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1973-06-20 第71回国会 衆議院 決算委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月二十日(水曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 宇都宮徳馬君    理事 木野 晴夫君 理事 森下 元晴君    理事 久保田鶴松君 理事 芳賀  貢君    理事 庄司 幸助君       阿部 喜元君    荒舩清十郎君       中尾  宏君    中村 弘海君       長谷川四郎君    濱野 清吾君       増岡 博之君    高田 富之君       田代 文久君    坂井 弘一君  出席国務大臣         労 働 大 臣 加藤常太郎君         国 務 大 臣         (経済画企庁長         官)      小坂善太郎君  出席政府委員         人事院事務総局         任用局長    渡辺 哲利君         総理府人事局長 皆川 迪夫君         経済企画庁長官         官房長     高橋 英明君         経済企画庁長官         官房会計課長  下山 修二君         経済企画庁総合         開発局長    下河辺 淳君         労働大臣官房会         計課長     大坪健一郎君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君         労働省職業安定         局長      道正 邦彦君         労働省職業安定         局失業対策部長 桑原 敬一君  委員外出席者         行政管理庁行政         監察局監察官  佐藤 惠一君         経済企画庁長官         官房参事官   大石 敏朗君         会計検査院事務         総局第一局長  高橋 保司君         会計検査院事務         総局第三局長  桜木 拳一君         会計検査院事務         総局第五局長  中村 祐三君         参  考  人         (水資源開発公         団副総裁)   丹羽雅次郎君         参  考  人         (労働福祉事業         団理事)    工藤 誠爾君         参  考  人         (雇用促進事業         団副理事長)  和田 勝美君         決算委員会調査         室長      東   哲君     ————————————— 委員の異動 六月二十日  辞任         補欠選任   石田 博英君     阿部 喜元君   篠田 弘作君     中村 弘海君   田村  元君     長谷川四郎君   中村 梅吉君     増岡 博之君  橋本登美三郎君     中尾  宏君   竹入 義勝君     坂井 弘一君 同日  辞任         補欠選任   阿部 喜元君     石田 博英君   中尾  宏君    橋本登美三郎君   中村 弘海君     篠田 弘作君   長谷川四郎君     田村  元君   増岡 博之君     中村 梅吉君   坂井 弘一君     竹入 義勝君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十五年度一般会計歳入歳出決算  昭和四十五年度特別会計歳入歳出決算  昭和四十五年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和四十五年度政府関係機関決算書  昭和四十五年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和四十五年度国有財産無償貸付状況計算書  〔総理府所管経済企画庁)、労働省所管〕      ————◇—————
  2. 森下元晴

    森下委員長代理 これより会議を開きます。  本日は、委員長が所用のため、委員長の指名により私が委員長の職務を行ないます。  昭和四十五年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、総理府所管経済企画庁及び労働省所管について審査を行ないます。  この際、おはかりいたします。  本件審査のため、本日参考人として水資源開発公団総裁丹羽雅次郎君、労働福祉事業団理事工藤誠爾君及び雇用促進事業団理事長和田勝美君の御出席を願い、その意見を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 森下元晴

    森下委員長代理 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、参考人からの意見聴取は、委員質疑により行ないたいと存じますので、さよう御了承願います。  これより質疑に入ります。質疑の申し出がございますので、順次これを許します。木野晴夫君。
  4. 木野晴夫

    木野委員 私は、経済企画庁関係につきまして質疑をいたしたいと思うのであります。  経済企画庁は、長期、短期にわたる経済計画、また国土総合開発計画、あるいはまた海外援助関係、いろいろな仕事をやっておられますが、そのうちの水につきまして、水資源開発公団経済企画庁所管でもありますので、その問題に限りまして本日は質疑をいたしたいと思うのであります。  水につきましては、非常に重要な問題でありまして、われわれの一般生活、これにも関係ありますし、また工業用水、そういった産業面におきましても問題がありますし、農業関係その他におきましても、これまた非常に重大な関係があるわけであります。しかも一方、人口が都市に集中いたしておりまして、東京中心とする首都圏、また大阪中心といたします近畿圏あるいは中部圏、各地で人口集中いたしておりまして、そういった地区はそれぞれ河川がある。そういった意味で発展をしたのでありますが、人口集中に伴いまして、はたして水が十分であるかどうかという点で多くの問題を投げかけておるのであります。先般も新聞で伝えられたところによりますと、建設省のつくりました試算でありますが、現在の人口増加、また現在の経済成長が続いたならば、昭和六十年には、東京中心とした南関東で年間で二十億トン、これは千三十万人の水でございますが、また京阪神では十三億トン、六百五十万人分、北九州では四・五億トン、二百三十万人分、これだけの水が不足する、こういった見通しが出たというので、新聞でも報ぜられておるのであります。私は、こういった大きな問題、水につきまして、経済企画庁におきましてこれが所管だというならば、相当しっかりした政策を立て、またしっかりした政策を実行してもらわなければならぬと思うのであります。  ところで、それを受けましてできた水資源開発公団、こういったものを見てまいりますと、経済企画庁主務官庁であるといっておりますが、しかしながらしさいに見てまいりますと、その工事自体はそれぞれの主務官庁がある、こうなっておるのであります。水につきましては、経済企画庁長期計画を立て、そうしてそれの実施水資源開発公団がやる、またそれすべて経済企画庁だというのでなくして、いまの計画その他は経済企画庁、そうしてダムをつくる場所ないしは水路の関係は、これも計画を立てるのは経済企画庁、しかしながら実施の場合にはそれぞれの官庁、こうばらけておるのであります。私は、そういった場合に経済企画庁総合調整をやるのだということでありますが、口先だけではいけないのでありまして、実際その効果が上がらないときにはサロンじゃないか、寄り集まりじゃないかということになりますので、長官以下におかれましては、この問題につきまして総合調整、何も主務大臣すべて経済企画庁とは言いませんが、各役所役所でありますが、この総合調整の機能を十分に発揮してもらわなければならぬ、このことをまず思うのでございます。また水資源開発公団におきましては、各役所と十分に連絡をとりまして、そうしてしっかりとやっていただきたいと思うのであります。  そこで、まず長官にお伺いいたしたいのは、南関東において水がこれだけ不足する、京阪神においてこれだけ水が不足する、こういうことでありまして、国民はそういう意味でとらえるわけであります。ところが、それを受けました水資源公団では、五大水系はやるのだ、こうなってまいります。五大水系といいますと、利根川淀川木曽川吉野川、筑後川、こうなってまいります。南関東について申しますと、利根川水系、こうなってくるわけでございまして、利根川水系開発公団で引き受けた、こうなるわけでありますが、国民の受け取り方は、それでは南関東の水は全部水資源開発公団がやってくれるのだ、こう思っておるわけでありますが、たとえば荒川利根川水系に入っておらない。利根川水系は手を打ったが、荒川は入ってない。南関東の水が非常に大事である、水資源開発公団がある、だいじょうぶと思っておったら、いや、水資源開発公団水系別であって、利根川水系であって、荒川水系は入っておらない、こういったことが起こるわけであります。それで経済企画庁にお聞きしたいのは、現在の考え方水系別でありますが、国民の考えておりますのは、南関東ではどうか、近畿圏はどうかということでありますから、この際、そういった地区の水を確保するために水系追加、それをする必要があるのじゃないかと思うのであります。またそういった作業をしておられると思うのでありますが、そういった点についてお聞きしたいのであります。
  5. 下河辺淳

    下河辺政府委員 いま御指摘いただいたとおりでございますが、特に南関東あるいは京阪神地域におきます水の需給の逼迫は非常に緊急を要する事態でありますが、従来私どもは、御指摘いただきましたように、利根川あるいは淀川水系中心開発事業を指導してまいりまして、御指摘いただきましたように仕事各省にまたがりますので、各省間の調整にいささか努力しておるわけでございまして、指定しております五大水系に関しましては各省間の調整がとれているものと私ども判断しておりますが、ただいま御指摘いただきましたように、荒川その他の河川についてやはり指定水系の中で総合的に検討すべきではないかという御指摘はごもっともだろうと思いますし、私どもといたしましても、荒川その他従来指定した水系関連水系については、やはり指定水系と同じように総合計画を立て、用水計画を完全なものにしていく必要があるということで、関連水系指定水系の中に組み入れることについて調査をし、各省と相談を始めているところであります。
  6. 木野晴夫

    木野委員 ただいまのお答えで伺いますと、経済企画庁においては、各水系ごとに当たります場合に、各役所総合調整は万全を尽くしておる、万全の努力を払っておる、こういう話がございましたが、この点は長官にも十分に総合調整の実をあげていただきたい、このことを思うのでありますが、その次の問題としまして提起いたしました、われわれは南関東の水がどうかというときに利根川水系ということだけでは荒川が抜けておる。そこで関連水系ということで荒川検討しているということを聞いたわけでありますが、これは利根川水系のほかに荒川水系を取り上げ、六大水系、こういうことになるのですか。それとも五大水系のままであって、それに荒川を入れる、こういう意味ですか。
  7. 下河辺淳

    下河辺政府委員 六大水系とするということではなく、利根川水系の中に荒川水系を含めて考えるという方向で現在各省調整中でございます。
  8. 木野晴夫

    木野委員 それでは、水系ということばですが、どのようにして水系というか、どういった場合にこれは関連水系に入るのだ、こう見るか。たとえば雨粒が一滴落ちたら、それがずっと流れ流れて利根川におりてくる、これが利根川水系だという定義であれば、荒川水系は入ってこないわけです。関連荒川水系が入るというなら、関連とはどういう意味関連になってくるのか、こういうことであります。
  9. 下河辺淳

    下河辺政府委員 御承知のことでありますけれども、現在すでに荒川につきましては、利根川用水開発によります水を荒川水系に流しておりまして、事実上水の供給体系の中に荒川はすでに利根川水系の一環として考えることが可能ではないかというふうに考えておりまして、そういう意味荒川利根水系の中でくふうしたいと考えておりまして、そういったような直接密接関係ある河川につきましては一体的なものとして水系を指定したいと考えておりますが、さらに御指摘いただいておりますように、南関東全体あるいは関東全体ということになりますと、荒川を含めた利根川水系だけではなくて、その他の周辺水系と申しますか、別途体系を立てるべき水系についても調査を始める必要があるというふうに考えております。
  10. 木野晴夫

    木野委員 この水資源開発の問題は、水資源開発するのでありますから、そういった意味で一滴の水が利根川におりた、それが利根川水系というのではなく、彼此融通し合ってそれがなにした場合には、それは水系の中に入ってくるというわけでありまして、荒川水系利根川水系関連であるという意味で取り上げられる、こういった考え方も非常にけっこうかと思うわけであります。また彼此融通できなくとも、たとえば那珂川の水、これなんかも何かの意味で考えていくのだ、こういうことでけっこうでありますが、もし荒川水系が非常に事業が大きいというときは、事業を促進するという意味でこれはまた別にするということでもよろしいし、とにかくわれわれの言っていますのは、南関東の水をどういうふうにするか、こういうことでありますので、そういった点から御配意願いたい、考えるべきであるに思うのであります。  それとともに、大阪で申しますと、大阪でもやはり京阪神の水がたいへんだということで、琵琶湖総合開発その他やりまして、淀川水系開発しておりますが、紀ノ川というのがあるわけであります。紀ノ川の水をどのように開発するか、関連さすか、これはもういずれ時の問題だと思うのでありますが、紀ノ川につきまして、淀川関連水系化してやるのか、そういった考え方でもけっこうであります。また別の六大水系一つとして追加して考えるのか、それもけっこうでありますが、この紀ノ川水系開発といいますものは近畿につきましては緊急の問題である。またこれで発電その他を総合的にやれば、公害問題にも電力問題の解除にもなりますし、これをぜひとも取り上げたいと私個人として非常に痛感しておるのでありますが、いま荒川について話されておりましたように、紀ノ川水系について言うとどういうことになるか、企画庁の考え方をお聞きします。
  11. 下河辺淳

    下河辺政府委員 ただいま荒川について申しましたように、大都市地域におきます水の不足については緊急を要する課題であることは先ほど申したとおりでありますので、荒川について考えました考え方は、決して利根川だけのものじゃなくて、淀川水系についても考えるべきであるという考え方はお答えしたとおりだろうと思います。しかし淀川水系につきましては、御承知のように、琵琶湖開発によります阪神への水供給ということを中心に昨年来検討をお願いしておりまして、ようやくそれが実りまして、これから琵琶湖総合開発というものに全力をあげるということでいままで淀川水系仕事経済企画庁としてはしてまいりましたので、御指摘の点についての検討がまだ進んでおりませんが、今度の検討課題として御了承いただきたいと思います。
  12. 木野晴夫

    木野委員 それ以外の地域で新しく水系追加というような点で考えておられる水系があれば、この際、こういったところが問題になっているのだ、こういったところが問題になりそうだ、それを聞かしてもらいたいと思います。
  13. 下河辺淳

    下河辺政府委員 現在利根水系についての各省との調整に入りつつありますが、他の地域については、実際上各省との調整に入っておらないというのが実情でございまして、これからそういったものに私どもとしても手を差し伸べて各省調整に入りたいと考えておりますので、具体的な地域はいま御説明することができませんけれども、やはり中心になりますのは大都市地域の水に対します対策として考えてまいりたいという方針でございます。
  14. 木野晴夫

    木野委員 長官に重ねてお聞きしたいのでありますが、先ほど申しましたとおり、昭和六十年には、建設省試算によりますと、千九百万人分の水が不足する。しかもそれが南関東近畿北九州、そういった人口集中地帯でありますが、これはほんとうに重大な問題であると思うのでありまして、先ほど申しました。しかも国民はその地域の水が確保されるかどうかということでありますから、水資源開発公団ができた、これでやるのだとなれば、いまの水系ということも大事でありますが、さらに水系追加するというふうな点も積極的に考えていただいて、これを織り込んでいく、この考え方、姿勢が大事であると思うのでありますが、長官はどのように考えておられますか。
  15. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 御指摘のように水の問題というのは非常に重要でございまして、従来水であるとか太陽であるとかというようなものは、もう無限のものというふうに考えられておりまして、その他の資源でも、かなり使い捨ての経済などといって、消費を拡大することが生産を拡大する一つの大きなルートであるというふうに考えられておったのでありますが、最近は資源有限性ということで、非常にわれわれ配慮しなければならぬような状態になったと思います。特に水というものは、これはもう人間生活とは切っても切れぬものでありまして、生活それ自体あるいは工業原料として、もう水がない場合を私どもは考えることはできないのであります。そういう意味で当庁の持っておりまする役割り水資源公団役割りというものは非常に大きなものであると考えております。  御指摘のように現在五大水系というものをわれわれ管理しておるわけでありますが、先ほど局長から申し上げましたように、たとえば荒川利根川というものは総合的に勘案していくということが必要だと思っております。また淀川に関します紀ノ川の問題も、ただいま御提案になりましたような、これなどもよく検討さしていただきたいと思いまするし、また関西地区、ことに大阪中心といたしまする水不足の問題にいたしましては、先年来、御承知のように琵琶湖総合開発の問題に着手をいたしました。着工後わずかでございますので、淀川水系開発はまだ着工率はたしか一一%ぐらいで低いのでございますが、これを鋭意伸ばしてまいりまして、ただいま御指摘のような総合的な見地から、大切な水の問題について間違いのないようにいたしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  16. 木野晴夫

    木野委員 いま大臣から、南関東については荒川を別水系で考えるかどうか別としていろいろ考えていこう、また近畿につきましては紀ノ川水系、これはまた検討しようということでありますが、ひとつ積極的に先手先手対策を練っていただきたいと思うのであります。  ところで、水資源開発公団にお聞きしたいのでありますが、水資源開発公団はそういった意味で非常に大事なところでありますが、水資源開発公団仕事といいますのは、治水事業につきましては国から交付金が出る。工業用水とか普通の水道、上水道につきましては、これは補助金の形で出てくる。それから地元負担金として、たとえば受益者負担金として金の項目がある。それから借り入れ金をして、それで金をまかなう。そういった形で仕事をしておるわけでありますが、私、四十五年の決算を見てまいりますと、国からの交付金補助金、借入金、それからまた債券を発行しておりますが、その様子を見てまいりますと、毎年多額繰り越しないしは不用額を出しておる。たとえば四十五年度決算で申しますと、治水特別会計では、百二億七千万円、これが予算でありますが、支出いたしましたのは八十億円で七七%の実行である。繰り越しが二十億円で、不用が二億七千万円。また一般会計からの補助金で申しますと、工業用水とか、水道とか、土地改良とか、そういったのを合わせますと五十八億円というのでありますが、支出済み額は四十七億円で、繰り越しが八億、不用が二億、このようになっておるわけであります。このように歳入面での繰り越しがあるということは、工事が進捗しなかったからそれだけ交付金が出なかった、補助金が出なかったということでありまして、工事がそれだけ進捗してないということのうらはらじゃないかと思うわけであります。  また公団会計を見てまいりますと、建設費でありますが、建設費は三百八億五千万円、ところが支出決定済み額は二百三十四億九千二百万円、六九%である。繰り越しが六十億で、不用額が十三億五千五百万円。このような傾向はずっと続いておるわけであります。要するに事業が予定よりもおくれておるということでありまして、この原因はどこにあるのか、この点につきまして水資源開発公団側の答弁を求めます。
  17. 丹羽雅次郎

    丹羽参考人 お答え申し上げます。ただいま水資源開発公団におきまして繰り越し額がたいへん多い、この原因はどこにあると思うかという御質問と承りました。私ども繰り越しが過去におきましても、現状におきましても、相当多額にのぼることにつきましては深く反省して、それのないように努力いたしておるわけでございますが、まさしくただいま先生がおっしゃいましたように、この原因は、結局はそれぞれの事業予算編成段階におきまして予定いたしたほどに伸びないということに一に帰するわけでございます。  その原因は何かという点でありますが、四十五年の例が出ましたので、四十五年につきましていろいろ分析をいたしてみますと、御承知のとおり当公団は、先ほど御指摘がございましたように、国におきまして、内閣におきまして、それぞれ水系ごと基本計画を立てる、法律に基づきまして、その基本計画に基づきまして、主務大臣がこういう要領でこの事業を行なえという実施方針を出す、それからそれによりまして初めて私どもとしては当事者能力が出るわけでございますが、今度はその実施方針に基づきまして関係知事関係利害者と、こういう計画でやりたいが承認をもらいたいということで実施計画承認をもらう、いわば三つの関門を持っておるわけでございます。  四十五年度につきまして申しますと、ちょうどこの年は木曽川水系吉野川水系におきまして基本計画の改定が行なわれまして、新しい事業が四つ五つ出てまいりまして、これが予算上計上された。それで基本計画ができましたが、実施方針がきまりましたのが年度末で、実はそのうち四件ほど年度末において実施方針が国の段階でございますがようやく関係知事との間で話がつきまして、御指示をいただいた。それでいわばこれに見合う繰り越し額相当額が約二割程度に相当するわけでございまして、この点につきましては、国におかれましても、主務大臣におかれましても非常に御努力願っておるわけでございますが、何ぶん水は出す県の知事立場、取る県の知事立場利害が複雑でございまして、その調整に非常に手間どる。しかし水は急いでおりますので、これがまとまればすぐやらねばならぬので、当然予算上は計上いたしておくという体制をとっております関係上、これがおくれますと繰り越し原因になる。  それから第二番目に、実施計画承認を求めてまいります段階におきまして、知事地元市町村その他の要望を聞いた上で、県議会の納得を得た上で初めて判こを押すという形に相なりますので、その段階におきましては、たとえばA県の流れております水を途中でせきとめましてB県に回すというような話になりますと、そのせきとめますところの下流にありますA県市町村からいろいろの注文が出てくるわけでございまして、知事さんとしてはこれを無視するわけにまいりませんので、これに対する対策につきましていろいろ協議、ネゴが行なわれるわけでございまして、この段階におきましてやはりどうしても期間を食うという形が少なからずあるわけでございます。幸いにしてこの系統のものが約一三%程度は四十五年度の中におきましては繰り越し額の内容に占めております。  それから申すまでもなく、それがきまりまして、さあ私ども地元に乗り込みまして、今度はほんとう水没者ほんとう村当局といろいろお話し合いを始めるわけでございます。御承知のとおり、何ぶん公共補償要綱で損失は補償するというたてまえでの折衝でございますので、最近の情勢下におきましてはそれでは足りないわけでございまして、やはり地元経済の安定、就職機会の確保、水没者生活再建、こういう問題につきましては、いかなるところにおきましても数十カ条の要求が出るわけでございまして、これをそれぞれの行政措置によりまして、県のほうに道路をお願いしたり、建設省に道路をお願いいたしましたり、簡易水道をお願いいたしましたりして、ほどいてまいるわけでございます。これはやはり非常に手間がかかるわけでございます。これが約四割弱程度を占めておるわけでございます。  最後に、一、二割弱でございますが、これは事業が最終段階に入りまして、この仕事は整理しよう、やめよう、あるいは最終的にもう一ぺん手直しをしてみようといういわば残務整理的なものとしてこの予算繰り越しまして、翌年度において最終的に処理する、こういう形のものがございます。  以上、大きく申しまして、知事対国、知事主務大臣知事知事及び市町村水没者対当公団、この関係におきますものごとのほどきに非常に時間がかかる。しかしうまくいくものはすらすらいきますので、予算上は当然あらかじめ用意しておきます。非常にこの点につきまして苦慮いたしておるところでございます。  以上でございます。
  18. 木野晴夫

    木野委員 長官にお伺いいたします。ただいま水資源開発公団の副総裁から話がありましたが、水資源開発公団仕事は非常に大事だということでありますが、毎年毎年工事自体がおくれておるわけであります。それにはいま話が出ましたとおり、県の水の権利の問題、そういった調整、それから地元の補償、そういったもので難航しておるのでありますが、琵琶湖につきましては、琵琶湖総合開発の特例法をつくりまして、これの解決の一助にした。いままた水源地域対策特別措置法というものが国会に出されておりますが、こういったことでこれの解決の一助にするようにいろいろなされておると思うのであります。長官に重ねてお伺いいたしますが、非常に大事な仕事でありますが、実はむずかしい問題がありましておくれておる、こういうのが現状でありますから、経済企画庁におきましては、各県の総合調整、各県知事がそれぞれのなわ張りを争って解決しない、そういったことにつきまして建設省とも連絡を密にして、また農林省とも連絡を密にしてこの問題の解決に当たる、そういったことが必要じゃなかろうかと思うのであります。それで、この問題につきましての長官考え方を重ねてお聞きしたいと思います。
  19. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 大規模なダム等ができまする場合には、その周辺の住民がいろいろな生活上の変化を受けるわけでございまして、この変化はおおむね負の変化といいますか、生活が苦しくなる、非常に生活環境がやりにくくなるという場合が多いわけです。それによって利する者は遠方の住民であるということで、やはり自分の地域生活を守るという面からいろいろな問題があるわけでございまして、これがまた知事等の苦慮の種であるわけでございますので、ただいまお話にもございましたような水資源地域対策特別措置法をつくりまして、これはダム地点の住民の利益がより多く守られまするようないろいろな内容を持っておるわけでございまして、幸いにこれが国会で早期に御審議、御可決いただきましたならば、よほどこの点は改善されるのではないかと存じます。われわれ企画庁としても、そういう問題をひっさげて、さらにこの水資源地域の自治体の長に対してできるだけその総合調整が円滑にまいりまするように、またいまの御指摘のような予算の使い残しなどが万々起こりませんように、より強力な施策を講じてまいりたい、こう思っておる次第でございます。
  20. 木野晴夫

    木野委員 先ほど申しましたとおり、公団事業はおくれがちでありまして、プラン自体に問題があるからもっとプランを縮小せいというような意見も出てくるわけであります。私は、プランはそのままにして、さらに水系を取り入れるとか積極的に考えるとともに、こういった隘路の打開には経済企画庁が率先してこれをやるというふうにやっていただきたい、この点を重ねてお願いするわけであります。  それから、公団にお聞きしますが、公団のほうでは交付金とか補助金工事が進みませんから入ってこない。預金部の資金のほうも、これまた工事が進んでませんからちょっと入ってこない。ところが公団債券のほうは全額交付してさばいておる。御承知のとおり預金部資金の金は六分五厘。最近は六分二厘、また六分になると思いますが、六分五厘。しかし公団債券のほうは少なくとも七分はかかると思います。七分の高いほうの金はちゃんと募集して用意してある。こういった点は、金が余ってなにするときは、公団債券のほうをあと回しにして、預金部の金とか、そういった安い金は全額もらうというようにしたらどうか。預金部のほうは工事の進捗に応じてその分だけ減っておる。ところが債券分は全額とっておる。こういう点について、私はもうちょっと何か考え方があってもしかるべきじゃないかと思うのでありますが、公団におきましてのこの点の考え方、どのように考えておるかお伺いしたい。
  21. 丹羽雅次郎

    丹羽参考人 私どももまことに先生のおっしゃるような立場で内心希望はいたしておるわけでございますが、まず公共事業でございまして、事業の性質上、一般論として、年度内に終わらなければ繰り越しして翌年に入っても引き続きやれるたてまえをとっておる。したがいまして、当公団事業も、先ほど来のむずかしい問題がかりに三月に解決しなくても四月に話がつけば直ちに突貫工事に入るという意味におきまして、事業の金は裏づけとしては繰り越しとして用意をいたしておかねばならない。そこで、その国費のほうは翌年度に当然繰り越しでございますから、いただけるわけであります。運用部資金のほうは、翌年度繰り越しして借り入れることを制度的に認められておるわけでございます。問題は、先生御指摘のとおりの公団債の問題でございますが、公団債につきましては、先生御承知のとおり、政府保証が一年と予算総則にも定められておるわけでございまして、年度を経過しての措置が許されておりませんものでございますから、公団債について繰り越しという制度によって翌年度公団債を発行する余地を認めてもらうということにつきましては、現状においてできないわけでございますので、私どもといたしましては、運用上これに見合う公団債はなるべく年度末に発行をするように努力をいたしておりまして、この間の調整をはかっておる次第でございます。
  22. 木野晴夫

