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1973-08-24 第71回国会 衆議院 外務委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年八月二十四日(金曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 藤井 勝志君    理事 石井  一君 理事 小坂徳三郎君    理事 西銘 順治君 理事 福永 一臣君    理事 岡田 春夫君 理事 金子 満広君       加藤 紘一君    小林 正巳君       深谷 隆司君    福田 篤泰君       宮澤 喜一君    山田 久就君       河上 民雄君    楢崎弥之助君       柴田 睦夫君    渡部 一郎君       永末 英一君    瀬長亀次郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         内閣官房副長官 山下 元利君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         科学技術庁研究         調整局長    千葉  博君         外務大臣官房長 鹿取 泰衛君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省経済協力         局長      御巫 清尚君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君         厚生省薬務局長 松下 廉蔵君  委員外出席者         警察庁警備局参         事官      中島 二郎君         法務省入国管理         局次長     竹村 照雄君         外務省アジア局         北東アジア課長 妹尾 正毅君         大蔵省主計局主         計官      廣江 運弘君         郵政省電波監理         局宇宙開発企画         室長      園山 重道君         参  考  人         (宇宙開発事業         団副理事長)  松浦 陽恵君         外務委員会調査         室長      亀倉 四郎君     ————————————— 委員の異動 七月二十三日  辞任         補欠選任   小林 正巳君     竹下  登君 同日  辞任         補欠選任   竹下  登君     小林 正巳君 同月二十七日  辞任         補欠選任   小林 正巳君     西村 英一君 同日  辞任         補欠選任   西村 英一君     小林 正巳君 八月二十四日  辞任         補欠選任   勝間田清一君     楢崎弥之助君 同日  辞任         補欠選任   楢崎弥之助君     勝間田清一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  千九百六十一年の麻薬に関する単一条約を改正  する議定書締結について承認を求めるの件  (条約第三号)(参議院送付)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 藤井勝志

    藤井委員長 これより会議を開きます。  千九百六十一年の麻薬に関する単一条約を改正する議定書締結について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。  質疑申し出がありますので、これを許します。渡部一郎君。
  3. 渡部一郎

    渡部(一)委員 さきに、本協定の審議中、家庭麻薬取り扱いにつき、日本国内法と千九百六十一年の麻薬に関する単一条約を改正する議定書との間に差があることが見出され、それに関して御質問をいたしましたところ、当局のほうから、これに関しては意見を整足して、当委員会に対して意見を表明する旨、御発表になりました。  そこで、当単一条約の上で、明らかに附表IIIにおきましては家庭麻薬取り扱いがしるされております。この家庭麻薬は、諸外国におきましては、これを買い集めることによって、一般麻薬あるいは強力な麻薬の代用品として使われ、ヒッピー等においても施用される旨の記述を諸外国の文献に見るわけでありますが、その意味で、わが国家庭麻薬という規定一般的な麻薬取り締まりの範囲を越えて非常にやわらかい規定になっておりますことにつき、疑念を抱いているわけであります。その意味から、当麻薬条約に関する扱いというものと国内法扱いというものとを調整する必要があるように感ずるわけであります。これに対しての明快な御所見を承りたいと存じます。
  4. 松下廉蔵

    松下政府委員 先般の委員会におきまして渡部先生から御質疑のございました単一条約附表IIIの中に記載されております物質取り扱いにつきまして、前委員会における御説明の中で、多少不十分であった点があろうかと存じますので、繰り返す点もあろうかと思いますけれども、補足して御説明さしていただきたいと思います。  単一条約附表III製剤といたしましては、その含有する物質のため、乱用のおそれがなく、かつ悪影響を及ぼさず、さらにその製剤中の薬品を容易に回収することができないものであるという定義になっておりまして、附表I及び附表IIに掲げる麻薬あるいはこれらの製剤適用される統制措置のような強い規制は受けておりません。需要量の見積もり、それから製造輸入輸出等に関する統計報告、それから輸入輸出についての免許制度、そういった統制措置は免除されているわけでございます。附表IIIの中で、コデインジヒドロコデインなどの製剤で一または二以上の成分と複合しており、かつ一回の用量につき百ミリグラム以下の薬品を含有し、または分割されていない製剤について、濃度二・五%以下であることという規定がございますが、この製剤に該当するものといたしましては、わが国におきましては二種類あるわけでございまして、いま先生が御指摘になりました家庭麻薬につきましては、麻薬取締法で、千分中十以下のコデインジヒドロコデインまたはこれらの塩類を含有し、これら以外の麻薬を含有しないものというふうに規定されております。したがって、この附表III規定に当たりますものの中でも、コデインジヒドロコデインが一%をこえて含まれておりますものにつきましては、条約附表IIIのものであり、かつ麻薬取締法対象になるということになります。その点は前回の御説明が不十分であったと思いますので、訂正さしていただきたいと思います。  いま御指摘家庭麻薬につきましては、千分中十以下、つまり一%以下のものについて家庭麻薬として用いられるわけでございますが、その中には医療用に用いますコデインジヒドロコデインの百倍散、それから一般用といたしましてコデインジヒドロコデインを含有する総合感冒剤あるいは鎮咳剤等があるわけでございます。こういった家庭麻薬につきましても、製造段階までは当然麻薬取締法適用があるわけでございまして、その原材料の入手、製造等につきましてきびしく規制されております。それ以後の流通段階につきましては、これは麻薬取締法対象ではございませんが、いま申し上げましたコデインジヒドロコデインの百倍散につきましては劇薬といたしまして、それから総合感冒剤等につきましては一般医薬品といたしまして、それぞれ薬事法規制をいたしておるところでございます。  コデインジヒドロコデインの百倍散は、いま申し上げたように劇薬でございますので、薬事法の中でも譲渡手続あるいは心配な者、十四歳未満の者等には交付してはいけないというような規定適用がございます。一般的な総合感冒剤等については、一般薬といたしまして販売規制がなされておるわけでございますけれども、いま先生が御指摘になりました諸外国との例の対比でございますが、この単一条約は国際的に、各国の法規を対象といたしまして総括的な規定をいたしておるわけでございます。私どもの承知しております限りでは、たとえばアメリカ等薬事制度日本とはやや異なっておりまして、アメリカ等におきましては、いわゆる大衆薬と申しますか、一般薬と申しますか、そういったような医薬品につきましてはOTCというような名称が付せられておりまして、その製造販売等についての規制はきわめて簡易でございます。一般的に、その販売についての規制が、化粧品並みとまでは申しませんけれども、相当ラフに行なわれておる、そういったような関係もございますために、そういう薬事制度をとっております国も全部カバーするために、単一条約ではこういう家庭麻薬的なものにつきましても条約をもって相当そういった一般OTCとは異なるきびしい規制を課すというようなたてまえがとられておるように承知いたしております。わが国におきましては、先生御承知のように現行薬事法におきまして医薬品医療用のものあるいは一般用のものを含めまして全部が一律の取り扱いになっておりまして、その製造につきましてももちろんでございますが、厚生大臣承認許可を必要とする。また販売段階におきましても、すべての医薬品につきまして医薬品販売業として薬局あるいは一定の資格を持つ薬種商でなければ販売できないというような規制があり、個々にその店舗あるいは従業員資格等につきまして薬事法をもって厳格な規制がされ、都道府県知事許可を必要とするというたてまえがとられておるわけでございまして、こういった家庭麻薬取り扱いにつきましても薬事法上の規制は相当厳格になされております。  それから一方、医薬品としての性格から見ましても、総合感冒剤等につきまして考えてみますと、これは解熱剤等いろいろな医薬品を含んでおりまして、こういったものを麻薬乱用目的といたしまして服用いたしましても、麻薬としての目的を達し得るような量になる前にその他の医薬品の副作用によりまして大きな健康障害を起こす。こういったものにつきましては、使用上の注意を相当厳格に記載することを義務づけております。それから技術的に申しましても、こういった医薬品の中から微量の麻薬を取り出しまして精製するというととは、通常の技術をもってしてはとても不可能な性質のものでございまして、そういった意味におきまして、こういう一般的な感冒剤等につきましては麻薬としての乱用をされるというおそれはまずないものというふうに考えております。  そういう医薬品性格を、一方ではいま申し上げましたような厳格な薬事法規制、それから製造面におきます麻薬取締法規制、そういったものを考え合わせまして、私どもといたしましても外務省法制局等とも御相談をいたしました結果、このような規制のもとにおきましては単一条約における要望を現行法において満たし得るもの、そのように考えておる次第でございますので、御了承いただければと考えております。
  5. 渡部一郎

    渡部(一)委員 外務省のほうに、今度は条約局のほうにお伺いしますが、ただいまの規定の中で、附表III規定で、附表IIIの(a)の規定についてはまさに乱用の危険はないという意味で伺ったわけでありますが、(b)、つまり「一回の用量につき百ミリグラム以下の薬品を含有し、又は、分割されていない製剤については、濃度二・五%以下であること。」という形になっております。つまり下のほうについても、濃度のうんと薄いものについても当条約規定によって取り締まる旨表示しているわけであります。そうすると、国内法扱いとは相違した扱いになるのではないか。その辺、条約上から見て、それらの現行国内法による取り締まりは本条約と違反するところがないかどうか。その辺をお伺いしたいと思います。
  6. 松永信雄

    松永政府委員 ただいま御指摘のございました問題につきましては、先ほど厚生省政府委員のほうからお答えがございましたように、現在のわが国薬事法等法令のもとにおきまして行なわれております規制によりまして、この条約趣旨としますところが実態的に達成されていると考えております。
  7. 渡部一郎

    渡部(一)委員 なお、当委員会審議中に麻薬取締法令違反者である米軍構成員及び軍属に対する送り出し要請について、私は法務省に対し資料を請求いたしました。そうしましたところ、法務省入国管理局から次のような御回答をいただきました。「一、米軍構成員又は軍属で、入国麻薬、大麻又はあへんの取締に関する日本国又は日本国以外の法令に違反して有罪の判決を受けたものについて法務省入国管理局在日米軍司令部に対し、情報の提供又は調査要請した例は、これまでありません。二、前記一に該当する者について、日米合同委員会を通じ、在日米軍当局に対し、その者の送出を要請した例は、これまでありません。」という御回答法務省からいただきました。日米合同委員会合意を見た主要事項に関するものとして参議院予算委員会に提出した資料の中に、米軍構成員軍属、家族にあって麻薬犯罪にひっかかった者を送り出すということが両者の合意によって行なわれているように見えるわけであります。そしてハワイにおける田中ニクソン共同発表の中においてもその旨、麻薬に関する協力が誓われているわけであります。これは外交努力を非常に欠いている証明ではないか。沖繩においてあれほどたくさんの米軍麻薬患者が発生し、米軍病院長のごとき高位にある人々麻薬犯罪にひっかかっており、日本官憲に追及されているという事実があるにもかかわらず、これらを逮捕あるいは取り調べあるいは当然出てくる送り出しの措置が全くとられていない。今後の外交努力としてこういう点は十分反省をなさるべきではないかと思いますが、いかがですか。
  8. 松永信雄

    松永政府委員 ただいま御指摘がございました麻薬事犯等取り締まりあるいはその捜査のための協力について、アメリカに対しまして強く協力要請をいたすべきは当然のことでございますし、私が了解しております限り、現在までに合同委員会あるいはその他の場を通じまして、すなわちアメリカ在京大使館に対しまして、大きな事件が起こりましたときには強く協力要請する等の措置をとってきておると思います。しかし、今後ともなお一そうこういう問題につきましては強くアメリカ取り締まりその他についての協力要請していくべきであろうと思っております。
  9. 渡部一郎

    渡部(一)委員 以上で終わります。
  10. 藤井勝志

    藤井委員長 これにて本件に対する質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  11. 藤井勝志

    藤井委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  国際情勢に関する件について調査のため、本日、宇宙開発事業団副理事長松浦陽恵君を参考人として出席を求め、その意見を徴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 藤井勝志

    藤井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  13. 藤井勝志

    藤井委員長 質疑申し出がありますので、順次これを許します。石井一君。
  14. 石井一

    石井委員 今回の事件に関連いたしまして、日韓関係というものは非常に異常なまでに重要な局面を迎えておる、こういうふうに私痛感をいたすわけでございますが、けさの閣議で第七回日韓定期閣僚会議延期されるということを御決定になったと承っております。これに至りました経緯、そしてこのことによって両国関係というものに対してどういう見通しを持っておられるか、まず基本的な問題でございますが、外務大臣から御所見を伺いたいと思います。
  15. 大平正芳

    大平国務大臣 第七回の日韓定期閣僚会議は、来たる九月七日、八日東京で開催する予定のもとに準備を進めてまいったのでございます。しかし、御案内のような局面を迎えておりますので、この時期に開催すべきかどうかということにつきまして、韓国側とも話し合いをいたしました結果、この時期は必ずしも開催に適当な時期でないという判断をいたしましたので、きょうの閣議で、とりあえずこれを延期いたしまして、総理訪欧訪ソ後、双方都合のよい時期、できるだけ早く開催しようじゃないかということで双方意見が一致いたしたのでありまして、そのことを閣議に御報告申し上げて、御了承を得たわけでございます。この延期ということは、わが国の対韓政策変更意味するものではもちろんないわけでございます。したがって、通常のおつき合いは従来どおり続けてまいるわけでございます。したがって、経済協力案件等につきましても、ルーチンの仕事といたしまして進めてまいるつもりでございます。  一方、金大中事件は、両国捜査当局におきまして早く解明していただいて、国民の疑惑を一掃していただくことが望ましいわけでございまして、そのためには、従来政府韓国側に求めておりますように、捜査上の協力は引き続き求めてまいらなければならぬと考えておるわけでございます。  今後の推移でございますけれども、いつごろこれが解明されるかというような点につきまして、いま私は見通しを持っていないわけでございます。こういう不幸な事件でございまして、なるべく早く解明されることを期待いたしておる次第でございます。
  16. 石井一

    石井委員 そういたしますと、もしかりに事件解決めどというものがつかない場合には、この問題が解決しない限り日韓閣僚会議というものは、かなり無期延期というふうな形で延期される、そういうお考えなのですか。それともやはり両国関係を維待していくために、できるだけすみやかに、この事件解決さえあれば、十月というものをめど開催をされる、こういうお考えでございますか。
  17. 大平正芳

    大平国務大臣 いま御答弁申し上げましたとおり、今回はとりあえず延期する、そして、総理訪欧訪ソ後の両国都合のよい時期に、できるだけ早く開催しようじゃないかという了解になっておるのが今日の時点の了解でございまして、一方、いままた御答弁申し上げましたように、本件、この誘拐事件がいつまでに解明されるかという点につきましては、さだかな展望をまだ私は抱くに至っていないということも正直に申し上げたわけでございます。いまあるがままの事態はそういう状態であると御了承いただきたいと思います。
  18. 石井一

    石井委員 昨日の参議院法務委員会で、田中法務大臣は、特定な機関の名前はおっしゃっておりませんけれども、某国の政府機関関係したということは、自分もそういう心証を持っておるということを御発言になっておるわけでございますけれども外務大臣は、この点に関してはどういう御見解を持っておられますか。
  19. 大平正芳

    大平国務大臣 せっかく捜査当局において解明中の事件でございまして、その解明を待たなければ私には判断がつかないわけでございます。
  20. 石井一

    石井委員 当然そういうお答えが返ってくると思っておりましたけれども関係をしておった犯人と申しますか、組織と申しますか、そういう人々がいわゆる政府機関の下部の者であっても、これはやはりそういう事態が起こった場合には、外交的には断固たる処置をとらなければいかぬ、こういうふうにお考えでございますか。
  21. 大平正芳

    大平国務大臣 捜査当局解明中でございまして、その解明を待ってわれわれは判断せなければならぬわけでございまして、捜査当局解明がどうなるであろう、どういう態様になるであろうというようなことを、いま予想するわけにまいりません。
  22. 石井一

    石井委員 さらに、昨日の読売新聞が、かなり具体的な事例をあげまして、いわゆる政府機関の介入というふうなことを報道しておるわけでございますけれども、これに関しましては、韓国政府が正式に事実無根のでっち上げであるというような反論を唱えておりますし、読売新聞の退去というふうなことも打ち出しておるわけでございます。これは問題が判明しなければわかりませんけれども、単なる韓国政府読売新聞の問題というよりも、やはり政府がある程度関与せざるを得ない問題に発展してくるんじゃないかと考えておりますが、この点はいかがでございますか。
  23. 大平正芳

    大平国務大臣 この金大中氏の誘拐事件が、単なる外国人わが国国内における違法行為にとどまるものか、先方の官憲が何らかの形で介入しておるかどうかという点が、まさに問題の核心であると思うのでございまして、その点に捜査当局が苦心して捜査中であるわけでございまして、政府といたしましてはその解明を待たなければ何とも判断がつかないわけでございます。いま御指摘の新聞の問題でございますけれども、論評を政府の立場でまだ申し上げる段階ではありません。
  24. 石井一

    石井委員 昨日の読売新聞の報道と関連いたしまして、昨日の田中法務大臣参議院法務委員会での発言、もし読売新聞の記事に韓国政府反論をいたしますならば、当然日本政府の一人の代表である田中法務大臣発言に対しましても、当然反論をするだろうと私は予想するわけでございますけれども田中法務大臣発言に対しては、政府は、韓国政府からの具体的な通告なり何なり、これは何ら受けておられないわけでございますか。
  25. 大平正芳

    大平国務大臣 韓国政府から何も申し出がございません。
  26. 石井一

    石井委員 田中発言は非常に重要なものだと思いますが、「第六感」ということばがございますから、ある意味では個人的な発言だというふうにとれるかもわかりませんけれども、私はこの点はある意味韓国政府の態度というものも非常にふかしぎだというふうに考えておるわけでございますけれども、いずれにしましてもわが国の主権の侵害という問題を考えますと、当然現状の回復ということを要求すべきであり、そのためには金大中氏の再来日重要参考人を訪日させるということ、これは非常に当然のわが国の権利だというふうに考えておるわけでございますが、これまで日本政府がいろいろなことを韓国政府に要求してまいりました。それに対して韓国政府はどのような誠意をもってこたえてきたか。外務省、いろいろ交渉されたと思いますけれども、その点についてひとつ当委員会で御発表をいただきたいと思います。
  27. 妹尾正毅

    妹尾説明員 御説明申し上げます。  まず八日の事件が発生したことを知りました日でございますが、その日の夜に法眼事務次官在京李韓国大使に会いまして、まずこの問題について韓国側で何か知っている点があるかということで本国政府への照会を含めて照会をいたしました。これに対しまして、翌日の九日でございますが、李大使から韓国政府は全く関係がない、情報がないということを言ってきたわけでございます。それで、その後でございますが、まず事件目撃者金大中氏と同席いたしました梁一東民主統一党の党首と金敬仁議員事件の後十一日に帰国したいということを申し出まして、これはわがほうの捜査上ぜひ残っていただきたいということがございましたので、韓国政府に両名の方に帰国を一時延期するように協力要請いたしまして、韓国政府から滞在延期してくれないかということをこの梁一東氏と金敬仁氏に要請したわけでございます。これにつきまして、梁一東氏は都合で延ばせないということで十一日の日に予定どおり帰りましたけれども金敬仁氏はこれによって十五日まで滞在延期したということがまず最初にございます。  その後も、これは十四日でございますが、同じく法眼事務次官から李大使に対して、わが国としてはこの事件を徹底的に捜査する方針であるので韓国側調査結果を随時迅速に連絡してほしい、それから金大中、梁一東両氏にできるだけ早く日本に来てほしいということを要請いたしまして、これに対して韓国側は、十七日尹外務部次官から後宮韓国大使に対して韓国側捜査経過を随時通報するということを約しました。ただし、金大中、梁一東両氏の訪日については現在調査中であるので不可能であるということでございました。  それから、金鍾泌国務総理後宮大使に対して、同じ日に、韓国政府としては事件の究明のために最大限の努力を尽くすということを言っております。それから、田中総理大臣大平外務大臣に対する親書においても同じ趣旨が述べられております。  それから実は韓国側要請しておりましたことは、その両氏来日のほか、捜査状況の詳しい通報と、それから金大中氏の血液型や指紋等日本側では必ずしもわからないので、こういうものを知らせてほしいということを言っておりましたのに対して、必ずしも随時その捜査状況の通報があったわけでもなく、かつ血液型、指紋等がすぐ送られてこなかったものでございますから、二十一日後宮大使から金外務部長官に対してこの点につき再度協力要請しましたところ、翌二十二日の朝血液型と指紋を韓国側から送ってまいりました。それから捜査状況につきましては、二十三日に現状につきまして比較的簡単なものでございますが、ソウルで通報を受けております。  以上でございます。
  28. 石井一

    石井委員 いわゆる韓国側捜査状況の通報ということを比較的非常に簡単なものとおっしゃいましたけれども、一体どこまで韓国では捜査が進んでおるというふうに事態を掌握されておるわけですか。
  29. 妹尾正毅

    妹尾説明員 まず事件の発生しましたときに一緒にいたという金大中氏と梁一東氏、それから金敬仁の三氏につきまして、そのときの状況についていろいろ話を聞いているということが一つございます。  それから、金大中氏の話ですと、船で韓国に運ばれたということでございまして、どこの港から来たのかということで、関係のありそうな、入ってきた可能性のあるような港を調べるとか、それから日本から来たんじゃないかと思われる船というようなものについて韓国政府が現在調査中である、こういうふうに私ども了解しております。
  30. 石井一

    石井委員 この捜査が遅々として進まないということは、やはり両国関係に非常に亀裂を生じるというふうな問題にも発展いたします。できるだけすみやかに真相を究明しなければいかぬというふうに私は考えておるわけでございますが、たとえばこの間民社党のミッションも行かれたようでございますし、わが自民党の中のAA研の宇都宮議員なんかも最近行かれる希望を持っておるということを伺っておりますが、この宇都宮ミッションに対して外務大臣はどういうお考えを持っておられるのか。私は自民党の一つのグループが出かけて究明をするというよりも、政府がもう少し積極的に、やはり捜査に時間はかかるにいたしましても、もうかなりの日時が経過をいたしておるわけでございますが、もう少し積極的に真相の究明というものに当たられてもいいんじゃないかという感じがいたします。そういう意味では在日の韓国の大使と次官との話し合いというよりも、日本大使を呼び返すとか、あるいはもう少し政府側から正式の調査のミッションを派遣するとか、そういう積極的な態度をとられてもいいと思うのでございますけれども、AA研の動きとも関連いたしまして、そういうことに対して何か積極的な御姿勢をお持ちになっておるのか、それともやはり非常に微妙な段階であるから静観する以外に方法がない、こういうお考えですか、この点はいかがですか。
  31. 大平正芳

    大平国務大臣 石井さんのおっしゃるように、事件の真相の解明を急がなければならぬというように私も考えております。そしてこれはわが国捜査当局捜査の必要があるということにつきまして韓国側から十分な協力を求めなければならぬし、そういう措置はとっておるわけでございまして、これを静観するというんでなくて、捜査の進捗を確保してまいらなければならぬと考えておりまして、政府はあらゆることをあらゆる場面で講じていきたいと考えております。  自由民主党、民社党等々のことにつきましていろいろ御心配をいただいておるわけでございますが、自由民主党のほうから訪韓という問題についてはまだ御相談を受けておりません。
  32. 石井一

    石井委員 最後の点でございますが、私、当然御相談を受けておられることだと思っておりましたが、そうしますと、そういう自発的な行為があればそれに対しては積極的に支持したい、こういう外務大臣のお考えでございますか。
  33. 大平正芳

    大平国務大臣 まず自民党のほうでこの問題をどのように措置されるか御決定になると思いまして、その結果を見まして政府と協議してみたいと思います。
  34. 石井一

    石井委員 金首相から親書が届けられて、その内容にはやはり韓国人がこの事件関係をしておったということに対する陳謝の意が示された、こういうことでございますけれども、この親書の内容はどういうものであったかお話しいただけますか。
  35. 大平正芳

