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1973-06-12 第71回国会 衆議院 決算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月十二日(火曜日)     午前十時十九分開議  出席委員    委員長 宇都宮徳馬君    理事 松岡 松平君 理事 森下 元晴君    理事 綿貫 民輔君 理事 芳賀  貢君    理事 庄司 幸助君    中村 弘海君       中尾  宏君    稲葉 誠一君       増岡 博之君    八木  昇君       原   茂君    坂井 弘一君       柴田 睦夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         外務大臣官房会         計課長     梁井 新一君         外務省欧亜局長 大和田 渉君         外務省中近東ア         フリカ局長   田中 秀穂君         外務省経済局長 宮崎 弘道君         外務省経済協力         局長      御巫 清尚君         外務省条約局長 高島 益郎君         外務省国際連合         局長      影井 梅夫君         大蔵省主計局次         長       長岡  實君  委員外出席者         外務大臣官房領         事移住部長   穂崎  巧君         外務省アジア局         外務参事官   大森 誠一君         食糧庁総務部長 森  整治君         会計検査院事務         総局第一局長  高橋 保司君         参  考  人         (海外移住事業         団理事長)   柏村 信雄君         参  考  人         (海外移住事業         団理事)    斉藤  実君         決算委員会調査         室長      東   哲君     ————————————— 委員の異動 六月十二日  辞任         補欠選任   篠田 弘作君     中村 弘海君  橋本登美三郎君     中尾  宏君   濱野 清吾君     増岡 博之君   江田 三郎君     稲葉 誠一君   田代 文久君     柴田 睦夫君   竹入 義勝君     坂井 弘一君 同日  辞任         補欠選任   中尾  宏君    橋本登美三郎君   中村 弘海君     篠田 弘作君   増岡 博之君     濱野 清吾君   稲葉 誠一君     江田 三郎君   柴田 睦夫君     田代 文久君   坂井 弘一君     竹入 義勝君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十五年度一般会計歳入歳出決算  昭和四十五年度特別会計歳入歳出決算  昭和四十五年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和四十五年度政府関係機関決算書  昭和四十五年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和四十五年度国有財産無償貸付状況計算書  (外務省所管)      ————◇—————
  2. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 これより会議を開きます。  昭和四十五年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、外務省所管について審査を行ないます。  この際、おはかりいたします。  本件審査のため、本日参考人として海外移住事業団から理事長柏村信雄君、理事斉藤実君の両君の御出席を願い、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、参考人からの意見の聴取は委員質疑により行ないたいと存じますので、さよう御了承願います。     —————————————
  4. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がございますので、順次これを許します。綿貫民輔君。
  5. 綿貫民輔

    綿貫委員 私は、特に海外経済協力の問題にしぼりまして御質問を申し上げたいと思います。  最近の国際情勢日本経済力の伸長に伴いまして、すでに海外経済協力についての日本に対する海外のいろいろの批評やまた期待、そういうものがあると同時に、国内におきましても最近この問題に強い国民の期待が寄せられておるわけであります。すでに昨年の五月にこの決算委員会におきましては、海外経済協力国連勧告に近づけるように議決も行なっておるのでありますが、その議決にもかかわらず、DAC勧告GNPに対する比率の〇・七%どころか、昨年は〇・二一%と四十六年を下回るような現状になっておるわけであります。決算委員会議決が単なる空文であったということになるのでありますが、こういう経過と今後のお考えについて、ひとつ外務大臣から大所高所に立った御答弁をいただきたいと思います。
  6. 大平正芳

    大平国務大臣 日本海外経済援助につきまして、わが国として国力にふさわしい貢献をしなければならぬことは申すまでもないことでございますが、それではどういう基準を目標としてやってまいるかということにつきましては、国際的に見まして幾つかの道標が設定されておるわけでございます。一つは、UNCTADで取り上げられました御指摘GNPの一%までは援助に回すべきであるということもその一つでございます。同時に、OECD等におきまして、先進国が協議いたしまして、こういう程度まで各国はその援助をやるにあたりまして心がけなければならないじゃないかというような道標もあるわけでございます。そういう国際的にきめられました、あるいは合意を見、施行されております道標から見まして、確かにわが国といたしましてはおくれをとっておることは隠れもない事実でございます。  それはなぜかと申しますと、わが国経済が、これまでわが国自体経済自立を達成しなければならないために、なりふりかまわずわが国自立本位やり方をやってまいりました結果、わが国経済援助各国から見ましてあるべき姿までいっていないということは、遺憾ながら認めなければならないと思うのであります。  しかし、わが国経済力も内外にわたって充実してまいりまして、しょっちゅう国際収支のピンチに襲われておりましたわが国も、国際的なバランスが大幅の黒字を記録するというふうな状況になってまいりましたので、今後わが国といたしましては、鋭意経済協力量質ともの改善をはかってまいりまして、国際的に指弾を受けることのないようにやってまいらなければいけないと思っておるわけでございます。  ただ、そういうことから申しますと、去年の援助実績というものが必ずしもそういう方向に動いていないじゃないかという御指摘が必ずあろうと思うのでございまして、去年は通貨調整その他の異変が国際経済界にありましたときでございまして、思うにまかせない年であったわけでございますけれども、今後わが国といたしましては、着実に量質ともの改善を施してまいらなければならぬ。その意味援助条件をソフトにする、あるいは援助をアンタイにする、あるいは政府援助を大幅にふやしてまいる、そういう方向に一段と努力を重ねていかなければならぬと考えておりますし、またそうやる実力がわが国にはついてきたと私ども考えておるわけでございます。
  7. 綿貫民輔

    綿貫委員 これは単に当委員会とか国内とかということだけではなしに、昨年の四月十四日に国連貿易開発会議におきまして、愛知日本政府首席代表が冒頭で演説をされまして、政府開発援助を国民総生産の〇・七%にすべしとの国際的目標を達成すべく最善の努力を払う意図を表明するものでありますという演説をしておられるわけであります。これはまさに国際的な発言でもあるわけでありまして、近くパリで開かれるところの審査会でもおそらくきびしい批判が生まれるものだと思います。そういう点、ただいま私が申し上げましたような点を謙虚におくみ取りいただきまして、今後努力をしていただきたいと思うわけであります。  ところで、ことしの四十八年度の予算を見てみますと、昨年対比二五・七%の経済協力費の増加ということで、千二百八十七億円を計上されておりますが、しかし、ただいまのGNPの伸びと比較いたしますと、これは四十七年度ではおそらくGNPは九十五兆円というふうに考えられますので、国連勧告の〇・七%といたしますと六千五百億円、DAC諸国の平均〇・三五%といたしましても三千三百億円ということで、現在のさらに三倍ぐらいの予算が組まれてもしかるべきだという結論になると思うわけであります。そういう意味で今後もぜひお考えをいただきたいのでありますが、特に最近餓死者が一千万人にも達するといわれます西アフリカの大飢饉に対しまして、外務省緊急援助四億円を支出する方針をきめながら、結局日本関係が薄いということで援助を取りやめたと聞いておりましたが、けさの閣議でこれを二億六千万円ということでおきめになったそうでありますし、まあおそまきながら——これは期限としてもおそらく六月七日ということになっておったと思いますが、こういう後手後手決定ということではほんとうの援助意味が薄れると思うわけであります。こういう点につきまして、外務大臣のお考えをお伺いいたしたいと思います。
  8. 大平正芳

    大平国務大臣 いま御指摘サハラ周辺地域六カ国、セネガルモーリタニアニジェールマリ上ボルタチャド、この六カ国は四年ほど前から干ばつ傾向が顕著になってきておりましたが、ことしはとりわけ数十年来かつて見ない干ばつだそうでございまして、数百万の住民、数百万の家畜が飢餓に瀕しておるという深刻な事態になっております。国連FAOはこの六カ国に調査団を派遣いたしまして被害状況調査いたしました結果、次期の収穫を保証するために種子をまず確保しよう、それから水を確保するために井戸掘り機材を調達しよう、それから家畜の飼料を確保するというようなことのために、先進各国資金拠出によりますサハラ地域信託基金千五百万ドルの設立をきめまして、わが国に対して協力要請をしてまいったわけでございます。わが国といたしましては、この協力要請を受けまして、さらにFAOに対しまして追加の資料を求める一方、在外公館からの被害状況も取り寄せまして、検討を重ねておりましたが、本日の閣議で御指摘のように二億六千万円の拠出を行なうことに御決定をいただいたわけでございます。今日までこの基金拠出をコミットいたしました国は、西独英国、オランダ、オーストラリア、スウェーデンの五カ国でございまして、日本が六番目の国になるわけでございます。金額的に申しますと、西独政府が百六万ドル、民間が二十一万ドルで、計百二十七万ドルが筆頭でございまして、英国が七十五万ドルでございまして、わが国は約百万ドルの拠出になるわけでございまして、西独に次ぐ第二位の拠出国になります。たいへんこれはおくれたような印象をお受けのようでございますけれども、われわれとしては決しておくれたとは考えていないわけでございます。それからまた、四億円を拠出することをきめておったが、財政当局等の反対で二億六千万円になったという事実はないわけでございまして、私どもは終始検討中でまいったわけでございます。四億円という数字がどこから出たか、私どもは全然関知していない数字でございます。そういう誤解がありといたしますならば、それは事実無根であるというように御了承をいただきたいと思います。
  9. 綿貫民輔

    綿貫委員 それでは、いろいろと援助内容に多少触れてみたいと思いますが、先ほどのアフリカはもちろん、現在世界的な食糧不足状況でありますが、インドネシア、パキスタンなどはわが国食糧援助というものを求めてきておるわけであります。これにつきまして昨年の実績とあわせて今年の計画を承りたいと思います。
  10. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 各国の昨年におきます世界的な天候不良に基づく食糧不足に伴いまして、各国からわが国に対しましてお米の援助要請が参りまして、そのおもなるものは、御指摘のようにインドネシア、それからバングラデシュ韓国等々でございます。これにつきまして、インドネシアにつきましては昨年の援助におきまして延べ払い、それからケネディラウンドによります援助を含めまして二十三万トンの援助をすでに約束しておりましたが、その後の作柄の悪いことによりまして、さらに十五万トンの援助要請がございまして、それにつきまして約束をすでに済ましておりまして、現在玄米を輸送しておる途中でございます。  韓国からも同じように米の作柄が悪いということで要請がございまして、これにつきましては、十万トンのお米をすでに約束して、現在輸送が行なわれていると承知しております。  それからバングラデシュにつきましても、いろいろ食糧不足ということがございましたので、先般のバングラデシュに対します援助国会議というのが三月の末、三月三十一日と四月一日にございましたが、その席上におきまして、これに対しましてもやはり十万トンだったと思いますが、米の援助約束してございます。  その他ケネディラウンドのワク内におきましても、各国にできる限りのお米を援助しておりますが、ことしの作柄がどういうふうになるか、天候の次第ということもございまして、各国ともかなり不安を持っております。特にインドネシアからは現在もまだ昨年同様の援助をほしいというような要請が参っておりますが、わが国の現在のお米の供給可能力が減っておるというようなこともございまして、現在いろいろとそのやり方等について苦慮しておる次第でございます。
  11. 綿貫民輔

    綿貫委員 食糧庁から総務部長がお見えになっておりますが、先般からもいろいろの委員会であなたに対する御質問が集中しておることも私はよく知っております。そこで、ただいま米を通じての海外からの経済援助要請が非常に強くなっておるのであります。現在、古米とか古古米というものがだぶついて、減反を中心農業政策が行なわれてきたわけでありますが、今後の農業政策の中で、米というものを国内需給だけに焦点を合わせておやりになるのか、あるいは海外援助をするという意味も含めた、さらにもっと余剰米をつくり出していくというところに焦点を合わせられるのか、この辺をひとつ御答弁願いたいと思います。
  12. 森整治

    森説明員 たいへん重要な問題でございますが、私ども、お米の問題は、まず国内自給体制をとるということをめどに努力をしておるわけでございます。そこで、全般的にはただいまの基本的な基調過剰基調ということで、今年度四十八年産の生産調整も二百五万トンという目標数量をきめまして、ただいま作付等指導をしておるわけでございます。したがいまして、基本的には国内の米を自給するという考え方で進めておるわけでございます。それがたまたま過去におきますように過剰になり国内でなお余るというものにつきまして、過剰米処理ということで海外援助あるいはえさに使うということで処理をしてまいっておるわけでございます。今後とも、基本的に考えますと、おそらく御質問の御趣旨は国内のお米を海外援助に向けるようにつくったらどうかということではなかろうかと思うのでございますが、いまのところ、政府が買いますお米がトン当たり約十五万円いたします。輸出をいたしますお米が大体五万円から六万円の間というふうに御了解いただければいいと思いますが、そういう差額を出してまで国内生産をいたしまして援助に向けるのがはたしていいものかどうかということ、それから一つは、東南アジアはやはりお米を中心農業生産を確立されていくのが筋であろうと思いますが、それらの国々から、いまは不足でございましても、過剰になった場合に、日本のお米でいろいろ問題をまた逆に起こす、その場合に、今度は国内輸出できないから、それではまた生産調整をするのだということになりますと、農政がまたぐらぐらする、こういうことに相なりまして、非常にむずかしい問題でございますが、われわれの事務的な段階では、いささか問題であろうという考え方を持っておる次第でございます。
  13. 綿貫民輔