    木野委員 公団債のほうがとにかく利息が高いわけであります。あなた方公団のほうでは、より安く、より早くというのがモットーであるならば、この安い利息の金をまず確保するということ、そして保証債が制度上こういうことであるというならば、またそれについての考え方を頼むというふうにすべきであって、こうなっているから高い金を借りればいいのだということだけでは済まされませんので、この点につきましてはさらにくふうをこらしていただきたい、努力していただきたい、こう思うわけであります。  時間もございませんので、あと一点、四十五年度決算で気のつきました点を申し上げておきたいと思いますのは、実は四十五年の決算におきまして多額の未収金という項目があるわけであります。二十九億六千万円。それから管理費の関係で未納金が一億一千万とあるわけでありますが、これはおそらく愛知用水関係ではなかろうかと思うのであります。もう時間もございませんので、私の推測したところで申しますと、たしか愛知用水ができまして、知多半島に水を流す、そこでその水はあるいは飲料水になりあるいは工業用水になりいたしますが、相当部分農業用水ということで完成したのであります。完成したころには、実は農業のほうではそれほど要らないのだ、したがって、分担金はそれだけ払えない、こういったことが起こったことは私も当時から承知いたしております。その部分じゃないかと思うのでありますが、その未収金がある。この未収金はどういった性格のもので、そして農業関係の者が自分はそれだけ払えないということでおれば、これはどういうふうに解決するか。片をつけなければいけませんが、この未収金が非常に多いので、この点につきまして公団側の説明を求めます。
  23. 丹羽雅次郎

    丹羽参考人 いま御指摘の未収金は、まさしく先生おっしゃるとおり愛知用水特別勘定におきます未収金でございまして、内容は、愛知用水事業におきまして農民が支払うべき金に見合う分でございます。愛知用水事業につきましては、三十六年に終わりまして、三十七年から負担開始をいたしまして、面積の食い違いその他いろいろの事情によりまして金が入ってまいらないということで、当委員会におきましてもたびたび御指摘、御注意をいただいたわけでございます。そこで私どもといたしましては、昭和四十一年から二年にかけまして関係者と何回か協議をいたしまして、面積ははっきりする、取るべき金ははっきりきめる、それから幸いあの知多半島におきまして上水事業の需要が大きいものでございますから、農業から一部水を工業に回して、農業がかぶるべき金は水道のほうで持ってもらう、こういう整理をいたしまして、未収金としては四十三年に三十三億という数字に確定いたしまして、これを年度計画で償還をするということで、毎年一億八千万から一億九千万ずつ入ってくる金からこれを消すという線にロングランの償却計画を立てまして、現在着々そのとおり、農民も納得し、県も納得して、金が入っておりますので、会計技術の形式上は未収金として整理せざるを得ないわけでございますが、内容的にはこれを解消する年度計画はきちっと立ち、それが毎年減じており、先々完全にゼロになり得る、かつその路線に添いまして毎年金が入っておる、したがいまして形式上は未収金でございますが、実質的には回収されるいわば未償還金、これから償還さるべき額というふうに理解をしてもいいものと私どもは確信を持って処理いたしておるわけでございます。過去におきましていろいろ不手ぎわがございまして、こういう形になりましたことにつきましては、申しわけなく存ずる次第でございますが、その後の、先ほど来の努力によりまして解消の目安は完全についておる、その後の決算におきましてこの数字は着々減少いたしておる、かような実情にあることを述べさしていただきます。
  24. 木野晴夫

    木野委員 いまの未納金の二十九億というのは、ただいまの説明によりますと、昭和四十三年に振りかえるものは振りかえ、そして三十三億と確定して、それが逐年きちんきちんと減っております、未収金じゃなくして未償還金というふうな感じです、こういうことですね。
  25. 丹羽雅次郎

    丹羽参考人 さようでございます。念のために申し上げますと、決算報告として提出されておりますものは、四十三年の三十三億が四十四年に三十一億、四十五年に二十九億、四十六年に二十七億八千万と報告をし、実行されておりますので、未収金とは申しながら、いずれ回収され得る金、かように私ども考えておりますので、御了承を願いたいと存ずる次第でございます。
  26. 木野晴夫

    木野委員 これはどこの未収ですか。
  27. 丹羽雅次郎

    丹羽参考人 どこと申しますと、水資源開発公団の愛知用水特別勘定における未収でございます。
  28. 木野晴夫

    木野委員 払う相手は。
  29. 丹羽雅次郎

    丹羽参考人 払う相手は土地改良区でございます。
  30. 木野晴夫

    木野委員 土地改良区のほうで愛知用水公団関係のこの未収金をきちんと払っていく、こういうことで、いまの二十九億というのは、三十三億から逐年順調にいっておるということでございますが、このことはこれといたしまして、私この愛知用水公団のときを思い出しますと、当初つくってみたが、その後の事情が変わったということで、付近の工業用水がほしい、また上水がほしいというので振りかえがついたわけでありますが、これがなかったならばそのままほんとうに未収金になるわけであります。したがいまして、この振りかえがうまくいったからいま答えられるわけでありますが、振りかえができなかった場合には答えられなくて頭を下げるだけだと思うのであります。こういった事情の変化というものは、いま開発公団で取り上げておられますのは人口集中のところでありますから、水の需要の非常に大きなところでありますから、ないと思いますが、そういった変更があったときには十分に対応できるように、措置できるようにやってもらわなければならぬと思うわけであります。水資源開発公団のこういった金につきましては、国税徴収法の例によってやるということをうたってありますが、しかしながら、これが取れぬときには、それじゃ取れるかというと取れない。したがいまして、ああいった徴収規定があるからいいんだ、取り立ての裏づけがあるからいいんだというのではだめであって、むしろやはりこういった計画がかっちりしているか、その必要があるか、長期の見通しはあやまちはないか、そういったことが大事であり、また事情が変わった場合には、それに対応できる対策、これを早急に立てなければいかぬと思うのであります。こういった点につきまして十分に考えていただきたいと思います。  時間もありませんので、私の質問はこれで終わりますが、水資源の問題といいますものは非常に大きな問題でありますので、経済企画庁におきましては、先ほど申しましたとおり総合調整の実を十分にあげるように、そして計画が合理的でかつ実効性のあがるようにやっていただきたい。そうしてこの問題につきましては、先ほど申しました水資源開発公団水系をさらに追加するというふうに先手先手でやっていただく、このことを希望いたしまして私の質問を終わります。
  31. 森下元晴

  32. 庄司幸助

    ○庄司委員 経済企画庁にお伺いいたしますが、これは経済企画庁の部員と称する職員の問題であります。  それに先立ちましてお伺いしたいのは、まず経済企画庁の定員は何名なのか、それから定員外の臨時職員は同名か、それからいわゆる企業から派遣されている部員と称する職員でありますか何かわかりませんが、そういう方々がそれぞれ何名あるのか、これをひとつお知らせ願いたいと思います。
  33. 高橋保司

    高橋(英)政府委員 企画庁の定員は、三月末で五百五十三名でございます。それから臨時職員といいますのが現在四十一名おります。それからいわゆる部員と称して民間から来ておりますものは六十一名でございます。
  34. 庄司幸助

    ○庄司委員 もう一つ伺っておきますが、この五百五十三名の中に、いわゆる定員の中に、日銀とそれから国鉄関係から派遣されている職員は入っておりますか。
  35. 高橋保司

    高橋(英)政府委員 入っておりません。五百五十三名は純然たる公務員の定員でございます。それから民間から六十一名の部員と申し上げましたが、純然たる民間でなくて政府機関等から来ております部員が六十一名のほかに三十二名ございます。したがいまして、部員全体では九十三名になります。
  36. 庄司幸助

    ○庄司委員 おたくからちょうだいしました資料によりますと、長官官房に部員と称する方が一名、これは日本交通公社ですね。それから調整局、これが九名、国民生活局八名、総合計画局が十四名、総合開発局が四名、調査局が十四名、それから経済研究所が十一名。この内容は間違いありませんね。
  37. 高橋保司

    高橋(英)政府委員 間違いございません。
  38. 庄司幸助

    ○庄司委員 それからもう一つ、派遣した企業ですね。これは三和銀行、富士銀行、住友、三井、三菱、そのほか日本不動産であるとかいろいろありますが、銀行が十七行、それから明治生命、第一生命、住友生命等保険会社が六名、それから関西電力、東北電力、東京電力、中国電力、四国電力、電力関係が五名、そのほか住友電気であるとか、あるいは新日本製鉄、三菱重工、日産自動車、トヨタ自動車、住友化学とか、こういった方々が残余の数になると思うのですが、これも間違いありませんか。
  39. 高橋保司

    高橋(英)政府委員 間違いございません。
  40. 庄司幸助

    ○庄司委員 それでは、こういう企業から派遣された部員と称する方々が、企画庁に派遣されてどういう仕事をしているのか、これをひとつお伺いしたいと思います。
  41. 高橋保司

    高橋(英)政府委員 主として調査、研究、分析といったようなものに当たっております。
  42. 庄司幸助

    ○庄司委員 調査、研究、分析というお答えでありますが、おたくで経済社会発展計画とか、いろいろ三年おきぐらいにつくっておられますね。この計画策定の会議ですね、計画策定について部内でいろいろ会議をやるだろうと思うのですが、それにはこういう方々は参加しておられるのですか。
  43. 高橋保司

    高橋(英)政府委員 計画の項目別の研究グループの一員として参加していると思います。
  44. 庄司幸助

    ○庄司委員 そうしますと、それは最終段階計画を取りまとめる際、そういう場合は参加しないが、最初のグループごとの段階での討議ですね、これには参加しておられるということになりますか。
  45. 高橋保司

    高橋(英)政府委員 さように相なっております。
  46. 庄司幸助

    ○庄司委員 もう一点伺っておきますが、こういう計画を策定なさる場合、いろんな資料が必要だろうと思うのですよ。計数であるとか、その他経済の動向であるとか、こういった計数についてあるいは資料についてこういう方々の手に渡っているわけですか。
  47. 大石敏朗

    ○大石説明員 お答え申し上げます。いろいろ資料がございますが、そういう数字につきまして個々の部員がそれを承知しておるということでございます。ただし、資料の取り扱いとして、そういうものが自由に外に出ているというわけではございません。いろいろ問題のある数字もございますので、そういうものが事前の段階で外に出ているということではないと思います。
  48. 庄司幸助

    ○庄司委員 問題になる資料については外に出ていないというお答えでありますが、目には触れる可能性はあるわけですよね。そうすると、それを本人がメモに書いたり記憶にとどめるということはあり得るわけですね。その点どうですか。
  49. 大石敏朗

    ○大石説明員 いまお話しのようなことがございますれば、そういう可能性はございます。しかしながら、この計画のつくり方でございますが、これは通常の行政事務とは若干違いまして、審議会、それの下にいろいろ部会その他あるわけでありますが、そういったところの討議を中心にして行なわれておるわけでございまして、大体やり方といたしましては、事務局のほうであらかじめデータをそろえ、その問題をどういうふうに考えていくかということにつきまして、審議会あるいはその下の部会その他で議論を進めていくという形でございます。したがって、数字につきましては、そう言われたような問題はあろうかと思いますが、その点通常の行政事務とは違いますので、一般的に考えられるような問題としては比較的ないのではないか、かように考えております。
  50. 庄司幸助

    ○庄司委員 もう一点伺います。こういった企業の出向社員ですね、これは企業側からすれば、どういう目的で企画庁に出向させているのか、それから企画庁の側からすれば、どういう目的でこれを受け入れているのか、この点をお伺いします。
  51. 高橋保司

    高橋(英)政府委員 現在企画庁に参っております部員は、大体年齢は二十七、八歳以下でありまして、それから大学卒四、五年といったようなところでございます。企画庁は、御承知のように、研究的なあるいは調査、あるいは長期的な計画といったような、ややアカデミックな性格を帯びておりますので、企業のほうからいたしますと、いわば留学といいますか、企業だけでは得られない、官庁に行って広い視野を得る、あるいは民間と違った発想といったようなものを体得するといったような、長い目で見ての、その当人にとってのメリットがあろうかと思います。私どものほうといたしましては、広く官僚とは違った発想の持ち主と接したり、場合によっては専門的なキャリアといいますか知識といったようなものも吸収できるといったような意味で、思想的に官民交流といったようなメリットがあろうかと思います。
  52. 庄司幸助

    ○庄司委員 いまちょっと気になることばを伺ったのですが、そうすると、これは皮肉に受け取られると困るのですが、経済企画庁の職員というのはいわゆる狭い官僚的な発想しかできないということになるように受け取れるのですが、そのとおりなんですか。
  53. 高橋保司

    高橋(英)政府委員 どうもことばが足りなくて失礼いたしました。別段役所のほうが狭いという意味ではございません。役所のほうも広く考えておりますけれども、また民間の、官僚とは違った考え方の人に接するということもプラスであるというふうに思います。
  54. 庄司幸助

    ○庄司委員 そこで、長官にお伺いしますが、この問題、部員の数はやはり経済企画庁が一番多いですね。各省庁合計で百三十六名受け入れております。派遣企業数は百十社でありますね。そのうち金融関係が七十七社、ほとんどもう金融関係ですね。その他が三十三社。この百三十六名のうちで経済企画庁が六十一名だ。約半分経済企画庁が受け入れている。しかも五百五十三名の定員に対して六十一名、約一割、これはほかの省庁の定員と比べたら、もうけた違いに経済企画庁の企業派遣の部員の数が多いわけですよ。その点やはり問題になるのは、私は二点あると思うのです。  第一点は、簡単な問題ですが、いわゆる企業側からすれば、これは一種の人材養成ですわね。会社の中堅社員あるいは幹部社員を養成するために企画庁に派遣する、そういう点、これはほとんど大企業ですからね、どれを見たって地方銀行の小さなところとか、あるいは地方の中小企業の社員なんかは入っておりませんから、この大企業の社員養成を、何ぼただだといっても、いろいろな事務費その他もありますから、やはり国費で養成してやっているという側面が一つあると思うのですね。その比率が一割も占めている。これは私は問題じゃないかと思うのですよ。それから、国民一般もやはりこの問題について、おかしいじゃないか、こう言っております。  それから第二点は、先ほどいろいろ伺いましたら、計画の策定に下部段階で関与しておられる、会議にも出ておられる。そこに企業の意向が何らかの形で反映してくる、こういう疑惑を国民が持つのは当然だろうと思うのですよ。  それからもう一つは、こういった策定の段階でいろいろ入手したりあるいは頭にとどめ置いた資料ですね。こういうものを、頭のいい方ばかりですから、エリートですから、頭にとどめておいて会社に持ち帰って、それが会社のいわゆる営利のための政策決定に使われないという保証は何一つないということなんですよ。この点でも、最近の土地の買い占めあるいはその他をめぐっても、日本列島改造論などというものが出てくる、あるいは経済企画庁のほうの発表する経済社会発展計画なり今度の経済社会基本計画なり、こういうものが事前にこういう方向で検討されているということが企業に筒抜けになる可能性は十分あると思うのですよ。そうなると、いわゆる政府と大企業の癒着でないか、こういう国民の疑惑や考え方が出てくるのは、私は当然だと思うのです。その点、長官、現にこういう疑惑があるのですから、そうでなくてさえも政府と大企業の癒着の問題は、田中さんの当番記者のいろいろな記事を見ましても、三日なり五日なりに一回、財界の首脳部とどこかの料亭やなんかで会談をしている、こういう話もあるわけです。こういうことでは私は、政府が国民から信頼を得られないのは当然になってくる。これは企画庁長官として十分考えなくてはならない問題じゃないかと思うのですが、長官のお考え、これをひとつ聞かしてもらいたいと思うのです。
  55. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 部員制度というのは、御承知と思いますが、経済安定本部の時代からございまして、もう二十数年あるわけでございます。その間に、経済安定本部が経済調査庁になり、企画庁になり、だんだん規模が縮小されてまいりましたわけでございますけれども、その間二十数年にわたりまして、この部員制度というのは非常に有効に機能してきたというふうにいわれておるわけでございます。実は、役所の中に民間の人が入って、ただいま御指摘のような役所と企業との癒着が生まれやしないかというようなことは、これも役所としては当然にそういう疑惑を生まないように考えなければならぬところでございまして、その意味から、この部員は大体非常に若い人に限っておりまして、平均年齢では二十八歳ぐらいでございますし、しかも二年たつと交流していく、大体、できるだけ同じ会社の人が来ないようにするとか、そういうようなことをやっておるわけでございます。なお、会議の末席にはおる場合もありますけれども、しかし、これは会議の起案その他には加わらない、要するに翻訳をしたりあるいは資料をいろいろ集めたりする、そういうようなことをやっておるので、一般に非常によく働くというふうに、評価されておるのであります。経済安定本部の時代には、一番多いときには人員は一万名をこえたのでありますし、五千七、八百名おって、経済安定本部が非常に大きな経済企画官庁としていた時代から、今日、ただいま官房長が言いましたように、五百五十三名という非常に少ない数になっておって、これがよく機能しておりますのは、いま申し上げたような部員制度というものが非常によく働いている、有効に機能しているということでもあるわけでございます。  しかし、いま三点あげてお話しになったように、それは企業側からすれば、将来有為な人材をいわば内地留学させるというような意味で、非常に先方はこの制度というものを評価しているわけでございますし、また役所の側とすると、これは大企業大企業というお話がありましたけれども、大企業に入っている諸君は相当学校の成績もいい連中が入っている、これはもう現実にそうなんでございますね。ですから非常にできのいい、まじめな人材がおるわけでございまして、問題は、役所側の使い方といいますか、そういう点でいまお話しのような大企業との癒着がないようにするということであろうと思うのです。従来、予算委員会やあるいは内閣委員会等でこの問題が論議されましたときも、いまあなたがおっしゃったようなことがいままでいろいろ議論されたわけでございますが、結論としては、やはり役所で働かせる以上は、何か国家公務員として一つのワク組みというものを考えたらどうだろう、こういうようなことが結論でございまして、いま五百五十三名の中からお話しのように六十一名というものがごっそり機能しなくなるという形になると、これはまさに確かに仕事の上で支障が出るということが言えると思うのでありまして、問題は支障が出ないようにし、しかもいま御心配のような点がないようにするには、やはり制度としてこの問題をどう扱っていくかということであろうと思うのでございます。実は、総理府の人事局のほうでこの問題について何かもう少しきっちりしたワク組みをきめてもらおうじゃないかということで、いろいろ話をいたしておるようなわけでございます。だんだんその点についても、いま御指摘のような問題についての御心配が起きないような方法を十分考慮していきたいと思います。現実には、この制度によって何か特に特定の会社と役所の癒着が生じたとか、あるいは役所の機密が漏れるとか、そういうようなことはないというふうに申し上げてよろしいと思うのであります。
  56. 庄司幸助

    ○庄司委員 癒着がない、あるいは秘密が漏れる心配はないといわれるのは、これは長官の主観的な問題であって、やはり大多数の国民はこの点について疑惑を持っている。これは明確だと思うのです。それから長官が、これはことばじりをつかむわけじゃありませんが、非常に有効に機能してきた。確かに私は、有効に機能したと思います。あの安定本部時代は、日本が戦災から立ち直る時代ですから、これはあるいは必要だったかもしれない。しかし、その後の経過を見ますと、まさにこの高度成長経済、これがこの有効な機能の活用によってどんどんと伸びてきた、こういう結果が出ているんですよ。だからそういう点で、まさにあなたのおっしゃるとおり、有効に機能したと思うのです。しかし大多数の、この高度成長経済のおかげで被害をこうむっている国民から見れば、これはやはり疑惑にしか映らない。癒着だ、こういうふうになるわけです。  それでお伺いしたいのは、有効だというなら、この経済計画は、何もいわゆる金融業であるとか、あるいは工業であるとか、保険屋さんとか、そういうもののためだけに経済計画を立てるのじゃないと思うのですね。それは、農業政策もここに立てられております。それから漁業の政策も立てられております。中小企業の政策もあります。それから労働者に対する計画もあります。そういう経済計画全体の構想からいったなら、こういった一部の分野、一部の大企業だけの人材を集めるのじゃなくて、まさに労働組合の代表であるとか、あるいは農民の代表であるとか、漁民の代表、それから中小企業の代表——代表と言うと、ことばがちょっと違いますが、そういう方々で、それぞれの分野で非常にやはり大学出で成績の優秀な、しかも仕事熱心な方がたくさんいると思うのです。そういう方々を入れるべきだと私は思うのですよ、もしそういう論理ならば。その点どうなんですかね、長官
  57. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私もことばじりをとらえるわけではございませんけれども、私は、その代表というような意味でこの諸君を考えておりません。これはたまたまできのいい、ある意味において役人よりできのいいのがおるでしょう。そういう諸君に働いてもらって、そして翻訳であるとか調査だとか、そういうことをやってもらうことが、いまのような人員の少ない企画庁が、非常に大きな問題をかかえておるというときに、これは使い方によって、それは御指摘のような問題を起こしてはいけませんから、十分戒心しなければならぬところでございますが、そういう点を避けながらやっていくことは、これは制度を生かすゆえんであるというふうに私は考えておるわけであります。役人とか民間とかというふうにおっしゃいますけれども、私は、日本国民として一つのものであると思っておるのでございます。若い、しかも国民としての社会的な義務と責任をこれからりっぱに果たしていこうというような人を、役所においても歓迎して、そしてこの人たちのそうした働きによっていろいろと貢献をしてもらうということは、これは私は心を広くして考えれば何でもないことであるというふうに思うのです。ことに経済企画庁というのは、そういういろいろな会社に、内部金融をどうするとか、あるいは補助金をどうするとか、そういうようなことを、全然関係のない立場の者で全体の企画をするところなんでございまするから、そうしたことは、先ほど申し上げておるように、もっと身分関係を整理したほうがいいとは私は思っておりますけれども、その意味で総理府の人事局にこれを依頼しておるのでありまするが、この方法自体として、特別に非難を招くようなものではないというふうに思っておるのであります。
  58. 庄司幸助

    ○庄司委員 私が伺ったのは、いわゆる企業の社員を採る、それならば労働組合からも、あるいは農民からも、漁民からも、中小企業からも、こういう方々からも入れて、やはり経済政策を豊かにしていく。それからその御本人にとれば、これは広い視野を得て帰っていく。同じ理屈ですね、さっきあなたがおっしゃったことと。そういう論理が成り立つと思うのですが、その辺は一向お考えにならないのはおかしいのじゃないか、論理からいって。その辺どうなんですか。
  59. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私の御説明が足りないのかもしれませんけれども、私は、そういう人の知恵をかりてやろうというふうな考え方でこの部員制度を運営していくつもりは全くないのであります。中小企業のお立場あるいは労働組合の考え方、ないしは中小企業の問題点、そういうものを役所が吸収しようというのは、それぞれの代表者に私どもがいろいろお話し合いをいたしまして、その考え方を吸収していく。これは審議会等を通じてやっていくわけでございまして、部員というのは、ほんの手助け、仕事をいろいろ分担してもらう。また繰り返しますが、翻訳してもらったり、調査してもらったり、そういうふうなことでございまして、何も中小企業の代表を役所に迎え入れようというようなことではございません。ことに若い社員でございますから、これは会社に帰れば労働組合の組合員であろうと思うのでありまして、私どもそういう職能的な代表を迎え入れて部員としておるという考えは毛頭持っておりません。
  60. 庄司幸助

