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1973-04-12 第71回国会 衆議院 決算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年四月十二日(木曜日)     午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 宇都宮徳馬君    理事 大石 武一君 理事 木野 晴夫君    理事 松岡 松平君 理事 森下 元晴君    理事 綿貫 民輔君 理事 久保田鶴松君    理事 芳賀  貢君 理事 庄司 幸助君       中尾  宏君    中村 弘海君       濱野 清吾君    吉永 治市君       稲葉 誠一君    坂井 弘一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 愛知 揆一君         文 部 大 臣 奥野 誠亮君  出席政府委員         大蔵省主計局次         長       辻  敬一君         文部大臣官房長 井内慶次郎君         文部大臣官房審         議官      奥田 真丈君         文部大臣官房会         計課長     三角 哲生君         文部省初等中等         教育局長    岩間英太郎君         文部省大学学術         局長      木田  宏君         文部省管理局長 安嶋  彌君         文化庁次長   清水 成之君         自治大臣官房審         議官      森岡  敞君  委員外出席者         会計検査院事務         総局第一局長  服部 桂三君         会計検査院事務         総局第二局長  柴崎 敏郎君         決算委員会調査         室長      東   哲君     ————————————— 委員の異動 四月六日  辞任         補欠選任   吉永 治市君     栗原 祐幸君 同日  辞任         補欠選任   栗原 祐幸君     吉永 治市君 同月十一日  辞任         補欠選任   中村 弘海君     松澤 雄藏君 同日  辞任         補欠選任   松澤 雄藏君     中村 弘海君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十五年度一般会計歳入歳出決算  昭和四十五年度特別会計歳入歳出決算  昭和四十五年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和四十五年度政府関係機関決算書  昭和四十五年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和四十五年度国有財産無償貸付状況計算書  (文部省所管)  昭和四十六年度一般会計予備費使用  総調書及び各省庁所管使用調書  (その2)  昭和四十六年度特別会計予備費使用  総調書及び各省庁所管使用調書  (その2)  昭和四十六年度特別会計予算総則第  十条に基づく経費増額調書及び経  費増額調君             (承諾  昭和四十六年度特別会計予算総則第  を求め  十一条に基づく経費増額調書及び  るの件  各省庁所管経費増額調書(その2) )  昭和四十七年度一般会計予備費使用  総調書及び各省庁所管使用調書  (その1)  昭和四十七年度特別会計予備費使用  総調書及び各省庁所管使用調書  (その1)  昭和四十七年度特別会計予算総則第 (承諾を  十条に基づく経費増額調書及び各 求めるの  省各庁所管経費増額調書(その1) 件)  昭和四十六年度一般会計国庫債務負担行為総調  書      ————◇—————
  2. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 これより会議を開きます。  昭和四十六年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)、昭和四十六年度特別会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)、昭和四十六年度特別会計予算総則第十条に基づく経費増額調書及び経費増額調書昭和四十六年度特別会計予算総則第十一条に基づく経費増額調書及び各省庁所管経費増額調書(その2)、以上四件の承諾を求めるの件、及び昭和四十七年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)、昭和四十七年度特別会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)、昭和四十七年度特別会計予算総則第十条に基づく経費増額調書及び各省庁所管経費増額調書(その1)、以上三件の承諾を求めるの件、並びに昭和四十六年度一般会計国庫債務負担行為総調書を一括して議題といたします。  まず、大蔵大臣から各件について説明を求めます。愛知大蔵大臣
  3. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま議題となりました昭和四十六年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)ほか三件の事後承諾を求める件につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、昭和四十六年度一般会計予備費につきましては、その予算額は九百五十億円であり、このうち財政法第三十五条(予備費管理及び使用)の規定により、昭和四十六年四月二十七日から同年十二月二十八日までの間において使用を決定いたしました金額は四百六十九億二百六十八万円であり、すでに第六十八回国会にその事後承諾を求める件として提出いたしまして、御承諾を得たところでありますが、その後、昭和四十七年一月七日から同年三月二十九日までの間において使用を決定いたしました金額は四百四十五億四千八百六万円であります。  その内訳は、災害対策費として、河川等災害復旧事業等に必要な経費等の十六件、その他の経費として、臨時繊維産業特別対策に必要な経費等の二十四件であります。  次に、昭和四十六年度各特別会計予備費につきましては、その予算総額は、六千五十六億一千三百二十八万円余であり、このうち昭和四十六年八月六日から同年十二月二十四日までの間において使用を決定いたしました金額は二十一億八百三十四万円余であり、すでに第六十八回国会において御承諾を得たところでありますが、その後、昭和四十七年二月四日から同年三月二十九日までの間において使用を決定いたしました金額は五百三億九千五百四十万円余であります。  その内訳は、失業保険特別会計における失業保険給付金の不足を補うために必要な経費郵便貯金特別会計における仲裁裁定実施等に伴う郵政事業特別会計繰り入れ等に必要な経費等十二特別会計の十四件であります。  次に、昭和四十六年度特別会計予算総則第十条(特別給与の支出)及び第十一条(歳入歳出予算弾力条項)の規定により、昭和四十六年六月二十二日から同年十二月二十四日までの間において経費増額を決定いたしました金額は五十五億三千七百三十九万円余であり、すでに第六十八回国会において御承諾を得たところでありますが、その後、昭和四十七年二月十日から同年三月二十八日までの間において経費増額を決定いたしました金額は四百三十七億四千七百十二万円余であります。  その内訳は、郵政事業特別会計における業績賞与に必要な経費増額及び同特別会計における仲裁裁定実施等に必要な経費増額等特別会計の九件であります。  以上が、昭和四十六年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)ほか三件の事後承諾を求める件の概要であります。  何とぞ、御審議の上、すみやかに御承諾くださいますようお願い申し上げます。  次に、昭和四十七年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)ほか二件の事後承諾を求める件につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、昭和四十七年度一般会計予備費につきましては、その当初予算額は一千八百億円でありましたが、補正予算(第一号)により七百億円を修正減少いたしましたので、改予算額は一千百億円となっております。  このうち、財政法第三十五条(予備費管理及び使用)の規定により、昭和四十七年四月十四日から同年十二月二十八日までの間において使用を決定いたしました金額は六百十七億五千四百七十八万円余であります。  その内訳は、災害対策費として、河川等災害復旧事業等に必要な経費等の三十六件、その他の経費として、衆議院議員総選挙及び最高裁判所裁判官国民審査に必要な経費等の二十六件であります。  次に、昭和四十七年度各特別会計予備費につきましては、その当初予算総額は七千五百九十五億五千八百三十三万円余でありましたが、補正予算(特第一号)により七億一千万円を修正減少いたしましたので、改予算総額は七千五百八十八億四千八百三十三万円余となっております。  このうち昭和四十七年五月四日から同年十二月十九日までの間において使用を決定いたしました金額は三百五十四億六百二十三万円余であります。  その内訳は、食糧管理特別会計国内米管理勘定における指定銘柄米奨励金及び自主流通米流通促進奨励金の交付に必要な経費等特別会計の十二件であります。  次に、昭和四十七年度特別会計予算総則第十条(歳入歳出予算弾力条項)の規定により、昭和四十七年八月四日から同年十二月十九日までの間において経費増額を決定いたしました金額は二百八十三億七千五百六十六万円余であります。  その内訳は、貴金属特別会計における金地金の購入に必要な経費増額治水特別会計治水勘定における河川事業等に必要な経費増額等特別会計の十五件であります。  以上が、昭和四十七年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)外二件の事後承諾を求める件の概要であります。  何とぞ御審議の上、すみやかに御承諾くださいますようお願い申し上げます。  次に、昭和四十六年度一般会計国庫債務負担行為総調書の報告に関する件につきまして、その概要を御説明申し上げます。  昭和四十六年度一般会計におきまして、財政法第十五条第二項の規定により、災害復旧その他緊急の必要がある場合に国が債務を負担する行為をすることができる限度額は三百億円であり、このうち、昭和四十六年発生河川等災害復旧事業費補助等八件につきまして、昭和四十七年二月十日の閣議の決定を経て、総額百四十九億六千百万円の範囲内で債務を負担する行為をすることといたしました。  以上が、昭和四十六年度一般会計国庫債務負担行為総調書の報告に関する件の概要であります。
  4. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 これにて説明聴取を終わります。      ————◇—————
  5. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 次に、昭和四十五年度決算外二件を一括して議題といたします。  文部省所管について審査を行ないます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がございますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
  6. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 文部大臣の属しておられる自由民主党綱領に、占領政策の再検討という文字かあるいはそれに近い意味のことがはっきりと書かれているわけですが、文部省所管の中で、占領政策というか、占領中にいろいろ改革が行なわれているわけですが、それがどういうふうなものであるかということですね。それについて、いまどのような再検討が行なわれておるのか、このことについてまず最初にお伺いをしていきたい、こういうふうに考えるわけです。
  7. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 占領政策の中で、すでに改正の行なわれたものもございます。たとえば、戦後取り入れられました教育委員会公選制、このあり方をすでに変えておるわけでございます。なおまた、これまでの教育諸制度がそのままでよろしいかどうか、中央教育審議会におきまして総合的な立場からいろいろ御検討をいただいたわけでございます。一応答申をいただいておりますので、答申を中心に、いろいろな方面の意見を伺いながら、妥当なものから改正に取り組んでいきたいというような考え方で進んでおるわけでございます。
  8. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 たとえば、戦後の教育の根幹をなしてきた六・三制ですか、そういうふうなものについての改革なり、それから前にさかのぼるというと、ではなぜこの占領中に行なわれたいろいろな教育改革というか、それが戦後において改変を必要とするようになってきたのかということの概略、これはわかっているといえばわかっていることですけれども、ちょっと簡単に御説明を願って、いま六・三制に対してどういうふうな改革を今後しようとしているのか、お聞かせを願いたい、こういうふうに思うわけです。
  9. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私たち六・三制は高く評価しているものでございますし、国民の間に定着していると考えているものでございます。中央教育審議会答申等を見ておりますと、直線的なコースばかりではなく曲線的なコースも考えられるではないか、それも一挙に改革をするのではなくて、先導的な試行を試みた上で改革すべきものは改革したらどうか、こういうことになっておるわけでございます。そういうこともございますので、一応若干の学校に研究をしてもらうというようなことも進めておるわけでございまして、そこで結論を得てやるというようなことではございません。一応いま研究をしてもらっておるその結果を見た上で判断をしてまいりたいということでございます。
  10. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで教育基本法、これはもちろん憲法から出ておるわけですが、その憲法占領政策中の一つの産物というとことばはちょっと悪いのですが、そういうふうな意味で再検討するというふうなことになるわけでしょうか。そこはどういうふうになるのでしょうか。
  11. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 憲法に基づきまして教育基本教育基本法に示されておるわけでございますけれども、この教育基本法をいま再検討するというようなことは考えておりません。
  12. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 ただ教育基本法を再検討しないといっても、そのより基本である憲法、しかしこれは自由民主党では再検討するというか自主憲法を制定するということを党の綱領にあげておるわけでしょう。そうなってくれば当然に、憲法自身占領政策中のものかどうかということの議論は別として、文部省としても、教育基本法その他の関連の中で再検討さるべきであるとか、あるいは改正さるべきである、こういうな考えはないでしょうか。そこはどうなんでしょうか。
  13. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 憲法改正についていろいろな意見自民党内にあることは事実でございます。論議しておられる問題が直接教育基本法に触れてくるような事項にかかるものではないわけでございます。御承知のように、自衛権をめぐりましては、解釈そのもの国民の間に大きな考え方の違いがあったりするわけでございますので、そういう意味でももう少しはっきりしたものに書き直したらどうかというような意見もあったわけでございまして、そういう点は別に教育基本法にかかわりを持つわけではございません。したがいまして、いま特に憲法改正について議論しております自民党内の意見も、直接には教育基本法には関係持ってこないという部分だ、かように御理解を賜わりたいと思います。
  14. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、もう一つの問題になってまいりまするのは、教科書検定の中で、いま裁判が行なわれておるわけですが、ある書物、たとえば「法律時報」の「憲法教育」というものの中にこういう記事があるわけですね。これは名古屋大学鈴木英一といろ教授の書かれた「戦後教育立法の動態−教育基本法の展開に即して」こういう論文ですが、この中に教科書検定実態に触れて「七三年度版高校教科書検定実態をみてみよう。たとえば、倫理・社会では七一年前期提出の一一点の中、不合格四点となっている。この不合格理由では、「日本の思想の叙述が暗い面をみすぎる」「神道、とくに国家神道の記述が、天皇制関連して、否定的にすぎる」等々であり、」いろいろいわれておるわけです。  そこでお聞きをしたいと思いますのは、国家神道あるいは天皇制、そういうものに関連をして、憲法の二十条で、信教の自由、信仰の自由というものがうたわれているわけですね。   〔委員長退席松岡委員長代理着席〕 これは、明治憲法二十八条の否定の上にもちろん立っているわけですね。そうすると、いまの憲法の二十条というものが、どういう経過でできてきたか、このことをはっきりつかんでいないというと、国家神道あるいは天皇制その他の問題に関連してくることが大きな問題になってくるわけだと思うのです。  そこで、明治憲法の二十八条と現在の憲法の二十条との違いであるとか、それが出てきた根拠、現在の憲法二十条の成立の過程、その根拠内容というか、こういうようなことについて、これはそこまで通告はしてなかったですけれども、ちょっとはずれましたが、常識的なことですから、文部大臣見解を伺って、それから次の質問に入っていきたい、こういうふうに思うわけです。
  15. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 戦前のわが国は、超国家主義的な運営が行なわれてまいった、またそのために神道というものを利用した、こうされてきていると思います。そういう反省に立ちまして、戦後の憲法改正なり教育基本法の制定なりが行なわれてまいりまして、特に宗教につきまして権力がこれに関与しないという仕組みを強く打ち出してまいってきている、これは将来ともその姿勢を強くとっていかなければならない、かように考えているわけでございます。  いま天皇という問題と神道というものとを戦後において結びつけているような式のニュアンスのあるお話があったようでありますけれども、そういうことは文部省において全然ございませんので、御了解をいただきたいと思います。
  16. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 教科書検定の中で、国家神道というものを否定的に見過ぎているということで、それが不合格になっているという例があるというふうに大学教授が書いてあるものですから、大学教授が書いたから正しいかどうかは別として、そこでお聞きをするわけですが、そうすると、憲法二十条の中の「信教の自由は、何人に射してもこれを保障する。いかなる宗教團體も、國から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。」とある。この「いかなる宗教團體」というのは一体何を含んでいるのか、神道との関係でどういうふうなものを含んでいるのか、これをお聞きしたいわけです。
  17. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 神道宗教一つキリスト教とか仏教と同じように宗教一つという考え方文部省においてはいろいろな問題の処理を進めておるわけでございます。
  18. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、これは文化庁所管になるわけですか、文部大臣だからいいでしょうね。「いかなる宗教團體」という中に靖国神社が入ると見てよろしいか。
  19. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 現在、靖国神社宗教法人のたてまえをとっておるわけでございまして、その限りにおいては同じような扱いをせざるを得ないということでございます。そのことについていろいろな意見があること、これはもう御承知のとおりでございます。現在は宗教法人として設立されたというかっこうになっておることは御承知のとおりでございます。
  20. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、靖国神社国家管理にするとか、あるいは国家護持にするとか、護持というのは内容はよくわかりませんけれども、ということは憲法二十条に違反をする、そこですね、こういうふうに直ちに見られるのか、どうなんですか。
  21. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 靖国神社がみずから宗教法人としている、そのことについてはいろいろな意見のあるところでございます。したがいまして、靖国神社宗教法人であることをやめる、そうして宗教法人でないような姿の、国民敬慕の的というようなものにしていくということになってまいりますと、私はこれは、宗教法人として律せられておったものと別な形においてこれを遇していくこと、これは可能だ、かように考えておるわけでございます。私自身の答えるべき問題であるかどうかは別にいたしまして、そういうことで、靖国神社については、やはり国民全体が国家のために命をささげた人に対して感謝していけるような仕組みをとりたいということで国家護持の問題が起こってきているのだ、かように了解しているわけでございます。
  22. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 かりにそういうふうな形を、どういう形かよくわかりませんけれどもとったとしても、それが本質的には神道であり、宗教団体であるということには変わりはないのではないですか。
  23. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いわゆる神道とは本来別なものであるべきじゃないか、なくなられた方々、これはいろいろな宗教を信じておられたのだろうと思うのでございます。そういう方々をあそこにお祭りしておる、社会のために、国民のために一身をささげた、それに対して国民はやはり感謝気持ちを持ち続けているのだから、国民全体の手で守っていきたいのだ、そうして特定宗教ではない、宗教法人というたてまえをやめてしまいたい、靖国神社もそう考えていく、そうして国民全体がやはりそういう形をとりたい、感謝気持ちをそこであらわせるようにしたい、同時にまた、お祭りのしかたについてもまた特別なくふうをしていきたい、というようなことで今日議論されているものだ、かように私は理解しているわけでございます。
  24. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そういう形をとれば、結局は憲法の二十条の、ことばは悪いかもしれぬけれども、趣旨を逸脱するというか、それを形を変えて否定をするというようになってくるのではないでしょうか。何のためにこの宗教団体神道というものが戦争中においていろろいな影響を及ぼしてきたか、このことに関連をして、それが特定宗教であって、国が特別な保護をするということが廃止されたわけですね。それが結局形を変えて実際にはまた出てくるということになるのじゃないですか。ここら辺は、率直に言えば見解の相違というか、そういうことになってくるかどうか。これは最後はそういうようになるかもしれませんけれども、どうもそこら辺のところが、なぜそういうふうな議論が出てきたのかぼくにはよくわかりませんが、現在どの程度話は進んでいるのですか。これはどこが主管なんですか。
  25. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 神道にしろ、一般宗教特定の宗義を広めようとしているのだと思うのでありますけれども、そういう点をやはり靖国神社は根本的に違うのじゃないかと思うのです。昔から国のために一身をささげた人をあそこにお祭りする、そして国民みんながあそこで感謝の念をささげておった、かように考えるわけでございます。戦後そういう姿が許されませず、届け出によって宗教法人になった、届け出によって靖国神社宗教法人の資格を持ったということで今日に至っておる、その結果、国家が特別それに対して保護を与えるということは許されない、それが国民感情に合わなくなってきている。そういう点からいたしまして、これは政府がそういう動きをしているというよりも、自民党の中で、ぜひ国家靖国神社をお祭するような体制を打ち出したいということで靖国神社法案というものがつくられ、そして幾たびか議員提案国会へ提案されてきているという経過がございます。政府がこれを直接処理しているというものではございません。
  26. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはいろいろその人の持っておるものの考え方によって根本的に分かれるところですから、ここで議論をしても平行線になることだと思うし、議論そのものとしてはまだ時期がちょっと早いようにぼくも思うものですから、この程度にしておくわけです。  そこで、別の問題になるのですが、これはあとで会計検査院にもお聞きをしたいところですが、よく私どもが聞くのは、私立医科大学、まあ歯科大学も入ると思うのですが、そういうふうな大学に入るのに、どういう名目かは別として、非常にお金がかかるということがいわれて、それが事実としていろいろ出てきているわけですね。どういう名目かはよくわかりませんけれども、その辺の実態、これは文部省としてはどの程度に把握をしておられるわけですか。
  27. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 私立医科歯科大学におきましてかなり多額の経費を徴収しておるということは事実でございますが、まず第一に、正規に徴収しておるものといたしましては学生納付金というものがあるわけでございます。四十八年度の状況でございますが、医歯系平均をいたしまして、授業料が約三十九万円、入学金が約二十万円、施設拡充費が約三十九万五千円、その他実験、実習費等が八万円、合計約百六万円程度正規徴収金があるわけでございます。  このほかに任意の寄付金ということでございますが、かなり多額の寄付金が徴収されておるのでございます。その的確な状況は私どももつかみ得ておりませんが、昭和四十六年度、これが最近の調査でございますが、その結果によりますと、入学者平均で申しますと約三百九十一万円でございますが、寄付者一人当たりにいたしますと約六百万円という寄付金が徴収されておるということでございます。これは医学部の数字でございますが、次に歯学部について申し上げますと、入学者一人当たりにいたしますと約四百万円、寄付者一人当たりにいたしますと約四百四十万円の寄付金が取られておるということでございます。  私ども、私立医科大学あるいは歯科大学を認可いたします際には、入学の条件としての寄付金は、これは絶対に取ってはならないということ、それから不当に高額な寄付金は、これも取ってはいけないということを強く指示をいたしております。にもかかわらず、かなり高額の寄付金が取られておるということは私どもたいへん残念に思う次第でございますが、文部省といたしましては、この私立の医学部、歯学部に対する助成を強化することによりまして、私立の医学部、歯学部全体の経営状況を改善し、ひいてはこうした事態の是正にもつとめたいというふうに考えておりまして、四十八年度予算におきましては、私立の医学部に対しましては、対前年度約十六億円増の七十四億円の補助をするという予定でございます。歯学部につきましては、対前年度六億円増の約二十三億円の補助をしたいということで、必要な予算を計上していただいた次第でございます。
