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1973-03-29 第71回国会 衆議院 決算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年三月二十九日(木曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 宇都宮徳馬君    理事 木野 晴夫君 理事 松岡 松平君    理事 森下 元晴君 理事 綿貫 民輔君    理事 久保田鶴松君 理事 庄司 幸助君       菅野和太郎君    中尾  宏君       濱野 清吾君    吉永 治市君       高田 富之君    坂井 弘一君  出席国務大臣         通商産業大臣  中曽根康弘君  出席政府委員         行政管理庁行政         監察局長    大田 宗利君         通商産業政務次         官       塩川正十郎君         通商産業大臣官         房長      和田 敏信君         通商産業大臣官         房会計課長   岸田 文武君         通商産業省企業         局長      山下 英明君         通商産業省公害         保安局長    青木 慎三君         通商産業省公害         保安局参事官  田中 芳秋君         通商産業省繊維         雑貨局長    齋藤 英雄君         通商産業省公益         事業局長    井上  保君         中小企業庁次長 森口 八郎君         建設省河川局次         長       川田 陽吉君         自治大臣官房審         議官      山下  稔君         消防庁長官   宮澤  弘君  委員外出席者         農林大臣官房審         議官      有松  晃君         会計検査院事務         総局第四局長  田中  稔君         決算委員会調査         室長      東   哲君     ————————————— 委員の異動 三月一日  辞任         補欠選任   芳賀  貢君     島田 琢郎君   坂井 弘一君     矢野 絢也君 同日  辞任         補欠選任   島田 琢郎君     芳賀  貢君 同月二日  辞任         補欠選任   稲葉 誠一君     北山 愛郎君   芳賀  貢君     安井 吉典君 同日  辞任         補欠選任   北山 愛郎君     稲葉 誠一君   安井 吉典君     芳賀  貢君 同月五日  辞任         補欠選任   稲葉 誠一君     田中 武夫君 同日  辞任         補欠選任   田中 武夫君     稲葉 誠一君 同月六日  辞任         補欠選任   中尾  宏君     高見 三郎君   稲葉 誠一君     辻原 弘一君   三浦  久君     浦井  洋君 同日  辞任         補欠選任   高見 三郎君     中尾  宏君   辻原 弘一君     稲葉 誠一君   浦井  洋君     三浦  久君 同月七日  辞任         補欠選任   吉永 治市君     福田  一君   三浦  久君     田代 文久君 同日  辞任         補欠選任   福田  一君     吉永 治市君 同月八日  辞任         補欠選任   中村 弘海君     保利  茂君   稲葉 誠一君     枝村 要作君 同日  辞任         補欠選任   保利  茂君     中村 弘海君   枝村 要作君     稲葉 誠一君 同月九日  辞任         補欠選任   矢野 絢也君     坂井 弘一君 同月十六日  辞任         補欠選任   吉永 治市君    小此木彦三郎君 同日  辞任         補欠選任  小此木彦三郎君     吉永 治市君 同月二十七日  辞任         補欠選任   中村 弘海君     林  義郎君 同日  辞任         補欠選任   林  義郎君     中村 弘海君 同月二十八日  辞任         補欠選任   中村 弘海君     吉川 久衛君   田代 文久君     三浦  久君 同日  辞任         補欠選任   吉川 久衛君     中村 弘海君   三浦  久君     田代 文久君 同月二十九日  理事八木昇君同日理事辞任につき、その補欠と  して芳賀貢君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  昭和四十五年度一般会計歳入歳出決算  昭和四十五年度特別会計歳入歳出決算  昭和四十五年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和四十五年度政府関係機関決算書  昭和四十五年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和四十五年度国有財産無償貸付状況計算書  (通商産業省所管中小企業金融公庫中小企  業信用保険公庫)      ————◇—————
  2. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 これより会議を開きます。  この際、おはかりいたします。  理事八木昇君から理事辞任申し出がございます。これを許可するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  これより理事補欠選任を行ないたいと存じますが、これは先例によりまして委員長において指名するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 御異議なしと認め、よって委員長芳賀貢君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  5. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 昭和四十五年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、通商産業省所管中小企業金融公庫及び中小企業信用保険公庫について審査を行ないます。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がございますので、順次これを許します。綿貫民輔君。
  6. 綿貫民輔

    綿貫委員 今日の国際通貨情勢の変化に伴いまして、わが国の経済は大きな影響を受けつつありますが、特に中小企業へのしわ寄せということが非常に憂慮されるわけであります。わが自由民主党はいち早く緊急中小企業対策というようなことに取り組んでおりますけれども、しかし、抜本的に中小企業の安定のためには、その体質改善あるいは構造近代化構造改善というようなことを進めていかなければならないと思います。そのために設備近代化資金が広く活用されておりますが、この制度を通じまして二、三質問を行ないたいと思います。  まず第一に、この資金が無利子であるということで、その活用面におきましていろいろ不正、不当というようなことが会計検査院から指摘されております。四十四年には二件、四十五年には九件、四十六年には実に三倍の二十七件が不正貸し付けということで指摘をされておるわけであります。金額にいたしましても、四十四年には三百万円、四十五年には二千六百万円、四十七年には実に七千八百万円ということになっておりますが、この点監督官庁としてどのように把握をされておりますか、まずお伺いをいたしたいと思います。
  7. 塩川正十郎

    塩川政府委員 四十五年度におきまして不正件数が二十七件と出てまいりまして、これは非常に遺憾なことでございます。  この制度は、そもそも中小企業と申しますか、特に零細企業を対象としての制度でございます。そこで、発足以来十数年の間にこの制度が果たしてきた効果というものは相当大きいものがあると思っておるのでありますが、それがようやく普及してまいりますと、何と申しますか、これを活用するについていろいろな方便を考えてくるようになります。そうした場合に、この融資を受けようということから無理な設備をするということも一見考えられると思うのでございます。また二十七件の不当事項の中に、当初見積もっておったよりも比較的安価に機械が入手された、そのためにその差額の分が不当事項となっておるというようなこともふえてまいったと思うのであります。したがいまして、こういう事態が増発していきますことは極力押えなければなりませんので、当局といたしましては、今後一そう指導を徹底すると同時に、この実態の把握を懸命にいたして、こういうことの発生のないようにつとめてまいりたい、このように思っております。
  8. 綿貫民輔

    綿貫委員 ただいま政務次官の御答弁のとおり、この資金の果たしてきた使命というものは非常に意義のあるものだと思います。  そこで、この近代化資金総額がふえたから不当額もふえたというふうに思っておりましたが、貸し出し総額におきまして、昭和四十一年には五十二億円、四十五年には二十六億円に減少いたしまして、ようやく四十六年に二十九億円ということになっております。これは確かに返済金がふえているということも言えると思いますけれども、予算額が四十一年、四十二年当時より大幅に少なくなっておるというのはどういうことなのか、これをお伺いいたしたいと思います。これは積算が甘かったのか、あるいは予算と実績に大きな開きがあり過ぎるため予算措置がとられなかったのか、その辺の事情を御説明願いたいと思います。
  9. 森口八郎

    森口政府委員 先生御存じのとおり、設備近代化資金の原資は、国が一般会計で府県に対する補助金を組みまして、その補助金に見合います額をまた県が一般会計で組みます。その両方の金を県のほうに設置してございます特別会計に毎年度繰り入れるわけでございます。中小企業者貸し付けます設備近代化資金は、こういうように国が一般会計から出します補助金、県が出します出資金、そういうものを合計したものが県の特別会計に入りますほかに、毎年度設備近代化資金償還額がございます。こういう償還額が毎年ふえておるわけでございまして、そういうような償還金と、先ほど申しました、国の一般会計あるいは県の出資金というものの合計額が毎年貸し付け額であがるということでございます。御指摘のように、補助金の額は四十年以降毎年減っております。数字で具体的に申しますと、最近の時点をとりましても、四十五年の二十六億、四十六年の二十九億八千五百万円、四十七年が二十四億、四十八年が二十三億というぐあいに、国の当制度に対する補助金減少ぎみであります。ただ、制度の仕組みが先ほど申しましたようなぐあいになっておるものでございますから、貸し付け規模でまいりますと、同じ年度で見まして、四十五年度が三百三十四億、四十六年度が二百五十三億、それから四十七年度が二百六十五億、それから四十八年度は二百七十五億というように予定をいたしておりまして、貸し付け規模自体は、設備近代化としては毎年ふえておるというのが状況でございます。  それから、もう一つ近代化資金をお考え願う場合に御考慮いただきたいのは、設備貸与制度であります。近代化資金制度が主として百人以下の中小企業者設備近代化に役に立っておるのに対しまして、設備貸与制度小規模事業者に対する設備近代化を促進するための制度であります。しかもこの制度は、必要な設備を県で設置しております公社等小規模事業者に直接貸し付け制度であります。本制度につきましても、中小企業庁は援助をいたしておりまして、設備貸与制度は近年急速にその事業規模を拡大をいたしておるわけでございます。予算規模で見ますと、設備貸与のほうは、四十五年度が約七億二千六百万円、四十六年度が九億七千七百万円、四十七年度は十四億八千四百万円、四十八年度は十九億一千八百万円を予定しておるわけでございますが、近々三、四年の間に予算額は倍以上にふくれ上がっておるということでございまして、事業規模のほうもこれに伴いまして、設備貸与制度のほうは、四十五年度は大体四十二億、四十六年度は六十億、四十七年度は八十八億、四十八年度は百十六億というような金額を予定いたしておるわけでございまして、当初非常に小さい規模から出発しました設備貸与制度は、ここ三、四年の間に急速に大きくなりまして、設備近代化の約四割くらいの貸し付け規模を持つに至っておるわけでございます。  したがいまして、先生指摘のとおり、中小企業者設備近代化は、何よりも中小企業体質改善に役立つわけでございまして、当方としては非常に力を入れておるわけでございますが、近代化資金のほうは、若干伸び率は鈍化はいたしておりますけれども、事業規模は年々増大をしておる、設備貸与のほうは急速に増大をしておるということでございまして、両者を合して、中小企業者設備近代化に対する評価をいたさなければならないというように考えるわけでございます。  両者を合わせた事業規模で申しますと、四十五年度が約二百七十六億円、四十六年度は三百十三億円、四十七年度は三百五十四億円でございまして、四十八年度は三百九十一億円というような事業規模を予定いたしておりまして、毎年大体八ないし十数%の伸び率を確保いたしておるわけでございます。したがいまして、確かに設備近代化資金国庫から出します予算額自体を見てみますと、近年減少傾向にあることは全く先生の御指摘のとおりでございますけれども、設備近代化資金事業規模または設備貸与制度の最近の国庫予算額の増額というような点、両方あわせお考え願えればありがたいというように思うわけでございます。  中小企業庁といたしましても、毎年予算を組みます場合に、設備近代化資金予算設備貸与制度予算と両方合わせた予算規模で大体中小企業者設備近代化ができるであろうか、はたして十分であろうかというような点を検証いたしながら、毎年財政当局予算要求をいたしておるということでございます。四十八年度予算につきましても、そういうような趣旨で若干設備貸与に重点を置いたような予算要求をいたしておりますが、この程度の予算がつきますれば、中小企業者設備近代化に支障はないのではないかというように考えておる次第でございます。
  10. 綿貫民輔

    綿貫委員 ただいまの次長の御説明で、施設の貸与、あるいはその他の還元したものを入れて、いろいろと総ワクについては増大をはかっておられるというふうに承りました。このワクのさらに増大ということについては、今後とも努力を願いたいと思います。  同時に、この内容につきまして、いろいろと調査をいたしてみますと、四十五年は、十万円から五十万円といういわゆる最低限度額のものが七百件ということに対しまして、最高額の三百万円から五百万円というのが二千三百件に達しております。四十六年も同様に、五百件に対して二千六百件ということで、つまり三百万円以上の貸し付け希望が非常に多くなっているということであります。これは特に中小企業者資金需要額が高くなっておるということだと思うのでありますが、また聞くところによりますと、最高限度額をこえて貸し付けておるものもあるというふうに聞いておりますが、こういう点について政務次官はどういうふうにお考えでしょうか。
  11. 塩川正十郎

    塩川政府委員 先生の御質問から承りますと、現在の限度額五百万円をもっと引き上げる必要があるのではないかということが含まれておるように思うのであります。顧みますと、機械設備投資額というものは、逐年技術が高度化してまいりますし、これに伴いますところの装置というものも複雑化してまいりますので、機械コストそのものも引き上げられていくのは当然でございます。ところが、この五百万円に上げましたのはつい二、三年前でございまして、そこで現在の設備状況等を十分に一回調査をいたしまして、この五百万円という限度額が少ないようでございましたならば、やはり訂正すべきであろうと思うのであります。しかし、御承知のように、この五百万円は、すなわち設備額に直しますと、一千万円相当のものになるのでありまして、一千万円の設備機械と申しましたら、いわば中小企業におきましては一番多い層ではないかと思うたりいたします。がしかし、お申し出のことでもございますので、十分調査いたし、必要あれば改定をすることもやぶさかではない、このように思います。
  12. 綿貫民輔

