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1973-09-19 第71回国会 衆議院 決算委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年九月十九日(水曜日)     午後一時九分開議  出席委員    委員長 宇都宮徳馬君    理事 松岡 松平君 理事 森下 元晴君    理事 綿貫 民輔君 理事 久保田鶴松君    理事 庄司 幸助君       臼井 莊一君    中尾  宏君       濱野 清吾君    吉永 治市君       阿部 助哉君    稲葉 誠一君       佐藤 観樹君    高田 富之君       原   茂君    米田 東吾君       田代 文久君    坂井 弘一君       受田 新吉君  出席国務大臣         法 務 大 臣 田中伊三次君         外 務 大 臣 大平 正芳君         通商産業大臣  中曽根康弘君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      小坂善太郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         警察庁警備局長 山本 鎮彦君         防衛政務次官  箕輪  登君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         法務省刑事局長 安原 美穂君         外務政務次官  水野  清君         外務大臣官房会         計課長     梁井 新一君         外務省経済協力         局長      御巫 清尚君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君         大蔵政務次官  山本 幸雄君         大蔵省国際金融         局次長     藤岡眞佐夫君         通商産業省通商         政策局長    和田 敏信君  委員外出席者         法務省入国管理         局次長     竹村 照雄君         通商産業大臣官         房会計課長   大永 勇作君         会計検査院事務         総局第一局長  高橋 保司君         日本輸出入銀行         副総裁     前川 春雄君         参  考  人         (海外経済協力         基金総裁)   大来佐武郎君         参  考  人         (海外経済協力         基金理事)   廣瀬 駿二君         参  考  人         (海外経済協力         基金業務第一部         長)      真崎 兼五君         決算委員会調査         室長      東   哲君     ————————————— 委員の異動 九月十九日  辞任         補欠選任   田村  元君     臼井 莊一君   芳賀  貢君     阿部 助哉君   八木  昇君     米田 東吾君   池田 禎治君     受田 新吉君 同日  辞任         補欠選任   臼井 莊一君     田村  元君   米田 東吾君     佐藤 観樹君   受田 新吉君     池田 禎治君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十六年度一般会計歳入歳出決算  昭和四十六年度特別会計歳入歳出決算  昭和四十六年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和四十六年度政府関係機関決算書  昭和四十六年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和四十六年度国有財産無償貸付状況計算書  〔総理府所管経済企画庁)、法務省所管、外  務省所管大蔵省所管農林省所管通商産業  省所管〕      ————◇—————
  2. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 これより会議を開きます。  昭和四十六年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、総理府所管経済企画庁法務省所管外務省所管大蔵省所管農林省所管及び通商産業省所管について審査を行ないます。  この際、おはかりいたします。  本件審査のため、参考人として海外経済協力基金総裁大佐武郎君、理事廣瀬駿二君、業務第一部長真崎兼五君の御出席を願い、その意見聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、参考人からの意見聴取委員質疑により行ないたいと存じますので、さよう御了承願います。     —————————————
  4. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 質疑に入ります前に、委員長から一言申し上げます。  本日は、対韓経済協力中心として、経済協力問題について審査することとなっております。  経済協力問題は、当委員会においてもこれまでしばしば論議されてきたところでありますが、特に対韓経済協力については、さきの金大中拉致事件に関連して最近にわかに関心が高まり、新聞雑誌等においてもいろいろの報道や論評がなされ、これらの中には経済協力の現状に対してかなり批判的な記事も見られるに至っております。  また、金大中事件は、日本主権侵害と見られる要素もあるのでありますが、金大中氏の原状回復等に関する日本政府韓国政府に対する交渉が手ぬるいとの非難があります。そして、それが対韓援助など経済関係の癒着の中に原因があるとの疑惑さえもあります。かかる状況にかんがみ、当委員会としてはその実情を解明して、今後の対韓経済協力あり方を正してまいる必要があると考えております。  政府においては、当委員会の意向を十分御理解の上、答弁にあたっては進んで実情を明らかにされるよう特に希望いたしておきます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がございますので、順次これを許します。綿貫民輔君。
  5. 綿貫民輔

    綿貫委員 ただいま委員長からもお話があったように、本日の委員会では対韓経済援助問題を中心にした質疑が行なわれるわけでありますが、ちょうどおりもおり、昨日政府は、金問題に関連いたしまして対韓経済援助凍結ということをおきめになったやに聞いておりますけれども、この結論と、しかもこの凍結ということがもしなされたとするならば、今後どのような見通しで、いつまでこの凍結が続けられるのか、こういう問題について通産大臣から御答弁を願いたいと思います。
  6. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 対韓援助問題の凍結というようなことは、私、報告も受けておりませんし、また、聞いてもおりません。
  7. 綿貫民輔

    綿貫委員 もしもそういう凍結問題が行なわれないということであれば、これは新聞の誤報か、あるいは一部の失言問題ということにもなろうかと思いますが、これは閣議で行なわれたのではなしに、どなたかが御発言になったということですか。
  8. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 政府の責任あるレベルでそういう話が出たということはございません。新聞がどういうふうな理由でお書きになったか、そのところは私はよく関知いたしません。
  9. 綿貫民輔

    綿貫委員 それでは、大臣の時間の都合もあるようでありますので、いままで対韓経済援助によりましていろいろとその結果が出ておりますけれども、特に日本の対韓経済援助ということは、韓国経済自立そして民政の安定にそれが寄与するという目的でそれがなされておると思うのでございますけれども、ややもすると自立化と逆行した方向への援助になっておるのではないかということがいわれておるわけであります。つまり、昨年のソウルで開かれました日韓経済閣僚会議で、朴大統領は、韓国日本に対する経済協力要請は第三次五カ年計画の終わる七六年で十分だ、それまでに韓国経済自立体制を確立できると述べておりますけれども、しかしこの八月十七日の発表によりますと、八一年まで実に百億ドル以上の資本導入計画を予定しており、日本への依存度をさらに高める方向でこれを検討しておると聞いております。しかしながら、いままでの援助の中で四割近くまでが債務の返済というようなことに充てられておるということでありまして、経済開発にはその残余が充てられるというような方向になっておるのではないかと思うわけであります。こういう問題について、いままでの経済援助経緯からしてどういうふうにお考えであるか、お伺いいたしたいと思います。
  10. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 韓国に対する経済協力関係は、公私の分を合わせて約十六億ドルぐらいの話があったと思います。そのうちコミットした分、それからすでに実行した分はかなりそれより減るわけでございまして、たぶん実行した分というのは半分ぐらいではないかと記憶しております。具体的な数字につきましては局長から御答弁申し上げます。
  11. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 時間がありませんので、簡単に願います。
  12. 和田敏信

    和田(敏)政府委員 韓国に対しまする経済協力関係といたしまして、無償資金協力といたしまして、現在までのところ累計、実行ベースといたしまして七百七十七億を供与いたしております。さらに有償資金協力といたしまして、現在までのところ同じく八百二十八億円でございます。さらに技術協力OTCベースといたしまして十四億二千万円でございます。以上、合計をいたしますと千六百二十億円を実行いたしております。ただいま大臣から申し上げました数字と比べまして小そうございますが、これは実行ベースでございます。さらにこのほかに米穀援助でございますが、本件に関しましては玄米ベースで百二十四万三千トンを貸し付けもしくは延べ払い輸出という形で実行済みでございます。さらに、お尋ねのありました経済協力あり方に関しましては、相手国の民生の安定、国民経済の発展に寄与するという方針でこれを実施してまいっております。  以上、御答弁申し上げます。
  13. 綿貫民輔

    綿貫委員 私は、そういう事務ベースの話を聞いているのではないのでありまして、もっと政治的な意味で、やはり最近金大中事件と関連をいたしまして、対韓経済援助というものの公正、しかもそれの実効が期せられるように国民もみな期待しておると思うのでありまして、それについて今後やはり十分そういう疑惑の持たれないような線で援助をしてもらいたいということを要望する意味で私は質問申し上げたわけであります。  それで、中で特にあとから野党の皆さん方からも御質問があろうかと思いますけれども、不実企業というようなものも生んでおる事実もあります。そういうような問題とも関連いたしまして、今後、先ほど冒頭に凍結があるとかないとかいうことは御質問申し上げましたけれども、国民が非常に関心を持っておるということは事実であります。そういう中で、ひとつ大臣も、これは行政官であると同時に政治家であると私は思います。そういう政治的な面から、高度の面からこの対韓経済援助、ひとつ公正をますます期してもらうように強く要望申し上げたいと思う次第であります。  なお、特に最後に、わが自民党では対外経済援助政策を洗い直すためにいろいろと作業を進めておりまして、総理府経済協力対策本部を設置したらどうか、そして現在各省がばらばらに行なっている援助政策を一本化し、最終的には対外経済協力省にまで発展させたらどうかというような意見もあるわけでありますけれども、この点について大臣からちょっとお考えをお聞きしておきたいと思います。
  14. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 対外経済協力が必ずしも円滑にいかない部面もあります。また、コミットしましても実行された部分がわりあいに低いということも現在ございます。そういう点については各省とも連絡を緊密にして、できるだけ実効性のある経済協力をしていきたいと思っております。先般の閣議におきましても田中総理からその残高の調査を命ぜられまして、各省からも報告いたしましたが、そういう点につきましては大いに今後スピードアップしていかなければならぬと思っております。ただ、相手方の国の中にいろいろな条件がございましたり、あるいは一たん約束したことを、金利の変更とか条件の改革を要求するようなケースもまた多々ありまして、またプロジェクトを見つけることがなかなかむずかしいというような問題もございます。そういういろいろな問題についても基本的によく解決策考えなければならぬので、わが国だけの理由に基づくものでないものもかなりあるわけであります。しかし、いずれにせよ効率的に行なうことは非常に大事でありますから、各省協力一致してやりたいと思います。いまの御構想につきましてはわれわれも検討してみたいと思います。
  15. 綿貫民輔

    綿貫委員 終わります。
  16. 宇都宮徳馬

  17. 松岡松平

    松岡委員 山本警備局長にこの際少し伺いたいと思います。  八月八日金大中事件が突発して以来、きょうはもう九月十九日であります、今日に至るまで捜査当局から断片的にはいろいろのことが言われているが、系統立った捜査の、すなわち事件の真相というものは明確になっておりません。この際私は、山本警備局長から詳しく、八月八日から今日に至るまで捜査当局がお取り調べになった内容について承りたい。ただし、まだ捜査機密を要する段階でもあると思うから、機密上のことまで聞きたいとは申しません。この点について山本警備局長の御説明を賜わります。
  18. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  八月八日金大中氏が都内のホテルから拉致されて、その通報がございましてから、警察といたしましては全力をあげてその捜査につとめている次第でございますが、その経緯を申し上げますと、まず遺留品がかなり現場に残されておりましたので、遺留品捜査を着実に進めてきておりますが、その中で、リュックサックが遺留されていた関係では、リュックサックを販売した店というものが判明をいたしております。  それから、その犯行の現場ないしそのホテル内で犯人らしい者を目撃した者がいるかという目撃者発見につとめてまいったわけでございますが、その過程の中で、当日一時半ごろ金大中氏を拉致していく途中、エレベーターの中でそういう犯人一味を見たという目撃者が二名申告をしてまいってきております。その証言というものも非常に重要な内容を持ってきておるわけでございます。  それから拉致していく手段に使いました車両、これの捜査も、時間帯をしぼりまして三十台の車というリストアップをして捜査を続行しておりますが、これがホテルの車庫でチェックされているナンバーが下四けただけでございますので、一台の車を限定するのに百数十台ないし二百数十台の車を一つ一つこれに関係があるかどうかを調べるということで、非常な時間を要する、労力を要する捜査になっておりますが、現在まで三十台のうち十九台が本件関係ないというふうに判明いたしております。あと十一台の中もかなり関係のない車も出てきておりますが、十一台のほうの捜査はまだ終了いたしておりません。  それから、その車によってどの経路を通って金大中氏の供述内容によりますと関西方面に連れていかれたか、そういう車の進行の経路の解明につとめておる段階でございます。  それから関西方面アジトに入ったという陳述がございました。そのアジト発見に、これも関西方面で安の家ということになっておりますので、その捜査をずっと続けて安の家の発見につとめておるわけでございます。  それからモーターボートに乗って船に入ったということでございますので、そのモーターボート発見並びに船舶、これは海上保安庁との連絡、共同の捜査によりまして、三十数隻の船が当日の時間帯に韓国のほうに出港しているということで、これの捜査をいたしておる段階でございます。  そういう一連の捜査の中で、われわれといたしましては被害者であります金大中氏の事情を直接聞きたい、そういうことで来日要請をいたしております。また現場におりました梁一東氏並びに金敬仁氏、この三氏を含めて事情聴取のための来日ということを外交ルート要請をいたしております。そしてその過程で、先ほど申し上げましたような目撃者発見並びにいろいろな捜査関係の積み重ねによりまして、韓国の大使館の金東雲という一等書記官が本事件にきわめて関係が濃いという疑いが生じてまいりましたので、九月五日に外務省を通じまして捜査本部への任意出頭を求めておるわけでございますが、現在の段階では韓国政府発表によりますと、これは一昨日の日付で来ておりますけれども、本事件関係がないというような意思の発表がありまして、この金東雲一等書記官任意出頭というものはまだ実現をされていないわけであります。われわれはそういうことではっきりした証拠というものをそろえて、いわば確信を持って金東雲一等書記官出頭を求めており、それがまだ実現されないという段階にあります。  以上がこれまでの捜査経緯でございます。
  19. 松岡松平

    松岡委員 いまの局長の御説明によりますと、八月八日ですが、判明したというのは、どういう経路で判明したのか。これは一一〇番の電話なのか、また他から通報があったのか。この点を明らかにしていただきたい。
  20. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  一番早くわれわれのほうに通報がございましたのは、宇都宮徳馬代議士から警視庁の警備部長あてでございます。これが二時十四分ごろだと思います。引き続いて直ちに捜査関係現場へ参りましたが、一方、二時四十分に金大中さんの関係の秘書のような職にあたる人から一一〇番で連絡が来ております。
  21. 松岡松平

    松岡委員 このときに梁一東氏、金敬仁氏という人たちが八月の八日ごろには日本にいたわけですね。それから九日にもおったわけです。その間に捜査当局があの人たち任意にお取り調べになりましたか、その内容を聞かしていただきたい。
  22. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  梁一東さんはもちろんその当日、それから九日、十日といろいろと事情は聞かしていただきました。それから金敬仁さんは、さらに十五日まで在日されて協力をしていただきました。ただそれぞれ、いろいろとこの事件についての個人的その他の御連絡あるいはいろいろな仕事の関係がありまして、梁一東さんは十一日に帰国してまた十六日には来るというようなお話でございました。そういうようないろいろな関係任意聴取はいたしましたけれども、十分また的確に調査したというわけにはまいりませんでした。
  23. 松岡松平

    松岡委員 そのときに梁一東氏——金敬仁氏はどうか私はわかりませんが、梁一東氏は金大中氏と一緒に食事をしておったのではないですか。そして同時に、その食事した相手方というものはだれか、これははっきりしない。
  24. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  食事をされたのが梁一東さん、金大中さん、金敬仁さん三人でございます。
  25. 松岡松平

    松岡委員 梁一東、金敬仁から反対側部屋という、そこへ一たん入ったというお取り調べですか、金大中氏は、食事を終わってから入ったのですか。その点は明瞭になっておるのですか。
  26. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  お三人で食事をされて、そして金大中さんはこれからまたほかの方と会合する予定があるということで部屋を出られたわけでございます。そうすると、この部屋を出られた前の部屋、それから横の部屋、二二一〇号室と二二一五号室から三人の男がそれぞれ出てきまして、金大中さんを二二一〇号室のほうへ取り囲んで連れ去ったということでございます。そして梁一東さん並びに金敬仁さんは、出てきたもとの部屋、二二一二号室へ押し戻されたということでございます。
  27. 松岡松平

    松岡委員 そうすると、食事をした部屋から金大中氏は任意に出たのか、そこから強制的に連れ去られたのか、ここが一つ問題点だと思うのです。それから梁一東氏及び金敬仁氏は、一たん部屋に押し込められたときにはそれらの中に顔に記憶があったのか、知った人間であるか知らない人間であるか、あるいはそのふうてい等についてもお取り調べなさいましたか。なさったらその内容を……。
  28. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  金大中さんが食事を終わって部屋から出るのは、これはもちろん任意で自発的に自由な形で出られたわけです。そして外へ、部屋を出られてからいま言ったような者に二二一〇号室のほうへ連れ去られたということでございます。それから梁一東さん並びに金敬仁さんをもとの部屋に押し込めた二人の者、これの者についてはお二人とも全く認識がない、初めての男であるということで、若干の人相、ふうてい等はそれぞれ供述をされております。
  29. 松岡松平

    松岡委員 局長に伺いますが、車を調べたがわからない、いまだ判明しない。そうすると、どこを通って海外に行った、この経路ですね。要するに日本の領土からどこの地点モーターボートに乗った、そのモーターボートはどういう船に乗って韓国まで行ったか。この経路について少し私どもわからない。
  30. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  車の捜査は、まだわからないというわけでございませんので、まだ捜査が終了しておらないわけです。数千台の数の車になりますので、もう少し時間がかかるというふうに思います。  それから拉致されて海へ出た経路については、金大中さんの陳述要旨というのは、韓国政府からこちらへ送られてきております。その内容によりますと、大体西のほうへ数時間高速道路を走っていった。そうしてある場所では、インターチェンジらしいけれども、どっちへ行ったらいいのかというような形の道を聞いたようなことがある。その後、安の家というほうへ行けという形でそこの家へ行きまして、安の家は地下に駐車場があって、そこからこう登って、エレベーターに登るような形の家である。それからまた車に乗ってしばらく行って、今度はモーターボートに乗って、それからかなり大きな船に今度乗りかえて、そこから出港したというような、大ざっぱでありますが、そういう筋がございます。  それから陳述要旨には、もう少しいろいろ詳しい事情、たとえばその過程でどういう状況であったとか、あるいは金とかパスポートとか名刺とか、そういうものを取られたとか、そういう陳述もついておりますので、これが唯一の具体的な内容でございますので、それを追って何とかその実態を解明しよう、こういう努力をしておる状況でございます。
  31. 松岡松平

    松岡委員 そうすると、関西方面ということになれば、これはばくとしておりますが、あそこの高速道路では何カ所か関西へ行くまでに通過地点がありまして、一応とまるのですね。その辺の捜査をなさいましたか、なさいませんか。
  32. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  それについて目撃者申告がございまして、大津インターチェンジ付近で、インターチェンジのところで道に迷っておるような車に会って、それが大体時間帯が当日一致する時間帯であるという形で、この目撃者参考のいろいろな陳述は、いま非常に貴重なものであるということで捜査をいたしておりますが、その車の車種とかあるいはその乗っておる人物、こういうものを非常に克明に記憶しておられるわけですが、まだ具体的に、この車が金大中氏を拉致していく過程であったかどうか、これを断定するには至っておりません。しかし、そういうこともございましたので、その時間帯のインターチェンジ大津から西宮の間のチェンジでおりた、そういう時間帯の切符ですね、そういうものを捜査いたしまして、その中から指紋を採取いたしまして現場遺留指紋との照合、こういうことをやっておる状況でございます。
  33. 松岡松平

    松岡委員 大津というのは、いまの捜査ではかなり一つのポイントにしておられるようですね。大津から先というと西宮。で大阪へ入った、つまり経路というものは全然出てこないですか。むしろ一説には、紀伊半島方面に車は動いたという説も流れております。これは別に確たる証拠はございません。その点はどうお考えでしょうか。
  34. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  大津から先、あらゆる状況を想定いたしまして、お話のありました和歌山県を含めまして、大阪、兵庫県、その関係一帯捜査を進めておるわけでございますが、まだ現在、はっきりした道順あるいはそのアジトというものの発見に至っておりません。
  35. 松岡松平

    松岡委員 その部屋から検出された指紋というものが問題になって、当局でも金一等書記官指紋と一致するということを発表しておられるようでありますね。この経過を御説明願いたい。
  36. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  指紋現場遺留指紋という形で、当日鑑識のほうで採取したものが、これは数十個以上、多数ございます。これの指紋金東雲一等書記官——これは書記官になる前に新聞記者という資格で来ておりました。その時代における指紋というものを公式な形で入手いたしましたので、それと照合したところまさに一致するということで、確たる容疑の根拠にいたしておるわけでございます。
  37. 松岡松平

    松岡委員 そうすると、遺留品とおっしゃいますが、あるいは机とか腰かけとか寝台等にあった指紋はない。ただ遺留品というので、リュックサックとか何か麻薬入りのびんとかいう、そういうものですか、指紋発見の対象物は。
  38. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  遺留品と申し上げたのではなく、遺留指紋と申し上げたわけです。ですから、この部屋のどこかにあったけれども、これは捜査の機微に属することでございますので、どこにあったかは申し上げられません。
  39. 松岡松平

    松岡委員 あなたのほうは、政府から公式に韓国に対して、金大中氏を日本に送還してくれと——送還ということばが適語であるかどうかわかりませんが、来日してほしいということは要求されたのですか。
  40. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  最も重要な参考人であり、被害者であります金大中さんの日本に来られてのわれわれからの事情聴取、これができるように取り計らい願いたい、こういうふうに外務省を通じて要求をいたしております。
  41. 松岡松平

