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1973-06-27 第71回国会 衆議院 建設委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月二十七日(水曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 服部 安司君    理事 天野 光晴君 理事 大野  明君    理事 田村 良平君 理事 村田敬次郎君    理事 渡辺 栄一君 理事 井上 普方君    理事 福岡 義登君 理事 浦井  洋君       今井  勇君   小此木彦三郎君       小沢 一郎君    小渕 恵三君       梶山 静六君    澁谷 直藏君       野中 英二君    浜田 幸一君       林  義郎君    宮崎 茂一君       渡部 恒三君    清水 徳松君       土井たか子君    中村  茂君       松浦 利尚君    森井 忠良君       渡辺 惣蔵君    瀬崎 博義君       林  百郎君    新井 彬之君       北側 義一君    渡辺 武三君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 新谷寅三郎君         建 設 大 臣 金丸  信君  出席政府委員         経済企画庁総合         開発局長    下河辺 淳君         環境政務次官  坂本三十次君         運輸省港湾局長 岡部  保君         建設大臣官房長 大津留 温君         建設省河川局長 松村 賢吉君         建設省河川局次         長       川田 陽吉君  委員外出席者         環境庁企画調整         局企画調整課長 三喜田龍次君         水産庁漁政部沿         岸漁業課長   渡辺  武君         通商産業省化学         工業局窯業建材         課長      原野 律郎君         運輸省港湾局管         理課長     鈴木  登君         自治省財政局地         方債課長    石原 信雄君         建設委員会調査         室長      曾田  忠君     ————————————— 委員の異動 六月二十六日  辞任         補欠選任   船田  中君     小渕 恵三君 同月二十七日  辞任         補欠選任   石井  一君     今井  勇君   廣瀬 正雄君    小此木彦三郎君   藤波 孝生君     宮崎 茂一君   清水 徳松君     土井たか子君   松本 善明君     林  百郎君 同日  辞任         補欠選任   今井  勇君     石井  一君  小此木彦三郎君     廣瀬 正雄君   宮崎 茂一君     藤波 孝生君   土井たか子君     清水 徳松君   林  百郎君     松本 善明君     ————————————— 六月二十七日  水源地域対策特別措置法案内閣提出第一一一  号)(参議院送付) 同月二十二日  建築設計監理業法制定に関する請願福永一臣  君紹介)(第七五六一号)  同外十八件(田中伊三次君紹介)(第七七一〇  号)  東高瀬川付替え跡地の利用に関する請願新井  彬之君紹介)(第七五六二号) 同月二十六日  建築設計監理業法制定に関する請願野田毅君  紹介)(第七七六七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公有水面埋立法の一部を改正する法律案内閣  提出第一二〇号)      ————◇—————
  2. 服部安司

    服部委員長 これより会議を開きます。  内閣提出公有水面埋立法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。清水徳松君。
  3. 清水徳松

    清水委員 公有水面埋立法について御質問申し上げたいと思います。  この法案の内容には大別して三つのポイントがあると思います。まず、権利者保護あるいは利害関係者意見を尊重する等の手続に関する問題、さらにまた、埋め立て主体の問題また同時に所有権の問題、これが二つ目、そしてまた三つ目には、いかにこの埋め立てを利用していくかという問題があろうかと思います。こういったような問題についても、やはり埋め立てというものに対する基本的な態度考え方というものいかんによってはずいぶん違った扱い方が出てくるのではないかというふうに思うわけです。  これは政府のほうからもらった資料でございますが、現在造成中の埋め立て地、それからまたこれからの計画されているもの、それを見ましても、建設省よりも運輸省がうんと多いわけですね。造成中のものも建設省所管は八千五百十一・六ヘクタール、運輸省は二万七千七百九十六・九ヘクタール、また計画しているものは建設省所管が一千四百五十七・四ヘクタール、そして運輸省は一万一千四百七十四ヘクタールという数字が出ておるわけであります。  いままでいろいろ建設大臣を大体お相手にいたしまして御質問申し上げてきたわけですけれども、この埋め立てに対する基本的な態度について、建設大臣のほうは非常にわれわれとして納得のできるような態度の御答弁をいただいたわけですが、いままでの同僚議員質問に対する運輸大臣の御答弁は何となく歯切れの悪さを感じたものですから、この際は建設大臣よりもまず運輸大臣に対して基本的な態度というものをお伺いをいたしたいと思います。
  4. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 私のほうは港湾関係でございますから、港湾関係に限りまして御答弁を申し上げますが、先般も同じようなお尋ねがあったので御答弁申し上げたわけですけれども日本港湾は、現状を申し上げますと非常に設備が足りません。私が言うまでもなく、世界貿易、資本、いずれも自由化の傾向にございまして、したがって世界各国のお互いの人と物との交流が盛んでございます。したがって、貿易の拡大に伴いまして、日本港湾施設を見てみますと、これは非常に足りない点が多いのでございます。したがいまして、港湾関係ではそういう貿易の方面からくる輸送需要に対応いたしまして港湾整備をしなければならぬ。したがいまして適地に適当な埋め立てを行なわなければならぬというのが実情でございます。先般も御質問があったからお答えしたと思うのですが、一番わかりやすい例は、船が日本港湾に着いて一体どのくらいの時間をかけないと荷役ができないかということで、滞船時間でございますが、いま滞船時間は平均いたしまして四十時間といわれておりまして、世界でもまれな滞船時間であります。こういうロスをやっておるわけです。ということは、港湾の運営も問題でありましょうけれども港湾設備が絶対的に足りないということの証拠でございまして、私どもはそういう輸送需要に応じた港湾設備整備をしていく必要があると考えておるのでございます。  ただ、むやみやたらに設備を拡大すればいいのか、こういうことになりますが、そうではございませんで、港湾法改正案を先般も御審議いただきまして、またこの公有水面埋立法につきましても御審議をいただいておるわけでございますが、いずれも最近の社会的な要望、要求というものに応じまして、港湾整備、それから公有水面埋め立てというものにつきましては、環境保全、それから公害の防除ということにできるだけ重点を置きまして行なわれなければならぬことは当然でございます。その両方を調和させるようにいたしまして、極力時代の要請に応じるような港湾整備を、これから慎重にやっていかなければならぬということを考えておるわけでございます。そういう方向で今後も進まなければならないと思っておる次第でございます。先般もこの点はお答えしたとおりでございます。
  5. 清水徳松

    清水委員 まず、手続の面についてお伺いをいたしたいと思います。  これは同僚議員が数多く御質問されておるわけでありますが、いわゆる環境保全立場公害防止というようなことになりますと、その埋め立ての及ぼすところきわめて広範囲になるのではないかというふうに思うわけであります。そういうことになりますと、埋め立てによって単に生業を失う漁業権者中心とする直接の利害関係者のことはもちろんでございますが、それとは直接いわゆる権利として持っておらなくても、広範な利害関係ということになりますと、これは直接権利のない人までのことを考えていかなければならないというふうに思います。そういうふうにしますと、現在縦覧だとか意見書提出、こういったような扱いがあるわけですけれども、やはりこれらの方々意見というものを十分に聞くためには、公聴会なり、あるいはまた単に権利者だけの同意を得たというだけではなくて、その周囲人たちの広範なる同意を得るための手続というものは必要じゃなかろうか。つまり、極端に言うならば、いまこの法案にすぐ入れろとは申し上げませんけれども、この広範な利害関係者に対して、埋め立てについて、これは困るといったような異議申し立てのそういう手段はあっていいのじゃないかというふうに思うわけであります。  特に弁護士会のほうから要望書も出ておるわけでございますが、これについては、少なくとも行政不服審査法に準じて口頭審理主義を採用されるのが当然じゃなかろうか、さらに公聴会開催等を義務づけて、実質的な資料の公開、閲覧等の確保などの規定が準備されるべきであるというふうに要望書が出ておるわけでありますけれども、こういう意見に対してはどういうようにお考えであるか、お伺いをいたしたいと思います。
  6. 川田陽吉

    川田政府委員 事務的な問題としてお答え申し上げます。  私どもとしては、権利者範囲というものを、直接同意を得なければならない範囲にしぼりますと、どうしても水面権利者にせざるを得ないということで現在の改正考えた次第でございますが、しかしその隣接区域周辺地域等について、埋め立てによって実際上の影響損害等をこうむる人も考えられます。そうした人方とは事前に十分御相談もしなければならないし、補償等のお打ち合わせも必要かと思いますが、法律上の義務づけとして書くとすれば、やはり今回の改正程度ということで私どもとしては考えている次第でございますが、このたびの改正を機といたしまして、日弁連のほうからの各項目につきましてのいろいろまたたいへん進んだ考え方等も、私ども勉強する機会を得た次第でございます。今後十分検討を続けていきたいと思っております。
  7. 清水徳松

    清水委員 この考え方について前向きに検討されるという御答弁であります。  この法案を見ましても、やはり一定埋め立てに対する規制方向というものがはっきり出ておるわけでございまして、少なくともいままでのような野放しな埋め立てというものは許さない、あくまで環境保全公害防止立場から規制をされていかなければならないんだというような一つ方向づけ、言うなればそういう念願というものは確かにあらわれているような気がいたします。言うなれば念仏をとなえているような気がするわけであります。念仏ですからその心根はきわめてよろしいかと思います。そしてまた、ヤマブキの花のように、きわめてきれいな花のような気がするわけです。しかし、残念ながら念仏に終わっているような気がいたします。そうしてまた、花ならばヤマブキの花のようにちっとも実のならないような法律であるというような気がいたしておる次第です。  そこで、どうせいまのように、弁護士会からの要望を取り入れるというようなことがすぐにもできないとするならば、せめてこの法律第三条で市町村長意見を、しかもそれも市町村会議決を経た意見を聞くということになっておるわけでありますから、もう一歩前進させまして、この意見を尊重しなければならないというような一項を入れて、少しでも実のある法律にする、そういう御意思があるかないか、お伺いをいたしたいと思います。
  8. 川田陽吉

    川田政府委員 お答え申し上げます。  地元の市町村長意見、しかも市町村会議決を経た意見、これを尊重するのは当然のことでございます。まあ運用上の問題といたしまして、私どもとしては免許するにあたって十分そうした御意見とか、あるいは公示、公告、縦覧によって出てまいります意見書提出というようなもの、その他すべての御意見等参考にしながら免許していかなければならないという考え方でおりますが、ただいまのところ条文上の表現としてはそういうことで運用上解決できると思っております。
  9. 清水徳松

    清水委員 それは運用上この意見というものが、法案にあるないにかかわらず、尊重される、尊重するということをここにお約束をしていただけるわけですか。
  10. 川田陽吉

    川田政府委員 さようでございます。
  11. 清水徳松

    清水委員 この広範な利害関係者のことでいま御質問してきたわけですけれども、この埋め立てについては、単に埋め立てそのものについても非常に大きな影響が広範な人にあるわけですが、この埋め立てをするについて、山から砂をあげるばかりじゃなく、土砂を取ってくるわけです。これは先般の質問でも御答弁をお願いしたわけですけれども山間部あるいは平地における砂あるいは土、こういったようなものを採取するについて、その地域においても非常に大きな環境上、公害上の問題を起こしておることは皆さん御承知だと思います。もちろん砂利採取法あるいは採石法等によって規制が加えられておることは事実でございますが、残念ながら土の採取については全然法的なものはないわけであります。先般も申し上げましたが、神奈川県、千葉県、埼玉県等においては、昭和四十六年に条例をつくりまして、これを届け出制にいたしまして、若干なりとも規制を加えようとする努力をしていることは御承知のとおりであります。しかしながら届け出制ではなかなか十分な成果をおさめることができない。そこで、砂利採取法採石法とあわせまして採土法、土を取る法律をつくってこれを規制していくべきではないかということを先般御質問申し上げましたが、これに対する明確なる御答弁がなかったわけです。通産省よりお答え願えればと思いますが、いかがでございましょうか。
  12. 原野律郎

    原野説明員 一般土砂採取が、砂利採取法あるいは採石法対象から除外されておることは先生指摘のとおりでございます。しかしながら、一般にこうした土砂採取砂利採取とはその形態を異にしておりまして、いわゆる土木工事あるいは整地等のための除去、採取という場合が非常に多い。したがいまして、これらの工事そのもの規制されておるというのが一般でございます。たとえば、宅地造成の場合におきましては宅地造成等規制法によりまして、工事そのもの災害防止のための一定基準に適合しておること、またその工事許可に際しましては災害防止のために必要な条件を付すことができるようにもなっております。さらにまた土砂採取場所がいわゆる地すべり等の発生しやすい場所である場合には、地すべり等防止法によります工事規制も行なわれているわけでございます。このように、土砂の移動というものを直接的に対象とした規制法もございますので、私どもはまずこうした種々の法律運用の強化によりまして、一般土砂採取に伴う災害防止に対処すべきではないかというふうに考えております。  しかしながら、先生のこの前の御指摘のごとく、こうした既存の法律関係だけでは不十分である、かりに新たに土砂採取目的とした法律を制定するという場合につきまして、私ども関係部局内において検討をいろいろ行ないましたけれども、ただいま申し上げましたように、一般土砂採取宅地造成等規制法あるいは国土保全関係と非常に密接な関係がございます。また相当な部分はこれらの法律でも十分規制できるとも考えられておりますので、私どもといたしましては、むしろ建設省中心といたしましてこうした問題を検討していくのが妥当であるという意見に落ちつきましたので、今後は建設省当局連絡をとって、急ぎ検討を進めてまいりたい、かように考えております。
  13. 清水徳松

    清水委員 これから検討してつくる方向ならばいいのですが、いまの場合だと、もうすでに山をくずしてからのいろいろな取り締まりの方法をとるということであります。私の質問は、山をくずす前に、この山はくずしていいのか悪いのか、またその山をくずすことによって、土を取ることによって付近環境の破壊にならないか、付近の住民にどういう迷惑がかかるのか、これは公有水面埋め立てと全く同じような問題が起こるわけでございます。その点で、山をくずす前に許可制にしてこれを規制すべきであるというようなことを申し上げておったわけでございます。その点を含めまして、まあ建設省と今後お話し合いをするのでしょうから、ぜひ山くずしが始まる前にこのことについては、砂利やあるいは石を取る場合と同じように、厳重にひとつ周囲事情を勘案いたしまして規制をすることができるように、そういう方向でのお話し合いを進めていただきたいというふいに思うわけです。通産省建設省のほうにやってもらいたいという御要望でありますので、建設省のほうにも御答弁をお願いしたいと思います。
  14. 川田陽吉

    川田政府委員 一般的に、危険地帯におきましては砂防指定地というような指定も行なわれております。それからまた急傾斜地等におきましては急傾斜地危険地指定も行なわれております。しかし土取りのように、普通そのままの状態なら何も差しつかえないという山を削るというような場合に、事前規制をかけるという必要性も現実的に出てきておる次第でございまして、また県によりましてはすでに土砂採取規制とかあるいは土砂採取条例というようなものを自発的につくっている例もございます。土の採取規制地域をまず指定したり、採取計画を届け出させましたり、その採取計画についていろいろ監督指示をするというような体制で現実的に運用している例もございます。私どもといたしましては、そういう実例をまず各県に広く及ぼしまして、またその上で特別な法律措置も必要であるならば、通産省その他関係省庁とも相談いたしまして立法措置考えなければいけない、こういうふうに考えております。
  15. 原野律郎

    原野説明員 御趣旨の線に沿いまして、建設省当局と十分協力して検討を進めてまいりたいと思います。
  16. 清水徳松

    清水委員 埼玉の場合は百二十八カ所、ことしだけでもあるわけです。もうほとんど規制できません。野放しです。どんな条例をつくっても、届け出制ですから、もうくずし始めちゃうわけですね。だからどうしてもやはり法的なささえが必要であるということでございますので、今後とも前向きの姿勢で御検討をお願いいたしたいと思います。  次に、これは権利者直接の問題でありますが、これからの公有水面埋め立てはほとんど国家的な見地に立ちまして、都道府県あるいは国自体責任をもって埋め立てるというような方向に行くのじゃないかというふうに思われるわけであります。それから埋め立てをする主体公共団体でございます。目的も、もちろん国家的な見地に立った目的埋め立てということになると思います。そういうことですから、それによって漁業権を放棄せざるを得ない方々に対する責任というものも国が負わなければならないのじゃないか。これは何も埋め立てに関するばかりじゃなくて、鹿島の場合だって、それからまた筑波学園の場合でも、その他いろいろな場合でも、農民がそういう立場に追い込まれるという場合も非常に多いわけです。特に飛行場、発電所、それからいろいろなこういう施設、そういう場合に、非常に広範にこれらの方々に対する補償の問題があるわけだけれども補償をしただけでは済まない問題が現在起こっておるということは、先般質問のときに申し上げたとおりでございます。ですから、こういうようなケースが非常に数多くなってくるわけですから、やはり追跡調査をするなりして参考資料を集めまして、そうしてこれらの国家的見地に立っての埋め立て、あるいはその他の開発によって生業を放棄せざるを得ないような方々に対する離職者保護立法を特別に必要とするんじゃないか。ぜひそうしてもらいたい。駐留軍の労務者に対する離職者特別措置法と同じように、こういったような方々に対する特別措置法をぜひつくっていただきたい。これが、われわれのみならず、われわれの周囲にそういったような方がたくさんおるわけですが、その方々念願であるわけです。その方々はみんな四十、五十になっております。ですから、これから急に転業するといったってなかなか困難な点があるわけですから、その程度の国の責任考えていいんじゃないかというふうに思うわけです。その点についての建設省運輸省等々の直接の責任者、それから水産庁、こういったようなところの御決意のほどを承りたい。
  17. 金丸信

    金丸国務大臣 先生のいまのお話は一つの提言だと思います。十分研究さしていただきたいと思います。
  18. 清水徳松

    清水委員 水産庁、いますか。
  19. 渡辺武

    渡辺説明員 お答え申し上げます。  埋め立てによりまして漁場を喪失いたしまして、生活基盤を失ったというような関係漁民に対しての措置といたしましては、まず、事情の許す限り、漁業をほかの種類漁業に転換するというようなことについて極力配慮しておるわけでございますけれども先生指摘のように、どうしても転職を希望するというような漁民につきましては、将来の生活に不安のないように、十分な生活再建措置がとられるように都道府県等を指導しておるわけでございまして、現地におきましては、地方公共団体だとか事業施行者等中心となって、職業紹介等措置を講じておるわけでございます。  先ほど御指摘がございました点につきましては、先ほど大臣から御答弁ございましたように、私たちとしても関係省庁とよく御連絡の上、検討してまいりたい、このように存じております。
  20. 清水徳松

    清水委員 これは非常に重要な問題でありまして、先ほどちょっと例にあげなかったのですけれども、ダムの問題なんかのときは、補償はされたけれどもそのあとたいへんみじめな状態になっているという例も再々見ておるわけですから、ほんとうにその点については本気になって、このような離職者方々に対する生業を保障する、何らかの仕事を保障する。アパートを建ててうまく運営すればいいじゃないか、そういったようなことじゃなくて、生業を保障する。そのことについて職業訓練をやるなり、またいろいろな紹介をするなり、法的な措置によって、もっと責任あるやり方をとってもらいたい、それをお願いするわけです。ここに水産庁長官もおられないわけですが、長官のみならず、農林大臣建設大臣、みんな一緒になりまして、政府が一体となってひとつこの離職者対策立法化考えてほしい。これは要望をしておきたいと思います。  次に、埋め立て地主体所有権のあり方でございますが、時間がありませんので、はしょって御質問申し上げたいと思います。  埋め立て方式にはいろいろありますね。まず第一番に、国、自治体が行なう公共方式、それからいわゆる純粋に民間が行なうもの、それから第三番目に、よく千葉方式とかいわれております、いわゆる民間資金導入方式、それから新しい方式として委託方式、いわゆる形は公共団体がやるけれども、実際は全部、金も何も民間が出してやるというような委託方式もあるというように聞いておるわけです。いろんなこの基本的な考え方を、いわゆる環境保全、それからまた公害防止、あるいは利権防止とも言いたいわけですから、これについて、あくまで公共優先福祉優先、こういったような方向を貫いていくためにも、もうすでにこの主体の問題から注意してかからなければならぬ問題だと考えます。いろいろな方法はあるけれども、その方法のうち一番いい方法は何であるか、どの方法が一番あるべき姿であるか。その点についてどのようにお考えになっておるか、お伺いしたいと思います。これは運輸省建設省両方にお伺いいたします。
  21. 岡部保

    岡部政府委員 先日の委員会のときにもお話し申し上げたわけでございますけれども先生おっしゃるとおり、埋め立て方式としてはいろいろな種類がございます。そこで私ども考え方といたしましては、今回の法改正にも織り込んであるわけでございますが、埋め立てをいたしました土地をその後分譲していくような方式、これにつきましては私どもは、公的な立場団体が実施する、はっきり言えば地方公共団体がおやりになるのが一番いいという考え方をはっきり持っております。ただ、それではそれ以外の問題、たとえば公共団体がやろうと思っても資金面での問題がある。これは資金導入が複雑をきわめましたような姿が実際あったわけでございますけれども、私どもとしては今後の問題としては、なるべく地方公共団体がおやりになるということが望ましいという考え方でございます。ただ、その土地を利用なさる方、先ほどの分譲型ではなくて、いわゆる最終利用者である私人が埋め立てなさるというのは、これは今後ともあり得ると思いますけれども一般的に、大規模な、特に港湾区域内などでの大規模な埋め立てというようなものの造成は、でき得る限り公共団体中心になっておやりいただくということを私どもは望んでおる次第でございます。
  22. 清水徳松

    清水委員 建設省は……。
  23. 松村賢吉

    ○松村政府委員 基本的にはただいま運輸省からお話がありましたと同意見でございます。特に分譲を主体とするものについては公共的な団体、これにやらせることが絶対かと思います。今回の法律におきましてもこれは規制点をきめておるということでございます。その他、単独目的でもってそれがどうしても必要だ、やむを得ず必要だというようなものにつきましては、これはあるいは私人的なものもあるかもしれませんけれども主体としてはやはり公共的な団体、これが行なうということが良法だと思っております。
  24. 清水徳松

    清水委員 主体としては公共的な団体が行なうことが理想である、それから分譲を原則としては行なわない、行なうとしても公共的な団体に分譲するということでございます。  それについて非常に具体的な例があるわけです。東京都の埋め立て方式といわれるものです。これは東京都の港湾審議会がことしの二月に中間報告の形で出しているものでございます。それによりますと、いままでの大企業本位の土地利用というものはやめまして、つまり工場敷地、港湾、こういったような使い方を中心とするそういうやり方をやめて、あくまで都民の生活に密着した土地利用に転換していく。それから第二点としては、この売却方式というものはいわゆる分譲はもう絶対にやらない。そして時価を基準とした貸し付け方式をとろう。そしてかりに、いま言った公共的な性格というと住宅公団だとか、そういったところであろうと思いますが、そういう場合でもいわゆる所有は絶対移さぬ。分譲はしないで、第三セクター的なものに運営させるというような、三つの非常に特色のある答申案であるわけであります。自治省が来ておられるわけですが、この財源は、あくまで都がやる以上は、やはり金がないから起債でもってするよりはかなかろうということで、起債ということが答申されておるわけでございます。そういう答申に対しておそらく御存じだと思いますので、運輸省建設省それから自治省その他関係各省の御見解をひとつお伺いをいたしたいと思います。
  25. 岡部保

    岡部政府委員 ただいま御指摘のございました東京都の港湾審議会の中間答申については私も拝見をいたしております。私どもの率直な考え方を言わしていただくと、港湾の管理という面から港湾管理者の土地造成、その土地をいろいろなものに利用されてきたという従来の経緯から考えまして、私どもはこういう土地を公有地のままで保存されて、貸し付け方式をとられるということは非常に望ましい姿だという考え方を持っております。と申しますのは、これは一時的には確かに起債をして、借金をしてこれをつくるのですから、いままでみたいにこれを売りませんとなかなか借金返済ができない、そういう矛盾はあります。ただ、でき得ればこういうかっこうにいたしますと、長い目で見ますと非常に港湾管理者財政としても潤う、そういう問題が出てまいります。たとえば外国の例でございますが、例のオランダでユーロポートという港をつくって、あそこに相当な工業地帯を造成しております。あれなんかは全部公有地のままで貸し付けをいたしております。したがって、今度はあれが動き出しますと貸し付け料というので相当に入ってくる。ただ残念ながらいままでの日本港湾管理者である地方公共団体としては、一時的な財政問題から売却せざるを得ないということがあったわけでございます。そういう、ちょっと先生がおっしゃった意味とは別の観点でいま申し上げたわけでございますけれども、私ども港湾の管理者を見ておる立場といたしましても、非常にこういう方式にかわっていけるということは賛成でございます。ただ現実の問題として財政面上問題があるということはわかりますので、この点をどういうふうにしたらいいか、これは今後とも自治省等とお打ち合わせをしていかなければいかぬ問題だと思っております。
  26. 石原信雄

    ○石原説明員 臨海埋め立て事業につきましては、現在地方債計画上の区分としては準公営企業ということで、原則としてその埋め立て地の処分その他の収入で公債費の償還財源をまかなうというたてまえにいたしております。先般の東京都の港湾審議会の答申にありますように、これを公有地として保有し、その借地料あるいは権利金、こういったもので償還財源をまかなっていくということも一つ方向かと思います。要は、準公営企業債でございますから、最終的に都民の税負担にならないという見通しが立てられますならば、起債の許可の面では従来の準公営企業債のワク内で一〇〇%充当が可能であろうと思います。その辺は財源収支の将来見通しがどうなるかということにかかっていると思います。私どもとしましても新しい行き方として検討さしていただきたいと考えております。
  27. 清水徳松

