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1973-06-29 第71回国会 衆議院 外務委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月二十九日(金曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 藤井 勝志君    理事 石井  一君 理事 西銘 順治君    理事 福永 一臣君 理事 岡田 春夫君    理事 堂森 芳夫君 理事 金子 満広君       稻葉  修君    加藤 紘一君       小林 正巳君    宮澤 喜一君       山田 久就君    石野 久男君       三宅 正一君    柴田 睦夫君       渡部 一郎君    永末 英一君       瀬長亀次郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  田中 角榮君         外 務 大 臣 大平 正芳君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      前田佳都男君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      茂串  俊君         科学技術政務次         官       伊藤宗一郎君         科学技術庁原子         力局長     成田 壽治君         外務政務次官  水野  清君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省経済局長 宮崎 弘道君         外務省条約局長 高島 益郎君         外務省条約局外         務参事官    松永 信雄君         外務省国際連合         局長      影井 梅夫君  委員外出席者         外務委員会調査         室長      亀倉 四郎君     ————————————— 委員の異動 六月二十八日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     粕谷  茂君   山田 久就君     床次 徳二君 同日  辞任         補欠選任   粕谷  茂君     加藤 紘一君   床次 徳二君     山田 久就君     ————————————— 本日の会議に付した案件  原子力の非軍事的利用に関する協力のための日  本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を  改正する議定書締結について承認を求めるの  件(条約第一二号)      ————◇—————
  2. 藤井勝志

    藤井委員長 これより会議を開きます。  原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定改正する議定書締結について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡部一郎君。
  3. 渡部一郎

    渡部(一)委員 先日の当外務委員会における審議の過程において、私は、当日米原子力協定改正にあたり、その中間において交換公文が提出され、内容の重大な改定が行なわれたにもかかわらず、当委員会への御報告もなく、いわんや承認その他の御相談もなく推移したことについて、深い遺憾の意を表明いたしました。と申しますのは、現在の日本国政において、国会は国権の最高機関であり、国政審議権は第一義的に保障されるべきものであります。しかるに政府は、この交換公文の取り扱いにあたり、明らかにそのような慎重な配慮を行なうことなく、恣意的にこの交換公文の公開あるいは当委員会への報告を怠り、そして審議権に対する一方的な侵害を行なったおそれのあることは、きわめて不適切であったと思うわけであります。したがいまして、この件に関して適切な説明がない限り、審議の続行について重大な障害になることを私は指摘いたしました。この件に関してまず外務大臣の御見解を伺いたいと存じます。
  4. 大平正芳

    大平国務大臣 日米原子力協定第九条に定める濃縮ウラン供給ワク拡大に関する交換公文に関して、国会審議権を十分尊重すべきであるとの渡部委員の御指摘でございます。国会審議権を十分に尊重すべきことは政府の当然の責任と心得ておるわけでございますが、本件交換公文に関する政府措置が適切でなかったことは遺憾でございまして、今後この種の交換公文その他国際約束締結するにあたりましては、この点に十分留意して、かかることの起こらないよう処理してまいりたいと存じております。
  5. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ただいまの外務大臣の御発言は重大な決意を披瀝されたものだと思いますが、もう少し内容にわたりましてお話を進めたいと存じます。  一つは、交換公文その他国際的諸取りきめに関し、これを国会あるいは当委員会報告し、採決を求められた事例とそうでない事例とがあると存じます。それについて外務省の御説明を求めます。
  6. 松永信雄

    松永政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘のごとく、現在まで交換公文の形式をとりました国際約束、その締結について国会承認を求めますために国会に提出いたしました事例が若干ございます。——補足いたします。三件現在までにございまして、日米通商条約の留保に関する交換公文、それから第二番目が特殊核物質の賃貸借に関する日本国政府アメリカ合衆国政府を代表して行動する合衆国原子力委員会との間の協定第一条の特例に関する交換公文、第三番目に日本国と大韓民国との間の紛争の解決に関する交換公文、この三件を独立の案件といたしまして国会の御承認をいただくために提出いたしております。
  7. 渡部一郎

    渡部(一)委員 今度は、かけないほうはどういうのがありましたか。
  8. 松永信雄

    松永政府委員 それは通常行政取りきめと称しておりますものでございますが、たとえば貿易取りきめでございますとか、円借款に関する取りきめでございますとか、あるいは各種技術協力センター設置に関する交換公文等による取りきめ、あるいは相互査証免除に関する取りきめ、そういったたぐいのものがございます。
  9. 渡部一郎

    渡部(一)委員 この国際的な約束交換公文等を含むこれらの取りきめに関し、あるものは国会、当委員会に提出され、あるものは提出されない、その基準がございますか。
  10. 松永信雄

    松永政府委員 一般的な基準考え方といたしまして、その締結によりましてわが国が新しい法律的な義務を負うもの、あるいは財政負担を負いますもの、さらに相手国との関係におきまして非常に政治的な重要な意義が認められるもの、こういったものはすべて国会に提出いたしまして、御承認をいただくということにいたしております。
  11. 渡部一郎

    渡部(一)委員 しかしただいまの御説明にもかかわらず、安保条約第六条に関する交換公文のごときは、その内容、その外交問題に与える重要性、予算に対する重大な影響性等を考えましても、当然他の交換公文をはるかに上回るものでありますが、それがかけられていないわけであります。これは明らかに問題点を多く含んでいると思われるわけであります。したがって、いまの外務大臣の御説明にありましたことばを引用するならば、政府措置が適切でなかったのは、これら交換公文その他国際約束すべてに関して扱いの原則が明確でなかった点にあろうかと思います。今後こうした問題を明確にするため、御研究、御検討なさるおつもりがありますか、それをお伺いします。
  12. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほどお答え申し上げましたとおり、国会審議権を尊重いたしますことは政府の厳粛な義務でございまして、それをそこねないように重々配意いたしまして、そごのないようにいたしたいと思います。
  13. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それから国会審議権を確保するにあたりましては、日本国憲法条項の中で、明らかに条約に関しては国会が第一義的にその承認を行なうことが定められております。しかし条約に類似する各種交換公文あるいは政府間声明あるいは政府間協定等のたぐいが最近増加しつつあります。アメリカ政府においても、最近ニクソン大統領を中心とする大統領府の手によって各種の国際的諸取りきめが、条約の形をとらずして独断専行されることについて、アメリカ上院外交委員会においては大きな不満が巻き起こっております。それと交渉する日本政府として、当然条約の名を冠しない、しかし実質的には条約の色合いを濃く持つものが取りきめられるという形が増加しつつあるわけであります。これはよい日本議会制民主主義を、アメリカと交渉するつど、次第次第に実質的に崩壊させていくものであるという警戒心を持つべきだと思っておるわけであります。  したがって、日本国憲法外交内容的な意図というものを理解しつつ、国会審議権を守るためには、今後交換公文その他国際的約束に関しては、十分国会及び当外務委員長等に対して御相談あるいは御報告等があってしかるべきである。少なくとも御報告もなし、御相談もなし、あるいは承認の提示もないような妙な外交的処置を行なうべきでない、私はかように思いますが、いかがでございますか。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 国会で御承認をいただきました法律条約等で、政府に授権された範囲内におきまして政府が取りきめをやるというような場合はあるわけでございますけれども、その場合におきましても、国会審議にあたりまして、そういうことは十分審議途上素材として提供されて、審議にお差しつかえがないように配慮いたしますのは行政府としての立場であろうと思うのでございまして、そういうことについていま渡部委員から求められたことと思うのでございまして、そういうラインで十分配慮してまいりたいと思います。
  15. 渡部一郎

    渡部(一)委員 では、本協定の、先日問題になったところのあれでありますが、「それぞれの法律上及び憲法上の手続に従って合意される量」というところが問題の個所でございました。「それぞれの」というのは、日米間の「法律上及び憲法上の手続」とは何でございますか。
  16. 松永信雄

    松永政府委員 この規定は、協定改正という形式的な手続をとることなく供給ワク拡大を決定し得るということを定めたものと考えておりますが、そこの「それぞれの法律上及び憲法上の手続従つて合意される」と申しますところの「それぞれの」が日本及びアメリカということは当然であろうと思います。したがいまして、日本の「法律上及び憲法上の手続」とは具体的に何であるかということになりますが、この点につきましては、これはこの字句からだけでは出てきませんで、それによって合意されるべき内容が何かということによってきまってくるんだろうと考えております。(発言する者あり)補足して申し上げますが、わが国の場合につきまして申しますならば、内閣法なり外務省設置法というものに基づきまして、外務大臣処理をすべき権限に属する事項であれば、その権限所掌事務範囲内において処理をするということであろうと存じます。
  17. 渡部一郎

    渡部(一)委員 御答弁が明確を欠いているように私は存じます。  では、日本のほうがよくわからないなら、アメリカのほうをひとつ伺いましょうか。アメリカの「法律上及び憲法上の手続」とは何ですか。
  18. 松永信雄

    松永政府委員 米側につきましては、供給ワク拡大ということによって、各国に対します濃縮ウラン供給状況が変化することになる関係から、アメリカ原子力法規定がございまして、この供給ワク拡大をいたす場合には上下両院原子力合同委員会に三十日間さらすという手続をとるべきことが定められております。それがアメリカ国内法上の要件であると考えております。
  19. 渡部一郎

    渡部(一)委員 また、アメリカ憲法上はどういう規定がありますか。
  20. 松永信雄

    松永政府委員 アメリカ憲法上は特に規定はございません。
  21. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうすると、日本法律上、そのアメリカ原子力法のような法律はありませんか。
  22. 松永信雄

    松永政府委員 この問題につきましての要件を定めている法律規定はないと考えております。
  23. 渡部一郎

    渡部(一)委員 日本国憲法上の手続としてはどういうものがありますか。——ありませんか。
  24. 松永信雄

    松永政府委員 憲法第七十三条の規定がございますが「内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ」とございまして、その第三号に「條約を締結すること。但し、事前に、時宜によつて事後に、國會承認を経ることを必要とする。」という規定がございます。
  25. 渡部一郎

    渡部(一)委員 あなたの引かれたその条項は、おたくにとってすごくまずいのじゃないですか。事前及び事後承認を受けましたか。
  26. 松永信雄

    松永政府委員 失礼いたしました。その第二号に「外交關係を處理すること。」ということがあるわけでございます。
  27. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そのそれぞれの両国政府が「法律上及び憲法上の手続」において、日本法律上に手続がない、アメリカ側憲法上の手続がないならば、なぜ「それぞれの」と併記して「法律上及び憲法上の手続」というふうに併記するのですか。よけいなことが書いてあるわけでしょう。日本憲法上の手続及びアメリカ法律上の手続に従ってとなるべきではありませんか。これはどういうことを意味しているのですか。
  28. 松永信雄

    松永政府委員 この「法律上及び憲法上の手続従つて云々と申しますのは、抽象的に書いてあるわけでございまして、それぞれの国の法体系に従って行なうということであろうと思います。で、日本につきまして法律上の要件がないということを先ほど申し上げたわけでございますけれども、これは法律的にはあり得るわけでございますから、そういうものがございますればそれに従うべきことは当然のことだろうと思います。
  29. 渡部一郎

    渡部(一)委員 この問題に関しまして各党委員よりおのおの、先刻の理事会において関連質問したいとの申し出がございましたので、私は、この席を譲りたいと存じております。
  30. 藤井勝志

  31. 石野久男

    石野委員 きょう例の四十七年二月二十四日ワシントンでお話し合いのあったといわれる交換公文を見せていただいたわけです。この交換公文内容で二、三お聞きしたいのです。その前に、いま渡部委員から質問のありました「それぞれの国の憲法上及び法律上の」という、やはりその憲法問題ですが、日本では第七十三条の二号、三号でそれぞれ外交関係処理することや条約締結することについてのことが規定されてあって、特に国会承認を経ることを必要とするということが条約上の問題として出ておるわけですね。この交換公文はこの憲法上の問題とは全然無関係処理されるような内容のものなのでしょうか。どうですか、その点、外務省のひとつ見解を聞いておきたい。
  32. 松永信雄

    松永政府委員 本件交換公文は、前回御説明申し上げましたように、政府といたしましては政府責任において締結する取りきめとして締結をいたしております。
  33. 石野久男

    石野委員 それではこの条約の第九条に「それぞれの法律上及び憲法上の手続従つて合意される量をこえてはならない。」という、このやはり九条A項に書かれておる「十六万一千キログラム又は両当事国政府の間でそれぞれの法律上及び憲法上の手続に従って合意される量をこえてはならない。」というこの「十六万一千キログラム」と、それから「憲法上の手続に従って合意される量」というのとの関係はどういうふうになるんですか。
  34. 松永信雄

    松永政府委員 先ほど申し上げましたように「十六万一千キログラム又は両当事国政府の間でそれぞれの法律上及び憲法上の手続に従って合意される量」というのが二つ並んでいるわけでございます。その場合にどちらが、かりにあとのほうの「合意される量」というのが定まりました場合に、どちらがこの協定上は適用されるかという御質問でございますれば、それはやはり新しく取りきめられた、合意された量に従うということになろうと思います。
  35. 石野久男

    石野委員 新しく取りきめられて合意された合意の量というのは、それはどのことをいうんですか、この旧法においては。
  36. 松永信雄

    松永政府委員 そのことがただいま提出してございます交換公文によって合意されているわけでございます。
  37. 石野久男

    石野委員 そうすると四十三年にきめたこの協定は、四十七年二月に交換公文をきめることを予想してこれは書いてあるのですか。
  38. 松永信雄

    松永政府委員 具体的にこの四十七年二月の交換公文を、その締結当時においてすでに予想していたということではないと存じます。その後の情勢の進展の結果そういう必要が出てきたので、この協定規定を受けて合意をしたということであろうと思います。
  39. 石野久男

    石野委員 私まだ当時の議事録を調べてみなければわかりませんけれども、当時十六万一千キログラムというものは、昭和四十七年二月に取りきめられるような、そういうものを予想してのものではなかったろうと思うのです。なぜなら前の協定は、協定案文にも示されてありまするように、協定案文第七条に示されてあるように、この協定は「この協定附表に掲げる動力用原子炉計画において燃料として使用するための同位元素U−二三五の濃縮ウラン日本国のすべての必要量供給する。」こうあるのであって、この付表規定されてある炉以外のものはこの協定には書いてないはずです。ところが四十七年の交換公文はそれよりもたくさんの炉が入っているわけですね。ですから、旧法はそういうことは予想してないはずです。そして旧法で予想してない炉について第九条がそんなことを書くはずがないですね。ちょっと答弁が違うんじゃないですか。
  40. 松永信雄

    松永政府委員 第九条の規定は、将来の必要が生じた場合にその限度、供給ワク拡大することを法律的には予想している規定であろうと思います。  そこで第七条のほうの規定付表に掲げたところの必要な濃縮ウラン供給するということを定めておりますけれども、この付表はその第七条A項の末段に「附表は、第九条に定める量の制限に従うことを条件として、両当事国政府同意により、この協定改正することなく、随時修正することができる。」と定めております。したがいまして、供給ワクが増大されますれば、その範囲内におきまして付表の修正が行なわれるということを予想しているわけでございます。
  41. 石野久男

    石野委員 第七条はいまお読みになったように、「附表は、第九条に定める量の制限に従うことを条件として、両当事国政府同意により、」「第九条に定める量の制限に従うことを条件として、」政府権限を与えられるのですよ。そうすると、その第九条に定める量と四十七年二月に交換公文の行なわれた炉並びにその所要の量というものは同じですか、その制限の内部になりますか、ないようじゃないですか、越えているのじゃないですか。
  42. 松永信雄

    松永政府委員 第七条に「第九条に定める量」とございます。  そこでその「第九条に定める量」というのは、先生先ほど御指摘がありましたように「十六万一千キログラム又は」これこれの量とございます。ですから、いずれかの量、その双方を含んでいると存じます。
  43. 石野久男

    石野委員 それではその量はどのくらいの量なんですか。
  44. 松永信雄

    松永政府委員 両政府間で合意される量でございますから、特定の具体的な量をここでは定めていないと存じます。これはいまお手元に差し上げてあります交換公文によりまして三百三十五トンのワクを設定しているわけでございます。
  45. 石野久男

    石野委員 そういう御都合主義だとするならば、第七条のA項は「この協定附表に掲げる動力用原子炉計画において燃料として使用するための」と、こうあるのですよ。昨年の二月に取りかわされた交換公文は全部で炉は幾つあるのでしょうか。そうして旧法に基づくところの炉の数は幾つか。そうしてそれがどういうふうに符合するか、ひとつ政府見解を聞かしてください。
  46. 成田壽治

    成田政府委員 四十三年七月の当初の協定による別表の炉は十三基でございます。で、四十七年の二月の二十四日の付表改定書簡交換による炉は二十六基、十三基ふえて、ウラン二三五の量にしますと、百五十四トン、これに研究炉が七トン入ります。百五十四トンプラス七が、三百二十八トンプラス七というふうになっております。
  47. 石野久男

    石野委員 現協定によりますと、いま局長が言われたように炉の数はわずかに十三なんですよ。ここではちゃんと付表に掲げる炉、こう書いてあるのであって、そしていわゆる「その他の」ということは、私はおそらくその他実験用とかなんかに規定されている量がありますから、そういうものを「その他」というふうに読むべきだろうと思うのです。昨年の二月に交換公文で入れられた約二十に及ぶような、付加されるような炉のことがこの協定の「その他」にはないのだと思うのです。そういう拡大解釈をやっていくということになると、問題がますます混乱しますよ。四十三年に取りかわされた協定というものはそういう膨大なものではない。私も当時いろいろ審議に入っておりまして、この十三の炉について論議をかわしたわけです。そして百六十一トンというものについて、そんなに大きな量を縛るべきではないという発言を私はしておるわけですから、いまここで出てきているのは、今度出ている炉と前の付表とのチェックをしてみてごらんなさい。このチェックでいきますと、たとえば計画中の九州第二号なんというのは、前の欄ではいわゆる計画中にずっと入っていたやつがいまもまだ計画中だし、建設中というのはその後前の表で九つ出ておりましたが、その九つのほかに六つか七基ほど加わっておりますよ。全然変わっているのですよ。ですから第九条による「又は」というのは、こういう当時きめられた炉の倍以上に及ぶものをここでは規定したということ、そういう答弁はなかったですよ、当時政府考え方は。そんなかってなきめ方をされるとちょっと困るんだ。答弁が違うんじゃないですか。
  48. 成田壽治

    成田政府委員 研究炉等の必要なウラン濃縮は百十六万一千キログラムの中に七トン入っております。したがって、「又は」以下は、これは当時この昭和四十三年の改定協定をつくったときは、やはり将来必要な場合の増量の場合の手当てとして考えておったわけでございます。
  49. 石野久男

    石野委員 そうすると原子力局もこの「又は」というのは、昨年の交換公文で出した約二十七基、ここに付表として出ておる。この当時より増加したものは全部「又は」ということで解釈しておった、こういうことですか。
  50. 成田壽治

    成田政府委員 四十三年協定をつくりましたときはどのぐらいの増量があるかというような具体的な見通しはもちろんなかったのでありますが、将来必要な場合はこの「又は」以下の規定によって炉の数あるいはウラン二三五の数をふやしていく、そういうような考えでこの「又は」以下ができておるのであります。
  51. 石野久男

    石野委員 わかりました。「又は」というのはこういうものを予想しておったとおっしゃられるならば、それじゃお尋ねしますが、新しい交換公文によりますとこういうふうに書いてありますね。「協定第九条Aにおいては、」云々と書いて、「十六万一千キログラム又は両当事国政府の間でそれぞれの法律上及び憲法上の手続に従って合意される量をこえてはならないことが規定されています。本使は、同条の規定に従い、同条Aにいう同位元素U−二三五の濃縮ウラン中のU−二三五の調整された純量の移転に関する量の制限を三十三万五千キログラムに増大することを日本国政府に代わって提案する光栄を有します。」アメリカがこういってきているのですね。これはアメリカが、こういうふうにこえてはならないことが規定されておりますが、アメリカのほうは日本国政府にかわってこのことを提案いたします、こういうふうに向こうからいってきているわけですよ。ですからこういうふうになってくると、「貴国政府にとって受諾しうるものであるときは、この書簡及びこの提案同意する閣下の返簡が」云々ということがあって、「効力発生のための法律上及び憲法上のすべての要件を満たした旨の書面による通告を受領した日に」と、こうあるわけですね。この「法律上及び憲法上のすべての要件を満たした」ということの中に国会承認の問題をわれわれは必要と思うのだ。政府はその必要がないという考え方交換公文に対する御返事をなさったということですか。
  52. 松永信雄