    松岡委員 そうすると、金一等書記官日本への引き渡しも要求されましたか。
  42. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  これは引き渡しという形でなくて、日本に、東京における韓国大使館の勤務員ということで、一等書記官ということでございますので、任意出頭ということを要望しておるわけでございます。
  43. 松岡松平

    松岡委員 そこで伺いますけれども、金大中氏、それから金一等書記官というものは捜査上にどうしても必要なのかどうか。もしこれが来なければ捜査の締めくくりがつかないのかどうか。私としては、この点をはっきりしていただきたいと思うのです。
  44. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  金大中さんは、まさに本件被害者であって、被害者から犯行現場、それからの経緯を具体的に聞かないと犯罪の筋がわからないというわけでございます。また金東雲書記官も、われわれとしては、その現場におってこの犯行にかかわった疑いが強いというので、事情を聞かざるを得ないという捜査の一連の過程からの必要上生じたいろいろな要望であり、要請であり、任意出頭であるわけでございます。したがって、さらに含めて梁一東さん、金敬仁さん、そういう人が来て捜査協力していただかないと、なかなか捜査は全貌もわからないし、また結論も出にくいというふうに考えて、これまでもお願いをいたしておるわけでございます。いまお話しのように、そういうことは全く不可能になって、だれも来ないというようなことになりますと、捜査としては非常にむずかしくなってきますが、しかしわれわれ捜査当局としては、そういう困難を承知でそれを乗り切って、ぜひこの犯罪の全貌を解明したい、こういう意欲に燃えていかなければいけない、こういうふうに考えております。
  45. 松岡松平

    松岡委員 どうもこれは単なるうわさであるか、事実であるかわかりませんけれども、韓国側と日本側と両方の捜査当局で、日本からは韓国へ、向こうからは日本へと、こういう捜査員をお互いに出し合って、真相を究明しようというような話があるようですが、これは事実どうなんですか。
  46. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 そういうような提案が韓国側からなされておるような報道を新聞記事で承知いたしておりますが、われわれに、公式に外務省を通してそういうような話は全く来ておりませんし、私ども一切承知いたしておりません。
  47. 松岡松平

    松岡委員 万一そういうことが行なわれても、捜査として、はたして的確なものを得られるかどうか。これについて、長く捜査に携わっておられる局長はどうお考えでしょうか。
  48. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  もしそういうような問題が具体的な日程に上がれば、その際は検討いたすというつもりでございますけれども、いまお話がありましたように、どこまでも捜査は、任意な、自由に発言でき、自由に陳述できる状況事情を聞かなければ真相はわからない、こういう大きな一つの問題がある。そういう問題を踏まえて、そういう捜査員の相互交換ということも検討する必要があるというふうに考えております。
  49. 松岡松平

    松岡委員 私の申し上げることは、やはり日本領土内で行なわれた事件でありますから、あくまで私はそのポイントにおいて捜査すべきが順当と思う。これは出張ったからといって、これは韓国主権のもとでどれだけの捜査ができるか、私どもは、非常に心もとないより、むしろ事件がうやむやにされる危険性がありはしないか、こうおそれるものであります。局長の御意見はいかがでしょうか。
  50. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 そういう相互交換という問題は、まだ全然実現とか具体的な日程にのぼっているわけではございませんので、現在としては、われわれは、先ほどから申し上げておりますように、金大中氏以下参考人日本への来日、それから金東雲一等書記官日本への任意出頭、この線を守っていきたい。これを重ねて要望して、誠意ある回答を得たい。こういう立場でいきたいというふうに考えております。
  51. 松岡松平

    松岡委員 局長のいまのお答えで、まことに意を強うしたものであります。とかくいままでにそういうことをして、真相をつかめた例はないと思うのです。やはりあくまで主権のもとにあってこそ捜査もできる。他国の主権のもとへ行って捜査して、的確なものを得られるわけがない。これは昔から長い一つの歴史の上にあらわれておることでありまして、捜査当局はあくまで権威を持って臨まれんことを私は特に切望します。  さらに、金大中氏及び一等書記官日本への来日捜査当局はいまなお強く求めておられるのかどうか。
  52. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  現在でもこれまでと同様強く要望している段階でございます。
  53. 松岡松平

    松岡委員 当局として可能性があるとお考えですか。いま韓国は拒否しておるようですね、金大中氏の日本入り。それから金一等書記官のことも同様だというふうに聞いておりますが、この点どうですか。
  54. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  外務当局からの連絡によりますと、金大中氏その他の参考人来日については、いまいろいろ調べておるのでちょっと待ってもらいたいということで、これを拒否したというふうにわれわれは受け取っておらないわけでございます。  金東雲一等書記官については、いまのところでもやはりそういうことで、外交上の特権があるから出頭させない、こういうことをこちらの大使館で言っておるというふうにわれわれは承知いたしております。
  55. 松岡松平

    松岡委員 どうも韓国側は、これは情報であるか真相であるか私はわかりませんけれども、一等書記官は不在証明があるというようなことを言っておりますが、それはどういう内容の不在証明であるか。こちらからあなた方があげておるのは、指紋一等書記官新聞記者時代来た指紋とは一致しているのですね。一致しているならば——指紋は同じ類型のものがあるわけがないのですが、これは指先を手術でもすれば、今度調べたときには指紋は変わるかもしらぬけれども、そうでもしない限りはその指紋はつかめるはずだ。捜査当局ではこの指紋が一致しているということを韓国側に通告されたことがございますかどうか。
  56. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、指紋のほかにもやはり当日金大中氏がエレベーターで拉致されていくのを目撃した目撃証人もあるわけでございます。これらの事実は九月五日、外務省を通じて任意出頭を求めたあとでそれぞれ韓国のほうには外務省を通じて連絡をしておるわけでございますが、向こうのアリバイというのは、向こうの野党の方が何か向こうの法務大臣に聞いたときにそういう話があったということで、十七日付で向こうから私のほうに届けられました捜査の中間報告には、そういうアリバイのことは記載されておりません。
  57. 松岡松平

    松岡委員 アリバイについては韓国側では中間報告で述べてないけれども、一等書記官はこれに関係していないとまで言明しておりますか。
  58. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 そういう表現でございます。
  59. 松岡松平

    松岡委員 どうもいままで一カ月以上の間に、この金大中事件でいろいろの角度からいろいろな発言なり情報が新聞などに出て、国民は非常に混乱しておるわけです。この事件というのは一体どういうことなのかわけがわからなくなってきたという、それは多数の国民はそう考えておるのです。捜査当局はこれを明確にしなければならぬし、国民はこれを知る権利があるわけです、はっきり言うて。あなた方はやはり職権をお持ちであり、同時に、これを国民に知らせなければならぬ義務があるわけなんです。ところがいまの状態ではどこをつかめばいいのか、私どもでもわからない。しっぽをつかんでいるのか、胴中をつかんでいるのか、頭をつかんでいるのかわからぬようになっている。だんだん日がたつに従ってこれはわからなくなりますよ。どうお考えになっておりますか。
  60. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  われわれも一日も早く本件捜査を完了して、全貌をいわば発表したいという気持ちではだれにも劣るものではないのでございますけれども、しばしば申し上げておりますように被害者である方、それから重要な現場にいた参考人からも事情が聞けない、それから捜査過程でこの犯行に関与したことが明らかであるとわれわれが確信を持っている方も外交官であるということで出てこない、そういう一つ捜査上の大きな壁と申しますか、一つのむずかしい局面があるわけですが、こういう条件のもとでの捜査でございますので、なかなか全貌を明らかにするまでに時間がかかるということをひとつ御了解いただきたい。われわれもそういう困難を乗り越えて一日も早くこの全貌をつかんで国民に知らせたい、こういう気持ちでおるわけでございます。
  61. 松岡松平

    松岡委員 どうも私ども見ておりますと、外交と捜査が何かからみ合っているような感じがするのです。だから、進むがごとく進まざるがごとく、一方において外交交渉しておる、よこせと言い、渡せぬと言う。と同時に、こちらからいろいろなことを円満に妥結したいというようなきざしも見える。全くわからぬですね。きょうは外務大臣、出られぬというからお伺いもできないのですけれども。だから捜査当局はそういう外交上のテクニックと言っては何ですけれども、というような歩きっぷりとタイミングを合わせて歩いておられるのじゃないですか。それであったら事は重大でありますよ。
  62. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  私どもは、本件は確かに国外、いわば外交的な関係における犯罪である、国際的な犯罪であることは承知いたしておりますが、犯罪を解明するということは、どこまでも予断を持たないで、どこまでも真実を追及していく、事実を一つ一つ積み重ねて、一つしかない真実に到達しなければならない、こういう信念でやっておりまして、政治的あるいは外交的な配慮でこの捜査を左右する、そういうようなことは全然考えておりません。
  63. 松岡松平

    松岡委員 局長答弁はまことにりっぱですよ。りっぱだが、現実はどうも私らも納得いかないのです。納得いかないということは、何かどうもそこに霧がかかったような感じがするのです、もうきょうこのごろになると。最初の出鼻は何か非常に勇しかったけれども、きょうこのごろになりますと霧がかかったようになってしまう。こうなってくると、これから日本に対する信頼感というものは、どうも日本へ行ってもまたこういう目にあいやしないか、そうしたらまたわけがわからぬのじゃないかというふうな不信を海外の人々に抱かせるということでは、これは日本の威信として重大な問題でありますね。韓国もまた、こういうことを長く不明瞭にしておきますれば、これは国民感情の上からいっても親善友好にひびが入るわけです。どうも、かすに時をもってせいという後宮大使の帰ってきたときの話なんか聞いていると、かすに時をもってするなんという問題じゃないと思う。これは一刻も早く究明し、明瞭にして、親善友好にひびの入らないようにつとめられるのがこれは順序だと思うのだ。どうもわからない。だから私どもは捜査当局に、そういう外交上のことなんかをお考えにならないで、まっしぐらに捜査当局の権限を勇敢に実行せられることを希望します。そのために金大中氏はどうしても必要なのだ、一等書記官はどうしても必要なのだ、これは強く政府当局に要求せられることが必要だと私は思うのですが、どうお考えですか。
  64. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 私どももそのように考えて、外務当局に対してこれからも再三にわたってその主張を強く続けていきたい、こういうふうに考えております。
  65. 松岡松平

    松岡委員 きょうは江崎公安委員長がどうしても差しつかえがあるというのでお出にならないのだが、私どもはこの点ははなはだ不満であります。現在の状態は何かベールをかけておいて、そして外務省が向こうに交渉する。その交渉たるや、もうまことに私どもが考えてもわけがわからぬ。談判しているのか、一体ごきげんをとっているのか、早くあやまれといっているのか、この辺がわからないのですよ。わからぬということは、外交交渉がきびきびしておらぬ。こちらからいえば韓国に対しては政府援助もあり、国民の投資もあります。かなり重大な問題でありまして、こんな状態で今後援助が続けられるのかどうか、また民間がはたして安心して投資を継続するであろうかどうか。私が考えてみた上において、捜査当局のお立場と責任はかなり重大なものだと思うのであります。最後にこれに対して一言私は承りたいと思います。
  66. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  われわれは捜査当局といたしまして、何としてもこの事件の真相を解明して、国内的にも国際的にもこういう問題における疑問をなくしたい、こういう一念でやっておるわけでございまして、いまの御質問に対するお答えになるかどうかわかりませんが、われわれの捜査への熱意を認めていただきたい、こういうふうに思っております。
  67. 松岡松平

    松岡委員 私は最後に一言局長に申し上げます。これは捜査当局全体に対する要望であります。  事きわめて重大である。どうぞ信念を曲げることなく、外交上の交渉のいろいろな波動もあり、変化もあるでしょうが、そういうことに目もくれぬで、捜査当局はき然とあってほしい、これだけ私は切に申し上げて、質問を終わります。
  68. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 原茂君。
  69. 原茂

    ○原(茂)委員 本来、当委員会が要求した資料が八項目出てまいりましたので、詳細にわたってお伺いをしたいというつもりでございましたが、外務大臣が約束をたがえて、きょう二時間しかここにおられないというようなことから、やむなくごくわずかな部分だけ、外務大臣に基本的な問題をお伺いしたいと思います。時間がありませんので、要点を簡潔にお伺いしますから、また同じようにお答えをいただきたい。  その前にちょっとお伺いしたいと思いますのは、新聞の報道によりますと、金大中事件は一時凍結というようなことで報道がされておりました。それは大臣は御存じのことですか。
  70. 大平正芳

    ○大平国務大臣 できるだけ早く事態を究明いたしまして、それを踏まえて公正な解決をするという方針で鋭意努力いたしておるわけでございまして、凍結も中断もございません。
  71. 原茂

    ○原(茂)委員 新聞のニュアンスでわかりませんけれども、新たに経済援助を行なうにあたって、その話し合いその他を凍結する、今日まですでにきめられておりますペースの進行中のものを凍結する、この両方に解釈できるのですが、これはどちらに解釈したらよろしいのでしょうか。
  72. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま申し上げましたように、凍結するという考え方は政府にないわけでございますが、いままでコミットいたしました件につきましてはそれを検討いたしまして、ローンアグリーメントというものをつくって、交換公文をつくり上げて、そして実行に移すという手順を踏んでまいるわけでございますので、そういう仕事はやめておくようにという指示をいたしておるわけじゃないわけでございまして、ルーチンの仕事といたしまして、各省におきましてはそういう仕事は進めておられることと私は思います。
  73. 原茂

    ○原(茂)委員 新聞がでたらめを書いたという答弁ですが、少なくとも外相がいままで二、三の場所で発表してきたことを総合しますと、金大中事件が起きてからは、この種の問題の折衝というのは事務レベルで行なわせるようにしたい、いままでの閣僚会議中心の進行というもの、これを政治的な配慮抜きでどんどん、新たな援助あるいは協力に対しても進行させるような事務レベルでの折衝に移していきたいということを二、三の場所で、あるいは新聞等で報道されているのですが、この点はいかがですか。
  74. 大平正芳

    ○大平国務大臣 本来閣僚会議というのは、ほかの例、日米、日カ、日豪等に見られますように、特定の問題についてネゴシエーションをやる場ではないわけでございまして、複数の閣僚が相互に集まりまして、高次元の立場で意見の率直な交換を行なって理解を深めていく、そういう素地のもとで具体的な案件が出てきた場合に、それを処置する十分の理解と知識を持っておるという姿が私は望ましいと考えておるわけでございます。ところが日韓閣僚会議におきましては、従来ともすれば閣僚会議自体で問題のネゴシエーションが行なわれる節がなかったわけではないわけでございまして、そうう傾向は私は本来望ましくないと考えておりまして、漸次その傾向も改善されまして、去年私がソウルにほかの閣僚と一緒に参りました閣僚会議におきましては、閣僚レベルでネゴシエーションをやるという場面はほとんどなかったわけでございまして、事務当局で詰めましたところで話のおさまりがついたように思うわけでございまして、こういう傾向は助長しなければいかぬという意味で、つまりこういう事件があろうがなかろうにかかわらず、閣僚会議運営をそういう方向に改善したいという希望を述べておるのが一点あるわけです。  それから今度の事件でございますが、今度の事件につきまして、閣僚会議をいま適切な時期でないというので延ばしたわけでございますので、援助政策というものを実行していく上におきまして、閣僚レベルの会議というよりも、事務当局の間でルーチンの仕事として検討すべきものは検討していくということしか道がないわけでございますので、そういうことを申し上げたわけでございます。現在そういう姿であるわけでございまして、いま私どものほうへ、交換公文ができ上がったからこれどうしましょうかというところまで来ておる案件はまだございません状態でございます。
  75. 原茂

    ○原(茂)委員 これにあまり時間とれないのですけれども、すなおにお聞きすると、本来あるべき姿にレールを敷き直すのだということだろうと思うのですよね。閣僚会議なんかで大ざっぱなものは全部きまっちゃって、金額のワクやなんかきまって、それからいろいろ調査をし、プロジェクトを行なうというようなことが、これはさか立ちをしていたのですからね。ですから、その意味では、すなおに聞けば大臣のおっしゃることがなるほど本来あるべき姿に返るんだなという感じがするのですが、時が悪い。金大中事件ができてからそういった種類のいわゆる考え方が何回か発表され始めたというふうになってきますと、この金大中事件を契機に非常に国民世論の問題もあるし、うるさくなるだろうということから、とにもかくにも金大中事件がどういうふうになろうともこの経済協力だけはどんどん進めていこうというための手段としてそのことが用いられている、考えられたというふうに実は考えるわけです。この問題はまた別の機会にまだまだ、あすでも足らない、休会中も委員長にお願いして委員会を開いて、とことんまでこの経済協力の一項一項についてもお伺いをしたいと思いますし、その問題についてその論議の中からまたあらためてお伺いをしていきたいと思います。  ついでに申し上げますが、私は、金大中事件というのは、今日までの経過を見ますと、何かこうわれわれのうちに大事なお客さんが来た、そのお客さんがどこかの人にとにかく脅迫されて拉致されてしまった。これは普通なら頭にきますよね、この主人というものは。しかし、日本政府の場合は、腹を立てるかどうか、これからようく考えてから腹を立てるのだ、こういう調子なんですよね。一口に言えばそうなると思うのですね。たいへんこれにはいろいろな問題が含まれているので、本来やはり国民的な立場で政府といえどもこれに対してはやはり一応頭にくる、腹を立てる、しかし、外交案件であるから冷静に、しかも厳密に早急に処理をする、こういうことは国民の合意を得ながら進んでいくようにしなければいけないのですが、およそこれとは逆なことをいろいろやっている。その意味で、この問題についてもずいぶんいままで論議をされてまいりましたが、私にもこの問題に対するまた別の機会にもう少し突っ込んでお伺いしなければいけない問題があるわけであります。  ここで私どもの野党の立場で反省ということは必要ないのかもしれませんが、私なんか、実は個人的に、ああいう昨年朴軍事独裁政権ができたあと、たいへん存在する野党というのが苦労して今日に至っている、非常な苦しみを味わっていると思うのですが、やはりずっと以前から韓国の政党に野党がある限り、その野党の立場というものをもうちょっと理解できるような、日本における野党としても何か接触をしながら、できる限りのこの軍事政権のでき上がる前あるいはでき上がってからの対抗手段というものを応援をし、協力をするというようなことが必要だったんじゃないかという、これは個人的な反省をしているわけですが、そうでないことが何か朴政権をここまで助長さしちゃった、世界にいままで例のないような、おそるべき独裁軍事ファッショ政権ができている、こういうふうにいま私は考えているわけですが、そういう反省もあります。ありますが、いずれにしてもいまの政府のやっておられることは、とてもじゃありませんが国民の立場で納得できるような状況ではないというふうに実は考えております。  この問題に関連して、これも新聞の情報ですけれども、何か元駐韓大使の金山政英氏が、十八日にソウルを出発して日本に帰ったはずだということが韓国日報に出ている。ところが駐韓大使館で調べてみると、どうも十九日の午前になってもまだ帰っていない。ホテルを調べると、ホテルには背広なりあるいはその他遺留品——遺留品じゃありませんが、残したものがありながら、なおかつチェックアウトもしていない、こういうようなことが、これも新聞報道ですが、出ているのですが、金山前駐韓大使に対するこの種の問題のこれは懸念がないんだ、政府のお使いに行ったのでしょうから、よく連絡がとれていて、こうこうこうなんだということがわかりましたら御答弁願いたい。
  76. 大平正芳

    ○大平国務大臣 金山さん、前駐韓大使として韓国の朝野に知られた方でありまするし、また数々の友好、友情的なつながりを持たれた方と承知いたしております。それから金山さん御自身が、この事態をたいへん憂慮されておるということも承知いたしております。自分の立場で何かお役に立つことを考えなければいかぬというお気持ちでおられるのではないかと拝察いたしております。けれども、いま政府といたしまして特使をしつらえてお願いをするという段階ではないわけでございますので、金山さんの言動につきまして政府関係はございません。私は案ずるに、あの人たいへん大人物でしてね、つまりあまりささいなことを気にかけない人でございますから、そ枝大葉といいますか、そういう方でございますので、どこかにおられるのだろうと思いますけれども、その点につきまして政府はよく承知いたしておりません。ただ安否は、確かに原さんおっしゃるように心配でございますから、その点はいろいろ聞き合わしてみたいと考えておりますが、政府との関係はいま申し上げましたとおりでございます。
  77. 原茂

    ○原(茂)委員 金山さんがもうこれで三回目ぐらい、金大中事件が起きてから行かれているのですが、私は、外務省あるいは大臣が全然関係ありません、本人はとにかく偉大な人物で、かってにやっているのだというようなことでは、これはどうも無責任なことで、どうしてそんな逃げを打つのか知りませんが、納得はいたしません。同時に、いまもちょっと最後のことばじりをとらえるようですが、安否は気づかっていますからということは、いま私が申し上げてから安否を気づかったのではない、どうもそれ以前に安否を気づかっていたような感じがするのです。ということになりますと、韓国日本大使館が、この金山氏の動向というものを空港まで調べていたが、どうも一人も該当者がいないというようなことを、韓国日本大使館で調べていたそれをおそらくお聞きになっていたろうと思う。お聞きになったら、金大中事件ではありませんが、間髪を入れず、国の立場で当然調査といいますか、安否を気づかった外交的な手を打つべきだ、こう思うのですが、どうもまだ打っていられないようですが、何かほかに理由があるのですか。こんなことじゃいけないと思うのです。
  78. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ただいまのところ所在はわかりませんけれども、なお方々聞き合わして、聞きただしてみたいと考えています。
  79. 原茂