    綿貫委員 一方で餓死者が出るような国がありながら、わが国ではいろいろ役所の会計上の問題で赤字が出るとか出ないとか、いわゆるそろばん主義と申しましょうか、そういうような形だけで政治が行なわれておるような気がするわけでありまして、もっと大所高所に立った意味での農業政策あるいはその他の政策が行なわれるべきだと考えるのでありますが、外務大臣は昨日インドネシア商工大臣とお会いになって、この問題について何かお話をなさったというふうに聞いておりますが、わが国ではお米が余るという時代はもう過ぎたのじゃないかという御発言があったのではないかということをちょっと聞いたのですが、この問題についてどういうふうにお考えでしょうか、お伺いしたいと思います。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど政府委員から御答弁申し上げましたとおり、きのうインドネシア側から前年どおり三十八万トンの援助を求めてまいったわけでございます。当方といたしましては、食糧当局相談の上検討してみるというお約束を申し上げたわけでございますが、いまのストックの状況から申しまして、こういう大量の援助要請に応ずることはより至難であると考えておるわけでございます。その場合、先方は、第三国から日本が買い付けて援助してくれるわけにまいらないかという御相談もあったわけでございますが、そのような米の輸出余力を持つ国があるのかないのか、またどれだけあるのか、またそういう国に対してわが国援助用の米を買い付ける必要があるかどうか、そういうことも問題でございますので、本件につきましては、政府部内で慎重にひとつ検討させていただきたいというようにいま考えております。
  15. 綿貫民輔

    綿貫委員 それでは、これまでしばしば問題になっております東南アジアの中でも悲惨な戦火にまみれたベトナム援助につきまして、その後どのようにお考えになっておりますか。特に北ベトナムに対しまして援助計画があるのかどうか、これについて外務大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  16. 大平正芳

    大平国務大臣 国会を通じて、インドシナ問題につきまして政府のよるべき基本の原則は、ハリ協定を踏まえた上で当たってまいる、つまり、パリ協定が誠実に順守されるということが必要ではないかということが第一でございます。第二は、ベトナムにつきまして、南北を問わずベトナム全域を対象として援助考えたいということを第二に申し上げたわけでございます。第三は、その援助やり方でございますが、これは援助を受ける国々の意向を考えなければなりませんので、日本援助を押し売りするというような態度はとるべきではないと考えておるわけでございます。  そういう考え方に沿いまして、ただいままでやりましたことは、第一は、国際赤十字社を通じまして五億円の緊急人道援助をいたしたわけでございます。これは国際赤十字社機構処理ができるベトナム全域にわたって、国際赤十字社の判断で緊急援助が施行されておるとわれわれは信頼いたしておるわけでございます。  それから第二に、ただいままでお話がある問題といたしましては、南越から、とりあえずたくさんの軍隊を除隊された方々に職を与えなければならぬし、そういう人たち生産活動に移るにあたりまして、橋をかけたり道路をつくったり、あるいはとりあえずの住まいをつくったりする意味におきましての緊急援助ということを各国に働きかけておるので、日本のほうも考えてくれないかという要請がございます。本件につきましては、私どもといたしまして各国と協力してそういうことに当たることにやぶさかでないわけでありますけれども、これは南越だけというわけにはまいりませんで、南越にやるにいたしましても、北越のほうにもオープンにしておく必要がありはしないかというように申しておるわけでございます。北越側がこれに対してまだ具体的な要請はよこしておりませんけれども北越は、私どもがいままで受けた感触は、そういう多国間ベースによる援助に対してはまだ十分信頼を持っていないようでございまして、二国間ベースであればという気持ちが依然強いように思うわけでございます。したがって、南越北越を一緒にした援助の仕組みというのはなかなか考えにくいのじゃないかといまのところ考えておるわけでございまして、具体的な要請がありました場合に、受け入れ国側考え方もよく聞いた上で、他の地域に対する援助等バランスも見ながら検討していきたいと考えております。  それから第三の問題といたしまして、将来大きな開発援助、前向きに経済を進めていく場合の開発援助というようなことにつきましては、国連でも研究しておるようでございますし、世銀でも検討いたしておるようでございますけれども、まだ本格的な材料もございませんし、日本政府としてどういう方法でどの程度おつき合いができるかというような段階まで至っていないわけでございます。
  17. 綿貫民輔

    綿貫委員 それでは最後に、最近平和部隊の一員としてタイに農業指導者として従事する青年に会ったのでありますが、非常に憤慨しておりました。それは、末端において土地改良事業指導しておるのでありますけれども、せっかく計画を立てて、いざ実施ということになりますと、肝心の援助費計画どおりこない、どこにいったかわからない、こういうような不明朗な形で援助費が流れておるのではないかということを言っておるのでありますが、こういうようなケースがしばしば指摘されておるようであります。せっかくの海外援助が有効適切な結果を生まないということが多いのじゃないかと思います。こういう意味におきまして政府はどのようにこれをチェックしておられるのか、これをひとつ簡単に御説明願いたいと思います。
  18. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 御指摘のようなケースそのものについては私まだよく存じておりませんが、わが国の出しております援助末端においてあまりはっきりしない形で使われていやしないかという点は、わが国といたしましても常に関心を持っておるところでございます。したがいまして、各種の方法でそれをチェックしておりますが、たとえば、わが国が実施しておりますプロジェクトについて、それぞれ効果の測定とか調査をいたしまして、それが現実にどういうふうに働いておるか、もしまた悪い点があれば、不十分な点があれば、どういう点を直したらいいかというような点は常常チェックして是正につとめておりますので、御指摘のようなケースがあったといたしましたならば、さっそく調査いたしまして改善につとめてまいりたいというふうに存じております。
  19. 綿貫民輔

    綿貫委員 それでは終わります。
  20. 宇都宮徳馬

  21. 芳賀貢

    芳賀委員 大平外務大臣にお尋ねいたします。  まず第一に、西アフリカ六カ国の大飢饉に対する日本としての緊急援助の問題でありますが、モーリタニアマリセネガルニジェールオートボルタチャド、この西アフリカ六カ国は御承知のとおりサハラ砂漠の南縁に位置する諸国であって、これは以前仏領植民地国家ということになっておったわけでありますが、いずれも一九五九年前後にこの六カ国は独立をしておるわけであります。たまたま今回、国連食糧農業機構である通商FAOの本部から加盟諸国に対しまして、特に日本FAO理事会のメンバーになっておるわけでありますので、FAOとしては五月十日付で加盟諸国に対しまして、この西アフリカ六カ国の大飢謹に対して緊急援助要請してきたわけであります。その中で、この西アフリカ地域は、特に六月中旬から雨期に入って、食糧援助その他の物資の輸送が困難になるので、できる限り四週間以内に総額で一千五百万ドルの緊急援助を、行ないたいという内容を付した要請が来ておるわけです。ところが日本の場合は、四週間以内ということになれば、大体六月の七日ごろまでが要請期間ということになるわけでありますが、この緊急援助に対して非常に取り扱い方針が今日まで遅延しておるということは、これは国際間の信義の上から見ても問題があると思うわけです。われわれの承知した範囲においては、外務省においてはいち早くこの問題に積極的に取り組んで、外務省方針としてはおおよそ百六十万ドル相当の緊急援助をする方針を固めて大蔵当局と協議をしたところが、その段階で大蔵省のほうは非常にこれに消極的な態度を示して、そのために緊急援助が今日まで遅延したということになるわけです。先ほど外務大臣から、けさの定例閣議を通じておおよそ百万ドルの緊急援助をすることを決定したというお話がありましたが、なぜこうした緊急を要する援助に対して決定が遅延しておったかという内部的な事情、あるいはまた大蔵省が反対の理由として示したという、西アフリカ諸国日本の場合とは非常に遠隔の地であると同時に、日本との関係は希薄ではないか、この地域はサハラ砂漠に近接しておるわけであって、毎年干ばつが起きることは当然である。そのたびごとにヨーロッパ諸国に追随して援助をするなんという必要は、それほど重要ではないのではないか、というような大蔵当局の非常に消極的な意見というものが世上に伝わっておったわけであります。国民としても、いまの田中内閣が、この六カ国で約六百万人の人間が餓死寸前に置かれておるようなその窮状というものを見過ごしてよいのかというようなきびしい批判が当然あるわけでありますからして、これに対する政府を代表した大平外務大臣の明確な方針をこの際示してもらいたいと思います。
  22. 大平正芳

    大平国務大臣 サハラ周辺地域干ばつ状況が深刻であることは、芳賀委員の御指摘のとおりでございます。FAOといたしましては、今後四週間に必要な現金千五百万ドルを見積もりまして、四週間以内に拠出期待してきたことでございますが、この期間は必ずしも私ども厳格なものではなく、あくまでも一つの目途であると承知しておるわけでございます。五月十日にFAOが、サハラ地域信託基金の設立をきめまして、同日付の電報でわが国援助要請がございました。この地域は、わが国といたしましてはセネガルと象牙海岸大使館両方が管轄いたしておるところでございまして、さっそく両大使館に被害状況の報告を求めたわけでございますが、必ずしもこれは十分とは思えませんでしたので、FAOのほうに調査報告書の送付をさらに依頼いたしまして、五月末にこれを受領いたしたわけでございます。そして三十日、FAO当局に対しまして、事態の重要性にかんがみ、わが国といたしましても本件基金拠出についてこれを行なう用意がある旨を通報いたしまして、そして本日の閣議経済開発等援助費外務省に十億円計上いたしてありますが、その中から二億六千万円充当することに御決定をいただいたわけでございます。これは、先ほども御報告申し上げましたように、六番目の名乗りでありまして、決して私はおそいとは考えていないわけでございますし、また金額のバランスから申しましても、西独に次ぐ金額でございまして、決して恥ずかしくない金額であると承知いたしております。
  23. 芳賀貢

    芳賀委員 この際、大蔵省当局から、この問題に対する遅延した経過、特に大蔵当局が西アフリカ飢饉に対して緊急援助を行なうことに難色を示した理由等について説明してもらいたいと思います。
  24. 長岡實

    ○長岡政府委員 お答え申し上げます。ただいま外務大臣からもお話がありましたように、この問題につきまして、別に外務省と大蔵省との間で金額その他につきまして意見の対立があり、そのために遅延したという事実はございません。私ども海外の特に災害等に対する緊急援助に対しては、その必要性は十分認識しておるつもりでございます。そういうような角度から従来も、世界各国で災害があれば、予備費等により援助の措置を講じてまいっておりますが特に予備費の場合、緊急に対処するといたしましても、手続等に若干の時日を要するというようなことから、すでに四十八年度予算の中に、海外の災害に対する緊急援助等のためにある程度の金額を計上いたしておりまして、迅速、適確に対処していくような体制をとることにつきまして、外務省と協力してやってまいるつもりでございます。  芳賀先生の御質問の基礎にございます新聞紙上に報道せられました大蔵省の西アフリカ飢謹救助に対する考え方と申しますか、そういうような点につきまして、この席を拝借いたしまして私から一言釈明をさせていただきます。  担当官のところへ毎日新聞の記者の方から取材がございましたのは、電話を通じて御取材があったようでございます。そのときに、実ははっきり申しまして、まだ幾らの援助をするかというようなところまでは外務省と大蔵省との間で交渉が始まっていない段階であったと聞いておりますが、取材に当たられた記者の、もうすでにヨーロッパの相当の国では大量の援助をきめておる、聞くところによると、これは非常に緊急を要する問題だというのに、日本は一体どうして早く結論を出さないのだという御質問に対しまして、まあ担当者の説明が不十分であったか、あるいは不穏当な表現があったか、その点は私どもも遺憾に存じておりますが、ヨーロッパの諸国とアフリカとの関係と、日本とアフリカとの関係というのは、歴史的にも地理的にも、また過去の経済的な関係からいっても、若干違うのではないだろうかということ、ですから、ヨーロッパの先進国が緊急に大量の援助をきめたからといって、日本も直ちに同じような態度をとらなければならないということはないのではないかという趣旨のことを言ったようでございます。ただ、その裏には、たとえば、アフリカと東南アジアとを比較することは私は適切ではないと思いますけれども日本の非常に近くにあります東南アジア諸国でこういう事態が起こった場合に、たとえヨーロッパの諸国がまだ態度を決定しない場合でも、日本としては率先して相当程度援助をすべきであろうというような考え方を彼が持っておって、それが新聞紙上に報道せられたような形で伝わったように私は聞いております。そういうことが結果として、とにかく大蔵省といいますか、あるいは日本政府西アフリカ飢饉に対して非常に冷たい態度をとっておるというような印象を与えたといたしますれば、まことに申しわけないことだと考えております。
  25. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、大蔵省の外務省担当の主計局主査の池田君なる人物が、いま主計局次長の言われたような趣旨の発言をしたということは事実なんですね。
  26. 長岡實

    ○長岡政府委員 ただいま私が申し上げたような趣旨のことを、取材に当たられた記者に対して電話でお話を申し上げたようでございます。
  27. 芳賀貢

    芳賀委員 この点は、いみじくも大蔵省当局の姿勢といいますか、いまの田中自民党内閣の経済合理主義的な政治姿勢というものが端的に表現されておると私は受け取っておるわけです。すなわち、その池田主計局主査なる者の発言は二点でして、第一は、西アフリカ地域日本関係の薄い国である、これは経済的な交流等が希薄である、したがって日本とは経済的な利害が非常に希薄であるということを言っておられるわけです。もう一つは、地理的の関係で言っておるわけと思いますが、西アフリカ干ばつは毎年のことであるから、欧米が援助するからといって日本としてその必要は薄いではないか、この二点が報道されておるわけでありますが、主計局次長としてもこれは認めておるところと思いますが、いかがですか。
  28. 長岡實

