運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1973-06-06 第71回国会 衆議院 外務委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月六日(水曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 藤井 勝志君    理事 石井  一君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 小坂徳三郎君 理事 西銘 順治君    理事 福永 一臣君 理事 岡田 春夫君    理事 堂森 芳夫君       石原慎太郎君    稻葉  修君       加藤 紘一君    小林 正巳君       深谷 隆司君    宮澤 喜一君       山田 久就君    石野 久男君       川崎 寛治君    河上 民雄君       柴田 睦夫君    渡部 一郎君       永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         外務政務次官  水野  清君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省欧亜局長 大和田 渉君         外務省経済局長 宮崎 弘道君         外務省条約局長 高島 益郎君         外務省国際連合         局長      影井 梅夫君         文化庁次長   清水 成之君         労働政務次官  葉梨 信行君         労働大臣官房長 藤繩 正勝君         労働省労働基準         局安全衛生部長 北川 俊夫君  委員外出席者         外務省アジア局         外務参事官   大森 誠一君         厚生省援護局庶         務課長     河野 共之君         労働大臣官房国         際労働課長   森川 幹夫君         外務委員会調査         室長      亀倉 四郎君     ————————————— 委員の異動 六月六日  辞任         補欠選任   大久保直彦君     竹入 義勝君 同日  辞任         補欠選任   竹入 義勝君     大久保直彦君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際労働機関憲章改正に関する文書締結に  ついて承認を求めるの件(条約第四号)  電離放射線からの労働者保護に関する条約  (第百十五号)の締結について承認を求めるの  件(条約第五号)  機械防護に関する条約(第百十九号)の締結  について承認を求めるの件(条約第六号)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 藤井勝志

    藤井委員長 これより会議を開きます。  国際労働機関憲章改正に関する文書締結について承認を求めるの件、電離放射線からの労働者保護に関する条約(第百十五号)の締結について承認を求めるの件、機械防護に関する条約(第百十九号)の締結について承認を求めるの件、以上各件を議題といたします。  各件につきましては去る六月一日に質疑を終局いたしております。  これより各件について討論に入るのでありますが、別に討論申し出がありませんので、順次採決いたします。  まず、国際労働機関憲章改正に関する文書締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件承認すべきものと決するに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  3. 藤井勝志

    藤井委員長 起立総員。よって、本件承認すべきものと決しました。  次に、電離放射線からの労働者保護に関する条約(第百十五号)の締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件承認すべきものと決するに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  4. 藤井勝志

    藤井委員長 起立総員。よって、本件承認すべきものと決しました。  次に、機械防護に関する条約(第百十九号)の締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件承認すべきものと決するに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  5. 藤井勝志

    藤井委員長 起立総員。よって、本件承認すべきものと決しました。  おはかりいたします。  ただいま議決いたしました各件に対する委員会報告書作成等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 藤井勝志

    藤井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  7. 藤井勝志

    藤井委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。石井一君。
  8. 石井一

    石井委員 外務大臣、きょうは最近の国際情勢について、断片的でございますが、グローバルな問題について政府見解をお伺いさせていただきたいと思います。  まず最初に、ベトナム和平後いわゆるICCS監視委員会がいろいろと作業をやっておるわけでございますけれども、最近の新聞報道によると、カナダ国際監視委員会から引き揚げたいという意思がある。この報道は真実なんですか、いかがですか。
  9. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう意向をカナダが固めておるということは承知しております。
  10. 石井一

    石井委員 その後任に日本という名前があがっておる、こういうことを聞いておりますが、この報道の真偽はいかがですか。
  11. 大平正芳

    大平国務大臣 その点につきましては、何らの日本に対する公式の接触は全然ございません。
  12. 石井一

    石井委員 非常に重要な問題でございますので、なかなか即答はできないと思いますが、そういうふうな要請があったとすれば、政府としてはやはりこれに積極的に参画されるというお気持ちでございますか。
  13. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうお申し出がない状態でございますので、政府見解を述べるのは必ずしも適切でないと思いますけれども、御案内のように、わが国体制並びにわが国世論状況を判断いたしますと、そういう機関日本が参加するということにつきましてはいろいろ問題があるわけでございまして、万一そういうお申し出がかりにありといたしますならば、あらゆる角度から慎重に検討をしなければならぬ課題であろうと考えております。
  14. 石井一

    石井委員 一説には、この委員会が結成されます当初に、日本は、公式か非公式か、あるいはそういう表明があったのかないのかわかりませんが、ICCSに加盟を希望しておった、ところが、最終的にはインドネシアがそのメンバーに加わったということで日本は非常に立腹したというふうなことが新聞報道であったように私記憶をしておるわけでございますけれども、当初、そのような参加に対する強い意思があったのか、そういう表明をされたのか、あるいはいまの御答弁から推察いたしますと、そういうことは一切なかった、こういうお考えなのか、これはいかがでありますか。
  15. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうことはなかったわけでございまして、日本が参加するかしないかという問題が論議されたのは国際会議のことでございまして、ベトナム後におけるインドシナ半島の援助計画開発計画等を論議するような国際的なフォーラムが持たれるとすれば、それに日本が参加するかしないかということは一つの問題になり得ると考えておったわけでございまして、国際監視委員会に参加するということは、当初からわれわれは問題にしていなかったわけでございます。
  16. 石井一

    石井委員 この問題に関して最後質問でございますが、先ほど、参加するという場合にはいろいろの問題点があるということでございますが、これはやはり憲法上の規定というものに抵触するというふうなお考えなのか。どういう問題点を一応想定されておるわけでございますか。
  17. 大平正芳

    大平国務大臣 制度の問題といたしまして、自衛隊を派遣するとすれば、自衛隊法制約があるわけでございます。それから、たとえば外務省のシビリアンを派遣するというようなことに関しましては、国内世論の上から申しまして、それが受け入れられるものであるかどうかというような点については、なお慎重な吟味が要るんじゃないかと考えております。
  18. 石井一

    石井委員 それじゃ、日本政府は、そういう問題があるので現時点においては非常に消極的である、そういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  19. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、そういうお申し入ればどこからも受けていないわけでございまして、まだ問題になっていないわけでございますが、一般的、概念的に申しまして、そういう問題につきましては制度的、世論的な制約がありはしないかということを申し上げた次第でございます。
  20. 石井一

    石井委員 次に移りまして、七月には田中総理ニクソン大統領との会議を持たれるということで、おそらく外務大臣もお出かけになるんではないかというふうに推察をいたしておるわけでございますが、今度の会談で最も重要な外交案件はどういうものなのか。これはいろいろたくさん問題があることはわかっておりますが、特に外務大臣としてこの点だけはというものがあればお伺いをしておきたいと考えますのと、それから、この間のアメリカ大統領外交教書などを読んでおりますと、やはり日米貿易の不均衡というふうな問題が非常に大きく取り上げられておるわけでございますが、この問題は必ず大きな議題になると想定をいたすわけでございますけれども、この場合に日本側としては、対米貿易を拡大するという方向でお話を進められるのか、あるいは縮小するというふうな基本的な考え方でやられるのか。第一点の重要案件と、それから貿易の問題についてひとつ外務大臣としての御所見をまず伺いたいと思います。
  21. 大平正芳

    大平国務大臣 第一点につきましては、今回の日米首脳会談は、特記すべき討議の問題として切迫した問題があるとは考えておりません。御案内のように、日米間には間断なき対話を繰り広げたい、あらゆるレベルでやりたいということを申しておりまするし、また、そういうラインで日米間の運営をやってきておるわけでございまして、最高首脳の間の会談というようなものも、その一連の日米間の対話の一環でございまして、ハワイでお目にかかってから一年たってまいりましたので、先方希望もあり、ここらあたりで頂上会談が持たれて、日米間の問題ばかりでなくて、双方共通の関心を持っておる国際問題につきまして隔意のない懇談を遂げていただくことは有益であろうと考えておるにすぎないのでございます。  それから第二点といたしまして、日米間の貿易収支のアンバランスでございますが、これは石井さんも御承知のように、わが国朝野のたいへんな御努力の結果、ことしに入りまして非常に顕著な改善の方向を示しておるわけでございまして、私どもといたしましては、この傾向が持続していくことを希望いたしておるわけでございますが、貿易のことでございますから、一進一退ということは間々あり得ると思いますけれども、全体の傾向といたしましては、こういう方向を着実に進んでいきたいものであるし、またそういうことは期待できるのではないかと思っております。そして日米間の、世上議論されました経済的な緊張という雰囲気もたいへん緩和してまいっておりますことは御案内のとおりでございますので、今回の頂上会談でこの問題が非常にホットな争点になるなどということは、私は全然考えておりません。
  22. 石井一

    石井委員 次に、対米関係でやはり非常に問題になるかと想像されるのは安全保障防衛という、こういう点も問題があろうかと思うのでありますけれども外交教書においても、日本防衛は第一義的には日本自身で責任を負うべきであるということが強調されておるわけであります。そういうことから考えると、やはりこの際、日米安保体制の第三条で規定されておるいわゆる日本独自の防衛力強化というふうなことの条約上の義務というふうなことが、今回論じられるのではなかろうか、こういう危惧を持っておるわけでございますが、この点は外務大臣はどのようにお考えになっておられますか。
  23. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せになる日本防衛力の問題は、日本できめることだと思うのであります。そして、いままでアメリカ側から公式に、日本防衛力強化要請してきたということは一回もございません。またそうあるべきものでもないとわれわれは心得ておるわけでございまして、この問題はあくまでも日本の問題であると考えております。
  24. 石井一

    石井委員 ちょっと問題がそれますが、先週、日米安保事務レベル協議会合が行なわれたということで、この協議会、過去に二回行なわれておるようでございますけれども、この中で、いま申しました点についてかなり協議が両国で事務レベルで行なわれておるのじゃないかと思うのですが、今後の見通し、さらに基地問題防衛問題についてどういう形での作業話し合いというものが進められておるのか、ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  25. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 五月の二十九日並びに三十日に日米安保事務レベル協議が二年十カ月ぶりに開かれたわけでございますが、この事務レベル安保協議におきましては、今回の会議におきまして三つ項目について主として意見の交換が行なわれて、第一の項目といたしましては、軍備及び軍縮への進展を含みます世界的な戦略情勢に対して米側がどういうふうに評価しているかという点でございます。第二の点は、アジアにおきまする現在の政治安全保障情勢ということでございまして、第三番目の問題といたしましては、日本を含む西太平洋における米軍の駐留に関する諸問題及びこれに関連した基地問題、こういう三つのテーマを中心に討議いたしました。  ただいま御指摘並びに御質問ございました点は、どちらかと申しますと、議題の二番目あるいは三番目に関連する問題であろうかと存じますけれども日本防衛力状況というものにつきましては、かねて米側に対しまして、第四次防衛力整備計画、こういうふうなものについていろいろな形で説明をいたしております。基本的には米側といたしまして日本防衛力の現況がどうであるかということについての理解は持っております。今回、その第三の議題に関連いたしまして、日本側が特に重点を置きまして米側話し合いをいたしましたのは、基地の問題でございます。この一月の日米安保協議委員会におきましても、関東計画並びに沖繩基地整理統合計画が発表になっておりますけれども、引き続いて日米間で作業を進めていこうという基本的な了解ができておりましたし、その後二回開かれました安保運用協議会の場におきましても、日本全体の基地統合整理についての基本的な理解米側と深め、今回の会議におきましても、その点について米側と十分話し合いました結果、在日米軍施設区域整理統合のための努力を今後とも継続していきたい、こういう了解をあらためてともにしたわけでございます。  それに関連いたしまして、さらにこの作業を促進するという目的をもちまして、来週月曜日、六月十一日の午後に第三回目の日米安保運用協議会の開催を現在予定いたしております。この第三回目の安保運用協議会におきましては、第一回、第二回の会合を受けまして、第一回会合了解されました米軍施設区域目的役割り、土地の使用状況に関する再検討の線に沿いまして、討議を行なうということを考えております。
  26. 石井一

    石井委員 外務大臣事務レベルでも、いま御答弁がありましたように、基地整理縮小という方向でいろいろと間断なく対話が行なわれておる、こういう模様でございますが、私は今後の頂上会談で、その後極東の情勢というものもベトナム和平その他で非常に変わってきております。私などは当然、安保体制を堅持するという立場に立っておりますけれども、やはり基地整理縮小ということは当然、これは国民的願望だと、こう認識をいたしておるわけです。この点について、私はこの際、大胆な提案なり要望ということをされるべきではないか、こういう考え方を持っておるわけでございますけれども、この点については、基地縮小に関してはどういうお考えなのか。また今後の御訪問に関連して、これらの問題が前進するというふうな御決意をお持ちになっておるのかどうか、この点はいかがでございますか。
  27. 大平正芳

    大平国務大臣 基地整理統合の問題につきましては、すでに御案内のように、サンクレメンテ日米首脳会談、さらにはことしの一月下旬に開かれました日米安保協議委員会等におきまして、基本的な合意を見ておるわけでございまして、その合意を踏まえた上で、日米双方がいまこれをどのように具体化してまいるかということについて協議が行なわれておるわけでございます。すなわち、頂上会談をまつまでもなく、すでに基本的な合意に沿っての具体的な段取りをいま相談をいたしておるわけでございます。したがって、私どもとしては、この作業が円滑にまた迅速にまいるように督促をしてまいらなければならぬと考えておるのでありまして、当面そういう現実の作業進展ぶりを注視いたしておるというのがいまの段階でございます。したがって、来たるべき日米首脳会談におきまして、この問題をあらためて取り上げるということではなく、基本的合意に沿った具体的な作業はいま行なわれておるということでございますので、それを促進するというのが、いまの当面の政治の任務であろうと考えておりますので、特にこの問題を根本から取り上げ直すというようなことは考えておりません。
  28. 石井一

    石井委員 私は前段で、アメリカ側から独自の立場防衛力を推進すべきだという要請があるのではないかという危惧を申し上げた。そしてまた、後段では、基地縮小を主張すべきだ。これはどちらもかってな言い方のように聞こえるわけでありまして、そうすれば、基地縮小するけれども、それじゃ日本自身軍備を増強するか、こういうふうな問題にも発展しかねないわけですけれども、私は、この辺がアメリカとの折衝の非常に肝心な、非常にむずかしい問題だ、こういうふうに認識をいたしておりますので、いまの外務大臣答弁、必ずしも私としては十分満足をいたしていないわけで、従来やっておるのだからそのままの姿勢というわけですけれども、私はもう少しこれらの問題に対して積極的に取り組んでいただく姿勢があってもいいのではないか、こういう感じがいたすわけでございますけれども、それは希望として申し上げておきまして、最後に、この問題で最近、テニアンに大規模の米軍基地設置計画があるというふうなことが報道されております。これができ上がれば、沖繩をはじめ日本国内における基地というのはかなり縮小できるのではないか、こういうことも予測されるわけでありますが、この点について、アメリカ側との話し合いなり確認をしておられるかどうか、この点はいかがでございますか。
  29. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 ただいま御指摘ございましたテニアンにおける米軍基地設置の問題につきましては、五月の三十一日だったと思いますけれどもミクロネシア地域と将来のミクロネシアの地位に関する話し合いを進めておりました米国政府の代表でありますウイリアムズ特使が、現地におきまして、マリアナ地域の住民との話し合いの結果を踏まえて、将来米国としてはテニアン島に軍事基地を設定ということを考えているということを公表いたしたわけでございますけれども、この計画がどこまで具体性を持ちまして、今後どの程度の期間内にどういうふうに発展しますかということにつきまして、私ども必ずしも実情を把握いたしておりません。ただ、米側といたしましては、今後のアジア情勢の展望の上に立ちまして、在日米軍基地の問題についても真剣な検討を加えてきているわけでございます。そういうことを踏まえまして、先般来在日米軍基地整理統合方向につきまして、米側話し合いをしているということでございます。
  30. 石井一

