要を通知して、それで意見も聞くという形になっておりますから、私は、その運用でやったらいいのではないか。現在の段階におきまして、いろいろと学説もありますけれども、どこからどこまでだということはなかなか法律的に引けないのではないか、こう思うのです。したがって、その辺をどういうふうに考えておられるのか。隣接の漁業組合についての同意も求むべきであるというような御陳述でありましたけれども、私は、むしろ隣接の漁業組合だけでは足りない、もう少し広いところのなにをしなければならないけれども、それもおのずから強弱があるだろうと思うのです。そういった点につきまして、まあ弁護士さんでありますから、何か具体的に立法の形というものを御準備しておられるならば御教示をいただきたいと思います。  それからもう一つは、最初の井戸公述人からお話がありまして、航空というものは非常に大切だ、海上空港にしなければならない、こういうふうな話がありました。そういったときに比較考量をすべきは、海面を埋め立てをいたしまして飛行場をつくる、それによって受けるところのいろいろな影響というものを十分に勘案してやらなければならない、これも当然のことだろうと思います。そういったときの埋め立てというものは、やはりどうしてもあるものは必要である。それからもう一つ小林公述人からお話がありましたけれども、都市計画で、住宅を建てる、その他のために埋め立てをすることがどうしても必要であるというようなお話であります。そういったときの環境という問題はやはり同様にこの法律の中では考えていかなければならないという形になっておるのです。そういった意味で、田中先生からのお話では絶対に反対であるというけれども、私はむしろこの法律の運用を相当うまくやれば、環境破壊というような問題につきましてはできるのではないだろうかという感じを持っておるわけです。その点につきまして、斉藤さん、田中さん、西村さんからの御答弁をいただきたいと思います。
  17. 斉藤吉平

    斉藤公述人 いま先生からお話ございましたけれども、私、さっき申し上げましたように、絶対ということばは用いていないわけでございます。流速が速くなって航路が土砂でもって埋まって、その航路を掘らなくちゃいけないじゃないか、これは当然のことでございまして、すでにそういう事実が出ております場合には、船が安全に運航できるだけの水深をとるということはきわめて大事なことかと思います。特にいまの船は燃料を全部油としておりますので、ある船によりましては昔のタンカーが持っているぐらいの燃料を持っておるということもございまして、海難を起こしますと、たとえば浅くなってのし上げるという結果から海難等を起こしますと、その流出する油による被害というのはこれは想像もつかないぐらいに大きくなるということでございまして、危険の優先順位から考えましても、その場合には当然しゅんせつをして航路の保持をする、維持をするということは当然のことだと考えます。ただ、なぜ流速が速くなってきたかというその源までさかのぼりますと、埋め立てたその結果によって流速が速くなる。その結果によって土砂の流出が多くなったという悪循環でございますので、これから先の埋め立てということにつきましては、そういう関係するところをよく総合的に検討した上で行なっていただきたいというのが私どもの趣旨でございます。
  18. 西村肇

    西村公述人 ただいまの私述べました影響範囲ということで、私の説明がどうも不十分であったような気がいたしますので、もう一度説明させていただきますと、先ほどの浮泥というのが、目に見える範囲の浮泥が潮流に乗って広がるのが十キロメートルだということでして、その先では一応目に見えなくなりますが、先ほど申しましたように非常にこまかいものは沈でんせずに広がってまいりまして、それは先ほど御説明しましたように、むしろ瀬戸内海、播磨灘なら播磨灘全域に広がる。ですから一時的な影響が十キロメートル、二次的な影響は非常に広いという、先ほどるる説明した点はその二次的な影響が広く広がっているという点を説明したわけであります。おわかりいただけたでしょうか。  それで最初の御質問でありますが、一度広がってしまった浮遊浮泥を何らか取り除くとかいうことができるだろうかという御質問でありますが、これは不可能であろうと思います。発生源においてとめる以外には不可能であろうと思います。発生源においてとめると申しましても、特に五ミクロンというような、先ほどの問題になるような浮遊状態が永続してしまうような微細な粒子の流出をとめるということは非常に困難、事実上不可能であろうと思います。そうしてそのようなこまかい浮泥がどのくらい海中にあるかといいますと、燧難の実測でありますが、五ミクロン以下というのが大体三〇%あるということを指摘したいと思います。三〇%は五ミクロン以下である。以上は事実の指摘であります。  それで、そうしますと関連する御質問の中で、要するに航路の安全性のためにしゅんせつしないでいいのかというような御質問があったと思いますが、私はむしろ、航路ということを考えましても、三〇%も五ミクロン以下の粒子があるような海底をしゅんせつして航路にするということには問題があると思います。ということは、つまり、そういう浅海性の非常に微粒子の多い海域を工業地区に開発して、二十万トンのタンカーのようなものを入れてくるということに非常な危険があるのではないかと思います。この点は私が最近瀬戸内海におけるケミカルタンカー及び石油タンカーの輸送の実情の問題を調べまして論文を発表いたしまして、その中で、そのような大きいタンカーがどのくらいの割合で事故を起こすのかということを報告した例があります。そうしますと、瀬戸内海の場合で一万トン以上のタンカーが海難事故を起こす確率が一年間に約五件あります。そういうことによりまして百トン以上の油漏れを起こす確率というのは一件から三件、実際は三件ぐらいはある。これは従来の海難統計を全部まとめてみた結果で推定される結果であります。ですから、これは一番小さいほう、百トン以上でありますので、実際に二十万トンタンカーが入ってまいりまして、それがかなり大きな事故を起こしますと、いまの船の構造からいいまして約一万トンの油漏れが起こる可能性があります。そうして、周防灘で一万トンの油漏れが起こりますとどこからどこまで汚染されるか、これも科学的に推定したわけでありますが、そうしますと大体下関から光市、あそこに至るまでの海岸線、つまり百キロから百五十キロに至る海岸線汚染されるという結果になります。ですから、瀬戸内海の中に二十万トンのタンカーを入れていくということは危険性が非常に大きいということを指摘したいと思います。ですから、船の航行の、安全性もさることながら、むしろそういう地域をしゅんせつして大型船を入れていき、しゅんせつによる被害を起こす、それからまたさらに船の航行による事故の危険性を増大させるということにむしろ問題があるのではないかと考えます。  その次の、先ほどおっしゃった問題ですが、私は少なくとも隣接漁区の同意を必要とするのではなかろうかと申し上げたわけです。でありまして、影響の及ぶ範囲というのは、先ほど申しましたように、一次的な影響は十キロ、それはかなりわかります。それから二次的な影響というのが、これはむしろ生態学者がみんな寄ってかかって明らかにしなければいけない。それが赤潮に対してどう響くかということもありますので、その範囲生態学者の英知を動員すれば推定できるだろうと思います。そういうことは審議会ではかるべきではないか。少なくとも隣接漁区というものの同意を必要とすれば、現実にはかなり部分がいまの状態よりも手続としてははるかによくなると考えております。
  19. 田中和