    清水委員 この東京都方式というのは、これからの公有水面埋め立てのあり方としては非常に斬新なものがあるとわれわれも高く評価しておるわけであります。もちろんその前提として権利者保護、あるいはまたその利害関係者、いろいろな影響を受ける人たちのことも十分考えるということがあるわけですが、この方向をぜひ今後とも埋め立て一つの有力な考え方として政府として考慮してもらいたい、そういうふうに思います。  特に、よく埋め立てについて千葉方式ということがいわれるわけですけれども、これが一番危険な状態じゃなかろうかというふうに思います。千葉方式というものは、千葉中央埋立港の例でちょっとこの資料で見たわけですが、一平米当たり一万五千円くらいで埋め立てたものを、今度電電公社あたりにも四万円くらいで売り渡しておる。これはまだ地価の安いころの話でございます。そういうことで非常なぼろもうけといったようなことも考えられるし、しかも千葉方式では三分の二を民間資金、それから三分の一を千葉県が出しておるというような関係があって、その利益を三井不動産のほうが三分の二取り、そして千葉県が三分の一といったような山分けをしているわけでございます。こういったようなことが埋め立てに許されておったならば、ますますそこに黒い霧のようなものが起こっていくのじゃないか。そしてまたこれは分譲されるわけですから、いま言った環境保全あるいは公害防止利権防止といったような本来のことがどうしてもできなくなるのじゃないかというような気がするわけであります。  けさの新聞等で見ましたけれども、何か建設省運輸省の重要な資料が建設会社に流れておるといったような記事を実はいま拝見してきたわけです。こういったことはまた後の何かの機会でいろいろ問題にするだろうと思いますが、企業と自治体なり政府との癒着ということは、こういったようなことを中心としてますます深まっていくということにもなりかねないわけですから、ひとつ十分にその点を注意していただきたい。その点について、たいへん恐縮ですが、政府としての御見解を再度承りたいと思います。
  28. 岡部保

    岡部政府委員 ただいまの先生のおっしゃいました前段の方式、いわゆる千葉の中央地区の埋め立てにとられました千葉方式と称する民間資金導入型の方法というのは、決して私ども望ましい方法とは考えておりません。先ほども申しましたように、この起業主体が県であるということについては私どもも望ましい方向であると思いますが、その背後にいろいろな問題がございます。先生のおっしゃったとおりの問題もございます。したがって、この点については、要するに問題は資金面、財政面で、いわゆる財政資金だけではなかなかいけないというところに問題があったことは明らかでございますので、そこら辺の問題についても十分今後自治省とお打ち合わせをしながら私ども進めてまいりたいという考え方でございます。   〔委員長退席、天野(光)委員長代理着席〕  それから後段におっしゃいました新聞に載りました事件につきましては、私も先ほどここへ出てくる直前に新聞を読んだだけでございますので、まだ何とも申し上げる段階に至っておりませんので、ごかんべんをいただきたいと思います。
  29. 清水徳松

    清水委員 埋め立て地を公有地にすべきだという問題にすでに入っているわけですが、この公有水面というものは文字どおり公有のものですから、私は埋め立て地というものは簡単に言うと国有地みたいなものだと思います。特にいま住宅あるいは公共施設、緑地の取得に自治体なり国が非常に困難を感じておることは事実でございます。特に公有地の確保に関する法律等をつくりまして、積極的に公有地の確保のために努力しておるという今日の状態でありますので、せっかく公有地である埋め立て地でありますから、これを簡単に分譲するといったような方向は今後絶対とらないようにきつく要望をしておきたいと思います。  質問点もございますがこれはこの程度にして、ちょっとごく具体的な問題について二つばかり御質問申し上げて質問を終わりたいと思います。  一つは水戸の射爆場の問題です。水戸の射爆場は、これはもちろん国有地でございます。近くこれが返還をされるということになっておるわけでありますが、これについて茨城県のほうでは、工業港にするか、あるいはまた商業港にするか、それから観光開発をやろうか、いろいろ考えておるやに聞いております。またさる大手の不動産も動いておるといったようなことも聞いておるものですから、特にこれは国有地であるという関係上、またここは一般海岸でもあろうと思いますので、いずれ何かをやろうとするならば建設省なり運輸省のほうに何らかの相談があったのじゃないか、現在相談中であるのじゃないかというふうに思われます。そういったような茨城県側の何らかの計画を聞いておられるかどうか、その点お伺いをいたしたいと思います。
  30. 岡部保

    岡部政府委員 本年の三月に返還されました水戸射爆場あと地の利用計画という問題につきましては、この返還以前から県としていろいろな計画を持っておられたということは私ども承知をいたしております。具体的な問題としては、残念ながら、たとえば射爆場の中に全然はいれないというような問題それからその前面のいろいろな調査をしようと思いましてもなかなか思うにまかせませんでしたために、具体的な計画という段階にまで立ち至っていなかったのが事実でございます。そこで返還になりまして、今後この土地をどういうふうに利用するかという点について県が現在いろいろ具体的な計画を練っておる最中でございます。これに対して私どもも、もう少したちますと具体的な御相談にあずかるというかっこうになってくるかと存じます。  それから次に、いままで県でどういう利用をしようかという考え方であられたかという点について、ごく私の知っている限りで申しますと、あの地域を観光面、いわゆるレクリエーションに利用するということと、流通港湾に利用するという、その二つのものが主体考えておられるようでございます。これと全然別個の問題で、私ども運輸省として、北関東と申しますか、関東地域の流通問題から考えまして、水戸、大洗、日立、あの周辺にいわゆる新しい相当大規模な流通港湾をつくりまして、これを北関東の門戸にする。と申しますのは、東京湾がいま窓口になっております物流を、その北関東のものについては北関東の流通港湾というのから出し入れしたい。そういたしますと、この過密地帯である東京周辺の通過交通が非常に減ってくるということを考えておる次第でございます。  ただ、それとこの射爆場あとと結びつくかどうかという点につきましては、先ほども申し上げましたようにまだそこまで具体的な考え方の接触がございません。これからもうしばらくの段階で具体的な調査ができてまいりますと、具体的にそういう意味でどういうふうに使うべきかというような点の県のお考え伺い、われわれの考えも申し上げ、あるいは港湾として利用するならばどういう計画にするべきだというような点についても、われわれとして御相談に応じていきたいという考え方でございます。
  31. 清水徳松

    清水委員 これからの問題ですのであらかじめお願いしておきたいことは、こういったような、鹿島港建設と同じように非常に大規模なものになろうかと思いますので、この点特にこの手続面、それからいわゆる埋め立て主体の問題、そしてまた所有権の問題、運用の問題等々、本来この公有水面埋立法に盛られようとする今後の方向づけになっておりますが、ひとつこの精神というものを十分生かした利用のしかたを考えていただきたいということを希望を申し述べ、あとは何らかの機会に質問をいたしていきたいというふうに思います。  次に、週刊朝日——朝日新聞のやっている週刊本ですからうそは書いておらないだろうという考え方に立って御質問申し上げるわけですが、東京湾百六十キロ、この海岸線があるわけですけれども、まだ埋め立てをしないで残されている海岸線は六十キロだそうです。その六十キロを大々的に埋め立てまして百万戸の住宅を建てようといったような、たいへんな大ぶろしきであるわけですけれども、この案に対して前建設大臣の根本さんの名前も出てきたり、田中総理の名前が出てきたりして、もうみんなだいぶ乗り気であるといったようなことも書かれておるわけでございます。ところが交通問題、それからまた環境保全の問題、第一、水の確保の問題等々でたいへん重要な問題を持っておるわけです。先般の公聴会においても、東京湾の埋め立てというものがどういうような影響があるかということについて、特に海員組合の出身の方からはいろいろ弊害のことについて参考になる御意見があったわけですけれども、非常に重要な問題であろうと思います。大体政府としてこの計画に対してどのようにお考えになっているか。何しろ考えている人は、埋め立てについてはたいへんな能力を持っておるといわれる藤田観光の小川栄一さん、こういったような方でもございますので、これはまんざらこれだけの話じゃないだろうという気がするものですから、その点、念のためお伺いしたいと思います。
  32. 松村賢吉

    ○松村政府委員 この大規模な東京湾の埋め立ての構想、これにつきましては、私どもといたしましても週刊誌その他から聞いている程度で、この内容の実態その他について具体的に検討したことはございません。これに対しましてただいま御指摘の種々の問題はあると思います。したがいまして、これを建設省といたしまして正式に取り上げてどうするということは現在は考えておりません。ただし、この問題につきましていろいろのところで論じられているということはございますから、これに対する内々の検討はいろいろ進めていきたいと思っております。非常に問題が大きいので、早急にそれをどうするという結論的な線はおそらく出ないのではないかというふうに考えております。
  33. 清水徳松

    清水委員 質問はいろいろたくさんあるわけですけれども、時間が参りましたのでこの程度にしてやめたいと思いますが、要は埋め立てについての三つの原則、環境保全しよう、それから公害を排除しよう、そしてまたその利用についてはいままでのような産業優先のやり方からあくまで生活優先、公共の福祉を重点とした運用をしていかなければならない、そのためにもきわめて慎重、厳重なる調査を基礎にして埋め立てというものが行なわれなければならない、このことをぜひ今後とも貫いていっていただきたい。次に、埋め立てを行なうにあたってはやはり国あるいは自治体が責任をもってやるべきである。そして権利者に対しては十分なる補償。そして特に先ほど申し上げました生業の保障。さらにまた広範囲にわたる利害関係者意見というものが十分反映されるように、尊重されるようにしなければならない。さらにまた、埋め立て地は分譲といったようなことは絶対やめ、公有として、あくまで先ほど申し上げました福祉優先、そして所期の目的を果たすための運用をしていかなければならない。  これがわれわれの埋め立てに対する基本的な態度であり、総括的に言って、埋め立てというものはそう簡単に許されるべきものではない、いわゆる促進ではなくて規制をさるべきであるというような立場に立って御質問を申し上げたわけですが、今後こういうような方向が貫かれるように強く希望をいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  34. 天野光晴

    ○天野(光)委員長代理 松浦利尚君。
  35. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私は、まず基本的なことについて一、二お尋ねをしておきたいと思うのです。  公有水面埋め立てというのは、国土の利用計画というものが明らかになった上で公有水面埋め立てというものが行なわれるべきだ、このように思うのですが、運輸大臣おいでですが、私の申し上げておることは間違いありませんでしょう。そのとおりだと思うのですがね。
  36. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 そのとおりだと思います。
  37. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それでは、実は昭和四十四年以降の運輸省の運輸白書を読ましていただいたわけであります。ところが四十四年の運輸白書によりますと、実はこのように書いてあるわけであります。「臨海工業地帯の造成実績をみると、昭和二十九〜四十三年度で約二億一千五百万平方米に達しており、臨海工業地帯の開発がわが国の工業発展に果たした役割は大きい。臨海部に立地する工業は鉄鋼、石油精製、石油化学、造船、機械などの重化学工業から食品、木材関連まで多業種にわたっているが、いずれも原材料の海外への依存、海上輸送の有利性などにより、港湾中心とした臨海部への立地を必要としている。これらの臨海性工業が今後更に生産規模を拡大し、また流通の合理化を進めていくためには、立地条件がすぐれかつ、計画的に広大な用地を得ることのできる臨海工業地帯の開発がますます重要となる。」こういうように四十四年の運輸白書は述べておるわけであります。ところが、四十七年度の運輸白書を見ますと、これが修正されまして、これはこういうふうに表現が変わってきておるわけであります。全文読み上げますと「国土が狭あいで、平たん部の少ないわが国では、以前から海面を埋立て、各種の用地造成を行なつてきたが、最近に至り、埋立に伴う自然景観の破壊、埋立地に立地した企業が排出する工業排水、排煙等による環境汚染が顕在化し、これらの問題の解決が焦びの急とされている。そこで、運輸省では今後の埋立についてその工事の実施に際しての自然景観の保全に対する配慮を一層強化するとともに、埋立地のしゅん功後における利用、管理について、適切な計画のもとに行なうよう規制、指導等を行なうことにしている。」ここでこういうふうにうたっておるわけであります。  これは明らかに計画が変わってきておるわけであります。その点は、四十四年の臨海に対する用地造成というものが四十七年度に大きく転換をした。その転換した内容というのは、工業生産その他の計画に大幅に修正をもたらすものだ、こういうように理解してよろしいですか。
  38. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 四十四年の白書と四十七年の白書を比較してお読みになりまして、変わったのかということでございますが、そのとおりでございます。これは基本的な考えからいたしますと、先ほども御説明をいたしましたが、日本港湾施設がいまの海上荷役に比較いたしますと絶対的には非常に足りない。したがいましてその整備をしなきゃならぬ。大規模に整備をすることになりますと自然埋め立てにも関係してまいります。港湾整備ということは埋め立てにも関連してまいることは事実でございます。その必要性は変わらないのですが、しかしいろいろの立地条件を考えます場合に、いま四十七年度の分をお読みになりました、その中に書いてございますように、ただ経済成長型の政策をとるだけでは足りなくなってきた。でありますから、先ほどから申し上げておりますように、私のほうの港湾法の一部改正におきましても、またこの埋立法改正におきましても、非常に重点を置いていますのは、環境保全あるいは公害の防除ということでございまして、そういう要望に応じまして、もちろんわれわれのほうだけじゃございません、通産その他関係各省がやはりそういう点に着眼をいたしまして、立地条件の作成といいますか立案といいますか、そういう土地の利用計画の策定にあたりましてそういった方向で各官庁とも考えるようになってまいりましたので、われわれのほうもそれと対応いたしまして、港湾整備ということにつきましても十分その点を考慮しながら、地方の港湾計画に対しまして指導を行なっておるというのが実情でございます。
  39. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それじゃ事務当局にお尋ねをいたしますが、昭和四十四年当時の公有水面埋め立て計画、それと四十七年度の公有水面埋め立て計画というのは変更があったわけですか。
  40. 岡部保

    岡部政府委員 先日の委員会でも御答弁申し上げたわけでございますけれども港湾区域に関しましての公有水面埋め立て計画というものは、オーソライズされたものは私ども持っておりません。と申しますのは、各港の港湾計画に伴いまして、港湾のいわゆる公共事業の計画と申しますものは、港湾整備緊急措置法という法律に裏づけられました港湾整備五カ年計画というものを持っております。これは閣議決定を見るものでございます。この計画に付帯してそれぞれの港の計画というところで、こういうふうにこの五カ年間には埋め立てていきたいというような希望を集計したものは、予算の折衝等事務的に必要になりますので持っておりますが、そういうものしかございません。  ただ、いま先生のおっしゃいましたように、四十四年ではございませんが、四十五年の八月に、四十六年度以降、現在ございます五カ年計画に対します各港の港湾管理者の計画を集めました一つの計画というものはございます。五カ年間で工業用地を造成する必要があるという考え方の計画を集計したものでございます。四十六年から五十年に至ります埋め立ての量というものの想定は、集計いたしまして約一万七千ヘクタールの埋め立ての計画がございます。  そこで、現時点で一体それをどういうふうに見ておるかという点につきましては、私ども考え方から申しますと、これよりもっと減らすべきであろうということは明白に考えております。ただ、来年度以降の五カ年間の計画を集計して、いまいろいろヒアリングをいたしておる最中でございます。これが作業が来月中ごろまでかかるわけでございますが、それが終わりますと、大体どのくらいの要望があるという、いま申し上げました数字に対比できる数字が出てくるわけでございますが、まだ集計ができておりません。現在ヒアリングの最中でございます。ただ、いずれにいたしましても、工業用地の要請というものあるいは埋め立ての要請というものがこの時点でぐっと減ってきつつあるということは明白でございます。
  41. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 非常に抽象的な答弁でわかりにくいのですけれども、冒頭大臣が言われたことは、国土利用計画があって埋め立てがあるという原則は確認しておられます。法律もそういうふうになっておりますね。ところが、そういう国土利用計画のあれが明確になっておらない。埋め立て計画というものがまだオーソライズされておらない。おそらく建設省のほうでもわからぬだろうと思うのですね。そういうことであるとするなら、それができるまでは公有水面埋め立ては一切禁止するということになるわけですか。そういう計画が前提になければ公有水面埋め立てはできないということになるわけでしょう。禁止するということになるのですか。そういう点を大臣からぜひお聞かせいただきたいのです。結局、先ほど原則を確認しまして、それじゃ公有水面埋め立てをどうするのだ。四十六年から五十年の計画ですらまだオーソライズされてないでしょう。四十七年の運輸白書にはこう書いてある。しかも埋め立ては減らすのだ、観念的にはそう言うけれども、具体的に数字はどうなのかということがはっきりしておらなければ、実際われわれは審議できないでしょう。
  42. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 政府委員のお答えしましたのと、私、別に違ったことを言っているわけじゃないのですが……。私が申し上げたのは、全体の五カ年間なら五カ年間の埋め立て計画、これを閣議決定をするとかいうような作業はいたしていないと思いますけれども港湾サイドから申しますと、御承知のように港湾管理者、これは府県知事でございますが、府県知事がその土地の利用計画をきめまして、この部分はどうしたらいいか、陸上の都市計画とかそういったものとも対応させまして、埋め立ても含めまして、この港湾整備をどうしたらいいかということをきめて、そうして地方の港湾審議会にかけまして、それをわれわれのほうに報告をしてくるわけでございます。私のほうでは、そういう土地の利用計画から見ましてそれがいいかどうかということを見まして、その上で必要があれば府県知事に対しまして運輸省としての意見を述べるというようなことで、お互いに協議をした上で最終決定をするという段取りをとっておるわけでございます。  その場合に、先ほど仰せになりましたが、いままではただ船が入ればいい、港湾の能率があがればいいということだけを——だけでもなかったですけれども、そういうことを主にして港湾計画が定められていたのじゃないかと思われますが、その点につきましては、先ほど申し上げたように環境保全でありますとかあるいは公害の防除でありますとか、そういったものについて十分の配慮をいたした上で港湾管理者も、つまり府県知事もわれわれのほうに港湾計画を出してくる場合にはそういったことを十分に配慮して計画を立ててくることになっておりますけれども、さらにわれわれのほうでもそういう点に重点を置いて、土地の利用計画をきめて、そして港湾整備をやらせよう、こういう態度であるということを申し上げたわけでございます。だから土地の利用計画というものがやはり根底になりましてその土地における港湾整備というものの内容がきまってきておるということでございますから、その点は政府委員の申し上げましたところと違わないのでございます。
  43. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それじゃ、この数字が正確かどうかわかりませんが、政府から発表された資料等を中心にして具体的にお尋ねをいたします。  現在ある新全国総合開発計画の見通しでは、具体的な資料として新たに約二十万ヘクタールの工業用地が必要とされておるわけです。そのうち十万ヘクタールは海上埋め立て、こういうふうになっておるわけでありますが、この計画はそれでは具体的に変更なさるのかどうか。海上埋め立ての十万ヘクタールは変更する意思があるのですか、そのままですか、具体的にお尋ねをします。
  44. 天野光晴

    ○天野(光)委員長代理 これは経済企画庁だが、まだ来てないか——
  45. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 公有水面埋め立ての主管は運輸省建設省ですね。だから運輸省建設省が知っておらなければいかぬはずです。何も企画庁が来なくたって、極端にいうと、協議してきめるとさっきから言っておられるのだから、現にこの新全総をきめたときには政府間ですでに具体的にきめておられる。閣議決定をしておる。そのときの具体的な資料の中に十万ヘクタールは海上埋め立てと書いてある。これをどうするのかということを質問します。   〔天野(光)委員長代理退席、委員長着席〕
  46. 川田陽吉

    川田政府委員 お答え申し上げます。  昭和四十四年に策定されました新全国総合開発計画におきましては、昭和四十年から六十年までの二十年間になされる公有水面埋め立てによる国土面積の増加を約十万ヘクタールと推計いたしておりますが、この推計は、近年における私どもが統計上把握いたしました年平均実績、建設、運輸両省合わせて約五千ヘクタール弱と思われますが、それの二十年分という計算で十万ヘクタールという推計を出したものというふうにお答え申し上げます。
  47. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 先ほど運輸大臣は、四十四年の運輸白書と四十七年の運輸白書ではこういうふうに内容が違ったと言い、しかも政府委員の説明によるとその埋め立ては大幅に修正するのだ、減らしていく方向だと言っておられる。そうだとすると、この十万ヘクタールの海上埋め立てというものは当然変えなければいけないのですよ。だからそれは変えるのですかと、こう質問しておる。変える意思があるのかないのか、そのことです。
  48. 岡部保

    岡部政府委員 ただいま私の立場で、そういう意思があるかないかというような御質問でございますが、非常に言いにくかったのでございますが、私ども考え方、いまの新全総の段階での十万ヘクタールというものに対して現在私どもがどう考えておるかという考え方についてだけ言わせていただきます。  あの時点で考えました十万ヘクタールの工業用地というもののベースは、相当に膨大な、いわゆる大規模工業基地として海上埋め立てという工業用地が予定されていたはずでございます。それが現在こういう環境問題が非常にむずかしくなったという点から、そういうものがそのままでいいかどうかという点については私ども自身非常に疑問を持っております。したがって、たとえば極端な例を申しますれば、周防灘の開発問題、これを一つ取り上げましても、埋め立て地の量というものは相当減らさざるを得ないという点がございます。したがって、先生の御指摘のようにただいま経済企画庁では新全総の総点検の作業をやっているはずでございます。その中で当然いろいろ検討していると思いますが、私ども自身としても、この数字は減る傾向にあるし、また必ずそうなるであろうというふうに考えております。
  49. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 いま港湾局長が政府委員立場で説明されたのですが、それでは直接、建設大臣運輸大臣、どちらでもけっこうですが、お尋ねしたいと思うのです。  実は、通産省の産業構造審議会の産業立地部会が、いまの十万ヘクタールの海上埋め立て公有水面埋め立てに関連をして、資料の中に大規模工業基地開発候補地を発表しております。この十二の工業基地開発を一応具体的なものとしてお尋ねをするのですが、この十二の大規模工業基地開発候補地の中で実質的に埋め立てが必要なところは秋田臨海、愛知県の東三河、三重県の中南勢、徳島県の徳島臨海、周防灘、それから山口、福岡、大分の三県にまたがるところ、宮崎県の日向灘、鹿児島県の志布志湾、これにすでに通産省の産業立地部会が大規模工業団地としての埋め立て計画というものを発表しておる。その用地面積から埋め立て面積まで具体的に産業立地部会で出されておるわけであります。これも、いまの政府委員の説明によれば縮小する、あるいは中止させる、そういうことでこれから手直しをするのだ、産業立地についても埋め立て地その他についても手直しをするのだ、そういうふうにこの大規模工業団地についても理解をしてよろしいですか。その点はひとつ責任ある大臣のほうから御答弁いただきたいと思うのです。
  50. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 いまお述べになりました、通産省が構想しておるというその具体的な問題についてはつまびらかでありませんので、政府委員のほうからお答えさせます。  ただ、私さっき申し上げましたように、先ほどの委員の方の御質問に対してもお答えしたのですが、世界的に非常に海上荷動きがふえております。日本国内においても同様でございます。それに対応いたします港湾設備が足りない。絶対に足りないのです。でございますから、国民経済を維持する上からいいましても、国民生活を向上させる意味におきましても、海上のこういう荷物を早く有効にさばくということは必要でございます。その意味におきましては、私はさっきもあなたにお答えしましたが、前とは必要性は変わっておりません。しかし、港湾サイドから見ましてそういった埋め立てをするにしても、港湾の計画を進めるにいたしましても、その場合に考えなければならぬことは環境保全であり、公害の防除ということをたえず念頭に置いて処理をしなければならぬということを申し上げているわけでございます。その面積を少し少なくするとか多くするとかということよりも、そういう方針ですべての港湾整備というものを考えていかなければならぬということを、るる申し上げておるつもりだったのでございます。今度のそういう工業港の設置につきましても、国民経済上あるいは国民生活の上からいいまして、やはり流通港湾といいますか、そういったものも必要でございましょうし、あるいは工業港というようなものも必要かもしれません。これは具体的に関係各省と相談をしてきめなければならぬ問題だと思いますけれども方向としては、私がさっき申し上げたように、港湾整備は必要でございますが、その場合に対処いたしまして、必ずそれには公害の防除とか環境保全ということを考えながら港湾整備をやってまいりますということを申し上げているわけでございます。
  51. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 いま私が申し上げたのは、すでに産業立地部会のほうが出した資料ですね。新全総をつくるときの基本になっておる資料なんです。そして公有水面埋め立て計画というものが出されておる。政府委員は先ほどそれは縮小する、こういうふうに言っておられるのですが、率直にいって、公害の問題をあなた方が言われるとするなら、産業立地部会から出してきたこういうものについてもう一ぺん全部見直すのだ、必要最小限度に限定するのだ、そういったことが出てこないと、極端にいうと、いまの大臣の御答弁を聞いておりますと、必要なところはどんどん許可していくのだ、ただ公害やらそういったものについて気をつけていけばいいのだ、こういうふうになりますと、現実に公害をたれ流しておる、公害も防げずにどんどん工場立地のための造成をする、それでは私は国民は納得しないと思うのです。通産大臣の所管かもしれませんが、土台をつくるのはこの法案でしょう。だとするなら、そういったものについてもっと明確に答弁してもらわなければいかぬのですね。そんなことを言わずに、手直ししてみたらどうですか。手直しせざるを得ないでしょう。四十四年の運輸白書と四十七年の運輸白書は違うのですよ。もう手直しせざるを得ないでしょう。
  52. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 先ほど申し上げたことを繰り返すようなことになりますけれども、いま新全総でいろいろの計画を持っていることは知っております。しかし、それの具体的な問題につきましてはまだ私たち提示を受けておりません。したがいまして、その内容について、それは縮小するとかなんとかということは、まだ原案ができておりませんので、われわれこの段階では申し上げられませんが、一般抽象的に申し上げますと、そういう工業港が必要でないか、工業港はいかぬのかということになりますと、さっき申し上げましたようにそれが環境保全考え、あるいは公害の防除を考えながら整備されるものであれば、それは日本の国民生活からいいましても、国民経済からいいましても必要でございますということを先ほど来申し上げているわけでございます。そういう意味におきまして、この通産省が立案しておられる、通産省の構想であるという港湾埋め立てあるいはそういう港湾設備というものが具体的に進んでまいります段階において、いまお話しのような点を考えながらわれわれも善処をしていきたい、こういうことを申し上げているわけでございます。
  53. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 どうも議論がかみ合わないのですが、昭和四十四年の五月に新全総はできたのですよ。そのときにその具体的な資料として、いま申し上げた大規模工業基地開発候補地というものがその中で出されておる。その十二のものをとってみても、埋め立てを必要とするのは、先ほどからたしか名前をあげたところは公有水面埋め立てが必要なんだ、そうでないところは必要がないところともうきまっておる。しかも二十万ヘクタールの工業用地が必要だと書いてある。そのうち十万ヘクタールは昭和六十年までに海上を埋め立てるのだ、公有水面埋め立てるのだと書いてある。白書をつくるときにこういうことは何も議論しないのですか。白書と新全総はばらばらですか。何をやっているのですか、あなた方は。かつてばらばらの行政ならそんな行政はだれでもできるのです。
  54. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 少し質問の趣旨を勘違いしておりましてすみませんが、いまおっしゃった現在できておる新全総、これはいま再検討しておることは御承知のとおりでございます。私は、いま再検討しておられるそれの構想についてどうかというふうなお尋ねがあったと思ったものですからさっき申し上げましたようなお答えをしたわけですが、いまの新しい新全総、これはいま作業中でございます。それに対するわれわれの態度は先ほど申し上げたとおりでございます。  新全総それ自体は私の所管ではございませんが、しかし、新全総につきましては、さきに決定いたしました新全総を相当見返して、これは構想も変え、再検討しておる事実がございますから、それに対応いたしまして、運輸省といたしましては港湾整備については先ほど申し上げたような態度でもって新しい新全総には臨みますということを申し上げているつもりでございます。したがって今度の新全総は、再検討されておるのですから、その内容についても相当の変革があるとわれわれは考えておるのでございます。
  55. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 環境庁からおいでですが、政務次官にお尋ねいたしますけれども、実は公有水面埋め立てがたいへん大きな公害の元凶になっておる。特に従来の高度経済成長そのものが、高成長指向型の経済政策が公害の発生源になったのだ、そういうことは環境庁で明確に出しておられますね。  一つの例ですが、これは瀬戸内海の関係でありますけれども、、環境庁に瀬戸内海国立公園管理事務所というのがあります。ここがこの瀬戸内海の実態を明らかにした報告書を出しておられるわけです。その報告書の中でこういうふうにいっておる。「瀬戸内海は、戦後沿岸部の相次ぐ埋立と干拓で浅海漁場は失なわれ、干拓、埋立地は汚染源に一転した。これ以上の埋立を国として強力に規制しなければ、瀬戸内海の自然は守れない」という報告をこの国立公園管理事務所が出しておるわけですね。そうすると、環境庁はこの瀬戸内海の埋め立て等も——これは瀬戸内海の埋め立てだけでありますが、この瀬戸内海の埋め立てに限定すると、もう瀬戸内海の埋め立てはやってもらっては困る、工業立地のためにそういうことをやってもらっては困る、そういうことで環境庁は統一されておる、あるいは統一されておらないのか、その点をひとつお聞かせいただきたいと思うのです。これは環境庁の国立公園管理事務所の報告です。
  56. 坂本三十次