    ○原(茂)委員 少なくともこうしている間にも、まだ所在が判明していないことは事実らしい。そうすると二十四時間以上たっているわけですから、やはりもう少し真剣にこの種の問題に取り組む姿勢というものがほしい。金大中事件で何か麻痺しちゃって、こういうことですっ飛び上がらないような状況が、どうも日本政府全体にあるような気がするのですが、これではいけない、こういうように思いますから、すこぶる早急に、しかも緊密なひとつ調査をすぐになさるべきだということを、これは要望をいたしておきます。  それから時間がありませんから次の問題に入るわけですが、私は韓国に対する経済協力考えますときに、最近のアメリカの朴政権に対する世論というようなものを相当参考にして考える必要があると思うのです。どうでしょう、朴政権、私は先ほどから軍事独裁政権、こう言いましたが、アメリカのフルブライト上院外交委員長あたりが調査報告書を出しておりますものなどをお読みになっていると思うのですが、一体ああいう報告書の内容をどういうようにお考えになりますか、当たっているとお思いになりますか。
  80. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私ども、外交はそれぞれの国の合法政権とのおつき合いをいたしておるわけでございます。その場合、お互いに最高の礼儀をもってつき合わなければいかぬと考えておるのでございまして、その政権についてとかくの論評を政府の立場でするということはいかがかと思いますので、それは差し控えさしていただきたいと思います。
  81. 原茂

    ○原(茂)委員 ですから、私は直接話法でお答えをいただこうと思っていない。いわゆる米上院外交委員長の朴政権評というもの、しかも正式の調査報告書で出されているその内容についての御感想はいかがか、こう間接話法でお答えをいただこう……。
  82. 大平正芳

    ○大平国務大臣 直接であろうと間接であろうと、政府の立場でわれわれが御交際をいたしております国の政権についての論評ということは、残念ながら申し上げることは差し控えさしていただきたいと思います。
  83. 原茂

    ○原(茂)委員 日本政府は、佐藤内閣以来そうですが、現在の中華人民共和国あるいは朝鮮民主主義人民共和国あるいはその他ベトナムの国々に対しても、かつての答弁をひもといてごらんになるとわかりますが、共産主義、社会主義を順奉する政権に対しては云々という批判を、外務大臣なり総理大臣が何回もおやりになってきている。外国の政体に対しては何一つ論評をしないなんということはいまごろ言い出した言いぐさなんであって、これはかつてそんなことはない。なぜ一体いま、この国際的に見ても珍しい金大中事件を起こすようなおそるべき暗黒のファッショ政治を行なう朴正煕政権に対して、直接ではないが、少なくとも米上院の外交委員長調査報告書にあのどぎつく書いてあることを、これはごらんになっているに違いないのだが、一体それが感想を求められたときに何も言えない日本の外務大臣、こんなばかなことがあるでしょうか。私はもう一ぺん感想をどうしてもお聞きしたい。
  84. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私の先輩がどういうときにどういう御質問に対してどう答えたかということを一々調べておりませんけれども、あるいは原さんが御指摘になったようなことがあったのかもしれませんけれども、私は、私の信念といたしましてはただいまお答え申し上げたとおりでございます。
  85. 原茂

    ○原(茂)委員 エッセンスだけ参考までに言っておきますからお聞きになってください。このフルブライト調査報告は、朴政権が永久政権を目ざして払った今日までのもろもろの努力に対してこうせんじ詰めている。民主主義をきれいさっぱり掃き清める作業をやったのだ、こういうことをいっている。しかも、現在の朴政権が李承晩以来の最悪の独裁体制だ、こうきめつけている。その上に、朴大統領というものは、自分がそれに同意するか死ぬか革命が起こらない限り権力の座から引きおろすことは不可能だろう、おりることはないだろう、こういうようにいって、最後の仕上げのように、朴大統領の一人支配体制に反対しようとする者は、極端な非合法的手段をもって朴正照の退陣を要求する以外には実際に選択の余地はないだろう、すなわち、いわゆる反独裁、倒朴運動による革命が起きるかもしれぬというようなことをやはり暗にいっているのですよ。アメリカ上院のフルブライトが報告書を出しているのです。私はこの間も日本大臣答弁を聞いてみますと、いわゆる民主主義を憲法にうたっている韓国政府であるから、やはりその種の何がしかの期待をもっておつき合いをしているのだという答弁委員会でもあったようですが、私はもうちょっと、韓国朴正煕政権というものに対するきわめてきびしい評価というものが日本政府にできてこないと、ほんとうの意味の日韓の国民的な合意による経済協力というのは不可能ではないか。たとえば、自民党の中にもそういう御意見を持っている方がありますが、この韓国に対する経済援助経済協力というのは、実は日本の軍事的な面の肩がわりなんだ、この種の援助を相当大きくやったにしても、韓国が強大になったからといって、それは決して日本の脅威ではない、韓国自体が経済的であろうと政治的であろうと万が一くずれることがあったときには、そのことのほうが日本に対する大きな脅威になるのだ、こういうような考え方が、あらゆる機会に、また文書などでもるる出されていることがあるわけです。この韓国の位置づけですが、大臣はやはり、経済協力経済援助を行なうということが、実はわが国の直接的ないわゆる軍備に肩がわりをした形になるのであって、わが国の安全のために経済協力というものが必要なんだ、こういうようにお答えになっていますかどうですか。
  86. 大平正芳

    ○大平国務大臣 それぞれの国はそれぞれの国民の選択に従って政治体制をとっておられます。そしてまた、その国の命運はその国の国民考えられることでありますので、他国の政府といたしまして、そういうことについて論評をいたすことは差し控えるべきだというのが私の信念でございます。  それから経済援助でございますが、この問題はひとり対韓援助ばかりじゃなく全体の日本経済協力政策として考えておるわけでございまして、われわれといたしましては、平和国家としてあくまで平和に徹することを国是として国の内外にわたって真剣な実践をしてまいらなければならない国といたしまして、軍事力の強化というようなものに資する経済協力は慎まなければならぬと考えておるわけでございます。朝鮮半島の運命がどうなるかということは確かにわが国に至大の影響があると思うのでございますけれども、しかし、これは朝鮮半島の方々がまず考えられることでございまして、日本のためにあるわけじゃございませんから、朝鮮半島の方々がみずからの責任で選択される道を歩まれることと思うのでありまして、わが国に都合のいい朝鮮半島をつくり上げるために経済協力をするのだなんという大それた気持ちは毛頭持っていないのであります。国交を開きました隣国といたしまして、韓国の民生の安定、経済自立に多少なりともお役に立つということであれば、それはそれでわが国の立場として当然の道行きであろうと考えておるわけでございます。
  87. 原茂

    ○原(茂)委員 これはそういう問題だけでも一時間、二時間かけながら、事例をあげながらほんとうにじっくり大臣とは話し合いをしませんと、こんなしり切れトンボで中途はんぱで終わるのは非常に残念に思うのですが、やむを得ません。  時間がありませんから進むわけですが、まあ関連はありますけれども、第六回の日韓閣僚会議がありましたのが昨年でしたが、その前の日、九月四日に朴大統領と大平外務大臣が会談をしておられます。この会談で第六回の日韓閣僚会議に臨む基本的な問題の一つとして、非常に大事な問題として朴大統領から、韓国日本に対する経済協力要請はことしから始まった第三次五カ年計画が終わる七六年までとする、この時期には韓国経済自立体制を確立できる自信があると約束をされたわけですね。さきに発表されました韓国の長期開発計画というものは、これはまた膨大な、総額四百億ドルを必要とする、そのうちの百億ドルは外資の導入をやろう、そのうちの六十億ドルは重化学工業に振り向けていきたい、そのうちの五十億ドルは何々というようなことまでこまかく現在日韓の間で論議をされているのですが、朴大統領が昨年大平外務大臣と会ったときに、とにかく七六年で経済自立ができます、したがって日本に対する経済的な協力要請というのはこれで終わります、こう約束したのが一体どうなっているのでしょう。このとおりにいくだろうと国民は期待をしてまいりましたし、知らない間に——先ほど外務委員会でおそらく岡田春夫委員からこの問題に関連した、一体国会の承認をどこまで得ているのだ、日韓基本条約なりあるいは交換公文なりにきめられた無償三億、有償二億、あるいはそのほかに民間の三億ドル以上というようなことがきめられて、それは承認を与えたけれども、一体そういうもの以外のワク、もうすでに飛び出しているものに対してどこで承認を得て、どういう法律的な根拠でやったのだというような論議がなされたやに、つい先ほどでございますが伺っておりますから、その問題に関連しては申し上げません。申し上げませんけれども、しかし、昨年の朴・大平会談による、閣僚会議の前日の九月四日のこの朴大統領の約束というものがきちっと守られなければいけませんし、守らないとするなら何が理由でどういうふうになったんだという、韓国にわが国からする有償、無償の協力に対する、追跡調査ではありませんが、チェックをきちっとするくらいなことがかえって私は親切だと思うのです。二十四日、第七回の閣僚会議が延期になりましたけれども、少なくともこれが行なわれるといたしましたときのテーマが、第二次から第三次、第三次から第四次へとずるずると日本を引っぱり込んで、まるで当然の予算でも獲得するような形で、現在巷間伝えられているような、韓国から日本に対して長期開発計画に対する新たなばく大な要請というものが出されているようなことを見のがしてはいけないと思うのですが、一体昨年の約束に基づいて今日外務大臣はどのような処置をとられようとしているのか、お伺いしたい。
  88. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま御指摘の朴大統領の決意、すなわち去年から始まりました第三次五カ年計画終了の段階までには経済自立を達成したい、そして政府レベルの援助を期待しなくても韓国経済が回るようにする決意であるということは、その後閣僚会議あと発表されましたコミュニケにもうたわれておるわけでございまして、その後韓国側から、せっかくうたったけれどもそのようにやれなくなったという通知は受けていないわけでございまして、私は、そこでおごそかに宣明された御決意に変わりないものと承知いたしております。
  89. 原茂

    ○原(茂)委員 これも、そこら辺のいろいろな事例をあげながら、いま外務大臣のおっしゃったことを事実に基づいて反駁できると私は思っているのですが、きょうは残念ながら時間がない。こんなばかな答弁をそのままに実は容認するわけにいかない。私はそのことは後に譲らざるを得ないのですが、韓国経済の実態というのは一体現在どうなっているのだろうということを考えた上に、この長期開発計画は七三年から八一年まで続く計画なんですが、この計画のスタートにおいてすでに、こまかい数字を申し上げるのも時間がないようですけれども、少なくとも毎年約十一億二千六百万ドルの外資導入がこれから長期計画計画されているわけです。その八一年、終わりまでの平均の年間の元利償還金額はどのくらいになるかといいますと、十一億四千万ドルぐらいになる。平均十一億二千六百万ドル外資を導入するという計画で七三年からスタートしていて、しかもその毎年毎年の平均元利償還金額というのは十一億四千万ドルをちょっと上越すのですね。要するに外資導入をして新たな長期経済計画を立てるのだといいながら、外資が入ってきても、そのお金は、それよりももっと多くの元利償還をしなければいけない状況にすでになっている。先ほど綿貫委員からも御指摘があったように、今日までを見たところでこの四〇%以上のものは元利償還に充てなければいけない、それもできないという状況なのに、引き続いて新たなこんなばかげた四百億ドルに相当するような長期計画をやったその結果は、韓国経済は破産をしてしまう状況になる。  私がこういう問題を取り上げてまいります究極の考え方は、結局外資導入外資導入で韓国経済が行なわれていった結果は、自立経済を達成するなどという朴大統領考え方やその表明していることとはうらはらに、その分だけ外国の経済に隷属をしていく道を朴政権は歩んでいるのだということを、現在もそうですが、これ以上進んでいった第三次五カ年計画のごときは、韓国をにっちもさっちもいかない、たいへんな外国資本の隷属下に置くことを、みずからその道を選んでやっているのだ、こういうことを指摘したいのだし、しかも今回の金利その他をだんだん考えたときには直接投資以外にないというので、直接投資にどんどん転換をするというようなことから、結局韓国というものが日本経済の一領域みたいな形にならざるを得ないところまでもう完全にレールが敷かれている。韓国国民というものを相手にして外交は、日本の政治は行なわれなければいけないと思うのです。朴政権を相手にして、朴政権だけの軍事独裁を強化して、南北朝鮮の対立に決してくずれることのないように朴政権の援助だけに急なるがゆえに、ほんとうの韓国国民の将来、あす、いまを考えたときのいわゆる日本の資本によるこの完全な隷属化というものが、日に見えてそのレールが敷かれているのをそのまま素通りして、韓国国民のいわゆる経済自立なり利益というものを全然眼中に置かない、朴政権だけを眼中に置いているいまの経済協力援助のやり方というものはたいへん大きなあやまちを政府自身がおかしているし、かつて日本がその道を歩んでまいりまして、そのためにアメリカの経済に隷属しているというわれわれの主張をだんだんに変えていくようなことに相当の苦労をセクション、セクションでは行なってきたというようなことを考えますと、どうもいま日本政府が行なっている朴政権だけを眼中に置いて軍事体制を強化することで南北朝鮮の対立がくずれることのないようにしようというような結果は、日本の資本の、いわゆる日本経済の一領域として韓国を隷属化していく、こういう道に通ずるのではないかという心配があるし、間違いなくそうなる、こう考えていますので、これに対して明快な御答弁をいただいて、改むべきは改むべきだと思う。という意味で、基本的に韓国に対する経済協力というものはここでもう一度考え直す、チェックをし直す、スタートをし直すべき時期が来ている、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  90. 大平正芳

    ○大平国務大臣 韓国経済自立できるかどうか、国際的な隷属状態になるかならぬかというような問題について、原さん自身の御憂慮が表明されましたが、私は、おことばを返すようでございますけれども、そういう問題をまず第一義的に真剣に考えられておるのは韓国じゃないかと思うのであります。そして、韓国の合法政権の指導者として大統領が自立の決意を表明されておるわけでございますから、それはおまえさん、だめじゃないかと言う必要は一つもないわけでございまして、この決意に従いまして、かの国の経済計画が順調に運びまして、自立が達成できてまいりますことは、経済的な安定ばかりでなく、政治的な安定にも通ずる道であると考えておるわけでございます。  第二に、そういう場合に日本政府は何をすべきであるか、何をすべきでないかということがわれわれの課題なのでございまして、われわれといたしましても、先方から御要請がございますから、これを右から左にお金を出すということをやっておるわけではないのであります。いわんや、わが国の経済韓国経済を隷属さそうなんという意図を持ってやっておるわけでも決してないのでありまして、プロジェクトを、十分そのフィージビリティーを吟味いたしましてかの国の自立計画に寄与し、民生の安定に寄与するであろうということをわれわれが判定いたしたものにつきまして、手順を踏んで援助いたしておるわけでございますので、私はあなたに対してのお答えといたしましては、御憂慮のほどは拝聴いたしましたけれども、そういう問題につきましては、まず先方が真剣に考えられておることと私は期待いたしております。
  91. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 この際、関連質疑の申し出がございますので、これを許します。稲葉誠一君。
  92. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 時間の関係で要点を三つにしぼってまとめて質問だけいたします。  一つは、大平さんとロジャーズとの会談ですね。この中で一体この前どういうことが話し合われたのか、これは国民は非常に聞きたかったところだと思う。考えられることは、朝鮮問題、韓国問題、そして韓国に対するアメリカの協力というか援助というか、それがだんだん減っていく、その肩がわり、穴埋めを日本がしてほしいということが第一。第二は、いわゆる四万の国連軍が遠からず撤退をする、そのあと日本が自衛隊なり何なりで埋めてほしいというふうな要請があったと伝えられておるのですが、その点はどうかというのが第一の質問。  第二の質問は、今度の国連総会で、一体日本はいわゆる朝鮮問題に対してどういう態度をとるのか。アメリカは日本韓国と一体となっていろいろ相談をしながらやるのだとしても、どういうふうな態度をとるのか。その他の国が出すいわゆる国連軍と称されるものの撤退の決議案が出てくる、あるいはこれが勝つかもわからないという情勢の中で、日本はどういう態度をとるのか。これが第二点。  第三点は、金大中氏の問題について、これは私は法務大臣にも聞いたのですが、これは宇都宮さんの論文その他もありますが、アメリカは相当程度に、どういうことばが正確か、介入というかコミットというか、とにかくいろいろな中に入ってきておる。こういうことが考えられるとすれば、金大中氏の問題の解決にはアメリカが中に入らなければ解決ができないということなのか、このことについてアメリカの意向というものを聞きながら解決をしようとするのかどうか。質問はこの三点だけです。
  93. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ロジャーズさんとの会談におきましては、いまあなたが御指摘になったようなお話はございませんでした。韓国に適正な軍事力を当分維持していくという意思の表明はありました。しかし、わが国にこうしてくれ、ああしてくれという注文は一切ございませんでした。  それから第二の国連問題でございますが、国連軍の問題につきましては、これはいわば……(稲葉(誠)委員「国連軍だけではなくて、今度の国連に臨む態度です」と呼ぶ)国連は朝鮮事変以後ずっと朝鮮問題に関与してまいったわけでございまして、言うところの国連軍の駐とんも安保理事会の決定で行なわれたものと承知いたしておるわけでございます。今日、南北の対話が始まった、韓国におきましても新しい外交政策の表明があったという段階におきまして、朝鮮半島の平和と統一という道標に向かって、この段階において国連は何をすべきであるか、何をすべきでないか、そういった点について国連のメンバーの一国として日本が適切と考えられる希望を表明するというのがいまわれわれの立場であろうと思うのでありまして、南北朝鮮が同時に国連に加盟するということであれば、それはたいへんわれわれが希望するところであるということが第一点。  それから第二点は、朝鮮復興委員会、UNCURK自身がもう任務を終えて解体の意思を表明いたしておりますが、それはけっこうであろうということ。それから国連軍につきましては管轄が安保理でございますから、安保理が休戦協定その他の事情を踏まえた上で適切な措置を慎重にとられることを希望するというようなラインを中心にいたしまして一つの決議案が関係国の間にできましたので、われわれもその共同提案国として責任を分かとうということにいたしておるわけでございます。  それから第三の問題でございますが、金大中事件という不幸な事件は日韓間に起こった問題でございまして、あくまでも日韓の間で解決すべき問題でございまして、アメリカにあっせんを依頼するというようなつもりは毛頭ありません。
  94. 原茂

    ○原(茂)委員 では、終わります。
  95. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 庄司幸助君。
  96. 庄司幸助

    ○庄司委員 最初大平外務大臣に御質問申し上げますが、対韓援助のみならず、すべての海外援助ですね。これの原資となっているものは日本国民の血税とそれから零細な積み立て金あるいは貯金、こういったものが原資になっていることは間違いないだろうと思うのです。輸出入銀行や協力基金、この関係だけ見ましても二兆三千億円くらいの政府貸し付けが行なわれております。こういった国民の血税と零細な貯蓄や積み立て、こういったものを利用して対韓援助が行なわれているわけでありますから、当然に政府としては、相手国経済状態の推移ですね、これは冷静に見守っていく必要があるだろうと思うのです。その点でお伺いしたいのは、現在、大臣が先ほどの御答弁で、向こうからの要請があったからといって右から左へと出すものじゃない、相当考えて出すのだといわれるようなことをおっしゃっておりますが、その点で韓国経済、これは自立のために援助しているのだ、こうおっしゃっておりますが、この韓国経済の現状あるいは韓国の国家財政の現状についてどのような分析をしておられるか、この点簡単にひとつ御答弁願いたいと思います。
  97. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほど原さんからも御指摘がありましたが、確かに韓国経済がオーバーボローイングの状態になっておる、そして国際収支もまだバランスを回復するに至っていない、そういう状況は私どもも承知いたしておるわけでございます。一つの国の経済考える場合に、とりわけ後進国あるいは開発途上国の場合におきまして一番大事なのは、私は農業経済がしっかりしておるということであると思うのでございまして、工業化というのはその基盤の上で初めて実りが出てくるのではないかと判断するのでございまして、そういう観点から申しますと、韓国といたしましては重化学工業化をやや急ぎ過ぎるという感じが私はしないものでもないのであります。  そこで、われわれは経済協力をやる場合におきまして、まず、これは韓国ばかりじゃございませんで、エカフェの総会におきまして私もアジアの各国に訴えたのでございますが、やはり農業基盤をしっかりさせようじゃないか、そのために日本も資金面におきましても技術面におきましても応分の寄与をするつもりであるということを宣明いたしたわけでございましたが、韓国におきましても、そういう点においてもっと農業経済の基盤が確立されることが望ましい、いわば成長のテンポというものをあまりお急ぎにならないで、じっくりと基盤を固められながら着実な前進が望ましい。しいて感想を求められるならば、私はそういう感想を持ちます。
  98. 庄司幸助