    田中公述人 私に対する御質問は、要するに、この新法の運用いかんによってはよろしいのではないかということと、それから隣接漁区をどうするかというような御趣旨にとれました。ところで、私が先ほど公述したのは、この改正条項についてどう思うかという点について公述いたしましたものでありまして、その意見はすでに述べたとおりであります。ただ私は、現行法自体も憲法三十一条ないし二十九条に違反する疑いがあるのではなかろうかという考えを持っております。先ほど制定された当時の状況を申し述べましたが、それはさておきまして、昭和四十三年の七月二十三日に松山地方裁判所で公有水面のこの法律に関連いたしまして次のような決定がなされております。というのは、要するに、利害関係人に告知とか聴聞の機会を与えないでなされた公有水面の埋め立て免許は憲法三十一条に違反するというのであります。おそらく、この改正案の第三条でございますか、「意見書ヲ提出スル」というような御提案者のそこにも、この判決を踏まえられたと思うのであります。さらに最高裁判所の昭和三十七年十一月二十八日の大法廷の判決によりますれば、これは関税法違反事件、関税法百十八条に関連した没収の規定でございます。いわゆる第三者から没収する場合に、所有者に告知、弁解、防御の機会を与えないということは悪法三十一條、二十九條に違反するというような趣旨でございます。この大法廷の判断を踏まえて考えますると、関税法違反という刑事事件に多少関連のある臓物の所有者に対してすらこのような保障がなされております。何ら刑事事件とは関係のない漁民の利益とかあるいは地域住民の権利を奪うことにおきまして、これらに対する防御の機会を与えてないといいますか、意見陳述の機会を与えてないという現行法は憲法違反である。さらに、先ほど詳述いたしましたが、事実上与えないにひとしい改正条項もいずれも憲法違反の疑いがあると存じます。したがいまして、私は繰り返して申しますが、この条項について反対、むしろ骨幹を変えて全面的に改正あってしかるべきだと存じます。法律というものは、一たん成立いたしますればこれをにわかに改正するというのはむずかしいものであります。この公有水面ということはわれわれ人間の生きることにつながる重大事であります。したがいまして、国民の選良である質問着並びに諸先生が英知と情熱を傾けられ、また大正十年代と異なりまして、科学的、気象学的、その他海洋学的に進歩している学者の力をかりまして新法の制定を行なうにおきましては、すみやかに容易にできるのではなかろうかと思います。その隣接漁業権者の範囲をいかにするかという点につきましても、その際におきまして十二分に御検討を賜わりたいと思います。終わります。
  20. 林義郎

    ○林(義)委員 ありがとうございました。  田中公述人にいたしましても、現行法は憲法違反であるというようなお話がある。だけれども、現行法よりは今度の改正法のほうがより環境問題について配慮した法案であるということはお認めだろうと思うのです。ただ現行法はさらにこの改正をしなければならないという点につきましての御意見だろう、こう私は思うのでありますけれども、その辺はどうなんでしょうかということをまずお尋ねしておきます。  それから西村先生ですけれども、実は具体的な問題でありますけれども、関門海峡というのは、橋を建てようが建てまいが、ずっとしゅんせつしておるわけです。浮泥というのですか、ずっとたまってあの辺に散らばっておるわけなんであります。ですからそういったものについてどういうことをやったらいいのか、これをお尋ねして私の質問を終わります。
  21. 西村肇

    西村公述人 関門海峡に関しましては、いままでどういうしゅんせつが行なわれていたか、私ちょっとその事実関係を知らないものでありますから……。むしろ私のお話しした対象にあったものは、水島とか番の州というような備讃瀬戸のしゅんせつの問題はよく調べておりますので、そこでのことを念頭に置きまして、その地域におけるコンビナートを大型化するための航路しゅんせつというようなことに関連して意見を申し上げたのでありまして、不勉強ながら関門海峡に関しては知りませんので、後日よく調べましてからまたお答えしたいと思います。
  22. 田中和

    田中公述人 お答えいたします。  私の考えは先ほどすでに申し上げましたとおりでありまして、この継ぎはぎをやめて、もっと根本に立ち返って、抜本的な全面的改正が必要であると信じております。
  23. 林義郎

    ○林(義)委員 ありがとうございました。
  24. 服部安司

    服部委員長 清水徳松君。
  25. 清水徳松

    ○清水委員 きょうは公述人の皆さんには非常に該博なる御見解をお聞かせいただいてほんとうにありがとうございました。私はしろうとでございますので、たいへん素朴な質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に井戸さんに対しで御質問申し上げたいと思いますが、先ほど先生は弁護士会の改正意見というものに対して、こういうような改正意見を取り入れていくということになりますれば、おそらく埋め立てというものは不可能になるであろうし、さらにまた大阪湾の空港建設というものも、とても見込みのないものになるといったようなお考え方を申し述べられたわけですけれども、私たちの理解するところでは、弁護士会の改正案というものは、埋め立てに関して今後利害関係者を守り、そしてまた公害を排除し、環境保全していくために、さらにまた現在までいろいろ問題になっておりました利権関係、こういったようなものも排除していくためにも、どうしてもあの程度改正は必要ではないかというように思われるような要望書であるわけでございます。言うなれば利害関係者の範囲を拡大し、その保護についても適切でなければならない。そのためにも公聴会を開く、そしてまたいろいろな意見が出た場合に審査機関を設けて、地方自治体の首長だけの専断にまかせないようにしていく。さらに免許の取り消し訴訟等もできるような、そういう権限を与えていくというようなことを内容としたもので、たいへんシビアには思いますけれども、その程度のことをしなければ、この本来の目的、改正するための目的というものは達し得ないのではないかというふうにわれわれは思っておるわけなんですが、どういうことでいわゆる大阪湾空港なるものがそれによってできなくなるのか、その辺のところをひとつお聞かせを願いたい。  それからまた、これは菊池さんとそれから西村さんも関連することでございますけれども、いま瀬戸内海埋め立てというものは現在まで大体二万ヘクタールちょっとこしたところでしょうか。それが将来の規模は八万ヘクタールというものが予想されておる。こういったような場合に、現在でも、このデータにありますようなたいへんな汚染ということになっておるわけでありますが、どのような事態が生ずるものであるか、ひとつ科学的な予想がありますならばぜひ教えていただきたいというふうに思うわけでございます。  次に、小林さんに対してお伺いをいたしたいと思いますが、小林さんのほうでは、東京湾の埋め立て地としてすでに埋め立てされてしまったところの自治体の責任者でいらっしゃるわけでございます。そこで、たまたま六月二十二日付の週刊朝日の中で発表されました小川栄一氏という方の東京湾埋め立ての大構想、三億三千万平方メートルというこの東京湾の埋め立てを行ないまして、一挙に住宅難を解決していくというようなことでございますが、はたしてこういったようなことが可能であるかどうかということ、さらにまた、この構想に対してやはり次の問題が一番大きな障害であるというふうにいわれておるわけですけれども、この水資源の確保は非常に重要であるというふうに小林さんもおっしゃっておられますが、その点についてのいわゆる自治体の責任者として、今後、市原市の場合でもけっこうですから、水資源に対してどのような確保のためのお考えを持っていらっしゃるか、そういうことをお伺いをいたしたいというふうに思います。  それから、先ほどの御意見ですと、この埋め立てによって工場を埋め立て地に誘致する、そして生産活動というものはもっぱらこの埋め立て地で行なって、むしろ奥地のほうは水資源確保のために使ったほうがよろしいというようなお考えでございました。ある意味においてはたいへん筋の通ったことでございます。そこで、いま政府の考えられておる中核都市の考え方、法案は今国会では出されなかったわけでありますが、その中核都市の考え方と多小矛盾するような感じがするわけでありますが、それとの関連でもしお考えがございましたならばお教えを願いたいというふうに思っておるわけです。  もう一つ市原市はすでに埋め立てを相当完了されておるわけですけれども、その場合の漁業権者を中心とする利害関係者に補償をされたと思います。特にその場合、漁業を放棄した方々、そういったような方々はその後どういうような状態になっておるか。そのような、言うなれば追跡調査といいますか、市原市なりに、市原市民で漁業を放棄された方々のその後の調査というものをなされておるのだろうか。もしなされておるならば、どういうような生活をその後なされておるか、その辺もしおわかりでしたらお教え願えればたいへんありがたいと思います。  それから斉藤さんには、いま関門海峡だけを申されたようですが、紀淡海峡、鳴門海峡、明石海峡、こういったようなところにはいわゆる四国−本土の間の橋がかけられるわけですけれども、その辺の調査といったようなものもなさっておられるか。これはたいへん問題があると思いますので、その辺のところをお伺いいたしたい。さらにその他二つのルートがありまして、これは関門、それから紀淡、鳴門、明石海峡のような細いところではないと思いますが、やはり問題があろうかと思います。したがって、その辺のところも御調査なさっておられるならばひとつお聞かせを願いたいというふうに思うわけであります。  それから田中さんには、もうおわかりだと思いますが、埋め立てについての東京方式というものがあるわけです。その東京方式というのは、ことしの二月、東京都の港湾審議会から出されたものですが、いままでのいわゆる大資本本位の土地利用というものをやめて、福祉中心の埋め立て地の利用に転換していきたい。それから造成については売却方式をとらないで、あくまでこれは公有地として残しておいて、第三セクターによっての運営、いわゆる貸し付け方式をやっていこうということでございます。そういったような埋め立ての東京方式というものについてどのようにお考えになっておられるか、その辺のところを、お伺いをいたしたいと思います。  以上、それぞれ公述人の方に御質問申し上げたわけでございます。
  26. 井戸剛

