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1973-06-20 第71回国会 衆議院 外務委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月二十日(水曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 藤井 勝志君    理事 石井  一君 理事 福永 一臣君    理事 堂森 芳夫君 理事 金子 満広君       加藤 紘一君    小林 正巳君       深谷 隆司君    山田 久就君       石野 久男君    川崎 寛治君       河上 民雄君    柴田 睦夫君       渡部 一郎君    永末 英一君       瀬長亀次郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      前田佳都男君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         科学技術庁原子         力局長     成田 壽治君         外務政務次官  水野  清君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省欧亜局長 大和田 渉君         外務省条約局長 高島 益郎君         外務省条約局外         務参事官    松永 信雄君         外務省国際連合         局長      影井 梅夫君         運輸政務次官  佐藤 文生君         運輸省航空局次         長       寺井 久美君  委員外出席者         警察庁刑事局捜         査第一課長   佐々木英文君         外務委員会調査         室長      亀倉 四郎君     ————————————— 委員の異動 六月十九日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君    橋本登美三郎君   小林 正巳君     石田 博英君   深谷 隆司君     田村  元君   山田 久就君     篠田 弘作君   永末 英一君     受田 新吉君 同日  辞任         補欠選任   石田 博英君     小林 正巳君   篠田 弘作君     山田 久就君   田村  元君     深谷 隆司君  橋本登美三郎君     加藤 紘一君   受田 新吉君     永末 英一君     ————————————— 六月十八日  米軍弾薬輸送即時中止等に関する請願外四件  (大出俊紹介)(第七二三四号)  米航空母艦横須賀母港化反対及び日米安全保  障条約廃棄に関する請願高沢寅男紹介)(  第七四二〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  原子力の非軍事的利用に関する協力のための日  本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を  改正する議定書締結について承認を求めるの  件(条約第一二号)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 藤井勝志

    藤井委員長 これより会議を開きます。  原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定改正する議定書締結について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので順次これを許します。柴田睦夫君。
  3. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 日米原子力協定改正議定書締結に関して、最初手続的なものに関連して若干質問いたします。  第一に、本件改正にあたって、政府日本学術会議意見を聞くということをおやりになられたかどうかということです。  日本学術会議法規定によりまして、日本学術会議に対して政府は「特に専門科学者検討を要する重要施策」について諮問をすることができるという規定になっておりますが、日米原子力協定本件のような重要な改正はまさに日本専門科学者検討を要する重要問題であると思うので、私は当然日本学術会議に対して諮問がなされるべきものである、こう思っておりますから、この学術会議に対する諮問の件について最初にお尋ねいたします。
  4. 成田壽治

    成田政府委員 日本学術会議意見はいろいろな形で原子力委員会としても接触を持って聞いております。  それで具体的には大体四半期に一ぺんほど学術会議原子力問題特別委員会三宅先生委員長になっておりますが、こと定例的な会合を持って、いろいろ意見交換をそのときの問題点について行なっております。今月末にも学術会議原子力委員会との懇談予定になっておりまして、いろいろな問題に対して意見交換をやっておりますので、長期計画の問題とかあるいは協定の問題とか安全問題、いろいろな問題について定例的に意見交換を行なっております。
  5. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 本件議定書改定について、そのことに関しての諮問をなさったかどうか、このことをお聞きします。   〔委員長退席福永(一)委員長代理着席
  6. 成田壽治

    成田政府委員 最近は二月末に行なっておりまして、協定という形じゃありませんが、濃縮ウラン確保問題一般等についていろいろな問題を議論しておりまして、今度の協定濃縮ウラン確保というのが一つの大きい柱になっておりますので、そういう面ではいろいろなディスカッションが行なわれており、また近く行なわれる定例懇談会においてもそういうお話が出ると思います。
  7. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 学術会議専門家意見は大要はどういう意見であったでしょうか。
  8. 成田壽治

    成田政府委員 私もいろいろ国会等でその会には出なかったのでありますが、いろいろな問題、濃縮ウランについては濃縮ウラン確保が必要であり、また供給源多角化をはかること、あるいは日本の自主的な技術開発必要性等意見が出たのではないかと思います。
  9. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 どうも答弁があいまいに思うのですが、そういった会合について、議事録あるいは話し合いの内容についての記録があるのですか。
  10. 成田壽治

    成田政府委員 議事録等はとっておらないのでありまして、ただ前回の二月末の会議協議事項としては四十八年度の原子力予算、安全、環境問題とか核融合研究とか人材確保あるいは燃料濃縮ウラン問題とかそういう原子力予算主要事項についていろいろなディスカッションをしております。それから四十七年の十二月八日に開催した原子力のシンポジウムの成果、それから三番目は公聴会開催問題等、それからパブリック・アクセプタンスの問題、公聴会等もそういう問題が討議事項になって、予算に関連して濃縮ウラン問題等議論になっておると思います。それで六月二十六日火曜に次回を行なうということで、来週早々開催予定になっております。
  11. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 どうも抽象的ですから具体的に聞きますと、たとえば今度の改定によって総設備容量六万メガワットというような内容になっているわけなんですけれども、原子力発電をはじめ原子力日本での平和的利用が大規模に進められると思うのですけれども、このことについての学術会議意見はどうなんでしょうか。
  12. 成田壽治

    成田政府委員 原子力発電六千万キロワットというのは、去年の六月の、原子力委員会原子力開発利用長期計画という計画を策定した際に出たのが六千万キロワットで、この長期計画につきましては昨年ですが、学術会議との懇談会あるいは長期計画専門部会、大体百人近い学者等学識経験者を集めて専門委員に委嘱していろいろな意見を聞いておりますが、学術会議という形では、その昨年の懇談会でこの長期計画議論がいろいろされておりますし、また学者等学識経験者という意味では長期計画専門部会が一年余にわたって会合しておるのでありまして、そういう意味ではいろいろ討議がなされたということになっております。昨年学術会議との懇談会長期計画に関してどういう討議がなされたかというのは、私いま具体的に内容を申し上げるデータを持っておらないのでありますが、長期計画について非常にいろいろな議論がなされたということは、はっきり言えることであります。
  13. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 しつこいようですけれども、学術会議法の中にある諮問ということですね、この諮問というものをなさったかどうか。それから意見文書で聞くということ、この文書での意見の提出はあるかどうかということをお伺いします。
  14. 成田壽治

    成田政府委員 学術会議に対して日本学術会議法第四条による諮問という形はとっておらないのであります。長期計画に関しては、原子力委員会が先ほどの長期計画専門部会、いろいろな学者学識経験者等を網羅しましたその専門部会に対して長期計画の作成を諮問したわけでありまして、学術会議法によって学術会議に対しての諮問という形はとっておらないのであります。
  15. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 専門科学者検討を要する重要事項について諮問をすることができるという規定になっているわけですけれども、本件改正にあたって学術会議諮問をしなかったということは、この専門科学者検討を要する重要事項だというように考えられなかったのかどうかお伺いします。
  16. 成田壽治

    成田政府委員 昭和四十三年の日米協定現行協定でございますが、それをつくる際、あるいは昨年のフランスとの原子力協定、オーストラリアとの原子力協定等、いろいろ原子力国際的協力協定をつくるについて、学術会議諮問したというケースはないのであります。むしろ実質的な意味でこれは原子力委員会が、政府としては委員会にいろいろ諮問して検討してもらっておりますので、原子力委員会学術会議とのそういう定例的な懇談会等においていろいろ意見交換を行なう、そういうたてまえになっておるのであります。
  17. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 どうも話を聞いていて、結局、意見を聞いているといわれるけれども、学術会議人たち意見が、このような改正日本国民に利益になるかどうか、それから将来の原子力開発についての科学者考え方がどうであるかというようなことについて具体的に出てこないということは、やはり本格的な意見を聞き、その科学者検討を待ってそれを検討するというような態度ではない、こう見るわけです。国会議員はここで審議しますけれども、科学専門家という方は非常に少ないと思うわけですが、この条約改正というのは原子力の大規模開発を進めようとするのであって、しかも原子力問題は何といっても世界での科学の最高のものであると考えるわけで、こういうものについて単に参考人意見を聞くという程度では決して十分ではないと思うのです。この条約について真剣に議論するためには日本国民あるいは科学者の知識を集めなければならないし、総理府設置法の第十六条の三の第二項に「日本学術会議は、わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学向上発達を図り、行政、産業及び国民生活科学を反映浸透させるための機関」とされているわけであります。しかも学術会議は、昭和二十九年四月二十三日の総会に、原子力研究利用に関し公開、民主、自主の原則を要求する声明を発したのをはじめ、昭和四十四年には原子力特別委員会を置いて、原子力問題について広範な研究調査を行なっております。こうした学術会議意見も本格的に聞かないというのでは、国民の総意を集めてこの条約検討するということにはならない、誤った判断におちいるんだ、こういうように考えるわけです。  次の問題は、本件改正されるにあたりまして国内的にはどういう態度をとってきたかという問題です。  今回の改正によりまして、第九条の中で「総設備容量六万メガワット」という数字があらわれてまいります。これは百万キロワットの原子炉の実に約六十基分に当たるわけです。こうした大規模原子力開発を行なおうとする計画が今回の改正内容になっているということは、このような計画日本において実施するということを示しておりますし、この日本において実施するということをこの条約によって先にアメリカに約束するということを意味していることです。それならば日本に対して原子力発電所等計画をどのように立てていくのか、どういう計画を立てるのか、こういったものを国民に対して明らかにする手続はどのようにやってきたかということをお伺いいたします。
  18. 成田壽治

    成田政府委員 先ほど言いましたように、原子力発電所が六千万キロワットというのは、昭和六十年における姿として昨年の六月原子力委員会が策定した計画でございまして、この計画策定にあたりましては政府から原子力委員会にお願いし、原子力委員会専門部会をつくり、そして各界の学識経験者を集めて一年余にわたって慎重に検討した結果でございます。それで昨年の六月に計画ができまして、そしてこれを具体的にどう——これは非常にマクロ的な計画でありまして、電力需給その他から原子力発電六千万が必要であるということで、これを具体的にどういうふうな形で具体的な計画になるかというのは、これはまた別な問題でありまして、電力会社原子力発電所をどの地点につくるという計画会社として持って、しかもそれが、地元といろいろな折衝をして、ある程度見当がついた場合には、電源開発促進法による電調審電源開発調整審議会に出して——これは当該県知事の同意が必要でありまして、知事が大体地元との関係で問題ないという場合に電調審にかけます。これは関係省大臣とその他学識経験者から構成される電調審で、計画に組み入れるかどうか検討するわけであります。その際、当該所在県の県知事意見が反映されるわけであります。そこが通って初めて、今度は原子炉規制法による許可申請が直ちに総理大臣に対してなされ、通産省に対しては電気事業法による許可申請がなされるわけであります。それで、原子力委員会におきましては、大体半年から一年ぐらいの期間にわたって安全審査会審査を行ない、慎重な検討を行なって、安全であるという意見安全審査会で出た場合に、原子力委員会が、また地元等関係も十分考えまして、そして総合判断して、規制法による許可をしていいというような結論を出すわけでございます。一方、通産省においてもいろいろ検討して、同時に電気事業法による許可を行なっておるわけであります。  そういう意味で、全体の計画、それからその計画に基づく個々の申請等はいろいろな関係機関意見も聞いて、非常に慎重になされております。原子力委員会としては、原子力基本法の精神に照らして、今度の申請平和利用に限られるという目的にマッチしているかどうか、あるいは原子力開発利用計画的遂行に十分合致しているかどうか、あるいは安全上問題ないかどうかというような、原子炉等規制法二十四条の許可基準に照らしまして、該当しているという場合に初めて総理大臣に対して許可をしていいという答申を出すのでございます。
  19. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 ですから、この日米原子力協定の六万メガワット分原子力発電所だと思うのですけれども、これをいつ、どこに、どれだけのものをつくっていくか、こういう計画について、単に石油会社やあるいは発電所などの申請というのではなくして、こういう計画であるということを国民の前に明らかにする、そういう手続をしているかどうかということです。
  20. 成田壽治

    成田政府委員 今度の六千万キロワットというのは、これは先ほど言いましたように、原子力委員会が全国的にマクロ的に見て必要であるという、そういう計画でありまして、今度の協定においても、現行を入れまして六千万キロワットという発電計画に必要な燃料確保内容としていますが、これはどこの会社が、どの地点で、いつつくるかという具体的な計画はまだできておらないので、むしろ、国全体としての計画、マクロ的な計画に基づいてこういう検討を行なっておるわけであります。現行協定におきましては別表で、どこの会社がどの地点でという具体的な計画を掲上しておりますが、今度の協定においては、そういう具体的な計画を必要とせず、全体としてどのくらい必要であるかという全体の見通しに基づいてつくられておるのが特色だろうと思います。
  21. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そういうことでありますと、この原子力発電所をつくる側はそれでよいかもしれません。しかし、つくられることによって一般的な被害を受ける、そういう人たちもたくさんできるわけで、現実に、もうすでに重大な問題がたくさん生じているわけです。現に、原子力発電所設置に反対する運動というのが、岩内や浜岡、福浦、浜坂、伊方原など、四十五の団体が結成され、反対運動をやっている状態です。これはみな自分たちの命と暮らしにかかわる問題であります。日本において、日本人の運命にかかわるエネルギー問題を含めて、国会審議を尽くし、国民の納得を得られるものを外交条約にすべきものであると私は考えるわけです。外交条約締結、また少なくとも批准の前には国民に具体的な内容を明らかにして国民意見を広く聞くべきである、こういうように思うのですが、大臣見解はいかがでしょう。
  22. 成田壽治

    成田政府委員 今度の協定の六千万キロワットというのは協定上はっきりしておりますが、決して、これだけの発電所日本政府がつくるというので、そういうコミットした考え方ではなくて、燃料確保の上で上限シーリングをつくるという意味でございます。したがって、その中で具体的にどこへ電力社会発電所をつくり、そしてそれが地元との関係でいろいろな問題、どういう関係になるかという問題はこれは別個の問題でありまして、この協定を離れて、先ほど言いましたように電調審にかけて、具体的計画に組み入れるかどうか、原子力規制法等による許可基準にマッチしているかどうか、そういう具体的な計画になって初めて、その発電所地元とどういう関係になり、そして賛成、反対運動等のいろいろな関係が生ずるわけでありまして、決して、この協定によって六千万キロワットの原子力発電所日本がつくるということをコミットするわけでもないし、また電力会社がこれによって、それだけつくらないといけないというわけでもないのでありまして、燃料確保上のシーリングという関係でございます。  具体的な原子力発電所建設計画別個の問題として、国内法的にいろいろな手続、また地元との関係調整等手続が行なわれまして、これは別個にきまっていく問題であろうと思います。
  23. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 いま、六万メガワットというのが燃料供給を受ける上限を示すものである。なるほど上限ではありましょうけれども、当然、この条約全体から見た場合に、この六万メガワット供給を受け、それを消費するということを予想しているのではありませんか、それに近い数字を。
  24. 成田壽治

    成田政府委員 まあ六千万キロワットは、先ほど言いましたように、原子力委員会が全国的なエネルギー需給から見て原子力発電によってこれが供給されることが望ましいという一つ考え方エネルギー対策上から望ましい考え方を示しております。そういう意味では、国としてその六千万できるということは望ましいという一つ見解のあらわれだろうと思います。協定においても、まあ実際そこまでできるかどうか、それ以上にいくかどうかということは、具体的な現実の問題としていろいろな問題の解決等によってきまる問題でありまして、そういう意味から、今度の協定におきましては、六千万キロワットの発電規模になる場合に必要な燃料上限の問題として確保する道を開いたという意味でございます。
  25. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 先ほどあげました原子力発電所設置に対する各地の反対運動、これが起きているときに、今度原子力発電所をさらにふやすことを予想する内容条約改定するということについて政府のほうではどう考えるか、お尋ねします。
  26. 前田佳都男

    前田国務大臣 今回の日米原子力協定改定先ほど担当政府委員からるる御説明を申し上げましたように、私たちの現在考えております原子力長期開発利用計画にきめておりまする発電に必要なる濃縮ウラン確保というその上限をきめるという意味におきましてその濃縮ウランの原料を確保するというところに意義があるわけでございまして、ただいま柴田先生指摘現実原子力発電立地にいろいろな障害があるではないか、こういう障害を一向頭に置かないでこういうことをきめるのはどうかと思うという御質問だと思いますが、具体的な原子力発電立地につきましては、われわれも決して安易には考えておりません。地元の理解と協力を得るためにいろいろ努力をしておるつもりでございまして、私たち原子力開発長期利用計画にきめられておりまする発電というものを円滑に推進していきたいという姿勢でいま考えておるわけでございます。
  27. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そうすると、角度を変えますが、ことしの四月の十八日にニクソン大統領アメリカの議会に対してエネルギー教書を提出いたしております。それがアメリカ国民だけではなくて日本資源エネルギー分野についての今後の対応策を考える上で重大な影響がある、こういうことがいわれたりしておりますが、この教書をごらんになって日本のエネルギー問題についてどういう感想を持たれたか、その要点を簡単にお答えいただきたいと思います。
  28. 前田佳都男

    前田国務大臣 ニクソン大統領の出しましたエネルギー教書でございますが、いろいろな影響があると思います。石油自給度が非常に高いアメリカ外国から輸入するというようなこと、いろいろなことを書いてございますけれども、そういう外国から原油の何分の一かを輸入するという政策をとるということ、輸入の割り当て、クオータ制度を撤廃するとか、いろいろなそういうことを書いたエネルギー教書というものは、具体的には中近東における石油獲得競争ということに発展をするのではないか。その結果、石油の値段というか原油価格というものがたいへん上がってくるのではないか。OPECとメージャーの対立とか、だんだん石油というものが売り手市場にますますなってくるのではないか。しかし、簡単にそういうふうに割り切るわけにもいかないいろいろな問題があると思うのであります。その意味におきまして、しかもまた石油のうちでも硫黄度の少ない低硫黄石油に対する要望というものが、公害問題等からいたしましてよけい強くなってくる。そういう点からも競争がますます激しくなるのではないかと思っております。その場合に、やはり柴田先生いろいろ御見解はあると思いまするが、やはり要望されるのは私はクリーンエネルギーではないか思います。原子力についてはクリーンエネルギーではないではないかというふうな意見もあると思います。しかし、もちろん原子力といえどもいろいろな温排水の問題だとかあるいは放射能の問題とかそういう問題ございますけれども、まずやはりクリーンエネルギー一つ——簡単に割り切れませんが、しかし私はそう考えていいのじゃないかと思う。したがって原子力がこれからのエネルギー確保の点において演ずる役割というものはだんだん大きくなってくるのではないか。これに対する公害の問題はいま答えませんけれども、そういうふうに私は考える次第でございます。
  29. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 今後は原子力エネルギー対策を重視しなければならないという答弁の趣旨だと思うわけですけれども、今度の日米原子力協定に基づいて濃縮ウランアメリカから日本が買うわけですけれども、その動力用原子炉というのはアメリカの場合軽水炉である。すなわち日本濃縮ウランを買うということで当然にアメリカがずっと一貫して開発してきたアメリカお得意の軽水炉をあわせて買わなければならないということになると思うわけです。アメリカから買った軽水炉濃縮ウラン利用していくということになると思うのですが、そうなりますと、これからこの協定によって三十五年間日本は事実上原子力開発というものをアメリカに依存して、自主的な研究開発はとめられてしまうのではないか、こういう疑問をこの条約で持つのですが、見解はいかがですか。
  30. 前田佳都男

    前田国務大臣 ただいま御指摘のとおり、現在当分の間は軽水炉によっておるわけでございます。したがいまして、濃縮ウランに対する需要というものはあるわけでございまして、その数字はいま申し上げませんけれども、この濃縮ウラン確保するためには、現在は日米原子力協定によっておりまして、それが四十九年度以降に着工する分についてはその濃縮ウラン確保ということが考えられないわけでございます。その意味におきまして、今回日米原子力協定改定をお願いしておることは御案内のとおりでございます。しかし、アメリカ濃縮ウラン供給力も、この私の手元にある数字によりますと、昭和五十五年ごろ、一九八〇年ごろになりますと、自由主義世界の需要が三万二千トン、米国の供給力は二万六千トンだというふうに私思っておりますが、そういうふうにアメリカ濃縮ウラン供給力も昭和五十五年ごろには限界にくるのではないか。したがって、供給源多角化する必要があるのではないかということを考えております。それがためにいま私たちが考えておりますのは、国際濃縮計画と申しましょうか、日本アメリカあるいはフランス、そういうものがアメリカが提唱しておるあるいはフランスが提唱しておりまする国際濃縮計画に参加するということを実は検討いたしております。そうしてできるだけ安定供給をはかる方策を考えていきたいというふうに思っております。しかし、いずれにしてもそんな外国にお願いをするよりも、日本の国で国産にするのが第一でありまして、その考え方のもとに従来から濃縮ウランの国産化ということについては検討いたしておりましたけれども、昭和四十八年度からいよいよ本格的に着手をいたしまして、予算は五十二億、遠心分離法による開発に今年度から着手するわけでございます。そしてこれは動燃事業団というものが中心になってやっております。百八十台の遠心分離機を十三段でひし形にしたカスケードといいましょうか、そういうものでこのプロジェクトを推進していく、そして目標は昭和六十五年ごろには日本で必要といたしまする濃縮ウランの約三分の一程度を国産によって確保していきたいというふうに考えております。  それと同時に、現在の軽水炉は、燃料効率と申しましょうか、非常に悪いわけでございます。そういう意味におきまして、燃料効率と申しましょうか、それの高い新型転換炉を五十年代に実用化したいという目標で、五十年に原型炉を臨界させる目的で進んでおるわけであります。それから、高速増殖炉、夢の原子炉といわれておりますが、この高速増殖炉、これは燃料効率が非常にいいといわれておりますけれども、これを昭和六十年代の初期に実用化したいという考え方でいま進んでおるということもあわせて申し上げたいと思います。
  31. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 アメリカから買っている原子発電炉で、よそから、アメリカ以外の国から入ってくる濃縮ウランを活用するということはできるのですか。
  32. 成田壽治

