○正
森委員 法務省と
警察庁とがそういうお答えでございましたし、俵谷公安
課長が相当詳しく御説明になりました。私は十分に勉強したわけではございませんが、俵谷公安
課長が言っている最高裁の大法廷判決といいますのは、おそらく
昭和三十七年五月三十日、
大阪市
条例第六十八号違反被告事件について、まつ正面から地方自治法十四条五項というようなものが合憲であるかどうかということについて触れた判例を考慮に置きながらお答えになったことであるというように私は思っております。間違ったら申しわけありませんが、そういう前提でこれから私は申し上げたいと思います。
その判例については、多数説と、それから補足意見というのを何人かの裁判官がつけておるということは御承知のとおりであろうと思います。しかしながら、これらの意見を読んでおりましても、その中には微妙な
差異があります。多数説というのは、地方自治法十四条の五項、これは
憲法九十四条に基づくものだけれども、それだけで合憲と言えるかどうかといえば若干問題がある。しかしながら、地方自治法の二条二項で相当こまかく、地方自治体ができることがきめてある。だからそういう点を考慮すれば、これはやはり構成要件の点からいうてもある程度
認められるのだというような、非常に非
法律的な
表現ですけれども、そういうようなことになっておる。全体としては合憲であるということになっておると思います。
しかしながら学者の中には、
条例にこれほど大きな委任をするというのは、
憲法の七十三条の第六号との
関係や、あるいは罪刑法定主義から見ても問題があるという学者もあります。たとえば、私の恩師である団藤教授は、罪刑法定主義の見地から地方自治法第十四条五項は違憲であるということを論ぜられました。これは新法学講座刑法、
法律新報七百四十五巻の二七ページであります。その後、団藤教授はその説を若干緩和されまして、地方議会の議決を経ておるものであるからという理由で違憲の疑いが全くないわけではないというように、前には違憲であると言っておられたのを若干修正されております。
しかし、そういうような点を考えますと、これが違憲であるかどうかは別として、少なくとも
法律でないことは明らかであります。地方自治体は住民の代表であるといいましても、人口三万の都市からあるいは東京都のようなところから、いろいろございます。少なくとも全
国民の英知を集め、そして行
政府の英知を集めた国会ではない。
国民の自由あるいは身体について
一定の拘束を加えようとするのは、国会の立法権に基づいてするというのが
憲法の大原則であり、例外が若干
認められるだけである。かりに合憲説をとっても、そういうことは明らかであると思います。そうだとすると、たとえば売春
防止法というように、これも前は
条例でございましたが、いろいろ問題がありますから
法律に統一されましたけれども、
表現の自由が問題になっている本件のようなことについては、幾ら
法律で委任しても——その具体的な処罰される構成要件というのは全面的に
条例にほぼ委任されておる。それについて、国会を通過しない
標準条例において事実上これに対して重大な
影響を与えておるということは、少なくとも
憲法の精神から見てきわめて問題であるというように私はいわなければならない、こう思います。その点について、私は
本法のような
表現の自由の制限は許さるべきでないと思いますけれども、万が一許されるとしても、それは国会の場で
標準条例ごときものを十分に審議して、そして全国統一的に、
美観風致あるいは公衆の危害の点から制限すべきものは制限し、そして
表現の自由を侵さないように、
認めるべきものは
認める。しかもそれは事前抑制でなしに事後抑制でやるとか、あるいはまず第一に
除却命令を出して、聞かなければそれに対して罰則を加えるとかいうような、
基本的人権に対する配慮がきわめて重要であると思います。だがしかしその点については、いま
理事の方からもう何分と言われた時間がちょうど参りました。残念ですけれども、私は、先ほど
理事会あるいは
理事懇の席で
服部委員長から仰せになりましたように、建設
委員会の
委員長の指示に従いたいと思いますので、
参考書を持ってまいりましたけれどもこれでやめます。そういう点を御配慮になって、この
法律について修正すべきは修正し、あるいは附帯決議をつけるべきはつけ、あるいは運営について配慮すべきは配慮するということがなければならないと思います。それについて最後に
建設大臣の御
答弁をお伺いして私の
質問を終わりたいと思います。