    井戸公述人 お答え申し上げます。  私が先ほど日本弁護士連合会の修正意見について、これが万一取り入れられますと、優慮すべき問題が起こると申し上げましたのは、実は航空の持っております特殊性に由来いたしまして、一つは国際間の問題、あるいは空港地域間流動の大きな役割りを有しておるという公共的な立場から考えまして、利害関係者にかなり強力な発言権を保障し、あるいはその裏づけとして一歩進んで免許取り消し訴訟の提起という権利が与えられた場合、埋め立て行為に対しまして故意に反対するごとく少数の利害関係者の思惑というようなものがからんでまいりまして、これがその埋め立て行為の成否を左右するというような事態をおそれるからでございます。したがいまして、改正案に盛られておりますように、地域社会を代表する地方自治体の長が裁定する、これは大きな立場から考えて裁定するという方式が最も望ましいと考えておるわけでございます。  以上でございます。
  27. 菊池泰二

    菊池公述人 これからまだ盛んに進行するような予定があります瀬戸内海埋め立て計画につきまして、将来を占えということでございますが、実はこれは私個人としての予想よりも先に、すでに先ほど御紹介しました水産庁でも予測が出ております。それによれば、周防灘の五万ヘクタールに及ぶ開発というものは、西部瀬戸内海にとっておそらく壊滅的な打撃を与えるであろうという予測が出ております。それに対して幾らか注釈をつけ加えるならば、瀬戸内海というのは御承知のように豊後水道と紀伊水道と、二つの方角から外洋水が入ってまいりまして、これに関門から幾らか入るわけですけれども、それがちょうど燧灘あたりで両方の水が出会います。すでにまん中のあたりは非常に水の交換が悪く、すでに工業開発が非常に進んで汚濁が問題になっております。いままでのところ周防灘は、山口県側はすでに徳山、下松あたりにかなりの開発がありますけれども、九州沿岸は比較的手つかずでございました。それが、大分鶴崎工業地帯と、今回企画されております超大型の周防灘臨海工業地帯というものが実現しました暁には、瀬戸内海に供給される外洋水の西の門戸というものがまず入り口のところで打撃を受けるであろうということが考えられます。ということは、現在残っている瀬戸内海のうちの機能かなり部分がいためられる。そして、すでにかなりよごれている瀬戸内海中央部に交換するために入ってくる外洋水そのものが、すでにある程度汚染を経過したものが入ってくるであろうということが考えられるわけです。埋め立てたものが何に使われるかによって、あるいはそこから海に出てくるものの質によって当然被害は非常に変わり得ると思いますので、今後の技術的進歩と、それから法的規制の強さによってその打撃の程度は当然違ってまいるに思いますけれども、少なくとも現在行なわれている工業排水規模及びそれに対する規制から考えますならば、やはりこれだけの大規模工業開発の影響というのは相当に深刻なものだと考えざるを得ないと思います。
  28. 西村肇

    西村公述人 菊池先生からも御指摘がありましたように、今後の開発の残っておりますのは周防灘でありまして、そこがどういうところかと申しますと、現在いわゆるタイなどの高級魚がいまだによくとれて健康な生態系として残っておりますものは伊予灘という部分であります。ところが周防灘埋め立てが行なわれますと、そこに関連して、伊予灘の根拠地になっているモ場というのは国東半島を中心にしてありますが、その国東半島のモ場などがほとんど全部やられるだろうと考えられておりまして、いま菊池先生が御指摘になったと同じように、しゅんせつ埋め立てだけでも、残っております唯一の漁場であった伊予灘の漁業は壊滅的打撃を受けるのではなかろうかと考えております。実際にそこでさらにコンビナートが操業したときの影響は、技術によりましては、周防灘が大阪湾と同じようによごれていくというような可能性も考えられるのではないかと思います。
  29. 小林茂衛