    成田政府委員 アメリカから購入した原子発電炉に使うウラン濃縮をアメリカ以外の国から買うことも、契約上はできることになっております。ただ、いま商業的に濃縮ウラン供給できる国はアメリカしか——アメリカ三工場、現在一万七千トンぐらいの大きな能力を持っておりまして、商業的に供給できるのはアメリカしかないという現実の事態から、現在はアメリカからだけ購入しておりますが、最近、ソ連等も買わないかというような話も先般の調査団の際にもあったようでもありますし、そういう意味では、供給源さえあれば買えるようになっております。
  33. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 日本原子炉開発していくということは非常な金がかかるんで、むしろ外国から買ったほうがいい、アメリカから軽水炉を買ったほうがいい、そういう態度であるというふうに聞いてもいるのですが、その点はどうなんでしょうか。
  34. 成田壽治

    成田政府委員 原子力発電所をつくる場合は、最初の第一号炉はアメリカのPWR、これはアメリカ開発された炉でありますので、アメリカから買っております。しかし、同じ容量、たとえば八十万キロワットのPならPについては、第二号炉以降についてはなるべく国産化で間に合わせるように、部分的にはアメリカから入れざるを得ないものも若干あるようでありますが、なるべく二号炉以降については、主契約は日本のメーカーにし、そして国産化率をあげるような方針を政策としてとっておりまして、大体そういうようなかっこうで建設がなされております。
  35. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 きょうは時間が制限されておりまして、たくさん質問が残っておりますけれども、時間の関係もありますので、これで終わります。
  36. 福永一臣

    福永(一)委員長代理 渡部一郎君。
  37. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、ただいまから日米原子力協定のさまざまな問題点について御質問をいたしたいわけでありますが、きょう時間が短いようでありますから、総括的な問題、また本質的な問題から先に伺いたいと思うわけであります。  まず科学技術庁の方に伺いたいのでありますが、当協定において、従前の協定より異なり、核燃料の購入に関して相当長期にわたる、また詳しい内容規定が行なわれたように拝見されるわけでありますが、どれぐらいの期間にわたって、時間的な段取りをどういうふうにしていくかという面と、それから質的な面で、その核燃料をわがほうが買うにあたって、国内措置としてどういうことが必要であるか、まず丁寧にお話ししていただきたいと思います。
  38. 成田壽治

    成田政府委員 今度の協定によりまして従来と燃料確保上違っておりますのは、大きくいいまして、現行協定は、今年までの着工分の発電炉だけの燃料供給確保の対象になっておりまして、来年、昭和四十九年以降着工する発電炉についての燃料手当てができていない点が、今後、従来の二千万キロワット相当分を含めまして、六千万キロワットの発電炉の燃料手当てがシーリングとしてきめられた点であります。したがって、六千万キロワットの今後の発電炉ができた場合でも、その燃料は、この日米原子力協定確保される道が開かれたという点が大きい点だろうと思います。  それで、具体的に今後、これは新協定は期間三十五年ということになっておりまして、昭和四十九年以降に着工される四千万キロワットの発電炉と耐用年数を考えまして、それが動いている間の燃料はずっと最後まで、その炉の寿命期間だけ確保でき得るような規定になって三十五年という期間ができておるのであります。したがって、三十五年間ずっとアメリカからもらうという意味ではなくて、今後昭和四十九年着工以降の六千万キロワットの炉については、こちらがほしいという場合は契約によりまして確保できるということであります。  それから最近濃縮ウランの新しい役務契約の基準ができまして、契約の初装荷燃料の引き取り時期の八年前にウラン濃縮の購入役務契約を締結しないといけないような新しいクライテリア案が五月から実施になって、これは国際的にいろいろな問題がありまして、日本もヨーロッパの業界も、あるいはアメリカの国内業者も、いろいろな意見を言って公聴会等でやったのでありますが、初装荷燃料の引き取り時期の八年前に契約を提起するということになったわけでございます。したがいまして、燃料引き取り時期の八年前といいますと、おそらく着工の四、五年前にウラン濃縮の契約をアメリカ原子力委員会と役務契約をやらざるを得ないということになるわけでありまして、今後この協定によって購入するウラン濃縮については、この手続によって行なわれるわけでありますが、そうしますと、着工の四、五年前の燃料というと、おそらく今度の協定によって対象になる相当部分が早急に契約を結ばないといけない。これは経過規定がありまして、この新しいクライテリア案によるものは八年前に契約するというたてまえで、今後七年しかないとか六年しかないものについても、来年の六月までにAECと契約するということになっておりまして、この協定が発効しますと、早急にAECと電力会社がウラン濃縮役務契約の交渉を行なって、いろいろな条件その他をきめ、来年の六月まで濃縮役務契約を締結して、そして燃料協定による確保がなされるという段取りになるということになっております。
  39. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、これで一番政治的な問題になると思われるのは、ウラニウムの供給量というものは、ある意味日本の国政の重大部分でありますから、われわれが協定を結んだりあるいはウラニウムの供給に関する申し出をしたりする途中で、供給量を操作するあるいは供給量について注文をつけるという形で、日本外交に対する大きな圧力になる場合があるわけであります。したがって、原子力局長にもう一回伺うわけです。もし意地の悪いアメリカの大ものがいたとして、この契約を結んだあと日米間の状態が非常に悪い状況になったとして、当原子力協定規定によって大幅に下げたり、あるいは日本側の原子力工場、原子力発電などの諸施設がその運転を維持できなくなるようなやり方をすることができるしかけになっているか、できないしかけになっているか、この協定について。
  40. 成田壽治

    成田政府委員 その具体的な濃縮契約の問題は、協定の上の問題よりはむしろ協定に基づく個別契約の問題として取り上がってまいると思います。したがいまして、一つの炉につきましてある電力会社がAECと来年六月までに濃縮契約を結んで、三十年間の全耐用年数の期間にわたって契約を結ぼうと思えば結べるわけでございまして、その間で供給力がカットされたり、そういうことは結び方によっては避け得る方法があると思います。   〔福永(一)委員長代理退席、委員長着席〕 ただ、料金につきましては、そのときどきの——アメリカもいろいろな電力費その他のコストの上昇等によって濃縮料金が上がってまいっておりますが、その料金については、契約、引き渡しの時点等によって変わってまいると思いますが、それは日本だけ意地悪するとかそういうことはなくて、外国と同じような料金を適用する、そういう形になっておりますので、政治的な情勢によって日本が不当な差別を受けるとか、契約の内容によってはそういうことはないように避け得る方法は十分にできると思います。  それからアメリカの能力も、いま三工場で一万七千トン、これは作業分離場でありますが、これが増設によって二万八千トンくらいまでなるということになっていますが、これに世界各国の需要が殺到するわけであります。これは国別に差別をするとかそういうことでなくて、先着順の原則によって、早く契約をしたものがあとからくるものよりも供給確保される、そういう考え方に立っております。
  41. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 もう一つ伺いますよ。そうすると、この二万八千トン、いまアメリカがつくっているとおっしゃいましたね。それをアメリカが分けている先、それは明らかにいわゆる自由主義圏諸国である、あるいはアメリカとの友好国であると見るべきでしょう。ですから、アメリカにとって友好国でないのとは協定もないし、また協定以前にそういったものを出しているあれもないし、結局、アメリカとしてはかなり選ばれた同盟国との間にこういう協定がつくられている、こう見ていいのでしょうか。
  42. 成田壽治

    成田政府委員 いまアメリカの能力は一万七千トンでありますが、これはアメリカは自由諸国といいますか、協定締結した国に均等に分けているわけであります。これは保障措置の関係等がございまして、平和利用に限定し、そして、その平和利用に限られているかどうかという保障措置をとる必要からどうしても条約協定が必要になっておりまして、アメリカ協定国に対しては、公平な原則によってウラン濃縮の供給を行なっておるのであります。
  43. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 アメリカ側から、アメリカが予期せざる事情という、要するに事情変更の原則というのが外交問題では必ずあるわけですけれども、事情が変わったということでこの供給量をカットするという場合に、協定本文の修正を行なわないでも済む可能性があるかどうか、外務省の方に伺いたい。
  44. 影井梅夫

    ○影井政府委員 恐縮でございますが、最後の部分をもう一度、ちょっとただいまの御質問の最後の部分がはっきりいたしませんでしたので……。
  45. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 四十九年以降の燃料手当て分がここに供給されることがきまっているわけでありますが、外交問題で、常にある事情変更の原則で、協定修正によらずして供給量を切り下げることがアメリカ側から可能であるかどうかお答えをいただきたい、このことであります。
  46. 影井梅夫

    ○影井政府委員 ただいま御指摘の御設問でございますが、これは協定という問題ではなくて、それぞれの契約の方法の問題かと思います。この契約の締結につきましては、アメリカ側は公平の原則ということを打ち出しておりますので、ただいま先生御指摘のようなことは、まず現実問題としては起こり得ないのではないかというふうに考えます。
  47. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 国連局長、そんなことを聞いているのじゃありません。私が言っているのは、ウラニウムの資源が急になくなったとか、あるいはほかの事情でウラニウムをほかに使わなければならぬとか、この協定で予期せざる事情の変更が起こったとします。また変な意味で、どこかで核戦争が起こったとか、そういう事情が変更した、その場合に、アメリカ政府協定をも直さなければ、全体供給量、わがほうが要求している六千万キロワット・アワーという供給量は保証しなければならない。ところが、それはこの協定にもかかわらず、この供給量を引き下げるやり方があるのではありませんかと聞いているのです。
  48. 成田壽治

    成田政府委員 濃縮契約の問題だと思いますが、予期せざる事故等が起きて能力に制限が出た場合は、おそらく、日本だけにしわ寄せということではなくて、諸外国の契約国全体に対して、公平の原則によってカットすることになるんではないか。  それから、たとえばウラン資源がなくなるというお話もございましたが、濃縮役務契約は、天然ウラン資源をこっちから持っていって加工だけをやってもらうわけであります。そして、現在一万七千トン、三工場の能力でありますが、近く拡充計画をやって二万八千トンにする、こういうことになって、能力的には一九八〇年までは十分確保されると思いますが、ただ工場の事故等によって能力が不足するというような事態もあるいは考えられると思いますが、その場合は公平の原則によって、契約者全体が公平に負担を配分するというかっこうになるものと解しております。
  49. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そのときは、この条約をたてにとって、六千万キロワットアワー相当の燃料手当てをするということの協定ですが、協定九条のA項の規定というものは、六千万キロワットアワーを出せるように日本国側に保証するのでなくて、要するに六千万キロワットアワー程度は供給するというやわらかい規定になっているのかどうか、そこのところを伺っておきたい。
  50. 成田壽治

    成田政府委員 六千万キロワットは、電力会社がAECと契約する上限指針をきめておりまして、したがって契約して初めて供給確保の形になるわけであります。したがって、予期せざる場合というのは六千万が公平の計算の基礎になるのではなくて、六千万のうちでどれだけ濃縮契約をやっているかという、これは世界全体の問題でありますが、そういう形で公平の原則によって負担が配分されるというふうに考えているのであります。
  51. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、原子力局長の御意見は、私が想像していたように、六千万キロワットアワーの発電量相当の核燃料の手当てというものは契約によってできるのであって、そこまでは契約することが可能であって、それより下回ることは常にあり得る、また、向こうと、いろいろな契約上の不履行ということで、それをはるかに下回るものになることも当然あり得る、こういう意味ですね。
  52. 成田壽治

    成田政府委員 先生御指摘の、前のほうはそのとおりでございます。ただ、向こうの都合によってこれを下回る可能性も十分あるのじゃないかというお話でありますが、これは公平の原則によって、先ほど言いましたように、先着順の原則によって、日本が早く契約すれば十分確保できまして、そのしわ寄せはあとから契約する契約者、まあ外国がそういう形にしわ寄せされる、そういうことでありまして、先着順の原則によって契約がなされ、そして公平の原則が協定七条にうたわれておるのであります。
  53. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 次に、先着順の原則とおっしゃったから、そういうすばらしい原則があるかどうか伺いますよ。  それは外交上確立された原則なのか、アメリカ原子力委員会の原則なのか、いままでの慣例なのか法規なのか。その思考に対する基本的な、裏にあるどういう慣例、規則、法律、準拠されているものがあるか、そしてそれは間違いないものであるかどうか、伺います。
  54. 成田壽治

    成田政府委員 具体的にはアメリカ原子力委員会の運用の基準によってそうなっておりますが、この協定におきましても、能力がある限度において供給し得る、そして公平の原則によって処理するというふうに書いておりますので、そういう精神は協定上もかなり出ておるというふうに解釈しております。
  55. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ただいまの御回答は不明であります。もう一回お願いします。
  56. 成田壽治

    成田政府委員 先着順によって能力との関係で契約がなされるというのは、原子力委員会の運用基準等によってつくられておりますが、この協定におきましても、濃縮役務能力の範囲内で公平の原則によって供給するという形で出ておりますので、そういう精神はこの協定にもあらわれておるというふうにわれわれは解釈しております。
  57. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 協定のどこにあらわれていますか。
  58. 成田壽治

    成田政府委員 協定の第七条のA項が今度改定になっております。A項の(1)の後段のほうにありますが、「量、濃縮度、引渡計画その他の役務の提供に関する条件を定める確定的な契約を締結する用意がある場合には、合衆国委員会の施設においてその時に利用可能であり、かつ、未配分であるウラン濃縮能力を、そのような役務の他の購入者との間における公平を基礎として利用することができることが両当事国政府により了解される。」、そういうふうに書いておるのであります。
  59. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 あなた、わざわざうしろを飛ばして読んだじゃないですか。そのうしろに何と書いてあります。「そのような役務の提供のための契約は、時宜に応じて交渉され及び締結される。」と書いてあるじゃないですか。ですから、私の言うのは、前のほうは確かに公平と書いてあります。しかしながら、ここのところで、実際上の契約は「時宜に応じて交渉され、締結される。」これは「時宜に応じて」というのがくせものですよ。自動的に交渉され、締結されるならともかく、「時宜に応じて」などといったら、契約は何ぼでも引き延ばせる、気にいらないところは時宜に応じて引き延ばすことが可能ではありませんか。ですから、こういう「時宜に応じて」と書いてあるところを私は問題にするためにあなたに伺ったら、あなたはまんまとそういうふうにおっしゃった。これはこんな契約が行なわれているというところに非常にぼくは、これはアメリカ側が優位な交渉になっているのではないかという疑問を持っておるわけです。
  60. 成田壽治

    成田政府委員 私、そこを言わなかったのは、決してそういう意味で落としたのじゃなくて、これは個々の役務契約がその必要なつど、間に合うように適宜に応じて交渉され、締結されるという意味で、むしろ需要者が必要なとき、そのつど締結される個々の契約によって行なわれますという意味で入った規定であります。
  61. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 じゃ、「時宜に応じて」と書いてあるのを英文で読んでください。そうしてそれが正確な意味でどんな意味なのか……。
  62. 成田壽治

    成田政府委員 いま外務省のほうから……。
  63. 影井梅夫

    ○影井政府委員 ただいまの該当部分の英文でございますが、お手元に配付してございます資料の英文の分でございますが、二ページ中ほどに出てまいります。コントラクツ フォア サプライ オブ サッチ サービセス ウイル ビー ネゴシエーテッド アンド エクゼキューテッド オン ア タイムリー ベーシスであります。
  64. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 国連局長、それを翻訳してください。高校生にわかるような言い方で翻訳してください。
  65. 影井梅夫

    ○影井政府委員 これは今回御審議をお願いしております改定議定書第七条A項(1)の末段でございますが、「そのような役務の提供のための契約は、時宜に応じて交渉され及び締結される。」ということでございます。
  66. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それはわかっておりますから、高校生にわかるような日本語でちゃんと言ってもらいたい。
  67. 影井梅夫

    ○影井政府委員 御質問の意味は、この意味をということかと思いますが、この「時宜に応じて」という意味は、その必要が発生したつどにという意味でございます。言いかえますと、役務契約を米国原子力委員会と交渉し、締結しようとするとき、米国側の都合により引き延ばされることのないようにという意味でございます。
  68. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 「オン・ア・タイムリー・ベイシス」とここに書いてあります。それを米国側の必要で引き延ばされないようにと解釈するわけですか。
  69. 影井梅夫

    ○影井政府委員 そのとおりでございます。
  70. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 これはコントラクトですから、契約ですよね。契約に関していっているわけですから、契約の相手側とこちら側とがあるわけですね。ところが、こちら側の都合とか向こう側の都合によってというのではなくて、契約がまとまるかどうかということは、両者の条件が折り合うか折り合わないかという問題がここに出てくるのです。だから、これは向こう側の都合でじゃなくて——契約当事者においては、一方的な都合というのはあり得ない。民法上にもそんな規定はないですよ。だから、少し法律をかじられている皆さん方だからおわかりのように、「タイムリー・ベイシス」なんというと、日本側のタイムリーもある、向こう側のタイムリーもある、両方どちらでも解釈できるじゃありませんんか。それを、間に合うようにと原子力局長は解釈された。国連局長は、必要が発生したつどにと解釈された。私に言わせれば、「タイムリー・ベイシス」というのは、いよいよになる——いまの友好的な間は問題じゃない、好意的な間は問題でないが、ちょっとこじれ始めてきたときには、契約を引き延ばすことが幾らでも可能な部分ではありませんかと聞いているのです。——御回答がないようですから、それでは困りますが、じっくりお考えいただいて……。  次に、成田原子力局長原子力委員会の運用基準の中で、先着順の原則があると申されました。アメリカ原子力委員会の運用基準を当委員会に御提出をお願いできますか。
  71. 成田壽治

    成田政府委員 原子力委員会の運用基準として具体的な文章になってそういうものがあるかどうか、これから早急に検討して、文書がありましたら、御提出いたします。ただわれわれ、従来何回もAECからそういうことは口頭で説明を受けておりますので、そういう根拠的な内規があるかどうか検討しまして、あったら早急に御提出したいと思います。
  72. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 先ほどあなたはそういう基準があるかのごとく発言されましたね。それは非常に不適切だと私は思います。あるならば提出するということは、いまのところ根拠不明ということですね。根拠不明の原則に乗ってお話しになるというのはあんまり賢明なことではなかろう。では、もしそういうのがあったら、この次御提出をお願いしたい、こう思います。  さて、せっかくおすわりになって、ここまでの議論を聞いていただきましたから、外務大臣科学技術庁長官に最後にお伺いするわけですが、その引き取り契約の八年前——私の伺っているのはそれなんです。引き取り契約の八年前、着工の四、五年前、合わせまして十二、三年前、こういう長い期間にわたる契約を維持するということは、一面においては日本のウラニウム資源の安定供給意味するものであって、プラスかもしれませんが、一面においては日本外交というものを完全にアメリカに固定化してくっつけてしまうものになるのではないか。その意味では、日本の基礎的な外交のパターンをアメリカとの間で緊密に結びつけることになるのではないかと思いますが、いかがですか。そして、そういうことが適切であるかどうかについて。
  73. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これは濃縮ウランばかりでございませんで、日本が必要とする資源の安定供給確保しなければならない立場にわれわれはおるわけでございます。そしてその場合、日本日本の自主的な選択によって安定供給確保する道があれば、それはベストだと思うのであります。ただ、今日提案いたしまして御検討いただいておりまするこの協定にいたしましても、現協定から見ますと、資源供給国すなわちアメリカの立場が強くなっておるということはそのとおりだと思うのであります。われわれはそういうことでなく、ほかにチョイスがあればできるだけ日本の手足を縛りたくないということは、仰せを待つまでもなく考えなければならないことだと思うのでありますが、今日そういう日本の置かれた立場におきまして、何としても安定供給確保しなければならない、そして最も有利な道を発見してまいらなければならぬわけでございます。われわれといたしましては、今日御提案申し上げておるもの以外にオールターナティブがございますれば、もちろんそれを喜んで検討するわけでございまけれども、今日の条件のもとにおきましては、精一ぱい御提案申し上げておるような挙に出ないと、安定供給確保するという責任にこたえられないんじゃないかという考えでおるわけでございまして、外交の自主性というものは、それ自体抽象的にあるわけではなくて、置かれた条件のもとにおいて日本の国益にベストな道を選択してまいるということであると私は思うのであります。
  74. 前田佳都男