    ○庄司委員 そうすると、官房長のお答えとちょっと食い違ってくるのですね。官房長は、先ほど、広く官僚と違った発想法を注入する、それから専門的キャリアを生かしてもらう、こういうふうに言っているわけですけれども長官官房長がどうもその点話が違うと私は思うのですよ。とにかくそういう点、私は、どうも論理からいって、非常にちぐはぐでつじつまが合わない、こういうふうに思います。そういう点で、この癒着についての疑問は、依然としてこれは残ります。  それで、もう一つお伺いしたいのは、五百五十三名が定員です。それから臨時職員が四十一名。そしてこういう方々がないと経済企画庁がやれないとすれば、当然それぐらいな定員増をやらなくちゃならないのじゃないか、こう思うのです。これはきわめて不正常ですから、やはり定員増によって、正式の国家公務員としてやっていく必要があるのじゃないか。その点、どういうふうにお考えになるのか。必要な人数は、当然定員で補っていく。それから、この問題について私は官房長の話の中で感じたのは、やはり国家公務員についての視野が何か狭いような、あるいは専門的なキャリアが足りないような、そういう印象を受けるのですよ。これはやはり国家公務員に対する侮辱だと私は思うのですよ。国家公務員の中にだって優秀な人は相当いるはずです。そうでなかったら、国家公務員を雇っておく必要ないでしょう。だから、そういう国家公務員に対する侮辱的なお考えではなくて、生かせば何ぼでも生かせるのでしょう。それを扱い方があなた方へただからいけないだけのことなんですよ。何でもかんでも企業の若手の優秀なエリートでないと役に立たないというような既成概念を持っておられたのじゃ、私は、国家公務員として困ると思うのですよ。だから、そういう点、国家公務員としての定員をふやす、六十一名必要なら六十一名ふやす、こういう点、やはりひとつやる気があるかないか。  それからもう一つは、やはり経済企画庁に国家公務員の職員さんがたくさんいらっしゃるわけでしょう。たくさんといっても、ほかから比べれば少ないですが、しかし五百五十三名もいらっしゃるのですから、こういった職員の方々と一体この問題について話し合いなさる気があるかどうかですよ。やはり経済企画庁の部内の問題ですからね、職員の英知を集めてこういった問題を解決する、あなた方にはその能力がないからほかから引っぱってくるんだというようなことでは、企画庁の役人は浮かばれないだろうと私は思うのですよ。その点で定員増の問題と、職員の方々とこの問題について話し合いをやる、これをひとつやってもらいたいのですが、その点どうですか。この二点について……。
  61. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私の申し上げることを曲解なさらないで、ひとつすなおにお聞きを願いたい。私は、役人がだめなんだということは一言も言ってないのだ。いまの部員の諸君は非常に優秀で役人に負けないという者もたくさんおる、こういうことを言っておるので、その前提は、役人が優秀だからこれに負けない、こう言っているのでしょう。そこで私といたしましては、それはいまのお話のように企画庁が一割も定員の増ができるなら、それはそれに越したことはないと思います。しかし、なかなかそう簡単にいかないのであります。役人をふやすということは、国民の税金でまかなっているわけでございますから、そう簡単に役人を、要るのだから要るのだからといっても、要るのか要らないのかということがなかなか客観的な妥当性のある線が引きにくいものでありまして、今度とにかく物価局をつくって、そうしていまの二十名の物価政策課を三十三名——十三名ほかからかき集めるについても、何人も人を減らすとか、ほかから持ってこさせられたりたいへんなわけで、あなたのおっしゃるようにちょっと簡単にはいかないのであります。そういう点から見ると、いまの部員制度というものは、妙な話ですけれども給料は役所で払ってないのですよ。そして民間のボランティアが来てまじめに働いてくれておる。こういうことが二十数年間機能して経済企画庁というものの業績の一部をになっているわけなんでございますから、あまり型にはめることばかりがいいんじゃない。やはり問題は、そのことをじょうずに有効に働かしていくということが非常に大事であると思うのであります。私どもは自由主義経済ということを言っておるので、役所の権力ばかり強くするということが必ずしもいいというふうに思っているわけじゃないのでございます。そういう点で若干お立場が異なる点もございまするので、私の考えは私の考えとしてお聞き取りを願いたいと思います。
  62. 庄司幸助

    ○庄司委員 いま定員はふやさないという意味だと私は受け取りました。それから、職員と話し合うという点はどうです。少し衆知を集めなさいよ。
  63. 高橋保司

    高橋(英)政府委員 部員のことにつきまして職員と話し合うという気持ちは持っておりません。
  64. 庄司幸助

    ○庄司委員 これはもう全く財界との癒着の関係がこれだけ明確になっていても、あなた方は認めない。それで立場が違う、こういう話ですよ。立場が違うのは、それは財界の立場と働く者の立場の違いはありますからね。だからそういう点では、あなた方はやはり財界本位の立場に相変わらず立っていらっしゃる。この点を私は強く指摘をしておきます。  それで、時間もありませんので、次に簡単に伺いますが、この十一日にFAOのベルマ事務局長が、FAO理事会で食糧問題について演説なさっていらっしゃいます。これはお読みになっただろうと思いますが、その演説の中で非常に重要な指摘があるのです。これは世界の食糧事情の根本にかかわるような重大な発言なのですが、これを聞かれて、あるいはお読みになられて、長官、日本の食糧政策、農業政策、これはもうやはり転換すべき時期に来たのじゃないかと私は考えるのですが、その点どうお考えになるのか。このベルマ事務局長の演説について、わが日本として、経済政策上、特に農業政策上どう考えねばならないのか。この点所信をひとつ聞かしていただきたいと思います。
  65. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 農業問題というのは非常に重要な問題でございまして、われわれの立場からいたしましても、いままでやってまいりました国民所得倍増計画なり、経済社会発展計画なり、新経済社会発展計画なり、あるいはまた私どもが今年の二月に策定いたしました経済社会基本計画なり、それらの計画の中におきましても、それぞれ農業の持つ役割りというものの評価が、時代に応じて強調する点が、ニュアンスが違っておるのであります。いま私どもは、やはり高能率農業の育成と食糧の安定的な供給、そうして高い福祉の農村をつくるということを非常に大きくうたい上げておるのでございますが、私どもの学生のころにマルサスの人口論というのが非常に言われた時代があったのでございますが、最近やはりそうした人口と食糧の関係というものが再び焦点を当てられておるように思うのでございます。ことに気象の変化というものに関連いたしまして食糧の絶対的な不足ということが言われ出しております。最近西アフリカにおきます、チャドとかダホメとかアッパーボルタとか、ああいう地方の悲惨な水飢饉、食糧飢饉の状況、五百万人の人類が飢饉のために死滅するかもしれない、あるいは四百万頭の家畜が飢え死にするかもしれない、そういう状況を見るにつけましても、やはり農業というものの持つ偉大なる役割りというものをこの際またかみしめなければならぬ。ことに大気の汚染と水の汚染がいろいろ言われている際に、やはり農業の持つ、生産面のみならず緑の効用、こうしたものも十分に私どもとして高く評価していかなければならない、かように思う次第であります。
  66. 庄司幸助

    ○庄司委員 それじゃ具体的に質問いたしますが、ベルマ事務局長は大体六点あげているんですね。第一点は、米穀は予想必要輸入量をまかなうには二百万トン程度不足している、それから、北米及び極東の作柄状態がこの上悪化した場合には、世界的穀物不足は不可避となろう、第三点は穀物不足の主因は干ばつ及び過去二年間続いたその他の天候不順である、第四点は、もう一つ原因開発途上国の農業生産が進まない、第五点は、インフレ圧迫下にあって国際通貨危機の影響も無視できない、最後に、最も重要な要因は二十年間世間の穀物需給の調整役を果たしてきた穀物の余剰在庫が多かれ少なかれ減少の一途をたどっておる、この点をあげておられるわけです。わが国においてもやはり、いま長官がお述べになったように悲観的な条件がやはり濃くなっている。一つは気象条件です。これは気象庁長官が本委員会で証言されたとおりです。それから二番目は、やはり土壌汚染等、地力の低下が進行しているという問題ですね。これはいわゆる高生産性農業ということで、金肥を使ったり、あるいは農薬だけに依存してきた結果がこういうことになっている。同時に、農村からの労働力の流出がこれに拍車をかけておる。それから三番目は、長官もおっしゃったとおり需要面での人口増加の問題だ。  そうなると、私は農業政策、あなたのほうでお書きになった基本計画の中の農業政策の部面ですね、これはもう一ぺん考え直す段階じゃないかと思うのですよ。二月の時点ではまだ予測できなかったような事態が顕在化したわけです。その点で私、これまでの四十二年計画、四十五年計画、四十八年計画と大体農業部面で見てまいりましたが、ずっとこれを貫いているのは、国際競争力に耐える農業の近代化であるとか、高生産性農業であるとか、あるいは高能率農業であるとか、表現は違いますけれども、この点があった。そして同時に、外国農産物、余剰農産物の輸入に依存するという政策がずっと貫かれてきた。この三つの計画をずっと貫いています。しかも、ことし二月の基本計画にもまだそれが貫かれていると私は思うのです。その点の政策の転換をやる時期に来たのじゃないか。この計画のまま押し通そうとすれば、必ず私は矛盾が出ると思う。また民族の食糧の需給の問題からいっても重要な問題ですから、ひとつ考え直してもらう必要があるんじゃないかと思うのですが、長官はどのようにお感じになっておられますか。
  67. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 いまの食糧関係の変化、この中にはFAOの事務局の指摘にあったような、LDC諸国の農業政策がうまくいっていないという点も大きな問題でございますが、やはり気象的な問題もたいへん大きいと思うのでございます。気象的な変化が相当続くものか一時的なものか、これも十分われわれとしてきわめなければならぬ点であると思います。  私はこのほどOECDの閣僚理事会に行ってまいりましたのでございますが、われわれといたしましては、経済技術協力、これの重点を農業問題に置かなければいかぬということを強調いたしまして、これはコミュニケにも採択されたような次第であったのでございますが、世界じゅうでこの農業問題というものを非常に重要視してきております。私どもは、農業の重要性につきまして、「福祉社会の農林漁業政策」というものを経済社会基本計画の中に書いておるわけでございますが、この中にある農業政策について、これを改めたらどうだという御指摘でございますが、私は、いまの農業問題についての扱い方は、この中で農村の所得をふやし、そして福祉に満ちた農村をつくる、こういう考え方、そして農業の生産基盤をさらによいものにするという考え方、しかも農業及び農村が健全に発展するように持っていかなければならぬということ、それから農産物の長期的な需給見通しのもとに、生産目標をもとにいろいろな施策をしていかなければならぬというような考え方、こういう考え方は変える必要は毛頭ないのでございまして、さらにより多く農業施策の充実をしていかなければならぬ、こういうことだと思っておる次第でございます。  具体的に言いますと、いまの減反政策、こういうものはアメリカでもカナダでもことしはまきつけからだいぶ変えてきております。わが国でも、田中首相の先般の青森発言のように、この点には若干の変化が見られておるわけでございまして、御指摘のように確かに農薬により過ぎたとか、あるいは化学肥料を多くまき過ぎて硫酸分が多くなって土壌が酸性化しておるとか、そういうような問題がありますから、そういう個々の点については、できるだけこれを改善するようにしなければならぬと思いますが、大きな今後の農林政策というものについて、基本計画を改定する必要があるとは私どもは思っておらぬわけでございます。
  68. 庄司幸助

    ○庄司委員 その点で輸入依存の考え方、この点は私は問題だと思うのです。自給率の低下がだいぶ騒がれているわけですが、カロリー計算でも五三%である。大豆や麦に至ってはほとんど数%だ、こういう関係もある。それと米との関連も出てくるわけです。  それで、具体的にひとつお伺いしたいのは、田中首相が青森で発言なさった減反政策はやめるという点が、新聞報道だけを見ますと、いわゆる休耕補償を打ち切るとカッコされて書いてある。これだけでは農民は泣きつらにハチということになる。やはりこれに全量買い上げが伴わないと、減反政策をやめるといっても何のことかわからない。減反政策をやめて休耕補償は打ち切るにしても、休耕田の復旧の経費も出さなければならぬ。これはあるいは農林省の問題になるかもしれませんが、あわせて米の全量買い上げ、これが伴わないと、減反政策をやめるといってもやめたことにならないと思うのです。それからいまの食糧事情ですね。FAOの事務局長が言っておるような食糧事情の悲観的な見通しからいっても政府が備蓄米も持つべきだ、こういう考えに当然立たなければならないと思うのですが、その点どうですか、全量買い上げの問題。
  69. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 農林政策につきまして、この場で私が国務大臣として御答弁申し上げることは適当ではないと思います。これは農林大臣の守備範囲でございますので、どうぞさような機会にお願いしたいと思いますが、田中首相の青森における発言は、減反についての補償金は予定どおり用意して、さらにいまの国民の食生活が非常に変わってきておって、野菜に対する嗜好等も非常にふえてきておる、また野菜が現実に高くなっておるのだから、これは生産者の手取りもふえるということであるし、またこれについてのいろいろなくふうも今後していこう、だから、非常に多様化した農業でしかも繁栄する農業を大いに政府も考えておるから一緒にやろうじゃないか、こういうような御趣旨だと私ども了承しておるわけでございます。詳しいことは担当大臣のほうから御答弁申し上げるほうが適切だと思いますので、さようにお願いしたいと思います。
  70. 庄司幸助

    ○庄司委員 最後に、いまの御答弁ですが、確かに農林大臣の守備範囲内の問題があります。それは認めます。ただ、経済企画庁長官としては、今後の食糧の需給の見通し、それから悲観的な問題、こういうものを踏まえて、政策として、計画として打ち出す場合、米の問題についていえば備蓄も持つべきである。若干はありますよ。この間の農林大臣の御答弁では大体端境期で二カ月分というようなお考えのようですが、これは前の時点ですから、しかしいまの時点になればこういった備蓄の状態ではだめだ、そういう点からいってもやはり全量買い上げの方向を政策として、あるいは計画として打ち出すべきじゃないか。生産調整については、この四十五年計画にはちゃんと計画として載っているわけですから、その点基本計画の中でも、あるいは基本計画をいじらないにしても、具体的な問題としてやはり考えなければいけないのではないか。その点どうでしょうか。
  71. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 基本計画の中ではそういう具体的な問題を実は指示しておりませんので、これはそれぞれの主管省にゆだねておるわけでございまして、さような点で農林大臣のほうからお答えをしたらよろしいと思いますが、私の立場で申し上げられることは、いままでの輸出入関係で、ことに輸入等でやはりその場限りの輸入をしておったわけでございます。それはわが国の生産を補うに足る輸入があればいいというふうな考え方でおったわけですが、ソ連等の例で見ますと、ソ連は昨年で四、五億ドルの小麦粉を輸入しておるわけでありますが、これは年度を二、三年にまたがっておるように承知しておるのであります。そういう年度を越えた契約をして、そうして穀物等については年度を越えた需給を考えていく、こういうことをやっておるわけでございまして、これはソ連が常時穀物不足に悩んでいる関係からの知恵でございましょうと思いますが、私どももそういう点は大いに参考として取り入れるべきじゃないか、こう思っているわけでございます。
  72. 庄司幸助

    ○庄司委員 終わります。
  73. 森下元晴

  74. 坂井弘一

    坂井委員 民間企業から各省庁に対しますいわゆる出向社員についてお尋ねしたいのでありますが、経企庁におきましても、何回も指摘されておりますように、民間企業から約六十一名、公社、公団から三十名、非常に多い出向社員をかかえております。いわゆる天上りといわれるものであります。  ところで、端的にお伺いしたいのでありますが、これらの出向社員の人事に対しまして経済企画庁長官はいかなる形の辞令を交付されておりますか、お伺いします。
  75. 高橋保司

    高橋(英)政府委員 事務次官名で経済企画庁部員を命ずるという辞令を出しております。
  76. 坂井弘一

    坂井委員 つまりこれですね。——部員を命ずる、経済企画事務次官名、人事異動通知書、何の何がし、異動内容、経済企画庁部員を命ずる、〇〇局〇〇課勤務を命ずる、年月日、こういう辞令を出されております。  お伺いしますけれども、これらの人たちの身分はいかなる身分になりますか。
  77. 高橋保司

    高橋(英)政府委員 企画庁の部員は、先ほど申し上げましたように安定本部時代から続いておる制度でございますが、安定本部時代にははっきり非常勤公務員ということで扱われておりました。現在でもそういう線であろうということで、私どもは非常勤職員という扱いをいたしております。
  78. 坂井弘一

    坂井委員 では、確認いたしますけれども、非常勤職員、つまり非常勤の国家公務員であるというわけでございますか。
  79. 高橋保司

    高橋(英)政府委員 そうでございます。
  80. 坂井弘一

    坂井委員 身分証明書はこれですね。——経済企画庁部員であることを証明する、経済企画庁。これは経済企画庁の職員、常勤職員がお持ちになっておる身分証明書と同じ形式のものですね。
  81. 高橋保司

    高橋(英)政府委員 形式は同じでございます。
  82. 坂井弘一

    坂井委員 部員とございますけれども、職員という分はございませんか。
  83. 高橋保司

    高橋(英)政府委員 一部印刷のぐあいが悪かったときに使ったことがございますそうですが、部員でございます。
  84. 坂井弘一

    坂井委員 部員というような制度は聞いたことがないですね。非常勤の国家公務員である。その非常勤の国家公務員、通常それを部員と名乗っておる、こういうわけですね。実態は職員ですね。——部員でも職員でもよろしい。部員といわなければならぬその苦しいところもあったのでしょう。  それはさておきまして、しからばこの任命権者は経済企画庁事務次官と、こうなっておりますけれども、この法律根拠をお示しいただきたい。
  85. 高橋保司

    高橋(英)政府委員 国家公務員法に基づきまして人事院に通知しながら任命しております。
  86. 坂井弘一

    坂井委員 国家公務員法の第何条に基づいて任命されたのですか。具体的にお答えいただきたい。
  87. 高橋保司

    高橋(英)政府委員 五十五条二項でございます。
  88. 坂井弘一

    坂井委員 五十五条、つまり任命権者、この二項において、「前項に規定する機関の長たる任命権者は、その任命権を、その部内の上級の職員に限り委任することができる。」こういうことですね。つまり、上級の職員たる事務次官、これに委任をした。「この委任は、その効力が発生する日の前に、書面をもつて、これを人事院に提示しなければならない。」人事院に提示されましたか。
  89. 高橋保司

    高橋(英)政府委員 提示しております。
  90. 坂井弘一

    坂井委員 では人事院にお尋ねします。受け取っておりますか。
  91. 渡辺哲利

    ○渡辺(哲)政府委員 人事院では、経済企画庁から、昭和三十二年七月三十一日付の文書によりまして、その当時は企画庁次長に委任する旨の通知をいただきました。続きまして昭和三十三年の六月三十日付の文書で、機構改正により次長が次官に変更された旨同様の通知をいただいております。
  92. 坂井弘一

    坂井委員 では重ねて人事院にお尋ねします。  提示されたわけでありますから、その書面は人事院においてしかと掌握されていると思いますし、同時に、どの企業からどのような人が出向し、その人を非常勤国家公務員として経済企画庁が任命をしたということについては、すべて人事院において掌握されていらっしゃるはずですね。
  93. 渡辺哲利

    ○渡辺(哲)政府委員 任命権の委任は、上級幹部のだれだれに委任したということは確かに了知しておりますけれども、その委任に基づきましてどういう職員を任命したかというようなことにつきましては、通知をいただいておりません。これは一々そういう御報告をいただくようなたてまえになっておりませんので、そのように個々に、どのような非常勤がどういうところから任命されておるかというような実態については、私どもでは把握をしていない次第でございます。
  94. 坂井弘一

    坂井委員 では、何名任命されたかということについては、これは国家公務員でありますから、人事院は当然数ぐらいは御掌握されていますね。
  95. 渡辺哲利

    ○渡辺(哲)政府委員 私どもは任用状況調査という調査を毎年やっておりますけれども、それは常勤の職員に限っておりまして、非常勤の職員につきましては、従来人事統計を所管いたします人事局のほうで数等は調査をされまして、その数字を常に御連絡いただいておる次第でございます。したがって私どもとしては、非常勤の総数はわかりますけれども各省庁のそれぞれこまかい点は承知しておらない次第でございます。
  96. 坂井弘一

    坂井委員 人事院、あんまりふざけたことを言っては困りますよ。何ということを言うんですか、国家公務員じゃありませんか、あなたたちは。知らないなんてふざけたことを言っては困る。けさほど聞いても知らないというのです。いま聞けば、確かに提示は受けた、しかし数はわからぬ。人事院は国家公務員を、数すらも掌握できないのですか。する必要がないのですか。成規の手続をとって、そして事務次官が正規に任命したんですよ。そのことに対して、五十五条の二項に基づいて人事院に提示をしたのです。これこれを任命いたします、非常勤国家公務員といたします、提示を受けたけれども、数もわかりません、どこから来たかもわかりません、それでいいんですか。
  97. 渡辺哲利

    ○渡辺(哲)政府委員 任命権の委任は、先ほど申し上げましたように、だれだれに任命権を委任するということだけでございまして、その委任に基づいて委任した者あるいは委任しない者について、どの程度任用されたかという数のこまかい点は調査しておらない次第でございます。ただ、常勤の職員につきましては、私どもも毎年調査しておりますが、非常勤職員は、その職務の特性上、臨時的というような意味もございまして、そのつど把握するのもたいへん困難でございますので、一応非常勤職員が個々に、どの省庁にどの程度任命されたかというような調査についてはやっていない次第でございます。
  98. 坂井弘一

    坂井委員 では、人事院に重ねて聞きますが、この非常勤職員は当然国家公務員法の適用を受けますね。
  99. 渡辺哲利

    ○渡辺(哲)政府委員 非常勤職員として任命するかどうかは各省庁のきめるところでございますけれども、かりに非常動職員として任命されました場合には、例外はございますけれども、一応公務員法一般はかぶるということになります。ただ、項目によって、その性質上かぶらない事項もございます。
  100. 坂井弘一

    坂井委員 では、経済企画庁に同じ趣旨の質問をいたしたいと思います。  公務員法の適用を受けると判断されていらっしゃいますか。
  101. 高橋保司

    高橋(英)政府委員 適用を受けると考えております。
  102. 坂井弘一

    坂井委員 こんなばかな議論をしなければいけない。あたりまえの話です。手続によって任命したわけでありますから、当然のことです。  総理府人事局いらっしゃいますね。これらの非常勤国家公務員、掌握されていらっしゃいますか。
  103. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 総理府では非常勤職員の調査をいたしておりますが、ただいま手元に資料を持ってまいっておりませんので、お尋ねの点がどうなっているかは、その調査からはちょっとわかりません。そういう状況でございます。
  104. 坂井弘一

    坂井委員 調査してみなければ総理府人事局はわからぬと言う。国家公務員がいま何名いるか、常勤はわかっておる、非常勤がわからない。ともに国家公務員ですよ。それが総理府人事局では内容をつかめていない。これから調査するということでございますか。
  105. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 調査はしておりますけれども、ただいま手元に資料を持ってまいっておりませんので、その総数についてお答え申し上げるわけにいきませんということでございます。
  106. 坂井弘一

    坂井委員 調査はしておるけれども手元に資料を持ってきていないというのは、ふまじめじゃありませんか。私は、きょうはこのことについて質問しますということを、事前にちゃんと通告してある。あなたのほうで掌握されることでしょう、数については。総理府人事局がそれを掌握しないでわかりませんとはどういうことですか。しかもこのことについて聞きますよと言っている。調査はしましたけれども資料を持ってきていない、そんなふまじめなことを言ってもらっては困る。
  107. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 私の聞き方が十分でなかったかと思いますが、非常勤公務員全体につきましては、これはまあ非常にその事実におきまして区々でございますので、資料を持ってまいらなかったので御説明はできないと申し上げましたけれども、お尋ねの経済企画庁の部員につきましては、事前に御通告もありましたので、調査をいたしております。資料も持ってまいっております。その数は、先ほど企画庁のほうからお答え申し上げましたとおり、民間から部員として参っておる者が、私の調査では五月一日現在の数字で六十二名でございます。ただいまは六十名のようでございます。そのほか公社、公団等から三十一名というふうに承知いたしております。
  108. 坂井弘一

    坂井委員 私のほうから発表します。  長官官房余暇開発室で日本交通公社から一名。調整調整課、埼玉銀行、第一勧業銀行から二名。貿易為替課、東レ、トヨタ自動車で二名。財政金融課、日本興業銀行、神戸銀行、第一生命各一で三名。それから経済協力第一課、富士銀行から一名。経済協力第二課、東海銀行から一名。次に国民生活国民生活課、関西電力から一名。消費者行政課、富士銀行、朝日生命、電通各一で三名。物価政策課、富士銀行、三菱銀行、住友生命、日本生命各一で四名。総合計画計画課、日本不動産銀行、日本ユニバック各一名で二名。それから計画官、これは国際経済担当、神戸製鋼所一名。同じく計画官、産業一般で、三菱重工業から一名。同じく計画官、労働力及び人的能力、宇部興産、大成建設各一名で二名。同じく計画官、財政金融、三和銀行、東海銀行、大和銀行各一名で三名。同じく計画官、国民生活担当、明治生命から一名。同じく計画官、これは物価担当、中国電力から一名。同じく計画官、計量分析一般、大和証券、住友電気工業、三菱化成工業各一名で三名。次に総合開発開発計画課、これに日本不動産銀行、日本長期信用銀行、一名ずつで二名。次に開発調整課、日本興業銀行から一名。次に東北開発室、これは東北電力から一名。次に調査局内国調査課、これは三和銀行、協和銀行、住友信託銀行、住友重機械、新日本製鉄、住友金属工業、三菱電機、住友化学工業、関西電力、東京電力、野村総合研究所から十一名。それから海外調査課、これは住友銀行、三井銀行、日産自動車各一名で三名。次に経済研究所、これは住友生命、日本長期信用銀行、太陽銀行、北海道拓殖銀行、日本製鋼所、日本電気、日本オイルシール工業、東北電力、四国電力、東京瓦斯、日興リサーチセンター、締めて十一名。各局合わせまして、経企庁総合計、民間企業から六十一名。こういう実態になっておりますが、間違いございませんか。
  109. 高橋保司

    高橋(英)政府委員 間違いございません。
  110. 坂井弘一

    坂井委員 無給ですか、有給ですか。
  111. 高橋保司

    高橋(英)政府委員 無給でございます。
  112. 坂井弘一

    坂井委員 最初から無給でしょうか。
  113. 高橋保司

    高橋(英)政府委員 最近は無給でございます。昔は謝金というのを払っていたこともあったそうでございます。
  114. 坂井弘一

    坂井委員 四十一年ごろから無給にされたようでありますが、私、その時期はさだかでございません。四十一年ごろから無給にされた、こういうことでしょうか。
  115. 高橋保司

    高橋(英)政府委員 四十一年度からだったと思います。
  116. 坂井弘一

    坂井委員 かつて有給であったというのですね四十一年ごろから無給にした。有給当時のこの給料にしましても、性格はきわめてあいまいであったようであります。ある意味ではもち代みたいなものですね。そういう中で今日無給ということになりまして、これが国家公務員として任命された。任命されたこれらの各社から集まってきた出向社員は、おのおのの企業のそれぞれ社員である。その身分を保障されておる。片や、出向して経済企画庁に入った場合、これが国家公務員であって、国家公務員法の適用を受ける。つまり一人の人間が二つの身分を持っておる。何回か指摘されておりますが、産官癒着、これは私は官民同体だと思う。単なる癒着ではない。その官民同体の中でどういうことが行なわれておるか、その事実を明らかにしていきたいと思います。  まず仕事の内容、現場ではどういう仕事をしておりますか。おのおのの部局、課によって違いましょうが、端的な、あるいは平均的な事例をあげていただきたい。
  117. 高橋保司