    小林公述人 私に対する御質問にお答えいたします。  これは非常に大きい問題で、東京湾の埋め立てによる人口計画、これは私どもがとやかく申し上げるまでもなく、水資源と考え合わした問題を先に解決してもらわない限り私は非常に危険が伴うのではないかと考えております。ただ市原市の場合を例にとって申し上げますと、市原市の人口計画水資源の問題——これは瀬戸内海で一番降雨量の少ない香川県の例をとってみますと、香川県は非常に降雨量が少ないというために、古い話でございますけれども、弘法大師があれだけの用水池をつくって水資源を確保して農耕に供した顕著な事実が残っております。いまもそれが使われておるという事実でございます。房総・半島の場合、全部考えてまいりますと、房総半島がなぜ開発がおくれたか、やはり水資源がなかったために開発がおくれておった。首都に至近の距離にありながら開発がおくれておったのは、やはり水資源に乏しかったのだということでございます。現在はそれらの水資源のある程度は解決されつつありますけれども、私がこの都市計画計画する際に、人口計画が最も最初に出てくる。私どもは都市が人口の多寡によって格づけられるものでないということをはっきりと信念として持っておりますけれども、そこに広場があるから人口を張りつけるということは非常に危険で、幼稚なことであるというふうに考えております。そこで、市原市の場合の人口計画は、ただいまの水問題の関係を考えまして、ただいま十八万の程度でございますけれども、将来三十五万、これも非常に無理な人口でございます。節水、断水、渇水等の問題が起こりますと三十五万の人口をどうするかということも、都市の建設として水問題から解決していかなければならぬ。そこで、市原市は日本全体の縮図のようなものでございますけれども、なるべく水資源の涵養地帯を残しながら、危険でない人口計画をしていくのだということを根本的に考えております。  工場誘致の結果の生産活動その他につきましては、これは化学工場が多いわけでございますけれども、これらの問題について、一寒村であった、漁村であった地域がなお過疎防止の役に立ち、そうして生活の場を得るために都市の整備その他で提供しておりますので、その点は私ども今後も、問題の中で最も重要なものとして考えてまいりたいと考えております。  それから、埋め立て完了後の漁業権放棄した者の転業対策というのは、これは私、山口県に非常に長くおりまして、そのいきさつを一つの例にとってみますと、山口県の岩国市では、そういう埋め立て等の漁業補償、それを個人に渡さずに漁業組合で取って、三浦半島の三浦市を根拠地にする遠洋漁業の資金にして、非常に活発にそれをやっております。そういう方法を私は如実に見てきたわけでございますが、千葉県に参りますのが七、八年前で、その当時の補償の問題をつぶさには知っておりませんけれども、転業対策あるいはアパートの建設その他にその資金を充当して自後の生活を営んでおるわけでございます。  それから中核都市との考え方ということでございますが、これは私どもの考えておる中核都市——市原市としましては首都圏の中の一員でございますけれども、そういう問題と、それから千葉県の市であるという問題と、両方から考えていかなければならないわけでござますが、中核都市との関連につきましてやはり起こってくるのは水の問題将来北総ニュータウンが整備されたりなんかしまして、その後に水計画がどうなっていくかということは重要な問題だと思います。そのために水源涵養地帯の開発、あるいは人工を加えることこれ自身はやはり地方のために防止していかなければならない。かえって法律をもって保安林あるいは環境保全林にしていただいたほうがいいのではないかというように考えております。
  30. 田中和

    田中公述人 お答えいたします。  ただいま御質問の東京方式につきましては、一つの行政指導のビジョンとしては歓迎すべきものであると思います。しかしながら行政指導にとどまり、この抜本的な全面的法改正の裏づけがない限りは単なる行政指導でありまして、これに対する、こういうふうにしてもらいたいといういわゆる義務づけ訴訟という要求もできないのでありまして、その点におきましても根本的な全面改正が必要でないかと存じます。
  31. 斉藤吉平

    斉藤公述人 関門海峡ばかりじゃなくて、ほかにも問題がないかというお話でございますが、これは埋め立てと直接関係がやはりあると思いますが、橋が渡るということで、私ども橋げたを問題にしております。明石海峡等でも相当論議になりましたけれども、橋げたは相当幅を持ちますので、そのことによって海峡の幅が狭くなる、あるいは渦ができるという問題、それからニューヨークの沖などで橋をはさみましてこの前コンテナ船とタンカーが衝突、爆発をしたという事件がございましたけれども、橋をはさんでのレーダーの映り方というのがこれはたいへん問題がございまして、航行安全上に問題があるということで現在いろいろやっている最中でございます。  それから、橋ができますと、そのことによって旅客船が減少していく、あるいは小型のカーフェリーが減少していくということで、私ども旅客船乗り組み員の雇用の問題ということで、その辺については反対の立場もとっております。  それから、先ほどちょっと申し忘れましたけれども、二十万総トン等の超大型タンカーの問題等がございましたが、これに対して組合のほうは、東京湾あるいは大阪湾、瀬戸内など、囲壁、囲繞されるといいますか、囲まれました内水につきましては原油等危険物を積んだ大型船は入れないという方針を立てて、前の総理大臣にも要請を申し上げましたが、そのときのお約束で、現状入っている二十万トン、これ以上大型化しない、しかも将来原油基地という構想が充実してくれば、可能な限り外洋タンカーは減らしていくというお約束等も得ておりまして、そのような考え方で対処しているということをあわせ申し添えたいと思います。
  32. 清水徳松

    ○清水委員 ありがとうございました。  市原小林さんにもう一度御質問さしていただきたいと思いますが、水の計画というのは、これはもうこれからの開発のためには絶対欠かすことのできない一番の問題だと思います。そこで、この市原の場合は、いま十八万だけれども、今後三十五万になるというお話がありましたが、そのためにもこの水の確保というものは非常に大きな問題になっていくだろう。そういった場合において、埋め立てのために使われる場合もあるし、その他の理由によって山岳地帯が非常にいまくずされておる。そのために樹木がどんどん伐採されるというか、こがれてしまって、そしてそれがゴルフ場になったり、あるいはまた埋め立てその他のための土砂の採取、そういったようなものによってくずされておるわけです。そういったようなことが、水資源の確保のために、現在そして将来ともに重要な問題となってくるということが明らかでございます。で、市原の場合、その山岳地帯の乱開発、あるいはまた土砂の採取についてどのような規制を加えられておるのか。そっちのほうにいまから相当厳重な規制を加えていかないと、将来ともこの水の確保というものに非常に障害が起こってくるのじゃないかというふうに思われるのですが、その点ひとつお答えを願えればと思います。  さらにまた、漁業権を放棄した皆さんにその後の追跡調査といったようなものをしておるかという質問に対しまして、アパート等の建設によってけっこう暮らしておるようだということでございますが、私が最も心配するのは、これは農民でも同じなんですが、やはり働くということが、職場を見つけるということがやはり一番重要だと思います。言うなれば、このアパートの建設ということはいわゆる補償費を運営しているだけにすぎない。そういうふうに思います。ですから、その人間はどういう形の仕事をしておるか。もちろんアパート業というのも業でしょうけれども、言うなれば農民にしても漁民にしても肉体労働者です。その労働をどのような方向にはけ口を見出しておるか、その辺のところをひとつお聞かせを願いたい。そういうことを解決しないと私はほんとうの補償ということにはならないのではないかというふうに思うものですから、たいへんしつこいようですが、御質問を申し上げておる次第です。
  33. 小林茂衛