    松永政府委員 ただいまお読みになりました書簡日本側から発出された書簡でございまして、これは米国駐在牛場大使から国務長官あてに発出された日本側書簡でございます。
  53. 石野久男

    石野委員 私が読み違いしておった。確かにそうだ。日本側から出したものですね。日本側から出したものについては、アメリカ側からこういうものは提案があったのか、どっちから出したのか知りませんけれども、それにしてもアメリカ側日本に対して、法律上及び憲法上のすべての要件を満たした旨の書面による通告を受領したときに効力を生ずるということを非常にうれしく思います、こうあるわけだから当然向こうから同じような提案があったのだろうと思います。ですから、そこで問題は、政府が昨年の二月二十四日にワシントンで牛場大使がこのものをやるときには一切の法律上、憲法上の要件を満たしたという理解によって交換公文を取りかわした、そういうことですね。そうすると、この案件については国会審議は不必要だという考え方だったわけですな。
  54. 松永信雄

    松永政府委員 ただいま御指摘ございましたように、この書簡の中で日本政府アメリカから、アメリカ法律上及び憲法上のすべての要件を満たした旨の書簡を受け取ったときに効力を発生するということが書いてございます。この法律上、憲法上の要件と申しますのは、具体的には先ほど申し上げましたようにアメリカ原子力法に定められている要件でございます。日本側につきましては、先ほど申しましたようにこの取りきめ自体は政府責任において処理されるべき取りきめであるということで処理されております。
  55. 石野久男

    石野委員 そうすると問題になりまするのは、四十三年の段階でこの協定を結ぶときに、われわれは国会審議をした。その審議のときに百六十一トンという量についてもあるいは炉についてもいろいろな角度で政府の意見をただした。そしてそういう大きい量をアメリカに一方的に締めつけられるような形の協定をすべきでないということをわれわれは言ったわけですよ。そしてその量目については決して少ないのじゃない、むしろ多いのだ、すべての炉に対する全量をこれで締めつけて軽水炉をそれで縛りつけるという内容があるわけですから、われわれはそういうことでよくないということであった。それでそういうことを国会では審議をしたわけですから、皆さんがもし国会審議にかける必要がないというのならば、協定自体かける必要ないのですよ。いまここで審議する必要ないわけですね。交換公文ではもうすでに、あなたこの協定交換公文付表になるものをここに出しておりますけれども、協定改正というけれども、協定改正内容は何であるかといえば、この炉について必要なウラン燃料を確保するということが目的なんですよ。これを除いてしまえば協定なんか不必要なんですよ。しかもその量目については交換公文でいままできまったというのならば、何も協定を本委員会にかける必要はないんじゃないですか。だからそこでは説明のしかたに問題があるのではありませんか。もし参事官がそういうふうにおっしゃるのならば、率直にいってこの協定は本院においてはそんなに急ぐ必要も何にもない。あなた方が交換公文でやったんだから、われわれはもう少し疑義をただすように——自民党の皆さんからはいろいろな催促もございますし、政府からも催促があるけれども、あなた方が交換公文だけでやりとりができるという理解ならば、何も本院でそんなに急いでやる必要はない。
  56. 松永信雄

    松永政府委員 第九条の規定につきまして、政府側は将来それが必要に応じて増量をされることがあるということを含めているというふうに解釈してきております。しかしながら先ほど大臣から申し上げましたように、この問題は確かにいま御指摘がありましたごとく、協定内容の非常に重要なものに触れる、実体的に協定内容を変えるものであるということ、そのことは十分私どもも了解できるわけでございます。したがいまして国会審議権を十分に尊重するという観点から、今後は十分検討いたしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  57. 石野久男

    石野委員 もし審議が必要とするならば、九条のA項にあるこの「又は」というこの解釈はきわめて重要なんですよ。その「又は」というのは、将来まだこれよりも三倍にも四倍にもなるものがみな「又は」になるのでしたら、この協定の意味がなくなってしまうんじゃないか。審議する必要も何にもないじゃないか。これは「十六万一千キログラム」という量目を出さなくたっていいじゃないか。「又は」という解釈は、これは科学技術庁もそういう解釈のようですが、外務省も科学技術庁もそういう解釈をするのでしたら、この「又は」というのはもう少し詰めなければだめですよ。当時審議の過程ではそういうふうには理解してなかったと思うのですよ。そんな拡大解釈をされるようだったら非常に重大ですよ。もう少しこの「又は」についての政府見解をしっかりとしてほしいと私は思う。
  58. 松永信雄

    松永政府委員 現行協定国会で御審議をいただきました際に、政府側からはこの第九条の規定につきまして、将来政府間の取りきめによって増大することを含めているという趣旨の御説明は申し上げております。ただその点につきまして、先ほど申し上げましたように協定の非常に重要な内容に触れるものであるから、国会審議権尊重という立場から、今後は十分にその点はいろいろな問題を含めて検討してまいりたいと思っているわけでございます。
  59. 石野久男

    石野委員 慎重に審議してもらいたいという意味はわかるのですけれども、しかしこの協定の中の「又は」というものがそういう拡大解釈をされるとするならば、これはたいへんなことですよ。前の協定では百六十一トンですよ。今度は三百三十何トンになるわけで、付表だけでも三百二十八トンですよ。そうですね。だから倍以上になるのでしょう。そんな倍以上になる問題が、つけ足しのような「又は」の内容だとするなら本文なんか何の意味もなくなってしまうんじゃないですか。ちょっとそれは拡大解釈が過ぎるんじゃないですか、便宜主義に過ぎるのと違いますか。そしてしかも皆さんの協定文の中の説明書を読んでみると、あとの(参考)のところにこういうふうに書いているのだ。「この取極は、わが国原子力発電の進展の結果、より多量の濃縮ウラン供給を確保する必要が生じたため、」云々と書いて、そうして「U−二三五の調整された純量の移転に関する量の制限を三三五トンに増大すること、及びわが国濃縮ウラン動力用原子炉計画を掲げている同協定附表を修正し、新附表によって置き替えることを定めたものである。」これが交換公文内容ですよ。そうしてしかもこの付表は前の協定では協定内容になっておったわけですね。これは協定の中の内容なんですよ。ところが協定の中の付表をはずして、今度交換公文付表にしているのですよ。ちょっとかって過ぎる。これは国会を無視している行為ではないでしょうか。協定内容であったものを交換公文内容に置きかえてしまって、協定付表はほごにしてしまっている。そんなことを国会にもかけないで政府がかってにやれる、それが委譲された権限だということであるとすると、これは国会無視もはなはだしいですよ。これはちょっと簡単には、はいそうですかというわけにはいきませんよ。
  60. 松永信雄

    松永政府委員 協定上は供給ワクの増大を合意することができるというように書いてございまして、さらに第七条の規定で、先ほど申しましたけれども、両政府同意してこの付表を修正することができると書いてございます。この供給ワク拡大というものと付表の修正というものとは若干違う取り扱いになっておりまして、現在この付表は、政府間の同意したところに従ってこの付表自体が修正されているわけでございますが、このやり方につきましては、たとえば航空協定付表に航空路線が掲げられておる、その路線を政府間の合意によって修正するということが通常認められております。その政府間の合意によって協定付表にあります路線を変更しているというような例は、実は幾らでもあるわけでございます。ですから、この付表はそのままにしておいて別の付表合意しているというのではございませんで、この付表自体を修正しているわけでございます。その条件は、第九条に掲げるところの供給ワク範囲内においてという条件協定上はあるわけでございます。
  61. 石野久男

    石野委員 だから第七条は第九条におけるところの制限ワク内で、こうあるわけですよ。ところが量の制限というのは百六十一トンとわれわれは理解しておったんだけれども、今度それを修正——その量を修正するのかどうか知らないが、私はその量の範囲内において移転の量を計算するというように思っておったんだけれども、政府はその量自体を変えてしまうのだ。制限ワクであると思っておった量を倍に変えてしまったわけだ。そうしてしかも協定内容である付表を今度交換公文付表に置きかえてしまっているのですよ。これはもちろん国会審議の結果そうしたなら私は文句を言いません。だけれども、国会協定文をつくって、その付表というものはちゃんと持っているわけですよ。だから政府は昨年の二月に協定内容付表をもうほごにして、そうしてこの交換公文付表を実効あるものにしているわけでしょう。少し行き過ぎじゃありませんか。航空協定の中で付表改定とか修正というものがあるということは聞いても、それとこれとはだいぶ違いますよ。そういうものと同次元で相談すべきものでもないし、そしてこのやり方は、私はなるべく政府考え方なりなんなりを混乱させないで理解していこうと思いますけれども、しかし、少なくともこれは国会条約を、あるいは条約に相当するこういう協定審議し、それに応諾を与えようとする場合に踏まなければならない審議過程からしますと、これは非常に逸脱しているし、政府の専横な姿がここに出ていると思うから、国会審議に対する権威を維持するためにも、これはこのまま見過ごすわけにはいかないですよ。これは委員長、少し理事会相談してもらいたい内容だろうと思います。
  62. 大平正芳

    大平国務大臣 現協定九条の「又は」以下の規定国会政府との間の取り扱いにつきましての疑義がいま出たわけでございますが、たびたび申し上げておりますように、政府といたしましては政府間で合意されるということが現協定で認められておりますので、政府権限内において本件を処理して差しつかえないという判断でいたしたわけでございますけれども、しかし、事柄は石野さんが御指摘のように、量的に申しましてもたいへん大きな修正でございまして、形式的に政府権限として認められておりましても、国会審議の道程におきましてそういうことを十分御了得いただく意味の政府措置が適切でなかったということにつきましては、私から先刻釈明いたしたことでございます。  なお、この協定の背景におきまして、もしわれわれが濃縮ウランの購入につきまして数量をふやすということが政府の新しい義務を負う性質のものでございますならば、事柄は、かりに微量でありましても非常に注意しなければならぬことでございますが、御案内のように濃縮ウランの需給はたいへん逼迫いたしておりまして、いまいわばほかの希少資源と同じように売り手市場になっておるわけでございまして、たびたび申し上げているように、現在アメリカ以外に安定した供給責任を持っていただける国がどうもありそうにございません。今日の段階でそうでございますので、われわれといたしましては、民間が契約をいたしまして濃縮ウランを確保することに支障を来たさぬようには配慮してまいる必要があるわけでございまして、この分量自体も押しつけられたもの、あるいは新たな義務をいまの政府が負うというものでもない、そういうものでございますること、さらにいまの濃縮ウランの市場の状況というものを御勘案いただきまして、政府が新しい義務を負うというようなものでございますれば、非常にその点は厳格にやらなければならぬことでございますが、そういう背景もひとつ御了解いただきまして、われわれが決してこのことを国会の御審議を無視して、あるいは国の負う責任に目をとざしてやったというようなものでないことは、これはもう石野さんも十分御了承いただけることと私は思うのであります。ただ、その「又は」以下の規定が形の上で、どうもいかにも変更としては「又は」以下の分量が多過ぎるじゃないかという点は御指摘のとおりでございますので、その点につきましては、これは政府に認められておる権限かどうかという論議は別といたしましても、国会の御審議に支障のないようには十分素材を御提供申し上げて御審議を願わなければいかぬ。その措置は十分とってまいりますと申し上げておるわけでございますので、政府の立場につきましても善意につきましても、十分の御理解をいただきたいと思います。
  63. 石野久男

    石野委員 政府の善意は理解するのですが、たとえばいまここで言いますと、この協定は現在生きておりますし、百六十一トンというものが、協定に基づく付表は生きているわけですよ。それから昨年の二月二十四日にワシントンで牛場さんが交換公文をなされたその日から効力が出ているその付表も生きているわけですよ。もうこれは両方生きているわけですよ。日本国政府は同じ条件で二つの付表を持っているわけですよ。こういうようなことを国会はこれを認めておっていいかどうかという問題なんですよ。そんな重複したようなことを政府がやっているのに、国会はまあ同じことじゃないかというようなことで見ておっていいのかどうかという問題が国会の権威の上から出てくるのですよ。そうじゃありませんか。現実には四十三年にきまったこの協定による付表が生きているのですよ。それから片方のほうは、こちらは昨年の二月二十四日にワシントンでウィリアム・P・ロジャーズ閣下と牛場さんが取りかわした、この日においてこの付表が生きてくるのですよ。現に生きているのだろうと思うのですがね、効力を発生しているのだから。ここのところをひとつはっきりしてくださいよ。
  64. 大平正芳

    大平国務大臣 第九条で政府に「又は」以下でアメリカ政府合意する権限国会から与えられたというたてまえに立ちまして、日米間で協定政府間で結びまして付表を新たにつけたわけでございますが、その付表によって、もとの付表に置きかえられておるわけでございます。そのことも国会から与えられた政府権限内の行為として認められておるという判断に立ちまして政府がやったわけでございまして、決してふらちなことをやっておるつもりはないのでありまして、形の上の手続としては私は間違っていないと思います。ただ御指摘のように政府間の協定によって供給される濃縮ウランの分量が非常に多いということでございますので、そういうことを事前十分国会にその素材を御提供申し上げて御報告をし、御審議の参考にしておくべき手順を踏んでおかなかったという点に、政府としては手続上非常に遺憾な点があったと思うわけでございまして、その点につきましては重々これから注意いたしますと申し上げておるわけでございます。
  65. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 ちょっと関連して。  それじゃ伺っておきますが、現行協定、政正前のでも修正案を出していますね。現在の協定付表は生きているのですか、生きてないのですか。現在ですよ。
  66. 松永信雄

    松永政府委員 現在と申しますのは、現行協定の四十三年に署名された当時の付表はその後の修正によって修正されているものが現在生きております。
  67. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そうするとどういうことなんですか。現在の四十三年協定付表は生きてないんですか、生きているのですか。
  68. 松永信雄

    松永政府委員 四十三年に締結されました当時の付表は生きておりません。
  69. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは生きているのは、交換公文に基づく付表が生きているのですか。
  70. 松永信雄

    松永政府委員 その点はさっき御説明いたしましたように、供給ワク拡大付表の修正とは別のものでございます。付表の修正は供給ワク範囲内で随時付表を修正することができるということが第七条に定められているわけでございます。この付表の修正は現在までに何回か行なわれております。しかし、それはあくまでもその供給ワク範囲内で行なわれているものでございます。
  71. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そうすると、現在生きている付表はどれなんですか。
  72. 松永信雄

    松永政府委員 これはお手元に差し上げてございます協定の新旧対照表というのがございますけれども、そこに掲げられております付表、これが現時点において生きております付表でございます。今度の改正によりましてこの付表そのものもなくなるわけでございますけれども、現時点において生きている付表はここに掲げられている付表でございます。
  73. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 四十三年協定付表とそれとは違うわけでしょう。違うのならば、その違っている付表というものはいつできたのですか。
  74. 松永信雄

    松永政府委員 それはこの第七条の規定によりまして修正されている付表でございます。
  75. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 だからそれはいつできたのですか。
  76. 松永信雄

    松永政府委員 その修正がいつ行なわれたかということでございますか。
  77. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それが修正されたのはいつですか。
  78. 松永信雄

    松永政府委員 一番最近の付表の修正は、本年二月二十六日に行なわれております。
  79. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 ではともかくも四十二年協定付表とこの付表とは違うわけですね。四十三年協定付表が消えたという根拠は、どうやって消せるのですか。
  80. 松永信雄

    松永政府委員 第七条の規定によりまして、付表を「随時修正することができる。」と書いてございます。その規定でございます。
  81. 石野久男

    石野委員 いまの岡田委員のあとをなにしますが、付表が消えているということ、そして新しい付表は「量の制限に従うことを条件として、」というこの「量」はどういうようになっているのですか。
  82. 松永信雄

    松永政府委員 それは先ほど来申し上げておりますように、昨年の交換公文によりまして供給ワク拡大された量の三百三十五トンでございます。
  83. 石野久男

    石野委員 そうすると、この付表の百六十一トンはもう消えてしまった、百五十四トンというものは消えてしまった。消えてしまって、現行では三百三十五トン、三百三十二・何ぼということになっていますが、そういうものにことしの二月に変えた。結局問題はここの「又は」ということの読み方なんですよ。その「又は」ということで百六十一トンが三百三十五トンになってしまうわけだ。だからこういう「又は」ということで、そういうひさしがおもやをかぶせてしまうような運営のしかたなり理解のしかたでいいのだろうか。  委員長、私はこういうやり方を国会が認めておっていいかどうかを問題にしてほしいのです。政府のこの解釈のしかたがいいとするならば、国会の権威はなくなると私は思うのです。
  84. 藤井勝志

    藤井委員長 ただいま石野委員の御指摘の問題、すなわちこのたびの具体的な問題としては、供給ワク拡大に関する政府間取りきめの問題については、別途理事会で御相談をして方針をきめたいと思いますから、この問題についての御質疑は一応この程度にしていただきまして、次へひとつ御進行願います。
  85. 石野久男

    石野委員 では私はこの問題はあとでまた、留保させていただきます。
  86. 藤井勝志

    藤井委員長 永末英一君。
  87. 永末英一

    ○永末委員 大平外務大臣に伺いたいのですが、先ほど遺憾の意を表明されましたが、どこを遺憾の意を表明されておるのかきわめてあいまいでございますので、その点をひとつ伺います。  いまの石野委員質問に対してお答えになっているところでは、どうもこういうことが遺憾の意ではなかろうかと思われますので、あなたの御趣旨ですよ、つまり本委員会でいま新しい協定審議をされておる。ところで古い協定国会承認を受けておる。その後その古い協定に基づく政府側の見解ですが、交換公文を取りかわして国会としては知らない内容によって運営されておる。さてこの新しい協定審議にあたって審議の参考にする資料として、その中間項である交換公文委員会すなわち国会に提出しなかったことが遺憾だ、こういうのですか、伺いたい。
  88. 大平正芳

    大平国務大臣 政府がとりました手順というものは、私どもは形の上で間違っていないと考えております。で、協定の解釈、とりわけ問題になりました九条の解釈におきましてもそういう解釈をとっておるわけでございますが、ただこれは立法府の権限でありこれから先は行政府権限であるという議論は別といたしまして、国会が御審議にあたりまして、行政府権限内のことであろうと——行政府権限でないことは当然でございますけれども、行政府権限にゆだねられたことでございましても、できるだけ充実した御審議をお願いする意味におきまして、この種のことは十分国会に御報告して御審議の素材にすべき性質のものであったと思うわけでございまして、そういう点で十分の配慮を欠いたのではないかということにつきまして遺憾の意を表したわけであります。
  89. 永末英一