  28. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いま、その状況を的確につかみ得ないということを最初に言われましたね。これは理由として考えられるのは、法律、制度の上から的確につかみ得ないようになっているのかどうか。そうじゃないのだ、実際はつかみ得る状況であるのだけれども、いろいろ向こうもほんとうのことを言わないとか、いろいろなことがあると思うのですけれども、そういうようなことで的確な状況がつかみ得ないのか。これはどうなんでしょうか。
  29. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 的確な状況がつかみ得ないと申し上げました意味は、実は直近の状態における調査がないわけでございます。したがいまして、ごく最近の状況につきましてはつかみ得ていないということが一つ。したがいまして、ただいま四十六年度の状況について御報告を申し上げたわけでございます。  それから法律上のたてまえといたしましては、これは私学法の規定によりまして、所轄庁は学校に対して調査上必要な報告を求めることができます。ですから、それで取ることはもちろん可能でございますが、ただ実際の状況が、四十六年度の場合におきましても、正確に報告されているかどうかという点につきましては、若干問題があるように感じております。
  30. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私どもの聞く範囲あるいは巷間いわれる範囲は、いまあなたの言われたような金額じゃないわけですね。大体けたがもう一つ上ですね。安いところで——安いところと言っては語弊がありますけれども、大体一千万円以上とか、いろいろあるでしょう。いま言った医学部が六百万、歯学部が四百何十万、そういうふうなものじゃなくて、もうおそらくこの数字の倍以上のものが取られているというふうに、私らいろいろな人、実際の受験生や何かから聞くわけですよ。  そこで、いま言われた、入学を条件に取ってはいけないということと、それから不当に高額なものを取ってはいけない、この二つを条件にしているというのでしょう。そうすると、いま現実に入学のときに取られておる多額の金から見て、この二つの条件との関連はどういうふうになっているのでしょうか。
  31. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 先ほど申し上げましたように、私学でございまする以上、任意の寄付金を禁止するということは、これは私学の経営という観点から考えまして問題があるわけでございます。したがいまして、任意の寄付金は、これは差しつかえないという前提に立っておるわけでございますが、しかし私学の公共性という点から考えまして、幾ばくかの寄付金を出さなければ入学をさせない、そういうことでございますと、これはやはり法制的にも問題があるから、それは困ると申しております。それに対しまして学校側は、入学を条件とする寄付金は一切取っておりませんというのが各私学の回答、意見でございます。  それから、不当に高額の寄付金というのが幾らかということが問題でございます。私どもが幾らがいいという言い方をいたしますと、それまでは当然認められるのだというような結果にもなりかねませんので、文部省といたしましては、不当に高額な寄付金が幾らであるというようなことは申しておりません。おりませんけれども、私ども、昨今伝えられるような額は、これは明らかに不当である、そういう点は直してもらいたいというふうに考えておる次第でございます。
  32. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 文部大臣、いま局長の言われたことはまたあとでちょっと分析して聞きたいと思ってはいるのですが、あなたとしては、いまの私立医科大学なり歯科大学、そういうようなものが実に高額な、普通一千万以上とっているようですね。ただ、安いところでは八百万くらいのところもあるのですけれども、そんなに多額な寄付金をとり、事実上それが入学の条件になっている。事実上ですよ。法律的に入学の条件になっているかなっていないかということはなかなかわかりにくいかもしれませんが、事実上入学の条件になり、しかも非常に多額な寄付金がとられて、一般国民が非常に困っているわけですね。このことに対して、一体文部省としてはどういうふうに考え、どう対処していきたいのか。これを大臣として、こまかい技術的な答弁はいいのですけれども、大局的な一つのものをお聞かせ願いたい、こう思うわけです。
  33. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 医科大学歯科大学の入学をめぐりまして多額の寄付金のことがうわさされております。私、このことが純真な青少年の心をひどくむしばんでいるということをいたく心配している一人でございます。なぜそういうことになっているのか。四十五年から後におきましても、医科大学歯科大学につきまして、私立のものを二十一校認可したわけでございます。私立の学校が医師、歯科医師の養成に対しまして大きな役割りを果たしてくれている、このことについては感謝したいのでございますけれども、いまのような問題につきましては、このままでは放任できないじゃないかという気持ちも抱いております。そういうこともございまして、四十五年以後認可いたしました医科大学歯科大学がどういうような姿になっているのだろうかということで、あと追い調査を始めたところでございます。しかし、いずれにしましても、医科大学歯科大学にはばく大な経費を要することでございますので、私立のままで多額の寄付金を求めないで運営していくことはかなり困難はあるだろう、そうすると、今後は私立医科大学歯科大学の認可は特に慎重を期したい、そのかわり国立、公立の医科大学歯科大学を積極的につくっていきたい、こう考えているわけでございまして、四十八年度で三校、四十九年度で四校、それ以後もさらに引き続いて国公立の医科大学歯科大学の設立を考えていきたい、こういう気持ちを持っているわけでございます。ばく大な金がかかりますだけに、やはり根本的に国公立中心で養成をはかっていくべきだろう、こういう考えでございます。
  34. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そのあと追い調査というのは、具体的にはどういうふうなことがどの程度進んでいるわけですか。それはあまり明らかにしちゃうと、相手方がいろいろ防備するからぐあいが悪いと言うかもわからぬけれども、それが一つと、それから、いま局長も言われた中で、十分に実態を把握していないようにとれるわけです。あるいは把握しているのかもわからぬけれども、あまり露骨に公式の席で言うわけにもいかないという配慮もあって、多少その点を低目に言っているのかもわかりませんけれども、実態はそんなものじゃないんじゃないですか。もっとひどい。それは学校によりますよ。いろいろな学校があるから一がいに言えません。私立でもいいのがあります。いい大学もあるし、いろいろありますから言えませんけれども、もっと実態を把握して、あまりひど過ぎるのが多いわけですから、それについて文部省として積極的なやめさせる手を、それは国立大学をふやすことももちろんあるけれども、それだけではなくて、私立大学のそういうふうなものに対する是正の措置をもっと積極的にとれるのじゃないか。その前提としてもっと実態をしっかり把握する必要があるのじゃないですか。何か遠慮しているのじゃないですか。そういうふうにとれる。不当に高いという不当が幾らかということを文部省で発表しろ、そんなことを言っているわけじゃない。そんなことを発表したらもの笑いの種ですから、実態の把握に対する熱意がないということ、私立医科大学その他に対する遠慮があるのじゃないか、こう思うのですが……。
  35. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 あと追い調査をしている過程でいろいろ疑問を持っておりますのは、認可にあたって経費の三分の二は自己資金を持っていなければならないということになるわけでございます。はたして三分の二だけの自己資金を用意しておられたのかどうか、これは私たちの一つの調査の眼目でございます。それだけのものを整えた、それだけの寄付金をもらっておるのだということで申請が出ているなら、やはりそのとおり実行してもらいたい、これが一つでございます。それともう一つは、認可にあたっては、そういうこともあるからかもしれませんが、わりあいに少ない総額を言ってこられている。実際の建設にあたっては五割増し、十割増しのものをつくっておられる。だから認可申請と認可後の運営がちぐはぐになっているところがずいぶんあるようであります。その他いろいろな問題がございまして、ぜひ是正を求めたいとも思いますし、またごめんどうを見なければならないものは個別に私たち調査いたしまして、個別に相談をしながらめんどうを見る道を考えていきたい、こういう気持ちも抱いておるわけでございます。まだ調査中でございますので、全体がまとまっておりません。ただ経過的にいまのようなことは申し上げることができると思うのでございます。先ほど管理局長がお答えをいたしましたのは四十六年度の数字でございます。同時にまた平均でございます。でございますから、他のところでも、最高はどのくらいあったのかということに対しまして、管理局長から二千百万円でございました、こうも答えておるわけでございます。したがいまして、今日最高をとりますと、私たちが心配するような結果になっているのじゃないかなというおそれも抱いておるわけでございます。いずれにしましても、この問題を私はこのままではもう放任できないのじゃないかという気持ちを強く抱いておるものでございまして、そういう気持ちで対処しているところでございます。
  36. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 よくわかりましたが、いま現実に問題になっているのは松本の件だけですか。そのほかにあるのかもわかりませんけれども、その概要、ほかの委員会でも問題になっているでしょうからいいですけれども、場合によっては認可の取り消しということも考えられると理解してよろしいでしょうか。
  37. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 検察庁が手入れをした、たいへん不名誉なことでございますけれども、それは松本歯科大学だけでございます。この学校につきましては、すでに一年生、二年生が入学しておるわけでございます。したがいまして、再建をはかってもらう、それに対して文部省も協力していこうという気持ちでおるわけでございまして、認可を取り消すというようなことは考えておりません。
  38. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは、現在学生が入っておれば、その学生に及ぼす影響もありますから、そこら辺のところはそう単純にやっていくべき筋合いのものではありませんから、いま言ったように、私は認可取り消しということは何も松本のことについて言っているのじゃなくて、一般論としてのことだというふうにお聞き取り願いたいわけです。  そこで、今後の国立なり——公立の場合は直接には関係ないかもしれませんが、あるいは自治医科大学のようなもの、あるいは形は私立だけれども実際は公立みたいなものですね、それは別として、国立の医学部の入学定員の増ということについての、これは四十八年まではわかっているし、四十九年のこともちょっと出ましたけれども、ある程度の年期計画といいますか、五年なら五年とか、将来のこともあるし、もちろん予算の伴うことですから、そうはいかないとしても、年期的なある程度の増員の計画というか、そういうものはあるわけですか。
  39. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 日本に医師が何人ぐらいあればいいのかという問題が根本だろうと思うのでございます。現在のところ厚生省では、人口十万人に百五十人とおっしゃっておられます。私たち、これは将来もっとよけい要るのではないかと思うのでございますが、これは厚生省の意見に従わざるを得ないと思うのでございます。四十八年度で国公私立合わせまして入学定員が六千二百人でございますが、これで養成をしてまいりますと、六十年を待たずに人口十万人に対しまして百五十人ということになるわけでございます。したがいまして、それ以後はだんだんふえまして、最高は人口十万人に対しまして二百二十人くらいになるわけでございます。しかし、いまも申し上げましたように、将来はなおもっと医師の需要がふえるのではないかという気持ちもございますし、同時にまた、総数で言うのではなくて、それぞれの地域に均衡のある配置が得られなければなりませんので、特に無医大県などにつきましては積極的に何らかの対応策を講じていくべきだというようなことから、無医大県を中心にしてなお一そうの増設をはかっていきたい、こういう気持ちでおるわけでございます。ただ、五十年以降何校つくるかということはいまきめておりませんけれども、厚生省のほうが人口十万人について百五十人という数字を変えていただけば、それに従って計画を立てることができるわけでございますが、いまのところは十万人に百五十人とおっしゃっている、それは満たせる医師養成ということにはなっておるわけでございます。しかし、なお積極的なかまえは持っておるということでございます。
  40. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはわかるし、文部省所管なのかあるいは厚生省の所管なのか、その辺のところはいろいろあると思うのですけれども、かりにそういうような平均だとかなんとかいっても、それは都市に集中するだけの話であって、いまちょっと言われましたいなかのほうはお医者さんがなくて非常に困っているわけでしょう。そういうふうなことについての文部省としての考え方、そういうお医者さんのいないところは日本でもたくさんありますから、そういうところに学校を出たお医者さんを配置するというような考え方、いま自治医科大学がちょっとやっていますね、義務的にやっているわけでしょう。そういうようなのは文部省としては具体的にはどういうように考えるわけですか。
  41. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 学校教育法に基づきます大学の設置に関します問題は文部省所管でございます。しかし医師の国家試験でございますとか医療行政というような問題は厚生省の所管でございます。そういうことで、地域にくまなく医師が配置されるというような性格の問題は厚生行政の問題だと思います。問題だと思いますが、文部省もそういうことについて無関心であるべきではないと思います。ということもございまして、沖繩県の琉球大学に医学部を設けるというお話がございます。私、先般琉球大学の学長に対しまして、琉球大学に医学部を将来つくりたい、しかしそこを卒業した方々が沖繩県の島々にも残って活動してくれる、そういう仕組みも考えなさいよ、沖繩県と相談をしながらそういう仕組みも打ち立ててくださいよ、そして私たちのほうで医学部をつくるように努力していこうじゃありませんか、こういう話をしたところでございまして、基本的には、厚生省の所管でございますけれども、私たちも決して無関心でおるわけではございません。
  42. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私学に対する、私立の医学部等に対する国庫補助が、経常費の補助や研究設備費の補助あるいは新設理工系の補助という形でいろいろ出てくるわけですが、会計検査院としては、こういう点について適正に使われておるかどうか、こういうようなことについてどの程度検査をするのですか、あるいはしないのですか。いままでの経過はどうでしょうか。
  43. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 私学の補助金のうちで一番大きい補助金でございますが、経常費補助金というのがございまして、これは私学振興財団を通して助成をしている要するに文部省の補助金でございますが、文部省から財団に交付されまして、財団が各私学の法人に対しまして配分を行なっている、こういうことになっております。  それで、私どものほうといたしましては、この財団を検査の対象といたしまして、財団の配分が正しいかどうかということを私学そのものに当たりまして検査をいたしております。大体昨年の例で六十校ほどの検査をいたしました。その前の年も大体同数の大学について検査をいたしました。  検査の内容でございますが、この経常費補助金の配分は、その算定の基準といたしまして、大学の教職員の給与費をそのおもなものにいたしておりまして、学校の教官数を基準にいたしまして、そのほかに学生数とか、あるいは大学の財政状況とか、そういったものを勘案しながら財団で一定のものさしのもとに配分を行なう、こういう仕組みになっておりますので、それらのものさしに照らし合わせまして、配分が適正であるかどうかということを私どもでは検査いたしておるわけでございます。  それで、四十六年にそれらの検査の結果、どうも配分に思わしくないところが多々見受けられました。と申しますのは、財団側の査定といいますか調査も十分でなかった点もありますが、大学側のほうでそれらの自分たちの大学のいろいろな資料の提出にあたりまして正確な計数等を提出しないというような傾向が見られまして、そのために大学に過大に交付になっているというような例が相当数見受けられましたので、これについて是正改善するような趣旨において改善意見を財団あてに出しております。  それから昨年の検査におきましても、財団のほうでもだいぶ努力はされておるのですが、数多い大学のことでございますので、なおそのような同じような傾向が見られましたので、それについて指摘をいたしております。  以上でございます。
  44. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いま改善についての意見を出したということですが、どういう意見を出したのかよくわかりませんが、意見を出してその後はどういうふうになったのですか。あとのことは会計検査院としては関与しない、こういうことなんですか。それはあとは文部省がやることだ、こういうことですか。どういうことなんです。
  45. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 財団に対しまして私どものほうで申し送りました改善措置要求の意見内容は、要するに、この経常費補助金の予算のワクというものはきまっておりまして、これを各私学の大学で配分をするわけでございますので、公平な配分ということが第一義でございます、絶対額が足りるわけではございませんので。そこで、ある特定大学だけが不実の申告をするということになりますと、その大学だけに他大学との比較においてよけいの補助金がいくということでは均衡上もたいへん困りますので、それらの資料の提出について、この補助金の趣旨を徹底して、各大学が正確な数字を出すように十分な指導を行なってくれということと、あわせて財団もその当時はこの仕事を始めた初年度でございましたので、事務にふれない点もありました。そこで内部の体制をもっと強化して、提出された資料というものをうのみにしないで、大学側についてときにはその実態の調査をするとかいうような形で適正な算定なり配分ができるように努力をしてほしい、こういう内容意見の表示があったわけでございますが、それに基づきまして財団のほうでは内部の機構を改変いたしまして、単なる算定ということだけでなく、大学の実情の調査を具体的に行なうというようなスタッフも中に設けまして、その後努力をしておるわけでございます。私どものほうといたしましては、それらの効果が実際上どのように上がっているかということは、昨年の検査を通じましてそのあとを確かめて、確認をしておる、こういうことで、差し上げた意見がそのままにならないように努力いたしているわけでございます。
  46. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 何だかわかったようでもあるし、わからないようでもあるのですが、そうすると、ある分け方でよけいに取ったところもあるのですね、不正に分配を受けたとかなんとか。それはちゃんと返させたのですか。そこら辺のところが何か返事がぴっと出てこないですね。
  47. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 御説明が不足いたしまして失礼いたしました。おととしの検査の結果、金額の多少はございますが、相当数そういう大学があったわけでございます。その中で極端に悪質と見られるものにつきましては、その年度中に過大交付された金額だけでなくて、交付したその金額そのものを返還、要するに補助金適正化法違反ということで返還をさせております。それからそのほかの過大交付の分につきましては、翌年度の補助金交付の際にその分を減額して交付する、こういう措置で是正さしております。
  48. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはいずれ決算報告書に出るわけですか。
  49. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 ただいま申し上げました、おととし出しました改善意見につきましては、検査報告に掲記いたしてございます。  それから昨年検査いたしました結果につきましても、これは不当事項ということで掲記されております。
  50. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 もう一つ別なことなんですが、近時、ことに中学ですが、町村合併に伴って中学ができるわけですね。できるというか、統合されたりなんかする。そのことをめぐっていろいろ紛争が起きていますね。たとえばあれは茨城の下館の近所ですか、何か小学生が一人自殺したというようなことも新聞に出ておった。   〔松岡委員長代理退席、委員長着席〕 私どもの栃木県では、田沼というところで、これは予算の分科会や何かで再三質問があったところですから多くのことを申し上げないですけれども、中学の統合とかあるいはそういうふうなことに関して、たとえば田沼のことなんか聞きますと、スクールバスとかはあるとしても、その中学まで行くのに相当、二十キロくらいあるところもある、近いところももちろんありますが。そうすると相当強引に無理をして統合するというか、いろいろなことをやるわけですが、それに関連して文部省としてはどういうふうな考え方であり、どういうふうな指導をしているわけですか。いま栃木県と茨城県で問題になっておりますが、そのほかでも全国にいろいろこういう問題があると思うのです。実態はどうで、どういうふうな指導をしておるわけですか。
  51. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 学校統合は、御承知のとおり小規模学校を適正な規模、標準的な規模にまで統合いたしまして、教育効果をあげるということが主眼でございます。文部省といたしましては、昭和三十一年度以来そうした方針で指導しておるわけでございますが、しかし御指摘のように、学校を統合するということは地域にとりましてはたいへん大きな問題でございますので、特に私ども、地域住民の理解と協力を得ることが大事だということを強調いたしておるわけでございます。にもかかわらず、ただいま御指摘のような例、これは全国でもわずかでございますが、統合をめぐる紛争が生じておることはまことに遺憾でございます。私ども機会あるごとに無理な統合が行なわれないようにという指示をしておるわけでございますが、今後ともさらにそうした方向で指示をしてまいりたい、指導をしてまいりたいというふうに考えております。
  52. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 統合をめぐって無理なことをやらないように指導していきたいというが、具体的には文部省としてはどういう指導をするのですか。
  53. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 まず学級数でございますが、学校統合の手引きあるいは義務教育諸学校施設費国庫負担法の施行令におきまして標準規模というものを示しておりまして、これは十二学級ないし十八学級が標準規模である、例外的に二十四学級ということもあり得る、さらに支障がないということであれば、二十四学級以上のものでもいいということではございますが、十二学級ないし十八学級ということが基本の原則でございます。  それからもう一つは通学距離でございますが、これがいたずらに遠くなることは児童の心身に与える影響が悪いものでございますから、小学校におきましては四キロ程度、中学校におきましては六キロ程度ということが政令で示されておるわけでございます。ただ、これは制定当時から、徒歩による距離、歩いて通う場合の距離がそういう程度が適切であるという指導基準でございます。ところが最近、御承知のようにスクールバスというものがかなり運行されてまいりまして、かなり遠距離の通学を前提とした学校統合が行なわれるような事例があるわけでございます。そうした際のバスを利用する場合の通学距離あるいは通学時間というものの具体的な基準は、私ども現在持っておりませんが、最近の事例にかんがみまして、これは早急に何か標準を示すべきであろうというふうに考えております。しかしバス等を利用する場合でありましても、あまり遠距離な通学を前提とする統合が行なわれることは、教育的にも好ましくないというふうに考えております。
  54. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると文部省では、いま言ったように、統合をするように、そのほうが教育効果があがる、こういう形で指導しているのでしょうけれども、それを府県の教育委員会などではストレートに受けちゃうんじゃないですか。あまり無理するなといったって、無理するなというところまで文部省がちゃんと言っているのか。そこらは言わないので、ただ統合しろというところだけまともに受けちゃうから、相当強行策で統合をして、あちこちで問題を起こしておる、こういうふうなことに現実にはなっているのじゃないかと思うわけですが、いま言ったようないろいろなことがありますから、無理をしないようによく文部省としても指示をしていただきたい。いろいろな形で人権問題が起きるわけですよ。子供さんなんかそのことに関連をして自殺したように何か新聞ではとれたのですが、下館のあれです。それからいろいろあるようですけれども、そういう点についてはあまり無理をした形で統合を進めないように、文部省としても指導というのか指示というのか、それをしていただきたい、こういうふうに思うわけです。その点の大臣のお答えをお聞きして、時間ですから私の質問は終わります。
  55. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 茨城県の問題は、どうも統合が直接の問題じゃないようでございますし、また自殺もしていないようでございます。しかし、いずれにしましても、学校統合は教育効果をあげるのが目的でございまして、あとに異常なしこりを残すというようなことでは、かえってマイナスの面も出てくるかと思います。十分な理解が得られ、その理解の上に立って教育効果をあげる必要な統合が行なわれる、そういう慎重な配慮がお説のとおり大切なことだと思いますので、そういう考え方で指導に当たってまいりたいと思います。
  56. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 庄司幸助君。
  57. 庄司幸助