    綿貫委員 ただいまの政務次官の御答弁でございますが、これは四十四年に改正をいたしております。最近のいろいろの物価高その他もございますし、この点については、さらにもう一度御検討を願いたいと思います。  この四十六年のドルショックによる貸し付け金を、さらに今回、返済が困難な輸出関連中小企業に二年間の猶予を認めるという御方針が打ち出されておりますが、これはまことに喜ばしいことだと思いますけれども、また同時に、緊急融資制度というものも充実させるということでありますが、単にこれにとどまらず、融資条件の緩和や納税の猶予というような特別のはからいをやはりこの際お考えいただいてはどうか、こう思うわけでありますが、中小零細企業の保全にさらに今後取り組んでいただく覚悟と方策をひとつお聞かせいただきたい、こう思うわけでございます。
  13. 塩川正十郎

    塩川政府委員 いわゆるドルショック対策といたしまして、三月の中旬でございましたか、閣議決定いたしまして、それによりますと、大体六つほどの骨子からできておるのでございますが、まず第一は、政府関係機関に対しまして二千二百億円の新しい緊急融資をしようということ、そうして一昨年末にありましたドル対策貸し付けに対します返済猶予するということ、さらには近代化設備をまず積極的に進めていくために、信用補完を充実させていくこと、あるいはまた国税の繰り戻し制度に基づきまして、欠損金を還付するということなり、あるいは転業指導、さらには外貨預託等を含めましてドル対策を決定したのでございまして、それに閣議決定に伴います事項法律案件を要するものにつきましては現在国会に提出しておるような次第であります。  そこで、中小企業対策としてこれから最も考えなければならないのは、国際化が進んでまいります中において、ただ単に通貨問題だけではなくして、後進国の追い上げということもございますし、何といたしましても、ここでわが国中小企業が根本的に体質改善をしなければならぬ時期に逢着しておるのでございます。そこで、それの対策といたしましては、やはりそういう信用補完なりあるいはまた税制上の問題等もございましょうけれども、国際競争力に耐えられない業種につきましては、積極的に転換方策を講じなければならぬと思うのであります。その転換方策の一番の中心となりますのは、やはりいままでの資源消費型から知識集約型の産業転換していかなければならない。これは中小企業におきまして最も大事な政策であろうと思います。ところが、この業種転換ということにつきましては、政府のほうとして指導するにつきましてきめ手となるものが実はないのでございまして、これらはいずれもやはりその業者自身が苦労をしていただいて転換の方向をひとつ見出していただく。それがためには、政府としては情報の提供なり、あるいはまた技術指導というようなことを積極的にお手伝いしなければならぬし、また転換方法が定まりました場合には、金融なりあるいはいろいろな措置をもってこれを支援するという形でもってやっていきたいと思うのであります。そういうことで、実地にひとつやってみようということから、近く十六業種につきまして転換指導を積極的にやっていきたいということで、現在コンサルタントを中心といたしまして、そういう特別調査班のようなものを編成する準備を進めております。これが実際に調査し、また転換につきまして業者といろいろ協議いたしましたこと、それを反映して来年度予算にそういうものの組み入れをはかっていきたい、このように思っております。
  14. 綿貫民輔

    綿貫委員 いろいろと誘導行政あるいは指導行政、いろいろなパターンがあると思いますけれども、ただいまの政務次官の御答弁のように、特に塩川政務次官中小企業問題にたいへん熱心に取り組んでおられますので、政務次官の在任中にひとつそういうパターンをきちっとしていただきたいというととを強く要望いたしておきます。  次に私が質問をいたしたいと思いますのは、私の郷土富山県の小さな部落のできごとにすぎないのでありますが、しかし通産行政の不手ぎわのために、素朴な農家数十戸が三年間にわたる不安と、しいたげられた生活におののいておる事実を、この決算委員会において明らかにすることによりまして、少しでも正しい行政の確立と国民の政治への信頼を取り戻すケースにしたいということでただいまから御質問をいたしたいと思います。  一昨年の暮れ十一月七日富山県の高岡市の石堤の通称石灰山土砂採取場で大きな山くずれが起き、送電用の鉄塔が倒れ、石川県ではおよそ二十万戸が停電、また部落土砂が押し流されまして、四百頭にのぼる豚をはじめ田畑が奪われ、県道や河川土砂で埋まり、部落民は恐怖に襲われたのであります。  この原因は、通産省監督のもとに採掘を行なっていた共同開発株式会社もぐら工法通産省監督不十分が原因であることは、当時名古屋通産局小野鉱山部長が明らかにいたしております。高岡市役所では、鉱山部長監督不十分であった点を深く反省し、被災地の復旧、賠償に全力をあげるということを言明いたしておられます。しかし、以来二年半、富山県が主体となって第二次災害を防ぐための代執行を一部行なったのみで、当時の土砂すらそのまま放置されている現状であります。通産省としてどのような対策を今日までとってこられたのか、また部落の損害など通産省ではどのように把握しておられるのか、これをお伺いいたしたいと思います。
  15. 田中芳秋

    田中(芳)政府委員 昭和四十六年十一月七日に富山県におきまして発生いたしました国土高岡鉱山にかかわります災害につきましては、ただいま先生から御指摘ありましたとおりでございます。私どもといたしましては、災害発生後、まず地域住民被害、これがきわめて膨大にのぼるということから、その対策に万全を期したいということで、県及び市と直ちに協議をいたしまして、通産省含めまして、これら関係機関の職員をもって構成いたします高岡石灰山災害対策連絡協議会を発足さしたのであります。協議会は今日まで五回開催し、被害者救済措置の問題につきまして鋭意問題の解決について協議をいたしておるところでございます。  この被害者への補償の問題につきましては、鉱業権者が無資力であるということ、さらに鉱業権者自体は、前日から降り続きました当地では異常といわれております大雨のための災害である、天災であるという主張をいたしておりますこともございまして、これが被害者救済に円滑を期しますためには、流出しておりますこうした土砂、これを処分いたしまして、それによって得ました代金をもって被害者補償に充てるという方法が最も適当であろうとの判断のもとに、市と協力いたしまして鉱業権者を説得をしてまいったところでございます。その結果、鉱業権者被害者代表との間で、流出いたしました分離鉱物、すなわち石灰石のまじります土砂でございますが、それの譲渡契約が締結されました。これが埋め立て等に使われますよう市のあっせんを得まして、この売却利益をもって補償に充てている現状でございます。ただ、市のほうの算定によります地元住民被害額は約二千五百万円ということにのぼっておりますが、今日までこうした方法によりまして地元被害民が受け取りました金額は六百四十万円という形になっておるわけでございます。  第二に、鉱山保安監督行政につきまして、ただいま御叱責をいただいたところでございます。私どもこれにつきまして深く反省をいたしておるわけでございますが、現地の名古屋鉱山保安監督部におきましては、第二次災害防止のため、鉱業権者に対しまして鉱山保安法に基づく命令を発したのでございますが、これの命令書の受け取りを拒否される等、この命令が履行されておりません。そこで、保安監督部では四十六年の十二月十七日から二十七日にかけまして代執行工事を行なったのでございます。しかし、今日まで代執行いたしました工事費が未納でございますので、四十七年四月十七日、この共同開発株式会社に対しまして鉱業権の差し押えを行なっております。また、この監督部におきましては、四十六年十二月十七日付で鉱業権者鉱山保安法違反で富山地検に送致をいたしますとともに、通産局も同日付で鉱業法違反ということで鉱業権者富山地検に告発をいたしておるところでございます。  この裁判につきましては、今日までたしか七回公判が開かれておりますが、いまだ結審を得るに至っていない状況でございます。  現在まで通産省といたしましてとりました処置につきまして、概要以上のとおりでございます。
  16. 綿貫民輔

    綿貫委員 いまいろいろと懸命に対策を講じた、あるいは協議会もスムーズに運ばれたように御説明がありましたけれども、これはただいまのお話にもありましたように、事件以来、地元の高岡市、それと名古屋の通産局、そして富山県を加えた三者協議会というものをつくりまして、当時の鉱山部長の小野部長が座長になって、いろいろと処理に当たることになったわけでありますが、第一回は四十六年の十一月十七日、第二回は十一月二十四日、第三回は十二月二十七日、このときやっと第二次災害防止の代執行をきめております。その後、座長の招集のないままようやく半年後の四十七年の五月に第四回の会合が開かれました。そのときに初めて、当時三十万立米というふうに推定されておりました土砂を売却してこれを補償に充てるということを確認いたしております。しかし、その後、一年も放置されていたために、土砂は雨と雪のたびに隣の谷内川に流れ込みまして、売るべき土砂が十五万立米と半分に減ったといわれております。加えて谷内川が土砂に埋まるという不手ぎわまで生まれまして、その後三者協議会も開かれず、部落民のみが不安におののいてきたという事実につきまして、当局はどのようにお考えになっておりますか。また最近黒田名古屋通産局長が、あとの土砂の搬出には一年近くもかかるということを言明しておられますが、これにつきましてもそういうゆうちょうなことでいいのかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  17. 田中芳秋

    田中(芳)政府委員 ただいま御指摘がございましたように、流出いたしました土砂の量は約三十万立米というふうに計算されておるわけでございますが、現在までの搬出量は十四万三千九百立米ということでございます。したがいまして、残量は約十五万立米と推定されるわけでございますが、かなりの量が水田等に埋没をいたしておりますこともございまして、いわゆる汚泥化いたしたような状況でございます。したがいまして、この十五万立米の中から搬出可能な数量は、私どもといたしまして約八万立米というふうに見積もっておるわけでございます。先ほど谷内川への自然流出等のお話もございましたが、私どもといたしましては、この量はそれほど多くないのではないかというふうに考えております。しかしいずれにいたしましても、この搬出を長期にわたって搬出できないまま放置しておきますことは、この量がやはり自然の状況下にさらされるわけでございますので、量が減るということもございますので、できる限り早くこれを埋め立て地等に売却をすることが望ましいと考えておるわけでございますが、しかしながら、この流出土砂につきましては、先ほど触れましたように、鉱業権者と地元被害者との間に譲渡契約という形がすでに成立しておりまして、この流出鉱物につきましては、所有権が地元被害者のものとなっておるわけでございます。したがいまして、これが搬出につきましては、地元被害者の御意向あるいは埋め立て先の確保等を早急に行ないまして、できる限り御指摘のようなことのないように全力を注いでまいりたい、このように考えております。
  18. 綿貫民輔

    綿貫委員 いろいろと全力を尽くすと言われましたが、何かまだはっきりしないようで、これについてはまたあとから具体的に申し上げたいと思います。  ところで、通産局のこの問題に対する安易さを示すもう一つの事実があるわけであります。この事件が起きます一カ月前に送電線の近くが採掘されている事実を認めた北陸電力の内田課長が、名古屋通産局に対し、鉄塔付近を掘り、山くずれの危険があるので即時中止してほしいという要請を行なっております。しかしそのまま黙認されまして、ただいまこの点は目下裁判中であります。また鉱山保安監督部監督状況でも、この山の試掘権が出願された昭和三十八年から事故発生の四十六年まで、実に八年間にただ一回四十五年の二月に現地調査が行なわれたというずさんな監督状況であります。この点についてどのようにお考えになっておりますか。  もう一点突っ込んでお尋ねいたしますと、事件を起こしました共同開発株式会社の木村社長は、新聞紙上でも、暴力団とのつながりがあって、目下逮捕中であります。通産省富山県など、いずれも交渉ができない事情にあるというふうに聞いておりますが、これについてもお伺いをいたしたいと思います。
  19. 田中芳秋

    田中(芳)政府委員 まず国土高岡鉱山に対します監督保安行政の不行き届きの御指摘があったわけでございます。この点につきましては、まず昭和三十八年三月十二日に、この当時は林勉という試掘出願者でございますが、これが試掘権を設定いたしておるわけでございます。その後、この試掘権を設定しつつ、同時に事業着手の延期願いが出ております。また同時に、試掘権の延長申請が三回にわたって出ておるわけでございます。  一方、しかしこうした間に、昭和四十二年六月二十八日、国土興業が試掘権者に変わったわけでございます。そして四十二年の九月一日に高岡鉱山よりの試掘の施業案が受理されておるわけでございますが、四十四年三月十二日、試掘権が満了するに伴いまして、採掘出願という形が国土興業から出されておるわけでございます。  ところで、この採掘出願中に通産省の鉱山保安監督のほうで現地を調査いたしたわけでございますが、まだ採掘権の認可がない、転願中に操業をしておることを発見いたしまして、四十五年三月十一日に鉱業法違反という形でこれを処理をいたしておるわけでございます。四十五年の三月十二日に採掘権の設定を認めたわけでございます。続きまして、同三月十六日、採掘施業案が提出をされ、五月一日に施業案を認可いたしたのでございます。  このあと、四十五年九月十四日、施業案の内容につきまして改善をいたすべき点があるということから監督部に招致をいたしまして、鉱山の操業状況を聴取し、九月二十一日に指示事項改善報告書提出を通知いたしておるわけでございます。  その後四十六年四月十六日、鉱山保安にかかわります保安統括者会議の開催をする、このために国土高岡鉱山に対しまして、保安統括者を招集したわけでございますが、これは欠席でございます。したがいまして、四十六年六月九日、再度この会議を開催いたしまして招集をいたしたわけでございますが、これも欠席をしておる、こういう状況でございます。  そうした中で、四十六年七月一日に国土興業株式会社、これが共同開発株式会社という形に、鉱業権を譲渡をいたしておるわけでございますが、その年の十一月七日に事故の発生を見たわけでございます。  こういった状況であるわけでございまして、ただいま御指摘のとおり、この地域に対しましては一回の現地調査、現地監督を行なっておりました点につきまして、監督不行き届きの点があったということにつきましては、私どもも深く反省をいたしておるところでございます。
  20. 綿貫民輔