    ○永末委員 あなたは先ほどの御発言の後段で、今後この種の交換公文その他の国際約束締結するにあたってはこの点に留意しつつ云々と、こう述べられました。  さて、この種の交換公文その他の国際約束締結するにあたってというのは、これからいま問題となっているようなものの締結にあたってやろうとする場合に、その内容がそれの母法とでもいうべきもとの条約を埋めるもの、あるいはその内容を変えるものであった場合は、あらかじめ、あなたの言明によりますと起こらないように処置してまいりたいというのですか、あたってはそういう配慮をしたいというのですから、そこには直ちに国会との関連が生ずると私は思うのです。  さて、そういう点で確かめたいのは、この交換公文の英訳では、この第九条のいい方でございますが、九条のいい方は、総量を百六十一トンとまずきめ、あるいは両国間の政府法律憲法上の手続に従って合意されるであろう量と、こういういい方をしているわけですね。日本語ではよくわからない。「合意される量」と書いてございますが、アメリカ側のことばで申しますと、「メイ・ビー・アグリード」こうなっておる。つまり未来に対してはまだ未確定である、こういう概念が含まれておると読み取り得るわけですね。  さて、問題は百六十一トンというのはだれが見ましてもはっきりした確定した量でございますが、将来両国政府がもう一つのことは未確定に預けてある量を埋めるということを旧協定においては国会承認したと思うのです。ところがそれをおやりになった。そういう観点から考えますと、なるほど、いま石野さんも質問されましたけれども、国会が知っておったのは百六十一トンという確定量——九条だけの問題にしておきますが——同時にもう一つのものはまだ未確定であった。その未確定なものを埋められた合意を、この交換公文によって一九七二年、去年おやりになったわけですから、いうならばそれは旧協定の本文とも同等の内容を要する約束をおやりになった。だといたしますと、なるほど交換公文でございますから国会承認事項ではございませんが、その時点において国会報告すべきものであった。にもかかわらずそれをしなかったということにあなたは遺憾の意を表明されていると私は思うのでございますが、そうではございませんか。
  90. 大平正芳

    大平国務大臣 大体永末さんおっしゃったような意味で申し上げた。つまり国会の充実した御審議をお願いする上におきまして、いま言われたようなことは政府として配慮すべきことではないかという意味の反省を表明いたしたわけです。
  91. 永末英一

    ○永末委員 いま大平さんの真意がよくわかりました。したがって、先ほどから言われておられるように新協定は、これは当然承認事項でありますから国会承認を求められるにあたってその中間項を実は参考資料として出さなかったのは審議手続に対して政府措置が落ちがあった、こういうことを遺憾の意を表明されたのではないかと私は思う。いまおっしゃったように、協定内容そのものに関係のある、いうならば国会があらかじめ承知しておったものを埋める、未確定ですから。それならば、埋めた瞬間において国会承認事項でなくても報告をしなければならぬ。だといたしますと、第七条に関連いたしましてはこれもまた妙な規定でございますが、日本語では「随時修正することができる。」とこうなっておりますが、これまた、メイ・ビー・アメンディド・フローム・タイム・ツー・タイム、こうなっております。そうしますと、その付表の意味合いでございますが、これは先ほどの報告によりますとことしの二月もまた修正した。するとやはり修正のつど、この種の協定の持っている意味合いは、やはり内容そのものに最初の協定審議のときにはいろいろ問題があったと思うのであります。だから審議があって一応確定して国会で了解している。あとは、外務大臣のおことばをかりますと、授権された事項であるから政府間でやれる。それはそうでしょう。しかし、それはメイ・ビーというのが相手方のことばでございますから、それが確定された場合にはやはり一々国会にこういうぐあいに埋めたのでございます、あるいは置きかえたのでございますという御報告があってしかるべきだ、第七条についてもこう思いますが、いかがですか。
  92. 大平正芳

    大平国務大臣 御審議を尊重する意味におきまして、できるだけそういう手順を踏んでいくのが適切であると思います。
  93. 永末英一

    ○永末委員 そのように御承知を願います。
  94. 藤井勝志

    藤井委員長 柴田睦夫君。
  95. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 条約の解釈論ということになりますけれども、この第九条ですが、濃縮ウランの量が十六万一千キログラム、そして「又は」から続いて、最後に「合意される量をこえてはならない。」こういうことになっているわけですけれども、これは十六万一千キログラムをこえてはならないに続くというように読めるのですけれども、そのとおりでしょうか。
  96. 松永信雄

    松永政府委員 「こえてはならない。」と申しますことばは、その両方にかかっていると思います。すなわち十六万一千キログラムというのが一つ、もう一つは合意される量であると思います。
  97. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 そこで、この「合意される量」の、この「合意」というのは国家間の合意だ、こういう解釈なんですが、いかがですか。
  98. 松永信雄

    松永政府委員 そこに書いてございますように、両当事国政府の間で合意される量ということであろうと存じます。
  99. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 その両当事国政府の間で合意される量の間に「それぞれの法律上及び憲法上の手続に従って」ということが入りますけれども、これはなぜ入れてあるのかということです。
  100. 松永信雄

    松永政府委員 この規定のしかたそのものがここに入れられましたいきさつ、経緯は、先ほどちょっと申し上げましたように、アメリカ原子力法上の法律上の要件といたしまして、供給ワク拡大を外国政府との間で合意する場合には、上下両院原子力合同委員会に三十日間さらすという要件が定められているわけでございます。その関係上必要であるということで、ここに入ったわけでございます。
  101. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 そうすると、日本の法には関係ないわけですか。
  102. 松永信雄

    松永政府委員 日本国内法アメリカ原子力法規定に相当します法律上の要件は存在しておりません。
  103. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 憲法上はどうですか。
  104. 松永信雄

    松永政府委員 先ほど申し上げました憲法七十三条二号に内閣権限に属する事項といたしまして、外交関係処理というのがございます。第三号に、条約手続に関する規定がございます。憲法上の関係は、条項といたしましてはそういうことであろうかと存じます。そのほか、政府あるいは外務省権限に関する法律といたしましては、内閣法外務省設置法というものがあると存じます。
  105. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 第七条の場合は、「両当事国政府同意により、」こういうことで特に法律上、憲法上というようなことは何も入ってないわけですけれども、九条でそういう「法律上及び憲法上の手続に従って」というのを入れるのは、それだけの理由づけがあるわけではないですか。
  106. 松永信雄

    松永政府委員 先ほど申しましたごとく、米国の原子力法にその法律上の要件としてそのことが規定されておりますので、第九条の中には入っているわけでございます。第七条の付表の修正につきましては、原子力法上そのような要件がございませんので入っていないわけでございます。
  107. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 以上を前提としてみた場合に、十六万一千キログラムの移転ということについては、この条約国会承認するということで、十六万一千キログラムは憲法規定に従って承認されている。そうしてそれと並行して、「又は」以下の「合意される量」というものについては、これは憲法上の手続ということになればやはり国会承認を必要とするのではないか、こういうふうに考えるわけです。というのはこの濃縮ウラン日本に移転するということにつきましては、日本原子力基本法をはじめ、いろいろの法律がありますし、また憲法との関係も生ずるわけでありますけれども、この濃縮ウラン日本に入れるということが、やはり日本の安全だとかあるいはアメリカとの関係において重要な問題があるということから十六万一千キログラムはこの条約承認する、そしてそれと並行して規定されているこの量を越えて合意される内容についてはやはり国会において承認を経なければならない、このように解釈すべきではないでしょうか。
  108. 松永信雄

    松永政府委員 「又は」以下の両政府間で合意される量につきまして交換公文が昨年行なわれ、その交換公文は行政府責任において処理されたということは先ほど申し上げたとおりでございます。ただその内容協定の非常に重要な内容に触れるということ、これはそのとおりでございまして、したがいまして私どもといたしましては、国会審議権を尊重するという立場に立って今後十分慎重に処理してまいりたいということを申し上げているわけでございます。
  109. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 今回のいわゆる改定議定書の場合においてもやはり同じように六万メガワットまたは法律上及び憲法上の手続に従って合意される容量と、こういう規定になるわけですけれども、今度はそう言われるのは、この六万メガワットをこえる量の協定を、交換公文が出されると、これは将来かりに批准された場合の話なんですけれども、その場合においては国会報告をして承認を求めるという考えなんですか。
  110. 松永信雄

    松永政府委員 まさしく今度のいま御審議いただいております協定が発効いたしますと、同じような規定が新しい改正されました協定に入ってまいります。その規定を受けて政府間が合意いたします、増大しますワク合意される場合に、どのような手続、形によりまして国会に御報告なり御説明申し上げるかということは今後の検討すべき問題であろうかと存じますけれども、私どもといたしましては、国会審議権を十分に尊重するというたてまえから、前回国会に御報告もいたさなかったというようなことは起こらないようにいたしたいと、こう考えておるわけでございます。
  111. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 国会審議に出さなかったということについて遺憾の意を表明されたわけなんですけれども、今後は国会には出す、国会には報告をするという範囲なんですか。それとも国会に出して国会承認を求めるという趣旨なんですか。どうなんですか。
  112. 大平正芳

    大平国務大臣 国会の御審議の参考のために報告をいたしたいと思いますけれども、国会承認案件といたすつもりはございません。
  113. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 それからここに、三百三十五トンにする、三十三万五千キログラムに増大する交換公文が出されましたけれども、現実には、この交換公文は昨年の二月の書簡になっておりますけれども、この交換公文が出されて三十二万キログラムに現実に移転される量がふえたのか。それともその以前からふえていたのか、お伺いします。
  114. 松永信雄

    松永政府委員 昨年二月に交換公文が行なわれまして供給ワクの限度量が三百三十五トンに増大するということが合意されたわけでございます。現実に各原子力炉の計画につきましてふえたというのは、その限度量が拡大されてから後でございます。その前に、前に設定されておりました限度量、すなわち十六万一千キログラムをこえて、この付表によって合意されていた濃縮ウランの量が、その限度をこえて行なわれていたということはございません。
  115. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 終わります。
  116. 藤井勝志

  117. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ただいまの各議員のこの問題に対する関連の御質問を伺っておりましたところ、ちょっとのみ込めませんでしたが、この付表改正というのはこの交換公文のみにおいて行なわれたのか、それとも先ほどの参事官の御説明ではかなり自由に何回も変えたような、何回も行なわれましたと御発言がありましたけれども、これは何回もそういう修正が行なわれたのでございますか。その回数と、どういうふうに直ってきたか、その辺を御発表願えますか。
  118. 成田壽治

    成田政府委員 四十三年にできましたこの日米協定付表改定は、先ほど御指摘ありました四十七年の二月二十四日で、ウラン二三五の量の増大、したがって九条の改定、九条の「又は」以下の発動によって二十六基、三百二十八トンというふうに直っております。それから昭和四十七年の八月一日付の付表改定がありまして、これは量は三百二十八トン、全く前と同じでありますが、炉の数が二十七基、一基追加になっております。したがってこれは七条の規定によって改定が行なわれております。それから先ほど説明ありましたことしの二月二十六日の付表改定、これも二十七基、同じでありますが、内容、炉の振りかえがありまして、これも七条によって改定が行なわれております。ウラン二三五の量は三百二十八トン、同じでありますので、九条による改定ではなくて七条による改定、この七条による付表改定が二回行なわれ、九条の場合は当然七条も伴っておりますが、これが一回、昨年の二月ということになっております。
  119. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうすると、私たちがいただいている資料の中では、そういう運用の変遷と申しますか、変更の過程というのは私たちは伺っておりません。手元の参考資料にも出ておりません。科学技術庁はこういうのをわざわざ隠されたのでありますか、御提出する意思はございませんのですか。
  120. 成田壽治

    成田政府委員 決して隠している意味ではないのでございまして、仕上がりが協定の新旧対照表の付表になっておりますので出なかったのでありますが、その二回の七条による改定についても早急に資料を提出いたします。
  121. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それではこの審議中に、できればきょうの夕方の御審議のときに間に合うように御提出をお願いできますか。
  122. 成田壽治

    成田政府委員 きょうじゅうに提出いたします。
  123. 渡部一郎

    渡部(一)委員 当委員会審議中に資料がだんだんだんだんうしろから追加されてくるというのは審議にならぬのでありまして、ほかにも何か隠している資料がおありでしたら全部この際運んでこられたいと思いますが、いかがですか。原子力局長、ひとつお願いいたします。
  124. 成田壽治

    成田政府委員 直接に関係あるのはこの三回の改定だと思いますが、その他御審議中にいろいろ御注文がありました、提出要求のありました資料もありますので、それもあわせて早急に提出いたします。
  125. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは、先日お話のありました先着順の原則と融通の原則についてお伺いをいたします。  まず融通の原則でありますが、一つの電力会社がアメリカ原子力委員会、AECと協定を行ない、提供を受けた濃縮ウランに対してそれを次のBなる電力会社に対してそれを融通する、そういう原則がある旨のお話をいただきました。もしこれがほんとうであるならば、たいへん私たちもやりいいし、一つの大きなメリットになろうかと思いますが、先日の御審議の際にはそういう旨の公文書、約束等はなく、向こうの交渉中の発言であったやに伺うわけであります。これは一体どういうことになっておるのか、私はきわめて不明でありますので、その点について明確にしていただきたい旨申し上げましたところ、早急に外務省を経由して大使館等から、その問題について煮詰めて御報告がある旨御発言がありました。そこでその後の経緯をお伺いいたします。
  126. 成田壽治

    成田政府委員 前回の審議でその点の融通の原則について御質問がありまして、われわれ早急にワシントン大使館に電報で照会しましたらその回答が来ております。その内容を見ますと、これは資料として御提出したいと思いますが、概略申し上げますと、これは大使館の参事官が、AEC、アメリカ原子力委員会の国際部長が出張中で二人の次長と会っての向こうからの返事でございます。「新しいメガワットシーリングの考え方説明等において米国側交渉団代表」これはフリードマン国際部長でありますが、「より日本側交渉団」これは小杉参事官でありますが、「に対して、新しいシーリングは、現行協定付表に定められているような特定の発電計画に対する固定ワクではなくて、顧客間でやりとりができる性質のものであることは当時説明したとおりである。」これはこの間の答弁でも申し上げた点でございます。「これらの議事録は作成されていないが、上記の言明を、新しい濃縮ウランの役務基準が発効した時点において、新基準に基づいて契約は顧客間で譲渡し得るとの内容とあわせて確認したメモを」これはフリードマン部長の名前のものですが、この「確認したメモを出すことは可能である。ただ法律家による吟味検討が必要であるので、多少時間がかかるかもしれない。」と言っております。  それからすべての譲渡が自動的に可能かどうかにつきましては、現在いろいろ新契約書案を整理しておりまして、確定的なものは整理のあとになりますが、大体譲渡の内容、これは量、ウランの濃縮の量とかあるいは引き取り時期等が譲渡の前後で大幅に変わらなければ、ほぼ自動的と考えてもよい。したがって百万キロワットのA社の発電所がB社の百万キロワットぐらいの発電所に、しかも引き取り時期が大体同じならば、A社とB社の話し合いで、自動的に考えてもよい。大幅に変わる場合は、譲渡が不可能となるのではなくて、三者、これは譲渡者と譲り受け者とアメリカ原子力委員会、この三者の交渉できまると考えてもらいたい。といいますのは、五十万の発電所が百万に変わるとかあるいは引き取り時期が数年にわたって変わるという場合は、当然供給者としてのAECの判断も入る必要があると思いますので、そういう場合は自動的ではないけれども、不可能なのではなくてAECが入った三者の交渉で譲渡がきまる、そういうふうに考えてもらいたいという公電が入っております。
  127. 渡部一郎

    渡部(一)委員 即座にこれほどの返事を向こうから取りつけられたことに対して感謝しておるわけでありますが、私がきわめて不可解に存じますのは、御説明をなさいました二人の次長が米国政府を代表するものであるかどうかについて私は大いな疑問があるわけであります。私どもがいただいておりますこの協定は、明らかに日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定改正するための議定書であります。したがいまして、その内容の重大にわたるポイントについて、先ほどおっしゃいましたフリードマンという部長が米国政府かち授権されているかどうかということが一つの問題であります。そしてまた当方から御質問に行かれた方がどなたか存じませんが、その方もまた授権されているかどうかということが問題であります。そこへもってきてフリードマンさんが不在であって、その子分の二人のアメリカのチンピラに何かを聞いた、その返事をここへ持ってこられて私に御説明にあずかったとしても、米国政府がそこまで責任を持っておるかどうかたいへん疑わしいわけであります。はたしてその二人の方はどの程度に責任を持てる方であるか、それは明らかに聞き直さなければならない重要な問題であろうと思うわけであります。フリードマンあるいはいま言われた二人の次長あるいは日本側の小杉参事官、その代表たちが政府を代表した協定ならこれはわかります。しかしこれほどの問題をそう簡単に、電報一本で片づけられるというのでは、とてもじゃないけれどもわからない。両者ははたして日米両国政府を代表しておるのかどうか、まずその基本をお伺いしたい。
  128. 成田壽治

    成田政府委員 今度の改定協定の交渉を行なった場合に、アメリカ側の交渉団代表はアメリカ原子力委員会のフリードマン国際部長であったわけでございます。したがいまして、今度はフリードマン部長不在でありましたので、その下の二人の次長に聞いておりますが、フリードマン国際部長の名前のメモを出してもいい、こう言っておりますので、手続的にはまだ次長でございますから代表権云々の問題がありますが、内容的には問題ないのじゃないか。それから日本側原子力アタッシェのある参事官が行ったのでありますが、これは大使館の公電で入っておりますので、大使が目を通し、その他交渉についても大使の了承を得、回答についても大使が目を通しておりますので、実質的には問題ないというふうに考えております。
  129. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それは原子力局長の個人的見解じゃないですか。あなた、外務省の言うことはみんな信じられると思っているのでしょう。また人がいいのでだまされているのじゃないのですか。そんなにアメリカ政府は甘くないですよ。アメリカ政府は、いままでにアメリカという国家と何か契約する場合に、協定あるいは条約の端々に至るまで気をつけなければ、だまされたりひっかけられたりしたことは明治以来何回やっているかわからぬぐらいじゃないですか。  私がなぜそこから聞こうとしたかもう一回申し上げましょうか。それは、あなたはこの融通の原則をおっしゃいましたが、ところがその返事の中にありますことばは、譲り渡す者と譲り受けるほうとAECとの三者間の交渉できめると考えてもらいたいと向こうはいっています。そうしたらそれは融通の原則じゃないじゃないですか。AECというのが一枚かみ込んできて、そしてわがほうの二社が協定するのだったらそれは融通の原則じゃないですよ。それは融通じゃなくてAECにお伺いを立てて許可をもらわなければならないのであって、単なる融通とは認められないじゃないですか。もうあなたが前に言われた、天真らんまんな、東京電力と関西電力との間でさっと受け渡しができるかのごとき御説明がありましたよ。そうでしょう。ところが今度はAECとの三者の合議でなければだめだなんていうふうにもう変わっているじゃないですか。アメリカ政府はそういう政府なんですよ。そういう政府であるのがあたりまえなんです、協定がいいかげんであるならば。だから譲り受けの原則というものは協定の中に書き込んでおかなければだめなんですよ、ほんとうを言えば。ところが一たん、外務省の出先がいないせいかしらぬが、小杉参事官という方が今度は行かれなかったのかもしれませんが、何をされておったのか。そんないいかげんな交渉で譲り受けの原則があるなどということを科学技術庁に教え込んで科学技術庁をまるめ込んだ、この外務省の陋劣なだましのテクニックというものに対して——私はわざわざ挑発的に言っておるのです。ここまでだまかしておいて、その純真な原子力局長をぽいなんてだまかしておいて、そして原子力局長は今度は各社に対してどう説明するのですか。いかにもひど過ぎるじゃありませんか、これは。だれがこの問題に対して御説明できますか。それで交渉にかけ合いに行くのはいつもお互いの最末端が行って、そういう原則がありますよなどというあわれな話をし合って、そして本省に電報を打ってごまかす。そして実際に交渉する段になって日本の業者の方が出かけていったらもう交渉にも何にもならないじゃないですか。これ重大問題じゃないですか。ちょっと深刻に御相談していただきたいと思うのです。まだあるんですよ、こういう問題が。どう答弁されますか。いいかげんな答弁なさらぬで、ちょっとよく相談してから答弁してください、私も待ってますから。
  130. 成田壽治