    石井委員 次に、中国の問題に関して数点お伺いをしますが、正常化が成りましてから、日本大使館も開設され、それに伴って、中国に残って生活をしておる日本人で、日本に一時帰国を希望しておるという人が非常に多い、最近大使館をたずねる日本人が非常に多くなっているということを仄聞いたしておるわけでございますけれども、これらの状況がどういうものなのか、またこれらに対して政府としてはどういう態度で臨まれようとしておるのか、これをお答えいただきたいと思います。
  31. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 戦前、中国に渡航いたしまして、戦後も引き続き大陸のほうに在留しておられるいわゆる未帰還者というものが日本に引き揚げる場合には、日本政府はいままでいろいろ援助いたしましてまいりましたけれども、いわゆる里帰りという一時帰国される人については特に援助は行なっておらないわけでございます。しかし御指摘のように、中国大陸に、現在非常に望郷の念にかられておられる日本人が約四千人くらいおられるというふうに私たち調査では承知しておるわけでございます。そのうち約三百名くらいの方がいままでのところ引き揚げを希望したいと言っておられますし、またそれ以外の方につきましても、近親訪問とか墓参りとかあるいは病気治療というような理由で一時帰国したい、いわゆる里帰りということを希望しておられる方がおられる、かように承知いたしております。
  32. 石井一

    石井委員 政府は、それを許可されて、大いに望郷の念にかられておる人々に対して援護の手を差し伸べられる、こういう御方針なんですか。その点はいかがですか。
  33. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 これは中国政府話し合いまして、先方のほうからの出国の手続もいろいろあろうかと思いますけれども、私たち気持ちとしては、そういう人たちをできるだけあたたかく日本にお迎えして、何とかその望郷の念に報いたい、こういうような考え方ではおるわけでございます。
  34. 石井一

    石井委員 どういう人々がおもにおられるわけですか。
  35. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 これは正確にはわからないのでございますが、終戦時の混乱の際に、非常に気の毒な状況で親にはぐれた人があったり、あるいはまた何らかの事情で向こうに残らざるを得なかった、ことに女性の方が多いようでございますが、そういう方が向こうに残られて中国の人と結婚され、向こうに残留しておられる、こういう形になっておるというふうに了解しております。
  36. 石井一

    石井委員 中国には日本人遺骨というものが相当数保管されておるというふうに聞くわけでございます。日本にも多少あるのじゃないか、こう思うのでございますけれども、これらを相互に返還するとかなんとかという計画も同時にいま考えておられるのかどうか。
  37. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 現在、日本のほうにおきまして、政府が伝通院に依頼いたしまして保管をしていただいておる中国人の遺骨が十一柱ございます。またいままでの中国側との接触でわかったことは、中国におきましては、紅十字会のほうで保管安置していただいておる日本人遺骨が八百九十九柱あるということでございまして、自来、私たち先方協議を進めてまいりましたが、その結果、幸いに、ごく最近、送還の時期とか送還の方法とか、またこちらのほうから遺骨を届け、また日本人遺骨をいただいて帰るために派遣する人たちの人数とか、そういった細部の計画が一応固まりましたので、最終的な確認方中国政府にいま連絡をとっておる、こういう状況でございます。大体、今月の末ごろには何とかしてこれを実施したい、こういう計画でいま一応進んでおります。
  38. 石井一

    石井委員 いま里帰り希望しておる方が四千人、しかも、すでにそれを申し出ておられる方が数百人もおるということですし、遺骨相互交換というようなことをやるにいたしましても、日中間航空路がいまのような状態ではどうにもならぬということで、政府も非常に苦慮されておるのですが、かなりの時間がその後経過しておりますが、外務大臣、その後かなり交渉は進展しておるのですか。これはいかがですか。
  39. 大平正芳

    大平国務大臣 日中航空協定につきましては、案文自体格別の問題はないわけでございますが、日台路線の問題につきまして、日本政府が処置しなければならぬ問題でございますが、技術的にも行政的にもいろいろ検討を重ねておるわけでございまして、私といたしましては、できるだけ早くこれをやらなければならぬと存じまして、鋭意運輸当局との間で相談をいたしておるわけでございます。なるべく早くいたしたいということで、せっかくがんばっておるところでございます。
  40. 石井一

    石井委員 御努力されておることはよくわかっておるわけでございますけれども、昨日の川崎メモなんかを見ておりましても、中国側日本側の態度に対してかなりしびれを切らしてきておる、こういうふうなことも言われております。日台路線にあんまりこだわり過ぎるんではなかろうか。政府の御答弁では、これは民間の取りきめでというふうなことですけれども、ここは政治的決断以外に何もないというふうに私は考えるのですが、外務大臣の御答弁は、民間のことだからというふうな言い方とか、あるいはまた技術的な問題であるとかいう言い方が非常に強調されておる。やはりこの辺で、外務大臣が日中に踏み切られたああいう決断をこれに下さない限り、せっかくできた正常化というものはこの問題で非常に阻害されるという重大な時期に来ておるというふうに私は感じるわけであります。早急にと言われますが、大体どういうふうなめどを大臣としてはお持ちなんですか。
  41. 大平正芳

    大平国務大臣 別に四の五のしているわけじゃないんです。正直に申しまして、わが国の空港にまつわるいろいろな条件、技術的な条件、行政的な条件もいろいろ吟味をしなければいけませんし、せっかくでき上がりました航空協定が円滑に運営される条件をつくってまいらなければなりませんので、そういう点に腐心をいたしておるわけでございます。そして、これを長く延ばしていいかというと、そうは考えていないわけでございまして、できるだけ早くやらなければならぬと考えておるわけでございますが、いまの段階で具体的な時限を示せと言われるお気持ちはよくわかりますけれども、できるだけ早くというところで御了承いただきたいと思います。
  42. 石井一

    石井委員 次に、外務省は戦後の外交機密文書を公開するというようなことを最近おきめになったようでございますが、それが事実かどうか。その場合には何から何まですべてを公開されるのか、これをどういう形で、どういう計画を持っておられるのか、この点をひとつ明らかにしていただきたい。
  43. 大平正芳

    大平国務大臣 このことは民主主義体制の非常に大事なポイントだと思うのであります。で、一定期間経過いたしました外交文書というものを公表するということは、私はたいへん大事なことだと考えておるわけでございますが、あなたがおっしゃるようにこれを具体的にどのように取り進めてまいるかということにつきまして十分な検討をせなければなりませんので、私はこの問題についてひとつ事務当局に検討してみたまえということは指示いたしました。ただ、まだこういう検討を指示しただけのことでございまして、事務当局のほうで目下この問題について寄り寄り相談をいたしておるというのがいまの実情でございまして、いつまでのものを公開するか、それはどういう範囲にするかというようなことはこれからの検討を待って判断していきたいと考えております。
  44. 石井一

    石井委員 いまの御答弁で、それじゃこの問題は前向きに進めたい、こういうふうに受け取らしていただこうと思うのですが、これは戦後の歴史というものを将来ひもといていく上においても、また先ほどお触れになりました民主主義の根幹に触れる問題として積極的に取り組んでいただき、私はできるだけ多くのものを勇断をもって資料の提出をしていただきたい、こういうふうに考えます。  けさの理事会の席で私ちょっと仄聞したのですけれども、ソ連のトロヤノフスキー大使が大臣かあるいは欧亜局長に緊急に会見を申し込んでこられたとかということでございますが、その内容はどういうものなのか、差しつかえなければひとつお話しをいただきたいと思います。
  45. 大平正芳

    大平国務大臣 今朝九時半に外務省に駐日ソ連大使がお見えになりまして、先般来わがほうから総理大臣の訪ソにつきまして申し入れをいたしておいたことに対する一応の現段階における回答があったわけでございます。要旨を申しますと、ソ連といたしましては田中総理の訪ソを非常に重要視しておる、そしてこの訪ソは日ソ関係の進展拡大にたいへん意義があるものと考えておる、ただ、こちらから申し入れました八月下旬ごろという時期について、その時期はソ連側の都合で若干延ばさしてもらいたいということでございまして、先方からもあらためての提案がございましたから、これは総理のほうと打ち合わせをいたしまして、さらに日程を固めていきたいと思っております。
  46. 石井一

    石井委員 時期に関してはそれじゃ九月初旬にでもなる可能性が非常に強くなった、こういうことでございますか。
  47. 大平正芳

    大平国務大臣 若干延ばしていただいたほうが向こうは好都合だというわけでございますので、八月下旬という時期は必ずしも適当でないということは確認されたわけでございます。当方の都合もいろいろありますので、このほうはいまから官邸のほうとよく相談をいたしまして日ソの間でもう少し詰めてみたいと思っております。
  48. 石井一

    石井委員 アメリカ外交教書の中にも御承知のように日ソ間の問題に触れておりまして、日本は「最近数年間にはシベリア資源開発の協力をはじめているが、この経済関係は大きな潜在的力をもつものである。米国が東西貿易を手控えていた間に、日本は経済的つながりを通じて東西の溝を埋めるという自らの役割を見出したのである。」アメリカ側は日ソの接近というものをある程度高く評価をしておるということなんですが、もう少し内容を見てみますと、そういう動きはありますけれども日本の場合は日ソ経済合同委員会なる民間団体が中心になってこういう重要な問題を推進しておる、政府は何かうしろで控えておる、こういう感じでございます。それに対してアメリカ日本をそういうふうに高く評価しながらも最近の米ソ間の接近、特に政府間の接触というものは非常に激しいものがあります。私はこの機会に民間主導型という対ソ外交を政府主導型——向こうは共産国で社会主義国でもあるという関係もございますし、もう少し政府主導型のものに徐々に変えていく必要があるのではなかろうか、こういう感触を持っておるわけでございますが、外務大臣はどういう御所見を持っておられるか。日本とソ連との関係とアメリカとソ連との関係とどちらが進んでおるようにお考えになっておられるか、この点について御所見を伺いたいと思います。
  49. 大平正芳

    大平国務大臣 米ソ関係は米ソの間のことでございますので私から論評をする立場でないと思うのであります。問題の性質も違いますし、一概に米ソ関係と日ソ関係を比較するものさしはちょっと出てこないと思いますが、ただ一九五六年以来今日まで十七年間にわたる日ソ関係の進展ということは、私は満足いたしておるのです。着実に貿易も伸びてきておりまするし、人的交流もひんぱんになってきておりまするし、また若干の経済協力もすでに実行に移っておるわけでございますので、そういう観点から見て、日ソ関係は私は非常に着実な展開を見ておると考えておるわけでございます。  それから第二点といたしまして、経済協力案件は確かに日ソ関係においてもあるわけでございますが、ただ御案内のようにわが国は全く資源を持たない国といってもいいくらいで、一番資源を持たない立場におりながら高密度の経済を維持いたしておる国でございますので、資源を安定的に確保してまいるということはわが国の命運にとりましてたいへん重大なことだと思うのでございまして、ひとりサイベリアだけでなくて、大きくいえばグローパリーにわれわれは資源を安定的に確保する手だてを講じていかなければならぬと考えておるわけでございます。したがって、日ソ間に経済協力案件がそういうラインに沿ってありましても、別にふしぎはないわけでございまするし、それは国の内外がそういうことに対して十分の理解を持っていただけるものと私は思うのであります。  第三点で、民間主導型か政府主導型かということでございますが、わが国体制がこういう自由な経済体制をとっておりまするので、まず民間レベルで問題を固めていくという手順をとらざるを得ないと思うのであります。しかしながら、経済協力案件になりますと、しかもそれが大きな規模になりますと、どうしても政府資金の参加ということがなければ結実しないわけでございますので、そういう意味におきましては、アメリカなんかよりももっと政府が肩入れしなければならぬ立場におると思うのでありまして、それぞれの国がそれぞれのシステムを持っておるし、それぞれの事情があるわけでございますので、いずれがいいとか、いずれが悪いとかというカテゴリカルな見方というのは必ずしも私はとらないわけでございます。日本日本なりの行き方をとっていっても一つも差しつかえないのではないかと考えております。
  50. 石井一

    石井委員 時間が参りましたので、終わります。
  51. 藤井勝志

    藤井委員長 川崎寛治君。
  52. 川崎寛治

    ○川崎委員 堂森委員の時間を少しもらって簡単に、先ほど石井委員質問されました中国からの一時帰国の問題で少しお尋ねしたいと思います。  これは行くえ不明者と一時帰国という二つの問題があると思うのですが、実は私も具体的な問題で、四月北京で日本大使館にいろいろ相談いたしました。たいへん日本大使館努力をいたしておりまして、鹿児島の名瀬市の出身者で、開拓団におって、本人は軍に引っぱられた、それで妻と子供が終戦当時行くえ不明になった、母は死ぬ、一人残っておるというふうなことで、これは行くえ不明者の問題です。具体的に相談をいたしてまいりました。大使館はさっそく名瀬の親のほうにも連絡をとりまして進めてもらっております。  それからなお先般廖承志訪日団が見えましたときに、社会党としてはこの問題について御相談をしました。紅十字会が担当しておるので、中日友好協会としては紅十字会のほうに相談をいたしますということで、たいへん積極的にプッシュしていただいております。そこで、周総理と川崎秀二氏との会談の際にもそういう問題が出ておりますが、この行くえ不明者をさがしてもらうということについては、ひとつ積極的にやってもらいたい。  それから、いまここで具体的にお尋ねをしたいのは、一時帰国者の問題です。国籍法上のいろいろな問題がありますし、歴史の背景がありますから、たいへん複雑だと思いますが、私は二つお尋ねをしたいと思うのです。  一つは、周総理がこの問題については協定を結ぶ必要があるのじゃないかというふうな発言をしておられるようでありますが、この点について、政府としてそういうことを積極的に進めていかれるのかどうかということが一つ。  二番目には、これも複雑な背景がありますが、ここは簡単にお尋ねせざるを得ないのですが、帰国旅費の問題です。この点について、先般二階堂官房長官が記者会見で発表をしておるようであります。四十九年度の予算で検討したい、こういうことを言っておるようでありますが、本来ならば昨年の日中国交回復以後、四十八年度予算に計上されてしかるべき問題であったのじゃないかと思うのです。しかし、いまさらそのことを問うても始まりません。だから、予備費で年度内にこれをぜひ具体化してほしい、こう思います。この点については、ぜひ外務省としては、厚生省その他大蔵省、いろいろ関係があると思いますが、この一時帰国の旅費の問題について、どういう態度で進めようとしておられるか、この二点をお尋ねしたいと思います。
  53. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 御質問の第一点の協定を結ぶかどうかという点に関しましては、一部新聞で報道されたところは私たちも承知しておりますが、まだ外交チャンネルに乗って正式に聞いてはおりません。さらに先方と連絡、協議いたしまして、もしその必要があれば、これはもちろん、こういう問題ですから、これを実現するためにできるだけの方途を講じたい、かように考えております。  質問の第二点の一時帰国者、いわゆる里帰りの人に対する帰国旅費の援助に関しましては、先ほど石井先生の御質問にもお答え申し上げましたように、従来のわが国のたてまえとしては、引き揚げ者に対しては一応の体制が整っておりますが、一時帰国者というものに対しては、援助がなかなかむずかしいという形になっております。しかし、事柄の性質上何とかしてそういう人たち希望に沿うようにやりたいということで、政府といたしましてはその方向検討しておるわけでございますが、私たちのほうも、一応所管としては厚生省のほうに予算の問題として技術的にいま詰めをいただいておる。さらに、その予算の進みぐあいにつきましては、幸いここに厚生省からお見えになっておられますから、もし補足をしていただくことがあれば、そちらのほうからお願いしたい、かように考えておるわけでございます。
  54. 河野共之