    前田国務大臣 お答えいたします。  先生も御承知のとおり、現在わが国の原子力発電軽水炉によっておるわけでございます。その燃料濃縮ウランは米国だけがいま供給能力を持っておるという情勢、これは先生十二分に御承知のとおりであります。しかも、米国の濃縮ウラン供給能力が一九八〇年ごろには世界の需要に追いつかない、そういう背景なものですから、米国といたしましても協定で保証はできないというのもこれはほんとうだろうと思います。しかも、現在日本には協定がございまして引き取る義務はないというようなことから、協定改定してもらいたいというような要望もあったわけでございまして、確かに先生御指摘のようなそういう心配とか考え方もあるかと思いますが、その点は交渉の段階においていろいろ詰めたわけでございます。詰めた結果が、先刻来政府委員原子力局長がお答えしたとおりでございます。いずれにいたしましても、とにかく濃縮ウランというものの供給多角化をはかるということと、自主的に国産化に馬力を出すということ、われわれとしてはそれに非常に馬力をかけて、精力をつけてひとつやっていきたい。これはお答えになりませんけれども、そういうふうに思っております。  それで、これは言いわけじゃありませんけれども、先生御承知のとおり、濃縮ウランの大口需要者でありまするユーラトムとの間におきましても、米国が同じような協定を二月二十六日にたしか結んで発効しておるというふうに聞いておりまして、その点は、協定をやめたから、それじゃその点は外国の圧力によってそうされるんじゃないか、何か向こうが適当に供給をもう少し縮めたり、そして日本を圧迫するのではないか、そういう先生の御指摘でありますが、私は、ただいまのところ、先ほど来局長の申しましたように、公平の原則というのはどの程度のものをいっておるのか、その事実は、私はその記事を見ませんけれども、交渉の段階においてその点は相当念を押したようでございまして、そういうふうに御了解をいただきたいと思うのでございます。  それから、新しいクライテリア、相当早く契約をしなくちゃいけない。ところが、日本では原子力発電の着工までに相当期間かかっております。したがいまして、具体的に発電所がどこにできるかということがきまらぬうちに契約をしなくちゃいかぬ。これは協定の問題じゃなくて、新しいクライテリアの問題がここに出ておりますが、それに関連しております。したがって、そういう問題は濃縮ウランの彼此流通制度とかあるいは過不足が出てくると思います。そういうような面もあわせて国内的にも考えていかなければならないと考えておるわけでございます。
  75. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それでは、私の時間がなくなりましたものですから、わが国外交における、こうした問題に関するチョイスは、別にあればというふうに外務大臣言われました。私もその点は同感なんです。同感でありますがゆえに、この際ウラニウムだけでなくて資源外交全般を考え直される必要があるのではないか。それから貿易の相手先、特に原材料輸入、製品輸出の部分が世界のあるパートに片寄っているということは、日本の外交に非常に無理なひずみを与えるものになるのではないか、この点はおそらく意見はほとんど一致するだろうと私は思います。しかし、そういう考え方は一致するんですが、それに対する現実ですね、石油なんかについても明らかなように、世界の局部に日本石油資源のとり方は片寄っておるわけです。そうして日本石油外交がどれくらいまずいものになったか、ある意味で実証を示していると私は思います。このウラニウムに対する考え方も、同じ意味で、これからこうした形で長期に結ぶという形がさらに悪いチョイスを引き起こすのではないかという危惧は非常に高いわけですね。新聞報道によれば、ソ連との間でウラニウムの供給という問題、そういう話が出ているということもちらっと伺いましたが、さらに一歩進んで、他の国々との間にももう少しこういう比重の高いこうしたものが考えられてしかるべきではないか、こういうのが私の基本的な考え方です。ここのところまで、繰り返すようでありますが、最後に御意見を伺っておきまして、私のきょうの質問を終わりにいたします。
  76. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのように、必要資源、いま問題になっておる濃縮ウランに限定して考えてみましても、供給源を可能な限り分散して、しかもなお安定供給が可能であるということが望ましい状態と思うのであります。しかし、いまわれわれの判断では、先ほど政府委員からも御答弁がございましたように、商業ベースで濃縮ウランを大量に供給できる国というのはいまアメリカしかないのが現実でございます。  ソ連のお話がございましたけれども、そうしてそういううわさも聞いておりますけれども、同国は濃縮ウランの安定供給源としてどのくらいの期間、どの程度の量の供給が期待できるか、そういうような点はまだ全く不明でございます。それから従来商業ベースで濃縮ウランを他国に供給されたという実績を私どもは知らないわけでございまして、私ども、こういう問題につきましては、なお関係者の御意見も十分聞きながら、しっかりしたデータをもとにして慎重に検討しなければならない課題だと思うのでありますけれども、現実の必要に確たる供給源としていまカウントするということの域にはまだ達していないのでございます。  もとよりその間いろいろ技術の進歩もございましょうし、どういう展開になるか、将来わかりませんけれども、いまの時点で判断いたしますと、先ほど申し上げましたように、アメリカを相手にいたしましたこういう措置がいまとり得る唯一のチョイスでないかというのがわれわれの判断でございます。
  77. 藤井勝志

  78. 永末英一

    永末委員 レイモン・アロンという人が、外交というのは他国にあることを行なわせ、または行なわせないテクニックである、こういうことをいっておりますが、外務大臣、この見解に御賛成ですか。
  79. 大平正芳

    ○大平国務大臣 何か理解できるような感じがいたします。
  80. 永末英一

    永末委員 フランス人というのはきわめて明晰な論理をとうとぶ癖がございますから、外交というのは、あるいはもっとふんわかとした言い方があるのかもしれませんが、自国と他国との関係というところに突き詰めると、そういう表現も出てくるのではないかと私思うのです。  もう一つ、このごろ抑止戦略ということばがいわれております。しかし、抑止というのは、これは戦争の話ではないのであって、きわめて外交の分野に属することである、こういうことをいっておりますが、この見解に対しては外務大臣はどうお考えですか。
  81. 大平正芳

    ○大平国務大臣 抑止というのは、平和とか安定とかを乱す力を抑止していくという意味でございますならば、外交はまさにそのためにあると申して差しつかえないと思います。
  82. 永末英一

    永末委員 私は、抑止というのは使われていることばですから、当然のみ込んでおられると思ったのですが、抑止戦略と申しますのは、核による抑止戦略、つまり核を前提にしたことばでございます。したがって、核抑止戦略とかいうことばを使いますと、何か戦争を前提にしておられるようだけれども、それは、戦争が始まってあとからのことではなくて、戦争が始まらない前のこと、つまりそれは外交のジャンルに属することであるということがレイモン・アロンの見解でございますが、こういう見解はどう思われますか。
  83. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのとおりだと思います。
  84. 永末英一

    永末委員 さて、そういう見解のもとで、彼はもう一つ、核兵器というのは、したがって戦争の道具ではなくて、いまや外交の道具になっておる、こういう見解を披瀝しまして、十七、八年前に有名な書物を一冊書き上げたわけでございます。わが国の関係学者の中にも相当な影響を与えている考え方、わが国のみならず諸外国にも与えておるのでございますが、核兵器というものの役割りでございますね。外務大臣でございますから、外交の道具の一つになっておる、こういう考え方はいかがでございますか。
  85. 大平正芳

    ○大平国務大臣 核兵器というものが、在来の意味における兵器のカテゴリーに属するかどうかということは、アルティメートウエポンといわれておる、非常に限界性を持っておるという意味でいわれる意味は、何かわかるような感じがするのであります。現実に核保有国が外交力というものを形成する一つの柱として、核兵器の保有ということがないとはいえないと思います。
  86. 永末英一

    永末委員 核兵器を持っている国では、ストレートに核兵器というのはその国が行なう外交の有力な道具の一つ、こういう意見が出てくると思うのです。わが国は、あなたの政府は、非核三原則なるものを掲げておられるわけでございまして、核兵器の保有は考えておられない。さて、その核兵器の保有を考えない場合の国の外交の責任者として、核兵器を持っている国は核兵器をそう考えておるとするならば、そういう考え方をどう思われますか。
  87. 大平正芳

    ○大平国務大臣 現に核兵器を保有しておる国があるわけでありますが、しかし、第二次大戦のあと、わが国が被爆をいたしました以後、核兵器を現に使った国もないわけでございまして、核兵器保有国の首脳の賢明な判断にわれわれは期待しなければいけないと思いますし、今日までのところ彼らはたいへん慎重であるというふうに思います。したがって、核兵器というのは限界兵器であると同時に、使用されない兵器であるということをわれわれは希望するわけでございますが、しかし、私どものように核兵器を持たない決意をいたしました国といたしまして、こういう状況に対応して何を考えたらいいか、何を考えては悪いかということを考える場合に、わが国がいま鋭意推進いたしておりますように、ひたすら平和に寄与する、平和主義に徹してそれにもとらない。神経質なまでに努力をすることによって、世界の信頼をかち得ていくようにしてまいることでないかと思います。
  88. 永末英一

    永末委員 他国は他国、うちはうちというのでは外交になりませんので、やはり他国の姿勢がどこにあるのかということ、特に核兵器を保有している国々の意図がどこにあるのかということを十分に察知をして、それらの国々との外交を考えませんと、他国は他国、おれはおれだということではなかなかならぬような気がいたしまして、今回上程いたされておりますこの原子力に関するアメリカ合衆国との協定を考えるにあたりましても、アメリカのほうは核保有国です。われわれは非核保有国である、こういう立場からこの協定をながめます場合に、やはり考えておかねばならぬ問題があるのではないかと思いますので、いまのような質問をいたしておるわけでございます。  それからもう一つ、この点でお伺いしておきたいのは、もし核保有国の外交に核兵器が有力な外交の道具であるといたしました場合に、実際に役立っておるでしょうか。どういう役立ち方をしておるか、その点何かお考えございますか。
  89. 大平正芳

    ○大平国務大臣 たいへんな国費を費やして、高度の技術を結集して、せっかくお持ちになられたものでございますけれども、少なくともいままで使われておらないことも事実でございます。また、それを使うことが何を結果するかということについても、一般の認識はだんだん定着してきておるように思うのであります。だから、私も先ほど申しましたように、核保有国の首脳はいままで賢明な判断を持ってこられたように思いますし、今後もそうあってほしいと思うわけであります。ただ、われわれは、非核保有国でございますけれども、それだからといって卑屈になる必要は一つもないのではないかと思います。
  90. 永末英一

    永末委員 使われないのは幸いであるというようなお考えでございますが、使われたらたいへんでございまして、最初申しましたように、抑止戦略というのは、戦略ということばでございますが、そのストラテジーという意味は、多分に外交上の用語にいまやなっておる。ところが究極兵器と先ほど大臣が言われましたような意味でのものすごい破壊力を持っているというようなものではなくて、核でありながらきわめて小規模の破壊力しかないというようなものを開発しておることは事実でございまして、すなわち、通常兵器といわゆる究極兵器といわれる核兵器の間に、しかも通常兵器に近い爆発物、それが核である、そういうものが開発されている。こうなりますと、使わないところに重点があるのではなくて、それを使ってみようかという一つの意図があればこそその開発をやっていると思わざるを得ない。その場合に、一体これが核につながるのか、通常兵器の使用のほうにつながるのかということを判定するのは、軍人の立場ではなくて、これは各国の外務大臣の立場にならざるを得ぬと思うのですね。その意味合いで私は先ほどからこの問題を取り上げたのでございますが、そういう角度から私は、この抑止戦略ということばの中で、ここ十数年来きわめて顕著に変化してきた核保有国のやり方の変化というものを見ていなければならぬのではなかろうか。その意味合いで、たとえばベトナム戦争がこういう形で終わりつつある、しかもベトナムは核保有国ではない、アメリカは強大な核保有国である、そうしてこういう形で終わってくることが、アメリカは核保有しておった、その核の保有ということが外交の有効な手段であったと日本の外務大臣はお考えになりますかどうか。
  91. 大平正芳

    ○大平国務大臣 アメリカ現実にベトナム戦争で核を使用しなかった、その結果が望ましいことであるか望ましいことでないかにかかわらず、アメリカの不使用に敬意を表します。
  92. 永末英一

    永末委員 外務大臣のお答えはお答えでございますから……。  先ほど私が申し上げましたのは、核兵器といいましても、その態様は非常に異なったものを核保有国は開発をいたしておる。これは、アメリカがやっておることはソ連もやっておるように思います。詳しくはわかりませんけれども、見たわけではございませんが……。  さて、われわれがこれから原子力に関する工業力と申しますか、そういうものをどんどん広げていきたいというのでこの協定を結ぶと思いますが、この核工業力と申しますか、簡単に言えば核力——核兵器ではございません。濃縮ウランをつくってだんだん発電もやりましょうが、あるいはそのうちに増殖炉ができればわれわれのほうも核の再生産をやり得るわけでございますから、そういう核の工業力、核力というものは、大平外交に有力な道具になりますか。
  93. 大平正芳

    ○大平国務大臣 そういう発想ではなくて、その必要があってやっておることにすぎないわけでございまして、私は日本の核工業力の発展というものを特にとりたてて誇示していくつもりはありません。
  94. 永末英一

    永末委員 本年度のイギリスの戦略研究所が出しましたストラテジックサーベー、一九七二年、昨年分でございます。この中で日本を取り上げましたのは、これは全文が約九七ページのうちの五ページ。ところが、日本を取り上げたその角度は、何を書いているかといいますと、日本の核の選択ということなんですね。それだけが書いてある。内容は、われわれの核兵器開発の見通し、それから宇宙開発、つまりわれわれがそれを運搬し得るミサイルをつくり得る能力があるかどうか、三番目は原子力の、ポラリス型でございましょうが、潜水艦をつくる能力、つまり造船能力があるかどうかというようなことを彼らなりに調べたものを書きまして、そうして結論は、能力がないということでございますから、あなたの政府の方針に合致しておるのでありますけれども、つまり、彼らは、そういう目でわれわれを見ておるということは私は事実だと思うのですね。したがって、あなたの外交もまた彼らが、われわれが原子力協定を結んで非常に大きな原子力工業といいますか、産業というところまでいくかいかぬか知りませんが、そういうものを保有しておるその事実については、片一方、そういう目で見られておる。これはただ単に非核三原則を打ち出しておるだけでは済まない問題だと私は思います。その意味合いでは、もう少し内容に立ち入って伺わねばならぬのでございますが、この戦略研究所の分析の中に、日本原子力関係工業というのはきわめて多く外国に発生以来依存してきておる、一本立ちができないんだということが書いてございます。さて一体、その原子力関係の工業の中で、わが国の独自のものというのはどんなものが、科学技術庁長官、ございますでしょう。
  95. 成田壽治

    成田政府委員 原子力自体がアメリカとイギリスとの技術導入をもとにしておりますので、産業も非常に向こうの技術導入等によって現在出てきておりますが、しかし、最近は、先ほど話がありましたように、発電炉をつくる場合も、一号炉は導入炉によりますが、二号炉以降は極力国産炉によるということで、原子炉のメーカーも相当な規模に発展してきております。それから燃料に関連しましても、濃縮は御承知のように、濃縮ウランの生産技術はないのでありますが、燃料の加工・転換等の工場も四、五社にわたって工業化され、現在いろいろ研究用の燃料その他の転換・加工をやっております。その他関連産業としましていろいろな分野、非常にすそ野の広い分野がありますが、そういう意味で、相当毎年伸びてきております。ただ、日本プロパーといいますか、原子力の技術自体が従来動いておるのは大体導入技術でありまして、独自的なものはある意味では非常に考え方によっては少ないと思いますが、ただ高速増殖炉とかあるいは新型転換炉とか、日本原子力の新しい自主的な技術開発によって新しい炉をつくろうという、これはまた政府機関によって研究開発段階でございますが、こういうものができると、それに関連して非常に自主技術を中心とした新しい日本固有の産業形態ということも考えられるというふうに思いますが、これは今後の問題だろうと思います。
  96. 永末英一

    永末委員 一九八五年に濃縮ウランの工場ができる、これは、この戦略研究所の報告書にもちゃんと書いてございますが、その一九八五年に濃縮ウランの工場ができて、それからわれわれがいよいよ生産を開始していくということになりますそれ以後ですね。いままで日本独自のものというのはあまりないようでございますが、なるほど無から始めたのですから、導入技術が全部が全部であったと思います。しかし、パテントの関係とか、あるいはまた原子力関係は残念ながら、平和工業として出発したものではなくて軍需工業として出発したことは、各国ともすべて同じでございますから、日本にピンからキリまで知らしておるとは私は思いません。だといたしますと、一九八五年という時点から濃縮ウランがつくれるということは、いわば原料がつくれるのでございますから、それ以後、わがほうの独自の技術の範囲というものはどの程度広がっていきますか。たとえばいま一といたしましたらどれぐらいになりますか。
  97. 成田壽治

    成田政府委員 昭和六十年ごろに遠心分離法による濃縮ウラン工場を国内につくりたい、そういう目途で、動力炉・核燃料開発事業団を中心にしまして四十八年度から国のプロジェクトとして馬力をかけて研究開発をやっております。それで工場が昭和六十年ごろでき、それに関連していろいろな関連の技術も日本固有のものが発生すると思います。  現在を一としてどうかというのはちょっと答えにくいのでありますが、これが大体計画どおり成功しますと、昭和六十五年においては日本濃縮ウランの所要量の三分の一は国産工場でまかないたい、そういう考え方でありますので、その関連の産業範囲というのは相当大きなものになるというふうに考えております。
  98. 永末英一

    永末委員 今度は逆に、現在もこの協定があるわけでございますが、現在までこの協定が発効いたしまして、この協定規定に従っていろいろな保障措置という名目で査察が行なわれてきたと思いますが、国際原子力機関その他、もしアメリカの単独の査察があれば伺いたいのでありますが、どの程度査察されておりますか、明らかにしていただきたいと思います。
  99. 成田壽治

    成田政府委員 最近を見ますと、これは全部IAEAの査察で、四十六年の査察回数が九回でありまして、査察の対象となった施設は百四十七カ所ということになっております。昭和四十七年は十二回でありまして、査察の対象としては百四十一カ所でございます。これは原子力発電所それから先ほどの燃料加工施設等でありまして、日本は全部日米、日英等の協定によるIAEAの査察を受ける形で行なっております。
  100. 永末英一

    永末委員 査察というのはどういう意味なんでしょうね。商業ベースで買うというんですが、商業ベースで買い込んだものを、まことにプライベートセクターでは関係のない者がやってきて見るというんですから、日本政府は査察というものを一体どう了解しておられますか。
  101. 成田壽治

    成田政府委員 査察といいますのは、向こうが燃料とかいろいろな資材、装置を送って、これがはたして日本協定上でいうように平和利用に限られておるかどうか、これを保障するための制度として査察制度が行なわれておるわけでございます。日本は、国際的な査察を受けなくても、原子力基本法等の法体系によって当然平和利用が十分確保される措置が国内的にとられておりますが、国際的にも、日米、日英、日仏、日加等の協定によって全部IAEAの査察を受けるということになっております。したがって、平和利用担保のための保障措置としては、設計の資料の提出だとかあるいは運転記録の保持だとか、それから報告書を定期的に出すとか、こういういろいろな形の保障措置がありますが、査察員が現実に施設に立ち入ってほんとうに平和利用になっておるかどうか、燃料その他の流れが記録にマッチしておるかどうかということを調べるという意味では、平和利用が行なわれているかどうかを担保する保障措置としては最も厳格な制度でございます。
  102. 永末英一

    永末委員 技術を一〇〇%よその国から学び取って機械をつくる、燃料はこうやって一〇〇%つくってもらう、だからそこへ査察をする。旧協定によりますと、濃縮ウランなんかあぶないのだから、おまえのところに売るけれども、売ったあとは責任持て、おれは知らぬぞというようなことが書いてありましたが、今度の新協定ではなくなっております。あぶなくなくなったという解釈もあるかもしれませんが、結局のところ、責任を相手方、買い手に持たすのは、普通の商行為なら当然のことでありますが、ただ先ほどちょっと質問をいたしましたように、これは三十五年か何かくくられるわけでしょう。そして一九八五年というとずっと前でありまして、それから日本独自の範囲というものがだんだん広がってくる。ところがいまは九回、十二回ですか、見せろ見せろとどんどんやってくる。平和的利用をやるかやらないか、つまり平和的利用を保障するためにというのは、国際的にはわれわれは疑われていると思わざるを得ない。それは、政府が言明しているように、非核三原則でございますからということが国際的に認められておるのなら、平和利用をしていないのではなかろうかという疑いのもとにおける査察というものは一回も来なくていいわけでございますが、疑っているから来るのでしょうな。  そうしますと、伺いたいのは、いままでの査察の中で、たとえわずかでもわがほうで考え出したものがあると思うのですが、その辺は見せなくていいのでしょう。断われますか。
  103. 成田壽治

    成田政府委員 現在の保障措置制度においては、日本でつくったものは見せなくていいわけでございます。
  104. 永末英一

    永末委員 ちょっと聞き取れなかったのですが、断われるのですね。
  105. 成田壽治

    成田政府委員 そのとおりでございます。
  106. 永末英一

    永末委員 この査察の問題は、核防条約が調印されたときにいろいろと問題となったところでございまして、この協定にも、核防条約が結ばれて——結ばれてというのはわが国が批准して、われわれがその中における燃料供給の行為をやっていくということになった場合には、そこの保障措置によってやるのだというようなことが書いてございまして、核防条約とのリンクと申しますか、そういうことがここに書かれております。  そこで伺いたいのは、この原子力協定によってわれわれは濃縮ウランを手に入れてわが国の原子力開発をやっていくわけでございますが、核防条約を結んだときにわれわれがまた同様な濃縮ウランを手に入れてやっていく手に入れ方、これはどんな関係がありますか、無関係でありますか。
  107. 成田壽治

    成田政府委員 かりに日本がNPTに入った場合は、保障措置は十二条の規定によってそちらの保障措置協定にかわるわけであります。ただ、保障措置の根拠がかわるわけでありますが、燃料の入手等に関しましては実体的な影響は全然ない、この日米協定によって燃料供給されるということになります。
  108. 永末英一

    永末委員 燃料供給の状態が変わらぬとしますと、燃料供給に関する限り、核防条約にわれわれが入らなくてもこの協定がある限り続くのだ、こう考えていいわけですか。
  109. 成田壽治

    成田政府委員 燃料供給に関する限りは、この協定ある限りこの形で供給が契約によって確保される、それは変わらないというふうに考えております。
  110. 永末英一

    永末委員 次に査察でございますが、査察はどう変わりますか。
  111. 成田壽治

    成田政府委員 現在、日米協定等によるIAEAの査察は、一昨年敦賀の発電所で非常に仕事のじゃまになるとかいろんな問題がございまして、日本政府の申し入れでだいぶ改善をして相当合理化されておりますが、不拡散条約に基づく保障措置につきましては、昭和四十六年四月にモデル協定というのができまして、これをNPT参加各国に対する保障措置の標準にしようというモデル協定案が理事会で承認になっております。その内容を見ますと、やはりさらに保障措置、査察関係が合理化されていく。たとえば原子力発電所の場合は上限何人デーという、一つの施設ごとに査察量の上限が違っておりますが、その国の自主的な管理制度が非常に信用できる有効なものであればそれを尊重しまして、IAEAの直接の査察を少なくしていくという、その国の自主的な燃料計量管理制度の有効性ということを非常に尊重しておる。施設ごとの査察最大量がきまっておりますが、それを相手が信用できる管理制度をとっておれば、IAEAの直接の査察をどんどん少なくしていくという制度が開かれておりまして、保障措置としてはさらに合理化された形のものの適用を受けるということに考えております。
  112. 永末英一