    綿貫委員 ただいま参事官から監督不行き届きということもお認めになったと思います。しかもなお、ただいま御説明にありましたように、四十五年三月に、通産省は国土興業に採掘権を与え、一年もたたない間に、四十六年十月に共同開発に採掘権を変更いたしております。しかしその中身は、共同開発の木村というのは日本の国籍を有しないということで、鉱業法の第十七条によりまして個人で資格はとれない、こういうことがわかりましたので、急遽法人をつくるというようなことで、ずさんな新会社をつくって、安易に採掘権を認めてほしいといったようなのを認めたということになっております。  事実、その後国土興業から、暴力行為で会社の乗っ取りと採掘権が奪われたという訴えが認められまして、この木村が裁判でも負けておるのであります。監督行政がしっかりしておれば、このようなずさんな採掘権の変更というものもなかったでありましょうし、同時に、こういう共同開発が強引なモグラ工法によって事件を巻き起こすというふうなこともなかったのじゃないかというふうに私どもは考えておるのであります。今後この、ただいま参事官もお認めになったように、監督行政というものについて、もっとぴしっとしたやり方でやってもらわないと、第二、第三のこういう事件が起こる可能性があるということを、ひとつ強く申し上げておきたいと思っております。  ところで、この採掘権の認可をめぐりまして、また名古屋通産局で贈収賄事件があったことは、すでに御承知のとおりであります。具体的に当時のメモを持っておりますけれども、ただいま申し上げましたように、通産省の綱紀粛正の問題とあわせて、いずれまたお伺いする機会もあるかと思いますが、簡単にその後の処分の処置についてお伺いをいたしたいと思います。
  21. 田中芳秋

    田中(芳)政府委員 ただいま御指摘の点につきましては、私どもといたしましてまことに残念に思っておるわけでございます。処分の問題でございますが、一名につきましては、昭和四十七年三月十六日付をもちまして国家公務員法第七十九条第二号によりまして刑事休職という形にいたしております。なおもう一名につきましては、三月二十五日国家公務員を辞職という処置をとっておるわけでございます。
  22. 綿貫民輔

    綿貫委員 この石灰山の問題につきましては、あまりにもなまぬるい行政措置に対しまして部落民は、行政管理庁の調査官に直訴するなど、訴えが続いてまいったのでありますが、すでに行政監察局でも昨年の十月詳しい調査を行ないまして、通産省に勧告も出しているはずでありますけれども、その後どのような回答が出されておるのか、行政監察当局にちょっとお伺いいたしたいと思います。
  23. 大田宗利

    ○大田政府委員 本件につきましては、昨年の十月、富山行政監察局から報告が参りまして、その内容につきましては大体四項目ございます。大まかに申しますと、保安上の問題と被害者救済問題という二つに分かれようと思います。  そこで、保安上の問題につきましては、ただいまいろいろ御説明のありましたように、四十五年二月の試掘権から採掘権への転願中に一回調査が行なわれて、そのあとは現地調査が行なわれていないという報告が参っております。  それからその次に、鉱業者は施業案に基づくベンチカット方式によらず、危険な工法によって操業していたが、上記現地調査を行なっていないこともありまして、業者に対する指導監督が十分でなかったという報告でございます。  それから、被害者補償状況でございますが、これは昨年九月末現在で三十万立米のうち十万立米しか処理されていない、あとの二十万立米はそのまま現地に放置されている、したがいまして、その二十万立米を早期に処分をきめまして、被害者救済に充てる必要がある、こういう内容でございます。この結果を通産省当局にお示ししまして、通産省からいろいろ事情をお聞きいたしましたのですが、その結果、結論的に申し上げますと、現地の立ち入り検査の励行など、業者に対する指導の充実をはかる必要があるということが第一点でございます。  それから、鉱業権の設定、変更に際しましては、地元地方公共団体との十分な連絡調整が必要である。  それから第三点といたしまして、施業案記載内容の明確化をはかる必要があるという内容でございます。
  24. 綿貫民輔

    綿貫委員 ただいま行政管理庁から御説明のあった点は、政務次官もお聞きになったとおりでありまして、その非はもう明らかであります。そういう点で、これはいろいろといままで行政的に解決しなければならないというようなことで努力をしていただいておりますが、もう政治性を加味しないと解決できないような面も非常にあると思います。そういう点でいろいろともう一度この面についてひとつ検討をしていただきたいと思うわけであります。  ところで、この土砂に埋まった県道の花尾線、谷内川は一部代執行によって補強されておりますけれども、さらにこの二年間放置されたために住民の不安や不満が高まっているのでありますけれども、何とか国の施策で、せめて土砂に埋まった谷内川の改修でも進めてほしいという住民の要望が出ておるのでありますけれども、この点について建設省はどのようにお考えであるか、お伺いいたしたいと思います。
  25. 川田陽吉

    ○川田政府委員 谷内川の改修についてでございますが、埋塞を起こした場所から下流のほうは、すでに災害関連事業等によりまして、相当の流下能力を備えております。埋塞を起こした個所並びにその上流についての改修が必要と考えております。とりあえず、直接の埋塞個所五十メートル区間を含めまして、一応県単で拡幅等が行なわれておりますので、建設省といたしましては、四十八年度から、そこから上流のほうを河道の拡幅とそれから屈曲等を、流心を是正するという事業に着手したいと考えております。一応四十八年度から着工という線でただいま検討いたしている次第でございます。現在の川幅が五メートルでたいへん狭うございます。まあ倍くらいに広げる必要があると考えている次第でございます。
  26. 綿貫民輔

    綿貫委員 谷内川の改修は、ただいまの御説明で大体今年からやっていただけるということでありますから、これはほんとうは通産省のしりをぬぐったというようなことに地元では考えておるわけであります。そういう点でやはり元締めは通産行政ということにあると思うのでありますが、今年に入りましてから、さらにこの付近が雨と雪のために第二次災害の危険があると富山県では判断をいたしまして、県の商工労働部から第二次の代執行で一部山をくずしてほしいという要望が出ておるはずであります。これに対しまして通産当局でも鉱山部では理解を示しながら、鉱山保安監督部では第一次代執行で十分安全なはずであるということで、お互いに責任のなすり合いといいましょうか、自分の責任を守るということで、いろいろとその辺にそごを来たしておるように聞いておるのでありますけれども、これについてはどういうふうになっておるかお伺いいたしたい。
  27. 田中芳秋

    田中(芳)政府委員 災害後、残壁と申しますか、それがほぼ直立をいたした形になっておりますために、このまま放置いたしますと二次災害が起こるということで、鉱業権者に対しましてこの残壁の角度を安全な角度に直すようにという工事命令を出したわけでございますが、先ほど御説明いたしましたように、鉱業権者がこれを実施いたしませんので、国の費用によりまして代執行をもって工事をいたしたわけでございます。現在、残壁の角度はほぼ、ほかの鉱山等につきまして保安上必要とされます約七十度の角度ということで、国が代執行で工事をいたしたわけでございまして、鉱山保安監督部といたしましても、これでだいじょうぶだという判断をいたしているわけでございます。ただ、ただいま先生の御指摘で、県のほうからこれでは不安だというお話、申し入れがあったという御指摘があったわけでございますが、私ども及び出先の監督部のほうではそういう事実は了知していないわけでございます。しかし、地元の方々がそういう形で非常に不安だということでございますれば、私どもさっそく県のほうともう一度連絡をいたしまして、そして、私どもとしては通常の保安規則面からこれはだいじょうぶだ、こういうふうに思っておりますし、現地の監督部のほうもそういう自信を持っておるわけでございますが、いまそういう御指摘がございましたので、土木工学関係のエキスパートと申しますか、そういう方々にお願いいたしまして、現地を一度見てもらう、そういう形でそういう方々の御意見を伺いまして、必要があればもう一度手を打つ、そういう形をしてみたいというふうに考えておるわけでございます。さっそくそういう方法をとりたいと思っております。
  28. 綿貫民輔

    綿貫委員 土木工学というような何か学理的な問題が出てきましたけれども、住民が不安だというものを土木工学でだいじょうぶだからやらぬ、そういうような行政の何か基礎づくりみたいなことばかり考えていただいては、この問題はなかなか住民の納得は得られないと思うのです。先ほども話があったように、この行政の不手ぎわということをお認めになっておるわけなんですから、やはり住民の願い、不安だという声もくみ上げるようなひとつ人情味のある行政態度をとってもらわないと、土木工学で認めたからどうだ、認めないからどうだ、そういうことではちょっと困ると思うのですが、政務次官これはどうですか。
  29. 塩川正十郎

    塩川政府委員 先ほど来経過をずっと聞いておりまして、通産省のほうで採掘権を許可する際からこの問題がからんでおるように思います。したがって、そういう意味におきまして採掘権者の十分な資本力なり能力というものを確かめないで免許を許していったという点について恐縮もし、われわれも反省いたします。ついては、現実に起こっておる問題をどう解決していくかということでございますが、先ほどの経過を聞いておりますと、三十万立米流出して、そのうち行政管理庁のほうでは十万立米処理したと言っておりますし、また通産当局のほうでは十四万立米処理した、こう言っております。そこにまた若干の食い違いもあるようにも思います。したがって、いずれにいたしましても、過半数以上のものがまだそこに堆積されておる。これが第二次流出を起こしはせぬだろうか、この不安があるから、早く処置しろ、こういう綿貫先生のお説でございます。つきましては、先ほど参事官が申しましたように、土木工学的ということは要するにその状況を調べるという意味だと私は思うのでございますが、地元のほうからそういう強い不安と懸念を持って要望しておられるのでございますから、地元の御意向というものを十分にお聞きして、そういう不安のなからしめるように、一刻も早く処置しなければならぬと思います。ついては、どの程度流出土、残土をどう取り除かなければならぬのか、あるいはまたこのままで補強作業をすることによって、それが再流出の懸念がないようにできるのか、いろいろな方法が考えられるであろうと思います。また、どうしても残土を取り除かなければならない場合には、代執行という手続をとっていかなければできないと思います。つきましては、いろいろな方法を考えてみまして、とりあえずは地元の方の不安のないようにすることが一番の緊要事でございますので、さっそく県のほうから来ていただきまして、御意見をお聞きいたします。それと同時に、監督部の者も呼びまして、いろいろと意見を調整し、とりあえずはそういう措置をどのように講ずるのかということについて対策を講じていきたい、このように思います。
  30. 綿貫民輔

    綿貫委員 この石灰山の問題につきましては、これは自民党だけではなくて、同僚の社会党の佐野代議士も国会で取り上げるなど、党派を越えまして、この通産行政の不手ぎわということについていろいろと申し上げておるわけであります。私自身も、これはもし天災であればいろいろと救済の道があるのですが、人災であるがために、いろいろ法律のワクに縛られて、被害を受けた住民に何もしてやれない、こういうことで私自身もほんとうに政治家としてふがいなさを感じております。ほんとうに何もできないのか、国というものはそういうものなのかというような疑問すら私は感じておる一人であります。そういうことで、部落民としては、もうすでに補償や復旧問題よりも、あまりにも責任を明確にしない行政の矛盾というものについて、また政治の貧困というものについていろいろと嘆いておるのでありまして、私がきょうこの問題を取り上げましたのも、こういう問題を何とか具体的な形で責任を明確にするようなことはできないかということを追及するためにお話をしておるわけであります。この点は、いままでたびたび政務次官、通産の各ポストの方々が知恵をしぼっておりますけれども、なかなかいい回答が出てこない。私は、回答が出るまでこの問題は取り組んでいかないと、政治不信につながる、また行政不信につながると思うのです。したがって私はこの問題についてはあくまで食いついていきたいと思いますので、その点はひとつ御了承いただいて、政務次官もひとつ取り組んでいただきたい、こう思います。
  31. 塩川正十郎