    ○河野説明員 現在中国には引き揚げ希望者が三百人程度あることが判明しておるわけでございます。政府といたしましては、従来から引き揚げ促進のために、帰国のために必要な旅費を国費で負担をいたしておるわけでございます。これによりまして、今年に入りましてから五十三人の方が中国から日本に帰っておるわけでございます。  一時帰国の点につきましては、最近中国の在留邦人から留守家族あての通信によりましても、日中の国交回復を喜びまして、肉親と再会できる機会がきた、こういうような手紙が非常に多いわけでございます。私どもといたしましては、こういうような局面を迎えたわけでございますので、今後とも在留邦人の実情の把握につとめますとともに、関係省庁と協議いたしまして、積極的に検討を進めることといたしております。
  55. 川崎寛治

    ○川崎委員 それはひとつ四十八年度内にぜひやっていただきたいと思います。  終わります。
  56. 藤井勝志

    藤井委員長 堂森芳夫君。
  57. 堂森芳夫

    堂森委員 外務大臣に、時間も三十分しかありませんので、二、三の点について質問を申し上げたいと思います。  第一点は、ただいま石井議員からお尋ねがありました日中航空協定のことでありますが、重ねて私はお尋ねをしておきたいと思うのです。川崎メモというものについても、石井議員が触れられました。向こうとしては、日中航空協定その他各種の実務協定の進行が非常におくれておる、それに対して向こうの周総理はきわめて不満の意を表した、こう川崎メモは報道しておるわけであります。さっきもできるだけ早く、こう外務大臣はおっしゃいました。それじゃわからぬと思うのです。たいへん言いにくいですが、航空協定を向こうは急ごうと言っているのに、どこにできない理由があるのか、この席ではっきりしてもらいたい。どうして具体的に早くするとおっしゃらなかったのか、その点もはっきりしてもらわぬと、いまの御答弁では、何だかさっぱりわからぬと思うのですが、簡単でようございますからお答え願いたい。
  58. 大平正芳

    大平国務大臣 自分のやっておる仕事につきまして自分が評価を加えるということはたいへん潜越なんでございますけれども、航空協定につきましては、御案内のように、去年の十一月にわがほうの案を先方に提示いたしまして、先方が対案というようなものを二月にこちらによこされたわけでございまして、三月に第一回の予備交渉団を出しましてその航空協定の案文の突き合わせをいたしたわけでございます。私は、先ほど御答弁申し上げましたように、航空協定の案文に関する限りはそう重大な支障はないのではないかという判断を持っておるわけでございますから、それはそれなりに進展をしておるわけなんでございます。  問題は、航空協定上の問題ではないわけで、日中間の航空協定の問題ではございませんけれども、現実に事実問題としてございまする日台間にある航空需要というものに対して、日中正常化の筋道をたがえない範囲内におきましてどのようにこれを維持してまいることが適当であるかというようなことについて日本政府として考えておるわけでございます。日本政府考えなければならぬことは、わが国にもいろいろ空港はあるわけでございますけれども、空港の具体的な技術的ないろいろな状況制約をよくわきまえておかなければならないし、それからまた行政上の措置につきましても検討を十分加えておきまして、これなれば国の内外にわたって御理解がいただけるのではないかということを自信をもって日本政府として提示したいと考えておりまして、あくまでもそれは、仰せのとおり、日本政府の決断にかかる問題なんでございます。決断する以上はそれでおさまっていただかなければならぬ性質のものでございますので、詳細にそういった点について吟味をいたしまして、きまりました以上、支障なく事柄が運ぶようにいたしたいということで、せっかく苦労をいたしておるというわけでございます。しかし、仰せのように、これをだらだらいつまでもやるわけにもまいらぬと思うわけでございまして、できるだけ早くという気持ちで精一ぱいの努力をやっておるわけでございますので、もうしばらくお待ちを願いたいと思います。
  59. 堂森芳夫

    堂森委員 いや、私は頭が悪いのでわからぬですわ、御答弁が。頭が悪くてわからぬのかもしらぬが、二者択一じゃないのですか。それを決断を政府がしなければいかぬ。そんなことはわかるはずだと思うんですがね。向こうの言っておるのはそうじゃないですか。こんなこと、みな知っていますよ。どっちもいい子になるとかあるいはうまくやるとか、そんなこと不可能だと私は思うんですが、どうして決断をされないのですか。もうちょっと待てと、そんなことはおかしいと思うんですよ。もっとはっきり御答弁になるほうがいいと思うのです。それ以上申しませんけれども、ちょっと政府の態度おかしいと思う。  そこで、私は次の問題に入っていきたいと思うのです。実は外務大臣に私もベトナム問題について二、三回質問してきました。それから他の議員諸君からも断片的に質問をされてこられました。私、きょうは時間が四十分以上あるから、この問題だけで系統的に外務大臣に少しお聞きしたい、こう思っておったのですが、時間もあと二十五分でございますから、そう詳しくはお尋ねできないと思うのですが、北ベトナムとの国交回復の時期はいつごろと判断をしておられますか。やってみなければわからぬというお答えですが、大体めどはあるのではないか。それから交渉をどこでこれはおやりになるのか。前からパリであろうということは答弁しておられますが、自来、時間がだいぶたっておりますから、交渉の場所はどこでおやりになるか、この二点をまずお聞きしておきたいと思います。
  60. 大平正芳

    大平国務大臣 御案内のように、三宅君がハノイを訪ねて帰りましたし、インドシナ三国の大使を東京に呼び返しまして現地の報告もつぶさに聞きまして、日本といたしましてのいわばオーバーオールなインドシナ政策というようなものを固めてまいらなければならぬと考え協議をいたしたわけでございます。  で、いま仰せの北越との間の国交樹立の話し合いというものも当然その中の大きなアイテムになっておるわけでありまして、この問題につきましては、たびたび本委員会を通じて申し上げておりますように、特に重大な支障というものがあるものとは私ども判断をいたしていないわけであります。ただ問題は、いまたびたび申し上げましたように、インドシナ半島に対する政策を考える場合に、パリ協定というものをわれわれは踏まえた上でやらなければならぬと心得ておると申し上げたわけでございますが、パリ協定の実施、必ずしも期待どおりにはいっていないようでございまして、現地の情勢はなおまだ流動的な面がないとはいえないわけでございます。しかし、それかといってこれがほごになるというような事態は考えられないわけでございまして、なお流動的な情勢ではございますけれども、やはり既定の政策というものを逐次実行に移していく必要をわれわれは感じております。  そこで国交樹立の問題でございますが、いつから、どこで始めるかというような点につきまして、目下部内におきまして検討を進めておるわけでございまして、まだ、いつから、どこでやるときめたわけじゃございませんが、遠からずそういう運びにいたしたいと考えております。
  61. 堂森芳夫

    堂森委員 端的に御答弁願わぬと時間がなくなってしまいますので、あまりまくらことばは要らぬです。  そこで、三宅課長がハノイを訪問しまして、もちろん大臣に全部報告があったことは当然でありましょうが、三宅課長が行きまして、復興援助問題についていろいろと詳しい話し合いもあったのではないか。まだわれわれは報告を聞いていないと思うのです。それから向こうとこっちの意見は必ずしも一致しなかったというふうな答弁が、私にこの前あったのですが、三宅課長が向こう人たちと話をしたときの話し合いについて、意見の相違点がかなりあったのかどうかということをもう一ぺん聞いておきたいと思います。  それからもう一つ、マクナマラ世界銀行総裁が、南越についてはコンソーシアムですか、そういうもので援助をしていこうとしておる。日本には世界銀行からそういう計画について応援するというような話が来ておるのか、そういうこともあわせてお尋ねしておきます。
  62. 大平正芳

    大平国務大臣 まくらことばはやめまして、端的にお答えいたしますが、北越の援助問題に対する考え方でございますが、わがほうはたびたび申し上げておるように、できるだけ多くの国が参加する姿において国際的な信義でやるほうが望ましいんではないかという考え方を持って臨んだわけでございますけれども、そういう国際的なコンソーシアムに対する信頼という点が、端的に申しましてまだ十分でございません。どちらかというと、二国間ベースの援助が望ましいということに傾斜しておるというように私ども判断いたしております。しかし、それはそれでけっこうだと思うのです。私ども、別に北越がこういう信義でないと北越に援助考えないというんじゃないんですから。そのことを先方の意図がはっきりすればいいと考えておるわけでございまして、そういうことが、一応そういう考え方であるということがわかったわけでございます。  それから第二点といたしまして、マクナマラ氏が東京にお見えになって、私もお目にかかったわけでございますけれども、南越に対するコンソーシアムの話は確かにありました。ありましたが、私はマクナマラ氏に対して、これは南越だけに限定されるのではなくて、将来北越がこれに参加の機会も、もしそういう気持ちになれば道を開いておく必要がありはしないか、だから、オープンにしておく必要がありはしないか、そういう点もあわせてあなたのほうで御検討を願ったらどうかということを言っておきました。で、この問題につきましては、なお今後世銀とわれわれの間でも協議しようじゃないかということで、具体案がまだきまったわけではございません。
  63. 堂森芳夫

    堂森委員 この復興援助問題は北越ですよ、北ベトナム。具体的な日本のやり方については何もきまっていない、こういうことでございますか。
  64. 大平正芳

    大平国務大臣 まだきまったわけではございません。
  65. 堂森芳夫

    堂森委員 そこで、せんだって、あれは五月の十七日、十八日ですか、インドシナ三国の大使を大臣は帰国命令を出されまして呼び寄せ、いろいろ情勢をお聞きになった。これは私の質問に対しても、こうしていろいろ情勢の判断をやるのだ、こういうお話でした。この際、いろいろ大使から報告があったと思うのですが、サイゴン政府の安定性はどういうふうに報告をされたのであるか、大臣はどういうふうに判断しておられるのか。  それからカンボジアの実情はどうであるか、カンボジアにおける和平の機運というものはどういうふうになっておるのかという報告があり、判断が、外務省としてはあったのか、これもあわせて聞いておきたいと思います。
  66. 大平正芳

    大平国務大臣 南越政府政治的に安定し、また自信も持って当面の事態に対処いたしておるということでございました。  カンボジアにつきましては、たいへん極端に不安な日々が続いておるわけでありまして、何らかの政治的な措置が早急にとられる必要があるのではないかという判断でございました。
  67. 堂森芳夫

    堂森委員 それで、外務大臣に私、提言いたしますが、アメリカの、カンボジア爆撃等について、やめろ、こういうような申し入れ、意思表示等をするような意思はないのでございますか、いかがでございますか。
  68. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 現在、米軍は北ベトナムのほうを別に爆撃をいたしておりませんので、問題になるとすれば、上空偵察をやっておる、こういうことでございますが、私たちの仄聞するところによりますと、そういった問題を含めて、現在、ちょうどきょうからパリで第二回目のキッシンジャー、レ・ドク・ト会談が行なわれておる、こういうふうな状況になっておるというふうに聞いております。
  69. 堂森芳夫

    堂森委員 私が申しておるのは、カンボジア方面の爆撃です。
  70. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 カンボジアのほうの爆撃は、とりあえずの緊急防止策として、カンボジア政府米軍に依頼して、事態の収拾を軍事的にはかっておったという緊急措置のような形でございますが、現在、米側のほうにおきましてもいろいろな検討がなされておるというふうに了解しておるわけでございます。カンボジア自体の情勢は非常にクリティカルな状態に入っておりますが、カンボジア政府自身といたしましても、先ほど大臣が言われましたように、政治的に広い国民の基盤の上に立って、新しい柔軟な外交政策を展開していきたい、こういうような情勢になっておると判断しております。
  71. 堂森芳夫

    堂森委員 いろいろ聞きたいのですが、あともう十分しかありませんので、問題をかえまして、新大西洋憲章について……。きょうの報道機関も、牛場大使がキッシンジャー氏がパリから帰ってきた直後に会って、彼の四月二十三日の新大西洋憲章といわれる演説についていろいろと懇談をするような訓令を牛場大使に与えておる、こういうふうに報道されておりますが、この新大西洋憲章についても、本委員会でいろいろな委員諸君から質問がされておるのでありますが、大臣としては、いろいろよく読んでみて、あるいはいろいろと考えてみて、キッシンジャー氏の演説の真意等についての検討を加えていきたい、こういうような御答弁がずっと繰り返されておったと思うのでありますが、さっき石井さんからも質問があったのですが、五月三十日と三十一日の日米安保会議が開かれたときに、事務レベルでのいろいろなこういう問題についての話があったのかどうか。これは大臣でなくてもけっこうですが、局長がおられますから、まず御答弁を願いたいと思います。
  72. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 五月二十九、三十日両日にわたって開かれました安保事務レベル協議につきましては、主として先ほどの三つのテーマについて意見の交換が行なわれたということを石井委員に御説明申し上げました。いま先生御指摘のキッシンジャー構想、新大西洋憲章というものにつきましては、その事務レベル協議におきましては議題になっておりません。
  73. 堂森芳夫

    堂森委員 それでは七月の十七日、十八日ですか予定されておる日米の閣僚経済会議がある、こういわれております。そのときには、この問題について政府はどういう態度で臨まれるのでありますか、大臣から伺っておきたいと思います。
  74. 大平正芳