    ○坂本政府委員 ただいま瀬戸内海を例にとられまして、そして公有水面埋め立て、そこにいままでずっとわが国のいわゆる資源多消費型と申しましょうか、はっきりいえば公害型企業を立地させてきた、もうこれ以上埋め立てをして、そこで公害を出すような工場はここでストップをしなければならないという基本方針はおっしゃるとおりであります。いま私どももやはり環境保全という点を優先させまして、そして環境アセスメントというもので十分チェックをしていくつもりでございますけれども、具体的な動きといたしましては、各党でも、瀬戸内海保全法というものをつくって、公有水面埋め立て、その上にいままでどおりな公害企業を乗せていくというようなことであってはならぬのでありまして、やはりきびしい環境保全上のチェックの上で……。あるいは埋め立てをするにしても、これは公害の少ない企業だとか、あるいはまた公害防除に必要な埋め立てもあるでありましょう。いろいろな種類はありましょうけれども環境保全上の十分なチェックをしないでいたずらに公有水面埋め立てを続けるというようなことはやはり慎んでいかなければならぬ、こういうふうに考えております。
  57. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私は先ほど全国的なことを申し上げました。いま瀬戸内海に限定して政務次官にお尋ねしたのですが、おたくの瀬戸内海国立公園管理事務所のほうから報告が上がっておるはずです。その報告書が、これ以上の埋め立てを国として強力に規制しないとだめだ、自然環境は守れない、こういっておるのですよ。一方ではやはり埋め立てをやるという。そうなってきますと、自然環境を守るという前提、たとえばPCB、水銀問題でたいへんな問題が起こっておりますけれども、現在排出しておる工場そのもののそういった公害というものがとまらないと、極端にいって新しくできた工場からはありませんということにはならぬわけでしょう、公害が拡散されるわけですから。そういう前提に立つと、当面は現在ある工場に対してすべての公害源を断ち切ってしまう。そうしてそれが断ち切れるという見通しが立った後に工場立地のためのそういった土地造成は認めていくのだ。しかし瀬戸内海はだめだぞ。やはりせっかく末端のところから上がってきた報告ですから、そういった報告をやはり行政に生かすということで検討を加えていただかないと、私は何のために末端の人たちが苦労しておるのかわからないと思うのですよ。ですからそういった面では、この公有水面埋立法にからんでの工業立地のための公有水面埋め立て造成ということについては、環境庁はきびしくあるべきだと私は思うのですよ。従来の惰性ではいかぬと思うのですね。そういった面でこういったものについては原則としてはもうきびしく規制をしていくのだ、そういったことを、やはり末端が言っておるように環境庁はやるべきだと思うのです。その点について政務次官のほうからひとつ明確にお答えいただきたいと思います。
  58. 坂本三十次

    ○坂本政府委員 基本的にはおっしゃるとおりであります。環境保全上きびしく環境アセスメントなどを行なってチェックしていくということはおっしゃるとおりであります。私もこの間、瀬戸内海を超低空でビーチクラフトに乗りまして視察もいたしましたけれども、確かにこれ以上の汚染は許すべからず。各党いろいろの具体構想をお持ちでございましょう。やはりいままでの汚染をぐっときびしく押え込むと同時に、これからのいたずらなる工業立地型の埋め立てというものについてはきびしく対処していくということは当然のことだろうと思います。
  59. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 建設大臣に国務大臣としてひとつ御答弁をいただきたいのですが、所管からある程度はずれるかもしれませんが、いずれにしても現在の公有水面埋め立てというのはほとんど地方公共団体が行なうのです、あるいは第三セクターが行なうのですね。従来のように民間企業が行なうというケースはもう少なくなってくると思うのです、これからは大規模工場団地造成しかないわけですから。そうしてくると、地方公共団体が行なうということになってくれば、地方公共団体が行なうというものは少なくとも国の国土総合計画というものの中に入ってきて行なわれていくだろうと思うのです。そうでなければ私はうそだと思う。そうすると、国土計画というものをつくるのは政府でしょう。だとすると、従来あった埋め立ての感覚、従来あった新全総からくる海上埋め立て、こういったものは、いま環境庁のほうは公害という面で押えていかれるということですけれども、これからは国務大臣としてそういった環境という問題も考慮し、この運輸白書にそういっているわけですから、極端な産業立地型の造成というものは押えていくべきだ、こういう方向埋め立てというものが進まなければいかぬと私は思うのですね。少なくとも転換をせざるを得ないと思うのです。そういう点について従来のパターンではなくて、要するにそういった産業立地型の公有水面埋め立て造成というものから、環境破壊を伴わない福祉型の公有水面埋め立て造成という方向に転換をしていくべきだ、私はそう思う。その点について、埋立法に関する大臣の所信をひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
  60. 金丸信

    金丸国務大臣 いろいろ先生のお話を承っておったわけでございますが、いま、環境保全という問題あるいは公害防除という問題、これは一番の政治的課題だと思います。そういう意味で、国が環境庁というものをつくったということを考えてみましても、これに準拠して各官庁が協力していくことは当然だと私は考えております。今回の法改正につきまして環境保全の問題を大きくうたったのもその辺にあると私は考えております。その意味で新全総のあり方も変わってしかるべきだと思っております。
  61. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それでは運輸大臣にさらにお尋ねをいたしますが、実は四十七年度の運輸白書によりますと、こういうことが書いてあるわけです。「従来、埋立地の利用目的のないものについては、埋立を免許しなかったが、今後は、廃棄物の処分のための埋立については、しゅん功後の利用目的のないものについても免許を与え、都市環境問題に対処することとしている。」こういうのが四十七年度の白書に出ておるのですね。そのことは、利用目的が全然ない、しかし産業廃棄物を公有水面埋め立て地に持っていって、公有水面にどんどん捨てる。造成したあとの利用目的がない。要するに産業廃棄物を処理するための公有水面埋め立て造成については、これはどんどん認めていこうということが書いてあるわけですが、環境庁にはそういうことについては事前に御相談がありましたですか。
  62. 三喜田龍次

    ○三喜田説明員 廃棄物の処理につきましては、環境庁は最終処理の基準をきめておりますので、その最終処理の基準に従わない埋め立ては認められないというふうに考えております。
  63. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 最終基準とかどうかということは別にして、現に産業廃棄物については公有水面埋め立ててよろしい。要するに、利用目的がなくても産業廃棄物を捨てる場所として公有水面を提供しようということを運輸省がいっておるわけです。そのことについて環境庁に相談があったかと聞いておる。環境庁もよろしいといってアグレマンを出しておるのですか。たいへんな問題ですよ。このことを私はお聞きしておる。
  64. 三喜田龍次

    ○三喜田説明員 その件については環境庁はオーケーをしているわけではございません。
  65. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 政務次官、大臣がおられないのですけれども、こういった大切な問題、公有水面埋め立てに関する監督は建設省運輸省が行なうのです。埋め立てるのは何を投げ込んでもいいんだ。しかも四十七年度の運輸白書にちゃんと書いてある。産業廃棄物の処分のために埋め立てする場合には、造成ができたものに対して利用目的がなくてもそれを許可するんだ、こうなっておる。そうしますと、産業廃棄物を捨てるからここをこう埋め立てたいということで民間から出された場合、これでいくとどんどん認めることになる。そういう重大なことがなぜ環境庁と相談されないのか。運輸白書というのは国民に発表されておるものですから私は問題があると思います。こういう点について政務次官の感想をひとつ聞かしてください。こんな運輸省の行き方について、環境庁政務次官としてのあなたの判断、考え方を聞かしてください。
  66. 坂本三十次

    ○坂本政府委員 運輸省のほうから産業廃棄物の埋め立てのことについて環境庁のほうにはまだ相談はないということでございますが、いま所感を述べろとおっしゃいますから申し上げますが、産業廃棄物にしろ生活廃棄物にしろ、これはいまたいへん重大な問題でございますから、これの処理ということはうまくやってもらわなければ困るわけです。その一端として公有水面でこれを埋め立てる、それも一つ方法であろうと思いますが、ただしその場合におきましても、環境庁は、いかに廃棄物であろうとこれがまた環境汚染を二次増進いたしますなどということについては困るわけでありますから、そのときにはいろいろな基準を設けて、また環境アセスメントを十分に行ないまして、これはやはりケース・バイ・ケースで考えていかなければならない。全面的にだめだとはいえませんでしょうし、全面的にオーケーというわけにもまいりません。環境保全上のアセスメントをやって十分に対処いたしたいと思います。
  67. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私は非常に不満ですね。公害の臨時国会が開かれましたときに一番問題になったのは、産業廃棄物の処理をどうするかということです。この産業廃棄物の処理でコストが上がるとかどうとかという問題が出てきておるわけです。そのことは国会での議論があったはずです。埋め立てそのもの自体が今日公害を生んでいると環境庁はいっておるし、瀬戸内海の国立公園管理事務所のほうではこれ以上国が埋め立てをしてはいかぬ、規制せよということをいっておるのです。埋め立てそのものが問題になっておるのに、その埋め立てするために産業廃棄物を公有水面に捨ててよろしい、それで土地が造成されても、これは利用目的がなくてもかまわぬのだというような感覚で監督官庁である運輸省が臨んだのじゃ、幾ら公有水面埋立法改正して、いろいろと政府が努力してみても、私は問題は解決しないと思うのです。こういう問題についての政府の見解を明らかにしてください。一体これはどうするのか。運輸白書から削るのかどうか、あるいは不十分ならどういうふうに補足するのか、その点をひとつ明確にしてやってください。——もう政府委員の方たちいいですよ。その点をはっきりしてください。はっきりしてから私の質問を続けます。(発言する者あり)
  68. 岡部保

    岡部政府委員 ただいまの運輸白書に載っております表現、私の立場から補足説明をさせていただきたいわけでございますけれども、たとえば東京湾において夢の島といわれておりましたいわゆる家庭のごみ廃棄物の処理場、そういうものがございます。現在中央防波堤の内側に埋め立てをしておりまして、そのところにごみを捨てるわけであります。それから大阪市においてもやはり都市廃棄物の処理場ということで、実は四十八年度からそのごみ処理場の周辺の護岸を国庫補助するという新しい予算措置までいたした次第でございます。いまの段階ではこういう埋め立てでごみを処理せざるを得ない。そういうところに対する場合、普通でしたら埋め立て地としてなるべく早く埋め立てをいたしまして、その土地をどういうふうに利用するかというのが問題でございますが、こういう処理場というのは逆に、埋め立てがなるべくおそくてごみが収容できるのが目的でございます。したがって、最初の埋め立てを認めるという際に、これはどういうふうに使うかとか、そういうところがなかなかきめかねておる問題でございます。そういうことで、そこまで踏み切らなければ都市廃棄物の処理というのはたいへんな問題であるという考え方でそこに記載した次第でございます。
  69. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 夢の島に産業廃棄物を捨てておりますか。失礼なことを言いなさんな。ぼくは産業廃棄物を聞いておる。ここには明らかに産業廃棄物と書いてあるじゃないか。何で夢の島に捨てるのかね。夢の島に捨てておると言うが、どこに捨てておるのか教えてください。美濃部知事がどこに捨てておるか教えてください。
  70. 岡部保

    岡部政府委員 ごくわずかでございますが、産業廃棄物は捨てております。
  71. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 夢の島のどこに捨てておるか。
  72. 岡部保

    岡部政府委員 場所はどこであるということは存じませんが、ごくわずかでございますが捨てております。それから大阪市においても、ごくわずかでございますが捨てております。
  73. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 そのことをここに書いておるのですか。そのことを認めると書いておるのです。「従来、埋立地の利用目的のないものについては、埋立を免許しなかったが、今後は、廃棄物の処分のため」に埋め立てさせると書いてあるじゃないですか。だから私は産業廃棄物のことを聞いておるのですよ。委員長、私は政府委員の説明は必要ないですよ。(「事務的な問題だ」と呼ぶ者あり)事務的じゃないですよ。この白書についてこういうことをここに書いてあるけれども、この書いてあるものについて、このとおりでいいのか、補足するのかあるいは削るのか、その点をひとつ統一した見解を教えてくださいと私は申し上げておるのです。内容についてもうごたごた聞く必要はありません。
  74. 鈴木登

    ○鈴木説明員 その運輸白書の原稿を書くための責任者といたしましてお答えいたします。(松浦(利)委員「産業廃棄物についてだけ答えてください」と呼ぶ)実は、公有水面埋立法よりも前に、海洋汚染防止法、それから廃棄物処理法がございます。その廃棄物処理法及び海洋汚染防止法の制定あるいは改廃のときに、産業廃棄物及び一般廃棄物——この場合は産業廃棄物に限りますが、その産業廃棄物の処理をどうするのだという点が非常に大きな国家的な問題となりました。それを前堤としまして廃棄物処理法及び海洋汚染防止法の制定がなされたわけでございます。それで海洋埋め立てば海洋汚染防止法のほうが非常に関係してまいりますが、その際、海洋汚染防止法の中では、産業廃棄物を受け入れるために埋め立てをやる、その際護岸は非常にきびしいものにすべきだということで、護岸の築造基準までも海洋汚染防止法のほうで非常に厳格に規定されております。その際、海洋汚染防止法に基づく産業廃棄物の海上埋め立てへの投棄を埋立法上どういうふうに処理するかということが一つの大きな問題になったわけであります。それで埋立法上は、現在の埋立法は御存じのように埋め立て目的を申請書に書かせるというふうにはっきりと規定しております。ところが、産業廃棄物にいたしましても一般廃棄物にいたしましても、埋め立てを実施いたしますときに、最終的にでき上がった土地がどういうふうに使えるかということについては、非常に長期の埋め立てが実施されます関係上、当初の目的の設定と埋め立ての利用目的の設定ということが非常に困難であります。ところが埋立法上でやる以上ははっきりと目的を書かなければならない。ところが埋め立て目的をなかなか確定しがたい。その二つの矛盾をどうするかということが大きな問題になったわけであります。今回の現行法の改正の際にもそのことが制定の過程で非常に問題になりましたけれども、実際の問題として、五年あるいは十年の長期のそういう廃棄物の処理埋め立て場を確保するためにはやはり当初の目的を、たとえばある程度は予想をして書かざるを得ないだろう。その途中において、土地がだんだんできました段階において、もう一度あらためて目的変更を出させる。その目的変更を出させるために今回新たに第二十七条あるいは第二十九条というふうな非常にきびしい、当初の埋め立て免許と同じような審査を行なうというふうな形にしたわけでございます。そこで、この運輸白書に書いておりますのは、無目的埋め立てを許すというふうな表現は使っておりますけれども、それは当初、埋立法の具体的な改正案が書かれる前に書かれたものでございまして、いま私が申し上げた、なかなか目的が確定しがたいものでも埋立法でそれを処理せざるを得ないというふうな表現でそういう表現を使ったつもりでございます。
  75. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 公有水面埋め立てについては、もう先ほどからくどいように大臣運輸大臣も御答弁なさっているように、四十四年の運輸白書から四十七年の運輸白書にかかって変わってきておるのです。運輸省自体も知っておるのですよ。そういう埋め立てはいかぬということはわかっておるから、白書がだんだん変わってきたのです。しかも、その埋め立てについてもある程度変更せざるを得ないということは運輸省そのものが白書の中でいっておるじゃないですか。そういうことをいっておきながら、あなたが言うことは、そういうことは知らなかったということなんですか。そういうことは全然念頭に置かずにこの白書を書いたというのですか。白書がちゃんといっておるじゃないか、公有水面埋立法改正しなければならぬということは。だからここで継ぎはぎだらけのことをあなた方が答弁したってだめだと思うのだ。政府のほうでこの白書に対してどういう見解なのか、明解に出してください。そうしてもらったほうがはっきりしていいと思う。そうして、あなたが言っておるように二十九条の答弁をしたのは、私がいま質問をしたのに、具体的ではないけれども、内容が違うことを言っておるじゃないか。  それで、これはいろいろ議論したって、政府委員人たちの言ってきておることはただ継ぎはぎだらけで、聞いておってほんとうに真剣に議論する気になれないのですよ。それでは夢の島のどこに一体捨てておるか。ちょっぴり捨てております、それはどうする、そういうことじゃなくて、私が聞いておるのは産業廃棄物はどうするのかということを聞いておるのだから、もっとまじめに答弁してもらわなければいかぬ。不規則発言を真に受けて夢の島がどうだこうだ答弁するからこういうことになる。不規則発言を聞いたから彼はああいうふうに答弁したのです。もっとまじめに議論してもらいたいと思う。大体姿勢が悪いよ。私がまじめに質問しているのに、あごに手をついたり、にやにや笑ったり、何だね。もっとまじめに議論しなければだめだよ。不満だね、こういう討議のあり方は。質問をすれば次々に違った答弁をするようなことで一体どういう審議ができるのかね。ただ時間がたてばいいという、そういう委員会ならぼくは質問しません。ただ時間がたてばいい、どうにかこの場を逃げ切ればいい、そういう答弁なら私は質問しませんよ。何だね。非常に不愉快だ、ぼくは。政府の統一見解を出してください。この白書についてどうするのか明確にしてください。それが出るまで質問しません。保留します。
  76. 服部安司

    服部委員長 この際、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時二十七分休憩      ————◇—————    午後一時四十四分開議
  77. 服部安司

    服部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。土井たか子さん。   〔委員長退席、天野(光)委員長代理着席〕
  78. 土井たか子

    ○土井委員 前回の質問に続きまして、順を追ってきょうもお尋ねをするわけでありますが、先ごろから特に汚染物質の中で、わけても水銀とPCBが問題にはされておりますけれども、それ以外の化学物質も含めまして、いま海洋汚染というものがたいへん深刻化しているということは事実であります。そういう点から、海洋汚染の特にはなはだしい地域、わけても最近はいろいろ魚介類に対しての水銀とPCBによってもたらされました問題が取り上げられまして、最近政府のほうでも九水域を指定をして、そしてその水域に対して調査を進める。そして、その調査の結果、基準値をこえるような魚介類がそこからとれているような事実が判明してくるということになりますと、この水域に対してはむしろ魚獲禁止区域に進めようというくらいのたいへん強硬な対策をいまとられつつあるわけであります。  そこでお尋ねをいたしますが、こういう海水汚濁についていま環境保全という点から政府をあげて取り組まなければならない時点でありますので、いま九水域という意味で調査を進められていらっしゃる場所は言うまでもなく、たとえば瀬戸内海であるとか大阪湾であるとか、その汚染のはなはだしい水域については、埋め立てを認めることは本来好ましくないというのが率直に申し上げまして国民の常識だと思うわけであります。この点について基本的にどういうふうなお考えを持っていらっしゃるか。これは建設のほうと運輸のほうと、私は実は両方から承りたいわけであります。
  79. 松村賢吉

    ○松村政府委員 お答えを申し上げます。  現在、汚染の程度が非常に進んでいる地域、特にただいま先生のおっしゃった九水域、こういうようなところにつきましての埋め立てについては、原則としてこれを行なわない方針でいきたいと思っております。ただし、特別なる緊急やむを得ざるもの、これはいま具体的に何ということは申し上げられませんけれども、こういうことにつきまして別途また慎重審議することはあり得ますが、原則としてはこれは進めないような方針でいきたいと思います。
  80. 土井たか子

    ○土井委員 特に考えてみなければならないような場合ということをいまおっしゃいました。そうしていまは具体的にそれを述べるということはできかねるけれども、別途これを問題にしていかなければならないということをおっしゃいました。実は特例を認めるということがたいへんな問題になってくるわけなんです。原則として禁止しておいてこういう場合には……。しかし原則からはずすという場合には、やはりそれをまず明確にしておいていただかないと、いま原則的には埋め立てというのは好ましくない、認めるべきでないと思うという御意見が帳消しになってしまうのです。そこでまず、それは具体的などういうふうな場合ということが言いにくければ、別途問題にする場合にどういうやり方によってそれを問題にしていくか、その辺をひとつ明らかにしておいていただきたい。
  81. 松村賢吉

    ○松村政府委員 改正法の基準等を一そう厳密に適用していくということが一つでございますが、それとともに、その埋め立て必要性というものについての慎重なる検討が最も必要だと思います。
  82. 土井たか子

    ○土井委員 どうも御答弁があいまいですね。先ほどは埋め立ては認められないと思うということをおっしゃったわけですね。今度は埋め立てそのものを慎重に検討していくことが必要だというふうな御答弁に変わってきたわけです。これは一体どっちをどういうふうに理解していいのか、それがわからなくなってきます。再答弁を要求します。ひとつはっきりお答えください。
  83. 松村賢吉

    ○松村政府委員 どうも誤解を招かれたような答弁をいたしまして、失礼いたしました。  埋め立て目的を慎重検討すると申しましたのは、その目的がほかの方法によって達せられないか、どうしても埋め立てによってその目的を達成する必要があるか、ほかにかわるべきものがないかというようなことを主にして検討していきたいということでございます。それはもちろん、一方で、それがどうしても必要だといっても、環境保全上の問題その他においてそれが万全を期せられないということになればこれはむずかしい問題で、埋め立てをやるべきものではないと考えております。
  84. 土井たか子

    ○土井委員 運輸省答弁はもう少しお待ちを願いたいと思います。  環境保全の点からは、埋め立て計画に対して今回の改正で万全を期することができるというお考えの上でのいまの御答弁でございますか。
  85. 松村賢吉

    ○松村政府委員 万全を期するということにいろいろな意味があると思いますが、少なくとも現在汚染されている水域においてさらにその汚染度を増加するようなことは避けたいということでございます。
  86. 土井たか子

    ○土井委員 それじゃもう一問、はっきり聞いておきたいと思うのですが、先ほど御答弁の中にも出てまいりました具体的な九水域以外に、ここは汚染度がはなはだしいと建設省さんのほうで考えていらっしゃる水域があるならばここで明確にお答え願います。もしそれがなければ、どの水域がどの程度汚染されているかということについてはあらまし掌握しておいてもらわないと先ほどからのお答えの意味がないわけでありますから、その点についての調査が進んでいるなら進んでいる、まだやっていらっしゃらないならまだであります、もし進んでいて具体化されているならばそれをお示し願うということをお願いいたしましょう。
  87. 松村賢吉

    ○松村政府委員 お答えを申し上げます。  その必要なる水域と申しますか、こういう水域につきましては、私のほうとしましてはやはりその実例、問題が起こった際に、その水域をそういう水域とするかどうか、これにつきましては、これを専門にいろいろ調査しておる環境庁その他と十分相談いたしましてそういう措置をとっていきたい、かように思っております。
  88. 土井たか子

    ○土井委員 問題が起こった際とおっしゃるのは、埋め立て計画が策定された段階というふうに理解しておいていいわけですか。それはいかがです。
  89. 松村賢吉

    ○松村政府委員 そのとおりでございます。
  90. 土井たか子

    ○土井委員 それじゃ運輸省のほうの考え方を……。
  91. 岡部保

    岡部政府委員 原則と申しますか、一般的な言い方をいたしますれば、先ほどの建設省の河川局長の答弁のとおりでございます。私どもの所管いたします港湾区域の中で、いわゆる例外的と申しますか、どうしても埋め立てをしなければならないという事例について二、三例をあげて御説明いたしたいと思います。  まず、港湾計画というものに基づいたいわゆる公共的な港湾施設の建設のための埋め立て、それから私どもいわゆる都市再開発用地と言っておりますが、たとえば住宅地であるとかあるいは騒音等の市内に散らばっております工場のむしろ疎開用地としての用地でありますとか、そういうように実例的に埋め立て地にそういうものを持っていこうという例がございます。そういうようないわゆる都市を再開発するための用地でございます。それからいわゆる環境問題にプラスになると申しますか、廃棄物処理のための埋め立てであるとか、そういうようなものについての埋め立ては、これはいたしていかなければならぬのではなかろうかという考え方でございます。
  92. 土井たか子