    成田政府委員 融通の原則につきまして、先ほど説明しましたように、条件内容が大幅に変わらなければこれは譲渡者と譲り受け者との間でAECが入らなくて自動的に譲渡ができるであろう、これは当然自動的な譲渡になると思います。ただAECが入りますのは、内容条件が大幅に変わる場合、これは百万キロの発電所が五十万、五十万、二つに分かれるとか、あるいは引き取りの時期が二年もずれるとか、そういう場合は当然供給側であるAECの意向が入る必要があると思いますので、そういう場合は三者間でAECも入ってその交渉できまることになろう。だからこれも不可能というのではなくて三者間の交渉できまる、そういう内容になっておりますので、これは売り手、供給側としての事情からやむを得ない点ではないかというふうにわれわれは考えておるのであります。(渡部(一)委員「だめだよ、そんなことでは。要するにだまされたんです」と呼ぶ)  補足しますと、いま新しいクライテリアによる新しい契約書が、そのフォームその他が、大体七月下旬ごろまでにきまるということになっておりますので、その新しい契約書の様式等がきまりますと向こうの条件等もはっきり出てまいりますので、その点はもっと具体的にはっきりしてくるものと考えております。
  131. 渡部一郎

    渡部(一)委員 条約局に伺いますけれども、いま御説明のあったフリードマン発の確認メモなんというものは、これは両国政府を代表するメモ、交換公文とかあるいは政治的取りきめとか、そういったものになり得るのですか。
  132. 松永信雄

    松永政府委員 アメリカ原子力委員会は、この協定に関しましてはアメリカ合衆国政府を代表する立場に置かれていると思います。問題は原子力委員会のそのフリードマンという国際部長が原子力委員会を代表する権限を与えられているかどうかということであろうと存じます。で、ただいま原子力局長が言われましたことは、一応国際部長でございますから国際関係事務処理に当たる当の責任者であるということで、原子力委員会のものの考え方あるいは取り扱い方針等についてフリードマン国際部長が責任ある説明をする立場にあるだろうという推定は、これは正しいんじゃないかと思います。  ただ、今度、いま御指摘がありました国際約束あるいは協定締結するという場合に、その署名の権限を当然にこの国際部長が与えられるかどうかということは、その場合にやはり権限の委任関係が明らかにされなければならないというふうに考えております。
  133. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いまの御答弁はそれでよろしいと思うんですね。確かに推定される。この確認メモを書いた際に原子力委員会を代表して確認メモを出すだろうというのは想像はされる。しかしこれからの問題です。変な確認メモなどという個人的なメモを渡されて協定上大きなマイナスを背負うことは私はないと思う。したがって外務省としてはこの問題をもう少しシビアに考えられて、大きな政治的取りきめの一つとしてこういう問題はきめておかなければならない。少なくとも日本国側の契約者の利益を守るためにはもっとシビアにばちっときめなければいけないんじゃないでしょうか。明らかにこの前原子力局長は自動的な譲渡が融通ができるかのごとき発言をなさった。きょうは保留事項がたっぷりついてしまった。わずか一回の委員会委員会の間でこんな激変が起こってしまった。これでは討議不能じゃありませんか。また委員会をとめようというんじゃない、そんな心配そうな顔をしなくてもいい。だけれどもこんなに変わった。こんなに変わった話がもう続々と出てくる。きょうもまた新しい原則ができそうですけれども、こういうのが続々出てくるんじゃこっちは手に負えない。協定がずさんをきわめておる。ほんとうにつくり直したほうがいいんじゃないかと思われる。私はまた英文のほうを見ましてきょうはびっくりしておるわけでありますが、また内容がまるで個人的な私信のごとき書き方をしている。いつでもどうにでもなるような言い方、まるで予測が述べられておる。その個所は何カ所も指摘することが可能です。どうしてこんなお粗末なのをわが優秀なる条約局ともあろうものが認められたか。私は何かそこに深い裏があるんじゃないかという感じすらするのですね。  もう一つ申し上げますが、この前の先着順の原則です。先着順の原則の前にもう少しこれを言っておかなければいかぬのですが、この融通の原則は明らかに融通の原則としては成り立たないほどのひどいものであります。私の要求は、融通の原則に関してはそういうことになってしまった、これほど大幅に譲る形になってしまったということに関して、この融通の原則を明確にされた上、米側と交渉して、これ以上の後退がないように、しかるべき外交的文書を両国政府の代表的人物の間で確定されて、合意書簡のような形とか合意議事録のような幾つかの形があるのですから、きちっとなさるべきだと思いますが、どうでしょうか。
  134. 松永信雄

    松永政府委員 ただいま御指摘がございました点ひとつ十分検討させていただきまして、科学技術庁のほうとも御相談していきたいと思います。
  135. 渡部一郎

    渡部(一)委員 じゃその御相談をした結果は必ず御報告をしていただきたいと存じます。よろしいですね。
  136. 松永信雄

    松永政府委員 さよう取り計らいます。
  137. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは先着順の原則について。この原則を先日吟味する余裕はございませんでした。「米国原子力委員会は、日米原子力協定改訂交渉中、濃縮役務供給を先着順に行なう旨述べており、また、改訂議定書承認をもとめるため、米国原子力委員会委員長から大統領にあてられた本年二月二十七日付け文書に、わが国の需要者が先着順の原則により契約締結を行なうことになる旨明記されている。」と配付資料にしるされております。しかしこれは米国原子力委員会委員長大統領にあてられた文書であって、日本側に対しての正規の文書ではございません。またこの先着順の原則はわが国原子力エネルギーの安定供給に対して明らかに重大な問題になっているわけでありますから、これだけではとうていお話にもなりません。したがって、合意議事録とか議定書あるいは何らかの形で明確な外交的取りきめにしなければ話にならないと私は思うわけであります。これは融通の原則と同じであります。しかし私があきれているのは、この先着順の原則は、先日御質疑の途中で明確になりましたように、申し込み順の原則ではなくて、契約成立の先着順の原則であると伺いました。契約成立における先着順の原則などというものは先着順にならぬわけであります。十分に外交圧がかかるわけであります。したがって、これは先着順ではなくて、こういった契約ができ終わったときに先着するといういい方なら、たとえば日米関係が緊迫したといたします、多少のへまがあったといたします、あるいは日本側の契約者のある者がアメリカ原子力委員会との間で話し合いがもつれたといたします、そういう場合に、先着者順の原則があるにもかかわらず、アメリカ側はその契約の締結をうしろへ引き延ばして、その間に契約のできた諸外国の契約者をどんどん入れることは可能であります。しかもこれだけの電力量の供給を保証しているにもかかわらず、契約ができないという言い方で日本に対する濃縮ウランの提供を削減することが可能であります。ここまではどうですか、原子力局長。
  138. 成田壽治

    成田政府委員 先着順の原則は受け付けベースでなくて契約ベースといいますか、こちら側がファームコントラクト書を出したベースになっての先着順というふうに向こうが言っております。したがいまして、これも受け付けベースでありますと、やはり内容審査等向こう側も供給側として当然相当あるはずでありますので、供給側としては内容を審査して、能力との関係等だいじょうぶであるという時点でこちらからファームコントラクト書を出す、そういうのが正確な意味の先着順のベースになるのはやむを得ないのじゃないだろうかというふうに考えております。  ただ、新協定の第七条の(1)項にもありますように「合衆国委員会の施設においてその時に利用可能であり、かつ、未配分であるウラン濃縮能力を、そのような役務の他の購入者との間における公平を基礎として利用することができることが両当事国政府により了解される。」ということでありますので、やはり公平の原則というのがありますので、これは供給者であるアメリカ委員会のそういうことを信用して、受け付けが早かったけれども、ファームコントラクトがおそくされて、それによって配分上、濃縮ウランの確保上損をするということは、この協定の精神から見まして、そういうことは考えられないというふうにわれわれは考えております。
  139. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それは違いますよ。この間は公平の原則を私が質問しました。そうしたら、あなたは融通の原則で答えられたのです。きょうは融通の原則で質問したら、あなたは公平の原則で答えた。そんな卵と鶏みたいな議論をされては困りますな。私が言っているのはそうではなくて、この場合に日本側が実際契約に当たって、幾ら先着順の原則を述べていたとしても、アメリカ側日本政府あるいは日本国民に対してよけいな圧力、ブレーキをかけないように何とかできないものかという観点から私は質問しています。それは日米安保の経済版みたいなものあるいは日米安保の濃縮ウラニウム版みたいなものとしか考えられない、原則でこんな弱い交渉をしているのでは。しかもこれは何もアメリカ側が当初からめちゃくちゃに押しまくった原則でなくて、交渉すれば交渉の余地がある言い方あるいは詰められてない問題がこのままなまで並んでいます。日本側ばかり拘束して、アメリカ側に対してウラニウムの安定供給を保証させていないというところを私は問題にしているのです。だからいま先着順の原則があったとしても契約成立の時点になってしまうということはしかたがないと原子力局長述べられました。そのしかたがないという精神で当初から交渉されたとしたら、これもまた問題ですね。それなら最初からその辺はあきらめられたのですか。局長、どうです。
  140. 成田壽治

    成田政府委員 これは供給側としてのアメリカ原子力委員会の一つの基準でありまして、日本だけが先着順を受け付けベースにしてくれというのも——これは世界、自由諸国に対するアメリカの統一的な条件内容になっておると思います。したがいまして、日本だけ受け付けベースの先着順ということを主張することも非常にめんどうじゃないか。また供給者の立場から見ましても、ファーム・コントラクト・ベースになるのはやむを得ないのではないかというふうにわれわれは考えておるという意味でございます。
  141. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうしますと、実際的にはアメリカに対して全く無防備の交渉をしたということになりますね。それでさっき公平の原則とおっしゃいました。もう一回話を戻しますけれども、そうすると、公平の原則でありながら、アメリカ合衆国政府がその条約の精神を踏みにじらないことを完ぺきに予想できますか、条約局参事官。
  142. 松永信雄

    松永政府委員 条約の適用ないしは解釈の問題につきましては、私どものほうも誠実にその義務を履行するということを前提にして締結いたしますし、また先方についても、先方が誠実にこの条約を実施するという前提に立って交渉しているわけでございます。ここにも「公平を基礎として」云々という規定がございますから、私どもといたしましては、アメリカ側がこの規定を誠実に守って規定を実施するということを確信をし、期待しているわけでございます。
  143. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうすると、この前の委員会のときと同じ議論になってくるのですけれども、その協定のところに「そのような役務の提供のための契約は、時宜に応じて交渉され及び締結される。」とありますね。「オン・ア・タイムリー・ベーシス」と書いてありますね。タイムリー・ベーシスというのは、この間、契約ができたときという御解釈でした。そうすると、契約ができるというところに力点を置いて、日本側の利益は大いに奪われる立場があります。これは重大な問題ですね。その問題を全部穴をあけておいて交渉を締結し終わったとしたら、これは問題だと私は思うのです。だからさっきのフリードマンさんから、どうせ交渉するならこの問題も含めてこの点をもう少し煮詰めて、こういう言い方になっているが、少なくとも日本側の契約者を故意にうしろに下げて圧力をかけるようにしないという一札は何らかの形にとっておくべきじゃないですか、どうでしょうか。
  144. 成田壽治

    成田政府委員 その問題につきましても、外務省とよく相談して先ほどの融通の原則の問題とあわせて処置をしたいと思っております。
  145. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは私もそうお願いしたいと思います。そして先着順の基準についてはいまだかつて日本側のほうに、口頭では多少説明されていますけれども、文書がないということもお含みいただきたい。何にも書いたものがない。そうでしょう。だからこれは向こうがそんなことを言った覚えはないといったら私はそれで終わりだと思うのです。だから契約としてこういうものを交わす意味ではかちっと書いて何らかの意思表示として、合意メモかあるいは合意議事録か知りませんけれども、そういった形できちっとするべきだ。前の融通の原則と私は同じだと思うのです。その辺もきちんとなすべきじゃないでしょうか。
  146. 大平正芳

    大平国務大臣 長期契約は当事者の間で行なわれるわけでございまして、先ほど原子力局長がお答えいたしましたとおり、七月末ごろになりますと、その契約の骨格が明らかになると思うのでございますが、私どもの外交上の任務は、渡部さん御指摘のように、日本の契約者が不当に不利にならぬように保障してまいることであると思います。そういうことにつきましては十全の配慮を加えてまいるつもりでございます。根本はやはり日米間の信頼でございまして、その点につきまして一から十まで疑っておりますと、なかなか事柄がめんどうでございますけれども、私の外交上の経験から申しますと、アメリカ当局、信頼に値する当局者であると私どもは考えております。
  147. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それから今度は、先ほどの、契約者に対する御説明がすでにAEC側から行なわれているという御説明でございました。契約者に対するAEC側からの御説明の中に、本協定の運用の実際というのは明らかだろうと私は存じております。原子力局長、そういう面について御了承されておられますか。もしされておったら、それを当委員会審議資料として提出されるお気持ちはありませんか。
  148. 成田壽治

    成田政府委員 たしか六月の一日だったですか、AECが説明会をやるというので、日本の業界代表も行って、あるいはコントラクトのほんのドラフト的なものも、電力会社にはきておるようでありますので、われわれまだ見ておりませんが、それを見まして、適当なものは、資料として出せるものは出したいと思っております。
  149. 渡部一郎

    渡部(一)委員 今度は外務大臣にお伺いします。  大臣、アメリカ政府は信用できるといまおっしゃいましたね。それで大臣、そういうふうにおっしゃるのもわからぬではありません。しかし、契約に関してアメリカ側がどんなことをするか、御存じでございましょう。私、そうおっしゃるだろうと思いましたので、新聞を持ってまいりました。昨日の新聞の夕刊です。大見出しですからお見えになると思うのです。「米が大豆輸出を全面禁止、既契約分も量規制、長期化か、日本に衝撃」。契約していたってだめなんです。これは毎日です。「米国、大豆の輸出を停止、既契約分も対象に、ミソ、トウフ値上がり必至」「米国、大豆、綿実の輸出停止、二日までに細目、需給窮迫防ぐ、秋まで続く公算」「米国、大豆の輸出を禁止、穀物規制の第一弾、適用二十七日船積み分以降、日本で暴騰の恐れ」。契約していたってだめじゃないですか。契約を破っているじゃないですか、この政府は。個人の契約ですよ。契約したって破る政府をどうして信用できるのですか。だから私は言っておるのです。ウラニウムなんて大事な問題で——契約を破った実証が新聞に出ているじゃないですか。きのうの夕刊にあるじゃないですか。だから私はさっきから心配しているのです。融通の原則も、先着順の原則も、さももっともらしく言われたけれども、ずいぶんいいかげんなものであることは審議ではっきりしました。そこへもってきて、こんなショック。どうしてまずいタイミングでこんなことをしたのか、私はわかりませんけれども、アメリカ側日本経済に対する重大なパンチだと私は思います。こんなやり方をしないように交渉をする前提がなければ本協定が成り立たない。だから、私は本協定をやるのだったら、もうしようがない、アメリカ政府に対して、ウラニウムに対してはこんなことをしませんねといわなければしようがないじゃないですか。既契約も破棄じゃないですか。船積みしている分まで押えているじゃないですか。どうしてこんなばかなことを向こうはするのですか。
  150. 大平正芳

    大平国務大臣 私は、欧米諸国民というのは、契約につきましてはたいへん厳格な態度をとる民族であると思います。宗教の世界でも神さまと人間と契約という観念でとらえておるほどの民族なんでございまして、日常生活におきましても契約概念というものは、われわれ日本人の生活の中におきましてよりはより厳格に彼らは尊重する風習があるように思うわけでございまして、契約を破るとかあるいは違反するなんということは非常に重大なことだと思うのであります。  いま御指摘の大豆の輸出規制でございますけれども、これは契約の破棄じゃないかというように渡部さんは端的にすぐとらえられておるかのような、いま御発言でございましたけれども、実はそうでないのでありまして、いま大豆の需給が逼迫してきた。アメリカにおきましても消費者あるいは家畜業者は、そういう卵とか肉とかいうものの価格は規制しておるけれども、原料が急に上がるということになっては困るという立場もございますし、また日本その他伝統的な顧客のコミットメント、約束を守るためにも、新規のインベイダーを防いでおかないとそれが保障できないから、七月二日までとりあえずエンバーゴーをかけた。七月二日から割当をきちんとしてコミットメントを尊重していくような措置をとるためにこれをやったのであるというのがアメリカ政府の言明でございます。七月二日以後、アメリカがこういう需給逼迫の段階におきましてどのようにやるかをフォローいたしまして、あなたの議論のように契約を結ぶということになるのではないかということになりますならば、鼓を鳴らして責める値打ちがあることだと私は思うのでございますけれども、きのうのとりあえずのエンバーゴーということにつきましての新聞記事を引用してのいまの御発言でございますが、それはそういう趣旨のものであったというように御了解をいただきたいと思うのでございます。  私ども、今度電力会社が濃縮ウランの契約をされるにつきまして、くれぐれも契約者が不利に取り扱われないように、他の濃縮ウラン需要国との間から見て日本が不当に取り扱われるようなことがないようにしなければならぬ責任があるわけでございまして、そういうことのないように十分の配慮を加えてまいって御期待にこたえなければならぬと思っておりますし、また私はそれができることと思っております。
  151. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私、大臣の御努力を期待している一人であります。ですから、大臣ちょっと甘いんじゃないかと私思うのは、商務長官が「日本はこれまでアメリカのいいお得意である。米政府は公平な立場に立ち、古くからの顧客を保護するつもりだ」と述べたことはこの新聞記事にも掲載されております。しかしそれとともに「米政府は今後、輸出を認める量を決定するが、すでに契約をすませている分のうち、かなりの量が不許可となるものとみられている。」こう明確に記事としても掲載されております。  したがって私の言うのは、こういう既契約分について量規制を行なうというアメリカ政府のやり方であります。だからウラニウムについても、一応この量を約束したけれども当方も事情が変わったというので、政府間の交渉も通さないでいきなりこういうふうにどっと切り捨てる可能性があるのではないかということを私は言っているのであります。  私は、アメリカは契約を守ると思います。契約は守る国家だからこそいいかげんな契約をしてはいけないんだということを私は申し上げているんです。私は、いま外務大臣が言われたことと前半の意見は一致しております。契約を守る国家だからこそ、こんなずさんな契約でものを進めれば、向こうはあらゆる行動を留保している、あらゆるフリーハンドを持っております。ウラニウムの量を切り下げることは可能であります。こういう協定では最低がないのです。最高があるだけなんですから。そうして、そうせざるを得ない状況を押しつけられたと言われるなら私はわかります。ああ御苦労さんでした、アメリカはそこまでたちが悪いのですかと私は了解します。しかしさっきからおっしゃっていることはそうではない。だから本協定にものすごく危険性があることを私は申し上げているわけであります。  大豆でさえかくのごとし、いわんやウラニウムにおいてをや。濃縮ウラン供給量に対して大幅の量的削減を既契約分にさかのぼってするといわれたときどうします。本協定をたてにしてけんかができますか。できるようにしておくのが外交ではないかと私は申し上げたい。本協定の交渉は、明らかに外務大臣御就任の前からの交渉の継続として行なわれたものであります。したがって、当時じみちな詰めが行なわれてなかったいきさつがあるかもしれません。しかしいまはあなたが責任をお持ちであります。そうするとすればこれについては、量的な面について大豆式なやり方をしないということについて一札をとるような確認ぐらいはなさるべきではないか、そういう交渉をすべきではなかろうか、その御決意はないのかを私は伺っているわけであります。
  152. 大平正芳

    大平国務大臣 資源がだんだん緊迫してまいりまして、濃縮ウランにつきましても容易ならぬ事態になってまいっておりますことは御案内のとおりでございまして、今度の改正議定書アメリカが最高限度を約束するにとどまりまして、供給保証義務協定上、現協定のように具体的にはっきりとうたわなくなりましたことも御案内のとおりでございます。で、いま御指摘のように、将来濃縮ウランの需給がより逼迫をいたしまして、供給量を予定どおり確保できないという事態が全然起こり得ない事態であるなんていう楽観的な見解を私は申し上げられないと思うのでございます。  ただ、与えられた条件のもとで電力会社が先方と契約をするわけでございまして、非常に不利な契約でございますれば電力会社といたしましてものむわけにはいかぬと思うわけでございますが、われわれといたしましては、その結ばれるべき条約ができるだけ日本に不当にならないように、そしてアメリカが無理押しするというようなことのないように外交的に保証していくという努力は常に怠ってはいけないと思うのでございまして、現実の契約のできぐあいを見まして、御点検いただいて、それから他の国とアメリカが結んだ契約も見ていただきまして、それで日本政府がそういった責任を一体十分果たしたかどうかという点はひとつ御批判をいただきたいと思うのでございますが、精一ぱいわれわれといたしまして努力いたしまして、そのようなことのないようにしてまいらなきゃならぬと考えております。
  153. 渡部一郎