    ○長岡政府委員 お答え申し上げます。災害等に対します緊急援助につきまして、私ども別に従来のわが国と当該国との関係経済的に密接であるとかないとかいうことから判断すべきではないと考えております。本人がそのように申しましたかどうかというのは、実は私は本人からの報告を聞いておるわけでございまして、取材に当たられました記者の方には当然それだけの御言い分もあろうかと思いますので、どちらがどのように表現したかということにつきまして的確にお答えする立場に私はございませんけれども、気持ちとしてそれほど、何か大蔵省が経済協力全般、国際協力的な経費の支出につきまして、経済関係を非常に重視しておるというようなことで、私ども常日ごろ主計官、主査と議論いたします際に、それが一つの判断の基準であるというようなことで対処はしていないつもりでございます。また、西アフリカは毎年常襲的に飢饉に襲われるのであるから、それに対して援助するのは無意味であるというようなことも、本人としても申し上げたつもりはないと言っておりますし、私どもも当然、そのような国際的に災害等にあって困っておられる地域の方を援助する場合に、常襲的であるとか、あるいは地理的に離れておるとかいうようなことで判断をすべきではないと考えております。  ただ、一つ非常にむずかしい問題がございまして、経済援助あるいは経済協力と申しますか、そういうような場合の金額の判定はたいへんむずかしいわけでございます。御要求の積算の基礎がはっきりいたしておりまして、それがたとえば各国国連の分担金の比率等によって、国力に応じて応分の負担をするというような方針があらかじめきまっております場合には、これは答えは直ちに出るわけでございますけれども、そうでない場合に、一体わが国としてどれだけの分担をすべきかという判断はたいへんむずかしい問題でございまして、結局わが国の国力、経済力に相応した金額であって、しかも同様にそのプロジェクトに関与いたします関係諸国とのバランス等も見ながら考えていくということにならざるを得ないわけでございます。  池田主査が申しましたのは、先ほど私からも申し上げましたように、非常に早く結論を出すように迫られている場合に、これは理屈よりはむしろ感情論ではございましょうが、たとえば東南アジアのように非常に身近にそういう問題が起きている場合であれば、わが国としては、ほかの先進国の金額の決定を待たずに、率先して意思表示をすべきであろうというようなことを申し上げたのではないかと考えております。
  29. 芳賀貢

    芳賀委員 この際、外務大臣に申し上げますが、田中内閣のもとにおいては大平外務大臣は、外交はすべておまえさんにまかせると田中首相に言われておるというふうに世上伝わっておるわけです。少なくとも内閣の外交担当の責任者である外務大臣が、最も緊急を要する人道上の緊急援助に対して、事態を遷延させ、しかもあなたの出身の大蔵省の事務官僚に押えつけられて、そうしてせっかくの血の通った援助決定日本の場合には非常に遅延しておるという点を、今後の日本の外交を担当する大平外務大臣としても十分反省をする必要があると私は考えるわけです。単にこれは当面する緊急事態を取り上げて申し上げたわけでありますが、従来日本の場合は、国連の総会あるいは国際会議のそれぞれの場において、日本としては国際的な経済協力についてはGNPの一%を目標にする、あるいは経済援助については〇・七%を実行目標にするということを公言しておるわけです。それなのに、ほんとうに人道的な立場に立って熱意をもってこれに取り組むという純粋な外交展開というものがなされておらぬことは、非常にこれは残念なことでありますが、これに対する外務大臣の御所見を聞かせてもらいたいと思います。
  30. 大平正芳

    大平国務大臣 外交もいわば国際社会のおつき合いでございまして、わが国の国力、国情にふさわしいおつき合いをして、しかもそれが世界各国から見ましてもっともだというようなところにおっつけてまいるということが私の任務ではないかと思っております。いま御指摘のございました、さっき綿貫さんからも御指摘がございましたが、経済援助経済協力の分野におきまして、非常に足らないところがまだある、これは歴然といたしておると思うのでございまして、これは、わが国がこれまで、先ほど私が申し上げましたように経済自立に専念をいたしまして、そういう方面に十分な配慮を加えるいとまがなかった、余裕がなかったというような事情も一部にあったと思うわけでございますけれども、今日わが国といたしましては、ともかくも国際的なおつき合いをする場合におきまして、経済力の上から申しましての制約というものが内外にわたって非常に少なくなってきたということは非常にしあわせな事情だと思っております。同時に、財政当局といたしましてもそういうことに対して漸次理解が深まってきていただいておりますことも歓迎すべき傾向だと思っておりますが、しかし、これをもって十分とは言えないわけでございまして、鋭意努力いたしまして、国際的に指弾を受けないように、国際的な理解を得られるだけの量質ともの協力というものを打ち出してまいりたいと考えております。  それから第二は、時期の問題でございますが、芳賀委員の御指摘のように、時期を失することのないように、鉄は赤きうちに打たなければならぬわけでございまして、その点につきましては、頂門の一針として、私といたしましても時期を失しないような配慮を今後十分加えてまいりたいと思います。
  31. 芳賀貢

    芳賀委員 この際、特に海外に対する食糧援助の問題について尋ねておきたいと思います。  一つは、一九六七年のいわゆるケネディラウンドに基づいた国際穀物協定に付随する食糧援助協定、さらにまた一九七一年の国際小麦協定の締結に基づくこれも食糧援助の協定が持続的に実行に入っておるわけでございますが、このKR援助といわれる食糧援助日本として行なった実績、それから七一年の食糧援助委員会規約に基づく援助実績等について、特に内容を区分して、日本国内生産された米の援助輸出並びに海外の米穀、穀類を購入して援助したその内容についても、具体的な説明をしてもらいたいと思います。
  32. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 いわゆるケネディラウンドに基づきますわが国食糧援助でございますが、これは毎年、四十三年の七月から三年間にわたって年間一千四百三十万ドル、それからさらに四十六年の七月から三年にわたってそれぞれ同じ額を供与するということになっておりまして、過去におきまして毎年毎年その約束に基づきまして供与してまいっておりますが、その実績は、まず最初にはラオスに対しまして四十三年の十二月に五十万ドル、これはタイ米と農業物資でございます。それから四十四年の一月に中東三国に対しまして三万ドル、これはスペイン米でございます。アフガニスタンに四十四年十月、これは農業物資。インドネシアに対しましては四十四年の十月に五百万ドル、日本米、タイ米その他の物資。セイロンに四十四年の十一月に五十万ドル。ラオスに同じく十二月に七十万ドル、続きまして同じラオスに四十五年一月に五十万ドル、タイ米でございます。それからインドネシアに対しまして、二回目でございますが一千万ドルを四十五年一月に約束しておりまして、これは日本米、タイ米、農業物資でございます。韓国につきまして四十五年の三月に百十万ドル、日本米。ベトナム、四十五年六月に農業物資。それからUNRWAと申しまして、国連のパレスチナの救済機関でございますが、これにお米を四十五年の六月に日本米。インドネシア、第三回目で四十五年の八月には一千万ドル、日本米とタイ米、その他こまかいこともございますが、インドネシア、第四回目に四十六年にまた一千万ドル、これも日本米、タイ米等でございます。相当こまかくなりますので、その他ずっと参りまして四十八年に参りますと、現在までに約束が済みましたのは四十八年の一月にニカラグアに、これは震災のためでございますが三十万ドル、小麦粉。バングラデシュに、先ほどもちょっと触れましたが、四十八年の一月には二百万ドルの日本米、ネパールに対しまして四十八年二月に二十五万ドルの農業物資、マダガスカルに四十八年の四月に三十万ドルの日本米ということで、今後の計画といたしましては、ことしの分の千四百三十万ドルの割り当ての問題があるわけでございますが、これはインドネシアが一番大きくて八百万ドル、これはおそらく日本米以外のお米、それから先ほどのUNRWA、国連の機関に対しまして、これもお米、その他ガーナとか、それからフィリピンとか、バングラデシュとか、アフガニスタンというようなところにことしの割り当てるべき予定をしておりますが、これらは今後先方とも話し合いを続けなければいけないという状況でございます。
  33. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいまの説明については、時間の関係もあるので、委員長にお願いしますが、政府側において資料を整備して後刻提出してもらいたいと思う。その際、あわせて昭和四十五年第六十三国会において、外国政府等に対する米穀の売渡しに関する暫定措置法案を私ども審議して成立させておるわけでして、この法律に基づく国産米の海外売り渡し等の内容についても、同時に資料を提出してもらいたいと思います。  最後に一点外務大臣にお尋ねします。  先ほども触れましたが、ことしの三月の早々にFAOの事務局長のパーマ氏が来日して、約一週間滞在しておったわけです。その際、世界の一九七〇年代における、あるいは将来にわたっての食糧、農業事情というものを具体的に日本政府についても伝えてあると思うわけであります。その中で特徴的な問題としては、日本が現在まで行なっておる国内における米の生産調整、いわゆる過剰米と称して在庫の減少につとめておるが、いま世界の食糧事情というものは、それぞれの国家が自国内食糧の自給政策だけに限定した政策を行なう時期ではない、むしろ世界的にFAO中心にして、食糧生産の余力のある国家においては、世界的な備蓄機構を実施する、そういう目標に協力して、日本においてもすみやかに国内における米の生産調整政策というものを再検討して、そうして国連食糧増産の協力をしてもらいたい、こういう要請が行なわれておるわけであります。それからもう一つは、従来日本海外協力、海外援助というものは、とかく二国間方式に限定されておるが、そういうことになると、どうしてもひもつき援助ということになるので、そういうことでなくて、やはり多国間の協力、国連機構等に対して積極的に協力するというような、そういう協力態度の変更というものが必要であるというような点を示唆して帰っておるわけでありますが、これは非常に重要な指摘であるというふうに考えるわけであります。外務省においても、たとえばFAOには日本の代表部がありまして、公使を派遣しておるわけでありますから、世界的な食糧、農業事情等については、外務省機構の中で相当正確なものが掌握されておると思うわけであります。したがって、日本の場合においても、経済大国と政府は自慢しておるわけでありますけれども、やはり世界人類の共同の福祉の上に立って、日本として何を可能として何を協力するかというような点についても、具体的な路線を設定して、十分国際間の信用あるいは信頼が高まるための努力を必要とするときであると私は考えておるわけでありますが、これに対する政府としての方針を明らかにしてもらって、質問を終わりたいと思います。
  34. 大平正芳

    大平国務大臣 御指摘の点はたいへん重要な課題であると存じます。長い先の展望に立ちまして、人口がふえて、はたして人類が摂取するカロリーを満たし得るかどうかという課題は、すでに久しく問われておる課題でございまして、この問題はしばらくおくといたしましても、最近の天候異変等にからんで食糧の需給が予想しない乱れを見ており、それがひいて世界経済の大きな撹乱要因になっておりますことを私どもも十分警戒して当たらなければならぬ事態であると考えております。さらに、後進国ないしは開発途上国が工業化を急いで農業生産を閑却してまいりますと、これは決して工業化自体も実らないことになる基本的な課題であると思うのであります。したがって、ことしの四月に東京で開かれましたエカフェの総会におきまして、私は日本政府の代表といたしまして、アジア地域においてとりわけ農業生産基盤の充実をはかることが当面の一番大事な急務じゃないかということを提唱いたしまして、各国の共感を得られたと思っております。私ども経済協力をやる場合におきまして、先方の政策を尊重しなければならぬことは当然でございますけれども、同時に、その政策がほんとうにその地域の真の自立安定に役立つかという角度から見る場合、その国の農業生産力がどうであるかということはどうしても考えなければならぬ課題でございますので、われわれ経済協力を重点といたしまして、農業関係のプロジェクトに重点を置いていくということが必要であろうと考えまして、現実のプロジェクトの選択にあたりましても、そういう考え方でいま各国で御相談をいたしておる段階でございます。資源問題と並びまして食糧問題というものが今後の世界の命運にとりまして決定的な問題であるばかりでなく、外交上の課題といたしましても非常に緊張を呼ぶ問題になってきておりますので、十分の検討を加えて、誤りないようにやっていかなければならぬと考えております。
  35. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 原茂君。
  36. 原茂

    ○原(茂)委員 本来、決算委員会における外務大臣への質問がめったにないものですから、広範にわたった質問をと考えましたが、その時間がありません。最初に外交一般に関して少し意見をい聞きして、後に二、三の問題に分けてお伺いをいたしますが、どうしてもさらりとお伺いする以外にないようであります。大臣からもさらりと御答弁をちょうだいして、また必要があれば他の機会に譲りたい、かように思います。  第一に、現在の状況についてですが、ニクソン訪中、あるいは朝鮮の祖国統一への努力、また日中国交回復があり、そしてベトナム和平協定の調印が進み、昨年末のアジアと日本との間の情勢の進展、あるいは武力対立なり反共の冷戦体制というものを国際的に見ました場合、明らかにそれが否定される、あるいは崩壊する、こういう段階で、したがって、緊張緩和と平和共存というような国際体制がいま樹立され始めている。当然そうなければいけないわけでありますが、そういう状況の中で、第二次世界大戦以来一貫して日米安保体制のもとに反共と冷戦の政策をとり続けてきたのが日本だと思うのでありますが、この日本外交のあり方というものがその意味においてはいま問われているときだ、今後どう改むべきかが国際的に見直される時期が来ている、こう考えるわけであります。しかし、自民党、日本政府というのは、内外世論と情勢の急変に押されていながらも、わずかに日中復交をやったことはやりましたけれども、しかし、朝鮮なりベトナムなりあるいは台湾など、こういう諸国に対する政策というものは依然として従来の安保体制のワクの中にとどまっている、そうして処理がされているというように考えられてならないわけであります。日中間の実務協定なり、あるいはベトナムとの経済協力なり、または日ソ平和条約交渉などを考えましたときに、日本国民の利益にかかわる重要な幾多の問題に対処するにあたりまして、日本国民が求めておりますものは、端的に申しまして、日米安保条約は廃棄してもらいたい、そしてすべての国と平和五原則に基づく平和共存と中立の外交へ転換をしてもらいたい、日本外交を根本的にその意味における立て直しをやってもらいたい、これが国民がいま庶幾している外交基本政策であろうと思うのであります。  そこで、お伺いをしたいのですが、第一に、すでに新聞紙上に明らかなように、田中首相が何か、現在国内に問題が山積をしているにもかかわらず、七月訪米あるいは九月後半訪ソ、訪欧というようなものを予定しておられるそうですが、田中首相は一体どういう基本的な姿勢をもってこれから一連の外遊をやろうとしておるのだろうか、前段申し上げましたことと照らし合わせまして、首相に思い切った外交の転換に対する基本的な思想というものがおありになって一連の外遊をやろうとされるのかどうか、この点、外務大臣からお伺いをしたいと思います。
  37. 大平正芳