    永末委員 私のお聞きしたのは、この協定でこのままずっと濃縮ウランを手に入れて、同じくこの協定による国際原子力機関の査察を受けていく。新しく核防条約を批准をいたしますと、この協定によって自動的にそっちへ移る。その場合に受ける査察と、損得というのはおかしいですが、合理的と言われたのがよくわからぬのですけれども、どっちが得なんですか。
  113. 成田壽治

    成田政府委員 先ほど言いましたようにNPTの査察のほうが、モデル協定を見ましても、その国の自主的な管理制度を国際的に信用して、その有効性を信用した場合にはIAEAの直接の査察の量を少なくしていく、そういう意味では非常に合理的、簡素化された形のもので、この個別協定による保障措置よりもNPTのもとにおける保障措置のほうがそういう合理化された形になるもの、そういう意味では得だというふうに考えてます。
  114. 永末英一

    永末委員 なぜこの二国間協定によっても、それと同じことができないのですか。これは外交問題かもしれませんね、大臣。そこのところをちょっと聞きたいわけです。査察がどうして変わるのか。つまり損得ということばがいけなければメリットでいいですね。つまりNPTに入った場合の査察のほうが、この協定による査察よりも、同じ国際原子力機関が行なうことでありますがメリットがわが国に多いという、そこのところがちょっとよくわからない。
  115. 成田壽治

    成田政府委員 NPTの場合と個別協定の場合の査察の範囲と多少違うのでありますが、ただNPTに関しては各国共同で検討した一つのモデル協定案という案が、ドラフトがあって、それが先ほど言いましたような合理化された形の案になっておるわけであります。個別協定については、従来の査察のIAEAのやり方が踏襲されておりまして、IAEA自体としてもNPTのモデル協定のように合理化された形にあるいは直していく考え方もあるかもしれませんが、いまのところはNPTの場合は国際的に共通の一つのモデル協定案でやろうということで、個別的な場合は従来のやり方を踏襲している。いろいろ改善はしておりますが、そういうことで、これはIAEA自体がどう持っていくかという問題にも帰すると思いますが、現状においてはモデル協定案のほうが進んでいる形で将来の問題として行なわれる見込みになっております。
  116. 永末英一

    永末委員 われわれはこの二国間協定を新しく変えようということをやろうとしているわけでございますが、その変えようとしているときに、われわれの受ける査察というものは、たとえば国際原子力機関の間にいま言われたモデル協定みたいなのと同様の内容でやってくれと言うことはできないのですか。
  117. 成田壽治

    成田政府委員 そういう申し入れをすることももちろんあるいは必要かもしれませんが、NPTの場合は共通のNPTという一つのサークルのもとでの保障措置、それから個別的な場合は同じIAEAでありましても日米、日英といろいろ個別的な区分によって行なわれている。はっきり区分した形で保障関係その他が全部行なわれているわけであります。したがいまして各国ごとの分を一つだけ改善というそういうことができるかどうか、これはIAEA自体の問題でもありまして、現在のところNPTのような一元的な国際的な査察制度と個別的協定に基づくIAEAの個別的な区分に従う査察のやり方は多少違った形で行なわれておるのが現状でございます。
  118. 永末英一

    永末委員 こういうことでしょう。この協定によってわれわれが査察を受けるのは、われわれが平和的利用の道にたがえているのではなかろうか。たがえてはならぬというので国際原子力機関というものがやってきて査察をするということはわれわれは承諾しておるわけです。NPTにいよいよ批准して入った場合にはそのことは同じことであって、あるいは平和的利用をやれ。ところが供給の面は同じことだとあなた言われた。最初NPTが問題になったときには、あれに入らなければ供給もまたむずかしいのではなかろうかという議論現実にあったのです。しかしいまや二国間協定で三十年以上にわたってわれわれは濃縮ウラン供給を受ける。しかし問題は、同じ原子力機関が行ない、そして相当多数の国がNPTに入るわけである。二国間協定濃縮ウランをもらっている国は入ったものも入らない国もございますね。その場合にNPTに入らないものについての査察だけをより不合理にするということが一体いいのだろうか。それならば、個別の契約でNPTに入ったものが査察を受けると同じ条件でやれということが外交上言えないとは私は思えない。これは外務大臣どう思われますか。できないのですか。私は当然やれることではないかと思うが、それならば、ここにこういう査察してよろしいというNPT特有の何かあるのでしょうか。あるならば、NPTに入ったものだけがこれこれの部分は省略するのだということがあり得るのか、その辺ちょっと伺いたい。これは外交の問題だ。
  119. 大平正芳

    ○大平国務大臣 外交上の問題といたしまして私ども気をつけておりますのは、アメリカと、原子力協定を結んでおる締約国と日本との間に実質的な公平を欠くことがないようにしなければならぬと思っておるわけでございます。すなわち、わが国がいずれの場合におきましてもあなたの言われる損をしないようにしなければならぬと思うのでございます。  NPTの査察の場合それから個別協定の場合、なぜ違っておるのかという技術的な点は私はよくわからぬのでございますけれども、少なくとも実質的な公平を保証してまいることが私どもの任務であろうと考えております。
  120. 永末英一

    永末委員 ぜひそのようにひとつ外交をお進め願いたい。  それから原子力局長科学技術庁にお願いしたいのですが、違っておるということばだけを知らされたのですが、どこがどう違うかわかりませんのでね。こことこことが現状でどう差があるかということは資料としてひとつお示しを願いたい。委員長、ひとつよろしくお願いします。  時間も参りましたので、外務大臣に最後に一つ伺いたいのですが、先ほどソ連が濃縮ウラン日本に対する提供について考えておるとかおらぬとかということをちらほら耳にするとおっしゃった。しかし商業ベースでこれは供給せられるかどうかという点についてはちっともはっきりしていないので、濃縮ウラン供給国としてはカウントしていない、こういうことばを使われたと記憶をいたしております。  さて、あなたは近くソビエトを訪問なさるわけでございますが、あちら側にはあちら側の経済的協力をわが国に求めるたくさんの問題がございますね。わが国の場合、この濃縮ウランをわが国にも供給しないかという交渉をしようという御意図はございませんか。あなたの意図です。
  121. 大平正芳

    ○大平国務大臣 最近そういう話を伺いましたのは、訪ソいたしました原子力産業会議視察団でございましたが、訪ソの際、ウラン濃縮の役務をソ連側で提供する可能性があるというようなことが伝えられたわけでございます。私どもといたしましては、同視察団からどういうことであったのか、一ぺん御報告をよく詳細に承ってみまして、今後どのように対応したらよいか考えてみたいと思います。
  122. 永末英一

    永末委員 終わります。
  123. 藤井勝志

    藤井委員長 午後一時三十分より再開することとし、これで休憩いたします。    午後零時五十二分休憩      ————◇—————    午後一時五十二分開議
  124. 藤井勝志

    藤井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  この際、私から政府にお尋ねをいたします。  去る六月十七日未明、東ドイツ領内で自動車事故により日本人二名が死亡、一名が重傷を負ったわけでございますが、外務省は直ちに西ベルリンの総領事館員をして、東ドイツ外務省に右邦人の安否、事故の実態につき照会いたしたわけでございますが、先方は回答を拒否したというような話を聞いておりますが、一体真相はどのようなことになっておりますか。
  125. 大和田渉

    ○大和田政府委員 事実関係について御説明申し上げます。  六月十七日の午前三時ごろでございますが、東ベルリンからハンブルグに向かって東独領内を走っておりました日本人三名が乗っている乗用車が、ボイツェンブルグ、これはハンブルグに近い東独領内の国境の地点でございますが、そこで運転を誤って、樹木に衝突して二名が死亡しまして一名が重傷を負ったわけでございます。この事故の発生につきましては、生き残りました一名の者からハンブルグの日本ビクター、このなくなりました二人の方は、日本ビクターのハンブルグ支店につとめておったわけでございます。日本ビクターに電話をいたしまして、その旨東京の本社に伝えられたわけでございます。その本社を通じまして外務省は知りまして、その結果十八日にわがほうのベルリン総領事館の館員から東ドイツの外務省の領事部に面会、事情を問い合わせたわけでございます。その際、われわれとしては、事故の詳細を知りたいということ、それからなくなられたという情報があるので、遺体の引き渡しの問題あるいはけがをしたということも聞いているので、このけが人を早く救護したいという問題について問い合わせたわけでございます。それに対しまして、東ドイツの領事部の者は、この事故の詳細については承知している、しかしながら西ベルリンにある日本総領事館の館員に答えるわけにいかないという態度をとったわけでございます。本省といたしましては、やむを得ずモスクワの日本大使館に連絡いたしまして、モスクワにある東ドイツ大使館に、先ほど申し上げましたような内容の要請をするという訓令を出したわけでございます。モスクワにありますわがほう大使館から先方へその旨伝えようと思ったところへ、入れ違いにモスクワにある東ドイツの大使館員が参りまして、事故発生の説明、それから遺体の引き渡し及び重傷者のハンブルグへの移送ということについて述べました口上書を持参したわけでございます。その際、わがほうからはさらに詳細な説明を求めましたけれども、それ以上のことは先方は詳細を承知していないという答えがありました。日本側といたしましては、今回のような人道上の事件かつ緊急を要する事態ということについて、東ドイツ側がわがほうのベルリン総領事館には説明できないという態度をとったのは非常に遺憾であるということを述べまして、同時に、もしこういうような事態があった場合は、たとえば地理的に近いベルリン総領事か、あるいはその総領事の代理というような者と至急連絡をとって救護措置をとりたいのであるから、そういうことを理解してもらいたいということを要請しておいたわけでございます。  なお、具体的には遺体の引き渡しは、現地時間のきょう二十日に行なわれる予定でございます。それからけがを負いました一人の学生でございますが、これはわりあいに軽傷で済みまして、昨日すでにハンブルグに移送されてまいって、かつ入院するほどのことはないというふうにわがほうのハンブルグ総領事から連絡がございました。  以上でございます。
  126. 藤井勝志

    藤井委員長 ただいま大和田局長から、ある程度事柄の真相がはっきりしました。私はそれを聞いて非常に意外に思っております。と申しますのは、御承知のように、東ドイツとは去る五月十五日にわがほうと国交が樹立されたわけでございますが、それにもかかわらず、ただいまお話しのように、緊急措置を要する人道的な問題について、東ドイツ政府がとられた態度というのは、ほんとうに理解に苦しむまことに遺憾な感じを私は受けるわけでございまして、東ドイツには近々わが大使館の設置予定されておりますし、わが邦人の東西ドイツの往来というのはますます頻度を増してくるというふうに思われます。  東西両ドイツ関係は、御承知のように緊張緩和の方向にあるわけですけれども、いわゆるベルリンの壁をめぐる東西ドイツ関係は微妙かつ複雑な関係にあると私は思うのでありまして、しかしそのために東ドイツ並びに東ベルリンにいる邦人の保護に万全を期することができないとするならば、人道的見地からもまことにゆゆしき問題だというふうに思わざるを得ません。  政府は、今回の措置にかんがみて、西ベルリン総領事館はもちろん、その周辺諸国に対する在外公館に対して、邦人の保護に万全を期するよう配慮するとともに、他方、新しく国交の開かれた東ドイツ側と十分な意思疎通をはかり、邦人の保護に当たり、今回のようなことが再び起こらないように万全の措置をしていただきたい、このように思いますが、この問題について大平外務大臣の御所信を賜わりたいと思います。
  127. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ドイツに発生いたしました不幸な事件をめぐりまして、御心配をかけてたいへん恐縮に存じております。  わがほうの照会に対しまして、東独外務省領事部の係官がわがほうのベルリン総領事館を相手に事実を説明することができないという態度に出たことが、いかなる理由に基づくものか明らかではございません。この問題につきましては、今後東独側と十分話し合いをいたしまして、東独内の邦人保護が確保されるよう、これから万全の措置を講じてまいりますとともに、いませっかく接触を持って開設を準備いたしております公館の設置の仕事も促進してまいりたいと考えます。     —————————————
  128. 藤井勝志

    藤井委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井一君。
  129. 石井一

    ○石井委員 ただいま委員長のほうから強い要望のございました点でございますが、もう私から繰り返す必要もございませんが、東西ドイツのきびしい情勢、ベルリンの壁というものが何ら関係のないわが国の日本人にもこういうふうな形で影響があったという一つの例であろうかと思いますので、わが党といたしましても、政府におかれましてはこれを一つのいい教訓にいたしまして、特に邦人の保護ということに対して万全の措置をとっていただきたい。これは私のほうからも強く要望させていただきたいと存じます。  そこで一つ短い問題でございますので、フランスの核実験についてちょっとお伺いをさせていただきたいと思うのでございますが、最近南太平洋で相当大規模の実験が行なわれようということでございますが、これに対しては周辺諸国も非常にきびしいまなざしを向けておるところでございますが、非核三原則を持っておるわが国の政府としては、これを傍観視されるおつもりなのか、この点政府の御所見をお伺いしたいと思います。
  130. 大和田渉

    ○大和田政府委員 いま御指摘のように、日本は非核三原則、これを堅持しております。従来、外国が行ないます核実験に対しましては、それがいかなる国であろうと、またいかなる場所においてであろうとわれわれとしては反対であると常に抗議を続けてきたわけでございます。  フランスの南太平洋における核実験、まだもちろん先方からやるという通報は受けておりません。ただいろいろな情報、たとえば外地にいる艦隊が行動を開始したというような情報にも接しておりますので、大臣の御指示に基づきまして、駐仏大使館に対して、抗議を申し込むようにすでに訓令いたしたわけでございます。
  131. 石井一

    ○石井委員 そういう計画が進んでおるようでございますけれども、その抗議がなされたといたしましても、これが実際に行動が起こされた場合に、政府としてはどういう態度で臨まれるつもりなんでございますか。
  132. 大和田渉

    ○大和田政府委員 われわれとしては、従来から一貫した態度をとっておりまして、まず、そういう実験はやめてもらいたいということを申しまして、まずやめることを希望するわけでございます。ただわれわれのその抗議にもかかわらず実験が強行されたという場合には、あらためてさらに強くけしからぬという趣旨の抗議を申し込むという基本方針を従来とも貫いてきておりますし、今回の場合ももしそうなりましたら同じような措置をとりたい、こう考えております。
  133. 石井一

    ○石井委員 これは大臣政府側の見解はわかったわけでございますけれども、そういう基本方針で厳重にひとつ対処していただくのがやはり国民感情にもマッチした行動ではないかと思いますので、わが党からもそういうことを御要望しておきたいと存じます。何か大臣、これに対してコメントはございますか。
  134. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま政府委員から御答弁申し上げました基本の方針を終始堅持して、いつ、いかなる場所において、いかなる国が行なう場合、あるいは行なった場合におきましても、わが国の態度は一貫して貫いてまいるつもりです。
  135. 石井一

    ○石井委員 次に、日中航空協定に関しまして数点お伺いをさせていただきたいと思います。  この点は私のほうからもまた野党議員からも当委員会においてたびたび問題になっておるところでございますし、政府も鋭意外交交渉の中で努力をされております。私、これ以上新しい問題さえ出なければ追及する意図はなかったわけでございますが、昨年、きょうと、いわゆる成田空港の開港に伴いまして従来政府がきめておりました羽田の国際線としての飛行場使用は廃止するという既定の方針を大きく転換されまして、成田とともに羽田も国際空港の表玄関としてあけるということでありますから、二つの表玄関を持つというたいへん大きな方針といいますか、これが運輸大臣のほうから発表されておるわけでございます。  そこで、成田の開港に伴う技術的ないろいろの問題点というのはあるわけでございますけれども、それにしても、この時期にこういう形の発表がなされたということは、やはりいま難航しておる日中航空協定の打開にもなり得る一つの案ではなかろうか、こういうふうにも私判断をするわけでございますけれども、このことに、航空協定に関連をいたしまして、運輸省側は今度の成田の措置に対し、羽田の措置に対してどういう御所見をお持ちなのか、政務次官からお伺いしたいと思います。
  136. 佐藤文生

    ○佐藤(文)政府委員 お答え申し上げます。  昨年私就任して以来、新谷運輸大臣から成田空港の開港が四十六年の四月一日の予定が大幅におくれたので、一つ一つ問題点を詰めてやれ、こういうことの御指示をいただきまして、ずっと成田空港が一日も早く開港するようにやっているわけでございます。だんだんと問題点が煮詰まりまして、パイプラインの問題とか鉄塔がまだ滑走路の前方に立っておる、その妨害鉄塔の問題とかいろいろ問題点がずっと煮詰まってまいりました。  ところが、さらにいま一つ大切なことは、御承知のとおりにアクセスの問題を早急に取り上げねばならぬということで取り上げていました。これは成田空港開港時において三万人から三万五千人の乗降客があることを想定して、首都圏の東京周辺から成田までお客さんが行く、おりたお客さんがこの首都圏の目的地に到達する、このアクセスの問題について検討をずっと半年ばかり続けてまいりました結果、道路網にいたしましても鉄道輸送の問題にいたしましてもバス輸送にいたしましても、いろいろと準備はいたしておりますけれども、開港時にアクセスの問題を片づけて、お客さんに満足して短時間で飛行場に着くということが非常に困難な状態であるということが察知されるわけであります。特にたとえば成田が開港しまして、成田から札幌まで時速八百キロで走ったとする。ところが東京から成田まで一時間半、それから札幌の飛行場から札幌の市内まで一時間半、四時間ということになりますと時速二百キロということになるのであります。それをいかに短縮するかというのが、国際的に、空港の位置の決定とアクセス問題ということが航空行政において非常に大きな問題なんです。  そこでこのアクセスの問題について、一挙にいまの羽田の国際便、現在外国線は一日平均百四十八回離発着しております。この三十社に及ぶ国際航空会社、一日百四十八便という離発着、これを一挙に成田に持ってくるというのがいままでの原則でございます。現在もそれを貫いているわけであります。大臣にこの報告をずっといたしましたところが、これはやはり重大なことである。したがってこれは閣議で取り上げる重要な問題であると思う。これを一挙に持っていくかあるいは羽田を国際線飛行場として残すかということはまた重要に考えなくちゃならぬ。したがって、成田と羽田を国際線の飛行場にする、両方することも考えねばならないねえという程度の発言を慎重にしたわけでございます。これはもしも二つにかりに分けたとすれば、CIQの問題を両方に分けなくちゃならぬ。現在はもう成田に一挙に持っていくということにしておるわけですから、その問題もありますし、人員の問題もありますし、それに関連する企業がたくさんございまして、たとえばグランドサービスの会社なんかは、国際線のサービスをするためには、成田だけで準備しておったのが、また羽田もなれば両者使わねばならぬ。非常に影響するところが大きいものですから、大臣としてはそういうことも考えねばならないね、こういうお考え方を新聞記者会見でやったわけでございます。したがって、まだこれを両方残すということを決定したわけじゃございません。いま、言うならば、国際線は一挙に成田に持っていくのだ、そして羽田はこうするのだとしておるが、アクセス問題を考えると、一挙に持ってくるということはサービス面において非常に問題点が多くなってくる、こういう点で大臣の御発言になったわけでございます。  そこで、この問題と、いま先生が言われました日中航空協定に伴うところの中国民航と中華航空との問題点とからみ合わしたわけではございません。これはアクセス問題から出した問題です。それとは違った時点で、日中航空協定は現在外務省当局と御相談申し上げて、一日も早く航空協定が結ばれるように努力しておる、こういう現状でございます。
  137. 石井一

    ○石井委員 ちょっとお伺いしますが、いつ開港を予定されておるのでございますか。四十六年四月一日が大幅におくれていると思いますが、いまや最終段階に入っておるわけですから、この点当局のお考えをまずただしておきたいと思います。
  138. 佐藤文生

    ○佐藤(文)政府委員 開港の目標をきめるということは、これは今度きめる場合は、閣僚会議できめていただきたい、こう思っております。そこで、きめる前提として、いまなお十数項目にわたる解決せねばならない問題点が山積しておりまして、たとえば地元の千葉県知事あるいは茨城県知事成田市長、千葉市長、地元のそれぞれの議会、こういった地元住民との話し合いを、いま一歩進めなくちゃならぬこと、それからパイプラインのそれに伴うところの完成の目標の設定、それから鉄塔が二本立っておりますので、妨害鉄塔の除去ということも裁判の結果を得てやらなければならぬ問題、こういう問題がずいぶんありますので、近い将来に大臣は閣僚協議会を開く準備をお願いをいたしまして、そして閣僚協議会で開港の時期をきめる予定でございますが、いまこの時点で、いつごろ開港の目標であるということは、いましばらく時期をかしてほしい、こう思っております。
  139. 石井一

    ○石井委員 日中航空協定との関連で成田の問題を提案したのではないということは先ほどの御答弁で明らかなんでございますけれども、やはり時あたかも非常に難航しておるむずかしい問題だけに、私は何かそこに一つの隘路が、政府側はそう思っておられないかもわかりませんが、あるのではないかという感じもいたすわけでございますが、従来当委員会でこの問題で議論をいたしました中に、外務当局としては鋭意交渉をいたしておるのだけれども、技術的な問題でいろいろの調査を進めておる、こういうふうな御答弁が、大臣並びに外務当局のほうからも、過去あったわけでございますが、政務次官、運輸当局としては、日中航空協定締結するにあたって、まだ調査をしなければいかぬ事項というものがたくさん残っておるのかどうか、この点はいかがですか。
  140. 佐藤文生