    渡部(一)委員 大臣の御退席の時間が迫っているようでありますから、この問題はまだちょっとあとに残しておいて、私、御質問を続けようかと思っております。  ただ、いま大臣は、契約のできぐあいを見て日本政府責任を果たしたかどうか批判してほしいという旨言われましたけれども、そっちに重点を置くんじゃなくて、私が申し上げたのは、その前に濃縮ウラン供給量の保証に関してもうちょっと何とかできないかと申し上げているわけであります。田中総理の訪米もあることであります。また外務大臣も、大使その他と打ち合わせをされることはたくさんありますでしょう。そういう際にそういう意思表示をするつもりがあるかないかを私は申し上げている。ところが大臣さっぱりそれをおっしゃらないから疑ぐっているんです。もう言う気力もなくなったんではなかろうか、どうです。
  154. 大平正芳

    大平国務大臣 それはひとり濃縮ウランばかりでなく、食糧、木材、その他重要な資源の安定供給という点はあらゆる努力を払いまして確保してまいらなければならぬわけでございまして、本件につきましてもその他の重要資源とあわせまして、政府首脳の訪米その他あらゆるレベルの接触におきまして鋭意努力してまいりまして、安定供給の確保に全力投球したいと思っています。
  155. 藤井勝志

    藤井委員長 この際、暫時休憩いたします。    午後零時五十九分休憩      ————◇—————    午後四時五十七分開議
  156. 藤井勝志

    藤井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡田春夫君。
  157. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 きょうは総理に若干お伺いしたいのですが、時間がたいへん制約されておりまして、わずか二十五分しか質問ができません。したがって、簡単明瞭に私も質問いたしますので、簡単明瞭にお答えをいただきたい。  まず第一点は、総理の西欧三国、ソビエトの訪問旅行について大体日程が固まっているようですが、これにつきまして、向こうに行かれましてどういうお話をされるのか、特に訪問の目的等について中心問題などをひとつここで率直にお話をいただければたいへん幸いだと思います。特に日本の国がアジアの一員であるという立場から、アジア問題などについてもいろいろな意見の交換があろうと思いますが、こういう点を含めて率直簡明な御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  158. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 ヨーロッパ三国、あわせてソ連を九月の末から十月の半ばにかけて訪問をしたい、こう考えております。  西欧三国は、御承知のとおり、西ドイツ、イギリスの総理大臣が日本を訪問しておりますし、その答礼という意味もございます。フランス訪問は来年ポンピドー大統領が訪日をされることが予定されておりまして、ぜひ訪仏をするようにという要請があります。でございますので、これら三国に対してはそのような事情で訪問をするわけでございますが、いま御承知の国際通貨の問題やエネルギーの問題とか、日本だけでやっていけない新しい事態が起こっておるわけでありますので、これらの問題、日米間で話し合いをいたしまして、西欧とも十分連絡をとりながらやってまいろうということになっておりますし、特にイギリスが一月一日から拡大ECに加盟をしておりますので、そのような問題が議題になる、こう思っておるわけでございます。  訪ソの問題は、これは何回も訪ソの要請があったわけでございますし、私も国会の時期を見て訪ソをするようにしたいということを、ブレジネフ書記長あてに書簡を出してあるわけでございます。日ソ間の意思の疎通ということが一番大きな問題であろうと思いますが、まだ具体的な議題は詰めておりません。これから外交ルートで詰められるものは詰めるということでございますが、詰めてトーキングペーパーをつくっておいて首脳会談に臨むというようなことよりも、両国の首脳として、日ソの友好親善ということが第一でありまして、ざっくばらんに、フランクに話をいたそうという考えでございます。当然平和条約の問題、領土の問題、安全操業の問題、シベリア開発の問題、その他いろいろと出ることと思いますが、まだ具体的に議題を詰めておらないというのが現状でございます。ものを言ってきめようということよりも、まず隣の国である大国ソ連との間の首脳会談が鳩山訪ソ以来行なわれておらないということでありますので、そういう意味で胸襟を開いて意思の疎通をはかろう、はかればそこから必ずものが生まれる、こういう観点に立っての訪ソであります。
  159. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 いまの日程等についてはあと関連していろいろお伺いいたしてまいりますが、次は米ソ首脳会談についての見解を伺いたいと思います。  この会談については、その直後大平外務大臣が新聞記者会見で、単なる平和共存から互恵関係に進展をしたと述べております。私は皆さんのほうと党の立場は違うのでございますけれども、米ソの今度の会談に関する限り、大平外務大臣のこの見解はなかなか的を射ておって巧妙な表現だと私は思う。今日の世界情勢は、あらためて申し上げるまでもなく、米ソは国際的な地位を非常に低下しておりまして、かつてのように東西陣営を支配して、あるいは指導して全世界を左右するという状態ではなくなってきている。したがって、大平外務大臣の言いますように、米ソの超大国が政治的、経済的に互恵関係にまで癒着したというか密着したという状態で全世界の他の国を動かそうという状態もあらわれている。こういう点では、国際情勢に対する米ソ会談の影響は相当大きなものがあると私は考えております。  特に、核戦争防止協定の問題については二つの面があると思う。表面上の字句だけをもってするならば、核戦争を自制するというようなことで、これは核戦争から遠のいていって前進であるという形で、表面上の字句だけでただ一面的にこれを手放しで喜ぶというようなことは、私はできないと思うのです。キッシンジャーがはっきり言っておりますように、この協定は戦争放棄の協定ではない、このようにはっきり言っている。ですから、これは自制するというだけにすぎないのであって、核戦争の禁止、不戦というようなものではありません。しかもそれだけではない。先ほどお話し申し上げたように、米ソが癒着をして一つになって、互恵関係にまで結びついて、そして他の国を支配する、第三国の紛争に介入するという危険性もある。また、二つが一つになって世界全体を動かしていく、支配をしていくという危険性が非常にあるということを、われわれは見のがしてはならないと思う。こういう協定の性格、二つの面、こういう点をはっきり見据えてこの協定に接していかなければならないと私は思うのです。  そこで伺いたい点は、この核戦争防止協定について、首相が訪ソされた場合において同様趣旨の協定の調印を求められるという説があります。こういう協定の調印を求められた場合において、首相としてはこれに対してどういう態度をおとりになるのか、この点についての見解を伺いたい。
  160. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 端的に申し上げると、私とニクソン大統領との会談の過程において、米ソの話し合いの状態が話し合われるということ、これは当然のことだと思います。しかし核に関する協定ということに日本がいますぐ調印をするとか、そういうことを求められるということはいま考えておりません。これは核を持っている国自体の問題がまず先でございまして、われわれは、いま核不拡散条約の批准をまだやっておらぬわけでございます。いろいろな事情もあります。核を持たない国の利益をどうして守るのか、核は一体国際管理ができるのか、ほんとうに核軍縮というものに保証があるのか、平和利用だけにとどまるのか。日本のように、法律で核を平和利用以外には使わない、非核三原則を国の内外に明らかにしておるような状態ではないわけでありますから、これはやはりお互いに立つ立場が違うということでありまして、日本の立場は十分述べるべきでありますし、私自身、そういう要求があるとは思っておりません。しかし、あなたが前段で申されたように、東西といえばその頂点に立つものは米ソである。だから、米ソもし戦わば地球上の人類が破滅するかもしれぬとさえ議論をされておったわけでありますから、そういうような米ソが、二次大戦後の世界の情勢を踏まえて、今度の首脳会談において核に対する協定を宣言したということは、これは評価される問題だと思います。
  161. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 私は、核戦争防止協定というのは、現実に核戦争を阻止するという点では実効性が薄いと思う。いま首を振られたから御同意されておられるのだと思うのですが、やはり日本の国は被爆国ですから、核戦争に反対するような現実的な提案を、むしろ日本のほうがやるべきだと思う。そういう機会として、訪ソ、訪米その他の機会において、総理大臣が積極的に提案をしていただきたい。そして積極的に提案するのには、現実に阻止できるような手がかりをつくってもらいたい。そういう意味でいろいろ考えてみますと、核戦争のきっかけになるような核兵器を最初に使わないという約束を、日本がむしろ提起すべきだと私は思う。訪ソ、訪米、その他のときにあたって、そういう提起をされるお考えがあるかどうか。核兵器を最初に使わないということの約束日本が一つ一つされて、それによってソ連、中国あるいはアメリカ、フランスその他、これらの国々とそういうように日本約束されることによって、実際に戦争を阻止するというきっかけができるのじゃないかと私は思う。こういう点はいかがですか。
  162. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 日本は、地球上における唯一の被爆国として、核を使わないように、人類の生命を守るということに対して発言をする最もかっこうな立場にあることは御指摘のとおりでございます。ですから、いままででも日本外交の上で、核の問題に対しては、被爆国として再びこのようなことが起こらないようにという基本的な姿勢で外交を進めておるということは申すまでもないことであります。しかし、私は、原則的な考え方でございますが、核を使われる戦争というものがあってはならないし、まあないだろうという感じを前提にしておるわけでございます。私は、ベトナム戦争が非常に膠着したときに、核を使われるというような実現性というものがあったのかなというふうに当時非常に心配をしておったわけですが、あのような膠着状態においても核は使用されなかったということが一つの大きなよりどころにもなります。いま核を地球上で使うということになると、どこの国が敗れてどこの国が勝つというよりも、人類が死滅をするということをある意味では意味すると思います。そういう意味で核は絶対に使ってはならない、核を使うような全面的な戦争は起こり得ないだろう、また起こしては絶対にならない、そういう考え方を前提にしておるわけであります。
  163. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 私は核兵器を最初に使わないという提案をしてもらいたいと申し上げたのですが、これについては御意見がないようでございますが、御意見ございましょうか。
  164. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 これは核兵器を使わないといっても、日本が持っておればそういうことはいえるのですが……(岡田委員「いやいや被爆国ですから」と呼ぶ)被爆国でありますが、それはアメリカとソ連との協定がだんだんと進んでいって、両国においてお互いに先制攻撃としての核兵器は使わない、こういう協定にはなると思いますが、これは日本に向かって核を使わないようにしてくださいということはいえても、日本が核兵器を持たないという前提に立って、どういうことを意味しておられるかわかりませんが、核というものの国際管理とか平和利用とか、核というものは使わないことを前提としなければならないというような行動、発言をすることは可能であっても、初めに使わないかというのは、これはちょっと理解しがたいわけであります。これは北京訪問のときは核の問題をやりました。日本は科学的にも技術的にも核兵器はつくる能力はあります、ありますが、唯一の被爆国である日本は核を絶対につくりません、持ちません、持ち込みませんと内外に宣言をしております、核を持つようなことを言ったらとても国民の支持を得られません、自民党自身が過半数を得るなどということはできません、そういう意味からいっても核は絶対に持ちません、これは国会においても国の内外に宣言をしておることでありますから、核兵器を持たぬ、こういうことを述べたら周首相も、中国の保有する核というものは防衛的な核であって、攻撃をされない限り絶対に使わないということを明確にしておられました。これ一つでございまして、それ以外ありません。
  165. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そういう提案をされればいいんです。そういう提案をしていただきたいと言っているのですが、こればかりやっておっては、時間を制約されておりますので、いまもメモが回ってまいりましたから、北方領土の問題をぜひ伺っておきたい。  さっき、日ソ問題は友好親善をたてまえとして、第一として考える、こういうお話でしたが、そういう意味では、領土問題の解決というのは最優先の課題でなければならないと思う。特に私は北海道の関係ですけれども、北方領土の問題については、どうもこういう考え方が国民の間に非常に強くなっている。今度の田中訪ソによって、チュメニ問題については前進はあるだろうけれども、北方領土の問題については、チュメニ問題の陰に隠れてそのまま投げられてしまうのではないか、そういう危険性が非常にある、一般にはそういう考え方になってきている。これは坪川総務長官が閣議で報告した点でも明らかであります。私は、この際北方領土の問題をそういう決意のもとに積極的にお取り上げいただくことをぜひとも希望したいし、それに対する成算についてもひとつ御意見を伺っておきたいと思います。
  166. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 北方領土、特に四島の問題については、わが国固有の領土である、これはもう民族の悲願でございます。沖繩はようやく祖国復帰をした直後でございますし、沖繩が返らなければ戦後は終わらない、こういう名言がございますが、私がその名言の第二を言うわけじゃありませんけれども、ほんとうに北方領土四島が返れば戦後は終わる、こういうことが言えるわけでございまして、これは国連の状態を見ても、北方領土四島の返還というものは全日本人の悲願であるということで、日ソの間には常にこの問題の解決ということが大前提になければならぬ、言うをまたないところでございますが、こういう問題が平和条約締結できないということでございます。でありますから、北方領土というものは即右から左にということができなくとも、ねばり強くどうしても返していただくということを前提にして、日ソはお互いに交流を続けていかなければならぬという問題でございまして、これは北方領土問題を投げやりにするとか、そういう考え方がどこからどういう理由で出てくるのか、理解に苦しむところであります。
  167. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それじゃこう考えてもよろしいのですか。今度の訪ソによって、北方領土の問題については何らかの足がかりをつくる、従来のような停滞状態から一歩突破口をつくっていく、こういうことについては決意を持ってやってみせる、こういうことを期待してもよろしゅうございますか。
  168. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 誠心誠意、熱意をもって事に当たるということでございまして、これは相手のある話でございますし、外交でございますから、初めはとても沖繩は返ってこないだろう、こういうことでございましたが、沖繩は祖国に返還をされたわけでございます。また、領土は不拡大ということでなければ平和は維持できないというのが人類共通の考え方でありますから、これは相手には相手の立場もありますし、いろいろな発言もあるだろうと思いますが、日ソ両国の友好の関係ということを持続していく過程においては必ずこの問題は完結させなければならない。このごろ気持ちを少しよくしておりますのは、米ソという東西の頂点さえも会談をして、核に関する協定宣言を行なっているわけですから、話せばわかるということじゃありませんか。
  169. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 もっと詰めたいのですけれども、時間がないので残念ながらこの程度にしますけれども、前の内閣のときに当時の福田外務大臣が、領土返還問題のネックになっているのは日米安保条約ではないのかという野党側の質問に答えて、北方領土に対しては米軍の基地は提供しない、申し入れがあってもこれを拒否する、日本の自衛隊の派遣についても、返還された領土にはいたしません、こうまではっきり言っている、こういう点は、田中さんの場合はもちろん同じ態度であろうと思いますが、これについてはいかがですか。
  170. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 まず四島を返還してもらうということが民族の悲願であり、私たちの使命でございますから、まず四島をひとつぜひ日本に返してほしい。二島は返還してもらえるということになるでしょう。あとの二島に対してどういうことを言ってくるのか、これは鳩山訪ソから二島は返す、こう言っているのですから、あとの二島というものに対しては、こちらは日本の固有の領土である。先方側は、いやこれはこっちのものになっているんだというようなことを言っておるようでございますが、これはお互いが話し合いの間にいろいろな問題が出てくると思いますよ。返しましょう、返すけれども、どう使うんだということになるかもしれませんし、これはいろいろな問題が出てくると思います。これは話もしないうちにいろいろなことを申し上げるよりも、フランクに話をして、先方のあとの二島の返還に対する意見をまず謙虚に聞いて、それからものを考えていく、こういうことで私はすなおだと思います。
  171. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 返還をスムーズにさせるためにもこういうことを考えてはどうか、こういう意味です。しかし、もう時間がありませんので、最後にこれで終わります。  最後に、日中問題ですが、日中関係は、あなたが行かれまして、日中共同コミュニケを結ばれて、そして日中の国交回復ができて、これはたいへん喜ばしいことなんですが、その後実務協定が全然進んでおらないことは御存じのとおりです。日中の航空協定もそのままになっております。それから日中貿易協定についても、最近文書の交換などもあったようですが、これについてどうなっているかわからない、外務大臣の話によると、平和友好条約を並行して結びたい、こういうことも言っているのですが、これもそのままである。実務協定については全然進んでないわけですね。そこで私はやはりこの突破口をつくらなくてはいかぬと思う。特にこの突破口については、日中航空協定の問題はやはり初めから交渉しているわけですから、これについての道をつくる必要が私はあると思う。こういう点では、航空協定については、御承知のように外務省事務担当者が行って、最後まで事務的にはもう煮詰めた問題である、そこでもうこの段階としては私は政治的な解決をする以外にはないと思うのです。  そこで私は総理大臣にお伺いをしたいのは、日中の航空協定をはじめとして実務協定を促進するために、やはり政治的な判断に基づいて結論をおろす、そういう意味では現職の大臣が向こうに参りまして、ここで結論を出していくということがいまや必要な段階になったと思う。そういう点を決意のほどをお示しいただきたい。キッシンジャーだってもう数回、今度もまた行くと言っているのですから、やはりここで大臣が行って政治的な結論を出していただきたいということを強く私は要望したいと思うのですが、そういうお考えがありますかどうですか。
  172. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 日中国交正常化宣言からすでに、一年近くでもありませんが、八、九カ月過ぎておるわけであります。できれば一年以内に、まあ宣言をしたときぐらいまでに、航空協定を結ばれれば望ましいことである。これは事実そう考えております。できるだけ早く結びましょうや、そうすることによって両国の交流も激しくなるわけですし、お互いが理解をすることになるのですから、まあそういう意味で実務協定の一番初めというものはやはり航空協定でしょうということでやってきたわけです。しかし、御承知のとおり、いろいろな問題がある。そういうことで、いかに調和をするかということが両国の問題だろうと思います。しかし、両国とも、日中の国交の正常化宣言ができたのでありますから、航空協定ができないなどということはない、これは絶対にできる。できるが、いかに合理的に、いかに——両国にも事情があるわけですから、そういうものが調整されて、円満な、よりよい航空協定というものができるように全力をあげてやるというのが実情であります。ですから、これはあまりあせって、これから長い長い歴史、日中交流の歴史の上にまたそれが障害になるようなことよりも、私は少しあわて者だといわれておりますが、そうじゃなく、やはりお互いに慎重に非常に濃密な交渉をやっておるわけですから、もう少し外務省にまかしておいていただきたい。外務大臣国会がありますから、とてもいますぐというわけにまいりません。アメリカにも参る、それからヨーロッパ、ソ連と国連に出席ということになると、相当忙しい日程のようでありますが、しかし飛べるのは二時間ぐらいで飛べますし、向こうからおいでになっていただいても二時間で済むわけです。ですからそういう意味で、そこらうまくやっているようです。うまくやっていますから、もう少し外務大臣にまかしておいていただきたい。これはいよいよになれば外務大臣が北京を訪問する、これは何ら問題ないことであります。これは必要があれば外務大臣が首脳外交として出ていくべきだということを言っておりますし、漁業協定も一年ぎまりでありますが、暫定協定は結ばれましたし、それから貿易協定もいま原案が、こちらの提案に対しての対策が出てきておりますし、三千年、四千年の交流という歴史の上に立ってのものでありますから、へたをして拙速をとうとぶあまり、あとからまたいろいろな批判が起こらないように、慎重かつ合理的、スピーディーにということでございますので、御理解をいただきたい。
  173. 藤井勝志