    大平国務大臣 原さんの御指摘のとおり、世界が冷戦的な対立の状況から平和的な共存の方向に向かっておりますことは、私も同様に見ておるわけでございます。問題は、そういう平和共存体制をつくり上げていく場合に、既存のワク組みを一挙に改廃してしまうか、それともそういう既存のワク組みというものを新しい事態の中で消化し、位づけを誤りないようにやりながら手がたく平和共存の基礎固めをやってまいるか、方法論として二つあると思うのであります。ヨーロッパ各国も、御承知のように、ワルシャワにいたしましてもNATOにいたしましても、既存のワク組みを急いで改廃しようとする動きはないばかりか、むしろ現状をそのまま固定した上で、しんぼう強く、平和共存体制というものを定着させていく上におきまして何をしたらいいか、何をしたら悪いか、そういう手がたいアプローチをとっておるように私は思うのであります。アジアにおきましては、ヨーロッパほどまだ事態が定着化いたしていない場合でございますので、なおさら慎重な態度が望まれるのではないかというのが政府がいまとっておる姿勢でございます。しかし、それとても、平和共存体制を打ち立てていく場合のじゃまになる、つまずきの石になるということでございますならば、これはよほど反省せねばならぬと思うのでありまするけれども、一九五六年の日ソの国交再開にいたしましても、去年の日中国交正常化にいたしましても、そういう既存のワク組みというものは少なくともじゃまにならなかったとわれわれは考えておるわけでございます。したがって、安保体制の早急な廃棄というようなことにつきましては、遺憾ながら原さんと私との間には若干意見の違いがありますことをあらかじめお含みおき願いたいと思うのであります。  それから第二に、田中総理の外国訪問の問題でございます。これは、私として田中総理にお願いをいたしましたのは、いまの時代は首脳外交の時代であろうというように私は思うのであります。最近も、御案内のように、ヨーロッパ各国の首脳相互間はもとよりでありますけれども、欧米あるいは米ソ等の首脳間の往来がたいへんしげくなってきておるわけであります。交通、通信が便利になりました今日、世界社会の中で民族を率いて立っておる最高首脳の方々がしょっちゅう会って意見の交換を遂げるということは何にも増して大事なことだと思っておるわけでありまして、とりわけ米国、中国、ソ連、欧州、東南アジア等につきましては、国内にいろいろな問題をかかえておられる総理でございますけれども、できるだけ時間をさいていだだきまして首脳間の接触を持っていただきたいと考えております。  さらに、この総理の外国訪問というものは、特定の成果をねらってやるというようには必ずしも総理も私も考えていないわけでございまして、会うということ、そうして共通の関心の問題につきましてフランクに話し合うということが非常に大事だと考えておるわけでございまして、フランクな意見の交換の中で、それぞれの国と日本との間柄について検討を加え、バランスシートを点検してもらって、改善すべきものにつきましては改善を施していくということでよろしいのではないかと思っておるわけでございまして、この総理の訪問によって何か胸のすくような成果が期待できるなどというほど幻想を抱いていないつもりでございます。内政上いろいろ問題があることは重々承知でございますけれども、その間わずかの時間をどうしても割愛していただかなければならぬという趣旨で出旅をお願いしておるのが私の立場でございます。
  38. 原茂

    ○原(茂)委員 外交にはおよそ先見性というのが必要だと思うのです。日本の外交を見ていますと、やはり国際情勢に押され押され、それに後手後手と対応していくという外交に現在のところ終始しているように思えてならないのです。田中首相がおいでになるという以上は、当然そこに世界平和、あるいは日本の国益というものを基本に据えながら、一体、アメリカに対しあるいはソ連に対しその他ヨーロッパ諸国に対してどのような首脳外交を展開しようか。ただフランクに、何も用意なしに、急激な成果を期待しないで、ばく然と行った帰りにとんでもないおみやげを逆にしょわされてくるような過去の幾多の例をわれわれは憂えているわけでありまして、田中首相がおいでになるからには、やはり外交的な世界の転換期におけるわが国の国益を中心に、世界の平和を中心に、今後どうあるべきかを基本的にしっかりと踏まえた上で、最近はやりの、必要であろうと思うこの首脳外交に臨んでいただく。その結果するところが、なるほど国民全体が見ても、われわれのために、日本の国のために、世界の平和のためにこれだけの成果をあげてこられたということが、具体的に明瞭に国民の前に展示できるような、そういうものでなければ、一国の総理がただフランクに、あまり急激なものを期待しないというだけの外遊というのでは、私は、この際国民の納得がいかないだろうと思いますし、われわれの立場からも、逆に変なおみやげなどをしょわされることはないだろうか、こういう心配を実はいたしておるわけであります。  したがって、外交問題では中心的に輔弼をされております外務大臣としては、田中総理の外遊に対しては、もう少しく、いま私が申し上げましたようなことも配慮され、十全の準備をされた上で、かつて七二年五月ですか、ソビエトと西ドイツ、これが首脳会談を行なう、交渉を行なうというようなことが行なわれると、その翌日にたいへん有益な独ソ間の経済協定が結ばれ、その翌日、またそれに類した協定が締結をされていくということが、具体的に国民の目にも、なるほど首脳会談の後にこうしたことが現実の姿となってあらわれた。それほど性急なものでなくてもけっこうですが、やはりニクソンの訪中なりニクソンの訪ソなりを通じて、今日なるほどあのときにすでに約束されたものか、あるいは首脳外交として了解に達したものか。つい先ごろ発表されましたような一つの例で言いますなら、ヤクーツクにおける天然ガスの開発の問題の協定がされてみたり、何か時間がたってでも首脳会談の成果というものがきちっと国民の前に目に見えてくるということが外交、特に首脳外交にとっては非常に大事なものだと思いますので、こういう点は、外務大臣の立場で、いまおっしゃったようなことだけではないと思いますが、私の意も含めた十全の準備をした上で、行くなら行くで総理の外遊の成果というものをぴちっと外務大臣としては踏まえた上で、できるだけの協力をしていただくようにお願いしたい。  二つ目にお伺いしたいのは、外務大臣が今月の四日でございましたか、日本国際問題研究所で講演をなさっておられます。その講演の中で、アジアはいま「不安定な状態が固まりかける兆しを見せているところだ。」こう述べたくだりがあるのですが、なるほどある意味でわれわれが憶測できないでもありません。しかし、これは非常にもことしております。一体、アジアは「不安な状態が固まりかける兆しを見せているところだ。」というこの講演をなさった外務大臣の意中、これはたとえばどこの地域をさしておいでになるのか、そしてそのことが望ましいことなのかどうかという点を二つ目にお聞かせ願いたい。
  39. 大平正芳

    大平国務大臣 もともとアジアは非常に不安定で、貧困で、病気が多くて、しかも宗教、信条、たいへん多彩なところでございまして、たいへんまとまりのしにくい広範な地域でございまして、アジア問題というのは、われわれにとっても世界にとってもたいへんな問題であると思うのでありますが、最近のアジアの情勢は不安定からやや固まる萌芽を見つつあるというような意味のことを申し上げたわけでございます。  それは何を頭に置いて言ったかと申しますと、一つにはベトナム問題でございます。ベトナムは一応、当事国をはじめ関係国の努力によりまして、パリ協定というものをつくり上げて、撃ち合いをやめることになったことはそのきざしの一つでございます。しかしながら、これがほんとうの定着にいまなっておるかというと、御案内のように、ベトナム自体におきましてもまだ協定違反の事実が踵を接してあとを断ちませんし、ラオス、カンボジアの事態はまだおさまっていないわけでございまして、また流動的であるといわなければなりませんけれども、しかし、もう一度それではもとの姿に返るかというと、もう返らないだろう。大きな意味の武力衝突というようなことは考えられない状態になってきつつあることは、確かに一つの緊張緩和への芽ばえがあそこに出てきたということでございますし、私の見るところ、アメリカもソ連も中国も、その他アジアの諸国民も、それから大きくいって世界の諸国民も、これ以上にアジアが紛争地帯になることを望んでいないと思うのでありまして、国際世論も、この緊張緩和の方向に定着化の度合いを高めてまいることを希望しているように見受けられるわけでございます。  朝鮮問題は、われわれにとって非常に大きな隣国の問題でございまして、従来対話のない対立という状態がずっと続いてきておったわけでございますが、いまのところ、去年の七月四日に対話の道が開かれた。しかし、それじゃ対話の道が開かれたから、直ちにあそこに標榜しておりますように平和的、自主的な統一への歩武が着実に進展しておるかというと、そういうものは見られないわけでございます。しかし、話し合おう、同じテーブルにつくということは少なくともできたわけでございまして、これとてもこれから先長い過程を必要とする問題であると思うのでございますけれども、そういう機運が出てきたことは歓迎すべきことではないかと考えておるわけであります。  一方、アメリカがポストベトナム状況に照らしてどのようなアジア政策を展開しようとするのかということは、まだ十分さだかではございません。この点は十分アメリカの意向もただしてみなければならぬし、われわれがこれに対して対応する姿勢を十分考えていかなければならぬと考えておるのでございますけれども、少なくともワン・モア・ベトナム考えていないのじゃないかということだけは最小限度言えることだろうと思うのでありまして、ようやくきざしが見えかけたこのきざしを大事にいたしまして、定着化の方向にどうして持っていくかが、アジアにとっても世界にとっても最大の課題ではないかと考えております。
  40. 原茂

    ○原(茂)委員 ものの言い方というものはむずかしいものでして、大臣の講演されたのを新聞で見る限りでは、「アジアは欧州のように緊張緩和が定着し始めているとはいえず、不安定な状態が固まりかける兆しを見せているところだ。」どっちにもとれるのです。逆に何かたいへん不安定な状況のほうへ固まっていきそうなといったふうにもとれるわけです。大臣のおっしゃることでわかりましたけれども、確かにそのとおりだとは思います。思いますが、日本の外交という立場を考えたときは、朝鮮なりあるいはベトナムなり、欧米はあとにいたしましても、こうした、まだまだ安定、固定という状態になっていないというときであればあるほどに、日本の平和なり国益を考えたときに、やはりもっと積極的な姿勢で安定と平和という方向に朝鮮なりベトナムを導くような、いわゆる外交的な積極的な努力というものが、とにかく世界第幾つかの大国だといわれるような日本であればあるほど、アジアにおける日本の責任というものは相当重大になってきているわけですから、もっと積極的に努力すべき何かがあるだろうと思うのであります。そういう点がどうも見えてないという点、時間がどうもないようですから、あとこまかく各国別にそのことの論議ができないようですが、とにかくそういう努力をすべきだと思うのですが、そういうことに関しては、われわれの見たところ、努力のあとが見えない。日本というものが積極的に前に出て寄与すべき段階だ、こう思うのでありますが、一体どういうことをなさろうとするのか、しなければいけないと考えておるのか、現在のままでよろしいというふうにお考えになっているのかをひとつお伺いしたいのと、もう一つ、いまアメリカに言及されましたので、ついでにお伺いしておきたいのですが、つい先ごろキッシンジャー補佐官の提唱でいわゆる新大西洋憲章というものが浮かび上がってまいりました。これへの日本の参加というものを強く米国が期待していると報道され、そのように聞いております。しかし、新大西洋憲章は間違いなく政治、経済、軍事、これが一体の体制でございますから、いかにアメリカが強く日本にこれを期待いたしましても、みだりにこれに参加するわけにはいかないだろう。アメリカも知っているのじゃないかと思いますし、大臣もそういうお立場であろうことは間違いないと思う。しかし、そこで一体これにどう対処したらいいのかということを、これは今月の六日からですか、三日間、日米政策企画会議というのをお持ちになって討議されていると聞いております。一体わが国がこの新大西洋憲章にどう対応するか、アメリカの期待にどうこたえるか、日本の果たすべき役割りは一体何であるか、もっと突っ込んで言うなら、日本の新大西洋憲章上における位置づけはどんなものか、こういったことが当然討議の内容とされたと思うのでありますが、六月六日から三日間行なわれましたこの会議の討議の内容について、いま四つお伺いしたことに関連して御報告なりお答えをいただきたい。
  41. 大平正芳