    大平国務大臣 総理に対する分と私に対する分がほぼ同様の内容のものでございまして、いま仰せのように、この事件に韓国人が関与しておる趣で、日本国民にたいへん御迷惑をかけておることに対して、深甚な遺憾の意が表明されております。この事件日韓関係の基本をそこなうようなことのないように自分は念願いたしておるということ、そして事件の究明を急いでいかなければならぬという意向が表明されております。
  36. 石井一

    石井委員 事件関係した韓国人をすみやかに逮捕してそれを処罰するという、そういう意味の内容も含まれておるわけでございますか。それとも政府の遺憾の意を表明しておるだけにとどまっておるのか、この点はいかがですか。
  37. 大平正芳

    大平国務大臣 親書自体には、いまあなたが後段に言われたように遺憾の意をとりあえず表明されたというものと私は承知いたしております。
  38. 石井一

    石井委員 この事件にはいろんな風評があるわけでございますけれども日本側捜査は一体どこまで進んでおるのか。最近かなりいろんな確証を握ってきておられるのじゃないかというふうに考えるわけでございますが、一つの風評の中には日本人が関係をしておったというふうなことをいわれておる向きもございますが、そういう事実が少しでもあったのか、これまでの日本側調査はどういうふうになっておるのか、ひとつ簡単に御説明いただきたいと思います。これは事件の進展を見なければいかぬわけでありますけれども、私は韓国側協力体制といいますか、これに対する臨んでおる体制というものもややひきょうな面があるし、私は必ずしも日本政府の要求に的確にこたえてない。これは非常に微妙な問題で時間がかかっておるということも考えられるわけでございますけれども、今後の方針として、そのうちに韓国政府当局はもちろん犯人を突きとめるだろうと思いますけれども、そういうふうな場合にその引き渡しというふうなものを政府としてはやはり当然要求されようとしておるのか、こういう問題についてはどういう御見解をお持ちでございますか。
  39. 大平正芳

    大平国務大臣 わが国捜査当局捜査上必要であるということにつきまして韓国の協力を求めなければならぬということは、外交ルートを通じまして今日までもやってまいりましたが、今後も引き続きやってまいるつもりでございます。で、それがそのとおり実現できるかどうか、これは石井委員がおっしゃるように日本政府の権利として要求できる性質のものではございませんで、あくまでも先方の協力がなければ実現できないことでございますが、私どもといたしましては、捜査当局の必要とする項目につきましては、極力韓国側がこれに応じていただけるように要請を続けてまいるつもりでございます。
  40. 石井一

    石井委員 今度の問題を外交問題として取り上げました場合には、これはいろいろな、さまざまな波紋を投げかけておるというふうに私は感じます。特に、朝鮮半島が本年の国連の場において一つの世界の焦点になるという時期だけによけい影響は大きい、私はそういうふうな意味で、やはり日本外交というものはきっちりと折り目を正して、主張すべきことは主張し、要求すべきことは要求してやっていくべきだというふうに考えるわけでございますけれども、これはまだ判明しないのでというお答えになろうかと思いますが、この点がやはり非常に重要でございますので重ねてお伺いをしてみたいと思うのでございますけれども、もし何らかの意味韓国政府当局がこれに関与しておる、こういうふうな事態が起こった場合には、日韓関係あるいは経済協力関係というふうなものは相当の影響が出てくる、こういうふうに外務大臣はお考えでございますか。
  41. 大平正芳

    大平国務大臣 冒頭でもお答え申し上げましたように、事件の真相の究明中でございまして、究明を待たなければわれわれの判断がつかないわけでございまして、いまある結果を想定してこういう場合はこうだというような御答弁を申し上げることは、私は軽率であろうと考えております。
  42. 石井一

    石井委員 まあ私の立場でこれ以上追及いたしませんが、私は正常な日韓関係というものを推進して、これからもっとさらに強くしていくという観点から考えても、この問題は非常にきっちり処理をつけるべきである、そういうふうに考えてなりません。一時的な問題の処理というものは非常に大きな問題をあとに残す、こういう性格のものだろうと思いますので、またきょうの議論では、外務大臣の御答弁の中には必ずしも積極的にこれに取り組むというよりも、事態を静観するというふうなこういう態度が非常に多かったことを、私はある意味では遺憾に考えるものでございます。きょうはこの問題が野党の皆さんからも相当取り上げられると思いますので、私はもうこれくらいにいたしまして、次に、しばらく外務委員会開かれておりませんでした、その間にかなり大きな外交問題がたくさんあったわけでございます。もう時間もあまりございませんけれども、二、三点これらの点について散発的にお伺いをさせていただきたいと思います。  そこで、まず最初に、日米首脳会談に御列席になりまして、いろいろの成果をおさめられてまいったわけでございますけれども、最近キッシンジャー補佐官が国務長官に就任するというふうなこともございますが、それなりにこのキッシンジャー構想のいわゆる大西洋憲章、これはわが国としても何らかの形で積極的に取り組まなければいかぬという段階にきておるんじゃないかと私は思うのでございますが、安川新大使とキッシンジャーの間にはいろいろな協議が進められておるということも聞きますし、牛場前大使がこれらについていろいろの日本側の意向を伝えたというふうなことも耳にいたしておりますけれども、これに対する日本案、日本側の基本的な考え方ということについてその後進展がありましたら、ひとつ御発表いただきたいと思います。
  43. 大平正芳

    大平国務大臣 いわゆるキッシンジャー構想というのは、御案内のようにこれから五年ないし十年の将来を展望いたしまして、先進工業民主国間の新しい協力についてのガイドラインというようなものについてヨーロッパ、日本等とひとつ協議してみようという一つのたたき台をキッシンジャー博士が提案されたものと承知いたしております。そしてヨーロッパ関係におきましては、ECの主たる国々との間、それからNATOの国々との間におきましてそれぞれ別個に協議が行なわれておると承知いたしております。しかし、まだ固まった構想が出てきておるというようには承知いたしておりません。わが国ともアメリカ政府といたしましては協議の場を持ちたいということでございました。われわれは、先進工業国間で新しい協力のガイドラインというようなものを考えてみたいということ自体は理解できる。しかしこれは十分検討をしなければならぬと心得ておるということで、安川大使とキッシンジャー氏との間で今後検討を重ねようじゃないかということで合意を見て、現にそれが始まっておるわけでございまして、今後どういう進展を見ますか、いままださだかな展望を持つことはできませんけれども、鋭意協議して、日米共同声明にありますように各国が納得ができるようなものができればたいへんしあわせだと考えております。
  44. 石井一

    石井委員 ベトナム復興の問題に関しましてやはり日米首脳会談で、とりあえず呼び水として南ベトナムに五千万ドルですかの援助を与えるというふうなことをおきめになったということを私伺っております。これはアメリカ側からの要請があったのか。ちょうどその時点に日本から南ベトナムに調査団も行き、どういう形での援助をしようというふうなことを調査しておる時期であったと思うのでありますけれども、そういう決定がなされたその経緯、また南ベトナムにやるならカンボジア、ラオスというふうなものに対しても日本はやるべきだ、こう思いますけれども、南ベトナム復興という問題に対する御見解、日米首脳会談との関連の上においてお答えいただきたいと思います。
  45. 大平正芳

    大平国務大臣 日米首脳会談でございますから、日米両国首脳が共通の関心を持っておる諸問題につきまして隔意のない意見の交換を遂げる場でございます。したがって、インドシナの援助問題もその一つであるわけでございまして、アメリカにおきましても、そのために新しい予算要求をコングレスにいたしておると承知いたしております。わが国もこれに対してどのような取り組み方をするかをいろいろ考えてきたわけでございますけれども、北越との間におきましては国交樹立の交渉がいま行なわれておる。ラオスの事態はやや落ちつきを取り戻しつつあるように思いますけれども、カンボジアはまさにたいへん流動的な状態にあるわけでございまして、具体的に対日協力要請というものはこの地域からまだ来ていないわけでございまして、ただ南越だけからは六千百万ドルのとりあえずの援助要請が来ております。したがってミッションを派遣いたしましてこの要請の裏づけになるいろいろな事実の調査を進めていただいたわけでございますが、大体この要請は無理からぬ要請である、実行可能なものであるという報告を現地からよこしておったわけでございまして、日本政府といたしまして、今会計年度で有償、無償合わせまして五千万ドル程度の腹づもりを持っておるんだということは、南越政府にもアメリカ政府にも内報をいたしておるのがいまの段階でございまして、アメリカ要請があったからするというようなお粗末なものではないのでありまして、日本がやるべきことをやるべき時期に所定の手続を踏んでやってまいるという日本の態度に変わりはないわけでございまして、首脳会談でいろいろな共通の関心事につきましての意見の交換の途次、そういった問題が取り上げられて、日本政府としてはこういう腹づもりでおるということを内報したまででございます。
  46. 石井一

    石井委員 日中問題について一、二点お伺いいたしたいと思いますが、いわゆる航空協定の締結に関しましても、その後おそらく鋭意努力されておるというふうに私推察をいたしますが、最近の情報では、中国は台湾の航空機と同一の空港におりることには異論はないけれども、認めるが、いわゆる中華民国の旗を使用するということに対しての抵抗を何らかの形で示しておるというふうに伺っておりますし、河野参議院議長にもそのような表現がなされたというふうに伺っておりますが、この点外務大臣お聞きになっておりますか。
  47. 大平正芳

    大平国務大臣 日中間にいろいろ要人の行き来がございまして、私といたしましては、この日台路線という問題の取り扱いにつきまして、できましたならば中国側の感触もあらかじめ承知できればという願望を持っておることは事実でございます。けれども、中国側といたしましては、自分のほうで具体案を示して押しつけがましいことをするということをいさぎよしとしないというお立場であるように推察されます。ただ、日中国交正常化という基本の原則に沿って、それにふさわしい措置はとっていただきたいというそういう原則的立場をクリアにするという立場を終始堅持しておるように私は見られるわけでございまして、こまかい技術的な点につきまして先方がとやかく言うておるとは承知いたしておりません。
  48. 石井一

    石井委員 この問題、いろいろ問題ございますので、別の機会にいたします。  なお、通商協定の交渉がかなり進んで、きょうかあすあたりにはもうほとんど話がまとまるのではないかというふうに私聞いておるわけでございますが、これはいわゆる貿易協定が今年終了するということもありまして、来年初めまでに発効しなければいかぬ。そういうことになりますと、国会への手続、たとえばこの国会へ通商協定は持ち出される、そういう御予定になっておるのか、この点はいかがでございますか。
  49. 大平正芳

    大平国務大臣 御指摘の日中通商協定の交渉でございますが、八月十七日から、当方はアジア局長、中国側は実業勝対外貿易部第四局長を団長といたしまして、目下交渉続行中でございます。双方とも、ぜひとも交渉を成立させたいという強い念願を持っておることは事実でございますが、交渉の内容につきまして、いま外部に発表しないという双方の申し合わせがございますので、失礼でございますが、いまの段階で明らかにすることは差し控えさせていただきたいと思います。  ただ、一部の新聞の報道は、今日にも仮調印に到達するのではないかという観測があるようでございますが、現時点でそういう具体的な見通しを立てておるわけではございません。いまのところ、一日も早く基本的合意に達するよう双方鋭意努力中であると御承知願いたいと思います。したがいまして、国会にいつ出すかというところまでまだ手順が及んでいないわけでございます。
  50. 石井一

    石井委員 日中貿易に関連いたしましてココムの規定との関係、これはある意味ではココムの規制というものが非常に阻害になるのではないかという感じがいたします。特に昨今の国際情勢の大きな推移という中で、ココムの規制がまだ存在する理由というものがあるのだろうかどうか、こういう点を私非常に疑問を持つのでございますけれども、これに対しては、日本政府はどういうように考えておられるわけでございますか。
  51. 大平正芳

    大平国務大臣 交渉の内容に触れることになりますので、ちょっと私も御報告する自由をいま持っていないわけでございますが、双方とも、基本的合意に一日も早く達したいということで鋭意努力中であると御承知願いたいと思います。
  52. 石井一

    石井委員 終わります。
  53. 藤井勝志

    藤井委員長 河上民雄君。
  54. 河上民雄

    ○河上委員 外務大臣に最近の金大中事件に関連してお尋ねしたいと思います。  事件発生以来、いまだに事態が明らかにならないのでありますが、八日東京で白昼拉致されましてから、十三日韓国の金氏の自宅におるということが判明いたしまして、三日ほど新聞記者その他との接触が許されておりましたけれども、その後外部との接触は一切遮断されて、すでにもう十日をこえようといたしております。私は、事態は非常に憂慮すべき段階に入っているのではないか、こういうように思うわけでありますが、外相は、この金大中事件の、特に金氏の安否についてどういう憂慮を持っておられるか、それをまず初めに伺いたいと思います。
  55. 大平正芳

    大平国務大臣 わが国の法域の中で行なわれた誘拐事件でございまして、きわめて不幸な、かつ遺憾な事件であると思います。しかし、金大中氏の身柄が安全であったということは、せめてものなぐさめであったと考えております。仰せのように、この事件事件自体といたしましても、また日韓双方にまたがる事件でもございまして、事柄は重大だと思うわけでございます。一日も早く真相が解明されて国民の疑惑を一掃し、公正な解決が見られなければならぬと考えておりまして、そのために政府も最善の努力をしなければならぬと心得ております。
  56. 河上民雄

    ○河上委員 先般、アメリカの国務省あるいはロジャーズ国務長官も、金氏の身辺の安否につきましていま非常に憂慮して、韓国政府に警告を発したという発表があったわけですが、私は、その後も事態はますます悪くなっているのではないかと思うのであります。韓国に最も近い日本であり、また事件日本で起こったという立場から見て、しかも金氏が日本滞在しておったのは、法務大臣の特別の許可によって滞在しておったという事実を考えますときに、ロジャーズ長官がそういう警告を発するくらいであれば、当然大平外務大臣韓国政府に金氏の安否について、問題の真相はともかくとして、安否についてまず警告なりそうした大平外務大臣の心情を訴えることが、いまここで非常に大切じゃないかと私は思うのでありますけれども、いかがなものでしょう。
  57. 大平正芳

    大平国務大臣 私といたしましては、金大中氏の安全につきまして韓国政府が周到な配慮を加えられておることを期待いたしておりまして、当方からそのことのために特に韓国政府に御注文をするというつもりはありません。
  58. 河上民雄

    ○河上委員 それはたいへん重大な御発言だと思うのでありまして、いま、金大中氏の事件のいかんによりましては、日本政府のみならず日本人全体が、非常に大きな試練といいますか真価を問われているのではないかと思うのでありまして、私は、もっと積極的な姿勢でこの問題に対処していただきたいと思うのです。  その後の新聞の報道によりますと、韓国側捜査によれば、金大中氏の身辺からいわゆる亡命政権樹立の計画書なるものが発見された、こういうようなことが伝えられております。これにつきましては、当然それはでっち上げであるという反論があるわけでありますけれども韓国側としてはそういうことを発表しているわけでございます。ところが、韓国の反共法あるいは国家保安法によりますと、こういう亡命政権を計画すること自体非常に重大な犯罪になるということになっております。特に国家保安法第一章第一条によりますと、次のとおりになっているんです。「(反国家団体構成)政府を僣称したり、国家を変乱する目的で結社又は集団(以下、反国家団体と称する)を構成した者は、次の区別に従って処罰する。一、首魁は、死刑又は無期懲役に処する。二、幹部又は指導的任務に従事した者は、死刑、無期又は五年以上の懲役に処する。三、それ以外の者は、七年以下の懲役に処する。」第一条ではこうなっております。これを下敷きとして亡命政権計画書なるものが発表されたというようなことを公表していることを考え合わせますと、金大中氏の場合はこの第一条の一に当たり、「首魁は、死刑又は無期懲役に処する。」に当たることになります。したがって、そういう情勢から見まして、金大中氏の身柄につきましては、日本政府が、隣国として、特に日本でそういう事件が起こったというたてまえからもっと積極的な態度をとらないと、われわれとしては最も願わしくない、そうあってほしくないような事態をかえって招くおそれがあるのじゃないかと思うのでありまして、そういう点、日本政府においてはもっとこの問題を真剣に考えていただきたいと私は考えるのでありますが、この点につきまして、日本政府としてはそういう事態にならぬことを願うわけでありましょうけれども、こういう問題についてどういうふうにお考えになるか、大臣の御意見をいただきたいと思います。
  59. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、金大中氏の身柄が韓国に無事であったことが発見されたことはたいへん喜ばしいことであると考えております。今後金大中氏をどのようにお取り調べになり措置されてまいるのか、これは韓国政府の問題でございまして、私どもがとやかく言うべき性質のものではございません。ただ、わが国といたしまして、金大中氏の誘拐事件わが国の法域の中で行なわれたということでございますので、わが国捜査当局が真相を掌握するために金大中氏の身柄をわが国に送り返してもらいたいという希望があることは十分理解できるわけでございまして、われわれはその希望をかなえるべく韓国政府にそれを要請いたしておるわけでございます。日本政府の立場は、真相の解明、そして国民の疑惑が一掃されて、公正な解決が一日も早くなされることを期待いたして、そのためになすべきことはなさねばならぬという立場でございまして、反共法云々の問題は韓国の法制の問題でございまして、私ども外国の者が、これを政治評論としてでなく、政府の立場でこれを論評するということは、私は遠慮したいと思います。
  60. 河上民雄

    ○河上委員 それではもとへ戻りまして、今回の事件は、いま大臣も認められたように、わが国の法域の及ぶ範囲の中でというより、東京のどまん中でございますが、合法的に滞在することを許可されている外国人が不法な手段で国外に連れ去られたという事件であると思います。しかも、その後事実上の軟禁状態になり、いま私が非常におそれて警告いたしましたような事態が発生するんじゃないかというような心配さえ生じておりますような一種の軟禁状態に置かれている事件でありますが、その前段といたしまして、まず日本に合法的に滞在を許されておる外国人が不法な手段で何らかの個人ないしは機関によって国外に連れ去られたということにつきまして、この点ははっきり認められると思うのであります。したがって、この事件の究明の責任は第一義的に日本側にある、こういうふうにお考えになるかどうか、その点をまず伺いたいと思います。
  61. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおりに心得ております。
  62. 河上民雄

    ○河上委員 そういたしますと、金大中氏は、決して一部で伝えられるような被疑者でなくて被害者であります。したがって、この金大中氏を事件究明のためにはどうしても日本に連れ戻す、そして自由な状況の中でその証言をとるということが絶対的な条件だと思いますけれども、その点については大臣いかがお考えでございますか。
  63. 大平正芳

    大平国務大臣 そのことが望ましいと思うわけでございますが、わが国が権利としてそれを主張するわけにはまいらないわけでございまして、あくまでも先方の協力を得てそれが実現しなければならないわけでございます。したがって、先方がそれに応ずるか応じないかということが問題であろうと思います。
  64. 河上民雄

    ○河上委員 そうなりますと、日本の主権というものは一体どういうふうに解釈されるのか。金大中氏が日本に来られたときに、出入国管理令の五十条ですかの三号に基づいて、法務大臣の特別の許可滞在していたはずであります。その外国人の安全も保障せられない、その安全が阻害された後もこれを原状に復帰する権利が日本にないということになりますと、これは非常に重大な問題だと思うんですよ。これは韓国の政治の問題に介入するとか、そういうこととは全く別の問題でありまして、日本の主権の主張というのは、いまの大臣の御答弁ですと一体どこで発揮されるのか、非常に余地が少なくなってしまうと思うのです。主権の侵害という問題について、主権の侵害を回復する道というのは一体どこにあるのか、その点をもう一度はっきり——いまの御答弁では非常に誤解を生ずるばかりか、今後同じような問題が起こったときに日本としてはどうしようもないようなことになってしまうんじゃないかと思うのです。したがって、もう一度いまの御答弁を変えていただきたい、こういうふうに思うのであります。
  65. 松永信雄

    松永政府委員 法律的な点につきましてお答え申し上げたいと思います。  いま先生指摘がございましたように、日本における事件につきましては、金大中氏は犯罪者ということではなくて被害者という立場に置かれておられると思います。そこで、日本における事件捜査解明にあたりまして、かりに金大中氏から話を伺わなくてもその事件解明されるということであれば、金大中氏の来日要請する必要はないわけでございますが、現段階におきましては、非常に重要な参考人として金大中氏に直接いろいろ話を伺った上で捜査を進めたいというのが現在の捜査当局ないし警察当局の意向と承知しております。その観点からしまして、現在韓国政府に対して金大中氏の来日が実現するよう強く要請をしているというのが現状であろうと思います。  他方、ただいま主権の侵害ということの問題が提起されましたけれども、これは全く実は事態がまだ解明されておりませんので、仮定の問題としてお答え申し上げさせていただくことを御了承いただきたいと思いますが、かりに主権の侵害がもしあったとすれば、それは国際法上の不法行為があったということになりますので、韓国政府に対しては、重大な決意に基づく措置が別途とられるということになるだろうと思います。
  66. 河上民雄

    ○河上委員 いまの最後の御答弁はさておきまして、大臣に一つ伺いますけれども、まず、日本の法務大臣が許可を与えて日本国内滞在することを許した外国人の安全というものが、何者かによって阻害せられた場合、特に自由意思に反して国外に連れ去られた場合、しかも日本政府機構の了解なしに連れ去られた場合、それを原状に復帰するつとめは日本政府に全くない、御自由にということなのかどうか。それでは日本滞在する外国人、特に合法的に日本滞在している外国人の安全というものは、いまの一言で全く保障されないということになってしまいます。しかも、金大中氏のように、ある意味では短期の滞在だけではなく長期の滞在をしておる人も、たくさんおるわけであります。その数は非常に多いのでありまして、そういう方々の安全をも脅かすような一つの政府の態度になってしまうおそれがあります。したがって、これはやはり金大中氏を八月八日の昼までの状況に戻すということは日本政府の責任ではないか、こういうふうに私は思うのでございますが、いかがでございましょう。
  67. 松永信雄

    松永政府委員 ちょっと先ほどの私の御説明をふえんさせていただきたいと思います。  金大中氏が全く自己の自由意思に基づいて韓国に帰られた場合、これはもちろん問題外だと思います。問題は金大中氏の意思に反して金大中氏が韓国に連れ戻された、強制的に連行されたということだろうと思いますが、この連行されたことにつきまして、韓国政府が責任を追及されるべき面がない場合におきましては、その責任を追及して韓国政府の責任において日本金大中氏を来日させることを要求する国際法上の権利というものはないと存じます。
  68. 河上民雄

    ○河上委員 いまの問題について大平外務大臣に御答弁いただきたいのです。  まず第一に、金大中氏は韓国において大統領選挙を争うほどの人物である、そういうような人物ですら日本国内に安心して滞在することができないというこの事実、これをけっこうなことだというふうに認めることは日本政府としては政治的にもできないと思います。  そうして第二に、法律的にも六十万人に及ぶ長期の在日朝鮮人——韓国人、朝鮮人すべてを含めてでありますけれども、そういう人たちを非常に深刻な不安におとしいれる事件である、こういう不安にどうこたえるかということが、いま今回の処理をめぐって日本政府に課せられた一つの大きな課題だと思うのです。そういう点につきまして、全く不安のないような御答弁をいただくことがいま絶対必要なんです。大臣その点いかがでございますか。
  69. 大平正芳