    塩川政府委員 先ほども申しましたように、地元でそういう不安がある間、これは政府といたしましてもそういうことに対する措置は積極的にとっていかなければならぬと思います。それと同時に、この問題をより的確に処理するためには、鉱業権者でありますところのその会社、特に代表者でございます木村何がしという者に対して、地元としても、これに協力せしめる方向、あわせてその会社なりあるいは木村個人に対します責任の追及というものもきびしくひとつお願い申し上げたい。もちろん当局といたしましてもそれらの者に対する処置というものは十分にやってまいります。そこにおいてやはり地元と通産なりあるいは県との協力関係もできてまいりましょうし、またその会社の責任をきびしく追及することによって会社自身もこれに協力をせしめなければならないのでございますし、その点におきますところの御尽力もひとつ切にお願い申し上げたい。もちろん何と申しましても、さっき綿貫先生のおっしゃっておりますように、こういうことを放置しておくということは地元民に不安を与え、これが政治に対する失望感を与えるということは事実でございます。そういうことはわれわれとしても見るに忍びないところでございますので、できるだけ早く対策を講ずるようにいたしたい、このように思います。
  32. 綿貫民輔

    綿貫委員 ただいま木村組のことについてのお話がありましたが、これは先ほども申し上げましたように、暴力団であり、しかも国籍が違う。いろいろと伝え聞くところによりますと、財産の隠匿もあるようでありますし、なかなか尋常一様の形で吐き出させるというようなことはできないところにこの問題のむずかしさが加わっておるわけでありまして、そういうことで私どももいろいろと県と相談をして努力をいたしておりますけれども、もうすでに八方手詰まりというような形でありまして、そういう点できょうは特に政治的な問題も含めてということで先ほどから申し上げたわけでありますから、その点をひとつ御理解願いたいと思っております。
  33. 塩川正十郎

    塩川政府委員 そういう点も踏んまえて十分に対策を考えていきたいと思います。
  34. 綿貫民輔

    綿貫委員 では、私の質問は終わります。
  35. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 速記をとめてください。   〔速記中止〕
  36. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 速記を始めて。  高田富之君。
  37. 高田富之

    ○高田委員 本日は、通産大臣がお見えになっておりますので、時間もございませんから、当面の大きな問題であります商品の投機、異常ないまの買い占め、売り惜しみの横行しております現状にかんがみまして、これらに関する政府当局のお考え、対策、こういった点にしぼりましてお尋ねをしたいと思うわけであります。  すでに予算委員会その他の方面でもいろいろ議論されておることではございますけれども、昨年末、特に本年に入りましてからの多種多様なあらゆる方面にわたります商品の異常な値上がり、まさにかつて例を見ないほどの異常な現象を呈してまいったわけでありまして、当初はいわゆる土地ブームということで大きな政治問題にもなりました。土地ブームがたけなわになりますや、さらにこれが証券に飛び火して、その方面での目に余る投機ということが問題になり、さらに大豆でありますとか、あるいは魚でありますとか、各種繊維、あるいは建築資材、もう何ということはなしに、台風が荒れ回りますように次から次へと飛び火をいたしまして、ほんとうに文字どおり日本経済はどうかしちゃったんじゃないか。この間もアメリカの記者がアメリカの新聞にそういう報道を送ったというような記事がありましたが、日本経済はまさに気が狂ったのではないか、あのままにしておけばかつての米騒動のような事件も起こりかねない。先般は、木材の暴騰のために零細な建築業者がやっていけないというようなことで、大臣のところにも陳情に行ったそうでありますし、材木を買い占めているのだろうというので大手の商社に対してもデモをかけて強い要請をするということまで起こっておるわけであります。若干の品物につきましてはやや鎮静の傾向をとりつつあるものもあるようではありますが、しかし何としてもこのままでは国民もがまんし切れないという限界点まで来ているというような事態にあたりまして、今日までもう一カ月以上こういうことが継続しておりますが、その間国会でも相当論議されたのでありますけれども、的確な施策というものが出され、これによって国民も安心感を取り戻すといったようなことは、残念ながら今日まで率直にいってない、いわばお手上げというような状況にあるのではないかとさえいわれておるわけなんですが、もちろん大きな問題でございますから、通産大臣だけでどうということではございませんが、なかなか大事な分野を担当されております中曽根大臣とされまして、この事態を一体どうしようとされるか。何か思い切った措置を考えないというとたいへんなことになる。あるいはいままでにお考えになり、あるいは着手されたこういう有効な施策があって、現に着手しておるとか、これからこうやろうとしておるというようなこと等につきまして、簡潔でけっこうでありますから御説明をまずいただきたい、こう思うわけであります。
  38. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 一般的には、昭和四十四年ごろから財政の引き締めがあって、そのためにかなりの輸出超過になりまして、そのためにドルが流入して、それが円に転化して過剰流動性になって、そういう情勢のところに日本列島改造とか、あるいは土地関係のブームが起こりまして、それが火つけ役のような形になって、ややインフレムードに国民の心理が転化した。そこに国際的に、たとえば飼料であるとか、あるいは羊毛であるとか、そういうものが品不足等のために割り高になってきて、そうして物価騰貴に拍車をかけた。そういうのがたまたま昨年の秋からことしの春にかけて重なって、ぶつかって入ってきた、そういう不幸な現象があったように思います。したがって、基本的にはこの過剰流動性を吸収していく、そういう意味において金融政策並びに財政政策が非常に大事で、政府はその処置をいま取り始めておるところでございます。だいぶ商社や不動産業等に対する金融を引き締めてまいりまして、その効果はいま顕著に見えつつありますし、さらに公定歩合の問題等とも見合わせまして金融のそういう意味の流動性吸収は続けられていくだろうと私は思います。  それからもう一つは、具体的に一つ一つの商品について手当てをするということが大事であるだろうと思います。土地につきましては、先般税制上の諸般の措置等をとることにいたしました。それから木材あるいは繊維あるいは飼料その他については、一つ一つ通産省並びに農林省で対策を講じております。通産省の品物につきましては、いま問題になっているのは、一番大きいのはセメントでございます。それからもう一つは毛の投機じみた取引所の価格の問題等がございます。  セメントの問題につきましては、この春がわりあいに暖冬でありまして、いつも一月ぐらいになると需要が減るのが、ことしは需要が減らないで二五%ぐらいふえてきている。そういうこともありまして、その上に新幹線や高速道路の工事が進み、災害の問題もありまして異常に需要がふえてきた、そういうことでございました。そういう原因を究明しながら、いままず地域的に需給関係を合わせなければならぬというので、中央並びに各通産局ごとに需給調整協議会をつくりまして、供給者と需要者と通産省が一体となりましてその調整をやっているところでございます。  最近値上がった一つの理由には、国鉄の動労のストによって貨車回りが悪くなって、そのために品不足が局地的にかなり出てきた、そういう点もございました。しかし、これらの問題はいま次第に解消されつつあります。なお、韓国から一万トンばかり緊急輸入いたしまして、さらに続けて輸入の手当てをいましておるところであります。  それから毛につきましては、天然繊維に対する要望、需要が非常に出てきたことと、豪州において羊の減産問題というようなところと、それから豪州のドルの切り上げということが入ってきまして、それで値が上がってきたというところがございます。しかし、基本的にはやはり天然の糸、毛に対する需要が非常に出てきたというところがございまして、したがって腰は非常に強い情勢であるわけであります。  しかし商社の中には、その商品市場において投機をやったのではないかと疑われるような筋のものも一部うわさされております。そこで通産省では、いま商社を一つ一つ調査をやっておりまして、大体どういうふうに金が動いたか、土地や株式あるいは商品についてどう動いたかトレースをしておりまして、それも大体調査が終わりまして、いままとめておるところでございます。そういうような事態が起きたときから、われわれがどうもこの辺が怪しいという点については、内面的に注意を与えたり警告を与えたりしてまいってきておりますが、商社側も先般社長会を開きまして、自粛し、またわれわれの調査に協力するということもきめて、現にそれを実行しておるところでございまして、これらの点についてはびしびしやっていくつもりでございます。  なお法律を提案いたしまして、売り惜しみ、買いだめ等の問題については法律をできるだけ早くお通しいただければ、これを一つのバックの力にいたしまして、そういう政策を推進していく考え方でございます。一つ一つの商品について具体的にたんねんにやっていくということが当面われわれとしてやることでございまして、一例を申し上げましたけれども、糸、繊維等についても需給のあっせん所をつくったり、あるいはいま持っておるものを吐き出させるようないろいろな措置を内面的にも講じてやっておるという状態でございます。
  39. 高田富之

    ○高田委員 お話しのような施策を進めておられるわけでございますが、ただいまもございました大企業の調査をおやりになり、注意したり勧告したり協力を求めたりしてまとめておられる、こういうことなんでございます。一々具体的な商社について云々ということではございませんが、一般に大企業、特に大きな商社がいま一番注目の的になっておるわけです。いろいろな調査その他に対して、この値上がりの原因は自分たちのところにあるのじゃない、ほかのところに原因があるのであって、われわれは正当な商行為をやっており、そのことは国民のためになっておる、決してわれわれが意識的に経済を撹乱するようなことをしているのじゃないということをどこへ行っても言っている。これはあらゆる物資についてそうでございますが、そういうことが一般に報道されております。また関係している人々から聞きましても、そういうふうな態度であると一様に言うわけであります。政府のほうでお調べになっておる中で、これははなはだおもしろくない、こういうことはやっちゃいかぬということで警告をされたことがいまあるという御報告だったのですが、事実あったとすれば、そういう不当な行為をやっていた、警告したらやめたということなのか、それとも言いわけをされてしまってそれで終わりになったのか、そこらをちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  40. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 これは、一月ごろ商品投機の問題が出てまいりまして、そのころいろいろうわさがあった商社等もありまして、いろいろそのうわさ等々も検討いたしまして、私のほうの次官から当該商社に対して警告をしたということはございます。しかし、名前を出すことは差し控えますけれども、先方はそういう事実はないというようなことを言っておりましたけれども、きつく言いまして、それもだいぶきいて自粛したのではないかと私たちは考えます。これはいろいろそのときの商品買いの模様や何かを手当てをして調べてみまして、どうもそういう疑いがありましたから、念のためにそういうこともやってみたのであります。
  41. 高田富之

    ○高田委員 政府が気づかれて、大商社に対しましてある程度の注意をされましても、おそらく正当な営業行為としてやっておるという立場での釈明だと思うのですよ。なかなかそこら辺むずかしいと私は思う。法律はお出しになっておるわけでございますが、投機を防止するための調査、公表といったような法律ですね。これも、われわれ野党側ではもう少しきびしいものというので対案を出しておるわけではございますが、しかしそれにいたしましても、それでこういうものを押えるということはなかなかできない。まあやらないよりは一歩前進であることは間違いないですからけっこうなんですが、結局そういう法律をつくって網をかぶせてみても、ひっかかってくるのは中小企業か何かになってしまって、一番国民全部が注視しております、目に余る大きな資本力を持って行動しておるところには実際問題として適用されないのじゃないか。行ってみたらもう品物は次の段階に移ってしまったとか、なくなっておったとか、先ほど言いましたような正当な行為としてのいろいろな申し開き等があるとか、結局値の上がったものを防衛上やむを得ずある程度持った零細なる企業なり小業者なりが、かかえたために今度は不当な損をするというような結果に終わる公算のほうが大きいのじゃないか、それが一般からも心配されているわけです。そこら辺をどうお考えになっておりますか。その点が一つ。  時間もございませんので続けて申しますが、毛糸の話がちょっと出たけれども、取引を停止されました。近く再開されるということなんでございます。この間の生糸の取引所の停止のときもそうですが、停止をしましたあと、現物の取引価格はそのときの最高価格をさらに上回って、一万五千円ぐらいのときに閉鎖になりましたが、一万七千円ぐらいで実物取引が行なわれるというようなことになり、ますます混迷の度を深めるというようなこともあったわけでございます。  いずれにしましても、取引所がああいう極限まで、一カ月の間に投機によって三倍もの値上がりをしてしまった、その段階で規制をようやく発動する、閉鎖という一番強い手段でありますが、それをやっても、これは非常な手おくれになっておるのじゃないかと私は思うのです。むしろこういうふうな事態に立ち至る前に、こういうふうな事態を起こさせないような取引所のあり方というものを早急に確立しておく必要があるのではないかということを痛感するわけなんです。  一般に、こまかい実務的なことはだれにもわかりませんけれども、国民の感じておりますのは、取引所というものが結局投機の場所になっておる。競馬、競輪その他の投機そのものの場所と本質的にあまり変わらないものになっておる。相場師の活躍する場所になっておるという印象はぬぐい去りがたい。そういうようなものでない、本来の取引所としての必要な使命を果たすだけの取引所に直すには、こういう機会にこそ、抜本的な法改正も考え、制度の改正も考えまして、投機的な資本が踊る余地を最初からなからしめるということにしなければいけないのではないかと私は考えますが、通産省としてはどういうふうにお考えになりますか。
  42. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 その点は同感の点もございます。  日本の資本主義を見ますと、商品関係の取引所というのがいびつになってきておると思います。大正のころは、郷誠之助とかあるいは河合良成先生とか、資本主義のチャンピオンといわれる人が取引所の理事長をやって、商品取引関係というものは、いまの株なんかよりはるかに大きく、盛大であったんだろうと思います。ところがいまの状態を見ますと、株式市場や証券界というものは銀行に並ぶくらいの力を持って、品格も上がってきつつありますが、商品関係の取引所というものは何か投機の、相場師の集まりみたいな印象を与えて、これが破行してきておる。これで日本の資本主義が健全に発達するとは思いません。  しかし、取引所には保険の要素とか、あるいは価格形成の要素とか、そういう大事な機能があるわけであります。特に価格をヘッジするという点は取引所の生命とするところであり、それが日本の資本主義を発展させる一つの大きな原動力でなければならぬと思うわけであります。それが投機の場所みたいになって動いておるということは本来の機能を逸脱しておる。ほんとうならば、もしそういう投機の場所であるなら、競馬や競輪と同じようなことで、政府が納付金を命じなければならぬというようなことでもありましょう。しかし、それは正しいことではないのであって、そういう方向に少しでもいこうとすれば、これを矯正しなければならない立場にあると思います。  現在、産業構造審議会の中に流通部会を設けまして、取引所をどうするかということを諮問しております。それで、各界の権威者によって改革案をつくってもらいまして、その改革案が出ましたら、われわれはそれを検討して、法改正まで含めて改革をする用意がございます。いまそういう段取りをしておる最中でございます。
  43. 高田富之