    ○土井委員 実は私は、むしろ運輸省さんのほうがこういう問題に対してははっきりした態度で臨んでいただかないと困るという考え方でおるわけであります。というのは、過去いろいろな埋め立て、特に大型埋め立ての実態を見てまいりますと、すべて港湾計画が基礎になっているわけです。港湾計画に基づいて港湾に関連する事業についての埋め立てを進められる場合が大半なんでございますね。そういう点からしますと、今回の公有水面埋立法で幾らがんばったって、そのもとにあるところの港湾計画、さらにこれは法律からいいますと、港湾法そのものでいま問題になっている点がどの程度チェックされているかということがたいへん大きな分かれ目になってくるわけであります。したがいまして、今回この汚染されている水域に対して港湾計画というものをもって臨まれる場合、やはり環境保全ということを運輸省さんはどの程度考えの中に置いてお取り組みになっているかということがたいへん大きな問題になってくるわけです。  そこで、いまの答弁の御趣旨、わかりました。それじゃお尋ねしますけれども、いま全国において汚染されている水域、これはもう全国津々浦々といってもいいわけでありますが、特に汚染のはなはだしいところはもう明確にわかっています。臨海工業地帯、さらに工場からいま有害、有毒であるということがはっきり認識されているところの物質が排出されている水域においては、やはりこれから早急に、環境汚染という点から、公害防止という点から対策を講じていかなければならない。ところがそういう場所においても、いままでにもう策定されてしまっている港湾計画に基づいて、この港湾計画の実施が至上命題であるという態度運輸省はいままでいつも臨まれてきたわけであります。いまでも地域住民からすると、あの港湾計画については再吟味をしてもらえないか、さらに撤回をしてもらえないかというふうな意見が相次いでいる場合、私は二、三の例を知っておりますけれども態度はなかなか頑強であって、これがもう国の基本方針であるから変えるわけにはいかないとか、国のほうでこういう港湾計画に基づいていろいろとそのうちの運輸行政なりあるいはいろいろな流通機構なり産業の工場なりが考えられているわけでありますから、いまこの港湾計画を変更するということはそうたやすくできる問題じゃありませんといって取り上げられてこなかったわけであります。いまそれは国の至上命題国の至上命題を繰り返される限りは、この問題に対しては歯どめがどこにもないということを申し上げたい。今回、事ここまで来たというふうな汚染状況であります。よほど運輸省のほうも気持ちを新たにしてこの問題に対しては考え直してもらわなければ困ると思うのであります  ひとつそういう意味で、いま九つの汚染水域だというふうなことを認識しながら政府のほうで調査を進めていらっしゃる水域は言うまでもなく、それ以外の、あそこから漏れている場所においても、これは汚染されていることがはなはだしいと認識されている水域については、いまあるところの港湾計画についてひとつ再吟味を進めるというお考えがあるかどうかをお聞かせ願います。
  93. 岡部保

    岡部政府委員 ただいまの先生の御意見、私ども決して国の至上命令であるから港湾計画を変えないと言った覚えもございませんし、そういうことはないと存じます。ただ、先生のおっしゃったように、現実にある程度港湾計画を実施しておるという際に、その途中で方向転換はなかなかむずかしいという実例は確かにございます。そのとおりたと存じます。  そこでこの港湾計画の問題に関して、いまたとえば九水域、あるいはもっと広げての汚染のある水域における港湾の計画というものを見直す意思があるかどうかという点につきましては、私ははっきり、あるということを申し上げたいと存じます。これは、港湾計画というものはあくまでも地方の港湾管理者が立てる計画でございます。したがって、管理者がほんとうにこの計画ではとてもだめだということを御認識になって、そういう方向に向かって計画を改定するということに対して私どもがつべこべ申し上げるつもりは毛頭ございません。ただその際に、これは運輸委員会港湾法改正を御審議いただきました際に御説明したわけでございますが、国としては、今回の港湾法改正が通りますれば、いままでの港湾計画の計画手法よりももう少し具体的なと申しますか、一つの国の基本方針というもので十分環境というものを重要視するべきであるという指示を当然するわけでございますし、それに基づいて、各港湾管理者が計画を立てる際にそういう環境問題というものを重要視するというふうに、いま以上に法律的にもなってくるというふうに私ども考えておる次第でございます。
  94. 土井たか子

    ○土井委員 えらい期待を将来に対して持っていらっしゃるような御答弁でありまして、おそらくそういうふうになるであろうというふうな予想のもとに考えられているところの答弁なんですが、それはいまの問題が大事なんですよ。いまどうするか、いまどう考えて、何をどういうふうにやるかという、そういう点からしますと、これはいま私はいろいろな例をあげて問題にしていかなければならないと存じますけれども、特に過去、運輸省のほうで、これは重要港湾について、まず港湾計画についての策定をなすって、そしてさらにそれに伴うところの大型埋め立てというものが行なわれている。過去の例を見ますとなかなか、いま将来に期待をかけられているような、私たちに期待が持てないのであります。なかなか持てないのです。  たとえば、いま九州のほうの福岡県で響灘の大型埋め立てがあるわけです。現にもう着工がされてしまって完了している地域もあれば、さらにこれから免許を申請するというふうな部分も残っている。御承知のとおりだと思います。ところがあの響灘の大型埋め立ての中に、運輸省埋め立て権を持ってそして埋め立てられた土地に対して、一部払い下げをなすっているわけです。御承知のとおりだと思いますけれども、相手方は三井アルミナ。ところがこの三井アルミナに対して払い下げられるところの価格というのが、見てみるとまことにこれはまた安価なんです。たいへんに安い。これは二度にわたって払い下げがあったわけで、四十五年十二月二十六日に一平米当たり三千二十五円、四十六年八月十二日に一平米当たり三千三百六十九円、これはいま地価の値上がりが非常に深刻化しているときに、公有水面埋め立てをやって新たにそこに土地を造成する、その造成した土地を払い下げる場合には、陸上にあるところの地面と比べた場合、この値段が非常に安いというのは、何といってもこれは事業者からすれば私はうまみだと思うのであります。そういう点に対してどういうお考えをお持ちであるか。やはりこういう問題は、埋め立てをやり、そして埋め立てに対しての払い下げということをして、事業者にとって埋め立てがふえればふえるほど、陸上の高騰の一途をたどっているところの土地を取得するよりも、たいへんにこれは安価であって、取得しやすいという問題を提起しているんじゃないか。こういうことに対してどういうふうに考えていらっしゃるかということをひとつお尋ねします。
  95. 岡部保

    岡部政府委員 ただいまのいわゆる具体的な例についてちょっと御説明申し上げます。  響灘の埋め立て地の中で、国が埋め立て権を取得してそれで埋め立てた土地をこういう価格で売ったという問題についてちょっと御説明申し上げますが、あの埋め立て地は本来国が埋め立てをするという、何といいますか、国が積極的に埋め立てをして土地をつくるという目的ではございませんで、関門海峡のしゅんせつ土砂の捨て場、捨て場と申しますか、土捨てをするということがむしろあの土地をつくったという主目的であったわけでございますが、現実には確かに先生がおっしゃったとおり、国有地ができてそれを売ったというかっこうになっております。  それから、いま最後におっしゃいました、一般的に見て、埋め立て地の価格とそれからその背後地である既成の土地の実勢価格との差が非常に大きいという点、それは先生のおっしゃるように、たとえばそこに進出する企業、買いました企業に恩典を与えるとかなんとか、そういう意図が入って私はやっているわけではないと信じておりますし、現実にそうであります。ただ、評価の問題評価の方法がこれは確かに問題があると存じます。したがって、実は先日も御質問があったわけでございますが、たとえば埋め立ての免許料がいいかどうかというような問題、それから現実の実勢価格と埋め立てた土地の評価額と売買価格との差というものが非常に大きいというような場合、こういう点について今後もう少し調査をいたしまして、どういうふうに処理するべきかという点については考えていきたいと思いますが、現行いままでの考え方で申しますれば、何かこう恣意的にやっておったということではなくて、一つのルールによって評価をしておったのがそういうことであるということでございます。  それからもう一つあえてつけ加えさせていただきますと、いわゆる地価が非常に高騰しておるということに対して、ある意味では安い地価のものを供給できるという一つの価値はあったと思います。ただ、それは必ずしもプラスになるかマイナスになるかは、これは何とも言えない問題でございます。
  96. 土井たか子

    ○土井委員 これはもう聞いておりまして何とも申し上げることのできぬ答弁であります。というのは、いまあるところの地価の高騰に対して安くこの土地を提供するということが、いいか悪いかよくわからぬけれども、そういう効果はあったと思うというような御答弁です。これは大体もともと地面があった場所じゃないのですよ。公有水面だったのです。もともとは海だったのですよ。これを埋め立てて新たな権利をそこに創設するという問題でしょう。そうやすやすと考えられたら困るのです。これはもう一般の所有地として十分に認識をしていかなければならない地面にあるところの土地とわけが違います。公有水面と名前にあるとおり、私はこの質問の冒頭にも申し上げましたけれども、公の水面であるという認識をはっきり持ってもらわなければ困る。そこをいたずらに埋め立てて新たに私有権というものを設定するということ自身、基本に立ち戻って考えてみたら、これは本来そう唯々諾々としてできることではないのです。そういう感覚がいまの御答弁を聞いているとどこにもうかがえない。私はそういう認識が間違っていると言いたいのですよ。そういうことを、私が申し上げている点をはっきり認識していただかないと、実は環境保全ということに対しても取り組んでいただくということに対して私はちょっと期待をかけることはできません。これ以上汚染された水域に対して埋め立てすることは好ましくないと口ではおっしゃるけれども、そういう感覚ではそれは実行でき得ない、私はそう思うのであります。  そういう点からすると、私は運輸省の今度のこの港湾計画に伴う埋め立て問題、これに対しては、再度お伺いしますけれども、やはり基本的に考え直さなければならない点があるのではないか。いまあるところの港湾計画に対して、やはり環境保全水域に対しての汚濁を防止していくという側面から再吟味をしなければならないのではないか、このことに対してどのように考えていらっしゃいますか。
  97. 岡部保

    岡部政府委員 先ほども申しましたように、環境保全のためにこの計画を見直す必要があるという御説に対しては、私、反対をいたしませんし、現実の問題としてそういう地域について十分見直していくようにこれから指導をするつもりでございます。
  98. 土井たか子

    ○土井委員 どうも木で鼻をくくったような御答弁で、指導する、指導するとおっしゃるけれども、そうするとそれは、現実にあるところの港湾計画に対して再吟味をしてみなければならないという御趣旨もその中に含められているというふうに考えていいわけですか。
  99. 岡部保

    岡部政府委員 さようでございます。
  100. 土井たか子

    ○土井委員 それではお尋ねをいたしますが、免許ということと承認ということと違うか、違わないか、これをひとつ御答弁いただきます。これはやはり建設省運輸省両方から。
  101. 川田陽吉

    川田政府委員 お答え申し上げます。  公有水面埋立法におきましては免許は私人に対する一種の設権的行為、行政法の体系で申し上げますと、どちらかといいますと特許というような形で一種のはっきりとした権利という形のものを与えるのが免許であるというふうに解しております。それから承認の場合は、これは国の行政機関が行なう埋め立てに際しまして、知事に承認を得てから実施するという、四十二条の規定の趣旨はそういうことでございまして、いわば権利化されたものでないという点におきまして両者に相違があると考えております。
  102. 岡部保

    岡部政府委員 ただいまの河川局次長の御答弁のとおりでございます。
  103. 土井たか子

    ○土井委員 これは御答弁のとおりだ。私も基本的には、法に対する概念なり法に対する理解はそのとおりだと思うわけです。片や今回の公有水面埋立法では二条でありますし、この二条の中身では免許を問題にしている権利の設定なんですね。それから片や四十二条の承認というのは権利の設定に対してのいわば手続上の条件のことであります。そういうふうに考えなければいかぬわけですね。ところが、この四十二条でいうところの承認の中身、「国に於テ埋立ヲ為サムトスルトキハ当該官庁都道府県知事ノ承認ヲ受クヘシ」、国の埋め立て事業については承認なんですね。それ以外の問題については言うまでもなく免許権者は都道府県知事であります。  そこでお尋ねしたいのは、片や都道府県知事に免許権がある。片や都道府県知事には承認をするかしないかという問題しかない。もし国の事業について都道府県知事が、この四十二条の定めているとおり承認をしないという場合には、その効果はどういうことになりますか。
  104. 川田陽吉

    川田政府委員 都道府県知事が承認をしなければ、国が埋め立てをみずからやろうと思ってもそれは行なうことができません。
  105. 土井たか子

    ○土井委員 運輸省も同様の考えですか。
  106. 岡部保

    岡部政府委員 同様の考えでございます。
  107. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、四十二条の示しておりますとおり、必ず都道府県知事の承認がなければ、端的に申し上げますと国は埋め立てについて権利を設定でき得ないということになるわけですね。  そこでひとつお尋ねをいたしますけれども、具体的にいま、この前の連合審査のときにも問題になった例でありますが、海上を埋め立て世界で初めてといわれる空港を建設してみてはどうかという案が、関西において問題にされつつあります。いわゆる関西新空港問題なんですね。これは現に大体候補地として運輸省のほうにもお考えがあると思いますけれども、地元の住民からするとたいへんな問題でありますから、この行くえに対しては非常に関心を払うどころじゃない、いろいろと心配をしてみたり、気にかけて、事実について何とか少しでも現在の情報を知りたいというのは当然のことだと思うのです。それからすると、運輸省が現に国の事業としてこれが具体的になってくると計画を策定されるわけでありますから、この公有水面埋立法でいえば四十二条にいうところの手続が必要になってくるわけでありますが、それについても関係府県知事の承認ということがなければならないということをここではっきりお認めになりますね。
  108. 岡部保

    岡部政府委員 当然のことだと思います。
  109. 土井たか子

    ○土井委員 それならば、承認がなければ策定なすった計画の中身もはっきりあきらめてしまうという立場でいらっしゃるわけですね。
  110. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 関西国際空港は、いまは伊丹国際空港がございますけれども、これはもう限度一ぱいでございまして、ですから新しく国際空港をつくろうということで、先年来私のほうとしては航空審議会に諮問をいたしておるものでございます。その位置をどうするか、規模をどうするか等について諮問をいたしております。埋め立てる場合もあるかもしれません。あるいは陸上に持ってくることもあるかもしれません。また航空審議会の答申を得ておりませんのでその内容は不明でございますが、私どものほうは幾つかの、三つないし四つの案があるようでございますが、それについて具体的な調査をしておりますから、その結果を待ちましてそれに対する措置をしていこうと思っておるのであります。埋め立ての場合には、政府委員答弁いたしましたように、国の施設であるからといって法律を破るわけにはいきませんから、法律の規定に従って処理をいたします。
  111. 土井たか子

    ○土井委員 そこでお尋ねをいたします。それは、現に候補地として考えられているところは、新聞紙上にも幾たびか出ておりますし、またここで次官も明らかにその名前をあげて四カ所ばかりを指示なさっておるわけでありますから、もはやそれについて運輸省考えがどの辺にあるかということがよくわかるわけであります。先ほど、海域汚染がはなはだしい場合は埋め立てについては見合わせるべきだ、考えるべきだというふうな御答弁があり、また現にあるところの個別計画についても考え直す必要があろうかと思うという御答弁があったわけであります。そこでその四カ所について考えてまいりましょう。その四カ所の中には、現に水質汚濁もはなはだしいと思われる場所があるのですよ。運輸大臣いかがですか。したがいまして、環境保全という立場からすれば、水域をこれ以上汚濁させないという点からだけでも考えれば、この候補地四カ所を相変わらずあげ続けるということが、基本的に先ほどの御答弁からすればおかしいということになるわけであります。この点はどういうふうにお考えですか。
  112. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 私はまだどの場所ということにつきまして正式に答申を受けたわけではございませんが、航空審議会のほうで調査の対象としておる場所はどことどことどこということは大体私も推察できるのでございます。そういったものをもとにいたしまして考えました場合には、第一に、いまおっしゃったような埋め立てをするといたしますと、埋め立てによりまして非常に海水の汚濁が生じて、そこに被害が起こってくる、また潮流の変化があるかもしれない、そういったことが問題になるだろうと思います。しかし、私は土木関係のほうは非常にふえてでございますけれども、いろいろ報告を聞いておりますと、飛行場をつくるにいたしましても、埋め立て方法もある。また、全部海底から埋め立ててくるのではなしに、橋をかけるようなかっこうで埋め立て方法もある。埋め立てといいますか、そういう方法でつくる方法もある。またその工法の一つとして、よくフローティングドックなんと言っておりますけれども、海面に浮いたような施設、こういったことも、金はかかるかもしれませんけれども、可能であるというようなことも聞いております。そういったことを含めまして、場所がどこがいいかということになった場合に、そういう空港をつくるについて、環境を悪化したり、あるいは漁業その他に影響を及ぼすというようなことを最小限度にする意味におきましては、工法についても、これは権威者に十分意見を聞いて考えなければならないと思っております。いまのところはあなたのおっしゃるように、これはもう絶対にだめなんだということは考えておりません。   〔天野(光)委員長代理退席、委員長着席〕
  113. 土井たか子

    ○土井委員 具体的には運輸省としてはまだこれから先の課題であって、いま明確にその場所を言う時期ではないというふうな御趣旨も込めての御答弁だと私は思うのですが、ただ航空審議会のほうではどの場所に設置することが最も適当であるということで、大体候補地を出しながら問題をいま現に進められている最中なんですね。この審議会に対して責任官庁はいずれでありますか。
  114. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 航空審議会は運輸大臣の諮問機関でございます。ですから、もちろん運輸大臣責任を持っておることは言うまでもございません。
  115. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、これは諮問機関の答申だと思うのですが、報告なり答申をお聞きになる際は、いま大臣答弁環境保全というふうな立場から、運輸省としてはその中身についてさらに考えを具体化する際十分吟味をなさるということを、これははっきりお考えになっていらっしゃるわけですね。
  116. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 もちろんのことでございます。私は、諮問いたしました事柄は、どの場所にどのくらいの規模でということを申しましたが、そういう諮問をいたしておるわけですけれども、航空審議会もいま問題にされておりますような環境保全というようなことについて全然無関心で、そういったのはもう考慮しなくていいのだということを前提に置いて場所を選定したり、あるいは規模を考えたりということはあり得ないと思います。しかし、そういうことを一応考慮された上で答申が出ました場合にでも、運輸省といたしましてはもちろんこれは運輸大臣責任におきまして解決する問題でございますから、さらに十分検討をし、地元の方々同意を得られるような方法考えていきたいと思っておるのでございます。その点は御安心をいただきたいと思います。
  117. 土井たか子

    ○土井委員 御安心をいただきたいというような御要請でございますが、安心できないので先ほどから私は質問をしているわけであります。  これは先日岩垂委員が連合審査の質問の中でこの関西新空港の問題を取り上げて質問した際、環境長官が、環境に対しての事前調査を十分にする、そしてやはり環境保全という点から間違いのないように、そういう問題に対しては自分としても十分に取り組みたいという御答弁があったわけです。そこで再度、その節に問題になったのは、この前の質問の機会に運輸大臣はその席にいらっしゃらなかったわけですが、環境長官が、公有水面埋立法の今回の改正でも環境保全立場からいろいろ意見を言うにとどまっているわけでありまして、協議をするとか、まして環境長官同意を必要とするということにはなっていない。そこで、これは意見を聞くのみでは不確かではないか、心もとないじゃないか。環境保全に対して十分に取り組まれる御意思があるならば、やはり意見を聞くだけじゃなくて、協議じゃなくて、できたら同意にしなければならぬというような趣旨の質問を繰り返しやったわけであります。その点は私は今回の法案じゃどうしても変えなければならぬ一つのポイントだと思っていますよ、環境保全という点から言うと。ところが、いま問題にしているのは、片や二条の「免許」、「免許の基準」というのが第四条でありまして、都道府県知事は、埋め立ての免許を出願した場合にそれに対して免許をできないというふうな場合を一応予想して、免許に対して条件に適合しなければならないという条件を具体的にいろいろ明記しているわけですね。ところが承認の場合はいかがでありましょうか。単に都道府県知事が国の事業に対して承認をするという場合は、その点はどういうふうになるわけでございましょうか。これは法の精神からすれば、準用するということはあるかもしれませんけれども、特に法に従って義務が設定されてない場合は、心得にとどまるわけであります、端的にいうと。法を準用するというのは、法を準用していろいろ行政を行なうとか、法を準用して問題を処理するということになってくるわけでありますが、義務づけられていないということになってくるとこれはずいぶん違ってくると思うのですね。この点は、一体どういうふうに考えていらっしゃいますか。  というのは、なぜこういうことを聞くのか、少し補足的に申しましょう。これは国の事業であろうと、どういう事業者がやる場合であろうと、埋め立てられるという現実は変わらないわけですよ。もう一つ言うと、国の事業であればあるほど埋め立ての中身は大規模になってきます。そこの住民からすれば、受ける弊害は、規模が大になればなるほど、機械論的にいえば大きくなると考えるのが私は通常の常識だと思う。そういう点からすれば、大事なのは、やはりそこに住んでいる住民じゃありませんか。したがいまして、住民に対して、こういう事業を行なう影響が、あるいはその結果がどういうことになるかということを、常に一番念頭に置いておかなければならないのが私はこの法律の中身だと思うのです。それからすると、いまこの問題に対して、一体この承認ということにおいてどの程度に住民の意見なり住民の生活を保障するということが担保されるか、これはたいへんな大問題じゃありませんか。この点はどういうふうに考えられますか。
  118. 川田陽吉

    川田政府委員 このたびの改正法の中で第四十二条、このただいま先生仰せになられました国が埋め立てを施行する場合の規定といたしまして、旧法でもこの条文が準用されて、しかるべき書類を出した上で申請をし承認を受けるようになっておりますが、このたびの改正におきましてもやはり、新しい改正要綱はこの免許基準も含めまして第三条ないし第十一条ということで、免許の基準は第四条でございますから、全部準用規定に入っております。そうしたものの条文適用方については全く同じだというふうに私は考えております。
  119. 土井たか子

    ○土井委員 運輸省のほうも、この問題に対してはそういうふうに認識なすっていらっしゃいますか。
  120. 岡部保

    岡部政府委員 そのとおりでございます。
  121. 土井たか子

    ○土井委員 そうなってきますと、この準用されます四条の中身がさらに問題になるのです。そこで、いうところの特に四条の二号「其ノ埋立が環境保全災害防止ニ付十分配慮セラレタルモノナルコト」と書いてある。「十分」というのは一体どの程度をさしていうかということになってきます、さらに言うと。どの程度であればいいか。いま改正されつつあるところの公有水面埋立法という法律が規定している中身を守れば十分だというようなお考えなのか。それとも公害関係の諸法律、つまり法律がきめているところに従えばそれで十分だというふうにお考えなのか。あるいは法律考えてないところにまで思いをいたす必要があるか、それならば一体どういうことをポイントに置いてお考えになるか。そのあたり少し御答弁願いたいわけです。第四条の二号の中身ですね。
  122. 川田陽吉

    川田政府委員 どうも先生のただいまの御質問に対しまして十分なお答えになるかどうか……。私としては、やはりこの条文は運用上の問題、いろいろ指導やデータの問題、もちろん環境庁等の御意見も大事でございますし、単に法律で定めてある基準だけを見ればいいのだという感覚ではいけないのじゃないか、いろいろ入手できる情報は十分参考にした上で判断を下すべきではないかと考えております。
  123. 土井たか子

    ○土井委員 入手できるということについては、向こうからどうぞごらんくださいと持ってくる分には、これは入手できたということになるかもしれませんが、こちらから積極的にさらに考えを持ってないと与えられる資料以上のものは確保できないのですよ。そこでどれだけ積極的にその問題に対して御用意があるかということが実は大問題になってくるのです。いまこの公有水面埋立法改正の中身につきまして、環境保全災害防止について十分に事前にこれでだいじょうぶかということが察知できる体制に建設省なり運輸省があるかどうかということを考えれば考えるほど、不十分だと思うから私はいま申し上げているわけですが、入手できるというふうにおっしゃるのはどういうふうな方策によって入手するということをお考えですか。
  124. 川田陽吉

    川田政府委員 このたびの法律の施行に伴います政令におきましても、「環境保全につき十分配慮されたものであることを示す文書」ということ、なおその他私どもとしてはいろいろ必要に応じまして補足文書の提出資料提出等も求めながら判断を行なうという考えでおります。
  125. 土井たか子

    ○土井委員 しかし問題は、紙面によってそこの状態というものを把握されるということじゃないはずですね。紙づらの上に書かれていることによって事情を把握したとお考えになったら、これ自身が私は間違いの始まりだと思うわけです。やはり状況については、その状況自身を御存じないことには、環境保全ということに対しても十分を期すことができないと思いますよ。したがいまして、いまの御答弁からすれば、これは私の邪推かもしれませんけれども、字づらの上で書かれている資料をあまねく、できる限り入手するということにつとめたいと受けとめられるような御答弁なんです。それじゃだめなんですね。いままでそれでだめだったのです。だめの繰り返しはだめなんです。今回の改正は、いままでだめだったから改正が必要だということになってきた。したがいまして、いままでやってなかったことで、こういうことに気を使わなければならぬというあたりが少しは聞かれていいのじゃないかと思って私は質問しているわけですが、それがいまの御答弁からは出てこなかった。再度答えてくださいませんか。
  126. 川田陽吉

    川田政府委員 運用上の問題としまして、職権によってわれわれとしては補足の調査ももちろん可能でございますし、また現地に密着している現地における都道府県知事というものは、やはり現地の状況というものを一番把握しやすい状態にあるわけでございます。そういった知事さんに対しまして積極的な調査なり事情把握についてもつとめるように指導してまいりたいと思います。
  127. 土井たか子