    ○佐藤(文)政府委員 第一点の問題についてちょっと申し上げますが、成田の開港の時期がこの問題には関係してない、こうはっきり申し上げました。それはそのとおりでございますが、この十二月一ぱい開港するということは、もう物理的に不可能であることは言えます。したがって、日中航空協定は一日も早く結ぶべきであるというたてまえは、これは外務当局、外務大臣が常に言われておることでございますから、それに従って事務を詰めておるわけでございます。そして、二回にわたって運輸省は外務省の方と一緒に中国に渡りまして、それを詰めておりますが、大体懸案事項は煮詰まっておる、こういってもいいと思います。御承知のとおりに、こちら側は上海、北京以遠権、向こう側は東京、大阪以遠権、こういう主張をいたしまして、そこに一つの調和点を求めていく問題と、それから日台航路の問題を、国際的に見てもあるいは国益から考えても、これをどのように調和させるかという問題については、大体事務的に、あるいはいろいろな問題については、ほとんど煮詰まっておる、こういってもよいと思います。
  141. 石井一

    ○石井委員 いまのお話を聞いておりますと、成田は十二月までには開かない、しかし航空協定に関してはそれ以上に緊急なものである、さらに技術的な問題その他については大体の問題点というものはすでに出尽くしておる、こういうふうなことに相なりますと、この問題は、技術的なサイドでなく、政治的な、外交的なサイドのみが未解決だというふうに考えざるを得ないわけでございます。ただ、外交的といいましても、外交の背景には国内世論なり国内政治なり、こういういろいろなものがあるわけでございますから、外交だけがそれを無視して進んでいくということも問題であり、ここは外務大臣としても非常に頭を悩ましておられるところだろうと思うわけでございますが、航空路の問題は技術的にある程度解決できるといたしましても、ほんとうに焦点になってくるのは、台湾航路というもの、台湾業務というものをどうするかという一点にしぼられてくるわけだろう。私はこういうふうに推察もいたすわけでございますけれども、この点についてはかなりの外交交渉というものが進んでおるのではないかというふうな感じも私はいたすわけでございますが、その反面、私、以前に田中総理、大平外務大臣が中国に正常化で行かれたときに、結局は中国側も日台間の過去の深いつながり、人的交流、文化的、社会的つながりというふうなものの実態というものを認めて、そういうものに対しては黙認するというふうな形の暗黙の合意がなされたというふうにも伺っておるわけでございますので、この辺は何らかの形で中国側に対する話し合い、説得というものがつかないのか。それとも、中国側がやはり日台業務なり航路というものに非常にこだわっておるためにこれが進まないのか。この辺について、もしお差しつかえなければ——外交交渉でありますから、必要以上のことを私は要求しておるわけではございませんけれども、技術的な問題よりも、結局問題はそこにしぼられてくるような感じがいたしますので、外務大臣から、できればひとつお答えをいただきたいと思うわけでございます。
  142. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日中航空協定は、そのタイトルに明瞭にいたしておりますように、日本と中国との間の航空協定なんでございます。それにふさわしい形式、内容のものであることは申すまでもないわけでございます。  それから日台路線でございますけれども、これは御案内のように、協定上の路線ではないわけでございまして、事実上輸送需要が大量にある状兄でございますので、できればこれを維持いたしたいという日本側の希望に対しまして、北京は今日まで理解を示していただいております。その証拠に、何らの支障なく今日まで日台航空路が継続してきておるわけでございます。  第三といたしまして、そういう状況の中で、今度本格的な日中航空協定を結ぶことになって、中国側の飛行機を日本に迎え入れなければならい、そういう事態が出てきたわけでございます。その場合、日本の航空行政の立場から、日中航空協定の筋を生かしながら日台路線をどういう対応において維持してまいるのがいいのか、そういう問題が問題の本質でございまして、それは私から御説明申し上げるまでもないことでございます。したがって、目下運輸御当局との問でそういった問題について御相談をいたしておるというのがいまの段階でございまして、あなたのおっしゃるようにしかるべき時期にやはり政府の決断が要ると考えておるわけでございまして、目下鋭意検討を重ねておるというのがいまの状況でございます。
  143. 石井一

    ○石井委員 日台航路の継続に関しまして、中国側は理解を示しておるから現在も存続しておるのだ、こういうことでございますと、中国側は、いわゆる日台航空業務というものはさほど、ことに問題にしておらない、こういうことでございますか。
  144. 大平正芳

    ○大平国務大臣 問題にしておるとか問題にしていないとかいうことは私にはわからないのでございます。私が申し上げられることは、先方はこれまで理解を示していてくれたということでございますから、そして将来もわれわれの希望としては理解をしていただきたいと思っておるわけでございまして、どういう対応において維持してまいるか、日中航空協定というものを新しく結ばなければならない段階になりましてどのような姿においてやってまいるかということはわれわれの課題でございまして、交渉の問題ではないので、あなたのおっしゃる政府の決断の問題と心得ております。
  145. 石井一

    ○石井委員 政務次官、台湾との往復の便数なり、たいへん多くの人数、観光客の動きというのはよくわかるのですが、もう目前に来ておるのですから、当局は当然こういうことを計算されたと思うのですが、当面、日中航空協定ができたといたしますと、何便くらい飛ばす御予定なんですか。
  146. 寺井久美

    ○寺井政府委員 かわりましてお答えいたしますが、日中航空協定ができました場合、当面旅客需要は非常に少ないと考えられますので、日本側、中国側、おのおの週一便程度で間に合うと思っております。
  147. 石井一

    ○石井委員 なるほど。それで、台湾からの飛行機というのは、毎日毎日入っておる、こういうことでございますか。
  148. 寺井久美

    ○寺井政府委員 台湾からの飛行機は毎日入っておりまして、週二十一便入っております。
  149. 石井一

    ○石井委員 その間に何らかの、午前中全部あいておるとか、そういう空間がかなりあるのですか。
  150. 寺井久美

    ○寺井政府委員 午前中とか午後とか非常に大阪と東京と両方に入っておりまして、大阪に毎日一便ずつ、東京に、東京どまりが一便と、それから東京を越えまして米国に行く便がございます。ですから、現実にあいておりますのは、いまのダイヤでございますと大体十二時ごろから四時ごろの間、これがあいておる時間でございます。
  151. 石井一

    ○石井委員 二十一便対一便なり二便の対比ですから、数の上からは、政治的には後者のほうが非常に重要なんですが、現実的にはたいへんなそこに格差といいますか、その便数の違いというのがあるわけですね。そこにもってきて、先ほどから外務大臣が期待されておる中国側の理解というものが重なるならば、私はこの問題は何とか解決に持っていきたいというそういう願望にかられておるわけでございますが、両国の飛行機が同じ飛行場で相並ぶということが問題なんだという発言を中国の要人がされたということは、私もたびたびこれまで伺ってまいったわけでございます。ここらが非常に問題だと思うのでございますけれども、船舶の場合は、従来からも両国の船舶がともに停泊をしたり、ともに旗をつけて入ってきた。現在もそういう事実があちこちの日本の港であるんじゃないですか、この点いかがですか。
  152. 佐藤文生

    ○佐藤(文)政府委員 第一点の、先生が言われました同じ時期に同じ場所で並ぶということ、これはやはり私は配慮すべきことが正しいんじゃないかと思います。そういうことをしないようにしたいということは私はやるべきだと思います。  それから第二点の、港湾において船舶が並列して入港したりしているんじゃないか、その実態につきまして、これは私自身もよく調査をいたしましてやりましたが、航空機と船舶の出入と違う基本的なところは、協定を結んでない、海運協定がない。飛行機の場合はやはり事前に何時何分にどの飛行場に着きますよ、そうして運輸大臣のオーケーが出てから飛行機は入ることができる、大体こういうことになっておりますね。ところが、船舶のほうは、港湾法、私の記憶では十三条の二項だと思いますが、何人といえども埠頭の利用あるいは港湾の利用で差別をつけてはならないという原則があるわけです。したがって、未承認国あるいは海運協定のない国といえども、相手方の国に入りたい、港に入りたいという場合は、それを拒む何ものもないわけであります。ですから、日本に入る場合は、どの国でもメーンマストに日の丸の旗をつけて入ってくる、そうして船尾に自国の旗をつけて入ってくる、こういうことであります。そこで、そういう船が入ってくるわけでございますが、いま先生の御指摘問題点につきましては、現時点では代理店が十分に配慮いたしまして、同じ港に入ってもバースを変えるとか、そういう配慮をしながら現在やっております。そういうことですから、同じバースに同じ時期に並列して入っておるというようなことはいまの時点ではございません。しかし、同じ港に入っているということはあります。そして、メーンマストに日の丸の旗を立て、それぞれ、港則法によりまして、入りましたら港湾管理者に届け出て、そして関税法に従って税関に届け出ねばならないので、それぞれはそれぞれの立場で、中華人民共和国あるいは中国、あるいは中華民国、こういう名称で届け出ております。そういうことでございます。
  153. 石井一

    ○石井委員 だから、航空機と船舶にはいろいろの法律上の問題もございますけれども、船舶の場合はかなりリベラルであるというふうに理解できるわけですね。私はこの航空機の問題も、先ほどのあいておる時間その他という問題もございましたが、その辺は、それこそ技術的に何か解決できるような方法があるような気持ちがしてならないのでございますけれども、いま議論しましたのは向こうから入ってくる飛行機の問題でございますが、日本は、御承知のように運輸当局の御方針は、国際線は日航、国内は全日空と、こういう形でございますが、先進国は複数のラインを国際線に出しておるわけですが、従来台湾航路をドル箱としておる日航と、それから国際線の許可を与えられていない全日空という問題がまた、日中空路の場合にときどき議論になる問題なんですけれども、今後この航路というものを、やはり国際線というのは一社にしぼられていくという航空行政でやっていかれるのか。この辺は何も日中協定とは関係がないけれども、今後の方針としては、これだけの航空機の時代になってきたからもう少し前向きに考えられようとされておるのか。この点はいかがですか、政務次官。
  154. 佐藤文生

    ○佐藤(文)政府委員 現在の航空行政の指導といたしましては、国際線の定期便は日本航空、それからチャーター便の一部の路線を全日空、そして国内の幹線は日本航空と全日空、それからローカル線は東亜航空、大体こういうぐあいに一つの方針をきめて航空行政の指導をやっております。  日中航空協定の成立の暁にはどうなるかという問題点でございますが、私は、首都間の東京−北京というのは、やはりナショナルキャリアである日本航空が受け持つべきであろうという考え方、首都間でない大阪−上海というような便については必ずしも日本航空でないでもいいというような考え方は持っております。したがって、何も一社だけであるというぐあいに限定して考えないでもいいのではないだろうか、こういうぐあいに思っております。
  155. 石井一

    ○石井委員 これでこの議論はきょうのところはやめますが、外務大臣、先ほど大臣のほうから、これは政治的決断だ、こういうお話がございました。私、まさしくそういうことだと思うのでございます。技術的には、私もいろいろ指摘いたしましたが、技術的に解明すべき未解決の問題がほとんどないという段階であるし、いまの便の差、そのほかいろいろなことを考えましても、その辺の技術的問題は解決し得るという感じがいたすわけです。ただ、政治的決断というのがむずかしいのは、国内事情からよくわかるのでございますけれども、すでに政治的決断というのは日中国交正常化においてなされたわけです、大臣が。きびしい決断をなされております。その時点で、中国側も日本と台湾との過去の関係というものに対しての深い理解を与えて、そういうものを踏まえてこの正常化というものもでき上がっておるわけですから、この辺の理解を中国側に期待しつつ、やはりぼつぼつ政治的決断ということをやりませんと、いまの話だと、成田がすぐにでもあきますと——これはまた一つの隘路かもわかりませんが、まだかなりの国内の政治問題があるということでございますとこのほうはちょっと間に合わぬというふうなことに相なってまいりますと、結局はその辺の問題だと思いますので、大臣のこの辺に対する——当然深い御認識のもとに御交渉をやっておるわけでございますけれども、私たちも一日も早くこれが締結されることを希望いたしまして、きょうは、この問題はこれで終わらしていただきたい、こう思います。  私、もう一問あります。それに関連いたしまして、この問題で御所見がありましたらお述べいただきますれば幸いでございますし、なければ、これはこれで終わらしていただきたいと思います。  通商協定の問題がここのところ非常に大きな問題になってまいりまして、政府としては原案を提示されて、今月中にでも、かなり早い時期にこの問題を詰められる、こういうことでございますけれども、最初の点は、最恵国待遇の問題でどこまでの線を出されるおつもりなのか。いわゆるガット関税、関税定率表による関税という問題ですけれども、この点についてはどういうお考えなのかということが一点と、それからやはり人間の往来という問題がこれに関連してくるわけでございますけれども、出入国法案に関連して、その問題はこれとは切り離されるのかどうかという問題、ちょっと技術的な問題ですが、非常に重要な問題ですから、政府の見通しをひとつお話しいただきたいと思います。
  156. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 技術的な面が多うございますので、私からお答えいたしますが、十八日に、日本側の関係当局の協議の結果、通商に関する協定日本案ができまして、北京側にこれを手交したわけでございます。  おもな内容といたしましては、いま御指摘の最恵国待遇の相互供与ということが大きな目玉になるかと思いますが、それ以外の、普通の、国際的に国家間で結ばれております通商協定や貿易取りきめの内容に準じたものを一応私たちとしては考えて、先方に提示しておるわけでございます。その具体的な内容は、いまこれから、先方の意向をまだ受け取っておりませんので、先方の意向をも聞きましてから交渉に入っていくということになるかと思いますので、いまの段階で、どの程度の最恵国待遇であるか、どういうふうなところがどうなるかというところは、ちょっと公表することは差し控えさせていただきたい、かように考えるわけでございます。  第二の、人の往来は、この通商協定とは必ずしも直接結びつかずに従来も行なわれておりますし、今後も拡大されていく。通商協定のほうで問題になる人の往来は、貿易とか通商業務に関連して人が動く場合のことが中心になる、かように御理解をいただければと思います。
  157. 石井一

    ○石井委員 いつごろにまでという場合、相手があるわけでございますけれども、通商協定にいたしましても航空協定にいたしましても、やはり当然年内には締結をされるというお考えでございましょうね、外務大臣。この点だけをお伺いしまして、私質問を終わりたいと思います。
  158. 大平正芳

    ○大平国務大臣 期日をいまお約束いたすわけにはまいりませんけれども、常識的に考えまして、できるだけ早く取り結ぶようにいたしたいと考えております。
  159. 藤井勝志

    藤井委員長 川崎寛治君。
  160. 川崎寛治

    ○川崎委員 先般来この委員会で朝鮮をめぐる議論というのはずいぶん進められておりますので、それに関連をしてお尋ねしてみたい、こう思います。  前に河上委員からも一度御質問しておるわけでありますけれども、南北両朝鮮と外交関係を持っておる国ですね、これは幾つになっておるものか。そしてそういう関係のあり方、大使、領事、それから貿易代表部、大使といういろいろな置き方を両方でやっておるわけでありますが、この点についてまずアジア局長のほうから御答弁願いたいと思います。
  161. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 現在韓国を承認いたしております国が、四月末で八十七カ国……。
  162. 川崎寛治

    ○川崎委員 それはいい。南北両方を聞いている。
  163. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 南北両方を承認いたしておる国は十九カ国でございます。これは、そのうちの双方に公館を置いておる、実館を置いておるという国は、正確な数字はちょっと手元にいま数字はございませんが、ほとんどなかったと記憶しております。法律上承認しておる、こういう形になっておるということでございます。
  164. 川崎寛治

    ○川崎委員 これは私は資料を要求しているのですよ、おたくのほうに。それでちゃんともらっている。それでお尋ねしているのです。だから、つまりあなた方はこれはもう国連局長、外務大臣、バランス論やらベトナム論やらいろいろ言っているですよ。ところが実態を踏まえての議論かどうかということを私はお尋ねしたい、こう思うのです。それからいきますと、いまのアジア局長の御答弁はたいへんいいかげんな御答弁でありまして、いかがかと思います。  そこで外務省からもらっております資料を見てみましても、南北両方に大使を置いている国、これはまた四月段階で具体的に調べたやつと、その後またずっと動きもありますから、なかなかその点少し動きはあると思いますけれども、北に大使を置きなお南に大使を置いているそういう国が、つまり北に大使館、そしてあと領事、貿易代表部、それから南に大使、領事館、貿易代表部、こういう形で、しかも両方大使というのも外務省からもらっているのでは二十二あるわけです、大使を両方を置いているのは。外務大臣、このことを御存じですか。
  165. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 ただいま私の答弁が足りませんで、手元の資料が出てこなかったために四月末の数字で十九カ国と申しましたが、私の手元に最近六月八日にできておりまして、先生のお手元のほうに差し上げてあります資料では確かに二十二カ国で、このうち双方に大使館というふうに書いてございますが、先ほど言いましたように、現実に大使館は双方に置かれているという国がない、こういうことでございまして、御指摘のように片一方に領事館を置いている場合には片一方に領事館または大使館を置いている。その逆のケース、こういうことあるいは貿易代表部を置くとかインフォメーションオフィスというようなものを置いておるというケースもございます。両方に大使館を置いているというケースは現在のところはないわけでございますが、近々双方に大使館を置くケースが出てくる可能性は出てきておるようでございます。
  166. 川崎寛治

    ○川崎委員 大使館そのものとせぬでも、大使といえばまた議論は別になりますね、大使を置いておるわけだから。そのこと自体があまり議論の問題じゃないのです。  そこで、いずれにいたしましても南北がそういう形の外交関係を、三十六の国が大使なり貿易代表部なり広報部なりという形で持ってきているわけです。いま御承知のように両方に大使館もという具体的な動きもあるわけですが、それは私はむしろベトナムにおける南北の関係よりももっと国際的な関係は広がっておる、こういうふうに私は思います。そういたしますと、北に対して外交関係を持ったりあるいは国連の中における関係を変えていくことに日本がかかわり合うということがバランスをくずすのだということを大臣は絶えずここで繰り返して言っておられるわけでありますけれども、そうしますと、なぜ日本がそうすることがくずすことになるのか、その点は実は残念ながらずっと同僚委員議論を読み直してみましてもなかなか出てこぬのです。それは外務大臣は汗をかき、骨を折り、慎重に一番やっているのだ、こういうふうに言われるかもしれませんけれども、そこのところはやはり国民が理解できないと思うのです。その点を、つまりなぜ日本が国際的にそういう南北の関係が動いておる中で、南北とも関係を持とうということが動いている中で日本が動くことが緊張を緩和をしない、そして好ましくない状況がなぜ生まれるのか、その点をひとつこれは事務当局ではなくて、大臣自身からお答え願いたいと思います。
  167. 大平正芳

    ○大平国務大臣 最近御承知のように東西両ドイツの基本関係条約ができまして、わが国も東独と外交関係を持つことになったのであります。これは西独もまたそのことに対してオブジェクションがないわけでございます。すなわちわが国と西独との関係を何らそこなうことなくそのことが可能になってきたわけでございます。最近われわれは北越との間に国交樹立を目ざしての接触を始めておるわけでございまして、幸いにそのことに対しましてサイゴン政府も反対するという態度ではございません状態になってきたわけでございまして、私ども考えておりますのは、よそさまも大事でございますけれども、日本が一番大事なんでございまして、日本が既往において関係を持っておる国々との関係をできるだけ大事にしていかなければならない。そういうものをできるだけそこなわないようにしながら新たな関係を模索して定着させていくという着実な努力をしてまいらなければならぬと考えておるわけでございまして、先生方から本委員会を通じましていろいろいわゆるいうところの国際政治の潮流というものが何を指向してどういう方向に動いているか、したがってまた現実にどういうことが起こりつつあるかというような点につきましては、私も目を閉ざしているつもりはないのでありまして、そういう道程におきまして出来してまいります一つ一つの案件につきまして吟味をいたしまして、できるだけ安全な道を踏み締めていかなければならぬという念慮で考えておるわけでございます。  朝鮮半島におきましても、いま川崎委員指摘のように南北朝鮮を同時に承認していく気配が出てきておるということ、そこで一番私が注目いたしておりますのは、南北両政権ともそういう状態を了承されなければ二十二の国が同時に外交関係を持つということはできなかったはずだと思うのでありまして、そのことは私どもが仕事を進めていく上におきまして一つの重要な視点になるものと考えております。
  168. 川崎寛治

    ○川崎委員 重要な視点だ、こういうことでありますが、これは四月十八日ですか、高島さんの答弁を見ますと、「ベトナムにおけるごとき情勢は出ておらない」つまり南北の関係の問題ですね。両方関係を持っていくということについては朝鮮半島にはないんだ、こう言われた。しかし、いまの大臣は、そういう現実の動きというものを注視しているんだ、こういうふうに言われますと、非常に大事な変化の動向を高島さんは見ていないということになって——ここで河上委員答弁をしているわけでありますけれども、私はその点、いま大臣自身が言われたようにたいへん違うと思うのですね。  そうしますと、ベトナムと朝鮮との違いというのは、日本との関係においてのみ違うのか。よその国は別だ、日本とベトナムについては南のほうがオーケーをしているからいいんだ、しかし朝鮮については南がうんと言わぬのだ、つまり北と関係を改善していくことに動けないんだ、ベトナムと違うという意味はそういうふうに受け取るべきなんですか。
  169. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほど申しましたように、ベトナムの場合、北越との接触を政治的に持ちまして、国交樹立についてのいろいろな話し合いをやるということ、そういうことに対しましてサイゴンは理解を示しておるわけでございます。  朝鮮半島の場合は、川崎委員も御承知のように、われわれは文化とかスポーツとか学術とか、あるいは経済の分野での接触を漸次やっていくのであるということがこれまでのわれわれの態度であったわけでございますが、逆に言いかえれば、政治的な接触を始めるというところまでまだ踏み切れずにおるわけでございまして、そういう意味ではベトナムと違っておると申さなければならぬわけでございまして、基本は、既往に関係を持ってまいりました国々との間の関係をそこなわないようにしながら、新たな関係の設定というようなことを用心深く進めていかなければならぬということでございますので、日本にとりまして朝鮮半島の状態は、その点に関しましてはまだプリマチュァーだと考えます。
  170. 川崎寛治