    大平国務大臣 アジアの平和共存の状態を定着さすために日本はもっと積極的な役割りを果たすべきじゃないか、見ておるところ、どうもはっきりそういう状況が読み取れないじゃないかという御指摘でございますが、申すまでもなく、われわれが考えなければならぬことは、朝鮮問題にいたしましてもベトナムの問題にいたしましても、いずこの国の問題にいたしましても、それらの民族自体がまず第一義的に考えられるべき問題でございまして、日本がとやかく干渉するということになることは決して賢明でないばかりか、事をなし遂げる場合にむしろじゃまになるわけでございます。あくまでも土着の民族のくふう、努力によってやっていただかなければならぬ課題であろうと思うのでございまして、私どもがなすべきことは、ベトナムならベトナム、朝鮮なら朝鮮という自体が安定し平和に向かうために第一義的に責任を持っておられる方々の御努力をまずじゃましないように、あるいはそれを勇気づけるように、あるいはそれを差しつかえない範囲で御援助申し上げるという、いわばそういう立場をとらざるを得ないと思うのでございます。原さんの言われる積極的という意味は、そういう意味においてもっと積極的であれという御趣旨に私は受け取りたいと思うのでありまして、そういう方向でやります場合に、私どもやり方が十分じゃないということでございますならば、いろいろ御指摘をいただき、御批判をちょうだいいたしたいと思うのでございますが、根本はそれぞれの民族の肩にかかった問題であるという認識がまず第一に必要でないかと考えておるのであります。  それから第二の御質問の、俗に大西洋憲章といわれておる問題でございますが、これは私も読んでみまして、感じといたしましては、きわめてあたりまえなこともたいへん多いと思うのであります。たとえば経済、社会等の分野で、貿易とかあるいは通貨とか、あるいは環境とかいうような問題につきましては、問題が世界的な規模を持っておるわけでございますから、大西洋問題という問題ではないので、いわば世界の問題なんでございまして、したがって貿易にせよ通貨にせよ環境にせよ、常にグローバルなベースでお互いに協力いたしておるわけでございますから、そのこと自体は私は当然のことを申しておるように思うのであります。ただ、あなたが御指摘になられましたように、この構想の根本に軍事、政治、経済等を総合的にとらえてお互いに関連づけているくだりがあるわけでございます。その点につきましてはもう原さんの御指摘のとおりでございまして、われわれは軍事力をもって国際紛争を処理するなんという道は閉ざされておる国でございます。日本の性格、日本を十分わきまえた上で、そういうことについてはわれわれは、だれが何とおっしゃいましても、そういう問題で勇み足をするというようなことは慎むつもりでございますので、その点御心配いただかないようにお願いしたいと考えております。  日米間で政策企画会議とかいうようなものを持っておること、また事実でございますが、いま日米間ではいろいろなレベルで対話が行なわれておるわけでございます。この種のものは結論を出すという目的ではありませんし、いわんや決定権は何もないわけでございますので、お互いの意見をざっくばらんに話し合って、何かその中で裨益するところがあればということでやっておるにすぎないものでございまして、この会議の結論はどうであったかというお尋ねでございますならば、そういうものをねらった会合ではないのだというようにお答えするよりしかたがないと思いますが、ただ、田中総理の訪米という場合におきまして、これは大事なひのき舞台でございますので、十分日本の立場を踏まえて、大西洋憲章といわれ、あるいは外交教書というようなものにつきまして、日本政府の姿勢をはっきりさせていかなければならぬと考えております。
  42. 原茂

    ○原(茂)委員 終わるわけですが、いま私が質問申し上げた中の、四つに分けまして討議の内容に触れて報告してもらいたい、こう申し上げたのは、その討議の内容についてで、結論を聞いているわけじゃありません。四項目に分けて御答弁をいただきたい。
  43. 大平正芳

    大平国務大臣 実は参加者から私まだ報告を聞いていないわけでございますので、こういう会議の性格をいま御報告申し上げたのでございますが、討議のテーマ等につきましては、後ほど整理しましてお届けすることにいたします。
  44. 原茂

    ○原(茂)委員 時間がないようです。またの機会をぜひ持ちたいと思います。ありがとうございました。
  45. 宇都宮徳馬

  46. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 時間の関係で端的にお尋ねしたいと思うのですが、宇都宮徳馬という方がいらっしゃるわけでございますが、その方が「世界」の五月号に「韓国の現状と日本の朝鮮政策」という論文を書いておられるわけです。私は前から読んでおるのですが、私ども考えとほとんど同じです。ちょっと違う点がありますが、最初のところにこういうふうに書いてあるわけです。   アメリカのアジアからの軍事的ディスカレー  ションは奥深い背景があり、多少の逆流はあっ  ても、当事者が何人であれ最早動かし難いもの  であって、ベトナム等インドシナ諸国に和解と  新しい安定が一応成立するならば、当然それは  朝鮮半島及日本にもおよぶ性格のものであるこ  とを覚悟しなければならない。   だから日本が、韓国中心の朝鮮政策を、漫然  とつづけることは、最早許されぬ情勢になって  来ているのである。韓国がうけている不安と  ショックは、深刻であって、反共を看板とした  朴政権も平和的統一を終局の展望として、当面  は人道的問題について北との話し合いを始めて  いる。日本も、当然、国家間の関係の正常化を  目ざして、北の朝鮮民主主義人民共和国政府と  話し合いを開始すべきである。最初こういうふうに書いてあるわけですが、この最後のところで「日本も、当然、国家間の関係の正常化を目ざして、北の朝鮮民主主義人民共和国政府と話し合いを開始すべきである。」このことに関しての外務大臣のお考えをお聞かせ願いたい。これが第一の質問でございます。
  47. 大平正芳

    大平国務大臣 宇都宮さんのあの論文は私も読ましていただいたわけでして、宇都宮さんの見識と勇気に対しまして敬意を表しております。  問題は、宇都宮さんの立場は、これは論文でございまして、一つの現状認識と展望を歯に衣を着せずに書かれたものでございまして、それなりに私は共感もし理解もできるのでございますが、私の立場は、現実に過去を背負って坂道をとぼとぼと歩いておるわけでございまして、現実の外交の歩みというものにつきましては、たいへん宇都宮路線というようなものからいきますと相当デビェートしておるし、ときにはまた回り道もし過ぎておるというようなことで、宇都宮さんから見ても隔靴掻痒の感があるに違いないと私は考えております。  そういう前提で、いま稲葉さんの御質問でございますが、わが国はもともと体制、信条のかきねを越えましてあらゆる国と正常なおつき合いをしたいという願望を持っておりまして、それにうそ偽わりはないわけでございまして、したがって、ただ問題は、そうしたいという願望を持っておりましても、そのことをやることによって事態がさらに複雑になり困難になるようなことがあってはいけないわけなんでございまして、そういうことを目ざして、やれる上におきまして、たんねんにもつれた糸をほぐしながら進めていかなければならぬわけでございます。いま北鮮に対しましては、稲葉さんも御承知のように、われわれといたしましては、経済とか文化とか、あるいは学術とかスポーツとかいうような方面でできるだけ交流を漸次拡大していきたいという姿勢をとっておるわけでございますが、政治的なおつき合いというようなところを考えてまいるにはまだ時期尚早でないかということでおるわけでございます。政治的な障害というようなものがだんだん取り除かれてくると原則に帰るわけでございますけれども、いまはそういう姿勢をとっておるほうが手がたい外交の進め方ではないかというように考えておるわけでございます。
  48. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまの大臣のお話の中で、一つは勇気に敬服するということばですね、これはまあいろいろな意味があるのだと思うのですけれども、しかし、この論文をここに参照はしますけれども、この論文のことについて直接討議しておるわけではございません。それから北鮮ということばを使われましたね。どうして北鮮ということばを使われるのですか、使ったでしょう、いま。どうして北鮮ということばを使われるのですか。
  49. 大平正芳

    大平国務大臣 未承認の場合におきまして、その国名を言わないということを外交上の慣例といたしておるにすぎないわけでございます。
  50. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 韓国の金首相がおいでになって、あしたあなたとお会いになるのですね。きょうですか、あしたですか、新聞紙上で拝見しておるわけですが、どういうことがその会談で話し合いになるかということのきわめて常識的な答えをお聞きしたいのですが、これは常識的に考えてこういうこととこういうことが問題になるだろうということはわれわれにもわかるわけですけれども、どんなことが話し合いになるのですか。
  51. 大平正芳

    大平国務大臣 ヨーロッパ旅行の帰路東京に立ち寄られて、田中総理と私に表敬訪問をしたいということだけ伺っておるわけでございまして、どういう問題を話したいという話題につきましては、先方からも何とも聞いておりません。私といたしましては、申すまでもなく最近のこういう状況でございますので、先ほど原さんにもお答え申し上げましたように、韓国の首脳として、国際情勢、アジア情勢、朝鮮情勢につきましてどのように判断を持たれておるか、展望を持たれておるか、そういう点につきましては率直にいろいろ聞いてみたいと考えております。
  52. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 ことしの秋の国連総会で、いわゆる朝鮮問題のたな上げ案というものがどういうふうに取り扱われるか、それに対して日本がどういう態度をとるか、これはもう非常に世界の注視の的になっているというふうに私は思うわけですね。そのことに関してお伺いしたいのが一つですが、その前にWHOの加盟、二十五票の差ですか、加盟になったとか承認されたとか、こういうふうなことに関しての外務大臣考え方を先にお聞かせ願って、それから国連の朝鮮問題のたな上げ案に対する対処のしかたというか、そういうようなものについてお話をお願いしたい、こう思います。
  53. 大平正芳

    大平国務大臣 北鮮のWHO加盟問題でございますが、これは本院の外務委員会等を通じましてかねがね申し上げておりますとおり、日本政府として、WHO、世界保健機構ができるだけ多くのメンバーをかかえて広範で充実した活動をいたすということには賛成なのでございます。それから北鮮をわれわれは決して敵視しておるというようなつもりは毛頭ないわけでございまして、そういう前提でWHOに加盟されるということになぜそれではわれわれが審議延期について提案したかと申しますと、この国連に対するアプローチは、本来これはいわば政治的なことでございますので、国連の本部のほうで北鮮をどのようにお迎えするかということが話がついて、そうしてWHOその他下部の専門機関におきましては、それを受けて祝福をもって迎えるというようなやり方のほうが正しいのじゃないか、東独はそういう姿でやったわけでございますので、私どもはWHOでこの問題を取り扱うのは必ずしも適切でないのじゃないかという理由でああいう態度をとったわけでございまして、他意はないわけでございます。
  54. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 あとの質問の、では、ことしこれから朝鮮問題を中心として国連総会なり何なりでどういうふうなことが問題になるだろうか、それに対して外務省としてはどういう態度をとるのか、こういうことをお聞きをしていきたいわけです。端的に言えば、またアメリカと同じような——アメリカに追随してということばは申し上げませんが、アメリカその他と一緒になって、朝鮮問題のたな上げ案というのですか、そういうふうなものに加担をしていくのかどうか、そういう点をお聞きしたいわけです。
  55. 大平正芳

    大平国務大臣 WHOに加盟はきまりましたし、それからその他の国連の下部機構に対して加盟を申請されるのかどうか、そのあたり私どもははっきりつかんでおりません。ただ、いまはっきり言えることは、すでにジュネーブの国連本部のホブザーバーになりまして、あそこに事務所を韓国と同様置くことになったわけです。近くおそらくニューヨークにおきましてもオブザーバーの事務所を置くべく国連本部に御申請をされるに違いないと思いますし、おそらくそれは実現するであろうと私どもも見ておるわけでございます。  それからさらに、そういうこととは別に、北鮮を承認する国が近来とみにふえてまいっております。総じて北鮮の国際的地位というものは漸次向上してきておるというように私どもも評価いたしておるわけでございます。こういう状況におきまして、いま御指摘のこの秋の国連でどのような姿になるのかということでございますが、これは、これから秋までの事態の推移をよく見ながら、日本といたしましてどのように対処してまいるか十分検討をして、適当な措置を講じなければならぬと考えておりますけれども、今日ただいまこの段階日本はこうすると申し上げるまでの結論に立ち至っておりません。
  56. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その推移を見ながらというのですけれども質問は、今後の国際情勢の中でどういうふうに推移をしていくというふうに外務大臣はお考えになるのか、これが第一の質問。  第二の質問は、いま言われた朝鮮民主主義人民共和国の承認の国の数がふえているわけですね。それの情勢の見通し、増加の見通しと、その際、日本もそれをかりに承認する場合に、日韓条約の存在あるいは規定が妨げにならないのかどうか。このことをまずお聞きをしたいと思います。
  57. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、確かに北鮮の国際的地位は向上しつつあるわけでございまして、今後の推移は、国連の朝鮮政策が、当事者、南北朝鮮でどのようにこれは考えてまいるのか、まず南北朝鮮の態度が一番見どころでございますし、その他の国々の動向というものも、われわれとしては十分承知しておきたいと思うのでございます。何となれば、日本の態度が一番大事なんでございまして、よその国も大事でないとは言いませんけれども日本の態度は確かに世界的な環視の中にあるわけでございますので、十分推移は掌握した上で考えなければならぬと思いますが、考え方の根本に、やはり初めに返って朝鮮半島の平和とか安定とかいうものにどうしたら寄与できるのかということが一番根本の軸になってくるのじゃないかと考えておるわけでございます。  条約上の問題につきましては、日韓条約が支障になるものとは考えておりません。
  58. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 国連総会で、日韓条約の前文それから第三条で引用しています百九十五号という、例の決議があるわけですね。大韓民国を朝鮮半島における唯一の合法の政府と認める。これが国連総会で否決されたということに——否決というか、あるものがひっくり返った、そういうことになってきたときに、一体日韓条約はどういうふうになるのですか。効力はなくなっちゃうというのですか。そこはどうなのですか。改定しなければならぬのですか。大臣からおわかりになっている範囲でお答え願って——専門家といったって、大臣は専門家じゃないのかな。
  59. 高島益郎

