○
渡部(一)
委員 お説教するわけじゃありませんけれ
ども、
日本国憲法には、
日本国民に対して非常に大きないろいろな権利が与えられております。たとえば憲法十二条には「この憲法が國民に保障する自由及び権利は、國民の不断の
努力によって、これを保持しなければならない。又、國民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」と記されております。これは憲法が個人のさまざまな自由、集会、結社、言論、出版その他一切の表現の自由を確保し、また法律の定める手続によらなければ、生命、自由を奪われることがない、刑罰に処せられることがないとか、あるいは「
現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法
官憲が發し、且つ理由となってゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。」とか、「何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに辯護人に依頼する権利を興へられなければ、抑留又は拘禁されない。」とか、「又、何人も、正當な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその辯護人の
出席する公開の法廷で示されなければならない。」とか、憲法でいっておりますさまざまな諸権利は、
わが国民及び
わが国土に住む
外国人一般に対して保障されているところであります。ところがそれが突き破られて一人が持っていかれちゃった。それが私は主権の侵害かどうかについて、主権ということばを使って議論するつもりはありません。しかしながら、こういうような乱暴なやり方で一人の人が引きずっていかれて、それに対して
日本政府が何にも抗議をしないし、声も発しないというのじゃ、私はうなずけない仕儀ではなかろうか。少なくとも
日本国憲法の精神に照らして「國民の不断の
努力によって、これを保持しなければならない。」と定めてありますとおりに、この憲法の条項を生かすためには、一人といえ
ども——たった一人の人間です、交通事故の人数なんかに比べたら、もう勘定することのできないほどの小さなたった一人の、しかも
外国の人に、
日本の国会があげて大騒ぎをすることができるような国会に成長したことを私は喜びたいと思うわけでありますが、その一人を守るために
政府はしかるべき態度をとるのが当然ではないか、こう思うわけであります。こういう基本的なところについて明瞭にされなければ、当人がどうしている、こうしているという議論に終始いたしますならば、結局
日本国民としても納得できない、国際的にも、何をやって騒いでいるのか、単に
日本人の朝鮮人いじめがまた始まったとさえ受け取られかねないと私は思うのです。
日本は朝鮮に対してはばかに強いではないか、一人さらっていったら、経済断交などと叫び立てる、中国のときはどうだったなどという議論さえ出かねないのであります。私はそれに対して、憲法を守る精神からいって、この問題に対する
政府の態度というものが堂々として韓国に表明されるべきである、そう思いますが、いかがでございますか。まず基本的な態度をお伺いしたい。