    小林公述人 最初に水計画の問題からお答えいたします。今後の水計画はどうかということでございますが、ただいまダムの計画等を行政地区内にやっておるわけでございます。このダムの計画は、御承知のとおり単に市原市だけでなく、房総半島全体の水の問題を解決するために何カ所か計画されておるわけでございます。  それと同時に、山岳地帯の乱開発の問題、ゴルフ場の問題等につきましては、一番最初に申し上げましたとおり、自然の環境を完全に保持しない限り水資源は枯渇していくのだ、水涵養地帯を失うのだという問題でございますが、これと関連するわけで、私どもはただいま都市計画法適用区域外におきましてもそれらを防ぐためにいろいろの規制をやっております。たとえばゴルフ場でございますけれども、ゴルフ場を従来のとおりのゴルフ場にして開発をしてまいりますと、たとえばフェアウエーに芝を植えるにいたしましても——自然の山岳地帯の中に、森林の中に降雨がありますと、平均して約五〇%近い水は山にとどまって浸透していき、樹木を肥やす水になっていくわけでございますが、その場所を伐採いたしましてゴルフ場をつくりますと、芝を植えて目には緑に見えるかもしれませんけれども、実際降雨の際に流出、いわゆる逃げてしまう水は九〇%近くなり、一〇%ぐらいしか残っていかない。そうすると、地下に涵養さるべき水も一時に流れてしまう。これが洪水の原因になり、あるいは災害の原因につながっていくわけでございます。そこで、こういうものをもし許可してつくる場合には、それにかわるべき、常時湛水できる、地下水を涵養できる水面を確保してもらうというようなことで、地下水をとるだけでなく、もっと復元する方法を考えてもらいたいというような制限を加えております。宅地造成につきましても同じようなことを考えて、ただ洪水調節用の貯水池ではなくて、常時農業用水あるいは都市用水として使えるような貯水池をつくらない限り、ただゴルフ場だけが助かり、あるいは排水のいい宅造ができても、それは全然われわれの好むところではないというように考えております。  それから、土砂採掘についても同じことでございます。  漁業の問題につきましては、ちょっと資料を持ってきておりませんけれども、その後、いわゆる補償が実施されてからすでにもう十年余たっているわけでございますが、過疎防止対策の一助になっておるという問題は、すでに子弟が相当に育ってきております。それで地元進出の企業におきましても、地元との融和等の関係上、地元出身の子弟を相当に雇用しております。その以前の、おとうさん、おかあさんの問題につきましては資料がありませんのでお答えできませんと思いますが、また何かを通じて資料を出しても差しつかえないと思います。
  34. 清水徳松

    ○清水委員 どうもありがとうございました。
  35. 服部安司

    服部委員長 浦井洋君。
  36. 浦井洋

    ○浦井委員 どうも公述人の皆さん御苦労さまです。  ひとつ質問をさしていただきたいと思うのですが、まず最初に井戸先生にお尋ねしたいのですが、先ほどからのお話によりますと、新しい空港をつくる場合に海上につくるのが望ましいという御意見だったというふうに思いますけれども、現在大阪湾では神戸沖あるいは泉南沖というようなところがちらちらと話題にのぼりまして、自治体の長、議会並びにいろいろな住民組織の方々が猛反対をされておるわけでございます。これは私当然だと思うわけで、いまの運輸省の考えておる計画でいきますならば、陸上並びに海上、それから海全体の環境保全というようなことがほとんど考えられておらない、そういうような状況の中で、井戸先生があえてこの関西国際空港を含めた新空港海上建設が望ましいと言われたのは、一体、きょうの話に限りますならば、海の環境工事中並びに完成後どのように変化をするのか、こういう点を踏んまえてお話しをされたのかどうか、あえてお尋ねをしてみたいというように考えております。これが井戸先生に対する御質問であります。  それから菊池先生にお尋ねをしたいのですけれども、第一点は、先生は海の生物の御専門だというように聞いておるわけでございますが、先ほどもモ場についてのうんちくを傾けていただいたわけでございます。稚魚の育成などにとって非常にモ場の存在というのが重要であるということがわかったわけでございますが、先生の書かれた論文などを見ますと、もう相当、いま先生が御発言をされた以上に何かいろいろな面から重要であるというふうに私仄聞をしておるわけでございまして、できましたらモ場のいろいろな面からの存在の重要性について、もう少しお教え願えればはなはだ幸いであるというように考えております。それが第一点。  それから第二点といたしましては、先生の書かれました、「公害研究」という雑誌の「沿岸埋立によって失われるもの」という論文によりますと、こう書いてあるわけでございます。「埋立地内の漁獲の喪失のほかに、埋められずに残った周辺海域が失うものも多いことは関係者には自明のように思われているものの、一般には意外といってよいほど知られておらない」こう述べられておるわけでございますし、私もそのとおりだと思うわけでございまして、この辺についてもう少し先ほどの公述につけ加えるものがあれば体系的に教えていただきたいというように考えるわけです。  第三点といたしましては、そういうような間接水域への影響という学問的研究を踏んまえて、具体的に瀬戸内海でもうこれ以上はたしてしゅんせつなり埋め立てなりというようなものが許されるべきものなのかどうなのか、ひとつ学者の立場から明快に教えていただければ幸いであるというように考えております。  次に西村先生にお伺いをしたいわけでございますが、これは一つは浮泥が赤潮をさらに悪化させるというメカニズムを御説明になったわけで、非常に私としては耳新しく感じたわけでございまして、できればこのメカニズムについて少し体系的に教えていただきたい、これが第一点でございます。  第二点としては、先ほどの菊池先生への御質問に関連をするわけでございますけれども、西村先生の御発言の中でやはり、しゅんせつあるいは上取り、しゅんせつによる埋め立ての場合、非常に悪い影響周辺海域広くに及ぼすということを言われたわけでございます。これに関連して、現法の第五条によりますと、権利者の規定がございまして、権利者というのは漁業権を有する者、あるいは「法令ニ依リ公有水面占用ノ許可ヲ受ケタル者」と、そのほかというようになっておるわけでございますが、先生の御説からいきますと、やはりこの権利者の中に間接の影響を、受ける人たちも入るべきではないか。その間接の影響というのは、独立の審議会などを設けてそこで規定をしていけばよいのではないかということを申されたというふうに記憶しておるわけですが、この問願についてもう一度先生の御意見と、それから審出会云々の辺の御確認を得ておきたいというふうに私思うわけです。  以上です。
  37. 井戸剛

    井戸公述人 お答え申し上げます。  私は、海上空港につきまして、単純に建設技術あるいは航空機の離発着の安全という点から考えますと、陸上のほうが望ましいと考えております。しかしながら、御承知のごとく昭和二十七年から一昨年までの二十年足らずの間にわが国人口は五〇%以上ふえております。国土はほとんどふえておりません。そういった事実を踏まえますと次第に、陸上空港建設する場合騒音被害というものを受ける方々が非常に多くなる。それからもう一つは、そういった騒音被害をなるべく人家密集地帯から避けるために、現在でもすでに航空機の乗員に対してかなり過酷な旋回方法を強要しております。したがってこれはきわめて安全上好ましくない。この二点から私は、今後海上空港に移行していくほかわが国航空の健全な発展というものは望めないのではないか、こう考えておる次第でございます。
  38. 菊池泰二