    高橋(英)政府委員 調査、研究が主であります。
  118. 坂井弘一

    坂井委員 一般行政事務も担当なさっていらっしゃる方もおりますね。
  119. 高橋保司

    高橋(英)政府委員 おりません。
  120. 坂井弘一

    坂井委員 机を並べて仕事をされる。経済基本計画に参加された方はいらっしゃいませんか。
  121. 大石敏朗

    ○大石説明員 参加という意味の使い方の問題でありますけれども、それに関係した資料の収集その他というものにつきまして、参加したという意味を広く解釈いたしますればございます。
  122. 坂井弘一

    坂井委員 資料を収集し、調査し、経済基本計画の作成にあたってそれが有効に利用された、もっと端的に言うならば、それが経済基本計画の一部を構成した、そういう事実はございませんか。
  123. 大石敏朗

    ○大石説明員 広い意味で解釈すれば、そういう事実はあると思います。
  124. 坂井弘一

    坂井委員 まあ広い意味で解釈しなくてもいいですよ。つまりあるのですね。あるのです。  いろいろな会議がございますね。それにも参加しておるようです。会議が終わったあと、おのおのの社に、全部とは言いませんが、電話で会議の模様を知らせる、そういう事実をつかんでいらっしゃいませんか。
  125. 大石敏朗

    ○大石説明員 個々の部員がどういう連絡をしたかということについては承知しておりません。そういう事実があるかないかということを特に私は確認して承知しておりません。
  126. 坂井弘一

    坂井委員 おると言ったらたいへんなことになりますね。れっきとした国家公務員であります。国家公務員法の適用は当然受ける。その身分を保障された人たちがおのおのの社に対して情報を報告する、これは許される行為であるかどうか、国家公務員法に照らして自明の理であります、国家公務員法第百条「秘密を守る義務」第一項「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。」重要な経済基本計画を策定する。その基本計画の構想、それに参画をする。のみならず、基本計画の一部を作成する。何ページから何ページまで書いたのだ、それがたいへん誇りになっておる人もいるのですね。その間、国家公務員法の適用を受けなければならぬこの人たちは、百条における秘密を守る義務というものが全然守られておらない。その辺からも容易に予測できると思うのです。  具体的な事実としては、いま私が申し上げますように、会議のあとで電話を入れる。月に一回は各社に帰っておられるようでありますが、いかがですか。
  127. 大石敏朗

    ○大石説明員 月に一回各社に帰っているということ、まあそういう事実があるかもしれませんが、特に私どもとしては承知しておりません。
  128. 坂井弘一

    坂井委員 給料はどうやって受け取っておりますか。
  129. 高橋保司

    高橋(英)政府委員 個人個人で会社に行って受け取っている人が多いと思います。
  130. 坂井弘一

    坂井委員 だから正直に答えていただきたい。そんなまどろっこいことを言わなければいい。月に一回は各社へ帰っておるでしょう。承知いたしておりません。給料をもらわなければならぬでしょう。あたりまえじゃないですか、会社に帰るのは。で、その会社に帰って、そこでどういうことが行なわれておるか、その事実についてはあなた方は掌握はされていらっしゃらない。あるいはされておったとしても言えないことであろうと思う。あえて言いません。かなり具体的な、百条に抵触するようなことが平然と行なわれておる。また、むしろそのことは、おのおの出向社員を経済企画庁に送り出した企業とすれば、特に関係のある部署に配置をしてもらっておって、言うなれば企業利益の代表者として経企庁へ送り込んでおる。その人たちが最低月に一回各企業に帰ってきて情報をつぶさに報告をする。秘密を守る義務には明らかに抵触するじゃありませんか。百条、幾つもありますから、一々お答えいただきたい。  当然、第百三条「私企業からの隔離」第一項「職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。」これに対する明確なる御判断をお願いいたしたい。
  131. 高橋保司

    高橋(英)政府委員 非常勤職員については、その条文は適用除外と聞いております。
  132. 坂井弘一

    坂井委員 適用されないという判断でございますか。人事院、明確に答えていただきたい。重要な問題ですよ。
  133. 渡辺哲利

    ○渡辺(哲)政府委員 私は、任用局の担当でございまして、間違ったことを申し上げるのもどうかということもございまして、所管外でございますので、申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  134. 坂井弘一

    坂井委員 幾つか申し上げたいけれども、審議になりませんね。所管外であるから、これに対する明確な答弁は差し控えたい。人事院のあなたが判断できないなんて、どういうことですか、所管外であるとかなんとか。前提があるんですよ。非常勤国家公務員であれ、国家公務員法の適用を受ける。それは前段においてあなた方が明確におっしゃったとおりでしょう。国家公務員法の適用は受けます。そうでしょう。任命をして、身分証明を発行して、公務員としての身分を保障しているわけだ。資格を与えておるわけです。正式な手続によって任命された。この手続を私はとやかく言っているのじゃない。確かに非常勤国家公務員として登録された、だから国家公務員法の適用を受けるのでしょう、こう聞けば、当然受けます。あたりまえの話だ。では、公務員法の中にこうこうあるけれども、このことについてはどうかと聞いたら、明確な判断はできない、答弁はできない、その衝に当たる人事院がそういうことをぬけぬけと答弁される。ああそうですかで引き下がれますか。明確に答えてください。
  135. 渡辺哲利

    ○渡辺(哲)政府委員 所管外でございますので手間どりまして申しわけありませんでした。所管外ではございますけれども、お答え申し上げます。  人事院規則一四−四におきまして、百三条も百四条も非常勤職員については適用が除外されることになっております。
  136. 坂井弘一

    坂井委員 百二条「政治的行為の制限」も除外されますか。
  137. 渡辺哲利

    ○渡辺(哲)政府委員 政治的行為につきましては非常勤職員も適用になりますけれども、ただ、規則一四−七におきまして、委員、顧問、参与など、諮問的な非常勤職員につきましては、除外ということになっております。
  138. 坂井弘一

    坂井委員 百二条二項「職員は、公選による公職の候補者となることができない。」これはどう判断されますか。どう適用されますか、されませんか。  加えて第三項「職員は、政党その他の政治的団体の役員、政治的顧問、その他これらと同様な役割をもつ構成員となることができない。」これについてもいかがですか。
  139. 渡辺哲利

    ○渡辺(哲)政府委員 それらの問題も先ほど申し上げましたと同じでございまして、一般の非常勤は適用になりますけれども委員、顧問、参与等は除外ということになります。
  140. 坂井弘一

    坂井委員 第九十三条「公務傷病に対する補償」についてはいかがでしょうか。
  141. 渡辺哲利

    ○渡辺(哲)政府委員 適用されます。
  142. 坂井弘一

    坂井委員 同じく国家公務員災害補償法の適用はいかがでございましょうか。
  143. 渡辺哲利

    ○渡辺(哲)政府委員 適用になります。
  144. 坂井弘一

    坂井委員 では、話はもとに戻しますが、これら非常勤国家公務員と称する天上りの方々は、私をして言わしめれば、経済企画庁の私設国家公務員みたいなものです。これらの人たちは、実態的にはどういう仕事の内容に携わり、またその人たちによって、おのおの派遣したところの企業は、どのような形で恩恵を受けておるか。言うならば、これは先ほど申しましたように、おのおの経済企画庁へ送り込んで、そこで情報を収集する、これが重大な任務である。実態においてはまさにそうであります。勤務時間の問題、毎日出勤されていらっしゃいますか。
  145. 高橋保司

    高橋(英)政府委員 毎日出勤しております。
  146. 坂井弘一

    坂井委員 どのくらいの期間非常勤国家公務員としておつとめになるのでしょうか。
  147. 高橋保司

    高橋(英)政府委員 原則として二年以下でございます。
  148. 坂井弘一

    坂井委員 長官、お尋ねします。  昭和三十六年二月二十八日、閣議決定によりまして、「定員外職員の常勤化の防止について」というものがございますが、御承知でしょうか。
  149. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 そういう決定があるということを聞いております。
  150. 坂井弘一

    坂井委員 しからば、この閣議決定は守られておりますか、いかがですか、官房長でけっこうです。
  151. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 守られております。
  152. 坂井弘一

    坂井委員 「定員外職員の常勤化の防止について」第三項、「昭和三十六年二月二十八日以後においては、非常勤職員のうち、継続して日日雇い入れることを予定する職員の雇用にあたっては、その常勤化を防止するため、次のとおり実施するものとする。(1)継続して日日雇い入れることを予定する職員については、必ず発令日の属する会計年度の範囲内で任用予定期間を定めること。」——守られておりますか。
  153. 高橋保司

    高橋(英)政府委員 それは守られております。
  154. 坂井弘一

    坂井委員 「必ず発令日の属する会計年度の範囲内で任用予定期間を定める」、つまり定員外職員の常勤化を防止しよう、長くなるのをやめよう、こういう趣旨で閣議決定された。したがって、長期にわたってはならぬというので、定員外職員につきましては、会計年度の範囲内で任用予定期間を定めて、またそれを更新して、さらに継続するというような措置をとっていらっしゃる、こういう意味でしょうか。
  155. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 政府は、定員を増加しないという方針をとっておるわけでございますが、往々にして、パートタイムで入ってきて、ずるずるとそのまま職員になってしまうという点がございますものでございますから、そういうことは厳に慎もう、こういうことで政府は厳守しているわけでございます。この点は、一部地方においては、そういうことがあるというふうに言われておりまして、こういう点はできるだけ是正したいというふうに私どもは思っております。
  156. 坂井弘一

    坂井委員 官房長、お答えがあるそうですが……。
  157. 高橋保司

    高橋(英)政府委員 先ほどの閣議決定に基づきますものは、私どものほうに現在四十一名ほどおりまする日々雇い入れる非常勤職員のことでございます。部員につきましては、あの決定は適用ないものと思っております。
  158. 坂井弘一

    坂井委員 人事院いかがですか、見解を承りたい。
  159. 渡辺哲利

    ○渡辺(哲)政府委員 私どもの制度のたてまえから申しますと、閣議決定は、別に制度に影響する問題じゃございませんけれども、一応そういう閣議決定がなされました以上、各省庁が非常勤を採用する場合におきましては、その趣旨に沿って任用すべきものと思います。
  160. 坂井弘一

    坂井委員 いささか食い違うようですね。官房長は適用を受けない、人事院は閣議決定がなされたのだからその趣旨に沿ってという。経企庁のほうでかってな判断をされたら困る。もう一度答弁していただきたい。
  161. 高橋保司

    高橋(英)政府委員 私どもは、閣議決定は日々雇用の賃金職員というふうに解釈しておりました。
  162. 坂井弘一

    坂井委員 その解釈で誤りない、今後もそのとおり、こういうことでございますか。
  163. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 政府の三十六年の閣議決定は、定員すなわち有給の職員をふやしていかない、これは国民の税金であるからこれをふやしていかない、こういう趣旨でございまして、いまいろいろ御審議をいただいておりまする部員の問題は、これは給与を払っていないものでございますので、その趣旨を官房長からお答え申し上げた、こういうことと解しております。
  164. 坂井弘一

    坂井委員 だんだんと、実態的にも、制度的にも非常に大きな矛盾を持っておりますね。非常勤の国家公務員である。国家公務員として任命をした。その資格を与えた。身分証明書も発行しておる。国家公務員法の適用は受ける。それが非常勤、しかし実態的には常勤である。しかも一般行政事務あるいは計画の立案、作成等にも参画をする。会議にも出る。そういう中で、国家公務員の資格を持ちながら、また国家公務員法の適用を受けながら、服務規定を順守しなければならない立場にありながら、その報酬は、企業からの月給と称するお金によってまかなわれる。国家公務員であるならば、公務員法の適用を受け、適用を受ける限りにおいては、それなりの公務員としての身分の保障をされる。したがって、そういう中で、災害等についてもこの補償は受ける。公務執行中における事故についてもその補償は受ける、同一人物が一方では民間企業の社員、そのまた身分を保障されておる。それが経済企画庁に来た場合には国家公務員としての身分を与えられ、資格を保障される。こういう制度を、制度といっていいのでしょうか、これは制度じゃないですね、私設機関、これを今日このままに放置してきた。何かといえば、それは内容は研修生である、広く民間企業から国際的な経済の視野を広めるという意味においても非常に有益であろう、同時にまた経済企画庁としては、民間企業の第一線に立つ有能な人たちの意見を十分聴取する、これもまた国策に資する一つの道であろう、こういうまことにえてかってな判断を両者において行なって、しかもその間あるときは無給、あるときは有給、今日は無給、あるときはこれらの人たちは単なる研修生であると言い、そしてそれがどうも実態に即してそうは言い切れないという場面に至っていまや非常勤国家公務員であるというれっきたる資格を与える。しかし実態においても非常勤ではなくて常勤である。それらの人たちに対して企業からそれらの報酬が月給という名のもとに交付をされ、言うなればある意味では企業の恩恵によって、企業からのまかない金によって、そういうやみ取引の国家公務員をかかえ込んで、それらに仕事をさせておる、その法的根拠はどこなんだ、それは制度上どうなんだということを最初からかりに詰めていくならば、それはどこにもありません、こういうことになるでしょう。しかしそれではまずいというので国家公務員としての資格を与えておる。与えてみればまた矛盾が起こってくる。これは経企庁長官、ただ単にこのままの形でのらりくらりと、まあまあそれなりの仕事をしてもらっておるのだし、経済企画庁としてもそれなりのメリットもあるのだし、定員をふやしてくれといったってふやしてくれない、そういうときにわざわざ出向いてきてくれて仕事をやってくれる、助けてくれる、非常に便利がよろしい、まあまあという形ではとうてい済まされない。なぜか。国家公務員としての資格を与えておる。これは一方においては総理府の人事局、それから人事院、それから行管、この辺で十分相談されてどうするかということを明快な結論を出さなければならない問題だとは思う。思うが、人事院に聞けば、人事院はわかりません、正規の職員として採用したものではありませんので、私のほうでは掌握はいたしておりません、けさまではそういうことなんです。総理府の人事局はといえば、実態もわかりません、いま調査をいたしております。わずかにこの間ベ平連が発表したあれがどこから出たのか知りませんが、あるいは委員会においても一、二回質問があった。いまや大あわてにあわてて調査にかかっているという段階らしい。一体どの省が、だれがこれらの非常勤職員と称する国家公務員を掌握するのか。どこもその責任の所在がないというようなことでは、これはたいへんなことになりますよ。災害補償もしなければなりませんよ。公務の途中において事故を起こした場合には、これらに対する身分の保障があるわけですから、国が金を出さなければなりませんよ。それは先ほど人事院の明快な答弁のとおり。選挙法との関係においてもまた疑問がありますよ。あるいは秘密を漏らしてはならぬということ、このことに対しては実態的には、事実の面では大きな問題がある。しかしこれは非常勤なるがゆえに適用されないのだとあなたはお答えになった。こんな形で非常勤職員をどんどん雇い入れて、国家機密も何もないです。みんな全部筒抜けなんです。しかも電力会社であるとか——いまや電気料金の値上げの問題、物価のお目付役であるところの経企庁は物価を抑制しなければならぬ。そういう中で、どうするかこうするかということについては物価の担当官がいま衆知を集めておる。そういう中に電力会社が入ってきておる。どうなりますか。しかも最も基本的な経済基本計画の作成までに当たっておる。企業の思いのままじゃありませんか。経済企画庁考え方はそっくりそのまま全部行ってしまう。だからおのおのの企業がそれなりにその人たちを優遇して給料を渡す。そうしてそれぞれのコネのある、一番関係の深い部局課に配置をする。少なくともこの問題については、いまのような実態からして、すみやかにどうするかはっきりしなければ、さまざまな問題が派生してくることは火を見るよりも明らかだと私は思う。長官、いかがなさいますか。
  165. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この問題は、先ほどから申し上げておるように、実は二十五年の長きにわたりまして現実にあった制度といいますか、制度でないとおっしゃいますれば、実際の運用でございまして、これを突き詰めて考えてまいりますと、幾多お話しのようなことは考えられるわけでございまして、先般も内閣委員会でこのお話が出まして、私はその後におきまして、これはぜひもう少し関係する者が寄り合いまして、ちゃんとした方針を立てるべきである、こういうふうに考えまして、総理府人事局、人事院あるいは行政管理庁、その三者におきましていろいろ話し合って、できるだけ早く考え方をまとめてほしいということを申しておるようなわけでございまして、ただいま御指摘の点を十分頭に入れまして、できるだけすみやかな結論を出したい、こう思っておる次第でございます。
  166. 坂井弘一

    坂井委員 これはすみやかな結論をとにかく期待しますが、たいへんな問題でしょう。たいへんなことだと思います。長官の胸のうちは複雑だと私は思う。早急にこの結論を出さなければならぬこともこれまた非常に大事な要請であることには違いない。  人事院、再度聞きますが、この経済企画庁のような形で非常勤国家公務員として任命しましたよということを提示された分はほかにございませんか、他の省庁で。
  167. 渡辺哲利

    ○渡辺(哲)政府委員 任命権の委任というのは、通常の場合、上級の職員に下位等級の職員あるいは非常勤等については委任された例が多うございまして、ただ私どもが了知しておりますのは、そういう特定の職員について任命権を委任したということだけでございまして、その委任に基づいてどういう職員を任命したかという詳細については、先ほどから申し上げましたとおり、個々の具体的な内容については調査はいたしておりません。
  168. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私の先ほどのお答えが少し不十分であったかもしれませんけれども、いろいろお話の中に、企画庁のこうした部員が企業に何か国家機密を漏らすとか、そういうような点がありはしないかともとられるような御指摘がございましたけれども、そういう点はもう絶対にございません。これははっきり申し上げておきたいと思います。  なお、そういうことがいろいろ言われるようなことがあってはこれはならぬことでございますので、そういう点について、どういうけじめをつけたらいいかということ等も含めまして、検討してもらいたい、こう思っておるわけであります。
  169. 坂井弘一

    坂井委員 長官、あえて絶対にございませんということは言わぬほうがよろしいですよ。言わなければならぬという気持ちもわかる。これはたいへんなことなんです。わかるけれども、私はさっきから言っているでしょう。言っていることについては、私はそれなりのものを持って言っているわけなんです。したがって、そのアウトラインについては、実態はかくかくしかじかであるということで、私はちゃんと提示しました。そういう中で判断されることは、これは容易にそういう情報は漏れるという心配がある。百条の秘密を守る義務が侵される心配は多分にある、こう判断されておる。そのようなことの絶対にないように、しからばどういうような形にすればよろしいかということを考えるのは、これは長官が考えなければならぬ。絶対にございませんと断言できますか。そこまであなたが言うならば言いますよ。絶対にそういう事実はない。それはあなたがそうあってもらいたいし、そのようなことがあったならばはなはだ困る、こういう希望を持っておっしゃっていることにすぎない。だからそこが問題だと私はさっきから何回も指摘しておるのです。電話でもって会議の模様を自分の社に入れた。月給をもらいに行った際に、経済企画庁では、いまかくかくしかじか、この課この部ではこういうことを考えておる、計画をしておる、このための資料の収集に私はこうこう当たった、そうしてその資料をもとにしてこのようなことがいま計画立案されつつある、そういうことを言っているのです。それは秘密を守る義務を侵しているのじゃないか、こう言っているのです。
  170. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 そういう事実は、いつ何どきにどういう者がやったかということでおっしゃっていただくなら、これは私はその者に対して厳重に処分をいたします。それは私の当然やるべきこと。ただ、そういうことがあるのではないかという勘ぐりを生じさせるようなことがないようにしなければならない。そういうふうに私の立場を持っておるのでして、そういうことがあってはならないから、ないような制度的なものを考えたい、こう言っているのでございまして、現にそういうことが行なわれているというようなことをおっしゃっていただくならば、それはいつ幾日だれがやったか、どういう証拠が出たかということをおっしゃっていただかないと、私どもとしては納得できないのであります。
  171. 坂井弘一

    坂井委員 常勤職員、正規の職員、同じ机を並べて仕事をしているような職員の中からそのような声は出ませんでしたか、報告は受けておりませんか。
  172. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 そういう報告はございません。
  173. 坂井弘一

    坂井委員 わかりました。  では、あらためてこの問題については事実を明示したいと思います。断固とした処分をするとおっしゃるのですから。先ほど人事院にお尋ねしましたが、掌握されておられない。総理府の人事局もつかんでいらっしゃらない。行管のほうもわからない。少なくとも総理府の人事局、ここではつかまなければならぬと思うのですがね。  いま経済企画庁ばかり言っておりますから、各省庁に対して、出向社員、これがどういう実態であるか、それらが非常勤国家公務員として資格を与えられた者があるのかないのか、ある省、ない省、どの企業から各省に対してどれだけの人たちが出向してきておるか、そういう具体的な数については掌握されていらっしゃいますか。重ねて伺います。
  174. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 この問題につきましては、実は過般衆議院の内閣委員会において取り上げられまして、その実態を至急に調べて対策を考えたほうがいいじゃないか、こういうことになりまして、私のほうで至急調査をいたしました。その結果、ただいまお話に出ております経済企画庁の六十二名、現在は六十一名のようでございますが、五月一日現在の報告では六十二名、そのほか外務省十八名、通産省の二十六名等がおもなものでございますが、合計いたしまして百三十六名という報告を受けております。  その個々の職務の内容、あるいは任命の形式、あるいは身分的なものの考え方等につきましては、十分なまだ取りまとめができておりませんけれども経済企画庁のように非常勤の職員と考えておられるところと、研修員であるという考えをとっておられて、したがって任命も、研修を命ずる、あるいは委嘱をする、こういうようないろいろな形があるようでございます。  こういう実態をもとにいたしまして、もちろんこの問題は、先ほど来お話にございましたように法律が予定した制度の上に乗ったものではないので、いわば自然のうちに各省庁の判断で生まれたものでございますから、やはり第一義的には各省庁の御判断があろうかと思いますが、私としては、先ほど来御指摘がありましたようないろいろな問題がございますので、そういう点について私たちの立場からものを考え、また各省庁のお考えも伺いまして、なるべくすみやかにこの問題についてはっきりした考えをまとめたい、かように考えておる次第でございます。
  175. 坂井弘一

    坂井委員 では、総理府が責任をもってまとめる、こういうことですね。そう理解してよろしいですか。
  176. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 先ほども申し上げましたように、第一義的には各省庁の御判断、御必要等から行なわれておるものでございまして、私のほうで一般的にまとめるというと語弊があるかと思いますが、なるべく各省庁の意見を聞きながら取りまとめていきたいという考えでございます。
  177. 坂井弘一

    坂井委員 人事院、聞いてくださいよ。これは常勤職員、非常勤職員、それから調査員と称するもの、部員と称するもの、あるいは単なる研修員と称するもの、いろいろな形がある。そのいろいろな形の中で、ある省では国家公務員として正式に任命しておる。任命してないところもある。こんなばらばらだから、あなたのほうは掌握できない。少なくとも総理府というものは、それらの実態についてはつぶさに把握をする。国家公務員として登録された人たちのことすらも現状においてわからない。こんなばかげた話は私はないと思う。  私のほうで調査したものを申し上げましょう。各企業別、それから各省庁別。省庁だけ先にずっといきますが、第一番目が経企庁、次が通産省、次が外務省、次は運輸省、次は建設省、次は中小企業庁、こういうことで合計結んでいきます。  最初に日本興業銀行二、それから同じく二、一、一、二、二、一、合計十一。三和銀行二、二、二、一、一、合計八。日本長期信用銀行二、一、一、〇、一、二、一、合計八。富士銀行三、二、一、一、〇、〇、〇、合計七。東海銀行二、一、一、一、一、〇、一、合計七。三菱銀行一、二、一、一、〇、〇、一、合計六。日本不動産銀行二、一、二、〇、〇、一、〇、合計六。住友銀行一、二、二、一、〇、〇、〇、合計六。三井銀行一、三、一、〇、〇、〇、〇、合計五。第一勧業銀行一、二、一、一、〇、〇、〇、合計五。協和銀行一、一、二、〇、〇、〇、〇、合計四。東京銀行〇、一、二、一、〇、〇、〇、合計四。大和銀行一、一、〇、〇、〇、〇、〇、合計二。北海道拓殖銀行一、一、以下〇、合計二。埼玉銀行一、一、以下〇、合計二。住友信託銀行一、一、以下〇、合計二。太陽銀行一、〇、〇、〇、〇、〇、一、合計二。神戸銀行一、〇、〇、一、〇、〇、〇、合計二。日本生命一、一、以下〇、合計二。住友生命二、以下〇、合計二。大和証券一、一、以下〇、合計二。東京電力一、〇、一、以下〇、合計二。関西電力二、以下〇、合計二。東北電力二、以下〇、合計二。日通総合研究所〇、〇、〇、〇、一、〇、〇、計一。それからあと二十八社、これは各一名経企庁へ行っておる者です。先ほど言いました分であります。したがいまして、経企庁合計六十一名、通産省が二十六、外務省が十八、大蔵省が九、運輸省が六、建設省が五、中小企業庁が五、合計いたしまして百三十。このほか私のほうで企業名がわからない分で総理府が二、北海道開発庁が一、科学技術庁が二、これを合わせまして百三十五。以上のように、企業から各省庁に対していま申しましたような数が天上ってきておる。これが昨日現在私のほうで調査し、掌握いたした数であります。  したがって、これらにつきまして、いま申しましたような実態をすみやかに総理府においては掌握をされたい。その上においてこれを一体どうするか、国家公務員法との関係もあろう。そういうことについては人事院あるいはまた行政管理庁の意向もあろうかと思う。総合的に判断して、早急に結論を見出し、そして今後において、いやしくも問題の起こらないように万全の対策を立てていただきたいということを特に強く要望いたしまして、本日はこれで質問を終わりたいと思います。留保分につきましてはあらためて質問をいたしたいと思います。  以上、終わります。
  178. 森下元晴

