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井上(普)議員 ただいま議題となりました
土地対策緊急措置法案につきまして、日本社会党を代表いたしまして提案の理由及びその趣旨の
説明を申し上げます。
まず、
法案の内容に入ります前に、わが党の
土地問題に対する基本的な
考え方を申し述べます。
そもそも
土地は、本来、一般の商品のように再
生産の不可能なもので、いわば天与の基本的な資源であり、国家存立の基礎たる
国土そのものにほかなりません。いわば
国民共通の財産であり、ひとしくこの恵沢に浴する権利を有するのでありまして、断じて一部の者の独占に放置されるべきものではないのであります。
しかるに、最近における
わが国経済の動向は、
資本の利潤追求を第一義に置き、一般
国民の
福祉を顧みない
政府の高度
経済成長
政策の強行に伴い、一方では
企業及び
人口の
大都市集中による市街地及び
都市周辺における
地価のとどまるところを知らざる暴騰現象を生み、他方では
国土開発を推進する
政府の公共投資の成果である
土地の利用価値の増大を予測した投機的な
土地投資及び大
企業の過剰流動性の増大と相まって、大
企業の大規模な
土地買い占めの現象を生むに至りました。いまや、
土地は、あらゆる
企業資本にとって、飽くなき利潤追求の対象となっているのであります。私は、ライオンが小羊を倒してもてあそび、むさぼり食う姿を連想するのであります。
さて、公共投資ないし社会
資本の充実による
土地の利用価値の増大による利益は、元来、社会公共に帰せられるべきものであるにかかわらず、あげて大
資本によってひとり占めされているのであります。かかる状況のもとで、最大の被害者はまさに一般
国民大衆であります。しかも、皮肉にも、
政府の
高度成長経済成長
政策は、みずからが生んだ
地価の暴騰によってみずからの
開発政策自体をも行き詰まらせているという
矛盾を露呈しているのであります。思うに、
資本の
土地買い占めによる利潤は、公共投資の成果たる
土地利用価値の増大の利益を横領する不労所得にほかなりません。また、
土地の買い占めは
国民大衆にいわれなき害悪を流しているばかりでなく、その
生産性を欠く投機的性格によって
資本の体質自体をもむしばかものであるといわなければなりません。
事態はすでにここまで来たのであります。いまや、われわれは、営々として働く
国民大衆の名において、断固、
土地を
資本の手から大衆の手に取り返し、
国民がこの天与の恩恵を受けるための徹底した変革の措置を講ずべき段階に立ち至っていると思うのであります。
このため、
政府は、近い将来において、第一に、
土地所有権その他
土地に関する私権については、他の一般の財産権と区別し、
国民一般の生存権の
立場から
土地の財産権の内容を限定し、財産権の内容が公共の
福祉に適合するよう定められるべきであるとの憲法第二十九条第二項の精神を時代の要請にこたえるよう拡充する
立場を確立して、
土地に関する私権は
国民の
福祉及び
生産に寄与する限度においてのみ認められることとする法体制の基本的変革を行なう措置を断行すること、第二に、
土地が私人間で商品のように取引されることを
原則として禁止し、
土地を売ろうとする者は国家に対してのみ売ることができ、
土地を買おうとする者は国家からのみ買うことができることとする体制、すなわち
土地取引の国家管理制度を断行することの二つの措置をとるよう早急に準備に取りかかるべきであります。
本
法案は、この基本的体制の変革が断行されるまでのさしあたりの緊急措置として、第一に、ここ数年来大
資本の手によって買い占められた
土地を国家が強制買収して広く
国民のために解放する措置をとるとともに、これを勤労者を含む一般
国民のための
住宅の
建設、社会
福祉施設の整備等に
計画的に利用すること、第二に、
地価の凍結を前提とする
土地売買等の許可制及び
土地の乱
開発を規制するための
土地の
開発行為の許可制等を定めようとするものであります。
次に、この
法律案の内容についてその概要を御
説明いたします。
土地の売買等の許可制につきましては、次のように規定しております。
第一に、
土地に関する所有権または使用収益権の移転または設定をする契約を結締しようとする場合には、当事者は、市町村長の許可を受けなければならず、この許可を受けないで締結した
土地売買等の契約は無効とすることといたしております。
なお、この許可制の対象から、農地を農地として利用するため
土地に関する権利の移転または設定をする場合、民事調停に基づく場合その他政令で定める場合はこの許可制の対象から除外しております。