    菊池公述人 いま御質問がありました三点についてお答え申し上げます。  モ場がいろいろな魚介類の育つ場所として重要であるということを先ほど申しました。それは学者がやる以前に、何百年来漁民が伝統的に信じてきたことであり、そしていま汚染の始まっている海に行きましたときに、ジャーナリストでも学者でも一番に聞かされることが、あそこに十年前にあったモ場がもうなくなったのだということを漁民一つの目安にしておるということです。これはモ場の値打ちということ自身を——これが何ヘクタールなくなったら何百万円分の、あるいは漁業資源にして年間何トン分の損失があるというそろばんをはじくことは、われわれ学者が非力にしてまだなかなかできないのでありますけれども、そういう重要性というものはやはり漁民がはだに感じておる事実というものを、われわれも十分に考えていかなければならないと思います。  一つ、国際的にもモ場が考えられているという話を申しましたけれども、そういうもののそもそもの根本になりましたのは、今世紀初頭にデンマークで国家的な事業として、モ場の広がりとそれの漁業に対する影響という非常に雄大な研究があります。それでどういうふうな結論が出たかというと、非常に広範な浅海にアジモがはえておる。それが太陽のエネルギーを固定して有機物にします。そうすると、そのモを食べる動物は実はほとんどないのです。ふしぎといっていいくらいに、大きいモをがりがりかじって食うような魚もいなければ、エビ、カニもおりません。じゃあどうなるかというと、それが一度海の底に落ちて腐って、その段階でバクテリアが出て、そのバクテリアが鞭毛藻類であるとか原生動物であるとかいうようなそういうものに食われて、そしてそれがもう一段上の魚介類に食われる。これについては一九五〇年代の初頭に、東北の入り江でございますけれども、有名なカキ場になっているところにアジモがはえている。そういうアジモの消長と、そこでの水の中の栄養塩類などの消長、モが枯れてしばらくしますと、そこに小さなプロトゾアとかプランクトンがたくさんわいてくる。それと大体あとを追っかけるようにしてカキその他の魚介類産卵が始まり、幼生はそれを食べて育つ。したがって、アジモは直接貝や魚が食べるものではないけれども、そこを豊かにしているものであるという研究日本でもなされております。私どももただモ場にいる魚を追っかけているだけではなくて、そういう意味での海を豊かにするという形でのアジモ、あるいはもっと広くこういう光の届くところにある海草類影響というものを考えなければならないだろうと思います。  それから第二点の、埋め立てられずに残ったところの被害ということでございますけれども、先ほどのクルマエビの例で申しますならば、クルマエビは沖で卵を産みます。その卵はプランクトンにかえってしばらく泳いだ後に小さなエビになるときに、幼生は沿岸に移動して干がたにおります。干がたにおりますのは大体七月から九月くらいまでの非常に短い期間です。そこで干がたにあります小さなゴカイとか貝あるいは非常に小さな甲殻類を食べて育って、また沖へ出ていきます。ですから、先ほど言及しました西条の干がたなどで、水産庁と愛媛水試とがマークなどをつけて海に放して、一体どの程度まで行くかというようなことも調べておりますけれども、そうしますと、西条あたりでマークしたエビが遠く豊後水道まで行っているものすらあります。ということは、その一つの干がたに何ヘクタールかを埋めた場合に失われるクルマエビ資源は、その地先の漁師だけのダメージではなくて、数十キロに及ぶところのクルマエビの漁獲に影響してくるだろうということです。  それから、あるいは埋め立てによってそういう浅海がなくなりましたり潮流が変わります、あるいはそこで工業排水などで汚染が始まりますと、移動する魚にとっては回遊経路の変更というようなことがあります。そうしますと、沖取りしている場合にはわずかな回遊経路の変更というのはそれほどシリアスでないかもしれませんけれども、現在の小さな沿岸漁業におきましては一つ一つの共同漁業権というものがかなり限定されておりまして、それぞれでまたそれぞれの網なり釣りなりというものの漁法について、相互の了解を得てこまかく海面を分割して漁業をやっております。そうすると、回遊経路が変わるということは、たとえば一つの大きな海域の中での資源は激減しなかった場合でも、特定の地先の漁師にとっては致命的になる場合があります。それから、そういう生きものの動き方に合わせて網なり何なりをくふうして伝統的にとっておりましたのが、生きものの動きが変わるとなると全く新たな漁具を開発しなければならない。そうするとそれがすでにある別な漁法と抵触するというような問題も出てくる可能性がございます。  それから第三点でございますけれども、瀬戸内をこれ以上開発してもいいかどうかということは、一番初めの公述でも申しましたように、結局ビジョンの問題だろうと思います。瀬戸内海あるいはそれ以外の大きな内湾内海というものを、近代的生活を営むためのもろもろの生産を営むということで工業を優先して、そこではもう自然保全あるいは第一次産業というものについてはある程度目をつぶるという立場をとるものか、それともあえて両方を望むのか、あるいは、すでに現状において瀬戸内海ではずいぶん沿岸の人々は苦しんでおります、こういうものを幾らかでも元へ返すのか。すでに政府においても瀬戸内海をきれいにするというビジョンをお出しになりましたけれども、そういう観点に立ちますならば、やはりもう瀬戸内海はそろそろ一ぱいではないかという感じがしております。  以上でございます。
  39. 西村肇

    西村公述人 ただいまの、しゅんせつが赤潮を悪化させるメカニズムについて簡単に述べさせていただきます。  御承知のように、赤潮のような植物プランクトンがふえるのには窒素、燐というような栄養塩が必要でありますが、この栄養塩はどうして補給されるかといいますと、陸上から直接投入された有機物がバクテリアによって酸素を使って分解されたときに硝酸塩またはアンモニアという形で出てくるわけであります。同じようにプランクトンの遺骸がやはりバクテリアによって分解されてそういう窒素が出てまいりまして、それがさらにまたプランクトンに利用されるということであります。考えてみますと、プランクトンのようなものは、瀬戸内海のような浅い海ですと、遺骸ができましてもわりあいに早く沈降してしまいまして、全部分解するわけではありません。それでかなり部分が底泥には有機物として残っているわけであります。計算してみますと大体五〇%くらいが分解するけれども、五〇%まだ底泥に残っている。それをもう一回巻き上げるとさらにまた窒素が出てくるということで、窒素の量がふえてくるということです。これは、魚を水槽に飼っておられますと、静かにしておけば何でもないものを、ちょっと底をかき回すと一ぺんに分解が起こりまして、酸素が欠乏して魚が死ぬというような経験でよく御存じだろうと思います。いま言いましたように、しゅんせつをしますと窒素が過剰に補給される、赤潮が頻発するようになる。  それともう一つ、その赤潮の種類でありますが、普通いままではわりあい珪藻類による赤潮が多かったわけです。これらはあまり被害がないわけでありますが、播磨灘で起こっておりますのは双鞭毛藻という、植物プランクトンと動物プランクトンの中間のような性質を持ったプランクトンによる赤潮でありますが、これは窒素、燐というものを使うばかりではなく、ビタミンを要求するわけです。このビタミンというのはバクテリアがつくり出すものでありまして、なぜバクテリアがふえるかといいますと、先ほど言いましたような浮泥を中心に有機物が非常にたくさん浮遊しておる、それを分解しようと思ってバクテリアがたくさんそこに、一つのミクロコスモスといいますか、一つのフロックをつくりまして、そこにバクテリアがふえてくると、そこからたぶんビタミン類が生産されて補給されるのではなかろうかと推測されておるわけであります。  以上が、しゅんせつが赤潮を頻発させ、なおかつ悪性化させるという説明であります。  もう一つの点は、間接的な影響を受ける人の範囲を、生態学者をはじめとする科学者が予測できるかということでありますが、私は、現在でもいま申し上げましたようにかなり程度まで知識が進んでまいりまして、これはさらに研究を進めれば、かなり程度まで専門学者が、どういうことが起こるか、その範囲はどこまでかということは十分に、と申しましょうか、必要な程度十分に予測できるものだと存じます。ですから、私が先ほど提案しましたことは、影響の及ぶ範囲、直接及び間接に影響の及ぶ範囲を推定するための専門家による委員会というものをまずつくることが第一であろう。そうしてこの次に、そこの中に入ってきた直接、間接に関係する人のうちの権利者の同意を得ることが必要であろう。権利者の中には漁民ばかりでなくて、いろいろな形で海を利用するような住民というものが当然入るべきで、その人たちの同意というものが、たとえば市町村議会の議決という形で求められる必要があるのではなかろうかということであります。ですから、間接の範囲がわからない、要するにしゅんせつ埋め立てによる間接で影響を受ける人がいるにもかかわらず、その範囲がきめがたいではないかという議論があることは聞いておりますが、私は科学的な立場からすれば決してそういうことはない。その大小、ここはこのくらいひどく影響を受ける、ここはこの程度影響を受ける、ここは養殖ができないくらい影響を受けるかもしらぬというふうに、段階をつけて影響を推測することは現在でもある程度可能ですし、今後の研究によって十分可能であろうと考えておるわけであります。  以上であります。
  40. 浦井洋