    藤井委員長 堂森芳夫君。
  174. 堂森芳夫

    堂森委員 時間が二十分しかありませんので、一、二の点を総理にお尋ねしたいと思います。  本月の二十三日に、韓国の朴大統領が、四分の一世紀の間主張し続けてきた、韓国の政府は金日成を首班とした北朝鮮すなわち朝鮮人民民主主義共和国の人たちとは同席はしない、こういう長い間の主張を捨てまして、国連のオブザーバーとして同時に招聘されるならば同席してよろしい、あるいは韓国と朝鮮人民民主主義共和国の両国が一緒に国連へ加盟してもよろしい等の非常に新しい提言の発表をいたしました。わが国外務大臣大平さんも、十時の韓国のラジオ、テレビ放送に呼応するように十一時半には、これは新聞報道ですが、記者会見をやっていろいろな談話を発表しておられる。おそらくこれは、すでに韓国の総理も来ておったのでありますから、打ち合わせはあった、こう思うのでありますが、あったかなかったか、そんなことをいまお尋ねしておるわけじゃないのです。ところがすぐまたこれに呼応するように、金日成北朝鮮の主席は、いや従来から韓国の政府の代表と朝鮮人民民主主義共和国の代表が一緒になることは、オブザーバーとしてはいい、これは当事者としてそういうことが国連の総会で決議されるならば行ってよろしい、しかし朝鮮半島に二つの国をつくるということには断固これは反対である、したがって二つの国が国連に加盟するということにはわれわれは同意できない、そしてたとえば高麗共和国でありますか、そういうような名前まであげて、一国としての国連加盟ならばわれわれはいい、連邦をつくって加盟しよう、こういうような談話を、またすぐこれは談話ではありませんが、チェコスロバキアの代表団が来たときの何か大会か会合かで、そういう意見を発表した。  矢つぎばやに、そういうふうに、南北両朝鮮の政府から、主席から、そういう意見が発表されてきた、こういうことでありますが、そうすると、従来からのわが国の対朝鮮政策はおのずと変わってこなければならぬ、こう思うのでありますが、総理はどのような政策を朝鮮政策としてお持ちになるのでありますか。
  175. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 時の流れというものがおのずからよき結論を出すものだ、やはり人類の英知だ、こう私は考えております。第二次大戦後から南北の境界線に起こっている三カ所の国々が御承知の東西ドイツであり、南北ベトナムであり、南北朝鮮、こういうことでありましたが、時を同じくして東西ドイツは話し合いを行ない、この秋には国連に両方とも加盟するという機運でありましょう。また北と南のベトナム問題もパリ会談を契機にして非常に好転をしつつあります。三十八度線を境にして南北同一民族で二つの国をつくっておる、こういう南北が赤十字を通じお互いの接触によって話し合いを続けておっても、他人のけんかのほうは早く済みますが、身内のけんかというものはかえってなかなかむずかしいものだと思うのです。そういう意味でほぼ二つに区分されたものの話し合いというものがそう思うほど簡単にいくわけではありませんが、しかし韓国朴大統領は国連の場にお互いが入ってもよろしいという声明を出されたことは高く評価さるべき問題だと思います。好ましい事態である、こう理解をいたしております。まあ符節を合わしたように金日成首相もとにかく意思は表明いたしました。いままでよりも相当前向きだと思います。ただ、理想を掲げて高麗共和国ということでありますが、理想の姿を表に出したと思います。これは朝鮮半島の歴史、高麗、百済、新羅というような長い歴史もあったわけでありまして、一つの理想、望ましい姿ということで出したのでしょう。ただ、この中には同じ声明でも非常に懸隔があります。ありますが、やはり時を同じくして一緒になりたい、一緒になろう、一緒になるために努力しようということを言われたことは評価に値する、こう思っております。  日本の朝鮮問題に対する基本姿勢は一貫しております。これはもう南北ができるだけ話し合いによって平和な統一ができることが望ましい、こういうことであります。これは遠いところではなくすぐお隣のことでありますから、お隣で火事が起きたり戦争が起こったりしたら、どうも対岸の火事というわけにはまいらぬわけでありまして、日本としてはほんとうに隣である、かつて統一の国家を形成しておった朝鮮半島の問題でありますから、これは非常に慎重かつ好意的にしかも平和的に統一できることを望んでおったわけでございまして、いままでの基本的な姿勢、いささかも変化はありません。これは時の推移を十分見詰めながら日本でできることがあれば好意的に立ちふるまう、こういうことでございまして、日本のいままでの朝鮮半島に対する、また韓国、北鮮に対する政治姿勢の変化ということは、日本はもう明らかに内外に宣明しておるわけでありますから、この時点から急速に変えなければならないというようなことはないのではないか、このように考えております。
  176. 堂森芳夫

    堂森委員 時間がありませんのであまり長答弁になると質問ができないのですが、総理、あなたの責任だとは言いませんが、日韓条約のときに前の総理の佐藤さんのときにどういうことを言いましたか。あの日韓条約審議のときは朝鮮半島における唯一の合法政府は韓国だとおっしゃったのでしょう、あなたのほうは。そして強行採決をしたんじゃないですか。一貫して朝鮮に対する政策は変わらぬ、そこらはおかしいじゃないですか。もう変わったじゃないですか。いまでも韓国政府が朝鮮半島における唯一の合法政府とお考えですか。何かことばじりみたいになりますが……。  それからもう一点聞いておきましょう。今度オブザーバーとして朝鮮の両方の政府が招聘されるということが通る可能性が多い。国連総会において二つの国の代表をオブザーバーとして呼ぶ決議案が通過する可能性が多い、こういわれているわけですね。じゃ日本はどうするのですか。いままでいつも韓国側について韓国だけをオブザーバーとして呼ぶような態度を続けてきたでしょう。それでもかまわぬのですか。そうしてもしそういうものが通りそうになってもこれは反対していくのですか。そうじゃないのですか。どうですか。
  177. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 そういう新しく起きる事態に対して、別に朝鮮半島に対する基本的な考え方が変わるということではなく、これは事態の推移に応じてやるということでございます。これはいままで西ドイツと国交がありましたが、東ドイツはなかったわけです。しかし両方で話し合いができたから東ドイツとの国交がちゃんとできるということでございますし、大平外務大臣は南ベトナム政府と国交がありますから北とはと言っておりましたが、このごろ政府としても北とも国交を開こうということになっております。ですから時の流れは人類の英知に立っていろいろうまくやりますということ、これはやはり理解していただけると思うわけでございまして、それは私は三つの事態に応じてちゃんとやっておることでございます。だからいままで韓国と国交がありまして今度韓国でもあのような状態になり、それから国連に韓国及び北鮮を両方招聘する。これは両方招聘されても行かないということになるかもしれません。しれませんが、そのときに日本が反対するというようなことは全く考えておりません。
  178. 堂森芳夫

    堂森委員 じゃ総理、あなたごまかしている。そんなことはごまかしですよ。あなた変わってないというけれども、変わってきたじゃないですか。佐藤内閣のときはそうでしょう。日韓条約のときは韓国政府が朝鮮半島における唯一の合法政府と言ったじゃないですか。あなた方はそれで強行採決してきたじゃないですか。それで変わらぬのですか。そういう態度を続けてきているでしょう。これからできますか、あなた。たとえば今度の秋の国連総会で両方の国の代表をオブザーバーとして呼ぶ。これは両方の政府と言っておるのですよ。そういうことになった場合、そういうオブザーバーとして呼ぶような決議案が上程されたときに日本はどうするのですかというと、そのときを見てという話ですね。もう一ぺん言ってください。
  179. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 非常に明確にしております。そういう決議案が出れば反対はいたしません、賛成をいたします、こう言っておるのですから、これは明確です。
  180. 堂森芳夫

    堂森委員 もう少し進めて聞きますが、非常に形式的な質問になるかもしれませんが、朝鮮半島にはもう今日では大きな武力による紛争というものは起きることは絶対私はないだろうと思うのですが、総理はどうお考えでありますか。それはあるかもしらぬと思われますか。
  181. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 あってはならない、こういうことでございますし、これだけ世界の情勢を考えますと、小ぜり合いはあっても大規模な、この前の朝鮮半島における大事件というようなものは起こらないだろう、こういう気持ちでおります。
  182. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと、総理、一九五〇年に国連の安保理事会でいろいろな決議が行なわれました。朝鮮半島に国連軍が入っていって、そうして三十八度線以北のほうへずっと戦争行為をやっていく、という意味での決議が三つくらいなされました。それから十月にはたしか総会の決議等があります。これは総理全部お知りじゃないかもしれませんが、しかし在朝鮮米軍が国連の旗を立てているわけです、いまでも。  それから朝鮮復興統一委員会というものが決議によってできておるわけです。ところがこの朝鮮復興統一委員会というものについては、もうすでに国連の場で絶えずこんなものはやめてしまえという議論もあるわけです。そして韓国でも在韓米軍はいてもらいたいが、統一委員会はもう要らぬというような議論もたしか出てきておるように私は思うのですが、総理としてはそういう在韓米軍というものは引き揚げるべきだとお考えでありますか、あるいはおるべきだとお考えでございましょうか。統一委員会というのはやはりあったほうがいいとお考えでしょうか。もうなくてもいいじゃないか、それはもう大きな戦争行為による軍事的な紛争はないという判断に立つと、なくなっていい、なくなるべきだ、こう私は思うのです。またそういう意味でのいろいろな議論が、ことしの国連総会では、両朝鮮の政府もオブザーバーとして呼べばよけい出てくると思うのですが、どういう態度で日本政府大平外務大臣に命令されるのですか。総理、あなたの見解をひとつお願いしたい。
  183. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 いま御指摘のような国連の機構が存在することは事実でございます。先ほど申し上げたように、韓国及び北鮮も話し合いの状況に入っておるということは事実でございまして、大規模な衝突はないだろう、こういう見通しであっても、これが定着をしていくためにはまだ相当な時日がかかる。これは同じことが南北ベトナムにもいわれるわけでございますから、そういう問題であって、やはり平和維持のためにつくられた機構というものは設置をした人たちが慎重に配慮して確認ができるような状態になったら、これはもう当然自然消滅にもなりますし、明確に消滅を決議するということもあるわけでありまして、これはいま日本がどうこうという問題ではないと思うのです。特に日本は国連には加盟しておりますが、国連軍に参加しておりませんから、日本はそういうことやっていないわけです。ですから、これらの問題はやはり国連の機構としての決議として行なわれたものでありますので、平和の定着というものと見合ってなくなるべきものである、これが強化されるような状態、不安定な状態になってはならないし、ならないだろうと思いますが、いずれにしても日本がいまこれの廃止とか消滅ということに対して意見を述べるような状態ではない、こう思います。
  184. 堂森芳夫

    堂森委員 いや、日本が国連軍に入っていなから発言ができない、そんなことはないと思うのです。大いに意見を言わなければ国連に入った意味がないじゃないですか。それが世界平和のためになるというならばなおいい。  もう時間がありませんので、もう一つだけちょっと聞いておきます。これはこの間私が新聞で見た報道なんですが、今度アメリカへ赴任した安川大使が日本人記者クラブで講演をした。そしてその中で、日本の国民一般は、ややもすれば日米安保体制は日本外交にはめられたワクととりがちであるが、私はワクではなく、日本外交をささえる大切な柱だと思うという講演をした、こういうふうに報道しておるのです。これは自民党の政府の一貫した思想を端的に示していると思うのです。日米安保体制は日本外交の柱である、ワクではない、そんな事やすいことでない、柱だ、骨だ、肉だ、こういうような意味のことを言ったと新聞は報道しておるのですが、こういう考え方を総理もやっぱりそうだとお考えでございましょうか、日本の大使が着任早々そういう講演をするということはたいへんなことだと私は思うのですが、どうですか。
  185. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 日本は独立を確保し、日本国民の生命、財産を守るためには、どうしても日米安全保障条約を必要とする、こういう立場に立って日米間に安全保障条約締結されておることは御承知のとおりであります。私は、日本の安全確保のためには日米安全保障条約は不可欠なものだと考えております。そういう意味で日米間においては安全保障条約もあり、友好関係が維持増進されておるわけでございます。しかしこの安全保障条約があるからといって、日本の対米外交の自主性が侵されるというようなものは全くないわけでございます。日米間の外交は、お互いの意思の疎通を十分にやりながら、両国の利益を守りながら平和に貢献をするということだと思うのです。そういう意味で安保条約は必要である、現に存在をする日米間の大きな、重要事項であるということは間違いないことであります。  ただ安川大使が外交の基調であるというか柱であるというか、そう言ったことは、彼自身の、日米間というものの中で大きなきずなになっておるものが安全保障条約である、こういう見方で表現したのだと思いまして、これは言ったこと自体は間違っておるとか逆なものだとかいうことは考えておりませんが、ただ私が述べるのは、安全保障条約があるので、外交は全く安全保障条約に縛られておって自主外交もできないのだ、そんなことは全然ないので、安全保障条約は全然別な問題として締結されておるものであり、日米間には濶達な外交が行なわれておる、こういうことであります。
  186. 堂森芳夫

    堂森委員 もう時間がないから終わりますが、私の意見を裏返しに総理が言ったように思うのです。安保条約があるから日本は自主的な外交ができるんだ、こうおっしゃいますが、いまの朝鮮政策一つとってみても、私のしばらくの質問に対しても、お答えになることは全く自主性がないような御答弁しか得られなかったように思うのです。安保条約によって日本外交が大きく自主性を失っておるということはもう明らかなことで、これは議論してもしかたがありませんが、もう時間でありますから終わります。
  187. 藤井勝志

    藤井委員長 石井一君。
  188. 石井一

    ○石井委員 世界は首脳外交の時代が到来しておるようでございまして、先ほどからの議論を伺っておりましても、総理の来たるべき三つの大きなミッションに対する決意のほどが十分にうかがえるわけでありますが、一番最初にやってまいりますワシントンにおける会談、今回はいわゆる日米間の間断なき対話ということが中心で一年経過しておるから、いろいろな懸案についてお話しになる、こういうことでありますが、特に総理の脳裏の中でこれとこれとは今回の会談で自分としては重視しておるんだ、こういう課題がございましたら、ひとつわれわれに教えていただきたい、こう思います。
  189. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 いま日米間で問題になっておりますものは、間断なき対話をやろう、これは切っても切れない両翼であるから不協和音が出るということはお互いによくないことである、だから政府政府、首脳は首脳、事務ベースにおける会合は専門家会議として一カ月に一ぺんずつやろう、お互いに日米間というものに対しては何でもフランクに話そう、第一話せばすぐわかるのじゃないか、日本が片貿易になった、なったというけれども、そのシェアは三〇%ではなく輸出入の四〇%が日米間の貿易である、そういうことも話せばわかるわけであります。ですから、数字を常に見せ合って、日本には特に通関統計とか伝票が非常にはっきりしておりますから、日本政府は直ちにもその数字が出せるのであって、日々日米間の貿易収支はこうなっていますよということさえ言える状態ですから、話してわからぬことはない、こう言っておったわけです。ですから、一年以内には首脳会談をどうしても開きましょう、こう言っておったわけです。両三年たたなければならないといっておった日本の貿易収支、総合収支も、三年どころじゃなくて、一年間でよくなっておる、こういうことであります。しかし相手はいま通商拡大法案を審議中であるというような事態。日米間で経済問題、貿易問題、そういう問題に対してはやはりどうしても首脳の間でがっちりひとつ理解し合う。それであとは当事者間や個別の会談をやることによって十分解決ができ、いやしくも米国においては反日感情が非常に強いなどということが報道されないようにしましょう、お互いの利益を守るためにというのが一番大きな問題だと思います。
  190. 石井一

    ○石井委員 経済問題非常に重要だということでございましょうが、最近の大統領外交教書などを読んでおりましても、いわゆる安保条約に対する日本の負担ということに関して、わがほうに対する要求というものもさらにもう少し強くなってくるのじゃなかろうか、私はこういうことを危惧いたしておるわけでございますが、この点については御見解ございますか。
  191. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 私はこれはそうは考えておらないのです。これはもう二十五年も経ておりますし、日米間に安保条約は必要だ。いま特に日本が必要である。だから、安保条約改定問題が出てくるとすれば向こうからだろうというのが日本人としては常に考えておったわけです。大体これはNATO条約のようなものとは違って、アメリカ側からいうとたいへんな片務契約でございます。NATOは攻守同盟条約でございますから、お互いとも防衛の責任を負っているわけですが、日本憲法九条もございますし、これは日本を守るためには協力していただくが、あなたがたいへんな事態になっても日本は兵を出すわけにはまいらないのですという条約ですから、これは新しくつくるにはたいへんな条約で、とてもできるような条約だとは思いません。そういう意味ではこの条約アメリカ側から見れば片務条約である、こういうことですから、確かに要求は出るだろうという考え方が起こるのは私はやむを得ないことだと思いますよ。しかし日米間ではそのくらいのことは理解しているのです。これはNATOとは違うんだ。日米というのは経済的にも非常に深い関係にあるし、この条約締結されてるから防衛分担金をというようなことが要請されるということはない。私はそういうふうに初めから理解しているのです。
  192. 石井一

    ○石井委員 天皇の訪米に関しては何かお話し合いになる予定でございますか。
  193. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 陛下が、アメリカ側の要請がございましたけれども、日程の御都合で今秋御訪米ができなかったという事実がございます。これは助言と承認の立場にございます政府でございますし、正式な要請に対してこたえられなかったわけでありますから、その間の事情は私から十分御説明をし、理解を求めるつもりであります。  アメリカ大統領も訪日の希望というものは存在するようでございますし、公的にも私的にもでございますが、いままででも六回、七回日本においでになっておるわけです。副大統領のときもおいでになっております。ですから、今度大統領として正式に御訪問いただきたい。前に大統領問題で羽田の大事件などありましたが、あれからは相当日本もよくなっておりますから、こう述べておるわけでありますので、これはまず大統領にぜひおいでいただきたいということは私も申し上げます。  そうすれば、ことしの事情を説明するわけですから、いつごろ訪米できるのかということは、宮中の御都合のいいときに訪米ができるであろうということだけは、これはもう答えなければならない、こう思います。ことしできませんでしたが、来年もまたわかりませんということではなく、十分慎重に御相談の上、御都合を伺いながらこちら側の予定も述べなければならない、こう考えております。
  194. 石井一

    ○石井委員 大体問題点がかなりはっきりいたしましたので、時間も限られておりますから、訪ソに関して一、二点お伺いをさせていただきます。  そこで先ほど岡田委員に対する応答の中にも、領土問題に関しては不退転の決意で日本国民の世論を背に受けてひとつがんばる、こういうことで私もたいへん意を強くいたしたわけでございますが、もう一つやはり大きな問題はシベリアのチュメニその他の天然資源開発、資源確保、こういう問題であります。資源を確保するという観点と同時に、安全保障上の見地からもこれは十分検討をしてまとめていかなければいかぬ問題である。また、これと領土問題をからみ合わせても非常に問題がある。こういう問題でありますけれども、この点に関して総理の御見解をひとつ伺っておきたいと思います。
  195. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 シベリア問題に関しましては、これはテクニックの問題として領土問題とからましたほうがいいんだとかからませないほうがいいんだとかいうことはありますが、これは外交技術の問題として考えてはいけないと思うのです。私はフランクな意味で訪ソしよう、訪ソした上は、平和条約、四島の返還という問題に対しても日本人の考え方をすなおに誠意をもって述べ、これが実現のために精力的な動きをする、これは当然のことであります。しかしシベリア開発というものはいまもうすでにやっておるのです。木材が不足である、木材の不足に対していまもう港をつくってワンセット開発が進められておるわけであります。高碕訪ソからずっと行なわれております。その後沿海州ガスの問題とか石炭の問題とかチュメニの問題とかございます。その中で一番大きなプロジェクトがチュメニ油田である。これは三十億といっておったものが五十億くらいかかるのではないかという問題もあります。これは日ソの間でお互いに共通の利益ということが確認せられればやりましょう、こういうことになっているので、原則はきまっているわけです。それでアメリカとソ連との首脳会談においても、天然ガスの開発に対してひとつ検討しようということまでいわれております。できれば日本だけではなく、アメリカもチュメニ油田の開発に参加することが望ましい、こういうことはソ連側にも述べておりますし、日本政府も間々明らかにしておりますし、アメリカ側にも通じております。そういう事態でありますから、これは日本としては六十年七億五千万キロリットルくらいの計算が出るのですが、それじゃ多過ぎる、とてもそんなに入れられるものではないということで五億五千万キロリットルにならないか、六億キロリットルにならないかと、いま資源に関する委員会で相当議論をしているわけです。そういうような状態でありまして、二千五百万ないし四千万キロリットルというものがその当時使用することを想定する数字の四、五%というものでありますし、輸入の多様化をはからなければならぬということでありますので、これは両国の意見がまとまればこの開発に参加をしていくということであります。  これはほかにいろいろな問題があります。いま端的に御指摘になったように、軍事的な問題とかいうことでありますが、これは米中も日中も国交が開かれて非常に交流が盛んになっておりますし、またアメリカも参加をする。また米ソはあれだけの話し合いをしておる。日ソの間には平和条約を——四島はございますよ。四島を実現して平和条約を結ぼうという機運になっているわけですから、そういう問題に対して、私は慎重な配慮は必要であるということは事実でございますが、大きな障害になるというものではないと考えております。
  196. 石井一