第二に、許可基準として、予定対価の額が規準価格をこえないこと、権利の移転または設定後における
土地の利用
目的が自己の居住の用に供する
住宅または自己の業務の用に供する建築物を建築するためのものであること等を定めておりますが、ここで、規準価格とは、
土地に関する権利が所有権であるときは当該
土地についての
昭和四十八年度の固定資産税の課税標準となった価格に、
土地に関する権利が所有権以外のものであるときは別に、市町村長が定める価格に、それぞれ当該
土地についての宅地造成等の費用の額を加えたものとすることといたしております。
なお、この
法律の施行の日から起算して二年間は、
土地に関する権利の取得に要した金額、もし宅地造成等の費用を負担しているときは当該費用の額を加えた額で、
土地に関する権利の移転または設定をする契約が締結できるよう、経過措置を設けております。
第三に、
土地に関する権利を有する者は、
土地に関する権利の移転または設定をする契約の締結につき市町村長から不許可の処分を受けたときは、国に対し、
土地に関する権利の買い取り請求ができるものとし、国は、規準価格で、当該
土地に関する権利を買い取るものとすることといたしております。
次に、
開発行為の許可制につきましては、次のように規定しております。
第一に、この
法律では、
開発行為を、宅地の造成その他の
土地の形質の変更または水面の埋め立てもしくは干拓とし、農地以外の
土地を農地にする行為並びに通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの及び非常
災害のため必要な応急措置として行なう行為を除外することといたしております。
第二に、
開発行為をしようとする者は、あらかじめ、市町村長の許可を受けなければならないことといたしておりますが、この許可の基準といたしましては、当該
開発行為が周辺の
自然環境もしくは
生活環境の
保全上、または
公共施設もしくは学校その他の公益施設の整備の予定から見て明らかに不適当なものでないこと、当該
開発区域内の
土地について
災害の
防止上必要な措置が講ぜられるよう設計が定められていること等といたしております。
なお、
開発行為につき不許可の処分を受けたときは、当該
土地につき権利を有するものは、国に対し、当該
土地に関する権利の買い取り請求ができることといたしております。
次に、ただいま述べましたように、
土地に関する権利の移転または設定をする契約及び
開発行為を市町村長の許可制といたしましたことにかんがみ、無許可でこれらの行為を行なった者または
土地に関する権利の移転または設定の対価の授受につき脱法行為を行なった者は、三年以下の懲役もしくは五百万円以下の罰金に処することとし、なお、
土地に関する権利の移転または設定に関し
現実に授受された対価の額が五百万円をこえる場合においてその差額の三倍が五百万円をこえるときは、罰金は、当該差額の三倍以下とすることといたしております。
次に、この
法律は、
昭和四十八年十月一日から施行することといたしておりますが、近年、大
企業等により大規模に買い占められ、未利用のまま保有されている
土地の国による強制買収に関し、次のように規定しております。
すなわち、国は、
昭和四十四年一月一日以降対価を支払って政令で定める規模以上の
土地を取得した者が当該取得した
土地で、この
法律の施行の際、現に保有する未利用地であるもの、つまり、自己の居住の用に供する
住宅の用もしくは事務所、事業場など自己の業務の用に供する施設の用に供しておらず、または供することが明らかでない
土地、あるいは地上権その他の政令で定める使用及び収益を
目的とする権利が設定されている
土地で、当該権利の設定を受けた者が自己の居住の用に供する
住宅の用、もしくは自己の業務の用に供する施設の用に供しておらず、または供することが明らかでないもの等につきまして、強制買収することができることといたしております。
なお、この強制買収の対価の額は、
昭和四十八年度の固定資産税の課税標準となった価格に宅地造成等の費用の額を加えた規準価格とし、かつ、その支払い方法としては、その全額を交付公債によるものとし、また、国は、強制買収により取得した
土地が、勤労者を中心とした
国民のための
住宅の
建設、社会
福祉施設の整備、その他
国民の
福祉を増進するために必要な施設の整備のために優先的に利用されるよう必要な措置を講じなければならないものといたし、これに必要な所要の手続等を規定した次第であります。
以上が、この
法律案の提案の理由及びその趣旨の
説明であります。何とぞ慎重御
審議の上、すみやかに御可決あらんことを願います。(拍手)