    ○庄司委員 私は、文部大臣に私学の問題、特に私立高校の問題にしぼって御質問したいと思うのですが、まず第一番目に、いま日本の高校教育に果たしている私立高校の役割り、これについて文部大臣がどのように御認識していらっしゃるか、この辺を伺いたいと思います。
  58. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 高等学校在学生のうち三一%が私立の高等学校に通っているわけでございます。そればかりじゃなしに、私立の高等学校はそれぞれにそれなりの学風を持っているのじゃないか、かように考えるわけでございまして、国公私立、それぞれの学校が学風を競い合いながら、多彩な人材を育成してくれる、そのことが社会を押し上げていく大きな力になっていくということで、私は私学の存在意義そしてまた役割りは、これを高く評価している一人でございます。
  59. 庄司幸助

    ○庄司委員 そこで、ちょっと伺いたいのですが、だいぶ古い話ですが、昭和二十四年、第六回国会で、衆議院の文部委員会において私立学校法の審議があったわけですが、その際、私学の問題について、当時の高瀬文部大臣が次のような見解を示しておられるわけです。私学が経済的な困難な事情にあることはわかる。しかし現状としてはやはり私立学校というものは財政的にも独立をして、独立の立場で独自の校風をつくってやるのが理想的である。そういう点で国庫補助をするということは適当でないと考えます。こういうふうに答えておられるわけですね。こういった当時の文部大臣見解、これはだいぶ古いのですが、こういった見解奥野文部大臣は変わっておられるのか、あるいはこういう見解を持つのか、その点ひとつ伺いたいと思うのです。
  60. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私学がみずからの責任においてその経営に当たっていくべきであるという基本考え方は全く同じでございます。ただ、国公立の高等学校が社会に果たしている役割り、それに劣らぬ役割りを私立の高等学校が果たしているとしますならば、国公立の高等学校につきましては国民の税金の金を使っているわけでございますので、それなりに私立の高等学校に対しましても税金の金を使うべきであるというのが私の考え方でございます。
  61. 庄司幸助