    大平国務大臣 河上先生おっしゃることはよくわかるわけでございまして、本件の処理、つまり真相を解明いたしまして公正な解決をはかって、こういう事件の再発を防ぐために日本政府として最善の努力をしなければならぬことは政治的に見て当然の責任だと思うのでございます。したがってわれわれといたしましても、そのために全力をあげておるわけでございまして、金大中氏を招くことなく捜査ができるのであれば、それはそれでいいのでしょうけれども捜査当局の態度といたしましては、本人から聴取しなければならないことがいろいろあるという態度でございますので、私どもはそれを韓国政府に求めておるわけでございます。韓国政府は国際法上の立場から日本にそれを引き渡さなければならぬという義務はないわけでございます。わが国もそれを権利として要求するという立場にない。つまり法律論としては、いま松永君が御説明申し上げたとおりでございますが、それでは政治的にどうだということでございますので、政治的にはこれは何とか御協力を願わなければならぬという趣旨で鋭意韓国政府に交渉しておるということと御了承いただきたいと思います。
  70. 河上民雄

    ○河上委員 いまの御答弁では、まだ日本の法務大臣の許可によって合法的に滞在している外国人滞在中における安全というものは保障されたことにならないと思います。この問題についてはなおさらにこの事件を通じて確立しなければいかぬと思います。しかもこれは金大中氏のような著名な政治家だけではなくて、在日六十万の朝鮮の方々、韓国人、朝鮮人民民主主義共和国の方々にも非常に関係のあることですので、これはさらにもっとはっきりした原則を確立する、それがこの事件に関する国会の討論の最大の任務だと私は思うのです。  まだ同僚の議員もほかに御質問がありますので、私はさらに、この問題を留保させていただきながら、質問を続けさせていただきたいと思いますが、大臣、原則というのは抽象的に法制局できめてそれでいいというわけじゃないのでありまして、一つ一つの問題の解決の中でつくっていく以外にないわけです。そういう意味で、今回の金大中事件というものは、金大中という著名な政治家が日本に合法的に滞在していた期間に起こった事件である、そういう具体的な問題をめぐってこういう原則の確立にわれわれ努力しなければいかぬと思うのです。そういう意味で、いまのように法律論ではああだ、こうだというようなことばかり言っておったのでは、金大中氏それ自体の安全さえ非常に憂慮すべき事態にかえっておちいるのではないかと私は憂えております。  二、三、今回の事件捜査に関連しましていろいろ伺いたいと思いますが、その前に大臣に一言だけお答えいただきたいのです。法律的にはこうだ、条約的にはこうだといろいろ御答弁がありましたけれども、政治的には、金大中事件については捜査の必要上もこれあって、八月八日のあの事件発生以前の状態に戻すために金大中氏を日本に来ていただくように政府としては努力されるおつもりかどうか。現にそういう要請は何とかしておられますけれども、単に要請だけでなく、そのために全力をあげるおつもりかどうかをここで一言お答え願いたいと思います。
  71. 大平正芳

    大平国務大臣 政府としては、事件解明を急いで、公正な解決を早くしないといけないと考えておるわけでございます。したがって、充実した捜査が進捗してまいることを期待いたしておるわけでございまして、捜査当局要請に従いまして韓国政府協力を求めなければならぬこと、これは今後も精力的にやってまいるつもりです。
  72. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、今度の事件で非常に不可思議なことが幾つかあるわけであります。警察の方来ておられますか。  まず第一に、事件発生直後の動きというものは、われわれから見ますと非常にミスが多かったのではないか。たとえば事件の起きました舞台であるホテルグランドパレスの従業員の証言なども、新聞などをわれわれ見ている限りでは、当初は全くそういう証言者を得られなかった、見た者はいないというようなことでございまして、それが金大中氏の自作自演説の一つの根拠にさえなっておったのでありますけれども、ところがだいぶたちますと従業員の中にも見た者がいるというような、いろいろな情報が入ってきております。こういうようなことでございますが、これが一つ。  あるいはわれわれから見まして、金大中氏を連れ出すルートというものは空港か港か、あるいはその間を行く、そこまで行くところの幹線道路かということしか考えられないのでありますけれども、そういうポイント、ポイントのチェックというものが非常におくれていたのではないか。その背景としては、非常に早い時期に今度の事件の構成につきまして、自作自演説だの、あるいは北朝鮮の工作説だの、金大中派の内紛説だの、そして最後に韓国のCIAの工作説だの、そのようなことがございまして、今日もうだれもが疑わないような、田中法務大臣ですら、第六感ではこうではないかというような方向に捜査がしぼり切れずに、あちこち四つの可能性を追ったりしておったためではないかというふうな気がするのであります。この初動捜査のミスということを非常に強く感ずるのでありますけれども、第一段階における捜査に誤りがなかったかどうか、その点についてどういうようにお考えになりますか。
  73. 中島二郎

    ○中島説明員 今回の事件につきましては、いろいろなうわさといいますか憶測がなされておるようでございますが、いろいろ複雑な背景のある事件のように思われますので、それだけに警察といたしましては客観的に事実を究明するということを第一義として、基本的な方針として捜査に当たってまいっておるわけでございます。  ただいまお尋ねの第一の、従業員等について十分調べを当初していなかったんじゃないかというお尋ねでございますが、私どもといたしましては、当初から従業員につきましては、当時この金大中氏の犯行の周辺におったと思われる従業員につきまして、組織的、計画的に事情の聴取を進めてまいっております。新聞等に記事があらわれます段階は、いろいろ事情をお伺いいたしておりましても、それが捜査上の資料となるためには、やはりこれを調書の形にすることが必要でございまして、したがいまして何回か事情を聞いた後に調書にするという、そういう作業の手順からいたしまして、この調書になった後あたりにそういう事実が新聞等にあらわれる、こういうのが一般的な経過でございまして、特に従業員について捜査を怠っておるというふうには考えておりません。  第二のお尋ねの、幹線道路等にポイントを置いて配備をすべきであるのにそれが十分行なわれていなかったのではないかという点でございますが、この点につきましては、事件の発生を警察が認知いたしましたのは、当日八月八日の午後二時十四分、警視庁の警備部長あてに自民党の宇都宮徳馬氏から電話連絡があったのが第一報でございます。この第一報を受けまして、直ちに麹町警察署員及び警視庁本部の外事二課員が現場に急行をいたしておるわけでございますが、現場に到着いたしましたのが二時四十五分でございます。警視庁が緊急配備を発令いたしましたのが三時十五分でございます。現場に到着いたしましてから約三十分くらい時間を要しておるわけでございますが、何ぶんにもどういう形で連れ出されたのかということがなかなかわからない。手配をいたしますには、やはり金大中氏の人相、特徴、それから連れ出されたとすれば、車で連れ出されたとすれば車の特徴等を手配いたしませんと緊急配備の実効をあげることができないわけでございまして、したがいまして、そうした緊急配備に必要な資料を集めるために手間がかかった、そういうことで三時十五分に緊急配備を発令いたしておるわけでございます。この間、二時四十一分に金大中事務所の趙活俊氏から一一〇番通報が入っておりますが、一一〇番通報が入りました時点におきましては、先ほども申し上げましたように宇都宮代議士からの第一報に基づいてすでに活動を開始しておった、こういうことでございます。で、どういう経路でどういう方向に連れていったのかということが全くわからない状況でございましたので、事件の特殊性を考えまして、海外に連れ出される可能性もなきにしもあらずということで、三時四十分に、警察庁といたしまして全国の海港、空港及びそれに通ずる主要道路の警戒を指示いたしたわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、事件についていろいろなことがいわれておりますけれども、特にそのために警察措置がおくれたということはないと考えております。
  74. 河上民雄

    ○河上委員 フランスの新聞では、今回の事件を論評して、世界で最も有能な日本の警察がなぜ今度だけはこんなに無能であったのか、こういうような批評をしておるのでありますけれども、一説によりますと、高橋警察庁長官は、事件の発生する前に、韓国大使館における金在権公使——新聞等によれば、はっきりと名ざしで韓国CIAの日本における最高責任者ということになっておりますけれども、この金公使に、何かそういうようなうわさがあるけれども、そんなことはしないでほしいという警告を発したということが伝えられております。こういうことが実際にあったのかどうか、いかがですか。
  75. 中島二郎

    ○中島説明員 高橋警察庁長官が金公使に事前に警告をしたという事実はございません。
  76. 河上民雄

    ○河上委員 韓国CIAの活動についてはアメリカ政府も、目に余るということで警告しております。昭和四十二年に西ドイツで韓国の学者あるいは留学生を拉致した事件の場合も、西ドイツ政府は直ちに韓国大使館におけるCIAメンバーと思われる人の国外退去を求めたりいたしております。そういう経緯から考えまして、わが国の警察は在日韓国CIAの活動につきまして、これまで警告を発したことはなかったのかどうか、特に日本における韓国CIAだけが非常に紳士的にふるまっておったのかどうか、そういう点をちょっと伺いたい。
  77. 中島二郎

    ○中島説明員 現在までのところ韓国のCIAと思われる者が日本において違法行為を行なったということを私ども承知いたしておりません。したがって、警告を発した事実はございません。
  78. 河上民雄

    ○河上委員 あまり時間がありませんので、具体的なことは申し上げませんけれども、先般、社会党の本事件に関する特別調査委員会発表したのでもわかりますように、多数の韓国人あるいは日本に帰化した韓国人がわけのわからない形で国外に連れ出されている例がたくさんあるわけです。いまの参事官の御答弁とはかなり事実が違うように思うのでありますが、もし今回の事件でCIAがかんでいる——先般、読売新聞にもそういうことがちょっと出ておるわけですけれども、そういうことが明らかになりました場合は、西ドイツ政府が行なったと同じように、そうした要員の国外退去を求めるつもりかどうか、大臣にお伺いしたい。
  79. 大平正芳

    大平国務大臣 入国して滞在するにつきまして、日本政府として本人に求めておりまする条件に違背したという場合には、当然退去を求めなければならぬと思います。
  80. 河上民雄

    ○河上委員 私が伺ったのは一般論ではなくて、在日韓国大使館の中におけるCIA要員の退去を求めるかどうかということでございまして、西ドイツ政府の場合は、それははっきりと三名の国外退去を求めているのであります。  昨日でありましたか、参議院法務委員会におきまして、わが党の議員の質問に答え、外務省の参事官の方が約束されておるのでありますけれども、在日韓国大使館におけるCIAメンバーのリストを資料として参議院法務委員会に出す、こういうことでございますが、私は本外務委員会におきましても同様なものを提出していただきたいと思います。お願いいたします。
  81. 高島益郎

    ○高島政府委員 お答えいたします。  在日韓国大使館の館員の中にCIAの関係者がいるかどうかという点につきましては、現在外務省におきまして調査いたしております。その結果につきましては後刻報告いたすようにいたします。
  82. 河上民雄

    ○河上委員 いまの資料提出は、ひとつ委員会としてきめていただきたいと思います。  これもうわさでありますけれども、今回の事件の舞台になりましたホテルグランドパレスは在日韓国大使館の指定宿になっていた。梁一東、金敬仁両氏も、在日韓国大使館の紹介であのホテルへ泊まったというふうに聞いておるのであります。そういう事実を警察においてはっきりと掌握されておるかどうか、従来ともそういうふうになっておったのかどうか、さらにホテルグランドパレスの資金的な関係、大株主にはどういう人がいるか、そういうことがもしおわかりならば教えていただきたいと思う。というのは、うわさによりますると、その人物の一人は在日韓国人で、韓国政府から、在外韓国人に対する融資制度の適用を受けて、六十億円でしょうか、非常に多額の融資を受けたということが昨年の十月の韓国国会において非常に問題になったというようなことも聞いておるのであります。非常に有能な日本の警察ですから、そういうことは全部調べがついているかと思うのでございますけれども、そういうことはあるのかないのか、またあるとすれば今後調べられるおつもりかどうか伺いたい。
  83. 中島二郎

    ○中島説明員 ホテルグランドパレスが韓国大使館の定宿になっているかどうかという点でございますが、そういう事実は聞いておりません。  それから第二の、同ホテルの資本、株主等についてでございますが、捜査の当然のことといたしまして株主等について調べておりますが、現在までのところ、特に不審な者は出ていない、こういう状況でございます。
  84. 河上民雄

    ○河上委員 いま不審というのは、あらかじめ事件関係あるという予断をもって言われたのかもしれませんけれども、私が申しておるのはそういうことではないのでございまして、在日韓国人の方は大株主におられるかどうかということを伺ったのでございます。
  85. 中島二郎

    ○中島説明員 在日韓国人にはそういう人はおりません。不審と申しましたのは、本件との関係があるかどうかという点で不審ということを申し上げたのであります。
  86. 河上民雄

    ○河上委員 いまおっしゃったことはなおもう少しよく調べていただきたいと思うのです。今回の事件にはそういういろいろな疑わしい要素というのが非常に重複しておるわけです。それをみんな疑わしくないというので一つ一つ消していけば、結局完全犯罪が成立するわけです。そういうのは警察の捜査の態度なのかもしれませんけれども……。  もう一つ伺いますけれども、イー・サンホ、李相浩という方ですか、在米韓国CIAの最高責任者と目されている方が、金大中氏の来日と相前後して日本へ来ておる、そしてまた事件の前後、ひんぱんに行ったり来たりしているということが伝えられております。こういうことは警察ではっきり、出入国関係で握れると思うのでありますけれども田中法務大臣が第六感で、某国秘密機関というふうに言われたのでありますけれども、いかに田中さんでも、何の根拠もなしに第六感ということは言えないわけでございまして、何かそういうようなこととの中で第六感を働かしたのだと思うのですが、李相浩という方がその事件の前後日本に来て一つの動きを示されたということは事実でしょうか。
  87. 中島二郎

    ○中島説明員 いまお話しの人が日本に来ておったということは聞いておりません。
  88. 河上民雄

    ○河上委員 法務省関係の方、来ておられたら、ちょっとその点。リストにちゃんとあるのじゃないかと思うのです。
  89. 竹村照雄

    ○竹村説明員 お答えいたします。  おそらく同一の人であろうと思われますけれども、報道されておりました、駐米韓国大使館の、日本式に言いますと朴正一、パク・チュンイルというらしいのですけれども、この二等書記官と同一の名前の人が七月十一日外交旅券で、通過者ということで米国から羽田に到着し、七月十二日にソウルへ出ていっております。それから、同じ人物が八月七日ソウルから羽田に参りまして、八月八日、米国に出ていっております。  以上でございます。
  90. 河上民雄

    ○河上委員 ちょっと私の申し上げた名前と違ったかもしれませんけれども、私の言いました人物ですね、在米韓国CIAの最高責任者と目されておる大使館員が、何か名前は、私の聞いただけでも二通りぐらい使っているようでございますが、いたことは事実です。私が聞いている以上、やっぱりそれに該当すると思われる人については答えていただかないと困ると思うのです。いまのでいかがですか、その点。もう一度確認しておきます。
  91. 中島二郎

    ○中島説明員 ただいまお話のあった朴正一氏は、駐アメリカ韓国大使館の二等書記官だと聞いておりますが、法務省お答えになりましたとおりの出入国の事実があったことは私どもも承知いたしておりますが、いままでのところ、同氏と本件との関連性を裏づける何ものもないという状況でございます。
  92. 河上民雄

    ○河上委員 いま警察の方は否定するときは非常に断定的に言っておられるのですけれども、何かある種の予断をもってというか、なるべく関係がないようにというようなことでないことを私は願う。  大臣、いままでお伺いしたところでおわかりのとおり、今回の事件につきましては、田中法務大臣が第六感で韓国秘密機関がかんでいるのではないかという疑いというのは十分考えられます。そして、それがたとえ下級の者がやったにしましても、これは主権の侵害のおそれがあることが一つ。さらに、日本の国が合法的に滞在許可した外国人が白昼、へたをすれば完全犯罪のような形で消されてしまうようなおそれもあるような状態ということは、日本政府としては、あるいは日本人として認めるべきではないということ。そういうことを考えますときに、今回の事件解決のまず第一のかぎは、金大中氏を八月八日午前の時点に引き戻すために、政治的に政府として薄身の勇を傾けて努力していただきたいということでございます。  アメリカのクリスチャン・サイエンス・モニターの新聞でも論じているように、金大中氏を返すためには、韓国に対する経済援助の停止、あるいは西ドイツ政府がやったように外交官の引き揚げ、後宮大使の引き揚げぐらいまで含むような強硬な態度をとらなければならないのではないか。もしそういうことをすればあるいは金大中氏を日本に連れ戻すことに成功するかもしれないと書いてございましたが、私はそういう決意をもって当たることが非常に必要である、そういうふうに思うのであります。大臣、いかがでございますか。
  93. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほどからもお答え申し上げますとおり、本件の真相をできるだけ早く解明して、そして公正な解決をすることを急がなければならぬと思うのであります。そのために政府として政治的になすべきことはいとわずに、精力的にやってまいらなければならぬと思います。当面われわれの任務はそういうことであって、その真相が究明された結果それを踏まえてどうするかということは、公正な筋の通った解決をやってまいらなければいかぬことは当然だと思います。
  94. 河上民雄

    ○河上委員 時間が参りましたけれども、最後に大臣に、重ねてお尋ねと同時に私の心境を込めてお願いをしたいのでありますけれども金大中氏を日本に連れ戻す、現状に戻すということが、日本政府のみならず日本人全体、日本の民主主義の命運をかけた非常に大切なことだと思うのです。いま真相究明と言われましたけれども、真相の核心は実はそこにあるのです。そういう意味で、大臣は非常に慎重な表現ばかり使っておられましたけれども大平先生の心の中をひとつ政治の中にはっきりと投入して、これはぜひとも努力をしていただきたいと思うのです。これはある意味においては、このあと楢崎委員からもお話があろうと思いますけれども、反共国家なるがゆえに理非を越えて経済援助をやるというような形での日韓両国政府間の友好関係をあるいは傷つけるかもしれない、しかし主権という問題と、そして日本に住む外国人の安全という問題とはかりにかけた場合に、どちらを選ぶべきかということはもう疑う余地がないと思うのです。  そういう意味で、私はもうあまり多くの御答弁は要求いたしませんけれども大平外務大臣にこの問題の処理にあたってはもう一歩踏み込んだ姿勢で最後まで当たっていただきますことをお願いをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  95. 藤井勝志

    藤井委員長 午後一時四十分に再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時四十二分休憩      ————◇—————    午後一時五十一分開議
  96. 藤井勝志

    藤井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。楢崎弥之助君。
  97. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 午前中の質問者に対する外務省の答弁について幾多の不明な点あるいは疑問点がありますので、まずその点から質問に入っていきたいと思います。  大平外務大臣は、金大中氏を呼ぶ権利はこちらのほうにはないのだという御答弁でございましたが、しかし、法律的にはということもつけ加えたようですけれども日本の主権という立場からいえば、法律よりも次元の高い、主権とはまさに権利の最も中心となる根源でありますから、日本の主権の侵害という問題もからんでおるゆえに、日本側としてはその観点から、金大中氏の再来日要請するということは当然の権利であると私は思う。ただ、私は韓国側がそれに応ずる義務があると思うけれども、一応韓国側に義務があるかどうかは別にしても、日本の側には権利がある。それをあくまでも権利と義務の密接な裏表の関係からこの問題を見られて、むしろ韓国側にその義務がないから日本側には権利がないというような倒錯した、あるいは何といいますか問題を本末転倒したような御見解だったと思うのです。あくまでも日本側としては日本の主権の立場から権利があるんだという態度を貫くべきではないか、こう私どもは思うわけですが、どうでしょうか。
  98. 大平正芳

    大平国務大臣 本件外国人によるわが国における一つの犯罪である、韓国の官憲がこれに関与していないという場合と、韓国の官憲が何らかの形で関与している場合と、これは二つに分けなければいけないと思うのであります。第一の場合におきましては、わが国の主権の侵害であるというように私は考えないのでありまして、後者の場合におきまして確かに主権の侵害ということになるわけでございまして、その場合におきましては当然のこととしてわが国に要求する権利は私はある。ただ、その場合韓国側が応ずるかどうかということはまた韓国の立場——韓国側のそれに応じなければならないという義務は法律上は少なくともないと思うのでございます。ただ、これは冷ややかな法律論でありまして、政治的な立場から申しましては、私はたびたび申し上げておりますように、本件を急いで解明いたしまして、国民の疑惑を一掃して、公正な解決をはかることがこういう不幸な事件の再発を防ぐ第一の手順でございますので、それはどうしても急がなければならない。で、わが国捜査当局もそのために懸命に努力中であると聞いております。したがって、捜査当局の要求によりまして韓国側捜査上の必要な協力は求めなければならぬ、これは政治的に、精力的に要求してまいることでございます。
  99. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私の指摘を肯定されたようでございますから、次に移ります。  金氏の現在の拘束状態もからめて、河上委員の金氏の身の安否と申しますか安全について当然日本側からそれを要求する必要があるのではないかという趣旨の質問に対して、大平外務大臣はただ、その点は韓国政府に期待するというだけでありまして、そのような要求をする考えはないという答弁をされました。この点についてはアメリカの国務省関係すらこの金氏の身の安全については見解を表明しているわけですね。どうしてそんなに木枯し紋次郎をきめ込むのですか。どうも私はその点も解せないと思うのです。なぜそれを要求しないのか、重ねてお伺いします。
  100. 大平正芳

    大平国務大臣 わが国で平穏に在住しておった方が不法に誘拐されたということでございまして、その外国人の安否につきまして当然私どもも重大な関心を持つわけでございます。しかしその身柄はいま韓国の法域の中にあるわけでございまして、私ども人命は何ものにもかえがたい、とうといものでございまして、要求するとかしないとかいう問題をこえて、韓国政府におかれまして第一義的に人命の尊重ということは当然御留意あってしかるべきことと思うわけでございますので、そういうことを強く希望し、また期待いたしておるのがわれわれの立場であると思います。
  101. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どうもその点も、いかにも日本政府としてはその点はかかわり合いはないのだ、あくまでも韓国の責任において行なわれるべきであるというように聞こえてしようがないのですね。私はやはりこれについては、アメリカの危惧と同様に、公式に日本政府としてもその危惧を表明すべきである、このように思うわけであります。  次に、金首相からの親書が来ておるということですが、この親書の性格は一体どういう性格なんですか。公式の謝罪表明と受け取っていいわけですか。
  102. 大平正芳

    大平国務大臣 事件の真相がまだ究明の道程にあるわけでございまして、まだいまの段階では解明されていないわけでございます。したがって、私の理解ではこの事件にどうも韓国人が関係しておるようである、そして日本国民にいろいろ御迷惑をかけておるようである、それはまことに遺憾である。いわば謝罪ということになりますと、これが主権の侵害という事実が判明いたしますならば、当然そういうことが考えられるわけでございますけれども、いまの段階におきましては、とりあえず深甚な遺憾の意を表明されたものと私は理解いたしております。
  103. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その点についても、私は韓国側の態度に矛盾を感ずるんですね。本件に韓国人がからんでおるという点から遺憾の意の表明があっておるのでしょう、この内容は。一方において、韓国側は、いま捜査段階だから何も言えないんだ。たとえば政府機関の関連等も否定をしておるわけでしょう。論理的に言えば、捜査段階であるとすると、韓国人がからんでおるというようなこともこの公式の親書に書くことも大体おかしいのですよね。一方においては、韓国人がからんでおるということを認めて、一方においては、捜査段階だから言えない、あるいは、読売新聞の記事に対して抗議をする。どうもその辺が私どもには全く納得できないわけですね、不可解で。  そこで、読売新聞がもし国外に追放される、国外退去を命じられるというような具体的な事実の発生があった際には、日本政府はどう対応されますか。
  104. 大平正芳