    森下委員長代理 木野晴夫君。     〔森下委員長代理退席、久保田(鶴)委員長代     理着席〕
  179. 木野晴夫

    木野委員 私は労働省所管につきまして四十五年度決算中心に若干の質疑をいたしたいと思います。そのうち問題をしぼりまして、雇用促進事業団関係いたします分につきましてお尋ねいたしたいと思うのでございます。  雇用促進事業団はたしか昭和三十六年に発足したのでありますが、職業訓練ということと、それから当時炭鉱の閉山が相次ぎまして、その人たちの就職ということで、受け入れ体制側におきまして宿舎が要るということで、炭鉱離職者の援助、宿舎の手配、そういったことが中心で行なわれたと思うのであります。ところが、炭鉱離職者の援護も軌道に乗ってまいりまして、それとともに、また一方、炭鉱離職者に限らず、その他の場合におきましても宿舎が必要であるというようなことで、地域をまたがりまして、広域にわたりまして移動がありました場合に、それの宿舎をつくるというふうなことで雇用促進事業団仕事が非常にふえてきたと思うわけであります。  さらにまた、労働者の福祉を増進するためにレクリエーションの設備をつくるというようなことで、雇用促進事業団という名前から連想いたしますもの、当初の炭鉱離職者の雇用を促進するために宿舎をつくる、ないしは職業訓練をするということから連想いたします雇用促進事業団という名前以上に、労働者のための相当幅広い事業をしているということであって、逆に労働福祉事業団、これは労働災害、福祉事業ということに限定してまいりまして、そのほうは非常に制限された形になってきておる。こちらのほうは逆にふくらんだ形できておるというふうなことであります。そういった意味からいきますと、雇用促進事業団といいますものは少し名前が実体をあらわしてない、このように思います。この雇用促進事業団に対しまして大臣はどのように考え、また実体からいって名前を少し変えたらいいのじゃないかと思うのでありますが、どのように考えておられるか、まずもって考え方につきましてお伺いいたしたいと思います。
  180. 加藤常太郎

    ○加藤国務大臣 なかなかいい点でございまして、日本の経済が大いに高度成長した、労働者の仕事自体も相当変革を来たしましたが、雇用促進事業団、福祉事業団、これも相当大幅にというか、設立当初の目的と違った方向に次第に変化しつつあるのであります。石炭の雇用の関係、また港湾とか、そういうような関係から転換いたしまして、御承知のように最近は中野サンプラザというような勤労青少年のためのセンターをつくるとか、中小企業本来のものを本年は六カ所つくりましたが、また今度は初め別荘村と言っておりましたが、こういうように労働者の余暇対策とかいろんな方向に転換してきまして、ほんとう雇用促進事業団とか福祉事業団という名前も変えなければならぬ、ほんとうに名前自体がふさわしくないことはお説のとおりであります。名前を変えたらというのは、この間うちから省議でもだいぶん問題になっておりますので、名前はともかくも、今後はいま御指摘のように、相当労働省の仕事自体並びに事業団の事業主体も転換してきまして、そうすることが日本の労働行政の進展であろう、こういう意味で御指摘のとおり変わっておりますし、またこのごろ日本の経済もいろんな転換を来たしておりまして、移動に対するいろいろなとりあえずの雇用促進住宅の問題なども今後大幅に進展させたいという方向であります。ほんとうにいい御意見でございまして、私も同感であります。
  181. 木野晴夫

    木野委員 私は、雇用促進事業団が住宅関係その他の対策を練ったときに、住宅については建設省があるじゃないか、建設省の住宅建設五カ年計画があるじゃないか、しかしながら特に必要だということを強調するために、実は雇用を促進さすために必要なんだということで雇用促進事業団という名前を雇用促進の名のもとに特につくったということでありますが、ただいまは雇用促進のためにやるのだというよりも、むしろ労働者の職業訓練のためにやるのだ、いま大臣の言われましたように福祉が相当入ってくる、余暇関係につきましても取り上げてやるのだとなってまいりますと、やはり名前は変えたほうがいいのじゃないかと思っております。もちろん名前を変えたらそれでいいというのじゃなくて、名前を変えて、かつ実も備えていただく、こういう意味であります。たとえば労働問題につきましても、雇用を促進するため、そういった労働力を確保するためにというよりも、むしろ人間としての労働者のためにどうしたらいいかということでやっていただくということでありまして、産業第一主義というようなことがこういった名前にも出ておるのじゃないかと思うわけでありますから、こういった点については十分にお考え願いたいと思います。労働者の問題につきましても、マンパワーとよくいわれておりますが、マンパワーとしてとらえるというよりも、やはりこれからは福祉第一、人間第一という点でいきますと、マンパワーというとらえ方、雇用促進というとらえ方、これはもう少しあたたかくとらえるという意味で雇用促進という形の名前も変えるべきときじゃないかと思うわけでありまして、一考をお願いいたす次第であります。  それから雇用促進事業団におきまして一つの大きな事業は、そういった方々が移ってくる、その場合に宿舎がとにかく必要じゃないかということで宿舎をつくっておられますが、いつも計画書を見ますと単年度一万戸といっておりますが、実績を見てまいりますと、昭和四十五年では七千九百五十戸、四十六年は七千五百六戸というふうに計画を下回っておるわけであります。さらに四十七年もおそらく下回っておるのじゃないかと思います。  事業団にお聞きいたします。単年度一万戸といっておりますが、実績は、ここ五年一体どういうようになっておるか。それからまた、なぜ計画よりも低いのか、それに対してどのように措置するつもりか、この三点についてお伺いします。
  182. 和田勝美

    和田参考人 お答えを申し上げます。先生の御指摘をいただきましたように、予算面では確かに一万戸ということで毎年予定を立てておりますが、実績といたしましては、四十一年度から四十七年度までの七年間、予算戸数七万戸に対しまして五万七千二百三十二戸、八一・八%、約八二%という建設の実情でございまして、予算との関係でまことに申しわけがない、かように考えております。
  183. 木野晴夫

    木野委員 単年度ずっと言ってください。
  184. 和田勝美

    和田参考人 予算は全部一万戸でございますので、実際に建設しました戸数を申し上げますからお聞き取りいただきたいと思います。  四十一年度は九千百四十二戸、四十二年度が八千七百六十六戸、四十三年度が八千四百三十二戸、四十四年度が八千六十戸、四十五年度が七千九百五十戸、四十六年度が七千五百六戸、四十七年度が七千三百七十六戸、合計いたしまして五万七千二百三十二戸でございます。こういう各年度の状況でございまして、確かに最近の年度になりますに従って建設戸数が徐々に減ってきておるという数字が実績として出ておるわけでございます。  これにつきましては、もちろんいろいろの事情がございますけれども、私どものほうで分析をいたしておりますことからいたしますと、建設費予算単価に比較いたしまして実際には相当上がってきておるというのが第一点、それから第二点は、大都会を中心といたしまして用地の取得に現実の問題として非常に困難が伴っておる。もちろん土地の値上がりに伴います単価問題が一番大きな問題でございますが、用地の取得に非常に困難をいたしておる。私どものほうの用地取得につきましては、相当厳格な査定及び審査を経て行ないます関係もありまして、なかなか最近の土地価格が上がってまいります実情に合わないというようなことが、この建設を現実的に押えておる実際であろう、かように分析をいたしておりますが、今後におきましても、現在の趨勢から判断いたします限り、この問題はなかなかむずかしい面を含んでおると存じますので、今後この予定どおりの戸数建設につきましては予算等で格別の御配慮をいただく必要があるのではないか、かように考えておる次第でございます。
  185. 木野晴夫

    木野委員 当初が一万戸目的であって九千戸建った。それがだんだん減ってきている状態でありますが、一つには建築費が増加したので、第二番目には大都会の用地の取得が困難であるからと、こういうことでありますが、予算は全部使っておるのでありますか。予算も使い切れずに残しておる、用地が非常に高いので入手が困難なので、それで予算も残して戸数が少なくなっておるのか、それとも予算は全部使っておるのだが戸数が減ってきておるのか、その点はどうですか。
  186. 和田勝美

    和田参考人 お答えいたします。実行計画をいたします際には、予算は全額消化可能ということでやっておりますし、結末につきましても、大体予算はほとんど全額使っております。
  187. 木野晴夫

    木野委員 それではもう少し聞きますが、建築費は坪当たりどのくらいの予算で組んでいるのか。それから、苦しいことはよくわかるのですが、用地費は一体どのくらいの単価で組んでおるのか。用地費と建築費についての予算単価をお伺いします。
  188. 和田勝美

    和田参考人 ちょっと例示的に申し上げさせていただきますと、四十二年度予算におきましては、土地が一平米当たり三千五百十六円という予算でございましたのが、実績は三千六百三十八円、それから建物につきましては、四十二年度予算が二万四千六百六十一円でございましたのが、実績が二万八千六百三十一円、こういうことでございます。四十六年度になりまして、中層の2Kについて同じように申し上げてみますと、予算単価が一平米当たり、土地が四千九百五十八円、実績が六千二百七十一円、平米当たりの建物で申し上げますと、予算が三万二千七百二十二円、実績が四万二千百五十九円というようなことになっております。
  189. 木野晴夫

    木野委員 建築費も非常に安い。いまの土地でありますが、四十二年度平米三千円としますと、坪で言いますと一万円、そういった予算単価で組まれてさがすわけでありますが、四十六年度でも平米四千九百円ですから、三倍しまして一万五千円ぐらいの土地をさがすわけであります。先ほど申しましたように、あなた方は一万戸を目標にしているわけです。一万戸をつくるんだと言っておるわけです。そうすると、一万戸つくれる予算を組まなければいけない。一万戸をつくれるだけの建築費と用地費とを組んだ予算を組まなければいけない。  そこで、いま土地について言いますと、坪一万円の土地をさがせといったら、よほどいなかに行かなければないわけです。雇用促進事業団においてさがそうとしておるところは産業のあるところですから、そんなところではとんでもないということであるわけであります。ところが皆さんのほうでは坪一万五千円とか、ことしの予算でおそらく、それじゃ二万五千円もあればいいほうなんです。それで一万戸をつくるということ、これはつくらなければいかぬのだと思えば、予算をしっかり取らなければいけないわけです。  ところで、予算がこういったことだから、そういったところへつくっても意味がないから、もうつくるのはあきらめた、七千戸でいいんだ、こういうことでおるのか、それとも一万戸つくらなければならぬのか。もし一万戸つくるということなら、それだけの予算を取らなければいけないわけです。  私がいま一番心配しますのは、雇用促進事業団が非常に間口を広げてきた。そうしますと、ほかの予算もほしいものだから、これはこの程度にしておこうやということで、目標は一万戸と言っておきながら、実際の努力を払っておらない。皆さん方は払ったと言っておりますが、ほかのところへ別荘村とかなんとかいうようなことを言っておられますから、そういったほうに重点が入ってきておるのじゃないかという点を、実は話を聞いておりまして心配するわけであります。だから、一万戸をつくるのがよほど必要であるということならば、予算をもっとしっかりたくさん取るということがないと、ずっと逐年下がっていって七千戸、来年度は六千戸台に落ちるのじゃないか、こう思うのです。だから、あなた方のほうでなぜ一万戸を達成できないのだと言いましたら、建築費の問題がある、用地の問題がある。予算がたっぷり組んであって用地がないから残したんだというならまだわかるわけです。用地の問題があるんだと言っておりますが、実はあなたのほうの事業団のウエートの置き方が足らぬのじゃないか、ここにあるのじゃないかと私は思うわけであります。そういった点についてもう一度事業団の説明を聞きます。
  190. 和田勝美

    和田参考人 お答えいたします。ただいま先生から御質問の中で出ました移転労働者用の宿舎は労働需要の多いところへつくるから、なかなか土地代も高かろうから単価も合わないだろうという御指摘がございましたが、まことにありがたい御指摘でございます。そのとおりでございまして、私どものつくります宿舎は労働需要の多いところでございますので、したがって土地価格が一般の全国平均よりは相当高い、そういうことがございます。それから、私どもの行政は職業安定行政とうらはらになっておりまして、各県の労働事情とのタイアップというのが何といいましても一番重要なことでございます。そういうようなことからいたしまして、土地の選定もそういうようなことを根幹にしながらやってまいるわけでございます。そうしますと、いわゆる予算単価に盛られた土地代では追いつかない。それならばなぜ予算を取らないかというおしかりをいまいただいたわけでございます。まことにおしかりをいただいて恐縮なんでございますが、これもいろいろ国の予算の編成の関係もあるのではなかろうかと存じますが、私どもも一生懸命努力をいたしますが、なかなかどうも単価の値上げというのがむずかしい事情があるようでございます。私どもとしては、いま申しましたようないろいろの事情につきましては、労働省、大蔵省その他関係方面によく御説明申し上げますし、また関係方面もそれぞれの御理解はいただいておるわけでございますが、なかなか現実に思うにまかせない点があることは、私どもにとりましてもたいへん遺憾なことでございますが、実際問題としては足りないということでございます。  それは、ほかの労働者の福祉のためのいろいろの政策を考えておるので、そちらに関心が向き過ぎて、労働省の宿舎の問題のほうにやや関心の薄さがあるのではないかという御指摘でございますが、たいへんおことばを返すようで恐縮なんでございますが、実は私ども、労働者の皆さんの福祉の第一のものは住宅問題である、こういう認識を非常に強く持っております。そういう観点で、いろいろのレクリエーションセンター、体育センターをつくるということも労働者にとりましてまことに重要なことでございますが、毎日毎日の問題である住宅については、それらと均衡を失するというよりも、それらとともに、あるいはそれら以上に力を尽くすことではなかろうかと存じておるわけでございます。決して、他の仕事がふえてまいりましたので住宅のほうがどうこうというような意思は、私どもは主観的には持っておりませんので、その点はひとつ御理解をいただきたい。ただ、客観的に言いまして、減ってきているのはこういうことじゃないのかというおしかりを受けますと、まことにその事実は事実でございますので申しわけございませんが、主観的には一生懸命努力をさしていただいておりますので、御理解をいただきたいと思います。
  191. 木野晴夫

    木野委員 単年度一万戸ということを目標に掲げるならば、それを達成するだけの予算を組まなければいけない。いまの、用地の問題が困難だ、そうして坪二万円というようなことでは、これはできないのはわかり切っていることでありますから、そういった点から、目標を掲げるならばそれにふさわしいだけの積み重ねをひとつやっていただきたい。そうしないと、来年度は六千戸台に落ちるのじゃないか。それならむしろ単年度一万戸という看板をおろしたほうがいい、こう思う。こういう積み重ねをしっかりとやっていただきたい。その上での旗でありますから、十分にがんばっていただきたいと思うのが私の気持ちであります。  それから、この利用状況でありますが、私の手元の資料を少し調べてみたのでありますが、広域移転就職の方々を受け入れるのだから、満ぱいにしておくといけないので、まあ一〇%程度の空戸が必要である、これはわかるのでありますが、そういったことを頭に入れての話でありますが、場所によりまして非常にあいているところがあるわけです。なぜまたそんなあいているところにつくったのだ。雇用促進事業団は建物好きだから、建てて、そうしてあれが自分のところの建物だ、こう言って見ているのが仕事ならそれでいいわけでありますが、そうじゃない。まあ一〇%程度の空戸は必要だ。しかしながら、やはり皆さんが利用していることが必要でありますが、利用状況の悪いところが見受けられます。それで、抽象的な話ではなんでありますから、悪いところを三カ所くらい、たとえば利用状況の悪いところを見ると、こことこことここでこの程度だ、それはなぜか、具体的に三つほど例示的にあげてもらいたいと思います。事業団にお願いします。
  192. 和田勝美

    和田参考人 雇用状況全般について申し上げまして、具体的な例について御説明申し上げたいと存じます。  先生にいま御指摘いただきましたように、私どものつくります雇用促進住宅が常にある程度の空居を持っていなければならぬことは御理解をいただいておるようでございますが、そういうような状況に関連をしまして全体について申し上げてみますると、本年の四月末現在で、運営をいたしております戸数が七万八千二百九十八戸でございます。これに対しまして入居ができておりますのが六万三千八百九十五戸でございまして、入居率は八二%弱でございます。  これを一年以上と一年以下に分けてみますると、運営を始めましてから一年以上の住宅につきましては入居率は八五%でございます。これに対しまして運営開始後一年未満の宿舎は四二%、たいへん低率になっておるわけでございます。この点は、運営を始めましてすぐ人が入るという状況でございませんで、公共職業安定所の紹介がありました者について漸次入居を認めてまいるというシステムになっております関係上、一年以上の場合と一年未満の場合ではいま申しましたように大きな差のあることは御理解をいただきたいと存じます。  しからば、どうして九割程度を考えておるのに全体として八二%弱程度なのかという問題については、全般的なことについてちょっと申し上げさせていただきますと、実はこの移転労働者用の宿舎につきましては、全体として、ある地方で大きな工業団地設定がある、あるいは商業団地設定が考えられている、そういう計画に合わせて従業員の人に他地方から大ぜい来てもらわなければならない。各会社のほうももちろん社宅その他でいろいろ考え、都道府県におきましても公営住宅その他で考える向きもございましょうが、県あるいは市町村のほうからこの従業員のための移転労働者用宿舎をつくってほしいというようなことで具体的な計画を持ってこられまして、私どもと労働省のほうでいろいろと相談をしまして、これは相当確実にそういう見込みが立つであろうというような先を見込みまして、ある程度宿舎計画を立てるわけでございます。そういうのが最初のうちは、まあ戸数の問題も総体として少なかったせいもございますが、順調でございましたけれども、四十六年ごろからの例のドル・ショック以降、あるいはその他いろいろの経済事情がございまして、なかなか各地方公共団体でお立てになっております団地計画、産業開発計画というのがそちらの面から順調に進まないというような事情もございまして、そのために必要な従業員の方がその地方に来られないというような、いわゆる計画と実際とがやむを得ない事情等の悪化がございまして吻合しない、そういうために住宅の入居率が思うようにうまくいかない、あるいは極端に非常に悪い、こういうのがここ二、三年の傾向であるというように私どものほうの考え方では分析をいたしております。  具体的な例について申し上げてみますると、具体的なことになりますので、関係市町村あるいは県に多少迷惑があるかもしれませんが、ちょっと申し上げさせていただきますと、茨城県の鹿島郡大野宿舎というところで四百戸つくりまして、業務開始をいたしましたのが四十六年の八月からでございますが、本年の四月末現在では入居率が一一%というような非常に極端な例がございます。これは、いま申し上げましたところの名前で御理解をいただけると存じますが、鹿島臨海工業地帯に隣接する地域でございまして、当時茨城県におきましてあの付近全体として大量の工場建設が予定されておったのでございますが、四十六年度以降の状態あるいはその他、まあ公害問題等もございまして、鹿島の臨海工業地帯のいわゆる予定どおりの推進というのが非常に困難な状況があるようでございますので、そういうことで現実に従業員を集めないということからくる極端な例が生まれたと思います。  北海道の旭川市の神楽岡宿舎という、これは八十戸でございまして、四十七年、昨年の六月から運営を始めておりますが、本年の四月末現在、これはまだ一年たっていませんが、入居率が四三%でございます。これも、この設置地区におきます都市計画の整備による町村合併とかあるいは企業誘致というような地域開発の進展が必ずしも順調でなかったというようなこともございましたし、経済事情の変動ということで、あの地方にありました企業、紡績とかあるいは木製品加工というような企業が倒産をいたしまして、そのことで離職者が発生をするというようなことがございまして、そこで発生をした離職者がそこにあります地元の企業に就職をされるということで、他から人を集めてくるよりもむしろそういうような特殊な事情で地元で調達ができるというようなこともございまして、入居率が悪いというような例等がございます。  以上、あとまだ具体的な例がございますが、あまり申し上げても関係市町村に悪かろうと思うので、一応二つ程度でとどめさしていただきますが、そういうように、それぞれにつきましてはやはりいろいろの客観的な動きの事情もあるということを具体的な例として申し上げたいと存じます。
  193. 木野晴夫

    木野委員 雇用促進事業団の宿舎というのは、一つの目的を持ってやっているわけでありますから、その目的が達成するように十分に努力する、また建ててみて有効に利用されておる、それがあって、初めてよかったということでありますから、ただいまの話は、最近の経済変動に伴って、そういった不測の事態が生じた結果ということでありますが、その前に、あれは経済変動があったためだ、そういったことで割り切らずに、どういった点に問題があったのだと考えてみると、あのときの案がやはり少し甘かったのじゃないかというふうなことを十分に検討してもらいたいと思うわけであります。私の手元にも、それ以外に、大分だとか新潟なんかで、団地が来ずに、雇用促進事業団の宿舎だけがりっぱなのが建っておる、あれは何だというふうな話を聞くわけでありますが、できるだけ十分に検討して、目的達成のために努力してもらいたいと思います。  それから、私のところへ耳に入ることばで、二、三お聞きしたいと思うわけでありますが、炭鉱のときには、これは事柄が簡単でありますから、九州から出てくる、大阪で受け入れる、すぐわかるわけでありますが、広域移転就職、これも受け入れる、こうなっておるわけであります。広域とは一体何ぞやということで、相当地区にまたがってわたるときにはいいんだ、しかしながら同一の職業安定所ならばだめなんだ、したがって、いなかなんかで離島がある、通えないんだ、しかし、たまたまそれが同じ職業安定所であるからあなたはだめなんだ、こう言って断わられた。同じ職業安定所の中はだめなんだ、だから断わられた。こういったことを聞くのでありますが、私は、そういったのはどうもおかしいので、たとえば職業安定所は違っておっても、近くのときは通えるじゃないかということであり、また同じ職業安定所の場合でも、離島であるとか僻地のときは、それはどうぞと言うべきではなかろうか。当然であると思うのであります。そういったことを聞いたのでありますが、そういった点についてどうなっておりますか。
  194. 和田勝美

    和田参考人 実は、私どものほうの移転労働者用宿舎につきましては、私どもの団法によりまして、広域職業紹介について、公共職業安定所の紹介のあったものをやるというのが本来の設置目的になっております。これもしかし、世の中の動きによりまして、広域職業紹介という概念にはいろいろと変動があるわけでございます。初めのうちは、ブロックを越えてというような、非常に広い理解のしかたもあったようでございますが、その後のいろいろな労働の流れの変化というようなこともございまして、漸次その解釈のしかたが変わってまいりまして、ある時期までは、同一安定所でなければいいだろう、違った安定所間であって、住居の移転を伴うことが新しい職業につくためにはやむを得ないというようなところもいいではないかというようなことの運営をしておりましたが、しかし、ただいま先生が御指摘になりましたように、安定所を見ましても、非常に管内の広い安定所もございますれば、非常に狭い安定所もございます。いろいろございます。それからまた御指摘のありましたように、離島もありますし、僻地もございます。そういうことを考えまして、一般的な動きあるいは要望というものを考えあわせて、昨年の七月から運営の規定を変えまして、一定の基準、通勤のために時間がかかるとか、あるいは特に不便だとか、一つの基準を設けましたが、それ以上のような状況の場合で住居を移転せざるを得ないと思われる方には、同一の安定所の管内の就職であっても、この宿舎には入れることにしようということで、七月からそのように運営をさしていただいております。
  195. 木野晴夫

    木野委員 昨年の七月からいまの問題は解決したと言っているわけですね。同一職業安定所の中であっても、一定の基準以上の者については入れてやる。一定の基準というのはどういうことですか。
  196. 和田勝美

    和田参考人 申し上げませんで、失礼いたしました。  私どものほうで三つ条件がございまして、そのうちの一つの条件を満足してもらえばいいわけでございますが、その一つは、通常の交通機関を利用いたしまして、往復の所要時間が四時間以上かかる、こういう四時間以上であれば、これが一つの基準。それからもう一つの基準は、これは金で書いてございますが、交通機関の所要経費が一日当たり、往復でございますが、二百二十五円以上、これはキロに直しますと、おおむね片道七十キロになるようでございますが、これ以上のような場合。それからもう一つの基準は、これは弾力的な規定でございまして、交通機関の事情が非常に不便だ、もう朝早くから始まって、夜早く上がってしまうという、非常に交通事情が悪いというので、通勤することが非常にむずかしいというような、以上申しました二点以外にもあろうと思いまして、そういうときには実情に即して判断をする。この三つございますが、そのうちの一つでも満足してもらえば、それで入れよう、こういうことでございます。
  197. 木野晴夫

    木野委員 私のところへ来ております第二番目の意見といいますのは、設備が非常に狭隘だ、だから家族の多い者は入っていないのだ、これが入らない理由だ。それからまたPRのしかたが県も職安も不十分だ。もちろん事業団も含めてでありますが、不十分だ。そういったこともございます。それからもう一つは、そもそもこの宿舎といいますものは、遠いところから移ってきて、そしていわゆる住居を見つけるまでの間おるので、一年未満だ。それで、わざわざ移ってきて、一年未満で出なければいかぬから、それよりも家をさがすのだといって、使わないということもあるわけでございます。事柄の性質として、一年未満でどこかさがしてくださいというのがこの宿舎の一応のたてまえかと思いますが、現状から見てまいりますと、中には二年も三年も五年もというのがあるわけであります。  それで、事業団に聞きたいのは、この宿舎は、こういった意味でつくった宿舎だから、原則として一年未満、やむを得ない場合には延長ということだと思いますが、現状は、長いのはどうなっておるか。それから、それについてどのように考えておるか。事業団の意見をお聞きします。
  198. 和田勝美