    ○庄司委員 そうすると、実はこれは文部省か自治省か、ぼくははっきり覚えていませんが、たしか昭和四十四年か四十三年ごろ、愛知県からの照会だったと思うのですが、私立学校の生徒さんに授業料補助をやる、これはやっていいのか悪いのか、この点について当局の見解を聞かれたわけですね。それに対する答えとして、私立学校は独自の建学の精神で建てられているのだ、だからこれはそういう校風を慕って進学するものであるから、そういう生徒さんや父兄に対しては補助するのは妥当でない、こういう見解が示されたような記憶があるわけです。もしそれが示されているとすれば、こういった当時の見解について、文部大臣としていまでもそういう御見解なのか、それとも変わったのか、この点お伺いしたいと思います。
  62. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 高等学校にいたしましても大学にいたしましても、時代の変遷とともに社会における役割りというものがずいぶん変化してきている、かように考えておるところでございます。今日におきましては九割近い方々が高等学校に通っておるわけでございます。特別に限られた人だけが特定の学校に通うのでございますなら、それは私は受益者負担的に、補助金は要らないのじゃないか、通う人たちが受益するのだから、その人たちで全額負担していきなさいよ、こういうことも言えるかと思いますけれども、今日の高等学校の姿から考えてまいりますと、私は、そういう考え方はあるべきではない、こう思っているわけでございます。同時に、いま四十四年というふうにおっしゃったと思うのでありますが、四十五年に私立の高等学校その他大学まで、経常費助成を行なうことに踏み切ったわけでございます。経常費助成を行なうことがいいのか悪いのか、やはり議論があったわけでございますが、学校の果たしている役割りから、やはり経常費助成に踏み切るべきだということで四十五年に踏み切ったわけでございまして、高等学校につきましても、府県から、ちょうど国から私立大学に対して経常費助成を行ないますことと同じような補助で助成をしていくということで今日続いているわけでございます。したがいまして、直接であれ間接であれ、私立の高等学校の授業料の負担が軽減されている、緩和されている、そういうことになっているわけでございますし、それを促進する施策を進めているわけでございます。
  63. 庄司幸助

    ○庄司委員 そこで事務当局に伺いますが、昭和四十五年から私立高校に対して経常費助成が始まった、それで、昭和四十五年から現在までの、ごく最近までの経常費助成の額の推移、それと私立高校の授業料その他を含めた納付金全体、この金額の推移をひとつお示し願いたいと思うのです。
  64. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 府県の補助の内容の推移でございますが、実は各府県はいろいろな名目で補助金を出しております。施設費というものもございますし、設備費というようなのもございますし、あるいは共済組合に対する補助でありますとか、あるいは退職金財団に対する補助でございますとか、いろいろな補助金を出しております。しかもそれが一括して予算に計上されておるというような形のものがございます。したがいまして、経常費の補助だけの額というのは実は手元にないわけでございます。  私学助成費全体の推移ということでお答えを申し上げたいと思いますが、昭和四十五年度におきましては、決算額におきまして都道府県は私学に対して百六十五億の補助をいたしております。昭和四十六年度は二百三十六億、これも決算額でございます。四十七年度は、これはまだ終わったばかりでございますが、補正予算も含めまして三百二十七億という助成が行なわれておるというような実情でございます。  それから私立高校の授業料、納付金の推移でございますが、授業料入学金、受験料、それから施設拡充費等を含めた総額について申し上げますと、四十五年度から申しますと、四十五年度は約九万円でございました。これが四十六年度におきましては約九万五千円になっております。それが四十七年度におきましては約十一万五千円というような数字になっております。
  65. 庄司幸助

    ○庄司委員 もう一つ伺いますが、これは都道府県の決算の額ですね。それぞれお示しいただいたわけですが、四十五年度からは、御承知のとおり交付税として、いわゆる私学に対する助成に見合った交付税が出ているわけでありますが、四十五年度、四十六年度、四十七年度の交付税の額はどれくらいになっていますか。
  66. 森岡敞

    ○森岡政府委員 お答えいたします。昭和四十五年度で地方交付税の基準財政需要額に算入いたしました私学助成費は八十三億円でございます。四十六年度が百四十一億円、四十七年度が二百三十五億円。なお、四十八年度はこれから算定するわけでございますが、おおむね三百九十億円、こう予定いたしております。
  67. 庄司幸助

    ○庄司委員 いまいろいろ御説明があったわけでありますが、四十五年度から交付税算定の基礎に繰り入れていった、それから都道府県もそれぞれ百六十五億、二百三十六億、三百二十七億と私学補助をやっていったわけですが、しかし、いまの納付金の金額の推移を見ますと、四十五年が九万で、四十六年が九万五千、四十七年が十一万五千、四十八年は、これは最近入学式その他もあったわけですが、入学金その他もやはり高くなっている。それから私学関係者の中には、文部省があまりにも私学に対して冷たいというので、この際世論を喚起する意味でどんと授業料を上げてみたらどうだ、これは少し極論だろうと思いますが、こういう言説さえ伝わっているわけですね。そうしますと、四十八年度はおそらく十一万五千じゃなくて、もっと高くなる。その点で私は、いままでの私学助成がある程度の役割りを果たしたことは認めますけれども、しかしやはり焼け石に水の観があるのじゃないか。実際数字の示すところ、私学助成を都道府県やあるいは国がやってはみたものの、依然として生徒一人当たりの納付金が上がりつつある。歯どめがないのですね。このような実態について、私は文部大臣も御心配なさっているとは思いますが、どういう歯どめ策を講じたならばこういった私学の納付金がどんどん上がるのを防ぐことができるか、その辺文部大臣の所見をひとつ示していただきたいと思います。
  68. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私学助成を始めたのは四十五年でございまして、四十五年に経常費の一割を目途として、だんだんこれを引き上げていきまして、四十九年度に五割に持っていきたい、五割に持っていっても、なおその算定のしかた等について問題がありますので、その際にそれから先どうするかということについてはもう一ぺん検討したい、こう考えているわけでございます。いずれにいたしましても、経常費の一割から五割へ毎年一割ずつ上げていくわけでございますので、相当な効果を私は果たしていると思うのでございます。学校当局が困っておられるのは、根本的に人件費で、毎年給与の改定を行なってきております、これをどうまかなっていくか、これが一番頭の痛いところのようでございます。これに対しまして、いま経常費助成はやはり給与の額をとっているわけでございますので、改善された給与額を毎年基礎に置いて一割、二割、三割、四割、五割と率を引き上げていっておるのでありまして、やはり私は、私学に対して相当な援助になっているのじゃないか、かように考えているわけでございます。  同時に私は、授業料の場合には、その高等学校が提供しているサービスに見合ってきまってくるべきものだ、画一的に論ずることはいかがなものだろうか、こういう気持ちも持っているわけでございます。しかし、いずれにしましてもあまり高額なことは好ましくございませんので、できる限り高額引き上げにならないでやっていけるような配慮を国としても努力をしていきたい、かように思っているわけであります。
  69. 庄司幸助