    ○庄司委員 幾らかおわかりのようでありますが、しかしもうちょっと詳細に数字を見ますと、そういった農業経済の問題や工業化の急ぎ過ぎとか、そういったことだけじゃなくて、もっと根本的な問題で韓国経済の破綻がやはり数字の上に出ていると思うのです。先ほど原委員がおっしゃった例の外国投資の投入計画や借款の導入計画にしても——これは時間がないからこまかいこと言いませんが、借金を返すため借金を重ねる、こういった実態がいろいろな数字を見ると出てくるわけです。八一年までの長期開発計画を見ても、それをさらに進めようというような性格がやはり出ておる。これは原委員も指摘のとおりであります。こういった状況に対してやはり手放しで、いままでのような態度で野放しの援助を続けていった場合、日本国民の血税と零細な積み立て金の行くえが、幾ら朴政権が保証するといったって、取れないところ、ないそでは振れないとなればこれはだめなんですから、そういう点で非常に心配な点があると思うのです。  それからもう一つ韓国予算ですね。七三年度の予算、これは大蔵省の調査月報で報告されておりますが、これも非常に不健全な予算の組み方だとわれわれは断ぜざるを得ないと思うのです。たとえば歳出の面では国防費が二八%も占めておる。そして一般経費は非常に微々たるものだ。国防費と財投が五〇%以上占めておる。それから歳入面ですね。歳入面でいうと非常にたいへんな問題があるやに感ぜられるわけですが、これはソウルの経済新聞の七三年一月十三日号に載った、ある一線税務局員の談話でありますが、すでに税収実績は非正常的な方法によっても——これは日本の税務署のやり方にも出ておりますが、もう限界に達した、こういうことをいっておるのですね。そして韓国では繰り上げ徴収という制度までとられている。繰り上げ徴収というのは、日本の場合ですと所得税の場合は、取ったものに対して税金をかける。ところがこれは翌年度の分を見越して繰り上げて徴収しておる。こういった繰り上げ徴収が六八年から起こりまして、現在では七二年六百億ウオンになっておる。もうすでに税金面でも限度に達している。しかも間接税、物品税の伸びが非常に大きい。こういう実態が大蔵省の調査月報の数字やらその他の数字から出てまいるわけですが、経済面ではやはり破綻の様相を呈している。一方、国家財政もそれを反映して危機的な状況にある。こういうところへずるずると右から左へというような印象を与えるような援助を与えていったのでは、これはたいへんなことになるのじゃないか。かえって恩を着せようとしてあだになる、こういうことまで考えられるわけです。この点で私は、外務大臣あるいは通産大臣あたりも御存じならばひとつ御答弁願いたいと思うのです。
  99. 大平正芳

    ○大平国務大臣 オーバーボローイングでございますとか経済自立がなかなか達成できないというのが後進国、新興国全体のいわば状況でございまして、世界で九十カ国ぐらいの後進国が、そういういまあなたが御指摘になったような困難をかかえながら、険しい再建の道を、自立の道を歩んでおるわけなんでございまして、われわれ先進国の仲間入りをいたしておるものといたしましては、十分の理解と同情を持ちまして、こういう問題の困難の打開にお力添えをするという責任があると思うのでございまして、その場合、あくまでも、あなたの論旨から申しましても、経済自立に役立つように、民生の安定に役立つように、援助は慎重にやらなければならぬという御趣旨に拝聴いたしたわけでございますが、われわれ政府といたしましても、全くそういう気持ちをもちまして現実の援助政策の実行に当たっているわけでございます。
  100. 庄司幸助

    ○庄司委員 大臣は、自立に役立つように援助しているとこう言う。これは本会議答弁でもどなたかもおっしゃっておりますが、私は、やっぱりこれは自立に役立っていないと思うのです。むしろ韓国経済を現状のような状況に追い込んでいっているのが、やはりこの経済援助一つの性格だ。ですから、この自立に役立っている、自立のためにやっているんだという政府の重ね重ねの御答弁ですが、これは逆じゃないか、こう思うのですよ。これはいま時間がありませんから、ここで論争はしませんけれども、そういう問題点がある。  それからもう一つ、私、次に申し上げたいのは、日本の対韓経済援助問題点として、やはりこの七二年度で財政借款あるいは商業借款、合わせて総額十二億六千六百万ドルがつぎ込まれている。これは七三年度の朴政権の国家予算が大体十六億ドルですから、ほぼそれに匹敵するぐらいもうつぎ込まれているという問題があるのです。政府から当委員会に出された資料を見ますと、そういう中で、日本の民間資本、この直接投資が非常にふえてきていますね。これは昭和四十一年度、一件で二百五十万ドルだったものが、四十七年度から急にふえていますね。四十七年度になると、百九十六件で投資金額は一億四千六百万ドル余、そして本年度は、四月から七月まででさえも八十七件で三千二百六十五万ドル、これぐらいふえてきておる。これは今後もっとふえる傾向にあると思うのですが、こういう日本の直接投資がどんどんふえていくという問題は、一体韓国でどういう扱いを受けたり、日本の進出企業が韓国でどういう実態になっているのか、その点でひとつお伺いしたいのです。  第一点としてお伺いしたいのは、日本の進出した企業、あるいは合弁もありますけれども、それで韓国経済の生産のシェアをどれぐらい握っているのか、これをひとつ通産大臣からでもお答え願いたいと思うのです。
  101. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 わが国企業の韓国に対する直接投資は、四十八年七月末現在で許可を与えたものが、いまお示しのとおり四百九十三件、金額で二億三千九百万ドル、このうち四十七年度が百九十六件、一億四千六百万ドル、四十八年度が四月——七月で八十七件、三千三百万ドルであります。これを業種別に見ると、製造業が四百三十一件、二億一千八百万ドルとその大宗を占めております。製造業のうちでも繊維産業が四六・六%、金額ベースで、以上の数字です。最もウエートが高く、次いで電気機械が一八・五%、鉄、非鉄製品が一二・二%のウエートで、これらの三つの分野で投資の中の四分の三強を占めております。  わが国企業の対韓投資が韓国経済に与える影響については、韓国政府が基本的には、外資導入を民生の安定と国民経済の発展のために活用していくという方針を打ち出していることからもうかがえるように、われわれは韓国経済の平和的発展に寄与しようと思って、やっているわけであります。  そこで韓国経済の中で、それらの合弁等がどの程度のパーセンテージを占めているかということでございますが、いま私の手元にその数字がございませんので、もしここでわかっておれば局長答弁させますし、わかってなければあと調査の上、御返事を申し上げます。
  102. 庄司幸助

    ○庄司委員 それはあしたまた質問がありますから、それまでにひとつ資料を出していただきます。  そこで、私が調べた数字でありますが、日本が進出した資本の設備の比重、これを見ますと、セメントの場合は大体五一・四%のシェアを占めておる、設備だけですがね。そのうちでも、三菱重工だけでそのうちの四八%ぐらい占めている。それから肥料は、これは尿素とか溶成燐肥とかありますが、溶成燐肥は六八・五%、尿素が四九・四%、こういう数字です。それから化学繊維、繊維ですね、これは五〇%だ、そのほかにアルミニウムの場合は、大体生産設備の一〇〇%近くを日本の企業で押えている。それからガラスの場合も、板ガラスの一〇〇%、それから鉄鋼や金属工業の場合は、薄板、冷間薄板で五七・一%、それからギア生産ですと八〇%、こういうかっとうですね。日本のいわゆる資本が韓国にどんどんとこうやって急速に進出をして、韓国経済のシェアをほとんど独占していくようなかっこうに見えるわけですよ。そうすると、先ほど原委員からも御指摘があったとおり、日本政府の対韓援助が呼び水になって、日本の資本の対韓進出がどんどんと出ていって、韓国経済を壟断ずるような形がだんだん出てきている。これは数字が事実雄弁に物語っているわけですが、この点、私は、やはり韓国に対する経済援助の性格が雄弁に出ていると思うのですよ、こういう側面が。そうすると、これは韓国国民から言わせれば、あのいまから二十八年前まで日本の総督府によって支配されていた、主権が三十六年間も侵害されていた、あの忌まわしい思い出が、今度は経団連という——これは経団連ということばを使うかどうかわかりませんけれども、日本の財界によって、また総督府のような隷属を受けてくる。これは労働者の生活なんか見ていても、現にそうなんですね。労働者の賃金が日本の労働者の賃金の五分の一ぐらいだ、こういわれております。こういう形が出ているので、私は、ほんとうに日本と朝鮮の民族間の友好のきずなをやはりこの経済援助が断ち切っていっている、そういう性格を持つのだろうと思うのですよ。これは事実はそういうふうになっておりますし、また、韓国の中の排日運動の問題も、これは大臣お聞き及びだろうと思うのです。こういうもの、日本政府海外援助が使われているとすれば、これはたいへんなことだ。その点で、いまの朴軍事独裁、ファッショ的な政権に対するてこ入れであるこの対韓援助、これはやはり当然に、政府援助も民間援助も、いま金大中事件を契機にして考え直して、思い切って打ち切る。これが日本と朝鮮の民族の友好のほんとうに大事な点じゃないかと思うのですよ。そういう点で大臣の御見解をひとつ伺っておきたいと思うのです。
  103. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 外国に対する経済協力は、その国民に歓迎されて行なわれなければならぬとわれわれも考えております。  韓国に対する経済協力は先方政府の強い御要望もあって、日韓経済閣僚会議等で協議をして、先方の要望に応じてわれわれは協力しておるのであって、われわれのほうから恩着せがましく、あるいは押しかけるようなことでやっておるのでは断じてないのであります  それで、最近における韓国経済の目ざましい成長、特に国民所得の増大等を見ますと、やはりわれわれの経済協力がある程度実を結びつつ、また歓迎されていることもあるのではないかと考えておるわけでございます。しかし、経済協力を行なう場合には、相手の国民の立場をよく考えて、そのナショナリズムと衝突しないように、また民族的プライドを傷つけないようにするということが非常に肝要であると考えております。われわれはそういう気持ちを持って、韓国との経済協力一つ一つ慎重に、ケース・バイ・ケースで検討しつつ行なっておるのでありまして、今後もそういう心組みを持って行なっていきたいと思っております。いままでのところ、相手側の国から排斥されたり、経済協力は要らぬとかそう言われたことは、韓国に関する限りはございません。
  104. 庄司幸助

    ○庄司委員 これはまたあすでもゆっくり時間をかけて論戦することにしますが、その次にお伺いしたいのは、政府からちょうだいした韓国不実企業、これは一六ページにありますが、二十六社ございますね。ところが、この注がついておりまして、「一九七一年九月、韓国財務部が韓国国会に報告したもの。」、こうなっております。その点、私は政府が独自に調べた資料で実は答えていただきたかったのですが、それがあるのかないのか、これが一点。それから、これは七一年の数字ですから、現在の数字はどうなのかという点が第二点。それから、このうち輸銀関係がからんでいるものは何社ぐらいあるのか。その三点を、ひとつ簡単にお答え願います。
  105. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いわゆる不実企業の問題は、七一年から七二年の前半にかけて韓国に不況が到来をした、そういう事情や、あるいは国際通貨、事情や、あるいは韓国側の経営が情勢判断が必ずしも適切でなかったというような点からきているものが多いようであります。それでお手元にあるリストは韓国財務部から発表したものでございますが、最近の情勢によりますと、これらの不実企業の要因としては、これまでの高度成長の過程において外国からの延べ払い輸出に依存して、需要や製品コストについて十分な見通しなしに小規模企業が乱立する現象を起こしたことが見られ、それに経営者の経験不足や高金利などの要因が加わり、あるいは一九七一年以降の景気後退下でこのような経営が必ずしもうまくいっていないものが表面化したということであります。  いま御質問の最近の情勢については、手元に資料がありませんので、調査ができ次第、御答弁申し上げたいと思います。
  106. 庄司幸助

    ○庄司委員 それでは、私の手元にある、輸銀が関係している二十六社のうちの企業を読み上げます。輸銀の融資を受けて進出しているものですね。  これには韓国肥料がある。これは日本の企業は三井物産が関係している。それから有名な韓国アルミがあるのです。これはトーメンが関係している。それから大韓造船がある。三菱商事と三井物産が関係しております。韓国電気冶金、これは丸紅が関係している。大元製紙、丸紅関係。都南毛紡、三井物産。大林水産、三井物産と三菱商事。これはまだ貸し付け残高が残っているはずですね。それから豊田通商が関係している新進自動車というのがある。これは貸し付け残高はなくなったそうですが、こういうものもある。これはやはり日本の輸銀が関係しております。韓国政府が保証して、あとを取れますから心配ありませんとあなた方は言うだろうと思いますが、しかし、こういった不実企業が大量に発生するような経済援助では、やはりむだがある。特に韓国アルミについていろいろ取りざたされている。話によりますと、リベートが相当からんでいる。極端な話では、大体韓国側が三割で、日本側が三割だ、こういう話までささやかれているわけなんです。これは、対韓援助がほんとうに役に立っていない。一部の部分にリベートなんかで流されていっておる。国民の血税や零細な積み立て金がこういうふうに使われているということになったのでは、私はたいへんだと思うのです。  その点で通産大臣、私はこの不実企業日本の商社が関係し、また輸銀が関係し、あるいは基金が関係したかどうかわかりませんが、そういった政府関係関係しているもの、これは全部調べ上げて、当委員会に精細な資料を出していただきたい。そしてそういう企業の中でリベートがあったのかないのか。それからその企業の工場をつくるにあたって資材を納入します、この資材の納入の価格なんかも相当くさいのがあるといわれております。そういった資料を、これはあしたでも正確にリストをつくって要求しますから、これはひとつやってもらいたい。その点、通産大臣、いま捕捉しておられる関係だけでもいいですから、不実企業の問題でどういうものをつかんでおられるか。これを御報告願いたいと思います。
  107. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 まず、リベートという事実はないと確信しております。国会のこういう委員会でそういう不正のようなことがあるということは、よほど大事なことでありまして、われわれ政府としては、そういうことはないと確信してお答えする次第であります。  なお、いま御質問の内容につきましては、もし手元にわかっておることがありますれば係からお答え申し上げますし、わかっていないことにつきましては、可能な限り資料を提出いたしたいと思います。
  108. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 庄司君、時間がまいりましたから……。
  109. 庄司幸助

    ○庄司委員 最後に簡単に。もう一つは、やはり日本の企業の運営が行き詰まってきている。たとえば公害問題ですね。公害規制が非常にやかましくなったので韓国に行く、こういった傾向があるやに聞いているわけです。そういった中で、私は一つだけ事例を申し上げますが、これはこちらの日本経済新聞にも載ったあれですが、産業廃棄物の処理を韓国でやる現地側計画がある、これは九月十二日の日経新聞です。「財団法人「韓国科学技術振興会」(ソウル市、理事長李在晩氏)の手で進められている。同振興会はこのほど、廃油処理会社の関西通商を日本側の窓口に指定、まず廃油、鉱さい、沈廃船の処理を引き受ける計画。」、こういうことが計画としてあるわけですね。ところが日本の鉱滓を処理する、廃油を処理する、あのとおり苛性ソーダで水銀の鉱滓マットが出ておりますが、こういったものが韓国にどんどん持ち込まれるということになれば、この日本の対韓援助というのは韓国に公害をどんどん持っていくような性格まで持ってくると思うのです。そういう点、通産大臣、これは韓国の科学技術省の長官でさえも言っておるのですよ。日本は公害でだいぶお困りのようだから、公害企業はみな韓国によこしたらどうです、こういうことをある調査団の方に言って、調査団の方があ然としたという話が新聞に載っているのですよ。両々相まってこういうことになったら、まさに日本韓国民からきらわれ者になるということになると思うのです。そういう点からいっても——私はその問題ひとつ大臣の所信を聞いた上で、やはりこの対韓援助は、この際金大中事件政府が強腰のとれない最大の原因はこういった韓国と首までどっぷりつかった日本の資本の進出、これがやはりき然とした態度をとれない大きな原因だろうと思うのですよ。  この二点、ひとつお伺いしたいと思います。
  110. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 われわれが行なっておる対韓経済協力は、やはり平和の目的のために、また韓国の民生、福祉の向上に寄与するために、ケース・バイ・ケースでしさいに検討してやっておるのでありまして、そういうような不正あるいは忌まわしいようなことは断じてございません。これだけはここではっきり申し上げておきます。何かどっぷりつかっておるというようなお話がありましたけれども、そういうことは全然ございません。  それから次に公害の問題でございますが、人命が大切であるということは国境を越えて同様でございますから、公害を出さないような企業あるいは工場をつくるということは共通の課題であると思います。しかし立地条件、人口分布、地形、そういうような点は各国おのおの違った条件がありますから、韓国韓国条件に応じた公害の規制がございますし、日本日本のこの稠密な人口に応じた公害の規制というものがあるわけでありまして、その公害の規制の標準が、必ずしも世界じゅうが同じ基準でやるというところまでは至っておらぬのであります。各国の経済発展の段階及び各国の科学技術の水準、学者の見解等によって各国がおのおのの公害基準をおつくりになっておるのであって、われわれが他国の公害基準に対して介入や干渉がましいことを申し上げることは適当でないと思います。そういう見地から、各国ともに協議しつつ、そういう人命尊重を頭に置きながら、いろんな諸般の企業の提携協力について話をするということは経済発展の上からも当然起こり得ることでありまして、そのことがやましいことであるとは私は思いません。ただ、国境を越えて人命は大事であるという一般的方針は確認しておかなければならぬことであると思います。われわれは韓国に公害を輸出しようなどという気持ちは毛頭ございません。しかし、その経済発展の段階に応じて、まだテークオフしない国がすぐコンピューターを始めようといったって無理でありまして、次第次第に熟練労働者がふえ、経営者の実力が増大し、技術が練摩し向上して上級の段階に進むのでありまして、どの国もみなそういう過程を通ってきておるし、日本もその過程を通ってきたわけでございます。そういう経済発展の段階に応じて各国主権の範囲内でおきめになっておるその条件に応じて、われわれは協議して前進さしていきたいと思います。
  111. 庄司幸助

    ○庄司委員 終わります。
  112. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 坂井弘一君。
  113. 坂井弘一

    ○坂井委員 大平外務大臣、中曽根通産大臣、また田中総理も、わが国の対韓経済協力、対韓援助韓国の民生の安定あるいは福祉の向上、さらには経済発展に大いに寄与をしておるのだという趣旨の答弁が繰り返しなされておるようでありますけれども、はたしてそうであるかどうか。ここに韓国国会の速記録があります。一九七一年九月九日、李鐘南議員の質問であります。一節を引用します。  「IMFにおいても言っているではありませんか。韓国が外国為替政策を再調整しなかったら、遠からず、危機がくると……。また、とくにIMFが何といいましたか。借款業体をさして、外債費用があまりにも多すぎるため、韓国の借款は成功していない、と言っています。外債費用とは何か。政治資金としてとられ、他の費用が多くかかるために、だめだということなんです。」韓国アルミニウムの話ですがと、韓国アルミニウムの例をあげて、そして調査をして処罰をしたか、きわめて具体的な問題に対してその額もあげて韓国国会の場において議論がされておる。つまり、いまも話に出ましたが、韓国アルミ、これは一九六二年二月の設立でありまして、この日本側の企業、融資者はトーメンであります。主要メーカーは日立製作所、技術提供者は昭和電工、この借款が千三百四十八万ドル、これは間違いございません、外務省の資料による。ところが元利金返済不能となって、政府系の韓国産業銀行がすべての債務を引き受け、国営企業に衣がえをしてしまった。その間、借款千三百四十八万ドルのうち実際にプラント代に支払われたのが七百五十六万ドル、残り五百九十二万ドルが行くえ不明になった。これが韓国の国会において議論され、かつまた特別委員会において相当この問題に対して究明された、こういう事実があります。この問題を指摘する中で、私は、具体的にはたして対韓援助なるものが実態面において韓国の民生あるいは福祉あるいは経済向上、それに寄与でき得たかどうかということについて明らかにしていきたい。  その前に、ここで取り上げるのは民間信用供与、つまり商業借款であります。この事務的な手続は、これまた正確に申し上げたいと思いますが、「日韓経済協力外務省経済協力局の一九六九年八月の中に「日本業者より先方バイヤーと契約後、通産省にプラント類延払輸出調書が提出され、省内の延払い委員会更には大蔵省との定期協議会にかけられ承認差支えなしということになって供与が内定する。この結果、輸出承認申請書が通産省に出され、後、輸出承認申請書とともに日本輸出入銀行に貸付申請が提出され慎重な審査の上、貸付けが決定されている。」こういう手続を踏んで民間商業借款供与が決定される、こういうことであります。ところで、いま韓国アルミの例を一つあげたわけでありますが、これには輸出入銀行の金が出ておる。いま庄司委員からも指摘がありましたが、本委員会に提出されたいわゆる韓国不実企業二十六社、これは韓国外務省発表によるものであります。その中に本邦企業ないし輸銀が関係したものはということで、いま指摘があったわけでありますが、私は、さらに私の調査によってつかみ得た範囲内において、その実態をつまびらかにしたい。これは私の調査が間違いないかどうか、ひとつ確認をしていただきたいと思うわけでありますが、その前に一つお聞きします。二十六不実企業の借款額及び関連銀行の管理形態はおわかりになっておりますか。銀行管理になっております。
  114. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 私どものほうではつかんでおりません。
  115. 坂井弘一