    和田参考人 お答えを申し上げます。いま御指摘をいただきましたように、私どものほうで運営しております、この移転就職者用宿舎は、臨時的に入って、それから恒久的な住宅のほうに移ってもらう、その間のつなぎという使命を果たすという意味合いでできております。法律的にもそのことを裏書きするのが私どもの団法の三十七条にもございまして、建設大臣のほうで、事業団が臨時的に運営をしているということを理解をして、産業労働者の諸君の住宅確保について御努力をいただくというような規定が入っておりますのも、そういう趣旨を明らかにするためのことだろうと私ども考えております。現在の運営は、御指摘のありましたように、一年未満でとにかくかわっていただきたい。これは一つは、たしか公営住宅に入りますのには、一年間そこの住民でなければならぬという制限もあるようでございまして、それを満たす必要もございますので、それで一年というのがまず出まして、その間には、私どものほうでやっております雇用促進融資の中で、社宅の融資もやりますし、あるいは住宅金融公庫のほうで、いろいろな労働者の皆さんに対する住宅金融、あるいは厚生年金等もございます。そういうもので会社のほうでできるだけ社宅をつくってもらいたい、こういうことを一つの前提としていろいろ考えております。それは一つの前提でございますが、現実には非常にむずかしい問題がございます。そのために、一年未満というものをさらに一年延ばして、要するに二年以内に何とかならぬだろうかというのが現在のたてまえでございます。しかしながら、自分の住まいでございますので、なかなかそう簡単に動くということが非常にむずかしい事情のあることは、とにかく受け入れのほうのさらがなかなかむずかしい事情でございます。私どもとしましては、建設省や都道府県、市町村にお願いをしたり、あるいは直接雇っていらっしゃる事業主にお願いをしまして、社宅をつくってもらうことをそれぞれ勧誘をいたしたりなんかいたしておりますが、そういう努力にもかかわりませず、実際には相当長期にわたって滞留をしておられる方がございます。昨年の調査でございますが、一番長いのを一応五年というような点で押えてみますると、私どもはこの宿舎の運営を始めましてからは、労働福祉事業団当時を含めましてすでに十二年以上経過しておりますが、全体で見ますると二二%ぐらい五年以上の方がおられます。先ほど申しました二年未満ということで見ますると、二年未満、要するに私どもの規定からいいますと適格と思われる方が四二、三%、そういうような状態でございまして、現実に滞留されている方が非常に多いということは事実でございます。ただこの点は、長くおるからけしからぬとだけは言いにくい住宅事情でございますので、私どもとしては、この住宅が臨時的なものであるという性格を越えない範囲内において、ぜひもう少し実情に合うような配慮を取り扱いの上でしていくべきではないかというのを、ここしばらく相当強く考えておりまして、現在関係の各お役所にはそういうことでお願いをして、できるだけ現実と基本性格との調和をはかるようなことでまいりたいということで、せっかく折衝を重ねておるような次第でございます。
  199. 木野晴夫

    木野委員 雇用促進事業団の住宅は一言に申して臨時的なものだ、そうしてそれの受けざらとして、そういった方々がその会社に落ちつくのだから、その会社のほうで社宅をつくっていただく、そこへ移ってもらう、その融資は年金事業団なりいろいろそういったので融資をやる、そういった受けざらを考えているのだ、また当該市町村で公営住宅をつくってもらって、それを受けざらとして考えているのだ、こういうことでありますが、そしてまた入っている方も非常に狭いものですから、できたらいいところへ移りたいという気でありましょうけれども、現状は長期にわたっておる方もあるわけであります。先ほど申しましたように、それがいかぬというのじゃなくて、住宅事情がそれほど逼迫しているということで私たち理解していきたいと思うわけでありますが、この受けざらにつきまして、それでははたしてうまくいっているかどうかという点、ここでまた問題があると思うのです。それで、この雇用促進事業団におかれましてこういった住宅をつくってやるときには、受け入れと、またあとの受けざらというのがありますから、十分に労働省において考えていかないといけないと思うわけであります。また、産業がそこに固定してしまって、それから次から来る人がない、そうしていまおる人がもうその住宅でいいと言ったときには、その住宅を、雇用促進の所期の目的を果たした、これは一般住宅なんだという意味で移しかえるというなにはないんですか。
  200. 和田勝美

    和田参考人 お答えします。私どもの運営戸数も約八万戸に近づいてまいりました。今後いろいろと労働力の流動が行なわれるだろうと思いますが、いま直ちにという問題ではないと思いますが、長い目で見ますると、先生の御指摘のありましたような問題が現実の問題としてだんだん出てくる可能性がある、かように思います。しかし、それはここ当分の問題ではなくて、ここ当分はまだまだ私どもがいま運営をさせていただいておりますような性格の住宅が必要だろうと思いますが、もう少し長期的に見ますと、そういう問題が出てくるのではなかろうかと思います。そういう点については労働省のほうでもせっかく何かと御検討ではなかろうか、伺っておりませんからわかりませんが、そういう長期的な問題もいずれ御検討の上、私どもに適切な御指示が、まだ少し時間があることでございましょうが、あるのではないか、かように考えております。
  201. 木野晴夫

    木野委員 時間も来ましたので、私の質問を終わりたいと思いますが、この労働者の関係につきましては、特に広域にわたって移転するという場合の受け入れ体制につきましては万全を尽くしてやっていかなければいけないと思うわけであります。ただいま聞きましたら、同じ職業安定所であっても、一定基準を越えた人については入ってもらうというふうに変えたということでありますが、そういったのはもうさっそくにやっていただいて目的にこたえていただく、それからいま申しましたそういった宿舎をつくるのは一つの目的を持ってつくるのでありますから、つくってみたが入る者はないというようなことのないようにしていただく、そうして一万戸というのを目的に掲げるからには、予算の積み重ねからひとつしっかりやってもらいたい。また、それが臨時である、一年を原則とするのだ、臨時的だと言うのならば、そのあとについては万全の対策をとっておくというふうなこと、全部が全部からんでいるわけなんです。またこれがきちっとしているということは、国民のいま一番切実な住宅問題の解決にもなってくるわけで、すべて関連している問題なので、十分に努力してもらいたいと思うわけであります。そういった意味で、いま雇用促進事業団の住宅だけについて取り上げましたが、しっかりとやっていただきたいと思うわけであります。  大臣にもう一度お伺いしますが、雇用促進事業団というものにつきまして申し上げましたが、たとえばいまの予算でありますが、坪二万円で産業のあるところで住宅受け入れといっても、ないわけですね。そこで無理をしていなかへつくったって、だれも入らないというふうなことになりますので、やはり予算でしっかりとるものはとる、これがないと、雇用促進事業団も一万戸掲げておりながら実際の戸数はだんだん減ってきておる、大事だ大事だと言っておりながら実際その迫力がない、こうなりますので、労働省におきましてもひとつ十分にお考え願いたい。そうして、繰り返し申しますが、臨時的なものだと言うならば、そのあとにつきましてちゃんとなっている、それがないと臨時的なものだからということは言えないわけです。そういった点を十分に考えていただきたい、この点を繰り返し大臣に申し上げまして、私の質問を終わります。
  202. 加藤常太郎

    ○加藤国務大臣 御指摘の雇用促進住宅、これは建設省のほうなり各方面でやっておりますが、労働省の立場は移転する方の臨時の間でありますから、これが遠方であったり、またかけ声は一万戸であるが実際は五千戸、六千戸ということでは、これはもう意味がありません。どうもこういうことは言いにくいのでありますけれども、かけ声であるのであったら初めから六千戸とやって、かちっとやったらいいのでありますが、場所が悪いとか、だいぶん最近は入居の率がよくなったのでありますが、八〇%というのでは、これはつくっても宝の持ちぐされであります。こういうような地域のいろいろな実情、それから住宅の広さでありますが、いままでは二K本位でやっておりますが、どうももう少し広くして利用できるようにしたい、二DKにしたいとかいうような御意見がありますし、今後かような問題は、日本全土のいろいろな関係、工場の関係も変わらなくてはならぬと思います。そういうときに、やはり労働省としての立場でいま御指摘のような点は大いに改革して、実際に即したようなきめのこまかいやり方で、今後雇用促進住宅、これは雇用促進住宅という名前よりに、移動した方の宿舎であるというような意味でいろいろ考えなくてはならぬと思いますので、私同感であります。実はこの間、決算委員会があるので行ったのではございませんが、事業団に歴代の大臣が行ったことがないそうで、私が行って相当ハッパをかけて、おまえたちはかってにやってはいかぬぞ、こうやってくれといって労働省の基本方針を示しました。今後御意見などを尊重いたしまして、これがほんとうに適切な住宅になるように大いに改善するところはどしどし改善させるという方針で対処いたしたいと思います。
  203. 木野晴夫

    木野委員 終わります。
  204. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員長代理 田代文久君。     〔久保田(鶴)委員長代理退席、委員長着席〕
  205. 田代文久

    ○田代委員 労働大臣にお尋ねしますが、現在の失業者の総数ですね、それからその動向、ふえつつあるのか減りつつあるのか、あるいは完全失業者がどれぐらいあるのかというような問題等について、まず御説明願いたいと思います。
  206. 道正邦彦

    ○道正政府委員 私ども雇用失業情勢につきましては絶えず重大な関心をもって見守っております。一時危惧せられました経済関係の雇用への影響も、ことし初め以降着実に回復いたしておりまして、現在までのところ雇用失業情勢に大きな変動は見られておりません。  失業率のお尋ねがございましたけれども、現在完全失業者は四十七年平均で七十三万人でございます。失業率は一・四ということになっております。
  207. 田代文久

    ○田代委員 そうしますと、最近北海道で閉山が相次いで、炭鉱労働者の失業者がふえておりますが、その七十三万の完全失業者の中に北海道の失業者はもちろん入っておるわけですね。北海道の失対事業はどういうことですか、数は。
  208. 道正邦彦

    ○道正政府委員 具体的な数字は後ほど申し上げますが、先ほど完全失業者は何万かというお尋ねでございましたので、全国平均で七十三万、失業率が一・四ということを申し上げました。御指摘のように、そういう中にありましても、ただいま御指摘の北海道の炭鉱の閉山でございますとか、あるいは基地の縮小等に伴う駐留軍関係の離職者であるとか、あるいは足尾その他多年の伝統を誇っておりました名門金属鉱山の閉山であるとか、そういう地方によりまして非常に大きな失業問題が起きておることも事実でございます。そういう問題につきましては、それぞれの法律によりまして対策を講ずることは当然でございますが、大体五百人以上千人近い離職者が一時に一定の地区で出るというケースにつきましては、県によりまして若干違いはございますけれども知事さんあるいは副知事さんをキャップにいたしまして、関係方面の労使を含めまして、協力を得まして対策本部をつくり、徹底したケースワーク方式、要するに一人一人の希望を聞き、事情を調査いたしまして、ケースワーク方式を徹底いたしまして、再就職のごあっせんにつとめております。中で私ども一番憂慮いたしておりますのは北海道でありまして、海峡を渡って本土のほうへ再就職されるというのはなかなか言うべくしてむずかしいようでございます。反面、北海道におきましても企業はもちろんあるわけでございますけれども、本土におけるように京浜地区その他で求人が殺到している、そういう状況にはなっておりません。したがいまして、総体的に言いまして北海道地区についていろいろ問題があるというのは御指摘のとおりでございます。
  209. 田代文久

    ○田代委員 では、失業対策政策の基本なり、いままでの政策に基づく進行状況などを伺いたいのですが、時間がありませんから、特にこういう問題をどうされているかという点をお聞きしたいのです。  それは、失対事業には入れない、それから生活保護ももらえない、こういう人たちが実際に相当数おられるわけです。たとえば現在の失業対策で働いておられる年齢は、非常に高齢化しておるといわれておりますけれども、まだ六十歳未満なんです。それで失対事業には入れないというので職安に入って仕事をさがしてくれと言ったら、あなたたちみたいな年齢の人の仕事はないのだ、こういう形の、とにかく仕事にありつけないという層が相当にあると思うのですが、そういう非常にお気の毒な方々に対してどういう政策をとっておられるのですか。
  210. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 先生も御承知のように、四十六年に中高年齢者雇用促進特別措置法というものの制定を見たわけでございます。そして新たに、いま先生のおっしゃいますような失業者が出ました場合には、手当を支給しながら職業指導とか職業訓練とか、手厚いいろいろな措置を講じて、安定した雇用に就労させていく、こういうようなたてまえで進めております。なお特定地域で非常に失業者が滞留してきました場合は、一時的にそこの地域開発を進めながら、あわせて一時的な就労の場を提供するということで、開発就労事業というものを起こしてやっていく、こういうような政策で進めているわけでございます。
  211. 田代文久

    ○田代委員 いまおっしゃったようなことはあれなんですが、実際において、いま申しましたような、そういう高年齢者の仕事が国家の政策としてはなかなか進まないというので、それを見かねた地方自治体が、そういうはみ出された方々に対して仕事計画を立てて、自治体が仕事をつくってこれを吸収しているというような事例が非常にふえておるようですが、この点を認められますか。そしてまた、そういうことになる責任に対してはどのようにお考えになりますか。
  212. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 先生の御指摘の、地方自治体で高齢者を中心として就労の機会を与える事業をやっておられるというお話でございますが、一、二そういうような自治体がございますことを私ども承知しております。問題は、やはり現在の日本の雇用慣行と申しますか、たとえば定年制の問題その他の関連から、高齢者が比較的就職がしにくいというような問題があろうかと思います。したがって、自治体におかれてはとりあえずそういうような措置をとられるという問題が出てきているのではないかと思います。基本的には私どもといたしましては、現在の日本の雇用慣行でございます定年の延長という形でこの問題はまず第一に処理すべきではなかろうか、そうして能力があり、またその企業にとってさらに戦力として働いていただける方たちについては、積極的に定年を延長して、そうして十分その生活ができるという状態をつくり出していかなければならないと思いますし、また定年の延長が関係のないような企業につきましても、高齢者対策という観点で積極的に、たとえば雇用率の設定等を通じまして適職を選定をし、そこに高齢者を積極的に就職あっせんしていく、こういうような対策をとってまいりたい。また、とっておるようなわけでございます。
  213. 田代文久

    ○田代委員 当然政府がやるべきのを、いま部長のお話では、自治体がそういうことをやっているのは一、二あるように聞いておるというなお話ですが、これはそんなものじゃないですよ。私が大体承知しておるところでは、数十自治体でこういうことをやっておられる。実際、失業者に対して非常にお気の毒だということで事業計画をつくってやっておられるということなんですから、この点はもう少し真剣に実情を調べていただいて、そしてその責任が結局政府にあるのだという点をはっきりさして、失業対策政策をとにかくとってもらいたいと思うのです。  時間がありませんから次に進みますが、いわゆる失対賃金というもの、これはおかしな質問ですけれども、これは労働者の賃金ですか、どうですか。というのは、労働者の賃金としては考えられないくらい安いわけですね。ですから、これは実際労働賃金かどうかということをまず私は大臣にお伺いしたい。同時にそれからもう一つは、いわゆる失業者の賃金は生活保障ということを基準にして算定するのかどうか、その二点について御答弁願いたいと思うのです。
  214. 加藤常太郎

    ○加藤国務大臣 専門家の田代さんでありますから十分御承知と思いますが、これは生活保護の問題とは違いまして、これは御承知のように失対法に基づいて失業対策事業賃金審議会の答申を大いに尊重いたしまして毎年きめておるのであります。このことは政府委員よりあとで詳しく御説明いたしますけれども、これを最近の物価高騰で改定していただきたいという御趣旨は十分よくわかります。しかし直接、生計費、物価とリンクするということには原則はなっておりませんので、この問題はなかなか困難な問題を包蔵いたしております。いまの御質問の趣旨もわかりますし、先般も全日自労の方々と私お会いいたしまして十分話を聞いたのでありますが、物価の問題は政府のもう一番の最大重点眼目であります。政府が総力をあげてこれに対処いたしまして、何とか物価の鎮静化をはかろう、これとも大いに関係がありますので、今後全力をふるって取り組んではいきますが、今後の推移を慎重に十分見守って、そうしてこれに対しまして取り組んでいきたい。  なお、これは御質問ではありませんけれども生活保護と違いまして、失対就労者には臨時の賃金、夏季の一三・二%のアップの額を早急にこれを支給するように対処いたしたいと思います。どうもお話にぴたっと御返答ができない点を遺憾に思いますが、詳しいことは政府委員から御答弁させます。
  215. 田代文久

    ○田代委員 大体、失対賃金というのは、これは労働者の賃金であるということはもうはっきり認められるわけですね。それからその基準というのは、いわゆる生活費を基礎にこれは十分考慮しなければならないということも御異存ないと思いますね。これはすでは三十八年に、当然のことなんですけれども、大橋労働大臣が当時はっきり言っておるわけですね。この失対労働者の賃金というのは、生活費を十分考慮して、それを基礎にして決定することは当然だということを当時労働大臣が言っています。これはわかりきったことですけれども、しかしこの原則をはっきりしないと、私はいまきめておられる政府の今度の鼻くそぐらいの失対賃金の値上げについてとても納得はできないので、この原則をはっきり確認されたということでこの質問を進めたいと思いますから。これは異議がないですね。
  216. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 先生の御質問の、失対の賃金は労働者の賃金かというお話でございますが、法律に書いてございますように賃金でございます。賃金のきめ方につきましては、法律に書いてございますように一定の法則がございます。類似の作業に従事している労働者の賃金を考慮してきめるわけでございます。その場合に、類似の労働者の賃金というものは、あくまでも労働者の生活というような問題を含めてきまってまいるわけでございますから、そういう関連においてそういった問題も含めて考えられる。しかし、原則そのものは類似の作業に働いておられる労働者の賃金を考慮してきめる、こういうような形になっております。
  217. 田代文久

    ○田代委員 いま抽象的にはそういうことをおっしゃいましたけども、今度は具体的に、実際にこれがほんとうに労働者の賃金であるかどうか、あるいは労働者の生活の保障をはっきりやるという原則が貫かれているかどうかという点から質問いたしますが、大体今度わずかばかり上げられる。一三・二%ですか、百六十八円八十三銭か何か、ほんのわずかですね。これぽっち上げられたその失対賃金の算出の方法、どういうそろばんをはじいてそういう計算が出てきたのか。この一三・二%、これをひとつ説明願いたいと思うのです。
  218. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 三十八年の法改正によりまして、十条の二の規定によって賃金のきめ方がきまっておりますが、その法律の趣旨に基づいて賃金審議会の答申をいただくわけであります。それに基づいて例年同様な方式できめてまいっております。現実には、類似の作業に従事している労働者の賃金と申しますと、私どもがとっておりますのは、建設業、いろいろ事業がございますが、総工事業の中で失対事業事業種目に似通った道路とか河川とか、こういった事業種目の日雇いの建設労働者の賃金をまずつかむわけでございます。建設労働者の賃金と申しましても、請負とか住み込みとかいろいろ態様がございます。その中で最も失対就労者に類似しております、定額で通勤の日雇い労働者の賃金をつかむわけでございます。その場合に私どもの賃金の把握のしかたは、賃金審議会の答申にございますように、一般的な賃金、こういうふうに答申に書いてありますが、これは私どもいわゆるモードと申しております。モードと申し上げますのは、算術平均ではなくて、その賃金が最もたくさんの労働者に払われている賃金をモードと申しております。そのモードをとるわけでございますが、モードももちろん、住み込みの場合は九時間近く働いておられるというようないろいろな時間がございます。これを八時間換算にしなければなりません。それから調査時期が八月でございますから、季節修正をするということが一つの作業でございます。それから日雇い建設労働者といいましても、土工、重作業、軽作業といろいろ作業の種類がございますから、そういう作業の種類によって失対就労者の労務構成を見なければなりません。また男女によっても賃金が違います。そういったような計算をやってまいりまして、最終的に出ました値に冬季加算を加え、前年度の労務費単価と比較いたしまして一三・二%アップ、こういうふうになるわけでございます。
  219. 田代文久

    ○田代委員 私がいま持っておる資料で読みますと、これはおたくで出された資料かどうかちょっとあれしてみたいのですが、いま土工がいわゆるモード値で八時間千八百二十一円、それから重作業が千八百七十五円、男の軽作業が千七百三十五円、女で軽作業が千二百四十九円、それから季節の修正値が約〇・六%プラスになって、土工が千八百三十二円でプラス十一円、重作業が千八百八十六円でプラス十一円、男の軽作業が千七百四十五円でプラス十円、それから女の軽作業で千二百六十五円、こういうことになっておりますが、この資料は政府がやっておられるものと一致しておりますか。
  220. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 一致をいたしております。
  221. 田代文久

    ○田代委員 これを見ますと、これと比較しまして、現在出されておる失対労働者の賃金が非常に安いということがはっきり言えるわけですが、まあそういう結論を出す前に、このモード値で計算する方式は、これは大体日本の全労働者の賃金を決定する場合に採用される方式であるかどうか、一般の場合にもやはりこういうのがとられるのかどうか、御答弁願いたいと思います。
  222. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 賃金のきめ方には、算術平均とか幾何平均とか、モードとか、いろいろあると思います。それはそれなりにその制度に関連してきめられるものだと思いますので、どれが一般的かというのは必ずしも言えないのではないかと思います。結局、失対事業の賃金をきめます場合に私ども考えますことは、やはり公費の負担で就労の場を提供して、そして賃金を払うということでございますので、日雇いの建設労務者が一般的に払われている賃金というもの、つまりその賃金をもらっておられる労働者が一番多い賃金というのが一般的に妥当ではないかということでございます。この考え方は、昭和三十八年の法改正以来、賃金審議会からの御意見等もいただきながらこの線できめてきているわけでございます。
  223. 田代文久

    ○田代委員 いわゆるこのモードのとり方、それで決定されるというのはいま御説明ありましたけれども、実際にはこれが非常に安い賃金決定になっておるのですね。たとえば男の軽作業をやる方々の比率、あるいは軽作業では、婦人の場合にはやはりランクとしてはその付近が非常に高くて、そして土工などでやっておられる千八百二十一円あるいは千八百三十二円というような人たちの就労要素というものは非常に少ないと思うのだけれども、とにかくこのモードでずっと押しまくられるということがやはり失対労働者の賃金を下げる一つの要因になっているのではないかというように考えられます。それで一三・二%と、つまり昨年より〇・二%上げられたというのですね。大体、〇・二%上げたというこの算出の根拠、これはどこにあるのですか。〇・二%というのはどこから来ていますか。
  224. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 先ほど申し上げましたように、いま先生の御指摘の資料でずっとまいりますと、最後に千四百五十円、端数がついておりますけれども、金額が出ます。それと、前年の予算できめられたいわゆる労務費の単価でございますね、その比率が一三・二アップになるわけでございます。
  225. 田代文久

    ○田代委員 いや、私が質問しているのは、去年とことしと比べて、とにかくこの一年間に非常に経済事情が変化しているのにわずかに〇・二%しか去年よりプラスにならない、それはなぜか。端的に言いますとこれは一七%か一八%にならないか、こういうことなんですよ。昨年は一三%だったですね。ことしが一三・二%、つまり去年とことしと比べて〇・二%のアップしかない。それはどこからはじき出されたか、何を根拠にしておるかということなんですよ。
  226. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 先ほども申し上げましたように、一定のルールで賃金をきめてまいっておるわけでございます。それによってずっと積み重ねてまいりまして、それで最終的に出た数値を比較して八月の時点においては一三・二%アップしている、こういうようなことを申し上げたわけでございます。
  227. 田代文久

    ○田代委員 まあこれはあとから指摘していきますが、そうしますと、昨年の八月の調査に基づいて出された賃金ですね。そしてこれは実施はことしの四月実施でしょう。そうしますと、前年の八月におきますのが八カ月後のことしの四月にこれを実施するという八カ月間のズレがある。その八カ月のズレというのは、現在の経済実態からいったら、これはたいへんなズレで、変化があるのですね。これは大体合理的ですか。全くこれは理に合わない。昨年の八月に調査したものを基礎にして、そしてことしの四月からこれを実施するというようなきめ方は、全くこれは理に合わない算出のしかただと思うのですが、この点はどうですか。
  228. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 例年予算編成というのは十二月末か、年によっては一月ということが例でございます。私どもはその一番最新の資料を求めるべく努力をいたしてまいっております。この屋外調査というのは非常に大きな調査でございます。八月に実施いたしましてから最終ぎりぎり終わるのはもう十二月の中旬ころになるわけでございます。それによって私ども予算編成をする、こういうような非常に統計技術上の制約があるわけでございます。  もう一点は、それでは予測して、その推測をしたらいいじゃないかということになりますが、やはり日雇い労働者は、常用労働者と違いまして、労務の需給関係で非常にブレが多いわけでございます。それから日雇いという性格から調査対象というのが常に動いていくわけでございまして、そういった非常に予測困難なものを乱暴に推計をするということはいかがかと思います。あくまでも予算に、しかも国費として積むわけでございますから、私どもとしては、八月の調査をもとに精一ぱい一番最新の数字をとっておる、こういうふうに申し上げたいと思います。
  229. 田代文久

    ○田代委員 それは全く詭弁だと私は思うのですよ。詭弁と言ったらこれは言い過ぎかもしれませんけれども、しゃくし定木です。労働者の労働賃金、あるいはさっき私がはっきりした労働者の生活を保障するという原則から見て、十二月ごろぎりぎりで見て、しかも実際の実施ということが四月と言われるのでしょう。そうすると、その間に労働者の就労事業や何かに非常にブレがある。それはわかり切ったことじゃありませんか。そういうことを十分考慮して、過去の一切の賃金の変化とか、あるいは経済の実態の変化ということを考慮して、そしてとにかく四月の実施なら、これなら大体労働者の諸君も納得してくれるだろうというようなところがなければ、これはほんとうに政府は国民の納得のもとに賃金をきめるという資格はないと思うのです。この点はどうです。
  230. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 私どもといたしましては、最大の努力をいたしまして、一番最新の数字を前提にして賃金の労力費単価の計算をしてやってまいっておりますし、これからもそういう方針でまいりたい、こういうふうに思います。
  231. 田代文久

