○金子(満)
委員 大臣は、陳謝したと言われますけれ
ども、金鍾泌氏が持ってきたいわゆる
総理あての大統領書簡というものは、遺憾の意を確かに表してある。何に対して遺憾の意を表したか。たいへん不幸なことが起こったからそれに遺憾の意を表しただけで、何にという具体的なものは
一つもない。それからかかる
事態が再び起こらないように、かかる
事態とは何のことか、これも全く不問に付したままで、ただ不幸な
事態という抽象化です。
大臣が言われている中で賢明だということで
表現されていますけれ
ども、私は
日本政府と
韓国政府の深い結びつきというものをこの際指摘しないわけにはいかぬと思う。
それはすでに六九年の日米
共同声明でもいわれていることでありますが、「
韓国の安全は
日本自身の安全にとって緊要である」このように
総理大臣は述べた。これは前佐藤
総理大臣であります。ことしの八月、
田中・ニクソン
会談で、今度は
日本側だけでなくて、その
共同声明の中で「両者は、朝鮮半島における新たな発展を歓迎し、」——この「朝鮮半島」といろ場合に、これは
韓国が対象になっていることは次の
文章でも明らかです。「
両国政府がこの地域における平和と安定の促進のために貢献する用意があることを表明した。」つまり、反共的な
立場で
日本と
韓国の
政府が結びつきを強めている。
そしていま
韓国では、御承知のように、最近
報道されていますが、著名な文化人十五氏が
朴政権の独裁政治に反対するアピールを出す。そしてこの恐怖政治に反対をする運動が南朝鮮で
かなり大がかりに広がっている。こうした中で
朴政権が非常に政治的な窮地に立たされている。これは事実であります。
こうしたときに、
日本政府が、賢明という
ことばの中で、私は
主権の
侵害というものが明白であるにもかかわらず、その点をうやむやにして政治的
決着をつける、こういうことは非常な間違いだと思うのです。
同時に、
主権侵害でないのなら、公的
立場にあった人が私的に行なったということであるなら、当然挙証
責任というものが
韓国側にあるはずであります。これは公権力は介入していないというのだったら、これこれしかじかで介入していないということを
日本側に出さなければならない。それをまた、われわれ
日本政府としても要求する権利があるし、義務がある、こういう点も私は指摘し、
大臣その他
関係者の意見を聞きたいと思います。
それから、時間がありませんから続けて
質問をしますから
お答え願いたいと思うのです。
原状回復の問題は、
主権侵害ということが明白にならなければできないということを当然言われることはわかりますけれ
ども、この
事件の一番大事なところにすわっている者は、一人は
金大中氏自身であります。これは被害者であります。そして
韓国にいることがはっきりしている。自由の身になったというのだから、そして
捜査当局のほうも再
来日を要求しているということは、最初の
石井委員の
質問に対する答弁の中でも出ました。そして
外務大臣はその答弁の中で、
事件直後は
要請しておった、こういうことでありますが、政治的な
決着をつけたということを言われるけれ
ども、なお
捜査は続けるということを他の面では主張されるわけですから、当然
金大中氏に対する再
来日を
捜査当局が求めているというのだったら、あらためて
外務大臣、
外務省として私はやる必要があるし、やらなければならぬ。同時に、
日本政府が
金大中氏に対して再
来日を求めているということを公にも明らかにすべきだと思うのです。前にそういうことを
要請したことがあるから、まあそのままですということでなくて、新たな時点の中で、ここでぜひ明らかにしてほしいと思うのです。
それから、
金東雲一等書記官については、容疑濃厚明確であります。これはもう隠すべくもない事実なんですから、これに対しては、容疑者として当然
日本側にその出頭を求める。このことを
捜査当局がどう
考えているか。私は
考えていなかったら重大問題だと思うのです。
考えているのだったら、しかるべき
措置をとるように、外交ルートを通じてもやるべきである。この点もこの席で明白に述べていただきたいと思うのです。もしここが不明確であれば、どのようなことを
政府側がおっしゃっても、腹の中では別なことを
考えている、そうとしか思えないわけだし、とれないわけです。そういう点で、その点について明確な御答弁を願いたいと思います。