    ○土井委員 これは先ほど申し上げたとおりに、国の事業として、目下審議会を設けて、ぜひ具体化しようということで努力中です。こういうことに対して、やはり運輸省自身も国の事業としてやるという責任があるわけでありますから、どの程度認識なさり、どの程度こういう問題に対しては努力をしようとなさっているかというあたりは聞かれていいと思うのです。いかがです。
  128. 岡部保

    岡部政府委員 私の所管でございませんで航空局の所管でございますので、私が御答弁申し上げるのはどうかと思いますが、私の感覚だけを言わしていただきますと、私どもの航空審議会で審議をしている中でも、当然環境問題は相当にディスカッションしているわけでございます。さらに、この問題は当然いまいろいろな意味での環境問題に非常に関係がございますので、環境庁とは十分御相談をしていくということで、いささか他力本願で申しわけございませんが、たとえば環境庁の環境アセスメント等お願いしなければならぬ問題が当然あるわけでございますので、そういうことで万全を期するつもりでおります。
  129. 土井たか子

    ○土井委員 環境アセスメント、環境アセスメントと言われますが、いままでだって環境について事前に調査はおやりになっていたと私は思うんですよ。全然それをやってないとおっしゃったらそれ自身問題にしますよ。そんなことはないと私は思う。やってこられたのです。環境庁はそれを専門的にやっていると言ったっていいくらいやっていらっしゃるのです。やっていらしてなおかついままではだめだったのです。こうなっちゃったのです、あたりの汚染状況が。したがいまして、これからも同じようなやり方じゃだめだということだけはひとつ御認識願います。いまの運輸省の御答弁を聞いておりますと、いままでと相も変わらぬ感覚だと思うんですよ。運輸省としては環境庁と話をしながらいろいろそれに対しての調査をやろうということしかいまの答弁では出てこない。その節一体何が大事とお考えですか。環境庁がこの調査の結果を運輸省に対してこうだああだと言われる。それをひとつ最大限に守ることが一番大事だとお考えか。それとも環境庁からはもちろん意見は聞くし協議はする。しかし運輸省運輸省で独自に考えて、そして環境保全という点から事前に調査をしなければならない、そういうお考えかどうかというあたり、少し聞かしてください。
  130. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 環境庁との関係はいま政府委員から申し上げたとおりでございます。先ほども申し上げたのですが、私のほうは、港湾に関する限りにおきましては、今度の港湾法の一部改正案でも、この環境保全ということについて非常に重要視しているものですから港湾法改正案を提案した次第でございます。したがいまして、たとえば環境庁の汚染基準というような具体的なものがあってもなくても、港湾に関しましては運輸省が独自に判断をして、最大限環境保全及び公害の防除につきまして努力するという考え方で今度の港湾法の一部改正案を出しているわけでございますから、そういう方向で努力を続けてまいります。
  131. 土井たか子

    ○土井委員 それじゃ一つの例を示しましょう、いままでどおりやっていればこんなことだというのを。名前はたいへんいいです。恋が浜という名前なんです。あります場所は山口県です。埋め立て計画が策定され、それに対しての認可がもう具体的になされ、もう着工され、現にここに写真がありますが、現在ここまでできちゃっているのです。ところが、こういうことになってから住民の人たちは、この埋め立てが完成して、そしてこの市が策定した計画どおりに事が進むと、このあたりの居住区は居住区に適さないのじゃないかということが問題になり出した。ここになってからですよ。初めてなり出した。そこで市はあわてまして、環境アセスメントをしたわけであります。環境アセスメントといえるかどうか問題なんです、この時期にやるのですから。専門家を頼んでそしていろいろと事情調査をしてみたところが、ここに住まいをすることは不適当だという結論が出た。そこであらためてこの居住区の人は全員移動しなければならない。実は二つに一つであります。二つに一つですよ。ここに住む人たちが移動をしないのならばこの埋め立ては全部撤回しなければならないのです。埋め立ては相変らず進めるということであるならば、ここに住んでいる人たちは集団移動しなければならないのです。二つに一つで、どういう結論が出たかというと、いまのところ集団移転ということになっているのです。ところがそのうち、皮肉なことに、ここに対する工事を着工する以前に海底に対しての、それこそ環境アセスメントだと思うのだけれども事前調査がなされていなかったことのために、ヘドロが予想以上に推積をいたしておりまして、この建設会社は当初の見積もりをはるかにこえるところの工事費を必要としたわけであります。いまこの問題がどうなっているかというと、市のほうも財政上この集団移転に対して行き悩んでおりますし、この工事自身もいま工事費がかさむということで行き悩んでいる。ここまで来て、この問題、さてこれからどうなるかというところに来ているのです。これは山口県の下松団市の恋が浜。この問題はどこに間違いがあったかというと、やはり、事前環境保全なりそれから埋め立てられてから災害防止について十分であるかどうかに対しての調査がなされていなかったということじゃないですか。いままでにこういう例があるのです。これは一例にしかすぎません。  いま私の住んでおります——私の選挙区のことを言うのは恐縮なんですけれども、西宮でも阪神間の埋め立てをめぐって、もうこれは計画が具体的になり、青写真じゃないですよ。具体的になり、そうしてこれに対して一部運輸省の実行計画が着手されてから住民の人たちは事実を知って、初めて声をあげている。あそこは非常に全国で数少ない野鳥が生息している場所でもあります。近隣には、文教地区でありまして、学校や幼稚園があるわけですね。そこでこれは困るという声が先ごろから出た。  これは先日の質問でも出したわけでありますが、これはやはり環境保全とか災害防止に対しての事前調査が必要であるということの中に、住民とともに事前調査をやるというのが必要だということじゃないですか。まずそこに住んでいる人に対して事の事実を伝えて、そうして住民とともに事前にこの問題に対しては十分に調査をしなければならないことだと私は思うのです。その点がいままで欠けていたんじゃないですか。先ほど運輸大臣は、港湾法の一部改正からしてもそのことに対しては十分に配慮があるというふうな御趣旨でありますが、いまの公有水面埋立法からしましても、事前環境調査をするということがこれでよいかというと私は不十分だと思うのです。それはつまり利害関係人の参加手続という項目に従って、おそらくは事前調査について利害関係人——利害関係人の中身も吟味を要する問題はありますけれども利害関係人が大体きめられている参加手続に従って意思表示をするというにとどまる。  だから、こういうことからすると、端的に申し上げて、環境に対する影響を審議するために独立した審議機関というものをこの節設ける必要があるんじゃないか。その審議機関の中には学者も入りますよ。それからさらにはこの事業について述べていただくところの参考人も入っていただいていいでしょう。しかし何といっても住民の代表を入れたところの独立した審議機関というものを設置することが必要じゃないか。これが今回の改正法案を見てもないのです。これについてはどういうふうに考えていらっしゃるか、ひとつお答えを願います。
  132. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 港湾関係についてお答えを申し上げます。  いろいろの御意見がございましたが、先ほども申し上げたような港湾法の一部改正におきましては、御承知のように今度は環境保全公害の防除というようなことも含めましてルールを設定いたしたのでございます。(「どんなルールだ」と呼ぶ者あり)それは港湾法改正案に書いてございます。一言で申し上げますと、港湾は、運輸大臣がこういう内容の計画をしなさいということを命令するわけじゃございませんで、港湾管理者であります都道府県知事あるいは市長等の地方公共団体の長が計画をいたしまして、その場合には地方港湾審議会にかけるのであります。その中にはいろいろの関係者が入ってきておることは御承知のとおりであります。そういったものをもとにいたしまして地方的なそういう調整もし、いろいろ地方として考えるべき点は考えました上で港湾計画を立てまして、運輸省に提案、提出をしてくるのでございます。それに対しましてさらに運輸省といたしましては中央の港湾審議会にかけまして、それが法律の趣旨に照らしてどうとか、あるいはいまお話しのような具体的ないろいろな問題についてどうとかいうことを十分考慮いたしました上で、運輸大臣としては場合によりましては意見を申し述べるということにしてございます。地方港湾審議会にかけますときには、利害関係者その他の方は地方公共団体の長に対しましていろいろの意見が申し述べられるだろうと思います。そういったものを調整した上で最終的に港湾の計画というものをきめてもらうという段取りになっておるわけでございます。いまお話しのような地方のいろいろの具体的な事情というものはそういう段階で反映していける。私どもとしては、どうしても全国的な視野から見ましてこういうところは非常に困るじゃないか、こういう点は改めたほうがいいじゃないかという点があれば、先ほど申し上げたように、港湾管理者に対しまして、その案についてはこういう点を直されたらどうかというような意見を申し述べることができるように仕組んでございます。
  133. 土井たか子

    ○土井委員 さて、いまるる説明を運輸大臣のほうから承ったわけですが、そこで一つ基本的に問題を申し上げたいのです。これはいろいろ事前に調査をする。そして関係人からも意見を聞く。地元の意見が最大限に反映されていくことのための努力を払う。けっこうであります。それをやってもらわなければ困る。けっこうでありますが、ここに第四条を見ますと「其ノ埋立ガ」と始まるのです。「其ノ埋立ガ」ということになってきますと、埋め立てるということ自身についてだけの問題——これは法文を的確に解釈すればですよ、法文の用語をそのまますなおに読めば、埋め立てそのものの問題ということになってくるのですが、これは従来いろいろ問題が引き起こされている事例を見ますと、埋め立てそのものもさることながら、その埋め立てがどういうふうな工法によるか、埋め立てられた後どういうふうに利用されるかということが実は問題になっておるケースが非常に多いのです。  私はいま一例をあげろといわれれば、埋め立てが済んでしまってから利用計画の中身を見て、これでは困るというのであらためて調停にかけて問題にしていったという例がある。兵庫県の芦屋市の埋め立て計画の中身です。そして県のほうに調停を申請しまして、その調停の結果、幸いにして基本的には調停申請人のほうの意見が通って、計画の中身を更新しなければならなくなったわけです。ただしかしその前提には、この埋め立てがされてしまった埋め立て後の利用の中身が問題です。実はあの地域は、もうすでによく御承知で、釈迦に説法のたぐいだと思いますが、大阪湾水域、さらには瀬戸内海に至る水域というのはたいへんに汚濁をされておりますから、兵庫県自身が水質汚濁防止法によるところの水質基準に対して上のせを条例でつくりまして、水質に対してはきびしい規制をやっておるわけであります。それに適合しないのですよ、埋め立ての後の利用の中身が。そこでそれを問題にして実は調停にかけたのですから、調停申請人に言い分があってそれが認められて、これはあたりまえなんです。  しかし今回、そういう調停申請をするという特例を除いて、この法律からすればすでに法律でその配慮がなければならない。おのおのが考えて調停を申請すればいいじゃありませんかという問題ではないと私は思うのです。やはり基本的には、埋め立てについてこの環境保全ということを考えられる。それはやはり埋め立てについて、埋め立ての工法や埋め立て地の利用についてまでもやはり考えを及ぼしておかなければうそじゃないか、不十分じゃないかと思うわけです。この四条二号の解釈についてどういうふうに考えていらっしゃるのか、「其ノ埋立ガ」という中身は。私がいま言ったのは、その改善について、埋め立てそのものをやはり、これは的確にすなおに読めば、考えられなければならないわけですから申し上げているわけですが、これをどういうふうに考えられるか。もしもう一つ的確に言うならば、この法文は「埋立及其ノ工法又ハ埋立地ノ利用ガ」というふうに明記すべきだと私は考えている。そういうふうにしないと、これはやはりいろいろな点で十分とはいえませんよ。いかがですか。
  134. 川田陽吉

    川田政府委員 お答え申し上げます。  「其ノ埋立ガ」という表現におきまして、私ども埋め立ての工法を当然含んでいるという考え方で条文を書いた次第でございます。  それから、埋め立て地の上ものの規制関係でございますが、その条文は三号のほうで「埋立地ノ用途が土地利用又ハ環境保全ニ関スル国又ハ地方公共団体法律ニ基ク計画ニ違背セザルコト」ということで、やはり工法と埋め立て地の用途と双方について、環境対策上の配慮を加えて免許を行なうという考え方でおります。
  135. 土井たか子

    ○土井委員 四条の三号に「埋立地ノ用途が土地利用又ハ環境保全」についてこれは考えられているわけであるからこれでよいというふうなお考えかと思いますが、「国又ハ地方公共団体法律ニ基ク計画ニ違背セザルコト」というふうに続いているわけでありますから、それは法律に従って考えていさえすればよいということになるわけですね。そこで私が先ほどから言ったのですよ。現行法並びにこの改正の中身がこれでいいか。「法律ニ基ク計画ニ違背セザルコト」ということになっている。ですから、この法律の中で事前環境保全なり災害防止について十分に調査を進めるという配慮がこれでいいということならば私は承認しましょう。だけれどもこれでいいとは思わないから先ほど来質問をしているわけです。今回の改正法案事前調査というのがこれで十分になされ得るというふうな確信がおありになりますか。
  136. 川田陽吉

    川田政府委員 数次にわたる御審議の御意見もいろいろ私ども拝聴しております。ぜひそういった、先生ただいま仰せのような運用配慮をこの法律運用にあたってやる、そうして遺漏なきを期するという考えでおりますので、その旨お答え申し上げます。
  137. 土井たか子

    ○土井委員 それでは申しますけれども、いままで審議の途次の、この事前環境に対して調査をするということに対して、こういう点を配慮をしてこの改正案のこういう点をこういうふうに手直ししなければならないじゃないかというふうないろいろな意見に対しては、それを尊重してもう一度この改正案の中身については再検討しなければならないというふうにお考えであるかどうか、その点をひとつ御答弁願います。
  138. 川田陽吉

    川田政府委員 私ども、この法律運用上の措置で誠心誠意やってまいりたいということを先生にお答え申し上げる次第でございます。
  139. 土井たか子

    ○土井委員 それでまたそれは繰り返し言わなければならなくなるのですが、運用上の措置にいままでまかせてきてこれはだめだったのです。法律で定めているところに違背しなければそれでよいという、そういう基本姿勢が問題にされ続けたのですよ。したがいまして、そうなってくればそうなってくるで、法律の中身を具体的に、今回の改正についても、環境保全からあるいは災害防止から考えてそごのないようにひとつはっきりさせておかなければならない、そういうことになりますね。そこで私は、これは運用上の問題に万事まかせてくださいとおっしゃるなら、本来法律なんて要らないだろうということを、極言ですけれども、この前の機会には質問の中で言ったのです。一条だけで事足りる。この法律目的はどういうものであるかという一条の条文だけで足りる。あとは全部その目的に従って行政でしっかりやってもらえばいいということになる。では国会なんというものは、一条だけ、目的さえつくればそれであとはいいものであって、あとは要らないね、というふうな質問にもこれはなったわけです。そういう点からしますと、これはどうでしょう、法律で具体的にできる限り、こういう環境保全に対しては、ここまで国に対しては義務があるのだ、ここまで地方自治体に対しては義務があるのだ、そうして肝心のそこに住んでいる住民に対しては、やはり住民の権利ということ、そこに住んでいる側からいうところの意見がこれだけ生かされるということがはっきり配慮としてなければいかぬのじゃないでしょうか。ほかの問題についてもそうですけれども公有水面埋め立てというのは、本来ないところに新たに土地を造成するわけですよ。海面をこわすわけであります。そうしてそこに土地を造成して、新たな権利をそこに造成するわけですね。だからそういう点からしますと、やはりこの問題というものはよほど慎重に考えておいていいのです。行政におまかせ願いますとおっしゃいますが、いままでずっときょうまでこの公有水面埋め立ての問題に対して審議が進んで、審議の中でも一度や二度じゃないのです、この問題に対しては。環境保全という点と十分に取り組むためには事前環境調査を十分にやる必要がある、だからそれについてはこれでよいか、これでよいかということでいろいろな意見が出た。これはひとつ行政を行なう上で配慮させていただきましょうじゃないのです。いま改正案について審議しているのですから、改正案の中身にそれを織り込んで考えるというふうに、いまこの改正案についての再吟味を必要とするか、どうですかということを聞いている。いかがですか。
  140. 川田陽吉

    川田政府委員 従来の法体系におきましては、免許官庁の判断というものはいわば野放しに近い状態でございまして、わずかに、法律に基づかない、それこそ全くの運用上の通達だけで一応ある程度現状に即した行政がやれるようにという指導を行なってきたわけでございます。それでははなはだ行き届きませんし、限界もございますので、ここに、条文上の表現としては簡素でございますけれども、その背後にあるもの及び運用のあり方等は、十分私ども環境保全ということに着目し、工法にも十分配慮し、また土地利用、埋め立て地の用途等についても十分な規制を行なっていくという条文も用意している次第でございますので、法律を度外視した、無視した運用というようなつもりは毛頭ございません。そういうことで、従来のなまぬるかったという御批判はごもっともでございますが、この改正後の法律の条文を踏まえた行政指導というものはやはり従来とは違った強力なものになるでありましょうし、そういう姿勢で行政を行なってまいりたいと思います。
  141. 土井たか子

    ○土井委員 どうも御答弁がすれ違いなんですよ。私が質問していることに対してのお答えをぜひいただきたいですね。これは行政に対する姿勢を私は問題にしているわけじゃないのです。いまここで審議しつつあるところの改正案を問題にしている。したがいまして改正案について、これではどうも不十分だ、この点については考え直す必要があるのじゃなかろうかという点で、この環境保全という点から事前の調査ということで私が先ほど一つの例を出したのは、それに対して独立した審議機関というものを設置する必要があるのじゃないかということも申し上げたわけであります。それはいまの法の改正の中ではないわけですから、そういう点に対しての配慮を少しは考えられていいだろう、こういうことを私は申し上げておるわけですが、そういうふうなことを織り込んだ一つ改正のあり方というものに、今回の改正案の中身をさらに吟味して考え直しをしていくというふうなことについてどうだということを聞いているわけですよ。だから、行政の姿勢についてあれこれ私は言っているわけじゃありません。いかがです。
  142. 川田陽吉

    川田政府委員 具体的に先生からのいろいろな御指摘もございましたが、ただいま御指摘の審議会という問題についても、私ども考え方といたしましては、一応公有水面埋め立ての免許をするにあたりましては、都市計画審議会でありますとか都市計画地方審議会でございますとか、また港湾審議会でありますとか、いろいろな角度からの立場で御意見を申し上げる審議会がたくさんあるわけでございます。そういった審議会の御意見を広く取り入れまして判断の要素に加えて埋め立ての免許をやるという考え方でこの法律改正案をまとめたという次第でございまして、先生の御意見にどうも必ずしもぴったり来ないという御指摘をいただいているわけでございますが、私どもとしては、法律の条文上の表現と運用の姿というものはこうでございますから、先生指摘の行政効果は得られるでありましょうというつもりでお答えしたわけでございます。
  143. 土井たか子

    ○土井委員 すべての役所でいまなさっていらっしゃる方々が次長さんと同じような感覚ならけっこうですよ。だけれども、なかなかそうはいかないのが現実なんです。法律の条文でどういうふうにきめているかによって初めて事を起こす人が大半と考えておかなければならない。そこで法律の条文がどういうものかということが大事になってくるのです。法律を越えてしっかりがんばってもらえる人ばかりなら私はこんなことを問題にしていろいろ審議をするという必要もなかろうと思うのですよ。しかしそうじゃないからこの問題は非常に大事になってくる。幾らこのことを繰り返し言いましても同じような答弁ばかりだと思いますが、しかしこの場所というのは少なくともいまの法案自身に対して審議をしている場所でありますから、審議の過程で出てきたいろいろな不十分な点に対しての手直しというものはやはり審議の結果出てこなければならない。したがいまして、そういう点からすると、私はいまの環境保全という点からの事前調査という部分については今回の改正では不十分だと思っているわけであります。この点で改正案に対する再吟味が必要だと思っているわけであります。一この点は、もう質問してもおそらくは同じ御答弁でしょう。したがいまして再度御質問はいたしませんが、ただ建設省としてこの問題に対しては一体どうお考えかということをひとつ大臣から一言おっしゃっていただいて、そして最後の質問に入ります。
  144. 金丸信

    金丸国務大臣 御指摘の点につきましては、確かに法律をつくるときに行政指導でやればよろしいということでは法律をつくる意義がないと思いますから、はっきりすべきだと私も思います。そういう意味で、今回の法律につきましては抜本的な改正でなかった一部改正というところにも問題もありますし、また先生方からいろいろ有益な御提言もありましたので、今後これを改正するときには、抜本的な改正方向に持っていくにいたしましても、そういうものを踏まえましてひとつ考えてみたい、こう思っています。
  145. 土井たか子

    ○土井委員 といいますのは、きょう先ほどからずっと質問を繰り返しやったのは第四条の二号、三号にその重点があったわけです。二号と三号をずっと見ますと、確かに埋め立てについては環境保全災害防止について「十分配慮セラレタルモノナルコト」とあるのに対して、この埋め立て地の利用については「国又ハ地方公共団体法律ニ基ク計画ニ違背セザルコト」とあるのです。なぜこの四条の二号と三号とでは取り扱いが、条文を引き比べた場合には違うのかという点はだれしも疑問を抱く点だろうと私は思う。したがいまして、この「法律ニ基ク計画ニ違背セザルコト」という法律がたいへんに問題になってくるわけであります。法律の中身はこれに対してどういう配慮があるかということです。そこで先ほど、改正についてこれでよいとお思いか。改正案の中身については、事前に調査をするということに対してやはり不十分さがある。したがいまして、一つはその不十分さということを十分にするための努力をさらに、この改正案については審議の途次と考えて、ひとつこの改正案に対して再吟味をするということがたいへん大切になってくるじゃありませんかということを申し上げているわけです。それは御理解いただけますね。  それで最後にお伺いしたいのは、過去の大型臨海工業用地の埋め立ての問題に対して調べてみますと、事業者の多くが地方公共団体、特に都道府県である場合が多かったのですね。ところがこのような場合、免許権者である都道府県知事に埋め立て免許の拒否を期待するということは、これはほとんど期待できないのです。また免許を与えた後に補償について協議が整わないときには一体どうなるかというと、これは裁定権者が問題にしていくわけですけれども、裁定権者というのはまた都道府県知事であります。したがいまして、こういうふうな状態からすれば、都道府県知事が一たん埋め立てを計画すればもうこれに対しての歯どめはきかないということが、一応大まかに言うと考えられるような現象が繰り返し繰り返し展開されてきたわけですね。こういうふうな場合にあって何とか免許の権限を行なう場合についても十分なチェックをする機構を設ける必要があるし、それから少なくとも補償裁定権者については当事者から独立した何か第三者機関というものを設ける必要があるのじゃなかろうか。これはかねてより問題にされてきたことなんですね。今回のこの改正案についてこの点はどういうふうに考えられているかということを一言述べていただきたいのです。
  146. 川田陽吉

    川田政府委員 まず補償裁定機関の問題でございます。これは知事が裁定するという現行制度になっておりまりすが、制度論はともかくといたしまして、運上用現実に発動されたことはないという私ども考え方で、これは十分検討の要があると思いますけれども、ただいまのところ実害を及ぼしていないという考え方と、それから、知事はやはり現地の機関として一番地方の実情について詳しい立場にある、まあそういう考え方でいる次第でございます。それから、埋め立てについて知事が免許するという具体的なケースがあるわけでございますが、そうしたものは概して大型の埋め立てでございまして、また大型の埋め立てということになりますと大臣が認可するということで現実的な解決がはかられているというようなことで、地方自治のたてまえ論、いろいろ考えまして、今回の改正ではそういった点については現条を残しておいたわけでございます。
  147. 土井たか子

    ○土井委員 いままでこの問題について大体支障がなかったというふうな御答弁ですが、ほんとうにそう考えていらっしゃいますか。それをもうちょっとお答えください。
  148. 川田陽吉

    川田政府委員 裁定官庁としての知事の行為について、特に現実的にそういった規定が発動されて裁定を下したというような例がございませんので、まあ実害もなかったし、一応制度論として考えてみますと、知事は現地機関として一番広い行政を府県領域で行なっておられますので、いろいろな適正な判断をできる存在であるという考え方で現行制度を残しておいたという意味でございます。これはまた話が別の話になりまして、現実に知事が埋め立て権者であり、知事が免許をするという、そういう制度自体についてどう思うかという先生の御下問に対しましては、そういった場合はおおむね大臣が認可するということになっておりますから、一応制度論としてはそれでよいのではないかということをお答えしたわけでございますが、現実的に企業局等の行なった埋め立てについて、事実認識の問題として反省すべき点がないのかと仰せになられますと、われわれとしてもやはり反省しなければならない点はやはりございます。そういうことでございます。
  149. 土井たか子

    ○土井委員 どうもはっきりしない御答弁なんですが、時間が来て、もうそろそろ次の質問者にということですから、このことについては私は具体的に言うことを保留にします。  それで最後に一言、それでは建設省に聞きたいのです。このことについて答えてください。先ほど響灘の問題について、国有地を払い下げられた、これらの地価の問題について、好ましいか、好ましくないかということは別としてという御答弁でありましたが、今後やはりこういう問題についてはやってもよいというふうに考えていらっしゃるわけですか。つまり、運輸省がその土地について埋め立てをやって、そして埋め立て地をさらに事業者に対して払い下げるというふうなことがやられてもかまわぬというふうに考えていらっしゃるわけですか。それをやっても別にかまわないというふうなお考えかどうかということをひとつ最後に聞かしていただきたいと思います。
  150. 岡部保

    岡部政府委員 先ほども申しましたとおり、運輸省が土地をつくって企業者に譲渡するということが本来の目的では全くございません。たまたましゅんせつ土の処分ということでああいう事態ができたわけでございます。したがって、こういうことを今後もやるというつもりは毛頭ございません。ただ例外的に、地方で埋め立て権を取って、どうしてもその中に土を捨てさせてもらうことができないという場合があり得ると存じます。しかし原則的に私はこういう方向に進むべきではない、こう考えております。
  151. 土井たか子

    ○土井委員 これで終わります。
  152. 服部安司

    服部委員長 松浦利尚君。
  153. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それでは、午前中中断した政府の統一見解をお示しいただきたいと思います。
  154. 岡部保