    大平国務大臣 今朝私がその問題について御答弁申し上げた段階におきましては、退去命令はまだ出ていない段階でございまして、私といたしましては、読売新聞韓国政府の間の問題で、ただいまの段階日本政府としてコメントする立場にないという御答弁を申し上げたのでございます。けれども、伺いますと、本日午前、退去命令が出たようでございます。読売新聞の報道が事実であるかどうかは今後の調査で判明すると思いますが、この事実が解明されない段階で、報道が事実に反するという理由で直ちに支局の閉鎖を求められましたことは、いささかどうかと私は考えておるわけでございまして、なるべく早く支局が再開されるようわれわれは希望します。同時に、外交保護の立場から、読売新聞の支局並びに特派員の身の安全等につきましては、先方の政府に十全の配慮を私のほうから求めております。
  105. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまの点も、韓国側としてはまさに大臣がおっしゃったとおり、私は不可解であると思う。まだ白黒わからないと韓国側は言っておりながら、一方においては、あの記事は間違いであると断定しているのですね。その判断のもとに閉鎖を命ずる、全くこれは不可解千万です。それで、いまの大臣のお考えは、直ちに行動にもう移されましたか。
  106. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう意向を先方に伝えてございます。
  107. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 次に、午前中河上委員の質問の中で、日本入国してきた韓国の人たちの中で、本件にからむと申しますか、介在したという事実が明白になったならば、国外追放、退去を命ぜられますかという趣旨の質問があったと思うのですね。それに対して大臣は、一般論としてお答えになったようでした。入国の理由に反するような行動があったら当然そうですということですが、具体的に田中法務大臣が示唆したようなことが事実、つまりKCIAがからんでおるという事実が明確になったら、当然国外退去を命ずるべきであると思いますが、どうですか。
  108. 大平正芳

    大平国務大臣 栖崎さんの御質問を伺って感じますことは、私がけさの御答弁でも申し上げましたように、問題はこの事件が一私人または複数の私人の単なる犯罪か、それからそれ以上にこれは官憲がかんでおるものかどうかという点が問題の核心だということを申し上げたわけでございます。それで、国の中における外国人の犯罪というのは間々あることでございまして、その限りにおいては、主権の侵害ということとして私どもは取り扱っていないわけでございますが、官憲がかんで警察力を行使するということになりますと、これはたいへん重大でございまして、厳正な措置をとることは当然なことでございます。本件につきましては、いまそういう真相を、たびたび申し上げているように究明中でございまして、一日も早く解明をわれわれは期待いたしておるわけでございまして、万一そういうことがあれば、これは当然の措置考えております。
  109. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、昨日の参議院法務委員会におけるわが党の田委員の質問に対して田中法務大臣が御答弁になった。大体その某国の諜報関係関係しておるという印象を胸の中に持っておるという答弁ですね。これは国会の答弁としてはぎりぎりの答弁だと思うのですね。この田中法務大臣の、しかも法務大臣という本件と最も密接な関係のある重要な地位にある大臣の御答弁ですが、山下さん、日本政府としてこの田中法務大臣のその印象、見解についてどのようなコミットをされますか。
  110. 山下元利

    ○山下(元)政府委員 お尋ねの件でございますが、まことに申しわけないことでございますが、法務大臣の御答弁を私十分承知いたしておりませんので、いま直接またお伺いして、その上でお答えさせていただきたいと思っております。
  111. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 委員長にお願いがあるのですが、実は政府のスポークスマンである官房長官の御出席をお願いしておったわけです。ところが、何か会議をやっておるということで山下副長官の御出席をいただいたのですが、それはそれでいいのですけれども、いまのような御答弁であればまことにうかつな話であると思うのですね。重要な国会審議の中で、それは昨日ですよ、きょうの午前中じゃないのですよ。昨日あのような答弁が出てきて、各社それをヘッドラインで書いているのですね。だから私は、私の質問があと三十分以上あると思うのですが、ぜひ終わるまでに官房長官の出席を再度要請していただきたい、このように委員長にお願いをいたします。どうでしょうか。
  112. 藤井勝志

    藤井委員長 承知しました。
  113. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、いまの質問については、官房長官がお見えになりまして、山下さんもよく御相談なさって御答弁いただきたい。  そこで、午前中河上さんは、日本の主権という観点から、あるいは国民感情という観点から金大中氏の再来日、そして原状復帰と申しますか、八日以前の事態に戻すという問題を取り上げられましたが、もう一つの観点から、つまりもし韓国が民主主義の国であり、本事件韓国政府はからんでいないとあくまでも言うのでしたら、その第一番のあかしというのは、金大中氏の再来日を早く韓国政府自体が実現させることだと思いますが、大平大臣はどうお考えですか。
  114. 大平正芳

    大平国務大臣 けさからたびたび御答弁申し上げておるように、私どもとしてはそのことを韓国政府要請いたしてあるわけでございまして、まだ応諾はいただいていない段階でございます。そういう事態が今日の事態でございまして、これからこの解明がどのように進んでまいりますか、そしてどのような解決がとられてまいりますか、これから将来のことだと思うのでございまして、その展望はいま私には明らかでございません。ただ私どもといたしましては、捜査が進みまして事態が究明されることを希求いたしておるわけです。
  115. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 本件の重大性にかんがみまして、いつごろ本件解明がなされるのか、その時期については、大臣は、午前中にもその展望がないということをおっしゃいましたね。いまもそのような御答弁ですが、展望がないで済まされるでしょうか。いつまでお待ちになるつもりですか。もしずっと金大中氏の再来日を拒否し続けたらどうされるのですか。ずっと待たれるのですか。どうですか、その点は。
  116. 大平正芳

    大平国務大臣 たびたび申し上げておりますように、一日も早く解明されることを期待いたしておるわけでございます。
  117. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だからいつまで待たれるのですかと聞いているんです。
  118. 大平正芳

    大平国務大臣 いつまでに事態解明が行なわれるかということは、私ただいまの段階ではさだかでございません。
  119. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、それを聞いておるんじゃないんですよ。大臣のお考えとしてはいつまででも待っておくわけにはいかぬでしょう。解明されるまでにいつまででも待たざるを得ないという御見解ですか。それまではきょうの御答弁のようなぬるま湯につかったような態度でしかおれないのですか。
  120. 大平正芳

    大平国務大臣 けさの御答弁も静観的じゃないかと言われたのでございますが、そうではないのでありまして、私ども、精力的に捜査が進むように韓国側協力も鋭意求めてまいるという努力を積み重ねていっておるわけでございまして、一日も早く解明されることを望んでおるわけでございまして、いつまでもじっと待っておる、そういうふらちな態度では決してございません。
  121. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 田中法務大臣も、金氏外二名の方が再来日しないと、本人に確かめないと事件解明はあり得ないということを答弁しているんですね。だから、もしいつまでも韓国側が拒否し続けたら、これは解明できないわけですよ。だから、いつまでも拒否し続けたらずっとお待ちになるつもりですか、それを聞いておるんです。一日も早くという願望はわかりますけれども、具体的に……。
  122. 大平正芳

    大平国務大臣 いま捜査中であるのでいまの段階では応じかねるというのが、いま私どもが受けておる答えでございまして、私どもといたしましては、これに対する韓国政府情報はもとよりでございます、また捜査の全貌もできるだけ早くとり、われわれが要求いたしておりまする身柄を日本に送るという問題につきましても、確たる答えはできるだけ早くちょうだいしなければならぬと思っております。
  123. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その点も私どもは納得できないんですね。それで、その点は官房長官がお見えになって再度ただしたいと思います。  そこで、次に日米共同声明と本件関係についてお伺いをしてみたいと思います。  せんだっての田中総理訪米で出されました日米共同声明のいわゆる韓国条項、これは六九年の日米共同声明の韓国条項を受けたものと思いますが、どうですか。
  124. 大平正芳

    大平国務大臣 朝鮮半島の平和と安定ということにわれわれは強い関心を持っておりまするし、それに対してできるだけのお手伝いをしなければならぬ、そういうことを共同声明にうたったつもりでございます。
  125. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、一番韓国条項が明確になっておるのは六九年の共同声明、続いてそれを受けた今度の具体的に「貢献する」というくだりのこの七三年の共同声明であると思うのです。したがって、この二つの韓国条項というのは、日本の主権の侵害問題とも関係がある今回の事件とは非常に重要な関係があるとわれわれは思わざるを得ません。  そこで、一国の平和と安全の保障というのは一体何なのか。これは共同声明の文句ですけれどもつまり一国の平和と安全保障というものは、突き詰めていけば主権を侵害されない保障、これが第一であるはずであります。だから平和原則等が出てくる際には、第一番目に主権の尊重ということが出てくるのです、どこの国の平和原則でも。それほど主権の尊重というのは平和と安全にとって一番中心となる問題であると思いますが、久保防衛局長どう思われますか。
  126. 久保卓也

    ○久保政府委員 私がお答えするのが適当かどうかは存じませんが、一国の安全保障にとって主権の尊重ということはきわめて重要なファクターであることは申すまでもございません。
  127. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 当然外務大臣もそうお思いだと思いますが、違った意見があればどうぞ。
  128. 大平正芳

    大平国務大臣 防衛局長が言われたとおり私も心得ております。
  129. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 当然のことであろうと思うのですね。  そこで、ずばり言いまして、国内においては非民主的な反共・軍事独裁体制を強行しておる、そして対外的にはたとえば西ドイツの事件、あるいは今回の日本における金事件に見られるように、一国の主権の侵害行為を行なうような韓国に対して、二つの先ほどの共同声明の韓国条項に基づいた経済的なあるいは軍事的な援助なり協力、そういうものをやるという今日の日本政府の対韓政策、これが日本の平和と安全に役立つあるいは貢献するという理由を国民にわかるようにひとつ説明していただきたい。私の質問の趣旨がわかりますか。
  130. 大平正芳

    大平国務大臣 まず第一に、それぞれの国が侵すべからざる主権を保持していくということが大事なことは申すまでもないことでございまして、朝鮮半島におきましても、朝鮮半島の平和と安定を希求して、鋭意みずからの運命を開拓すべく、現在二つの政権がございますけれども努力されておられるのでございます。私どもの対韓政策というのは、主権をオーバーライドするものではないのでありまして、韓国側におきましてみずからの国の自立と平和と繁栄をこいねがうために、先方のイニシアチブに基づきまして経済の計画が進められておる場合、先方の主権の要請に応じてこちらも可能なお手伝いはいたしましょうという態度をとっておるわけでございます。ところが、その韓国がわが国の主権を侵害したという場合どうなんだということでございますが、今度の事件はまさに真相の究明中でございまして、主権を侵害したかどうかという点がまさに問題の核心でございまして、その調査がいま進められておるわけでございます。私は、その捜査が進められて事態解明されることを期待しておるわけでございます。この段階で対韓政策は変改、変更するというようなことではないと私は思っております。
  131. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 仮定の問題あるいは真相が明らかにならないからと、いろいろな言明を大臣は差し控えられておりますが、何回も言うように、事件の直接関係者である、指揮官である田中法務大臣は、仮定の問題としてもし某国の諜報部員が関係しておれば、これは重大な主権の侵害になるということは答弁なさっていらっしゃるのですよね。だから仮定の問題には見解の表明はできないというのはこれは私は逃げ口上である、このように思うのですよ。  そこで、この問題は実は共同声明の韓国条項と直接のかかわり合いがあるし、ひいては日米安保条約あるいは日米安保体制とも重大なかかわりが出てくると私ども思わざるを得ないのです。それで、これは仮定の問題でけっこうですが、この問題の発展いかん、つまり想像される最悪の事態の場合には、いわゆる経済協力等の停止はもちろんのこと、いわゆる共同声明の韓国条項の廃棄までも発展する可能性があると思いますが、その点はどうですか。
  132. 大平正芳

    大平国務大臣 真相が究明されましてそれを踏まえた上で、日本政府といたしましては、国の内外納得のいく公正な措置をとらなければならぬと考えております。
  133. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは、その中に私が申しました韓国条項の廃棄問題も含めてという意味ですか。
  134. 大平正芳

    大平国務大臣 まずそういう真相が究明されなければ何ともまだ申し上げられないわけでございまして、いま申し上げられるのは、内外納得のいく厳正公平な措置をとらなければならぬことは政府の当然の責任と考えておるというところできようのところはひとつお聞き取りをいただきたいと思います。
  135. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 少なくとも韓国条項と重大な関係があることはお認めになりますか。
  136. 大平正芳

    大平国務大臣 いま、私が先ほど申しましたように、この事件があったからといって、まだ真相が究明中でございますので、対韓政策の基本を変改する意図はないということを申し上げておるわけでございまして、いまの段階はそれ以上申し上げる立場にございません。
  137. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どうも何というか態度があいまいであり、弱腰であるという印象を持たざるを得ないですね、午前中からの御答弁を伺っておって。そこで、何回も言うようですけれども田中法務大臣は、ずばり言ってKCIAの介在を示唆するぎりぎりの答弁をきのう参議院法務委員会でなさったのですよ。田委員はそれに対して、先ほど河上委員も取り上げたとおり、駐日韓国大使関係あるいは総領事館関係にKCIAの方がいるかどうかの調査を依頼された。それに対して、先ほど当委員会でも、その調査が判明したら資料を出すという御答弁があったわけですけれども、駐日の韓国外交官の中に本件に介在している人は一人もいないという確信がおありですか。
  138. 妹尾正毅

    妹尾説明員 その点はわからないと申し上げるほかないと思います。
  139. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 わからないということは、介在しておる韓国外交官があるかもしれないということだと思います。  そこで、社会党もいままでいろいろ情報を提供して協力してまいったことは御案内のとおりですが、どんなささいな情報でもこれを真剣に取り上げて裏をとるとか、取り組む態度を警察はお持ちですか。
  140. 中島二郎

    ○中島説明員 いろいろな情報等を各方面から警察庁並びに警視庁の特別捜査本部にいただいておりますが、いずれの情報につきましても、真剣に本件との関係について調査をいたしております。
  141. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 西ドイツの事件関係をした例の李台煕という方は、現在神戸の総領事館の次席領事をされておるのじゃないですか。それから情報によれば、日本にある韓国総領事館関係の副領事クラスは、概してKCIAに関係があるといわれておる。たとえば今度の事件関係する例のホテルの部屋にありました眠り薬、これは仙台で手に入れたものらしいという警察の発表もあった。それから同じく金敬仁氏の印象では、犯人の一人は現在の下関の次席領事に仰ておるということを言ったということがいわれておる。したがって非常に大使館、領事館関係にいるKCIAの人たちとこの事件関係は深いと思われる。そこで、いま情報は取り上げて調査をするという警視庁のお答えですが、実はわが党にこういう写真と、この写真の人物に関する情報が寄せられておるのであります。その情報によれば、この写真の人物は駐日韓国大使館員である、そして常にブループレート四八五二の車を使っておる。これは昨日田氏がこの四八五二の車は、問題を提起したところでありますが。そしてこの金氏の事件にこの人が介在をしておる。たとえば例の登山用具専門店の「さかいや」にリュックを買いに行ったのも、その一人はこの人物であるはずだという情報の提供があっております。私はこの写真を差し上げますから、まず外務省は、この写真の人物がはたして韓国大使館員として実在しておるかどうか、この調査を直ちにやってもらいたい。同時に警視庁は、この写真を警視庁の責任において、一連の目撃者がずっとおったはずですから、その目撃者に見せてその印象を確める措置をとっていただきたい。そしてその結果を当委員会に報告をしていただきたい、このように思います。ちょっとこれを大臣にひとつ……。これは私はすぐわかることだと思います。よろしゅうございますか。
  142. 大平正芳

    大平国務大臣 外務省としては照会してみます。
  143. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 警察庁は……。
  144. 中島二郎

    ○中島説明員 直ちに調査をいたします。
  145. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 重ねてその結果を早急に当委員会に御報告をいただきたい。  そこで、官房長官まだお見えじゃないですか。どうなんでしょうか。——そうですか。来られるまでちょっとほかの問題やっておきます。  それで、大河原アメリカ局長もおられますが、例の十六日付のAP電によるSR71の沖繩からカンボジアへの偵察飛行の問題を報道しておったわけですが、それに対してあなたは、記者会見か何か知りませんけれども、これは新聞の報道するところですが、こういうことを言われていますね。かりに沖繩を発進したSR71機がカンボジア上空を偵察飛行したとしても、政府としてはこの種の活動に対しては安保条約上疑義はないということではっきりしており、これ以上米側に事実関係を問い合わせるようなことはしないと言われたそうである。同時に、ほかの新聞によると、事前協議の対象にならず、米側にSR71のカンボジア偵察飛行の中止を求めるなどの措置をとる必要もないが、一応事実関係は確めるつもりだ、こういうふうに述べられたということが新聞に報道されている。そしてアメリカ側から回答が寄せられた。これは間違いありませんか、大河原局長
  146. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 SR71がカンボジアの上空の偵察をしたという趣旨のAP電が十六日に入って参りました。これに基づきまして私どもといたしましては在京米国大使館に照会いたしますと同時に、ワシントンのわが大使館に対しましてもその事実関係調査を命じたわけでございます。これに対しまして米側から得られました答えは、米側としてはそういう事実について確認しない、こういうことでございました。  SR71の偵察活動につきましては、この春の国会におきましてもSR71が北越の上空を偵察しているという趣旨の報道がありまして、これに対しましても国会で種々御質問があり、また政府側の立場を御答弁申し上げた経緯がございます。  今回のSR71のカンボジア上空の偵察云々という報道につきまして、米側に対しました照会の結果は、ただいま申し上げましたようにその事実を確認しないということであったわけでございます。そこでその報道に対する米側の回答を得たわけではございましたけれども、従来の経緯を踏まえまして、政府といたしましては、この種の偵察活動はいわゆる安保条約に基づく事前協議の対象になる性格の行動ではないという説明を一貫してとっておりますし、そういう観点からしまして、安保条約にかかわる問題ではない、こういうふうに考えていたわけでございます。
  147. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 では、たとえ偵察飛行だけとしても、安保条約にはかかわり合いはないという御答弁ですが、他国の領土をこのような形で侵犯するということは、国際法の一般原則から言ったらどうなんですか。違反をしておると思いますか、どうですか。
  148. 松永信雄

    松永政府委員 一般論として申し上げますと、外国の航空機がある国の領空に入ります場合にその国の同意を必要とするということであろうと思います。
  149. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 本件については安保条約関係をここで掘り下げる時間がありませんからこれはおくといたしまして、この問題については沖繩国会あるいはその直前の国会で十分やりとりしておるのですね。そしてまさにそのものずばりの質問が——一番はっきりしておるのは公明党の方の質問に対する御答弁であります。これを読み上げます。  福田外務大臣ですね。「沖繩が返還され、わが国の領土となる。そこに駐在しますところのSR71が、国際法の原則に反しまして他国の領土を侵犯するということは、わが国としては絶対に許しがたいことでありますから、これはそのとおり処置する考えであります。」と答弁されておるのは、質問者の、そういう事態が起こったらSR71の撤去を求めるという、その質問に対する見解です。それからまだあります。当時は北朝鮮あるいは中国に対する侵犯問題を具体的に取り上げたわけです。そして今度はそれに対して一般的にも答弁されておるのですね。福田大臣、「米側におきましては、国際法にのっとって行動をする、それは他の領空を侵さないということも含めての意味でありますが、そういう言明をしておるそうでありますので、さように御了承願います。」  今度は吉野局長です。「いずれにせよアメリカ政府は、国際法違反をしない、他国の、第三国の領空を許可なくして飛ばない、こういうことを言っておりますから、そのようにわれわれは信じております。」  そして今度は質問者がこう聞いております。「もし復帰後にSR71が某国の領空領海を侵犯をした場合、これは明らかにSR71のこの行動というものがいわゆる安保条約及び協定文等の範囲を飛び越えた行動をしておるということが立証されるわけでありますが、そのときは政府は一体どういう態度をアメリカに対して」とられますかという質問に対して、福田大臣は、「さようなことが不幸にして起こった場合におきましては、それが反復されないような厳重な措置をとります。」「いずれにいたしましても反復されないような措置をとりまするから御安心願いたい、」こういう答弁なんです。安保条約というよりも国際法の一般原則からいってこれは違反だ、だから厳重にアメリカに抗議する、あるいはそういう行動が繰り返されないようにアメリカに要求する、明確な答弁があっているのです。それを、これは安保条約上問題ないから重ねてアメリカのほうにとやかく言うあれはないというような政府側の答弁は、あるいは考え方は、私はまさに食言であると思うのです。だめですよ、こういう過去の経緯を無視したような態度を表明されることは。外務大臣の御見解を伺いたい。
  150. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 ただいま御指摘ございました沖繩国会当時以来のSRに関しまする国会答弁につきましては、私どもも十分その経緯を承知いたしております。御指摘ございました当時の福田外務大臣の御答弁も、アメリカが国際法の原則に反して他国の領空を侵犯するというふうなことについては、わが国としては絶対許しがたいということを答弁されておるわけでございまして、私どもも、国際法の原則に反しまして他国の領空侵犯というふうなことがSR71によって行なわれることについては、これは許しがたいことである、こういうふうに考えております。  ただ、米側に対しまして照会いたしました際に、米側といたしましては、国際法の原則に反することは一切いたしておりませんということもはっきり申してきておりますし、カンボジア上空の飛行につきましては、その事実関係について確認しないとは申しておりますけれども、偵察活動そのものにつきましてはカンボジア政府の同意を得て行なっておるということも別途説明してきております。
  151. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 カンボジア政府了解を得て行なっているというのはつけ足しですよ、あなた。そんなことはありませんよ。しかも何のためにカンボジアに偵察を始めたかというと、これは当然シュレジンジャー国防長官が表明しておるとおり、もし再度南ベトナムに対して北側が公然と侵害を加えるようなことがあったら、爆撃を再開するということを表明しておるのですね。これは、そのための条件づくりなんです。だから非常に戦闘作戦行動とも関係があるし、しかもベトナムのときは周辺で説明した、また今度はカンボジアが出てくると、カンボジアも周辺に含める、これは全く極東の範囲について歯どめがない。そしてそのことは、実は今度の七三共同声明の中の日米安保条約がアジアの安全にかかわり合いがあるという指摘、これはいまだかつてどの共同声明にもなかった文句なんですね。アジア安保に拡大された。そういうこととかかわり合いがあるということを私はここで指摘をして、問題を残しておきたいと思います。  そこで、官房のほうからの御答弁をいただきたい。
  152. 山下元利

    ○山下(元)政府委員 官房長官よんどころない事情のために、かわりまして御答弁申し上げることをお許し賜わりたいと思います。  先ほどの御質問の点につきまして、田中法務大臣にお伺いいたしましたところ、昨日の参議院法務委員会におきまして、新聞に報ぜられるような答弁をされたことは事実でございます。その真意について伺いましたところ、これにも出ておりますとおりに、第六感によればということでございまして、わざわざ国会答弁で言う段階ではないということでございます。第六感と申しますと、あくまで個人の感触であるということでございます。そういうお話でございました。  なお、あくまで某国ということになっておりまして、特定の国はあげておられませんのであります。そのような趣旨のお話がございましたのでお答え申し上げます。
  153. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 参議院法務委員会の公式答弁で、正式答弁で、事件の指揮に当たられておる法務大臣が言われたことが、個人の見解である、そういうお考えですか。昨日の田中法務大臣の御答弁に対して、田中内閣は責任を負われない、こういう意味ですか。
  154. 山下元利

    ○山下(元)政府委員 ただいま申し上げましたとおり、田中法務大臣の真意は、あくまで第六感によれば、個人の感触としての見解を申し上げられたのでありまして、国会で答弁申し上げる段階ではないということをわざわざ答弁中に言われておるわけでございます。したがいまして、ただいまのところ、この田中法務大臣の個人の御感触に基づく発言につきましては、そのようなものであるとわれわれは考えておるわけでございます。
  155. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 田中内閣は責任を負いますか、田中法務大臣のこの御答弁に対して。それを聞いておるのです。
  156. 山下元利

    ○山下(元)政府委員 あくまで、わざわざ国会答弁で申し上げる段階でないと断わりまして、個人の感触として言っておられるのでございますから、そういう御発言としてわれわれは考えておる次第でございますので、政府としての責任という問題は、いまのところないものと考えております。
  157. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 では、全然責任は負わないということですか。こういう重大な問題について、何回でも言うが、その捜査の最高の地位にある人が、個人的な見解としてでも公の国会の場で表明された内容というのは、よほどの根拠があってのことと思います。もしそうでなかったら、まことに軽率です。しかし国会答弁の性格上、ことばとしてはあのようなことばで答弁なさった、それは私は理解できるのです。これに対して、田中内閣としては責任持てないんだというような見解は、私は全く内閣の統一性からして、これは大きな疑問があります。これは了承できませんよ。
  158. 山下元利