    ○高田委員 ぜひひとつそれはなるべく早く、できれば——できればでなくて、この問題のまっ最中でございますから、今国会で法改正までやるというめどで取り組んでいただきたいと思います。それを強く要望しておきたいと思うのです。  それから、今度の商品投機の中で、これは単に国内問題としてだけではなくて、羊毛にしましてもあるいは木材にしましてもそうであります、その他のものもそうでありますが、海外から原料を買いつけてくる。先ほどもお話がありましたように、ことしは原毛自体が減産であって、需給のアンバランスが生じているという事態がある。木材などでもそういうことがいわれておるわけでございます。大豆その他、えさにしましても、いろいろなことがいわれるわけでありますが、その際、海外から買いつけてくるものも、やはり国内で投機の元凶ではないかというようなことで国民から指弾を受け、世論の批判を受けておるような大商社がその仕事にあたっておるわけでございまして、特に今度の原毛、木材等を見ますと、大手商社が、伊藤忠だったか、その他大手商社が法外な買い占めを海外でやっておるわけですね。羊毛の買いつけ、青田買いなどといわれておりますが、まだ刈り取っておらないものをどんどん買って買って買いまくる、原毛の半分近くを日本商社だけで買ってしまうというようなことをやってくるわけです。それが、世界的な原毛の非常な値上がりを来たす。国内においては毛のほうの投機をやる。原料が上がったから国内も上がったのだか、国内が上がったから原料が上がったのだかわからぬような、両方でもって投機を進めておるわけです。そのことは、国内で国民の大きな指弾を受けることは当然ですが、国際的にもいま御承知のとおりたいへんな批判を受けておるわけです。いまの羊毛を高くしているのは日本商社である、けしからぬということで、海外の新聞、雑誌あるいは国際会議等においても日本が徹底的にやり玉に上げられる。先般、新聞紙上にも報ぜられておりますが、原木等につきましてもアメリカでは国会で問題になった。日本には原木を売るな、半年間日本への木材の輸出を中止しろというような発言が議員からなされるというような状況、これはそうでなくても日本はエコノミックアニマルなんということで、経済的には相当これは注意しないと、全般的に悪い影響を及ぼすことは言うまでもないのであります。今回のこの事件にかんがみまして、たとえば一つ具体的に羊毛だけを申しましても、これは一体どうしたらいいのだろう、これだけ不評を買うようなことをしておるが、これをやらせっぱなしにしておいていいものだろうか。何かここに思い切った措置をして、二度と再び海外の批判を受けないような体制をこの際つくるという意味で、措置をとる必要があるのではないか。これはどういうことかお考えになっておるのかどうか。その点をひとつお伺いしたい。
  44. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 海外から批判を受けるような乱買は、やはりこれは抑制しなければならぬと思います。しかし、日本の国内需要を考えまして、ある程度先に手当てをしておくということは必要でありまして、商社であれば、売りと買いということは必ず随伴することであります。それを、自由を乱用するというか、あるいは国際的にもひんしゅくを買うというようなやり方でやることは私はまずいと思っております。羊毛の事例を見ますと、日本の商社がわりあい先に買いつけをやって、そのために値も上がりましたけれども、その後世界的に羊毛が不足してきて、イギリスやソ連がいま買いに出ておりますけれども、非常に高いものをつかまされておる、そういう現象も出てきておりまして、その辺はやはり国際的な商売のかけ引きみたいな要素も多少あるわけです。ですから、買いつけ自体が必ずしも悪いということではない。国民経済全体から見てプラスになるという好ましい買いつけをしてもらうということもまた大事でございます。ただ、品を悪くしたり、国際的に非難されるようなやり方は注意しなければならぬ、そのように思います。
  45. 高田富之

    ○高田委員 これは何か精神的な訓話じゃなくて、きちっとした方策を講じて、今後こういうことが起こらないようにする必要があると私は思うのであります。  羊毛の場合、さっき申し上げたのですが、伊藤忠が昨年度の七二%増の買い付けを豪毛に関してやっておるわけでございます。日本商社だけで豪州の全原毛生産量の五二%を買ってしまっているのですね。結局伊藤忠が先頭でやったわけですが、それに連れましてほかの商社もそれぞれいままでに例のない買いあさりをやったわけでありまして、日本の原毛需要量、総必要量を上回るものを実際は現在すでに買ってしまっている。数字はちょっと申し上げませんが、すでに昨年度買ったものよりもオーバーするものを買ってしまっているのですね。だから品物が国内で足らぬからというようなことで買ったというよりは、やはり先を見越しての投機的な買い占めであるということは、これは間違いないと思うのですよ。ですから、そういう点で私は一つ申し上げますが、こういう重要な、国際的にも非常に大事な、衣生活の一番中心になるようなものでございますから、他から非難を受けるような投機的な買い占めを日本がやった、これは日本の黒星になるわけでありますから、そこで、こういうことなからしめるためには、こういう品物について一手買いつけ機関のようなものをつくって、そうしてその買いつけ機関に、買い入れたものは全部売り渡さなければならぬというような形にいたしまして、そうして適正な価格で押えていく。そうして国内の紡績業者その他の需要者に対して、入札等によって公正に分けていくというふうな、何かそういう方法で、国家的な計画に基づくチェックをしていく機関でもつくらないことには、今後ますますこの傾向ははなはだしくなるのではないか。これは何か考えないといけないと私は思うのでありますが、そういうことについて検討してみるお考えはございませんか。
  46. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 秋になると洋服が高くなるのじゃないかというようなうわさがあるようですが、ある統計によりますと、日本の洋服の需要というのは大体七、八百万着あればいい、ところが日本にある羊毛の量というものは一千万着分ぐらいある、この数字はやや確実だと私聞いております。そういうことで見ると、この羊毛を吐き出させれば洋服の値段は下がるわけです。三百万着分ぐらいよけい毛が入っているということになります。そういうこともあって、金融を引き締めて、いまそういう手持ちのものを市場に回すようにやることが私はいいことだろう、そう思っておりますけれども、ともかくそういう、ある程度偏在しているということはあり得ることでありまして、これはセメントにしても羊毛にしても、そういうところから吐き出させるということを、政府としてはあらゆる施策を使って実行していきたいと思っております。  御指摘の輸入一元化機関ということは、中国貿易やソ連貿易の場合にもいろいろいわれたことであります。今回のような国際的な異常高値の場合にもそういう御議論もございます。共産圏貿易の場合とは話は違いますが、ともかくございます。しかし私は、やはり貿易というようなことは、なるたけ自由に商社の責任において、自己負担においてやらせることが、長い目で見て経済を発展させ、貿易を発展させるもとになると思います。国家が介入するということは、よほど国家的物資で、どうしても数が少ないとかなんとかいう問題については考えられましょうけれども、できるだけ国家が介入することは避けたほうが、長い目で見て国民の税金が安くなるゆえんになるだろう、そう思いまして、その点は慎重にしていきたいと思います。
  47. 高田富之

    ○高田委員 もう時間がまいっておりますので、もう一言だけでやめますが、自由経済のいいところを非常に御主張なさるのですけれども、ここまで来ますと、弊害があまりに極端に大きく出ておりまして、国内においてそうでありますし、国際的にもそうですから、特定の品物については、現在でも国際的に小麦とかコーヒーとかいろいろありますように、国際的な協定というようなものもこれからどんどん重要な品物には広がっていかなければならぬだろうと思いますし、各国の買い付けにつきましても、商社の商行為ということでおのずから弊害は大きくなりますので、これを規制するという措置もいまは考えなければならない段階に来ておるのではないかというふうに実は私考えます。  それから、最後にもう一つお伺いしたいことは、どの品物をとりましても、いずれも結局大商社が問題になるわけで、けさの新聞に大々的に報道されておりますように、法人のもうけがしら、上から何十番目というのを見ますと、新たに投機で問題になった商社が続々その中へ入ってきております。六大商社の総売り上げが二兆円をこえる。国民総生産の二割に達しておる。しかも、年々これがものすごい勢いで拡大しつつあるという状況でございます。ですから、このような膨大な資本力を持って、何にでもウの目タカの目で手を出していけるような商社という怪物的存在が国民生産の伸び率をはるかに上回るスピードでどんどん大きくなっていくこの状況をこのまま放置しておいたら、これはたいへんなことになるのじゃないかと私は思います。独禁法もこういうものにはいまのところどうしようもないのだろうと思いますし、いろいろな先ほどからの御施策があるにしましても、基本的にこういう企業体というものがどんどん大きくなっていくということは、もう何らかの方法で押えないと、いまお話しの自由経済そのものの命取りを自分がやっているような形になるのじゃないか。最近は経済同友会等でもいろいろ企業の公共性、社会的責任云々ということを申しておりますけれども、観念的にはみんなそう思っておりましても、それぞれしのぎを削る過当競争の中で利潤追求をやっておるわけですから、実際にはなかなかできない。何らか法的規制でもやらぬ限りはやれないと私は思う。ですから、たとえば商社法とか、それは私は別に具体的な案があって申しているのではありませんが、何でもいいのですが、適切な方法で、こういう巨大化していく、大きな経済力を持ってどこへでも神出鬼没に出ていく、出ていったところでは市場経済をそれが完全に制圧してしまうという力量のあるものについて、厳格な国家的規制を加えなければならない段階に来ている。これは放置をしておいたらたいへんなことになると私は思うのですが、最後にひとつその点についての大臣のお考えを承りたいと思います。
  48. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 自由の乱用というものは規制をしなければならぬと思います。しかし、自由というところにやはり経済が発展し、人間が創造していく基本があると思います。その辺の調和をどうとるかということは非常にむずかしいことでございますけれども、われわれの考えとしては、やはり自由を基調にして、そして乱用を規制する、そういう考えで基本的立場をとっていきたいと思います。今回いろいろ法律を提案いたしまして御審議願っておるのもそういう趣旨でやっておるのでございまして、必要あらばそういう乱用に対しては今後とも規制を加えていきたいと考えます。
  49. 高田富之

    ○高田委員 たいへん申しわけないのですが、もう一つだけ、せっかく農林省の方にもお見えいただいておるので……。  生糸が、幾らか鎮静傾向にあるわけですが、先般はものすごい暴騰をやりました。特に白生地の払底による流通段階から消費段階に至る混乱というものはたいへんなもので、これは現在も続いておるわけでございます。これがこの先どうなるかということは、やがて今度の春繭にも影響してまいりますので、影響するところは農民、中小商工業者、非常に大きいわけでございます。この白生地の暴騰も、その背後に商社ありということがもっぱらでございますが、いずれにしましても、これに対して生糸の需給関係、見通しはどうなのか。  それから、今後の価格の暴騰暴落を押えて、いまこそ安定した繭の大増産をやるべき時期だということがいわれておる。私もそう思うのですが、そのために必要な施策というものをどのように立てておられるのかを最後にお伺いして、これで質問を終わります。
  50. 有松晃