    ○石井委員 首脳外交で最近特にブレジネフ書記長はアメリカに渡り、西独に渡りして意欲的に動いておりますが、総理は今回訪ソされたときに書記長に訪日を要請される、こういうお考えはございますか。
  197. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 ニクソン大統領もヨーロッパに飛び、北京に飛び、モスクワに飛んだわけです。ブレジネフ書記長もベルリンに飛び、ワシントンに飛び、今度ワシントンからパリに行ったわけですから、今度は日本の番だろう、こう思いますな。私も招待を受けて訪ソをするということでありますから、当然こちらのほうも訪日を要請するということになります。
  198. 石井一

    ○石井委員 これは最後の質問でございますが、訪ソの場合も訪米の場合も、アジア情勢、これは私たちとしては一つの最も重要な課題だ。たとえばアジア太平洋諸国会談というような提唱もございましたし、またソ連からはアジア安保というふうなこともございますが、基本的にこのアジア情勢ということに関して総理の御所見、首脳会談に向かう一つのお考えというものがありましたら、これを伺いまして私の質問を終わりたいと思います。
  199. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 アジアというのはヨーロッパのように非常に安定はしておらぬということは事実であります。これは宗教の問題もございますし、貧困の問題もあるし、また地球上にある東西に分かれておるという三カ所のうちの二カ所があるわけでありますし、非常に膨大な人口をかかえておるという面もあります。特に世界の三大国であるところの米中ソ、これはちょっと報道されておるような記事だけですべてだというほど簡単なものではないということであります。アジアの安定もいまだし、これを定着させなければならない。定着のためにはあらゆる努力をしなければならない、日本協力しなければならぬということでありますが、なかなか問題はヨーロッパのように簡単ではないということでありますから、アジアのことに対しては日本はよく知っております。しかも静かに戦後見てきております。兵を出したりいろいろな援助をしたりやっておると、そういう角度や目から見ますから、やはりいろいろな評価が違うと思うのですよ。日本はそういう意味ではアジアの情勢に対しては、アメリカにもヨーロッパ諸国にもそれからソ連に対しても、アジアの一員として正しい見方を主張できるということは事実だと思うのです。ですから、ほんとうの南北のベトナム問題というものの復興に何が一体障害になっているのだということを言ってごらんなさいと言えば、はっきり言いますから、私は案外ものをはっきり言う人ですから、ですからそういう意味では、ひとつ何でも述べるということだと思います。そしてあなた方はアジアに対してどうするのですか、米ソはほんとうにあの協定をするように、アジアに個別に具体的にこうするのですかという問題は、それは当然話の間には出てくる問題である、こう思いますよ。
  200. 藤井勝志

    藤井委員長 金子満広君。
  201. 金子満広

    ○金子(満)委員 総理の訪米の日程、そしてまた田中・ニクソン会談の日程、これもきまったようでありますから、そこで最初に、端的に伺いたいのですが、総理が考えている田中・ニクソン会談で何を話し合うかという課題について、ひとつ最初にお伺いしたいと思います。
  202. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 まだ外交ルートでどういう問題をやろうということは詰めておりませんが、十六、七日には日米合同委員会が東京で開かれるわけでありますし、国会の都合も見ながら、できるだけ日米間で何を話すのかというようなことは連絡をしてもらう、こう思っておりますが、いまの状態において、率直に申し上げれば、ハワイ会談におきまして少なくとも日米の首脳が一年に一回以上会おう、場合によったらどこへでも出ていってもいいじゃないかということであります。ですから、フランクに、お互いに東京でなければ、ワシントンでなければというようなものではなくて、どこへ出ていってもいいから会いましょう、会えば必ずお互いが理解し合ってものも解決する、こういうことになっておりますので、ハワイ会談から一年を迎えようとしておる今日、お互いがまず会おうというのが一つの目的でございます。  そしてそこで言えることは、両三年かかりますよ、これだけの高度な経済の中でもって日米間の貿易収支を考えるときに、両三年かかると思います、それはかかるでしょう、そう言っておったのが、一年間でとにかく先は見えてきたということでありますので、少なくとも通商拡大法案が通っても対日問題に対してはひとつしかるべく考えてほしいという問題が一つあります。  もう一つは、今度の大豆や何かの問題がありますから、そういう問題に対して、これからひとつ日本の需給状態というものを十分考えなければいかぬと思います。それから飼料の来年度からの問題がありますので、これはやはり耕作反別をふやさなければならないということがあります。そういう意味で、そういう問題も当然議題にしなければならぬだろう。  向こうからは大西洋問題も出ておりますし、アジアにおけるベトナム問題その他に対する日本考え方、広範な話になると思います。また、特に米ソの首脳会談の状態というものに対してはその事情をたださなければならぬ、こう考えております。
  203. 金子満広

    ○金子(満)委員 そこで、いま総理の言われた去年のハワイ会談の続きでありますけれども、このハワイの会談のあと日米共同声明が出されまして、その声明の中では、日米安保条約のいわゆる円滑かつ効果的な実施ということがうたい上げられたわけであります。それと前後して日本にあるアメリカの軍事基地の態様に変化が起きていることは事実であります。相模の補給廠が戦車の修理をしている。あるいはまた横須賀が第七艦隊の空母ミッドウエーの母港化、そしてまた日本にある米軍基地がベトナム、インドネシアに対して直結をしておった、こういうことが出てきているわけでありますが、こういう中で在日米軍の基地の再編強化、そういうことが具体的に肉眼で見えるような状態になってきていると思うのです。  そこで、まず私は関東計画についてひとつ聞きたいわけですが、この関東計画というのも安保条約の円滑かつ効果的な実施の内容であるかどうか、この点を伺いたいと思うのです。
  204. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 日米安保条約が円滑に実施されなければならない、合理的に実施されなければならぬということは、両国ともそういう立場にあることは事実でございます。しかし日本側が考えておるものは、基地をなるべく統合したりして、日米安全保障条約上の日本義務を守っていく立場においても、できるだけ国民の理解が得られるような状態にしてもらいたいということで、基地の返還、統合等を進めていきたいという考えであります。その意味では、B52もいなくなりますし、それから沖繩の一部の基地も返還が実現をする、また関東計画も行なわれるという面からいって、これは日本の要請どおり実行に移されつつある、こういうふうに評価をしているわけです。ただ一面から見て、基地の数は減ったけれども性能はよくなっているじゃないかという御指摘だろうと思いますが、これはやはり量から質への転化であって、これはそうだと思うのですよ。量が減ってなるべく金がかからないように、人も少なくして、そして目的がちゃんと果たせるようになることは、これはもう一般の企業でも同じことだと思うのです。だから、そういう意味で、日本の基地の整理統合という要請と、先方の量から質へという転化が、ときあたかも同じくなっておるというふうに理解すべきだと思いまして、これは横須賀のミッドウエーの母港化という問題、これも、一々帰らないで済むとか、横浜は非常に、まあ百年の歴史があってアメリカ人は住みやすい、郷愁を感じておる、こういうことでありますので、それは私は必然的な姿ではないか、こう考えておるのです。
  205. 金子満広

    ○金子(満)委員 たいへん総理は率直に申されたわけですけれども、いわゆる量から質への転化だと。われわれはこれは非常に重大だと思うのです。つまり、基地の機能が集中する、そして強化される。こういうことだと思うのです。特に関東計画によれば、関東平野にある空軍基地を中心にして横田に集中する。そうしますと、ここが戦略空軍の基地になり、戦術空軍の基地になる。そして、軍事輸送、補給のための基地になる。これはアメリカが極東に持っている軍事基地では、私どもの推定では、この関東計画が達成されれば最大の空軍基地になる、こういうように思うのですが、総理はその関東計画ができ上がったとき、横田の基地の態様はどういうものになるか、その点を最初にもう一つ関東計画で聞きたいと思うのです。
  206. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 私は、まあ専門家でございませんから、そう詳細は承知をいたしておりません。おりませんが、基地がばらばらになっておるものを日本の要請によって統合されるということを機会に量から質へということで計画を進めるということは、これはやむを得ないことだと思います。また、日本に核兵器が持ち込まれたり、そういうことになったらたいへんでございますが、そうではなく、日本政府が内外に宣言しておる非核三原則は十分守ります。そういう基本的な条件を備えて、そうして統合による合理化、効率化ということが行なわれておるということに対して異論を差しはさむことはないと思います。なぜならば、安保条約というものが日本の防衛のために必要なものとしてこれを締結し、基地を提供しておるのであります。ですから、その量から質へ転化する過程において防衛分担金を出せとか基地が広がるとかということになると問題がございますが、そうではなく、基地は縮小され、日本政府の要請にこたえておるわけでございますから、私は日米安全保障条約というものがアジアの平和にも、またアメリカ軍が基地を持っておるということが周辺地域の平和にも力のあることでありますし、そういうことによって日本も平和という立場を享受できる立場にあるわけでございます。その問題に対しては、私はつまびらかにお答えはできませんが、政府の立場において、不当なものであるとか、日本がそれを制限しなければならないものだとかというような見解は全く持っておりません。
  207. 金子満広

    ○金子(満)委員 私の質問に答えていないのですが、つまり、横田基地がアメリカの極東における軍事基地の中では、機能上最も大きな基地になる、こういう点についてどう思われるかというのを伺ったわけです。それを一つ答えてもらうこととして——ちょっと待ってください。一国の首都にこれだけ機能が集中した軍事基地があるのは世界にないと私は思うのです。アメリカの同盟国で、このように機能が集中した軍事基地というものがほかの国にあるかどうか、その点、総理どう考えますか。
  208. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 どういう根拠に基づいて御発言になっておられるかわかりませんが、基地の機能というものは量から質へ、これは時代の要請でもありますし、相手のあることでありますから、量から質へ転化をするのは、これはもうどこの国でも同じことであり、例外ではないわけでございます。横田基地が世界的にそんなに大きいのかどうかということは、私は専門家ではありませんから詳細には承知をしておりませんが、しかし、報告を受けておる限りにおいては、全体としての戦力というものは日本にあったものよりもふえてはおらない、こういうことだけは聞いておるわけであります。ですから、沖繩が非常に小さくなる、またB52もいなくなる、いろいろな状態から考えて、日本におけるアメリカの戦力というものがそんなに膨大化しておるというふうには考えておりません。  各国に一体そんなに膨大な基地があるのかといえば、NATOには三十万から三十五万の兵隊まで出しておるわけですから、これはそういうことからいうと……(金子(満)委員「首都にです。首都にそんなのがほかの国にありますかというんです」と呼ぶ)首都……わかりました。しかし、首都ということになりますと、これはなかなかめんどうなことでございますが、いま首都につくったんじゃないんです。これは占領時代からずっとあって、もっとうんとあったものがだんだんと集約されてきたということでありますので、これはやはりそういう立場からひとつ御理解を賜わらなければなりません。首都にどこにどういうものが、ロンドンやベルリンやいろいろなところにあるのか、私は承知いたしておりませんから、必要があれば防衛庁から資料を取り寄せてお答えをいたします。
  209. 金子満広

    ○金子(満)委員 よその国の首都にはこれだけ膨大な外国の軍事基地はないんです。これは総理が知らないと言えばそれまでですけれども、ないことは事実だ。そこで、いま総理も言われましたけれども、これは占領中の引き継ぎでしかたがないという意味のことを言われました。確かに横田の基地というのは日本政府と合衆国政府が協議してつくった基地でないことは明らかですよ。しかし、日本政府がそれをそのまま受け継いできて、さらに機能強化という方向に移ってきていることもまた事実です。確かに一国の首都にこれほど大がかりな外国軍事基地を持っている国はよそにないのでありますから、この際、先ほど総理も言われますように、近く日米合同委員会が開かれる、そうしてそのあと田中・ニクソン会談が開かれる、私はこの時期に、大体関東計画というのは誤りだ、よその国にも例がないんですから、特に独立国といっているんですから、この首都東京から軍事基地の撤去を求めるようにアメリカに要求する考えがあるかどうか、この点についてただしたいと思うのです。
  210. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 せっかくの御提言でございますが、横田基地を直ちに返還をしてくれという提案をするつもりはいまのところありません。これはその例がないからというんですが、日米安全保障条約も、先ほど述べたように、例がないんです。これは両国でもって結ぶものはみんな攻守同盟条約的なものであって、お互いに協力し合う。日米安保条約だけは日本が攻撃を受けるときにはアメリカがやってくれる、アメリカが攻撃を受けてもどうもやれないんですと、こういうことでありまして、これは全然別な条約であるということが一つございますし、それからいま横田を返還要求してほんとうにできるのかどうかという問題もあります。これはやったら、膨大もない国民の資金をまたやらなければいかぬわけです、出さなければいかぬわけですから、横田というものを他に移すようなところが一体現にあるのか、そうしてそれにはそれだけの費用を提供するだけの国民のコンセンサスが得られるのか、国会が第一、予算を通していただけるのかという周到な配慮のもとになくて、ただ私として、首脳会談でございますから、首都には例がないからこれは何とかしてくれませんかと言うわけにはまいりません。遺憾ながらこれは率直に申し上げておきます。
  211. 金子満広

    ○金子(満)委員 率直ばかり言うんですけれども、私は言うまでもないことですけれども、軍事基地というのは、日本の国土にあっても日本国憲法の届かないところですよ、つまり、それは主権に対する制限であり、日本の主権に対する侵害であることははっきりしているのです。しかも、それが首都のまん中にある。首都の重要な部分を占めておる。その面積も非常に膨大だ。二千六百四万平方メートルもある。そして、住宅の問題についても、その他都民の生活についても、基地というものがどういう役割りを果たしているのかということを考えただけでも、われわれは、首都に軍事基地があるということはまことに不名誉なことだ、これをなくすように総理は考えてないと言うけれども、これこそ大きな問題だと思うのです。事のついでですけれども、総理の「日本列島改造論」の中にも軍事基地というのはないのですね。どうするかというのはないのですよ。あれだけ膨大な面積を持ち、そして地域住民にも大きな被害を与えている、こういう基地について出てない。しかも、いまの答弁では、軍事基地の返還、率直に言ってこれをアメリカに要求する考えはない。私は、いま東京の都民も、そしてまた多くの国民も、首都にアメリカのこんな膨大な軍事基地、しかもこれが関東計画でそこへ集中してきて、量から質へだ、そしてこれがますます強化されるということについては、だれも危険に感ずるし、これを取り払うように要求するのはあたりまえだと思うのですね。そういう点について、当然これは日米合同委員会あるいはまた田中・ニクソン会談でも出すべきだ、こんなことに遠慮する必要はないということですが、時間が来たそうでありますから、そのことを強く要求をしておきたいと思うのです。
  212. 藤井勝志

  213. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理にお伺いします。短い時間だそうですから、簡単なことを少し伺います。  私は、総理の訪米と訪ソをたいへん心配している一人であります。なぜかというと、総理はたいへん単純に、かつ、御自分の表現では、率直にものを言われるわけでありますから、ひょっとしてひっかかるのではないかという点がたくさんあるわけです。それで、私は、総理のひっかかりそうなことを幾つかいま申し上げますから、十分お考えの上、御返事をいただきたい。  一つは、大西洋憲章にキッシンジャーは日本の国を入れたいという発言をしました。総理、何とお答えになりますか。
  214. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 大西洋憲章そのものの、アメリカが何を企図しておるか、またNATO諸国が何を考えておるのかという問題、当然話し合われると思います。日本は、しかし軍事的な面で協力するわけには全然まいりません。しかし、これは、国際通貨の問題であり、また経済上の問題であり、貿易の問題であり、また国連の下部機構であるところのIMFや新通貨流通性をどうするかというような問題になれば、これはもう経済的にお互いに日米、EC各国との間には緊密な連絡が必要なわけでございますので、そういう立場をわきまえて話を十分するということでございます。  私は率直にものを言いますが、人のことを聞いて判断するときには慎重でございますから、国益を誤るようなことはいたしません。
  215. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうすると、キッシンジャーのいう、大西洋憲章にお入りなさいとすすめられたら断わるという意味ですね。
  216. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 大西洋憲章なるものが、アメリカが何を企図し、何を一体考えておるのか、それに対するヨーロッパ諸国の反応はどうかという問題は当然聞きます。そしてそれが軍事的なものであるならば、日本は入るわけにはまいりません。しかし、それが経済問題等が主題になり、IMFの問題とか、国際通貨の問題、貿易の問題、エネルギーの問題、そういう問題が議論をされるようなものであれば、それはひとつ日本も考えましょう、こういうことになります。
  217. 渡部一郎

    渡部(一)委員 今度は慎重過ぎて……。そうすると、これからもう一回大西洋憲章のことはアメリカに聞き直される、こういうことですね。まだ何もきまってない、アメリカ政府からよく聞いてみる、こういう意味ですね。
  218. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 新聞に報道されたことや、また、外務省からレクチャーを受けている程度でございまして、実際においてどう運営されるのか、どういう形態になるのかというものは定まっておりません。このごろでは、キッシンジャーそのものも、みずから言った大西洋憲章そのものを口にしなくなったとさえ報道されております。そういう問題に対してアメリカが何を考え、相手国がどう反応し、在来の機構とどう調和できるのかという問題をたださずしてここで結論を申し上げるわけにはいかぬわけです。
  219. 渡部一郎

    渡部(一)委員 では次に、ニクソンがこの間外交教書でもって、日本外交及び政治姿勢について数々の教訓を試みました。あれに対して総理はどうお考えですか。
  220. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 それは、アメリカ日本に対していろいろな見方をすると思いますし、私たちもアメリカに対してはいろいろな見方をしております。そういう問題はやはり首脳会談でフランクに話し合うということでありまして、これは日本の実情……(渡部(一)委員「いまどうお考えですか」と呼ぶ)いままだ勉強中でございます。
  221. 渡部一郎