    岡部政府委員 午前中に混乱をいたしました点、おわびを申し上げます。  昭和四十七年度の運輸白書の二九五ページの廃棄物埋め立てに関する記載は、一般廃棄物及び産業廃棄物の処理が都市環境問題に重大な影響を及ぼしていること、及び海洋汚染防止法、廃棄物処理法の施行に際し、廃棄物の海洋埋め立て処分が強く要請されたこと、という事情もありまして、利用目的のないものにも免許を与える云々の、いささか行き過ぎの表現をしたものでございます。  ただ、現実の問題といたしましては、利用目的のないものに対しては免許ないし認可はなされておりませんし、今後、新法の成立後は、新法の趣旨にのっとりまして、慎重に対処する所存でございます。
  155. 鈴木登

    ○鈴木説明員 けさほどの松浦先生の御質問に対する私の答弁の中で、改正法の、目的変更の手続といたしまして、改正法二十七条及び二十九条というふうに申し上げましたけれども、あわてておりました関係上私のミスでございまして、十三条の二でございますので、訂正させていただきます。
  156. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 いま統一見解が出されましたが、その統一見解についてまたいろいろとここで言うつもりはありません。しかし、やはりいまここで運輸白書というもののある程度の修正がされる。先ほど私にうその答弁をして、いま答弁の変更がある。そういったことは、やはりまじめに議論をする場合に、質問する側に対して行き当たりばったりの答弁をするのではなくて、休憩するなりして、すぐ統一見解をぱっと出すということにしてもらわないと、ちぐはぐな答弁になって、かえってつけ焼き刃になって、法改正を提案しておる側が法改正の趣旨を間違って答弁する、条文を間違って答弁する、上がっておるということですけれども、そういうことでは私は審議というものはできないと思うのです。  そこで、運輸大臣に、あるいは建設大臣でもけっこうですが、このように公有水面埋め立てというのは政府内部でもまだやはり統一的になっておらないのですよ。だからそういった意味では、この法案として一応前向きな部分があることは事実です。しかしいま必要なことは、法を改正するということと同時に、政府埋め立てに対する基本的な統一行動をとる、意識を統一する、そのことが必要だと思うのです。だからそういう面で、先ほど環境庁の政務次官がお話しになりましたように、やはり環境という問題、産業という問題、運輸という問題あるいは建設というサイドから、お互いに意思疎通しまして、そうして新たな角度から埋め立てというものはどうあるべきかという組み立てをしておかないと、ちぐはぐになってくると思うのです。そういった意味で、ひとつ建設大臣運輸大臣から、これからの埋め立てに対する基本的な考え方について再検討を加えてやるおつもりがあるかどうか、あるいは政府部内の統一的な方向でさらに検討を加えることの意思があるのかないのか。この点ついてそれぞれお答えをいただきたいと思います。政務次官もひとつお願いをいたします。
  157. 金丸信

    金丸国務大臣 埋め立ての問題はなかなか重要な問題でありますし、また環境保全公害防除という点から考えてみましても、おろそかにできない問題でありますので、各省とも連携をとりまして、なおより一そうの全きを期する所存であります。
  158. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 建設大臣のただいまの御答弁と全く同じ考えでございます。
  159. 坂本三十次

    ○坂本政府委員 埋め立てを行なうにあたりましても、環境保全範囲内においてやるという姿勢は貫くべきだと思います。
  160. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それではさらにこの問題について、時間がないそうですから、あとの方の質問に協力する意味ではしょりたいと思いますが、一つ二つちょっとお尋ねしておきます。  それは、実は現在造成が認可されまして未造成のところがあるのです。現に埋め立てを認可して、これだけの規模を認可して、そして現実に進行中だけれどもまだ未造成の部分があるのです。たとえば大分の六号地、七号地、こういったところがあるのです。こういうものについてこの法律は遡及しないわけですね。だとすると、先ほど統一見解をいろいろお示しになったわけでありますが、許可をして現に未造成中のものの扱いをどういうふうに考えておられるのか、その点をひとつお答えいただきたいと思います。
  161. 川田陽吉

    川田政府委員 先生の御疑問の一般論のお答えといたしましては、やはりすでに免許を得て埋め立てを行なっているものにつきましては本法の適用はございません。一般論としてはそういうお答えでございます。
  162. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 そこで大臣にお尋ねをするのですが、実はこれは中村委員から私の関連質問で補充してもらったほうがいいと思うのですけれども、調査室の出した公有水面埋め立て面積の資料と、それからきょういただいたこの埋め立て面積の資料とでは差があるのです。差がある部分について、許可をしておるけれどもまだ未造成のところがあるのです。非常に大きい数字になります。これは三万ヘクタール近くになるのです。現在までに埋め立てられたのが七万六千ですから、約半分近くが、許可がおりたが未造成の部分、こうなる。これをどうするかということは埋め立て行政では非常に大きな問題、しかも環境についても非常に重大な問題になる。しかもその中には、すでに許可を与えて未造成の部分で瀬戸内海の部分があるのです。それは環境庁の政務次官にも再度お尋ねをしたいのですが、国立公園管理事務所がいった、汚染源だからもうこれ以上埋め立ててもらっちゃ困るのだ、だからこの埋め立てを国として強力に規制しなければだめだ、こういうふうに瀬戸内海国立公園管理事務所が文書を出しておられます。だとすると、三万何がしの大きな未造成、しかも許可のおりておるものについてはどうするのかということは、これからの埋め立て行政でたいへん大きな問題になると私は思う。この法律は公式的にやはり遡及いたしません、これをどうするのか、その点に対する政府の明確なお答えをいただきたいと思うのです。場合によってはいままでの答弁が、はっきりいうとちぐはぐになるのです。いままで御答弁なさったことと、この答弁のいかんによってはたいへん食い違った行政になる。その点ひとつ明確にお答えいただきたい。
  163. 金丸信

    金丸国務大臣 許可にはなったがまだ埋め立てしておらないというものにつきましては、確かに環境汚染等の問題があるわけでございますから、この法律が成立いたしましたらこの法律の精神にのっとってこれを行政指導することは、私どもなおより一そうの調査をいたしたいと考えております。
  164. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 大臣の言われたことはそれで非常にきれいに聞こえるのです。ところがもうすでに一ぺん免許を与えておるわけですから、三万坪だ、何のと、向こうは地元との話がつけば造成するわけです。ところがそのことに対して、先ほどから言ったように、新全総計画も修正をする、だからその中で公有水面埋め立てのものについても縮小するということは政府委員の説明もあったわけです。ところがこの法律が遡及しない、三万ヘクタールという部分については。もうすでに許可が終わっておる。七万六千坪造成しておって、三万坪これからやる。約半分ですよ、瀬戸内海等も含めて。これをどうするかということは、単なる行政指導だけで解決できるとは思わないのですけれども。いま建設大臣が言われたこと、そのことはわかります。しかしそれだけでは解決できないのじゃないかと私は思うのです。ですからもう一ぺん、運輸大臣でも建設大臣でもけっこうですから、明確に、どうするのか、どう扱うのか。
  165. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 いまお尋ねの中にもございましたように、免許を与えておりますので、これを取り消すことはこれはなかなか困難であると思うのでございますけれども、新法が施行されました場合には、先ほど建設大臣も言われましたように、新法の精神を十分にくみまして、なお私ども港湾に関しましては新しい港湾法の精神に従いまして、十分に行政指導をして対処してまいりたいと考えております。
  166. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 実は造成されておらない部分がいま問題になっておるのです。なぜ問題になっておるかというと、大分の六号地、七号地のように、漁民が反対をして、なかなか環境問題で造成できない、そういったことのトラブルがあるのです。そういうところが残されておるのです。それをそのまま認めていくということは、逆にいうと、新全総計画をそのまま認め、それに伴う埋め立てを認めていくという結果になる。  午前中の御答弁と食い違ったことになる。だから、これは免許を与えたものは取り消せないと言われるのですけれども、やろうと思えば、造成されていないのだから——造成されたものについてはしかたがないが、造成されておらないものについては法律の遡及効果というものはあってしかるべきだ。やろうと思えばできる。それは握っておる者の判断と、現在の政権を握っておる者の力だと思うのです。その人たちの判断だ。やろうと思えばできる。ですから、いま言われたように行政指導ということでは私はなかなか了解できないのですが、環境庁はどうなんですか。それはいま言われたように行政指導だけでやれるか、あるいは、埋め立てがこの瀬戸内海の公園管理事務所のほうでは困るといっておるけれども環境庁は免許を与えたものはしょうがないから行政指導でやるだけで、行政指導の外に出るものについては、行政指導の言うことを聞かないものについてはやむを得ないという立場に立つのか、それともそういう間のものについてはやはり緊急措置として何らかの法的規制を加えるという立場に立ってやろうとするのか、その点をひとつ環境庁もお答えをいただきたいと思います。
  167. 坂本三十次

    ○坂本政府委員 すでに免許を発せられてしまったものにつきまして、環境庁はこれを取り消すとかなんとかという権限はこれは御承知のとおりございません。しかし、私ども立場といたしましては公害関係のいろいろの立法がございます。それに基づいて種々の環境保全規制というものをきびしくやってまいる。環境容量以上にはみ出せば、認可があろうとなかろうとそれは当然認めるわけにはまいりません。そういう筋合いで私ども環境保全上アセスメントを十分にやって、そして公害発生のないように十分に対処いたします。
  168. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 非常に行政に立ち入るようですけれども環境庁のほうでは、たとえば三万ヘクタール許可があるけれどもまだ未造成だ、それは環境を破壊するから一万ヘクタールにする、行政指導をして造成面積を切り下げるというようなことはやれますか。やる自信がありますか。そしてそのことについて港湾関係担当の運輸省は、環境庁がそういうことを言ってこられたときには、そういう立場に立って行政指導することがやれますか、だいじょうぶですか。その点を、くどいようですけれども、いつも法律がしり抜けになるのはそこなんです。今度法律がせっかくできるなら、この法律というものが直ちに発効して実行できるように、国民の立場に立ってやるのが私は為政者の立場だと思うからこそいろいろ質問するのです。ですから、行政に立ち入って申しわけないですが、ひとつ環境庁とそれから運輸省のほうからお答えいただきたい。
  169. 坂本三十次

    ○坂本政府委員 私ども立場とすれば、当然環境容量をはみ出すような、そういうことは認めるというわけにはまいりません。その場合には具体的な計画がいろいろ出てまいりましょうから、それについて私ども意見を述べて、そして環境容量の中に押し込めていくということは当然のことでございます。
  170. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 関係省庁と十分に連絡をとりまして、さっき申し上げたような方向で最大限努力をいたします。
  171. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 いま言われたことは、与えた許可の変更もあり得るという御答弁だと理解してよろしいですか。交付した免許の修正があり得るんだ、そういうことで理解してよろしいですね。
  172. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 先ほど申し上げましたように、許可を取り消すということは法律上非常に困難でございますが、私どもとしては、港湾管理者というものと運輸省というものはいつでも相対立したものではなくて、お互いに絶えず相談いたしまして、そうして港湾計画を立て、港湾計画の遂行に対してお互いに協力をしておる立場でございますから、十分に行政指導は可能であると考えております。
  173. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 これは水かけ論になるようですから……(「そういうふうになるようなことばかり言っているのだ」と呼ぶ者あり)実際、いま冗談で不規則発言がありましたが、この問題はたいへんだと思うのです、率直にいって。七万六千ヘクタールも造成をしたために環境が破壊をされ、公害発生源をつくり出してしまった。その許可、免許がすでに三万についておりておる。未造成だけれどもある。これはたいへん重要な問題で、笑い話で済まされない問題だと思う。だから、いま環境庁の次官あるいは運輸大臣から言われましたけれども、やはり免許の修正、こういったことは私は当然やっていいと思う。一ぺん免許を与えたのは、永久免許じゃないのだから。永久にそこでその人に権利が発生をしたと理解するから免許の取り消しができない。だから、それは免許を与えて一定期間たっておるのだから、そのものについては免許を洗い直す、修正する、そういったようなことくらいはやってもらわないと、あとから欠陥が起こって、国民に対して申しわけありませんでした、あのときやっておけばよかったということになると、これでは何のために私たちは国会でこの法律を審議しておったかということになるのですから……。そのくらいのことは言えないですか、運輸大臣。洗い直す、修正する、それくらいのことは、あなた方は権力を持っているのだから——われわれは幾ら言ったってできぬけれども、やろうと思えばあなた方は権力を持っているから、できるんだから、そういう点についてやはりもう一ぺんお答えいただきたいと思います。
  174. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 先ほど環境庁から御答弁をいたしましたように、環境についての基準が出ますればこれは順守させます。しかし、権利関係の問題は、これは法律論でございますから、法律に根拠がありまして、そういう場合にはこういう法律によって一たん免許を与えたものでも取り消すのだ、こういう場合には免許を与えてもそれを修正し得るのだという権限がございませんと、これはできないと思います。ですから私は、実際上効果をあげますように最大限の努力をして行政指導をいたしますということをお答え申し上げておる次第でございます。
  175. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 もうこのことで水かけ論をしてもしようがありませんから……。いずれにしてもそのことは非常に重要な問題だと思うのです。ですから早急に、やれるとかやれないということは別にして、未造成の三万ヘクタールについては洗い直していただいて、環境庁、運輸省なり建設省がこの法律にのっとって一ぺん洗い直してもらって、修正できるものは行政指導で修正をする、あるいは免許を与えていけないものはこの際行政指導で、免許を一ぺんおろしたけれどもその発効を停止をさせる、やはりそれぐらいの気持ちでやっていただきたいというふうに思いますので、ひとつくどいようですがもう一ぺん決意のほどを聞かしていただいて、建設大臣運輸大臣環境庁の政務次官、それぞれから決意をいただいて——何か私の質問が非常にうるさかったようですけれども、明確にひとつお答えをいただいて私の質問を終わります。
  176. 金丸信

    金丸国務大臣 免許を取り消すという問題はなかなかむずかしい問題だと思います。そういうものも踏まえまして十分検討してみたいと思います。
  177. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 お答えいたします。  御趣旨はよくわかっておりますから、行政指導を最大限にいたしまして、御趣旨に沿うように善処をいたします。
  178. 坂本三十次

    ○坂本政府委員 環境保全優先の立場からアセスメントを十分にやりまして、そして御期待にこたえたいと思います。
  179. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それじゃ私の質問は終わります。
  180. 服部安司

    服部委員長 井上普方君。
  181. 井上普方

    ○井上(普)委員 私は簡単に質問を進めてまいりたいと思います。  この埋め立て事業というのは、これは歴史的に見れば江戸時代から、あるいはその前から行なわれたと思います。ずっと下がってまいりまして第一次欧州大戦後、産業革命が日本でできてきた。それに伴って工場敷地をつくるためにいろいろトラブルが出てきたので、大正十年の法制定になったと私は思うのであります。  そこで、私の、これはまことに卑近な例を申し上げて恐縮なんでありますが、私のうちも実は干拓をやりながら藩政時代からやってきたようであります。——民法関係についてきょう質問しようと思ったのですけれども、この問題はやめましょう。この法改正だけにつきましての質問をしたいと思うのであります。昔の干拓といいますのは、これは干拓でありまして、干がたを大体囲って埋め立てるというやり方をやってまいりました。しかしこのごろになりますと、技術の進歩のために、擁壁をつくって、いままで考えられなかった水深十メートル、十五メートル地帯まで埋め立て地が出てきた。しかしこれは戦後の食糧窮乏時代には、大体農地をつくるための埋め立てが行なわれたのでありますが、昭和三十二、三年以降、高度成長政策に伴いまして海面下十四、五メートルのところまで埋め立てるようになった。そしてそこが港湾区域でありましても、港湾区域内に、ほとんどが港湾区域でありますが、ここに工場を張りつけていった。これがまた公害問題を引き起こし、同時にまた自然環境を非常に破壊するような事態になっておるのであります。  数字を見てまいりますと、大体建設省関係分が一といたしますと、運輸省関係分が大体十になっておる、こういうような事態を見てみますときに、ほとんど港湾区域内において工場がつくられておる、埋め立てが行なわれておるというのが実態であろうと思います。また、先ほど来運輸大臣が再三言われましたが、日本港湾が少な過ぎるのだ、だから港湾をつくらなければならぬのだ、こうおっしゃいますけれども埋め立てをしたそこに工場を張りつけるから港湾が必要になってくる。あなたのおっしゃるのと逆の状況が現在出てきておると思うのであります。したがって、港湾法港湾法と盛んにおっしゃいますけれども、むしろ港湾法よりもこの埋立法が優先して考えらるべきである、こう考えるのであります。したがいまして、この埋立法の審議というものは重大な影響を及ぼしますので私はこれから御質問をしていきたいと思います。  まず第一番に、これが大正十年の三月から審議されておるようであります。私はその議事録を拝見いたしました。そういたしますと、埋め立てをすることが至上命令であるという考え方のもとにあの当時審議がされておるのであります。したがいまして、公有水面に対しまして権利を持つ者は、これは無理を言うんだという観念からあの審議がなされております。言いかえますならば、埋め立て事業を進めるために、そこのけそこのけお馬が通るで、ともかく利害関係者考え方権利を全部押しのけてつくられたのが公有水面埋立法であります。あの会議録を全部読んでみればそれが十分にわかる。  ところが、御承知のように、その間明治憲法から民主憲法にかわった。国民の権利は守られなければならないことになっている。ところがそれに対して改正ができていない。ここで初めてことしになって一部改正が出てまいった。これに対して、建設大臣あるいはまた運輸大臣は、この法律改正ははなはだ不十分である。建設大臣のおっしゃるには、ぬるま湯に入ったごとき感を深くする、こうおっしゃるのも私は無理からぬことだと思う。したがいまして、このかたかな法律をいまの民主憲法にのっとった法律に早急に変えなければならないと私は思います。大臣もまた抜本改正をやらなければならないと再々ここでおっしゃいます。しかし私どもは、この法律建設省よりもむしろ運輸省のほうに、面積の関係からいっても現在の埋め立て事業の実態からいっても運輸省のほうに重要な権限があるように思われてなりません。したがいまして、抜本改正をいつやるかということであります。抜本改正をやるということは再三両大臣とも明言されておりますが、いつやるか、この時期をひとつ明確にしていただきたいと思うのでございます。どうでございますか。
  182. 金丸信

    金丸国務大臣 この法案は一部修正いたしただけでありまして、かたかなの法文そのままになっておるというようなこともあるわけでありますから、抜本的な改正をするというところにねらいもあるわけでございますし、また抜本的な改正をやらなければならないという要請にも迫られておると考えます。そういう意味で、その時期という問題につきましてははっきり申し上げるわけにいかぬけれども、できるだけ早い機会にやるということは必要である、こう私は考えております。これが共管でありますので、埋め立ての基本問題等につきましてはいろいろ意見の分かれるところもありますし、また学者の意見をいろいろ聞いたりするというようなことも踏まえてやるということを考えて、たとえていえば、法律をつくるためには法律改正委員会をつくって、準備委員というものをつくってそのほうの検討をしてもらうということもやらなくちゃならぬだろうというようなことも、私は私なりに考えるわけでございます。そういう意味で、どうせつくるのには全き法律をつくらなくちゃならぬ。またあそこもだめだ、ここもだめだというような法律でない法律をつくるためにも、ある程度の日時はおかし願いたいと思うわけでございます。
  183. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 大体建設大臣のお考えと同じでございますけれども、これにまあ姉妹関係といいますか、私どもには港湾法がございます。今度の改正案は再々申し上げましたように部分改正でございまして、いままで両方とも、環境保全でございますとかあるいは公害の防除でございますとか、そういった規定が表面化されておりませんで、これは行政措置にまかせられておったわけでございますから、今度はそれを前面に出して、埋め立てにつきましても港湾整備につきましても、そういった問題を重点的に取り上げて今後やってまいりますという意味で今度の改正案を急遽といいますか、部分改正でございますが、急いで出したという経緯がございます。将来、それじゃいつかと、何年たったらやるのだというような約束をしろというふうに聞こえるのでございますが、これはいまの環境の問題なんかもこれからまだいろいろ考えなくちゃならぬし、進展していく問題もたくさんございます。  それから一方、私のほうの埋め立て関係いたしますが、港湾関係でございます。港湾関係につきましては、ちょっとこれは余談になりますけれども、井上先生の御質問の中で、運輸大臣は、工場を張りつけて、そして港湾をふやしたらいいじゃないか、こう言っているというふうにおとりになりましたけれども、そうじゃございませんで、いまの日本の国内の海上の荷物の動き、それから国際的に見まして、非常にたくさんの原料を輸入しなければ日本の国民生活も国民経済も成り立っていかないわけでございますから、それがここ何年間には何倍になる、いろいろな試算が出ておりますが、それに対応した輸送需要がございますから、それに対応したような港湾設備がほしいと言っているのでございます。ただ数をほしいというのじゃございません。さっき申し上げたように、世界にもまれな平均滞船時間四十時間なんというのですから、これを何とか解消いたしまして、必要な物資がどんどん入ってくる、またこちらのほうから、主として雑貨でございますが、そういったものをどんどん出せるというような態勢にしなければいかぬということを言っているのでございます。したがいまして、数の問題よりも、そういう設備の内容を整えないと追いついていけないのだ、それを申し上げているのです。でございますから、設備の内容を変えようといたしますと、たとえばバースをふやそうということになりますと、自然、ある部分でございますけれども、海岸の埋め立てというものも伴ってくるわけでございます。しかしいままでは、そういった問題について環境保全とか公害とかいうことについての配慮が足りなかったことは事実でございます。そういった点について十分反省いたしまして、今後は新法の精神に沿いまして、そういう港湾設備を充実いたします場合にも十分な配慮をして行ないますということを申し上げておるわけでございますから、この点ひとつ、先生にもしその点について私の言ったことが間違って入っておりましたら、いま申し上げたことが正確でございますから、そのとおりに御了解いただきたいと思います。
  184. 井上普方

    ○井上(普)委員 これは建設大臣運輸大臣との御答弁のニュアンスが違う。早急にこれは改正しなければならぬのだが、時期はいつだといって私は聞いているのです。運輸大臣は全然そのことに触れられないじゃありませんか。(新谷国務大臣「いや、建設大臣と同じ意見です」と呼ぶ)同じ。同じであるならば、大体目安を、いつを目途にしてやられるのか、この点をひとつお伺いしたい。いつを目途にしてやられるのか。
  185. 金丸信

    金丸国務大臣 事務当局とこの問題についていろいろ話し合ってみたわけでございますが、一、二年ではでき上がらないといっておりますから、五年くらいは見てもらわなければならないと思います。
  186. 井上普方

    ○井上(普)委員 この日進月歩の時代に、法律改正するのに五年かかるといえば、まさにこれまたわれわれとしても口をあんぐりせざるを得ないのであります。なぜできないかという一つの理由には、私が想像するに、運輸省建設省との間になわ張りがあるのじゃありませんか。なわ張り争いがあるんじゃありませんか。共管になって、一つのこのたびの関係資料を見ましても運輸省建設省とが並んでくる、こういうところに……。改正するとすれば五年なんという、気の遠いことをおっしゃられる。せめて、自民党さんのよくお使いになる両三年くらいのおことばは使えませんか。どうでございます。われわれはこのことを早急にやるためにも、大臣、両三年で、くらいのことばは使えませんか。
  187. 金丸信

    金丸国務大臣 先ほど来から申し上げましたように、この法律を全面改正するということはなかなか困難な問題点がたくさんあるわけです。完全な法律をつくるためには日時をかしていただかなくちゃならないということで、私が五年と申し上げたのは、五年ということが適切であるかどうかわからぬけれども、ある程度の時間をかしてもらうという意味で五年と言ったのですが、五年が長ければもちろんそれを縮めるということにやぶさかではないわけでありますから、できるだけ縮めまして、御期待に沿うようにいたしたいと思っております。
  188. 井上普方

    ○井上(普)委員 それでは、先ほど法律改正するために準備行為がたくさん必要だ、こうおっしゃいましたが、この準備行為は、すなわち法律改正の審議会なんかを、この法律が発効したら直ちにつくられることを私は要求したいと思いますが、どうです。
  189. 金丸信

    金丸国務大臣 これも関係官庁とよく連絡をとりまして、できるだけ早い機会につくるということは当然であろうと思います。どういう方法でやることが一番いいのか、その基本線をきめることがまず第一だと思うわけでございますから、どういう方法でこの法改正をやるかということをまず関係各官庁と連絡をとりましてきめた上で、でき上がったら順次屋根を組んでいく、こういうようにしたいと思っております。
  190. 井上普方

    ○井上(普)委員 われわれは根本的な改正を、いま大臣がおっしゃったとおり、ともかく早くやられることを強く要求いたしたいと思うのであります。この点御了解願えますか。
  191. 金丸信

    金丸国務大臣 先生の御指摘のように、できるだけ早くやるように心がけます。
  192. 井上普方

    ○井上(普)委員 この法律を見てみまして、明治憲法下でつくられましたので、非常に変な、わからぬところがたくさんありますので、大体質問に出てきたと思いますが、確認の意味をもちまして少々私は御質問したいと思います。  第三条でありますが、「地元市町村長意見ヲ徴スベシ」ということが第一項にあるわけであります。この地元というのは一体どういう意味でございますか。  その次、「意見書提出スルコトヲ得」とありますが、この意見書の取り扱いはどうするのか、ひとつお伺いしたいと思います。  それからもう一つ、根本的な問題でありますが、実はこの法律には、いわゆる「政令」ということばと「命令」ということばと「法令」ということばが同じ一つ法律の中にあるのであります。一体命令とは——私は新しい法律の中では命令ということばは知らないのでありますが、どういうように考えておられるのか、ひとつお伺いしたいのです。なぜこの命令ということばは現在の法律用語に直さなかったか。ついでにそれもお伺いします。
  193. 川田陽吉

    川田政府委員 お答え申し上げます。  地元市町村長は、最小限度埋め立てを施行する区域の市町村長を意味しております。(井上(普)委員「最小限度というのは何だね」と呼ぶ)埋め立ての区域と、それから埋め立てに関する工事の施行区域を含めまして、そこにひっかかります市町村長という意味でございます。  それからその次に御指摘意見書でございますが、意見書につきましては、先ほどもお答え申し上げましたが、地元の御意見といたしまして十分判断の資料として慎重に取り扱うということでございます。  それから法令と命令と政令と三種類ございますが、政令は、先生承知のとおりに、戦後の法律に基づくところの、法律を実施する広い意味での命令の一つの形態でございますが、この政令の概念は一応はっきりしているわけでございますが、命令という表現におきまして政令と省令を含めております。どちらかといいますと省令的なものを命令という表現でやっておりますが、しかし中には政令事項も含めた意味で現実に命令という使い方をしております。それから法令でございますが、法令は他の法律及び関係の政令とかまた省令というようなもの全部をひっくるめまして法令という表現を使っている次第であります。   〔委員長退席、天野(光)委員長代理着席〕
  194. 井上普方