    ○坂井委員 それでは申し上げましょう。韓国鉄鋼、借款額は三百五十万ドル、この管理銀行は産業銀行、管理形態は出資管理であります。仁川製鉄二千二百三十八万六千ドル、銀行は同じく産業銀行、管理形態は同じく出資管理。韓永工業、これは電気機器工場でありまして、二百七十三万二千ドル、銀行、管理形態は同じであります。次は韓国肥料四千四百七万七千ドル、銀行、管理形態は同じであります。興韓化せん千百二十九万三千ドル、以下同じ。韓国アルミ千三百四十八万七千ドル、以下同じ。これの関係日本企業はトーメンであります。前後しますが、先ほどの韓国肥料につきましては三井物産であります。次は韓国造船公社五百二十六万六千ドル、これは産業銀行、部分管理であります。三菱商事、三井物産。次は新進自動車二千七百五万五千ドル、産業銀行、部分管理。これは豊田通商。それから韓国電気冶金八十七万三千ドル、産業銀行、全面管理。これは丸紅であります。大鮮造船三十八万ドル、産業銀行、全面管理。これは丸紅と思われます。それから韓国麻紡二百四十七万五千ドル、産業銀行、全面管理。東立産業、総合食品加工でありますが、千二百万ドル、産業銀行、部分管理。三栄ハードボー下百七十八万二千ドル、産業銀行、部分管理。大韓光学五十万七千ドル、商業銀行、部分管理。興和工作所四百三十二万ドル、商業銀行、部分管理。和一産業二百七十八万五千ドル、法定管理。三成製鋼百五十万ドル、商業銀行、全面管理。大成木材二千三百五十二万五千ドル、朝典銀行、全面管理。大元製紙百三十万ドル、朝興銀行、部分管理。これは丸紅であります。三洋航海三千百九十四万七千ドル、第一銀行、全面管理。都南毛紡六十万ドル、第一銀行、部分管理。これは三井物産であります。三安産業七十万六千ドル、第一銀行、部分管理。大林水産四百九十二万九千ドル、韓一銀行、部分管理。三菱商事、三井物産であります。内外紡績百七万ドル、韓一銀行、部分管理。泰興産業七百万ドル、外換銀行、部分管理。それから豊韓産業二百十八万六千ドル、外換銀行、全面管理。これも日本商社が関係していると思われます。  以上、二十六社のそれぞれの不実企業の管理銀行及び管理形態及び関係日本企業の関係している分について申し上げました。  なお韓国肥料、これは繰り返し申しますが三井物産で、輸銀が出しております。韓国アルミ、トーメンにつきましても同じく輸銀。韓国造船公社、三菱商事、三井物産これも輸銀。それから新進自動車、豊田通商、これは輸銀の貸しはもうありません。済んでおります。韓国電気冶金、これは丸紅、輸銀が貸し付けしております。それから大元製紙、丸紅、これも輸銀。都南毛紡、これは三井物産、同じく輸銀。大林水産、三菱商事、三井物産、これも輸銀。つまり輸銀がこの二十六社のうち八社ということになりますが、間違いございませんか。
  116. 前川春雄

    ○前川説明員 輸出入銀行の副総裁の前川でございます。ただいまの御質問に対してお答えいたします。  民間借款で輸出金融でございますので、輸銀の貸し出しは日本の輸出社に対して行なわれておりますが、日本の輸出社が延べ払いの信用をただいま御指摘の八社に対して供与した事実はございます。
  117. 坂井弘一

    ○坂井委員 供与した事実はあるということでありますが、この二十六不実企業以外に本邦企業が関係している不実企業はございますか。お調べになっていらっしゃいますか。
  118. 前川春雄

    ○前川説明員 この二十六企業以外にいかなる企業が不実企業であるかということにつきましては、輸銀は承知しておりません。
  119. 坂井弘一

    ○坂井委員 では私のほうで調査しましたものを申し上げますが、大韓プラスチック、借款額は三百六十万ドルであります。関係日本企業はチッソ化学、輸銀はチッソ化学に融資をしているはずであります。それから共栄化学工業、借款額が三百三十八万ドル、これは三井物産、同じく輸銀を使用しております。韓国化成工業八百二十万ドル、これは三菱商事、これも輸銀が関係している。この三社については間違いないでしょうか。
  120. 前川春雄

    ○前川説明員 ただいま御指摘の三社につきまして不実企業であるかどうかということにつきましては、輸銀は承知しておりません。
  121. 坂井弘一

    ○坂井委員 外務省にお尋ねしますが、四十七年七月、外務省経済協力局が韓国第三次経済開発五カ年計画調査団報告書を出されております。この中にいま申しました企業が出てまいりますが、それらとあわせていま私が二十六社あげましたが、この借款額と銀行管理形態、間違いでないかどうか、外務省から御答弁を願いたいと思います。
  122. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 繰り返すようでございますが、私どものほうでは、先方銀行の管理形態については詳細承知いたしておりません。
  123. 坂井弘一

    ○坂井委員 ちゃんとあるんですよ。大韓プラスチック、共栄化学、調査報告書の中にはっきりあるんです。これはあなたのほうの調査でしょう。先ほど二十六社というのは韓国の外務部の発表です。少なくとも昨年調査団を派遣しまして、報告書の中にあるのです。あるから私は言っておるのです。だから、少なくともその程度のことはつかめておるんだから、私は確認しますと言って確認を求めておるわけです。いかがですか。
  124. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 経済協力局長、時間がありませんから急いでください。
  125. 坂井弘一

    ○坂井委員 では外務省あとでお調べください。  輸銀にお尋ねしますが、いま私があげました大韓プラスチック、共栄化学工業、韓国化成工業、この三社は輸銀の融資、出ておりますか。どうですか。
  126. 前川春雄

    ○前川説明員 先ほど申し上げました件と同じに、輸出信用でございますので、輸出入銀行は直接の融資はしておりませんが、輸銀が融資いたしました日本の輸出社から延べ払いの信用が出ておりまして、日本の輸出社に対する延べ払い信用供与に関して、輸銀から日本の輸出社に対する信用の融資が出ております。
  127. 坂井弘一

    ○坂井委員 正確にはそのとおりでしょう。そのとおりでけっこうなんです。つまり本邦企業に対して、輸銀が輸出信用供与のワクを認めておるということでありますから、それはそれなりにけっこうなんです。  もう一度確認いたしますと、輸銀の関係する分は、そういたしますと八社と三社で十一社になりますか。
  128. 前川春雄

    ○前川説明員 繰り返して申すようでございますが、プラスチック三社が不実企業であるかどうか、輸銀は承知しておりませんが、いまの八社と三社に対して輸銀の融資の事実はございました。
  129. 坂井弘一

    ○坂井委員 そういう事実はないとおっしゃるわけですか。
  130. 前川春雄

    ○前川説明員 いま私が申し上げましたのは、輸銀の融資の事実があったと申し上げました。
  131. 坂井弘一

    ○坂井委員 わかりました。それ以外にございませんか。つかめておりませんか。
  132. 前川春雄

    ○前川説明員 輸銀はどれが不実企業であるかということにつきましては、外務省から出ました資料、あの表以外には承知しておりませんので、不明でございます。
  133. 坂井弘一

    ○坂井委員 まだあるんですね。たとえば新韓碍子工業、これは日商岩井から三百四十五万ドルの資金を借りてつくった借款企業です。これが操業開始不能、これに対する輸銀は日商岩井、これもあるはずだと思います。さらに東洋セメント、これはいま整理に入りまして大きな反響を呼んでおります。韓国のセメント業界の草分け的な存在だ。これは三菱商事から百三十五万ドルの融資を受けた借款会社、この会社の負債が七十億ウオン、そのうち三十二億ウオンは月利が三ないし五鬼の私債資金、私債で倒産した。これも輸銀は関係おありじゃないでしょうか。東洋セメント、同じく新韓碍子工業。
  134. 前川春雄

    ○前川説明員 ただいまの新韓碍子工業並びに東洋セメント、この両社につきましては、不実企業であるかどうかは輸銀は承知しておりませんが、日本の、輸銀の輸出金融が間接的に供与されております。
  135. 坂井弘一

    ○坂井委員 以上で明らかになったことは、私のほうの調査では、少なくとも不実企業が三十一社、これに関係する輸銀が十三社、まだあと非常にたくさんあると思われます。外資導入百四十七企業のうち、不実企業が四十五あるといわれているというようなことが調査団の報告書の中にもある。もっとあるのではないか。しかも管理形態が、いま申しましたような韓国の銀行、と申しましても、これは言うなれば一種の国策銀行みたいなものでありまして、政府が何らか、非常に大きな関係を持っておる。産業銀行、外換銀行、これはもちろん政府関係銀行であります。ところが、商業銀行、朝興銀行、第一銀行、韓一銀行等にしましても、商業銀行でありますけれども、三三ないし四三%程度政府が株式を保有しておる、こういう銀行形態であります。  そこで、それらの銀行の昭和四十五年度の上半期の収支を見ましても五億ウオン以上の赤字が出ておる、こういう韓国銀行の収支悪化は、基本的にはやはり不良債権の累増、それによって起こった、いわゆる不実企業に象徴される企業の経営悪化、これと関連するものである、こういわれておる。したがって、政府関係韓国銀行のこうした赤字は不実企業がふえればふえるだけ大きくなる。そのことは、突き詰めていけばやがては韓国国民の血税という形で韓国国民にツケが回ってくる。つまり民間借款供与を、商業借款によって韓国との取引が本邦企業において行なわれる。ところが、その信用保証は韓国外換銀行が保証しておる。したがって、債権保全上は何ら問題はない。不実企業がどんどんできる。しかも先ほどあげたような韓国アルミのような、これは全くひどい例でありましょうけれども、そういうような形の中で結果的には韓国国民のツケ。だから、これは裏返しにいえば、経済侵略の何ものでもないじゃないかというような批判も一部起こってくる。韓国においては借款亡国だというようなことも議論されておる。韓国要請だから、わが国はそれに対して援助をするんだ、民主安定、経済復興、うたい文句ははなはだけっこうです。しかし、実態はそうなっていないというところに問題がある。こういう不実企業を生み出す、しかもその手続の仕組み、行動的な分におきましても通産省、大蔵省またはその以前の問題として外務省、これは大いに私は責任があると思う。なおはっきり言っていますよ。有力者の口添えがなければこの経済援助の借款供与のワクの中に入れてもらえない、そういう声が聞かれておるということをあなた方調査団もここで指摘していらっしゃる。この仕組みの中で何か問題があるかというと、一つには「同一分野で日本の商業借款によるものが乱立し、過剰設備となって共倒れ傾向となっているものもある現状である。」これはどういうことか。「商業借款が信用供与枠として設定されたため、借款導入の許可に当って枠の消化の見地から通常より慎重な配慮が欠けていたものと思われる。」調査団の指摘であります。報告であります。つまり、そのようなでたらめなあるいは最初に借款ワク、信用ワクがきめられた、われもわれもとそのワクに飛びついてくる、有力者の口添えがある。同じような企業がメジロ押しにやってくる。取捨選別もしないで、それでもってこの許可を与えた、ここらに大きな問題があるということをみずから認めていらっしゃる。だからそういう点の反省がない限り、まだなお不実企業を生んでいくでしょう。そのことは先ほどから何回も指摘するように、とりもなおさず、これは韓国国民の最終的には犠牲をしいるということにもなりかねない。そういう点について外務大臣いかがですか。
  136. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほど申しましたように、新興国といたしましては、韓国ばかりでなく、多くの国が経済自立の険しい道を歩んでいるわけでございまして、いろいろ内外経済政策の運営に非常に難渋をいたしておるということは、一般的に理解しなければいかぬことだと思うのであります。ただ、坂井さん御指摘になりましたような症状が固定してしまって、改善の道がないというのでございますならば、これは確かに問題なのでございますが、通産大臣も先ほどお触れになりましたように、当時一般的に韓国経済が不況であったこと、通貨情勢が混乱いたしたこと、もろもろの困難がありまして、いわゆる不実企業といわれる操業度の低い銀行管理の企業が続出したということでございますが、その後、経済界がだんだん落ちつきを取り戻してまいりまして、いま御指摘になりました不実企業といわれる企業の操業状態もノーマルの状態にだんだん返っておるようでございまして、私はこのショックからいち早く回復いたしまして、健全な状態に立ち返ることを期待いたしておるわけでございます。しかしながら、御指摘にもありましたように経済協力政策、これは十分な慎重さを加えてやらなければならぬことでございまして、いまあなたがお手にいたしておりましたような調査団の報告にも見られますように、私どもも進んで調査団を派遣いたしまして、民間のすぐれた経験と感覚で事態を見てもらいまして、そうしてわれわれが配慮しなければならぬ個所につきましても遠慮なく御指摘をいただいておるわけでございまして、各プロジェクトにつきましてそういう配慮をいたして、いわゆる国民の大事な資源でございます税金処理につきましては、慎重の上にも慎重を加えていかなければならぬと心得ております。
  137. 坂井弘一

    ○坂井委員 時間が間もなく参ります。いまの対韓援助経済協力の基本的なあり方、姿勢、このことについては、さらにいまあげました私の調査一つ一つの企業を通じまして、その実態の中から、やはり改めるべきは改める。対韓援助そのものを私は否定するものではありません。ただ、その内容において、質において、真にいわれるところの民生の安定なり経済の復興なりあるいは福祉の向上に役立つものである。そして両国の友好親善ということがさらに助長されるような、そういう方向援助であるならば、それは最も望ましいと思います。しかし、現状においてはそうではないということを、きょうはきわめて短時間の中でありますが、一点指摘をして、具体的にはあらためまして、さらにその内容等につきまして質疑を行ないたいと思いますが、最後に一点だけお聞きしておきたいと思います。  一九七二年八月五日付の朝鮮日報によりますと、「洪竜熹被告五年宣告」「外換銀不正」この見出しで、洪頭取が懲役五年の宣告を受けたことを報じております。その後一九七二年十月十四日の東亜日報によりますと、「特権層に偏重融資」「財務委外換銀国監で追求」、この見出しで、「外換銀行東京支店は日貨で五十億円という巨額を貸し出したが回収の見通しはうすい」こういう報道がなされております。それから二日後の同紙十六日付には、「一部海外融資回収不能是認」これは「金外換銀行長」この見出しで記事が報道されております。これらのことと、日本の政財界は何らかの関係性を有するかいなか、一点大臣からお聞きしたい。
  138. 大平正芳

    ○大平国務大臣 寡聞にいたしまして、そういう事件と政界との関係につきまして、何ら承知いたしておりません。
  139. 坂井弘一

    ○坂井委員 何ら承知してない。ここで、このことにつきまして調査を求めるかどうかについては、大臣は直ちに御答弁にはなれないかと思いますが、調査を求める要求についてはいかがでしょうか。
  140. 大平正芳

    ○大平国務大臣 本件と政界との関係政府の手でただせということでございますか。——承りまして、検討してみたいと思います。
  141. 坂井弘一

    ○坂井委員 終わります。
  142. 宇都宮徳馬

  143. 受田新吉

    受田委員 お二人の大臣、お急ぎのようですから、私、外務大臣通産大臣、合わせて二十分間、外務大臣の持ち分の中へ通産大臣を入れてお尋ねします。協力いたしますから。  外務大臣、先ほど原委員からお尋ねの金山前大使の行くえがわからぬということでございますが、こういうことは、やっぱり政府当局として問題になった場合には、不問に付してはいけないと思うのです。どこかで健在である。韓国にいまおいでるのか、また日本へ帰ったのかぐらいのことは、元大使としての身分のある人だし、十分心得ておられなければならぬ。すなおにこういうものは考えて、質問があったときにはお答えをすべきだと私は思うのであります。第二の金大中事件のようなものになっておるのではないかという不安さえあるわけです。御答弁を願います。
  144. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほど申し上げましたように、手を尽くして所在を確かめてみたいと思います。
  145. 受田新吉

    受田委員 さっきから時間も二時間たったわけですが、外務事務当局は電話で、戻ったか戻らないかぐらいは確かめておいてもらいたいのです。いますぐ国際電話ででも聞いてもらえば、ホテルへ戻っているかいないか、依然として行くえ不明か、依然として行くえ不明となればこれはたいへんな事態である。たいへん心配をしておりますので、私の質問の終わる時点で御答弁を願いたい。  大平さん、外務大臣として、この金大中事件日本の主権を侵されたと見られるかどうか、お答えを願いたいのです。
  146. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これは本会議委員会におきまして政府側から申し上げておりますとおり、主権侵害というのは、その国の同意がなくて他の国の公権力が日本の国内で行使される状態をいうものと理解いたしておるわけでございまして、本件がそれに該当するかどうかという点につきましてまだ十分な材料が整っておりませんので、この事件が主権の侵害であると断定するというところまでは、まだまいっておりません。
  147. 受田新吉

    受田委員 主権侵害であると断定する要素は、なおどういうものを取り入れることによって可能になるのでございましょう。
  148. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま問題になっております金東雲という方が、在日韓国大使館に籍を置く外交官であるということは間違いないことと思うのです。この方がこれに関与した嫌疑が濃厚であるということでございます。これがはっきり関与したかどうかという、かりにそういう場合におきましても、その人の職務の範囲内の犯行であったかどうかということが明らかにされねばならぬと思うのでありまして、外交官の一切の行為が公権力の行使であるというわけにはいかないと思うのでございまして、そのあたりが明確にならないと断定するわけにいかないのではないか。これは弱気で遠慮して言っておるわけではないので、きわめてあたりまえのことを申し上げているのです。
  149. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、大臣のお説によれば、金東雲氏が日本へ来て調べに応じない限りは国家主権の侵害の断定は下されない、ところが向こうさまは、本人は白であると判定しておるということでありますから、これは金東雲来日なき限りこの問題の処理はできない、したがって日本主権侵害の結論は出ないと解釈してよいかどうかをお答え願いたい。
  150. 大平正芳

    ○大平国務大臣 まだそういうことを申し上げておるわけではないので、事態は究明中の過程であるということでございまして、私どもはなお希望を捨てておりません。
  151. 受田新吉

    受田委員 韓国側の報道によると、金大中並びに金東雲両氏とも、双方で捜査官の交換をやって捜査をしようということであると聞いておるのですが、これも正式の報道かどうか、外務省が耳にしておるかどうかをお答え願いたいのです。
  152. 大平正芳

    ○大平国務大臣 まだそういう御提案を受けておりません。
  153. 受田新吉

    受田委員 もしそういう提案が出た場合、これははっきりしておくべきだと思うのですが、捜査官が日本から韓国へ行って調べるといったって、環境がああいう厳重な中で真実の告白ができる可能性は非常に薄い。やはり日本金大中氏も金東雲氏も御苦労願う以外には解決の道はないと私は思うのです。金東雲氏のほうがそういう形である場合は、金大中氏については日本へ御苦労願うことについて、すでに向こうさまもある程度希望を持たせるような発言があったと聞いておるのですが、金大中氏のほうへひとまず御苦労願って問題の処理に当たってもらうほうへ外交の努力を置かれてはいかがなんですか。
  154. 大平正芳

    ○大平国務大臣 金大中氏ほか二名の方につきましては、捜査の真相究明のために、被害者としてあるいは参考人として任意陳述を必要とするという捜査当局要請がございまして、そのまま先方に要請いたしてあります。先方は、先方が調査中であるので直ちに応じがたいというのがただいままでの反応でございまして、引き続き要請を続けてまいるつもりでございます。金東雲氏につきましては、外交官、外交特権を援用の上、応じがたいという返事をもらっております。
  155. 受田新吉

    受田委員 金東雲氏がこちらへ来てくれる場合、すなおに来てくれる場合は外交特権を認めないというような形はないわけですね。特権はそのままにして御苦労願うわけですか。
  156. 大平正芳

    ○大平国務大臣 外交特権を主張しないで出頭するというつもりはないという返事なんでございます。
  157. 受田新吉

    受田委員 私、実はこの問題の処理は韓国協力なき限りは解決できない形にいまなっておるわけだし、捜査官の相互交換などという——結果的には、事実問題として全く正常な捜査ができないような形のものでかれこれ議論をするような架空の形でなくして、もっとすかっと向こうから金大中、そして引き続くお二人の三人組にあわせて金書記官も引き続きこちらへ来てもらうという、そういう強い外交姿勢を、すかっとしたもので今後の処理に当たってもらいたいと思うのです。この線を明確にして大国日本としての、韓国に対する友情も持ちながら、筋を通すことで外務大臣として努力してもらいたい。あわせて、あなたも間もなく国連の総会へ行かれるわけですから、あなたが直接韓国へ行かれるか、あるいは国連総会で韓国の外務大臣その他の責任者とこの問題についてお話をされるか、チャンスは二つあるわけなんですが、あちらへ行かれる機会がないとすれば、国連総会でこの問題の処理にあたって外務大臣同士の友情こまやかな話し合いで結論を出そうとされるか、この問題をお答え願いたいのです。
  158. 大平正芳

    ○大平国務大臣 たびたび申し上げておるように、本件につきましてはまず事件の真相の究明が第一なんでございます。それを踏まえた上で公正な解決をせねばならぬと考えております。真相の究明にあたりまして受田さんがおっしゃるとおり、被害者参考人も、またこちらから任意出頭を求めておられる方々も来ていただきまして、わが国の捜査当局捜査が進んで、究明が早期に完全に行なえることを私どもは期待いたしておるわけでございまして、そういうベースに立ちまして私どもはそのとおり先方に要請をいたしておるわけでございます。ただ、この事件が日韓両国にまたがった不幸な事件でございまして、身柄は先方にあるわけでございます。したがって、われわれのほうはそういう要求はいたしておりますけれども、先方の反応はいま私が申し上げたとおりの状況になっておるわけでございます。しかしながら、この事件の公正な解決をしないと、私は、日韓関係はフェアな納得のいく国交関係を維持運営していく上におきましては、たいへん支障が起こると思うのでありまして、その点につきましては、私は韓国も同じ憂いを持っておると思うのであります。したがって、断念しないで、しんぼう強く先方の御協力を今後とも求めてまいって、究明をできるだけ早期にやりたいと、いませっかく努力いたしておるわけでございまして、その時期、時期に応じまして私どもは有効な手段は講じていかなければならぬと考えております。
  159. 受田新吉

    受田委員 金大中氏ほか二名並びに金東雲書記官の日本への御苦労を願う形の基本線でこの捜査の解明につとめるという、この路線は変わらない、こう了解してよろしゅうございますか。
  160. 大平正芳