    渡部(一)委員 今度はすごく慎重ですね。  外交、防衛方針の施政方針の演説の中で、総理は、「ようやくできかけた和平を定着させるため、アジア諸国をはじめ太平洋諸国を網羅した国際会議の開催の可能性を検討したいと考え」ると特におっしゃったようであります。ASPACがだめになりましたし、そういう意味で、こういうお考え方を持ち始められる経緯もわかるような気もいたします。ところが、総理が訪ソをされるという点も含まれるから、それも当然アメリカともお話しされる場でこういう話が出てまいりましょうから、私は心配しておるのです。それは要するに、世界安保、太平洋安保ともいうべきものをソビエト政府がこの間から何回も述べておることであります。そしてそれに対して日本政府側はまだ明確な返事はしておりません。新聞紙上で外務省高官筋という報道がされておりまして、大平さんの語り口らしいせりふが並んでおります。まだしかし、それは正式のコメントとして伺っておりません。総理がこういう国際会議なんというのに非常に傾斜しがちなニュアンスがもはやありますので、私は、アジア安保なんていわれるとぱっと乗りそうな予感がしておるわけです。総理、お乗りになるおつもりがあるかどうか伺いたい。
  222. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 そういうところは非常に慎重です。私は、アジアの経済復興会議というのはベトナムの復興ということがその主題になっております。そうしてパリ会談ということが行なわれておりますし、いつの日にか合意はされるであろう。しかし、なかなかこれを定着させるためには努力は必要であるということで、日本日本の立場で、可能な限り南北ベトナムの平和復興というものに寄与しなければならない。その場合一つのきっかけとして、めんどうな問題になっているのは、地球上における三大国というところの米ソ中というものががっちり組んでいるところになかなか問題がうまくいかないわけですから、そういうことで、アジア太平洋諸国が協力をし合いながらベトナムの民生安定や復興をやろう、その契機に、結局アメリカや中国やソ連も、南北といわず、わしは南だけ応援しようと思っているんだから北には出さぬ、わしは北のほうだけ応援しているんだから南には出さないということではいつまでたっても平和は定着をしないので、できるならば、そういうことを機会に、アジアの平和というものを安定させたい、そういう考えなんです。ですから、あのときには平和復興会議を提唱したい、こう言いたかったのですが、これは言ってもなかなかできるのはたいへんであるという感じがしましたので、提唱を考慮したい、こういうことでした。ですから、やはりアジアの平和というものは、貧困とかいろいろな問題でたいへんな生活不安になっているわけでありますから、民生の安定ということに主力を置くべきである。ですから、アジア開銀の設立に対しては積極的でありますし、経済復興という面に積極的である、そういう復興会議ができれば望ましいことである、できなければ国連を通じてでもいいじゃないか、こういうことを考えたわけでございまして、国連が主導的な立場をもってやるなら、これは日本は応分の協力をいたします、こういうことを言っているわけです。赤十字がやるならば、日本は応分の協力をいたしますし、こういうことで日本はなるべく、出しゃばるといろいろまた批判をされますので、理解を求めながら、平和に対する応分の寄与をしたい、こういうことであります。  アジアの安保という問題、これはなかなか簡単でないことは、これはあなたも御指摘になっているとおりでありまして、そんなに簡単なものでない。一番いいのは国連の常任理事国にしてもらうことでございまして、これは、国連機構というものを完備した中でやることなら、それは世界じゅうの問題を、いろいろなことをやるにしてもあれですが、アジア自体でもっていますぐソ連の提唱しておるようなものができるということは、なかなかめんどうな状態である、こう思います。
  223. 渡部一郎

    渡部(一)委員 国連の常任理事国になることは、総理のお考えになるほどいい政策ではございませんですよ。それはあとでがっちりまた私申し上げるチャンスがあったら申し上げたいと思います。  それから、時間がありませんから、総理にアメリカ外交についての、行かれるときに一つだけ注意していただきたいことがあるのです。それは、総理は大胆に行かれるおつもりでしょうが、アメリカというのは世論の国だということです。したがって、世論形成が十分慎重に行なわれた後に政治家の行動があります。ですから、大東亜戦争、いわゆる太平洋戦争の勃発時期において、日本を最初に第一撃させるのに十分な配慮が行なわれたことも事実だし、また今度のベトナム戦争終結にあたっても、外交機密文書が漏れることによって国民に周知されて、初めてやめることができるようになった、やめろという方角に進み始めたのは御承知のとおりでございます。そうすると、今度の場合、日本の田中総理が行くにあたりまして、日本政府のいままでやってきたことに対しては、非常に強烈な反感というものがあるように思います。私は向こうへ行って見せてもらいましたけれども、アメリカの国旗が地下鉄の中に飾られておったそうでありまして、その下にメイド・イン・ジャパンと大きな字で彫られていたり、そうかと思うと「貴方の政府日本に職場を輸出している」という広告が、女性衣服組合の手で、ニューヨークの地下鉄の中に出ております。こういうキャンペーンが徹底的に行なわれております。それは単純に見ますと、佐藤・ニクソン共同コミュニケによって、日本側が、アメリカとの間の貿易の不均衡は、これは均衡を保つより直すというふうに約束しているところから始まっているわけであります。したがって、それは向こうが、それが正しいかどうかではなくて、約束を守るか守ってないかの次元でものをいっているわけであります。だから裏切り者という形であります。そこへ田中総理はしばしば、ドラスチックな変化を好まない旨、そういう急激に何か言ってもらわなくても、両三年の間に何とかなるのだという説明を続けられました。それはどういうふうに向こうに映っているかというと、要するに裏切り者であり、要するに仕事をしない無能な人であり、要するに日本というのはどうしようもない、奇怪なうすら笑いをする人物の集合体としか見えない。したがって、今度どういうようになるかというと、田中総理はおそらく、貿易不均衡が少し回復されたというので喜び勇んで行かれるだろうと思います。しかし、実際向こうはそういう目で迎えてくれるか、何だかよくわからない人が来たという感じになると思うのです。それはどういうふうにわからないかというと、ずけずけ申し上げますけれども、こういう経過もありました。ぼくはあるアメリカ銀行の幹部に会いました。そうしたら、そのときに彼らが言うのには、日本側はこう説明する、政府の首脳部に会うと、財界が言うことを聞かないで困っているのだと言う。財界に会うと、労働組合がだめなんだと言う。労働組合に会うとまた政治家がだめなんだ、そういうふうにどこかで非常に困っているんだという説明をする。どうなら変わるのかというと、結局は強大なる圧力がほしいのだという説明になる。われわれはコナリー式の圧力をかけることは好まないが、圧力をかけてほしいというならいつでも外圧をかける用意がある。田中総理が来たときに十分差し上げましょう、こういう発言をしておった。こういう圧力がかかってくるだろうと私は思います。したがって、政治家同士、ニクソンと会うだけでお話をしようと思って行かれると、問題の半分しか理解しないことになる。アメリカの世論に対抗して、アメリカの悪意ある世論に取り囲まれて、それを引き回すことができなければ、総理はほかの交渉もあまりできなくなるところに追い込まれる可能性がきわめて高い。私は、時間で、縮めて言いましたから過激な言い方になっています。しかし、総理に早くわかっていただきたいと思って言うのです。総理、十分気をつけないと、アメリカ政府との交渉で意外な面が出てくる。総理、こういう点はどうお考えになりますか。
  224. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 アメリカの一部に、いろいろな日本を理解しない人があることも事実でございます。私もよく知っておりますが、アメリカ人というものは、話せば非常によくわかる人たちであります。日本に対しては相当理解をしておると私も考えます。私も、過去十五年くらいの間に十回くらいアメリカに行っているわけでありますが、私もアメリカをそんなに知らないということはないわけです。毎日のようにというわけにはいきませんが、少なくとも週に何人かはアメリカ人にも会っております。激烈な日本批判をする人もございますが、しかしお互いが話し合いをして理解をしなければならない立場にありますし、どうしても日米間はそういう状態ではいかぬのです。ですから、私は十分お互いが理解できると思います。私は、そんなにアメリカに不信用だと思っていません。私は、絶対にできなかった日米繊維交渉をやったので、信用はあるのです。少なくとも私のところに来る人たちは、あなただけは信用しますよ、こう言っていることも事実なんです。しかも両三年間と言ったのを、一年間で貿易バランスは二十九億ドルといったのが、ことしは二十五億ドルになる。私がはっきり言っているのは、二十九億ドルにという要求なんです。まあ、とにかく上下三、四億ドルあるにしても、少なくともおととしの三十二億、去年の四十何億ドルということはもうないように思います。三十二億ドルをオーバーしなければ、それは努力ということを評価してもらわなければ困るということで、ことしは二十五億ドルをもっと割るかもしらぬという状態でございます。しかも七月十六、七日は日米の合同委員会も開かれるわけであります。経済人会議も京都で開かれるわけであります。私もニクソン大統領にだけ会うつもりはありません。ニューヨークにも参りますし、いろいろなところで、できればマスコミ、また経済人、いろいろな人たちに会うつもりでおります。十五年間もおつき合いがあるのでございますから、これは相当知った人もおります。ぜひ来てくれというので、ニューヨークだけ回るつもりでおりましたら、とにかくシカゴにも来てくれ、ロスにも来い、サンフランシスコもやはり顔を出さなければいかぬ、いろいろな要請がありますが、これに全部こたえられるかどうかは、日程の都合上わかりませんが、私も精力的な旅をしてまいるつもりでありまして、これはやはり行ってマイナスになる、そういうことではなくて、真に日本はよきパートナーとして理解し得るものであるというために訪米をするのでありますから、そういうことに対しては十分な配慮をしてまいりたい、こう考えております。
  225. 渡部一郎

    渡部(一)委員 時間が参りましたので、その話をもう少し丁寧にお話できませんけれども、なるべくたくさんの方々に、しかも日本人がいままで行かなかったような南部の人たちや、いろいろなところで対話を続けられることが望ましいと私は思います。  それから最後に、北方領土問題で私一つだけ……。  総理は、先ほどもお話がありましたけれども、北方領土問題は解決を急ぐと非常に妙なことになるわけであります。つまり、ある意味で領土問題を凍結あるいはたな上げする、そして油の問題だけで妥協するのではないかという観測も一部にあります。領土問題は絶対譲らない要件であるかどうか。私は、外務大臣にも先日伺いましたが、総理からもその問題を伺いまして、私の最後の質問にしたいと思います。
  226. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 日ソ間に戦後わだかまっておるのは四つの島の問題でございます。これは固有の領土であり、日本人の悲願であります。この実現ということは至上命令であると私は理解をいたしております。その意味でどんなに言いづらいことでも日本人の考えていることはちゃんと述べます。そしてほんとうに日ソが友好を深めてほんとうに善隣友好の両国になるためにはやはり領土問題を解決して平和条約というものが大前提であるということは主張いたします。私はこれをたな上げにしようなどという考えは全くありません。ただ今度でどうしてもきまらないという問題があるならば、それは粘り強くやらなければならないという基本的な考え方を述べたにすぎないのでありまして、たな上げをして安易な道を選ぼうなどという考えはありません。
  227. 渡部一郎

    渡部(一)委員 四島とも譲りませんか。
  228. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 そういうことでなければ訪ソなどいたしません。
  229. 藤井勝志

    藤井委員長 永末英一君。
  230. 永末英一

    ○永末委員 六月十八日以来一週間にわたりましてソ連ブレジネフ書記長がアメリカニクソン大統領と会談をし、一連の取りきめをいたしました。その中で核戦争防止協定というのが非常に重要な意味を持っていると思います。この第一条、第二条、第三条のいうところによれば米ソ両大国は核戦争にもう訴えないようにしよう、それは両方の国のみならず他の国にもそうさせないようにしよう、こういうことがうたわれております。ところが、そうなりますと冷戦構造、つまりアメリカとソ連とが終局的には核戦争、核を使用してくれるんだという予定のもとに組み立てられておったいろいろな同盟関係というものは最終的な保障力をなくしますので、第六条で二つの国はいままでそれらの国と同盟条約を結んだその義務をちゃんと守るのだという注釈は加えてあるのでございます。それほどに重要な協定だと私どもは思うのでございます。さて、したがってこの協定が調印されましたときにキッシンジャーアメリカ大統領補佐官は記者会見をいたしまして、こういう重要な協定なんだから、調印に先立ってNATOをはじめ同盟諸国の一部と事前協議を行なったと発表いたしました。わが国事前協議を受けましたか。
  231. 大平正芳

    大平国務大臣 受けております。
  232. 永末英一

    ○永末委員 どういう内容ですか。
  233. 大平正芳

    大平国務大臣 発表されたような内容につきまして詳細な通告を受けております。
  234. 永末英一

    ○永末委員 だといたしますと、この協定後各国の動きは非常に急速に変化をしているわけですね。わが東北アジアにおきましても、朝鮮半島の二つの政府はいままでとは非常に違った動きを、加速度を加えておる、こういう状況。欧州もそうでございますが、わが国政府は動かざること山のごとしみたいな感じで、あまり動いているように見えない。そこで、相当重要な事前通告があり、こういう決定があるということの話があったということを言われたわけでございますから、さてこの協定が結ばれた前と結ばれたあととは事情が変わってないと御判断か、変わったという御判断か。
  235. 大平正芳

    大平国務大臣 これは前にも申し上げておりますように、こういう政治的な決意を表明することについての意義は十分高く評価するものでございますけれども、内容を申しますと、いままで米ソ間で話し合いがされ、あるいは取りきめられておりましたものと本質的には大きな相違があるようなものであるとは承知していないのでございます。
  236. 永末英一

    ○永末委員 大平さんはものの見方はなるべく変化の面には眼を置かないようにお考えになるくせがあると私は思うのです。田中さんの御性格はそうじゃないのではなかろうかと私は思うのでありますけれども、大平さんいまおっしゃったように、たとえば協定でも第六条のほうに重点を置いてものをお考えになる。第六条というのは、基本的にこの協定はいままでのかまえとは違ったんだ、むしろ先年ニクソン大統領がモスクワに行って出しました共同声明には似たようなことがございます。しかし協定という形であれは出したのではありません。その意味では明らかに事態は変わっておるという認識に立たなければこれから以後のわが国の安全保障のきめ方あるいは外交の進め方も私はわからなくなると思います。この点はひとつ総理大臣からお答えをいただきたい。
  237. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 私は先ほど申し述べましたように、第二次戦争後、だんだんと平和に向かってまいりました。平和に向かってまいりましたが、その前提となるものはやはり力の均衡を保った上にだんだんと人類の英知が平和の道を開いてまいったわけでございます。それが東西ドイツの話し合いになり、南北ベトナムの話し合いになり、それから南北朝鮮というものも話し合いをするようになっておるわけであります。しかし、それはあくまでも過去のワク組みというものを基盤としてそういう機運が醸成されつつあるということでございます。そこで一番問題になっておった東西の頂点に立つものは米ソでありますから、その米ソが核戦争というものをやらないことにしよう、ほかで起こってもすぐ連絡をして話し合いをしようじゃないか、こういう協定を宣言したわけでありますから、これは確かに大きな事実として評価をすべきであって、望ましいことであると、こう考えております。望ましいことであるということと、だからすぐ一ぺんに平和になるのだということのけじめだけは、これは政治の責任の地位にある者は当然考えなければならぬと思うのです。ですから、大平外務大臣が述べておる慎重さなどというものは、私はその意味においては同等もしくはそれ以上に慎重なところは慎重なんです。ですから、そういう意味で現実問題として米ソがあのような大きな協定を行ない、宣言をしたということは、変化であるということは評価をいたしております。評価をいたしておりますが、それによって日本が直ちに現状を変えてもいいんだということとはつながらないのです。これはまだまだ両国も七回も会合をしながらようやく、しかもそれをするにはそれだけの両国の背景もあったわけであります。そういうような状態でもって宣言が行なわれたということであって、ではその核に対する国際管理をやろうとか、一斉に核防条約の批准をやろうとか、そういう問題になるまでにはまだ相当な時間がかかるわけであります。ですから、われわれは人類の理想に向かって努力は続けなければならないということは当然でございますが、あの声明がすっかり世の中を変えてしまったんだ、こういうふうには断じて行動するわけにはまいらない、こういうことであります。
  238. 永末英一

    ○永末委員 私はいま総理が言われたように、この協定で一ぺんに平和が来たなんということを申し上げているわけでは全然ございません。わが国の安全保障ということを申し上げたのは、わが国安保条約に基づいて——政府が繰り返し申されてきたことは、要するにいかなる攻撃に対してもアメリカはこの安保条約によって対応する姿勢をとるのだ、その中には核攻撃に対する対応も含まれるというのが政府の終始一貫した答弁であった。ところが、この協定はまさにその点に触れているわけです。しかし、それは義務を放てきするのではない。義務は守るのだということから、六条では打ち消してはおりますよ。しかし、この協定が生きていく場合に、わが国の安全保障の基本を、一体いままでのそのままでいいのかどうかということはやはり考えざるを得ない問題をわれわれはこれによって提起されていると思います。あなたはそう思われませんか。
  239. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、アメリカとソ連が両首脳の会談によって核は使わない、核戦争はしない、こういう協定をし、宣言をしたことは、これは高く評価のできる事実である。しかし、それだからといって、すぐ国際的に保障もない。国連機構がすべて管理をするということにもなっておりませんし、まだまだそこまでには時間がかかると思いますよ。しかし、究極の目的としてそれを達成することに努力すべきであります。しかし、両巨頭が協定をしたからといって、日本の国防の基本に関する観念を直ちに改める、それは少し早過ぎる、そういう事態にはありません。これは国民の負担を最小限にして、しかも憲法の精神をよく守ってしかも備えに対しては万全でなければならないというのが国防の基本だと思うのです。その責任を負荷されておる政府が、あの協定宣言によって日本の防衛の基本さえも直ちに変えるとしたらそれは少し気が早過ぎる。これもそうなるのでございまして、いまもそういう問題は一つの事実として評価をしておりますし、平和のためには日本も貢献し寄与してまいるという基本的姿勢、すべて外交でものを解決しなければならないという基本的な姿勢はますます固くはしておりますが、防衛問題に対していま再検討するとか、基本に対して勉強し直すとか、そういうことは全く考えておりません。
  240. 永末英一

    ○永末委員 私は、再検討というのは最後の保障力があるという前提で進めていくのか、それとも最後の保障力の面について、米ソ二つの国がこの協定で意向を表明したことで、いままでとは違った意味で受け取るならば、万全のかまえというのは、これは万全をますます万全にするためには、いままでどおりでいいとは私は思わない。その一つの証拠に、米ソ共同声明で「国際問題——緊張の緩和と国際安全の強化」というくだりに、インドシナのこと、ヨーロッパのこと、中東のことは触れられておりますが、残念ながら、わが国を含んだ北東アジアのことは一百一句触れられていないわけである。私は総理、この点についてはニクソンと会われる場合、あるいは訪ソされた場合、やはり日本の総理として、なぜこの共同声明に出なかったかきっちりと伺っていただきたい。そうでなければ、どういう見解が表明されたかこれではわからない。御意見を承りたい。
  241. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 これは、こういう協定を行なうということは事前に通告を受けておるということでございますが、全文に対して受けておるかどうか、私はさだかには報告は受けておりません。  中東問題とかいろいろな問題が指摘されておりますところは、米ソが明らかに対立しておると見られておるような地点、またお互いが協力をしなければものは解決しないというような立場における地点が列挙されておるようであります。日本に対しては、日本はあらゆる攻撃に対して防衛をしなければならないということであって、仮想敵国をどこにしておるというようなことはないわけであります。島国でございますし、地球は狭くなっておりますから、どこからでも攻撃を受けても、それに耐えて、国民の生命、財産を守らなければならぬ、こういうことを考えておるのでございまして、日本をなぜ列挙した地点からはずしたかということを私は聞かなければならないほどの問題ではない、こう理解しております。
  242. 永末英一

    ○永末委員 そう言っているのじゃないのです。北東アジアというものは、いまの総理のことばをかりますと、米ソ両国だけでは解決のつかない場所である、アメリカは別として、中ソ関係というものは一つも触れていないわけですね。だからこそ、朝鮮半島にいろいろな影響があるわけである。われわれは、先ほどのあなたのことばをかりれば、米中ソとあげられたそのからみ合いの中で、一体米ソ両大国がこれをどう見ておるかということを知らなければ、われわれの安全保障の基本は立たないわけでございまして、したがってこの共同声明に触れられていない点、これはぜひひとつ日本国の総理として伺ってほしい。お答えいただきます。
  243. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 いずれにしましても、米ソが核戦争を一切やらないということを協定したことは人類のためにも非常にいいことである、望ましいことである、理想には一歩前進することである。具体的にはどうするのか、こういう問題に対してはこれはもう当然討議の対象になる重要なポイントでございます。そういう意味で米ソ両国を訪問するのでございますから、いろいろな問題、あなたがいま述べられた問題も含めて、いろいろな問題に対して議論をしたり、先方の意見をただしたりしたい、こう考えます。
  244. 永末英一

    ○永末委員 終わります。
  245. 藤井勝志

    藤井委員長 次回は、来たる七月二日月曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時五十五分散会