    ○高島政府委員 先生のお尋ねは、日韓基本条約の第三条に引用しております国連総会決議第百九十五号につきまして、将来、仮定の問題でございますけれども国連総会で否決されるということがあった場合に、この日韓基本条約はどうなるのだろうかという御質問でございます。  これは、日韓基本条約が審議されました国会におきましても、かなり議論された問題の一つであろうかと思いますが、まず第一番に、そのような総会決議第百九十五号が将来、仮定の問題としまして、国連総会で否決されるとかあるいは修正されるという可能性があるかどうかという問題が第一番かと思います。この総会決議第百九十五号と申しますのは、大韓民国が全朝鮮を代表する唯一の合法政府であるということをきめたものでは毛頭ございません。これは当時、国連の臨時朝鮮委員会というものがございまして、これが韓国の部分についての選挙を監視いたしまして、その監視した選挙の結果できました韓国政府を、そのような意味で合法政府であるということを認めたにすぎない、つまり朝鮮の南の部分についての唯一の合法政府であるということを認めたにすぎない決議でございます。そういう意味の決議でございますので、これが将来、たとえば南北両朝鮮が統一されて一つの朝鮮になるということになりますれば、この決議自体の意味もすっかり根底から変わってくると思いますけれども、現状におきまして韓国と北朝鮮というものがそれぞれ存在する限りにおきましては、理論的可能性といたしましても、将来国連総会において修正されあるいは否決されるということはあり得ない問題じゃないかというふうに考えておりますので、そういう前提に立つ限りは、私ども、将来の朝鮮の統一という場合以外におきましては、この日韓基本条約第三条あるいは日韓基本条約そのものが影響を受けるということはないのではなかろうかというふうに考えております。
  60. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 時間の関係で最後の質問になるわけですが、いままでの答えをお聞きしていて、こういう質問をしたいと思うのです。  今秋の国連総会で朝鮮問題に関するたな上げ案を出すことは困難になってきている、こういうふうな情勢が来ることもあり得る、こういうふうに考えてよろしいのでしょうか。それが一つ。  それから、さっき言われた、原点に返って、北と南の両方に対して日本としては友好を増進したいというのが基本的な考え方だというふうに承ったようにもとれるのですが、そのことのためには、日本としては一体どういうことをしたらいいというふうに考えるわけですか。ただ自主的だというので、向こうの二つの国にまかしておくということなんですか。それを妨げないような方法日本自身もとる必要があるのではないでしょうか。その点については、どういうふうにお考えなんでしょうか。
  61. 大平正芳

    大平国務大臣 審議たな上げ案の、ことしの秋直面する事態をどう展望するかという問題でございますけれども、私は予言者でございませんので、先々のことを的確に申し上げる自信はございませんけれども、少なくとも去年の総会のときとは相当変わった事態であろうということだけは言えようかと思います。  それから第二点の御質問でございますが、先ほども基本の考え方として申し上げたのは、朝鮮半島の問題はやはり朝鮮民族の問題である。そしてそれが、はしなくも南北の対話が始まっておるわけでございまして、これは実質的な進展があるようには、いまのところ判断されませんけれども、しかしこれをはずしては——はずしてというか、この対話の進展というものを十分見きわめながら、われわれといたしましてはこれをじゃましないばかりでなく、できたらこれをエンカレッジしていくというような気持ちで終始しなければいけないと思っております。
  62. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 もう一点、いまの最後のところで、エンカレッジするといったって、具体的にはどうやるのですか。せっかく非常に慎重な大臣がおっしゃったのだから、もう少し詳しく聞かしていただきたい。
  63. 大平正芳

    大平国務大臣 日韓の間は現に国交がございますし、いろいろな接触があるわけでありまして、われわれができますことは、まず韓国に対しまして、南北対話の実質的な進展についてその役割りを期待いたさなければならぬと思っております。
  64. 宇都宮徳馬

  65. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 サイゴン政権に対する日本援助の問題についてお尋ねするわけですが、まず援助の実態を明らかにするために、サイゴン政権に対する援助の種類にはどういうものがあるか、このことをお伺いします。
  66. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 ベトナム、すなわち南ベトナムに対しますわが国援助は、ベトナムにおきまして不幸な状態が続いております間は極力人道上の援助というものに限定してやってまいりました。もちろんその前に、御承知の賠償協定というものができまして、それに基づきましてダニムダムの建設ということが行なわれておりますが、それ以後におきましては、たとえばサイゴンにおきます難民住宅の建設でありますとか、サイゴンの近郊のチョーライという場所にあります病院の建設でありますとか、また同じく近郊におきます、戦災を受けました孤児の職業訓練センターの建設でありますとか、そういうような無償の経済協力、並びにまた電力事情、それから通信の状態の改善というようなことを目的といたしまして、サイゴンにおきますディーゼル発電所の建設、それからカントーという場所におきます火力発電所の建設、サイゴンにおきます電話網の拡充といったような計画に、少額ずつではございますが借款を供与してまいったということでございまして、その他こまかい専門家派遣とか、そういったような種類のいわゆる技術協力を供与してまいったというわけでございます。
  67. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 無償援助でいいのですが、サイゴン政権に対する無償援助昭和四十四年度と昭和四十五年度、それから昭和四十六年度の各金額を明らかにしていただきたいと思います。
  68. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 昭和四十四年につきましては、予算の計上がございましたが、実際の実施はおくれまして四十五年からでございますので、供与しました実額で申し上げますと、四十五年には六億一千四百万円余り、四十六年には十二億八千六百万円余り、四十七年には十八億九千百万円で、合計いたしましてその三年間に三十七億九千万円の無償協力が行なわれております。これは先ほど申し上げました難民住宅、それからチョーライ病院、孤児の職業訓練所、それからダニムダムの若干の修復の費用、それからケネディラウンドに基づきます食糧援助というものを含んでおります。
  69. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 昭和四十四年度に計画されて、四十五年度、四十六年度、四十七年度と急速に援助額がふえていくわけですが、これがどうしてふえるかという問題なんです。昭和四十四年の十一月二十二日に日米共同声明が締結され、日米のアジア援助拡大と改善が取りきめられたわけです。当時の佐藤総理大臣はナショナルプレスクラブで、アジア援助では日本のほうが主体的役割りを果たすということを言明しております。昭和四十五年になりますと、経団連が南ベトナム調査団を派遣するし、七月八日の佐藤・ロジャーズ会談で援助の増額が求められ、日本外務大臣は、人道的援助から民生安定と福利の増進をはかるための自主的援助計画検討したい、こう回答いたしました。昭和四十六年になりますと、九月九日に第八回日米合同貿易委員会が開かれて、ここでアメリカ側は日本の対外援助の劇的な拡大を求めるということになります。こうしている間にサイゴン政権からのいろいろな要望がありますし、また一連のアメリカ側からの要望がある。こうした中で、先ほど言われましたような発電所やチョーライ総合病院建設、孤児の職業訓練所の建設援助などが行なわれて、援助が増大されてきております。昭和四十五年の二月十七日に出されたニクソンの外交教書は、戦争のベトナム化、すなわちベトナム軍隊の強化と平定計画の拡大というアメリカの侵略支配改策の中で日本がこれに協力する過程であると私は考えておりますが、政府の見解はいかがですか。
  70. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 わが国の南ベトナムに対します援助は、先ほども申し上げましたように、もっぱら緊急に必要な難民の救済でありますとか、戦災をこうむっております孤児の救済であるとか、そういったような人道的な援助に向けられておりまして、たとえば難民住宅につきましては、二年間の計画を立てて建設をする、チョーライ病院につきましても、三年か四年にわたる計画をたてておりまして、その計画が、初めの年から見ますと二年度、三年度には若干金額が多くなるというのは、これはプロジェクトの性質上そうなっておるわけでございまして、いま御指摘のような諸般の客観的な情勢と必ずしも軌を一にしておるわけではないというふうに私どもは存じております。
  71. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 このサイゴン政権に対する援助について、政府はいつも人道的援助また経済援助に限られるのだ、こういうふうに言明しておりますから、この点について問題を明らかにするために質問するわけですが、一つは、ベトナム周辺の諸国、サイゴン政権あるいはプーマ政権、それからロン・ノル政権、それからビルマ、タイ、この五つの政権に対する援助の中で、四十五年と四十六年中に一番日本援助額を多くしている国はどこか、それをお聞きしたいと思います。
  72. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 昭和四十六年の実績数字がここにございますが、アジア地域の中でベトナム周辺諸国に対します援助の合計をかいつまんで申し上げますと、ベトナムに対しましての政府レベルの援助は、四十六年度におきまして八百六十万ドル、これは支出の純額でございまして、ドルで計算されておりますので、ドルで申し上げることをお許し願いたいのですが、ベトナムが八百六十万ドル、それからラオスが四百七十万ドル、カンボジアが同じくらい、大体四百七十万ドル。それらと比べましてタイは一千五百五十万ドル。その近くの国で申し上げますとフィリピンが二千九百万ドル、マレーシアが一千二百万ドル、少し離れますがインドネシアは非常に多くなりまして一億一千万ドル、ビルマは二千六百万ドルというわけでございまして、インドシナ三国よりはその周辺の国のほうが金額が多くなっておるという状況でございます。
  73. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 昭和四十五年のニクソンの外交教書を見ますと、ベトナム政府が同国軍隊強化に伴う経費の増大を分担し、ベトナム駐留軍の継続削減に伴うベトナム駐留米軍の軍事費が減少するにつれて、ベトナム経済の負担が過重なものとなろう、このような経済問題と取り組むために、ベトムは援助を必要とするであろう、ベトナム化の過程において、ベトナムにおけるわれわれの純然たる軍事目的の支出は大幅に減少するであろうが、経済目的のためのわれわれの支出をある程度増大することが必要となろう、こう述べていますが、結局サイゴン政権はその資金を軍事費に使って、民生に必要な部分は援助する側が見るから安心して戦え、こう言っているのと同じことだと思うわけです。国家の予算の大部分を軍事費に充てるから民生に充てる部分がなくなってくるわけで、その民生に充てる部分についてはサイゴン政権がみずからめんどうを見切れない。しかも政権として見なければならない民生問題に関して海外からの援助をさせる、日本もそれに一役買うというのは、結局はサイゴン政権の軍事遂行を可能ならしめるためのものであって、臨時革命政府側と戦争をしている一方の政権に対する援助は実際上軍事援助になってしまう。このように直接軍事問題に対する援助ではなくても、軍事問題に使われる資金のために経済問題民生問題についてめんどうを見切れない、そのことを穴埋めしてやるということで実際上は軍事援助と一体のものになる、このように考えるのですか、見解をお伺いしたいと思います。
  74. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのように、経済的に見ますと、アメリカの軍事援助は、南越経済にとりまして受け入れ側に立つわけでございまして、それによって経済バランスがとれるという仕組みになっておることは申すまでもないことと思うのであります。戦争がやんでまいりますと、南越といたしましてはそういう前提の上で経済バランスを回復しなければならないわけですから、国民が生産活動に従事いたしまして、やがては経済自立を達成することと思うのでありますが、戦争がやんだ直後しばらくの間経済援助を必要とする事態が考えられるだろうと思うのであります。これは申すまでもなくアメリカが第一義的に心配していることと私ども考えるのでありまして、その他の国々がこの南越援助に対してどのような態度をとるかというようなことは、まだ伺っておりませんけれども、民生的な援助であるという限りにおきまして、日本といたしましても、先方からの要請がございます場合に、応分のことを考えなければならないのではないかと考えていますが、まだ具体的な数字をはじくまでには至っておりません。
  75. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 私が聞いたのは、いま四十五年度の決算が審議されておりますので、過去の問題として聞いたわけなんですけれども、過去にやった援助というのが、サイゴン政権の金が軍事のほうに使われて民生のほうに回らない。日本は人道的援助経済援助ということで病院の建設あるいは孤児の施設をつくる、あるいは発電所をつくる、こういうことに力を尽くした、こういうことを言われるのですけれども、戦争をやっている一方の側のほうに援助をするということは、そのほうに対する軍事援助と実質的に変わりないことにならないか、こういうことを聞いているわけです。
  76. 大平正芳

    大平国務大臣 戦争をやっておる経済にとりましてのバランス考えますと、どういう態様の援助であれ、援助を受けた場合に、それが受け入れ側に立つわけでございまして、そういう意味で関連がないとは言えませんけれども日本がやった援助はあくまでも非軍事援助であるということで徹しておりますということを御報告申し上げたわけです。
  77. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 戦争をやっている中において実質上その相手方にされております北ベトナムの民主共和国あるいは臨時革命政府、解放戦線、こうしたところに対する人道的援助経済援助がなされたかどうか、お伺いいたします。
  78. 大平正芳

    大平国務大臣 すでに実行いたしましたものといたしましては、国際赤十字を通じまして緊急人道援助五億円を先般実行いたしたわけでございます。これはベトナム全土を対象に考え国際赤十字社にまかせてあるわけでございまして、これから先のことにつきましては、まだ具体的な要請を先方から受けていないわけでございまして、先方の考え方等は聴取しつつあるのがいまの段階でございます。
  79. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 いま言われました国際赤十字に対する援助、これは南ベトナム全土に対してなされたということですが、これはいつのことですか。そして、その援助がサイゴン政権の支配外の解放戦線側の支配している地域にも行き渡っているかどうか確かめておりますか、お伺いします。
  80. 大森誠一

    ○大森説明員 昨年の十二月にインドシナ地域、これは南北両ベトナム、ラオス、カンボジア、これらの地域すべてを含むわけでございますが、これらインドシナ地域における難民、それから戦争被害者に対する救援、こういった活動を効果的に実施いたしますために、赤十字社連盟と赤十字国際委員会を母体といたしまして、インドシナ救援グループというものが発足いたしました。これは通常IOGと呼ばれておりますが、このインドシナ救援グループから各国の赤十字社に対しまして、インドシナ救援活動のための資金拠出要請が行なわれまして、また同時に各国政府に対しても拠出要請がございました。これに基づきまして、日本赤十字から政府に対しましても拠出要請があり、他方、本年三月に入りまして、この救援グループから直接ジュネーブにございますわがほうの国際機関代表部の北原大使を通じまして、わが国政府に対しても緊急拠出要請がございました。さらに三月から四月にかけて特に緊急な援助がほしいという重ねての要望もございまして、先方より約五億円程度拠出をしてほしい、こういう具体的な要請がございました。  政府といたしましては、この要請にこたえまして、これは非常に緊急に処理しなければならない案件といたしまして、本年三月十六日の閣議において予備費から五億円の支出方を決定いたした次第でございます。
  81. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そうしますと、いま言われたのは、昨年度の終わりから……。いま私がいろいろ聞いておりますのは、昭和四十五年、六年、七年という問題で、政府のサイゴン政権に対する援助が実質的に軍事援助と同じことではないかという角度から聞いているわけです。この和平協定が締結されたあとの問題ではなくて、その以前の、もっと激しい内戦があった、そのときにサイゴン政権には援助したけれども、解放戦線あるいはベトナム民主共和国に対する援助というのは一切していないではないか、こういうことを聞いているわけです。
  82. 大森誠一