    ○山下(元)政府委員 法務大臣が先ほど私に言われました真意によりますと、あくまで某国というふうに言っておられまして、そのことについてはお触れになっておらないのであります。同時にまた、田委員の御質問がございましたために、個人としての感触を言われたにとどまっておりまして、政府としての見解というものではないわけでございますので、先ほど来私が御答弁申し上げておるように考えておる次第でございます。
  159. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、そういう答弁は納得できませんよ。では公式の席上でなくても、あなたは責任をもって某国とはどこか——公表されないでもいいですよ、田中法務大臣に確かめますか。こんな重大な発言を法務大臣の一個人的な答弁なんというようなことは、絶対納得できませんよ、そういうことは。だめですよ、そういうことは。重ねて明確に御答弁をいただきたい。
  160. 山下元利

    ○山下(元)政府委員 先ほど来申し上げておりますとおりに、これは私が田中法務大臣の真意を伺った上での発言でございまして、法務大臣があくまで第六感による、つまり第六感というのは個人の感触であるということでございますので、それ以上のことを私から申し上げることはございません。
  161. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 関連して。参議院法務委員会で正式に答弁をしている、しかもそれが個人であるとか第六感であるといっても法務大臣として答弁をしている、こういう問題を、あとになって個人であって第六感であるから責任を負うことができないと言わぬばかりの言い方ではわれわれ国会の審議は進行いたしません。こういう点については副長官がもう一度——この点については電話でお調べになったのですか、どういう方法でお調べになったのですか。法務大臣の見解を、そういう点を調整された経過をお伺いしたいと思う。
  162. 山下元利

    ○山下(元)政府委員 先ほど当委員会において楢崎委員の御質疑がありまして直ちに参りましたところ、ちょうど法務委員会が散会直後でございましたために法務大臣は車中でございましたので、法務省に着かれて直ちに電話がございまして、私ども先生の御質疑の時間の関係もありますために電話で応答して、十分にその真意を伺った次第でございます。
  163. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 これは内閣一体の原則からいって、その答弁と昨日の答弁との相違というのは相当重要な問題です。こういう点について、いまの答弁でわれわれとしては了解するわけにはまいりません。私たちはこの問題であまり時間をとるということはできませんけれども、これはあとの機会においてもっとはっきりさせていかなければならないと思っています。これについて楢崎委員からまだ質問がありますので続いてやってもらいます。
  164. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間がありませんから締めくくります。  そういう政府側の態度あるいは大臣の答弁が責任の持てないようなそういうものであれば——われわれは本件に対する真相の究明についてこうして国会で各委員会でもやっていると思いますよ。これじゃ審議が進められませんよ。したがって本件については私はわが党の国会対策委員会に報告をいたしまして、どういう態度をとるか態度を留保させていただきたい。  一応きょうのところはこれで終わります。
  165. 藤井勝志

  166. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 SR71偵察機について質問いたしたいと思いますが、その前にSR71機、いま嘉手納基地に何機配置、駐留しているか、いつから配置され、どのような偵察をどの国を相手にやっているか、その点をまず第一に確かめたいと思います。
  167. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 SR71は現在嘉手納の基地に数機駐留しているというふうに承知いたしております。  いつからこの部隊、飛行機が沖繩に配置されたかということにつきまして私手元に資料を持ち合わしておりませんけれども沖繩返還の前からということははっきりしていると存じます。  また行動の範囲でございますが、SR71が偵察機としての特性を使っての偵察行動を行なっているという以上のことについて米側は行動の詳細については発表いたしませんので、詳細を承知いたしておりません。
  168. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 数機というのは五、六機という意味ですか。
  169. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 大体三、四機であるというふうに承知いたします。
  170. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 そこで、米国防総省の権威ある側からの発表として、これは特にスポークスマン、ダニエル・ジェームズ中将、この人の発表として日本の各新聞にも報道されておりますが、「米国は十五日のカンボジア爆撃停止後も、カンボジア解放勢力の動きを撮影するため、高空を飛ぶ高性能の長距離戦略偵察機SR71を沖繩基地から出動させている」ということを、スポークスマンの名前まではっきりさせて、しかもSR71機は地上から落とせないというふうな性能、そういったものまで説明されての報道があるわけなんです。これに対しまして、新聞報道によりますと、こういったことはないのだといったようなことを外務省はいまも答弁されており、新聞にも発表されておりますが、こういった国防総省の名前までちゃんと書いてだれが発表したのだということまでいっておるこの事実、これをどうお考えですか。
  171. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 ただいま御指摘の国防省のスポークスマンの記者会見と申しますのは、今月十六日に行なわれました国防省スポークスマン、ジェームズ中将の記者会見のことであろうと存じます。この記者会見に関連いたしましてAP電が、SR71がカンボジアの上空の偵察を行なっておるという趣旨の報道をいたしまして、これに対しまして私ども事実関係を確かめたわけでございますが、記者会見の中身を具体的に取り寄せてみますと、ジェームズ中将が申しましたのは、カンボジアにおいて非武装偵察機による偵察を行なっておるということを一カ所言っておりますのと、記者団からの質問で、SR71のごとき超高度の偵察が行なわれておるのかという質問に対しましては、そのことについて自分は何も知らないという答弁をしておるということが確かめられております。
  172. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これが事実であるとすれば、これはカンボジア人民に対してもさらに日本国民に対しても重大な挑戦だと見なければなりません。カンボジアにおける一切の軍事活動の中止、これをうたっておるベトナムの和平に関するパリ協定、この中でははっきりそういったことの違反をやってはいかぬということを明確にされております。すなわちカンボジア及びラオス関係、この二十条、特に(B)項、これは、「諸外国は、カンボディア及びラオスにおける一切の軍事活動を止めなければならない。」とはっきり規定しております。こういったものを侵犯しておる。これを侵犯することにまた共犯者となっておるということが、もしこれを許すならば日本政府は共犯者の立場に立たなければならない、私はこう思いうのです。国際法の領空、領海の侵犯、これはもとよりのこと、いま申し上げましたパリ協定、これにも違反し、これを侵犯しておるということになりますが、これはどうお考えでありますか。
  173. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 カンボジア、ラオスに関係いたしますベトナム和平協定第二十条、特に(B)項について御指摘でございますが、わが国はパリ協定の当事者じゃございませんのでこの協定を有権的に解決し得る立場にはございませんけれどもアメリカは、パリ協定第二十条はラオス、カンボジアにおいてそれぞれ停戦が実現した後に実施されるとの了解が行なわれている旨を従来から説明してきておりまして、政府としては米国のこういう立場を理解しているということでございます。
  174. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 大平大臣にお答え願いたいと思いますが、いまさっきも大河原局長は答弁の中で、偵察は行なっているという事実ははっきりいっております。これはSR71機がやっている事実も、もうすでにいろいろな情勢から判断してはっきりしている。そうなると、日本の国からこういったような偵察機がカンボジア上空を偵察している、この事実は、だれがどう言おうがいま申し上げました国際法に違反し、と同時にパリ協定に違反している。この違反行為を日本政府が認め、協力し、共犯者になっているという、これははっきり言えると思います。したがって、これがはっきりすれば、SR71は当然撤去を求めるということがはっきりすると思いますが、これに対して大臣、どういうふうにお考えか、その点を明らかにしてほしいと思います。
  175. 大平正芳

    大平国務大臣 瀬長さん、よく大河原君の御答弁をお聞き取りいただきたいと思うのでございまして、これはパリ協定に違反しておるのじゃないかというお問いでございましたから、いや、そうではないんだ、パリ協定の第二十条はカンボジアに例をとりますと、その停戦後において実施されるものであるという解釈を当事国であるアメリカがいたしておるということをあなたにお答えしたわけでございまして、したがってパリ協定違反で日本が共犯に立つということを申し上げたわけでは決してないわけでございまして、またこのことが安保条約の違反であるというのでございましたら黙っておれないわけでございますけれども、私どもは個々の軍事行動の一々をチェックいたしておりませんけれども、今日まで政府がずっと安保条約の運営をしてまいりまして、こういう偵察行動というのは直接日本の基地をベースにいたしまして戦闘爆撃行動に出るという事前協議の条項にかかるものではないという解釈を持っておるということ、これもたびたび国会で申し上げておるわけでございまして、したがって日本が共犯者の立場にあるというあなたの御見解には同じかねるわけでございます。
  176. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これはいま爆撃停止後もアメリカが一貫してカンボジア爆撃を前提とする偵察飛行を行なっておる。しかもこの機種はSR71であるということを否定をしない。しかもこのSR71が現に嘉手納基地にいるということが確認されている。こういった偵察飛行を続けている、また続けさせるということは、いま申し上げました領空侵犯の問題が出てきます、国際法の。さらにいま申し上げましたパリ協定の二十条に関係してくるわけなんです。そのこととは無関係だから、SR71の偵察飛行はたとえカンボジアの上空を偵察しようがこれは安保条約のワク内であるのでしかたがないという見解であるかどうか、この点を明らかにしてほしいと思います。
  177. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 安保条約に基づきまして、日本日本にあります施設、区域の使用を米軍に対して認めておりますのは、それが日米共通のこの地域の平和と安定ということに関連するからであるわけでございまして、そういう趣旨の施設、区域の使用について、安保条約に基づく事前協議の対象となります行動以外の行動について、日本政府としては、米軍日本の施設、区域をたとえば偵察活動のごときに使用することについて異存を持たないわけでございます。もちろん、その行動というものが国際法に違反するような行動である場合には、日本政府として当然これに対して異存を持たざるを得ないということは先ほどの御答弁で申し上げたとおりでございますが、SR71の行動に関します限りにおきまして、米側としては国際法の原則に基づき、安保条約のワク内において行なっている行動であるということをたびたび日本政府に伝えてきているわけでございまして、日本政府としましては、その立場に立ちましてこの問題を処理しているわけでございます。
  178. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 SR71機はどういう性能を持っており、どのような偵察行動をやっているかということについてはすでに防衛庁の資料でも出ております。したがいまして、このSR71が嘉手納基地から飛び立って常時偵察している、この偵察は公海だけを偵察しているというふうに考えておるのか、それ以外にも偵察をしているかもしれないあるいはいるという、そういった情報を何かつかんでおるのですか。
  179. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 SR71の個々の行動につきまして米側は日本側にそれを伝えてきておりません。しかしながら、国際法の原則に反するような行為は一切いたしておりませんということだけは繰り返し申してきております。
  180. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 こういったような、アメリカが国際法に違反しておりませんということになれば、そうでございますというふうに、アメリカのいっていることは一〇〇%オーケーである。ところで不安と疑惑は相変わらず残っております。沖繩の現地でSR71機が、特にベトナム以後はむしろ朝も晩も、いつ飛び立つかわからないくらいに偵察飛行に飛び立っておるという事実ははっきり認めておるわけなんです。したがいまして、このSR71を撤去せよというのは、この前、屋良県知事も関係各省に陳情したと思いますが、このようなスパイ機、これを今後もずっと嘉手納基地に置いておくのか。この問題は、国際法の問題になりますと、アメリカは国際法を侵しておらないというから——これが一つ。いうからこの撤去はやらない、というのは安保条約のワク内のものである。そうなりますと、いわゆるアジアの平和あるいは安全という名前をアメリカがつけて軍事行動するとすれば、これに対しても何ら反論することなくすべて賛成でございますというふうな立場をずっととり続けられるのかどうか、ここら辺を明らかにしてもらいたいと思います。
  181. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 たびたび御答弁申し上げておりますように国際法に従って、また安保条約のワク内で適法に行なわれている行動であります場合には日本政府としては在日米軍の施設、区域の使用に異存を唱える立場にないわけでございます。
  182. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 防衛庁の国会提出の資料によりますと、SR71機は第一二百七十六戦略航空団、これに属しておるということを明らかにし、沖繩だけに配置されておるということも明らかになっております。この中でこのSR71機の行動半径、これは西太平洋全域の戦略偵察を任務として日本基地を使用しているということになります。この問題から何が出てくるかというと、安保条約の極東条項、これがだんだん拡大されてアジア周辺、日本アメリカ合意すればこの安保条約はどこまでも拡大されるんだという見方に通じます。  そこで、ニクソン・田中会談でこの前発表された共同声明、これは安保条約の円滑かつ効果的な実施を期するため継続的努力をするという問題と、日本における米軍施設、区域の再編強化、これをうたっておる。これがいかに危険な実体を持っておるかということを明らかにしている。これは佐藤内閣を引き継いだ田中内閣のこの安保に対する問題、これの実体がどんなに危険性を持っているか。アジア安保からさらにキッシンジャー構想、これを支持するとなれば、この安保の問題はアジアだけでなしに全世界に広げられていく。このような解釈がどんどん拡大されていっているという問題と、もう一つは、在日米大使館、これの極東地域以外に在日米軍基地が使用される可能性があるという証言、さらにゲイラー米太平洋統合司令官、これは沖繩返還後も戦略的重要性に変化はない、第三海兵師団の撤去はしない。さらにクレイ空軍司令官は、嘉手納空軍基地は西太平洋の戦略基地として保持し続ける。こういったような現在の情勢分析からいきますと、いま外務省が答弁されたSR71の取り扱い方、これと関連いたしましてこの日米共同声明の持つ危険性、さらにもう一つは、日米沖繩協定、これの侵略的な屈辱的条項の実体というものがどんなに危険なものであるか、これを浮き彫りにしております。この意味からも沖繩県民だけじゃなしに、こういった危険な謀略部隊のSR71を即時撤去せよという要求が出るのは当然であると思います。これに対する大平外務大臣考え方を明らかにしてもらいたいと思います。
  183. 大平正芳

    大平国務大臣 たいへん安保体制というのは危険きわまりないものであるというお話でございまして、私はその根本の見解を瀬長さんと異にするわけなんでございます。安保条約というものがありますと日本は戦争に巻き込まれる危険があるじゃないか、アジアはだんだんと緊張が高まってえらいことになるじゃないかという懸念が一部にありましたことは御案内のとおりでございますけれども、この体制のもとにありましてベトナムの和平もともかくも実現いたしましたし、米中の和解、日中の正常化も行なわれてまいって、われわれのアジアにも緊張緩和のきざしが徐々に出てまいったわけでございまして、安保体制は危険なものでないばかりか、こういう緊張緩和の状況を生み出すにあたってその基盤をつちかったものであるという評価がいま静かに行なわれているのが私はいまの段階ではなかろうかと思っておるわけでございまして、この安保体制の評価につきましてたいへん残念でございますけれどもあなたと見解を根本的に異にするわけでございます。  それから第二に、こういう二国間の条約を運営してまいる場合におきまして私ども一番大事なことと心得ておるのは相互信頼関係であると思うのでありまして、お互いが言ったことに責任を持ち、約束したことにちゃんとこたえるという信頼関係がないと円滑な運営はできないと思うわけでございます。アメリカは国際法違反をいたしませんと確言する、そんなことは信じられないじゃないかというのがあなたの御見解でございますが、私どもは大アメリカが他の国に対しましてそういう約束をするということはたいへんな約束であると思うのでありまして、それを守らないようなアメリカであればアメリカはこの地球上においてその存在を問われることになるわけなんでございまして、したがって私はこの約束は山のような約束であって、それを信頼していくということが当然の態度でなければならないと思うのであります。また事実一々の軍事行動につきまして一々チェックしていくなんというようなことの間に安保条約なんという信頼に根ざした約束はできるはずのものではないわけでございますので、その点につきましても、こいねがわくはわれわれのは仕事をなまけるために、アメリカが言うからそうなんだということで承知しておるのだというようにおとりにならないで、そういう深い信頼の上に手がたく運営しておるのであるというように御理解をいただきたいものと思うのであります。  第三点は今度の日米共同声明でございますが、日米共同声明は安保体制の強化をうたったものではございません。しかし弱化をうたったものでもごげいません。今日までの安保体制の運営に双方とも満足しておる、それを手がたく維持していこうじゃないかということでございまして、それ以上のものでもなく以下のものでもないと御承知を願いたいと思います。  第四点は基地の整理統合、あなたは強化と言われましたが、強化ということばは共同声明にありません。私どもは基地の整理統合を今後も——いままでもやってきたが今後も続けてやるのだという既定の方針をこの日米共同声明で確認いたしたまでのものでございまして、さように御理解賜わりたいと思います。
  184. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 時間がありませんので締めますが、特に日米共同声明の問題、たとえばいま再編強化の問題は整理統合だと言っておりますが、それは英語と日本語が、日本向けとアメリカ向けの翻訳がある。そういった問題はまあ抜きにしまして、この日米共同声明の問題、さらに安保条約のアジア安保の実体の危険性の問題、さらに日米沖繩協定の特に屈辱的な侵略的条項の実体がどんなに危険なものになりつつあるかという問題、さらにパリ協定、この侵犯行為の問題など、これはいま解明するわけにもまいりませんので一応次の機会に譲ることにして、ただ沖繩県民全体をあげてこのSR71、これの即時撤去を要求するが、これを踏みにじっておるのは日本政府である、アメリカであるという結論をいま下されたと思いますので、以上申し上げまして私の質問を終わります。
  185. 藤井勝志

    藤井委員長 柴田睦夫君。
  186. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 金大中氏の事件について尋ねます。  共産党国会議員団は、金大中氏の事件に関して八月二十一日に田中総理に対して三項目の申し入れをいたしました。それは「一、金大中事件にたいし、主権擁護、国際的謀略、テロを許さないという立場から事件を徹底的に究明し、真相を国民のまえに明らかにすること。一、「韓国」政府にたいし、断固として金大中氏、梁一東氏、金敬仁氏の三氏の再来日を保証させるよう厳重に要求すること。一、予定されている日「韓」閣僚会議は中止すること。」、この三項目でありますが、これに対して外務大臣の見解をお尋ねするわけですが、まず日韓閣僚会議につきましてはすでに延期発表されましたので、ここでは触れないことにいたします。この日韓閣僚会議の中止のほかに、真相を国民の前に明らかにすること、それから金大中、梁一東、金敬仁、三氏の再来日を求めておりますが、中でも金大中氏は本人の意思に反して拉致されたわけです。主権がどのように侵害されたかを調べるについても、主権が侵害された場合における原状回復についても、また人道上から見ても、金大中氏を日本に取り戻すのでなければ事は済まないと考えるわけです。口で幾ら真相究明ということを言っても、金大中氏が日本に戻ること、この原状回復がなされるということがこの問題を処理する第一歩であると考えます。そこで断固として金大中氏の取り戻しをしなければならないと考えるわけですが、外務省の見解を聞いておりますと、韓国側協力が必要である、こういわれるわけです。協力が必要であるならば、日本政府の要求に対していままで拒んでいる韓国に対して金大中氏の再来日を実現させる効果的な手段はないか、効果的な措置をとるつもりはないかということをお伺いします。
  187. 大平正芳

    大平国務大臣 捜査当局のお立場から申しまして、御指摘の方々をもう一度日本に呼び返せ、呼び返していただきたいという要請がございまして、それは仰せのとおり韓国政府に要望いたしておるわけでございまして、ただいままで捜査中であるという理由をもって応諾をいただいていないのでありまするけれども、今後も鋭意求めてまいりたいと思います。
  188. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 ただ求めるということだけでありますけれども、こうした主権侵害のような国際的な無法を行なっておる韓国に対して日本は経済援助を打ち切るということも考えなければならないと考えるわけです。韓国に対する経済援助については共産党はずっと反対の態度を表明しておりますが、このような事件に遭遇して援助の打ち切りという態度に変えるべきではないかと思いますが、いかがですか。
  189. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうことは考えていないわけでございまして、いまこういう不幸な事件が起こりまして、ただ真実を究明中でございますから、日韓関係自体はそのために変改を加えるという意図を政府は持っていないわけでございまして、従来約束をいたしました経済協力案件はもとよりでございますが、経済協力案件につきまして今後お申し出がありました場合も、われわれはそれを適正に検討してまいるということは続けてまいるつもりでございます。
  190. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 韓国のCIAの日本での活動については、もう天下周知の事実であります。一般報道によっても常時日本で五百名が活動している、こういわれておりますし、駐日大使館や領事館員、民間人で構成される、こういわれております。この韓国のCIAの日本における活動は、在日朝鮮人総連合会関係者の情報の収集、韓国籍の在日朝鮮人の反対派に対する監視と情報収集をやっておって、いままで公表されたものでも六件の不当な不法事件があるわけです。これが韓国の反共法、国家保安法に基づいて行なわれているといわれますが、これは間違いのないことだと思うわけです。  もう一つ、国際勝共連合についてですが、この国際勝共連合は韓国に本部を置いて、韓国にいる文鮮明あるいは金寅哲、こういう人が指導者であって、国際的な反共活動を行なっており、日本でも国際的背景のもとで反共活動が行なわれております。銃砲などを韓国から大量に輸入したということも報ぜられている団体であるわけです。この勝共連合の活動は日本に対する内政干渉になっていると考えます。CIAと勝共連合、それぞれ実態を調査して、内政干渉あるいは主権侵害、こういったものの取り締まりを行なうべきであると考えますが、CIAと勝共連合に対してどういう態度をとるか、お伺いしたいと思います。
  191. 中島二郎

    ○中島説明員 韓国のCIAにつきましてはどういう組織かということは存じておりますが、日本におきましてどういうような活動をいたしておるのか、あるいはどれだけのどういう人がおるのかという点については、私ども全く承知いたしておりません。  先ほど六件にわたる不法な事案があったようなお話がございましたが、六件が何をさすかよくわかりませんが、私どもの把握いたしておりますところでは、日本の法律を犯して不法な事案を犯したという事例は承知いたしておりません。国際勝共連合につきましては、お話のありましたように韓国と関係のある団体であろうかと存じますが、韓国と申しますのは韓国の統一……。ちょっと失念いたしましたが、韓国から宗教的に関係を持って生まれた組織であるということを承知いたしておりますが、この国際勝共連合が今回の事件関係しているという点は全く出ておりません。
  192. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 国際勝共連合の日本における活動というのは、これは内政干渉になっていると考えるのですが、この内政干渉に対して、これを調査し、取り締まるということを考えないのかどうかということなんです。
  193. 中島二郎

    ○中島説明員 これが反共活動をやっておる団体であるということは承知いたしておりますが、不法な事案を行なう団体であるというふうには見ておりません。
  194. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 時間が来ましたが、最後に一つ。  韓国の政府読売新聞に対してソウル支局の閉鎖、それからソウル特派員の追放を決定したということでありますけれども、新聞記事の内容については、読売新聞社の長谷川編集局長が正当な記事である、こう主張しておられるところです。このような措置日本政府にも連絡なくて行なわれるということは全く言語道断であって、こんなことを許していたのでは、日本人はこの金大中事件の真相を知ることもできなくなってしまうわけです。こういう不当な措置に対して、韓国に政府として抗議して、この追放や閉鎖の措置を直ちに取り消させるよう効果的な措置をとるべきであると考えるのですが、外務省の見解を、大臣の見解をお伺いします。
  195. 大平正芳

    大平国務大臣 それは先ほど楢崎さんの御質疑にもお答えしたわけでございまして、読売新聞の報道が事実であったかどうか、これは今後の調査に待たなければならないのがいまの時点であろうと思うのでありますが、まだそれが判明しない先に退去命令が出たということはたいへん残念でございまして、私どもといたしましては、なるべく早く支局が再開されるよう韓国当局とかけ合いたいと思っております。
  196. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 日本政府なんですから、日本の新聞社が正当な記事であると主張しているときに、やはり日本人を守るという立場から、現在の段階においても強い行動をしなければならない、こう考えるわけですが、いかがですか。
  197. 大平正芳