    大平国務大臣 去年は不幸にして日米合同委員会を持つに至らなかったわけでございます。なるべく早く、新内閣が発足した後、機会を持ちたいと思っておりましたが、双方の事情で延び延びになって、七月に持たしていただこうと考えております。これは従来の合同委員会と同様でございまして、二国間の問題と双方共通の関心を持つ問題につきまして、隔意のない懇談を遂げようということでございまして、特段の決定を予想いたしておるわけではございません。  当然のことといたしまして、最近アメリカが世界に向けてキッシンジャー構想とかあるいは外交教書の発表があるわけでございますが、これが日本並びにアジアに関係したこともあるわけでございますので、こういうことについてアメリカの解明をよく伺わなければならないことは当然でございますし、わが国としても、これをどう受けとめるかというようなことについて、会議の直接の議題にはなっておりませんけれども、ロジャーズ長官と私との協議等を通じまして話し合うことになるだろうと私は考えております。
  75. 堂森芳夫

    堂森委員 六月一日でございますか、ポンピドー大統領とニクソンが会談しておる。そして両首脳が会談をしながら共同コミュニケも何も発表されなかったといわれておるのです。それからポンピドー大統領は、これは出産ではなく懐妊であった、子供は生まれないが、おなかに子供ができたんだ、こういう表現をもって何か記者会見をしておる。対話に意味があった、こういうふうな表現も使っておるといわれておりますが、在外公館からどのような情報が大臣に届いておるのか、あるいは何もないのか、大臣はどういうようにこの両首脳の会談を解釈しておられるのか、この点を端的に御答弁願いたいと思います。
  76. 大平正芳

    大平国務大臣 キッシンジャー演説にいたしましても外交教書にいたしましても、アメリカが世界に向かってものを申したものでございまして、これに対してどのような反応があるかということは、これからだんだんと明らかになってくると思うのでございます。  さしあたりヨーロッパにおきましては、一連の首脳会談が英独仏等の間で行なわれておるようでありますし、アメリカと西欧首脳との間あるいはソ連首脳との間の話し合いも予定されておるようでございますので、この問題につきまして、まずヨーロッパはじめその他の国々がどういう反応を示すであろうかということが一つの大きな関心事であるわけでございます。あの教書にもありますように、意見の相違というのはあっていいんだということでございますし、またこれを契機としていろんな意見が各パートナーから出ることもまた望ましいことであるともいわれておるわけでございますから、いろいろな意見が多彩な姿で出てしかるべきものであると思っております。わが国といたしましては、この問題につきまして、総理の訪米というような時期を一応想定いたしまして、それまでには十分な検討を遂げて、それでちゃんとしたものを言わなければならぬと考えておるわけでございます。目下鋭意勉強いたしておるという段階でございます。
  77. 堂森芳夫

    堂森委員 外務大臣は五月の連休中にヨーロッパに行かれました。向こう外務大臣とお会いになったわけですね。そのときには、向こうからそういう話が、外務大臣同士が会って出ないはずはないと思いますが、どういうふうな感触を受けられましたか。内容を一々言えとは私は申しませんけれども、この問題について、あなたが会った向こう外務大臣はどういう考えを持っておると受け取られましたか、御答弁を願いたいと思います。
  78. 大平正芳

    大平国務大臣 私は三人の外務大臣しか会っておりませんから、ヨーロッパの外務大臣全部に会ったわけではないわけでございます。しかし、お目にかかりました方々総じて、たいへん重大な関心を持っておることは事実でございます。それから、これに対する反応のしかたにつきましても、それぞれニュアンスの差はあるわけでございまして、ある意味においてこれは当然かと思うのであります。  ただ問題は、まだ具体的な姿でアメリカ要請が出ていないわけでございますので、どのようにこたえたらいいかという問題は、具体的なテーマが出てこないと、コンクリートな形では出てこないはずだと思うのであります。いまのところ、おそらくニクソン大統領の訪欧というような場面あるいはそれぞれの首脳の会談等を通じまして、逐次明らかになってくるところに従って、それぞれの対応を考えようというような意味で受け取ってまいったわけでございます。
  79. 堂森芳夫

    堂森委員 もう時間がありませんので最後になりますが、私、一生懸命読んでみたのですが、語学力がないから、どうもなかなか解釈はむずかしいのですが、確かに大臣が言われるように、いろんな意味にとれるような非常に抽象的な文章が全体を支配しておるということは確かだと思うのです。しかし、考えようによっては、これはNATOの新版であるということも考え得るような印象もあるのです。そしてアメリカの新しい戦略体制日本を引っぱり込んでいこうという意図もあるようにもとればとれるように思うし、それからアメリカがEC諸国に対する一つの戦略、戦術のパートナーみたいにして日本を引っばり込んでいくという、私の邪推かもしれませんが、そういうことも想像できないようなこともない。これはたいへん重要な一つの提案である。したがって、わが日本政府としては、き然たる態度で臨んでいってもらうということを強く要望しまして、時間がございませんので質問を終わりたい、こう思います。
  80. 藤井勝志

    藤井委員長 石野久男君。
  81. 石野久男

    ○石野委員 大臣にお尋ねします。  先般の委員会で河上委員質問に答えて大臣は、北朝鮮のWHOへの加盟と秋の国連総会とは無関係でないという答弁をしました。   〔委員長退席、西銘委員長代理着席〕 そのことについて、一般には国連での朝鮮問題については従来とは異なる立場をとることを示唆したものだというふうな見方をしておりますが、大臣は秋の国連総会にあたって従来の態度と変わる立場で臨まれようとしておるのだろうかどうだろうか、そういう点について大臣の考え方をひとつ聞かしていただきたいと思います。
  82. 大平正芳

    大平国務大臣 朝鮮問題はやはり第一義的には朝鮮民族の問題でございまするし、たびたび申し上げておりますように南北の朝鮮が平和的、自主的な統一を目ざしての対話がいま行なわれておるということでございますので、朝鮮政策を考える場合にまずこの対話進展というものを見ながら対処しなければならぬと考えておるわけでございます。したがって、問題は、この進展について阻害要因になるか促進要因になるか、そういう角度から見ていかなければならぬと思いまするし、自主的だということは非常に大事なことでございますので、まずこの秋の国連総会におきまして朝鮮半島における両当事者がどういうような態度をそういう状況を踏まえて展開してまいるのか、このあたりが一番肝心なかぎになるのではないかと考えておるわけでございます。  それから第二に、WHOに対して北鮮が加盟したということは秋の国連との関連において無関係でないと私が申し上げたのは、WHOの加盟、その他多くの国が北鮮を承認し外交関係を樹立するという傾向になってまいりますことは、北鮮の国際的地位というものがそれだけ国際的に認められてきておることだと思うのでありまして、そういう政治的な事実というものはこれからの対国連政策ばかりでなく、全体の問題といたしまして影響力を持ってくるに違いないと私は考えておる、そういう意味で無関係でないと申し上げたわけでございます。  それから第三に、それでは日本は、秋の国連を展望してどういう姿勢で臨むかといういま石野委員からのお尋ねでございますが、この問題につきましてはこれから秋までの間にいろいろ検討すべきことは十分検討した上でわが国として姿勢をきめてまいらなければならぬ課題でございますので、いまの段階でこういう方針でいくのであるというようなことを申し上げることは時期尚早であろうと思いまするし、事実まだ検討が全部終わっておるわけでは決してないわけでございますので、残念ながらそのことについていまお答えする自由を持っていないことは御了承をいただきたいと思います。  ただ、朝鮮半島はわが国にとりまして非常に重大な関係のある地域でございまして、ここが平和で安定していただくということはわが国にとっては非常に大事なことでもございますので、朝鮮半島のそういう状況を招来することを希求する意味におきまして、われわれの朝鮮政策というものはそういう本筋からはずれたものであってはならないと考えております。
  83. 石野久男

    ○石野委員 大臣の対朝鮮政策というのは、やはり朝鮮におけるところの自主的平和統一に対して日本と朝鮮との友好問題をかまえる中で阻害要因になるような政策はとらない、こういうような御趣旨だと承知いたします。  そこでそういうたてまえから、去る二十六日に平壌で開かれた朝鮮総連の十八周年記念パーティーで朝鮮共和国の許淡外務大臣が、日本わが国に対する敵対政策を捨て南北朝鮮に対して同等の政策をもって臨むべきだというふうに言われておりますが、このことについて大臣はどのように所感をお持ちでございましょうか。
  84. 大平正芳

    大平国務大臣 わが国といたしましては、北鮮を敵視するなんということは毛頭考えていないわけでございまして、WHOの問題につきましても、申し上げたとおりWHOが世界保健機構としてできるだけ多くの加盟国を得て広範な充実した活動を展開することは望ましいことである。ただ、ああいうところで政治問題を取り扱う場所としては適当でないという理由でわれわれは延期の提案をいたしたにすぎないわけでございまして、これをもって直ちに敵視政策であるというようにとられるとすれば、それは思い過ごしであろうと思うわけでございまして、わが国体制信条のいかんにかかわらずあらゆる国々と友好親善関係を維持してまいらなければならぬし、それを増進していかなければならぬと考えており実際他意はないわけでございます。
  85. 石野久男

    ○石野委員 別にWHOの採決にあたってとった態度だけでなく、従来長きにわたり日本政府のとってきた朝鮮民主主義人民共和国に対する態度を総括する中でおそらく許外務大臣わが国に対する敵対政策ということを言ったのだと思います。私はやはり大臣が言うように敵対政策というものをとってないという政府立場を今後とも堅持するようにお願いしたいと思うのです。  それで、六月一日にジュネーブの国連欧州本部における正式なオブザーバーの資格を朝鮮民主主義人民共和国は国連から認められました。このことについて、今後秋の国連の場もありますし、今後いろいろと国際間におけるところの問題で共和国の問題が日本政府にとっても重要になってくると思いますが、このことについての大臣の所感をひとつ聞かしてもらいたい。
  86. 大平正芳

    大平国務大臣 ジュネーブにオブザーバーの事務所を設けられる、あるいは近くニューヨークで韓国その他数カ国と同様にオブザーバーの事務所を設けるというような手順になっていくのではないかと私は考えておりまして、事の成り行きといたしましてそういうことは十分考えられるわけでございます。私は冒頭にも申し上げましたように朝鮮半島が平和で安定するという方向に南北両当事者が自重した態度に終始されますように、朝鮮半島内部ばかりでなく、国際的なフォーラムにおきましても望ましいと考えております。
  87. 石野久男

    ○石野委員 大臣そういう所見を、私は非常に従来に増して前進したように思いますし、そのようにひとつ具体的な政策が行なわれるように期待したいと思うのです。  これは去る四月六日付の書簡でございますが、政府に対して「朝鮮民主主義共和国最高人民会議第五期第二回会議で採択した世界各国の国会と政府におくる手紙」というのが政府に来ていると思うのです。この手紙に対して政府はどのような立場をとっておられますか、ひとつお聞かせいただきたい。手紙は非常に長文でありますが、この問題の焦点は五つの条件を中心とした南北の統一の問題についてであることは大体おわかりだと思います。そういうところに焦点を合わせた御答弁をお願いします。
  88. 大森誠一

    ○大森説明員 ただいまお尋ねのございました書簡は政府には参っておりません。
  89. 石野久男

    ○石野委員 これは各国に対して出しておりますし、来ているものを受け取ってないのかどうか知りません。この文書は世界各国の国会と政府に送っておることでございますし、すでにもう四月六日でございますので時日もたっていると思いますが、事実やはり政府には来てないのですか。
  90. 大森誠一

    ○大森説明員 事実政府としては受け取っておりません。ただ、わが国国会の衆参両院議長のほうには来ているというふうに伺っております。
  91. 石野久男

    ○石野委員 まあおそらく共和国政府のほうでは送ったものと私は思いますけれども、いわゆる従来の政府立場から受け取ってないのかどうか知りませんが、それじゃ私はお尋ねいたします。  この手紙の内容とするところは、朝鮮の平和と平和統一を保証する先決条件になるとみなされるものとして五つの条件を出しているわけです。「わが方は、南北共同声明の精神にかなうよう北と南が政治、経済、文化、軍事、外交など、各分野にわたって多面的な合作を実現するための具体的な措置をとることを南朝鮮側に提議した。とくにわれわれは、わが国に現存する緊張状態を緩和し、軍事的対立状態を解消することが南北間に累積された誤解と不信をとき、信頼のふん囲気をつくり、朝鮮の平和と平和統一を保証する先決条件になるとみなし、武力増強と軍備競争を打ち切り南朝鮮からすべての外国軍隊を撤退させ、軍隊をそれぞれ十万あるいはそれ以下に減らし、海外から武器と戦争物資を持ち込まず、南北間に平和協定を結ぼうという五項目の提案をした。」こういうことにひとつ理解と支持をいただきたいというような手紙の内容になっていると思います。大臣、こういう問題についてどういうような所見を持たれておりますか。
  92. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように南北間には対話の場が持たれておるわけでございます。しかもそれは平和的にかつ自主的な方向で処理していこうという合意のもとに展開されていると承知いたしておるわけでございまして、そういった問題では対話のテーブルで討議されて南北の間の対話が実質的な進展を見ることを私どもは期待いたします。
  93. 石野久男

    ○石野委員 この手紙は政府には来てないと申されましたが、衆参両院議長のほうへは来ているようでありますし、いずれやはり対朝鮮政策を立てる上につきましては政府としても全然無関心であってはならないのだろうと思います。いま手紙を手にしてなかったのでしたら、衆参両院の議長に来ている手紙を一度検討されて、当然秋の国連ではこういう問題を中心とした論議が行なわれることだと思いますし、ひとつそういうことについて外務省としては配慮をすべきだと思いますが、大臣はそれについてどういうふうにお考えですか。
  94. 大平正芳

    大平国務大臣 両院議長のほうに来ているということでございますので、お伺いしてみたいと思います。
  95. 石野久男

    ○石野委員 現在、太完善韓国副総理兼経済企画院長官が来日をせられて、田中総理はもとより大平外務大臣も太副総理との間で面談をしておるように伝えられております。新聞報道によりますと、太副総理はいろいろと経済援助の問題について強い御要望があり、それらの点について総理並びに大平外務大臣はそれぞれやはり積極的に協力する体制をとっているようでございます。新聞によりますと外務省筋では大体太副総理の要望にこたえて四つの項目ですね、韓国が現在進めているセマウル運動を支援する農業援助、浦項総合製鉄所第二期工事に対する援助、三番目はセメント積み出し港、墨湖の港湾施設整備に対する援助、それから四番目はすでに話し合いがまとまっている商品援助の早期実施、こういうようなことで三、四千万から五千万にのぼるところの援助話し合いを進めて、特に大平外務大臣はその援助要請に対して両国の事務当局で話を詰め結論を出すように積極的な指示をなされておるようですが、これらのことについてひとっこまかい詳細な、といってもまあ時間がありますから大綱についての折衝内容を聞かしていただきたい。
  96. 大平正芳

