○渡部(一)委員 私は、ただいま
議題となっております
国際ココア協定並びに
麻薬に関する
協定、両
協定を
審議するにあたり、きのう、おとといからの
経緯につき、当局の
態度をただしたいと存じます。
問題は、一昨日の晩のことであります。私が当
協定の勉強会をやっておりまして、その席上、
外務省の係官が当
協定の
説明にお越しになりまして、いろいろお話を伺っておる最中、
国際ココア協定に関しては暫定
措置がとられた旨のお話がございました。私は、このような
国会審議の最中であり、
参議院において議決が行なわれ、衆議院において議決が行なわれない中間点において、暫定
措置をとられた旨
国会に報告をなされるのが当然だと考えました。
しかし、その翌日に至り、各党委員の様子を聞いて一驚したわけでありますが、社会党の同僚議員は、その日朝廊下の立ち話でこれを聞き、民社党の委員は、
理事会の席上これを聞き、共産党の委員にはついに連絡が行なわれなかった旨伺いました。また、おそるべきことは、自民党の
理事であり同僚議員である方に対しては、
委員会の席上で初めて教えられたというような実情でありました。
そのときに、
外務委員会において、
外務委員長から、暫定
措置をとることに関して十日ばかり前に
外務省からお話があった旨御
発言がありましたが、十日前といたしましても七月十日前後であり、暫定
措置がとられた六月三十日から実に十日も過ぎてのことであります。しかも、私の伺ったところでは、省議で決定されたのが六月二十五日であり、閣議で決定されたのが六月二十八日である。こういうような形で
暫定適用の問題が行なわれたということに関して、これでよいのかという感じを強く持つわけであります。先ほどから御弁明があったわけでありますが、こうしたやり方というものに対して、私はきわめて遺憾の念を持っているものであります。
日本国憲法の第四十一条、
国会の、ことに立法権に関する
規定は次のようにしるされております。「國會は、 國權の
最高機關であって、國の唯一の立法
機関である。」この
規定は、明らかに
国会が国権の
最高機関であることを定めております。そして、行
政府といえ
ども、この国権の
最高機関であり、国の唯一の立法
機関である
国会の
審議に対して深い敬意を表さなければならぬことは、言をまたぬところであります。
また、日米原子力
協定審議中、第七十三条、内閣の職務に関する項につき種々の討論があったわけでありますが、その項を読み上げてみますと、「内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。」「一 法律を誠實に執行し、國務を總理すること。」「二 外交關係を處理すること。」「三 條約を
締結すること。但し、事前に、時宜によっては事後に、國會の
承認を經ることを必要とする。」と明示されているわけであります。
私が原則的なことを申しますのは、明らかにこの項に関し、
条約を
締結することに関し、交換公文の取り扱いが不適切だというので、日米原子力
協定の
審議中、この交換公文の取り扱いを、今後
条約に類するものあるいは
条約に類しないものとを分けて、明らかな将来の方途というものが定められなければならぬ旨、当
委員会において論議が尽くされたところであります。しかし
ココア協定については、これは
条約であり、明らかに内閣の職務に関していうならば七十三条の三号「條約を
締結すること。」の範囲に入るわけであります。「但し、事前に、時宜によっては事後に、國會の
承認を經ることを必要とする。」というのは、事前に行なうのが原則であり、「時宜によっては」というのは、どうしても時間的に見てあるいはその他のいろいろな
事情で事後にやったほうが適切な場合には事後にという
意味でありましょう。
そうしますと、本
ココア協定の
審議中に
暫定適用をこうした形で行なわれたことに対し、少なくとも
委員会に何らの報告も行なわず、当
委員会の
委員長、
理事、
理事会、
委員会と、いずれに対してもまるでだまし討ちのごとき処置を行なったことに対して
外務省はその
責任を負わねばならぬと私は思うわけであります。
しかも不愉快なことは、当
協定の
審議にあたり、担当局である経済
局長はこの席に在席せず、一回の
説明も行なわなかったことはますます不当であります。しかも、日米原子力
協定の
審議中、交換公文の問題をめぐり問題が起こったにもかかわらず、また全く類似のと言いたいところでありますが、類似というよりもむしろこの問題を全く新たに引き起こし、何らの反省がないばかりか、さらにひどい同様ケースの事件を起こしたということは、私は単なる謝罪では済まぬ大きなきずではなかろうかと存ずる次第でございます。これは
国会軽視といわれてもまことにやむを得ないのではないかと思うわけであります。しかも先ほどの御
説明を拝聴いたしておりますと、私がとうてい納得しがたいことは、
西田経済局次長は、開発途上国がこの
条約に深い関心を持っており、かつ開発途上国には重要性があり、これを
わが国が
批准しないことによって本
協定を破壊しないようにしたいという気持ちからやったのだという旨御
発言がありましたけれ
ども、それは明らかにこのような
国会の
審議権を侵した問題に対する単なる弁明であって、たとえて言うならば、刑事訴訟被告人が有罪なるを認めつつも情状酌量を求めるときの表現と全く同じものであります。したがいまして弁明にはならぬのであります。
不行き届きということばで一括して言われましたけれ
ども、何が
不行き届きなのかもどうやらわかっていらっしゃらない旨がまことに濃厚でありまして、私は先ほどからの御弁明、御
説明を伺えば伺うほどその疑いを濃くするものであります。したがって、私は深い遺憾の意を表しつつ、
外務委員会理事会においてこの問題を提起いたしましたが、その
外務委員会の
理事会の席上
藤井委員長が、これは明らかに
外務省の瑕疵である、きずである、こういうきびしいことばをもって評されにことを記録にとどめておきたいと思うわけであります。そしてこのような失態というものを
——失態というよりも
条約自体の取り扱いに対してここまで妙なやり方をしたという点について一体どりお考えになっているか、もう一回経済局及び担当
大臣の御
発言を求める次第であります。