    ○大森説明員 和平協定のできます以前のものといたしまして、昭和四十六年度の予算から三百六十万円を、日本赤十字社の北ベトナム救援事業に対する補助金として支出いたしております。さらに昭和四十七年度におきましては、同様の目的で七百二十万円を支出しております。
  83. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そのとおりであったにしても、サイゴン政権に対する援助の額、先ほど言われましたけれども、これとは全く比べものにならない非常に微々たるものであると考えるわけです。  もう一つ伺いますが、先ほど言いましたベトナム周辺の五カ国の中で、それぞれ国家予算があるわけですけれども、その中で軍事費の占める割合が一番多い国はどこになっておりますか。
  84. 大森誠一

    ○大森説明員 ただいま資料を持ち合わせてございませんので、たいへん恐縮でございますけれども、なるべく早い機会に資料として御提出したいと思います。
  85. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 サイゴン政権に対する援助の問題についてお伺いしたわけですけれども、もともとサイゴン政権との関係から言いますと、一九五〇年に十七度線の軍事境界線が引かれて、それを機会にアメリカの南に対する支配が進められ、日本は間もなく賠償協定を結ぶ。そしてその後、アメリカのあと押しでクーデターが行なわれると、日本はこのクーデターによって成立したサイゴンの政権と、そのまま引き続いて外交関係を結んでいくわけです。サイゴン政権に対する大きな援助に対して、一方、アメリカの爆撃で非常に困難な生活をしいられている北のベトナム民主共和国に対しては、何らの援助もしないし、この戦争において安保条約のもとで日本の基地が提供される。すなわち、北ベトナムに対しては敵対的な態度が持ち続けられてきていたことは否定できないと思うわけです。南ベトナムの臨時革命政府に対しては、パリでの公式文書にもはっきり出ておりますのに、その臨時革命政府との関係を結ぼうとはしない。同じベトナム人民が生活している地域で、サイゴン政権にだけ大きな援助をして、北ベトナムや臨時革命政府との戦いを進めさせることに役立たせるということは、これはアメリカの侵略政策のお先棒をかついで、しかもベトナムの民族自決権に対する干渉であり、民族独立を抑圧する役割りを果たす援助になりますし、日本国民の税金はこんな不当なことに使うべきものであってはならない、私はこのように考えます。  政府はいま振り返ってみて、過去のサイゴン政権に対する援助政策を特に反省して、ベトナム民主共和国との国交の早期の樹立、ベトナムにおける侵略戦争の停止のために努力すべきである、このように考えますが、御見解を伺っておきます。
  86. 大平正芳

    大平国務大臣 これまで北越との間には国交がなかったわけでございまして、私どもパリ協定の成立を契機といたしまして、今後のインドシナ政策につきまして、この協定を踏まえて進めてまいりたいという方針を堅持してまいっておるわけでございます。  援助の問題につきましても、この協定を踏まえて処置してまいるつもりでございますが、この協定にはベトナムにつきましてまとまった援助をしなければならぬとは書いてないわけでございまして、それぞれ南越北越に対して別々に考えても協定の違反になるとは考えていないわけでございまして、南北ベトナムとそれぞれ接触を持ちまして、今後の援助政策の進め方をいま検討いたしておる最中でございます。ただ、臨時革命政府とはわが国といたしまして外交関係を持つ意図はないわけでございますパリ協定の当事者であることはよく承知いたしておるわけでございまするし、南越の民族自決権を踏まえた上で、南越政府と臨時革命政府と第三勢力が一緒になりまして、和解評議会をつくって、将来の南越の政治形態を考えていくというブループリントがあそこに書かれておるわけでございまして、一日も早くそういうことができることをわれわれは希求いたしておるわけでございますが、われわれがいま現に検討いたしております方向は、決してパリ協定に背反しておるとも考えませんし、支障がないものと判断いたしております。
  87. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 時間が参りましたので、終わります。
  88. 宇都宮徳馬

  89. 坂井弘一

    坂井委員 海外移住によります日本人の海外における活動のあり方いかんということがわが国国際的評価にもたらす影響というものは非常に大きいものがあります。  ところで、海外移住事業団法が昭和三十八年七月八日に制定されておりますが、その際に、衆議院の外務委員会におきまして附帯決議がなされております。その附帯決議によりますと、海外移住法、これを次期通常国会に提出することという附帯決議であります。ところで、今日この移住基本法がいまだに制定されておりません。これはいかなる理由によるものか明らかにしていただきたい。
  90. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 お答えいたします。移住基本法につきましては、移住事業団法が成立いたしました際に、国会の附帯決議をいただいておるわけでございますが、その直後いろんな法案について考えたわけでございます。ところが、その当時の情勢が刻々に変化しておりまして、それまでは中南米向けの移住が非常に多かったわけでございますけれども、カナダ向けの移住者がふえてきたというようなこと、それから傾向といたしまして、それまでは家族ぐるみの移住が多かったわけでございますが、それが単身の移住者がふえてきた、それからさらに農業移住者が多かったものが技術移住者がふえてきた、そういうふうな従来の移住の形と違ったものが出てきたわけでございます。と申しますのは、従来移住といいますのは、ともすれば労働力の不足、労働力過剰という問題をかかえて考えておられましたのが、そのころからぼつぼつ、いわば海外に出ていくのは、日本で働くよりもより有意義な働きをするためにはむしろ海外に出たほうがよろしい、こういうふうに移住者の考え方がだんだん変わってきつつありまして、そこで関係者がいろいろ寄って協議したわけでございますけれども、そういう移住の実態が少しずつ変わっておるということを踏まえて、もう少しこの問題を検討したほうがいいのではなかろうかということで、移住基本法が提出されるに至っていないわけでございます。
  91. 坂井弘一

    坂井委員 その際、大平外務大臣、当時も外務大臣でいらっしゃったが、附帯決議の御趣旨を尊重いたしまして最善の努力を尽くしたい。この附帯決議は明らかに「次期通常国会に提出すること。」こうなっているわけなんですね。ところが、いまその後の情勢の変化等説明がございました。次期通常国会に提出する。その附帯決議に対して最善の努力をいたします。今日まだ附帯決議の趣旨に基づく海外移住法が制定されていない。これはつくりませんか。法律をおつくりになる意思はないのでしょうか。大臣に伺いたい。
  92. 大平正芳

    大平国務大臣 いま政府委員から御答弁申し上げましたような移住の実態がだんだん変わってまいりましたので、今後の推移をもう少し見ながらこの問題に取り組みたいということで今日まで遷延いたしておる次第でございます。この事態、あらためてもう一度私の立場で勉強さしていただきまして、どのように対処したらいいか検討をひとつさしていただきたいと思います。
  93. 坂井弘一

    坂井委員 どうも国会の附帯決議たるものが軽視されがちですね。十年たっているわけですよ。当時も大平さんは外務大臣でいらっしゃった。そこで、四十六年の九月に行政管理庁が、この海外移住事業団の監督行政の監察を行ないました。その監察の結果、業務運営の基本方針、これについて再検討する必要がある、こういうことでありまして、移住者の数を見ますと、昭和三十五年をピークにいたしまして八千三百六十人。ところで事業団が成立しました昭和三十八年には千五百二十六人であります。その後ずっと年々減少いたしまして、四十五年度におきましては六百二十九人と非常に少なくなっております。原因は何でしょうか。
  94. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 お答えいたします。移住者の数につきましては、いま御指摘がありました昭和四十五年六百二十九人、四十六年六百七十四人、四十七年七百六十三人でありますが、これは中南米向けの移住者だけでございまして、そのほかにカナダ等を入れますと、もっと数が多くなります。たとえばこれは昭和四十六年の統計でございますけれども、アメリカを含む世界全体で、これは呼び寄せでございますけれども、これも移住者でございますので入れますと八千二百八十八人でございます。カナダが年々ふえてまいりまして大体七、八百人ということでございますので、いわばアメリカの呼び寄せ関係を除きまして、雇用ないし自分で働くというようなことで行く移住者は、大体カナダが七百ないし八百人、中南米が七百人といたしますと、大体千五百人でございます。この減った原因は、御承知のようにやはり昔と日本経済情勢がだんだんと変わってきたということではございます。最近なおかつ家族ぐるみで農業を目的で移住する方もおりますが、それに反しまして、先ほども申しましたように単身移住者、これは農業をやる人もおりますし技術者もおります。そういう方の数がだんだんふえていくということで、移住傾向が変わってきておるということでございます。これが今後いままでどおり減るのか、あるいはもっとふえていくのか、予測は立ちがたいわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、やはり若い方の中には日本よりもむしろ海外で自分の力をためしてみたいという方もおりますので、あるいは今後こういう方がだんだんふえていくのじゃないか、そのように考えてお  ります。
  95. 坂井弘一

    坂井委員 いずれにいたしましても非常に減ってきておる。そこで、この移住人数の減少に伴いまして事業団の業務量が大幅に減ってくる。そこでその対策をどうするかということにつきましては、地方事務所にまとめまして、十一ブロックにまとめる、こういうことで方針をおきめになっていらっしゃるようなのですが、そうなりますと当然職員もあるいは管理職等も少なくするのか、一体どういうようにしていくのか。この事業団の役員は七名おります。これは一般職員、在外合わせまして四百四十五人、こうなっております。たいへん多い数ですが、これはどういたしますか。
  96. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 行政管理庁の勧告に基づきまして、いままであります地方事務所というものを整理いたしまして、ことしの十月以降は十二支部に統合いたしますと同時に、暫定的に特定の十県に地方事務所を置くわけでございます。現在のところ、支部をつくることによりまして、ことしは約十二、三名、百十三名が百十一名くらいに減るということでございますが、これらの人員の減につきましては自然減もございますので、それとにらみ合わせながら適時配置転換等をはかり、減員を進めていきたい、このように考えております。
  97. 坂井弘一

    坂井委員 行政管理庁の勧告に、交付金による固定資産取得の処理改善ということがあげられておりまして、この勧告の趣旨は十分理解できるという回答でありますが、各事業団が個々に独自の方式に従って処理していることは好ましくない、したがって当事業団の会計処理についても検討いたしたい、こうあるわけでありますけれども——きょう事業団はおいででございましょう。独自の方針処理しておるということは、具体的にどういうことなんでしょうか。
  98. 斉藤実

    斉藤参考人 お答えいたしますが、ただいまの先生の御質問の趣旨がちょっとわかりかねますので、もう一度ひとつ御質問を願いたいと思います。
  99. 坂井弘一

    坂井委員 行政管理庁の勧告に、会計処理の適正化、このことに触れまして、交付金等による固定資産取得の処理改善、これが勧告されておる。事業団がこれに答えて、各事業団が個々に独自の方式に従って処理していることは好ましくない、こうおっしゃって、したがって改善する、こう答えられておるわけですが、各事業団が個々に独自の方針に従って処理しておる、これは一体どういうことを意味しておるのでしょうか。具体的にどういうことなんでしょうか。
  100. 斉藤実

    斉藤参考人 固定資産の取得並びに処理について、独自の方式により処理しておるということの意味が、私ちょっと理解いたしかねるわけでございますが……。
  101. 坂井弘一

    坂井委員 これはおたくからの回答なんです。行政管理庁が改善を要求したわけです。それに答えていらっしゃるわけです。確かに、固定資産取得の処理については、各事業団が個々に独自の方式に従って処理していることは好ましくない、したがって改善いたします、こうお答えになっていらっしゃるから、一体各事業団が個々の独自の方式に従って処理しておるというのは、具体的にどういう処理がされておるのか、またそのことがなぜ好ましくないのか、こういうことをお尋ねしておるわけです。  次に進みましょう。この事業団の土地の取得についてでございますけれども、直営入植地ロッテ——ロッテつまり一区画ですね。この造成分譲計画がございます。四十七年から四十九年末まで、その中で不良ロッテがかなりたくさんあるようでございますけれども、この不良ロッテの数と入植地域名、これを明示していただきたい。
  102. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 不良ロッテと申しますのは、御承知かと存じますが、一応入植地をロッテ割りいたしまして、これを造成いたしまして、移住者の選択によりこれを売るわけでございますが、その土地の条件等のいろいろな問題がございまして、売れ残りになったものをわれわれは不良ロッテと考えております。それから売れ残りのロッテと申しますのは、そういうことではなくて、たとえば移住者があるロッテを買いまして、将来ロッテをふやしたいけれどもいますぐ買えないというものにつきましては、居住者のためにとっておこう、こういうふうな考えもございますので、こういうものが残りのロッテだというふうに考えます。  そこで不良ロッテの数でございますけれども、これは昭和四十七年度末現在でアルゼンチンが九カ所でございます。不良ロッテは三百三十七。それからパラグアイが三カ所でございまして五十三。それからブラジルが七カ所でございまして四百十六でございます。全体の割合から申しますと大体一〇%から一二、三%の間、こういうことになっております。——ちょっと間違えました。訂正させていただきます。アルゼンチンが二十六でございます。パラグアイが三百三十七でございます。ブラジルが五十三で、合計四百十六でございます。それから残ロッテは、アルゼンチンが三十九、パラグァイが七十六、ブラジルが二百七十、合計三百八十五でございます。
  103. 坂井弘一