    ○庄司委員 それで、授業料を含めた納付金全体、これについての公立と私立の格差が非常にあるわけですね。この格差を見ますと、これは実は宮城県の一つ実態でございますが、授業料についていうならば、公立高校は一カ月九百円でずっとストップしているわけですね。ところが私立のほうは、昭和四十一年が二万七千六百二十三円年間に納めていたわけですから、これは一カ月大体二千円ちょっとですね。それが昭和四十七年になりますと、平均で四千五百三十五円、約倍くらいにはね上がっている。最高の場合は五千九百円取っている学校もある。最低でも三千円である。ですから、最低の私立高校と公立高校を比べただけでももう三倍以上違う、こういう格差があるのですね。それから、公立高校にはほとんど見られない入学金、これも一万六千九百円平均から約三万円くらいにはね上がっている。それ以外の納付金が七千百円取られる。それから入学時の納付金を見ますと、約五万円近くにも平均でなっているのですね。これに対して私学に対する県費補助、宮城県だけで見てみますと、生徒一人当たりの県費負担は、公立は十四万七千円負担しているのですよ。ところが、私立はたった七千七百円しか負担しない、こういう数字が出ているわけです。そうすると教育基本法、私きょう六法を持ってきていませんが、あの中には、いわゆる教育というものは、経済的条件やあるいは門地門閥、こういうものによって差別されないのだ、この点が明確にうたわれているわけです。しかも高校進学率が年々増加しまして、もう九〇%近くなっている。これはもう少しすればおそらく九五%くらいにいく。そうなれば、高校教育というのはほとんど義務教育とは言えないにしても、あらゆる親御さん、あらゆる子供さんがどうしても高校には入りたい、こうなるわけですね。これがいまのような不当な差別があるのは現実なんですね。だから、このような差別によって高校にも行けない、こういう実態が相当どこにもあると思うのです。宮城県で起こった事例でありますが、中学校の先生から、きみは成績があまりよくないから公立高校は受けてもむだだ、私立高校を受ければ通れるだろう。ところがその家庭は私立高校に入れるだけの財政的な状況にないわけですね。そのためその生徒さんが二、三人集団を組んで、自転車だったかオートバイ、これをちょっと失敬して、何でも秋田県あたりまで遠乗りして、それでつかまったなどという事例も出ている。あるいは、これは事情が違いますが、別な中学校では、学校に放火するような生徒さんまで出てきている。だからこれは非常にゆゆしい問題だと私は思うのです。  もう一つ、それを具体的にあらわしている数字を申し上げますが、これは仙台で私立高校に入った生徒さんや家庭のアンケート調査をやったのです。そうしましたら、親や先生にすすめられて入ったというのが二九%ですね。それから他校受験に失敗して入ったのが一七%。この親や先生にすすめられるという中身は、いま行なわれておるこの現実からいいますと、いわゆる先生が、お宅のお子さんは成績が悪いから公立を受けたってむだですよ、ひとつ私立を受けなさい、こういう進学指導が相当やられていることは、文部大臣も御承知のとおりだろうと思うのですよ。だから、こういう点で約四〇%くらいの人が心ならずも私立高校に入っているという状態が数字としてあらわれている。それからもう一つは、この学校に入学してよかったと思いますかというアンケートに生徒さんが答えているわけですが、いいえと答えた人があるわけです。その人のいいえと答えた理由、これがたいへん深刻な問題なんですね。まず、お金がかかるからいやなんだという人が二五%なんですよ。これはさっきの数字も示しておりますが、それから設備や施設に不満があるというのが二〇%。それから生徒数が多過ぎる、これはやはり詰め込みが相当やられている、マスプロ教育ですね、これが一五%。合わせると、こういう理由でいいえと答えたのが六〇%ぐらいあるという実態なんですね。それから、毎朝登校するときの気分はどうですかというアンケ−ト、これはしようがないから学校へ行くと答えたのが二〇%あるのですよ。それから憂うつだと答えたのが一九%です。それから、途中でどこかに行ってしまいたい、これはわれわれのほうですと山学校ということばになりますが、これが一四%。この三つを合わせると大体これも六〇%をこすのです。それからあとは行くのが当然だから行くのだ、非常に消極的なあれで、これは一五%。さわやかだと答えたのは一一%しかいないという数字があるのです。その点では、私はあらゆるいろいろな面での格差が私立高校にあるのだと思うのです。いわゆるお金の問題での格差がある。それから学校の設備や施設についての格差がある。それから先生一人当たりの生徒数、これも公立と比べると多過ぎる。それから先生一人当たり、一週間当たりの授業時間数、これも公立と比べると多い。こういう実態がこういったアンケートの結果にあらわれていると思うのですが、その点で私は、文部大臣が先ほど非常に前向きの御答弁をなさったわけですが、この格差を一刻も早く解消願いたい。毎年一〇%ずつ経常費補助をふやしていくというのでは、やはりだいぶ時間もかかるわけですね。それから経常費だけでなくて人件費の問題もあります。人件費は経常費に入りますが、設備補助の問題もあれば、その他もろもろの問題があると思うのですが、こういった半ば義務教育とまで言うのは語弊がありますが、大体全員高校に入るという事態のもとで私学が果たしている役割りが大きい。これは大臣もお認めになっているわけですから、そうすれば、この格差を一刻も早く解消する具体的な方策が文部大臣はおありだろうと思うのです。その具体的な方策をひとつ文部大臣から聞かせていただきたい、こういうふうに思うわけです。
  70. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 宮城県の私立の高等学校のことを中心にお話しになっておったようでございます。私は宮城県のことは詳しくないのでございますけれども、あたかもそれが日本全国の私立の高等学校の姿だということになりますと、私はたいへんな反発が出てくるのじゃないか、かように思います。地域によりましては、むしろ私立の高等学校に殺到しているわけでございます。先生がりっぱな方がいらっしゃる、設備も整っている、だから公立を避けて私立の高等学校に殺到している地域だってたくさんあるわけでございます。私は、やはり私立の高等学校は千差万別だ、こう考えるわけでございます。同時に、私立の高等学校の経営にあたりましては、あくまでもその経営についてはそれぞれ私学が負うのだというたてまえは、私はくずすべきじゃないと思います。学校経営を企業と考えないでほしい、安い負担で高いサービスを提供する、その努力をそれぞれの私学が意欲を持って進めてもらいたい、こういう希望を強く抱くものでございます。したがいまして、また教育内容によっては授業料に高低があっていいのじゃないか、画一である必要はない、問題は提供されるサービスに見合って授業料が高いか安いかというような考え方に切りかえていただきたいなという気持ちを私は持つわけでございます。同時に、公立も私立もその県において同じような社会的役割りを果たしているのだということでありますならば、公立に税金を使っている、それに相応するものを積極的に私立の高等学校にも県に使ってもらいたいものだ、かような希望を文部大臣としては申し上げたいのでございます。全国的な方針としては、先ほど申し上げましたような方向で積極的に私学の助成をはかっていく、四十八年度よりも四十九年度はさらにまた一割上げるという方針がきまっているわけでございますので、一応これを進めていきたい、その暁にもう一ぺん全体を見直してみたいものだ、かように考えておるわけでございます。
  71. 庄司幸助

    ○庄司委員 いや、文部大臣、私がたまたま宮城県の実例を申し上げたので、それで宮城県は特殊なんだというようなお話をなすっていますが、私は大阪の実例も兵庫県の実例も持っているのですよ。文部大臣も冒頭に申されたように、やはり高校進学率がふえていって、私学の高校教育に果たしている役割りは非常に大きいんだ、この側面が私は大事だと思うのですよ。そういう中でAという学園と、あるいはCという学園の校風の差とか、いろいろニュアンスの違いはあるだろうと思うのですよ。父兄の中には、あそこの学校はサービスが多い、だからそれに見合った授業料を払ってもいいという人もあることは私は否定しません。否定しませんが、全体の傾向、これはやはり大臣が冒頭に申されたような傾向があるだろうと思うのですよ。だからそうなると、県民にしろあるいは府県の住民にしろ同じ住民税を払っているわけですね。同じ固定資産税を払っていますよ。そしてまた所得税も同じように平等に払っているわけですね。そういう中で、たとえば宮城県の場合は、県費補助が公立には一人当たり十四万七千円いっている、私立には七千七百円だ、これはやはり法のもとに平等だという原則からいけばはずれるのじゃないかと思うのですよ。  それからもう一つは、さっき言ったように、そういう中でさえも高校自体の格差が非常に多い。だからその点都道府県は都道府県なりの苦労は確かにしているのですよ。大体交付税以上に私立高校に金を出しているという数字はいま自治省から発表になったとおりですが、そうとすれば国のほうでやはりもっと交付税をふやしてやる必要があるのじゃないか。都道府県は、三割自治だ、二割自治だといわれる中で、相当苦労しながらも交付税以上の私学補助をやっているわけですから、国のほうでももっと積極的な姿勢を示していただかないと、私立高校の格差というものは解消しないのじゃないか、私はこう思うのですが、その点どうですか。
  72. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 たいへんくどいようでございますけれども、自治省が基準財政需要額に算入してくれているその私立高等学校に対する経常費助成は、四十八年度が一人当たり二万一千円だそうでございます。四十九年度はさらにこれが増額になっていくわけでございます。四十五年から計画的に進めてまいりました私学助成が四十九年度で完成するのです、こう申し上げてまいっておるのでございます。その完成の暁にさらに全体的に見直してみたい、こう思っているのでございます。格差是正とおっしゃっている気持ちは私はわからないわけではございません。積極的に私学に対します助成を増額することを通じまして生徒の負担を緩和していく、そのことを通じて公立に通う生徒との間の負担を少なくしていくべきだ、こうおっしゃっているのだろうと思います。それにつきましては、いま申し上げているような方向をとっているじゃありませんか。同時にまた、格差是正であっても、まさか私立高等学校がそのサービスのいかんを問わず画一的な授業料が同じでなければならないのだ、こうはおっしゃっていないだろうと思うのでございます。私立それぞれが学風を競い合っていく、優秀な教授を無理をしてでも引っぱってくる、そしてりっぱな教育が行なえるようにする、施設、設備を極端にりっぱなものにしていく、それはいけないとはおっしゃらないだろうと思います。そういう場合には授業料の格差があっても御容認されるのではないかと思うのでありまして、そういう気持ちでお答え申し上げているわけでございます。基本的には、おっしゃっているような方向に向かって私学助成を拡大していくのです。一応五カ年計画というのは四十九年度で完成するのです。その暁においてもう一ぺん総体を見直してみたいと思っているのです。かように考えておるわけでございます。
  73. 庄司幸助

    ○庄司委員 いま大臣が、私立高校間の授業料の格差があってもいいんじゃないか。私もそれはある程度なら否定しませんよ。ただ公立高校と比べての格差が非常に多過ぎる、こう申し上げているわけですよ。この公立高校との格差、法のもとに平等というたてまえからいうと、やはりもっともっと詰める必要があるんじゃないか。その点で四十九年度で一応第一段階が終わるとおっしゃいましたから、そうしますと、四十九年度までやった施策の結果、公立高校と比べての格差の解消が大体何ぼ対何ぼくらいになるのか。たとえば中教審答申は、大学の場合一対二くらいの経費負担の格差だ、公立が二十四万円で私立が四十七万円だ、こういうことをいっておりますが、せめてこれくらいの割合、一対二、つまり公立高校一、私立高校二、この辺まで四十九年で迫れるのか、その点どうなんですかね。
  74. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 四十五年に立てられた五カ年計画、それの完了を待ってさらに検討したいということを申し上げているわけでございますけれども、なかなか御満足いただけないようでございます。  もっと具体的に申し上げますと、一割から五割まで持っていっているわけでございますが、高等学校の場合には、新設の高等学校があったりいろいろなことをいたしまして助成の対象にすべきでない学校もあったりするという意味も兼ねまして、七割しか対象にしていないわけであります。七割にして五割補助するという仕組みになっておるわけでございまして、私はこの七割は撤廃してもらいたいという気持ちを持っておるわけでございますけれども、そういう問題を含めまして一応の計画が達成した暁に全体を見直していきたいのです、こうお答えいたしておるわけでございます。経常費助成につきまして実質二分の一が公費でまかなわれるということになりますと、格差はうんと縮まるのじゃないか、実質五割助成まで持っていきたいものだ、いま実質四割とか五割とかいいながら、なっていないのじゃないか、こう私は思っておるところでございます。  いずれにしましても、しかし私学自身も積極的な財政の基礎をつちかっていく努力はしてもらわなければならないのじゃないだろうか、何もかも公費におぶさっていくのだという姿勢は避けてほしいな、という希望も私は心の中には強く持っているものでございます。
  75. 庄司幸助

