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平井説明員
先生の最初の御
質問は、刑の種類によってその受刑者に課する作業の態様、業種が異なるか、こういう御
質問と
認識いたしましたので、その
立場から
お答えいたします。
御承知のように、刑務所に収容されておる受刑者は、
先生御
指摘のように、懲役受刑者、それから禁錮受刑者、それからさらにたいへん数は少ないのでございますが、
罰金等を納められないということで収容される労役場留置者というような者がおります。それからさらに、もう少し数が少なくなりまして、刑としての拘留受刑者という者が大体入っております。最も数が多いのは懲役受刑者でございます。懲役受刑者につきましては、あとでこまかい数などは詳細申し上げますが、大体刑務所内におきまして木工とか印刷、洋裁、金属、農耕、牧畜、あるいは北海道などに参りますと造林とか木材の伐採、あるいは
場所によっては紙細工な
どもやらしておるところな
どもございます。それからさらに皮工、皮製品をつくらせるとか、あるいは紡績をやらせるとか、さらには構外作業と申しまして、刑務所のへいの外のかなり離れたところの耕うん地などで農耕をやらせるとか、あるいは事業所の職工さんにまじって働くというような形の構外作業な
どもございます。こういった作業を課されておるのが懲役受刑者の大体一般的な姿でございます。
それから禁錮受刑者でございますが、禁錮受刑者は、御承知のように、刑法の
条文をかりてまいりますと作業は課されておりません。請願と申しますか、本人が自主的に働きたいということを願い出た場合には、その者の能力であるとか体力であるとか資質というようなものを考えて、また刑務所の若干の都合も考えますが、そうしてその作業をやらせるということになります。しからばこの禁錮受刑者にはどういう作業をやらせるかということですが、できれば禁錮受刑者に適切なものがあればそれをやらせるということになりますが、大体の刑務所では、禁錮受刑者だけに適切なというものはなかなか見つかりませんので、懲役受刑者と大体似たような作業に従事させるという例が多いと思います。
それから、数は少ないと申し上げましたが、労役場留置者、これは大体懲役受刑者に類似した作業をやらせる場合が多いのでございますが、何ぶん数少ないということと、一般の懲役受刑者とか禁錮受刑者と混禁といいますか、同じような
場所で入りまじって作業をやらせるには法律上親しまない地位の者でございますので、どうしても数少ない者が独居房などで一人でやるというような形になりますので、手細工とか紙細工というようなものになる可能性が多いわけでございます。
それから拘留受刑者、拘留受刑者は期間もたいへん短い。いまでございますと大体一月以内ということでございますので、やはり紙細工程度のものを独居房などでやって、間もなく出所してしまうというのが実情でございます。
それから第二点、ちょっと聞き落としましたので、あとでもう一度
先生から教えていただきたいと思います。
第三点の受刑者に対する運動時間、これを問題にされましたが、休憩時間を使って運動をやらせておるのではないか、こういう御
質問でございましたが、御承知のように監獄法、それからそれを受けました監獄法施行規則の
条文に即して
お答えいたしますと、刑務所等の収容には一日三十分あるいはそれ以内といいますか、三十分を最高限度として戸外運動をやらせるということになっております。その戸外運動をやらせる時間をどこに設定するかというのはたいへんむずかしい問題になっております。もちろん雨天の場合にはなかなかうまくまいりません。雨天体操場のようなところがあればそこでやらせますが、ないところは、廊下で事実上ちょっとからだを動かすというようなことしかさせられませんし、それから、ほんとうならば作業時間以外に運動時間を設定いたしまして、そこでちゃんとやらせればよろしいのでございますが、御承知のように、収容者を処遇する刑務官といいますか保安
職員と申しますか、一応刑務官と言わしていただきますが、刑務官の勤務時間もそう無限定に長くするわけにはまいりません。あちこちで言われますように、勤務時間を短縮する、場合によっては週休二日というような声がかかる
世の中でございますので、刑務官の勤務時間もあまり長くできないというようなことになりますので、作業時間の中のどこにはさみ込むか、つまり作業時間を使うということでなく、作業をやらせながら昼間の日の当たるときのどの時間帯に三十分なら三十分というものをはさみ込むかというのがたいへんむずかしい場合がございます。特に日照時間の短い冬など困りますので、事実上休憩時間とか休息時間を戸外運動に使うというところもあると思います。
それから週休一日という御
質問がございました。これは、受刑者には免業日と申しまして、普通の日曜日とかそれから祝祭日は作業を課しません。結局作業をやらない日は何をやっておるかと申しますと、集団的な教育行事、たとえば知名人の講演を聞かせるとか、あるいは希望者には宗教教戒的な話を聞かせるとか、場合によっては運動会的なものをやらせるとか、また、そういう全体が参加する行事が設けられない場合には、クラブ活動といいますか、詩吟だとか読書だとかやらせる、少さなグループでやらせる、その行事がありますが、そういったものに参加させる場合がございます。それからそういう大きなグループ、小さいグループ、いずれを問わずそういう行事が行なえない場合には、刑務所にも図書室の設
けがございますので、図書室から本を借り出させる、そうしてそれを舎房の中で読むとかいうようなことをやらせております。
それから、先ほど作業時間につきまして、実働八時間ということであるが、事実上は拘束九時間半ではないか、こういう御
質問があったと思いますが、拘束九時間半というほど長くはない、実情はそれほど長くはないと思います。ただ、実働八時間やらせるためには、その前後に若干の幅を見ます。たとえばかりに七時半から作業をやらせるといたしますと、これは工場でやらせるという場合を仮定いたしますと、七時半に工場が始まるとすれば、舎房から工場まで収容者を連れてまいらねばなりません。ばらばら不規則に連れてまいりますと、中には不心得な収容者もおりますので、やはり一応並んで規律を保ちながら工場に連れていく、そういうことを刑務官がやるわけでございます。そういうようなことを考えますと、舎房から工場までの路離が若干ありますので、やはり十分とか十五分とか幅を見なければならぬというようなことも考えられます。現実にそうでございます。それから七時半に工場の始業といいますか、機械を運転するといたしますと、その前に安全操業といいますか、
事故のないようにということを考えますと、やはり機械の始業点検というのも五分なりそこらやらなければいかぬということがあります。それから、御承知のように収容者の中には不心得者がおりまして、刃物で
職員を傷つけるというような者もまれにでございますがおります。したがいまして、木工にしろ機械作業にしろ若干刃物などを渡しますので、その員数点検というようなこともやらせます。そういったことがありますので、七時半に始まるとしても、その前に大体二十分から三十分近くの準備の時間が要るわけでございます。同じように、作業が終わってから舎房に帰るまでのことを考えますと、たとえば四時半なら四時半、あるいは五時に作業が終わるといたしますと、そのあと使わせた刃物は、員数だけ返ってくるかどうかというようなことをやはり点検せざるを得ない。そして舎房に連れて帰るためには、受刑者の数を点検
——点検というのはおかしい
ことばでございますが、数を点検します。場合によっては、看守さん、刑務官の目をのがれて、どこかにひそむとか逃げるとかいうものもおりますので、そういうことがあっては、地域社会の方にも迷惑を及ぼしますので、収容者の員数まで点検するというようなことがありますので、実働八時間が前後でかなりふくれます。そういうこともありますので、実働八時間が、実際の拘束は少し延びるというようなことはあろうかと思うわけでございます。