    ○井上(普)委員 私が聞くのは、ここで一部改正するに際しましても、なぜ命令なんということばを変えなかったかということなのです。この法律の中へまた命令なんということばが出てきているのです。
  195. 川田陽吉

    川田政府委員 普通、はっきり書ける場合には建設省令とかあるいは省令とかという表現をとるわけでございますが、政令と省令と一緒に含めた表現をとっている場合にはやはり命令というような表現で書いているという実体論でございます。
  196. 井上普方

    ○井上(普)委員 大臣、この一つの字句をとりましてもこういうことがあるのです。いま使われてないことばを使っている。それは一部改正でもやはり残しておる。こういうようなことがありますので、やはり根本的な改正が必要であろうと私は思います。  さらにまた、先ほどから、起業者が知事であり、免許権者が知事であり、しかもその権利関係者のトラブルに対する裁定権者も知事であるということにつきましての意見が再三にわたってこの委員会において出されております。ここで私は大正十年ぐらいの日本の官制を考えますと、これは官選知事であったわけです。そうしてまた国民の権利というものは、お上の御用のためには、陛下の命令のためには全部押えられてきた、それが残っておると私は思うのです。これじゃ関係利害関係者はたまったものじゃありません。したがいまして先ほど来この問題につきまして盛んに論議がかわされておるのでございます。これは特に運輸大臣に私はお伺いしたいのです。といいますのは、これは先般もわが党の中村委員から指摘せられたところでありますが、おたくの港湾局管理課長、あそこにおる人の前任者でありますが、運輸省港湾局管理課長が「時の法令」という政府の雑誌に論文を出している。その中でやはりこのことを指摘しているのです。昭和三十七年です。この、ピッチャーとキャッチャーとアンパイアが知事だというところは不合理であるし、またこういうような裁定制度も、知事が裁定するんだから、どうも当事者の権利を十分尊重する制度的保障はないということを指摘されておるのです。三十七年ですよ。これはともかく公に出された論文の中にあるのです。この補償制度の改善ということについても出されてない。お読みになっていただいてけっこうです、大臣。——こういうことが書かれております。それで運輸省が法のこの不合理を知らないはずはないのです。不合理であることを認めておるし、かつまた改正しなければならぬということもいっておる。ところがそれについて何らこの一部改正には出てこないというのは、はなはだもってけしからぬと思うのです。知らなければこれはまた罪は許せます。知っておって、しかも、こんな不合理があるじゃないかといって公の論文に発表しておって、こういうことを改正に盛り込まない。この態度というものは私は許すべからざるものがあると思います。こういうような指摘が十一年前にあるんです。ところがこれに対して何ら改正案に出してこないことは怠慢といわざるを得ないのであります。大臣、どうですか、御感想を承りたい。
  197. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 この法令の解釈か論文かは存じませんけれども、それはいま拝見いたしましてわかりました。そういったことは私は研究不十分だったかもしれませんが、運輸省の中でも事務当局の間でそういった意見があるからそういう意見が出たのだと思います。そういう明瞭な事実があるのに今度の改正案の中になぜ入れなかったかという御指摘だろうと思いますが、今度のこの改正案は、建設省のほうから初めにどういう御説明があったか知りませんけれども、実は非常にまぎわになりまして、倉卒の間に立案をされたものでございます。基本的な問題はいずれ全面改正のときにということで、あとに譲られた問題が非常に多いのでございます。さっき申し上げましたように、当面、埋立法につきましても私ども港湾法につきましても一番欠けておるのは何かということで、社会事情の変化、社会の要請というものにこたえるために、環境保全とかあるいは公害の防除というものをとにかく前面に押し出そうというので、急遽つくった法律案であると私は聞いております。したがいまして、先ほど建設大臣も申しました、私もお答えいたしましたように、そういったあらゆる問題についての改正というものにつきましては、できるだけ早くその成案を得るように努力をしなければならぬということを痛感しておる次第でございます。
  198. 井上普方

    ○井上(普)委員 これは昭和三十七年に「時の法令」、これはいまでも出ておりますが、政府の刊行物にともかくこういう名前で出ておるのであります。「公有水面埋立ての現状と問題点」という論文で、しかもこれは政府の刊行物で出しておるのです。資格もはっきりと港湾局管理課長という名前で出ています。身分もはっきりして出しておる。ここのところを早くと言いますけれども、この一事をもってして考えますならば、利害関係者に、そこのけそこのけお馬か通るという法律をそのままここに出しておるわけであります。そこに関係住民、利害関係者の利害ということを全然考慮に入れてない法改正でもあるし、ひいては、この改正の根底に流れるものが、いかにももっともらしく環境保全とかあるいは災害の防除などといっておるけれども、ほんとうはそうじゃないんじゃないですか。ほんとうは埋め立て地を利用する企業者の利益のためにのみ考えて、国民を一応ごまかそうとする底意があるのではないかと疑われてもしかたがないと思うのであります。こういうようなことから考えますならば、この一事をもっていたしましても、私は新しい憲法にのっとった法改正を全面的にすみやかにやる必要がある、こう思うのであります。大臣、いかがでございます。
  199. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 御意見は十分に拝聴いたしました。
  200. 井上普方

    ○井上(普)委員 御意見ではなくて、新しい憲法にのっとった全面改正を早くやることを強く要求しているのです。大臣の御決意のほどを承りたい。
  201. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 先ほども建設大臣と御一緒に御答弁を申し上げたとおりでございまして、いまおっしゃったように、これは何か権利者保護するためにも残しておるのじゃないかという御懸念でございますが、そうではございませんで、これは先ほど申し上げましたように、いまの社会情勢に合わないようなものであっては困るということで、この埋立法につきましても社会の要請に応じました環境保全とか公害の防除というものを前面に押し出そうということで改正した趣旨にほかならないのでございまして、いま仰せのような意図は毛頭ございません。したがいまして、今後この問題に対しましては、先ほど建設大臣も、私からも申し上げましたように、できるだけ努力をいたしまして、いろいろの権利関係の問題もございますから、そういったものの法律的な解決を急ぎまして、できるだけ早く全面改正の提案をするようにあらゆる努力をしたいということを申し上げておきます。
  202. 井上普方

    ○井上(普)委員 この新しい憲法ができて、国民の権利は守られなければならないということがはっきりと明示されております。それにもかかわらず、この法律は、この論文にいっておりますように「必ずしも当事者の権利を十分尊重する制度的保障がなく、」こう断定しておる。この法律権利者の国民の権利を守る上からもすみやかに改正すべきである。しかもこれが現代的な、今日的な問題であると私は思う。公害問題あるいは災害問題も重要でございますが、同時に国民一人一人が持つ権利を尊重しなければならないというのはまた今日的な問題でもあります。これをないがしろにされておる行政当局、政府の姿勢を私は強く非難いたしたいと思うのであります。ともかくすみやかにこの問題について法改正をやられんことを強く要求いたしたいと存じます。  それからさらに第二十七条第一項第二号で、「滞納処分、強制執行、競売法ニ依ル競売又ハ企業担保権ノ実行ニ因リ権利が移転スルトキ」は無条件で移ってもいいということであります。「埋立地に関する処分の制限」のところではこれは無条件に権利を移転してもいいということになっております。ここは先般も質問されまして明確にならなかったのでありますが、二十九条第一項との関係においてどうなっておるのか。こういうことで意図的にやられる可能性があると思いますが、どうでございます。
  203. 川田陽吉

    川田政府委員 法律の条文整理の問題と申しますか、第二十七条の二号の滞納処分とか強制執行とか、競売法による競売または企業担保権、物上担保の制度によりまして債務不履行におちいり、その結果強制的に物件の権利が移転するというのが現行制度上一応認められている次第でございますが、その関係と二十九条の関係法律論として見れば、先生おっしゃったようなそういう法網をくぐる悪知恵を出す人がいるとすれば私どもも防止しなければならない事柄でございますが、現行制度上は一応そういう会社の破産とかいうような関係で物権が強制的に移転するという場合は、やはり認めざるを得ないのではないかというふうに考えます。
  204. 井上普方

    ○井上(普)委員 この場合は十年間の移転の制限を排除されることになっておる。そうしてその利用目的もはずされることになりますね。利用の点につきましてもはずされることになる。あなたの言われたように、法網の抜け道があると言われてもしかたのないところであろうと思います。しかし、こういうような場合には、せっかく公有地拡大法という法律ができているのですから、この場合はその先買い権を行使するような方向をとったらどうでございますか。
  205. 川田陽吉

    川田政府委員 実際上また応用上の問題として、先生指摘の事態というのはたいへん憂慮される次第でございますが、この法律運用上の問題といたしまして、前項の出願者の資格の審査の際に資金計画調書とか、そういった関係で極力倒産するおそれのないような人を埋め立て免許者として選ぶ方針でもございますし、万一そういった事態が予想されるなら、やはりできるだけの手を事前に打ちまして……(井上(普)委員「どんな手を打つのか」と呼ぶ)担保権の実行によって軽々に権利が動いて、しかもそれが他目的に使われるおそれがないような措置考えなければならないかと思います。この際法律上のそういった制度を組み込むことはなかなか私どもとしてもむずかしかったわけでございますが、条件等の処分によりましてそういった事態が防げるなら、そういった措置も極力考えていきたいと思います。
  206. 井上普方

    ○井上(普)委員 次長さん、あなたは埋め立て事業というものはどういうようにいままでやられてきたか御存じないからそういうことをおっしゃる。埋め立ての免許を得た者が、これは戦前でございますけれども埋め立て免許というものを売買せられたことがあるんだ。いまでも民法上これは売買できるはずなんです。あなたが言うように、こんな項目を入れておいたって、環境保全とか幾らいったって、これを行政指導でできますなんていったって、できやしないじゃないですか。埋め立ててしまったあとの土地についてはこういうことがいわれておる。あったのですよ。埋め立て免許というのは売買の対象になったのです。それすら対象になってきておるのです。事実私も戦後そういう事例を知っております。こういうようなことであります。あえてこういう法の網をくぐってということばを使って、これはおかしいじゃないか。せっかくつくっておるなら、ここらあたりは何とか細工ができるのじゃないかと思うのですが、どうでございます。これは行政措置や何かということではできませんよ。
  207. 川田陽吉

    川田政府委員 法律上の措置として、先生の御心配になるような点を担保するということはやはりたいへんむずかしいというふうに私ども考えております。
  208. 井上普方

    ○井上(普)委員 ともかくそういう問題があります。こういうような問題があるのだ。私、埋め立てのことについて民法上の問題を言い出しましたらとても時間が足りませんのでこの程度にしておきますけれども、特にこういう問題があることを指摘しておきたいと思います。  それからもう一つは、「政令及び命令案要旨」というものをいただいたのでありますが、これを見てみますとはなはだ不十分であります。私たちはいままでこんなざっとした政令案要旨というものはいただいたことがないのであります。この政令案要旨の第三項にいたしましても、一体どんなことを書こうとしておるのか、十分ではございません。「環境保全につき十分配慮されたものであることを示す文書等」と書いてありますが、これは一体どんな文書ですか。あるいはまた第九の「施行期日としては、改正法の周知徹底に要する期間等を考慮して定める。」これも、こういうような政令条要旨をいただいたためしが私どもにはございません。あるいは第十にいたしましても、二の「免許料の額の基準の改定」、あるいは三の「主務大臣の認可を受くべき埋立免許の範囲についての所要の改正等を定める。」というような、まことにばく然とした政令案要綱が出されておるのであります。およそ法律を出すときには、ある程度コンクリートした政令案要綱を出されるのが常であります。このようなばく然としたものであっては、はなはだ、委員会と申しますか、審議の妨げになっておるのであります。事務当局はいかにお考えになりますか、お答え願いたい。
  209. 川田陽吉

    川田政府委員 不備を指摘されましてまことに申しわけございません。この場におきましてある程度可能なものにつきましては御答弁という形で補足させていただきたいと思いますが、まず第三の「環境保全につき十分配慮されたものであることを示す文書」、これは、個々具体の埋め立て申請の実例によりまして、たびたびの知事等からの補正等もございますし、一応こうした環境保全についての支障がないという判断を知事が下すことが可能なような裏づけ資料を出させる、こういう趣旨で書いた次第でございます。それから第四の「政令ヲ以テ定ムル者」としては、ただいまのところ「分譲埋立てを行なわせることが適当と認められる公共団体」ということで、それは何ぞやという御質問をいただきましたが、ただいまのところ、そのような地方公共団体あるいは公共団体以外の法人というものを分譲埋め立ての適格者に指定する考え方はただいま持っておりません。  それから、先生から御指摘ございました第九の施行期日の問題でございますが、施行期日につきましては、一応昭和四十九年の一月一日ということで年内にぜひスタートさせたい、来年早々スタートさせたいというふうに考えております。  それから免許料の額でございますが、この免許料の額の基準につきましては、時価から造成費を控除したものを基準といたしまして、現行百分の三という額をあとう限り引き上げてまいりたいというふうに考えております。  それから「主務大臣の認可を受くべき埋立免許の範囲」につきましては、潮流等の関係で他県に著しい影響を及ぼすおそれのある埋め立ての免許というものをつけ加えるという、ただいまそういうことでおりますので、補足御説明申し上げました次第でございます。
  210. 井上普方

    ○井上(普)委員 これほど不十分な政令案要旨なるものは私は見たことございません。  そこで委員長にお取り計らいをお願いしたいのであります。一応この政令の要旨がまとまった際には、委員会を開きまして一度これについて論議する機会をつくっていただきたいことを強く要求したいと思います。  そこで、もう一つ問題を私は提起したいのであります。実は、この法律改正が行なわれるということでかけ込みが非常にたくさん行なわれておるように承るのであります。事実私のところに、高知県の浦戸湾の埋め立て工事につきまして、先般、いまから四日前に運輸審議会が開かれました。何だというと、この法律ができるのだから、それまでにひとつ知事の免許を出したいということで運輸審議会が開かれたそうであります。これは私のたまたま隣の高知県のことでございますので、一体建設委員のあなたはどういう意見を持っておるかという話で私は承った。たくさんあると思うのです。このかけ込みに対しましてどういう処置をとられるか、お聞きしたいのです。
  211. 金丸信

    金丸国務大臣 建設省といたしましては、かけ込みというものは断じて許すわけにはいかないという考え方に立って、行政指導で知事にこの件は十分伝えて、かけ込みのないようにいたしたい。私の責任でいたします。
  212. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 ただいま建設大臣からお述べになりましたとおり、そういう事態が起こりませんように、これは強力に関係都道府県知事に対して行政指導をいたします。
  213. 井上普方

    ○井上(普)委員 私はたまたま高知県のことを知ったわけであります。高知県に対しまして、すでにそういうような動きがあるのでございますから、大臣から直接指示をしていただきたいと思います。それと同時に、不十分ながらもこの新法の精神にのっとって処置されんことを強く要求したいのでありますが、どうでございますか。
  214. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 言うまでもございません。そのとおりにするつもりでございます。
  215. 井上普方

    ○井上(普)委員 さらにもう一つ、実は先ほど来松浦委員あるいはその他の委員からたくさん出ておるのでありますが、計画をしておって、その計画が実は港湾区域あるいはまた建設省所管埋め立て区域であるにもかかわらず、両省が知らないというような埋め立て計画が盛んに行なわれておる。大型でありますが、進んでおるのですが、これは簡単に申し上げます。私どもの生まれております徳島県におきまして一千万坪の埋め立てをやろうとしておるのであります。これは建設省の事務当局に聞きますと、そういうことは私は存じませんという話なんです。港湾区域かと思ってこれもお伺いしますと、港湾区域じゃない。鳴門の潮筋にひっかかったところにこういう埋め立てをつくろうとするのであります。ところが先ほど松浦さんに通産省が出した資料を拝見しますと、これにも入っておるのか入っていないのかわからない。どうも違うようなんです。こういうような場合、もうこれはすでに四、五年前から計画して、県費をつぎ込んで調査までやっておるのであります。ところが主務官庁である建設省あるいは運輸省は、これは御存じないと、事務当局に聞きますとおっしゃるのであります。どうしたらいいのでしょう。しかもこれが大臣、ピッチャーとキャッチャーと、アンパイアまで知事であることに問題があるのです。一千万坪ですよ。これは経企庁は知っておるのですか、どうなんです。
  216. 下河辺淳

    ○下河辺政府委員 お答えいたします。  県のほうで調査していることを存じております。県のほうからの調査報告書も拝見しております。
  217. 井上普方

    ○井上(普)委員 政府の役所内部においてこういうことが行なわれておるのです。認可権者である当局は全然知らない。産業に密着した役所だけがくっついてこういうようなことをやられておる。ここに環境保全も何もあったもんじゃない。環境庁の次官、あなたは先ほど来こういうような埋め立てについていろいろ言っているが、これをちょっと見てごらんなさい。——この地図だけを見てみまして、私には環境アセスメントという英語と日本語をチャンポンにしたようなことばはわからないのですが、それに沿ってはどうです、何やら環境アセスメントからするとこれはどうでございますか。
  218. 坂本三十次

    ○坂本政府委員 環境アセスメントということが一番大事なことなんです。一番大切なことでございます。私それをただいま拝見をいたしましたところでございまして、詳しいことを存じておりませんけれども、それが具体的な計画になりましたら、それこそ慎重に厳正に、やはりアセスメントをやらなければいかぬ、こういうのであります。
  219. 井上普方

    ○井上(普)委員 そのアセスメントというのはどういうことなんです。これは日本語じゃないと思うのですな。どんなことなんです。それほどありがたいものなら、ひとつ御披露願いたいと思います。
  220. 坂本三十次

    ○坂本政府委員 あんまり詳しいことは知りませんけれども、いままでの失敗はよく反省をして、前もってよくよく調査をいたしまして、こうしたらああいうことが起こらないか、こういうことをやったらああいう失敗をしないか、いろいろと考えまして、それでこういった問題悪かったらこの手でいこうとか、ずっと事前に調査研究をいたしまして、失敗のないようにやりたい、こういうことでございましょう。
  221. 井上普方

    ○井上(普)委員 ことばはもう少し正確に翻訳されていただきたいと思うのです。それがはたしてアセスメントのほんとうの意味か。私も実は英語の辞書を引いてみました。どうも違うようです。それをあたかもにしきの御旗のごとく振りかざして、おまえはアセスメントということばを知らぬのかといわぬばかりにありがたがったことばで言われると、日本人にとってはまことに迷惑しごくであります。まずその点を御注意申し上げておきたい。ひとつ御披露申し上げますと、常識ということばがある。この常識ということばは、明治二十四年の帝国議会においてある国会議員が、「カマンセンス、訳して常識と言う」ということばから常識ということばが一般化したのであります。カマンセンスと常識ということばといまではちょっとニュアンスが違う。しかし、そういうような新しいことばがつくられたのでありますから、あなたがアセスメントということばを使われるならば、今後に及ぼす影響もあらかじめ十分お考えの上でお使いになっていただくことを強く私は申し上げておきたいと思うのです。  ともかく、いずれにしましてもこういうような計画が行なわれているのです。しかもそれがピッチャーでありキャッチャーでありアンパイアなんです。ここに大きな問題があるのです。こんなことをやられたら潮流に大きな変化を来たすでしょう。いわゆる環境は著しく違ってくる、こういうような面をひとつお考えの上で——これはえらい県費をつぎ込んで、どうも私が聞いたところでは、経済企画庁の御指導のもとにやっておられるがごとく県議会でも発言されておるのであります。しかし建設省は知らぬ、運輸省は知らぬ、認可権者には何ら話し合いがない、こういうことが行なわれておることをひとつ御記憶願いまして、ともかくこれに対する措置をお考え願いたいと存ずるのであります。  いずれにいたしましても、この今回の公有水面埋立法という法律は、大正十年の法律からしますと半歩前進であることは認めます。しかし現状から今日的課題といたしまして、やはり根本的に法改正を望む時代になっておると思いますし、またしなければならない時期でもあります。両大臣の決断と実行を期待いたしまして、私の質問を終わります。
  222. 天野光晴

    ○天野(光)委員長代理 浦井洋君。
  223. 浦井洋

    ○浦井委員 公有水面埋立法の一部改正について、すでにわが党の中島委員、それから瀬崎委員質問をやっておりますが、たくさん保留分が残っております。私は、そういうものを兼ねて、補充をする意味で簡潔に質問をしてみたいと思います。  第一点は、この法の第五条、いわゆる水面に有する権利者の問題であります。これはもうすでに先日の公聴会でも相当お話が出ましたし、この委員会でも論議になっておるわけでございますが、私が言いたいのは、要するに、たとえば大分の例でお話をしますならば、すでに一号地から五号地までは埋め立てが完成をした。現在その一号地−五号地の横に六号地、七号地の埋め立てが実施される予定だ。神崎、ここの漁民の方はもうすでに、一号地から五号地までの埋め立てによって、漁業権はあるけれども現実に漁業が成り立たないというような状況に追い込まれておるわけです。そこで今度また新しく埋め立ての免許が与えられたので、もうどうせ漁業はできないのだということで、やむなくこの埋め立てに賛成をされておる。必ずしも漁業を放棄する意思はないのだけれども、現実に漁業ができないのでしかたがないという形で補償に応ずる。ところが少し離れた佐賀関へ行きますと、これはまだまだ外海へも出られる、海もまだ比較的美しいということで、埋め立てに反対をされておる。そして神崎の漁民と佐賀関の漁民とがなぐり合いをするというような不祥事件まで起こっておるわけです。こういう状況だろうと思う。こういういわば将棋倒し作戦といいますかドミノ作戦といいますか、一つ埋め立てて次々次々と埋め立てていくということでどんどん事業が進められていっておるのが実情だと思うわけなんです。漁民は必ずしも生業である漁業を捨てたいというふうには思っておらないけれども漁業がやれなくなったのでやむなく漁業権を放棄した。そしてそれと引きかえに、その人のこれからあとの一生を考えるならば相対的に非常に安い補償費でがまんをせざるを得ないというのがいまの現実ではなかろうか。大分の例を引いたわけでございますけれども、私は東京湾の千葉でも同じことがいえるのではないかというふうに思うわけです。  そこで、そういうような考え方から現在の埋立法公有水面埋立法の現法を見てみますと、これは先ほどから申し上げておるように、埋め立てられた海面、この海面に漁業権を持っておるところの漁民、漁協、こういうところの同意を得れば埋め立てがやれるというような仕組みになっておるわけなんです。そうですね。ところが改正案で一体そういう点が改まったのかというふうに見てみますと、この点は全く前と同じ。明らかにこういう事態が持ち上がって改正の必要が大いにあると思われるのに、どうしてこの点を改められないのか。もっと具体的にいうならば、同意を得なければならない権利者範囲を広げる、そして少なくとも当面は、埋め立てられる地域の隣接海面に権利を持っておる方たち権利者として認めるというような措置を講ずべきではないかというふうに私は思うわけですけれども、これはまず運輸大臣なり運輸省の方の御意見をお聞きしたい。
  224. 天野光晴

    ○天野(光)委員長代理 答弁は簡潔にお願いします。
  225. 岡部保

    岡部政府委員 ただいまの先生の仰せ、今回の法改正でどういうふうに考えておるかということ、確かに利害関係人としての補償対象になるという人については何ら変わっておりません。ただ、いわゆる第三条でございますかに、関係の者として意見を申し出る機会を与えたというところが私どものこれに対する措置であったわけでございます。
  226. 浦井洋

    ○浦井委員 三条の、意見書提出することができる、これはこの前の委員会でも問題になりましたように、一体この意見書が具体的なものごとの判定にどう反映されるのかという保障は全くないわけです。私、兵庫県庁へ行きまして係官に聞きましても、末端の行政の側でも、これをどのように見たらよいのかということでは非常に戸惑っておる、こういう意見を聞きました、この点については。だから、これはやったというだけで、何ら私は実効がない、実効の保障はないと思う。だから私が先ほどから申し上げておるように、当面さしあたって、隣接海域、隣接水面の漁協なりあるいは漁民の方たちなりを権利者として認めるということをここに法改正で明文化すればそれで済むわけなんでしょう。どうですか。
  227. 岡部保

    岡部政府委員 ただいまの先生の御提案、その点に関する限りは全くそのとおりだと思います。ただ今回の問題も、これをふやしました際に、いろいろな利害関係者というのがおるわけでございます。それをどこまでどういうふうに入れられるかという点についての結論を残念ながら得られなかったということが実情でございます。
  228. 浦井洋

    ○浦井委員 局長、私はいま沿岸住民というところまでは言ってないわけなんです。埋め立てられる海域の隣接海域ぐらいは権利者として認めよ、こういうように言っておるわけなんです。この点はどうですか、もう一ぺん。
  229. 岡部保

    岡部政府委員 いわゆる先生のおっしゃった隣接海域という意味が、たとえば漁業権を持っておる、それが埋め立てられるところにはその漁業権の設定は、その漁業組合はない、しかしその横の水域にあるという意味かと存じます。それで、そういうところ以外にそれをどこまで及ぼすか、たとえば隣接と申しましてもこれははっきりいたしません。そういうような問題でいろいろ議論が出たことは事実でございます。
  230. 浦井洋

    ○浦井委員 局長はこの前の公聴会のときに聞いておられたですね。あのときに、菊池公述人であるとかあるいは西村公述人などは、学問的に十分に検討をするならば、その合意を得なければならないだろうと思われる範囲は学問的にはきまってくるということをはっきりとあのときに言っておられるわけなんですが、そういうことはなぜできないわけですか。   〔天野(光)委員長代理退席、委員長着席〕
  231. 岡部保