    坂井委員 不良ロッテが全部で四百十六ということですね。たいへん多い。これはできた理由は何でしょうか。  同時に、この不良ロッテをいつ取得して、その面積と金額をひとつ教えていただきたい。
  104. 斉藤実

    斉藤参考人 お答えいたします。不良ロッテと申しますのは、全体を購入いたしました場合に、その中には砂れき地であるとか、あるいは農耕に適しないというようなところがどうしてもまじってくるわけでございまして、そういうのをこちらでは不良ロッテということにいたしておるわけでございます。  不良ロッテは、全体といたしまして一万一千八百六十七ヘクタールございます。ブラジルはジャカレー、バルゼアレグレ、第二トメヤス、アルゼンチンはガルアペ、アンデス、パラグアイはアルトパラナ、イグアスということになっておりまして、一応、当初購入いたしました移住地の総金額でもってこのヘクタール数を割りますと、金額といたしましては二千六百六十万一千円というのが不良ロッテの総額となっております。ブラジルのジャカレーでは四百二十八万一千円、バルゼアレグレでは八十八万八千円、第二トメヤスでは二万五千円、それからアルゼンチンのガルアペが三百九十万四千円、アンデスが二百十三万円、それからアルトパラナ、これはパラグアイでございますが、八百六十三万三千円、それからイグアスが六百七十四万円ということでございます。  取得いたしました年月は、先ほど申し上げました順番でいきますと、ジャカレーが三十四年の七月三十一日に取得しております。それからバルゼアレグレが三十二年の九月四日でございます。第二トメヤスが三十七年の五月十日でございます。それからアルゼンチンのガルアペが三十二年の七月三十一日、アンデスが三十四年の五月二十二日、それからパラグアイのアルトパラナが三十三年の十一月十日、それからイグアスが三十五年の十月四日、かようになっております。
  105. 坂井弘一

    坂井委員 不良ロッテを、いまごろになりまして、四十八年度予算で土地の鑑定を行なって、そして標準価格よりも安く売ろう、こういう方針でやるようでございますけれども、ずいぶんしかし気の長い話でして、今日まで、しかもこれは不良ロッテについては、たな上げした形ですね。これはある種の国損じゃございませんか。  同時に、残ロッテがございますが、四十九年度末の残ロッテの数とその地域名、これをひとつ明示してください。
  106. 斉藤実

    斉藤参考人 お答えいたします。不良ロッテという中にも、農耕には適しないけれども牧畜はできるというようなところもございまして、そういうものも検討をいたして売却したいということと、それから土地の価格の鑑定は、これは三十三年とか四年とかいうときに比べまして、相当の年月がたっておりますので、その価格もはっきりいたさないということでございましたので、これを鑑定して売却しようということにいたしたわけでございます。  それから、残ロッテは、一応各移住地についてございまするけれども、もし必要でございましたら移住地ごとに申しますが、概略といたしまして国別に申し上げますと、アルゼンチンがロッテ数が三十九、それから面積が六百三十五ヘクタール。それからパラグアイが、ロッテ数が百二でございまして、面積が二千九百八十七ヘクタール。それからブラジルが、ロッテ数が二百八十四、面積が三千五百五十二ヘクタールでございます。
  107. 坂井弘一

    坂井委員 それは四十九年度末になりますか。四十九年度末に、いまのを合計いたしますと、三百十四ということでしょうか、残ロッテは。
  108. 斉藤実

    斉藤参考人 四十九年度末ではございません。これは現在のところ、四十六年度の決算を——いま四十七年度の決算がまだきまっておらない状況でございますので、これは四十六年度末現在というところの数字でございます。
  109. 坂井弘一

    坂井委員 では、四十九年度末の予算の残ロッテ数はおわかりになりますか。
  110. 斉藤実

    斉藤参考人 四十九年度末ということになりますと、ちょっと現在のところではわかりかねます。  ただいまのところ、残ロッテにつきまして、あるいは不良ロッテについて、こちらといたしましては、売却方をいろいろ考えておりまするけれども、何ぶんにも相手のあることでございますので、こちらが一方的に処分することもできかねるというような状況にもございますので、現在のところでは、どれだけ売れるものかということはわからないわけでございますが、現在あちこちで購入したいという希望が出てきておりますので、ある程度これは消化できるのではないか、かように考えておる次第でございます。
  111. 坂井弘一

    坂井委員 四十七年度末現在の実績で言いますと、残ロッテは、合計で幾らになりますか。
  112. 斉藤実

    斉藤参考人 お答えいたします。四十七年度末はまだ出てございません。四十六年度末で調べております。
  113. 坂井弘一

    坂井委員 いずれにいたしましても、残ロッテがかなり数が多くなお残っておるようであります。  さらに、この移住地別の退耕者が非常に多いわけですね。特に多いところを見てみますと、アルゼンチンのガルアペ、これは入植総戸数が百一戸、それに対して退耕者が五十戸、現在五十二月です。それからパラグアイのフナム、入植総戸数が三百七十八、退耕者が百五十一、残ったのが二百二十七。それからボリビアの沖繩第一から第三、入植総戸数が五百五十四、退耕者が二百十四、残ったのが三百四十。いずれも半分ないし三分の一退耕者が出ておる。これは移住政策の完全な失敗であると思うのですね。一体この退耕者はどこへ行ったのでしょうか。調査はなさっていらっしゃいますか。
  114. 斉藤実

    斉藤参考人 お答えいたします。先生のおっしゃるように、ずっと退耕者の追跡調査というようなこと、退耕者に限らず移住者の追跡調査ということを常にいたさなければならぬわけでございますが、南米と申しましても非常に広範な地域でございます。それにいつ出ていくのやらということもなかなかわかりません。また直轄地等につきましては、それぞれそういう連絡をするように組合その他にも連絡はしてございますけれども、なかなか連絡してくれないというような状況もございますし、また行く先も転々といたしますので、退耕した人の実情というのは、現在のところはっきりした計数がないという状況でございます。
  115. 坂井弘一

    坂井委員 退耕者がどこへ行ったかさっぱりわからぬというわけですね。これは入植総戸数でいきますと、二千百六十七戸、そのうち退耕戸数が四百六十三戸、五戸に一戸退耕したということですね。不良ロッテあるいは残ロッテ等が今日なおかつ非常に大きい数にのぼり、そういう中でこれらの移住者が退耕を余儀なくされて、しかも行き先が転々として、今日追跡調査もさだかでない、これは当初から計画がきわめてずさんであったのではないかといわれてもいたしかたないと思うのです。さらに、四十五年度の交付金を見ますと、支出決算額が十六億七千四百余万円、海外渡航費交付金六千四百余万円、これだけ支出されております。ところが、過去の経緯からずっと事業団成立以来ほとんど完ぺきな事業らしきものが行なわれない形の中で、入植者数を見てみましても、移住事業団が設置されて以来、なおかつ今日減少の一途をたどっておる。たとえば、先ほど申しましたように、この事業団では役員が七名、一般職員、国内、在外を合わせまして四百四十五名、それに対しまして四十五年度の入植者数はわずかに六百二十九名でありますから、職員と移住者の数はあまり変わりはない。こういう実態を見るときに、これは必ずしも好ましい状態ではない。だんだんと移住者が少なくなる。これだけ大ぜいの職員をかかえて、かつ失敗して行った先がどこかわからない。はたして移住者一人当たり幾らぐらいかかったか。これは出していただきました資料によりますと、一人当たり約二十一万円。六百二十九名でございますから、単純計算いたしますと一億三千二百九万円。そうなりますと二十億からの事業費を使って実際の移住者に対しては総額で一億三千余万円では、一体事業団は何をやったのかということになりかねない。事業団の役員は七名でございますか。氏名、前歴及び給料をおっしゃっていただきたいと思います。
  116. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 事業団の役員は、理事長柏原信雄、俸給は四十八万円でございます。それから経歴は、昭和三十三年警察庁長官を退職しております。それから理事は、安藤吉光、給料は三十七万円でございます。昭和四十二年外務省を退職しております。それから伊藤卓也、給料は同じく三十七万円でございます。昭和四十年外務省を退職しております。それから斉藤実、給料は同じでございます。昭和四十一年会計検査院を退職しております。それからいま一人岩下龍一、給料は同じでございます。昭和四十一年日本蚕糸事業団の理事を退職しております。それから監事が一人おります。給料は二十九万円であります。昭和四十年に人事院を退職しております。いま監事が一人欠員になっております。  以上でございます。
  117. 坂井弘一

    坂井委員 役員六名全部これは天下りですね。私は、この役員構成を見まして、決して好ましいとは思えません。同時に、今日までこの事業団が行なってきた事業等につきまして、確かに困難な面はあったとは思います。しかしながら移住行政、移住政策の、これは外務省にもあろうかと思う。その失敗のしりぬぐいもしなければならぬ。そういう中で移住政策の基本的な考え方が今日確立しておらない。そうしたところに非常に大きな移住行政の迷いがある。一番そのしわ寄せを受けているのは移住者である。確かに過去におけるところの人口減らし、口減らし、そういう移住のあり方から大きく見直されて、今日移住の果たす役割りというものは、国際社会の中にあって移住者は民間外交の第一線に立つ、そういうきわめて大きな意義を持つのが移住である、そういう基本的な考え方に立たないところにこのようなきわめて好ましからざる、またきわめて残念な移住の失敗の結果が如実にあらわれている、私はこういわなければならないと思います。  時間が参りましたが、さらにもう一点お聞きしておきたいのは、この事業団発足当時に海外移住振興株式会社の欠損金九億七千万円を引き継いでおりますけれども、この欠損金は今日一体どう処理されておりますか、簡単にお答えいただきたい。
  118. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 移住の問題につきまして、海外の移住者が非常に苦労していることは事実でございます。何ぶん未知の土地へ参りまして、未知の気候と戦いながら農業をやるわけでございますので、いろいろな試行錯誤もございますし、やはり定着いたしますのに十年ないし十四、五年かかるわけでございます。先ほどもお話がありましたが、毎年六百人ぐらいの移住者に対して二十数億の金を使い、四、五百人の事業団職員がおるという御指摘でございますけれども、われわれが対象にいたしておりますのは、これらの新しい移住者のみならず、すでに移住した人々の定着援護もやっておるわけでございまして、中南米だけとりますと、戦後約六万人以上のの移住者がおります。こういうもの全体をくるめまして移住事業団としてやっておるわけでございます。先ほど御指摘がありましたような事情ではなくて、もっとたくさんの移住者のめんどうを見ている、こういう事情でございます。  それから移住の将来でございますけれども、われわれいまいろいろ考えておるわけでございまして、移住者というものは、どんどん出ていきまして、始終日本を向いていろいろな仕事をしている。結局現地におりながら、自分は日本人であるという一つの誇りを持っておるわけでありまして、われわれといたしましては、これらの移住者に対して新しい血を送るということがやはり大事なことじゃなかろうか。そういうことによりまして、その移住者を通じて国と国との関係もよくなるということも一つのねらいにしておるわけでございまして、目標としてはそういう遠大な目標を掲げておるわけでございますけれども、何ぶん農業というものは非常にむずかしい問題でございまして、いまおっしゃったような簡単にはなかなかいかない事情もございます。  それから、かつての移住振興会社の欠損金でございますが、これは移住事業団の中に別の、欠損金九億に対しまして、毎年その移住振興会社の財産から上がってきたものを、利益のある場合には利益としてこれに繰り入れ、損失のあった場合には損失としてあれしておりますが、財産の大部分が不動産でございますので、現在の時価に評価しますれば、欠損というものはあるいは補てんされ得ると思いますので、そういう形で処分済みの財産は利益ということで徐々に欠損を埋めていきたい、このような方針で対処していきたいと思います。
  119. 坂井弘一

    坂井委員 将来この欠損は解消される見通しはあるのでしょうか。簡単に具体的に答えてください。
  120. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 欠損が解消する見通し、なかなか困難ではございます。と申しますのは、いまある財産が幾らであるかという評価が困難であると同様に困難でございますが、できる限り運用よろしきを得まして、その欠損を少なくしたい、かりにありましても少なくしたい、このように考えております。
  121. 坂井弘一

    坂井委員 最後に、外務大臣に御所見なりこれからの御方針等について簡単にお伺いしたいわけでありますが、この海外移住、事は非常に大事なことだと思います。ところで、いままで申し上げましたように、必ずしもこれは所期の目的を達していないばかりか、非常に大きな失敗もある、迷いもある。そういう中で入植者は非常に困難をきわめておる。そうした中で、最初に指摘質問いたしましたように、事業団法成立の際の移住基本法なるものが十年後の今日においてもなおかつ判定を見ない。これは大臣から先ほど御答弁いただきましたけれども、さらにひとつそうした観点から、十分な、そして明確な移住行政に対する基本を織り込んだ移住基本法の制定を早急にはからなければならぬ、こう私は思うわけでありますが、大臣の御所見を承って質問を終わりたいと思います。
  122. 大平正芳

    大平国務大臣 移住行政につきましていろいろの御指摘をいただき、激励を賜わりましたことを感謝します。仰せのとおり十年前、私が外務大臣の職にありましたときに事業団法をお願いいたしまして、成立させていただいた経緯もあるわけでございます。その後、事態は非常に変化いたしましたが、変化したなりに移住政策の基本というものにつきましてもう一度新たな視野から考え直す必要を痛感するものでございまして、御指摘の点も参照しながら鋭意検討さしていただきたいと思います。
  123. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時四十三分散会