    大平国務大臣 強い報道をする、弱い報道をするというのは新聞社の自由でございまして、政府が……。(「政府の態度だよ。政府が強い態度をとるんだということです。」と呼ぶ者あり)政府といたしましては、たびたび御答弁申し上げますとおり、事実の究明に精力的に当たっておる次第でございます。
  198. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 どうも中身のない答弁ですので、またあらためてやることにいたします。終わります。
  199. 藤井勝志

  200. 渡部一郎

    渡部(一)委員 先ほどから金大中氏の問題につきまして何回か押し問答が続いているわけでありますが、外務大臣は一生懸命にガードを固められていて、国民に対して率直に語られる姿勢が欠落しておられるのじゃなかろうかと私は心配いたしておるわけであります。こういうチャンスでありますから、あまりこまかいことを伺ってもだめかとは存じます。全部の真相につきいま話す段階でないということも私は了解しているつもりであります。また韓国政府の、ある意味で苦慮している——韓国政府がこういう問題に回答する立場でなく、日本政府が、日本側が同じようなことをやった場合に、ことで答弁をされる立場に立ったとしたら、外務大臣はさぞかしお困りになっただろうと私は思うわけであります。当然そういう配慮がありながらこの問題を扱わなければならぬわけでありますが、私はあまりにも事件の真相がわからな過ぎますし、政府のとるべき態度がわからな過ぎますから、あまり複雑な論理を駆使しないで単純にお伺いしたいと思うのです。御答弁できる点については率直にお答えを、そうでない点はそうとお答えをいただきたい。  まず金大中という方はいま韓国におられるらしいのでありますが、韓国政府は何の容疑で御当人を調べておられるか。つまり誘拐された分を調べており、かつ金大中氏が反共法とか国家保全法とかそうした韓国内の諸法律、革命を起こしたというので調べられているのか、こういう容疑についてはどういう点にしぼられているのか、それをお伺いしたいと存じます。
  201. 妹尾正毅

    妹尾説明員 詳細については承知いたしておりません。   〔「言いたいことを言いなさい。」と呼ぶ者あり〕
  202. 妹尾正毅

    妹尾説明員 調査を続けているということは承知しておりますが、具体的に何法の違反についての容疑の取り調べをしているかというような詳細については承知していないという趣旨でございます。失礼いたしました。
  203. 渡部一郎

    渡部(一)委員 容疑不明である……。  次に、金大中氏は生きているのか死んでいるのか、お伺いします。
  204. 高島益郎

    ○高島政府委員 私ども確認する手段を持ちませんけれども、ただいままで政府が得ておる情報では安全であるということでございます。
  205. 渡部一郎

    渡部(一)委員 お説教するわけじゃありませんけれども日本国憲法には、日本国民に対して非常に大きないろいろな権利が与えられております。たとえば憲法十二条には「この憲法が國民に保障する自由及び権利は、國民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、國民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」と記されております。これは憲法が個人のさまざまな自由、集会、結社、言論、出版その他一切の表現の自由を確保し、また法律の定める手続によらなければ、生命、自由を奪われることがない、刑罰に処せられることがないとか、あるいは「現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が發し、且つ理由となってゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。」とか、「何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに辯護人に依頼する権利を興へられなければ、抑留又は拘禁されない。」とか、「又、何人も、正當な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその辯護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。」とか、憲法でいっておりますさまざまな諸権利は、わが国民及びわが国土に住む外国人一般に対して保障されているところであります。ところがそれが突き破られて一人が持っていかれちゃった。それが私は主権の侵害かどうかについて、主権ということばを使って議論するつもりはありません。しかしながら、こういうような乱暴なやり方で一人の人が引きずっていかれて、それに対して日本政府が何にも抗議をしないし、声も発しないというのじゃ、私はうなずけない仕儀ではなかろうか。少なくとも日本国憲法の精神に照らして「國民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。」と定めてありますとおりに、この憲法の条項を生かすためには、一人といえども——たった一人の人間です、交通事故の人数なんかに比べたら、もう勘定することのできないほどの小さなたった一人の、しかも外国の人に、日本の国会があげて大騒ぎをすることができるような国会に成長したことを私は喜びたいと思うわけでありますが、その一人を守るために政府はしかるべき態度をとるのが当然ではないか、こう思うわけであります。こういう基本的なところについて明瞭にされなければ、当人がどうしている、こうしているという議論に終始いたしますならば、結局日本国民としても納得できない、国際的にも、何をやって騒いでいるのか、単に日本人の朝鮮人いじめがまた始まったとさえ受け取られかねないと私は思うのです。日本は朝鮮に対してはばかに強いではないか、一人さらっていったら、経済断交などと叫び立てる、中国のときはどうだったなどという議論さえ出かねないのであります。私はそれに対して、憲法を守る精神からいって、この問題に対する政府の態度というものが堂々として韓国に表明されるべきである、そう思いますが、いかがでございますか。まず基本的な態度をお伺いしたい。
  206. 大平正芳

    大平国務大臣 日本国内におきまして、こういう不幸な誘拐事件が起こったわけでございます。起こらないことがいいわけでございますが、日本の警察力がいかにすぐれておりましても、そういう落ち度があったことをたいへん残念に思うのであります。しかし、これが起こった以上は、われわれの任務は、こういうことが起こらないような事態をどのようにして招来するかということを考えなければならぬと思うのであります。そのためには、この事案を徹底的に解明していきまして、そして公正な解決をするということ、日本事件が起こるとこういう始末にちゃんとなるんだということを内外にちゃんとはっきりさせる必要があるわけでございまして、そのために日本捜査当局といたしましてもいろいろ御苦心中のことと思うのであります。それに必要な捜査協力をわれわれはしてまいらなければならぬというのがいまのわれわれの立場であろうと思いまして、先般来お答え申し上げておるとおり、鋭意そういう方向で努力をいたしておりますし、今後も努力してまいるつもりでございます。
  207. 渡部一郎

    渡部(一)委員 その事案を解明する方向が今度は問題になるわけであります。外務大臣は、事案を解明する方向について今度お話ししていただかなければいかぬわけであります。  まず、そういう日本から黙って人を連れていったことに対して、いいとお考えなのか、悪いとお考えなのか。そして、それに対して韓国にどう言われたのか明らかにしていただきたい。
  208. 大平正芳

    大平国務大臣 だれもこのことをいいとは考えておりません。問題は、先ほどからも申し上げておりますとおり、これは私人の行為であるか、それとも官憲がかんだ行為であるかということが問題の核心であるということを、われわれの立場から申し上げておるわけでございまして、その真相を究明中であるということでございます。このことがいいことでないことは申すまでもございません。
  209. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうすると、そのいいことでないことに対して、韓国政府に抗議あるいは要求をなさいましたか。それはどういう内容でございましたか。
  210. 大平正芳

    大平国務大臣 この事案を解明していくにあたりまして、金大中氏は犯人ではないわけでございまして、被害者の立場であられるようでございますが、被害者から事情を聴取する必要があるというのが日本捜査当局のお立場でございます。しかし、身柄はいまソウルにあると聞いておるわけでございまして、これの出国を認めるかどうかということは、まず金大中氏がそういう意思を持つかどうか、あるいは韓国政府がその出国を認めるかどうかという問題にかかっておるわけでございますので、私どもとしては、韓国政府協力方を要請しておるというのがいまの立場でございます。
  211. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いまの御回答は、私はあんまりよくうなずけないですね。金大中氏が捜査に応じるかどうか、その意思を持つかどうか——被害者が意思を持つのは当然なんであって、もし持たないとすれば、何か脅迫されて、日本政府と話さないということが考えられるのであって、また、韓国政府が出国を認めるか認めないか、これはまさに外交交渉の、談判するこちらの力によるものであって、向こうが認めるか認めないかできまるものではないと私は思うのです。西ドイツの場合は、こういう類似事件が発生した場合に、外務省の高官を派遣してこわ談判したあげく、その身柄のほとんど全部を引き取ったという強い姿勢が表明されているではありませんか。ですから、私は、同じやり方でやるなら、日本外務省からしかるべき人を派遣するなり、その身柄引き取りのためにもつときちっとした交渉をなすべきではなかろうかと思いますが、どうでしょうか。
  212. 大平正芳

    大平国務大臣 いま捜査協力方を韓国政府に求めておるわけでございますが、まだ韓国政府として調査中であるので、今日まで応諾を得ていないわけでございます。私どもといたしましては、なるべく早くわれわれの希望が充足されることを期待いたしておるわけでございまして、今後の推移を見ながら、なお精力的に要請を続けていきたいと思っております。
  213. 渡部一郎

    渡部(一)委員 要するに日本憲法を守る立場から、日本の主権侵害というきわめて濃厚な容疑のある問題に関して、警察当局捜査協力の問題というふうにこの問題を小さくしてしまったところに問題があると私は思うのです。お立場は異にされるんでしょうけれども、これは捜査の問題でないのですね。日本国内において何かしゃべる人が遠慮なくその母国によって逮捕され引っぱられていくことを日本は認める国になるかどうかの問題ですね。それは私人であるか、公人であるかを問わぬと思うのです。まだ私はそこまで議論をしていない。だから、こんなやり方を放置したら、そのたんびに——警察の問題ではなくて、日本政府として、日本のこのテリトリーに関しては、そんなことをしちゃならぬところなんだと明確に意思づけることが必要なんであって、捜査が完了してから言うべき問題ではないと私は思いますが、いかがですか。
  214. 大平正芳

    大平国務大臣 この措置がちゃんとした措置にならないと、やはりこういう犯罪に対しまして見せしめにならぬわけでございまして、私どもといたしましては、いまの段階では事件解明が一番大事なことだと考えております。
  215. 渡部一郎

    渡部(一)委員 大臣、それは御答弁になりませんですね。その御答弁にならぬような点を幾らお聞きしても、御答弁はそれ以上出ないと思いますから……。  先ほど、官僚がやったのか、それとも私人がやったのか、つまり公人がやったのか、私人がやったのかが問題の焦点だという旨の御発言がございました。それで私はお伺いするのですけれども、公人がやったということが確定した場合に、外務省はどういうお立場をおとりになりますか。
  216. 大平正芳

    大平国務大臣 まだそういうことが解明されていないので、そのときにどうするこうすると言うのはいかがかと思うわけでございまして、一般的に内外が納得のいく厳正な措置を講じなければならぬものであると私は考えております。
  217. 渡部一郎

    渡部(一)委員 公的機関がこれに関与しておりますならば、同氏の逮捕、国外誘拐は日本国主権に対する侵害行為になると存じます。なぜかといえば、一般国際法上、一国の領土主権下に置かれた領域で、その国の同意を得ることなしに他国官憲が犯人の逮捕、拘禁、護送などの公権力行為をすることは、その国の主権侵害を構成するというのがこれはもう定説であるからであります。この点はいかがでございますか。
  218. 大平正芳

    大平国務大臣 私も仰せのとおり心得ております。
  219. 渡部一郎

    渡部(一)委員 もう一つ、連れ出しの犯人及び金大中氏が日本から出られましたことは、これは密出国に該当するわけでありますから、日本国国内法違反も構成する、すなわち日本では出入国管理令違反になる、こう思いますが、いかがでございますか。
  220. 竹村照雄

    ○竹村説明員 わが国に在留いたします外国人が出国する場合は、出国の証印を受けて出国しなければならないことになっております。そういう点でいいますと、金大中氏は証印を受けずに出たわけでございますけれども、それが本人の自由意思に基づかないものであるならば、これは本人に対してそういう違反を問うわけにはいきません。むしろそういうふうな行為をした者が出入国管理令違反に問われるということでございます。
  221. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私が言ったのは、ですから、犯人及び金氏と申し上げたのです。ですから、そのグループが出入国管理令に違反するということになると思うわけなんです。  その次に、そうするとこれは誘拐罪あるいは一般諸刑法に触れるようなものにもなるとお考えになりますか、続いて御答弁いただきたい。
  222. 中島二郎

    ○中島説明員 本事件につきましては、事件発生当初は、刑法二百二十条でございますが、逮捕監禁の罪として捜査しておったわけでございますが、金大中氏の発見に伴いまして、国外移送目的拐取罪、刑法二百二十六条第一項でございます。及び、金大中氏が負傷していることがわかりましたので、逮捕監禁致傷罪、刑法二百二十一条。この両罪で現在捜査をいたしております。
  223. 渡部一郎

    渡部(一)委員 このように国際法及び国内法における重大な犯罪行為を形成しているわけであります。  今度は、外務大臣が先ほど述べられた私人としての立場でありますが、犯人が私人としての立場、つまり韓国の特務機関情報機関、秘密警察等が関与せず、公的機関が関与せず、全くの私人がこれを行なったといたしましても、先ほど警察の方がおっしゃいましたような犯罪はやはり成立するのではないかと思いますが、いかがですか。
  224. 中島二郎

    ○中島説明員 成立するものと考えております。
  225. 渡部一郎

    渡部(一)委員 また、私は、公人が私人の資格で、つまりCIAの職員がかってに自分でやったというような事実があったとしても、それは公人の行為として当該政府は釈明すべき内容になるべきであろうと思いますが、いかがでありますか。
  226. 松永信雄

    松永政府委員 外国機関に所属する者がそのような行為を行なった場合は、当然その機関の属する国が責任を負うべきものと考えます。
  227. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そこまでのところのお話で、私は日本政府の強い御意思が初めてわかったわけであります。先ほどからは全然わかりませんでした。そういうふうにはっきりおっしゃってくだされば、私も了解できるわけであります。  それでは、今度は金大中氏を連れ戻せるかどうかの問題について、御答弁をいただきたいと思うのです。金大中氏を国際法のたてまえの上で——この間からいろいろな紛争が世界じゅうに発生をいたしておるようでありますが、その際に、連れ戻しの成功した部分と成功しなかった部分とがあると存じます。日本政府としては、犯人が公人あるいは私人の場合と分けてけっこうでありますから、当人の連れ戻しに対してどういう見解と見通しをお持ちであるか、御答弁をいただきたいと存じます。
  228. 松永信雄

    松永政府委員 まず公的な機関、韓国の機関の介入があったという場合でございますが、その場合は、明らかに日本の主権の侵犯があったということになりますから、国際不法行為に対する韓国政府の責任を追及する一つの手段と申しますか、救済の手段といたしまして、原状回復あるいは陳謝、または場合によっては損害賠償といったもののいずれかあるいはその組み合わせということが交渉事項として韓国側と話し合いをするということになると存じます。  他方、私人の行為によってそういう事態がもたらされたという場合におきましては、金大中氏について申せば、日本における捜査に資するために金大中氏の来日の実現につき韓国政府協力要請するということであろうと存じます。
  229. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ただいま述べられたような政府の態度につきましては、韓国政府に対して通報あるいは抗議の形で、それは韓国側に通報してあるのでありましょうか。
  230. 高島益郎

    ○高島政府委員 いま条約局長から答弁いたしましたのは、韓国政府機関が関与している場合と、それからそうでなくて韓国の私人が行なった場合に分けて日本政府の見解を述べたものでございまして、現在日本政府として韓国に申し入れていることは、日本における捜査のために十分な協力を求めている、その協力を求める手段といたしまして、金大中氏を日本によこしてもらいたい、こういうことでございます。
  231. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうすると、外務省日本の警察の捜査のお手伝いはなさっているけれども、これらの見解を韓国側に伝えていない、こういうことになるわけですね。私は、外務省が、そういうやり方では、本来の機能を果たしていないのではないかと思います。国家間ですから、友好関係を樹立しようと思っても、なおかつ紛争が起こるのは当然でありましょうし、それをゼロにせよと言っているわけではありませんが、言うべきことを言わず、行なうべきことを行なわず、隣国であるにもかかわらず妙な遠慮をしていくというやり方でいくならば、それは長い目から見て両国の友好親善関係にとっては重大な障害になることを、日本政府はむしろ韓国政府に対してき然たる態度をとることによって教えられるべきでないかと思いますが、外務大臣、どうお考えですか。
  232. 大平正芳

    大平国務大臣 言うべきことを遠慮して言わないというようなことをいたしておるつもりは毛頭ないのであります。私どもは、この事件がどういう事件であるかということにつきまして、韓国政府も一国主権の主体といたしまして、十分心得られておると思うのでございまして、私どもは私どもとして要求すべきことを要求いたしておるわけでございます。ただ、事案がまだはっきりしない段階で、あいまいなことで申し上げられない、申し上げるべきでないと心得ておるだけでございまして、この問題について私どもがしり込みをしているとか遠慮をしているとかいうようなことは、もしそういうように御理解がございますれば、それは誤解でございますので解いていただきたいと思います。
  233. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は、事案が不明確な場合に申し上げるべきでないとは思いません。それは外務大臣意見を異にいたしております。それはなぜかといえば、日本国内にある外国人の皆さん方は、こういうような怪しい日本にいたのでは、日本国憲法下においてすらわれわれは安全にものはいえないではないか、日本国の警察にわれわれは保護されているのではなくて、自国の秘密警察に対してセルフガードをしなければならないではないかというような恐怖すら抱かせる問題になろうかと思います。私は、結局この問題は、日韓条約を成立させて以来、日本が朝鮮半島の半分に介入をして、それによって韓国の平和的統一の問題に対して水をさした、そのなごりというものがこうした姿勢にあらわれているのではないかと考えているわけであります。私はしたがって、これは事のよしあしとか、事態が明瞭になるならぬの前に、これはまずいことだったということを政府がきちっとした態度を表明することが日本国内にいるたくさんの外国人人々に対して安心感を与え、かつ日本国の平和憲法の意味するものがかくも日本国家に定着しているということを世界に知らしめるいいチャンスではなかったか、こう思うわけであります。その意味で、私は、単なる捜査への協力などという段階ではなくて、韓国政府に対しておそらくいろいろなことをなさっているのだろうとは思いますけれども、わかるような措置をおとりになるということが当然ではないかと私は思うわけであります。その立場から大臣にもう一息の対韓交渉に対してお考え直しをいただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  234. 大平正芳

    大平国務大臣 まことに残念ながら渡部さんとは私見解を異にするのです。私どもが事案の解明を急いでおるというのはそのためでございまして、確かな事実を基礎といたしまして、私どもは言うべきことを言い、やるべきことをやらなければいかぬわけでございまして、政府たるものが単なる聞き込みや憶測で軽率にものをやっちゃいかぬと思うわけでございます。あくまでも事態の究明を急ぐということが今日的時点においての一番大事なことと私は思っております。
  235. 渡部一郎

    渡部(一)委員 じゃ、その話はそれ以上お話が両者で一致しないようでありますから、読売新聞の問題についてもう一つ申し上げるわけでありますが、これから先、いままで過去を考えましても、新聞各社がその情報によって当該国家から不当な報道をしたというので追放されたり、追い出されたりしたことは何回かございました。この件につき読売新聞が報道した問題について決着がつかない以前において、捜査が完了しない以前において読売新聞の記事を事実無根ときめつけた韓国首脳側のやり方というのは明らかに矛盾したものでありまして、先ほど大臣が御答弁になったとおりであります。しかしこれから先、私が言っているのはこれから先であります。このようにわが国の言論機関が国民の知る権利を代表して諸外国に行き、さまざまな報道をしようとした場合、そして報道が間違っているというので抗議をされた場合、もちろん事実関係は調べなければななぬと思いますが、一方的な要求で支局の閉鎖、特派員の退去などを要求された場合、今後も、この読売新聞事件とあわせて、当該政府に対して抗議またはその他の処置をおとりになりますかどうか、お伺いいたします。
  236. 大平正芳

    大平国務大臣 正当な要求は遠慮なくやらなければならぬと思います。
  237. 渡部一郎

    渡部(一)委員 正当な要求はどしどしやらなければならぬという言い方をなさいますと、これまでのことを私は問うていないわけでありますが、これまでもずいぶんいろいろな事件があったわけであります。それに対してあまりなさらなかったわけですね、外務省というところは。これから先、そうした問題については当該政府とかけ合う事項になさるかどうか、これから将来の原則論として私はお伺いしているんですが、これからはもう全部こういった問題に対しては外務省としては関与なさって、それが正当であるかどうかを判断なさって、正当だと思った場合には当該政府に対して小言も何も言う、こういうように決意をしたという意味でありますか。くどいようでありますけれどももう一回伺います。
  238. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおり今日までも各ケースについてやってきておるわけでございます。今後もやってまいります。
  239. 渡部一郎

    渡部(一)委員 これまでもやってこられたというのは、多少私は異論があるわけでありますが、これからの努力をお願いしたいと存じます。  それから、定期閣僚会議延期される旨先ほど発言をされましたが、いつまで延期をされるおつもりであるか、その点明快には伺わなかったわけであります。最後にそれを伺いたいと存じます。これはいつごろまで延期をされるおつもりであるか、どういう状況になればこれを再開されるおつもりであるか、それだけお伺いしたいと存じます。
  240. 大平正芳

    大平国務大臣 この時期は閣僚会議開催するに必ずしも適当な時期とは考えない、したがって一応延期します、そして総理訪欧訪ソから帰られたあと、両国都合のよいできるだけ早い時期に開催しようじゃないかということで日韓両国意見が一致いたしております。
  241. 藤井勝志

    藤井委員長 永末英一君。
  242. 永末英一

    ○永末委員 大平外務大臣に伺いたいんですが、過般大平外務大臣田中総理と一緒に訪米をされました。そしてニクソン大統領と総理との間にはいろいろな会談がございまして、共同声明の形でこんなことをやったという発表がございました。あの訪米の前に私は、あなたはこの席にお見えになり、田中総理もお見えになったときに、特に注文をつけましたのは、ニクソン・ブレジネフ会談で、わが日本を含んでおる極東アジアのことについて何を語られたかは明らかでなかった、ぜひ、田中総理が訪米されニクソン大統領と会談される場合には、中国を含め、日本を含めているこの辺の地域のことでひとつ話を、彼らの見解を聞いておいてほしいと申しておきました。共同声明で出ましたこのくだりのところは、ただ単に中国が国際社会に帰ってきたということについて討議をして、これが紛争の平和的解決をもたらすに至ることを希望するという程度。この共同声明のあちこちには、確認をしたり合意をしたり満足の意を表明したり、いろいろ強い表現があるんですね。ところがこの中国の問題については討議をして希望したというような表現でございまして、何をしてこられたのか明らかにしていただきたい。
  243. 大平正芳

    大平国務大臣 米中が和解をし、相互理解が進んでおること、そして日中が正常化をなし遂げたこと、このことは共同声明にもありますように、両首脳が満足の意を表明したわけでございまして、日中関係あるいは米中関係、いまけわしい問題は特にございませんで、一般的な意見の交換であったと御了解をいただきたいと思います。
  244. 永末英一

    ○永末委員 それを受けたかどうかは知りませんが、発表の八項目で、いままでの日米両国間の既存のワク組み、すなわち日米安保体制というものを振り返りつつ、これによる両国協力関係の継続は「アジアの安定の維持のための重要な要素であることを再確認した。」この場合に、アジアということばを使われたのはどの辺の範囲のことをさして言われておったのですか。
  245. 大平正芳

    大平国務大臣 アジアという地域を北東アジア、東南アジアに限ったかあるいはパキスタン以東を言うたかというような厳密な検討をもって共同声明を書いたわけではございませんで、常識的に申しましていわゆるアジアという感じでものしたものでございます。
  246. 永末英一

    ○永末委員 私どもが懸念いたしますのは、その次に、アメリカの大統領は「右地域において適当な水準の抑止力を維持するとの米国の意向を確認した。」こういうことでしょう。そうしますと、アジアがぼんやりした地域ではなくて、日米安保条約によってアジアの安定維持のために日本協力するんだ、こういうことを前段に言われ、アメリカはそのアジアの地域に対して自分たちは兵力を持っているんだ。それから軍事基地の話がきておるわけでございますから、そうしますと、いままで安保条約が設定せられて以来、極東とは何かということが国会でも非常に詳しく論議をされました。ところが、いまそのぼんやりした地域であるアジアの安定のためにわれわれは日米安保条約を解釈し、その運用をあなたの政府は是認した、こういうことになりますから、私どもとしてはアジアって一体何を言っておられるのか聞かざるを得ない。お答え願いたい。
  247. 大平正芳