    ○大平国務大臣 今日までそれで来ましたし、今後もそれでいきたいと思っております。
  161. 受田新吉

    受田委員 捜査官の相互交換などは断わって、そうしていくと了解してよろしゅうございますね、もしそういう提案があっても断わると了解して。
  162. 大平正芳

    ○大平国務大臣 まだそういう御提案を受けてないわけでございまして、先方からそういう御提案があった場合にはその時点で検討してみたいと思います。
  163. 受田新吉

    受田委員 外務大臣、その御提案があったらよろしゅうございますというようなことでやったのでは、やはり筋が違います。やはりあちらからこちらへ御苦労願う以外には事件の解明はできないですよ。やはり日本で起こった事件です。そこははっきりしておいて、そのときの時点でまた考えるということになると、捜査官相互交換を了承する場合があるというような誤解を受けるわけですが、その意味ではないのですか。
  164. 大平正芳

    ○大平国務大臣 問題は事態の究明が目的なのでございますから、それにあらゆる手段を講じなければならぬわけでございます。捜査官の問題につきましては、まだ先方から御提示がないわけなんでございまして、もしあればそれは先方の提案として検討するのは当然のことと思います。
  165. 受田新吉

    受田委員 基本路線は変わらないということを了解のもとに、御提案があった場合には考える、こういうことですね。  私、中曽根通産大臣にちょっとお尋ねしたいのですが、主権の侵害があったという場合は経済援助を打ち切るというお気持ちがおありかどうかです。
  166. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私が答弁しましたのは、もし万一不幸にして主権の侵害があったというような場合には、外務当局と相談をし、閣議レベルで検討することが適当であると思う、そういう答弁をしたのです。世上伝えられたのは、その中間の条件を抜いちまって、短絡に打ち切るとか検討するとかということばが伝えられておりますが、正確にはそういうことでありまして、速記録をごらんになればわかります。まず第一に、主権の侵害ありやなしやということが問題です。その点については、いま法務当局検察当局等においてやっている最中でありまして、結論が出たわけではありませんから、まだそれに関して発言することは適当でない、そう申し上げておるのであります。
  167. 受田新吉

    受田委員 通産大臣としての見解は、私が指摘した線である。しかしそれの後には段階がある、かように了解してよろしいですね。
  168. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 つまりまず第一が事実の究明、もし条件に該当した場合には外務当局と相談をする、そして閣議レベルで相談をする、そして検討する、だから二段階まだあるわけであります。
  169. 受田新吉

    受田委員 大臣の御発言はやはり影響するところが非常に多うございますから、前提が明確であるだけに私も一応うなずける節があるのですけれども、結果的には外務大臣閣議レベル、もちろんそういう段階を経なければ、通産大臣だけで処理できる問題じゃないわけです。ただ、通産大臣の見解としては、個人の見解としては主権侵害段階におけるきびしい情勢をすかっと述べてみたい、こういう御意思だと了解してよろしゅうございますね。
  170. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私がここで慎重に述べたとおりが私の真意でございまして、受田委員の御想像と私の真意が一致しているかどうかは、私自体まだ判定できません。しかし、やはりここでも申し上げましたように、隣国と友好親善を永続的に結んでいくということ、これは一時期の波乱にかかわらず両国の国民の念願であり、大事なことであると思いますし、また一面において独立国家の尊厳を維持していくということも政治家国民に対する大きな責任でございます。そういう両方を考えながら判断すべきものであると考えます。
  171. 受田新吉

    受田委員 政府は、この韓国に対する経済援助について、特に最近民間企業の進出に対しては六月一日付で、発展途上国に対する投資、行動の指針というものを、経済団体連合会等五つの団体からこれを示しておられるわけです。これを拝見しますと、なかなか筋の通った基本的姿勢その他教育訓練にまで及ぶ内容が摘記されてあるのでございますが、私も韓国へは最近二度旅をし、また朝鮮民主主義人民共和国にも昨年、久野日朝議員連盟の一員として参加して、ピョンヤンにおいては貿易協定の、民間レベルではありましても協定の草案を、あるいは共同声明の草案をつくるなどにタッチしたものでありますが、近くて遠い国といわれる北朝鮮との問題は、同時に韓国との場合を十分調整しながら考えていかなければならぬと私は思うのです。秦という国が戦国時代を統一して、遠交近攻策という策士茫雎の提案を取り入れて、遠くの国と結んで近くを攻めた事例があるのですが、一番近い朝鮮半島の二つの国との友好親善というものは、私どの国よりも密接でなければならないと思うのです。したがって、韓国の場合においても同様でありますが、疑いを持ったり相手をけなしたりするだけでなくして、お互いの国が信頼し合う、あわせて北の朝鮮民主主義人民共和国にも、できるだけ早い機会に国交が樹立されるように、その前提としては経済交流、文化交流などを熱心に推進するなどという配慮がいま日本政府に要る。こういうことで、この近いお隣の国と、こんな金大中事件などが起こって、両国の不信感を高めるようなことは、これはたいへん残念です。外務大臣はその意味で、国連総会にも行かれるわけですが、西ドイツ、東ドイツの二つは国連の加盟国になった、百三十四番目の加盟国になった、二つそろって。韓国と朝鮮民主主義人民共和国もまた一緒に国連に入ってもらえばいい、そういう努力も十分重ねるなど、ひとつあまり右往左往しないで、遠交近攻策のような印象を与えないで、近い国との交わりを一そう強化するという配慮でこの問題の処理に当たっていただきたい。  いわんや、韓国に進出している企業を私も実態を調べて当たってみましたけれども、アメリカが日本の二倍ぐらいの贈与と、そして借款を供与しております。アメリカにはさらに韓国に対する軍事援助がある、こういうものを考えると、日本とアメリカによって韓国は大きな恩恵を受けている開発途上国ということがいえる。しかも日本の倍以上の協力経済的にもアメリカがやっている。その中で日本が現地韓国人を雇用している状態は、低賃金で、福利厚生施設なども非常におくれておる、こういうことはやはり福利厚生施設もりっぱにやって、民生の安定に協力するというさっきの方針を経済援助の上で実行してもらわなければいかぬ。そうして民間企業にも、賃金などにおいてもできるだけ日本に近づけるように、韓国のレベルを上げるように模範的な体制を整えてもらわなければならぬ。アメリカと比べると、日本のほうは韓国人を雇用する賃金が低い、あるいは福利厚生施設も悪い、こういう状態であることを外務大臣及び通産大臣は御存じかどうか。やはり日本という徳をもって治める国らしく、韓国でそういう低賃金で福利厚生施設を低くして、利潤追求にうき身をやつすというような資本主義の露骨な弊害のほうをやってもらっては、韓国人だって日本に対する感謝が減りますよ。ひとつそういう意味で、日本国としてのあたたかい友情を韓国に示して、そうしてこの経済開発、民生の安定に貢献するということへ御努力をされるべきではないか。民間企業の自発的な協力にまつことでなくて、通産省が指導し外務省が指導して、韓国の民間企業をりっぱにリードして、日本国の進出企業の本質をりっぱな方向へ導く御努力をお二人でやってもらいたい。ちょうどお二人がそろっておられるから、あえて要求をいたします。
  172. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 受田委員のお考えに賛成であります。経済団体がああいう経済協力に関する方針を出したことは非常に適切なことでありまして、あれを実行するようにわれわれも協力してまいりたいと思っております。ただ、ほかの韓国の企業あるいは外国系の企業に負けないだけの待遇や、あるいはいろんな配慮を日本の企業はするということは適切な、望ましきことでございますけれども、やはり各国各国の経済水準というものがございますから、韓国の労働者の条件日本の賃金水準に平準化させるということも、これは無理であります。韓国には韓国経済水準や経済秩序というものがあると思いますから、郷に入ったら郷に従えということもありまして、そういう点においてはその横の並びを見ながら、その中でおくれをとらない、むしろ日本がそういう点で特に配慮しているというような姿勢が示せるような形でやっていきたい、そう思います。
  173. 大平正芳

    ○大平国務大臣 遠交近攻の話がございましたが、わが国といたしまして、国が遠かろうと近かろうと外交関係は公正公明な関係でなければならぬと思っております。もっとも地理的な関係その他から申しまして、関係に濃淡はあると思うのでありまして、したがって、それに応じて問題もまた多く出てくることは承知いたしておりますけれども、国と国との間柄というのはフェアな関係でなければならぬと考えております。親しいから公明でなくてもいいというようには私は考えていないのでありまして、今度の事件非常に不幸でございましたけれども、こういった事件を早期に解明、解決をいたしまして、そしてそういう公正な、公明な関係を早く取り戻していきたいものと念願しております。
  174. 受田新吉

    受田委員 もう時間が来たようですが、あとの質問しませんから、外務大臣もお出かけでありますが、外務大臣通産大臣お二人とも次期総理に目せられておる大人物として、評価が高く買われておる人です。したがって、私はお二人とも自重自愛していただきたいのです。したがって、また政治的にもりっぱな政治実績を積んでもらいたい。外務大臣も国連総会へ行かれた場合には、あなたも韓国の外務大臣ともきっとお会いになっていただきたいのです。そして、ゆっくり話してもらいたい。もっと外務大臣同士で、外交努力でこの問題の処理の可能性を生むと私は思うのです。  それから北の国と南の国とは手を握って、できれば朝鮮民族は統一してもらいたいですよ、お隣の国に。ドイツを学べというかっこうで、そのぐらいの友情を二つの国に示してもらいたい。したがって、北の国との国交樹立というところが、すぐということが困難であるとしても、経済的に、文化的に人間関係の交流に一そう前進させる。南との関係を保持しながら北との前進をはかる。経済的にも貿易協定の実行等、通産大臣としても積極的に取り組んでもらって、北朝鮮とのそうした経済交流、人間交流等へも一緒に協力していただく。そして、やがて日本が南北朝鮮半島の民族のほんとうに平和的な統一への貢献もしてあげる。私は、やはり日本の果たす役割りは、内政干渉というんでなくて、大事だと思うのです。こういう不幸な事態などを早くなくしたい。それに対する将来を背負うお二人の有力な政治家の御発言、御決意を承って、私は引き下がることにしますから、どうぞ。
  175. 大平正芳

    ○大平国務大臣 御忠告つつしんで拝聴いたしました。
  176. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 やはりアジア人として平和共存をあらゆる地域に差し伸べていくということは、日本として非常に大事な政策であると思います。いろいろ国際環境や歴史的因縁はありますけれども、日本人の考えとしては、そういう太い線でできるだけ氷を溶かしながら、われわれの平和的意思や善意を広めていくということを私たちは努力していきたいと思います。
  177. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 稲葉誠一君。
  178. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 先刻から金山元大使のお話が出ておるわけですが、それが質問の時間までにわかりましたならば御通知願いたい、こう思います。  そこでその金山元大使、これは、金大中氏の日本における身元保証人になっておるわけですが、この方がソウルで十七日に朝日の記者に話をされておる。この問題の中で、韓国側の条件が満たされれば渡日を認めるとこれまでに明言しているというふうに語った、こう伝えられておるわけですね。これも法務大臣の管轄になると思うのですが、そこで金大中氏が来日ということになったときに、一体この条件というのは、韓国側からどういうふうな条件が出されるというふうに常識的に考えられるか、こういうことですね。これをまず最初にお聞きをしておきたいと思います。
  179. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 外交に関連する事項と存じます。外務省からお答えを申し上げます。
  180. 水野清

    ○水野政府委員 この金大中氏の再来日は、形式的には御承知のように、日本政府日本捜査当局に対する捜査協力ということで向こうに要求をしております。しかし、これも先生御承知のとおり、向こう側はまだそれに応じていない段階でございます。そういう段階でございますので、どういう条件でという条件を話し合うという段階になっていないわけでございます。しかし、もちろん日本政府としては捜査協力でございまして、ごく短期間に来て、形式的な捜査だけで済ませるというような意思も毛頭持っておりません。しかしまだ、再度申し上げますが、条件については話し合いに入っていないというのが現状でございます。
  181. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 だから私は条件がどうだということを言っているんじゃなくて、金大中氏が来日ということになったときに、常識的に韓国側がつけてくる条件はどういう条件だと考えられるか、こういう質問をしておるわけですよ。そうでしょう。いまあなたの言われるのは、捜査のためだということになると、捜査が終わったら韓国へ責任をもって帰せということが条件になるというふうに裏から見るとなってしまうのですよね、そういうふうに承ってよろしいですか。
  182. 水野清

    ○水野政府委員 私の答弁がことばが足りなかったのでございますが、そういう意味ではございませんので、韓国側がともかく金大中氏を、捜査協力であっても日本に連れてくるということをまだ容認をしておりません。ですから、話し合いをしてないというわけであります。ただ、日本政府としては、十分な捜査に必要な条件ということを考えておりますが、まだ向こう側に伝えられない段階でございます。また向こう側も、世上いろいろなことは言われておりますけれども、韓国側も、どういう条件でなければ帰さないとか、そういうことをまだ言っておりません。そこまで話が至ってない、こういうことでございます。
  183. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、金大中氏が来た場合に法務大臣、何かこう、まあ一たん日本へ来てそれからアメリカへまた行くんだという話がよく世上伝わっておりますね。このことに対して法務大臣は、何か日本で御本人がそういうことを希望すれば、それをかなえてあげたいという意味のことを答弁されたようにちょっと記憶しているのですけれども、そこら辺はどういう考え方でございますか。
  184. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 衆議院の委員会答弁であったかと記憶をいたしますが、日本に亡命という制度があるのかないのか、彼がやってきたときには亡命の扱いをするのかどうかといったような意味の御質問がございました。それに対して私がありのままの答えをいたしましたことをもう一度申し上げますと、わが国には亡命制度はない、したがって、亡命の取り扱いはいたしようがない、こういうお答えをいたしますと同時に、一般論として言えば、条件が整うならば特別の滞在を許す道がなくはない。それは、しかしながら仮定の問題であって、本人が実際に日本に来てみて、本人がどういう意思を持つのか、どういう環境で——自由なからだで来るのか連れられてくるのかという意味でありますが、どういう環境で本人が日本においでになるのか、国際的にどういう事情に置かれておるかということを考えてみなければならないのでありますので、具体的な本人が来てからの問題というものについては、その時点において検討する以外にはない、こういう趣旨の答弁でございます。
  185. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それはまたあとなり別の機会にいたしまして、通産大臣が何か時間をお急ぎのようでございますから、その関係を先にやるわけですけれども、もうさっきから話を聞いていますと、対韓経済援助ということばが盛んに出てくるのですね。それから協力ということばが出てくるのですけれども、一体どっちが正確なのでしょう。どうも援助ということばは、何か上から下のほうへやるような大国主義的なにおいもするような私ども聞き方で、私も反省しているのですけれども、政府が出した資料にも、これは援助ということばが出てきているのですよ。きょうのガリ版刷りのやつをもらったでしょう、あの中にも援助が出てくるのですよ。一体どっちが正確で、どういうふうに違うのですか。
  186. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 たしか私の記憶によりますと、請求権の処理並びに有償、無償をきめましたあの経済協力に関する協定は、経済協力という表現があったのではないかと思うのです。でありますから、ここでも御答弁申し上げますように、私は常に経済協力ということばを使っておって、援助ということばは使っておりません。しかし、内容自体いろいろ見ますと、援助的な要素もあるわけですね。たとえば無償援助と、こう言いますね。無償協力というよりも無償援助。そういうような無償である場合には、どうもそういうような性格を通俗的に持つのかもしれません。でありますから、私は正確には、経済協力ということばが適当であると思っています。
  187. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そこで、その経済協力が何の目的のために行なわれたかというようなことを聞きますと、表から聞くと返ってくる答えはもうきまっているのですよね、形式的な答えしか返ってこないわけでしょう。私は、それじゃ韓国に対する経済協力がもしなかったならば、韓国経済は一体どういうふうになったんだろう、こういうふうにお考えでしょうか、そういうふうに聞かないと、なかなかほんとうのことを言わないから、そういう質問になってきてしまうんですけれども、どういうふうにお考えでしょうか。
  188. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これは仮定の御質問で、想像することは非常にむずかしいと思いますが、ほかの国の経済協力を求めて韓国はおやりになるかもしれません。その場合には、今日のような経済発展をまた示すかもしれません。しかし、日本はいろいろ過去の因縁もございまして、有償、無償の経済協力をして、現実としては、韓国経済はかなり結果的に上昇してきておると思います。最近の経済成長を見ますと、七%ぐらいになって、ことしになりましてからは、景気が非常にいいものですから、一九%程度の経済成長率を示しております。これらは、いままで過去における韓国国民の努力あるいは政府の指導あるいは外国の経済協力の成果がだんだん実ってきたのではないか、そういうように思います。
  189. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、日本韓国に対する経済協力が、朴政権ですね、具体的に政権をとっている朴政権の支持というか、あるいはことばは悪いかわからないのですが、延命といいますか、そういうふうなものにプラスになったあるいはそれをサポートしたということは、これはまあ常識的に言えると、こう考えてよろしいでしょうね。
  190. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日本経済協力は、大韓民国という国家及び国民を相手にしておるものであって、一政権を応援するためにやっているというものではございません。しかし、窓口は政府でありますから、いろいろ経済協力の実があがってくれば、やはりその政府の成果として国民は評価するかもしれませんし、あるいは選挙の際には、われわれもよくやっておることですが、演説では大いにプレーアップするということもあるわけであります。それらはみんなその国民が各自判断するということになろうと思います。
  191. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 通産大臣、もうさっきも話が出たアメリカのフルブライト、フルブライトさんが自分で言ったわけではないのですけれども、その上院報告がありますね、いわゆる韓国白書といわれているものですが、あれをごらんになったかと、こう思うのですが、あれを見ると、かなり手きびしくアメリカは朴政権というものを——アメリカがと言っていいかどうか別として、アメリカの一部と言っていいかもわからぬし、あるいはアメリカの大きな影響力を持つところと言っていいかもわからぬが、相当手きびしく朴政権というものを批判していますね。そういうふうな批判の対象になっているところに実際にてこ入れというか、サポートするような形で経済協力が行なわれるということは、日本としても考えなければならないのじゃないでしょうかね、ちょっとぼくの質問は抽象的かもしれませんけれども、そこら辺はどうでしょうか。もう日本政府としても、朴政権というもののある姿というものに対して相当批判的にいまなりつつあるのじゃないですか、もうなっているのじゃないですか。そこをそんなにまでしてサポートすることが結果としてどういうふうな状態を呼ぶかということは、もう当然考えていい時期に来ているのじゃないですか。アメリカはもうそれは早いから、すでにそこへ到達してしまっているのじゃないですかね、どうでしょうか。
  192. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 われわれは、政権の性格や内容等を越えて友好親善を結ぼう、平和的共存をやろうと先ほども申し上げたとおりでありまして、相手が共産主義国であっても、われわれ自民党としては共産主義には賛成しませんけれども、しかし、体制を乗り越えて両国国家あるいは国民の将来を考えて友好親善関係を結ぼうとしてやっておるわけであります。韓国の問題につきましても、相手側の政治体制、社会体制についてわれわれは容喙することは適当でありません。これは韓国国民がその時点においていいと思って、国民の意思によって決定されつつあるものでありまして、われわれがとやかく言う筋ではないと思っております。
  193. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 しかし、アメリカはもう早くもはっきりとした一応の意見、結論に近いものを出しつつあるんじゃないでしょうかね。これは外務大臣がいないところであれしてもあれですけれども、ぼくはそれが今度の金大中事件というものにもある程度関与と言うとことばは悪いかもわからぬけれども、いろんな面で影響しているんじゃないでしょうかね。こういうことを言う方がいらっしゃるのですが、ある方ですけれども、信頼できる韓国筋からの情報によると、金氏は拉致されていく船の中で赤い点滅光とごう音を聞いたと語っているが、これは事情を知ったアメリカのCIAのヘリコプターが飛来してきたのに間違いない。この事件には米CIAがからんでおり、米国は事件発生後三日目の八月十一日にはKCIAの犯行の事実を知っていた。朴大統領は肝臓をこわして健康が思わしくない。後継者選びに悩んでいたことがこの事件の背景にあると内幕を語った。こういう記事が二、三日前の毎日新聞だかに出ておるのですがね。こういうとおりのことを語ったかどうかはわかりませんけれども、新聞記事にはそうなっているのですね。  この前法務大臣に私、聞きましたね。この金大中氏の事件にアメリカがどの程度関与しているかということについてあなたの考え方を聞きたいといったら、あなたは、それは非常に重要な問題だ、だから法務大臣として言えない、外務省が言うことなんだ、ということがあったのです。もうさっきちょっと外務大臣に聞いたのですけれども、このことに関連して聞いたのじゃない、ちょっと違うことから聞いたものですから、今度の金大中事件にアメリカがどの程度関与しているか。あるいはこの金大中氏の命を助けたのはアメリカだという説すら流れているわけですね。今後のこの問題の解決に一体アメリカがどの程度介入してくるかというようなことについては、どういうふうなんでしょうか。これはもうさっき外務大臣の答えがありましたけれども、短い答えでしたから、これは外務省はどういうふうに考えているわけですか。いま私が読んだのは九月十八日付のある新聞、語った方はここにいらっしゃる宇都宮徳馬代議士だというふうに伝えられている記事でございます。
  194. 水野清