    ○田代委員 最大の努力とおっしゃるけれども、あなたたちの最大の努力と、働いておる労働者の方々の努力、ほんとうにやってくれておるなということになったこととは、あまりに開きが多過ぎると思うのですよ。これはあとからはっきりいたしますが、実際現在それでは失対労働者がわずか千二、三百円か、四、五百円、千七百円から二千円にもならないような賃金で食えると思いますか。その点はあとからいきましょう。そうすると季節修正値というのは約〇・六%と見ておられるわけですね。これの根拠はどういうことですか。
  232. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 日雇い建設労働者の賃金というのは経済活動の変化によって非常に需給関係が変わってまいりますから、賃金のブレも非常に大きいわけでございます。したがって八月という時点で年間を見るというのは必ずしも妥当でない場合がございますので、年間の平均的な状況をあらわすために季節指数というものを見まして、その逆数で季節修正をやっておるわけでございます。それが一・〇〇六ということになっておるわけでございます。
  233. 田代文久

    ○田代委員 そういう季節修正値というものでとにかく弾力性を持たしておられるということは、これはもちろん賛成です。けれども、しかしそれは実際において、たとえば土工で約〇・六%ですから、わずか十一円、あるいは婦人の軽労働者ではわずか七円というようなことの修正値というもの、これは意味がありますか。大臣どうです。
  234. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 結局年間の平均賃金の労力費単価をきめます場合に、最も年間の安定した数字できめるということが必要だと思います。したがって日雇い労働者の賃金というのは非常にブレが多うございますから、できるだけそのブレをなくして、安定した形での賃金をきめることが望ましいのではないかと私ども思っております。
  235. 田代文久

    ○田代委員 ブレブレとおっしゃるけれども、問題はブレではないですよ。労働者が実際生活できるかどうか、食えるかどうかということが原則ですよ、どんなブレ方をするか知りませんけれども。そこを中心に据えて、そしてブレということがあるといたしますならばその点を要素に入れられることは、これは納得できると思うのです。しかしブレだブレだといって、それを基礎にしてわずか七円を季節の修正値にプラスしたとかなんとかいうことは、これは全く意味ないじゃないですか。そういう失業者の方々の仕事が奪われておるのです。しかも一家平均二・五人の家族を持って暮らしを立てておられる。政府の責任においてそういう生活を余儀なくされておる方々ですよ。それに対してブレということを最大の理由にして、わずか〇・五%の季節の修正値をつけて、これで安定するとか、これで固定数字だとかなんとかいうようにとられることは、これは全く役人のやるごまかしだと私は思う。ほんとう国民の政治になっておらぬです。政治はそういうものではない。  しかし、その点はあとから行くとしまして、失対賃金は上昇率が生活保護よりなぜ低いか。失対賃金と生活保護基準額と比べてみて、片方は、生活保護者の方々の所得も非常に安い。これももちろんアップしなければならないですけれども、実際に仕事についておられる失対労働者、こういう方々が生活保護者よりアップ率が低いとか、あるいは賃金所得がとんとんという理由はどこにあるのですか。それでいいかどうかという問題ですね。
  236. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 失対賃金というのは、先ほど申し上げましたように、失対法で決定の原則がきまっておるわけであります。生活保護はまたそれをきめる一つの原則があろうかと思いますので、それとこれとを直ちに比較することはどうだろうかというふうな感じがいたします。いずれにいたしましても、私どものほうは一つの決定方式に従って一三・二というパーセントを出したわけであります。結局食えるか食えないかという議論になるかと思いますけれども生活保護の場合は世帯主義になっておりますので、失対就労者の方々は二・三人の世帯でございますけれども、その辺を比較するのはなかなかむずかしい。ただ失対就労者の生活実態がどうなっておるかということは私どもは重大な関心を持って見ております。そういった意味で四十七年に実施いたしました失対就労者の世帯平均の収入は約四万九千円をこえております。二人世帯と見まして約四万二千円、こういったような世帯収入になっておりますので、そういったことも私ども十分調査をして行政を進めておるようなわけでございます。
  237. 田代文久

    ○田代委員 生活保護費と比べることを全然別個のような御答弁ですけれども、ちゃんと書いてあるじゃないですか、緊急失業対策法の中の第十一条の二に。いわゆる高齢者の場合、第十一条の二の第二項で「「同一地域における類似の作業に従事する労働者に支払われる賃金」とあるのは、「同一地域における類似の作業に従事する労働者に支払われる賃金及び社会保障制度による給付の水準」と読み替えるものとする。」社会保障制度による給付の水準でしょう。そうすると結局、生活保護をもらっておられる方々は、つまり社会保障制度によって少なくともその金をもらっておるわけですね。どんなに悪くたってそれより低いとかということはあり得ないでしょう、法律の条文からいっても。どうです、その点。
  238. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 十一条の二の二の規定は高齢失業者等就労事業でございまして、一般的に屋外職賃を便ってきめていく人たちとしてはふさわしくないという層に一時的な就労の場を提供しようということで三十八年の法改正のときに入ったわけでございますが、現実にこの就労者はございませんで、現実にこれは動いておりません。考え方は、一般的な失業者就労事業のほうは屋外職賃でやって、高齢者就労事業のほうは、もしそういうような事業が考えられるならば、他の社会保障の水準というものを考慮してきめるという原則がきめられているわけでございます。
  239. 田代文久

    ○田代委員 いずれにしましても生活保護費というやつがほんとうに日本の現在の経済的な社会的なわれわれの生活水準から見て非常に低い。あまりに低い。だからこれをとにかく底上げしなければならないということ、これが基本的な政策でなければならないと私は思うのですよ。ところが、それを基礎にしてもなおアップ率が低いというようなことで固執されるということは、失対事業なりそういう失業労働者に対する政策としては、私はこれは全く許されないのじゃないかと考えます。その点は十分考慮していただかなければならぬのですが、ではほかの面から申しますけれども、大体中学卒業者の初任給、あるいは高校卒業者の初任給と比べて、十六、七の人たちと比べて安いというようなことは許されますか。どうです、その点。
  240. 道正邦彦

    ○道正政府委員 初任給のお尋ねでございますが、四十七年の全国の中卒男女計でございますが、これは三万一千七百円でございます。それから高校は三万七千九百円というふうに相なっております。ただ学卒の賃金と比べて失対賃金がどうあるべきかということは一がいに言いにくい問題でございまして、先ほど来失対部長がお答えいたしておりますように、失対法に定めるところに従いまして、同種の屋外労働者の賃金を基礎にして、しかも失対賃金審議会の御意見を尊重してきめるというシステムになっておりますので、なまの数字をもって直ちに多いとか少ないという議論はできにくいのじゃないかというふうに思います。
  241. 田代文久

    ○田代委員 あなたたちはそういうことをおっしゃいますが、長い間働いて四十、五十、あるいは六十近くになる。ところが、中学を出て二十歳まではまだ三つも四つも年をとらねばならぬという人たちの賃金と比べてこれが安いというようなことは、あなたたち、失対労働者の賃金をきめられる場合、これはとにかく許されぬという、そういうことはお考えにならぬのですか。ただあなたたちの考え方というのは失業者の賃金を、その人たちが食えるとか食えぬとかの問題じゃない、とにかく水でもパンでもどんな余りものでも食って生きていれば、それは日本の社会の人間だというようなお考えじゃないのですか。もし私はこういうことがあるならば、したがって中学卒業生の十六、七くらいの初任給と失対労働者の賃金があまりに均等を欠いているということは、その点を失対賃金をきめる場合の基礎に考えなければ、これはほんとうの正しい算定の方法にならないと考えるのですよ。ところが、あなたたちの説明というのは、ひたすらそれとは考え方が違うのだというようなことで処理される。こんなことは大体許されますか。  それじゃもう一ついきましょう。さっきからのなにですが、いまきめられた賃金の中には交通費、こういうものは当然入ってないと思うのです。ところが、実際に現場に失業者が働きにいかれるという場合に、バス賃も上がっておるし、あるいは汽車賃も上がっておる。大体バスくらいで行かれるでしょうが、これは私も現実に知っております。そうしていままで百円で済んだのが二百円かかるとか、百五十円だったのが三百円かかるようになったということになっておりますが、この交通費というものを別途考えられるようなことが配慮されておりますか。どうです、その点は。
  242. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 結局、賃金のきめ方のことに戻るわけでございますけれども、屋外職賃を調査します場合に、大体日雇いの方でございますので、日給幾らという形できめられるのが一般でございます。したがって、交通費込みでそういうことになっておりますので、調査結果としましてはそれも含まって調査をいたしておる、こういうふうに申し上げたいと思います。
  243. 田代文久

    ○田代委員 これは全く、こういうことばを使いたくないけれども、ふざけた考え方ですね、実際のところ。この異常な物価の値上がりの中で千四百五十円平均の中から、この中には交通費も入っておるのだ。そうすると、かりに三百円交通費がかかるとすれば、三百円引かなければならぬですよ、実際のところ。そうすると、あと千百五十円しか残らないじゃないですか。これでやっていけると思いますか。大体ほかの産業だってそうでしょう。ほかの職場に働きにいく労働者にはちゃんと別にとにかく交通費を出しておるでしょう。なぜこれは考えないのですか。また今後考えるお気持ちがあるかどうか、御答弁願いたいと思うのです。
  244. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 賃金の決定原則に関連する問題でございます。いずれにいたしましても、交通費を内訳をとっても、単価をきめます場合の結論は結局同じになると思います。それも全部含めて私ども調査をいたしておるわけであります。ただ、最近失対事業に働いておる方がだんだん減ってきておる事業主体がございまして、事業を集約するというようなことがいろいろ出てまいっております。そういった場合にいろいろマイクロバスを仕立てるというようなことで、そういった足の問題については別の面から考慮はしてまいりたい、こういうふうに思います。
  245. 田代文久

    ○田代委員 全くこれはもう冷酷きわまりない処置なり考え方だと思うのですが、それで良心が済みますならば、ひとつそれはやってください。  そうしますと、この失対賃金をおきめになる場合に、物価やインフレを賃金をアップする要素として十分考慮に入れられておるかどうか、その点御答弁を願いたいと思います。
  246. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 これも賃金決定方式に関連するわけでございますけれども、再々申し上げて恐縮ですけれども、類似の作業に従事している労働者の賃金できめてまいるわけでございます。したがって、たとえば一般的なほかの法律にございますように、生計費というような文言が入っておりません。そういう関係で物価というものにパラレルに関連はしてこない、こういうふうに思います。
  247. 田代文久

    ○田代委員 全く私はこれはおかしいと思いますね。労働大臣加藤さんにこれは私ははっきり質問いたしますが、ことしの春闘で加藤労働大臣がいわゆる賃金のアップ問題について報告されましたね。それでは単純平均で大体一万五千百十五円ですよ。賃上げ率が二〇・一%、これは加藤さんが発表されているのですからね。ところが実際総評やらそういうのなんかでは、こういう政府のきめ方というのは大体いつも安いのだ。ですからこれについては春闘共闘では、二〇・一%ではなくて二一・六%になるんだというようなはじき方になっておるのですね。労働省のこの数字は低過ぎる。ことしの春闘共闘の五月十二日の中間集計では、単純平均は一万五千二百七十六円、二一・六%である。加重平均が一万四千四百六十七円、二〇・五%に比べて差がだいぶ縮まってきたというような評価にはなっておりますが、ことしの集計方式で修正した昨年の賃金というのは、単純平均で一万二百二十円、アップ率が一五・五%、加重平均で一万二百十八円、二八%。だからことしは昨年を四千九百三十九円から四千六百九十九円、率で四・六%から四・二%上回って、これまで史上最高だった四十五年の単純平均九千百六十六円、一八・五%、加重平均八千九百円、一八・二%もはるかにしのぐ春闘史上の新記録となった、こういうことになっておるのですね。失対労働者の賃金というのは、基本賃金があまりに非人間的と言ってもいいくらいに安い。それにアップ率が去年に比べて一三・二%アップだ。ところが、ことしの春闘におけるアップ率は平均一万五千円ですよ。それで二〇%以上になっておる、こういうことですね。そして実際の物価の値上がりの状況などは、もう私が申し上げるまでもなくて、私は二、三日前渋谷のマーケットに行ってびっくりしちゃったですよ。肉を食べたいからとちょっとのぞいてみたら、千二百円と書いてあるんですよ。一キロかなと思ったら百グラムですよ。もちろんそんないいのは私は食ったことがないですからどうでもいいんですけれども、いま牛肉は百グラムが千二百円ですよ。うちは五人家族だから、かりに二百グラムずつ食おうと思って一キロ買うとすると、一万二千円牛肉を買わないと食えないというような物価の上がり方ですよ。そういう上がり方で、これはあとからはっきりさせていただきたいと思うのですが、今後も物価の下がる見通しはないというような事情の中で、去年と比べて〇・二%上げて、これでとにかく法律にのっとってやっております、これで労働者は暮らしができましょうというようなことで済みますか。加藤労働大臣、これはどう考えられます。わかった、そんなものでは大体人間扱いしていることにならぬから、わしが当然春闘に準じてそれくらい上げるのだということが言えますか。
  248. 加藤常太郎

    ○加藤国務大臣 田代さん御指摘の民間ベースが本年は一万五千百五十九円、二〇・一%、これは労働省のまとめたもので、私閣議でも報告いたしました。これは私が指導したというよりは、賃金の問題は労使関係で労使が対等の立場で交渉いたしまして、これがもめたとかいう場合には私が指導いたしますが、賃金の決定は民間の場合には労使が決定する。これが御指摘のように二〇・一%、これはもう間違いありません。私が春闘のときに御指導いたしましたのは、公労委の関係その他で政府のほうでタッチしなければならぬ。特にいろいろな不祥事件も起きましたので、国民立場から公共企業体のほうは指導いたした。これは二〇・一%ではありません。一七・五%であります。これは理屈でありますけれども、御指摘のように失対賃金が一三・二、あの当時これを決定するときには私も大いに努力いたしたのでありますが、いまいろいろな観点から御質問があり、政府委員が答弁しましたように、この賃金体系は民間のベースを根拠にいたしまして、生活保護と違った面で算定いたしております。しかし最近の市場の事情、いろいろなことも十分わかります。生活保護費のパーセンテージ、上昇率はこれとは理論上関連はないようでありますが、御指摘のようにやはり同じ国民でありますし、立場も低所得者でありますから、関連がないと言い切れない点があるのもお説のとおりであります。今後この問題は、先ほど私御答弁いたしたように、全日自労とも話をいたしまして、物価高のおりで低所得者の失対の方々の御苦労も十分わかりますので、あらゆる観点を考慮して今後十分対処いたしますけれども、これは労働省が金をさっそく出せないという関係各省にもまたがりますので、今後の推移を見て、あらゆる観点からよくいろいろのお立場を勘案いたしまして、今後慎重に善処いたします。さっそくここでこうする、こうなかなか言い切れない困難な事情も、もう田代さん専門家であられますので十分おわかりと思いますから、御趣旨の点をよく体して、今後労働大臣といたしましてできるだけ対処いたしますが、いまさっそく御質疑に対するポイントの、それだったらこうする、ああするということの御答弁ができないのをはなはだ申しわけなく思いますが、どうかごかんべん願いまして、生活の苦しい面、これは国民の方々でありますので、この点は十分考慮しなければならぬという気持ちは、私自体、労働省も、いろいろ御質問に対して政府委員の答えが不満のような点も私は横から聞いてよくわかりますが、いろいろの立場があって意を尽くさないところもありますけれども、田代委員の御質問の意味もよく考えて、今後この問題について推移を見つつ、各省とも連携をとりまして対処いたしますことを申し上げたいと思います。
  249. 田代文久

    ○田代委員 加藤さんのいわゆる賃金決定はとにかく労使で話し合うのだ、これは国会で耳にたこができるくらい聞いておりますよ。それなら今度の賃金を決定をされる場合に、いわゆる事業主体である国あるいは地方自治体、これと失対労働者の組合と賃金交渉、いわゆる労使の関係できめるというのを十分やられましたか。私は、やったということを聞いていない。どうですか。
  250. 加藤常太郎

    ○加藤国務大臣 これは、専門家と論争する気持ちは毛頭ありませんが、先ほど言った二〇・一%は民間ベースであり、公務員なり地方自治体なり、また人事院なり公労委なり、また労働省なり総理府なり、いろいろの関係のことはもう御承知のとおりであります。ただ民間のベースはこれが主体である、こう申し上げたので、どうか誤解のないように……。
  251. 田代文久

    ○田代委員 とてもそんなことでは私どもは納得できないのですが、先ほど部長が繰り返し述べられましたけれども、賃金審議会、これが大体はじき出したというのですね。それを決定される賃金審議会というのは大体何ですか。どういう人たちが入っておりますか。これは五人で構成されておりますね。
  252. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 失業対策法に基づきまして設けられております労働大臣の法律的な諮問機関でございます。構成メンバーは、公益的立場の方が五人で構成されております。
  253. 田代文久

    ○田代委員 大体そういう生活の苦労も知らぬ人たちが構成して、そしてほんとうに苦労して全く最低の生活をしいられておる方々の賃金の問題をきめるということ自身が私は実際非常に問題があると思うのです。もしそれなら当然審議会にそういう労働者の立場に立つ代表を入れなければほんとうに妥当なものは出ないと思うのですよ。あなたたちは、ともかくそういう諮問機関の審議会があるのだ、これでやったのだから正しいのだ、そういうことじゃこれは通らないのです。ですから、この審議会の構成あるいは内容を今後十分考え直してもらいたいと思うのです。  時間がありませんから結論を申し上げますけれども、大体今後の物価の見通しとして、卸売り物価がすでに一二・四%くらい上がっております。これは全く異常ですね。卸売り物価がそんなに上がっている。西ドイツでは消費者物価が三%上がっただけで、これはたいへんだということで政府は手を打つことに必死になっているのですね。卸売り物価が一二・四%も上がるというような異常事態、しかもことしの十四兆に余るような膨大な予算、赤字公債の発行、こういう中で、どこから考えても物価が落ちつく、下がるとかということはもう考えられないのです。そういうことを見込んで、当然現在の失対労働者の賃金を手直しする必要がある。これで食っていきなさいといったってとても食っていけません。食っていけるなら、あなたたち実際に食ってみてくださいよ。ですから、これは手直しする意思があるかどうか。  それから、もう盆が迫っております。いわゆる夏期手当。私はいま時間があれば、陳情のはがきがこんなに来ているのですよ、あなたたちにも来ていましょう。これは大臣にも言うてくれと書いてあるから、言いたいのだけれども、時間がないから読みませんが、来ておるのですよ。この中にも夏期手当、とにかくほんとうにたった三日でいいから上げてもらえぬかと言われるのですが、どうですか。夏期手当を三日分上げるということ、それから賃金の手直しをされるかどうか。
  254. 加藤常太郎

    ○加藤国務大臣 夏期手当のほうは、さっそく手配いたしまして支給するようにいたしております。また先ほどからいろいろ御質問の点、田代委員の御趣旨も十分わかりますし、私の性格は御承知のとおりで、もうぱあっと言いたいのでありますが、いろいろな事情もありますので、なかなか……。あまり大臣は会わぬそうでありますが、先般も私全日自労とも喜んで会いまして、いろいろ聞いておりますので、いろいろの点を考慮いたしまして慎重にとなかなか言いにくい点でありますが、十分わかります。
  255. 田代文久

    ○田代委員 それは問題にならぬです。とにかくいままでの夏期手当の支給を一カ月早められたか二カ月早められたか知りませんけれども、これは十年も早められたというなら少しは意味がありましょう。しかしわずか三十日足らずのあれをやったから、これで何か手を打ったというのは、これは実際のところ、愚弄するものですよ。ですから少なくとも三日くらいの手直しをひとつやってくださいよ。あなたたちは、もう予算が組んであるから、ないと言いたいのでしょう。だからそこにちゃんと補正予算というのがあるでしょう。とりあえず三日分くらいの夏期手当をとにかくやるということでおやりになる。そうすると今度の夏期手当の分としては九日分しか組んでないから、それはちょっと困るということでありましょう。しかしそれをやっておいて十二月の補正予算を組んだらいいじゃないですか。実際のところ、予備費もあるでしょう。またいろいろそういう手は打っているじゃないですか、国鉄の運賃の値上げのときでも。あなたたち、やるという腹があれば、これは実際できます。どうです。
  256. 宇都宮徳馬

    ○宇都宮委員長 田代君に申し上げます。所定の時間が来ておりますから……。
  257. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 先ほど大臣がお答え申し上げましたように、最近の物価等の関連において生活が非常に苦しいというお話を私どももたびたび団体の方からお聞きいたしております。したがって、賃金改定の問題を含めまして十分今後の推移を見きわめながらいろいろ検討はしてまいりたい、こういうふうに思います。
  258. 田代文久

    ○田代委員 頼みますよ、実際のところ。  終わります。
  259. 宇都宮徳馬

    ○宇都宮委員長 坂井弘一君。
  260. 坂井弘一

    坂井委員 業務災害によります被災労働者、こうした被災労働者を休養させる場合にどのような手続によって休養させるのか、法律上の根拠等について、まず最初にお尋ねしておきたいと思います。
  261. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 労災保険法におきましては、保険給付のほかに保険施設を行なうことができることに相なっております。休養に関しましては、現在行なっておりますのは、負傷、疾病が治癒いたしまして、そうしてあとに障害が残った方に対しまして、障害等級八級以上という比較的重度の障害を残しました方に対しましては、本人の御申請によりまして温泉保養券というものを発行いたしまして、それを持っていかれますと、労働福祉事業団が設置いたしております休養所、または民間の旅館等で特約をいたしておりますところで、その保養券を使って無料で温泉保養等ができることにいたしておるわけでございます。
  262. 加藤常太郎

    ○加藤国務大臣 いま政府委員から答弁いたしましたように、事業団が全国で七カ所か八カ所休養所をつくっておりますが、先般もこの問題で事業団へ行きましていろいろ聞いたのであります。二時間ぐらいにわたって私、議論をいたしたのでございますが、表面はうまくいったようでありますが、八級以上という方にいま政府委員が言ったような保養券を渡す。八級以上というのはだいぶ重症者でございますので、付き添いが要る。付き添いは金が要るというような関係で、もう少し利用度がぴったりいっておりません。私も各方面から聞きまして、かような問題に対しましては、今後役所は広報活動とかなんとかいろいろ言っておりますけれども、これに対しまして今後いままでの悪い点は改善いたしまして、大臣のほうからも正式に事業団とよく懇談いたしまして、なおこの休養施設を実際にほんとうに活用できるように、宝の持ちぐされではいけません。今後この休養施設に対しましても、全国で八カ所では少ないですから、本年度はこれに対しまして画期的にこれを倍増するような方向で、これらの施設の充実、そうしてほんとうに活用できるようなかっこうに持っていきたい、私といたしまして、また労働省の基本方針として、雇用促進事業団のほうにもこう指示いたす所存であります。
  263. 坂井弘一

    坂井委員 不幸にして業務災害にあわれたそうした被災労働者を、労働者災害補償保険法第二十三条におきまして「休養又は療養に関する施設」、こうした施設に休養をさせるということになっているようでございます。  ところで、この労働者災害補償保険法、これが昭和二十二年の四月の立法でございますね。ところが、労働福祉事業団が昭和三十二年七月に発足しております。そうして、災害を受けられた労働者に対して休養所をつくるということでつくられるわけですが、この休養所が一番最初にできたのが昭和三十九年の二月でございますか、たしか岡山の湯原荘、これが一番早いと思うのですが、そのとおりでしょうか。
  264. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 先生のおっしゃるとおりでございます。
  265. 坂井弘一

    坂井委員 そういたしますと、事業団ができてからも、三十二年の七月でございますから、三十九年まで七年間という間、この法律からいきますと、二十二年になりますか、つまり施設ができないままで推移してきた。その間は、先ほど答弁ございましたけれども、つまり民間の休養所、温泉旅館でしょうか、そういうところをお使いになった、こういうことでしょうか。
  266. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 先生御指摘のように労災保険法ができましたのが二十二年でございますが、当初二十七、八年ごろまでは保険財政が非常に赤字でございまして、したがいまして保険給付をするのが精一ぱいでございまして、法律にはいろいろ保険施設の規定がございましたけれども、それになかなか手が出なかったわけでございます。三十年前後からようやく保険財政が安定してまいりまして、それに伴いましてまず労災病院を全国につくったわけでございます。と申しますのは、もちろん民間の指定病院等もございますけれども、労災独自の、労災の負傷、疾病に適合した療養を行ないますために、たとえばリハビリテーション等もあわせた療養を行ないますためには、やはり労災病院がある程度必要だということで、三十年ごろから三十九年ごろまでの間に労災病院を全国に約三十四ばかり次々につくったわけであります。でございますから、初めのうちは、福祉事業団ができましても、もっぱら労災病院の建設、増設が主でございました。ようやくそれがある程度全国に必要数行き渡りましたことに応じまして、三十七年ごろからそれ以外のいろいろな休養施設等にも手を伸ばす、こういうことに相なったわけでございます。したがいまして、休養所ができますまでの間は、温泉保養券の利用はもっぱら民間の旅館等との契約によりまして、契約旅館等を利用していただいておったというのがそれまでの経緯でございます。
  267. 坂井弘一