    大平国務大臣 日韓の間には御案内のように経済協力案件が若干進行いたしておるわけでございまして、このやり方は両国の政府の間で相談をいたしまして、場合によっては両国の閣僚会議に持ち出されて討議の上、固めてまいる措置を例年やってきたわけでございます。副総理がお見えになりまして、いま石野さんが御指摘になりましたような問題につきまして日本側の協力を要請されたわけでございますが、これは既定の協力計画との関連、わが国の経済協力政策のフレーム、わが国の協力財源、その他いろいろ検討すべき問題がございますので、十分事務当局において検討するようにということを指示したわけでございまして、具体的にこの会談を通じてこれがきまった、あれがきまったというような性質のものではございません。
  97. 石野久男

    ○石野委員 向こうからの要請と、それを検討してどういう結果が出るか、それは、作業が進まない過程ではそうだろうと思いますが、韓国側の要請もトータルにしますとどのくらいの額になるのですか。新聞の報道するように、四千万から五千万ドルというところでございますか。
  98. 大平正芳

    大平国務大臣 その金額でございますが、たとえば商品援助というのは、すでに第一回の五千万ドル分で未済のもの、具体的にいうと、経済協力基金担当の分がまだ一部しか終わっていないのを促進するというような意味でございます。その他のものにつきましては、まず、総ワクがきまらなければいけません。それは年次別の支出がどういうことになるかで金額が算出されてまいるわけでございますが、そんなにまだ固まったものではございません。また、わが国の経済協力計画との関連におきましては、外資分、つまり日本援助するというのは韓国にとって外資になるわけでございますが、内資分、すなわちウォン資金をどの程度まで見るかというようなむずかしい問題もございまして、経済協力政策のフレームの中でどのように配慮したらよいかというような点もあわせて検討しなければなりませんので、具体的な金額がどういう見当になるかというようなことにつきましては、即座に御返答いたしかねます。
  99. 石野久男

    ○石野委員 双方、折衝の内容になることだと思いますから、いますぐ返答のできないこともあろうかと思いますけれども、しかし、韓国側の要望はもうすでに出ていることだろうと思いますから、韓国側の要望はどの程度のものなのかについては、大臣からのお話は聞けるだろうと思います。今度どの程度のものを太副総理は要望してきておるのですか。
  100. 大森誠一

    ○大森説明員 四つの案件につきましてただいま折衝が行なわれている最中でございますが、たとえば、セメントの積み出し港整備というような例をとりますと、その整備をいかにしていくかというような計画については、韓国側からも話がございましたけれども、それでは具体的に幾らの援助を必要とするかというような数字については、必ずしも先方からまだ具体的なものは出てまいってない段階でございます。
  101. 石野久男

    ○石野委員 この場合、韓国に対する日本援助の問題で、援助をするのはドルで援助するのですか、何で援助するのですか。
  102. 大森誠一

    ○大森説明員 それぞれの援助項目につきまして、ものによりましては、日本から調達して提供するというものもございますし、必ずしもいかなる通貨で援助を与えるかということは、こまかい詰めをいたしませんと、どちらとも言いかねるというところでございます。
  103. 石野久男

    ○石野委員 大臣、いまのような事情で、援助のしかたは、こちらで調達して現物で持っていくにしても何にしても、結局援助の換算を何でするかは、終局的にはきめなければならぬだろうと思いますが、それは何で換算するのですか、従来からいえばドルでやっておったと思うのですが。
  104. 大森誠一

    ○大森説明員 最近におきましては、たとえば了解交換公文できめます場合、円を基礎とするということが多い傾向があります。
  105. 石野久男

    ○石野委員 そうしますと、今度の韓国側の要請に対する援助は、主として円で援助という形、そういう方向へ持っていくことなんですか。
  106. 大森誠一

    ○大森説明員 先ほど御説明申し上げましたように、わが国から通貨をそのまま、プラントの形で、先方に渡して、そして先方が買い付けるということには必ずしもなっておりませんので、話をいたします場合には、円建てで話を詰めていくということが通例でございます。
  107. 石野久男

    ○石野委員 これは、時間があまりありませんから、私はあとでもお伺いしますが、円かドルかという問題は、最近ドルの国際市場における価値がずいぶんと変わってきております。そういうことで私はちょっとお聞きしたわけです。おそらくこの間の経済協力の協定というのは、表示はほとんどドルでやっていたのだろうと思います。その協定と援助する内容との間のうまくつき合いのできるような具体的な方策というものをわれわれ考えなければいけないわけですね。ドル建てになっておる場合に、ドルが今日のように非常に価値が低下しておる。実質的に購買力に見合うものということになったら、ドルはものすごく大きいものになってしまうだろうと思うのです。これらの点は、政府がただ任意にきめられたのでは困ると思う。条約でちゃんときめられたものを任意に処置されたのでは困るので、そういう点で私は聞いておるわけですから、大臣、これらの問題に対する処置のしかたについての考え方だけちょっと聞かしておいていただきたい。
  108. 大平正芳

    大平国務大臣 ドル価値が安定していないということは、これは各方面に支障を来たしているわけでございます。貿易をやる場合はもとよりでございますけれども、とりわけ経済協力のもとに長期にわたった仕事をやる場合におきまして、その場合にどの通貨を基準にして考えるかということは、その計画の安定性から申しまして、非常に大事なことでございまして、先ほど事務当局からもお話がありましたように、最近はどうも円建てを各国が希望してきておる傾向にあることは事実でございます。せっかく援助いたします上におきまして、その計画を実効あらしめる意味から申しまして、円建てでまいりますことが適切であるという意味合いのものでございますれば、あえてこれを拒むという必要は私はないのではないかと思います。
  109. 石野久男

    ○石野委員 円建てを拒む必要はないけれども、経済協力協定の中で、たとえば本年度はどれくらいというのは大体グローバルな形での額をきめておるだろうと思うのです。そういう問題について、円とドルとの価値がたいへん違ってくる。ドルの購買力が非常に減った。しかし、援助するのだから、実際に仕事をさせてやらなければいかぬだろうということで、円で援助して、それが換算のときドルで換算するとたいへんな違いが出てくる。ことに金一オンス三十五ドルで計算していたとき、それがいまのように百二十ドル、百三十ドルというような形になってきて、ドルと円との価値で——円でも最近二円だか三円だか落ちて、二百六十一円か二円になってしまっている。そうしますと、この内容が非常に問題になってくるだろう思うのですよ。援助することと協定の内容との食い違いをどのように政府は対策を立てていくのかということをわれわれはやはり注視しなければいけませんので、そういう意味でこの間の政府考え方をひとつ聞いておきたい。大臣の言うように、せっかく援助するんだからそれは成功させてやりたい、だから円建てでいくんだ、こういうことは必ずしもそう簡単に経済協力の問題との何では処置できないだろうと思いますので、ひとつ大臣に所見を聞かしていただきたいと思います。   〔西銘委員長代理退席、委員長着席〕
  110. 大平正芳

    大平国務大臣 問題は、日本だけでやる場合は格別問題はないと思いますけれども、あるいは世銀等との抱き合わせで考えるような場合にパリティをどうするかというようなことになりますと、いま石野さんが御指摘のような問題が出てくると思うのでありまして、これはわれわれいかに議論してみましても、ドルその他通貨の安定がないと、そごなくやってまいるということは不可能なことなんでございまして、その場合ケース・バイ・ケース、具体的な場合に応じてその計画を実効あらしめるということを中心にやはり考えていくべきじゃないかと思うのであります。現在計画当局あるいは受益国側もそういう考え方で将来のことも十分頭に置きながら計画を進めていく傾向が強まってきておることは当然のことと思うのでありまして、よそさまの価値が落ちるから日本はやり過ぎたというようなこと、必ずしも私は日本としては問題にすべきものではないのではないか。日本が結局やるかやらぬか、どこまでやるかということを日本政府としてはきちんと踏まえてかかる必要が私はありはしまいかと思います。
  111. 石野久男

    ○石野委員 私はドルの不安定性というものと、それから韓国を援助する日本の態度との間に実効をあらしめようという意図から従来ドル建てならドル建ての話し合いをし、しかも協定文をつくったりしている場合に、それはどうでもいいんだという、実際に効果をあらしめることが本意なんだからどうでもいいんだということにはならないだろう。だからそういうことになれば協定を変更するとかなんとかいうようなことを具体的に国際間の間でやらにゃならぬだろうと思う。そういう処置があってでないと、ただ恣意的にこれはいいんじゃないかというようなことでやられると、協定文や何かで国会などの審議を通さない場合は別ですけれども、通しているような場合では、これは非常に国会を無視する形になってくる、やはり注意すべきだろう、こう思います。私はその点はあとでまた大臣の答弁をいただきたい。  時間があまりありませんので次にお聞きしますが、この十日に金鍾泌韓国首相が来られる。それで総理並びに外務大臣はそれぞれ金鍾泌首相との間に十三日に大平さんお会いになられるようですし、十四日には総理と会われる予定です。これは金鍾泌というと、大平さんとの組み合わせばなかなか古い組み合わせで、日韓条約の一番根回しをしたのは金・大平会談だといわれている。私どもこのいまの時期に金鍾泌、大平会談というものは非常に意味深長だというふうに思ったりしているのですが、どういうような内容がこの金首相との間に大平さんお話しになられるのだろうか知りたいわけですよ。やはりいろいろありましょうけれども、おいでになる主意は何で、どういうようなことが主要な話題になるのだろうか、この際ひとつ国会に対してお聞かせいただければけっこうだと思います。
  112. 大平正芳

    大平国務大臣 田中内閣ができましてなるべく早く金総理訪日の希望を持たれておったようでございますけれども、そういう機会が今日まで恵まれなかったわけで、今回ヨーロッパ方面を旅行されている途次に、東京にストップされた機会に表敬いたしたいということでございます。  どういうお話があるのかというそういう話は私は聞いていないわけでございます。総理大臣と会うということ、外務大臣と会うということ、きわめて自然なことでございますので、特別に意味があるわけではございません。
  113. 石野久男

    ○石野委員 大臣は、私の質問時間もあと五分しかないので、実際のことをわかりませんで通せばそれでも通っちゃいますけれども、しかしこの時期に金首相が日本に来て総理並びに外務大臣に会うということについては、やはり国際的にも非常に意味があると思いますし、日本の朝鮮政策の上において、南北の平和的統一の問題をかかえて、われわれはなるべく阻害しないように前進の方向で話を進めていかなければならぬと思っているときですから、金首相がおいでになったときに、日本政府並びに特に外務大臣がお会いになるときにはそういう方向での話をされるものだろう、こう思うのですよ。だからそういう点でひとっこれはどういう話になるのか、私はわかりませんが、ひとつかつて日韓会談の根回しをしたような陰険なやり方はしないようにひとつ私は頼みたいと思って、大平外務大臣から本意のあるところをひとつ聞かしてください。
  114. 大平正芳

    大平国務大臣 いろいろいやなことばもたくさんありますけれども、陰険ということばは一番いやなことばで、外交をやる場合におきましてゆめゆめそんなことをやっちゃならぬと戒めておるのでございます。きわめて公明に正大にやってまいるつもりでございます。
  115. 石野久男

    ○石野委員 そうあっていただきたいと思います。  共和国との間のやはり最近における経済交流は案外に前進の方向をたどっていると思うのです。私はやはり朝鮮との友好関係を進めるために日本は善意な形で前向きでやっていくということになれば、やはり民間の間に行なわれている経済交流がいい方向へ進んでいる場合、政府は積極的にそれを支持し、あるいはそれをいい方向へ進めていくような政策をとるべきだろう、こう思います。この際、経済交流とか人的交流というようなものについて政府はどういうような立場で具体的にそういう問題に対処される所存でございますか、それをひとつ聞かしていただきたいということが一つ。  それからもう一つは、いま共和国のほうの対外文化協会の金寛愛という方が団を率いて訪日されるような希望があるわけでございますけれども、こういう問題についても両国の友好交流を進める上からいって、外務省は積極的にそれをやはり受け入れるような立場であってほしいという念願を持っているわけですが、そういうことについて外務大臣の所見をひとつ聞かしていただきたい。
  116. 大平正芳

    大平国務大臣 かねがね申し上げておりますように、北鮮との交流につきましては、学術、スポーツ、文化、経済等の領域を漸進的に拡大してまいりたい。政治的な交流はまだ時期尚早であるという考え方で終始してきたわけでございます。それで御案内のように人の交流、経済の交流も、スポーツ等の交流も漸次拡大してまいっておりますことは石野さんも御承知のとおりでございまして、今後もそういうことをベースにしてやってまいるつもりでございます。  第二の、入国の問題でございますが、これは私の所管ではないわけでございまして、法務大臣といたしましては事外交に関しては外務省の意見を一応聴取されるという立場におられるわけでございます。したがって、まず法務省の御判断というものが第一でございますが、いま冒頭に申し上げましたような基本的な姿勢というものを踏まえた上でケース・バイ・ケース法務省と御相談をして対処したいと考えております。
  117. 石野久男