    ○水野政府委員 この事件の背景にアメリカ——アメリカといいましても政府もありますし、国民もありますし、いろんな政党があろうかと思いますが、どういう形で関係があるかということについては、これは外務省としては全く存じておりません。  それから先生のお答えにこう申し上げるのは正確かどうかわかりませんが、今後の発展についてアメリカ政府あるいはアメリカの関係者がもしあるとすれば、それがどういう形で参画してくるかということについてはわからないわけでございますが、ただ日本政府外務省として持っております態度は、あくまでもこれは日本韓国との間の問題であって、たとえば今後の解決について第三国、特にアメリカ政府とかアメリカのその他の関係者を依頼してこれを解決するというようなことは筋違いでございますから、全くそういうことは考えておりません。
  195. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 稲葉委員に申し上げますが、私の名前が出ましたから申し上げますけれども、あの新聞記事は私の真意を必ずしも正確に伝えていませんから、お願いしておきます。
  196. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 いま宇都宮さんからそういうお話がございましたので、私もそのとおり承っておきます。  そこで、これはあまりその点に深入りしていても堂々めぐりになりますから、別のことをお聞きいたしますが、韓国に対する経済協力の中で一つの例、たとえば浦項にある製鉄所ですか、これは非常に大規模なものだそうですね。これは何かアメリカや西ドイツが採算が合わないといって断わったのに、日本のほうが協力したということで、三菱が非常にいま韓国経済の中に進出している。これと、地下鉄ですか、一生懸命やっているとかなんとかいう話があるのですが、その浦項の製鉄所はどの程度の規模のものなんですか、わかっている範囲で。それは現在どういう状況にいま進んでおるのですか。それが一つと、もう一つ、この竣工式か何かに、国会開会中に国会議員が出席したということがある書物に書いてあるのです。これは法務省に調べてもらったのですが、急な調べだったのでわからないというのですけれども、だれがこの浦項の製鉄所の落成式か何かに行ったのですか、またなぜそんなものに行く必要があったのですか、そこら辺はどういう事情ですか。
  197. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 浦項と申す韓国の場所に韓国が総合製鉄所というものを建てる計画を持っておりまして、初めアメリカとかイギリスとかドイツ、フランス、イタリア、そういうようなところからいわゆる国際コンソーシアムというものを構成して、それによって所要の外貨を調達して、粗鋼年産六十万トンの規模の製鉄所を建設しようという計画を立てたわけでございます。それにつきまして世銀の調査を依頼したわけでございますが、世銀は、この粗鋼年産六十万トン、こういうような規模のものでは当時の世界の経済情勢から見て、そのままでは経済性に疑問があるという結論をその当時出しました。そこで韓国側は、世銀の意見をも勘案いたしました上で、この浦項総合製鉄所の計画に新たに変更を加えまして、年産百万トン規模というかっこうで新しい計画を出しまして、韓国経済開発計画における最も優先的な計画であるということで、第三回目の日韓定期閣僚会議におきましてわがほうに対して今度は協力方を要請してまいったということでございます。  わがほうといたしましては、まずやはりいわゆるフィージビリティーというものを調べなければいけませんので、一九六九年の九月に調査団を派遣いたしまして、そこで詳細に調査をいたしました結果、新しい韓国側の計画は大体基本的なラインでは妥当であって、技術的、経済的ともにフィージビリティーがあるという結論をそのときにおいて出しました。そこで政府といたしましては、この報告に基づきましてさらに慎重な検討を加えた上で、協力をするということにいたしたわけでございまして、わがほうの独自の調査の結果、エコノミックフィージビリティー、それからテクニカルフィージビリティーともにありという結論を出して計画に取りかかりました。  その後順調に工事が進みまして、本年の七月初めに竣工式をやるまでにこぎつけたわけでございます。竣工式に招かれましたのは主としてこの工事に関係をいたしました会社の重役その他でございます。政府ももちろん、御承知のように例の協定によります有償、無償の経済協力の中からこの資金の一部が出ておりますし、輸銀の資金の一部も出ておるというような関係から、政府にも招待が参りまして、私が招待状を受けましたので式には参列いたしました。そのとき私自身の目で見ました限りでは、おもに会社の社長さん方がおられる。式典は全部韓国語で行なわれたという状況でございます。  この結果、現在できております生産規模は粗鋼年産百三万トンということでございます。そこで韓国側といたしましては、これは高炉一基によります生産量でございますので、さらにこれを高炉を二基にふやしまして、その際には合計して二百六十万トンという生産規模にふやしたいという計画を現在持っておりまして、これに対しまして世銀それから私ども、それから初めからこの工場の一部分をオーストリアのある会社が担当しておりますので、続いてそのオーストリアにも協力を依頼しておりまして、世銀はその後もう一度調査いたしました段階では、この前の見解を改めましてエコノミックフィージビリティーありというふうな結論に改めておるという状況でございまして、この二百六十万トンにいたします第二期の工事計画に関しましての協力をどうするかという点につきましては、昨年の第六回目の日韓閣僚会議の席上におきまして韓国側は一億三千五百万ドルにのぼる、これはこの資金の一部でございますが、その資金を低利長期の資金として日本側から協力してほしいという要請をいたしましたが、日本側といたしましてはさらにまたよく第二期工事についての調査をした上で検討してみようということを約束いたしまして、その後調査団を派遣いたしまして調査を終わったというのが現在の段階でございます。
  198. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それはあれですか、日本の企業グループとしてはどこがそれに対して投資や借款をやっておるわけですか。それとあなたの話を聞いていると、おもな人はこうだと言うんだけれども、おもな人はわかった。おもでない人も行っているんでしょう。行ったのはだれなんだ。どういう形、政府の代表で行ったの、おもでない人は。どういうわけで三菱がこの仕事をやるようになったの。そこら辺のところは……。
  199. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 お答え申し上げます。  おもな人と申し上げましたのは、非常にたくさんの人数の式典でございまして、そこに出席していた方皆さんのお顔を私は存じているわけでございませんので、存じております方の中には大会社の社長さんのお顔が見えた、こういう意味でございます。
  200. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 こっちの質問によく答えなさいよ。三菱がこれには積極的に投資や何かしてやっているんですかとまず聞いているのが一つ。  それからもう一つ、おもでない人の話を聞いているわけよ、ぼくは。おもでない人の名前をここで言うのはかんべんしてくれ、ぐあいが悪いというならそれはそれでいいですよ。調べればわかるんだから。ぼくは急に調べたものだからわからなかったんだけれども、ざっくばらんな話、だれがこういうふうなことの仲立ちなんかをやったんですか。そこが問題じゃないですか。だれか行ったでしょう、こっちから経済人じゃない人が。
  201. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 三菱との関係につきましては私よく詳細を存じ上げませんし、その場にどういう方がおられたかということについてあまり正確に名前をよく覚えておりませんので、一々申し上げることはごかんべん願いたいと思います。
  202. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それじゃその話は、私のほうでまたよく調べましょう。これは責任ある書物に書いてあるのですよ。これはまたこっちで調べればわかるわけですから、それがどういう関係なんですかね、よくわかりませんけれども、三菱との関係がどうなっているのか、いろいろあると思うのですよ。  そこで、これはちょっと質問が場違いな質問になって非常に恐縮なんですが、長沼判決がございましたね。長沼判決のことをここで聞くわけじゃないのです、違いますから。そこで聞くのは、法制局へ聞くのが一番いいと思うのですが、まず海外派兵ということについて日本の憲法で一体それを禁止しているのかしていないのか。禁止しておるとすれば、憲法の条文のどこから海外派兵を禁止しているというのが出てくるかということ、これが第一点。
  203. 吉國一郎

    吉國政府委員 海外派兵ということばはもともと法律用語ではございませんので、いろいろ国会で御議論がございまして、大体の概念が国会における社会通念として固まったものであろうと思います。  便宜その議論を詰めまして定義をいたしますと、何らかの武力行使を行なう目的をもって外国の領土、これは領域と申したほうが正確かもしれませんが、領土、領海に入ることというのが大かたのいままでの概念であろうと思います。どうしてこういうような海外派兵が憲法上禁じられているかという議論になるということでございますが、もちろん憲法に海外派兵をしてはならないというような明文があるわけではございません。  政府は、従来憲法第九条第一項の戦争放棄の規定にもかかわらず、わが国には固有の自衛権があって、その固有の自衛権の限界の中では自衛のための行動をとることは許されておるという解釈をいたしておりますが、いわゆる先ほど申し上げましたような海外派兵は、この自衛権の限界を越えるから憲法上はできないと解すべきであるということでございます。したがいまして、海外派兵の問題は自衛権の限界との関連において従来とも論じられておるところでございまして、海外派兵が憲法上どの条文によって禁じられていることになるかと申せば、第九条第一項の解釈と申しますか、第九条第一項の精神に従って憲法を考えれば、海外派兵のようなことは自衛の限度を越えて憲法上禁じられておるというのが政府の従来の考え方でございます。
  204. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 いまの答えは一つのトリックがありますね。あとお話ししますが。  そこで、韓国にあるアメリカの国連軍、いわゆる国連軍ですね、これはいわゆるというのが正しいと思うのですが、この国連軍の中に日本の自衛隊が参加をすることは、これは憲法上認められますか。第一点。  それから韓国にある国連軍が撤退したあと日本の自衛隊が何らかの目的で韓国に行くこと、目的によりますよ、は憲法に違反するかしないか、これが第二点。
  205. 吉國一郎

    吉國政府委員 第一の御設問でございますが、韓国にある国連軍、現在わが国は国連軍協定というもので、国連軍、韓国にある国連軍にある範囲において協力をいたすことになっておりますが、その問題ではなしに、韓国にある国連軍にわが国の自衛隊が部隊として参加するということを稲葉委員は仰せられているものと思います。これはもちろん憲法上できないことでございます。  また第二に、国連軍が撤退したあとに自衛隊が何らかの目的で韓国におもむくことは憲法上どうかということでございます。この場合も、自衛隊が部隊としていわば武力行使をする目的で韓国に参ることは、これはもちろん、先ほども申し上げました海外派兵は憲法上禁じられていると同じ理論によりましてとうていできないことでございます。ただ、自衛隊でございましても、これは前々から海外派兵あるいは海外派遣の問題としていろいろ論ぜられたところでございますが、自衛隊が、武力行使などということは全然必要もないし、またそういうことをするようなことも予想されないような状態におきまして、平和目的に限られた目的の範囲内で行動する場合に限っては、海外におもむくことも場合によっては憲法上は許されることであると現にお答え申しております。したがいまして、韓国におもむくことが憲法上可能であるかどうかということは、その目的なり態様なりによって変わることでございまして、一がいに申せません。ただ、部隊として武力行使を目的として韓国におもむくことは、憲法上とうてい許されることではございません。
  206. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それで、私がなぜこんなことを聞くかということ、非常にとっぴなように考えられる方が多いと思うのですよ。だけれども、これはおそらくもうアメリカから問題として出てきているんじゃないでしょうか。あるいは近い将来にアメリカから、アメリカの四万の国連軍が撤退しますが、その後に日本の自衛隊によって何らかの形でこれを穴埋めしろということが、アメリカからの要請として出てくる危険性があるような感じがするから私は聞くわけです。現に田中・ニクソンあるいは大平・ロジャーズの中でこの話が出てきたということが伝えられているわけですね、これは憲法の精神からいって断わったということが出ているようですけれども。  そこでもう一つの問題、純法律論となってくると、自衛権と海外派兵との関係での問題になるのですが、自衛権の行使で外国へ行く場合は海外派兵ではなくなるわけですか、あるいは海外派兵ではあるけれども憲法上許されるということになるわけですか。ここはどういう関係になりますか。ちょっと議論が、議論のための議論のきらいなきにしもあらずと私も思いますけれども、将来必要なことだと思うので聞いているわけです。
  207. 吉國一郎

    吉國政府委員 先ほど申し上げましたように、まずは海外派兵についての定義の問題でございます。そこで、国会でいろいろ御議論があったところを総合して申し上げますならば、一般的に申しまして、武力行使を目的として自衛隊のごとき——自衛隊と申しますか武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣することということに定義をいたしまして考えますならば、ただいま仰せられました海外日本の自衛隊が出ることということは、その海外に出る態様、目的等によって違うわけでございますから一がいには申せないと思います。現に南極の観測に協力をするために、海上自衛隊の一部の船舶が南氷洋におもむいているわけでございます。これはもう当然、社会通念と申しますか常識の海外に当たると思います。これは海外派兵になるから禁止すべきであるとか、海外派兵であるから憲法違反だという御議論は全くないと存じます。したがってその目的、態様によって違う。  ただ、御質問の中にこの点が含まれていたかどうかわかりませんが、要するに海外派兵が憲法上禁じられていると申しますのは、あくまで自衛権との関係で申しているわけでございます。自衛のため必要な最小限度内において行動するという意味から考えまして、その限度を越えるものであるから憲法上禁じられておる。あくまで自衛権との関係で論じておるわけでございます。この場合、いよいよ何か事がございまして自衛隊が防衛出動をいたしまして自衛行動に移るという場合に、その自衛行動の限界がどこにあるかという問題でございますならば、その自衛のため必要な最小限度において行動するわけでございますが、その限度内でございますならばわが国の領土、領海、領空に限定されるというものではないと存じます。
  208. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そこで、どうもはっきりしない点があるのですけれども、では具体的に、こういう私の言う例はほんとうはまずいと思うのですが、法務大臣お得意の某国ですが、某国にいる日本人の生命、財産、身体の安全というふうなものが害されるときに日本の自衛隊が出かけることは、これは一体海外派兵になるのですか、なる場合とならない場合とがあるのですか、そこはどうなんですか。そこら辺のところをはっきり答えてください。
  209. 吉國一郎

    吉國政府委員 これはまた先ほどのお答えの繰り返しになると思いますが、これはあくまで海外派兵ということばの定義の問題に相なると思います。  しかし、大きく分けまして、その某国で日本人の生命、身体、財産が危殆におちいっておる、これを保護するために自衛隊が派遣されるという、これは仮定でございますが、そういう例を考えました場合に、これも自衛隊の派遣の目的、態様によって答えが違ってくると思います。これが、自衛隊が武力行使を目的といたしましてその某国に派遣されて、武力を行使して日本人の生命、身体、財産なりを保護するというようなことでございますならば、これはいつも申しております自衛権発動の要件にはずれると存じますので、言いかえますならば海外派兵と同じ意味になると思いますので、憲法上はできないことである。某国にあるわが国の国民の生命、身体、財産が危殆に瀕しておる、これが侵害されており、あるいは侵害される危険にさらされたという場合にも、まず国際法上自衛権の発動が許されるかどうかについて学問上賛否両論分かれておると存じますけれども、国際法の問題は別といたしましても、わが憲法上は許されないところであると思います。その外国の領域内にある、その国では外人でございます日本人の生命、身体、財産が侵害されたりあるいは侵害されそうになったという場合に、それは一般的に申しましてわが国に対する武力攻撃というには当たらないと思います。また、他国の領域内にある、その国では外国人である日本人の生命、身体、財産の保護は、当該領域に施政を行なっております国の当然の責務として行なわれるべきことであろうと思います。したがって、わが国としてはまず外交交渉によってその保護をはかるべきでございまして、これに対して自衛権発動の要件がないわけでございますから、武力行使等の手段によって保護をはかるということは憲法上許されないところであるということでございます。  また、そういう武力行使というようなことではなくて、ほんとうに仮定の例でございますけれども、その某国における日本人の生命、身体が脅かされて避難をするということで、どうせ海を渡ってくるわけでございますからどこかの港に集結しておる、その集結をした日本人をわが国まで輸送する輸送力が全く他に得られないというような場合に、そのような輸送手段として海上自衛隊の船舶が用いられるということになりますならば、これは全く武力行使を目的としたものではない、避難民を輸送するという全くの平和目的であるというふうに限定されますならば、これは憲法上第九条で問題になるような事柄ではあるまい。こういうようなことは憲法上は許されるだろう。ただ、自衛隊法上そういう責務は、現在防衛庁なり自衛隊なりの任務として規定されておりませんので、これは当然法律の手当ては要ると思いますけれども、憲法上の問題は生じないのではないか。  要約して申し上げますならば、武力行使を目的としないいわば警察的な手段をもって、平和的目的のために日本人の保護のために行動するという場合、端的な例はただいま申し上げましたような事例に当たると思いますけれども、そういう場合を無理に仮定をいたしますならば、憲法上問題はなかろう。しかし、他国にある日本人の生命、身体、財産を保護するために武力行使を目的として自衛隊を派遣されるということは、憲法上禁じられておるということでございます。
  210. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 約束の時間が来たわけですから、あと二、三分ありますけれども、いまの説明を聞いておりますと、まずわからないのは、警察力というものの概念というか範囲がきわめて不明確ですね。これはどんどん拡大していけば、いままでの日本がやったと同じようなことができないとも限らないと考えられるわけです。だから、警察力というものの明確な限界づけを、どういうふうに統一的に理解したらいいかということですね。これをはっきりさせていかないと、拡大していってしまいます。これが一つの問題だと私は思うわけです。  どうも私の聞いていることは、何か架空のできごと、空想的なことを聞いて、論議の遊戯をしているようにとられる方があるかもわかりませんけれども、将来この問題が出てくると思うのです。何らかの形で出てくる可能性がある。そのためには、びしっとしたものをやはり残してもらわないといけないのではないか。こういうので、いささか論議をもてあそんだというきらいがあるかもわかりませんけれども、そういう質問をいたしておるわけです。いまの私の質問についてお答えを願って、そしてこの問題については、私のほうでももっと研究して、また別な機会にゆっくり質問をしたい、こういうふうに思います。
  211. 吉國一郎

    吉國政府委員 ただいまお答え申し上げました中で警察という字句を使いましたのは、自衛隊が武力行使を全く目的としないで、また武力行使も予想されないような状態において行動することを、比喩的に警察的な行動というようなことばで申し上げたつもりでございまして、警察というのは、現在の警察法第二条にございますように、「個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当る」、これが警察一般の概念だろうと思います。もちろんこの警察法の定義による警察は国内の問題でございます。国内でこのように警察が、個人の生命、身体及び財産の保護に当たると同じような態様で、おのずから限定された手段によって行動をする。その場合に、先ほども申し上げましたように、武力行使は全く必要としない。また将来武力行使をすることも予想されないような状況において行動する限りは、憲法上問題は生ずることはあるまいということを申し上げたつもりでございます。
  212. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 庄司幸助君。
  213. 庄司幸助

    ○庄司委員 外務大臣の都合でどうも質問がこま切れになって、ちょっとやりにくいわけでありますが、順序からいって、私はきょうの質問は、いわゆる対韓経済協力が軍事的な援助の側面が強いという点を質問したかったわけです。もう外務大臣もおりませんが、ひとつ外務次官から御答弁をお願いしたいと思うのですが、軍事予算の問題については先ほど申し上げましたから重複しません。  そこで、韓国側は日本を含めたその他のいわゆる海外からの援助をどう受けとめているか、この点二、三の韓国側の発言があるわけです。これは本年一月十二日に朴大統領経済企画院の年頭巡視で演説をやっておりますが、その際「外国の巨額投資は、一個歩兵師団が韓国に駐屯するぐらいの効果がある。」、こういうことを言っているわけです。これは明らかに、外国からの経済援助というものが韓国の国防にとって非常に役に立っているという発言なんです。それから第二番目には、政府機関の文化広報部が、予算の解説の際だと思いますが、こういうことを言っています。「七三年度予算は、軍隊の精鋭化と軍装備の現代化、総力安保体制の強化、防衛産業の育成などを通じて、自主国家体制強化をはかる特徴をもっている。」、これは二人とも政府機関の正式な発言なわけです。  そうしますと、先ほど来言われております朴政権の性格ですね。これは日本政府が依然として民主主義の国のような錯覚をおかしておりますが、アメリカの上院外交委員会でさえも、李承晩以来の最悪の独裁体制である、市民の自由は一かけらもないというようなことまで報告しておる。この朴政権の政府当局が発言している内容から見ても、日本韓国援助というものは、これは直接防衛費には使われていないにしても、間接的にやはり軍事援助に使われている、軍事援助を助けている、こういうことになると思うのですよ、この発言は。そうやって七三年度の予算を見ますと、先ほど言ったような非常に緊縮予算、しかも行き詰まった予算の中で、軍事予算は二八%も占めている。こういう客観的な状況があるのです。  そうすると、政府当局は、いままでのあらゆる答弁でも、平和目的にこの経済援助は役立っている、こうおっしゃっておりますが、韓国側からすれば、これは軍事援助に役立っているという発言なんですよ。こういう発言があっても、外務当局は依然として平和目的だと言い張るのかどうか。私は、軍事援助だ、これに役立っている、こういうふうに思うのですが、その点ひとつ聞かしてもらいたいと思います。
  214. 水野清

    ○水野政府委員 ただいま先生の御指摘の、韓国の現政権がどういう状態であるか、アメリカの議会でどういう議論がなされたかというようなお話がございましたが、日本政府としては、お隣の韓国にあります現在の政権は正しい形で国交を持っている国でございます。このいまの政権がどういう形であろうと、それを公の席で非難をする、あるいは批判をする、よいとか悪いとか言うということは、私どもは一切差し控えていきたい、こういうふうに思っております。  それから日本の対韓援助につきまして、対韓経済協力につきまして事実上は軍事援助じゃないかというような御指摘がございましたが、私どもは一件ごとにこういう問題は吟味をしておりまして、決して軍事援助にならないようにきちんと調査をしてやっております。先生の御指摘は一つ考え方でございますが、私どもはそういう考え方をとってやっていないのは事実でございます。
  215. 庄司幸助