    ○有松説明員 お答え申し上げます。生糸の最近の需給でございますが、最近国内の需要が非常にふえてまいりまして、特に昭和四十七年におきましては前年よりも二十数%の増加ということで、国内の需要が五十万俵ということになっておるわけでございます。こういった需要は引き続き堅調に推移するであろうというふうに考えられます。  一方、供給の面でございますけれども、国内の繭並びに生糸の生産につきましては、ここ数年来労力不足というような問題それから繭につきまして特に凍霜害の問題がございまして、生産は横ばいになっております。半面、需要の伸びに対応いたしまして最近生糸の輸入が増加をしておる。四十七年につきましては輸入が国内需要の三分の一、こういう状況でございます。  こういった供給面につきましては、一方で国内の繭並びに生糸の増産に今後つとめてまいりたいということと、それから輸入の面につきましても、できるだけ輸入源、これは特に中国並びに韓国でございますが、中国につきましては、先般関税の引き下げも行なわれまして、輸入源の確保にはつとめてまいりたいというふうに考えておりますが、国内の繭の増産につきましては、先生のおっしゃるとおり非常に必要であるというふうに考えておりまして、このために諸種の生産対策を講ずることにしたいというふうに考えております。特にポイントといたしましては、現在遊休桑園が一万ヘクタールばかりございますが、この遊休桑園を組織的に活用するということ、それから肥料の増加というものが桑の生産に効果がある、こういう点で肥料の増、これも最近の価格が有利であるということからわりあい資材の投下もしやすい環境になっておると思います。さらに凍霜害の防止、こういった面も技術的に万全な指導を行ないまして、繭の増産に全力をあげてまいりたいということでございます。
  51. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 庄司幸助君。
  52. 庄司幸助

    ○庄司委員 私は、石油コンビナートの防災体制についてお伺いしたいのでありますが、まず、その関連で緊急な問題がありますので、その点から伺っていきたいと思います。  これは新聞にも報道されたわけでありますが、去る二十七日の未明、佐世保市赤崎町の米軍赤崎貯油所、ここは非常に膨大な貯油量があるわけでございまして、大体米軍の三分の二くらい持っておるといわれておりますが、この第一岸壁に接岸中の米海軍極東海上輸送部隊所属のタンカー、ピスカタクア号が火災を発生しまして、一たんは消火した。しかしその後また燃え上がって、間もなく大爆発が起きて負傷者が出る、あるいは死者が出る、こういう状況になったわけであります。  この船が入港した際、ガソリンの積み出しをやっていたというわけでありますが、この事故の調査のため佐世保署とあるいは労働基準監督局が、同日朝に米軍に立ち入り調査を要求したわけでありますが、これは同艦が横須賀基地所属であることを口実に、横須賀基地の了解がないということで立ち入り許可はできないと拒否されたわけであります。そういう中で、なくなった原口孝一さん、この人は意識不明で入院されたわけでありますが、この人に対して家族が面会を申し入れても面会さえ許可されなかった。こういう事態があるわけであります。  その点で、まず消防庁長官にお伺いしたいのでありますが、こうやって立ち入り調査もできないで、事故の原因もつかめない、こういう状態では一体佐世保市民の安全が守れるのかどうか、また消防当局は責任を持って市民の防災を全うできるのか、こういう疑問が市民の中に相当あるわけであります。しかも、この油送船の油が海に流れて発火でもしたならば、これは対岸に米軍の弾薬庫があるわけです。さらにそれに隣接して市街地やあるいは団地もある。これはもう非常に憂慮すべき事態だと思うのですが、この辺で消防庁長官、この立ち入りができないという状況についてどうお考えになっておるのか。あるいはまたこの申し入れをして、その後の経過はどうなっておるのか。これは明確にしていただきたいし、あわせて私は中央防災会議の主要メンバーである通産大臣にお伺いしたいのですが、こういう状況で、この間も米軍のタンク車の火災も発生したわけでありますが、国民のための責任ある防災対策がとれるのかどうか。この米軍基地の問題については防災上立ち入りができないわけですから、こういう点をどういうふうに打開されるのか。これは通産大臣にお伺いしたいと思います。  以上、まず伺っておきます。
  53. 宮澤弘

    ○宮澤政府委員 米軍の基地につきましては、いわゆる地位協定に基づきまして米軍が管理権を持っておりますので、米軍の同意なくしては立ち入れない一般原則がございますことは御承知のとおりでございます。  そこで、消防との関係でございますが、御質問の多少らち外になりますけれども、火災発生というような場合が一番問題でございます。そういうことを考慮いたしまして、多くの基地では、米軍の基地の責任者と所在の市町村の消防当局との間に相互応援協定を結んでおりまして、火災の場合には相互応援をするという協定がございます。これは火災の場合でございます。しかしごくわずかでございますが、たぶん東京であったと思いますけれども、東京の協定におきましては、火災以外の場合でも、わが国の消防機関が防火管理上必要な立ち入り調査をすることができる、こういう約束をしているものもございます。しかしこれはごくわずかでございまして、一般的には、火災の場合には相互応援で消したり消させたりいたしますけれども、ただいまお話がございましたような、火災の原因調査のための立ち入り調査というところまでは協定に明文化しておりませんのが普通でございます。佐世保の場合も同様でございます。佐世保の労働基準関係の機関あるいは警察の機関とともに消防関係の機関原因調査につきまして立ち入り調査の要請をいたしたわけでございますけれども、現在においては現地の米軍当局からはそれを承諾するという意思表示はございません。ただ、この問題につきましては、現地の防衛施設庁の出先機関、それと基地当局というものとの間の折衝をしてもらって、その上で立ち入り調査というものを私どもとしてはやってもらう以外になかろうかと思うのでございます。
  54. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 石油コンビナート等における高圧ガスの取り扱い等につきましては、各種の法律がありまして、それで厳重に規制をしております。それから、コンビナートごとに地元との協議会を設けておりまして、消防庁あるいはそのほか各般の官庁間の連絡もとってやっておるわけでございます。  米軍のいまの問題については、これはいま消防庁長官申されましたように、防衛庁の施設庁のほうから米軍に対していろいろ警告もし、あるいは立ち入り調査等の要望も出しておるということでございますが、この点はやはり日本政府とアメリカ政府との間においてそういう危害予防についてさらに連絡を綿密にして、そういう災害を起こさないように両方で連携していかなければならぬ、そういうように思います。
  55. 庄司幸助

    ○庄司委員 その点でもう一点伺いたいわけですが、いま消防庁長官からもお話ありましたが、こういう重大な、もし放置した場合不測の災害を起こすような事態があるわけですね。こういうときに立ち入り調査もできない。あるいはまた火災が発生して燃え広がっていっておる、海が全部火の海になって対岸まで届いていく、こういう状況も予想されるわけでありますが、そういう際も米軍から応援要請がない限り全然日本の消防体制が発動できないということになったのでは、日本じゅうにある米軍基地、相当ありますが、これがいろいろな事故が発生した場合、国民は安心して寝ていられないのではないか、こういうふうに思うわけですよ。その点でもっと抜本的な対策を講じて、米軍当局に強硬に、やはり立ち入りを認めさせる、あるいはまた火災が発生したような場合は、米軍の許可云々はなくとも、自動的に日本の消防体制の判断で立ち入って未然に防ぐなり、あるいは大事に至らない間に初期消火体制をとる必要があるのではないかと思うのですよ。その点についてどういうふうに具体的に米軍当局に申し入れるのか。この辺、中央防災会議のメンバーである御両所から御判断をひとつ聞かしてもらいたいと思うのです。
  56. 宮澤弘

    ○宮澤政府委員 消防の立場だけから申しますと、ただいま御指摘のように、日本全国どこでも必要な消火活動なり調査活動ができるというのがもちろん理想の形でございます。しかし、ただいまの国際情勢を背景といたしまして基地という特殊な性格を持ったものがわが国内に存在をしておるということは、これは事実でございます。したがいまして、その辺の調整、調和の問題であろうかと思います。先ほど申しましたように、消火活動につきましては多くの基地で相当応援協定を結んでおるわけでございますが、ただいまお示しの、たとえば調査活動というものも、先ほど私申しましたように、東京地区にはその例があるわけでございますので、各現地におきまして各基地の関係者との折衝において消防機関がそういう活動ができますように私どもといたしましても推進をやっていただきたい。また、その問題が必要であれば、中央の段階で折衝をしていただかなければならない事態もあろうかと思うのでございます。
  57. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 消防庁長官と同じ意見であります。
  58. 庄司幸助

    ○庄司委員 この問題はこれくらいにしますが、いずれにしても日米安保条約の体制のもとではこういう不備がある。その点でやはり安保条約の問題はどうしても国民の重大関心事にならざるを得ない。このことだけは申し上げておきます。  次に、私は全国至るところにあります日本の石油コンビナートの防災体制についてお伺いしたいのでありますが、これは通産省のお調べですと、全国の石油油槽所は四十六年十二月末でタンクが六千三百八十六基、容量は八百八十二万五千キロリットルある。それから全国の製油所でありますが、これは四十七年十二月末でありますが、タンクが六千七十五基、容量は五千四百五十万七千キロリットルだ、こういうお調べがあるわけであります。もし火災が発生すればまさに新潟並みの大火災になるというようなおそれのあるところが至るところにあるわけです。そのほかに昨年の新潟のユリアナ号の事故の例もありますし、また室蘭のタンカー火災の事例もあるわけですが、こういう大事故が頻発する可能性を持っているのじゃないか。私の調べでありますが、川崎市だけとってみましても、四十年から四十七年の間に、これはほかのあれも含みますが、危険物施設の事故が百四十三件あるわけです。そのうちの約六割のものは石油関係の事故なんです。さらにはこれに、この間発生したような黄燐火災、こういう危険物の火災もあるわけでありますが、このほかコンビナート出入りのタンカーが油のたれ流しを相当やっておる、こういうような事例も至るところにあるわけです。こういう中で住民の不安がつのる一方なわけでありますが、こういう事態に対して、通産当局が石油コンビナートの数さえも把握していない実態があるのじゃないか。これはたとえば消防庁の調査ですと、石油コンビナートは二十七都道府県にあって、五十六地帯ある。これが消防庁の調査なんです。ところが通産のほうは化学第一課の調べだと十七カ所である。それから工業保安課の調べたと十四カ所である。こうして消防庁と通産省の間の概念の不統一が一つあると思うのですが、その上に通産部内でさえもばらばらな問題がある。しかもコンビナートの防災体制は全く実態に即していない。これは通産御当局もお認めになっている文書があるわけです。  たとえば、これは通産省が特殊法人高圧ガス保安協会ですか、ここへ委託研究した結果によりまして、こういうふうに書かれているわけです。コンビナートについて「しかしながら、その内容は個々の施設、設備あるいはプロセスごとの保安に重点がおかれており、必ずしも大型化、広域化しつつあるコンビナートの実態に即したものとなっていない。」こう書いています。  それからもう一つは、これは昭和四十二年、だいぶ古いのですが、消防審議会の答申でも、この問題を非常に憂慮している答申があるわけです。  それから、これは一つの具体的な例になりますが、たとえば仙台新港の東北石油のコンビナートがありますが、この東北石油コンビナートの防災をやるために消防訓練をやってみた。そうしたら、タンカー火災の訓練の際は、岸壁に係留中のタンカーに陸上からポンプ車で放水してもタンカーまで届かなかった、こういう実例がある。それから第二回の今度は石油タンク基地の火災訓練をやったわけですが、このとき県で購入した設備のあわ放射砲二門を主軸にして防御行動を起こしてみたが、砲一門について消防ポンプ車五台が必要だ。だからそういう点でポンプ車が十台必要だ。これを緊急集合させるまでには火災の進展、拡大ははかり知れないものがある。こういう結果が出ているのですよ。そういう点で私はいまの石油コンビナートの災害について、これは通産のほうで、立地させる側でありますから、当然責任を持って十分な体制を、前から騒がれているわけでありますから、とらなくちゃならないのじゃないか。それが非常に手おくれになっている。そういう点で私は大臣にお伺いしたいのですが、大臣は中央防災会議の非常に重要なメンバーの一人であります。この防災会議で通産大臣はこれまで一体何を主張してこられたのか。この会議の経過をずっと調べてみますと、三十七年九月から四十五回会議をやっております。ところが、この石油コンビナートの問題で具体的な討論をなされたのは四十六年八月の一回だけしかない。こういう状況なんですよ。だからこれで通産が防災体制についてほんとうに行政指導上の責任を果たしてきたのかどうか、私はこれは非常に疑問だと思うのです。よく世間ではいわれるわけでありますが、高度経済成長は通産が先兵になってやってきた、これは通り相場であります。ところが、こういうことはやってきたが、防災の問題になるとあまり手を打っていないのじゃないか。その点で私は、これまでのやってきた経過と、それからこれから一体こういう事態に照らして本気になって取り組む気があるのかないのか、その辺を大臣にお伺いしたいと思うのです。
  59. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 コンビナートを中心にする高圧ガス等の取り締まりについては、法規が非常に整備されておりまして、その法規に基づいていろいろな協議会をつくったりあるいは監察を行なったりしておるわけでございます。防災会議で発言したからといって多く仕事をしているというわけではありません。自分たちの所掌事務をたんねんに忠実に実行していくということが非常に大事なポイントでもあります。具体的な点は政府委員から答弁させます。
  60. 田中芳秋