    坂井委員 いずれにもせよ、いろいろな事情があったということは御説明のとおりでありますが、この休養所に限って見ますと、つまり労働者災害補償保険法の二十三条におきまして、「休養又は療養に関する施設」これをつくるのだということでありますけれども、残念ながら、この休養所の設置については、休養所に限っては非常におくれた、こういうことですか。
  268. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 最初から十分な施設ができればよかったのでございますが、やはり緊急の順序ということになりますと、まずけが、疾病をなおす病院が優先するかと存じまして、当初はその整備に力を注いでおったということでございます。
  269. 坂井弘一

    坂井委員 大臣から、この休養所が八つあるのだ、あまり利用されておらないという話でありますが、労働省のほうにお尋ねしますが、この休養所が八つございますが、これらのおのおのの開設はいつされたのか。それから四十六年度までの建設費の累計はどのくらいになりますか。同時に、四十五年度の延べ利用定員、同じく延べ利用者数と、その利用率はいかほどになりましょうか。
  270. 加藤常太郎

    ○加藤国務大臣 先ほど八つと言いましたが、いま見ますと九つありまして、事業団の名前を雇用と言いましたが、福祉事業団でありますことを訂正いたしておきます。
  271. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 設置の年月日を申し上げますと、群馬の水上荘が三十九年六月、それから岡山の湯原荘が三十九年二月、それから和歌山の椿荘が四十年二月、岐阜の恵那荘が四十年五月、大分の湯のもり園が三十九年十一月、北海道の十勝荘が四十三年二月、登別ときわ荘が四十二年十二月、蔵王パレスが四十七年七月でございます。なお沖繩の白雲荘と申しますのは、復帰前琉政がつくっておりましたものを、復帰と同時に事業団が引き継いだものでございまして、当初から福祉事業団が設置したものではございません。復帰に伴って琉政から引き継いだものでございます。なお、その建設に要しました費用は、そういうことで、沖繩から引き継ぎました白雲荘、これは建設をこちらでしておりませんので、それを別にいたしまして、八カ所の累計が八億二千二百八十九万と相なっております。  それから、先生のお尋ねの四十五年の利用者の延べ数は、これは沖繩の白雲荘が途中から引き継ぎましたために、これがちょっと抜けておりますが、それを除きまして、八カ所で四十五年度の利用者総数が、宿泊二万一千六百五十三人、ほかに宿泊しない休養者が一万八百九十二人と相なっております。
  272. 坂井弘一

    坂井委員 そうしますと、利用率はいかほどになりますか。
  273. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 宿泊者の数で、定員に対しまして一七・三%、それから宿泊を伴わない休憩者も含めますと、二六・一%に相なっております。
  274. 坂井弘一

    坂井委員 いま、お示しいただいたのでありますが、これを少しさかのぼって、四十四年度を見ますと、いまの八カ所で利用定員が、蔵王パレスを入れますと四百九十二、これを抜きますと三百四十二ですね。利用者の延べが宿泊で二万八百五、そういたしますと、利用率が一六・七%。四十五年度は、いまお答えいただきましたように、利用定員が三百四十二、利用者延べ数が二万一千六百五十三、宿泊でございます。これの利用率が一七・三%。さらに四十六年度になりますと、利用定員が四百三十八、利用者延べ数が三万一千五十七、利用率は一九・六%。大体こういう推移をたどっているようでありまして、利用率が非常に低いわけですね。  ところで、一体、なぜこんなに利用率が低いのか。しかも八級以上というワクを取りまして、十四級の方まで、あるいはなおそれ以上に幅を持たした考え方で、できるだけ労働者の福祉に供しようというお考え方に立って、これらの利用をはかろうとされていらっしゃるようでありますが、そうしたような計らいをしながらも、なおかつ今日二〇%にも満たないような利用率である。私は考えますのに、最近、たとえば国民宿舎一つ見ましても、押すな押すなの盛況であります。いずこも温泉旅館なんていいますと、シーズンにもなりますと、とても予約をしましてもなかなか受け入れてくれないというような状況でもあります。そういう中で、こうした労働者のための、特に災害を受けられた、被災された方々のための施設がりっぱにできながら、なおかつ二〇%にも満たないような利用率である。これは一体いかなる理由によってこのような低い利用率になっておるのでしょうか。どう判断されていらっしゃいますか。
  275. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 先ほど、温泉保養券を発行して無料で利用させておるのは八級以上ということを申し上げましたけれども、八級以下の人におきましても、望む方につきましては、できるだけこれらの施設を利用して本格的な回復をはかっていただくようにしたい、かように考えておるところでございます。  ただ、そういう意味において申しますと、民間旅館等への委託契約等はやめて、せっかくある施設でございますから、これらの施設をもっぱら使っていただくといいわけでございますが、ただ現在は、先ほど申しましたように、沖繩を入れまして九カ所でございます。被災労働者の方々、したがいまして必ずしもその近くに住んでおられない方もございまして、遠くまで行くのならという方もありますために、従来から使っております契約旅館、こういう近くのところを利用される希望もございまして、せっかくできましても、必ずしも全部利用される方がこの労働福祉事業団の休養所を利用されると限っておらないという点もあると思います。それからなお、そういう被災労働者の方全部に、せっかくつくりましたけれども、こういう休養施設がどこそこにあるということの周知、PRが必ずしも徹底してない点もあると思いまして、これらにつきましては、最近基準局あるいは監督署で被災労働者等にそういう周知につとめますとともに、労働福祉事業団のほうでも、広報活動として入院患者等にそういう施設があるのだということを周知いたしまして、そういう温泉保養等の希望のある方にできるだけこの施設を利用していただくようにつとめておるところでございます。  なお、先ほど大臣も申されましたように、重い方ですと、自分は保養券をもらってもなかなか一人で行けない、だれか付き添ってほしいという場合がありますが、付き添いの方まではいままでのところ無料ということにいたしておりませんので、そういうような制約もあるのではないかという点もございまして、大臣からも何らか付き添いの人に対しても見てやれるようなことを検討できないかという御指示もございましたので、早急にそれらの点も今後検討いたしまして、より一そう有効な利用をはかるように配慮いたしたいと考えておるところでございます。
  276. 坂井弘一

    坂井委員 温泉地にあるけれども遠隔なためになかなか利用されがたい、あるいはまたPRの不足というような面ということでお答えいただいたと思うのですが、年々推移しまして今日なお二〇%にも満たない。これがせめて半分は利用されておる、半分はいっておる、それでもひどいかしれませんけれども、それならばまだしものこと、二〇%に満たない。これは単なるPRの不足であるとか、遠隔だからなかなか利用されないのであろうということでは、私は常識的にどうも理解しがたいわけなんです。少なくとも、いまこうした時勢柄、もう各地の温泉地というのは御承知のとおり満員であります。国民宿舎まで予約でなければ利用できない。しかもそういう中で被災労働者が、特にこうした災害によって障害補償を受給をされる、その場合に、当然ある期間療養を要する、当人もしばらくの期間やはり療養したいという希望は十分おありであろうと思うし、かつまたそうした際には、特にそうした労働者の障害補償という面から、それにはこうこうした施設がございますよ、しばらく休養されてはいかがですかと、自然の話の中で私はそうなるであろうと思うのです。こうしたせっかくの施設がありながらも、その反面、民間の一般の温泉旅館を使うというような人たちもかなりいらっしゃるようである。そうすると、確かにそういう実態からすればPRが不足しているのだろうかとも思われる。しかし、これは単なるPRの不足ではなくして、むしろ知らさないような、そんな手だてまでされていらっしゃるのではなかろうかとぐらいまで思いたくなるほど利用者が少ないということでありまして、たとえば障害補償の受給者数を見ましても、昭和四十五年度に八級以上の、つまりこの種の休養所に休養できる資格のある人が九千七百四十一名もいらっしゃるわけですね。それで定員を見ますと、四十五年度では、三百四十二人しか利用できないのです。延べでいきますと、一日泊まって帰る人もあるし、一週間さらに泊まる人もあるし、いろいろあるでしょう。ですから、延べ人員でいきますれば、回転がありますから、相当な数の人が利用されるということになるわけですけれども、それにいたしましても、利用率が二〇%を割るということでありますから、いかに利用率が低いかということは、この数字をもってしても歴然としておりますし、かといって、いま申しましたように、八級以上の方が四十五年度で九千七百四十一名もいらっしゃるのだ。これはどこかに欠点があるのではなかろうか。単なるPR不足ではないのではなかろうか。では一体、こうしたりっぱな施設ができたということですけれども、なるほど温泉地には違いないが、しかしこの温泉地は、温泉地でもきわめてへんぴなところにつくられたのではなかろうか。つまりその温泉地へ行きましても、温泉地だというから来たところが、なかなか人里離れた、なるほど温泉群の片すみには違いはないけれども、相当な遠隔のところである。しかもこれを利用される方はつまり障害者であり、付き添いの方もいらっしゃる。とても不便だ、こんなところはもうこりごりだ、とても利用できない、そういうようなことも、これは全部が全部とは申しませんけれども一つ原因になっているのではなかろうかということが出てくるわけでありますけれども、その辺については分析されましたですか。
  277. 加藤常太郎

    ○加藤国務大臣 先ほど御答弁のときに、私ははっきり申しましたが、御質問がありませんでしたが、四十六年に行管より勧告も来ておりますし、この問題は、私、一週間前に、御質問があるから行ったのではないのでありますが、福祉事業団へ行って、これも恥ずかしい話ながら、大臣が行ったのは初めてらしいのですが、よくこの問題は懇談いたしました。これは遠隔地であるとか、いろいろな条件で二〇%、このごろはだいぶ、この間行ったときは二八%で、休憩を入れると四十何%で、だいぶよくなったとは言っておりましたけれども、これはもう広報活動がへただと言ったって、やはりはっきり労災の方なんかはもう知っておるのでありますから、何かそこらに欠陥がないか。欠陥は、いろいろ私もわかる点でありますが、要は実行でありますので、この点については、もう御趣旨を体して、御趣旨がなくても行管からも来ておるのでありますから、今後これが改善、今後の設置場所についても十分検討して、国民宿舎もあらゆるものが、政府がやっておる機関でももう超満員でありますが、どうも御病人の方の気の毒な方の利用ができない、こういうのは納得しません。そういう意味で、福祉事業団の参考人からも答弁があろうと思いますが、これは根本的に労働省が中心となって、これが改善へ御趣旨の線に沿うように、ここでお約束をいたしまして、改善するように持っていきたいと思います。いろいろ事情はあるのであります。役所から言うと、うまく私のほうから説明いたしますけれども、こっちはいろいろな点も知っておりますから、役人の答弁だけで納得せぬで改善せい、こういう強い指示をいたしておりますので、きょうは私の指示のようなことがちょうど坂井委員からあったので、私も喜んでいる次第で、今後はこれが改善に対して邁進いたします。
  278. 坂井弘一

    坂井委員 大臣から強い指示をされたし、必ず改善するというせっかくの御答弁であります。  そこで、やはり運営、このことに携わっておるのは労働福祉事業団でありまして、きょう事業団にもお越しをいただいておるわけでありますので、一言お伺いしたいと思いますが、このような非常に低い利用率、まあこれにはさまざまな事情があったということであります。ただ、確かにどこもかしこも満員、その状態の中で、たとえば言われるところの欠陥団地ですね、せっかく日本住宅公団が建設したりっぱな公団住宅にしても、足なし水なし団地なんというものがありまして、ここにはこれほど住宅不足のおりからも人が集まらないというような事例も見られて、これは改善しなければならぬというようなこともございます。同じくこれもそうだと私はきめつけて言うわけではない。ただ、しかし、確かにいまも大臣もおっしゃるように、どこもかしこももう押せ押せの満員の盛況の中でひとり休養所ががらがらの状態である。まことに今日珍しい。どうも常識的には理解しがたいですね。したがって、今日までの利用者が少ない原因については、いろんな角度から究明されていらっしゃるとは思うのですが、しからばこれをどう改善するか、どう利用していくか。必ずこれこれの時点においてはこれだけの利用ができるというような見通しを福祉事業団においては持っていらっしゃるかどうか、そこのところをひとつお伺いをしたい。
  279. 工藤誠爾

    工藤参考人 先ほどから、先生、非常に利用率についての御指摘がございましたが、まことに恥ずかしい利用率であると私たち思っております。しかし、私どももいろいろ努力いたしまして、漸次利用率は上がってまいりまして、四十六年度が一九・六%ということは先生の先ほどのお話のとおりでございますが、四十七年度になりまして二六・二%、休憩を含めまして四九・六%というふうに、若干向上を見ております。しかし、私ども、こういう数字で決して満足しているわけじゃございませんので、今後、大臣の強い御指示もございますし、先生の御指摘もございますので、あらゆる角度から検討いたしまして、御趣旨に沿うように努力いたしてまいりたい、かように考えておる点を御了承いただきたいと思います。
  280. 坂井弘一

    坂井委員 該当者は、労働者災害補償保険法によりまして、たとえば手当も受けられますよ。旅費千八百円でございますか、日当が二百円、宿泊費が二千五百円から三千円、ただし休養所の利用者につきましては千八百円、しかも八級以上の人についてはこの宿泊費は無料なはずですね。ただ、付き添いの方はこの場合の実費に当たる額は出していただく、こういうことになっているようであります。  いずれにいたしましても、一般のそうした温泉地の旅館のことを思えば、これはもう労働者の災害補償のためにつくられた施設でありますから、確かにそれなりの便宜もはかっておるというわけでありますが、せっかくの施設ができながらこれが利用されない。しかも、その利用されない理由としては、PRが不足であるなんということは、これはあまりにも、労働省は一体何をしておるのだ、福祉事業団は何をいままで仕事をしてきたのですか、あるいは何のために設立されたのですか、こう問いたくなるわけですよ、そういうお答えをされますと。ですから先ほども大臣のお答えにありましたので、きわめて前向きに、かつさっきのお話じゃありませんが、ぱっとやるという加藤大臣でありますので、ひとつこの施設を労働者のために、ことに被災されました方々のために、それこそ一日も早く、しかもそのようなお気の毒な労働者が喜んで利用できる、そういうようにしていただきたいと思うわけであります。  ただ、もう一つつけ加えて申し上げますと、たとえば蔵王パレスなんかは四十七年六月十五日に完成、開始をされているわけです。これに三億七千百六十三万円まで投じておるわけですね。それまで七つできておったわけです。それらが二〇%も満たないような利用率である。そういう中で山形の蔵王にこんなりっぱなものができた。これがまたはたして利用されるのか利用されないのか。それからこれからもなおこの種の休養所等はおつくりになっていくような御計画であるように聞いておりますが、くどくどしいことを申し上げて恐縮ではございますが、ただ私が念のために申し上げなければならないのは、いま言った蔵王にいたしましても、新しくつくられたものがはたしてどれだけ利用されるかわからないというようなそういう状態では、これはちょっとだれしも納得できませんので、そういう点もあわせてひとつ御検討いただきまして、活用されるように望みたいわけであります。大臣何か御答弁を……。
  281. 加藤常太郎

    ○加藤国務大臣 これは釈明ではありませんが、ちょっと一つの大きな欠陥がありますのは、最初つくったのがちょっとちゃちであったのであります、三十人とか四十人で。このごろは国民休暇村でもいろいろなものでも相当豪華になっておりますので、この点が少し最初の規模が悪かったという点がありますけれども、しかし、それもまた改善したらいいのでありますし、その他いろいろの点で私聞いて納得せぬところがありますから、蔵王はだいぶ思い切ってやったので、ここはえらい利用があって、ほかのほうは全然来ぬというようなかっこうでありますので、あらゆる設備の問題も考えて抜本的にこれに対処いたします。
  282. 坂井弘一

    坂井委員 次に雇用促進事業団でございますが、この事業団に関しまして行政管理庁が労働省に対しまして昭和四十六年の九月、監察の結果、勧告を出していらっしゃいますが、その内容につきまして概略行管から明らかにしていただきたいと思います。
  283. 佐藤惠一

    ○佐藤説明員 御説明申し上げます。雇用促進事業団の雇用促進融資につきまして、融資によって設置しました施設、設備の目的外使用が調査件数の二四%ございました。それから利用率が低いもの、つまり労働者住宅等の入居率が五〇%以下等のもの、調査件数の一四%、こういうような状態でございまして、融資効果が必ずしもあがっていない事例が見られたということでございます。
  284. 坂井弘一

    坂井委員 いま行管お示しのように、この雇用促進融資の調査結果によりますと、目的外使用、それから利用率が低い、いま数字をあげて御説明のとおりであります。それに対しまして雇用促進事業団では、あと調査し、改善なさっていらっしゃると思いますが、現在どうなっておりますか。
  285. 和田勝美

    和田参考人 お答え申し上げます。四十六年の九月に、ただいま行政管理庁のほうから御説明がありましたような指摘を受けました。その結果、それに対する措置といたしまして御指摘のありました第一点民生目的外使用が四十三件あったということでございまして、事業団といたしまして直ちに調査実施いたしましたところ、御指摘がありましてから私ども調査いたしますまでに、四十三件中二十二件はすでに目的外使用をやめまして正常の使用になっておりました。残る二十一件につきましては、実情を見まして直ちに繰り上げ返還を命じましたものが十一件でございまして、現在までこの繰り上げ償還は全部完了いたしております。それと、目的外使用の度合いによりまして、その目的に合うように勧告をいたしましてその目的の中におさまったものが十件でございますが、これも今日まで全部完了いたしております。
  286. 坂井弘一

    坂井委員 かかることがあってはならぬと私は思うのです。このようなことの再びないように十分御注意いただきたいと思うわけであります。  たとえば目的外使用の態様を見ますと、融資施設を第三者に賃貸ししている。これはいけないですね。さらに融資施設を事業主の自宅に転用している。これはとんでもないことですね。また融資施設を他目的の事業用施設に転用している。これも許されることでありませんね。こういう目的外使用というものは、この種の雇用促進融資の趣旨、目的からきわめて逸脱するということでありますので、厳に慎んでいただきたいと思うわけであります。  なお次に、簡易生活補導施設、それから労働福祉館、これらを廃止または廃止の準備中である、こういうように聞いているわけでありますけれども雇用促進事業団法第十九条の一項五号、これとの関連においてどう御説明になりますか、お伺いしたい。
  287. 和田勝美

    和田参考人 お答え申し上げます。雇用促進事業団法の第十九条の一項五号に御指摘の「労働者のための簡易宿泊施設、託児施設、給食施設その他の福祉施設の設置及び運営を行なうこと。」という規定がございます。この規定によりまして、従来労働福祉館あるいは簡易生活補導施設というような具体的なものについての設置、運営をいたしておりましたが、これも時代の変化によりまして、具体的な施策については変更していくべきであろう、こういうように私ども一般論として考えております。  具体的な労働福祉館につきましては、たしか三十三年ごろから設置が始められまして、日雇い失業保険の被保険者の幼児あるいは乳幼児のための託児施設として経営を始めたものでございます。その後、日雇い失業保険関係におきましてその大宗を占めますものは失業対策事業に従事する就労者の皆さんでございますが、先生すでに承知をいただいておると存じますが、最近におきましては、日雇い失業対策事業に働かれる皆さんの年齢が非常に高くなってまいりましたのを反映いたしまして、現実に労働福祉館を利用していただいております者を見ますと、日雇い失業保険の被保険者の方々というのとはだいぶ事情が違ってまいりまして、その点につきまして四十六年九月に行政管理庁から、設置目的からして、現在の利用度から見て、これらのものは廃止することが望ましいのではないかという勧告をいただきました。実態は確かにそのとおりでございますが、ただ、現実に、これが設置目的とは多少違いますけれども、託児施設として利用されている、要するに社会環境全体の問題として利用されている向きもございますので、所在をいたします市町村とよく話し合いをいたしまして、漸次市町村に移譲をいたしまして、現在使われておると同じような姿で市町村が使っていただけるようにいたしまして、現在のところまだなお多少残っておりますが、行政管理庁の勧告の線に沿って廃止をしておるということでございまして、ここにございます簡易宿泊所は——それ以外に私どもは、たとえば港湾等でもやっておりますし、その他のいろいろのところで、ここにあります諸種の具体的なものについては、さらに今後拡充してまいりますが、使用目的が変わってきておるものについては、やはり流動的に変えていくべきだろう。簡易生活補導につきましても、これは炭鉱労働者の皆さんのためのものでございましたけれども、これも炭鉱労働者の方々の生活補導というようなことも変わってまいりましたので、それに合わせて漸次変更していきたい、こういうことでございます。
  288. 坂井弘一

    坂井委員 実態に即してということでございますが、ただ私がお尋ねしておるのは、雇用促進事業団法の第十九条「業務の範囲」の第五号の「労働者のための簡易宿泊施設、託児施設、給食施設その他の福祉施設の設置及び運営を行なうこと。」この項については別段差しさわりはない、廃止あるいは地方自治体に移譲していくやり方をなさっていらっしゃるわけですけれども、特別にこの五号には触れるものではない、こういう御判断でございますか。
  289. 道正邦彦

    ○道正政府委員 お答えいたします。十九条の五号に、御指摘のように福祉施設についての規定がございます。これは沿革的に申し上げまして、ただいま事業団のほうから御説明がございましたように、失対就労者であるとかあるいは炭鉱労働者の皆さんを直接目的としてこの種の施設を当初設置してまいったわけでございますが、それにつきまして、ただいまお話がございましたような経緯で逐次設置の目的も事情が変化してまいりましたので、地方自治体に移管していく手続をとっております。ただ、別の問題といたしまして、御承知のように港湾労働に関係してやはり簡易宿泊施設を設けております。これも事業団の施設としてやっております。そういうことで、時代の推移に応じまして、必要なものがあれば、この規定を活用して福祉施設の拡充につとめてまいりたいというふうに考えます。
  290. 坂井弘一

    坂井委員 それからもう一点お尋ねしたいのですが、この雇用促進事業団の設立趣旨なりあるいは目的によりますと、つまり技能に応じた労働者の雇用を促進し、あわせて福祉の向上に資するのだということと同時に、これもやはり対象になるものは中小企業が主たる対象になるということと思いますが、そのように理解して間違いございませんですね。
  291. 道正邦彦

    ○道正政府委員 お答えいたします。御指摘のように、福祉施設は、中小企業の労働者におきまして、大企業に比較して総対的に立ちおくれておるわけでございますので、福祉施設を考えます場合に、何よりもわれわれといたしましても中小企業が中心になるというふうに存じます。ただ、大企業につきましても、たとえば融資制度等につきまして利率等は中小企業よりも高めておりますけれども、これを排除するということまではいたしておりません。ただ、あくまで中小企業主体に考えるべきは当然だと思います。
  292. 坂井弘一

    坂井委員 四十五年度の住宅についての融資を見てみますと、申請が千四十二件ありまして、実績が六百三十四件、つまり申請に対して四百八件アウトになっておる。同時に、融資額を見ますと、これが百四十億六千九百九十一万、これだけの額が住宅費用に融資されておる、こういうことでございますけれども、この百四十億のうち大企業への融資が四十六億三百四十万、これだけ融資されておる。約三分の一になりますか。ちょっと多過ぎるのじゃないでしょうか、比率からいたしまして。多過ぎるという言い方はよくないかもしれませんが、中小企業向けに融資されるべきものが、その三分の一までが大企業に融資されておる。これはいかがかと思うのですが、どういう判断をされていらっしゃいますか。
  293. 和田勝美

    和田参考人 お答え申し上げます。昭和四十五年度におきましては、先生ただいま御指摘のように、大企業につきましては申請件数二百四十一件、総額八十八億八千八百万円、全体に対して三四%の申請がございましたのに対しまして、貸し付け実績といたしましては百九十九件、五十七億六千三百万円、三〇%ということでございまして、三〇%の貸し付けを確かに大企業にいたしたわけでございます。  この件につきましては、私どもは、ただいま安定局長から御答弁を申し上げましたように、できるだけこういう政府関係機関の資金は中小企業に回すべきであるという観点に立っていろいろ審査をし、決定をいたしております。四十五年度につきましても、いま申しましたような金額でございますが、それぞれの申請額に対する決定額を見ますと、金額的で、大企業の場合は六四・八%に対しまして中小企業は七八・六%ということで、約一四%中小企業のほうが優先的にと申しますか、扱いをいたした、こういうような実情もございます。  四十五年度だけでなくて、ほかにわたりまして恐縮でございますが、ちょっと私どもが大企業と中小企業にどういう貸し付けをしておるかを例示的に申し上げさしていただきたいと存じます。  昭和四十年度におきましては、大企業には全体のワクの中で二八・六%、中小企業には八三・四%、こういうような貸し付けをいたしておりますし、昨年の四十七年で申し上げますと、大企業には一一・九%、中小企業には八八・一%、こういうような貸し付け決定をいたしております。こういう四十年度から四十七年度までを見てみますと、実は四十四年の場合が一番大企業高い率になっておりまして、それ以外の場合は、できるだけ大企業を押え、中小企業をやっていきたいということで、中小企業には八〇%台をできるだけ確保するようにしたい、こういうような一応私どもの心づもりを持っておりますことをあわせて御説明申し上げさしていただきたい、かように考えております。
  294. 坂井弘一

    坂井委員 時間がございませんので、もうこれ以上こまかい点について議論はいたしませんが、本来的な趣旨からいたしましても、どうか中小企業に対するさらに融資の拡大をはかって、大企業は自力で十分力があるわけでありますから、せっかく中小企業者が申し込んでも、その申請から漏らされる、そうして大企業のほうに融資されるということになりますと、これは本来的な目的、趣旨からはずれていくということを懸念もし、かつ、それではせっかくのこの種の雇用促進なり、そのための労働者の住宅の融資というものが、この趣旨からいっても効果的に生かされたとは言いがたいことになるのではないかという点で申し上げたわけであります。  時間がありませんので、本日はこれで終わりたいと思います。よろしくお願いいたします。
  295. 宇都宮徳馬

    ○宇都宮委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十一分散会