    ○浦井委員 井戸先生に一言だけ追加をしたいのですが、先生のただいまの御意見は、陸上の面から、あるいは経済の上からはそういうことが望ましいということであって、海上を含めた海そのもの、その漁業、あるいは船の航行の安全あるいはレクリェーションの場としての海への影響を踏んまえた上での御意見ではないというふうに理解してよろしいですか。それだけです。
  41. 井戸剛

    井戸公述人 冒頭の公述で申し上げましたように、やはり自然環境保全と、それから増大する国民輸送需要というものの調和をはかるということはきわめて大切と考えております。その上での私の見解でございます。
  42. 浦井洋

    ○浦井委員 どうもありがとうございました。
  43. 服部安司

    服部委員長 北側義一君。
  44. 北側義一

    ○北側委員 本日は、六人の公述人の方にはいろいろ専門的な立場公述していただきまして、今後の審議に非常に参考になりました。ほんとうにありがとうございました。  いろいろさきに公述人の方に委員の方が質問なさりましたので、私はもう二点についてだけひとつお伺いしたい、かように思っております。  菊池先生にお尋ねしたいのですが、瀬戸内海のいわゆる市町村において、私の調べたところでは、埋め立て事業が非常に進んでおるわけです。これからの計画も非常に多いわけなんです。そういう面で私自身も、瀬戸内海の海水の汚濁と埋め立てによるこういう問題が非常に大きな問題になってくるのではないか、かように考えておる次第です。先ほども先生仰せのとおり、周防灘の開発等も計画されておりますし、非常に心配しておるのですが、今度の法律案で、御存じのとおり市町村の議決を得るようになっておるわけですけれども、その議決を得る市町村自身が推進をしておる。たとえば市町村の財源確保の上からそれをやらなければやむを得ないというような実情が、法律案の上で出てくるのではないか、かように私は思っておるわけなんです。そういう点において、先生のおっしゃっておられる瀬戸内海埋め立てはもうすべきでない、こういう面から考えますと、いまの法律案のあのような環境保全、災害の防止、これらだけで、はたしてそういう水質の保全が保てるのかどうか。こういう点が第一点です。  それから、これは局地的な問題ですが、響灘の開発につきまして、非常にやはり赤潮等に影響しまして、山口県の漁民が抗議を申し込んでおる。こういうことを私は聞いておるわけですが、これについてもし御存じでしたらひとつお教えいただきたい。  それから次に田中先生にお尋ねしたいのですが、埋め立て法律案の中に——これは先生、法律のほうをやっておられるので、お尋ねするわけですが、埋め立て地の処分の規制について、私もこの法律案を見ますと、「竣功認可の告示の日より起算して十年間は、埋立人又はその一般承継人がその埋立地について所有権を移転し、または使用および収益を目的とする権利を設定しようとするときは、」云々、こう書いてあるわけですね。ここで私一つ心配になりますことは、たとえばこの改正法律案で、これは第三者だけに加える規制であって、その企業が埋め立てをやった、その企業のやった埋め立てが、もし会社の役員が交代した、そうして後において社名を変えた、しかもやっている事業内容は同じである、こういう場合に、これははたして規制できるのかどうか、法律的に、いまこの法文では。その点どのように思っておられるか、この一点だけひとつお答え願いたいと思います。
  45. 菊池泰二

    菊池公述人 御質問にお答えします。  第一点につきましてはきわめて社会的な問題ですので、生物学者の一部としての私の判断を越えるところがあると思います。結局、こういう環境保全の問題が焦眉の急になってまいりまして——一時はとにかく開発をすれば地元は豊かになるという、そういうものが一つの指導指針のようになって、自治体がすべてそういう運動をしてきたのだと思いますけれども、最近の徳山湾なりあるいは有明海、水俣などでの非常に痛切な教訓から、すでに住民のかなり部分はそれに疑念を抱いているのではないかと思います。それから先の問題になりますと、そういう行き方に疑念を持つ人々と、それでもなおかつ過疎なりあるいは貧困を脱出するためには工業開発が必要だと考える人々との力の問題になってまいりますので、これはちょっと私の判断を越えることだと思います。  それから現在の法律で保てるかどうかということにつきましては、たとえば環境保全ということにつきまして環境庁の協議を得るということがございますけれども、すでに瀬戸内海はその大部分瀬戸内国立公園に入っております。そしてすでに現行法の自然公園法なり何なりで、わずかな部分埋め立て、極端な場合には家一軒建てるような場合にでも縛られるような法規が存在しているわけですけれども、それがいろいろの交渉の結果、特例ができましたり、ここは普通地域で特別地域ではないからというような形で現実には開発が進んできております。ですからそういう点で、現在の法の網でカバーできるかどうかということは、やはり運用面の問題がずいぶんからんでいるのではないかと思いますし、これもどうも私の判断を越えると思います。  それから響灘開発につきましても、これは私、ただ新聞ニュースなり何なりで承る程度のことしかわかりません。で、山口県からの抗議と福岡県側の言い分につきましては、それぞれに自然科学者を動員しておりまして、福岡県側はモデル実験と数値計算をやってそっちまで行かないと言った。それから山口県側は実際にびんをほうり込んで調べたら自分のほうまで流れてきたということが議論になっておるようです。こういう場合——これはあくまで私、伝聞でしか存じませんからそれ以上の発言はできませんけれども、やはり数式とかモデルというものはいろいろな仮定を含んでいるものですから、それで行かないと言っても、もしびんが何割かでも漂着するんだったらそちらの主張を認めざるを得ないだろう。それから、その中でどの程度薄まっているかということは、これはたぶん、自然科学の次元で、調査と、それから拡散理論なり何なりである程度の説明はつくのでしょうけれども、いまはまだその自然科学の次元のところで両県の言い分が対立しておるような状態ですので、それはアセスメントを論理的にやればどちらかが正しいということはいずれば出てくることではないかと思います。
  46. 田中和

    田中公述人 お答えいたします。  ただいまの御質問の二十七条でございますが、企業が法人であれば、かりに役員変更がなされようとも法人の同一性を保っておりますから、この規定には抵触しないものと考えております。
  47. 服部安司