    大平国務大臣 その文脈の中で考えましたことは、アジア地域におきまして緊張が激化したかというと、そうではない。緊張緩和のきざしが見えてきた。米中の和解、日中の正常化も進んできた、ベトナムの平和も実現したというように、アジアは緊張緩和の方向に向いておるではないか。そしてそのことは、日米安保条約をはじめ既存の条約のワク組みがあったということもそれに寄与しておるんじゃないかという意味で、私どもはこの体制を維持してまいりますことがアジアの平和にとって有益であるという認識が一つあるわけでございます。  それから、アメリカはその地域において適正な規模の抑止力を引き続き維持していく。これは海に陸にあるいは空に、各地域に兵力を保持いたしておりますが、緊張緩和のきざしが見えたからといって直ちにこれを思い切って削減するというのでなくて、適正規模の抑止力は依然として維持していくのであるという、今日日米がとっておる姿勢というものをすなおに共同声明にあらわしたものと私は理解いたしております。
  248. 永末英一

    ○永末委員 これまでの長期間にわたる日米安保体制、そしてこの安保条約によってわれわれがアメリカに軍事基地を貸与しておるその対象区域、たとえばベトナムはこの安保条約できめている地域の周辺であるというあやしげな見解が、昔、椎名外務大臣のときに言われて以来踏襲されているわけなんです。さて、そういういままでの安保条約適用せられる地域について外務省、あなた方政府考えておったこととここでアジアをコミットされたこととは違いますか、同じことなんですか。
  249. 大平正芳

    大平国務大臣 言いかえますと、安保条約に何らの改変を加えてない。安保条約の強化をねらったものでもなければ、逆に弱化をねらったものでもない、こういう体制を維持していくのだということで御理解をいただきたいと思うのです。アメリカのアジアにおけるミリタリープレゼンスは何も安保条約との関連だけじゃございませんで、ほかの関連でも出ておるわけでございまして、したがって安保条約上の極東という観念とそこにいうアジアというものは一つであるというように私は理解いたしておりません。
  250. 永末英一

    ○永末委員 ちょっと聞き間違いであったらと思うぐらいの御答弁でございますが、いままで極東ということで国会で明らかにしてこられた政府の見解、その極東という文字とここで使ったアジアといま同じだとあなたは言われましたね。そうですか。
  251. 大平正芳

    大平国務大臣 同じでないといまお答えしたのです。
  252. 永末英一

    ○永末委員 だから聞き間違いかしらと思いました。そこでもう一ぺん確かめておきますが、このことばをお使いになったけれども、いままで議会を通して国民に明らかにせられてきた安保条約適用地域の考えは同じだ、こう理解してよろしいな。
  253. 大平正芳

    大平国務大臣 さようでございます。
  254. 永末英一

    ○永末委員 さてもう一つの点は、この第六項目に「朝鮮半島における新たな発展を歓迎し、両国政府がこの地域における平和と安定の促進のために貢献する用意があることを」両者は表明した、こうなっている。この前の佐藤・ニクソン会談、すなわち沖繩返還がきめられたあのときの共同声明で、わが国は韓国の安全が日本の安全にとって緊要である、バイタルであると表現をされた。あのときの情勢の見方とこの共同声明にあらわれました朝鮮半島の状況とは同じですか、違いますか。
  255. 大平正芳

    大平国務大臣 明らかに大きな変化が起こっております。
  256. 永末英一

    ○永末委員 その変化は何であると思われますか。
  257. 大平正芳

    大平国務大臣 去年の七月四日、南北の対話が始まっておるわけでございます。また、南におきましては外交政策上現実的な変化を発表いたしておりまするし、南北両朝鮮に対する各国の承認あるいは外交関係の設定、そういうものも相当の速度で進んでおるという、いわば客観的には大きな変化がいま起こっておると私どもは認識しておるわけでございます。
  258. 永末英一

    ○永末委員 だといたしますと、安保条約下に行なわれました日韓条約締結時代のあなた方の政府の見解は、われわれが何と申しましても三十八度以北における政権についてはほとんどコミットしない、そういう姿の答弁が繰り返されておったわけです。いまの大平さんのおことばの中には、明らかに二つの政権、南は政府と言われておろうと思いますが、それをやはり意識しておるということが、佐藤・ニクソン会談時と今度の田中・ニクソン会談のときと大きな変化である。したがって、日韓条約のときの政府の見解はいまやあなたの胸の中には改められておる、こう判断してよろしいか。
  259. 大平正芳

    大平国務大臣 日本がどう意識しているとかしていないとかいうことでなくて、客観的に朝鮮半島をめぐる事態が大きく変化しておるということを申し上げたわけです。それから日本と北鮮との関係におきましても、北鮮に一つのオーソリティーがあるというような段階を越えまして、いろいろな分野で接触が始まってきております。  それから、日韓条約を結んだときと日本の基本の方針は変わっておるかというと、それは変わっていないわけでございまして、われわれは韓国を助けることが朝鮮半島の平和と安定を取り戻していくにつきまして有益に働くように祈念しておるわけでございまして、今日の日韓関係も同じ気持ちでやっておるわけでございまして、まるっきり違った考え方でやっておるというものではないのであります。
  260. 永末英一

    ○永末委員 それは大平さん、変わっていないと言われるけれども日韓条約締結、そしてその直後の状態は、たとえばわが国における朝鮮人という名目を持った人々が韓国籍を取るかいなかの問題で、南北には非常な見解の分かれがあり、あなた方のやられたことについていろいろな角度から批判があったことも事実でございまして、いまはそういう状態は非常に変わっておるんだから、あのときと同じ方針だとは思われません。  そこで、ぜひ聞いておきたいのは——私は変わっておるだろうと思いますから聞きたいのですが、朝鮮半島におけるこの新たな発展について、いろいろなことを両国でやっていくんだというのでございますが、その中で韓国に対する援助について、軍事的援助、経済的援助について、アメリカから何らかのオファーがございましたか。
  261. 大平正芳

    大平国務大臣 全然ございません。
  262. 永末英一

    ○永末委員 私は、これだけの文句を朝鮮半島のために書いてあるためには、これが共同声明でことばで出ているためには、何ほどかの具体的なオファーがあり、あなた方の受け答えはどうであったか、これは別としまして、アメリカ側としてはそういうことをおれたちはコミットしたんだぞということがこの文言に出ていると思えるのでございますが、韓国については具体的な話はございませんか、重ねてお伺いします。
  263. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう事実は、いま御答弁申し上げましたとおり全然ございません。
  264. 永末英一

    ○永末委員 さて、あなたがないと言われるから、大臣のおことばでございますから、きょうはそのままお聞きをいたしておきますが、われわれが韓国に対する態度というのは、先ほど申し上げましたように、日韓条約の当時とは変わらざるを得ない、客観的条件はできていると思います。そこへ起こったのが金大中事件でございまして、先ほどあなたのお話の中で、金鍾泌韓国首相がわが田中首相に親書を送られた、その中で、日本日本人と言われたかどうか忘れたのですが、深甚な遺憾の意を表明しておる、こういうことばがあったと思うのです。何を彼らは遺憾だと考えているのですか。
  265. 大平正芳

    大平国務大臣 この犯罪は韓国人が関与しておるという認識で、遺憾の意を表明されたものと私は理解しておるのです。つまり、韓国の官憲がかんでおるかどうかというようなことは捜査中であるわけでございまして、ただとりあえずの段階として、韓国人が関与しておる、そして日本に大きな迷惑をかけているということに対して遺憾の意を表明されたものとぼくは理解いたしております。
  266. 永末英一

    ○永末委員 韓国人が関与しているということを相手方の政府が認めておると日本外務大臣は認識しておられる。あっち方から、韓国から、まさか、おれのほうの国民がわけのわからぬ形で誘拐されたことに対する日本国の治安維持の無能力に対する抗議はございませんね。
  267. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうくだりはございません。
  268. 永末英一

    ○永末委員 だといたしますと、一方的にこれはわがほうが——韓国の首相が遺憾の意を表明している犯罪事件でございますから、わがほうが彼らの協力を求めるのは、この親書をもとにしても、法律上の権利とまではいえぬかもしれませんが、国際社会における両国の国交上堂々とこれは要求できることですね。そうお考えでしょうね。
  269. 大平正芳

    大平国務大臣 そのとおりでございまして、そのとおりやっておるわけです。
  270. 永末英一

    ○永末委員 金大中事件はまだやりたいのですが、もう一つ問題がございますので、特に大平大臣に聞いておきたいのですが、昭和四十四年にあなたの前任者の愛知さんが、時のアメリカ国務長官、ロジャーズ長官との間に、宇宙開発に関する日本国アメリカ合衆国との間の協力に関する交換公文なるものを取りかわしました。  私は、この宇宙開発の問題はこれからの国際政治上重要な課題を提起をするものだと考えます。大平大臣は、この宇宙開発の問題は国際政治上重要な問題になり得ると思われますか、思われませんか。
  271. 大平正芳

    大平国務大臣 重要な問題と心得ております。
  272. 永末英一

    ○永末委員 この交換公文ができました当時、アメリカ国務長官ロジャーズさんはアメリカの議会で、これによって——この内容は要するにソー・デルタ・ロケットに関する技術の提供、物品の提供を約束したものでございますから、これによってアメリカ側は大体一億ドルの収入、また日本の自動車や繊維に関する関税障壁を取り除く効果があると思うのだという旨の説明をしておるのでございまして、なるほど、これのみであるかどうかは知りませんが、自動車と繊維に関する経済問題はだんだんとそれからなくなりました。  ところで、この交換公文によってわがほうがアメリカに支払ったものというのはいままで幾らになっておるでしょう。
  273. 千葉博

    ○千葉政府委員 現在までの支払った額はいま調査しております、調べておりますが、資料を持ってきておりませんですが、概略申し上げますと、毎年約百億円程度の支払いが米側にある。将来三年ぐらいの間でございますが、毎年百億円程度の支払いがある、このような計算をいたしておるわけでございます。
  274. 永末英一

    ○永末委員 大平さんに前申し上げたことがあるのですが、アメリカの外交というのは、たとえばいま申し上げた宇宙開発のロケット等に関する外交関係でも、経済問題とワンセットでものを考えておる。もし——いまのは概算ですから、まだあとで正確な数字が教えられるだろうと思うのでありますけれども、一億ドルという計算を相手方が、ロジャーズがしたというのは、そのときの外交交渉で外務省側は、大体これぐらいあなたのほうに支払うんですという約束をしなければ、あんなえてかってなことをアメリカの国務長官が議会に言うはずはないと思うのです。何かそういうお約束をされましたか。大体これでこれぐらいあなたのほうに支払います、支払うことになります、そういうことございますか。
  275. 千葉博

    ○千葉政府委員 当時交換公文を作成する場合にそういったような約束はいたしておりません。
  276. 永末英一

    ○永末委員 日本側は知らぬといい、アメリカ側が計算すると、おかしな話ですね。外交というのはやはり同じテーブルについて話するのですから、相手方が無責任なことを言うわけではない。アメリカの議会で説明をしているのですから、何ほどかそれを思わせるものがあったに違いないと、局外者としてやはり推測いたしますね。  そこで、大平大臣の退席の時間が迫っておりますので、もう一つ伺っておきたい。あとはまあほかの人に聞きますが、このロケット問題は二十二日の日、宇宙開発委員会がいままでの決定をばらっとひっくり返して、違った決定を発表いたしました。この考え方は、いままで昭和四十四年以来この件について日米が話し合ってきた基本的なコースに乗っていないのではないかと思われる節がある。大臣とされましても、この点についてはもう一度過去の経違を振り返り、特に日本国外務大臣が相手方の国務長官と話し合ってきめたことでございますので、深甚の関心をもって自後の交渉に当たっていただきたいと思いますが、いかがですか。
  277. 大平正芳

    大平国務大臣 よく経緯を点検いたしまして慎重に対処いたします。
  278. 藤井勝志

    藤井委員長 この際、私から一言所見を申し上げます。  本日、当委員会において金大中事件について与野党の各委員によって活発な質疑が行なわれましたが、現在、本事件は真相究明の段階でありますので、捜査当局の迅速なる解明が急務であると考えます。事態の推移いかんによっては何らかの意思表明を必要とするものと考えられますので、外務省当局は本事件の早期解決のため、韓国政府に対し強力に外交交渉を継続されるよう強く要望いたします。大臣に御意見がありますならば、承っておきたいと思います。
  279. 大平正芳

    大平国務大臣 いま委員長の御発言でございます。御趣旨に沿いまして鋭意努力いたします。
  280. 藤井勝志

    藤井委員長 引き続き永末君の質疑を許します。永末英一君。
  281. 永末英一

    ○永末委員 先ほど触れました二十二日、宇宙開発委員会では、ことしの三月に出しました宇宙開発計画、これは昭和四十五年に出されたものを改定いたしたものでございますが、ここで発表いたしましたものの方針を変えてそして新しいことをやる、こういう発表をいたしました。その間、報道によりますと、宇宙開発委員会アメリカの国務省と交渉してこういう結論に達したのだというのですが、外務省はこの間、何しておったのですか。
  282. 千葉博

    ○千葉政府委員 昨日、宇宙開発委員会におきまして、通信衛星、放送衛星、この二つの衛星を本格的に開発しよう、さしあたりそういった方針で宇宙開発委員会は来年度の予算の見積もりを行なうという決定をしたわけでございまして、ことしの初めにわが国の宇宙開発計画を見直しました。その計画の四十八年度の見直しは、二、三カ月あとに行なわれるというような、いま段階にあるわけでございますが、いま先生の御質問の米側と話をして、それでこういう決定をしたのだというような事実は——実は技術的に宇宙開発計画は、もう御案内のとおり米国の技術を大幅に導入いたしましてそれでこの宇宙開発を行なっていこうという線でございますので、そういったことで一体技術をどの程度入れてもらえるか、そういった点を四十四年に結びました交換公文、この線に沿って一体どういうふうに考えるのだというような点につきましての技術的なやりとりを米側とやったという点以外は私は存じ上げておらないわけでございます。  以上でございます。
  283. 永末英一

    ○永末委員 もちろん両国の間のことですから技術的なことは技術者がやりますが、もともと先ほど触れましたようにアメリカ側はこの交換公文を取り結ぶことによってある種の期待を持っておる。だとしますと、私は窓口は外務省ではないかと思うのですが、外務省はそれにのっとって、先ほど、では一体どれぐらいアメリカのソー・デルタに関する機械器具等あるいは施設等について注文したかよくわからぬという話でしたが、外務省は知っておらぬというのはおかしな話ですね。つまり、全体として、アメリカ側はそれをわが国に対する外交関係の一ファクターとして考えているのだから。外務省はどっかこの問題について専任でやっておるところがあるのですか。
  284. 鈴木文彦

    ○鈴木(文)政府委員 ただいまの点、いわれるような交渉をアメリカとの間にやったことはございません。
  285. 永末英一

    ○永末委員 その点はやはり一応大平さんに聞かしておきたかったですね。われわれはやはり国会側として、何と申しましてもこの交換公文が取りきめられ、それから四十五年に宇宙開発計画は私はできたのだと思う。その方針がいま変わってきたという場合に、アメリカ側に一体どういう反響を起こすかということを私どもは懸念をいたしますので、外務委員会で取り上げているわけでございまして、その辺はひとつ、外務大臣おりませんけれども、何もやらなんだというのでは、何のための外務省かとすら言いたくなるわけでございます。それはまた外務大臣が来たときに聞きます。  さて、郵政省がともかく昭和五十一年に通信衛星と放送衛星で宇宙のあるポジションを占拠したい、こういうことでこの新しい方針がきまった、こういうのでございますけれども、これは技術者で郵政省、どっちでもいいのですが、大体わが国が、通信なり放送のほかにたくさんの衛星の役割りがございますけれども、望ましい東経は何度から何度までですか。
  286. 園山重道

    ○園山説明員 郵政省で考えております通信放送関係について申し上げますと、大体百十度ないし百四十度といったところが中心になるかと考えられます。
  287. 永末英一

    ○永末委員 わが国の一番東と申しますと、国後まで含みたいのでございますが、日本人の住んでおるところは根室の先ぐらい。そして一番西側は西表でございましょうな。それは何度から何度までですか。
  288. 園山重道

    ○園山説明員 まことに申しわけありませんが、いま調べさせていただきたいと思います。
  289. 永末英一

    ○永末委員 私はあなたの答弁の中で百十度から百四十度というのは疑義があるから質問しているのです。もともとそうじゃないのでしょう。大体百二十五度から百四十度、十五度程度でしょう、日本の範囲は。なぜそれを西のほうへ延ばしておるかというところに問題があるから聞いておる。先ほどのことはいいですよ。なぜ百十度からといったのですか。
  290. 園山重道

    ○園山説明員 ただいま申し上げました百十度を選んでおりますのは、これは蝕の関係でございまして、つまり衛星が地球の影に入りまして太陽が当たらなくなりますと太陽電池が動作しなくなりますので、その関係で最もいい位置を計算したと聞いております。
  291. 永末英一

    ○永末委員 私の聞いておるのは、もともと日本列島に対する放送なり通信のことですから、やはり日本列島線で百二十五度ないし百四十度くらいならそのまん中のところですな、百二十八度とかその辺が望ましい。ところがわが国の計画は昭和五十一年に上がるか上がらぬか、まあ上がる上がるといいながら、いままで上がったことはない。これはあとで聞きますけれども、そこで早く占拠しなくちゃならない、ベトナム戦争は終わったというようなこともあって、西のほうに追いやられ、百十五度程度のところへ追いやられつつある。百十四度かどっちか知りませんけれども、そうなると、これは大きな外交問題なので、その辺のことを聞いておるわけです。あなた方はそういう事実はないと言われますか。日本に一番望ましいのは、日本列島線の中心で、赤道のずっと上のほうですね。それがずうっと、百十度って左ですよ、うんと。ぼくは蝕だけのことではない、きわめて政治的な原因があると思いますが、いかがですか。
  292. 園山重道

    ○園山説明員 私どもといたしましては、先ほど申し上げましたとおり、その蝕の関係での技術的な配慮からその位置を選定いたしておりまして、先生指摘のようなことはございません。
  293. 永末英一

    ○永末委員 ございませんのですか、知らないのですか。はっきりしてください。
  294. 園山重道

    ○園山説明員 正確に申し上げれば、そういうことがあることは存じません。
  295. 永末英一

    ○永末委員 まあ科学の話ですから、正確にひとつ答えておいていただきたい。さて、郵政省はそうやってあわてていまやろうとしておる。それでアメリカのNASAに頼もう、こういうことですが、これが東経何度で上げようと、こういう御計画ですか。
  296. 園山重道

    ○園山説明員 ただいま計画いたしております五十一年度の通信実験衛星と放送実験衛星がございますが、   〔委員長退席、西銘委員長代理着席〕 通信実験衛星は百四十度、放送実験衛星は百十度でございます。
  297. 永末英一

    ○永末委員 これは何年宇宙にとどまっておるのですか。
  298. 園山重道

    ○園山説明員 ただいま開発のものでございますが、開発の設計寿命といたしましては三年を考えております。これは満足に動作する寿命という意味でございまして、衛星そのものがいつまでとどまるかということはもっととどまるわけでございます。
  299. 永末英一

    ○永末委員 したがって、三年たてば、つまり五十一年から三年、五十四年になれば、わがほうとしては通信衛星ともに、ほかのもございますけれども、新しいものを打ち上げて実用に供したい、こういう底意があるわけでしょうな。
  300. 園山重道

    ○園山説明員 ただいま申し上げましたのは開発の設計寿命でございまして、これが終わったらすぐ次のものを上げるとかということを決定しているわけではございません。
  301. 永末英一

    ○永末委員 だといたしますと、通信衛星で百四十度、それから放送衛星で百十度、それにポジションをとったということは、いまあとの計画はないということでございますから、それはどうなるのですか。よその国が日本の上げたところをおれも使いたい、こうなりましたら、はいどうぞ、こういうことになるのですか。それとも、いや、おれがとったのだからそこにいたいというのですか。久野郵政大臣が「時の動き」という政府発行のパンフレットの中で、要するにポジションをとることが大切なんだという旨の発言をしておられますね。何か大臣の言っていることとあなたの言われたことと合わしますと、ズレがあるように思いますが、どっちなんですか。
  302. 園山重道

    ○園山説明員 いま五十一年度を目標にいたしております衛星は実験衛星でございまして、これは将来の通信放送需要に対処するための本格的衛星に至る一つの過程といたしまして開発して実験をするものでございます。したがって、将来の実用衛星をいつどのような規模のどのようなものを打ち上げるかということにつきましては、この実験衛星の成果を踏まえましてきめていきたい、こう考えておるところでございます。したがいまして、先生指摘のように、その目的の中にはやはり日本にふさわしい、日本に適当な位置の確保ということがございますけれども、いまの実験衛星のそのあとに直ちに次の衛星を上げるということを決定いたしているわけではございません。
  303. 永末英一

    ○永末委員 いま郵政省の見解を聞きましたが、宇宙開発委員会は四十八年三月一日に決定された宇宙開発計画の中で、昭和五十一年を目途に実験用の通信衛星並びに放送衛星を開発して打ち上げることが要請されているのでやるんだ、こういうことでございますが、そうして今回の発表では、これはNロケットであるけれども、山県というあなたの委員会委員長代理の方の発表が報道に載っておりますが、その報道によりますと、「ポストNロケットで、第二号の放送衛星や通信衛星が打ち上げられるし、」云々と、こうなっている。だから、宇宙開発委員会のほうは継続的に事業を考えているように思われる、どういうことになっているんですか、これは。
  304. 千葉博

    ○千葉政府委員 宇宙開発委員会におきまして先般発表しました際に、山県委員長代理はこういうことを申し述べております。それは、今度の通信実験用、中容量の通信衛星と、それからまた放送衛星につきましては、これは利用者側であります郵政側あるいはNHKあるいは電電公社、そういった面から、五十一年度にどうしてもこの種の実験衛星は上げてほしいという要請がございまして、従来はその開発、研究を行なっている程度でよろしいということをしておりましたのですが、これを五十一年度を目標に上げようという決意をしたわけでございます。それで、それではNのロケットはどうかといいますと、これはもういま先生の御指摘のとおり、このロケットは、改良をいたしますと、数百キロの衛星を軌道に乗せるというようなそういった非常に性能のいいロケットでございますので、そのNの改良は推し進めていく。そういたしますと、五〇年代の半ばごろからずっと末にかけましては、そのNの改良ロケットで、通信衛星、放送衛星の実験用のものは三百五十キロぐらいの重さがございますが、こういったような種のものは上げられるようなNロケットに力が出てくる、こういうことを説明をいたしたわけでございますが、その際、五十一年度にはとても間に合いませんので、この際は米側のロケットにこれはお願いしようではないか、こういうような例外的な考え方をここに打ち出しているわけでございます。
  305. 永末英一

    ○永末委員 米側にお願いした場合には、アメリカはどのロケットを使うんですか。
  306. 千葉博

    ○千葉政府委員 おそらく、まだこれははっきり米側にお願い——このロケットでというようなことになっておりませんけれども、いわゆる二九一四型ロケット、こう称するものだと私ども考えているわけでございます。
  307. 永末英一

    ○永末委員 その二九一四型ロケットとソー・デルタ・ロケットとはどこがどう違うんですか。
  308. 千葉博

    ○千葉政府委員 いわゆるソー。デルタのロケットは改良型がずうっと出ておりまして、それで二九一四と申しますのはいわゆるソー・デルタ・シリーズの最近のものである、こういうことでございます。
  309. 永末英一