    ○庄司委員 それはわかります。私も、もちろん私立学校の経営者がやはり最大の努力を払っていく必要がある、これは認めるにやぶさかじゃないのですよ。それで、いま大臣から少し前進した御答弁があったわけですが、そこでもう少し具体的にして、対象を七割にしたという問題、これは文部省が七割にしているのか自治省が七割にしているのかわかりませんけれども、なぜこの七割にしたのか。未完成校舎の問題やその他もあるだろうと思いますが、大学の場合は、私立大学の場合はいわゆる暴力学生の問題なんかも加味されているようでありますが、高校では暴力学生云々はあまりないわけですね。だからこれはあまり理由にならないと思いますが、なぜ七割なのか、この点が一つお伺いしたいところです。これは自治省当局は七割を解消するのか、できれば一〇〇%まで持っていくのか、この辺どうなのか、ひとつ伺いたいと思うのです。
  76. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 だんだんのお尋ねでございますのでいろいろ申し上げてまいったわけでございますけれども、当初の五カ年計画のときには事務職員は入ってなかったのです。その後事務職員を入れるようにしたのです。それは専任教員を中心に助成をしていこうということで始まったわけでございます。同時にまた、どんな経営の学校であっても全部助成するというたてまえもいかがなものだろうかということもございまして、いろいろなことがあって七割という率が採用された、それがそのまま続いているわけでございます。こういうことも根本的に洗い直さしてほしいということを考えておるものでございます。一応の計画達成が四十九年で、実際にはもう一ぺん洗い直して私学の助成についての方策を立てたいと思っているのだ、一応の計画は計画として進めていきませんと、絶えず計画をまた元へ戻して話をしていたのでは財政当局との間の話ができませんので、一応これはこれなりに四十九年度まで進めていくのです、その暁において根本的に再検討するのです、こうさしてほしいということでございます。
  77. 庄司幸助

    ○庄司委員 そうすると、四十九年度の段階でこの七割の解消をはかるというふうに理解していいわけですね。そういうふうに理解しておきます。  それで、四十九年度になると授業料を含めた納付金は、公立高校と私立高校の違いが大体何対何ぼくらいになるのか、その辺の計画おありだろうと思うのですが、それをひとつ示していただきたいと思うのです。
  78. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 ただいま大臣から御答弁を申し上げておりまするような方向で検討いたしておるわけでございまして、それが国の場合でございますと四十九年度の概算要求の内容になるわけでございます。同時に、それと並行して地方財政の措置もお願いをするということでございます。  基本的な考え方は大臣から御答弁を申し上げたとおりでございますが、その結果、計数的にどういう姿のものが想定されるかということは、実はこれから作業をしたいということでございます。
  79. 庄司幸助

    ○庄司委員 それでは私立高校の問題についてはもう一点だけ伺って終わりたいと思いますが、最近各都道府県で、いわゆる現状を見かねて、いままでいろいろ助成をやったが、結局授業料の引き下げにつながらなかったというので、父母の方からのいろいろな要求が出まして、いわゆる授業料の直接補助という形をとっている都道府県がだいぶ出てまいったわけですね。ところがこれに対して、例の四十四年から四十三年の文部省か自治省の見解で、好ましくないというような見解が出された事例があるのですが、この見解はいままでも生きているのか、あるいはもうこの辺でいさぎよくこの見解を撤回するというふうになるのか、この辺ひとつ伺いたいと思うのです。
  80. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 あとで自治省の関係で御意見があればお答えをしていただきたいと思いますが、文部省としてお答えをさせていただきます。  私も、直接授業料を軽減するという形で県が幾らかを助成しているというところのあることを承知しているわけでございます。その場合に、他府県から自分の県内の私立高等学校に通ってきている子供さんの授業料については軽減措置をとっていない、私はたいへん不自然だなという感じを持っているわけでございます。そういうみみっちい補助のしかたをしないで、直接私立高等学校に助成してくれたらいいじゃないか、私立高等学校を助成する以上は信用したらどうか、教育内容を充実する、同時に授業料負担も軽減する、文部省としては、私は、私立高等学校を信用して、私立高等学校の運営に対して助成をするという道を県においてはとってもらいたい、同時に学校当局としては積極的に授業料の軽減に充てていただくことを期待したいところでございます。よその県から通ってきている者については助成をしない、あんまり愉快じゃないな、学校の教育内容にも必ずしもいい影響を与えないのじゃないかなという気持ちを持ったりしているものでございまして、そういう意味で、できるなら私立高等学校を信用して、私立学校の経営全体に対して県が助成するという道を、むしろそういう方向をとってほしい、もちろん授業料の軽減に努力を払っているのは大賛成でございますけれども、助成のしかたとしてはどうも私の申し上げるほうがいいのじゃないかな、こういう気持ちを強く持っているものでございます。
  81. 庄司幸助

    ○庄司委員 それは水かけ論になるかもしれませんが、これは確かに、私学に抜本的な助成があって、私学の当事者がもうこれなら少し授業料を安くしてやろうというくらいになれば、当然私学の経営者だって、世論というものがありますから、安くしたにこしたことはないと考えるだろうと思うのですよ。ところが、やはり安くできない事情があるから、こういうふうに上がり続けているのだろうと私は思うのですよ。問題は根本的にはそういうところにある。  それからもう一つは、私学の経営者の中に、全部とは言いませんよ、間々経営が明瞭にガラス張りにされていないところもあるわけですね。これに対する父母の不信感が相当にある。私は実例を見ております。これは苦しいからでしょうが、私学財団で土地の投機みたいに見られるような行為をやっている学校もあるのですよ。学校のグラウンドを買うといって、とんでもない山の中に校庭用地なんて立て札を立てている学校があるのですよ。これは明らかにここへ学校が建つ見込みなんかほとんどないわけですね。具体的な名前はきょうは申し上げません。そういうところがあって、あれは山を買って投機しているのじゃないか、伊藤忠とか三菱地所と同じような性格じゃないかと付近の人は言っているわけですよ。こういう不信感がやはりあるわけですね。だから一がいに経営者を信用しなさい。信用したいのはやまやまですよ。しかし信用できない実情が父母の中にあるのだということですね。この点は文部大臣にも認識していただきたいと思うのです。  これはそれで打ち切りますが、見解を出されたのがもし自治省だとすれば、自治省のほうのお考えをひとつ伺いたいと思うのです。
  82. 森岡敞

    ○森岡政府委員 お話しの私立学校の生徒に対する補助金の交付についての四十三年二月の自治省行政局行政課長あての質疑でございますけれども、内容は、私立学校の在籍者に対して教育負担を軽減するために一律に補助金を交付する仕組みをとることは、地方自治法二百三十二条の二の規定から見て適当かどうか、こういう質問でございました。地方自治法の二百三十二条の二では、「普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。」こういう規定を設けているわけでございます。ですから、住民の租税負担をもってまかなっておる公経済でございますので、やはり公益に合致することが必要だという規定でございますが、答えの趣旨は、在籍者に対する補助金というのは多分に家計費補助的な色採がどうしても出るということが第一点でございます。第二点は、確かにある程度の補助金を出すことは授業料負担の軽減にはなると思いますけれども、しかし反面、またその程度の補助金を受けても高等学校には進学できない勤労青少年、それについては全く何らの措置も行なわれていない。それとのバランスを考えますと、これは「公益上必要がある」という判断の面で多分に問題があろう。先ほど文部大臣が言われましたように、県内外の住民について一体どう考えるのか、こういうふうな問題があるわけでございます。したがいまして、これらの授業料負担の軽減を行なっていく必要性はもちろん自治省としても認めておるわけでございます。この質疑の一番最後では、この問題については制度の改革あるいは私立学校に対する公的財政援助等の措置を通じて解決されるべき問題である、個人に公費を補助金という形で交付することは不適当だというふうな判断を下しているわけでございます。この考え方は、私どもといたしましてはいまも大筋におきまして変わっていないということでございます。  なお、最後にお話のありました私立学校の経営の問題、これはまさしく私立学校の経営監督の問題としてその是正を求めていくべき問題ではなかろうか、かように考えます。
  83. 庄司幸助

    ○庄司委員 自治省の見解ですが、昭和四十三年から五年たった現在、私学に対する依存率や私学の重要性、こういう問題に照らしてみた場合、自治省の五年前の見解がそのままいまでも続いているというのは、私はやはり納得できないのです。これはぜひ見解を改めてもらいたいし、同時にもう一つは、確かに一律補助はうまくないとか、あるいは他県から来る人に対しても不公平だとか、そういうお話がありましたが、そういうことをおっしゃるなら、同じ住民税を払っているこの地方の住民が、一方では九百円の月謝で間に合う、一方はとにかく五千円の月謝を払わなければならない、こういう不公平な実態も考えなければうまくないと思うのですよ。時間もありませんから、その点要望だけしておきますが、ぜひ見解を改められて、法のもとに平等に次代をになう青年をすこやかに育てる、この観点からひとつ前向きに検討し直してもらいたい、これだけを要望しておきます。それでは、この問題はこれで終わりますが、私がもう一つ伺いたいのは、文部省の文化財保護の問題で、具体的な問題を一つ二つ伺っておきたいと思うのです。  一つは、たしかことしの初めごろだったろうと思いますが、文部省が特別名勝に指定した宮城県の松島、この松島に、東北電力の仙台火力発電所、これが代カ崎というほんとうに松島の額みたいな場合にあるのですが、これはどの観光客もここを通る場所だし、また、松島の一番見晴らしのいい山からながめても、ここが目のつく場所なんですね。ここにだいぶ前に火力発電所が建設されて三本の煙突が立ったわけです。これはたしか七十メートルか八十メートルぐらいの巨大な煙突ですが、特別名勝地域内にこういう煙突を立てさせるということ自体、私は文部省の文化財に対する考え方に、どうも何か電力あたりから押されたのじゃないかという感じがするわけです。しかもその上に、去年からいわゆる公害問題が非常にうるさくなりまして、あの火力発電所の亜硫酸ガスが現地の七ケ浜町の役場あたりに相当濃いのが漂っていく、こういう問題に立たされて、電力が苦肉の策に考えたのが煙突の三十メートルのかさ上げなんですね。本来ならば、これは低サルファの燃料をたけば、あの七十メートル煙突でも間に合うはずなんです。ところが、低サルファの燃料がコスト高である、そのために煙突のかさ上げをするというようなこそくな手段を電力側がとっているわけですね。これが一体どういう理由で三十メートルのかさ上げを認められたのか、特別名勝を一体何と心得ておられるのか、この理由をひとつ聞かしてもらいたいと思うのです。
  84. 清水成之

    ○清水政府委員 まず最初に、一般的でございますが、史跡、名勝、天然記念物につきまして、国民の遺産としてこれを保存し継承をしていかなければならぬという態度にはまず基本線として変わりはないわけでございまして、私どもそれに努力をいたしておるわけでございます。ただ、いろいろなケースが出てまいりまして、ただいま御指摘の東北電力の場合につきますと、御指摘のように、現在九十メートルの煙突でございます。当時、九十メートルを認めるかどうかにつきまして、調べてみますと、昭和三十年のようでございますが、一面いろいろ電力の需給状況の逼迫した問題があったというようなことから、当時昭和三十年に認めたようでございます。いま御指摘の、もう三十メートル継ぎ足して百二十メートルにするという点でございますが、御承知のとおり、昭和四十四年に国と宮城県が公害防止の観点から実験をいたしましたところ、仙台火力から排出されます硫黄酸化物の最大着地濃度が毎秒六メートルの北東風のときに〇・〇九PPM、こういうような状況であったようでございます。そこで、通産省の公害保安局のほうといたしましては、公害防止の観点から、五十年度を目標に〇・〇五PPMまで改善せよ、こういう指導、勧告がなされた。そこでいま御指摘のように、低硫黄の燃料を使ったらどうかというような議論文化庁内部と向こうとではいろいろあったようでございます。それから先方におきましてもそういう点につきまして検討いたしたようでございますが、一つは公害防止の観点でございますし、また名勝の観点からいたしましても、煙突を上げてPPMを下げるということによりまして、緑を保存する上にやむを得ないのではないか、こういう結論から、昨年の十一月、この現状変更を認可した、こういう次第でございます。基本線といたしましては、一般的に申しまして、できるだけそういう名勝の景観をそこなうことのないようにお互いが堅持をしてまいりたいということには変わりないわけでございますが、いまのような公害防止という観点からまあやむを得ない、こういう考え方でございます。
  85. 庄司幸助

    ○庄司委員 それでは私は納得できないのですよ。公害防止、これは確かに大事です。だからいま通産も、いわゆる低サルファの重油であるとか、あるいは排煙脱硫であるとか、あるいは直接脱硫、これをどんどんやらしておるわけでしょう。そういう御時世の際に、特別名勝を保護すべき立場にある文部当局が、そういう企業サイドに押しまくられた感じですね。それから低サルファの油がないからやれないのだとか、あるいは排脱がまだ完成しておりませんからやれませんとか、こういう企業的な観点に押しまくられて、もう古来何百年も日本の三大景勝の地である松島、ここに三本煙突があるだけでも目ざわりでしかたがない、そこへ今度はまた三十メートルかさ上げする、しかも航空法の関係から赤白のだんだらの色を塗らなくちゃならない、これでは特別名勝片なしになるのじゃないですか。だからその点で、文化庁関係でなぜそういう低サルファの油を使いなさいと言わないのか。現在あそこで使っているのは、大体二%から二・二%の硫黄含有量の、全くひどい油を使っているのですよ。隣にできた新仙台火力では、公害防止協定によって一・四とか一・五の油をたく、こうなっているのですよ。だから東北電力ができない実情はないのですよ。それを妥協してしまって三十メートルかさ上げを認めた上に、今度は赤白だんだらに塗らなくちゃならない、これでは名勝片なしですよ。電力のほうは、何だかんだ言っても航空法に触れるから、しかも特別名勝の観点もあるから、いろいろくふうしてみよう、こんなばかなことを言っているのですよ。これでは私は、だんだん企業サイドで押しまくられて、文化財がだんだん滅失していく、価値を失っていく、こういうことになるのじゃないかと思うのですよ。だからその点で私は文化庁としてもう一ぺん考え直してもらいたい。その点どうですか。
  86. 清水成之