    ○石野委員 時間がありませんので、これで終わります。
  118. 藤井勝志

    藤井委員長 渡部一郎君。
  119. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私はこれまで二回にわたりましてお話をいたしました海外子女教育の問題につきまして最初に少しお伺いをしたいと思っております。  最初にアメリカ局長にお答えをいただければいいんじゃないかと思いますが、現在の状況についてまずどう認識されているかという問題であります。  御承知のとおり、海外子女教育の問題についてはたいへん大きな問題点がたくさんあるわけでございます。日本のたくさんの外交官あるいは商売をなさっている方々あるいは一般的な教育者、その他の文化人等が海外に行かれていろいろ仕事をされておるわけであります。その子女が海外に行かれて教育問題で非常に困惑をいたしております。その問題幾つかあげられるわけでありますが、まず集約的に一番その中でも問題が多く起こっているのがアメリカであります。これはアメリカ当地における学校教育は充実しているわけでありますが、日本語を忘れてしまうとか、あるいは日本国内に引き揚げてまいった場合に日本の学制に適応ができなくなるとかという問題があるわけであります。そこでこういう問題点について最近アメリカ局長は十分の情報を集められたし、御自分でもお行きになった、話も聞いてきたとおっしゃっておられたのを伺ったのでありますが、まず総括的にひとつお伺いしたい。
  120. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 日米関係が密接になればなるほど日米間のいろいろな意味の交流が深くなってまいりますが、それを反映いたしまして、日本からアメリカにいろいろな仕事を持って行かれる方が非常にふえております。その関係でアメリカの各地で駐在して仕事をしておられる方々の子女の教育の問題というのが非常に重要性あるいはむずかしさを増しているということは重ねて御指摘のとおりでございます。私自身もワシントンに在勤した経験がございまして子供の教育のことを直接の問題として味わわされた経験もございますし、在外で働いておりまする日本政府の出先のみならず、民間の会社の方々の実際上の家庭面における一番の問題は子女の教育だと思います。しかしながら、従来は必ずしもその面に対する手当てが十分に行なわれておらなかったわけでありますが、近年はその問題についての重要性の認識が各方面で深まってまいりまして、子女教育のための財団も設置されて積極的な協力あるいは応援をいただいているような状況になっておるわけでございますが、数がふえてまいりますと従来補習校、いわば寺子屋式の補習校だけでやれておったものが、そういう状況では済まなくなってくる。そこで数の少ない場合には補習校でがまんをし、またがまんをせざるを得ない状況であったものが、子女の数がふえてまいるに伴いまして補習校そのものをもう少し組織的なものにしなければいけないという要望が一つには出てまいると同時に、補習校ということでは、将来日本に家族を連れて帰った場合にその子供たち日本の学校との連携の問題が非常にむずかしいということで、これを全日制のちゃんとした学校に切りかえるべきだという声も一部には起こっているようでございます。したがいまして、この各地の実情に応じて補習校をどのように整備することがいいのか、あるいはまたさらに数がふえてまいりました場合に、全日制ということを考えるべきかという非常にむずかしい局面がそろそろ出てきている、こういうことであろうかと思いますが、一番大きな問題を持っておりますのが、何といっても一番日本から赴任しておりますいわゆる在留邦人の数が多いニューヨーク周辺であろうと思います。ニューヨークにおきましてはかねて日本人会、日本人商業会議所あるいは総領事館、いろいろな関係のところでこの問題についての具体的な検討が行なわれてきておりますけれども、必ずしもこうすべきであるというまとまった意向といいますか、方向というものが出てきておらないという状況でありまして、これをどうすべきかということが一つの大きな問題になっているわけだと思います。  そこで現地のほうからこういう実情に照らして日本の教育の専門家を派遣していかなる仕組みで在留邦人の子女に対する日本語教育を実施すべきかということについて専門家の立場としての検討を行なってもらいたいという強い要望がございました。これを受けまして外務省並びに文部省で相談の上近く専門家の派遣ということが具体的に検討されているというふうに私承知しておりまして、そういうふうな形でこの問題が具体的に動き出すことを大いに希望し、また期待しておる次第でございます。
  121. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 外務大臣は私が四月の二十五日に大臣から御答弁をいただいた内容の中で、この問題は非常に大事な問題である、明かにそういう御見解を示されました。アメリカ局長はその大臣の見解については御存じですか。
  122. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 伺っております。
  123. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうしましたら、もう少し——いまのお話は、もうすでに私が問題提起したところであります。ただいまのお話は一般論を軸答えられました。それじゃなくて、もう少し具体的なことを言っていただかないと話が進まないのじゃないかと思います。  で、いま補習校は先進諸国につくられておりまして、三十校、それに三校プラスして三十三校つくろうというような計画になっております。ところがアメリカ一国でも補習校はそんな程度ではもう話にならぬ。アメリカ一国でも十や二十は十分要るわけであります。開発途上国にいま三十二校、これは全日制の学校がございます。いま補習校から全日制の学校へかえたいという希望があるとおっしゃいましたが、アメリカではそういう希望はほとんど出ておりません。現在アメリカで要求されているのは、補習校自体が非常に程度が悪かったり、あるいはお金が足りなかったり、あるいは教員を補助してもらいたかったり、そういう要望書がニューヨークから総領事館の名前で意見が出ているのはお持ちだろうと思います。またワシントンにおいてはワシントンの在留邦人から全部かたまった書類が各大臣あて送付されておりまして、前回委員会で私読み上げましたから御承知いただいたと思います。じゃそれに対してどうするか、これはもう少ないのが当然だからふやそうということに向かうのか向かわないのか、その辺の御意向を承っておきたい。私はそう思っているのですが、概論としては大臣がすでにこの問題については前向きに処理する強い方向を示しておられるのですから、アメリカ局長としては、アメリカ国内のそういう状況をどう考えておられるか、この辺をはっきりお答えいただきたいと思います。
  124. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 具体的な御指摘でございますので、まずニューヨークから申し上げたいと思います。  ニューヨークにつきまして、私、全日制の要望が出ておるということを申しておるわけではありませんで、全日制にしたらという希望も一部の方はお持ちのようでありますし、また補習校をもっと強力に整備するという意見をお持ちの方もあり、またもう一つの考え方として、アメリカの学校で日本語を教えるという仕組みも考えられないかという意見もございます。  こういうふうに数がふえてまいりますと、初等教育の場合と中等教育の場合とでまたいずれも考え方が違ってまいりましょうし、日本に帰ってからアメリカにおける教育をどういうふうにつないでいこうかということについて、各自の立場からいろいろな注文があるようでございます。  そこで、現地の実情に照らしまして、どういう方法が一番実際的であり、また効果的であるのかということについて専門的な立場から調査してもらいたいというのが、現地からの要望でございます。これを受けまして、近く新学期から調査のための専門家を送ってもらうように現在人選が行なわれているというふうに、私承知しております。  もう一つ、ワシントンの問題でございますが、ワシントンにつきましては、従来大使館の建物の一部を週末に利用いたしまして、細々とした補習が行なわれております。数がふえてまいりますうちに、もう少し補習の中身を充実させたいという現地の関係者のきわめて強い要望がございまして、これを受けまして、九月からはワシントン市内の公立学校の建物を借りて、補習事業を具体的に整備、強化させていきたいという措置がすでにとられまして、財団のほうの御協力を得て、それに必要な経費の手当てが行なわれているというふうに承知しております。
  125. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 アメリカ局長、ひとつこの問題について精力的に取り組んでいただくように御要望したいと思うのです。特に、アメリカからの地域の話を私は聞きましたので、いま答弁になった趣旨と私が聞いた話とはだいぶこまかいニュアンスの違いがあります。これは、いまこの委員会で詰める必要は別にないと私は思いますから、後ほど申し上げますので、十分御検討を仰ぎたい。よろしくお願いします。
  126. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 将来におきまして、子女教育問題は領事事務所の所管でございますが、アメリカ関係非常に数が多いし、また重要性を増しておりますので、アメリカ局といたしましても領事事務所と密接な連絡をとりまして、この問題に取り組んでまいりたいと思います。
  127. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 アジア局長にお伺いしたいのでありますが、おいでになっておりますか。——じゃ、欧亜局長アジア局と欧亜局が、おのおの補習校でなくて、実際には全日制の学校の問題が主体になって、問題点が起こっておるように了解しております。これについてどういうふうに考えておられるか。ひとつ欧亜局長から御答弁いただきたいと思います。
  128. 大和田渉

    ○大和田政府委員 一般論になって恐縮でございますが、やはり在留邦人の子弟の教育という問題では、アメリカでもあるいはヨーロッパでも同じ問題でございまして、主としてヨーロッパでは全日制の学校の設立あるいは運営が行なわれておりますが、やはり要望にこたえて充実していきたいというように考えております。  具体的には、私もソ連におりまして全日制の学校を経営した経験もございますけれども、やはり父兄の要望というものはアメリカにおける要望と似たようなものでございますので、同じように考えたい、こう考えております。
  129. 大森誠一

    ○大森説明員 アジア地域の在留日本人子女教育の問題につきましては、比較的早くから取り組んでおりまして、またニューヨークなどに比べますと比較的人数もふくれていないということなどもありまして、地域によってはかなり前から整備されていたところもございますが、最近また子女の数も、在留邦人の増加に伴って従来よりはだんだん大きなものになってきているというところもありますので、そういうところにつきましても、従来整備されている比較的小規模な地域に劣らないよう、私どもといたしましても十分努力して、その拡充整備につとめたいと存じております。
  130. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 では、まあ一応代表して三局のお話を伺ったわけでありますが、大事さはわかってくださっておるのだろうと思います。  それでもう一つ、文化庁と文部省の方、来ておられましたら、文化庁次長がお見えのようでありますから……。  帰って、今度は、海外で問題が起こっているもう一つの重大な理由は、日本国内の学生の方々が、お帰りになった時点において、もとの学年にうまくはまることができない。あるいはある者は言語障害を起こしておって、その言語障害を克服するための施設、設備等がないため、非常なしわ寄せを生ずる。あるいは年度、学期が違っているために、日本の四月になったら試験をするとか、九月になったら試験をするとかというような、試験期をきめられている公立系の学校には、まず編入が非常にむずかしいというような、幾つかの状況があがっております。もちろん海外に行っているからといって、日本に帰ってきて有名校にすらっと入るということを要求するのは、それは筋違いであると思いますけれども、あまりにも不適正な状況にあるのではないか。  私の考えるところでは、帰ってこられた方々が少なくとも日本の学制に適応できるようなシステムというものを、国公立関係の学校の中で少数校設けられ、そのショックを防ぐ、ジョイントするだけの何かのシステムをつくり上げるべきではないかというふうにも考えられるわけであります。  現在どうなっているか、そしてまたそういう意見に対してはどう思うか。文化庁の方あるいは文部省の方にひとつ御意見を伺いたいと思っております。
  131. 清水成之

    ○清水政府委員 いまお尋ねいただきました件は、海外子女教育の問題といたしまして、非常に重要な点であるというふうに感じております。  お話の点でございますが、これは小中の場合とそれから高等学校の場合、それから公立の場合と国立及び私立の場合と、また考え方というか、スタンドポイントを少し変えて考えなければならぬ、かように考えているわけでございます。  しかし、先生がおっしゃいました冒頭の言語障害等によります自閉症等にかかる、こういう問題につきましては、すでに海外子女の教育の研究協力校の研究結果からも報告されておりまして、これをどういうふうに持っていったらいいかということにつきましては、なおその研究校で検討中でございますけれども、一つの方法といたしまして、現在とられておりますのが、海外子女教育財団と、それから御承知のとおり、端的に申しまして、ファミリースクールというのがございます。これは教育心理学者の波多野先生がやっておられる学校でございます。そこで、帰ってきた場合に、日本語をある期間教えてからそれぞれの正規の学校へ行くというのが、海外子女教育財団で一つとられております。  それからもう一つの研究結果からまいりますと、これは東京都の渋谷の区立のほうでの一つのいい例でございますけれども、初めから別のところへその生徒だけ入れてしまうというのはかえって日本の生活、風土への復帰がおくれたりあるいは日本の児童生徒との人間関係、こういう点からどうか。そこで普通の学級に入れまして、そして在来からおります日本人のこちら側の児童生徒との人間関係もはかりつつ、日本語等につきましては特別教育活動として別個に教えてまいる。こういうほうがあとの運営がうまくいくのではないか。  それから一方そういうことによりまして、特別教育活動をやります場合に、頭から日本語、日本語ということではなしに、せっかく身につけてきました英語なら英語等のものを加味しながら、徐徐に日本語に特別教育活動で持っていくというのが効果があるのではないか。こういうことがとられておりまして、そういう点が一つ教育方法論として推奨をされておる点でございます。  それから行財政上の措置の問題でございますが、国立につきましては先生御承知のように小学校、中学校について国立の東京学芸大学の大泉のほうに特別学級を小学校につきましては四、五、六各学年に一学級ずつ定員十五名、それから中学校につきましては、一、二、三学年それぞれ各一学級定員十五名、それから神戸大学の付属の住吉中学に一学級一、二、三、これは中学でございますが、設けておりまして、九十名のワクを持っておるわけでございます。  小中につきましては以上でございますが、なお私ども立場としましては国立のほうで付属で、たとえば小学校等をもう少しふやせないかということをいま所管の大学局と相談、検討中でございます。  それから、いまお話が出ておりましたが、小中の場合におきましては、これは帰ってきた場合義務教育がもろに適用されるわけでございまして、私どものほうといたしましては昭和三十五年以来県教委に向けまして、公立の場合でございますが、帰ってきた場合には原則としてその年齢相当学年に編入すべきものである、そういうたてまえである。ただしいまお話しのように、言語等の問題で困る場合には保護者と相談の上、ある時期低学年に入れるとか、あるいはまた別のところにやってまたもとの年齢相当のところに戻るとかいう措置をとってもらいたい、こういうふうに義務教育につきましては指導をいたしております。  それから高等学校の場合とそれから国立、私立の場合につきましては、高等学校、公立も同じでございますが、これは義務教育でございませんので、試験を取っ払えということはこれは私ども立場としてもまた制度としても申し上げにくい点でございます。それで、しかるべきところへお入りをいただくということでございますけれども、最近に至りまして、ことしからとった措置としましては、現地の中学三年なら三年が、現地からこちらの本土の高等学校に申し込みをいたしまして、直接選考試験を受けて入学を許可する、こういうようなことを始めたわけでございます。若干の県の公立につきましてはそれが実施をされました。  それからまた帰ってきた場合の途中進学の場合でございますが、都立につきましては、普通でございますと夏休みにこれまで欠員がある場合にやっておったわけでございますが、特殊事情のある場合につきましては、まだ十分ではございませんが、年三回試験をやって入れる、こういうふうに協力をいただいておる点でございます。  しかし高等学校の受け入れ体制につきましては、御指摘のとおり十分でもございませんし、また国立大学にそういう受け入れがないということで、これまた何とか実現をしたいという意欲のもとに大学局と相談をいたしておるところでございまして、今後とも御鞭撻をいただきまして充実を期してまいりたい、かように考えております。
  132. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 いま非常によくまとめてお話をしてくださいましたので、あと海外に行かれる方々が子女をこちらに残していかれるシステム、イギリス等では非常にそういう点が完備しているようでありまして、各種類の全寮制高校あるいは中学等があるようであります。ところが日本の場合は非常に数が少ない、というよりも不十分といいますか、こうしたことは明らかに日本国内措置の問題になってくると思われるわけでありますが、現状とこれとはどうなっているか、その辺ちょっとお聞かせいただきたい。
  133. 清水成之

    ○清水政府委員 その点もいま御指摘の実情でございますが、この小中学の児童生徒の場合に親と離れて相当期間住むことが子供の成長上いいかどうかという問題が一つ教育論としてはあろうかと存じます。  高等学校の場合につきましては、これまた地区的に見えますとある程度京浜地区とか阪神地区とかというところが該当者は多いわけでございますが、現在都立の秋川高等学校が、これは海外子女だけとは銘打っておりませんが、国内でも転勤する場合、また海外へ行く場合の問題などで全寮制の高等学校が設置をされておるわけでございます。そして海外へ行かれる方の高校生もここで希望者につきましては試験の上受け入れをしていただく。  それから私学の場合に、中学校あるいは中高一貫のシステムをとっておられるところがありますが、私学の場合に、私どもいま承知しておりますのでは数校そういう寮を持っておられるところがございます。私どもとしまして、いまのあれで高等学校の場合どの程度残られるか、あるいはまた現在やっておっていただくところでなお不十分であるかどうかというような実態把握の点が、率直なところ、残念ながら実はまだ十分しておりません。これらを見きわめた上、打ち立てるべきものがあればそれに即応した対策を考えなければならぬ、かように考えております。  それから小中の場合ですと、先ほど来ちょっと申しました低年齢の者につきまして親と離れて住むのがほんとうにいいかどうか、この点の教育論の詰めをなおさせていただきたい、かように考えております。
  134. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 時間がもうございませんものですから、大臣にひとつ、私は、先ほどから問題になっている点はこの間から何回か申し上げております。外務省として領事移住部が御担当していただいておって、また文化庁あるいは海外子女教育財団等がお話をいろいろ担当される、それは明らかに私もわかってきたわけでありますが、これに対して一段と前向きの前進した姿勢で何かしなければならぬ。そこでこれに対してどういう対案をつくるか、これは私たち議員としても当然推し進めたいとは存じますけれども、大臣から領事移住部なり文化庁なりにお話しいただいて、こうした問題についての一歩前進の企画なりプランなりをおつくりいただけないか、私はこう思っておるわけであります。この点はいかがでございますか。もしできるのであったら、大臣からお話をしていただいて一段と進めていただいて、その案をわれわれに見せていただきたい、こう思っておるわけであります。
  135. 大平正芳