    田中(芳)政府委員 ただいまコンビナートの数等の御指摘をはじめ幾つかの点について御指摘があったわけでございます。  まず消防庁のほうのコンビナート、それから通産省の中におきますコンビナート、この数それ自体が違っておる、こうした認識の相違についての御叱責をいただいたわけでございますが、私どものほうでコンビナートといいますものにつきましては、そもそもコンビナートといいますものの定義は、法制上あるいは社会通念上もあまり明確ではございません。私どものほうで十四と申し上げておりますのは、高圧ガス取締法の対象として、通産省といたしまして十分この法律を活用し、そうして防災体制に遺憾なきを期すべきものとして考えておりますコンビナートの数を申し上げておるわけでございます。そうして、この高圧ガス取締法によりますと、個別施設につきまして通商産業大臣がその規制基準を定めることとし、かつ、工場建設をいたしますときには、その都道府県知事の許可あるいは届け出をいたすという形、そうしてまた、都道府県知事によります監督、立ち入り検査、こういった点をこの法律によりまして実施したり、この面からの災害発生に遺憾なきを期しておるわけでございます。しかし、何と申しましても、防災問題は企業の自主的な活動が根幹になるものというふうに考えております。  私どもといたしましては、こうした観点から鹿島あるいは水島等の大きなコンビナート、これにつきまして自主保安体制を確立させたいということで、行政指導によりまして協議会をつくらせて、共同組織によります防災体制の確立をはかっておるところでございます。こういう形で充実をいたしてまいっておるわけでございますが、なお今後とも私どもといたしまして、これが運営面におきまして遺憾なきを期するようにさらに指導の徹底をはかってまいりたい、このように考えております。
  61. 庄司幸助

    ○庄司委員 高圧ガスについては通産大臣が非常によくやっているというふうなお話があったわけですが、私はこれは少し見当違いじゃないか、こういうふうに思うのです。というのは、いわゆる各県ごとに定めております防災会議、ここでは石油コンビナートという名前を使っておるわけですよ。このコンビナートの中には高圧ガス施設もあれば、同時に石油の施設もあるわけですね。この全体について考えないとどうにもならないのだというのが、やはり消防審議会の答申にもあるわけですよ。高圧ガスだけ通産は取り締まって、それで済ませている、こういう考え方では、私は通産の考え方に非常に立ちおくれがあるのではないか、こう思うのです。これはもう時間がありませんからこれ以上やりませんけれどもね。  それで、私が伺いたいのは、いわゆる各県の防災会議でいっている石油コンビナートですね。これは通産のいういわゆる化学コンビナートでないものもあるかもしれません。いわゆる油槽所もあります。こういうところで、防災会議でそれぞれ負担区分をきめてやっているわけであります。ところが、いま田中参事官から企業の自主保安体制を一生懸命やらしているというお話でありますが、この負担区分が私は非常に不公平だと思うのですよ。たとえば宮城県の塩釜市の事例ですが、あそこにいわゆる石油タンク群、油槽所がありますが、あそこは各社百五十基以上あるわけです。これに対して各社が納めている塩釜市に対する市税は、法人税と固定資産税合わせて約十年間で二億九千万くらいなものですよ。ところがこれに対して塩釜市は、前に赤字再建団体になっておるわけですが、これが結局約七億円の防災上の負担をさせられておる、こういう問題があるのです。  それから仙台新港の東北石油のコンビナート、これに対して仙台市は、たとえば百トンの消防艇をつくれ、消防署を一つ増設しろ、化学消防車何台ふやせ、こういうことで何だかんだ約二億円くらいかけなくちゃならない。ところがこのコンビナートから固定資産税いまだたったの一円も納まっていない、こういうしり抜けがあるのです。だから、その点で企業負担、これは非常に不公平だ。公害はやっと事業者負担の法律ができたわけですが、この石油コンビナートの防災体制にとって、企業負担の原則を何らかの形で法制化するなり何なりしてとらせないと自治体は参っちゃう。消防庁の予算なんか、こういう点での補助は全国に対して年間約三十億足らずでしょう。地方自治体は三割自治でいつも苦しんでいるわけですが、こういう石油コンビナートは税金もろくに入らない。こういうものができたためによけいな仕事をして住民の負担がふえていく。これはどうしても企業負担を強める原則を法制化するなり何なりして確立してもらいたい。  それから第二点は揮発油引取税、これは仙台市の場合ですと、約二百億円国庫に納まります。ところがこの譲与税は二億円が県に入るだけで、道路財源なんです。全然これがいわゆる地元の市町村には入らないのです。そういう点で市町村長会議の意見書も政府に上がっているはずですが、この揮発油引取税の地方配分、これを考える気がないのかどうか、これを具申する気があるのかどうか、この辺ひとつ伺いたいと思います。
  62. 田中芳秋

    田中(芳)政府委員 ただいま御指摘がございました地域におきます消防体制の問題でございますけれども、消防法の規定に基づきまして、現在自主消防組織を置くことが必要とされておるわけでございますが、事故が発生いたしました場合直ちに公設消防機関に連絡をし、相互に協力しながら消防活動を実施する、こういう消防体制になっておるわけでございます。しかし、御指摘のように、消防法に規定されますこの自主自衛消防組織、これがどうも能力不足ではないかということでございますが、私どもといたしましても、これは当然企業が自主的に力を注ぐべきであるという観点から積極的に今後指導をしてまいりたい、このように考えております。  なお、ガソリン取引税という御指摘でございますが、これは揮発油税あるいは軽油引取税等をおさしのことかと存じます。この点につきましては地方税法上の問題でございます。所管は自治省の問題になりますので、ただいまの御意見等もあわせまして、自治省と連絡をとっていきたい、このように考えております。
  63. 庄司幸助

    ○庄司委員 終わります。
  64. 宇都宮徳馬

  65. 坂井弘一

    坂井委員 ごく短い限られた貴重な時間でありますので、質問の趣旨に沿って答弁は簡明にお願いしたいと思います。  最近、発電立地ということが公害問題から非常に困難である。加えて電力の需要というものが非常に大きな伸びを示してきたということで、将来にわたって電力の供給がたいへんむずかしいのではないかということが盛んに論議されるようになっております。そこで、電力供給の適正予備率一〇%、こういわれております。これが昭和四十六年では八・六%、五十一年には二・一%まで落ち込むのではないか。したがって、電力不足というのはますます大きくなる。そうなりますと、電気事業法第二十七条及びこの施行令二条、これに節電、停電ということが規定されているわけでございますが、いまのような事態を踏まえてみますと、いわゆる節電、停電をせざるを得ないような事態になるのじゃないかということが盛んに心配されるわけであります。そうしたことから、通産大臣、一体いまのような事態を踏まえながら、将来にわたってそうした深刻な事態を招くことがないかどうか。また、それらに対応するにはどういうようなお考えをお持ちか、まずひとつお聞かせいただきたい。
  66. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 現在の電力着工の数字を見ておりますと、近い将来そういう危険性が出てまいります。そこで、地元の方々にぜひ御理解をいただいて、着工をできるだけすみやかにできるように諸般の対策を講じていきたいと思っております。今般、国会に電源地帯周辺整備法を提出することにいたしまして、近く提出になると思いますけれども、これもそういう努力の一つのあらわれであります。
  67. 坂井弘一

    坂井委員 電源開発調整審議会で決定しております分で、五カ所ばかり着工できないというような事態がございますね。一々申しません。そういう状態を踏まえてみますと、電源立地が困難性を来たしておるという最大の理由は何かといいますと、やはり公害問題でありますね。地域住民あるいは自治体がこれに対して非常に大きな反発を示す。そのもとは公害である。  そこで、ちなみに日本開発銀行の九電力に対する融資状態を見ますと、昭和四十五年二百十億、四十六年三百四十四億。これに対しまして、公害防止関係の特別貸し付けが四十六年に八十二億。電気事業者の公害防止施設投資額中、大気汚染防止には四十六年四百八十四億、四十五年二百七十一億、非常に少ないわけであります。そういう事態の中で、既設の火力発電所を見てみますと、運転中の七十二カ所、この火力発電所のボイラー二百七十六本ございます。SO2、亜硫酸ガスの排脱装置が働いておるのはわずかに四本しかない。これを量で見ますと、四万五千五百十四・七メガワット中、排脱装置が働いておるのは三十五・七メガワット、わずかです。そうしたことによる大気汚染、公害問題、これが電源立地の確保に非常に困難を来たしている基本的な問題じゃないかと私は思うわけでございますけれども、そうした電力事業者の公害防止に対する努力がまだ足らない、そうした姿勢、それから通産省のそれらに対する指導のあり方、この辺に非常に大きな問題があると思う。そうした公害問題に対して一体通産大臣どうお考えでございますか。
  68. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 電源立地の困難を招来しておる一つの大きな要素は、御指摘のとおり公害問題でございまして、このためには燃料源における手当て、つまりローサルファ・オイルあるいはナフサ、そういうような方向で一つは切り抜ける。もう一つは、科学技術的な改革をやりまして、公害防除の施設を充実させていく。そういう両方から攻めていく以外にはないと思います。
  69. 坂井弘一

    坂井委員 いま言いましたように、わずかに四本しか排脱装置がつけてない。これは既存の火力発電所にも全部つけさせるような指導を具体的になさっていらっしゃいますか。
  70. 井上保

    ○井上政府委員 公害対策の問題でございますが、先ほど大臣から御答弁がございましたように、一つはローサルファ燃料の確保でございます。これは原油のなまだきであるとか、あるいはローサルファ重油の手当てであるとか、あるいはLNGとか、あるいはナフサであるとか、多種多様のローサルファ原油の手当てを手一ぱいいたしまして、それをまずたく。これは排脱装置の前でございますが、排脱装置につきましては、今後できてまいります主要な発電所につきましては極力つけさせるということで、強く行政指導をやることにいたしておりまして、従来、必ずしも先生おっしゃいますとおりに排脱装置が十分でなかったという点がございましたが、これは技術的な問題もございまして、必ずしも技術的に完成しておったというような段階ではないという事情もございます。大体においていまや実用化の段階に入ったという認識でございまして、今後は強力に排脱装置をつけさせていきたいと思っております。ただ、場所によりましては非常に工業の集まっております地帯、そういう地帯では、現在の技術をもってしましては排脱装置では必ずしも十分でないという問題もございます。そういう点につきましては、特にローサルファの燃料をそういうところでたく、排脱装置をつけるよりももっとサルファが少ないものを使わせるということでございます。  いま一つ、今後の問題といたしましては、ガス化脱硫という問題がありまして、これも技術が完成いたしますれば非常にそのサルファをとることができるということでございまして、その技術をいま鋭意検討中でございます。
  71. 坂井弘一

    坂井委員 ローサルファ・オイルは限度があるんですね。既存の設備についても排脱装置を極力つけさせるような指導を強力に行なうということでありますから、具体的な問題に入りたいと思います。  それはそれとして、なお非常に問題のあるのはNOx、窒素酸化物です。これが非常に大きな問題になっております。特に火力発電所の場合はガスの絶対量が非常に多い。そうしたNOxの問題、これは一面SO2よりも害が大きいといわれるわけでありますけれども、そうなれば当然防止装置を設置しなければいかぬ。ところが、NOxの規制についてはまだ基準がない。どうやら近く出そうでありますが、その点についても伺っておきたいのでありますけれども、アメリカあたりでは規制基準があるんですね。日本ではまだNOxの規制基準がどうもつくられていない。アメリカと日本を比べますと、日本のほうがもっと深刻なはずです。これは論をまちません。そういう公害防止に対する姿勢というものがきわめてあいまいである、むしろ後向きである。そういうところに私が前段指摘するような、電力の需要というのはたいへん大きな需要を来たしておるという中で、一方においては発電所の建設が進まない。なぜか。つまりそのもとである公害防止に対して、地域住民あるいは発電所を立地される当該市町村はまずそのことを解決してくれ、これが切実な声であります。そうしたとこからろいまNOxの問題に移ったわけでありますが、NOxの除去装置というものはりっぱなものが日本に開発されておる。最近の新聞によりますと、アメリカに逆輸出する、そこまで技術的に進歩したものができておりながら、なおかつ規制基準が今日までまだつくられない、これについてどうお考えになりますか。
  72. 井上保

    ○井上政府委員 NOxの問題でございますが、これは先生いま御指摘のとおりに非常にむずかしい問題でございまして、現在大型のものに適応できるようなうまい機械がないということでございますけれども、電力会社といたしましては、二段燃焼方式であるとか、NOxを出さないようないろいろな方式につきまして鋭意研究しておりまして、実際におきましては逐次NOxが出ないようなかっこうになっていっているわけでございます。  それから基準の点でございますが、これは中央公害審議会でいろいろといま検討中のようでございまして、結論がまだ出ていないようでございますが、電力会社といたしましてはその結論のいかんにかかわりませず、できる限りNOxを出さないように措置するということで鋭意それを引き下げるような手続、手段をとっておる状況でございます。これは新しい火力発電所をつくります場合のいろんな公害協定におきましても、NOxにつきましては非常にやかましく言いまして、地元の了解が得られる範囲内にこれを下げるというように強い行政指導をいたしております。
  73. 坂井弘一