    ○清水政府委員 いま御指摘、御批判いただきました点につきましては、実は私どももいろいろそういう話し合いをした経緯がございます。許可にあたりまして、お話もいま出ておりますが、排煙脱硫装置が発達した場合におきましてはまた煙突を下げてもらいたい、こういうことで許可をしておるわけでございますが、御指摘の点につきましては、できるだけそういう企業側だけの都合でどうこうということではなしに、しかるべき燃料が手に入りますならばそれをぜひ使ってもらうように指導はしてまいりたい、かように考える次第でございます。
  87. 庄司幸助

    ○庄司委員 だから、一ぺん煙突を三十メートル上げて、今度はまた途中でこわして三十メートルつめる、そんなめんどうくさい、手間の食うやり方をやるよりは、あれは着地濃度の計算をやれば、一・四%かあるいは一・五%の油をたけば間に合うはずですよ。これは計算してごらんなさい。そういう方向でもう一ぺん指導をやり直しして再検討する、そうすれば、電力も三十メートル上げたり引っ込めたりしなくて済むのですから、この辺おやりになっていただきたいと思うのですよ。その点どうですか。
  88. 清水成之

    ○清水政府委員 ただいまの三本につきまして許可しておるわけでございますが、工事の工程からいきますと、一挙にこの三本ができるわけではございません。最初のやつがことしの十月にできる予定になっております。あとの二本につきましては、これからの問題でございまして、いま御指摘の点につきましては、再度工場側に、そういう燃料を使うことについて一ぺん指導をしてみたい、なお、通産省にもよく御意見を聞いてみたい、かように考えます。
  89. 庄司幸助

    ○庄司委員 これで終わりますけれども、私はこの際ひとつ文部大臣に御要望したいのは、こういった文化財が現在の日本列島改造論その他によってどんどんこわされていっている。それから貴重な遺跡がやはり高速道やあるいは縦貫道によってどんどんこわされていますね。しかも、これを発掘調査して、あとはまあ埋めてもいいしどうしてもいいというような事例もあるのですが、これに対する各都道府県の担当課である社会教育課の文化財保護関係の係官が非常に少ないのですよ。遺跡地図はどこでも相当膨大なものを持っているのです。ところがそれを持ちながらも、人手が足りないために工事のほうが先にいってしまう、こういう事態がもう全国至るところあるわけですね。その辺で文部当局として、一つは全国の文化財保護の担当官をふやす問題と、それからそれに対して特別な留意、いまの松島の事例もありますし、その辺をひとつ検討していただいて、埋蔵文化財あるいは特別名勝にこれ以上の破壊がないように進めていただきたい、こう思うのです。その辺、最後に文部大臣の御見解を聞かしていただいて、私の質問を終わります。
  90. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 おっしゃっていますように、埋蔵文化財が破壊されることのありませんように将来見守っていかなければならないこと、大切だと思います。周知の遺跡十四万カ所、これにつきましても再調査をいたしておりまして、国民の前に明確に示すようにしていかなければならない、こう存じておるわけでございます。同時にまた文化財保護法につきましても、なお徹底を欠くうらみもございまして、これの改正もはかりたい、こういうことで検討も続けておるわけでございます。史跡名勝、これを守っていくことも当然のことでございまして、今後とも一そうそういう方向に向かって努力を傾けていきたいと思います。
  91. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 坂井弘一君。
  92. 坂井弘一

    ○坂井委員 国立大学の会計があまりにもでたらめ過ぎるので、問題点をあげて明らかにしたいと思います。  各国立大学で、特に医学部あるいは理学部、工学部、これらで研究用の試験薬を毎年多量に購入いたしております。  最初にお尋ねしておきたいのでありますが、この研究用試薬が、全国立大学のトータルでけっこうでありますが、過去三年間年度別に、毎年総額でどれだけ購入されたか、まず示していただきたいと思います。
  93. 三角哲生

    ○三角政府委員 各国立大学使用いたしております研究用試薬の総額でございますが、これにつきましては主として教官当たり積算校費といったような予算が充当されるわけでございますが、現在その校費の中からどの程度が試薬に使われたか、試薬以外にいろいろな器具器材、備品等にも充てられますので、ちょっと手元に資料の持ち合わせがございません。
  94. 坂井弘一

    ○坂井委員 どの程度試薬に使われたか、はっきりしないということでございます。  では、お尋ねしていきますが、つまり試薬の購入にあたっては、これは支出負担行為担当官、いわゆる会計法令に基づくところの権限を有する者によってその会計処理がなされる、これはもう言うまでもないことであります。また当然そうでなければならぬ公金であります。したがって、その試薬の発注、納入、それらは会計法令に基づいて会計処理が行なわれるのは当然のことでございますが、一体この試薬を各大学は従来どのような方法をもって購入したか。国立大学でございますから、相当長い古い経緯もあると思いますが、どういうような方法で購入してきたか。  また同時にもう一点お尋ねしたいことは、文部当局はこれらの試薬の購入に対していかなる指導あるいは監査監督を行なってきたか、これを示していただきたい。
  95. 三角哲生

    ○三角政府委員 国立大学におきます試薬の購入の手続でございますが、これは一般の物品の購入の手続によらなければならないわけでございまして、本来は、試薬を用います教官が、学部あるいは研究所等の事務の会計係——支出負担行為担当者補助者となっております会計係に対しまして購入の請求をいたすわけでございます。それで、請求を受けまして、会計係が業者に見積もり書等の提出を求めまして、見積もり書等が出ますれば、それに基づきまして会計係が支出負担行為を起案いたします。そうしまして支出官が当該支出負担行為案について確認をいたしました上で、支出負担行為担当官が決裁をいたします。それで業者と契約を締結するということになりまして、業者が学部等の会計係官に物品を納入いたし、かつ請求書の提出をいたすわけでございます。その上で物品を会計係官が検査をいたしまして、検査の上で教官に引き渡すというわけでございまして、さらにその後におきまして支出の手続を行なうということでございます。ただ、これはいま申し上げましたのが法令上の正規の手続でございますが、四十六年度決算報告会計検査院のほうから指摘がございましたように、中には、教官が直接業者に発注いたしまして、教室に業者が物品を納入いたしまして、事後において学部等の会計係官が物品購入の手続をとり行なっておったという例があったわけでございます。
  96. 坂井弘一

    ○坂井委員 ですからお聞きしているわけでありますが、文部当局はどのような指導あるいは監督をされてきたか。この会計処理にあたって、当然会計法令に基づくところの、準拠するところの手続によって購入の手続を踏まなければならぬ。それがいまお話によれば、そういう法令に準拠しないような方法によって購入した事実が会計検査院によって指摘されたということでございますが、しからばその以前文部省はどういうような指導をし監督をしてきたかということをお尋ねしているわけであります。
  97. 三角哲生

    ○三角政府委員 ただいま申し上げました支出負担行為前に物品の納入を行なわせているという問題につきましては、たびたび検査院からも指摘がございましたので、文部省といたしましても、そのつどそういう事情のありました大学に対しましては十分注意をいたしますとともに、会計検査院照復事項集録とか、それから毎年私どものほうで作成いたしまして大学の経理担当者に配付、説明いたしております会計事務執行上の注意事項というパンフレットの中に内容を盛り込みまして、全国立学校に配付いたし、あるいは実地に監査も行ないまして、このような事態が起きないように、関係部課長に対して指導をしてまいっておるわけでございます。たとえば、注意事項のパンフレットに「支出負担行為前に物品等が納入されている事例がしばしば見受けられるので、教官等の協力を求め、このようなことのないように注意すること。」といったような記載をかなり前から行なってまいったわけでございます。また一般の会計職員に対しましても、会計法令の理解を深め、会計職員としての知識を高めるために毎年会計研修を実施いたしまして、その内容として、このような事態が起こることのないように努力してまいっておるところでございました。
  98. 坂井弘一

    ○坂井委員 起こることのないように努力してきた、注意してきたということでございますけれども、結果的には起こったのですね。またそれがなぜ起こったかということについては私はあとで指摘いたしたいと思います。けれども、やはり文部当局の姿勢にあると思います。  そこで、会計検査院が指摘したものは、群馬大学、それから名古屋、長崎、九州、熊本、京都、北海道、帯広畜産、東京、東北、静岡、以上の十一大学ですね。これらが昭和四十二年の十月から四十六年九月まで教官が直接納入させたと言っているもの。事実はわからぬわけです。向こうはそう言っている。直接納入をさせたと称するものが一億二千九百四万七百六円、これだけあった。さらにその中で未払い分が二千二百七十二万九千四百二十六円あった。これを指摘しておるわけです。そこで会計検査院の指摘を受けまして、いま局長の答弁のとおりでございますが、未払い額の二千二百七十二万九千四百二十六円、これは昭和四十六年中に処理を完了した、こう言われているわけでございますけれども、一体二千二百七十二万九千四百二十六円というこの未払い額は、この金額に差異はなかったかどうか、これよりもふえたかどうか。つまり私お聞きしたいことは、会計検査院がこの問題を指摘した当時におきましては、もうすでに現品は使ってしまって、ないのです。だから調査することは不能なんですね。そういう中で判明する分について調べ上げた結果、いま申しますような現場の教官がかってに購入しておった、それで支出担当官はそれは知らない、そういうでたらめな会計が行なわれておった、購入が行なわれておったという事実を指摘した。そこで調べ上げた結果、現品はない、ないけれどもそういう困難な中でようやく判明した分がなお、いま申しますところの整理未済額として二千二百七十二万九千四百二十六円もあったということでありまして、この額については全部処理された、こうなっておるわけでございますけれども、文部省が再調査した結果、この未済額はふえたというようなことはございませんか。
  99. 三角哲生

    ○三角政府委員 未済額がふえたということはございません。
  100. 坂井弘一

    ○坂井委員 それでは、この指摘された十一大学以外の大学についてはいかがでしたか。
  101. 三角哲生

    ○三角政府委員 指摘された以外の大学にも同種の事例を見るところが若干ございましたが、これらについても、指摘された大学と同様に指導をいたしまして、処理を進ませてございます。
  102. 坂井弘一

    ○坂井委員 大学名をあげてください。
  103. 三角哲生

    ○三角政府委員 申しわけございませんが、ただいま手元に資料の持ち合わせがございませんので、後ほどお答えさせていただきたいと存じます。
  104. 坂井弘一

    ○坂井委員 あなた方はこの問題の重要性ということについて全然認識がなさそうなんです。では申し上げますが、先ほど言いましたように、現場の教官がかってに業者に発注をする、その薬が現場の発注した教官の手元に入る、そしてその代金は業者に直接大学当局から来る、会計法令権限を有する支出担当官はその事実をしらない、ところが業者のほうは、あなたの大学の何々教官から注文されましたので、確かに何々教官のもとに届けております、こう言うわけです。そこで支出担当官は適当に書類をつくる、品物の名前も違う、数量も違う、言われた金額のトータルだけ合わせて、そして関係書類をつくって支出負担行為をする、代金を支払う、これが実態なんです。そういうことが平然と行なわれてきた。こんな無神経なことが、私にはとうてい理解できないのだけれども、しかし現実に行なわれている。会計法令もわきまえていない。公金ですよ、これは。支出する人は、あるいは注文する人は、いずれも国家公務員です。これが会計検査院から、そうしたような会計法令を全く無視したやり方が大学において行なわれている、文部当局に対して厳重にこの点に対しては注意をしてもらいたいとあったはずです。それを受けて文部省が一体、その後こうした各大学に対して、その事実の調査なりをどう行なわれてきたか。また改善なり、実際の現場をどのように調査されてきたか。いまのお答えでは、全くやっていらっしゃらない。そういうことに基づいて、文部省としては厳重な調査をされたのでしょうか、いかがですか。
  105. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 お話しのようなことを、四十五年度の決算検査報告会計検査院から御指摘を受けたわけでございます。たいへん重大な問題だ、かように考えているわけであります。  したがいまして、研究用試薬等の購入手続の適正を期しますために、昭和四十六年十一月、経理事務改善検討委員会を文部省に設けまして、研究用試薬等の購入についての具体的な改善策を検討し、その結果に基づきまして、昭和四十六年十二月二十三日付で国立学校長あてに「会計検査院の是正改善処置要求にかかる研究用試薬等の購入に関する是正処置について」の通達を発したわけでございます。一、予算執行の効率化、二、教官等に対する会計制度の周知徹底、三、支出負担行為事務の促進、四、業者への指導啓蒙、五、物品調達事務の集約化、六、部内会計監査の励行、七、実態の把握、八、教室等職員の補助者の任命等について、具体的改善方策を進めるよう指導し、また特にこの趣旨を徹底させるため、全国立学校の経理部課長会議を、昭和四十七年一月七日に開催し、その改善方について指示いたしました。  なおその後の経理部課長会議においても、改善の実施促進方について指示督励しているところでございます。  また、大学における学内予算の執行に関して、教育研究の計画に即応した予算計画を早期に確立させるため、文部省から各大学への予算示達の早期化につとめたところであります。  一方、研究用試薬の性質上、購入に緊急を要する場合等があることを考慮し、会計制度上迅速にこれらの処理ができる体制を整える必要がありますので、昭和四十七年度から「文部省所轄の会計機関の事務の一部を処理させる職員の範囲等を定める規則」を制定いたしまして、従来金額の多寡にかかわらず、契約権限は事務局長となっていたものを、研究用試薬等の物品については、学部の事務長などにおいて契約ができるよう制度を確立し、事務の迅速化をはかりました。  以上のような措置を講じておりまして、この結果、研究用試薬等については、成規の手続により処理がなされるように改善を見ているものと考えているところでございます。
  106. 坂井弘一