    岡部政府委員 確かに学者の考え方としてそういうお説はございましたが、ただ、たとえば育成地でございますとか産卵地でございますとか、そういうような非常に関係があるというところと、それの実際の魚獲というのはずっと離れたところで行なわれるという点までも議論があったわけでございます。そこで、いまおっしゃったように、確かに非常に何かそういう限定されたもので限定されるなら私はそうこだわりませんけれども、それが非常にむずかしいという見解に立っておるわけでございます。
  232. 浦井洋

    ○浦井委員 まだ納得できないわけなんですが、時間があまりないようなので……。やはり私がいま言っているような方向で早急に努力をすべきだというふうに思うわけなんです。  それから建設省の次長さんもつい先ごろ、いろいろな審議会をつくってやればよいという委員からの御質問に対して、港湾審議会もあるし都市計画審議会もあるし公害対策審議会もある、そこでやれる、だから特別な権利者をきめる場合にいまのままでよいのではないかというような御意見を言われたように思うのですけれども、私は、こういうような学者の方々も入れた審議会のような機関をつくって、そこでこの埋め立てについては権利者はここなんだということをきめて、その意見を知事が聞くというような形にすれば、けっこうできるのではないかというふうに思うわけなんです。どうですか、その点は。
  233. 川田陽吉

    川田政府委員 お答え申し上げます。  第五条の趣旨というものは、やはり地域的にも一番はっきりした人方でなければいけないという、まぎれのないと申しますか、制度的にはっきりとされたものでなければ、たとえば用地を買収する際にはその必要な敷地というような感覚で、きわめて即物的に限定されたものでなければならないと思う次第でございます。そこで、同意を得る権利者というのは今回の改正におきましてもやはりこの範囲でなければいけないというふうに考えた次第でございますが、補償等関係で実害を受ける人方事前にいろいろ相談し、補償等の予約もするということは、やはり埋め立て行政を円滑に推進していく上で必要なことと思います。したがいまして、そういう意味で隣接海域の方々の救済ということは考えられると思うわけでございます。また、その区域そのものを科学的に一挙に定め得るかどうか、それは、この法律の制度の同意義務の相手として見る場合の関係者の区域を科学的にきめるということになりますと、実行上やはりむずかしい問題が残りますが、そういった手法につきましても、自然科学の関係方々の御意見等をいろいろ聞いて勉強していかなければいけないというふうに思います。
  234. 浦井洋

    ○浦井委員 私はやはり、その個々の埋め立てについて、知事の諮問機関として、学者であるとかあるいはいろいろな学界の代表者を入れたそういう審議会といいますか、あるいは埋め立て委員会といいますか、こういうようなものをつくって、そこで科学的にもあるいは経済的にもいろいろな面から十分に検討すればやれるのではないかということを言っておるわけなんです。だからこの点はまあ主張をしておきますので、ひとつ早急に、だれでもが納得できるような結論を早く出していただきたいというように私は思うわけです。それが第一点です。  それから第二点としては、例の四条の免許の基準の二号ですね。「其ノ埋立ニ因リテ生スル利益ノ程度カ損害ノ程度ヲ著シク超過スルトキ」には、その権利者同意を得なくても知事は埋め立ての免許をすることができるという点なんですが、この損害の程度というのはこれはどうなんですか。最近のようにいろいろと環境破壊あるいは公害というようなものが出ておる中で、これも現行のとおりなんですけれども、一体どういう形で損害というようなものをはかっていかれるのか。その前に、この損害の中には当然環境破壊であるとか公害というようなものは含まれておるのだろうと思うのですが、そうですね。それがどういう形でこの金額なりいろいろな面で評価できるのか、ひとつお聞きしたいと思います。
  235. 川田陽吉

    川田政府委員 四条の二号の運用実例と申しますことにつきましては、これは非常にシビアに運用しなければならない規定だと思います。現実的な運用が可能であるかどうかすら私どもとしては疑問に思うぐらいでございますが、一例といたしまして、大分の臼杵のセメント会社のための埋め立てにつきまして地方裁判所が判決を出しております。その判決におきましては、何びとも環境上の損害等を十分配慮した上で、そこに埋め立て地ができて、まあある企業なり産業なり、その他もろもろの経済的な利益があるとしまして、その利益と反面失う環境上のマイナス等を比較考量して、しかも何びとも納得のいくような大きな差があるものでなければならないということでございますので、これはまず運用は不可能なくらいの規定だと思います。
  236. 浦井洋

    ○浦井委員 そうすると、この法ができてから、大正十年以来この法が適用されて免許がおろされたような例はないのですか、あるのですか。
  237. 川田陽吉

    川田政府委員 本条を背景といたしまして埋め立てを強行して土地をつくったという実例は、私ども、戦後は少なくともございません。
  238. 浦井洋

    ○浦井委員 先ほどすでに説明があったように、いまのは臼杵の風成の大阪セメントの例。これはその裁判のときにも出たように、当初県はこの項を論拠に持ち出してきたわけなんでしょう。ところがそれはいけませんよということで裁判官にいろいろと念を押されたけれども、結局この論拠を撤去しなかったので判決の中で四条二号が述べられたという経過があるわけですね。そうですね。だから私は、これをさらにふえんしていくならば憲法二十九条に違反するとさえも思うわけなんです。だからこの項は、いまお答えがあったようなことであるならばこれは改正案から削除してもいいのじゃないですか。どうですか。
  239. 川田陽吉

    川田政府委員 お答え申し上げます。  大分県が免許の適法なることを立証するための一つの手段として使っておりますが一現実的には一号該当で、公有水面に関し権利を有する人方同意を得て免許をしたんだ、こういう主張でございまして、かりにこの同意が不成立だとしても、この免許についてはこれだけの利益があるのだからかまわないのではないかというささえの議論に使ったわけでございますが、理論的に現行埋立法は、観念的に埋め立てによって地域社会全体が利益することがあるのだという一つの前提に立っているものですから二号とか三号とかという条文はそのままになっておりますが、これはただいま申し上げましたように、この限りにおいて及ぼすような使われ方はしておりませんし、公有水面埋立法の現在の体系としてはここで一応のまとまりを示しているわけでございますので、あえて削除しなかったわけでございます。
  240. 浦井洋

    ○浦井委員 適用もされておらないわけですから、これはやはり削除するということを要求しておきたいと私は思うわけなんです。それが第二点。  それから第三点は裁定制度の問題で、この間の公聴会の公述人の方の表現を借りれば、弁護士も検察官も裁判官も一人の裁判官が兼ねておるようなものだというような表現がございましたけれども、この点はいまの井上委員の主張のように、第三者の裁定機関をつくるべきだということを一言づけ加えておきたいと思うのであります。  それから次の問題は、これもかけ込み申請の問題。これも趣旨は同じでありますけれども、こういう公文書があるわけなんです。これは岡山県宇野にある三井造船玉野造船所の問題で、これはこう書いてある。岡山県土木部長からことしの二月一日に三井造船所長にあてた文書なんです。「工場設備拡張のための漁業補償について」ということで、「計画中の設備拡張については、内容検討中であるが、貴社は関係漁協と事前補償交渉を行ない、補償金支払請求を受けられる段階に立ち至っているやに仄聞するが、免許又は許可の見通しが明確になる以前に、既成事実を作られるがごときは、行政上好ましくないので絶対に避けられたい。」こういうような文書が岡山県の土木部長から三井造船所長に渡っておるわけです。先ほどの例もこの例も、やっぱりこういうたくさんのことがあるだろうと思うのです。これもひとつ先ほどの建設大臣の御答弁のように、もっときつくやらなければならぬ。厳重だけでなしに、ぴしっと行政指導以上のものが私はほしいわけでございますけれども、具体的にこの件についてはさっそく調査をして実情をつかんで報告していただけますか、大臣。これは運輸大臣ですか。
  241. 岡部保

    岡部政府委員 確かにただいま御指摘のような事実があったことを私存じております。それで、もう少しこれはどういういきさつであったかというのをよく調査いたしませんといかぬものですから、さっそく調査をさせていただきます。
  242. 浦井洋

    ○浦井委員 報告してもらえますか。
  243. 岡部保

    岡部政府委員 はい。
  244. 浦井洋

    ○浦井委員 大体そういうことで、他の委員の方と論旨が少々ダブっておりますので、時間を省略する意味で飛ばしていきたいと思うのですが、要するに今回の公有水面埋立法の一部改正についてはっきりしたことは、過去ずっと埋め立て事業によって企業が非常にもうかっておるということがわかったと思うのです。  ここに二つほど例を出してみたいと思うわけなんですけれども、関西に、具体的には尼崎を中心として、東洋建設という会社がある。これは会社年鑑の一九七三年版によりますと、はっきりとしゅんせつの大手だというふうに書いてある。資本金五十億円で、総事業のうち三七%がしゅんせつ事業である、こういうことが書いてあって、そこで私調べてみたんですけれども、尼崎、西宮の沖にこの会社が埋め立て免許を取ったわけなんです。それが昭和四年の五月三十一日。この当時に百五十九・八ヘクタール、これだけの免許を取った。おそらくその当時百分の三の免許料を支払ったんだろうと思うのですけれども、それがいまだに埋め立てられずに、一部埋め立てられてはおるわけですけれども、ずっと続いておるわけなんです。設計変更されたり、あるいは一部兵庫県へ譲渡してみたり、また設計変更してみたりということでいまに至り、昨年の四十七年十一月八日にやっぱり、少し面積を違えて百七十八・七ヘクタール、こういうものを昭和五十一年六月三十一日までに竣功するんだということでやっておるわけです。だから私指摘したいのは、こういう形で大きな企業が、しゅんせつも埋め立てですから、国民の本来共有すべき財産である公有水面を独占するというようなことは今後許されぬのではないか。ましてこの例のように戦前の免許がいまに至るまで連綿として続いておるというような形は、これはもう大いに問題があるというように私は思うわけなんです。これが一つの例。  それからもう一つの例は岡山県の水島のクラレです。倉敷レーヨン。これはちょっと読んでみますと、県が埋め立てをやって、そして県から昭和三十五年七月三十日にクラレへ譲渡されておる。その価格が三億二千万円。それが今度は昭和四十四年にクラレからその土地が三菱へ譲渡されておる。それが十六億九千万円という形、九年間のうちにそれだけの価格に上がっておるわけなんです。こういうことで、クラレはこの埋め立て地の転売によって非常に巨額の利益を得ておるという証拠は、これは岡山県の公式の資料ですけれども、あるわけです。  それからもう一つ、クラレの場合、昭和二十七年の六月二十五日に免許を受けた合計二十一ヘクタール、これが昭和三十二年に竣功しているのにずっとそれを延長して、四十一年に至るまで法的には海のまま残っておるわけなんです。だから当然その間、埋め立てておるところからは何らの税金も取られずに、しかも適当な機会をねらって一挙に埋め立てをやって転売をねらっておるのだというようなうわささえ地元ではいわれておるわけなんです。  こういうような状態が、私は二例ほどあげただけなんですけれども、もっとごろごろそこらにころがっておるのだというふうに推測されるわけです。こういうようなことをいままでの現法というものは許してきたわけなんです。だから、むしろ私は今回の改正案というのはおそ過ぎた、そういうような大きな会社の埋め立てを利用したぼろもうけというようなものを許容してきたと思う。こういうものを規制すべきだと思う。それと同時に、公有水面をほんとうの意味で国民の共有の財産にという本来の姿に戻す必要があると思う。  ところが、今回の改正案を見ると、建設大臣さえも認めておられるようにきわめて不十分である。一見規制をするというふうに見せかけて、現在国民の中には公害反対あるいは環境を守れという声が強いわけですけれども、こういうような声をそらせるような役目をさせるような今回の一部改正ではないか。一方では、これは田中内閣のいう列島改造を進めていく一つの有力な手続法になるのではないかという点を私は指摘しておきたいと思うわけなんです。この点について最後に建設大臣並びに運輸大臣の御意見を承って私の質問を終わります。
  245. 金丸信

    金丸国務大臣 御指摘のように、この法案が完全なものでないことは私も認めておるところでございます。まことに検討する問題がたくさんありまして、時間的に提出をすることができ得なかった、そういうことでございますが、あくまでもこの法案を抜本的に改正して、一日も早い機会に完全な法律をつくり上げるということが必要であることを私は痛感をいたしております。そういう意味で、今後とも全力を傾けて検討いたしたいと考えております。
  246. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 この法律案が十分問題点をとらえてないということについては先ほど申し上げたとおりでございます。しかし、法律に基づきまして、その精神を体しまして、行政運用の面、それから行政指導の面であとう限りの方法考えていかなければならぬと思っております。
  247. 服部安司

    服部委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  248. 服部安司

    服部委員長 この際、福岡義登君、浦井洋君、北側義一君及び渡辺武三君から、公有水面埋立法の一部を改正する法律案に対し、修正案が提出されております。
  249. 服部安司

    服部委員長 提出者福岡義登君から趣旨の説明を求めます。福岡義登君。
  250. 福岡義登

    ○福岡委員 私は、ただいま議題となりました公有水面埋立法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党、民社党を代表しまして、提案の理由及び修正案の内容について御説明申し上げます。  公有水面埋め立てが、今日まで高度経済成長政策の手段として採用され、大企業優先、生産第一主義の埋め立て、利用が進められてまいりました。  その結果、自然環境を著しく破壊し、国民生活を大きく圧迫し、社会問題となっていることは御承知のとおりであります。したがって、今日重要なことは、埋め立て制度全般にわたって、今日までの経過を総点検し、抜本的な方針を確立することであります。  しかるに政府改正案は、これらの基本問題を放置し、わずかばかりの部分的改善をはかろうとするものであり、きわめて不満であります。公有水面は、本来国民がひとしく利用し得る公共物であり、これを埋め立て環境を破壊し、しかも、特定の者がこれを独占、利用することは許されないという原則が確認されるべきであります。  以上が、この修正案を提案する理由であります。  次に、修正案の内容について申し上げます。  修正案は、別紙のとおりでありますが、その趣旨は、公有水面埋め立ては、原則として禁止する方針のもとに、この制度全般にわたり検討を行ない、二年以内に法改正が行なわれるような必要な措置を講じようとするものであります。  以上が、この修正案の提案の理由及びその内容であります。  何とぞ慎重な御審議の上、可決くださるようお願いします。  以上であります。
  251. 服部安司

    服部委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  本修正案について別に発言の申し出もありません。     —————————————
  252. 服部安司

    服部委員長 これより本案及びこれに対する修正案を一括して討論に付します。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。梶山静六君。
  253. 梶山静六

    ○梶山委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました公有水面埋立法の一部を改正する法律案の原案に賛成、福岡義登君外三名提出の修正案に反対するものであります。  御承知のように、本案は、最近における埋め立て規模の大型化、埋め立て地利用の多様化等の社会経済情勢の変化にかんがみ、公有水面の適正かつ合理的な利用に資することを目的として、出願事項の縦覧意見の聴取等埋め立ての免許に利害関係者意見を反映させる措置を講ずるとともに、免許基準の明確化、埋め立て地の処分及び用途変更の制限、追認制度の廃止、認可に際して環境長官意見を求めること等としているのであります。  以上の改正は、現在の公有水面埋め立ての現況から見て、公有水面の適正な埋め立て埋め立て地の合理的な利用等をはかる上において、万全の案とは言えないとしても、必要最小限の措置というべく、時宜に適したものとし賛意を表するものであります。  福岡義登君外三名提出による修正案については、公有水面埋め立てが国民の生活環境及び自然環境を著しく破壊する大きな原因となっている現状に対し、今後、法の適正な運用改正をはかる必要があると考えるのでありますが、埋め立てを原則として禁止する方針のもとに公有水面埋め立てに関する関係法律改正また廃止することは、妥当な措置とはいいがたく、反対するものであります。  以上で討論を終わります。(拍手)
  254. 服部安司

    服部委員長 北側義一君。
  255. 北側義一

    ○北側委員 私は、日本社会党、公明党、民社党、三党を代表いたしまして、政府提案の公有水面埋立法の一部を改正する法律案に反対し、四党共同の修正案に賛成の討論をするものであります。  まず、政府案に反対する理由の第一の点は、環境保全、国土の適正利用、及び公有水面所有権の帰属及び利害関係者同意並びに補償等の問題が明確になっておらない点であります。  今日まで政府のとってきた大企業本位の生産第一主義による高度経済成長政策のもとで、全国各地域においての公有水面埋め立てはその大部分が工業用地として利用されてきたことは周知の事実であります。その結果、海水を汚濁し、潮流の流れや速さを変え、漁場の荒廃をはじめ、工業誘致による大気汚染をもたらし、漁民地域住民の生活権や環境権まで脅かしているのが実情であります。  ところが、政府案は依然として埋め立てに資するという従来の基本姿勢は何ら改められていないのであります。しかも、環境保全と災害の防止を云々いたしてはおりますが、環境長官のチェック権限は皆無で、わずかに主務大臣環境長官意見を求めるのみにとどまっておるのであります。  第二点は、埋め立て計画に対する地域住民の住民参加の配慮がほとんどなされていないことであります。  埋め立てにより最も影響を受けるのは、申すまでもなくその海を生活のよりどころとしている漁民や、自然景観に基づく旅館業者をはじめ、その地域住民であります。  ところが、政府案は、縦覧期間中に限り意見書提出を認めていますが、短期間の縦覧期間の間で、はたしてばく大な資料を整えた意見書提出することができるかどうかも疑問であります。さらに、提案された意見書についての実効もはなはだ疑問のあるところであります。  あくまでも埋め立て環境を全くそこなうことなく、地域住民の納得のもと、かつ住民福祉の向上に寄与するという三つの条件が満たされなければならぬのであります。  以上が本案に対する反対の理由であります。  次に、福岡義登君提出の四党提案の修正案に賛成する理由を申し上げます。  それは、国土全体の環境保全立場から公有水面埋め立てについて制限規定を強化しようとする点であります。すなわち、埋め立てについては、今日までの公有水面埋め立ての実態に即して、埋め立て制度全般にわたって総点検を行ない、政府案のような一部改正でなく、埋め立て制度を抜本的に改正しようとしていることであります。  従来、本法により行なわれてまいりました公有水面埋め立ての例が示すように、自然環境を破壊し、漁場を荒廃させ、地域住民の生活を圧迫している事実を見るとき、当然ここで、公有水面を今後人間がどのように利用するかということについて総点検をやり、抜本的に改正しなければならぬことは当然のことなのであります。  以上の理由をもって、政府案に反対し、四党共同提案の修正案に対する賛成の討論を終わります。
  256. 服部安司

    服部委員長 浦井洋君。
  257. 浦井洋

    ○浦井委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、政府提出公有水面埋立法の一部を改正する法律案についての反対討論を行なうものであります。  現行法は大正十年に制定され、その後実質的改正は一度も行なわれず今日に至っており、住民の権利を守る上からも、環境保全する上からも、きわめて欠陥の多いものであります。したがって、その抜本的改正が必要なことは言うまでもありません。  しかしながら、政府提出の本改正案は、その中にわずかの改善点を含むものとはいえ、それもきわめて不徹底であり、現行法の欠陥を本質的に改めるものではありません。たとえば、埋め立てを行なうに際して、その同意が必要とされるもの、すなわち権利者範囲の不当な限定、いや一定の場合には権利者同意がなくても埋め立てができるという、憲法違反ともいうべき規定等々、これらは依然として改正されないままにされております。  これまで、自民党政府の高度経済成長政策のもとで、これら権利者をはじめとする住民の犠牲の上に、水面埋め立てによって広大な工業用地が造成され、それによる環境破壊、そして埋め立て地に立地した企業による公害が深刻化し、日本の国土は文字どおり公害列島化してしまいました。この埋め立てを促進してきた手続法が現行の公有水面埋立法であります。したがって、いま必要なことは、埋め立て規制し、もって環境の破壊を食いとめることであります。  政府も、「自然環境保全公害の防止、埋め立て地権利移転または利用の適正化等の見地から」すれば現行法の「規定が不十分である」と、本改正案の提案理由を説明していますが、本改正案はあくまでも埋め立て促進手続法としてのワク内のものであり、真に埋め立て及び埋め立て地の利用を規制して、環境保全し、公害を防止するという国民の要求にこたえるものではありません。  なるほど、本改正案では、新たに「免許の基準」を設け、その一つとして一応環境保全への配慮をうたってはいますが、それはあくまで抽象的な理念規定にとどまっており、埋め立て規制する具体的な保障とはなり得ません。このような規定がいかに役立たないかは、工業整備特別地域整備促進法にも「公害の防止について、適切な考慮」をしなければならないと規定してありますが、この工業整備特別地域整備促進法こそ新産業都市建設促進法と並んで、まさに公害コンビナートの建設を促進してきたものであることからも明らかであります。  また「免許の基準」にはこのほか、埋め立て地の利用が法律に基づく土地利用計画、環境保全計画に違背しないことと規定されていますが、現在の環境破壊、公害の激化が、まさに、国土総合開発法、新産業都市建設促進法等の法律に基づく計画に従って行なわれた埋め立てと、埋め立て地利用の結果生じたものである以上、土地利用計画に違背しないことという規定は全く無意味であります。  そればかりか、ときあたかも田中内閣日本列島改造計画を推進しようとしているとき、わずかの不徹底な手直しと、実効性の全くない規定を盛り込んだ改正法に適合していることを理由に、環境破壊、公害拡大の大規模工業用地埋め立て等が大手を振ってまかり通る危険性すら持つものであります。  日本共産党・革新共同は、このような立場から本改正案に反対することを表明します。  次に、修正案について意見を述べます。  現行法がきわめて大きな欠陥を持つものであり、政府改正案はこれを正すことができないのでありますから、法の抜本的な改正を求めるのは当然のことであります。わが党は、公有水面埋め立てについては、住宅の建設、環境の改善、災害の防止など沿岸住民にとって必要なものを除いては禁止されるべきであると考えていますので、この方向に沿って政府公有水面埋立法の抜本的な改正を二年以内になるべくすみやかに行なうように修正案を提出したものであります。  以上のとおり、政府提出公有水面埋立法の一部を改正する法律案に反対、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党、民社党提出の修正案に賛成の態度を表明して、討論を終わります。
  258. 服部安司

    服部委員長 以上で討論は終局いたしました。  これより採決いたします。  まず、福岡義登君外三名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  259. 服部安司

    服部委員長 起立少数。よって、福岡義登君外三名提出の修正案は否決されました。  次に、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  260. 服部安司

    服部委員長 起立多数。よって、公有水面埋立法の一部を改正する法律案は、原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  261. 服部安司

    服部委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、天野光晴君、井上普方君、北側義一君及び渡辺武三君から附帯決議を付すべしとの動機が提出されております。  まず、提出者から趣旨の説明を求めます。天野光晴君。
  262. 天野光晴

    ○天野(光)委員 ただいま議題となりました公有水面埋立法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案について、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  案文はお手元に配付してあります。  御承知のとおり、本法律案につきましては、当委員会において、関係委員会との連合審査会の開催、公聴会開催等慎重に審議されてまいったのでありますが、公有水面埋立法の早急な抜本的改正、免許にあたっての環境に及ぼす影響についての調査及び直接間接の利害関係人の意見の反映、自然資源の保護環境保全の免許基準の具体化、明確化、都道府県知事等の公正な立場からの損害補償等の裁定、漁業権者等に対する生活再建のための適切な措置埋め立て地環境整備環境長官意見の尊重等については、審議の過程において特に議論された重要な問題でありますので、ここに附帯決議を付し、以上の諸点について政府の適切なる措置を強く要望する必要があると存ずるのであります。  以上が、本案に附帯決議を付さんとする理由であります。  各位の御賛同をお願いいたす次第であります。 ————————————— 公有水面埋立法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案) 政府は、本法の施行にあたつては、次の諸点に留意し、その運用に遺憾なきを期すべきである。 一、近年における埋立地及び埋立地の利用が全国各地で社会問題となっている現状にかんがみ、環境保全、国土の適性利用、所有権の帰属等の問題について公有水面埋立法を抜本的に検討し、早急に所要の法整備を行なうこと。 二、埋立の免許または認可にあたつては、埋立及び埋立地の利用が環境に及ぼす影響について必要な調査を行なうとともに、関係地方公共団体および直接または間接の損害を受ける漁業権者その他の利害関係人の意見が十分反映されるよう配慮すること。 三、環境保全の免許基準を運用するにあたつては、自然資源の保護についても配慮するとともに、これらの基準の具体化、明確化に努めること。 四、都道府県知事等は、公正な立場から損害の補償等の裁定を行なうとともに、埋立により生活の基盤を失う漁業権者に対し、職業のあつせん等生活再建のための適切な措置が講じられるよう配慮すること。 五、埋立地の環境整備のため、建ぺい率の強化、公園、緑地、道路等の公的、私的空間の確保について適正な基準を設けるよう検討すること。 六、埋立の認可にあたつては、環境長官意見を十分尊重すること。 右決議する。 —————————————
  263. 服部安司

    服部委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  本動議に対し、別に発言の申し出もありませんので、これより採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  264. 服部安司

    服部委員長 起立総員。よって、天野光晴君外三名提出のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、建設大臣及び運輸大臣より発言を求められておりますので、これを許します。金丸建設大臣
  265. 金丸信

    金丸国務大臣 本法案の御審議をお願いいたしまして以来、熱心な御討議をいただき、ただいま議決されましたことを深く感謝申し上げます。  審議中における委員各位の御高見につきましては、今後その御趣旨を生かすようつとめるとともに、ただいま議決になりました附帯決議につきましても、その趣旨を十分に尊重し、今後の運用に万全を期して努力する所存でございます。  ここに、本法案の審議を終わるに際し、委員長をはじめ委員各位の御指導、御協力に対し、深く感謝の意を表し、ごあいさつといたします。ありがとうございました。(拍手)
  266. 服部安司

  267. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 本法律案に対し、御熱心に御審議の上、ただいま御議決をいただき、ありがとうございました。  私といたしましても、本委員会における御審議の内容及びただいま御議決になりました附帯決議を尊重いたしまして、公有水面埋立法運用に遺憾なきを期する所存でございます。まことにありがとうございました。(拍手)     —————————————
  268. 服部安司

    服部委員長 なお、おはかりいたします。  ただいま議決いたしました本案に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  269. 服部安司

    服部委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  270. 服部安司

    服部委員長 次回は、来たる二十九日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時二十三分散会