    ○庄司委員 時間もありませんからこの問題はあとでじっくり追及したいと思いますが、その次にお伺いしたいのは、第七回日韓閣僚会議に向けて事務レベルでいろいろ検討させているとさっきの大臣の御答弁があったわけですが、それでお伺いしたいのですが、七回日韓定期閣僚会議で朴政権が要請しようとしている援助内容ですね、六項目ほどある、こういうふうに聞いております。これは先ほど御答弁にもありましたあの浦項の総合製鉄所の第二計画、二番目はセマウル運動の計画、三番目は国際収支対策としての商品援助、四番目は船舶借款の増額、五番目は日本向けのセメント積み出し港の墨湖港拡張計画、六番目はソウル地下鉄計画に対する追加援助、合計で四億ドル前後要請したい。これ以外にいわゆる一九八一年目標の長期開発計画、つまり重化学工業の開発計画ですが、これへの援助は別ワクで要請している、これが中心テーマになるだろう、こういうことがいわれているわけですが、その点外務当局、事務レベルでこういう要請がされているのかどうか、これをお答え願いたいと思うのです。
  216. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 通常、先ほど大臣からお答え申し上げましたように、閣僚会議が行なわれることにきまりますと事務的なレベルで項目、金額等につきまして話し合いを開始するわけでございますが、今回も閣僚会議がもし予定のとおり開かれるとすれば、御指摘のような事務的な話し合いが始められたであろうと思われますが、今回のような事件が起こりましたために事務的な話し合いはまだいまのところは行なわれておりません。したがいまして、御指摘の六項目につきましては、これまでの経過から見て若干推測のできるものはあるということを申し上げ得るかと思います。  まず第一番目の浦項につきましては、昨年の閣僚会議の経過からして第二期工事、拡張工事の要求が出てくるのではなかろうか、これは私ども推測ができますし、またセマウル、いわゆる新しい農村運動のための若干のプロジェクトにつきましても要請が出てくるかもしれない。それから墨湖、セメントの積み出し港につきましては、先般韓国の要人が訪日されました際にこういう港の拡張の計画があるという話が出ておりますので、こういうものが今度の閣僚会議の議題になるであろうということは予測されます。しかし、その他につきましては、何ぶんにもいま申し上げましたような事情でございますのではっきりと、そういう要求があるかどうか、また金額等についてももちろんまだ何もわかっておらないのが実情でございます。  また、これと別に、いわゆる一九八一年までの長期的な経済展望、そういうものに基づくもっと大きな別ワクの要求があるのかないのかというような点につきましても、一切私ども事務レベルではまだわかっておらないというのが実情でございます。
  217. 庄司幸助

    ○庄司委員 きょうはあしたの質問の予備的な質問をしておるわけですから、そのつもりでひとつお答え願いたいと思うのです。  もう一つ伺いたいのは、いわゆる韓国の第三次五カ年計画、これと伝えられている長期開発計画、この関係について何か韓国当局からの説明外務省聞いておられるかどうか、これをひとつ伺っておきます。
  218. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 私どもが現在まで韓国の事務当局との接触において聞いておりますのは第三次五カ年計画のことでございまして、それ以外の話は何も聞いておりません。したがいまして、御指摘のような点については何も承知いたしておりません。
  219. 庄司幸助

    ○庄司委員 時間がありませんので最後に、これは通産の事務当局でいいのですが、先ほど大臣が公害の問題について私に答えられた問題ですが、韓国は人口も少ないしそれから公害の基準も日本とは違う。公害問題については、日本の企業進出によって公害が起こるとかなんか、そういった問題については経済発展の段階に応じて考えるのだ、こういう御説明があったわけです。この問題私は重要な内容を含んでいると思うのですが、たとえば最近の世界の動向では、水銀とかその他のいわゆる公害物質については、人間の住む環境にはこれ以上ふやさないのだ、発展段階がどうであろうともうふやさない、こういう見解が広くとられているわけです。日本の科学者の中でもそういうあれが圧倒的なあれですが、この点ですね。もし通産大臣が、韓国はまだ経済の発展段階が低いからまだまだよごせる可能性を含んでいるのだという答弁内容だろうと私は思うのですが、大臣がこういう考えを持っておるのではたいへんな問題になるし、外務省日本経済進出に対する世界の世論調査がありますね、これでもそれは指摘されておる問題なんですよ。これはそういった経済発展の段階でよごせるだけよごしてもいいのだというような考え方おありとすれば、これはたいへんな問題なんで、事務当局どう考えていますか。大臣が答えたからあのとおりだと言うかもしれませんが……。
  220. 和田敏信

    和田(敏)政府委員 われわれといたしましては、国の内外を問わず人命尊重、環境の保全というのを第一だと心得ております。韓国等にプロジェクト等が輸出される場合におきましても、当該プロジェクトからいやしくも当該地域の住民に対して悪い影響の出るような物質の排出に関しましては最大の注意と努力をするよう企業を指導してまいっておりますし、またこれからもさようにいたしたいと思っております。また、わが国におきましても公害問題は最大の問題の一つでございまして、通産省におきましても公害防止関係の技術の開発、機器の生産に関しましては最大限の努力を払っておりまして、われわれの製品あるいは工場等の輸出先に関しましても、先方の地域住民の状況等に応じまして、先方の要望に応じましてわれわれの持っております公害防止に関しますすべてのハード、ソフトに関する知識は遅滞なくこれを先方にも使っていただきたい、このように考えております。  また、大臣答弁に関しましての御質問でございますが、私ども事務当局といたしまして大臣の真意をそんたくいたしますところ、公害の基準に関しましては、何と申しましても人命の尊重、これ以上環境をよごさないということが第一でございますが、地域に応じまして、いわゆる集積に伴うところの汚染あるいは国民生活への悪影響というものが地域によって違います点に着目されましての御発言があったように記憶しておりまして、御質問の中で御指摘のあったような、第三国の国民の健康の問題は当該国の問題であって、わが国政府としては要望のあるところに輸出を行なうというような趣旨で随時これを行なってまいるというような考えは、一切われわれとしてはとらないところでございます。輸出先の住民、国民の健康、環境の保全ということが完全に行なわれることなくしては、われわれの輸出もまた十分にその効果をあげることはできない、かように考える次第でございます。
  221. 庄司幸助

    ○庄司委員 これは重大な問題なので、いずれ速記録も調べて、あとでもう少し追及したいと思います。  きょうはこれで終わります。
  222. 水野清

    ○水野政府委員 先ほど外務大臣出席中に、受田委員から、金山前韓国大使が現在ソウルのどこにいるかというような御質問がございまして、私直接承っておりませんのでちょっと違うかもしれませんが、外務省で、四時三十五分現在、韓国日本大使館に電話で問い合わせましたところ、所在はなお不明であるという返事がございました。  それだけでございますが、御答弁申し上げます。
  223. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 坂井弘一君。
  224. 坂井弘一

    ○坂井委員 韓国におけるわが国の借款企業のうちで不実企業が続発しておるということにつきましては、先ほど指摘したとおりでありますが、この不実化する企業、この責任の一端というものは私はやはり日本側にもある、かなりな部分があるのではないかということを指摘したいのでありますが、先ほど一つ二つと、外務省経済協力局のこの調査資料に基づきましてあなた方が指摘された点につきまして、不実化する一つの要因と申しますか、それを引きまして、その中で、同一分野で、同じ業種で日本の商業借款によるものが乱立をしておる、設備が過剰になって共倒れ現象があちこちで起こっておる、これは非常に大きな問題であるということを指摘されておるわけでありますけれども、その実態については掌握されていらっしゃいますでしょうか。
  225. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 調査団の報告書にそう書かれてあることは承知しておりますが、それが一体どういうことを目にしてそういうふうに書いたのか、私はなはだ申しわけございませんが、つまびらか  にしておりません。
  226. 坂井弘一

    ○坂井委員 調査団がそういう指摘をしているわけでありますので、具体的にどのような事実があるか、実態であるかということについてはあらためてひとつ御報告をしていただきたい。  同時に、商事借款、これが信用供与ワクとして設定をされておる。そこで借款導入のためには、このワクの中に何とか首を突っ込みたいということで、われもわれもと押しかける。その段階で有力者が口添えをするということ、これも調査団がはっきり指摘をしている。しかもこの有力者の口添えたるや、すべて有力者の口添えが必要である。つまり商業借款のワクの中に入るためにはオール、一件残らず有力者の口添えがなければはいれないのだ、少なくとも文法上はそう解せられるわけです。すべてなんですね。これはおそらく私は実態であろうと思うのです。しかもワクの消化の見地から、通常より慎重な配慮が欠けてあったということまで率直に認めていらっしゃる。であるとするならば、このようなあり方というものは、今日内容が検討されて是正されておりますか。されておるならば、その具体的な今日のあり方、もしないとするならばどのようにされますか。
  227. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 先生の御指摘は、この調査報告書の第一章の二ページの終わりのほうの部分かと思われますが、韓国経済に関する苦言ということで申されておる部分でございまして、韓国側において、そういった点について改善がなされるということを期待して調査団が報告を書かれたものと思われますが、その後どういうことが起こったかについても、私どもはまだはっきりしたことは承知いたしておりません。
  228. 坂井弘一

    ○坂井委員 あわせてこの指摘に対して、いまどういう実態にあるかということに対しても報告をお願いしたい。  それから数ある不実企業、この不実企業が本邦企業、日本企業が何らかの形で関係をしておる、出資であれ投資であれあるいは合弁であれ。この経済援助、商業借款という形の中で本邦企業が韓国におけるそうした借款企業に関係を持つ、そういう中で輸銀が借款の信用のワクを与える、もちろん輸銀は本邦企業との関係でありまして、直接的には韓国企業とはつながりを持ちません。  ところでその中で、たとえば一つ事例として先ほどあげました韓国アルミ、これは本邦企業はトーメン、日立、昭電であります。一体この本邦企業に対して輸銀はどれくらいの供与ワクを与えているのでしょうか、その額を明らかにしていただきたいと思います。
  229. 前川春雄

    ○前川説明員 輸銀は、先ほど申し上げましたとおりに日本の輸出社に対して信用供与をいたしまして、日本の輸出社が延べ払いで韓国の輸入社に設備、資材を売るわけでございます。御指摘の韓国アルミにつきましては、契約金額が千三百四十八万ドルでございまして、そのうちこれは設備、機械、それとエンジニアリングフィーを含んでおりますが、その分を日本の輸出社に対しまして輸銀は融資しております。ただ、この設備、資材、機械につきましては、当初契約に年産一万五千トンとございましたかの能力を有する設備であり、その性能の保証がございまして、積み出されまして現地で組み立てられたあとその所期の性能が達せられたことの証明をとっております。また、実際の信用供与自身は船積みのつど——もちろん、輸銀が信用供与をいたしますにつきましては、韓国側の輸入許可並びに日本側の輸出許可に基づいていたしておるわけでございますが、船積みのつどその資金を日本の輸出社に支払っておるわけでございます。また、それがメーカーに支払われるべきものであることを確認いたしまして、メーカーに支払われたことを確認いたしましたつどその船積みの金額を輸出社に払っておるわけでございます。
  230. 坂井弘一

    ○坂井委員 したがって、いまのような形で輸銀が、いまあげました本邦日本企業に対して与えたところのワクの総額は幾らになりますか、こういう質問であります。
  231. 前川春雄

    ○前川説明員 ただいまの件に関しまして、輸銀が融資いたしました金額は当初二十七億四千八百万円でございます。
  232. 坂井弘一

    ○坂井委員 当初とおっしゃいましたが、総額はいかほどになるのでしょうか。
  233. 前川春雄

    ○前川説明員 総ワクでございます。申し上げましたのは、その後返済が行なわれておりますので、現在は違うという意味で申し上げました。
  234. 坂井弘一

    ○坂井委員 わかりました。  私は韓国国会における議論あるいは韓国の特別委員会における議論等々、韓国の国会会議録、速記録等によりまして、先ほど指摘いたしましたのは李鍾南議員の質問であります。その中におきましても、韓国アルミのみならず、借款状態がいまどのような形になっているか、はたして日本の対韓経済協力なるもの、援助なるものが韓国の民生安定あるいは経済発展に寄与しているかどうかという点について、韓国国会の中における議論が、さにあらずして、さまざまな疑惑、そしてそういう中で韓国の政財界、同時にそれにつながるところの日本の政財界、この四者の、まことに一握りの一部の特権階層の間において食いものにされておるというような幾つかの事例をあげて、韓国国会において議論がされております。少なくともそのことは、日本政府としてあるいは通産省、もちろん外務省、大蔵省あるいは経済企画庁、それぞれが関係を持つことでありますので、無関心ではおれないことでありますので、そうした具体的な事実関係と申しますか、その実態、内容等についてさらに議論を進めて実態を明らかにして、そうした中で、いまあるところの忌まわしい対韓経済協力そのものを正常なあるべき姿の日韓の経済関係、これに改めなければならないということを痛切に感じております。  きめられた時間が参っておりますので、そうしたことにつきましては次の委員会に譲りたいと思いますが、いまソウルにおきまして欠食児童が六〇%もある。弁当を持ってこれない児童が六〇%もあるというようなことまでいわれておる。これがはたして韓国の民生安定、経済発展に今日までの対韓経済協力が、援助が所期の目的に沿ってきたか、果たされたか。答えはノーであります。そうしたことからさらに具体的な問題については次の委員会に譲りたいと思います。  本日はこれで終わりたいと思います。
  235. 宇都宮徳馬

  236. 受田新吉

    受田委員 十分のお約束でありますので、時間を厳守します。小刻みにこういう質問を繰り返すことは非常に苦痛でありますから、明日また皆さんと一緒に時間をかけて残余の質問をさせてもらいます。  経済協力局長さん、あなたのところで扱っておられる対外援助資金というものは国家予算の何%、一%という程度のものか、目標をどこに置いておられるものか、最近における方針を明らかにしていただきたいです。
  237. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 外務省が直接取り扱っております経済協力関係の予算と申しますのは、受田先生御存じかと思われますが、いわゆる技術協力とそれから無償協力と、それから国際機関に対しまして拠出いたしましたりするお金、そのごく一部分でございますが、そういったものでございまして、外務省全体の予算が御承知のとおりことしの予算で約八百億円ぐらいでございまして、その大体三分の一ぐらいが経済協力局の予算——三分の一に欠けるかと思いますが、というようなのが実情でございますから、金額にしては約二百億円をこす程度のものでございます。
  238. 受田新吉

    受田委員 この対外援助資金の配分の上で、韓国の占める部位はどのくらいですか。
  239. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 技術協力の部門につきましては、これは過去の総計になってしまっておりますけれども、(受田委員「最近の年」と呼ぶ)ちょっと私手元に最近の年だけのを持っておりませんですが、過去における総額ということは結局昭和四十一年以後四十八年までの総計で、技術協力が約十三億五千万円でございます。それから無償協力としまして金烏工業高等学校というものに対します援助のお金が、過去二回交換公文が結ばれておりまして、その分第一回目が昭和四十六年の八月で一億三千万円、第二回目が昭和四十七年の七月一日で三億九千万円、合計いたしまして約五億円というものでございまして、それが韓国の部分でございますから、(受田委員「順位は」と呼ぶ)全体の順位の中では、ちょっと手元に資料ございませんが、韓国から入ってまいります研修員の数等はかなり高いほうの順位になっておると存じます。
  240. 受田新吉

    受田委員 無償、有償技術協力というようなものについて、外務省というものはその国の実情を十分把握してきわめて適切な配分がされておるかどうか。思いつきでなされる危険があるということになるとたいへんなことなんで、韓国の場合のごときは、いま質問されたような危惧を確かに抱かれておる。韓国一般国民にはわかっていない。朝鮮半島は大体中国の儒教の精神が十分流れて道義を尊重する国であるはずなのでありますが、しかし、どうも韓国を旅行しながら、安い公務員の給与などではとても食っていけないのだが、その残りをわいろによって生活しているという風説も流れているような実情になってくると、韓国のほんとうの経済立て直しに貢献して、韓国国民の民生安定、生活向上というところに日本援助がどう役に立つかを、よほど的確に外務省は配慮してくれなければいけないと思うのです。思いつきで配分されるようなことがあってはたいへんなことだと思うのですが、どうも議論を承っていると、各種の経済援助関係が有償、無償、贈与、借款、これらにわたって的確な基礎に基づいてその援助した実態の追跡調査などがされているのかどうか、非常に危険があると思うのです。残りはまた明日承りますが、援助した金額及びその目的というようなものが的確に住民の土に貢献されているかどうか。大づかみの処理ということになれば、国民の血税をもってするものであるだけに許されないと思うのです。したがって、援助対象国とその金額及び目的を、一応ひとつ資料として拝見して明日伺いたいと思います。  私がいただいておるこのDACの資料を見ますると、韓国の場合は、米国の政府関係援助金額が一九六八年から五カ年の比率を見ましても贈与、借款、これが大体平均して日本の倍に及んでいる。アメリカの援助日本援助がそれぞれの国で何ら連絡なしになされておるとするならば、これは非常なまた不合理の結論が出る危険があると思うのですが、日本援助計画は米国の援助計画と全く関係なしにやっておられるのか。日米の経済関係とそれから韓国に与える日本援助計画というものの中には因果関係があるのかないのか。私は、もっと総合的に友邦韓国の現状を十分把握して、開発途上国としてわれわれの血税で御協力したものの対象がりっぱに国民の上に与えられなければならぬと思うのですが、この数字を見ましても何か思いつきで処理されたような、毎年どういうふうにこれが与えられたかの理由が明確でない。  もう一つ、いま閣僚会議を開くとするならば、韓国はいまいかなる協力を求めようとしておるのか。一九七二年に例をとるならば一億一千三百万ドル、贈与四千七百万ドル、借款六千六百万ドルというのと、ことし新しく今度要請、要望されている金額というものとがどういう比率になっているのか。一九七二年以後における要望はどういうことであるかを明白に願いたいと思うのです。
  241. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 援助は決して思いつきでやっているわけではございませんで、相手方の要望、それに対しましてわが国が協力をし得る度合い等々を検討いたしまして、それぞれ厳重にチェックの上実施しておるわけでございます。なお、それでもまだ効果があがったかどうかという点が問題になりますので、いわゆる効果測定調査団というのを事後において出しておりまして、韓国につきましてもすでに一回過去にその調査団を出しまして、先ほどどなたか御引用になりました当局が一九六九年八月に発行いたしました日韓経済協力と題する報告書は、いわゆる効果測定調査団の報告書でございます。  それから韓国に対します援助数字を先ほどちょっとあれでしたが、ここで出てまいりますのは、先ほど申し上げました外務省所管以外のものまでも含んでの全体の数字でございますが、一九七一年には大体一般の民間信用その他までも含んだものでございますが、アジアに対します数字が全体の六四%、そのうち北東アジアに対しますものは三九%というような数字が載っかっております。  アメリカと対比いたしました場合には、先ほど先生御指摘になりましたように、一九七一年にアメリカの援助の中から軍事援助を差し引きますと、大体日本援助の倍程度をアメリカが出しておるというようなことになっておりますが、これは必ずしもアメリカと日本との間にどの程度の援助を分け持とうかというような相談をした結果ではございません。ところが、場合によりましては、たとえばインドネシアのような場合におきましては、アメリカと日本との間にいわゆる三分の一方式と申しまして、多数国機関が分担する分それから食糧援助、そういったものを取り除いたもののうちの三分の一をアメリカと日本が持とうというような内々の話をしている場合もございます。しかし、多くの場合は、大体援助協議グループというような世銀で主催する会合がございまして、そこに出されますその国の経済計画その他をもとにいたしました援助要請額というものをもとにいたしまして、私どものほうで慎重に検討した上で援助の金額をきめて実施しておる、こういうのが実情でございます。  今回、第七回の日韓閣僚会議は延期になりましたわけでございますが、先ほども、受田先生ちょっとおられなかったかもしれませんが御答弁申し上げました中で申し上げたように、普通ならば閣僚会議が近づきますと先方事務当局と私どもとの間で下打ち合わせが始まりますが、今回はその下打ち合わせをまだやるに至っておりませんでしたのではっきりしたことはわかりませんが、昨年の閣僚会議のときに話が出ました浦項総合製鉄所の第二期拡張工事のための一億三千五百万ドルというものに対する先方の要請が残っておりますという点、それからいわゆる新しい農村、セマウル運動に対するわが国の協力に対して当然先方はまた援助要請してくるであろう、それから先般韓国の要人が日本に見えられましたおりに、わがほう政府の首脳に対しまして要請がございました韓国の北東岸に墨湖という港がございますがその拡張計画、こういったものが議題になってくるであろうということは予想をしておりました。
  242. 受田新吉

    受田委員 御苦労さんでした。大臣がおられぬ場合には政務次官に常に御苦労願っておく。大臣も政務次官も——政務次官でもうわれわれは了承するわけですから。政治的な発言の場合……(「あんただけやで、それは。」と呼ぶ者あり)だから特に私は要求してあるわけですからね。私が政務次官でよいと言うておったその政務次官さえも行くえ不明なんです。ちょうど金山さんが行くえ不明だし、政務次官いつの間にか行くえ不明になっておる。こういう調子じゃ、大臣がいなくても協力しようという幅を持った人間の質問ができなくなってしまう。こういうことを特に委員長御注意していただいて……。
  243. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 はい、よく注意します。
  244. 受田新吉

    受田委員 あすから厳重に政府を監督していただきたいと思います。  どうもすみません。
  245. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時三分散会