    大平国務大臣 長い間にわたりまして子女教育という、じみながらしかし重要な問題につきまして詳細にわたりまして御質疑をいただき、また鞭撻を賜わりましたことに対して感謝をいたします。  いま仰せのとおり、実態をまずきわめなければなりませんし、要望を的確に整理いたしまして、一歩前進をいかにしてはかるかということにつきましては、領事移住部長以下に指示いたしまして、関係当局の理解と協力を得ましてそのことがなるように促進をいたすつもりでございます。今後とも一そう御鞭撻を願いたいと思います。
  136. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それでは委員長に申し上げたいのでありますが、先ほどの当委員会理事会のお話し合いの際、委員長からも、この海外子弟教育の問題の重要性にかんがみ小委員会をつくる旨の御相談がございました。私は非常にうれしく存じているわけでありますけれども、次同等においてこうした問題が当委員会委員の各位の御賛同をいただきまして、一段と当委員会においても前進されることを希望したい、こう思っておる次第でございます。よろしくお計らいのほどをお願いいたします。
  137. 藤井勝志

    藤井委員長 ただいま渡部委員からの御発言の海外子弟教育につきましては、けさ方の理事会でも御相談をいたしたいきさつもありまして、正式な手続を経て前向きで具体的な結論の出るように努力いたしたい、こう考えております。
  138. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 どうもありがとうございました。以上で終わります。
  139. 藤井勝志

    藤井委員長 永末英一君。
  140. 永末英一

    ○永末委員 私たち民社党はあすから四日間にわたりまして沖繩の現地調査に参ります。それを念頭に入れつつ、ベトナム戦争停戦後のアメリカアジア戦略について、大平外務大臣はどう考えておられるかということを伺っておきたいと存じます。  この前、先週のこの委員会で、リチャードソン新アメリカ国防長官は同盟国との約束を守る新しい方式としてタンデム方式、すなわち二頭立て縦引き馬車方式なるものを提案をいたしました。これについては外務省、はなはだあいまいな御答弁でございましたが、一週間たっておりますので、そういう方式でアメリカアジア戦略に臨んでおるんだということは、大臣、本日現在は御確認いただけますか。
  141. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 具体的に縦列二頭立て馬車式戦略ということについて御質問がございましたので、その点からまず御答弁さしていただきたいと思います。  御指摘のリチャードソン国防報告の中に、ワーキング・イン・タンデムという表現を用いまして、同盟諸国との協力関係の重要性を強調している個所がございます。そのワーキング・イン・タンデムという表現をどういうふうに読むかということにつきまして、これをしいて翻訳いたしますと縦列二頭立て馬車式の協調という表現が出てくるかと存じますが、この場合に、縦列二頭立て、それじゃ先頭馬はどこで二番目の馬はどこか、そういうふうな点がこの前の御議論で一つの焦点になっていたかというふうに伺っておりますが、単純に考えますと、このワーキング・イン・タンデムという表現はどちらが前、どちらがあとというよりは、むしろ同盟諸国との協力関係、協調関係を大いに言いたがっているものであるというふうに読めるわけでございまして、この前後のコンテクストを見ましても、自由世界の同盟各国からの最大限の強力な防衛に対する協力を促し、また同盟諸国と相互戦略方式の推進について協議していきたいということもうたっておる、こういう文脈において御指摘の点を読んでいくべきじゃなかろうか、こういうふうに考えております。  それから、ベトナム以後のアメリカアジア戦略につきまして、私どもといたしましては当然強い関心を持っている点でございまして、リチャードソン国防長官の国防報告は、一月に出ましたレアード前国防長官の国防長官としての最終報告にうたわれている考え方をおおむね踏襲しているものというふうに思われますし、またリチャードソン国防長官のあとを受けまして国防長官の職につきましたシュレジンジャー新長官がどういう方針をもってこの問題に対処するかということにつきましても当然の深い関心を持っておりますけれども、シュレジンジャー新長官自身は国防長官に就任して以後、国防方針についての具体的な考え方を公にいたしておりません。したがいまして、新長官がいつどういう内容の考え方を述べることになるのかということについても深い関心を持っております。  なお、五月二十九、三十日、両日開かれました安保事務レベル協議におきましても、けさほどの御答弁で申し上げましたように、アジアにおける政治安全保障情勢ということも議題の一つとして日米間で意見の交換を行なったわけでございまして、基本的には米側はニクソン・ドクトリンを基軸にして引き続いてアジアに対する戦略を考えていくということが言えるかと存じます。
  142. 永末英一

    ○永末委員 タンデムということばは協力してということであろうと言われましたが、並列二頭馬車でしたらアプレストということばを使うわけで、タンデムということばを使っているところに私は意味があると思うのです。ニクソン・ドクトリンは、リチャードソン報告の二三ページによりましても、はっきりとある同盟国に対する侵略に対してはその国のマンパワーで当たれ、こうなっているのですから、先頭の馬は同盟国であって、アメリカ自身であるまい、こう思うわけです。そう読みますと、新しいシュレジンジャーのはわかりませんから、これに基づいて質問いたしますが、NATOについて一方的兵力削減をせよという主張が国内にあるけれども、それは危険である、やってはならぬことだということを長々しく述べたあとで、アジアにおいて配備されておる兵力についてはかなり大きな規模において削減をすることができる、こういうことを言うているわけですね。この考え方は、大平大臣、どう評価されますか。
  143. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 アメリカ立場から見ました場合といたしましても、NATOの戦略配備とアジア情勢とはおのずから異なった認識を持っているということが一つ言えるかと思います。  もう一つは、NATOからの米軍の撤退という問題につきましては、たとえばマンスフィールド提案というふうな具体的な形ですでに提案をいたされておりますけれども、こういう主として民主党から出ておりますヨーロッパからの兵力撤退につきまして、ニクソン政権は一貫してこれに反対の意向を表明いたしております。現にアメリカは、ヨーロッパにおいてNATO諸国と協力して相互兵力削減交渉の予備交渉をずっと続けてきておりますし、相互兵力削減交渉というものを前に控えまして、一方的な兵力の削減ということがいかなる意味を持つかということに関する考え方がそういう点にも出てきているのではなかろうかというふうに考えられるわけであります。
  144. 永末英一

    ○永末委員 NATOとアジア、この両方面にアメリカの態度は私は違っておると思う。その違っておることが、この前のニクソンの外交教書におきましても、また、この三月のリチャードソン報告においてもはっきりと読み取れる。読み取ってかからなければ、アメリカがわが日本に対してどういう態度なのかということはわからないのではないかと思うわけです。したがって、NATOにおいて相互兵力削減——それはブレジネフ・ブラント会談の結果いわばその基盤ができてくる。それは、あるいはこの前大平大臣は答えられなかったのですが、ソ連の提唱しておる集団安全保障体制アジアにおいても、アジア集団安全保障体制ということを申しましたし、ヨーロッパにおいては、すでにあのような形でその糸口につきつつある。それに対するアメリカの態度と、アジアにおけるアメリカの態度とは違うと思ってかからなければならぬのではなかろうか。そこで、そういう意味合いで、アメリカがNATOにおいて兵力削減をがえんじない態度をアジアにおいても持つであろうか。私は、兵力削減をしていくと思うが、どう思われますか、大臣。
  145. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 御指摘になっておられますリチャードソン国防報告そのものの中にも、たとえば欧州に関しまして、ニクソン・ドクトリンの対応、適応は、アジアにおいてとは大いに異なるということをはっきりうたっております。したがいまして、先生御指摘のとおりに、アメリカがNATO諸国あるいは欧州に対します政策と、アジアに対する政策とは、その面に関する限り明らかな差異があるということは、国防報告そのものが認めておるわけでございます。情勢も異なり、その基盤も異なり、したがいまして、兵力の駐留ということに関しましても、おのずから別途の考慮というものが働くことも考えられますけれども米側といたしましては、アジアにおいて、現在の情勢のもとに大幅なあるいは急激な戦略体制の変更を考えてないということは、私ども、いろいろな機会に米側から聞いておるところであります。
  146. 永末英一

    ○永末委員 差異を認めておる、差異というのは何なんだろうか。つまり、アフリカの兵力というのは、ヨーロッパにおいて組み入れられておるそのしかたと、アジアにおけるアメリカの兵力が、ベトナム戦争で果たしていた役割りが終わった現在、これからどうなっていくのか。しかも、その観点から沖繩をながめました場合に、沖繩軍事基地アメリカベトナム戦争の軍事基地として使用してきたそのあり方は変わらざるを得ない。リチャードソンが三月十五日に朝日新聞社の篠原特派員と話しましたところでは、沖繩の地位が大きく変わることはない、そういっている。しかし、変わるということでしょう。一ぺんに大きく変わるということは言っておりませんが、変わるということを大きく変わらないという表現で言っている。だから、われわれとしては、変わるんだという観点でこれをとらえるならば、日本の外交としては変えろという要求が出てくるはずだと思いますが、いかがですか。
  147. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 三月の十五日でございますか、リチャードソン国防長官は、確かに、沖繩基地役割りに関しまして、四つのことを言っております。一つは作戦基地であり、一つは補給基地であり、一つは通信基地であり、最後に、目に見える信頼性のある抑止力の証拠である、こういうことを言っているわけでございますが、ベトナム以後の情勢におきましても、米側考えは基本的には変わっておらないと思います。しかしながら、アメリカアジア戦略との関連におきまして、アメリカが、アジアにおけるあるいは具体的には日本における兵力配備、それとの関連におきまする基地のあり方ということについていかなる考え方を持っておるかということは、当然きわめて重大な問題でございますが、私どもは、この春以来米側といろいろな形での接触を通じ、意見交換を通じまして、米側としても、日本が強く希望しておりまする沖繩を含めた日本全体の基地整理統合については十分の理解を示し、基本的にはその方向日米共同して作業するということについての了解を持っておるわけでございます。今後引き続いてその作業を進めてまいりたいと考えております。
  148. 永末英一

    ○永末委員 私は、その同じ現象を見ておっても、どこが変わっておるかということをさがそうという目で見ておるわけだけれども、どうも外務省は、変わっていないというほうばかりに重点を置いて現象を見ておるように思いますね。しかし、変わっておるのでしょう。いまあなたが言われた、リチャードソンの、沖繩基地目的について、「第一に、日本本土やアジア各地への脅威に対し、迅速な対応ができるよう地上軍および空軍を維持するための前進基地および作戦基地である。」こんなことを言っておる。こういうものの言い方をアメリカの国防長官がしておるということを、返還後の沖繩基地について、一体わが国外務大臣はどう思いますか。前進基地であり、作戦基地であるとアメリカの国防長官が沖繩基地目的を語っておる。そっくりそのまま受け取られますか。
  149. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 ただいま、たとえば地上軍及び空軍を維持するため、こういうことを具体的に御指摘がございましたけれども沖繩を含めます日本における米陸軍の配備というのは、実戦兵力はもうない、こういうふうな状況でございますし、空軍にいたしましても、かってに比べますと、実戦兵力というものはきわめて限られてきておるということでございますから、御指摘のとおり、現実の米軍日本における配備というものは、情勢の変化に伴って動いておるということは、私どももそのとおりに理解いたしております。
  150. 永末英一

    ○永末委員 そこを聞いておるのではなくて、沖繩は現在陸軍が少なくなっておることは御承知のとおり。ただ、しかし、陸軍も住宅はありますよ。海兵隊の基地はまだあるわけであります。その沖繩における基地について、アメリカの国防長官は全部知っておるわけです。そういうことを全部含んだ上で、そのことばの内容ではなくて、作戦基地、前進基地というのは、彼らが占領をしてきたときからずっといわれてきたことばだ、同じことばを使っておるということを、復帰後の沖繩基地において、外務大臣は彼らの考え方をそのまま受け取られますかということを伺っておるのです。大臣、答えてください。
  151. 大平正芳

    大平国務大臣 私が関心を持っておりますのは、もとより、永末さん言われるようなバーバルな意味で、このことばづかいはどういう意図をもって使ったかということは、全然興味がないわけではありませんけれども、問題は、ポストベトナムにおけるアメリカアジアにおける軍事的プレゼンスというようなものが今後どうなっていくのか、アメリカは具体的にどう考えておるのかということを実は明らかにしたいわけなんでございます。ことばでなくて事実をもってわれわれは明らかにしていかなければならないわけでございまして、そういう努力を続けておるわけでございます。同時に、一面、日本といたしましての立場があるわけでございまして、アジア情勢はどういう状況であるかという認識、そしてその中で日本はどうあるべきであるか、どうあるべきでないか、そういうこともわれわれとしては絶えざる検討を続けてまいらなければならぬわけでありまして、その両者の間でどういう理解のある安定した間柄が可能であるか、そういうことを一生懸命究明いたしているところでございます。まさにいまそういうあなたが御指摘のように大きな変わり目に来ておることは間違いないわけでございますが、それがどういう姿で出てまいり、それをどのような姿で受けとめるのかということこそが私どもの課題であると考えておるわけでございまして、この作業は、この仕事はたいへん重大な仕事でございますので、速成の結論を私は急ごうと思わないのでありまして、われわれにまだ相当の時間が与えられておるものと私は思うのでありまして、もっとじっくり取り組ましていただき、その間御質疑を通じて問題点の解明に光を当てていただければ非常にしあわせであります。
  152. 永末英一