    坂井委員 伝え聞くところによりますと、この発電のボイラーの燃焼方式を変えるような、そういうボイラーの改良をやるということで九電力で自主的にそういう計画が進められつつあるやに聞くわけでございますけれども、そうしたことに対して通産省は適切な行政指導なり、そういう中で、まずとりあえずはそうした点からでもNOxの排出をできるだけ少なくするような指導をいまのような面に関して具体的にされておりますか。
  74. 井上保

    ○井上政府委員 通産省技術の主任の者を中心にいたしまして、関係の電力会社の担当者を集めまして、そういう審議会をつくって鋭意検討いたしております。
  75. 坂井弘一

    坂井委員 問題を残しておりますが、次の問題として地方税法の固定資産税、これは去る予算分科会におきまして中曽根通産大臣、あなたとこの問題について論議したわけでありますけれども、つまり新しく設けられた発電所、変電所等の特別措置、これを存続している理由として一つあげられたことは、料金だ、つまり電力料金の安定に資するためであるということを盛んにおっしゃった。変わりございませんか。
  76. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 固定資産税を現地に還元するということは、やはり電力施設をつくるところの住民、地元に対してそれだけのメリットを与える必要がある、そういう意味で現在固定資産税の二五%が行っておるわけでございますが、それを五〇%くらいにふやしたいというのが私たちの要望でございまして、その点についていろいろ自治省その他と折衝いたしておりますけれども、なかなかこの問題は解決いたしません。いまのところはまだ解決できないという状態であります。しかし電源立地を促進するための周辺地帯整備法は早く出す必要がありますので、ほかの方法でそれにかわるべき方法をいま考えておりまして、発電会社に一部受け持たせる、そういうこととか、それから道路、港湾あるいは下水、水道、そういうものに対する補助率を今度は思い切って上げる、あるいは保健、衛生、モニタリング、そういうものについても国がいろいろ積極的に乗り出してやる、そういうような内容を盛った周辺地帯整備法をいま仕上げている最中でございまして、来週くらいには提案できるのではないかと思っております。
  77. 坂井弘一

    坂井委員 いまの御説明は御説明としましてそのままお聞きいたしますが、私の質問しておる趣旨は、つまり固定資産税軽減の特例措置を設けたあの立法の趣旨は、いわゆる産業の振興、それからもう一方では料金の安定、この二つにあった。いま私の申し上げておることは、先般の分科会におきまして大臣は料金ということを盛んにおっしゃった。したがって、やはりそういう考え方についてはいまも変わりはないか、つまり電力料金安定のためにこの特例措置を存続させなければならないのだとしておられるのかどうなのかということについてお伺いしておるわけなんです。
  78. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 固定資産税というお話は、それは電気ガス税と別ですか。
  79. 坂井弘一

    坂井委員 電気……。
  80. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 電気ガス税のことですか。——電気ガス税については、これをできるだけ軽減していきたい、そういうことで非常に努力をいたしました。今般はたしか一%下げることになりましたが、まだまだ十分ではございません。しかしさらに努力していくつもりでございます。
  81. 坂井弘一

    坂井委員 ちょっと大臣、質問の趣旨を取り違えていらっしゃる。つまり、発電所、変電所が建設される当該市町村、その市町村に対する固定資産税を特例措置によって減免しておるわけですね、三分の一、三分の二と。もう少し申しますと、そういう公害を発生するような発電所を地元に建設されて、しかも固定資産税は三分の一、三分の二と、自治体は少ない。しかも公害の防止のためになお一般財源から公害防止、環境整備等の費用を持ち出さなければならぬ。これでは踏んだりけったりではないか。こういう特例措置は一刻も早く改めてもらいたい。なおその上に地域住民が発電所建設に伴って公害のために受けるそうした被害を除去するために環境整備等について政府は援助すべきではないかというのが、発電所を建設された当該町村の切なる要望なはずなんです。それに対して申し上げておるわけです。
  82. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 勘違いしまして失礼いたしました。固定資産税の課税標準特例廃止の問題につきましては、最近電気事業の経理内容はなかなか苦しくなってきておるのでございます。一つはOPEC等による原油価格の引き上げ、あるいは排煙脱硫その他公害防除施設の経費、あるいは大規模な電源開発による資本費の増加、そういうようなことがございまして、いまの課税標準の特例を廃止した場合に、九電力合計で、昭和四十六年度約百二十五億円の負担増となります。これは利益に対して一二・八%のウエートを持っておりまして、支出全体に対しても〇・七%を占める。事業収益利益率五・二三%と対比してみると非常にウエートが大きいわけでございます。こういう事情からいたしまして、課税標準の特例を廃止した場合、料金への影響はかなり大きくなるものと考えられます。
  83. 坂井弘一

    坂井委員 その辺は私の見解と全く異にします。料金が固定資産税に占める比率というものは非常に小さいです。四十六年度における九電力合計の収支実績を見ますと、支出合計が一兆七千八百四十四億八千三百万、これに対して固定資産税が二百六十九億五千四百万、支出合計に対する固定資産税の占める比率一・四%、たいへん低いですね。また特例による減税額約百二十五億、ですから支出合計に対してこれの占める率というものは〇・七%、いま御指摘のとおりでございます。つまりこの〇・七%というようなものは企業努力でカバーできるものだと私は理解するが、この固定資産税が料金安定のためのきわめて高い要素を持つものであるということは、どうしても理解できない。いま事業収益利益率というようなものも出されたわけでございますが、これは非常に比較がおかしいと思うのです。ずっと見てみますと、高いものから順次言いますと、支出の各区分別の四十年度から四十六年度にかけての倍率ですが、燃料費二・四四、事業税二・〇八、人件費一・九八、修繕費一・八九、減価償却費一・八三、法人税同じく、固定資産税一・六二、最低です。これはもうほんとうに微々たるものです。二倍以上占める燃料費、事業税、これすらも企業努力によってカバーしようと努力をされておる。そういう中で最低の固定資産税、しかもその免税額が支出合計に占める比率はわずかに〇・七%、これは企業努力ができないことはないと私は思うのですが、大臣どうでしょうか。
  84. 井上保

    ○井上政府委員 固定資産税の減免の廃止の問題でございますが、ただいま大臣からも御説明がございましたように、現在電力会社の経費の増加というものは、非常にいろいろな経費が増加することでございます。これは極力いろいろと努力をいたしておりますけれども、たとえばOPEC攻勢による燃料の値上がりであるとか、人件費のアップであるとか、あるいは火力発電所と同じ出力を出します原子力発電所はコストが二倍かかるとか、いろいろな意味でコストアップの要因がたくさんございます。一方、コストを削減するための努力、従来一番努力してまいりまして大きな効果があがりましたものは、スケールアップによります燃料のエフィシェンシーアップでございますが、これも大体限界にきておる。もう四〇%近いところまでまいりまして、二十数%から四〇%まで上がってまいりまして、これ以上はとても上がらないというところまで合理化してきておるわけでございます。そういうことでございまして、だんだんと経理内容がつらくなっていっておるわけでございます。  それから、ちょっと話が変わりますが、一方、電力会社の経営といたしましては、いわゆる総括原価主義をとっておりまして、利益といいます中には、一応平均的な配当を含めました利益というものを考えておるわけでございます。これは資本費の調達であるとかそういう問題から考えまして、どうしても必要な配当を確保いたしております。これは、たとえば一〇%の配当をいたしませんと増資ができないとか、いろいろなルールがございまして、これはアメリカでもそうなんでございますが、そういうことから、そういう所要の利益を差し引いた残りのいわゆるキャリーオーバーの増加というものを見ますと、九電力で五十数億円でございまして、その五十数億円に対しまして、百二十五億と先生おっしゃいました数字がその固定資産税の減免の額である、こういう対比になるわけでございまして、いま経理内容が非常に逼迫しております段階におきましては、これはなかなか大きな負担である、こういうふうに考えております。
  85. 坂井弘一

    坂井委員 これはあなた方と議論すると、いつもそういう調子でかみ合わないのですが、だれが考えたっておかしいですよ。地方自治体はたいへんな反発をしておりますよ。一方で電力の供給の増大がたいへんだ、何とかしなければいかぬ。しかるに、もとの公害問題にしても、十分な手を尽くさない、努力を払わない。そうしてもう一方では、いまのような固定資産税を減免して、地方自治体に多分な財政上の負担をしいておる。そういう結果何が起こっているかといいますと、地域開発協力金、これは電力会社からその地域の自治体へ出ているのです。つまり、公害を出しておりますよ、がまん料といいますか迷惑料といいますか、固定資産税をまけてもらった分のうちからこれだけ持っていきますから黙ってください、こう言わんばかりなんです。これの争奪をめぐってまた付近の自治体がやかましいこと。これは自治体にやむにやまれぬ事情もあるということはわかますよ。しかし、それを強要するかどうかは別としましても、公害を発生する電力会社、火力発電所から自治体に対してそういう金を出せば口をつぐむだろうというような形になるものを野放しにしてきたのは、私は行政庁の大の責任だと思う。しかも地域開発協力金をもっと出しなさいと指導するに至っては何をか言わんやです。もとの企業のための固定資産税をまけておいて、しかもその言い分は何かというと、公共料金安定であります、公益事業であります。りっぱでしょう、大義名分は。そうであれば国民全体が負担すべきじゃありませんか。なぜ公害をもろにかぶる地域住民だけにしわ寄せをするのですか。そんな不合理な特例措置を今日なお存続しようという。その意図は何かと聞けば、料金安定のためだ。率はどれだけだ、〇・七%。企業努力でカバーできるじゃないか、いやできません、重大であります。どうしても私はそれは理解できないです。政務次官いかがですか。
  86. 塩川正十郎

    塩川政府委員 〇・七%ではたいして大きい負担にもならないから企業努力でというお説でございますが、なるほど懸命に企業努力しておると思うのでございますが、電力料金を組み立てますときには、非常にこまかいところまで拾い出しまして、その結果電力料金の認定をしておるといういきさつがございまして、これは非常に微妙に私は影響してくる問題だと思うのであります。まあ〇・七では影響がないではないか、企業努力で吸収できるではないかという仰せでございますが、これはしかし私は見ましたところ、電力会社としては料金上なかなか深刻な問題になってくる、こう思っております。それと同時に、いま御説の中にございました地元に対する電力会社の協力のあり方、こういうのがいわばイレギュラーで行なわれておって、それをめぐって地元でもあらぬ紛争が起こる、こういう事態をおっしゃっておったのでありますが、私たちもまあ実際を見まして、そういう事態もあるように思うのであります。そこで、それでは電力会社が一切何も協力せぬという立場に立つかというと、そんなわけにもいかない。御迷惑をかけておるしという気持ちもあってそういうことになったと思うのですが、これはやはり行政的にもすっきりしたものにしなければいけないと私たちも思います。そこで今回、電源周辺地域の整備に関する特別措置法というようなものを用意いたしまして、近く国会に上程さしてもらいたいと思ったりいたしまして、それを行政の責任においてやっていきたい、このように思うのであります。そしてその中において電力会社の協力というものが合理的に協力体制がとれるような筋道を立てていきたい、このように思っております。
  87. 坂井弘一

    坂井委員 時間が経過いたしました。最後に一点だけ自治省に伺っておきます。  自治省は、そうした発電所を持つ自治体からの、いま私が申しましたような趣旨による自治省に対する申し入れ等に対して回答されておりますが、やはりその中にも電気料金の安定に資するため必要やむを得ない措置、こういっておるわけですね。やっぱり自治省もそういうふうにお考えですか。まあ通産省は先ほどからそういうようなことを政務次官もおっしゃっていらっしゃる。そういうことですか。
  88. 山下稔

    山下(稔)政府委員 地方税の軽減措置につきましては、基本的には、個々の政策目的と課税の公平という地方税の基本原則とのかね合いの問題がございます。したがいまして軽減措置等につきましても、慢性化、既得権化しないように、経済情勢の変化に応じて再検討しなければならないとは考えております。ただ、発電所等に対します固定資産税の軽減措置につきましては、ただいま通産当局からお答えがありましたように、公共料金への影響があるという段階でございますので、通産省とも十分協議をしなければならない問題であるというふうに考えております。
  89. 坂井弘一

    坂井委員 これで終わりますが、私先ほど申しましたように、そうした公共料金安定のためにということで当該自治体だけがそういうしわ寄せを受けるということはきわめて好ましくないと思います。したがって、そうした自治体に対しては、国がもっと適切な行政指導、同時に、その以前にそうした自治体に対する財政的な援助、こういうことをやはり真剣に検討してしかるべきであろう。少なくとも、そうした電力会社から先ほど申しましたような地域開発協力金というようなもの、これは意図はわかりますが、また善意の発想から出たものかもしれませんが、しかし、そういうものでもって間に合わそうという考え方はいけないと思いますので、そういう点も十分踏まえて、ひとつ前向きな検討の上で、一刻も早くそうした自治体の不満を解消するように努力をしていただきたい。  終わります。
  90. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十一分散会