    ○川崎委員 バランス論をいつも言われるわけでありますけれども、佐藤総理が日韓国会で冷戦体制にあることが日本の平和を保障されておるんだ、こういうことを答弁しておるわけです。つまり南北が割れておること、そのことが日本の平和を保障されるんだ、こういうふうに日韓国会で言っておるわけですね。そうしますと、大平外務大臣のそのバランス論というものも、残念ながらそこから一歩も出ていないということにならざるを得ないわけです。だから、そういう冷戦体制をどうくずすかという、つまり環境は変化してきているんだ、構造の変化はあるんだということを一方では外務大臣は御指摘になっているわけですね。しかし事朝鮮に関しては、そういう南北に分裂をしておる冷戦体制ということが、いまの統一の話し合い、自主的な話し合いというものを進める土台になっているんだ、こういう考えですし、それからベトナムと情勢が違うんだということになりますと、日本が南のほうとかかわって、経済協力その他——これはあらためてまた別の機会にやりますけれども、経済協力その他非常に強い関係を持っておることが話し合いを進めていく土台になるんだ、こういうことになりますと、残念ながら外務大臣のバランス論というのは、佐藤さんの言う冷戦体制とちっとも構造的には変わってない。どうですか。
  171. 大平正芳

    ○大平国務大臣 佐藤さんとその問題について議論を戦わしたことはございませんので、その点についてはごかんべんをいただきたいと思うのでございますが、私が申し上げておる中で聡明な川崎さんお気づきじゃないかなと思うのですけれども、また十分御理解いただいていない面があるんじゃないかと思いますのは、きわめて簡単なことでございますけれども、朝鮮半島の問題は第一義的に朝鮮民族の問題なんでございます。そしてそれが二つの政権に分かれて対立の状態にあったわけでございますけれども、それが去年七月から対話が持たれるようになったわけでございます。私どもそれを非常に歓迎しておるわけなんでございまして、まず第一に、依然として対話のない対立を私が願っておるということではないこと、それはおわかりいただけるだろうと思うのでございまして、この対話を実のある対話にしてどのように進展させてまいるかということは、第一義的にやはり両当事者じゃないかと思うのでございます。したがって、両当事者が自主的な、平和的な話し合いというものを進めていく意欲をそこねないように、じゃましないようにしなければならぬということをたびたび私申し上げておるわけなんでございまして、またそれがないと朝鮮問題の解決の糸口が出てこないように私ははたから見ておって思うわけでございます。日本政府がどういう態度をとるかによって朝鮮半島の運命がきまるわけでも決してないわけでございますから、日本政府はあくまでもそういう南北の間の理解と話し合いの進んでまいることを念願して、それをそこねないように考えていかなければならぬ。先ほども私がちょっと答えましたように、対話のない対立から対話のある対立に移ってきておったが、最近になりまして、両方の国を承認することを受け入れるという態度に両当局ともお考えになるようになったことを私は非常に重視しておると申し上げたわけでございまして私はそういう事態の進展ということに対しまして、決して目をおおっておるわけじゃないのであります。
  172. 川崎寛治

    ○川崎委員 目をそらしてないというそこは評価しますけれども、そうしますと、統一の問題というのは当然民族の自決の問題ですから、第三国が云々すべき問題ではないんですね。ただしかし、環境をどう変えていくかということは、かかわっている国のそれぞれの自主的な問題でもあるわけなんです。そうしますと、自主的な解決を見詰めておるということになりますと、だから朝鮮の政策については自分のほうから出せないんだ、こういうことが節々に出てくるわけです。そうしますと、朝鮮民主主義人民共和国の、北のほうとの関係というのは、自主的な統一ができるまでは持たないというお考えなのかどうか、あるいはことしの秋、国連で朝鮮問題を論議いたしますために朝鮮民主主義人民共和国が無条件に招請される、そういう事態になったら少しは考えるのかどうか。後段の分については、仮定だといって逃げられるかもしれないけれども、しかしそれは大きな方向としては、日本政府としてはもうはっきりしていいのじゃないか、こう思うのです。いかがですか。
  173. 大平正芳

    ○大平国務大臣 両当事者がお話し合いをされることを阻害しないようにいたしますために、私どもとしては非常に用心深くやってまいったつもりでございまして、北のほうとの関係におきましても、御案内のように、関係の拡大を前進的に詰めてきたわけでございます。つまり、日本政府がやったことは南北両当局とも一応は理解できるという線を踏まえてやってきたつもりでございますが、両者の関係が進展していくにつれまして、私どもの今後の朝鮮政策というもののあり方も、われわれ考えていかなければいかぬと思っておるわけでございまして、決して固定的に考えているわけではないわけでございます。これから国連の問題もありましょうし、その前にどういう問題がありますか、ともかく両当局をめぐりまして国際関係がどのように進んでまいるか、それをどのように両当局が受け入れていかれるか、そういった状況を十分見詰めながら、われわれの朝鮮政策というものをまた考えていかなければならぬ。何も固定的に考えておるわけではないのであります。
  174. 川崎寛治

    ○川崎委員 固定的に考えていない、もう一つ前向きと、こうくるのかどうかがまだわからぬわけですけれども、では、金鍾泌韓国総理が先般見えまして、田中、大平、金総理という三者の会談が、通訳をもまじえず三人でやられた、こういうふうに伺っておるわけであります。当然、WHO加盟以後の朝鮮をめぐる国際情勢についての話し合いがなされたと思いますし、またさらに、七月末の日米首脳会談で日米間が朝鮮問題をどうしていくか、朝鮮政策をどうしていくかという日米間の話し合いが当然あるものというふうに考えられます。日米首脳会談で、朝鮮政策について非常にかかわりの深い日本として、日本の平和を守るという立場と朝鮮半島における自主的な平和統一への方向をより促進する国際環境をつくっていくという立場から、外務大臣としては、この日米首脳会談にどう臨むつもりなのか、お聞かせいただきたいと思います。
  175. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ハワイ会談から一年経過いたしたわけでございますが、その間、日米関係はもとよりでございますけれども、国際情勢、とりわけアジアの情勢も大きな変化を見たわけでございますので、当然のこととして、今日の局面を踏まえた上で、日米共通の関心を持っておる諸問題につきましてフランクな意見交換を遂げていただかなければならぬと考えておるわけでございます。ただ朝鮮問題につきましては、先ほど私も申しましたような、日本の立場に立ちまして意見交換をやるわけでございます。日米間で話をいたしまして、朝鮮をどうするなんという大それたことはやれるはずはないわけなんでございますが、われわれの足場は足場として、ちゃんと踏まえた上で、当面の局面を踏まえて意見交換を十分に遂げる時期じゃないかと思っております。
  176. 川崎寛治

    ○川崎委員 日米首脳会談との関連については、まだ時間もありますから、これからたびたびこの問題については触れていきたいと思います。  もう少し具体的に朝鮮に関しましてお尋ねをしたいと思いますが、朝鮮のWHO加盟あるいは秋の総会における動向と、さらには中国の国連復帰、そういう問題等を考えますときに、朝鮮に関します国連の諸決議というのがずっと引き継がれてきているわけですね。この国連の決議というのはもう廃棄すべきだ、こう思います。そこで国連の諸決議の問題、これは国連軍の問題や在日国連軍の地位協定の問題なども全部からんでくるわけですね。そしてそれは、ここ半年くらいの間にいやおうなしに態度を迫られる問題であるわけです。でありますから、この国連の朝鮮に関する諸決議を、つまり情勢がどうなったらということではなくて、むしろ日本としては積極的に自主的な、平和的な統一、そういうものの話し合いが進んでいきますためにも、こうした国連の決議がかぶさっておるということがたいへんいけないと思うのです。でありますから、むしろ日本としては自主的にこの決議を廃棄する、そういう方向に向かって国連の中で動く、そういう態度を明らかにすべき時期だろう、こう思います。国連はまだ先のことだ、もうしばらく時間があるからとあるいは逃げるかもしれませんが、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  177. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま仰せのような問題をどのようにこの秋取り扱うことになるのか、いまのところまださだかでございませんけれども、朝鮮における両当事者がそういう問題についてまずどう考えられるか、それが第一に大事なことじゃないかと思うのでありまして、日本政府がどうやるかというようなことより前にそのことが決定的に大事だと思うのでありまして、そういうこれからの情勢の推移というものは十分見きわめてかからなければいかぬと思っておりまするし、また国際世論というようなものもどのような推移を見るか、十分見届けさしていただきたいと思うのです。何となれば、わが国は朝鮮の両当事者を除きましては一番朝鮮問題については注目を呼んでおる国なんでございますので、わが国の朝鮮政策というのは、先に走り出すのがいいのか、ゆっくりあとについていくのがいいのか、そのあたりのペースのとり方はたいへんむずかしいと私は思うのです。そこであなたの御質問のおことばをかりれば、事実もあることだし、そういったことを十分検討さしていただきたいと思います。
  178. 川崎寛治

    ○川崎委員 決議について当事者がどう考えるか、これは答弁になっていないのですね。これは北のほうはそんなばかなのは廃棄せいと繰り返し言っているわけなんです。南のほうはこの決議にすがってきているわけなんですから、そうなると日本は自主的にどうするか。だから民族が自主的に動きましょう、こう言うのでしょう。日本は自主的にこれにどう対応しますかという、その自主的なところを私はお尋ねしているのです。そうしたら、そこはあとから行ったほうがいいんじゃないか、こう言うが、では一九六六年にはこの決議に、わざわざ日本は日韓条約のあと入っていって共同提案国になっているわけですから、またあの中国の国連復帰のときに、たいへん歴史の歯車を逆回しするようなことを断固としてやられたわけでありますけれども、そういう共同提案国にはもうならない、このことをはっきり言うのにはそう時間はかからぬのじゃないですか。つまり、この決議をもう一ぺん生かしていく、そういう共同提案国にはならない。だから、この決議はむしろ廃棄していくということについて日本自身としてのそういう出処進退についてはもう明らかにできると思うのですけれども、いかがですか。
  179. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日本がただいま言えることは、朝鮮半島の平和と安定なんです。それで、それをもたらす第一義的な力は当事者の御努力であろうと思うのでありまして、そういうことをよりシュアなものにするために日本は考えていくべきじゃないかと思うのでありまして、いま技術的な点について云々するのはまだ早いという感じがいたします。
  180. 川崎寛治

    ○川崎委員 条約局長にお尋ねいたしますが、朝鮮にあります国連軍、これはもう先ほどからいろいろ申し上げておりますとおりに、国連軍の旗なんというのはおろすべきだと思うのです。国連軍の旗をおろすためにはどれだけの条件が必要なのか、それからその旗をおろしたときには、当然日本における国連軍の地位協定というのは、これはもう効力失効ですね。
  181. 高島益郎

    ○高島政府委員 朝鮮にあります国連軍を設置しましたのは、一九五〇年七月七日の決議八十四号という安保理事会の決議だろうと思います。したがいまして、公約に申しますと、国連軍の旗をおろすための措置といたしましては、この安保理決議そのものに手を加えるということが必要ではなかろうかと思います。もしそのような措置がとられるといたしますれば、仮定の問題でございますけれども、当然わが国にございます国連軍、これの地位を定めました地位協定、これは廃止の手続をとらざるを得ない情勢になろうかと思います。
  182. 川崎寛治

    ○川崎委員 日本としては、大臣、そういう情勢に迫られておるわけですから、これはむしろいつまでも受け身の形じゃなくて私は前向きに進めてもらいたいと思いますし、そのことは日米首脳会談において日本側の積極的な態度を要求しておきたい、こう私は思います。  次に国士舘大学の暴力事件について、あなたの所管ではございませんけれども、ちょっと国務大臣として外務大臣にお尋ねしておきたいのでありますが、これは先ほど来出たように、やはり南北の差別政策というのが日本にあるわけです。それはどうことばを変えて言おうが、やはり敵視政策なんですね。そのことが非常に大きな背景としてありまして、しかも植民地時代からの非常に不幸な日本と朝鮮との関係というものがありますし、在日朝鮮人の六十万の方々のそういう歴史的な背景というのがあるわけですね。そういう人種差別というものがこの国士舘大学の暴力事件の底にあるわけです。たいへん許せないことだと私は思います。でありますから、日本の外交政策というものもそこにはからんできておる。こう言わざるを得ないのです。出入国法案についてはおおよそ廃案の見通しのようでありますけれども、それらも関連をしまして、外務大臣に国務大臣として、国士舘大学の暴力事件、それがそうした差別政策とからんでおると私は指摘せざるを得ないのでありますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。
  183. 大平正芳

    ○大平国務大臣 おことばでございますけれども、朝鮮民族を差別しようなんという大それた考え方政府にないのであります。問題は政策論といたしまして、韓国との国交を南の半分と結んだ結果といたしまして、わが国内における朝鮮人の法的地位というものの規定のしかたが、その結果として変わらざるを得なかったわけでありますけれども、しかしこれは韓国と国交を持つということの結果として最小限度出てきたことでございまして、根本からわれわれは差別政策をとるなんということは毛頭考えていないわけでございます。  それから、いま御指摘の国士舘高等学校の学生と先方の高等学校の学生との間のトラブルでございますけれども、何が原因で、どういう経過を経てああいう姿になったのかは、実は私も寡聞でございますが、実態を詳細に存じないのでありますけれども、ああいう事件はたいへん暗い、不幸な事件と心得ておるわけでございまして、双方理解と信頼を何とか、いかにかして回復しなければならぬ問題だと思うのであります。国務大臣といたしまして、御注意もございますけれども、深甚な配慮をしていかないといけないことと考えております。
  184. 川崎寛治

    ○川崎委員 あと十分しかありませんので、少しまた先に進まさせてもらいます。  アメリカ局長にお尋ねをしますが、アメリカの海兵隊は実戦部隊でありますか、そうでありませんか、お尋ねします。
  185. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 アメリカ海兵隊ということで、具体的に海兵隊のどの部隊を念頭に置かれての御質問かちょっとはっきりいたしませんけれども、海兵隊としましては実戦に即応できる体制をとり得る部隊である、こういうふうに考えております。
  186. 川崎寛治

    ○川崎委員 そうしますと、あなたのこの委員会における答弁は訂正してもらわにゃいかぬですね。永末委員でしたか、質問をしました際に、日本には実戦部隊はないのです。六月六日、永末委員に対して、「沖繩を含めます日本における米陸軍の」——失礼しました、陸軍はそうなんですね。では、海兵隊は実戦部隊ですから、実戦部隊は米軍の配備の中にあるわけですね。そうしますと、私次にお尋ねしたいことは、なぜそのことに触れたかといいますと、アジアに展開をされております米軍の中で、海兵隊がおりますのは日本だけなんですよ。このことは、春以来基地の問題と米軍配備の問題についてはアメリカと話し合っておる、こういうことでありますので、当然日米首脳会談における一つの大きな課題になってまいると思いますが、現在アジア太平洋に二十五万ぐらい米軍が配備されておりますね。これはひとつ、米軍の配備というものがどのようになっておるかということを委員がお互いに認識をしながらアメリカの極東戦略と日本との関係というものを検討してまいりますために、ぜひ資材として本委員会に駐留米軍の兵力の実態というものを、各軍の種類ごとに出していただきたい、こう思います。このことはひとつ委員会のほうからよろしくお願いをしておきたいと思います。  そこで、二十五万ぐらいのうち第七艦隊が六万五、六千ですよ。そうすると、日本には沖繩と日本本土を含めまして六万二千、しかも沖繩には四万二千ですか、四万一千ですか、四万二、三千のところであるわけです。しかもその中で、本土に海兵隊が六千、それから沖繩の海兵隊が二万五百、こういう状況であるわけです。  そこで、これは外務大臣にお尋ねしたいのでありますが、いまアメリカで米ソ首脳会談が行なわれておりますね。そうしますと、この米ソの首脳会談というのは共存からさらに協力へ、こういうことで新聞等も報道しておりますね。それから米中は会談をやりましたし、平和五原則をお互いに確認し合っておる。日中も平和五原則を中心に共同声明を結んだわけです。ベトナムの和平協定が成立をし、確認をし合い、民族自決ということがさらに大きなプリンシプルとして確立をされ、国際的にそれをどう守っていくかということがいま大きなアジアの課題になっているわけです。そうしますと、アジアにおける戦争というものがなおかつあり得る、緊張が存在をするというふうに外務大臣はお考えになるのかどうか。もう一つ、朝鮮半島の先ほどから議論しました自主的平和統一の方向の問題を加えておきたいと思いますが、そういう中で、なおかつアジアに緊張があるというふうにお考えになっておるのかどうか、まずその点を外務大臣にお尋ねしておきたいと思います。
  187. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま御指摘の国際政治上の大きな動き、新たな動きというものは、世界全体が緊張の緩和に向かうことを示したものでございまするし、また言いかえればそういうことの結果であるともいえると思うので、われわれとしては歓迎をいたしておるわけでございます。アジアにおきましては、ついこの間ベトナムの撃ち合いが一応終わったわけでございますけれども、なおその後いろいろ事態がまだ完全にいえておるとはいえない流動的な状態にございますけれども、少なくとも大きな撃ち合いはもうない。米軍は撤退してしまったということでございまして、アジア全体も、いまあげられましたもろもろの徴候も含めまして、緊張は逐次緩和の方向にいっておると思うのでございまして、私は新たな緊張が起こらぬようにこいねがっております。
  188. 川崎寛治

    ○川崎委員 そういう情勢の認識でありますならば、なぜ日本の本土並びに沖繩になおかつベトナムの和平協定成立前と変わらない米軍の存在が必要なのかということは大きな疑問になってくるわけでありまして、これはもう時間がありませんから次の機会に譲りますが、これは当然日米首脳会談において、基地の縮小という問題と同時に米軍の機能の縮小——たちは撤退を要求しておりますが、さしあたっての問題としては機能の縮小というのがいまの外務大臣国際情勢の認識からまいりますならば当然あってしかるべきだ、こう思います。そのことは、日米首脳会談において十分日本側の情勢認識のもとにおける積極的な米軍の軍事力の削減ということを主張されるというふうに理解をしてよろしいですね。
  189. 大平正芳

    ○大平国務大臣 前段まではあなたと意見を同じにするわけですが、後段のほうになりますと意見が違うのです。私はそういうことをこいねがっており、緊張緩和が定着しなければならぬ、新たな緊張が起こるのは防がなければいかぬという意味におきまして、安保条約も含めての既存のワク組みの取り扱いというのは非常に慎重でなければいかぬと思っておるのです。あなたの考え方は、そうなったんだからこれはだんだんと荷を軽くしていったらどうだというのがあなたの御意見でございますが、私はもっと用心深いのでございまして、そういう状態をなお基礎固めをしていく間には、ヨーロッパにおいてもそうじゃないか、とりわけアジアにおいては手軽に、尊敬する川崎さんの御意見でございますけれども、私はその点につきましては若干意見が違うということを留保さしていただきたいと思います。
  190. 川崎寛治

    ○川崎委員 時間がありませんから終わりますが、私は、このいまのはもう少し、朝鮮の統一並びに朝鮮問題との関連の中で、日本における米軍の配備の問題というのはまたかかわってくると思うのです。でありますから、台湾、朝鮮、それらとの関連等、また次の機会にいたしたいと思います。  終わります。
  191. 藤井勝志

    藤井委員長 河上民雄君。
  192. 河上民雄

    ○河上委員 先ほども少し問題になりましたのですが、十九日の新聞によりますと、日中貿易協定の素案が日本側から中国側に手渡されたというニュースが北京発でこちらへ来ております。向こうでこういう発表というかニュースが出ております以上、その内容について当委員会において表明せられるのは当然だと思うのでありますが、先ほども御質問ありましたので、重複を避けて一、二お尋ねしたいと思います。  先ほど最恵国待遇の問題がもう出ておりますので、私、関心を持っております点についてだけとりあえず質問したいと思います。  ココムの輸出規制という問題がこの貿易協定の成立によってどういう見通しになるか、そのことを、事務当局でけっこうでございますから、伺いたいと思います。
  193. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 日本が多数国間で戦略上の必要としてやっております措置に関しましては、できるだけその必要のないような姿に持っていきたいということで、現在鋭意、その種の御指摘のような問題の削減、撤廃方向へ努力いたしておるわけでございます。これはしかし、いずれにいたしましても、関係国間で討議していかなければならない問題であるということで、簡単に結論なり見通しを出すことは現段階ではむずかしい、かように考えております。
  194. 河上民雄

    ○河上委員 いま、貿易協定交渉の中でもこういう問題は議題になっておるわけですか。
  195. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 こういう戦略問題に関しまして対象になっておる国は、過去におきましても、また現在それ以外にもあるわけでございますが、中国との関係におきましても、この点は問題点一つとして意見交換が行なわれることはあろうかと思いますが、まだ先方の反応がいまの段階ではわかりませんので、論評を差し控えたい、かように考えます。
  196. 河上民雄