    ○永末委員 私どもアメリカの当局と外交折衝する立場じゃございません。だから、彼らが発表したもの、公にしたものについて、どういう意図であろうかということを推測するより方法がない。したがって、その推測をした場合に、それが外交折衝しておられる大臣がどういう感触を持っておるかということをやはりこの委員会で聞くのはわれわれの義務でございますから伺っておるわけであります。先ほど申し上げましたタンデムということばにこだわりましたのは、もしアメリカがニクソン・ドクトリンによって最初出ていくのが同盟国である、こういう考え方になっておるならば、沖繩基地について、前進基地であるとか作戦基地であるとかいうことばを使ってもらいたくないわけである。にもかかわらず、何か本土やアジアの他の諸国に対する前進基地、作戦基地と占領中二十数年にわたり使ってきたことばを無反省に使っておる。私の目から見ると、このリチャードソン報告はあちこち矛盾がありますが、その点は十分大臣も御検討いただいて、私はタンデム方式がこれからあっち側の基本的な考えであるというならば、もっともっと沖繩基地なんか少なくなるはずだ。目標を定めて御交渉いただきたい。  さて、四日ですか、アメリカの下院の外交委員会のヘイズ国家機関対外活動分科委員長という人が、この予算でVOAの移転費がなくなったので、上院で否決されたためにその移転することができないのだということをUSIAに通告したということが伝えられましたが、返還協定によりますと、その第八条で、ボイス・オブ・アメリカは五年間続くと書いてあります。これに対する了解については、「五年の期間の後その代替施設が完成するまでの間沖繩島においてヴォイス・オヴ・アメリカの運営を継続する必要性に対し、十分な認識を払う用意がある。」というような了解が取りかわされておりますが、もともとこの場合には、ボイス・オブ・アメリカというのはずっと続くんだということが頭にあったと思うのですね。とりあえず五年間ということを返還協定で問題がございましたから協定なさった。しかしその了解は、五年たっても代替施設ができないという場合にはまた考えるぞ、こういうのですが、アメリカのこの予算を通過せしめなかった、予算を否決した態度というのは、もうそれ以後の、沖繩の返還以後のアジア情勢は急激に変わった。つまりアメリカ中国との関係も変わり、ベトナム戦争も終わった。アメリカとソビエトまではボイス・オブ・アメリカは関係ないと思いますが、そういう東南アジア体制が変われば、この辺の地域でいままで沖繩のボイス・オブ・アメリカのやっておった役割りは要らぬのだ、こういう認識が予算の削減になったと私は思いますが、大臣どう思いますか。
  153. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 沖繩返還協定第八条の規定は、暫定的に五カ年間、この協定の効力の発生の日から五年間は沖繩でボイス・オブ・アメリカの運営継続ということに同意するということであります。五年を過ぎた場合に日本が引き続いて沖繩にボイス・オブ・アメリカの運営の継続を認めるという意味合いは持っておらないわけでございます。政府といたしましては、この協定第八条の規定に基づきまして、沖繩の返還協定の効力の発生の日から二年後にこの問題につきまして米側協議に入る、こういうことを考えているわけでございます。五年後も引き続いて継続運営を考えるということは全くないわけでございます。  それからもう一つ、七四会計年度におけるVOAの移転費が削減されたことに関する解釈をお述べだったわけでございますが、私どもといたしましても、米側が二年後の協議の結果五年の間にいかなる措置をとるかということについては当然深い関心を持っております。しかしながら今回七四会計年度に予算がつかなかったことをもって直ちにVOAの放送中止ということになるのかどうかについては、まだはっきりした情報を持っておりません。
  154. 永末英一

    ○永末委員 アメリカ局長、私が読み上げましたこの第八条に関する了解は、五年後において「ヴォイス・オヴ・アメリカの運営を継続する必要性に対し、十分な認識を払う用意がある。」こういうことばを読み上げて伺ったのでありますが、五年後はやらさないのだという意味の答弁をされました。そうですか。
  155. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 第八条に関する合意議事録の中に、「予見されない事情により代替施設が」といって、「明らかとなったときは、」という限定がついてございまして、予見されない事情、これはもうほんとうに予見できないわけでございまして、通常の状況におきましては五年後の存続ということは考えておらないわけでございます。
  156. 永末英一

    ○永末委員 時間が参りましたので終わりますが、大平大臣、これからアメリカとの折衝も新たな立場で行なわれると思います。沖繩軍事基地の前途につきましては十分慎重に状況を判断されまして、一刻も早くこれが縮小になるように御努力を願いたいと思います。
  157. 藤井勝志

    藤井委員長 柴田睦夫君。
  158. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 米軍基地の返還の問題についてお伺いするわけですが、まずきょうの委員会の最初に質問がありました第八回日米安保事務レベル会議、この会議は三年ぐらい中断していましたが、これが今回行なわれた、その理由ですが、まずその理由をお伺いします。
  159. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 今回の安保事務レベル協議は第八回目になります。そこで、第七回が行なわれましたのが一昨昨年の七月でございまして、それ以後日米双方の直接の担当者が沖繩返還交渉その他の事務で都合がつかなかったためにずっとしばらくとだえておりましたが、久しぶり会合をするということになったわけでございます。
  160. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 この事務レベル会議のおもな出席者をお伺いします。
  161. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 日本側からは、外務省法眼事務次官、東郷外務省審議官、影井国連局長大河原アメリカ局長、黒田調査部長、防衛庁から島田防衛事務次官、中村統幕議長、高松施設庁長官、久保防衛局長、こういう顔ぶれでございます。米側は、在日米大使館からインガソル大使、シュー・スミス公使、シュミッツ参事官、在日米軍からパースレー司令官、スノーデン参謀長、国務省からスナイダー次官補代理、ピッカリング政治・軍事局次長、エリクソン日本部長、国防省からドーリン次官補代理、ミッチェル企画部付補佐官、それから軍縮庁のレナード国際部長、太平洋軍司令部のエイツ海軍少将、こういう顔ぶれでございます。
  162. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 ついでに伺いますが、日米安保条約の運用協議会第二回の会合が五月の十四日に行なわれておりますけれども、この協議議題については、先ほど基地整理統合の問題であったと一口に答えられましたが、もう一度その運用協議会での内容と、それから出席者、お伺いします。
  163. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 安保運用協議会は四月二十三日が第一回、五月十四日が第二回……(柴田(睦)委員「二回目だけでけっこうです」と呼ぶ)五月十四日が第二回目でございます。この会合で取り上げましたのは、第一回の会合了解されました米軍の施設、区域目的役割り、土地の使用状況について再検討という基本的な合意に基づきまして、日米間の共通の関心事について意見の交換を行なったものであります。  出席の顔ぶれは、日本側外務省からアメリカ局長防衛庁から統幕議長、防衛局長、それから施設庁長官、米側からはシュー・スミス公使、シュミッツ参事官並びにパースレー司令官、スノーデン参謀長、こういう顔ぶれでございます。
  164. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 出席者をお伺いしたのは、今回はいわゆる制服組が直接会議に参加しているというように聞いているのですけれども、制服組の出席は安保運用協議会が初めてであるかどうかお伺いします。
  165. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 先ほど申し上げましたように、事務レベルの安保協議は今回が第八回でございますが、過去の八回の会合にはいずれも統幕議長が参加いたしております。  それから日米安保協議委員会は過去十四回開かれておりますが、統幕議長は——もちろん正式メンバーは外務大臣防衛庁長官でございますが、統幕議長は十四回の会議にいずれも出席いたしております。
  166. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 それらの会合米軍基地整理統合を進めるということが討議されたと伺いましたが、沖繩にはいわれておりますようにたくさん基地があって、その基地の中にはいわゆる遊休施設がまたたくさんある、こういわれておりますが、日本から見た場合、米軍の遊休施設にどういうものがあるか、そういう調査をされているか、またその調査結果についてお伺いします。
  167. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 沖繩米軍に提供いたしております施設、区域の数は現在七十九ありますが、この七十九の施設につきまして、日本側といたしましては、いかなる態様でこの施設、区域が使用されているかという実情については、十分これの調査をいたしております。
  168. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 それらの基地の中で遊休施設、いまアメリカが使われていない施設、それが幾つあるか、その調査結果をお聞きしたいと思います。
  169. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 遊休施設が幾つあるか、どこどこが遊休施設であるかということについて  は、ただいま申し上げる立場にございませんけれども日本側といたしましては、米側沖繩にあります施設、区域整理統合の話を進めるにあたりまして、各施設、区域の使用の実態については十分把握した上で米側と話を進めておるということを申し上げたいと思います。
  170. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 新聞報道などを見てみましても、またいろいろ調査をした結果によっても、米軍が現在使っていない施設、それがあるということはもう明らかだと思うのですけれども、いま外務省のほうでそれを言う立場にない、こう言われましたが、それはどういうことですか。
  171. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 日本側としては、ただいま米側と施設、区域整理統合の問題について鋭意話し合いを進めている段階でございますので、その作業の結果が出てくるのをもう少しお待ちいただきたいと存じます。
  172. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 返還の話を進めているということですけれども、そうすると、中身について言えないということですけれども日本のほうで遊休施設だと考えられるものについて、現実に返還の要求はしているわけですか。
  173. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 日本側がかりに遊休施設であるというふうに考えるものがあったといたしましても、米側米側立場として、それは必ずしも遊休施設であるということに同意しない場合も理論的にはあり得るかと思います。いずれにしましても、日本側といたしましては沖繩を含める日本米軍の施設、区域につきまして、その目的役割り使用状況、こういうものを再検討し、その上に立って基地整理統合について具体的な話し合いを進めるということで米側と話をしているわけでございます。
  174. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 遊休施設であるかどうかというようなことは、話をすれば大体すぐわかることだと思うのです。それらについて絶えず折衝している、話をしているということなんですけれども、どういう点が長い時間を必要とする事情になっているわけですか。
  175. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 日本政府は、安保条約に基づいて、米軍に対しまして日本における施設、区域の使用を認めているわけでございますが、その施設、区域の使用が安保条約目的にかなう限りにおいて、施設、区域の使用が許されるわけでございます。しかしながら社会情勢、経済情勢の推移に伴いまして、このような施設、区域の提供についてもろもろの問題が出てまいります際に、その新しい状況に照らして、施設、区域のあり方というものについて絶えず検討を加え、必要に応じて整理統合をはかるというのが日本側の基本的な考え方であり、米側といたしましても、基本的には日本側整理統合の必要性に関する考え方というものに対する理解を持っているわけでございますから、その理解の上に立って現在整理統合作業を進めようということをしているわけでございます。
  176. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 そういう話では基地はいつまでたっても返ってこないということになると思うのですけれども、結局いまいろいろな事情から考えてみまして、米軍側から移転先を要求されるとか、あるいは移転の費用を要求されるとか、そういう折衝が続けられているわけではないのですか。
  177. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 施設、区域整理統合にあたりまして単純な返還の形もありましょうし、一部返還の場合もありましょうし、あるいは代替施設の提供という形での整理統合もありましょうし、いろいろな形があり得るわけであります。そこらの点を全般的に踏まえまして整理統合という作業を進めてまいるわけでありますし、かりに代替施設の提供ということにつきまして日米間の話が進みます場合には、その代替施設の提供に伴う経費は地位協定に基づいて日本側の負担ということになるわけであります。
  178. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 地位協定の第二条第三項によりますと、「合衆国軍隊が使用する施設及び区域は、この協定の目的のため必要でなくなったときは、いつでも、日本国に返還しなければならない。合衆国は、施設及び区域の必要性を前記の返還を目的としてたえず検討することに同意する。」こういう内容になっているわけです。現実に遊休施設となっているようなものは、これはもう安保条約立場からしても必要でないのだ、こういうように考えるのが普通だと思うのですけれども、地位協定に書いてあるこの内容をそのまま実行するように要求するという態度が必要ではないかと思うのです。  いまの政府見解を聞いておりますと、地位協定にきめられている以上な負担が日本にさせられているのじゃないか、こう思うのですが、いかがですか。
  179. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 地位協定第二条の3についての御言及でございますけれども、こういう規定があるからこそ、米側といたしましては、基地の施設、区域の必要性に関する検討を行なっているわけであります。その検討の結果といたしまして、日本側合意できましたものについて返還という、部分返還あるいは代替施設の提供による整理統合という、いろいろな日米間の合意が行なわれるわけであります。  代替施設の提供という形での合意ができました場合に、地位協定に基づいて、この経費を日本側が負担するということを先ほど申し上げましたけれども、これは地位協定が規定するもの以上のものを日本側が負担ということでは決してないわけでございます。あくまでも地位協定の規定に基づく措置であるわけでございます。また、措置でなければいけないというふうに私ども考えております。
  180. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 では、具体的に言いますと、那覇空港にありますP3、この移転が要求されて、P3の移転を要求すると普天間の基地の滑走路の改修これが要求されて、日本がその改修費を払わなければならないような立場に置かれている、こう言われておりますけれども、こういった改修費は地位協定上払う必要はないのじゃないでしょうか。
  181. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 復帰前から那覇空港に米海軍のP3が駐留いたしております。復帰にあたりまして那覇空港の完全返還ということの関連におきまして、P3の撤去について日米間での話し合いが行なわれたわけでございます。  その段階におきまして、那覇空港のP3は普天間の飛行場へ移転という話が一応動いた段階がございます。  しかしながら、その後いろいろな経緯を経ましてP3は嘉手納の飛行場へ移転するということについての合意が、一月二十三日に最終的に固まったわけでございまするけれども、那覇空港を返還させ、P3を撤去させるに伴いまして、日本側といたしましては、P3の使用のために必要とされる施設の提供を必要としたわけでございまして、P3の撤去先としては嘉手納の飛行場でございまするけれども、これに関連いたしまして、従来嘉手納の飛行場にありまする部隊は那覇の空港を代替飛行場、予備飛行場という形で使い得たわけでありますが、完全返還の場合にはその形がとり得ませんので、したがいまして、嘉手納の飛行場の代替施設、予備施設という形での普天間の飛行場の使用が必要とされるわけであります。それに関連いたしまする普天間の飛行場の滑走路の整備補強という作業が必要になっているわけでございますから、その費用を地位協定の規定に基づいて日本側が負担するという合意をしたわけでございます。  さらにもう一つ、P3に関連して申し上げますと、普天間にありまする海兵隊のヘリコプター部隊は、今日那覇空港にありますP3の補修整備施設を使用いたして補修整備の作業を行なっておりますけれども、P3が嘉手納へ移転いたしました場合にはそれができなくなりますので、普天間  の海兵隊のヘリコプターの部隊用といたしまして、若干の施設を合わせて代替という意味で提供するということの合意もできているわけでございます。これらはいずれも地位協定の規定の範囲内で行なわれているものであるというのが、政府のはっきりした考え方でございます。
  182. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 普天間の基地も嘉手納の基地もすでに提供してある基地であるわけです。四十五年の八月十八日の内閣委員会での、当時の山上施設庁長官が滑走路を延長する場合、土地は日本が提供するが、その上に行なう滑走路延長のためのもろもろの工事の負担は米軍が引き受けることになっている、こういう答弁がされているわけですが、この考え方といまの答弁との関係について説明していただきたいと思います。
  183. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 私どももただいま御指摘の、当時の山上施設庁長官の答弁を承知いたしております。そこで当時の状況から見まして、山上施設庁長官の御答弁は、その時点における態様を申し述べたものであって、地位協定の解釈を述べたものではないというのが、政府考え方であります。
  184. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 地位協定の二十四条というのは、結局これ、日本側が負担してもかまわない、日本側が負担しなければならないというわけではない、このように私は読んでいるわけなんですけれども、そういうことから、そういった滑走路の延長の費用などを日本が負担するというのは、地位協定以上の仕事をさせられているということではないかと思うのですが、いかがですか。
  185. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 地位協定二十四条は、第一項で米側が負担すべき経費について規定し、第二項で日本側の負担について規定しているわけでございまして、日本側といたしましては代替施設の提供の場合には、地位協定二十四条二項の規定に従って日本側の負担になるという考え方をとっているわけであります。
  186. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 時間が参りましたので、終わります。
  187. 藤井勝志

    藤井委員長 次回は、来たる八日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後一時五十九分散会