    ○坂井委員 いま大臣が読み上げました通達、私はきのうからそれを請求したのです。提出がないのです。何回言っても出さない。なぜ出さないのだろうかと思って、いろいろ調べました。あとで申しましょう。このような会計法令に基づかない、法律に準拠しない不当な支出行為、これが行なわれたということは厳然たる事実なんです。まことに恥ずかしい話。一体、いつからこういうことが行なわれたのですか。それだけでけっこうです。
  107. 三角哲生

    ○三角政府委員 かなり以前から慣行として行なわれていたように存じております。
  108. 坂井弘一

    ○坂井委員 これまた、きわめてあいまい。かなり以前から……。こんな会計法令を無視した支出行為が平然として行なわれておった、会計検査院がこれを指摘した、通達を出した、それで終わりですか。いつからか、調査もしていない。かなり以前から行なわれておったようである、そういうことで済まされる問題ですか、これは。先ほどから申し上げておりますように、全部これはあとで書類をかってに作成をした。品物の名前も違います。わからないわけです。どういう品物を注文したか、それがわからない。ですから、品物の名前もかってに変える。それから購入した日、それがもう二年、三年あるいは五年前。会計年度が違います。処理できません。したがって、しかたがない、それに見合うような会計年度に適当に納入日を繰り上げる。それから数量、この数も合わす。そういう中で金額だけは——これは業者の言い分ですから、それもどうかわからぬですね、何とか大体間違いないというような形の金額をつくり上げる。それが会計法令に基づく権限を有する支出負担行為の担当官の手によって平然とつくられる。こんなばかな話がありますか。  なぜそういうことが行なわれたかというと、研究用試薬であって、緊急性あるいは品質、純度、規格、そういうものにはなはだ制約を受ける、したがってそういう会計法令によるところの手続を踏むいとまがない、これが最大の理由だったのです。そんな理由でもってこんなでたらめな会計処理がなされる。それが見のがされて、今日まできた。文部省はそれに対して、何ら適切な指導も、監督も、監査も行なっていない。もうでたらめきわまる。ですから、こういうやり方が行なわれますと、非常に危険な問題が次に想像されます。つまり、不正が行なわれないという保証はどこにもない。  では、一つ聞きましょう。薬を納入します業者から——古い話になります。いま会計検査院が指摘した中でも四十二年から四十六年まで、その間の問題もあるわけですが、納入した薬に対して何割かの、同種あるいは違うかもしれませんが、現品の薬が添付されて、発注したその教官のもとに入った事実はありませんか。
  109. 三角哲生

    ○三角政府委員 いまおっしゃいましたような事実は、承知いたしておりません。
  110. 坂井弘一

    ○坂井委員 会計検査院にお尋ねいたします。  調査された段階でそのような事実らしいものはございませんでしたでしょうか。
  111. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 お答えいたします。検査に行った担当官の説明によりますと、特に添付されたといったようなものはなかったと聞いております。
  112. 坂井弘一

    ○坂井委員 特に添付されたようなものはなかったと聞いておるというわけでありますね。私の手元にいろいろな問題が持ち込まれてきております。リベートの問題等についての、これはあえてうわさと言っておきます、いろいろな業者から、こんなでたらめが許されるのかという非難であります。そのことはさておきまして、もしこれがこの支出負担行為担当官の故意または重大な過失によって実損を生じた場合、予算執行職員等の責任に関する法律によって、その責任を問われる、そう考えるわけでございますけれども、その点についてはいかが判断されましたか。
  113. 三角哲生

    ○三角政府委員 この問題につきましては、先ほど先生から御質問ありましたように、かなり以前から慣行としてやっておったような事情もございます。それから、事後の処理ということで、会計法令を無視した取り扱いであることは間違いないのでございますが、事柄が研究一般、私どもの事務官庁の経費と違いまして、常に継続して行ない、必要のつどこまごまとしたものを用いて研究を続けなければならないといったような需要に見合うために行なわれてきたようなこともございまして、全体を勘案いたしまして、本件につきましていわゆる明らかな不正というようなことは必ずしも認めがたいのではないかという観点でございますが、ただ、先ほどから御指摘のございますように、明らかに現行の会計法令を無視した手続にのっとってやっておりましたので、これは国民の税金をあてがって進めておる研究、あくまでもそういった校費でございますので、会計手続を厳正に守って執行するように改善させるということで措置しておるわけでございます。
  114. 坂井弘一

    ○坂井委員 国損を招くような事態、あるいは不正は必ずしも行なわれているとは認められなかったということですね。  では、重ねてお聞きしますが、予算執行職員等の責任に関する法律第三条、これは「予算執行職員の義務及び責任」に関する条項であります。その第一項「予算執行職員は、法令に準拠し、且つ、予算で定めるところに従い、それぞれの職分に応じ、支出等の行為をしなければならない。」と、きわめて明確であります。また当然であります。この第一項にもとるとお考えになりますか。
  115. 三角哲生

    ○三角政府委員 この第一項の精神に対して十分に職務を行なったというふうには考えられないと存じます。
  116. 坂井弘一

    ○坂井委員 そういうややこしい言い方をしない。考えられないというのですから、これにもとったということですね。私が判断するのにややこしくなってしようがない。はっきりお答えになったほうがよろしいようですね。  会計検査院にお尋ねいたします。  同法律第六条「懲戒処分」、この第一項、国損を生じた場合という項のあとを受けまして、「又は国に損害を与えないが故意又は重大な過失に因り同項の規定に違反して支出等の行為をしたと認めるときは、当該職員の任命権者に対し、当該職員の懲戒処分を要求することができる。」、この第一項をどう判断されましたか。
  117. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 ただいまの規定まさにそのとおりでございまして、現実に国損があったかどうかということについては、私どもでは確認できなかったわけでございますけれども、会計法令違反の予算執行行為があったということについてはそのとおりであろうと思います。ただその場合に、故意または重大な過失によってそのような事態が起こったかどうかということの判断につきましては、先ほども文部当局から御説明がありましたとおり、多年の慣行で行なわれていたというような事態もございますし、予算執行職員の個人責任の一つとしての懲戒処分の問題でございますので、具体的な個々の支出負担行為担当官等について見た場合に、それを故意、重過失と見るかどうかということの判断については、なかなかむずかしい点もございましたので、私どものほうは文部当局のほうの措置というものを見守らしていただくというようなことで、特に懲戒処分の要求には及んでおりません。
  118. 坂井弘一

    ○坂井委員 故意または重大な過失だと私は思うのです。少なくともこの会計法令を無視して、このような形の会計処理がなされた。それは予算執行職員等の責任に関する法律第三条及び第六条に照らして、明らかにその責任を関わるべき問題だと私は考えます。単なる私企業ではございません。これが国立大学という中で行なわれておる。この金は公金です。したがって、事はきわめて重大だと思います。刑事上の事件としても問題を内包している。そのようなきわめて好ましからざる、まことに遺憾な風評あるいはうわさ、この程度にとどめますが、しばしばそうしたことがいわれております。したがって、少なくともこの法令を曲げて、準拠しないで、無視した形で、まことにずさんな、無神経な公金の取り扱いが行なわれておる。しかるにその担当官ないし責任者に対しては、明確に予算執行職員等の責任に関する法律がありながら適用できない、しない。あなた方がそのような姿勢であるならば、私のほうはあえてこの事実をあげてこれを糾弾せざるを得ないわけでございます。  そこで、事前に一、二申し上げておきたいと思いますが、文書偽造の罪、刑法百五十五条公文書偽造でございます。同じく百五十六条虚偽の公文書作成、これにはいささかも該当しないという認識に立たれておりますか。
  119. 三角哲生

    ○三角政府委員 指摘のありました事項につきましては、先ほどお答え申し上げましたように、事後に支出の手続をとりまして整理をいたしたわけでございますが、その間に先生のおっしゃいましたような書類をつくるというようなことが絶対なかったかどうかということでございますが、私どもは、業者から出されました証拠書類、それから教官側に確かめまして、そのような薬をある一定の量納入させて、それを用いたかどうかというようなことは、十分調査の上で手続を済ませたというふうに認識しております。
  120. 坂井弘一

    ○坂井委員 では重ねて会計検査院にお尋ねいたします。  私が前段申し上げましたことは、つまりこの支出負担行為は会計法を無視した形で行なわれた。具体的には支出負担行為担当官があとで全部取りまとめをいたしまして、品名は違う、数量は違う、ようやく金額においてはトータルで何とか合わせた、こういう処理がなされていたということを私は言っておるわけです。そのとおりかどうか、違うかどうか、会計検査院答えていただきたい。
  121. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 私どもで検査いたしまして取り上げました範囲の事項につきましては、先生ただいまおっしゃったとおりの事実でございまして、日時とかあるいは数量とか品名とか、そういうものについてはあとで整理をし、それらが必ずしも事実どおりの計数なり日付なりになっていないというものが相当数見受けられた次第でございます。
  122. 坂井弘一

    ○坂井委員 きわめて明確であります。つまり、あとでつくって合わせただけの話なんです。品名は違うし、購入年月日は違う。こんなでたらめなことがありますか。そういう関係書類を作成して、予算執行職員の手によって、つまり法令に基づくところの支出負担行為担当官の手によってそういうものが支出された、そういう形で。これはとんでもないことですね。  もう一つ刑法の問題を言っておきましょう。横領の罪、刑法二百五十三条、これは業務上横領であります。「業務上自己ノ占有スル他人ノ物ヲ横領シタル者」同じく二百五十二条の二項「自己ノ物ト雖モ公務所ヨリ保管ヲ命セラレタル場合ニ於テ之ヲ横領シタル者亦同シ」私はなぜここまで申し上げるかといいますと、大臣よくお聞きしていただきたい。前段、何回も申し上げますように、まことにでたらめとも野方図とも——これは公金、国民の血税であります。それを支出するれっきとした支出負担行為担当官、その人によってあとでかってにつくられる。もうそのときには薬は使って、ないのです。実態をつかむことはできないのです。会計検査院は物がないために不能であるとはっきり言っております。向こうはそう言っております、こういう表現なんです。必ずしも事実をつかんだわけじゃないのです。そんなようなでたらめな会計処理、もちろんその以前には発注、納入がそんなにでたらめな形で行なわれて、あとでつじつまを合わすために品名や数量、購入月日、これをつくり上げる。この陰でどういうことが行なわれるか。しかも現品添付という問題がある。そこへまた好ましからざるリベートというようなことがささやかれる。これは非常に重大な問題だと思う。文部当局のあなた方の神経はそこまで行き届いていないらしい。従来、いつから行なわれたかわからぬけれども、そのようなでたらめな会計処理が行なわれておったということは一応は認められながらも、そして通達まで出されながらも、各大学において実態はどのように行なわれていたかということの調査をされてない。あるいは幾らかされたのかもしれない。それで結論的には一片の通達をもってこの問題を処理しようというような考え方が文部当局の中に非常に強い、私はそういう印象を受けざるを得ない。きわめて遺憾であります。  したがって、この問題につきましては、きょうは警察当局にも出席を要求したかったわけでございますが、残念ながらきょう出席ございませんので、留保したいと思いますが、最後に大臣から、このような形の会計処理が行なわれた、でたらめだ、これに対して大臣なりの御反省もあろうと思いますし、同時にまた、これから各国立大学に対してどのような態度、あるいはまた調査等をなされるかどうかお聞きして、これ以上進めませんので、留保した形できょうの質問を終わりたいと思います。
  123. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 だんだんの御指摘、非常に重大なあやまちを慣行的に繰り返してきたものだ、私も実はたいへん驚いておるわけでございます。会議を開いたり通達を出したりしておるのでございますけれども、あとの処理をどうしたとか、関係の学校全部について報告を求めたいと思いますし、またそれぞれの実態についても調査をいたしまして、将来にあやまちを再び繰り返さないような処理をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  124. 坂井弘一

    ○坂井委員 留保いたしまして終わります。
  125. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時十六分散会