    ○河上委員 情報によりますと、アメリカでは、今回の広州交易会などでもココムを事実上解消というか、そういう方向に進んでおるやに聞いておるのですけれども、日本がこれを守っておる間にアメリカのほうがどんどん先を越してしまうというような情勢が出てくるんじゃないかと思うのですが……。
  197. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 これはそういうことはございませんので、関係国の間で歩調をそろえて十分協議してやっておりますから、一カ国がほかの国と違う姿になるということはちょっと考えられない次第でございます。
  198. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、いまのところはまだ残っておるけれども、先ほど言われるように、今回の貿易協定の交渉を通じても、ココムの制限を撤廃する方向で努力している、また関係各国ともそういう線で話し合っている、こういうふうに理解してよろしいわけですか。
  199. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 方向といたしましては、私たち現実に即して関係国間の中で合意が得られるならば、できるだけ削減もしくは撤廃の方向へ進むべきだということで、一貫して日本政府は従来からその努力をやってきているわけでございます。
  200. 河上民雄

    ○河上委員 この問題は今後の発展の中で、私は先ほど一、二の情報に基づいて申し上げたのですけれども、率直なところをいって、アメリカのほうは先へどんどん、日本より一歩も二歩も行ってしまうのじゃないかという予感を持っているわけです。これは米中接近の経過から見ましても、現にそういうことがあったわけで、私は、この相手の出方というのですかね、まわりの、左右の列の出方を見ながら考えるのではなく、日本も進んでやるべきじゃないかと思っているわけですが、これはまた後に機会を改めて、少しまとめて討論さしていただきたいと思います。  もう一つ、日中航空協定につきまして、私も前回御質問いたしました。きょうも本委員会におきまして石井委員から御質問があったわけでありますけれども、先ほどの御答弁でちょっと、あまりはっきりしなかったのですが、新聞に報道せられました、いわゆる日台ルートと中国との新しい航空協定によるルートとの関係において、日中の航空協定によるルートを成田へ持っていく、日台ルートについては羽田に持っていくというようなことが報道せられておりましたが、そのような事実があるのかないのか。先ほどの運輸政務次官の御答弁の中では、そういうことはあまりはっきりしておりませんでしたので、明確にしたい意味でお尋ねしたいと思います。
  201. 寺井久美

    ○寺井政府委員 先ほど運輸政務次官のお答え申し上げた趣旨は、新聞に報道されましたように、羽田を国際空港として残すことも検討しようという点とこの日中航空協定の問題は直接に関係がないということをお答え申し上げたはずでございます。
  202. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、新聞の報道の内容といま運輸省が考えておられることとの関係についてはどうなんですか。
  203. 寺井久美

    ○寺井政府委員 成田の空港が開設されました時点におきまして、成田でのアクセス道路の問題等を考えますと、一時に国際線を全部移すのは非常にむずかしい問題があるということから、羽田をまだ国際線の空港として残すことを検討したらどうかという考えでございまして、これを残すか残さないかは、今後検討の結果定まってくる問題だと思います。したがいまして、日中航空協定——台湾の航空会社のために羽田を国際線の空港として残すというようなことは、いま当面考えておりません。
  204. 河上民雄

    ○河上委員 いま日中航空協定が、もう少しでできそうだというところで難航しているやに伝えられておるわけですが、その障害は、そういう台湾ルートとの関係ということにしぼられているように印象づけられるのですけれども、最近の新聞報道によりますと、中国側は、日台ルートにつきましては羽田、大阪をはずせという非常に強い希望があるということであります。いま運輸省では、あるいはこの交渉団は、その点についてどういうような態度で臨んでおるのか、もう少し明らかにしていただきたいと思います。
  205. 寺井久美

    ○寺井政府委員 どういう態度で臨んでおるかという具体的なことについては御答弁は差し控えさせていただきたいと思いますが、考え方といたしまして、台湾といいますか、現実に輸送需要のある路線に対して輸送手段を提供するべきであるというのが運輸省の考え方でございます。したがいまして、日台間に輸送需要の存在する限り航空路というのは継続させるという考え方でございます。
  206. 河上民雄

    ○河上委員 そういうことで中国側との交渉は成立するという自信がおありですか。
  207. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日中航空協定は一応結ばなければならぬ。いま運輸当局からお話がありましたように、現実の輸送需要は何とか充足せなければならぬ、それで筋の通った解決をせなければならぬ、いま与えられた条件のもとで解決せなければならないわけで、それが日中航空協定問題なんでございます。問題というのはやっぱり解決の道があるから問題になるんだろうと思うので、解決の道がなければ問題にならぬはずなんです。だから私は、これは解決の道がある、解決しなければならぬと考えております。
  208. 河上民雄

    ○河上委員 久しぶりに大平哲学を伺ったのですが、余韻のあるところで、この問題は一応こちらも留保させていただきますけれども、ただ、先般私が伺いましたときに、以遠権の問題で、カナダ航空の羽田へ来たものをさらに将来上海へ延ばすという申請に対しまして、日本政府はまだ許可を与えないというか、拒否をしている。一方、エア・フランスが上海まで来ているのを以遠権で羽田まで来たい、これを日本政府はまだ許可していない。もちろん、一方台湾ルートについては以遠権は十分生かされているわけですが、これはどういう事情によるものですか。
  209. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 先般御質問に対しまして留保いたした点でございますが、その後調べてみまして、カナダ側から外務省のほうに対しまして正式に、カナダ航空機が中国へ乗り入れる際に日本に技術着陸を行ないたいという申し入れを行なったことはございません。ただ、航空当事者としては技術的な問題として、技術レベルで当事者間で話し合ったというふうには了解いたしておりますが、その辺の動きは、運輸省がここに見えておりますから、運輸省の担当の方からお答えいたします。
  210. 寺井久美

    ○寺井政府委員 ただいまの御質問は二点ございまして、カナダ航空が東京を経由して上海あるいは北京に行くということに対して日本政府許可をしていないという点、それから第二点は、エア・フランスが上海まで来ておるが、それを東京まで延ばしたいというのを許可していないという点、これはどういうことであるかという質問かと思いますが、カナダとの航空協定では日本以遠中国本土が入っておりません。したがいまして、カナダ航空は東京を経由して中国本土内の地点である上海あるいは北京に商業的な寄港をすることができないことになっております。ただ、いまお話しになっておりますのは、おそらく技術着陸という点だと思うのですが、これは日本でお客あるいは貨物の積みおろしをしないということで、ただ給油をして飛んでいくという場合かと思いますが、これは国際民間航空条約の加盟国である日本とカナダとの間でございますから、そういうのを認めております。しかしながら、飛行機が飛びますには飛行計画の通報あるいは気象情報の交換というような情報交換を行なわなければ飛べないわけでございます。日本と中国との間には現在これを行ないますための固定回線の通信網がございません。臨時便等が飛んでおります場合には、飛んでおります飛行機と陸上とが通信をいたします。短波による通信施設を利用いたしまして、東京と上海との間で通信をやっております。これは気象条件に非常に影響されまして、フライトプランの交換通報だけでも二、三十分かかる、のみならず、この通信によって飛行中の航空機と地上との交信が妨害されるというような不便がございまして、定期的に飛行機が飛ぶための通信手段としては非常に不備であるということで、したがいまして、技術的にもそういう技術着陸を認めて、日本以遠中国に飛ばせるということは非常に困難であるという事情を、カナダの航空会社に説明した事実はございます。  それから第二点のエア・フランスの件でございますが、これも上海まで参っておりますけれども、東京まで飛んでくるという協定上の権利は正確にはございません。中国内の地点を特定するという協議をした上でないと日本に来れない状態になっておりますが、まだそういう協議をする時点に立ち至っておりません。日本側としましては、まず日本の航空機が中国本土に定期便を飛ばせることができるようになった状態の上で、そういうような航空交渉に応じたいと思っております。
  211. 河上民雄

    ○河上委員 何かいろいろ技術的な理由をあげておられるのでありますが、最後のほうのお答えがほんとうなんでしょうか。日中航空協定ができたあとでそういう問題に応じたいというのがほんとうなんでしょうか。
  212. 寺井久美

    ○寺井政府委員 この航空権益の交換ということに関連いたしまして、まず当事国である日本と中国との間におのおのの飛行機が飛んだあとで、第三国の飛行機を日本の上に飛ばすと、こういうことでございます。
  213. 河上民雄

    ○河上委員 そう伺うと非常にはっきりするわけでありまして、何かいろいろ技術的な理由をあげておられましたけれども、きょうはあまり時間もございませんので次に移りたいと思いますけれども、非常に短い時間で大切な問題を伺うのは恐縮というか、残念なことでありますが、先般の新聞報道によりますと、沖繩におけるブルービーチ演習場での戦車による日本婦人殺害事件について、アメリカ側から隊員には過失はなかったという通告があった旨の報道がなされております。これは一体事実だったのでしょうか、その点をまずお伺いいたします。
  214. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 新聞報道といたしまして、アメリカの海兵隊が、四月に起きました戦車の事故についての結論を出したということを私も見ておりますけれども、この月曜日十八日に那覇の司法当局が米海兵隊当局に照会しましたところでは、米軍としての処分は最後的にはまだ決定されていないということであった由でございまして、現在のところまだ米軍の処分は未定である、こういうふうに承知いたしております。
  215. 河上民雄

    ○河上委員 もしこういうのが事実であるといたしますと、日米間の国民感情の将来にも非常に鋭い、深い影を投げかける事件になると思うのでございますが、大平外務大臣はこの事件が起きましたときに、公務中であるとかそういうようないろいろな問題があるにしても、日本国民の立場に立ってアメリカ側に強く抗議する、抗議の意味を込めて交渉に当たるというようなことを言われたのでございますが、もしこのような通告がなされた場合には日本政府としては当然アピールされると思うのですが、いかがでございましょうか。
  216. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、米側がいかなる結論を出していかなる措置をとるのかということについて未定であるというふうに承知をいたしております。したがいまして、日本側の処分あるいは処置ということは、米側の措置を待った上で決定ということになるというふうに考えておるわけでございます。  万が一新聞報道にございますような結論を米側が出してまいった場合にどうするか、こういう御質問だと承知いたしまするけれども、この問題につきましては司法上の措置あるいは地位協定上の関係、いろいろな側面があると存じますので、慎重に考えさせていただきたいと思っております。
  217. 河上民雄

    ○河上委員 われわれ非常にその点憂慮いたしておりますので、外務当局はいつも慎重にということでございますけれども、沖繩の地位の変更に伴って従来とは違った新しい行政の中で起こった最初の非常に不幸な大きな事件であると思いますので、間違いのないように取り扱って対処していただきたいと思います。もし大河原局長がそういうふうに強く言われますのでしたら、きょうは時間があまりございませんので、この次の機会にこの問題を追及させていただきたいと思います。  最後に、日米経済合同会議が近く、七月になろうかと思いますが、行なわれる予定だと聞いておりますけれども、その日程また論議せられる議題などもそろそろ固まってくるんじゃないかと思いますが、日程とか議題についてお伺いしたいと思います。
  218. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 日米貿易経済合同委員会は七月の十六日並びに十七日に東京で開催ということに予定されております。この両日の日程をいかに詰めていくかということにつきましては、現在米側と議題とのふり合いを考えつつ調整の作業をいたしております。またいかなる議題をこの二日間に取り上げるかという点につきましても、現在米側と調整中でございまするけれども、一般的に申し上げますと、過去のこの委員会で取り上げられましたような問題、すなわち日米間の経済問題でありますとか国際経済に関連する問題でありますとか、そういうふうなことが取り上げられるだろうということは申し上げられると思いますけれども、それ以上具体的な問題につきましては現在調整中でございます。
  219. 河上民雄

    ○河上委員 大平外務大臣にお尋ねいたしますが、近く田中総理が訪米されますけれども、日米経済合同会議というものがそれへの準備の一つのプロセスになろうかと思うのですが、大臣としてはこの会議にどういう覚悟で臨まれるのか、そのことを最後に一言伺いたいと思います。
  220. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほども御答弁申し上げたように、ハワイ会談がございまして一年ぶりでございます。わずか一年でございますけれども、その間日米間の経済関係に大きな変化を見たばかりでなく、国際通貨、貿易等の分野におきましても大きな変革が行なわれたわけでございます。またとりわけ資源の問題、環境の問題等新たな緊張を増してきておるわけでございます。そういうことでございますので、過去一年間の日米経済関係というもののバランスシートを一ぺん点検いたしますとともに、今後の展望という点につきまして、両首脳の間で隔意のない意見交換を遂げて理解を深めていただきたいと考えております。  日米間には間断ない対話を続けようじゃないかということになっておりますので、まず最高首脳みずからが陣頭に立って、こういう局面において討議をしてまいるということは、たいへん有意義なことと考えており、精力的に取り組んでいきたいと思います。
  221. 河上民雄

    ○河上委員 外務当局にもお伺いしたいことでございますけれども、フランスの原爆実験について太平洋地域の国々は非常に強い抗議をしておるわけでございます。そのため国際司法裁判所でもこの問題が取り上げられておるわけでございますけれども、この問題について国際司法裁判所の決定がどうなるか、フランスはいわゆる留保条件をつけておりますので、どうなるか見通しがつきませんが、外務省においてはどういうふうな見通しを持っておられるのか、ちょっと技術的なことになりますけれども、それを伺いたいと思います。
  222. 大和田渉

    ○大和田政府委員 おっしゃいますとおり五月の九日に豪州及びニュージーランドがおのおの国際司法裁判所に提訴したわけでございます。その提訴についての判決はまだないわけでございます。判決のあるまでの中間的な措置として、とりあえず中止するように勧告してくれということも豪州、ニュージーランドは国際司法裁判所に言っております。一方、フランス側としましては、核の実験は国防上の問題に直接関係あるので、国際司法裁判所には管轄権はないという言い方をしております。いずれにしましても、われわれとしてはまだ判決あるいは裁判が下っておりませんので、それを待っている段階でございます。
  223. 河上民雄

    ○河上委員 いま国際司法裁判所の判決を待っているというようなお話でございましたが、日本政府自身としては、フランスに原爆実験の中止を申し入れておるわけですけれども、これについてフランス政府からどのような回答があったか、まだわれわれ伺っておらないわけですが、実際にはどういう回答があったか、ここで明らかにしていただきたいと思います。
  224. 大和田渉

    ○大和田政府委員 日本政府としましては、フランスに限らず、あらゆる国の核実験、あらゆる場所においても行なわれる核実験に反対でございまして、その基本的な考え方については、かねてからフランスは承知しております。またわがほうも在外公館を通じまして、あるいは東京において先方にも伝えてあります。このたび南太平洋で核の実験をやるという情報を得ております。まだそれもかなり近いのではないかという感触をわれわれは持ちましたので、現地のフランス大使館に対しまして、政府に抗議を申し込むように、つまり実験を中止するように抗議を申し込むように訓令をいたしております。先方はそれに対してどういう返事をよこすかということは、まだわれわれは承知しておりません。
  225. 河上民雄

    ○河上委員 それでは時間が参りましたので終わりますけれども、はっきりいえば、核兵器の災害を世界で最も強く受けたほとんど唯一の民族である日本政府としては、豪州やニュージーランドに劣るような姿勢では非常に困るわけでございますので、これを強くフランス政府にさらに抗議を重ねていただくように要望いたしたいと思いますが、大臣いかがでございましょうか。
  226. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いまも政府委員から申しましたように、わが国といたしましては終始反対の態度を内外に強く表明いたしてきておりますし、今後もやるつもりでございまして、わが国に近いからとか遠いからいいとかそういうようなことではなくて、終始一貫そういう態度を堅持していきますし、今後も堅持してまいるつもりであります。
  227. 藤井勝志

  228. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私は、日本国民に加えられた米軍の犯罪について質問いたしますが、二つの点を特に質問したいと思うのです。  一つは、アメリカ兵の野獣のような行動について、日本がこれをさばく権利すら奪われておるという現実の問題、これは特に大平外務大臣に質問したいと思います。二つ目は米軍の横暴、傲岸さ、こういったものについて、これをむしろ助長するような日本政府の恥ずべき卑屈な態度について、大まかに二つの点を質問したいと思います。  第一に、事実関係から、これは検察庁に確認してもらいたいというのがありますが、六月十六日に米海兵隊広報部が沖繩県金武村ブルービーチの演習地域で、一九七三年四月十二日十五時十分に起きた安富祖ウシさんの死に関する調査、これを発表しております。内容は、調査内容、所見、結論、三つからなっており、特に所見において、安富祖さんは現場からの退去を免れるため、雑草の茂みに身を隠していた。前方を走っていた五台の戦車と背後から接近してくる戦車と識別できなかった。むしろ殺された安富祖さんにあやまちがあるような所見を述べ、結論として、同事故に関連した海兵隊員のだれも刑事責任を問われる過失がなかった。だから、過失致死にもならぬものだから、その関係で、広報部は同事件に関する軍事裁判は開かれない。こう発表しております。この六月十六日に発表された、いま申し上げた調査について事実かどうか、検察庁、ただこの事実があるならある、ないならないというだけ返事していただきたいと思います。
  229. 佐々木英文

    ○佐々木説明員 お答えいたします。  御質問の事件につきましては、沖繩県警が事故発生当時の四月十二日以降真相究明につとめたわけでございまして、実況検分それから死体解剖、付近居住者からの事情聴取、米軍関係者からの事情聴取、それから演習実施通告状況の調査、こういうふうなものを含めた捜査を行ないまして、四月十九日に米軍文書で那覇地検の安田検事正に対しまして、地位協定に基づいて、米軍側において第一次裁判権を行使する旨の通告をしてまいりました。したがいまして、沖繩県警はそれまでの捜査結果を取りまとめまして、さらに五月二十五日に米軍当局から米軍側で行なった捜査結果の資料の送付を受けまして、それを検討いたしました結果、六月五日に戦車の乗務員三名を業務上過失致死事件の被疑者といたしまして、事件を那覇地検に書類送致いたしております。
  230. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは米軍からの調査によると、四月十二日に轢殺事件があり、十九日に、地位協定十七条を根拠に第一次裁判権の行使の通告を行なって、さらに五月二十五日付で、いま申し上げた調査の結果について那覇地方検察庁及び那覇防衛施設局に通告をされておって、しかも、その後ひた隠しに隠されて、この調査の結果が知れたのが六月十六日、しかも在沖米海兵隊広報部発表ということになっております。  この前も、宜野湾市大謝名で起こった崎間敏子さん、ホステス、これは絞殺事件であります。裸にされて締め殺されておる。この重要参考人、むしろ唯一の容疑者といわれていたアメリカの兵隊が五月一日に除隊され、二十四日に帰国させられて、とうとうこの事件は迷宮入り。というのは、五月三十一日にコザ警察署の捜査本部は解散しております。  こういった一連のことを考えます場合に、だれでもすぐ気がつくのは憲法の問題であります。憲法はその前文で主権在民をうたっております。すなわち「ここに主権が國民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」一体主権が憲法に規定されておる国民にあるのであるか、半分くらいはアメリカにあるのか、主権在米軍あるいは主権在米国、この件について外務大臣意見を聞かしてほしいと思います。
  231. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日米関係の問題につきましては、憲法のもとにおいて締結されました安保条約、地位協定等に準拠いたしまして適正に処理すべきものと考えております。
  232. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私が申し上げたのは、主権が日本国民にあるという憲法の規定がそのとおりであるとすれば、これは憲法の本文十一条に基本的人権の保障がうたわれております。「この憲法が國民に保障する基本的人權は、侵すことのできない永久の權利として、現在及び將來の國民に與へられる。」とはっきり規定してあります。むしろいま申し上げました事件は、日本国民の基本的人権を踏みにじっているものであり、主権者であるのかないのか疑問を持たすような事件なんです。さらに憲法十三条は個人の尊重をうたっております。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利、これは保障しなければならない。もし憲法が侵害されておるとすれば、現実に生命、自由、福祉追求の権利をいまの事件は奪っている。これが大平大臣の言う安保、地位協定。そうなりますと、憲法が主であるのか、安保、地位協定が主であるのか、この事件はこれを明確にせよということを要求しております。その意味で私は聞いておる。いわゆる主権者であるのかないのか、基本的人権は一体どうなっているか。人間の尊厳、生命を奪われても、さばく権利すら現実に安保条約、地位協定の十七条で奪っておるとすれば、われわれ日本国民は安心して生きておれないという現実。よく選挙のときは自由民主党政府は自由の守り手であるなどということをいわれている。自由の守り手であるとすれば明確に——いまの事件と関連して重要犯人をアメリカが国に帰したり、あるいは当然のことながら殺した場合にはさばかれなくちゃいけない。しかもこれは調査中であるということを言わせたあとで那覇地検の検事正はこう言っておる。たとい第一次の裁判権が日本側にあっても搭乗者、いわゆる戦車に乗っておる者の刑事責任まで追及できるかどうかきわめて困難だと思うなどということを言っておる。これはあとで検察庁にお聞きしますが、こういったような状態にいま日本現実が置かれている。これについて、憲法を尊重し擁護すべき責任ある大臣としての基本姿勢をまず明確にしてほしいと思います。
  233. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま申しましたように、憲法のもとで締結されました安保条約、その関連諸取りきめというものを適正に運用してまいることが私の責任であると心得ておるわけでございます。  第二に、事件につきましては事態を究明しなければならぬわけでございますので、政府といたしましてもあらゆる手を尽くして事案の究明にかかっておるわけでございまして、これに対しましてどういう判定がされますか、地位協定に照らしてアメリカ側がどういう判断をとるか、それを最終的なものを伺いまして日本政府として判断しなければならぬ立場にあると思うのであります。あらかじめこの問題につきましてそういった手順を踏まずに即断をするというようなことは、最も慎しまなければいかぬことと思っております。
  234. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 そうしますと、アメリカの決定待ちで、その決定を受けてでなければアメリカにあらかじめ交渉したり責任を追及したりするということは一切やめる、いわゆるアメリカの決定待ちということになりますか。
  235. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 先ほど警察当局から御説明ありましたように、米側はこの事件につきまして調査の結果第一次裁判権を行使するということを日本側に通告してまいっております。したがいまして、地位協定に基づきまして米側が第一次裁判権を行使する事案ということになっておりますので、第一次裁判権を行使しております米側の結論を待った上で、こういうことになるわけでございます。
  236. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 そうすると、アメリカがいま申し上げました調査の結果を発表されて、その調査の結果は、所見として米兵には刑事責任はない、刑事責任を問われる過失がないということと、軍事裁判にかける必要もないということを明確に言っておる。これは米海兵隊の広報部からの発表。これに対して那覇の地方検察庁が照合したら結論は出てない。まだ調査中であるとかいうことを言わしております。ところが事実関係から申し上げまして、いま申し上げましたように二十五日に発表されて、その間日本政府、その関係当局は伏せてしまって、そしてアメリカが発表したのであわてて照会をして、さらに十八日に新聞記者に発表するという段取りを実に巧妙にとっております。この事実関係を否定できないわけなんです。ちゃんと安里検事正が発表しているわけです。これから見ますと、この安保条約、地位協定というのが日本政府のいうような、アジアの平和とか日本の安全とかを守るものではなくて、むしろ危険だ。個人の生命すら奪われても、アメリカが結論を出さない限り、日本政府は、そして担当の外務大臣はそれに対して何も言えないということになりますと、主権は一体どこにあるのですか。問題はそこにあります。私は基本的にそれを聞いているわけなんです。生命、自由及び福祉追求の権利とかいってみても、これはただ単なる条文上の文言にしかすぎない。日本政府は、特に大臣は、憲法九十九条によって、憲法を尊重し擁護すべき義務を負わされているわけなんです。そこら辺を私は聞いているわけなんです。ひとつ、安保条約、地位協定、憲法のいまの基本的条項の問題などと関連して、はっきり大平大臣の御答弁を聞きたいと思います。
  237. 大平正芳