    服部委員長 渡辺武三君。
  48. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 公述人の皆さま方、本日はどうもたいへん御苦労さまでございました。それぞれの専門的な立場から貴重な御意見をありがたく拝聴いたしました。すでに時間も超過をいたしておりますから、私は専門的な御意見をあらためてお聞きしようとは思いませんが、この公有水面埋め立てに関する基本的な問題について若干お伺いをしたいと思います。  御承知のように、この公有水面を埋め立てること自身は、現在、原則的には禁止をされておる、しかるがゆえに埋め立て免許を受けて埋め立てがされておる、こういうことであろうかと思いますが、近来陸上の乱開発が問題にされておりますように、海上におきましても、たいへんこの埋め立て等によるいわば乱開発が問題にされ、そしていろいろな問題点が起きておるのでございまして、そのためにこそこの埋め立て手続法ともいわれる今回の法律改正されようといたしておるわけでございます。  確かに、制定をされましたのが大正十年でございまして、現代の時代にマッチしないようないろいろな問題点が出ております。私ども自身も、この委員会審議を通じまして、もっと抜本的な改正が必要だという意見を持っておるわけでございますが、諸般の事情から今回は一部改正に実はとどまっておるわけでございまして、本来公有水面を埋め立てる場合には、やはりメリットとデメリットを考えるべきであろう。それぞれの御意見の中で賛成、反対の意見に分かれておるようでございますが、確かに公有水面を埋め立てることによってもろもろの問題点が起きております。しかしながら、その起きてまいりますデメリットよりもはるかに大きなメリットが、国民的な利益が得られるという場合に限っては、これはやはり公有水面を埋め立てざるを得ないであろうと考えるわけでございますが、そのときにも、そのデメリットを受けられる方々に対する十分な補償、これが十分になし遂げられなければならないのではないか、こういう立場でございまして、十分な補償をするという問題につきましては、利害関係者のみではなかなか公正な結論が得られないおそれがある。そこで科学的な立場も必要でございましょうし、第三者的な公正な立場の人々による協議会、審議会等が設けられて、そこで十分な審議がされ、結論が出されることが必要ではなかろうか、かように考えておるわけでございます。  私は今回の法律改正に対しましてこのような基本的な立場を持っておるわけでございますが、私のこの基本的な考え方に対して肯定をなさるのか、否定をなさるのか、あるいはさらにつけ加えていただく御意見があるならばお聞かせいただきたいと思います。それぞれの公述人からお願いをいたします。
  49. 井戸剛

    井戸公述人 ただいまの先生の御意見には全く賛成でございます。特に空港につきましては航空審議会が立地条件あるいはその副次作用等につきまして慎重審議を続けております。したがいまして、先生がいまおっしゃったような点はその審議会の席上で十分反映される、こう考えております。
  50. 菊池泰二

    菊池公述人 いまの御意見、私も賛成といえば賛成でございます。ただ、その場合に、メリットとデメリットをはかる場合に、私個人の感想としましては、ちょっとメリットの中でも何かひとつ質が違うようなものがあるのではないか。というのは、先ほど東京方式の話が出ましたけれども、これは全くのしろうと考えでございますけれども、その地域の福祉安寧のために必要な場合の措置というものと、それから現在経済発展を通じて日本を潤すということでは確かにメリットでございますけれども、私企業である企業体の工業開発というために海を失うということの場合とでは、同じメリットといっても何か質的に分かれるものがあるのではなかろうか。その場合に、メリットとデメリットを算定をする場合に、結局十人のために一万人が迷惑する、大の虫のために小の虫をという議論にいきなり飛び越える前に、何かそのあたりにメリットというものの質的な考察が要るような気がしております。全くのしろうと考えでございます。農本主義といいますか、漁本主義といいますか、とにかくただ、どんなになっても海だけ残ればいいというふうには私個人は考えておりませんけれども、ただ現在の趨勢としては、海を守る力というもののほうがより必要のような気がいたします。
  51. 小林茂衛

    小林公述人 私も先生の御意見と全く同様でございますが、ただ今後の問題として起こる問題は補償の問題。補償の問題がメリットになるような、あるいは地元の人には非常に失礼かもしれませんが、民度の上がるような方法にとられていくならばこれもいいと思います。  都市計画立場からすれば、現在の水問題を解決しなければいけない全国的な問題からすれば必要であるということでございます。ただ、水資源涵養のために森林地帯その他に規制を加えるならば、この面もやはり公有水面埋め立てとは別に考えていかなければいけない問題が残っていくかと考えております。
  52. 斉藤吉平

    斉藤公述人 先生のお考えには基本的に賛成でございます。ただ私、一言つけ加えたいのは、海を失えば日本人はすべてを失うということをこの際国民がもう一度振り返って、そのことをかみしめるべきときであるということを考えます。
  53. 田中和

    田中公述人 全面的、抜本的改正をはかられるという点につきましては賛成でございます。ただつけ加えますれば、これは私ども現在生活しているものばかりでなくて、子々孫々に至るまでの問題であります。何とぞこの点につきましても十分御留意あってしかるべきことをお願いいたします。
  54. 西村肇

    西村公述人 基本的には賛成でありますが、ちょっとつけ加えさしていただきたいと思います。  つまり、私たちもいま、自然生態系を変えまして開発をしたときにおけるメリットとそれからデメリットをソシアルコストとして算出していこうということを研究しておりますが、やっております過程でわかりますのは、環境を破壊したことによる環境へのコスト、ソシアルコストが少なくともこれだけはある、つまりここでの漁業生産はこれだけなくなる、それからここの生態系から出てくる生産はこれだけなくなるという最低値は出るわけであります。メリットのほうは、工業生産をこれだけやれば年間何億円の生産性が上がるということはわかりますが、ソシアルコストのほうは、最低これだけはあるということはわかるが、そのほかにどんなものが加わってくるかということはよくわからないわけであります。ですから、言いたいことは、メリットとそれからソシアルコストであらわされるデメリットを全部金額に直して、その二つをいきなり比較したら、多くの場合、生産性であらわされるメリットのほうが大きく出てしまいまして、それはあまり妥当な判断にはならないのではないか。つまり、そういうデメリットというのは単一の金額になかなか変換されないものではないだろうか。もっと定性的に、質的に、これはこういう難点がある、これはやはり人間の健康または精神的な安定のためにはこういう景観はどうしても必要であるというような、お金に還元できない質の問題を十分に考えていかなくちゃいけないと思うわけです。そのために、先生がおっしゃいました客観的な第三者による判断というようなことでありますが、最も客観的なものはたぶん現在ではコンピューターであろうと思います。つまり、すべてのソシアルコスト、それからメリットを金額に換算して、うまくそういうモデルをつくりましてコンピューターに入れておいて、最後にコンピューターに判定させるということがいいかもしれませんが、そういう質的な問題を考えていきますならば、いわゆるコンピューターに象徴されるような客観的な基準というものはとりがたいのではないだろうか。というのはなぜかといいますと、現在ではやはり農業生産と工業生産における生産性の問題が、社会的に見てもかなりアンバランスになっている。工業生産は、同じところで非常に生産性が上がるような経済メカニズムになっておりますから、その基盤の上で金額的な比較をしてメリット、デメリットを直接比較するというのは、大きな百年の大計を誤るものではなかろうかと考えるわけであります。
  55. 服部安司

    服部委員長 これにて公述人に対する質疑は終わりました。  公述人各位には、御多用中、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚くお礼を申し上げます。  以上で公聴会は終了いたしました。  これにて散会いたします。    午後一時二十分散会