    ○永末委員 あなたは二九一四なんて言わないで、ソー・デルタと、いまの答弁を先にすべきです。先ほどから私が出しましたのは、ソー・デルタ・ロケットについてアメリカ側は日本側に提供すると約束をしておるわけでしょう。それを前提にして宇宙開発計画を組まれ、国民の血税が使われていままでいろんな開発をしてきたわけだ。ところが同じ——私もソー・デルタと言われたっていろんな型があることを承知しております。本を見れば書いてある。したがって、それならばなぜ一体そのロケットの開発をもっと進めなかったのか。何年も何年もやっておいて、そして伝えられるところによれば五十一年には百八十キロくらいの小さなやつしか上がらぬ。これでは何ともならぬ、実験にも役に立たぬというようなことで相手方に頼む。アメリカのほうはその同じ系列に乗っておるロケットを使う。国民はこんな話はちょっとわかりませんね。伺いたいのでありますが、こっちはなぜ上がらないのですか。あっち側には上がって、そしてそれは再突入装置を除くほかのものはまた秘密にわたらないというのもございますが、提供いたしますというのが昭和四十四年の両国外務大臣の約束なんです。そしてそれを知っておってやってきたが、外務省は何を交渉したか知らぬというので、これまたおかしな話でございますが、なぜわがほうは五十一年になっても上がらないのですか。上がらない原因を言ってください。
  310. 千葉博

    ○千葉政府委員 この四十四年の交換公文に基づきまして、御案内のとおり四十五年から宇宙開発事業団が発足いたしまして、それでソー・デルタ・ロケットの技術をベースにいたしましてNロケットをいま開発中で、その計画でいきますと昭和五十年度にその第一号が打ち上がるということになっておるわけでございますが、それで昭和五十二年には静止軌道にこの実験用の衛星を打ち上げるというのが現在のいわゆるN計画でございまして、おかげさまでそのほうは順調にいま進んでいるわけでございます。したがいまして当初の計画どおりいまは進んでいるわけでございまして、そういった点からはいわゆるソー・デルタ型のロケットは現在製作されつつあるわけでございます。ところがいま先生指摘の、それじゃなぜ通信衛星あるいは放送衛星がソー・デルタ・ロケットで五十一年に上がらないのか、米側に頼むのか、この点につきましては実はその四十四年に交換公文を締結いたしましたその時点におきますソー・デルタの水準までの技術をもらうという約束でございまして、その当時のロケットを四十五年からいま製作しておるというわけでございます。そのロケットでございますと、いわゆるNロケットでございますが、静止軌道には約百三十キログラム程度の衛星しか打ち上げることはできません。米側ではその後いろいろ改良いたしまして、いわゆるそのシリーズでは、先ほど申し上げました二九一四というようなシリーズですと三百キロから三百五十キロまで衛星を静止軌道に打ち上げることができるというようなことでございますが、そういったことでございまして、このNロケットも今後改良しなければそういった三百キロあるいは四百キロといったものを静止軌道に打ち上げることはできないという状況に相なっておるわけでございます。
  311. 永末英一

    ○永末委員 条約局長に伺いたいのですが、いま話がございまして、四十四年の交換公文はそれまでにアメリカで開発されておったソー・デルタ・ロケットに関係ある機器、装置等のことであって、それ以後のことは関係ない、こういうものだという見解を発表されましたが、そうですか。
  312. 松永信雄

    松永政府委員 いま科学技術庁のほうからの御説明がございましたとおりに解釈いたしております。
  313. 永末英一

    ○永末委員 ことしは四十八年ですね。こんな交換公文を持っておることがわが国のロケット開発の事業をおくらしておることになりはしませんか。古いものを、中古を買え買えなんてばかなもの、一年一年こういう種類のもの、これが壁になっておるというのは、変えなければいかぬのじゃないですか。中古のものを買って何になりますか。条約局長、変えなくてはならぬと思われませんか。
  314. 千葉博

    ○千葉政府委員 ただいま中古だという御指摘でございますけれども、実は百三十キログラムのものを静止軌道に打ち上げるというこの技術でございますが、これはもう御案内のとおり現在でも米国だけでございまして、それ以外の国ではいま上げることができない程度のむずかしい技術でございます。それで、中古というような御指摘でございますけれども、まあ見方によれば、中古というよりも、百三十キロを上げるタイプとしてはこれはまあまあ現在でも一流だと私ども見ておるわけでございます。そういうような見解をとっておるわけでございます。
  315. 永末英一

    ○永末委員 あなた、非常に弁解されますけれども、百三十キロじゃ間に合わぬから先ほどお話の三百五十とか二百五十とか三百とかということが——郵政省の見解ではまだ単なる実験段階であるということでもそれくらいの重さが要る。あなた、百三十キロ上げるのには一流だと言うけれども、一体何のためにわれわれ国民としては百三十キロを上げなくてはならぬか。中古ではないと言ったって、要するに小さいものしか上がらないだけの装置というものを、なぜわれわれは四十四年の交換公文に縛られて買わなくてはならぬのか。買う必要がないから買ってないのじゃないですか。たとえば二段ロケットなどは買う交渉をされましたか。
  316. 千葉博

    ○千葉政府委員 御案内のとおり、N計画におきましては、いわゆる技術の波及効果を非常にねらうということでございます。したがいまして、単にそれを買うということよりも、わが国でできるだけこの生産をいたしまして、それでその技術を習得する、これが意義の第一になっておるわけでございます。したがいまして、第二段につきましてもいま御指摘のとおりでございますが、わが国が独自で開発しようということで、米側のこの技術の指導を受けながら三菱重工が独自のロケットを開発しておるというのが実態であるわけでございます。
  317. 永末英一

    ○永末委員 あなた、自分が言っておって矛盾を感じられませんか。私が提起した問題は、要するに機械、設備、ノーハウ含めて譲ります、提供しますとアメリカ側がわれわれに約束したことである。ソー・ロケットについてはあなた方はそれを手に入れられた。しかし二段ロケットについてはいまのような波及効果とかなんとかいってやっておる。別に私はまるまる買えとも何とも——買うというのは、提供する交渉をしてやれば、わざわざそれだけを自主開発と称して一からやらなくてももっと早くやれるはずじゃなかったろうかと思われる。にもかかわらずそのことが進まないから上がらぬ、だから今度アメリカに頼んで、何ぼ金を払うか知りませんが、それで打ち上げるのだというような、われわれしろうとの目から見ますと何をしているのだろうか、ここからここまではアメリカの提供を受ける、まん中の重要なところは自分で一ぺんやってみようといって粘土細工をしておるというような感覚では、われわれ税金を払う気持ちになりません。一体どういうことなんですか。
  318. 千葉博

    ○千葉政府委員 二段目だけが自主開発であとは買うじゃないか、こういうような御指摘でございますが、御承知のとおり一段目もライセンスでだんだん生産を国内に持っていく、こういうような考え方でございます。したがいまして、全体のロケットも自分のものにそしゃくしていくのだ、それで第二段は、これは従来すでに日本においてもう着手しておった、そのロケットを改造して二段に組み込めばいいのだ、そういったような思想でこのNロケットの組み立てをしておるわけでございまして、それでこれが非常におくれているのじゃないかというような御指摘でございますが、当初の計画どおりいま進んでおる点は先ほど私申し上げたとおりでございます。順調に進んでおりまして、そういったことでございます。
  319. 永末英一

    ○永末委員 あなたは順調、順調と言われますが、四十八年三月一日のあなた方のきめられた宇宙開発には、先ほど半分読んだのでございますが、そういう五十一年度を目標にその二つの衛星を打ち上げることが「要請されていることに鑑み、開発方法等の検討を行なうとともに、所要の開発研究を進めること。」これをしろうとが読めば、あなた方が努力をして、五十一年にはその要請にこたえて上げてみせるのだ、こういう決意の表明に聞こえますよ。だから、それを受けて予算が組まれたら、そのように有効に予算が使われているのだな、こう見えます。あなたが順調と言うのは、こうこう書いてあるけれども、五十一年には、ここに書いてあることをアメリカに頼むことであって、わが方は別に研究することじゃないのだ、こうなりますよ。これはそんな文章なんですか。
  320. 千葉博

    ○千葉政府委員 通信、放送衛星の経緯を申し上げますと……(永末委員「経緯はあまり言わぬで、そこのところだけ答えてください」と呼ぶ)そこでいわゆるN計画は、先ほど申し上げましたように、Nロケットを五十年から打ち上げていくのだ。ところがこの通信、放送衛星の要請は昨年突然出てきた筋のものでございまして、これをN計画、Nのロケットで打ち上げようということをいろいろ検討したわけでございますが、要請にとうてい間に合いませんので、それで米側に頼もう、こういったようなことに相なったわけで、そういったような趣旨のことが昨日ですか、発表されたわけでございます。
  321. 永末英一

    ○永末委員 宇宙開発委員会とされては、郵政省がなぜ五十一年に上げたがっておるとお考えなんでしょうか。そうしてそれを受けられてあなたのほうは、自分のほうは順調だ、郵政省が何か横から横やりを入れて何が何でも上げてくれろと言った、郵政省の計画を聞くと、一ぺん上げてみますが、その次のことは考えていない、何だかこま切れであちこちばらばらやって、みな税金使っておる。これは私、国民に宇宙開発で統一的、計画的に金を使っておるかと聞かれたら、ちょっと答えられないのですが、一体郵政省の要請をいれてアメリカに頼んだ、そのことはどんな意味があるのですか、あなた方の順調にやっておると称される開発に。
  322. 千葉博

    ○千葉政府委員 その点につきましては、郵政側から昨年、御案内のとおりこの両衛星をどうしても五十一年度に上げてほしい、しかもこれはいわゆる将来の国内の通信のふくそうする点、そういった点から、それを解消すること、さらに、一たんいろいろな災害などが起きた場合の通信の確保をしたいようなこと、それからさらに放送衛星につきましては難視聴の解消、それからさらに国際的な問題、そういったものを勘案いたしまして、どうしても五十一年度にはこういった中容量の実験衛星を上げてほしいということが委員会に提出されたわけでございます。それで慎重に昨年来検討いたしまして、昨日ですか、この両衛星については、衛星を国内で開発する、だがこれは米側で打ち上げてもらおうということに相なったわけでございます。
  323. 永末英一

    ○永末委員 お答えいただきましてもよくわからないのですが、宇宙開発委員会から人が見えていますので三点伺いたいのです。  一つは、久野郵政大臣は、要するにポジションをちゃんととっておかなければ、確保しておかなければならぬのだ、そう無限に乗るわけじゃなくて、大体百五、六十個で横ばいになるのだ、こういう表現をされて、自分が郵政事業を進めるためには、通信、放送等の衛星を早くポジションを確保したいという趣旨のようでございまして、それが必要だと委員会はお考えなのかどうか。  第二点は、先ほど二段ロケットで説明がございましたけれども、二段ロケットというのに、ノーハウ等々についてもっと早く買うこともありましょう、知らせる、情報の提供もございましょうが、そういうことよりは国内の産業力でつくっていくのだという御方針をなお続けられるのか。  第三点は、昔々、日の丸衛星が上がるという、文部大臣は剱木さんの時代でございましたが、そのときに聞いたら、制御装置は何にもない、ただばんと打ち上げたらくるくると回るであろうという、確率は三割程度であるということを聞いて、これが科学というものかという、非常に驚きを感じました。いまはその制御装置がちゃんと研究をされ、そうしていまのようなことができるように制御装置を働かせるという状態になっておるのか。三点をひとつ宇宙開発委員会から来ておられる方にお伺いしたい。——事業団ですか、では松浦さんお願いします。
  324. 松浦陽恵

    松浦参考人 お答えいたします。  いまの御質問の最初のほうは宇宙開発委員会のほうの問題だと思います。最後のものにつきましては、お尋ねがございましたら、私のほうでも内容の件につきましてはお答えできます。
  325. 永末英一

    ○永末委員 お答えできる範囲でどうぞ答えてください。
  326. 松浦陽恵

    松浦参考人 二段の開発のことでございますが、先ほど千葉研究調整局長からお話もございましたように、わが国ですでに、この宇宙開発計画が昭和四十五年にきめられました前から開発をいたしておりました小型の液体ロケットエンジンがございました。それによりましてある程度の技術的な基礎ができていたわけでございます。ちょうどNの二段に使うのに手ごろな大きさのものでございました。したがって、これを基礎といたしまして、アメリカから技術指導を受けながら国内で開発をするということで進んでまいったわけであります。先ほど局長から説明がありましたように、この点につきましては現在順調に進んでおります。交換公文が結ばれました当時でございますが、その当時のソア・デルタ・ロケット、これに使っておりました二段エンジンより性能のいいものになるはずでございます。
  327. 永末英一

    ○永末委員 あとの二つは答えられる人から答えてください。
  328. 千葉博

    ○千葉政府委員 第一点は電波権益の問題だと思います。ポジションの問題を御指摘だと思います。この件につきましては、宇宙開発委員会といたしましてはちょっとこの権限が、いわゆる宇宙開発の推進ということが中心になっておりまして、いわゆる宇宙の利用については権限に入っておりませんので、いわゆる開発という観点から見て検討をしたということでございます。それで、この権益問題につきましては、もう御案内のとおり、宇宙平和利用委員会、これは国連の場でございますが、これでも先般来いろいろ議論になっております。したがいまして、この権益の問題につきましては、久野郵政大臣が御指摘のとおり、宇宙開発委員会としても重大な関心を持ちまして、それでこの郵政側からの電波権益の確保、それからさらには通信衛星、放送衛星の先ほど申し上げましたような意義づけ、こういったような点の説明を十分に検討いたしまして、それで今度のこの二つの衛星を特に開発する方向に決意したということでございます。  そうしますと、この第二点の、それじゃなぜ自己開発をしないのか、自分で、要するに日本でつくった星は全部みずからの手で上げる、こういった方向でやらぬのかというような御指摘だと思います。この点につきましては、従来からNロケットをベースにいたしましてこの星を上げようという線は、原則として維持することに相なっております。このたびのように二つの衛星につきましてはどうしても間に合わぬというようなことで、例外的な措置である、こういったような配慮で米側に頼もうというようなことになったわけでございます。私のほうは委員会の事務局をつとめておるわけでございますが、その委員会の検討の結果そのようになったということを申し上げるわけでございます。
  329. 永末英一

    ○永末委員 まあことばの問題だけでいきますと、権限のないものなら、別に委員会が郵政省のことを干犯をしてやったということが計画の変更になったやに決定をして新聞発表するという限りのものではないと私は思います。しかし予算作成のときもごたごたやっておられたようでございますから、それはそれとして、質問いたしました制御装置というものは、考えておられるのですか、おられないのですか。
  330. 松浦陽恵

    松浦参考人 Nロケットには、いま御質問のございました制御装置がついております。一段と二段についておるわけであります。電波で誘導するという方式をとっております。で、三段目は二段までで誘導いたしました姿勢とポジション、これを基準といたしまして固体ロケットを吹かせまして所要の軌道速度を得させる、こういうしかけになっておるものでございます。
  331. 永末英一

    ○永末委員 三段目をはっきりとわがほうでコントロールして所要の軌道に乗せるということは、不必要なんですか、どうなんですか。
  332. 松浦陽恵

    松浦参考人 三段目は固体ロケットを使っております。しかもこの固体ロケットは非常に精度の高い固体ロケットでございまして、二段が燃え尽きまして、それからさらにある一定の高度まで達したというところで三段を吹かしますと、三段は、エネルギーがその時点でちょうど燃え尽きましたときに軌道に乗るというようにできているわけでございます。したがって三段の固体ロケットには制御装置をつけなくて十分目的を達するわけでございます。
  333. 永末英一

    ○永末委員 アメリカはそういう同種類の場合、最終的なロケットの制御装置をつけておりますか。
  334. 松浦陽恵

    松浦参考人 アメリカのソー・デルタも一段が液体ロケット、二段が液体ロケット、三段が固体ロケットでございまして、このシリーズのものは三段には制御装置はつけておりません。
  335. 永末英一

    ○永末委員 このシリーズでないものについて軌道に乗せようという場合には、最終ロケットについて制御装置はつけておりますか。
  336. 松浦陽恵

    松浦参考人 特に制御装置が上段についておりますものは、衛星の制御装置、それからたとえば三段に液体ロケットを使っておるもの、こういうものにはついておるわけでございます。で、固体ロケットを使っておるものについても、姿勢の制御というようなことをやる必要があるものにはつけるものもございます。
  337. 永末英一

    ○永末委員 大蔵省の方が来ておられますが、わが国がこの宇宙開発に従事して——いま聞きましたところ、郵政省と科学技術庁関係だけでもだいぶんねらいが違うような形、そのほかいろいろな省がございますが、各省で何ぼぐらい金を使いましたでしょうか。
  338. 廣江運弘

    廣江説明員 お答えいたします。  昭和三十九年の宇宙開発推進本部発足以来四十八年度まで、わが国の宇宙開発関係予算は、一般会計、特別会計とを合わせまして総額約千二百六十二億円、また、そのうち宇宙開発事業関係予算は、四十四年の発足以来総額七百十三億円となっております。
  339. 永末英一

    ○永末委員 この宇宙開発というのは雲の上の話でございますので国民はよくわからぬわけですね。わからぬわけでございますからいろいろ御苦労はございましょうけれども、伝えられるところによれば、来年度は五百億とか六百億とか使おうじゃないかという案もあると聞いておるわけでございます。すでに現実に支出決定されたものは千二百億円を突破しておる。相当な金額でございまして、国民としましてはやはり、この計画が順調だといわれるので順調かもしれませんが、郵政省の要求をすら満足し得ないような状態で開発が進んでおる。その速度については、やはり国民としては重大な関心を持たざるを得ない。しかもまた、いまのお話を伺っておりますと、だれがきめたのか少しもわからぬのですね。郵政省はポジションと言うが、ポジションをきめるかどうかということは、利用ということはあまり宇宙開発委員会の権限ではなさそうな話でございます。しかし私は、日本の国益というのは、もし情報化社会にこの種の衛星というものを使ってやることが必要だというのであるならば、ポジションを獲得するということは重要な国益の問題だと思うのです。それはやはり政府がどこかでぴしっと統合的に考えてやっていただかなくちゃならぬ問題だと思うのです。  アメリカはなおこういう実験、実験と重ねておる段階でしょうか、それとも、通信についてはここまで実用、あるいはまた放送についても、これぐらいの大きさの星をいつ打ち上げるという計画で進んでおるか、そういうことがございましたらちょっと承っておきたい。
  340. 園山重道

    ○園山説明員 御承知のようにアメリカにおきましては非常に技術は進んでおりまして、国際通信、インテルサット4号といったものが七百キロの衛星でございまして、通信用としてはすでに実用になっております。しかし放送用につきましては、今度来年の四月でございますか、ATSのFという衛星を上げまして、いろいろな実験を行ないます。その中の一つとして放送実験を行なうというように聞いております。したがいまして、放送に関しましてはまだ完全な実験段階、通信につきましては、国際通信用としてはもう非常に大きなものが実用されておりますけれども、ヨーロッパ、カナダ、イタリア等が現在通信実験衛星として計画いたしておりますのは、郵政省が考えておりますものとほぼ同じ規模で同じ時期をねらったものでございます。
  341. 永末英一

    ○永末委員 放送実験衛星の重さはどれぐらいですか。
  342. 園山重道

    ○園山説明員 日本の放送実験衛星は約三百キロということを目標にいたしております。
  343. 永末英一

    ○永末委員 いまおっしゃったアメリカで計画されていると伝えられるものは……。
  344. 園山重道

    ○園山説明員 申し上げましたアメリカのATS−Fというのは約九百キログラムでございます。
  345. 永末英一

    ○永末委員 いままで使った金はわかりましたが、あとどれぐらいの金を何年ぐらいの間にかけようというのが科学技術庁の考えですか、実用するまで。
  346. 千葉博

    ○千葉政府委員 いわゆるN計画と称するものは全体で二千億程度でございますが、本年度まで含めての使用実績は約六百七、八十億だということでございます。  それから、先ほどの先生のいわゆる外資支払い分でございます。いまわかってきまして、四十七年度までに約二千九百万ドルだということでございます。
  347. 永末英一

    ○永末委員 アメリカに支払われたのは二千九百万ドル。三千万ドル弱。あっちは一億ドルと言ったのは、一億ドルの積算する根拠が何かあったんだろうとぼくは思うのですね。詳しくは知りませんから伺ったのですが、そんな話はないと、こういうことでございますが、しかし、郵政省は、先ほど伺いますと、三年ぐらいの計画期限というものは考えておる、あとは考えていない、こう言う。しかし、いずれにいたしましても、それが五十一年にぶち上がれば日本がそのポジションを獲得したことになる。ところで、そのあとは考えてないというのですが、科学技術庁なり宇宙開発委員会はそのあとはもうめんどうは見ないのですか。郵政省は上げて、おれは頼まれたんでアメリカに上げてもらったが、上がったらあとはおれは知らぬ、こういうのですか。それともやはり何かコミットしてやらなければならぬとお考えなんですか。利用計画についてはおれは権限がないから、あれは郵政省の星であって、わしは知らぬ、こういうことなんですか。ちょっとそれを伺っておきたい。
  348. 千葉博

    ○千葉政府委員 実は通信放送衛星の前に気象衛星がすぐに問題となっているわけでございますが、これにつきましてはいま運輸側と話しまして、いわゆる上がった星、これを所有し、管理するのは科学技術庁がやると、ただし、そこで得た情報を地上にとって、それを気象の写真にいたしますが、それから先のところでございますね、とってそれを利用するところ、これは気象庁側、こういったようなことでいま話を進めております。  通信放送衛星につきましても、いま管理権をどうするとかいうことはまだ明確になっておりませんでございますが、気象衛星の例からいえば、これを管理し、たとえば姿勢を制御したり何かするそういったものは科学技術庁が、いわゆる事業団でございますが、やるのかなというようにいま考えております。ただしこれを実際に使って通信をするというところは郵政側というように考えられるわけでございます。
  349. 永末英一

    ○永末委員 なかなかその疑問は晴れないのでございますが、時間が相当経過をいたしておるので私はもうやめたいと思うのですが、いまのお話でも、まだこれからでわからぬというんです。しかし国民の金を使ってあることをやられる場合にどうなるのか。私はしろうとです、全然わかりませんよこんなことは。しかしぶち上げたものは管理をやはり日本国のどこかがやらねばならぬ。そうすれば寿命がある。寿命がきたものをほっておいたらこれはじゃまになるのでございまして、スカイラブ計画でぶち上がったアメリカの人の乗っている衛星が、そういうものにひっかかったかどうか知りませんが、故障を起こしているなんというようなことになると、掃除をしてくれろという要求が、もし管理責任が日本国政府にあるのなら、当然要求がある。しかしそれを掃除をする能力が一体あるのかないのか。そうしたらまたアメリカに頼むのかということも問題が起こる。これは国際政治上の問題です。これは大臣おれば申し上げたいのでありますけれども、何も百年先の話ではない、三、四年先には必ず問題になり、そのときわがほうはどうするのか。その場合に、法律に基づいて権限はここまででございますから知らぬのだというようなことでほったらかしておいて、そうして毎年の膨大な予算を取っていく、これじゃ国民は何も実態がわからないのに税金が使われている、こういうことになるのでございますから、いまの科学技術庁、宇宙開発委員会、事業団、それから郵政省、各省等々ばらばらでございますけれども、やはり政府としてはもっと一本化してやるべきだと思いまして、私研究いたしますから、あなたのほうも研究しておいてください。  きょうは時間がおそうございますので、この辺で中止をいたします。
  350. 西銘順治

    ○西銘委員長代理 次回は、来たる二十九日水曜日午後一時理事会、午後一時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時二十四分散会