    ○大平国務大臣 あなたのお話を聞いておりますと、安保条約も地位協定も違憲だというお考えのようでございますが、私が申し上げているのは、憲法のもとで、国会の議決を経て、正当に成立いたしましたこの条約協定というものを厳正に運用するのが私の責任である、憲法上私に与えられた責任であると考えておるわけでございます。法治国家である以上、事実を究明して、正当な手順を踏んで、問題の解明、処置をしていかなければならぬわけでございまして、あらかじめ特定の色めがねをもって事件を、この事件に限らず、何によらず、見るということは私の立場としては適当でないと考えるわけでございます。
  238. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 外務大臣は、日本国民がいかに米軍の軍人に殺され、暴行される——殺し方の種類も幾つもあります。それを集めますと、集団虐殺。戦争は済んだなどといわれておりますが、現に戦争状態だ。たとえば、七二年九月二十日、これは施政権返還後なんです。栄野川さんという基地労働者がキャンプ・ハンセン、これも海兵隊ですが、ここで射殺された事件。三月十八日には、ホステス崎間敏子さんがまっ裸にされて首を絞められておる。そして、いまの安富祖ウシさんが四月十二日。さらに五月二十八日、名前は伏せられております。Aさんという日本の女性が基地外から基地の中へ拉致されて、アメリカ兵十名によってまっ裸にされ、そして輪姦されている。これが現状なんです。しかも基地は治外法権的な存在です。これが現に日本の国内にあるわけなんですよ。大平大臣は、安保条約、地位協定を憲法のワク内で処理するといまおっしゃった。ところが、いま私が申し上げました、どこまでも主権は国民にあるという基本姿勢、さらに、現在も将来も国民に与えられるという基本的人権、そして、個人の尊厳、民族としての尊厳、これにまっこうから挑戦しているのがいまのアメリカの仕打ちである。生命、自由、福祉追求の権利、これは一体どこに行ったのか。こういう観点に立つならば、憲法を尊重し擁護すべき大臣は、主権国民としての立場からも、アメリカの単なる決定待ちではなくて、憲法の規定に従ってやはり主張すべきは主張する、それが当然じゃないですか。大平さん、抗議まではいかぬかもしれぬが、言うべきことはアメリカにでも堂々と言えるんじゃないですか。安保協議委員会ですか、それを待つまでもなく、いつでも会えるはずです。決定待ちということになりますと、侵されている基本的人権、生命の危険、これを日本国民はどう保障していくか、政府が保障しなければ一体だれが保障するかという問題がいまここに提起されております。この点について、大平大臣の基本姿勢をもう一ぺん伺いたいと思います。
  239. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いろいろな不幸な事件がございましたことは事実でございまして、真相は究明されなければなりません。それは所定の手続を経て解明して、そして判断をしてまいらなければならぬわけでございまして、本件もその例外ではないわけでございます。アメリカが第一次の裁判権をいま行使しておるところでございますが、アメリカがどういう判断をいたしますか、その判断を待ちまして、地位協定に照らしてそれが当たっておるかどうか、これは日本政府が判断すべき問題と思っておるわけでございます。われわれは手をこまねいてこの事件を袖手傍観しておるわけでは決してないのであります。くれぐれも申し上げておりますように、地位協定というものを厳正に運用してまいるのが私の責任でございますので、この責任に忠実にこたえてまいるのが私の任務であると思っております。
  240. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いま私が提起しました問題については、全然はぐらかして、大平大臣答えていません。しかし、もう時間がありませんので、これを保留して、次の委員会で引き続き質問することにし、さらに検察当局に対しても、次の委員会であらためて追及します。  あの崎間敏子さん事件は一週間隠されております。さらに、この事件は実に三週間隠されて、アメリカが発表したのであわてて検察庁が、アメリカに問い合わしたかっこうで、現に調査中でありますなどと言わして、しかも、さっき読みましたように、かりに第一次裁判権が日本にあっても、やはりこれは有罪はむずかしかろうなどという結論すら出しておるというに至っては、これは実に卑屈というか、まさに恥ずべき行為だと思います。これにつきましては質問を保留いたしまして、次の委員会で引き続きやることにして、きょうはこれで終わりたいと思います。
  241. 藤井勝志

  242. 永末英一

    永末委員 大平外務大臣に伺いたいのですが、先月、五月二十九日、三十日両日開かれました日米間の安保事務レベル協議会でどんなことが話されたのでしょうか。お聞かせ願いたい。
  243. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 五月二十九日並びに三十日に開かれました第八回の日米安保事務レベル協議におきましては、大きくいって三つの項目について話し合われております。まず第一は、軍備並びに軍縮への進展を含みまする世界的な戦略情勢に対する米側の評価、それが第一点、第二点といたしまして、東アジアにおける現在の政治安全保障情勢、第三点としまして、日本を含む西太平洋における米軍の駐留に関する諸問題及びこれに関連しての諸問題、この三つの問題をめぐりまして意見交換が行なわれたわけであります。
  244. 永末英一

    永末委員 その場合に、日本側はどうする、こうするというわがほうの意見の発表はございましたか。
  245. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 この協議の性格から見まして、日米の安全保障に関する実務担当者の自由な意見交換という性質の場でございまするから、それらの問題につきましてアメリカ側の考え方を聞くと同時に、日本側としても十分意見交換を行なっております。
  246. 永末英一

    永末委員 この場はどういう場なんですか。二つの国のある意味では代表している人々が、レベルはいろいろございましょうが、集まって、同じテーブルについて話をする、話し合う、これは外交折衝というのですか、座談会というのですか、どういうものなんですか。
  247. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 事務レベル協議ということでございまして、厳密な意味の外交折衝ではございません。さりとて全く無責任な放談会ということでもございませんが、いずれにせよ、実務担当者がそれぞれの立場において考えるべき問題について自由な意見交換を行なってきておる場、こういうことでございます。
  248. 永末英一

    永末委員 そういたしますと、要するに日本政府の行なっている外交の一部面であることは確かですね。
  249. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 安保条約に関しまして日米間でいろいろな協議の場が持たれておりますが、この事務レベル協議もそういう意味では一つの協議の場であるということは確かでございます。
  250. 永末英一

    永末委員 そういたしますと、その場に出された文書というのは外交文書といわれるものですか。
  251. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 その会議というか協議の場で使われまする文書の性格にもよると思いますし、お互いがそれをどういうふうな意味合いをもって出したかということにもよると思います。
  252. 永末英一

    永末委員 わが外務委員会は、わが政府が他国との間のいろいろな外交折衝を通じまして議のまとまりましたものについて、それぞれ国会の批准を要するものやあるいは承認を要するものはこれは審議するわけでございまして、それに必要な限りの外交文書は見せていただくことはございますが、交渉過程、あるいは協議会ですから交渉ではないという話でございますが、そういうところでやっているものはいまだかってあまり見たことはないのでございますが、伝えられるところによりますと、本院の内閣委員会で、昨日、その場所で提示せられた文書委員会に提示されたという報道があるのでございます。そうしますと、シェーマティッシュに申しますと、外交文書がわが衆議院の委員会に提示をされた、こういうことになると思うのですが、外務省はこれを一体、いままでシェーマティッシュに考えていただいているが、どういう性格の文書が衆議院の委員会に提出されるとお考えですか。
  253. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 この問題につきましては、実は昨日の衆議院内閣委員会におきまして社会党楢崎議員からいろいろ御質疑があり、また要求がございました。その過程におきまして、この会議におきまして取り上げられました問題の一つとして、日本の防衛問題に関する防衛庁担当の説明の段階におきまして使われたメモが、資料が——紙がございます、その紙につきまして資料として提出ありたい、こういう御要請がありまして、これに対しましては政府といたしましては、この会議が従来から日米それぞれの実務担当者の自由な意見交換の場ということで会議内容については一切外部に公表しないという了解のもとに話し合ってきておる、また、今回もそういう約束のもとに行なわれているという状況のもとに、その場で使われました紙を国会に正式に資料として提出することは控えさせていただきたい、こういうふうに申し上げまして、資料としましては御要求のあったとおりの提出はいたさなかったわけであります。ただ、この紙の性格につきましては、後ほど直接防衛庁のほうから御答弁いただいたほうがよろしいと思いますけれども、たっての御要求でございましたので、資料としては提出できないけれども、委員長の手元にこの資料をお届けいたしますので各党の理事の方が委員長のもとでそれをごらんになっていただくことはけっこうでございます、こういう措置がとられたわけであります。
  254. 永末英一

    永末委員 二つ、要素があるのですが、一つは、この協議会の性格上そこでどういうことが具体的に話し合いされたかということについては、日米両方外へ漏らさない。外という言い方は悪いですが。政府が知るのはあたりまえでしょう。というようなことで進めているので出せないという理由が一つ。  もう一つは、非常に注意深く言われたのですが、私は外交文書かとお聞きしたところ、しゃべるために必要なメモないしは資料、最後は紙きれ、こうなりましたね。そうしますと、それはしゃべるために、確かに頭の賢い人ならいざ知らず、賢い人でも間違うのでありますから、メモや資料が——紙が必要だと思います。しかし、それはしゃべるほうが手に握って見るべきものではなかろうか。私は外交文書ということばを使いましたのは、こうこう、こういうことでございますといって相手方に見せるために使ったのか、それとも自分がしゃべるために手に握ってしゃべっているという性質のものなのか。この文書の性質をちょっとお知らせ願いたい。
  255. 久保卓也

    ○久保政府委員 この事務レベル会議はいまアメリカ局長からも答弁がありましたように双方が自由な内容討議し合う、自由な意見交換を行なうということであります。したがいまして私は公式の外交文書とかいうようなものを防衛庁側で用意するという筋合いのものではないというふうにまず認識をいたしております。そこで、この事務レベル会議では私のほうは事務次官が当面の防衛関係の問題を説明する予定になっておりまして、そのために準備をしたわけであります。ところが、実際には防衛庁長官が交代されまして事務次官が出られなくて私が説明に当たったわけでございます。そこで、事務次官が説明する場合にやはり一応手元に持っておいたほうがよろしいというわけで準備をしたわけでありますが、数ページにわたるものでありますので、正確を期するために、また相手方米側のほうでもこれを一々メモするのもたいへんであるというような問題もあるので、参考のために説明する内容を同時に説明者のメモとしてお配りをしてあったというだけのものであります。
  256. 永末英一

    永末委員 やはり相手方はそのものを持ったわけですね。説明の資料であろうと何であろうと、要するに、メモワールという外交文書もございますがね、紙きれに書いたものを相手方が持っておる、そういうもの。これは条約局長がお答えになることかどうか知りませんが何もなしで両国がしゃべっていることと、何ほどかのものを紙に印刷したものを渡したこととは、どういうことになるのでしょうかね。
  257. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 外交交渉に使いまする外交文書でないということは先ほど来の御説明でおわかりいただけたかと思います。  それで、ただいま防衛局長から答弁がありましたように、防衛庁を代表しての参加者が説明にあたって、メモがわりに用意したものを、それをもとに説明をしたわけでございますが、その際に、米側の理解と便宜のために、そのメモに用意しました紙を参考のために米側にも配付したということでございます。おっしゃいますとおりに、確かに米側にもこの紙が渡っているわけでございます。
  258. 永末英一

    永末委員 もし、この紙の性質を、説明のために用意したものといたしますと、別に外交文書ではないとたびたび繰り返しておられるわけでございますから、したがって、それを議会が知りたいと言っても、これはちょうど外国との関係がなければ、大部分のものは要求に応じて資料を提出されるのが、政府国会との関係であったと思うのですね。そうしますと、何か、その会議で討論されたことを外部には漏らさない約束だからといってこのメモを見たいということをしばらく拒否されたようだけれども、ちょっと話が違うのと違いませんかね。日本側が用意した、しかも正規の文書ではない、メモである。それはしたがって、アメリカに対して言う場合と政府国民に対して説明をする場合と違うなら知りませんよ。違わなければならぬというのはこれは大問題だが、それは知りませんが、メモのごときものであるのなら、それは同じ内容のことを、国会が要求した場合、正規の場所で要求した場合には、それを示されるのに何らちゅうちょされることはないと私は思いますが、いかがですか。
  259. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 繰り返しで恐縮でございますが、いわゆる外交文書ではないということは申し上げているわけでございますが、従来からの米側の約束によりまして、自由な意見交換に役立たせるためにこの会議の中身については公表を避けようという約束のもとに行なわれておる会議におきまして、日本側が、メモとしてではありますけれども、使いました紙を国会委員会に正式に提出するということは、やはり米側との信義の問題があって差し控えさしていただきたい、こういうことを申しているわけでございます。
  260. 永末英一

    永末委員 普通なら、相手方がどう言ったかということを公表するということが望ましくないということからいうならば、自由な討議をやっているんだからそれを公表したくないという両国間の申し合わせというものがあり得るとすれば、それは内容ではなかろうか。事はわがほうに関するものであって、しかもいまのような性格のものという場合に、私は、そう拒否しなくてはならぬかどうか、事の性質上アメリカ国会ならどうするか知りませんがね、と思うんです。さて正式に提出したわけではないんだけれども、食い違いがあるではないかというぐあいに公の委員会でなったら、やはりそのものがこれだということでなければ、質問者がこれだろうと思ったこととの食い違いがわかりませんね。したがって、結果的には、アメリカとの約束を破ってでもちゃんと見せたということになるんじゃないですか、見せ方は別としましてね、どうでしょう。
  261. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 私どもの考え方といたしましては、国会委員会に正式に政府文書として提出するということと、内容的には、従来防衛庁が国会で繰り返し説明してきておられることをメモとしてまとめたもので、国会答弁あるいは防衛庁の正式の方針あるいは説明、そういうものと何ら食い違っていない、むしろそのワク内のものを説明したという趣旨におきまして、国会の場で米側との信義に反しない形で御説明をできる方法はないかということを考えるわけであります。
  262. 永末英一

    永末委員 考えておられることはわかるのですが、具体的に、先ほど、提出しなかった、しかし一部の報道では提示した、こうなっているのですが、その辺はどっちがほんとうなんですか。最終的に提示したればこそ、食い違いというものがわかったということが内閣委員会審議の過程であったと伝えられているわけですね。その辺ちょっとよくわからない。
  263. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 内閣委員会にこのものを資料としての提出はいたしませんでした。これは遠慮さしていただいたわけでございますが、ただ、その際に使いました紙がこういうものでございますということを御説明するために、委員長のお手元にお出ししたわけでございます。
  264. 永末英一

    永末委員 そういたしますと、外務省といたされましては、これから、問題となりましたものは委員長の手元にはやはりお見せするわけですね。
  265. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 ですから、問題になりました際の状況、また問題になりました当該文書がどういう性格のものであるかということにもよろうかと思います。今回の場合には、先ほど来申し上げておりますような性質の紙でありましたために委員長の手元へごらんに入れた、こういう措置をとったわけであります。
  266. 永末英一

    永末委員 まあ、ある事件が起こりますと、それぞれその事件特有の特殊な要素がございますね。しかし、事が一たん行なわれますと、その特殊な要素の特殊性を捨てまして、そうしてそういう筋だけが残ってくるわけであります。私の伺いますのは、正確に申しますと日本側の意向を盛ったある資料——紙であろうと何であろうと、資料であることに違いありません。それはたとえ両国間の交渉であれ何であれ、協議会という名前を使われようと、日本と他国の間で話し合われた、その場所で使われたそういう資料、それは国会委員長には見せるということが、日本政府、外務省の方針である、こう理解してよろしいか。
  267. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 一般論としてそういう原則を外務省が固めたということではないわけでございまして、昨日の内閣委員会における情勢のもとに、特殊の紙を特殊の状況のもとに委員長にごらんに入れた、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  268. 永末英一

    永末委員 大平大臣、その場限りの一ぺんだけということはないのですよ。日本国政府日本国の国会とが、いろいろなことでいろいろな処理をしながら議事をやっていきますが、いままでわが外務委員会ではなかったことが行なわれておるわけだから、したがって、いまそのものの性質も伺いましたし、そして政府がこういう他国との関係でやっておる過程で生じたあるものについて、国会委員会には見せないが、委員長には見せた。委員長国会委員会機関でございますから、実態は委員会に見せたということと同じだと私は思う。したがって、そういう措置をとられるのはよろしいですから、今後もおやりになったらいい。あれは特別でございまして今後はやらぬのだということだったら、われわれとしては、いまのようなケースとして考えるならば、いままで何をやったかということをやはり聞いてみたいと思う。  外務大臣としてはどうお考えになりますか。
  269. 大平正芳

    ○大平国務大臣 本件についての感想でございますけれども、安保事務レベルの会議というのは、あくまでも協議機関でございまして、決定機関ではございません。したがって特定の案件についてそこで交渉をするということではないのでありまして、双方の自由な意見交換の場にいたして理解を深めるということをやっておるわけでございます。お互いの間、国内におきましても理解を深めていくということは容易じゃありませんので、とりわけ他国のことでお互いが何を考えておるかということは十分知りたいわけでございますし、その場合に自由な意見交換の場というものがあることは望ましいと私は考えております。そして、そこに使われた、話された内容というようなものが公開されないことがまた望ましいと思うのです。何となれば、これは会見とオフレコの違いみたいなものでして、会見、これは必ず国会に出さなければならないのであるということになると、もう初めから自由な意見交換というよりも非常に態度がステッドになってしまうじゃないかと思うのでございまして、私はそういう場は国会側も寛容に見守ってほしいと思うのでございます。  しかし、第二に秘密外交はいけないと思うのです。秘密外交というのは絶対に民主主義の社会において避けなければならぬことと思うのであります。しかし、この秘密外交というのが往々にして誤解されておりまして、交渉から始まって妥結に至るまでの経過を全部あらわにしないと、秘密でやるといけないというのは間違いでございまして、できた結果は厘毫も残さず公表せなければいけないと思うのでありますけれども、過程は両当事者においてなるべく秘密にやらしていただくほうが、私は交渉を結実する上において正しいと思うのであります。しかし、この交渉過程といえども、いつまでもこれは外務省の奥深く退蔵しておくべきではないと思うのです。だから、この間本委員会におきまして河上君からお話がございましたように、外交文書というものを公開するということについて検討するように、私は事務当局に命じたわけでございまして、これは民主主義の根本だろうと思うのでございます。やったことはやましいことではない、ちゃんとしたことをやっておるのだということを、歴史的な検証にたえるだけのことをやらないと申しわけないと思うのであります。一定の期間たちまして、関係国に対しましても支障がないという段階になりますと、洗いざらいこれを国民が自由に回覧できる、学者はこれを活用できるというようにすべきでないかと思うのであります。  要は国会政府との間の信頼関係でございまして、おまえたちアメリカとの間で何かこそこそやっているのじゃないかというような疑惑がありとすれば、そういうことがあってはならぬと私は思うのでありまして、そういうことのないようにわれわれは十分筋道を踏まえてやってまいるつもりでございます。  本件につきましていろいろ御心配いただいたわけでございますけれども、内閣委員会で紙片が委員長の手元に物理的に届いたとかいうことを聞いたわけでございますけれども、そういう経緯を私よく存じませんけれども、こういういきさつ、あまりほめたことでないと私は考えております。で今後、永末委員おっしゃるように、いろいろな自由協議の場においていろいろな討議をしたことも、そういう内容に触れたような問題について委員長の手元に届けるつもりであるか、私はそういうことはすべきではないと考えております。それは政府のためにも国会のためにもならぬと私は考えております。
  270. 永末英一

    永末委員 政府考え方はわかりました。まあ国会国会を構成している者それぞれまた考え方がございます。これらの件についてはしたがってこれからいろいろなことが起ころうかと思いますが、ただ私は、国の安全保障の問題が、新聞記事で申しますと、社会部的記事として取り扱われるようなことはあまり望ましくないと思っておるわけで、やはり国の安全保障に関する問題は政治部的記事で取り扱われるべきではなかろうか。したがって、なるほど安全保障に関する外交関係いろいろございましょうが、国会はやはりここという非常に重要な問題点と思う場合は、秘密会という制度が国会法にあるわけでありますから、政府もやはりきちっと資料を出して、要らざる疑惑が国民の中に起こらないように善処されたいと、私は希望いたしておきます。  終わります。
  271. 藤井勝志

    藤井委員長 次回は、来たる二十二日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時五十六分散会